(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】放射線検出器およびその製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021575291
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 FI2020050427
(87)【国際公開番号】W WO2020254724
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521551261
【氏名又は名称】ディテクション テクノロジー オーワイジェー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー,アレックス
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB09
2G188CC10
2G188CC15
2G188CC16
2G188CC18
2G188CC22
2G188DD04
2G188DD05
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD45
(57)【要約】
放射線検出器および放射線検出器を製造するための方法を提供することが目的である。一実施形態によれば、放射線検出器は、少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層と、発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含むシンチレータ層であって、発光物質は入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、少なくとも1つの幾何学的形状は変換された電磁放射線の少なくとも一部を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される、シンチレータ層とを含む。放射線検出器および放射線検出器を製造するための方法が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器(100)であって、
少なくとも1つのピクセル(102)を含むフォトダイオード層(101)と、
発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状(104)を含むシンチレータ層(103)であって、前記発光物質は入射電離放射線(105)を非電離電磁放射線(106)に変換するように構成され、前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)は前記少なくとも1つの幾何学的形状内部での反射を使用して変換された電磁放射線(106)の少なくとも一部を前記少なくとも1つのピクセル(102)に誘導するように構成される、シンチレータ層(103)と、
を含む、放射線検出器(100)であり、
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面(107)と、前記第1の表面に対向する第2の表面(108)とを備え、前記第1の表面の表面積は前記第2の表面の表面積よりも大きく、前記第2の表面は前記第1の表面よりも前記フォトダイオード層に近い、放射線検出器(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、前記変換された電磁放射線に対して反射性を有する材料を含む、前記少なくとも1つの幾何学的形状の表面上に位置する反射層(110)をさらに含む、請求項1に記載の放射線検出器(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面(107)と第2の表面(108)とを含み、前記第1の表面および/または前記第2の表面は実質的に凸状である、請求項1または請求項2に記載の放射線検出器(100)。
【請求項4】
前記第1の表面または前記第2の表面は、前記フォトダイオード層(101)と接触している、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、高さおよび幅を含み、前記高さと前記幅の比は1より大きい、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)はさらに、前記フォトダイオード層(101)の平面内で変化する、前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)の屈折率を用いて、前記変換された電磁放射線(106)の少なくとも一部を前記少なくとも1つのピクセル(102)に誘導するように構成される、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項7】
前記ポリマーは、
アクリロニトリルブタジエンスチレン、
ポリ乳酸、
ポリビニルアルコール、
ポリエチレンテレフタレート、
ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、
耐衝撃性ポリスチレン、
ナイロン、または
熱可塑性エラストマー
のうちの少なくとも1つを含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の幾何学的形状(104_1)および第2の幾何学的形状(104_2)を含み、前記第1の幾何学的形状は第1の発光物質を含み、前記第2の幾何学的形状は第2の発光物質を含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項9】
前記第1の発光物質は、第1の波長域の電離放射線(105_1)を第1の非電離電磁放射線(106_1)に変換するように構成され、前記第2の発光物質は、第2の波長域の電離放射線(105_2)を第2の非電離電磁放射線(106_2)に変換するように構成される、請求項8に記載の放射線検出器(100)。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記発光物質を含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項11】
放射線検出器を製造するための方法(1100)であって、
少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層を提供すること(1101)と、
ポリマーを使用してシンチレータ層を前記フォトダイオード層上に3D印刷すること(1102)であって、前記シンチレータ層は発光物質および前記ポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含み、前記発光物質は入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、前記少なくとも1つの幾何学的形状は前記少なくとも1つの幾何学的形状内部での反射を使用して変換された電磁放射線を前記少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成されることと、
