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特表2022-538831自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素及びエアフィルタ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素及びエアフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20220830BHJP
【FI】
B01D46/00 C
B01D46/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576520
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021059868
(87)【国際公開番号】W WO2021213906
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】102020110941.5
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021000515.5
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ,エリック
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA14
4D058KA01
4D058KA08
4D058KC19
4D058KC37
4D058KC54
4D058LA01
4D058SA07
(57)【要約】
本発明は、自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素(10)であって、フィルタ要素(10)のフィルタ材料(18)を少なくとも部分的に取り囲むフレーム(16)を有し、フレーム(16)は、前壁(20)を備え、前壁(20)は、挿入方向(22)に垂直に延在しており、この挿入方向(22)で、フィルタ要素(10)は、エアフィルタ装置のハウジング(12)の収容スペース(14)に挿入可能であり、前壁(20)の前側(24)に、少なくとも1つの締結要素(26)が配置されており、少なくとも1つの締結要素(26)に、収容スペース(14)を閉鎖するために形成された、エアフィルタ装置のカバー(34)が定着可能であり、少なくとも1つの締結要素(26)は、前壁(20)の前側(24)から離間された保持部分(44、46)を有し、保持部分(44、46)は、カバー(34)を用いて収容スペース(14)を閉鎖するために、カバー(34)の対応する保持部分(56)によって後ろから係合可能であり、2つの保持部分(44、46)は、挿入方向(22)に対して横方向に締結要素(26)のシャフト(42)から突出する翼部として形成されており、それぞれの保持部分(44、46)は、第1の端部領域(48)から第2の端部領域(50)にわたって、フィルタ壁(20)に向かって傾斜型の形状を有する、フィルタ要素(10)、に関する。更に、本発明は、そのようなフィルタ要素(10)を有するエアフィルタ装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素であって、前記フィルタ要素(10)のフィルタ材料(18)を少なくとも部分的に取り囲むフレーム(16)を有し、前記フレーム(16)は、前壁(20)を含み、前記前壁(20)は、挿入方向(22)に垂直に延在しており、前記挿入方向(22)で、前記フィルタ要素(10)は、前記エアフィルタ装置のハウジング(12)の収容スペース(14)に挿入可能であり、前記前壁(20)の前側(24)に、少なくとも1つの締結要素(26)が配置されており、前記少なくとも1つの締結要素(26)に、前記収容スペース(14)を閉鎖するために形成された、前記エアフィルタ装置のカバー(34)が定着可能であり、前記少なくとも1つの締結要素(26)は、前記前壁(20)の前記前側(24)から離間された少なくとも1つの保持部分(44、46)を有し、前記保持部分(44、46)は、前記カバー(34)を用いて前記収容スペース(14)を閉鎖するために、前記カバー(34)の対応する保持部分(56)によって後ろから係合可能である、フィルタ要素において、
前記少なくとも1つの締結要素(26)は、2つの保持部分(44、46)を有し、
前記2つの保持部分(44、46)は、前記挿入方向(22)に対して横方向に前記締結要素(26)のシャフト(42)から突出している翼部として形成されており、
前記2つの保持部分(44、46)のそれぞれは、第1の端部領域(48)から第2の端部領域(50)にわたって、フィルタ壁(20)に向かって傾斜型の形状を有することを特徴とする、フィルタ要素。
【請求項2】
