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特表2022-538817FLT3阻害剤および化学療法剤を含む急性骨髄白血病を治療するための薬学的組成物
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  • 特表-FLT3阻害剤および化学療法剤を含む急性骨髄白血病を治療するための薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】FLT3阻害剤および化学療法剤を含む急性骨髄白血病を治療するための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220830BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K45/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576034
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2020008258
(87)【国際公開番号】W WO2020262974
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077302
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベ,イン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジェ ユル
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヨン ギル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
(57)【要約】
骨髄白血病(AML)を治療するための薬学的組成物、および前記薬学的組成物を使用して急性骨髄白血病を治療するための方法が提供され、前記薬学的組成物は、Fms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療上有効な組み合わせ、および化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物であって、Fms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含む薬学的組成物として、
前記組成物は、化学療法剤、それらの薬学的に許容される塩、または溶媒和物と組み合わせて投与され、
この場合、前記FLT3阻害剤は、式1の化合物、その立体異性体、互変異性体、および組み合わせから選択される化合物であり、
【化1】

式1中、
は水素、ヒドロキシまたはC1~4アルコキシであり、
は水素、ハロゲン、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルであり、
およびEは、互いに独立して水素またはヒドロキシであり、
X’は水素またはヒドロキシであり、
kは1~2の整数であり、
各Qは他から独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C1~4アルキル、ヒドロキシC1~4アルキルまたはC1~4アルコキシであり、
Z’は式(2)に示す一価の官能基であり、
【化2】

この場合、式2では、nは1~2の整数であり、
各Aは、他とは独立して、ヒドロキシ、C1~4アルキルおよびヒドロキシC1~4アルキルから選択される官能基であり、少なくとも1つのAはC1~4アルキルであり、
Lは水素、C1~4アルキル、ヒドロキシまたはヒドロキシC1~4アルキルである、薬学的組成物。
【請求項2】
前記FLT3阻害剤が、式3の化合物、その立体異性体、互変異性体、および組み合わせから選択される化合物であり得、
【化3】

式3中、
は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1~4アルキル、ヒドロキシC1~4アルキル、またはC1~4アルコキシであり、
sは1~2の整数であり、
は、ヒドロキシ、C1~4アルキルおよびヒドロキシC1~4アルキルから選択される官能基であり、
tは1~2の整数である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記FLT3阻害剤が、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、またはそれはその薬学的に許容される塩、またはその水和物である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される1つ以上、その薬学的に許容される塩、およびその溶媒和物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される1つ以上、その薬学的に許容される塩およびその水和物であり、前記FLT3阻害剤が、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される1つ以上、その薬学的に許容される塩およびその水和物であり、前記FLT3阻害剤が、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体の化合物である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される任意の1つ以上、その薬学的に許容される塩、およびその水和物であり、前記FLT3阻害剤が5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン、またはその薬学的に許容される塩、またはその水和物であり、前記FLT3阻害剤が、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン、またはその薬学的に許容される塩、またはその水和物であり、前記FLT3阻害剤が、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり、前記FLT3阻害剤が、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体であり得る、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり、前記FLT3阻害剤が、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記化学療法剤が、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり、
前記FLT3阻害剤が、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンであり得る、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記急性骨髄白血病が、FLT3変異を有する急性骨髄白血病である、請求項1または13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記急性骨髄白血病が、変異体FLT3ポリヌクレオチド陽性急性骨髄白血病、FLT3内部タンデム重複(ITD)陽性急性骨髄白血病、またはFLT3点変異を伴う急性骨髄白血病である、請求項1または13に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
