(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】印刷及びコーティングのためのカーボンナノ材料のナノインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/52 20140101AFI20220829BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220829BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20220829BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20220829BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220829BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220829BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20220829BHJP
【FI】
C09D11/52 ZNM
C09D11/037
C01B32/194
C01B32/168
H01B1/24 A
H01B13/00 Z
H01B13/00 503D
H01G11/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576393
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020039547
(87)【国際公開番号】W WO2020264110
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508374807
【氏名又は名称】カンザス ステイト ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】ダス, サプレム アール.
(72)【発明者】
【氏名】シャン, ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ゴア, アナンド ピー. エス.
【テーマコード(参考)】
4G146
4J039
5E078
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA11
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146CB19
4G146CB35
4J039AB02
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4J039BD04
4J039BE01
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4J039BE28
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4J039DA02
4J039EA24
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA16
4J039GA24
5E078AA15
5E078AB01
5E078BA12
5E078BA15
5E078BB33
5G301DA19
5G301DA20
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
5G323CA05
(57)【要約】
特定の比率で、1次元、2次元、及び準3次元ナノ構造及び/又はそれらの組合わせ、並びに/あるいは窒素、ホウ素、硫黄等の元素によるドーピングのカーボンナノ材料を含む導電性インク組成物が提供される。カーボンナノ材料は、グラフェン及び酸化グラフェン粒子、カーボンナノチューブ、並びにグラフェンエアロゾルゲルからなる群から選択される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン、カーボンナノチューブ、及びグラフェンエアロゾルゲルから選択される一定量の少なくとも1つのナノ材料を含むインク組成物。
【請求項2】
前記一定量のグラフェン、カーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲルのうちの少なくとも1つが、液体ビヒクル中に分散される、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記液体ビヒクルが、1つ以上のケトン及び1つ以上のアルコールの混合物を含む、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記液体ビヒクルがシクロヘキサノン及びテルピネオールを含む、請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記液体ビヒクルが、約60重量%~約99重量%のシクロヘキサノン、及び約1重量%~約35重量%のテルピネオールを含む、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記インクが、約1~約500mg/mlの界面活性剤を含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記インクが、約0.01~約10mg/mlの前記カーボンナノチューブ及び/又はグラフェンエアロゾルゲルを含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記組成物が、一定量のグラフェン又は酸化グラフェン粒子を更に含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記インクが、約1~約30mg/mlの前記グラフェン又は還元型酸化グラフェン粒子を含む、請求項8に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記グラフェンエアロゾルゲルが、約0.1~約10μmのD90粒径を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのナノ材料が、窒素、硫黄、及びホウ素のうちの少なくとも1つでドープされている、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のインクで印刷された1つ以上のトレースを含む電子機器。
【請求項13】
前記電子機器が、キャパシタ、スーパーキャパシタ、マイクロキャパシタ、ウルトラキャパシタ、又は擬似キャパシタである、請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
複合インクを形成する方法であって、
液体ビヒクル中に分散された一定量のグラフェン又は酸化グラフェン粒子を含む、グラフェン又は酸化グラフェン含有インク前駆体を提供することと、
一定量のカーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲルのうちの少なくとも1つを前記インク前駆体内に分散させることと、
を含む、複合インクを形成する方法。
【請求項15】
前記インク前駆体を提供する前記工程が、
少なくとも1つのケトン及び少なくとも1つのアルコールを混合することによって、前記液体ビヒクルを形成する工程と、
前記一定量のグラフェン又は酸化グラフェン粒子を、前記液体ビヒクルに添加する工程と、
場合により、前記液体ビヒクル及びグラフェン又は酸化グラフェン粒子混合物に界面活性剤を添加する工程と、
前記液体ビヒクル及びグラフェン又は酸化グラフェン粒子混合物を撹拌し、それによって前記粒子を前記液体ビヒクル内に分散させる工程と、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記撹拌工程が、前記インク前駆体を超音波処理することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記超音波処理が400℃以下の温度で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記一定量のカーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲルの少なくとも1つを、前記インク前駆体内に分散させる前記工程が、前記インク前駆体混合物を超音波処理することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
インク組成物を形成する方法であって、
グラフェンエアロゾルゲル及び界面活性剤、好ましくはエチルセルロース又はニトロセルロースを含む混合物を提供することと、
