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特表2022-538699マルチラテラル方向性掘削のための誘導方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】マルチラテラル方向性掘削のための誘導方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/30 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E21B43/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020568545
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 CA2020000078
(87)【国際公開番号】W WO2020257913
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,313
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518327729
【氏名又は名称】エバー・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デレク・リドル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ケアンズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・テーブス
(57)【要約】
軌跡ドリフトを低減させつつ坑井の掘削を誘導するための誘導方法である。各々の掘削された坑井は、追加の坑井の掘削を誘導するために、一緒にかまたは選択された順番で使用される信号伝達装置を組み込んでいる。信号伝達装置の漸進的な追加によって、特にはマルチラテラル坑井である坑井の間隔空け、位置決め、および連結が集中的で正確である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地質学的な地層の中に所定の構成で掘削するための方法であって、
前記地層において、入口坑井および出口坑井を有する坑井を掘削するステップと、
前記入口坑井と前記出口坑井との間に、相互連結坑井部分を有する連続坑井を形成するために、前記入口坑井と前記出口坑井との間の通信のための信号伝達で掘削するステップであって、前記相互連結坑井部分は、前記地層の中において前記入口坑井および前記出口坑井に対して所定の幾何学的構成を有する、ステップと、
前記地層の中において所定の幾何学的構成で前記連続坑井に動作可能に連結される第2の相互連結坑井部分を掘削するために、前記入口坑井、前記出口坑井、および前記相互連結坑井部分のうちの少なくとも1つから、通信のために信号伝達するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記入口坑井および前記出口坑井は同一の場所に設置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記地質学的な地層は不規則で一貫性のない温度勾配を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記入口坑井、前記出口坑井、および前記相互連結坑井部分のうちの少なくとも1つとの通信のために信号伝達するために、前記入口坑井および前記出口坑井の少なくとも一方から近位または遠位に部分的な坑井を掘削するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記地層の中において所定の構成で、動作可能な連結状態で、さらなる相互連結坑井部分および連続坑井の掘削を誘導するために、前記連続坑井および前記第2の相互連結坑井部分から、通信のためにさらなる信号伝達を確立するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
通信のために信号伝達するステップは、前記坑井同士の間で送受信することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
通信のために信号伝達するステップは、坑井同士の間で同時に実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
通信のために信号伝達するステップは、坑井同士の間で所定の順番で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
掘削する前記ステップは、前記相互連結坑井部分を伴う前記連続坑井を形成するために、交差のために前記入口坑井および前記出口坑井のための個別の場所から独立して実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
