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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】タンパク質を精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220829BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/085 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/095 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220829BHJP
   C07K 14/31 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/33 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/34 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/205 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/21 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/285 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/315 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 14/22 20060101ALN20220829BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20220829BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N1/21
C07K1/18
A61K39/02
A61K39/08
A61K39/05
A61K39/145
A61K39/09
A61K39/085
A61K39/095
A61P37/04
A61P31/04
A61P31/12
A61K47/64
C07K14/31
C07K14/33
C07K14/34
C07K14/205
C07K14/21
C07K14/285
C07K14/315
C07K14/22
C07K4/00
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576833
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020067782
(87)【国際公開番号】W WO2020260436
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19183033.0
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マーティン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ファリドモアイヤー,アミレザ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバー,サビーナ マリエッタ
(72)【発明者】
【氏名】リザク,クリスティアン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ギレス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,マルクス ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076CC06
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BA08
4C085BA10
4C085BA12
4C085BA14
4C085BA15
4C085BA16
4C085BA55
4C085CC07
4C085CC08
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA01
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、具体的にはイオン交換クロマトグラフィーを使用したタンパク質を精製する方法に関する。イオン交換クロマトグラフィーによる精製において使用するのに適した改変されたタンパク質及びペプチドタグが、関連する方法と同様に提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換クロマトグラフィーによる精製に適した融合タンパク質であって、
(i)目的のタンパク質、
(ii)N末端又はC末端のペプチドタグ
を含み、ペプチドタグが(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含み、「n」が2~6の整数(両端を含む)である、融合タンパク質。
【請求項2】
イオン交換レジンに結合することができるペプチドタグに直接的又は間接的に共有結合で連結された目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、ペプチドタグが(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含み、「n」が2~6の整数(両端を含む)である、融合タンパク質。
【請求項3】
ペプチドタグが4~20アミノ酸長である、請求項1又は請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
ペプチドタグが4~12アミノ酸長である、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
ペプチドタグが、配列番号4~6、8及び9のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
ペプチドタグが、配列番号4~6、8及び9のいずれか1つのアミノ酸配列からなる、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
目的のタンパク質とペプチドタグとの間にリンカーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
リンカーがGG、GS、SS、SG、又はGGSGGを含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
目的のタンパク質が、抗原性タンパク質又は担体タンパク質である、請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
目的のタンパク質が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、C.ジェジュニ由来のAcrA、インフルエンザ菌由来のタンパク質D、緑膿菌の外毒素A(EPA)、肺炎連鎖球菌由来の解毒されたニューモリシン、髄膜炎菌の外膜タンパク質複合体(OMPC)、解毒された黄色ブドウ球菌由来のHla又は黄色ブドウ球菌由来のClfAである、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
目的のタンパク質が、緑膿菌由来の外毒素A(EPA)である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記EPAが、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
EPAタンパク質が、
a.EPAタンパク質が、配列番号10のL552位に対応するアミノ酸位置でのLからVへの置換、及び/又は配列番号10のE553の欠失、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば配列番号11)内の同等の位置での置換及び/又は欠失を含む;並びに/或いは、
b. 1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であり、その置換は、任意選択的に、K-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)による置換である
という点で改変されている、請求項11又は請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
目的のタンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
(i)請求項11~14のいずれか一項で定義されたEPA、及び(ii)請求項1~6のいずれか一項で定義されたペプチドタグを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
ペプチドタグが、配列番号6、8又は9のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
ペプチドタグが、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
配列番号12~14、17、18、41、42、44、46、又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
配列番号14、17、18、44、46、又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
目的のタンパク質が、黄色ブドウ球菌由来のHlaである、請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記Hlaが、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
Hlaタンパク質が、
a. アミノ酸配列が、配列番号19のH35位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含み、その置換が、任意選択的に、H35Lである;
b. 1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であり、その置換は、任意選択的に、配列番号19のK131のK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)による置換である;並びに/或いは、
c. アミノ酸配列が、配列番号19のH48位及びG122位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含み、前記置換が、任意選択的に、それぞれHからC及びGからCである
という点で改変されている、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
目的のタンパク質が、配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
(i)請求項20~23のいずれか一項で定義されたHla、及び(ii)請求項1~6のいずれか一項で定義されたペプチドタグを含む、請求項1~8又は20~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
請求項1~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含むタンパク質-多糖コンジュゲートであって、タンパク質が多糖にコンジュゲートされてコンジュゲートを形成する、タンパク質-多糖コンジュゲート。
【請求項29】
多糖が細菌莢膜多糖である、請求項28に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
バイオコンジュゲートである、請求項28又は請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項28~30のいずれか一項のコンジュゲートを精製する方法。
【請求項32】
前記融合タンパク質中のペプチドタグが、融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる役割を果たす、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
目的のタンパク質を精製する方法であって、(i)目的のタンパク質及びイオン交換レジンに結合するペプチドタグを含む融合タンパク質を生産すること、及び(ii)イオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質を精製することを含む、方法。
【請求項34】
目的のタンパク質を精製する方法であって、タンパク質をイオン交換クロマトグラフィーに供することを含み、タンパク質がN末端又はC末端でペプチドタグの付加によって改変されている、方法。
【請求項35】
ペプチドタグが、融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる役割を果たす、請求項33又は請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ペプチドタグが、(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
