(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ポータブル吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 11/08 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61M11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576808
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 IB2020054958
(87)【国際公開番号】W WO2021001704
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520102901
【氏名又は名称】マーキシン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステュアート,アダム
(57)【要約】
回転作動機構を有し、従動子部材(104)、回転装薬装置(106)、及びボタン(112)を含むポータブル吸入器を開示する。回転装薬装置は、ケージ部材(110)に係合されているカム部材(108)を含み、それらの間に所定の制限された回転相対運動が許容されている。ボタンは、中央位置と延長位置との間で平行移動可能であり、回転作動機構がその初期位置へ回転移動し、ボタンをその延長位置へ移動させると、カム部材と係合することができ、また、ボタンが中央位置へ平行移動することにより従動子部材を開放するにつれ、カム部材と係合することにより回転作動機構の作動位置への回転移動を有効にすることができる。
【選択図】
図5D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
準備位置と作動位置との間で順次かつ交互に可動な回転作動機構を有し、
前記回転作動機構が準備位置から次の作動位置に移行するときに投薬量を分配するために解放可能であり、且つ前記回転作動機構が作動位置から次の準備位置に移行するときに準備されることができる従動子部材、
カム部材およびケージ部材を含み、前記カム部材が前記ケージ部材により囲まれており、且つ前記ケージ部材と前記カム部材との間で所定の制限された相対回転運動を可能にするなど相互に干渉する機械的特徴によって前記カム部材が前記ケージ部材に係合している回転装薬装置、及び、
中央位置と延長位置の間で平行移動可能であり、前記回転作動機構がその準備位置に回転運動するときに前記カム部材に係合されることにより延長位置へ平行移動するものであり、且つ中央位置へ移動する際に前記カム部材と係合して前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることにより前記従動子部材を開放するボタンを含むことを特徴とするポータブル吸入器。
【請求項2】
前記カム部材が、放射状歯であるカム歯を有し、
前記放射状歯が、歯の前縁に第1カム歯表面を有し、歯の後縁に第2カム歯表面を有し、
前記ボタンが、前記ボタンをその延長位置へ平行移動させるために、前記カム部材の前記放射状カムの第1カム歯表面により、前記回転作動機構のその準備位置への回転運動に係合できる第1歯面を有する牽制歯を含み、
前記牽制歯が、前記放射状カムの第2カム歯面と係合して、前記ボタンがその中央位置に平行移動するときに前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることによって前記従動子部材を解放することができる第2歯面を有する請求項1に記載のポータブル吸入器。
【請求項3】
長手方向軸を有し、
前記従動子部材が、分配長手方向に解放可能であり、且つ計量長手方向に初期化されることができ、
前記回転作動機構が前記長手方向軸の周りに回転運動する請求項1または請求項2に記載のポータブル吸入器。
【請求項4】
前記従動子部材の動きが、前記回転作動機構の回転運動に対して固定されている請求項3に記載のポータブル吸入器。
【請求項5】
前記ボタンが前記長手方向軸を横切って平行移動することができる請求項3または請求項4に記載のポータブル吸入器。
【請求項6】
前記所定の制限された相対回転運動が2から30度の範囲にある請求項1~5のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項7】
前記所定の制限された相対回転運動が5から15度の範囲にある請求項6に記載のポータブル吸入器。
【請求項8】
前記回転作動機構の連続する作動位置間の前記回転装薬装置の前記回転運動が180度である請求項1~7のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項9】
前記ケージ部材が、前記カム部材の外向きの突起が緩くはまることにより相互に干渉する機械的特徴を提供する内向きの窪みを有する請求項1~8のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項10】
前記ケージ部材が上向きの窪みを有し、
前記ボタンの前記牽制歯が前記上向きの窪みに緩くはまることにより、前記牽制歯が前記上向きの窪みに移動することが可能になる一方で、前記窪みは前記長手方向軸の周りを回転する請求項1~9のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項11】
前記回転装薬装置および前記従動子部材のうちの少なくとも1つが、反対側の部材の対向するカム機構と係合するように構成された螺旋状カムを有することによって、前記回転装薬装置と前記従動子部材の相対的な回転により前記従動子部材の計量長手方向への平行移動がもたらされるように、前記回転装薬装置および前記従動子が相互螺旋状カム配置を有する請求項3~10のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項12】
