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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電子管及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 29/38 20060101AFI20220829BHJP
   H01J 43/24 20060101ALI20220829BHJP
   H01J 43/20 20060101ALI20220829BHJP
   H01J 43/28 20060101ALI20220829BHJP
   H01J 33/04 20060101ALI20220829BHJP
   H01J 1/34 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H01J29/38
H01J43/24
H01J43/20
H01J43/28
H01J33/04
H01J1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574326
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020024219
(87)【国際公開番号】W WO2020262254
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182652.8
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507018838
【氏名又は名称】テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰英
(72)【発明者】
【氏名】河合 直弥
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ピーター ウドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ サイモン レインコーフ
【テーマコード(参考)】
5C038
【Fターム(参考)】
5C038BB02
5C038BB04
5C038BB06
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】電子管は、内部が真空に保持されていると共に電磁波を透過する窓を有しているハウジングと、ハウジング内に配置されており、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有している電子放出部と、ハウジング内に配置されており、電子放出部から放出された電子を増倍する電子増倍部と、ハウジング内に配置されており、電子増倍部で増倍された電子を収集する電子収集部と、を備えている。窓は、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空に保持されていると共に電磁波を透過する窓を有しているハウジングと、
前記ハウジング内に配置されており、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有している電子放出部と、
前記ハウジング内に配置されており、前記電子放出部から放出された電子を増倍する電子増倍部と、
前記ハウジング内に配置されており、前記電子増倍部で増倍された電子を収集する電子収集部と、を備え、
前記窓は、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む、電子管。
【請求項2】
前記電子放出部は、前記メタサーフェスが設けられた第1主面と当該第1主面に対向する第2主面とを含む基板を有し、
前記電子増倍部は、前記電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有し、
前記基板は、前記窓を透過する電磁波に対して透過性を有し、かつ、前記第1主面が前記電子増倍部の前記入射面に面すると共に前記第2主面が前記窓に面するように配置されている、請求項1に記載の電子管。
【請求項3】
前記電子増倍部は、前記電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有し、
前記メタサーフェスは、前記電子増倍部の前記入射面に面するように前記窓に設けられている、請求項1に記載の電子管。
【請求項4】
前記電子放出部は、前記メタサーフェスが設けられた第1主面と当該第1主面に対向する第2主面とを有している基板を有し、
前記電子増倍部は、前記電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有し、
前記基板は、前記第1主面が前記窓及び前記電子増倍部の前記入射面に面するように配置されている、請求項1に記載の電子管。
【請求項5】
前記メタサーフェスは、パターン化された酸化物層又はパターン化された金属層に含まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項6】
前記電子増倍部及び前記電子収集部は、ダイオードであると共に一体に構成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項7】
前記電子増倍部は、互いに離間した複数のダイノードを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項8】
前記電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項9】
前記電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項10】
請求項9に記載の電子管と、
前記蛍光体からの前記光に基づく像を撮像する撮像部と、を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子管及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波を検出する検出器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この検出器は、メタマテリアル構造を有している基板と、光センサとを備えている。テラヘルツ波は、基板に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0216201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている検出器では、メタマテリアル構造を有している基板へテラヘルツ波が入射すると、当該基板は電子を放出する。基板から放出された電子は、大気を構成する分子などを励起する。分子は、励起されると光を発生させる。光センサは、発生した光を検出する。このような検出器では、微弱な強度を有しているテラヘルツ波が検出され難い。