地上信号伝達装置、地中信号伝達装置、およびそれらの組み合わせを、掘削を誘導するために個別の場所に近接して提供するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記地層は熱を発生させる地層である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記地層は地熱地層である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記相互連結坑井部分にケーシングまたはライナー材料のない前記連続坑井を通じて流体の流れを引き起こすことで熱回収を容易にするために、少なくとも前記相互連結坑井部分を状態調節するステップをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
状態調節するステップは、前記入口坑井、前記出口坑井、および前記相互連結部分のうちの少なくとも1つの掘削の連続的、不連続的、最中、後、および順番の組み合わせのうちの少なくとも1つによってもたらされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記入口坑井の掘削作業、前記出口坑井の掘削作業、および前記相互連結坑井部分の掘削作業のうちの少なくとも1つからの信号伝達データに応じて、状態調節する前記ステップを動的に変更するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
地質学的な地層の中に所定の構成で掘削するための方法であって、
前記地層において、入口坑井および出口坑井を有する坑井を掘削するステップと、
前記入口坑井および前記出口坑井の少なくとも一方との通信のために信号伝達するために、前記入口坑井および前記出口坑井の少なくとも一方から近位または遠位に部分的な坑井を掘削するステップと、
前記入口坑井および前記出口坑井を、前記入口坑井、前記出口坑井、および前記部分的な坑井のうちの少なくとも1つとの通信のための信号伝達と連続的に連結する相互連結坑井部分を掘削するステップと
を含む方法。
【請求項17】
入口坑井と出口坑井とを有する第2の坑井を前記部分的な坑井から形成するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記部分的な坑井は、個別の離間された複数の坑井を備える、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
連結された連続坑井を形成するために、個別の離間された複数の前記坑井の間で信号伝達するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
信号伝達するステップは、坑井同士の間で送受信することを含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温、不規則な地層地質など、様々な環境において複数の坑井を誘導し、位置決めし、かつ間隔を空けるための方法に関し、より詳細には、本発明は、マルチラテラル掘削作業における軌跡ドリフトを効果的に制御するための効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削において正確性が求められることは明確である。作業は費用が非常に掛かり、坑井の複雑性または不適切な位置合わせ、間隔空け、および連結は、資本支出コストを法外なレベルまで悪化させてしまう。そのため、数十年にわたって、先行技術は高度な解決策を広めるために進化してきた。解決策のうちの多くは、坑井の組み合わせのためのSAGD作業に適用されるとして石油産業において具体化してきたが、この技術は、坑井の組み合わせを越えては、地熱産業において特に有益であるマルチラテラル掘削の正確性の有用性には対処してこなかった。比較的現代の開発のうちの例が以下の段落において提示されている。
【0003】
Clarkらは、2009年10月15日に公開された特許文献1において、マルチラテラル分岐部が設置される主の坑井孔を掘削およびケーシングすることでマルチラテラル坑井を掘削するための方法を教示している。マルチラテラル分岐部からの第1の横坑井が掘削およびケーシングされる。続いて、第2の横坑井が、第1の横坑井に対して制御された関係を有するように、掘削の間に磁気測距を用いてマルチラテラル分岐部から掘削される。この方法論は石油産業に集中されており、そのため多数の横坑井に関してはさらなる詳細を述べていない。軌跡の逸脱は明確に対処されてはいない。
【0004】
2018年11月1日に公開された特許文献2では、Dondericiらは、地層モデルを較正するために、第1の坑井からの電磁的および測量的な測定を利用する効果的なシステムを教示している。そのため、これは第2の坑井からの測定の解釈を向上させるために使用される。方法は、相対的な手法を用いるように指示されている。そのため、各々の坑井孔の正しい位置が正確に特定されない可能性があるが、坑井孔の相対的な位置は正確に特定できる。これは、坑井の組み合わせのより良好な位置決めを結果的にもたらしている。
【0005】
2016年9月22日に公開された特許文献3では、Dondericiらは、磁気測距およびジオステアリングのための方法およびシステムを開示している。この開示では、段落[0019]において以下のことが示されている。