前記カム部材および前記従動子部材が前記相互螺旋状カム配置を有する請求項11に記載のポータブル吸入器。
【請求項13】
前記カム部材が螺旋状カムを有する請求項12に記載のポータブル吸入器。
【請求項14】
前記対向するカム機構が、前記従動子部材から放射方向に延びるゼロピッチレッジである請求項11~13のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項15】
前記カム部材が、前記螺旋状カムに対するゼロピッチ延長部を有し、
前記従動子部材が、分配長手方向への前記従動子部材の動きを遮断するためのゼロピッチ対向カム機構を有し、
前記従動子部材の分配長手方向への前記ゼロピッチ延長部の端部を超える移動が許容される請求項13に記載のポータブル吸入器。
【請求項16】
前記従動子部材がバネによって前記分配長手方向へバイアスをかけられている請求項3~15のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項17】
前記回転作動機構が、前記ケージ部材にトルクが加えられることによってその準備位置からその作動位置に移動される請求項1~16のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項18】
低揮発性液体噴霧器である請求項1~17のいずれか一項に記載のポータブル吸入器。
【請求項19】
噴霧化のエネルギーが、蓄積された機械的力によって提供される請求項18に記載のポータブル吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に医療機器、特に薬物吸入器、より具体的には、薬物吸入器の装薬と作動メカニズムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬物吸入器は、肺や呼吸などに関連する疾患を治療するための薬物を送達するために長い間利用されてきた。薬剤吸入器は、毎分マイクロ/ミリリットルの流量内で、少量の液体(医薬化合物、薬剤など)を分配することができる。このような薬物吸入器の製造は、制御された正確な薬物送達など多くの重要なアプリケーションにおける堅牢な流体送達方法として特に興味深いものである。通常、実際に使用される薬剤吸入器は、計量された量の薬剤投与量が装薬され、狭い出口(ノズルなど)から放出されるように機能する。
【0003】
ほとんどの吸入器は、使用前に装薬され、次いで簡単な低力のボタンを押すことで作動するように設計されている。この低力操作により、デバイスの使用がはるかに簡単になり、吸入による投与量の調整を改善できる。このことは、投与量を供給するために必要な力が非常に大きい場合が多いため(通常は>40N)、ソフトミスト吸入器では特に重要である。そのような目的のために、採用されたメカニズムは、患者により容易に装薬できる必要があるが、また作動前にその装薬状態で頑丈で安定したままである必要もある。デバイスを作動させる力は、デバイスを作動させることが薬物送達に影響を与えないように十分に低くなければならず、ボタンの位置は快適であり、患者が容易にアクセスできる必要がある。ソフトミスト吸入器の場合、メカニズムは大きな力(~45N)を抑え、軽いトリガー力、理想的には5~15Nを持つ必要がある。
【0004】
いくつかの既存の推進剤を含まない薬物吸入器は、張力をかけられたバネから放出されるエネルギーを使用して、ミストの形で薬剤を送達する。例えば、そのような装置は、レッジから落下して張力をかける位置に達する点まで駆動されるカム表面を利用することができる。かかる張力位置では、作動ボタンが移動を妨げることにより、使用される機構がそれ以上移動するのを防ぐ。発射軸に垂直な方向にいったんボタンが押されると、メカニズムはデバイスを発射し続ける。ボタンを作動させるために必要な力は、バネの力、及びボタンリングとメカニズムカムとの間の摩擦に直接関係する。
【0005】
但し、このアプローチの1つの欠点は、一部の液体がノズルから排出され、ノズル出口に溜まる可能性があることである。かかる貯留は、張力ステップに続く作動のパフォーマンスに影響を与え得る。ノズルに少量の液体があると、液滴サイズのプロファイルが不規則になり、場合によっては噴霧煙が片側に引きずり出される。薬物吸入器のそのような不適切な機能は、不正確な薬物送達や、高いデバイス故障リスクなどにつながる可能性がある。
【0006】
従って、前述の議論に照らして、薬物吸入器の機能および設計に関連する前述の欠点を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、ポータブル吸入器を提供することを目的とする。本開示は、具体的には、ポータブル吸入器のための装薬および作動の機構を提供することを目的とする。本開示は、投薬量の装薬および分配の際における吸入器の頑健性の既存の問題に対する解決策を提供することを目的する。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服する解決策と、安全な装薬と作動のための機構を有する頑丈なポータブル吸入器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ポータブル吸入器を提供することを目的とする。本開示は、特に、ポータブル吸入器のための装薬および作動機構を提供することを目的とする。本開示は、投薬量の装填および分配中の吸入器の頑健性の既存の問題に対する解決策を提供することを目的とする。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服し、安全な装薬および作動機構を有する頑丈な携帯型吸入器を提供する解決策を提供することである。
【0009】
一態様では、本開示の一実施形態は、
準備位置と作動位置との間で順次かつ交互に可動な回転作動機構を有し、
前記回転作動機構が準備位置から次の作動位置に移行するときに投薬量を分配するために解放可能であり、且つ前記回転作動機構が作動位置から次の準備位置に移行するときに準備されることができる従動子部材、
