(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/40 20060101AFI20220829BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220829BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220829BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220829BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K47/40
A61K31/573
A61P27/02
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/20
A61K47/12
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578118
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020068398
(87)【国際公開番号】W WO2021001366
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519186244
【氏名又は名称】オキュリス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロフトソン,トールシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】フロプ,ゾルタン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC10
4C076DD23
4C076DD24S
4C076DD37S
4C076DD49
4C076EE23
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4C076FF15
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4C076FF51
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA58
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
本開示は酸化されやすい薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法に関し、前記方法は、前記酸化されやすい薬剤の酸化を防止するための添加剤の添加を含む。特に、本開示はコルチコステロイドを含む水性組成物のpHを安定化するための方法に関し、前記方法は、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤の添加を含む。本開示はまた、コルチコステロイドとコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤とを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法であって、
前記方法は、前記薬剤の酸化を防止する添加剤の添加を含む、
方法。
【請求項2】
前記水性組成物は、シクロデキストリン、好ましくはガンマ-シクロデキストリンを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤は、コルチコステロイドである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤は、デキサメタゾンである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤およびそれらの混合物から選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、フェノール系抗酸化剤、水溶性天然抗酸化剤または食品抗酸化剤から選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体からなる群より選択される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒロキシアニソールからなる群より選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で、好ましくは0.05%(w/v)~1%(w/v)、より好ましくは0.1~0.5%、さらにより好ましくは0.2%(w/v)~0.4%(w/v)の濃度で、前記水性組成物に添加される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
薬剤を含む前記水性組成物のpHは、4~8であり、好ましくは4.5~6である、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
コルチコステロイド、シクロデキストリン、好ましくはガンマ-シクロデキストリン、および前記コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤を含む水性組成物であって、
前記添加剤は、0.15%(w/v)~0.6%(w/v)の濃度で、好ましくは0.2%(w/v)~0.5%(w/v)の濃度で、前記組成物中に存在する、
組成物。
【請求項15】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾン、典型的には1.5%(w.v)デキサメタゾンである、
請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤およびそれらの混合物から選択される、
請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤は、フェノール系抗酸化剤、水溶性天然抗酸化剤または食品抗酸化剤から選択される、
請求項14~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体からなる群より選択される、
請求項14~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒロキシアニソールからなる群より選択される、
請求項14~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項14~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項14~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである、
請求項14~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物のpHは、4~8であり、好ましくは4.5~6である、
請求項14~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
マイクロ懸濁液であり、好ましくは1μm~10μmの直径を有する微粒子中に80%~95%の前記コルチコステロイドを含む、
請求項14~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
眼の状態、特に前眼の状態または後眼の状態の治療において使用するための、
請求項14~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、
網膜中心静脈閉塞性疾患または眼の炎症の治療において使用するための、
請求項14~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、
糖尿病性黄斑浮腫;または、
眼科手術後、典型的には白内障手術後の炎症;の治療において使用される、
請求項14~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
コルチコステロイドを含む水性組成物、特にデキサメタゾン/ガンマ-シクロデキストリン複合体を含む水性組成物のpHを安定化させるための、コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法に関し、前記方法は、薬剤の酸化を防止するための添加剤の添加を含む。特に、本開示はコルチコステロイドを含む水性組成物のpHを安定化させるための方法に関し、前記方法は、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤の添加を含む。本開示はまた、コルチコステロイドとコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の状態は世界的な問題であり、世界中の約2億8500万人が視覚障害者であると推定されている。米国では、210万人の米国人が加齢黄斑変性(AMD)、270万人の米国人が緑内障、770万人の米国人が糖尿病網膜症、2400万人の米国人が白内障と診断されている。
【0003】
ほとんどの眼の状態は、全盲を含む負の効果を軽減するために治療および/または管理することができる。しかし、眼の状態に対する現行の治療法は、眼内の標的組織に効果的な用量の薬剤を送達することが難しいため制限される。現行の治療では点眼薬の局所投与が、点眼薬の便利さおよび安全性のために、硝子体内注射および注入などの他の眼科薬剤投与経路と比較して、眼への薬剤投与の好ましい手段である(Le Souriais, C., Acar, L., Zia, H., Sado, P.A., Needham, T., Leverge, R., 1998. Ophthalmic drug delivery systems-Recent advances. Progress in Retinal and Eye Research 17, 33-58)。薬剤は主に、眼表面から眼および周囲の組織への受動的な拡散によって輸送され、フィックの法則によれば、薬剤は、溶解した薬剤分子の勾配によって眼中に駆動される。眼への受動的な薬剤拡散は、3つの主な障害によって妨げられている(Gan, L., Wang, J., Jiang, M., Bartlett, H., Ouyang, D., Eperjesi, F., Liu, J., Gan, Y., 2013. Recent advances in topical ophthalmic drug delivery with lipid-based nanocarriers. Drug Discov. Today 18, 290-297; Loftsson, T., Sigurdsson, H.H., Konradsdottir, F., Gisladottir, S., Jansook, P., Stefansson, E., 2008. Topical drug delivery to the posterior segment of the eye: anatomical and physiological considerations. Pharmazie 63, 171-179; Urtti, A, 2006. Challenges and obstacles of ocular pharmacokinetics and drug delivery. Adv. Drug Del. Rev. 58, 1131-1135)。
【0004】
近年、出願人は、デキサメタゾンを含むシクロデキストリン系点眼薬の調製および試験を記載した(WO2018/100434, Johannesson, G., Moya- Ortega, M.D., Asgrimsdottir, G.M., Lund, S.H., Thorsteinsdottir, M., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. Kinetics of y-cyclodextrin nanoparticle suspension eye drops in tear fluid. Acta Ophthalmologica 92, 550-556; Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 7,893,040 (Feb. 22, 2011); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 8,633, 172 (Jan. 21, 2014); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery US Pat. No. 8,999,953 (Apr. 7, 2015))。
【0005】
これらの研究は、有効成分を含むシクロデキストリン系点眼薬が眼の状態の治療に有望であることを示している。
【0006】
しかし、ある保存条件、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)バイアルで数ヶ月間保存した場合、有効成分を含むシクロデキストリン系点眼薬のpHは安定ではなく、経時的に減少する。従って、pH低下(pH drop)を防止するために、これらの水性組成物のpHを安定化させるための手法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の対象は、薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法であって、前記方法は、前記薬剤の酸化を防止する添加剤の添加を含む、方法である。
