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特表2022-538647脱エピトープ化されたアルファグリアジン、ならびにセリアック病およびグルテン過敏症の管理のためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】脱エピトープ化されたアルファグリアジン、ならびにセリアック病およびグルテン過敏症の管理のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20220829BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220829BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220829BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220829BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20220829BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
C12N15/29
C07K14/415 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
A01H5/00 A
A23L7/10 Z
A21D6/00
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577898
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2020056263
(87)【国際公開番号】W WO2021001784
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/870,695
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521567055
【氏名又は名称】ウッコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オフラン、ヤナイ
(72)【発明者】
【氏名】ベン―デイビッド、モシェ
(72)【発明者】
【氏名】ビラン、アッサフ
(72)【発明者】
【氏名】ザーキン、シリ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ガーバー、オーリー
(72)【発明者】
【氏名】チュプリン、アンナ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B023
4B032
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD08
2B030CA14
2B030CB02
4B023LC09
4B023LE26
4B023LG06
4B032DG02
4B064AG01
4B064CA11
4B064CA19
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA89X
4B065AA89Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA32
4H045EA01
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンが提供される。それを生成する方法およびその使用も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)および/またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する抗原性単位を含むアルファグリアジンを脱エピトープ化する方法であって、
前記抗原性単位の1位のアミノ酸残基を、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換するステップと、
前記抗原性単位の4位または5位の少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を置換するステップと、を含み、
それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する、方法。
【請求項2】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンタンパク質が、30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、配列番号60~80に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、配列番号49~58に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記置換が、前記抗原性単位のうちの少なくとも2つで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記置換が、前記抗原性単位のうちの少なくとも3つで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗原性単位の1位、4位および5位のアミノ酸残基を置換するステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原性単位の1位での前記置換が、正に帯電したアミノ酸による置換を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記正に帯電したアミノ酸がヒスチジンまたはリジンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原性単位の4位での前記置換が、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗原性単位の4位での前記置換がプロリンによる置換を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸による置換を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記小アミノ酸が、グリシンまたはセリンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原性単位の3位のアミノ酸残基を芳香族または極性アミノ酸で置換するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、
前記アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置で1つ以上のアミノ酸残基を変異させるステップを含み、
前記変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択された位置のアミノ酸にもたらされ、それによって、前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成し、前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、方法。
【請求項17】
前記脱エピトープ化が、前記アルファグリアジンのアレルゲン性を低下させない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記変異が、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83G、およびP84T/Mからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンが、グルタミン酸に変異する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記位置が、66、73および/または80からなる群から選択され、前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、セリアック病患者に由来するT細胞に対して、対応する非変異アルファグリアジンが前記セリアック病患者に由来するT細胞に結合するよりも低い親和性で結合する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、HLA-DQ-ペプチドテトラマーベースのアッセイまたはインターフェロン-γELISAアッセイを使用して測定された場合、セリアック病患者に由来するT細胞を、対応する非変異アルファグリアジンが前記セリアック病患者に由来するT細胞を活性化するよりも少ない程度で活性化する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記親和性が少なくとも約10%減少する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記脱エピトープ化が、ポリペプチドの三次元構造を破壊しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記脱エピトープ化が、前記ポリペプチドのフォールディングを破壊しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、
(i)野生型アルファグリアジンの抗原性単位の1位での、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸による置換と、
(ii)前記抗原性単位の4位および/または5位による置換と、を含み、
前記抗原性単位が、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する、脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項29】
30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない、請求項28に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項30】
配列番号60~80に示されるアミノ酸配列を含む、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項31】
配列番号49~57に示されるアミノ酸配列を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項32】
前記抗原性単位のうちの少なくとも2つによる置換を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項33】
前記抗原性単位のうちの少なくとも3つによる置換を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項34】
前記抗原性単位の1位、4位および5位での置換を含む、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項35】
前記抗原性単位の1位での前記置換が、正に帯電したアミノ酸による置換を含む、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項36】
前記正に帯電したアミノ酸がヒスチジンまたはリジンである、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項37】
前記抗原性単位の4位での前記置換が、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項38】
前記抗原性単位の4位での前記置換がプロリンによる置換を含む、請求項37に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項39】
前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む、請求項28または29に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項40】
前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸による置換を含む、請求項39に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項41】
前記小アミノ酸がグリシンまたはセリンを含む、請求項40に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項42】
前記抗原性単位の3位での芳香族または極性アミノ酸による置換をさらに含む、請求項28~41のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項43】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、
前記アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置に少なくとも1つ以上の変異を含み、
前記変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択される位置のアミノ酸にもたらされ、
前記変異の前記位置が配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項44】
前記変異が、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83GおよびP84T/Mからなる群から選択される、請求項43に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項45】
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む、請求項43または44に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項46】
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項47】
前記アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンが、グルタミン酸に変異する、請求項43または請求項44に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項48】
前記位置が、66、73および/または80からなる群から選択され、前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、請求項47に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項49】
配列番号60~80に示されるアミノ酸配列を含む、請求項43~48のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項50】
配列番号49~57に示されるアミノ酸配列を含む、請求項43~48のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項51】
請求項28~47および49~50のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項52】
植物細胞における前記アルファグリアジンの発現を可能にするように、転写調節配列に作動可能に連結された、請求項51に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項53】
前記転写調節配列が植物プロモーターを含む、請求項52に記載の発現ベクター。
【請求項54】
前記植物プロモーターが小麦プロモーターを含む、請求項53に記載の発現ベクター。
【請求項55】
請求項28~47および49~50のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを含む細胞。
【請求項56】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、
請求項52~54のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む細胞を、前記細胞における前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンの発現を可能にする条件下で培養するステップを含み、それによって脱エピトペドアルファグリアジンを生成する、方法。
【請求項57】
請求項28~47および49~50のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを含む、非グルテン植物に由来する小麦粉。
【請求項58】
請求項57に記載の小麦粉を含む生地。
【請求項59】
前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い展開時間(DT)、より低い安定性時間(S)、より高い軟化度(DS)、より高いコンシステンシー(C)値およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする、請求項58に記載の生地。
【請求項60】
(a)前記脱エピトープ化されたグルテニンまたはグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い剛性、
(b)前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、機械的誘起に対するより高い安定性、
(c)前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い臨界張力値、
(d)前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い変形能力、
(e)前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い可塑性を有する、および
(f)前記脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高いコンシステンシー、
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする、請求項58に記載の生地。
【請求項61】
(a)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い剛性、
(b)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、機械的誘起に対するより高い安定性、
(c)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い臨界張力値、
(d)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い変形能力、
(e)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い可塑性を有する、および
(f)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高いコンシステンシー、
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする、請求項58に記載の生地。
【請求項62】
前記生地が、塩をさらに含む、請求項58に記載の生地。
【請求項63】
前記生地が、少なくとも1つの追加の食品成分と組み合わされ、前記少なくとも1つの追加の食品成分が、香味料、野菜または野菜部分、油、植物デンプン、ビタミンおよびオリーブからなる群から選択される、請求項58に記載の生地。
【請求項64】
膨張剤をさらに含み、前記膨張剤が、低温殺菌されていないビール、バターミルク、ジンジャービール、ケフィア、サワードウスターター、酵母、ホエイプロテイン濃縮物、ヨーグルト、生物学的膨張剤、化学膨張剤、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、重曹、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項58に記載の生地。
【請求項65】
請求項28~47および49~50のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたグリアジンを発現するように遺伝子改変されている小麦。
【請求項66】
前記対応する非変異ポリペプチドの発現が、野生型小麦と比較して下方調節されている、請求項65に記載の小麦。
【請求項67】
前記非変異ポリペプチドに対するRNAサイレンシング剤を含む、請求項66に記載の小麦。
【請求項68】
DNA編集剤によって遺伝子改変されている、請求項65に記載の小麦。
【請求項69】
請求項28~47および49~50のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたグリアジンを発現するように遺伝子改変されているトウモロコシ植物。
【請求項70】
請求項65~68のいずれか一項に記載の小麦から生成された小麦粉。
【請求項71】
請求項65~68のいずれか一項に記載の小麦から生成された生地。
【請求項72】
請求項58または71に記載の生地を加工することによって調製される加工生地製品であって、
前記加工が、前記生地を食品成分と組み合わせ、膨張、練り、押し出し、成形(molding)、成形(shaping)、調理、煮込み、茹で、上火での焼きつけ、焼き、揚げ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、加工生地製品。
【請求項73】
鍋で焼いたパン(pan bread)、ピザパンクラスト、パスタ、トルティーヤ、パニーニパン、プレッツェル、パイ、およびサンドイッチパン製品からなる群から選択される形態である、請求項72に記載の加工生地製品。
【請求項74】
小麦粉を製造する方法であって、
請求項65~68のいずれか一項に記載の小麦を加工することを含み、それによって前記小麦粉を製造する、方法。
【請求項75】
前記加工が、粉砕または製粉を含む、請求項74に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年7月4日に出願された米国仮特許出願第62/870,695号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の陳述)
2020年6月30日に作成された83105 Sequence Listing.txtというタイトルのASCIIファイルは、58,437バイトで構成され、本願の提出と同時に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、アルファグリアジンを脱エピトープ化する方法、およびセリアック病を含むグルテン過敏症の管理のためのその使用に関する。
【0004】
セリアック病(CD)は、小麦、ならびにライ麦および大麦などの関連穀物の貯蔵タンパク質である環境要因であるグルテンに関連する感受性の高い個体(その多くはHLA遺伝子型DQ2またはDQ8)で発症する後天性慢性免疫障害である。ヨーロッパおよび米国でのセリアック病の有病率は、人口の約1~2%であると推定されている。セリアック病は、潜伏性または無症候性のセリアック病、軽度の胃腸障害のみを伴う疾患、慢性胃腸症状、吸収不良、および/または体重減少を含む幅広い臨床症状を示す。セリアック病は、孤立性鉄欠乏性貧血(isolated iron deficiency anemia)の患者で診断されることがよくある。
【0005】
グルテン含有シリアルの摂取は、骨粗鬆症、末梢神経系および中枢神経系の関与、軽度または重度の肝疾患、不妊症の問題など、腸の外側の症状を誘発する可能性があり、古典的な例はグルテン誘発性皮膚疾患、疱疹状皮膚炎である。
【0006】
セリアック病患者の場合、骨障害、不妊症、がんなどのさらなる合併症の発症リスクが大幅に高まることを避けるために、生涯にわたる完全なグルテン排除に厳密に従う必要がある。セリアック病患者の死亡率は一般人口の死亡率を上回っている。しかしながら、グルテンを含まない食事で1~5年後に死亡率が低下する傾向がある。
【0007】