【0005】
本発明の一つの態様は、電磁波の検出精度が確保されている電子管を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、電磁波の検出精度が確保されている撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様に係る電子管は、ハウジングと、電子放出部と、電子増倍部と、電子収集部とを備える。ハウジングは、内部が真空に保持されていると共に電磁波を透過する窓を有している。電子放出部は、ハウジング内に配置されている。電子放出部は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有している。電子増倍部は、ハウジング内に配置されている。電子増倍部は、電子放出部から放出された電子を増倍する。電子収集部は、ハウジング内に配置されている。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を収集する。上記窓は、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。
【0007】
上記一つの態様では、ハウジングが有している窓は、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。したがって、ハウジング内に導かれる電磁波、たとえば、テラヘルツ波から赤外光に関する周波数帯域の電磁波の強度が確保され得る。窓を透過した電磁波が電子放出部のメタサーフェスに入射すると、電子が電子放出部から放出される。放出された電子は、ハウジング内で電子増倍部によって増倍される。電子収集部では、増倍された電子が収集される。このため、上述した電磁波に対しても検出精度が確保される。
【0008】
上記一つの態様では、電子放出部は、メタサーフェスが設けられた第1主面と当該第1主面に対向する第2主面とを含む基板を有していてもよい。電子増倍部は、電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有していてもよい。基板は、窓を透過する電磁波に対して透過性を有していてもよい。基板は、第1主面が電子増倍部の入射面に面すると共に第2主面が窓に面するように配置されていてもよい。この場合、窓及び基板を透過した電磁波がメタサーフェスに入射する構成において、当該電磁波の入射に応じてメタサーフェスから放出される電子が簡易な構成で電子増倍部へ導かれる。
【0009】
上記一つの態様では、電子増倍部は、電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有していてもよい。メタサーフェスは、電子増倍部の入射面に面するように窓に設けられていてもよい。この場合、メタサーフェスを設ける基板をハウジング内に別途配置する必要がない。このため、電子管のサイズ及び重量が削減され得る。
【0010】
上記一つの態様では、電子放出部は、メタサーフェスが設けられた第1主面と当該第1主面に対向する第2主面とを有している基板を有していてもよい。電子増倍部は、電子放出部から放出された電子が入射する入射面を有していてもよい。基板は、第1主面が窓及び電子増倍部の入射面に面するように配置されていてもよい。この場合、窓を透過した電磁波が基板を透過せずにメタサーフェスに入射する構成において、当該電磁波の入射に応じてメタサーフェスから放出される電子が簡易な構成で電子増倍部へ導かれる。
【0011】
上記一つの態様では、メタサーフェスは、パターン化された酸化物層又はパターン化された金属層に含まれていてもよい。この場合、上述した電磁波の入射に応じてメタサーフェスから放出される電子が増加する。
【0012】
上記一つの態様では、電子増倍部及び電子収集部は、ダイオードであると共に一体に構成されていてもよい。この場合、電子管のサイズがさらに削減され得る。
【0013】
上記一つの態様では、電子増倍部は、互いに離間した複数のダイノードを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有してもよい。この場合、メタサーフェスから放出された電子が複数のダイノードで増倍される。このため、アノード又はダイノードで収集される電子の増倍率が向上する。
【0014】
上記一つの態様では、電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有してもよい。この場合、電子増倍部に複数のダイノードを用いる場合に比べて、サイズ、重量、及び消費電力が削減されると共に、応答速度及び利得が向上する。
【0015】
上記一つの態様では、電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体を有してもよい。この場合、メタサーフェスから放出された電子の2次元位置が、蛍光体が発した光によって検出され得る。
【0016】
本発明の別の一つの態様に係る撮像装置は、上述した電子管と、蛍光体からの光に基づく像を撮像する撮像部と、を備えている。上記別の一つの態様では、上述した電磁波の検出精度が確保される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、電磁波の検出精度が確保される電子管を提供できる。本発明の別の一つの態様によれば、電磁波の検出精度が確保される撮像装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る電子管を示す断面図である。
図2】電子管の部分拡大図である。
図3】メタサーフェスの部分拡大図である。
図4】電子管の部分分解図である。
図5】本実施形態の変形例に係る電子管の部分拡大図である。
図6】本実施形態の変形例に係る電子管の部分拡大図である。
図7】本実施形態の変形例に係る電子管の部分拡大図である。
図8】本実施形態の変形例に係る電子管の断面図である。
図9】本実施形態の変形例に係る電子管の断面図である。
図10】マイクロチャンネルプレートの斜視切欠図である。
図11】本実施形態の変形例に係る電子管の部分断面図である。
図12】本実施形態の変形例に係る電子管の断面図である。
図13】本実施形態の変形例に係る撮像装置の側面図である。
図14】本実施形態の変形例に係る電子管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
まず、図1図4を参照して、本実施形態に係る電子管の構成を説明する。図1は、電子管の一例を示す断面図である。図2は、電子管の一例を示す部分拡大図である。
【0021】
