(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】226ラジウムから225アクチニウムを生成する方法
(51)【国際特許分類】
G21G 1/10 20060101AFI20220830BHJP
G21G 4/08 20060101ALI20220830BHJP
G21G 1/12 20060101ALI20220830BHJP
B01D 15/04 20060101ALI20220830BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220830BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G21G1/10
G21G4/08 Z
G21G1/12
B01D15/04
B01D15/00 N
B01D15/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569159
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020067376
(87)【国際公開番号】W WO2020260210
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510304715
【氏名又は名称】ザ ヨーロピアン ユニオン、リプレゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッション
【氏名又は名称原語表記】The European Union,represented by the European Commission
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルムベック,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】カチュフォ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バニク,ニドゥ,ラル
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017BA13
4D017BA15
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA01
4D017EB01
(57)【要約】
225アクチニウムは、照射装置(2)において、プロトン、重水素又はガンマ線照射によって液体
226ラジウムターゲットを照射し、第1の抽出装置(6)内の照射された液体ターゲット溶液から、生成した
225アクチニウムを抽出することによって、
226ラジウムから生成される。次いで、
225アクチニウムが除去された液体ターゲット溶液を再び照射して、液体ターゲット溶液中にさらに
225アクチニウムを生成する。液体ターゲット溶液は、好ましくは、閉ループ(4)において照射装置を通って循環し、さらなる閉ループ(7)において第1の抽出装置(6)を通って循環する。このような方法の利点は、生成されたアクチニウムをラジウムから分離することができるように、照射されたターゲット溶液を乾燥及び再溶解する必要がなく、分離されたラジウムから出発して液体ターゲットを再び生成するためにさらなる乾燥及び再溶解工程が必要ないことである。したがって、ラジウムターゲットは、特に、
226ラジウムの減衰によって連続的に生成されるラドンガスを考慮して、より効率的で安全な方法でリサイクルすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
226ラジウムから
225アクチニウムを生成する方法であって、
226ラジウムを含む液体ターゲット溶液を準備する工程と、
照射装置(2)内で前記液体ターゲット溶液を照射して、前記液体ターゲット溶液中に含まれる
226ラジウムから出発して前記液体ターゲット溶液中に
225アクチニウムを生成する工程と、
生成された
225アクチニウムの少なくとも一部を残留
226ラジウムから分離する工程と、
を含み、
前記分離する工程は、第1の抽出装置(6)内で行われる第1の抽出工程を含み、前記第1の抽出工程において、前記
225アクチニウムの少なくとも一部は前記液体ターゲット溶液から抽出され、一方で、前記
226ラジウムは前記液体ターゲット溶液中に維持され、
前記方法は、
前記
225アクチニウムの一部が抽出された前記液体ターゲット溶液を前記照射装置(2)内で再び照射して、前記液体ターゲット溶液内に含まれる前記
226ラジウムから出発して前記液体ターゲット溶液中にさらに
225アクチニウムを生成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液体ターゲット溶液が、照射工程中に、前記照射装置(2)及び熱交換器(5)を通る第1の閉ループ(4)で循環されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体ターゲット溶液が、前記第1の抽出工程中に、前記第1の抽出装置(6)を通る第2の閉ループ(7)で循環されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体ターゲット溶液が、照射工程中に、容器(1)及び前記照射装置(2)を通る前記第1の閉ループ(4)で循環され、前記第1の抽出工程中に、前記容器(1)及び前記第1の抽出装置(6)を通る前記第2の閉ループ(7)で循環されることを特徴とする、請求項2及び3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体ターゲット溶液が、前記
225アクチニウムの少なくとも一部が前記液体ターゲット溶液から抽出される前に、16日間未満、好ましくは13日間未満、より好ましくは10日間未満、最も好ましくは7日間未満、照射されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体ターゲット溶液が、照射工程中に、プロトン又は重水素で照射されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体ターゲット溶液が、照射工程中に、γ線照射で照射され、
226ラジウムの
225ラジウムへの変換及び
225ラジウムの
225アクチニウムへの変換によって、
225アクチニウムを生成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の抽出工程中、前記
225ラジウムが前記液体ターゲット溶液中に維持されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体ターゲット溶液が、
226ラジウム塩及びその対応する酸の溶液を含み、前記溶液が、好ましくは
226ラジウムの硝酸塩及び硝酸を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の抽出装置(6)が、前記第1の抽出工程中に前記
225アクチニウムが蓄積する第1の吸着剤を含み、前記方法が、第1の溶離工程を含み、前記第1の溶離工程において、前記第1の吸着剤上に蓄積された前記
225アクチニウムの少なくとも一部が、第1の溶離剤(16)によって前記第1の吸着剤から溶離されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体ターゲット溶液が、前記第1の抽出工程中に前記
225アクチニウムが前記第1の吸着剤上に蓄積するように所定のpH値を有し、一方、前記第1の溶離剤は、前記第1の溶離工程中に前記
225アクチニウムが前記第1の吸着剤から溶離されるように、前記液体ターゲット溶液のpH値とは異なるpH値を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の溶離剤(16)が、前記ターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含有する第1の酸性溶液を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の溶離剤(16)が、第1の溶離工程中、第2の抽出装置(18)を通る第4の閉ループ(17)で循環され、前記第2の抽出装置(18)は、前記第1の溶離剤によって前記第1の吸着剤から溶離された前記
225アクチニウムが前記第1の溶離工程中に蓄積する第2の吸着剤を含み、前記方法が、第2の溶離工程を含み、前記第2の溶離工程において、前記第2の吸着剤上に蓄積された前記
225アクチニウムの少なくとも一部が第2の溶離剤(19)によって前記第2の吸着剤から溶離され、特に、前記第2の溶離剤(19)が、前記第2の溶離工程中に前記