しかしながら、完全にグルテンを含まない食事をとることは非常に困難である。厳格な食事療法を維持しようとする意欲の高い患者でさえ、グルテンへの不注意またはバックグラウンド曝露のために影響を受ける。臨床的に寛解しており、グルテンを含まない食事をとっていると主張するセリアック病患者の80%が、小腸生検標本に持続的な異常を示している。グルテンへの不注意な曝露は、グルテンを含まない食事をしていると推定された臨床的に診断された患者の間で、無反応のセリアック病の主な原因として特定されている。
【0008】
纏めると、セリアック病の追加の食事療法は、費用がかからず、利用しやすいものであることが急務である。
【0009】
Sanchez-Leon、Susana et al."Low-gluten、Nontransgenic Wheat Engineered with CRISPR/Cas9."Plant Biotechnology Journal 16.4(2018):902-910.PMC。
【0010】
追加の背景技術としては、米国特許出願第2016/0338366号が挙げられる。
【0011】
追加の背景技術としては、Herpen et al.,BMC Genomics volume 7,Article number:1(2006)、Kumar et al.,Volume 319,Issue 3,7 June 2002,Pages 593-602、Ozuna et al,The Plant Journal(2015)82,794-805、Petersen et al.,Nature Structural&Molecular Biology volume 21,pages480-488(2014)、Mitea et al.,PLoS One.2010;5(12):e15637、およびQiao et al.,J Immunol 2011;187:3064-3071が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)および/またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する抗原性単位を含むアルファグリアジンを脱エピトープ化する方法であって、方法が、抗原性単位の1位のアミノ酸残基を、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換することと、抗原性単位の4位または5位の少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を置換することと、を含み、それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する、方法が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、方法が、アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置で1つ以上のアミノ酸残基を変異させることを含み、変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択された位置のアミノ酸にもたらされ、それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成し、変異の位置が配列番号32に示されるような野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、方法が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、
(i)野生型アルファグリアジンの抗原性単位の1位での、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸による置換と、
(ii)抗原性単位の4位および/または5位での置換と、を含み、
抗原性単位が、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する、脱エピトープ化されたアルファグリアジンが提供される。
【0015】
本発明の一態様によれば、アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置に少なくとも1つ以上の変異を含む、脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、変異のうちの少なくとも1つが63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択される位置のアミノ酸にもたらされ、変異の位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、脱エピトープ化されたアルファグリアジンが提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、植物細胞におけるアルファグリアジンの発現を可能にするように、転写調節配列に作動可能に連結された、本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを含む細胞が提供される。
【0019】
本発明の一態様によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、細胞内での脱エピトープ化されたアルファグリアジンの発現を可能にする条件下で、本明細書に記載の発現ベクターを含む細胞を培養することを含み、それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する、方法が提供される。
【0020】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファを含む、非グルテン植物に由来する小麦粉が提供される。
【0021】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の小麦粉を含む生地が提供される。
【0022】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを発現するように遺伝子改変されている小麦が提供される。
【0023】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを発現するように遺伝子改変されているトウモロコシ植物が提供される。
【0024】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の小麦から生成された小麦粉が提供される。
【0025】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の小麦から生成された生地が提供される。
【0026】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の生地を加工することによって調製された加工生地製品が提供され、加工は、生地を食品成分と組み合わせて、膨張、練り、押し出し、成形(molding)、成形(shaping)、調理、煮込み、茹で、上火での焼きつけ、焼き、揚げ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
本発明の一態様によれば、本明細書に開示される小麦を処理することを含み、それによって小麦粉を製造する、小麦粉の製造方法が提供される。
【0028】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンタンパク質は、30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない。
【0029】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号60~80に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号49~58に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、置換は、抗原性単位のうちの少なくとも2つで行われる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、置換は、抗原性単位のうちの少なくとも3つで行われる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、この方法は、抗原性単位の1、4および5位のアミノ酸残基を置換することを含む。
【0034】
本発明の実施形態によれば、抗原性単位の1位での置換は、正に帯電したアミノ酸による置換を含む。
【0035】
本発明の実施形態によれば、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジンまたはリジンである。
【0036】
本発明の実施形態によれば、抗原性単位の4位での置換は、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、位置4での置換は、プロリンによる置換を含む。
【0038】
本発明の実施形態によれば、抗原性単位の5位での置換は、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む。
【0039】
本発明の実施形態によれば、5位での置換は、小アミノ酸による置換を含む。
【0040】
本発明の実施形態によれば、小アミノ酸は、グリシンまたはセリンを含む。
【0041】
本発明の実施形態によれば、この方法は、抗原性単位の3位のアミノ酸残基を芳香族または極性アミノ酸で置換することをさらに含む。
【0042】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化は、アルファグリアジンのアレルゲン性を低下させない。
【0043】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンは、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む。
【0044】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンは、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。
【0045】
本発明の実施形態によれば、変異は、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83G、およびP84T/Mからなる群から選択される。
【0046】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンは、グルタミン酸に変異している。
【0047】
本発明の実施形態によれば、位置は、66、73および/または80からなる群から選択され、変異の位置は、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う。
【0048】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、セリアック病患者に由来するT細胞に対して、対応する非変異アルファグリアジンがセリアック病患者に由来するT細胞に結合するよりも低い親和性で結合する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、HLA-DQ-ペプチドテトラマーベースのアッセイまたはインターフェロン-γELISAアッセイを使用して測定された場合、セリアック病患者に由来するT細胞を、対応する非変異アルファグリアジンがセリアック病患者に由来するT細胞を活性化するよりも少ない程度で活性化する。
【0050】
本発明の実施形態によれば、親和性は少なくとも約10%減少する。
【0051】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化は、ポリペプチドの三次元構造を破壊しない。
【0052】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化は、ポリペプチドのフォールディングを破壊しない。
【0053】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない。
【0054】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号60~80に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号49~57に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0056】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、抗原性単位のうちの少なくとも2つによる置換を含む。
【0057】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、抗原性単位のうちの少なくとも3つによる置換を含む。
【0058】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、抗原性単位の1、4および5位での置換を含む。
【0059】
本発明の実施形態によれば、抗原性単位の1位での置換は、正に帯電したアミノ酸による置換を含む。
【0060】
本発明の実施形態によれば、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジンまたはリジンである。
【0061】
本発明の実施形態によれば、位置4での置換は、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む。
【0062】
本発明の実施形態によれば、位置4での置換は、プロリンによる置換を含む。
【0063】
本発明の実施形態によれば、抗原性単位の5位での置換は、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む。
【0064】
本発明の実施形態によれば、5位での置換は、小アミノ酸による置換を含む。
【0065】
本発明の実施形態によれば、小アミノ酸は、グリシンまたはセリンを含む。
【0066】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、抗原性単位の3位での芳香族または極性アミノ酸による置換をさらに含む。
【0067】
本発明の実施形態によれば、変異は、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83G、およびP84T/Mからなる群から選択される。
【0068】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンは、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む。
【0069】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンは、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。
【0070】
本発明の実施形態によれば、アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンは、グルタミン酸に変異している。
【0071】
本発明の実施形態によれば、位置は、66、73および/または80からなる群から選択され、変異の位置は、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う。
【0072】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号60~80に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0073】
本発明の実施形態によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号49~57に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0074】
本発明の実施形態によれば、転写調節配列は、植物プロモーターを含む。
【0075】
本発明の実施形態によれば、植物プロモーターは小麦プロモーターを含む。
【0076】
本発明の実施形態によれば、生地は、脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い展開時間(DT)、より低い安定性時間(S)、より高い軟化度(DS)、より高いコンシステンシー(C)値およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする。
【0077】
本発明の実施形態によれば、生地は、(a)脱エピトープ化されたグルテニンまたはグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い剛性、(b)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、機械的誘起に対するより高い安定性、(c)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い臨界張力値、(d)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い変形能力、(e)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い可塑性を有する、および(f)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高いコンシステンシー、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする。
【0078】
本発明の実施形態によれば、生地は、(a)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い剛性、(b)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、機械的誘起に対するより高い安定性、(c)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い臨界張力値、(d)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い変形能力、(e)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い可塑性を有する、および(f)任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高いコンシステンシー、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする。
【0079】
本発明の実施形態によれば、生地はさらに塩を含む。
【0080】
本発明の実施形態によれば、生地は、少なくとも1つの追加の食品成分と組み合わされ、少なくとも1つの追加の食品成分は、香味料、野菜または野菜部分、油、植物デンプン、ビタミンおよびオリーブからなる群から選択される。
【0081】
本発明の実施形態によれば、生地はさらに膨張剤を含み、膨張剤は、低温殺菌されていないビール、バターミルク、ジンジャービール、ケフィア、サワードウスターター、酵母、ホエータンパク質濃縮物、ヨーグルト、生物学的膨張剤、化学膨張剤、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、重曹、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
本発明の実施形態によれば、対応する非変異ポリペプチドの発現は、野生型小麦と比較して下方調節されている。
【0083】
本発明の実施形態によれば、小麦、変異していないポリペプチドに向けられたRNAサイレンシング剤を含む。
【0084】
本発明の実施形態によれば、小麦は、DNA編集剤によって遺伝子改変されている。
【0085】
本発明の実施形態によれば、加工生地製品は、鍋で焼いたパン(pan bread)、ピザパンクラスト、パスタ、トルティーヤ、パニーニパン、プレッツェル、パイ、およびサンドイッチパン製品からなる群から選択される形態である。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、加工は、粉砕または製粉を含む。
【0087】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が係る当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は単なる例示であり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
本明細書では、本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。ここで図面を特に詳細に参照すると、示されている詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な記述の目的のためであることが強調されている。これに関して、図面とともに行われる説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
図1】本発明の実施形態によるライブラリー設計戦略を示す。
図2A】単離したグルテンおよび非小麦粉を用いる、パン焼きプロセス(図2A)、生地(図2B)、ならびに焼きパン(図2C)の写真である。
図2B】単離したグルテンおよび非小麦粉を用いる、パン焼きプロセス(図2A)、生地(図2B)、ならびに焼きパン(図2C)の写真である。
図2C】単離したグルテンおよび非小麦粉を用いる、パン焼きプロセス(図2A)、生地(図2B)、ならびに焼きパン(図2C)の写真である。
図3】本発明の実施形態に従って使用することができる修飾アルファグリアジンペプチドの配列を提供する表である。一番上の行は、配列番号32に記載されている野生型タンパク質によるエピトープの位置を示す。位置66、73、および80はピンク色で強調表示されており、抗原性単位の位置1に対応する。位置69、76、および83は黄色で強調表示されており、抗原性単位の位置4に対応する。位置70、77、および84は緑色で強調表示されており、抗原性単位の位置4に対応する。第2の行は、配列番号33に示されるようなエピトープの野生型配列を提供する。黄色で強調表示された領域は、最初の抗原性単位に対応する。緑色で強調表示された領域は、2番目の抗原性単位に対応する。灰色で強調表示された領域は、3番目の抗原性単位に対応する。アルファグリアジンペプチドの提案された置換は青色で示される。
図4-1】野生型アルファグリアジンの配列を提供する。それぞれの強調表示された領域は、T細胞エピトープを含む。
図4-2】野生型アルファグリアジンの配列を提供する。それぞれの強調表示された領域は、T細胞エピトープを含む。
図5A】33merのペプチドへの修飾がT細胞活性化の廃止につながることを示すグラフである。試験されたグルテンWTおよび患者生検からのTCLの修飾ペプチドに対する応答は、IFN-γのレベルを検出するELISAによってアッセイされた。各サンプルに対して実行された4つの実験の平均±SDとして示されるデータ。グリアジンに対するTCL応答は、正規化されたIFN-γ産生がコントロールと比較して試験ペプチドで有意に高かった場合に陽性とみなされた(片側スチューデントのT検定で決定。*p-val<0.05、**p<0.01、***p<0.001)(A)、またはコントロールの2倍を超える応答(B)。小文字は修飾アミノ酸を意味する。daは脱アミド化。各配列の左側の番号は配列番号に対応する。
図5B】33merのペプチドへの修飾がT細胞活性化の廃止につながることを示すグラフである。試験されたグルテンWTおよび患者生検からのTCLの修飾ペプチドに対する応答は、IFN-γのレベルを検出するELISAによってアッセイされた。各サンプルに対して実行された4つの実験の平均±SDとして示されるデータ。グリアジンに対するTCL応答は、正規化されたIFN-γ産生がコントロールと比較して試験ペプチドで有意に高かった場合に陽性とみなされた(片側スチューデントのT検定で決定。*p-val<0.05、**p<0.01、***p<0.001)(A)、またはコントロールの2倍を超える応答(B)。小文字は修飾アミノ酸を意味する。daは脱アミド化。各配列の左側の番号は配列番号に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、小麦タンパク質を脱エピトープ化する方法、およびセリアック病の治療のためのその使用に関する。