「本明細書に記載されているように、本開示は、ある坑井孔を別の坑井孔に向けて誘導するために磁気双極子ビーコンを利用する例示の測距の方法およびシステムを記載している。一般化された実施形態では、ビーコンは低周波の磁場を第1の坑井孔から地層へと誘導し、低周波の磁場は、第2の坑井孔における1つまたは複数の双極子(受信機として作用する)によって感知される。ビーコンおよび/または受信する双極子は磁気双極子であり、特定の実施形態では、一方または両方が三軸磁気双極子であり得る。それでもなお、いずれの実施形態でも、ビーコンから放出される磁場は第1の坑井孔への接近の自然な経路を形成する。結果として、第2の坑井孔は、磁場方向と並ぶように操縦でき、これは第1の坑井孔に向かう理想的な接近を自動的に構築することになる。」
【0006】
システムは、掘削の間に一貫性を維持するために、2つの坑井システムにとって明確に有用である。
【0007】
さらなる開発において、Yaoらは、2017年5月4日に公開された特許文献4において、空間変換を用いる複数のダウンホールセンサによるデジタル位置合わせのためのシステムおよび方法を提供している。構成は、ダウンホール掘削において正確性を確保するために、最終的に数学的変換で使用されるデータを伝達する多数のセンサノードを組み込んでいる。
【0008】
2013年11月7日に公開された特許文献5では、水平な坑井の最適な間隔空けのためのシステムおよび方法が開示されている。方法およびシステムは、1つの坑井孔を別の坑井孔に向けて誘導するために、磁気双極子ビーコンを用いている。一実施形態は、第1の坑井孔から地層へと低周波の磁場を誘導するためのビーコンを含む。次に、これらの磁場は第2の坑井孔における1つまたは複数のダイポールによって感知される。ビーコンおよび/または受信する双極子は磁気双極子であり、この開示は、一部の実施形態において、一方または両方が三軸磁気双極子であり得ることを述べている。ビーコンから放出される磁場は第1の坑井孔への接近の自然な経路を形成する。結果的に、第2の坑井孔は、磁場方向と並ぶように操縦でき、これは第1の坑井孔に向かう好ましい接近を構築する。
【0009】
Rodneyは、2017年2月28日に公表された特許文献6において、磁気発生源を伴うドリルストリングを有する掘削システムがケーシングストリングで磁気モーメントを誘導する間の測距を教示している。磁気発生源は、ドリルストリングの長手方向軸に対して直角でない傾斜を伴う少なくとも1つの双極子を含む。誘導された磁気モーメントから磁場を検出する三軸磁気探知器が提供され、磁気発生源の回転配向を指示する信号を提供するセンサを有する。処理装置が、センサおよび三軸磁気探知器による測定からケーシングストリングの相対距離および方向を決定する。
【0010】
先行技術を考慮すると、有害な軌跡ドリフトのない1つまたは複数の方向からの掘削で、所定の間隔空けを伴う所定の様態で坑井が位置決めされる、誘導されるマルチラテラル坑井の方向性のある掘削を容易にすることが望ましい。
【0011】
本発明は、複数の実施形態において、とりわけこれらの特性を、石油産業およびガス産業と共に地熱産業において適用可能性を有する方法および構成で達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0255661号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0313203号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0273345号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0122099号明細書
【特許文献5】国際出願PCT/US2012/036538号明細書
【特許文献6】米国特許第9,581,718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一実施形態の1つの目的は、地中の地層において坑井をより効率的に位置決め、連結、および間隔空けするための方法論を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態のさらなる目的は、地質学的な地層の中に所定の構成で掘削するための方法であって、
地層において、入口坑井および出口坑井を有する坑井を掘削するステップと、
入口坑井と出口坑井との間に、相互連結坑井部分を有する連続坑井を形成するために、入口坑井と出口坑井との間の通信のための信号伝達で掘削するステップであって、相互連結坑井部分は、地層の中において入口坑井および出口坑井に対して所定の幾何学的構成を有する、ステップと、
地層の中において所定の幾何学的構成で連続坑井に動作可能に連結される第2の相互連結坑井部分を掘削するために、入口坑井、出口坑井、および相互連結坑井部分のうちの少なくとも1つのから、通信のために信号伝達するステップと
を含む方法を提供することである。
【0015】
方法の熱回収効果をさらに高めるために、相互連結坑井部分は状態調節され得る。
【0016】