好ましくは1つ以上のケトン及び1つ以上のアルコールの混合物、より好ましくはシクロヘキサノン及びテルピネオールの混合物を含む、液体ビヒクル系内に前記混合物を分散させることと、
を含む、インク組成物を形成する方法。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか1項に記載の前記複合インクを使用して、導電性トレースを基板上に印刷することを含む、電子機器を形成する方法。
【請求項21】
前記基板が、合成樹脂材料から形成されたフレキシブル基板を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記合成樹脂材料がポリイミドを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記導電性トレースをアニーリングすることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記アニーリング工程が、不活性雰囲気下、約200℃~約500℃の温度で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アニーリング工程が、窒素雰囲気下、約350℃の温度で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アニーリング工程が、1~5時間の期間にわたって実施される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/866,412号、及び2019年12月27日に出願された米国仮特許出願第62/954,118号の利益を主張し、その両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、全米科学財団(NSF)によって授与された助成金番号CBET1935676の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、特定の比率で、1次元、2次元、及び準3次元ナノ構造及び/又はそれらの組合わせのカーボンナノ材料を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる、様々な電子グレードのインク及び/又は分散体の配合に関する。これらのインクは、印刷可能でフレキシブルな電子機器及び機能性コーティングを含むがこれらに限定されない多くの用途に使用され得る。これらのインクの好ましい用途は、エネルギー貯蔵、電気化学的センシング、電界効果トランジスタ、及び透明導電性電極の領域である。プロセスはスケーラブルであり、大規模生産/製造に適している。
【0003】
先行技術の説明
マイクロスーパーキャパシタ(マイクロSC)及びマイクロ電池等の再充電可能且つマイクロスケールのエネルギー貯蔵装置は、モノのインターネット(IoT)、自律型のユビキタスセンサ、ウェアラブル機器を含む小型家電等の新たな用途のために、需要が増している。電気二重層容量(EDLC)及び固体-電解質界面における酸化還元活性反応の原理に基づいて、エネルギー貯蔵装置は充電及び放電の特性を有する。したがって、信頼性のある充放電サイクルは、任意のスーパー/マイクロスーパーキャパシタ技術及び電池技術の本質的な特徴を構成する。グラフェンは、その大きな表面積(単離された単一シートのグラフェンに関して、2630m2/g)のために、エネルギー貯蔵用途として長い間求められてきた。しかし、その厚さの調節と共に大規模でスケーラブルなプラットフォームで特性を利用することは、粒子間抵抗、機械的不安定性、及びそれらの相関のために困難であった。マイクロ/ナノスケールでグラフェンの物理的構造を修飾して(例えば、環境に曝露される利用可能な表面積を増加させることによって)、これらの悪影響を組み合わせて緩和する代替的な手法、及びより高いEDLCを利用する利点を活用する代替的な手法は、新しい技術的手段の開発に有益であろう。スクリーン印刷、インクジェット印刷、及び3D印刷等の様々な種類のアディティブマニュファクチャリングは、それらの費用対効果、製造の単純性、及びプロセスにおける広範囲の互換性のために、最近ますます採用されている。したがって、上記の次世代のSC及び電池を達成するために、利用可能なより高い表面積を有するマイクロ/ナノスケールの加工処理された表面のグラフェンマイクロSC及びマイクロ電池を印刷できることが当技術分野で必要とされている。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0081537号明細書は、グラフェン濃度を高めるために、遠心分離なしで利用することができる、ポリマー有機溶媒媒体によるグラフェン分散及び濃縮のための迅速でスケーラブルな方法論に関する。
【0005】
国際特許公開第2014/210584号明細書は、固体又は液体分散体中のグラフェンナノプレートレット等のナノプレートレットグラフェン様材料の分散体に関し、ナノプレートレットグラフェン様材料は、グラフェン様材料分散剤により分散体中に実質的に均一に分散される。そのような分散体は、3次元(3D)印刷によって物品を調製するために、並びに導電性インク及びコーティング、化学センサ及びバイオセンサ、電極、エネルギー貯蔵装置、太陽電池等を提供するために使用され得る。液体分散体は、例えば、グラファイトフレークの溶液、分散剤、及び液体分散体の超音波処理によって調製することができ、一方、固体分散体は、例えば、溶融ポリマーを液体分散体と組み合わせるか、固体ポリマーを混和性溶媒に溶解し、次いで液体分散体とブレンドするか、固体ポリマーを液体分散体に溶解するか、又は液体分散体中の1つ以上のモノマーを重合させて固体ポリマーを形成することによって調製することができる。
【0006】
米国特許第9,440,857号明細書は、1つ以上の炭素含有化合物炭化水素化合物及び1つ以上の酸化剤の混合物のワンステップ、気相、触媒を用いない爆轟による、初期状態のグラフェン粒子の製造方法に関する。爆轟反応は、非常に迅速に、3000Kを超える比較的高い温度で起こって、エアロゾルの形態等で、反応容器から回収することができるグラフェンナノシートを生成する。グラフェンナノシートは、例えば、単層、二層、又は三層で積層されてもよく、約35~約250nmの平均粒径を有してもよい。
【0007】
前述の各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0081537号明細書
【特許文献2】国際特許公開第2014/210584号明細書
【特許文献3】米国特許第9,440,857号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、グラフェンエアロゾルゲルインクが配合され、マイクロスーパーキャパシタのインクジェット印刷に使用される。特定の実施形態では、使用されるグラフェンエアロゾルゲルは、例えばメタン、エチレン、及びアセチレン等の炭化水素の制御された環境の爆轟によって合成された。
【0010】
別の実施形態では、グラフェン、カーボンナノチューブ、及びグラフェンエアロゾルゲルからなる群から選択されるナノ材料を含むインク組成物が提供される。好ましい実施形態では、インク組成物は、主な又は唯一のグラフィックカーボン又はグラフェン材料として、グラフェンエアロゾルゲルを含むか、グラフェンエアロゾルゲルからなるか、又はグラフェンエアロゾルゲルから本質的になる。
【0011】
本発明の更に別の実施形態によれば、グラフェンエアロゾルゲル、及び界面活性剤、好ましくはエチルセルロース又はニトロセルロースを含む混合物を提供することを含むインク組成物を形成する方法が提供される。混合物は、液体ビヒクル系内に分散され、液体ビヒクル系は、好ましくは1つ以上のケトン及び1つ以上のアルコールの混合物、より好ましくはシクロヘキサノン及びテルピネオールの混合物を含む。
【0012】
本発明の別の実施形態では、グラフェン又は酸化グラフェンを含み、カーボンナノチューブ又はグラフェンエアロゾルゲルあるいはそれらの組合わせ等の低濃度の第2の要素を含むインク組成物が提供される。以下に記載される試験において使用されるベースグラフェンインクは、市販のグラフェンインク及び自家製グラフェンインクである。複合インクを製造するために使用されるカーボンナノチューブは市販されており、複合インクに使用されるグラフェンエアロゾルゲルは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,440,857号の教示に従って製造される。カーボンナノチューブは、金属特性を有する多層カーボンナノチューブであり、グラフェンエアロゾルゲルは、炭化水素爆轟経路を介して合成された場合、制御された炭素対酸素比を有する還元型酸化グラフェンである。
【0013】