式1の化合物のいずれか1つのFLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、または溶媒和物を含む急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物として、急性骨髄白血病(AML)が、FLT3アミノ酸配列のチロシンキナーゼドメイン(TKD)(FLT3-TKD)の変異を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記FLT3-TKD変異には、内部タンデム重複(ITD)がさらに含まれる、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記FLT3-TKD変異が、FLT3(D835Y)、FLT3(F691L)、FLT3(F691L/D835Y)、FLT3(ITD/D835Y)、FLT3(ITD/F691L)、およびそれらの組み合わせから選択される任意の1つを含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記FLT3阻害剤が、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-)イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、またはその薬学的に許容される塩またはその水和物である、請求項16~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と同時に、連続して、逆の順序で、または別々に投与される、請求項1または13に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および前記化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、それぞれ、治療有効量で含まれる、請求項1または13に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物として、化学療法剤、またはその薬学的に使用可能な塩または溶媒和物を含み、前記組成物が、Fms様チロシンキナーゼ-3:FLT3阻害剤、またはその薬学的に使用される塩または溶媒和物と組み合わせて投与される、薬学的組成物。
【請求項23】
前記FLT3阻害剤が、以下の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【表1】

【表2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、Fms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および化学療法剤の有効な治療組成物を含む、急性骨髄白血病を治療するための薬学的組成物、およびそのような組成物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)は、急性骨髄白血病(AML)において最も頻繁に変異する遺伝子の1つである。変異体FLT3(変異型FLT3)は、急性骨髄白血病(AML)患者の亜集団に現れる白血病細胞で発現する変異を指す。近位ドメインでの遺伝子内タンデム重複(ITD)などのFLT3の活性化変異は、新たに診断されたAML症例の約25~30%に見られる(特許文献1)。FLT3変異は、急性骨髄白血病(AML)患者の約1/3で発生することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
いくつかのFLT3阻害剤が臨床的に利用可能であるが、これらのFLT3阻害剤で治療されたAML患者で薬剤耐性白血球が観察され、薬剤耐性が示された(非特許文献1)。さらに、従来の急性骨髄白血病(AML)の標準的な化学療法では、AML幹細胞/前駆細胞を標的とすることは不可能であるため、患者に疾病が頻繁に再発し、したがって長期的な有効性が制限されるという問題がある(非特許文献2)。シタラビン(AraC)とアントラサイクリン(ダウノルビシン(DNR)やイダルビシン(IDR)など)を単独または併用化学療法で治療したFLT3-ITD変異を有するAML患者も、予後不良を示す(非特許文献4)。したがって、チロシンキナーゼの変異によって引き起こされる薬剤耐性を解決し、変異体急性白血病の患者を効果的に治療できる方法が必要である。
【0004】
FLT3阻害剤に対する耐性に取り組む試みとして、PI3K/Akt、MAPK、およびJAK/STATシグナル伝達経路の阻害剤、ならびにさまざまなFLT3阻害剤と化学療法剤の併用後のFLT3阻害剤が研究された(非特許文献3,4,5)。
【0005】
化学療法剤は、化学療法で使用される薬物を指し、シタラビン(AraC)、ダウノルビシン(DNR)、イダルビシン(IDR)、ドキソルビシンなどを含む。例えば、シタラビンは「4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン」と呼ばれる薬剤であり、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および非ホジキンリンパ腫に臨床的に使用されている。ダウノルビシンは、「((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン」という化学名と呼ばれる薬剤であり、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびカポシ肉腫に臨床的に使用されている。イダルビシンは、「(1S,3S)-3-アセチル-3,5,12-トリヒドロキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル3-アミノ-2,3,6-トリデオキソ-α-L-イルソ-ヘキソピラノシド」という化学名で呼ばれる薬剤であり、商品名Zavedosで販売されている。ドキソルビシンは、「(7S,9S)-7-[(2R,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ-6,9,11-トリヒドロキシ-9-(2-ヒドロキシアセチル)-4-メトキシ-8,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン」という化学名で呼ばれる薬剤であり、商品名アドリアマイシンで販売されており、乳がん、膀胱がん、急性リンパ性白血病などに臨床的に使用されている。ギルテリチニブは、「6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド」の化学名で呼ばれる薬であり、商品名Xospataで販売されており、例えば、ヘミフマル酸塩として存在し得る。非特許文献4は、急性骨髄白血病(AML)を治療するための、ギルテリチニブまたはその塩と化学療法剤またはその塩との効果的な組み合わせを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国未審査特許出願公開番号10-2018-0124055
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mol Cancer Ther 2007;6(7).2007年7月
【非特許文献2】J Natl Cancer Inst.Vol.106,Issue2,djt440,Feb5,2014
【非特許文献3】Oncogene.2010 Sep 16;29(37):5120-34
【非特許文献4】Oncotarget,2019,Vol10,No.26
【非特許文献5】Blood2016128:1071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、FLT3変異を有する患者を含む、AMLの治療のための代替療法を提供することによって、より良い治療結果をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
FLT3は白血病の有望な治療標的であり、AML患者の約30%以上で変異している。しかし、急性白血病患者の治療に使用される標的化チロシンキナーゼの点変異の出現に起因する薬剤耐性と難治性の発生への関心が高まっている。この耐性を克服するための1つのアプローチは、構造的に無関係な阻害剤および/または異なるシグナル伝達経路の阻害剤を組み合わせて、有効性と治療効果が増強されるかどうかを判断することによって特定される。
【0010】
