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特表2022-538638電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤中の非腐食性極圧及び耐摩耗添加剤としてのリン化合物の使用
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  • 特表-電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤中の非腐食性極圧及び耐摩耗添加剤としてのリン化合物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤中の非腐食性極圧及び耐摩耗添加剤としてのリン化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 137/04 20060101AFI20220829BHJP
   C10M 137/02 20060101ALI20220829BHJP
   C10M 137/12 20060101ALI20220829BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20220829BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20220829BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20220829BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220829BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20220829BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220829BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
C10M137/04 ZHV
C10M137/02 ZAB
C10M137/12
C10M101/02
C10M107/02
C10M105/32
C10N30:06
C10N30:12
C10N40:04
C10N40:02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577602
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2020067825
(87)【国際公開番号】W WO2020260462
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1907147
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514170019
【氏名又は名称】トタル マーケティング セルヴィス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シミン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ハキム・エル-バヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエン・ゲラン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104BH02C
4H104BH03C
4H104BH11C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB09
4H104EB13
4H104LA03
4H104LA06
(57)【要約】
本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物中の耐摩耗及び極圧添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物の使用に関する。本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑及び任意選択で冷却するため、特に電気車両又はハイブリッド車両の電気モータ及びパワーエレクトロニクスを潤滑及び冷却するための、耐摩耗及び極圧添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物を含む潤滑剤組成物の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物中の極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物の使用。
【請求項2】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、リン酸誘導体から、より具体的には、ホスフェートエステル、ホスホネートエステル、ホスフィネートエステル、ホスファイトエステル、及びホスフィンオキシドから、非常に具体的には、以下の式(I):
【化1】
[式中、
sは0又は1であり、
X基は、互いに独立して、-OR'又はR'基を表し、R'は、好ましくは1~24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
ただし、sが0である場合、3個のX基は-OR'基を表し、sが1である場合、3個のX基のうちの少なくとも2個は-OR'基を表す]
の化合物から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、ホスフェートエステル、より具体的には、以下の式(II):
【化2】
[式中、R基は、互いに独立して、直鎖状又は分枝鎖状C1~C10アルキル基、より具体的にはC3~C8アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表し、好ましくは、出現するごとに、nは1であり、Rは、パラ位の基、好ましくはC3~C6アルキル基、より具体的には分枝鎖状の基を表す]
の化合物から選択され、より具体的には、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物は、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、ホスファイトエステル、より具体的には、以下の式(II'):
【化3】
[式中、R基は、互いに独立して、直鎖状又は分枝鎖状C1~C10アルキル基、より具体的にはC3~C8アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表し、好ましくは、出現するごとに、nは1であり、Rは、パラ位の基、好ましくはC3~C6アルキル基、より具体的には分枝鎖状の基を表す]
の化合物から選択され、より具体的には、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、前記潤滑剤組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~3質量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記潤滑剤組成物が、ポリアルキレングリコール、ポリアルファオレフィン、カルボン酸とアルコールとのエステル、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の基油を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑及び任意選択で冷却するための、より具体的には電気車両又はハイブリッド車両の電気モータ及びパワーエレクトロニクスを潤滑及び冷却するための、極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物を含む潤滑剤組成物の使用。
【請求項8】
前記リン化合物が、請求項2から4のいずれか一項で定義した通りである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