【0090】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは実施例によって例示されている詳細に必ずしも限定されるものではないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または行うことができる。
【0091】
小麦、大麦およびライ麦由来のセリアック病関連T細胞エピトープが開示されている。例えば、P.R.Shewry,A.S.Tatham,Journal of Cereal Science 67(2016)12e21を参照されたい。
【0092】
本発明者らは、免疫感受性反応を引き起こす原因となる、小麦グルテンタンパク質であるα-グリアジンのうちの最も重要なアミノ酸を発見した。本発明者らは、非毒性グルテンを生成するために、これらの部位でα-グリアジンを変異させることを提案する。企図される変異は、本明細書に開示されている。
【0093】
したがって、本発明の第1の態様によれば、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する抗原性単位を含むアルファグリアジンを脱エピトープ化する方法であって、方法が、抗原性単位の1位のアミノ酸残基を、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換することと、抗原性単位の4位または5位で少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を置換することと、を含み、それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する、方法が提供される。
【0094】
本明細書で使用される「アルファグリアジン」という用語は、配列番号90、91、または92に示されるアミノ酸配列を有する単位の少なくとも1つのコピーを含む小麦グルテンタンパク質を指す。
【0095】
通常、アルファグリアジンは上記の単位のうちの少なくとも2つまたは3つを有する。単位(本明細書では抗原性単位とも呼ばれる)は、各アルファグリアジンにおいて同一の単位である必要はないことが理解されよう。したがって、例えば、単一のアルファグリアジンは、配列番号90の1つのコピーおよび配列番号91の別のコピーを含み得る。あるいは、単一のアルファグリアジンは、配列番号90などの2つまたは3つのコピーを含み得る。
【0096】
アルファグリアジンは、二次元電気泳動で特徴的な電気泳動移動度を有し、一次元において等電点電気泳動を行い、二次元において酸性pHでスターチゲル電気泳動を行う。
【0097】
アルファグリアジンは通常、20個のアミノ酸のシグナルペプチド、5残基のN末端領域、110~130残基の反復ドメイン、および140~160残基のC末端領域を含む。C末端領域は、4つのシステイン残基を含むシステインリッチ領域(CI)、一連のグルタミン残基を含むグルタミンリッチ領域(CII)、および35~39残基の配列(CIII)によって、最後の2つのシステイン残基と区別される。システイン残基のうちの6つは、3つの分子内ジスルフィド結合を形成する。N末端反復ドメインは、反復モチーフP(F/Y)PQ3-5を含む。ポリグルタミンの2つのストレッチは、反復ドメインのC末端部分およびC末端領域のCIIに存在する。アルファグリアジンの質量は30~34kDまで変化し、この多様性は反復ドメインおよび2つのポリグルタミンストレッチの長さの多様性に起因する。
【0098】
野生型アルファグリアジンの例示的なアミノ酸配列は、配列番号32および81~89に提供される。
【0099】
一実施形態において、本明細書に開示される修飾アルファグリアジンは、配列番号32および81~89に示されている配列のうちのいずれか1つと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である配列を有する。
【0100】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993のように修正された、KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定され得る。このようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10、1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行され、目的のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得することができる。2つの配列の間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402、1997に記載されているように、ギャップのあるBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップのあるBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。BLASTヌクレオチド検索は、例えば、スコア=100、ワード長=12のように設定されたNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを用いて実行され、本明細書に記載の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得することができる。BLASTタンパク質検索は、例えば、スコア50、ワード長=3に設定されたXBLASTプログラムパラメータを用いて実行され、本明細書に記載のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得することができる。比較の目的でギャップのあるアラインメントを取得するために、Altschul S F et al.,(1997)Nuc Acids Res 25:3389 3402に記載されているようにギャップのあるBLASTを利用することができる。あるいは、PSI BLASTを使用して、分子間の離れた関係を検出する反復検索を実行することもできる(同上)。BLAST、ギャップのあるBLAST、およびPSIブラストプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる(例えば、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.govのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)を参照されたい)。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の特定の非限定的な例は、MyersおよびMiller ,1988,CABIOS 4:11 17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCGシーケンスアラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基テーブル、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティを使用することができる。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを許容するかどうかにかかわらず、上記のものと同様の技術を使用して決定することができる。パーセント同一性の計算では、通常、完全一致のみがカウントされる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、リンパ球によって認識される決定基を指す。エピトープは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によって提示され、T細胞受容体に特異的に結合することができるペプチドであり得る。特定の実施形態において、エピトープは、T細胞受容体によって特異的に結合されるT細胞免疫原の領域である。特定の実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面グループ化を含み得る。特定の実施形態において、エピトープは、特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有し得る。
【0102】
本発明のこの態様のT細胞エピトープは、通常、クラスIまたはIIのMHC分子に結合する短いペプチドであり、したがって、適切な親和性を有するMHC/ペプチド複合体に結合するマッチングT細胞受容体を有するT細胞によって認識され得る三重複合体を形成する。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、通常、長さが約8~14アミノ酸であるが、それより長くなることもあり得る。MHCクラスII分子に結合するT細胞エピトープは、通常、長さが約12~30アミノ酸であるが、それより長くなることもあり得る。MHCクラスII分子に結合するペプチドの場合、同じペプチドおよび対応するT細胞エピトープは共通のコアセグメントを共有し得るが、コア配列のアミノ末端の上流およびそのカルボキシ末端の下流にそれぞれ異なる長さの隣接配列があるため、全体的長さが異なる。T細胞エピトープは、免疫応答を誘発する場合、抗原として分類され得る。
【0103】
「脱エピトープ化タンパク質」という用語は、以下でさらに説明するように、エピトープとして同定される部位であって、野生型の対応物よりもその関連するMHCタンパク質に対して低い親和性で結合し、かつ/またはその野生型の対応物よりも少ない程度でT細胞を活性化する部位に変異を含むタンパク質を指す。
【0104】
好ましくは、脱エピトープ化されたタンパク質は、その野生型対応物に存在するような少なくとも1つの本質的な物理的特性を含む。したがって、例えば、アルファグリアジンの場合、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、好ましくは、パン生地の流動特性に寄与することができる。
【0105】
細胞表面にペプチドを輸送および提示する分子は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のタンパク質と呼ばれる。MHCタンパク質は、MHCクラスIとMHCクラスIIとの2種類に分類される。2つのMHCクラスのタンパク質の構造は非常に似ているが、機能は大きく異なる。MHCクラスIのタンパク質は、ほとんどの腫瘍細胞を含む、体のほぼすべての細胞の表面に存在する。MHCクラスIタンパク質には、通常、内因性タンパク質または細胞内に存在する病原体に由来する抗原がロードされ、ナイーブまたは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示される。MHCクラスIIタンパク質は、樹状細胞、Bリンパ球、マクロファージ、およびその他の抗原提示細胞に存在する。それらは主に、外部の抗原源から、すなわち細胞の外側で処理されるペプチドをTヘルパー(Th)細胞に提示する。T細胞受容体は、MHCクラスIまたはIIの分子と複合体を形成したペプチドを認識して結合することができる。各細胞傷害性Tリンパ球は、特定のMHC/ペプチド複合体に結合することができる特定のT細胞受容体を発現する。
【0106】
抗原提示細胞(APC)は、細胞表面のMHC分子と関連してタンパク質抗原のペプチド断片を提示する細胞である。一部のAPCは、抗原特異的T細胞を活性化し得る。APCの例には、樹状細胞、ベータ細胞、およびマクロファージが含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
特定の実施形態によれば、T細胞エピトープは、セリアック病関連エピトープである、すなわち、エピトープは、セリアック病患者の抗原提示細胞(APC)上に提示される。
【0108】
本教示は、他の形態のグルテン過敏症にも関連している。セリアック病という用語は、特定の実施形態におけるこれらの形態を包含することを意味する。
【0109】
セリアック病は、主に小腸に影響を及ぼす長期的な自己免疫障害である。古典的な症状には、慢性の下痢、腹部膨満、吸収不良、食欲不振などの胃腸の問題、子供たちの間で正常に成長できないことが含まれる。これは多くの場合、生後6か月~2歳の間に始まる。非古典的な症状は、特に2歳超の人によく見られる。軽度または不在の胃腸症状、体のあらゆる部分に関係する多数の症状、または明らかな症状がない場合がある。
【0110】
セリアック病は、小麦、および大麦またはライ麦などの他の穀物に見られる様々なタンパク質であるグルテンに対する反応によって引き起こされる。グルテンに曝露されると、異常な免疫応答により、いくつかの異なる臓器に影響を及ぼす可能性のあるいくつかの異なる自己抗体が産生され得る。小腸では、これは炎症反応を引き起こし、小腸の内側を覆う絨毛の短縮を引き起こし得る。
【0111】
診断は通常、血液抗体検査と腸生検との組み合わせによって行われ、特定の遺伝子検査によって支援される。この疾患は小麦タンパク質に対する永続的な不耐性によって引き起こされるが、小麦アレルギーの一種ではない。
【0112】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合遺伝子複合体分子に結合した抗原を認識する役割を果たす。TCRは、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖のヘテロダイマーで構成されているが、一部の細胞では、TCRはガンマ鎖およびデルタ鎖で構成されている。TCRは、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタの形態で存在し得、これらは構造的には類似しているが、解剖学的な位置および機能が異なる。各鎖は、可変ドメインおよび定常ドメインの2つの細胞外ドメインで構成されている。いくつかの実施形態において、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびガンマデルタT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞上で改変され得る。本発明のTCRは、変異を伴うまたは伴わないTCRの異なる断片を含む様々な形態で存在し得る。
【0113】
「T細胞免疫原」という用語は、T細胞媒介性免疫応答を誘発することができる薬剤(例えば、タンパク質)を指す。T細胞免疫原は少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。一実施形態において、T細胞免疫原は、グルテンタンパク質などの小麦タンパク質である。
【0114】
いくつかの実施形態において、この方法は、同定されたエピトープのうちの1つ以上における小麦ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基を変異させることを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、ポリペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25以上のアミノ酸残基を変異させることを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチド上で同定されたエピトープのうちの1つ以上(またはすべて)を破壊する。1つ以上の変異を含むポリペプチドを作製するための方法は、当業者によく知られている。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、保存的変異である。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、非保存的変異である。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、保存的変異と非保存的変異との混合物である。
【0115】
本発明のこの態様の変異は、置換、欠失、または挿入であり得る。
【0116】
特定の実施形態によれば、変異は置換である。
【0117】
特定の実施形態によれば、変異は小麦ポリペプチドの機能に影響を及ぼさない。
【0118】
核酸変化を目的の遺伝子に組み込む方法は、当該技術分野において周知であり[例えば、Menke D.Genesis(2013)51,-618、Capecchi,Science(1989)244:1288-1292、Santiago et al.Proc Natl Acad Sci USA(2008)105:5809-5814、国際特許出願第2014/085593号、同第2009/071334号および同第2011/146121号、米国特許第8771945号、同第8586526号、同第6774279号ならびに米国特許出願公開第2003/0232410号、同第2005/0026157号、同第2006/0014264号を参照されたく、それらの内容は、それらの全体が参照により組み込まれている]、標的化された相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、PBトランスポザーゼ、および操作されたヌクレアーゼによるゲノム編集を含む。目的の遺伝子に核酸変化を導入するための薬剤は、一般に入手可能な供給源から設計され得るか、または、Transposagen、AddgeneおよびSangamoから商業的に入手され得る。いくつかの実施形態において、遺伝子の配列における変化の生成は、望ましい配列の既存の多様体を検索するために既存の植物の配列をスクリーニングすることによって達成され得る。次に、この既存の配列は、交雑育種または遺伝子編集によって標的ゲノムのゲノムに導入することができる。他の実施形態において、望ましい多様性は、ランダム変異誘発を導入し、続いて、望ましい変異が起こった多様体をスクリーニングし、続いて交雑育種することによって導入される。
【0119】
以下は、本発明の特定の実施形態に従って使用することができる、目的の遺伝子およびそれを実装するための薬剤に核酸変化を導入するために使用される様々な例示的な方法の説明である。
【0120】
操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集-本アプローチは、人工的に操作されたヌクレアーゼを使用して、ゲノムにおける望ましい場所で特異的二本鎖切断を切断および生成し、それらは、次いで、相同組換え修復(HDS)および非相同末端結合(NFfEJ)などの細胞内因性プロセスによって修復されるリバースジェネティクス法を指す。NFfEJは、二本鎖切断でDNA端を直接連結する一方、HDRは、切断点で欠損DNA配列を再生するためのテンプレートとして相同配列を利用する。特異的ヌクレオチド修飾をゲノムDNAに導入するために、望ましい配列を含むDNA修復テンプレートは、HDR中に存在する必要がある。ほとんどの制限酵素はDNA上の少ない塩基対をそれらの標的として認識して、ゲノムにおける多くの場所で、望ましい場所に限定されない複数の切断をもたらす認識された塩基対の組み合わせが見つかる可能性がかなり高いため、従来の制限エンドヌクレアーゼを使用してゲノム編集を実行することはできない。この課題を克服し、部位特異的な一本鎖または二本鎖切断を生成するために、現在までいくつかの別個のクラスのヌクレアーゼが発見され、バイオエンジニアリングされてきた。これらは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/Casシステムを含む。
【0121】
メガヌクレアーゼ-メガヌクレアーゼは、一般に、LAGLIDADG(配列番号119)ファミリー、GIY-YIG(配列番号118)ファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーの4つのファミリーにグループ化される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフを特徴とする。例えば、LAGLIDADG(配列番号119)ファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADG(配列番号119)モチーフの1つまたは2つのコピーのいずれかを有することを特徴とする。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存されている構造要素、ひいてはDNA認識配列の特異性および触媒活性に関して互いに大きく分離されている。メガヌクレアーゼは一般に微生物種に見られ、かなり長い認識配列(>14bp)を有するというユニークな特性を有し、したがって、望ましい場所での切断のためにそれらを自然にかなり特異的にする。これを利用して、ゲノム編集で部位特異的二本鎖切断を行うことができる。当業者はこれらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、そのような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、変異誘発法およびハイスループットスクリーニング法を使用して、ユニークな配列を認識するメガヌクレアーゼの多様体を作製した。例えば、様々なメガヌクレアーゼが融合されて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作製される。あるいは、メガヌクレアーゼのアミノ酸と相互作用するDNAは、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために変更され得る(例えば、米国特許第8,021,867号を参照されたい)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo、MT et al.Nature Methods(2012)9:073-975、米国特許第8,304,222号、同第8,021,867号、同第8,119,381号、同第8,124,369号、同第8,129,134号、同第8,133,697号、同第8,143,015号、同第8,143,016号、同第8,148,098号、または同第8,163,514号に記載されている方法を使用して設計することができ、これらの各々の内容は、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、商業的に利用可能な技術、例えば、Precision BiosciencesのDirected Nuclease Editor(商標)を使用して得ることができる。
【0122】
ZFNおよびTALEN-2つの別個の操作されたヌクレアーゼのクラス、すなわち、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は両方とも、標的化二本鎖切断の生成に効果的であることが証明されている(Christian et al.,2010、Kim et al.,1996、Li et al.,2011、Mahfouz et al.,2011、Miller et al.,2010)。
【0123】
基本的に、ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(それぞれ一連のジンクフィンガードメインまたはTALE反復配列)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位および切断部位が互いに分離されている制限酵素が選択される。切断部分は分離され、次にDNA結合ドメインに連結され、それによって、望ましい配列に対してかなり高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを得る。そのような特性を有する例示的な制限酵素はFoklである。さらに、Foklは、ヌクレアーゼ活性を持たせるためにダイマー化が必要であるという利点があり、これは、各ヌクレアーゼパートナーがユニークなDNA配列を認識するために特異性が飛躍的に増加することを意味する。この効果を増強するために、ヘテロダイマーとしてのみ機能し、かつ触媒活性が高くなったFoklヌクレアーゼが操作された。ヘテロダイマー機能性ヌクレアーゼは、望ましくないホモダイマー活性の可能性を回避し、したがって、二本鎖切断の特異性を高める。