本発明の一態様は、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物を提供し、薬学的組成物としてFms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤、その薬学的に許容される塩または溶媒和物を含み、組成物は、化学療法剤、それらの薬学的に許容される塩または溶媒和物と組み合わせて投与され、この場合、FLT3阻害剤は、式1の化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物である。
【0011】
本発明の別の態様は、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物を提供し、薬学的組成物として化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、Fms様チロシンキナーゼ(FLT3)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組み合わせて投与される。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、FLT3阻害剤、その薬学的に許容される塩または溶媒和物、および化学療法剤、その薬学的に許容される塩または溶媒和物を含む、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組み合わせを提供し、この場合、FLT3阻害剤は、式1の化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物である。
【0013】
本発明の別の態様は、薬学的組成物または薬学的組み合わせを同時に、連続してまたは別々に投与するための説明書を含む薬学的キットを提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、薬学的組成物、薬学的組み合わせ、またはキットを使用して急性骨髄白血病(AML)を治療するための治療方法を提供する。
【0015】
本発明の効果
本発明の一態様は、急性骨髄白血病(AML)を治療するための薬学的組成物を提供し、ms様チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物の治療上有効な組み合わせを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、薬学的組成物を使用して急性骨髄白血病(AML)を治療する方法、急性骨髄白血病を治療するための上記の薬学的組成物、薬学的組み合わせおよびそれらを使用するキットを提供する。
【0017】
薬学的組成物、薬学的組み合わせ、治療方法、およびキットを提供することにより、FLT3変異が存在する個体を含む急性骨髄白血病(AML)の対象におけるAMLの治療の有効性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンを構成するシタラビン(AraC)またはアントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(DNR))およびFLT3阻害剤である化学療法剤を単独で、または組み合わせて、MV-4-11細胞株を異種移植されたヌードマウスに投与した後の平均腫瘍体積の測定結果を示す。Y軸は平均腫瘍体積を表し、X軸は投与日数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で使用されるすべての専門用語は、別段の定義がない限り、本発明の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、好ましい方法およびサンプルが本明細書に記載されているが、類似または同等のものも本発明の範囲に含まれる。また、本明細書に記載されている数値は、特に明記されていなくても「約」の意味を含むものとみなされる。参照により本明細書に組み込まれるすべての刊行物の詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明の一態様は、薬学的組成物、組み合わせ、キット、または急性骨髄白血病(AML)の治療のための、それらを使用したAMLを治療する方法を提供し、急性骨髄白血病の治療に有効な組み合わせで、Fms様チロシンキナーゼ(FLT3)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物、および化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含む。
【0021】
本明細書では、急性骨髄白血病(AML)は、造血幹細胞が悪性細胞に変化し、骨髄で増殖し、末梢血に広がり、全身に広がり、肝臓、脾臓、リンパ腺などに侵入する疾患であり、FLT3変異を伴う急性骨髄白血病を含む可能性がある。一実施形態において、急性骨髄白血病は、変異体FLT3ポリヌクレオチド陽性骨髄白血病、FLT3遺伝子における縦方向重複(ITD)陽性急性骨髄白血病、またはFLT3点変異を有する急性骨髄白血病を含み得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、Fms様チロシンキナーゼ-3:(FLT3)は、造血幹細胞の表面に通常発現するクラスIII受容体チロシンキナーゼ(TK)ファミリーのメンバーである。FLT3とそのリガンドは、多能性幹細胞の増殖、生存、分化に重要な役割を果たす。FLT3は多くのAML症例で発現している。さらに、活性化FLT3のD835付近のチロシンキナーゼドメイン(TKD)変異、および近位ドメイン内およびその周辺の遺伝子内縦方向重複(ITD)を伴う活性化ループは、AML症例のそれぞれ28%~34%および11%~14%に存在する。FLT3のこれらの活性化変異は腫瘍形成性であり、細胞内で形質転換活性を示す。FLT3-ITD変異のある患者は、臨床試験での予後が悪く、再発率が高く、初期治療からの寛解期間が短く(FLT3-ITD変異のない患者では11.5か月であるのに対し、6か月)、無病生存期間が短くなり(5年で41%に対し16%~27%)、およびOSが低下する(5年で42%に対し15%~31%)。造血幹細胞移植(HSCT)後の再発の発生率も、FLT3-ITDの患者で高くなっている(2年で、FLT3-ITD変異のない患者の16%に対して30%)。第1選択治療の予後と同様に、再発/難治性のFLT3変異体陽性AMLの患者は、サルベージ化学療法による寛解率が低く、二次再発までの寛解期間が短く、FLT3変異体-陰性患者のOSが低下している。
【0023】
本明細書では、FLT3阻害剤は、4’-N-ベンゾイルスタウロスポリン(成分名:ミドスタウリン)、6-エチル-3-[[3-メトキシ-4-[4-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ピペリジニル]フェニル]アミノ]-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ]-2-ピラジンカルボキサミド(成分名:ギルテリチニブ)、1-(2-{5-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]-1H-ベンズイミダゾール-1-イル}キノリン-8-イル)ピペリジン-4-アミン(成分名:クレノラニブ);1-(5-(tert-ブチル)イソオキサゾール-3-イル)-3-(4-(7-(2-モルホリノエトキシ)ベンゾ[d]イミダゾ[2,1-b]チアゾール-2-イル)フェニル)尿素(成分名:キザルチニブ);2-ヒドロキシ-1-(2-((9-((1r,4r)-4-メチルシクロヘキシル)-9H-ピリド[4’,3’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)-7,8-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-6(5H)-イル)エタノン(開発コード名:FLX925);(S,E)-N-(1-((5-(2-((4-シアノフェニル)アミノ)-4-(プロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)ペント-4-イン-1-イル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(ジメチルアミノ)-N-メチルブタ-2-インアミド(開発コード名:FF-10101)、および6-[[(1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル]アミノ]-7-フルオロ-4-(1-メチルピラゾール-4-イル)-1,2-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピリジン-3-オン(開発コード名:TAK-659)、国際特許出願公開第WO2018/139903号に記載されているキナーゼ阻害活性を有する化合物、または韓国特許出願第10-2018-0086768号(登録第10-1954370号)に記載されているFLT3阻害活性を有する化合物、または、水和物などの任意の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物の形態の阻害剤などの物質を含むが、これらの物質に限定されない。