電気車両又はハイブリッド車両の、電気モータのロータとステータとの間に位置するベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速ギアを潤滑するための、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
潤滑剤組成物が、
- 好ましくは、トリアリールホスフェートエステル及びトリアリールホスファイトエステルから選択され、より好ましくは、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから選択される、0.1質量%~5質量%、より具体的には0.5質量%~3質量%の、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、
- 好ましくは、第III群の基油、第IV群又は第V群の基油、及びそれらの混合物から選択される、50質量%~99.5質量%、より具体的には60質量%~99質量%の1種又は複数種の基油、並びに
- 任意選択で、抗酸化剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択される、0.1質量%~5質量%の1種又は複数種の添加剤
を含むか、又は更にはこれらからなり、これらの量が、前記潤滑剤組成物の総質量に対して表されている、請求項7から9のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物の分野、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物の分野に関する。本発明は、より具体的には、これらの潤滑剤中での、有利には「非腐食性」の極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないリン化合物の使用に関する。
【0002】
CO2排出量を削減するのみならずエネルギー消費量も削減するための国際標準の発展によって、自動車メーカーは、燃焼エンジンの代替的なソリューションを提案するよう奨励されている。
【0003】
自動車メーカーが認識している解決策のうちの1つは、燃焼エンジンを電気モータに置き換えることである。したがって、CO2排出量の削減に関する研究は、一部の自動車会社による電気車両の開発に繋がった。
【0004】
本発明の意味合いでの「電気車両」とは、その唯一の推進手段として電気モータを備える車両を指すのに対し、ハイブリッド車両は、組み合わされた推進手段として燃焼エンジン及び電気モータを備える。
【0005】
本発明の意味合いでの「推進システム」とは、車両の推進に必要な機械的部品を備えるシステムを示す。したがって、電気車両の推進システムは、より具体的には、パワーエレクトロニクスのロータ-ステータアセンブリを備える電気モータ(速度調整専用)と、トランスミッションと、バッテリとを備える。
【0006】
一般的に言うと、主に、車両の推進システムの様々な部品間の、特にエンジン内の可動金属部品間の摩擦力を低減する目的で、「潤滑剤」とも呼ばれる潤滑剤組成物を車両に用いる必要がある。これらの潤滑剤組成物は、これらの部品、より具体的にはそれらの表面への早期の摩耗又は損傷さえも防止するのに更に効果的である。
【0007】
これを達成するために、潤滑剤組成物は、従来的には、1種又は複数種の基油からなり、一般的に、基油の潤滑性能を刺激するのみならずこれに補助性能特性を提供することを目的とする多くの添加剤と組み合わされる。
【0008】
より具体的には、「耐摩耗」添加剤として公知の添加剤は、推進システムの部品、特にモータの機械的部品の摩耗を低減し、それによって、モータの耐久性の低下を防止すると考えられている。多種多様な耐摩耗添加剤があり、例としては、ジメルカプトチアジアゾール、ポリスルフィド、特に、硫黄含有オレフィン、アミンホスフェート、又はリン硫黄添加剤(phosphosulfur additive)、例えば、金属アルキルチオホスフェート、より具体的には亜鉛アルキルチオホスフェート、より具体的には亜鉛ジアルキルジチオホスフェートすなわちZnDTPが挙げられる。
【0009】
ジメルカプトチアジアゾール、亜鉛ジチオホスフェート、又はポリスルフィド等の、車両モータ用の潤滑剤に現在用いられている耐摩耗添加剤には、残念なことに、腐食性であるという欠点がある。更に、金属ジアルキルジチオホスフェート等のイオン性添加剤は、流体の電気絶縁力を低下させる。
【0010】
腐食の問題は、電気ハイブリッド車両の推進システムの場合に特に重要であると判明するであろう。より具体的には、腐食は、一般的に銅をベースとすることから特に腐食に敏感である、ロータ-ステータの対の巻線、推進システムのセンサ、油圧システムのソレノイドバルブのみならず、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリングに影響するか、又は推進システム内に存在するガスケット若しくはワニスに影響する、劣化リスクを引き起こす可能性がある。したがって、電気車両又はハイブリッド車両の駆動システムに潤滑剤を使用する場合、腐食のリスクを防止することが重要である。
【0011】
更に、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを冷却できるようにするには、存在する電気部品の故障を回避するために、潤滑剤が効果的な電気絶縁体であることが不可欠である。より具体的には、導電性潤滑剤は、ステータ及びロータの巻線内で電流が逃げるリスクを生じさせる場合があり、それによって、推進システムの効率を低下させ、電気部品の過熱の可能性を伴い、更には、システムを損傷することさえあり得る。したがって、電気車両又はハイブリッド車両の駆動システムに潤滑剤を使用する場合、潤滑剤が、優れた電気絶縁性及び非腐食性を有することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを意図した潤滑剤の耐摩耗性を増強する一方で、従来使用されている耐摩耗システムが直面している腐食の問題を除去する、手段を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本発明者らは、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないリン化合物を極圧及び耐摩耗添加剤として用いることによって、増強された耐摩耗性を示し、更には腐食性効果を生じさせることのない、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物を得ることが可能であることを見出した。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様によると、この態様は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを意図した潤滑剤組成物中での、極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物の使用に関する。
【0015】
「極圧及び耐摩耗添加剤」とは、潤滑剤組成物中で、特に電気車両又はハイブリッド車両の駆動システム用の潤滑剤組成物中で使用される場合に、厳しい圧力及び/又は温度条件下でさえ、組成物の耐摩耗性を増強する化合物を示す。
【0016】
組成物の耐摩耗性は、より具体的には、ASTM D2670規格に従って評価され得る。
【0017】
本発明の別の態様では、この態様は更に、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑及び任意選択で冷却するための、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の電気モータ及びパワーエレクトロニクスを潤滑及び冷却するための、極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物を含む、潤滑剤組成物の使用に関する。
【0018】
以下の例に示されるように、本発明者らは、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないこれらの種類の極圧及び耐摩耗リン添加剤、より具体的には、トリアリールホスフェートエステルタイプのものが、アミン及び/又は硫黄を含有する耐摩耗リン添加剤とは対照的に、金属表面に、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの金属表面に接触したときに腐食を誘発しないことを観察した。
