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特表2022-538775過酸化ジアシルを生成するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】過酸化ジアシルを生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 409/34 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C07C409/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573609
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020066231
(87)【国際公開番号】W WO2020249691
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】19179624.2
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, 6824 BM Arnhem, the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】タメル,マルティヌス,キャサリヌス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC40
4H006AD16
4H006BB31
4H006BD33
4H006BE30
(57)【要約】
無水物のアルデヒドおよび酸素との反応、形成されたカルボン酸の除去、該カルボン酸からの無水物の生成、およびプロセス内の無水物の再利用を伴う、過酸化ジアシルを生成するためのプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化ジアシルを生成するためのプロセスであって、以下の工程:
a)式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する1つ以上の無水物を、式R-C(=O)Hのアルデヒドおよび酸素と反応させることによって、過酸化ジアシルおよびカルボン酸を含む混合物を生成する工程であって、式中、RおよびRが、独立して、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、1~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択され、Rが、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、2~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択される、生成する工程、
b)前記カルボン酸を、そのカルボン酸塩または付加物の形態で、前記混合物から抽出または分離する工程、
c)前記カルボン酸を前記塩または付加物から遊離する工程、
d)任意選択的に、式R-C(=O)Hのアルデヒドを酸素と反応させることによって、追加量のカルボン酸を生成する工程、
e)工程c)で得られたカルボン酸、および任意選択的に追加量の式R-C(=O)OHのカルボン酸(工程d)から得られた、および/または別の方法で得られた該追加量のカルボン酸)を、酸無水物または式C(R=C=O(式中、各Rが、独立して、HおよびCHから選択される)のケテン、好ましくは酢酸無水物と反応させて、式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する1つ以上の無水物を形成する工程、ならびに
f)工程e)で形成された前記無水物の少なくとも一部を、工程a)に再利用する工程、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記カルボン酸を、工程e)において酢酸無水物と反応させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
および各Rが、同一であり、好ましくは、R、R、および各Rが、同一である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
追加量のカルボン酸を、工程d)において生成し、工程e)において反応させる、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記カルボン酸が、工程b)において塩基の水溶液を用いて抽出されて、カルボン酸塩を形成し、前記カルボン酸が、工程c)において、前記抽出物の酸性化によってその塩から遊離される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記カルボン酸が、工程b)において塩基の水溶液を用いて抽出されて、カルボン酸塩を形成し、前記カルボン酸が、工程c)において、電気透析、好ましくは双極膜電気透析(BPM)によってその塩から遊離される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
工程e)中に、酢酸が、前記反応混合物から除去される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
工程e)が、反応性蒸留カラムで実施される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する前記1つ以上の無水物が、対称無水物であり、式中、RおよびRが、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、2~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
