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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】新規アレルゲン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20220829BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20220829BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/35 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/36 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220829BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20220829BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C12N15/29 ZNA
C07K14/415
C12N15/63 Z
C07K17/00
C12M1/34 F
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/35
A61K39/36
A61P37/08
G01N33/531 A
G01N33/53 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500515
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020068670
(87)【国際公開番号】W WO2021004885
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1950853-0
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500139981
【氏名又は名称】ファディア・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】Phadia AB
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】リドホルム ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】マットソン ラース
(72)【発明者】
【氏名】エーレンベルク アンジェリカ
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】エストリング ヨナス
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB17
4B029CC03
4B029CC08
4B029CC13
4B029FA12
4B065AA77X
4B065AA89Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA02
4C085BB03
4C085BB04
4C085BB11
4C085CC32
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA60
4H045CA30
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA50
4H045FA71
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA15
4H045GA22
4H045GA23
4H045GA25
4H045GA26
4H045HA04
(57)【要約】
本発明は、アレルゲンの分野、より詳細には、タンパク質Pru p7によって媒介される重度のモモアレルギーに対する一次感作物質であることが示されているヒノキ科種からの新規単離アレルゲンに関する。アレルゲンは、モモにおけるPru P7と相同であり、タンパク質はジベレリン制御性タンパク質(GRP)に属する。新規アレルゲンはまた、ヒノキ科ファミリーの他の種の間で高い配列相同性を共有し、したがって、ヒノキ科ファミリーの2つの他の種にも追加の新規アレルゲンが提供される。新規アレルゲンは、1型ヒノキ科花粉アレルギーおよびヒノキ科花粉関連食物アレルギーのインビトロ診断、治療、ならびに/または予防において使用が見出される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号4に従うアミノ酸配列を含むか、または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントが、少なくとも85%の配列番号4との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質。
【請求項2】
前記配列番号4との配列同一性が、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である、請求項1に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントが、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
〔配列表1〕
ここで、位置Xのうちの最大4つには、表3で定義される任意のアミノ酸が含まれ、
残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、配列番号4の対応する位置のアミノ酸と同一である、請求項1または2に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントが、配列番号9に従う以下のアミノ酸配列を含み、
〔配列表2〕
ここで、位置Xが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含む、請求項1または2に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項5】
配列番号9の前記位置Xのうちの最大4つが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含み、
残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、もしくはQのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項6】
前記残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、
位置2におけるXが、QまたはHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、AまたはLのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、KまたはEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、AまたはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、VまたはSのうちのいずれか1つから選択され、および
位置52におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項5に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項7】
位置Xにおいて、前記アミノ酸が、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項8】
位置Xにおいて、前記アミノ酸が、
位置2におけるXが、QまたはHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、AまたはLのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、KまたはEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、AまたはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、VまたはSのうちのいずれか1つから選択され、および
位置52におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項7に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項9】
配列番号9の前記位置Xのうち最大4つが、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択され、
残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、配列番号4の対応する位置のアミノ酸と同一である、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項10】
前記位置Xのうち最大4つにおいて、前記アミノ酸が、
位置2におけるXが、QまたはHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、AまたはLのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、KまたはEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、AまたはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、VまたはSのうちのいずれか1つから選択され、および
位置52におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項9に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項11】
前記タンパク質が、配列番号4に従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項12】
前記タンパク質が、配列番号5に従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項13】
前記タンパク質が、配列番号6に従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質が、配列番号8に従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質、断片またはバリアントが、組換え的に産生され、任意に、前記タンパク質が、構造的に修飾され、非天然起源タンパク質をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項16】
先行請求項のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアントをコードする、単離核酸分子。
【請求項17】
前記核酸分子が、配列番号10によってコードされる、請求項16に記載の単離核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞。
【請求項20】
アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアントを追加するステップを含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって得られる、アレルゲン組成物。
【請求項22】
1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアントの使用。
【請求項23】
前記1型アレルギーが、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされる、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記1型アレルギーが、食物に関連する、例えば、柑橘類果物またはモモなどの果物に関連する、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記1型アレルギーが、花粉食物に関連する、例えば、花粉食物関連症候群(PFAS)に関連する、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための方法であって、
1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアントと接触させるステップと、
前記試料において、前記タンパク質、断片またはバリアントと特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体などの存在を決定するステップと、を含み、
前記タンパク質、断片またはバリアントと特異的に結合する前記試料中の抗体の存在が、前記対象における1型アレルギーに関して有益である、方法。
【請求項27】
キットオブパーツであって、可溶性または固体支持体に固定化された、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアントを含み、前記キットが、任意に、検出試薬および/または使用説明書をさらに含む、キットオブパーツ。
【請求項28】
1型アレルギーの治療または予防に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアント。
【請求項29】
前記1型アレルギーが、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされ、食物に関連する、例えば、柑橘類果物またはモモなどの果物に関連し、および/または花粉食物関連症候群(PFAS)に関連する、請求項28に記載の使用のための単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアント。
【請求項30】
請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアント、ならびに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
1型アレルギーの治療または予防のための方法であって、薬学的有効量の、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片またはバリアント、請求項21に記載のアレルゲン組成物、あるいは請求項30に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記1型アレルギーが、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされる1型アレルギーであり、食物に関連する、例えば、柑橘類果物またはモモなどの果物に関連し、および/または花粉食物関連症候群(PFAS)に関連する、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギーの分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒノキ科ファミリーに属する種の花粉からの新規アレルゲンの特定、ならびにかかる花粉に対するアレルギーおよび特に関連する食物アレルギーの診断および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
工業先進国における人口のおよそ20%が、様々な環境生物物質または食物からの抗原に曝露されると、過敏性(アレルギー)となる。即時型および/または遅延型の過敏症を誘導する抗原は、主にタンパク質または糖タンパク質であり、アレルゲンと呼ばれ[1]、花粉、ヒョウヒダニ、動物の皮屑、昆虫の毒液、植物または動物由来食物など、様々な源に見られる。アレルギー性疾患の基本的な免疫学的機構は、一般に感作と呼ばれる、かかるアレルゲンに対するアレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体の形成である。IgE抗体は、特定の高親和性IgE受容体であるFcεRIを介して、好塩基球、肥満細胞、樹状細胞と結合する。アレルゲンに曝露されると、細胞表面上のアレルゲン特異的IgE抗体は、各アレルゲン分子の少なくとも2つの異なるエピトープの認識を通して架橋され、これらの細胞からヒスタミンおよびロイコトリエンなどの炎症性媒介物が放出される。その結果、組織炎症およびアレルギーの生理学的症状が生じる[2]。
【0003】