本発明の更に別の実施形態によれば、液体ビヒクル中に分散した一定量のグラフェン又は酸化グラフェン粒子を含む、グラフェン又は酸化グラフェン含有インク前駆体を提供することを含む、インク組成物を形成する方法が提供される。一定量のカーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲルのうちの少なくとも1つがインク内に分散される。
【0014】
カーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲルをグラフェンインクに含めた後、得られたナノインクは、それらの構造的、電気的及び電気化学的特性に関して特有の特徴を示す。コーティングされた表面及び印刷されたパターンの両方を、ポリイミドフィルム等のフレキシブル基板上で試験し、結果を得た。技術に関する優れた電子的及び電気化学的経路は、電子機器、センシング、エネルギー、及びIoT等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるナノインクの製造の概略図である。
【
図2】本発明によるナノインクを使用して電子機器を作製するための印刷技術の概略図である。
【
図3】ナノインクを使用して、電極、センサ、回路等を製造するために使用されるドロップ・オン・デマンド機器及び印刷プロセスの概略図である。
【
図4a】グラフェンインクを使用して印刷されたセンサのSEM画像である。
【
図4b】グラフェン及びグラフェンエアロゾルゲルを含む複合インクを使用する印刷されたセンサのSEM画像である。
【
図4c】グラフェン及びカーボンナノチューブを含む複合インクを使用して印刷されたセンサのSEM画像である。
【
図5a】成分のナノ構造体、及びグラフェンフレークのナノスケールにおけるそれらの混合のTEM画像である。
【
図5c】成分のナノ構造体、及びグラフェンと混合され、グラフェンによって覆われたグラフェンエアロゾルゲルのナノスケールにおけるそれらの混合のTEM画像である。
【
図5e】成分のナノ構造体、及びグラフェンと混合され、グラフェンによって覆われたカーボンナノチューブのナノスケールにおけるそれらの混合のTEM画像である。
【
図5d】グラフェンと密接に接触したグラフェンエアロゾルゲルの高解像度TEM画像である。
【
図5f】グラフェンと密接に接触したカーボンナノチューブの高解像度TEM画像である。
【
図6】グラフェンインク、グラフェン及びグラフェンエアロゾルゲルの複合インク、並びにグラフェン及びカーボンナノチューブの複合インクで印刷された3つのセンサのサイクリックボルタンメトリのグラフである。
【
図7】インターディジテイテッドフィンガー形状の電極を有する約10mmx8mmの印刷されたスーパーキャパシタの画像である。
【
図8】低解像度のグラフェンエアロゾルゲルインクの透過型電子顕微鏡(TEM)画像(左)及びそれらの高解像度(HR)TEM画像(右、左画像の正方形のマークされた領域で撮像)を示す図であり、多層グラフェンエアロゾルゲル中の原子状の薄いグラフェン壁を示している。
【
図9】グラフェンエアロゾルゲルインクのラマンスペクトルであり、印刷されたインクを後処理し(以下に記載される制御環境アニーリング)、532nm励起を使用してラマンスペクトルを測定した。
【
図10a】初期段階における5つの代表的な充電サイクル及び放電サイクルに関するマイクロスーパーキャパシタセルの定電流充放電特性を示すチャートである。
【
図10b】10,000サイクルの最終段階における5つの代表的な充電サイクル及び放電サイクルに関するマイクロスーパーキャパシタセルの定電流充放電特性を示すチャートである。
【
図11】材料及びインク形成からエネルギー貯蔵装置の作製までの本発明の様々な態様の例示である。
【
図12a】インクジェット印刷されたインターディジテイテッドマイクロスーパーキャパシタの概略設計である。
【
図12b】フレキシブルポリイミド基板上に印刷された抵抗素子の写真である。
【
図12c】インクジェット印刷されたフィンガーの高解像度SEM画像であり、挿入された図形は、幅及び均一性を示す、そのような1つのフィンガーのより倍率の高い拡大を示している。
【
図12d】印刷されたフィンガーの表面形態を示すSEM画像であり、球様グラフェンエアロゾルゲル粒子を示している。
【
図13】グラフェンエアロゾルゲル(GAG)の微細構造特性決定のための4つの連続した高解像度TEM測定を示す図である。(a)は、TEM銅グリッド上に取り付けたグラフェンナノシートの凝集体を示す。(b)は、シートの中心に対して、境界でより高いコントラストを示すグラフェンナノシートのより高倍率の拡大画像を示す。(c)は、境界にフリンジ/ストライプ様の微細構造を示すそのような1つのナノシートの高解像度画像を示し、挿入画像が、ストライプが基本的にグラフェンシートの終端エッジによって形成されていることを示す。(d)は、インク中に存在するストライプ様微細構造が大部分を占めることを示す。
【
図14a】直列に印刷された3つのマイクロスーパーキャパシタを示す写真である。
【
図14b】並列に印刷された3つのマイクロスーパーキャパシタを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態は、ナノインク、及びそのようなナノインクを作製する方法に関し、2Dグラフェン、1Dナノチューブ及び/又は3Dエアロゾルゲルのハイブリッド構造を含有する非常に安定な懸濁液を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなり、これらの全てが顕微鏡的寸法であり、基本化学元素として炭素からなる。特定の実施形態では、ポリイミド基板上のグラフェンインク及びグラフェンエアロゾルゲルインクから製造(印刷)された機械的にフレキシブルなスーパーキャパシタの形態の様々なエネルギー貯蔵装置が(インターディジテイテッド電極(IDE)形態で)提供される。
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、液体ビヒクル中に分散した、一般に「カーボンナノ材料」と呼ばれる、グラフェン(還元型酸化グラフェンを含む)、カーボンナノチューブ、及び/又はグラフェンエアロゾルゲル(GAG)を含むインク組成物が提供される。グラフェン及び/又はカーボンナノチューブは、当技術分野で公知の任意の技術に従って調製され得る。グラフェンの場合では、特定の溶媒の種類及び比の組合わせにおける高い剪断力は、溶媒に対する特定の濃度のグラフェンを用いて溶媒媒体内で使用される際に、グラファイトの剥離を可能にする。グラフェンエアロゾルゲルは、反応チャンバ内の制御された量の酸素を用いた、アセチレン前駆体(C2H2)の、触媒なし、電気火花開始爆轟によって調製され得る。GAGを製造するための例示的なプロセスは、米国特許第9,440,857号に記載されている。’857特許に記載されているプロセスは、アセチレン分子の遊離炭素原子又はイオンへの変換、その後のカーボンエアロゾル形成、グラフィックカーボン形成、及びその後のゲル化プロセスを経てゲルを形成することとして理解され得る。
【0018】
1つ以上の実施形態では、カーボンナノ材料が分散している液体ビヒクルは、カーボンナノ材料と適合性のある1つ以上の有機化合物を含む。特定の実施形態では、液体ビヒクルは、1つ以上のケトン、1つ以上のアルコール、又は1つ以上のケトン及び1つ以上のアルコールの混合物を含む。本発明に従って使用され得る例示的なケトンには、脂肪族及び芳香族環状ケトン、例えばシクロヘキサノンが挙げられる。本発明に従って使用され得る例示的なアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコール、例えばテルピネオールが挙げられる。他の実施形態では、液体ビヒクルは、アミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はラクタム、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含み得る。
【0019】
特定の実施形態では、液体ビヒクルは、約60重量%~約99重量%、約70重量%~約95重量%、又は約80重量%~約90重量%の1つ以上のケトンを含む。特定の実施形態では、液体ビヒクルは、約1重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%の1つ以上のアルコールを含む。
【0020】
1つ以上の実施形態では、カーボンナノ材料がカーボンナノチューブ及び/又はグラフェンエアロゾルゲル粒子を含む場合、インク中のこれらのカーボンナノ材料の濃度は、約0.01~約10mg/ml、約0.05~約5mg/ml、又は約0.1~約3.0mg/mlである。特定の実施形態では、CNT及び/又はGAG粒子に加えて、インク組成物は、グラフェン(還元型酸化グラフェンを含む)及び/又は酸化グラフェン粒子、並びに/あるいは窒素、硫黄、及びホウ素等の元素をドープすることによるドープされたカーボンナノ材料を更に含んでもよい(
