(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】層状吸着剤構造
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20220830BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20220830BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220830BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20220830BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220830BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220830BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220830BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20220830BHJP
【FI】
B01J20/18 A
B01J20/18 E
B01J20/08 A
B01J20/20 A
B01J20/20 C
B01J20/10 C
B01J20/08 C
B01J20/10 A
B01J20/30
B01J20/28 A
B01D53/04 110
B29C64/124
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569571
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 GB2020051359
(87)【国際公開番号】W WO2020260855
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ブートランド、アラン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】エドガー、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4D012
4F213
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012BA04
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4G066FA31
4G066FA37
(57)【要約】
【解決手段】 吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む、成形された吸着剤が記載される。成形された吸着剤は、封止されたエンクロージャ内の1つ以上の汚染物質をゲッタリングする際に使用するゲッターとして使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む、成形された吸着剤。
【請求項2】
前記吸着材料が、アルミナ、シリカ、炭素、又は分子篩、好ましくはゼオライト材料を含む、請求項1に記載の成形された吸着剤。
【請求項3】
前記吸着材料が、反応性吸着材料、好ましくは1つ以上の遷移金属化合物、希土類金属化合物、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物、より好ましくは銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、白金及びパラジウムの化合物を含む、請求項1又は2に記載の成形された吸着剤。
【請求項4】
分子篩吸着材料と、反応性吸着材料と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項5】
前記成形された吸着剤中の前記吸着材料の最大粒径(Dv100)が、層厚未満、好ましくは層厚の半分未満、より好ましくは層厚の5分の1未満、最も好ましくは層厚の10分の1未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項6】
前記光重合された樹脂が、多官能性モノマーと、アクリレートによって官能化されたオリゴマーとの混合物を含むフォトポリマーから得られ、好ましくは光開始剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項7】
1~70体積%の吸着材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項8】
5~5000の層を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項9】
各層が、10~300μmの範囲、好ましくは20~100μmの範囲の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項10】
前記成形された吸着剤が、0.3mm~100mm、好ましくは0.3mm~50mmの範囲の断面長さ幅又は高さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項11】
前記成形された吸着剤が、格子構造又は離間した平行な支柱若しくはメッシュの層を含む、開放型円筒の形態であり、好ましくは、前記円筒が≦1のアスペクト比を有し、より好ましくは、前記成形された吸着剤が、使用中に固定されることを可能にする1つ以上のラグ又はタブを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の成形された吸着剤。