を含む、放射線検出器を製造するための方法(1100)であり、
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とを備え、前記第1の表面の表面積は前記第2の表面の表面積よりも大きく、前記第2の表面は前記第1の表面よりも前記フォトダイオード層に近い、放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【請求項12】
前記3D印刷の前に、前記発光物質を前記ポリマーに添加すること
をさらに含む、請求項11に記載の放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【請求項13】
前記3D印刷は、
ステレオリソグラフィ、
バインダジェッティング、
熱溶解積層法、
デジタル光処理、
選択的レーザ焼結、または
薄膜積層法
のうちの1つを使用して行われる、請求項11または請求項12に記載の放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検出器に関し、特に、放射線検出器および放射線検出器を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータベースの検出器は、X線放射線、ガンマ線、アルファ線、ベータ線、および中性子線などの電離放射線を検出するために使用され得る。シンチレータベースの検出器は、シンチレータ層およびフォトダイオード層を含み得る。シンチレータ層は入射電離放射線を非電離放射線に変換することができ、次にフォトダイオード層は非電離放射線を検出可能な電流に変換することができる。
【発明の概要】
【0003】
この概要は、発明を実施するための形態において以下にさらに詳細に説明する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または必須の特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されること意図するものでもない。
【0004】
放射線検出器および放射線検出器を製造するための方法を提供することが目的である。上述の目的および他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施形態は、従属請求項、説明および図面から明らかである。
【0005】
第1の態様によれば、放射線検出器は、少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層と、発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含むシンチレータ層であって、発光物質は、入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、少なくとも1つの幾何学的形状は、変換された電磁放射線の少なくとも一部を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される、シンチレータ層とを含む。少なくとも1つの幾何学的形状はポリマーを含むので、3D印刷を使用して少なくとも1つの幾何学的形状を作成することが可能であり得る。このことにより、低減された製造コストで少なくとも1つの幾何学的形状を成形することが可能になり得る。
【0006】
第1の態様の実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、少なくとも1つの幾何学的形状内部での反射を使用して、変換された電磁放射線を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される。このような構成では、少なくとも1つの幾何学的形状は、全内部反射(TIR)を使用して、変換された電磁放射線のピクセルへの誘導の改善を可能にし得る。
【0007】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、変換された電磁放射線に対して反射性を有する材料を含む、少なくとも1つの幾何学的形状の表面上に位置する反射層をさらに含む。このような構成では、少なくとも1つの幾何学的形状は、変換された電磁放射線のピクセルへの誘導の効率を高めることが可能であり得る。
【0008】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面と、第1の表面に対向する第2の表面とを含み、第1の表面の表面積は第2の表面の表面積よりも大きく、第2の表面は第1の表面よりもフォトダイオード層に近い。このような構成では、少なくとも1つの幾何学的形状は、例えば、各ピクセルの有効表面積を増加させることができる。
【0009】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は第1の表面および第2の表面を含み、第1の表面および/または第2の表面は実質的に凸状である。このような構成では、少なくとも1つの幾何学的形状は、凸面を使用して、変換された電磁放射線をピクセルに誘導し得る。
【0010】
第1の態様のさらなる実装形態では、第1の表面または第2の表面はフォトダイオード層と接触している。このような構成では、変換された電磁放射線は、例えば、少なくとも1つの幾何学的形状からピクセルへ効率的に伝達し得る。
【0011】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は高さおよび幅を含み、高さと幅の比は1より大きい。このような構成により、少なくとも1つの幾何学的形状の変換効率を高めることができる。
【0012】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状の屈折率は、フォトダイオード層の平面内で変化する。可変屈折率は、変換された電磁放射線の少なくとも1つのピクセルへの誘導を高めることができる。
【0013】
第1の態様のさらなる実装形態では、ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、耐衝撃性ポリスチレン、ナイロン、または熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含む。このような構成では、従来の3D印刷手順および/または機器を使用して少なくとも1つの幾何学的形状を3D印刷することが可能であり得る。
【0014】
第1の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は第1の幾何学的形状および第2の幾何学的形状を含み、第1の幾何学的形状は第1の発光物質を含み、第2の幾何学的形状は第2発光物質を含む。このような構成では、同じ検出器を使用して異なる波長範囲を検出することが可能であり得る。
