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特表2022-538586車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置および方法ならびに対応する制御アーキテクチャ
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  • 特表-車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置および方法ならびに対応する制御アーキテクチャ 図1
  • 特表-車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置および方法ならびに対応する制御アーキテクチャ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置および方法ならびに対応する制御アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20220829BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
B60R16/02 660J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577019
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020066462
(87)【国際公開番号】W WO2020260050
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182279.0
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】チャバ コクレヘル
(72)【発明者】
【氏名】アダム バルドス
(72)【発明者】
【氏名】ガーボル テレキ
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033DB18
5K033EA04
5K033EB06
(57)【要約】
車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置が開示される。車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニット(6,7,8,9)を含み、各被指令ユニットは、冗長通信回線(10,11)により制御されるように構成されている。この装置は、少なくとも第1の制御ユニット(3)および第2の制御ユニット(4)を含み、これらは、相互接続通信回線(5)により接続されており、それぞれ、冗長通信回線(10,11)のうちの1つを介して被指令ユニット(6,7,8,9)と通信し、複数の被指令ユニット(6,7,8,9)のうちの少なくとも1つを制御することにより、通信回線(10,11)を介して互いに通信して、ゲートウェイユニット(6)として動作し、冗長通信回線(10,11)間で情報を転送するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置であって、
前記車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニット(6,7,8,9)を含み、各被指令ユニットは、冗長通信回線(10,11)により制御されるように構成されている、装置において、
少なくとも第1の制御ユニット(3)および第2の制御ユニット(4)が、相互接続通信回線(5)により接続されており、それぞれ、
前記冗長通信回線(10,11)のうちの1つを介して前記被指令ユニット(6,7,8,9)と通信し、かつ
前記複数の被指令ユニット(6,7,8,9)のうちの少なくとも1つを制御することにより、前記通信回線(10,11)を介して互いに通信して、ゲートウェイユニット(6)として動作し、前記冗長通信回線(10,11)間で情報を転送する
ように構成されている
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記ゲートウェイユニット(6)が、前記通信回線(10,11)間で各方向に情報を転送するように構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記複数の被指令ユニット(6,7,8,9)の各被指令ユニットが、ゲートウェイとして動作して、前記冗長通信回線(10,11)間でデータを転送するように構成されている、
請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1の制御ユニット(3)および前記第2の制御ユニット(4)が、マスタまたはスレーブのいずれかとして動作するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1の制御ユニット(3)および前記第2の制御ユニット(4)が、前記相互接続通信回線(5)または前記通信回線(10,11)を介して情報を交換することにより、各制御ユニットのうちの1つをマスタとして選択し、他のものを所定のアルゴリズムに従うスレーブとして選択するように構成されている、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記車両アーキテクチャが、冗長車両通信ネットワーク(1,2)を含み、