【請求項12】
成形された吸着剤ユニットの製造方法であって、(i)吸着材料をフォトポリマーと組み合わせて吸着混合物を形成する工程と、(ii)光重合を使用して、前記吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む成形された吸着剤を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
前記光重合が、好ましくはステレオリソグラフィを含み、より好ましくはデジタル光処理又は連続液体界面製造を含む、積層造形光重合を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、(i)フォトポリマーと吸着材料とを含む吸着混合物を形成する工程と、(ii)所定のパターンに従って、前記吸着混合物を電磁放射線に曝露して、硬化したポリマーの層を形成する工程と、(iii)層ごとに工程(ii)を繰り返して、前記成形された吸着剤を形成する工程と、を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記フォトポリマーが、20℃で1~500mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記吸着混合物が1~70体積%の前記吸着材料を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記吸着混合物が分散剤を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む、成形された吸着剤のゲッターとしての使用。
【請求項19】
前記ゲッターが封止されたエンクロージャ内に配置される、請求項18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された吸着剤、具体的には成形されたゲッターに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲッターは、エンクロージャ内の大気から望ましくない物質を除去するために、電気デバイス若しくは電子デバイスの一部又はハウジングを形成する封止されたエンクロージャ内で使用されることが多い、吸着剤組成物である。
【0003】
ゲッター組成物は既知である。例えば、米国特許第6428612号は、銀などの活性化金属によって交換されたナトリウムイオンの部分を有する微粒子ゼオライトを含む水素ゲッターを開示している。このゲッターは、水分吸収剤と組み合わせて可撓性水素透過性の水分不透過性シート材料中に提供されている。米国特許第5888925号は、有効量の白金族金属の酸化物と、乾燥剤と、ガス透過性バインダーとを含むゲッターを記載しており、好ましくは、約150~約205℃の酸素担持環境内で配合後に硬化される。米国特許第4559471号は、真空装置内で炭化水素を分解するためのゲッター補助手段の使用について記載しており、ここでは、ゲッター補助手段は、ロジウム、銅、白金、パラジウム、及びそれらの酸化物のうちの1つ以上を充填した無機多孔質担体を含む。米国特許第6200494号は、遷移金属の酸化物、金属パラジウム、及び水分吸収材料の混合物を含むゲッター材料の組み合わせについて記載している。水分向けのゲッターも既知である。国際公開第02/43098号は、共に無機結合剤と結合した、10未満のシリカ対アルミナのモル比を有するFAUゼオライトの粒子、及び、少なくとも20のシリカ対アルミナのモル比を有する高シリカ対アルミナモル比ゼオライトの粒子から形成される多孔質体の形態である、封止されたエンクロージャで使用するためのゲッターについて記載している。国際公開第2015/015221号は、アルカリ土類金属酸化物又はこれらの前駆体と、遷移金属酸化物又はこれらの前駆体とを含み、かかる遷移金属は、銅、ニッケル、及びコバルトから選択される、水素及び水分のゲッタリングに好適なゲッター組成物を開示する。
【0004】
従来技術のゲッター組成物は多くの用途において有用であるが、従来の方法を使用して達成され得る限定された形状によって制限が課される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層造形(ALM)は、3次元(3D)印刷としても知られており、新たな形状を作り出す能力を提供する発展型技術である。国際公開第2012/032325号は、(i)粉末触媒又は触媒担体材料の層を形成することと、(ii)所定のパターンに従ってかかる層内の粉末を結合又は融合させることと、(iii)層上で(i)及び(ii)層を繰り返して、成形ユニットを形成することと、(iv)任意に触媒材料をかかる成形ユニットに適用することと、を含む、積層造形法を使用する触媒を製造するための方法を開示している。しかしながら、粉末ベースの方法を使用して作製された、成形された吸着剤の強度は、ゲッターを調製するのに不十分である。
【0006】
本出願人らは、光重合積層造形が、驚くべきことに、その形状が従来の成形技術によって決定されない新しい吸着剤を調製するための手段を提供することを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む成形された吸着剤を提供する。
【0008】
本発明は、更に、(i)吸着材料をフォトポリマーと組み合わせて吸着混合物を形成する工程と、(ii)光重合を使用して、吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む成形された吸着剤を形成する工程と、を含む、成形された吸着剤の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、更に、吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の複数の層を含む成形された吸着剤のゲッターとしての使用を提供する。
