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2022-538797生物学的送達ビヒクルのための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】生物学的送達ビヒクルのための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20220830BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220830BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220830BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K38/02
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/713
A61P1/12
A61P1/00
A61P1/04
A61P35/00
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
C12N15/88 Z ZNA
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573887
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020037579
(87)【国際公開番号】W WO2020252375
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/861,852
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/948,095
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167427
【氏名又は名称】ディーエヌエーライト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アフマド、ムビージ
(72)【発明者】
【氏名】デイ、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ハーフェズ、イスマイル
(72)【発明者】
【氏名】メリット、ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC29
4C076DD41
4C076DD41Z
4C076DD46
4C076DD46F
4C076DD48
4C076DD48F
4C076DD49
4C076DD49F
4C076DD52
4C076DD52F
4C076DD59
4C076DD59F
4C076DD60
4C076DD60Z
4C076DD63
4C076DD63F
4C076DD67
4C076DD70
4C076DD70F
4C076EE06
4C076EE06Q
4C076EE17
4C076EE17Q
4C076EE23
4C076EE23Q
4C076EE41
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084MA05
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA03
4C084NA11
4C084NA13
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA731
4C084ZA732
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085EE07
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA13
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA73
4C086ZB26
(57)【要約】
治療剤の投与のための脂質ナノ粒子を含む送達ビヒクルと、粘液含有環境内のものなどの上皮細胞への治療剤の送達のためにそれを製造及び使用する方法とが提供される。提供されるナノ粒子は、イオン化可能な脂質及び/又はMVL5、MC2、CL1H6、DODMAなどのカチオン性脂質、リン脂質、及び胆汁酸塩を含む。前記送達ビヒクルを使用して治療剤、特に核酸治療剤を消化管中の上皮細胞に送達する方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カーゴ及び(ii)脂質ナノ粒子を含む送達ビヒクルであって、
前記脂質ナノ粒子は少なくとも1つの飽和脂質と、胆汁酸塩とを含み、
前記少なくとも1つの飽和脂質が飽和カチオン性脂質であるか、あるいは前記脂質ナノ粒子が少なくとも1つのカチオン性脂質をさらに含む、送達ビヒクル。
【請求項2】
前記脂質ナノ粒子は、不飽和カチオン性脂質又は不飽和非カチオン性脂質の少なくとも1つをさらに含み、任意選択で、前記脂質ナノ粒子中の前記少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質又は不飽和非カチオン性脂質の濃度は、前記脂質ナノ粒子の総脂質濃度の50モル%未満である、請求項1に記載の送達ビヒクル。
【請求項3】
前記飽和カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有する、請求項1又は請求項2に記載の送達ビヒクル。
【請求項4】
前記飽和脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和非カチオン性脂質を含む、請求項1又は請求項2に記載の送達ビヒクル。
【請求項5】
前記脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、永久荷電カチオン性脂質、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項6】
前記多価カチオン性脂質は、MVL5、TMVLBG2、TMVLG3、TMVLBG1、GL67、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の送達ビヒクル。
【請求項7】
前記多価カチオン性脂質はMVL5を含む、請求項6に記載の送達ビヒクル。
【請求項8】
前記多価カチオン性脂質は総脂質濃度の約25モル%以下である、請求項6又は7に記載の送達ビヒクル。
【請求項9】
前記永久荷電カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC-コレステロール・HCl)、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項5に記載の送達ビヒクル。
【請求項10】
前記飽和カチオン性脂質は、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DPTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DSDAP)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項11】
前記飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項4~9に記載の送達ビヒクル。
【請求項12】
前記不飽和カチオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、1,2-ジアルキルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、O-アルキルエチルホスホコリン、MC3、MC2、MC4、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール、N4-コレステリル-スペルミン、7-(4-(ジメチルアミノ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイルジオレアート(CL1H6)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項13】
前記不飽和カチオン性脂質は少なくともMC2又はCL1H6を含む、請求項12に記載の送達ビヒクル。
【請求項14】
前記不飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項2~13のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項15】
前記少なくとも1つの飽和脂質又はカチオン性脂質は多価カチオン性脂質である、請求項1に記載の送達ビヒクル。
【請求項16】
非カチオン性脂質をさらに含む、請求項15に記載の送達ビヒクル。
【請求項17】
前記多価カチオン性脂質、前記非カチオン性脂質、又は前記多価カチオン性脂質及び前記非カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有する、請求項16に記載の送達ビヒクル。
【請求項18】
前記多価カチオン性脂質は、MVL5、TMVLBG2、TMVLG3、TMVLBG1、及びGL67、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の送達ビヒクル。
【請求項19】
前記非カチオン性脂質は飽和非カチオン性脂質を含む、請求項17又は請求項18に記載の送達ビヒクル。
【請求項20】
前記飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の送達ビヒクル。
【請求項21】
前記送達ビヒクルは、胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、高胆汁酸塩環境中で安定である、請求項1~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項22】
前記高胆汁酸塩環境は胃腸環境を含む、請求項21に記載の送達ビヒクル。
【請求項23】
前記送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、少なくとも約5g/Lの胆汁酸塩を含む溶液中で増加した安定性を示し、前記安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、前記脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される、請求項21又は22に記載の送達ビヒクル。
【請求項24】
前記送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、少なくとも約5g/Lの約50%コール酸と約50%デオキシコール酸塩の混合物を含む溶液中で増加した安定性を示し、前記安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、前記脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される、請求項23に記載の送達ビヒクル。
【請求項25】
N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,Nトリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,NジステアリルN,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(2,3ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアムントニウムクロリド(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドムキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、N-(1-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)、ジオクムデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、DLin-K-C2-DMA、DLin-M-C3-DMA、2-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシル]プロパン-1-アミン)(CLinDMA)、MC4、O-アルキルエチルホスホコリン、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項26】
ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエバノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド、ジアシルグリセロール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項27】
ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリエロール(POPG)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項28】
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスファチジルコリン1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(OPEC)、ジオレオイルホスバチジルグリセロール(DOPG)、ジパフニトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオルミル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(4-マレイミドメチル)シエロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-teal)、ジパフニトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエバノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-OジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPS)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(transDOPE)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項29】
少なくともDSPC又はDMPCを含む、請求項28に記載の送達ビヒクル。
【請求項30】
コンジュゲートされた脂質をさらに含み、前記コンジュゲートされた脂質は、安定化成分にコンジュゲートされた脂質を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項31】
前記安定化成分は親水性ポリマーを含む、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項32】
前記親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)、ポリビニルアルコール、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項31に記載の送達ビヒクル。
【請求項33】
前記親水性ポリマーが約50kDa~約500kDaの分子量を有する、請求項32に記載の送達ビヒクル。
【請求項34】
前記親水性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記コンジュゲートされた脂質は、ペグ化された脂質を含む、請求項32又は33に記載の送達ビヒクル。
【請求項35】
前記ペグ化された脂質は、DSPE-PEG、DSG-PEG、DMG-PEG、又はDPPE-PEGを含む、請求項34に記載の送達ビヒクル。
【請求項36】
前記ペグ化された脂質はDSPE-PEG又はDMG-PEGを含む、請求項35に記載の送達ビヒクル。
【請求項37】
前記コンジュゲートされた脂質の濃度は25モル%未満である、請求項30~36のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項38】
前記コンジュゲートされた脂質の濃度は5モル%未満である、請求項30~36のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項39】
前記コンジュゲートされた脂質の濃度は約0.5モル%~約20モル%である、請求項30~36のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項40】
前記非カチオン性脂質を含み、前記非カチオン性脂質の濃度は約5モル%~約75モル%である、請求項5~39のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項41】
前記脂質ナノ粒子は、正又は中性に近い正味電荷を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項42】
コレステロールをさらに含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項43】
カーゴ及びナノ粒子を含む送達ビヒクルであって、前記ナノ粒子は、約5.5~8.0のpHで正電荷を帯びている第1の部位、及び約5.5~8.0のpHで負電荷を帯びている第2の部位を含み、前記第1及び第2の部位は、前記正電荷及び負電荷が散在しないように分離されており、前記ナノ粒子は、粘液バリアを通過して上皮細胞に到達することが可能である、送達ビヒクル。
【請求項44】
上皮細胞への到達は、前記送達ビヒクルが細胞表面から20ミクロン以内に接近すること、上皮細胞表面に結合すること、あるいは上皮細胞によって吸収されることを含む、請求項43に記載の送達ビヒクル。
【請求項45】
前記ナノ粒子は、脂質、ポリマー、又はそれらの組合せを含む、請求項43又は44に記載の送達ビヒクル。
【請求項46】
前記第1の部位は第1の相に含まれ、前記第2の部位は第2の相に含まれ、前記第1の相と前記第2の相は互いに物理的に分離されている、請求項43~45のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項47】
前記第1の相が液体である、請求項46に記載の送達ビヒクル。
【請求項48】
前記第2の相がゲルである、請求項47に記載の送達ビヒクル。
【請求項49】
前記第1の相がゲルである、請求項46に記載の送達ビヒクル。
【請求項50】
前記第2の相が液体である、請求項49に記載の送達ビヒクル。
【請求項51】
安定性成分をさらに含む、請求項43~50のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項52】
前記安定性成分はポリエチレングリコール(PEG)である、請求項51に記載の送達ビヒクル。
【請求項53】
前記第1の部位は、不飽和脂質又は短尾部脂質を含む、請求項47に記載の送達ビヒクル。
【請求項54】
前記不飽和脂質は、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項53に記載の送達ビヒクル。
【請求項55】
前記カチオン性脂質は、多価カチオン性脂質又は一価カチオン性脂質を含む、請求項54に記載の送達ビヒクル。
【請求項56】
前記カチオン性脂質は、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N4-コレステリル-スペルミンHCl(GL67)、これらのいずれかの塩、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項55に記載の送達ビヒクル。
【請求項57】
前記第1の相中の1つ以上の脂質はペグ化されている、請求項56に記載の送達ビヒクル。
【請求項58】
前記第1の部位は、1,2-ジオレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)プロパン(DODMA)、6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル3-(ジメチルアミノ)プロパノアート(MC2)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つをさらに含む、請求項43~57のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項59】
前記第2の部位は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS)、デポ酢酸メドロキシプロゲステロン(DMPA)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸ナトリウム(DSPA)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロールジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、又は2,4-ジアセチルフロログルシノール(DAPG)の少なくとも1つを含む、請求項43~58のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項60】
前記第2の部位が、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン(DMPE)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン20:0 PC(DAPC)、又は1,2-ジラジル-3-ホスファチジルエタノールアミン20:0 PE(DAPE)の少なくとも1つをさらに含む、請求項59に記載の送達ビヒクル。
【請求項61】
前記第2の部位が、デオキシコール酸塩、及び2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン(DMPE)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン20:0 PC(DAPC)、又は1,2-ジラジル-3-ホスファチジルエタノールアミン20:0 PE(DAPE)の少なくとも1つを含む、請求項43~58のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項62】
前記第1の相は37℃未満の転移温度を有し、前記第2の相は37℃超の転移温度を有する、請求項47に記載の送達ビヒクル。
【請求項63】
前記第1の相は37℃超の転移温度を有し、前記第2の相は37℃未満の転移温度を有する、請求項49に記載の送達ビヒクル。
【請求項64】
37℃未満の転移温度を有する前記相は、DODMA、MVL5、MC2、カチオン性脂質、又はイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項62又は請求項63に記載の送達ビヒクル。
【請求項65】
37℃超の転移温度を有する前記相はDSPCを含む、請求項62又は請求項63に記載の送達ビヒクル。
【請求項66】
pH7.4における前記第2の部位中のアニオン性電荷に対する前記第1の部位中のカチオン性電荷の比は、約0.25~約3.0である、請求項43~65のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項67】
前記比は約0.75~約1.25である、請求項66に記載の送達ビヒクル。
【請求項68】
前記第1の相は、MVL5及びイオン化可能なカチオン性脂質を含む、請求項66又は67に記載の送達ビヒクル。
【請求項69】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が、DODMA、MC2、MC3、及びKC2からなる群から選択される、請求項68に記載の送達ビヒクル。
【請求項70】
前記イオン化可能なカチオン性脂質はDODMA又はMC2であり、前記送達ビヒクル中のMVL5:イオン化可能なカチオン性脂質のモル%比は、約6.25%:18.75%、12.5%:12.5%、又は18.75%:6.25%である、請求項69に記載の送達ビヒクル。
【請求項71】
前記送達ビヒクル中のMVL5:イオン化可能なカチオン性脂質の前記比は約12.5%:12.5%である、請求項70に記載の送達ビヒクル。
【請求項72】
前記第2の相はデオキシコール酸塩を含む、請求項61~69のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項73】
2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)、又はその塩をさらに含む、請求項72に記載の送達ビヒクル。
【請求項74】
DMPE-PEG又はその塩をさらに含む、請求項72に記載の送達ビヒクル。
【請求項75】
前記第1の部位はカチオン性脂質を含み、前記第2の部位はアニオン性化合物を含む、請求項43に記載の送達ビヒクル。
【請求項76】
前記カチオン性脂質はMVL5である、請求項75に記載の送達ビヒクル。
【請求項77】
前記アニオン性化合物は胆汁酸塩を含む、請求項75又は請求項76に記載の送達ビヒクル。
【請求項78】
前記胆汁酸塩は、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸塩、イソリトコール酸、イソリトコール酸塩、リトコール酸、及びリトコール酸塩からなる群から選択される、請求項1~32又は77のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項79】
前記胆汁酸塩は、リトコール酸塩、デオキシコール酸塩、及びイソリトコール酸塩からなる群から選択される、請求項78に記載の送達ビヒクル。
【請求項80】
前記胆汁酸塩はデオキシコール酸塩である、請求項78に記載の送達ビヒクル。
【請求項81】
前記胆汁酸塩はイソリトコール酸塩である、請求項78に記載の送達ビヒクル。
【請求項82】
前記胆汁酸塩は約10モル%~約80モル%の濃度である、請求項1~42又は78~81のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項83】
前記カーゴは、前記脂質ナノ粒子により少なくとも部分的に取り囲まれている、請求項1~82のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項84】
前記カーゴは治療剤を含む、請求項1~83のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項85】
前記カーゴは、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、生物製剤、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1~84のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項86】
前記カーゴは核酸であり、前記核酸は、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項85に記載の送達ビヒクル。
【請求項87】
細胞内移行のための成分をさらに含む、請求項1~86のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項88】
前記成分は、ペプチド、炭水化物、又はリガンドである、請求項87に記載の送達ビヒクル。
【請求項89】
細胞透過性ペプチド、リガンド、粘液透過性ポリマー、粘液透過性ペプチド、非粘液付着性細胞透過性ペプチド、又はこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1~88のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項90】
請求項1~89のいずれか一項に記載の送達ビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項91】
消化管にカーゴを送達する方法であって、請求項1~89のいずれか一項に記載の送達ビヒクル又は請求項90に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記送達ビヒクルが消化管に到達し、前記送達ビヒクルが前記消化管中に存在する胆汁酸塩から前記カーゴを保護する、方法。
【請求項92】
送達ビヒクルは粘液バリアを容易に通過する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
送達ビヒクルは、前記消化管内の上皮細胞に到達することが可能である、請求項91又は請求項92に記載の方法。
【請求項94】
上皮細胞への到達は、前記送達ビヒクルが細胞表面から20ミクロン以内に接近することを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記送達ビヒクルは上皮細胞の表面に接触する、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記送達ビヒクルが上皮細胞に接触した後、前記カーゴは上皮細胞によって吸収される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記送達ビヒクル又は医薬組成物は、それを必要とする対象に経口又は非経口的に投与される、請求項91~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記カーゴは、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、又は生物製剤を含む、請求項91~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記核酸は治療剤をコードし、上皮細胞は前記カーゴを吸収した後に前記治療剤を発現する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記治療剤は前記上皮細胞により分泌される、請求項99に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生物学的送達ビヒクルのための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近50年にわたる遺伝子治療の進歩にもかかわらず、特に消化管内など、遺伝子治療の標的位置が送達の困難さを与える場合に、従来の方法に不応性である多くの疾患が依然として存在する。本開示はこの必要性に対処し、またいくつかの利点も与える。
【発明の概要】
【0003】
(i)カーゴ及び(ii)脂質ナノ粒子を含む送達ビヒクルであって、脂質ナノ粒子が少なくとも1つの飽和脂質と、胆汁酸塩とを含み、少なくとも1つの飽和脂質が飽和カチオン性脂質であるか、あるいは脂質ナノ粒子が少なくとも1つのカチオン性脂質をさらに含む、送達ビヒクルが本明細書で提供される。いくつかの場合において、脂質ナノ粒子は、不飽和カチオン性脂質又は不飽和非カチオン性脂質の少なくとも1つをさらに含み、任意選択で、脂質ナノ粒子中の少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質又は不飽和非カチオン性脂質の濃度は、脂質ナノ粒子の総脂質濃度の50モル%未満である。いくつかの場合において、飽和カチオン性脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する。いくつかの場合において、飽和脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和非カチオン性脂質を含む。いくつかの場合において、脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、永久荷電カチオン性脂質、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの場合において、多価カチオン性脂質は、MVL5、TMVLBG2、TMVLG3、TMVLBG1、GL67、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、多価カチオン性脂質はMVL5を含む。一態様において、多価カチオン性脂質は、総脂質濃度の約25モル%以下である。いくつかの場合において、永久荷電カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC-コレステロール・HCl)、又はこれらの任意の組合せを含む。いくつかの場合において、飽和カチオン性脂質は、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジパルミトイル-3トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DPTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DSDAP)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、不飽和カチオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、1,2-ジアルキルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、O-アルキルエチルホスホコリン、MC3、MC2、MC4、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール、N4-コレステリル-スペルミン、7-(4-(ジメチルアミノ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイルジオレアート(CL1H6)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、不飽和カチオン性脂質は、少なくともMC2又はCL1H6を含む。いくつかの場合において、不飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、少なくとも1つの飽和脂質又はカチオン性脂質は多価カチオン性脂質である。