225アクチニウムが前記第2の吸着剤から溶離されるように前記第1の溶離剤のpH値とは異なるpH値を有し、前記第2の溶離剤(19)が、好ましくは前記ターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含む第2の酸性溶液を含むことを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶離剤(16)が、前記第1の抽出装置(6)から、第2のラドンフィルタ(20)、特に第2の活性炭フィルタを通って、前記第2の抽出装置(18)に循環されて、前記第1の溶離剤(16)からラドンが抽出されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の溶離剤(19)が、第2の溶離工程中に、第3の抽出装置(22)を通る第5の閉ループ(21)で循環され、前記第3の抽出装置(22)は、前記第2の溶離剤(19)によって前記第2の吸着剤から溶離された前記
225アクチニウムが前記第2の溶離工程中に蓄積する第3の吸着剤を含み、前記方法が、第3の溶離工程を含み、前記第3の溶離工程において、前記第3の吸着剤上に蓄積された
225アクチニウムの少なくとも一部が第3の溶離剤(24)によって前記第3の吸着剤から溶離され、特に、前記第3の溶離剤(24)が、前記第3の溶離工程中に前記
225アクチニウムが前記第3の吸着剤から溶離されるように、前記第2の溶離剤(19)のpH値とは異なるpH値を有し、前記第3の溶離剤が、好ましくは前記ターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含む第3の酸性溶液を含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、226ラジウムから225アクチニウムを生成するための方法であって、226ラジウムを含有する液体ターゲット溶液を準備し、この液体ターゲット溶液が照射装置内で照射されて、液体ターゲット溶液中に含有される226ラジウムから出発して液体ターゲット溶液中に225アクチニウムを生成する方法に関し、生成された225アクチニウムの少なくとも一部は、残留226ラジウムから分離されている。
【背景技術】
【0002】
225アクチニウムは、癌治療に使用するための興味深い放射性核種である。225アクチニウムは、10日間の半減期を有するα放出放射性同位体である。それは、放射線免疫療法のための薬剤として使用することができる。α粒子放射体は、それらの高密度の電離放射線のために、単一の癌細胞及び微小転移物の致死的な照射のための有望な供給源である。α粒子は、軟組織におけるそれらの範囲がわずか数個の細胞直径に限定されているため、放射線免疫療法用途にとってかなり興味深い。
【0003】
225アクチニウムを生成するためのいくつかの可能な方法があるが、要求を満たすのに必要な量で225アクチニウムを生成することを可能にする新しいより安全な生成方法が依然として必要とされている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているように、229トリウムの放射性崩壊によって225アクチニウムを生成することができる。これは、医療用途のための225Acを生成するための現在の主な方法である。この方法は、229Th/225Ra/225Ac発生器(Boll2005)を利用し、225Acは、229Thのアルファ崩壊及びその娘225Raからの放射性内部成長によって常に生成される。発生器は、放射化学的に純粋な225Ra及び225Acを6~8週間ごとに生成する。225Acの最大活性は、発生器内に存在する229Thの総量に制限される。229Thと225Ra/225Acとの間の化学的分離は、通常、イオン交換に基づく。現在、このような発生器は世界中に3つ存在する。ORNL(USA)は年間最大720mCiの225Acを供給している。同様の量がロシアのオブニンスクのInstitute of Physics and Power Engineeringから入手可能であると報告されており、カールスルーエのEuropean Commission directorate Gは、より少ない229Th供給源(年間最大350mCiの225Acを生成することができる)を維持している。しかしながら、問題は、225Acの需要が既存の発電機からの総生成速度よりも既に高いことである。他方、229Thは、希少同位体(233Uに由来する)であり、世界中で利用可能性が限られている。233U及び229Thの長い半減期のために、生成方法が調査されているにもかかわらず、229Thの在庫を有意に増加させることができる可能性はない(Jost2013)。
【0005】
225アクチニウムを生成するための別の方法は、232トリウムターゲットのプロトン又は重水素照射による225Acの生成からなる。この方法は、加速器施設(Ermalaev2012、Weidner2012)内のサイクロトロン又は中~高エネルギーのプロトン(>80MeV)によって中エネルギーのプロトン又は重水素(24~50MeV)(Morgenstern2006)で照射される厚い232Th金属ターゲット(天然Th)の製造に基づいている。中程度のエネルギーのプロトン又は重水素では、225Acの生成は、232Th(p,4n)229Pa及び232Th(d,5n)229Paに基づき、その後、低収率の0.48%β+崩壊を伴い、同位体的に純粋な225Acになる。必要なプロトン及び重水素エネルギーは、今日の市販のサイクロトロンの範囲内であるが、興味深い生成速度を得るためには非常に高い電流が必要である。高エネルギープロトンの232Th(p,x)反応による225Acの直接生成は、225Acの生成のみに感度がなく、隣接する同位体が同等の高断面積で生成される。実際、Ciレベル225Acは、一週間の照射(Ermolaev2012、Griswold2016)で高エネルギープロトンによって生成することができるが、直接の治療的使用は、活性比227Ac/225Ac=0.2%(Griswold2016)で生成される長寿命(27年)アルファ放射体である227Ac(Ermolaev2012)の同時生成によって妨げられる可能性がある。照射されたトリウムターゲットからのアクチニウムの化学的分離は、照射後の錯体同位体混合物に起因して、かなり複雑であり、通常は一連のイオン交換カラムに基づいている。227Acからの225Acの分離及び精製は、必要に応じて同位体分離であり、通常の化学的方法を用いて達成することはできない。これは、照射(ISOLDE)中にライン上で実行することができる非常に複雑な質量分離を必要とする。必要なプロトン電流(>100uA)及び高プロトンエネルギー(90~200MeV)は、現在の市販のサイクロトロンを超えている。実際、必要な強度の中~高エネルギーを有するプロトンを生成することができる加速器設備は、世界中に限られた数しかない(Zhuikov2011)。ライン上で同位体分離を実行することができるものは、さらに少ない。
【0006】
225アクチニウムを製造する別の方法は、例えば、特許文献2及び特許文献3に開示されており、226Raのプロトン又は重水素照射による225Acの生成からなる。この方法は、気密水冷ターゲットホルダに配置され、プロトン(Koch1999、Apostolidis2004)又は重水素(Abbas2004)で照射される226Raの薄い固体ターゲットの製造に基づいている。225Acの化学分離後、残留226Raは再処理され、新しいターゲットの生成のためにリサイクルされ、それによってラジウム照射サイクルを閉じる。照射方法は、mCiレベルの225Acが生成されるサイクロトロン照射試験でうまく証明された。226Ra(p,2n)225Ac反応について16.8MeVのプロトンで0.71mbの断面積を実証することができ、ターゲット溶解及び化学分離を通して、225Ac生成物が229Th/226Ra/225Ac発生器から生成された225Acと同じ高い放射化学的品質を有することがさらに実証された(Apostolidis2005)。
【0007】
しかしながら、この方法のさらなる開発及び実証は、226Ra溶液の複雑な取り扱いのために停止した。226Raは、かなり長寿命のアルファ放射体であり、強く放射性であり、比較的少量で使用する場合でも遮蔽する必要がある。しかしながら、主な問題は、226Raのアルファ崩壊で直接生成される222Rn(ラドン)の存在である。実際、ラドンが終始、分離及び除去されない場合、226Raと222Rnは数週間後に同じ放射能レベルを有する放射平衡に達する。ラドン(222Rn)は、希ガスであるため含有が非常に困難であるので、深刻な問題を抱えている。したがって、大量の226Raを取り扱うには、ラジウム汚染及び/又はラドン放出を最小限に抑えるために、大きな通気流を有する高温セル及びグローブボックスなどの加圧下の遮蔽設備と、取扱アプローチを通した非常に慎重で十分な考慮が必要である。固体照射226Raターゲットの溶解、225Acの化学的精製及び226Raの再処理並びにターゲット生成はすべて、プロセス全体をラドン放出に対して敏感にする開放プロセスである。