電子管1は、電磁波の入射に応じて電気信号を出力する光電子増倍管である。電子管1は、電磁波が入射した場合に内部で電子を放出し、放出された電子を増倍する。本明細書において、電子管に入射する「電磁波」は、いわゆるミリ波から赤外光の周波数帯域を有する電磁波である。図1に示されているように、電子管1は、ハウジング10と、電子放出部20と、電子増倍部30と、電子収集部40とを備えている。
【0022】
ハウジング10は、バルブ11と、ステム12とを有している。ハウジング10の内部は、バルブ11とステム12で気密に封止されることで真空に保持されている。真空は、絶対真空だけでなく、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態も含む。たとえば、ハウジング10の内部は、1×10-4~1×10-7Paに保持される。バルブ11は、電磁波を透過する窓11aを有している。本実施形態では、ハウジング10は円筒形状を有している。ステム12は、ハウジング10の底面を構成する。バルブ11は、ハウジング10の側面及びステム12に対向する底面を構成する。
【0023】
窓11aは、ステム12に対向する底面を構成する。窓11aは、たとえば、平面視で円形状である。窓11aは、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。本実施形態では、窓11aは、石英からなる。なお、材料に応じて、電磁波の透過率の周波数特性は異なる。このため、窓11aを透過する電磁波の周波数帯域に応じて、窓11aの最適材料は異なる。たとえば、石英は0.1~5THz、シリコンは0.04~11THz及び46THz以上、フッ化マグネシウムは40THz以上、ゲルマニウムは13THz以上、セレン化亜鉛は14THz以上の周波数帯域を有する電磁波を透過する部材の材料に適している。
【0024】
電子管1は、ハウジング10の外部と内部との電気的な接続を可能とする複数の配線13をさらに有している。複数の配線13は、たとえば、リード線又はピンである。本実施形態では、複数の配線13は、ステム12を貫通するピンであり、ハウジング10の内部から外部に延在している。複数の配線13の少なくとも1つが、ハウジング10の内部に設けられた種々の部材と接続されている。
【0025】
電子放出部20は、ハウジング10内に配置されており、ハウジング10内で電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部20は、メタサーフェス50と、メタサーフェス50が設けられた基板21とを有している。基板21は、窓11aを透過する電磁波に対して透過性を有している。本明細書において、「透過性」とは、入射した電磁波の少なくとも一部の周波数帯域が透過する性質をいう。すなわち、基板21は、窓11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数帯域を透過する。基板21は、たとえば、シリコンを材料として構成されている。基板21は、平面視で矩形状である。基板21は、窓11a及び電子増倍部30から離間している。
【0026】
図2に示されているように、基板21は、互いに対向している一対の主面21a,21bを含んでいる。メタサーフェス50は、主面21aに設けられている。たとえば、主面21aが第1主面を構成する場合、主面21bが第2主面を構成する。主面21a及び主面21bは、窓11aに対して平行に配置されている。
【0027】
メタサーフェス50は、基板21の主面21a上でパターン化された酸化物層又はパターン化された金属層に含まれている。酸化物層は、たとえば酸化チタンである。金属層は、たとえば金である。メタサーフェス50は、平面視で矩形状である。図3は、メタサーフェスの一例を示す部分拡大図である。本実施形態では、図3に示されているように、パッシブタイプのメタサーフェス50を構成する金属層が、主面21a上で複数のアンテナ51を形成している。
【0028】
アンテナ51のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に感度を有している。メタサーフェス50は、アンテナ51の構造を変更することで、0.01~50THz程度の周波数帯域、いわゆるミリ波から中赤外光の周波数帯域に対応できる。メタサーフェス50は、たとえば、いわゆるミリ波からテラヘルツ波の周波数帯域に相当する0.01~10THzの周波数帯域に対応できるように構成されてもよい。メタサーフェス50は、たとえば、テラヘルツ波から中赤外光の周波数帯域に相当する10~50THzの周波数帯域に対応できるよう構成されてもよい。本実施形態では、メタサーフェス50の平面視のサイズは、10×10mmである。各アンテナ51のピッチは、約20μm~30μmである。当該メタサーフェス50は、周波数が0.5THzの電磁波に対応している。
【0029】
本実施形態では、メタサーフェス50は、透過型のメタサーフェスである。透過型のメタサーフェスでは、電磁波が入射すると、電磁波が入射した面と反対側から電子が放出される。電子管1では、窓11aを透過した電磁波は、基板21の主面21bに入射する。基板21を透過した電磁波は、主面21aに設けられたメタサーフェス50に入射する。メタサーフェス50は、窓11a及び基板21を透過して入射した電磁波に応じて電子を放出する。
【0030】
電子増倍部30は、ハウジング10内に配置されており、電子放出部20から放出された電子が入射する入射面35を有している。電子増倍部30は、入射面35に入射した電子を増倍する。本実施形態では、基板21の主面21aは、電子増倍部30の入射面35に面している。すなわち、メタサーフェス50は、電子増倍部30の入射面35に面しており、メタサーフェス50から放出された電子が入射面35に入射する。基板21の主面21bは、ハウジング10の窓11aに面している。
【0031】
本明細書において、「αがβに面する」とは、βがαに接する平面よりもαの法線方向に位置することを意味する。換言すれば、「αがβに面する」とは、空間をαに接する面で二分した場合に、βがαの裏側でなく、α側に位置することを意味する。たとえば、電子管1では、上述したように、メタサーフェス50は電子増倍部30の入射面35に面している。これは、電子増倍部30の入射面35がメタサーフェス50に接する平面よりもメタサーフェス50の法線方向に位置していることを意味する。
【0032】
本実施形態では、電子増倍部30は、図1及び図4に示されているように、いわゆるラインフォーカス型の複数段のダイノードを有している。図4は、電子増倍部30、電子収集部40、及びその周辺の部分分解図である。
【0033】