および各Rが、独立して、2~8個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル基から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記式R-C(=O)-O-C(=O)-Rの前記1つ以上の無水物が、イソ酪酸無水物、n-酪酸無水物、2-メチル酪酸無水物、3-メチル酪酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物、2-プロピルヘプタン酸無水物、n-ノナン酸無水物、イソノナン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、2-エチルヘキサン酸無水物、n-吉草酸無水物、およびイソ吉草酸無水物からなる群から選択される、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記式R-C(=O)Hの前記アルデヒドが、n-ブタナール、イソブタナール、2,2-ジメチルプロパナール、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、2-メチルペンタナール、2-エチルヘキサナール、n-ヘプタナール、n-ペンタナール、イソノナール、および2-プロピルヘプタナールからなる群、好ましくは、n-ブタナール、3-メチルブタナール、n-ヘプタナール、イソノナナール、およびイソブタナールからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記過酸化ジアシルが、過酸化ジ-n-ブチリル、過酸化ジ-2-メチルブチリル、過酸化ジ-3-メチルブチリル、過酸化ジ-イソバレリル、過酸化ジ-n-バレリル、過酸化ジ-2-メチルペンタノイル、過酸化ジ-シクロヘキシルカルボニル、過酸化ジ-n-ノナノイル、過酸化ジ-イソノナノイル、および過酸化ジ-イソブチリルからなる群から選択される、請求項3~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記過酸化ジアシルが、過酸化イソノナノイルイソブタノイル、過酸化ノナノイルイソブタノイル、過酸化イソブタノイルヘプタノイル、過酸化バレロイル2-エチルヘキサノイル、過酸化バレロイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化バレロイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化ヘプタノイル3-メチルブタノイル、過酸化ノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化イソノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化ペンタノイル3-メチルブタノイル、過酸化ノナノイルヘプタノイル、過酸化イソノナノイルヘプタノイル、過酸化ノナノイルペンタノイル、過酸化イソノナノイルペンタノイル、および過酸化イソノナノイルノイルノニルからなる群から選択される、請求項1~2または4~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
工程d)が、工程a)と同じ装置で実施される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化ジアシルを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化ジアシルは、以下の一般式を有し、
R-C(=O)-O-O-C(=O)-R
式中、R基は、同じであり得るかまたは異なり得、ヘテロ原子含有置換基で任意に置換されたアリール、アリールアルキル、および直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基から選択される。
【0003】
対称過酸化ジアシル、すなわち、上記式中のR基が同じであるものは、以下の式によって示されるように、過剰の酸無水物または酸塩化物を過酸化水素のアルカリ性溶液と反応させることによって調製されている。
2R-C(=O)-O-C(=O)-R+Na→R-C(=O)-O-O-C(=O)-R+2NaOC(=O)R
2R-C(=O)Cl+Na→R-C(=O)-O-O-C(=O)-R+2NaCl
この反応スキームにおいて、Naは、個別的な生成物Naを指すのではなく、HおよびNaOOHを含む平衡を指す。
【0004】
米国特許第3,580,955号は、酸塩化物を、アルデヒドおよび酸素と、酸受容体の存在下で反応させることによって、不斉過酸化ジアシルを調製するためのプロセスを開示する。
【0005】
米国特許第3,502,701号は、酸塩化物を過酸(peroxyacid)と反応させることによって不斉過酸化ジアシルを生成する。
【0006】
酸塩化物は、比較的高価であり、かつ塩化物含有水層を生じ、これは、塩分濃度の高い廃水をもたらす。
【0007】
不斉過酸化ジアシルの調製を可能にする別のプロセスは、英国特許第1,156,573号に記載されており、このプロセスは、有機無水物、アルデヒド、および酸素間の、有機酸のリチウムまたはマグネシウム塩を含む触媒の存在下での反応を伴う。
【0008】
英国特許第444,603号は、ベンズアルデヒドおよび酢酸無水物を、酸素含有ガスと、過酸化ジベンゾイルの存在下で反応させることによる、過酸化アセチルベンゾイルの調製を開示する。
【0009】
しかしながら、無水物は、酸塩化物よりもさらに高価であり、このプロセスの廃棄物流は、形成されたカルボン酸塩に起因して高い有機負荷、すなわち、高い化学的酸素要求量(COD)値を含有し、したがって、経済的および環境的に魅力的ではない。
【0010】
英国特許第901,041号は、過酸(peracid)を有機酸の無水物またはハロゲン化物と反応させることによって過酸化ジアシルを調製するプロセスを開示し、このプロセスでは、塩化物を使用することが好ましいと言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,580,955号明細書