前記相互接続通信回線(5)および前記ゲートウェイユニット(6)を介した冗長通信が、前記冗長車両通信ネットワークの一方(1)から受信したデータを、前記第1の制御ユニット(3)および前記第2の制御ユニット(4)を介して、前記冗長車両通信ネットワークの他方(2)に送信するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記相互接続通信回線(5)および/または前記ゲートウェイ(6)を介した通信が、妥当性チェックおよび/またはクロスチェックを可能にするために、少なくとも前記第1の制御ユニット(3)と前記第2の制御ユニット(4)との間でデータをスワップするように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
少なくとも前記第1の制御ユニット(3)および前記第2の制御ユニット(4)が、制動動作、ステアリング動作、トランスミッション、エネルギ管理、バッテリ充電のうちの1つ以上を制御するように構成されており、
前記被指令ユニットが、ブレーキアクチュエータ、ステアリングアクチュエータ、トランスミッションアクチュエータ、インテリジェントエネルギ蓄積要素、ホイールエンド制御ユニット、モジュレータ、バルブのうちの1つ以上を含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の装置を備えていることを特徴とする車両アーキテクチャ。
【請求項10】
第1の制御ユニット(3)または第2の制御ユニット(4)のいずれかにデータを提供するように構成された冗長車両通信ネットワーク(1,2)が設けられている、
請求項9記載の車両アーキテクチャ。
【請求項11】
車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための方法であって、
前記車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニット(6,7,8,9)を含み、
各被指令ユニットは、第1の通信回線(11)および第2の通信回線(10)、少なくとも第1の制御ユニット(3)および第2の制御ユニット(4)、ならびに少なくとも前記第1の制御ユニット(3)と前記第2の制御ユニット(4)との間の相互接続通信回線(5)により制御されるように構成されている、方法において、
前記第1の制御ユニット(3)が、前記被指令ユニット(6,7,8,9)と、前記第1の通信回線(11)を介して通信することと、
前記第2の制御ユニット(4)が、前記被指令ユニット(6,7,8,9)と、前記第2の通信回線(10)を介して通信することと、
前記複数の被指令ユニットのうちの少なくとも1つ(6)を、ゲートウェイユニット(6)として動作させて、前記第1の通信回線(11)と前記第2の通信回線(10)との間でデータを転送するように制御することと
を含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記相互接続通信回線(5)を介して、前記第1の制御ユニット(3)と前記第2の制御ユニット(4)との間でデータを送信するか、または
前記ゲートウェイユニット(6)を介して、前記第1の制御ユニット(3)と前記第2の制御ユニット(4)との間でデータを送信する
ことにより、前記第1の制御ユニット(3)と前記第2の制御ユニット(4)との間で冗長通信を確立する、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサ上で実行される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置および方法に関する。特に、本発明は、車両のための制御アーキテクチャおよび車両の制御アーキテクチャのための制御方法に関する。
【0002】
自動車は、車両動作、例えば推進およびトランスミッションシステム、ステアリングシステム、ブレーキシステムを共同で実現することができる幾つかのサブシステムを含む。この場合、各サブシステムは、これに関連付けられた制御ユニットにより制御される。アクチュエータまたは個々の制御システムレベルでのサブシステムの誤動作は、車両のさらなる動作を妨げる場合があり、または少なくともその機能の劣化を引き起こす場合がある。自動運転には、ブレーキおよびステアリングのような安全関連システムは、冗長なセットアップとその間の適切な通信とを必要とする。
【0003】
米国特許第9195232号明細書には、故障した動作システムにおける共通の故障を補償するためのシステムが記載されている。このシステムは、車両の機能、例えば、推進ブレーキおよびステアリングを実行するように構成された1次コントローラと、1次コントローラと共に冗長構成で構成された2次コントローラとを含むことができる。このシステムは、障害の検出に基づいて、コントローラ間で車両の制御を移行するように構成された制御モジュールを含む。この制御モジュールは、制御モジュールに共通の障害信号を出力させるコントローラの共通の障害を検出することができる。これに応答して、このシステムは、システムが制御を1次コントローラに戻すことができるまで、車両の機能を実行するように構成された安全コントローラに制御を移行することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2016/009257号明細書には、第1のブレーキモジュールおよび第2のブレーキモジュールを含む自律サブシステムを有するシステムが記載されている。各モジュールは、プロセッサとメモリとを含む。このメモリは、障害を検出するためにプロセッサにより実行可能な命令を記憶している。このシステムは、第2のブレーキモジュールからの信号に応答してブレーキ機構を作動させるようにプログラムされたブレーキサブシステムをさらに含む。
