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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】NMP系膜中の反応性添加剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/08 20060101AFI20220829BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/46 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20220829BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220829BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B01D69/08
B01D71/06
B01D71/26
B01D71/34
B01D71/46
B01D71/60
B01D71/68
B01D71/82 510
B01D61/02
B01D61/14
C02F1/44 D
C08J9/00 Z CFC
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576798
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 IB2020055925
(87)【国際公開番号】W WO2020261116
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182942.3
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウェウスター,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】マレク,ダニエル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ストロシュケ,マチアス
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006MA01
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC40X
4D006MC50X
4D006MC62
4D006MC63X
4D006NA13
4D006NA17
4D006NA18
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB12
4D006PB55
4F074AA64
4F074AD13
4F074CB91
4F074DA43
4F074DA53
(57)【要約】
本開示は、改質微多孔膜を製造するためのプロセスであって、(i)少なくとも1つの第1のポリマー及び少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む第1の溶液を提供することと、(ii)少なくとも1つのジアミン化合物を含む第2の溶液を提供することと、(iii)第1の溶液と第2の溶液を接触させ、それにより、少なくとも1つの第1のポリマーと、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物と少なくとも1つのジアミン化合物との架橋反応生成物と、を含む、改質微多孔膜を得ることと、を含み、改質微多孔膜は中空繊維膜であり、第1の溶液はドープ溶液であり、第2の溶液はボア溶液であり、第1の溶液と第2の溶液の接触は、紡糸口金内で起こる、プロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質微多孔膜を製造するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマー及び少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む第1の溶液を提供することと、
(ii)少なくとも1つのジアミン化合物を含む第2の溶液を提供することと、
(iii)前記第1の溶液と前記第2の溶液を接触させ、それによって、少なくとも1つの第1のポリマーと、前記少なくとも1つのエポキシ官能性化合物と前記少なくとも1つのジアミン化合物との架橋反応生成物と、を含む、改質微多孔膜を得ることと、を含み、
前記改質微多孔膜は中空繊維膜であり、
前記第1の溶液はドープ溶液であり、前記第2の溶液はボア溶液であり、前記第1の溶液と前記第2の溶液の接触は、紡糸口金内で起こる、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、少なくとも1つのエポキシ部分と、少なくとも1つの脂肪族又は芳香族アルコキシ官能基とを含む構成ブロックを含むコポリマーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエポキシ部分を含む構成ブロックが、脂肪族又は芳香族グリシジルエーテルから選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コポリマーが、脂肪族、環状若しくは芳香族エステル、脂肪族、環状若しくは芳香族アミド、脂肪族、環状若しくは芳香族エーテル、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホン、脂肪族、環状若しくは芳香族スルフィド、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホンアミドから選択される部分、及び/又は金属キレート剤を含む構成ブロックを更に含む、請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、
