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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】真菌織物材料および皮革類似物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220830BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220830BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20220830BHJP
   D06M 15/05 20060101ALI20220830BHJP
   D06M 13/192 20060101ALI20220830BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20220830BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20220830BHJP
   D06M 13/152 20060101ALI20220830BHJP
   D06M 11/45 20060101ALI20220830BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20220830BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08J5/18
C08L101/00
C08K3/011
D06M15/05
D06M13/192
D06M15/333
D06M11/44
D06M13/152
D06M11/45
B32B5/26
C12N1/14 A
C12N1/14 E
D06N3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575474
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2020038194
(87)【国際公開番号】W WO2020257320
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/862,680
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/951,332
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/966,525
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.トワロン
3.サランラップ
4.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】518308809
【氏名又は名称】ザ・フィンダー・グループ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Fynder Group, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート,ブレンダン アレン
(72)【発明者】
【氏名】アレグリア,ラリー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】トットマン,ライアン ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】アブニール,ユバル チャールズ
【テーマコード(参考)】
4B065
4F055
4F071
4F100
4J002
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4B065AA58X
4B065CA60
4F055AA01
4F055BA01
4F055BA02
4F055BA06
4F055BA14
4F055CA16
4F055EA02
4F055EA04
4F055EA05
4F055EA06
4F055EA07
4F055EA22
4F055FA07
4F055FA37
4F055FA39
4F055HA07
4F055HA16
4F071AA09
4F071AA15X
4F071AA29
4F071AA29X
4F071AA88
4F071AC09A
4F071AE02A
4F071AE04
4F071AE10
4F071AE19A
4F071AE22
4F071AF15Y
4F071AF16Y
4F071AF20Y
4F071AF34Y
4F071AG01
4F071AG05
4F071AG09
4F071AG12
4F071AG28
4F071AG33
4F071AG34
4F071AH19
4F071BA02
4F071BA03
4F071BB01
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA19A
4F100AA19H
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AB00A
4F100AB00H
4F100AC03A
4F100AC03H
4F100AC04A
4F100AC04H
4F100AD00A
4F100AD00H
4F100AH02A
4F100AJ02A
4F100AJ02B
4F100AJ04B
4F100AJ07A
4F100AJ08B
4F100AJ11A
4F100AK01A
4F100AK03B
4F100AK21A
4F100AK24A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AK47B
4F100AK52A
4F100AK54A
4F100AK68A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA04A
4F100CA13A
4F100CA18A
4F100DG12A
4F100DG12B
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100EJ82A
4F100GB72
4F100JC00A
4F100JK02A
4F100JK03
4J002AA001
4J002AB041
4J002AB051
4J002AE052
4J002BE021
4J002BG011
4J002CF191
4J002CH021
4J002CH022
4J002DD017
4J002DJ006
4J002EC057
4J002EF027
4J002EF066
4J002EH037
4J002EH047
4J002EJ006
4J002FD022
4J002FD027
4J002FD146
4J002GC00
4J002GG00
4J002GK00
4J002HA04
4L031BA11
4L031DA11
4L033AB05
4L033AC15
4L033BA13
4L033BA18
4L033CA29
(57)【要約】
少なくとも1種の糸状菌を含む織物組成物、同様に、このような織物組成物を作製および使用するための方法が開示される。織物組成物の実施形態は一般に、糸状菌に加えて、可塑剤、ポリマー、および架橋剤の少なくとも1つを含む。開示される織物組成物は、皮革を含むがこれに限定されない、従来の織物組成物の類似物または代替物として、特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌バイオマスを含む耐久性シート材料を調製するための方法であって、
(a)溶液を不活性化真菌バイオマスに浸透させることであって、溶液が、溶媒と、ポリマー、架橋剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される成分とを含む、浸透させること、ならびに
(b)バイオマスを硬化させ、バイオマスから溶媒を除去して、耐久性シート材料を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
真菌バイオマスが真菌菌糸体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活性化真菌バイオマスを、工程(a)の前にサイズ低減させ、工程(a)が、サイズ低減不活性化真菌バイオマスを溶液とブレンドして、ブレンド組成物を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において、ブレンド組成物を注型して、溶媒が除去された注型シートを形成することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
サイズ低減不活性化真菌バイオマスが、約125ミクロン以下の平均粒子サイズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
不活性化真菌バイオマスが、凝集性真菌バイオマスを含み、工程(a)が、不活性化真菌バイオマスと溶液とを、ある期間一緒にかき混ぜることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
凝集性真菌バイオマスが、表面発酵プロセス、または液中固体表面発酵プロセスによって生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
期間が、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、または少なくとも約25時間からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
期間が、約10時間~約20時間である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
かき混ぜることが、大気圧以外の圧力において行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
圧力が準大気圧である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
圧力が超大気圧である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムおよびタンニンからなる群から選択される少なくとも1種の化学物質による処理に供することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
不活性化真菌バイオマスが、液中発酵によって生成された真菌ペーストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
溶液が、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
溶液がポリマーを含み、ポリマーが、耐久性シート材料の約25重量%以下、耐久性シート材料の約20重量%以下、耐久性シート材料の約15重量%以下、耐久性シート材料の約10重量%以下、および耐久性シート材料の約5重量%以下からなる群から選択される量において、耐久性シート材料中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
溶液が、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せからなる群から選択される架橋剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
溶液が可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
可塑剤が、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
真菌バイオマスが、クロボキン目、ベニタケ目、ハラタケ目、チャワンタケ目、およびボタンタケ目からなる群から選択される目に属する、少なくとも1種の糸状菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
真菌バイオマスが、クロボキン科、サンゴハリタケ科、タマチョレイタケ科、マイタケ科、シメジ科、モエギタケ科、ホコリタケ科、ハラタケ科、ヒラタケ科、タマバリタケ科、ツキヨタケ科、セイヨウショウロ科、アミガサタケ科、ハナビラタケ科、ベニアワツブタケ科、およびノムシタケ科からなる群から選択される科に属する、少なくとも1種の糸状菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
真菌バイオマスが、ハラタケ属、ユキワリ属、ノウタケ属、ノムシタケ属、カニタケ属、ツリガネタケ属、フザリウム属、マンネンタケ属、マイタケ属、サンゴハリタケ属、クリタケ属、シロタモギタケ属、アミガサタケ属、スギタケ属、ヒラタケ属、タマチョレイタケ属、ハナビラタケ属、モエギタケ属、セイヨウショウロ属、およびウスティラゴ属からなる群から選択される属に属する、少なくとも1種の糸状菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
真菌バイオマスが、ウスティラゴ・エスクレンタ、ヤマブシタケ、アミヒラタケ、マイタケ、ブナシメジ、シロタモギタケ、ユキワリ、ナメコ、セイヨウオニフスベ、ツクリタケ、サケツバタケ、クリタケ、エリンギ、ヒラタケ、ヒラタケ変種コロンビヌス、チャセイヨウショウロ、アミガサタケ、トガリアミガサタケ、モルケラ・インポルトゥナ、ハナビラタケ、フザリウム・ベネナタム、MK7 ATCC寄託預け入れ番号PTA-10698、カニタケ、およびサナギタケからなる群から選択される、少なくとも1種の糸状菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
溶液が、顔料、可溶化剤、およびpH調整剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
溶液が、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される可溶化剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
溶液が、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されるpH調整剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
耐久性シート材料が、イソペプチド結合によって架橋されたタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
(i)不活性化真菌バイオマスに熱ドーパントを加えること、および(ii)工程(b)の後の耐久性シート材料に熱ドーパントを加えることの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
熱ドーパントの量が、耐久性シート材料の少なくとも約2.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約7.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約10重量%、耐久性シート材料の少なくとも約12.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約15重量%、および耐久性シート材料の少なくとも約17.5重量%からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
熱ドーパントの量が、耐久性シート材料の約20重量%以下、耐久性シート材料の約17.5重量%以下、耐久性シート材料の約15重量%以下、耐久性シート材料の約12.5重量%以下、耐久性シート材料の約10重量%以下、耐久性シート材料の約7.5重量%以下、および耐久性シート材料の約5重量%以下からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
熱ドーパントが、セラミック材料、金属材料、ポリマー材料、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
熱ドーパントが、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、エチレン酢酸ビニル、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
不活性化真菌バイオマスが、サイズ低減不活性化真菌バイオマスである、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
不活性化真菌バイオマスが、表面発酵プロセスによって生成された、バイオマットまたはその一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
不活性化真菌バイオマスが、約5~約20、または約7~約15の炭素対窒素モル比を有する増殖培地において増殖した、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
不活性化真菌バイオマスと、
可塑剤、ポリマー、架橋剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含み、
少なくとも1つの成分が、真菌菌糸体バイオマス中に分散している、織物組成物。
【請求項37】
少なくとも約1mmの厚さを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項38】
少なくとも約30Nの引裂き力を有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項39】
少なくとも約10N/mmの引裂強さを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項40】
約5グラム-センチメートル以下の曲げ剛性を有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項41】
少なくとも約10MPaの引張強さを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項42】
少なくとも約3の水滴下グレースケールレーティングを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項43】
少なくとも約4の光色堅牢度ブルーウールレーティングを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項44】
乾燥時に少なくとも約3の摩擦色堅牢度グレースケールレーティングを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項45】
湿潤時に少なくとも約2の摩擦色堅牢度グレースケールレーティングを有する、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項46】
非真菌織物材料の少なくとも1つの裏張り層をさらに含む、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項47】
非真菌織物材料が、アクリル系織物、アルパカ織物、アンゴラ織物、カシミア織物、コイア織物、綿織物、アイゼンガルン織物、麻織物、ジュート織物、ケブラー織物、リネン織物、マイクロ繊維織物、モヘア織物、ナイロン織物、オレフィン織物、パシュミナ織物、ポリエステル織物、ピーニャ織物、ラミー織物、レーヨン織物、シーシルク織物、シルク織物、シサル織物、スパンデックス織物、スパイダーシルク織物、ウール織物、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項46に記載の織物組成物。
【請求項48】
熱ドーパントをさらに含む、請求項36に記載の織物組成物。
【請求項49】
熱ドーパントが、セラミック材料、金属材料、ポリマー材料、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項48に記載の織物組成物。
【請求項50】
熱ドーパントが、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、エチレン酢酸ビニル、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムからなる群から選択される、請求項48に記載の織物組成物。
【請求項51】
織物組成物の熱的特徴が、熱ドーパントのない織物組成物の同じ熱的特徴に対して変わっており、熱的特徴が、熱浸透率、熱伝導率、熱容量、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項48に記載の織物組成物。
【請求項52】
請求項36に記載の織物組成物を含む製造物品であって、衣服の物品、アクセサリーアイテム、および什器アイテムからなる群から選択される、製造物品。
【請求項53】
耐久性シート材料を作製するための方法であって、
(a)不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムを含む水溶液と接触させて、石灰化不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(b)石灰化不活性化真菌バイオマスを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させて、脱灰不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(c)脱灰不活性化真菌バイオマスを、ポリマーを含む水溶液と接触させて、浸酸不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(d)浸酸不活性化真菌バイオマスを、架橋剤を含む水溶液と接触させて、なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(e)なめし不活性化真菌バイオマスを、可塑剤を含む水溶液と接触させて、可塑化不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(f)可塑化不活性化真菌バイオマスを乾燥させて、乾燥不活性化真菌バイオマスを形成すること、および
(g)乾燥不活性化真菌バイオマスを熱プレスして、耐久性シート材料を形成すること
を含む、方法。
【請求項54】
工程(a)と(b)、工程(b)と(c)、工程(c)と(d)、および工程(d)と(e)からなる群から選択される任意の工程のペアの間に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、残留水溶液を除去することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
工程(a)~(e)の少なくとも1つが、不活性化真菌バイオマスを水溶液とともにかき混ぜることを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
工程(a)~(c)の少なくとも1つの水溶液が、界面活性剤または可溶化剤をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
界面活性剤または可溶化剤が、ポリソルベート、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ポリマーが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
工程(c)の水溶液が、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、可塑剤をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
工程(c)の水溶液が、アルカリ金属ハロゲン化物をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
アルカリ金属ハロゲン化物が塩化ナトリウムである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
架橋剤が、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
可塑剤が、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
耐久性シート材料を作製するための方法であって、
(a)真菌バイオマスを、水中でバイオマスを煮沸することによって、不活性化すること、