前記少なくとも1つの締結要素(26)は、前記前壁(20)の上方向(68)に向かって、前記前壁(20)の下端から離間されており、かつ前記挿入方向(22)に反して前記前側(24)から突出しているため、前記少なくとも1つの締結要素(26)は、前記カバー(34)上に配置された閉鎖要素(40)のスリーブ型の保持領域(66)に挿入可能であり、
前記保持領域(66)で取り囲まれた前記少なくとも1つの締結要素(26)は、その保持部分(44、46)で前記閉鎖要素(40)を回転軸線(70)を中心として捻ることによって、前記閉鎖要素(40)の対応するカバー側の保持要素(56)とクランプ可能であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ要素。
【請求項3】
前記フィルタ要素(10)の前記前壁(20)の短辺(72)において保持タブ(76)が突出しており、前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)側に設けられた保持溝(80)に前記保持タブ(76)を挿入することによって、前記フィルタ要素(10)は、動きに対して固定可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルタ要素。
【請求項4】
前記フィルタ要素(10)は、前記フィルタ材料(18)を支持する少なくとも1つの支持ウェブ(96)を有し、
前記少なくとも1つの支持ウェブ(96)は、前記フレーム(16)の2つの対向する壁(20、28、30、32)の間に延在しており、前記少なくとも1つの支持ウェブ(96)は、前記2つの壁(20、28、30、32)を互いに接続することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタ要素。
【請求項5】
自動車用のエアフィルタ装置であって、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ要素(10)を有し、
前記フィルタ要素(10)は、前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)内に形成された収容スペース(14)に挿入されており、
前記収容スペース(14)は、前記エアフィルタ装置のカバー(34)上に配置された少なくとも1つの閉鎖要素(40)を用いて閉鎖可能であり、
前記閉鎖要素(40)は、前記フィルタ要素(10)の前記少なくとも1つの締結要素(26)の前記2つの傾斜型の保持部分(44、46)に定着可能である、自動車用のエアフィルタ装置。
【請求項6】
前記カバー(34)の前記少なくとも1つの閉鎖要素(40)は、回転軸線(70)を中心として回転可能であり、かつ2つの保持部分(56)を有するスリーブ型の保持領域(66)を有するため、前記フィルタ要素の前記少なくとも1つの締結要素(26)を前記スリーブ型の保持領域(66)で取り囲むことが可能であり、
前記少なくとも1つの閉鎖要素(40)が閉位置にあるとき、前記閉鎖要素(40)の前記2つの保持部分(56)は、前記少なくとも1つの締結要素(26)の前記2つの保持部分(44、46)を後ろから係合することを特徴とする、請求項5に記載のエアフィルタ装置。
【請求項7】
前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)は、前記フィルタ要素(10)の前記保持タブ(76)が挿入されている少なくとも1つの保持溝(80)を有するため、前記フィルタ要素(10)の前記締結要素(26)は、前記カバー(34)の前記閉鎖要素(40)による閉鎖のために、正しい位置に位置調整されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載のエアフィルタ装置。
【請求項8】
前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)は、特に挿入方向(22)で見て斜めに上昇する傾斜型の少なくとも1つの保持突起として形成された逆戻り防止要素(82)を有し、
前記逆戻り防止要素(82)は、挿入方向(22)で前記保持溝(80)の上流に存在することを特徴とする、請求項7に記載のエアフィルタ装置。
【請求項9】
前記ハウジング(12)は、前記保持溝(80)の長手延在方向で前記保持溝(80)の隣に配置された少なくとも1つの傾斜(100)を有し、
前記少なくとも1つの傾斜(100)は、前記保持溝(80)から出発して、挿入方向(22)で見て斜めに降下するように形成されていることを特徴とする、請求項7及び8に記載のエアフィルタ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの傾斜(100)は、頂部領域(102)を有し、