【0008】
このようなプロセスでは、照射は通常、高温セル/グローブボックスの外側で行われるため、ターゲットの取り扱いが特に重要である。投入後のターゲットは、汚染がなく気密でなければならない。ターゲット及び薄いターゲットウィンドウの水冷は、ターゲットの故障を回避するために使用されるプロトン電流に対して最適化されなければならない。この方法の大きな利点は、プロトン照射によるPET同位体の生成を目的とした市販のサイクロトロンを使用できることである。それらは、適切な電流で、最適化されたプロトンエネルギーを送達することができる。しかしながら、上記の欠点のために、この興味深い225Acの生成方法のさらなる開発は中止された。
【0009】
以前の生成方法と同じ欠点を有するが、225アクチニウムを生成するための別の方法は、例えば、特許文献4に開示されている。この方法は、中性子又は高強度ガンマ線照射による226Raの照射による225Acの生成からなる(これは、特許文献4において、変換材料の使用によってガンマ線に変換される電子ビームによって達成される)。これは、226Raの(γ、n)又は(n、2n)反応を利用して、225Acへと崩壊する225Raを生成する。光子反応(γ、n)は、電子加速器で制動放射として生成される強いガンマ線の場を利用するが、中性子は高速反応器で、又は加速器施設の破砕源によって生成される。226Raから225Acを生成するために、18MVリニアックの線形(医療)加速器を使用したが、断面積は実用には小さすぎた(Melville2007)。後の研究では、より大量の226Raのより強力な加速器照射が実現可能な方法であり得ると述べられた(Melville2009)。ラジウムの取り扱いに関して、この生成方法は、固体Raターゲットのプロトン照射と同じ欠点を抱えている。226Raターゲットは、実際に製造され、照射され、溶解され、アクチニウム生成物が分離され、ラジウムが新しいターゲット生成のために再処理されなければならない。非常に大きな(数十グラム以上の)226Raターゲットが必要とされる可能性が高いが、プロトン照射と比較して、熱除去の問題が少なく、ターゲットウィンドウを薄くする必要がないので、ターゲット技術及び照射はおそらく技術的に容易である。それにもかかわらず、光子又は中性子反応は、適切な生成レベルに達するために、原子炉、高強度線形加速器又はシンクロトロンなどの大型施設を必要とする。
【0010】
要約すると、229Thからの崩壊生成物としての225Acの現在の生成方法は、治療的処置における将来の需要を満たすために容易に増加又は拡大することができない。アクチニウムは、(p,2n)反応によるラジウムの照射により、市販のサイクロトロンで生成することができる。しかしながら、226Raの取り扱いは、その娘ラドンのために非常に困難である。提案された技術は、固体ターゲットのサイクロトロン(プロトン又は重水素)又はシンクロトロン(ガンマ線)照射に基づいており、ターゲット製造、照射、ターゲット溶解、アクチニウム分離、及び最後に、サイクルを閉じるために新しい固体ターゲットへのRaの再処理を必要とする。荷電粒子(プロトン、重水素)の照射において、ターゲット及び薄いターゲットウィンドウの熱除去(冷却)は、粒子電流を制限し、それによって生成能力を制限する。ラドン放出は、このようなプロセスにおいて常に懸念されるであろう。(γ、n)反応では、ターゲットウィンドウは限定されないが、そのようなプロセスはおそらく大量から非常に大量の226Ra及び電子加速器設備を必要とする。232Thの高エネルギープロトン照射に基づく方法は、227Acを除去するための質量分離に基づく非常に複雑な同位体分離を必要とする可能性がある。
【0011】
本発明による方法では、226ラジウムの溶液を含む液体ターゲットを使用する。このような液体ターゲットの使用は、特許文献4に開示されている。この既知の方法では、226Raは、ガンマ線照射によって、14.8日間の半減期を有する225Raに変換され、その後に、225Acに変換される。226Raの225Raへの変換は、光子を生成する変換材料に電子を当てることによって達成される。226Raは、変換材料上にコーティングされるが、十分な生成物が生成されるまで、変換材料上を流れる溶液にリサイクルされてもよい。226Ra溶液は、石英バイアル内に収容され、照射されてもよい。
【0012】
ターゲットとしての226Ra溶液の利点は、十分に大量の226Raが利用可能であり、固体ターゲットの生成及び溶解が必要ないことである。しかしながら、生成された225Acの分離及び精製は、放射性226Ra及びそれによって連続的に生成されるラドンの取り扱いに依然として問題をもたらす。特許文献4に開示されている方法では、液体ターゲットは、実際には226ラジウムクロリドの溶液によって形成される。この溶液は、約0.5~約1.5モルの濃度、例えば約1モルの濃度であってもよい。約10~約30日間、例えば約20日間照射した後、溶液は、226Raと、溶液中で生成した少量の225Ra及び225Acとを含む。生成した225Acを226Ra及び225Raから分離できるようにするために、照射した溶液を乾燥させ、乾燥した材料を0.03MのHNO3溶液に再溶解させなければならない。この溶液をイオン交換カラム、特にLN(登録商標)樹脂カラム(Eichrom Industries,Inc.,Darien,III.)に通す。226Ra及び225Raはカラムを通過し、225Acはカラム上に保持される。続いて、結合した225Acを0.35MのHNO3でカラムから溶離させる。
【0013】
特許文献4には開示されていないが、226Ra及び225Raはターゲットとして再使用することができる。ターゲットは塩化物形態であるため、これらのラジウム同位体の再使用は、硝酸溶媒の蒸発と、液体ターゲットのラジウムクロリド(塩化ラジウム)溶液を得るために塩酸に得られた乾燥材料の再溶解とを必要とする。
【0014】
上記で説明したように、このような方法の問題は、連続的に生成されるラドンガスが捕捉される密閉環境で行われなければならないことである。生成した225Acを抽出し、残っている226Raを含むターゲット溶液を再生するための照射ターゲット溶液の複雑な処理のために、ターゲット溶液は、照射ターゲットから225Acを抽出する前に、十分な225Acを含むまで照射されるべきである。特許文献4に開示されている方法では、液体ターゲットは、特に最大生成能力の80~90%が達成されるまで、より一層照射される。このように長い照射時間の欠点は、生成された後に、225Acが既に崩壊しているため、生成された225Acのかなりの部分がその生成中に失われることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US5809394
【特許文献2】EP0752709B1
【特許文献3】EP0962942B1
【特許文献4】US2002/0094056A1
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、226Raを含む液体ターゲットを照射することによって226Acから225Acを生成する新しい方法であって、生成されたアクチニウムをラジウムから分離することを可能にするための乾燥及び再溶解工程と、分離されたラジウムから出発して液体ターゲットを再び生成するためのさらなる乾燥及び再溶解工程とを必要としない方法を提供することである。したがって、新しい方法は、ラジウムターゲットから生成されたアクチニウムを除去した後、ラジウムターゲットをより効率的かつ安全な方法でリサイクルすることを可能にするはずである。
【0017】
この目的のために、本発明による方法は、分離工程が、第1の抽出装置で実行される第1の抽出工程を含み、225アクチニウムの少なくとも一部が液体ターゲット溶液から抽出される一方で226ラジウムは液体ターゲット溶液中に維持され、また、本発明による方法は、225アクチニウムの一部が抽出された液体ターゲット溶液を照射装置内で再び照射して、液体ターゲット溶液内に含まれる226ラジウムから出発して液体ターゲット溶液中にさらに225アクチニウムを生成するさらなる工程を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の方法では、照射装置内で液体ターゲット溶液を照射し、照射後に、同じターゲット溶液を第1の抽出装置に供給し、生成したアクチニウムは、液体ターゲット溶液自体から抽出される。したがって、照射されたターゲット溶液を乾燥させたり、再溶解させたりする必要はない。照射された液体ターゲット溶液からアクチニウムを抽出した後、液体ターゲット溶液はそのまま再度照射され、ターゲット溶液中にさらなるアクチニウムが生成される。ここでも、液体ターゲットを生成するために乾燥及び再溶解工程は必要とされない。したがって、サイクルは、ターゲット材料の乾燥及び再溶解を必要とせずに閉じられる。
【0019】