【特許文献2】米国特許第3,502,701号明細書
【特許文献3】英国特許第1,156,573号明細書
【特許文献4】英国特許第444,603号明細書
【特許文献5】英国特許第901,041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、その排出物中に比較的低いカルボン酸(塩)含有量を有し、酸塩化物の使用を必要としない、過酸化ジアシルを生成するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、以下の工程:
a)式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する1つ以上の無水物を、式R-C(=O)Hのアルデヒドおよび酸素と反応させることによって、過酸化ジアシルおよびカルボン酸を含む混合物を生成する工程であって、式中、RおよびRが、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、1~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択され、Rが、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、2~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択される、生成する工程、
b)カルボン酸を、そのカルボン酸塩または付加物の形態で、混合物から抽出または分離する工程、
c)カルボン酸を塩または付加物から遊離する工程、
d)任意選択的に、式R-C(=O)Hのアルデヒドを酸素と反応させることによって、追加量のカルボン酸を生成する工程、
e)工程c)で得られたカルボン酸、および任意選択的に追加量の式R-C(=O)OHのカルボン酸(工程d)から得られた、および/または別の方法で得られた該追加量のカルボン酸)を、酸無水物または式C(R=C=O(式中、各Rが、独立して、HおよびCHから選択される)のケテン、好ましくは酢酸無水物と反応させて、式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する1つ以上の無水物を形成する工程、ならびに
f)工程e)で形成された無水物の少なくとも一部を、工程a)に再利用する工程、を含む、プロセスによって、達成することができる。
【0014】
このプロセスは、無水物から過酸化ジアシルを生成し、この無水物は、少なくとも部分的にカルボン酸副生成物から得られる。この工程a)で形成されたカルボン酸の再利用により、経路は経済的に魅力的となり、その排出物は低CODとなる。
【0015】
好ましくは、工程a)において必要とされる無水物の量を形成するために必要とされる任意の追加量のカルボン酸は、対応するアルデヒドの酸化によって得られる。この酸化は、工程a)と同じ装置で実施することができるため、非常に経済的であり、比較的安価である対応するアルデヒドから開始する過酸化ジアシルの生成をさらに可能にする。したがって、工程d)において追加量のカルボン酸を生成し、工程e)においてそれを酢酸無水物またはケテンと反応させることが好ましい。
【0016】
このプロセスは、腐食性または揮発性反応物の使用を伴わないため、生産安全性を高め、過酸化ジアシルが最終的に使用される場所(例えば、重合施設)での生産が可能となる。そのようなオンサイト生産により、応需型の過酸化物生産が可能となり、それによって貯蔵容量および結果として生じる安全対策を最小限に抑えることが可能となる。
【0017】
工程a)は、アルデヒドの、式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する無水物との反応を伴う。
【0018】
この式におけるRは、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、1~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択される。好適な置換基の例は、アルコキシ、塩素、およびエステル置換基である。炭素原子の数は、好ましくは2~11個、さらにより好ましくは2~8個、および最も好ましくは3~6個の炭素原子である。さらなる好ましい実施形態では、Rは、直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される。最も好ましくは、Rは、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、および2-ブチル基からなる群から選択される。
【0019】
この式におけるRは、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、2~17個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ならびにアリールアルキル基から選択される。好適な置換基の例は、アルコキシ、塩素、およびエステル置換基である。炭素原子の数は、好ましくは2~11個、さらにより好ましくは2~8個、および最も好ましくは3~6個の炭素原子である。さらなる好ましい実施形態では、Rは、直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される。最も好ましくは、Rは、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、および2-ブチル基からなる群から選択される。
【0020】
無水物は、対称であり得、R=Rを意味するか、または不斉であり得、R≠Rを意味する。
【0021】
無水物が対称である場合、工程a)で形成され、工程b)で抽出または分離されるカルボン酸は、式R-C(=O)OHを有する。無水物が不斉である場合、カルボン酸は、R-C(=O)OHおよびR-C(=O)OHの混合物である。