【0019】
化合物の腐食性(又は腐食)力は、例えば1種又は複数種の基油等の非腐食性媒体中に入った前記試験化合物を含む組成物中にこのワイヤが浸漬される時間の関数としての、所定の直径の銅ワイヤの電気抵抗の変化を調べる試験によって評価することができる。この電気抵抗の値の変化は、試験されたワイヤの直径の変化と直接相関している。したがって、本発明の文脈では、化合物は、調べた銅ワイヤの直径の損失が、前記化合物を含む組成物において、80時間の浸漬後に0.5μm以下、より具体的には20時間の浸漬後に0.2μm以下である場合、「非腐食性」であると言われる。
【0020】
潤滑剤の誘電特性は、特に、電気抵抗率及び誘電損失(tanδ)で表され、IEC 60247規格に従って測定することができる。
【0021】
電気抵抗率は、材料が電流の循環を阻む容量を表す。電気抵抗率は、抵抗計で表される(Ω.m)。電気抵抗率が大きいほど、潤滑剤の電気伝導率が低くなる。
【0022】
損失角δは、印加電圧と交流電流との間の位相差の相補角である。この係数は、ジュール効果によるエネルギーの損失を伝えるものである。したがって、加熱効果は、δの値に直接関連している。
【0023】
車両のトランスミッションでの使用を意図した潤滑剤は、一般的に、周囲温度で1のオーダーのtanδ値を有する。tanδ値が低いほど、潤滑剤の電気絶縁性が大きくなる。
【0024】
本発明による極圧及び耐摩耗添加剤として用いられる前記リン化合物は、有利には、ホスフェートエステル又はホスファイトエステル、より具体的には、トリアリールホスフェートエステル又はトリアリールホスファイトエステル、好ましくはトリ(アルキルアリール)ホスフェート又はトリ(アルキルアリール)ホスファイトエステルから、有利には、トリフェニルホスフェートエステル又はトリフェニルホスファイトエステルから選択される。
【0025】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物において、本発明による硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物を導入することによって予想される効果は、有利には、電気車両又はハイブリッド車両の機能に特に悪影響を与え得る腐食効果を引き起こすことなく、組成物の極圧性及び耐摩耗性を増強することである。
【0026】
したがって、本発明による組成物は、良好な極圧性及び耐摩耗性を示し、その一方で、同時に非腐食性である。したがって、この組成物は、本発明によって企図されるように、良好な誘電特性を有しながら腐食のリスクを防止することが重要である電気車両又はハイブリッド車両の推進システムにおける適用に特に有利であることが証明されている。
【0027】
本発明による組成物には、配合が容易であるという利点もある。より具体的には、極圧及び耐摩耗添加剤としての本発明による1種又は複数種の非腐食性リン化合物を使用することによって、これらの潤滑剤中で追加の「防食」添加剤(特に腐食性添加剤の使用によって引き起こされる腐食効果を抑制することが意図されているもの)を使用する必要をなくすことが可能である。
【0028】
本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑するための方法であって、前記システムの少なくとも1つの機械的部品を、極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物を含む潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1回のステップを含む、方法も提供する。
【0029】
本発明による潤滑剤組成物は、有利には、電気車両又はハイブリッド車両における、電気モータ自体、より具体的には、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速ギアを潤滑するために使用される。
【0030】
本発明による硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないリン化合物の使用の他の特徴、変形例、及び利点は、例示の目的で記載されて本発明を限定することのない、以下の説明及び実施例を読むことでより明確に明らかになるであろう。
【0031】
以下の文章では、「...と...との間」、「...~...の範囲」、及び「...~...で変動する」という表現は、同等のものであり、特に明記されていない限り、終点が含まれることを意味することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤
先に明記したように、本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の駆動システム用の潤滑剤中での、極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物の使用に存する。
【0034】
以下の文章では、特に明記しない限り、「本発明によるリン添加剤(又は化合物)」という用語は、極圧及び耐摩耗添加剤としての、本発明によって使用される硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物を示すために使用される。
【0035】
本発明の意味合いでの「硫黄を含まない」とは、本発明によって企図される極圧及び耐摩耗添加剤が硫黄原子を含まないことを特徴付けることを意図している。
【0036】
本発明の意味合いでの「アミン官能基を含まない」とは、本発明によって企図される極圧及び耐摩耗添加剤が、アミン官能基を含まないこと、すなわち、第1級、第2級、第3級、又は第4級アミン基を含まないことを特徴付けることを意図している。
【0037】
本発明によって企図される極圧及び耐摩耗添加剤は、好ましくは、窒素原子を含まない。
【0038】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない本発明によるリン化合物は、組成物に極圧性及び耐摩耗性を付与する。
【0039】
本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、有利には腐食性ではなく、すなわち、これらは、金属表面に、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの部品の金属表面に接触したときに腐食効果を生じさせない。
【0040】
本発明によって使用される極圧及び耐摩耗リン添加剤は、より具体的には、リン酸誘導体から、より具体的には、ホスフェートエステル、ホスファイトエステル、ホスホネートエステル、ホスフィネートエステル、及びホスフィンオキシドから選択され得る。
【0041】
より具体的には、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、以下の式(I):
【0042】
【化1】
【0043】
[式中、
sは0又は1であり、
X基は、互いに独立して、-OR'又はR'基を表し、R'は、好ましくは1~24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
ただし、sが0である場合、3個のX基は-OR'基を表し、sが1である場合、3個のX基のうちの少なくとも2個は-OR'基を表す]
の化合物であり得る。
【0044】
1つの特定の実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、ホスファイトエステルから選択され、より具体的には、上記の式(I)に準じ、式中、sは0である。
【0045】
別の特定の実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、ホスホネートエステルから選択され、より具体的には、上記の式(I)に準じ、式中、sは1であり、3個のX基のうちの2個は-OR'基を表す。
【0046】
別の特定の実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、ホスフェートエステルから選択され、より具体的には、上記の式(I)に準じ、式中、sは1であり、3個のX基は-OR'基を表す。