【0004】
一実施形態において、送達ビヒクルは非カチオン性脂質をさらに含む。いくつかの場合において、多価カチオン性脂質、非カチオン性脂質、又は多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する。いくつかの場合において、多価カチオン性脂質は、MVL5、TMVLBG2、TMVLG3、TMVLBG1、及びGL67、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、非カチオン性脂質は飽和非カチオン性脂質を含む。いくつかの場合において、飽和非カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアキリル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、モノグリセロールアルキラート、グリセリルヒドロキシアルキラート、ソルビタンモノアルキラート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N,N-ジメチル、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、高胆汁酸塩環境中で安定である。いくつかの場合において、高胆汁酸塩環境は胃腸環境を含む。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、少なくとも約5g/Lの胆汁酸塩を含む溶液中で増加した安定性を示し、安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、少なくとも約5g/Lの約50%コール酸と約50%デオキシコール酸塩の混合物を含む溶液中で増加した安定性を示し、安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される。
【0005】
一実施形態において、送達ビヒクルは、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,Nトリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,NジステアリルN,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(2,3ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアムントニウムクロリド(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドムキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、N-(1-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)、ジオクムデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、DLin-K-C2-DMA、DLin-M-C3-DMA、2-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシル]プロパン-1-アミン)(CLinDMA)、MC4、O-アルキルエチルホスホコリン、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。
【0006】
一実施形態において、送達ビヒクルは、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエバノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド、ジアシルグリセロール、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。
【0007】
一実施形態において、送達ビヒクルは、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリエロール(POPG)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。
【0008】
一実施形態において、送達ビヒクルは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスファチジルコリン1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(OPEC)、ジオレオイルホスバチジルグリセロール(DOPG)、ジパフニトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオルミル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(4-マレイミドメチル)シエロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-teal)、ジパフニトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエバノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-OジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPS)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(transDOPE)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む。
【0009】
一実施形態において、送達ビヒクルは、少なくともDSPC又はDMPCを含む。
一実施形態において、送達ビヒクルは、コンジュゲートされた脂質をさらに含み、コンジュゲートされた脂質は、安定化成分にコンジュゲートされた脂質を含む。いくつかの場合において、安定化成分は親水性ポリマーを含む。いくつかの場合において、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)、ポリビニルアルコール、又はこれらの任意の組合せを含む。いくつかの場合において、親水性ポリマーは、約50kDa~約500kDaの分子量を有する。いくつかの場合において、親水性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み、コンジュゲートされた脂質は、ペグ化された脂質を含む。いくつかの場合において、ペグ化された脂質は、DSPE-PEG、DSG-PEG、DMG-PEG、又はDPPE-PEGを含む。いくつかの場合において、ペグ化された脂質は、DSPE-PEG又はDMG-PEGを含む。いくつかの場合において、コンジュゲートされた脂質の濃度は25モル%未満である。いくつかの場合において、コンジュゲートされた脂質の濃度は5モル%未満である。いくつかの場合において、コンジュゲートされた脂質の濃度は約0.5モル%~約20モル%である。いくつかの場合において、送達ビヒクルは非カチオン性脂質を含み、非カチオン性脂質の濃度は約5モル%~約75モル%である。いくつかの場合において、脂質ナノ粒子は、正又は中性に近い正味電荷を有する。
【0010】
一態様において、送達ビヒクルはコレステロールをさらに含む。
カーゴ及びナノ粒子を含む送達ビヒクルであって、ナノ粒子は、約5.5~8.0のpHで正電荷を帯びている第1の部位及び約5.5~8.0のpHで負電荷を帯びている第2の部位を含み、第1の部位と第2の部位は、正電荷及び負電荷が散在しないように分離されており、ナノ粒子は、粘液バリアを通過して上皮細胞に到達することが可能である送達ビヒクルが本明細書で提供される。一態様において、上皮細胞への到達は、送達ビヒクルが細胞表面から20ミクロン以内に接近すること、上皮細胞表面に結合すること、あるいは上皮細胞によって吸収されることを含む。一態様において、ナノ粒子は、脂質、ポリマー、又はそれらの組合せを含む。一態様において、第1の部位は第1の相に含まれ、第2の部位は第2の相に含まれ、第1の相と第2の相は互いに物理的に分離されている。一態様において、第1の相は液体である。一態様において、第2の相はゲルである。一態様において、第1の相はゲルである。一態様において、第2の相は液体である。いくつかの場合において、送達ビヒクルは安定性成分をさらに含む。いくつかの場合において、安定性成分はポリエチレングリコール(PEG)である。いくつかの場合において、第1の部位は、不飽和脂質又は短尾部脂質を含む。いくつかの場合において、不飽和脂質は、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの場合において、カチオン性脂質は、多価カチオン性脂質又は一価カチオン性脂質を含む。いくつかの場合において、カチオン性脂質は、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N4-コレステリル-スペルミンHCl(GL67)、これらのいずれかの塩、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一態様において、第1の相中の1つ以上の脂質はペグ化されている。一態様において、第1の部位は、1,2-ジオレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)プロパン(DODMA)、6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル3-(ジメチルアミノ)プロパノアート(MC2)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つをさらに含む。一態様において、第2の部位は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS)、デポ酢酸メドロキシプロゲステロン(DMPA)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸ナトリウム(DSPA)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロールジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、又は2,4-ジアセチルフロログルシノール(DAPG)の少なくとも1つを含む。一態様において、第2の部位は、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン(DMPE)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン20:0 PC(DAPC)、又は1,2-ジラジル-3-ホスファチジルエタノールアミン20:0 PE(DAPE)の少なくとも1つをさらに含む。一態様において、第2の部位は、デオキシコール酸塩、及び2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン(DMPE)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン20:0 PC(DAPC)、又は1,2-ジラジル-3-ホスファチジルエタノールアミン20:0 PE(DAPE)の少なくとも1つを含む。一態様において、第1の相は37℃未満の転移温度を有し、第2の相は37℃超の転移温度を有する。一態様において、第1の相は37℃超の転移温度を有し、第2の相は37℃未満の転移温度を有する。一態様において、37℃未満の転移温度を有する相は、DODMA、MVL5、MC2、カチオン性脂質、又はイオン化可能なカチオン性脂質を含む。一態様において、37℃超の転移温度を有する相はDSPCを含む。いくつかの場合において、pH7.4における第2の部位中のアニオン性電荷に対する第1の部位中のカチオン性電荷の比は、約0.25~約3.0である。いくつかの場合において、この比は約0.75~約1.25である。いくつかの場合において、第1の相は、MVL5及びイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの場合において、イオン化可能なカチオン性脂質は、DODMA、MC2、MC3、及びKC2からなる群から選択される。いくつかの場合において、イオン化可能なカチオン性脂質はDODMA又はMC2であり、送達ビヒクル中のMVL5:イオン化可能なカチオン性脂質のモル%比は、約6.25%:18.75%、12.5%:12.5%、又は18.75%:6.25%である。いくつかの場合において、送達ビヒクル中のMVL5:イオン化可能なカチオン性脂質の比は約12.5%:12.5%である。いくつかの場合において、第2の相はデオキシコール酸塩を含む。
【0011】
一態様において、送達ビヒクルは、2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)又はその塩をさらに含む。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、DMPE-PEG又はその塩をさらに含む。いくつかの場合において、第1の部位はカチオン性脂質を含み、第2の部位はアニオン性化合物を含む。いくつかの場合において、カチオン性脂質はMVL5である。いくつかの場合において、アニオン性化合物は胆汁酸塩を含む。いくつかの場合において、胆汁酸塩は、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸塩、イソリトコール酸、イソリトコール酸塩、リトコール酸、及びリトコール酸塩からなる群から選択される。いくつかの場合において、胆汁酸塩は、リトコール酸塩、デオキシコール酸塩、及びイソリトコール酸塩からなる群から選択される。いくつかの場合において、胆汁酸塩はデオキシコール酸塩である。いくつかの場合において、胆汁酸塩はイソリトコール酸塩である。いくつかの場合において、胆汁酸塩は、約10モル%~約80モル%の濃度である。いくつかの場合において、カーゴは、脂質ナノ粒子により少なくとも部分的に取り囲まれている。いくつかの場合において、カーゴは治療剤を含む。いくつかの場合において、カーゴは、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、生物製剤、又はこれらの任意の組合せを含む。いくつかの場合において、カーゴは核酸であり、核酸は、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA、又はこれらの任意の組合せを含む。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、細胞内移行のための成分をさらに含む。一態様において、その成分は、ペプチド、炭水化物、又はリガンドである。
【0012】
一態様において、送達ビヒクルは、細胞透過性ペプチド、リガンド、粘液透過性ポリマー、粘液透過性ペプチド、非粘液付着性細胞透過性ペプチド、又はこれらの任意の組合せをさらに含む。
【0013】
送達ビヒクルを含む医薬組成物が本明細書で提供される。
送達ビヒクル又は医薬組成物を投与することを含んだ、消化管にカーゴを送達する方法であって、送達ビヒクルが消化管に到達し、送達ビヒクルが消化管中に存在する胆汁酸塩からカーゴを保護する方法が本明細書で提供される。いくつかの場合において、送達ビヒクルは粘液バリアを容易に通過する。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、消化管内の上皮細胞に到達することが可能である。いくつかの場合において、上皮細胞への到達は、送達ビヒクルが細胞表面から20ミクロン以内に接近することを含む。いくつかの場合において、送達ビヒクルは上皮細胞の表面に接触する。一態様において、送達ビヒクルが上皮細胞に接触した後、カーゴは上皮細胞によって吸収される。いくつかの場合において、送達ビヒクル又は医薬組成物は、それを必要とする対象に経口又は非経口的に投与される。いくつかの場合において、カーゴは、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、又は生物製剤を含む。いくつかの場合において、核酸は治療剤をコードし、上皮細胞はカーゴを吸収した後に治療剤を発現する。いくつかの場合において、治療剤は上皮細胞により分泌される。
【0014】
参照による組込み
本明細書中の全刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により組み込まれると具体的及び個別に示されるかのように同程度まで参照によりその全体として組み込まれる。本明細書中の用語と組み込まれた参照文献での用語の間に矛盾がある場合、本明細書中の用語が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の新規な特徴が、添付される特許請求の範囲に詳細に述べられる。本開示の特徴及び利点のより良好な理解は、本開示の原理が利用できる実例となる実施形態を述べる以下の詳細な説明及び以下の添付図面を参照して得られるだろう。
図1】HEK細胞中でDNAをカーゴとして運ぶ本開示の例示的な送達ビヒクルの核酸導入効率を測定する例示的なアッセイの結果を示す。
図2】本開示の例示的な送達ビヒクルの安定性を測定する例示的なアッセイの結果を示す。
図3】本開示の例示的な送達ビヒクルの安定性を測定する例示的なアッセイの結果を示す。
図4】本開示の例示的な送達ビヒクルの安定性を測定する例示的なアッセイの結果を示す。
図5】本開示の例示的な送達ビヒクル(表1の製剤番号5)によるアガロースゲル電気泳動を示す。レーンは左から以下の通りである。第1レーンはラダーを示す。第2レーンは未処理送達ビヒクルを示す。第3レーンは7%トリトン-X100により処理された送達ビヒクルを示す。第4レーンは7%トリトン-Xと熱(70℃30分間)により処理された送達ビヒクルを示す。
図6】DiI及びDiO標識された送達ビヒクルに封入された30マイクログラムのDNAを投与されたマウスのマウス結腸切片を示す。明視野に重ねられた、DiIからの蛍光画像化により示されるDiI及びDiOにより標識された1%PEG含有ビヒクル(表3の粒子5)の分布が観察される。粒子5及び図中の他の参照された粒子の説明に関して、実施例5、表3を参照されたい。
図7】DiI及びDiO標識された送達ビヒクルに封入された30マイクログラムのDNAを投与されたマウスのマウス結腸切片を示す。明視野に重ねられた、DiIからの蛍光画像化により示されるDiI及びDiOにより標識された2%PEG含有ビヒクル(表3の粒子6)の分布が観察される。
図8】DiI及びDiO標識された送達ビヒクル(表3の粒子7)に封入された30マイクログラムのDNAを投与されたマウスのマウス結腸切片を示す。明視野に重ねられた、DiIからの蛍光画像化により示されるDiI及びDiOにより標識された3%PEG含有ビヒクルの分布が観察される。
図9】DiI及びDiO標識された送達ビヒクルに封入された30マイクログラムのDNAを投与されたマウスのマウス結腸切片を示す。明視野に重ねられた、DiIからの蛍光画像化により示されるDiI及びDiOにより標識された5%PEG含有ビヒクル(表3の粒子8)の分布が観察される。
図10】DiI及びDiO標識された送達ビヒクルに封入された30マイクログラムのDNAを投与されたマウスのマウス結腸切片を示す。明視野に重ねられた、DiIからの蛍光画像化により示されるDiI及びDiOにより標識された10%PEG含有ビヒクル(表3の粒子9)の分布が観察される。
図11A-11B】0%/25% MVL5/DODMAパーセントモルの比の粒子(表3の粒子1)を投与されたマウスから得られた代表的な結腸切片中の送達ビヒクルの分布を示す。
図12A-12B】6.25%/18.75%(MVL5/DODMA)パーセントモルの比の粒子(表3の粒子2)を投与されたマウスから得られた代表的な結腸切片中の送達ビヒクルの分布を示す。
図13A-13B】12.5%/12.5%(MVL5/DODMA)パーセントモルの比の粒子(表3の粒子3)を投与されたマウスから得られた代表的な結腸切片中の送達ビヒクルの分布を示す。
図14A-14B】18.75%/6.25%(MVL5/DODMA)%モルの比の粒子(粒子4)を投与されたマウスから得られた代表的な結腸切片中の送達ビヒクルの分布を示す。
図15A-15B】25%/0% MVL5/DODMA%モルの比の粒子(表3の粒子10)を投与されたマウスから得られた代表的な結腸切片中の送達ビヒクルの分布を示す。
図16A-16D】図16A及び図16Bは第1のマウスの切片の結腸のスイスロール画像を示し、図16C及び図16Dは第2のマウスの切片の結腸のスイスロール画像を示し、各マウスは、バイオテックサイテーション(BioTek Cytation)ソフトウェアを使用して、DiI及びDiOを有するMVL5/DODMA/DOPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG(表3の粒子11)を投与された。図16A及び図16Cは、DiIチャネルを示し、図16B及び図16Dは明視野に重ねられたDiIチャネルを示す。
図17A-17D】図17A及び図17Bは、バイオテックサイテーション(BioTek Cytation)ソフトウェアを使用して、DiI及びDiOを有するMVL5/DODMA/GMO/デオキシコール酸塩/DMG-PEG(表3の粒子12)を投与された第1のマウス及び第2のマウス(図17C及び図17D)の切片の結腸のスイスロール画像を示す。図17A及び図17CはDiIチャネルを示し、図17B及び図17Dは明視野に重ねられたDiIチャネルを示す。
図18A-18D】図18A及び図18Bは、バイオテックサイテーション(BioTek Cytation)ソフトウェアを使用して、DiI及びDiOを有するMVL5/DODMA/DSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG(表3の粒子5)を投与された第1のマウス及び第2のマウス(図18C及び図18D)の切片の結腸のスイスロール画像を示す。図18A及び図18CはDiIチャネルを示し、図18B及び図18Dは明視野に重ねられたDiIチャネルを示す。
図19A-19D】図19A及び図19Bは、それぞれバイオテックサイテーション(BioTek Cytation)ソフトウェアを使用してPBSをDiI及びDiOと共に投与された第1のマウスの切片の結腸のスイスロール画像を示し、図19C及び図19Dは第2のマウスの切片の結腸のスイスロール画像を示す。図19A及び図19CはDiIチャネルを示し、図19B及び図19Dは明視野に重ねられたDiIチャネルを示す。
図20】DiIとDiOの間のFRETを使用して脂質構造中の摂動を測定することによる、10g/Lの胆汁酸塩(コール酸塩:デオキシコール酸塩混合物)中の脂質構造を組み込む異なる胆汁酸塩の安定性を比較する棒グラフを示す。FRET値は無処置に対して正規化される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明及び例は、本開示の実施形態を詳細に説明する。本開示は本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、したがって変わり得ることが理解されるべきである。当業者は、本開示の範囲内に包含される本開示の多くの変形体及び改変体があることを認識するだろう。
【0017】
概要
消化(GI)管、膣、及び肺などの中の上皮組織及び細胞への治療剤などの薬剤の送達は特定の課題を提示する。これらの組織において、上皮細胞は粘膜層に覆われており、そのため治療剤は粘液に透過し、その中を動いて上皮細胞に達しなければならない。さらに、治療剤は、粘液の層内又はそれを通ると、意図される標的細胞の近傍に来なくてはならず、いくつかの場合において、細胞膜と相互作用するか、及び/又は細胞に入らなくてはならない。したがって、薬剤(本明細書で「カーゴ」とも称される)の送達は、粘液層に透過し、それを越えるだけでなく、意図される上皮細胞標的の届く範囲に来る送達ビヒクルにより改善される。また、消化管及び他の組織に関して、胃腸の天然に存在する胆汁酸などの過酷な環境は、送達の安定性及び意図される標的細胞へのカーゴの首尾よい送達のための課題を提示し得る。
【0018】
本明細書で提供される送達ビヒクルを使用してカーゴを送達する組成物(「送達ビヒクル」)及び方法が本明細書で提供される。いくつかの態様において、送達ビヒクルは、安定性を提供し、及び/又は困難な環境中で標的上皮細胞に到達するようにさらに修飾され得る。実施形態において、本明細書で提供される送達ビヒクル(本明細書で「粘膜上皮到達」及び「電荷分離」送達ビヒクルとも称される)は、正電荷を帯びた分子と負電荷を帯びた分子が散在するのではなく互いに分離するように、ビヒクル内の別の部位への正電荷と負電荷の分離を有するものを含む。本明細書中の電荷分離送達ビヒクルは、粘液への透過により上皮粘液中の送達ビヒクルの捕捉を減少又は防ぐこと並びに送達ビヒクルを20ミクロン以下の距離内などの上皮細胞の近傍に連れてくる上皮到達機能性の両方を提供する。
【0019】
消化管中などの高胆汁酸塩環境中での改善された安定性を有する脂質ナノ粒子などの脂質構造及びカーゴを含む脂質系送達ビヒクルを含む送達ビヒクルも本明細書で開示される。送達ビヒクルは、いくつかの実施形態において、消化管の過酷な環境中での安定性を提供することができ、粘液環境にさらに適することがある。したがって、送達ビヒクルは、腸上皮細胞、肺上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、直腸上皮細胞、子宮内膜細胞などの粘膜上皮細胞へ、カーゴ(例えば、核酸)を送達するのに好適であり得る。さらに、送達ビヒクルは、皮膚などの器官への送達にも好適であり得る。
【0020】
いくつかの場合において、本明細書で提供される送達ビヒクルは、上皮細胞をとり囲む粘液を通る送達ビヒクルの透過及び動きを支援し得るさらなる粘液透過性特徴を含み得る。そのようなさらなる特徴は、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルを有するポリオキサゾリンポリマー(PMOZ)、エチルを有するポリオキサゾリンポリマー(PEOZ)などのポリマーの送達ビヒクル表面への組込み及び/又は送達ビヒクルの表面に連結した粘液透過性ペプチド(MPP)を含むことを含む。他の場合において、ビヒクルは、PEGコーティングも低密度PEGコーティング(又は別のポリマーの低密度コーティング)も全く有さない。
【0021】
定義
本明細書で使用される通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記(the)」は、文脈が明らかに別なように示さない限り、複数形も含むものとする。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、又はその変形体が詳細な説明及び/又は請求項中で使用される限り、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であるものとする。用語「約」又は「およそ」は、値がどのように測定又は決定されたか、例えば測定系の限界に部分的に依存する、当業者により決定される特定の値の許容できる誤差範囲内を意味し得る。例えば、「約」は、所与の値の±10%以内を意味し得る。特定の値が本願及び請求項に記載される場合、特記されない限り、用語「約」は、特定の値の許容できる誤差範囲を意味すると推測されるべきである。
【0022】
本明細書で使用される基準数値及びその文法上の等価物に関連する用語「約」及びその文法上の等価物は、その値の10%上又は下の様々な値を含み得る。例えば、量「約10」は量9~11を含む。基準数値に関連する用語「約」は、その値から10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%上又は下の様々な値も含み得る。
【0023】
用語「投与すること」及びその文法上の等価物は、本明細書に記載される構造を対象に提供するあらゆる方法を指し得る。そのような方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔内投与、外用投与、膣内投与、眼投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射剤を含む非経口投与があるが、これらに限定されない。投与は、連続的でも、間欠的でもあり得る。種々の態様において、本明細書に開示される構造は治療的に投与され得る。いくつかの場合において、構造は、既存の疾患又は病態を治療するために投与され得る。さらなる種々の態様において、構造は、疾患又は病態を予防するために予防的に投与され得る。
【0024】
用語「生分解性」及びその文法上の等価物は、使用中に分解するように意図された本明細書に記載されるものなどのポリマー、組成物、及び製剤を指し得る。用語「生分解性」は、「生侵食性」とも称される材料及びプロセスを含むものとする。
【0025】
本明細書で使用される用語「癌」及びその文法上の等価物は、独特な特質-正常な制御の喪失-が制御されない成長、分化の欠失、局所組織浸潤、及び転移をもたらす細胞の過剰増殖を指し得る。本発明の方法に関して、癌は、急性リンパ球性癌、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管、直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、首、胆嚢、又は胸膜の癌、鼻、鼻腔、又は中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網、及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、及び/又は膀胱癌のいずれも含むどのような癌であり得る。本明細書で使用される通り、用語「腫瘍」は、例えば悪性タイプ又は良性タイプの、細胞又は組織の異常な成長を指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「カーゴ」は、細胞又は組織への又はその中への送達のための送達ビヒクル中に含まれる1つ以上の分子又は構造を指し得る。カーゴの非限定的な例は、核酸、染料、薬物、タンパク質、リポソーム、小型化学分子、大型生体分子、及びこれらの任意の組合せを含み得る。
【0027】
本明細書で使用される用語「細胞」及びその文法上の等価物は、生物の構造的及び機能的単位を指し得る。細胞は、大きさが微細であり得て、膜内に囲まれた細胞質及び核からなり得る。細胞は小腸腺窩細胞を指し得る。腺窩細胞は、腸内の絨毛の基底部を囲む穴状の構造であるリーベルキューンの腺窩を指し得る。細胞は、ヒト由来のことも、非ヒト由来のこともある。本明細書で使用される「コンジュゲート」は、非限定的に、粘液透過性ペプチド(MPP)などのペプチドと、送達ビヒクル、ポリマー、表面修飾、又はこれらの任意の組合せとの会合を含む、2つ以上の分子又は構造の共有結合的又は非共有結合的な会合を指し得る。
【0028】
本明細書で使用される用語「機能」及びその文法上の等価物は、意図される目的を操作し、有し、又はそれに役立つ能力を指し得る。機能的という言葉は、意図される目的のベースラインから100%までのあらゆるパーセントを含み得る。例えば、機能的という言葉は、意図される目的の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は約100%までを含み得るか、又は含む。いくつかの場合において、機能的という用語は、正常な機能の100%超又は約100%超、例えば、意図される目的の125、150、175、200、250、300%、400%、500%、600%、700%、又は約1000%までを意味し得る。
【0029】
本明細書で使用される用語「胃腸疾患」は、食道、胃、小腸、大腸、及び直腸、並びに消化の付属器官、肝臓、胆嚢、及び膵臓、並びにこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない消化管を含む疾患を指し得る。
【0030】