【0022】
好適な対称無水物は、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、イソ酪酸無水物、ピバリン酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、2-メチル酪酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-メチルヘプタン酸無水物、2-エチル酪酸無水物、カプロン酸無水物、カプリル酸無水物、イソカプロン酸無水物、n-ヘプタン酸無水物、ノナン酸無水物、イソノナン酸無水物、2-プロピルヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ネオデカン酸無水物、ウンデカン酸無水物、ネオヘプタン酸無水物、イソ-オクタン酸無水物、ラウリン酸無水物、トリデカン酸無水物、2-エチルヘキサン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、フェニル酢酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、3-メチル-シクロペンタンカルボン酸無水物、ベータ-メトキシプロピオン酸無水物、メトキシ酢酸無水物、エトキシ酢酸無水物、プロポキシ酢酸無水物、アルファ-エトキシ酪酸無水物、安息香酸無水物、o-、m-、およびp-トルイル酸無水物、2,4,6-トリメチル安息香酸無水物、o-、m-、およびp-クロロ安息香酸無水物、o-、m-、およびp-ブロモ安息香酸無水物、o-、m-、およびp-ニトロ安息香酸無水物、o-、m-およびp-メトキシ安息香酸無水物、ならびに上記の無水物のうちの2つ以上の混合物である。
【0023】
対称無水物の好適な混合物の例は、イソ酪酸無水物と2-メチル酪酸無水物との混合物、イソ酪酸無水物と2-メチルペンタン酸無水物との混合物、2-メチル酪酸無水物とイソ吉草酸無水物との混合物、および2-メチル酪酸無水物と吉草酸無水物との混合物である。
【0024】
不斉無水物は、通常、不斉無水物と対称無水物との混合物として入手可能である。これは、不斉無水物は、通常、酸の混合物を、例えば酢酸無水物と反応させることによって得られるためである。これは、不斉無水物および少なくとも1つの対称無水物を含む、無水物の混合物をもたらす。そのような無水物の混合物を、本発明のプロセスにおいて使用することができる。好適な不斉無水物の例は、好ましくはメトキシ酢酸無水物とイソノナン酸無水物との混合物として存在する、メトキシ酢酸イソノナン酸無水物;好ましくはエトキシ酢酸無水物とイソノナン酸無水物との混合物として存在する、エトキシ酢酸イソノナン酸無水物;好ましくはメトキシ酢酸無水物とn-ノナン酸無水物との混合物として存在する、メトキシ酢酸ノナン酸無水物;好ましくはエトキシ酢酸無水物とn-ノナン酸無水物との混合物として存在する、エトキシ酢ノナン酸無水物;好ましくはイソ酪酸無水物と2-メチル酪酸無水物との混合物として存在する、イソ酪酸-2-メチル酪酸無水物;好ましくはイソ酪酸無水物と酢酸無水物との混合物として存在する、イソ酪酸-酢酸無水物;好ましくはプロピオン酸無水物とイソ酪酸無水物との混合物として存在する、プロピオン酸-イソ酪酸無水物;好ましくは2-メチル酪酸無水物と吉草酸無水物との混合物として存在する、2-メチル酪酸-吉草酸無水物、および好ましくは酪酸無水物と吉草酸無水物との混合物として存在する、酪酸-吉草酸無水物である。
【0025】
より好ましい無水物は、イソ酪酸無水物、n-酪酸無水物、2-メチル酪酸無水物、3-メチル酪酸無水物、2-メチルヘキサン酸無水物、2-メチルペンタン酸無水物、2-プロピルヘプタン酸無水物、n-ノナン酸無水物、イソノナン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、2-エチルヘキサン酸無水物、n-吉草酸無水物、およびイソ吉草酸無水物である。最も好ましいのは、イソ酪酸無水物である。
【0026】
工程a)では、無水物を、アルデヒドと酸素の反応生成物と反応させる。
【0027】
アルデヒドは、式R-C(=O)Hを有し、式中、Rは、酸素および/またはハロゲン含有置換基で任意選択的に置換された、1~17個の炭素原子を有する炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基から選択される。
【0028】
好適な置換基の例は、アルコキシ、塩素、およびエステル置換基である。
【0029】
炭素原子の数は、好ましくは1~11個、より好ましくは3~9個、および最も好ましくは3~6個である。
【0030】
さらなる好ましい実施形態では、Rは、直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0031】
最も好ましいR基は、n-プロピルおよびイソプロピルであり、これは、式R-C(=O)Hを有する最も好ましいアルデヒドが、イソブタナール、n-ペンタナール、およびn-ブタナールであることを意味する。
【0032】
好適なアルデヒドとしては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブタナール、イソブタナール、2,2-ジメチルプロパナール、n-ペンタナール、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、2-エチルブタナール、2-プロピルヘプタナール、n-ヘキサナール、n-オクタナール、4-メチルペンタナール、n-ヘプタナール、6-メチルヘプタナール、n-オクタナール、n-ノナナール、イソノナール、n-デカナール、ウンデカナール、トリデカナール、2-エチルヘキサナール、テトラデカナール、オクタデカナール、フェニルエタナール、シクロヘキサンカルバルデヒド、3-メチル-シクロペンタナール、ベータ-メトキシプロパナール、アルファ-エトキシブタナール、ベンズアルデヒド、o-、m-、およびp-メチルベンズアルデヒド、2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド、o-、m-、およびp-シクロベンズアルデヒド、o-、m-、およびp-ブロモベンズアルデヒド、o-、m-、およびp-ニトロベンズアルデヒド、o-、m-、およびp-アセトキシベンズアルデヒド、ならびにo-、m-、およびp-メトキシベンズアルデヒドが挙げられる。