「n」が2~6の整数(両端を含む)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ペプチドタグが4~20アミノ酸長である、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ペプチドタグが4~12アミノ酸長である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ペプチドタグが、配列番号4~6、8又は9のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項33~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ペプチドタグが、配列番号4~6、8又は9のいずれか1つのアミノ酸配列からなる、請求項33~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記融合タンパク質が、目的のタンパク質とペプチドタグとの間にリンカーをさらに含む、請求項33~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
リンカーが、GG、GS、SS、SG、又はGGSGGを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
イオン交換クロマトグラフィーが陽イオン交換クロマトグラフィーである、請求項1~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項31~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を精製する方法、特にイオン交換クロマトグラフィーを使用したタンパク質を精製する方法に関する。イオン交換クロマトグラフィーによる精製において使用するのに適した改変タンパク質及びペプチドタグが、関連する方法と同様に提供される。
【背景技術】
【0002】
組換えタンパク質の生産には、タンパク質が生産される細胞からタンパク質を分離することによってタンパク質を精製する必要があるが、多くの場合、生産プロセスで最も時間がかかり、費用のかかる要因となっている。このことは、医療用途及び治療用途で使用されるタンパク質には、非常に高レベルの純度が要求されることから特に当てはまる。タンパク質精製は、通常、細胞を破壊して細胞デブリを除去することから開始され、次いで目的のタンパク質を他の細胞タンパク質及び不純物から分離する、多段階プロセスでのいくつかの技術の組合せに依存している。必要とされる材料の量及び濃度、要求される天然フォールディング及び活性、純度の程度、多量体タンパク質のサブユニット含有量、翻訳後修飾が、タンパク質戦略設計の指針となる。適切なタンパク質精製方法を設計するためには、タンパク質の溶解性、高濃度又は低濃度でのその不安定性、並びに塩濃度、温度、pH及び酸化に対するその感受性を評価することが重要である。さらに、異なる精製工程を組み合わせることを目標とする場合、透析及び濃縮のいずれかの中間工程を削減するか、又は廃止することが望ましい。
【0003】
精製は、通常、精製初期に採用され、大容量に適し、非タンパク質材料(核酸、多糖類、脂質)を除去するのに有効なバルク法又はバッチ法、その後の高純度製品を得るのに適したより精密な方法を伴う。バルク法には、塩析、有機ポリマーによる相分配、有機溶媒による沈殿(変性につながる可能性がある)、非常に低い塩濃度での等電沈殿、熱沈殿、ポリエチレングリコール(非イオン性ポリマー)沈殿が含まれる。熱、極端なpH、又は有機溶媒による相分配などのドラスティックな方法は、安定したタンパク質に対してのみ適していることに注意されたい。沈殿法は、標的タンパク質の分画及び集積によって標的タンパク質の実質的な濃縮を達成するために広く利用されている、迅速で、穏やかで、スケーラブルで比較的安価な方法である。硫酸アンモニウム(AS)及びポリエチレンイミン(PEI)は、最も広く使用されている沈殿剤である。ASはタンパク質構造に対して安定であり、非常に溶解性が高く、比較的安価であり、塩溶-塩析現象(salting in-salting out phenomenon)を利用したタンパク質分画を可能にする。同じように、PEIは中性pHでは正荷電分子であり、核酸及び酸性タンパク質などの負荷電高分子と結合してネットワークを形成し急速に沈殿する。
【0004】
精密な精製方法は、通常、高容量から低容量の方法へと進み、とりわけ、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトでのタンパク質クロマトグラフィー、及び固定化金属アフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、固体マトリックスに固定化されたZn2+、Cu2+、Ni2+、及びCo2+などの遷移金属イオンの強力なキレート剤を介した水溶液中のヒスチジン及びシステインに対する親和性に基づく技術である。この技術は、一般的に、Ni2+カラムに結合する組換えHisタグ化タンパク質(ヒスチジン残基を6個以上含有するエピトープを有して発現されるタンパク質)とともに使用される。IMACの主な利点は、比較的高い親和性及び特異性を有し、変性、酸化、還元の条件下でも機能するので、低コストで堅牢であり、使用も簡単であることである。主な欠点としては、キレート剤(EDTAのほか、Trisなどの可能性のあるキレート基)を回避する必要性、Hisタグ配列の免疫原性の可能性、IMACマトリックスからのニッケル溶出のアレルギー的な影響、並びに混入タンパク質、例えば、天然の金属結合モチーフを有するタンパク質、表面にヒスチジンクラスターを有するタンパク質、異種発現されるHisタグ化タンパク質と例えばシャペロン機構により結合するタンパク質、及びアガロースベースの担体に親和性を有するタンパク質などの同時精製が挙げられる。さらに、IMAC固定相はキレート剤又は還元剤を許容しないので、金属イオンに感受性のあるタンパク質、及び酸化又はタンパク質分解によるダメージを受けやすいタンパク質には適さない。
【0005】
イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質を分離する汎用性の高い方法であり、分析目的及び調製目的で頻繁に使用されている。イオン交換クロマトグラフィーは、高分離能を達成することができ、標的の精製及び濃縮を同時に行うことができる。
【0006】
イオン交換体は、ベースマトリックス、通常は広い吸着面を提供する多孔質ビーズからなり、その上に荷電リガンド、通常はレジンの容量を向上させる荷電ポリマーが固定化されている。交換体はそれ自体酸及び塩基であり、広い又は狭いpH領域でのそのプロトン化の程度は、それが強い又は弱い酸又は塩基であることによって、決まる。
【0007】
タンパク質、ポリヌクレオチド、及び他の生体高分子は、表面に荷電部分を露出するため、イオン交換体と相互作用することができるが、これは、翻訳後修飾がない限り、溶液のpH及びタンパク質配列に基づいて推定することができるそれらの等電点(pI)に依存した現象である。陽イオン交換体は負に荷電しており、そのpIより下の正荷電タンパク質と結合する。陰イオン交換体は正に荷電しており、そのpIより上の負荷電タンパク質と結合する。タンパク質のイオン交換レジンへの結合は、タンパク質全体の荷電だけでなく、タンパク質表面の荷電分布などの要因にも依存しており、これは、配向的に起こるレジンへのタンパク質結合に影響を及ぼす。したがって、タンパク質のイオン交換体への結合は、タンパク質の一次構造に基づいて予測することはできず、特に、適切なフォールディング及び機能を維持するために望ましい生理学的pHで、常に所望のタンパク質のイオン交換レジンへの良好な結合を達成できるとは限らない。イオン交換クロマトグラフィーは、一次構造は同じであるが表面構造が異なっており、イオン交換体上での保持が異なることを特徴とする、インタクト及び短縮型のタンパク質、又はタンパク質バリアント及び/又はアイソフォームを分離するのに有用である。例えば、単一電荷が異なるタンパク質バリアントを単離することが可能である。イオン交換クロマトグラフィーは室温で最大500cm/hの直線流で行うことができるので、これは非常に迅速に実施することが可能であり、タンパク質分離を5分未満で達成することができる。しかしながら、タンパク質はその荷電特性によっては、ある特定のイオン交換レジンに結合しない場合があり、或いは高収率で効率的な分離を達成するのに十分に強く結合しない場合があるので、イオン交換クロマトグラフィーを使用してすべてのタンパク質を容易に分離することができるわけではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、目的のタンパク質及びペプチドタグを含む融合タンパク質を提供する。好ましくは、ペプチドタグは、イオン交換レジン、特に陽イオン交換レジンに結合することができる。ペプチドタグは、イオン交換レジンへのタンパク質の結合を強化し、イオン交換クロマトグラフィーによって精製されるタンパク質の精製を容易にする役割を果たす。Hisタグなどのペプチドタグは、金属イオンカラム(例えばIMAC)でのアフィニティークロマトグラフィーにおける使用について、当技術分野で公知である。しかしながら、本発明者らは、ペプチドタグはまた、イオン交換クロマトグラフィーによるタンパク質の精製を可能にする、又は最適化するためにも使用され得ることを見出した。この目的に有効なタグが開発され、本明細書に開示されている。
【0009】
本発明は、したがって、(i)目的のタンパク質、及び(ii)N末端又はC末端のペプチドタグを含む、イオン交換クロマトグラフィーによる精製に適した融合タンパク質を提供する。このタグは、適切には、(HR)n、(PR)n、(SR)n若しくは(PSR)nを含むか、又はそれからなり、「n」は好ましくは2~6の整数(両端を含む)である。
【0010】
また、(i)目的のタンパク質、及び(ii)N末端又はC末端のペプチドタグを含む融合タンパク質であって、このタグが(HR)n、(PR)n、(SR)nは若しくは(PSR)nを含むか、又はそれからなり、「n」が好ましくは2~6の整数(両端を含む)である、融合タンパク質も提供される。
【0011】
また、イオン交換レジンに結合することができるペプチドタグに直接的又は間接的に共有結合で連結された目的のタンパク質を含む融合タンパク質も提供される。このタグは、適切には、(HR)n、(PR)n、(SR)n若しくは(PSR)nを含むか、又はそれからなり、「n」は好ましくは2~6の整数(両端を含む)である。
【0012】
ペプチドタグは、適切には4~20アミノ酸長であり、好ましくは4~12アミノ酸長である。好ましくは、タグは荷電アミノ酸を含む。タグはまた、1つ以上のプロリン残基を含み得る。ある実施形態では、タグは、配列番号4~6、8又は9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0013】
ある実施形態では、タグはHisタグではなく、すなわち「n」が≧2であるHnを含まない。ある実施形態では、タグはHis6タグではない。ワクチン抗原との関連では、Hisタグでないタグを使用すると、一般的にアフィニティークロマトグラフィーによって生産及び精製されるHisタグ化タンパク質と交差反応する抗体を誘導する、又はそれの標的になるリスクが低減される。
【0014】
融合タンパク質は、目的のタンパク質とペプチドタグとの間にリンカーをさらに含み得る。リンカーは、有利には、G又はSなどの、フレキシブルリンカーを提供する、中程度から高度の自由度を有するアミノ酸を含み得る。ある実施形態では、リンカーはGG、GS、SS、SG、又はGGSGGを含む。
【0015】
目的のタンパク質は、抗原性タンパク質、例えばワクチン抗原、及び/又は多糖にコンジュゲーションするための担体タンパク質であり得る。典型的な担体タンパク質には、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、C.ジェジュニ(C. jejuni)由来のAcrA、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のタンパク質D、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外毒素A(EPA)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来の解毒されたニューモリシン、髄膜炎菌の外膜タンパク質複合体(OMPC)が含まれる。解毒された黄色ブドウ球菌(S. aureus)由来のHla又は黄色ブドウ球菌由来のClfAなどの細菌ワクチン抗原もまた、担体タンパク質として使用され得る。
【0016】
ある実施形態では、目的のタンパク質は緑膿菌由来の外毒素A(EPA)である。前記EPAは、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。EPAタンパク質は、EPAタンパク質が、配列番号10のL552位に対応するアミノ酸位置でのLからVへの置換、及び/又は配列番号10のE553の欠失、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば配列番号11)内の同等の位置での置換及び/又は欠失を含む;並びに/或いは、1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であり、その置換は、任意選択的に、配列番号10のA375、A376又はK240のK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)による置換であるという点で改変され得る。別の実施形態では、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)(X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸である)から選択され、好ましくは、K-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)から選択される、1つ以上のコンセンサス配列(複数可)が、配列番号10のY208、R274、S318及びA519から選択される1つ以上のアミノ酸残基に対し置換される。したがって、目的のタンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含んでもよく、任意選択的に、K-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)による挿入又は1つ以上のアミノ酸の置換を有してもよい。