【0124】
したがって、例えば、特異的部位を標的化するために、ZFNおよびTALENはヌクレアーゼ対として構築され、対の各メンバーは標的化部位で隣接配列を結合するように設計されている。細胞における一過性発現時に、ヌクレアーゼはそれらの標的部位に結合し、FokIドメインヘテロダイマー化して二本鎖切断を生成する。非相同端連結(NHEJ)経路を介したこれらの二本鎖切断の修復は、ほとんどの場合、小さい欠失または小さい配列挿入をもたらす。NHEJによって行われる各修復はユニークであるため、単一のヌクレアーゼの対を使用すると、標的部位において異なる欠失の範囲を有する対立遺伝子のシリーズが生成される。欠失は、通常、長さが数塩基対から~数百塩基対の範囲であるが、2対のヌクレアーゼを同時に使用することによって細胞培養においてより大きい欠失を成功裏に生成した(Carlson et al.,2012、Lee et al.,2010)。さらに、標的化領域に対する相同性を有するDNAの断片がヌクレアーゼ対とともに導入されるとき、二本鎖切断が相同組換え修復を介して修復されて、特定の修飾が生成され得る(Li et al.,2011、Miller et al.,2010、Urnov et al.,2005)。
【0125】
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似した特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼの違いは、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNは、Cys2-His2ジンクフィンガーおよびTALE上のTALENに依存する。ペプチドドメインを認識するこれらのDNAの両方は、それらがタンパク質の組み合わせにおいて自然に見られるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、通常、3bp離れた反復配列において見られ、タンパク質と相互作用する様々な核酸の種々の組み合わせにおいて見られる。一方、TALEは、アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間に1対1の認識率を有する反復配列において見られる。ジンクフィンガーおよびTALEの両方は反復パターンで発生するため、様々な組み合わせを試して、様々な配列特異性を生成することができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとして、例えば、特に、モジュラーアセンブリ(トリプレット配列と相関するジンクフィンガーが必要な配列をカバーするために一列に取り付けられる)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、続いてペプチドの組み合わせ対細菌システムの最終標的の高ストリンジェンシー選択)、およびジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から商業的に設計および入手することもできる。
【0126】
TALENを設計および取得する方法は、例えば、Reyon et al.Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460-5、Miller et al.Nat Biotechnol.(2011)29:143-148、Cermak et al.Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82、およびZhang et al.Nature Biotechnology(2011)29(2):149-53に記載されている。Mojo Handという名前の最近開発されたWebベースのプログラムが、ゲノム編集アプリケーション用のTALおよびTALEN構築物を設計するためにMayo Clinicによって紹介された(www(dot)talendesign(dot)orgを介してアクセスすることができる)。TALENは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から商業的に設計および入手することもできる。
【0127】
CRISPR-Casシステム-多くの細菌および古細菌は、侵入するファージおよびプラスミドの核酸を分解することができる内因性RNAベースの適応免疫システムを含んでいる。これらのシステムは、RNA成分を産生するクラスター化されて規則的に間隔を空けて配置された短い回文配列の反復(CRISPR)遺伝子、およびタンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子からなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルスおよびプラスミドに対する相同性の短いストレッチを含み、Casヌクレアーゼを対応する病原体の相補的核酸を分解するように指向するためのガイドとして機能する。Streptococcus pyogenesのII型CRISPR/Casシステムの研究は、3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、ともに、配列特異的ヌクレアーゼ活性、すなわち、Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対する相同性の20塩基対を含むcrRNA、およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)のために十分であることを示した(Jinek et al.Science(2012)337:816-821)。crRNAとtracrRNAとの融合物からなる合成キメラガイドRNA(gRNA)が、インビトロでcrRNAに対して相補的であるDNA標的を切断するようにCas9を指向できることがさらに示された。また、合成gRNAと組み合わせたCas9の一過性発現が使用されて、様々な異なる種の標的二本鎖切断を生成できることも示された(Cho et al.,2013、Cong et al.,2013、DiCarlo et al.,2013、Hwang et al.,2013a,b、Jinek et al.,2013、Mali et al.,2013)。
【0128】
ゲノム編集用のCRIPSR/Casシステムは、2つの異なる成分、すなわち、gRNAおよびエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9を含む。
【0129】
gRNAは、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、単一キメラ転写物においてCas9ヌクレアーゼにcrRNAを連結する内因性細菌RNA(tracrRNA)との組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対によって標的配列に対して補充される。Cas9の結合を成功させるためには、ゲノム標的配列はまた、標的配列の直後に適切なProtospacer Adjacent Motif(PAM)配列を含む必要がある。gRNA/Cas9複合体の結合は、Cas9が二本鎖切断を引き起こすDNAの両方の鎖を切断することができるように、ゲノム標的配列に対してCas9を局在化する。ZFNおよびTALENと同様に、CRISPR/Casによって生成される二本鎖切断は、相同組換えまたはNHEJを起こすことができる。
【0130】
Cas9ヌクレアーゼは、各々が異なるDNA鎖を切断する2つの機能的ドメイン、すなわち、RuvCおよびHNHを有する。これらのドメインの両方が活性な場合、Cas9はゲノムDNAの二本鎖切断を引き起こす。
【0131】
CRISPR/Casの大きな利点は、合成gRNAを簡単に作製する能力と結合されたこのシステムの高効率が、複数の遺伝子を同時に標的化することができることである。さらに、変異を持つ細胞の大部分は、標的化遺伝子に二対立変異を示す。
【0132】
しかしながら、gRNA配列とゲノムDNA標的配列との塩基対相互作用の明らかな柔軟性は、標的配列に対する不完全な一致がCas9によって切断されることを可能にする。
【0133】
単一不活性触媒ドメイン、すなわち、RuvC-またはHNH-のいずれかを含むCas9酵素の改変バージョンは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性なヌクレアーゼドメインが1つしかないため、Cas9ニッカーゼは標的DNAの1つの鎖のみを切断し、一本鎖切断または「ニック」を作製する。一本鎖切断またはニックは、通常、完全な相補DNA鎖をテンプレートとして使用して、HDR経路を介して迅速に修復される。しかしながら、Cas9ニッカーゼによって導入された2つの近位の反対側の鎖ニックは、「ダブルニック」CRISPRシステムとしばしば呼ばれる二重鎖切断として扱われる。ダブルニックは、遺伝子標的に対する望ましい効果に応じて、NHEJまたはHDRのいずれかによって修復され得る。したがって、特異性および低減されたオフターゲット効果が重要な場合、Cas9ニッカーゼを使用して、近接してかつゲノムDNAの反対側の鎖上に標的配列を有する2つのgRNAを設計することによってダブルニックを作製することにより、いずれかのgRNA単独としてのオフターゲット効果が低下し、ゲノムDNAを変更しないニックをもたらすであろう。
【0134】
2つの不活性な触媒ドメイン(死亡Cas9またはdCas9)を含むCas9酵素の改変バージョンは、ヌクレアーゼ活性はないが、gRNAの特異性に基づいてDNAに結合することは依然として可能である。dCas9は、既知の調節ドメインに不活性な酵素を融合することにより、DNA転写調節因子のプラットフォームとして利用されて、遺伝子発現を活性化または抑制することができる。例えば、ゲノムDNAの標的配列へのdCas9単独の結合は、遺伝子転写を妨げ得る。
【0135】
Feng Zhang labのTarget Finder、Michael Boutros labのTarget Finder(E-CRISP)、RGEN Tools:Cas-OFFinder、CasFinder:ゲノム内の特異的Cas9標的を同定するための柔軟なアルゴリズムおよびCRISPR Optimal Target Finderなどの様々な種における様々な遺伝子についてのバイオインフォマティクスで決定されたユニークなgRNAのリストだけでなく、標的配列を選択および設計するのに役立つ公開利用可能ツールが数多くある。
【0136】
CRISPRシステムを使用するためには、gRNAおよびCas9の両方を標的細胞において発現させる必要がある。挿入ベクターは、単一プラスミド上に両方のカセットを含み得るか、または、カセットは2つの別々のプラスミドから発現される。Addgeneからのpx330プラスミドなどのCRISPRプラスミドは一般に入手可能である。
【0137】
「ヒット・アンド・ラン」または「イン・アウト」には、2段階の組換え手順が含まれる。第1のステップでは、デュアル陽性/陰性選択マーカーカセットを含む挿入型ベクターを使用して、望ましい配列変更を導入する。挿入ベクターは、標的遺伝子座と相同性のある単一の連続領域を含み、目的の変異を運ぶように改変されている。この標的化用構築物は、相同領域内の1つの部位で制限酵素を用いて線形化され、細胞にエレクトロポレーションされ、陽性選択が実行されて相同組換え体が単離される。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む、介在するベクター配列によって分離された局所的な重複を含んでいる。第2のステップでは、標的化クローンを陰性選択にかけ、複製された配列間の染色体内組換えによって選択カセットを失った細胞を同定する。局所組換えイベントは重複を取り除き、組換え部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、野生型に戻る。最終結果は、外因性配列を保持することなく、望ましい修飾を導入することである。
【0138】
「二重置換」または「タグ・アンド・エクスチェンジ」戦略には、ヒットアンドランアプローチと同様の2段階の選択手順が含まれるが、2つの異なる標的化用構築物を使用する必要がある。第1のステップでは、3'および5'相同性アームを備えた標準的な標的化用ベクターを使用して、変異が導入される場所の近くにデュアル陽性/陰性選択可能カセットを挿入する。エレクトロポレーションおよび陽性選択の後、相同的に標的化されたクローンが同定される。次に、望ましい変異と相同性のある領域を含む第2の標的化用ベクターを標的化されたクローンにエレクトロポレーションし、陰性選択を適用して選択カセットを取り除き、変異を導入する。最終的な対立遺伝子には、不要な外因性配列を排除しながら、望ましい変異が含まれている。
【0139】
部位特異的リコンビナーゼ-P1バクテリオファージ由来のCreリコンビナーゼおよび酵母Saccharomyces cerevisiae由来のFlpリコンビナーゼは、各々がユニークな34塩基対DNA配列(それぞれ「Lox」および「FRT」と呼ばれる)を認識する部位特異的DNAリコンビナーゼであり、Lox部位またはFRT部位のいずれかに隣接する配列は、それぞれCreまたはFlpリコンビナーゼの発現時に部位特異的組換えを介して容易に除去することができる。例えば、Lox配列は、13塩基対逆方向反復配列が隣接する非対称の8塩基対スペーサー領域で構成されている。Creは、13塩基対の逆方向反復配列に結合し、スペーサー領域内で鎖の切断および再連結を触媒することにより、34塩基対のlox DNA配列を組換える。スペーサー領域でCreによって作られた千鳥状DNA切断は、6塩基対によって分離されて、同じ重複領域を有する組換え部位のみが組換えることを保証する相同性センサとして機能する重複領域を与える。
【0140】
基本的に、部位特異的リコンビナーゼシステムは、相同組換え後の選択カセットの除去のための手段を提供する。このシステムはまた、一時的にまたは組織特異的に不活性化または活性化できる条件変更された対立遺伝子の生成を可能にする。注目すべきことに、CreおよびFlpリコンビナーゼは、34塩基対のLoxまたはFRTの「瘢痕」を残す。残っているLoxまたはFRT部位は通常、改変された遺伝子座のイントロンまたは3'UTRに残されていて、現在の証拠は、これらの部位が通常遺伝子機能を著しく妨げないことを示唆している。
【0141】
したがって、Cre/LoxおよびFlp/FRT組換えには、目的の変異を含む3'および5'相同性アームを有する標的化用ベクター、2つのLoxまたはFRT配列、および通常2つのLoxまたはFRT配列間に配置された選択可能なカセットの導入が含まれる。陽性選択が適用され、標的化変異を含む相同組換えが同定される。陰性選択と組み合わせたCreまたはFlpの一時的な発現は、選択カセットの切除をもたらし、カセットが欠損した細胞を選択する。最終的な標的化対立遺伝子には、外因性配列のLoxまたはFRT瘢痕が含まれる。
【0142】
トランスポザーゼ-本明細書で使用される場合、「トランスポザーゼ」という用語は、トランスポゾンの末端に結合し、ゲノムの別の部分へのトランスポゾンの移動を触媒する酵素を指す。
【0143】
本明細書で使用される場合、「トランスポゾン」という用語は、単一細胞のゲノム内の異なる位置に移動することができるヌクレオチド配列を含む可動遺伝要素を指す。その過程で、トランスポゾンは変異を引き起こし、かつ/または細胞のゲノム内のDNAの量を変化させたりする可能性がある。
【0144】
Sleeping Beauty[IzsvakおよびIvics Molecular Therapy(2004)9,147-156]、piggyBac[Wilson et al.Molecular Therapy(2007)15,139-145]、Tol2[Kawakami et al.PNAS(2000)97(21):11403-11408]、またはFrog Prince[Miskey et al.Nucleic Acids Res.Dec 1,(2003)31(23):6873-6881]など、細胞、例えば脊椎動物内で転置することもできる多くのトランスポゾンシステムが分離または設計されている。一般に、DNAトランスポゾンは、単純なカットアンドペースト方式で1つのDNA部位から別のDNA部位に移動する。これらの要素にはそれぞれ独自の利点がある。例えば、Sleeping Beautyは領域特異的な変異誘発に特に役立つが、Tol2は発現遺伝子に組み込まれる傾向が最も高くなる。Sleeping BeautyおよびpiggyBacにはハイパーアクティブシステムが利用できる。最も重要なことは、これらのトランスポゾンは異なる標的部位の好みを有するため、重複しているが異なる遺伝子のセットに配列変化をもたらす可能性があることである。したがって、遺伝子の可能な限り最良のカバレッジを達成するために、複数の要素の使用が特に好ましい。基本的なメカニズムは異なるトランスポザーゼ間で共有されているため、例としてpiggyBac(PB)について説明する。
【0145】
PBは、イラクサギンウワシTrichoplusia niから最初に単離された2.5kbの昆虫トランスポゾンである。PBトランスポゾンは、トランスポザーゼPBaseに隣接する非対称末端反復配列で構成されている。PBaseは、「カットアンドペースト」ベースのメカニズムを介して末端反復を認識し、転置を誘導し、テトラヌクレオチド配列TTAAで宿主ゲノムに優先的に転置する。挿入すると、TTAA標的部位が複製され、PBトランスポゾンがこのテトラヌクレオチド配列に隣接するようになる。動員されると、PBは通常、正確に切除して単一のTTAA部位を再確立し、それによって宿主配列をトランスポゾン前の状態に戻す。切除後、PBは新しい場所に転置するか、またはゲノムから永久に失われる可能性がある。
【0146】
通常、トランスポザーゼシステムは、Cre/LoxまたはFlp/FRTの使用と同様に、相同組換えが終了した後に選択カセットを除去するための代替手段を提供する。したがって、例えば、PBトランスポザーゼシステムは、目的の変異、内因性TTAA配列の部位にある2つのPB末端反復配列、およびPB末端反復配列の間に配置された選択カセットを含む3'および5'相同性アームを有する標的化用ベクターの導入を伴う。陽性選択が適用され、標的化変異を含む相同組換えが同定される。PBaseの一時的な発現は、陰性選択と組み合わせて除去し、選択カセットの切除をもたらし、カセットが欠損した細胞を選択する。最終的な標的化対立遺伝子には、外因性配列を有しない導入された変異が含まれている。
【0147】
PBが配列変化の導入に役立つためには、特定の変異が挿入される場所に比較的近接したネイティブTTAA部位が存在する必要がある。
【0148】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)プラットフォームを使用するゲノム編集-このゲノム編集プラットフォームは、生哺乳動物細胞のゲノムにおけるDNA配列の挿入、欠失または置換を可能にするrAAVベクターに基づく。rAAVゲノムは、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)分子であり、陽性または陰性のいずれかであり、約4.7kbの長さである。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い導入率を有し、ゲノムにおいて二本鎖DNA切断がない場合に内因性相同組換えを促進するユニークな特性を有する。当業者は、望ましいゲノム遺伝子座を標的とし、細胞内の粗大および/または微細な内因性遺伝子変化の両方を実行するためのrAAVベクターを設計することができる。rAAVゲノム編集は、一対立遺伝子を標的とし、オフターゲットゲノム変化をもたらさないという利点を有する。rAAVゲノム編集技術、例えばHorizon(商標)(Cambridge,UK)のrAAV GENESIS(商標)システムが市販されている。
【0149】
有効性を認定し、かつ配列変化を検出する方法は、当該技術分野で周知であり、DNA配列決定、電気泳動、酵素ベースのミスマッチ検出アッセイ、ならびにPCR、RT-PCR、RNase、インサイチュハイブリダイゼーション、プライマー拡張、サザンブロット、ノーザンブロットおよびドットブロット解析などのハイブリダイゼーションアッセイを含むが、これらに限定されない。
【0150】
特定の遺伝子における配列変化は、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動法、ELISAおよびウエスタンブロット解析などの免疫検出アッセイならびに免疫組織染色を使用して、タンパク質レベルで決定することもできる。
【0151】
さらに、当業者は、構築物との相同組換えイベントを受けた形質転換細胞を効率的に選択するための陽性および/または陰性選択マーカーを含むノックイン/ノックアウト構築物を容易に設計することができる。陽性選択は、外来DNAを取り込んだクローンの集団を濃縮する手段を提供する。そのような陽性マーカーの非限定的な例には、グルタミンシンテターゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、およびブラストサイジンS耐性カセットなどの抗生物質耐性を付与するマーカーが含まれる。マーカー配列(例えば、陽性マーカー)のランダムな組み込みおよび/または脱離に対して陰性選択マーカーを選択する必要がある。このような陰性マーカーの非限定的な例には、ガンシクロビル(GCV)を細胞毒性ヌクレオシド類似体に変換する単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(ARPT)が含まれる。
【0152】
いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの機能を破壊しない(例えば、対応する非変異ポリペプチドの機能と比較して、変異ポリペプチドの機能を破壊しない)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの生地強化能力を破壊しない。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの生地弾性促進能力を破壊しない。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの生地膨張促進能力を破壊しない。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、小麦の成長(例えば、種子の生産、種子の数、種子のサイズ)に顕著に影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの天然のタンパク質間相互作用を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じタンパク質間相互作用を形成する能力を保持する)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの三次元構造を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じ三次元構造を保持する)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドのフォールディングを破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じタンパク質フォールディングを保持する)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの翻訳を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと同じタイミングで、同じ速度で、同じレベルなどに翻訳される)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの正常な細胞局在化を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じ細胞局在化を保持する)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、ポリペプチドの翻訳後修飾を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じ翻訳後修飾プロファイルを保持する)。さらにいくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、小麦ポリペプチドのアレルゲン性を破壊しない(例えば、変異ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドと実質的に同じIgE抗体結合親和性を保持する)。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、本明細書で上記に記載されたパラメータのうちの少なくとも2、3、4、5、またはそれ以上に影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、本明細書で上記に記載されたパラメータのいずれにも影響を及ぼさない。