(b)不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムを含む水溶液と接触させて、石灰化不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(c)石灰化不活性化真菌バイオマスを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させて、脱灰不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(d)脱灰不活性化真菌バイオマスを、アルカリ金属ハロゲン化物を含む水溶液と接触させて、浸酸不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(e)浸酸不活性化真菌バイオマスを、第1の架橋剤と接触させて、なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(f)なめし不活性化真菌バイオマスを、第2の架橋剤およびポリマーの少なくとも1つを含む水溶液と接触させて、再なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(g)再なめし不活性化真菌バイオマスを、加脂油と接触させて、加脂不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(h)非真菌織物裏張りを、不活性化真菌バイオマスに接着して、裏張り付き不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(i)裏張り付き不活性化真菌バイオマスを熱プレスして、熱プレス不活性化真菌バイオマスを形成すること、
(j)熱プレス不活性化真菌バイオマスを乾燥させて、乾燥不活性化真菌バイオマスを形成すること、ならびに
(k)仕上げワックス、仕上げ油、およびニトロセルロースの少なくとも1つを、乾燥不活性化真菌バイオマスに塗布して、耐久性シート材料を形成すること
を含む、方法。
【請求項65】
工程(b)と(c)、工程(c)と(d)、および工程(e)と(f)からなる群から選択される任意の工程のペアの間に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、残留水溶液を除去することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
工程(a)~(g)の少なくとも1つが、不活性化真菌バイオマスを水溶液とともにかき混ぜることを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
工程(b)および(c)の少なくとも1つの水溶液が、界面活性剤または可溶化剤をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
界面活性剤または可溶化剤が、ポリソルベート、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
ポリマーが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
アルカリ金属ハロゲン化物が塩化ナトリウムである、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
工程(d)~(f)の少なくとも1つの水溶液がpH調整剤を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
pH調整剤が、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、またはこれらの組合せもしくは混合物、あるいは金属水酸化物を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
第1の架橋剤が、アルミニウム塩、クロム塩、チタン塩、アルデヒド、またはこれらの組合せもしくは混合物を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項74】
第1の架橋剤がケイ酸アルミニウムである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
第2の架橋剤が、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項76】
ポリマーが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
工程(f)の水溶液が、アニオン性染料をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項78】
加脂油が、硫酸化ヒマシ油、ビーズワックス、ココナッツ油、植物油、オリーブ油、亜麻仁油、オレイン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項79】
加脂油がエマルションを含み、方法が、工程(g)と(h)の間に、加脂油を酸と接触させて、エマルションを解離させることをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項80】
仕上げワックスが、カルナウバワックス、カンデリラワックス、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年6月18日に出願された米国仮特許出願第62/862,860号、2019年12月20日に出願された同第62/951,332号、および2020年1月27日に出願された同第62/966,525号の優先権の利益を主張し、これらのすべては、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
この発明は一般に、皮革類似物として、ならびに他の織物および布地に使用することができる、真菌材料、特に糸状菌に由来する材料に関する。
【背景技術】
【0003】
皮革を含むがこれに限定されない、多くの現在の織物材料は、製造中に環境問題を生じ、物品の有用な寿命の最後に、環境的に安全に再生利用または処分するのが困難または不可能でありうる。非限定例としては、皮革の製造は、ウシの飼育(それ自体、重大な環境影響を有し、動物の福祉への懸念を生じうる)に依存し、クロム、ギ酸、水銀、および様々な溶媒などの毒性の高い化学物質を使用しうるなめし工程を必要とする。皮革はまた、約25~約40年の時間にわたって、ゆっくりと生分解する。多くの織物材料は、同様の環境的または倫理的懸念に見舞われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、最小限の環境影響を有し、動物の福祉上のまたは他の倫理的懸念のない、コスト効率的に生成されうる織物材料が、当技術分野において必要とされている。このような材料が、従来の織物材料、例えば皮革の様々な物理的および/または機械的特性、例えば、引張強さ、引裂強さ、曲げ剛性、弾性、テクスチャ、熱特性、感覚的特質等を保持することは、さらに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、真菌バイオマスを含む耐久性シート材料を調製するための方法は、(a)溶液を不活性化真菌バイオマスに浸透させることであって、溶液が、溶媒と、ポリマー、架橋剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される成分とを含む、浸透させること、ならびに(b)バイオマスを硬化させ、バイオマスから溶媒を除去して、耐久性シート材料を形成することを含む。
【0006】
実施形態では、真菌バイオマスは真菌菌糸体を含みうる。
【0007】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスを、工程(a)の前にサイズ低減させてもよく、工程(a)は、サイズ低減不活性化真菌バイオマスを溶液とブレンドして、ブレンド組成物を形成することを含んでもよい。方法は、必要ではないが、工程(b)において、ブレンド組成物を注型して、溶媒が除去された注型シートを形成することをさらに含んでもよい。サイズ低減不活性化真菌バイオマスは、必要ではないが、約125ミクロン以下の平均粒子サイズを有しうる。
【0008】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスは、凝集性真菌バイオマスを含んでもよく、(a)は、不活性化真菌バイオマスと溶液とを、ある期間一緒にかき混ぜることを含んでもよい。凝集性真菌バイオマスは、必要ではないが、表面発酵プロセス、または液中固体表面発酵プロセスによって生成されうる。期間は、必要ではないが、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、または少なくとも約25時間からなる群から選択されうる。期間は、必要ではないが、約10時間~約20時間でありうる。かき混ぜることは、必要ではないが、準大気圧または超大気圧であってもよい、大気圧以外の圧力において行われうる。方法は、必要ではないが、不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムおよびタンニンからなる群から選択される少なくとも1種の化学物質による処理に供することをさらに含んでもよい。
【0009】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスは、液中発酵によって生成された真菌ペーストを含みうる。
【0010】
実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0011】
実施形態では、ポリマーは、耐久性シート材料の約25重量%以下、耐久性シート材料の約20重量%以下、耐久性シート材料の約15重量%以下、耐久性シート材料の約10重量%以下、および耐久性シート材料の約5重量%以下からなる群から選択される量において、耐久性シート材料中に存在しうる。
【0012】
実施形態では、架橋剤は、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0013】
実施形態では、溶液は可塑剤をさらに含みうる。可塑剤は、必要ではないが、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0014】
実施形態では、真菌バイオマスは、クロボキン目(Ustilaginales)、ベニタケ目(Russulales)、ハラタケ目(Agaricales)、チャワンタケ目(Pezizales)、およびボタンタケ目(Hypocreales)からなる群から選択される目に属する、少なくとも1種の糸状菌を含みうる。
【0015】
実施形態では、真菌バイオマスは、クロボキン科(Ustilaginaceae)、サンゴハリタケ科(Hericiaceae)、タマチョレイタケ科(Polyporaceae)、マイタケ科(Grifolaceae)、シメジ科(Lyophyllaceae)、モエギタケ科(Strophariaceae)、ホコリタケ科(Lycoperdaceae)、ハラタケ科(Agaricaceae)、ヒラタケ科(Pleurotaceae)、タマバリタケ科(Physalacriaceae)、ツキヨタケ科(Omphalotaceae)、セイヨウショウロ科(Tuberaceae)、アミガサタケ科(Morchellaceae)、ハナビラタケ科(Sparassidaceae)、ベニアワツブタケ科(Nectriaceae)、およびノムシタケ科(Cordycipitaceae)からなる群から選択される科に属する、少なくとも1種の糸状菌を含みうる。
【0016】
実施形態では、真菌バイオマスは、ハラタケ属(Agaricus)、ユキワリ属(Calocybe)、ノウタケ属(Calvatia)、ノムシタケ属(Cordyceps)、カニタケ属(Disciotis)、ツリガネタケ属(Fomes)、フザリウム属(Fusarium)、マンネンタケ属(Ganoderma)、マイタケ属(Grifola)、サンゴハリタケ属(Hericulum)、クリタケ属(Hypholoma)、シロタモギタケ属(Hypsizygus)、アミガサタケ属(Morchella)、スギタケ属(Pholiota)、ヒラタケ属(Pleurotus)、タマチョレイタケ属(Polyporous)、ハナビラタケ属(Sparassis)、モエギタケ属(Stropharia)、セイヨウショウロ属(Tuber)、およびウスティラゴ属(Ustilago)からなる群から選択される属に属する、少なくとも1種の糸状菌を含みうる。
【0017】
実施形態では、真菌バイオマスは、ウスティラゴ・エスクレンタ(Ustilago esculenta)、ヤマブシタケ(Hericulum erinaceus)、アミヒラタケ(Polyporous squamosus)、マイタケ(Grifola fondosa)、ブナシメジ(Hypsizygus marmoreus)、シロタモギタケ(Hypsizygus ulmarius)、ユキワリ(Calocybe gambosa)、ナメコ(Pholiota nameko)、セイヨウオニフスベ(Calvatia gigantea)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、サケツバタケ(Stropharia rugosoannulata)、クリタケ(Hypholoma lateritium)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、ヒラタケ変種コロンビヌス(Pleurotus ostreatus var. columbinus)、チャセイヨウショウロ(Tuber borchii)、アミガサタケ(Morchella esculenta)、トガリアミガサタケ(Morchella conica)、モルケラ・インポルトゥナ(Morchella importuna)、ハナビラタケ(Sparassis crispa)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、MK7 ATCC寄託預け入れ番号PTA-10698、カニタケ(Disciotis venosa)、およびサナギタケ(Cordyceps militaris)からなる群から選択される、少なくとも1種の糸状菌を含みうる。
【0018】
実施形態では、溶液は、顔料、可溶化剤、およびpH調整剤の少なくとも1つをさらに含みうる。可溶化剤は、必要ではないが、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。pH調整剤は、必要ではないが、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0019】
実施形態では、耐久性シート材料は、イソペプチド結合によって架橋されたタンパク質を含みうる。
【0020】
実施形態では、方法は、(i)不活性化真菌バイオマスに熱ドーパントを加えること、および(ii)工程(b)の後の耐久性シート材料に熱ドーパントを加えることの少なくとも1つをさらに含んでもよい。熱ドーパントの量は、必要ではないが、耐久性シート材料の少なくとも約2.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約7.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約10重量%、耐久性シート材料の少なくとも約12.5重量%、耐久性シート材料の少なくとも約15重量%、および耐久性シート材料の少なくとも約17.5重量%からなる群から選択されうる。熱ドーパントの量は、必要ではないが、耐久性シート材料の約20重量%以下、耐久性シート材料の約17.5重量%以下、耐久性シート材料の約15重量%以下、耐久性シート材料の約12.5重量%以下、耐久性シート材料の約10重量%以下、耐久性シート材料の約7.5重量%以下、および耐久性シート材料の約5重量%以下からなる群から選択されうる。熱ドーパントは、必要ではないが、セラミック材料、金属材料、ポリマー材料、およびこれらの組合せからなる群から選択されうる。熱ドーパントは、必要ではないが、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、エチレン酢酸ビニル、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムからなる群から選択されうる。
【0021】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスは、サイズ低減不活性化真菌バイオマスでありうる。
【0022】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスは、表面発酵プロセスによって生成された、バイオマットまたはその一部を含みうる。表面発酵プロセスの増殖培地における炭素対窒素モル比は、必要ではないが、約5~約20、または約7~約15でありうる。
【0023】
本発明の別の態様では、織物組成物は、不活性化真菌バイオマスと、可塑剤、ポリマー、架橋剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含み、少なくとも1つの成分は、真菌菌糸体バイオマス中に分散している。
【0024】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約1mmの厚さを有しうる。
【0025】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約30Nの引裂き力を有しうる。
【0026】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約10N/mmの引裂強さを有しうる。
【0027】
実施形態では、織物組成物は、約5グラム-センチメートル以下の曲げ剛性を有しうる。
【0028】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約10MPaの引張強さを有しうる。
【0029】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約3の水滴下グレースケールレーティングを有しうる。
【0030】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約4の光色堅牢度ブルーウールレーティングを有しうる。
【0031】
実施形態では、織物組成物は、乾燥時に少なくとも約3の摩擦色堅牢度グレースケールレーティングを有しうる。
【0032】
実施形態では、織物組成物は、湿潤時に少なくとも約2の摩擦色堅牢度グレースケールレーティングを有しうる。
【0033】
実施形態では、織物組成物は、非真菌織物材料の少なくとも1つの裏張り層をさらに含みうる。非真菌織物材料は、必要ではないが、アクリル系織物、アルパカ織物、アンゴラ織物、カシミア織物、コイア織物、綿織物、アイゼンガルン(eisengarn)織物、麻織物、ジュート織物、ケブラー織物、リネン織物、マイクロ繊維織物、モヘア織物、ナイロン織物、オレフィン織物、パシュミナ織物、ポリエステル織物、ピーニャ(pina)織物、ラミー織物、レーヨン織物、シーシルク織物、シルク織物、シサル織物、スパンデックス織物、スパイダーシルク織物、ウール織物、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0034】
実施形態では、織物組成物は熱ドーパントをさらに含みうる。T熱ドーパントは、必要ではないが、セラミック材料、金属材料、ポリマー材料、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。熱ドーパントは、必要ではないが、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、エチレン酢酸ビニル、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムからなる群から選択されうる。織物組成物の熱的特徴は、必要ではないが、熱ドーパントのない織物組成物の同じ熱的特徴に対して変わっていてもよく、熱的特徴は、熱浸透率、熱伝導率、熱容量、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0035】
本発明の別の態様では、製造物品は、本明細書に記載される織物組成物を含み、衣服の物品、アクセサリーアイテム、および什器アイテムからなる群から選択される。
【0036】
本発明の別の態様では、耐久性シート材料を作製するための方法は、(a)不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムを含む水溶液と接触させて、石灰化(limed)不活性化真菌バイオマスを形成すること、(b)石灰化不活性化真菌バイオマスを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させて、脱灰(delimed)不活性化真菌バイオマスを形成すること、(c)脱灰不活性化真菌バイオマスを、ポリマーを含む水溶液と接触させて、浸酸不活性化真菌バイオマスを形成すること、(d)浸酸不活性化真菌バイオマスを、架橋剤を含む水溶液と接触させて、なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、(e)なめし不活性化真菌バイオマスを、可塑剤を含む水溶液と接触させて、可塑化不活性化真菌バイオマスを形成すること、(f)可塑化不活性化真菌バイオマスを乾燥させて、乾燥不活性化真菌バイオマスを形成すること、および(g)乾燥不活性化真菌バイオマスを熱プレスして、耐久性シート材料を形成することを含む。
【0037】
実施形態では、方法は、工程(a)と(b)、工程(b)と(c)、工程(c)と(d)、および工程(d)と(e)からなる群から選択される任意の工程のペアの間に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、残留水溶液を除去することをさらに含んでもよい。
【0038】
実施形態では、工程(a)~(e)の少なくとも1つは、不活性化真菌バイオマスを水溶液とともにかき混ぜることを含んでもよい。
【0039】
実施形態では、工程(a)~(c)の少なくとも1つの水溶液は、界面活性剤または可溶化剤をさらに含みうる。界面活性剤または可溶化剤は、必要ではないが、ポリソルベート、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0040】
実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0041】
実施形態では、工程(c)の水溶液は、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択される、可塑剤をさらに含みうる。
【0042】
実施形態では、工程(c)の水溶液は、アルカリ金属ハロゲン化物をさらに含みうる。アルカリ金属ハロゲン化物は、必要ではないが、塩化ナトリウムでありうる。
【0043】
実施形態では、架橋剤は、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0044】
実施形態では、可塑剤は、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオールおよびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0045】
本発明の別の態様では、耐久性シート材料を作製するための方法は、(a)真菌バイオマスを、水中でバイオマスを煮沸することによって、不活性化すること、(b)不活性化真菌バイオマスを、水酸化カルシウムを含む水溶液と接触させて、石灰化不活性化真菌バイオマスを形成すること、(c)石灰化不活性化真菌バイオマスを、硫酸アンモニウムを含む水溶液と接触させて、脱灰不活性化真菌バイオマスを形成すること、(d)脱灰不活性化真菌バイオマスを、アルカリ金属ハロゲン化物を含む水溶液と接触させて、浸酸不活性化真菌バイオマスを形成すること、(e)浸酸不活性化真菌バイオマスを、第1の架橋剤と接触させて、なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、(f)なめし不活性化真菌バイオマスを、第2の架橋剤およびポリマーの少なくとも1つを含む水溶液と接触させて、再なめし不活性化真菌バイオマスを形成すること、(g)再なめし不活性化真菌バイオマスを、加脂油と接触させて、加脂不活性化真菌バイオマスを形成すること、(h)非真菌織物裏張りを、不活性化真菌バイオマスに接着して、裏張り付き(backed)不活性化真菌バイオマスを形成すること、(i)裏張り付き不活性化真菌バイオマスを熱プレスして、熱プレス不活性化真菌バイオマスを形成すること、(j)熱プレス不活性化真菌バイオマスを乾燥させて、乾燥不活性化真菌バイオマスを形成すること、ならびに(k)仕上げワックス、仕上げ油、およびニトロセルロースの少なくとも1つを、乾燥不活性化真菌バイオマスに塗布して、耐久性シート材料を形成することを含む。
【0046】