【0008】
本発明者らは驚くべきことに、薬剤の酸化を防止するための添加剤の水溶液への添加が、pHの低下を防止することができ、特に長期間の保存期間中においてpHの低下を防止することができることを見出した。
【0009】
本開示の第2の対象はコルチコステロイド、シクロデキストリン、および前記コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤を含む水性組成物であって、前記添加剤は、0.15%(w/v)~0.6%(w/v)の濃度で、例えば0.15%(w/v)~0.45%(w/v)の濃度で、好ましくは0.2%(w/v)~0.4%(w/v)の濃度で、前記組成物中に存在する、組成物である。
【0010】
本開示の第3の対象は、コルチコステロイドを含む水性組成物のpHを安定化させるための、コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤の使用である。
【0011】
本開示の第4の対象は、薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法であって、前記方法は薬剤の酸化を防止するための酸素吸収剤の使用を含む、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[定義]
本明細書中で使用される場合、「組成物の体積に基づく化合物Xの重量%」という用語は、「%w/v」とも略され、組成物100mL中に導入されるグラム単位の化合物Xの量に対応する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「眼の状態」は、疾患、病気、もしくは他の状態であり、これは、眼、眼の一部または領域の1つ、または涙腺などの周囲組織に影響を及ぼすか、または関与する。大まかに言えば、眼には、眼球、ならびに眼球を構成する組織および体液、眼周囲の筋肉(斜筋および直筋など)、涙腺および眼蓋などの眼球および周囲の組織の内部または近傍にある視神経の一部が含まれる。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「前眼の状態」は、疾患、病気、もしくは他の状態であり、これは、前部(すなわち、眼の正面)の眼領域または部位、例えば、眼周囲の筋肉、眼蓋、涙腺、または水晶体嚢の後壁もしくは毛様体筋の前部に位置する眼球組織または体液に影響を及ぼすか、または関与する。
【0015】
したがって、前眼の状態は、主に、次の:結膜、角膜、前眼房、虹彩、水晶体、または水晶体嚢、および前眼領域または部位に血管形成する、もしくは神経支配する血管および神経、に影響を及ぼすか、または関与する。前眼の状態はまた、本明細書では涙器まで拡大されると考えられる。特に、涙を分泌する涙腺と、涙液を眼の表面に運ぶ導管。
【0016】
さらに、前眼の状態は、網膜の後方であり、水晶体嚢の後壁の前側にある、後眼房に影響を及ぼすか、または関与する。
【0017】
前眼の状態は、例えば、無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老視;瞳孔障害;屈折障害および斜視などの疾患、病気または状態を含む。緑内障治療の臨床目標は眼の前眼房中の水の高い圧力を軽減する(すなわち、眼圧を低下させる)ことであるため、緑内障も前眼の状態であるとみなすことができる。
【0018】
前眼の状態には、白内障手術後の炎症、緑内障、前眼房の炎症、中央黄斑浮腫などの眼の前側の炎症も含まれる。
【0019】
「後眼の状態」とは、疾患、病気または状態であり、これは、主に、後眼領域または脈絡膜もしくは強膜(水晶体嚢の後壁を通る面の後方の位置にある)、硝子体、硝子体眼房、網膜、視神経(すなわち、視神経乳頭)、ならびに後眼領域または部位を血管新生する、もしくは神経支配する血管および神経などの後眼領域または部位に、影響を及ぼすか、または関与する。
【0020】
したがって、後眼の状態には、疾患(disease)、病気(ailment)または状態(condition)であり、例えば、黄斑変性(非滲出性加齢黄斑変性および滲出性加齢黄斑変性など)、脈絡膜新生血管、急性黄斑神経網膜症、黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫および糖尿病黄斑浮腫など)、ベーチェット病、網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞性疾患(CRVO)、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、後眼部または後眼位置に影響を及ぼす眼外傷、眼レーザー治療によって引き起こされるまたはその影響を受けた眼の状態、光線力学療法によって引き起こされるまたはその影響を受けた後眼の状態、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞性疾患、前部虚血性視神経症、非網膜症性糖尿病性網膜機能障害、網膜色素変性症および緑内障が含まれ得る。緑内障は網膜細胞または視神経細胞(すなわち、神経保護)の損傷または喪失による視力喪失の発生をなくす、または低下させることを防止することを治療目標とするため、後眼の状態とみなすことができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「微粒子」という用語は約1μm~約200μmの直径D50を有する粒子を指す。「ナノ粒子」という用語は1μm未満の直径D50を有する粒子を指す。例示的な実施形態では、D50であり得る直径は1μm以上約200μmまでであり、「ナノ粒子」という用語は約1μm未満のD50を有する粒子を指す。
【0022】
「マイクロ懸濁液」という用語は、液相中に懸濁された固体複合微粒子を含む組成物を意味することを意図する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「薬剤の酸化を防止する」という表現は、薬剤の酸化を防止または遅延することを意味することを意図する。
【0024】
<薬剤を含む水溶性組成物のpHを安定化する方法>
本開示は第一に、薬剤を含む水性組成物のpHを安定化するための方法に関し、前記方法は、薬剤の酸化を防止するための添加剤の添加を含む。本発明はまた、薬剤とこの方法によって得られる薬剤の酸化を防止するための添加剤とを含む水性組成物に関する。
【0025】
薬剤の酸化を防止するための添加剤は、薬剤の前または後に水性組成物に添加することができる。
【0026】
(薬剤)
本開示の水性組成物は薬剤を含む。本開示の文脈において、薬剤は眼科薬剤、すなわち、眼の状態に罹患している患者に充分な量で投与された場合に治療効果を示す化合物である。
【0027】
一実施形態では、薬剤はコルチコステロイドであり、コルチコステロイドはグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドを含む。有利には、薬剤はC16メチル置換を有するグルココルチコイドであるベタメタゾン型コルチコステロイドから選択される。ベタメタゾン型コルチコステロイドには、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾン、クロコトロン、デオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルコルトロン、フルメタゾン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ハロメタゾン、およびモメタゾンが含まれる。好ましくは、薬剤はデキサメタゾンである。
【0028】
具体的な実施形態では、薬剤は酸化を受けやすい。このことは薬剤が酸化経路を介して分解され得ることを意味する。場合によっては、この酸化の分解産物は酸性分解産物であり、薬剤の酸化を防止するための添加剤の追加は酸性分解産物の形成を防止する。
【0029】
本開示の水性組成物中の薬剤の濃度は、約0.1mg/ml~約100mg/ml、特に約1mg/ml~約100mg/ml、特に約1mg/ml~約50mg/ml、より具体的には約1mg/ml~約40mg/ml、さらにより具体的には約5mg/ml~約35mg/ml、より具体的にはさらに約10mg/ml~約30mg/mlであり得る。本開示の水性組成物中の薬剤の濃度は、約5mg/ml~約30mg/ml、特に約10mg/ml~約25mg/mlであり得る。
【0030】
水性組成物中の薬剤の量は、組成物の体積に基づいて、薬剤の0.5~5重量%、特に1~4重量%、より特に1.5~3重量%であり得る。
【0031】
(シクロデキストリン)
水性組成物は、シクロデキストリンを含むことができる。水性組成物中のシクロデキストリンの量は、組成物の体積に基づいて、1~35重量%、特に5~30重量%、より特に10~27重量%、さらに特に12~25重量%のシクロデキストリンであり得る。水性組成物中のシクロデキストリンの量は、組成物の体積に基づいて10~25重量%、特に12~20重量%のシクロデキストリンであり得る。
【0032】
シクロデキストリンは、α-1,4-グリコシド結合を介して結合した、6(α-シクロデキストリン)、7(β-シクロデキストリン)、および8(γ-シクロデキストリン)グルコピラノースモノマーを含有する環状オリゴ糖である。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンは、デンプンの微生物分解によって形成される天然産物である。ドーナツ形シクロデキストリン分子の外面は親水性であり、多数のヒドロキシ基を有するが、それらの中心空洞はある程度は親油性である(Kurkov, S.V., Loftsson, T., 2013. Cyclodextrins. Int J Pharm 453, 167-180; Loftsson, T., Brewster, M. E., 1996. Pharmaceutical applications of cyclodextrins. 1. Drug solubilization and stabilization. Journal of Pharmaceutical Sciences 85, 1017-1025)。3つの天然シクロデキストリンに加えて、多数の水溶性のシクロデキストリン誘導体が合成され、シクロデキストリンポリマーを含む薬剤担体として試験されている(Stella, V.J., He, Q., 2008. Cyclodextrins. Tox. Pathol. 36, 30-42)。
【0033】
シクロデキストリンは、疎水性化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティを高めることができる。水溶液では、シクロデキストリンは、薬剤分子、またはより頻繁には分子のいくつかの親油性部分を中心空洞に取り込むことによって、多くの薬剤と封入複合体を形成する。この特性は、薬剤製剤および薬剤送達の目的のために使用されてきた。薬剤/シクロデキストリン封入複合体の形成、薬剤の物理化学的特性への効果、薬剤の生体膜透過能へのそれらの効果、および医薬産物中のシクロデキストリンの使用がレビューされている(Loftsson, T., Brewster, M.E., 2010. Pharmaceutical applications of cyclodextrins: basic science and product development. Journal of Pharmacy and Pharmacology 62, 1607-1621; Loftsson, T., Brewster, M.E., 2011. Pharmaceutical applications of cyclodextrins: effects on drug permeation through biological membranes. J. Pharm. Pharmacol. 63, 1119-1135; Loftsson, T., Jarvinen, T., 1999. Cyclodextrins in ophthalmic drug delivery. Advanced Drug Delivery Reviews 36, 59-79)。
【0034】