前記頂部領域(102)における前記少なくとも1つの傾斜(100)の高さは、前記少なくとも1つの逆戻り防止要素(82)の最大高さよりも大きいこと、及び/又は前記少なくとも1つの傾斜(100)は、挿入方向(22)で見て前記頂部領域(102)に向かって斜めに上昇するように形成されていることを特徴とする、請求項9に記載のエアフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ要素のフィルタ材料を少なくとも部分的に取り囲むフレームを有する、自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素に関する。フレームは、挿入方向に実質的に垂直に延在する前壁を含む。この挿入方向で、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジングの収容スペースに挿入可能である。更に、本発明は、そのようなフィルタ要素を有するエアフィルタ装置に関する。
【0002】
特許文献1には、折り畳まれた濾過材がフレームによって取り巻かれた、自動車の空調システム用のエアフィルタについて記載されている。フレームの壁から、係止手段を挿入することができる2つの収容部が突出している。係止手段は、エアフィルタを収容するハウジングを閉鎖可能なカバー上に配置されている。ハウジングがカバーを用いて閉鎖されるときにハウジングの縁に当接しているシール要素は、カバーの接続プレートと一体的に形成されている。
【0003】
特許文献2には、自動車の内燃機関に供給される燃焼用空気を濾過するためのフィルタ要素について記載されている。フィルタ要素は、支持構造体の形態の内部支持体本体に支持され、かつ保持された濾過材本体を有する。支持体本体の軸線方向端面に端部ディスクがある。それぞれの係止要素を有する2つのタブ型の構成要素は、それぞれの接続部品を介して端部ディスクのうちの1つと接続されている。それぞれの係止要素を有する構成要素は、接続部品を介して端部ディスクと一緒に単一部品として形成されている。更に、この場合、構成要素は、フィルタ要素から横方向に突出している。係止要素は、フィルタ要素の設置位置において、フィルタハウジング上に配置された相手係止要素と係止する。係止要素は、フィルタハウジング上に置かれたカバーを用いて、係止位置に固定される。
【0004】
この場合の欠点とは、係止要素を有する横方向に突出した構成要素が、フィルタハウジング内で比較的大きな設置スペースを占めるため、この設置スペースが、濾過すべき空気の濾過に用いることができないこと、又は使用可能ではないことであると考えられる。
更に、フィルタ要素がフィルタハウジング内にない場合であっても、カバーがフィルタハウジングに取り付けられ得る。どちらも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007018215(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102015004645(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、使用可能な設置スペースの良好な利用率及びエアフィルタ装置の機能的に信頼可能な動作を可能にする、冒頭で述べたタイプのフィルタ要素を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、請求項1の特徴を有するフィルタ要素及び請求項4の特徴を有するエアフィルタ装置によって解決される。本発明の好都合な発展形態を伴う有利な形態は、従属請求項に明記されている。
【0008】
自動車のエアフィルタ装置用の本発明によるフィルタ要素は、フィルタ要素のフィルタ材料を少なくとも部分的に取り囲むフレームを有する。フレームは、前壁を含む。前壁は、挿入方向に垂直に延在しており、この垂直方向で、フィルタ要素がエアフィルタ装置のハウジング(以下、「エアフィルタハウジング」又は「ハウジング」とも称する)の収容スペースに挿入可能である。前壁の前側に少なくとも1つの締結要素が配置されている。収容スペースを閉鎖するように形成された、エアフィルタ装置のカバーは、少なくとも1つの締結要素において定着可能である。
【0009】
少なくとも1つの締結要素は、前壁の前側から離間された少なくとも1つの保持部分を有する。この場合、少なくとも1つの保持部分は、エアフィルタ装置のカバーを用いて収容スペースを閉鎖する目的で、カバーの対応する保持部分によって後ろから係合可能である。このようにして、エアフィルタハウジングへのカバーの特に密接な当接を達成することができる。そのように閉鎖がもたらされることによって、カバーもまた、その閉位置にあるときに所定の位置に良好に固定することができる。
【0010】
本発明によると、少なくとも1つの締結要素は、2つの保持部分を有し、これらの保持部分は、締結要素のシャフトから挿入方向に対して横方向に突出した翼部として形成されている。そのようなそれぞれの翼部を、カバーの対応する保持部分によって、特に容易に後ろから係合することができる。更に、そのような翼部又は保持部分を有する締結要素は、わずかな設置スペースしか占めず、カバーの閉鎖要素が締結要素と協働し、その際、対応する保持部分を有する閉鎖要素が翼部を後ろから係合することによって、フィルタ要素用の収容開口部の領域における、エアフィルタハウジングへのカバーの確実な固定が達成される。