【0024】
FLT3阻害剤は、国際特許出願公開第WO2018/139903号に記載されているキナーゼ阻害活性を有する化合物、韓国特許出願第10-2018-0086768号(登録第10-1954370号)に記載されているFLT3阻害活性を有する化合物、または、薬学的に許容される塩または水和物などのその溶媒和物の形態の阻害剤であり得るが、これらの物質に限定されない。
【0025】
FLT3阻害剤として、国際特許出願公開第WO2018/139903号に記載されているキナーゼ阻害活性を有する化合物は、本明細書に記載の式1の化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物であり得る。
【0026】
FLT3阻害剤として、韓国特許出願第10-2018-0086768号(登録番号10-1954370)に記載されているFLT3阻害活性を有する化合物は、本明細書に記載の式3の化合物、立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物であり得る。
【0027】
本発明の一態様は、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物を提供し、Fms様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤を含む薬学的組成物、
その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物としては、組成物は、化学療法剤、それらの薬学的に許容される塩、または溶媒和物と組み合わせて投与され、
この場合、FLT3阻害剤は、式1の化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物であり、
【化1】

式1中、
は水素、ヒドロキシまたはC1~4アルコキシであり、
は水素、ハロゲン、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルであり
およびEは、互いに独立して水素またはヒドロキシであり、
X’は水素またはヒドロキシであり、
kは1~2の整数であり、
各Qは他のヒドロキシ、ハロゲン、C1~4アルキル、ヒドロキシC1~4アルキルまたはC1~4アルコキシから独立しており、
Z’は式(2)に示す一価の官能基であり、
【化2】

この場合、式2では、nは1~2の整数であり、
各Aは、他から独立して、ヒドロキシ、C1~4アルキルおよびヒドロキシC1~4アルキルから選択される官能基であり、少なくとも1つのAはC1~4アルキルであり、
Lは水素、C1~4アルキル、ヒドロキシまたはヒドロキシC1~4アルキルである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩)と1つ以上の溶媒分子との分子複合体を指す。そのような溶媒分子は、例えば、水、エタノールなど、製薬分野で知られている、または一般的に使用されているものであり得る。「溶媒和物」という用語は、水和物を含む。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「塩」または「薬学的に許容される塩」という用語は、開示される化合物の薬学的に許容される誘導体を指し、親化合物は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって変性される。
【0030】
一実施形態において、FLT3阻害剤は、式3の化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせから選択される化合物であり得る。
【化3】
【0031】
式3中、
は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1~4アルキル、ヒドロキシC1~4アルキル、またはC1~4アルコキシであり
sは1~2の整数であり、
は、ヒドロキシ、C1~4アルキルおよびヒドロキシC1~4アルキルから選択される官能基であり、
tは1~2の整数である。
【0032】
例えば、FLT3阻害剤は、国際特許出願公開第WO2018/139903号に記載されているキナーゼ阻害活性を有する化合物であり得、例えば、それは、表1の番号1から55に記載される化合物、その薬学的に許容される塩、および水和物を含む溶媒和物からなる群から選択される化合物であり得る。
【表1】

【表2】

【表3】
【0033】
例えば、FLT3阻害剤は、韓国特許出願第10-2018-0086768号に記載されているFLT3阻害活性を有する化合物であり得、例えば、それは、表2の番号1から32に記載される化合物から選択される化合物、その薬学的に許容される塩、および水和物を含む溶媒和物であり得る。
【表4】

【表5】
【0034】
一実施形態において、FLT3阻害剤は、上記の表2に示される化合物からなる群から選択される任意の1つであり得る。
【0035】
一実施形態において、FLT3阻害剤は、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、またはその薬学的に許容される塩、またはその水和物であり得る。
【0036】
FLT3阻害剤として、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンは、AML耐性に関連することが知られているSYKなどのキナーゼを阻害する。それらの中で、SYKキナーゼは直接的な物理的相互作用によってFLT3を転写し、これは、FLT3-ITD誘発性骨髄形成異常症の発症に重要であり、主にFLT3-ITD陽性AMLでより活発である。したがって、SYKなどのキナーゼの他のシグナル伝達経路の活性化は、AML患者の治療における耐性の原因である可能性がある。さらに、FLT3阻害剤とSYK阻害剤の組み合わせは、AML患者の治療のためのより効果的な戦略である可能性がある。
【0037】
本明細書で使用される場合、化学療法剤は、化学療法で使用される薬物を指し、それらには、作用機序に関係なく癌の治療に有用な生物学的(高分子)または化学的(小分子)化合物が含まれ、化学療法剤または抗腫瘍剤とも呼ばれる。そのような化学療法剤は当業者によく知られており、それらは、以下の物質からなる群から選択される化合物、またはその任意の薬学的に許容される塩または水和物であり得る。
【0038】