シクロデキストリンおよび薬剤/シクロデキストリン複合体は水溶液中で自己集合して、ナノサイズおよびミクロサイズの凝集体並びにミセル様構造を形成することができ、これらはまた、非封入複合体化およびミセル様可溶化によって難溶性薬剤を可溶化することができる(Messner, M., Kurkov, S.V., Jansook, P., Loftsson, T., 2010. Self- assembled cyclodextrin aggregates and nanoparticles. Int J Pharm 387, 199-208)。一般に、自己集合し、凝集体を形成するシクロデキストリンの傾向は、薬剤/シクロデキストリン複合体の形成時に増加し、凝集は、薬剤/シクロデキストリン複合体の濃度の増加と共に増加する。一般に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよび2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンなどの親水性シクロデキストリン誘導体、およびそれらの複合体は、水に自由に溶解する。一方、天然α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、およびγ‐シクロデキストリン、ならびにそれらの複合体は、25℃の純水において限定的な溶解度、すなわち、それぞれ129.5±0.7、18.4±0.2および249.2±0.2mg/mlを有していた(Sabadini E., Cosgrovea T. and do Carme Egidio F., 2006. Solubility of cyclomaltooligosaccharides (cyclodextrins) in H2O and D2O: a comparative study. Carbohydr Res 341, 270-274)。それらの溶解度は、温度の上昇に伴って、ある程度増加することが知られている(Jozwiakowski, M. J., Connors, K. A, 1985. Aqueous solubility behavior of three cyclodextrins. Carbohydr. Res., 143, 51-59)。それらの複合体の限定的な溶解度のために、天然シクロデキストリンは最も頻繁に、Bs型またはBi型相溶解度図を示す(Brewster M. E., Loftsson T., 2007, Cyclodextrins as pharmaceutical solubilizers. Adv. Drug Deliv. Rev., 59, 645-666)。天然シクロデキストリンの溶解度は、薬剤/シクロデキストリン複合体の形成時に純水中でのそれらの溶解度を下回って減少することが観測されている(Jansook, P., Maya-Ortega, M.D., Loftsson, T., 2010. Effect of self-aggregation of y-cyclodextrin on drug solubilization. Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry 68, 229-236)。低濃度の溶解した薬剤/シクロデキストリン複合体は、薬剤/シクロデキストリン複合体を含有するナノ粒子および微粒子の形成を妨げる。さらに、ナノ懸濁液およびマイクロ懸濁液を安定化するために使用される水溶性ポリマーなどの他の賦形剤は、シクロデキストリンと複合体を形成することができる。したがって、薬剤/シクロデキストリン複合体の形成をさらに妨げることができる。
【0035】
以前、出願人は、シクロデキストリンナノ粒子中にデキサメタゾン、ドルゾラミド、イルベサルタン、テルミサルタン、およびシクロスポリンAを含む、シクロデキストリンに基づく点眼薬の調製および試験について述べた。デキサメタゾンについて述べた文献はJohannesson, G., Moya-Ortega, M.D., Asgrimsdottir, G.M., Lund, S.H., Thorsteinsdottir, M., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. Kinetics of γ-cyclodextrin nanoparticle suspension eye drops in tear fluid. Acta Ophthalmologica 92, 550-556; Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 7,893,040 (Feb. 22, 2011); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 8,633, 172 (Jan. 21, 2014); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery US Pat. No. 8,999,953 (Apr. 7, 2015である。ドルゾラミドについて述べた文献はJohannesson, G., Maya-Ortega, M.D., Asgrimsdottir, G.M., Lund, S.H., Thorsteinsdottir, M., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. Kinetics of γ-cyclodextrin nanoparticle suspension eye drops in tear fluid. Acta Ophthalmologica 92, 550-556; Gudmundsdottir, B.S., Petursdottir, D., Asgrimsdottir, G.M., Gottfredsdottir, M.S., Hardarson, S.H., Johannesson, G., Kurkov, S.V., Jansook, P., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. γ-Cyclodextrin nanoparticle eye drops with dorzolamide: effect on intraocular pressure in man. J. Ocul. Pharmacol. Ther. 30, 35-41である。イルベサルタンについて述べた文献はMuankaew, C., Jansook, P., Stefansson, E., Loftsson, T., 2014. Effect of γ-cyclodextrin on solubilization and complexation of irbesartan: influence of pH and excipients. Int J Pharm 474, 80-90である。テルミサルタンについて述べた文献はC. Muankaew, P. Jansook, H. H. Sigurdsson, T. Loftsson, 2016, Cyclodextrin-based telmisartan ophthalmic suspension: Formulation development for water-insoluble drugs. Int. J. Pharm. 507, 21-31である。シクロスポリンAについて述べた文献はS. Johannsdottir, P. Jansook, E. Stefansson, T. Loftsson, 2015, Development of a cyclodextrin-based aqueous cyclosporin A eye drop formulation. Int. J. Pharm. 493(1-2), 86-95である。。これらの研究は、ナノ粒子が眼表面との薬剤接触時間および薬剤の眼バイオアベイラビリティを増加させることを示す。薬剤/シクロデキストリンナノ粒子および微粒子は、眼表面上に保持されるだけでなく、水性涙液中の薬剤溶解度も高める。薬剤/γ-シクロデキストリン複合体から構成されるナノ粒子および微粒子は、眼への薬剤の局所送達にとりわけ効果的な薬剤担体であることが示されている。
【0036】
本開示の組成物は、薬剤およびシクロデキストリンを含む固体複合体を含むことができる。薬剤とシクロデキストリンとの複合体を「薬剤/シクロデキストリン複合体」と称する。薬剤がコルチコステロイドである場合、コルチコステロイドとシクロデキストリンとの複合体を「コルチコステロイド/シクロデキストリン複合体」と称する。薬剤がデキサメタゾンであり、シクロデキストリンがγ-シクロデキストリンである場合、デキサメタゾンとγ-シクロデキストリンとの複合体を「デキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体」と称する。
【0037】
本開示の組成物の固体複合体は、複合体凝集体であってもよい。複合体凝集体は複数の複合体の凝集体、特に、薬剤およびシクロデキストリンを含む複数の封入複合体、典型的には薬剤およびγ-シクロデキストリンを含む複合体に相当し得る。
【0038】
一実施形態によれば、本開示の水性組成物はマイクロ懸濁液である。
【0039】
特に、本開示の水性組成物は、約100μm未満、特に約1μm~約100μmの直径D50を有する固体複合体を含む。一実施形態では、直径D50が約1μm~約25μm、特に約1μm~約20μm、より具体的には約1μm~約10μm、さらにより具体的には約2μm~約10μm、さらにより具体的には約2μm~約5μm、または約3μm~約8μmであってもよい。粒状物または複合体の直径および/またはサイズは、当業者に公知の任意の方法に従って測定することができる。例えば、直径D50はレーザー回析粒サイズ解析によって測定される。一般に、シクロデキストリン/薬剤粒子または複合体の直径および/またはサイズを測定/評価するための技術は限られた数しかない。特に、この分野における当業者は、物性(例えば、粒子サイズ、直径、平均直径、平均粒度など)が典型的にはそのような限定された典型的な既知の技術を用いて評価/測定されることを知っている。例えば、このような既知の技術は、Int. J. Pharm. 493 (2015), 86-95に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、そのような限定された既知の測定/評価技術は、例えば、European Pharmacopoeia (2.9.31 Particle size analysis by laser diffraction, Jan 2010)、およびSaurabh Bhatia, Nanoparticles types, classification, characterization, fabrication methods and drug delivery applications, Chapter 2, Natural Polymer Drug Delivery Systems, PP. 33-94, Springer, 2016などの他の技術参考文献によって証明されているように、当該技術分野において既知であった。これらの文献もそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
European Pharmacopoeia (01/2008:1163)は懸濁液の形態の点眼薬が以下に従うべきであることを教示している:固体活性物質10μg毎に、約20個以下の粒子が約25μmより大きい最大直径を有し、約2個以下のこれらの粒子が約50μmより大きい最大直径を有する。いずれの粒子も、約90μmを超える最大直径を有することができない。本開示の水性組成物は、European Pharmacopoeia (01/2008:1163)の要件に準拠する。
【0041】
概して、水性点眼薬濁液中の粒子サイズは、眼の刺激を防止するために、最小限、好ましくは約10μm未満に維持されることが推奨される。さらに、水性懸濁液中の沈降速度は粒子直径に比例し、大きな粒子の沈降速度は、全ての他の因子が一定のままであると仮定すると、小さな粒子の沈降速度よりも速い。
【0042】
特に、組成物中の薬剤の60~95重量%、より具体的には70~90重量%は、薬剤とシクロデキストリンとの固体複合体の形態であり得る。
【0043】
さらにより具体的には、組成物中の薬剤の5~40重量%、特に10~30重量%が溶解形態であり得る。溶解形態は、液相に溶解される複合体化されていない薬剤、液相に溶解される薬剤とシクロデキストリンとの複合体、および薬剤/シクロデキストリン複合体凝集体からなる水溶性ナノ粒子を含む。
【0044】
好ましくは、組成物中の薬剤の0~0.5重量%が複合体化されていない固体形態であってもよい。したがって、本開示の組成物は、薬剤の固体の複合体化されていない粒子を実質的に含まなくてもよい。
【0045】
一実施形態では、マイクロ懸濁液は、微粒子中の薬剤を約70%~約99%、およびナノ粒子中の薬剤を約1%~約30%含み得る。より具体的には、マイクロ懸濁液が約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中の薬剤の約80%~約95%、およびナノ粒子中の薬剤の約20%~約5%を含み得る。マイクロ懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中の薬剤を約80%、およびナノ粒子中の薬剤を約20%含み得る。
【0046】
別の実施形態では、マイクロ懸濁液が微粒子中の薬剤を約40%~約99%、およびナノ粒子または水溶性薬剤/シクロデキストリン複合体中の薬剤を約1%~約60%含み得る。特に、マイクロ懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中の薬剤を約80%~約95%、およびナノ粒子または水溶性活性医薬成分/シクロデキストリン複合体中の薬剤を約5%~約20%含み得る。
【0047】