【0005】
当該自律サブシステムは、障害が検出されたか否かに応じて、ブレーキ機構に信号を供給するために、ブレーキモジュールのうちの1つを選択するようにさらにプログラムされている。
【0006】
しかしながら、これらのシステムは、限られた冗長性しか有さず、改善されたシステム冗長性を提供する必要がある。
【0007】
前述のような従来のシステムの問題の少なくとも幾つかは、請求項1記載の装置または請求項11記載の方法により克服される。各従属請求項は、各独立請求項の主題のさらなる有利な実現を指す。
【0008】
本発明は、車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための装置に関する。この車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニットを含み、各被指令ユニットは、冗長通信回線により制御されるように構成されている。この装置は、少なくとも第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットを備え、これらの制御ユニットは、相互接続通信回線により接続されており、それぞれ、
-冗長通信回線のうちの1つを介して被指令ユニットと通信し、かつ
-複数の被指令ユニットのうちの少なくとも1つを制御する
ことにより、通信回線を介して互いに通信して、ゲートウェイユニットとして動作し、冗長通信回線間で情報を転送するように構成されている。
【0009】
したがって、相互接続通信回線と、通信回線およびゲートウェイユニットを介した通信とが、少なくとも第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間で冗長な相互接続通信を形成する。「回線」なる用語は、有線接続を指すことができると理解される。ただし、本発明は、有線接続に限定されるべきではなく、同様に、種々の(車両)コンポーネント間の無線接続を含むべきである。アーキテクチャは、被指令ユニットまたは他の被指令ユニットと通信可能なさらなる制御ユニットを含むことができるとさらに理解される。同様に、被指令ユニットの数または機能は制限されない。制御ユニットは、ブレーキ、ステアリング、トランスミッションおよび/もしくはエネルギ管理または車両における他の用途に使用することができる。被指令ユニットは、インテリジェントエネルギセル、ホイールエンド制御ユニット、ブレーキまたはステアリングまたはトランスミッションのためのアクチュエータ、モジュレータ、バルブ等を含むことができる。
【0010】
場合により、ゲートウェイユニットは、通信回線間で各方向に情報を転送するように構成されている。加えて、被指令ユニットのそれぞれまたは任意のものは、1つまたは種々のゲートウェイとして動作して、冗長通信回線間でデータを転送するように構成されていることができる。
【0011】
場合により、少なくとも第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットは、マスタまたはスレーブのいずれかとして動作するように構成されている。具体的な役割は、予め決められていることができまたは自由に選択することができる。例えば、少なくとも第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットは、相互接続通信回線または通信回線を介して情報を交換することにより、そのうちの1つをマスタとして選択し、他のものを所定のアルゴリズムに従うスレーブとして選択するように構成されていることができる。例えば、第1の動作モードでは、第1の制御ユニットは、マスタコントローラとして動作するように構成され、第2の制御ユニットは、スレーブコントローラとして動作するように構成されている。第2の動作モードでは、第2の制御ユニットは、マスタコントローラとして動作するように構成され、第1の制御ユニットは、スレーブコントローラとして動作するように構成されている。すなわち、制御ユニットは、マスタまたはスレーブのいずれかの役割をとることができる。この場合、そのうちの1つがマスタの役割を有するのに対して、1つ以上の他の制御ユニットがスレーブの役割を有する。
【0012】
車両アーキテクチャは、冗長車両通信ネットワークを含むことができる。その結果、相互接続通信回線およびゲートウェイユニットを介した(冗長)通信は、冗長車両通信ネットワークのうちの1つから受信したデータを、第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットを介して、冗長車両通信ネットワークのうちの他のものに(またはその逆に)送信するように構成されている。
【0013】
このようにして、通信のうちの1つが故障する重大な状況が軽減される。
【0014】
場合により、相互接続通信回線および/またはゲートウェイを介した通信は、妥当性チェックおよび/またはクロスチェックを可能にするために、少なくとも第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間でデータをスワップするように構成されている。