連続的な照射及び抽出工程において液体ターゲット溶液がそのまま使用されることにより、乾燥及び再溶解工程が必要とされないので、生成プロセスを容易に自動化することができ、ラドンガスのいかなる漏出も容易に回避することができる。
【0020】
液体ターゲット溶液は、静的ターゲット内に含まれてもよい。次いで、第1の抽出装置内でこの静的ターゲットを空にし、アクチニウムが抽出された液体ターゲット溶液で静的ターゲットを再び充填するために、この静的ターゲットの何らかの操作が必要とされる。液体ターゲット溶液の第1の抽出装置への移送及びその逆の移送は自動化することができ、又はこの単一の工程は、高温セル又はグローブボックス内などの閉じた環境で容易に実行することができる。生成されたアクチニウムの抽出は、例えば、1日に1回又は数日ごと、例えば週に1回行うことができる。
【0021】
本発明による方法の第1の実施形態では、液体ターゲット溶液は、照射工程中に、照射装置及び熱交換器を通る第1の閉ループで循環される。
【0022】
したがって、この実施形態では、ターゲットは静的ではなく動的ターゲットである。ターゲット溶液が閉ループで循環されるため、生成されたラドンガスをシステム/設備内に容易に閉じ込めることができる。この実施形態の利点は、循環する液体ターゲット溶液を容易に冷却して、照射装置内のターゲット溶液の温度を制御し、それによって照射装置、特にターゲット溶液を外部から分離するウィンドウを冷却することができることである。
【0023】
ラジウムターゲットにプロトンが照射されると、プロトンビームはそのエネルギーをターゲット溶液に蓄積し、照射中に温度及び圧力を上昇させる。熱除去の効率は重要であり、ターゲット及びターゲットウィンドウは、照射条件に耐えるように正確に設計されなければならない。例えば、液体ターゲット溶液中でサイクロトロンによっても生成されるPET放射性同位体又は他の放射性同位体と比較して225Acの半減期が比較的長いため、及び、水溶液中のRa塩の溶解度が限られているため、照射は不可避的に長くなければならない。適切な生成レベルに達するためには、できるだけ高いプロトン電流を印加して、ターゲットへの熱負荷を増加させる必要がある。しかしながら、閉鎖体積の液体ターゲットは、ターゲット液体の内圧及び温度の上昇のために熱負荷が制限される。熱負荷の増加は、内部還流、すなわちサーモサイフォン・デザインで設計された液体ターゲットにおいてある程度対処することができ、Ra溶液の照射についても意味がある可能性がある。しかし、226Raを取り扱う際の目標温度や目標圧力を高めることは、安全性の観点から疑問である。
【0024】
比較的高いプロトン電流、すなわち十分に高い生成レベルを可能にするために、ターゲットは、この第1の実施形態では水冷されることが好ましく、熱除去のかなりの部分はターゲット溶液自体の外部冷却によって処理される。この実施形態は、静的液体ターゲットと比較して著しく高い電流及び熱負荷を可能にする。再循環するターゲット液体は、ターゲット及びターゲットウィンドウ自体の効率的な内部冷却を提供し、それによってターゲットウィンドウの故障に対する安全性を高める。
【0025】
再循環するターゲットは、18F(Clarke2004)の生成について調査されているが、これまでのところ慣例の用途は見出されていない。18Fの生成のために、ターゲットを再循環させる技術は、主に、使用される18O濃縮水の溶液体積がわずか数ミリリットルであるために、実際に複雑である。これは、非常に小型の再循環ループ設計を必要とするので、液体ターゲットを冷却するためにそのような再循環ループを使用することは明らかでない。しかしながら、本発明の方法では、極めて小型の再循環ループ設計の問題は、液体のポンプ輸送及び冷却のための標準的な技術を用いた循環ループ設計を可能にする、より大きいがより濃縮されていない量のターゲット溶液を使用することによって解決される。照射プロセスの効率の観点からターゲット溶液中のより高いラジウム濃度が好ましいが、水溶液中のラジウム塩の溶解度が限られているため、特に水溶液中に酸の形態の比較的多量のアニオンを既に含む場合、より低いラジウム濃度しか可能ではない。本発明の生成方法で使用される合計のターゲット溶液体積は、特に10mlより大きく、より具体的には20mlより大きく、さらにより具体的には30mlより大きく、さらに40mlより大きくすることができる。合計のターゲット溶液体積は、分離カラムのサイズも決定するため、大きすぎないことが好ましく、例えば250ml未満、好ましくは150ml未満である。ターゲット溶液中の226Ra濃度は、特に1M未満、より具体的には0.8M未満であるため、比較的少量のみの226Raが必要とされる。226Raは、226Ra塩、特に226Ra(NO3)2又は226RaCl2をターゲット溶液に溶解することによってターゲット溶液中で達成することができる。226Ra(NO3)2と比較して、226RaCl2では幾分高い濃度を達成することができるが、ターゲット溶液からアクチニウムを抽出できるようにするために、ターゲット溶液は、より多くの塩酸を含有する必要があり、226RaCl2塩の溶解度が低下する。したがって、226Ra(NO3)2も226RaCl2も、ターゲット溶液中により高いラジウム濃度を達成できない。しかしながら、達成され得る比較的低いラジウム濃度にもかかわらず、本発明による方法は、十分に高い生産性を得ることを可能にすることが分かった。
【0026】
本発明による方法の第2の実施形態では、液体ターゲット溶液は、第1の抽出工程中に、第1の抽出装置を通る第2の閉ループで循環される。
【0027】
この第2の実施形態においても、ターゲット溶液の再循環は、液体ポンプ輸送のための標準的な技術を用いた循環ループ設計で再び可能にされる。この場合、生成されたアクチニウムをターゲット溶液から抽出するためである。この実施形態の利点は、液体ターゲット溶液が第1の抽出装置を通る閉ループで循環されることにより、生成されたラドンガスをシステム/設備内に容易に再び閉じ込めることができることである。液体ターゲット溶液は、第1の抽出装置を通って複数回再循環されてもよい。このようにして、第1の抽出装置は、特に液体ターゲット溶液が容器内に収容され、この容器及び第1の抽出装置を通って再循環される場合に、アクチニウムを最大限に充填することができる。
【0028】
第1及び第2の実施形態の組み合わせに適用可能な本発明による方法の第3の実施形態では、液体ターゲット溶液は、照射工程中に、容器及び照射装置を通る第1の閉ループで循環され、第1の抽出工程中に、容器及び第1の抽出装置を通る第2の閉ループで循環される。
【0029】
この実施形態の利点は、液体ターゲット溶液を照射装置から第1の抽出装置におよびその逆に移送する必要がなく、単に照射装置及び第1の抽出装置を通って循環させることができることである。これは2つの閉ループで起こるため、ラドンガスは逃げることができない。この実施形態のさらなる利点は、抽出工程中に照射工程を継続できることである。言い換えれば、ターゲット溶液から、生成したアクチニウムを除去することを可能にするために照射工程を中断する必要はない。したがって、生成されたアクチニウムは、より頻繁に、すなわちその生成後により迅速に除去することができ、その結果、崩壊によって失われるアクチニウムはより少なくなる。また、液体ターゲット溶液は、第1の抽出装置を通って2回以上再循環されてもよく、又は半連続的に、すなわち主に任意の溶離又はすすぎ工程のためにのみ中断されてもよい。このようにして、生成されたアクチニウムの最大量を、ターゲット溶液の比較的大きな再循環体積にもかかわらず、また、第1の抽出装置を出るターゲット溶液が第1の抽出装置に供給されているターゲット溶液と再び混合されるという事実にもかかわらず、ターゲット溶液から取り出すことができる。
【0030】
本発明による方法の第4の実施形態では、第1の抽出工程は、照射工程中に実行される。
【0031】
この実施形態の利点は、生成されたアクチニウムの抽出を可能にするために照射プロセスを停止する必要がないため、照射装置を最適に使用できることである。
【0032】
本発明による方法の第5の実施形態では、液体ターゲット溶液は、225アクチニウムの少なくとも一部が液体ターゲット溶液から抽出される前に、16日間未満、好ましくは13日間未満、より好ましくは10日間未満、最も好ましくは7日間未満、照射される。
【0033】
アクチニウムは、液体ターゲット溶液から容易に、すなわち乾燥及び再溶解工程なしに抽出することができるので、照射工程自体の間の生成されたアクチニウムの崩壊を低減するために十分に早く除去されることが好ましい。
【0034】
本発明による方法の第6の実施形態では、第1の抽出工程は、16日間未満、好ましくは13日間未満、より好ましくは10日間未満、最も好ましくは7日間未満の休止を挟んで行われる。
【0035】