【化1】
(式中、x、y及びzは、均等に分布している)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
x+y+z=100である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのジアミン化合物が、ポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリアミドアミン、並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1のポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及び/又はポリスルホンから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1のポリマーが、ポリスルホン、好ましくはポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、又はポリアリールエーテルスルホンから選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の溶液が、少なくとも1つの第2のポリマー、好ましくは親水性ポリマー又はコポリマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1のポリマーがポリスルホンから選択され、前記少なくとも1つの第2のポリマーがポリビニルピロリドンから選択される、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の溶液が、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、改質膜。
【請求項14】
好ましくは水又は水性媒体の、精密濾過、ナノ濾過、又は限外濾過のための、請求項13に記載の膜の使用。
【請求項15】
前記使用が、ウイルス濾過を含む、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改質微多孔膜を製造するためのプロセスに関する。更に、本開示は、このようなプロセスによって得られる膜に関する。本開示は更に、液体媒体の濾過及び精製のためのこのような膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー膜は、精密濾過のために、非常に広い範囲の異なる工業用途、薬学的用途、又は医療用途で使用される。これらの用途では、膜分離プロセスの重要性が増しており、それは、これらのプロセスには、分離される物質が熱的に負担がかからず、又は更には損傷されないという利点があるためである。限外濾過膜を、巨大分子の除去又は分離に使用することができる。更に多くの膜分離法の用途が、飲料工業で、バイオテクノロジーで、水処理又は下水技術で公知である。このような膜は、全般的に、その保持容量に従って、すなわち、特定のサイズの粒子若しくは分子を保持する容量に応じて、又は有効細孔のサイズ、すなわち分離挙動を決定する細孔のサイズに関して分類される。限外濾過膜は、それにより、およそ0.01~約0.1μmの分離挙動を決定する細孔のサイズ範囲をカバーすることから、20000より大きい、又は約200000ダルトンより大きいサイズ範囲の粒子又は分子を保持することができる。
【0003】
多くの場合、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンなどのスルホンポリマーから作製された膜は、特に、これらの材料から作製された膜の、酸若しくはアルカリの不存在に対しての高い化学的安定性、温度安定性又は滅菌性のために、限外濾過セクタにおける用途に使用される。
【0004】
米国特許第5,928,774号は、平坦フィルムの形態のスルホンポリマーから作製された非対称限外濾過膜を開示している。米国特許第5,928,774号の膜は、顕著な非対称性を呈し、それらの一方の表面には、皮膜の形態の分離層と、これに隣接した支持層とを有しており、その細孔構造は、フィンガーポア又はマクロボイドとしても知られている空洞を有しておらず、その細孔は、皮膜から第2の表面に向かって徐々に大きくなっていく。それらの顕著な非対称性によって、米国特許第5,928,774号の膜は、その用途において高い膜内外流及び高い汚染負荷能力に向けて最適化される。ポリエーテルスルホンから作製された顕著な非対称性を有する類似の平坦な膜が、米国特許第5,886,059号に更に記載されている。
【0005】
上記の公報に記載されている半透膜は疎水性スルホンポリマーから作製されるため、膜は劣った水湿潤性を有しており、そのため、水性媒体の濾過のためのそれらの使用は極めて限定されている。更に、疎水性膜は、例えばタンパク質を吸着するための強力で非特異的な能力を有することから、濾過される液体からの主に高分子成分による膜表面の急速な被覆が使用中に頻繁に発生し、その結果透過性の低下をもたらすことが知られている。この現象は、一般に「膜汚染」と呼ばれる。水湿潤性を向上させ、ひいては水性媒体への透過性を改善するために、またタンパク質の膜表面への付着を防止するために、スルホンポリマー系膜を親水性にし、同時にタンパク質を吸着する傾向を低減する様々な試みがなされてきた。これらのアプローチの1つによると、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーは、製造プロセスにおいてスルホンポリマーに混合される。
【0006】