【0015】
また、実施形態は、上記の定義された装置を有する車両アーキテクチャに関する。
【0016】
場合により、車両アーキテクチャは、第1の制御ユニットまたは第2の制御ユニットのいずれかにデータまたは制御信号を提供するように構成された冗長車両通信ネットワーク(例えば、2つの独立したネットワーク)を含む。
【0017】
さらなる実施形態は、車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための方法であって、車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニットを含み、各被指令ユニットは、第1の通信回線および第2の通信回線、少なくとも第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニット、ならびに少なくとも第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間の相互接続通信回線により制御されるように構成されている。この方法は、
-第1の制御ユニットが、被指令ユニットと、第1の通信回線を介して通信することと、
-第2の制御ユニットが、被指令ユニットと、第2の通信回線を介して通信することと、
-複数の被指令ユニットのうちの少なくとも1つを、ゲートウェイユニットとして動作させて、第1の通信回線と第2の通信回線との間でデータを転送するように制御することと
を含む。
【0018】
場合により、この方法は、
-相互接続通信回線を介して、第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間でデータを送信するか、または
-ゲートウェイユニットを介して、第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間でデータを送信すること
により、第1の制御ユニットと第2の制御ユニットとの間で冗長通信を確立すること
を含むことができる。
【0019】
また、この方法は、ソフトウェアでまたはコンピュータプログラム製品として実装することもできる。ステップの順序は、所望の効果を達成するのに重要ではない場合がある。本発明の実施形態は、特に、電子制御ユニット(ECU)内にもしくは電子制御ユニット(ECU)として実現することができまたはECU内のソフトウェアもしくはソフトウェアモジュールにより実装することができる。したがって、実施形態は、該方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムであり、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行される、コンピュータプログラムに関する。
【0020】
このため、実施形態は、冗長性を有する制御システムアーキテクチャを提供し、これにより、安全性およびシステム性能を改善する。
【0021】
システムおよび/または方法の幾つかの実施例を、単なる例としてかつ添付の図面に関して説明するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車両アーキテクチャを有する実施形態に係る装置の実装を示す図である。
図2】別の実施形態に係る車両の制御アーキテクチャのための方法を示す図である。
【0023】
図1に、本発明の実施形態に係る装置が実装される車両アーキテクチャを示す。この車両アーキテクチャは、第1の車両通信ネットワーク1と、第2の車両通信ネットワーク2と、第1の制御ユニット3と、第2の制御ユニット4と、例示的な4つの被指令ユニット6,7,8,9とを備えている。第1の制御ユニット3は、第1の車両通信ネットワーク1に結合しており、第1の通信回線11により、4つの被指令ユニット6,7,8,9の全てに接続されている。第2の制御ユニット4は、第2の車両通信ネットワーク2に結合しており、同様に、第2の通信回線10により4つの被指令ユニット6,7,8,9の全てに接続されている。第1の制御ユニット3および第2の制御ユニット4は、相互接続通信回線5により接続され、情報またはデータを交換する。
【0024】
さらなる一実施形態によれば、少なくとも幾つかもしくは全てまたは追加の被指令ユニットを、制御ユニット3,4の一方または両方に接続することができる。したがって、示している車両アーキテクチャでは、全てのコンポーネントが二重化され、その結果、故障が重大な状況を意味しうる共通のコンポーネントを使用することなく、第1の車両通信ネットワーク1および第2の車両通信ネットワーク2ならびに第1の制御ユニット3および第2の制御ユニット4により各被指令ユニット6,7,8および9を制御することができる、冗長車両アーキテクチャが可能となる。例えば、第1の制御ユニット3は、第1の車両通信ネットワーク1により制御することができる。また、第2の制御ユニット4は、第2の車両通信ネットワーク2により制御することができる。複数の被指令ユニット6,7,...は、第1の制御ユニット3および/または第2の制御ユニット4から、専用通信回線10,11を介してコマンド/データを受信するように構成されている。
【0025】