実施形態では、方法は、工程(b)と(c)、工程(c)と(d)、および工程(e)と(f)からなる群から選択される任意の工程のペアの間に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、残留水溶液を除去することをさらに含んでもよい。
【0047】
実施形態では、工程(a)~(g)の少なくとも1つは、不活性化真菌バイオマスを水溶液とともにかき混ぜることを含んでもよい。
【0048】
実施形態では、工程(b)および(c)の少なくとも1つの水溶液は、界面活性剤または可溶化剤をさらに含みうる。界面活性剤または可溶化剤は、必要ではないが、ポリソルベート、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0049】
実施形態では、ポリマーは、必要ではないが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0050】
実施形態では、アルカリ金属ハロゲン化物は塩化ナトリウムでありうる。
【0051】
実施形態では、工程(d)~(f)の少なくとも1つの水溶液はpH調整剤を含みうる。pH調整剤は、必要ではないが、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸、またはこれらの組合せもしくは混合物、あるいは金属水酸化物を含みうる。
【0052】
実施形態では、第1の架橋剤は、アルミニウム塩、クロム塩、チタン塩、アルデヒド、またはこれらの組合せもしくは混合物を含みうる。第1の架橋剤は、必要ではないが、ケイ酸アルミニウムでありうる。
【0053】
実施形態では、第2の架橋剤は、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0054】
実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、アルギネート、デンプン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0055】
実施形態では、工程(f)の水溶液は、アニオン性染料をさらに含みうる。
【0056】
実施形態では、加脂油は、硫酸化ヒマシ油、ビーズワックス、ココナッツ油、植物油、オリーブ油、亜麻仁油、オレイン酸、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【0057】
実施形態では、加脂油はエマルションを含んでもよく、方法は、工程(g)と(h)の間に、加脂油を酸と接触させて、エマルションを解離させることをさらに含んでもよい。
【0058】
実施形態では、仕上げワックスは、カルナウバワックス、カンデリラワックス、ならびにこれらの組合せおよび混合物からなる群から選択されうる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の実施形態は一般に、真菌バイオマスを含む耐久性シート材料の生成に関する。ある特定の実施形態では、耐久性シート材料は、制御、工学設計、および/または調節された熱特性を有しうる。第1の非限定例としては、本発明の耐久性シート材料の熱特性が、耐久性シート材料中の空気バブルのサイズ、数、および/または空間的分布を制御することによって、制御、工学設計、および/または調節されうる。第2の非限定例としては、本発明の耐久性シート材料の熱特性が、所望の熱特性(例えば、熱容量、熱伝導率、熱浸透率、およびこれらの組合せ)を有する熱ドーパントを加え、これによって耐久性シート材料の全体としての同じ熱特性を改質することによって、制御、工学設計、および/または調節されうる。第3の非限定例としては、本発明の耐久性シート材料の熱特性が、耐久性シート材料中に含まれる熱ドーパントの質量、体積、厚さ、空間的分布等を制御し、これによって、耐久性シート材料における、および耐久性シート材料を通じた熱交換に、工学設計または設計された空間的パターンをもたらすことによって、制御、工学設計、および/または調節されうる。
【0060】
本発明の実施形態は、無処置凝集性真菌バイオマス(例えば、表面発酵プロセスもしくは任意の他の好適なプロセスによって生成された真菌バイオマット)、サイズ低減もしくは均質化真菌バイオマス、または真菌バイオマスの任意の他の物理的形態、とりわけ糸状菌バイオマスからの、真菌織物材料、特に真菌皮革類似物の製造を提供する。本発明の材料は一般に、不活性化真菌バイオマスと、ポリマー、可塑剤、架橋剤、および染料からなる群から選択される成分との両方を含み、本発明の方法によって、このような成分を、不活性化真菌バイオマスに導入して、所望の化学、物理、および/または熱特性を有する材料を生成することができる。本発明の材料は一般に、従来の織物と同じまたは同様の用途における使用に好適な、耐久性シート材料として提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図5図5は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態による、真菌織物材料を作製するための方法の一般化概略図である。
図7図7は、本発明の実施形態による、グリセロール含量の関数としてのMK7皮革類似材料の引張強さのグラフである。
図8図8は、本発明の実施形態による、グリセロール含量の関数としてのMK7皮革類似材料の破断ひずみのグラフである。
図9図9は、本発明の実施形態による、グリセロール含量の関数としてのMK7皮革類似材料の膨潤度のグラフである。
図10図10は、本発明の実施形態による、グリセロール含量の関数としてのMK7皮革類似材料の浸漬後の質量損失のグラフである。
図11図11は、本発明の実施形態による、装填比の関数としてのMK7皮革類似材料の引張強さのグラフである。
図12図12は、本発明の実施形態による、装填比の関数としてのMK7皮革類似材料の破断ひずみのグラフである。
図13図13は、本発明の実施形態による、装填比の関数としてのMK7皮革類似材料の膨潤度のグラフである。
図14図14は、本発明の実施形態による、装填比の関数としてのMK7皮革類似材料の浸漬後の質量損失のグラフである。
図15図15は、本発明の実施形態による、ポリビニルアルコール:キトサン比の関数としてのMK7皮革類似材料の引張強さのグラフである。
図16図16は、本発明の実施形態による、ポリビニルアルコール:キトサン比の関数としてのMK7皮革類似材料の破断ひずみのグラフである。
図17図17は、本発明の実施形態による、ポリビニルアルコール:キトサン比の関数としてのMK7皮革類似材料の膨潤度のグラフである。
図18図18は、本発明の実施形態による、ポリビニルアルコール:キトサン比の関数としてのMK7皮革類似材料の浸漬後の質量損失のグラフである。
図19図19A、19B、19Cおよび19Dは、本発明の実施形態による、従来の家庭用ブレンダーでそれぞれ10秒、20秒、40秒および60秒間ブレンドした後のサイズ低減された真菌粒子のヒストグラムである。
図20図20は、本発明の実施形態による、装填比の関数としてのブレンドオーバーラン、加熱オーバーラン、全体的オーバーラン、および真菌粒子の水中溶液の密度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「生分解性」という用語は、所与の条件のセット(例えば、ISO 20136:2017「Leather--determination of degradability by micro-organisms」に定められた条件)のもとで、「真の」(すなわち動物の)皮革よりも迅速に生分解する材料を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「膨潤度」という用語は、固体が液体で飽和したときの、固体アイテムの質量における相対的な変化の量を指す。非限定例としては、乾燥時には200gの質量、水によって飽和したときは300gの質量を有する固体アイテムは、50%または0.5の水中膨潤度を有する。本明細書において、液体を明示的に識別せずに「膨潤度」という用語が使用される場合、液体は水であると仮定してもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「耐久性」という用語は、少なくとも約5N/mmの引裂強さ、少なくとも約5Nの引裂き力、および少なくとも約1.5MPaの引張強さの少なくとも1つを有する材料を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「真菌バイオマス」という用語は、任意の好適なプロセスによって培養、発酵、または増殖された真菌の塊を指す。真菌バイオマスは、表面発酵方法、液中発酵方法、固体基質液中発酵(SSSF)方法、および参照によって全体が本明細書に組み込まれる、PCT出願公報WO2019/099474(「’474公報」)に開示される方法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知である、および本明細書に開示される複数の方法のいずれかによって生成されうることを、明白に理解されるべきである。
【0066】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「ハイドレザー」および「真の皮革」という用語は互換的であり、それぞれ、動物のハイドまたはスキンをなめすことによって作製される、耐久性のある可撓性材料を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「不活性化」という用語は、好適な不活性化手段、例えば、煮沸すること、水蒸気を当てること、すすぐこと、放射線照射すること、凍結させること、少なくとも70%エタノールの水溶液により処理すること、エタノール蒸気により処理すること、塩基により処理するか、もしくは他の方法でpHを上昇させること(加熱ありもしくはなしで)、酸により処理するか、もしくは他の方法でpHを低下させること(加熱ありもしくはなしで)、または機械的に崩壊させるか、もしくは破壊すること(例えば、ブレンドするか、もしくは他の方法でサイズ低減させること)によって殺菌された、またはそうでなければ、活発に増殖しないようにされている真菌バイオマスを指す。真菌バイオマスは、サイズ低減、石灰化、または脱灰工程などの別のプロセス工程中に、これらと組み合わせて、および/またはこれらの結果として、不活性化されてもよいことを、明白に理解されるべきである。
【0068】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「浸透」という用語は、例えば、限定するものではないが、菌糸体からなる真菌バイオマット中の間隙空間に染み込んだポリマー溶液のように、溶液を固体材料の塊に染み込ませて、および/または飽和させて、溶液またはその一部が、固体材料の塊中に分散するようにすることを指す。理論によって束縛されるものではないが、ポリマーおよび可塑剤などの成分を含む溶液を、真菌菌糸体バイオマスに浸透させることで、硬化によって溶媒を除去した後に、バイオマス中に分散したこのような成分を有する織物材料が生じる。このような分散は、実質的に一様に分散しても、一様に分散しなくてもよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「装填比」という用語は、真菌織物組成物中の真菌バイオマスとポリマーとの重量比を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「浸漬時の質量損失」という用語は、固体アイテムによって吸収された液体の質量を無視した、液体中に浸漬させた後の固体アイテムによる質量損失の相対的な量を指す。非限定例としては、乾燥時に100グラムの質量を有し、水中に浸漬させた後には95グラムの質量(吸収された液体の質量は無視する)を有する固体アイテムは、5%の水中浸漬時の質量損失を有する。本明細書において、液体を明示的に識別せずに「浸漬時の質量損失」という用語が使用される場合、液体は水であると仮定してもよい。
【0071】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「シート」という用語は、全体的に平坦または平面的な形状、および大きな表面積と厚さとの比を有する、固体材料の層を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「タンニン」という用語は一般に、タンパク質構造との強い結合を形成する任意の分子、より詳細には、ハイド皮革に塗布した場合、スキンのコラーゲン構造内のタンパク質部分に強く結合して、皮革の強さおよび耐分解性を改善する分子を指す。最も一般的に使用されるタンニンのタイプは、植物タンニン、すなわち、樹木(tree)および草木(plant)から抽出されたタンニン、ならびに硫酸クロム(III)などのクロムタンニンである。本明細書においてこの用語が使用されるタンニンの他の例としては、改質天然由来ポリマー、バイオポリマー、およびクロム以外の金属の塩、例えば、ケイ酸アルミニウム(ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸アルミニウムカリウム等)が挙げられる。
【0073】
ここで図1を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法100の一実施形態が図示されている。図1に図示される方法100の第1の工程110において、限定するものではないが、これらすべての全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2017年2月28日に出願されたPCT出願PCT/US2017/020050(「’050出願」)、2018年8月29日に出願されたPCT出願PCT/US2018/048626(「’626出願」)、2019年2月27日に出願された米国仮特許出願62/811,421(「’421出願」)、および’474公報に記載される方法を含めた、複数の好適な方法のいずれかによって、真菌バイオマスを生成する。’050出願、’626出願、および’421出願に記載されるように、真菌バイオマスは、人工培地において表面発酵によって増殖して、バイオマットと呼ばれる相互に編まれた(interwoven)か、または相互に接続した菌糸体の凝集構造を形成しうる。’050出願、’626出願、および’421出願に記載される方法によれば、実施形態では、事前に選択された炭素対窒素の比を有する増殖培地を提供することによって、真菌バイオマスの油含有率および/または脂質含有率を制御することが望ましい場合がある。特に、真菌バイオマスがある特定の脂質もしくは油を、またはある特定の量のそれらを生成することで、真菌織物材料は、ある特定の望ましい材料の特徴、例えば、耐水性の改善、コンディショニング要件の減少等を有しうるが、このような特徴は、実施形態では、約5~約20、または約7~約15でありうる、真菌増殖培地における事前に選択された炭素対窒素のモル比を提供することによって、制御、工学設計、または調節に従いうる。一部の実施形態では、真菌バイオマスによるある特定の脂質または油、例えば、オレイン酸、リノール酸、エイコセン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等の生成によって、そうでなければ本発明の実践には好適でないことがある、ある特定のポリマー、溶媒等の使用が可能になることがあり、これによって、そうでなければ達成できないことがある真菌織物材料の特性が提供され、または追加のもしくは代替的な、この種類の相乗効果が提供されうる。
【0074】
図1に図示される方法100にあってもよい、第2の工程120において、真菌バイオマスを、非限定例としては、加工すること(例えば、ブレンダー、フードプロセッサー、または同様のサイズ低減装置において)、圧縮すること(例えば、可動式ジョー、ロール、ジャイレートリーコーン、または同様の圧縮装置によって)、衝突させること(例えば、ハンマー、材料の高速ジェット、ローラー、または同様の衝突装置によって)、および噴霧乾燥させること等を含みうる、任意の好適な方法によってサイズ低減させてもよい。サイズ低減工程は、任意の好適な時間の長さ(例えば2分)の間、任意の好適な装置(例えばブレンダー)において行われうる。サイズ低減工程の間に、真菌バイオマスの相互に接続しているか、または相互に編まれた、凝集性菌糸体ネットワークの少なくとも一部が、崩壊しうる、または破壊されうる。
【0075】
図1に図示される方法100の第3の工程130において、真菌バイオマスを、合成ポリマーおよび/またはバイオポリマーの溶液と混合する。合成ポリマーは、水であってもよいがその必要はない、選択された溶媒に可溶な任意の合成ポリマーであってよく、非限定例としては、合成ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、低密度および/もしくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ならびに/または様々なブランド名で販売されている1種もしくは複数の合成ポリマー(例えば、ベークライト、ケブラー、マイラー、ネオプレン、ノーメックス、オーロン、リルサン、テクノーラ、テフロン、トワロン、ウルテム、ベクトラン、バイトン、ザイロン等)のいずれかでありうる。バイオポリマーは、動物、草木、または真菌によって天然に生成される任意のポリマー分子であってよく、非限定例としては、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、フィブロイン、ヒアルロン酸、ケラチン、アルギネート、デンプン、およびこれらの組合せが挙げられる。実施形態では、この溶液(あるいは、同じ工程、または先行するもしくは後続の工程において、バイオマットを組み合わせる別の溶液)は、追加の成分、例えば非限定例としては、可塑剤[例えば、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油から)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物等]ならびに/または架橋剤(ホモ二官能性架橋剤、ヘテロ二官能性架橋剤、光反応性架橋薬剤、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せ)も含みうる。サイズ低減工程(存在するならば)と混合工程とは、同時に行うことも、任意の順序において続けて行うこともできることを、明白に理解されるべきである。
【0076】
図1に図示される方法100の第4の工程140において、典型的には高温(非限定例としては、約90℃~約100℃)において、バイオマス/溶液混合物を撹拌する。撹拌後、バイオマス/溶液混合物を適宜、染料とさらに混合して、所望の色を真菌織物材料に提供してもよい。一部の実施形態では、プロセスにおけるより早期に、染料を加えてもよい。
【0077】
図1に図示される方法100の第5の工程150において、バイオマット/溶液混合物を硬化させるが、所望の形状に注型した後であってもよい。硬化工程は、乾燥または化学反応の開始を伴ってもよく、溶液の溶媒を飛ばしてもよい。
【0078】
図1に図示される方法100の第6の工程160において、硬化した材料を熱プレスして、所望の真菌織物材料を形成する。実施形態では、真菌織物材料は、皮革などの従来の織物材料の物理的、機械的、および/または審美的特徴を模倣した、または綿密に似通った、少なくとも1つの物理的、機械的、および/または審美的特徴を有しうる。
【0079】
本発明の方法のある特定の実施形態では、真菌バイオマスをサイズ低減する工程(例えば、図1に図示される第2の工程120)を省略してもよい。一部のこのような実施形態では、バイオマス(例えば、’050出願、’626出願、および/または’421出願に記載される方法によって生成されたバイオマット)は、事前にサイズ低減されていても、されていなくてもよい。他の実施形態では、使用するバイオマスは、当技術分野において公知であり、記載された液中発酵方法によって生成された真菌ペーストなど、サイズ低減を必要としないバイオマスであってもよい。
【0080】
ここで図2を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法200の別の実施形態が図示されている。図2に図示される方法200の第1の工程210において、’050出願、’626出願、’421出願、および’474公報に記載される方法を含むがこれらに限定されない、複数の好適な方法のいずれかによって、真菌バイオマスを生成し、加工する。バイオマスを煮沸し、すすぎ、放射線照射し、かつ/もしくはプレスして、微生物を不活性化してもよく、かつ/または過剰な水および/もしくは他の液体を除去してもよい。特に、後の工程を実行する前に、ある期間バイオマスを保管することが望ましいか、または必要がある場合、バイオマスを凍結させてもよく、これによって、バイオマスの使用可能な「貯蔵寿命」が延長される。
【0081】
図2に図示される方法200の第2の工程220において、真菌バイオマスを解凍し(事前に凍結させた場合)、非限定例としては、ブレンダー、フードプロセッサー、ミル、超音波処理器、または同様のサイズ低減装置において加工することを含みうる、任意の好適な方法によってサイズ低減させ、水および適宜顔料とブレンドし、または他の方法で均質化させて、所望の色を真菌織物材料に提供する。サイズ低減サブ工程を、任意の好適な時間の長さ(例えば2分)の間、任意の好適な装置(例えばブレンダー)において行ってもよい。ブレンド/均質化サブ工程は、粘性の実質的に均質な真菌ペーストを生成する。サイズ低減サブ工程およびブレンド/均質化サブ工程を、同時に、同じ容器において続けて、または異なる容器において続けて行ってもよいことを明白に理解されるべきであり、非限定例としては、サイズ低減サブ工程の前に、水および適宜顔料を、真菌バイオマスとともにブレンダーに加えてもよく、これらの成分をブレンダーにおいて同時にブレンドしてもよく、これによって、サイズ低減サブ工程とブレンド/均質化サブ工程とが、同じ容器において同時に行われる。一部の実施形態では、真菌バイオマスのサイズ低減は、例えば、真菌の細胞構造が崩壊することによって、真菌バイオマスの不活性化ももたらしうる。
【0082】
図2に図示される方法200にあってもよい、第3の工程230において、粘性の実質的に均質なペーストを、非限定例としてはかき混ぜおよび真空処理の1つまたは複数を含みうる、任意の好適な方法によって脱ガスする。真菌材料を脱ガスすることは、ユーザーをより審美的に満足させる、および/または再現される材料(例えば真の皮革)により類似した、テクスチャまたは「感触」を含むがこれらに限定されない、完成した真菌織物生成物の品質の改善を提供しうる。一部の実施形態では、脱ガスすることを省略してもよく、特に、一部の実施形態では、ある特定の望ましい熱特性または断熱特性が、完成した真菌織物材料に付与されうるため、少なくとも一部の空気バブルまたはポケットを、真菌ペーストに残すことが望ましい場合もある。
【0083】
図2に図示される方法200の第4の工程240において、真菌ペーストを、選択された溶媒中のポリマーの溶液と混合する。溶媒は、必要ではないが、水でありうる。ポリマーは、必要ではないが、バイオポリマー、すなわち、動物、草木、または真菌によって天然に生成される任意のポリマー分子であってよく、非限定例としては、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、フィブロイン、ヒアルロン酸、ケラチン、アルギネート、デンプン、およびこれらの組合せが挙げられる。実施形態では、この溶液(あるいは、同じ工程、または先行するもしくは後続の工程において、バイオマットを組み合わせる別の溶液)は、バイオポリマーに加えて、またはバイオポリマーの代わりに、溶媒に可溶な合成ポリマー[例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、低密度および/もしくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ならびに/または様々なブランド名で販売されている1種もしくは複数の合成ポリマー(例えば、ベークライト、ケブラー、マイラー、ネオプレン、ノーメックス、オーロン、リルサン、テクノーラ、テフロン、トワロン、ウルテム、ベクトラン、バイトン、ザイロン等)のいずれかを含みうる。さらなる実施形態では、溶液は、1種または複数の追加の成分、例えば、可塑剤[例えば、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油から)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物等]、架橋剤(ホモ二官能性架橋剤、ヘテロ二官能性架橋剤、光反応性架橋薬剤、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せ)、可溶化剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)、ならびに/またはpH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)を含みうる。