本実施形態において電子増倍部30は、電子を集束させる集束電極31と、互いに離間した複数段のダイノード32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g,32h,32i,32jとを有している。ダイノード32aは、上述した入射面35を含んでいる。本実施形態では、電子増倍部30は、10段のダイノード32a~32jを有している。集束電極31の中央部には、円形状の入射開口31aが設けられている。ダイノード32a~32jは、入射開口31aの後段に配置されている。ダイノード32a~32jのそれぞれには、複数の配線13のうち1つが接続されている。ダイノード32a~32jのそれぞれには、所定の電位が配線13を通して印加される。ダイノード32a~32jは、印加された電位に応じて入射開口31aを通過した電子を増倍する。
【0034】
電子収集部40は、ハウジング10内に配置されており、電子増倍部30で増倍された電子を収集する。本実施形態では、電子収集部40はメッシュ状のアノード41を有している。アノード41は、基板21の主面21bと対向している。アノード41には、複数の配線13のうち1つが接続されている。アノード41には、所定の電位が配線13を通して印加される。アノード41は、ダイノード32a~32jで増倍された電子を補足する。電子収集部40は、アノード41の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0035】
本実施形態では、電子管1は、ダイノード32a~32j及びアノード41をハウジング10内に固定する絶縁基板52,53を有している。絶縁基板52,53は、アルミナからなる。絶縁基板52,53は、互いに対向している。ダイノード32a~32jは、絶縁基板52,53の対向方向において延在する一対の端部32kを有している。アノード41は、絶縁基板52,53の対向方向において延在する一対の端部41kを有している。ダイノード32a~32j及びアノード41のそれぞれの端部32k,41kは、絶縁基板52,53に予め設けられたスリット状の貫通孔52a,53aに挿入されている。
【0036】
電子管1は、ダイノード32a~32jとアノード41との一部を囲う遮蔽板36を有している。遮蔽板36は、ダイノード32a~32jで増倍された電子の衝突によって生じた光及びイオンがハウジング10内で飛散することを防止する。遮蔽板36は、複数の配線13のうち1つに接続されている。遮蔽板36には、所定の電位が配線13を通して印加される。
【0037】
次に、電磁波を入射した場合の電子管1の動作について説明する。電磁波は、ハウジング10の窓11aを透過すると基板21の主面21bに入射する。主面21bに入射した電磁波は、基板21を透過し、基板21の主面21aに設けられたメタサーフェス50に入射する。メタサーフェス50は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子は、電子増倍部30の入射面35に向けて放出される。
【0038】
メタサーフェス50から放出された電子は、集束電極31で収束されて第1段目のダイノード32a(入射面35)に送られる。第1段目のダイノード32a(入射面35)に電子が入射すると、ダイノード32aから二次電子が第2段目のダイノード32bに向けて放出される。第2段目のダイノード32bに電子が入射すると、ダイノード32bから二次電子が第3段目のダイノード32cに向けて放出される。このように、第1段目のダイノード32aから第10段目のダイノード32jへと電子が増倍されながら順次送られる。すなわち、メタサーフェス50から放出された電子に対して、電子増倍部30でカスケード増倍が行われる。電子増倍部30で増倍された電子は、電子収集部40であるアノード41で収集されて、アノード41から配線13を通して出力信号として出力される。
【0039】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図5及び図6は、それぞれ変形例に係る電子管の部分拡大図を示している。
【0040】
図5に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、基板21が窓11aに設けられている点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0041】
図5に示されている電子管1Aでは、メタサーフェス50がハウジング10内で基板21を挟んで窓11aに間接的に設けられている。基板21は、ハウジング10内において窓11aに設けられている。基板21は、窓11aを透過する電磁波に対して透過性を有している。すなわち、基板21は、窓11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数帯域を透過する。基板21は、たとえば、シリコンを材料として構成されている。基板21は、平面視で矩形状である。基板21は、窓11a及び電子増倍部30から離間している。
【0042】
基板21は、メタサーフェス50が設けられた主面21aと当該主面21aに対向する主面21bとを含んでいる。主面21aは、電子増倍部30の入射面35に面している。すなわち、メタサーフェス50は、電子増倍部30に面している。主面21bは、ハウジング10の窓11aに面している。主面21a及び主面21bは、窓11aに対して平行に配置されている。基板21の主面21bと窓11aとは、窓11aを透過する電磁波に対して透過性を有している真空用接着剤Lによって接着されている。真空用接着剤Lは、たとえば、ポリエチレン系樹脂又はエポキシ樹脂系接着剤である。
【0043】
図5に示されている電子管1Aでは、窓11aを透過した電磁波が基板21の主面21bに入射する。基板21の主面21bに入射した電磁波は、基板21を透過し、主面21aに設けられたメタサーフェス50に入射する。メタサーフェス50にテラヘルツ波が入射すると、メタサーフェス50は電子を放出する。電子は、メタサーフェス50から電子増倍部30の入射面35に向けて放出される。
【0044】
図6に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、メタサーフェス50がハウジング10内で基板を挟まずに窓11aに直接設けられている点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0045】
図6に示されている電子管1Bでは、メタサーフェス50は、電子増倍部30の入射面35に面している。図6に示されている電子管1Bでは、窓11aを透過した電磁波が、窓11aに設けられたメタサーフェス50に入射し、メタサーフェス50から電子が放出される。電子は、メタサーフェス50から電子増倍部30の入射面35に向けて放出される。
【0046】
次に、図7を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図7は、電子管の一例の断面図である。図7に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、窓11aがハウジング10の側面に設けられている点、メタサーフェス50に対する電磁波の入射方向が異なる点、電子増倍部30がいわゆるサーキュラゲージ型の複数段のダイノードを有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0047】