カム部材およびケージ部材を含み、前記カム部材が前記ケージ部材により囲まれており、且つ前記ケージ部材と前記カム部材との間で所定の制限された相対回転運動を可能にするなど相互に干渉する機械的特徴によって前記カム部材が前記ケージ部材に係合している回転装薬装置、及び、
中央位置と延長位置の間で平行移動可能であり、前記回転作動機構がその準備位置に回転運動するときに前記カム部材に係合されることにより延長位置へ平行移動するものであり、且つ中央位置へ移動する際に前記カム部材と係合して前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることにより前記従動子部材を開放するボタンを含むことを特徴とするポータブル吸入器を提供する。
【0010】
任意選択で、前記カム部材は、放射状歯であるカム歯を有し、前記放射状歯が、歯の前縁に第1カム歯表面を有し、歯の後縁に第2カム歯表面を有する。
【0011】
更に、任意選択で、前記ボタンは、前記ボタンをその延長位置へ平行移動させるために、前記カム部材の前記放射状カムの第1カム歯表面により、前記回転作動機構のその準備位置への回転運動に係合できる第1歯面を有する牽制歯を含み、前記牽制歯が、前記放射状カムの第2カム歯面と係合して、前記ボタンがその中央位置に平行移動するときに前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることによって前記従動子部材を解放することができる第2歯面を有する。
【0012】
本開示の実施形態は、先行技術における前述の問題を実質的に排除するか、又は少なくとも部分的に対処し、薬物吸入器を介した正確で間違いの無い薬物の送達のための安全な装薬および作動機構を可能にする。
【0013】
任意選択で、ポータブル吸入器は長手方向軸を有し、前記従動子部材が、分配長手方向に解放可能であり、且つ計量長手方向に初期化されることができ、前記回転作動機構が前記長手方向軸の周りに回転運動する。
【0014】
任意選択で、前記従動子部材の動きは、前記回転作動機構の回転運動に対して固定されている。
【0015】
任意選択で、前記ボタンは前記長手方向軸を横切って平行移動することができる。
【0016】
任意選択で、前記所定の制限された相対回転運動は2から30度の範囲にある。
【0017】
任意選択で、前記回転作動機構の連続する作動位置間の前記回転装薬装置の前記回転運動は180度である。
【0018】
任意選択で、前記ケージ部材は、前記カム部材の外向きの突起が緩くはまることにより相互に干渉する機械的特徴を提供する内向きの窪みを有する。
【0019】
任意選択で、前記ケージ部材は上向きの窪みを有し、前記ボタンの前記牽制歯が前記上向きの窪みに緩くはまることにより、前記牽制歯が前記上向きの窪みに移動することが可能になる一方で、前記窪みは前記長手方向軸の周りを回転する。
【0020】
任意選択で、前記回転装薬装置および前記従動子部材のうちの少なくとも1つが、反対側の部材の対向するカム機構と係合するように構成された螺旋状カムを有することによって、前記回転装薬装置と前記従動子部材の相対的な回転により前記従動子部材の計量長手方向への平行移動がもたらされるように、前記回転装薬装置および前記従動子は相互螺旋状カム配置を有する。
【0021】
任意選択で、前記カム部材および前記従動子部材は前記相互螺旋状カム配置を有する。
【0022】
任意選択で、前記カム部材は螺旋状カムを有する。
【0023】
任意選択で、前記対向するカム機構は、前記従動子部材から放射方向に延びるゼロピッチレッジである。
【0024】
任意選択で、前記カム部材は、前記螺旋状カムに対するゼロピッチ延長部を有し、前記従動子部材が、分配長手方向への前記従動子部材の動きを遮断するためのゼロピッチ対向カム機構を有し、前記従動子部材の分配長手方向への前記ゼロピッチ延長部の端部を超える移動が許容される。
【0025】
任意選択で、前記従動子部材はバネによって前記分配長手方向へバイアスをかけられている。
【0026】
任意選択で、前記回転作動機構は、前記ケージ部材にトルクが加えられることによってその準備位置からその作動位置に移動される。
【0027】
任意選択で、ポータブル吸入器は低揮発性液体噴霧器である。
【0028】
任意選択で、噴霧化のエネルギーは、蓄積された機械的力によって提供される。
【0029】
本開示の追加の態様、利点、特徴、及び目的は、以下の添付の特許請求の範囲と併せて解釈される図面および例示的な実施形態の詳細な説明から明らかにされるであろう。
【0030】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
上記の発明の概要、並びに例示的な実施形態である以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構成が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法および手段に限定されない。また、当業者は、図面が原寸に比例していないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は同じ番号で示されている。
【0032】
本開示の実施形態は、ここで、例としてのみ、以下の図を参照して説明される。
【
図1A】
図1Aは、本開示の一実施形態による、回転作動機構の上部を明らかにするために水平に切断されたポータブル吸入器の斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の一実施形態による、回転作動機構の断面を明らかにするために垂直に切断されたポータブル吸入器の斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、カム部材の上側の一点から見たカム部材の斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、カム部材の下側の一点から片側に見たカム部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、ボタンの下側の一点から見たボタンの斜視図である。