【0011】
更に、第1及び第2の端部領域を有するそれぞれの保持部分は、一方の端部領域から他方の端部領域にわたって傾斜型の形状を有することも特に有利である。カバーをその閉位置でハウジングに固定するとき、対応する保持部分を、カバーの定着時に、このタイプの傾斜型の端部領域に沿って動かすことができる。フィルタ側の保持部分(又は翼部も)の形状が傾斜型になっていることから、エアフィルタハウジングへのカバーの特に密接な当接を達成することができる。すなわち、保持部分の形状が傾斜型になっていることに基づいて、カバーを、カバーがハウジングに対して当接しているその閉位置に固定する際に、ハウジングに向かう、密閉を補助するより強いカバーの動きを達成することができる。
【0012】
前壁の前側に配置された締結要素を有するフィルタ要素における更なる利点は、フィルタ要素が収容スペースに設置又は挿入されているときにのみ、自動車のエアフィルタ装置を動作させることができることである。というのも、エアフィルタ装置のカバーを用いて収容スペースを確実に閉鎖するためには、フィルタ要素の構成部品である少なくとも1つの締結要素が必要とされるからである。言い換えるなら、フィルタ要素がハウジングの収容スペースに挿入されていない場合、カバーをエアフィルタハウジングにおいて所定の位置に固定して又は強固に当接することはできない。このようにして、エアフィルタ装置が不適切に動作することを防ぐことができる。結果として、このフィルタ要素によって、エアフィルタ装置の機能的に信頼できる動作が可能になる。
【0013】
更に、フィルタ要素を交換する際には、少なくとも1つの締結要素をフィルタ要素と一緒に交換する。これは、例えば、エアフィルタハウジング内に形成された収容スペースをカバーを用いて閉鎖するためにエアフィルタ装置のカバーを締結要素に定着させる際に、締結要素のクランプ形状及び/又は保持形状が摩耗を受けやすいという点に鑑みて有利である。
好適には、少なくとも1つの締結要素は、前壁の上方向に向かって、前壁の下端から離間されており、挿入方向に反して前側から突出している。
【0014】
フィルタ要素の前面における締結要素のこの自由にアクセス可能な配置によって、締結要素が挿入可能なスリーブ型の保持領域を有することが有利なカバー側の閉鎖要素との締結に関して、利用性が良好になる。特に、それによって、カバー上に配置された閉鎖要素が締結要素を囲み込むこと又は取り囲むことが達成される。これは、堅牢性及び信頼性のある、フィルタ要素へのカバーの固定にとって有利である。
【0015】
閉鎖要素を回転軸線を中心として回転させることによって、保持領域に取り囲まれた少なくとも1つの締結要素は、フィルタ要素側の保持要素がカバー側の閉鎖要素の保持要素と当接することで、カバーの閉鎖要素によってクランプ可能である。このようにして、非常に堅牢性かつ耐久性となるように、フィルタ要素へのカバーの定着又は固定を達成することができる。
【0016】
その際、締結要素は、挿入方向に反して前面から少しだけ離れて延在していれば十分である。挿入方向で見て、それに伴う締結要素の高さが低いことは、フィルタ要素のフィルタ材料による使用可能設置スペースの利用率が良好であるという点で有利である。
【0017】
更なる好ましい形態では、短辺におけるフィルタ要素の前壁から、保持タブが突出している。エアフィルタ装置のハウジング側に設けられた保持溝に保持タブを挿入することによって、フィルタ要素は、動きに対して固定可能である。
【0018】
保持タブがハウジングの保持溝に挿入されている場合、フィルタ要素をハウジング内に更に挿入したり、又は挿入方向に反してハウジングから抜き出したりすることはできない。これは、挿入方向が水平ではなく、フィルタ要素が水平に対して斜めに収容スペースに挿入されている又は押し込まれている場合にも当てはまる。そのような場合にも、保持タブは、保持タブが保持溝に挿入されるとすぐに、収容スペースから滑り落ちたり、又は収容スペースに更に滑り込んだりすることを防ぐ。保持タブを保持溝に挿入することによって、フィルタ要素全体が正しい位置に位置調整されることが確実になる。すなわち、フィルタ要素がハウジング内でこの設置位置にあると、同時に、少なくとも1つの締結要素も、エアフィルタ装置のカバーを締結するために正しい位置に位置調整されている。
【0019】
設置位置に対してより低い前壁短辺において保持タブが突出していると、収容スペースへのフィルタ要素の挿入又は押し込み時に、重力によって、保持タブがハウジング内で保持溝に到達して、前壁が下降する。したがって、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジングに非常に容易に取り付け可能である。
【0020】