本明細書で使用される用語「親水性」及びその文法上の等価物は、水と容易に相互作用する極性基を有する物質又は構造を指す。
本明細書で使用される用語「疎水性」及びその文法上の等価物は、水と容易に相互作用しない極性基を有する物質又は構造を指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「粘液」及びその文法上の等価物は、呼吸器、鼻腔内、頸膣部、胃腸、直腸、視覚、及び聴覚系を含むがこれらに限定されない種々の器官/組織の上皮表面を保護する、主としてムチン糖タンパク質及び他の材料を含む粘弾性の天然物質を指し得る。
【0032】
本明細書で使用される用語「脂質構造」は、核酸などの治療用製品を送達するためなど、細胞又は組織への送達のための脂質組成物を指す。本明細書で使用される用語「脂質構造」及びその文法上の等価物は、ナノ粒子又は送達ビヒクルを指し得る。構造はリポソーム構造であり得る。脂質構造は粒子も指し得る。脂質構造又は粒子はナノ粒子又は送達ビヒクルであり得る。脂質粒子又は脂質構造は、約1nmから約1ミクロンまでの直径を有する任意の形状であり得る。ナノ粒子又はナノ構造は、100~200nmでも、又は約100~200nmでもあり得る。ナノ粒子又はナノ構造は最大500nmでもあり得る。球形を有するナノ粒子又はナノ構造は「ナノスフィア」と称され得る。
【0033】
本明細書で使用される用語「構造」及びその文法上の等価物は、ナノ粒子又は送達ビヒクルを指し得る。構造はリポソーム構造であり得る。構造は粒子も指し得る。構造又は粒子はナノ粒子又は送達ビヒクルであり得る。粒子又は構造は約1nmから約1ミクロンまでの直径を有する任意の形状であり得る。ナノ粒子又はナノ構造は、100~200nmでも、又は約100~200nmでもあり得る。ナノ粒子又はナノ構造は最大500nmでもあり得る。球形を有するナノ粒子又はナノ構造は「ナノスフィア」と称され得る。
【0034】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」、並びにそれらの文法上の等価物は互換的に使用され得て、直鎖又は環状のコンフォメーションの、単鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドポリマーを指し得る。本開示のために、これらの用語は長さに関して限定的であると解釈されるべきではない。用語は、天然ヌクレオチド並びに塩基、糖、及び/又はリン酸部分(例えばホスホロチオエート骨格)に修飾されているヌクレオチドの公知のアナログも包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対合特異性を有し、すなわちアデニン「A」のアナログはチミン「T」と対合し得る。
【0035】
用語「薬学的に許容できる担体」及びそれらの文法上の等価物は、滅菌された水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液、又は乳液、並びに使用直前の滅菌された注射用液剤又は分散液への再構成用の滅菌された散剤を指し得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合要求される粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。これらの溶液、分散液、懸濁液、又は乳液は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散化剤などの補助剤も含み得る。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗菌剤及び抗真菌剤の含有により確実にされ得る。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望ましくなり得る。注射医薬形態の長期に及ぶ吸収は、吸収を遅らせるモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの作用物質の含有によりもたらされ得る。デポ注射形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)などの生分解性ポリマー中の薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造される。
【0036】
本明細書で使用される用語「素因を有する」は、対象が疾患又は病態を患う増加した確率(例えば、確率の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、又はそれ以上の増加)を意味すると理解され得る。
【0037】
用語「個人」、「患者」、又は「対象」は互換的に使用される。それらの用語のいずれも、医療従事者(例えば、医師、登録看護師、診療看護師、医師助手、病院用務員、又はホスピス職員)の監督(例えば、連続的又は断続的)を特徴とする状況を要求せず、それに限定もされない。対象は哺乳動物であり得る。対象は、ヒトの男性でもヒトの女性でもあり得る。対象はどのような年齢でもあり得る。対象は胚であり得る。対象は、新生児でも、最高約100歳でもあり得る。対象はそれを必要とし得る。対象は癌などの疾患を有し得る。
【0038】
本明細書で使用される用語「配列」及びその文法上の等価物は、DNA及び/又はRNAであり得るし、直鎖、環状、又は分岐鎖であり得るし、一本鎖又は二本鎖であり得るヌクレオチド配列を指し得る。配列は、あらゆる長さ、例えば、長さが2~1,000,000以上のヌクレオチド(又は、それらの間又はそれを超えるあらゆる整数値)、例えば、約100~約10,000ヌクレオチド又は約200~約500ヌクレオチドであり得る。いくつかの場合において、示される場合、本明細書で使用される「配列」は、タンパク質、ポリペプチド、及び/又はペプチドの配列などのアミノ酸配列を指し得る。
【0039】
本明細書で使用される用語「幹細胞」は、同じ種類の限りなく多い細胞を発生させることが可能である多細胞生物の未分化細胞を指し得る。幹細胞は、他の種類の細胞を分化により生じさせることもできる。幹細胞は腺窩に見出され得る。幹細胞は、腸の絨毛表面に見られる上皮細胞の前駆細胞であり得る。幹細胞は癌性であり得る。幹細胞は、分化全能性、単能性、又は多能性であり得る。幹細胞は人工幹細胞であり得る。
【0040】
用語「治療」又は「治療すること」及びそれらの文法上の等価物は、疾患、病態、又は障害を治癒し、寛解させ、安定化し、又は予防する目的の対象の医療管理を指し得る。治療は、積極的治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の改善に具体的に向けた治療を含み得る。治療は、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けた治療を含み得る。さらに、この治療は、緩和療法、すなわち、疾患、病態、又は障害の治癒よりも症状の軽減のために設計された治療を含み得る。治療は、予防的治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の発生を最小化又は部分的若しくは完全に阻害することに向けた治療を含み得る。治療は、支持的治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の改善に向けた別の特異療法を補うために利用される治療を含み得る。いくつかの場合において、病態は病的であり得る。いくつかの場合において、治療は、疾患、病態、又は障害を、完全には治癒し、寛解させ、安定化し、又は予防することができない可能性がある。
【0041】
化学基の文脈で使用される場合、「水素」は-Hを意味し、「ヒドロキシ」は-OHを意味し、「ハロゲン」は、独立に-F、-Cl、-Br、又は-Iを意味する。
本明細書中で提供される構造では、以下の括弧でくくられた下付き文字は下記の通り基をさらに定義する。「(C)」は、基の中の正確な数(n)の炭素原子を定義する。例えば、「(C2~10)」アルキルは、2~10個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10、又はそれらの中の誘導可能な範囲(例えば、3~10個の炭素原子)を有するアルキル基を示す。
【0042】
「アルキル」基は脂肪族炭化水素基を指し得る。アルキル部分は「飽和アルキル」基であり得るが、それはアルケン部分もアルキン部分も含まないことを意味する。アルキル部分は「不飽和アルキル」部分でもあり得るが、それは少なくとも1個のアルケン又はアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン」部分は少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素-炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素-炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和であろうと不飽和であろうと、分岐鎖、直鎖、又は環式であり得る。さらに、アルキル部分は、飽和であろうと不飽和であろうと、分岐鎖、直鎖、及び/又は環状部分を含み得る。構造次第で、アルキル基は、モノラジカルでも、ジラジカル(すなわちアルキレン基)でもあり得る。「ヘテロアルキル」基は、その少なくとも1個のC原子がN、S、又はO原子により置換された、「アルキル」に関して記載された通りである。「ヘテロアルキル」基は、直鎖、分岐鎖、及び/又は環状部分を含み得る。特定の実施形態において、「低級アルキル」は1~6個の炭素原子を有するアルキル基(すなわちC~Cアルキル基)である。具体的な場合において、「低級アルキル」は直鎖でも分岐鎖でもあり得る。
【0043】
「アリール」は、芳香族単環式又は芳香族多環式炭化水素環系から、水素原子を環炭素原子から除くことにより誘導された基である。芳香族単環式又は芳香族多環式炭化水素環系は、水素及び炭素のみを、5~18個の炭素原子を含み、環系中の少なくとも1個の環は芳香族であり、すなわち、それは、ヒュッケル理論に一致する環式の非局在化(4n+2)π-電子系を含む。アリール基が誘導される元の環系としては、ベンゼン、フルオレン、インダン、インデン、テトラリン、及びナフタレンなどの基があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、用語「アリール」は、環を形成する原子のそれぞれが炭素原子である芳香環を指し得る。アリール環は、5、6、7、8、9、又は10以上の炭素原子により形成され得る。アリール基は任意選択で置換され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル、及びインデニルがあるが、これらに限定されない。構造次第で、アリール基は、モノラジカルでも、ジラジカル(すなわちアリーレン基)でもあり得る。
【0044】
「ヘテロアリール」は、2~11個の炭素原子及び各ヘテロ原子がN、O、及びSから選択され得る少なくとも1個のヘテロ原子を含む3員~12員芳香環基から誘導された基を指す。本明細書で使用される通り、ヘテロアリール環は、環系中の少なくとも1個の環が芳香族である単環式又は二環式で縮合又は橋かけ環系環から選択され得て、すなわち、それは、ヒュッケル理論に一致する環式の非局在化(4n+2)π-電子系を含む。ヘテロアリール基中のヘテロ原子は任意選択で酸化され得る。1個以上の窒素原子は、存在する場合、任意選択で四級化されている。ヘテロアリールは、ヘテロアリールの炭素又は窒素原子など、原子価が許す限りヘテロアリールのいずれの分子によっても分子の残りに結合し得る。ヘテロアリールの例としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、フロ[3,2-c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、5,8-メタノ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル、1,6-ナフチリジノニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a-オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド[3,2-d]ピリミジニル、ピリド[3,4-d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、5,6,7,8-テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,5-c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3-d]ピリミジニル、チエノ[3,2-d]ピリミジニル、チエノ[2,3-c]プリジニル、及びチオフェニル(すなわちチエニル)があるが、これらに限定されない。「X員ヘテロアリール」は、環中の環内原子の数、すなわちXを指す。例えば、5員ヘテロアリール環又は5員芳香族複素環は5個の環内原子を有し、例えば、トリアゾール、オキサゾール、チオフェンなどである。
【0045】
いくつかの実施形態において、「置換された」という修飾語なしで使用される場合の用語「ヘテロアリール」は、芳香族炭素原子又は窒素原子を結合点とする一価基であって、前記炭素原子又は窒素原子が芳香族環構造の一部を形成し、少なくとも1つの環原子が、窒素、酸素、又は硫黄であり、一価基が、炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素、及び芳香族硫黄以外の原子からならない一価基を指す。ヘテルアリール基の非限定的な例としては、アクリジニル、フラニル、イミダゾイミダゾリル、イミダゾピラゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾピリミジニル、インドリル、インダゾリニル、メチルピリジル、オキサゾリル、フェニルイミダゾリル、ピリジル、ピロリル、ピリミジル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリニル、チエニル、トリアジニル、ピロロピリジニル、ピロロピリミジニル、ピロロピラジニル、ピロロトリアジニル、ピロロイミダゾリル、クロメニル(結合点が芳香族原子のうちの1つである場合)、及びクロマニル(結合点が芳香族原子のうちの1つである場合)がある。置換されたヘテロアリールは、芳香族炭素原子又は窒素原子を結合点とする一価基であって、前記炭素原子又は窒素原子が芳香族環構造の一部を形成し、少なくとも1個の環原子が、窒素、酸素、又は硫黄であり、一価基が、非芳香族窒素、非芳香族酸素、非芳香族硫黄F、Cl、Br、I、Si、及びPからなる群から独立に選択される少なくとも1個の原子をさらに有する一価基を指す。
【0046】
用語「置換された」は、構造の1個以上の炭素又は置換可能なヘテロ原子、例えばNH上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。「置換された」又は「により置換された」が、そのような置換が置換された原子及び置換基の許容された原子価と一致し、置換が、安定な化合物、すなわち転位、環化、脱離などの変換を自然にしない化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されるだろう。特定の実施形態において、置換されたという言葉は、単一の炭素上の2個の水素原子を、オキソ、イミノ、又はチオキソ基により置換するなど、同じ炭素原子上の2個の水素原子を置き換える置換基を有する部分を指す。本明細書で使用される通り、用語「置換された」は、有機化合物の許容される置換基を全て含むように企図される。広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐鎖及び非分岐鎖、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換基がある。許容される置換基は、適切な有機化合物にとって1つでも複数でもあり得て、同じことも異なることもあり得る。本開示では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、置換基は、本明細書に記載されるあらゆる置換基を含み得て、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジノ(=N-NH)、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1又は2である)、及び-R-S(O)N(R(式中、tは1又は2である)、並びにアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルであって、そのいずれも、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジン(=N-NH)、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1又は2である)、及び-R-S(O)N(R(式中、tは1又は2である)により任意選択で置換されていてもよく、各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルから独立に選択され、各Rは、原子価が許せば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジン(=N-NH)、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)(式中、tは1又は2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1又は2である)、及び-R-S(O)N(R(式中、tは1又は2である)により任意選択で置換されていてもよく、各Rは、直接結合又は直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン、アルケニレン、若しくはアルキニレン鎖から独立に選択され、各Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン鎖である。
【0048】
電荷分離を有する送達ビヒクル
いくつかの場合において、本明細書中で提供される送達ビヒクルは、粒子内の異なる部位中に、分離された正電荷及び負電荷を有するが、各部位は(部位に電荷を与える)異なるポリマーで構成されている。いくつかの場合において、本明細書中で提供される送達ビヒクルは正電荷を帯びた脂質及び負電荷を帯びた脂質を含み、部位は、液相及びゲル相中など相により分離されている。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、正電荷を帯びた液相及び負電荷を帯びたゲル相、又は正電荷を帯びたゲル相及び負電荷を帯びた液相を含み得る。
【0049】
本明細書中で提供される送達ビヒクルは、核酸、タンパク質、ペプチド、及び/又は小分子などのカーゴを粘膜組織内の上皮細胞に効率よく送達できる。本明細書中の送達ビヒクルは、消化管中の粘膜組織などの粘膜組織に影響を及ぼし、及び/又は粘膜組織で発生する疾患及び病態を治療するのに有用である。非限定的な例としては、家族性大腸腺腫症(FAP)、軽症型FAP、大腸癌、慢性炎症性腸疾患、慢性炎症性腸疾患、微絨毛封入体病、及び先天性下痢性疾患がある。本明細書中の送達ビヒクルは、粘膜組織中で治療剤を発現する治療剤及び/又は核酸を提供するためにも有用であり、そのような薬剤は、標的とされる上皮細胞中にとどまり得るか、及び/又は対象内の疾患に冒された他の細胞及び組織に輸送され得る。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、上皮細胞への近傍距離を与える。いくつかの態様において、そのような近傍距離は、約50、40、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ミクロン未満である。いくつかの場合において、本明細書中の送達ビヒクルは上皮細胞と接触する。いくつかの場合において、送達ビヒクルは細胞中に吸収され、送達ビヒクルにより運ばれるカーゴは細胞内で放出される。いくつかの場合において、送達ビヒクルは上皮細胞と接触し、送達ビヒクルからのカーゴは細胞の外で放出される。
【0050】
本明細書中で提供される送達ビヒクルは脂質構造であり得る。脂質構造は、細胞又は組織へのカーゴの送達に使用され得る。いくつかの場合において、カーゴは、核酸などの治療用製品を包含し得る。脂質構造としては、脂質粒子、脂質ナノ粒子、リポソーム又は水性体積が両親媒性脂質二重層により封入されているか(例えば、単一、単層又は多数、多重層)若しくは治療用製品を含む内側を脂質が少なくとも部分的に被覆しているベシクルなどのベシクル、又は脂質により封入された治療用製品が比較的乱れた脂質混合物内に含まれている脂質凝集体若しくはミセルがあるがこれらに限定されない。
【0051】
本明細書中の送達ビヒクル(脂質ナノ粒子、リポソーム、及びミセル様構造など)は少なくとも2つの部位を有し、散在せずその代わりに別の部位中に配置された正電荷及び負電荷を有する。例えば、負電荷及び正電荷は、約7.4のpHなど約5.5~8.0のpHで、本明細書中で提供される脂質構造上の相対する部位に存在し得る。
【0052】
一態様において、正電荷及び負電荷は2つの別の部位中にあり、各部位は、脂質構造の異なる相、例えば液相又は固(ゲル)相である。一態様において、正電荷は液相にあり得て、負電荷は固相、例えばゲル相にあり得て、又は逆も同様である。電荷分離は、引力及び反発力の両方を可能にし得る。いくつかの場合において、正の脂質は、標的細胞にその高い負電位のため引き付けられ得る。別の態様において、負の面の反発力は、正の面が粘液中に動的に捉えられるのを防ぎ得る。いくつかの場合において、例えば送達ビヒクル上の脂質上のカチオン性電荷は、標的細胞への途中で粘液に引き付けられ得て、粘液中に動的に捉えられ得て、それにより送達ビヒクルが捉えられる。粘液は、最終的にはげ落ちて、送達ビヒクルが除去される。別の態様において、アニオン性送達ビヒクルは粘液により反発され得て、粘液中を進むことができないことがある。双性イオン粒子は、正味の力がない中性粒子のように作用できる。双性イオン粒子は、ペグ化された系と同様に水の流れに従い得て、粘液中には捉えられないかもしれないが、上皮細胞に到達しない可能性がある。
【0053】
特定の実施形態において、脂質構造は、アニオン性脂質又はカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び形成の間の脂質粒子の凝集を減少させるために選択された脂質の1つ以上を含み得る。凝集は、形成の間に電荷により誘起される凝集を防ぎ得る脂質構造の立体安定化から起こり得る。脂質構造は2種以上のカチオン性脂質を含み得る。一態様において、脂質構造が異なる電荷の脂質を有する2相を含むように、カチオン性脂質は第1の相に、アニオン性脂質は第2の相にあり得る。脂質は、異なる好都合な性質に寄与するように選択できる。例えば、アミンpK、化学的安定性、循環中半減期、組織中半減期、組織中の正味蓄積、又は毒性などの性質が異なるカチオン性脂質を脂質構造に使用できる。特に、カチオン性脂質は、混合された脂質の脂質構造の性質が、個別の脂質の単一脂質構造の性質より望ましいように選択できる。カチオン性脂質の正味の組織蓄積及び長期毒性(もしあれば)は、所与の製剤において単一のカチオン性脂質を選択することの代わりにカチオン性脂質の混合物を選択することにより好都合に調節できる。そのような混合物は、より良好な封入及び/又は核酸などのカーゴの放出も与え得る。カチオン性脂質の組合せは、製剤中の単一の実体と比べると、全身安定性にも影響し得る。
【0054】
いくつかの場合において、カチオン性脂質は、極性頭部基に存在する1つ以上のアミンにより正電荷を得ることができる。いくつかの場合において、脂質構造はカチオン性リポソームであり得る。いくつかの場合において、リポソームは、DNAなどの負電荷を帯びたポリ核酸を運ぶのに使用されるカチオン性リポソームであり得る。正電荷を帯びたアミンの存在は、DNAに見られるものなどのアニオンとの結合を促進し得る。このように形成されたリポソームは、リポソーム形状に部分的に寄与し得るDNAカーゴへのファンデルワールス力及び静電結合によるエネルギー的寄与の結果であり得る。いくつかの場合において、カチオン性(及び中性)脂質が遺伝子送達に使用され得る。他の場合において、アニオン性リポソームが他の治療剤を送達するために使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される送達ビヒクルはカーゴをさらに含む。いくつかの場合において、カーゴは治療剤を含む。いくつかの場合において、カーゴは、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、生物製剤、又はこれらのいずれかの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中の送達ビヒクルは、細胞内移行のための成分を含む。いくつかの場合において、成分は、ペプチド、炭水化物、又はリガンドである。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される送達ビヒクルは安定性成分も含む。いくつかの場合において、安定性成分はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0056】
送達ビヒクルのいくつかの実施形態において、第1の部位は不飽和又は短尾部脂質を含む。いくつかの場合において、不飽和脂質はカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態において、カチオン性脂質は多価カチオン性脂質又は一価カチオン性脂質を含む。
【0057】
いくつかの場合において、電荷分離は、対象送達ビヒクルの優れた、及び/又は予期せぬ性能をもたらし得る。例えば、PEGの利用は、参照により本明細書に組み込まれるメイゼル K(Maisel K)ら著、「胃腸粘膜とのナノ粒子相互作用並びにマウスでの経口及び直腸投与後の消化管中の分布に対する表面化学の影響(Effect of surface chemistry on nanoparticle interaction with gastrointestinal mucus and distribution in the gastrointestinal tract following oral and rectal administration in the mouse)」、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリースに提供される通り、標的細胞、例えば腸の上皮細胞への輸送を増加させると考えられる。いくつかの場合において、ペグ化を増加させると、腸の組織内又は組織での分布が減少し、それにより、従来のビヒクルと比べてペグ化が減少した送達ビヒクルの利用が支持される。ペグ化の減少が、標的細胞への及びその近傍への輸送及び/又は分布を改善し得る一機構は、ペグ化の遮蔽特性を減少させることにより対象ビヒクルの表面での正電荷の露出を増加させることによる。
【0058】
いくつかの場合において、本明細書中で提供される電荷分離を含む送達ビヒクルは、電荷分離を欠く同等な送達ビヒクルと比べて、改善された輸送、標的細胞の核酸導入、上皮到達(epithelial reach)、又はそれらの組合せを有し得る。いくつかの場合において、改善は、電荷分離を欠く同等な送達ビヒクルと比べて、約1倍から、50倍、99倍、148倍、197倍、246倍、295倍、344倍、393倍、442倍、491倍、540倍、589倍、638倍、687倍、736倍、785倍、834倍、883倍、932倍、981倍、又は約1000倍までである。
【0059】
いくつかの場合において、送達ビヒクルは、MVL5/MC2/DSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DSPC/デオキシコール酸塩/DMPE-PEG、MVL5/CL1H6/DSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/CL4H6/DSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DSPC/ケノデオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DMPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DMPC/デオキシコール酸塩/DMPE-PEG、MVL5/CL1H6/DMPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DSPC/デオキシコール酸塩/リトコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/CL1H6/DSPC/デオキシコール酸塩/リトコール酸塩/DMG-PEG、MVL5/MC2/DSPC/アロイソリトコール酸塩/DMG-PEG、又はMVL5/MC2/DSPC/デヒドロリトコール酸塩/DMG-PEGのいずれか1つを含み得る。
【0060】
送達ビヒクルは、種々のモル比を使用して作り出され得る。いくつかの場合において、医薬製剤は、MVL5、MC2、デオキシコール酸塩、DSPC、及びDMG-PEGを、約0.96:0.96:2.592:3.168:0.0768:0.0384:0.0384のモル比で含む。いくつかの場合において、pH7.4における第2の部位中のアニオン性電荷に対する第1の部位中のカチオン性電荷の比は、約0.25、0.45、0.65、0.85、1.05、1.25、1.45、1.65、1.85、2.05、2.25、2.45、2.65、又は2.85である。いくつかの場合において、pH7.4での第2の部位中のアニオン性電荷に対する第1の部位中のカチオン性電荷は、約0.25~約1.05、0.75~約1.25、1.05~約1.45、又は0.85~約1.85である。別の態様において、送達ビヒクル中のイオン化可能なカチオン性脂質に対する多価脂質の比は、約(6%、6.25%、6.5%、6.75%、7%、7.25%、7.5%、7.75%、又は8%)~(8%、8.25%、8.5%、8.75%、9%、9.25%、9.5%、9.75%、10%)、(12%、12.25%、12.5%、12.75%、又は13%)~(12%、12.25%、12.5%、12.75%、又は13%)、又は(18%、18.25%、18.5%、18.75%、19%、19.25%、19.5%、19.75%、20%)~(6%、6.25%、6.5%、6.75%、7%、7.25%、7.5%、7.75%、又は8%)である。いくつかの態様において、胆汁酸塩は、約10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、又は約80モル%の濃度である。いくつかの場合において、胆汁酸塩は、約10モル%~30モル%、20モル%~50モル%、30モル%~60モル%、又は40モル%~80モル%である。好適な代わりの製剤は、多価脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、胆汁酸塩、構造性脂質、及び/又は脂質-PEGを、本明細書中で提供されるものに対して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%多いか又は少ないモル比で含み得る。
【0061】
送達ビヒクル安定性
いくつかの実施形態において、送達ビヒクル安定性は胆汁酸又は胆汁酸塩の組込みにより増加され得る。用語「胆汁酸」、「胆汁酸塩」、「胆汁酸/塩」は、特記されない限り、本明細書で互換的に使用される。本明細書で使用される胆汁酸へのあらゆる言及は、胆汁酸又はその塩への言及を含み得る。本明細書で使用される用語「胆汁酸」(及び「胆汁酸塩」「胆汁酸/塩」)は、非限定的な例として、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸塩、リトコール酸、リトコール酸塩など又はその塩を含む、動物(例えばヒト)の胆汁に見られるステロイド酸(及びそのアニオン)、及びその塩を含み得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸は、ウルソジオール、イソリトコール酸塩、アロイソリトコール酸塩、デヒドロリトコール酸塩、又は5-β-コラン酸である。タウロコール酸及びタウロコール酸塩は本明細書でTCAと称される。本明細書で使用される胆汁酸へのあらゆる言及は、胆汁酸、唯一の胆汁酸、1以上の胆汁酸、又は少なくとも1つの胆汁酸への言及を含み得る。さらに、薬学的に許容できる胆汁酸エステル、例えばアミノ酸(例えばグリシン又はタウリン)にコンジュゲートされた胆汁酸は、本明細書に記載される「胆汁酸」として使用され得る。他の胆汁酸エステルは、例えば、置換又は非置換のアルキルエステル、置換又は非置換のヘテロアルキルエステル、置換又は非置換のアリールエステル、置換又は非置換のヘテロアリールエステルなどを含み得る。例えば、用語「胆汁酸」は、それぞれグリシンかタウリンのいずれかにコンジュゲートされたコール酸、グリココール酸塩及びタウロコール酸塩(及びその塩)を含み得る。本明細書で使用される胆汁酸へのあらゆる言及は、天然により又は合成により調製された同一の化合物への言及を含み得る。さらに、本明細書で使用される成分(胆汁酸又はその他)へのあらゆる単一の言及が、唯一の、1つ以上の、又は少なくとも1つのそのような成分への言及を含み得ることが理解されるべきである。同様に、本明細書で使用される成分へのあらゆる複数の言及は、特に記載がない限り、唯一の、1つ以上の、又は少なくとも1つのそのような成分への言及を含み得る。