ここでも、アクチニウムは、液体ターゲット溶液から容易に、すなわち乾燥及び再溶解工程なしに抽出することができるので、照射工程自体の間の生成されたアクチニウムの崩壊を低減するために十分に早く除去されることが好ましい。
【0036】
本発明による方法の第7の実施形態では、液体ターゲット溶液は、照射工程中にプロトン又は重水素で照射される。
【0037】
プロトン又は重水素によって、226ラジウムから225アクチニウムを直接かつ効果的に生成することができる。重要な利点は、プロトン照射によるPET(陽電子放出断層撮影)同位体の製造を目的とした市販のサイクロトロンを使用できることである。それらは、225アクチニウムの生成に適した電流で最適なプロトンエネルギーを送達することができる。したがって、大きな設備は必要とされない。
【0038】
本発明による方法の第8の実施形態では、液体ターゲット溶液は、照射工程中にγ照射で照射され、226ラジウムの225ラジウムへの変換及び225ラジウムの225アクチニウムへの変換によって225アクチニウムが生成される。
【0039】
この実施形態の利点は、プロトン照射と比較して、熱除去の問題が少なく、ターゲットウィンドウを薄くする必要がないため、ターゲット技術及び照射が技術的に容易であり得ることである。
【0040】
好ましくは、第1の抽出工程中、225ラジウムは、225アクチニウムが液体ターゲット溶液から抽出されるときに液体ターゲット溶液中に維持される。
【0041】
この好ましいことについての利点は、225ラジウムがリサイクルされるので、225アクチニウムが液体ターゲット溶液中でタイムラグなしに直ちに再び生成されることである。
【0042】
本発明による方法の第9の実施形態では、液体ターゲット溶液は、226ラジウム塩及びその対応する酸の溶液を含み、溶液は、好ましくは226ラジウム硝酸塩及び硝酸を含む。
【0043】
上記で説明したように、ラジウムクロリドは硝酸ラジウムよりも水への溶解度が高いが、通常、溶液中により多量の対応する酸、すなわちHClを必要とし、ラジウムクロリドの溶解度を低下させる。HClの必要な濃度は、例えば約5Mを含み得る。
【0044】
硝酸と組み合わせて硝酸ラジウムを使用する利点は、226Ra(又は生成された場合には225Raさえも)を抽出するのではなく、225アクチニウムを抽出することを可能にする異なる抽出クロマトグラフィ樹脂が存在することであり、抽出クロマトグラフィ樹脂には、比較的少量の硝酸含有量を有する溶液(硝酸ラジウムの溶解度に対する影響は比較的小さい)から225アクチニウムを抽出することを可能にし、より大きい硝酸含有量を有する硝酸溶液で溶離することができる抽出クロマトグラフィ樹脂(例えば、ジアルキルリン酸を含むLN樹脂)、及び、比較的大きい硝酸含有量を有する溶液から225アクチニウムを抽出することを可能にし、より小さい硝酸含有量を有する硝酸溶液で溶離することができる抽出クロマトグラフィ樹脂(例えば、DGA(ジグリコールアミド)(例えば、N,N,N’,N’-テトラ-n-オクチルジグリコールアミド又はN,N,N’,N’-テトラキス-2-エチルヘキシルジグリコールアミド)系樹脂、CMPO(すなわちオクチルフェニル-N,N-ジ-イソブチルカルバモイルホスフィンオキシド)ベースのTRU樹脂、又はジアミド(例えば、DMDOHEMA又はDMDBTDMA)ベースの樹脂)が含まれる。したがって、一連のこれらの異なる抽出クロマトグラフィ樹脂の使用は、液体ターゲット溶液から225アクチニウムを抽出し、第1の抽出クロマトグラフィ樹脂から225アクチニウムを溶離し、溶離剤から225アクチニウムをより純粋でより濃縮された形態で、第二の抽出クロマトグラフィ樹脂によって再び抽出することを可能にする。液体ターゲット溶液の硝酸含有量に応じて、一連の2つの抽出クロマトグラフィ樹脂を逆にすることができる。
【0045】
硝酸と組み合わせた硝酸ラジウムの使用のさらなる利点は、塩化物による腐食が硝酸塩媒体における腐食問題と比較してはるかに大きな問題であることである。より高い濃度の硝酸でさえも本質的に耐食性を有する多くの材料が存在する。塩酸に適した材料はほとんどない。この状況は、反応性ラジカルが生成される照射条件によってさらに複雑になる。これらの問題は、硝酸の使用によって解決することができる。
【0046】
本発明による方法の第10の実施形態では、第1の抽出装置は、第1の抽出工程中に225アクチニウムが蓄積する第1の吸着剤を含み、本方法は、第1の溶離工程を含み、第1の溶離工程において、第1の吸着剤に蓄積された225アクチニウムの少なくとも一部が第1の溶離剤によって第1の吸着剤から溶離される。
【0047】
この実施形態では、225アクチニウムは、第1の抽出工程中に第1の吸着剤上に蓄積するので、液体ターゲット溶液から容易に抽出することができる。第1の抽出装置は、好ましくは抽出クロマトグラフィ装置であり、第1の吸着剤は、好ましくは担体、好ましくは不活性担体、及び支持体上の固定相としての抽出剤を含む。
【0048】
第10の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第11の実施形態では、液体ターゲット溶液は、第1の抽出工程中に前記225アクチニウムが前記第1の吸着剤上に蓄積するように所定のpH値を有し、一方、第1の溶離剤は、第1の溶離工程中に225アクチニウムが第1の吸着剤から溶離するように、液体ターゲット溶液のpH値とは異なるpH値を有する。
【0049】
この実施形態の利点は、液体ターゲット溶液と第1の溶離剤の両方が、濃度のみ異なる同じ酸を含むことができ、その結果、第1の吸着剤に残っているターゲット溶液の酸は第1の溶離工程を妨害することができず、逆もまた同様であり、その結果、第1の吸着剤に残っている第1の溶離剤の酸は第1の抽出工程を妨害することができないことである。
【0050】
第11の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第12の実施形態では、その方法は、第1の抽出工程と第1の溶離工程との間のすすぎ工程を含み、当該すすぎ工程では、第1の吸着剤上に225アクチニウムが残るように、第1の溶離剤のpH値とは異なるpH値を有するすすぎ溶液で第1の抽出装置をすすぎ、すすぎ溶液は、好ましくは液体ターゲット溶液のpH値とほぼ等しいpH値を有する。
【0051】
この実施形態の利点は、第1の抽出工程の終わりに第1の吸着剤に残っているラジウムを、アクチニウムが第1の吸着剤から溶離される前に洗い流すことができ、したがって、ラジウムが失われずにシステム/設備に残り、抽出されたアクチニウム中に不純物を形成することができないことである。ラジウムとは、本明細書では、任意のラジウム同位体、特に226ラジウムを意味し、場合により、照射工程中に生成される場合には225ラジウムも意味する。
【0052】
好ましくは、すすぎ溶液は、好ましくは液体ターゲット溶液と混合されることなく、すすぎ工程中に液体ターゲット溶液を第1の抽出装置から押し出し、第1の溶離剤は、好ましくはすすぎ溶液と混合されることなく、第1の溶離工程中にすすぎ溶液を第1の抽出装置から押し出す。
【0053】
第12の実施形態に適用可能な本発明による方法の第13の実施形態では、すすぎ溶液は、すすぎ工程中に、ラジウム抽出装置を通る第3の閉ループで循環され、当該ラジウム抽出装置は、すすぎ溶液によって第1の吸着剤からすすぎ洗浄されたラジウムがすすぎ工程中に蓄積するラジウム吸着剤を備えており、本方法は、ラジウム溶離工程を含み、当該ラジウム溶離工程において、ラジウム吸着剤上に蓄積されたラジウムの少なくとも一部がラジウム溶離剤によってラジウム吸着剤から溶離され、ラジウム溶離剤は、ラジウム溶離工程中にラジウムがラジウム吸着剤から溶離するように、すすぎ溶液のpH値とは異なるpH値を特に有する。
【0054】
この実施形態の利点は、第1の抽出装置からすすぎ洗浄されたラジウムを回収できることである。ラジウムはラジウム溶離剤中にしばらく保存することができ、ラジウム溶液を、正しい酸性に再調整すること、濃縮すること、及び、ターゲット溶液へ戻すことによって回収することができる。少量のラジウムしか第1の抽出装置から洗い流されないので、この回収操作は時々行われるだけでよい。
【0055】
したがって、第13の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第14の実施形態では、226ラジウム吸着剤から226ラジウム溶離工程中に溶離される226ラジウムは、好ましくは保存され、続いて液体ターゲット溶液にリサイクルされる。
【0056】
第12から第14の実施形態のいずれか1つに適用可能な、本発明による方法の第15の実施形態では、すすぎ溶液は、第1のラドンフィルタ、特に第1の活性炭フィルタを通って循環され、第1の抽出装置からラドンが除去される。
【0057】