図11)。そのような実施形態では、グラフェン及び/又は酸化グラフェン粒子の濃度は、約1~約30mg/ml、約5~約25mg/ml、又は約10~約15mg/mlである。
【0021】
特定の実施形態では、カーボンナノ材料、特にグラフェンエアロゾルゲルは、約0.1~約10μm、約0.25~約7.5μm、又は約0.45~約5μmのD90粒径(分布の90%がより小さい粒径を有し、10%がより大きい粒径を有する)を有する。
【0022】
インク組成物は、1つ以上の任意の成分を更に含んでいてもよい。1つ以上の実施形態では、インク組成物は、液体ビヒクル中にカーボンナノ材料の安定な懸濁液を形成するのを助ける1つ以上の界面活性剤を含んでもよい。本発明と共に使用され得る例示的な界面活性剤としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)が挙げられる。特定の実施形態では、インク組成物は、約1~約500mg/ml、約2~約300mg/ml、又は約5~約200mg/mlの1つ以上の界面活性剤を含む。
【0023】
特定の実施形態では、インク組成物は、インクジェット印刷ヘッドから吐出可能であるために、室温(すなわち、約25℃)で30cP未満、25cP未満、又は20cP未満の粘度を有し得る。
【0024】
本発明の他の実施形態では、複合インクを形成する方法が提供される。例示的な方法を以下の実施例に記載する。しかし、概して、本発明による複合インク組成物は、多数の経路を介して配合されてもよい。一実施形態によれば、本明細書に記載のグラフェンエアロゾルゲル、及び1つ以上の界面活性剤を含む混合物が提供される。特定の実施形態では、混合物は、最初に有機溶媒等の液体媒体中に一定量のグラフェンエアロゾルゲル粒子を分散させることによって形成され得る。特定の実施形態では、使用される有機溶媒は、エチルアルコール等のアルコールであってもよい。GAG分散体に、一定量の界面活性剤、例えばエチルセルロース又はニトロセルロースを添加する。1つ以上の実施形態では、GAGと界面活性剤との比は、重量により、10:1~1000:1、25:1~500:1、又は100:1~250:1である。次いで、GAG粒子が複数のGAGフレークに崩壊するまでの期間にわたって撹拌又は超音波処理を使用して、溶媒内にGAGを分散させる。
【0025】
次に、より小さいサイズのGAGフレークが、例えば遠心分離によって懸濁液から分離される。上清に含まれるGAGフレークを凝集させ、過剰量の界面活性剤を除去してもよい。これは、NaCl溶液を調製し、これをフレークに添加することによって達成され得る。得られた懸濁液を濾過し、凝集したGAGフレークを回収することができる。得られたフレークを乾燥させ、グラフェン-界面活性剤粉末を回収することができる。場合により、乾燥粉末を有機溶媒中に再分散させ、分散体を濾過することによって、より大きなサイズのGAGフレークを粉末から除去することができる。フィルターを通過したGAGフレークを含む透過液を、前の工程のように凝集させ、乾燥させて粉末を形成することができる。
【0026】
最後に、複合インクは、上述のように、液体ビヒクル系にGAGフレーク及び界面活性剤粉末を分散させることによって形成することができる。次いで、均質なインク組成物を形成するために、超音波処理の使用等によって分散体を撹拌することができる。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、複合インクは、最初にグラフェン又は還元型酸化グラフェン分散体を提供することによって配合することができる。例示的な還元型酸化グラフェン分散体は、還元型酸化グラフェン微粒子を、上記のようにシクロヘキサノン及びテルピネオールの混合物等の液体ビヒクル系と混合させることによって形成することができる。特定の実施形態では、還元型酸化グラフェン粒子は、約1~約30mg/ml、約5~約20mg/ml、又は約10~約15mg/mlの濃度でビヒクル系中に存在する。次いで、一定量の界面活性剤を、約0.5~約15mg/ml、約1~約10mg/ml、又は約3~約5mlのレベルで混合物に添加してもよい。得られた混合物を、超音波処理等によって、400℃を超えない高温条件下で撹拌して、インク懸濁液を形成することができる。1つ以上の実施形態では、一定量のCNT又はGAG粒子を、約0.01~約5mg/ml、約0.05~約2.5mg/ml、又は約0.1~約1mg/mlのレベルでインク配合物に添加してもよい。次いで、得られた混合物を超音波処理して、安定な懸濁液を形成することができる。
【0028】
複合インクを使用して、インクで印刷された1つ以上のトレースを含む電子機器を作製することができる。特定の実施形態では、インクはジェットプリンタを使用して基板上に印刷したが、所望の寸法のトレースを作製することができる任意の印刷技術を使用することができた。複合インクによって作製することができる例示的な電子機器には、キャパシタ、スーパーキャパシタ、マイクロキャパシタ、ウルトラキャパシタ、及び擬似キャパシタが含まれる。特定の実施形態では、インクを使用して電極を印刷することができ、1つ以上の電解質と組み合わせる場合に使用されて、電池を作製することができる。
【0029】
1つ以上の実施形態では、電子機器は、本明細書に記載の任意の複合インクを使用して、基板上に導電性トレースを印刷することによって形成されてもよい。特定の実施形態では、使用される基板は、ポリイミドフィルム等の合成樹脂材料から形成されたフレキシブル基板である。しかし、剛性プラスチック、ガラス、及びセラミック等の非フレキシブル基板を含む他の種類の基板が使用されることは本発明の範囲内である。特定の実施形態では、導電性トレースが作製されると、トレースをアニールすることができる。アニーリング工程は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下、約200℃~約500℃、約300℃~約450℃、又は約350℃の温度で実施することができる。アニーリング工程は、約1~約5時間の期間にわたって実施され得る。
【0030】
図11は、ナノインク及び複合インクの配合、並びにエネルギー貯蔵装置の作製を通した、カーボンナノ材料の製造から始まる本発明による様々な概念を概略的に示す。第一段階は、少なくとも1つの低次元材料40からカーボンベースナノ材料を製造することを含む。例示的な低次元材料は、ナノ材料を合成するために使用することができる、グラファイト、又は炭化水素化合物等の1つ以上の有機反応物である。低次元材料40から、1次元カーボンナノチューブ42、2次元グラフェン及び酸化グラフェンシート44、準3次元グラフェンエアロゾルゲル46、又は様々なドープされた炭素-ナノ材料48等の様々なナノ材料を製造することができる。ドープされたカーボンナノ材料は、例えば、ドーパントとして窒素、ホウ素、又は硫黄原子を更に含むナノ材料42、44、又は46のいずれかを含んでもよい。
【0031】
次いで、ナノ材料42、44、46、48を使用して、ナノインク及び複合ナノインク50を配合することができる。次いで、ナノインク50は、例えばスーパーキャパシタ54及び擬似キャパシタ56を製造することができる印刷された電極52等の様々なエネルギー貯蔵装置の製造において使用することができる。印刷された電極52はまた、電池60を構築するために1つ以上の電解質58と共に使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態、特に、グラフェン、還元型酸化グラフェン、及びグラフェンエアロゾルゲルを含むインク組成物を記載する。それらは、本発明と共に使用され得る特定の概念を例示するものであり、その全体的な範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特定の実施形態では、ナノインクの配合は、市販のグラフェンインク、例えば、Sigma Aldrichから入手可能なグラフェンインクから開始し得る。しかし、以下に記載するように、炭素含有ナノ材料を合成し、複合インク組成物に配合することができる。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態による2つのグラフェン含有インクを作製するためのプロセスを概略的に示す。両方のプロセスにおいて、グラフェンインク10がベース配合物として使用される。1つのプロセスでは、グラフェンエアロゾルゲルをグラフェンインクベースに添加して、グラフェン14及びグラフェンエアロゾルゲル粒子16の両方を含むグラフェンエアロゾルゲルインク12を形成する。第2のプロセスでは、カーボンナノチューブをグラフェンインク10に添加して、グラフェン14及びカーボンナノチューブ20の両方を含むグラフェン-カーボンナノチューブインク18を形成する。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブを含み得ることに留意されたい。
