(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】セルピン産生
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20220829BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220829BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220829BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220829BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220829BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20220829BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C12P21/02 Z
C12N1/20 E
A61P43/00 121
A61P37/08
A61P1/04
A61P17/04
A61K35/745
A61K31/702
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576390
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020068399
(87)【国際公開番号】W WO2021001367
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】デュボー, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ゴリアド, ミレイユ
(72)【発明者】
【氏名】クリーレベゼム, ミヒェル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG23
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4C086AA01
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4C087ZB13
4C087ZC75
(57)【要約】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピンタンパク質産生を増加させるための、ガラクトース又はガラクトオリゴ糖の使用。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピンタンパク質産生を増加させるための、ガラクトース、ガラクトオリゴ糖(GOS)、又はこれらの組み合わせの使用。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムが、前記ガラクトース、ガラクトオリゴ糖(GOS)、又はこれらの組み合わせを0.02~2重量%の濃度で含む培地で培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記培地が、0.02~2重量%の濃度のガラクトースと、任意選択的に発酵終了時に0.02~0.3重量%の濃度のグルコースとを含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記培地が、0.02~2重量%の濃度のGOSと、任意選択的に発酵終了時に0.02~0.3重量%の濃度の残留グルコースとを含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピンタンパク質レベルを増加させる方法であって、前記方法が、培養培地でビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを増殖させる工程を含み、前記培養培地が、ガラクトース、GOS、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記培養培地が、前記ガラクトース、GOS、又はこれらの組み合わせを0.02~2重量%の濃度で含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを培養培地で増殖させる方法によって調製され、前記培養培地が、ガラクトース、GOS、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム。
【請求項10】
前記培養培地が、前記ガラクトース、GOS、又はこれらの組み合わせを0.02~2重量%の濃度で含む、請求項9に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム。
【請求項11】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999(森永乳業株式会社からBB536として入手可能)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-103、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2334、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3864、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3853、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項9又は10に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む、組成物。
【請求項13】
炎症性腸疾患、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎、又は小麦アレルギーの治療又は予防における使用のための、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又は請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
炎症性腸疾患、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎、又は小麦アレルギーの治療又は予防における使用のための、(i)ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと(ii)ガラクトース、GOS、又はこれらの組み合わせとの組み合わせ。
【請求項15】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999(森永乳業株式会社からBB536として入手可能)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-103、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2334、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3864、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3853、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の使用のための組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルピンを発現する細菌、細菌におけるセルピン産生を増加させるための方法、及びその使用に関する。