【0084】
溶液は、ポリマーおよび溶媒と、適宜1種または複数の追加の成分とを容器内で組み合わせて、組合せを撹拌しながら加熱することによって作製されうる。溶液が可溶化剤および/またはpH調整剤を含む実施形態では、これらのいずれかまたは両方は、他の成分を加熱および撹拌した後に、溶液に加えてもよい。好ましくは、ポリマー(バイオポリマー、合成ポリマー、またはこれらの組合せ)は、溶液を適宜脱ガスされた真菌ペーストと混合する前に、完全に溶媒に溶解させる。混合物は、混合物を確実に実質的に均質にするのに十分な時間、例えば約30分~約45分、加熱(例えば、約90℃まで、および/もしくは沸騰するまで)ならびに/または撹拌されうる。
【0085】
図2に図示される方法200にあってもよい、第5の工程250において、第4の工程において生成された混合物を、非限定例としてはかき混ぜおよび真空処理の1つまたは複数を含みうる、任意の好適な方法によって脱ガスする。混合物を脱ガスすることは、ユーザーをより審美的に満足させる、および/または再現される材料(例えば真の皮革)により類似した、テクスチャまたは「感触」を含むがこれらに限定されない、完成した真菌織物生成物の品質の改善を提供しうる。一部の実施形態では、脱ガスすることを省略してもよく、特に、一部の実施形態では、ある特定の望ましい熱特性または断熱特性が、完成した真菌織物材料に付与されうるため、少なくとも一部の空気バブルまたはポケットを、混合物に残すことが望ましい場合もある。
【0086】
図2に図示される方法200の第6の工程260において、真菌混合物を硬化させるが、所望の形状(例えば、平坦な、またはテクスチャ化された型)に注型した後であってもよい。硬化工程は、硬化または化学反応の開始を伴っても、伴わなくてもよく、溶液の溶媒を飛ばしても、飛ばさなくてもよい。硬化工程は、周囲空気下で室温において行ってもよい。硬化は、硬化した材料の所望の質量(例えば、乾燥/硬化前の質量の約20%)および/または含水率を提供するのに十分な時間についての条件下で継続させてもよい。
【0087】
図2に図示される方法200にあってもよい、第7の工程270において、硬化した材料を熱プレスして、所望の真菌織物材料を形成してもよい。実施形態では、真菌織物材料は、皮革などの従来の織物材料の物理的、機械的、および/または審美的特徴を模倣した、または綿密に似通った、少なくとも1つの物理的、機械的、および/または審美的特徴を有しうる。熱プレスの温度(例えば約100℃)および/または時間(例えば約10分~約20分)は、所望の物理的、機械的、および/または審美的特徴を提供するように選択してもよい。次いで、真菌織物材料を、必要ではないが、織物裏張りに積層してもよく、これらの実施形態では、第4の工程の溶液の一部が、必要ではないが、真菌織物材料を織物裏張りに接着するための接着剤として利用されうる。
【0088】
一般に、図1および2に図示される方法では、真菌フィラメントのネットワークが互いに、ポリマー(例えばキトサン)と架橋剤(例えばクエン酸)との組合せによって架橋される。ポリマーと架橋剤とは、エステル化反応(真菌フィラメントおよび/もしくはポリマーのアルコール基と、架橋剤および/もしくは真菌フィラメントのカルボン酸基との間)ならびに/またはアミド化反応(真菌フィラメントおよび/もしくはポリマーのアミド基と、架橋剤および/もしくは真菌フィラメントのカルボン酸基との間)を介して、結合を形成することができる。これらの反応は、例えば、酸性条件および/または加熱(例えば熱プレス工程における)によって触媒されうる。グリセロールなどの可塑剤の使用によって、完成した真菌織物材料に可撓性を付与することができる。図1の方法は、無処置真菌バイオマスとサイズ低減真菌バイオマスとの両方を、併用して使用することができる。
【0089】
ここで図3を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法300の別の実施形態が図示されている。図3に図示される方法300の石灰化工程310において、不活性化真菌バイオマスを、成分の水性混合物または水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水性混合物または水溶液は、質量が典型的には真菌バイオマスの質量とほぼ同等である水性溶媒と、真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約6重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約3重量%の量の石灰化物質、最も一般的には水酸化カルシウム(すなわち消石灰)とを含む。水性混合物または水溶液は適宜、可溶化剤または界面活性剤、例えばポリソルベートを、真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約1重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.2重量%の量でさらに含みうる。かき混ぜは、約1分~約180分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約90分行ってもよい。
【0090】
工程310の前に、’050出願、’626出願、’421出願、および’474公報に記載される方法を含むがこれらに限定されない、複数の好適な方法のいずれかによって、真菌バイオマスが生成され、加工されていてもよく、煮沸し、すすぎ、放射線照射し、かつ/またはプレスして、微生物を不活性化してもよく、かつ/または過剰な水および/もしくは他の液体を除去してもよい。特に、後の工程を実行する前に、ある期間バイオマスを保管することが望ましいか、または必要がある場合、工程310の前に、バイオマスを凍結させてもよく、これによって、バイオマスの使用可能な「貯蔵寿命」が延長され、後に解凍されうる。
【0091】
図3に図示される方法300の工程310は、無処置真菌バイオマス、例えば、表面発酵によって生成された凝集性真菌バイオマットにおいて行ってもよく、または非限定例としては、ブレンダー、フードプロセッサー、ミル、超音波処理器、もしくは同様のサイズ低減装置において加工することを含みうる、任意の好適な方法によって事前にサイズ低減させた真菌バイオマスにおいて行ってもよい。任意のこのようなサイズ低減は、任意の好適な時間の長さ(例えば2分)の間、任意の好適な装置(例えばブレンダー)において行われうる。一部の実施形態では、サイズ低減の前に、真菌バイオマスが活性であってもよく、例えば、真菌の細胞構造を崩壊させることによって、サイズ低減の結果として、不活性化してもよい。より一般には、方法300のいずれか1つまたは複数の他の工程、例えば、石灰化工程310(真菌バイオマスのpHを、少なくとも約7まで、もしくは真菌を殺菌するのに十分に高い別のpHまで上昇させる)または後続の他の工程のいずれか(特に、高温において行われる場合)の間に、工程と組み合わせて、または工程の結果として、真菌バイオマスを不活性化してもよいことを、明白に理解されるべきである。
【0092】
図3に図示される方法300の脱灰工程320において、不活性化真菌バイオマスを、成分の水性混合物または水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水性混合物または水溶液は、質量が典型的には出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの質量の約半分の質量である水性溶媒と、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約6重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約3重量%の量の脱灰物質、最も一般的には硫酸アンモニウムとを含む。水性混合物または水溶液は適宜、可溶化剤または界面活性剤、例えばポリソルベートを、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約1重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.2重量%の量でさらに含みうる。かき混ぜは、約1分~約180分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約90分行ってもよい。
【0093】
図3に図示される方法300の浸酸工程330において、不活性化真菌バイオマスを、水性溶媒中のポリマーの溶液と混合する。ポリマーは、必要ではないが、バイオポリマー、すなわち、動物、草木、または真菌によって天然に生成される任意のポリマー分子であってよく、非限定例としては、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、フィブロイン、ヒアルロン酸、ケラチン、アルギネート、デンプン、およびこれらの組合せが挙げられる。実施形態では、この溶液(あるいは、同じ工程、または先行するもしくは後続の工程において、不活性化真菌バイオマスを組み合わせる別の溶液)は、バイオポリマーに加えて、またはバイオポリマーの代わりに、溶媒に可溶な合成ポリマー[例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、低密度および/もしくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ならびに/または様々なブランド名で販売されている1種もしくは複数の合成ポリマー(例えば、ベークライト、ケブラー、マイラー、ネオプレン、ノーメックス、オーロン、リルサン、テクノーラ、テフロン、トワロン、ウルテム、ベクトラン、バイトン、ザイロン等)のいずれかを含みうる。さらなる実施形態では、溶液は、1種または複数の追加の成分、例えば、可塑剤[例えば、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油から)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、およびこれらの組合せ]、架橋剤(ホモ二官能性架橋剤、ヘテロ二官能性架橋剤、光反応性架橋薬剤、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せ)、可溶化剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)、ならびに/またはpH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)を含みうる。不活性化真菌バイオマスの膨潤を防止するために、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば塩化ナトリウム)を提供してもよい。
【0094】
溶液は、ポリマーおよび溶媒と、適宜1種または複数の追加の成分とを容器内で組み合わせて、適宜組合せを加熱しながら、組合せをかき混ぜる、または撹拌することによって作製されうる。溶液が可溶化剤および/またはpH調整剤を含む実施形態では、これらのいずれかまたは両方は、他の成分を加熱および撹拌した後に、溶液に加えてもよい。好ましくは、ポリマー(バイオポリマー、合成ポリマー、またはこれらの組合せ)は、溶液を適宜脱ガスされた真菌ペーストと混合する前に、完全に溶媒に溶解させる。混合物は、混合物を確実に実質的に均質にするのに十分な時間、例えば約1分~約240分、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も典型的には約30分~約45分、または120分、加熱(例えば、約90℃まで、および/もしくは沸騰するまで)ならびに/または撹拌されうる。
【0095】
方法300の工程330において不活性化真菌バイオマスを加えるポリマー溶液は一般に、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの質量と概ねほぼ同等である質量の水性溶媒と、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスに対して、約0.01重量%~約10重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約1重量%の量のポリマーとを含む。他の成分は、工程330の間に存在する場合、任意の適当な量において提供してもよく、非限定例としては、可溶化剤またはpH調整剤を、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスに対して、約0.01重量%~約10重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.5重量%~約2.5重量%の量で提供してもよく、アルカリ金属ハロゲン化物を、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスに対して、約0.01重量%~約14重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約7重量%の量で提供してもよい。
【0096】
図3に図示される方法300のなめし工程340において、浸酸工程330からの不活性化真菌バイオマスを、架橋薬剤またはなめし剤を含む水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水溶液は、質量が典型的には出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの質量とほぼ同等である水性溶媒と、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約12重量%、最も一般的には約5重量%の量の架橋薬剤またはなめし剤、例えばクエン酸および/またはタンニン酸とを含む。かき混ぜは、約1分~約360分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約180分行ってもよい。
【0097】
図3には図示されていないが、方法300は、石灰化工程310、脱灰工程320、浸酸工程330、およびなめし工程340のいずれか1つまたは複数の後に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、過剰な水溶液を除去する、1つまたは複数のすすぎ工程を適宜含んでもよい。すすぎ工程は、不活性化真菌バイオマスを含有する容器(例えばシェーカーフラスコ)から過剰な水溶液を排出させること、容器を水で再充填すること、容器をかき混ぜること、および容器から水を排出させることを含んでもよい。
【0098】
図3に図示される方法300の可塑化工程350において、不活性化真菌バイオマスを、可塑剤を含む水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水溶液は、質量が典型的には出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの質量とほぼ同等である水性溶媒と、出発(すなわち工程310前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約50重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約25重量%の量の可塑剤、例えばグリセロールとを含む。かき混ぜは、約1分~約180分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約90分行ってもよい。一部の実施形態では、可塑化工程350は加脂工程であってもよく、すなわち、可塑剤は、硫酸化ヒマシ油、ビーズワックス、ココナッツ油、植物油、オリーブ油、亜麻仁油、オレイン酸、硫酸化魚油、硫酸化アブラナ油、大豆油、パーム油、脂肪酸、またはこれらの組合せなどの加脂油であってもよい。
【0099】
図3に図示される方法300の乾燥工程360において、不活性化真菌バイオマスを乾燥させるが、サイズ低減真菌バイオマスから生成する場合、所望の形状(例えば、平坦な、またはテクスチャ化された型)に注型した後であってもよい。乾燥工程は、化学反応の開始を伴っても、伴わなくてもよいが、一般に、残留する水、溶媒、および他の液体があれば、少なくともその大部分を不活性化真菌バイオマスから飛ばす。乾燥は、受動的(すなわち、室温において、ブロワー、ファン等を使用しない)であっても、能動的(すなわち、加熱下および/または強制空気、乾燥ミリング等の使用下)であってもよく、乾燥が能動的である場合、室温を上回る所望の温度、最も一般的には約80°Fまで温度を上昇させてもよく、かつ/または任意の好適な空気強制手段(例えば、ブロワー、ファン、強制空気脱水器等)を使用してもよい。一部の実施形態では、真菌材料の少なくとも一部を、型締めして、または他の方法でプレスして、収縮率を低下させてもよい。硬化は、硬化した材料の所望の質量(例えば、乾燥/硬化前の質量の約20%)および/または含水率を提供するのに十分な時間についての条件下で継続させてもよく、実施形態では、約1分~約2日、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約1日でありうる。
【0100】
図3に図示される方法300の熱プレス工程370において、不活性化真菌バイオマスを熱プレスして、所望の真菌織物材料を形成する。実施形態では、真菌織物材料は、皮革などの従来の織物材料の物理的、機械的、および/または審美的特徴を模倣した、または綿密に似通った、少なくとも1つの物理的、機械的、および/または審美的特徴を有しうるが、特に、熱プレス工程は、皮革様テクスチャを真菌織物材料に付与するように構成されうる。熱プレスの温度(例えば約100℃)および/または時間(例えば約1分~約20分、最も一般的には約10分)は、所望の物理的、機械的、および/または審美的特徴を提供するように選択してもよい。次いで、真菌織物材料を、必要ではないが、非真菌織物裏張りに積層してもよい。
【0101】
ここで図4を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法400の別の実施形態が図示されている。不活性化工程405において、真菌が活発に増殖および代謝しないように、真菌バイオマスを不活性化する。この不活性化は一般的に、真菌バイオマスが完全に沈むまたは包囲されるのに十分な容量の水中で、真菌バイオマスを煮沸することによって発動されうるが、この煮沸は典型的には、約1分~約60分、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約30分の期間、実施される。当然ながら、不活性化工程405はまた、任意の他の好適な手段によって、例えば、煮沸とともに、または煮沸せずに、放射線照射すること、凍結させること、サイズ低減すること、またはこれらの組合せによって実施してもよい。
【0102】
工程405の前に、’050出願、’626出願、’421出願、および’474公報に記載される方法を含むがこれらに限定されない、複数の好適な方法のいずれかによって、真菌バイオマスが生成され、加工されていてもよい。特に、後の工程を実行する前に、ある期間バイオマスを保管することが望ましいか、または必要がある場合、工程405の前に、バイオマスを凍結させてもよく、これによって、バイオマスの使用可能な「貯蔵寿命」が延長され、後に解凍されうる。
【0103】
図4に図示される方法400の工程405は、無処置真菌バイオマス、例えば、表面発酵によって生成された凝集性真菌バイオマットにおいて行ってもよく、または非限定例としては、ブレンダー、フードプロセッサー、ミル、超音波処理器、もしくは同様のサイズ低減装置において加工することを含みうる、任意の好適な方法によって事前にサイズ低減させた真菌バイオマスにおいて行ってもよい。任意のこのようなサイズ低減は、任意の好適な時間の長さ(例えば2分)の間、任意の好適な装置(例えばブレンダー)において行われうる。一部の実施形態では、サイズ低減の前に、真菌バイオマスが活性であってもよく、例えば、真菌の細胞構造を崩壊させることによって、サイズ低減の結果として、不活性化してもよい。
【0104】
工程405は一般に、水性溶媒に不活性化真菌バイオマスを溶解させること、混合すること、または懸濁させることも含み、可溶化剤または界面活性剤、例えばポリソルベートを、不活性化真菌バイオマスに加えること、および例えばかき混ぜることによって、可溶化剤または界面活性剤を、不活性化真菌バイオマスに組み合わせることも含んでもよい。水性溶媒の質量は一般に、不活性化真菌バイオマスの質量の約半分~約6倍、最も一般的には約3倍でありうる。可溶化剤または界面活性剤は、真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約1重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.2重量%の量で提供されうる。不活性化真菌バイオマスを水性溶媒と、および適宜可溶化剤または界面活性剤と組み合わせるためのかき混ぜまたは他の機械的操作は、約1分~約60分、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約30分の期間行われうる。
【0105】
図4に図示される方法400の石灰化工程415において、不活性化真菌バイオマスを、成分の水性混合物または水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水性混合物または水溶液は、質量が典型的には真菌バイオマスの質量とほぼ同等である水性溶媒と、真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約3重量%の量の石灰化物質、最も一般的には水酸化カルシウム(すなわち消石灰)とを含む。水性混合物または水溶液は適宜、可溶化剤または界面活性剤、例えばポリソルベートを、真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約1重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.2重量%の量でさらに含みうる。かき混ぜは、約1分~約300分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約150分行ってもよい。
【0106】
図4に図示される方法400の脱灰工程425において、不活性化真菌バイオマスを、成分の水性混合物または水溶液に加え、例えばシェーカーテーブル上でかき混ぜる。水性混合物または水溶液は、質量が典型的には出発(すなわち工程405前の)真菌バイオマスの質量の約半分の質量である水性溶媒と、出発(すなわち工程405前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約3重量%の量の脱灰物質、最も一般的には硫酸アンモニウムまたは塩化アンモニウムとを含む。水性混合物または水溶液は適宜、可溶化剤または界面活性剤、例えばポリソルベートを、出発(すなわち工程405前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約0.4重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.2重量%の量でさらに含みうる。かき混ぜは、約1分~約150分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約75分行ってもよい。
【0107】
図4に図示される方法400の浸酸工程435において、不活性化真菌バイオマスを、酸、最も一般的には塩酸または他のpH調整剤と混合する。十分なpH調整剤を加えて、約4.0以下、典型的には約0.5~約3.5、より典型的には約1.0~約3.0、いっそうより典型的には約1.5~約2.5、最も典型的には約2.0の標的pHを達成する。事前に選択された質量または容量の酸または液体溶液を加えることによって、この標的pHが達成される水性溶媒中の酸のモル濃度および/もしくは重量モル濃度、またはpH調整剤の濃度を選択することが、一般に望ましい。酸またはpH調整剤の水溶液は、真菌バイオマスの膨潤を防止するために、アルカリ金属ハロゲン化物、例えば塩化ナトリウムをさらに含んでもよく、アルカリ金属ハロゲン化物は、出発(すなわち工程405前の)真菌バイオマスに対して、約0.01重量%~約14重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約7重量%の量で存在しうる。不活性化真菌バイオマスを酸および/またはpH調整剤と、ならびに適宜アルカリ金属ハロゲン化物と一緒に、約1分~約180分、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約90分の期間かき混ぜてもよい。