【0015】
第1の態様のさらなる実装形態では、第1の発光物質は、第1の波長域の電離放射線を第1の非電離電磁放射線に変換するように構成され、第2の発光物質は、第2の波長域の電離放射線を第2の非電離電磁放射線に変換するように構成される。このような構成では、同じ検出器を使用して異なる波長域を検出することが可能であり得る。
【0016】
第1の態様のさらなる実装形態では、ポリマーは発光物質を含む。このような構成では、電離放射線を非電離電磁放射線に変換するためにポリマー自体の発光特性を利用することが可能であり得る。
【0017】
第2の態様によれば、放射線検出器を製造するための方法は、少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層を提供することと、ポリマーを使用して、シンチレータ層をフォトダイオード層上に3D印刷することであって、シンチレータ層は発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含み、発光物質は入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、少なくとも1つの幾何学的形状は変換された電磁放射線を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される、3D印刷こととを含む。このような方法を用いて、改善された精度および/または低減された製造コストで少なくとも1つの幾何学的形状を成形することが可能であり得る。
【0018】
第2の態様の実装形態では、該方法は、3D印刷の前に、発光物質をポリマーに添加することをさらに含む。
【0019】
第2の態様のさらなる実装形態では、3D印刷は、ステレオリソグラフィ、バインダジェッティング、熱溶解積層法、デジタル光処理、選択的レーザ焼結、または薄膜積層法のうちの1つを使用して行われる。
【0020】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、幾何学的形状内部での反射を使用して、変換された電磁放射線を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される。
【0021】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、変換された電磁放射線に対して反射性を有する材料を含む、幾何学的形状の表面上に位置する反射層をさらに含む。
【0022】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面と、第1の表面に対向する第2の表面とを含み、第1の表面の表面積は第2の表面の表面積よりも大きく、第2の表面は第1の表面よりもフォトダイオード層に近い。
【0023】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は第1の表面および第2の表面を含み、第1の表面および/または第2の表面は実質的に凸状である。
【0024】
第2の態様のさらなる実装形態では、第1の表面または第2の表面はフォトダイオード層と接触している。
【0025】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は高さおよび幅を含み、高さと幅の比は1より大きい。
【0026】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状の屈折率は、フォトダイオード層の平面内で変化する。可変屈折率は、変換された電磁放射線の少なくとも1つのピクセルへの誘導を高めることができる。
【0027】
第2の態様のさらなる実装形態では、ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、耐衝撃性ポリスチレン、ナイロン、または熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
第2の態様のさらなる実装形態では、少なくとも1つの幾何学的形状は第1の幾何学的形状および第2の幾何学的形状を含み、第1の幾何学的形状は第1の発光物質を含み、第2の幾何学的形状は第2発光物質を含む。
【0029】
第2の態様のさらなる実装形態では、第1の発光物質は、第1の波長域の電離放射線を第1の非電離電磁放射線に変換するように構成され、第2の発光物質は、第2の波長域の電離放射線を第2の非電離電磁放射線に変換するように構成される。
【0030】
第2の態様のさらなる実装形態では、ポリマーは発光物質を含む。
【0031】
上述した第2の態様の実装形態は、互いに組み合わせて使用され得ることを理解されたい。実装形態のいくつかは、さらなる実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0032】
付随する特徴の多くは、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるので、より容易に理解されるであろう。
【0033】
以下において、添付図面を参照しながら、例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図5】一実施形態に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図7a】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図7b】別の実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図8】一実施形態に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図10】一実施形態に係る放射線検出器の概略断面図である。
【
図11】一実施形態による放射線検出器を製造するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下において、同一の参照符号は、同一または少なくとも機能的に同等の特徴を指す。
【0036】
以下の説明では、添付図面を参照する。添付図面は、本開示の一部を形成し、本開示が設置され得る特定の態様が例として示されている。他の態様を使用することができ、本開示の範囲から逸脱せずに構造的または論理的変更を行うことができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、本開示の範囲が添付の請求項によって定義されるので、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0037】