【0033】
好ましいアルデヒドは、n-ブタナール、イソブタナール、2,2-ジメチルプロパナール、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、2-メチルペンタナール、2-エチルヘキサナール、n-ヘプタナール、n-ペンタナール、イソノナナール、および2-プロピルヘプタナールである。
【0034】
より好ましいアルデヒドは、n-ブタナール、イソブタナール、3-メチルブタナール、n-ペンタナール、n-ヘプタナール、およびイソノナナールである。
【0035】
最も好ましいアルデヒドは、イソブタナール、n-ペンタナール、およびn-ブタナールである。
【0036】
好適な酸素源は空気であるが、純酸素、酸素富化空気、または酸素貧化空気も使用され得る。酸素源は、反応器にガスとして、好ましくはスパージャを使用して供給することにより、反応混合物に添加することができる。
【0037】
酸素源およびアルデヒドを、無水物を含有する反応器に、蒸発による損失が低く、かつ反応速度が十分に高い方法で投与することが好ましい。
【0038】
工程a)の反応は、好ましくは-10~60℃の範囲、より好ましくは0~50℃の範囲、さらにより好ましくは0~40℃の範囲、および最も好ましくは5~40℃の範囲の温度で実施される。
【0039】
好ましくは大気圧が使用される。より低い圧力では、より少ない酸素が反応混合物中に溶解し、より多くのアルデヒドが蒸発し得る。反応速度を増加させるために、いくつかの過圧が使用され得るが、高圧は一般に、濃縮された過酸化物系には望ましくない。
【0040】
アルデヒド対無水物のモル比は、好ましくは0.8~2.5、より好ましくは1.0~2.0、および最も好ましくは1.1~1.7の範囲である。
【0041】
この反応は、溶媒の存在を必要としない。しかしながら、最終生成物(すなわち、過酸化ジアシル)が溶媒中での希釈を必要とする場合、溶媒を無水物で事前充填するか、または反応中に反応混合物に投与することができる。好適な溶媒は、アルカン、エステル、エーテル、アミド、およびケトンである。好ましい溶媒は、イソドデカン、Spirdane(登録商標)、Isopar(登録商標)鉱油などのアルカン(の混合物);酢酸エチル、酢酸メチル、エチレングリコールジベンゾエート、マレイン酸ジブチル、ジイソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(DINCH)、または2,2,4-トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)などのエステル;およびフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸ジオクチルなどのフタレートである。
【0042】
塩基性触媒は、任意選択的に使用され得る。好適な触媒の例は、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはカルシウムの酸化物、水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩、(ヒドロ)リン酸塩、およびカルボン酸塩である。
【0043】
触媒は、無水物に対して0~30mol%、より好ましくは0~10mol%、および最も好ましくは0~5mol%の量で添加され得る。
【0044】
工程b)に従って、カルボン酸は、そのカルボン酸塩または付加物の形態で、工程a)から得られる混合物から抽出または分離される。該塩または付加物の形成は、塩基の存在を必要とする。工程a)中に塩基が存在しなかった場合、または工程a)中に添加された塩基の量が、カルボン酸の大部分を対応する塩もしくは付加物に変換するのに不十分である場合、工程b)において塩基または追加量の塩基が添加され得る。工程a)から生じる混合物中に存在する塩基の量が、カルボン酸の大部分を対応する塩または付加物に変換するのに十分である場合、工程b)において追加量の塩基を添加する必要はない。
【0045】
好適な塩基は、アルキル化アミン、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはカルシウムの酸化物、水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩、およびカルボン酸塩である。これらの塩基は、カルボン酸を脱プロトン化し、それによって水相に終着する水溶性塩を形成する。その後、有機相および水相は分離される。
【0046】
他の好適な塩基は、カルボン酸を捕捉し、それによって付加物を形成することができる、塩基性機能を有する固体材料である。そのような固体材料の例は、ポリ(スチレン-コ-ビニルベンジルアミン-コ-ジビニルベンゼン)、N-{2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル}アミノメチル-ポリスチレン、ジエチルアミノメチル-ポリスチレン、スチレンおよびジビニルベンゼンのジメチルアミノメチル化コポリマー、ポリマー結合モルホリン、ポリ(4-ビニルピリジン)、3-アミノプロピルシリル官能化SBA-15シリカ等のアルキルアミン基を含有するゼオライトまたはメソポーラスシリカ、高分子アミン、ならびにこれらの材料のうちの1つ以上の混合物などの塩基性イオン交換樹脂である。形成された付加物は、濾過によって反応混合物から除去することができる。