【0047】
上記の式(I)の炭化水素基R'は、好ましくは、互いに独立して、
- 好ましくはC1~C24直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、
- 好ましくはC2~C18直鎖状又は分枝鎖状アルケニル基、
- 好ましくはC1~C24アルコキシアルキル基、
- 好ましくはC3~C8シクロアルキル基、
- 好ましくはC6~C10アリール基
から選択され、
前記基は、それら自体が、任意選択で、1個又は複数個の炭化水素基、より具体的には、1個又は複数個のアルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、及び/又はアリール基によって置換され得る。
【0048】
本発明の文脈において、
- 「アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状飽和脂肪族基を意味し、例えば、Cx~Czアルキルは、直鎖状又は分枝鎖状のx~z個の炭素原子の飽和炭素鎖を表し、
- 「アルケニル」とは、直鎖状又は分枝鎖状不飽和脂肪族基を意味し、例えば、Cx~Czアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状のx~z個の炭素原子の不飽和炭素鎖を表し、
- 「アルコキシアルキル」とは、少なくとも1個のアルコキシ基を有するアルキル基を意味する。アルコキシ基は、Rがアルキル基を表す-OR基であり、
- 「シクロアルキル」とは、環状アルキル基を意味し、例えば、Cx~Czシクロアルキルは、x~z個の炭素原子の環状炭素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロヘプチルを表す。
- 「アリール」とは、単環式又は多環式芳香族基を意味し、より具体的には、6~10個の炭素原子を含むものを意味する。アリール基の例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0049】
1つの好ましい実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、以下の式(I'):
【0050】
【化2】
【0051】
[式中、R1、R2、及びR3は、互いに独立して、好ましくは1~24個の炭素原子を有する炭化水素基、より具体的には上述により定義したものを表す]
のホスフェートエステルから選択される。
【0052】
好ましくは、R1、R2、及びR3は、互いに独立して、好ましくはC2~C18直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、好ましくはC3~C8シクロアルキル基及び好ましくはC6~C10アリール基から選択され、前記シクロアルキル基及びアリール基は、任意選択で、1個又は複数個の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基で置換され得る。
【0053】
1つの特定の実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、上記の式(I')のものであり、式中、R1、R2、及びR3は、同一であり、好ましくは上述により定義したものである。
【0054】
この実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、有利には、トリアリールホスフェートエステル、特にトリ(アルキルアリール)ホスフェートエステル、好ましくはトリフェニルホスフェートエステルから選択され得る。
【0055】
本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、好ましくは、以下の式(II):
【0056】
【化3】
【0057】
[式中、R基は、互いに独立して、C1~C10直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、より具体的にはC3~C8直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表す]
の化合物である。
【0058】
好ましくは、n=1であり、Rは、パラ位の基、好ましくはC3~C6アルキル基、好ましくは分枝鎖状アルキル基、例えばイソプロピル基を表す。
【0059】
本発明による耐摩耗リン添加剤は、好ましくは、式(II)のものであり、式中、-(R)n基は、同一である。
【0060】
別の好ましい実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、以下の式(I''):
【0061】
【化4】
【0062】
[式中、R4、R5、及びR6は、互いに独立して、好ましくは1~24個の炭素原子を有する炭化水素基、より具体的には上述により定義したものを表す]
のホスファイトエステルから選択される。
【0063】
好ましくは、R4、R5、及びR6は、互いに独立して、好ましくはC2~C18直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、好ましくはC3~C8シクロアルキル基及び好ましくはC6~C10アリール基から選択され、前記シクロアルキル基及びアリール基は、任意選択で、1個又は複数個の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基で置換することができる。
【0064】
1つの特定の実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、上記の式(I')のものであり、式中、R4、R5、及びR6は、同一であり、好ましくは上述により定義したものである。
【0065】
この実施形態によると、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、有利には、トリアリールホスファイトエステル、特にトリ(アルキルアリール)ホスファイトエステル、好ましくはトリフェニルホスファイトエステルから選択され得る。
【0066】
本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤は、好ましくは、以下の式(II'):
【0067】
【化5】
【0068】
[式中、R基は、互いに独立して、C1~C10直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、より具体的にはC3~C8直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表す]
の化合物である。
【0069】
好ましくは、n=1であり、Rは、パラ位の基、好ましくはC3~C6、好ましくは分枝鎖状アルキル基、例えばイソプロピル基を表す。
【0070】
本発明による耐摩耗リン添加剤は、好ましくは、式(II')のものであり、式中、-(R)n基は、同一である。
【0071】
本発明による耐摩耗リン添加剤は、有利には、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート(CAS 68937-41-7)及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS 31570-04-4)から選択される。
【0072】
本発明の文脈において、本発明によって企図される極圧及び耐摩耗リン添加剤は、少なくとも2種の、リン化合物、より具体的には上述により定義した通りのリン化合物の混合物の形態をとり得ると理解されている。
【0073】
本発明によって使用されるリン化合物は、市販であり得るか、又は当業者に公知の合成技術によって調製され得る。
【0074】
本発明によって企図される極圧及び耐摩耗リン添加剤、より具体的には、上述により定義した極圧及び耐摩耗リン添加剤は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物中で、潤滑剤組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~3質量%の割合で使用され得る。
【0075】
