(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】骨格筋における状態又は障害を予防又は治療するための、トリゴネリン及びミネラルを使用する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/06 20060101AFI20220829BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20220829BHJP
A61K 33/14 20060101ALI20220829BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220829BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20220829BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20220829BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220829BHJP
A61K 36/02 20060101ALI20220829BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220829BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220829BHJP
A23K 20/132 20160101ALI20220829BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20220829BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20220829BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K33/06
A61K31/455
A61K33/14
A61P21/00
A61P43/00 111
A61K36/48
A61K36/74
A61K36/185
A61K36/02
A23L33/10
A23L33/105
A23K20/132
A23K10/30
A23K50/40
A61K33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577010
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020068775
(87)【国際公開番号】W WO2021004915
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ファイギ, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】メンブレス, マテュー
(72)【発明者】
【氏名】ソレンティーノ, ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ジネール, マリア ピラール
(72)【発明者】
【氏名】モコ, ソフィア
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
2B005AA06
2B005BA01
2B005EA01
2B005EA02
2B150AA01
2B150AA06
2B150AB03
2B150AB10
2B150CE15
2B150DB22
2B150DD44
2B150DD45
2B150DD47
2B150DD57
4B018LB08
4B018LB10
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4B018MD04
4B018MD18
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4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
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4C086HA02
4C086HA04
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4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZC62
4C088AA12
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB59
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA11
4C088BA23
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZC62
4C088ZC75
(57)【要約】
本発明は、骨格筋状態又は疾患を予防又は治療するための組成物及び方法に関する。本発明はまた、骨格筋におけるNAD+レベルを増加させるのに役立つ組成物及び方法にも関する。好ましくは、本発明は、骨格筋の状態又は疾患を予防又は治療するための、トリゴネリンと、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択されるミネラルとを使用する組成物及び方法に関する。本発明の組成物のレシピエントは、例えば、老齢個体、又はサルコペニアを有する個体、又は例えば運動、筋肉損傷若しくは手術の後の、骨格筋の回復のために本発明の組成物を必要とする個体であり得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格筋におけるNAD+レベルを増加させて骨格筋の疾患又は状態を予防又は治療するための組成物であって、トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む、組成物。
【請求項2】
前記ミネラルが、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
食品製品、飲料製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記トリゴネリンが、コーヒー、コロハ、麻、又は藻類の抽出物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリゴネリンが、少なくとも約25%~50%のトリゴネリンを含むコロハの抽出物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記トリゴネリンが、化学的に合成されたものであり、少なくとも約90%のトリゴネリンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象において骨格筋機能を維持又は向上させるための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
筋機能の維持が、疼痛、攣縮及び筋痙攣を伴わない骨格筋収縮及び弛緩によって評価される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
筋機能の向上が、筋幹細胞及び/又は筋芽細胞及び/又は筋管の数の増加によって評価される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
対象において骨格筋量を維持又は増加させるための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
対象において骨格筋消耗を予防又は低減するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
激しい運動後の骨格筋の回復を増進するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
損傷、外傷、又は手術の後の骨格筋の回復を増進するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
骨格筋疾患及び/又は状態後の骨格筋の回復を増進するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
骨格筋疾患及び/又は状態が、サルコペニア、悪液質若しくは前悪液質、ミオパチー、ジストロフィー、及び/又は激しい運動、筋損傷若しくは手術の後の回復期からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
悪液質が、がん、慢性心不全、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、自己免疫障害、慢性炎症性障害、肝硬変、食欲不振、慢性膵炎、代謝性アシドーシス及び/又は神経変性疾患から選択される疾患に関連する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
対象哺乳動物においてNAD+を増加させる方法であって、
骨格筋の疾患又は状態を予防又は治療するのに有効な単位用量形態で有効な量の請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を、処置を必要とする前記哺乳動物に送達する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記骨格筋の疾患又は状態が、サルコペニア、悪液質若しくは前悪液質、ミオパチー、ジストロフィー、及び/又は激しい運動、筋損傷若しくは手術の後の回復期の群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
必要とする対象において骨格筋の疾患又は状態を予防又は治療するための方法であって、
i)トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を前記対象に用意する工程と、
ii)前記組成物を前記対象に投与する工程と、
を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
必要とする対象において骨格筋の疾患又は状態を予防又は治療するための方法であって、
i)トリゴネリンと、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択されるミネラルとを本質的に含む組成物を、前記対象に用意する工程と、
ii)前記組成物を前記対象に投与する工程と、
を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、又はヒツジからなる群から選択される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、好ましくはヒトである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
加齢に伴う筋肉量及び筋機能の低下は、全ての個体において避けられないものであるが、その進行は、遺伝的要因並びに身体活動及び栄養摂取(特にミネラルの十分な摂取)などの環境要因に大きく依存する。サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量及び筋機能の低下が悪化して、生活の質に影響を及ぼすようになっている状態であるとして定義されている。対照的に、フレイルは、加齢に伴う身体機能の衰えという別の分類であり、筋肉量ではなく、筋力及び筋機能の低下を特徴とする。サルコペニアは、老齢集団のうち可動性が病的状態にある個体を区分する分類を用い、筋肉量及び筋機能の低下をもとに臨床的に診断される。サルコペニアからは将来的な身体障害及び死亡が予測される。サルコペニアには、2016年に公式のICD-10疾病コードが割り当てられている(Ankerら、2016)。
【0002】