好ましい実施形態によれば、水性組成物は、薬剤/シクロデキストリン複合体、好ましくはコルチコステロイド/シクロデキストリン複合体、より好ましくはデキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体を含む。
【0048】
薬剤/シクロデキストリン複合体を含む組成物の例は国際公開第2018/100434号に開示されており、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
(薬剤の酸化を防止するための添加剤)
水性組成物は、薬剤の酸化を防止するための添加剤を含む。本出願人らは驚くべきことに、薬剤の酸化を防止するための添加剤の添加が水性組成物のpHを安定化し、pHの低下を防止することを見出した。
【0050】
好ましい実施形態において、薬剤の酸化を防止するための添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0051】
抗酸化剤は、典型的にはフェノール系抗酸化剤および還元剤を含む。フェノール系抗酸化剤は、フリーラジカルと反応して酸化反応をブロックする立体障害型フェノールである。フェノール系抗酸化剤の中で、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)または3,4-dヒドロキシ安息香酸、ドデシル3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(ラウリル没食子酸塩)を挙げることができる。還元剤は、酸化を防止することが意図される薬剤よりも低い酸化還元電位を有する化合物である。還元剤は溶媒から酸素を捕捉し、したがって酸化を遅延または防止する。還元剤の中で、チオ硫酸ナトリウム(STS)または抗酸化特性を有する他の工業食品防腐剤を挙げることができる。抗酸化剤の例としては、さらに、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、および他の有機酸およびそれらの誘導体などの水溶性天然抗酸化剤が挙げられる。他の抗酸化剤は、既知の食品抗酸化剤の中からさらに選択することができる。
【0052】
特定の実施形態において、薬剤の酸化を防止するための添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである。
【0053】
別の特定の実施形態において、薬剤の酸化を防止するための添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体、またはそれらの混合物の中から選択される。より好ましくは前記添加剤がチオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒロキシアニソールの中から選択され、さらにより好ましくは前記添加剤がチオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸の中から選択され、もちろん、前記抗酸化剤の混合物は薬剤の酸化を防止するための添加剤として添加されてもよい。
【0054】
薬剤の酸化を防止するための添加剤、典型的にはチオ硫酸ナトリウム、メチオニン、または3,4ジヒドロキシ安息香酸を、少なくとも0.05%(w/v)、好ましくは0.05%(w/v)~1%(w/v)、より好ましくは0.1~0.5%、さらにより好ましくは0.2%(w/v)~0.4%(w/v)の濃度で添加することができる。薬剤の酸化を防止するための添加剤、典型的にはチオ硫酸ナトリウムを、0.2%(w/v)~0.3%(w/v)の濃度で添加することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、0.3%(w/v)チオ硫酸ナトリウムの濃度は、水を含まないチオ硫酸ナトリウムに相当する。これはチオ硫酸ナトリウム五水和物0.471g/100mLに相当する。他の抗酸化剤については、典型的には0.3%チオ硫酸ナトリウムのモル当量を水性組成物中で使用することができる。
【0056】
(組成物のpH)
有利には、薬剤を含む水性組成物のpHが4~9、好ましくは5~8である。典型的には、薬剤を含む水性組成物のpHは生理学的pHである。
【0057】
有利には、コルチコステロイドを含む水性組成物のpHが4~8、好ましくは4.5~6である。
【0058】
特定の実施形態では、水性組成物のpHがICHガイドラインに従って、25℃、40%相対湿度で保存した場合、4~8の間、好ましくは4.5~6の間で、6ヶ月より長く、好ましくは9ヶ月より長く安定化される。
【0059】
(水性組成物)
有利には、水性組成物は眼科的に許容可能な溶媒である。用語「眼科的に許容可能な溶媒」は、組成物の眼科的投与に適した溶媒を意味することが意図される。眼科的に許容可能な溶媒は、好ましくは液体である。
【0060】
水性組成物は有機溶媒を含むことができる。今回の場合、水性組成物は有機溶媒を含まないことが好ましい。
【0061】
特定の実施形態では、眼科的に許容可能な溶媒が水以外のいかなる他の溶媒も含まない。従って、眼科的に許容される溶媒は、水性点眼薬ビヒクルに相当し得る。具体的な実施形態では、水性組成物が緩衝化されていない水性点眼薬ビヒクルである。
【0062】
具体的な実施形態によれば、水性組成物は、水と、任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、およびそれらの組合せからなる群より選択される添加剤とを含む。特に、眼科的に許容可能な溶媒は、防腐剤を含むことができる。
【0063】
防腐剤は、組成物中の細菌増殖を制限するために使用され得る。保存剤の例は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、フェニルエチルアルコール、およびそれらの組合せである。本開示の組成物中の防腐剤の量は、組成物の体積に基づいて、防腐剤の0~1重量%、特に0.001~0.5重量%、より特に0.005~0.1重量%、さらにより特に0.01~0.04重量%であってもよい。好ましい実施形態では、水性組成物は防腐剤を含まない。
【0064】
特に、水性組成物は、安定化剤を含むことができる。適切な安定剤の例は、エデト酸二ナトリウムである。本開示の組成物中の安定化剤の量は、組成物の体積に基づいて、0~1重量%、具体的には0.01~0.5重量%、より具体的には0.08~0.2重量%の安定化剤であり得る。
【0065】
特に、眼科的に許容可能な溶媒は、電解質を含むことができる。組成物を等張にするために、電解質を特に使用することができる。好適な電解質の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、電解質は塩化ナトリウムである。本開示の組成物中の電解質の量は、組成物の体積に基づいて、電解質の0~2重量%、具体的には0.1~1.5重量%、より具体的には0.2~1重量%であり得る。
【0066】
水性組成物は、ポリマーをさらに含んでもよい。特に、前記ポリマーは、水溶性ポリマーであってもよい。さらに、前記ポリマーは、粘度増強ポリマーであってもよい。用語「粘度増強ポリマー」は液体の粘度を増加させるポリマーを意味することを意図する。ポリマーは本開示の組成物の粘度を増加させる。粘度の増加が結果として組成物の物理的安定性を増強させる。したがって、組成物は、ポリマーを含む場合、固体複合体の沈降傾向が少ない。したがって、ポリマーはポリマー安定化剤とみなすことができる。特に、ポリマーは界面活性ポリマーであってもよい。用語「界面活性ポリマー」は、界面活性特性を示すポリマーを意味することを意図する。界面活性ポリマーは、例えば、親水性骨格ポリマーにグラフトされた疎水性鎖;疎水性骨格にグラフトされた親水性鎖;または交互の親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含み得る。最初の2つのタイプはグラフトコポリマーと呼ばれ、第3のタイプはブロックコポリマーと呼ばれる。
【0067】
一実施形態において、本開示の眼科用組成物は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどのセルロース誘導体;例えば、Carbopol 971およびCarbopol 974であるカルボマーなどのカルボキシビニルポリマー;ポリビニルポリマー;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンのコポリマー;チロキサポール;ならびにそれらの組合せ、からなる群より選択されるポリマーを含む。
【0068】
適切なポリマーの例としては、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル(例えば、cetomacrogol 1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween 20およびTween 80(ICI Specialty Chemicals));ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax 3550および934(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるプルロニック F68およびFI08);ポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの連続的な付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーであるポロキサミン 908として知られる、テトロニック 908(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany、N.J.));テトロニック 1508(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons X-200(Rohm and Haas);PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンA、PEG誘導体化ビタミンE、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのランダムコポリマー、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本開示によるポリマーの特に好ましい例は、チロキサポールおよびポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとのコポリマーである。
【0070】
より具体的には、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとのコポリマーが親水性ブロック-疎水性ブロック-親水性ブロック構成を含むトリブロックコポリマーであってもよい。
【0071】
一実施形態において、本開示の組成物がポロキサマーであるポリマーを含む。ポロキサマーは、当技術分野で知られている任意の種類のポロキサマー(poloxamer)を含むことができる。ポロキサマーとして、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105ベンゾエートおよびポロキサマー182ジベンゾエートが挙げられる。ポロキサマーは、商品名として、プルロニック(Pluronic)とも称される。プルロニックは、例えば、プルロニック10R5、プルロニック17R2、プルロニック17R4、プルロニック25R2、プルロニック25R4、プルロニック31 R1、プルロニックF 108、プルロニックF 108、プルロニック F 108、プルロニック F 108NF、プルロニック F 127、プルロニック F 127NF、プルロニック F 127、プルロニック F 127、プルロニック F 38、プルロニック F 38、プルロニック F 68、プルロニック F 77、プルロニック F 87、プルロニック F 88、プルロニック F 98、プルロニック L 10、プルロニック L 101、プルロニック L 121、プルロニック L 31、プルロニック L 3S、プルロニック L 43、プルロニック L 44、プルロニック L 61、プルロニック L 62、プルロニック L 62 LF、プルロニック L 620、プルロニック L 64、プルロニック L 81、プルロニック L 92、プルロニック L 44、プルロニック N3、プルロニック P 103、プルロニック P 104、プロニック P 85、プルロニック P 123、プルロニック P 65、プルロニック P 84、プルロニック P 85、およびこれらの組合せなどである。
【0072】