【0017】
ある実施形態では、目的のタンパク質は黄色ブドウ球菌由来のHlaである。ある実施形態では、前記Hlaは、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。Hlaタンパク質は、アミノ酸配列が、配列番号19のH35位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含み、その置換が任意選択的にH35Lであるという点で改変され得る。Hlaタンパク質は、1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であるという点で改変され得る。ある実施形態では、前記置換は、配列番号19のK131のK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)による置換である。Hlaタンパク質は、アミノ酸配列が、配列番号1のH48位及びG122位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含むという点で改変され得る。ある実施形態では、前記置換は、それぞれ、HからC及びGからCである。
【0018】
ある実施形態では、融合タンパク質は、(i)本明細書に記載のEPAタンパク質、及び(ii)配列番号4~6、8又は9のいずれか1つからなるか、又はそれを含むペプチドタグを含む。好ましい実施形態では、前記ペプチドタグは、配列番号6、8及び9のいずれか1つを含むか、又はそれらからなる。好ましい実施形態では、前記ペプチドタグは配列番号8を含むか、又はそれからなる。
【0019】
ある実施形態では、融合タンパク質は、(i)本明細書に記載のHlaタンパク質、及び(ii)配列番号4~6、8又は9のいずれか1つからなるか、又はそれを含むペプチドタグを含む。好ましい実施形態では、前記ペプチドタグは配列番号4を含むか、又はそれからなる。
【0020】
ある実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12~14、17、18、41、42、44、46又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は、配列番号14、17、18、44、46又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は、1つ以上のアミノ酸がK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)で置換されているという点で改変されている、配列番号12~14、17、18、41、42、44、46又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は、1つ以上のアミノ酸がK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)で置換されているという点で改変されている、配列番号14、17、18、44、46又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は、配列番号21又は23のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は配列番号21のアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、融合タンパク質は配列番号24のアミノ酸配列を含まない。
【0021】
一態様では、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、本発明の融合タンパク質、又は本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲートを精製する方法を提供する。ある実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーの工程は、
(i)ローディング緩衝液を使用して、融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる工程、
(ii)洗浄緩衝液を使用して、イオン交換レジンを洗浄する工程、及び
(iii)溶出緩衝液を使用して、イオン交換レジンからタンパク質を溶出させる工程
を含む。
【0022】
一態様では、本発明は、(i)目的のタンパク質及びイオン交換レジンに結合するペプチドタグを含む融合タンパク質を生産すること、及び(ii)イオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質を精製することを含む、目的のタンパク質を精製する方法を提供する。適切なペプチドタグは本明細書に記載されている。
【0023】
一態様では、本発明は、目的のタンパク質を精製する方法であって、タンパク質をイオン交換クロマトグラフィーに供することを含み、タンパク質がN末端又はC末端で本明細書に記載のペプチドタグの付加によって改変されている方法を提供する。適切なペプチドタグは本明細書に記載されている。
【0024】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の目的タンパク質に連結された、例えば共有結合で連結された多糖、例えば多糖抗原を含むコンジュゲート(例えばバイオコンジュゲート)を提供する。
【0025】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質に連結された、例えば共有結合で連結された多糖、例えば多糖抗原を含むコンジュゲート(例えばバイオコンジュゲート)を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0028】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質、又は本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲート、及び薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む免疫原性組成物を提供する。
【0029】
一態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質、又は本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲート、及び薬学的に許容される賦形剤又は担体を含むワクチンを提供する。
【0030】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質、及び薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質又はコンジュゲート又はバイオコンジュゲートを薬学的に許容される賦形剤又は担体と混合する工程を含む、本発明の免疫原性組成物を作製する方法を提供する。
【0032】
一態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質、本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲートを宿主に投与することを含む、ヒト宿主を免疫化する方法を提供する。
【0033】
一態様では、本発明は、対象における抗原、例えば本明細書に記載の目的のタンパク質に対する免疫応答を誘導する方法であって、本発明の融合タンパク質、本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲートの治療有効量又は予防有効量を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0034】
一態様では、本発明は、医学的処置又は予防の方法に使用するための、本発明の融合タンパク質、本発明のコンジュゲート、又は本発明のバイオコンジュゲートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】HHHH、RRRR、HHRR及びHRHRペプチドでタグ化されたHla-CP5のNuvia-S陽イオン交換カラムでの精製(SDS-PAGE)を示す図である。
図2】C末端HRHRタグを有するCP5-Hlaの陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗Hla抗体を用いたウェスタンブロット)。ゲルA:40μLロードした。ゲルB:20μLロードした。
図3】非タグ化CP5-Hlaの陽イオン交換カラムでの精製を示す図である。図2と同じ手順を非タグ化CP5-Hlaを用いて行った。ゲルA:20μLロードした。ゲルB:40μLロードした。
図4】配列番号41のHRHRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図5】配列番号42のHRHRHRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(SDS-PAGE)。
図6】配列番号44のHRHRHRHRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図7】配列番号43のRRRRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33Fの陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図8】配列番号45のRRRRRRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図9】配列番号46のPRPRPRPRPRPRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図10】配列番号47のPSRPSRPSRPSRペプチドでタグ化されたEPA-Sp33FのCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図11】配列番号46のPRPRPRPRPRPRペプチドでタグ化されたEPA-Sp8のCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
図12】配列番号46のPRPRPRPRPRPRペプチドでタグ化されたEPA-Sp2のCapto S陽イオン交換カラムでの精製を示す図である(抗EPA抗体を用いたウェスタンブロット)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
ペプチドタグ:本明細書で使用される場合、用語「ペプチドタグ」とは、目的のタンパク質のN末端又はC末端に融合される、短い(好ましくは2~20アミノ酸、より好ましくは4~20アミノ酸)アミノ酸配列を指す。
【0037】
タグ化タンパク質:本明細書で使用される場合、「タグ化タンパク質」とは、N末端又はC末端に融合されたペプチドタグを有する目的のタンパク質を含むポリペプチドを指す。タグ化タンパク質はまた、タンパク質とペプチドタグとの間にアミノ酸リンカー、好ましくは1又は2個のアミノ酸のアミノ酸リンカーを含み得る。
【0038】
融合タンパク質:本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」とは、異なるポリペプチド由来のアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。好都合には、それらは2つ以上のアミノ酸配列をコードする単一ヌクレオチド配列、例えば、2つ以上の遺伝子、遺伝子の一部又はペプチド若しくはポリペプチドをコードする他のヌクレオチド配列を含む単一ヌクレオチド配列によってコードされていてもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「担体タンパク質」とは、コンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)を作製するために多糖抗原(例えば糖抗原)に共有結合させるタンパク質を指す。担体タンパク質は、それがコンジュゲートした多糖抗原に対してT細胞性免疫を活性化する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「バイオコンジュゲート」とは、宿主細胞バックグラウンドで調製されたタンパク質(例えば、担体タンパク質)と抗原(例えば、糖)との間のコンジュゲートを指し、宿主細胞機構は、抗原をタンパク質に結合する(例えば、N結合する)。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「グリコサイト」とは、細菌のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、C.ジェジュニのPglB)によって認識されるアミノ酸配列を指す。PglBの最小コンセンサス配列はD/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)であるが、伸長されたコンセンサス配列K-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)も使用することができる。