【0062】
本明細書の送達ビヒクルのいくつかの実施形態において、胆汁酸塩はコール酸であり得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸塩はデオキシコール酸塩であり得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸塩の組込みは、コール酸及びデオキシコール酸塩であり得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸塩は、コール酸塩、デオキシコール酸塩、それらのコンジュゲート若しくは誘導体、又はそれらの組合せを含み得る。さらなる実施形態において、胆汁酸塩は、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、タウロデオキシコール酸、又はそれらの組合せであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルの脂質ナノ粒子中(又は脂質ナノ粒子を含む組成物中)の胆汁酸塩濃度は、約80モル%~約70モル%、約65モル%~約55モル%、約60モル%~約50%、約55モル%~約45モル%、約50モル%~約40モル%、約45モル%~約35モル%、約40モル%~約30モル%、約35モル%~約25モル%、約30モル%~約20モル%、約25モル%~約15モル%、約20モル%~約10モル%、約15モル%~約10モル%、約60モル%~約20モル%、約25.9モル%~、約30.4モル%~、約34.9モル%、約39.4モル%~、約37.1モル%~、約43.9モル%~、又は約45モル%など、約80モル%~約10モル%を含み得る。いくつかの場合において、送達ビヒクルの脂質ナノ粒子(又は脂質ナノ粒子を含む組成物)中の胆汁酸塩濃度は、約5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、又は85モル%を含み得る。
【0064】
送達ビヒクルの脂質ナノ粒子中に含まれる胆汁酸塩を有する本明細書に記載される組成物などの構造による細胞取込みの効率は、粘液層を通って標的細胞までの効率よい透過及び通過を可能にし得て、それにより、標的細胞による効率よい取込みを有するが、例えば、取込みは、接触した細胞の総数の20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超であり得るか、又は接触した細胞の総数の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、胆汁酸塩を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、細胞取込みのより高いパーセントを有し得る。改善は、約10%から、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は約80%まで、より良好であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載される送達ビヒクル組成物により細胞に送達されるポリ核酸カーゴの核酸導入又は統合の効率は、胆汁酸塩並びにMPP及び/又は脂質の特定の組成物などの追加の特徴を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、約5%から、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%まで、より良好であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載される送達ビヒクル組成物により細胞に送達されるポリ核酸カーゴの核酸導入又は統合の効率は、胆汁酸塩を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、約5%から、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%までより良好であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルの安定性は、高胆汁酸塩模倣環境における胆汁酸塩安定性アッセイにより測定できる。例えば、胆汁酸塩安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、様々な濃度の胆汁酸塩を含む送達ビヒクルの相対蛍光など、蛍光分光法により測定できる。いくつかの実施形態において、組み込まれた胆汁酸塩は、送達ビヒクルの安定性を、約80%~約70%、約65%~約55%、約60%~約50%、約55%~約45%、約50%~約40%、約45%~約35%、約40%~約30%、約35%~約25%、約30%~約20%、約25%~約15%、約20%~約10%、約15モル%~約10、約60%~約20%、約25.9%、約30.4%、約34.9%、約39.4%、約37.1%、約43.9%、又は約45%など、約80%~約10%増加させ得る。いくつかの実施形態において、組み込まれた胆汁酸塩は、胆汁酸塩を欠く同等な送達ビヒクルと比べて、送達ビヒクルの安定性を増加させ得る。いくつかの場合において、本明細書に提供される胆汁酸塩を含む送達ビヒクルは、胆汁酸塩を欠く同等な送達ビヒクルと比べて、改善された輸送、標的細胞の核酸導入、上皮到達、又はそれらの組合せを有し得る。いくつかの場合において、改善は、胆汁酸塩を欠く同等な送達ビヒクルと比べて、約1倍、50倍、99倍、148倍、197倍、246倍、295倍、344倍、393倍、442倍、491倍、540倍、589倍、638倍、687倍、736倍、785倍、834倍、883倍、932倍、981倍、又は最高約1000倍である。いくつかの例において、安定性の増加パーセントは、インビボ又はエクスビボのFRETなどのアッセイにおける増加した相対蛍光単位又は相対発光単位により測定できる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の送達ビヒクルはカチオン性脂質及び胆汁酸塩を含み得るが、脂質は飽和カチオン性脂質又は不飽和カチオン性脂質であり得て、飽和カチオン性脂質は少なくとも約20℃である相転移温度を有し得る。いくつかの実施形態において、本開示の送達ビヒクルは少なくとも1つの飽和カチオン性脂質及び少なくとも胆汁酸塩を含み得るが、少なくとも1つの飽和カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有し得る。いくつかの実施形態において、飽和カチオン性脂質は、少なくとも約20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、及び/又は約60℃までの相転移温度を有する。例えば、飽和カチオン性脂質は、30℃~60℃、35℃~60℃、37℃~60℃、37℃~55℃、37℃~50℃、37℃~45℃、又は37℃~40℃の相転移温度を有し得る。いくつかの実施形態において、本開示の送達ビヒクルは少なくとも1つの飽和カチオン性脂質及び少なくとも胆汁酸塩を有し得るが、少なくとも1つの飽和カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有し得る。脂質送達ビヒクルは飽和非カチオン性脂質をさらに含み得る。飽和非カチオン性脂質は、少なくとも約20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、及び/又は約60℃までの相転移温度を有し得る。例えば、飽和非カチオン性脂質は、約30℃~60℃、35℃~60℃、37℃~60℃、37℃~55℃、37℃~50℃、37℃~45℃、又は37℃~40℃の相転移温度を有し得る。脂質送達ビヒクルは、いくつかの場合において、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーにコンジュゲートされた脂質をさらに含み得る。送達ビヒクルは、いくつかの場合において、細胞透過性ペプチド、リガンド、粘液透過性ポリマー、粘液透過を可能にするペプチド、実質的に粘液付着性でない細胞透過性ペプチド、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つにコンジュゲートされ得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、脂質構造、例えば脂質ナノ粒子中にカーゴを含む送達ビヒクルであって、脂質ナノ粒子は、胆汁酸塩、並びに(a)少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和カチオン性脂質及び非カチオン性脂質か、あるいは(b)飽和カチオン性脂質、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質であって、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質、若しくは不飽和カチオン性脂質及び非カチオン性脂質が少なくとも約37℃の相転移温度を有するものか、あるいは(c)多価カチオン性脂質、非カチオン性脂質であって、多価カチオン性脂質、非カチオン性脂質、若しくは多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質が少なくとも約37℃の相転移温度を有するものの少なくとも1つを含み、送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩及び(a)、(b)、若しくは(c)の少なくとも1つを含む脂質ナノ粒子を含まないか、あるいは(ii)(a)、(b)、若しくは(c)の少なくとも1つを含む脂質ナノ粒子を含むが、胆汁酸塩を含まないか、あるいは(iii)胆汁酸塩を含むが、(a)、(b)、若しくは(c)の少なくとも1つを含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、高胆汁酸塩環境中で安定である送達ビヒクルが提供される。飽和カチオン性脂質、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び/又は多価カチオン性脂質は、少なくとも約20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、及び/又は約60℃までの相転移温度を有し得る。例えば、飽和カチオン性脂質、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び/又は多価カチオン性脂質は、約30℃~60℃、35℃~60℃、37℃~60℃、37℃~55℃、37℃~50℃、37℃~45℃、又は37℃~40℃の相転移温度を有し得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、カーゴ及び脂質ナノ粒子などの脂質構造を含む送達ビヒクルであって、脂質ナノ粒子は、胆汁酸塩、並びに(a)少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和カチオン性脂質か、あるいは(b)飽和カチオン性脂質、不飽和カチオン性脂質、及び非カチオン性脂質であって、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質、若しくは不飽和カチオン性脂質及び非カチオン性脂質が少なくとも約37℃の相転移温度を有するものか、あるいは(c)多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質であって、多価カチオン性脂質、非カチオン性脂質、若しくは多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質が少なくとも約37℃の相転移温度を有するものの少なくとも1つを含み、送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩及び(a)、(b)、又は(c)の少なくとも1つを含む脂質ナノ粒子を含まないか、あるいは(ii)(a)、(b)、若しくは(c)の少なくとも1つを含む脂質ナノ粒子を含むが、胆汁酸塩を含まないか、あるいは(iii)胆汁酸塩を含むが、(a)、(b)、若しくは(c)の少なくとも1つを含まない他の点では同一の脂質ナノ粒子と比べて、少なくとも約5g/Lのコール酸及びデオキシコール酸塩を含む溶液中で増加した安定性を示し、安定性が、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される送達ビヒクルが提供される。いくつかの場合において、送達ビヒクルは、(i)胆汁酸塩を含まない他の点では同一の送達ビヒクルと比べて、少なくとも約0.5g/L、1g/L、5g/L、7g/L、9g/L、11g/L、13g/L、15g/L、17g/L、19g/L、21g/L、23g/L、又は最高約25g/Lの胆汁酸、例えば、約40%、45%、50%、又は最高約55%コール酸と約40%、45%、50%、55%、又は最高約60%デオキシコール酸塩の混合物を含む溶液中で増加した安定性を示し、安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、脂質ナノ粒子中に組み込まれた蛍光性脂質の相対蛍光強度により測定される。
【0069】
いくつかの実施形態において、(i)カーゴ及び(ii)脂質ナノ粒子などの脂質構造を含む送達ビヒクルであって、脂質ナノ粒子は少なくとも1つの飽和カチオン性脂質と、胆汁酸塩とを含み、少なくとも1つの飽和カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有する、送達ビヒクルが提供される。いくつかの実施形態において、(i)カーゴ及び(ii)脂質ナノ粒子を含む送達ビヒクルであって、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの飽和脂質と、少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質と、胆汁酸塩とを含み、脂質ナノ粒子中の少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質の濃度が50モル%未満である、送達ビヒクルが提供される。
【0070】
例示的な送達ビヒクルは本明細書中に記載され、例えば、表1、表2、表3、及び表4に与えられる。表1~表4に例示される送達ビヒクルのいずれの1つをさらに修飾することができる。例えば、追加の脂質、カーゴ、修飾、追加、差し引きがなされ得る。いくつかの場合において、表1中の送達ビヒクルのいずれの1つは脂質-PEGをさらに含み得る。
【0071】
【表1】
【0072】
送達ビヒクルに使用するための脂質
カーゴを有するものを含んだ本明細書中の送達ビヒクルは、脂質ナノ粒子中など1以上の脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの飽和脂質と、不飽和カチオン性脂質又は不飽和非カチオン性脂質の少なくとも1つと、胆汁酸塩とを含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は少なくとも1つの飽和脂質を含み、飽和脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和カチオン性脂質又は少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和非カチオン性脂質を含む。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、永久荷電カチオン性脂質、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、胆汁酸塩並びに多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質を含み、多価カチオン性脂質、非カチオン性脂質、又は多価カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、少なくとも約37℃の相転移温度を有する。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、胆汁酸塩並びに少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和カチオン性脂質及び非カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、胆汁酸塩、並びに飽和カチオン性脂質、不飽和カチオン性脂質、及び非カチオン性脂質を含み、不飽和カチオン性脂質、非カチオン性脂質、又は不飽和カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は少なくとも約37℃の相転移温度を有する。いくつかの実施形態において、送達ビヒクルは、約5.5~8.0のpHで正電荷を帯びている第1の部位及び約5.5~8.0のpHで負電荷を帯びている第2の部位を有し、第1の部位と第2の部位は、正電荷及び負電荷が散在しないように分離されており、一方又は両方の部位は脂質を含む。いくつかの実施形態において、第1の部位は、カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質などの不飽和又は短尾部脂質、例えば、多価カチオン性脂質又は一価カチオン性脂質を含む。
【0073】
一態様において、本明細書中の送達ビヒクルの脂質ナノ粒子に使用するためのカチオン性脂質は、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、[1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン](DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、3β[N-(N’、N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、及びジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)を含み得る。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ポリエチレンイミン(PEI)、中性脂質は、多くの場合、低pHでのその膜不安定化作用のためカチオン性脂質と併せて使用され得るが、それはエンドリソソームエスケープに役立ち得る。いくつかの実施形態において、飽和カチオン性脂質は本明細書中で提供される送達ビヒクル中に利用され得る。飽和カチオン性脂質は、pH4で、又はpH4を超えるpHで正電荷を有し得る。いくつかの実施形態において、飽和カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含み得る。飽和カチオン性脂質がアルキルを含む例において、アルキルは、ミリストイル、ペンタデカノイル、パルミトイル、ヘプタデカノイル、ステアロイル、ラウロイル、トリデカノイル、ノナデカノイル、アラキドイル、ヘンエイカサノイル、ベヘノイル、トリコサノイル、リグノセロイル、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つのコンジュゲートされた誘導体であり得る。いくつかの実施形態において、飽和カチオン性脂質は、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DPTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DSDAP)、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む少なくとも約37℃の相転移温度を有する飽和カチオン性脂質の少なくとも1つを含み得る。一態様において、カチオン性脂質は脂質構造のゲル相中にあり得て、アニオン性脂質は液相中にあり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルの脂質ナノ粒子は少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、不飽和カチオン性脂質は、pH4で、又は約pH4より高く約pH8未満のpHで正電荷を有し得る。いくつかの実施形態において、不飽和カチオン性脂質は、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジアルキル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジアルキル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジ-O-アルキル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジアルキル-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(アルキルオキシ)プロパン-1-アミニウム、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノジ酢酸)スクシニル]、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[アルキル]-ベンズアミド、1,2-ジアルキルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、O-アルキルエチルホスホコリン、MC3、MC2、MC4、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール、N4-コレステリル-スペルミン、若しくはその塩又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含み得る。不飽和カチオン性脂質がアルキルを含む例において、アルキルは、オレイン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ミード酸、パウリン酸、バクセン酸、パルミトレイン酸、ドコサテトラエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、γ-リノレン酸、リノエライジン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、α-リノレン酸、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つのコンジュゲートされた誘導体であり得る。いくつかの実施形態において、不飽和カチオン性脂質は、1,2-ジアルキルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、O-アルキルエチルホスホコリン、MC3、MC2、MC4、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール、N4-コレステリル-スペルミン、若しくはその塩又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含み得る。いくつかの場合において、脂質は、どちらも参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20200129431A1号明細書及びサトウ Y(Sato Y)ら著、「pH感受性カチオン性脂質の構造-活性関係を理解することは、インビボでsiRNAを送達するための見込みある脂質ナノ粒子の合理的な特定を推進する(Understanding structure-activity relationships of pH-sensitive cationic lipids facilitates the rational identification of promising lipid nanoparticles for delivering siRNAs in vivo)」、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース、2019年、295巻、p.140-152に記載される通り、7-(4-(ジメチルアミノ)ブチル)-7-ヒドロキシトリデカン-1,13-ジイルジオレアート(CL1H6)、CL1A6、CL1A6、CL3A6、CL4A6、CL5A6、CL6A6、CL7A6、CL8A6、CL9A6、CL10A6、CL11A6、CL12A6、CL13A6、CL14A6、CL15A6、YSK12-C4を含み得るか、又はそれらであり得る。一態様において、カチオン性脂質は脂質構造の液相中にあり得て、アニオン性脂質は脂質構造のゲル相又は固相中にあり得る。
【0075】
いくつかの場合において、送達ビヒクルの脂質ナノ粒子は多価カチオン性脂質を含み得る。多価カチオン性脂質は、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、その塩、及びこれらの任意の組合せから選択され得る。一態様において、本明細書中で提供される送達ビヒクルはMVL5を使用して生じ得る。一態様において、MVL5、GL67、又はそれらの組合せは送達ビヒクルの液相中にある。本明細書中で提供される多価カチオン性脂質のいずれも、提供されるビヒクル又は粒子中に、約50モル%、48モル%、46モル%、44モル%、42モル%、40モル%、38モル%、36モル%、34モル%、32モル%、30モル%、28モル%、26モル%、24モル%、22モル%、20モル%、18モル%、16モル%、14モル%、12モル%、10モル%、8モル%、6モル%、4モル%、2モル%、又は0モル%未満で組み込まれ得る。本明細書中で提供される多価カチオン性脂質のいずれも、提供されるビヒクル又は粒子中に、約50モル%、48モル%、46モル%、44モル%、42モル%、40モル%、38モル%、36モル%、34モル%、32モル%、30モル%、28モル%、26モル%、24モル%、22モル%、20モル%、18モル%、16モル%、14モル%、12モル%、10モル%、8モル%、6モル%、4モル%、2モル%、又は0モル%で組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される多価カチオン性脂質は、提供されるビヒクル又は粒子中に、5~50モル%、5~40モル%、5~30モル%、5~25モル%、5~20モル%、5~15モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、10~25モル%、15~50モル%、15~40モル%、15~30モル%、及び15~25モル%の濃度で組み込まれ得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される送達ビヒクルの脂質ナノ粒子はアニオン性脂質も含み得る。アニオン性脂質は、疎水性領域中に広範囲の脂肪酸鎖のいずれかを含み得る。組み込まれる特定の脂肪酸は、相挙動及び弾力性の点で脂質構造の流動特性の原因である。いくつかの場合において、二価カチオンがアニオン性脂質構造中に組み込まれて、アニオン性脂質による封入の前に核酸の縮合が可能になる。Ca2+、Mg2+、Mn2+、及びBa2+など、数種の二価カチオンがアニオン性リポプレックスに使用され得る。いくつかの場合において、Ca2+がアニオン性脂質構造に利用され得る。好適なアニオン性脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリエロール(POPG)、又はこれらの任意の組合せがあるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子中のアニオン性脂質は、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアルキルホスファチジルセリン、ジアルキルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、グリセロホスホイノシトールモノホスフェート、グリセロホスホイノシトールビスホスフェート、グリセロホスホイノシトールトリホスフェート、グリセロホスフェート、グリセロピロホスフェート、グリセロホスホグリセロホスホグリセロール、シチジン-5’-二リン酸-グリセロール、グリコシルグリセロリン脂質、グリセロホスホイノシトールグリカン、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスフェート、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール、1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホプロパノール、及び/又は1,2-ジアルキル-sn-グリセロ-3-ホスホブタノールの少なくとも1つを含む。アニオン性脂質がアルキルにコンジュゲートされており、アニオン性脂質が液相中に存在するいくつかの態様において、アルキルは、オレイン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ミード酸、パウリン酸、バクセン酸、パルミトレイン酸、ドコサテトラエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、γ-リノレン酸、リノエライジン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ステアリドン酸、α-リノレン酸、若しくはその塩又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つのコンジュゲートされた誘導体である。他の場合において、アルキルは、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、及び/若しくはその塩又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つのコンジュゲートされた誘導体である。上記において、アルキルが37℃超の相転移温度を有する場合、それは、ゲル相中であると考えられ、そうでない場合それは液相中に存在する。
【0078】
一態様において、アニオン性脂質は、37℃を超える相転移温度を有する飽和脂質であり得て、そのような脂質は固相に使用され得て、カチオン性脂質は液相に使用され得る。アニオン性脂質が37℃未満の転移温度を有する不飽和又は短鎖の脂質である場合、それは液相に利用され得て、カチオン性脂質はゲル又は固相に使用され得る。
【0079】
一態様において、脂質ナノ粒子中の少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質及び/又は不飽和非カチオン性脂質の濃度は、脂質ナノ粒子の総脂質濃度の50モル%未満、45モル%、40モル%、35モル%、30モル%、25モル%、20モル%、15モル%、10モル%、5モル%、又は2モル%であり得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子中の少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質及び/又は不飽和非カチオン性脂質の濃度は、脂質ナノ粒子の総脂質濃度の約50モル%、45モル%、40モル%、35モル%、30モル%、25モル%、20モル%、15モル%、10モル%、5モル%、又は2モル%であり得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子中の少なくとも1つの不飽和カチオン性脂質及び/又は不飽和非カチオン性脂質の濃度は、5~50モル%、5~40モル%、5~30モル%、5~25モル%、5~20モル%、5~15モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、10~25モル%、15~50モル%、15~40モル%、15~30モル%、及び15~25モル%であり得る。
【0080】
いくつかの場合において、送達ビヒクルは、高温相転移脂質、例えばDSPCなどの高温相転移中性脂質及びデオキシコール酸塩などの胆汁酸塩、コール酸、又はそれらのコンジュゲートを含み得る。デオキシコール酸塩は固相(ゲル相)として機能し得るが、デオキシコール酸塩は負電荷を提供する。同じ送達ビヒクル上で、カチオン性脂質は不飽和又は短尾部の脂質として存在し得て、液相中に存在し得る。MVL5のような多価カチオン性脂質を使用して、充分な陽電荷と負電荷の比を作り出しシステムに引力と反発のバランスを与えて、それにより電荷分離を含む送達ビヒクルを生成させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルはコンジュゲートされた脂質をさらに含み得て、コンジュゲートされた脂質は安定化成分にコンジュゲートされた脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、安定化成分は親水性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)、ポリビニルアルコール、又はこれらの任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、少なくとも約500Da~約500kDaの分子量を含み得る。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)を含み得て、コンジュゲートされた脂質はペグ化された脂質を含む。いくつかの実施形態において、ペグ化された脂質は、DSPE-PEG、DSG-PEG、DPG-PEG、DAG-PEG、DMG-PEG、DPPE-PEG、DMPE-PEG、又はこれらの任意の組合せを含み得る。