【
図4】
図4は、従動子部材の上側の一点から見た従動子部材の斜視図である。
【
図5C】
図5Cは、装薬位置にある、水平に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【
図5D】
図5Dは、装薬位置にある、垂直に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【
図5E】
図5Eは、準備位置にある、水平に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【
図5F】
図5Fは、準備位置にある、垂直に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【
図5G】
図5Gは、分配位置にある、水平に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【
図5H】
図5Hは、分配位置にある、垂直に切断されたポータブル吸入器の拡大図である。
【0033】
添付の図面において、下線番号は、下線番号が配置されているアイテムまたは下線番号が隣接しているアイテムを表すために使用されている。下線のない番号は、下線のない番号をアイテムにリンクする線で識別されるアイテムに関連している。番号に下線がなく、関連する矢印が付いている場合、下線のない番号は、矢印が指している一般的なアイテムを識別するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態およびそれらを実施することができる方法を示している。本開示を実施するいくつかの様式が開示されているが、当業者は、本開示を実施または実行するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0035】
一態様では、本開示の一実施形態は、
準備位置と作動位置との間で順次かつ交互に可動な回転作動機構を有し、
前記回転作動機構が準備位置から次の作動位置に移行するときに投薬量を分配するために解放可能であり、且つ前記回転作動機構が作動位置から次の準備位置に移行するときに準備されることができる従動子部材、
カム部材およびケージ部材を含み、前記カム部材が前記ケージ部材により囲まれており、且つ前記ケージ部材と前記カム部材との間で所定の制限された相対回転運動を可能にするなど相互に干渉する機械的特徴によって前記カム部材が前記ケージ部材に係合している回転装薬装置、及び、
中央位置と延長位置の間で平行移動可能であり、前記回転作動機構がその準備位置に回転運動するときに前記カム部材に係合されることにより延長位置へ平行移動するものであり、且つ中央位置へ移動する際に前記カム部材と係合して前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることにより前記従動子部材を開放するボタンを含むポータブル吸入器を提供する。
【0036】
任意選択で、前記カム部材は、放射状歯であるカム歯を有し、前記放射状歯が、歯の前縁に第1カム歯表面を有し、歯の後縁に第2カム歯表面を有する。
【0037】
更に、任意選択で、前記ボタンは、前記ボタンをその延長位置へ平行移動させるために、前記カム部材の前記放射状カムの第1カム歯表面により、前記回転作動機構のその準備位置への回転運動に係合できる第1歯面を有する牽制歯を含み、前記牽制歯が、前記放射状カムの第2カム歯面と係合して、前記ボタンがその中央位置に平行移動するときに前記回転作動機構をその作動位置に回転運動させることによって前記従動子部材を解放することができる第2歯面を有する。
【0038】
本開示は、装薬および作動機構を有するポータブル吸入器を提供する。本開示の実施形態は、正確で間違いの無い薬物分配のための堅牢な吸入器を提供する。更に、前記作動機構は、5Nから15Nの範囲で、作動のための非常に低いトリガー力を可能にする。特に、前記作動メカニズムは、40Nを超える力で薬物を分配する。有益なことに、低いトリガー力は、ポータブル吸入器をユーザーフレンドリーにし、ポータブル吸入器の使用のためのより良い調整を可能にする。
【0039】
本開示を通して、「ポータブル吸入器」という用語は、エアロゾル薬物用量ディスペンサーに関し、これは、ユーザー(患者など)によって吸入されるスプレーの形態で所定量の薬物を送達するものである。更に、ポータブル吸入器は、少量の流体をより正確に分配するために使用されるマイクロ液体分配システムと呼ばれる。ポータブル吸入器は、少量の液体(通常はマイクロメートル量)を制御および操作することができる。通常、圧力は、ポータブル吸入器から狭い出口(ノズルなど)を通して流体を分配するために加えられる。更に、狭い出口により、流体をより高い圧力で送達することができる。また、ポータブル吸入器は円筒の形状を模しており、ユーザーの手のひらに容易に保持可能な長さを持っている。ポータブル吸入器は、吸入器の内部に取り外し可能に取り付けられ、使用されていないときに取り外すことができる容器(流体を含む)を含む。特に、計量された用量は前記容器から引き出され、ノズルを通して送達される。
【0040】
計量された用量は、マイクロポンプを使用して分配され得る。マイクロポンプは、典型的には、計量チャンバー、流体を計量チャンバーに送達するための毛細管、及び計量された流体を排出するためのピストンを含むポンプ本体を含む。マイクロポンプの部材を製造するために使用される材料には、金属、合金、非金属(半硬化ポリビニル材料、高分子材料、ガラスなど)、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、マイクロポンプの部材の少なくとも1つ、即ち、計量チャンバー、毛細管、及びピストンを含む本体は、一般にアセタールと呼ばれるポリオキシメチレンを使用して製造される。
【0041】