【0153】
本発明の脱エピトープ化されたグルテンのタンパク質構造/フォールド/生化学的-生物物理学的特性をチェックするための方法には、流体力学的研究(例えば、Field,J.M.,Tatham,A.S.&Shewry,P.R.1987.Biochem.J.247,215-221、Castellia,F.et al.,2000.Thermochimica Acta 346,153-160を参照)、NMR分光法(例えば、Bekkers,A.C.,et al.1996,In Gluten 96-Proc.6th Int.Wheat Gluten Workshop,Sydney,September 1996 pp.190-194.North Melbourne,Australia:Royal Australian Chemical Institute、Eliezer,D.,Biophysical characterization of intrinsically disordered proteins.Curr Opin Struct Biol.2009;19(1):23-30を参照)、円二色性の測定(例えば、Tatham,A.S.,Shewry,P.R.,1985.J.Cereal Sci.3,104-113を参照)、異種発現分析(例えば、Tatham,A.S.,Shewry,P.R.,1985.J.Cereal Sci.3,104-113を参照)、静的および動的光散乱測定(例えば、Herrera,M.、Dodero,V.In Proceedings of the F.Bioact.Process.Qual.&Nutr.,10-12 April 2013、Sciforum Electronic Conferences Series;T.A.Egorov,FEBS Letters,Volume 434,Issues 1-2,1998,Pages 215-217を参照)、小角X線散乱(例えば、Neil H.Thomson Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Protein Structure and Molecular Enzymology,Volume 1430,Issue 2,1999,Pages359-366、Eliezer,D.,Curr Opin Struct Biol.2009;19(1):23-30を参照)、非常に小さい角度の中性子散乱(例えば、Mohsen Daheshet al.,The Journal of Physical Chemistry B 2014 118(38),11065-11076.DOI:10.1021/jp5047134、Gibbs,B.E.&Showalter,S.A.2015,Biochemistry 54,1314-1326を参照、蛍光相関分光法(FCS)(例えば、Eliezer,D.,Curr Opin Struct Biol.2009;19(1):23-3参照)、および単分子FRET(smFRET)(例えば、Gibbs,B.E.&Showalter,S.A.2015,Biochemistry 54,1314-1326を参照)が含まれる。上記のすべての参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
好ましくは、本発明の態様のうちのいずれかの変異(すなわち、脱エピトープ化された)ポリペプチドは、対応する非変異ポリペプチドが同じセリアック病患者に由来するMHCIIタンパク質またはT細胞に結合するよりも、セリアック病関連MHCIIタンパク質(例えば、HLA-DQ2またはHLA-DQ8)またはセリアック患者に由来するT細胞に対してより低い親和性で結合する。さらに、本明細書に記載の脱エピトープ化されたポリペプチドは、好ましくは、対応する非変異ポリペプチドがDQ7.5 MHCIIタンパク質に結合するよりも、DQ7.5 MHCII IIタンパク質に対してより低い親和性で結合する。
【0155】
したがって、濃度の単位で測定される親和性値は、対応する非変異ポリペプチドが同じセリアック病患者に由来するT細胞に結合するよりも、セリアック病関連のMHCIIタンパク質(例えば、HLA-DQ2またはHLA-DQ8)またはセリアック病患者に由来するT細胞に対して、脱エピトープ化されたポリペプチドについて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%高い。一実施形態において、セリアック病関連MHCIIタンパク質(例えば、HLA-DQ2またはHLA-DQ8)またはT細胞への変異(すなわち、脱エピトープ化された)ポリペプチドの結合は、無効にされる。セリアック病関連MHCIIタンパク質(例えば、HLA-DQ2またはHLA-DQ8)またはT細胞へのペプチド/ポリペプチドの結合を測定する方法は、当技術分野で知られており、例えば、1)ゲル濾過と、明確に定義された放射性標識参照ペプチドへの競合的結合との組み合わせを使用するペプチド/MHCII複合体の検出(Sidney et al.,Curr.Protoc.Immunol.2013)、2)MHCIIテトラマーとグルテンペプチドとの融合体を使用して、フローサイトメーターによってグルテン特異的CD4+ T細胞への結合を検出および定量化する(Raki et al.,PNAS 2007)、3)IFN-γの分泌を調べることによりグルテン特異的CD4+ T細胞の活性化を測定するELISpotまたはELISAアッセイ(Anderson et al.,Gut 2005)、4)関連するAPC(例えば、HLA DQ8またはHLA DQ2.5発現細胞)およびグルテンペプチドの存在下でのグルテン特異的T細胞の増殖アッセイ(Kooy-Winkelaar et al.,J.Immunol.2011)、を含む。
【0156】
特定の実施形態によれば、本発明の脱エピトープ化されたポリペプチドは、20μM未満、30μM未満、または40μM未満でさえあるIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merペプチドを含まない。以下の実施例5を参照されたい。
【0157】
好ましくは、変異(すなわち、脱エピトープされた)ポリペプチドは、対応する非変異型が同じセリアック病患者に由来するT細胞を活性化するよりも、セリアック病患者に由来するT細胞をより少ない程度で活性化する(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%80%、90%または100%)。例示的なT細胞活性化アッセイは、本明細書の以下の実施例の項に記載されている。
【0158】
一実施形態において、「変異すること」という用語は、野生型タンパク質に関して変異を有する組換えポリペプチドを発現することを指す。
【0159】
したがって、特定の実施形態によれば、アルファグリアジンポリペプチドは組換えポリペプチドである。
【0160】
本発明者らはさらに、上記のグリアジンポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを企図する。そのようなポリヌクレオチドを使用して、宿主細胞(例えば、細菌または植物)において上記の脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドを発現させることができる。
【0161】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸」という用語、およびそれらの変形は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、プリンまたはピリミジン塩基のN-グリコシドである他のタイプのポリヌクレオチド、および非核酸骨格を含む他のポリマー(ただし、DNAおよびRNAに見られるように、塩基対形成および塩基スタッキングを可能にする構成で核酸塩基を含む)に対して一般的であるはずである。したがって、これらの用語には、既知のタイプの核酸配列修飾、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体による置換、およびヌクレオチド間修飾が含まれる。
【0162】
異種タンパク質産生に一般的に使用される発現系には、細菌細胞(例えば、E.coli)、真菌細胞(例えば、S.cerevisiae細胞)、植物細胞(例えば、タバコ、トウモロコシ)、昆虫細胞(鱗翅目細胞)、およびその他の哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)が含まれる。
【0163】
宿主細胞(例えば、植物)内での本発明の外因性ポリヌクレオチドの発現は、宿主の1つ以上の細胞を外因性ポリヌクレオチドで形質転換することによって達成することができる。
【0164】
好ましくは、形質転換は、本発明の外因性ポリヌクレオチドおよび宿主細胞における外因性ポリヌクレオチドの転写を指示することができる少なくとも1つのプロモーターを含む核酸構築物を宿主細胞に導入することによって行われる。適切な変換アプローチの詳細は、以下に提供される。
【0165】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合してRNAの転写を開始する遺伝子の転写開始部位の上流にあるDNAの領域を指す。プロモーターは、遺伝子が発現される場所(例えば、植物のどの部分、動物内のどの器官など)および/またはいつ(例えば、生物の生涯におけるどの段階または状態)を制御する。
【0166】
任意の適切なプロモーター配列を、本発明の核酸構築物によって使用することができる。好ましくは、プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、または植物特異的プロモーター(小麦プロモーターなど)である。
【0167】
適切な構成的プロモーターには、例えば、CaMV 35Sプロモーター(配列番号19、Odell et al.,Nature 313:810-812,1985)、トウモロコシ Ubi 1(Christensen et al.,Plant Sol.Biol.18:675-689,1992)、イネアクチン(McElroy et al.,Plant Cell 2:163-171、1990)、イネグルテリン(Qu、Le Qing et al.J Exp Bot 59:9、2417-2424、2008)、pEMU(Last et al.,Theor.Appl.Genet.81:581-588、1991)、およびSynthetic Super MAS(Ni et al.,The Plant Journal 7:661-76,1995)が含まれる。他の構成的プロモーターには、米国特許第5,659,026号、同第5,608,149号、同第5.608,144号、同第5,604,121号、同第5.569,597号、同第5.466,785号、同第5,399,680号、同第5,268,463号、および同第5,608,142号に記載のものが含まれる。
【0168】
適切な組織特異的プロモーターには、例えば、Yamamoto et al.,Plant J.12:255-265,1997、Kwon et al.,Plant Physiol.105:357-67,1994、Yamamoto et al.,Plant Cell Physiol.35:773-778,1994、Gotor et al.,Plant J.3:509-18,1993、Orozco et al.,Plant Mol.Biol.23:1129-1138,1993、およびMatsuoka et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:9586-9590,1993によって記載されているような葉特異的プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
適切な小麦特異的プロモーターには、Smirnova,O.G.およびKochetov,A.V.Russ J Genet Appl Res(2012)2:434.www(dot)doi(dot)org/10(dot)1134/S2079059712060123に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
本発明の核酸構築物は、好ましくは、適切な選択可能なマーカーおよび/または複製起点をさらに含む。好ましくは、利用される核酸構築物は、E.coli(構築物が適切な選択可能なマーカーおよび複製起点を含む)の両方で増殖でき、細胞での増殖に適合できるシャトルベクターである。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体であり得る。
【0171】
前述のように、アルファグリアジンの脱エピトープ化は、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号NO:91)またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する抗原性単位の第1のアミノ酸(すなわち、1位)を、正に帯電したアミノ酸、プロリンまたは脂肪族アミノ酸で置換し、抗原性単位の4位または5位で少なくとももう1つのアミノ酸残基を置換することによって行われる。
【0172】
本発明者らは、抗原性単位のうちの少なくとも1つの第1のアミノ酸が上記のように置換されるか、抗原性単位のうちの少なくとも2つの第1のアミノ酸が上記のように置換されるか、抗原性単位のうちの少なくとも3つの第1のアミノ酸が置換されるか、または抗原性単位のすべての第1のアミノ酸が上記のように置換されることを提案する。
【0173】
企図される正に帯電したアミノ酸には、ヒスチジン、リジン、およびアルギニンが含まれる。
【0174】
一実施形態において、単位の第1のアミノ酸は、ヒスチジンまたはリジンに置換されている。
【0175】
本発明により1位で企図される脂肪族アミノ酸の例はメチオニンである。脂肪族アミノ酸の追加の例には、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはすべての抗原性単位の1位および4位が置換されている。
【0177】
抗原性単位の第4のアミノ酸は、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンで置換され得る。
【0178】
例示的な脂肪族アミノ酸は、本明細書で上記に記載されている。
【0179】
極性アミノ酸の例はセリンである。
【0180】
追加の企図される極性アミノ酸には、スレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびチロシンが含まれる。
【0181】
特定の実施形態によれば、第4のアミノ酸はプロリンで置換されている。
【0182】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはすべての抗原性単位の1位および5位が置換されている。
【0183】
抗原性単位の第5のアミノ酸は、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸で置換され得る。
【0184】
特定の実施形態によれば、第5のアミノ酸は、小アミノ酸(例えば、グリシンまたはセリン)で置換される。
【0185】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはすべての抗原性単位の1位、4位および5位が置換される。
【0186】
本発明者らは、1、4および/または5位でアミノ酸を置換することと同様に、抗原性単位内の追加のアミノ酸を変異させる(例えば、置換する)ことを企図する。したがって、例えば、本発明者らは、抗原性単位の3位のアミノ酸残基を芳香族または極性アミノ酸で置換することを企図している。
【0187】
一実施形態において、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号60~80に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0188】
別の実施形態において、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号49~58に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0189】
さらに別の実施形態において、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、典型的には、配列番号93~112および115~117に示されるようなアミノ酸配列を欠いている。
【0190】
本発明の別の態様によれば、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、方法が、該アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置で1つ以上のアミノ酸残基を変異させることを含み、変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択された位置のアミノ酸にもたらされ、それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成し、変異の位置が配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、方法が提供される。
【0191】
本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、少なくとも1つの変異は、配列LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF-アルファグリアジンタンパク質の配列番号33(すなわち、アミノ酸57とアミノ酸89との間であり、番号付けは配列番号32に示されるアミノ酸配列を有する野生型アルファグリアジンに従う)にある。
【0192】
一実施形態において、アルファグリアジンタンパク質の変異は、脱アミド化されたアミノ酸配列(すなわち、アミノ酸配列のグルタミンがグルタミン酸に変更される場合)のようなものであり、タンパク質は、配列番号36、37、38、41、42、43、46、47または48に示される配列を含む。
【0193】
一実施形態において、本発明の脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、配列番号32に示される塩基配列と、指定された位置(63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84)での少なくとも1つの保存的または非保存的置換とを含む。
【0194】
本明細書で使用される「非保存的置換」という語句は、親配列に存在するアミノ酸を、異なる電気化学的および/または立体的特性を有する別の天然または非天然に存在するアミノ酸で置換することを指す。したがって、置換するアミノ酸の側鎖は、置換される天然アミノ酸の側鎖よりも著しく大きく(または小さく)、かつ/または置換されるアミノ酸とは著しく異なる電子特性を有する官能基を有することができる。このタイプの非保存的置換の例には、アラニンの代わりにフェニルアラニンまたはシコヘキシルメチルグリシン、グリシンの代わりにイソロイシン、またはアスパラギン酸の代わりに-NH-CH[(-CH-COOH]-CO-が含まれる。
【0195】
保守的置換も本明細書で企図されることが理解されよう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は当該技術分野で既知である。どのアミノ酸の変化が表現型的に沈黙している可能性が高いかに関するガイダンスは、Bowie et al.,1990、Science 247:1306 1310にも記載されている。そのような保存的に修飾された多様体は、本発明の多型多様体、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、それらを除外しない。相互の典型的な保存的置換には、1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、トレオニン(T)、および8)システイン(C)、メチオニン(M)が含まれるが(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照されたい)、これらに限定されない。アミノ酸は、側鎖に関連する特性に基づいて置換することができ、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は、例えば、セリン(S)およびスレオニン(T)で置換することができ、側鎖の電荷に基づくアミノ酸、例えば、アルギニン(R)およびヒスチジン(H)で置換することができ、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、例えば、バリン(V)およびロイシン(L)で置換することができる。示されているように、変化は、通常、タンパク質のフォールディングまたは活性に有意に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換などのマイナーな性質のものである。
【0196】
例示的な置換には、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83GおよびP84T/Mが含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
別の実施形態によれば、アミノ酸配列の少なくとも1つのグルタミンは、グルタミン酸に変更される。
【0198】
グルタミンをグルタミン酸に変換することができる例示的な位置には、66、73および/または80が含まれ得る。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターを細胞に導入するために、様々な方法を使用することができる。そのような方法は、一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989)、Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995)、Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)、およびGilboa et at.[Biotechniques 4(6):504-512,1986]に記載されており、例えば、安定的または一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および組換えウイルスベクターによる感染が含まれる。また、陽性‐陰性の選択方法については、米国特許第5,464,764号および同第5,487,992号を参照されたい。
【0200】
本発明の核酸構築物は、植物細胞を安定的または一過性に形質転換するために利用することができる。安定した形質転換において、本発明の外因性ポリヌクレオチドは、植物ゲノムに組み込まれ、それ自体、それは、安定で遺伝性の形質を表す。一過性の形質転換では、外因性ポリヌクレオチドは形質転換された細胞によって発現されるが、それはゲノムに組み込まれておらず、それ自体、一過性の形質を表す。
【0201】
単子葉植物および二子葉植物の両方に外来遺伝子を導入する様々な方法がある(Potrykus,I.,Annu.Rev.Plant.Physiol.,Plant.Mol.Biol.(1991)42:205-225、Shimamoto et al.,Nature(1989)338:274-276)。
【0202】
外因性DNAの植物ゲノムDNAへの安定した組み込みを引き起こす主な方法には、2つの主要なアプローチが含まれる。