【0082】
いくつかの場合において、コンジュゲートされた脂質の濃度は、約0モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、5.5モル%、6モル%、6.5モル%、7モル%、7.5モル%、8モル%、8.5モル%、9モル%、9.5モル%、10モル%、10.5モル%、11モル%、11.5モル%、12モル%、12.5モル%、13モル%、13.5モル%、14モル%、14.5モル%、15モル%、15.5モル%、16モル%、16.5モル%、17モル%、17.5モル%、18モル%、18.5モル%、19モル%、19.5モル%、20モル%、20.5モル%、21モル%、21.5モル%、22モル%、22.5モル%、23モル%、23.5モル%、24モル%、24.5モル%、25モル%、25.5モル%、26モル%、26.5モル%、27モル%、27.5モル%、28モル%、28.5モル%、29モル%、29.5モル%、又は30モル%未満であり得るか、又はそれらより高くなり得る。いくつかの場合において、コンジュゲートされた脂質の濃度は、約0.5モル%~約20モル%、0.5モル%~約5モル%、0.5モル%~約10モル%、5モル%~約10モル%、又は10モル%~約20モル%である。
【0083】
いくつかの場合において、胆汁酸塩は、アニオン性成分として送達ビヒクル中で使用され得る。他の場合において、非胆汁酸塩がアニオン性成分として使用され得る。いくつかの実施形態において、送達ビヒクル安定性は、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸塩、リトコール酸、及びリトコール酸塩などの胆汁酸塩(本明細書で胆汁酸とも称される)の組込みにより増加され得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸塩はコール酸であり得る。さらなる実施形態において、胆汁酸塩はデオキシコール酸塩であり得る。いくつかの実施形態において、胆汁酸塩の組込みは、コール酸及びデオキシコール酸塩であり得る。いくつかの実施形態において、送達ビヒクルの安定性は、高胆汁酸塩模倣環境中での胆汁酸塩安定性アッセイにより測定できる。例えば、胆汁酸塩安定性は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイにおいて、様々な濃度の胆汁酸塩を含む送達ビヒクルの相対蛍光など、蛍光分光法により測定できる。いくつかの実施形態において、組み込まれた胆汁酸塩は、送達ビヒクルの安定性を、約80%~約70%、約65%~約55%、約60%~約50%、約55%~約45%、約50%~約40%、約45%~約35%、約40%~約30%、約35%~約25%、約30%~約20%、約25%~約15%、約20%~約10%、約15%~約10、約60%~約20%、約25.9%、約30.4%、約34.9%、約39.4%、約37.1%、約43.9%、又は約45%などの約80%~約10%増加させ得る。いくつかの例において、安定性の増加パーセントは、FRETなどのアッセイにおいて増加した相対蛍光単位又は相対発光単位により測定できる。
【0084】
いくつかの場合において、本明細書中で提供される送達ビヒクルは、多価脂質、カチオン性脂質、構造性脂質、胆汁酸塩、又は脂質-PEGの少なくとも1つを含み得る。本明細書中で提供される脂質のいずれか又は全部は、例えば、0モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、5.5モル%、6モル%、6.5モル%、7モル%、7.5モル%、8モル%、8.5モル%、9モル%、9.5モル%、10モル%、10.5モル%、11モル%、11.5モル%、12モル%、12.5モル%、13モル%、13.5モル%、14モル%、14.5モル%、15モル%、15.5モル%、16モル%、16.5モル%、17モル%、17.5モル%、18モル%、18.5モル%、19モル%、19.5モル%、20モル%、20.5モル%、21モル%、21.5モル%、22モル%、22.5モル%、23モル%、23.5モル%、24モル%、24.5モル%、25モル%、25.5モル%、26モル%、26.5モル%、27モル%、27.5モル%、28モル%、28.5モル%、29モル%、29.5モル%、30モル%、30.5モル%、31モル%、31.5モル%、32モル%、32.5モル%、33モル%、33.5モル%、34モル%、34.5モル%、35モル%、35.5モル%、36モル%、36.5モル%、37モル%、37.5モル%、38モル%、38.5モル%、39モル%、39.5モル%、40モル%、40.5モル%、41モル%、41.5モル%、42モル%、42.5モル%、43モル%、43.5モル%、44モル%、44.5モル%、45モル%、45.5モル%、46モル%、46.5モル%、47モル%、47.5モル%、48モル%、48.5モル%、49モル%、49.5モル%、50モル%、50.5モル%、51モル%、51.5モル%、52モル%、52.5モル%、53モル%、53.5モル%、54モル%、54.5モル%、55モル%、55.5モル%、56モル%、56.5モル%、57モル%、57.5モル%、58モル%、58.5モル%、59モル%、59.5モル%、60モル%、60.5モル%、61モル%、61.5モル%、62モル%、62.5モル%、63モル%、63.5モル%、64モル%、64.5モル%、65モル%、65.5モル%、66モル%、66.5モル%、67モル%、67.5モル%、68モル%、68.5モル%、69モル%、69.5モル%、70モル%、70.5モル%、71モル%、71.5モル%、72モル%、72.5モル%、73モル%、73.5モル%、74モル%、74.5モル%、75モル%、75.5モル%、76モル%、76.5モル%、77モル%、77.5モル%、78モル%、78.5モル%、79モル%、79.5モル%、又は80モル%を含むがこれらに限定されない任意のモル%で製剤され得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書中の送達ビヒクルは追加の成分を含み得る。例えば、送達ビヒクルの脂質構造は脂質二重層を含み得る。特定の場合において、リン脂質、ホスファチジル-コリン、ホスファチジル-セリン、ホスファチジル-ジエタノールアミン、ホスファチジルイノシテ、スフィンゴ脂質、及びエトキシ化ステロール又はそれらの混合物からなる群から選択される1以上の組成物の脂質二重層が生じ得る。そのような実施形態の実例において、リン脂質はレシチンであり得るし、ホスファチジルイノシテは、ダイズ、セイヨウアブラナ、綿実、卵、及びそれらの混合物から誘導され得るし、スフィンゴ脂質は、セラミド、セレブロシド、スフィンゴシン、及びスフィンゴミエリン、並びにそれらの混合物であり得るし、エトキシ化ステロールは、フィトステロール、PEG-(ポリエチレングリコール)-5アブラナ種子ステロールであり得る。特定の実施形態において、フィトステロールは、以下の組成物、シストステロール、カンポステロール、及びスティグマステロールのうちの少なくとも2つの混合物を含む。さらに他の実施形態において、脂質層は、ホスファチジルコリン、ホスファチジル-エタノールアミン、ホスファチジル-セリン、ホスファチジル-イノシトール、リゾホスファチジル-コリン、リゾホスファチジル-エタノールアニン、リゾホスファチジル-イノシトール、又はリゾホスファチジル-イノシトールを含む群から選択される1以上のホスファチジル基で構成され得る。他の場合において、脂質二重層は、モノアシル又はジアシルホスホグリセリドから選択されるリン脂質で構成され得る。さらに他の場合において、脂質二重層は、ホスファチジル-イノシトール-3-リン酸(PI-3-P)、ホスファチジル-イノシトール-4-リン酸(PI-4-P)、ホスファチジル-イノシトール-5-リン酸(PI-5-P)、ホスファチジル-イノシトール-3,4-二リン酸(PI-3,4-P2)、ホスファチジル-イノシトール-3,5-二リン酸(PI-3,5-P2)、ホスファチジル-イノシトール-4,5-二リン酸(PI-4,5-P2)、ホスファチジル-イノシトール-3,4,5-三リン酸(PI-3,4,5-P3)、リゾホスファチジル-イノシトール-3-リン酸(LPI-3-P)、リゾホスファチジル-イノシトール-4-リン酸(LPI-4-P)、リゾホスファチジル-イノシトール-5-リン酸(LPI-5-P)、リゾホスファチジル-イノシトール-3,4-二リン酸(LPI-3,4-P2)、リゾホスファチジル-イノシトール-3,5-二リン酸(LPI-3,5-P2)、リゾホスファチジル-イノシトール-4,5-二リン酸(LPI-4,5-P2)、及びリゾホスファチジル-イノシトール-3,4,5-三リン酸(LPI-3,4,5-P3)、ホスファチジル-イノシトール(PI)、又はリゾホスファチジル-イノシトール(LPI)を含む群から選択される1以上のホスホイノシチドで構成され得る。
【0086】
送達ビヒクルとして使用される脂質構造は修飾され得る。修飾は表面修飾であり得る。表面修飾は、脂質構造が粘液中で動く平均速度を、同等な脂質構造と比べて増大させ得る。同等な脂質構造は表面修飾されていない可能性があるか、あるいは同等な脂質構造はポリエチレングリコール(PEG)ポリマーにより修飾され得る。修飾は、インビボでの分解からの保護を促進し得る。修飾は、脂質構造の輸送も支援し得る。例えば、修飾は、脂質構造が、pH感受性修飾により酸性pHを有する消化(GI)管内で輸送することを可能にし得る。表面修飾は、脂質構造が粘液中を動く平均速度も改善し得る。例えば、修飾は、修飾がない同等な脂質構造又はPEGを含む修飾を有する脂質構造と比べて、速度を、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、300倍、500倍、700倍、900倍、又は約1000倍まで増大させ得る。いくつかの場合において、脂質構造に対する修飾は結合により起こる。結合は、共有結合性、非共有結合性、極性、イオン性、水素、又はこれらの任意の組合せであり得る。結合は、2つの基又は基の一部の会合であると考えられ得る。例えば、脂質構造は、共有結合を含むリンカーによりPEGに結合され得る。いくつかの場合において、結合は、2つの隣接する基の間に起こり得る。結合は動的であり得る。動的結合は、1つの基が一時的に第2の基と会合する場合に起こり得る。例えば、リポソーム内で懸濁しているポリ核酸は、その懸濁の間に脂質二重層の一部と結合し得る。
【0087】
いくつかの場合において、修飾は、ポリエチレングリコール(PEG)付加であり得る。脂質構造表面をPEGにより修飾する方法は、脂質構造表面へのその物理吸着、脂質構造へのその共有結合、脂質構造へのそのコーティング、又はこれらの任意の組合せを含み得る。いくつかの場合において、PEGは、脂質構造が形成される前に脂質粒子に共有結合され得る。種々の分子量のPEGが使用され得る。PEGは、脂質構造に含まれる脂質の重量の1%~20%、好ましくは5%~15%、10%を含むか又は約1%~約20%、好ましくは約5%~約15%、約10%を含むリン脂質にアミン基によりコンジュゲートされ得る約10~約100単位のエチレンPEG成分の範囲であり得る。
【0088】
いくつかの場合において、脂質構造はホスファチジルコリンを含み得る。例示的なホスファチジルコリンとしては、ジラウロイルホファチジルコリン、ジミリストイルホファチジルコリン、ジパルミトイルホファチジルコリン、ジステアロイルホファチジル-コリン、ジアラキドイルホファチジルコリン、ジオレオイルホファチジルコリン、ジリノレオイル-ホファチジルコリン、ジエルコイルホファチジルコリン、パルミトイル-オレオイル-ホファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、ミリストイル-パルミトイルホスファチジルコリン、パルミトイル-ミリストイル-フドスファチジルコリン、ミリストイル-ステアロイルホスファチジルコリン、パルミトイル-ステアロイル-ホスファチジルコリン、ステアロイル-パルミトイルホスファチジルコリン、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルコリン、ステアロイル-リノレオイルホスファチジルコリン、及びパルミトイル-リノレオイル-ホスファチジルコリンがあるがこれらに限定されない。非対称型ホスファチジルコリンは、1-アシル,2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと称され得るが、アシル基は互いに異なっている。対称型ホスファチジルコリンは1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと称され得る。本明細書で使用される通り、略語「PC」はホスファチジルコリンを指す。ホスファチジルコリン1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは本明細書で「DMPC」と略記され得る。ホスファチジルコリン1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは本明細書で「DOPC」と略記され得る。ホスファチジルコリン1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは本明細書で「DPPC」と略記され得る。一般に、種々の脂質に存在する飽和アシル基としては、名称プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、カプロイル、ヘプタノイル、カプリロイル、ノナノイル、カプリル、ウンデカノイル、ラウロイル、トリデカノイル、ミリストイル、ペンタデカノイル、パルミトイル、フィタノイル、ヘプタデカノイル、ステアロイル、ノナデカノイル、アラキドイル、ヘンエイコサノイル、ベヘノイル、トルシサノイル、及びリグノセロイルを有する基がある。飽和アシル基の対応するIUPAC名は、トリアン、テトラン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トロコサン、及びテトラコサンである。対称型と非対称型の両方のホスファチジルコリンに見られる不飽和アシル基としては、ミリストレイル、パルミトレイル、オレオイル、エライドイル、リノレオイル、リノレノイル、エイコセノイル、及びアラキドノイルがある。不飽和アシル基の対応するIUPAC名は、9-シス-テトラデカン、9-シス-ヘキサデカン、9-シス-オクタデカン、9-トランス-オクタデカン、9-シス-12-シス-オクタデカジエン、9-シス-12-シス-15-シスオクタデカトリエン、11-シス-エイコセン、及び5~シス-8-シス-11-シス-14-シス-エイコサテトラエンである。例示的なホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン、及び卵ホスファチジルエタノールアミンがある。ホスファチジルエタノールアミンは、IUPAC命名系では、対称型脂質か非対称型脂質かによって、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン又は1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンと称され得る。例示的なホスファチジン酸としては、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、及びジオレオイルホスファチジン酸がある。ホスファチジン酸は、IUPAC命名系では、対称型脂質か非対称型脂質かによって、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスフェート又はl-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスフェートと称され得る。例示的なホスファチジルセリンとしては、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン、パルミトイル-オレイルホスファチジルセリン及び、脳ホスファチジルセリンがある。ホスファチジルセリンは、IUPAC命名系では、対称型脂質か非対称型脂質かによって、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン]又はl-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン]とも称され得る。本明細書で使用される通り、略語「PS」はホスファチジルセリンを指す。例示的なホスファチジルグリセロールとしては、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルグリセロール、及び卵ホスファチジルグリセロールがある。ホスファチジルグリセロールは、IUPAC命名系では、対称型脂質か非対称型脂質かによって、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)]又は1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)]とも称され得る。ホスファチジルグリセロール1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)]は本明細書で「DMPG」と略記される。ホスファチジルグリセロール1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ホスホ-rac-1-グリセロール)(ナトリウム塩)は本明細書で「DPPG」と略記される。好適なスフィンゴミエリンは、脳スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、及びジステアロイルスフィンゴミエリンを含み得る。他の好適な脂質としては、糖脂質、スフィンゴ脂質、エーテル脂質、セレブロシド及びガングリオシドなどの糖脂質並びにコレステロール又はエルゴステロールなどのステロールがある。
【0089】
いくつかの場合において、脂質構造は、コレステロール若しくはその誘導体、リン脂質、リン脂質とコレステロールの混合物若しくはその誘導体、又は組合せを含み得る。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、及びそれらの混合物があるが、これらに限定されない。脂質構造がリン脂質とコレステロールの混合物又はコレステロール誘導体を含む場合、脂質構造は、脂質構造中に存在する総脂質の最高約40、50、又は60mol%を構成し得る。1以上のリン脂質及び/又はコレステロールは、脂質構造中の総脂質の約10モル%~約60モル%、約15モル%~約60モル%、約20モル%~約60モル%、約25モル%~約60モル%、約30モル%~約60モル%、約10モル%~約55モル%、約15モル%~約55モル%、約20モル%~約55モル%、約25モル%~約55モル%、約30モル%~約55モル%、約13モル%~約50モル%、約15モル%~約50モル%、又は約20モル%~約50モル%を構成し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書中の送達ビヒクルは、消化管内の上皮細胞などの上皮細胞へ吸収されるように設計されている。ペプチド、特に、細胞透過性ペプチド(CPP)及び粘液透過性機能性を有する細胞透過性ペプチド(MPP)は、細胞への吸収を与える。そのような目的で本明細書に記載される脂質構造などの本明細書中の送達ビヒクルは、粘液透過性ペプチド(MPP)、細胞透過性ペプチド(CPP)、又は両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞透過性ペプチド(CPP)は、送達ビヒクル及び/又はカーゴの細胞への増加された取込みを可能にし得る短いポリペプチドであり得る。細胞透過性ペプチド(CPP)は、細胞膜を効率よく通過することを容易にするペプチド配列であり得る。例示的なCPP及びMPPとしては、参照により本明細書に組み込まれるPCT/US17/61111号明細書及びPCT/US2019/032484号明細書に開示されているものがある。
【0091】
いくつかの実施形態において、粘液透過性細胞透過性ペプチド(MPP)が本明細書に記載される送達ビヒクルと併せて使用される。MPPは細胞透過性を有し、さらに、結腸、肺、眼、及び子宮頸部中の天然の粘液の層などの粘液の層を通る透過を可能にする。MPPは、構造を細胞の細胞内成分に標的化するためにさらに使用され得る。それらは、特定の細胞型を特異的に標的化するためにも設計され得る。透過又は細胞の標的化の増加をもたらすために、MPPは送達ビヒクルにコンジュゲートされて、粒子が粘液層を通る透過及び細胞との相互作用も可能になり得る。いくつかの実施形態において、MPPを有する脂質構造は、MPPを含まない同等な粒子と比べて、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は最高約100%の有効性で細胞中に吸収されうる。いくつかの実施形態において、送達ビヒクルは粘液透過性ペプチド(MPP)を含み得る。MPPは、MPPが全体として又は一部分、粘液層、粘液含有組織、器官、又は細胞外表面と接触し得るようにMPPが露出されるように、脂質ナノ粒子、脂質ナノ粒子の表面修飾、又はカーゴにコンジュゲートされるなど脂質構造にコンジュゲートされ得る。MPPの存在は、粘液を通る(拡散及び/又はその中を通る動き)送達ビヒクルの改善された透過を付与し得る。いくつかの実施形態において、透過は、MPPを有さない送達ビヒクル及び/又はカーゴの送達と比べて、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、50倍、100倍、又はそれ以上改善され得る。いくつかの実施形態において、MPPは、非限定的に、約3~5、5~10、10~20、20~40、30~60、又は80~100アミノ酸を含むがこれらに限定されない約3~100アミノ酸を有するアミノ酸配列を有し得る。MPPは、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又は最高約100アミノ酸を有し得る。いくつかの実施形態において、MPPは、標的細胞又は組織を覆うか又は取り囲む粘液層に透過する能力を有し得る。MPPは、哺乳動物の腸の上皮、結腸、肺、眼、又は子宮頸部などの標的組織の粘液層に透過するために利用され得る。MPPは、透過又は細胞の標的化の増加をもたらすために、送達ビヒクルの粘液層を通る透過及び細胞との相互作用も可能にするために、ナノ粒子を含む送達ビヒクルにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、MPPを有する粒子は、MPPを含まない同等な粒子と比べて、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は最高約100%の有効性で粘液層に透過する。粘液層の透過を測定する多くの方法を利用して、MPP又は送達ビヒクルと直接若しくは間接にコンジュゲートされたMPPによる透過を評価できる。
【0092】
一態様において、脂質構造は、本明細書で使用される粘液透過性粒子すなわちMPPであり得て、粘膜透過増進コーティングにより被覆された粒子を指し得る。いくつかの場合において、粒子は、粘膜透過増進コーティングにより被覆され得る治療用、診断用、予防用、及び/又は栄養補強性薬剤(すなわち薬物粒子)などの活性薬剤の粒子であり得るか、又はそれを送達できる。他の場合において、粒子は、治療用、診断用、予防用、及び/又は栄養補強性薬剤がその中に封入、分散、及び/又は会合され得るポリマー性材料などのマトリックス材料で形成され得る。
【0093】
特定の場合において、送達ビヒクルは少なくとも1つの標的化剤をさらに含み得る。用語標的化剤は、特定の種類若しくは部類の細胞及び/又は他の特定の種類の化合物(例えば、特定の細胞又は種類の細胞を標的とする部分)と特異的に結合する部分、化合物、抗体などを指し得る。標的化剤は、特定の標的細胞の表面、標的細胞表面抗原、標的細胞受容体、又はそれらの組合せに特異的であり得る(例えば、親和性を有する)。いくつかの場合において、標的化剤は、特定の種類又は部類の物質及び/又は細胞に曝露されると特定の作用(例えば切断)を有する薬剤を指し得て、この作用が、送達ビヒクルを特定の種類又は部類の細胞を標的とするように推進し得る。そのため、用語標的化剤は、送達ビヒクルの一部であり得て、送達ビヒクルの標的化機構において役割を果たす作用物質を指し得るが、作用物質自体は、特定の種類又は部類の細胞自体に特異的なことも特異的でないこともある。特定の場合において、送達ビヒクルにより送達されるポリ核酸の細胞取込みの効率は、標的化剤の本送達ビヒクルへの組込みにより、増大され得るか、及び/又はより特異的になり得る。特定の実施形態において、本明細書に記載される送達ビヒクルは、1以上の小分子標的化剤(例えば、炭水化物部分)を含み得る。好適な標的化剤は、非限定的な例として、抗体、抗体様分子、又はRGD含有ペプチドなどのインテグリン結合ペプチドなどのペプチド、又はビタミン、例えば葉酸などの小分子、ラクトース及びガラクトースなどの糖、又は他の小分子も含む。細胞表面抗原は、細胞表面上のタンパク質、糖、脂質、又は他の抗原などの細胞表面分子を含む。特別な実施形態において、細胞表面抗原は吸収を受ける。本送達ビヒクルの実施形態の標的化剤により標的化される細胞表面抗原の例としては、トランスフェリン受容体1型及び2型、EGF受容体、HER2/Neu、VEGF受容体、インテグリン、NGF、CD2、CD3、CD4、CDS、CDI9、CD20、CD22、CD33、CD43)、CD56、CD69、及びロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役型受容体5(LGR5)があるがこれらに限定されない。標的化剤は、人工親和性分子、例えば、ペプチドミメティック又はアプタマーも含み得る。ペプチドミメティクスは、治療用ペプチドなどのペプチドの少なくとも一部分が修飾されている化合物を指し得て、ペプチドミメティックの三次元構造はペプチドの三次元構造と実質的に同じままである。ペプチドミメティクス(ペプチドと非ペプチジルアナログの両方)は、改善された性質を有し得る(例えば、タンパク質分解減少、保持増加、又はバイオアベイラビリティ増加)。ペプチドミメティクスは、一般的に、改善された経口アベイラビリティを有し、そのために、ヒト又は動物の障害の治療に特に適する。ペプチドミメティクスは、類似の二次元化学構造を有することも有さないこともあるが、共通の三次元構造特徴及び形状を共有することに留意すべきである。
【0094】
いくつかの実施形態において、標的化剤はタンパク質性標的化剤(例えば、ペプチド、及び抗体、抗体断片)であり得る。いくつかの具体的な実施形態において、送達ビヒクルは複数の異なる標的化剤を含み得る。実施形態において、脂質構造修飾は生体適合性を与え得て、例えば、抗体、アプタマーを含む標的ペプチド、ポリエチレン、又はこれらの組合せを含む標的種を有するように修飾され得る。標的化剤は受容体であり得る。いくつかの場合において、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、単鎖バリアント断片(scFv)、キメラ抗原受容体(CAR)、又はこれらの組合せが標的化剤として使用される。
【0095】
いくつかの実施形態において、1以上の標的化剤は、送達ビヒクルを形成するポリマーにカップリングされ得る。いくつかの場合において、標的化剤は、送達ビヒクルを被覆するポリマーに結合され得る。いくつかの場合において、標的化剤はポリマーに共有結合され得る。いくつかの場合において、標的化剤は、標的化剤が、生じる送達ビヒクルの実質的に表面に、又はその近くにあり得るようにポリマーに結合され得る。特定の実施形態において、標的化剤残基を含むモノマー(例えば、ペプチドの(アルキル)アクリル酸誘導体などの標的化剤の重合性誘導体)が共重合されて、本明細書中で提供される送達ビヒクルを形成するコポリマーが形成し得る。特定の実施形態において、1以上の標的化剤は、連結部分により本送達ビヒクルのポリマーに結合し得る。いくつかの実施形態において、標的化剤を膜不安定化ポリマーに結合する連結部分は、切断性連結部分であり得る(例えば、切断性結合を含む)。いくつかの実施形態において、連結部分は、切断性であり得るか、及び/又はエンドソーム条件で切断性であり得る結合を含む。いくつかの実施形態において、連結部分は、切断性であり得るか、及び/又は特異的な酵素(例えば、ホスファターゼ、又はプロテアーゼ)により切断性であり得る結合を含む。いくつかの実施形態において、連結部分は、切断性であり得るか、及び/又は細胞内パラメータ(例えば、pH、酸化還元電位)の変化時に切断性であり得る結合を含み、いくつかの実施形態において、連結部分は、切断性であり得るか、及び/又はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)への曝露時に切断性であり得る結合を含む(例えば、MMP-切断性ペプチド連結部分)。
【0096】
特定の場合において、送達ビヒクルの標的化機構は、ポリマー中の切断性セグメントの切断に依存し得る。例えば、本ポリマーは、切断されると送達ビヒクル及び/又は送達ビヒクルのコアを露出する切断性セグメントを含み得る。切断性セグメントは、いくつかの実施形態において、本ポリマーのいずれか又は両方の末端に位置し得る。いくつかの実施形態において、切断性セグメントは、ポリマーの長さに沿って位置し、任意選択でポリマーのブロックの間に位置し得る。例えば、特定の実施形態において、切断性セグメントはポリマーの第1ブロックと第2ブロックの間に位置し得て、送達ビヒクルが特定の切断性物質に曝され得る場合、第1ブロックは第2ブロックから切断され得る。具体的な実施形態において、切断性セグメントは、MMPへの曝露時に切断され得るMMP-切断性ペプチドであり得る。
【0097】
抗体又はペプチドなどの標的化剤のポリマー又は脂質への接続は、任意の好適な方法で、例えば、アミン-カルボキシルリンカー、アミン-スルフヒドリルリンカー、アミン-炭水化物リンカー、アミン-ヒドロキシルリンカー、アミン-アミンリンカー、カルボキシル-スルフヒドリルリンカー、カルボキシル-炭水化物リンカー、カルボキシル-ヒドロキシルリンカー、カルボキシル-カルボキシルリンカー、スルフヒドリル-炭水化物リンカー、スルフヒドリル-ヒドロキシルチンカー、スルフヒドリル-スルフヒドリルリンカー、炭水化物-ヒドロキシルリンカー、炭水化物-炭水化物リンカー、及びヒドロキシル-ヒドロキシルリンカーを含むがこれらに限定されないいくつかのコンジュゲートケミストリアプローチのいずれか1つにより達成され得る。具体的な実施形態において、「クリック」ケミストリーが使用されて、標的化剤が本明細書中で提供される送達ビヒクルのポリマーに接続され得る。多種多様のコンジュゲートケミストリが任意選択で利用され、いくつかの実施形態において、標的化剤がモノマーに接続され得て、次いで、生じた化合物が、本明細書に記載される送達ビヒクルに利用されるポリマー(例えばコポリマー)の重合合成に使用され得る。いくつかの実施形態において、標的化剤は、送達ビヒクルのポリマーに結合したsiRNAのセンス又はアンチセンス鎖に接続され得る。特定の実施形態において、標的化剤は、センス又はアンチセンス鎖の5’又は3’末端に接続され得る。
【0098】
化合物を連結する方法は、タンパク質、標識、及び他の化学物質、ヌクレオチドを含み得るが、これらに限定されない。n-マレイミドブチリルオキシ-スクシンイミドエステル(GMBS)及びスルホ-GMBSなどの架橋試薬は減少した免疫原性を有する。置換基は、アミダイト又はH-ホスホネートケミストリーを使用して、事前に構築されたオリゴヌクレオチドの5’末端に接続された。置換基は、オリゴマーの3’末端にも接続され得る。この最後の方法は、固体担体に接続された2,2’-ジチオエタノールを利用して、ジイソプロピルアミンがアクリジン部分を有する3’ホスホネートから移され、その後にリンの酸化の後に削除される。あるいは、オリゴヌクレオチドは、リンカーアームにより塩基に接続された基を有する1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含み得る。例えば、アリルアミンリンカーアームによるdUTPのC-5位へのビオチンの接続が利用され得る。リンカーアームによるピリミジンの5位へのビオチン及び他の基の接続も実施され得る。
【0099】
化学架橋は、スペーサーアーム、すなわちリンカー又はテザーの使用を含み得る。スペーサーアームは分子内柔軟性を与えるか、又はコンジュゲートされた部分の間の分子内距離を調整し、それにより、生物学的活性を維持することを助け得る。スペーサーアームは、スペーサーアミノ酸を含むペプチド部分の形態であり得る。あるいは、スペーサーアームは、「長鎖SPDP」中など架橋試薬の一部であり得る。
【0100】