第1の抽出装置で生成されたラドン、及び照射装置で生成され第1の抽出装置で収集されたラドンは、第1のラドンフィルタを通って第1の抽出装置をすすぐ場合に、第1のラドンフィルタによって第1の抽出装置から除去され得る。このフィルタは、例えば、ラドンが付着する活性炭フィルタである。このラドンはその後崩壊して210Pbを生成し、これはシステム/設備内に残る。システム/設備から210Pbを除去することを可能にするために、鉛抽出装置、例えばSr樹脂又はPb樹脂(Eichrome)を含む抽出クロマトグラフィカラムをシステム/設備内に設けることができ、Sr樹脂又はPb樹脂の両方ともPbを除去するのに非常に効率的である。
【0058】
第12から第15の実施形態のいずれか1つに適用可能な、本発明による方法の第16の実施形態では、すすぎ溶液は、ターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含有する酸性溶液を含む。
【0059】
第10から第16の実施形態のいずれか1つに適用可能な、本発明による方法の第17の実施形態では、第1の溶離剤は、ターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含有する第1の酸性溶液を含む。
【0060】
液体ターゲット溶液、すすぎ溶液及び第1の溶離剤溶液は好ましくは同じ酸を含むが、これらは混合されない、なぜなら、特に生成プロセスが比較的長時間行われる場合は生成プロセスの妨害をもたらすからである。したがって、第1の抽出装置に含まれるすすぎ溶液の体積は、好ましくは、第1の溶離剤が第2の抽出装置を通って再循環される前に、第1の溶離剤によってその再循環ループに押し戻される。
【0061】
第10から第17の実施形態のいずれか1つに適用可能な、本発明による方法の第18の実施形態では、第1の溶離剤は、第1の溶離工程中に、第2の抽出装置を通る第4の閉ループで循環され、当該第2の抽出装置は、第1の溶離剤によって第1の吸着剤から溶離された225アクチニウムが第1の溶離工程中に蓄積する第2の吸着剤を含み、本方法は、第2の溶離工程を含み、当該第2の溶離工程において、第2の吸着剤上に蓄積された225アクチニウムの少なくとも一部が第2の溶離剤によって第2の吸着剤から溶離され、第2の溶離剤は、第2の溶離工程中に225アクチニウムが第2の吸着剤から溶離されるように第1の溶離剤のpH値とは異なるpH値を特に有し、第2の溶離剤は好ましくはターゲット溶液と同じ酸、特に硝酸を含む第2の酸性溶液を含む。
【0062】
したがって、第1の抽出装置から溶離したアクチニウムを、第2の抽出装置に容易に収集することができ、より濃縮された純粋な形態で再び第2の抽出装置から溶離させることができる。好ましくは、第2の溶離剤は、好ましくは第1の溶離剤と混合されることなく、第2の溶離工程中に第1の溶離剤を第2の抽出装置から押し出す。
【0063】
第18の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第19の実施形態では、第1の溶離剤は、第2のラドンフィルタ、特に第2の活性炭フィルタを通って、第1の抽出装置から第2の抽出装置に循環され、第1の溶離剤からラドンが抽出される。
【0064】
第1の抽出装置で生成されたラドン、及び照射装置で生成され第1の抽出装置で収集されたラドンは、第1の抽出装置が溶離される場合、第2のラドンフィルタによって、第1の抽出装置から除去され得る。このフィルタもまた、例えば、ラドンが付着する活性炭フィルタである。このラドンはその後崩壊して210Pbを生成し、これはシステム/設備内に残る。システム/設備から210Pbを除去することを可能にするために、鉛抽出装置、例えばSr樹脂又はPb樹脂(Eichrome)を含む抽出クロマトグラフィカラムをシステム/設備内に設けることができ、Sr樹脂又はPb樹脂の両方ともPbを除去するのに非常に効率的である。
【0065】
第18又は第19の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第20の実施形態では、第2の溶離剤は、第2の溶離工程中に、第3の抽出装置を通る第5の閉ループで循環され、当該第3の抽出装置は、第2の溶離剤によって第2の吸着剤から溶離された225アクチニウムが第2の溶離工程中に蓄積する第3の吸着剤を含み、本方法は、第3の溶離工程を含み、当該第3の溶離工程において、第3の吸着剤上に蓄積された225アクチニウムの少なくとも一部が第3の溶離剤によって第3の吸着剤から溶離され、第3の溶離剤は、第3の溶離工程中に225アクチニウムが第3の吸着剤から溶離されるように第2の溶離剤のpH値とは異なるpH値を特に有し、第3の溶離剤は第3の硝酸溶液を含む。
【0066】
したがって、第2の抽出装置から溶離したアクチニウムを、第3の抽出装置に容易に収集することができ、より濃縮された、及び/又は、純粋な形態で再び第3の抽出装置から溶離することができる。好ましくは、第3の溶離剤は、好ましくは第2と混合されることなく、第3の溶離工程中に第2の溶離剤を第3の抽出装置から押し出す。
【0067】
第20の実施形態に適用可能な、本発明による方法の第21の実施形態では、第2の溶離剤は、第2の抽出装置から、第3のラドンフィルタ、特に第3の活性炭フィルタを通って、第3の抽出装置に循環されて、第2の溶離剤からラドンが抽出される。
【0068】
第2の抽出装置に到着したラドンは、第2の抽出装置が溶離されると、第2のラドンフィルタによって第2の抽出装置から除去され得る。このフィルタもまた、例えば、ラドンが付着する活性炭フィルタである。このラドンはその後崩壊して210Pbを生成し、これはシステム/設備内に残る。システム/設備から210Pbを除去することを可能にするために、鉛抽出装置、例えばSr樹脂又はPb樹脂(Eichrome)を含む抽出クロマトグラフィカラムをシステム/設備内に設けることができ、Sr樹脂又はPb樹脂の両方ともPbを除去するのに非常に効率的である。
【0069】
本発明のさらなる詳細及び利点は、本発明による生成方法に対するいくつかの例の以下の説明から明らかになるであろう。この説明は、例としてのみ与えられ、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書で使用される参照番号は、添付の図面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の第1の実施形態による方法を実施するための設備の図であり、液体ターゲット溶液は、比較的少量の硝酸、特に0.02Mを含有する。
【0071】
【
図2】本発明の第2の実施形態による方法を実施するための設備の図であり、液体ターゲット溶液は、より大量の硝酸、特に0.5Mを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の方法では、226Ra、より詳細には226ラジウム硝酸塩を含む液体ターゲット溶液が作製される。この溶液は、特に0.005~1.0Mの硝酸を含む。これは、鉛遮蔽された気密ボトルに収容されることが好ましい。
【0073】
図1に概略的に示す設備は、特に、低酸性オプションに従って
225Acを生成することを意図しており、すなわち、液体ターゲット溶液は、例えば0.005~0.05MのHNO
3を含む酸性度を有する。ターゲット溶液中のRa(NO
3)
2の濃度は、好ましくは可能な限り高く、0.4Mまで高くすることができる。
【0074】
設備は、液体ターゲット溶液を収容するように構成された容器1を備える。設備は、ターゲット溶液に、プロトン、重水素又はガンマ線を照射することができる窓を有する照射装置2も含む。ガンマ線照射は、シンクロトロン又はリニアックから得ることができ、又はUS2002/0094056に開示されているような変換材料によって得ることもできる。しかし、液体ターゲットは、プロトン(又は重水素)による照射が226Raから225Acを生成する最も効率的な方法であるため、プロトン(又は重水素)で照射されることが好ましい。プロトン照射は、サイクロトロン、例えば18Oから18FなどのPET放射性同位体を生成するために既に一般的に知られているサイクロトロンによって生成することができる。
【0075】
液体ターゲットは静的ターゲットであってもよいが、より効率的な冷却を可能にするため、したがってターゲットのよりエネルギーの高い照射を可能にして生成能力を高めるために、液体ターゲットは、
図1に示す実施形態のように再循環液体ターゲットであることが好ましい。この実施形態では、ターゲット溶液は、第1の閉ループ4内のポンプ3によって、容器1から照射装置2に、続いて熱交換器5にポンプ輸送され、容器1に戻される。ターゲットはまた、好ましくは、照射装置2自体内で冷却され、特に水冷される。溶液は、好ましくは15~20MeVの入射エネルギーを有するプロトンで照射されることが好ましい。照射中、ターゲット溶液中のプロトンを停止させることによって発生した熱は、ターゲット溶液自体によって完全に又は部分的に除去され、一次熱交換器5において外部と交換される。完全な照射ループは、腐食を回避し、漏れ防止性を確保するために、全ての濡らされる部品が、典型的にはハステロイ、インコネルなどの、高不活性で気密材料であるように構成される。セラミック又は金属とセラミックの組み合わせも同様に良好な選択であり得る。