状態調節は、ケーシング、ライナー、または他の熱伝達を低下させる要素が回避されるように、相互連結する坑井孔部分を少なくとも封止するために、シーラント複合物を導入する掘削の連続的、不連続的、最中、後、および順番の組み合わせのうちの少なくとも1つによってもたらされ得る。
【0017】
より詳細には、状態調節は、地層に由来しない少なくとも1つの組成物と、単位作業と、それらの組み合わせとを導入することを含み得る。
【0018】
方法の効果を増大させるために、入口坑井の掘削作業および出口坑井の掘削作業の少なくとも一方からの信号伝達データに応じて、状態調節する作業を動的に変更してもよい。
【0019】
特定の状況に応じて、単位作業には、掘削流体の温度を制御すること、掘削される地層における岩面を予冷却すること、掘削装置を冷却すること、地層において掘削から形成される坑井孔の孔空間を変更することがあり得る。
【0020】
孔空間の変更には、相互連結部分への地層流体進入または地層への作動流体の排出に対して孔空間を不浸透とさせるために、孔空間を後続の処理のために活性化させること、連続作業における掘削の間に孔空間を封止すること、不連続作業における掘削の間に孔空間を封止すること、およびそれらの組み合わせがあり得る。
【0021】
作業の状態調節の変更は、入口坑井と出口坑井との間の信号伝達からの信号伝達データに基づかれてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態のさらなる目的は、地質学的な地層の中に所定の構成で掘削するための方法であって、
地層において、入口坑井および出口坑井を有する坑井を掘削するステップと、
入口坑井および出口坑井の少なくとも一方との通信のために信号伝達するために、入口坑井および出口坑井の少なくとも一方から近位または遠位に部分的な坑井を掘削するステップと、
入口坑井および出口坑井を、入口坑井、出口坑井、および部分的な坑井のうちの少なくとも1つとの通信のための信号伝達と連続的に連結する相互連結坑井部分を掘削するステップと
を含む方法を提供することである。
【0023】
好都合なため、入口坑井および出口坑井は、設置面積の縮小のために同一の場所に設置されてもよい。地質学的な地層が不規則で一貫性のない温度勾配を有する場合、入口坑井と出口坑井とを離間した場所に位置決めすることが必要な可能性がある。
【0024】
部分的な坑井は、入口坑井、出口坑井、および相互連結坑井部分のうちの少なくとも1つとの通信のために信号伝達するために、入口坑井および出口坑井の少なくとも一方から近位または遠位にあり得る。これは、一貫性のない温度勾配、不連続な温度勾配、または、完全に異なる温度勾配の可能性にも拘らず、さらにより優れた度合いの坑井の形成および位置決めを許容する。
【0025】
さらなる信号伝達が、地層の中において所定の構成でさらなる相互連結坑井部分および連続坑井の掘削を動作可能な連結において誘導するために、形成された連続坑井および第2の相互連結坑井部分から実施され得る。この手法では、坑井のネットワークが、幅広い領域の熱を発生させる地層を捕捉するために、正確性を伴って形成できる。
【0026】
このように本発明を概して記載してきたが、ここで添付の図面が参照される。
【0027】
産業上の利用可能性
本発明は掘削技術において利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】方法の大まかなステップを示す流れ図である。
図2】マルチラテラル坑井の配置の概略図である。
図3図2の平面図である。
図4】さらなる実施形態による坑井の配置の変形の図である。
図5】さらなる実施形態による坑井の配置の別の変形の図である。
図6】マルチラテラルの配置の坑井配置のさらなる変形の図である。
図7】マルチラテラルの配置の坑井配置の別の変形の図である。
図8】マルチラテラルの配置の坑井配置のなおもさらなる変形の図である。
図9】設置面積が相当に縮小したマルチラテラル坑井を伴う、本発明による別の実施形態の図である。
図10】地熱の実施形態に適用可能な閉ループシステムの概略図である。
図11】本発明のさらなる実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図において使用されている同様の符号は同様の要素を示している。
【0030】
ここで図1を参照すると、方法における全体のステップについての大まかな流れ図が示されている。
【0031】
図2は、符号10によって概して示されている本発明の一実施形態の概略図である。例では、U字形の坑井が、離間された略鉛直の坑井12(入口)および14(出口)の対と、坑井12と14とを相互連結する水平な坑井として示されている相互連結坑井部分16とを備える。この坑井は、使用されていない坑井、つまり、SAGDの配置からあらかじめ存在していてもよく、または、新たに掘削されてもよい。本明細書においてさらに検討されている技術は、使用されていない石油坑井を別の目的で使用することに特に有用であり、来たるべき開示において、開示された技術の多くの態様が、地熱産業において位置決めされるのと同じくらい容易に、既存の石油およびガスの環境へと容易に付加または代用させることができることが明らかになるであろう。
【0032】