【0002】
[背景技術]
グルテン関連障害は、グルテンにより誘導される全ての疾患を含む。これらとしては、数ある病態生理の中でも、セリアック病、及び非セリアックグルテン過敏症が挙げられる。現在、様々なグルテン関連障害の発生率が世界中で上昇しており、セリアック病及び非セリアックグルテン過敏症に関しては特に上昇している。両疾患は、グルテンの摂取によって誘導される。先天性免疫及び適応免疫はいずれもセリアック病に関与し、かつ先天性免疫は非セリアックグルテン過敏症に関与している。
【0003】
生涯に及ぶグルテンフリーの食生活は、セリアック病及び非セリアックグルテン過敏症患者に対する代表的な治療であるが、疾患の腸管外での症状に対してはある程度の限界を有し得る(Sedghizadeh et al.,2002,Oral Surgery,Oral Medicine,Oral Pathology,Oral Radiology,and Endodontology,94(4),474-478)。低レベルでの二次汚染を回避することは困難であり、穀物の生育から製造加工までの食品生産チェーンの全体で発生する可能性があるため、厳密なグルテンフリーの食生活に従うことは非常に難しいことが示されている(Mitchison et al.,1991,Gut,32(3),260-265)。更に、厳格なグルテンフリーの食生活下であっても、毎日最大3gのグルテンを思いがけず摂取している可能性があることが報告されている(Aziz et al.,2014,The American journal of gastroenterology,109(9),1498)。
【0004】
セリアック病は、特に米国及び欧州で広がっており、被検者の約1%が抗体検査で陽性であった(Dube et al.,2005,Gastroenterology,128(4),S57-S67)。セリアック病は、様々な免疫学的要因、遺伝的要因、及び環境的要因の間での複雑な相互作用から生じる複雑な疾患である(Alaedini&Green,2005)。この疾患は、小麦グルテン、並びにライ麦タンパク質及び大麦タンパク質などの関連するその他の穀類タンパク質の消化によって誘導される。セリアック病に関連する症状には、子供の発育遅延、易怒性、及び思春期遅延、並びに不快感、下痢、潜伏便(occult stool)、脂肪便及び鼓腸などの多くの胃腸の症状がある(Dube et al.,2005;Sedghizadeh et al.,2002)。
【0005】
非セリアックグルテン過敏症(非セリアック小麦過敏症とも呼ばれる)は、新しく出現している身体状態である。この状態は、グルテンの摂取によって誘導される腸症状及び/又は腸外症状を引き起こす臨床単位として定義され、食事からグルテン含有食品を除去することで改善される可能性がある(Lundin&Alaedini,2012)。グリアジン(グルテンの主要な細胞毒性抗原)に加えて、グルテン及びグルテン含有穀物(小麦、ライ麦、大麦、及びそれらの誘導体)中に存在する他のタンパク質/ペプチドが症状の出現に関与し得る。非セリアックグルテン過敏症は、一般集団において0.5~13%(平均5%)の有病率を示す、グルテン関連障害の中でも最も一般的な症候群である(Catassi et al.,2013,Nutrients,5(10),3839-3853)。
【0006】
セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)は、真核生物(Gettins,2002 Chemical reviews,102(12),4751-4804)及び原核生物(Kantyka et al.,Biochimie,92(11),1644-1656)に見られるタンパク質のスーパーファミリーである。
【0007】
近年では、ヒトセリンプロテアーゼ阻害剤が、グルテン関連障害において強く関与していることが示されている。エラフィンは、様々な形態のエラスターゼ及びプロテイナーゼに対し強力な阻害能を示すヒトセリンプロテアーゼ阻害剤である(Ying&Simon,1993,Biochemistry,32(7),1866-1874)。エラフィンは胃腸管の上皮全体で発現し、炎症性腸疾患及びセリアック病を有する患者ではその発現及び誘導は低下している(Baranger,Zani,Labas,Dallet-Choisy,&Moreau,2011;Motta et al.,2012)。近年では、エラフィンはトランスグルタミナーゼ2(TG2)の架橋活性の基質として同定されている(Baranger et al.,2011,PloS one,6(6),e20976;Motta et al.,Science translational medicine,4(158),158ra144-158ra144)。インビトロのデータでは、エラフィンの添加によりトランスグルタミナーゼ2(TG2)が適度に阻害され、したがって、セリアック病における適応免疫反応の考え得る誘因の1つである、消化抵抗性の33-merのグリアジンペプチドの脱アミド化が阻害されることを示す(McCarville et al.2015,Current opinion in pharmacology,25,7-12)。
【0008】
組換えラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)によって産生されたエラフィンの送達により、グルテン過敏症のマウスモデルにおいて、グルテン誘発性の病状が軽減し、腸の炎症が正常化されることが示されている(Galipeau et al.,2014,The American journal of gastroenterology,109(5),748-756)。しかしながら、この提案された療法は、遺伝子組み換え微生物(GMO)に基づくものであり、消費者によるGMOの受容は非常に低いことから、食品用途に適さない。
【0009】
より最近では、原核生物のセルピンが報告されている。インシリコ分析では、様々なビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、特にビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)種の亜種ロンガムの細菌に、セルピン様タンパク質をコードする遺伝子が存在していることが明らかになった。B.ロンガム亜種ロンガム(B.ロンガムと命名)NCC 2705によりコードされたタンパク質は、ヒトセルピンの抗プロテアーゼ活性と類似する抗プロテアーゼ活性を示した(Ivanov et al 2006,Journal of Biological Chemistry,281(25),17246-17252)。
【0010】
B.ロンガムNCC 2705は、2001年1月29日にブダペスト条約によりパスツール研究所に寄託され、寄託番号CNCM I-2618を付されている。
【0011】
