(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20220830BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568873
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2021079141
(87)【国際公開番号】W WO2021253874
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202110050500.6
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517283640
【氏名又は名称】雲南中煙工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊文
(72)【発明者】
【氏名】李超
(72)【発明者】
【氏名】李娥賢
(72)【発明者】
【氏名】範多青
(72)【発明者】
【氏名】張承明
(72)【発明者】
【氏名】王▲る▼
(72)【発明者】
【氏名】王慶華
(72)【発明者】
【氏名】李響麗
(72)【発明者】
【氏名】胡燕
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC19
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF01
2G059FF10
2G059HH01
2G059KK04
2G059LL03
2G059MM01
2G059MM02
(57)【要約】
紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法は、複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理することと、主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出することと、主流煙のスペクトルデータ及び浅層スペクトル特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることと、主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することと、主流煙のスペクトルデータ及び深層空間特徴に基づいて、深層官能品質結果を得ることと、浅層官能品質結果及び深層官能品質結果から、総合的な官能品質結果を得ることと、を含む。この紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法は、浅層から深層にかけてスペクトル特徴及び空間特徴をそれぞれ抽出するとともに、スペクトル-空間分類フレームを融合することにより、主流煙の官能評価結果を自動的に直接取得し、主流煙中の未知物の正確なスクリーニングを実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理することと、
拡張処理された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出することと、
前記浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータ及び前記浅層スペクトル特徴に基づいて、各前記主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることと、
前記浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することと、
前記深層空間特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータ及び前記深層空間特徴に基づいて、各前記主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得ることと、
前記浅層官能品質結果及び前記深層官能品質結果から、各前記主流煙のスペクトルデータの総合的な官能品質結果を得ることとを含む、ことを特徴とする、紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項2】
前記主流煙のスペクトルデータは、中赤外スペクトルデータを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項3】
前記複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理することは、
各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して水平反転処理を行うことと、
水平反転処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対してランダム切り抜き処理を行うことと、
ランダム切り抜き処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して物理的摂動処理を行うことと、
物理的摂動処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して成分摂動処理を行うこととを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項4】
前記拡張処理された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出することは、