【0047】
水相中のあらゆる残留ペルオキシ化合物は、水相を、溶媒および/または無水物、好ましくは式R-C(=O)-O-C(=O)-Rの無水物で洗浄することによって除去することができる。
【0048】
カルボン酸の除去後、過酸化ジアシルを含有する有機相は、精製および/または乾燥され得る。精製は、任意選択的に塩、塩基、もしくは酸を含有する水で洗浄すること、および/または、例えば、カーボンブラックもしくは珪藻土上で濾過することによって実施することができる。乾燥は、MgSOもしくはNaSOのような乾燥塩を使用することによって、または空気もしくは真空乾燥工程を使用することによって実施することができる。過酸化ジアシルを水中で乳化する場合、乾燥工程を省略することができる。
【0049】
工程c)において、カルボン酸は、例えば、
(i)カルボン酸塩を含有する水相を酸性化すること、
(ii)付加物を(例えば、加熱もしくは酸性化することによって)分割し、塩基性機能を有する固体材料からカルボン酸を物理的に分離(例えば、蒸留)すること、または
(iii)電気化学的膜分離、例えば双極膜電気透析(BPM)を介して塩を分割することによって、遊離される。
【0050】
カルボン酸の酸性化およびプロトン化のための好ましい酸は、HSO、HCl、NaHSO、KHSOなどのような、3未満のpKaを有する酸である。最も好ましくは、HSOが使用される。HSOを使用する場合、好ましくは、90~96重量%の溶液として添加される。
【0051】
酸性化は、好ましくは6未満、より好ましくは4.5未満、および最も好ましくは3未満のpHになるよう実施される。得られるpHは、好ましくは1未満ではない。
【0052】
酸に加えて、少量の還元剤、例えば、亜硫酸塩および/またはヨウ化物もまた、任意の過酸化物残基を分解するために水相に添加され得る。任意の過酸化ジアシル残基を分解するために、熱処理(例えば、20~80℃)を適用することができる。
【0053】
次いで、カルボン酸を含有する有機層は、任意の水性の塩含有層から分離される。分離は、液体/液体分離器、遠心分離器、(パルスおよび/またはパックされた)向流カラム、ミキサセトラ(の組み合わせ)、または連続(プレート)分離器などの従来の分離装置を使用して、重力によって実施することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、分離は、有機液相を濃縮塩溶液、例えば、20~30重量%のNaCl、NaHSO、KHSO、NaSO、またはKSO溶液で塩析することによって促進することができる。塩は、水性液相中のカルボン酸の溶解度を低下させる。この抽出は、反応器、遠心分離器、またはミキサセトラなどの任意の好適なデバイスで実施することができる。
【0055】
特に、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、およびメチルまたはエチル分岐鎖ペンタン酸のような低分子量の酸については、残留量の酸が水層中に溶解したままである。この残留量は、吸着、(共沸)蒸留、または抽出によって回収することができる。任意選択的に、カルボン酸の溶解度を低下させるために、塩(例えば、硫酸ナトリウム)を水層に添加することができる。
【0056】
別の実施形態では、カルボン酸の遊離は、電気化学的膜分離によって達成される。電気化学的膜分離技法の例は、膜電気分解および双極膜電気透析(BPM)である。BPMは、好ましい電気化学的膜分離法である。
【0057】
電気化学的膜分離は、カルボン酸および金属水酸化物(例えば、NaOHまたはKOH)中の金属カルボン酸塩の分割、および両方の種の分離をもたらす。したがって、膜によって分離された(i)カルボン酸含有混合物および(ii)NaOHまたはKOH溶液をもたらす。NaOHまたはKOH溶液は、本発明のプロセス、例えば工程a)において再利用することができる。
【0058】
温度、塩濃度、およびカルボン酸の水中溶解度に応じて、カルボン酸含有混合物は、2つの液相の二相混合物または均質混合物であり得る。均質混合物が電気化学的膜分離条件下(概ね40~50℃)で形成される場合、混合物を約30℃未満の温度に冷却すること、および/または塩の添加により、二相混合物が形成されることを確実にする。次いで、この二相カルボン酸含有混合物の有機液層は、重力によって、または遠心分離器のような装置を使用することによって、水層から分離することができる。
【0059】
カルボン酸含有有機相は、任意選択的に、工程e)で使用する前に、アルコール、ケトン、アルケン、および水などの揮発性物質を除去するために精製される。これらの揮発性物質は、吸着、蒸留、または塩、分子ふるい等で乾燥させることによって、除去することができる。蒸留は、好ましい精製方法である。蒸留は、好ましくは、2つの生成物収集段階、すなわち、1つはアルコールのような不純物を収集する段階、もう1つは任意選択的にカルボン酸との共沸剤として、残りの水を収集する段階を伴う。
【0060】
工程e)およびf)に従って、その後、カルボン酸を、酸無水物または式C(R=C=Oのケテン(式中、各Rが、独立して、HおよびCHから選択される)、好ましくは、酢酸無水物と反応させて、式R-C(=O)-O-C(=O)-Rを有する無水物を形成し、その後、これを工程a)に少なくとも部分的に再利用し、再び使用して、過酸化ジアシルを生成する。
【0061】
工程e)の反応、特に酢酸無水物との反応は、中間区間にカルボン酸および酢酸無水物を供給される反応性蒸留カラムで有利に実施される。無水生成物はカラムの下部から抽出され、酢酸生成物はカラムの上部から収集される。代替的な方法は、蒸留カラムを上に載せた攪拌反応器内で無水物を生成することである。これにより、平衡を移動させるために、形成時に酢酸を蒸留することが可能になる。米国特許第2005/014974号は、酢酸無水物をイソ酪酸と反応させることによってイソ酪酸無水物を調製するためのプロセスを開示し、このプロセスは、形成された酢酸を蒸留する工程を含む。蒸留カラムは、高純度の酢酸を得るのに十分に効率的であることが好ましい。カラムの効率は、少なくとも8つの理論プレートであることが好ましい。高純度の酢酸は、様々な目的のために販売および/または使用することができる。