臨床診療では、医師によるアレルギーの診断は通常、同じアレルゲンに対する感作の証拠と組み合わせた、アレルゲンに対する過敏性の納得できる病歴に基づいている。アレルゲン感作の診断検査手順は、患者の血液試料中のアレルゲン特異的IgE抗体を検出するためのインビトロイムノアッセイ、または患者の皮膚へのアレルゲン抽出物の局所適用によって実行される皮膚プリック検査(SPT)のいずれかを利用できる[3]。どちらの様式でも、アレルゲン源からのタンパク質抽出物を含むアレルゲン試薬が従来使用されている。かかる検査は高い感受性、それによる高い陰性の予測値を有し得るが、天然アレルゲン抽出物における成分に対する感作は、必ずしもアレルギーの臨床症状が発生することを意味するわけではない。検出可能な感作と臨床的アレルギーとの間のかかる解離は、部分的には、天然抽出物に存在する異なるアレルゲンタンパク質の不等な有意性によるものである。アレルゲン源における特定のタンパク質に対する感作が他のものよりも臨床疾患と密接に関連しているという事実は、診断検査に純粋な形態でかかる特定のタンパク質を利用することにより、改善された臨床的有用性を伴う診断検査の開発へ向かう手段を開いた。個々のアレルゲンタンパク質に対するIgE抗体についてのインビトロ診断検査は、多くの場合成分分解診断(CRD)と呼ばれる[4]。
【0004】
アレルゲン抽出物を使用する従来のIgE分析と比較して、CRDにはいくつかの明確な利点があることが現在広く認識されている。CRDの1つの重要な特徴は、アレルゲン源に対する一次感作と交差反応性による感作を区別する能力であり、前者はより重度の症状に、後者は軽度の症状または臨床的耐性に関連する。食物アレルギーでは、一次感作は通常、豊富で多くの場合安定したタンパク質に指向する。結果として、問題の食物を少量でも誤って摂取すると、相当量のかかる食物タンパク質に曝露され、感作された個体において高いリスクの重度の反応をもたらすであろう。対照的に、花粉アレルゲンと相同で交差反応する食物タンパク質は、通常、少量しか存在しないため、重度の症状を引き起こすことはめったにない[5、6]。関連する食物アレルゲン成分に対するIgE抗体の分析は、小麦、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツに対するアレルギーに例示されるように、診断値および臨床的有用性を有意に増加させることが示されている[7~13]。CRDを使用することにより、重度で生命を脅かす可能性のあるアレルギー反応のリスクが高い患者を特定し、食物への曝露を厳密に回避し、緊急治療のためにアドレナリン自動注入器を常に携帯するように指示することができる一方で、かかる重篤な反応のリスクがない患者は、不当な不安から解放され、改善された生活の質から恩恵を受けることができる。同様に、呼吸器アレルギーでは、一次感作と交差反応性感作とを区別するCRDの能力により、重要性の低い交差反応性感作ではなく、アレルギー症状の真の原因を対象としたアレルゲン免疫療法治療(AIT)の最適な選択が容易になる[14]。
【0005】
精製された天然または組換えアレルゲン成分の別の用途は、天然アレルゲン抽出物中の対応するタンパク質の不均衡または不足に対抗するためのスパイク試薬としてのそれらの使用である。これは、アレルゲンマイクロアレイまたは診療所での検査など、小型化されたまたは実験室以外のイムノアッセイで特に重要となり得、あまり好ましくないアッセイ条件、抗体結合アレルゲン試薬の能力の低下、および効力が制限された天然アレルゲン抽出物の組み合わせは、不十分な診断感度を引き起こし得る。
【0006】
2016年、欧州アレルギー学会(EAACI)は、「EAACI分子アレルギー学-ユーザーガイド」を発表した[1]。これは、より信頼性の高い診断のために、アレルギー患者をアレルゲン成分で検査することの重要性を認識する上で画期的な出来事であった。このガイドを使用することにより、アレルギー専門医および他の医療専門家は、交差反応性および特定の感作パターンに関連するリスクのレベルをよりよく理解し、それによって適切なアレルゲン回避戦略を含む、患者のより適切な管理を提供することができる。
【0007】
アレルギーの最も一般的な治療法は、一時的に症状を緩和するように作用するが治癒的ではない薬理学的(例えば、抗ヒスタミン薬)である。アレルギーの長期的および治癒的な治療は、患者の免疫学的脱感作を引き起こすアレルゲン免疫療法(AIT)で達成することができる。治療は、皮下または舌下のいずれかで、原因アレルゲンの抽出物の用量を、非常に低いレベルから100~1000倍高い維持用量まで徐々に増加させる用量の投与を含む。この制御され、徐々に増加するアレルゲン曝露は、時に免疫系の再教育とも称される、アレルゲンタンパク質に対する防御免疫応答の特異的な活性化を引き起こす。免疫療法の確立された形態の可能なさらなる発展は、天然のアレルゲン抽出物の代わりに、1つまたはいくつかの精製アレルゲンタンパク質の使用である。このような免疫療法の試験は、イネ科草本[15、16]およびカバノキ[17]の花粉アレルギーに対して成功裏に実施されており、ペット動物に対するアレルギーの治療にも提案されている[4、18]。
【0008】
AITの疾患修飾メカニズムは完全には理解されていないが、それが主にIgG4サブクラスからなるアレルゲン特異的IgG応答を誘導することが周知である。これらのIgG抗体は、アレルゲンを遮断することによって直接的に、またはFc受容体を介して作用することによって間接的にIgE抗体の効果を調節し得る[19~21]。IgG抗体応答は免疫療法の成功の機構の一部であると考えられているため[20、21]、アレルゲン特異的IgGの分析は、治療の関連する免疫学的効果をモニタリングする方法であり得る。結論として、アレルゲン特異的IgGレベルの測定は、環境曝露または免疫療法治療を通したアレルゲンに対する自然または誘導耐性を反映している可能性があり、IgE測定と組み合わせて、アレルギーにおける診断検査の臨床的関連性を高める可能性がある。
【0009】
花粉アレルゲンは工業先進国における呼吸器アレルギーの主な原因であり、おそらく気候変動の結果として、花粉症は過去数十年の間に着実に増加している[22]。花粉症は、季節性鼻炎、結膜炎、喘息などの様々な症状を示す。花粉粒は、イネ科草本、雑草、樹木の花から放出され、風または昆虫のいずれかによって飛散される。樹木からのほとんどのアレルギー性花粉は風で運ばれ、ブナ目、シソ目、ヤマモガシ目、およびマツ目に属する種によって産生される。マツ目は裸子植物であり、別々に雄花および雌花を有することによって特徴づけされる。アレルギーに関連するマツ目種は主にヒノキ科ファミリーに属し、主に比較的温暖な気候で見られる[23]。地中海地域では、Cupressus sempervirens(地中海またはイタリアのヒノキ)が冬の花粉症の重要な原因であり、ヒノキ花粉に対する感作の有病率は過去数十年で劇的に増加している。特定の地域では、感作率は、アトピー性個体の間で42%高く達し得る[24、25]。地中海ヒノキはアリゾナヒノキ(Cupressus arizonica)と密接に関連しており、北米および日本でそれぞれ見られるマウンテンシダ(Juniperus ashei、同義名J.sabinoides)、二ホンヒノキ(Chamaecyparis obtusa)、および二ホンシダ(Cryptomeria japonica)とは若干離れている。これらの種の主要なアレルゲンであるCup s 1、Cup a 1、Jun a 1、Cha o 1、およびCry j 1はそれぞれ、90%を超えるヒノキ科花粉アレルギー患者を感作している。これらのアレルゲンはすべて糖タンパク質であり、40~50kDaの分子量を有し、ペクチン酸リアーゼタンパク質ファミリーに属する。アレルゲンは交差反応性が高く、70%~95%の配列同一性を共有する[26、27]。2群アレルゲン(Cup s 2、Cup a 2、Jun a 2、Cha o 2、およびCry j 2)はポリガラクツロナーゼファミリーに属し、71%~97%の配列同一性を示す。感作率はヒノキ科花粉アレルギー患者間で80%高くなる可能性があり、したがってそれを主要なアレルゲンと見なすこともできる[24]。3群および4群のヒノキ科花粉アレルゲンは、それぞれタウマチン様タンパク質ファミリーおよびポルカルシンタンパク質ファミリーに属し、少数アレルゲンとして記載されている[27、28]。これらの4つの群を超えて、ヒノキ科花粉において約15個の他のアレルゲンタンパク質が報告されている。
【0010】
花粉に対する感作は、多くの場合相同な花粉および食物タンパク質の間の交差反応性のために、異なる植物性食物に対するアレルギーと関連している。かかる交差反応性は、花粉および植物由来食物中に存在する相同タンパク質間の構造的類似性の結果として生じる。関連するタンパク質のかかる対間のアミノ酸配列同一性および三次元構造類似性のレベルが高いほど、交差反応性の確率および強度が高くなる。互いに60%以上の配列同一性を有するタンパク質間で広範な交差反応性が期待できるが、関連性の低いタンパク質間で生じ得る[29]。
【0011】
花粉関連食物アレルギーは、主にまたは完全に花粉感作によって駆動されると考えられている。これは通常、口腔症状を引き起こすため、口腔アレルギー症候群(OAS)と称される。花粉関連食物アレルギーの最も周知である広く見られる例は、カバノキ花粉によって引き起こされ、様々な果物および野菜におけるいわゆるPR-10タンパク質Bet v 1および相同タンパク質が関係している[30]。別の例は、任意の花粉感作によって駆動され得るプロフィリン媒介性食物アレルギーであり、これは頻度が低く、メロン、バナナ、および他の果物などの食物に対してアレルギーを引き起こし得る[31、32]。
【0012】
さらに別の例では、ヒノキ科花粉感作とモモアレルギーとの関連を示すいくつかの患者の症例が報告された[33]。その調査では、45kDaのモモアレルゲンが、免疫ブロット阻害実験によって交差反応性の原因の可能性があると特定された。最近では、Pru p 7またはpeamacleinと称された新規モモアレルゲンが、南イタリアのモモアレルギー患者の主要なアレルゲンとして報告された[34]。Pru p 7は、日本において果物アレルギーの重要な原因としても報告されているジベレリン制御性タンパク質(GRP)ファミリーに属する7kDaのシステインに富むタンパク質である[35]。フランス南部では、Pru p 7感作を特徴とする重度のモモアレルギーとヒノキ科花粉症との間に有意な関連が観察されている[36]。阻害実験を行うことにより、ヒノキ花粉抽出物は、Pru p 7とのIgE結合を凌駕することが見出され、ヒノキ花粉におけるPru p 7と交差反応するタンパク質の存在を示している。ヒノキ花粉由来のBP14と称される14kDaのタンパク質は、GRPファミリーの別のメンバーであるジャガイモタンパク質snakin-1[37]と配列相同性のある13アミノ酸残基のペプチドを含むことが報告されている。この配列伸展は、13残基のBP14配列を使用したBlast検索によって証明されるように、40を超える植物種からのGRPで同一である高度に保存されたGRPセグメントを含むすが、ヒノキ科種からの他の利用可能な配列は含まれない。したがって、報告されたBP14ペプチドには、ヒノキ科花粉GRPに特徴的および区別する配列情報が含まれておらず、したがって、かかるタンパク質の特定の特徴に向けたガイダンスは提供されていない。これまでのところ、Pru p 7に対応するヒノキ科花粉タンパク質は特定および特性づけされていない。
【0013】
したがって、1型アレルギー、特に食物中のタンパク質との交差反応性を示し、および感作を誘発し、食物アレルギー反応を引き起こし得るアレルゲンの診断、予後、治療および/または予防に使用することができる、さらなるヒノキ科花粉アレルゲンを特定するための当技術分野における必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0014】
上記の必要性は現在満たされているか、少なくともヒノキ科花粉の新規に単離された7kDaアレルゲン(本明細書ではCup s GRPとも称される)の特定および提供によって軽減されている。アレルゲンは、モモにおけるPru p 7と相同であり、ジベレリン制御性タンパク質(GRP)ファミリーに属する7kDaの塩基性システインリッチタンパク質であり、Pru p 7によって媒介される重度のモモアレルギーの主要な感作物質である可能性が高いことが示されている。かかるアレルゲンの発見は、1型アレルギー診断の分野での大きな必要性、ならびに果物および潜在的な他の植物性食物に対して重度のアレルギーを発症するリスクのあるヒノキ科花粉アレルギーの個体の特定に対応する。
【0015】
本明細書で特定されたアレルゲンであるCup s GRPは、ヒノキ科ファミリーからの他の種の対応する花粉タンパク質と高い配列相同性を共有する。したがって、本明細書は、ヒノキ科ファミリーからの3つの種におけるCup s GRPを含むアレルゲンの特定についても記載する。Cupressus sempervirens、Cryptomeria japonica、およびJuniperus asheiから特定されたアレルゲンは、本明細書では、それぞれ、Cup s GRP、Cry j GRP、およびJun a GRPと称される。3つの花粉GRPアレルゲンは、Cup s 7、Jun a 7、およびCry j 7とも称される。
【0016】
本明細書ではまた、それぞれCup s GRPaおよびCup s GRPbと称されるCup s GRPの2つのタンパク質アイソフォームが示される。
【0017】
したがって、本明細書の第1の態様では、単離アレルゲンタンパク質(すなわち、本明細書で特定されたアレルゲン(複数可))であって、該タンパク質が、配列番号4に従うアミノ酸配列(すなわち、Cup s GRPa)を含むか、または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントが、少なくとも85%の配列番号4との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質が提供される。本明細書では、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列番号4との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントも提供される。
【0018】
本明細書では、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号8のいずれか1つに従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる単離アレルゲンタンパク質も提供される(すなわち、それぞれCup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRP)。本明細書では、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性のそれぞれ配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号8のいずれか1つとの配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントも提供される。
【0019】
さらなる態様では、本明細書に示されるそれぞれの単離タンパク質をコードする単離核酸分子が提供される。かかる単離核酸分子は、IUPAC多義性コードに従う同義コドンおよびバリアントを含む花粉GRPの縮重DNA配列を提示する配列番号10に従う配列によって表される。
【0020】
さらなる態様では、本明細書の他の場所に開示される単離核酸配列を含む単離核酸分子を含む、発現ベクター(本明細書では単にベクターとも称される)が提供される。
【0021】
さらに別の態様では、本明細書に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞が提供される。該宿主細胞は、発現ベクターによってコードされる目的のタンパク質を発現させるために使用される。
【0022】
さらに別の態様では、アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、本明細書に記載の単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアントを追加するステップを含む、方法が提供される。
【0023】
さらに別の態様では、本明細書に記載のアレルゲン組成物を産生するための方法によって得られるアレルゲン組成物であって、該アレルゲン組成物が、本明細書の他の場所でさらに定義される、単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアントを含む、アレルゲン組成物が提供される。
【0024】
本明細書に記載の単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアント、ならびにアレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含むアレルゲン組成物も提供される。
【0025】
さらに別の態様では、1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための、本明細書に開示される単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアントの使用が提供される。
【0026】
さらに別の態様では、本明細書では、1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための方法であって、1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、本明細書に記載の単離アレルゲンタンパク質、またはその断片もしくはバリアントと接触させるステップと、該試料において、該タンパク質、断片もしくはバリアント、またはその機能的に同等の断片と特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体などの存在を決定するステップと、を含み、該タンパク質、断片またはバリアントと特異的に結合する該試料中の抗体またはその機能的に同等の断片の存在が、該対象における1型アレルギーに関して有益である、方法が提供される。