1つの特に好ましい実施形態によると、本発明によって使用される極圧及び耐摩耗リン添加剤は、トリアリールホスフェートエステル、より具体的には、上述により定義した式(II)の化合物であり、好ましくは、潤滑剤組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0/5質量%~3質量%の割合で使用される。
【0076】
別の特に好ましい実施形態によると、本発明によって使用される極圧及び耐摩耗リン添加剤は、トリアリールホスファイトエステル、より具体的には、上述により定義した式(II')の化合物であり、好ましくは、潤滑剤組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~3質量%の割合で使用される。
【0077】
本発明によって企図される潤滑剤組成物は、耐摩耗アミン及び/又は硫黄添加剤、より具体的にはリン含有アミン及び/又は硫黄添加剤を、10質量%未満、より具体的には5質量%未満含むか、又は更にはこれらを含まないことが好ましい。
【0078】
本発明によって企図される潤滑剤組成物は、本発明によって企図される硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないリン添加剤とは異なる耐摩耗添加剤を、7.5質量%未満、より具体的には3質量%未満含むか、又は更にはこれらを含まないことが有利である。
【0079】
潤滑剤組成物
本発明によって使用される組成物は、本発明による、より具体的には、上述により定義した1種又は複数種の極圧及び耐摩耗リン添加剤と、1種又は複数種の基油と、潤滑剤組成物において従来的に企図される他の添加剤とを更に含み得る。
【0080】
基油
したがって、本発明に適した潤滑剤組成物は、1種又は複数種の基油を含み得る。
【0081】
これらの基油は、鉱油、合成油若しくは天然油、動物油若しくは植物油、又はそれらの混合物等の潤滑油の分野で従来的に使用されている基油から選択され得る。
【0082】
基油は、2種以上の油の混合物、例えば、2種、3種、又は4種の基油の混合物を含み得る。
【0083】
本発明によって企図される潤滑剤組成物中の基油は、より具体的には、API分類で定義され、且つ以下の表1に提示されるクラスに従って第I~V群に属する鉱物若しくは合成起源の油(若しくはATIEL分類によるその同等物)又はそれらの混合物であり得る。
【0084】
【表1】
【0085】
鉱物基油としては、原油の大気圧及び減圧蒸留と、それに続く、溶媒抽出、脱歴、溶媒脱パラフィン化、水素化処理、水素化分解、水素化異性化、及び水素化仕上げ等の精製操作によって得られる全てのタイプの基油が挙げられる。
【0086】
生物由来であり得る合成油及び鉱油の混合物を使用してもよい。
【0087】
本発明によって使用される組成物を製造するための様々な基油の使用に関しては、これらが、(特に、粘度、粘度指数、又は耐酸化性に関して)電気車両又はハイブリッド車両の推進システムのための使用に適した特性を有する必要があることを除いて、一般的に制限はない。
【0088】
本発明によって使用される組成物中の基油は、カルボン酸とアルコールとの特定のエステル、ポリアルファオレフィン(PAO)、及び2~8個の炭素原子、より具体的には2~4個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合又は共重合によって得られるポリアルキレングリコール(PAG)等の合成油からも選択され得る。
【0089】
基油として使用されるPAOは、例えば4~32個の炭素原子を含むモノマーから、例えばオクテン又はデセンから得られる。PAOの質量平均分子量は、極めて広く変動し得る。PAOの質量平均分子量は、好ましくは600Da未満である。PAOの質量平均分子量は、100~600Da、150~600Da、又は200~600Daの範囲であってもよい。
【0090】
本発明によって使用される組成物中の基油は、有利には、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、カルボン酸とアルコールとのエステル、及びそれらの混合物から選択される。
【0091】
本発明によって使用される組成物中の基油は、好ましくは、第III群、第IV群、又は第V群の油及びそれらの混合物から選択され、第III群の基油が好ましい。
【0092】
1つの代替的な実施形態によると、本発明によって使用される組成物中の基油は、第II群の基油から選択され得る。
【0093】
当業者は、本発明に適した組成物に使用される基油の量を調整する。
【0094】
本発明によって企図される潤滑剤組成物は、その総質量に対して、少なくとも50質量%の基油、より具体的には60質量%~99質量%、非常に具体的には70質量%~98質量%、好ましくは80質量%~97質量%の基油を含み得る。
【0095】
追加の添加剤
本発明に適した潤滑剤組成物は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤中での使用に適した、本発明によって企図される極圧及び耐摩耗リン添加剤以外の任意のタイプの添加剤を更に含み得る。
【0096】
使用される添加剤の性質及び量は、潤滑剤組成物の特性、より具体的には、本発明による極圧及び耐摩耗リン添加剤によって付与される特性に悪影響を与えないように選択されると理解されるであろう。
【0097】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの潤滑及び/又は冷却についての当業者に公知のそのような添加剤は、摩擦調整剤、粘度指数調整剤、本発明による極圧耐摩耗リン添加剤以外の極圧添加剤、洗浄剤、分散剤、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0098】
本発明に適した組成物は、有利には、抗酸化剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加の添加剤を含む。
【0099】
これらの添加剤は、単独で導入され得るか、かつ/あるいは当業者に周知のACEA(Association des Constructeurs Europeens d'Automobiles)及び/若しくはAPI(American Petroleum Institute)によって定義されているレベルの性能で車両モータ用の市販の潤滑剤配合物として既に販売されている種類の混合物の形態で導入され得る。
【0100】
本発明に適した潤滑剤組成物は、少なくとも1種の摩擦調整剤添加剤を含み得る。摩擦調整剤添加剤は、金属元素を提供する化合物、及び無灰化合物から選択することができる。金属元素を提供する化合物としては、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、及びZn等の遷移金属の錯体が挙げられ、配位子は、酸素、窒素、硫黄、又はリン原子を含む炭化水素化合物であり得る。無灰摩擦調整剤添加剤は、一般的に有機起源であり、脂肪酸とポリオールとのモノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪アミン、脂肪エポキシド、ホウ酸脂肪エポキシド、脂肪酸の脂肪アミン又はグリセロールエステルから選択され得る。本発明によると、脂肪化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1個の炭化水素基を含む。
【0101】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総質量に対して、0.01~2質量%又は0.01~5質量%、好ましくは0.1~1.5質量%又は0.1~2質量%の摩擦調整剤添加剤を含み得る。
【0102】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、少なくとも1種の抗酸化添加剤を含み得る。
【0103】