欧州特許第568045号は、親水性特性を確保するために、ポリグリコール及びビニルピロリドン系ポリマーを含有する非対称構造を有する親水性ポリスルホン系中空繊維膜に関する。内腔に面する側では、欧州特許第568045号における中空繊維膜は、0.1~3μm厚の分離層を有し、この分離層は、内側表面にスロット状の0.001~0.05の幅の細孔を有する。この分離層は、網状又はスポンジ様構造及び平均サイズが1~5μmの細孔を有する支持層によって接合される。外側表面は、支持層よりも高密度である網状又はスポンジ様構造を有する層である。
【0007】
欧州特許第568045号における膜の分離部は、限外濾過範囲に割り当てられ得るが、膜は、血液処理のために最適化される。欧州特許第568045号に記載されている実施例では中空繊維膜に関して、最大約0.7ml/cm・分・barの水の透過性が記載されている。しかしながら、これらの膜は、壁厚が40μmであるため、比較的薄壁であり、したがって、その圧力及び破壊安定性が不十分であるため限外濾過用途には適していない。
【0008】
疎水性が向上した改質膜をもたらし、理想的には、濾過又はフラックス/保持特性のいずれの劣化も伴わずに、抽出物の量が減少した、ポリマー膜、特にPES膜を製造するためのプロセスが当該技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、改質微多孔膜を製造するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマー及び少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む第1の溶液を提供することと、
(ii)少なくとも1つのジアミン化合物を含む第2の溶液を提供することと、
(iii)第1の溶液と第2の溶液を接触させ、それによって、少なくとも1つの第1のポリマーと、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物と少なくとも1つのジアミン化合物との架橋反応生成物と、を含む、改質微多孔膜を得ることと、を含み、
改質微多孔膜は中空繊維膜であり、
第1の溶液はドープ溶液であり、第2の溶液はボア溶液であり、第1の溶液と第2の溶液の接触は、紡糸口金内で起こる、プロセスを提供する。
【0010】
本開示は、本明細書に記載されるプロセスから得られる膜を更に提供する。
【0011】
更に、本開示は、水性媒体の濾過、特にウイルス濾過における用途における、本明細書に記載される膜の特定の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のいずれかの実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実行することが可能である。本明細書で使用するとき、用語「a」、「an」及び「the」は、互換可能なものとして使用され、1つ以上を意味し、「及び/又は」は、一方又は両方の記述された事例が起こる場合があることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。更に本明細書では、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。更に本明細書では、「少なくとも1つ」の記載は、1以上の全ての数を含む(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであり、限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。限定的であることが意図される「からなる(consisting)」の使用とは異なり、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びそれらの変化形の使用は、限定的でないものと意図され、これらの後に列記される項目並びに追加項目を包含することを意図するものである。
【0013】
組成物の成分の量は、別途明記しない限り、重量%(又は「%wt」若しくは「wt-%」)によって示され得る。全成分の量は、別途明記しない限り、100重量%となる。成分の量がモル%によって特定される場合、全成分の量は、別途明記しない限り、100モル%となる。
【0014】
本明細書に記載されるパラメータは、実験の項において詳細に記載されるように決定され得る。
【0015】
明示的に示されない限り、全ての好ましい範囲及び実施形態は、自由に組み合わされてもよい。
【0016】
本開示は、改質微多孔膜を製造するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマー及び少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む第1の溶液を提供することと、
(ii)少なくとも1つのジアミン化合物を含む第2の溶液を提供することと、
(iii)第1の溶液と第2の溶液を接触させ、それによって、少なくとも1つの第1のポリマーと、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物と少なくとも1つのジアミン化合物との架橋反応生成物と、を含む、改質微多孔膜を得ることと、を含み、
改質微多孔膜は中空繊維膜であり、
第1の溶液はドープ溶液であり、第2の溶液はボア溶液であり、第1の溶液と第2の溶液の接触は、紡糸口金内で起こる、プロセスを提供する。
【0017】
このプロセスは、改質膜、特に中空繊維膜を製造するための便利で効率的で確実な方法を提供し、これにより、架橋エポキシ化合物により改質された微多孔膜が得られる。ジアミン架橋エポキシ化合物のこの制御された組み込みは、未改質膜と比較して疎水性が向上した膜を提供する効果を有し、これにより抽出物が減少し、同時にまた、良好なフラックス、濾過及び保持特性を呈する。本明細書に記載されるプロセスによって得られる膜の疎水性のこの向上及び改善は、膜の湿潤性の改善、「汚染」挙動の低減、並びに濾過及び/又は保持特性の改善という利点を有し得る。