【0108】
図4に図示される方法400のなめし工程445において、第1の架橋薬剤またはなめし剤を不活性化真菌バイオマスに加え、組合せを、例えばドラム内またはシェーカーテーブル上でかき混ぜる。架橋薬剤またはなめし剤は、実施形態では、アルデヒド、アルミニウム塩、クロム塩、またはチタン塩を含みうるが、一般的にはケイ酸アルミニウムを含みうる。架橋薬剤またはなめし剤は一般に、出発(すなわち工程405前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約15重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約1.5重量%~約7.5重量%の量で提供されうる。かき混ぜは、約1分~約180分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約30分~約150分行ってもよい。かき混ぜの間、実施形態では一般に約2.0~約6.0、典型的には約2.5~約5.5、より典型的には約3.0~約5.0、いっそうより典型的には約3.5~約4.5、最も典型的には約4.0である標的pHを達成および/または維持するために、塩基または他のpH調整剤、例えば水酸化ナトリウムを、1回または複数回のいずれかで一般的に加えてもよい。
【0109】
図4には図示されていないが、方法400は、石灰化工程415、脱灰工程425、およびなめし工程445のいずれか1つまたは複数の後に、不活性化真菌バイオマスを水によってすすいで、過剰な水溶液を除去する、1つまたは複数のすすぎ工程を適宜含んでもよい。すすぎ工程は、不活性化真菌バイオマスを含有する容器(例えばシェーカーフラスコ)から過剰な水溶液を排出させること、容器を水で再充填すること、容器をかき混ぜること、および容器から水を排出させることを含んでもよい。
【0110】
図4に図示される方法400の再なめし工程455において、第2の架橋薬剤またはなめし剤を不活性化真菌バイオマスに加え、組合せを、例えばドラム内またはシェーカーテーブル上でかき混ぜる。第2の架橋薬剤またはなめし剤は、実施形態では、例えばクエン酸を含んでもよく、出発(すなわち工程410前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約6重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約3重量%の量で提供されうる。かき混ぜは、約1分~約480分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約60分行ってもよい。
【0111】
再なめし工程455は、不活性化真菌バイオマスに、したがって完成した真菌織物材料に、追加の物質または特徴を付与するための、追加のサブ工程を適宜含んでもよい。第1の非限定例としては、不活性化真菌バイオマスを、本明細書に開示される任意のポリマーの水溶液と混合し、例えば、ドラム内またはシェーカーテーブル上でかき混ぜてもよい。ポリマーは、出発(すなわち工程410前の)真菌バイオマスの重量に対して、約0.01重量%~約30重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約0.5重量%~約5重量%の量で提供されうる。かき混ぜは、約1分~約480分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約60分行ってもよい。第2の非限定例としては、染料、例えばアニオン性染料を不活性化真菌バイオマスに加えてもよく、不活性化真菌バイオマスに所望の色を付与するのに十分な時間(典型的には約1分~約240分、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も典型的には約120分)、組合せを、例えばドラム内またはシェーカーテーブル上でかき混ぜてもよい。適宜の成分(例えば、ポリマー、染料等)の添加は、第2の架橋薬剤またはなめし剤の添加の前、後、または同時に行われうる。
【0112】
再なめし工程455の全体を通じて、酸、塩基、および/または他のpH調整剤を加えて、標的pHを維持してもよい。第1の非限定例としては、一部の実施形態では、約2.0~約6.0(より典型的には約2.5~約5.5、より典型的には約3.0~約5.0、より典型的には約3.5~約4.5、最も典型的には約4.0)の初期pHにおいて再なめし工程455を開始し、かき混ぜの間に、1または複数のアリコートにおいて塩基または他のpH上昇剤を加えることによって、約3.5~約7.5(より典型的には約4.0~約7.0、より典型的には約4.5~約6.5、より典型的には約5.0~約6.0、最も典型的には約5.5)まで、pHを徐々に上昇させることが望ましい場合がある。第2の非限定例としては、再なめし工程455がポリマーの添加を含む場合、一部の実施形態では、不活性化真菌バイオマスをポリマーと一緒にかき混ぜる間、約3.5~約7.5(より典型的には約4.0~約7.0、より典型的には約4.5~約6.5、より典型的には約5.0~約6.0、最も典型的には約5.5)のpHを維持することが望ましい場合がある。
【0113】
ポリマーは、必要ではないが、バイオポリマー、すなわち、動物、草木、または真菌によって天然に生成される任意のポリマー分子であってよく、非限定例としては、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、フィブロイン、ヒアルロン酸、ケラチン、アルギネート、デンプン、およびこれらの組合せが挙げられる。実施形態では、この溶液(あるいは、同じ工程、または先行するもしくは後続の工程において、不活性化真菌バイオマスを組み合わせる別の溶液)は、バイオポリマーに加えて、またはバイオポリマーの代わりに、溶媒に可溶な合成ポリマー[例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、低密度および/もしくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ならびに/または様々なブランド名で販売されている1種もしくは複数の合成ポリマー(例えば、ベークライト、ケブラー、マイラー、ネオプレン、ノーメックス、オーロン、リルサン、テクノーラ、テフロン、トワロン、ウルテム、ベクトラン、バイトン、ザイロン等)のいずれかを含みうる。さらなる実施形態では、溶液は、1種または複数の追加の成分、例えば、可塑剤[例えば、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油から)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物等]、架橋剤(ホモ二官能性架橋剤、ヘテロ二官能性架橋剤、光反応性架橋薬剤、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、およびこれらの組合せ)、可溶化剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)、ならびに/またはpH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、乳酸等)を含みうる。不活性化真菌バイオマスの膨潤を防止するために、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば塩化ナトリウム)を提供してもよい。
【0114】
溶液は、ポリマーおよび溶媒と、適宜1種または複数の追加の成分とを容器内で組み合わせて、適宜組合せを加熱しながら、組合せをかき混ぜる、または撹拌することによって作製されうる。溶液が可溶化剤および/またはpH調整剤を含む実施形態では、これらのいずれかまたは両方は、他の成分を加熱および撹拌した後に、溶液に加えてもよい。好ましくは、ポリマー(バイオポリマー、合成ポリマー、またはこれらの組合せ)は、溶液を不活性化真菌バイオマスと混合する前に、完全に溶媒に溶解させる。混合物は、混合物を確実に実質的に均質にするのに十分な時間、例えば約1分~約240分、最も典型的には約30分~約45分、または120分、加熱(例えば、約90℃まで、および/もしくは沸騰するまで)ならびに/または撹拌されうる。
【0115】
図4に図示される方法400の可塑化工程465において、可塑剤を不活性化真菌バイオマスに加え、組合せを、例えばドラム内またはシェーカーテーブル上でかき混ぜる。実施形態では、可塑化工程は加脂工程であってもよく、すなわち、可塑剤は、硫酸化ヒマシ油、ビーズワックス、ココナッツ油、植物油、オリーブ油、亜麻仁油、オレイン酸、硫酸化魚油、硫酸化アブラナ油、大豆油、パーム油、脂肪酸、またはこれらの組合せなどの加脂油を含んでもよく、任意の好適な量において提供されうる。かき混ぜは、約1分~約120分の間の任意の好適な時間、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、最も一般的には約60分行ってもよい。可塑剤は、可塑剤が伝統的な皮革加脂油である場合はとりわけ、エマルションとして提供してもよく、このような一部の実施形態では、可塑化工程465は、酸、例えば塩酸をエマルションに加えてエマルションを分割し、可塑剤の排出および除去を容易にすることによって終えてもよい。
【0116】
図4に図示される方法400の裏張り工程475において、非真菌織物材料の少なくとも1つの裏張り層を、不活性化真菌バイオマスに適用し、不活性化真菌バイオマスに接着する。非真菌織物材料は、実施形態では、アクリル系織物、アルパカ織物、アンゴラ織物、カシミア織物、コイア織物、綿織物、アイゼンガルン織物、麻織物、ジュート織物、ケブラー織物、リネン織物、マイクロ繊維織物、モヘア織物、ナイロン織物、オレフィン織物、パシュミナ織物、ポリエステル織物、ピーニャ織物、ラミー織物、レーヨン織物、シーシルク織物、シルク織物、シサル織物、スパンデックス織物、スパイダーシルク織物、およびウール織物のいずれか1つまたは複数を含みうる。接着剤は、任意の好適な、織物に使用される積層接着剤、例えばポリ酢酸ビニルであってよく、一部の実施形態では、任意の好適な量の架橋剤または可塑剤、例えばクエン酸を含みうる。
【0117】
図4に図示される方法400の熱プレス工程485において、不活性化真菌バイオマスを、非真菌織物裏張りと一緒に熱プレスする。実施形態では、真菌織物材料は、皮革などの従来の織物材料の物理的、機械的、および/または審美的特徴を模倣した、または綿密に似通った、少なくとも1つの物理的、機械的、および/または審美的特徴を有しうるが、特に、熱プレス工程は、皮革様テクスチャを真菌織物材料に付与するように構成されうる。熱プレスの温度(例えば約100℃)および/または時間(例えば約1分~約20分、最も一般的には約10分)は、所望の物理的、機械的、および/または審美的特徴を提供するように選択してもよい。
【0118】
図4に図示される方法400の乾燥工程495において、不活性化真菌バイオマスを乾燥させるが、所望の形状(例えば、平坦な、またはテクスチャ化された型)に注型して、真菌織物材料を形成した後であってもよい。乾燥工程は、化学反応の開始を伴っても、伴わなくてもよいが、一般に、残留する水、溶媒、および他の液体があれば、少なくともその大部分を不活性化真菌バイオマスから飛ばす。乾燥は、受動的(すなわち、室温において、ブロワー、ファン等を使用しない)であっても、能動的(すなわち、加熱下および/または強制空気の使用下)であってもよく、乾燥が能動的である場合、室温を上回る所望の温度、最も一般的には約80°Fまで温度を上昇させてもよく、かつ/または任意の好適な空気強制手段(例えば、ブロワー、ファン、強制空気脱水器等)を使用してもよい。一部の実施形態では、真菌材料の少なくとも一部を、型締めして、または他の方法でプレスして、収縮率を低下させてもよい。硬化は、硬化した材料の所望の質量(例えば、乾燥/硬化前の質量の約18%)および/または含水率を提供するのに十分な時間についての条件下で継続させてもよく、実施形態では、約1分~約2日、最も一般的には約1日でありうる。
【0119】
図4には図示されていないが、方法400は、少なくとも1つの追加のポスト加工工程または最終ハンドリング工程を含んでもよい。特に、1種または複数の伝統的な皮革仕上げワックスもしくは油(例えば、カルナウバワックス、カンデリラワックス)、またはニトロセルロースを、任意の好適な量において、任意の好適な時間、真菌織物材料に加えてもよい。
【0120】
ここで図5を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法500の別の実施形態が図示されている。図5に図示される方法500の不活性化工程510において、例えば、図4に図示される方法400の不活性化工程405に関して本明細書に記載されるように、真菌バイオマスを不活性化する。図5に図示される方法500の石灰化工程520において、例えば、図3に図示される方法300の石灰化工程310、および/または図4に図示される方法400の石灰化工程415に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを石灰化させる。図5に図示される方法500の脱灰工程530において、例えば、図3に図示される方法300の脱灰工程320、および/または図4に図示される方法400の脱灰工程425に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを脱灰させる。
【0121】
図5に図示される方法500の浸酸工程540において、例えば、図3に図示される方法300の浸酸工程330、および/または図4に図示される方法400の浸酸工程435に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを浸酸する。しかしながら、他の実施形態の浸酸工程に対する、図5に図示される方法500の浸酸工程540の1つの差異は、少なくとも2アリコートの架橋剤、例えばタンニン酸を、不活性化真菌バイオマスとポリマー溶液との組合せに、またはその逆で、不活性化真菌バイオマスを、第1のアリコートの架橋剤に接触させる前に、または第1のアリコートの架橋剤に接触させるのと同時に、または第1のアリコートの架橋剤に接触させた後であるが、第2のアリコートの架橋剤に接触させる前に、または第2のアリコートの架橋剤に接触させるのと同時に、または第2のアリコートの架橋剤に接触させた後に、ポリマー溶液に接触しうるように加えることにある。この方法では、図5の方法500では、ある意味、浸酸となめしと再なめしとの工程、例えば、方法300の工程330と340、および/または方法400の工程435と445と455を、浸酸となめしと再なめしとのサブ工程を含む単一工程に組み合わせてもよい。
【0122】
図5に図示される方法500の中和工程550において、大部分の実施形態では塩基性pH中和剤、例えば重炭酸ナトリウムであるが、一部の実施形態では酸性pH中和剤であってもよいpH調整剤に、不活性化真菌バイオマスを接触させることによって、不活性化真菌バイオマスのpHを中和する。pH中和剤は、水溶液の一部として提供してもよく、(必要ではないが、)約7のpHを提供するのに好適な量において提供してもよい。他の工程と同様に、中和工程550は、例えばシェーカーフラスコ中で、かき混ぜることによって行われうる。
【0123】
図5に図示される方法500の可塑化工程560において、例えば、図3に図示される方法300の可塑化工程350および/または図4に図示される方法400の可塑化工程465に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを可塑化させる。図5に図示される方法500の熱プレス工程570において、例えば、図3に図示される方法300の熱プレス工程370、および/または図4に図示される方法400の熱プレス工程485に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを熱プレスする。
【0124】
ここで図6を参照すると、真菌織物材料を作製するための方法600の別の実施形態が図示されている。図6に図示される方法600の不活性化工程610において、例えば、図4に図示される方法400の不活性化工程405に関して本明細書に記載されるように、真菌バイオマスを不活性化する。別個に、図6に図示される方法600のポリマー溶液調製工程615において、例えば、図3に図示される方法300の浸酸工程330に関して本明細書に記載されるように、ポリマー溶液を調製する。図6に図示される方法600の組合せ工程620において、例えば、図3に図示される方法300の浸酸工程330、および/または図4に図示される方法400の浸酸工程435に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスをポリマー溶液と組み合わせる。図6に図示される方法600の初期乾燥工程630において、例えば、図3に図示される方法300の乾燥工程360、および/または図4に図示される方法400の乾燥工程495に関して本明細書に記載されるように、不活性化真菌バイオマスを乾燥させる。図6に図示される方法600の積層工程640において、不活性化真菌バイオマスを、任意の好適な方法によって、1つまたは複数の他の不活性化真菌バイオマス、および/または非真菌織物材料の層と一緒に積層して、複合真菌シートを形成する。図6に図示される方法600の熱プレス工程650において、例えば、図3に図示される方法300の熱プレス工程370、および/または図4に図示される方法400の熱プレス工程485に関して本明細書に記載されるように、複合真菌シートを熱プレスする。図6に図示される方法600の仕上げ工程660において、1種または複数の伝統的な皮革仕上げワックスもしくは油(例えば、カルナウバワックス、カンデリラワックス)、またはニトロセルロースを、任意の好適な量において、任意の好適な時間、複合真菌シートに加えてもよい。図6に図示される方法600の最終乾燥工程670において、例えば、図3に図示される方法300の乾燥工程360、および/または図4に図示される方法400の乾燥工程495に関して本明細書に記載されるように、複合真菌シートを乾燥させて、真菌織物材料を形成する。
【0125】
一般に、図3~5に図示される方法は、かき混ぜながら実施して、化学種の真菌構造への拡散を増大させ、完成した真菌織物材料の感触を柔らかくする、一連の化学的洗浄を利用している。これらの方法の石灰化工程では、真菌構造のマトリックスを膨潤させ、ある特定の真菌タンパク質を切断して、化学種を真菌により良好に分散させ、後のプロセス工程における反応のための化学活性サイトを露出させる。このとき、植物タンニンが効力を生じて、大きな水素結合ネットワークを形成することができ、これによって、真菌構造が架橋され、真の皮革の強さ、色、匂い、および/または化学的安定性の特徴が提供される。図1および2に図示される方法におけるように、強化性ポリマー(例えばキトサン)および別の非タンニン架橋剤(例えばクエン酸)を用いることができ、図1および2に関して上に記載される効果を有することに加えて、強化性ポリマーと非タンニン架橋剤とが、タンニン架橋剤とともに複合体を形成することができる。同様に、可塑剤(例えばグリセロール)も、方法に組み込むことができる。
【0126】
限定するものではないが、子嚢菌および担子菌からなる群から選択される門に属する1種もしくは複数の糸状菌;クロボキン目、ベニタケ目、ハラタケ目、チャワンタケ目、およびボタンタケ目からなる群から選択される目に属する1種もしくは複数の糸状菌;クロボキン科、サンゴハリタケ科、タマチョレイタケ科、マイタケ科、シメジ科、モエギタケ科、ホコリタケ科、ハラタケ科、ヒラタケ科、タマバリタケ科、ツキヨタケ科、セイヨウショウロ科、アミガサタケ科、ハナビラタケ科、ベニアワツブタケ科、およびノムシタケ科からなる群から選択される科に属する1種もしくは複数の糸状菌;ハラタケ属、ユキワリ属、ノウタケ属、ノムシタケ属、カニタケ属、ツリガネタケ属、フザリウム属、マンネンタケ属、マイタケ属、サンゴハリタケ属、クリタケ属、シロタモギタケ属、アミガサタケ属、スギタケ属、ヒラタケ属、タマチョレイタケ属、ハナビラタケ属、モエギタケ属、セイヨウショウロ属、ウスティラゴ属からなる群から選択される属に属する1種もしくは複数の糸状菌;ならびに/またはウスティラゴ・エスクレンタ、ヤマブシタケ、アミヒラタケ、マイタケ、ブナシメジ、シロタモギタケ、ユキワリ、ナメコ、セイヨウオニフスベ、ツクリタケ、サケツバタケ、クリタケ、エリンギ、ヒラタケ、ヒラタケ変種コロンビヌス、チャセイヨウショウロ、アミガサタケ、トガリアミガサタケ、モルケラ・インポルトゥナ、ハナビラタケ、フザリウム・ベネナタム、MK7 ATCC寄託預け入れ番号PTA-10698、カニタケ、およびサナギタケからなる群から選択される種に属する1種もしくは複数の糸状菌を含む、任意の1種または複数の糸状菌が、本発明の真菌織物材料を形成するために好適に使用されうることを、明白に理解されるべきである。
【0127】
本発明の実践では、ポリマー、可塑剤、および/または架橋剤がマットに染み込む、かつ/またはこれらによってマットが飽和するのに十分な時間、一般には少なくとも約1時間、不活性化真菌バイオマスを、ポリマー、可塑剤、および/または架橋剤の溶液に浸漬させるか、または溶液とともにかき混ぜる。溶液に浸漬させた、かつ/または溶液とともにかき混ぜた後、湿潤マットを溶液から取り出す(すぐに、過剰な溶液を、マットの1つまたは複数の表面から除去してもよい)。
【0128】
本発明の真菌織物材料における使用に好適な可塑剤としては、限定するものではないが、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油から)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにこれらの組合せおよび混合物が挙げられる。本発明の実践では、可塑剤は典型的には、非限定例として約50重量%、約37.5重量%、約25重量%、または約12.5重量%を含む、約0.5重量%~約50重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲の量で、真菌織物材料中に存在する。
【0129】
本発明の真菌織物材料における使用に好適なポリマーとしては、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、アルギネート、ならびにこれらの組合せおよび混合物が挙げられる。実施形態では、2種以上のポリマーが、約99:1~約1:99の任意の重量比、典型的には約99:1、約90:10、約80:20、約70:30、約60:40、約50:50、約40:60、約30:70、約20:80、約10:90、または約1:99、より典型的には約50:50において含まれうる。織物組成物の装填比は、約99:1~約1:99の任意の値、典型的には約99:1、約95:5、約90:10、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、約15:85、約10:90、約5:95、および約1:99、より典型的には約70:30をとりうる。
【0130】
本発明の真菌織物材料における使用に好適な架橋剤としては、限定するものではないが、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにこれらの組合せおよび混合物が挙げられる。実施形態では、真菌織物材料は、イソペプチド結合によって架橋されたタンパク質を含みうるが、その形成は、一部の実施形態では、トランスグルタミナーゼによって触媒されうる。
【0131】
本発明の真菌織物材料における、糸状菌、可塑剤、ポリマー、架橋剤、追加の成分等の相対的な量は、1つまたは複数の所望の物理的、機械的、感覚的(例えば、嗅覚、触覚等)、および/または審美的特徴を有する真菌織物材料が提供されるように選択されうる。実施形態では、匂い付き添加剤、例えば皮革用香料油を真菌織物材料に加えて、所望の嗅覚的特徴、例えば皮革様アロマを真菌織物材料に提供してもよい。
【0132】
糸状菌は、真菌織物材料の約20%~90%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲を占めうる。一部の実施形態では、糸状菌は、真菌織物材料の約25~85%、約30~80%、約35~75%を占めうる。例えば、非限定例において、一部の実施形態では、糸状菌が、真菌織物材料の約40重量%~約60重量%を占めうる。
【0133】
さらなる非限定例としては、1種または複数のポリマー(例えばキトサン)が、真菌織物材料の約1重量%~約40重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、または約5重量%~約20重量%を占めうる。第3の非限定例としては、1種または複数の架橋剤(例えばクエン酸)が、真菌織物材料の約0.01重量%~約8重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、または約0.05重量%~約6重量%、または約0.1重量%~約4重量%を占めうる。第4の非限定例としては、1種または複数の可塑剤(例えばグリセロール)は、真菌織物材料の約0.5重量%~約80重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲、または約9重量%~約60重量%、または約17.5重量%~約40重量%を占めうる。