図7に示されている電子管1Cでは、窓11aは、円筒形状のハウジング10の側面に設けられている。電子管1Cでは、基板21の主面21aは、窓11a及び電子増倍部30の入射面35に面している。すなわち、主面21aに設けられたメタサーフェス50は、窓11a及び電子増倍部30の入射面35に面している。
【0048】
電子管1Cでは、電子放出部20のメタサーフェス50は、反射型のメタサーフェスである。反射型のメタサーフェスでは、電磁波が入射すると、電磁波が入射した面側に電子が放出される。電子管1Cでは、窓11aを透過した電磁波は、基板21を介さずに、基板21の主面21aに設けられたメタサーフェス50に入射する。メタサーフェス50は、窓11aを透過して入射した電磁波に応じて電子を放出する。
【0049】
電子管1Cは、メタサーフェス50と窓11aとの間にグリッド55を備えている。窓11aを透過した電磁波は、グリッド55を透過してメタサーフェス50に入射する。グリッド55には、配線13を通して電圧が印加されている。グリッド55による電界の影響よって、メタサーフェス50から放出された電子は電子増倍部30の入射面35に導かれる。
【0050】
電子管1Cの電子増倍部30は、いわゆるサーキュラーケージ型の複数段のダイノード32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g,32h,32iを有している。ダイノード32aは、入射面35を含んでいる。本変形例では、電子増倍部30は、9段のダイノード32a~32iを有している。ダイノード32a~32iは、ハウジング10の側面に沿って、電子放出部20を回り込むように設けられている。ダイノード32a~32iのそれぞれには、所定の電位が配線13を通して印加される。ダイノード32a~32iは、印加された電位に応じて入射した電子を増倍する。
【0051】
電子管1Cの電子収集部40は、湾曲したダイノード32iに囲まれている。本変形例では、電子収集部40は、アノード41である。アノード41には、複数の配線13のうち1つが接続されている。アノード41には、所定の電位が配線13を通して印加される。アノード41は、ダイノード32a~32iで増倍された電子を補足する。
【0052】
図7に示されている電子管1Cでは、電磁波は、ハウジング10の窓11aを透過するとグリッド55を透過し、基板21の主面21aに設けられたメタサーフェス50に入射する。メタサーフェス50は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェス50から放出された電子は、グリッド55による電界の影響によって、電子増倍部30の入射面35に向けて放出される。
【0053】
メタサーフェス50から放出された電子は、第1段目のダイノード32aに送られる。第1段目のダイノード32a(入射面35)に電子が入射すると、ダイノード32aから二次電子が第2段目のダイノード32bに向けて放出される。第2段目のダイノード32bに電子が入射すると、ダイノード32bから二次電子が第3段目のダイノード32cに向けて放出される。このように、第1段目のダイノード32aから第9段目のダイノード32iへと電子が増倍されながら、基板21を回り込むように順次送られる。電子増倍部30で増倍された電子は、電子収集部40であるアノード41で収集されて、アノード41から配線13を通して出力信号として出力される。
【0054】
次に、図8を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図8は、電子管の一例の断面図である。図8に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、電子増倍部30及び電子収集部40がダイオード60によって一体に構成されている点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0055】
図8に示されている電子管1Dでは、電子増倍部30及び電子収集部40は、ダイオード60である。電子管1Dでは、電子増倍部30及び電子収集部40が一体に構成されている。電子管1Dでは、メタサーフェス50は、窓11aに面している。
【0056】
本変形例では、ダイオード60は、アバランシェダイオードである。ダイオード60は、平面視で矩形状であり、互いに対向する一対の主面61,62を有している。主面61には、電子入射面61aが設けられている。主面61は、ハウジング10の窓11aに面している。主面62は、ハウジング10のステム12に面している。主面61,62は、窓11a、基板21、及びメタサーフェス50に対して平行に配置されている。
【0057】
ダイオード60の主面62には、絶縁層65が設けられている。ダイオード60は、絶縁層65を挟んでステム12に接続されている。主面61及び主面62のそれぞれに、複数の配線13のうち1つが接続されている。
【0058】
ダイオード60には、配線13を通して逆バイアスの電圧が印加される。本変形例では、ダイオード60の主面61側(電子入射面61a)と主面62側と間にブレークダウン電圧よりも大きな逆バイアス電圧が印加される。電子管1Dでは、基板21のメタサーフェス50から放出された電子がダイオード60の電子入射面61aに入射すると、入射した電子はダイオード60の内部でアバランシェ増倍によって増倍される。増倍された電子は、配線13を通して出力信号として出力される。
【0059】
次に、図9及び図10を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図9は、電子管の一例を示す断面図である。図9に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、電子増倍部30が集束電極31及びダイノード32a~32jの代わりにマイクロチャンネルプレート70を有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0060】
図9に示されている電子管1Eでは、マイクロチャンネルプレート70は、バルブ11の内壁に固定された取付部材71,72の内縁で支持されている。マイクロチャンネルプレート70は、電子放出部20と電子収集部40との間に配置されている。具体的には、マイクロチャンネルプレート70は、メタサーフェス50が設けられた基板21とアノード41との間に配置されている。マイクロチャンネルプレート70は、基板21及びアノード41から離間している。電子管1Eにおいても、電子収集部40は、アノード41の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0061】