プロテインA、カルボジイミド、ジマレイミド、ジチオ-ビス-ニトロ安息香酸(DTNB)、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SATA)、及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、6-ヒドラジノニコチミド(HYNIC)、NS、及びNなどの種々のカップリング剤又は架橋剤が周知の手順で使用されて、標的化されたコンストラクトが合成され得る。例えば、ビオチンは、二環式無水物法を使用して、DTPAによりオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ得る。さらに、スルホスクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート(NHS-LC-ビオチン、ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.)、ロックフォード、イリノイ州から購入できる)、ビオチンのリジンコンジュゲートである「ビオシチン」は、一級アミンの利用可能性のためビオチン化合物を製造するのに有用であり得る。さらに、対応するビオチン酸クロリド又は酸前駆体が、治療剤のアミノ誘導体と公知の方法によりカップリングされ得る。ビオチン部分を粒子の表面にカップリングすることにより、別の部分がアビジンにカップリングされて、次いで、強いアビジン-ビオチン親和性により粒子にカップリングされ得るが、又は逆も同様である。ポリマー性粒子がPEG部分を粒子の表面に含む特定の実施形態において、PEGの遊離のヒドロキシル基が、追加の分子又は部分の粒子への連結又は接続(例えば共有結合)に使用され得る。
【0101】
一態様において、本明細書中の脂質構造(送達ビヒクル)は、20~200nm、200nm~1μmなど、ナノメートルからマイクロメートルの範囲に入り得るサイズを有する。いくつかの場合において、ポリ核酸は縮合されて脂質構造により適切に封入され得る。DNAの縮合は、DNA骨格のリン酸基の中和及び塩基との水素結合によるB-DNA構造のゆがみによりDNAを縮合できるMn2+、Ni2+、Co2+、及びCu2+などの二価金属イオンにより実施され得て、DNAの局所的な曲げ及びヘリックス間の会合の両方が可能になる。いくつかの場合において、縮合に利用される金属イオンの濃度は、縮合に利用される媒体の誘電率に依存し得る。エタノール又はメタノールの添加も、縮合に必要とされる金属イオンの濃度を減少させ得る。いくつかの場合において、エタノールは、体積で約0.5%から約60%までの濃度でDNAを縮合するのに使用され得る。いくつかの場合において、エタノールは、体積で約0.5%から、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%までの濃度でDNAを縮合するのに使用され得る。いくつかの場合において、カルシウムも縮合に使用され得る。カルシウムはDNAリン酸に結合するだけでなく、グアニンの窒素及び酸素と錯体も形成でき、塩基対合を乱すことができる。
【0102】
いくつかの場合において、ポリ核酸は脂質構造中に完全に封入され得る。完全な封入は、脂質構造中のポリ核酸が、血清又は遊離のDNA、RNA、若しくはタンパク質を著しく分解するだろうヌクレアーゼ若しくはプロテアーゼアッセイへの曝露後に著しく分解され得ないことを示し得る。完全に封入された系において、好ましくは、脂質構造中のポリ核酸の約25%未満が、遊離のポリ核酸の100%を通常分解するだろう処理において分解され得て、より好ましくは、脂質構造中のポリ核酸の約10%未満、最も好ましくは約5%未満が分解され得る。ポリ核酸の文脈において、完全な封入は、オリグリーン(Oligreen)(登録商標)アッセイにより決定され得る。オリグリーン(Oligreen)(登録商標)は、溶解状態のオリゴヌクレオチド及び一本鎖のDNA又はRNAを定量化する超高感度蛍光性核酸染料である(インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)、カールスバッド、カリフォルニア州から入手可能)。「完全に封入された」は、脂質構造が血清安定であり得ること、すなわち、それらが、インビボ投与時にその成分部分に迅速に分解しないことも示し得る。
【0103】
特定の用途において、ポリ核酸などの薬物がいったん細胞に入ると、部分を放出することが望ましいことがある。部分は、ポリ核酸を受け取ったいくつかの細胞を特定するのに利用できる。部分は、いくつか例を挙げると、抗体、染料、scFv、ペプチド、糖タンパク質、炭水化物、リガンド、ポリマーであり得る。部分はリンカーと接触し得る。リンカーは非切断性であり得る。したがって、いくつかの場合において、リンカーは切断性リンカーであり得る。これにより、いったん標的細胞への接触がなされると、部分が脂質構造から放出されることが可能になり得る。これは、脂質構造から分離されたときに、部分がより高い治療効果を有する場合に望ましいことがある。いくつかの場合において、部分は、脂質構造から分離されたときに、小腸腺窩細胞又は小腸腺窩幹細胞などの細胞の細胞内成分により吸収される、より良好な能力を有し得る。いくつかの場合において、リンカーは、ジスルフィド結合、アシルヒドラゾン、ビニルエーテル、オルトエステル、又はN-PO3を含み得る。
【0104】
したがって、部分が細胞内区画に入ることができるように、部分を脂質構造から分離することが必要であるか又は望ましくなり得る。部分を放出するリンカーの切断は、例えば、細胞内のpHの変化による、細胞の外と比べた細胞内の状態の変化の結果であり得る。リンカーの切断は、細胞内の酵素の存在のため起こり得るが、それは、ポリ核酸などの薬物が細胞に入るとリンカーを切断する。あるいは、リンカーの切断は、細胞に加えられたエネルギー又は化学物質に反応して起こり得る。リンカーの切断を起こすのに使用され得るエネルギーの種類の例には、光、超音波、マイクロ波、及びラジオ波エネルギーがあるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、リンカーは光解離性リンカーであり得る。複合体を連結するのに使用されるリンカーは、酸に不安定なリンカーであり得る。酸に不安定なリンカーの例としては、シス-アコニット酸、シス-カルボン酸アルカトリエン、ポリ無水マレイン酸を使用して形成されたリンカー、及び酸に不安定な他のリンカーがある。
【0105】
いくつかの場合において、リポソームなどの脂質構造は生体適合性で生分解性であり得る。例えば、いくつかの場合において、リポソームは、対象への導入後に生分解し得る。生分解は、いくつかの場合において、導入直後に始まり得る。生分解は、リポソーム又はリポソーム構造の投与を受けた対象の粘膜管内で起こり得る。生分解は、ポリ核酸などのリポソームカーゴの放出をもたらし得る。他の場合において、生分解は、ポリマーなどのリポソーム構造の成分の分解を含み得る。生分解は、約36.4℃(97.6°F)~約37.2℃(99°F)などの標準的な身体条件下で起こり得る。他の場合において、生分解は、約35℃(95°F)~約41.1℃(106°F)の温度で起こり得る。生分解は、約35℃(95°F)、35.6℃(96°F)、36.1℃(97°F)、36.7℃(98°F)、37.2℃(99°F)、37.8℃(100°F)、38.3℃(101°F)、38.9℃(102°F)、39.4℃(103°F)、40℃(104°F)、40.6℃(105°F)、又は41.1℃(106°F)までで起こり得る。他の態様において、生分解は約10℃(50°F)~約65.6℃(150°F)で起こり得る。
【0106】
他の場合において、生分解は起こらないことがある。生分解が起こる場合、それは、対象へのリポソーム又は構造の投与の後に約1分~約100年かかり得る。生分解は、約1分、5分、30分、1時間、3時間、7時間、10時間、15時間、20時間、25時間、2日、4日、8日、12日、20日、30日、1.5か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、1.5年、3年、5年、8年、10年、15年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、又は少なくとも約100年かかり得る。リポソームなどの構造の脂質は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合から誘導される)、ステロール脂質プレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合から誘導される)、若しくはこれらの任意の組合せであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0107】
カーゴ
本明細書中で提供される電荷分離及び上皮到達機能性を有する本明細書中の送達ビヒクルは、あらゆる種類のカーゴを、標的、例えば標的細胞に送達するために利用され得る。いくつかの場合において、カーゴは治療剤を含み得る。例示的な治療剤は、核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、生物製剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチドミメティクス、リボザイム、化学療法薬分子などの化学剤、又はウイルス粒子、成長因子サイトカイン、免疫調節性剤、低分子薬を含むがこれらに限定されないあらゆる大きな分子、リポソーム内に組み込まれたDNAにより発現され得る蛍光色素ペプチドを含む蛍光色素、又はこれらの任意の組合せを含み得る。
【0108】
一態様において、カーゴは核酸であり得る。核酸は、DNA系でもRNA系でもあり得る。核酸はベクターであり得る。DNA系ベクターは非ウイルス性であり得て、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、閉端直鎖DNA(ドギーボーン(doggybone))、直鎖DNA、及び一本鎖のDNAなどの分子を含み得る。脂質核酸粒子中に存在し得る核酸としては、公知であるあらゆる形態の核酸がある。本明細書で使用される核酸は、一本鎖のDNA若しくはRNA、又は二本鎖のDNA若しくはRNA、又はDNA-RNAハイブリッドであり得る。二本鎖のDNAの例としては、構造遺伝子、制御及び停止領域を含む遺伝子、及びウイルス又はプラスミドDNAなどの自己複製系がある。二本鎖のRNAの例としては、siRNA及び他のRNA干渉試薬がある。一本鎖の核酸としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、及び三重鎖形成性オリゴヌクレオチドがある。脂質核酸粒子中に存在する核酸は、以下に記載される1以上のオリゴヌクレオチド修飾を含み得る。核酸は、一般的に特定の形態の核酸に応じて種々の長さであり得る。例えば、特定の実施形態において、プラスミド又は遺伝子は、長さが約1,000~100,000ヌクレオチド残基であり得る。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは長さが約10~100ヌクレオチドの範囲であり得る。種々の関連する実施形態において、一本鎖、二本鎖、及び三重鎖のオリゴヌクレオチドは、長さが約10~約50ヌクレオチド、約20~約50ヌクレオチド、約15~約30ヌクレオチド、約20~約30ヌクレオチドの範囲であり得る。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが約2ヌクレオチド~10ヌクレオチドの範囲であり得る。
【0109】
DNA系ベクターはウイルス性でもあり得て、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスなどがある。ベクターはRNAでもあり得る。RNAベクターは、直鎖又は環状形態の未修飾RNAであり得る。それらは、半減期を増加させ、免疫原性を減少させ、及び/又は翻訳のレベルを増加させるように設計された種々のヌクレオチド修飾も含み得る。本明細書で使用されるベクターは、DNAかRNAのいずれかで構成され得る。いくつかの実施形態において、ベクターはDNAで構成され得る。ベクターは、成長に使用されるE.コリ(E.coli)などの原核生物において自律的複製が可能であり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、生物のゲノム中に安定的に統合され得る。他の場合において、ベクターは、細胞質か核のいずれかの中で別なままであり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは標的化配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターは抗生物質耐性遺伝子を含み得る。ベクターは遺伝子発現を制御するための調節エレメントを含み得る。いくつかの場合において、ミニサークルが送達ビヒクル中に封入され得る。
【0110】
一態様において、ミニサークル(MC)DNAは、本明細書に記載されるビヒクルによりカーゴとして送達され得る。MCとプラスミドDNAはどちらも、送達後すぐに導入遺伝子産物が高レベルでつくられることを可能にする発現カセットを含み得るので、MCはプラスミドDNAに類似し得る。いくつかの場合において、MCは、MC DNAが原核生物の配列因子(例えば、細菌性複製起点及び抗生物質耐性遺伝子)を欠き得る点で異なり得る。骨格プラスミドDNAからの原核生物の配列因子の除去は、エピソームDNA単離の前にエシェリキア・コリ(Escherichia coli)の部位特異的組換えにより達成され得る。原核生物の配列因子がないと、その親完全長(FL)プラスミドDNAに対してMCサイズが減少し得るが、それは核酸導入効率の増大をもたらし得る。その結果は、MCは、そのFLプラスミドDNA対応物と比べて、より多くの細胞に核酸導入でき、送達時に持続した高レベル導入遺伝子発現を可能にし得ることであり得る。いくつかの場合において、ミニサークルDNAは細菌性複製起点を含まないことがある。例えば、ミニサークルDNA又は閉端直鎖DNAは、約50%の細菌性複製起点配列から、又は100%の細菌性複製起点までの細菌性複製起点を含まないことがある。いくつかの場合において、細菌性複製起点は短縮化されるか又は不活性である。ポリ核酸は、最初に細菌性複製起点をコードしたベクターから誘導され得る。細菌性複製起点を完全に、又はその一部を除去して、細菌性複製起点がないポリ核酸を残す方法が利用され得る。いくつかの場合において、細菌性複製起点は、その高いアデニン及びチミン含量により特定され得る。ミニサークルDNAベクターは、非ウイルス性遺伝子治療及びワクチン接種に使用するために、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)中でインビボの部位特異的組換えにより従来のプラスミドDNAから誘導されたスーパーコイル状の最低限の発現カセットであり得る。ミニサークルDNAは、細菌DNAに固有な抗生物質耐性遺伝子、複製起点、及び/又は炎症性配列などの細菌の骨格配列を欠き得るか、又は減少されている。それらの改善された安全性プロファイルに加えて、ミニサークルは導入遺伝子発現の効率を大いに増加させることができる。
【0111】
いくつかの場合において、遺伝子の一部がポリ核酸カーゴにより送達され得る。遺伝子の一部は、3ヌクレオチドからゲノム配列全体までであり得る。例えば、遺伝子の一部は、約1%から約100%までの内因性ゲノム配列であり得る。遺伝子の一部は、遺伝子のゲノム配列全体の約1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は約100%までであり得る。
【0112】
代謝疾患及び内分泌障害を治療するタンパク質を含むがこれらに限定されない種々のタンパク質及びポリペプチドが、本明細書に記載されるビヒクルによりカーゴとして送達され得る。タンパク質の例としては、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、インスリン、抗利尿ホルモン、及び成長ホルモンがある。障害としては、フェニルケトン尿症、糖尿病、有機酸尿症、チロシン血症、尿素サイクル異常症、家族性高コレステロール血症がある。フェニルケトン尿症、糖尿病、有機酸尿症、チロシン血症、尿素サイクル異常症、家族性高コレステロール血症における不具合を治すことができるタンパク質又はペプチドのいずれの遺伝子も、タンパク質又はペプチド産物が腸の上皮により発現されるように幹細胞中に導入できる。抗血友病因子(因子8)、クリスマス因子(因子9)及び因子7などの凝固因子は、同様に腸の上皮中で産生され得る。循環タンパク質の不足を治療するのに使用され得るタンパク質も腸の上皮中で発現され得る。循環タンパク質の不足を治療するのに使用され得るタンパク質は、例えば、アルブミン血症の治療のためのアルブミン、α-1-アンチトリプシン、ホルモン結合タンパク質であり得る。さらに、嚢胞性線維症の腸の症状は、正常な嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の遺伝子を腸の上皮の幹細胞に挿入することにより治療され得る。無βリポタンパク血症はアポリポタンパク質Bの挿入により治療され得る。二糖類不耐症は、スクラーゼ-イソマルトース、ラクターゼ-フロリジンヒドロラーゼ、及びマルターゼ-グルコアミラーゼの挿入により治療され得る。ビタミンB12の吸収のための内因性因子又はビタミンB12の吸収のための内因性因子/コバラミン複合体の受容体の挿入並びに胆汁酸のトランスポーターは腸の上皮中に挿入され得る。さらに、核酸によりコードされ得るあらゆる薬物は腸の上皮の幹細胞に挿入されて、癌の治療のために局所的な高濃度で分泌され得る。この点において、当業者は、アンチセンスRNAがアンチセンスの産生後に幹細胞中にコードされ得て、それが癌の治療のために癌細胞中に統合し得ることを容易に認識するだろう。
【0113】
治療剤又は薬物は、小分子、タンパク質、多糖又は糖類、核酸分子、脂質、ペプチドミメティック、又はそれらの組合せであり得る。送達ビヒクルは、細胞、組織、器官、又は対象に対して所望の効果を発揮することが可能なあらゆる分子又は化合物を含み得る。そのような効果は、例えば、生物学的、生理学的、又は美容的であり得る。分子又は化合物は、例えば、核酸、ペプチド及びポリペプチド、例えば、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ヒト化抗体、組換え型抗体、組換えヒト抗体、及びプリマタイズド(Primatized)(商標)抗体など、サイトカイン、成長因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体、及びそれらのリガンド、ホルモン、及び有機小分子又は化合物を含む小分子を含み得る。一実施形態において、分子又は化合物は、治療剤、又はその塩若しくは誘導体であり得る。治療剤誘導体は、それ自体治療活性があり得るか、又はそれらはプロドラッグであり得て、さらなる修飾時に活性になる。そのため、一実施形態において、分子又は化合物誘導体は、修飾されていない薬剤と比べて治療活性の一部又は全てを保持し得るが、別の実施形態において、治療剤誘導体は治療活性を欠く。
【0114】
種々の実施形態において、治療剤は、抗炎症化合物、抗うつ剤、刺激剤、鎮痛剤、抗生物質、受胎調節医薬品、解熱剤、血管拡張剤、抗血管新生剤、細胞血管剤、シグナル伝達阻害剤、心臓血管薬、例えば、抗不整脈剤、血管収縮剤、ホルモン、及びステロイドなど、あらゆる治療上有効な薬剤又は薬物を含む。特定の実施形態において、分子又は化合物は腫瘍学薬であり得て、抗腫瘍薬、抗癌薬、腫瘍薬、抗新生物剤などとも称され得る。使用され得る腫瘍学薬の例としては、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリナール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、静脈内ブスルファン、経口ブスルファン、カペシタビン(ゼローダ(Xeloda))、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、シトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドデタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシドリン酸塩、エトポシド及びVP-16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フロオロウラシル、5-FU、ゲムシタビン(ジェムザール(Gemzar))、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、ハイドレア、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロン、イリノテカン(カンプトスター(Camptostar)、CPT-111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミゾール、リトレチノイン、メガストロール、メルファラン、L-PAM、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI-571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾラミド、テニポシド、VM-26、トポテカン(ハイカーンチン)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、及びビノレルビンがあるが、これらに限定されない。使用され得る腫瘍学薬の他の例は、エリプチシン及びエリプチシンアナログ又は誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤、及びカンプトテシンである。
【0115】
いくつかの態様において、本明細書中の送達ビヒクルと共にカーゴとして使用するためのポリ核酸としては、腫瘍抑制遺伝子をコードする核酸がある。腫瘍抑制遺伝子は、一般的に、何らかの方法で細胞増殖を阻害できるタンパク質をコードできる。これらの「ブレーキ」の1つ以上の喪失は、癌の発生の一因となり得る。5種の広い部類のタンパク質が、一般的に、腫瘍抑制遺伝子によりコードされるものと認識され得る。特定の段階の細胞周期により進行を調節又は阻害できるp16サイクリン-キナーゼ阻害剤などの細胞内タンパク質、細胞増殖を阻害するように機能し得る、分泌されたホルモン(例えば、腫瘍由来成長因子β)の受容体、DNAが損傷され得るか又は染色体が異常である場合細胞周期を停止させるチェックポイント制御タンパク質、アポトーシスを促進し得るタンパク質、DNA修復に関与する酵素、又はそれらの組合せ。DNA修復酵素は、細胞増殖を阻害するように直接機能しないかもしれないが、DNA中のエラー、ギャップ、又は破損末端を修復する能力を喪失した細胞は、細胞成長及び増殖を制御する際に重大であるものを含む多くの遺伝子中で変異を蓄積する。そのため、DNA修復酵素をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、他の腫瘍抑制遺伝子の不活性化並びに発癌遺伝子の活性化を促進し得る。一般的に1コピーの腫瘍抑制遺伝子が細胞増殖を制御するのに充分であるので、腫瘍発生を促進するには、腫瘍抑制遺伝子の両アレルが失われるか、又は不活性化されなければならない。一態様において、腫瘍抑制遺伝子中の発癌性機能喪失型変異は劣性に働く。多くの癌における腫瘍抑制遺伝子は、タンパク質の産生を妨げるか、又は非機能性タンパク質の産生につながる欠失又は点突然変異を有する。いくつかの場合において、タンパク質をコードする腫瘍抑制遺伝子の導入は、対象の疾患を寛解させ、疾患を予防し、又は疾患を治療し得る。
【0116】
本明細書中の送達ビヒクルにより送達され得る腫瘍抑制遺伝子としては、例えば、APC、ARHGEF12、ATM、BCL11B、BLM、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、CARS、CBFA2T3、CDH1、CDH11、CDK6、CDKN2C、CEBPA、CHEK2、CREB1、CREBBP、CYLD、DDX5、EXT1、EXT2、FBXW7、FH、FLT3、FOXP1、GPC3、IDH1、IL2、JAK2、MAP2K4、MDM4、MEN1、MLH1、MSH2、NF1、NF2、NOTCH1、NPM1、NR4A3、NUP98、PALB2、PML、PTEN、RB1、RUNX1、SDHB、SDHD、SMARCA4、SMARCB1、SOCS1、STK11、SUFU、SUZ12、SYK、TCF3、TNFAIP3、TP53、TSC1、TSC2、VHL、WRN、WT1、及びこれらの任意の組合せがある。
【0117】
特定の実施形態において、ビヒクルは、検出可能な標識にさらに接続され得るイメージング剤を含み得る(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光性化合物、酵素、又は酵素補因子であり得る)。活性部分は、鉄キレートなどの放射性重金属、ガドリニウム又はマンガンの放射性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素、又はガリウムの陽電子放出体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I、又は99Tcなどの放射性作用物質であり得る。そのような部分を含む送達ビヒクルは、イメージング剤として使用され得て、ヒトなどの哺乳動物における診断用の使用に有効な量で投与され得る。このようにして、イメージング剤の局在化及び蓄積が検出され得る。イメージング剤の局在化及び蓄積は、ラジオシンチオグラフィー、核磁気共鳴画像化、コンピュータ断層撮影、又は陽電子放出断層撮影により検出され得る。当業者には明らかである通り、投与すべき放射性同位元素の量は放射性同位元素に依存する。当業者は、投与すべきイメージング剤の量を、活性部分として使用される所与の放射性核種の比放射能及びエネルギーに基づいて容易に定式化できるだろう。典型的には、イメージング剤の投与量あたり0.1~100ミリキュリー、1~10ミリキュリー、及び2~5ミリキュリーが投与され得る。そのため、イメージング剤として有用な組成物は、0.1~100ミリキュリー、いくつかの実施形態において、好ましくは1~10ミリキュリー、いくつかの実施形態において、好ましくは2~5ミリキュリー、いくつかの実施形態において、より好ましくは1~5ミリキュリーを含み得る放射性部分にコンジュゲートされた標的化部分を含み得る。標識を検出するのに使用される検出の手段は、使用される標識の性質及び使用される生体試料の性質に依存し、蛍光分極、高速液体クロマトグラフィー、抗体捕捉、ゲル電気泳動、示差沈殿、有機抽出、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光顕微鏡法、又は蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイも含み得る。標的化部分は、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、又は小分子も指し得る。実体は、例えば、小分子などの治療化合物又は検出可能な標識などの診断用実体であり得る。場所は、組織、特定の細胞型、又は細胞内区画であり得る。一実施形態において、標的化部分は、活性実体の局在化を指示できる。活性実体は、小分子、タンパク質、ポリマー、又は金属であり得る。核酸を含むリポソームなどの活性実体は、治療用、予防用、又は診断用の目的に有用であり得る。いくつかの場合において、部分は、送達ビヒクルが血液脳関門を透過することを可能にし得る。
【0118】
カーゴは薬物であり得る。薬物は、投与されると、対象において生理学的変化を起こし得る物質であり得る。薬物は、癌などの疾患を治療するのに使用される医薬品であり得る。いくつかの場合において、薬物は、リポソーム脂質二重層中に、水性コンパートメント中に、又はリポソーム脂質二重層と水性コンパートメントの両方に完全に封入され得る。親油性が強い薬物は、脂質二重層中にほとんど完全に封入され得る。親水性が強い薬物は、水性コンパートメント中に排他的に局在化され得る。中間のlogPを有する薬物は、二重層中と水性コア中の両方の脂質相と水相の間に容易に分配し得る。例示的な薬物は、アダリムマブ、抗TNF、インスリン様成長因子、インターロイキン、メサラミン、GLP-1アナログ、GLP-2アナログ、及びそれらの組合せなどの薬物を含み得る。
【0119】
いくつかの場合において、ポリ核酸は、非相同性配列をコードし得る。非相同性配列は、細胞内局在化(例えば、核を標的化するための核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル、葉緑体を標的化するための葉緑体局在化シグナル、小胞体保留シグナルなど)を提供し得る。いくつかの場合において、ミニサークルDNA又は閉端直鎖DNAなどのポリ核酸は、核局所化配列(NLS)を含み得る。
【0120】
カーゴは1つ以上の核局所化配列(NLS)を含み得る。いくつかのNLS配列は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSであり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、アミノ末端で若しくはその近くで約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上より多いNLSを含み、カルボキシ末端で若しくはその近くで約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又はこれらの組合せである(例えば、アミノ末端で1つ以上のNLS及びカルボキシ末端で1つ以上のNLS)。2つ以上のNLSが存在する場合、それぞれは、単一のNLSが、2コピー以上で、及び/又は1つ以上のコピーで存在する1つ以上の他のNLSとの組合せで存在し得るように、互いに独立に選択され得る。NLSの非限定的な例は、下記から誘導されたNLS配列を含み得る。アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号:1)を有するSV40ウイルスラージT-抗原のNLS、ヌクレオプラスミンのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号:2)を有するヌクレオプラスミン双節型NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号:3)又はRQRRNELKRSP(配列番号:4)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号:5)を有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチン-αのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号:6)、筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP(配列番号:7)及びPPKKARED(配列番号:8)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号:9)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号:10)、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号:11)及びPKQKKRK(配列番号:11)、肝炎ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号:12)、マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR(配列番号:13)、ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号:14)、並びにステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号:15)。一般に、1つ以上のNLSが、真核細胞の核内でミニサークルDNAベクター又は短い直鎖DNAベクターの検出可能な量での蓄積を促進するのに充分な強度であり得る。真核細胞はヒト小腸腺窩細胞であり得る。
【0121】
いくつかの場合において、粒子はDNAse阻害剤を含み得る。DNAse阻害剤は、粒子内に又は粒子上に局在化し得る。他の場合において、阻害剤をコードするポリ核酸が粒子内に封入され得る。他の場合において、阻害剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤-2(DMI-2)などのDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤であり得る。DMI-2は、ストレプトミセス(Streptomyces)属菌株番号560により産生され得る。DMI-2の構造は、4’’’R,6aR,10S,10aS-8-アセチル-6a,10a-ジヒドロキシ-2-メトキシ-12-メフィル-10-[4’-[3”-ヒドロキシ-3”,5”-ジメチル-4”(Z-2’’’,4’’’-ジメチル-2’’’-ヘプテノイルオキシ)テトラヒドロピラン-l”-イルオキシ]-5’-メチルシクロヘキサン-1’-イルオキシ]-1,4,6,7,9-ペンタオキソ-1,4,6,6a,7,8,9,10,10a,11-デカヒドロナフタセンであり得る。クロロキンなどの他の阻害剤も、粒子内又は粒子の表面上などの粒子上に封入され得る。