【0076】
照射中、225Acはターゲット溶液中に絶えずビルドアップされている。静的ターゲットを使用して、照射が終了すると、ターゲット溶液は気密ターゲット溶液ボトルに回収される。静的ターゲットは、空のボトルに自動的に充填されることが好ましい。再循環液体ターゲットは、照射プロセス中に再処理することができる。そこから、225Acの化学的分離及び精製は、抽出クロマトグラフィ又はイオン交換カラムを通って流れを再循環させることによって行われる。カラム上でアクチニウムを抽出し、一方、不純物を再循環させるように、条件が設定される。カラムのサイズ、流速、溶液の体積は、ターゲット溶液の初期体積に依存する。
【0077】
静的ターゲットの場合、ボトルに収容された照射されたターゲット溶液は、第1の抽出装置6に移送及び再循環され得る。この抽出装置6では、照射されたターゲット溶液から225Acが抽出され、一方、226Ra(及び、ターゲット溶液のガンマ線照射の場合には、225Raも)がターゲット溶液中に維持される。226Acが抽出されたターゲット溶液は、ボトルに再び回収され、照射対象の液体ターゲットに再び投入される。
【0078】
図1に示す設備では、
225Acを液体ターゲット溶液から抽出し、
225Acが抽出された液体ターゲット溶液を液体ターゲットに投入することは、はるかに少ない取り扱い工程を必要とし、特に自動的に実行することがはるかに容易である。
図1に示す実施形態では、容器1に収容された照射ターゲット溶液は、第2の閉ループ7で第1の抽出装置6に実際に再循環される。これは、
図1には示されていないポンプによって行われる。
【0079】
第1の抽出装置は、第1の抽出工程中に225Acが蓄積する第1の吸着剤を含む。第1の抽出装置は、好ましくは、低酸性オプションでは、例えばLN-樹脂(Eichrome、HDEFIEP)ベースの第1の抽出クロマトグラフィカラムを含む。ターゲット溶液が、例えば0.005~0.05MのHNO3、例えば0.02MのHNO3を含む場合、アクチニウムがカラムに保持され、226Ra(存在する場合は225Ra)が再循環される。再循環体積は、ターゲット溶液からのAcの取り込みの効率を決定し、Acの破過が回避されるようにこの体積を制限することが重要である。
【0080】
ターゲット溶液からのRaの損失は好ましくは防止される。226Raから225Acを分離した後の最初のカラムに存在するターゲット溶液体積の大部分がターゲット溶液容器1に押し戻されることが重要である。
【0081】
最初の分離後、すなわち液体ターゲット溶液がカラムを通ってポンプ輸送又は浸透された後、第1の抽出装置6内に残っているラジウムは、第1の抽出装置6のカラムをすすぎ溶液8ですすぐことによって回収される。このすすぎ溶液は、すすぎ工程中に225Acがカラム上に保持されるように、液体ターゲット溶液のpHと同様のpHを有する。すすぎ溶液は、第1の抽出装置6及びラジウム抽出装置10を通る、例えば強陽イオン交換カラム(例えば、DOWEX50W又はBiorad50Wなど)を通る第3の閉ループ9で循環される。ラジウム抽出装置10は、すすぎ溶液8によって第1の吸着剤からすすがれたラジウムがすすぎ工程中に蓄積するラジウム吸着剤を備える。
【0082】
第1の抽出装置6に蓄積されたあらゆるラドンを除去するために、すすぎ溶液8は、好ましくは、第1の抽出装置6からラドンガスを除去するための第1の活性炭フィルタ11を通って再循環される。活性炭フィルタ11は、粒状活性炭フィルタであってもよいが、粉末活性炭フィルタであることが好ましい。
【0083】
カラムのサイズが小さくなり、それによって溶離体積も減少するので、さらなる精製及び濃縮が、Ln樹脂、Sr樹脂、DGA樹脂又は分岐DGA樹脂(全てEichrome)ベースの抽出クロマトグラフィカラムによって行われる。酸性度の変化は、1つの抽出カラムから次の抽出カラムにアクチニウムを移動させ、その度に、純度を改善し、濃度因子を増加させる。プロセスの最後のカラムは、アクチニウム生成物がどの媒体でプロセスを離れるかを決定する。
図1では、SCE(強陽イオン交換体)を使用し、対応する高酸性度を使用してアクチニウムを溶離する。代替案は、アクチニウムの溶離がより低い酸性度で行われる、DGA又はDGA-B(Eichrom)などの三価元素に選択的な抽出クロマトグラフィ樹脂であろう。
【0084】
図1に示す実施形態では、ラジウム抽出装置10に蓄積されたラジウムは、より詳細には、すすぎ溶液のpH値又は酸性度とは異なるpH値又は酸性度を有するラジウム溶離剤12によってラジウム抽出装置10から溶離され、したがって、ラジウム溶離工程中にラジウムがラジウム吸着剤から溶離される。すすぎ溶液8は、例えば、0.02M硝酸溶液を含んでもよく、一方、ラジウム溶離剤12は、例えば、2M硝酸溶液を含んでもよい。回収されたラジウムを含むラジウム溶離剤12は、気密容器13に貯蔵される。この容器13には、ガス入口14及びガス出口15が設けられている。したがって、容器13中に含まれるラジウムの保管中に容器13内で生成されるラドンガスを除去するために、容器13を、少量の例えば窒素ガスでパージすることができる。少量のみが使用されるので、Rnは、小型の活性炭ガスフィルタ(
図1及び
図2には示されていない)によって捕捉及び管理することができる。回収されたRaは、必要に応じて、正しい酸性度に再調整され、濃縮され、ターゲット溶液に戻され得る。
【0085】
第1の抽出装置6内の第1の吸着剤上に蓄積された225Acは、すすぎ工程後の第1の溶離工程において、第1の溶離剤16によって、第1の吸着剤から溶離される。この第1の溶離剤16は、第1の抽出装置6に収容された第1の吸着剤から第1の溶離工程中に225Acが溶離するように、液体ターゲット溶液のpH値とは異なるpH値を有する。第1の溶離剤16は、より低いpH、すなわちより高い酸性度を有し、例えば0.5MのHNO3を含有する第1の硝酸溶液を含み得る。このような溶離剤により、225AcをLn樹脂から除去することができる。
【0086】
第1の溶離剤16は、第1の溶離工程中に、第1の抽出装置6及び第2の抽出装置18を通る第4の閉ループ17で循環され、第2の抽出装置18は、第1の溶離剤16によって第1の抽出装置6から溶離された
225アクチニウムが第1の溶離工程中に蓄積する第2の吸着剤を含む。第2の抽出装置は、好ましくは、
図1に示す低酸性度オプションにおいて、例えばDGA樹脂(Eichrome、TODGA)ベースである第2の抽出クロマトグラフィカラムを含む。第1の溶離剤16が例えば0.5MのHNO
3を含む場合、アクチニウムはDGAカラムに保持され、不純物は再循環される。第2の抽出装置18のフリーカラム容積は、第2の抽出装置18上でアクチニウムを濃縮し、より少量の第2の溶離剤19で第2の抽出装置18から溶離できるように、第1の抽出装置6のフリーカラム容積よりも小さいことが好ましい。
【0087】
設備の第4の閉ループ17に存在し得るラドンガスを除去するために、第1の溶離剤16は、第1の抽出装置6から、第2のラドンフィルタ20、特に第2の活性炭フィルタを通って、第2の抽出装置18に循環され、第1の溶離剤16からラドンが抽出される。第2の活性炭フィルタ20は、粒状活性炭フィルタであってもよいが、粉末活性炭フィルタであることが好ましい。
【0088】
225アクチニウムが第2の抽出装置18に収容された第2の吸着剤に蓄積されると、
225アクチニウムは、第2の溶離工程において、第2の溶離剤19によって第2の吸着剤から溶離される。第2の溶離剤は、第2の抽出カラムに含まれる第2の吸着剤から第2の溶離工程中に
225アクチニウムが溶離するように、第1の溶離剤8のpH値又は酸性度とは異なるpH値又は酸性度を有する。第2の溶離剤19は、ここでも好ましくは第2の硝酸溶液を含み、
図1に示す低酸性オプションでは、例えば0.05MのHNO
3を含む。このような第2の溶離剤により、
225AcをDGA樹脂から除去することができる。
【0089】
第2の溶離剤19は、第2の溶離工程中に、第2の抽出装置18及び第3の抽出装置22を通る第5の閉ループ21で循環され、第3の抽出装置22は、第2の溶離剤19によって第2の抽出装置18から溶離された
225アクチニウムが第2の溶離工程中に蓄積する第3の吸着剤を含む。第3の抽出装置22は、好ましくは、
図1に示す低酸性度オプションにおいて、例えばここでも、Ln樹脂(Eichrome、HDEHEP)ベースである第3の抽出クロマトグラフィカラムを含む。第2の溶離剤19が例えば0.05MのHNO
3を含む場合、アクチニウムはLnカラムに保持され、不純物は再循環される。さらなる濃縮が必要でない場合、第3の抽出装置22のフリーカラム容積は、第2の抽出装置18のフリーカラム容積に等しくてもよい。
【0090】