【0018】
エポキシ官能性化合物は、概して、架橋に好適な少なくとも1つのエポキシ部分を有する炭化水素系化合物である。より具体的には、エポキシ官能性化合物は、少なくとも1つのエポキシ部分を含む構成ブロックを含むオリゴマー、ポリマー又はコポリマーである。好ましくは、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物は、少なくとも1つのエポキシ部分と、少なくとも1つの脂肪族又は芳香族官能基とを含む構成ブロックを含むコポリマーである。この点で、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が脂肪族主鎖を示すことが好ましい。すなわち、様々な構成ブロック間のコア炭素-炭素結合は、脂肪族の性質であることが好ましい。更に、少なくとも1つのエポキシ部分を含む構成ブロックは、脂肪族又は芳香族エーテル又はエステルから選択されることが好ましい。好ましくは、コポリマーは、脂肪族、環状若しくは芳香族エステル、脂肪族、環状若しくは芳香族アミド、脂肪族、環状若しくは芳香族エーテル、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホン、脂肪族、環状若しくは芳香族スルフィド、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホンアミドから選択される部分を含む構成ブロック、及び/又は金属キレート剤を更に含む。これは、選択された官能基が、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物中に選択的に組み込まれ得るという利点を有する。これは、膜特性が故意に、かつ意図的に改質され得ることを意味する。例えば、疎水性又は親水性を向上させることができ、電荷を(例えば、カチオン又はアニオンを介して)導入することができ、タンパク質注入部位、キレート剤、又は更には医学的活性剤を膜内に導入し、ひいては組み込むことができる。これは、工業、又は特に医薬若しくは医療セクタにおける多くの用途に有利であり得る。本明細書に記載のエポキシ官能性化合物のコポリマーは、環状アミド、環状若しくは脂肪族エステル、及び/又は脂肪族若しくは環状シランを含む構成ブロックから選択される構成ブロックを更に含むことが更に好ましい。好ましくは、更なる構成ブロックは、ピロリドン、カプロラクタム、アセテート、及び/又はホルメートから選択される。
【0019】
少なくとも1つのエポキシ官能性化合物は、式(I)を有することが好ましい
【化1】
(式中、x、y及びzは、均等に分布している)。好ましくは、x+y+zは合計すると、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、より好ましくは少なくとも70である。この点に関して、x+y+zは合計すると、140以下、好ましくは130以下、より好ましくは120以下であることが更に好ましい。好ましくは、x+y+zの合計は、50~140、好ましくは60~130、より好ましくは70~120の範囲の数である。式(I)の、これらの範囲内にx、y、及びzを有するエポキシ官能性化合物は、本明細書に記載されるプロセスにおいて容易かつ確実に架橋され、これらの架橋化合物を含まない膜と比較して、疎水性が増し、抽出物が減少した膜を生じさせることが見出された。本開示によるプロセスで使用される第1の溶液は、第1の溶液の総重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲、好ましくは0.5~10重量%の範囲、より好ましくは1~7重量%の範囲の量の少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む。
【0020】
全般的に、エポキシ官能性化合物を架橋するための当業者に既知の任意のジアミンを、少なくとも1つのジアミン化合物として本開示の範囲で使用することができる。本開示によるプロセスで得られた膜において確実で最適な架橋結果を得るために、少なくとも1つのジアミン化合物は、ポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリアミドアミド、並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物から選択されることが好ましい。例えば、本開示によるプロセスでの使用に好適なジアミン化合物は、Huntsman Corp.から「Jeffamine」、例えば「Jeffamine ED-2003」の商品名で市販されているポリエーテルアミンである。本開示によるプロセスで使用される第2の溶液は、第2の溶液の総重量に基づいて、1~20重量%の範囲、好ましくは2~15重量%、より好ましくは3~10重量%の範囲の量の少なくとも1つのジアミンを含む。
【0021】
本開示によるプロセスでは、膜は、均質な第1の溶液(すなわち、ドープ溶液)及び第2の均質溶液(すなわち、ボア溶液)を、紡糸口金を通して紡糸することによって、膜が紡糸処理されている。第1の溶液は、溶媒系において少なくとも1つの第1のポリマーと、少なくとも1つの第1のエポキシ官能性化合物とを含む。本明細書に記載されるプロセスで使用される少なくとも1つの第1のポリマーに関して、基本的に、微多孔膜を製造するための当該技術分野において既知の任意のポリマーが使用され得る。好ましくは、少なくとも1つの第1のポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及び/又はポリスルホンから選択される。これらのポリマーにより、安定した微多孔膜が生成され、これは、膜の工業的製造に、並びに工業及び/又は医薬若しくは医療用途における膜自体の多くの用途に必要な良好な濾過特性、良好なフラックス、並びに良好な機械的特性を呈する。本明細書に記載されるプロセスにおいて、少なくとも1つの第1のポリマーは、ポリスルホン、好ましくはポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、又はポリアリールエーテルスルホンから選択されることが好ましい。特に、疎水性芳香族スルホンポリマーが好ましい。