【0042】
プロリン(pro、P)とは別の任意のアミノ酸:アラニン(ala、A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、バリン(val、V)からなる群から選択されるアミノ酸を指す。
【0043】
EPA:緑膿菌の外毒素A。
【0044】
Hla:ブドウ球菌、特に、黄色ブドウ球菌由来のアルファ毒素としても公知であるヘモリシンA。
【0045】
CP:莢膜多糖。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、治療薬(例えば、本発明の免疫原性組成物又はワクチン)を対象に投与する文脈において、予防効果及び/又は治療効果(複数可)を有する治療薬の量を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、動物、特に哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト)を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸又は核酸配列間の配列同一性パーセンテージへの言及は、整列された場合に、そのパーセンテージのアミノ酸又は塩基が、2つの配列を比較する際に同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性又は配列同一性は、当該技術分野において公知であるソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubelら、編集、1987年、Supplement 30)の7.7.18節に記載されているものを用いて決定することができる。好ましいアラインメントは、ギャップオープンペナルティが12であり、ギャップ拡張ペナルティが2であり、BLOSUMマトリックスが62であるアフィンギャップサーチを用いて、Smith-Waterman相同性サーチアルゴリズムによって決定される。Smith-Waterman相同性サーチアルゴリズムは、Smith & Waterman (1981年) Adv. Appl. Math. 2巻: 482~489頁に開示されている。任意の具体的な配列(例えば、具体的な配列番号)に対する同一性パーセンテージは、理想的には、その配列の全長にわたって計算される。異なる長さの2つの配列間の配列同一性パーセンテージは、好ましくは、より長い配列長にわたって計算される。グローバルアラインメント又はローカルアラインメントが使用され得る。好ましくは、グローバルアラインメントが使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、融合タンパク質、又は目的のタンパク質、又はそのコンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)の「精製する」又は「精製」という用語は、1つ以上の混入物質からそれらを分離することを意味する。混入物質とは、前記融合タンパク質、又は目的のタンパク質、又はそのコンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)とは異なる任意の物質である。混入物質は、例えば、細胞デブリ、核酸、脂質、融合タンパク質又は目的のタンパク質以外のタンパク質、多糖、及び他の細胞成分であり得る。
【0050】
「組換え」ポリペプチドとは、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞、又は相同組換えの結果としてポリペプチドを生産する宿主細胞で生産されるものである。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、その位置でのアミノ酸残基のサイズ、極性、電荷、疎水性、又は親水性にほとんど影響ないか又は全く影響がなく、免疫原性の低下をもたらさないような非天然残基で天然アミノ酸残基を置換することを伴う。例えば、これらは、以下の群:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン内の置換であり得る。ポリペプチドの配列に対する保存的アミノ酸改変(及びコードするヌクレオチドに対する対応する改変)は、親ポリペプチドのものと類似する機能的及び化学的特徴を有するポリペプチドを生産し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「欠失」は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去である。典型的には、約1~6残基(例えば、1~4残基)以下が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失される。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「挿入」は、タンパク質配列中の1つ以上の非天然アミノ酸残基の付加である。典型的には、約1~6残基(例えば、1~4残基)以下が、タンパク質分子内の任意の1つの部位に挿入される。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、指定された成分に加えて他の成分が存在し得ることを示し、一方、用語「からなる」は、他の成分が存在しないか、又は検出可能な量で存在しないことを示す。用語「含む」は、用語「からなる」を当然に含む。
【0055】
発明の説明
ペプチドタグ
本発明で使用されるペプチドタグは、イオン交換レジン、特に陽イオン交換レジンに結合する。したがって、タグは、適切には、荷電アミノ酸残基(例えば、K、R、H、D及びE)を含む。タグが陽イオン交換レジンに結合することを意図する場合、K、R、H、特にH及びRが好ましい。プロリンなどの残基もまた、タグ内の荷電残基のアクセス可能性を向上するために含まれ得る。
【0056】
当業者には、タグのアミノ酸組成及び長さが、目的のタンパク質のサイズ、アミノ酸組成、荷電及び荷電のアクセス可能性に応じて、イオン交換レジンへの結合を最適化するように適合され得ることが理解されよう。例えば、タグが長ければ長いほどレジンとの結合が強くなるので、所与のpHで全体的に低い荷電しか有さないタンパク質には長いタグが必要となり得る。
【0057】
ある実施形態では、ペプチドタグは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上のアミノ酸長であり得る。好ましくは、タグは、4~12アミノ酸長である。
【0058】
例示的なタグには(HR)n、(PR)n、(SR)n、(PSR)nが含まれ、「n」は、好ましくは2~10の整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。適切なタグは、HRHR、HRHRHR、HRHRHRHR、(PR)6又は(PSR)4であり得る。「n」が2、3、4、5、又は6である(PR)nが特に適切なタグである。
【0059】
ある実施形態では、タグはHRHRである。ある実施形態では、タグはHRHRを含む。特定の実施形態では、タグ化タンパク質はHlaであり、タグはHRHRである。特定の実施形態では、タグ化タンパク質は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0060】
ある実施形態では、タグはHisタグではない。ある実施形態では、タグはHis6タグではない。ワクチン抗原の文脈において、Hisタグではないタグを使用すると、アフィニティークロマトグラフィーによって一般に生成及び精製されるHisタグタンパク質と交差反応する抗体を誘導する、又はそれの標的になるリスクが低減される。
【0061】
本発明のペプチドタグは、アルギニンのヒスチジン、プロリン及び/又はセリンとの組合せである。それらは、タンパク質をイオン交換クロマトグラフィーカラムに効果的に結合させることにおいてポリアルギニンタグに対して優位性を示した。理論に縛られることを望むものではないが、本組合せのペプチドタグは、カラムへの結合を向上させるペプチドへの構造変化を誘導すると考えられる。
【0062】
目的のタンパク質
目的のタンパク質は、任意のタンパク質、特に組換えタンパク質であり得る。ある実施形態では、タンパク質は抗原性タンパク質、例えば、ワクチン抗原である。ある実施形態では、タンパク質は、多糖抗原のための担体タンパク質として使用するためのものである。担体タンパク質は、例えば、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、C.ジェジュニ由来のAcrA、緑膿菌の外毒素A(EPA)、インフルエンザ菌由来のタンパク質D、肺炎連鎖球菌由来の解毒されたニューモリシン、髄膜炎菌の外膜タンパク質複合体(OMPC)であり得る。細菌ワクチン抗原、例えば、解毒された黄色ブドウ球菌由来のHla又は黄色ブドウ球菌由来のClfAもまた担体タンパク質として使用され得る。
【0063】
特定の実施形態では、目的のタンパク質は、緑膿菌の外毒素A(EPA)である。EPAは、成熟型で613個のアミノ酸を含む67kDaの細胞外分泌タンパク質である。このタンパク質は、例えば、Lukacら、Infect Immun、56巻、3095~3098頁、1988年及びHoら、Hum Vaccin、2巻、89~98頁、2006年に記載されているように、触媒的に必須の残基L552VΔE553を変異/欠失させることによって解毒させることができる。タンパク質がバイオコンジュゲートの担体として使用される場合、以下に記載しているように、1つ以上のPglBコンセンサス配列がタンパク質へ操作され得る。さらに、大腸菌でそのグリコシル化を可能にするために、以下に記載しているように、グリコシル化が起こるようにタンパク質がペリプラズムスペースに局在しなければならないシグナルペプチドを含めることが有用であり得る。
【0064】
ある実施形態では、目的のタンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるEPA配列であり得る。ある実施形態では、目的のタンパク質は、配列番号10に少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、アミノ酸配列が、L552位の非保存的アミノ酸置換(例えば、LからV)及び残基E553の欠失を含むという点で改変されており、前記位置は配列番号10のL552位及びE553位、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば配列番号11)内の同等の位置に対応する。
【0065】
前記改変されたEPAタンパク質は、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)を含むようにさらに改変されていてもよく、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸(例えば、配列番号28)であり、本明細書では「グリコサイト」とも呼ばれる。ある実施形態では、前記コンセンサス配列は、前記EPA配列内のアミノ酸残基に対して置換されている。したがって、目的のタンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むEPAタンパク質であってもよく、前記アミノ酸配列がD/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)を含むという点で改変されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸である。ある実施形態では、前記コンセンサス配列は、配列番号10、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列のA375、A376若しくはK240に対して置換されている。別の実施形態では、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)(X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸である)から選択され、好ましくはK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)は、配列番号10のY208、R274、S318及びA519から選択される1つ以上のアミノ酸残基に対して置換される。ある実施形態では、前記改変されたEPAタンパク質は、以下の突然変異:L552V/ΔE553、並びに1つ以上のアミノ酸のグリコサイトKDQNATKによる置換を含有する。
【0066】