トリゴネリンは、NAD+経路に供給される重要なNAD+前駆体である。NAD+は、還元-酸化反応及びエネルギー代謝に関連した複数種の酵素の機能に不可欠な酵素補因子である。NAD+は、アミノ酸、脂肪酸、及び炭水化物の細胞代謝において電子担体として機能する。NAD+は、サーチュイン(下位生物における代謝機能及び寿命延長に関与するタンパク質脱アセチル化酵素ファミリー)の活性化因子及び基質として機能する。NAD+の補酵素活性、並びにその生合成及びバイオアベイラビリティの厳密な調節により、NAD+は、老化プロセスに明らかに関与し、かつ骨格筋が適切に機能することを可能にするためのエネルギー産生に重要な、代謝をモニタリングする系となっている。
【0003】
カルシウムが存在すると筋収縮のトリガーに役立つ他、マグネシウムは筋弛緩に作用することから、カルシウムなどのミネラルは筋機能に不可欠である。筋肉のマグネシウムが欠乏している場合、筋痙攣、疼痛、及び筋肉の攣縮を伴い得る。ナトリウム及びカリウムは、ミネラル及び電解質の両方として働き、神経細胞からの、筋肉を収縮させるシグナルとなる電気的活動電位に関与することから、筋収縮においても重要な役割を果たす。
【0004】
[発明の概要]
本開示は、トリゴネリンを本質的に含む、又はトリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を提供する。
【0005】
一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、組成物中の植物抽出物、例えば、コーヒー抽出物、麻抽出物、カボチャ種子抽出物、及び/又はコロハ抽出物のうちの1種以上、例えば、トリゴネリンが濃縮された植物抽出物によって、植物素材から提供される。
【0006】
好ましい実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、コロハ抽出物から提供される。
【0007】
一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、藻類源、例えば、コンブ(Laminariaceae)抽出物から提供される。
【0008】
一部の実施形態では、好ましいミネラルは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択される。
【0009】
一実施形態では、組成物配合物は、食品製品、飲料製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
本組成物の配合物は、個体、例えばヒト(例えば、治療を受けているヒト)、又はイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、若しくはヒツジ(例えば、治療を受けているイヌ又はネコなどのコンパニオンアニマル)、又は畜牛、家禽、ブタ、ヒツジ(例えば、乳又は肉の生産のため農業で使用される)に対して、骨格筋への1つ以上の利益を提供することができる。
【0011】
好ましくは、組成物の配合物は、骨格筋におけるNAD+生合成及びエネルギー産生を増加させる。
【0012】
一実施形態では、組成物は、経腸投与される。
【0013】
一実施形態では、本発明は、トリゴネリンを本質的に含む、又はトリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物の単位剤形を提供する。単位剤形は、特に骨格筋において、細胞及び組織内のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のレベルを増加させて、細胞及び組織の生存率並びに/又は細胞及び組織全体の健康を改善することによって、治療若しくは予防を必要とする又はそのリスクがある個体において骨格筋に関連する疾患又は状態を治療又は予防(例えば、発生率及び/又は重症度の低減)するのに有効な量の本発明の組成物を含有する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、トリゴネリンを本質的に含む、又はトリゴネリンとミネラルとを含む組成物の単位剤形を提供する。単位剤形は、治療若しくは予防を必要とする又はそのリスクがある個体において、酸化的代謝に関連する疾患又は状態を治療又は予防する(例えば、発生率及び/又は重症度を低減する)のに有効な量の組成物を含有する。
【0015】
一実施形態では、好ましいミネラルは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選択される。組成物は、食品製品、飲料製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0016】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の1つの利点は、年齢と共に減少するNAD+プールを補充することである。
【0017】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、老化に伴う代謝の減速を補うのを助けることである。
【0018】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、酸化的代謝に関する効果を増強すること、及びDNA損傷を防ぐことである。
【0019】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、体が脂肪を代謝し、除脂肪体重を増加させるのを助けることである。
【0020】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、対象において骨格筋機能を維持又は向上させることである。
【0021】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、例えば筋幹細胞及び/又は筋芽細胞及び/又は筋管の数を増加させることによって、筋機能を向上させることである。
【0022】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、例えば、疼痛、攣縮及び筋痙攣を伴わない骨格筋収縮及び弛緩によって評価したときの、筋機能の維持である。
【0023】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、対象において骨格筋量を維持又は増加させることである。
【0024】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、対象において骨格筋消耗を予防又は低減することである。
【0025】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、激しい運動の後の骨格筋の回復を増進することである。
【0026】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、損傷後の骨格筋の回復を増進することである。
【0027】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、外傷又は手術後の骨格筋の回復を増進することである。
【0028】
本発明によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、上記のように、悪液質若しくは前悪液質;サルコペニア、ミオパチー、ジストロフィー、及び/又は激しい運動、筋損傷若しくは手術の後の回復期などの、疾患及び状態の後の骨格筋における改善を補助することである。特に、悪液質は、がん、慢性心不全、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、自己免疫障害、慢性炎症性障害、肝硬変、食欲不振、慢性膵炎、代謝性アシドーシス及び/又は神経変性疾患に関連する。
【0029】
一実施形態では、本発明は、対象哺乳動物においてNAD+を増加させる方法であって、骨格筋の疾患又は状態を予防及び/又は治療するのに有効な単位用量形態で有効な量の本発明による組成物を、かかる処置を必要とする哺乳類に送達する工程を含む、方法を提供する。悪液質若しくは前悪液質;サルコペニア、ミオパチー、ジストロフィー、及び/又は激しい運動、筋損傷若しくは手術の後の回復期などの骨格筋の疾患又は状態。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、必要とする対象において骨格筋の疾患又は状態を予防及び/又は治療するための、対象哺乳動物においてNAD+を増加させる方法であって、
i)トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を、対象に用意する工程と、
ii)上記組成物を上記対象に投与する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、必要とする対象において骨格筋の疾患又は状態を予防及び/又は治療するための、対象哺乳動物においてNAD+を増加させる方法であって、
i)トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を、対象に用意する工程であって、ミネラルが、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択される、工程と、
ii)上記組成物を上記対象に投与する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0032】
一部の実施形態では、対象としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、又はヒツジが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、好ましくはヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】トリゴネリン処理時のヒト及びゼブラフィッシュにおけるNAD+濃度の酵素定量。 Figure1のAは、用量5μM、50μM、500μM、及び1mMのトリゴネリンで6時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)におけるNAD+濃度の酵素定量を示す。 Figure1のBは、用量500μM及び1mMのトリゴネリンで16時間処理したゼブラフィッシュ幼生(DPF4)におけるNAD+濃度の酵素定量を示す。 #、
*は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.1、p<0.05)。データは平均±SEMとして表した。
【
図2-1】トリゴネリン処理時の、筋管におけるNAD+濃度、及び安定同位体で標識した、NAD+への組み込みの質量分析。 Figure2のAは、2名の異なるドナーからのヒト骨格筋筋管(HSMM)を用量500μMのトリゴネリンで6時間処理したときのNAD+の、対照と比較した相対濃度を、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)で測定した結果を示す。 Figure2のBは、500μMの用量においてNAD+(M+1)に組み込まれた、標識されたトリゴネリンの相対量を、LC-MSで測定した結果を示す。
**、
****は、それぞれの対照との差を示す(対応のないt検定、それぞれp<0.01、p<0.0001)。データは平均±SEMとして表した。 Figure2のCは、安定同位体で標識した、トリゴネリン処理時のNAD+への取り込みを示す。C
*は、標識された
13C(天然
12Cに対してM+1)を表し、D
3は、重水素/
2H(天然
1Hに対してM+1)を表す。
【
図2-2】トリゴネリン処理時の、筋管におけるNAD+濃度、及び安定同位体で標識した、NAD+への組み込みの質量分析。 Figure2のAは、2名の異なるドナーからのヒト骨格筋筋管(HSMM)を用量500μMのトリゴネリンで6時間処理したときのNAD+の、対照と比較した相対濃度を、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)で測定した結果を示す。 Figure2のBは、500μMの用量においてNAD+(M+1)に組み込まれた、標識されたトリゴネリンの相対量を、LC-MSで測定した結果を示す。