【0022】
本発明による方法で使用される有利な疎水性芳香族スルホンポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、又はポリアリールエーテルスルホンである。好ましくは、疎水性芳香族スルホンポリマーは、以下の式(II)及び(III)で示される繰り返し分子単位を有するポリスルホン又はポリエーテルスルホンである。
【化2】
【化3】
【0023】
少なくとも1つのポリスルホンポリマーなどの少なくとも1つのポリマーは、膜の特性を選択的に改質するために、酸化防止剤、核形成剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有することができる。本開示によれば、第1の溶液中の少なくとも1つの第1のポリマーの濃度は、第1の溶液の総重量に基づいて、10~40重量%、好ましくは12~35重量%、より好ましくは15~30重量%の範囲である。10重量%の濃度を下回ると、特に得られる中空繊維膜の機械的安定性に関して不利な点が生じる場合がある。一方、第1のポリマーが40重量%を超える紡糸溶液から得られた膜は、過度に密な構造及び不十分な透過性を呈し得る。
【0024】
この点に関して、第1の溶液は、少なくとも1つの第2のポリマーを更に含むことが好ましい。この少なくとも1つの第2のポリマーは、好ましくは、本明細書に記載されるプロセスで使用される第1の溶液中の少なくとも1つの第1のポリマーとして使用される疎水性芳香族スルホンと組み合わせて有利に使用される親水性ポリマー又はコポリマーである。長鎖ポリマーは、有利には、少なくとも1つの第2のポリマーとして使用され、すなわち、一方では疎水性芳香族スルホンポリマーとの相溶性を示し、それ自体が親水性である繰り返しポリマー単位を有する、少なくとも1つの親水性ポリマーとして使用される。10000ダルトン超、好ましくは20000ダルトン超、より好ましくは30000ダルトン超の平均分子量Mを有する親水性ポリマーが好ましくは使用される。親水性ポリマーは、好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリソルベート、カルボキシメチルセルロース、又はこれらのポリマーの改質物若しくはコポリマー、並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物である。ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールが特に好ましい。本開示の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1のポリマーは本明細書に記載のポリスルホンから選択され、少なくとも1つの第2のポリマーはポリビニルピロリドンから選択される。
【0025】
本開示の文脈において、少なくとも1つの親水性ポリマーは、異なる親水性ポリマーの混合物を更に含むことができる。親水性ポリマーは、例えば、化学的に異なる親水性ポリマー又は異なる分子量を有する親水性ポリマーの混合物、例えば、分子量が5倍以上異なるポリマーの混合物であり得る。好ましくは、少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールと親水性改質芳香族スルホンポリマーとの混合物を含む。親水性改質芳香族スルホンポリマーは、スルホン化芳香族スルホンポリマー、特に、本開示による膜及び方法で使用される疎水性芳香族スルホンポリマーのスルホン化改質物であることも好ましい。ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、及びポリビニルピロリドンの混合物が特に有利に使用され得る。親水性改質芳香族スルホンポリマーが存在する結果、用途における特に安定した親水性特性を有する中空繊維膜が得られる。好ましくは、第1の溶液は、第1の溶液の総重量に基づいて、2~25重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは7.5重量%~15重量%の範囲の量の少なくとも1つの第2のポリマーを含有する。
【0026】
第1の溶液は、存在する場合、少なくとも1つの第1のポリマーと少なくとも1つの第2のポリマーとに適合する少なくとも1つの溶媒又は溶媒系を含む。例えば、使用される溶媒系は、使用される疎水性芳香族スルホンポリマー及び少なくとも1つの親水性ポリマーと適合する必要があり、これにより、均質な紡糸溶液を製造することができる。溶媒系は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はこれらの混合物などの極性非プロトン性溶媒、又はε-カプロラクタムなどのプロトン性溶媒を含む。更に、溶媒系は、最大80重量%の潜在性溶媒を含有することができ、ここで、本発明の文脈において、潜在性溶媒は、スルホンポリマーの溶解が不十分であるか、又は高温でのみ溶解させる溶媒として理解される。ε-カプロラクタムが溶媒として使用される場合、例えば、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート又はポリアルキレングリコールを使用することができる。加えて、溶媒系は、水、グリセリン、1000ダルトン未満の平均分子量を有する低分子ポリエチレングリコール、又はエタノール若しくはイソプロパノールなどの低分子アルコールなどの膜形成ポリマーのための貧溶媒(non-solvent)を含有することができる。本開示による溶媒系の好ましい例では、第1の溶液における溶媒系は、N-メチルピロリドン及び水を含む。好ましくは、第1の溶液は、40~80重量%、好ましくは50~75重量%、より好ましくは55~70重量%の範囲の量のN-メチルピロリドンを含む。