【0010】
用語「吸着剤」は、吸着剤及び吸収剤を含む。
【0011】
吸着材料は、任意の吸着性材料又は吸収性材料、すなわち、物質を除去するための吸着剤として使用される任意の材料であってよい。吸着剤は、アルミナ、シリカ、炭素、これらの2つ以上の混合物、又は任意の他の好適な吸着材料を含んでもよい。吸着材料は、分子篩を含んでもよい。分子篩は、ゼオライトX、ゼオライトY、ZSM-5、ゼオライト13X、CBV500、3Aゼオライトなどのゼオライト材料、又は、リン酸アルミニウム(ALPO)若しくはシリコアルミノリン酸アルミニウム(SAPO)などのリン酸含有分子篩、又は任意の他の分子篩材料であってもよい。分子篩は、望ましくない物質を物理的に捕捉し、それを環境から除去することによって少なくとも部分的に機能する。あるいは、又はそれに加えて、吸着材料は、反応性吸着剤、すなわち、望ましくない物質と化学的に反応する吸着材料を含んでもよい。反応性吸着材料は、1つ以上の遷移金属化合物、希土類金属化合物、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んでもよい。これらの化合物のうちの1つ以上が存在してもよい。好適な遷移金属化合物としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、白金、及びパラジウムの化合物が挙げられる。金属酸化物及び/又は金属水酸化物は、本発明において最も好適である。
【0012】
成形された吸着剤は、1つ以上の分子篩吸着材料及び1つ以上の反応性吸着材料を含んでもよい。
【0013】
成形された吸着剤中の吸着材料の最大粒径(Dv100)は、好ましくは層厚未満、より好ましくは層厚の半分未満、最も好ましくは層厚の5分の1未満、特に層厚の10分の1未満である。例えば、10μmの層厚では、最大粒径は1~10μmの範囲であってよい。同様に、100μmの層厚では、最大粒径は10~100μmの範囲であってよい。100μmを超える厚さを有する層の場合、最大粒径はより大きくてもよいが、これは必須ではない。
【0014】
成形された吸着剤中の粒径は、X線顕微鏡を使用して決定することができる。
【0015】
成形された吸着剤は、複数の層の光重合された樹脂を含む。各層は、吸着材料の粒子を含有する。本出願人は、驚くべきことに、複数の層の光重合された樹脂内に封入された吸着材料が、樹脂内に含有されているにもかかわらず、使用中に物質を効果的に捕捉できることを見出した。
【0016】
光重合は、一般に、光重合された樹脂を形成するための、紫外線若しくは可視光又は別の形態の電磁放射線による、液体光反応性ポリマー(あるいは、フォトポリマーとして知られる)の硬化を指す。液体光反応性ポリマーは、光源、例えば好ましくは約375~405nmの範囲の波長を有UV光源の作用下で反応し、剛性の3次元形状を形成する。本出願人は、フォトリソグラフィをベースにした光重合積層造形が、成形された吸着剤の製造に特に好適であることを見出した。最も一般的なフォトリソグラフィ系技術は、液体フォトポリマー浴中で、紫外線レーザーを用いて二次元画像をトレースすることによって、所望の全体形状の一部を形成する樹脂層を硬化させる、ステレオリソグラフィ(SLA)として知られている。トレースが完成すると、例えば、硬化層が支持されるビルドプラットフォームを、液体フォトポリマー浴内に下げた後、プロセスを繰り返すことによって、硬化層を浸漬する。所望の形状が形成されるまで、プロセスを層ごとに繰り返す。光重合積層造形技術は、一般に、液体フォトポリマーを含有する槽を使用するため、この技術は、液槽光重合と呼ばれることもある。槽の基部に窓を設けて、下部から光源をフォトポリマーに適用できるようにしてもよい。レーザーは、形状についての所定の設計がプログラムされたコンピュータによって制御される。成形された吸着剤は、所望の形状に変換される三次元コンピュータモデルを作り出す、CAD-CAMソフトウェアを使用して好適に設計され得る。3次元画像は、ソフトウェアを使用してスライスへと「切断」され、各スライスは、液体フォトポリマーの光放射硬化によって再構成され、画像を固体物体に変換する。コンピュータ及びシステムは一般にSLAプリンタとして一緒に提供される。SLAプリンタは市販されている。
【0017】
SLAと同様の特に好適な技術としてデジタル光処理(DLP)が知られており、レーザー光線をトレースするのではなく、リザーバの基部の窓を通してフォトポリマー上に成形された吸着剤の層全体を投影するためにプロジェクタを使用する。これにより、層を形成するために必要とされる時間が短縮され、ビルドプラットフォームが上昇又は下降することを可能にする。成形ユニットの除去を可能にするために、非粘着層を窓上に設けてもよい。好適な材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)フィルム又はフッ素化エチレンポリマー(FEP)フィルムが挙げられる。特に好適なFEPフィルムは、0.25m mmの厚さを有する。連続液体界面製造(CLIP)又はデジタル光合成(DLS)として知られる方法は、DLPに基づいているが、非粘着性ポリマーを使用して硬化層を液体フォトポリマーから物理的に分離するのではなく、CLIPは、ビルドポイントで薄い未硬化の液体層が形成される酸素含有ゾーンを形成し、これによって、成形ユニットの窓への接着を回避する。プラットフォームを硬化層から下げてもよく、又は、硬化層をビルド支持プレートを使用して液体プールから上昇させてもよい。この手法は、従来のSLA又はDLPプリンタに必要とされる別個の工程を排除し、層状構造の製造時間を短縮する。光重合プロセス及び装置の説明は、「Additive Manufacturing Technologies - Rapid Prototyping to Direct Digital Manufacturing」by Ian Gibson,David W.Rosen and Brent Stucker,Spring (2010)に見出すことができる。CLIPは、Tumblestone,et al in Science,347 (2015) pages 1349-1352により詳細に記載されている。