**、
****は、それぞれの対照との差を示す(対応のないt検定、それぞれp<0.01、p<0.0001)。データは平均±SEMとして表した。 Figure2のCは、安定同位体で標識した、トリゴネリン処理時のNAD+への取り込みを示す。C
*は、標識された
13C(天然
12Cに対してM+1)を表し、D
3は、重水素/
2H(天然
1Hに対してM+1)を表す。
【
図3】トリゴネリン処理時の肝臓及び筋肉におけるNAD+取り込みの酵素定量。 強制経口投与(Figure3のA、Figure3のC)又は腹腔内投与(Figure3のB、Figure3のD)により250mg/kgのトリゴネリン(Trig)を受けてから120分後のマウスにおけるNAD+の酵素定量。
*は、対照との差を示す(対応のないt検定、p<0.05)。データは平均±SEMとして表した。
【
図4】化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリンを濃縮したコロハ種子抽出物での処理後のヒト初代筋芽細胞において測定されたNAD
+。 Figure4のAは、異なる用量の合成トリゴネリン一水和物で16時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)及びNAD
+の定量を示す。 Figure4のBは、トリゴネリンを濃縮したコロハ種子抽出物(40.45%トリゴネリン)を異なる用量で用い16時間処理したヒト骨格筋筋管(HSMM)及びNAD+の定量を示す。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図5】300mg/kgのトリゴネリンクロリド(Trig)又は等モル量のコロハ種子抽出物の強制経口投与の120分後に測定したC57BL/6JRjマウスの肝臓NAD
+レベル。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図6】1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した1日目の成体ワーム(adult animals)、及び8日目の高齢ワームで測定した、線虫(C.elegans)全溶解物のNAD
+レベルの、日齢を合わせた対照との比較。
*、
**、
****は、対照との差を示す(一元配置分散分析、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001)。データは平均±SDとして表した。
【
図7-1】線虫の生存率、平均速度、距離、及び運動性。 Figure7のAは、1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した線虫の生存曲線は、寿命が21%延びている。 Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期1日目に実施した自発的運動性アッセイ(spontaneous mobility assay)で測定された平均速度の対照との比較。 Figure7のCは、高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離。 Figure7のDは、8日目及び11日目の老齢ワームで評価した刺激後運動スコアは、物理的刺激に応答したワームの割合を示す。
*、
**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。 Figure7のA及びDでは、データは平均±SDとして表した。 Figure7のB及びCでは、データは平均±SEMとして表した。
【
図7-2】線虫の生存率、平均速度、距離、及び運動性。 Figure7のAは、1mMのトリゴネリンクロリド(Trig)で処理した線虫の生存曲線は、寿命が21%延びている。 Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期1日目に実施した自発的運動性アッセイ(spontaneous mobility assay)で測定された平均速度の対照との比較。 Figure7のCは、高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離。 Figure7のDは、8日目及び11日目の老齢ワームで評価した刺激後運動スコアは、物理的刺激に応答したワームの割合を示す。
*、
**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。 Figure7のA及びDでは、データは平均±SDとして表した。 Figure7のB及びCでは、データは平均±SEMとして表した。
【
図8】線虫のミトコンドリアDNA対核DNA比(mt/nDNA)
図8は、8日目の老齢ワームにおける核でコードされている遺伝子(act-1)に対するミトコンドリアでコードされている遺伝子(nduo-1)の比を示す。
*は、対照との差を示す(スチューデント検定、p<0.05)。 データは平均±SDとして表した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
パーセンテージは全て、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比は全て、特に明記しない限り重量によるものとする。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0035】
更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers)、整数(whole)又は分数、を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0036】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、かかる「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
【0037】
同様に、「含む/構成される(comprise)」、「含む/構成される(comprises)」、及び「含む/構成される(comprising)」という用語は、排他的ではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈される。しかし、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的に構成される」、及び「から構成される」実施形態の開示でもある。「を本質的に含む」とは、実施形態が、特定の構成要素を50重量%超、好ましくは特定の構成要素を少なくとも75重量%、より好ましくは特定の構成要素を少なくとも85重量%、最も好ましくは特定の構成要素を少なくとも95重量%、例えば、特定の構成要素を少なくとも99重量%含むことを意味する。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合に、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示される全ての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0039】
「動物」としては、齧歯類動物、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどの飼養動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合、これらの用語はまた、文章の文脈によって示される、又は示すことを目的としている効果について能力を有する任意の動物、例えば、オートファジーが可能な動物にも適用される。本明細書で使用するとき、用語「対象」又は「患者」は、本明細書で定義される治療を受けている又は治療を受ける予定の動物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトを含むと理解される。本明細書で使用するとき、「個体」及び「患者」という用語は、多くの場合、ヒトを指して使用されるが、本開示はヒトに限定されない。
【0040】
したがって、「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書で開示される方法及び組成物が有益となり得る任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。実際に、ヒト以外の動物は、ヒトの状態によく似た長期の重篤な病気を経験する。これらの重篤な動物は、ヒトに対応するものと同じ代謝障害、免疫障害、及び内分泌腺障害、並びに臓器不全及び筋消耗の発症を経験する。更に、動物は、老化の影響も同様に経験する。
【0041】
用語「老齢」は、ヒトに関連して、少なくとも55歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈における用語「老齢成体(older adult)」又は「高齢個体(ageing individual)」は、少なくとも45歳、好ましくは50歳以上、より好ましくは55歳以上の年齢を意味し、老齢の個体を含む。
【0042】
他の動物については、「老齢成体」又は「高齢個体」とは、その個々の種、及び/又は種内における属の、平均寿命の50%を超えたものをいう。動物は、平均期待寿命の66%を超えた場合、好ましくは平均期待寿命の75%を超えた場合、より好ましくは平均期待寿命の80%を超えた場合に、「老齢(elderly)」であるとみなされる。高齢のネコ又はイヌは、少なくとも約5歳齢である。老齢のネコ又はイヌは、少なくとも約7歳齢である。
【0043】
サルコペニア
サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量及び筋機能(筋力及び歩行速度を含む)の低下として定義される。サルコペニアは、筋量低下、筋力低下、及び身体パフォーマンス低下のうちの1つ以上によって評価することができる。
【0044】
サルコペニアは、例えばChenら(2014)(J Am Med Dir Assoc.2014 Feb;15(2):95-101)に記載されているように、AWGSOP(Asian Working Group for Sarcopenia in Older People)の定義に基づいて、対象において診断することができる。筋量低下は、概ね、身長の二乗に対して正規化した体肢除脂肪量(ALM指数)の低下を基準とすることができ、具体的には男性の場合は7.00kg/m2未満、女性の場合は5.40kg/m2未満のALM指数を基準とすることができる。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で26kg未満、女性で18kg未満の握力を基準とすることができる。
【0045】