設備の第5の閉ループ21に存在し得るラドンガスを除去するために、第2の溶離剤19は、第2の抽出装置18から、第3のラドンフィルタ23、特に第3の活性炭フィルタを通って、第3の抽出装置22に循環されて、第2の溶離剤19からラドンが抽出される。第3の活性炭フィルタ23は、粒状活性炭フィルタであってもよいが、粉末活性炭フィルタであることが好ましい。
【0091】
225アクチニウムが第3の抽出装置22に収容された第3の吸着剤に蓄積されると、
225アクチニウムは、第3の溶離工程において、第3の溶離剤24によって第3の吸着剤から溶離される。第3の溶離剤24は、第3の抽出カラム22に含まれる第3の吸着剤から第3の溶離工程中に
225アクチニウムが溶離するように、第2の溶離剤19のpH値又は酸性度とは異なるpH値又は酸性度を有する。第3の溶離剤24は、ここでも好ましくは第3の硝酸溶液を含み、
図1に示す低酸性オプションで、例えば0.5MのHNO
3を含む。このような第3の溶離剤により、
225AcをLn樹脂から除去することができる。
【0092】
225Acのさらなる精製及びオプションでの濃縮は、
図1の実施形態では、第3の溶離工程中に、第3の溶離剤24を、第3の抽出装置22及び第4の抽出装置26を通る第6の閉ループ25で循環させることによって得られ、第4の抽出装置26は、第3の溶離工程中に第3の溶離剤24によって第3の抽出装置から溶離した
225アクチニウムが蓄積する第4の吸着剤を含む。第4の抽出装置26は、やはりDGA又はDGA-B(分岐)カラムを備えてもよく、このカラムでは、酸性度を0.1Mに下げて、最後の工程で
225Acをカラムから除去することができる。しかし、第4の抽出装置26は、好ましくはSCE(強陽イオン交換体)を含む。第3の溶離剤24が例えば0.5MのHNO
3を含む場合、アクチニウムはSCE26に保持され、不純物は再循環される。第4の抽出装置26のフリーカラム容積は、第2の抽出装置18のフリーカラム容積以下であってもよく、
225Acをさらに濃縮できるように第2の抽出装置18のフリーカラム容積の約半分に等しくてもよい。
【0093】
設備の第6の閉ループ25に存在し得るラドンガスを除去するために、第3の溶離剤24は、第3の抽出装置22から、第4のラドンフィルタ27、特に第4の活性炭フィルタを通って、第4の抽出装置26に循環されて、第3の溶離剤24からラドンが抽出される。第4の活性炭フィルタ27は、粒状活性炭フィルタであってもよいが、粉末活性炭フィルタであることが好ましい。
【0094】
225アクチニウムが第4の抽出装置26に収容された第4の吸着剤に蓄積されると、225アクチニウムは、第4の溶離工程において、第4の溶離剤28によって第4の吸着剤から溶離される。
【0095】
第4の抽出装置26がDGA又はDGA-B樹脂を含む場合、第4の溶離剤28は、第4の抽出カラム26に含まれる第4の吸着剤から第4の溶離工程中に
225アクチニウムが溶離されるように、第3の溶離剤24のpH値又は酸性度とは異なるpH値又は酸性度を有する。第4の溶離剤28は、ここでも好ましくは第4の硝酸溶液を含み、
図1に示す低酸性オプションで、例えば0.1MのHNO
3を含む。このような第4の溶離剤により、
225AcをDGA又はDGA-B樹脂から除去することができる。
【0096】
第4の抽出装置26がSCEである場合、第4の溶離剤28は、SCEから225Acを溶離するのに十分に高いpH又は酸性度を有する。第4の溶離剤28は、この場合には高い酸性度を有し、例えば2MのHNO3を含む第4の硝酸溶液を含むことがここでも好ましい。
【0097】
得られた精製され濃縮された225Acは、第4の抽出装置の出口29を通して除去することができ、乾燥生成物を得るために続いて乾燥され得る。乾燥工程では、水だけでなく、第4の溶離剤に含まれる酸も蒸発により除去することができる。
【0098】
一例として、
図1に示すような設備で使用される異なる抽出装置及び溶液は、以下の構成を有することができる。
【0099】
【0100】
図2は、本発明による方法の代替実施形態を示しており、液体ターゲット溶液がより高い酸性度(より低いpH)を有する。この高酸性度オプションは、DGAカラムを用いた初期Ac/Ra分離に基づく。ここで、ターゲット溶液中の酸性度は、例えば0.1M~0.5Mの硝酸度であり、ターゲット溶液中の
226Raの濃度は、より低い酸性度が硝酸塩の添加によって、例えば硝酸アンモニウムによって補償される場合、0.35Mまでであり得る。アクチニウムは、DGAカラムを通る再循環によって除去される。再循環体積は、Acを効率的に除去するのに十分高くあるべきであるが、Acの破過を回避するためにカラムの容積内であるべきである。低酸性度オプションの場合と同様に、強い陽イオン交換体は、最初のアクチニウム分離後にカラム上に残ったRaを管理する。酸性度及びLn樹脂カラム上の取り込みを低下させることによって、さらなる精製が行われる。ここで、酸性度は、Pbの共抽出を回避するように選択される(すなわち0.03M~0.075M)。この点から様々な選択肢が利用可能であるが、DGA又はDGA Bカラムを使用したその後の精製及び濃縮がおそらく好ましい方法である。
【0101】
図1に示す設備に対応する
図2に示す設備の部分は、同じ符号で示されている。
図2に示す設備は、
図1を参照して上述した設備と同じように機能するので、共通部分の機能の説明は繰り返さない。代わりに、
図2に示すような高酸性度設備で使用される様々な抽出装置及び溶液の具体例を以下の表に示す。
【0102】
【0103】
見て分かるように、濃縮及び精製された225Acは、第3の抽出装置22から既に除去されている。しかしながら、追加の抽出カラム、すなわち鉛抽出装置30が、第2の抽出装置18と第3の抽出装置22との間に第5の閉ループ21に設けられている。鉛抽出装置30の前には、第3のラドンフィルタ23があり、鉛抽出装置30の後には、追加のラドンフィルタ23’がある。
【0104】
鉛抽出装置30は、特に、Pbに対して非常に有効であり、設備/システムからPbを除去するために使用することができるSr樹脂を含む。Pbは、ラドンの崩壊によって生成される。ラドンはアルファ崩壊によって崩壊し、カラム材料に放射線損傷を発生させ、カラム分離性能に影響を及ぼす。したがって、カラムの寿命を延ばし、225Ac生成物のラドン汚染を回避するために、ラドンがプロセスの下流に移動するのを防ぐことが好ましい。ラドンは、ラドンフィルタによって、すなわち粉末活性炭(PAC)又は粒状活性炭(GAC)を含有する小カラムによって管理される。ラドンはPAC/GACカラムで吸収/強く遅延され、ガンマ放射体である210Pbに減衰する。210Pbは水相に溶離され、プロセス内に含まれる。PAC/GACカラムは複数回使用することができる。Sr樹脂カラムは、Pbに対して非常に有効であり、したがって、プロセスからPbを除去するために使用することができる。Sr樹脂カラムは、固定相として、オクタノールに溶解されたジシクロヘキサノ-18-クラウン-6誘導体を含む。
【0105】
また、
図1の低酸性度設備でも、鉛抽出装置(Sr樹脂カラム)を、特に第3の抽出装置22と第4の抽出装置26との間に容易に組み込むことができ、好ましくは、鉛抽出装置の前に第4のラドンフィルタ27があり、鉛抽出装置の後に追加のラドンフィルタがある。
【0106】
本発明による方法は、硝酸ラジウムの限られた溶解度(これは、例えば、68Zn(p,n)68Ga反応によって68Gaを生成するために液体ターゲットに使用される硝酸亜鉛68の溶解度よりも10倍以上小さい。)の結果として、ターゲット溶液中の226Raの濃度が比較的低いにもかかわらず、商業的に興味深い生成率を達成することを可能にする。
【0107】
225Acの生成率を算出することができる。最大0.4Mの226Ra(NO3)2を含有する水溶液(Nucleonica)中のプロトンのエネルギー依存阻止能と共に226Ra(p,2n)反応のエネルギー依存断面積(IAEA ENDFデータベース)を使用して、液体ターゲットの小さな層の生成率を得、これを合計して225Acの全体的な形成を得る。使用したプロトン電流の関数として、週ごとの生成率を表1に示す。
【0108】
【0109】
経済的実現可能性については、225Acを用いた治療的処置が承認されると仮定すると、225Acの需要は大幅に増加する。提案された方法によって生成された225Acは、227Acの複雑な同位体分離が行われない限り、232Thターゲットのプロトン照射によって生成された225Acよりも高品質である。年間40週間の生成を想定して生成されたまま流通させる場合、生成された225Acは、25000回を超える処理をカバーすることができる。したがって、アクチニウム生成プロセスにおける経済的実現可能性が保証される可能性が最も高い。
【0110】
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