したがって、例えば、融合タンパク質は、配列番号10若しくは配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号4~6、8若しくは9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。ある実施形態では、融合タンパク質は、配列番号10若しくは配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号6、8若しくは9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号10若しくは配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号8若しくは配列番号9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。特に好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号10若しくは配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号8のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12~14、17、18、41、42、44、46、又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上のグリコサイトの挿入を有する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号14、17、18、44、46、若しくは47のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上のグリコサイトの挿入を有する。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17、配列番号18、配列番号46、若しくは配列番号47の配列を含み、任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上のグリコサイトの挿入を有する。特に好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17若しくは配列番号46の配列を含み、任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上のグリコサイトの挿入を有する。
【0067】
特定の実施形態では、目的のタンパク質はHlaである。
【0068】
ある実施形態では、目的のタンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19に少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHla配列であり得る。ある実施形態では、目的のタンパク質は、配列番号19に少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、アミノ酸配列が、配列番号19のH48位及びG122位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含むという点で改変されており、前記置換はそれぞれHからC及びGからCである(例えば、配列番号20)。
【0069】
前記改変されたHlaタンパク質は、アミノ酸配列が配列番号19のH35位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば、配列番号20)内の同等の位置でアミノ酸置換(例えばH35L)を含むという点でさらに改変され得る。前記改変されたHlaタンパク質は、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)を含むようにさらに改変されていてもよく、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸である(例えば、配列番号27)。ある実施形態では、前記改変されたHlaタンパク質は、以下の突然変異:H35L、H48C及びG122C、並びに配列番号19のK131に対して置換されているグリコサイトKDQNRTKを含有する(例えば、配列番号20~24)。したがって、目的のタンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むHlaタンパク質であり得、アミノ酸配列がD/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)を含むという点で改変されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸である。
【0070】
したがって、例えば、融合タンパク質は、配列番号19若しくは配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号19若しくは配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号4~6、8若しくは9のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。ある実施形態では、融合タンパク質は、配列番号19若しくは配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号19若しくは配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列、並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるペプチドタグを含み得るか、又はそれらからなり得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は配列番号24のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0071】
目的のタンパク質は、N末端にシグナル配列、例えば、宿主細胞(例えば、細菌)のペリプラズムにHlaタンパク質を指向することができるシグナル配列をさらに含み得る。これは、目的のタンパク質がバイオコンジュゲートでの使用を意図した担体タンパク質である場合に特に有用である。特定の実施形態では、シグナル配列は、大腸菌フラジェリン(FlgI)[MIKFLSALILLLVTTAAQA(配列番号29)]、大腸菌外膜ポーリンA(OmpA)[MKKTAIAIAVALAGFATVAQA(配列番号30)]、大腸菌マルトース結合タンパク質(MalE)[MKIKTGARILALSALTTMMFSASALA(配列番号31)]、エルウィニア・カロトボランス(Erwinia carotovorans)ペクチン酸リアーゼ(PelB)[MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号32)]、易熱性大腸菌エンテロトキシンLTIIb[MSFKKIIKAFVIMAALVSVQAHA(配列番号33)]、枯草菌(Bacillus subtilis)エンドキシラナーゼXynA[MFKFKKKFLVGLTAAFMSISMFSATASA(配列番号34)]、大腸菌DsbA[MKKIWLALAGLVLAFSASA(配列番号35)]、TolB[MKQALRVAFGFLILWASVLHA(配列番号36)]又はSipA[MKMNKKVLLTSTMAASLLSVASVQAS(配列番号37)]由来であり得る。目的のタンパク質がEPA、特に本明細書に記載のEPAタンパク質である場合、シグナル配列はDsbA(配列番号35)であり得る。目的のタンパク質がHla、特に本明細書に記載のHlaタンパク質である場合、シグナル配列はFlgI(配列番号29)であり得る。
【0072】
コンジュゲート
一部の実施形態では、目的のタンパク質は、多糖にコンジュゲートされてコンジュゲートを形成する。ワクチンの文脈では、多糖はT細胞に依存しない抗原であるため、抗原性多糖のタンパク質担体への結合が防御記憶反応に必要である。多糖は、多糖並びにタンパク質担体の活性化反応基を使用した様々な化学的方法と、細菌多糖をタンパク質に結合させる酵素を利用するバイオコンジュゲーション方法によって、タンパク質担体にコンジュゲートされ得る。
【0073】
ある実施形態では、コンジュゲートは、多糖抗原に共有結合で連結された本明細書に記載の目的のタンパク質を含む(又はそれからなる)コンジュゲートを含み、抗原は前記タンパク質のアミノ酸残基に(直接的に又はリンカーを介して)連結されている。
【0074】
ある実施形態では、コンジュゲートは、多糖抗原に共有結合で連結された本発明の融合タンパク質を含む(又はそれからなる)コンジュゲートを含み、抗原は融合タンパク質のアミノ酸残基に(直接的に又はリンカーを介して)連結されている。
【0075】
ある実施形態では、コンジュゲートはバイオコンジュゲートである。ある実施形態では、コンジュゲートは化学的コンジュゲートである。ある実施形態では、本発明のコンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)中の抗原は、糖、例えば、細菌莢膜糖、細菌リポ多糖又は細菌オリゴ糖である。ある実施形態では、抗原は、細菌莢膜糖である。
【0076】
細菌莢膜糖は、例えば、髄膜炎菌(N. meningitidis)血清群A莢膜糖(MenA)、髄膜炎菌血清群C莢膜糖(MenC)、髄膜炎菌血清群Y莢膜糖(MenY)、髄膜炎菌血清群W莢膜糖(MenW)、インフルエンザ菌(H. influenzae)b型莢膜糖(Hib)、B群連鎖球菌I群莢膜糖、B群連鎖球菌II群莢膜糖、B群連鎖球菌III群莢膜糖、B群連鎖球菌IV群莢膜糖、B型連鎖球菌V群莢膜糖、黄色ブドウ球菌5型莢膜糖、黄色ブドウ球菌8型莢膜糖、チフス菌(Salmonella typhi)由来のVi糖、髄膜炎菌LPS(例えば、L3及び/又はL2)、カタラーリス菌(M. catarrhalis)LPS、インフルエンザ菌LPS、赤痢菌(Shigella)O抗原、緑膿菌O抗原、大腸菌O抗原、又は肺炎連鎖球菌莢膜多糖であり得る。
【0077】
ある実施形態では、目的のタンパク質は、バイオコンジュゲーションアプローチを介して多糖に連結される。簡単に説明すると、このアプローチは、細菌細胞、例えば、大腸菌などのグラム陰性細胞での糖タンパク質のin vivo生産を含む。多糖は、細胞質膜で一般的な前駆体(活性化糖ヌクレオチド)から、定義された特異性を有する様々なグリコシルトランスフェラーゼによって担体脂質上でアセンブルされる。多糖の合成は、膜の細胞質側で担体脂質であるウンデカプレニルリン酸に単糖を付加させることによって開始される。抗原は、活性化された糖ヌクレオチドから異なるグリコシルトランスフェラーゼによって単糖が順次付加されることにより構築され、脂質に連結した多糖がフリッパーゼによって膜を介して反転される。抗原リピート単位は、酵素反応によって重合される。次いで、多糖はリガーゼによって脂質に移され、ペリプラズムに輸送される。ペリプラズムでは、多糖は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のPglBなどの細菌オリゴサッカリルトランスフェラーゼを使用して、タンパク質担体に結合(例えばN-結合)され得る。
【0078】
N-結合タンパク質のグリコシル化-標的タンパク質のポリペプチド鎖中のアスパラギン残基への炭水化物分子の付加-は、通常、真核生物で起こる。真核生物では、このプロセスは、小胞体内で新生タンパク質の保存配列Asn-X-Ser/Thr(Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)内のアスパラギン残基への、脂質担体(ドリコールリン酸)からの予めアセンブルしたオリゴ糖の転移に関与する酵素オリゴサッカリルトランスフェラーゼ複合体(OST)によって達成される。食物媒介性病原体カンピロバクター・ジェジュニはまた、(タンパク質のグリコシル化に関して)「pgl」と呼ばれるクラスターによってコードされるグリコシル化機構を使用して、タンパク質をN-グリコシル化することができる(Wackerら、Science、2002年、298巻(5599号):1790~3頁)。C.ジェジュニのグリコシル化機構は、大腸菌に導入して、大腸菌細胞によって発現される組換えタンパク質のグリコシル化を可能にすることができる。従前の研究は、N-グリコシル化を行うことができる大腸菌株を生じさせる方法を実証している(例えば、Wackerら、Science、2002年、298巻(5599号):1790~3頁; Nita-Lazarら、Glycobiology、2005年、15巻(4号):361~7頁; Feldmanら、Proc Natl Acad Sci U S A、2005年、102巻(8号):3016~21頁; Kowarikら、EMBO J. 2006年、25巻(9号):1957~66頁; Wackerら、Proc Natl Acad Sci U S A、2006年、103巻(18号):7088~93頁;国際特許出願公開第WO2003/074687号、同第WO2006/119987号、同第WO2009/104074号、同第WO/2011/06261号、及び同第WO2011/138361号を参照されたい)。バイオコンジュゲートの生産は、例えば、国際特許出願第PCT/EP2013/068377(WO14/037585として公開)及び国際特許出願第PCT/EP2018/085854にも詳細に記載されている。
【0079】
したがって、バイオコンジュゲートを生産するために使用される宿主細胞は、異種核酸、例えば、1つ以上の担体タンパク質をコードする異種核酸、及び/又は1つ以上のタンパク質をコードする異種核酸、例えば、1つ以上のタンパク質をコードする遺伝子を含むように操作される。グリコシル化経路(例えば、原核生物及び/又は真核生物のグリコシル化経路)に関与するタンパク質をコードする異種核酸が、本発明の宿主細胞に導入され得る。このような核酸は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、エピメラーゼ、フリッパーゼ、ポリメラーゼ、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼを含むタンパク質をコードし得る。
【0080】
したがって、本発明は、
i)グリコシルトランスフェラーゼ(複数可)をコードする1つ以上の核酸、
ii)オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸、
iii)本発明の融合タンパク質をコードする核酸、任意選択的に、
iv)ポリメラーゼ(例えば、wzy)をコードする核酸
を含む宿主細胞を提供する。
【0081】