抗酸化添加剤は、一般的に、使用中の組成物の分解を遅らせることを可能にする。この分解は、特に、堆積物の形成、スラッジの存在、又は組成物の粘度の増加に反映され得る。抗酸化添加剤は、特にラジカル抑制剤又は過酸化水素破壊剤として作用する。一般的に用いられる抗酸化添加剤としては、フェノール系抗酸化添加剤、アミン型抗酸化添加剤、及びリン-硫黄抗酸化添加剤が挙げられる。リン-硫黄抗酸化添加剤等のこれらの抗酸化添加剤のうちのいくつかは、例えば、灰発生剤であり得る。フェノール系抗酸化添加剤は、灰を含んでいなくても、又は中性若しくは塩基性の金属塩の形態にあってもよい。抗酸化添加剤は、特に、立体障害フェノール類、立体障害フェノールエステル類、及びチオエーテル架橋を含む立体障害フェノール類、ジフェニルアミン類、少なくとも1個のC1~C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン類、N,N'-ジアルキルアリールジアミン類、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0104】
本発明によると、立体障害フェノール類は、好ましくは、フェノール基を含む化合物から選択され、アルコール官能基を有する炭素に隣接する少なくとも1個の炭素は、少なくとも1個のC1~C10アルキル基、好ましくはC1~C6アルキル基、好ましくはC4アルキル基、好ましくはtert-ブチル基で置換されている。
【0105】
アミン化合物は、任意選択でフェノール系抗酸化添加剤と組み合わせて使用され得る別のクラスの抗酸化添加剤である。アミン化合物の例は、芳香族アミンであり、例えば式NR4R5R6の芳香族アミンであり、式中、R4は、任意選択で置換されていてもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R5は、任意選択で置換されていてもよい芳香族基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基、又は式R7S(O)zR8の基を表し、式中、R7は、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、R8は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、zは、0、1、又は2を表す。
【0106】
硫化アルキルフェノール又はそれらのアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩も、抗酸化添加剤として使用することができる。
【0107】
別のクラスの抗酸化添加剤は、銅化合物のもの、例えば、銅チオホスフェート又は銅ジチオホスフェート、カルボン酸の銅塩、並びに銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート及びアセチルアセトネートである。銅I及びIIの塩、並びにコハク酸又は無水物の塩も使用することができる。
【0108】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、当業者に公知の任意のタイプの抗酸化添加剤を含有し得る。
【0109】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、少なくとも1種の無灰抗酸化添加剤を含む。
【0110】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、組成物の総質量に対して、0.5~2質量%の少なくとも1種の抗酸化添加剤を含み得る。
【0111】
本発明に適した潤滑剤組成物はまた、少なくとも1種の洗浄剤添加剤も含み得る。
【0112】
洗浄剤添加剤は、一般的に、酸化及び燃焼の副生成物を溶解することによって、金属部品の表面における堆積物の形成を低減することを可能にする。
【0113】
本発明によって使用される潤滑剤組成物に使用され得る洗浄剤添加剤は、一般的に当業者に公知である。洗浄剤添加剤は、長い親油性炭化水素鎖及び親水性頭部を含むアニオン性化合物であり得る。会合したカチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0114】
洗浄剤添加剤は、好ましくは、カルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、スルホネート、サリチレート、ナフテネート、及びフェネート塩から選択される。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、又はバリウムである。
【0115】
これらの金属塩は、一般的に、化学量論で、又は過剰で、すなわち、化学量論量よりも多い量で、金属を含む。ここで、これらは、塩基過剰の洗浄剤添加剤であり、過剰な金属は、洗浄剤添加剤にその塩基過剰の性質を与え、一般的に、油に不溶性の金属塩、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、又はグルタミン酸塩、好ましくは炭酸塩の形態にある。
【0116】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総質量に対して、例えば、2~4質量%の洗浄剤添加剤を含み得る。
【0117】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、同様に、少なくとも1種の分散剤を含み得る。
【0118】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミド、及びそれらの誘導体から選択され得る。
【0119】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、組成物の総質量に対して、例えば、0.2~10質量%の分散剤を含み得る。
【0120】
本発明に適した潤滑剤組成物は、少なくとも1種の消泡剤を更に含み得る。
【0121】
消泡剤は、シリコーンから選択され得る。
【0122】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総質量に対して、0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%の消泡剤を含み得る。
【0123】
本発明に適した潤滑剤組成物は、少なくとも1種の流動点降下剤(PPD)も含み得る。
【0124】
一般的に、流動点降下剤は、パラフィン結晶の形成を遅延させることによって、組成物の低温挙動を増強する。流動点降下剤の例としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、及びアルキル化ポリスチレンが挙げられる。
【0125】
この種類の潤滑剤組成物の配合に関して、本発明による前記耐摩耗リン添加剤は、基油又は基油混合物に添加され得て、その後、他の補完的な添加剤が添加される。
【0126】
或いは、本発明による前記極圧及び耐摩耗リン添加剤は、特に1種又は複数種の基油及び任意選択で追加の添加剤を含む、従来の既存の潤滑配合物に添加され得る。
【0127】
或いは、本発明による前記極圧及び耐摩耗リン添加剤は、1種又は複数種の追加の添加剤と組み合わされ得て、そのように形成された添加剤「パッケージ」が、基油又は基油混合物に添加され得る。
【0128】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、ASTM D445規格に従って100℃で測定して、1~15mm2/sの範囲、より具体的には3~10mm2/sの範囲の動粘度を有する。
【0129】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、ASTM D445規格に従って40℃で測定して、3~80mm2/sの範囲、より具体的には15~70mm2/sの範囲の動粘度を有する。
【0130】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、式(X)W(Y)によって定義されているSAEJ300分類によるグレードを有し、式中、Xは、0又は5を表し、Yは、4~20の範囲の整数、より具体的には4~16又は4~12の範囲の整数を表す。
【0131】
本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、90℃で測定して、5~10000Mohm.m、より好ましくは6~5000Mohm.mの電気抵抗率を有する。
【0132】
更に、本発明によって使用される潤滑剤組成物は、有利には、90℃で測定して、0.01~30、より好ましくは0.02~25、非常に好ましくは0.02~10の誘電損失を呈する。