【0027】
好ましくは脱気及び濾過して未溶解粒子を除去した後、均質な第1の溶液を、従来の中空繊維ダイ(すなわち紡糸口金)の環状間隙を通して押し出し、中空繊維を製造する。第2の溶液(又はボア溶液)、すなわち、少なくとも1つのジアミン化合物を含み、かつ疎水性芳香族スルホンポリマーの凝固媒体であってもよく、同時に中空繊維の内腔を安定させる内部フィラーは、中空繊維ダイ/紡糸口金内の環状間隙と同軸に配置された中央ノズル開口部を通って押し出される。本開示では、用語「中空繊維ダイ」及び「紡糸口金」は、互換的に使用されてもよい。第2の溶液は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びN-メチルピロリドン、並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物から選択される少なくとも1つの溶媒を含む。好ましくは、第2の溶液は、水、グリセリン、1000ダルトン未満の平均分子量を有する低分子ポリエチレングリコール、又はエタノール若しくはイソプロパノールなどの低分子アルコール、及び/又はカプロラクタムなどのプロトン性溶媒などの膜形成ポリマーのための非溶媒を更に含む。例えば、第2の溶液は、水及びグリセロールを含んでもよいが、追加の成分及び/又は溶媒を含んでもよい。
【0028】
環状間隙の幅及び中央ノズル開口部の内径は、当該技術分野において既知であるように、中空繊維膜の所望の特性に従って選択することができる。すなわち、紡糸口金は、1100~3000μmの範囲のドープ用の紡糸口金針外径、600~2000μmの範囲の紡糸口金針外径、及び400~1500μmの範囲の紡糸口金針内径を示し得る。
【0029】
中空繊維ダイ(すなわち紡糸口金)を離れた後、凝固媒体に入る前に、中空繊維が、規定された環境条件を有する環境制御ゾーンを通過することが好ましい。したがって、環境制御ゾーンは、例えば、封入されたチャンバの形態をとることができる。技術的理由のために、中空繊維ダイと環境制御ゾーンとの間に空気間隙が存在する必要がある場合がある。しかしながら、この間隙は、有利には可能な限り小さいものである必要があり、環境制御ゾーンは、好ましくは、中空繊維ダイに直接続く必要がある。
【0030】
この点に関して、中空繊維は、0.5~10秒の環境制御ゾーン内の保持時間を有し、環境制御ゾーンには、相対湿度40~95%、温度50~70℃の空気が入っている。環境制御ゾーンに入っている空気は、好ましくは、55~85%の相対湿度を有する。環境制御ゾーン内での中空繊維の保持時間は1~7秒であることも好ましい。環境制御ゾーン内の安定した条件を確立するために、空気は、好ましくは、0.5m/秒未満の速度で、特に好ましくは0.15~0.35m/秒の範囲の速度で、環境制御ゾーンを通って流れる。
【0031】
中空繊維が、本開示による方法において好ましい環境条件に設定された環境制御ゾーンを通るように向けられると、中空繊維の事前凝固は、非溶媒として作用する空気中の水分の、中空繊維の外側での吸収によって誘発される。
【0032】
環境制御ゾーンを通過した後、事前凝固された中空繊維は、膜構造の形成を完了させ、膜構造を固定するために、好ましくは50~80℃に調整された水性凝固媒体を通るように向けられ得る。凝固媒体は、好ましくは、60~75℃の範囲の温度に調整される。好ましくは、凝固媒体は、水又は水浴である。
【0033】
凝固媒体において、膜構造は、十分な安定性を既に有し、例えば、偏向ローラ又は凝固媒体中の同様の手段に対して迂回され得る範囲で、まず析出される。プロセスの更なる過程中に、凝固が完了し、膜構造が安定する。溶媒系及び可溶性物質の抽出は、ここで同時に行われる。全般的に、親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンの大部分は、膜構造から抽出され、その結果、凝固浴は洗浄又は抽出浴として同時に機能する。水は、好ましくは、これらの凝固浴又は洗浄浴内の凝固又は洗浄媒体として使用される。
【0034】
抽出後、このようにして得られた中空繊維膜を乾燥させることができ、次いで乾燥した膜を巻く。膜の抽出及び乾燥中、表面多孔性及び分離特性などの特定の膜特性を選択的に設定するために、わずかなドローイング(drawing)が有利であり得る。次いで、本開示による中空繊維膜は、束内の中空繊維膜の交換特性を改善するために、(必要に応じて)テクスチャ加工されてもよい。最後に、中空繊維膜は、従来の方法を使用して処理することができ、例えば、コイル上に巻かれるか、又は好適な繊維数及び長さを有する束に直接形成することができる。束の製造前に、例えば、マルチフィラメント糸の形態の補助糸を、中空繊維膜の互いに対する間隔及び束内の個々の中空繊維膜の周りのより良好な流れを確保するために、中空繊維膜に追加することができる。
【0035】
本明細書に記載される方法により、本明細書に記載される有利な構造及び特性を有する本開示による膜が得られる。
【0036】
本明細書に記載される方法から得られる、本明細書に記載される中空繊維膜の特性の独自の組み合わせにより、本開示は、更に、精密濾過、ナノ濾過、又は限外濾過のための、本明細書に記載の膜の使用を更に提供する。「精密濾過」、「ナノ濾過」、及び「限外濾過」は、当該技術分野において一般的な意味を有する。好ましくは、本明細書に記載される使用は、水濾過又は水性媒体の濾過を行う。この点に関して、本開示による使用は、医薬産業、生物医薬産業、医療用途、住宅用水の処理、並びに食品及び飲料濾過を含む。