スペクトルベクトルのHotelling T
2統計量を利用して複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータにおける外れデータ点を除外することにより、主流煙のスペクトルデータにおける異常データを除外することと、
異常データが除外された各前記主流煙のスペクトルデータに対して、2階微分、Karl Norris微分フィルタ、乗算的散乱補正及びウェーブレット変換の少なくとも1つの方法を用いてノイズ低減処理を行うこととを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項5】
前記浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータ及び前記浅層スペクトル特徴に基づいて、各前記主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることは、
前記浅層スペクトル特徴が抽出された各前記主流煙のスペクトルデータを予め構築された第1官能分類モデルに入力して、各前記主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることを含む、ことを特徴とする、請求項4に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項6】
前記第1官能分類モデルは、主成分分析に基づいて非線形サポートベクターマシンで構築されたものであり、前記第1官能分類モデルの構築方法は、
主成分分析法に基づいてノイズ低減処理された各前記主流煙のスペクトルデータに対して特徴選択を行うことで、主流煙中の各成分の前記主流煙のスペクトルデータにおける特徴的ピークを抽出することと、
非線形サポートベクターマシンアルゴリズムに基づいて、特徴的ピークが抽出された各前記主流煙のスペクトルデータを訓練して、第1官能分類モデルを得ることとを含む、ことを特徴とする、請求項5に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項7】
前記浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することは、
深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて、前記浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項8】
前記深層空間特徴が抽出された各紙巻きタバコの前記主流煙のスペクトルデータ及び前記深層空間特徴に基づいて、各前記主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得る前記ことは、
前記深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて抽出された複数の前記深層空間特徴を、スタックの形でサポートベクターマシンに入力して、第2官能分類モデルを得ることと、
前記深層空間特徴が抽出された各前記主流煙のスペクトルデータを前記第2官能分類モデルに入力して、各前記主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得ることとを含む、ことを特徴とする、請求項7に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項9】
前記深層残差畳み込みニューラルネットワークのネットワークパラメータの決定方法は、
主流煙のスペクトルデータセットを固定する前提で、最適分類誤差を第1目的関数として、第1最適ネットワークパラメータを取得することと、
最速演算効率を第2目的関数として、第2最適ネットワークパラメータを取得することと、
第1最適ネットワークパラメータに対応する第1最適畳み込みカーネルと、前記第2最適ネットワークパラメータに対応する第2最適畳み込みカーネルとの畳み込みカーネルサイズの平衡点を、前記深層残差畳み込みニューラルネットワークの最終的なネットワークパラメータとして選択することとを含む、ことを特徴とする、請求項7に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【請求項10】
前記浅層官能品質結果及び前記深層官能品質結果から、各前記主流煙のスペクトルデータの総合的な官能品質結果を得ることは、
前記浅層官能品質結果及び前記深層官能品質結果をそれぞれ専門家評価結果と比較して、前記浅層官能品質結果に対応する浅層モデル化正解率と、前記深層官能品質結果に対応する深層モデル化正解率とを得ることと、
前記浅層モデル化正解率及び前記深層モデル化正解率に基づいて、前記浅層官能品質結果及び前記深層官能品質結果の重みを決定することと、
前記浅層官能品質結果及び前記深層官能品質結果を重み付け加算して、総合的な官能品質結果を得ることとを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコ製品の品質評価の技術分野に関し、特に紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコは、特殊な嗜好品として、その主流煙中の主成分の含有量が紙巻きタバコの品質や口当たりに直接影響を与えるが、如何に煙成分と官能評価との間の関連性を効果的に数値化して製品の正確な評価を実現するかは、タバコ業界で早急に解決しなければならない重要な技術的ボトルネックとなっている。
【0003】