以下を含むホルモンおよび拮抗薬:シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシルおよびメルファランなどのナイトロジェンマスタード、チオテパなどのエチレンアミンおよびメチルメラミン、プロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体、ブスルファンなどのアルキルスルホネート、カルムスチンまたはロムスチンなどのニトロソウレア、ダカルバジンやテモゾロミドなどのトリアゼン、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどの白金配位錯体を含むアルキル化剤、メトトレキサートなどの葉酸類似体、フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビンなどのピリミジン類似体、メルカプトプリン、ペントスタチン、クラドリビン、フルダラビンなどのプリン類似体を含む代謝拮抗剤、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、パクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン、エトポシドやテニポシドなどのエピポドフィロトキシン、トポテカンやイリノテカンなどのカンプトテシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ドキソルビシン、プリコマイシン、およびエピルビシンなどの抗がん性抗生物質、ミトキサントロン、ミトマイシン、ブレオマイシンなどのアントラキノンジオン、ドラスタチンなどの有糸分裂阻害剤、L-アスパラギナーゼなどの酵素、ヒドロキシ尿素などの置換尿素、トレチノインなどの分化剤、イマチニブやブリオスタチンなどのプロテインキナーゼ阻害剤、ゲフチニブやボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、アミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤、プレドニゾンなどの副腎皮質ステロイド、酢酸メゲストロールやメドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロールなどのエストロゲン、タモキシフェン、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ジンドキシフェン、トリオキシフェン、ICI182,780、EM-800、トレミフェンなどの抗エストロゲン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンなどのアロマターゼ阻害剤、プロピオン酸テストステロンなどのアンドロゲン、フルタミドなどの抗アンドロゲン、リュープロリドなどのゴナドトロピン放出剤。
【0039】
化学療法剤は、1つ以上、例えば、2、3、4、5、6または7以上であり得る。例えば、2つ以上の化学療法剤が存在し得、例えば、2つの化学療法剤が組み合わせて使用され得る。
【0040】
化学療法剤は、代謝拮抗剤、抗がん抗生物質、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0041】
代謝拮抗剤は、ピリミジン類似体であり得る。例えば、ピリミジン類似体は、フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビンまたはカペシタビン、あるいはそれらの任意の薬学的に許容される塩または水和物であり得る。
【0042】
抗がん抗生物質は、アントラサイクリンベースの抗生物質であり得る。アントラサイクリンベースの抗がん物質は、4つの環からなるアグリコンに1つ以上のデオキシ糖を含むという構造的特徴を有する。代表的なアントラサイクリン系抗がん物質として、ダウノルビシンとドキソルビシンが知られている。
【0043】
抗がん抗生物質は、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ドキソルビシン、プリコマイシンまたはエピルビシン、あるいはそれらの任意の薬学的に許容される塩または水和物であり得る。
【0044】
化学療法剤には、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン(成分名:シタラビン、AraC)、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン(成分名:ダウノルビシン:DNR)、(1S,3S)-3-アセチル-3,5,12-トリヒドロキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル3-アミノ-2,3,6-トリデオキソ-α-L-イルソ-ヘキソピラノシド(成分名:イダルビシン:IDR)、(7S,9S)-7-[(2R,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ-6,9,11-トリヒドロキシ-9-(2-ヒドロキシアセチル)-4-メトキシ-8,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン(成分名:ドキソルビシン)、(8S,10S)-10-{[(2R,4S,5R,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,7,8,9,10,12-ヘキサヒドロテトラセン-5,12-ジオン(成分名:エピルビシン)などの物質、任意の薬学的に許容される塩またはその水和物の形態が含まれるが、それらに限定されない、化学療法剤は、シタラビン、ダウノルビシン、イダルビシン、ドキソルビシン、およびエピルビシンから選択される任意の1つ以上であり得る。化学療法剤は2つ以上であり得る。化学療法剤は、シタラビンとダウノルビシンの組み合わせであり得る。
【0045】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される任意の1つ以上、その薬学的に許容される塩、およびその溶媒和物であり得る。
【0046】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される任意の1つ以上、その薬学的に許容される塩およびその水和物あり得、
FLT3阻害剤は、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、およびその互変異性体であり得る。
【0047】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される任意の1つ以上、その薬学的に許容される塩、およびその水和物であり得、
FLT3阻害剤は、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、およびその互変異性体であり得る。
【0048】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンからなる群から選択される任意の1つ以上、その薬学的に許容される塩およびその水和物であり得、
FLT3阻害剤は、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンであり得る。
【0049】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン、またはその薬学的に許容される塩またはその水和物であり得、
FLT3阻害剤は、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体であり得る。
【0050】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン、またはその薬学的に許容される塩、またはその水和物であり得、
FLT3阻害剤は、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体であり得る。
【0051】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり得る。
【0052】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり得、
FLT3阻害剤は、式1の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体であり得る。
【0053】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり得、
FLT3阻害剤は、式3の化合物から選択される任意の1つ、その立体異性体、および互変異性体であり得る。
【0054】