図2に示すように、次いで、インク24をインクジェットヘッド26からプラスチック基板28上に所望の構成で印刷することによって、インクを使用して電極等の電子機器22を製造することができる。
【0034】
[実施例1]
還元型酸化グラフェンインク
還元型酸化グラフェンインクは、以下の工程を使用して形成することができる。
【0035】
1. 85体積%のシクロヘキサノン(Sigma Aldrich)を15体積%のテルピネオール(Sigma Aldrich)と混合して、均一な溶媒混合物を作製した。この溶媒混合物は、インク配合物のためのビヒクルを形成する。
【0036】
2. 溶媒を10~15mg/mLの比で還元型酸化グラフェン(ACS Materials製)と混合した。あるいは、市販のグラフェン粉末(例えば、Graphene Supermarketから入手可能なもの)を使用することができる。
【0037】
3. 3~5mg/mLのエチルセルロースを混合物に添加した(Sigma Aldrich製のエチルセルロース)。
【0038】
4. 混合物を400℃を超えない温度で一晩、超音波浴処理した。
【0039】
5. 混合物を、プローブ超音波処理に設定した30%出力で、15分間の工程及びその間の15分間の休止時間で60分間プローブ超音波処理した。温度が400℃を超えないことを確実にするための工程を行った。
【0040】
6. インク/懸濁液を更に10分間、超音波浴処理し、続いて印刷前に約5分間ボルテックスミックスする。
【0041】
更に、カーボンナノチューブ及び/又はグラフェンエアロゾルゲルを含む複合ナノインク配合物については、以下の工程も実施する。
【0042】
7. 0.3mg/mLのナノチューブ又はグラフェンエアロゾルゲルをグラフェンインクと混合し、得られたインクを1時間、超音波浴処理する。
【0043】
次いで、グラフェンナノシート及びカーボンナノチューブ(CNT)を有する配合された複合インク、並びにグラフェンナノシート及びグラフェンエアロゾルゲル(GAG)を有する配合された複合インクを、マテリアルプリンタ(SonoPlot Microplotter II)において使用して、それらの電気化学的特性の特性決定のために、(ポリイミド等のフレキシブル且つ曲げられる基板上に)印刷された電極を製造した。印刷プロセスの後、電極を窒素雰囲気中、300℃で2時間アニールする。標準的なヘキサアミンルテニウム(III)塩化物溶液を電気化学プローブとして使用して、印刷された電極を試験した。電気化学的方法によるナノ材料表面と溶液試料との間の電子移動(又は電荷移動)プロセスを理解するために、サイクリックボルタンメトリ(CV)試験を実施し、標準Ag/AgCl基準電位に関する電極全体に電圧を掃引し、酸化及び還元電流を監視した。電圧が往復して掃引される場合の酸化及び還元活性表面は、電荷移動の指標であり、表面の電気活性を意味する。上記の複合インクのアディティブマニュファクチャリング法によって作製された電極(すなわち、印刷された電極)は、この技術を使用して特性決定され、上記の両方の複合インクは、有意に活性な電気化学的シグナル(1桁高い)を示し、センサ及びエネルギー貯蔵装置を製造するためのグラフェンインクにおけるカーボンナノチューブ及びグラフェンエアロゾルゲル添加剤の役割を示している。この特性は、より大きな有効反応表面積を提供することができる、添加されたナノ材料の多孔質構造に起因すると考えられる。GAG及びCNTマトリックスの多孔質構造並びにネットワーク分布を、透過型電子顕微鏡(TEM)画像から確認した。
【0044】
図3は、グラフェン電子機器、例えば、電極、センサ、及び回路を製造するために使用することができるドロップ・オン・デマンド及び印刷プロセスを概略的に示す。インク30は、インクジェットヘッド32から吐出され、プリンタプレート36上に配置されるプラスチック基板34上に堆積される。各インクで形成されたストリップ電極38の電気化学的及び電荷移動特性を試験した。
【0045】
図4a~
図4cは、走査型電子顕微鏡撮像(SEM)を使用して測定された、印刷されたセンサの表面微細構造を示す。3つのセンサは、(a)グラフェン、(b)グラフェン及びグラフェンエアロゾルゲルの複合体、並びに(c)グラフェン及びカーボンナノチューブの複合体を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる。グラフェンエアロゾルゲル及び個々のカーボンナノチューブの単離された及び/又はより小さいクラスターは、ホストグラフェンフレークと密接に接続されて示され、以下に説明するように、電気化学的活性からも明らかな追加の表面特性を提供する。エアロゾルゲル及びカーボンナノチューブの密度は、それらの機能性に悪影響を及ぼす可能性があるナノ構造体の凝集を避けるために、意図的に小さく保たれた。
【0046】
図5a~
図5dは、成分のナノ構造体、及び3つのインクのナノスケールにおけるそれらの混合を示すTEM画像である。
図5a、
図5c、及び
図5eはそれぞれ、グラフェンフレーク、グラフェンと混合され、グラフェンで覆われたグラフェンエアロゾルゲル、並びにグラフェンと混合され、グラフェンで覆われたカーボンナノチューブのTEM画像を示す。
図5b、
図5d、及び
図5fは、高解像度の、グラフェン、グラフェンと密接に接触するグラフェンエアロゾルゲル、及びグラフェンと密接に接触するカーボンナノチューブ(10nm未満)を示す。
【0047】
(a)グラフェン、(b)グラフェンエアロゾルゲルとの複合グラフェン、及び(c)カーボンナノチューブとの複合グラフェンを含むインクを使用してワンパスプリントで印刷される、印刷されたセンサでラマンスペクトルを得た。特徴的なDピーク、Gピーク、及び2Dピークはそれぞれ、約1350cm-1、1580cm-1、及び2700cm-1において観察され、カーボンナノ材料のインタクト分子及び構造振動モードの存在を示している。
【0048】
図6は、グラフェン(a)、グラフェンエアロゾルゲルとの複合グラフェン(b)、及びCNTとの複合グラフェン(c)を含むインクを用いて作製された3つの印刷されたセンサのサイクリックボルタンメトリのグラフである。センサは、標準Ag/AgCl基準電極及び標準ヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物レドックスプローブによって試験した。グラフェンインクがグラフェンエアロゾルゲル又はカーボンナノチューブ添加剤を含有する場合、非常に明確で対称的な酸化及び還元ピークが観察され、複合インクの電気活性特性の向上を示した。陰極電流及び陽極電流は、グラフェンインクと比較して複合インクでは桁違いに高い。グラフェンインクは、レドックスプローブとの相互作用が依然として弱い。
【0049】
グラフェンエアロゾルゲルインクとの複合グラフェン及びCNTインクとの複合グラフェンを含む印刷されたセンサのサイクリックボルタンメトリを、5mV/s、10mV/s、25mV/s、50mV/s、及び100mV/sの走査速度で分析した。これらの2つのセンサの線形陽極特性及び陰極特性を示すグラフも作成した。どちらの種類も高い電気化学的電子移動を示すが、カーボンナノチューブ添加剤を含むセンサは、グラフェンエアロゾルゲル添加剤を含むセンサよりもわずかに高い性能を示した。
【0050】
様々な走査速度における0.1MのNaOH中の5.0mMグルコースで、複合グラフェン-グラフェンエアロゾルゲル及び複合グラフェン-カーボンナノチューブセンサそれぞれのサイクリックボルタンメトリも測定した。対応する線形陰極及び陽極ピーク電流位置を示したグラフも作成し、複合グラフェンインクで印刷又はコーティングされたセンサが、グルコースセンサに使用できたことを示していた。
【0051】
[実施例2]
グラファイト粉末からのグラフェンインクの配合
別の実施形態では、グラフェンエアロゾルゲルインクは、以下のように配合され得る。
【0052】
1. 最初に、1.5mg/mlエチルセルロース(粘度4cP)(すなわち、0.25g)を50mlエタノールに分散させ、超音波浴処理した。次いで、50mg/mlのグラファイト(ACS Materials)(すなわち、2.5g、)を混合物に添加した。
【0053】
2. 分散体をプローブ装置内で50%の設定エネルギーにより3時間プローブ超音波処理した(5秒間ON、続いて5秒間OFFに設定し、混合物を含有するビーカを氷浴中に維持した)。
【0054】
3. 分散体を10,000g(11641rpm)で15分間遠心分離し、その後、上清を回収した。
【0055】
4. 上清を体積比1:2で0.04g/mlのNaClと混合し、続いてホットプレート上で50℃において、マグネタイザで5分間撹拌しながら熱処理した。
【0056】
5. 残留塩を有さない粉末を回収するために、グラフェン/EC固体を脱イオン水で洗浄し、真空によって単離した後、ホットプレート上に再び置いて乾燥させた。
【0057】