現在、紙巻きタバコの主流煙の官能評価方法は、専門家の喫煙評価により行われ、即ち、官能評価は、専門家が紙巻きタバコを喫煙して対応する評価項目を採点することで得られたのである。この官能評価方法は、人に依存しており、しかも、人による喫煙評価が官能評価者自身の要因や外部環境の影響を受けるため、紙巻きタバコの評価結果に不確実性をもたらすとともに、専門家による喫煙評価方法は、時間や労力がかかり、煩雑で効率が低く、官能評価結果が安定しないなどの問題点がある。したがって、紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解消して、紙巻きタバコの主流煙の官能評価の効率、正確性及び安定性を向上させることができる、紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法を提供することにある。
【0005】
本発明は、
複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理することと、
拡張処理された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出することと、
浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び浅層スペクトル特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることと、
浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することと、
深層空間特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び深層空間特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得ることと、
浅層官能品質結果及び深層官能品質結果から、各主流煙のスペクトルデータの総合的な官能品質結果を得ることと、を含む紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法を提供する。
【0006】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、主流煙のスペクトルデータが、中赤外スペクトルデータを含む。
【0007】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理することが、
各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して水平反転処理を行うことと、
水平反転処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対してランダム切り抜き処理を行うことと、
ランダム切り抜き処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して物理的摂動処理を行うことと、
物理的摂動処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して成分摂動処理を行うことと、を含む。
【0008】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、拡張処理された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出することが、
スペクトルベクトルのHotelling T2統計量を利用して複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータにおける外れデータ点を除外することにより、主流煙のスペクトルデータにおける異常データを除外することと、
異常データが除外された各主流煙のスペクトルデータに対して、2階微分、Karl Norris微分フィルタ、乗算的散乱補正及びウェーブレット変換の少なくとも1つの方法を用いてノイズ低減処理を行うことと、を含む。
【0009】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び浅層スペクトル特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることが、
浅層スペクトル特徴が抽出された各主流煙のスペクトルデータを予め構築された第1官能分類モデルに入力して、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得ることを含む。
【0010】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、第1官能分類モデルが、主成分分析に基づいて非線形サポートベクターマシンで構築されたものであり、第1官能分類モデルの構築方法は、
主成分分析法に基づいてノイズ低減処理された各主流煙のスペクトルデータに対して特徴選択を行うことで、主流煙中の各成分の主流煙のスペクトルデータにおける特徴的ピークを抽出することと、
非線形サポートベクターマシンアルゴリズムに基づいて、特徴的ピークが抽出された各主流煙のスペクトルデータを訓練して、第1官能分類モデルを得ることと、を含む。
【0011】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することが、
深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて、浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出することを含む。