例えば、説明される方法に関連する開示内容は、その方法を実行するように構成された対応するデバイスまたはシステムにも当てはまり、その逆も同じことが言えると理解される。例えば、特定の方法ステップが説明されている場合、対応するデバイスは、説明されている方法ステップを実行するためのユニットを、そのようなユニットが明示的に説明されていない、または図面に示されていない場合であっても、含めることがある。一方で、例えば、特定の装置が機能ユニットに基づいて説明される場合、対応する方法は、説明されている機能を実行するステップを、そのようなステップが明示的に説明されていない、または図に示されていない場合であっても、含めることがある。さらに、本明細書に記載されている様々な例示的な態様の特徴は、特に別段の記載がない限り、互いに組み合わされ得ると理解される。
【0038】
図1は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。
【0039】
一実施形態によれば、放射線検出器100は、少なくとも1つのピクセル102を含むフォトダイオード層101と、発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状104を含むシンチレータ層103とを含む。発光物質は、入射電離放射線105を非電離電磁放射線106に変換するように構成される。幾何学的形状104は、変換された電磁放射線106の少なくとも一部を少なくとも1つのピクセル102に誘導するように構成される。
【0040】
少なくとも1つの幾何学的形状104はポリマーを含むので、少なくとも1つの幾何学的形状104は、3D印刷を使用して作成され得る。このことは、変換された電磁放射線106の少なくとも1つのピクセル102への誘導を向上させることができる少なくとも1つの幾何学的形状104の様々な形状を可能にし得る。
【0041】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、高さおよび幅を含み、高さと幅の比は1より大きい。この比は、高さを幅で除されたものを指すことができる。したがって、高さは幅より大きくなり得る。高さは、フォトダイオード層101の平面に実質的に垂直な方向で測定され得る。幅は、実質的にフォトダイオード層101の平面内で測定され得る。少なくとも1つの幾何学的形状104の高さにより、幾何学的形状104は、より多くの電離放射線105を非電離放射線106に変換することが可能であり得る。代替的または追加的に、高さと幅の比は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10より大きい比であり得る。
【0042】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、幾何学的形状104内部での反射を使用して、変換された電磁放射線106を少なくとも1のピクセル102に誘導するように構成される。少なくとも1つの幾何学的形状104の材料は、空気などの周囲物質の屈折率よりも大きい屈折率を有し得るので、変換された電磁放射線106は、幾何学的形状104内部で1回以上の全内部反射(TIR)を受け得る。したがって、TIRは、変換された電磁放射線106を少なくとも1つのピクセル102に誘導し得る。
【0043】
一実施形態によれば、ポリマーは発光物質を含む。ポリマー自体が発光特性を有する場合もある。代替的または追加的に、発光物質がポリマーに添加され得る。発光物質は、例えば、ポリマーに添加される前は粉末状であり得る。
【0044】
本明細書では、「電離放射線」という用語は、例えば、X線放射線、ガンマ線、アルファ線、またはベータ線を指すことができる。電離放射線105の波長は、例えば1nm未満であり得る。電離放射線105は、様々な波長を含み得る。
【0045】
発光物質は、例えば、酸硫化ガドリニウム(GOS)を含み得る。GOSは、例えば、テルビウム、プラセオジム、および/またはフッ素でドープされ得る。代替的または追加的に、シンチレータ材料は、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ガーネット、ペロブスカイト、および/または酸化物シンチレータ、例えばケイ酸塩、タングステン酸塩、オキシオルトシリケートを含み得る。
【0046】
発光物質の粒径は、例えば、10~200マイクロメートル(μm)の範囲内、またはこの任意の部分範囲内、例えば、10~100μm、50~150μm、もしくは30~130μmなどであり得る。
【0047】
発光物質の被覆重量は、例えば、1平方センチメートル当たり40~500ミリグラム(mg/cm2)の範囲、またはこの任意の部分範囲内、例えば、40~400mg/cm2、50~300mg/cm2、もしくは100~400mg/cm2などであり得る。
【0048】
図2は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略斜視図である。
図2の実施形態に示されている放射線検出器100は、
図1の実施形態に示されている放射線検出器100と同様であり得る。
【0049】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、例えば、ピラーを含み得る。このようなピラーの一例は、
図1および
図2の実施形態に示されている。電離放射線105が少なくとも1つの幾何学的形状104に入射すると、少なくとも1つの幾何学的形状104内の発光物質は、電離放射線105を非電離電磁放射線106に変換することができる。非電離放射線106は、電離放射線105より長い波長を有し得る。
【0050】
変換された電磁放射線106は、非電離放射線、変換された非電離放射線、非電離電磁放射線、変換された電磁放射線、変換された非電離放射線などと称される場合がある。
【0051】
変換された電磁放射線106は、例えば、非電離電磁放射線であり得る。変換された電磁放射線106は、例えば、赤外線(IR)、可視光線(VIS)および/または紫外線(UV)を含み得る。変換された電磁放射線106の波長は、電離放射線105の波長より長い波長であり得る。例えば、変換された電磁放射線の波長は、100マイクロメートル(μm)~10ナノメートル(nm)の範囲であり得る。変換された電磁放射線106は、様々な波長の電磁放射線を含み得る。
【0052】
少なくとも1つの幾何学的形状104の変換効率は、少なくとも1つの幾何学的形状104の高さを使用して構成され得る。
【0053】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、空気などの周囲物質の屈折率よりも大きい屈折率を有し得るので、変換された電磁放射線106は、少なくとも1つの幾何学的形状104の内側で反射し得る。したがって、変換された電磁放射線106の少なくとも一部は、少なくとも1つの幾何学的形状104内に実質的に閉じ込められ得る。したがって、少なくとも1つの幾何学的形状104は、変換された電磁放射線106を少なくとも1つのピクセル102に誘導することができる。その結果、少なくとも1つの幾何学的形状104は、変換された電磁放射線106のための導波路として機能するように構成され得る。このようにして、少なくとも1つの幾何学的形状104は、隣接するピクセル102間における変換された電磁放射線106の漏れ/クロストークを低減することができる。