図10は、マイクロチャンネルプレートの一例の斜視切欠図である。本変形例では、マイクロチャンネルプレート70は、図10に示されているように、基体73と、複数のチャンネル74と、隔壁部75と、フレーム部材76を有している。基体73は、入力面73a及び入力面73aに対向する出力面73bを有している。基体73は、円板状に形成されている。入力面73aは、基板21に面している。出力面73bは電子収集部40であるアノード41に面している。入力面73a及び出力面73bは、窓11a、基板21、及びメタサーフェス50に対して平行に配置されている。アノード41は、平板形状であり、マイクロチャンネルプレート70の出力面73bと平行に配置されている。
【0062】
複数のチャンネル74は、基体73において、入力面73aから出力面73bにかけて形成されている。具体的には、各チャンネル74は、入力面73a及び出力面73bに直交する方向に、入力面73aから出力面73bに延在している。複数のチャンネル74は、平面視でマトリクス状に配置されている。各チャンネル74は、断面円形状である。複数のチャンネル74の間には、隔壁部75が設けられている。なお、マイクロチャンネルプレート70は、電子増倍器として機能するために、チャンネル74内の隔壁部75の表面に図示しない抵抗層及び電子放出層を有している。フレーム部材76は、基体73の入力面73a及び出力面73bの周縁部に設けられている。
【0063】
電子管1Eでは、取付部材71,72のそれぞれに、複数の配線13のうち1つが接続されている。マイクロチャンネルプレート70には、配線13及び取付部材71,72を通して、入力面73aと出力面73bとに電圧が印加される。具体的には、入力面73a及び出力面73bに、入力面73aよりも出力面73bの方が高電位となるように電位が付与される。メタサーフェス50から放出された電子は、入力面73aに入射すると、チャンネル74で増倍されて出力面73bから放出される。マイクロチャンネルプレート70で増倍された電子は、電子収集部40であるアノード41で収集されて、アノード41から配線13を通して出力信号として出力される。
【0064】
次に、図11及び図12を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図11は、電子管の一例を示す部分断面図である。図12は、図11に示されている電子管の一部を示す断面図である。図11及び図12に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、電子管がいわゆるイメージインテンシファイアである点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0065】
図11に示されている電子管1Fでは、ハウジング80の内に、電子放出部20、電子増倍部30、及び電子収集部40が配置されている。電子管1Fでは、図9に示されている電子管1Eと同様に、電子増倍部30が、集束電極31及びダイノード32a~32jの代わりにマイクロチャンネルプレート70を有している。電子管1Fでは、電子収集部40が、アノード41の代わりに蛍光体81を有している。電子管1Fでは、ハウジング80の内部において、メタサーフェス50と、マイクロチャンネルプレート70と、蛍光体81とが近接している。
【0066】
ハウジング80は、側壁82と、入射窓83(窓11a)と、出射窓84とを有している。側壁82は、中空筒形状を有している。入射窓83及び出射窓84は、それぞれ円板形状を有している。ハウジング80の内部は、側壁82の両端部を入射窓83及び出射窓84で気密に封止することにより真空に保持されている。たとえば、ハウジング80の内部は、1×10-5~1×10-7Paに保持される。
【0067】
側壁82は、たとえば、側管85と、側管85の側部を被覆するモールド部材86と、モールド部材86の側部及び底部を被覆するケース部材87とによって構成されている。側管85、モールド部材86、及びケース部材87は、中空円筒形状である。側管85は、たとえば、セラミックで構成される。モールド部材86は、たとえば、シリコーンゴムで構成される。ケース部材87は、たとえば、セラミックで構成される。
【0068】
モールド部材86の両端部のそれぞれには貫通孔が形成されている。ケース部材87の一端は開放されている。ケース部材87の他端には、モールド部材86の一方の貫通孔とその周縁を一致させた貫通孔が形成されている。モールド部材86の一端側において、モールド部材86の貫通孔周辺の表面には、入射窓83が接合されている。入射窓83は、電子管1の窓11aと同様に、電磁波を透過する。入射窓83は、電子管1の窓11aと同様に、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。
【0069】
電子管1Fでは、メタサーフェス50は、ハウジング80内で入射窓83に直接設けられている。メタサーフェス50は、電子増倍部30であるマイクロチャンネルプレート70に面している。マイクロチャンネルプレート70は、メタサーフェス50と蛍光体81との間に配置されている。マイクロチャンネルプレート70は、メタサーフェス50及び蛍光体81から離間している。
【0070】
モールド部材86の他端側において、モールド部材86の他方の貫通孔には、出射窓84が嵌合している。出射窓84は、たとえば多数の光ファイバをプレート状に集束して構成されたファイバプレートである。ファイバプレートの各光ファイバは、ハウジング80の内部側の端面84aが面一に構成されている。当該端面84aは、メタサーフェス50と平行に配置されている。
【0071】
蛍光体81は、端面84aに配置されている。蛍光体81は、たとえば、蛍光材料を端面84aに付与することによって形成される。蛍光材料は、たとえば、(ZnCd)S:Ag(銀をドープした硫化亜鉛カドミウム)である。蛍光体81の表面には、メタルバック層と低電子反射率層とが順次積層されている。メタルバック層は、たとえばAlの蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート70を通過した光に対して比較的高い反射率を有し、かつマイクロチャンネルプレート70からの電子に対して比較的高い透過率を有している。また、低電子反射率層は、たとえばC(炭素),Be(ベリリウム)などの蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート70からの電子に対して比較的低い反射率を有している。
【0072】
電子管1Fでは、電子管1Eと同様に、マイクロチャンネルプレート70を保持する取付部材71,72のそれぞれに、ハウジング80の外部に延在する複数の配線13のうち1つが接続されている。マイクロチャンネルプレート70には、取付部材71,72を通して、入力面73a側と出力面73b側とに電圧が印加される。
【0073】