安定剤として特に有用なポリマーは、ポロキサマーである。ポロキサマーは、当技術分野で知られている任意の種類のポロキサマーを含むことができる。ポロキサマーとして、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー23S、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー33S、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105ベンゾエートおよびポロキサマー182ジベンゾエートが挙げられる。ポロキサマーは、商品名として、プルロニック(Pluronic)とも称される。プルロニックは、例えば、プルロニック 10R5、プルロニック 17R2、プルロニック 17R4、プルロニック 25R2、プルロニック25R4、プルロニック 31 R1、プルロニック F 108 Cast Solid Surfacta、プルロニック F 108 NF、プルロニック F 108 Pastille、プルロニック F 108 NF Prill Poloxamer 338、プルロニック F 127、プルロニック F 127 NF、プルロニック F 127 NF 500 BHT Prill、プルロニック F 127 NF Prill ポロキサマー 407、プルロニック F 38、プルロニック F 38 Pastille、プルロニック F 68、プルロニック F 68 Pastille、プルロニック F 68 LF Pastille、プルロニック F 68NF、プルロニック F 68 NF Prill ポロキサマー 188、プルロニック F 77、プルロニック F 77 Micropastille、プルロニック F 87、プルロニック F 87 NF Prill ポロキサマー237、プルロニック F 88、プルロニック F 88 Pastille、プルロニック F 98、プルロニック L 10、プルロニック L 101、プルロニック L 121、プルロニック L 31、プルロニック L 35、プルロニック L 43、プルロニック L 44 NF ポロキサマー 124、プルロニック L 61、プルロニック L 62、プルロニック L 62 LF、プルロニック L 620、プルロニック L 64、プルロニック L 81、プルロニック L 92、プルロニック L44 NF INH界面活性剤ポロキサマー 124 View、プルロニック N 3、プルロニック P 103、プルロニック P 104、プルロニック P 105、プルロニック P 123 界面活性剤、プルロニック P 65、プルロニック P 84、プルロニック P 85、およびこれらの組み合わせなどである。特に、前記ポリマーはポロキサマー407である。
【0073】
本明細書中に記載される組成物および方法と相溶性のあるさらなるポリマー安定化剤は、チロキサポールである。好ましい実施形態では、安定剤および共可溶化剤はチロキサポールであり、チロキサポールは、ホルムアルデヒドおよびオキシランを含む4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールポリマーであるチロキサポールである。
【0074】
本開示はまた、コルチコステロイド/シクロデキストリン複合体を含む水性組成物のpHを安定化するための方法に関し、例えば、上述のセクションに記載されるような抗酸化剤、典型的にはチオ硫酸ナトリウムの1つ以上である、コルチコステロイドの酸化を防止するための抗酸化剤の添加を含む。
【0075】
本開示はまた、薬剤を含む水性組成物のpHを安定化するための方法に関し、前記方法は、薬剤の酸化を防止するための酸素吸収剤の使用を含む。薬剤を含む水性組成物はバイアル中に貯蔵することができ、バイアルは、酸素吸収剤を含む密封パウチ、典型的にはアルミニウムパウチ中に包装することができる。有利には、酸素吸収剤は鉄粒子を含有する。
【0076】
(コルチコステロイドを含む水性組成物)
本開示はまた、コルチコステロイド、シクロデキストリンおよびコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤を含む水性組成物に関する。ここで、前記添加剤は、例えば、上述のセクションに記載されるような、還元剤、水溶性天然抗酸化剤またはフェノール性抗酸化剤であり、典型的にはチオ硫酸ナトリウムであり、0.15%(w/v)~0.45%(w/v)、好ましくは0.2%(w/v)~0.4%(w/v)の濃度で組成物中に存在する。コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤は、例えば、上述のセクションに記載されるような、還元剤、水溶性天然抗酸化剤、またはフェノール系抗酸化剤、典型的にはチオ硫酸ナトリウムであり、0.2%(w/v)~0.3%(w/v)の間の濃度で存在することができる。
【0077】
(コルチコステロイド)
コルチコステロイドとして、グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドが挙げられる。有利には、コルチコステロイドは、C16メチル置換を有するグルココルチコイドであるベタメタゾン型コルチコステロイドから選択される。ベタメタゾン型コルチコステロイドには、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾン、クロコトロン、デオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルコルトロン、フルメタゾン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ハロメタゾン、およびモメタゾンが挙げられる。好ましくは、薬剤はデキサメタゾンである。
【0078】
具体的な実施形態では、コルチコステロイドは酸化されやすく、このことはコルチコステロイドが酸化経路を介して分解され得ることを意味する。場合によっては、この酸化の分解産物は酸性分解産物であり、薬剤の酸化を防止するための添加剤の添加は酸性分解産物の形成を防止する。
【0079】
本開示の水性組成物中のコルチコステロイドの濃度は、約0.1mg/ml~約100mg/ml、特に約1mg/ml~約100mg/ml、特に約1mg/ml~約50mg/ml、より具体的には約1mg/ml~約40mg/ml、さらにより具体的には約5mg/ml~約35mg/ml、より具体的には約10mg/ml~約30mg/mlであり得る。本開示の水性組成物中のコルチコステロイドの濃度は、約5mg/ml~約30mg/ml、具体的には約10mg/ml~約25mg/mlであり得る。
【0080】
水性組成物中のコルチコステロイドの量は、組成物の体積に基づいて、コルチコステロイドの0.5~5重量%、特に1~4重量%、より特に1.5~3重量%であり得る。
【0081】
(シクロデキストリン)
水性組成物はシクロデキストリンを含む。水性組成物中のシクロデキストリンの量は、組成物の体積に基づいて、1~35重量%、具体的には5~30重量%、より具体的には10~27重量%、さらに具体的には12~25重量%のシクロデキストリンであり得る。水性組成物中のシクロデキストリンの量は、組成物の体積に基づいて10~25重量%、具体的には12~20重量%のシクロデキストリンであり得る。薬剤としてデキサメタゾンを用いる特定の実施形態では、水性組成物中のシクロデキストリン、典型的にはガンマ-シクロデキストリンの量は10~25%であり、デキサメタゾンの量は1.5%である。他の実施形態では水性組成物中のシクロデキストリン、典型的にはガンマ-シクロデキストリンの量は20~25%であってもよく、例えば、23%であり、具体的には2.0~3.5%の量のデキサメタゾンと組み合わせてもよく、好ましくは約3%のデキサメタゾンと組合せてもよい。
【0082】
コルチコステロイドは、上述のようにコルチコステロイド/シクロデキストリン複合体を形成することができる。
【0083】
(コルチコステロイドの酸化を防ぐための添加剤)
水性組成物は、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤を含む。出願人らは驚くべきことに、酸化を防止するための添加剤の添加が、水性組成物のpHを安定化し、pHの低下を防止することを見出した。
【0084】
好ましい実施形態において、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤およびそれらの混合物から選択される。
【0085】
抗酸化剤には、フェノール系抗酸化剤および還元剤が挙げられ、例えば水溶性天然抗酸化剤または他の公知の食品抗酸化剤が挙げられる。
【0086】
フェノール系抗酸化剤の中で、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)または3,4-dヒドロキシ安息香酸、ドデシル3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(ラウリル没食子酸塩)を挙げることができる。還元剤は、酸化を防止することが意図される薬剤よりも低い酸化還元電位を有する化合物である。還元剤は溶媒から酸素を捕捉し、したがって酸化を遅延または防止する。還元剤の中で、チオ硫酸ナトリウム(STS)を挙げることができる。抗酸化剤の例としては、さらに、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、および他の有機酸ならびにそれらの誘導体などの水溶性天然抗酸化剤が挙げられる。
【0087】
他の抗酸化剤は、公知の食品または化粧用抗酸化剤の中から選択されてもよい。
【0088】
特定の実施形態において、薬剤の酸化を防止するための添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである。
【0089】
別の特定の実施形態では、薬剤の酸化を防止するための添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体の中から選択される。より好ましくは、前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒロキシアニソールの中から選択される。さらにより好ましくは、前記添加剤はチオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸の中から選択され、もちろん、前記抗酸化剤の混合物は薬剤の酸化を防止するための添加剤として添加されてもよい。
【0090】
(組成物のpH)
有利には、コルチコステロイドを含む水性組成物のpHが4~8、好ましくは4.5~6である。
【0091】
特定の実施形態では、水性組成物のpHがICHガイドラインに従って、25℃、40%相対湿度で保存した場合、4~8の間、好ましくは4.5~6の間で、6ヶ月より長く、好ましくは9ヶ月より長く安定化される。
【0092】
(水性組成物)
有利には、水性組成物が上記のように、眼科的に許容可能な溶媒である。
【0093】
特に好適な具体例では、水性組成物が:
デキサメタゾン1~4%、例えばデキサメタゾン1.5~3%;
γ-シクロデキストリン1~35%、例えばγ-シクロデキストリン5~25%;
ポリマー2.2~2.8%、または2.8~3.2%、例えばポリマー2.5%または3.0%、典型的にはポロキサマー;
安定剤0~0.2%、例えば安定剤0.1%、典型的にはエデト酸二ナトリウム;
コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤0.15~0.45%、例えば0.2~0.4%、または0.2~0.3%、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤、典型的には、例えば水溶性天然抗酸化剤、より好ましくはチオ硫酸ナトリウム、L-メチオニン、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸などのフェノール系抗酸化剤または還元剤;
電解質0~1%、例えば電解質0.57%、典型的には塩化ナトリウム;および
水;を含み、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0094】
コルチコステロイド、シクロデキストリン、およびコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤を含む水性組成物は、プラスチックバイアル、典型的にはLDPEバイアル、またはガラスバイアル中に保存することができる。
【0095】
(デキサメタゾンを含む好ましい水性組成物)
特定の実施形態では、水性組成物が;
デキサメタゾン1~4%、例えばデキサメタゾン1.5~3%;
γ-シクロデキストリン1~35%、例えばγ-シクロデキストリン5~25%;
安定剤0~0.2%、例えば安定剤0.1%、典型的にはエデト酸二ナトリウム;
電解質0~1%、例えば電解質0.57%、典型的には塩化ナトリウム;および
水;を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0096】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるような使用のための水性組成物は、
デキサメタゾン1~4%、例えばデキサメタゾン1.5~3%;
γ-シクロデキストリン1~35%、例えばγ-シクロデキストリン5~25%;
任意に、ポリマー2.2~2.8%またはポリマー2.8%~3.2%、例えばポリマー2.5%またはポリマー3.0%、典型的にはポロキサマー;
安定剤0~0.2%、例えば安定剤0.1%、典型的にはエデト酸二ナトリウム;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.8%、例えば0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤、典型的には、例えば水溶性天然抗酸化剤、より好ましくはチオ硫酸ナトリウム、L-メチオニン、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸などのフェノール系抗酸化剤または還元剤;