この実施例では、2つの制御ユニット3,4につき説明しているが、3つ以上の制御ユニットも設けることができ、第1のセットの制御ユニットは、第1の車両通信ネットワーク1に接続されており、残り(第2のセット)は、第2の車両通信ネットワーク2に接続されている。ついで、相互接続通信回線10,11は、第1のセットの制御ユニットを第2のセットの制御ユニットに接続するであろう。
【0026】
被指令ユニット6,7,8,9は、これらのうちの少なくとも1つが第1の通信回線11を介して第1の制御ユニット3により受信され、第2の通信回線10を介して第2の制御ユニット4から受信されるデータの転送が可能である限り、任意のユニットであることができる。したがって、1つ以上の被指令ユニット6,7,8,9は、ゲートウェイユニットとして動作して、第1の制御ユニット3から第2の制御ユニット4にまたはその逆に情報を転送することができる。したがって、第1の制御ユニット3と第2の制御ユニット4との間の接続も、相互接続通信回線5または制御ユニット3,4の一方から他方の制御ユニット4,3にデータを転送するためにゲートウェイモードに置かれた少なくとも1つの被指令ユニット6,7,8,9のいずれかによって冗長性を有する。それにもかかわらず、選択されたゲートウェイユニットは、データをゲートウェイしながら、その専用の機能(例えば、アクチュエーションまたはインテリジェント記憶素子として)を実行することができると理解される。
【0027】
実施形態に係る装置を、制御ユニット3,4の一方または両方内のソフトウェアにより実装することができる。制御ユニット3,4は、被指令ユニット6,7,8,9のうちの少なくとも1つをゲートウェイモードに置いて、制御ユニット3,4のうちの一方から受信されたデータを他方の制御ユニット4,3に中継するように構成されている。代替的には、実施形態に係る装置は、被指令ユニット6,7,8,9のうちの1つ、または図1に示されていない被指令ユニット6,7,8,9のうちの1つを制御して、ゲートウェイモードに置くことが可能な別の制御ユニットにおいて実装されることも可能である。
【0028】
被指令ユニット6,7,8,9の少なくとも1つがゲートウェイモードに置かれてゲートウェイユニットとして動作すれば十分であるが、本発明は、この場合に限定されるべきではないことも理解される。特に、被指令ユニット6,7,8,9の2つ、3つまたは全てがゲートウェイモードに置かれることも可能である。これにより、両制御ユニット3,4間で情報を転送するための複数の可能性が提供される。
【0029】
一実施形態によれば、制御アーキテクチャは、相互接続通信回線5および/またはゲートウェイユニットを利用して、第1の車両通信ネットワーク1と第2の制御ユニット4との間でデータを送信するように構成されている。制御アーキテクチャは、同様に、相互接続通信回線5を利用して、第2の車両通信ネットワーク2と第1の制御ユニット3との間でデータを送信するようにも構成されている。
【0030】
一実施形態によれば、第1の動作モードでは、第1の制御ユニット3がマスタコントローラとして動作するように構成され、第2の制御ユニット4がスレーブコントローラとして動作するように構成され、第2の動作モードでは、第2の制御ユニット4がマスタコントローラとして動作するように構成され、第1の制御ユニット3がスレーブコントローラとして動作するように構成される。
【0031】
一実施形態では、3つ以上の制御ユニットが存在でき、そのうちの1つはマスタとして動作し、残りはスレーブとして動作する。このため、3つの制御ユニットが存在する場合、上記の名称を使用して、3つの動作モードが存在しうる。各モードにおいて、異なる制御ユニットがマスタとして動作し、残りはスレーブとして動作する。ここで、このことは、4つ、5つ、6つの制御ユニットにも当てはまり、この場合、4つ、5つおよび6つの動作モードなどが存在することになる。
【0032】
一実施形態によれば、動作モードの決定は、相互接続通信回線5および/またはゲートウェイユニットを介した通信を含む。
【0033】
一実施形態では、動作モードの決定はアルゴリズムに従って実行され、制御ユニット3,4は、相互接続通信回線5および/またはゲートウェイユニットを介して配置される。
【0034】
一実施形態によれば、動作モードの決定は、第1の制御ユニット3および/または第2の制御ユニット4により実行される。
【0035】
一実施形態によれば、第1の制御ユニット3および第2の制御ユニット4は、相互接続通信回線5および/またはゲートウェイユニットを利用して、制御ユニット3,4間でデータを送信し、妥当性チェックおよび/またはクロスチェックのタスクを実行するように構成されている。これにより、セキュリティが強化され、2つの矛盾する制御ユニットが動作している状況が回避される。
【0036】
マスタ-スレーブの役割分担の決定は、適切なアルゴリズムに従って制御ユニットにより実行され、相互接続通信回線を介して配置される。このようにして、制御ユニット3,4間に(回線5および回線10,11ならびにゲートウェイユニットを介した)冗長通信回線を有することにより、車両通信ネットワーク1,2のうちの一方が故障しているかまたはダウンしている状況を軽減しまたは回避することが可能となる。このような場合、完全な車両通信ネットワーク1,2からのデータを、冗長通信回線を介して他の制御ユニット3,4に送信することができる。
【0037】