追加的に又は代替的に、サルコペニアは、例えばCrutz-Jentoftら(2019)(Age Ageing.2019 Jan 1;48(1):16-31)に記載されているように、EWGSOP(European Working Group for Sarcopenia in Older People)の定義に基づいて、対象において診断することができる。筋量低下は、概ね、身長の二乗に対し正規化した体肢除脂肪量(ALM指数)の低下を基準とすることができ、具体的には男性の場合は7.23kg/m2未満、女性の場合は5.67kg/m2未満のALM指数を基準とすることができる。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で30kg未満、女性で20kg未満の握力を基準とすることができる。追加的に又は代替的に、サルコペニアは、例えばStudenskiら(2014)(J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2014 May;69(5):547-58)に記載されているように、アメリカ国立衛生研究所(Foundation for the National Institutes of Health、FNIH)の定義に基づいて、対象において診断することができる。筋量低下は、概ね、体格指数(BMI;kg/m2)に対して正規化した体肢除脂肪量(ALM)の低下を基準とすることができ、具体的にはBMIに対するALMが、男性の場合は0.789未満、女性の場合は0.512未満であることを基準とすることができる。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で26kg未満、女性で16kg未満の握力を基準とすることができる。筋力低下はまた、概ね、握力対体格指数の低下を基準とすることができ、具体的には男性で1.00未満、女性で0.56未満の握力対体格指数を基準とすることができる。
【0046】
本明細書で使用するとき、「フレイル」は、加齢に伴い複数の生理学的システムにわたって予備能及び機能が低下することに起因して、脆弱性が高まった結果、日常的又は急性のストレッサーに対処する能力が損なわれる、臨床的に認識可能な状態として定義される。確立された定量的基準が存在しないため、フレイルは、Friedらによって、エネルギー低下を示す5つの表現型基準のうち3つに合致することとして運用上定義されている:(1)筋力低下(weakness)(性別及び体格指数で補正して、ベースラインで集団の下位20%の握力)、(2)持久力及びエネルギーの低下(VO2 maxと関連する自己申告による疲労)、(3)歩行速度の低下(slowness)(15フィートの歩行時間を基準とし、性別及び身長で補正して、ベースラインで集団の下位20%)、(4)身体活動の低下(ベースラインでの一週間当たりの摂取キロカロリーの重みつき得点、性別ごとに特定された身体活動の五分位のうち最下位;例えば、男性については383kcal/週未満、女性については270kcal/週未満)、及び/又は意図しない体重減少(過去1年間で10ポンド)。Fried LPら,J.Gerontol.A.Biol.Sci.Med.Sci.56(3):M146-M156(2001)。これらの基準のうちの1つ又は2つが存在するプレフレイル段階は、フレイルに進行するリスクが高いものとして特定される。
【0047】
悪液質及び関連疾患
悪液質は、基礎疾患に関連する複雑な代謝症候群であり、筋肉の減少を特徴とし、脂肪量の減少を伴う場合も伴わない場合もある。悪液質に顕著な臨床的特徴は、成人における(体液貯留分を補正した)体重減少又は小児の成長障害(内分泌障害を除く)である。
【0048】
悪液質は、がん、慢性心不全、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、自己免疫障害、慢性炎症性障害、肝硬変、食欲不振、慢性膵炎、並びに/又は代謝性アシドーシス及び神経変性疾患などの疾患を有する患者においてしばしば見られる。
【0049】
特定の種類のがん、例えば、膵臓がん、食道がん、胃がん、腸がん、肺がん、及び/又は肝臓がんでは、悪液質が特に一般的に見られる。
【0050】
悪液質について国際的に認められている診断基準は、限られた期間を通しての(over a restricted time)、例えば、6か月間での5%を超える体重減少、又は現在の体重及び身長(体格指数[BMI]が20kg/m2未満である)若しくは骨格筋量(DXA、MRI、CT、又は生体インピーダンスによって測定される)により消耗を既に示している個体における2%を超える体重減少、というものである。悪液質は、様々なステージを経て、すなわち前悪液質から悪液質、難治性悪液質へと徐々に進行し得る。重症度は、エネルギー貯蔵及び身体タンパク質(BMI)の消耗度に応じて、進行中の体重減少と組み合わせて分類することができる。
【0051】
特に、がん悪液質は、過去6ヶ月間(単純な飢餓のない状態で)での体重減少が5%超であること;又はBMIが20未満でありかつ体重減少度が2%超であること;又は体肢除脂肪量が、筋量低下と矛盾しないこと(男性で7.26kg/m2未満、女性で5.45kg/m2未満)、かつ任意の体重減少度が2%超であること、として定義されている(Fearonら、2011)。
【0052】
前悪液質は、食欲不振及び代謝の変化と併せて体重減少が5%以下であることとして定義され得る。現在、更に進行する可能性が高い前悪液質の患者、又は前悪液質が進行する速度、を特定するための強力なバイオマーカーは存在しない。難治性悪液質は、本質的に患者の臨床的特性及び状況に基づいて定義される。
【0053】
ミオパチー及び関連する状態
ミオパチーは、筋線維の機能不全に起因する筋力低下が初発症状である神経筋障害である。ミオパチーの他の症状としては、筋肉痙攣、硬直、及び痙縮が挙げられ得る。ミオパチーは、遺伝性(筋ジストロフィーなど)、又は後天性(一般的な筋痙攣など)であり得る。
【0054】
ミオパチーは以下のように分類される。(i)先天性ミオパチー:運動技能の発達遅延を特徴とし;出生時に骨格異常及び顔面異常が明白である場合がある(ii)筋ジストロフィー:随意筋の進行性の衰弱を特徴とし、出生時に認められる場合がある(iii)ミトコンドリアミオパチー:エネルギーを制御する細胞内構造体ミトコンドリアの遺伝子異常に起因し、カーンズ・セイヤー症候群、MELAS及びMERRF筋型糖原病を含み、グリコーゲン及びグルコース(血糖)を代謝する酵素を制御する遺伝子の変異に起因し、ポンペ病、アンダーソン病、及びコリ病を含む
(iv)ミオグロビン尿症:筋肉の働きに必要な燃料(ミオグロビン)の代謝障害に起因し;マッカードル病、タルイ病、ディマウロ病を含む
(v)皮膚筋炎:
皮膚及び筋肉の炎症性ミオパチー
(vi)骨化性筋炎:筋組織で骨が成長することを特徴とする
(vii)家族性周期性四肢麻痺:腕及び脚の筋力低下に関するエピソードを特徴とする
(viii)多発性筋炎、封入体筋炎、及び関連するミオパチー:骨格筋の炎症性ミオパチー
(ix)神経筋緊張症:ひきつり及び硬直の交互のエピソードを特徴とし;及びスティッフパーソン症候群:硬直及び反射性痙縮のエピソードを特徴とする一般的な筋肉痙攣及び硬直
(x)テタニー:腕及び脚の痙縮が長引くことを特徴とする。(参照:https://www.ninds.nih.gov/disorders/all-disorders/myopathy-information-page)。
【0055】
手術及び筋肉外傷による筋損傷後の回復
筋損傷は、筋、腱、又はこれらの両方における急性又は慢性軟組織損傷を引き起こす、挫傷、伸張、又は裂傷によって引き起こされ得る。筋損傷は、筋肉の疲労、酷使、又は不適切な使用の結果として生じ得る。筋損傷は、身体活動中の落下、骨折、又は酷使などの肉体外傷後にも生じ得る。筋損傷はまた、関節置換関節鏡手術などの手術後にも生じ得る。
【0056】
用語「治療」及び「治療すること」には、状態又は疾患(障害)の改善をもたらす任意の効果、例えば状態又は疾患を和らげること、軽減すること、制御すること、又は解消させることが含まれる。この用語は、必ずしも完治するまで対象が処置/治療されることを意味するものではない。状態又は疾患を「治療すること」又は「その治療」の非限定的な例としては、(1)状態又は疾患を阻害すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の発症を止めること、及び(2)状態又は疾患を緩和すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の一時的又は永続的な消退を生じさせることが挙げられる。治療は患者に関連するものであってもよく、又は医師に関連するものであってもよい。
【0057】
用語「予防」又は「予防すること」は、状態又は障害にさらされ得る又はそれに罹り易い傾向があり得るが、まだ状態又は障害の症状を呈していない又はそれが現れていない個体において、言及される状態又は障害の臨床症状を発症させないことを意味する。用語「状態」及び「疾患/障害」は、任意の疾患、状態、症状、又は徴候を意味する。
【0058】
相対的用語「改善された」、「増加された」、及び「増強された」などは、タンパク質がより少ないこと以外は同一である組成物と比較した、トリゴネリンと高タンパク質(本明細書に開示される)との組み合わせを含む組成物の効果を指す。同様に、タンパク質が少ないこと以外は同一である組成物と比較した、トリゴネリン、高タンパク質、及びクレアチンの組み合わせを含む組成物の組み合わせの効果。
【0059】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に記載の必須成分(essential elements)及び制限に加え、本明細書に記載の、又は食事療法に有用な、任意の追加の若しくは任意選択的な原材料、構成成分、又は制限を含んでよく、これらから構成されてよく、又は本質的にこれらから構成されてよい。
【0060】
用語「飲料」、「飲料製品」、及び「飲料組成物」は、ヒトなどの個体による摂取のための製品又は組成物であって、個体に対して少なくとも1つの栄養素を提供する製品又は組成物を意味する。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に記載の必須成分(essential elements)及び制限に加え、本明細書に記載の、又は食事療法に有用な、任意の追加の若しくは任意選択的な原材料、構成成分、又は制限を含んでよく、これらから構成されてよく、又は本質的にこれらから構成されてよい。
【0061】
本明細書で使用するとき、「完全栄養」は、その組成物が投与される対象にとって唯一の栄養源とするのに十分な、十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂質及び炭水化物)及び微量栄養素を含有する。個体は、このような完全栄養組成物から、個体が必要とする栄養分の100%を受容可能である。
【0062】
用語「経腸投与」は、経口投与(経口強制栄養投与を含む)及び直腸投与を包含するが、経口投与が好ましい。用語「非経口投与」は、消化管以外の経路によって与えられる物質の送達を指し、静脈内、動脈内、筋肉内、脳室内、骨内、皮内、くも膜下腔内、並びにまた腹腔内投与、膀胱腔内注入、及び海綿体内注射などの投与経路を範囲に含む。
【0063】
好ましい非経口投与は、静脈内投与である。非経口投与の特定の形態は、栄養の静脈内投与による送達である。非経口栄養は、食品が他の経路によって与えられない場合、「全非経口栄養」である。「非経口栄養」は、好ましくは、グルコースなどの糖類を含み、脂質、アミノ酸、及びビタミンのうちの1つ以上を更に含む、等張水溶液又は高張水溶液(又は溶解される固体組成物、又は等張溶液若しくは高張溶液を得るために希釈される液体濃縮物)である。
【0064】
実施形態
本発明は、トリゴネリンとミネラルとの組み合わせを含む組成物を含み、当該組成物は、例えば骨格筋において、NAD+を増加させるのに有効な量の上記組み合わせを提供するように投与される。本組成物は、非経口的に、経腸的に、又は静脈内に投与することができる。
【0065】
本発明は、トリゴネリンとミネラルとの組み合わせを本質的に含む組成物を含む。本発明の組成物は、例えば骨格筋において、NAD+を増加させるのに有効な量の組み合わせを提供するように投与される。本組成物は、非経口的に、経腸的に、又は静脈内に投与することができる。
【0066】
トリゴネリン
「トリゴネリン」は、本明細書において、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボキシレートを含む任意の化合物として定義され、例えば、その任意の塩(例えば、塩化物又はヨウ化物塩)及び/又はその中の環が還元され得る形態を含む。
【0067】