本開示を通して、「流体」という用語は、外力を受けたときに形状および/または体積が変形する物質を指す。流体は、通常、液体および/または用量(薬物投与量)である。そのような物質は、正確な量の正確な送達場所での送達のために、ポータブル吸入器によって少量で送達される必要があることが理解されよう。流体の例には、吸入エアロゾル薬物製剤、医薬化合物などが含まれるが、これらに限定されない。吸入製剤の一つの側面は、肺に浸透するのに十分小さい液滴サイズのスプレーを提供する必要があることである。ノズルを通して流体を強制することによってそのようなスプレーを製造するために、高圧、例えば10~59MPaで流体を強制することが必要である。
【0042】
ポータブル吸入器は、準備位置と作動位置との間で順次かつ交互に移動可能な回転作動機構を備えている。本明細書で使用される「回転作動機構」という用語は、その作動時に薬物ストロークを提供するための機械的部材の配置に関する。一例では、機械的部材は、円筒形要素、円形要素などを含み得る。回転作動機構は、準備位置と作動位置という2つの状態になる。回転作動機構が時計回りまたは反時計回りに回転するとき、準備位置および作動位置は交代の位置である。特に、準備位置と作動位置の両方が、同じ方向(時計回りまたは反時計回り)に順番に達成される。準備位置は、主に、用量が装薬されたときの回転作動機構の状態に関連し、回転作動機構の作動時に発射されることを意味する。一方、作動位置は、回転作動機構が作動され、主に用量が発射されるときの回転作動機構の状態に関連する。そのような位置に到達するために、回転作動機構の機械的部材は、互いに係合および解離して、回転作動機構に作動せしめることができる。更に、回転作動機構は、準備位置と作動位置とを順次交互に切り替えて、用量を首尾よく装薬および発射するように動作可能である。例えば、所定量の用量が、準備位置での回転作動機構の回転構成で装薬される。そのような場合、回転作動機構への更なる回転は、所定量の用量を発射し得る。様々な例において、準備位置は、回転作動機構の初期位置からの20度、30度、40度、90度、180度などの回転シフトを含み得る。また、作動位置は、準備位置からの更なる回転シフトである。例えば、作動位置は、回転作動機構の初期位置からの40度、60度、80度、180度、360度などの回転シフトを含み得る。
【0043】
回転作動機構は、回転作動機構が準備位置から次の作動位置に移動するときに用量を分配するために解放可能であり、回転作動機構が作動位置から次の準備位置に移動するときに準備されることができる従動子部材を含む。「従動子部材」という用語は、回転作動機構が準備位置と作動位置との間で回転するときに、往復移動または直線的に平行移動するように、その中に提供される中空円筒部材および/または管状構造に関する。更に、回転作動機構が準備位置から次の作動位置に移行すると、従動子部材が解放され、ノズルを介して用量が発射される。同様に、回転作動機構が作動位置から次の準備位置に移行すると、従動子部材が逆方向に移動し、用量がそこに装薬され、次の作動位置で解放される。加えて、準備位置と作動位置のシフトは順次であり、互いに交互に行われ、従動子部材の同時平行移動が提供される。
【0044】
任意選択で、ポータブル吸入器は長手方向軸を有し、従動子部材は、分配長手方向に解放可能であり、計量長手方向に準備され得、回転作動機構は、長手方向軸の周りで回転運動する。長手方向軸は、ポータブル吸入器の中心を通る仮想線であることが理解されるべきである。更に、従動子部材は、長手方向軸に沿って平行移動するように動作可能であり、用量を首尾よく装薬および分配する。従って、従動子部材は前方に往復運動して、ノズルに向かって分配長手方向に用量を放出する。同様に、従動子部材は後方に往復運動して、ノズルから離れて、計量の長手方向に初期化される。従動子部材は、回転作動機構の回転に応じて直線的に平行移動する。回転作動機構は、長手方向軸を中心に回転して、準備位置と作動位置との間で順次交互になり、用量を首尾よく装薬および送達する。
【0045】
任意選択で、従動子部材の動きは、回転作動機構の回転運動に関して決定される。ここで、従動子部材の動きは、ポータブル吸入器中で決定される。従動子部材の動きは、回転作動機構の回転に対して決定されるので、従動子部材は、長手方向軸に沿って直線的に往復運動するように動作可能である。
【0046】
回転作動機構は、回転装薬装置を含み、回転装薬装置は、カム部材およびケージ部材を含み、カム部材は、ケージ部材によって囲まれ、ケージ部材とカム部材との間における所定の制限された回転相対運動を可能にするなど相互に干渉する機械的特徴によってそれに係合する。カム部材は、放射状カムを有する。放射状カムは、歯の前縁に第1カム歯面を有し、歯の後縁に第2カム歯面を有する。ここで、ケージ部材は、上部バネケージ部材である。本明細書で使用される「カム部材」および「ケージ部材」という用語は、円筒形カムに関する。円筒形カムは、断面に厚さを有する中空円筒形状に似た機械的部材であることが理解されよう。カムはまた、その代わり円周の周りと曲面全体の両方で、山とそれに続く窪みを含む。更に、円筒形カムは、溝、歯、曲面(内部および/または外部)において隆起したねじ山などの機械的特徴を含む。特に、機械的特徴の係合は、カム部材とケージ部材との間の相対的な回転運動を可能にする。ケージ部材とカム部材との間の所定の制限された回転相対運動は、ケージ部材とカム部材との間の相対的運動の角度ギャップを指す。例えば、該角度ギャップは、2度、5度、10度などであり得る。そのような場合、ケージ部材の各回転(例えば180度)について、カム部材は、それらの間に提供される角度ギャップとして、それぞれ2度、5度、10度遅れることができる。例えば、ケージ部材とカム部材との間の所定の制限された回転相対運動に10度のギャップがある場合、カム部材は、ケージ部材の180度の回転に対して170度回転する。
【0047】