【0018】
マテリアルジェッティングなどの他の積層造形技術が使用されてもよい。マテリアルジェッティングは、従来のインクジェットプリンタの原理に基づくが、従来のインクの代わりに光硬化性樹脂を使用する。ビルド材料及び支持材料の2つのレジストが使用される。支持材料は、形状が形成された後に続いて除去される。この余分な複雑性と、噴射の必要性による吸着混合物の物理的特性に制約されることにより、マテリアルジェッティングは、デジタル光処理及び連続液体界面製造又はデジタル光合成方法よりも好ましくない。
【0019】
好ましくは、成形された吸着剤は、成形された吸着剤をUVチャンバ内に置いて硬化プロセスを完了させるなど、反応の完了を確実にするための成形後処理に供される。
【0020】
本発明で使用されるフォトポリマーは、電磁スペクトルの紫外線又は可視領域内の光に曝露されたときに硬くなる、つまり硬化する、任意の好適な液体フォトポリマーであってよい。最も一般的には、光重合されたシステムは、紫外線がよりエネルギーが強いため、典型的には紫外線によって硬化されるが、染料ベースの光開始剤系の開発により、可視光の使用が可能になっており、取り扱いが安全なプロセスであるという潜在的な利点を有する。多くの場合、フォトポリマーは、硬化と呼ばれるプロセスを通じて硬化したポリマー材料に形成されるモノマー、オリゴマー、及び光開始剤の混合物を含む。典型的には、フォトポリマーは、所望の物理的特性を達成するために多官能性モノマーとオリゴマーとの混合物を含み、したがって、内部又は外部開始を介して光の存在下で重合できる多種多様なモノマー及びオリゴマーが開発されている。可撓性、接着性、耐薬品性等の光硬化材料の特性は、光硬化性複合体中に存在する官能化オリゴマーによって提供される。オリゴマーは、典型的には、エポキシド、ウレタン、ポリエーテル、又はポリエステルであり、これらはそれぞれ、得られる材料に特定の特性を提供する。これらのオリゴマーのそれぞれは、典型的にはアクリレートによって官能化される。硬化は、ネットワークポリマーとして知られるものを形成する。多くの場合、フォトポリマーは光開始剤を含有する。光開始剤は、光の放射により、オリゴマー上の特定の官能基の重合を活性化する反応種に分解する化合物である。光開始には、フリーラジカルとイオンという2つの一般的な経路が存在し、そのいずれかを使用してもよい。光開始剤を含まない反応性オリゴマー及びモノマーに対して電子ビーム硬化は可能であるが、この方法はより好ましい。
【0021】
好適なフォトポリマーとしては、広範な反応性モノマー又は他のオリゴマー及び光開始剤と組み合わせて使用して、光重合された樹脂を生成することができるアクリレートオリゴマーを挙げることができる。フォトポリマーは、十分な架橋部を持っていなくてはならず、理想的には、成形された吸着剤の歪みを回避するために、重合時の体積収縮が最低限であるように設計すべきである。撮像に利用される一般的なモノマーとしては、多くの場合、体積収縮を低減するために非ポリマー成分と組み合わされる、多官能性アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。エポキシド樹脂とカチオン性光開始剤との競合複合混合物は、開環重合時の体積収縮がアクリレート及びメタクリレートよりも著しく低いため、使用が増えている。エポキシド及びアクリレートモノマーの両方からなるフリーラジカル及びカチオン性重合もまた使用されてもよく、アクリルモノマー由来の高い重合速度と、エポキシマトリックス由来のより良好な機械的特性を提供する。
好適なフォトポリマーは市販されている。
【0022】
所望であれば、染料などの光遮断化合物を吸着混合物中に含め、硬化速度を変更し、成形プロセスを支援してもよい。
【0023】
吸着混合物及び成形された吸着剤の調製に使用するためのフォトポリマーの粘度は、望ましくは20℃で1~500mPa・sの範囲内、好ましくは、20℃で1~250mPa・sの範囲内、より好ましくは20℃で1~100mPa・sである。
【0024】
吸着材料をフォトポリマーと混合して、成形された吸着剤を形成するために硬化される、液体吸着混合物を形成する。したがって、本方法は、(i)フォトポリマーと吸着材料とを含む吸着混合物を形成することと、(ii)所定のパターンに従って、吸着混合物を電磁放射線に曝露して、硬化ポリマーの層を形成することと、(iii)層ごとに工程(ii)を繰り返して、成形された製品を形成することと、を含む。
【0025】
吸着混合物及び調製直後の成形された吸着剤中の吸着材料の量は、1~70体積%の範囲であり得る。1~20体積%の範囲の低含量は、長期間にわたって低濃度の汚染物質を捕捉するのに有効であり得る。20~70体積%の範囲、好ましくは25~70体積%の範囲の高含量により、性能が増加する。本出願人は、70体積%を超えると、層状構造の迅速な形成を可能にするには、混合物の粘度が高すぎることを見出した。