【0012】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、深層空間特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び深層空間特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得ることが、
深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて抽出された複数の深層空間特徴を、スタックの形でサポートベクターマシンに入力して、第2官能分類モデルを得ることと、
深層空間特徴が抽出された各主流煙のスペクトルデータを第2官能分類モデルに入力して、各主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得ることと、を含む。
【0013】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、深層残差畳み込みニューラルネットワークのネットワークパラメータの決定方法が、
主流煙のスペクトルデータセットを固定する前提で、最適分類誤差を第1目的関数として、第1最適ネットワークパラメータを取得することと、
最速演算効率を第2目的関数として、第2最適ネットワークパラメータを取得することと、
第1最適ネットワークパラメータに対応する第1最適畳み込みカーネルと、第2最適ネットワークパラメータに対応する第2最適畳み込みカーネルとの畳み込みカーネルサイズの平衡点を、深層残差畳み込みニューラルネットワークの最終的なネットワークパラメータとして選択することと、を含む。
【0014】
上述した紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法では、好ましくは、浅層官能品質結果及び深層官能品質結果から、各主流煙のスペクトルデータの総合的な官能品質結果を得ることが、
浅層官能品質結果及び深層官能品質結果をそれぞれ専門家評価結果と比較して、浅層官能品質結果に対応する浅層モデル化正解率と、深層官能品質結果に対応する深層モデル化正解率とを得ることと、
浅層モデル化正解率及び深層モデル化正解率に基づいて、浅層官能品質結果及び深層官能品質結果の重みを決定することと、
浅層官能品質結果及び深層官能品質結果を重み付け加算して、総合的な官能品質結果を得ることと、を含む。
【0015】
本発明に係る紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法は、主流煙のスペクトルデータを拡張処理することにより、限られたサンプルの条件で、主流煙に暗黙的に含まれるスペクトル特徴と空間特徴とのパラダイムを最大限に向上させ、訓練サンプル数への需要を効果的に低下させることができ、浅層スペクトル特徴を抽出することにより、後続の深層学習に複雑系の重要な成分の指向性情報を提供し、深層空間特徴の抽出精度を向上させるのに役立つことができ、深層空間特徴を抽出することにより、訓練データから有効な深層特徴表現を迅速に学習して、異常サンプルと正常サンプルとの特徴情報表現を拡張することができる。本発明は、浅層から深層にかけてスペクトル特徴及び空間特徴をそれぞれ抽出するとともに、スペクトル-空間分類フレームを融合することにより、主流煙の官能評価結果を自動的に直接取得し、主流煙中の未知物の正確なスクリーニングを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【
図1】本発明に係る紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の各例示的な実施例を詳細に説明する。例示的な実施例の説明は、単に説明するためのものに過ぎず、本発明及びその適用又は使用に対する如何なる限定とならない。本発明は、本明細書に記載された実施例に限定されることなく、多くの異なる形態で実施されてもよい。これらの実施例を提供することにより、本発明を徹底的かつ完全なものにし、当業者に本発明の範囲を十分に伝えることができる。なお、これらの実施例に記載された構成要素及びステップの相対的な配置、材料の成分、数式及び数値は、特に明記しない限り、限定するものではなく、単なる例示として解釈されるべきである。
【0018】
本発明で使用される「第1」、「第2」及び類似の用語は、順序、数量又は重要性を示すものではなく、単に異なる部分を区別するためのものに過ぎない。「備える」又は「含む」などの類似の用語は、その用語の前の要素がその用語の後に列挙された要素を包含することを意味し、他の要素も包含する可能性を排除するものではない。「上」、「下」などは、相対的位置関係を示すためのものであり、説明対象の絶対位置が変化すると、その相対的位置関係もそれに応じて変化する可能性がある。
【0019】
本発明において、特定の構成要素が第1構成要素と第2構成要素との間に位置すると記載された場合に、その特定の構成要素と第1構成要素又は第2構成要素との間に介在構成要素が存在していてもよいし、介在構成要素が存在しなくてもよい。特定の構成要素が他の構成要素に接続されると記載された場合に、その特定の構成要素は、介在構成要素を介さずに当該他の構成要素に直接接続されていてもよいし、当該他の構成要素に直接接続されずに介在構成要素を有していてもよい。
【0020】
特に他に定義しない限り、本発明で使われるすべての用語(技術的用語又は科学用語を含む)は、本分野の当業者によって理解されるものと同様な意味を持っている。また、一般的に使われる辞典に定義されている用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を持つと解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義しない限り、理想的な意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0021】