最近では、B.ロンガムNCC 2705(CNCM I-2618)が、グルテン過敏症のマウスモデルにおいてグルテンにより誘発された病態生理を、セルピン産生を通して改善することができ、グルテン関連障害の解決策としての可能性を示すことが示されている(McCarville et al.,2017,Appl.Envoron.Microbiol.Vol.83,no.19,e01323-17)。
【0012】
[発明の概要]
本発明者らは、驚くべきことに、ビフィドバクテリウム・ロンガム種の亜種ロンガムの細菌の増殖培地にガラクトース及びガラクトオリゴ糖(GOS)を添加すると、セルピンの産生を増加させることができることを見出した。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピン産生を増加させるための、ガラクトース若しくはガラクトオリゴ糖(GOS)、又はこれらの組み合わせの使用が提供される。
【0014】
本発明の別の態様では、ビフィドバクテリウム・ロンガム種の亜種ロンガムの細菌におけるセルピン産生を増加させる方法が提供され、当該方法は、培養培地でビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを増殖させる工程を含み、当該培養培地がガラクトース若しくはガラクトオリゴ糖(GOS)、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の別の態様によれば、培養培地でビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを増殖させる方法によって製造されたビフィドバクテリウム・ロンガム種の亜種ロンガムの細菌であって、当該培養培地がガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする、細菌が提供される。
【0016】
本発明によって調製されるビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせの非存在下で増殖させた、同じビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株と比較して、増加したセルピンタンパク質レベルを伴う。
【0017】
本発明によると、当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせを、例えば、0.02~5重量%、好ましくは0.05~2重量%の濃度で含む培地で培養してもよい。
【0018】
例えば、B.ロンガム株CNCM I-2618を、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせを0.02~5重量%、0.05~2重量%、0.1~1.5重量%、又は約1重量%の濃度で含む培地で培養してもよい。
【0019】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む組成物が提供される。
【0020】
一実施形態では、組成物は、食品、医療用食品、経管栄養、又は栄養補給剤である。
【0021】
一実施形態では、食品は、乳、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵乳、乳ベースの発酵製品、米ベースの製品、乳ベースの粉末、乳児用フォーミュラ、及びペットフードから選択される。
【0022】
一実施形態では、組成物は、医薬組成物であり、この医薬組成物は、1種以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/又は添加物を含む。
【0023】
本発明の別の態様によると、グルテン過敏症に関連する状態又はセリンプロテアーゼ阻害剤の活性低下を伴う状態の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又は当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む組成物が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によると、グルテン関連障害の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又は当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む組成物が提供される。
【0025】
本発明の一態様によると、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎、又は小麦アレルギーの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又は当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む組成物が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によると、炎症性腸疾患の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の方法によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又は当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む組成物が提供される。
【0027】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、任意のビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株であってもよい。一部の好ましい実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株は、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせ、特にB.ロンガムCNCM I-2618(NCC 2705)から選択されてもよい。
【0028】
ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせを、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと組み合わせて投与したとき、ガラクトース及び/又はGOSが、インビボでのビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピン産生も増加させ得ることも理解されよう。
【0029】
したがって、本発明の別の態様によると、(i)ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと(ii)ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとの組み合わせも提供される。
【0030】
本発明の別の態様によると、グルテン過敏症に関連する状態又はセリンプロテアーゼ阻害剤のレベル低下に関連する状態の治療又は予防における使用のための、(i)ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと(ii)ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとの組み合わせも提供される。