【0054】
フォトダイオード層101の平面における少なくとも1つの幾何学的形状104の断面は、
図1の実施形態では円形として示され得るが、少なくとも1つの幾何学的形状104の断面は任意の形状であり得る。その断面は、例えば、長方形、正方形、三角形、楕円形、または任意の多角形であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、シンチレータ層103は、複数の幾何学的形状104を含み得る。いくつかの実施形態では、シンチレータ層103は、少なくとも2つの幾何学的形状104を含み得る。
【0056】
少なくとも1つのピクセル102は、変換された電磁放射線106を電流に変換するように構成され得る。フォトダイオード層101に電圧が印加され、ピクセル102内で発生した電子正孔対が電流として検出され得る。
【0057】
当業者は理解できるように、少なくとも1つのピクセル102は、様々な方法で実装され得る。例えば、各々のピクセル102はn型半導体を含み得、フォトダイオード層の残りはp型半導体を含み得る。pn接合に電圧が印加されると、変換された電磁放射線によってpn接合において発生した電子正孔対に起因する電流が検出され得る。検出器100は、
図1および
図2の実施形態に示されていないバイアスプレート、基板、集積回路、および/または類似物などの他の構成要素をさらに含み得る。
【0058】
図3は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略斜視図である。
【0059】
図4は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。
図4の実施形態に示されている放射線検出器100は、
図3の実施形態に示されている放射線検出器100と同様であり得る。
【0060】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、第1の表面107と、第1の表面107に対向する第2の表面108とを含み、第1の表面107の表面積は第2の表面108の表面積よりも大きく、第2の表面108は第1の表面107よりもフォトダイオード層101に近い。第1の表面107および/または第2の表面108は、実質的に平面状/平坦であり得る。
【0061】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、第1の表面107および第2の表面108を含み得る。第2の表面は、第1の表面107よりもフォトダイオード層101に近くなり得る。第2の表面108はフォトダイオード層101と接触し得る。第1の表面107の表面積は、第2の表面108の表面積より大きい表面積であり得る。第1の表面107および/または第2の表面108は、フォトダイオード層101の平面と実質的に平行であり得る。
【0062】
少なくとも1つの幾何学的形状104の各々は、実質的に正四角錐台として成形され得る。
図4の実施形態は、このような幾何学的形状104の概略断面図である。断面は実質的に等脚台形であり得る。代替として、少なくとも1つの幾何学的形状104は、別のタイプの錐台として成形され得る。
【0063】
少なくとも1つの幾何学的形状104の形状により、シンチレータ層103は、より多くの電離放射線を少なくとも1つのピクセル102に集めることができる。少なくとも1つの幾何学的形状104の内側の発光物質が電離放射線を非電離電磁放射線に変換するので、少なくとも1つの幾何学的形状104の側面109は、変換された電磁放射線をフォトダイオード層101内の少なくとも1つのピクセル102に誘導することができる。さらに、第1の表面107のより大きな表面積により、少なくとも1つの幾何学的形状104は、より多くの電離放射線を集めることができる。このことにより、フォトダイオード層101のピクセル間の不感領域(デッドスペース)が低減され得、ピクセル間の空間不感領域が低減および/または排除されたピクセル化フォトダイオードが実現され得る。
【0064】
図5は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略斜視図である。
【0065】
図6は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。
図6の実施形態に示されている放射線検出器100は、
図5の実施形態に示されている放射線検出器100と同様であり得る。
【0066】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、第1の表面107および第2の表面108を含み、第1の表面107および/または第2の表面108は実質的に凸状である。
【0067】
さらなる実施形態によれば、第1の表面107または第2の表面108は、フォトダイオード層101と接触している。
【0068】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、例えば、マイクロレンズを含み得る。このようなマイクロレンズの例は、
図5および
図6の実施形態に示されている。
【0069】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、実質的に凸状の第1の表面107および実質的に平坦な第2の表面108を含み得る。第2の表面108は、第1の表面107よりもフォトダイオード層101に近くなり得る。第2の表面108はフォトダイオード層101と接触し得る。第1の表面107および/または第2の表面108は、フォトダイオード層101の平面と実質的に平行であり得る。
【0070】
実質的に凸状の第1の表面107により、少なくとも1つの幾何学的形状104は、平凸レンズとして機能することができる。電離放射線105が非電離電磁放射線106に変換されると、変換された電磁放射線106は様々な方向に伝搬し得る。少なくとも1つの幾何学的形状104と少なくとも1つの幾何学的形状104を囲む材料との間に屈折率差が存在し得るので、第1の表面107は、フォトダイオード層101から離れて伝搬する変換電磁放射線106の一部を反射してフォトダイオード層101の方へ戻すことができる。したがって、フォトダイオード層101内のピクセル102は、より大きな割合の変換電磁放射線106を集めることが可能であり得る。
【0071】
図7aは、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。