関連分野の当業者に知られている技術、方法及び装置は、詳細に説明されないことがあるが、適切な場合には、明細書の一部としてみなされるべきである。
【0022】
図1に示すように、この実施例に係る紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法は、実施する際に、ステップS1~ステップS6を含む。
【0023】
ステップS1:複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータを拡張処理する。
【0024】
主流煙のスペクトルデータは、中赤外スペクトルデータを含み、具体的には、中空導波管の二次元赤外スペクトル測定技術に基づいて取得されたものであり、中空導波管の赤外スペクトル技術は、赤外拡張技術として、従来の赤外スペクトル技術に比べて、中空光ファイバ技術が、Ag/AgI複合被膜の高反射率で入射光を中空光ファイバ内で多重反射して光と物質との相互作用の光路長を延長させることにより、被測定系の赤外吸収強度を効率的に向上させて、検出限界を低下させ、分析の精度及び正確性を向上させることができる。
【0025】
主流煙のスペクトルデータを拡張処理することにより、全体最適化の立場から訓練サンプル数への需要を低下させることができ、主流煙に関連する成分のスペクトル(例えば、中空導波管の二次元赤外スペクトル)の空間パラダイムを拡張し、第1官能分類モデル及び第2官能分類モデル(後述する)の過剰適合リスクを効果的に低減することができる。こうして、限られたサンプルの条件で、主流煙に暗黙的に含まれるスペクトル特徴と空間特徴とのパラダイムを最大限に向上させて、第2官能分類モデルの既存のデータに対するディープマイニングを推進して、訓練サンプル数への需要を効果的に低下させることができる。
【0026】
さらに、本発明の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の一実施形態において、ステップS1はステップS11~S14を含むことができる。
【0027】
ステップS11:各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して水平反転処理を行う。
【0028】
ステップS12:水平反転処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対してランダム切り抜き処理を行う。
【0029】
第2官能分類モデルの深層学習に関する部分は、データ量、即ち中空導波管の二次元赤外スペクトルデータにおける空間分布特徴に対する要求が最も高く、この特徴は、画像情報として見なされてもよい。したがって、本発明は、第2官能分類モデルが空間画像を認識する有効性及びロバスト性を向上させるように、従来の画像拡張モードを用いて、水平反転、ランダム切り抜きなどの処理を行う。
【0030】
ステップS13:ランダム切り抜き処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して物理的摂動処理を行う。
【0031】
実際のサンプルの中空導波管の二次元赤外スペクトル分析において、二次元スペクトル情報は、物質成分情報の影響を受けるだけではなく、その物理状態の影響も受ける。したがって、サンプルの物理状態を変更することにより、より多くの中空導波管の二次元赤外スペクトルのパラダイム情報を効率的に取得し、深層学習の正確性及び有効性を向上させる。主流煙における物理的摂動要因は主に、温度、風速、圧力、喫煙方式などの異なる物理状態が、主流煙の中空導波管の二次元赤外スペクトル情報に与える影響を含む。
【0032】
ステップS14:物理的摂動処理が行われた各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータに対して成分摂動処理を行う。
【0033】
具体的な実施において、異なる組成の標準サンプルを任意に添加し、配合成分を変更するなどの成分摂動方法により、異なる成分摂動状態での主流煙の中空導波管の二次元赤外スペクトルの情報変化を決定することができる。
【0034】
以上の複数の異なるデータ拡張処理により、実際のサンプルの中空導波管の二次元赤外スペクトル信号のパラダイム情報を向上させて、後続の中空導波管の二次元赤外スペクトルの分類識別性能を向上させることができる。
【0035】
ステップS2:拡張処理された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから浅層スペクトル特徴を抽出する。
【0036】
本発明の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の一実施形態において、ステップS2はステップS21~ステップS22を含むことができる。
【0037】
ステップS21:スペクトルベクトルのHotelling T2統計量を利用して複数の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータにおける外れデータ点を除外することにより、主流煙のスペクトルデータにおける異常データを除外する。
【0038】
ステップS22:異常データが除外された各主流煙のスペクトルデータに対して、2階微分、Karl Norris微分フィルタ、乗算的散乱補正(multiplicative scatter correction,MSC)及びウェーブレット変換の少なくとも1つの方法を用いてノイズ低減処理を行う。