電解質0~1%、例えば電解質0.57%、典型的には塩化ナトリウム;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0097】
より具体的には、特に好適な実施形態は、点眼薬製剤であり、:
デキサメタゾン1.5%;
γ-シクロデキストリン14%;
ポロキサマー2.5%;
安定剤0~0.2%、例えばエデト酸二ナトリウム0.1%;
電解質0~1%、例えば塩化ナトリウム0.57%;
デキサメタゾンの酸化を防止する添加剤0%~0.6%、例えば0.2%~0.4%、コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤、典型的には、例えば水溶性天然抗酸化剤、より好ましくはチオ硫酸ナトリウム、L-メチオニン、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸などのフェノール系抗酸化剤または還元剤;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0098】
典型的には、点眼薬製剤が以下の構成要素を有する:
デキサメタゾン1.5%;
γ-シクロデキストリン14%;
ポロキサマー2.5%;
エデト酸二ナトリウム0.1%;
塩化ナトリウム0.57%;および
チオ硫酸ナトリウム0.2~0.4%;
水。
【0099】
別の特定の実施形態は、点眼薬製剤であり、
デキサメタゾン3%;
γ-シクロデキストリン1~35%、例えばγ-シクロデキストリン20~25%;
任意に、ポリマー2.8~3.2%、例えばポリマー3.0%、典型的にはポロキサマー;
安定剤0~0.2%、例えば安定剤0.1%、典型的にはエデト酸二ナトリウム;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.6%、例えば0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤、典型的には、例えば水溶性天然抗酸化剤、より好ましくはチオ硫酸ナトリウム、L-メチオニン、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸などのフェノール系抗酸化剤または還元剤;
電解質0~1%、例えば電解質0.57%、典型的には塩化ナトリウム;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0100】
別の特定の実施形態は、点眼薬製剤であり、
デキサメタゾン3%;
γ-シクロデキストリン20~25%;
任意に、ポロキサマー2.8~3.2%;例えば3.0%のポロキサマー;
安定剤0~0.2%、例えばエデト酸二ナトリウム0.1%;
電解質0~1%、例えば塩化ナトリウム0.57%;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.6%、例えば0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%、コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤、典型的には、例えば水溶性天然抗酸化剤、より好ましくはチオ硫酸ナトリウム、L-メチオニン、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸などの、フェノール系抗酸化剤または還元剤、;および
水;を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0101】
典型的には、点眼薬製剤が以下の構成要素を有する:
デキサメタゾン3%;
γ-シクロデキストリン20~25%、例えばγ-シクロデキストリン23%;
ポロキサマー2.8~3.2%;
エデト酸二ナトリウム0.1%;
塩化ナトリウム0.57%、および
チオ硫酸ナトリウム0.2~0.4%、典型的にはチオ硫酸ナトリウム0.3%、
水。
【0102】
上記の全ての製剤または水性組成物は、有利には防腐剤を含まない。
【0103】
点眼薬として使用するための最終製剤は、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの複合体凝集体を含むマイクロ懸濁液である。典型的には、組成物中のデキサメタゾンは60~95重量%、より具体的には70~90重量%は、デキサメタゾンとγ-シクロデキストリンとの固体複合体の形態であってもよい。
【0104】
このような製剤を調製するための方法は、以下の工程を含む:
a)デキサメタゾンを眼科的に許容可能な溶媒中で他の賦形剤と混合し、デキサメタゾンが眼科的に許容可能な溶媒中に実質的に溶解するまで加温(例えば80℃~110℃で少なくとも60分間)する;
b)ガンマシクロデキストリンを眼科的に許容可能な溶媒に懸濁させて懸濁液を形成し、シクロデキストリンが眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで前記懸濁液を加熱する;
c)120℃未満の温度T1で工程a)およびb)の組成物を混合し、120℃未満の温度T1で混合物を時間tの間加熱する;および
d)得られた溶液を温度T2に冷却して、デキサメタゾンとシクロデキストリン(好ましくはガンマシクロデキストリン)との固体複合体を含む水性組成物を得る。
【0105】
上記の製造方法において、デキサメタゾンはシクロデキストリンを含まない眼科的に許容可能な溶媒に懸濁されてもよく、任意に他の賦形剤と共に懸濁されてもよい。得られた懸濁液は乳白色の外観を有することができる。これとは独立して、ガンマシクロデキストリンは、活性医薬成分を含まない眼科的に許容される溶媒中に懸濁され得る。得られた懸濁液は乳白色の外観を有することができる。2つの懸濁液は、例えば、オートクレーブ中で、121℃で20分間加熱することによって加熱または滅菌することができる。次に、2つの懸濁液または熱溶液を一緒に混合し、混合物を、デキサメタゾンとガンマ-シクロデキストリンとの複合体が形成されるまで加熱することができる。得られた溶液を、固形活性医薬成分/γ-シクロデキストリン複合体を含むミクロ懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却することができる。
【0106】
マイクロ懸濁液を製造するための詳細な方法は、WO2018100434にも記載されている。
【0107】
上記のようなマイクロ懸濁液は安定であり、点眼薬製剤として使用することができる。
【0108】
特定の実施形態では、1.5%(w/v)を含む前記水性組成物が防腐剤を含まない眼科用マイクロ懸濁液である。それらは、0.5mlの充填容量のユニット投与量で提供されてもよく、例えばLDPEプラスチック材料中に提供されてもよい。得られた懸濁液は25℃未満の周囲温度で保存され得、少なくとも2、3、6、12、18または24ヶ月間保存することができる。
【0109】
(コルチコステロイドを含む水性組成物の使用)
本開示の水性組成物は、眼の状態、特に前眼部の状態または後眼部の状態、特にぶどう膜炎、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌性またはウイルス性感染、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感神経性眼炎、Vogt小柳-原田(VKH)症候群、ヒストプラズマ症、ぶどう膜伝播、および血管閉塞の治療に使用することができる。本開示の水性組成物は、ぶどう膜炎、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、および血管閉塞を治療するのに特に有用であり得る。
【0110】
本開示によるデキサメタゾンを含む水性組成物は、特に黄斑浮腫の治療に使用することができる。このケースでは、本開示によるデキサメタゾンを含む水性組成物は、1日に3回、組成物1滴の量で眼に局所的に投与することができる。前記組成物中のデキサメタゾンの量は、組成物の体積に基づいて、デキサメタゾンの1~5重量%、特に1.5~3重量%であり得る。
【0111】
デキサメタゾンを含む本開示の組成物は、既知の局所デキサメタゾン組成物ほど頻繁に、すなわち、組成物1滴を1日6回投与する必要はない。実際に、組成物の粘性によって、本開示の組成物の固体複合体は、薬剤のバイオアベイラビリティを増加させる公知の組成物と比較して、眼の表面上でより高い接触時間を示す。
【0112】
本開示はまた、点眼薬溶液としての本開示の水性組成物の使用を包含する。
【0113】
一実施形態では、本開示によるデキサメタゾンを含む水性組成物が特に、網膜中心静脈閉塞性疾患、または白内障手術後の炎症、緑内障、前眼房炎症、中心黄斑浮腫などの眼の炎症の治療に使用することができる。
【0114】
本開示はまた、眼の状態、特に前眼の状態または後眼の状態の治療のための医薬剤の作製のための、本開示の水性組成物の使用に関する。本開示の水性組成物は、網膜中心静脈閉塞性疾患、または白内障術後の炎症、緑内障、前眼房炎症、中心黄斑浮腫のような眼の炎症の治療のための医薬剤の製造に特に有効であり得る。
【0115】
本開示はまた、眼の状態、特に前眼の状態または後眼の状態を治療するための方法に関する。この方法はそれを必要な被験者に、好ましくはヒトに、本開示の治療的に有効な量の水溶液を投与することを含む。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」は、そのような用語が適用される疾患(disease)、障害(disorder)、もしく状態(condition)、またはそのような疾患、障害もしくは状態の1つ以上の症状(symptoms)もしくは症状(manifestations)の進行を逆転させる、軽減する、阻害する、またはそれらの可能性を予防する、もしくは減少させることを含む。予防とは、疾患、障害、状態、またはそのような症状(symptom)もしくは症状(manifestation)を引き起こさないこと、またはそのような重症度の悪化を引き起こさないことを指す。したがって、本開示の化合物は、疾患、障害、または障害の発生もしくは再発を予防または低減するために予防的に投与することができる。
【0117】
本明細書中で使用される場合、用語「治療的に有効な量」は、対象の生物学的または医学的応答を誘発する薬剤の量を指す。例えば、症状を改善し、状態を軽減し、疾患の進行を遅らせ(slow)または遅延させ(delay)、または疾患を予防する薬剤の量をいう。
【0118】
(デキサメタゾンによる点眼薬製剤の好ましい使用)
上記のような水性組成物およびデキサメタゾンとの点眼薬製剤は、好ましくは、
糖尿病性黄斑浮腫;
眼科手術後(典型的には白内障手術後)の炎症;
眼科手術後の嚢胞様黄斑浮腫;
急性前部ぶどう膜炎;
ドライアイ疾患と眼瞼炎;
移植片対宿主疾患(GVHD)、春季カタル、翼状片、霰粒腫、アレルギー性結膜炎など、他の急性または慢性の眼の炎症性疾患;
炎症を制御して拒絶反応を防ぐための角膜移植後;または、
眼の後部セグメントに影響を及ぼす非感染性ぶどう膜炎の治療
の治療または予防に使用される。
【0119】
このような使用の具体的な実施形態は、次のセクションにおいてより詳細に記載される。
【0120】
(糖尿病黄斑浮腫の治療方法)
本開示の点眼薬製剤は、このような障害に罹患している患者における治験において試験されており、その結果は実施例に示されている。特に、1.5%(w/v)デキサメサゾンの点眼薬製剤による糖尿病黄斑浮腫の治療に有効性が示されている。
【0121】
より具体的には、本明細書ではそれを必要とする対象における糖尿病性黄斑浮腫を治療する方法が提供される。前記方法は、前記対象の影響を受けた眼に局所投与することを含む。前記方法において、治療有効量の1.5%(w/v)デキサメタゾン(典型的には上記の好ましい製剤の1つ)を含む点眼薬製剤を、好ましくは1日に1、2、3、4、5、または6滴、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、または12週間の期間、投薬する。
【0122】
本方法の好ましい実施形態では、上記方法で使用するための点眼薬製剤が
デキサメタゾン1.5%;
γ-シクロデキストリン14%;
ポロキサマー2.5%;
安定剤0~0.2%、例えば0.1%のエデト酸二ナトリウム;
電解質0~1%、例えば塩化ナトリウム0.57%;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.6%、例えばコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%であり、典型的にはチオ硫酸ナトリウム;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0123】
本方法の好ましい実施形態では、上記方法で使用するための点眼薬製剤は、
デキサメタゾンの3%;
γ-シクロデキストリン20~25%、例えばγ-シクロデキストリン23%;
ポロキサマー2.5%;
安定剤0~0.2%、例えばエデト酸二ナトリウム0.1%;