【0027】
さらに別の態様では、キットオブパーツであって、可溶性または固体支持体に固定化された、本明細書に記載の単離アレルゲンタンパク質、または断片もしくはバリアントを含み、該キットが、任意に、検出試薬および/または使用説明書をさらに含む、キットオブパーツが提供される。
【0028】
別の態様では、1型アレルギーの治療または予防に使用するための、本明細書に開示される単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアントが提供される。
【0029】
さらに別の態様では、本明細書に開示される単離アレルゲンタンパク質、またはその断片もしくはバリアント、ならびに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む、薬学的組成物が提供される。
【0030】
さらに別の態様では、1型アレルギーの治療または予防のための方法であって、薬学的有効量の、本明細書で提供される単離アレルゲンタンパク質、またはその断片もしくはバリアント、あるいはアレルゲン組成物、あるいは薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】カチオン交換クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第1の精製ステップを示す。280nm(A280)での吸光度および導電率は、それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、さらに精製するためにプールされた画分を示す。
図2】サイズ排除クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第2の精製ステップを示す。280nm(A280)での吸光度および導電率は、それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、さらに精製するためにプールされた画分を示す。
図3】抗Pru p 3モノクローナル抗体を使用する親和性免疫吸着クロマトグラフィを含む天然Pru p 7の第3の精製ステップを示す。280nm(A280)での吸光度および導電率は、それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、さらに精製するために収集した非結合の物質を示す。
図4】逆相クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第4の精製ステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度およびアセトニトリルのパーセンテージを伴うクロマトグラムはそれぞれ実線および斜線で示す。矢印はSDS-PAGEで分析した画分を示し、括弧はさらなる分析のためにプールされた画分を示す。b)画分のSDS-PAGEは図4aに示す。レーン7~9には、図4aの括弧で示した画分が含まれる。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。
図5】カチオン交換クロマトグラフィによる組み換えPru p 7の第1の精製ステップを示す。280nm(A280)での吸光度および導電率は、それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、さらに精製するためにプールされた画分を示す。
図6】サイズ排除クロマトグラフィによる組換えPru p 7の第2の精製ステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度および導電率を伴うクロマトグラムはそれぞれ実線および斜線で示す。括弧はさらなる分析のためにプールされた画分を示す。b)サイズ排除クロマトグラフィステップからのプールの還元(レーン1)および非還元(レーン2)試料のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。
図7】ウサギ抗Pru p 7 IgGの異なる抗血清希釈でのa)組換えPru p 7、およびb)Cupressus sempervirens花粉抽出物との結合を示す。同じウサギからの免疫前血清を陰性対照として使用した。
図8】サイズ排除クロマトグラフィによるCupressus sempervirens花粉抽出物からのnCup s GRPの精製の第1のステップを示す。214nm(A214)での吸光度および導電率は、それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、さらに精製するためにプールされた画分を示す。
図9】イオン交換クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第2のステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度および導電率を伴うクロマトグラムは それぞれ実線および点線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示す。括弧はさらなる精製のためにプールされた画分を示す。b)画分と結合するanti-Pru p 7 IgGのレベルは図9aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEは図9aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。
図10】サイズ排除クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第3のステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度を伴うクロマトグラムは 実線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示し、括弧はさらなる精製のためにプールされた画分を示す。b)画分と結合するanti-Pru p 7 IgGのレベルは図10aに示す。c)画分のSDS-PAGEは図10aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。d)画分のプールのSDS-PAGEは、図10a(nCup s GRP、レーン1)およびrPru p 7(レーン2)に示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。
図11】MS/MSによるnCup s GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079のヌクレオチド配列(Cryptomeria japonicaの雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。中断された仮想上オープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)および終止コドン(TGAおよびTAG)には下線が引かれている。b)4つのペプチドの整列(Pep 1~4)は、BY878079によって仮想的にコードされたアミノ酸配列を使用して、MS/MS分析によって確認した。予測されるシグナルペプチドには下線が引かれ、終止コドンはアスタリスクで示した。c)アミノ酸を伴うMS/MSによって決定されたCup s GRPのアミノ酸配列は、配列の上に示された2つの多型部位で確認された下線付きのBY878079の修正版によって仮想的にコードされた配列から逸脱する。d)Cup s GRPおよびPru p 7のアミノ酸配列の整列。垂直線、コロン、およびピリオドは、それぞれ同一、保存、および半保存の位置を示す。
図12】サイズ排除クロマトグラフィによるnJun a GRPの第3および最後の精製ステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度および導電率を伴うクロマトグラムは それぞれ実線および斜線で示す。括弧は、クロマトグラムに示した3つの吸光度ピーク(プール1~3)のプールされた画分を示す。b)サイズ排除クロマトグラフィから選択した画分のSDS-PAGE分析は図12aに示す。プール1~3を含むフ画分は、括弧で示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。c)棒グラフは、図12aに示す3つのプールによるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す。
図13】サイズ排除クロマトグラフィによるnCry j GRPの第3および最後の精製ステップを示す。a)280nm(A280)での吸光度および導電率を伴うクロマトグラムは それぞれ実線および斜線で示す。矢印は、SDS-PAGEおよびウサギ抗Pru p 7 IgGの結合による分析のために選択した画分を示す。括弧は、さらなる精製のためにプールされた画分を示す。b)画分のSDS-PAGE分析は図13aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。c)棒グラフは、図13aに示す画分によるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す。
図14】MS/MSによるnJun a GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079の修正版のヌクレオチド配列は、精製された7kDaのJuniperus asheiタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致である。架空のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)、修正された以前の終止コドン(TGY)、および末端終止コドン(TAG)に下線が引かれている。b)4つのペプチドの整列(Pep 1~4)は、BY878079の修正版によって仮想的にコードされたアミノ酸配列を使用して、MS/MS分析によって確認した。予測されるシグナルペプチドには下線が引かれ、終止コドンはアスタリスクで示した。c)アミノ酸を伴うMS/MSによって決定されたJun a GRPのアミノ酸配列は、下線で示された修正BY878079によって仮想的にコードされた配列から逸脱する。d)Jun a GRPおよびPru p 7のアミノ酸配列の整列。垂直線、コロン、およびピリオドは、それぞれ同一、保存、および半保存の位置を示す。
図15】MS/MSによるnCry j GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY900480のヌクレオチド配列(Cryptomeria japonicaの雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCryptomeria japonicaタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。仮想上オープンリーディングフレームの開始(ATG)および停止(TAG)コドンには下線が引かれている。b)5つのペプチドの整列(Pep 1~5)は、BY900480によって仮想的にコードされたアミノ酸配列を使用して、MS/MS分析によって確認した。予測されるシグナルペプチドには下線が引かれ、終止コドンはアスタリスクで示した。c)Cry j GRPのアミノ酸配列はMS/MSによって決定した。d)Cry j GRPおよびPru p 7のアミノ酸配列の整列。垂直線、コロン、およびピリオドは、それぞれ同一、保存、および半保存の位置を示す。
図16】ヒノキ科花粉由来GRPの配列および電気泳動の比較を示す。a)Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRPアミノ酸配列の多整列。すべての配列において同一のアミノ酸を有する位置はアスタリスクで示す。b)上記のアミノ酸配列のマトリックス比較は、配列同一性の割合を示す。c)3つの7kDaタンパク質のSDS-PAGEは、C.sempervirens(レーン1)、J.ashei(レーン2)、およびC.japonica(レーン3)花粉ならびに組換えPru p 7(レーン4)から精製された。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は右側に示した。
図17】rCup s GRPa(レーン1)、rCup s GRPb(レーン2)、精製された天然Cup s GRP(レーン3)、およびrPru p 7(レーン4)のSDS-PAGE分析を示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)は左側に示した。
図18】44人のモモアレルギー対象間のrPru p 7およびnCup s GRPとのIgE結合の比較を示す。アッセイの0.1kUA/L定量限界(LoQ)を下回る値は、0.1 kUA/Lに設定した。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図19】18人のモモアレルギー対象間のnCup s GRPおよび組換えCup s GRPの2つのバリアントとのIgE結合の比較を示す。a)rCup s GRPa対nCup s GRP、およびb)rCup s GRPb対nCup s GRP。c)rCup s GRPb対rCup s GRPa。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図20】4人の異なる対象の血清において、天然および組換えCup s GRPbによるrPru p 7とのIgE結合の阻害を示す。結果は、希釈緩衝液対照の割合として表される。
図21】18人のモモアレルギー対象間のa)nJun a GRPおよびnCup s GRP、b)nCry j GRPおよびnCup s GRP、ならびにc)nCry j GRPおよびnJun a GRPとのIgE結合の対比較を示す。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図22】ヒノキ花粉に感作された88人の対象の血清におけるnCup s GRPに対するIgE抗体の保有率およびレベルを示す。アッセイの0.1kUA/L定量限界(LoQ)を下回る値(斜垂直線および水平線で示される)は、0.5kUA/Lに設定した。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図23】プロフィリンBet v 2、Cor a 2、Mal d 4、Pru av 4、Pyr c 4、Api g 4、Dau c 4、およびPhl p 12間の免疫学的および配列比較を示す。a)対比較は異なるプロフィリンとのIgE結合を比較する。斜水平線および垂直線は0.35kUA/Lレベルを示し、対角線は1:1の勾配を示す。b)対配列比較は、パーセント配列同一性を示す。
図24】Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRP配列と、これら4つの配列に基づくヒノキ科コンセンサス配列との整列を示す。Cup s GRPaのアミノ酸から逸脱するアミノ酸のみは、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRPの配列において示される。変動性を示すアミノ酸位置は、他の配列の上部に整列したヒノキ科花粉GRPコンセンサス配列(配列番号9)のXで示される。
図25】37個の既知のGRP配列の複数の整列を示す。アスタリスクは、比較されたすべての配列の中で系統的に保存されたアミノ酸を示す。
図26】ヒノキ科花粉GRPコンセンサス配列、配列番号9、Pru p 7の配列整列を示す。行Aにおいて、Zで示されるアミノ酸位置は、ヒノキ科花粉GRPとPru p 7との間で異なる。行Bにおいて、ヒノキ科花粉とPru p 7との間で保存されているが、図25に示すように整列された37個の配列間で異なるアミノ酸を示す。行Cにおいて、37個の整列された配列すべての間で保存されているアミノ酸を示す。配列番号52は、ヒノキ科花粉GRP配列とPru p 7との間のコンセンサス配列であり、Xはこの比較において保存されていないアミノ酸を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本発明の詳細を以下に示す。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の材料および方法を本発明の実施または試験に使用することができるが、次に、好ましい材料および方法を記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、記載から明らかになるであろう。記載において、単数形は、別段に文脈が明確に指示しない限り、複数形も含む。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0033】