(i)アグロバクテリウムを介した遺伝子導入:Klee et al.(1987)Annu.Rev.Plant Physiol.38:467-486、KleeおよびRogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol.6,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,eds.Schell,J.,およびVasil,L.K.,Academic Publishers,San Diego,Calif.(1989)p.2-25、Gatenby,in Plant Biotechnology,eds.、Kung,S.およびArntzen,C.J.,Butterworth Publishers,Boston,Mass.(1989)p.93-112。
(ii)直接的なDNA取り込み:Paszkowski et al.,in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol.6,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds.、Schell,J.,およびVasil,L.K.,Academic Publishers,San Diego,Calif.(1989)p.52-68、DNAをプロトプラストに直接取り込む方法、Toriyama,K.et al.(1988)Bio/Technology 6:1072-1074を含む。植物細胞の短時間の電気ショックによって誘発されるDNA取り込み:Zhang et al.Plant Cell Rep.(1988)7:379-384.Fromm et al.Nature(1986)319:791-793。粒子衝撃による植物細胞または組織へのDNA注入:Klein et al.Bio/Technology(1988)6:559-563、McCabe et al.Bio/Technology(1988)6:923-926、Sanford,Physiol.Plant.(1990)79:206-209、マイクロピペットシステムの使用による:Neuhaus et al.,Theor.Appl.Genet.(1987)75:30-36、NeuhausおよびSpangenberg,Physiol.Plant.(1990)79:213-217、細胞培養物、胚またはカルス組織のガラス繊維または炭化ケイ素ウィスカー形質転換:米国特許第5,464,765号、または発芽花粉とのDNAの直接インキュベーションによる:DeWet et al.in Experimental Manipulation of Ovule Tissue、eds.、Chapman、G.P.およびMantell,S.H.and Daniels,W.Longman,London、(1985)p.197-209、ならびにOhta,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:715-719。
【0203】
Agrobacterium系には、植物のゲノムDNAに組み込まれる明確なDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織への接種方法は、植物種およびAgrobacterium送達系に依存して異なる。広く使用されているアプローチは、植物全体の分化を開始するための優れた供給源を提供する任意の組織外植片で実行可能なリーフディスク手順である。Horsch et al.in Plant Molecular Biology Manual A5、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht(1988)p.1-9。補足的なアプローチでは、真空浸潤と組み合わせてAgrobacterium送達系を採用する。Agrobacterium系は、トランスジェニック双子葉植物の作製において特に実行可能である。
【0204】
植物細胞に直接DNAを移行する様々な方法がある。エレクトロポレーションでは、プロトプラストは短時間、強い電界に曝露される。マイクロインジェクションでは、非常に小さなマイクロピペットを使用して、DNAを細胞に直接機械的に注入する。微粒子衝突では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶、またはタングステン粒子などの微小発射体に吸着され、微小発射体は、細胞または植物組織へと物理的に加速される。
【0205】
形質転換に続き、植物の繁殖が行われる。植物繁殖の最も一般的な方法は、種子によるものである。しかしながら、種子繁殖による再生には、メンデルの法則によって支配される遺伝的分散に従って種子が植物によって産生されるため、ヘテロ接合性のために作物の均一性が欠如するという欠点がある。基本的に、各種子は遺伝的に異なり、各々が独自の特定の形質を有して成長する。したがって、再生植物が親トランスジェニック植物と同一の形質および特徴を有するように、形質転換された植物を産生することが好ましい。したがって、形質転換された植物は、形質転換された植物の迅速で一貫した再生を提供するマイクロプロパゲーションによって再生されることが好ましい。
【0206】
マイクロプロパゲーションは、選択した親植物または栽培品種から切除された単一の組織片から新世代の植物を育てるプロセスである。このプロセスは、融合タンパク質を発現する好ましい組織を有する植物の大量繁殖を可能にする。生産される新世代の植物は、元の植物と遺伝的に同一であり、すべての特徴を備えている。マイクロプロパゲーションは、短期間で高品質の植物材料の大量生産を可能にし、元のトランスジェニックまたは形質転換された植物の特性を維持しながら、選択された栽培品種の迅速な増殖を提供する。植物のクローンを作ることの利点は、植物の増殖の速度、ならびに生産される植物の品質および均一性である。
【0207】
マイクロプロパゲーションは多段階の手順であり、段階間で培地または増殖条件を変更する必要がある。したがって、マイクロプロパゲーションプロセスには4つの基本的な段階が含まれる。ステージ1、最初の組織培養;ステージ2、組織培養増殖;ステージ3、分化および植物形成;ならびにステージ4、温室の培養および硬化。ステージ1の最初の組織培養では、組織培養が確立され、汚染物質がないことが証明される。ステージ2では、最初の組織培養は、生産目標を達成するのに十分な数の組織サンプルが生産されるまで増殖される。ステージ3では、ステージ2で成長した組織サンプルが分割され、個々の小植物に成長する。ステージ4では、形質転換された苗木は硬化のために温室に移され、そこで植物の光に対する耐性が徐々に増加し、自然環境で育つことができるようになる。
【0208】
現在、安定した形質転換が好ましいが、葉細胞、分裂組織細胞、または植物全体の一過性の形質転換もまた、本発明によって想定される。
【0209】
一過性の形質転換は、上記の直接DNA導入法のうちのいずれか、または改変植物ウイルスを使用したウイルス感染によって影響を受ける可能性がある。
【0210】
植物宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスとしては、CaMV、TMVおよびBVが挙げられる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号(BGV)、EP-A67,553(TMV)、日本公開出願第63-14693号(TMV)、EPA194,809(BV)、EPA278,667(BV)、およびGluzman,Y.et al.,Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、pp.172-189(1988)に記載されている。植物を含め、多くの宿主において外来DNAを発現する際に使用するための偽ウイルス粒子は、WO87/06261に記載されている。
【0211】
好ましくは、本発明のウイルスは無毒性であり、したがって、成長速度の低下、モザイク、リングスポット、葉巻、黄変、ストリーキング、痘形成、腫瘍形成および孔食などの重篤な症状を引き起こすことができない。適切な非病原性ウイルスは、天然に存在する非病原性ウイルスまたは人工的に弱毒化されたウイルスであり得る。ウイルスの弱毒化は、致死量以下の加熱、化学処理を含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の方法を使用することによって、または、例えば、KuriharaおよびWatanabe(Molecular Plant Pathology 4:259-269,2003),Gal-on et al.(1992)、Atreya et al.(1992)、およびHuet et al.(1994)に記載されるような直接変異誘発技術によってもたらされ得る。
【0212】
適切なウイルス株は、例えば、American Type culture Collection(ATCC)などの入手可能な供給源から、または感染した植物からの単離によって入手することができる。感染した植物組織からのウイルスの単離は、例えば、FosterおよびTatlor,Eds."Plant Virology Protocols:From Virus Isolation to Transgenic Resistance(Methods in Molecular Biology(Humana Pr),Vol 81)",Humana Press,1998によって記載されているような当技術分野でよく知られている技術によって行うことができる。簡単に言えば、高濃度の適切なウイルス、好ましくは若い葉および花びらを含むと考えられる感染植物の組織を、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)中で粉砕して、ウイルスに感染した樹液を生成し、これをその後の接種で使用することができる。
【0213】
植物における非ウイルス性外因性ポリヌクレオチド配列の導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述の参考文献、ならびにDawson,W.O.et al.,Virology(1989)172:285-292、Takamatsu et al.,EMBO J.(1987)6:307-311、French et al.,Science(1986)231:1294-1297、およびTakamatsu et al.,FEBS Letters(1990)269:73-76によって示される。
【0214】
ウイルスがDNAウイルスの場合、ウイルス自体に対して好適な改変を行うことができる。あるいは、外来DNAを用いて望ましいウイルスベクターを構築することを容易にするために、ウイルスを最初に細菌プラスミドにクローニングすることができる。その後、ウイルスをプラスミドから切除することができる。ウイルスがDNAウイルスである場合、細菌の複製起点がウイルスDNAに付着する場合があり、次いで、細菌によって複製される。このDNAの転写および翻訳により、ウイルスDNAをカプシドで包むコートタンパク質が産生される。ウイルスがRNAウイルスである場合、ウイルスは、一般的に、cDNAとしてクローニングされ、プラスミドに挿入される。次に、プラスミドを使用してすべての構築物を作製する。次に、プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳して、ウイルスRNAをカプシドで包むコートタンパク質を産生することにより、RNAウイルスを産生する。
【0215】
本発明の構築物に含まれるものなど、非ウイルス性外因性ポリヌクレオチド配列の植物への導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述の参考文献および米国特許第5,316,931号に示されている。
【0216】
植物にウイルスを接種するための技術は、FosterおよびTaylor,eds."Plant Virology Protocols:From Virus Isolation to Transgenic Resistance(Methods in Molecular Biology(Humana Pr),Vol 81)",Humana Press,1998、MaramoroshおよびKoprowski,eds."Methods in Virology"7 vols,Academic Press,New York 1967-1984、Hill,S.A."Methods in Plant Virology",Blackwell,Oxford,1984、Walkey,D.G.A."Applied Plant Virology",Wiley,New York,1985、ならびにKadoおよびAgrawa,eds."Principles and Techniques in Plant Virology",Van Nostrand-Reinhold,New York、に見られ得る。
【0217】
次に、形質転換された細胞から生成された成熟植物を、成熟植物内で外因性ポリヌクレオチドを発現するのに適した条件下で培養することができる。
【0218】
一実施形態において、発現構築物がトランスフェクトされる植物宿主細胞は、グルテンポリペプチドを自然に発現しない(すなわち、非グルテン植物に由来する)。したがって、一実施形態において、宿主細胞は、アマランス、ソバ、イネ(茶色、白、野生)、トウモロコシキビ、キノア、ソルガム、Montina、鳩麦およびテフからなる群から選択される。
【0219】
別の実施形態において、発現構築物がトランスフェクトされる植物宿主細胞は、野生型グルテンポリペプチドを発現する。このような宿主細胞には、スペルト、カムット、ファッロおよびデュラム、ブルガー、セモリナ、大麦、ライ麦、ライ小麦、コムギ(Triticum)(小麦(wheat)品種であるフィールダー、スペルト、ボブホワイト、シャイアン(cheyenne)、チャイニーズスプリングおよびムジョルナー(mjoelner))ならびにオーツなどの小麦品種を含むが、これらに限定されない。グルテンポリペプチドを自然に発現する宿主細胞において、本発明者らは、野生型グルテンポリペプチドの発現を下方調節することをさらに企図することが理解されよう。野生型グルテンポリペプチドの発現を下方調節する方法は、当技術分野で知られており、例えば、RNAサイレンシング剤およびDNA編集剤の使用が含まれる。RNAサイレンシング剤の例には、siRNA、miRNA、アンチセンス分子、DNAzyme、RNAzymeが含まれるが、これらに限定されない。グルテンポリペプチドの発現を下方調節する1つの方法は、Sachez-Leon,Susana et al."Low-gluten,Nontransgenic Wheat Engineered with CRISPR/Cas9."Plant Biotechnology Journal 16.4(2018):902-910.PMCに記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
組換えポリペプチドの生成のために、本発明は、発現されたタンパク質の安定性、産生、精製または収量を増強するように操作された配列を含む発現構築物を企図する。例えば、本発明のいくつかの実施形態の変異グルテンタンパク質および異種タンパク質を含む融合タンパク質または切断可能な融合タンパク質の発現を操作することができる。そのような融合タンパク質は、融合タンパク質がアフィニティークロマトグラフィーによって、例えば、異種タンパク質に特異的なカラムへの固定化によって、容易に単離され得るように設計され得る。切断部位が変異グルテンタンパク質と異種タンパク質との間に操作される場合、変異グルテンタンパク質は、切断部位を破壊する適切な酵素または薬剤で処理することにより、クロマトグラフィーカラムから放出することができる[例えば、Booth et al.(1988)Immunol.Lett.19:65-70、およびGardella et al.,(1990)J.Biol.Chem.265:15854-15859を参照されたい]。
【0221】
組換えポリペプチドの回収は、培養の適切な時間の後に行われる。「組換えポリペプチドを回収する」という語句は、ポリペプチドを含む発酵培地全体を収集することを指し、分離または精製の追加のステップを意味する必要はない。上記にもかかわらず、本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシングおよび示差可溶化などの様々な標準的なタンパク質精製技術を使用して精製することができる。
【0222】
本発明者らは、セリアック病を有する対象による消費に適した食品の調製のために、本明細書に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドを使用することを企図している。したがって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンは、肉製品、チーズ、および肉製品の代替菜食主義者の調製に使用することができる。
【0223】
一実施形態において、脱エピトープ化されたグルテンポリペプチドは、食用小麦粉の調製に使用することができる。
【0224】
本明細書で使用される「小麦粉」という用語は、典型的には製粉によって得られる、自由流動性の粉末である食品を指す。小麦粉は、パン、ケーキ、ペストリーなどのベーカリー食品に最もよく使用されるが、パスタ、ヌードル、朝食用シリアルなどの他の食品にも使用される。
【0225】
小麦粉の例としては、パン粉、万能粉、無漂白粉、自家粉、白粉、茶色粉、およびセモリナ粉などがある。
【0226】
したがって、本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも1つの脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドを含む、非グルテン植物に由来する小麦粉が提供される。
【0227】
小麦粉が由来する植物(例えば、穀物)の例には、アマランス、ソバ、イネ(茶色、白、野生)、トウモロコシのキビ、キノア、ソルガム、およびテフが含まれるが、これらに限定されない。
【0228】
一実施形態において、非グルテン植物は、脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドで形質転換され、そこから小麦粉が生成される(例えば、粉砕、細かく刻む、製粉などによって)。
【0229】
別の実施形態において、小麦粉は、非グルテン植物から生成され(例えば、粉砕、細かく刻み、製粉などによって)、少なくとも1つの組換え脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドが添加される。脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドの量および種類を調整して、そこから生成される小麦粉または生地の品質を変えることができる。したがって、本発明者らは、生地改良剤としての本発明の組換え脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドの使用を企図している。
【0230】
さらに別の態様によれば、小麦粉は、本発明の少なくとも1つの脱エピトープ化されたアルファグリアジンポリペプチドを発現するように遺伝子改変された小麦から生成される。好ましくは、遺伝子改変された小麦は、野生型アルファグリアジンポリペプチドの発現が下方調節または排除されるようにさらに操作されている(本明細書で上記に記載されているように)。本発明のこの態様の小麦は、ビールなどの他の食用製品を生成するために使用できることが理解されよう。
【0231】
本発明者らはさらに、本明細書に記載の小麦粉のうちのいずれかから生地を生成することを企図している。
【0232】
「生地」という用語は、その一般的に使用される意味を有すると理解されるべきであり、すなわち、最小限の必須成分として小麦粉および液体の供給源、例えば、練りおよび成形に供される少なくとも水を含む組成物を有する。生地はその展性が特徴である。
【0233】
「可鍛性」という用語は、必ずしも容易に破壊されることなく適応変化に対する生地の能力、そのようなものとして、それによって、生地を、以下の加工ステップ、伸長、成形、延伸、シーティング、モーフィング、フィッティング、練り、成形、造形などのいずれか1つに供することを可能にするその柔軟性、弾性および/または柔軟性を定義するものとして理解されるべきである。生地の成形は、所定の形状を有する任意の器具によるか、めん棒または手によるものであり得る。
【0234】
生地は、任意のグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い展開時間(DT)、より低い安定性時間(S)、より高い軟化度(DS)、より高いコンシステンシー(C)値、より低い程度の伸展性(DE)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とする。試験は、小麦粉から抽出されたグルテニンおよびデンプン画分に様々な量の修飾組換えタンパク質を添加し、例えばファリノグラフおよびアルベオグラフを使用して生物物理学的特性を評価することによって実行できる。
【0235】
生地はさらに、(a)脱エピトープ化されたグルテニンまたはグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い剛性、(b)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、機械的誘起に対するより高い安定性、(c)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い臨界張力値、(d)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より低い変形能力、(e)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高い可塑性を有する、および(f)脱エピトープ化されたグリアジンポリペプチドが存在しない対応する生地と比較して、より高いコンシステンシー、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を特徴とし得る。
【0236】
本発明のこの態様の生地は、塩、植物デンプン、香味料、野菜または野菜部分、油、ビタミンおよびオリーブなどの追加の成分を含むことができる。
【0237】
生地はさらに膨張剤を含み得、その例には、低温殺菌されていないビール、バターミルク、ジンジャービール、ケフィア、サワードウスターター、酵母、ホエイプロテイン濃縮物、ヨーグルト、生物学的膨張剤、化学膨張剤、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウムおよびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0238】
本発明のこの態様の生地から生成される加工製品には、鍋で焼いたパン、ピザパンクラスト、パスタ、トルティーヤ、パニーニパン、プレッツェル、パイ、およびサンドイッチパン製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0239】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は±10%を指す。
【0240】
「comprises(含む)」、「comprising(含む)」、「includes(含む)」、「including(含む)」、「having(有する)」という用語およびそれらの活用形は、「含む(including)が限定されない」ことを意味する。
【0241】
「からなる」という用語は、「含み、かつ限定される」ことを意味する。
【0242】
「本質的にからなる」という用語は、追加の成分、ステップおよび/または部品が特許請求された構成、方法、または構造の基本的なおよび新規の特性を実質的に変更しない場合のみ、構成、方法または構造が追加の成分、ステップおよび/または部品を含んでもよいことを意味する。
【0243】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、その混合物を含む複数の化合物を含んでもよい。
【0244】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されてもよい。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解される必要がある。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、および、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわりなく適用される。