【0072】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、実質的に平坦な第1の表面107および実質的に凸状の第2の表面108を含み得る。第2の表面108は、第1の表面107よりもフォトダイオード層101に近くなり得る。第2の表面108はフォトダイオード層101と接触し得る。第1の表面107および/または第2の表面108は、フォトダイオード層101の平面と実質的に平行であり得る。
【0073】
凸状の第2の表面108により、少なくとも1つの幾何学的形状104は、平凸レンズとして機能することができる。したがって、変換された電磁放射線106は、少なくとも1つの幾何学的形状104によって少なくとも1つのピクセル102に集束され得る。
【0074】
図7bは、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。少なくとも1つの幾何学的形状104の内側の勾配は、材料の屈折率に対応し得る。
【0075】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104の屈折率は、フォトダイオード層101の平面内で変化する。屈折率は、フォトダイオード層101の平面内の勾配を含み得る。
図7bの実施形態は、このような放射線検出器100の一例である。
【0076】
少なくとも1つの幾何学的形状104の屈折率は、フォトダイオード層101の平面内の少なくとも一方向において変化し得る。屈折率は、次第に変化し得る。例えば、屈折率は、幾何学的形状104の中央部よりも幾何学的形状104の外側部分の方が低くなり得る。屈折率は、幾何学的形状104の中央部よりも、フォトダイオード層101に実質的に垂直である幾何学的形状104の側面に近い方が低くなり得る。例えば、少なくとも1つの幾何学的形状の断面がフォトダイオード層101の平面において実質的に円形である場合、屈折率は半径方向に可変であり得る。このような可変屈折率は、
図7aの実施形態において示されているレンズ構造と同様に、変換された電磁放射線106の少なくとも1つのピクセル102への誘導を向上させ得る。
【0077】
3D印刷は、少なくとも1つの幾何学的形状104の屈折率を次第に変化させることができる。これは、例えば、印刷される原材料の混合比を変えることによって実現され得る。
【0078】
図8は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略斜視図である。
【0079】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状104は、変換された電磁放射線に対して反射性を有する材料を含む幾何学的形状104の表面上に位置する反射層110をさらに含む。
【0080】
一実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状は、周期的またはランダムに位置決めされた導光構造、例えばファイバ、ピラー、低密度のシンチレーション被覆、または印刷される原材料の混合比を変更することによって実現され得る密度勾配を有する領域を含む。これらの周期的またはランダムに位置決めされた構造は、これらの導光構造のない幾何学的形状と比較して、集められる電磁放射線の量を増加させることができる。
【0081】
図9は、一実施形態に係る放射線検出器100の概略断面図である。
図9の実施形態に示されている放射線検出器100は、
図8の実施形態に示されている放射線検出器100と同様であり得る。
【0082】
シンチレータ層103は、反射層110をさらに含み得る。反射層は、少なくとも1つの幾何学的形状104の表面上に位置し得る。
図8および
図9の実施形態は、前述のピラー形状に対するそのような反射層110を示している。しかしながら、反射層110は、本明細書に記載される任意の幾何学的形状104と組み合わされる場合もある。
【0083】
反射層110は、変換された電磁放射線106の波長において反射性を有し得る。したがって、反射層110は、変換された電磁放射線106をフォトダイオード層101内のピクセル102にさらに誘導することができる。
【0084】
反射層110は、変換された電磁放射線105の全ての波長または変換された電磁放射線106のいくつかの波長において反射性を有し得る。変換された電磁放射線106の波長全体の反射層110の平均反射率は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9より大きくなり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、反射層110は再帰反射材を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、反射層110は、幾何学的形状104の材料の屈折率よりも小さい屈折率を含む材料を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、各々の幾何学的形状104は、フォトダイオード層101内のピクセル102と実質的に位置合わせされ得る。
【0088】
図10は、一実施形態に係る多重エネルギー撮像のために構成された放射線検出器100の概略図である。
【0089】
一実装形態によれば、少なくとも1つの幾何学的形状は第1の幾何学的形状104_1および第2の幾何学的形状104_2を含み、第1の幾何学的形状104_1は第1の発光物質を含み、第2の幾何学的形状104_2は第2発光物質を含む。
【0090】
さらなる実装形態によれば、第1の発光物質は、第1の波長域の電離放射線105_1を第1の非電離電磁放射線106_1に変換するように構成され、第2の発光物質は、第2の波長域の電離放射線105_2を第2の非電離電磁放射線106_2に変換するように構成される。
【0091】
シンチレータ層103は、異なる発光物質を含む少なくとも1つの幾何学的形状104_1、104_2を含み得る。したがって、少なくとも1つの幾何学的形状104_1、104_2は、異なる電離放射線波長域を非電離電磁放射線106_1、106_2に変換するように構成され得る。
【0092】
変換された電磁放射線106_1、106_2はさらに、異なる波長を含み得る。例えば、第1の変換された電磁放射線106_1はUV波長を含み得、第2の変換された電磁放射線106_2はVIS波長を含み得、またはその逆であり得る。代替的または追加的に、変換された電磁放射線106_1、106_2は、実質的に同じ波長を含み得、および/またはそれらの波長は重複し得る。
【0093】
図11は、一実施形態による放射線検出器を製造するための方法のフローチャートである。
【0094】