【0122】
核中の蓄積の検出は、任意の好適な技法により実施され得る。例えば、検出可能なマーカが、細胞内の位置が可視化され得るように、核の位置を検出する手段(例えば、DAPIなどの核に特異的な色素)と組み合わせてなど、ベクターに融合され得る。細胞核は細胞から単離され得て、次いで、その内容物が、免疫組織染色、ウェスタンブロット、又は酵素活性アッセイなど、タンパク質を検出する任意の好適なプロセスにより分析され得る。本明細書中の実施形態は、標的部位へのカーゴの時間依存性pH誘発放出を示し得る。本明細書中の実施形態は、複雑な多数のカーゴの細胞送達を含み、提供し得る。追加のカーゴは、小分子、抗体、DNAse阻害剤又はRNAse阻害剤などの阻害剤であり得る。
【0123】
脂質構造は、100%重量((カーゴ重量/脂質構造の重量)×100と定義される)超までの容量に運び得る。カーゴの最適なローディングは、脂質構造の1%~100%重量であり得るか、又は脂質構造の約1%~100%重量であり得る。例えば、脂質構造は、構造の約1%重量~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約90%~約100%、約100%~約200%、約200%~約300%、約300%~約400%、約400%~約500%又は構造の重量を超えるポリ核酸カーゴを含み得る。
【0124】
ポリ核酸は腸管の細胞に送達され得る。例えば、ポリ核酸は、本明細書中の送達ビヒクルにより腸の腺窩幹細胞に送達され得る。例えば、送達されたポリ核酸は、(1)腸の上皮幹細胞中に通常見られないこと、(2)腸の上皮幹細胞中に通常見られるが、生理学的に意義があるレベルで発現されていないこと、(3)腸の上皮幹細胞中に通常見られ、幹細胞又はその子孫中で生理学的な望まれるレベルで通常発現されていること、(4)腸の上皮幹細胞中の発現のために修飾され得るあらゆる他のDNA、及び(5)上記のあらゆる組合せであり得る。
【0125】
いくつかの場合において、脂質構造内に含まれるポリ核酸によりコードされるタンパク質は、測定及び定量化され得る。いくつかの場合において、修飾された細胞は単離され得て、ウェスタンブロットが修飾された細胞に実施されて、存在及び未修飾の細胞と比べたタンパク質産生の相対量が決定され得る。他の場合において、フローサイトメトリーを利用するタンパク質の細胞内染色が実施されて、存在及びタンパク質産生の相対量が決定され得る。追加のアッセイも実施されて、APCなどのタンパク質が機能性であるかどうかが決定され得る。例えば、APC導入遺伝子を発現する修飾された細胞は、サイトゾルβ-カテニン発現に関して測定されて、未修飾の細胞と比較され得る。未修飾の細胞と比べた修飾された細胞のサイトゾル中のβ-カテニンの発現減少は、機能性APC導入遺伝子を示し得る。他の場合において、FAPのマウスモデルが使用されて、APCタンパク質をコードする導入遺伝子の機能性が決定され得る。例えば、FAPを有するマウスはAPCをコードする修飾された細胞により治療され得て、FAP疾患の減少が未処置マウスに対して測定され得る。
【0126】
対象送達ビヒクルを受け取る対象に対して実施できる追加の処置も本明細書中で提供され得る。対象は、輸血、採血、コンピュータ処理された断層撮影スキャン(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、放射線療法、臓器移植、及びこれらの任意の組合せなどの処置を受けることができる。いくつかの場合において、癌性病変などの病変の評価が実施され得る。
【0127】
いくつかの場合において、非標的病変が評価され得る。非標的病変の完全奏功は、腫瘍マーカレベルの消失及び正常化であり得る。全リンパ節は、サイズの点で非病的でなくてはならない(10mm未満の短軸)。腫瘍マーカが最初に正常値上限を超えている場合、それらは、患者が完全な臨床反応と考えられるには正常化しなくてはならない。非CR/非PDは、1つ以上の非標的病変の残存及び又は正常値限界を超える腫瘍マーカレベルの維持である。進行は、1つ以上の新たな病変の出現及び又は既存非標的病変の明らかな増悪である。明らかな増悪は、通常標的病変状態を上回らないはずである。いくつかの場合において、最良総合効果は、治療の開始から疾患増悪/再発までに記録された最良効果であり得る。
【0128】
カーゴの送達
本明細書中で提供される送達ビヒクルは、カーゴを標的細胞に送達するために利用できる。いくつかの場合において、標的細胞は、消化管、生殖器管、循環系、呼吸器系、筋骨格系、排泄系、神経系、眼系、及びそれらの組合せに見られる。いくつかの場合において、好適な標的細胞は、皮膚、肺、心臓、肝臓、胃、尿路系、生殖系、腸、膵臓、腎臓、胸腺、甲状腺、及び/又は脳を含むがこれらに限定されない体のあらゆる主要器官に見られ得る。いくつかの場合において、標的細胞は消化管の一部であり、肛門、直腸、大腸、小腸、肝臓、胃、食道、又は口の中にある。いくつかの場合において、標的細胞は、腸内分泌細胞、肥満細胞、腸細胞、刷子細胞、パネート細胞、又は杯細胞である。いくつかの場合において、標的細胞は腸内分泌細胞であり、EC細胞、D細胞、CCK細胞、L細胞、P/D1細胞、又はG細胞である。いくつかの場合において、標的細胞は腸の上皮中にあり、腸の幹細胞、パネート細胞、杯細胞、腸細胞、トランジット増幅細胞、腸内分泌細胞、又はこれらの任意の組合せから選択される。いくつかの場合において、標的細胞は腸の幹細胞である。いくつかの場合において、標的細胞は腺窩細胞である。
【0129】
送達ビヒクルはカーゴを標的細胞に導入するために使用され得る。いくつかの場合において、導入は、標的細胞をカーゴと接触させることを含む。他の場合において、導入は、標的細胞をカーゴにより核酸導入又は形質導入することを含む。いくつかの場合において、カーゴは、細胞のゲノムを修飾することができ、又は細胞内でゲノム外に存在し得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、利用される送達ビヒクルは、例えば細胞中での発現のために及び/又は標的細胞を遺伝子改変するために標的細胞に送達されるカーゴを含み得る。そのような送達、例えば、本明細書に記載されるポリ核酸などのカーゴによる核酸導入の効率は、例えば、接触させられる(インビボ又はエクスビボ)及び/又は組織若しくは位置に存在する細胞の総数の20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、若しくは99.9%超であり得るか、又は約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、若しくは99.9%超であり得る。そのような送達、例えば、本明細書に記載されるポリ核酸などのカーゴによる核酸導入の効率は、例えば、接触させられる(インビボ又はエクスビボ)及び/又は組織若しくは位置に存在する細胞の総数の1倍、10倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、120倍、140倍、160倍、180倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は1000倍超であり得るか、又は約1倍、10倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、120倍、140倍、160倍、180倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は1000倍超であり得る。
【0131】
本明細書で使用される組成物(上皮細胞到達のための電荷分離を有し、過酷な環境中での安定性のための胆汁酸塩を有し、かつ任意選択で、MPPなどの他の特徴又は他の粘液透過性の特徴を有する送達ビヒクルを含む)などの対象送達ビヒクルによる細胞取込みの効率は、標的細胞への効率よい透過及び通過(粘液層を通るなど)を可能にし得て、それにより標的細胞による効率よい取込みを有し、例えば、取込みは、接触させられる細胞の総数の20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超であり得るか、又は約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は99.9%超であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、胆汁酸塩及び/若しくは電荷分離を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、又は1以上の成分を欠く送達ビヒクルと比べて、より高い細胞取込みのパーセントを有し得る。改善は、約10%から、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は約80%まで、より良好であり得る。いくつかの場合において、核酸導入又は本明細書に記載される送達ビヒクル組成物により細胞に送達されるカーゴの送達(ポリ核酸からのタンパク質の統合又はその発現など)の効率は、胆汁酸塩及び/若しくは電荷分離を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、又は1以上の成分を欠く送達ビヒクルと比べて、約5%から、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%まで、より良好であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載される送達ビヒクル組成物により細胞に送達されるポリ核酸カーゴの核酸導入又は統合又はその発現の効率は、胆汁酸塩及び/若しくは電荷分離を含まない同等な送達ビヒクルと比べて、又は1以上の成分を欠く送達ビヒクルと比べて、約5%から、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%まで、より良好であり得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、カーゴを送達するための本明細書に記載される組成物は、それを必要とする対象への導入後、少なくとも又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、6、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、又は100日間機能的であり得る。構造は、対象への導入後、少なくとも又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月間機能的であり得る。本明細書中で提供される送達ビヒクルは、対象への導入後、少なくとも又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、又は30年間機能的であり得る。いくつかの実施形態において、送達ビヒクルは、受容者の生涯にわたり機能的であり得る。さらに、送達ビヒクルは、その意図される通常の操作の100%で機能できる。送達ビヒクルは、また、その意図される通常の操作の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%機能できる。送達ビヒクルの機能は、送達の効率、脂質ナノ粒子の残留、脂質ナノ粒子の安定性、又はこれらの任意の組合せを指し得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される送達ビヒクルは、核酸などのカーゴを標的細胞(RNA、DNA(例えば、ミニサークルDNA)など)に送達できる。いくつかの場合において、機能は、送達ビヒクル組成物から核酸を受け取った細胞のパーセントを含み得る。他の場合において、機能は、核酸からのタンパク質生成の頻度又は効率を指し得る。例えば、送達ビヒクル組成物は、APCなどの遺伝子の少なくとも一部をコードする核酸を細胞に送達し得て、効率の頻度は、カーゴの送達により修復又は作製された、機能性が完全な遺伝子を記述し得る。
【0134】
送達ビヒクル組成物中の核酸カーゴ濃度は、0.5ナノグラム~50マイクログラムであり得る。そのような濃度は、約0.5ngから、1ng、2ng、5ng、10ng、50ng、100ng、150ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1000ng、1μg、2μg、5μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、若しくは50μgまで又はそれ以上であり得る。いくつかの場合において、送達ビヒクルにより細胞に導入され得る核酸(例えば、ssDNA、dsDNA、RNA)の量は、核酸導入効率及び/又は細胞生存率を最適にするために変えられ得る。いくつかの場合において、約100ピコグラム未満の核酸が対象に導入され得る。いくつかの場合において、少なくとも約100ピコグラム、少なくとも約200ピコグラム、少なくとも約300ピコグラム、少なくとも約400ピコグラム、少なくとも約500ピコグラム、少なくとも約600ピコグラム、少なくとも約700ピコグラム、少なくとも約800ピコグラム、少なくとも約900ピコグラム、少なくとも約1マイクログラム、少なくとも約1.5マイクログラム、少なくとも約2マイクログラム、少なくとも約2.5マイクログラム、少なくとも約3マイクログラム、少なくとも約3.5マイクログラム、少なくとも約4マイクログラム、少なくとも約4.5マイクログラム、少なくとも約5マイクログラム、少なくとも約5.5マイクログラム、少なくとも約6マイクログラム、少なくとも約6.5マイクログラム、少なくとも約7マイクログラム、少なくとも約7.5マイクログラム、少なくとも約8マイクログラム、少なくとも約8.5マイクログラム、少なくとも約9マイクログラム、少なくとも約9.5マイクログラム、少なくとも約10マイクログラム、少なくとも約11マイクログラム、少なくとも約12マイクログラム、少なくとも約13マイクログラム、少なくとも約14マイクログラム、少なくとも約15マイクログラム、少なくとも約20マイクログラム、少なくとも約25マイクログラム、少なくとも約30マイクログラム、少なくとも約35マイクログラム、少なくとも約40マイクログラム、少なくとも約45マイクログラム、又は少なくとも約50マイクログラムの核酸が、各細胞試料に加えられ得る(例えば、1つ以上の細胞が電気穿孔されるか、そうでなければカーゴ送達のために標的化される)。いくつかの場合において、最適な核酸導入効率及び/又は細胞生存率に要求される核酸(例えば、dsDNA、RNA)の量は、細胞型に特異的であり得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、有効量の構造は、治療の前に対象において減少し得る少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを増加させるのに充分な量又は癌の1つ以上の症状を緩和するのに充分な量を意味し得る。例えば、有効量は、胃腸の分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、及び腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、基準値又は化合物の治療がない場合の発現レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、1500%、又はそれ以上増加させるのに充分な量であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、有効量は、治療の前に対象において増加し得る少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを減少させるのに充分な量又は癌の1つ以上の症状を緩和するのに充分な量を意味し得る。例えば、有効量は、遺伝子の発現レベルを、基準値又は化合物の治療がない場合の発現レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、1500%、又はそれ以上減少させるのに充分な量であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、治療することは、それを必要とする対象における疾患の、インビトロ又はインビボアッセイにより測定して、投与を受けない同等な対象と比べて少なくとも約1分の1、5分の1、10分の1、20分の1、40分の1、80分の1、100分の1、300分の1、600分の1、又は1000分の1の減少を含む。一態様において、疾患の減少は、対象における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの増加又は減少の結果であり得る。種々の遺伝子発現アッセイが利用でき、シーケンシング、PCR、RT-PCR、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、ELISA、タンパク質定量化、mRNA定量化、FISH、RNA-Seq、SAGE、又はそれらの組合せがあるが、これらに限定されない。利用できる追加のアッセイとしては、顕微鏡法、組織診断、インビボ動物実験、ヒト実験、又はこれらの任意の組合せがある。
【0138】
使用方法
本明細書中の送達ビヒクル組成物は、消化管(胃腸管)のものなどの粘膜組織内の上皮細胞への送達を与えると同時に肺、膣、及び眼などの他の粘膜組織で使用される。本明細書中の送達ビヒクルは、粘液層を通る透過と共に上皮細胞への到達を与える。いくつかの実施形態において、送達ビヒクルは、カーゴを消化管の上皮細胞に送達し、治療用、診断用、又はセラノスティック目的でカーゴ(本明細書に記載されるものなど)を送達する。
【0139】
本明細書中で提供される対象送達ビヒクル、特に治療用カーゴを有する送達ビヒクルにより治療できる例示的な疾患は、癌性でも非癌性でもあり得る。そのような疾患は、いくつか例を挙げると、心血管疾患、神経変性疾患、眼疾患、生殖器系疾患、胃腸疾患、脳疾患、皮膚疾患、骨格疾患、筋骨格疾患、肺疾患、胸部疾患であり得る。疾患は、嚢胞性線維症、テイサックス病、脆弱X、ハンチントン、神経線維腫症、鎌状赤血球、サラセミア、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、又はそれらの組合せなどの遺伝性疾患であり得る。
【0140】
いくつかの態様において、疾患は胃腸疾患である。いくつかの場合において、胃腸疾患は単一遺伝子胃腸疾患である。いくつかの態様において、胃腸疾患は遺伝性である。いくつかの場合において、胃腸疾患は上皮のものである。好適な胃腸疾患は、家族性大腸腺腫症(FAP)、軽症型FAP、微絨毛封入体病(MVID)、慢性炎症性腸疾患、慢性炎症性腸疾患、回腸クローン病、若年性ポリポーシス、遺伝性びまん性胃癌症候群(HDGC)、ポイツ・ジェガース症候群、リンチ症候群、胃腺癌及び胃近位ポリポーシス(GAPPS)、リ・フラウメニ症候群、家族性胃癌、又はそれらの組合せであり得る。胃腸疾患は消化管にポリープをつくり得る。いくつかの場合において、疾患はFAPである。FAPは癌に進行し得る。胃腸疾患は遺伝性であり得る。例えば、遺伝性胃腸疾患は、ジルベール症候群、毛細血管拡張症、ムコ多糖、オスラー・ウェーバ・ランデュー症候群、膵炎、角化棘細胞腫、胆道閉鎖症、モルキオ症候群、ハーラー症候群、ハンター症候群、クリグラー・ナジャー、ローター、ポイツ・ジェガース症候群、デュビン・ジョンソン、骨軟骨症、骨軟骨異形成症、ポリポーシス、又はそれらの組合せであり得る。
【0141】
いくつかの態様において、対象は疾患の存在に関してスクリーニングされ得る。スクリーンを利用して、好適な対象が特定できる。いくつかの場合において、疾患は、遺伝子、表現型、分子、又は染色体スクリーニングにより特定され得る。一態様において、好適な対象は、本明細書中で提供される疾患に陽性である。例えば、遺伝子スクリーンは、FAPをもたらし得るAPC遺伝子中の突然変異を特定できる。いくつかの場合において、スクリーンは、CDH1、STK11、SMAD4、MLH1、MSH2、EPCAM、MSH6、PMS2、MYO5B、APC、TP53、これらの一部、これらのプロモータ、及びこれらの組合せなどの遺伝子を分析することを含み得る。
【0142】
いくつかの場合において、本明細書中の送達ビヒクルは治療用カーゴ(核酸、タンパク質、又は薬物など)を運び、家族性ポリポーシス(FAP)、軽症型FAP、大腸癌、慢性炎症性腸疾患、回腸クローン病、微絨毛封入体病、及び先天性下痢などの消化管を冒す疾患を治療するために使用される。
【0143】
他の場合において、リポソームにより送達するための遺伝子は、予防的措置として対象に投与され得る。例えば、対象は、疾患を診断されなかった可能性があり、癌などの疾患の素因を有するように見えることがある。いくつかの場合において、癌は結腸癌であり得る。
【0144】
いくつかの場合において、本明細書中の送達ビヒクルは診断用のカーゴを運び、細胞若しくは組織の状態を可視化若しくは診断し、又は病態若しくは疾患に関して対象を診断若しくはモニターするために使用される。例えば、対象は有効量の送達ビヒクルを投与され、FAPの診断方法は、細胞ゲノムに組み込まれたAPCのレベルを決定することを含み、その結果、患者の療法の開始前と療法の間及び/又はその後のAPCレベルの差が、患者が療法を完了したかどうか、又は病態が阻害若しくは除去されたかどうかを含む、患者における療法の有効性の証拠となるだろう。
【0145】
カーゴを有する送達ビヒクルを含む医薬組成物は、いくつかの場合において長期間投与され得る。投与は、毎時、毎日、毎月、又は毎年の構造の対象への投与を包含し得る。例えば、いくつかの場合において、対象は、対象の生涯全体にわたり医薬組成物を毎日投与され得る。他の場合において、医薬組成物は、対象に疾患が存在する期間、毎日投与され得る。対象は、送達ビヒクル及びポリ核酸カーゴを有するなどの医薬組成物を投与されて、疾患又は障害が減少し、制御され、又は除去されるまで疾患又は障害が治療され得る。疾病管理は疾患の安定化を包含し得る。例えば、制御されている癌は、CTスキャンにより測定して、成長又は広がりを停止した可能性がある。癌は結腸癌であり得る。他の場合において、医薬組成物は予防的に投与され得る。いくつかの場合において、対象は、結腸癌などの癌の素因を有すると対象を特定する遺伝子スクリーンを受けた可能性がある。この場合、素因を有する対象は、送達ビヒクル及びポリ核酸カーゴを含む医薬組成物を受け取ることにより、予防的な治療を始め得る。この場合、対象は、対象を結腸癌になりやすくさせる遺伝子変異を含み、その対象はそのような医薬組成物により予防的な治療を始め得る。
【0146】
いくつかの場合において、予防的な治療は癌などの疾患を予防し得る。予防が、局所的再発(例えば疼痛)などの病態に関連して使用され得る場合、癌などの疾患、心不全などの症候群複合体、又は任意の他の病状予防は、組成物を受け取らない対象に対して、対象における病状の症状の頻度を減少させ、又はその発症を遅延させる組成物の投与を含み得る。そのため、癌の予防は、例えば、統計的に及び/又は臨床的に重要な量で、例えば、治療されない対照集団に対して予防的な治療を受ける患者の集団において検出可能な癌性増殖の数を減少させること、及び/又は治療されない対照集団に対して治療された集団において検出可能な癌性増殖の出現を遅延させることを含む。感染症の予防は、例えば、治療されない対照集団に対して治療された集団において感染症の診断数を減少させること、及び/又は治療されない対照集団に対して治療された集団において感染症の症状の発症を遅延させることを含む。疼痛の予防は、例えば、治療されない対照集団に対して治療された集団の対象により経験される痛覚の規模を減少させるか、あるいは遅延させることを含む。
【0147】
アッセイを使用して、本明細書中で提供される送達ビヒクルの治療有効性を決定できる。いくつかの場合において、アッセイは、対象送達ビヒクルの投与の前、その間、及び/又はその後に実施できる。アッセイは、例えば、投与前又は投与後の-30日、-15日、-7日、-3日、0日、3日、5日、7日、10日、14日、18日、20日、24日、30日、35日、40日、50日、55日、60日、80日、100日、150日、250日、360日、2年、5年、又は10年に実施できる。好適なアッセイは、インビボでもエクスビボでもあり得る。いくつかの場合において、アッセイはスキャンを含む。好適なスキャンは、CT、PET、MRI、又はそれらの組合せを含み得る。いくつかの場合において、アッセイは、組織診断、血清検査、シーケンシング、ELISA、顕微鏡法などのインビトロアッセイを含む。
【0148】
医薬組成物及び製剤
全体を通じて記載される組成物は医薬品に製剤でき、それを必要とするヒト又は哺乳動物を治療するのに使用できる。医薬品は、任意の追加の療法と共に共投与できる。
【0149】
経口投与では、賦形剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。所望の場合、送達ビヒクル組成物は、湿潤剤、乳化剤、又は緩衝剤などの微量の非毒性の補助物質も含み得る。
【0150】
組成物は、経口的に、皮下若しくは他の注射により、静脈内に、大脳内に、筋肉内に、非経口的に、経皮的に、鼻腔内に、又は直腸内投与され得る。化合物又は組成物が投与される形態は、少なくとも一部分、化合物が投与される経路による。いくつかの場合において、組成物は、経口投与用の固形調製物の形態で利用され得て、調製物は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセルなどであり得る。錠剤製剤において、組成物は、典型的には、添加剤、例えば、糖又はセルロース調製物などの賦形剤、デンプン糊又はメチルセルロースなどの結合剤、充填剤、崩壊剤、及び医薬品の製造に典型的に使用される他の添加剤と共に製剤される。投与すべき組成物は、患者又は対象を含む生体系における治療用使用のための薬学的に有効な量である量の送達ビヒクルを含み得る。医薬組成物は、毎日投与されることも、必要に応じて投与されることもある。
【0151】
本明細書中の送達ビヒクルは、投与用に医薬組成物として製剤されたものを含む。好適な製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質及び製剤を、意図される受容者の体液と等張性にする溶質を含み得る水性及び非水性の滅菌された注射液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌された懸濁剤を含み得る。好適な不活性な担体はラクトースなどの糖を含み得る。いくつかの場合において、組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳液などの形態をとり得て、懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散化剤などの製剤化剤を含み得る。あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌されたパイロジェン除去水により構成するための粉末形態であり得る。
【0152】
担体は、例えば、水、エタノール、1以上のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、植物油(例えば、落花生油、コーン油、ゴマ油など)などの油、及びそれらの組合せを含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合要求される粒径の維持により、及び/又は界面活性剤の使用により維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。遊離酸若しくは塩基又は薬理学的に許容できるその塩としての活性化合物の溶液及び分散液は、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH調整剤、及びそれらの組合せを含むがこれらに限定されない1以上の薬学的に許容できる賦形剤と好適に混合された水又は別の溶媒又は分散媒中に調製され得る。好適な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性界面活性剤であり得る。好適なアニオン性界面活性剤としては、カルボキシラート、スルホナート、及びスルファートイオンを含むものがあるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど、長鎖アルキルスルホナート及びアルキルアリールスルホナートのナトリウム、カリウム、アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのジアルキルナトリウムスルホスクシナート、ビス-(2-エチルチオキシル)-スルホスクシナートナトリウムなどのジアルキルナトリウムスルホスクシナート、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキルスルホナートがあるがこれらに限定されない。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリモニウニブロミド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなどの四級アンモニウム化合物、ポリオキシエチレン及びココナッツアミンがあるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレングリコールモノステアレート、ミリスチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル-4、アシル化ソルビタン、アシル化スクロース、PEG-150ラウレート、PEG-400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン水添タロウアミドがある。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート、ラウリルベタイン及びラウリルスルホベタインがある。製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含み得る。好適な保存剤としては、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールがあるが、これらに限定されない。製剤は、活性薬剤の分解を防ぐ酸化防止剤も含み得る。製剤は、典型的には、再構成時に非経口投与用に3~8のpHに緩衝される。好適な緩衝剤としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及びクエン酸緩衝液があるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーは、非経口投与用の製剤にしばしば使用され得る。好適な水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールがあるが、これらに限定されない。
【0153】
滅菌された注射用液剤は、要求される量の活性化合物を適切な溶媒又は分散媒に、必要な場合、1以上の先に列記された賦形剤と共に組み込み、それに続いて滅菌濾過することにより調製され得る。一般的に、分散液は、種々の滅菌された有効成分を、基本的な分散媒及び先に列記されたものからの要求される他の成分を含む滅菌されたビヒクルに組み込むことにより調製され得る。滅菌された注射用液剤の調製のための滅菌された散剤の場合、調製の方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技法であり得て、有効成分に加えて、先に滅菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分の散剤を与える。散剤は、粒子がその性質として多孔性であるような方法で調製でき、それは、粒子の溶解を増加し得る。多孔性粒子を製造する方法は、当技術分野に周知である。
【0154】
製剤は、眼製剤又は外用剤であり得る。眼投与用の医薬製剤は、1以上のポリマー-薬物コンジュゲートから形成された粒子の滅菌された水溶液又は懸濁液の形態であり得る。許容できる溶媒としては、例えば、水、リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。製剤は、1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の滅菌された溶液、懸濁液、又は乳液でもあり得る。さらに他の実施形態において、リポソームは、粘膜への外用投与用に製剤され得る。外用投与の好適な剤形としては、クリーム剤、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、スプレー剤、ゲル剤、ローション剤、乳剤、液剤、及び経皮パッチがある。製剤は、経粘膜、経上皮、経内皮、又は経皮投与用に製剤され得る。組成物は、1以上の化学的透過促進剤、膜透過剤、膜輸送剤、軟化剤、界面活性剤、安定剤、及びそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、リポソームは、液剤若しくは懸濁剤などの液体製剤、ローション剤若しくは軟膏剤などの半固体製剤、又は固体製剤として投与され得る。いくつかの実施形態において、リポソームは、点眼剤などの液剤及び懸濁液を含む液体として、又は眼若しくは膣内若しくは直腸内などの粘膜への外用適用のための軟膏剤若しくはローション剤などの半固体製剤として製剤され得る。製剤は、軟化剤、界面活性剤、乳化剤、及び透過促進剤などの1以上の賦形剤を含み得る。