【0026】
体積百分率の決定は、吸着材料の重量及び密度から容易に達成され得る。
【0027】
本出願人は、フォトポリマー混合物中に、吸着材料の粒子を分散させ、成形された吸着剤の処理を改善する分散剤を含むことによって、吸着混合物の粘度を低下させることが望ましいことを見出した。分散剤は、フォトポリマーの硬化プロセスに干渉しない、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、及び非イオン性分散剤などの任意の好適な分散剤であってもよい。
【0028】
本出願人は、成形前及び成形中に吸着混合物混合物の温度を調節して、粘度を低下できることを見出した。成形プロセス中の吸着混合物の温度は、好ましくは20~90℃、より好ましくは35~90℃、最も好ましくは40~60℃の範囲内である。
【0029】
例えば、硬化後に除去される低粘度の不活性液体を含むことによって、吸着混合物の粘度を低下させるための他の手段を使用することができる。
【0030】
吸着混合物は、望ましくは、使用される温度において、
1~20mPa・s、好ましくは1~10mPa・sの範囲内の粘度を有する。
【0031】
成形された吸着剤に多孔性をもたらすために、細孔形成剤もまた含めてよい。
【0032】
成形された吸着剤は、複数の層を含む。成形された吸着剤中の層の数は、光重合法の分解能及び成形された吸着剤のサイズに依存するが、多層構造では、5~5000以上の範囲であってもよい。複数の層を含む成形された吸着剤中の層の厚さは、10~300μmの範囲であってもよいが、好ましくは20~100μmである。SLA、DLP及びCLIP技術は、層状構造を製造するのに特に好適である。同心層を提供する方法も使用することができる。
【0033】
ALM技術を使用して製造され得る成形された吸着剤の幾何学的形状にはほぼ制限はない。この形状は、骨格フレーム又はマルチストラット格子構造から、多数の特徴部を有するファセット化ロバスト構造の範囲であってもよい。例えば、成形された吸着剤は、内部に空隙を含有し、複数の内部強化ロッドを有し得る、ワイヤーフレーム又は骨格フレームワーク構造の形態であってもよく、又は成形された吸着剤は、任意の形態のハニカム、又は円筒などの固体単位であってもよく、これは、平坦又はドーム形の端部、複数のローブ及び/又は貫通孔を有するように構成され得る。
【0034】
格子フレームワーク構造は好ましいものであり、円形又は多角形の形状であり得る1つ以上の面を含んでもよい。
【0035】
成形された吸着剤は、断面が円形、楕円形(elipsoid)、又は多角形、例えば、三角形、正方形、矩形、又は六角形であり得る、1つ以上の貫通孔を含んでもよい。貫通孔は、2つ以上の、平行に延びる貫通孔、又は、成形された吸着剤を通って様々な角度で成形された吸着剤の長手方向軸に延びる平行ではない貫通孔を含んでもよい。現在、従来のペレット化及び押出成形技術を使用しては可能ではない、湾曲している貫通孔もまたALM技術を使用して製造できる。
【0036】
成形された吸着剤は、望ましくは、吸着のための表面積を最大化するために、高い幾何学的表面積を有する。例えば、成形された吸着剤は、例えば国際公開第2016/166523号及び同第2016/166526号に開示されているような貫通孔を含む円筒形又は三次元楕円形状を有してもよい。特に好適な成形された吸着剤は、格子構造又は離間した平行な支柱若しくはメッシュの層を含む、開放型円筒の形態である。円筒は、好適には、≦1、例えば0.10~0.75のアスペクト比、すなわち、長さ/直径を有する。
【0037】
成形された吸着剤は、0.3mm~100mm、好ましくは0.3mm~50mmの範囲の断面サイズ(長さ幅又は高さのいずれか)を有し得る。
【0038】
成形された吸着剤は、使用中に固定されることを可能にするラグ又はタブを更に含んでもよい。
【0039】
成形された吸着剤は、代替的に、10cm~250cmの範囲の幅又は長さを有し得る、マルチチャネルモノリス又はハニカム構造として形成されてもよい。
【0040】
成形された吸着剤は、ガス、液体、又は、真空下又は窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスを含有し得る封止されたエンクロージャから物質を除去するプロセスに使用されてもよい。成形された吸着剤は、熱的に非常に安定であるが、ゲッタリングは、典型的には、0~60℃の範囲の温度で実施される。本発明は、封止されたエンクロージャ、特に気密封止されたエンクロージャから1つ以上の望ましくない物質を除去するための成形されたゲッターの製造に特に使用される。成形された吸着剤を使用して、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、酸素、アンモニア、水素、メタノール若しくはエタノールなどの有機分子、又は、メタン、エタン、若しくはエチレンなどの炭化水素のうちの1つ以上を除去することができる。成形された吸着剤は、水蒸気及び水素を除去するのに特に有用である。したがって、本発明は、環境を、吸着材料の粒子を含有する光重合された樹脂の1つ以上の層を含む成形された吸着剤と接触させることによって、環境から物質を除去するためのプロセスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
ここで、以下の図を参照して、本発明を更に説明する。
【
図1】
図1は、成形された吸着剤の調製に使用される、液槽光重合積層造形(VP-ALM)装置の図である。
【
図2】
図2は、装置を使用して調製された成形されたゲッターの側面図である。
【
図3】