また、糖に連結された本発明の融合タンパク質を含む(又はそれからなる)バイオコンジュゲートを生産する方法であって、(i)タンパク質の生産に適した条件下で、本発明の宿主細胞を培養すること、及び(ii)前記宿主細胞によって生産されたバイオコンジュゲートを単離することを含む方法も提供される。
【0082】
別の実施形態では、目的のタンパク質は、化学的コンジュゲーション法を用いて得ることができる化学的連結を介して、多糖に共有結合で連結されている(すなわち、コンジュゲートは、化学的コンジュゲーションによって生産される)。
【0083】
ある実施形態では、化学的コンジュゲーション法は、カルボジイミド化学、還元アミノ化(animation)、シアニル化化学(例えば、CDAP化学)、マレイミド化学、ヒドラジド化学、エステル化学、及びN-ヒドロイスクシンイミド化学からなる群から選択される。コンジュゲートは、米国特許出願公開第2007/10184072号(Hausdorff)、米国特許第4,365,170号(Jennings)及び米国特許第4,673,574号(Anderson)に記載されている直接還元アミノ化法によって調製することができる。他の方法は、EP-0-161-188、EP-208375及びEP-0-477508に記載されている。或いは、コンジュゲーション法は、シアン酸エステルを形成するために、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)による糖の活性化に依存し得る。このようなコンジュゲートは、PCT公開出願WO93/15760、ユニフォームドサービス大学(Uniformed Services University)、並びにWO95/08348及びWO96/29094に記載されている。また、Chu C.ら、Infect. Immunity、1983年 245~256頁を参照されたい。
【0084】
イオン交換クロマトグラフィー
イオン交換クロマトグラフィーの技術及び原理は当技術分野では周知であり、Weiss「Handbook of Ion Chromatography」、Wiley 2016年などの標準的な教科書、及び製造業者のハンドブック、例えばGE Healthcare(GE Healthcare Bio-Sciences AB、Uppsala、Sweden)の「Ion Exchange Chromatography Principles and Methods」で詳細に説明されている。
【0085】
イオン交換レジンは、広い吸着面を提供するベースマトリックス、通常は多孔質ビーズで構成されており、その上に荷電リガンド、通常はレジンの容量を改善するための荷電ポリマーが固定化されている。交換レジンはそれ自体が酸及び塩基であり、広いpH範囲又は狭いpH範囲でのプロトン化の程度は、それが強い又は弱い酸又は塩基であることによって異なる。
【0086】
イオン交換クロマトグラフィーには、機械的安定性、低下した非特異的吸着、より高い結合能力、促進された物質移動を特徴とする固定相が必要である。固定相は、典型的には、液体で満たされた細孔を含むビーズ状のマトリックスで構成されている。機械的に安定であり機能的なマトリックスは、一般的には、多糖(セルロース、デキストラン、アガロース)、合成有機ポリマー(ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリスチレン)、及び無機材料(シリカ、ヒドロキシアパタイト)であり、これらは化学的に架橋され、機能性リガンドで修飾されている。これらの粒子サイズは、分析用の2μmから低圧調製用の約200μm程度の範囲であり、孔径は10~100nmの範囲である。
【0087】
交換レジンへのタンパク質の結合は低塩濃度で生じ、溶出は高塩濃度で生じるので、イオン交換クロマトグラフィーカラムは、塩含有緩衝液(適切には1M NaCl)で洗浄して荷電リガンドを完全に飽和させてから、タンパク質の溶解度及び安定性を維持するのに適した緩衝液で平衡化するべきである。タンパク質のローディングは、タンパク質が交換体に結合できるように、低塩濃度を含有する平衡化緩衝液と可能な限り同じpH及び導電率で実施される。ローディング後、未結合の物質は、通常、可能な場合には特定の補充物を含有する、平衡化緩衝液で洗浄される。溶出はイソクラティック溶出又は勾配溶出で実施することができる。勾配溶出は、溶出ウィンドウを広げるので好ましく、通常は、2つの緩衝液(平衡化緩衝液及び対イオンローディングに使用される緩衝液)の勾配で構成される、直線又は段階的な塩勾配で構成することができる。或いは、pH勾配による溶出を実施することができる。
【0088】
典型的には、次いで、イオン交換クロマトグラフィーの工程は、
(i)ローディング緩衝液を使用して融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる工程、
(ii)洗浄緩衝液を使用してイオン交換レジンを洗浄する工程、
(iii)溶出緩衝液を使用してイオン交換レジンからタンパク質を溶出する工程
を含む。
【0089】
イオン交換レジンは、陽イオン交換体又は陰イオン交換体であり得る。様々な強度及び粒子サイズを持つ、予め調製された様々なレジンが市販されている。市販の陽イオン交換(「CIX」)レジンには、Nuvia-S及びNuvia HR-S(Bio-Rad); Capto-S、Source 15S、CM Sephadex C-25、及びCM-Sephadex C-50(GE Healthcare)が含まれる。市販の陰イオン交換レジンには、Nuvia-Q及びNuvia HR-Q(Bio-Rad)、Capto-Q、Source 15Q、DEAE Sephadex A-25及びDEAE-Sephadex A-50(GE Healthcare)が含まれる。強陽イオン交換レジンには、Capto-S及びSource 15Sが含まれる。強陰イオン交換レジンには、Capto-Q及びSource 15Qが含まれる。弱陽イオン交換レジンには、CM Sephadex C-25及びCM-Sephadex C-50が含まれる。弱陰イオン交換レジン剤には、DEAE Sephadex A-25及びDEAE-Sephadex A-50が含まれる。
【0090】
平衡化緩衝液、ローディング緩衝液、洗浄緩衝液及び溶出緩衝液の組成は、当業者であれば、当技術分野の通常の手順に従って選択することができる。適切な緩衝剤は、例えば、Weiss「Handbook of Ion Chromatography」、Wiley 2016年、及び上述したGE Healthcareの「Ion Exchange Chromatography Principles and Methods」に記載されているように当技術分野で周知である。クロマトグラフィー緩衝液の選択は、標的タンパク質のpI、その安定性及び溶解性だけでなく、交換体の特性によっても決まる。交換体に結合する可能性のあるTris及び酢酸などの緩衝液は避ける必要がある。好ましくは、1~4mS/cmの導電率に対応する、10~100mMの緩衝液濃度が推奨される。
【0091】
ある実施形態では、同じ緩衝液をローディング及び洗浄に使用し、その後、塩濃度を溶出緩衝液で高くすることができる。例えば、20mM クエン酸塩、50mM NaCl、pH5.5をローディングと洗浄に使用し、その後、20mM クエン酸Na、50~500mM NaCl、pH5.5を使用して溶出を行うことができる。
【0092】
イオン交換クロマトグラフィーの工程は、任意選択的に、異なるイオン交換レジンを使用して繰り返すことができる。
【0093】
イオン交換クロマトグラフィーの工程は、追加の精製工程、例えば脱塩又は透析の前又は後であってもよい。
【0094】
本特許明細書中で引用されているすべての参考文献又は特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
本発明の態様は、以下の付番された段落に要約される。
1.イオン交換クロマトグラフィーによる精製に適した融合タンパク質であって、
(i)目的のタンパク質、
(ii)N末端又はC末端のペプチドタグ
を含み、ペプチドタグが(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含み、「n」が2~6の整数(両端を含む)である、融合タンパク質。
2.イオン交換レジンに結合することができるペプチドタグに直接的又は間接的に共有結合で連結された目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、ペプチドタグが(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含み、「n」が2~6の整数(両端を含む)である、融合タンパク質。
3.ペプチドタグが4~20アミノ酸長である、段落1又は段落2に記載の融合タンパク質。
4.ペプチドタグが4~12アミノ酸長である、段落3に記載の融合タンパク質。
5.ペプチドタグが、配列番号4~6、8及び9のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、段落1~4のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
6.ペプチドタグが、配列番号4~6、8及び9のいずれか1つのアミノ酸配列からなる、段落5に記載の融合タンパク質。
7.目的のタンパク質とペプチドタグとの間にリンカーをさらに含む、段落1~6のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
8.リンカーが、GG、GS、SS、SG、又はGGSGGを含む、段落7に記載の融合タンパク質。
9.目的のタンパク質が抗原性タンパク質又は担体タンパク質である、段落1~8のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
10.目的のタンパク質が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、C.ジェジュニ由来のAcrA、インフルエンザ菌由来のタンパク質D、緑膿菌の外毒素A(EPA)、肺炎連鎖球菌由来の解毒されたニューモリシン、髄膜炎菌の外膜タンパク質複合体(OMPC)、解毒された黄色ブドウ球菌由来のHla又は黄色ブドウ球菌由来のClfAである、段落9に記載の融合タンパク質。
11.目的のタンパク質が、緑膿菌由来の外毒素A(EPA)である、段落10に記載の融合タンパク質。
12.前記EPAが、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、段落11に記載の融合タンパク質。
13.EPAタンパク質が、
a.EPAタンパク質が、配列番号10のL552位に対応するアミノ酸位置でのLからVへの置換、及び/又は配列番号10のE553の欠失、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば配列番号11)内の同等の位置での置換及び/又は欠失を含む;並びに/或いは、
b. 1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であり、その置換は、任意選択的に、K-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)又はK-D-Q-N-A-T-K(配列番号28)による置換である
という点で改変されている、段落11又は段落12に記載の融合タンパク質。
14.目的のタンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、段落11~13のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
15.(i)段落11~14のいずれか一つで定義されたEPA、及び(ii)段落1~6のいずれか一つで定義されたペプチドタグを含む、段落1~14のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
16.ペプチドタグが、配列番号6、8又は9のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、段落15に記載の融合タンパク質。
17.ペプチドタグが、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、段落16に記載の融合タンパク質。
18.配列番号12~14、17、18、41、42、44、46、又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、段落15に記載の融合タンパク質。
19.配列番号14、17、18、44、46、又は47のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、段落15に記載の融合タンパク質。
20.目的のタンパク質が、黄色ブドウ球菌由来のHlaである、段落1~8のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
21.前記Hlaが、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の融合タンパク質。
22.Hlaタンパク質が、
a. アミノ酸配列が、配列番号19のH35位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含み、その置換が、任意選択的に、H35Lである;
b. 1つ以上のアミノ酸が、D/E-X-N-Z-S/T(配列番号25)及びK-D/E-X-N-Z-S/T-K(配列番号26)から選択される1つ以上のコンセンサス配列(複数可)によって置換されており、X及びZは、独立して、プロリンとは別の任意のアミノ酸であり、その置換は、任意選択的に、配列番号19のK131のK-D-Q-N-R-T-K(配列番号27)による置換である;並びに/或いは、