【0155】
組成物中の活性薬剤の適切な用量(「治療上有効な量」)は、例えば、病態の重症度及び経過、投与様式、特定の薬剤のバイオアベイラビリティ、対象の年齢及び体重、対象の病歴及び活性薬剤への応答、医師の判断、又はこれらの任意の組合せに依存し得る。対象に投与すべき組成物中の活性薬剤の治療上有効な量は、1回の投与によっても複数の投与によっても約100μg/kg体重/日~約1000mg/kg体重/日の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、毎日投与される各活性薬剤の範囲は、約100μg/kg体重/日~約50mg/kg体重/日、100μg/kg体重/日~約10mg/kg体重/日、100μg/kg体重/日~約1mg/kg体重/日、100μg/kg体重/日~約10mg/kg体重/日、500μg/kg体重/日~約100mg/kg体重/日、500μg/kg体重/日~約50mg/kg体重/日、500μg/kg体重/日~約5mg/kg体重/日、1mg/kg体重/日~約100mg/kg体重/日、1mg/kg体重/日~約50mg/kg体重/日、1mg/kg体重/日~約10mg/kg体重/日、5mg/kg体重/投与量~約100mg/kg体重/日、5mg/kg体重/投与量~約50mg/kg体重/日、10mg/kg体重/日~約100mg/kg体重/日、及び10mg/kg体重/日~約50mg/kg体重/日であり得る。
【0156】
本明細書で使用される通り、「薬学的に許容できる担体」としては、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、甘味剤、塩、緩衝剤などがある。薬学的に許容できる担体は、特定の治療用組成物を調製するために必要であり得る着香剤、甘味剤、並びに緩衝剤及び吸収剤などの多岐にわたる材料があるがこれらに限定されない広範囲の材料から調製され得る。
【0157】
いくつかの場合において、送達ビヒクルを含む組成物は、滅菌された条件下で投与に先立つ妥当な時間内に製剤され得る。例えば、送達ビヒクルを含む組成物は、対象への投与の約1か月、2週間、1週間、5日、3日、2日、1日、10時間、5時間前、又は直前に製剤され得る。一態様において、送達ビヒクルは、凍結されて、投与前に解凍され得る。提供される送達ビヒクルは、二次療法と組み合わせて使用され得る。例えば、化学療法又は放射線療法などの二次療法が送達ビヒクルの投与の前又は後に、例えば12時間から7日以内に投与され得る。化学療法と放射線療法の両方などの療法の組合せが、送達ビヒクルの投与に加えて利用され得る。
【0158】
いくつかの場合において、提供される送達ビヒクルはコーティングを含み得る。コーティングは腸溶性コーティングであり得る。腸溶性コーティングは、胃での溶出を防ぐか若しくは最低限にするが、小腸での溶出を可能にするために利用され得る。いくつかの実施形態において、コーティングは腸溶性コーティングを含み得る。腸溶性コーティングは、小腸に達する前の医薬品の放出を防ぐ経口医薬品に適用されたバリアであり得る。腸溶性コーティングなどの遅延放出製剤は、医薬品の投与から胃での溶出から胃に対する刺激効果であり得る。そのようなコーティングは、酸不安定な薬物を胃の酸性曝露から保護し、それらを、代わりに分解しない可能性がある塩基性pH環境(腸のpH5.5以上)に送達するために使用される。
【0159】
溶出は器官中で起こり得る。例えば、溶出は、十二指腸、空腸、腸骨、及び/若しくは結腸、又はこれらの任意の組合せで起こり得る。いくつかの場合において、溶出は、十二指腸、空腸、腸骨、及び/又は結腸の近傍で起こり得る。腸溶性コーティングの一部は、胃に存在する高度に酸性のpHで安定であるが、酸性が低い(比較的塩基性に近い)pHで迅速に分解する表面を呈することにより作用する。したがって、腸溶コート丸剤は胃の酸性環境で溶出しないことがあるが、小腸に存在するアルカリ性環境中で溶出できる。腸溶性コーティング材料の例としては、メチルアクリラート-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリラート-メタクリル酸コポリマー、アルギン酸ナトリウム及びステアリン酸があるが、これらに限定されない。
【0160】
腸溶性コーティングは機能的濃度で塗布され得る。腸溶性コーティングは、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリラート)1:1、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリラート)1:1、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:1、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:1、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:2、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:2、ポリ(メチルアクリラート-co-メチルメタクリラート-co-メタクリル酸)7:3:1、又はこれらの任意の組合せであり得る。腸溶性コーティングは、約6mg/(cm)~約12mg/(cm)で塗布され得る。腸溶性コーティングは、構造に、約1mg/(cm)から、2mg/(cm)、3mg/(cm)、4mg/(cm)、5mg/(cm)、6mg/(cm)、7mg/(cm)、8mg/(cm)、9mg/(cm)、10mg/(cm)、11mg/(cm)、12mg/(cm)、13mg/(cm)、14mg/(cm)、15mg/(cm)、16mg/(cm)、17mg/(cm)、18mg/(cm)、19mg/(cm)、約20mg/(cm)で塗布され得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、対象送達ビヒクルを含む医薬組成物は、遅延放出を与えるように設計された種々の薬物製剤から経口投与され得る。遅延された経口剤形としては、例えば、錠剤、カプセル、カプレットがあり、封入されていることもされていないこともある複数の顆粒剤、ビーズ、散剤又はペレットも含み得る。錠剤及びカプセルは経口剤形を呈し得て、その場合固形医薬担体が利用され得る。遅延放出製剤において、1以上のバリアコーティングが、ペレット、錠剤、又はカプセルに塗布されて、薬物の腸への緩徐な溶出及び同時に起こる放出を促進し得る。典型的には、バリアコーティングは、治療用組成物又は活性コア周囲に層又は膜を包み、取り囲み、又は形成する1以上のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリ核酸などの活性薬剤が製剤中で送達されて、投与後の所定の時間に遅延放出を与え得る。遅延は、長さが、約10分まで、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、又は1週間までであり得る。いくつかの場合において、腸溶性コーティングは粒子の被覆に使用されないことがある。
【0162】
腸溶性放出を達成するために使用され得るポリマー又はコーティングは、いくつかの場合において、アニオン性ポリメタクリレート(メタクリル酸と、メチル-メタクリラートかエチルアクリラートのいずれかの共重合物(オイドラギット(Eudragit)(登録商標))、セルロース系ポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース(アクアテリック(Aquateric)(登録商標))又はポリビニル誘導体、例えば、ポリビニルアセテートフタレート(コーテリック(Coateric)(登録商標))であり得る。
【0163】
いくつかの場合において、製剤は、単用量又は多用量容器で、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提示され得て、使用の直前に滅菌された液体担体を添加するだけでよい凍結又はフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。経口投与では、組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化されたメイズデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ)、崩壊剤(例えば、バレイショデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容できる賦形剤と共に従来の技法により調製された錠剤又はカプセルの形態をとり得る。錠剤は、いくつかの場合において被覆され得る。経口投与用の液体調製物は、例えば、液剤、シロップ剤、又は懸濁剤の形態をとり得るか、それらは、使用前の水又は他の好適なビヒクルによる構成のための乾燥製品として提示され得る。そのような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水添食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分画された植物油)、及び保存剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)などの薬学的に許容できる添加剤と共に従来の技法により調製され得る。調製物は、緩衝剤塩、着香剤、着色剤、及び甘味剤も必要に応じて含み得る。経口投与用の調製物は、活性化合物の制御放出を与えるように好適に製剤され得る。頬側投与では、組成物は、従来の方法で製剤された錠剤又はロゼンジ剤の形態をとり得る。いくつかの場合において、組成物は、移植又は注射用の調製物としても製剤され得る。そのため、例えば、構造は、好適なポリマー性、水性、及び/若しくは親水性の材料若しくは樹脂と共に、又は難溶性誘導体として(例えば難溶性塩として)製剤され得る。化合物は、直腸組成物、クリーム剤、又はローション剤、又は経皮パッチでも製剤され得る。
【0164】
いくつかの場合において、医薬組成物は塩を含み得る。塩は、比較的非毒性であり得る。薬学的に許容できる塩の例としては、塩化水素酸及び硫酸などの無機酸から誘導されるもの並びにエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導されるものがある。塩の形成のための好適な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩がある。塩は、非毒性であり、そのような塩の形成のために十分に強力であるものを含む好適な有機塩基によっても形成され得る。説明のために、そのような有機塩基の種類は、メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンなどのモノ-、ジ-、及びトリアルキルアミン、モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミンなどのモノ-、ジ-、又はトリヒドロキシアルキルアミン、アルギニン及びリジンなどのアミノ酸、グアニジン、N-メチルグルコサミン、N-メチルグルカミン、L-グルタミン、N-メチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、(トリヒドロキシメチル)アミノエタンなどを含み得る。
【0165】
本開示の好ましい実施形態が本明細書中に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることが当業者に明らかだろう。今や当業者は、本開示から逸脱せずに、多くの変形体、変更、及び置換を思い付くだろう。本明細書に記載される本開示の実施形態の種々の代替物が利用され得ることが理解されるべきである。以下の請求項が本開示の範囲を定義し、これらの請求項及びそれらの等価物の範囲内の方法及び構造がそれにより含まれることが意図される。
【実施例
【0166】
実施例1: 本開示の例示的な送達ビヒクルの調製
この実施例は、本開示の送達ビヒクルを調製する例示的な方法を提供する。送達ビヒクルの脂質成分DODMA(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))、デオキシコール酸塩(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))、MVL5(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DSPC(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DMG-PEG2000(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DOPC(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DiI(サーモフィッシャーサイエンティフィク(ThermoFisher Scientific))、DiO(サーモフィッシャーサイエンティフィク(ThermoFisher Scientific))をエタノールに溶解させ、例えば相転移温度が37℃より高い場合、それらの相転移温度より上に加熱した。例えば、DSPCを使用する場合、脂質及び水相を70℃に加熱した。DOPCを使用する場合、脂質及び水相を加熱せず、室温で使用した。核酸を、脂質の相転移温度より上に加熱された水性緩衝液に溶解させた。
【0167】
水性緩衝液pHを、胆汁酸塩及びカチオン性脂質のpKa未満に設定した。このようにすると、脂質は、核酸と共に製剤するときに強カチオン性であった。カーゴを有する送達ビヒクルを形成するために、脂質と核酸を、マイクロ流体チャネルを使用して混合し、それに続いて透析によりエタノールを除去した。この工程に他の好適な方法も使用できる。例えば、リポソームなどの脂質構造を薄膜水和により形成できるが、その場合、脂質を有機相に溶解させて、回転しているロトバップを使用して乾燥させることができる。形成された薄膜を水中で水和できる。水和された脂質を、例えばDSPでは70℃に加熱でき、又は例えばDOPCでは室温で使用でき、適切な押出機細孔径に通して押し出すことができる。核酸カーゴを脂質と混合して、リポプレックスを形成できる。
【0168】
例示的な送達ビヒクルを調製する別の好適な代わりの方法は薄膜水和を使用することである。脂質を有機溶媒に溶解させ混合する。溶媒を除去し、形成された薄膜を水溶液中で水和する。超音波処理又は押出を使用して、脂質を適切なサイズにする。脂質混合物と核酸を一緒に混合することにより、核酸を複合体化できる。
【0169】
例示的な送達ビヒクルの製剤
封入された核酸を含む例示的な送達ビヒクルを調製するために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ下でガウシアルシフェラーゼをコードする300μgのプラスミドDNAを、最終体積3mLの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)に溶解させた。適切なモルのMVL5、DODMA、デオキシコール酸塩、MVL5、DSPC、DMG-PEG2000、及び/又はDOPCを、それらのモル及びカチオン性脂質:核酸比(調製された種々の製剤中の脂質のモル%に関しては表2参照)に応じてエタノール中で混合した。カチオン性脂質:ヌクレオチドモル比を約16に維持した。DiI及びDiOなどの蛍光標識された脂質を、使用する場合、ミックスに総脂質モルの0.5%で加えた。エタノール体積を1mLに増やした。
【0170】
核酸は、3mLシリンジ内の水性酢酸ナトリウム緩衝液相中にある。脂質は1mLシリンジ内のエタノール中にある。2つのシリンジを、ナノアセンブル(NanoAssemblr)(プレシジョンナノシステムズ(Precision Nanosystems))に取り付け、次いで、2種の試料を、ナノアセンブル(NanoAssemblr)上でマイクロ流体チップを使用して混合する。
【0171】
この試験のために、試料を、ナノアセンブルベンチトップ(NanoAssemblr Benchtop)上でシリンジ(上述の通り、3mLシリンジ中に核酸及び1mLシリンジ中に脂質)に入れ、DSPC製剤では65℃に予備加熱するか、又はDOPC製剤では室温で(約25℃)であった。試料を、6mL/分の流量で、ナノアセンブルベンチトップ(NanoAssemblr Benchtop)マイクロ流体チップシステムを使用して混合した。pH7.5の300mM HEPES緩衝液でpHを中和した。透析を一晩利用して、エタノールを除去した。100kDa分子量カットオフを有するアミコンウルトラ(Amicon Ultra)-4を使用して、試料を濃縮した。
【0172】
【表2】
【0173】
実施例2: 本開示の例示的な送達ビヒクルの核酸導入
この試験において、例示的な送達ビヒクル(上記実施例1に記載のプロセスを利用して調製した)の核酸導入効率を評価した。50~80%のコンフルエンシーに培養したHEK細胞を核酸導入に使用した。脂質ナノ粒子(上記表2に列記)中に封入された1μgのガウシアルシフェラーゼを発現するプラスミドDNAを、24ウェルプレート中で1ウェルあたり使用した。核酸導入効率は、30μlの媒体を24時間後にとり、フラッシュルシフェラーゼアッセイ(ピアスガウシアルシフェラーゼアッセイキット(Pierce Gaussia Luciferase Kit))を実施することにより評価した。相対発光単位(RLU)の値の増加は、より高い核酸導入効率に対応した。
【0174】
多価カチオン性脂質MVL5の存在が、おそらくは胆汁酸塩安定系に対して陽性又は中性の特性を発揮することにより核酸導入を著しく増加させたことが観察された。これは、エンドソームエスケープの増加によるようであった。その多価(生理学的pHで+3及びリソソームpHで+5)及び安定性のために要求される負電荷を帯びた胆汁酸塩の高いモル比のために、MVL5及び他の多価脂質はこの系に最適であり得る。データを図1に示す。
【0175】
実施例3: 本開示の例示的な送達ビヒクルの安定性
この試験において、高胆汁酸塩環境における例示的な送達ビヒクルの安定性を評価した。送達ビヒクル安定性を決定するために、このアッセイに使用した送達ビヒクルに、それぞれ0.5モル%のDiI及びDiOを組み込んだ。DiI及びDiOは、FRETペアである蛍光色素である。胆汁酸塩は、コール酸とデオキシコール酸塩の等量混合物を示された濃度で使用することにより模した(図2~4中)。送達ビヒクルが胆汁酸塩による崩壊を受けやすい場合、FRET強度の減少が起こるだろうと予測した。励起を465nmにし、発光を501nm及び570nmで読み取って、相対蛍光単位(RFU)を決定した。570nmでのRFU読取りを、501nmでの読取りにより割った。読取り値を、全く処理がない系のFRET強度に対して正規化した。データを図2図3及び図4に示す。
【0176】
この試験は、DSPC/デオキシコール酸塩(製剤番号10)が胆汁酸塩に対して安定であったがDOPC/デオキシコール酸塩(製剤番号11)ではそうではなかったことを表した。DOPC/デオキシコール酸塩が、胆汁酸塩の影響を極めて受けやすいことが分かった弾性リポソームに類似していることに留意すべきである。対照的に、DSPC/デオキシコール酸塩は、胆汁酸塩攻撃に対して極めて耐性があることが分かった。さらに、DSPC/コレステロール(製剤番号13)も、胆汁酸塩に耐性がないことが分かった。これは、飽和脂質尾部の存在が胆汁酸塩に対する安定性を与えるのに充分ではなく、安定性を与えるには胆汁酸塩(例えばデオキシコール酸塩)が脂質ナノ粒子内に組み込まれなければならないことを示した。
【0177】
さらに、図4で分かる通り、ペグ化(製剤番号16)が安定性のために必要ではなく、高相転移温度脂質の省略(製剤番号15)又は胆汁酸塩の省略(製剤番号14)が、送達ビヒクルの胆汁酸塩安定性の喪失をもたらしたことが観察された。
【0178】
実施例4: 本開示の例示的な送達ビヒクル中の核酸の封入
この試験のために、脂質ナノ粒子(表2の製剤番号5)に封入された1μgのDNAを含む送達ビヒクルを、未処理(図5のレーン2)、(ii)7%トリトン-X100により処理(図5のレーン3)、(iii)7%トリトン-X100による処理に加えて70℃30分間(図5のレーン4)のいずれかでアガロースゲルのレーンにロードし、それに続いて電気泳動した。SYBRセーフ(SYBR Safe)を使用して、UV光によりDNAを検出した。DNAバンドは、胆汁酸塩安定系を含むカチオン性脂質のいずれでも見られず(レーン2、未処理)、封入及びDNAが送達ビヒクルから放出されなかったことを示した。しかし、DNAバンドは、洗剤及び熱を使用して系が乱された場合に見られ(レーン3及び4)、ビヒクルがこの環境中で不安定であり、DNAが処理時に放出されたことを示す。データを図5に示す。これは、特に消化管などの高胆汁酸塩環境中での効率よい保護のための、胆汁酸塩環境中で安定である送達ビヒクル内に封入されたカーゴ(DNAなど)を有することの利点を表した。
【0179】
実施例5: カーゴを有する送達ビヒクルの調製
核酸カーゴの封入を下記の通り実施した。脂質をエタノールに溶解させ、それらの相転移温度より上に加熱した。核酸を、脂質の相転移温度より上に加熱した水性緩衝液に溶解させた。水性緩衝液pHを胆汁酸塩及びカチオン性脂質のpKa未満に設定した。このようにすると、核酸と共に製剤するときに、脂質は強カチオン性であった。脂質と核酸を、マイクロ流体チャネルを使用して混合した。pHを中性まで上げて、試料を濃縮し、透析を使用してエタノールを除去した。
【0180】
材料: DODMA(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))、デオキシコール酸塩(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))、MVL5(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DSPC(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DMG-PEG2000(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DOPC(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))、DiI(サーモフィッシャーサイエンティフィク(ThermoFisher Scientific))、DiO(サーモフィッシャーサイエンティフィク(ThermoFisher Scientific))、及びGMO(エムピーバイオメディカルズ(MP Biomedicals))
製剤
CMVプロモータの下でガウシアルシフェラーゼをコードする375μgのプラスミドDNAを最終体積3mLの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)に溶解させた。適切なモルのMVL5、DODMA、デオキシコール酸塩、MVL5、DSPC、GMO、DMG-PEG2000、及び/又はDOPCを、それらのモル及びカチオン性脂質:核酸比に応じてエタノール中で混合した。カチオン性脂質:ヌクレオチドモル比は16で一定に保った。脂質をDiI及びDiOにより蛍光標識する場合、各DiI及びDiOを総脂質モルの0.5%molでミックスに加えた。エタノール体積を1mLに増やした。試料を、ナノアセンブルベンチトップ(NanoAssemblr Benchtop)(プレシジョンナノシステムズ(Precision Nanosystems))上でシリンジ中に入れ、DSPC製剤では65℃に予備加熱し、又はDOPC製剤では室温であった。ナノアセンブルベンチトップ(NanoAssemblr Benchtop)マイクロ流体チップシステムを使用して6mL/分の流量で試料を混合した。pHを中和し、次いで、透析を一晩使用してエタノールを除去した。100kDa分子量カットオフを有するアミコンウルトラ(Amicon Ultra)-4(メルクミリポア社(Merck Millipore Ltd)、アイルランド)を使用して、試料を濃縮した。
【0181】
以下の製剤を表3に示す通り製造した。
【0182】
【表3】
【0183】
要約すると、DMG-PEGを有する粒子は、1%DMG-PEGですら安定であり、凝集体を形成しなかった。DSGは、37℃でゲル相中に存在するステアリン酸脂質尾部を有する。DMGは、37℃で液相中にあるミリストリン酸脂質尾部を有する。DMG-PEGはビヒクルの液相部分に存在し、そのためカチオン性脂質を安定化し、凝集を防いだ一方で、DSG-PEGはゲル相部分中にあり、同じ安定化効果を与えられなかった。
【0184】
実施例6: 送達ビヒクルのインビボ投与
マウスに、DiI及びDiO標識したナノ粒子中に封入したおよそ30マイクログラムのDNAを直腸内投与した。投薬の4時間後、マウスを犠死させ、腸をOCTに包埋し、ドライアイスで凍結させ、-80℃で保存した。組織を30マイクロメートルスライスの凍結切片にして、バイオテックサイテーション(BioTek Cytation)1を使用して画像化した。DiI蛍光をRFPチャネルで測定した。
【0185】
ペグ化された粒子は腸の上皮細胞に到達できない
MVL5/DODMA/DSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG(粒子5~9)粒子を、DMG-PEGの量を増やしながら形成し、粒子の挙動をインビボで調査した。DMG-PEGの量を増やすと、腸の組織での分布が減少した。これは、ペグ化を増やして腸の上皮到達を増やすという現在の定説と矛盾する。発明者らは、増加したペグ化がその遮蔽特性により表面で正電荷の露出を減少させると考える。これは、図6(粒子5)、図7(粒子6)、図8(粒子7)、図9(粒子8)、及び図10(粒子9)に示されるように、粒子の二重の性質を減少させる。
【0186】
実施例7: 送達ビヒクルインビボ試験
図11A図11B図12A図12B図13A図13B図14A、及び図14Bに示されるように、DiI及びDiOを有するDSPC/デオキシコール酸塩/DMG-PEG)中でMVL5/DODMAの比を変更して、正電荷を増加させることの効果を調査した。粒子中の以下の比のMVL5/DODMAを形成した(0%/25%)、(6.25%/18.75%)、(12.5%/12.5%)、(18.75%、6.25%)、(25%/0%)。DODMAが中性pHでほとんど中性であり、一価であるので、デオキシコール酸塩の負電荷及びMVL5の多価電荷が、粒子の挙動を支配した。それにより、MVL5を増やすことは電荷を増やす。
【0187】
データは、12.5%/12.5%のMVL5/DODMA比がインビボで粒子の腸の上皮分布に最適であることを示す。MVL5が多すぎると、カチオン性特性が強くなりすぎて、負電荷を帯びた粘液への付着をもたらした。MVL5が少なすぎると、負電荷を帯びた粒子をもたらし、それは粘液に反発した可能性があるか、あるいは相互作用が全くなかった。さらに、MVL5/DODMA/DSPC/コレステロール/DMG-PEG粒子を製造したが、それらは、腸の上皮細胞に到達しないことが分かった。要約すると、図11A図11B図12A図12B図13A図13B図14A、及び図14Bに示されるように、電荷の注意深い釣り合いをとって腸の上皮細胞に到達するには、二重の電荷が必要とされる。
【0188】
実施例8: 双性イオン送達ビヒクルに対する二重相送達ビヒクル
送達ビヒクルを実施例1に記載の通り生成させ、実施例7に記載の通りインビボで試験した。双性イオン性が、PEGの存在なしに粘液透過を増加させることが以前に示された。二重相性ではなく双性イオン性が充分であるかどうかを調査するために、単一相のものであるように設計した粒子を製剤した。単一相粒子を製造するために、低相転移温度脂質(すなわちDOPC又はGMOを含む)を、DSPCの代わりにした。電荷を粒子の間で同じに保った。液相のみである粒子(DSPCの代わりにDOPC又はGMOを含む)は、腸の上皮細胞到達が著しく減少したか、又はほとんどないことが見出された。
【0189】
要約すると、データは、図16A図16B図16C、及び図16Dに示されるように、腸の上皮細胞到達を可能にするには、双性イオン性のみの存在では不充分であることを示す。
【0190】
実施例9: 胆汁酸塩を有する送達ビヒクルの安定性
先に実施例1に記載した方法を使用して、以下の製剤を製造した。モル比0.96:0.96:2.592:3.168:0.0768:0.0384:0.0384で、MVL5:MC2(バイオファインインターナショナル社(Biofine International LLC)、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ):胆汁酸塩:DSPC:DMG-PEG2000:DiI:DiO。ここで、胆汁酸塩成分は、ウルソジオール、デオキシコール酸塩、リトコール酸塩、イソリトコール酸塩、アロイソリトコール酸塩、デヒドロリトコール酸塩、又は5β-コラン酸のいずれかであった。核酸は脂質ナノ粒子中に組み込まなかった。表4に与えられるものなど、代わりの製剤も生成させることができる。
【0191】
【表4】
【0192】
胆汁酸塩中の脂質ナノ粒子の安定性を、先に議論した通り、10g/Lまで測定した。DiI及びDiOからのFRETシグナルを無処理に対して正規化した。塩の形態のビヒクルの安定性のレベルを図20に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20
【配列表】
2022538797000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
カーゴは1つ以上の核局所化配列(NLS)を含み得る。いくつかのNLS配列は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSであり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、アミノ末端で若しくはその近くで約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上より多いNLSを含み、カルボキシ末端で若しくはその近くで約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含むか、又はこれらの組合せである(例えば、アミノ末端で1つ以上のNLS及びカルボキシ末端で1つ以上のNLS)。2つ以上のNLSが存在する場合、それぞれは、単一のNLSが、2コピー以上で、及び/又は1つ以上のコピーで存在する1つ以上の他のNLSとの組合せで存在し得るように、互いに独立に選択され得る。NLSの非限定的な例は、下記から誘導されたNLS配列を含み得る。アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号:1)を有するSV40ウイルスラージT-抗原のNLS、ヌクレオプラスミンのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号:2)を有するヌクレオプラスミン双節型NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号:3)又はRQRRNELKRSP(配列番号:4)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号:5)を有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチン-αのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号:6)、筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP(配列番号:7)及びPPKKARED(配列番号:8)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号:9)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号:10)、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号:11)及びPKQKKRK(配列番号:16)、肝炎ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号:12)、マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR(配列番号:13)、ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号:14)、並びにステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号:15)。一般に、1つ以上のNLSが、真核細胞の核内でミニサークルDNAベクター又は短い直鎖DNAベクターの検出可能な量での蓄積を促進するのに充分な強度であり得る。真核細胞はヒト小腸腺窩細胞であり得る。
【国際調査報告】