更に、ハウジング側に設けられた保持溝への挿入が意図されている保持タブが存在することから、フィルタ要素を取り外す際に、すなわち、フィルタ要素を収容スペースから取り出す際に、前壁、したがってフィルタ要素全体を最初に少し持ち上げる必要がある。このようにして、フィルタ要素、より正確にはフィルタ要素のフィルタ材料は、エアフィルタ装置のハウジングの領域内で引っ掛かり、その際に損傷することを防ぐことができる。これは、フィルタ要素を一時的にのみ取り外して、例えば、フィルタ要素から粉塵若しくは固形物を降り落とすか、又は軽くたたいて落とし、続いて、フィルタ要素をハウジングに再度設置する場合に特に好都合である。
【0021】
好適には、保持タブは、前壁の基体と一体的に形成されている。そのようにして、保持タブをフレームの製造時に特に容易にかつわずかな労力で提供することができる。更に、保持タブが、プレート型の基体の短辺の厚さに対応する厚さを挿入方向に有することが企図され得る。それによって、保持タブは、特に堅牢性かつ耐久性となるように形成されている。
【0022】
好適には、フィルタ要素は、フィルタ材料を支持する支持ウェブを少なくとも有し、この支持ウェブは、フィルタ要素のフレームの2つの対向する壁の間に延在しており、この支持ウェブは、2つの壁を互いに接続する。そのような支持ウェブを設けることによって、フレーム、更には、フィルタ要素のフレームによって少なくとも領域的に(好適には完全に)取り囲まれた、又はフィルタ要素のフレームによって少なくとも領域的に(好適には完全に)取り巻かれたフィルタ材料が、良好に安定化されている。それによって、例えば、収容スペースからフィルタ材料を取り出した後に、フィルタ材料の粗空気側に留められた粉塵などの形態の固形物を、フィルタ材料の形状を永続的に損なうことなく、降り落とすことによって、又は軽くたたいて落とすことによってフィルタ材料から除去することが可能になる。
【0023】
フィルタ材料が複数のプリーツを有する場合、支持ウェブは、突起状又はピン状に形成された隆起を有し得て、これらの隆起は、例えば、支持ウェブのストリップ型の背面から突出しており、フィルタ材料のプリーツに係合している。そのようにして、軽くたたくこと又は払うことなどによって固形物を折り畳まれたフィルタ材料から除去する際及びその後でも、フィルタ材料のプリーツの形状を非常に良好に維持することができる。
【0024】
自動車用の本発明によるエアフィルタ装置は、本発明によるフィルタ要素を有し、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジング内に形成された収容スペースに挿入されている。
【0025】
エアフィルタ装置は、特に、空調システムのエアフィルタ装置又は自動車の換気装置として形成され得る。更に、エアフィルタ装置は、自動車の内燃機関の吸気管のために、すなわち、内燃機関によって引き込まれる空気のためのフィルタとして設けられ得る。
【0026】
収容スペースは、エアフィルタ装置のハウジングを周辺環境から密閉するカバーを用いて閉鎖可能であり、カバーは、本発明によるフィルタ要素の少なくとも1つの締結要素の2つの傾斜型の保持部分に定着させられる少なくとも1つの閉鎖要素を有する。カバーがフィルタ要素又はフィルタ要素の締結要素に直接定着していることによって、本発明によるフィルタ要素が存在し、かつこれが収容スペースに正しく設置されている場合にのみ、エアフィルタハウジングをカバーを用いて閉鎖できることが確実になる。それによって、フィルタ要素が挿入されずにエアフィルタ装置が動作されることが確実に回避される。
【0027】
好適には、カバーの少なくとも1つの閉鎖要素は、回転軸線を中心として回転可能であり、その際、スリーブ型に構築されているため、少なくとも1つのフィルタ側の締結要素を取り囲むことができ、閉位置にあるとき、カバー側の閉鎖要素の2つの保持部分は、フィルタ側の締結要素の2つの対応する保持部分を後ろから係合し、締結要素側の保持部分が傾斜型に形成されていることに基づいて、互いにクランプする。閉鎖要素と締結要素とのこの協働に基づいて、ハウジングのその位置において、カバーの特に確実かつ密接な固定が達成可能である。
【0028】
特に、カバーがエアフィルタハウジングにおいて枢動可能に保持されることも企図され得る。それによって、装置の非常に直感的な操作が可能になる。
【0029】
更に好ましい形態では、エアフィルタ装置のハウジングは、少なくとも1つの保持溝を有し、この保持溝に、フィルタ要素の保持タブが挿入可能である。
【0030】
フィルタ要素の保持タブが、意図される保持溝に係合したら、フィルタ要素(又はそれに付いた締結要素)は、収容スペースにおいて正しく位置決めされ、それにより、エアフィルタ装置のカバーを少なくとも1つの閉鎖要素を用いて少なくとも1つのフィルタ側の締結要素に定着させることができ、このようにして、ハウジングが閉鎖される。この配置によって、フィルタ要素がエアフィルタハウジングに正しく設置されている場合にのみ、カバーを用いて収容スペースを閉鎖することができること、及びエアフィルタ装置がフィルタ要素なしで誤って動作されないことを確実にすることができる。