「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、当技術分野においてそれらの通常の意味を有すると解釈されるべきである。別段に明記されない限り、これらの用語は本明細書では互換的に使用される。
【0034】
「単離」タンパク質とは、その天然環境から単離または除去されたタンパク質を指す。また、ヒトの介入によって生産されており、タンパク質産生環境で共存する材料から実質的に分離されていることも示す。
【0035】
「単離タンパク質」または「タンパク質」が本明細書で言及される場合はいつでも、これは本明細書でさらに記載される単離タンパク質と配列同一性を有し、起源の全長タンパク質と機能的に同等である、該単離タンパク質の断片またはバリアントを指し得る。「機能的に同等」は、本明細書の他の場所でさらに定義される。
【0036】
本明細書において、「タンパク質」、「単離タンパク質」、「アレルゲンタンパク質」、「その断片またはバリアント」、「単離アレルゲンタンパク質の断片またはバリアント」、および「アレルゲン」という用語は、は互換的に使用することができ、本開示のすべての文脈および態様で想定される。
【0037】
「配列同一性」は、2つの(ヌクレオチドまたはアミノ酸)配列が、整列における同じ位置に同じ残基を有する程度に関連し、割合で表される。この点での「整列」は、最大レベルの同一性を達成するために2つ以上の生物学的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を一致させるプロセスまたは結果、アミノ酸配列の場合、類似性の程度および相同性の可能性を評価する目的での保存に関連する。「全体的な」配列同一性を決定するために、その断片またはバリアントと比較したそれぞれの単離タンパク質のアミノ酸配列、またはそれをコードする核酸配列を整列に使用することができる[38、39]。
【0038】
タンパク質の「長さ」は、タンパク質のアミノ酸残基の数である。
【0039】
本明細書において、タンパク質の「断片」は、起源タンパク質の全長にわたって計算されるように、起源タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する断片を意味すると解釈されるべきである。換言すると、本開示に従うと、全長起源タンパク質のアミノ酸残基の少なくとも85%が断片において存在する。本明細書に開示されるように、起源タンパク質は、配列番号4に従うアミノ酸配列を有し得る。結果として、本明細書に開示される「断片」は、配列番号4の全長にわたって計算されるように、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し得る。タンパク質断片は、ヘキサヒスチジンタグ、リンカー配列、またはベクター由来アミノ酸など、それらの産生の結果として追加のアミノ酸をさらに含み得る。
【0040】
タンパク質の「バリアント」は、バリアントタンパク質の全長にわたって計算されるように、該起源タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するバリアントに関する。起源タンパク質は、配列番号4に従うアミノ酸配列を有し得る。結果として、本明細書に開示される「バリアント」は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し得る。European Bioinformatics Institute(Cambridge,United Kingdom)が提供するClustal Omegaなど、起源タンパク質とバリアントタンパク質とを整列し、配列同一性を計算するための多数のソフトウェアツールが市販されている。タンパク質バリアントは、ヘキサヒスチジンタグ、リンカー配列、またはベクター由来アミノ酸など、それらの産生の結果として追加のアミノ酸をさらに含み得る。
【0041】
本明細書において、タンパク質の「機能的に同等のタンパク質断片またはバリアント」、またはタンパク質の「機能的に同等の断片またはバリアント」に言及する場合はいつでも、これはタンパク質およびその断片またはバリアントが同等のIgE結合特性を有することを意味することが意図される。より詳細には、起源の単離アレルゲンタンパク質の機能的に同等のバリアントまたは断片であるために:
(a)バリアントまたは断片は、起源アレルゲンタンパク質に感作された代表的な患者の血清試料からのIgE抗体の、起源アレルゲンタンパク質による結合を、緩衝液のみによる模擬阻害と比較して少なくとも50%阻害する(IgE希釈剤、Thermo Fisher Scientific)。バリアントまたは断片のこの特性は、例えば、実施例9に記載されるように、当技術分野で即知の任意の好適な阻害アッセイを使用することによってアッセイすることができる。
(b)バリアントまたは断片は、起源アレルゲンタンパク質と実質的に同じレベルでIgE抗体と結合する。結合レベルは、例えば、実施例8に記載されるように、バリアントまたは断片を固相に固定化し、個々の血清のIgE反応性を測定し、測定されたIgE反応性を起源単離アレルゲンタンパク質のIgE反応性と比較することによって測定することができる。この定義の目的について、「実質的に同じレベル」とは、バリアントの結合レベルが起源タンパク質の結合レベルと最大で25%、20%、15%、10%、または5%異なることを意味すると解釈されるべきである。
(c)バリアントまたは断片には、ヒノキ科GRPコンセンサス配列のすべての保存アミノ酸が含まれる(すなわち、配列番号9;保存アミノ酸については図26を参照されたい):
(d)(i)それがバリアントである場合、バリアントは、配列番号4と比較して交換される9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸残基(複数可)など、配列番号4と比較して交換される最大9個のアミノ酸残基を有するか、または
(ii)それが断片である場合、断片は、配列番号4と比較して削除される9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸残基(複数可)など、配列番号4と比較して削除される最大9個のアミノ酸残基を有するか、または
(iii)それがバリアントおよび断片の組み合わせである場合、バリアントおよび断片の組み合わせは、配列番号4と比較して最大9個のアミノ酸残基の交換または削除を有する。
【0042】
実施例10および12は、交差反応性に起因するアレルゲンタンパク質のIgE結合が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するアレルゲンタンパク質間で非常に類似していることを示している。互いに少なくとも80%、例えば、90%以上の配列同一性を有する相同タンパク質は、著しく類似したIgE反応性を示す。
【0043】
アミノ酸配列の特定の位置にあるアミノ酸残基は、該位置のアミノ酸残基が、比較された整列タンパク質配列間で同一である場合、同じタンパク質ファミリーの異なるタンパク質間で「系統的に保存された」、時には単に「保存された」と記される。したがって、異なるタンパク質間で「保存されていない」アミノ酸残基は、比較したタンパク質配列間で同一ではない。保存されていないアミノ酸残基は、比較されるタンパク質配列にわたって「系統的に制限された」または「系統的に制限された変動性」を有し得、これは、特定の位置におけるアミノ酸が、例えば、GRPタンパク質ファミリーからの類似のタンパク質の群の系統的比較で見出される制限された数のアミノ酸からなる群から選択されることを意味することが意図される。
【0044】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、外来遺伝物質を別の細胞に人工的に運び、そこで複製および/または発現させることができるビヒクルとして使用されるDNA分子に関する。
【0045】
「宿主細胞」は、目的のタンパク質、断片またはバリアントを発現するために本明細書に開示されるベクターによって形質転換されている細菌、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞に関する。
【0046】
タンパク質「アイソフォーム」は、高い類似性を有するタンパク質の群のメンバーであり、単一遺伝子の対立遺伝子バリアントまたは遺伝子ファミリーの非同一メンバーに由来し、遺伝的差異から生じる。多くのアイソフォームは、同じまたは類似の生物学的機能を実行する。
【0047】
詳細な記載
本明細書で前述したように、本発明者らは、Pru p 7によって媒介される重度のモモアレルギーに対する一次感作物質であると考えられる、Pru p 7に対応するヒノキ科花粉タンパク質を初めて特定することに成功した(実施例8に提示した結果を参照されたい)。天然起源からの高純度のPru p 7の単離は、真に特異的な抗Pru p 7ウサギ抗血清を得るための前提条件であった。Pru p 7タンパク質は、Pru p 3と同様の生化学的特性を有するので、Pru p 3の市販の調製物におけるPru p 7混入の実証によって証明されるように[34]、Pru p 3を除去するための生体特異的親和性吸着、および他の共精製タンパク質を除去するための逆相クロマトグラフィ(RPC)のステップなど、本目的のために精巧な精製方法を開発した(実施例1を参照されたい)。高度に精製された天然Pru p 7調製物を用いてウサギを免疫化することによって得られた抗Pru p 7抗血清をさらに使用して、Cupressus sempervirens、Cryptomerica japonica、およびJuniperus ashei花粉抽出物の溶出画分においてPru p 7相同体を検出できる。以前に本明細書で言及したC.sempervirensからの以前に報告された14kDaのBP14タンパク質を考慮して予想され得たこととは対照的に、ウサギ抗Pru p 7 IgG抗体は、C.sempervirens花粉抽出物、ならびにJuniperus asheiおよびCryptomeria japonicaの花粉抽出物において7kDaタンパク質(すなわち、BP-14の半分のサイズのタンパク質)のみを検出した。特定されると、これらのタンパク質は、質量分析による分析ならびに生化学的および免疫学的特性評価のために均一に精製され得る。
【0048】
N末端配列決定データ、各調製物の異なる酵素消化からのMS/MSデータ、および反復プロセスにおけるCryptomeria japonicaからの中断/不完全なEST配列を組み合わせることにより、7kDaタンパク質の完全なアミノ酸配列は、Cupressus sempervirensおよびJuniperus asheiから一緒に推定/当惑され得る。Cryptomeria japonicaからのPru p 7相同体の完全な配列は、ESTデータベースにおけるMS/MSデータを分析することによって決定された。3つの天然ヒノキ科花粉アレルゲン間の免疫学的類似性は、実施例10で証明され、論じられる。
【0049】
本プロジェクトの別の必要条件は、正確に折りたたまれた免疫反応性組換えGRPアレルゲンを実用的に有用な量で産生するための方法論の開発であった。これは、rPru p 7およびrCup s GRPの産生のための様々な発現系、ベクタークローニングバリアント、および発酵戦略の調査を伴う。異なる標準的な手順に従ういくつかの最初の試みは、生化学的および免疫学的に欠陥のあるタンパク質産物を生成したが、最終的に精巧に作られた方法論は、品質とおよび収量の両方に関して非常に成功した。
【0050】
本明細書で確立および開示されたCup s GRPの配列に基づいて、組換えCup s GRPはPichia pastorisにおいて産生され、天然精製タンパク質と同様の生化学的特性およびIgE反応性を有することが示された。組換えタンパク質は、Pru p 7とのIgE結合を阻害し、モモタンパク質Pru p 7とCup s GRPとの間に交差反応性があり、後者が一次感作物質として作用し得ることを示す。
【0051】
このタンパク質の特定とそれに続くその組換え産生は、1型アレルギーの新しくかつ改善された診断への道を築く。重度のモモアレルギーとヒノキ科花粉症との関連が確立されているため、現在開示されている所見は、花粉および食物アレルギーの両方の診断、治療、および/または予防に応用できるであろう。
【0052】
本明細書で言及したように、何年にもわたって、花粉からジベレリン制御性タンパク質ファミリーのアレルゲンタンパク質を特定し、単離し、特徴づける多くの試みがあった。このタンパク質ファミリーの花粉アレルゲンの重要性についての推測された理解にもかかわらず、本開示がかかるタンパク質の完全な配列を首尾よく単離および記載することに成功するまで、だれも実施してこなかった。本明細書で言及したように、配列情報の断片は以前に報告されているが、完全な配列、タンパク質の構造およびそれが同じタンパク質ファミリーの他のメンバーとどのように比較されるかを理解するための、ならびに診断および治療用途のための組換えタンパク質を生成するための必要条件は、依然として明らかにされていない。
【0053】
これまでの進展の欠如は、花粉からこのタンパク質ファミリーのタンパク質を特定および単離することの難しさを示している。特に、本発明者らは、この問題を解決する方法を発見した。例として、本明細書に記載のタンパク質の完全な詳細の供給をもたらす機能的な実験プロトコル、ならびに単離および特徴づけのプロセスを通して得られた発見を取得して適用する方法を特定するには、実質的な発明の要点が必要であった。しかしながら、最終的に、アレルゲンタンパク質は、本明細書でさらに示され、記載されるように、単離され、評価され、利用された。
【0054】
したがって、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号4に従うアミノ酸配列を含むか、または機能的に同等のそのタンパク質断片もしくはバリアントが、少なくとも85%の配列番号4との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質が提供される。さらに、該配列番号4との配列同一性は、少なくとも90%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であり得る。
【0055】
単離タンパク質は、本明細書において、相同性の高いタンパク質であるCup s GRP(タンパク質アイソフォームa(配列番号4)およびタンパク質アイソフォームb(配列番号5))、Jun a GRP(配列番号6)およびCry j GRP(配列番号8)によって表され、例示されている。
【0056】
Pru p 7(Pru p7)のアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
〔配列表1〕
配列番号1(nPru p 7)
【0057】
Cup s GRPaのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
〔配列表2〕
配列番号4(Cup s GRPa)
【0058】
Cup s GRPbのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
〔配列表3〕
配列番号5(Cup s GRPb)
【0059】
Jun a GRPのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
〔配列表4〕
配列番号6(Jun a GRP)
【0060】
Cry j GRPのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
〔配列表5〕
配列番号8(Cry j GRP)
【0061】
以下の実施例13に記載および示されるように、ヒノキ科-Pru p 7 GRPコンセンサス配列(配列番号52)が設計されており、本明細書に開示される。配列番号52に従う該コンセンサス配列において、アミノ酸が本明細書に開示される異なるヒノキ科花粉GRP間で変化する位置(すなわち、Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRP)、ならびにアミノ酸が本明細書に開示されるヒノキ科花粉GRPとモモGRPとの間で変化する位置(すなわち、Pru p 7)が、Xで示される(図26)。図26の行Aにおいて、アミノ酸が本明細書に開示されるヒノキ科花粉GRPとモモGRPとの間で変化する位置(すなわち、Pru p 7)が、Zで示される。
〔配列表6〕
【0062】
したがって、本開示は、単離アレルゲンタンパク質であって、該タンパク質が、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
〔配列表7〕
ここで、位置Xのうちの最大9つ、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、または1つには、表3で定義される任意のアミノ酸が含まれ、
残りの位置Xにおいて、アミノ酸が、配列番号4の対応する位置のアミノ酸と同一である、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0063】
特に、本開示は、単離アレルゲンタンパク質であって、該タンパク質が、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
〔配列表8〕
ここで、位置Xのうちの最大4つには、表3で定義される任意のアミノ酸が含まれ、
残りの位置Xにおいて、アミノ酸が、配列番号4の対応する位置のアミノ酸と同一である、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0064】