一部の実施形態では、トリゴネリンは、式1の構造によって表され、ハロゲン(例えばヨウ化物又は塩化物)などのアニオン(X-)を有する塩を確立することができる。式1の構造は、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウム、N-メチルニコチン酸、1-メチルピリジン-3-カルボン酸、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボン酸、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩(8CI)、1-メチルニコチン酸、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムとしても知られている。
【0068】
【0069】
一部の実施形態では、トリゴネリンは、その分子内塩形態の式2の構造によって表される。式2の構造はまた、カフェアリン(Caffearine)、ギネシン、N-メチルニコチネート、トリゲノリン、コフェアリン(Coffearine)、トリゴネリン、コフェアリン(Coffearin)、ベタインニコチネート、ニコチン酸ベタイン、1-メチルピリジニウム-3-カルボキシレート、ニコチン酸N-メチルベタイン、1-メチルピリジニオ-3-カルボキシレート、1-メチル-3-ピリジニウムカルボキシレート、N-メチルニコチン酸、トリゲネリン、カフェアリン(Caffearin)、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムヒドロキシド分子内塩、N’-メチルニコチネート、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボキシレート、3-カルボキシ-1-メチルピリジニウムヒドロキシド分子内塩、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩、1-メチルピリジン-3-カルボン酸、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボン酸、1-メチルニコチネート、トリゴネリン(S)、N-メチル-ニコチネート、ピリジン-3-カルボキシ-1-メチル-ヒドロキシド分子内塩(8CI)、N’-メチルニコチン酸、N-メチルニコチン酸ベタイン、ニコチン酸N-メチルベタイン、1-メチル-ニコチン酸アニオン、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-分子内塩、1-メチル-5-(オキシラトカルボニル)ピリジニウム-3-イド、ピリジニウム3-カルボキシ-1-メチル-分子内塩、3-カルボキシ-1-メチル-ピリジニウムヒドロキシド分子内塩)としても知られる。
【0070】
【0071】
一部の実施形態では、任意選択的に「トリゴネリン」は、その代謝産物及び熱分解生成物、例えば、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、1-メチルニコチンアミド、1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(Me2PY)、1-メチル-4-ピリドン-5-カルボキサミド(Me4PY)、並びに1-メチル-ピリジニウム(NMP)及び1,4-ジメチルピリジニウムなどのアルキル-ピリジニウムを含むことができ;ただし、本明細書で後述するように、一部の実施形態は、これらのトリゴネリンの代謝産物及び熱分解生成物のうちの1つ以上を除外する。
【0072】
組成物は、薬理学的に有効な量のトリゴネリンを、薬学的に好適な担体中に含むことができる。水性液体組成物において、トリゴネリン濃度は、好ましくは、水性液体組成物の約0.05重量%~約4重量%、又は約0.5重量%~約2重量%、又は約1.0重量%~約1.5重量%の範囲である。
【0073】
特定の実施形態では、本方法は、血漿トリゴネリンを、例えば、血漿1L当たり、50~6000nmol、好ましくは100~6000molの範囲のレベルまで増加させる処理である。本方法は、体重1kg当たり、0.05mg~1g、好ましくは1mg~200mg、より好ましくは5mg~150mg、更により好ましくは10mg~120mg、又は最も好ましくは40mg~80mgの重量範囲で、トリゴネリンを毎日投与することを含み得る。
【0074】
典型的には、1日当たり50μg~10gのトリゴネリンが1回以上に分けて対象に投与される。より好ましくは、1日当たり100mg~1gのトリゴネリンが1回以上に分けて対象に投与される。
【0075】
一部の実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部は単離されている。追加的に又は代替的に、トリゴネリンの少なくとも一部を化学的に合成することができる。
【0076】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約90%がトリゴネリンである、好ましくは少なくとも約98%がトリゴネリンである、化学合成されたトリゴネリンを含む。
【0077】
好ましい実施形態では、トリゴネリンの少なくとも一部分は、植物又は藻類抽出物、例えば、コーヒー豆(例えば、コーヒー生豆抽出物)、大根、コロハ種子、エンドウ豆、麻実、カボチャ種子、オート麦、ジャガイモ、ダリア、シソ種(Stachys)、キョウチクトウ種(Strophanthus)、コンブ種(Laminariaceae)(特にゴヘイコンブ属(Laminaria)及びコンブ属(Saccharina))、海ヤシ(Postelsia palmaeformis)、ニセツルモ(Pseudochrada nagaii)、コンブモドキ(Akkesiphycus)、又はカイナンボク科(Dichapetalum cymosum)のうちの1種以上からの抽出物によって提供される。植物抽出物は、好ましくは、トリゴネリンが濃縮されている。すなわち、出発植物材料は、トリゴネリンに加えて1種以上の他の化合物を含み、濃縮植物材料は、上記1種以上の他の化合物のうちの少なくとも1種に対するトリゴネリンの比が、出発植物材料における比よりも高い。
【0078】
したがって、組成物の一部の実施形態は、組成物中にトリゴネリンの少なくとも一部を提供する植物素材及び/又は濃縮された植物素材を含む。
【0079】
好ましい実施形態では、組成物は、組成物中に少なくとも約25~50%のトリゴネリンを提供する濃縮コロハ抽出物を含む。
【0080】
本明細書で使用するとき、「トリゴネリンを本質的に含む組成物」は、トリゴネリンを含有し、NAD+産生に影響を及ぼすトリゴネリン以外の任意の追加化合物を実質的に含まない、又は全く含まない。特定の非限定的な実施形態では、組成物は、トリゴネリンと1つ以上の賦形剤とを含む。
【0081】
一部の実施形態では、トリゴネリンを本質的に含む組成物は、任意選択的に、他のNAD+前駆体、例えば、トリゴネリン誘導体;トリゴネリンの代謝産物及び熱分解生成物、例えば、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、1-メチルニコチンアミド、1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(Me2PY)、1-メチル-4-ピリドン-5-カルボキサミド(Me4PY)、並びに1-メチル-ピリジニウム及び1,4-ジメチルピリジニウムなどのアルキル-ピリジニウム;ニコチン酸(「ナイアシン」);又はL-トリプトファンのうちの1種以上を実質的に含まない、又は全く含まない。
【0082】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」は、組成物中に存在する他の化合物のいずれも、トリゴネリンの量に対して1.0重量%以下、好ましくはトリゴネリンの量に対して0.1重量%以下、より好ましくはトリゴネリンの量に対して0.01重量%以下、最も好ましくはトリゴネリンの量に対して0.001重量%以下であることを意味する。
【0083】
ミネラル
カルシウム
好適な形態のカルシウムの非限定的な例としては、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、又はこれらの混合物などの1つ以上のカルシウム塩が挙げられる。一般的な実施形態では、1日当たり0.1g~1.3gのカルシウム、好ましくは1日当たり500mg~1.3gのカルシウム、より好ましくは1日当たり1~1.2gのカルシウムが個体に投与される。
【0084】
マグネシウム
好適な形態のマグネシウムの非限定的な例としては、グルコン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、又はこれらの混合物などの1種以上のマグネシウム塩が挙げられる。一般的な実施形態では、1日当たり30mg~420mg、1日当たり190mg~420mg、より好ましくは1日あたり310mg~420mgのマグネシウムが提供される。
【0085】
ナトリウム
好適な形態のナトリウムの非限定的な例としては、塩化ナトリウム、及びアスコルビン酸ナトリウムなどの1種以上のナトリウム塩が挙げられる。一般的な実施形態では、1日当たり1000mg~4000mgのナトリウム、より好ましくは1日当たり1500mg~2000mgのナトリウムが個体に投与される。
カリウム
好適な形態のカリウムの非限定的な例としては、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、又はアミノ酸錯体中のカリウムなどの1種以上のカリウム塩が挙げられる。一般的な実施形態では、1日当たり400mg~5100mgのカリウム、より好ましくは1日あたり2600mg~3400mgのカリウムが個体に投与される。
【0086】
その他のミネラル
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムに加えて、1種以上のその他のミネラルを組成物に使用することができる。好適なミネラルの非限定例としては、鉄、ホウ素、クロム、銅、ヨウ素、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、セレン、ケイ素、スズ、バナジウム、亜鉛、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの、その他のミネラル及び単位用量の好適な形態は、ミネラルによって、及び当該ミネラルを受ける個体の必要性によって、調整され得る。
【0087】
組成物の配合
組成物は、食品製品、飲料製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0088】
一部の実施形態では、組成物は、トリゴネリン及びミネラルに加えて、タンパク質、炭水化物、及び脂肪などの追加の成分を含有してもよい。
【0089】
一実施形態では、組成物は追加的にタンパク質を含有してもよく、タンパク質の少なくとも一部は、(i)動物素材由来のタンパク質、(ii)植物素材由来のタンパク質、及び(iii)これらの混合物からなる群から選択される。
【0090】
一実施形態では、タンパク質の少なくとも一部は、(i)乳タンパク質、(ii)ホエイタンパク質、(iii)カゼイン塩、(iv)カゼインミセル、(v)エンドウ豆タンパク質、(vi)大豆タンパク質、及び(vii)これらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
一実施形態では、タンパク質は、(i)タンパク質の少なくとも50重量%がカゼインである配合、(ii)タンパク質の少なくとも50重量%がホエイタンパク質である配合、(iii)タンパク質の少なくとも50重量%がエンドウ豆タンパク質である配合、(iv)タンパク質の少なくとも50重量%が大豆タンパク質である配合、からなる群から選択される配合を有する。
【0092】
一実施形態では、タンパク質の少なくとも一部は、(i)遊離形態のアミノ酸、(ii)加水分解されていないタンパク質、(iii)部分的に加水分解されたタンパク質、(iv)広範囲に加水分解されたタンパク質、及び(v)これらの混合物からなる群から選択される。タンパク質は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、オルニチン、セリン、チロシン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアミノ酸を含み得る。タンパク質は、2~10のアミノ酸長を有するペプチドを含み得る。