一実施形態において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン、および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンであり、
FLT3阻害剤は、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミンであり得る。
【0055】
一実施形態において、急性骨髄白血病は、FLT3変異を有する急性骨髄白血病であり得る。
【0056】
一実施形態において、急性骨髄白血病は、変異体FLT3ポリヌクレオチド陽性急性骨髄白血病、FLT3内部タンデム重複(ITD)陽性急性骨髄白血病、またはFLT3点変異を伴う急性骨髄白血病であり得る。
【0057】
一実施形態において、式1の化合物の任意の1つのFLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、または溶媒和物を含む、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物として、
【0058】
急性骨髄白血病(AML)は、FLT3アミノ酸配列のチロシンキナーゼドメイン(TKD)(FLT3-TKD)に変異がある可能性がある。
【0059】
一実施形態において、FLT3-TKD変異は、内部タンデム重複(ITD)をさらに含み得る。
【0060】
一実施形態において、FLT3-TKD変異は、FLT3(D835Y)、FLT3(F691L)、FLT3(F691L/D835Y)、FLT3(ITD/D835Y)、FLT3(ITD/F691L)、およびそれらの組み合わせから選択される任意の1つを含み得る。
【0061】
一実施形態による急性骨髄白血病の治療のための薬学的組成物において、FLT3阻害剤は、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、またはその薬学的に許容される塩またはその水和物であり得る。
【0062】
一実施形態による急性骨髄白血病の治療のための薬学的組成物において、FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、化学療法剤、またはその薬学的許容される塩または溶媒和物と同時に、連続して、逆の順序で、または別々に投与され得る。
【0063】
一実施形態による急性骨髄白血病の治療のための薬学的組成物において、FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、ならびに化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、それぞれ、治療有効量で含まれ得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、FLT3阻害剤および化学療法剤と組み合わせて対象または患者に投与された場合に、急性骨髄白血病を治療する化合物の量である。
【0065】
薬学的組成物中の治療有効量は、患者に投与されたときに、意図された標的の生物学的活性を経時的に完全に阻害しない化合物の量であり、それは広い許容範囲内で変化する可能性があり、当技術分野で知られている方法で決定することができる。投与量は、治療される患者、および投与される特定の化合物、投与経路(経口投与、非経口投与)、および治療される状態を含む、それぞれの特定の症例の個々の要件に合わせて調整される。
【0066】
特定の対象に対していつでも治療有効量であることが証明された量は、たとえそのような用量が臨床医によって治療有効量と見なされたとしても、その疾患に対して同様に治療された対象の100%に対して有効ではない可能性がある。治療有効量に対応する化合物の量は、特定の種類の癌、癌のステージ、治療されている患者の年齢、および他の要因に依存し得る。一般に、これらの化合物の治療有効量は当技術分野でよく知られている。
【0067】
一実施形態による薬学的組成物の投与経路には、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、皮内、経皮、髄腔内、筋肉内、鼻腔内、経粘膜、皮下および直腸投与が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0068】
薬学的組成物において、FLT3阻害剤は、5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン、その薬学的に許容される塩または溶媒和物であり得、例えば、FLT3阻害剤は経口投与できる。
【0069】
薬学的組成物において、化学療法剤は、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン(成分名:シタラビン、AraC)、その薬学的に許容される塩または溶媒和物であり得、例えば、化学療法剤は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射によって投与できる。
【0070】
薬学的組成物において、化学療法剤は、((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン(成分名:ダウノルビシン:DNR)、その薬学的に許容される塩または溶媒和物であり得、例えば、化学療法剤は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射によって投与することができる。
【0071】
薬学的組成物において、化学療法剤は、(1S,3S)-3-アセチル-3,5,12-トリヒドロキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル3-アミノ-2,3,6-トリデオキソ-α-L-イルソ-ヘキソピラノシド(成分名:イダルビシン:IDR)、その薬学的に許容される塩または溶媒和物であり得、例えば、化学療法剤は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射によって投与することができる。
【0072】
薬学的組成物において、FLT3阻害剤は、6mg~600mgの量で投与され得る。あるいは、FLT3阻害剤は、0.1mg~10mg/kg体重/日の量で投与され得る。あるいは、FLT3阻害剤は、3.7ミリグラム/m~370ミリグラム/mの体表面積の量で投与され得る。
【0073】
患者に投与される併用薬物の量は、既知の技術を使用し、同様の状況下で得られた結果を観察することにより、当技術分野の主任診断医によって決定することができる。投与される化合物の有効量または用量を決定する際に、哺乳動物種、そのサイズ、年齢および全体的な健康状態、関与する特定の新生物;新生物の程度または関与または重症度;個々の患者の反応;投与されている特定の化合物;投与の様式;投与される薬剤の生物学的利用能特性;選択された使用法;併用薬の使用;およびその他の関連する環境、を含むがこれらに限定されない、多くの要因が主治医によって考慮される。例えば、経口投与される場合、1日当たりの用量は、患者の体重の約0.001~約100mg/kg、例えば、約0.005~約30mg/kg、例えば、約0.01~約10mg/kgであり得る。静脈内投与される場合、1日あたりの用量は好適には患者の体重の約0.0001~約81mg/kgであり得、全体は1日1回以上の分割投与で投与される。さらに、経粘膜製剤は、体重あたり約0.001~約81mg/kgの用量で投与され、1日1回投与することも、1日数回の分割用量で投与することもできる。例えば、シタラビンは、1日あたり約27~約81mgの量で投与され得る。
【0074】
一実施形態による化学療法剤の1日あたりの用量は、患者の体重の約0.001~約100mg/kg、例えば、約0.01~約90mg/kg、例えば、約0.1~約80mg/kgまたは約1~約50mg/kgであり、経口、静脈内、腹腔内に投与可能である。一実施形態によれば、化学療法剤の1日あたりの用量は、患者の体表面積に基づいて、1~500ミリグラム/m、10~200ミリグラム/m、または30~45ミリグラム/mであり得る。1日あたりの用量は、1日1回投与することも、分割用量で投与することもできる。一実施形態による1日あたりの用量は、併用薬の数および種類に応じて調整することができる。