6. エタノールにグラフェン/EC粉末を再分散させ、5μmのフィルター孔を通して濾過する。
【0058】
7. 分散体を体積比1:2で0.04g/mlのNaClと再度混合し、続いてホットプレート上で5分間、マグネタイザで撹拌した。
【0059】
8. 残留塩を有さない最終粉末を回収するために、グラフェン/EC固体を脱イオン水で洗浄し、真空濾過プロセスによって単離した。最後に、生成物をホットプレート上に置いて乾燥させた。
【0060】
9. 最後に、この粉末を50~200mg/mLの濃度で、85体積%のシクロヘキサノン(Sigma Aldrich)及び15体積%のテルピネオール(Sigma Aldrich)の混合物中で使用して、均一な溶媒混合物を作製する。
【0061】
[実施例3]
グラフェンエアロゾルゲルインクの配合
別の実施形態では、グラフェンエアロゾルゲルインクは、以下のように配合され得る。
【0062】
以下の化学物質を使用することができる。
a.溶媒:エチルアルコール
b.界面活性剤:エチルセルロース(製品番号200646、Sigma Aldrich、4cp、トルエン/エタノール(80:20(リットル))中5%)。
c.グラフェンエアロゾルゲル:(O2/C2H2)比=0.5。
【0063】
工程1.溶媒中にグラフェンエアロゾルゲルを懸濁。
a.校正されたメスシリンダを使用して清潔なガラス容器にエチルアルコール50mlを注ぎ、グラフェンエアロゾルゲル250mg(すなわち、5mg/mlの濃度で)を添加する。10~15分間穏やかに振盪する。
b.エチルセルロース1.25g(すなわち、25mg/mlの濃度で)を添加する。
c.50%のワット設定で1時間氷浴中に維持し、プローブ超音波処理を使用し、且つパルスオン時間5秒、パルスオフ時間5秒を使用して、グラフェンエアロゾルゲルを溶媒内に分散させる。この段階の後、グラフェンエアロゾルゲルは、グラフェンエアロゾルゲルフレークへと崩壊する。
【0064】
工程2.より小さなグラフェンエアロゾルゲルフレークの分離。
d.懸濁液を11,000rpm(10,000rcf)に相当する速度を使用して、15分間遠心分離する。遠心分離機バイアルの上部で液体を静かに傾け、ビーカに回収する。
【0065】
工程3.過剰な界面活性剤(エチルセルロース)の凝集及び除去。
e.脱イオン水中に濃度0.04g/mlのNaClの水溶液を調製する。
f.懸濁液とNaCl水性ゾルとの間で体積比1:2を維持しながら懸濁液にNaClゾルを添加する。
g.凝集したグラフェンエアロゾルゲルを、0.45μm孔径のフィルターを使用して、真空濾過によって濾過する。
h.ホットプレートを使用して固体粉末を50℃で一晩乾燥させて、グラフェン-エチルセルロース粉末を得る。
【0066】
工程4.より大きなグラフェンエアロゾルゲルフレークの除去。
i.乾燥粉末をエチルアルコール溶媒に再分散させ、5μmふるいを通して濾過する。
j.工程(e)、(f)及び(g)の後に再度凝集させる。
k.50℃のホットプレートを使用して一晩乾燥させる。
【0067】
工程5.最終的なグラフェンエアロゾルゲルインクの調製。
l.60mgのエチルセルロース-グラフェン粉末を、450μLのシクロヘキサノン及び50μLのテルピネオール混合物中にゆっくり添加する。
m.室温で15分間の超音波浴処理を使用して、粉末を溶媒中で混合して、均質で懸濁したインクを得る。
【0068】
より低い濃度のエチルセルロースをインク配合物に使用した場合、インクは、印刷及び熱アニーリングの後に、より良好な導電率を示したことが観察された。
【0069】
図7は、より低い濃度の界面活性剤を有するエアロゾルゲルインクで印刷された約1cmx1cmのスーパーキャパシタ機器(インターディジテイテッド型電極)の写真である。ワンパス印刷を使用して、20μm直径のプリンタ先端によりポリイミド(KAPTON)フィルム上にこれらの機器を印刷した。印刷後、機器を窒素中350℃で2時間アニールした。
【0070】
調整可能な物理的構造を有するナノスケール材料は、それらの周囲環境への大きな表面積の曝露という特有の利益を得て、これが多数の用途を導くが、粒子間電気抵抗及び機械的破壊、望ましくない種に対する表面感受性、並びにそれらの欠陥を制御できないこと等の重要なボトルネックは、エネルギー貯蔵装置の形態における再生可能エネルギー等のスケーラブル且つ実用的な用途のそれらの可能性を制限する。グラフェンは、その原子次元(薄さ)及びエネルギー及びセンシングにおけるその成功した用途による特別な電子特性のために、過去15年に大きな物理的特性を示してきた。グラフェンの大規模材料合成の態様は、マイクロメカニカル剥離法とは対照的に高い需要があるが、グラフェン機器の製造及びそれらの信頼性の高い特性探索は、業界でまだ採用されていない。本発明の一実施形態では、グラフェンエアロゾルゲルを使用して、界面活性剤を官能化し、ポリイミド等のフレキシブル且つ曲げられる基板を含む多数の基板材料上に印刷されたグラフェンマイクロスーパーキャパシタを製造するためにそれらを使用することによって、安定なグラフェンエアロゾルゲルインクを製造する。優れた特性を有するマイクロスーパーキャパシタは、電解質に曝露される印刷された電極の有効表面積に密接に依存することが実証されている。以下により詳細に示すように、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート電解質及び5~10μA cm-1の放電電流密度の10,000回の動作サイクルにわたって、印刷されたマイクロスーパーキャパシタ電気化学的機器で80%を超える容量保持を得た。
【0071】
インクの特性決定及び印刷
グラフェンエアロゾルゲルインクは、安定性試験(経時的な懸濁液の沈降に関する定性的観察)、エアロゾルゲル密度推定、電子顕微鏡測定、及び印刷後の電気抵抗測定を含む多くの方法で特性決定した。マイクロスーパーキャパシタの場合、インターディジテイテッド電極を、室温で20μmのノズルサイズを有するSonoPlot Microplotter IIを使用することによってポリイミド基板上に印刷した。スーパーキャパシタ特性を最適化するために複数の印刷パスを使用することができるが、この研究は、主に小型電源用のマイクロ機器の製造に起因して、シングルパスライティングによる印刷されたスーパーキャパシタ機器に焦点を当てる。印刷後熱処理を、窒素中の5%水素混合物の不活性周囲環境において350℃で2時間、機器によって行った。
【0072】
制御された量の酸素による、アセチレン前駆体(C2H2)の触媒なしの電気火花開始爆轟を4Lチャンバ内で行って、グラフェンエアロゾルゲルを合成した。爆轟中のプロセスの要約は、アセチレン分子の遊離炭素原子又はイオンへの変換、それに続くカーボンエアロゾル形成、及びその後のゲル化プロセスを経て、カーボンエアロゾルゲル(CAG)と呼ばれるゲルを形成することによって理解することができた。CAG、グラフェンエアロゾルゲル及びそれらの特性決定の詳細なプロセスは以前に報告されており、エアロゾルゲル壁の層厚、多孔度、酸素対炭素原子比、炭素-炭素結合特性(ハイブリダイゼーション)等のいくつかの重要なパラメータが研究されている。エアロゾルゲルの表面積は、エアロゾルゲルインク配合前にブルナウアー-エメット-テラー(BET)測定を使用して試験した。
【0073】
ラマン分光法、X線光電子分光法、局所格子間隔を有する高分解能透過型電子顕微鏡法、並びに制限視野電子回折(SAED)からの回折パターン等の多数の特性により、インク成分のグラフェン特性が確認され、エアロゾルゲル材料の品質が保証された。懸濁液はまた、沈降することなくその粒子分散体を保持し、後の長期使用のためのインク品質を確実にする。インクのレオロジー及び粒径は、印刷パターンの品質だけでなく、その物理的及び機械的安定性を決定する最も重要なパラメータのうちのいくつかである。
【0074】
図7に示すマイクロスーパーキャパシタは、機械的に非常にフレキシブルで曲げることが可能であり、高レベルの機械的フレキシブル性に対応する厚さ25μmのシートである、ポリイミド基板上に印刷される。これらの機器では、セルは通常10mmx8mmであり、更に小型化することができる。
【0075】
図8は、グラフェンエアロゾルゲルインクの高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像化結果を示す。エアロゾルゲル粒子のランダムに分布した崩壊構造(
図8の左画像)は、グラフェンエアロゾルゲルシグネチャを示す。右側の画像(
図8)は、左側の画像の円形領域によって示される領域に位置するグラフェンエアロゾルゲルを拡大した図である。画像は、インクに使用される典型的なエアロゾルゲル粒子に存在するグラフェンの層数を示す(7~10の平行線がTEMから見える)。この特有の構造が、印刷品質における信頼性(機械的完全性)と共に、エネルギー貯蔵装置の開発にとって不可欠な構成要素であることを理解することが重要である。