【0031】
一実施形態では、組み合わせは、B.ロンガム株CNCM I-2618とガラクトースとの組み合わせである。
【0032】
本発明の別の態様によると、グルテン過敏症に関連する状態又はセリンプロテアーゼ阻害剤のレベル低下に関連する状態の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムも提供され、当該ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0033】
本発明の別の態様によると、グルテン過敏症に関連する状態又はセリンプロテアーゼ阻害剤のレベル低下に関連する状態の治療又は予防における使用のための、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせが提供され、当該ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせは、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと組み合わせて投与される。
【0034】
一部の実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0035】
一部の好ましい実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0036】
一部の好ましい実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株B.ロンガムCNCM I-2618(NCC 2705)が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】様々な炭水化物で8時間増殖させたB.ロンガムNCC 2705で測定したセルピンタンパク質レベルを示す。
【
図2】異なる比率のグルコースとガラクトースで増殖させたB.ロンガムNCC 2705で測定したセルピンタンパク質レベルを示す。
【
図3】GOSで8時間増殖させたB.ロンガムNCC 2705で測定したセルピンタンパク質レベルを示す。
【
図4】B.ロンガムNCC 2705のセルピンレベルに対して(部分的に加水分解されたグアーガム(PHGG))が与える影響を示す。
【
図5】ガラクトースで増殖できるB.ロンガム亜種ロンガム株のセルピンレベルに対してガラクトースが与える影響を示す。値は、各試料中のタンパク質の総量によって正規化されたタンパク質レベルを表す。
【
図6】ガラクトース単独では増殖できないB.ロンガム亜種ロンガム株のセルピンレベルに対してガラクトースが与える影響を示す。値は、各試料中のタンパク質の総量によって正規化されたタンパク質レベルを表す。
【
図7】セルピンをコードする遺伝子を有する様々なビフィズス菌株に対するガラクトース、GOS、及びパパインの影響を示す。値は、各試料中のタンパク質の総量によって正規化したタンパク質レベルを表す。
【0038】
[発明を実施するための形態]
組成物
本発明の組成物は、食品、医療用食品、経管栄養、栄養組成物、又は栄養補給剤の形態であってもよい。用語「栄養補給剤」とは、対象の普段の食生活を補助することを意図する製品を指す。
【0039】
一実施形態では、食品は、乳、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵乳、乳ベースの発酵製品、米ベースの製品、乳ベースの粉末、乳児用フォーミュラ、及びペットフードから選択される。
【0040】
組成物は、医療用食品の形態であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「医療用食品」は、医学的疾患又は状態の食事管理のために特別に配合された食料製品を指す。医療用食品は、医学的管理下で投与される場合がある。医療用食品は、経口摂取又は経管栄養のためのものであってもよい。
【0041】
組成物は、経管栄養の形態であってもよい。用語「経管栄養」とは、栄養を供給管によって対象の胃腸管に直接導入することを意図する製品を指す。経管栄養は、例えば、対象の鼻を通して配置された供給管(経鼻胃管、経鼻十二指腸管、及び経鼻空腸管など)、又は対象の腹部内へと直接配置された供給管(胃瘻供給管(gastrostomy feeding tube)、胃空腸瘻供給管(gastrojejunostomy feeding tube)、又は空腸供給管(jejunostomy feeding tube)など)によって投与される場合がある。
【0042】
組成物は医薬組成物の形態であってもよく、医薬として許容される1種以上の好適な担体、希釈剤、及び/又は添加物を含んでもよい。
【0043】
本明細書に記載の組成物のそのような好適な添加物の例は、A Wade及びPJ Weller編の「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、2nd Edition(1994)に見出すことができる。
【0044】
治療用途に許容される担体又は希釈剤は、医薬分野において既知であり、例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0045】
好適な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール、及び水が挙げられる。
【0046】
医薬担体、添加物又は希釈剤の選定にあたっては、意図した投与経路及び標準的な医薬業務に関連して選択することができる。医薬組成物は、担体、添加物、若しくは希釈剤として、又はそれに加え、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、及び/若しくは可溶化剤を含んでもよい。
【0047】
好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、β-ラクトースなど、コーン甘味料、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
防腐剤、安定剤、染料、及び更には香味剤を組成物に含ませてもよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤もまた使用することができる。
【0049】
栄養学的に許容される担体、希釈剤、及び添加物としては、食品業界で規格として使用されるヒト又は動物の摂取に好適なものが挙げられる。典型的な栄養学的に許容される担体、希釈剤、及び添加物は、当業者によく知られている。
【0050】
組成物は、錠剤、糖衣錠、薬用キャンディ、カプセル、ゲルキャップ、粉末、顆粒、溶液、エマルジョン、懸濁液、被覆粒子、噴霧乾燥粒子、又はピルの形態とすることができる。
【0051】
代替の実施形態では、組成物は、局所投与用のゲル、クリーム、軟膏、エマルジョン、懸濁液、又は溶液などの局所投与用組成物の形態であってもよい。
【0052】
理想的な用量は、例えば、治療する対象、その健康状態、性別、年齢、又は体重、及び投与経路によって異なることは、当業者には明らかである。その結果、理想的に使用される用量は、様々であり得るが、当業者によって容易に決定することができる。
【0053】