【0075】
一実施形態による化学療法剤として、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン(成分名前:シタラビン、シタラビン、AraC)は、患者の体表面積1mあたり約100mgから患者の体表面積1mあたり約200mgの用量、例えば、約100mg/m~約200mg/mの量で投与することができる。ベースラインの血液学的値に関係なく、すべての患者に推奨される単剤療法の開始用量は、皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入による5日間(120時間)のシタラビン200mg/m/日である。治療サイクルは2週間ごとに繰り返すことができる。
【0076】
((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン(成分名:ダウノルビシン:DNR)は、患者の体表面積の1mあたり約45mgの用量で、例えば、約45mg/mの量で投与され得る。ベースラインの血液学的値に関係なく、すべての患者に対する併用療法の推奨用量は、皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入による7日間(1~7日目)のシタラビンの100mg/m/日の投与、および皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入による3日間(1~3日目)のダウノルビシンの45mg/mの投与である。疾病が続く場合は、上記の併用療法を2~4週間の間隔で繰り返すことができる。
【0077】
一実施形態による薬学的組成物の投与量、または組成物中のFLT3阻害剤および化学療法剤の投与量または治療有効量は広い許容範囲内で変化でき、それは当技術分野で知られている方法で決定することができる。投与量は、治療される患者、ならびに投与される特定の化合物、投与経路(経口投与、非経口投与)、および治療される状態を含む、それぞれの特定の症例の個々の要件に合わせて調整される。
【0078】
一日当たりの用量は、単回投与または分割投与として投与することができ、あるいは非経口投与の場合、持続注入として投与することができる。
【0079】
一実施形態による薬学的組成物において、FLT3阻害剤および化学療法剤は、特定の時間制限なしに、同時に、連続的に、または別々に投与され得る。本明細書において、そのような投与は、患者の体内に治療上有効なレベルの2つの化合物を提供することを意味する。投与の間隔は、所定の間隔の数秒、数分、数時間、または数日であり得、必要に応じて一時停止され得る。
【0080】
本発明の一態様は、治療上有効な間隔での組み合わせの投与または使用を包含する。治療上有効な間隔は、化合物の1つが患者に投与されたときに始まり、2つの化合物を組み合わせて投与する利点が維持される他の化合物の用量限界で終わる期間である。したがって、併用投与は、同時、連続、または任意の順序であり得る。
【0081】
同時投与の期間またはサイクルは、合計で1週間、28日、1か月、2か月、3か月、または4か月以上になる場合がある。個々の薬物はそれぞれ、全期間にわたって、または期間またはサイクルの一部のみにわたって毎日投与され得る。例えば、28日サイクルにおいて、FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩または水和物は、サイクルにおいて毎日投与され得るが、化学療法剤またはその薬学的に許容される塩または水和物はその一部、例えば、連続5日間、連続7日間、または連続10日間であり得、連続する5、7、および10日は、それぞれ期間またはサイクルの最初の5、7、または10日で投与され得る。あるいは、例えば、FLT3阻害剤は、21日間連続して1日1回投与され得、そして化学療法剤は、同じ期間中に週に3回または週に5回投与され得る。2つ以上の化学療法剤として投与される場合、各化学療法剤は、異なる投薬サイクルを有し得る。例えば、シタラビンとダウノルビシンの組み合わせがFLT3阻害剤と一緒に投与される場合、FLT3阻害剤は1日1回、合計21日間投与され、同じ期間に、シタラビンは週に5回投与され、ダウノルビシンは週に3回投与される場合がある。
【0082】
一実施形態による薬学的組成物は、FLT3阻害剤、またはその任意の薬学的に許容される塩または水和物、および化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩または水和物を含む、急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬剤として、同時、連続または別個の使用のための任意の薬学的に許容される量に含まれ得る。
【0083】
薬学的組成物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の任意選択の薬学的に許容される添加剤をさらに含み得る。賦形剤は、製剤を調製するのに有用であることが当業者に知られている任意の物質であり、例えば、薬物の投与様式に従って、必要に応じて調整することができる。
【0084】
本発明の別の態様は、化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む薬学的組成物として、Fms様チロシンキナーゼ(FLT3)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組み合わせて投与される急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組成物を提供する。
【0085】
この場合、FLT3阻害剤は、式1の化合物から選択される化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0086】
本発明の別の態様は、FLT3阻害剤、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物、および化学療法剤、それらの薬学的に許容される塩、または溶媒和物、を含む急性骨髄白血病(AML)の治療のための薬学的組み合わせ(または組み合わせ)を提供し、この場合、FLT3阻害剤は、式1の化合物から選択される化合物、その立体異性体、互変異性体、およびそれらの組み合わせである。
【0087】
薬学的組み合わせにおいて、FLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、または水和物などを含む溶媒和物など、および化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩または水和物を含む溶媒和物の2つの有効成分は、同時に、連続してまたは別々に投与することができる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」または「薬学的組み合わせ」という用語は、2つ以上の有効成分を混合または組み合わせることによって製造される製品を意味し、有効成分の固定されたおよび非固定の両方の組み合わせを含む。「固定された組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば、本明細書に開示される化合物、および1つ以上の追加の治療薬が、単一の凝集体または投薬量の形で対象に同時に投与されることを意味する。「非固定の組み合わせ」という用語は、本明細書に開示される化合物などの有効成分、および1つ以上の追加の治療薬が、特定の時間制限なしに別個の凝集体として同時に、同時にまたは連続して対象に投与されることを意味し、そのような投与は、対象の体内に治療有効レベルの有効成分を提供する。後者は、カクテル療法、例えば、3つ以上の有効成分の投与にも適用することができる。
【0089】
本発明の別の態様は、薬学的組成物または薬学的組み合わせを同時に、連続してまたは別々に投与するための説明書を含む薬学的キットを提供する。
【0090】