更に、カム部材は、ケージ部材と係合してそれらの間に相対回転を提供するための放射状カムを有する。本明細書で使用される「放射状カム」は、カム部材の曲面から突出する隆起した表面に関する。放射状カムは、歯の前縁に第1カム歯面を有し、歯の後縁に第2のカム歯面を有し、ケージ部材との係合および係合解除を成功させる。更に、歯の前縁の第1カム歯面は、最初はより狭い厚さを指す場合があり、これは、ケージ部材とカム部材との係合を開始することを意味する。一方、歯の後縁の第2カム歯面は、ケージ部材とカム部材との係合を維持するためにその中に提供され、最初から最後まで徐々に増加する、端部のより広い厚さを指す場合がある。
【0048】
任意選択で、所定の制限された相対回転運動は、2度から30度の範囲にある。一例では、所定の制限された相対回転運動は、5度から15度の範囲にある。本明細書で上述したように、ケージ部材とカム部材との間の相対回転のために提供されるギャップは、2度から30度まで変化し得る。各回転において、所定の制限された相対的な回転運動のために、ケージ部材とカム部材の回転との間に位相差があることが理解されよう。
【0049】
任意選択で、回転作動機構の連続する作動位置の間の回転装薬装置の回転運動は、180度である。一例では、準備位置は、回転作動機構の初期位置から180度の回転シフトにあり得、作動位置は、回転作動機構の初期位置から360度の回転シフトにあり得る。従って、準備位置と作動位置のそれぞれは、180度の回転で交代される。
【0050】
任意選択で、ケージ部材は、カム部材の外向きの突起が緩くはまり、相互に干渉する機械的特徴を提供する内向きの窪みを有する。該内向きの窪みは、カム部材の外向きの突起など、干渉または係合する外歯の頂部の係合を可能にする放射状カムの根部領域に関連する。本明細書で使用される「対面突起」は、長手方向に、及びポータブル吸入器のノズルに向かって係合および静止するカム部材の隆起した部材に関する。更に、相互に干渉する機械的特徴の係合は、カム部材の外向きの突起に内向きの窪みを緩くはめ込むための公差ギャップを備えている。有益なことに、公差ギャップはカム部材の摩耗や裂けを減らすことができ、また作動を容易にする。
【0051】
任意選択で、回転装薬装置および従動子部材は、相互螺旋状カム構成を有し、その結果、回転装薬装置および従動子部材の少なくとも1つは、回転装薬装置と従動子部材の相対回転により、反対の部材の対向するカム機構と係合して、計量長手方向への従動子部材の平行移動をもたらすように構成された螺旋状カムを有する。更に、従動子部材の往復運動は、回転装薬装置と従動子部材との間に相互に螺旋状のカム配置を有することによって達成される。また、相互螺旋状カム配置の存在、及び回転装薬装置と従動子部材との間の相対的な回転運動は、従動子部材の直線平行移動を提供する。「螺旋状カム」は、螺旋の形で曲面に歯を配置することを指すことが理解されよう。更に、回転装薬装置と従動子部材の相互螺旋状カム配置により、回転運動を直線平行移動に伝達することができる。また、従動子部材は、回転装薬装置に係合されたときに、従動子部材が、ノズルに向かう計量長手方向に平行移動するのを制限するための対向カム機構を含む。
【0052】
任意選択で、カム部材および従動子部材は、相互に螺旋状のカム配置を有する。更に、カム部材と従動子部材の係合は、その中に相互螺旋状カム配置を提供することによって達成され、回転運動を直線的平行移動または往復運動に首尾よく変換する。有益なことに、相互螺旋状カム配置を有するカム部材および従動子部材は、回転装薬装置の回転によって提供されるように、力の効率的な伝達をもたらす。
【0053】
任意選択で、カム部材は螺旋状カムを有する。カム部材と従動子部材の相互螺旋状カム配置は、カム部材の曲面に螺旋状カムを配置することにより得られる。また、カム部材は、両方の曲面(即ち、内部および外部)に螺旋状のカム配置を含む。内部螺旋状カム配置は従動子部材と係合し、外部螺旋状カム配置はケージ部材と係合する。
【0054】
任意選択で、対向するカム機構は、従動子部材から放射状に延びるゼロピッチレッジである。「ゼロピッチレッジ」という用語は、カム部材の傾斜端に対して平坦な端を有するカム機構の最も外側の面に関する。従動子部材のノズルへの直線状平行移動をブロックするために、対向するカム機構は、従動子部材から放射状に延びるゼロピッチレッジである平坦な表面を提供し、カム部材の後縁と係合する。
【0055】
任意選択で、カム部材は、螺旋状カムへのゼロピッチ延長部を有し、従動子部材は、分配長手方向への従動子部材の移動を遮断するためのゼロピッチ対向カム機構、及びそれを超えるゼロピッチ延長部へのエッジを有し、該エッジを超えて、従動子部材の分配長手方向への移動が許容される。分配長手方向への従動子部材の動きを制限するために、カム部材には、螺旋状カムへのゼロピッチ延長部が含まれ、従動子部材には、ゼロピッチ対向カム機構が含まれる。このような場合、カム部材のゼロピッチ延長部と従動子部材のゼロピッチ対向カム機構は、放射状周囲に相互に整列して、従動子部材の分配長手方向への動きを阻害する。更に、カム部材のゼロピッチ延長部および従動子部材のゼロピッチ対向カム機構の配置は、配置のわずかなシフトが、従動子部材の分配長手方向への動きを許容するようにされている。そのような場合、従動子部材のゼロピッチ対向カム機構は、カム部材のゼロピッチ延長部と係合して、その相互カム機構の通過を可能にし、従動子部材が、分配長手方向へ移動することを可能にする。
【0056】
任意選択で、従動子部材は、バネによって分配長手方向にバイアスがかけられている。つまり、従動子部材への移動は、バネによってもたらされ、長手方向の軸に沿って平行移動する。一例では、バネは、従動子部材の基部に提供され得、それにより、従動子部材の動きは上向きである。別の例では、バネは、(流体を含む)容器の開口部に設けられ得る。特に、そのような容器は、バネに張力をかける毛細管と共にバネ機構を含む。従って、バネの配置は、従動子部材の作動を強制し得る。
【0057】