電解質0~1%、例えば塩化ナトリウム0.57%;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.6%、例えばコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%、典型的にはチオ硫酸ナトリウム;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0124】
典型的には、SD-OCTによって評価される中心黄斑厚さ(CMT)が、DMEに罹患している患者において、12週間のそのような上記処置後に有意に減少され得る。例えば、ベースラインから測定される10%を超えるCMTについて、CMTは以下の実施例に記載されるように決定される。
【0125】
加えて、ピンホール視力は、DMEに罹患している患者において、上記治療の12週間後に、ベースラインから少なくとも3つのETDRS文字まで改善され得る。ピンホール視力は、以下の実施例に記載されるように決定され得る。
【0126】
本治療は、VEGF阻害剤治療(VEGFナイーブ患者)に対する応答がないかまたは不十分な応答であり、および/または糖尿病黄斑浮腫に対する侵襲的治療を支持しない患者に特に有効である。
【0127】
従って、上記糖尿病黄斑浮腫を治療する上記方法の特定の実施形態において、患者は、糖尿病黄斑浮腫による影響を受けた眼において網膜肥厚を増す、VEGFiナイーブ患者の中から選択される。
【0128】
典型的には、患者はヒト患者であり、より具体的には成人ヒト患者である。
【0129】
(眼科的手術後の炎症の治療方法)
眼科的手術後の炎症および/または疼痛に対する有効性が示されており、特に白内障手術後(術後白内障)に1.5%(w/v)デキサメサゾンの点眼薬製剤を投与した場合の。
【0130】
したがって、眼科手術後、特に手術を必要とする被験者における白内障手術後(手術後白内障)の炎症を治療する方法が本明細書で提供される。前記方法は、前記被験者の影響を受けた眼に対して局所投与することを含む。治療有効量の点眼薬製剤は、1.5%(w/v)または3%(w/v)デキサメタゾン(典型的には上記の好ましい製剤)を含み、好ましくは1日に1滴または2滴、例えば、少なくとも1~6週間の期間、投薬する。
【0131】
本方法の好ましい実施形態では、上記方法で使用するための点眼薬製剤が
デキサメタゾン1.5%;
γ-シクロデキストリン14%;
ポロキサマー2.5%;
安定剤0~0.2%、例えばエデト酸二ナトリウム0.1%;
電解質0~1%、例えば塩化ナトリウム0.57%;
デキサメタゾンの酸化を防止するための添加剤0%~0.6%、例えばコルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤0.1%~0.5%、または0.2%~0.4%、典型的にはチオ硫酸ナトリウム;および
水;
を含むか、またはこれらから本質的になり、
ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である。
【0132】
典型的には、眼科的手術後に疼痛および炎症に罹患した患者において、眼の疼痛および炎症は、15日間の上記処置後に有意に減少または消失させることができる。例えば、白内障手術後に、疼痛は以下の実施例に記載されるように、数値的な疼痛評価によって決定することができる。炎症は以下の実施例に記載されるように、前眼房細胞の細胞数およびフレアによって決定され得る。
【0133】
典型的には、患者はヒト患者であり、より具体的には成人ヒト患者である。
【0134】
(コルチコステロイドの酸化を防止するための添加剤の使用)
本開示はまた、コルチコステロイドを含む水性組成物のpHを安定化させるための、コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤の使用に関する。
〔実施例〕
<実施例1:水性デキサメタゾン点眼薬の製剤>
表1による組成物を有する水性デキサメタゾン点眼薬を調製した。
【0135】
【0136】
点眼薬は以下のように調製した:
パートA:エデト酸二ナトリウム、ポロキサマー407および塩化ナトリウムを80℃の純水に溶解した。デキサメタゾンを、滅菌直前に賦形剤混合物に添加した。
【0137】
パートB:γ-シクロデキストリンを別々に純水中に80℃で懸濁させた。
【0138】
パートAおよびパートBを121℃で15分間滅菌した。滅菌後、パートBをパートAに95℃で添加した。15分間攪拌した後、この溶液を急速に冷却して室温にし(20分以上)、濁った懸濁溶液を形成した。
【0139】
次いで、懸濁液をガラスバイアルまたは低密度ポリエチレン(LDPE)バイアルに充填し、密封した。
【0140】
ガラスバイアルおよびLDPEバイアル中の点眼薬のpHを、25℃での保存中に測定した。結果を表2に示す。
【0141】
【0142】
これらの結果は、点眼薬をLDPEバイアル中に保存した場合、pHは経時的に低下するが、ガラスバイアル中ではpHは安定したままであることを示す。
【0143】
<実施例2:チオ硫酸ナトリウム(STS)を含む水性デキサメタゾン点眼薬の製剤>
異なる%のチオ硫酸ナトリウムを含む点眼薬を調製した。点眼薬の組成を表3に示す。チオ硫酸ナトリウムを、表1に記載の水性点眼薬製剤に(実施例2A)、または水性点眼薬製剤の調製中に(実施例2B)、添加した。この場合において、実施例1に記載されたプロトコールに従って点眼薬を調製し、チオ硫酸ナトリウムを、エデト酸二ナトリウム、ポロキサマー407および塩化ナトリウムと共にパートAに添加した。
【0144】
【表3】
0.3%のチオ硫酸ナトリウム(0.471gのチオ硫酸ナトリウム五水和物に相当する)ならびに異なる%のデキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む点眼薬も調製した。点眼薬の組成を表4および5に示す。チオ硫酸ナトリウムを、水性点眼薬製剤の調製中に添加した:点眼薬を、実施例1に記載されたプロトコールに従って調製し、チオ硫酸ナトリウムを、エデト酸二ナトリウム、ポロキサマー407および塩化ナトリウムと共に、パートAに添加した。
【0145】
【0146】
【0147】
<実施例3:STSを含む水性デキサメタゾン点眼薬の安定性試験>
(1.酸素および熱によるストレス試験)
STSを含む点眼薬製剤のpHを、酸素および熱によるストレス試験後に測定した。実施例2Aおよび2Bの点眼薬を10mLのガラスバイアルに移し、そこで窒素または酸素でパージするか、または大気中で保存した。全てのバイアルをオートクレーブに入れ、0~4回の加熱サイクル(各加熱サイクル:121℃で20分間)を行った。各サイクル後に全てのバイアルについてpHを測定し、結果を表6(実施例2A)および7(実施例2B)に示す。
【0148】
【0149】
【0150】
これらの結果は抗酸化剤であるSTSを加えることにより、点眼薬の製剤のpH低下が防止されることを示している。したがって、点眼薬製剤はより安定である。
【0151】
(2.12ヶ月間にわたるpHの測定値)
LDPEバイアルに充填し、空気または酸素を含む密封されたアルミニウムパウチに入れた0.3% STSを含む点眼薬製剤(実施例2B)のpHも、ICHガイドライン(25℃/40%RHおよび40℃/NMT25%RH)に従って制御された温度および湿度で12ヶ月間測定した。結果を表8に示す。
【0152】
【0153】
これらの試験は抗酸化剤であるSTSを加えることにより、点眼薬製剤のpH低下が防止されることを示している。したがって、点眼薬製剤は、少なくとも6ヶ月間安定である。
【0154】
(実施例4:フェノール系抗酸化剤を含む水性デキサメタゾン点眼薬の製剤)
0.02%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)またはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、表1に記載の水性点眼薬製剤に添加した。
【0155】
0.005gのBHAを10μLのエタノールに溶解した後、製剤に加えて0.02%(w/v)の濃度に到達するまで加えた。0.005gのBHTを50μLのエタノールに溶解した後、製剤に加えて0.02%(w/v)とした。
【0156】
点眼薬を10mLのガラスバイアルに移し、そこで窒素または酸素のどちらかでパージするか、または大気中で保存した。全バイアルをオートクレーブに入れ、0~3回の加熱サイクル(各加熱サイクル:121℃、20分間)で運転した。各サイクル後の全バイアルのpHを測定し、その結果を表9に示す。
【0157】
【0158】
これらの結果は、フェノール系抗酸化剤を添加することにより、点眼薬製剤のpH低下が防止されることを示している。したがって、点眼薬製剤はより安定である。
【0159】
<実施例5:本開示の点眼薬製剤を用いた臨床試験(1.5%w/vデキサメタゾンを含む)>
略語
AC:前眼房
AE:有害事象
ANCOVA:共分散分析
BCVA:最高矯正視力
BID:1日2回(ラテン語の「bis in die」から)
CMT:中心黄斑厚さ
ETDRS:糖尿病網膜症の早期治療の研究
HbA1c:ヘモグロビンA1c
IOP:眼圧
LogMAR:解像度の最小角度の対数
QD:1日1回(ラテン語の「quaque die」から)
SD-OCT:スペクトラルドメイン光干渉断層計
TEAEs:治療下で発生した有害事象
USP:米国薬局方
<格付けおよび測定スケールおよび方法>
(前眼房細胞とフレア)
前眼房の細胞数は、≦10の細胞が認められた場合に観察された細胞の実際の数として記録する(白血球のみを数えるべきであり;赤血球および色素細胞は数えない)。(Jabs, D. A., R. B. Nussenblatt, J. T. Rosenbaum and G. Standardization of Uveitis Nomenclature Working (2005). “Standardization of uveitis nomenclature for reporting clinical data. Results of the First International Workshop.” Am J Ophthalmol 140(3): 509-516)
【0160】
【0161】
(眼痛)
眼痛は、0~10に格付けした数値的な疼痛評価尺度を用いることによって患者によって評価される(McCaffery, M. and A. Beebe (1994). “Pain: clinical manual for nursing practice.” Nurs Stand 9(11): 55)。
【0162】
試験官は、患者に以下の質問をする:
「0~10(0は痛みなし、10は最悪または耐えられない痛み)の尺度には、今回手術した*眼において感じている痛みまたは不快感を最もよく示す数字を記入してください。スケールの中央(約5)は、「中等度の疼痛」を記述するために使用することができます。整数スコアのみが許可されます。」
<治験1:糖尿病黄斑浮腫の治療におけるデキサメタゾンの水性医薬製剤(1.5%w/v)の使用>
これは、前向きな研究であり、多施設研究であり、無作為研究であり、二重盲検であり、並行群間比較研究であり、ビヒクル懸濁液-対照(controlled)試験であった。適格な被験者144例を2:1の割合で無作為に割り付けた。一方の群の被験者には、1.5%(w/v)のデキサメタゾンを含む眼科的マイクロ懸濁を1回1滴、1日3回(8時間ごと)、12週間点眼した(99例)。もう一方の群の被験者には、ビヒクル点眼薬を1日3回(8時間ごと)、12週間点眼した(45例)。主要有効性エンドポイントは、糖尿病網膜症試験(ETDRS)BCVAの早期治療における、ベースラインと比較した12週時の平均変化量であった。副次的エンドポイントは、スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)により評価した中央黄斑厚さ(CMT)の、ベースラインと比較した2、4、8、12、および16週目の平均変化量を含んでいた。安全性エンドポイントは、AEs、安全性臨床検査、治験薬に対する眼毒性を示す細隙灯顕微鏡検査パラメータ、眼圧、および散瞳倒像眼底検査を含んだ。
【0163】
<有効性の結果>
(最高矯正視力)
12週時のETDRSのBCVA文字スコアのベースラインからの平均変化量は、本開示の点眼薬製剤を用いた治験薬投与群の方がビヒクル群よりも高く、2.9(70%信頼区間:2.13、3.65)対1.7(70%信頼区間:0.66、2.72)であった。ANCOVAの結果は対立仮説を証明し、本開示に記載のデキサメタゾンを含む点眼薬製剤の、ビヒクル点眼薬に対する0.15のαでの優位性を確証した。
【0164】
(中心黄斑厚さ)
本開示の点眼薬製剤を用いた試験群では、ビヒクル群と比較して、ベースラインからの平均CMTのより大きな減少が、12週目まで観察された。
【0165】
第2週目から第12週目にかけて、試験された眼のCMTの低下に統計学的にきわめて有意なLS平均の、試験のベースラインからの差が観察され、試験群の方が良好であった;第12週目のLS平均差;-36.77(70%CI:-53.58、-19.95)、p値=0.01。
【0166】
また、多重補完法を用いて補正したベースラインの共分散分析の結果からも、第12週目のCMT改善について、ビヒクル群に対する点眼薬製剤の優位性が示された(αは0.15)。
【0167】
(安全性の結果)