図2に、車両アーキテクチャ内に冗長通信を提供するための方法のフロー図を示す。車両アーキテクチャは、複数の被指令ユニット6,7,8,9を含み、各被指令ユニットは、第1の通信回線11および第2の通信回線10、少なくとも第1の制御ユニット3および第2の制御ユニット4ならびに少なくとも第1の制御ユニット3と第2の制御ユニット4との間の相互接続通信回線5により制御されるように構成されている。この方法は、
-第1の制御ユニット3が、被指令ユニット6,7,8,9と、第1の通信回線11を介して通信することS110と、
-第2の制御ユニット4が、被指令ユニット6,7,8,9と、第2の通信回線10を介して通信することS120と、
-複数の被指令ユニットのうちの少なくとも1つ6を、ゲートウェイユニット6として動作させて、第1の通信回線11と第2の通信回線10との間でデータを転送するように制御することS130と
を含む。
【0038】
場合により、この方法は、
-相互接続通信回線5を介して、第1の制御ユニット3と第2の制御ユニット4との間でデータを送信するS140か、または
-ゲートウェイユニット6を介して、第1の制御ユニット3と第2の制御ユニット4との間でデータを送信するS150
ことにより、第1の制御ユニット3と第2の制御ユニット4との間で冗長通信を確立するさらなるステップをさらに含む。
【0039】
さらに、装置に関連して記載された各機能を、車両アーキテクチャに冗長通信を提供するための方法におけるさらなる任意選択の方法ステップとして実装することができると理解される。
【0040】
この方法は、コンピュータ実装方法であることもできる。当業者であれば、種々の上記の方法のステップを、プログラムされたコンピュータにより実行することができることを容易に認識するであろう。また、実施形態は、プログラム記憶装置、例えば、デジタルデータ記憶媒体をカバーすることを意図している。これは、機械またはコンピュータ可読であり、命令の機械実行可能プログラムまたはコンピュータ実行可能プログラムをエンコードする。ここで、この命令は、コンピュータまたはプロセッサ上で実行される時、上記の方法の動作の一部または全部を実行する。
【0041】
さらなる有利な実施形態は、次の冗長車両アーキテクチャに関する。すなわち、冗長車両アーキテクチャは、少なくとも2つの制御ユニット3,4を有し、各制御ユニット3,4は、冗長車両通信ネットワーク1,2のうちの一方に接続され、これらと制御ユニットとの間の相互接続通信回線5は制御/通信回線10,11により任意の数の被指令ユニット6,7,8,9に接続され、ここで、相互接続通信回線5の冗長ペアは、被指令ユニット(6~9)を介して交換される情報をゲートウェイすることにより、制御回線10,11を介して実現される。
【0042】
冗長車両アーキテクチャにおいて、交換された情報は、制御ユニット3から制御ユニット4への各方向およびその逆の各方向でゲートウェイされる。
【0043】
冗長車両アーキテクチャにおいて、制御ユニットは、マスタまたはスレーブのいずれかの役割をとることができる。そのうちの1つがマスタの役割を有するのに対して、他のものがスレーブの役割を有する。
【0044】
冗長車両アーキテクチャにおいて、マスタスレーブの役割の決定は、適切なアルゴリズムに従ってコントローラにより実行され、相互接続通信回線5および10/11を介して配置される。
【0045】
冗長車両アーキテクチャにおいて、相互接続通信回線5および10/11は、制御ユニット3,4の一方により得られた冗長車両通信ネットワークからのデータを、他方の制御ユニット3,4に送信するのに使用される。
【0046】
冗長車両アーキテクチャにおいて、相互接続通信回線5および10/11は、制御ユニット間でデータをスワップし、妥当性チェックおよび/またはクロスチェックタスクを実行するのに使用される。
【0047】
説明および図面は、本開示の基本方式を単に例証するものである。このため、当業者であれば、本明細書には明示的に説明されまたは示されていないが、本開示の基本方式を具体化し、その範囲内に含まれる種々の構成を考案することが可能であろうと理解されるであろう。
【0048】
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」または「含む(including)」なる語は、他の構成要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲において再引用される幾つかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項において再引用されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0049】
さらに、各実施形態は、別個の実施例として自立することができるが、他の実施形態では、定義された特徴を異なるように組み合わせることができる、すなわち、一実施形態で説明された特定の特徴を、他の実施形態でも実現することができると留意されたい。このような組み合わせは、特定の組み合わせが意図されていないと述べられていない限り、本明細書における開示によりカバーされる。
【符号の説明】
【0050】
1,2 通信ネットワーク回路
3,4 制御ユニット(例えば、第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニット)
5 相互接続通信回線
6,7,8,9 被指令ユニット(1つまたは全てがゲートウェイとしてアクティブ化可能である)
10,11 通信(または制御)回線
図1
図2
【国際調査報告】