表3に列挙されるアミノ酸残基は、配列番号52の位置Xにおいて系統的に制限された変動性を有するアミノ酸残基であることに留意されたい。
【0065】
さらに提供されるのは、それぞれ、配列番号5、6、または8の機能的に同等のタンパク質断片またはバリアントであり、該断片またはバリアントは、配列番号5、配列番号6、または配列番号8とそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有する。さらに、該配列番号5、6、または8との配列同一性は、少なくとも90%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であり得る。
【0066】
ヒノキ科ファミリーからのこれらの例示された単離タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号9に示されるように、最大7つのアミノ酸位置においてのみ互いに異なる。上記のファミリーメンバー間の相違性および類似性を示す配列整列を図24に示す。本明細書の実施例10において、少なくともこれらの位置でアミノ酸残基を変化させても、それらの意図された目的のためのタンパク質の機能性に影響を及ぼさないことが証明された。したがって、それにより、アミノ酸配列におけるある程度の構造的柔軟性が示され、これは、配列番号4によって示される単離タンパク質の機能的に同等のバリアントまたは断片が想定され、本開示の文脈において有用であることが証明されることを意味する。本明細書に提示される配列番号4に従う単離タンパク質の機能的に同等のバリアントまたは断片の定義は、本明細書の他の場所に記載される。
【0067】
したがって、本明細書はさらに、単離アレルゲンタンパク質であって、該タンパク質が、配列番号9に従う以下のアミノ酸配列を含み、
〔配列表9〕
ここで、任意の位置Xが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含む、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0068】
本明細書において、配列番号9または配列番号52における位置X(のうちのいずれか)が「任意のアミノ酸」を含み得ると述べる場合、この表現は、任意の天然または非天然起源アミノ酸を意味することを意図する。特に、本明細書では、配列番号9または配列番号52における位置X(のうちのいずれか)が任意の天然起源アミノ酸を含み得ることが開示される。
【0069】
配列番号9は、本明細書で特定された単離タンパク質を表すヒノキ科花粉GRPコンセンサス配列の例と見なすことができ、該最大7つのアミノ酸位置(位置2、18、31、34、41、46、および52)において、アミノ酸残基が、XがCではないという条件で、およびかかるタンパク質が、本明細書の他の場所に記載される意図された目的に関して、起源タンパク質と機能的に同等の活性を維持するという条件で、任意の他のアミノ酸について1つ以上の位置で変動、すなわち交換することができる。本明細書では、同じ配列類似性を有するが、追加または代替のアミノ酸残基が変動し、該バリアントが起源タンパク質と同じ機能的活性を維持する、すなわち、該バリアントが、起源タンパク質、または上記の7つの位置でのアミノ酸が本明細書でさらに記載されるように変動しているタンパク質と機能的に同等である、配列番号4の他のバリアントも想定される。本明細書には、配列番号9に従う単離タンパク質の機能的に同等の断片も提供される。
【0070】
実施例13に示されるように、該7つのアミノ酸位置Xにおいて、アミノ酸は、系統的に制限されたアミノ酸からなる群から選択されることが想定される。
【0071】
図25によれば、以下のアミノ酸が、配列番号9の各位置Xにおいて系統的に好ましい:
位置2:A E S D T L Y
位置18:Y L I V F M R
位置31:E D Q A G S K
位置34:Q N H K
位置41:Y F A S
位置46:E V A Q
位置52:D E N
【0072】
位置Xにおいて上記で開示される好ましいアミノ酸残基はすべて、系統的に制限された相互の変動性を有し、図25に整列された既知のGRP配列に見られるものと一致している。
【0073】
さらに、ヒノキ科花粉GRPタンパク質の配列によれば、以下のアミノ酸が、配列番号9の各位置Xにおいて系統的に好ましい:
位置2におけるXが、QもしくはHであり、
位置18におけるXが、AもしくはLであり、
位置31におけるXが、KもしくはEであり、
位置34におけるXが、HもしくはNであり、
位置41におけるXが、AもしくはYであり、
位置46におけるXが、VもしくはSであり、および/または
位置52におけるXが、HもしくはNである。
【0074】
該上記に開示されるアミノ酸残基は、系統的に制限された変動性を有し、図24の整列に示されるように、ヒノキ科花粉GRP、すなわち、Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRPに見られるものと一致する。
【0075】
したがって、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大6つ、例えば、5、4、3、2、または1つが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含み、
残りの位置X(複数可)において、アミノ酸が、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、もしくはQのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0076】
特に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、または1つが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含み、
残りの位置X(複数可)において、アミノ酸が、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、もしくはQのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0077】
さらに、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大6つ、例えば、5、4、3、2、または1つが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含み、
該残りの位置Xにおいて、該アミノ酸が、
位置2におけるXが、QまたはHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、AまたはLのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、KまたはEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、AまたはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、VまたはSのうちのいずれか1つから選択され、および
位置52におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0078】
特に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、または1つが、XがCではないという条件で、任意のアミノ酸を含み、
該残りの位置Xにおいて、該アミノ酸が、
位置2におけるXが、QまたはHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、AまたはLのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、KまたはEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、AまたはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、VもしくはSのうちのいずれか1つから選択され、および
位置52におけるXが、HまたはNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0079】
より詳細には、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、位置Xにおいて、該アミノ酸が、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0080】
さらに、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、
位置2におけるXが、QもしくはHであり、
位置18におけるXが、AもしくはLであり、
位置31におけるXが、KもしくはEであり、
位置34におけるXが、HもしくはNであり、
位置41におけるXが、AもしくはYであり、
位置46におけるXが、VもしくはSであり、および/または
位置52におけるXが、HもしくはNである、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0081】
さらに、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、または1つが、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、もしくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、もしくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、もしくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、もしくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、および/または
位置52におけるXが、H、N、D、もしくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を含み、
残りの位置Xにおいて、アミノ酸が、配列番号4の対応する位置のアミノ酸と同一である、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0082】
より詳細には、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、または1つが、
位置2におけるXが、QもしくはHであり、
位置18におけるXが、AもしくはLであり、
位置31におけるXが、KもしくはEであり、
位置34におけるXが、HもしくはNであり、
位置41におけるXが、AもしくはYであり、
位置46におけるXが、VもしくはSであり、および/または
位置52におけるXが、HもしくはNである、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0083】
詳細には、本開示は、それぞれ配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号8に従うアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる単離アレルゲンタンパク質をさらに提供する。
【0084】
本明細書に記載のタンパク質はまた、起源配列に化学的に修飾されたアミノ酸を付加することができ、これは、側鎖が化学的に修飾されているアミノ酸を指す。例えば、側鎖は、フルオロフォアまたは放射性標識などのシグナル伝達部分を含むように修飾され得る。側鎖は、チオール、カルボン酸、またはアミノ基などの新しい官能基を含むように修飾され得る。翻訳後修飾されたアミノ酸も、化学的に修飾されたアミノ酸の定義に含まれる。
【0085】
本明細書を通して開示される単離タンパク質、そのバリアントまたは断片は、組換え的に産生され得る。一般に、研究、診断または他の用途におけるアレルゲンタンパク質の実用的な利用は、組換え形態でのそれらの利用可能性によって大いに促進される。アレルゲンタンパク質が特定され、そのアミノ酸配列が確立されると、それは周知の方法を使用して組換えタンパク質として産生することができる[40])。しかしながら、教科書的な例として挙動しない困難な場合において、有用な量の機能性タンパク質を得るという目標を達成するために、発現系構成、培養方法、および/または精製戦略を広範に適応させるか、さらには新たに開発する必要性があり得る。かかる広範な適応をどのように達成するかは、当業者にとってさえ容易に予見することはできない。タンパク質をコードする遺伝子は、アレルゲン起源物質から調製されたmRNAに由来するcDNAの形態でクローン化するか、または所望のDNA配列に従って合成することができる。同じアミノ酸を指定する最大6つの異なるコドンを有する遺伝暗号の冗長性により、所与のアミノ酸配列は、多数の同義DNA配列によってコード化することができる。必要に応じて、タンパク質への機能的な追加または修飾は、合成遺伝子の設計を通じて、部位特異的変異誘発によって、またはクローニング戦略の一部として導入することができる。目的のアレルゲンをコードする遺伝子は、様々な異なる発現ベクターのうちのいずれかにクローン化され、様々な原核生物または真核生物の発現宿主のうちのいずれかに導入される[40]。一般的な発現宿主には、グラム陰性菌Escherichia coli、酵母Saccharomyces cerevisiaeおよびPichia pastoris、Spodoptera frugiperdaまたはDrosophila melanogasterに由来する昆虫細胞株、ならびに哺乳動物細胞株が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
組換えタンパク質は、可溶性もしくは不溶性の形態で細胞内に発現されるか、または培養培地に分泌され得る。組換えタンパク質の回収および精製は、様々な周知の方法またはそれらの組み合わせによって実施することができる。一般的なクロマトグラフィ技術には、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィ(IMAC)、アニオンおよびカチオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィが含まれる。
【0087】
本明細書に提示される単離タンパク質は、組換え的に産生される場合、特定の目的のために意図的に修飾され得、それにより、例えば、抗体結合特性に関してタンパク質に機能的に影響を与えることなく、非天然起源タンパク質をもたらす。非天然起源タンパク質は、発現レベルまたは溶解性を高めるために別のタンパク質と融合された組換えタンパク質であり得る。かかる融合パートナーの例には、チオレドキシン(TRX)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。別の例は、タンパク質を培養培地に分泌することを可能にするシグナルペプチドの添加であり、そこからそれを可溶性形態で容易に回収することができる。非天然起源タンパク質はまた、短いペプチドタグが親和性精製を可能にする目的で該タンパク質に遺伝的に移植されている組換えタンパク質であり得る。かかるペプチドタグの例には、金属イオン親和性を付与するためのヘキサヒスチジン、または抗ヘマグルチニン、抗c-mycもしくは抗Flagモノクローナル抗体などの特定の抗体のためのペプチドエピトープが含まれる。
【0088】
組換えタンパク質へのかかる付加物の分離および削除を可能にするために、部位特異的タンパク質分解切断のための短いペプチド配列を、目的のタンパク質と融合パートナーまたはペプチドタグとの間に挿入することができる。タンパク質分解酵素のかかる標的部位の例には、エンテロキナーゼのDDDDK、第Xa因子のIEGR、TEVプロテアーゼのENLYFQA、およびP.pastorisにおけるインビボプロセシングのためのKex2/Ste13のEKREAEAEFが含まれる。かかる標的配列のいくつかのアミノ酸残基は、切断後に、例えば、P.pastorisにおける分泌発現の場合、EAEFEFまたはその一部が残存し得る。
【0089】
本明細書に開示される単離タンパク質、断片またはバリアントをコードする単離核酸分子もまた本明細書に提供される。単離核酸は、配列番号10によってコードされ得る。配列番号10は、コンセンサスヒノキ科アミノ酸配列(すなわち、配列番号9)をコードする縮重DNA配列であり、これは、本明細書に記載のCup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、およびCry j GRP配列、すなわち、IUPAC多義性コードに従った同義のコドンおよびバリアントを含む、本明細書に開示される単離タンパク質に基づく。配列番号10に従うコンセンサスヒノキ科核酸配列は、Cup s GRPaアミノ酸配列(すなわち、配列番号4)から開始し、逆翻訳され、同義コドンを含み、Cup s GRPb、Jun a GRP、および/またはCry j GRPがCup s GRPaアミノ酸配列と異なる7つのアミノ酸位置を考慮して構築された。7つの可変アミノ酸位置をコードするヌクレオチドは、以下の太字のテキストでマークアップされる。