示されている例では、複数の従属的な横に水平な坑井18、20、22、および24は分岐部26および28から延びており、水平坑井として例では示されている。この手法では、すべての坑井は、それぞれの鉛直な坑井12または14に共通して連結されている。U字形の坑井があらかじめ存在している状況では、信号装置が鉛直坑井12、14および相互連結坑井16に沿って位置決めされ得る。これら信号装置は、符号30によって概略的に図示および描写されている。適切な信号装置は、技術的に知られている装置の解決策から選択でき、受信機、送信機、送受信機をとりわけ備え得る。適切な装置の例の目的のために、Baker Hughes、Scientific Drilling、Halliburtonなどへの参照が参考のために行われ得る。
【0033】
装置は、掘削速さ、坑井同士の間の間隔空け、坑井から分岐部への連結の完全性、ビットの摩耗、温度、および、掘削された坑井の中の流体の流速のうちの少なくとも1つを監視することができるように変更または選択され得る。
【0034】
この分野は技術的に成熟しており、そのため詳細な説明は必要ではない。
【0035】
U字形の坑井があらかじめ存在しない状況では、坑井は、最初の土台坑井として任意の構成で掘削でき、信号伝達装置は、その場に永久的に残すか、または、時間に応じて回収のために位置決めされるかのいずれかで、工程において適切なときに坑井の中に配置される。
【0036】
位置決めされると、一実施形態では、これは、第2の横坑井20の方向性の掘削との信号通信のための「マスター」を提供する。掘削配置(図示されていない)は、信号装置30からのスレーブとして誘導信号を受信するための容量を備え、さらなる信号装置32を水平の坑井20の経路に沿って残すことができる。掘削配置および信号装置30、32との追加の通信も可能である。
【0037】
信号装置32を伴う第2の坑井20を確立すると、これは第3の横坑井22のために信号伝達する誘導のためのマスターとして作用できる。先に言及された掘削配置は、この掘削手順と同様の様態で機能する。さらなる信号装置34が坑井22の経路に沿って位置決めされる。この配置によって、第2の坑井は、任意の連続または不連続な順番で、一緒にかまたは独立してのいずれかで、信号装置30および32の誘導から便益を得る。理解されるように、これは、複数のセンサの位置および場所のため、掘削の間に軌跡ドリフトを相当に低減させる効果を有する。
【0038】
第3の横坑井22に関して、掘削配置は、信号装置30、32、および34からのスレーブとして誘導信号を受信するための容量を備え、さらなる信号装置36を水平の坑井22の経路に沿って残すことができる。そのため、先の例と同様に、この坑井は装置30、32、および34の誘導から便益を得る。
【0039】
最後に、上記の例の考え方で、信号装置38が第4の横坑井24に位置決めされ、装置30、32、34、および36と通信することができる。
【0040】
信号装置が、最後のマルチラテラル坑井に向けて累積的となるため、各々の追加のマルチラテラル部分についてドリフトを漸進的に低減させることは、理解されるものである。これは、当初の坑井はマルチラテラルの状況においてあまり重要性を持たないため、あらかじめ存在する/使用されていない/放棄された坑井の使用を可能にする。より多くの横坑井がマルチラテラルの配置を形成するために増やされるため、当初の「マスター」の状況は重要性が低下する。
【0041】
先行技術において詳しく説明したように、この技術の分野における既存の技術の多くは、SAGD環境において固有の2つの坑井または注入および生産の坑井システムに集中している。しかしながら、この技術と関連付けられる正確性は、地熱の技術の分野において優れた適用を可能にし、その能力における言及がここで説明される。
【0042】
相互連結部分16は水平として示されているが、幾何学的配置は、地層の中の熱回収を最大化するのに適する任意の角度であり得る。そのために、図2は他の可能性を示している。
【0043】
図3は、図2の坑井の配置の上からの平面図である。
【0044】
ここで図4を参照すると、一般的に「重合」の配置と称され、地熱勾配Gの中に位置決めされている坑井の配置の変形が示されている。この実施形態では、重合における各々のマルチラテラル配置40は、それ自体の入口坑井12、12'、12"、12'''と出口坑井14、14'、14"、14'''とを有し得る。実現可能な場合、重合40の各々は単一の入口坑井12および単一の出口坑井14に共通して連結され得る。重合の配置の魅力は、より小さい設置面積でより大きな熱回収をする可能性である。
【0045】
図5は、「フォーク」の配置として言及されるさらなる変形を示している。この配置では、マルチラテラル坑井配置40は、離間した同一平面の関係、または、離間した平行な平面の配置で配置され得る。このような配置は、システムの全体の設置面積が問題ではない場合に適切である。マルチラテラル坑井40の重合は、図示されているように、勾配が不規則および/または分散させられている勾配Gの中から熱エネルギーを捕らえるときに効果的となるように、任意の角度で傾斜されてもよい。
【0046】