【0037】
本開示は、以下の例示的かつ好ましい項目によって更に例示することができる。
【0038】
項目1:改質微多孔膜を製造するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマー及び少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む第1の溶液を提供することと、
(ii)少なくとも1つのジアミン化合物を含む第2の溶液を提供することと、
(iii)第1の溶液と第2の溶液を接触させ、それによって、少なくとも1つの第1のポリマーと、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物と少なくとも1つのジアミン化合物との架橋反応生成物と、を含む、改質微多孔膜を得ることと、を含み、
改質微多孔膜は中空繊維膜であり、
第1の溶液はドープ溶液であり、第2の溶液はボア溶液であり、第1の溶液と第2の溶液の接触は、紡糸口金内で起こる、プロセス。
【0039】
項目2:少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、少なくとも1つのエポキシ部分と、少なくとも1つの脂肪族又は芳香族アルコキシ官能基とを含む構成ブロックを含むコポリマーである、項目1に記載のプロセス。
【0040】
項目3:少なくとも1つのエポキシ部分を含む構成ブロックが、脂肪族又は芳香族グリシジルエーテルから選択される、項目2に記載のプロセス。
【0041】
項目4:コポリマーが、脂肪族、環状若しくは芳香族エステル、脂肪族、環状若しくは芳香族アミド、脂肪族、環状若しくは芳香族エーテル、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホン、脂肪族、環状若しくは芳香族スルフィド、脂肪族、環状若しくは芳香族スルホンアミドから選択される部分を含む構成ブロック、及び/又は金属キレート剤を更に含む、項目2又は項目3に記載のプロセス。
【0042】
項目5:更なる構成ブロックが、環状アミド、環状若しくは脂肪族エステル、及び/又は脂肪族若しくは環状シランを含む構成ブロックから選択される、項目4に記載のプロセス。
【0043】
項目6:更なる構成ブロックが、ピロリドン、カプロラクタム、アセテート、及び/又はホルメートを含む構成ブロックから選択される、項目4又は5に記載のプロセス。
【0044】
項目7:少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、式(I)
【化4】
(式中、x、y及びzは、均等に分布している)を有する、項目1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【0045】
項目8:x+y+z=100である、項目7に記載のプロセス。
【0046】
項目9:少なくとも1つのジアミン化合物が、ポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリアミドアミン並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物から選択される、項目1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【0047】
項目10:少なくとも1つの第1のポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及び/又はポリスルホンから選択される、項目1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【0048】
項目11:少なくとも1つの第1のポリマーが、ポリスルホン、好ましくはポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、又はポリアリールエーテルスルホンから選択される、項目10に記載のプロセス。
【0049】
項目12:第1の溶液が、少なくとも1つの第2のポリマーを含む、項目1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【0050】
項目13:少なくとも1つの第2ポリマーが親水性ポリマー又はコポリマーである、項目12に記載のプロセス。
【0051】
項目14:少なくとも1つの第1のポリマーがポリスルホンから選択され、少なくとも1つの第2のポリマーがポリビニルピロリドンから選択される、項目11又は項目12に記載のプロセス。
【0052】
項目15:第1の溶液が、少なくとも1つの溶媒を含む、項目1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【0053】
項目16:少なくとも1つの溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びN-メチルピロリドン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される、項目15に記載のプロセス。
【0054】
項目17:第1の溶媒が、好ましくは、ε-カプロラクタム、水、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート及びポリアルキレングリコール、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される、少なくとも1つのプロトン性溶媒を更に含む、項目15又は項目16に記載のプロセス。
【0055】