c. アミノ酸配列が、配列番号19のH48位及びG122位で、又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列内の同等の位置でアミノ酸置換を含み、前記置換が、任意選択的に、それぞれHからC及びGからCである
という点で改変されている、段落21に記載の融合タンパク質。
23.目的のタンパク質が配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、段落20~22のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
24.(i)段落20~23のいずれか一つで定義されたHla、及び(ii)段落1~6のいずれか一つで定義されたペプチドタグを含む、段落1~8又は20~23のいずれか一つに記載の融合タンパク質。
25.段落1~24のいずれか一つに記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
26.段落25に記載の核酸を含む、発現ベクター。
27.段落26に記載のベクターを含む、宿主細胞。
28.段落1~24のいずれか一つに記載の融合タンパク質を含むタンパク質-多糖コンジュゲートであって、タンパク質が多糖にコンジュゲートされてコンジュゲートを形成する、タンパク質-多糖コンジュゲート。
29.多糖が細菌莢膜多糖である、段落28に記載のコンジュゲート。
30.コンジュゲートがバイオコンジュゲートである、段落28又は段落29に記載のコンジュゲート。
31.イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、段落1~24のいずれか一つに記載の融合タンパク質、又は段落28~29のいずれか一つのコンジュゲートを精製する方法。
32.前記融合タンパク質中のペプチドタグが、融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる役割を果たす、段落31に記載の方法。
33.目的のタンパク質を精製する方法であって、(i)目的のタンパク質及びイオン交換レジンに結合するペプチドタグを含む融合タンパク質を生産すること、及び(ii)イオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質を精製することを含む、方法。
34.目的のタンパク質を精製する方法であって、タンパク質をイオン交換クロマトグラフィーに供することを含み、タンパク質がN末端又はC末端でペプチドタグの付加によって改変されている、方法。
35.ペプチドタグが、融合タンパク質をイオン交換レジンに結合させる役割を果たす、段落33又は段落34に記載の方法。
36.ペプチドタグが、(HR)n、(PR)n、(SR)n又は(PSR)nを含む、段落33~35のいずれか一つに記載の方法。
37.「n」が2~6の整数(両端を含む)である、段落36に記載の方法。
38.ペプチドタグが4~20アミノ酸長である、段落33~37のいずれか一つに記載の方法。
39.ペプチドタグが4~12アミノ酸長である、段落38に記載の方法。
40.ペプチドタグが、配列番号4~6、8又は9のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、段落33~39のいずれか一つに記載の方法。
41.ペプチドタグが、配列番号4~6、8又は9のいずれか1つのアミノ酸配列からなる、段落33~40のいずれか一つに記載の方法。
42.前記融合タンパク質が、目的のタンパク質とペプチドタグとの間にリンカーをさらに含む、段落33~41のいずれか一つに記載の方法。
43.リンカーがGG、GS、SS、SG、又はGGSGGを含む、段落42に記載の方法。
44.イオン交換クロマトグラフィーが陽イオン交換クロマトグラフィーである、段落1~24のいずれか一つに記載の融合タンパク質、又は段落31~43のいずれか一つに記載の方法。
【実施例
【0096】
[実施例1]
陽イオン交換カラムでの異なるタグを有するHla-CP5の精製
Sa5H Nuvia HR-S結合実験
材料:
Nuvia HR-S CIXクロマトグラフィーレジンは、BioRad(米国)から入手した。化学物質は、特に断りのない限り、Sigma-Aldrich(スイス)から入手した。反応チューブは、TPP社(スイス)から入手した。卓上遠心分離機(table top centrifuge)は5804R(Eppendorf、スイス)を使用した。NuPAGE 4~12% BisTris SDS-PAGE Gel及びCoomassie safe stainは、Invitrogen(米国)より入手した。異なるC末端タグ(HHHH、RRRR、HHRR、HRHR)を有するHlaをコードするプラスミドは、Genecust社(フランス)に注文して入手した。
【0097】
方法:
大腸菌W3110株は、黄色ブドウ球菌の莢膜多糖CP5を生成するように改変した。この株は、pglBをコードするプラスミド(pGVXN1221)及びGenecust社から入手した対応するHlaをコードするプラスミドで形質転換した。菌株は、酵母エキス及び大豆ペプトンを含む複合培地を使用して、標準的な手順に従って、2L容器の6パック発酵槽システムで増殖させた。アラビノース及びIPTGをHla及びPglBの誘導にそれぞれ使用した。回収は遠心分離によって行い、細胞ペレットはさらに使用するまで-20℃で凍結した。ペリプラズム抽出液は、1mLの発酵槽容量に相当する細胞ペレットから浸透圧ショック法により得られた。このために、細胞を25%のスクロース、100mM EDTA、200mM Tris、pH8の溶液に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。細胞にショックを与えるため、遠心分離後に得られたペレットを冷H2Oに再懸濁させた。上清は、さらに使用するまでRTで保存した。
【0098】
Nuvia HR-Sクロマトグラフィーレジン4×100μlを4×15mlのTPPチューブに移した。チューブを2000rpmで5分間遠心分離した。上清は廃棄した。ビーズを800μlの緩衝液A(20mM クエン酸Na、pH5.5)で2回洗浄した。800μlの個々の浸透圧ショック試料を1.6mlの緩衝液Aで希釈し、クロマトグラフィーレジンと混合した。混合物をRTで20分間インキュベートした。チューブは、インキュベーション時間の間、4~5回手動で振とうした。遠心分離した試料の上清をフロースルー(FT)とラベル付けした。ビーズを800μlの緩衝液Aで3回洗浄した。洗浄分画は廃棄した。溶出は、300μlの緩衝液B(20mM クエン酸Na、500mM NaCl、pH5.5)を2回アプライすることにより実施した。溶出画分をEL1及びEL2とラベル付けした。FT画分及びEL画分を、4~12%のBisTris Gelsを使用し、coomassie safe stainを用いて染色するSDS-PAGEにより解析した。結果は図1に示す。
【0099】
[実施例2]
陽イオン交換クロマトグラフィーを使用したタグ化(HRHRタグ)Hla-CP5及び非タグ化Hla-CP5の精製
HRHRタグ化CP5-Hlaバイオコンジュゲートを選択し、図2に示すように、陽イオン交換レジンを使用した選択的精製工程を改良した。精製タグを欠いたCP5-Hlaを使用して得られた結果を図3に示す。StGVXN1717(W3110 ΔwaaL;ΔwecA-wzzE、rmlB-wecG::Clm)は、黄色ブドウ球菌莢膜多糖CP5(CPS5)をコードするプラスミドpGVXN393、C末端ヒスチジン-アルギニン-ヒスチジン-アルギニンタグを有する又は有しない、131位にグリコシル化部位を有する黄色ブドウ球菌担体タンパク質HlaH35L-H48C-G122C pGVXN2533をコードするプラスミド、及びカンピロバクター・ジェジュニのオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBcuo N311V-K482R-D483H-A669VをコードするプラスミドpGVXN1221を用いてエレクトロポレーションにより同時形質転換された。
【0100】
しばらくの間、細胞をTB培地中で増殖させ、組換え多糖を恒常的に発現させ、Hla及びPglBを0.74の光学濃度OD600nmで誘導した。
【0101】
一晩の誘導後、細胞を回収し、CP5-Hlaバイオコンジュゲートを浸透圧ショック法によりペリプラズムから放出させた。細胞を8.3mM Tris-HCl pH7.4、43.3mM NaCl、0.9mM KCl及び再懸濁緩衝液(75%(w/v)スクロース、30mM EDTA、600mM Tris-HCl pH8.5)に再懸濁し、20分間、4℃で回転させた。細胞をペレット化し、浸透圧ショック緩衝液(10mM Tris-HCl pH8.0)に再懸濁し、続いて20分間、4℃でさらにインキュベートした。細胞を再度遠沈し、上清を1mlの陽イオン交換カラムにロードし、バイオコンジュゲートを勾配溶出によって回収した。溶出画分からのタンパク質を4~12%のSDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜上にブロットし、抗Hla抗体によって検出するか、又はゲルをSimplyBlue Safe Stainで直接染色した。その結果を図2(タグあり)及び図3(タグなし)に示す。
【0102】
さらなる詳細:タグ化タンパク質について、大腸菌細胞を回収し、4℃、9000rpmで15分間遠沈し、110mlの0.9%塩化ナトリウムで洗浄し、1560 OD600nmの同等物を浸透圧ショック法により抽出した。細胞を5mlの1/3×TBS(Tris緩衝生理食塩水、Fisher Scientific)及び2.5mlの再懸濁緩衝液(75%(w/v)スクロース、30mM EDTA、600mM Tris-HCl pH 8.5)に再懸濁し、20分間、4℃で回転させた。細胞をペレット化し、7.5mlの浸透圧ショック緩衝液(10mM Tris-HCl pH8.0)に再懸濁し、続いて30分間、4℃でさらにインキュベートした。細胞を遠心分離により再度遠沈し、上清を回収し、0.2μmフィルターで濾過した。2mlの濾液に5M塩化ナトリウム溶液を50mMの最終濃度になるまで補充し、1Mクエン酸を用いてpHを5.5に調整した。試料を14000rpm、4℃で、5分間の遠心分離により遠沈した。精製カラム(Proteus FliQ FPLCカラム、1ml、Generon)を1mlの陽イオン交換レジン(Nuvia HR-S、Biorad)で調製し、FPLCシステム(Aekta、Amersham Pharmacia)上で20mMクエン酸塩、50mM NaCl、pH5.5で平衡化した。試料を2mlのスーパーループで適用し、カラムを5mlの20mMクエン酸塩、50mMのNaCl、pH5.5で洗浄し、バイオコンジュゲートを20mMクエン酸塩、500mMのNaCl、pH5.5に勾配を適用して、10カラム体積で溶出した。回収されたフロースルー画分及び洗浄画分は500μlであり、溶出画分は350μlの体積であった。45μlのクロマトグラフィー画分に、15μlの4倍濃縮したLaemmli緩衝液を補充し、最終濃度62.5mMのTris-HCl pH6.8、2%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、5%(w/v)ベータ-メルカプトエタノール、10%(v/v)グリセロール、0.005%(w/v)ブロムフェノールブルーを得た。試料を95℃で15分間、煮沸し、40μlは、200ボルトで45分間、MOPS泳動緩衝液(50mM MOPS、50mM Tris塩基、0.1%SDS、1mM EDTA、pH7.7)を用いて、4~12%のSDS-PAGE(Nu-PAGE、4~12%Bis-Trisゲル、Life Technologies)により分離した。次に、タンパク質を、iBLOTゲル転写スタック(Novex、Life Technologiesによる)を用いてニトロセルロース膜上に転写した。ニトロセルロースを、20分間、室温でPBST(10mMリン酸緩衝液pH7.5、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム(Ambresco E703-500mlから購入)、0.1%(v/v)Tween)に溶解した10%(w/v)粉末ミルクでブロックし、続いて、PBST中の2.5μg/mlの一次ウサギ抗Hla抗体(ポリクローナル精製IgG、Glycovaxyn Nr 160)を用いて、1時間、室温でイムノブロット検出した。膜を、PBSTで2回洗浄し、PBST中の二次ヤギ抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体(Biorad、170-6515)とともに1時間、室温でインキュベートした。膜をPBSTで5分間、3回洗浄し、TBM(TMB1成分HRP膜基質)の添加によりタンパク質バンドを可視化し、反応を脱イオン水で停止した。
【0103】
煮沸した試料から、20μlを第2の4~12%SDS-PAGEゲル(Nu-PAGE、4~12%Bis-Trisゲル、Life Technologies)にロードし、タンパク質をMOPS泳動緩衝液(50mM MOPS、50mM Tris塩基、0.1% SDS、1mM EDTA、pH7.7)中で、200ボルトで45分間分離した。ゲルを10mlのSimplyBlue SafeStain(Life Technologies)で連続して2回染色し、続いて脱イオン水を用いて脱色工程を行った。結果を図2に示す。
【0104】