回転作動機構は、中央位置と延長位置との間で平行移動可能であり、カム部材の放射状カムの第1カム歯面により、回転作動機構のその準備位置への回転運動と係合することができ、ボタンをその延長位置に移動させる第1歯面を有する牽制歯を含むボタンを含み、該牽制歯は、回転作動機構をその作動位置へ回転移動させることにより、従動子部材を開放する第2歯面を有する。本明細書における「ボタン」という用語は、動作中に、カム部材の回転運動の制御を提供する機械的スイッチに関する。該ボタンは、ケージ部材の周囲の窪みに配置されている。本明細書で述べられる「中央位置」は、ボタンが押されて吸入器を作動させたときの状態に関係し、一方、延長位置は、デバイスの準備状態でケージ部材の円周から放射方向外側にシフトしたときの状態に関係する。ボタンが静止位置にある場合、第1歯面を有する牽制歯は、ボタンをその延長位置に移動させるために、回転作動機構がその準備位置に回転運動する際に、カム部材の放射状カムの第1カム歯面に円周方向に係合する。一例として、回転作動機構がその静止位置から180度に回転され(カム部材が170度に回転される)、従動子部材が下向きの位置に移動すると、カム部材の放射状カムはボタンを延長位置に移動させる。更に、外力がボタンに加えられると、第2歯面を有する牽制歯が放射状カムの第2カム歯面と係合して、回転作動機構をその作動位置に回転運動させ、それによって、長手方向軸に沿って、従動子部材を解放する。例えば、外力は、ユーザーの親指で押すこと、又は親指以外の指で押すことであり得る。更に、作動中、牽制歯は放射状カムの第2カム歯面を通って移動し、それによってカム部材を170度から180度にシフトさせる。また、作動時に、牽制歯は、放射状カムの第2カム歯面を通って移動し、カム部材のゼロピッチ延長部およびゼロピッチ対向カム機構の解放を可能にし、それにより、従動子部材を解放する。
【0058】
任意選択で、ボタンは長手方向軸に対して横方向に平行移動可能である。更に、ボタンの中央位置と延長位置は、長手方向軸に対して放射方向内側と放射方向外側に移動する。
【0059】
更に、回転作動機構の準備は、ボタンを長手方向軸に向かって放射方向に駆動するのに対し、放射方向カムを作動させると、ボタンは長手方向軸から放射方向に離れるように駆動されることが理解され得る。
【0060】
任意選択で、ケージ部材は、ボタンの牽制歯が緩くはまり、牽制歯が上向きの窪みに移動することを可能にする上向きの窪みを有し、その一方で、窪みは長手方向軸の周りを回転する。更に、上向きの窪みは、ボタンを中央位置から延長位置に移動させながら、上向きの窪みへの牽制歯の移動に対応する。ここで、上向きの窪みは、長手方向軸の周りでケージ部材と共に回転する。
【0061】
任意選択で、回転作動機構は、ケージ部材にトルクが加えられることによって、その作動位置からその準備位置に移動される。更に、回転作動機構は、ケージ部材をねじることによって、その作動位置からその準備位置に移動される。一例では、ケージ部材のねじれは、ユーザーによって実行される。
【0062】
任意選択で、ポータブル吸入器は低揮発性液体噴霧器である。更に、開示されたポータブル吸入器は、低揮発性液体を含む容器を含む。例えば、液体は、フルチカゾンおよびサルメテロール(Advair Diskus)、モメタゾンおよびホルモテロール(Dulera)などであり得る。
【0063】
任意選択で、噴霧化のエネルギーは、蓄積された機械的な力によって提供される。本明細書において、蓄積された機械的力は、作動バネ、帯電したアクチュエータ、又は任意の他の適切な手段によって、制限なしに提供され得る。
【実施例】
【0064】
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、ポータブル吸入器100の斜視図が示されている。
図1の詳細は、それを確実にする段落に関連させて参照すべき
図5Aで拡大されている。ポータブル吸入器100は、準備位置と作動位置との間で順次かつ交互に移行可能な回転作動機構102を有する。回転作動機構102は、従動子部材104を含み、該従動子部材104は、回転作動機構102が準備位置から次の作動位置に移行するときに薬剤量(図示せず)を分配するために解放可能であり、回転作動機構102が作動位置から次の準備位置に移行するときに初期化されることができる。回転作動機構102は、回転装薬装置106を備える。回転装薬装置106は、カム部材108とケージ部材110とを含み、該カム部材108は該ケージ部材110によってケージ(囲まれ)され、且つ該ケージ部材110と該カム部材108との間で所定の制限された相対回転運動を可能にするなど相互に干渉する機械的特徴によって該カム部材が該ケージ部材に係合している。例えば、カム部材108の突端113は、ケージ部材110の内壁のギャップ111(
図5Cを参照)に突出しており、該突端は、該ギャップ内でいくらかの自由な動きをするようになっている。回転作動機構102は、中央位置と延長位置との間で平行移動可能なボタン112を備える。ボタン112は、該ボタン112を延長位置へ平行移動させるために、回転作動機構102がその準備位置に回転運動する際に、カム部材108の放射状カム120の第1カム歯面118によって係合可能な第1歯面116を有する牽制歯114を備える。この実施形態は、作動間で回転装薬装置106の180度回転を伴うので、カム部材108は、2つの放射状カム120を有する。牽制歯114は、ボタン112がその中央位置に移動し、それによって従動子部材104が解放されるに連れて、回転作動機構102のその作動位置への回転運動をもたらすための放射状カム120の第2歯面124(
図2Aを参照)と係合することができる第2歯面122(
図3を参照)を有する。
【0065】
図2Aおよび2Bに示されるカム部材は、円筒の上部から延びる直径方向に配置されたカム歯120を備えた通常は円筒形を有する開放構造である。各カム歯120は、第1カム歯面118および第2カム歯面124を有する。円筒の内面から延びる一対の螺旋状カム223を含む内向きカム203があり、これらのカムはそれぞれ、円筒の周りの半分の少し手前で下向きに延びており、水平部分225が続き、次に上向きの第1絶壁縁207が続く。各第1絶壁縁207は、各カム歯の回転位置に対して所定の回転位置にある。
【0066】