図3は、同じ成形された吸着剤の上面図である。
【
図4】
図4は、成形された吸着剤中の層を示す、
図1の拡大部分である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施例1.デジタル光処理による成形されたゼオライト吸着剤の調製
材料及び装置。
吸着材料:3Aゼオライト粉末及びPdO粉末(両方とも市販)。
【0043】
フォトポリマー:CPS2030。CPS2030は、光開始剤及びポリマー前駆体を含有する配合された市販製品である。20℃におけるフォトポリマーの粘度は30mPa・sであった。このフォトポリマーは、Colorado Photopolymer Solutionsから入手可能である。
【0044】
分散剤:Hypermer(商標) KD1は、カチオン性ポリマー分散剤である。この材料は、Croda(商標)から入手可能である。
【0045】
コンピュータ支援設計装置:「Blender」オープンソースソフトウェアを実行し、続いて、nTopologyから入手可能な「Element」ソフトウェアを使用して構造を精密化する、デスクトップコンピュータ。
【0046】
DLPプリンタ装置:Sprintray Incから入手可能なMoonray(商標) S。装置を
図1に示す。この装置は、装置を制御するコンピュータ制御ユニット(図示せず)、及び、壁12と、その基部にコンピュータ制御デジタル光プロセッサ16からの光をガラス窓14の下側の鏡18を使用して投影することを可能にするためのガラス窓14と、を備える、吸着混合物用の槽、つまりリザーバ10を備える。ガラス窓のリザーバ側は、硬化した材料の分離を可能にするために、その上に配置された非粘着性ポリマーフィルム20を有する。ビルドプラットフォーム22は、ビルドプラットフォーム22の下面と非粘着性ポリマーフィルム20との間に液体層が存在するように、液体吸着混合物24内に配置される。硬化層26が形成されると、プラットフォーム22及び槽10は層厚によって分離され、プロセスは繰り返される。Moonray(商標) Sは、20、50、又は100μmの層厚を生成することができる。
【0047】
吸着混合物の調製:CPS2030/Hypermer(商標) KD1中、ゼオライト3Aを65重量%。
【0048】
98gのCPS2030を秤量し、50℃に加温した。Hypermer(商標) KD1を50℃に加温して、温めたCPS2030樹脂への添加前に確実に液体であるようにした。2gのHypermer(商標) KD1を98gのCPS2030に添加し、Hauschild Speedmixer(商標)中、2000rpmで180秒間混合した。153.29gの3Aゼオライトを秤量し、Speedmixer(商標)ポットに入れた。CPS2030樹脂溶液中の88.2gの以前に調製した2% Hypermer(商標) KD1を50℃に加温し、粉末と共にSpeedmixer(商標)ポットに秤量した。次いで、混合物をSpeedmixer(商標)に入れ、1200rpmで180秒間混合した。混合後、全ての粉末の残留物を容器の側面から戻し、バルク混合物内に混合した。次いで、混合物をSpeedmixer(商標)において、1200rpmで180秒間再度混合した。この混合手順に続いて、成形部品を製造する準備が整ったMoonray(商標) S DLP装置の樹脂タンクに、吸着混合物を注いだ。
【0049】
ゼオライト3Aは予め乾燥させず、そのため吸着した水を含有した。これらの実施例では、水分含量(300℃まで8時間加熱による質量損失を測定することにより決定)は、18.4重量%であった。
【0050】
DLP印刷の準備。
方法及びソフトウェアは、DLPプリンタの提供者から市販されており、又はオープンソースである。本明細書で使用される方法は、以下のとおりとした。
1. コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用して構造設計を描画/作成する。
2. 仮想ビルドプラットフォーム上への位置付けと、自動的な支持構造体の生成のために、この構造設計をDLPプリンタ装置ソフトウェアにインポートする。
3. 設計を複数の層に分割するスライスファイルを生成する。
4. スライスファイルをDLPプリンタ装置に送信する(この時点で、槽内に吸着材料混合物が存在し、必要に応じてビルドプラットフォームを固定されていることを確認する必要がある)。
【0051】
CPS2030フォトポリマーは、波長405nmの光に曝露されると固化する。硬化面におけるMoonray(商標) Sの出力は、2.8mW・cm-2であり、ピーク波長405nmに対して較正された。成形された吸着剤を形成する前に、フォトポリマーを既知の量のエネルギーに曝露し、次いで固化したポリマーの厚さを測定することによって、所望の分解能をもたらすために必要とされる光源への曝露を特定するため、作業曲線を決定した。作業曲線の決定方法を含む光重合の説明は、「Additive Manufacturing Technologies - Rapid Prototyping to Direct Digital Manufacturing」by Ian Gibson,David W.Rosen and Brent Stucker,Spring (2010),pages 61-102に見出すことができる。
【0052】
成形された吸着剤の作製。
再び
図1を参照すると、吸着混合物24と、しっかりと固定されたビルドプラットフォーム22とを、リザーバ10に入れた。非粘着性FEPポリマーフィルム20をガラス窓14上に配置した。次いで、事前調製されたスライスファイルを、DLP装置を使用して処理した。デジタル光プロセッサ16から405nmのピーク波長の光28を、ガラス窓14を通して、成形された吸着剤の第1の層に従ったパターンで液体の層へと投影し、それによって固化させる。投影された光は、