キットは、例えば、開業医(例えば、医師、看護師)または患者が、急性骨髄白血病(AML)などの癌を有する患者にそこに含まれる組成物または組み合わせを投与することを任意選択で可能にする投薬スケジュールを含む指示を含み得る。キットには注射器も含まれる場合がある。
【0091】
本発明の別の態様は、薬学的組成物、薬学的組み合わせ、またはキットを使用して急性骨髄白血病(AML)を治療するための治療方法を提供する。この場合、有効成分は、同時に、連続してまたは別々に投与することができる。
【0092】
FLT3阻害剤、または製薬上許容される塩、またはその水和物、および化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩または水和物を有効成分として含む組成物を使用して、急性骨髄白血病(AML)に罹患している対象を治療することができる。
【0093】
治療方法に従って治療される対象には、FLT3変異を有する急性骨髄白血病に罹患している対象が含まれる。例えば、急性骨髄白血病には、変異体FLT3ポリヌクレオチド陽性骨髄白血病、FLT3遺伝子の円柱状重複(ITD)陽性急性骨髄白血病、またはFLT3点変異を有する急性骨髄白血病が含まれる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、ヒト、チンパンジー、類人猿、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモットなどが含まれる。非哺乳動物の例には、鳥、魚などが含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療(treat)」、「治療すること」、または「治療(treatment)」という用語は、既存の症状、疾患、状態、または障害の進行または重症度を制限、遅延、阻止、軽減または逆転させることを含む。
【0096】
本発明の一態様は、急性骨髄白血病(AML)の治療薬の製造に使用される有効成分としてのFLT3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含む組み合わせの使用、または化学療法剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0097】
薬学的組成物、薬学的組み合わせ、薬学的キット、および治療方法は、化学療法剤、FLT3阻害剤、またはそれらの薬学的に許容される塩またはその溶媒和物の前述の成分、これらの投与量および投与方法を使用することができる。
【0098】
本発明による一態様の薬学的組成物、薬学的配合物、薬学的キット、治療方法を用いたFLT3阻害剤と化学療法剤との併用療法は、FLT3阻害剤または化学療法剤を単独で投与した時の効果と比べて、改善された治療効果を有する。一実施形態による治療効果は、組み合わせて使用される2つ以上の薬物の算術和よりも大きい相乗的治療効果を表す。
【0099】
本明細書での産業上の利用可能性は、この併用療法の有用性の、1つ以上のパラメーターの説明を含む1つ以上の研究におけるプラスの影響によって例示される。
【0100】
以下、本発明を実施例および実験例としてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例および実験例は、本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の範囲は、いかなる意味においてもそれに限定されない。
【0101】
[実施例1]
MV-4-11細胞株異種移植マウスモデル
MV-4-11細胞株を異種移植したマウスモデルにおいて、FLT3阻害剤である5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(以下、化合物A)、4-アミノ-1-[(2R,3S,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン(以下、シタラビン),および((8S,10S)-8-アセチル-10-[(2S,4S,5S,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオン(以下、ダウノルビシン)の比較および組み合わせ効力試験を実施した。
【0102】
MV-4-11細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。このMV-4-11細胞株を用いて異種移植マウスモデルを構築するために、5週齢の雌CAnN.Cg-Foxn1nu/Crljbgiマウス(以下、ヌードマウス)をCharles River Laboratories Japan, Inc.から購入した。
【0103】
MV-4-11細胞株は、5×10細胞/10ミリリットル/マウスを側腹部に皮下接種し、増殖させた。投与1日前に腫瘍体積が100~300mm(長さ×幅×0.5)のマウスを選び、平均腫瘍体積がほぼ同一となるように各群の平均腫瘍体積を4群(5匹/群)に分け、各用量を合計21日間投与した。
【0104】
対照群は、DMSO/PEG400/DW(比率=0.5/2/7.5、v/v/v)混合溶液を1日1回経口投与した。化合物A群は、1日目から21日目まで3mg/kg/日の用量で1日1回経口投与された。CTx(シタラビン+ダウノルビシン)群は、1日目から21日目まで週5回(毎週1日から5日目:シタラビン)、50mg/kg/日の用量でシタラビンの腹腔内投与を受け、ダウノルビシンを2mg/kg/日の用量で週3回静脈内投与した(毎週1日目から3日目:ダウノルビシン)。併用群では、化合物Aを1日1回、1日目から21日目まで3mg/kg/日の用量で経口投与し、CTx(シタラビン+ダウノルビシン)群では、1日目から21日目まで50mg/kg/日の用量で週5回(毎週1日~5日目:シタラビン)のシタラビンの腹腔内投与を受け、ダウノルビシンを2mg/kg/日の用量で週3回静脈内投与した(毎週1日~3日:ダウノルビシン)。
【0105】
実験結果を図1に示す。図1は、MV-4-11細胞株を異種移植されたヌードマウスにおいて、各治療溶液または薬物単独または組み合わせでの治療後に測定された腫瘍体積(mm3)を示す。図1の結果から、FLT3阻害剤と化学療法剤を組み合わせて投与した場合の抗腫瘍効果が見られる。Y軸は平均腫瘍体積(mm)を表し、X軸は投与日数を表す。腫瘍増殖阻害(TGI)は、「(1-(薬物治療群の平均腫瘍体積)/(対照群の平均腫瘍体積))Х100%」から計算された。ここで、各治療群で使用された5匹のヌードマウスのそれぞれの腫瘍体積の平均を平均腫瘍体積として採用した。
【0106】
図1に示すように、平均腫瘍体積は、各治療群で21日間の薬物投与期間にわたって測定され、これから腫瘍増殖阻害(TGI)の効果が得られた。その結果、化合物Aのみ投与群(化合物A群)または化学療法剤のみ投与群(シタラビン+ダウノルビシン(CTx)群)と比較して、併用群の平均腫瘍体積は有意に減少した。腫瘍増殖抑制(TGI)効果は併用群で増加した(併用群でTGI=75.8%、化合物A群でTGI=34.7%、CTx群でTGI=34.1%)。
【0107】
図1に示されるMV-4-11細胞で異種移植されたマウス有効性モデルを使用した実験結果から、FLT3阻害剤化合物Aのみを投与した群、または化学療法剤(シタラビンおよびダウノルビシン)のみを投与した群と比較して、FLT3阻害剤と化学療法剤(シタラビンおよびダウノルビシン)の併用群では平均腫瘍体積の減少が増加し、改善された抗腫瘍効果が示されたことが確認された。
【0108】
この併用療法の有用性の産業上の利用可能性は、1つ以上のパラメーターの説明を含む1つ以上の研究におけるプラスの影響によって例示される。
【0109】
これまでのところ、本発明はその特定の例に焦点を合わせおり、本発明に関連する当業者は、本発明が本発明の本質的な特徴から逸脱することなく修正された形で実施され得ることを理解するであろう。したがって、開示された実施形態は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述の説明ではなく特許請求の範囲に示され、それに相当する範囲内のすべての相違は、本発明に含まれると解釈されるべきである。
図1
【国際調査報告】