【0093】
一実施形態では、本組成物は、(i)遊離形態、(ii)少なくとも1つの追加のアミノ酸に結合している形態、及び(iii)これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの形態の分岐鎖アミノ酸を含む。分岐鎖アミノ酸は、個体においてmTORを活性化するのに有効な量のロイシン、イソロイシン、及び/又はバリンを含み得る。
【0094】
一実施形態では、タンパク質の少なくとも一部は、5~95%加水分解されている。
【0095】
一実施形態では、タンパク質は、(i)タンパク質の少なくとも50%が1~5kDaの分子量を有する配合、(ii)タンパク質の少なくとも50%が5~10kDaの分子量を有する配合、(iii)タンパク質の少なくとも50%が10~20kDaの分子量を有する配合、からなる群から選択される配合を有する。
【0096】
組成物の方法及び使用
本発明の組成物は、骨格筋疾患及び状態を予防及び/又は治療する必要のある個体に投与することができる。例えば、骨格筋におけるNAD+を増加させる。このような筋肉の非限定的な例としては、次のうちの1つ以上が挙げられる:外側広筋、腓腹筋、脛骨筋、ヒラメ筋、長指伸筋(extensor,digitorum longus)(EDL)、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、大臀筋、外眼筋、顔筋肉、又は横隔膜。
【0097】
本発明の組成物を必要とする個体は、高齢の動物又は高齢のヒトなどの高齢個体であり得る。一部の実施形態では、本発明の組成物を必要とする個体は、老齢の動物又は老齢のヒトである。
【0098】
げっ歯類などのヒト以外の哺乳動物については、一部の実施形態は、ヒト以外の哺乳動物の体重1kg当たり、1.0mg~1.0gのトリゴネリン、好ましくは10mg~500mgのトリゴネリン、より好ましくは25mg~400mgのトリゴネリン、最も好ましくは50mg~300mgのトリゴネリンを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0099】
ヒトについては、一部の実施形態は、ヒトの体重1kg当たり、1.0mg~10.0gのトリゴネリン、好ましくは10mg~5.0gのトリゴネリン、より好ましくは50mg~2.0gのトリゴネリン、最も好ましくは100mg~1.0gのトリゴネリンを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0100】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、トリゴネリン及びミネラルに加えて、タンパク質、炭水化物、及び脂肪などの追加の成分を含有してもよい。
【0101】
一実施形態において、組成物は、タンパク質源を含んでもよい。タンパク質は、遊離形態のアミノ酸、アミノ酸2~20個の分子(本明細書では「ペプチド」と称する)を含み、また、同様に、より長いアミノ酸鎖も含む。小さいペプチド、すなわち、アミノ酸2~10個の鎖は、単独で、又は他のタンパク質との組み合わせにより本組成物に好適である。アミノ酸の「遊離形態」は、アミノ酸のモノマー形態である。好適なアミノ酸としては、天然のアミノ酸及び非天然のアミノ酸の両方が挙げられる。本組成物は、1種以上のタンパク質の混合物、例えば、1種以上の(i)ペプチド、(ii)より長いアミノ酸鎖、又は(iii)遊離形態のアミノ酸の混合物を含んでもよく;この混合物は、好ましくは所望のアミノ酸プロファイル/含有量が得られるように配合される。
【0102】
タンパク質の少なくとも一部は、動物に由来するもの又は植物に由来するもの、例えば、乳タンパク質(milk protein)、例えば、乳タンパク質濃縮物若しくは乳タンパク質単離物;カゼイン塩若しくはカゼイン、例えば、カゼインミセル濃縮物若しくはカゼインミセル単離物;又はホエイタンパク質、例えば、ホエイタンパク質濃縮物若しくはホエイタンパク質単離物のうちの1種以上などの乳タンパク質(dairy protein)であり得る。追加的に又は代替的に、タンパク質の少なくとも一部は、大豆タンパク質又はエンドウ豆タンパク質のうちの1種以上などの植物性タンパク質であり得る。
【0103】
これらのタンパク質の混合物、例えば、カゼインがタンパク質の大部分であるが全部ではない混合物、ホエイタンパク質がタンパク質の大部分であるが全部ではない混合物、エンドウ豆タンパク質がタンパク質の大部分であるが全部ではない混合物、及び大豆タンパク質がタンパク質の大部分であるが全部ではない混合物もまた好適である。一実施形態では、タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%は、ホエイタンパク質である。一実施形態では、タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%は、カゼインである。一実施形態では、タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%は、植物性タンパク質である。
【0104】
ホエイタンパク質は、例えば、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質単離物、ホエイタンパク質ミセル、ホエイタンパク質加水分解物、酸性ホエイ、甘性ホエイ、変性甘性ホエイ(カゼイノグリコマクロペプチドが除去された甘性ホエイ)、ホエイタンパク質の画分、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される任意のホエイタンパク質であり得る。
【0105】
カゼインは任意の哺乳類から得ることができるが、好ましくは牛乳から、及び好ましくはカゼインミセルとして得られる。
【0106】
タンパク質は、加水分解されていなくてもよく、部分的に加水分解されていてもよく(すなわち、分子量は3kDa~10kDaで、平均分子量は5kDa未満のペプチド)、又は広範囲に加水分解されていてもよく(すなわち、90%が3kDa未満の分子量を有するペプチド)、例えば、5%~95%の範囲が加水分解されていてもよい。一部の実施形態では、加水分解されたタンパク質のペプチドプロファイルは、異なる分子量の範囲内であり得る。例えば、ペプチドの大部分(50モル%超又は50重量%超)は、1~5kDa又は5~10kDa又は10~20kDa以内の分子量を有し得る。
【0107】
タンパク質の少なくとも一部は、(i)遊離形態のアミノ酸、(ii)加水分解されていないタンパク質、(iii)部分的に加水分解されたタンパク質、(iv)広範囲に加水分解されたタンパク質、及び(v)これらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
タンパク質は、必須アミノ酸及び/又は条件付き必須アミノ酸(例えば、低摂取カロリー又は病気により送達が不十分となり得るアミノ酸)を含むことができる。例えば、タンパク質は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、及びバリンからなる群から選択される1種以上の必須アミノ酸を含むことができ;これらのアミノ酸(存在する場合)のそれぞれは、体重1kg当たり約0.0476~約47.6mgの1日用量で本組成物において投与され得る。特に、メチオニンの摂取量が低いと、タンパク質の翻訳レベルが低下し、最終的には筋肉合成のレベルが低下する。タンパク質は、アルギニン、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、オルニチン、セリン、及びチロシンからなる群から選択される1種以上の条件付き必須アミノ酸(例えば、病気又はストレス時に条件付きで必須のアミノ酸)を含むことができ;これらのアミノ酸(存在する場合)のそれぞれは、体重1kg当たり約0.0476~約47.6mgの1日用量で本組成物において投与され得る。
【0109】
一実施形態では、本組成物は、炭水化物源を含んでもよい。デンプン(例えば、変性デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン)、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、固形コーンシロップ、マルトデキストリン、キシリトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の好適な炭水化物を本組成物に使用してもよい。
【0110】
炭水化物源は、好ましくは本組成物の50エネルギー%以下、より好ましくは本組成物の36エネルギー%以下、最も好ましくは本組成物の30エネルギー%以下である。組成物は、例えば、0.66超、好ましくは0.9超、より好ましくは1.2超の高いタンパク質:炭水化物エネルギー比を有することができる。
【0111】
一実施形態では、本組成物は、脂肪源を含んでもよい。脂肪源は、任意の好適な脂肪又は脂肪混合物を含み得る。好適な脂肪源の非限定的な例としては、植物性脂肪(例えば、オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、菜種油、キャノーラ油、ヘーゼルナッツ油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、クロフサスグリ種子油、ルリヂサ油、レシチンなど)、動物性脂肪(乳脂肪など);又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0112】
本発明の組成物は、ヒトなどの個体、例えば、高齢個体又は重篤な個体、又は骨格筋の手術若しくは損傷から回復中の個体に、治療有効用量で投与することができる。治療に有効な用量は当業者により決定され得るものであり、状態の重症度並びに個体の体重及び全身状態など、当業者に公知のいくつもの因子に応じて異なり得る。
【0113】
本組成物は、好ましくは少なくとも週2日、より好ましくは少なくとも週3日、最も好ましくは週7日;少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は更に長い期間、個体に投与される。一部の実施形態では、本組成物は、例えば、少なくとも治療効果が達成されるまで、数日にわたって連続的に個体に投与される。一部の実施形態では、本組成物は、少なくとも30日間、60日間、又は90日間連続で毎日個体に投与することができる。
【0114】
上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2~4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
【0115】
好ましい実施形態では、本組成物は、個体に経口投与又は経腸投与(例えば経管栄養法)される。例えば、本組成物は、飲料、カプセル、錠剤、散剤又は懸濁液剤として個体に投与することができる。
【0116】
本組成物は、ヒト及び/又は動物が摂取するのに好適ないかなる種類の組成物であってもよい。例えば、本組成物は、食品組成物、ダイエタリーサプリメント、栄養組成物、ニュートラシューティカルズ、摂取前に水又は乳で再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬品、飲料及びドリンクからなる群から選択され得る。一実施形態では、本組成物は、経口栄養補助食品(ONS)、完全栄養配合物、医薬品、薬剤又は食品製品である。好ましい実施形態では、本組成物は個体に飲料として投与される。本組成物は粉末としてサシェに保存され、次に使用の際に水などの液体中に懸濁されてもよい。
【0117】
経口又は経腸投与が不可能である、又は推奨されない一部の場合には、本組成物はまた、非経口投与されてもよい。