【0133】
1つの好ましい実施形態によると、本発明によって配合された潤滑剤組成物は、
- 好ましくは、第III群の基油及び第IV群又は第V群の基油から選択される、基油又は基油混合物、
- 硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、より具体的には、上述により定義したもの、好ましくは、トリアリールホスフェートエステルタイプのもの、より具体的には、上述により定義した式(II)に準ずるもの、
- 任意選択で、抗酸化剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択される1種又は複数種の追加の添加剤
を含むか、又は更にはこれらからなる。
【0134】
本発明によって配合された潤滑剤組成物は、好ましくは、
- 好ましくは、トリアリールホスフェートエステル、より具体的には、上述により定義した式(II)に準ずるもの、及びトリアリールホスファイトエステル、より具体的には、上述により定義した式(II')に準ずるものから選択される、より好ましくは、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから選択される、0.1質量%~5質量%、より具体的には0.5質量%~3質量%の、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、
- 好ましくは、第III群の基油、第IV群又は第V群の基油、及びそれらの混合物から選択される、50質量%~99.5質量%、より具体的には60質量%~99質量%の1種又は複数種の基油、並びに
- 任意選択で、抗酸化剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択される、0.1質量%~5質量%の1種又は複数種の添加剤
を含むか、又は更にはこれらからなり、これらの量は、前記潤滑剤組成物の総質量に対して表されている。
【0135】
用途
先に示したように、本発明によって配合された組成物は、上述したように、電気車両又はハイブリッド車両の推進システム、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両内のモータ及びパワーエレクトロニクス用の潤滑剤として使用される。
【0136】
したがって、本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑するための、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の電気モータ及び動力電気機器を潤滑するための、極圧及び耐摩耗添加剤としての、好ましくは、唯一の極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、より具体的には、上述により定義したもの、好ましくは、トリアリールホスフェートエステルタイプのもの、より具体的には、上述により定義した式(II)に準ずるものを用いた上述により定義した組成物の使用に関する。
【0137】
したがって、本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの部品、より具体的には、ステータ及びロータの巻線、推進システムのセンサ、又は油圧システムのソレノイドバルブのみならず、電気車両又はハイブリッド車両における、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速ギアの摩耗を低減し、同時にその腐食を引き起こさないための、潤滑剤組成物中の添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、より具体的には、上述により定義したものの使用に関する。
【0138】
図1に概略的に示されているように、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムは、特に、電気モータ部品(1)と、電池(2)と、トランスミッション、より具体的には減速機(3)とを備える。
【0139】
電気モータは、典型的には、ステータ(13)及びロータ(14)に接続されたパワーエレクトロニクス(11)を備える。ステータは、交流電流が供給されるコイル、より具体的には銅コイルを備える。これによって、回転磁界の生成が可能になる。また、ロータは、コイル、永久磁石、又は他の磁性材料を備え、回転磁界によって回転させられる。
【0140】
ローリングベアリング(12)は、一般的に、ステータ(13)とロータ(14)との間に組み込まれる。トランスミッション、より具体的には減速機(3)は、電気モータの出口での回転速度を減速させ、車輪に伝達される速度を調整することを可能にし、それによって、同時に車両の速度を制御することが可能になる。
【0141】
ローリングベアリング(12)は、特に高い機械的応力に供され、疲労による摩耗の問題を生じる。したがって、ローリングベアリングの寿命を延ばすために、これを潤滑する必要がある。減速機も同様に高い摩擦応力に供されるため、急激に損傷しないように適切な潤滑が必要である。
【0142】
したがって、本発明は、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両の電気モータを潤滑するための、より具体的には、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリングを潤滑するための、上述した組成物の使用に関する。
【0143】
本発明はまた、電気車両又はハイブリッド車両における、トランスミッション、より具体的には減速機を潤滑するための、上記のような組成物の使用にも関する。
【0144】
したがって、有利には、本発明による組成物は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの様々な部品、より具体的には、電気車両又はハイブリッド車両における、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速機を潤滑するために使用され得る。
【0145】
有利には、上記のように、本発明による潤滑剤組成物は、非腐食性でありながら、優れた極圧性能及び耐摩耗性能を呈する。
【0146】
その別の態様によると、本発明はまた、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの少なくとも1個の部品、より具体的には、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速ギアを潤滑するための方法であって、前記少なくとも1個の部品を上記のような組成物と接触させる少なくとも1回のステップを含む、方法にも関する。
【0147】
したがって、本発明は、電気車両又はハイブリッド車両の推進システムの少なくとも1個の部品、より具体的には、電気モータのロータとステータとの間に位置するローリングベアリング、及び/又はトランスミッション、より具体的には減速ギアの摩耗を低減し、同時にその腐食を引き起こさないための方法であって、前記少なくとも1個の部品を上記のような組成物と接触させる少なくとも1回のステップを含む、方法を提示している。
【0148】
本発明によって使用される組成物及びその使用について記載されている特徴及び選好性も全て、この方法に適用可能である。
【0149】
推進システムの様々な部品に電気絶縁を設けることも有利である期待され得る。
【0150】
したがって、1つの特定の実施形態によると、本発明による組成物は、良好な電気絶縁性及び潤滑性を呈し得る。
【0151】
この実施形態によると、本発明による組成物は、電気車両若しくはハイブリッド車両の推進システムの1個又は複数個の部品を潤滑するために、より具体的には、モータのセンサ及びソレノイドバルブ、ローリングベアリングのみならず、電気モータのロータとステータとの間に位置する巻線を潤滑するために、又はトランスミッション、より具体的には、電気車両若しくはハイブリッド車両に見られるギア、センサ、ソレノイドバルブ、若しくは減速ギアを潤滑するために、また同時に、前記推進システムの少なくとも1個の部品、特に、バッテリ、モータ、若しくはパワーエレクトロニクスに電気絶縁を設けるために使用され得る。
【0152】