一実施形態によれば、放射線検出器を製造するための方法1100は、少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層を提供すること1101と、ポリマーを使用してシンチレータ層をフォトダイオード層上に3D印刷すること1102であって、シンチレータ層は発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含み、発光物質は入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、幾何学的形状は変換された電磁放射線を少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成されることとを含む。
【0095】
一実施形態によれば、放射線検出器を製造するための方法1100は、3D印刷の前に、発光物質をポリマーに添加することをさらに含む。いくつかの実施形態では、発光物質は粉末状であり得る。
【0096】
少なくとも1つの幾何学的形状104は、3D印刷を使用してフォトダイオード層101上に作成され得るので、印刷された材料は、シンチレータおよび接着剤の機能を果たすことができる。したがって、光学接着剤、およびそれによってシンチレータ層103とフォトダイオード層101との間の中間層を省略することができる。このことにより、シンチレータ層103とフォトダイオード層101との間の光損失が低減され得る。
【0097】
印刷可能な原材料の価格は、標準的なシンチレータの価格よりも相当低い価格であり得る。特に、UV硬化性印刷技術は、少なくとも1つの幾何学的形状104を3D印刷するのに好適であり得る。しかしながら、原理的には、任意の3D印刷技術が好適であり得る。2,5-ジフェニルオキサゾール(PPO)ならびに1,4-ビス(5-フェニルオキサゾール-2-イル)ベンゼン(POPOP)などの蛍光色素を含有する、ポリビニルトルエン(PVT)ならびにポリスチレン(PS)のような芳香族プラスチックなどの多くのプラスチック、およびいくつかのUV硬化性材料は、天然シンチレータである。これらの材料は、X線吸収時に可視光またはUV光を放出することができる。したがって、高価なシンチレータ材料は、フォトダイオード層101上に直接堆積され得るより安価なプラスチックと置き換えられ得る。このことは、VISおよび/またはUV波長領域において最も感度が高いフォトダイオード層101にとって特に有用であり得る。
【0098】
印刷プラスチックのシンチレーション能力は、印刷原材料にシンチレータ材料を添加することによって増大され得る。これは、シンチレータ材料が粉末または溶液の形態で存在する場合、例えば、プラセオジムをドープした酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S:Pr)、セレン化亜鉛(ZnSe)、またはホウ素-10(10B)およびガドリニウム-157(157Gd)のような中性子吸収材である場合に特に簡単である。このアプローチはまた、異なる場所に異なる発光物質を添加することによって、同じフォトダイオード上に様々な発光色のシンチレータを印刷するために使用され得る。このことにより、多色のX線またはガンマ線撮像およびエネルギー特異的シンチレーションが可能になり得る。したがって、単一のシンチレータ層およびフォトダイオード層を使用する多重エネルギー放射線検出器が可能になり得る。
【0099】
シンチレータをフォトダイオードに3D印刷することの別の利点は、プリントの形状が恣意的に調整可能であるということであり得る。したがって、例えば台形の側壁を有する特定用途向けのシンチレータ形状、またはマイクロレンズ、ならびに各々のフォトダイオードピクセルに対する個々のシンチレータが可能であり得る。その結果、ピクセル化シンチレータを、より低いコストで製造することが可能であり得る。恣意的な形状およびマイクロレンズは、従来のシンチレータでは可能ではないまたは実現可能でない場合があるが、ピクセル化シンチレータは、製造コストがより高いことから、より高価になり得る。
【0100】
3D印刷されたシンチレータはまた、数ミリメートルまたは数センチメートルなど、厚みを増して堆積されてもよい。このことは、X線吸収長を増加させ、ひいてはシンチレータ層103の全体的な効率を高めることによって、プラスチックの低い吸収効率の予想される欠点を軽減することを可能にし得る。
【0101】
3D印刷1102は、例えば、デジタル光処理(DLP)、熱溶解積層法(FDM)、ステレオリソグラフィ(SLA)、バインダジェッティング、選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、および/または薄膜積層法(LOM)を使用して行われ得る。
【0102】
本明細書において、「3D印刷」という用語は、例えば、材料がコンピュータ制御下で接合または固化されて3次元物体を作成する様々なプロセスを指すことができる。例えば、3D印刷では、液体分子または粉末粒子などの材料が加えられ得、一緒に溶融され得る。3D印刷は、層ごとに行われ得る。3D印刷は、3次元印刷などと称される場合もある。
【0103】
ポリマーは、例えば、3D印刷に使用される任意のポリマーであり得る。ポリマーは熱可塑性であり得る。ポリマーは紫外線硬化性であり得る。
【0104】
ポリマーは、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル(PETT)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ナイロン、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリビニルトルエン(PVT)ならびにポリスチレン(PS)のような芳香族プラスチック、2,5-ジフェニルオキサゾール(PPO)、および/または1,4-ビス(5-フェニルオキサゾール-2-イル)ベンゼン(POPOP)を含み得る。
【0105】
本明細書内で与えられる任意の範囲またはデバイス値は、求められる効果を失うことなく拡張または変更され得る。また、明示的に否定されない限り、任意の実施形態が別の実施形態と組み合わせられ得る。
【0106】
主題は、構造的特徴および/または動作に特有の言語で説明されているが、添付の請求項において定義される主題は、必ずしも上述の特定の特徴または動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、上述の特定の特徴および動作は、請求項を実装する例として開示され、他の同等の特徴および動作が請求項の範囲内にあることが意図される。
【0107】
上述の利益および利点は、一実施形態に関連し得る、またはいくつかの実施形態に関連し得ることが理解されるであろう。実施形態は、上記の問題のいずれかもしくは全てを解決するもの、または上記の利益および利点のいずれかもしくは全てを有するものに限定されない。「一つの」項目への言及は、それらの項目のうちの1つ以上を指す場合があることがさらに理解されるであろう。
【0108】