非タグ化タンパク質について、大腸菌細胞を回収し、4℃、9000rpmで15分間遠沈し、110mlの0.9%塩化ナトリウムで洗浄し、4200 OD600nmの同等物を浸透圧ショック法により抽出した。細胞を14mlの1/3×TBS(Tris緩衝生理食塩水、Fisher Scientific)及び7mlの再懸濁緩衝液(75%(w/v)スクロース、30mM EDTA、600mM Tris-HCl pH 8.5)に再懸濁し、30分間、4℃で回転させた。細胞を8000rpmで30分間、4℃にて遠心分離によりペレット化し、21mlの浸透圧ショック緩衝液(10mM Tris-HCl pH8.0)に再懸濁し、続いて30分間、4℃でさらにインキュベートした。細胞を遠心分離により再度遠沈し、上清を回収し、0.2μmフィルターで濾過した。2mlの濾液に5M塩化ナトリウム溶液を50mMの最終濃度になるまで補充し、体積を4mlに調節することにより1Mクエン酸を用いてpHを5.5に設定した。試料を14000rpm、4℃で、5分間の遠心分離により遠沈した。精製カラム(Proteus FliQ FPLCカラム、1ml、Generon)を1mlの陽イオン交換レジン(Nuvia HR-S、Biorad)で調製し、FPLCシステム(Aekta、Amersham Pharmacia)上で20mMクエン酸塩、50mM NaCl、pH5.5で平衡化した。2mlの試料を2mlのスーパーループで適用し、カラムを5mlの20mMクエン酸塩、50mMのNaCl、pH5.5で洗浄し、バイオコンジュゲートを20mMクエン酸塩、500mMのNaCl、pH5.5に勾配を適用して、10カラム体積で溶出した。回収されたフロースルー画分及び洗浄画分は500μlであり、溶出画分は350μlの体積であった。45μlのクロマトグラフィー画分に、15μlの4倍濃縮したLaemmli緩衝液を補充し、最終濃度62.5mMのTris-HCl pH6.8、2%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、5%(w/v)ベータ-メルカプトエタノール、10%(v/v)グリセロール、0.005%(w/v)ブロムフェノールブルーを得た。試料を95℃で15分間、煮沸した。その20μlは、図3)A)に示されるウェスタンブロットについて、200ボルトで45分間、MOPS泳動緩衝液(50mM MOPS、50mM Tris塩基、0.1%SDS、1mM EDTA、pH7.7)を用いて、4~12%のSDS-PAGE(Nu-PAGE、4~12%Bis-Trisゲル、Life Technologies)により分離した。次に、タンパク質を、iBLOTゲル転写スタック(Novex、Life Technologiesによる)を用いてニトロセルロース膜上に転写した。ニトロセルロースを、20分間、室温でPBST(10mMリン酸緩衝液 pH7.5、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム(Ambresco E703から購入-500ml、0.1%(v/v)tween)に溶解した10%(w/v)粉末ミルクでブロックし、続いて、PBST中の2.5μg/mlの一次ウサギ抗Hla抗体(ポリクローナル精製IgG、Glycovaxyn Nr 160)を用いて、1時間、室温でイムノブロット検出した。膜を、PBSTで2回洗浄し、PBST中の二次ヤギ抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体(Biorad、170-6515)とともに1時間、室温でインキュベートした。膜をPBSTで5分間、3回洗浄し、TBM(TMB1成分HRP膜基質)の添加によりタンパク質バンドを可視化し、反応を脱イオン水で停止した。
【0105】
煮沸した試料から、40μlをSimplyBlues染色用の第2の4~12%SDS-PAGEゲル(Nu-PAGE、4~12%Bis-Trisゲル、Life Technologies)にロードし、タンパク質をMOPS泳動緩衝液(50mM MOPS、50mM Tris塩基、0.1%SDS、1mM EDTA、pH7.7)中で、200ボルトで45分間分離した。ゲルを10mlのSimplyBlue SafeStain(Life Technologies)で連続2回染色し、続いて脱イオン水を用いて脱色工程を行った。結果を図3に示す。結果は、非タグ化タンパク質はタグ化タンパク質とは異なり、イオン交換レジンに結合しなかったことを示す。
【0106】
[実施例3]
Nuvia-S及びCapto-Sイオン交換クロマトグラフィーを使用したタグ化EPAバイオコンジュゲートの精製
材料:
改変されたEPAを以下のレジン:Nuvia S (BioRad)、Capto S Impact (GE Healthcare)を用いて試験した。BioRad社のNGC Systemを使用した。緩衝液組成:酢酸ナトリウム又はリン酸ナトリウム、ナトリウム及び塩化ナトリウム(Sigma)。IPC SDS-PAGE及びCoomassie save stainは上記と同様に行った。ウェスタンブロット:ウサギ抗体抗EPAはSigma P2318から入手し、ヤギ抗ウサギHRP抗体はBiorad 170-6515から入手した。
【0107】
方法:
大腸菌W3110株を、血清型Sp33Fの肺炎連鎖球菌多糖を生成するように改変した。これらの菌株を、pglBをコードするプラスミド及びGenecust社から入手した対応するEPAをコードするプラスミドで形質転換した。発酵後、浸透圧ショック及び清澄化を上記と同様に実施した。遠心分離後の上清は、清澄化された溶解物に相当した。
【0108】
異なるペプチドタグ、すなわち、HRHR(配列番号41のp6291)、HRHRHR(配列番号42のp6292)、HRHRHRHR(配列番号43のp6612)、RRRR(配列番号44のp6293)、RRRRRR(配列番号45のp6613)、PRPRPRPRPRPR(配列番号46のp6614)、及びPSRPSRPSRPSR(配列番号47のp6615)を有するグリコシル化EPAを含有する清澄化溶解物のpHをpH6.0±0.2に合わせ、予め20mM 酢酸Na又はNaPO4(いずれもpH5.8)で平衡化したNuvia S又はCapto S Impactカラムにロードした。6カラム容量(CV)の洗浄フェーズに続いて、6CVの溶出緩衝液(20mM 酢酸Na又はNaPO4;200mM 塩化ナトリウム pH6.0)を実施した。レジンCapto S Impactは能力及び有効性の向上を示したため、5mLから100mLへのカラム容量のアップスケールに使用した。クロマトグラフィー工程の特定の画分は、SDS PAGEで分析され、Coomassie染色された。さらに、特異性及び感度を高めるために、EPA特異的ウェスタンブロットを実施した。結果を図4図10に示す。明らかなように、最良の結果は、ペプチドタグPRPRPRPRPRPR(配列番号46)を有するEPA融合タンパク質p6614、及びペプチドタグPSRPRPSRPSR(配列番号47)を有するEPA融合タンパク質p6615で得られた。Rリピートタグ及び短いHRタグにはあまり効果はなかったが、融合タンパク質p6612(配列番号44)の最長HRタグ(HRHRHRHR)はカラムに結合した。
【0109】
異なるPSのコンジュゲーションがカラムへのEPAの結合に影響を及ぼすかどうかを試験するために、配列番号46のp6614をまた、血清型Sp8由来の肺炎連鎖球菌莢膜多糖及びフレキシネル赤痢菌(S. flexneri)2aO多糖を発現する大腸菌で発現させ、Sp8-EPA及びSf2-EPAバイオコンジュゲートを生産した(Sp8は負に荷電しており、2a Oは非荷電である)。その結果を図11及び図12に示すが、EPA-Sp8及びEPA-Sf2は両方ともCapto Sに依然として結合することが示される。
【0110】
配列表
配列番号1 H4タグのアミノ酸配列
【0111】
配列番号2 R4タグのアミノ酸配列
【0112】
配列番号3 H2R2タグのアミノ酸配列
【0113】
配列番号4 (HR)2タグのアミノ酸配列
【0114】
配列番号5 (HR)3タグのアミノ酸配列
【0115】
配列番号6 (HR)4タグのアミノ酸配列
【0116】
配列番号7 R6タグのアミノ酸配列
【0117】
配列番号8 (PR)6タグのアミノ酸配列
【0118】
配列番号9 (PSR)4タグのアミノ酸配列
【0119】
配列番号10 成熟野生型EPAのアミノ酸配列。太字及び下線は、解毒化するために置換/除去される残基である
【0120】
配列番号11 L552V/ΔE553解毒化突然変異(太字、下線)を有するEPAのアミノ酸配列
【0121】
配列番号12 解毒化突然変異及び(HR)2タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0122】
配列番号13 解毒化突然変異及び(HR)3タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0123】
配列番号14 解毒化突然変異及び(HR)4タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0124】
配列番号15 解毒化突然変異及びR4タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0125】
配列番号16 解毒化突然変異及びR6タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0126】
配列番号17 解毒化突然変異及び(PR)6タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0127】
配列番号18 解毒化突然変異及び(PSR)4タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0128】
配列番号19 成熟野生型Hlaのアミノ酸配列
【0129】
配列番号20 K131に対して置換されたグリコサイトKDQNRTK、H35L解毒化突然変異、H48C/G122C安定化突然変異(太字、下線)を有するHlaのアミノ酸配列
【0130】
配列番号21 グリコサイト、解毒化突然変異及び安定化突然変異、リンカー並びにH4タグを有するHlaのアミノ酸配列
【0131】
配列番号22 グリコサイト、解毒化突然変異及び安定化突然変異、リンカー並びにR4タグを有するHlaのアミノ酸配列
【0132】
配列番号23 グリコサイト、解毒化突然変異及び安定化突然変異、リンカー並びにH2R2タグを有するHlaのアミノ酸配列
【0133】
配列番号24 グリコサイト、解毒化突然変異及び安定化突然変異、リンカー並びに(HR)2タグを有するHlaのアミノ酸配列
【0134】
配列番号25-最小PglBグリコサイトコンセンサス配列
【0135】
配列番号26-全長PglBグリコサイトコンセンサス配列
【0136】
配列番号27-PglBグリコサイト配列(Hla)
【0137】
配列番号28-PglBグリコサイト配列(EPA)
【0138】
配列番号29-FlgIシグナル配列
【0139】
配列番号30-OmpAシグナル配列
【0140】
配列番号31-MalEシグナル配列
【0141】
配列番号32-PelBシグナル配列
【0142】
配列番号33-LTIIbシグナル配列
【0143】
配列番号34-XynAシグナル配列
【0144】
配列番号35-DsbAシグナル配列
【0145】
配列番号36-TolBシグナル配列
【0146】
配列番号37-SipAシグナル配列
【0147】
配列番号38 解毒化突然変異、並びにY208及びR274の2つのグリコサイトを有するEPAのアミノ酸配列
【0148】
配列番号39 解毒化突然変異、並びにY208、R274及びA519の3つのグリコサイトを有するEPAのアミノ酸配列
【0149】
配列番号40 解毒化突然変異、並びにN末端、Y208、R274及びA519の4つのグリコサイトを有するEPAのアミノ酸配列
【0150】
配列番号41 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト並びに(HR)2タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0151】
配列番号42 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト並びに(HR)3タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0152】
配列番号43 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト並びにR4タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0153】
配列番号44 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト、リンカー並びに(HR)4タグ有するEPAのアミノ酸配列
【0154】
配列番号45 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト、リンカー並びにR6タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0155】
配列番号46 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト並びに(PR)6タグを有するEPAのアミノ酸配列
【0156】
配列番号47 解毒化突然変異、DsbAシグナル配列、Y208、R274及びA519の3つのグリコサイト並びに(PSR)4タグを有するEPAのアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022538580000001.app
【国際調査報告】