図1に点線によって示されている。次いで、リザーバ10を下げ、又はビルドプラットフォーム22を上昇させて、液体が硬化した固化層と非粘着性ポリマーフィルム20との間に流れ、次いで、その位置を1層分の厚さに調整し、プロセスを、成形された吸着剤の第2の層に従ったパターンを使用して繰り返し、このようにして、完全に形成された成形された吸着剤が得られるまで、層26を積み上げた。この実施例における層厚は100μmであった。
【0053】
試料洗浄及び後処理。
成形された吸着剤をビルドプラットフォームから取り外し、イソプロパノールで洗浄して、未反応の材料を除去した。次いで、洗浄した成形された吸着剤をUV硬化チャンバ内に入れ、375~405nmで後処理して、ポリマーを完全に硬化させた。
【0054】
成形された吸着剤を
図2、
図3及び
図4に示す。
図2及び
図3に示される成形された吸着剤は、平行な支柱を含む内部格子構造32を含む開放円筒構造30を含む。一方の端部で円筒の周囲に3つの等間隔のラグ34を設けて、装置又は密封されたエンクロージャ内への成形された吸着剤の取り付けを可能にした。円筒の直径は20mmであった。円筒の高さは5mmであった(したがって、L/Dは0.25であった)。ラグ34は、2.75mm幅であり、高さは1.25mmであった。格子構造内の支柱厚さは0.8mmであった。
図4は、格子構造32が複数の層36を含むことを示す、
図2の拡大部分を示す。この成形された吸着剤中の層の数は、50であった。
【0055】
実施例2.動的蒸気吸着法(DVS)による試験
実施例1で調製した、2重量%のHypermer(商標) KD1/CPS2030フォトポリマー中の65重量%のゼオライト3Aを含む硬化した吸着混合物について試験を行った。試験用の試料は、FEP被覆ガラススライド上に液体吸着混合物をキャスティングし、得られた層を405nmの光源に曝露することによって調製した。0.3~1mmの範囲の厚さを有する硬化した成形された吸着剤試料を調製した。次いで、DVS試験用の9mmの試料ホルダーに合わせるために、硬化した試料を破壊して材料のフレークを形成した。
【0056】
表面測定システムDVS advantage(商標)装置を使用して、以下の手順を用いて水分吸着を測定した。各試料を120℃で6時間予熱し、脱水された試料質量を記録した。次いで、200cm3/分の窒素流(20℃で40%の相対湿度を含む)に480分間曝露した試料の質量変化によって、水分の吸着を測定した。結果は以下のとおりであった。
【0057】
【0058】
結果は、ゼオライトを含有する薄い光重合された試料は、水蒸気をより捕捉することが可能であることを示す。
【0059】
光重合した試料は、試験時間(8時間)終了時点で飽和していないことに留意されたい。16時間まで実施した更なる測定では、一定速度で水分を吸着し続け、14.3重量%の取り込みを達成したことを示した。
【0060】
実施例3.デジタル光処理による成形されたPdO/ゼオライト吸着剤の調製
実施例2のキャスティング方法を使用して成形された吸着剤の試料を調製し、水素をゲッタリングする成形された吸着剤を製造できるかどうかを試験した。吸着混合物は、5重量%又は10重量%のPdO粉末(<45μmにふるい分け)を、実施例1で調製した2重量%のHypermer(商標) KD1/CPS2030フォトポリマー吸着混合物中、65重量%ゼオライト3A中に混合することによって調製し、その後成形した。
【0061】
次に、Chemisorb 2480体積化学吸着分析装置を使用して、試料の水素取り込みを測定した。約0.5~1gの材料の正確に計量されたアリコートを使用した。試料の活性化は、50cm3/分の試料を通して圧縮空気を流し、周囲温度から120℃まで10℃/分で加熱し、続いてこの温度で2時間保持することによって達成した。この時間の終了時に、圧縮空気をオフにし、試料を真空に開放しながら、35℃の分析温度及び10μmHg未満の圧力まで冷却した。これらの条件が満たされると、試料を真空下で更に60分間保持した。平衡等温線を生成するために、10秒の平衡時間を使用して、100、150、200、300、400、500、600、700及び760mmHgで純粋な水素の取り込みを測定した。測定後の試料重量を使用して、総ガス取り込み量を760mmHgでのcm3/gとして報告した。結果は以下のとおりであった。
【0062】
【0063】
成形された吸着剤は、試験中に水素を吸着することができた。
【0064】
実施例4.デジタル光処理による成形されたゼオライト吸着剤の調製
材料及び装置。
吸着材料:3Aゼオライト粉末。
【0065】
フォトポリマー:Genesis Flexible Development Base Resinは、アクリル化モノマー/オリゴマー(ウレタンアクリレート樹脂及びウレタンアクリレート)、分散剤、及び光開始剤からなる市販の光硬化性樹脂である。20℃におけるフォトポリマーの粘度は45mPa・sである。このフォトポリマーは、Tethon Corporation Incから供給され、受領したまま使用した。
【0066】
コンピュータ支援設計装置:「Blender」オープンソースソフトウェアを実行し、続いて、nTopologyから入手可能な「Element」ソフトウェアを使用して構造を精密化する、デスクトップコンピュータ。
【0067】
液槽光重合積層造形(VP-ALM)装置:Tethon Corporation Incから入手可能なBison 1000 DLP。装置は、