本明細書に記載されている方法のステップは、任意の好適な順序で、または適切な場合には同時に実施され得る。加えて、個々のブロックは、本明細書に記載されている主題の精神および範囲から逸脱することなく、方法のいずれかから削除され得る。上述の実施形態のいずれかの態様は、求められる効果を失うことなく、さらに別の実施形態を形成するために、記載される他の実施形態のいずれかの態様と組み合わされ得る。
【0109】
「含む」という用語は、本明細書では、特定された方法、ブロック、または要素を含めることを指すために使用されるが、そのようなブロックまたは要素は、排他的リストを含まず、方法または装置は、追加のブロックもしくは要素を含み得る。
【0110】
上述の説明は、単なる例として示されたものであり、様々な修正が当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。上記の仕様、例およびデータは、例示的な実施形態の構造および使用を詳細に説明するものである。種々の実施形態が、ある程度の特定性を伴って、または1つ以上の個々の実施形態を参照しながら上記で説明されているが、当業者は、本明細書の精神または範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に多くの変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器(100)であって、
少なくとも1つのピクセル(102)を含むフォトダイオード層(101)と、
発光物質およびポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状(104)を含むシンチレータ層(103)であって、前記発光物質は入射電離放射線(105)を非電離電磁放射線(106)に変換するように構成され、前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)は前記少なくとも1つの幾何学的形状内部での反射を使用して変換された電磁放射線(106)の少なくとも一部を前記少なくとも1つのピクセル(102)に誘導するように構成される、シンチレータ層(103)と、
を含む、放射線検出器(100)であり、
前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)はさらに、前記フォトダイオード層(101)の平面内で変化する、前記少なくとも1つの幾何学的形状(104)の屈折率を用いて、前記変換された電磁放射線(106)の少なくとも一部を前記少なくとも1つのピクセル(102)に誘導するように構成される、放射線検出器(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、前記変換された電磁放射線に対して反射性を有する材料を含む、前記少なくとも1つの幾何学的形状の表面上に位置する反射層(110)をさらに含む、請求項1に記載の放射線検出器(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面(107)と第2の表面(108)とを含み、前記第1の表面および/または前記第2の表面は実質的に凸状である、請求項1または請求項2に記載の放射線検出器(100)。
【請求項4】
前記第1の表面または前記第2の表面は、前記フォトダイオード層(101)と接触している、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、高さおよび幅を含み、前記高さと前記幅の比は1より大きい、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の表面(107)と、前記第1の表面に対向する第2の表面(108)とを備え、前記第1の表面の表面積は前記第2の表面の表面積よりも大きく、前記第2の表面は前記第1の表面よりも前記フォトダイオード層に近い、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項7】
前記ポリマーは、
アクリロニトリルブタジエンスチレン、
ポリ乳酸、
ポリビニルアルコール、
ポリエチレンテレフタレート、
ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、
耐衝撃性ポリスチレン、
ナイロン、または
熱可塑性エラストマー
のうちの少なくとも1つを含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの幾何学的形状は、第1の幾何学的形状(104_1)および第2の幾何学的形状(104_2)を含み、前記第1の幾何学的形状は第1の発光物質を含み、前記第2の幾何学的形状は第2の発光物質を含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項9】
前記第1の発光物質は、第1の波長域の電離放射線(105_1)を第1の非電離電磁放射線(106_1)に変換するように構成され、前記第2の発光物質は、第2の波長域の電離放射線(105_2)を第2の非電離電磁放射線(106_2)に変換するように構成される、請求項8に記載の放射線検出器(100)。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記発光物質を含む、いずれかの先行する請求項に記載の放射線検出器(100)。
【請求項11】
放射線検出器を製造するための方法(1100)であって、
少なくとも1つのピクセルを含むフォトダイオード層を提供すること(1101)と、
ポリマーを使用してシンチレータ層を前記フォトダイオード層上に3D印刷すること(1102)であって、前記シンチレータ層は発光物質および前記ポリマーを含む少なくとも1つの幾何学的形状を含み、前記発光物質は入射電離放射線を非電離電磁放射線に変換するように構成され、前記少なくとも1つの幾何学的形状は前記少なくとも1つの幾何学的形状内部での反射を使用して変換された電磁放射線を前記少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成されることと、
を含む、放射線検出器を製造するための方法(1100)であり、
前記少なくとも1つの幾何学的形状はさらに、前記フォトダイオード層の平面内で変化する、前記少なくとも1つの幾何学的形状の屈折率を用いて、前記変換された電磁放射線の少なくとも一部を前記少なくとも1つのピクセルに誘導するように構成される、放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【請求項12】
前記3D印刷の前に、前記発光物質を前記ポリマーに添加すること
をさらに含む、請求項11に記載の放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【請求項13】
前記3D印刷は、
ステレオリソグラフィ、
バインダジェッティング、
熱溶解積層法、
デジタル光処理、
選択的レーザ焼結、または
薄膜積層法
のうちの1つを使用して行われる、請求項11または請求項12に記載の放射線検出器を製造するための方法(1100)。
【国際調査報告】