【0118】
一部の実施形態では、本組成物は単回投与剤形で個体に投与され、すなわち、食事と一緒に個体に与えられる1つの製剤中に全ての化合物が存在している。他の実施形態では、本組成物は別個の剤形で同時投与され、例えば少なくとも1つの構成成分と本組成物の他の構成成分のうちの1つ以上は別個のものとして同時投与される。
【0119】
これらの方法は、トリゴネリンを本質的に含む組成物、又はトリゴネリンと高タンパク質とを本質的に含む組成物、又はトリゴネリンと、高タンパク質と、クレアチンとを本質的に含む組成物を投与する工程を本質的に含み得る。本明細書で使用するとき、「トリゴネリンを本質的に含む、又はトリゴネリンを含む組成物を投与する工程を本質的に含む方法」とは、NAD+産生に影響を及ぼすトリゴネリン以外の任意の追加の化合物が、トリゴネリンの投与から1時間以内に投与されないこと、好ましくは、トリゴネリンの投与から2時間以内に投与さないこと、より好ましくはトリゴネリンの投与から3時間以内に投与されないこと、最も好ましくはトリゴネリンの投与と同日に投与されないこと、を意味する。任意選択的に本方法から除外され得る化合物の非限定的な例としては、組成物自体からの除外に関して上述したものが挙げられる。
【0120】
本明細書に開示される組成物及び方法のそれぞれにおいて、組成物は、好ましくは、食品添加物、食品原材料、機能性食品、ダイエタリーサプリメント、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、経口栄養補助食品(ONS)又は栄養補助食品などの食品製品である。
【0121】
組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日若しくは4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与してよい。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であり得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも毎日であり、例えば、対象は、1日当たり1回以上の投与、一実施形態では1日当たり複数回の投与を受け得る。一部の実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。別の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が見られるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0122】
本明細書に開示される組成物は、経腸的に、例えば経口的に、又は非経口的に対象に投与されてもよい。非経口投与の非限定的な例としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、滑液嚢内、眼内、髄腔内、局所、及び吸入によるものが挙げられる。したがって、組成物の形態の非限定的な例としては、自然食品、加工食品、天然果汁、濃縮物及び抽出物、注射液、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏、吸入形態、点鼻スプレー、点鼻液、点眼液、舌下錠、及び持続放出性製剤が挙げられる。
【0123】
本明細書に開示される組成物には、治療目的での投与のための様々な製剤のいずれかを使用することができる。より詳細には、医薬組成物は、適切な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含むことができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、及びエアゾール剤などの固体、半固体、液体又は気体形態の製剤として処方され得る。したがって、組成物の投与は、経口、頬側、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮、及び気管内投与を含む様々な方法で達成することができる。活性薬剤は、投与後に全身性のものであってもよく、又は局所投与の使用、壁内投与の使用、若しくは埋め込み部位において有効用量を保持するように作用する埋入物(インプラント)の使用によって局在化させてもよい。
【0124】
医薬剤形では、化合物は、薬学的に許容可能な塩として投与されてもよい。これらはまた、別の薬学的に活性な化合物と適切に関連させて使用してもよい。以下の方法及び添加物は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0125】
経口製剤では、化合物は、単独で使用することができ、又は、錠剤、散剤、顆粒剤若しくはカプセル剤を製造するための適切な添加剤と組み合わせて、例えば、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはバレイショデンプンなどの従来の添加剤と、結晶セルロース、セルロース機能性誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤と、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と、及び所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び香味物質と組み合わせて、使用することができる。
【0126】
化合物は、水性又は非水性溶剤中に、例えば、植物油若しくは他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル又はプロピレングリコールなどに、また所望であれば、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、及び保存剤などの従来の添加剤と一緒に、溶解、懸濁又は乳化することによって、注射用の製剤として処方することができる。
【0127】
化合物は、吸入により投与されるエアゾール製剤において利用することができる。例えば、化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、及び窒素などの加圧された許容可能な噴射剤中に配合することができる。
【0128】
更に、化合物は、乳化基剤又は水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤として製造することができる。化合物は、坐剤によって直腸内に投与することができる。坐剤は、ココアバター、カーボワックス、及びポリエチレングリコールなどの、体温では融解するが室温では凝固するビヒクルを含むことができる。
【0129】
シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤などの経口又は直腸内投与用の単位剤形が提供されてもよく、各投与量単位、例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤又は坐剤は、規定量の組成物を含有する。同様に、注射又は静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水又は別の薬学的に許容可能な担体による溶液としての組成物中に化合物を含んでもよく、各投与量単位、例えばmL又はLは、化合物のうちの1つ以上を含有する組成物を規定量含有する。
【0130】
非ヒト動物を対象とする組成物としては、動物の必要栄養量を補給する食品組成物、動物用トリート(例えば、ビスケット)、及び/又はダイエタリーサプリメントが挙げられる。組成物は、ドライ組成物(例えば、キブル)、セミモイスト組成物、ウェット組成物、又はそれらの任意の混合物であってよい。一実施形態では、組成物は、グレイビー、飲料水、飲料、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁液、噛むもの(chew)、一口で食べるもの(morsel)、トリート、スナック、ペレット、丸薬、カプセル、錠剤、又は他の適切な送達形態のものなどのダイエタリーサプリメントである。ダイエタリーサプリメントは、高濃度のUFA及びNORCと、ビタミンB及び抗酸化物質とを含み得る。これにより、かかるダイエタリーサプリメントを動物に少量投与することが可能になり、あるいは動物に投与する前に希釈することができる。ダイエタリーサプリメントは、動物に投与する前に、水又は他の希釈剤と混合する必要がある場合があり、又は混合することができる。
【0131】
「ペットフード」又は「ペットフード組成物」は、約15%~約50%の粗タンパク質を含む。粗タンパク質材料は、大豆ミール、ダイズタンパク質濃縮物、トウモロコシグルテンミール、小麦グルテン、綿実、及びピーナッツミールなどの植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質などの動物性タンパク質を含み得る。本明細書で有用な肉タンパク質の例としては、豚肉、子羊、ウマ、家禽、魚、及びこれらの混合物が挙げられる。組成物は、約5%~約40%の脂肪を更に含むことができる。組成物は、炭水化物源を更に含み得る。組成物は、約15%~約60%の炭水化物を含み得る。そのような炭水化物の例としては、米、トウモロコシ、ミロ、ソルガム、アルファルファ、大麦、大豆、キャノーラ、オート麦、小麦、及びこれらの混合物などの穀物又は穀草類が挙げられる。組成物はまた、乾燥乳清及び他の乳製品副産物などの他の材料を任意に含み得る。
【0132】
一部の実施形態では、ペットフード組成物の灰分は、1%未満~約15%であり、一態様では、約5%~約10%の範囲である。
【0133】
含水率は、ペットフード組成物の性質に応じて変更し得る。一実施形態では、組成物は、完全なものでありかつ栄養的にバランスのとれたペットフードであり得る。この実施形態では、ペットフードは、「ウェットフード」、「ドライフード」、又は中間含水率の食品であり得る。「湿潤食品」は、典型的には缶又はホイル袋で販売されるペットフードを表し、典型的には約70%~約90%の範囲の水分含有量を有する。「ドライフード」は、ウェットフードと同様の組成のものであるが、典型的には約5%~約15%又は20%の範囲の限定された含水率を含むペットフードを表し、そのため、例えば、小さいビスケット状のキブルとして提供される。一実施形態では、組成物の含水率は約5%~約20%である。ドライフード製品は、比較的常温保存可能であり、微生物又は真菌による劣化又は汚染に対して耐性を有するような様々な含水率の様々な食品を含む。コンパニオンアニマル向けのペットフード又はスナックフードなどの、押し出し成形された食品製品であるドライフード製品組成物も含まれる。
【0134】
骨格筋の疾患又は状態
本組成物の方法及び使用は、有効量の組成物を有効な単位用量形態で投与して、骨格筋の疾患又は状態を予防及び/又は治療することによって、対象におけるNAD+を増加させるために提供される。
【0135】
一部の実施形態では、組成物の方法及び使用は、骨格筋の疾患又は状態の予防又は治療のために提供される。一部の実施形態では、組成物の方法及び使用は、サルコペニア、悪液質若しくは前悪液質、ミオパチー、ジストロフィー、及び/又は激しい運動、筋肉損傷若しくは手術の後の回復期などの骨格筋の疾患又は状態のためのものである。
【0136】
一実施形態では、本発明の組成物は、
i)トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を、対象に用意する工程と、
ii)上記組成物を上記対象に投与する工程と、
を含む、必要とする対象における骨格筋の疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用される。
【0137】
一実施形態では、本発明の組成物は、
i)トリゴネリンとミネラルとを本質的に含む組成物を、対象に用意する工程であって、ミネラルが、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/又はカリウムからなる群から選択される、工程と、