図3に示されるボタン112は、限定された放射方向の動きを提供するために、ポータブル吸入器の他の部材に差し込むためのくびき227を有する。該くびきは、ポータブル吸入器の外側輪郭の傾斜に整列する傾斜した外面229を有する。該外面は、傾斜した外面と整列した尖った端部を備えた牽制歯114を有し、それによって、傾斜した外面に加えられた外圧が牽制歯を尖った端の方向に向けるようになる。
【0067】
図4に示す従動子104は開放構造であり、ポータブル吸入器内で垂直方向の動きを可能にするが回転運動を可能にしないように内面から延びる垂直リブ233を備えた通常円筒形の形状を有する。該垂直リブ233は、マウスピースを含むポータブル吸入器に対する回転運動が防止されるように、吸入器(図示せず)の筐体内の溝にぴったりとはまる。従動子104は、外面に円周方向のレッジ235を有する。円周方向のレッジ235には一対の切れ目213がある。切れ目213は任意であるが、より経済的な製造を可能にする。各切れ目は、外向きカム205によって橋渡しされる。外向きカムは、第2絶壁端209、第3絶壁端211、短い水平部分239につながる短い螺旋状部分237を有する。第2絶壁端209は、水平部分に隣接し、第3絶壁端211は、螺旋状部分237に隣接している。外向きカム205の寸法は、カム部材108の内向きカム203の特徴で動作するように設計されているので、垂直リブ233および溝は、外向きカム205と内向きカム203の相対的な位置決めのための基準を提供する。
【0068】
図5A~5Hを参照すると、本開示の一実施形態による、ポータブル吸入器100を使用して投薬量を分配する様々な段階の斜視図が示されている。図示されているように、ポータブル吸入器100を使用して投薬量を分配する様々な段階は、明確にするためだけであり、本明細書の特許請求の範囲を過度に制限すると解釈されるべきではないことを当業者は理解することができる。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形、代替、及び修正を認識するであろう。
【0069】
図5Aおよび5Bには、前述の初期位置に対応する静止位置にあるときのポータブル吸入器100の断面図が示されている。
図5Aおよび5Bに示されるように、ボタン110は押し下げられた位置にあり、従動子部材104は最も高い位置にある。
図5Bは、従動子部材104、カム部材108、ケージ部材110、及びバネ231を示している。また、従動子部材の外向きカム205と係合するカム部材の内向きカム203を示している。更に、ポータブル吸入器のマウスピース241およびノズル243が示され、分配される薬液(図示せず)の容器を把持するように構成された従動子ハウジング245の形態の従動子部材の下部が示されている。
【0070】
図5Cおよび5Dでは、投薬量の装薬(図示せず)が行われる際の中間段階が示されている。この段階に到達するために、ケージ部材110は、静止位置から中間位置まで回転され、その間、10度の回転の後、カム部材を駆動し始める。
図5Cには、静止位置から90度の角度におけるカム部材108が示されている。更に、従動子部材104は、
図5Dに示されるように、従動子部材の外向きカム205に係合しているカム部材の内向きカム203の作用により、最高位置から下向き位置(即ち、中間位置)に移動した。
【0071】
図5Eおよび5Fでは、投薬量(図示せず)が装薬される段階、即ち吸入器が初期化される段階が示されている。この段階では、ケージ部材110は、中間段階から、静止位置から180度の角度(即ち、準備位置)まで回転している。しかし、カム部材108は、ケージ部材110とカム部材108との間に提供される10度の所定の制限された回転相対運動のために、静止位置から170度のみ回転した。ケージ部材は、外側に隆起した円周壁を有する。該円周壁には、狭い角度範囲にわたってそれぞれ2つの切れ目115を有する。ケージ部材110のほとんどの位置において、壁は、ボタンの外向きの移動、特にボタン112の牽制歯114の移動を防止する。ケージ部材が装薬位置に近づくに連れ、それが装薬位置を通過するまで、壁の切れ目はボタンが外側に動くことを可能にする。更に、従動子部材104は、
図5Eおよび5Fに示されているように、中間の下方位置から更に下方の位置に移動する。ここで、カム部材108の放射状カム歯120は、放射状カム歯の第1カム歯面がボタンの牽制歯の第1歯面と係合するときに、ボタン110の牽制歯114を放射方向外向きに押す。ここで、歯のそれぞれの角度により、接線方向の力を放射方向に分解することができます。
【0072】
図5Gおよび5Hでは、投薬量(図示せず)が分配される段階、即ち吸入器が作動される段階が示されている。装薬された段階から、ボタン112が押され、牽制歯114の第2歯面が、カム部材108の放射状カム120の第2カム歯面124と係合する。これにより、カム部材108に静止位置から180度の回転を完了させる(静止位置と同様)。この回転中(
図2A、2Bおよび4を参照)、カム部材の内向きカム203の第1絶壁端207は、従動子部材の外向きカム205の第2絶壁端209と整列するようになる。その結果、従動子部材104は、バネ231の解放された力の下で最高位置へ急速に動き、回転装薬装置106は、作動位置(静止位置と同じ)に移動し、投薬量(図示せず)が分配される。
【0073】
前述の本開示の実施形態への変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく可能である。本開示を説明および主張するために使用される「含む(including)」、「含む(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「有する(have)」、「である(is)」などの表現は、非排他的な様式で、即ち、存在するものとして明確には記載されていない項目(items)、部品(components)、要素(elements)も許容するものとして解釈されることが意図されている。単数形への言及は、複数形にも関連すると解釈されるべきである。
【国際調査報告】