治療下で発現したAEsは、デキサメタゾン眼科的マイクロ懸濁液を点眼された群の被験者の方が、ビヒクル群の被験者よりも高い割合で報告された(70例[70.0%]の被験者が134件のTEAEを発症したのに対し、24例[53.3%]の被験者が50件のTEAEを発症した)。
【0168】
重篤なTEAEは、デキサメタゾン眼科的マイクロ懸濁液の群の被験者の方が、ビヒクル群の被験者よりも高い割合で報告された(11例[11.1%]の被験者が14件の重篤なTEAEを発症したのに対し、1例[2.2%]の被験者が1件の重篤なTEAEを発症した)。両治療群におけるこれらの重篤なTEAEは、治験薬とは関係ないものであった。
【0169】
<治験2:白内障手術後の疼痛および炎症の治療におけるデキサメタゾンの水性医薬製剤(1.5%w/v)の使用>
本研究は多施設研究であり、無作為研究であり、二重盲検であり、プラセボ(ビヒクル)対照研究であった。本研究は、本開示(1.5%w/vデキサメタゾン)で開示されている点眼薬製剤の有効性および安全性を、白内障手術後の炎症および疼痛の治療においてプラセボと比較して評価するように設計された。
【0170】
被験者を1:1:1で無作為に割り付け、デキサメタゾンQD(1日1回)およびプラセボQD、BID(1日2回)、またはプラセボBIDの点眼薬製剤を点眼した。被験者には、手術した眼の術後1日目から開始し、BIDで14日間、試験した眼に1滴を投与した。階層的な主要有効性測定は、1)第6回来院時(第15日)に前眼房細胞が認められないこと(すなわち、「0」のスコア)、2)第4回来院時(第4日)に疼痛が認められないこと(すなわち、「0」のスコア)であった。安全測定には、ETDRSチャートで測定したピンホールVA(他の補正なし)のベースラインからの変化、IOPのベースラインからの変化、および有害事象(AE)率が含まれた。
【0171】
(有効性の結果)
第6回来院時(第15日)では、前眼房細胞欠損の数はQD(AC細胞欠損を有する被験者は26[51.0%]、p=0.0009)およびBID(AC細胞欠損を有する被験者は34[66.7%]、p<0.0001)において、プラセボ(AC細胞を欠損した被験者は10[19.6%])と比較して、有意に多かった。第4回来院時において、疼痛が認められなかった被験者の数は、QD(37被験者[72.5%]、p=0.0049)およびBID(32被験者[62.7%]、p=0.0738)において、プラセボ(23被験者[45.1%])と比較して、有意に多かった。
【0172】
総合すると、主要有効性エンドポイントに到達し、結果は、QDまたはBIDのいずれの投与でも、前眼房細胞を有する対象の数および白内障手術後の疼痛を有する対象の数の減少において、プラセボよりも有意に優れていることが示された。
【0173】
(安全性の結果)
全体として、両試験群と比較してプラセボ群では、眼のTEAEを含むTEAEの割合が高かった。結果は、デキサメサゾンを含む点眼薬製剤は安全であり、耐容性も良好であることが示された。
【0174】
<実施例6:代替抗酸化剤の使用のための選別研究>
本研究を目的として、異なる量の抗酸化剤を含む一組の試験製剤を作製した。試験製剤は実施例1の表1に記載されるように、表XXに列挙されるような特定の抗酸化剤を製剤に添加することによって調製された。
【0175】
抗酸化剤の濃度は、0.3%w/vチオ硫酸ナトリウムに対して等モルとして固定した。
【0176】
調製した試験製剤をpH5(4.9~5.1)に調製し、周辺空気(酸素挿入なし)で2回オートクレーブ処理した。オートクレーブの2回目のサイクルの後、サンプルのpHを測定した。使用した抗酸化剤、それらの濃度およびpH測定の結果についての情報を表11に示す。
【0177】
【0178】
考慮される抗酸化剤は、製剤を安定化させるそれらの有効性に基づいていくつかの群に分けることができる(表12参照)。
【0179】
【0180】
A群、B群、C群の抗酸化剤は製剤のpH安定性にプラスの効果を示したが、D群の代表物は役に立たなかった。
【0181】
<試験結果の考察>
得られた結果の解釈を容易にするために、記載された試験のストレス条件は、点眼薬製剤のための現在実行中の長期安定性プログラムの条件に変換されるべきである。この目的のために、試験時からガラス容器中に保存されたストック製剤のpH低下の値を、抗酸化剤(STS)を含まないLDPEプラスチック容器中で、25℃で保存されたクリニカルバッチのpH低下プロファイルと比較した。
【0182】
発明者らは、異なる熱ストレス試験の結果が、長期間保存中のOCS-01製剤のpH低下を阻害するために使用され得る代替の抗酸化剤を明らかにすることを見出した。
【0183】
L-メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム、DL-酒石酸、α-モノチオグリセロール、ラウリル没食子酸塩、乳酸およびtert-ブチルヒドロキノンなどの抗酸化剤は、25℃での少なくとも1年間の保存期間中において、製剤を安定化することができる。
【0184】
Covitol(登録商標) 1100 EU、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびチオ硫酸ナトリウムは、25℃での2年間までの保存において、製剤のための好適な抗酸化剤として機能することができる。
【0185】
上記で言及された抗酸化剤が依然として有効である最大保存時間は、研究されておらず、上記で結論付けられた保存時間を超えることができる。
【0186】
結論として、スクリーニングされた抗酸化剤の中で、チオ硫酸ナトリウムはデキサメタゾン1.5%眼科用懸濁液のpHを安定化するための最良の抗酸化剤であった。
【0187】
さらなる抗酸化剤は、デキサメタゾン1.5%眼科用懸濁液について安定化プロファイルを示す。これらはSTSよりは、pHを安定化させるための有効性が低いかもしれないが、プラスチック/LDPE容器中において25℃で保存した場合に2年間の安定性を得ることができるかもしれない。これらの抗酸化剤には、L-メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム、DL-酒石酸、α-モノチオグリセロール、ラウリル没食子酸塩、乳酸およびtert-ブチルヒドロキノン、Covitol(登録商標) 1100 EU(d-α-トコフェリル酢酸)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含む水性組成物のpHを安定化させるための方法であって、
前記方法は、前記薬剤の酸化を防止する添加剤の添加を含む、
方法。
【請求項2】
前記水性組成物は、シクロデキストリ
ンを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性組成物は、ガンマ-シクロデキストリンを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤は、コルチコステロイドである、
請求項1
~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤は、デキサメタゾンである、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤およびそれらの混合物から選択される、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、フェノール系抗酸化剤、水溶性天然抗酸化剤または食品抗酸化剤から選択される、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒ
ドロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体からなる群より選択される、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸
)、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒ
ドロキシアニソールからなる群より選択される、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤の酸化を防止する前記添加剤は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で
、前記水性組成物に添加される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
薬剤を含む前記水性組成物のpHは、4~8で
ある、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
薬剤を含む前記水性組成物のpHは、4.5~6である、
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コルチコステロイド、シクロデキストリン
、および前記コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤を含む水性組成物であって、
前記添加剤は、0.15%(w/v)~0.6%(w/v)の濃度で
、前記組成物中に存在する、
組成物。
【請求項16】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾン、典型的には1.5%(w.v)デキサメタゾンである、
請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
前記コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤は、抗酸化剤、脱酸素剤およびそれらの混合物から選択される、
請求項
15または16に記載の組成物。
【請求項18】
コルチコステロイドの酸化を防止する前記添加剤は、フェノール系抗酸化剤、水溶性天然抗酸化剤または食品抗酸化剤から選択される、
請求項
15~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、α-モノチオグリセロール、ブチル化ヒ
ドロキシアニソール、ラウリル没食子酸塩、乳酸、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの塩または誘導体からなる群より選択される、
請求項
15~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン(典型的にはL-メチオニン)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム三塩基性無水物)、リンゴ酸(典型的にはDL-リンゴ酸
)、アスコルビン酸ナトリウム(例えば、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸(典型的にはDL-酒石酸)、α-モノチオグリセロール、およびブチル化ヒ
ドロキシアニソールからなる群より選択される、
請求項
15~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項
15~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウム、メチオニン、および3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群より選択される、
請求項
15~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
酸化を防止する前記添加剤は、チオ硫酸ナトリウムである、
請求項
15~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物のpHは、4~8で
ある、
請求項
15~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物のpHは、4.5~6である、
請求項15~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
マイクロ懸濁液であり
、1μm~10μmの直径を有する微粒子中に80%~95%の前記コルチコステロイドを含む、
請求項
15~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
眼の状
態の治療において使用するための、
請求項
15~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
後眼の状態の治療において使用するための、
請求項15~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、
網膜中心静脈閉塞性疾患または眼の炎症の治療において使用するための、
請求項
15~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、
糖尿病性黄斑浮腫;または、
眼科手術後、典型的には白内障手術後の炎症;の治療において使用される、
請求項
15~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
コルチコステロイドを含む水性組成
物のpHを安定化させるため
に、コルチコステロイドの酸化を防止する添加剤
を使用
する方法。
【国際調査報告】