【0134】
本発明の実施形態は、工学設計および/または調節された熱特性を有する真菌織物材料、特に真菌皮革類似材料を含む。第1の非限定例としては、真菌織物材料の熱浸透率、すなわち、真菌織物材料が熱を周囲と交換する比率が、本発明によって工学設計または調節されうる。第2の非限定例としては、真菌織物材料の熱伝導率、すなわち、真菌織物材料を通じて伝達される熱の分量が、本発明によって工学設計または調節されうる。第3の非限定例としては、熱容量、すなわち、温度の単位変化を生じるまでに、所与の質量の真菌織物材料に供給される熱の量が、本発明によって工学設計または調節されうる。真菌織物材料の体積熱容量、すなわち、ある容量の真菌織物材料が蓄積できる熱の分量が、本発明によって工学設計または調節されうる。真菌織物材料を熱的に工学設計および/または調節できると、真菌織物材料は所望の「熱触覚」を有することができ、これによって、使用者への「冷感」(すなわち、不良な熱特性を有する)という欠点に頻繁に見舞われる、かつ/または、例えば、真菌織物材料から作製された衣服の物品の着用者に不十分な断熱を提供する、先行技術の真菌織物材料または他の非動物織物材料を越えた大きな改善を、真菌織物材料が示し、したがって、本発明は、例えば、より大きな分量の熱を保持し、これによって、冬用衣服の物品における使用に好適な真菌織物を作製することを可能にする。本発明の1つのさらなる利点および便益は、従来の織物材料では達成可能でない、これらの2つ以上の組合せまたは他の熱特性を有しうる織物材料を生成できることにあり、例えば、1つの熱特性を上昇させながら、1つもしくは複数の他の熱特性を上昇させる、一定に保つ、もしくは減少させることができ、かつ/または1つの熱特性を一定に保ちながら、1つもしくは複数の他の熱特性を上昇させる、一定に保つ、もしくは減少させることができ、かつ/または1つの熱特性を減少させながら、1つもしくは複数の他の熱特性を上昇させる、一定に保つ、もしくは減少させることができる。
【0135】
本発明の真菌織物材料の熱特性は、真菌織物材料内に熱ドーパントを含むことによって、工学設計または調節されうる。本発明の真菌織物材料における使用に好適な熱ドーパントとしては、真菌織物材料の熱浸透率、熱伝導率、および熱容量の1つまたは複数を、熱ドーパントのない真菌織物材料と比較して改質する材料が挙げられる。このような熱ドーパントは、必ずしも限定するものではないが、公知の熱特性を有するポリマー、セラミック、および金属材料、ならびに/または所望の熱伝導特性および/もしくは熱浸透特性を有する任意の他の材料を含みうる。本発明における使用に好適な熱ドーパントのさらなる非限定例としては、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、エチレン酢酸ビニル、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムが挙げられる。一部の実施形態では、熱ドーパントは、事前に選択された熱プロファイルを生じるように、工学設計されたコーティング、ならびに/または、熱伝導材料および/または断熱材料の真菌織物材料全体にわたる工学設計された空間的分布を含みうる。
【0136】
本発明の実践では、熱ドーパントを、製造方法の任意の好適な時点において、真菌織物材料に加える、および/または導入することができる。第1の非限定例として、熱ドーパントを、ポリマー溶液において提供してもよく、すなわち、ポリマーおよび溶媒と組み合わせた後に、続いて真菌バイオマスと組み合わせてもよい。第2の非限定例として、製造方法のサイズ低減工程、および/またはブレンド/均質化工程の前に、または工程中に、熱ドーパントを、不活性化真菌バイオマス、水、および適宜顔料と組み合わせてもよい。第3の非限定例として、熱ドーパントを、真菌ペーストとポリマー溶液との混合物に、ペースト/ポリマー溶液混合物を撹拌および/または加熱しながら加えてもよい。第4の非限定例として、熱ドーパントを、一部の実施形態では、工学設計または設計された空間的パターンまたは構造の熱ドーパントを、真菌織物材料と一体化させてもよい。第5の非限定例として、例えば、シートを注型するトレイもしくは型に熱ドーパントを提供することによって、または注型後の真菌材料の表面上に、ドーパントの粒子を振りまく、もしくは他の方法で散布することによって、熱ドーパントを注型工程の前、または工程中に加えてもよい。第6の非限定例として、真菌織物材料が硬化した後に、熱ドーパントを真菌織物材料に加えてもよい。
【0137】
熱ドーパントの量は、真菌織物材料の他の材料特性(例えば、可撓性、引張強さ等)を損なうことなく、得られる真菌織物材料に所望の熱特性が提供されるように選択されうる。典型的には、熱ドーパントは、提供される場合、真菌織物材料の約0.1%~約25%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲を占めうる。一部の実施形態では、ドーパントは、真菌織物材料の約0.1~約20重量%、または約0.1~約15重量%において存在しうる。例えば、様々な実施形態では、ドーパントは、真菌織物材料の約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、または0.1~25の1/10刻みの重量パーセントのいずれかを占めうる。
【0138】
実施形態では、ポリマー溶液と混合した後に形成される真菌組成物を、熱ドーパントを含むスキャフォールドまたは基材と、少なくとも部分的にオーバーレイするように注型してもよい。実施形態では、注型シート中の真菌組成物およびスキャフォールドまたは基材の不均質な空間的分布が提供されるように、真菌組成物とスキャフォールドまたは基材との少なくとも一方に、力を適用してもよい。実施形態では、注型シート中のブレンド組成物および熱ドーパントの不均質な空間的分布が提供されるように、真菌組成物および熱ドーパントをそれぞれ選択的に、注型領域の所定の区域に適用してもよい。実施形態では、注型シートは、少なくとも第1の層と第2の層とを有し、第1の層が少なくとも真菌組成物の部分を含み、第2の層が少なくとも熱ドーパントの部分を含む、多層構造を含みうる。
【0139】
本発明の実施形態は、部分的にまたは完全に、本発明の真菌織物材料によって構築された衣服の物品を含む。このような衣服の物品は、非限定例としては、防護服、シャツ、パンツ、ショーツ、ジャケット、コート、ベルト、ハット、グローブ、靴、ブーツ、サンダル、フリップフロップ、腕時計ストラップ、およびエプロンが挙げられる。
【0140】
本発明の実施形態は、部分的にまたは完全に、本発明の真菌織物材料によって構築されたアクセサリーアイテムを含む。このようなアクセサリーアイテムは、非限定例としては、小銭入れ、札入れ、ケース、スーツケース、荷物アイテム、鞄、バックパック、およびヒップパックが挙げられる。
【0141】
本発明の実施形態は、部分的にまたは完全に、本発明の真菌織物材料によって構築された什器アイテムを含む。このような什器アイテムは、非限定例としては、椅子、リクライナー、長椅子、ソファ、ラブシート、およびオットマンが挙げられる。
【0142】
本発明の実施形態は、部分的にまたは完全に、本発明の真菌織物材料によって構築された被覆を含む。このような被覆は、非限定例としては、自動車用シート、航空機用シート、および電車用シート用の被覆が挙げられる。
【0143】
本発明による真菌織物材料は、所望の材料、機械的および/または物理的特性を特徴とするように製造されうる。第1の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、少なくとも約15MPa、もしくは約4MPa~約15MPa、またはこれらの値の任意の部分範囲でありうる、所望の引張強さを有するように製造されうる。第2の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、約50パーセント~約60パーセント、もしくは約10パーセント~約70パーセント、またはこれらの値の任意の部分範囲でありうる、所望の破断ひずみを有するように製造されうる。第3の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、約50パーセント~約60パーセント、もしくは約30パーセント~約120パーセント、またはこれらの値の任意の部分範囲でありうる、所望の膨潤度を有するように製造されうる。第4の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では約5パーセント以下でありうる、所望の浸漬時の質量損失を有するように製造されうる。第5の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、約25ナノメートル以下、約50ナノメートル以下、約75ナノメートル以下、約100ナノメートル以下、約125ナノメートル以下、約150ナノメートル以下、約175ナノメートル以下、約200ナノメートル以下、約225ナノメートル以下、約250ナノメートル以下、約275ナノメートル以下、約300ナノメートル以下、約325ナノメートル以下、約350ナノメートル以下、約375ナノメートル以下、約400ナノメートル以下、約425ナノメートル以下、約2マイクロメートル以下、約4マイクロメートル以下、約6マイクロメートル以下、約8マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約75マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約150マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、約250マイクロメートル以下、約300ナノメートル以下、約400マイクロメートル以下、約500マイクロメートル以下、および約750マイクロメートル以下でありうる、所望の平均真菌粒子サイズを有するように製造されうる。一部の実施形態では、真菌バイオマスは、少なくとも約1センチメートル、少なくとも約2センチメートル、少なくとも約3センチメートル、少なくとも約4センチメートル、少なくとも約5センチメートル、少なくとも約6センチメートル、少なくとも約7センチメートル、少なくとも約8センチメートル、少なくとも約9センチメートル、少なくとも約10センチメートル、少なくとも約20センチメートル、少なくとも約30センチメートル、少なくとも約40センチメートル、少なくとも約50センチメートル、少なくとも約60センチメートル、少なくとも約70センチメートル、少なくとも約80センチメートル、または少なくとも約90センチメートルの長さを有する真菌フィラメントを含みうる。第6の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、二峰性、およそ二峰性、三峰性、またはおよそ三峰性の粒子サイズ分布でありうる、所望のタイプの粒子サイズ分布を有するように製造されうる。第7の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では、約5N/mm~約25N/mm、またはこれらの値の任意の部分範囲でありうる、所望の引裂強さを有するように製造されうる。第8の非限定例として、真菌織物材料は、グレースケールにおいて少なくとも約4の、所望の湿潤摩擦、乾燥摩擦、および/またはキセノン光に対する色堅牢度を有するように製造されうる。第9の非限定例として、真菌織物材料は、実施形態では約5グラム-センチメートル以下でありうる、所望の曲げ剛性を有するように製造されうる。本発明の利点および便益の1つは、従来の織物材料では達成可能でない、これらのまたは他の材料的、機械的、および/または物理的特性の2つ以上の組合せ、例えば、高引裂強さ(一部の実施形態では、少なくとも約1N/mm、または少なくとも約2N/mm、または少なくとも約3N/mm、または少なくとも約4N/mm、または少なくとも約5N/mm、または少なくとも約6N/mm、または少なくとも約7N/mm、または少なくとも約8N/mm、または少なくとも約9N/mm、または少なくとも約10N/mm、または少なくとも約11N/mm、または少なくとも約12N/mm、または少なくとも約13N/mm、または少なくとも約14N/mm、または少なくとも約15N/mm、または少なくとも約16N/mm、または少なくとも約17N/mm、または少なくとも約18N/mm、または少なくとも約19N/mm、または少なくとも約20N/mm)と、低曲げ剛性(一部の実施形態では、約10グラム-センチメートル以下、または約9グラム-センチメートル以下、または約8グラム-センチメートル以下、または約7グラム-センチメートル以下、または約6グラム-センチメートル以下、または約5グラム-センチメートル以下、または約4グラム-センチメートル以下、または約3グラム-センチメートル以下、または約2グラム-センチメートル以下、または約1グラム-センチメートル以下)との組合せを有しうる織物材料を生成できることにある。
【0144】
一部の実施形態では、サイズ低減不活性化真菌バイオマスから作製され、いずれの非真菌織物裏張りも欠いている真菌皮革類似材料が提供されうる。このような真菌皮革類似材料は、以下の特性のいずれか1つまたは複数を有しうる:約1~約2mmまたは約1.15~約1.6mmの厚さ、約6~約12Nまたは約7.4~約10.5Nの引裂強さ、約3~約10N/mmまたは約4.7~約8.1N/mmの引張強さ、約1~約11g・cmの曲げ剛性、4~5の水滴下グレースケールレーティング、少なくとも4の光色堅牢度ブルーウールレーティング、乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング、および乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング。このような真菌皮革類似材料は、様々なテクスチャまたはエンボス加工を容易に呈することができる。
【0145】
一部の実施形態では、サイズ低減不活性化真菌バイオマスから作製され、一方の面に接着された非真菌織物裏張りを有する真菌皮革類似材料が提供されうる。このような真菌皮革類似材料は、以下の特性のいずれか1つまたは複数を有しうる:約1~約3mmまたは約1.95~約2.09mmの厚さ、約20~約50Nまたは約33~約37Nの引裂強さ、約3~約10N/mmまたは約5.8~約6.8N/mmの引張強さ、約1~約11g・cmの曲げ剛性、4~5の水滴下グレースケールレーティング、少なくとも4の光色堅牢度ブルーウールレーティング、乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング、および乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング。このような真菌皮革類似材料は、様々なテクスチャまたはエンボス加工を容易に呈することができる。
【0146】
一部の実施形態では、サイズ低減不活性化真菌バイオマスから作製され、2層の真菌材料の間に接着された非真菌織物層を有する複合真菌皮革類似材料(すなわち、真菌層の間に非真菌層が「サンドイッチされた」材料)が提供されうる。このような真菌皮革類似材料は、以下の特性のいずれか1つまたは複数を有しうる:約1~約4mmまたは約2.2~約2.8mmの厚さ、約25~約60Nまたは約34~約52Nの引裂強さ、約7~約14N/mmまたは約8.7~約11.4N/mmの引張強さ、約1~約11g・cmの曲げ剛性、4~5の水滴下グレースケールレーティング、少なくとも4の光色堅牢度ブルーウールレーティング、乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング、および乾燥時に4~5の摩擦色堅牢度グレースケールレーティング。このような真菌皮革類似材料は、様々なテクスチャまたはエンボス加工を容易に呈することができる。
【0147】
一部の実施形態では、不活性化真菌バイオマスから作製され、1つまたは複数の無処置または全バイオマット(例えば、表面発酵によって生成され、サイズ低減に供していないバイオマス)の形態を取り、いずれの非真菌織物裏張りも欠いている真菌皮革類似材料が提供されうる。このような真菌皮革類似材料は、以下の特性のいずれか1つまたは複数を有しうる:1つのバイオマット当たり約0.1~約1.5mmまたは1つのバイオマット当たり約0.5~約0.9mmの厚さ、1つのバイオマット当たり約1~約3Nの引裂強さ、1つのバイオマット当たり約3N/mmの引張強さ、約1~約11g・cmの曲げ剛性、および4~5の水滴下グレースケールレーティング。このような真菌皮革類似材料は、真の皮革の同じ品質を綿密に模倣した、温かさ、ドレープ適性、柔らかさ、外観、および匂いなどの利点を有することができる。
【0148】
一部の実施形態では、不活性化真菌バイオマスから作製された真菌皮革類似材料、およびその製造方法は、動物生成物を使用しないことに加えて、真の皮革に対する環境的な利点および便益を提供しうる。特に、本発明の製造方法は、6価クロム化合物などの、従来の皮革なめしプロセスにおいて使用される、毒性が高いか、または環境に有害な材料を、まったく発生させないか、または少なくともより少ない分量で発生させうる。加えて、本発明による皮革類似材料は、生分解性でありうる、すなわち、所与の条件のセットのもとで、真の皮革よりも迅速に生分解しうる。
【0149】
本発明の1つの特性は、様々な化学成分(ポリマー、架橋剤等)を、不活性化真菌バイオマスの菌糸体マトリックス中に浸透させることができる能力である。不活性化真菌バイオマスがサイズ低減真菌バイオマスである場合、この浸透は、浸透流体と接触している真菌粒子の表面積が大きいことの結果でありうる。不活性化真菌バイオマスが無処置または凝集性真菌バイオマス(例えば、表面発酵によって生成されたバイオマット)である場合、この浸透を、真菌バイオマスと流体との間の接触時間を延長すること、真菌バイオマスを流体と一緒にかき混ぜること、および真菌バイオマスと流体とに準大気圧または超大気圧を適用することなどのいずれか1つまたは複数によって達成してもよい。
【0150】
真菌バイオマスを含む耐久性シート材料を調製するための方法であって、(a)不活性化真菌バイオマスを、可塑剤、ポリマー、架橋剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1つの成分と組み合わせて、組合せ組成物を形成すること、(b)組合せ組成物を注型して、注型シートを形成すること、(c)注型シートから溶媒を除去すること、ならびに(d)注型シートを硬化させて、耐久性シート材料を形成することを含む、方法を提供することが、本発明の一態様である。この方法は、無処置凝集性バイオマス(例えば、表面発酵によって生成されたバイオマット)、またはサイズ低減真菌バイオマスのいずれかと併用して使用できることを、明白に理解されるべきである。
【0151】
実施形態では、工程(d)は、注型シートを乾燥させることを含んでもよい。
【0152】
実施形態では、工程(d)は、注型シート内で、または注型シートの表面で化学反応を開始させることを含んでもよい。
【0153】
実施形態では、方法は、天然繊維材料、合成材料、およびこれらの組合せの少なくとも1つを、ブレンド組成物に加えることをさらに含んでもよい。天然繊維材料は、必要ではないが、セルロース系材料を含みうる。天然繊維材料は、必要ではないが、綿繊維を含みうる。天然繊維材料および合成材料の少なくとも1つは、必要ではないが、複数の粒子、シート、またはこれらの組合せの形態でありうる。
【0154】
実施形態では、方法は、真菌バイオマスを不活性化して、不活性化真菌バイオマスを形成することをさらに含んでもよい。
【0155】
実施形態では、方法は、真菌バイオマスをサイズ低減させることをさらに含んでもよい。
【0156】
実施形態では、方法は、熱ドーパントを、不活性化真菌バイオマス、ブレンド組成物、および注型シートの少なくとも1つに加えることをさらに含んでもよい。
【0157】
真菌バイオマスを含む耐久性シート材料を調製するための方法であって、(a)不活性化真菌バイオマスを、可塑剤、ポリマー、架橋剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む溶液と接触させること、(b)バイオマスから溶媒を除去すること、ならびに(c)バイオマスを硬化させて、耐久性シート材料を形成することを含む、方法を提供することが、本発明の別の態様である。
【0158】
実施形態では、方法は、真菌バイオマスを不活性化して、不活性化真菌バイオマスを形成することをさらに含んでもよい。
【0159】
不活性化真菌バイオマスと、可塑剤、ポリマー、架橋剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含む織物組成物を提供することが、本発明の別の態様である。
【0160】
実施形態では、織物組成物は、可塑剤、ポリマー、および架橋剤を含みうる。
【0161】
実施形態では、真菌バイオマスは、子嚢菌および担子菌からなる群から選択される門に属する真菌を含みうる。
【0162】
実施形態では、真菌バイオマスは、フザリウム属、ツリガネタケ属、およびマンネンタケ属からなる群から選択される属に属する真菌を含みうる。真菌は、必要ではないが、フザリウム・ベネナタム、ツリガネタケ(Fomes fomentarius)、コフキサルノコシカケ(Ganoderma applanatum)、ツヤケシサイワイタケ(Ganoderma curtisii)、ガノデルマ・フォルモサナム(Ganoderma formosanum)、ガノデルマ・ネイ-ジャポニカム(Ganoderma nei-japonicum)、オオマンネンタケ(Ganoderma resinaceum)、ガノデルマ・シネンセ(Ganoderma sinense)、およびガノデルマ・ツガエ(Ganoderma tsugae)からなる群から選択される種に属しうる。
【0163】
実施形態では、真菌バイオマスは、フザリウム・ベネナタムおよびMK7 ATCC寄託預け入れ番号PTA-10698からなる群から選択される真菌を含みうる。
【0164】
実施形態では、可塑剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール、クエン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含みうる。可塑剤は、必要ではないが、グリセロールを含みうる。グリセロールは、必要ではないが、約0.5重量%~約50重量%、またはこれらの値の間の任意の部分範囲の量において、織物組成物中に存在しうる。実施形態では、グリセロールは、必要ではないが、約50重量%、約37.5重量%、約25重量%、または約12.5重量%の量において存在しうる。
【0165】
実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、およびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含みうる。ポリマーは、必要ではないが、ポリビニルアルコールを含みうる。ポリマーは、必要ではないが、キトサンを含みうる。ポリマーは、必要ではないが、ポリビニルアルコールとキトサンとを含みうる。ポリビニルアルコールとキトサンとの重量比は、必要ではないが、約99:1、約90:10、約80:20、約70:30、約60:40、約50:50、約40:60、約30:70、約20:80、約10:90、および約1:99からなる群、またはこれらの比の2つによって形成される任意の範囲から選択されうる。ポリビニルアルコールとキトサンとの重量比は、必要ではないが、約50:50でありうる。
【0166】
実施形態では、織物組成物はポリマーを含んでもよく、織物組成物の装填比は、約99:1、約95:5、約90:10、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、約15:85、約10:90、約5:95、および約1:99からなる群、またはこれらの比の2つによって形成される任意の範囲から選択される。装填比は、必要ではないが、約70:30でありうる。
【0167】
実施形態では、架橋剤は、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、グリオキサール、および抽出植物タンニンからなる群から選択される少なくとも1つを含みうる。架橋剤は、必要ではないが、アジピン酸を含みうる。
【0168】
本発明の織物組成物を含む衣服の物品を提供することが、本発明の別の態様である。
【0169】
実施形態では、物品は防護服でありうる。