【0090】
配列番号10、すなわちヒノキ科コンセンサス核酸配列:
〔配列表10〕
ここで、
N=T、C、A、またはG;
R=AまたはG;
H=T、C、またはA;
Y=TまたはC;
M=CまたはA;
W=TまたはA;
S=GまたはC;
B=C、G、またはT;
K=GまたはT;および
D=A、G、またはT。
【0091】
本明細書には、以下の核酸配列も提供される:
配列番号50、すなわち、Cup s GRPaが逆翻訳され、同義コドンを考慮する:
〔配列表11〕
【0092】
配列番号51、すなわち、Cup s GRPaが逆翻訳され、7つの可変アミノ酸位置(太字でマークアップ)をコードするヌクレオチドが、Cup s GRPb、Jun a GRP、および/またはCry j GRPに存在するアミノ酸をコードするヌクレオチドに変更されている:
〔配列表12〕
【0093】
配列番号50および配列番号51において、可変ヌクレオチドは、上記で定義されたように、配列番号10におけるものと同じ意味を有する。
【0094】
本明細書には、配列番号10、50、もしくは51のうちのいずれか1つに従う核酸配列、またはそれと少なくとも85%の配列同一性、例えば、それと少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含む核酸分子も提供される。
【0095】
本明細書に開示される単離核酸分子を含む、ベクターまたは発現ベクターも提供される。単離核酸分子は、本明細書に開示される単離タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードし得、したがって、本明細書に開示される任意の核酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0096】
さらに、本明細書に記載のベクターまたは発現ベクターを含む、単離宿主細胞も提供される。本明細書で前述したように、該ベクターまたは発現ベクターは、本明細書の他の場所に開示されているように、単離タンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸分子を含む。
【0097】
アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、本明細書に記載の単離タンパク質または機能的に同等の断片もしくはバリアントを追加するステップを含む、方法が提供される。かかる方法によって得られるアレルゲン組成物も提供される。かかるアレルゲン組成物は、本明細書に提示されるように、単離タンパク質、その断片、またはバリアントに「スパイク」することができる。かかるアレルゲン組成物は、アレルゲン抽出物、または本明細書に提示される単離タンパク質を含まないかもしくは低い含有量を有する精製または組換えアレルゲン成分の混合物であり得、単離タンパク質、その断片またはバリアントは、IgEが他の方法ではアレルゲン組成物と結合しないか、または不十分に結合する患者からのIgEと結合するために、該アレルゲン組成物に追加(すなわち、アレルゲン組成物が「スパイク」される)される。したがって、この態様は、かかる組成物を産生するための方法に関し、方法は、アレルゲン抽出物(任意に他の成分をスパイクすると言及したように)または精製された天然または組換えアレルゲン成分の混合物などのアレルゲン組成物に該タンパク質を追加するステップを含む。本明細書に記載の単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアント、ならびにアレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含むアレルゲン組成物も提供される。
【0098】
本明細書では、1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための、単離タンパク質またはその機能的に同等の断片もしくはバリアントの使用も提供される。
【0099】
明細書では、該1型アレルギー症状がヒノキ科種の花粉によって誘発される場合の使用も提供される。さらに、該1型アレルギーが、モモ、アプリコット、プラム、柑橘系果物またはザクロなどの食物によって誘発される症状を伴う花粉関連食物アレルギーである場合の使用も提供される。
【0100】
ヒトまたは動物検体中のアレルゲン特異的IgE抗体の検出または測定は、いくつかの異なる方法で実行できるが、通常、問題のアレルゲンと結合する抗体を捕捉する最初のステップと、それに続く非結合抗体を除去するための洗浄ステップ、IgE検出試薬を適用するステップ、非結合のかかる試薬を除去するための洗浄ステップ、およびIgE検出試薬からのシグナルを生成して記録する最終ステップが含まれる。アレルゲンは、アレルゲン特異的抗体を捕捉するために固体または可溶性の支持体に固定化するか、またはかかる複合体のその後の捕捉および定量化のために溶液中の抗体と複合体を形成することができる。アレルゲン検出試薬は、通常、レポーター物質または蛍光法または比色法で定量可能な生成物の形成を触媒することができる酵素のいずれかと結合したモノクローナル抗体である。アレルゲン特異的抗体を測定するためのアッセイには、一次応答単位を抗体濃度単位に変換できる較正システムも含まれる。同じアッセイ原理が他のアイソタイプのアレルゲン特異的抗体の測定にも適用されるが、唯一の違いは使用される検出試薬の特異性である。
【0101】
さらに、本明細書では、1型アレルギーのインビトロ診断または評価のための方法であって、1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、本明細書に記載の単離アレルゲンタンパク質、またはその断片もしくはバリアントと接触させるステップと、該試料において、該タンパク質、その断片またはバリアントと特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体などの存在を決定するステップと、を含み、該タンパク質と特異的に結合する該試料中の抗体の存在が、該対象における1型アレルギーに関して有益である、方法が提供される。IgE抗体が該試料中に存在し、該タンパク質と特異的に結合する一実施形態では、これは、該対象におけるI型アレルギーを示す。
【0102】
体液試料は、対象からの血液または血清試料であり得、該体液試料は、該対象試料が、単離タンパク質、そのバリアント、または断片と特異的に結合するIgE抗体を含むかを決定するために、単離タンパク質、またはその断片もしくはバリアント、または該タンパク質、またはその断片もしくはバリアントを含む組成物と接触させる。
【0103】
本明細書で言及される任意の単離タンパク質の断片またはバリアントは、起源タンパク質と機能的に同等である天然または人工的な断片またはバリアントであり得る。
【0104】
キットオブパーツであって、可溶性または固体支持体に固定化された、単離アレルゲンタンパク質、または断片もしくはバリアントを含み、該キットが、任意に、検出試薬および/または使用説明書をさらに含む、キットオブパーツがさらに提供される。固体支持体は、ニトロセルロース、ガラス、シリコン、およびプラスチックの群から選択することができ、ならびに/またはマイクロアレイチップ、もしくは当技術分野で利用可能な他の任意の好適な固体支持体である。
【0105】
本明細書の他の場所で言及されるように、キットは、固定化されたタンパク質と結合したIgE抗体などの抗体と結合することができる検出剤もさらに含み得る。かかる検出剤は、例えば、免疫アッセイの分野で即知である、色素、フルオロフォアまたは酵素などの検出可能な標識で標識された抗IgE抗体であり得る。
【0106】
タンパク質およびペプチドの固定化に好適な支持体は当技術分野で周知であり、本明細書では、この態様において、タンパク質またはタンパク質断片の免疫原性に実質的な程度で悪影響を及ぼさない任意の支持体が含まれる。この文脈において、「固定化された」という用語は、特定の支持体に好適な任意の種類の付着物であり得ることが理解される。単離タンパク質またはタンパク質断片は、ImmunoCAP、EliA、またはVarelisAなどの診断方法での使用に好適な固体支持体に固定化することができる。代替的に、タンパク質またはタンパク質断片は、溶液中の1つ以上の樹状突起構造など、溶液中の天然または合成ポリマー構造に固定化され得る。
【0107】
標識または標識要素が提供されている、本明細書に記載の単離タンパク質、その断片またはバリアントもまた本明細書に提供される。したがって、本明細書には、光発光標識、蛍光標識またはリン光標識、化学発光標識または放射線ルミネセンス標識などの発光標識が提供されているタンパク質またはタンパク質断片もしくはバリアントも提供される。親和性機能などの特定され得る要素で誘導体化された単離タンパク質、その断片もしくは誘導体もまた、本開示に含まれる。タンパク質およびペプチドの標識のための親和性機能は当技術分野で周知であり、当業者は、ビオチンなどの任意の好適な機能を選択することができるであろう。
【0108】
1型アレルギーの治療または予防に使用するための、単離タンパク質またはその機能的に同等の断片もしくはバリアントもまた本明細書で提供される。1型アレルギーは、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされ得、および/またはモモ、アプリコット、プラム、柑橘系果物、またはザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うヒノキ科の花粉関連の食物アレルギーであり得る。同様に、1型アレルギーの治療または予防のための薬剤の製造において、本明細書に開示される単離タンパク質または機能的に同等の断片もしくはバリアントの使用も提供される。1型アレルギーは、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされ得、および/またはモモ、アプリコット、プラム、柑橘系果物、またはザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うヒノキ科の花粉関連の食物アレルギーであり得る。
【0109】
本明細書では、薬学的組成物であって、該薬学的組成物が、単離タンパク質またはその機能的に同等の断片もしくはバリアント、ならびに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む、薬学的組成物がさらに提供される。
【0110】
本明細書における薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。各成分は、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「薬学的に許容される」ものである必要がある。また、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織または臓器と接触して使用するのに好適である必要がある。
【0111】
本明細書では、1型アレルギーの治療または予防のための方法も本明細書であって、薬学的有効量の、本明細書に記載の単離タンパク質、その断片もしくはバリアント、アレルゲン組成物、または該単離タンパク質、その断片もしくはバリアントを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。免疫療法におけるタンパク質、そのバリアントまたは断片の使用には、例えば成分分解免疫療法が含まれる[41]。単離タンパク質は、その天然の形態で、または天然のタンパク質と同様の生化学的および免疫学的特性を示す組換え形態で使用することができる。単離タンパク質は、化学的または遺伝的に生成される修飾形態で使用され得る。単離タンパク質への修飾の例には、タンパク質の断片化、トランケーション、タンデマー化(tandemerization)もしくは凝集、内部セグメントの削除(複数可)、アミノ酸残基の置換(複数可)、ドメインの再配置、またはジスルフィド架橋の破壊もしくは別の高分子構造もしくは他の低分子量化合物へのその結合による三次構造の少なくとも一部の破壊が含まれるが、それらに限定されない。
【0112】
本明細書に開示される薬学的組成物の任意の好適な投与方法が、単離タンパク質の投与の目的に応じて使用することができる。投与の用量およびタイミングは、治療される対象に適切であるとして医師によって決定されるであろう。
【0113】
本明細書の他の場所で言及されているように、タンパク質はその天然起源から精製することができる。それはまた、組換えDNA技術によって産生され得るか、または当業者に即知である方法によって、または本出願に記載されるように化学的に合成され得る。
【0114】
本明細書では、該1型アレルギーが、ヒノキ科種の花粉によって引き起こされる1型アレルギーであり、および/またはモモ、アプリコット、プラム、柑橘系果物、またはザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うヒノキ科の花粉関連の食物アレルギーである、方法がさらに提供される。
【0115】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものと見なされるべきではない。
【0116】
実験セクション

以下の表1は、本開示の一部である配列表による配列番号、および該配列の対応する定義/名称を特定する。
【表1】
【0117】
表2:a)nCup s GRP、b)nCup s GRPのアイソフォームバリアント、c)nJun a GRP、およびd)nCry j GRPのMS/MS分析で特定されたペプチド配列のリスト。列1はペプチドの配列を示し、列2は対応する配列番号、列3は統計的有意性値-logP、列4はDaでのペプチドの実験的に決定した質量(M/Z-1.00794)、列5は実験的に決定した生物学的または実験的修飾の質量補正(PTM)、列6はペプチドの理論的に計算した質量、列7~8はペプチドが表す成熟タンパク質のアミノ酸配列の開始位置および終了位置、列9は分析したペプチド中に存在する修飾である。MS/MS分析の前に、すべてのシステイン残基がプロピオンアミド残基に修飾された結果、システイン残基当たり71.03712Daの質量が増加した。いくつかのペプチドでは、以下の列9に示すように、末端グルタミン酸のアミド化が発生し、0.984Daの質量の減少を引き起こした。このMS/MS分析の文脈では、生物学的または実験的なアミノ酸修飾はPTMと称される。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0118】
表3は、配列番号52の位置Xにおいて系統的に制限された変動性を有するアミノ酸、すなわち、21個の可変位置を有するヒノキ科-Pru p 7 GRPコンセンサス配列を特定する。
【表6】
【0119】
位置1、3、4、7、8、10、11、17、19、20、44、51、59、および60におけるアミノ酸は、本明細書に開示される4つのヒノキ科GRPタンパク質間で保存されているが、Pru p 7の対応する位置のアミノ酸とは異なる。該位置は、図26の行AではZで示されるが、配列番号52ではXで示される。
【0120】
位置2、18、31、34、41、46、および52におけるアミノ酸は、本明細書に開示される4つのヒノキ科GRPタンパク質間で異なる。該位置は、配列番号9および配列番号52の両方においてXで示される。
【実施例
【0121】
別段に明記されない限り、すべてのフィルター、クロマトグラフィ媒体、および機器は、GE Healthcare Life Sciences、Uppsala、Swedenから入手した。
【0122】
実施例1:缶詰のモモからの天然Pru p 7の調製
天然Pru p 7の精製
天然Pru p 7は、4つのクロマトグラフィステップを使用して缶詰のモモから精製した。換言すると、缶詰のモモを130mM NaAc pH 4.5の台所用ブレンダーで混合し、4°Cで粉砕球(Haldenwanger MTC,Berkshire,UK)と攪拌しながら2時間インキュベートした。抽出物を遠心分離によって清澄化し、濾過し、130mM NaAc pH4.5で平衡化したSPセファロースFFカラムに負荷した。洗浄および溶出は、130 mM NaAc pH4.5でそれぞれ0.15および0.5MのNaClの均一濃度ステップで実施した(図1)。画分をSDS-PAGEで分析し、顕著な7kDaバンドを含むその画分をプールして、20mM NaPO4、0.15M NaCl、0.02% NaN3 pH 7.4で平衡化したSuperdex 75調製グレード(pg)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラムに適用した。溶出を平衡化緩衝液(図2)を用いて実施し、顕著な7kDaバンドを含む画分をプールした。
【0123】
Pru p 7と同様のサイズおよび等電点を有するPru p 3の残留量を特異的に除去するために、生物特異的親和性吸着ステップを適用した。この目的のために、Pru p 3抗体に対する独自のモノクローナル抗体をNHS活性化Sepharose HPカラムと結合させた。SECプールを、20 mM NaPi pH 7.4、150mM NaCl、0.02% NaN3で平衡化した抗Pru p 3親和性カラムに適用した。平衡化緩衝液で溶出した後(図3)、未結合の物質を収集し、0.1%TFAで平衡化したSource 15 RPC逆相クロマトグラフィ(RPC)カラムに適用した(図4a)。結合タンパク質は、0~55%アセトニトリルの直線勾配で溶出した。画分をSDS-PAGEで分析し(図4b)、純粋な7kDaのバンドを含む画分を図4aに示すようにプールし、Sephadex G25カラム上で20mM MOPS、0.15M NaCl pH7.6に脱塩した。