メタサーフェス50から放出された電子は、入力面73aに入射すると、チャンネル74で増倍されて出力面73bから放出される。電子管1Fでは、マイクロチャンネルプレート70で増倍された電子は、蛍光体81で収集される。蛍光体81は、マイクロチャンネルプレート70で増倍された電子を受けて光を発する。蛍光体81が発した光は、ファイバプレートを通過して、出射窓84からハウジング80の外部に出射される。
【0074】
次に、図13を参照して、本実施形態に係る変形例の電子管を含む撮像装置について説明する。図13は、撮像装置の側面図である。図13に示されている撮像装置90は、観察対象が発する電磁波又は観察対象で反射若しくは散乱した電磁波に基づく画像を取得する。撮像装置90は、構成要素として、イメージインテンシファイアである電子管1Fと、対物レンズ91と、リレーレンズ92と、撮像部93とを備える。撮像装置90では、上記構成要素が対物レンズ91、電子管1F、リレーレンズ92、撮像部93の順で接合されている。
【0075】
対物レンズ91は、電子管1に入射する電磁波に対して屈折率を有しているレンズで構成されている。対物レンズ91は、観察対象からの電磁波Tを電子管1Fの入射窓83に導く。リレーレンズ92は、電子管1Fの出射窓84から出射した光を撮像部93に導く。撮像部93は、リレーレンズ92から導かれた光、すなわち、蛍光体81からの光に基づく像を撮像する。撮像部93は、たとえば、CCDカメラである。
【0076】
次に、図14を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。図14は、電子管の一例を示す部分断面図である。図14に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、電子増倍部30が集束電極31及びダイノード32a~32jの代わりに電子増倍体95を有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。電子増倍体95は、いわゆる、チャンネル型エレクトロンマルチプライヤー(CEM)である。
【0077】
図14に示されている電子管1Gでは、電子増倍体95は、バルブ11の内壁に固定された保持部材96によって支持されている。電子増倍体95は、電子放出部20と電子収集部40との間に配置されている。具体的には、マイクロチャンネルプレート70は、メタサーフェス50が設けられた窓11aとアノード41との間に配置されている。電子増倍体95は、窓11a及びアノード41から離間している。電子管1Gにおいても、電子収集部40は、アノード41の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0078】
本変形例では、電子増倍体95は、入力面95a及び入力面95aに対向する出力面95bを有している。入力面95aは、窓11aに面している。出力面95bは、電子収集部40であるアノード41に面している。入力面95a及び出力面95bは、窓11a及びメタサーフェス50に対して平行に配置されている。アノード41は、平板形状であり、電子増倍体95の出力面95bと平行に配置されている。本実施形態では、入力面95aに直交する方向において、入力面95aとメタサーフェス50との間の距離Sは、例えば、0.615mmである。
【0079】
電子増倍体95は、本体部97と、複数のチャンネル98とを有している。本体部97は、直方体形状である。複数のチャンネル98は、本体部97によって画定されている。各チャンネル98は、入力面95aから出力面95bにかけて形成されている。具体的には、各チャンネル98は、入力面95a及び出力面95bに直交する方向に、入力面95aから出力面95bに延在している。図14に示されている構成では、3つのチャンネル98が、入力面95aに平行な一方向に配列されている。
【0080】
各チャンネル98は、電子入射部98aと、増倍部98bとを含んでいる。各チャンネル98の電子入射部98aは、入力面95aに設けられた開口を有している。電子入射部98aの開口は、入力面95aに直交する方向から見て、矩形状を呈している。電子入射部98aは、入力面95aから出力面95bに向かって、複数のチャンネル98の配列方向に徐々に狭まっている。すなわち、電子入射部98aは、入力面95aに直交する方向に沿って縮小するテーパ状を呈している。
【0081】
各チャンネル98の増倍部98bは、入力面95aに平行、かつ、複数のチャンネル98の配列方向に直交する方向から見て、ジグザグ状又は波状に形成されている。換言すれば、増倍部98bは、複数のチャンネル98の配列方向において、屈曲を繰り返す形状を呈している。
【0082】
電子管1Gでは、保持部材96に、複数の配線13のうち2つが接続されている。電子増倍体95には、配線13及び保持部材96を通して電圧が印加される。具体的には、入力面95a及び出力面95bに、入力面95aよりも出力面95bの方が高電位となるように電位が付与される。アノード41には、保持部材96に接続された配線13とは異なる配線13が接続されている。保持部材96とアノード41とは、絶縁部材99によって、互いに電気的に絶縁されている。
【0083】
メタサーフェス50から放出された電子は、いずれかのチャンネル98の入力面95aの開口に入射した後、電子入射部98aを通って増倍部98bに入射する。この結果、メタサーフェス50から放出された電子は、各チャンネル98で増倍されて出力面95bから放出される。電子増倍体95で増倍された電子は、電子収集部40であるアノード41で収集されて、アノード41から配線13を通して出力信号として出力される。
【0084】
以上説明したように、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fは、ハウジング10に電磁波を透過する窓11aを有している。当該窓11aは、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含む。このため、ハウジング10,80内に導かれる電磁波、たとえば、テラヘルツ波から赤外光に関する周波数帯域の電磁波の強度を確保することができる。窓11aを透過した電磁波が電子放出部20のメタサーフェス50に入射すると、電子が放出される。放出された電子は、ハウジング10,80内で電子増倍部30によって増倍された後に電子収集部40で収集される。このため、微弱な強度を有している上述した電磁波に対しても検出精度が確保される。
【0085】
電子管1,1A,1B,1D,1E,1Fでは、電子放出部20は、メタサーフェス50が設けられた主面21aと当該主面21aに対向する主面21bとを含む基板21を有している。電子増倍部30は、電子放出部20から放出された電子が入射する入射面35を有している。基板21は、窓11aを透過する電磁波に対して透過性を有している。基板21は、主面21aが電子増倍部30の入射面35に面すると共に主面21bが窓11aに面するように配置されている。この場合、窓11a及び基板21を透過した電磁波がメタサーフェス50に入射する構成において、当該電磁波の入射に応じてメタサーフェス50から放出される電子が簡易な構成で電子増倍部30へ導かれる。