【0170】
実施形態では、衣服の物品は、シャツ、パンツ、ショーツ、ジャケット、コート、ベルト、ハット、グローブ、靴、ブーツ、サンダル、フリップフロップ、腕時計ストラップ、およびエプロンからなる群から選択されうる。
【0171】
本発明の織物組成物を含むアクセサリーアイテムを提供することが、本発明の別の態様である。
【0172】
実施形態では、アクセサリーアイテムは、小銭入れ、札入れ、ケース、スーツケース、荷物アイテム、鞄、バックパック、およびヒップパックからなる群から選択されうる。
【0173】
本発明の織物組成物を含む什器アイテムを提供することが、本発明の別の態様である。
【0174】
実施形態では、什器アイテムは、椅子、リクライナー、長椅子、ソファ、ラブシート、オットマン、および乗り物用シートからなる群から選択されうる。
【0175】
実施形態では、織物組成物は、少なくとも約15MPaの引張強さを有しうる。
【0176】
実施形態では、織物組成物は、約30パーセント~約60パーセントの破断ひずみを有しうる。
【0177】
実施形態では、織物組成物は、約30パーセント~約60パーセントの膨潤度を有しうる。
【0178】
実施形態では、織物組成物は、約30パーセント以下の浸漬時の質量損失を有しうる。
【0179】
実施形態では、真菌バイオマスは、約25ナノメートル以下、約50ナノメートル以下、約75ナノメートル以下、約100ナノメートル以下、約125ナノメートル以下、約150ナノメートル以下、約175ナノメートル以下、約200ナノメートル以下、約225ナノメートル以下、約250ナノメートル以下、約275ナノメートル以下、約300ナノメートル以下、約325ナノメートル以下、約350ナノメートル以下、約375ナノメートル以下、約400ナノメートル以下、約425ナノメートル以下、約2マイクロメートル以下、約4マイクロメートル以下、約6マイクロメートル以下、約8マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約75マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約150マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、約250マイクロメートル以下、約300ナノメートル以下、約400マイクロメートル以下、約500マイクロメートル以下、および約750マイクロメートル以下からなる群から選択される平均粒子サイズを有しうる。
【0180】
実施形態では、真菌バイオマスは、二峰性またはおよそ二峰性の粒子サイズ分布を有しうる。
【0181】
実施形態では、真菌バイオマスは、三峰性またはおよそ三峰性の粒子サイズ分布を有しうる。
【0182】
実施形態では、織物組成物はトランスグルタミナーゼを含みうる。
【0183】
実施形態では、織物組成物は、イソペプチド結合によって架橋されたタンパク質を含みうる。架橋性イソペプチド結合の形成は、必要ではないが、トランスグルタミナーゼによって触媒されうる。
【0184】
実施形態では、織物組成物は熱ドーパントをさらに含みうる。熱ドーパントは、必要ではないが、活性炭、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、リグニン、ナノシリカ、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シリコーン、および酸化イットリウムからなる群から選択されうる。
【0185】
真菌バイオマスを含む耐久性シート材料を調製するための方法であって、(a)不活性化真菌バイオマスを、水を含む流体と均質化させて、真菌ペーストを形成すること、(b)真菌ペーストを、ポリマーを含む水溶液と組み合わせて、ブレンド組成物を形成すること、(c)ブレンド組成物を注型して、注型シートを形成すること、(d)注型シートから溶媒を除去すること、ならびに(e)注型シートを硬化させて、耐久性シート材料を形成することを含む、方法を提供することが、本発明の別の態様である。この方法における使用に好適な真菌バイオマスは、表面発酵方法、液中発酵方法、固体基質液中発酵(SSSF)方法、および’474公報に開示される方法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知である、および本明細書に開示される複数の方法のいずれかによって生成されうることを、明白に理解されるべきである。
【0186】
実施形態では、工程(a)の流体は、顔料をさらに含みうる。
【0187】
実施形態では、方法は、真菌バイオマスを不活性化して、不活性化真菌バイオマスを提供することをさらに含んでもよい。
【0188】
実施形態では、工程(a)は、同時に、不活性化真菌バイオマスをサイズ低減させることをさらに含んでもよい。
【0189】
実施形態では、不活性化真菌バイオマスは、サイズ低減真菌バイオマスでありうる。
【0190】
実施形態では、ポリマーはキトサンを含みうる。
【0191】
実施形態では、工程(b)の水溶液は、架橋剤、可塑剤、可溶化剤、およびpH調整剤の少なくとも1つをさらに含みうる。水溶液は、必要ではないが、架橋剤を含んでもよく、架橋剤はクエン酸を含む。水溶液は、必要ではないが、可塑剤を含んでもよく、可塑剤はグリセロールを含む。
【0192】
実施形態では、方法は、工程(a)と(b)の間に、真菌ペーストを脱ガスすることをさらに含んでもよい。
【0193】
実施形態では、方法は、工程(b)と(c)の間に、ブレンド組成物を脱ガスすることをさらに含んでもよい。
【0194】
実施形態では、方法は、少なくとも1種の熱ドーパントを、不活性化真菌バイオマス、工程(a)の流体、真菌ペースト、工程(b)の水溶液、ブレンド組成物、注型シート、および工程(c)においてブレンド組成物を注型するトレイ、型、または他の容器の少なくとも1つに加えることをさらに含んでもよい。
【0195】
上記方法のいずれかの実施形態では、真菌バイオマスは、表面発酵、液中発酵、固体基質液中発酵、および’474公報に記載される発酵方法の少なくとも1つによる、真菌接種材料を培養することを含む方法によって生成されうる。真菌バイオマスは、必要ではないが、バイオマットでありうる。
【0196】
上記方法のいずれかの実施形態は、少なくとも1種のガスのバブルを維持すること、または導入することをさらに含んでもよい。
【0197】
上記織物組成物の実施形態は、少なくとも1種のガスのバブルを含んでもよい。
【0198】
実施形態では、真菌バイオマスは、少なくとも約1センチメートル、少なくとも約2センチメートル、少なくとも約3センチメートル、少なくとも約4センチメートル、少なくとも約5センチメートル、少なくとも約6センチメートル、少なくとも約7センチメートル、少なくとも約8センチメートル、少なくとも約9センチメートル、少なくとも約10センチメートル、少なくとも約20センチメートル、少なくとも約30センチメートル、少なくとも約40センチメートル、少なくとも約50センチメートル、少なくとも約60センチメートル、少なくとも約70センチメートル、少なくとも約80センチメートル、少なくとも約90センチメートル、少なくとも約100センチメートル、少なくとも約200センチメートル、少なくとも約300センチメートル、少なくとも約400センチメートル、少なくとも約500センチメートル、少なくとも約600センチメートル、少なくとも約700センチメートル、少なくとも約800センチメートル、または少なくとも約900センチメートルの長さを有する真菌フィラメントを含みうる。
【0199】
実施形態では、真菌バイオマスは、約1センチメートル以下、約9ミリメートル以下、約8ミリメートル以下、約7ミリメートル以下、約6ミリメートル以下、約5ミリメートル以下、約4ミリメートル以下、約3ミリメートル以下、約2ミリメートル以下、約1ミリメートル以下、約900マイクロメートル以下、約800マイクロメートル以下、約700マイクロメートル以下、約600マイクロメートル以下、約500マイクロメートル以下、約400マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約90マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、約70マイクロメートル以下、約60マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約9マイクロメートル以下、約8マイクロメートル以下、約7マイクロメートル以下、約6マイクロメートル以下、約5マイクロメートル以下、約4マイクロメートル以下、約3マイクロメートル以下、約2マイクロメートル以下、または約1マイクロメートル以下の長さを有する真菌フィラメントを含みうる。
【0200】
本発明を、以下の非限定例によって、説明的にさらに記載する。
【実施例
【0201】
[実施例1]
織物材料製造プロセス
本発明による真菌織物材料は、実施形態では本実施例に記載の方法に従って作製され得る。特に、本実施例に記載の方法は、皮革類似織物材料、すなわち本物の皮革を複製する、模倣する、および/または置き換えることができる真菌織物材料を製造するために使用され得る。
【0202】
これらの真菌織物材料を作製する方法における第1の工程または複数の工程は、一般に、好適な反応器から菌糸体を含む真菌材料のマットを得ることを含み、これは実施形態では‘050出願、‘626出願、‘421出願および/または‘474出願公開に記載の方法に従って真菌バイオマットを製造することを伴う。次いで、これらのマットは、一部の実施形態では30分以上蒸気処理することにより不活性化され、次いで、不活性化マットは、所望のサイズおよびジオメトリに切断され得る。一部の実施形態では、マットは、脱水器内で高温で、例えば約130°F~約160°Fで部分的または完全に乾燥され得る。
【0203】
次いで、不活性化マットは、最終的な真菌織物材料に所望の特性を付与するように選択された1つまたは複数の成分の溶液中に入れられる。一般に、溶液は、ポリマー、可塑剤、および架橋剤のうちの1つまたは複数を含む。本発明による溶液中での使用に好適なポリマーは、これらに限定されないが、ポリビニルアルコール、キトサン、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸、ならびにそれらの組合せおよび混合物を含む。本発明による溶液中での使用に好適な可塑剤は、これらに限定されないが、グリセロールおよびそのエステル、ポリエチレングリコール、クエン酸、オレイン酸、オレイン酸ポリオール(例えばマンニトール、ソルビトール)およびそのエステル、エポキシ化トリグリセリド植物油(例えば大豆油由来)、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、生物学的可塑剤、ならびにそれらの組合せおよび混合物を含む。本発明による溶液中での使用に好適な架橋剤は、これらに限定されないが、クエン酸、タンニン酸、スベリン酸、アジピン酸、コハク酸、抽出植物タンニン、グリオキサール、ならびにそれらの組合せおよび混合物を含む。
【0204】
不活性化マットは、マットがポリマー、可塑剤および/または架橋剤により浸透および/または飽和されるのに十分な期間、一般的には少なくとも約2時間、最も典型的には約24時間、ポリマー、可塑剤、および/または架橋剤に浸漬される。溶液への浸漬後、湿潤したマットが溶液から取り出される(その後マットの1つまたは複数の表面から過剰の溶液が除去され得る)。
【0205】
一部の実施形態では好ましくなり得る本発明の方法における任意選択の工程は、浸漬後の2つ以上のマットのラミネーションを含む。本発明の実践において、マットは、一部の場合では菌糸体に加えて天然繊維を含んでもよい2つ以上のマットを垂直に積み重ねることにより、またはマットを任意の所望の空間的配向(水平対垂直、平行対直交対斜め等)で配置し、垂直に積み重ねられたマットを、以前の浸漬工程に使用された溶液と同じかまたは異なってもよいポリマー溶液中に浸漬することによりラミネートされ得る。一般に、本発明による2つ以上のマットのラミネーションは、例えば積み重ねられたマットのプレス、圧延、真空抽出等による層間に捕捉された気泡の除去を含む。
【0206】
次いで、湿潤したマット(またはマットのラミネート)は、脱水器内で高温で、例えば約130°F~約160°Fで一般に約30分~約120分間乾燥され、マット(またはラミネート)の外側表面から液体の実質的にすべてが除去されるが、マット(またはラミネート)の内部には少なくともいくらかの液体が保持される。次いでマットは脱水器から取り出され、一部の実施形態では、例えばテクスチャ化されたケイ素型の間で高温(例えば約130℃)で熱プレスされるが、典型的には、マットは約20秒~約30秒の間隔で約3分~約10分の合計時間熱プレスされる。
[実施例2]
【0207】
繊維を通した真菌成長
本発明による真菌織物材料は、実施形態では本実施例に記載の方法に従って作製され得る。特に、本実施例に記載の方法は、糸状真菌および他の天然または合成繊維の両方を組み込んだ織物材料を製造するために使用され得る。
【0208】
これらの真菌織物材料を作製する方法における第1の工程または複数の工程は、一般に、糸状真菌用の増殖培地を提供することを含み、これは実施形態では‘050出願、‘626出願、‘421出願および/または‘474出願公開に記載の増殖培地を含むが、他の種類の増殖培地も含み得る。特に、増殖培地は、代替炭素源または異なる炭素分が配合されてもよく、これは、実施形態では、増殖培地中で培養される真菌による天然繊維の消費を促進し得る。限定されない例として、従来の増殖培地は、糸状真菌によるセルラーゼ酵素の生成を促進するために、グリセロールを加水分解セルロース、結晶性セルロース、または他のセルロース化合物で置き換えることにより改変され得る。さらなる限定されない例として、セルロース系材料の総量は、糸状真菌の所望の成長特性を提供するために、例えば増殖培地の約10wt%まで慎重に制御され得る。増殖培地は、調製後、一般に競合的または病原性微生物を排除するために30分以上の期間煮沸され、次いで密封および冷却される。冷却された培地は、典型的には例えば塩酸を使用してpH調整され、糸状真菌(例えばMK7 ATCC受託番号PTA-10698)の接種材料で約5vol%の割合で接種されるが、培地は、真菌接種材料の均一な分散を提供するために一般に撹拌される。
【0209】
糸状真菌バイオマスの生成のための反応器は、衛生反応器、例えばサランラップ反応器等を提供し、反応器の内部(例えば壁、扉、ラック、トレイ等)を清浄化および/または滅菌する(例えばエタノールで)ことにより準備される。別個に、真菌織物材料の基板および/または構造材料として機能する天然繊維が、1つまたは複数のパイレックストレイ内に一般にトレイ当たり約0.5グラム~約5グラムの割合で置かれ、アルミニウム箔で覆われ、競合的または病原性微生物を排除するために乾燥オートクレーブ処理され、次いで冷却されるが、パイレックストレイは、次いで清浄化された反応器内(一般に反応器のトレイ上)に置かれる。
【0210】
次いで、接種された培地が反応器内のパイレックストレイに一般にトレイ当たり約200mLの割合で注入または別様に導入される。一般に、接種された培地をパイレックストレイの中央ではなくその角に導入して、増殖培地がパイレックストレイ内の繊維の下を流れるようにし、したがって繊維を液体培地の表面上に浮かせることが望ましい。一般に約3日~約3週間の接種期間の後、各パイレックストレイは天然基板および/または構造繊維を通って成長した真菌バイオマスを含み、次いでこれがさらなる処理のために採取され得る。
[実施例3]
【0211】
油の組み込み
本物の(すなわち非真菌)皮革の生成では、皮革材料は一般に油加工プロセスに供され、それにより皮革材料は1種もしくは複数種の油、またはより一般的には油(複数種可)、乳化剤および浸透助剤の混合物でコーティングされる。この油加工プロセスは、皮革を潤滑して、ひび割れることなく屈曲する能力を改善し(乾燥した皮革繊維は一般に容易にひび割れるかまたは破断する)、また皮革材料に色および耐水性を付与し得る。本発明の実践において、同様の利点および利益を提供するために、油は真菌皮革類似材料にも同様に組み込まれ得るか、または発酵プロセス中に糸状真菌自身によりその場で生成され得る。本実施例は、真菌皮革類似材料のためのそのような油組込みプロセスの実施形態を説明する。
【0212】
本発明による「エマルション」油組込み法では、1種または複数種の油、脂肪、および/またはワックスが提供される。油、脂肪、および/またはワックスは、その乳化剤および/または界面活性剤(例えば塩、石鹸、および他の両親媒性分子)としての実用性のために選択され得、限定されない例として、硫酸化ヒマシ油、ビーズワックス、ココナッツ油、植物油、オリーブ油、亜麻仁油およびオレイン酸硫酸化魚油、硫酸化アブラナ油、大豆油、パーム油、脂肪酸のうちの任意の1つまたは複数を含み得る。界面活性剤を利用して形成されたエマルションは、皮革の浸透のためのより安定な条件を提供し得、当業者は、皮革材料の繊維に対するエマルションの湿潤作用を改善するためのアニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤を選択することができる。これらの油、脂肪、および/またはワックスは、容器内で急速撹拌され(例えば磁気撹拌棒により)、一部の実施形態では、完全な混合を確実にするために熱を加えて油、脂肪、および/またはワックスの1つまたは複数を溶融しながら、乳白色エマルションが形成されるまで水(好ましくは脱イオン水)を混合物に徐々に添加することができるが、最も典型的には、水はこのエマルションの約50vol%~約70vol%を構成する。その後撹拌速度を低下させ(例えば磁気撹拌棒またはオービタルシェーカーによる)、その後本発明による真菌皮革類似材料を槽に導入する。真菌皮革類似材料は一般に、かき混ぜられたエマルション中に約20分~約4時間の期間維持され、次いでエマルションから取り出されて約24時間~約48時間の間空気乾燥される。この油加工プロセスは、真菌皮革類似材料の熱プレスの前、その後、および/またはその代わりに行われ得る。
【0213】
本発明による「充填」油組込み法において、これらに限定されないが上述の「エマルション」法における使用に好適な油またはワックスを含む1種または複数種の液化油またはワックスを真菌皮革類似材料の表面上に機械的に擦り込み、真菌皮革類似材料の構造内に油またはワックスを「作用」させることができる。「エマルション」法の場合のように、真菌皮革類似材料は、次いで約24時間~約48時間空気乾燥され、「充填」油加工プロセスは、真菌皮革類似材料の熱プレスの前、その後、および/またはその代わりに行われ得る。
[実施例4]
【0214】
植物なめし
本発明の実践において、真菌織物材料に見られる化学部分へのカルボン酸の架橋は、一般に高温(例えば約130℃)でのみ生じるため、架橋剤としてのジカルボン酸の使用には、一般に真菌織物材料の熱プレスが必要である。代替として、天然タンニン、例えば植物材料または他の草木材料から抽出されたタンニンは、ジカルボン酸より低い温度で真菌織物材料に結合する、および/またはそれへの化学結合(すなわち架橋)を誘導することができ、したがって熱プレスの必要性を排除することができ、これは真菌織物材料の耐水性を改善し得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、タンニンは、獣皮または皮膚と相互作用する、すなわちタンパク質部分と結合するのとほぼ同じ様式で真菌織物材料と相互作用して、材料の強度および劣化耐性を改善すると考えられる。
【0215】
真菌織物材料を熱プレスする必要性の排除は、下流処理におけるさらなる利点および有益性を有し得る。限定されない例として、油組込みプロセス(例えば実施例3に記載されるもの)は、典型的には、真菌織物材料の比較的「開いた」構造を必要とし、熱プレスにより真菌織物材料の構造が閉じ、したがって油が皮革構造内に浸透することが困難となり、油組込みプロセスは熱プレスの前に行うことができるが、これは一部の場合では架橋反応に干渉し得、および/または熱プレス中に真菌織物材料から油を浸出させ得る。本実施例は、これらの、および他の欠点を回避するために、植物タンニンを使用して真菌織物材料を架橋するためのプロセスの実施形態を説明する。
【0216】
本発明による植物なめし法において、真菌バイオマスのマットが、本明細書ならびに/または‘050出願、‘626出願および/もしくは‘421出願において開示される方法を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法により製造され、実施例1に記載のように蒸気処理される。蒸気処理されたマットは、脱イオン水、ブライン、またはそれらの組合せもしくは混合物で1回または複数回洗浄され、次いで洗浄されたマットはタンニン化合物を含む溶液中に入れられる。タンニン化合物は、任意の1種または複数種の市販の草木抽出タンニンおよび/または純粋なタンニン酸を含み得、一般に、なめし溶液の約0.5wt%~約20wt%を構成し得る。真菌マットは、一般に、約1日~約30日間なめし溶液中に維持され、一部の実施形態では、真菌マットは、なめしプロセス中に、2つ以上のなめし溶液、例えば異なる組成および/または濃度のタンニン化合物を有するなめし溶液間を移動され得る。
【0217】
なめし後、真菌マットは、任意の好適な方法、例えば実施例3に記載の方法の1つもしくは両方により油加工され得、および/または、可塑化溶液またはプロセスに供され得る(例えば可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG)および/またはグリセロールを使用)。可塑化および/または油加工された材料は、最終的に一般に約24時間~約72時間空気乾燥される。実施形態では、例えば架橋剤としてジカルボン酸を使用したさらなる架橋が、本実施例に記載の植物なめしプロセスの後に実行されてもよいことが明確に理解されるべきである。
[実施例5]
【0218】
織物材料特性に対するポリマー-可塑剤比の効果
本実施例は、真菌織物材料、特に真菌皮革類似材料の材料特性に対する、本発明の溶液中のポリマー対可塑剤の比の効果を説明する。ポリマー(すなわち真菌織物材料内の生物学的構造に化学結合した長鎖分子)は真菌織物材料の引張強さを改善し、一方可塑剤(すなわち生物学的構造またはポリマーに化学結合しないより小さい分子)は可撓性を改善し、真菌織物材料の脆性を低下させる。したがって、いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、ポリマー対可塑剤比(以降では「PP比」と呼ばれる)を変化させることにより、当業者は、本発明に従って製造された真菌織物材料の物理的特性を正確に制御、選択または調節することが可能となり得る。
【0219】
MK7 ATCC受託番号PTA-10698(以降では「MK7」と呼ばれる)のバイオマットを成長させ、30分間蒸気処理または煮沸して真菌を不活性化した。不活性化されたバイオマットを約4cm×6cmの長方形に切断し、そのそれぞれを、ポリマー(ポリビニルアルコール(PVA)またはキトサンのいずれか)および可塑剤(グリセロール)の両方を含む溶液中に入れ、一晩浸漬した。浸漬後、各長方形を卓上脱水器内で約45分~約1時間乾燥させ、次いで275°Fで30秒間隔で合計4分間熱プレスした。次いで、試料を室温で一晩空気乾燥し、その後膨潤度(DOS)、浸漬後の質量損失(ML)、引張強さ(TS)および主観的可撓性(6つの評価、0~10スケール)について試験した。結果を表1に示す。
【0220】
表1:
様々なポリマー-可塑剤比でのMK7皮革類似試料の材料特性
【表1】

【0221】
使用されたポリマー(PVA対キトサン)の種類に関わらず、ある特定の傾向、すなわちPP比の増加に伴う引張強さの増加、PP比の増加に伴う膨潤度の増加、PP比の増加に伴う質量損失の減少、およびPP比の増加に伴う可撓性の減少が明らかであった。MK7バイオマットへのポリマーの導入、およびその後の熱プレスは、菌糸体とポリマー分子との間の共有結合および非共有結合の形成をもたらす。これらのポリマー分子はまた互いに結合して、結合構造の絡まりを形成する。グリセロール等の可塑剤は、ポリマーおよびMK7構造の両方に結合しないままの「浮遊性」分子であり、ポリマーとバイオマスとの間の化学結合の形成をブロックするように機能する。可塑剤の存在がわずかである場合、より多くの化学結合が生じ、強度および脆性が増加した材料をもたらし得る。可塑剤が豊富に存在する場合、それらは化学結合の形成をブロックし、可撓性であるが強度を欠いた材料をもたらす。この現象は、ポリマー対可塑剤の濃度を変化させることにより得られる広範囲の引張強さ(2.70MPa~8.61MPa)および広範囲の可撓性(主観的0~10スケールで0.67~9.83)から明らかである。
【0222】