ii)上記組成物を上記対象に投与する工程と、
を含む、必要とする対象における骨格筋の疾患又は状態の予防及び/又は治療に使用される。
【0138】
一部の実施形態では、対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、又はヒツジからなる群から選択される。対象は、好ましくは、骨格筋に影響を及ぼす疾患又は病状の予防又は治療を必要とするヒトである。
【0139】
実施例
実施例1-トリゴネリン処理後のヒト及びゼブラフィッシュにおけるNAD+濃度の酵素定量
ヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり3,000個の細胞密度で、384ウェルプレートの骨格筋増殖培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、分化用培地(Gibco No.31330-028)を使用して培地を4日間変更し、分化を誘導した。細胞をトリゴネリン(sigma #T5509)で6時間処理した。生物発光アッセイ(Promega NAD/NADH-Glo(商標)#G9071)を用いてNADを測定した。これをFigure1のAに示す。
【0140】
野生型ゼブラフィッシュ由来の胚を、標準的な実験室条件下、28℃で飼育し、6ウェルプレートで受精後96時間飼育した(n=20~25)。幼生を、トリゴネリン(sigma #T5509)で16時間処理した。比色NAD定量アッセイ(Biovision NAD/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を用いNADを測定した。これをFigure1のBに示す。
【0141】
実施例2-ヒト筋芽細胞の分化のトリゴネリンによる増進
2名の異なるドナー由来のヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり200,000個の細胞密度で、6ウェルプレートの骨格筋増殖培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、分化用培養培地(Gibco No.31330-028)を使用して培地を4日間変更し、分化を誘導した。同位体標識したトリゴネリン(13Cカルボニル;メチル上に32H)で細胞を6時間処理した。
【0142】
Vanquish UHPLC+集束LCシステム(Thermo Scientific)で、寸法150×2.1mm、5μmの親水性液体クロマトグラフィー(HILIC)iHILIC-Fusion(P)カラム(Hilicon)と前部のガードカラム(iHILIC-fusion(P),Hilicon)とを用いて細胞抽出物を分離した。代謝産物の分離は、0.25mL/分の流量及び35℃の温度で、順相に線形の溶媒勾配を適用することによって達成された。移動相として、溶媒Aは、10mMの酢酸アンモニウム及び0.04%(v/v)の水酸化アンモニウムを含む水(pH約9.3)とし、溶媒Bはアセトニトリルとした。
【0143】
溶出した代謝産物は、加熱エレクトロスプレーイオン化(H-ESI)源を有するOrbitrap Fusion Lumos質量分析計(Thermo Scientific)をポジティブモード及びネガティブモードで用いて、200m/zで60,000の分解能で分析した。機器の制御及びデータ分析は、Xcalibur(Thermo Scientific)を使用して行った。
【0144】
Figure2のAは、500μmで与えられたトリゴネリンによるNAD+の増進を示す。Figure2のBは、分化した初代筋芽細胞において天然に生じるNAD+を対照として比較して、500μmの用量の標識トリゴネリンで処理した後の標識NAD+(M+1)の相対量が増加していることを示す。
【0145】
実施例3-トリゴネリンの経口投与又は腹腔内投与後の肝臓及び筋肉におけるNAD+濃度
10週齢のC57BL/6JRjの雄性マウスに給餌し(Safe 150)、次いで、トリゴネリン(250mg/kg、n=5/群)を強制経口投与又は腹腔内注射した。処理の120分後、組織を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。NADを、腓腹筋及び肝臓において、比色NAD定量アッセイ(Biovision NAD/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を使用して測定した。
図3は、強制経口投与(Figure3のA、Figure3のC)又は腹腔内投与(Figure3のB、Figure3のD)により250mg/kgのトリゴネリンを受けてから120分後のマウスにおけるNAD+の酵素定量を示す。
【0146】
実施例4:化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリンを濃縮したコロハ種子抽出物での処理後にヒト初代筋芽細胞において測定されたNAD+。
ヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり12,000個の細胞密度で、96ウェルプレートの骨格筋細胞用培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。1日後、培地を4日間変更して分化を誘導する。種々の用量で合成トリゴネリン一水和物(Figure4のA)、又は40.45%のトリゴネリンを含有するトリゴネリン濃縮コロハ種子抽出物(Figure4のB)を用いて、細胞を16時間処理した。比色NAD+定量アッセイ(Biovision NAD+/NADH Quantitation Colorimetric Kit #k337-100)を使用してNAD+を測定した。
【0147】
この実験は、化学合成したトリゴネリンと、コロハ種子抽出物由来のトリゴネリンとの両方が、対照と比較して、NAD+含有量の有意な増加を示すことを実証した。コロハ種子抽出物は、化学合成したトリゴネリンよりも低用量でより強力であった。
【0148】
実施例5:化学合成したトリゴネリンでの又はトリゴネリンを濃縮したコロハ種子抽出物での処理後にマウス肝臓において測定されたNAD+。
10週齢のC57BL/6JRjの雄性マウスに、トリゴネリン(sigma #T5509)又はトリゴネリンを濃縮したコロハ種子抽出物(40.45%トリゴネリン)を強制経口投与した(300mg/kgでのトリゴネリンの等モル、n=8/群)。120分の処理後、肝臓を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。Dall,M.ら(Mol Cell Endocrinol,2018.473:p.245-256)によるものを調整した酵素法を用いて、肝臓におけるNAD+を測定した。
【0149】
この実験は、化学合成したトリゴネリンと、コロハ種子抽出物由来のトリゴネリンとの両方が、対照と比較して、肝臓におけるNAD+含有量の有意な増加を示すことを実証した。
【0150】
実施例6:生存率、速度、運動性、及び刺激後運動を評価するための線虫試験
1つの条件につき約100匹のワームを使用してワームの寿命試験を実施し、1日おきに手作業で採点した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワーム成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験評価を開始した。Figure7のAは、対照とトリゴネリンで処理したワームとを比較した、ワームの平均生存率(日)を示す。1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫の生存曲線は、寿命が21%延びている。
線虫運動性試験は、Movement Trackerソフトウェア(Mouchiroud,L.ら、Curr Protoc Neurosci 77,8.37.1-8.37.21(2016))を使用して実施した。実験を、少なくとも2回繰り返した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワーム成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験評価を開始した。
【0151】
Figure7のBは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理したワームの成体期1日目に実施した自発的運動性アッセイで平均速度を測定し、対照と比較した。1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫は、対照と比較して平均速度が増大した。
【0152】
Figure7のCは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫では、後期高齢期における自発的運動性アッセイ中に移動した距離が、対照と比較して有意に増加したことを示した。
【0153】
1つの条件につき45~60匹のワームを、ポーキング(poking)後の運動性について手作業で採点した。任意の繰り返し刺激に応答することができなかったワームを、死亡として採点した。結果は、少なくとも2つの独立した実験から得られたデータを表すものとした。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワーム成体期の1日目に、トリゴネリン処理及び実験評価を開始した。
【0154】
Figure7のDから、8日目及び11日目の老齢ワームについて評価した刺激後運動スコアでは、1mMのトリゴネリンクロリドで処理した線虫は、対照よりも物理的刺激への応答性が高いことを示すことがわかる。
【0155】
*、**は、それぞれの対照との差を示す(スチューデント検定、それぞれp<0.05、p<0.01)。
【0156】
実施例7:トリゴネリンを用いた処理による筋原線維及びミオシンの構造の完全性の改善。
加齢に伴うミオシン構造の形態変化は、典型的には、高塩濃度下での筋原線維及びミオシンのATPase活性において観察され、筋原線維構造は、高齢になると組織化されにくくなる。
【0157】
RW1596(myo-3p:GFP)ワームを、1日目(若齢成体)及び11日目(高齢成体)に回収し、筋肉の完全性評価を実施した。ワームをテトラミソールで固定し、共焦点顕微鏡法により分析して、GFP蛍光イメージングによって示される筋線維形態を評価した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワーム成体期の1日目に、1mMのトリゴネリンクロリドを用いたトリゴネリン処理及び実験評価を開始した。
【0158】
本発明者らは、GFPタグを付与したミオシンの形態学的構造の、蛍光顕微鏡法による観察により、トリゴネリン処理した11日齢のワームでは、日齢が一致する対照ワームと比較して改善された、より組織化された筋原線維構造を見ることができた。
【0159】
実施例8:対照及びトリゴネリン処理した線虫におけるミトコンドリアDNA対核DNAの比
リアルタイムPCRにより、野生型N2ワームにおけるmtDNAコピー数の絶対的定量を実施した。各サンプルにおけるnduo-1及びact-1の相対値を比較して、核ゲノム当たりのミトコンドリアDNAの相対レベルを表す比を作成した。各生体データ点について、少なくとも2回の技術的反復の平均を使用した。各実験は、少なくとも10の独立した生体試料(別個のワーム)で実施した。実験終了までの長期曝露のレジメンにおいて、野生型N2ワーム成体期の1日目に、1mMのトリゴネリンクロリドを用いたトリゴネリン処理及び実験評価を開始した。
【0160】
図8は、8日目の老齢ワームにおける核にコードされている遺伝子(act-1)に対するミトコンドリアにコードされている遺伝子(nduo-1)の比を示す。
*は、対照との差を示す(スチューデント検定、p<0.05)。データは平均±SDとして表した。
【0161】
トリゴネリン処理群では、核発現に対するミトコンドリア発現は、対照群よりも高かった。
【国際調査報告】