【0245】
本明細書で数値範囲が示される際は常に、示された範囲内に任意の引用された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1に示された数字と第2に示された数字との「間の範囲」は、および第1に示された数字「から」第2に示された数字「までの範囲」の表現は、本明細書では交換可能に使用され、第1の示された数字および第2に示された数字ならびにそれらの間の小数および整数のすべてを含むことを意味する。
【0246】
本明細書で使用する「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家により既知の、または、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家による既知の方法、手段、技術、および手順から容易に開発される方法、手段、技術、および手順を含むが、これらに限定されない、所定のタスクを達成するための方法、手段、技術、および手順を指す。
【0247】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、状態の進行を無効にする、実質的に阻害する、遅らせるもしくは逆転させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善する、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0248】
明確にするために別個の実施形態についての文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態についての文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または本発明の任意の他の記載されている実施形態において適切であるとして提供されてもよい。様々な実施形態についての文脈で説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素を備えずに動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0249】
上記に記載され、以下の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態および態様については、以下の実施例で実験的裏付けが見出される。
【実施例
【0250】
ここで、上記の記載とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示する以下の実施例を参照する。
【0251】
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験手順には、分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は文献で十分に説明されている。例えば、"Molecular Cloning:A laboratory Manual"Sambrook et al.,(1989)、"Current Protocols in Molecular Biology"Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994)、Ausubel et al.,"Current Protocols in Molecular Biology"、John Wiley&Sons,Baltimore,Maryland(1989)、Perbal,"A Practical Guide to Molecular Cloning"、John Wiley&Sons,New York(1988)、Watson et al.,"Recombinant DNA",Scientific American Books,New York、Birren et al.(eds)"Genome Analysis:A Laboratory Manual Series",Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998)、米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号および同第5,272,057号に記載されている方法論、"Cell Biology:A Laboratory Handbook",Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994)、"Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique"by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition、"Current Protocols in Immunology"Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994)、Stites et al.(eds),"Basic and Clinical Immunology"(8th Edition),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994)、MishellおよびShiigi(eds),"Selected Methods in Cellular Immunology"、W.H.Freeman and Co.,New York(1980)、利用可能なイムノアッセイは、特許および科学文献に広く記載されている、例えば、米国特許第3,791,932号、米国特許第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同第4,879,219号、同第5,011,771号および同第5,281,521号を参照されたい、"Oligonucleotide Synthesis"Gait,M.J.,ed.(1984)、"Nucleic Acid Hybridization"Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,eds.(1985)、"Transcription and Translation"Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,eds.(1984)、"Animal Cell Culture"Freshney,R.I.,ed.(1986)、"Immobilized Cells and Enzymes"IRL Press,(1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning"Perbal,B.,(1984)and"Methods in Enzymology"Vol.1-317,Academic Press、"PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications",Academic Press,San Diego,CA(1990)、Marshak et al.,"Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual"CSHL Press(1996)、これらはすべて、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献は本明細書全体を通して提供されている。それらにおける手順は、当該技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供されている。それらに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0252】
実施例1
【0253】
セリアック病エピトープの包括的なマッピング
【0254】
セリアック病のエピトープがマッピングされる。評価は、特定のMHCII分子に結合する遺伝子配列内のペプチドの予測される能力に基づいて行われる。エピトープの検証は、MHCII結合アッセイを使用して実行される。
【0255】
実施例1の方法論
【0256】
文献検索。実験的に検証されたすべてのセリアック病エピトープについて、広範囲にわたる徹底的な文献検索が行われる。
【0257】
計算による予測。マッピングは、HLAクラスII遺伝子HLA-DQ2またはHLA-DQ8に結合する能力に基づいて免疫原性エピトープ配列を予測するバイオインフォマティクスツールを使用して実行される。各タンパク質について、すべての可能なペプチド(それぞれ9~13残基)が未修飾バージョンまたは脱アミド化バージョン(ペプチド-MHC複合体の安定性を向上させる組織トランスグルタミナーゼ(tTG2)によるペプチド配列のグルタミン酸へのグルタミン残基の翻訳後脱アミド化)で合成される(Sollid L,2012))。すべてのペプチド配列は、T細胞エピトープとして機能する可能性について分析され、候補はMHCII結合アッセイによってさらにスクリーニングされる。マッピングの優先順位は、経験的に同定されたセリアックエピトープを有するグルテンタンパク質、およびパンの品質に不可欠であると同定されたグルテンタンパク質に与えられる。
【0258】
エピトープ検証。計算による予測は、MHCII結合アッセイを使用して経験的に検証される。予測される各エピトープのMHCIIへの結合は、放射性標識プローブペプチドの精製MHC分子への結合を阻害する能力に基づいて評価される。MHCII分子はアフィニティークロマトグラフィーで精製され、ペプチドはクロラミンT法を使用して放射性標識される。インキュベーション期間後、結合および非結合の放射性標識種が分離され、それらの相対量は、サイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーまたはMHCのモノクローナル抗体捕捉のいずれかによって決定される。次に、結合した放射能のパーセントが決定される。使用するMHCII結合アッセイの詳細なプロトコルは、Sidney et al.(Sidney J,2013)に記載されている。
【0259】
実施例2
【0260】
遺伝子産物の発現およびフォールディングを維持しながら、ペプチドの免疫原性(「脱エピトープ化」)を無効にする。
【0261】
概要。同定された予測エピトープについて、MHCII分子HLA DQ2.5またはDQ8に結合すると予測される位置に核酸多様性を導入するライブラリーを設計する。次に、このライブラリーを使用して、ファージディスプレイライブラリーのようなライブラリースクリーニングまたは選択の方法を使用して、HLA DQ2.5またはDQ8への結合を無効にする変異を検索する。ディープシーケンシングを使用して、HLA DQ2.5またはDQ8への結合が無効になっているが(実施例1で説明したMHCII結合アッセイを使用)、酵母表面ディスプレイ(YSD)ライブラリーを使用して完全な発現およびフォールディングを有する、多様体を同定する。この文脈では、YDライブラリーは、結合ではなく、発現およびフォールディングを測定および評価するために使用される。上記の結合スクリーニングと合わせて、これにより、脱エピトープ化タンパク質が十分に発現され、十分にフォールディングされ、安定しており、MHCIIに結合しないことが確認される。重要なことに、ほとんどのグルテニンおよび一部のグリアジンはフォールディングされていないため、酵母の表面に発現させるのは困難である。これらのタンパク質については、発現/フォールディング分析にNicklコーティングプレートおよび円二色性分析を使用する。
【0262】
方法論:
【0263】
脱エピトープ化:
【0264】
ライブラリー設計の位置の選択:予測されるエピトープおよび既知のエピトープについて、MHCII結合に重要であると予測される位置を選択する。簡単に説明すると、WTおよび特定の変異体のHLA-ペプチド相互作用を予測する。予測の違いは、有望な変異を特定するのに役立つ。毒性が低下した野生小麦株のデータも、免疫原性に影響を及ぼす可能性のある位置を決定するために使用される。選択は、以下を考慮に入れた組み合わせスコア、(i)予測のスコア、(ii)残基の保存を評価する複数アラインメントに基づいて行われる。保存されていない残基には、より高いスコアが与えられる。(iii)タンパク質の同じ領域内の他の推定上の置換との相乗効果。このようにして、変更する位置および各位置に導入する多様性を選択する。最終的なライブラリーには、変更された各位置にWT残基も含まれる。既存のデータは、多くの場合、単一の変異でペプチド-MHC結合を無効にするのに十分であることを示している。
【0265】
ライブラリーの設計:我々は、ペプチドの各位置(通常は9~13アミノ酸の長さであるが、エピトープマッピングの計算分析に基づいて、より短いまたはより長い場合がある)が他の残基に置換されたライブラリーを注文する。選択された位置での点変異を含む選択された位置分析に基づくライブラリー設計は、遺伝子再構築法を介した吹き替え組み込み合成オリゴによって生成される(ISOR)(Herman 2007)。遺伝子配列に基づくテンプレート遺伝子(「WT」)は、IDTから合成遺伝子として注文される。望ましい置換を含み、適切なDNA領域に相補的な合成オリゴヌクレオチドは、低精製グレードでIDTに注文される。ライブラリー内のすべての置換は、終止コドンの頻度を最小限に抑えながら、予測によって提供される選択されたアミノ酸を生じさせるコドンの選択によってコード化される。戦略の概要を図1に示す。簡単に説明すると、マイクログラム量のテンプレートを取得するために、リバースプライマーおよびフォワードプライマーを使用してテンプレートDNAを増幅する。次に、DNAをDNaseIで断片化し、70~100bpに対応する断片を単離する。次に、DNA断片を様々なオリゴヌクレオチド量と混合し、Pfu Turbo DNAポリメラーゼを使用したPCRアセンブリ反応を実行する。完全長の組み立てられた遺伝子は、特定の制限酵素によって認識されるDNA配列を含む適切なフォワードおよびリバースプライマーを使用した「ネステッド」PCRによってさらに増幅される。消化されたpCTCON2を消化された純粋な「ネステッド」PCR産物とライゲーションし、エレクトロコンピテントE.coli細胞を精製されたライゲーションミックスで形質転換することにより、pCTCON2プラスミドの望ましい多様性のDNAライブラリーが作成される。次に、ライブラリーの複雑さは、ランダムなE.coliコロニーをシーケンスすることによって評価される。細胞を含むすべてのプラスミドがプールされ、EBY100ライブラリーが分離されて保存される。
【0266】
検証
【0267】
ファージディスプレイライブラリー。ファージディスプレイには、バクテリオファージFエピソームの表面にペプチドライブラリーを表示することが含まれ、これにより、M13バクテリオファージの感染および増殖が可能になる。細菌宿主に導入されると、DNAはDNA修復および複製によって分解され、得られたライブラリーはファージ粒子にパッケージ化される。次に、陽性ファージクローン(上記のMHCII結合試験で測定したHLA DQ2.5またはDQ8に結合しない脱エピトープ化ペプチド配列)によってカプセル化されたDNAを、ディープシーケンスのテンプレートとして使用する。詳細なプロトコルは、Tonikian R,et al.2007に記載されている。
【0268】
発現およびフォールディング評価
【0269】
酵母表面ディスプレイ(YSD):酵母の表面でフォールディングされてよく発現するグルテン遺伝子の場合、YSDは前述のように実行される(Chao,G、2006)。簡単に言うと、酵母ライブラリーはpCTCON2プラスミドライブラリーでEBY100細胞を形質転換することにより、約1×10細胞の多様性に作成される。細胞をプールし、酵母をペニシリン-ストレプトマイシン(pen/strep)を含むSDCAA培地で一晩増殖させる。次に、細胞を遠心分離機で収集し、酵母の表面での発現を可能にするSGCAA培地を補充する。誘導は48時間実行される。発現細胞は、発現レベルに基づいてフローサイトメトリーによって分離、分析、および分類される。プラスミドは陽性クローンから単離され、配列決定される。
【0270】
ディープシーケンシング。YSDライブラリーの場合、ライブラリーをディープシーケンスし、正しく発現およびフォールディングされているすべての脱エピトープ化された遺伝子多様体を特定する。次に、変異した遺伝子配列を分析し、エピトープのどの残基の変化がMHCIIへの結合を減少させると予測されるかを評価する。これらの結果に基づいて、脱エピトープ化されたグリアジン遺伝子を合成する。酵母の表面で適切にフォールディングされない/発現しないグルテン遺伝子の場合、候補の脱エピトープ化された遺伝子多様体は、Hisタグ付きタンパク質発現およびニッケルコーティングプレート精製アプローチを使用して、発現について試験される。円二色性分析は、タンパク質の二次構造に関する情報を提供する。
【0271】
ニッケルコーティングしたプレートを使用したHisタグ付きタンパク質の精製。個々の変異タンパク質の発現を調査するために、タンパク質多様体の精製のためのハイスループット法が使用される。この方法では、タンパク質の精製は、Hisタグ付きタンパク質とNi-NTAでコーティングしたマイクロプレートとの間の相互作用に基づく。詳細なプロトコルは、Lanio T,et al.2000に記載されている。簡単に言うと、グルテン遺伝子の脱エピトープ化バージョンを有するプラスミドベクターpHisが生成される。転写は、2つのlacオペレーターとT7プロモーターとの組み合わせの制御下にあり、これはIPTGによる効果的な抑制または誘導を可能にする。E.coli細胞を37℃で増殖させ、LB培地に移す。多様体の発現は、IPTGを添加することによって誘導される。インキュベーション後、遠心分離により細胞を回収し、ペレットを溶解バッファーに再懸濁する。ライセートをNi-NTA HisSorbに移し、室温でボルテックスしながらインキュベートする。プレートは溶解緩衝液で洗浄される。Hisタグ付きタンパク質は溶出される。前培養からの細胞ペレットは、標準的なDNAプラスミド調製またはPCRによって目的の多様体遺伝子からDNAを抽出するために使用される。
【0272】
円二色性分析。適切に発現された精製された脱エピトープ化タンパク質は、前述のように円二色性分析を使用してフォールディングについてさらに試験される(Srinivasan B,2015)。精製されたタンパク質は酢酸で透析され、その円二色性スペクトルは分光偏光計を使用して分析される。190~260nmの遠紫外線円二色性スペクトルは、2mmの光路長の石英キュベットで、分解能1nm、スキャン速度50nm/分、タンパク質濃度0.10mg/mLで記録される。平均3回のスキャンが取得される。与えられた波長での平均残留楕円率(度/平方センチメートル/デシモル×10)が計算される。その後の二次構造の内容の計算は、専用のソフトウェアを使用して実行される。発現およびフォールディングを維持する脱エピトープ化された遺伝子多様体(未修飾の対応物と同様)は、T細胞活性化アッセイを使用して免疫原性の欠如についてさらに検証される。
【0273】
さらなる検証
【0274】
グルテン特異的T細胞株の生成:グルテン反応性TCLは、以前に説明されているように生成される(Gianfrani C.et al.,Gastroenterology(2007))。簡単に説明すると、粘膜外植片をコラゲナーゼAで消化し、細胞を5%ABプールヒト血清(Biotag)および抗生物質を添加した完全培地X-Vivo15(Lonza)に2~3×105細胞/mlで播種する。細胞は、1.5×106の照射されたPBMCおよびTG2(Sigma-Aldrich)で処理された(脱アミド化された)PT-グリアジン(50μg/ml)で刺激される。IL-15およびIL-2 Peprotech)は、24時間後にそれぞれ10ng/mlおよび20単位/mlで添加される。サイトカインは3~4日ごとに補充され、細胞は必要に応じて分割される。細胞は最初の刺激から約2週間後に再刺激される。
【0275】
T細胞活性化アッセイ1。検証は、HLA-DQ-ペプチドテトラマーベースのアッセイを使用して実行される。このアッセイでは、HLA(DQ2.5およびDQ8)テトラマーに提示された脱エピトープ化ペプチドまたは未修飾コントロールを、CD患者の末梢血(おそらく経口グルテンチャレンジ下)から分離した、または炎症部位から得られた生細胞の培養を可能にする新鮮な小腸生検から分離したT細胞とインキュベートする。T細胞の結合および/または活性化は、前述のように測定される(Brottveit M,2011)。これらのT細胞の結合おと活性化の有意な減少または完全な抑制を示す複合体は、さらなる評価のために選択される。
【0276】
T細胞アッセイ2。TCLは、以前に記載されたように、ELISAによるIFN-γの検出によって脱アミド化PT-グルテンタンパク質およびPT-グルテンペプチドに対する応答を分析される(Gianfrani C.ら、J.Immunol.(2006))。HLA適合B-LCL(Sigma-Aldrich)がAPCとして使用される。PT-グルテンタンパク質(100μg/ml)またはグルテンペプチド(10μM)(A&A labs)をレスポンダーT細胞(4×10)と同時にAPC(1×10)に添加し、細胞を丸底96ウェルプレート(Corning)中の200μl X-vivo15培地で播種し、48時間インキュベートした。各ペプチド/タンパク質は4回繰り返して試験される。DMSOはペプチド試験の陰性コントロールとして機能し、ブランク培地はタンパク質試験の陰性コントロールとして機能する。Elisa実験では、Nunc MaxiSorpプレート(Thermo Fisher)を1μg/mlのα-IFNγ抗体(Mabtech)でコーティングし、ブロックして、TCLのプレートから採取した50μlの上清(sup)と一晩インキュベートする。組換えIFNγ(Bactlab)は、検量線の作成に使用される。プレートをビオチン-α-IFNγ抗体(1μg/ml)(Mabtech)、ストレプトアビジン-HRP(Bactlab)(1:5000)およびTMB(Thermo Fisher)とともにインキュベートする。反応を停止し、プレートをElisaプレートリーダーで450nMで読み取る。結果はGraphpad Prismを使用して分析され、IFNγレベルが決定される。結果はコントロールに対して正規化される。ペプチド/タンパク質サンプルのIFNγレベルがコントロールと比較して2倍以上の場合、またはIFNγレベルがコントロールよりも有意に高い場合(片側スチューデントのt検定)、結果は陽性(T細胞の活性化)と見なされる。
【0277】
各グリアジンについて同定された特定の変化は、遺伝子の完全な遺伝子配列に導入され、実施例3の一部として機能試験に使用される。
【0278】
実施例3
【0279】
完全な生物物理学的特性を備えた「セリアック病に安全な」グルテンタンパク質多様体を生成する。
【0280】
脱エピトープ化されたグルテン遺伝子の完全な遺伝子配列は、それらの生物物理学的品質の保存について試験される。これは、細菌、ウイルス、または哺乳動物の発現技術を含むがこれらに限定されない、任意の手段による脱エピトープ化遺伝子の組換え発現によって行われる。精製された組換え脱エピトープ化されたグルテン遺伝子(単一遺伝子または組み合わせ)は、グルテンフリーの生地または小麦粉、またはその他のグルテンフリー製品に、様々な量または組み合わせで追加される。あるいは、小麦以外の作物(小麦粉および/またはコーンフラワー)からの小麦粉/生地を使用して、パンの品質の改善を試みることができる。パン/小麦粉の品質への脱エピトープ化された多様体の寄与は、混合特性、生地の膨張、弾力性、強度などの特性で示される。脱エピトープ化された多様体の生物物理学的特性は、同等の機能を検証するために、修飾されていない(「WT」)対応物と比較される。
【0281】
方法論:
【0282】
組換えタンパク質の産生。選択した宿主に最適化された分子属性(強力なプロモーター、効率的なリボソーム結合部位など)を備えた発現構築物を設計する。細菌発現(例えば、E.Coli)の場合、修飾および非修飾グルテン遺伝子の形質転換に続いて、スクリーニング研究および増殖条件(宿主、誘導、培地、温度、添加剤)の最適化を行い、可溶性または封入体の発現を促進する。転写は、2つのlacオペレーターとT7プロモーターとの組み合わせの制御下にあり、IPTGによる効果的な抑制または誘導を可能にする。大腸菌細胞は37℃で培養され、最小培地に移される。グルテンタンパク質の発現は、IPTGを添加することによって誘導される。誘導後、細胞を溶解し、全細胞溶解物をニトロセルロースメンブレンにスポットする。次に、メンブレンをスキムミルクでブロックする。Hisタグ付きタンパク質は、抗His抗体で探査される。精製前に、制限酵素を使用してHisタグを除去する。