【0076】
印刷機器の炭素-炭素結合特性をより詳しく調べるために、エアロゾルゲルインクに対してラマン分光測定を実施し、
図9は、
図8に示されるエアロゾルゲル格子の振動スペクトルを示す(挿入して示される画像に対応するスポットは測定部位として示された)。Gピーク(約1580cm
-1)及び2Dピーク(約2700cm
-1)の出現は、構造中に存在するグラファイト結合を意味する。多層グラフェン格子の
図10に示されるように、2Dピークの強度は、単層グラフェンとは異なるバンド構造(ディラックポイントを有する線状バンド構造)のため、Gピークの強度よりも小さいと予想される。約1340cm
-1付近に位置するDピークは、欠陥由来のピークに割り当てられる。その準3Dランダム構造及び構造中の欠陥の数に起因して、このピークが、インクのラマンスペクトルにおいて生じると予想される。
【0077】
印刷されたマイクロスーパーキャパシタを、0V及び1Vの電位窓でGamry Instrument interface 1010Eポテンショスタット/ガルバノスタット装置によって、それらの電気化学的性能について試験した。セルに使用した電解質は、イオン液体電解質、すなわち1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(有機電解質であるEMIBF4)であった。これは、いくつか例を挙げると、電気化学的輸送機構を試験するために使用されるレドックスプローブの校正、単一電子又は多電子レドックスプロセスの評価、電気二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)における電荷シャトリング、及び電極-電解質界面の信頼性調査を含む広範囲の用途を有する常温イオン液体(IL)である。
【0078】
印刷されたスーパーキャパシタのサイクリックボルタンメトリ分析を、2組のフィンガー電極に印加された0V~1Vの極性の間の様々な走査速度(100mV/s~2,000mV/s)で行った。方形電流対電圧特性(特に、いくつかのより低い走査速度では、1,000mV/sの走査速度であっても当てはまる)は、電気化学的二重層容量の特性を実証した。測定は、より低い走査速度のそれぞれで数百サイクルの動作にわたって信頼性があり、電極-電解質界面の安定性を示していた。より高い走査速度(2,000mV/等)では、電流対電圧特性は、認識する必要がある理想的な方形形状から幾分歪んでおり、改善が必要である。
【0079】
マイクロスーパーキャパシタの面積比容量(CS)は、異なる走査速度によるCV曲線から、又は定電流充放電特性(後述)から測定することができる。これらはマイクロスーパーキャパシタであり、ランダム化された構造的シグネチャを有するグラフェンエアロゾルゲルを利用する。したがって、体積比容量又は重量比容量を導き出す代わりに、面積比容量を考慮することがより適切であろう。
【0080】
図10a及び
図10bは、定電流測定を使用するマイクロスーパーキャパシタの充放電特性を示す。測定には6μA cm
-2の定電流密度を使用した。
【0081】
マイクロスーパーキャパシタの面積比容量は、以下によって得られ、
【数1】
式中、Iは印加電流、Aは印刷された電極の総面積、(dV/dt)は定電流充放電特性における放電曲線の傾きである。マイクロスーパーキャパシタを10,000サイクル行った。6μA cm
-2の電流密度での10,000サイクルの動作中において、
図10aは、最初の5回の充電及び放電サイクルを示し、
図10bは、最後の5回の充電及び放電サイクルを示す。これらの実験からいくつかの事実が観察される。第1に、充電時間及び放電時間の両方が非常に速い(10秒未満、実際には充電時間は5秒未満である)。第2に、電池の性能とは異なり、充電特性及び放電特性の両方が完全に線形である。初期放電サイクル及び最終放電サイクルからの相対放電容量を比較すると、マイクロスーパーキャパシタは、10,000サイクルの動作にわたって80%を超える容量維持率を示した。単一のマイクロスーパーキャパシタセルで60μF cm
-2の初期放電容量が得られた。結果は、IoTドメイン等のグラフェンエアロゾルゲルに基づく印刷されたマイクロスーパーキャパシタの優れた性能及び有望な適用を実証する。
【0082】
図11は、ナノカーボン複合材への材料発見の拡大、並びに機能性インク及びアディティブマニュファクチャリングによるエネルギー機器(スーパーキャパシタ及び電池機器)の製造へのそれらの適用を示す。複合材及び複合インクは、1Dナノチューブ、2Dグラフェン、準3Dグラフェンエアロゾルゲル、並びに窒素、硫黄、及びホウ素等の元素によってドープされたカーボンナノ材料を含む。
【0083】
[実施例4]
グラフェンエアロゾルゲルインクの配合
この実施例では、グラフェンエアロゾルゲルインクを調製し、インターディジテイテッド電極の物理的特徴及び特性を試験した。
【0084】
材料特性決定
Philips CM-100透過型電子顕微鏡を使用して、加速電圧100kVでグラフェンエアロゾルゲル粒子の微細構造を試験した。TEM試験片は、銅グリッドを合成GAGインクに直接浸漬することによって、TEM銅グリッド上に直接調製した。印刷された電極の表面形態及び均一性は、日立の電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM)で測定した。ラマン(Renishaw Invia Raman Microscope、励起波長532nm)及びXPSスペクトル(PHI 5000 Versa Probe II、Physical Electronics Inc.)を印刷された装置で直接測定して、相及び元素分析を決定した。XPSスペクトルは、電子及びアルゴンイオンフラッドガンの組合わせで達成した。X線ビームサイズは100μmであり、調査スペクトルはパスエネルギー(PE)117eV、ステップサイズ1eV及び滞留時間20msで記録され、一方、高エネルギー分解能スペクトルはPE23.5eV、ステップサイズ0.05eV及び滞留時間20msで記録された。
【0085】
エアロゾルゲルインク調製物
爆轟法によって合成されたGAG粉末は、初期状態のグラフェンナノシート凝集体を含んでいた。したがって、凝集体を分散させるために、超音波プローブ(500W、20kHz、Q500 sonicator、USA)によって、氷浴条件で30分間プローブ超音波処理を使用した。GAG粉末250mgをエタノール50mlに分散させ、乳化剤として1w/v%エチルセルロース(EC、Sigma-Aldrich、5重量%、48%エトキシで、80:20のトルエン:エタノールにおいて測定された4cPグレード)を使用した。次いで、懸濁液を5μmガラス繊維シリンジフィルターで濾過して、より大きなGAG粒子を除去した。次いで、回収した懸濁液をNaCl水溶液(脱イオン水中0.04g/ml)を添加することによって凝集させ、続いて0.45μmナイロンフィルターを使用して真空濾過した。次いで、得られたGAG/ECペーストを70℃のホットプレートを使用して乾燥させた。GAG/EC粉末をシクロヘキサノン及びテルピノール(体積比85:15)に均一に懸濁し、続いて70mg/mlの濃度で超音波浴処理することによって、インクを調製した。
【0086】
インターディジテイテッド電極(IDE)のインクジェット印刷
MSCのインターディジテイテッド電極(IDE)を、室温で20μmのノズルサイズのガラス先端を有するインクジェットプリンタ(SonoPlot、Microplotter II、USA)を使用してフレキシブル基板上にパターン化した。アセトン及びメタノールの混合物中で超音波浴処理によって基板を完全に洗浄し、印刷前に窒素ガスで吹き付けることによって乾燥させた。次いで、印刷された電極をN2/H2混合物(窒素中5%水素)中350℃で2時間熱処理して、有機バインダを燃焼除去した。
【0087】
電気化学的性能
印刷されたマイクロスーパーキャパシタの電気化学的性能を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIM-BF4、Sigma Aldrich)有機電解質を使用して、0~1ボルトの電位窓で、Gamry interface 1010Eポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して試験した。面積比容量(C
A)、体積比容量(C
V)及び等価直列抵抗(R
ESR)は、式(1)、(2)及び(3)を使用して定電流充放電曲線から測定され、
【数2】
(1)
【数3】
(2)
R
ESR=V
drop/2I (3)
式中、パラメータI、A及びVは、それぞれ印加電流、印刷された電極フィンガーの総面積、フィンガーの総体積である。dv/dtは放電曲線の傾きであり、V
dropは放電サイクル開始時の電圧降下である。
【0088】
結果及び考察