図1に示されるものと同様である。この装置は、装置を制御するコンピュータ制御ユニット、及び、コンピュータ制御デジタル光プロセッサ光源からの光をリザーバの底部の液体層上の鏡を使用して投影することを可能にするため、その基部に薄い透明なポリマー窓を有する、液体フォトポリマー、つまり吸着混合物用の槽、つまりリザーバを備える。透明なポリマー窓は、硬化した材料の層の剥離を可能にするために粘着性を有しない。ビルドプラットフォームは、ビルドプラットフォームの下面と非粘着性ポリマーフィルムとの間に液体層が存在するように、液体フォトポリマー、つまり吸着混合物内に配置される。
【0068】
吸着混合物の調製:Genesis Flexible Development Base Resin中、ゼオライト3Aを65重量%。50.67gの3Aゼオライトを秤量し、Hauschild Speedmixer(商標)ポットに入れた。27.28gのGenesis Flexible Development Base Resinを、3Aゼオライトと共にSpeedmixerポットに秤量した。次いで、混合物をHauschild Speedmixer(商標)に入れ、2000rpmで60秒間混合した。混合後、全ての粉末の残留物を容器の側面から戻し、バルク混合物内に混合した。次いで、混合物をSpeedmixer(商標)において、3000rpmで60秒間、更に3回混合した。
【0069】
ゼオライト3Aは予め乾燥させず、そのため吸着した水を含有した。この実施例では、水分含量(300℃まで8時間加熱による質量損失を測定することにより決定)は、18.4重量%であった。
【0070】
この混合手順に続いて、成形部品を製造する準備が整ったBison 1000 DLP装置の樹脂タンクに、吸着混合物を注いだ。
【0071】
DLP印刷の準備。
方法及びソフトウェアは、DLPプリンタの提供者から市販されており、又はオープンソースである。本明細書で使用される方法は、以下のとおりとした。
1. コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用して構造設計を描画/作成する。
2. 仮想ビルドプラットフォーム上への位置付けと、自動的な支持構造体の生成のために、この構造設計をDLPプリンタ装置ソフトウェアにインポートする。
3. 設計を複数の層に分割するスライスファイルを生成する。
4. スライスファイルをDLPプリンタ装置に送信する(この時点で、槽内に吸着材料混合物が存在し、必要に応じてビルドプラットフォームを固定されていることを確認する必要がある)。
【0072】
Genesis Flexible Developmentフォトポリマーは、波長405nmの光に曝露されると固化する。Bison 1000は、様々な出力の光源を有する。硬化面において、出力は最低2.24mW・cm-2、最大9.05mW・cm-2である。これを405nmのピーク波長に対して較正した。
【0073】
成形された吸着剤の作製。
完全に組み立てられたリザーバに、ビルドプラットフォームを有さない吸着混合物を入れた。次いで、事前調製されたスライスファイルを、DLP装置を使用して処理した。光を、成形された吸着剤の第1の層に従ったパターンで、デジタル光プロセッサから液体の層に窓を通して投射し、これによって固化した。設定された露光時間後に光を消し、このプロセスを、成形された吸着剤の第2の層に従ったパターンを使用して繰り返し、このようにして、完全に形成された成形された吸着剤が得られるまで、層を積み上げた。
【0074】
露光回数は、ソフトウェアによってスライスに処理されたときに、対応する露光回数に応じて厚さが増加する成形された吸着剤をもたらす入力ファイルを設計することによって決定された。各曝露は、それぞれの出力設定で5秒であった。
【0075】
各曝露による層厚は、配合物の材料特性及び光プロジェクタの出力によって決定された。
【0076】
試料洗浄及び後処理。
成形された吸着剤をリザーバの基部から取り外し、イソプロパノールで洗浄して、未反応の吸着剤材料を除去した。次いで、洗浄した成形された吸着剤をUV硬化チャンバ内に入れ、375~405nmで後処理して、ポリマーを完全に硬化させた。
【0077】
1.0~1.5mmの範囲の厚さを有する1cm×1cmの正方形を、この方法によって調製した。
【0078】
実施例5.動的蒸気吸着法(DVS)による試験
実施例4の手順に従い吸着混合物のいくつかの薄膜を硬化させることによって調製された、Genesis Flexible Developmentフォトポリマー中、65重量%のゼオライトAを含む吸着剤について、試験を行った。1.11(5層)及び1.40mm(10層)の厚さを有する硬化した成形された吸着剤試料を使用した。次いで、DVS試験用の9mmの試料ホルダーに合わせるために、硬化した試料を破壊して材料のフレークを形成した。
【0079】
表面測定システムDVS Endeavour(商標)装置を使用して、以下の手順を用いて水分吸着を測定した。各試料を120℃で6時間予熱し、脱水された試料質量を記録した。次いで、40cm3/分の窒素流(20℃で40%の相対湿度を含む)に360分間曝露した試料の質量変化によって、水分の吸着を測定した。結果は以下のとおりであった。
【0080】
【0081】
結果は、このフォトポリマーを用いて調製された薄い光重合された試料は、水蒸気を捕捉することが可能であることを示す。試料は、40%RHへの曝露がより短い時間であり、DVS装置での流量がより低く、試料がより厚いにもかかわらず、実施例2の試料よりも効果的に水を取り込むことができた。このポリマーはまた可撓性であり、設置及び使用における利益を提供する。
【国際調査報告】