【0062】
式C(R=C=Oのケテンとの反応は、好ましくは、米国特許第2,589,112号に開示されているように、向流吸着デバイスにおいて実施される。好ましいケテンは、式CH=C=Oを有する。
【0063】
工程e)において触媒を使用してもよいが、触媒の非存在下で反応を実施することが好ましい。好適な触媒の例は、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはカルシウムの酸化物、水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩、およびカルボン酸塩である。
【0064】
カルボン酸対酢酸無水物のモル比は、好ましくは0.5:1~5:1、より好ましくは1.5:1~2.2:1、最も好ましくは1.8:1~2.2:1の範囲である。酢酸無水物に対してわずかに過剰のカルボン酸が使用され得る。
【0065】
反応は、好ましくは、70~200℃、好ましくは100~170℃、最も好ましくは120~160℃の温度で実施される。温度は、反応器内の圧力を調整することによって、所望の値に維持することができる。この圧力は、好ましくは1~100kPa、より好ましくは5~70kPaの範囲である。
【0066】
反応の完了後、式R-C(=O)-O-C(=O)-Rの無水物を精製するために、存在し得るあらゆる過剰の酢酸無水物を留去することができる。
【0067】
次いで、この無水物を、工程a)で再び使用することができる。
【0068】
好ましい実施形態では、工程e)で使用されるカルボン酸は、2つまたは3つの供給源から得られる。第1の供給源は、工程c)で遊離されるカルボン酸である。第2の供給源は、以下に記載されるように、工程d)に従って対応するアルデヒドを酸化することにより得られるカルボン酸である。第3の供給源は、任意の他の方法で得られた追加量のカルボン酸である。
【0069】
工程d)におけるアルデヒドの酸化は、工程a)と同じ装置で実施することができるため、非常に経済的であり、比較的安価である対応するアルデヒドから開始する過酸化ジアシルの生成をさらに可能にする。
【0070】
工程d)の酸素源としては、好ましくは空気が使用されるが、純酸素、または酸素富化もしくは酸素貧化空気も適用され得る。酸素源は、反応器にガスとして、好ましくはスパージャを使用して供給することにより、反応混合物に添加することができる。
【0071】
工程d)の反応は、好ましくは0~70℃の範囲、より好ましくは10~60℃の範囲、および最も好ましくは20~55℃の範囲の温度で実施される。
【0072】
好ましくは大気圧が使用され、より低い圧力ではアルデヒドが蒸発し得るが、これは望ましくない。
【0073】
触媒は、任意選択的に使用され得る。酸化を加速するだけでなく、酸の収率も高める非常に優れた触媒は、白金黒および第二鉄塩である。セリウム、ニッケル、鉛、銅、およびコバルト塩もまた有用であり、特に、それらのカルボン酸塩が有用である。
【0074】
触媒は、アルデヒドに対して0~20mol%、より好ましくは0~5mol%、および最も好ましくは0~2mol%の量で添加され得る。
【0075】
対称過酸化ジアシルおよび不斉過酸化ジアシルの両方は、本発明のプロセスによって生成することができる。しかしながら、対称過酸化ジアシルが好ましい。上記式のR、R、およびRが等しい場合、対称過酸化ジアシルが得られる。このプロセスが特に好適な対称過酸化ジアシルの例は、過酸化ジ-n-ブタノイル、過酸化ジ-n-バレロイル、過酸化ジ-2-メチルブタノイル、過酸化ジ-3-メチルブタノイル、過酸化ジ-2-メチルペンタノイル、過酸化ジ-シクロヘキシルカルボニル、過酸化ジ-n-ノナノイル、過酸化ジ-イソノナノイル、および過酸化ジ-イソブタノイルである。最も好ましいのは、過酸化ジ-2-メチルブタノイル、過酸化ジ-2-メチルペンタノイル、および過酸化ジ-イソブタノイルである。
【0076】
本プロセスが特に好適な不斉過酸化ジアシルの例は、過酸化イソノナノイルイソブタノイル、過酸化イソノナノイルブタノイル、過酸化イソノナノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化イソノナノイル2-メチルブタノイル、過酸化イソノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化イソノナノイルピバロイル、イソノナノイルシクロヘキシルカルボニル、過酸化イソノナノイルヘプタノイル、過酸化イソノナノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化3-メチルブタノイルイソブタノイル、過酸化3-メチルブタノイルn-ブタノイル、過酸化3-メチルブタノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化3-メチルブタノイル2-メチルブタノイル、過酸化3-メチルブタノイルピバロイル、過酸化3-メチルブタノイルシクロヘキシルカルボニル、過酸化3-メチルブタノイルヘプタノイル、過酸化3-メチルブタノイルイソノナノイル、過酸化3-メチルブタノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化イソブタノイルブタノイル、過酸化イソブタノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化イソブタノイル2-メチルブタノイル、過酸化イソブタノイル3-メチルブタノイル、過酸化イソブタノイルシクロヘキシルカルボニル、過酸化イソブタノイルヘプタノイル、過酸化イソブタノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