【0124】
nPru p 7の質量分析(MS/MS)
天然Pru p 7のプールは、トリプシンまたはキモトリプシンのいずれかによる還元、アルキル化、および酵素的切断の後、Orbitrap Fusion Tribrid instrument (Thermo Fisher Scientific,CA,USA)でMS/MS分析によって分析した。データ分析は、これらの消化から得られたMSスペクトルの組み合わせで行った。データは、緑色植物データベースの分類ID 33090に対して分析し、精製したタンパク質がPru p 7(配列番号1)であることを確認した。Pru p 3または他のモモタンパク質の痕跡は調製物中に検出されなかった。
【0125】
結論として、実施例1は、天然Pru p 7の精製、およびMS/MSによるその同一性の確認について記載する。続いて、この調製物を、Pru p 7に対するポリクローナルウサギ抗体の産生に使用した。
【0126】
実施例2:組換えPru p 7の発現および精製
Pru p 7をコードする合成遺伝子を含むプラスミドDNA構築物を調製し、酵母Pichia pastoris株X-33に形質転換した。形質転換株を増殖させ、誘導して、3リットルバイオリアクター(Belach Bioteknik,Skogas,Sweden)で組換えPru p 7を産生した。培地を遠心分離により収集し、上清を回収した。HAcでpHを4.5に調整し、Whatman GF/Fガラスマイクロファイバーフィルタを通して濾過した後、上清を50mM NaAc pH4.5で平衡化したSPセファロースFFカラムに適用した。組換えタンパク質は、同じ緩衝液中で直線0~1M NaCl勾配で溶出した(図5)。rPru p 7を含む画分を収集し、50mM NaAc pH 4.5、150mM NaCl中のSuperdex 75pgカラムでSECによりさらに精製した(図6a)。rPru p 7を含む画分をプールし、0.72mg-1 mL cm-1の計算した吸光係数を使用して、280nmでの吸光度によって濃度を決定した。アレルゲン調製物の純度および同一性は、SDS-PAGE(図6b)および質量分析によって検証した。実験的ImmunoCAP試験(Thermo Fisher Scientific,Uppsala,Sweden)は、以前に記載されたように調整し[42]、免疫学的活性は、関連する患者の血清試料を使用して評価した。
【0127】
結論として、実施例2は、Pichia pastorisにおけるrPru p 7の発現および組換えタンパク質の精製を記載する。組換えPru p 7を使用して、nPru p 7に対して産生されたポリクローナルウサギ抗体を特徴づけ、関連する患者血清中のPru p 7に対するIgE反応性を研究することができる。
【0128】
実施例3:Pru p 7に対するポリクローナルIgG抗体の生成および利用
実施例1に記載したように調製した精製したnPru p 7を使用して、Pru p 7に対するポリクローナルウサギ抗体を産生した。ウサギを抗原の4回の追加免疫注入を含むプロトコルに従って、nPru p 7で免疫した。免疫化の前に、免疫前の血清試料をウサギから採取し、その後の実験で対照として使用した。すべての手順は、地域倫理承認の下で、Agrisera AB(Vannas,Sweden)で実施した。
【0129】
得られた抗Pru p 7抗血清は、ImmunoCAP固相に固定化されたrPru p 7およびCupressus sempervirens花粉抽出物の両方に対して一連の希釈で試験した。抗血清は、最高希釈率(1:8000)でも、前血清と比較して固定化rPru p 7との強いIgG結合を示し(図7a)、Pru p 7反応性IgGの含有を確認した。さらに、血清はC.sempervirens花粉抽出物との結合を示し(図7b)、Pru p 7と交差反応する今まで未知であったタンパク質の存在を示唆する。したがって、以下の実施例に示すように、抗Pru p 7抗血清をプローブとして使用して、Pru p 7のこの潜在的なヒノキ科花粉相同体を追跡し、精製することができる。
【0130】
実施例4:新規Pru p 7に関連するC.sempervirens花粉アレルゲンの精製
実施例3において、Pru p 7に対して産生されたポリクローナルウサギIgG抗体が、C.sempervirens花粉の固定化タンパク質抽出物と結合することが示された。同じ抗体を利用して、Pru p 7と交差反応するC.sempervirens花粉タンパク質を特定、精製、および特性づけすることができた。
【0131】
換言すると、C.sempervirens花粉(Allergon,Valinge,Sweden)を50mM NaAc、1M NaCl pH 4.5で、4°Cで72時間撹拌しながら抽出し、遠心分離によって清澄化し、Whatman GF/Fガラスマイクロファイバーフィルタで濾過し、50mM NaAc pH4.5で平衡化したSephadex G25カラムで脱塩した(図8)。空隙容量で溶出するタンパク質含有画分をプールし、50mM NaAc pH4.5で平衡化したSPセファロースFFカラムに負荷した。溶出を同じ緩衝液中で0~1M NaClの直線勾配で実施した(図9a)。9つの選択した画分をImmunoCAP固相に固定化し、抗Pru p 7 IgG結合活性をアッセイし(図9b)、SDS-PAGEで分析した(図9c)。抗Pru p 7 IgGの最高の結合を示し、顕著な7kDaタンパク質バンドを含む画分7~9を、図9aに示すようにプールし、SPセファロースHPカラムに濃縮した。濃縮したプールは、20mM NaAc pH 4.5、250mM NaClで平衡化した、Superdex 30pgカラムでのSECによってさらに精製した。溶出を同じ緩衝液で実施した(図10a)。8つの選択した画分をImmunoCAP固相に固定化し、上述のように抗Pru p 7 IgG結合活性を試験し(図10b)、SDS-PAGEで分析した(図10c)。抗Pru p 7 IgGの最も高い結合は、7kDaで単一の明確なバンドを示した画分3~5で見られた。したがって、図10aに示すように画分3~5をプールし、この広範に精製したPru p 7に関連するC.sempervirens花粉タンパク質を以下に記載するように生化学的および免疫学的に分析した。精製したC.sempervirensタンパク質は、Pru p 7と同等の見かけ上の分子量を示した(図10d)。
【0132】
結論として、実施例4は、一連のクロマトグラフィステップおよび実施例3に記載の抗Pru p 7 IgG抗体を使用して、以下でCup s GRPと称される、新規C.sempervirens花粉タンパク質をどのように精製したかを記載する。
【0133】
実施例5:Cup s GRPのアミノ酸配列の解明
実施例4で精製した7kDaのC.sempervirens花粉タンパク質の同一性および一次構造を確立するために、それをOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MSによって分析した。MS分析の前に、タンパク質をDTTによって還元し、アクリルアミドでアルキル化し、トリプシン、キモトリプシン、またはLys-Cのいずれかで酵素切断した。MSデータ分析は、7kDaタンパク質の3つの消化物から得られたスペクトルの組み合わせで行った。
【0134】
NCBIタンパク質データベースの記録は、MSデータとの確証的で完全な配列一致を提供しなかった。したがって、ヒノキ科EST(発現配列タグ)データベースに存在するヌクレオチド配列の仮想上翻訳に対して検索を行った。このデータベースにおいて最も一致したのは、記録BY878079(配列番号2)、Cryptomeria japonicaの雄球花からのcDNA配列であった(図11a)。このEST配列は、位置302~304での終止コドンによって分離された2つの仮想上アミノ酸配列(図11b)に翻訳された、中断されたオープンリーディングフレーム(ヌクレオチド位置44~397)を含んでいた。MS/MSによって特定した4つのペプチドは、図11bに示すように、BY878079の仮想上アミノ酸配列と完全に一致し、2つは終止コドンのうちのいずれかの側にある。この観察により、位置302~304の終止コドンが配列決定エラーの結果である可能性が生じた。
【0135】
この概念を支持して、中断されたBY878079由来配列とPru p 7のアミノ酸配列との間の整列は、位置302~304での終止コドンにわたって伸びる相同性を示した(示さず)。実際に、TGA終止コドンにおけるAがTまたはCのいずれかに変更された場合、その代わりにシステイン残基をコードし、対応する位置でPru p 7と完全に一致する。BY878079(配列番号3)のかかる修正を導入した後、MS/MSデータの改善された全体的な一致が得られ、精製したCup s GRPタンパク質が、修正されたBY878079に由来する仮想上アミノ酸配列の残基87に対応する位置に実際にシステインを有していたことを示す(図11b)。
【0136】
得られたMS/MSスペクトルの分析についてPEAKS Studioソフトウェア(Bioinformatics Solutions Inc.,Ontario,Canada)を使用して、Cup s GRPの完全な63残基のアミノ酸配列(図11c、配列番号4)は、4つの反復ステップで決定できる。Cup s GRP配列は、図11cに示すように、さらに4つの位置で修正されたBY878079由来配列とは異なった。MS/MS分析は、修正されたBY878079記録によってコードされた配列の残基55~117に対応する、このアミノ酸配列の完全な適用範囲を示した。この配列の一部である特定したペプチドの例を表2aに示す。
【0137】
さらに、新たに決定したCup s GRP配列を標的配列として使用するMS/MSデータの再分析は、Cup s GRP配列の2つの位置:位置18(Ala/Leu)および位置52(Asn/His)に多型が存在することを明らかにした(図11c、表2b)。位置18にAlaおよび位置52にAsnを含む最初に決定したCup s GRP配列は、以下ではCup s GRPaと称され、代替アミノ酸、すなわち位置18にLeuおよび位置52位にHisの両方を含む配列は、Cup s GRPb(配列番号5)と称される。Cup s GRPaおよびCup s GRPbに加えて、2つの代替アミノ酸のうちのいずれか一方または他方を含む2つの他のアイソフォームの存在が考えられる。
【0138】
EST記録BY878079によってコードされたアミノ酸配列には、予測した24残基のシグナルペプチドが含まれた(図11bにおける下線付き配列)。加えて、MS/MSによって特定したシグナルペプチドとCup s GRPペプチド1(図11bにおけるPep 1)に一致する配列との間に、一致するCup s GRPペプチドが特定されなかった30個のアミノ酸の伸展が存在した。
【0139】
それにもかかわらず、精製したCup s GRPがかかるN末端ペプチドを含むかを決定するために、タンパク質は、[43]に記載されるように、エドマン分解によるN末端配列決定に供した。タンパク質の最初の4つのアミノ酸残基は、Ala-Gln-Ile-Aspとして特定され、MS/MSによって特定されたCup s GRPペプチド1のN末端部分と正確に一致した。したがって、Cup s GRPの前駆体は、BY878079由来配列の残基25~54に対応する部分を含み得るが、それは切断され、成熟Cup s GRPタンパク質中にはもはや存在しない。
【0140】
Cup s GRP調製の完全性およびタンパク質の新規に決定したアミノ酸配列の証拠は、試料の還元およびアルキル化の後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得られ、その無傷の分子量を決定した。分析は、すべてのシステイン残基が減少した非修飾タンパク質の分子量6828.98Daに対応する、m/z=7682.43で優勢なピークが明らかになった。これは、すべてのシステイン残基が減少したCup s GRPa配列(配列番号4)について計算したモノアイソトピック分子量と完全に一致する。
【0141】
N末端配列および全質量MS分析は、MS/MS分析によって得られたアミノ酸配列がC.sempervirens花粉から精製した7kDaのタンパク質の完全なアミノ酸配列を網羅していることを確認した。Pfamシグネチャ(http://pfam.xfam.org/)のCup s GRPのこのアミノ酸配列の分析は、タンパク質が、GASAタンパク質ファミリーとしても知られるジベレリン制御性タンパク質ファミリーに属することを確認した。GRP配列は植物界全体で高度に保存されており、Cup s GRPaおよびCup s GRPb配列の両方がPru p 7と68%の配列同一性を示した(図11d)。
【0142】
結論として、実施例5は、Cup s GRPのアミノ酸配列がMS/MSおよびN末端配列決定によってどのように決定したかを記載する。MS分析により、無傷タンパク質の質量を決定し、計算した理論上質量と完全に一致することを見出した。63残基配列は、2つの位置に代替アミノ酸を有し、その天然状態におけるタンパク質の4つの可能なアイソフォームをもたらすことを示した。
【0143】
実施例6:Juniperus asheiおよびCryptomeria japonica花粉からのPru p 7関連タンパク質の精製およびアミノ酸配列決定
上記の実施例4に記載したCup s GRPの精製のために作成した手順は、2つの他のヒノキ科種、Juniperus asheiおよびCryptomeria japonicaの花粉からの対応するタンパク質の精製に使用した。
【0144】
J.asheiからの花粉を抽出し、記載した精製およびモニタリングの手順を実行した。第3に精製ステップでは、SECを使用して、以前のカチオン交換クロマトグラフィステップからの画分の濃縮プールに存在するタンパク質を分離した。SECカラムから溶出した3つの顕著なピーク(図12a)およびSDS-PAGEによる個々の画分の分析(図12b)は、3つのピークの各々に明確に異なるタンパク質バンドを明らかにした。3つのピークを図12aに示すように別々にプールし、ImmunoCAP固相と結合させ、ウサギ抗Pru p 7 IgG抗体と結合する能力を分析した(図12c)。
【0145】
ピーク2は、約7kDaに優勢なタンパク質バンドを含むことを見出し、強い抗体結合活性を示した。以下ではJun a GRPと称される、J.ashei花粉からのこのタンパク質調製物は、以下に記載するように生化学的および免疫学的に分析した。
【0146】
同様に、C.japonicaからの花粉の抽出物を調製し、脱塩し、カチオン交換クロマトグラフィに供した。抗体結合活性を示す画分をプールし、SECに適用した(図13a)。このSECクロマトグラムは、J.ashei花粉抽出物で得られたものよりも複雑な外観を示した。選択した画分をSDS-PAGEおよび抗Pru p 7 IgGの結合について分析した。分析は、画分2および3において約7kDaのタンパク質バンドを明らかにし(図13b、レーン2および3)、これらの画分も強い抗体結合活性を示した(図13c)。結果に基づいて、画分2および3は図13aの括弧で示したように、プールした。以下ではCry j GRPと称される、C.japonica花粉からのこのタンパク質調製物は、以下に記載するように生化学的および免疫学的に分析した。
【0147】
Jun a GRP調製物は、実施例5に記載されるように、試料調製後にOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MS分析によって分析した。この場合も、得られたMS/MSスペクトルの最適なデータベースの致はEST記録BY878079であった(図11a、配列番号2)。図14aは、BY878079の修正版を示し、実施例5において特定したように、位置302~304の誤ったTGA終止コドンは、システインコドンTGY(配列番号3)によって置き換えられ、Yは、IUPAC多義性コードシステム[44]で定義されるようにCまたはTを表す。図14bには、修飾BY878079(配列番号6)のヌクレオチド44~394によってコードされるアミノ酸配列を示し、MS/MSによって特定したJun a GRPペプチドが下を配置した。
【0148】
得られたMS/MSスペクトルの分析にPEAKS Studioソフトウェアを使用して、Jun a GRPの完全なアミノ酸配列(図14c、配列番号6)を4つの反復ステップで決定できる。Jun a GRP配列は、図14cに示すように、5つの位置で修正されたBY878079由来配列とは異なった。MS/MS分析は、修正されたBY878079記録によってコードされた配列の残基55~117に対応する、このアミノ酸配列の完全な適用範囲を示した。この配列を表す特定したペプチドの例を表2cに示す。分析において多型は検出されず、配列はPru p 7と67%の同一性を示した(図14d)。
【0149】
Jun a GRP調製物の完全性の証拠、および新規に決定したアミノ酸配列の確証は、試料をTris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で還元した後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得た。分析により、分子量6828.03Daに対応する、m/z=6829.04で優勢なピークが明らかになった。これは、配列番号6のすべてのシステイン残基が減少したJun a GRP配列で計算したモノアイソトピック質量と完全に一致する。