【0283】
発現の評価は、SDS-PAGE/Coomassieまたはウエスタンブロットによって実行される。次に、組換えタンパク質は溶解物画分または封入体から精製される。グリアジンタンパク質の精製は、公開されている手順(Arentz-Hansen EH et al.,J.Exp。Med。(2000))に従って行われる。簡単に説明すると、細菌細胞ペレットを70%エタノールに60℃で1時間再懸濁する。遠心分離して細胞片を除去した後、NaCl(1.5M)を上清に加えてグリアジンタンパク質を沈殿させる。沈殿物は遠心分離によって回収される。次に、ペレットを蒸留水で洗浄する。
【0284】
バキュロウイルスタンパク質の発現については、遺伝子をバキュロウイルス発現ベクターにサブクローニングし、昆虫細胞(例えば、SF9またはSF21)で発現させる。これに続いて、ウイルスの生成、増幅、およびクローニング(限定希釈またはプラーク精製)が行われる。高力価のウイルス株が生成される。発現の評価は、ウエスタンブロットまたはELISAによって行われる。組換えタンパク質は細胞ペレットから精製される。哺乳動物タンパク質の発現には、ベクターの組換え発現に哺乳動物細胞(例えば、CHO、HEK293、HEK293E)を使用する。発現は、細胞溶解物から単離されたウエスタンブロットまたはELISAによって試験される。
【0285】
検証。実施例1に記載された方法と同様に、組換えタンパク質を用いてMHCII結合アッセイを実施して、免疫原性(脱エピトープ化された多様体)または免疫原性(WT多様体)の欠如を検証する。
【0286】
脱エピトープ化されたグルテン遺伝子セットの生物物理学的品質の評価。最適な生地およびパンの特性を達成するために、様々な組み合わせと量の様々な組換えタンパク質の添加が試験される。生地は、精製された組換えグルテンタンパク質をデンプンと混合することによって製造される。生地が生成され、生物物理学的特性が、例えばファリノグラフおよびアルベオグラフで評価される(試験するパラメータは、混合特性生地の展開時間およびピークコンシステンシー値)。焼きたてのパンは、ボリューム、パン粉の色および質感の属性、弾力性、および接着性について試験される。試験のプロトコルは、Patrascu L,et al.2017およびUthayakumaran et al.,Cereal Chemistry(2000)から採用される。
【0287】
実施例4
【0288】
完全な生物物理学的特性を備えた脱エピトピート化されたグルテン遺伝子多様体を発現するように植物を設計する。
【0289】
以下のアプローチを使用して、植物で脱エピトピート化された遺伝子を発現させる。
1.CRISPR Cas9アプローチを使用してパン小麦(Triticum aestivum)の標的グルテン遺伝子のDNA配列を変更するためのゲノム編集。
2.人工マイクロRNA(amiRNA)でネイティブ遺伝子の発現を抑制しながら、遺伝子のネイティブプロモーターの制御下で脱エピトープ化遺伝子を発現させる植物遺伝子工学。
2.1.RNAiアプローチまたはTriticum aestivumの欠失系統(WT遺伝子が発現されていない)を使用してネイティブ遺伝子の発現をサイレンシングしながら、そのネイティブプロモーターの制御下で脱エピトープ化された遺伝子を形質転換する。
3.脱エピトープ化されたグルテン遺伝子のその他の作物(例えば、イネ、トウモロコシなど)への形質転換。
【0290】
すべてのアプローチで、遺伝子の未修飾(WT)バージョンがベースラインコントロールとして機能する。目的は、遺伝子に加えられた改変が植物で発現されたときに非免疫原性のままであり、生地の調製およびベーキングに悪影響を及ぼさないことを確認することである(実施例3に記載)。さらに、すべてのアプローチについて、植物の成長を評価する。
【0291】
方法論
【0292】
小麦におけるWT遺伝子サイレンシング。ネイティブ遺伝子の発現を抑制しながら、遺伝子のネイティブプロモーターの制御下で脱エピトープ化された遺伝子を発現させる。この目的のために、人工マイクロRNA(amiRNA)は、WMD3-web microRNAデザイナー(www(dot)wmd3(dot)weigelworld(dot)org/cgi-bin/webapp(dot)cgi)を使用して、脱エピトープ化された遺伝子に「ブラインド」であるネイティブ転写物を選択的に標的化するように設計される。サイレンシング効率は、一過性発現アッセイアプローチを使用してサイレンシング効率について2~5つのamiRNAの間をスクリーニングすることにより、植物の形質転換の前に試験される。2つの異なるレポーター遺伝子(2つの相互可能性のGFPまたはルシフェラーゼ)に融合し、強力な構成的プロモーターによって制御されるネイティブおよび変更された遺伝子は、Nicotianaベンサミアナの葉で設計された各amiRNAとともに一時的に共発現する。最も効率的なamiRNAは、トランスジェニック植物を生成する次のステップに進む。amiRNAの発現は、強力な小麦特異的プロモーターによって制御される。脱エピトープ化された遺伝子(プロモーター、UTR、イントロンを含む修飾ゲノム断片)および選択されたamiRNAの両方が同じバイナリーベクターにクローン化される。トランスジェニック植物は、効率的なプロトコルに従ってアグロバクテリウムが形質転換を媒介することによって生成される(Ishida Y,2015)。得られたトランスジェニック小麦は、cDNAに対する一塩基多型(SNP)識別アプローチを使用して、改変された遺伝子のサイレンシング効率と発現レベルについて評価される。派生した切断増幅多型配列(dCAPS)または単純な対立遺伝子識別PCR(SAP)のいずれか(Chum、PY、2012、Bui、M、2009)。WTと同様に、良好な植物成長と中断されない発達表現型を示す、ネイティブ転写物の最大のサイレンシングを伴うトランスジェニック系統が継続される。
【0293】
クローニングおよび形質転換:グルテン遺伝子は、選択された小麦品種からクローン化される。
グルテニン遺伝子Dx5およびDy10は、生地の粘弾性に寄与することが以前に報告されている(Rooke L,1999、Popineau Y,2001、Gadaleta,A、2008)。染色体6Dの短腕にある免疫原性の高いα2-グリアジン遺伝子座により、生地の機能が大幅に失われることが以前に報告されている(Van den Broeck HC,2009)。これらのデータに基づいて、Dx5およびDy10グルテニンとα2-グリアジンとを組み合わせて植物を形質転換し、グルテン複合体を生成し、機能性アッセイのベースラインコンパレーターとして機能させる。
【0294】
小麦における導入遺伝子の発現:条件の整った温室で育てられた小麦品種の健康な植物の未熟胚は、遠心分離で前処理され、Ishida et al.によって記述されたプロトコルの下でアグロバクテリウム・ツメファシエンスと共培養される(Ishida Y,2015)。
【0295】
イネにおける導入遺伝子の発現:一般に、クローニングおよび形質転換の戦略は、Jo,et al.2017に記載されているプロトコルに従う。遺伝子は発現ベクターに個別に挿入され、イネ胚乳特異的Glu-B1プロモーターの制御下で、高アミロースの韓国イネ品種Koami(Oryza sativa L.)で発現される。構築されたベクターはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(LBA4404)に導入され、目的の遺伝子はジャポニカ型韓国イネ品種コアミのゲノムに挿入される。
【0296】
トウモロコシにおける導入遺伝子の発現:遺伝子は発現ベクターに個別に挿入され、トウモロコシの内因性プロモーターの制御下でトウモロコシ(Zea mays L.)で発現される。アグロバクテリウムを介したトウモロコシの未成熟形質転換は、Ishida et al.(Ishida Y,1996)によって開発された方法に基づいて実行され、高頻度のトランスジェニックイベントの生成をもたらす。
【0297】
すべての導入遺伝子について、培養が実行され、収穫されたトランスジェニック種子は4℃で保存される。導入遺伝子の発現は、SDS-PAGE、イメージング、または発現および局在分析のための他の分子技術を特徴とする。
【0298】
検証。トランスジェニック種子/植物からの抽出物を用いたMHCII結合アッセイを実施して、植物で発現する多様体の免疫原性の欠如を検証する。
【0299】
脱エピトープ化されたグルテン遺伝子セットの生物物理学的品質の評価。
【0300】
これは、実施例3で説明した方法と同様に実行される。
【0301】
ゲノム編集:トランスジェニック小麦で最高のパフォーマンスを発揮する脱エピトープ化されたグルテン遺伝子および免疫学的アッセイが、CRISPR/Cas9アプローチを使用したゲノム編集用に選択される。CRISPR/cas9を使用して、小麦ゲノムからWTグルテン遺伝子を削除し、脱エピトープ化された遺伝子の配列に置換する。これにより、いくつかの細胞が生成され、それぞれに異なるバージョンの脱エピトープ化された遺伝子が含まれる。最近のアプローチでは、粒子衝撃によってCRISPR/Cas9のインビトロ転写産物またはリボヌクレオプロテイン複合体を送達することにより、パン小麦のDNAフリー編集を使用しており、この目的に使用できる(Liang Z,2018)。CRISPRリボ核タンパク質複合体を使用した小麦のゲノム編集変異のジェノタイピングは、Liang et al.(Liang Z,2018a)によって記述された方法を使用して行われる。
【0302】
実施例5
【0303】
MHCへの結合の低下を示す例示的なアルファグリアジンペプチド。
【0304】
材料および方法
【0305】
MHC/ペプチド相互作用の測定:計算予測アルゴリズムを使用して、推定上の非結合ペプチドのリストを生成した。これらのペプチドを合成し、Sidney J et al,2013に記載されているようにMHCへの結合を測定した。
【0306】
簡単に説明すると、異なる濃度のWTおよび修飾グルテンペプチドを使用する競合アッセイは、ペプチドをNP40緩衝液で希釈し、精製MHCおよび放射性標識既知MHC結合ペプチドと2~4日間インキュベートすることによって実施される。MHCII分子はアフィニティークロマトグラフィーで精製され、ペプチドはクロラミンT法を使用して放射性標識される。インキュベーション期間後、結合した放射性標識種と結合していない放射性標識種を分離し、それらの相対量をサイズ排除ゲルろ過クロマトグラフィーまたはMHCのモノクローナル抗体捕捉のいずれかによって決定する。次に、結合した放射能のパーセントが決定される。修飾ペプチドごとに、WTおよび修飾ペプチドのIC50値が計算される。検証されたグルテンペプチドエピトープは、陽性コントロールとしてのMHC結合について分析される。一部のペプチドは、脱アミド化された形でも試験される。ネイティブペプチドの値よりも4~5倍以上大きい値は、操作されたペプチド配列の結合がネイティブグルテンペプチドの結合と比較して損なわれていることを意味する。非結合はIC50≧30,000nMとして定義される。
【0307】
結果
【0308】
表1は、MHCへの結合が損なわれていると予測された数個の多様体について測定されたIC50を示している。ネイティブペプチドの値よりも大きい値は、操作されたペプチド鎖の結合がネイティブグルテンに関して損なわれていることを意味する。各ペプチドについて、WTネイティブペプチドに関する修飾の数がリストされている。
【0309】
【表1-1】
【表1-2】
【0310】
実施例6
【0311】
T細胞活性化の廃止を示す例示的なアルファグリアジンペプチド。
【0312】
患者生検からのWTアルファグリアジンペプチドおよびTCLの修飾ペプチドに対する応答を、IFN-γのレベルを検出するELISAによってアッセイした。結果を図5A~Bに示す。
【0313】
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【0314】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内にあるそのような代替、修正、および変形のすべてを包含することが意図される。
【0315】
本明細書で言及されているすべての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるのと同程度に、参照により全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または識別は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクション見出しが使用されている限り、それらは必ず限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、本出願の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4-1】
図4-2】
図5A
図5B
【配列表】
2022538647000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、
(i)野生型アルファグリアジンの抗原性単位の1位での、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸による置換と、
(ii)前記抗原性単位の4位および/または5位による置換と、を含み、
前記抗原性単位が、QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有し、かつ、
30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない、脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項2】
前記抗原性単位のうちの少なくとも2つによる置換を含む、請求項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項3】
(a)前記抗原性単位の1位での前記置換が、正に帯電したアミノ酸による置換を含む、
(b)前記抗原性単位の4位での前記置換が、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む、
(c)前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む、または、
(d)上記の(a)~(c)の任意の組み合わせである、請求項またはに記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項4】
(a)前記正に帯電したアミノ酸がヒスチジンまたはリジンである、
(b)前記抗原性単位の4位での前記置換がプロリンによる置換を含む、
(c)前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸による置換を含み、前記小アミノ酸がグリシンまたはセリンを含む、または、
(d)上記の(a)~(c)の任意の組み合わせである、請求項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項5】
前記抗原性単位の3位での芳香族または極性アミノ酸による置換をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項6】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンであって、
前記アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置に少なくとも1つ以上の変異を含み、
前記変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択される位置のアミノ酸にもたらされ、
前記変異の前記位置が配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項7】
前記変異が、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83GおよびP84T/Mからなる群から選択される、請求項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項8】
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む、請求項またはに記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項9】
前記アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンが、グルタミン酸に変異する、請求項のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項10】
前記位置が、66、73および/または80からなる群から選択され、前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、請求項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項11】
配列番号49~57または配列番号60~80に示されるアミノ酸配列を含む、請求項10のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
植物細胞における前記アルファグリアジンの発現を可能にするように、転写調節配列に作動可能に連結された、請求項12に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項14】
前記転写調節配列が植物プロモーターを含む、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
請求項11のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを含む細胞。
【請求項16】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、
請求項13または14に記載の発現ベクターを含む細胞を、前記細胞における前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンの発現を可能にする条件下で培養するステップを含み、それによって脱エピトペドアルファグリアジンを生成する、方法。
【請求項17】
QLPYPQP(配列番号90)、QLPYSQP(配列番号91)および/またはPLPYPQP(配列番号92)に示されるアミノ酸配列を有する抗原性単位を含むアルファグリアジンを脱エピトープ化する方法であって、
前記抗原性単位の1位のアミノ酸残基を、正に帯電したアミノ酸、プロリンおよび脂肪族アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換するステップと、
前記抗原性単位の4位または5位の少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を置換するステップと、を含み、
それによって、脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成し、
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンタンパク質が、30μM未満のIC50でMHCクラスDQ2またはDQ8に結合する15merのペプチドを含まない、方法。
【請求項18】
前記置換が、前記抗原性単位のうちの少なくとも2つで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)前記抗原性単位の1位での前記置換が、正に帯電したアミノ酸による置換を含む、
(b)前記抗原性単位の4位での前記置換が、プロリン、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸またはグリシンによる置換を含む、
(c)前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸、極性アミノ酸または芳香族アミノ酸による置換を含む、または、
(d)上記の(a)~(c)の任意の組み合わせである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記正に帯電したアミノ酸がヒスチジンまたはリジンである、
(b)前記抗原性単位の4位での前記置換がプロリンによる置換を含む、
(c)前記抗原性単位の5位での前記置換が、小アミノ酸による置換を含み、前記小アミノ酸がグリシンまたはセリンを含む、または、
(d)上記の(a)~(c)の任意の組み合わせである、請求項19に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジン。
【請求項21】
前記抗原性単位の3位のアミノ酸残基を芳香族または極性アミノ酸で置換するステップをさらに含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、配列番号49~58または配列番号60~80に示されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成する方法であって、
前記アルファグリアジンのアミノ酸57とアミノ酸89との間の位置で1つ以上のアミノ酸残基を変異させるステップを含み、
前記変異のうちの少なくとも1つが、63、64、66、68、69、70、72、73、75、76、77、78、80、81、82、83および84からなる群から選択された位置のアミノ酸にもたらされ、それによって、前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンを生成し、
前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従い、
前記アルファグリアジンが、配列番号32、81、82、83、84、85、86、87、88または89に示される配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項24】
前記変異が、P63D/W、Q64H、Q66R/K/H/M、P68S/R、Y69W/G、P70S、P72G、Q73W/R、P75R、Y76G、P77S、Q78H、Q80R/W、L81S、P82R、Y83G、およびP84T/Mからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アルファグリアジンの少なくとも1つのグルタミンが、グルタミン酸に変異する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記位置が、66、73、80、それらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記変異の前記位置が、配列番号32に示される野生型アルファグリアジンのアミノ酸配列に従う、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、セリアック病患者に由来するT細胞に対して、対応する非変異アルファグリアジンが前記セリアック病患者に由来するT細胞に結合するよりも低い親和性で結合する、
(b)前記脱エピトープ化されたアルファグリアジンが、HLA-DQ-ペプチドテトラマーベースのアッセイまたはインターフェロン-γELISAアッセイを使用して測定された場合、セリアック病患者に由来するT細胞を、対応する非変異アルファグリアジンが前記セリアック病患者に由来するT細胞を活性化するよりも少ない程度で活性化する、または、
(c)上記の(a)および(b)の組み合わせである、
請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~11のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたアルファグリアジンを含む、非グルテン植物に由来する小麦粉。
【請求項29】
請求項28に記載の小麦粉を含む生地。
【請求項30】
請求項1~11のいずれか一項に記載の脱エピトープ化されたグリアジンを発現するように遺伝子改変されている小麦。
【国際調査報告】