【0086】
電子管1B,1Fでは、メタサーフェス50が電子増倍部30の入射面35に面するように窓11aに設けられている。この構成によれば、メタサーフェス50を設ける基板をハウジング10,80内に別途配置する必要がない。このため、電子管のサイズ及び重量が削減され得る。
【0087】
電子管1Cでは、基板21は、主面21aが窓11a及び電子増倍部30の入射面35に面するように配置されている。この場合、窓11aを透過した電磁波が基板21を透過せずにメタサーフェス50に入射する構成において、当該電磁波の入射に応じてメタサーフェス50から放出される電子が簡易な構成で電子増倍部30へ導かれる。
【0088】
メタサーフェス50は、パターン化された酸化物層又はパターン化された金属層に含まれている。この構成によれば、上述した電磁波の入射に応じてメタサーフェス50から放出される電子が増加する。
【0089】
電子管1Dでは、電子増倍部30及び電子収集部40は、ダイオード60であると共に一体に構成されている。この構成によれば、電子管のサイズがさらに削減され得る。
【0090】
電子管1,1A,1Bでは、電子増倍部30は、互いに離間した複数のダイノード32a~32jを有している。電子収集部40は、電子増倍部30で増倍された電子を収集するアノード41又はダイオードを有している。この構成によれば、メタサーフェス50から放出された電子が複数のダイノード32a~32jで増倍される。このため、アノード41又はダイノードで収集される電子の増倍率が向上する。
【0091】
電子管1Eでは、電子増倍部30は、マイクロチャンネルプレート70を有している。電子収集部40は、電子増倍部30で増倍された電子を収集するアノード41又はダイオードを有している。この構成によれば、電子増倍部30に複数のダイノードを用いる場合に比べて、サイズ、重量、及び消費電力が削減されると共に、応答速度及び利得が向上する。
【0092】
電子管1Fでは、電子増倍部30は、マイクロチャンネルプレート70を有している。電子収集部40は、電子増倍部30で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体81を有している。この構成によれば、メタサーフェス50から放出された電子の2次元位置が、蛍光体81が発した光によって検出され得る。
【0093】
撮像装置90は、電子管1Fと、蛍光体81からの前記光に基づく像を撮像する撮像部93と、を備えている。この構成によれば、上述した電磁波の検出精度が確保される。メタサーフェス50から放出された電子の2次元位置を示す画像が取得され得る。
【0094】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0095】
電子管1,1A,1B,1C,1E,1F,1Gにおいて、メタサーフェス50は、パッシブタイプであってもよいし、アクティブタイプであってもよい。図3は、パッシブタイプのメタサーフェス50を示している。パッシブタイプのメタサーフェス50を有する電子放出部20は、メタサーフェス50の各アンテナ51にバイアス電圧が印加されることなしに動作する。すなわち、パッシブタイプのメタサーフェス50は、各アンテナ51が同電位の状態において電磁波の入射に応じて電子を放出すること、を前提とするメタサーフェスである。
【0096】
アクティブタイプのメタサーフェス50を有する電子放出部20は、メタサーフェス50の各アンテナ51にバイアス電圧が印加された状態で動作する。すなわち、アクティブタイプのメタサーフェス50は、各アンテナにバイアス電圧がされた状態において電磁波の入射に応じて電子を放出すること、を前提とするメタサーフェスである。この場合、メタサーフェス50には、複数の配線13のいずれかから電圧が印加される。
【0097】
電子管1,1A,1B,1C,1E,1Gにおいて、電子収集部40は、アノード41の代わりにダイオードを有していてもよい。この場合、電子増倍部30で増倍された電子は、ダイオードで収集される。
【0098】
電子管1,1A,1Bにおいて、窓11aは、電子管1Cのように、ハウジング10,80の側面に設けられてもよい。この場合、たとえば、電子増倍部30のダイノードの配置を変更することで、窓11aから入射した電磁波に基づく電子を電子収集部40で収集することができる。
【0099】
電子管1,1A,1B,1D,1E,1F,1Gにおいて、電子管1Cのように、電子放出部20のメタサーフェス50は、いわゆる反射型のメタサーフェスであってもよい。反射型のメタサーフェスが用いられる場合には、電子管は、メタサーフェス50が窓11aに面すると共に電子増倍部30の入射面35に面するように構成される。
【0100】
ハウジング10,80は、円筒形状に限定されない。たとえば、ハウジング10,80は、断面が多角形である筒形状を呈していてもよい。
【0101】
電子管1Fには、メタサーフェス50とマイクロチャンネルプレート70との間に掃引電極が設けられてもよい。これによって、いわゆるストリーク管が構成されてもよい。この場合、ストリーク管としての電子管1Fの窓11aの外側に、被測定光を入射させるスリットとスリット像を結像するレンズ系とが設けられてもよい。これによって、いわゆるストリークカメラが構成されてもよい。
【0102】
撮像装置90では、電子管1Fにおいてマイクロチャンネルプレート70で増倍された電子を蛍光体81で収集し、蛍光体81が発する光を電子管1Fの外部に設けられた撮像部93で撮像する。この点、電子収集部40として蛍光体81の代わりに電子打ち込み式固体イメージセンサを電子管の内部に設けることで、電子管が撮像装置として機能するように構成されてもよい。この場合、電子管の外部に撮像部93を設けることなく、マイクロチャンネルプレート70で増倍された電子を電子打ち込み式固体イメージセンサで撮像することができる。電子打ち込み式固体イメージセンサは、たとえば、EBCCD(Electron-Bombarded Charge-Coupled Device)である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…電子管
10,80…ハウジング
11a…窓
20…電子放出部
21…基板
21a,21b…主面
30…電子増倍部
35…入射面
40…電子収集部
41…アノード
50…メタサーフェス
60…ダイオード
70…マイクロチャンネルプレート
81…蛍光体
90…撮像装置
93…撮像部。
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【国際調査報告】