熱重量分析(TGA)を実施して、処理されたGAG/EC粉末中のグラフェン含有量を測定した。温度の関数としての質量変化を示しているTGAは、開始温度約250℃における界面活性剤の分解を示した。質量の有意な変化(30重量%)が250℃~350℃に生じ、界面活性剤の芳香族化合物への完全な分解を示した。したがって、GAG/EC粉末は70重量%のグラフェンを含んでいた。GAG/EC粉末をシクロヘキサノン/テルピノール混合物(体積比85:15)に更に懸濁して、インクジェット印刷用インクを調製した。
【0089】
配合されたインクは、長期の安定性及び印刷適性を示した。
図12a及び
図12bは、フレキシブルポリイミド(厚さ25μm)基板上の、インクジェット印刷されたインターディジテイテッドμ-SC及び抵抗素子それぞれの光学画像を示す。印刷された装置の幾何学的寸法を表1に示す。
【0090】
表1. インクジェット印刷されたマイクロスーパーキャパシタの幾何学的測定
【表1】
【0091】
印刷されたパターンの均一性を決定するために、SEM及びAFM画像(SI-II)を記録した。
図12cのSEM画像から分かるように、印刷されたパターンは非常に均一であり、コーヒーリング効果を有さない。したがって、印刷プロセス中、インクの流れは一貫しており、凝集がなく、配合されたインクの良好なレオロジー特性が得られた。インクの印刷適性を、2倍の数のフィンガーを有する複数の機器を印刷することによって精査した。全ての印刷されたパターンは良好な均一性を示した。更に、印刷された電極表面の高解像度画像を、表面形態を試験するためにSEMで記録した。
図12dを参照されたい。印刷された電極の表面は、球状粒子を含み、高度に多孔性の表面を形成した。このような多孔質形態は、貯蔵容量に有利に働く。
【0092】
微細構造特性決定
高解像度TEM測定で表されたGAG粉末の微細構造を
図13に示す。
図13(a)は、100nmに近いほぼ均一なサイズ分布を有するグラフェンナノシート(GNS)の凝集体を示す。(b)に示すように、GNSのエッジは、シートの中心に対して、よりポジティブコントラストを有することは注目に値する。(b)の高倍率画像から明らかなように、GNSの境界は、(c)の挿入画像に示すように、シェルがエッジ終端グラフェンシートによって形成される、シェル様構造を基本的に含む。ランダム指向シートは、融合して固有のナノ多孔系、すなわちエアロゾルゲル様構造を形成する。エッジ終端グラフェンの存在量は、(d)に示すように、グラフェンシートが同心状に配置されて閉じたマルチシェル構造を形成するカーボンオニオンの形態に類似している。この場合、シェル構造は粒子のエッジのみに限定されており、したがって特有の微細構造は多孔性を引き継いでいるために、電気化学エネルギー貯蔵に利益をもたらすことができた。
【0093】
グラフェンエアロゾルゲルのラマンスペクトル
ラマン分光法は、様々なsp2炭素材料の非破壊的なハイスループット特性決定ツールとして説得力のある方法で使用される。グラフェンの特有のバンド構造は、共鳴フォノン散乱による強いラマンバンドの発生をもたらした。したがって、ラマンスペクトルの慎重な分析を使用して、グラフェンの欠陥、積層順、層数、ドーピング、応力及び熱導電性に関する重要な微細構造的側面を明らかにした。室温で記録されたGAG粒子のラマンスペクトルは、ローレンツ関数に適合し、1351cm-1、1583cm-1及び2700cm-1を中心とする3つの強いラマンバンドを含む。これらの光学ラマン活性フォノンモードは、典型的にはD、G及び2Dバンドとして割り当てられ、それぞれA1g、E2g及びA1gフォノンモードの倍音に起因する。更に、1622cm-1及び2452cm-1で2つの弱いラマンバンドも存在した。
【0094】
これらのフォノンモードは、それぞれD’、D+D’’バンドとして以前に割り当てられた。D’バンドの起源は、ブリュアンゾーンのK(又はK’)点の周りの谷内二重共鳴(DR)散乱プロセスに起因する。しかし、D+D’モードは、1100cm-1のLA分岐フォノン及びブリュアンゾーンのK点のDフォノンの組合わせから活性化された。強い2Dバンドの出現は、グラファイトカーボンのシグネチャである。更に、2Dバンドの線形状は、単層グラフェン(SLG)の2Dバンドと同様に、単一のローレンツ関数と非常に良く適合する。しかし、SLGの2Dバンドに関する波数約20cm-1の増加及びより高い半値幅(FWHM)は、GAG中のグラフェン層のターボスタティック積層と一貫していた。
【0095】
更に、Dバンドの強度は、概して、並進対称性の喪失に起因する構造欠陥及び不規則エッジの形態で存在する欠陥密度と相関する。高解像度TEM画像から見られるように、GAGの微細構造は、100nmの平均サイズ分布を有するシェル様構造を含む。シェルの境界は、実質的にGAG形態に持続するエッジ指向グラフェンシートによって制限される。したがって、直感的には、前にオニオン様カーボンで示されたように、相当量の露出したエッジに起因して、GAGでは大きなI(D)/I(G)が予想される。反対に、より小さい約0.2のI(D)/I(G)により、構造欠陥の濃度が低いだけでなく、並進対称性が良好な程度まで維持されたエッジが示唆される。したがって、エッジは、エッジ欠陥の量がより少ないジグザグ又はアームチェアの配列の炭素原子のいずれかを有する。ジグザグエッジは、運動量の保存によりDバンド強度に効果的に寄与しないことが以前に示されており、ストライプ様構造が、炭素原子のアームチェア配列を有するエッジ指向グラフェンシートの実質的な密度を含むことを示唆している。
【0096】
X線光電子分光法
GAGの化学純度を、印刷された機器の表面から記録されたXPSスペクトルで分析した。調査スペクトルは、C1s炭素及び非常に低い酸素濃度に関連する光学ピークのみを示した。XPSバンドの非対称形状は、3つの成分へのデコンボリューションを示す。XPSバンドのより大きい強度は、炭素原子の六角形ネットワークのC=Cに由来するsp2混成状態(284.05eV)によって共有され、GAGの化学純度を更に確認した。sp3混成状態(284.7eV)はまた、C-O基の最小濃度と共にかなりの濃度(22%)でXPSスペクトルに存在する。これは、酸素と反応するために化学的により活性なグラフェンエッジ状態のサイズ及びその相当量に言及することができる。
【0097】
電気化学的性能
異なる走査速度におけるサイクリックボルタモグラム(CV)によって調べた印刷されたGAGμ-SCの電気化学的性能は、0.0~1.0ボルトの電位窓を示した。CV曲線の典型的な方形形状は、印刷されたμ-SCの理想的な二重層容量特性を示した。CV曲線の方形形状は、最大約2V/sの測定された高い走査速度に対して線形に持続した。しかし、丸みを帯びた角部は、印刷された装置に存在する有意な大きさの等価直列抵抗(ESR)を示唆した。ESR値は、放電曲線の開始の電圧降下(5μ-amp/cm2におけるΔV=36mV)から式(2)を使用して算出した。RESRの大きさは約45kΩであることが見出された。ESRの大きさは、接触抵抗、電極-電解質界面抵抗、及びバルク電極抵抗から生じる。GAG電極の高い多孔性は、ESRの大きさの主な一因となり得る。更に、異なる電流密度のMSCで充放電(CDC)プロファイルを測定した。CDCは典型的な三角形の形状プロファイルを表すが、特に低電流密度では非対称な形状がよく知られている。しかし、高電流密度では三角形の形状はより対称的になった。面積比容量(CA)及び体積比容量(Cv)は、電流密度の関数として式(2)、(3)を使用して、定電流放電プロファイルの勾配から計算した。印刷されたスーパーキャパシタの安定性を、6μ-amp/cm2の定電流密度で多くの回数のCDCサイクルで試験した。機器は、10,000サイクル後に約80%の良好な容量保持を示した。
【0098】
実際の用途のための出力密度を高めるために、一般に、
図14a及び
図14bに示すように、複数のセルが直列及び並列の組合わせで組み立てられる。直列の組合わせは、予想されるように、0~1ボルトの電位窓で動作した場合、容量が3分の1に減少することが示されたが、最大3ボルトで動作した場合、充放電時間のわずかな増加を示した。同様に、並列配置は、単一セルと比較して容量が3倍に増加することを示した。したがって、配合されたGAGインクは、出力を調整するために、複数の機器を直列及び並列の組合わせで直接印刷するために、直接使用され得る。
【0099】
結論
全ての印刷されたパターンは、いかなる明らかな汚れ又はコーヒーリング効果なしに高い均一性を示した。したがって、GAGインクの良好な印刷適性及び長期安定性により、インク配合プロトコルの成功が確認された。印刷されたμ-SCは、0~1ボルトの電位窓で6μA cm-2で動作される、多くの回数の充放電サイクル(10,000サイクル)にわたって約80%の良好な優れた容量保持を示した。したがって、この手法は、グラフェンの大量生産及びエネルギー貯蔵装置の製造のギャップを埋めることができた。
【国際調査報告】