この種類の実装形態の文脈において、本発明によって企図される潤滑剤組成物は、有利には、ASTM D445規格に従って100℃で測定して、2~8mm2/s、好ましくは3~7mm2/sの動粘度を有する。
【0153】
上述した使用を組み合わせることができると理解され、上述した組成物は、潤滑剤として、電気絶縁体として、また、電気車両又はハイブリッド車両のモータ、バッテリ、及びトランスミッション用の冷却液として使用され得る。
【0154】
本発明によると、本発明による組成物の、特定の、有利な、又は好ましい特性によって、同様に特定の、有利な、又は好ましい本発明による使用の定義が可能になる。
【0155】
これより、本発明を、以下の実施例によって説明するが、これらの実施例は、当然のことながら、例示の目的で示されるものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0156】
様々な組成物を評価した:
- 本発明に適合するリン化合物Aを含む組成物C1:トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート
- 本発明に適合したリン化合物Bを含む組成物C2:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
- 本発明に適合していない、極圧及び耐摩耗化合物としての公知のリン-硫黄化合物Cを含む組成物C3:トリフェニルホスホロチオネート、並びに
- 本発明に適合しておらず、Irgalube 349の名称で販売されている、耐摩耗化合物としての公知のアミン及びホスフェート化合物Dの混合物を含む組成物C4
- 本発明に適合していない、耐摩耗化合物としての公知のジメルカプトチアジアゾール化合物Eの混合物を含む組成物C5
- 本発明に適合していない、耐摩耗化合物としての公知の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート化合物Fの混合物を含む組成物C6。
【0157】
前述の各化合物に加えて、組成物C1~C6は、第III群の基油を含む。
【0158】
組成及び量(質量パーセントとして表される)を、以下の表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
腐食力の評価
評価方法
組成物の腐食性(又は腐食)力は、組成物中にこのワイヤを浸漬する時間の関数としての、所定の直径の銅ワイヤの電気抵抗値の変化を調べることを伴う試験によって評価することができる。この電気抵抗の値の変化は、試験ワイヤの直径の変化と直接相関している。本発明の文脈において、選択されるワイヤの直径は、70μmである。
【0161】
この場合、銅ワイヤを、体積20mLの試験組成物が入った試験管に浸漬する(組成物C1及びC2は、本発明による組成物であり、組成物C3~C6は、比較のために用いられる組成物である)。
【0162】
ワイヤの抵抗は、抵抗計を用いて測定する。
【0163】
測定電流は1mAである。
【0164】
試験組成物の温度を150℃にする。
【0165】
銅ワイヤの抵抗は、この式(1):
【0166】
【数1】
【0167】
[式中、Rは抵抗であり、ρは銅の抵抗率であり、Lはワイヤの長さであり、Sは断面積である]
で計算する。
【0168】
この式(1)では、ρ及びLは定数である。したがって、抵抗Rは、浸漬されたワイヤの断面積に反比例する。
【0169】
ワイヤの直径は、断面積(2):
【0170】
【数2】
【0171】
[式中、Dはワイヤの直径である]
から計算する。
【0172】
抵抗と直径との間の関係を示すために、式(2)を(1)に挿入する(3):
【0173】
【数3】
【0174】
したがって、ワイヤが試験組成物によって腐食すると、ワイヤの直径が小さくなり、それによって、抵抗値が増加する。
【0175】
抵抗を監視することによってワイヤの直径の変化を監視し、この変化は、浸漬されたワイヤが受けた腐食のスナップショット(snapshot)である。
【0176】
したがって、ワイヤの直径の損失は、測定された抵抗から直接計算される。
【0177】
測定された抵抗が無限である場合、開回路が存在している。したがって、これは、ワイヤが破損したことを意味し、非常に深刻な腐食と定義される。
【0178】
結果
これらの結果は、以下の表3に要約されており、μm(直径の損失)で表される。得られた値が低いほど、評価された組成物の防食特性は良好である。
【0179】
組成物は、調べた銅ワイヤの直径の損失が、組成物において、80時間の浸漬後に0.5μm以下、より具体的には20時間の浸漬後に0.1μm以下である場合、「非腐食性」であると考えられる。
【0180】
【表3】
【0181】
これらの結果から、硫黄含有又はアミン含有耐摩耗リン添加剤とは対照的に、本発明による硫黄を含まず且つアミン官能基を含まないリン添加剤の添加には腐食性効果が伴わないことが明らかである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤組成物中の極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物の使用。
【請求項2】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、ホスフェートエステル、ホスホネートエステル、ホスフィネートエステル、ホスファイトエステル、及びホスフィンオキシドから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、以下の式(II):
【化2】
[式中、R基は、互いに独立して、直鎖状又は分枝鎖状C1~C10アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表す]
ホスフェートエステルから選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、以下の式(II'):
【化3】
[式中、R基は、互いに独立して、直鎖状又は分枝鎖状C1~C10アルキル基を表し、nは、出現するごとに独立して、0、1、又は2を表す]
ホスファイトエステルから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない前記リン化合物が、前記潤滑剤組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記潤滑剤組成物が、ポリアルキレングリコール、ポリアルファオレフィン、カルボン酸とアルコールとのエステル、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の基油を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記潤滑剤組成物が、防食添加剤を含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
電気車両又はハイブリッド車両の推進システムを潤滑及び任意選択で冷却するための極圧及び耐摩耗添加剤としての、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない少なくとも1種のリン化合物を含む潤滑剤組成物の使用。
【請求項9】
前記リン化合物が、請求項2から4のいずれか一項で定義した通りである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
電気車両又はハイブリッド車両の、電気モータのロータとステータとの間に位置するベアリング、及び/又はトランスミッションを潤滑するための、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
潤滑剤組成物が、
- 0.1質量%~5質量%の、硫黄を含まず且つアミン官能基を含まない1種又は複数種のリン化合物、
- 50質量%~99.5質量%の1種又は複数種の基油、並びに
- 任意選択で、抗酸化剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物から選択される、0.1質量%~5質量%の1種又は複数種の添加剤
を含むか、又は更にはこれらからなり、これらの量が、前記潤滑剤組成物の総質量に対して表されている、請求項8から10のいずれか一項に記載の使用。
【国際調査報告】