しかしながら、一般に、本発明の組成物が、1日用量当たり106~1010cfu、及び/又は細胞106~1010個のビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含む場合が好ましい。本発明の組成物はまた、組成物の乾燥重量1g当たり106~1011cfu、及び/又は細胞106~1011個のビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを含んでもよい。
【0054】
ビフィドバクテリウム・ロンガム
ビフィドバクテリウム・ロンガムは、任意のビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株であってもよい。一部の実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株は、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC BAA-999(森永乳業株式会社からBB536として入手可能)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-103、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2334、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3864、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-3853、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0055】
菌株は、下の表(表1)に示される寄託機関に寄託され、以下の寄託日及アクセッション番号を付されている:
【0056】
【0057】
CNCMは、Collection nationale de cultures de micro-organismes(パスツール研究所、28,rue du Dr Roux,F-75724 Paris Cedex 15,France)を指す。ATCCは、American Type Culture Collection
(10801 University Blvd.,Manassas,Virginia 20110-2209,U.S.A.)を指す。DSMは、Leibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)を指す。NCIMBは、NCIMB Ltd(Ferguson Building,Craibstone Estate,Buckburn,Aberdeen AB21 9YA,Scotland)を指す。
【0058】
株1、株2、株6、株7、株9、株11~株13は、Nestec S.A.(avenue Nestle 55,1800 Vevey,Switzerland)によって寄託されている。その後、Nestec S.A.はSociete des Produits Nestle S.Aに合併されているため、ブダペスト条約第2条(ix)により、Societe des Produits Nestle S.A.がNestec S.A.の権利承継者である。他の株は全て市販されている。
【0059】
一部の好ましい実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムは、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2169、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2171、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15708、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株DSM 20097、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株NCIMB 8809、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株CNCM I-2170、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株ATCC 15707(T)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0060】
一部の好ましい実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株B.ロンガムCNCM I-2618(NCC 2705)が使用される。
【0061】
GOS
本発明者らは、驚くべきことにガラクトース及びガラクトオリゴ糖(GOS)が、ビフィドバクテリウム・ロンガム種の亜種ロンガムの細菌におけるセルピンの産生を増加させることができることを見出した。
【0062】
本明細書で使用される「オリゴ糖」という用語は、2~20の範囲(両端の値を含む)の重合度(DP)を有する炭水化物を指す。
【0063】
「重合度」又は「DP」は、オリゴ糖又は多糖類の鎖中の糖ユニットの総数を指す。
【0064】
本明細書で使用される「ガラクトオリゴ糖」という用語は、2つ以上のガラクトース分子を含む難消化性オリゴ糖を指す。本発明のガラクトオリゴ糖は、2~20、好ましくは2~10のDPを有する。例えば、単量体サブユニットを基準として、好ましくは糖ユニットの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%がガラクトースユニットである。
【0065】
好適なガラクトオリゴ糖は、市販されており、例えば、Purimune GOS(CornProducts Internationalから)、King GOS(King Prebioticsから)、Vivinal GOS(Friesland Campinaから)、及びPHGG(Taiyoから)が挙げられる。オリゴ糖の他の供給元としては、Clasado、Ingredion、Leprino、ヤクルト、Dextra Laboratories、Sigma-Aldrich Chemie GmbH及び協和発酵工業株式会社が挙げられる。あるいは、ガラクトシルトランスフェラーゼなどの特定のグリコシルトランスフェラーゼを使用して中性オリゴ糖を製造してもよい。
【0066】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は、そのグリコシド結合の構造により、唾液及び腸消化酵素による加水分解に大部分が抵抗する。GOSは、結腸内の有益細菌の増殖及び/又は活動を刺激することによって宿主に有益効果を与える難消化性炭水化物であるプレバイオティクスとして分類される。
【0067】
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの混合物を、例えば、0.02~5重量%の濃度で含む培地で培養してもよい。例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの混合物を0.02~5重量%、0.05~2重量%、0.1~1.5重量%、又は約1重量%の濃度で含む培地で培養してもよい。
【0068】
ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの混合物を、最大8重量%、好ましくは最大6重量%、例えば最大4重量%の、B.バクテリウム・ロンガムの増殖を維持するのに好適な別の糖、例えば、限定するものではないがグルコース、を含む従来の培養培地に添加してもよい。本発明者らは、驚くべきことに、グルコースが存在する場合でも、グルコースが発酵中に枯渇させることができるレベルで存在する場合に限り、ガラクトースがビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムにおけるセルピンの産生を誘導し得ることを見出した。好ましくは、発酵の終了時の培養培地は、0重量%~0.3重量%のグルコースなどの0.4重量%未満のグルコース、例えば、0.02重量%~0.4重量%、又は約0.05重量%~約0.3重量%のグルコースを含有する。B.ロンガムの増殖に好適な従来の培養培地は、当業者に周知である。
【0069】
一実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを、ガラクトースを0.05~2重量%、0.1~1.5重量%、又は約1重量%の濃度で含む培地で、任意選択的に、発酵終了までに枯渇させることができる濃度のグルコースの存在下で、培養してもよい。好ましくは、発酵の終了時の培養培地は、0重量%~0.3重量%のグルコースなどの0.4重量%未満のグルコースを含有する。グルコースが存在する場合、培養培地は、発酵終了時に、例えば、0.02重量%~0.4重量%、又は約0.05重量%~約0.3重量%のグルコースを含有し得る。
【0070】
一実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムを、GOSを0.05~2重量%、0.1~1.5重量%、又は約1重量%の濃度で含む培地で、任意選択的に0.02重量%~0.4重量%、又は約0.05重量%~約0.3重量%の残留グルコースの存在下で、培養してもよい。
【0071】
一実施形態では、ガラクトースは、上記の濃度で使用される。
【0072】
一実施形態では、GOSは、上記の濃度で使用される。
【0073】
培養粉末の製造方法
B.ロンガム種に属する株を嫌気性条件下で増殖させる。嫌気性条件下での発酵方法は周知である。当業者は、増殖させる微生物に応じて、その一般知識に基づき、発酵培地の好適な成分を特定し、発酵条件を調節することができる。発酵培地は典型的には、
酵母抽出物などの窒素源と、
糖などの炭素源と、
微生物に必要な様々な増殖因子(例えば、ミネラル、ビタミンなど)と、
水と、を含む。
【0074】
B.ロンガムの典型的な増殖培地の非限定例は、0.05%のシステインを添加したMRS(De Man,Rogosa and Sharpe)培地(MRSc)である。
【0075】
発酵は、好ましくは2工程で実施され、主発酵工程の前にスターター発酵が実施される。発酵培地は、スターター発酵及び主発酵で異なっても、同一であってもよい。
【0076】
この方法の第2の工程は、バイオマスの濃縮である。これはまた、例えば遠心分離又は濾過などの、当業者に既知の方法を使用して実施することもできる。濃縮後のバイオマスの総固形分は、バイオマスの総乾燥重量(すなわち、発酵培地及び調製された微生物の総量)に基づいて、好ましくは10~35重量%、好ましくは14~35重量%を構成する。
【0077】
任意選択的に、濃縮は、発酵培地の残留物及び/又は発酵中に生成された化合物を除去するために、洗浄工程に先行しても又は組み合わせてもよい。例えば、洗浄は、バイオマスを濃縮し、濃縮したバイオマスをリン酸緩衝液又は同様の組成物などの緩衝液に再懸濁させ、バイオマスを再濃縮することによって行うことができる。
【0078】
例えば、参照により全体が組み込まれる国際公開第2017/001590号に記載されている方法を適用することができる。
組み合わせ
本発明の一態様によると、(i)ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと(ii)ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとの組み合わせが提供される。
【0079】
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ」は、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムとガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとの組み合わせ投与を指し、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムとガラクトース及び/又はGOSとは、同時に又は連続的に投与され得る。
【0080】
本明細書で使用するとき、用語「同時の」又は「同時に」は、2つの剤が同時に、すなわち同じ時に投与されることを意味するために使用される。
【0081】
用語「連続的な」又は「連続的に」は、2つの剤が1つずつ順に投与されることを意味するために使用され、ここで、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとは、どちらを最初に投与してもよい。
【0082】
剤は、別個の製剤として、又は単一の組み合わせ製剤としての、いずれで投与されてもよい。
【0083】
化合物が共配合される場合、すなわち同じ組成物又は製剤に配合される場合、それらは同時にのみ投与することができる。化合物が別個の組成物又は製剤に配合される場合、それらは、同時に又は連続して投与することができる。同じ製剤又は別個の製剤での剤の同時(simultaneous)投与はまた、2つの化合物の併用(co-)投与又は複合(joint-)投与として記載することもできる。
【0084】
一実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとは、混合物である。別の実施形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガムと、ガラクトース若しくはGOS、又はこれらの組み合わせとは、これら2つの剤の調製物と、任意選択的に、必要とする対象への当該調製物の同時投与又は連続投与についての指示書とを含む、キットの形態で存在する。
【0085】
治療
本発明によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム株、又はそれを含む組成物は、グルテン関連障害又はセリンプロテアーゼ阻害剤の活性低下を伴う状態の治療又は予防に使用することができる。
【0086】
例えば、本発明によって調製されたビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム、又はそれを含む組成物は、炎症性腸疾患、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎、及び小麦アレルギーの治療又は予防に使用することができる。
【0087】
好ましくは、疾患は、グルテン関連障害である。グルテン関連障害は、グルテンによって誘導された疾患を包含する。用語「グルテン過敏症に関する状態」及び「グルテン関連障害」は、本明細書において互換的に使用される。グルテン関連障害としては、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎、及び小麦アレルギーが挙げられる。