【0039】
ノイズ低減処理を行うことにより、ノイズ干渉を低減して、主流煙のスペクトルデータにおける特徴的ピークをより明確にし、主流煙のスペクトルデータの背景からの特徴的ピークの抽出を容易にし、信号対ノイズ比を向上させることができる。そして、データスクリーニング及びノイズ低減処理により、後続のスペクトル解析方法が被測定物質のデータ特徴を正確に抽出するのに役立つことができる。
【0040】
ステップS3:浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び浅層スペクトル特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得る。
【0041】
浅層スペクトル特徴を抽出する目的は、複雑で変化しているスペクトル(例えば、中空導波管の二次元赤外スペクトル)信号からサンプルの重要な成分のスペクトル特徴を抽出して、スペクトル空間の次元削減を実現することにある。具体的には、浅層スペクトル特徴が抽出された各主流煙のスペクトルデータを予め構築された第1官能分類モデルに入力して、各主流煙のスペクトルデータの浅層官能品質結果を得る。浅層スペクトル特徴を抽出することにより、後続の深層学習に複雑系の重要な成分の指向性情報を提供し、深層空間特徴の抽出精度を向上させるのに役立つことができる。
【0042】
さらに、第1官能分類モデルは、主成分分析(Principal Component Analysis,PCA)に基づいて非線形サポートベクターマシン(Support vector machine,SVM)で構築されたものであり、第1官能分類モデルの構築方法は、
主成分分析法に基づいてノイズ低減処理された各主流煙のスペクトルデータに対して特徴選択を行うことで、主流煙中の各成分の主流煙のスペクトルデータにおける特徴的ピークを抽出することと、
非線形サポートベクターマシンアルゴリズムに基づいて、特徴的ピークが抽出された各主流煙のスペクトルデータを訓練して、第1官能分類モデルを得ることと、を含む。
【0043】
非線形サポートベクターマシンは、線形サポートベクターマシンに比べて、分類過程が曖昧であり、抽出された特徴的ピークを入力すれば、判別関係及び分類関係を自ら確立することができる。
【0044】
さらに、第1官能分類モデルの分類結果は少なくとも良好、普通及び不良を含む。本発明において、第1官能分類モデルの分類結果が良好、普通及び不良となっているが、第1官能分類モデルの分類結果及び数を特に限定するものではなく、パラメータの定義及び重みの変更により、他の分類結果を得ることができる。
【0045】
また、第1官能分類モデルの訓練の際に、専門家官能評価得点により第1官能分類モデルから出力される第1分類判定値を教師有り学習することにより、第1官能分類モデルの検証及び更新を実現することができる。
【0046】
本発明の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の一実施形態において、第1官能分類モデルは以下の訓練方法により訓練する。
まず、主流煙のスペクトルデータの訓練セットを第1官能分類モデルに入力する。具体的には、主流煙のスペクトルデータのオリジナル訓練セットにおける異常データを除外することと、異常データが除外されたオリジナル訓練セットにおける各主流煙のスペクトルデータに対してノイズ低減処理を行うことと、ノイズ低減処理されたオリジナル訓練セットにおける各主流煙のスペクトルデータを第1官能分類モデルに入力することと、を含むことができる。
次に、第1分類判定値及び専門家官能評価得点から第1目的関数を得、第1目的関数の勾配を第1官能分類モデルに逆伝搬する。
最後に、第1分類判定値及び専門家官能評価得点から得られた第1目的関数の関数値が設定値になった場合に、訓練を停止する。
【0047】
ステップS4:浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出する。
【0048】
具体的には、深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて、浅層スペクトル特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータから深層空間特徴を抽出する。複雑系に未知の干渉物がある場合に、元の重要な成分の位相空間情報がある程度の歪みをもたらすが、深層残差畳み込みニューラルネットワークは、この変化について、訓練データから有効な深層特徴表現を迅速に学習して、異常サンプルと正常サンプルとの特徴情報表現を拡張することができる。
【0049】
ステップS5:深層空間特徴が抽出された各紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータ及び深層空間特徴に基づいて、各主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得る。
【0050】
深層空間特徴を抽出する目的は、深層残差畳み込みニューラルネットワークの手法により、シフト不変の方式で深層空間特徴の抽出及び拡張を達成することにある。深層残差畳み込みニューラルネットワークのネットワークパラメータの決定方法は、
主流煙のスペクトルデータセットを固定する前提で、最適分類誤差を第1目的関数として、第1最適ネットワークパラメータを取得することと、
最速演算効率を第2目的関数として、第2最適ネットワークパラメータを取得することと、