ここで図6を見ると、先に言及された相互連結坑井16に対して径方向で離間した配列で分散させられたマルチラテラル坑井20、22、24、26、および28の配置が示されている。例の配置は同軸であるが、他の変形が当業者によって理解されるものである。
【0047】
部品が明確性のために除去されているが、坑井20、22、24、26、および28がすべて、図示されていない鉛直の坑井12および14ならびに分岐部26および28と共通の連結を有することは理解される。この径方向の分散は、より大量の熱が所与の熱生成体積の中から引き出され得るため、地熱環境において特有の価値のものである。本開示において述べられた方向性の掘削前進を考慮すると、このような配置は可能であり、周囲環境に応じてカスタム可能である。
【0048】
図7はさらなる変形を示している。この実施形態では、図6に示された配置の対が同様の坑井18'、20'、22'、24'、および26'と互いに組み合わされている。本明細書において確立されている掘削方法による正確性は、互いと組み合わさることを容易にする。この配置は、設置面積に影響なく、例えば地熱帯域の中で、熱回収を高める。これは、資本支出の便益を明らかに有しており、所与の領域の中でさらにより大きなエネルギー供給能力を可能にもする。
【0049】
図8は、図7からの配置の対が離間されているが熱接触している別の変形を示している。
【0050】
坑井の踵部から爪先部までの温度偏差の軽減のために、図7および図8に描写されている配置は有用である。例として、図7に関連する坑井18、20、22、24、および26の中の流体の流れの方向は、坑井18'、20'、22'、24'、および26'の中の流れと反対であり得る。この手法では、1つの坑井における踵部が別の坑井の爪先部と熱接触することになり、つまり、対向流となる。
【0051】
ここで図9を参照すると、本発明の別の実施形態が示されている。この実施形態では、別々のマルチラテラル坑井40が地層Gの中で地理的に離れて拡げられ得る。この実施形態は、出口坑井14との連結のために終端46において一体に元に戻るように、符号42および44などのマルチラテラル坑井を連結している。マルチラテラル坑井42'および44'の第2のセットが、マルチラテラル坑井42および44と同一平面上または並列な平面にあり、同様に終端46'において一体に元に戻ることができる。この配置における利点は、入口/出口の設置面積48が比較的小さいながら、熱エネルギー回収能力が非常に大きいことである。これは、設置面積48における1つの用地に、大きな区画の土地を要件とすることなく生産性を増加させることができる。
【0052】
すべての例において、入口12および出口14は、公知の補助的な構成要素、つまり、発電装置、エネルギー貯蔵装置、電力網への連結配置、熱電併給システムをとりわけ備える。これは、明確性のために図1図9では省略されている。さらに、地熱システムが閉ループとなることは理解されるものであり、これは、入口、分岐部、マルチラテラル坑井介在発電装置など、および出口坑井が、地上位置に配置される最小の連結導管で連続回路を形成することになることを意味する。これについての大まかな言及は、図10に関連して行うことができる。
【0053】
補助または介在の装置は、地面52の上方に位置決めされる符号50で参照される。地面52の下の閉ループは、例では誇張されている。符号54は、装置30、32、34、26、および28のうちのいずれか1つまたはすべてとの通信が可能な地上送受信装置を表している。
【0054】
代替として、記載されているマスターおよびスレーブの通信配置とは対照的に、信号伝達通信が、選択的、連続的、または所定の順番で、すべての装置と同時にもたらされてもよい。これは、個々の状況の詳細に依存することになる。
【0055】
図11は、部分的に掘削された坑井または掘削孔56が、他のマルチラテラル配置に近接して位置決めされ、信号伝達/送受信装置56を備え得る実施形態における変形を示している。信号伝達/送受信装置56は、本明細書において先に述べられているような坑井配置の形成を誘導するために、他のこのような装置30、38、54と通信することができる。掘削孔56は、点線60によって示されているような他の坑井と一体化されるようにさらに掘削され得る。任意の数の掘削孔56が、地層の中のさらにネットワーク化された坑井の配置を形成するために含まれてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 本発明の実施形態
12、12'、12"、12''' 入口坑井、鉛直坑井
14、14'、14"、14''' 出口坑井、鉛直坑井
16 相互連結坑井部分
18、20、22、24 横坑井
26、28 分岐部
18、18'、20、20'、22、22'、24、24'、26、26'、28 マルチラテラル坑井
30、32、34、36、38 信号装置
40 マルチラテラル配置、重合
42、42'、44、44' マルチラテラル坑井
46、46' 終端
48 設置面積
50 補助装置、介在装置
52 地面
54 地上送受信装置
56 坑井、掘削孔、信号伝達/送受信装置
G 温度勾配、地層
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】