【0088】
セリアック病
セリアック病は、最も一般的な免疫介在性障害のうちの1つである。この障害は世界中で見られ、特に米国及び欧州で顕著であり、被検者の約1%が抗体検査で陽性である。セリアック病は、様々な免疫学的要因、遺伝的要因、及び環境的要因の間での複雑な相互作用から生じる複雑な疾患である。この疾患は、小麦グルテン、並びにライ麦タンパク質及び大麦タンパク質などの関連するその他の穀類タンパク質の消化によって誘導される。セリアック病に関連する症状は、子供の発育遅延、易怒性、及び思春期遅延、並びに不快感、下痢、潜伏便、脂肪便、鼓腸などの多くの胃腸の症状である。
【0089】
臨床的証拠では、セリアック病の病状に強く関連するクラスIIのヒト白血球型抗原(HLA-DQII)が、セリアック病患者の約95%で発現していることが示されている。腸内腔において、グルテンタンパク質は部分的に消化され、タンパク質分解に耐性のある33-merグルテンペプチドを形成する。小腸バリアを通過した後、それらのペプチドは、負電荷を有するトランスグルタミナーゼ2(TG2)によって脱アミド化され(Sollid,2000,Annual review of immunology,18(1),53-81)、次いでHLA-DQ2.5/8の正に帯電する結合部位に結合する(Dieterich et al.,1997,Nature medicine,3(7),797-801)。HLA-DQ2.5/8は、これらの特異的グルテンペプチドシグナルをヘルパーT細胞に示し、他の免疫細胞が、小腸において更なる損傷を引き起こす。グルテンタンパク質に対する抗体及び結合組織成分(TG2)に対する自己抗体もまた、セリアック病の進行に関連している(Alaedini&Green,2005,Annals of internal medicine,142(4),289-298)。
【0090】
非セリアックグルテン過敏症
非セリアックグルテン過敏症(非セリアック小麦過敏症とも呼ばれる)は、新しく出現している身体状態である。この状態は、グルテンの摂取によって誘導される腸症状及び/又は腸外症状を引き起こす臨床単位として定義され、食事からグルテン含有食品を除去することで改善される可能性がある(Lundin&Alaedini,2012)。非セリアックグルテン過敏症の病因は、未だ充分に解明されていない。グルテン及びグルテン含有穀物(小麦、ライ麦、大麦、及びそれらの誘導体)中に存在する、グリアジン(グルテンの主要な細胞毒性抗原)以外のその他のタンパク質/ペプチドが、症状の出現に関与し得ることが示されている。非セリアックグルテン過敏症は、一般集団において0.5~13%の有病率を示す、グルテン関連障害の中でも最も一般的な症候群である(Catassi et al.,2013,Nutrients,5(10),3839-385)。非セリアックグルテン過敏症の診断は、他のグルテン関連障害を除外することによって行われる。
【0091】
疱疹状皮膚炎
疱疹状皮膚炎は、広範囲で対称的な分布を有し、摩擦の大きい領域で優勢であり、主に両方の肘、膝、臀部、足首に影響を及ぼし、また頭皮及び身体の他の部分にも影響を与え得る皮膚損傷が存在することを特徴とする、慢性的な自己免疫性水疱性皮膚疾患である。病変部は小胞性の痂皮に覆われ、それらが剥がれると、その領域の色素沈着、又は慢性的な激しい灼熱感、かゆみ及び水疱性発疹に発展する。
【0092】
発症年齢は様々である。小児期及び青年期で開始し得るが、対象の人生のあらゆる年齢で、いずれの性別でも影響を及ぼし得る。
【0093】
疱疹状皮膚炎を有する人は、中程度の粘膜病変から絨毛萎縮の存在までの範囲にわたる様々な度合いの腸病変を有する。
【0094】
小麦アレルギー
小麦アレルギーの胃腸症状は、セリアック病及び非セリアックグルテン過敏症のものと類似しているが、小麦への曝露から症状の発症までの間隔が異なる。小麦アレルギーは、小麦を含有する食品の摂取後の発症が早く(数分から数時間)、アナフィラキシーにつながり得る。
【0095】
グルテン失調症
グルテン失調症は、グルテン関連性障害である。グルテン失調症では、小脳に、すなわち歩行、発語、及び嚥下のような協調運動及び複雑な動きを制御する脳の平衡中枢に損傷が生じる。グルテン失調症は、散発性特発性失調症の中でも最も一般的な原因の1つである。この失調症は、原因不明の失調症のうちの40%、及び全ての失調症のうちの15%を占める。
【0096】
グルテン失調症は、遺伝的に過敏症である個体においてグルテンの摂取によって誘発される免疫介在性疾患である。特発性散発性失調症を有する全ての患者の鑑別診断において考慮されるべき疾患である。治療の有効性は、失調症の発症から診断までの経過時間に依存する。対象のグルテンへの曝露の結果として生じる、小脳におけるニューロンの死は不可逆的なものである。
【0097】
早期診断及びグルテンを含まない食生活による治療は、失調症を改善し、その進行を防止することができる。グルテン失調症を有する人でなんらかの胃腸症状を呈しているのは10%未満であるが、約40%が腸の損傷を有している。グルテン失調症の感受性マーカーとしては、抗グリアジン抗体が挙げられる。小腸及び腸外部位においてトランスグルタミナーゼ2(TG2)に対して沈着する免疫グロブリンA(IgA)は、更に信頼性が高いことが証明されている。
【0098】
投与
ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種ロンガム又は本明細書に記載の組成物は、好ましくは経腸的に投与される。
【0099】
経腸的投与は、経口、経胃、及び/又は経直腸投与であってよい。
【0100】
一般論として、本明細書に記載される組み合わせ又は組成物の投与は、例えば、経口経路又は別の経路による胃腸管への投与であってもよく、例えば、投与は経管栄養によるものであってもよい。
【0101】
代替的な実施形態では、本明細書に記載の組み合わせ又は組成物の投与は、局所投与であってもよい。
【0102】
対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、及び霊長類などの哺乳動物であってもよい。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0103】
本発明の好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な例によってこれより記述する。
【0104】
本発明の実施では、特に指示がない限り、当業者の能力の範囲内のものである、化学、生化学、分子生物学、微生物学、及び免疫学の従来技術を用いる。かかる技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13 and 16,John Wiley&Sons;Roe,B.,Crabtree,J.and Kahn,A.(1996)DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;Polak,J.M.and McGee,J.O’D.(1990)In Situ Hybridization:Principles and Practice,Oxford University Press;Gait,M.J.(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press、並びに、Lilley,D.M.and Dahlberg,J.E.(1992)Methods in Enzymology:DNA Structures Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA,Academic Pressを参照されたい。これらの一般的なテキストの各々は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0105】