第1最適ネットワークパラメータに対応する第1最適畳み込みカーネルと、第2最適ネットワークパラメータに対応する第2最適畳み込みカーネルとの畳み込みカーネルサイズの平衡点を、深層残差畳み込みニューラルネットワークの最終的なネットワークパラメータとして選択することと、を含む。
【0051】
さらに、本発明の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の一実施形態において、ステップS5はステップS51~ステップS52を含むことができる。
【0052】
ステップS51:深層残差畳み込みニューラルネットワークに基づいて抽出された複数の深層空間特徴を、スタックの形でサポートベクターマシンに入力して、第2官能分類モデルを得る。
【0053】
さらに、第2官能分類モデルの分類結果は官能評価得点である。本発明において、第2官能分類モデルの分類結果が官能評価得点であるが、第2官能分類モデルの分類結果及び数を特に限定するものではなく、パラメータの定義及び重みの変更により、他の分類結果を得ることができる。
【0054】
ステップS52:深層空間特徴が抽出された各主流煙のスペクトルデータを第2官能分類モデルに入力して、各主流煙のスペクトルデータの深層官能品質結果を得る。
【0055】
本発明は、深層学習ポリシーを導入して、様々な専門家の官能評価過程を模擬する。本発明は、具体的な実施において、深層学習の際に、主流煙による1本のタバコの官能データ分析という対象問題を、異なる重み及びパラメータが配置される予測モデルの多クラス分類問題に分けて、異なる専門家の間の官能差を模擬し、異なる紙巻きタバコサンプルの主流煙の成分を専門家の事前知識に基づくマルチラベル問題と見なし、専門家官能評価で得られた専門家ラベルの得点情報により深層学習モデルの教師情報を改良する。ラベルを改良する際に、第2官能分類モデルで得られた得点情報と、専門家官能評価で得られた専門家ラベルの得点情報との共起関係を利用して、得られた深層学習の訓練結果を改善する。
【0056】
さらに、本発明は、異なる程度の品質を有する標準紙巻きタバコサンプルを選択し、サンプルの中空導波管の二次元赤外スペクトル情報を第2官能分類モデルの入力として収集し、主流煙の官能評価分析を行い、専門家得点と比較して、第2官能分類モデルの有効性を決定する。こうして、反復、アップグレードを繰り返すことにより、正確な評価モデルを確立することが困難な場合に、中空導波管の二次元赤外スペクトルデータの特徴及びその法則性を分析することにより、官能評価に関連する特徴セグメントで部分的な動的分析を行うように、目的関数に適応的に近似させて、主流煙の品質評価と官能分析を実現することができる。
【0057】
ステップS6:浅層官能品質結果及び深層官能品質結果から、各主流煙のスペクトルデータの総合的な官能品質結果を得る。
【0058】
本発明の紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法の一実施形態において、ステップS6はステップS61~ステップS63を含むことができる。
【0059】
ステップS61:浅層官能品質結果及び深層官能品質結果をそれぞれ専門家評価結果と比較して、浅層官能品質結果に対応する浅層モデル化正解率と、深層官能品質結果に対応する深層モデル化正解率とを得る。
【0060】
ステップS62:浅層モデル化正解率及び深層モデル化正解率に基づいて、浅層官能品質結果及び深層官能品質結果の重みを決定する。
【0061】
ステップS63:浅層官能品質結果及び深層官能品質結果を重み付け加算して、総合的な官能品質結果を得る。
【0062】
浅層官能品質結果及び深層官能品質結果から総合的な官能品質結果を得ることで、スペクトルの浅層特徴ネットワークと深層特徴ネットワークとの特性を有機的に結合させて、互いに補充し合い、互いに補正し合い、優れたスペクトルビッグデータの特徴抽出能力を含むようにする。
【0063】
本発明の実施例に係る紙巻きタバコの主流煙のスペクトルデータの官能評価方法は、主流煙のスペクトルデータを拡張処理することにより、限られたサンプルの条件で、主流煙に暗黙的に含まれるスペクトル特徴と空間特徴とのパラダイムを最大限に向上させ、訓練サンプル数への需要を効果的に低下させることができ、浅層スペクトル特徴を抽出することにより、後続の深層学習に複雑系の重要な成分の指向性情報を提供し、深層空間特徴の抽出精度を向上させるのに役立つことができ、深層空間特徴を抽出することにより、訓練データから有効な深層特徴表現を迅速に学習して、異常サンプルと正常サンプルとの特徴情報表現を拡張することができる。本発明は、浅層から深層にかけてスペクトル特徴及び空間特徴をそれぞれ抽出するとともに、スペクトル-空間分類フレームを融合することにより、主流煙の官能評価結果を自動的に直接取得し、主流煙中の未知物の正確なスクリーニングを実現する。
【0064】
以上、本発明の各実施例について詳細に説明した。本発明の構想を不明瞭にすることを避けるために、当該分野で知られているいくつかの詳細は記述されていない。当業者であれば、以上の説明から、本明細書に開示される技術的手段をどのように実施するかについて十分に理解するであろう。
【0065】
本発明のいくつかの特定の実施例を例として詳細に説明したが、当業者であれば、以上の例は説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解するであろう。当業者であれば、本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限り、以上の実施例に修正を加えたり、技術的特徴の一部を均等に置き換えたりすることができることを理解するであろう。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】