ポリマーとしてPVAを利用した試料は、各試験パラメータの中間範囲においてより一貫した結果を示したが、ポリマーとしてキトサンを含んでいた試料は、パラメータ範囲の端部にわたってより広がった、より一貫性のない結果を示した。この結果は、蒸気処理されたバイオマット試料と煮沸されたバイオマット試料との間の差に一部起因し得、煮沸された試料はポリマー溶液分量をより均一に組み込むことができ、したがってより良好な性能を示したが、一方蒸気処理された試料ははるかにより脆性となる傾向を有していた。PVAは蒸気処理されたバイオマットにキトサンより容易および均一に吸収されるようであったが、これはPVA試料について得られたより一貫したデータを説明し得る。
[実施例6]
【0223】
織物材料特性に対するグリセロール含量の効果
実施例5の手順を繰り返したが、ただし、真菌織物材料の材料特性に対するグリセロール含量の効果を評価するために、ポリマー/可塑剤溶液はポリマーを含まず(すなわちPVAまたはキトサンを含まない)、可塑剤(すなわちグリセロール)含量を変化させた。
【0224】
MK7皮革試料に対して試験したグリセロール濃度の範囲にわたり、TS、破断ひずみ(SAB)、DOSおよびMLにおける明確な傾向が観察された。図6に示されるように、MK7皮革のTSはグリセロール濃度の増加とともに減少することが観察され、事前に煮沸されたグリセロールが添加されていないバイオマスから作製された試料で8.65MPaの最大TSが達成され、37.5%の添加グリセロール濃度の未加工バイオマス試料で1.55MPaの最小TS値が記録された。図7に示されるように、MK7皮革のSABはグリセロール濃度の増加とともに増加することが観察されたが、事前に煮沸されたバイオマスから作製された試料はこの傾向をあまり示さず、その理由としてはひずみ試験前の一部の試料の不完全な乾燥が最も考えられる。さらに、図8に示されるように、MK7のDOSはグリセロール濃度の増加とともに減少することが観察されたが、図9に示されるように、MLはグリセロール濃度の増加とともに増加することが観察された。
【0225】
グリセロールは、ポリマー-ポリマー相互作用を妨害して自由空間を増加させ、したがってポリマー分子の移動度を増加させることにより作用する。本発明によるMK7皮革実施形態では、天然MK7細胞および排出バイオポリマー(EPS)とともにPVAおよび/またはキトサンポリマーの混合物が存在する。グリセロールの非存在下では、添加されたポリマー、細胞およびバイオポリマーは互いにより多くの水素結合、イオン結合および共有結合を形成し得、分子移動度および自由空間が低く、一方結合濃度は高い。この状態では、材料はより剛性であり、伸張または湾曲するのにより多くのエネルギーを必要とする。したがって、グリセロール濃度が低い場合は測定されるTSはより高く、ひずみはより低く、またその逆も成り立つ。
[実施例7]
【0226】
織物材料特性に対する装填比の効果
実施例5の手順を繰り返したが、ただし、真菌織物材料の材料特性に対する装填比の効果を評価するために、ポリマー/可塑剤溶液は可塑剤を含まず(すなわちグリセロールが添加されていない)、総ポリマー含量(すなわちPVAおよび/またはキトサンの総量)を変化させた。
【0227】
図10に示されるように、MK7皮革のTSはポリマー濃度の増加とともに増加することが示され、換言すれば最も低い装填比で最も高い引張強さが観察され、またその逆も成り立つ。TSは、約36.5%のポリマー濃度までポリマー濃度とともに直線的に増加することが観察され、次いで約47.5%のポリマー濃度でTSの降下が観察された。約47.5%超のポリマー濃度では、TSは、73%のポリマー濃度での6.89MPaの最大値まで直線的に増加した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、この効果は、PVAおよびキトサン分子中に存在する多くのヒドロキシル基およびアミン基に起因し得、これらの基は、生物学的構造および他のポリマー分子と共有結合および非共有結合を形成し得ると考えられる。ポリマー濃度が増加すると、分子間結合の濃度もまた増加する。次いで、高い結合濃度は、材料強度の改善をもたらす。さらに、皮革試料を形成するために使用される未処理バイオマスは、培地からの残留グリセロールおよび生物により形成されたEPS分子の両方を含む。グリセロール、およびおそらくはEPSのいくつかの成分は、皮革構造に対する可塑剤として機能する。グリセロール濃度実験の結果に基づいて、バイオマス濃度の増加、ひいては可塑剤濃度の増加が、試料のTSの減少をもたらし得ることが合理的に推測され得る。
【0228】
図11に示されるように、MK7皮革試料のSABは、36.5%のポリマー濃度での182%の最大値までポリマー濃度とともに直線的に増加することが観察された。ポリマー濃度が36.5%超まで増加すると、SABは直線的に減少することが観察された。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、この効果は、皮革構造内の分子間結合および可塑化の競合する効果に起因し得ると考えられる。高い装填比では、バイオマスおよび可塑剤濃度は高いが結合濃度は低く、分子間結合の欠如は低い張力限界を有する材料をもたらし、したがって、引張試験中、顕著な材料ひずみの前に張力限界に達し得、低いひずみで材料破壊をもたらす。中央の装填比(37.5%のポリマー濃度)では、対照的に顕著な分子間結合が生じ得る。さらに、中央の装填比でのバイオマスの顕著な組込みにより、試料はまた顕著に可塑化される。これらの特性は、適度に高い張力限界および適度に高いひずみ限界の両方を有する材料をもたらす。引張試験中、材料はその張力またはひずみ限界に達する前に顕著に伸張し得る。より低い装填比では、試料は顕著には可塑化されない。それらは、分子間結合を形成する高濃度のポリマーを含み、したがって高い引張限界を有する。しかしながら、可塑化分子の欠如は低いひずみ限界をもたらし、より低い対応SAB値で最大TS値に達する。
【0229】
図12に示されるように、皮革試料のDOSについて、SABの傾向と同様の傾向が観察された。試料のDOSは、47.5%のポリマー濃度での405%の最大値までポリマー濃度の増加とともに直線的に増加した。ポリマー濃度が47.5%超まで増加すると、DOSの直線的減少が観察された。PVAおよびキトサンは、ヒドロゲル、すなわち物理結合および化学結合ポリマー分子の三次元メッシュまたはネットワークを含む材料を形成することが知られている。完全に架橋されていない場合、ヒドロゲルネットワークは柔軟でポリマー鎖間に空間を含み、したがってヒドロゲルは伸張してポリマー鎖間の空間内に多量の水を保持し得る。完全に架橋された場合、ポリマー鎖間の空間は結合し、水が吸収される際に材料はより屈曲することができなくなる。この架橋状態では、ヒドロゲルはより低い保水能力を有する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、高い装填比では、ポリマー分子の量が少ないことにより、水分子の利用可能な結合部位がより少ないと考えられる。したがって、高い装填比では、水を吸収する能力がより低い。中央のポリマー濃度では最大DOS値が観察されたが、これらの濃度では、比較的高いポリマー濃度および比較的高いバイオマス濃度が存在した。バイオマスは吸収されたグリセロールを含み、低い架橋および高い保水能力を伴う可塑化ポリマーネットワークをもたらす。ポリマー濃度がさらに増加すると、吸収されたグリセロールの減少とともに可塑化効果が減少する。これは、それほど多くの水を保持することができない、より高度に架橋した材料をもたらす。
【0230】
しかしながら、MK7皮革のML値は、いかなる極大値も示さなかった。その代わり、図13に示されるように、ML値はポリマー濃度の増加とともに直線的に減少することが観察された。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、この効果は、装填比の減少に関連したバイオマス量の減少に起因し得ると考えられる。バイオマスは高い割合の水溶性化合物を含み、これはバイオマスが浸漬された際に水相に拡散し得る。したがって、浸漬前後の質量の差は、大量の可溶性化合物を含む高装填比試料ではるかに大きい。
[実施例8]
【0231】
織物材料特性に対するポリビニルアルコール-キトサン比の効果
実施例5の手順を繰り返したが、ただし、真菌織物材料の材料特性に対するポリマー組成の変化の効果を評価するために、ポリマー/可塑剤溶液は可塑剤を含まず(すなわちグリセロールが添加されていない)、総ポリマー含量(すなわちPVAおよび/またはキトサンの総量)を一定に保持し、キトサンに対するPVAの比を変化させた。
【0232】
図14に示されるように、MK7皮革試料のTSは、0:100、50:50、および100:0のPVA:キトサン重量比で極大値を有することが観察された。これらの点は、0%、11.7%、および23.4%のPVA濃度に対応し、これらの点におけるTS値は、それぞれ3.55MPa、3.53MPa、および4.32MPaであった。図15に示されるように、試料のSABは、TSについて観察された同じPVA:キトサン比で極大値を有することが観察された。これらの点におけるSABの値は、それぞれ143%、138%および132%であった。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、TS極大値は、一方のポリマーが存在しない場合、およびポリマーが等量で存在する場合に観察され得るが、これは、一方のポリマーの化学結合が少量の他方のポリマーの含有により妨害され得る、すなわち少量で存在するキトサンがPVAのより大きなマトリックス内で凝集体を形成し得、またその逆も生じ得るためである。ポリマー凝集体は、大きなポリマーマトリックスの結合部位についてバイオマスと競合して強度の減少をもたらすと同時に、ポリマー分子が移動して伸張する能力を妨害する。これは、80:20、60:40、40:60、および20:80のPVA:キトサン比で観察されるTSおよびSABの低い値を説明する。ほぼ等量の各ポリマーが添加された場合、凝集体は形成し得ず、したがって均質なポリマーマトリックスが存在し得る。凝集体が存在しない場合、ポリマーとバイオマスとの間の結合度が増加する。さらに、凝集体の欠如は、ポリマー分子の移動および屈曲を可能にする。これは、50:50のPVA:キトサン比で観察されるTSおよびSABの増加を説明する。
【0233】
図16に示されるように、皮革試料のDOSは、試料のPVA濃度の増加とともに減少することが観察された。図17に示されるように、試料のMLは反対の傾向を示した。DOS値は、唯一のポリマーとしてPVAを含む試料と比較して、唯一のポリマーとしてキトサンを含む試料において3倍大きかった。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、キトサン分子は、おそらくは低pHでのキトサンのアミン基上の正電荷に起因して、PVAの分子よりも高い水分子に対する親和性を有すると考えられる。この荷電アミン基はまた、系内の他の分子、例えばバイオマス粒子、グリセロール、またはEPS構成物質に結合する可能性がより高くなり得る。荷電アミン基に起因して、キトサン分子は浸漬中に結合したままとなる可能性がより高くなり得、これはより高い濃度のChにおいて観察されるより低いML値を説明し、またその逆も説明する。
[実施例9]
【0234】
真菌粒子長に対するブレンド時間の効果
40グラムの未加工(未処理)真菌バイオマスおよび40mLの脱イオン水を小型Osterブレンダー内に入れ、10秒間ブレンドした。3mLの得られた混合物をブレンダーから取り出して、27mLの脱イオン水と合わせ、30mLの「10秒ブレンド」試験材料を作製した。ブレンダー内の残りの混合物をさらに10秒間ブレンドし、さらに3mLの試料を取り出して、27mLの脱イオン水と合わせ、30mLの「20秒ブレンド」試験材料を作製した。さらに20秒ブレンドしてこのプロセスを繰り返し、「40秒ブレンド」を得、再びさらに20秒ブレンドした後に「60秒ブレンド」を得た。次いで、試験材料のそれぞれをさらに脱イオン水中に9:1で希釈して、それぞれ1vol%のブレンド混合物を含む4つの300mL試料を作製した。
【0235】
4つの1vol%試料のそれぞれ75μLを顕微鏡スライド上に載せ、各試料の顕微鏡写真を撮影した。各顕微鏡写真において、30個の真菌粒子の見かけの長さを測定し、これらの見かけの長さを、顕微鏡で使用された倍率に基づいて各粒子の実際の長さに変換した。ブレンドに対する粒子長のヒストグラムを、それぞれ図18A、18B、18Cおよび18Dに示す。
[実施例10]
【0236】
製造中の発泡に対する装填比の効果
未加工(未処理)真菌バイオマスを約1cm角の小片に細断し、いくつかの400mLビーカーのそれぞれに、水、PVA溶液、キトサンおよびアジピン酸とともに様々な量で加えた。各ビーカー内の混合物の高さを測定し、次いでHamilton Beach HB08ハンドミキサを使用して各混合物を1分間ブレンドし、その後再び混合物の高さを測定した。次いで各混合物を180℃で30分間撹拌し(大型撹拌棒、60rpm)、その後3度目として混合物の高さを測定し、次いである容量の酢酸をビーカーに加えた後4度目として測定したが、混合物は冷却中さらに10分間撹拌した。次いで各混合物を平坦なトレイに注入し、室温で2日間乾燥させ、次いでトレイから取り出して、シリコーンのテクスチャ化された型内で275°Fで1回につき10分間、別個に5回熱プレスした。次いで、それぞれの熱プレスされた試料の密度を測定した。図19は、それぞれブレンド後、加熱後および酢酸添加後の出発混合物に対する容量の変化である、「ブレンドオーバーラン」、「加熱オーバーラン」および「全体的オーバーラン」、ならびに各混合物の密度を、装填比の関数として示している。
[実施例11]
【0237】
真菌皮革類似物の物理的特性 - サイズ低減対無傷バイオマス
真菌皮革類似材料の8つの試料を、別段に指定される点を除き図3に示される方法およびそれに関連する説明に従って製造した。これらの8つの試料のうち、3つは工程310の前にサイズ低減された不活性化真菌バイオマスから作製した - 第1の試料は非真菌織物裏張りを有さず、第2の試料は真菌層の片側に非真菌織物(綿)裏張りを有し、第3の試料は2つの真菌層の間に「挟まれた」非真菌織物(綿)層を有していた。他の5つの試料は、表面発酵プロセスにより生成された無傷(非サイズ低減)バイオマスから作製した - 第4、第5および第6の試料は非真菌織物裏張りを有さず、第7の試料は真菌層の片側に非真菌織物(綿)裏張りを有し、第3の試料は2つの真菌層の間に「挟まれた」非真菌織物(綿)層を有していた。
【0238】
サイズ低減された真菌バイオマスは、以下のように調製した:水および戻された(以前に冷凍されていた)処理後バイオマスを、Vitamixブレンダーに1:1の質量比で加えた。これらを一緒に約2分間ブレンドして、水中のサイズ低減されたバイオマスの均質混合物を生成した。別個に、水、グリセロール、キトサン、クエン酸、および塩酸の溶液を、それぞれ200:17.5:6.3:1:13.5の各成分の質量比で調製した。溶液の総質量は、バイオマス-水ブレンド混合物の総質量に等しかった。キトサンが溶解したら、ポリマー水溶液およびバイオマス-水混合物を合わせた。均質なペーストが形成されるように、新しく作製した混合物を加熱下で約30分間撹拌した。次いで、このペーストを平坦な付着防止加工トレイ内に注型し、周囲条件下で乾燥させた。乾燥したら、新しく形成されたシート材料を100℃で10分間熱プレスした。
【0239】
非真菌(綿)層を有する試料については、キトサン(1%w/v)、クエン酸(1%w/v)および塩酸(1%v/v)の水溶液を使用して綿裏張り材料を試料に接着した。キトサン溶液を真菌層の適切な側に塗布し、湿潤した表面に綿を貼り付けた。キトサン接着剤を約20分間乾燥させ、次いで試料を275°Fで2分間熱プレスして裏張り材料を結合させた。
【0240】
8つの真菌皮革類似材料試料を、9つの物理的特性、すなわち厚さ、引張強さ、引張力、破断時伸び、引裂抵抗、密度、曲げ剛性、膨潤度および浸漬後の質量損失について試験した。これらの試験の結果を、以下の表2に示す。
【0241】
表2
【表2】


[実施例12]
【0242】
真菌皮革類似材料の特性に対する炭素-窒素比の効果
真菌バイオマスの表面発酵用の4つの増殖培地(例えば‘050、‘626および‘421出願に記載の通り)を調製したが、各培地は同一のフルクトース含量を有していた。培地がそれぞれ5、8.875、10および20のCN比を有するまで硫酸アンモニウムおよび尿素の合わせた含量を増加または減少させることにより(これらの2つの成分の互いに対する比を一定に保持)、各培地の炭素対窒素モル比(「CN比」)を調整した。振盪フラスコ接種により、各培地を5%v/vのMK7接種材料で接種した。
【0243】
250mLの各接種培地を4つのガラストレイのそれぞれに注入し、合計16の接種トレイを得た。ガラストレイを27℃の温度の覆われた反応器内に入れ、120時間インキュベートし、72時間、96時間および120時間の時点で各トレイの写真を撮影した。次いで、各トレイからのバイオマスを採取し、脱イオン水中で70℃で30分間不活性化した。相対成長性能を評価するために、不活性化後に各試料の湿潤収量を決定した。
【0244】
次いで、上記実施例11に記載の方法に従ってバイオマスの各試料を真菌皮革類似材料に転換した。なめし後、各試料の様々な物理的パラメータを測定した。結果を表3に示す(示される値は各CN比に対する平均である)。
【0245】
表3
【表3】

【0246】
なめしプロセスの前および後の両方の、試料間の様々な定性的差異もまた観察した。CN比が5である培地で成長させたバイオマットはより「滑りやすく」、所々、特にトレイの中央付近で成長させたバイオマットの部分において著しく薄く、一度不活性化されるとこれらの真菌試料は極めて可撓性であった。CN比が8.875および10である培地で成長させたバイオマットは、不活性化後、おそらくはバイオマットの厚さに起因して非常に硬かった。CN比が20である培地で成長させたバイオマットは、不活性化工程の前および後の両方において、CN比が8.875および10である培地で成長させたものよりも可撓性であった。
【0247】
なめしプロセスの後、CN比が5である培地から得られた試料は不均一な厚さを有し、材料が最も厚い領域で非可撓性であり、熱プレス工程中により高い圧力下にあった領域はより光沢があり、より滑らかなテクスチャを有することが観察されたが、これはおそらくは熱プレスの圧縮により糸状真菌のフィラメントが整列および圧密されることに起因する。CN比が8.875である培地から得られた試料は最も厚く、乾燥工程中に最も収縮し、不均一な表面テクスチャを有し、他の試料よりも硬く感じられた。CN比が10である培地から得られた試料は中間的な厚さを有し、CN比が8.875である培地から得られた試料より可撓性であったが、同時に不均一な表面を示し、CN比が5である培地から得られた試料と同様に、熱プレス工程中に最も高い圧縮に曝露された領域は著しく光沢を有していた。CN比が20である培地から得られた試料は、CN比5およびCN比10の試料の間の中間的な厚さを有し、比較的可撓性で若干より不均一な表面を有していたが、この場合も熱プレス中に最も圧縮された領域が最も光沢を有していた。
[実施例13]
【0248】
真菌皮革類似物の熱ドーピング
5つの実験試料のそれぞれを以下のように調製した:75グラムのグリセロール、27グラムのキトサン、4.3グラムのクエン酸、880ミリリットルの水、および13.5ミリリットルの濃塩酸をビーカー内に入れ、キトサンが溶解するまで撹拌した。別個に、本明細書ならびに‘050、‘626および‘421出願に記載の表面発酵方法によって生成された80グラムの湿潤糸状真菌バイオマスと、80ミリリットルの水とをキッチンブレンダー内に入れ、均質になるまでブレンドした。次いで、7.2グラムの熱ドーパントをブレンダーに加え(対照試料の場合を除く)、再び混合物を均質になるまでブレンドした。次いで、160グラムのキトサン溶液をブレンダーに加え、再びこの混合物を均質化し、300グラムの得られた混合物を小型の付着防止加工トレイに注入し、90°Fで23時間乾燥させた。乾燥した試料を100℃で10分間熱プレスして、約2ミリメートル厚の適度な可撓性の平坦シートを生成した。
【0249】
試料のそれぞれの熱特性を測定した。これらの測定の結果を表4に示すが、比較のために非ドープ獣皮皮革、非ドープブレンド真菌皮革類似物、および無傷バイオマットから作製された非ドープ皮革の対照試料(CN比は8.875、10および20、それぞれ「CN8」、「CN10」、および「CN20」と指定される)もまた試験した。
【0250】
表4
【表4】


[実施例14]
【0251】
材料性能に対するポリ酢酸ビニルの効果
バイオマス、水、グリセロールおよびアジピン酸の大量混合物をブレンダー内で混合し、5つの等しい分量に分けた。ポリビニルアルコール(PVA)およびキトサンを80:20の質量比で含む5つの別個の6%ポリマー溶液を作製したが、各溶液は異なる種類のKuraray PVAを含んでいた。各ポリマー溶液をバイオマス混合物の一部と合わせ、それにより5つの別個の皮革前駆体混合物を作製した。手持ち式のイマージョンブレンダーを使用してこれらの皮革前駆体混合物のそれぞれを個別に混合し、小型パイレックストレイに注入し、次いでファンでトレイ上に送風しながら室温で乾燥させた。各試料が20%以下の含水率に達したら、100℃で10分間、別個に2回熱プレスした。次いで試料を室温で一晩乾燥させ、その後引張強さおよび引裂強さについて試験し、テクスチャおよび耐水性について定性的に検査した。各皮革試料は、75:25の装填比および22.5wt%の可塑剤含量を有していた。この試験の結果を表5に示す。
【0252】
表5
【表5】

【0253】
分子量に直接相関するPVAの粘度は、引張および引裂強さに顕著な効果を有し、低粘度のPVAは低い引張および引裂特性をもたらした。より高粘度のPVAの種類では、加水分解度が引張および引裂特性の決定因子であるようであり、低い加水分解度を有する試料はより良好な引張および引裂特性を示した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、より高い濃度のアセテート基が可塑剤として作用し、内部分子の自由な移動、ならびに微視的レベルでの亀裂および脆性の低減を可能にし、それにより試料の全体的強度および可撓性を増加させるという仮説を立てている。
【0254】
本開示は、様々な態様、実施形態および構成において、実質的に本明細書で描写および説明された通りの成分、方法、プロセス、システムおよび/または装置を含み、これはその様々な態様、実施形態、構成、部分的組合せおよび部分集合を含む。当業者は、本開示を理解した後に、様々な態様、実施形態および構成を作製および使用する方法を理解するであろう。本開示は、様々な態様、実施形態および構成において、本明細書またはその様々な態様、実施形態および構成において描写および/または説明されていない項目の非存在下でデバイスおよびプロセスを提供することを含み、これは、例えば性能を改善するため、容易性を達成するため、および/または実施のコストを削減するために以前のデバイスまたはプロセスにおいて使用され得たような項目の非存在下を含む。
【0255】
本開示の上記の議論は、例示および説明を目的として示されている。上記は、本開示を本明細書で開示された形態に限定することを意図しない。例えば、上記の発明を実施するための形態において、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化することを目的として、1つまたは複数の態様、実施形態および構成において一緒にグループ化される。本開示の態様、実施形態および構成の特徴は、上で議論されたもの以外の代替の態様、実施形態および構成において組み合わされてもよい。この開示の方法は、請求される開示が各請求項において明示的に列挙されるものより多くの特徴を必要とすることの意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、単一の上記の開示された態様、実施形態および構成のすべての特徴より少ない特徴で存在する。したがって、以下の特許請求の範囲はこの発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、本開示の別個の好ましい実施形態として独立している。
【0256】
さらに、本開示の説明は、1つまたは複数の態様、実施形態または構成、およびある特定の変形および修正を含んでいるが、例えば本開示を理解した後に当業者の技術および知識の範囲内となり得るように、他の変形、組合せおよび修正も本開示の範囲内である。特許請求されたものとの代替、交換可能および/または同等の構造、機能、範囲または工程を、そのような代替、交換可能および/または同等の構造、機能、範囲または工程が本明細書に開示されているか否かを問わず、またあらゆる特許可能な対象を公に開放することを意図せずに含む、代替の態様、実施形態および構成を許容される範囲まで含む権利を得ることが意図される。
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【国際調査報告】