項目18:第1の溶液が、水及び/又はN-メチルピロリドンを含む、項目17に記載のプロセス。
【0056】
項目19:第2の溶液が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びN-メチルピロリドン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、項目1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【0057】
項目20:第2の溶液が、好ましくは、ε-カプロラクタム、水、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート及びポリアルキレングリコール、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される、少なくとも1つのプロトン性溶媒を更に含む、項目19に記載のプロセス。
【0058】
項目21:第2の液体が、水及び/又はN-メチルピロリドンを含む、項目19又は項目20に記載のプロセス。
【0059】
項目22:項目1~21のいずれか一項に記載のプロセスで得られる、改質膜。
【0060】
項目23:精密濾過、ナノ濾過、又は限外濾過のための、項目22に記載の膜の使用。
【0061】
項目24:使用が、水濾過又は水性媒体の濾過を含む、項目23に記載の使用。
【0062】
項目25:使用が、医薬産業、生物医薬産業、医療用途、住宅用水の処理、並びに食品及び飲料濾過を含む、項目23又は項目25に記載の使用。
【0063】
項目26:使用が、ウイルス濾過を含む、項目23~25のいずれか一項に記載の使用。
【実施例
【0064】
本開示を更に説明するが、本開示をこれらに限定することを望むものではない。以下の実施例は、特定の実施形態を説明するために提示するが、いかなる方法によっても限定することを意図するものではない。その前に、材料及びこれらの特性を特徴付けるために使用されるいくつかの試験方法を説明する。全ての部及び百分率は、別段の指示のない限り、重量に基づく。
【0065】
試験方法
膜の窒素含有量の測定
膜の窒素含有量は、対応する装置におけるKjehldahl手順に従って測定される。約1gの乾燥した膜試料を、0.1mg単位でガラスバイアル瓶に慎重に秤量する。この試料に、Spezial-Kjeltab Cu/3.5錠剤及び16mLの濃スルホン酸を慎重に添加する。三重測定を行う。ブランク値測定のために、Spezial-Kjeltab Cu/3,5錠剤及び16mLの濃スルホン酸のみを含有する3つの試料を調製する。バイアル瓶をKjehldahl装置の対応するホルダに入れ、400℃で、真空下で手順を行う。この手順は、透明な青色溶液がガラスバイアル瓶内に形成されたときに終了したと見なされる。次いで、バイアル瓶内のNH含有量は、HClによる滴定によって測定され、対応する窒素含有量が計算される。
【0066】
UV分光法による残留抽出物の測定
約1.5gの膜試料を、三角フラスコに0.1mg単位で秤量する。予備煮沸し、室温まで冷却した150mLの超純水を添加した。次いで、閉じたフラスコを70℃の温度で1時間振盪し、その後室温まで冷却する。次に、溶離液を、10nmの間隔で350nm~250nmの範囲の波長のUV分光法に供する。測定値として、当該波長領域における最も高い吸光度が採用される。
【0067】
実施例1:改質中空繊維膜
表1に記載の組成を有するドープ溶液を準備した。表1で使用されるVP/VA/GMAコポリマーは、以下の一般式1を有するAshlandから入手したコポリマーであり、式中、x、y及びzはランダムに分布し、x+y+z=100である。
【化5】
【0068】
表1に記載の組成に従ってジアミン(Jeffamine ED-2003)を含むボア液を使用して、50℃の温度及び40m/分の紡糸速度で紡糸口金を通して中空繊維膜の紡糸処理を行った。紡糸は、凝固浴温度が65℃で40m/分で行った。ボア液の温度は、35℃であった。ボア液とポリマードープとの間の界面における2つの成分間の反応の滞留時間は38秒と推定した。紡糸口金温度は50℃であった。上記式1によるエポキシ官能性化合物(すなわち、ジアミン)に対する対応物を、ボア液(NMP/水混合物中5%)に添加した。エポキシド(VP/VA/GMA)とジアミン(Jeffamine ED-2003)との間の架橋は、ドープ溶液とボア液が接触したとき、紡糸口金の出口の直後で開始した。
【0069】
得られた全ての膜の壁厚は約49μmであり、内腔は300~370μmであった。
【表1】
【0070】
比較例1
比較例として、実施例1を、ドープ溶液中のVP/VA/GMA及びボア溶液中のジアミンを含まない組成物を使用して繰り返した。
【0071】
実施例1及び比較例1による膜の窒素含有量を測定した。次いでまた、実施例1及び比較例1の膜を、ソックスレー装置で7日間処理し、この抽出手順後に窒素含有量を測定した。結果を、表2にまとめる。
【表2】
【0072】
実施例1による膜の窒素含有量は、比較例1の対応する値よりもはるかに高いことが明らかであり、これは、窒素が膜に組み込まれていることを示すものである。これは、膜構造におけるVP/VA/GMA単位中のエポキシ官能基とジアミンとの架橋の証拠である。
【0073】
同様に、これらの膜の残留抽出物をUV分光法により測定した。結果を、表3にまとめる。
【表3】
【0074】
表3は、通常のPVPよりも少ないVP/VA/GMAが、膜から洗い流されることを示す。これは、架橋されたVP/VA/GMA及び安定した親水性の、抽出物が少ない膜についての明確な指標である。
【0075】
最後に、実施例に1による膜は、比較例1による膜によって得られた、15nmの金粒子の57%の保持率と比較して、15nmの金粒子の100%の保持率をもたらした。
【国際調査報告】