[実施例]
実施例1-ガラクトースによるB.ロンガムCNCM I-2618(NCC 2705)のセルピン誘導
B.ロンガム株CNCM I-2618(NCC 2705)を、Biolector内(増殖条件-嫌気性、37℃)で、様々な炭水化物を添加した無糖MRS+5mM L-システイン(MRSc)ベースで増殖させた。
【0106】
pHセンサ及び溶存酸素(DO)センサと併せて48ウェルマイクロタイタープレートを使用して、Biolector(m2p-labs Aachen,Germany)内で株を培養した。細菌の凝集を防止するために、プレートを8時間連続的に振盪した。培養物は遠心分離によって回収し、上清を除去した。ペレットを、Haltプロテアーゼ阻害剤(Sigma)を添加したPBSに再懸濁し、ガラスビーズを使用して溶解した。次いで、可溶性材料と不溶性材料の両方を含有する溶菌液を回収した。総タンパク質含有量をPierceBCAキット(Thermofisher)を使用して測定し、ELISAを使用してセルピンタンパク質濃度を求めた。
【0107】
図1に示すように、ガラクトースは、試験した全ての他の糖と比較して、B.ロンガムNCC 2705セルピンタンパク質レベルを増加させることが明らかとなった。
【0108】
実施例2-グルコース存在下でのガラクトースによるB.ロンガムCNCM I-2618(NCC 2705)のセルピン誘導
B.ロンガムNCC 2705を、(実施例1に記載のとおり)Biolector内で、様々な比のグルコース及びガラクトースを最終濃度1%まで添加した、無糖MRScベースで培養した。培養物を18時間の増殖後に回収し、総タンパク質レベル及びセルピンタンパク質レベルを分析した(実施例1に記載のとおり)。
【0109】
結果(
図2)は、グルコースが存在する場合でも、グルコースが発酵中に枯渇するレベルで存在する場合に限り、ガラクトースが、B.ロンガムNCC 2705においてセルピンの産生を誘導できることを示す。この実施例で使用したモデルシステムでは、0.3%の添加が、発酵中に枯渇できるグルコースの最大添加率であった(データ非掲載)。したがって、発酵系/増殖培地のグルコース濃度を、ガラクトース濃度と比べて低く保つことが望ましい。
【0110】
実施例3-ガラクトオリゴ糖(GOS)によるB.ロンガムNCC 2705のセルピン誘導
B.ロンガムNCC 2705を、様々な市販のガラクトオリゴ糖(GOS)を様々な濃度で添加した無糖MRScベースで増殖させた。前述のとおり培養物を18時間増殖させ(実施例1を参照されたい)、回収した。得られたペレットを、総タンパク質及びセルピンタンパク質含有量について分析した(実施例1を参照されたい)。試験した市販のGOSは、Purimune GOS(CornProducts Internationalから)、King GOS(King PrebioticsからのGDS-700-P)、Vivinal GOSシロップ(DOMOから)、BMOS(牛乳オリゴ糖、Nestleから)、Sunfiber R(部分加水分解グアーガム、Taiyo GmbHから)であった。
【0111】
Purimmune GOS、King GOS、Vivinal GOS及びBMOSは、B.ロンガムNCC 2705の増殖をサポートした。
図3に示すように、これらのGOSは、B.ロンガムNCC 2705におけるセルピンタンパク質のレベルを有意に増加できた。市販のGOSは全て、残留糖(主にグルコース及びラクトース)を含有することから、その使用濃度を、残留糖が発酵中に枯渇するレベルで存在するように調節する必要がある。Sunfiber Rだけは、B.ロンガムNCC 2705の増殖を部分的にしかサポートしなかった(データ非掲載)が、試験した他のGOSと同様に、B.ロンガムNCC 2705におけるセルピンタンパク質のレベルを有意に増加することができた(
図4)。
【0112】
実施例4-ガラクトースによるB.ロンガム亜種ロンガムのセルピン誘導
セルピンをコードする遺伝子及びその周辺は、B.ロンガム亜種ロンガム種内での保存性が高い。B.ロンガム亜種ロンガムの株を、遺伝的系統樹の全範囲を表すように選択した(表2)。全ての株を、Biolector(実施例1による)内で、1%のグルコース、1%のガラクトース、又はグルコースとガラクトースとの混合物(それぞれ0.2及び0.8%)を添加した、無糖MRScベースで培養した。培養物を18時間増殖させ、回収した。得られたペレットを、総タンパク質及びセルピンタンパク質含有量について更に分析した(実施例1を参照されたい)。
【0113】
【0114】
B.ロンガム亜種ロンガムの全ての菌株が、ガラクトースを唯一の炭水化物源として増殖できたわけではない。しかし、それにもかかわらず、
図5及び
図6に示されるように、ガラクトースの存在下で、セルピンタンパク質レベルが、全てのB.ロンガム亜種ロンガム株で増加したことは重要である。これはガラクトースの誘導能力が、増殖のために代謝される能力に依存するものではないことを意味する。
【0115】
実施例5-ガラクトースによるB.ロンガムのセルピン誘導
セルピンは更に、限られた数のビフィドバクテリウム種内で保存されている(Turroni,F.et al.Characterization of the serpin-encoding gene of Bifidobacterium breve 210B.Appl Environ Microbiol 76,3206-3219、doi:10.1128/AEM.02938-09(2010))。これらの種に属する菌株(表3)を、Biolector内で、1%のグルコース、1%のガラクトースを添加した無糖MRScベースで培養した(実施例1を参照されたい)。更に、過去にはパパインがB.ブレーベ(breve)でセルピンを誘導することが実証されていることから、1%グルコースに加えて、0.05mg/mLのパパイン(Worthingtonから)も試験した。培養物を18時間増殖させ、回収した。得られたペレットを、総タンパク質及びセルピンタンパク質含有量について更に分析した(実施例1を参照されたい)。
【0116】
【0117】
図5~7に示すようにエラー!参照ソースが見つかりません。試験した全てのB.ロンガム亜種ロンガム株が、ガラクトースに応答し、セルピンタンパク質の有意な増加を示した。これに対して、B.ブレーベATCC 15700(T)、B.ロンガム亜種インファンティス又はB.ロンガム亜種スイスのいずれも、ガラクトースによる誘導を受けなかった。B.ブレーベのセルピンを誘導することが過去に明らかになっていたパパインは、B.ロンガム亜種ロンガム培養物においてセルピンレベルを増加させなかったが、B.ブレーベATCC 15700(T)株では増加させた。B.ロンガム亜種インファンティス及びスイスに属する2つの株は、それぞれガラクトースによってもパパインによっても誘導を受けなかった(
図7)。
【国際調査報告】