【0150】
Cry j GRP調製物は、実施例5に記載されるように、試料調製後にOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MSによって分析した。得られたMS/MSスペクトルの最適なデータベースの致は、C.japonicaの雄球花からのcDNA配列である、EST記録BY900480であった(図15a、配列番号7)。図15bには、BY900480のヌクレオチド位置15~365に及ぶオープンリーディングフレームの翻訳されたアミノ酸配列を示し、MS/MSによって特定したCry j GRPペプチドを下に配置した。タンパク質全体を表す、MS/MSによって特定した選択Cry j GRPペプチドのリストを表2dに示す。Cry j GRPの完全なアミノ酸配列を図15c、配列番号8に示す。分析において多型は検出されず、配列はPru p 7と68%の同一性を示した(図15d)。
【0151】
Cup s GRPおよびJun a GRPの場合と同様に、Cry j GRPは、最も一致するデータベース記録によってコードされたアミノ酸配列の最初の54残基を欠いていた。この場合も、最初の24残基は予測したシグナルペプチドを含み、続く30残基はタンパク質成熟中に切断されたプロペプチドを表すと結論づけた。
【0152】
Cry j GRP調製物の完全性の証拠、および新規に決定したアミノ酸配列の確証は、試料をTCEPで還元した後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得た。分析により、分子量6894.95Daに対応する、m/z=6895.96で大きなピークが明らかになった。これは、配列番号8のすべてのシステイン残基が減少したCry j GRP配列で計算したモノアイソトピック分子量質量と完全に一致する。
【0153】
3つのヒノキ科花粉由来GRP配列、Cup s GRP、Jun a GRP、およびCry j GRPは、90~98%の配列同一性を共有し(図16a~b)、SDS-PAGEにおいて同じ電気泳動移動度有する(図16c)。
【0154】
結論として、実施例6は、J.asheiおよびC japonicaからのPru p 7関連花粉タンパク質Jun a GRPおよびCry j GRPの精製、アミノ酸配列決定、ならびに質量決定をそれぞれ記載する。
【0155】
実施例7:2つの組換えCup s GRPアイソフォームのクローニングおよび精製
実施例5からのCup s GRPaおよびCup s GRPbのアミノ酸配列をコードするように設計した合成遺伝子を、発現ベクターpPICZα Aにクローン化し、Pichia pastoris株X-33に形質転換した。2つの組換えタンパク質は、実施例2においてrPru p 7について記載しものと同じ手順を使用して発現および精製した。MS/MS分析により、精製した組換えタンパク質の同一性および完全性を確認した。SDS-PAGEによるCup s GRPの2つの組換えアイソフォーム、nCup s GRP、およびrPru p 7の比較は、見かけ上の分子量が7kDaで、4つのタンパク質調製物のほぼ同一の電気泳動的外観を示した(図17)。
【0156】
結論として、実施例7は、実施例5において決定したアミノ酸配列バリアントのうちの2つを表す、Cup s GRPの2つの組換えアイソフォームのクローニングおよび精製を記載する。
【0157】
実施例8:rPru p 7と比較した天然および組換えCup s GRPのIgE結合活性
44人のモモアレルギー対象間血清中の精製したnCup s GRPと結合するIgE抗体を、ImmunoCAPで分析して、rPru p 7と比較した(図18)。試験した44個の血清のうち、43個(98%)がnCup s GRPに対して、38個(86%)がrPru p 7に対して検出可能なIgE応答(≧0.1kUA/L)を示した。rPru p 7に対して陰性であると試験された6つの血清のうち5つはnCup s GRPに対して陽性IgE応答を示した。nCup s GRPおよびrPru p 7とのIgE結合のレベルは有意に相関しており(r=0.68)、結合の中央値はnCup s GRPよりも約2倍高かった。分析は、Cup s GRPおよびPru p 7が免疫学的に関連していることを示したが、Pru p 7はCup s GRPと比較して不完全なエピトープ提示を保有することも示した。
【0158】
産生した2つの組換えCup s GRPタンパク質の免疫学的活性および確実性を評価するために、nCup s GRPを用いたIgE結合活性の比較を、19人のモモアレルギー対象の血清を使用するImmunoCAPで実行した。図19aおよび19bに示すデータは、nCup s GRPと比較したrCup s GRPa(配列番号3)およびrCup s GRPb(配列番号4)の両方の本質的に同等のIgE結合活性(それぞれr=0.98およびr=0.99)、rCup s GRPaよりもrCup s GRPbとのわずかに高いIgE結合を明らかにした。結果は、組換えCup s GRPタンパク質の構造的および免疫学的確実性の両方の証拠を提供する。
【0159】
結論として、実施例8は、ヒトIgE抗体による認識に関しても、ウサギIgG抗体によって最初に確立したモモアレルゲンPru p 7とC.sempervirens花粉タンパク質Cup s GRPとの間の免疫学的関連を確認する。第2に、Pru p 7よりもCup s GRPと結合するIgEレベルが高いことは、Cup s GRPが一次感作物質として作用し、Pru p 7と交差反応するIgE抗体を誘発し得ることを示唆する。
【0160】
実施例9:Pru p 7とCup s GRPとの間の交差反応性
Pru p 7とCup s GRPとの間の免疫学的関連をさらに特徴づけするために、IgE競合実験を実行した。4つのPru p 7反応性ヒト血清を、20μg/mLの最終濃度でnCup s GRPもしくはrCup s GRPbと個別に、または陰性対照として役割を果たす同じ容量比率の希釈緩衝液のみと組み合わせた。抗体/抗原複合体形成を可能にするために室温で2時間インキュベートした後、すべての試料をImmunoCAPによってPru p 7とのIgE結合について試験した。nCup s GRPおよびrCup s GRPbによるPru p 7とのIgE結合の阻害レベルを、希釈緩衝液対照の割合として計算した。
【0161】
実験結果を図20に示す。試験した4つの血清のうち3つにおいて、nCup s GRPおよびrCup s GRPbの両方が、rPru p 7とのIgE結合を本質的に完全に阻害した。また、第4の血清において、rPru p 7とのIgEの結合は、nCup s GRPによって完全に打ち負かされたが、rCup s GRPbは約80%の阻害を引き起こした。別の対照実験において、nCup s GRPが非関連のカバノキ花粉アレルゲンBet v 1とのIgE結合に対して阻害効果を発揮しないこと、Pru p 7とのIgE結合に対するその効果の特異性を確信 させることを確認した。
【0162】
結論として、IgE競合実験は、Pru p 7およびCup s GRPとのIgE結合における相関が、他の理由による共変動ではなく、2つのタンパク質に共通するエピトープ構造の抗体認識によって本当に引き起こされることを示す。
【0163】
実施例10:Cup s GRP、Jun a GRP、およびCry j GRP間の免疫学的類似性
この研究において特定および精製した3つの天然ヒノキ科花粉GRP間の免疫学的類似性の程度は、比較IgE結合分析で評価した。各樹木アレルゲンをImmunoCAP固相と結合させ、アッセイを使用して、18人のモモアレルギー対照の血清中のIgE抗体結合を測定した。比較を図21a~cに示す。nCup s GRPおよびnJun a GRPとのIgE結合のレベル(図21a)は、nCup s GRPとわずかに高い結合傾向(中央値レベル比1.12)で、非常に高い相関関係があることを見出した(r=0.98)。nCup a GRPおよびnCry j GRP(図21b)はまた、nCup s GRPとわずかに高い結合ではあるが(中央値レベル比1.46)、IgE結合と強い相関関係を示し(r=0.84)、血清を分析において使用した対象におけるC.japonica花粉に対する一次感作の欠如を反映している可能性がある。nJun a GRPおよびnCry j GRPの比較(図21c)は、IgE結合において同様の相関(r=0.87)を示したが、再びnCry j GRPとのわずかに低い結合を伴った(中央値レベル比1.28)。
【0164】
この例は、GRPタンパク質ファミリーからの4つのタンパク質(>90%の配列同一性)が非常に類似したIgE反応性を有することを示す。これは、アミノ酸配列において小さな変動があるにもかかわらず、IgE反応性が本質的に同じままであるという、高い配列同一性の他の小さなアレルゲンタンパク質について行われた観察を支持する。さらに実施例12を参照されたく、これは、交差反応性によるIgE反応性が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するタンパク質間で非常に類似していることも示す。
【0165】
実施例11:ヒノキ花粉症を有する対象間のCup s GRPに対する感作の有病率
88人のヒノキ花粉感作対象(t23>0.1kUA/L)の血清間の精製したnCup s GRPと結合するIgE抗体を、ImmunoCAPで分析した(図22)。これらの血清のうち、28個(32%)がnCup s GRPに対して検出可能なIgE応答(≧0.1kUA/L)を示した。血清のうちの13個(15%)において、nCup s GRPおよびヒノキ花粉抽出物と同様のレベルのIgEを観察し、このサブセットにおける対象のヒノキ花粉感作におけるCup s GRPの優勢な役割を示す。
【0166】
分析は、ヒノキ花粉感作対象の約3分の1が、ヒノキ科花粉GRPに相同なタンパク質を含む食物に対してアレルギー反応のリスクを与える感作プロファイルを有することを示唆する。かかる個体は、好適で代表的なヒノキ科花粉GRPを含むIgE試験を使用して特定することができる。
【0167】
より詳細には、モモアレルギーに関して選択されていない花粉症患者の分子分析は、これらの個体のうちの3分の1のみがCup s GRPに対する検出可能なIgEを有し、3分の2の大多数がこのアレルゲンに対する感作を欠いていることを示した。この発見は、Cup s GRPがヒノキ花粉においてマイナー的なアレルゲンであることを明らかにし、ヒノキ花粉感作患者の特定可能な亜群がモモまたは他のGRP含有食物に対するアレルギー反応のリスクがあることを示唆する。ヒノキ科花粉曝露が高い地域においてこの亜群を構成する実質的な絶対数およびGRP媒介性食物アレルギー反応の潜在的な重症度を考慮すると、GRP感作を伴うそれらを特定することは、この患者群の管理におけるリスク低減の貴重なステップとなるであろう。この目的のために、実施例7において記載したように、インビトロ診断用途のための試薬として好適な、完全に免疫反応性の組換えCup s GRPの生成が、第1の重要なステップである。
【0168】
実施例12:同じタンパク質ファミリーからの密接に関連するタンパク質-プロフィリンのIgE反応性の分析
類似アレルゲンの互換性を実証するために、異なるアレルゲン起源からの8つの異なるプロフィリンタンパク質を比較した。カバノキ(rBet v 2)、ヘーゼルナッツ(Cor a 2)、リンゴ(Mal d 4)、サクランボ(Pru av 4)、ナシ(Pyr c 4)、セロリ(Api g 4)、ニンジン(Dau c 4)、およびチモシー牧草(Phl p 12)からの組換えプロフィリンを、immunoCAPに固定化し、いくつかの血清を使用して試験した。タンパク質の各対間のIgE反応性の比較は、試験した血清の大部分について、試験したすべてのタンパク質の強い相関および非常に類似したIgE結合活性を示した(図23a)。
【0169】
これらのタンパク質の配列は、Emboss針プログラム[45]を使用して対合整列した(図23b)。対合配列同一性は、これらのタンパク質間で74%~93%の範囲であった。
【0170】
配列データをPhyre2[46]などの構造予測プログラムによって分析した場合、これら8つの配列はすべて、プロフィリンについて実験的に決定したものに近い折りたたみ構造と一致すると結論づけすることができる(データは示さず)。
【0171】
IgEデータは、これらのプロフィリンのうち4つを比較したScheurerらのデータと良好一致する[47]。その研究において、Bet v 2、Pru av 4、Pyr c 4、およびApi g 4が比較され、これらのタンパク質は細胞媒介物放出試験でほぼ同一のアレルゲン特性を示すと結論づけられた。これらの4つのタンパク質の対合配列同一性は76~86%の間で変化した。同様の結論およびプロフィリン間の高い交差反応性のさらなる証拠が、Villaltaらによる研究で提示された[48]。
【0172】
結論として、この実施例は、交差反応性によるIgE反応性が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するタンパク質間で非常に類似していることを示す。この研究において、タンパク質は可溶性で折りたたまれた小さなサイズのタンパク質であり、対合配列同一性は約80%であった。上述の研究はすべて天然起源タンパク質バリアントを用いて実行したが、特定のプロフィリンと高い配列同一性を有するこれらのタンパク質の人工的なバリアントも、バリアントが可溶性の折りたたみタンパク質で提供される場合、非常に高い類似性のIgE反応性を示すであろう。依然として可溶性および折りたたみプロフィリンの人工的なバリアントは、アミノ酸が系統的に保存されていない位置での制限された数のアミノ酸置換によって設計され得る。かかる置換が任意のかかる位置で他のプロフィリンにおいて生じるアミノ酸で行われる場合、これは可溶性の折りたたみタンパク質を産生する可能性を高めるであろう。
【0173】
実施例13:異なるヒノキ科種の花粉から実験的に決定したGRPの配列の分析
同様のIgE抗体結合反応性を割り当てた4つの配列を整列させた(図24)。これらの4つの配列から、非保存的なすべてのアミノ酸がXでマークされているヒノキ科花粉GRPコンセンサス配列を構築できる。
【0174】
さらに、このコンセンサス配列を使用してBLAST検索を実行し、このコンセンサス配列と相同性を有するすべての既知の配列を特定した。特に、このヒノキ科花粉GRPコンセンサス配列に対して70%(44/63)を超えるアミノ酸同一性を示す既知の配列は存在せず、本明細書で特定したヒノキ科花粉からの配列が、Pru p 7などの食物に存在するGRPタンパク質から系統的に比較的離れていることを示す。
【0175】
コンセンサス配列と59%(37/63)を超える配列同一性を有する37個の記録配列の選択を使用して、多重配列整列を行った。clustal omegaプログラムを使用して作成したこの多重配列整列(図25)から、図26の行Cに示すように、分析したすべての配列で同一である22個の高度に保存されたアミノ酸を同定した。これらの位置におけるアミノ酸交換は、タンパク質のIgE結合能力に影響を与え得る構造変化をもたらし得る。加えて、Pru p 7と系統的に比較的離れたヒノキ科花粉コンセンサス配列との間で20個のアミノ酸が同一であり、図26の行Bを参照されたい。これらの位置におけるアミノ酸交換は、タンパク質のIgE結合能力に影響を与え得る構造変化を誘導する高い可能性を有するであろう。最後に、ヒノキ科花粉コンセンサス配列とPru p 7との間で異なる14個のアミノ酸残基が存在し、図26の行AにおいてZで示した。表3に列挙したように、系統的に関連するタンパク質において生じるアミノ酸残基へのこれらの14個のアミノ酸位置Zのうちのいずれか1つ以上のアミノ酸置換は、タンパク質の全体的な構造を妨害しない可能性が高い。
【0176】
これらの配列から、ヒノキ科-Pru p 7 GRPコンセンサス配列(配列番号52)を設計し、ヒノキ科花粉GRP間で非保存的であるか、またはヒノキ科花粉およびPru p 7 GRP間で非保存的であるかのいずれかであるすべてのアミノ酸をXで示した(図26および配列番号52)。
【0177】
図25に示す整列を調査することにより、ヒノキ科-Pru p 7 GRPコンセンサス配列の系統的に非保存的な位置(図26における21個のX位置)で使用されているすべてのアミノ酸を特定できた。表3において、ヒノキ科花粉GRP配列から実験的に決定したものを含む、これらの系統的に試験したアミノ酸を列挙した(図24)。
【0178】
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図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図14d
図15a
図15b
図15c
図15d
図16a
図16b
図16c
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図20
図21a
図21b
図21c
図22
図23a
図23b
図24
図25
図26
【配列表】
2022538691000001.app
【国際調査報告】