化n-ブタノイルイソブタノイル、過酸化n-ブタノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化n-ブタノイル2-メチルブタノイル、過酸化n-ブタノイル3-メチルブタノイル、過酸化n-ブタノイルピバロイル、過酸化n-ブタノイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化n-ブタノイルヘプタノイル、過酸化n-ブタノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化2-メチルブタノイルイソブタノイル、過酸化2-メチルブタノイルブタノイル、過酸化2-メチルブタノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化2-メチルブタノイル3-メチルブタノイル、過酸化2-メチルブタノイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化2-メチルブタノイルヘプタノイル、過酸化2-メチルブタノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化2-メチルペンタノイルイソブタノイル、過酸化2-メチルペンタノイルブタノイル、過酸化2-メチルペンタノイル3-メチルブタノイル、過酸化2-メチルペンタノイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化2-メチルペンタノイルヘプタノイル、過酸化2-プロピルヘプタノイルヘプタノイル、過酸化ノナノイルイソブタノイル、過酸化ノナノイルブタノイル、過酸化ノナノイル2-エチルヘキサノイル、過酸化ノナノイル2-メチルブタノイル、過酸化ノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化ノナノイルピバロイル、過酸化ノナノイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化ノナノイルヘプタノイル、過酸化ノナノイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化メトキシアセチルイソノナノイル、過酸化エトキシアセチルイソノナノイル、過酸化メトキシアセチルノナノイル、および過酸化エトキシアセチルノナノイルである。
【0077】
最も好ましい不斉過酸化ジアシルは、過酸化イソノナノイルイソブタノイル、過酸化ノナノイルイソブタノイル、過酸化イソブタノイルヘプタノイル、過酸化バレロイル2-エチルヘキサノイル、過酸化バレロイル2-プロピルヘプタノイル、過酸化バレロイルシクロヘキシルカルボノイル、過酸化ヘプタノイル3-メチルブタノイル、過酸化ノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化イソノナノイル3-メチルブタノイル、過酸化ペンタノイル3-メチルブタノイル、過酸化ノナノイルヘプタノイル、過酸化イソノナノイルヘプタノイル、過酸化ノナノイルペンタノイル、過酸化イソノナノイルペンタノイル、および過酸化イソノナノイルノイルノニルである。
【0078】
本発明に従うプロセスおよびその個々の工程は、バッチ式にまたは連続的に実施することができる。連続モードで実施されることが好ましい工程は、工程e)における無水物を作製するための反応性蒸留、ならびに工程c)におけるカルボン酸の単離および精製である。
【0079】
また、バッチ作業と連続作業との組み合わせも使用することができる。組み合わせの例は、以下のとおりである。
-工程a)における過酸化ジアシルへのバッチ反応、続いてカルボン酸のバッチ分離および連続精製、ならびに工程e)における無水物への連続反応性蒸留、
-過酸化ジアシルへの連続反応、ならびにカルボン酸の分離および精製、続いて工程e)における無水物へのバッチモード蒸留、または
-過酸化ジアシルへのバッチ反応および生成物の分離、続いてカルボン酸の連続モード精製、ならびに工程e)における無水物への連続反応性蒸留。
【発明を実施するための形態】
【0080】
実施例
【0081】
実施例1
10℃の空の反応器に、1.8gのイソブタナール、30.9gのイソドデカン、39.9gのイソ酪酸無水物、および0.42gのNaHCOを添加した。空気を、高速攪拌下で、得られた混合物に通した。4.5時間の間、34.2gのイソブタナールおよび39gのイソ酪酸無水物の混合物を、8~10℃で投与した。空気投与を、16.5時間の間維持し、その間に温度が3℃低下した。
【0082】
得られた混合物を0℃に冷却した後、104gの水中に溶解した24gのNaCOをゆっくりと投与した。層を0℃で分離させ、117gの有機相および147.4gの水相を得た。
【0083】
有機相の過酸化ジ-イソブチリル含有量は、アルデヒドに基づいて、収率63%に対応する47重量%であった。生成物のFTIR分析により、過酸化物が少量の無水物を含有していることが明らかとなった(1750cm-1でのショルダー)。
【0084】
水相を、微量の過酸化物を除去するために、2.3gのイソドデカンで抽出し、続いて、20重量%のHSO溶液で、pH2に酸性化した。相分離は、20.9gの湿潤イソ酪酸を有する有機層をもたらした。
【0085】
有機層中の有機化合物のGC分析は、イソ酪酸97%、イソドデカン1%、および揮発性成分1%(水を除く)の含有量を示した。
【0086】
このイソ酪酸含有層の共沸蒸留時に、98%超のイソ酪酸および少量の水を含有する底流を得た。次いで、このイソ酪酸を、別の供給源(この場合はSigma Aldrich)からのイソ酪酸と混合し、次いで、酢酸無水物と、イソ酪酸無水物:酢酸無水物のモル比2:1.05で混合し、加熱して、酢酸を400mbar未満および120℃で蒸留して、残渣としてイソ酪酸無水物を得た。次いで、イソ酪酸無水物を、イソブタナールと反応させる第1の工程に再利用した。
【国際調査報告】