【0031】
好適には、エアフィルタ装置のハウジングは、挿入方向で保持溝の上流に存在する少なくとも1つの逆戻り防止要素を有する。そのような逆戻り防止要素は、特に保持溝と一緒になって、保持タブが保持溝内に位置するとすぐに、フィルタ要素が意図せずに収容スペースから動いて出ることができないようにする。特に、保持タブが保持溝内に挿入されており、かつカバーがフィルタ要素に定着しているときに、保持タブが少なくとも1つの逆戻り防止要素に当接していることが企図され得る。
【0032】
少なくとも1つの逆戻り防止要素は、特に挿入方向で見て斜めに上昇する傾斜型の保持突起として形成され得る。保持溝の長手方向で、すなわち挿入方向に対して横方向で複数のそのような傾斜型の保持突起が、挿入方向で保持溝の上流に存在し得る。次いで、保持タブが、好適には重力によって、挿入方向で保持突起の下流に存在する保持溝内に下降するまで、保持タブの下側をこれらの傾斜型の保持突起上で非常に容易に押すことができる。すなわち、保持タブが保持溝に係合するとすぐに、保持タブは、特に傾斜型の保持突起とアンダーカットを形成することができる。
【0033】
好適には、ハウジングは、保持溝の長手延在方向で保持溝の隣に配置された少なくとも1つの傾斜を有する。この場合、少なくとも1つの傾斜は、保持溝から出発して、挿入方向で見て斜めに降下するように形成されている。このような傾斜によって、フィルタ要素を収容スペースから取り出す又は抜き出す際に、フィルタ要素が絡まること、及び/又はフィルタ材料が損傷することを非常に容易かつ確実に防ぐことができる。
【0034】
フィルタ要素が、フレームの側壁を互いに接続する少なくとも1つの支持ウェブを有する場合、少なくとも1つの傾斜によって、そのような支持ウェブを有するフィルタ要素がハウジングの構成要素に引っ掛かること、又は支持ウェブがそのような構成要素に絡まることも防がれる。
【0035】
好適には、少なくとも1つの傾斜は、頂部領域を有し、頂部領域における少なくとも1つの傾斜の高さは、少なくとも1つの逆戻り防止要素の最大高さよりも大きい。したがって、フィルタ要素を収容スペースから抜き出す際に、フィルタ要素のフレームが少なくとも1つの逆戻り防止要素に引っ掛からないことを非常に容易に確実にすることができる。
【0036】
追加的に又は代替的に、少なくとも1つの傾斜が、挿入方向で見て、頂部領域に向かって斜めに上昇するように形成されることが企図され得る。これによって、エアフィルタ装置のハウジング内に形成された収容スペースへのフィルタ要素の挿入が容易になる。
【0037】
本発明によるフィルタ要素について説明した利点及び好ましい実施形態は、本発明によるエアフィルタ装置にも適用され、その逆もまた同様である。
【0038】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、好ましい実施例の以下の説明から、図面を参照して明らかとなる。先に説明において挙げた特徴及び特徴組み合わせ、並びに以下で図面の説明で挙げる、かつ/又は図に単独で示す特徴及び特徴組み合わせは、それぞれ記載されている組み合わせでのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素の概略斜視図である。
図2図1によるフィルタ要素の拡大詳細図であり、この図では、フィルタ要素のフレームの前壁の前側に配置された締結要素をよりよく見ることができる。
図3図1によるフィルタ要素を収容するように形成された、エアフィルタ装置のハウジングの一部の図である。
図4】ハウジングの収容開口部の領域における部分断面詳細図であり、この収容開口部を介して、図1によるフィルタ要素をハウジングに押し込むことができる。
図5図3によるハウジングへの図1によるフィルタ要素の挿入の部分断面側面図である。
図6】ハウジングの収容スペースに挿入されて挿入方向でその最終位置に到達したフィルタ要素の部分断面側面図である。
図7】フィルタ要素及びハウジングの前側部分の拡大詳細図であり、この図では、フィルタ要素の前壁は、ハウジング側に形成された保持溝の高さにある。
図8】前壁が重力により下降して、前壁と一体的に形成されたフィルタ要素の保持タブが保持溝に係合することを示す図である。
図9】エアフィルタ装置のハウジング用のカバーの一部の正面図であり、この図では、カバーは、図2に示されるフィルタ要素の締結要素と協働してカバーを定着させる回転閉鎖具として形成された閉鎖要素を有する。
図10】回転閉鎖具の領域のカバーの一部の背面図である。
図11】フィルタ要素を取り外す又はフィルタ要素を分解する際の第1のステップを示す図であり、このステップでは、フィルタ要素が前壁の領域において持ち上げられ、それによって、保持タブが保持溝から動かされる。
図12】フィルタ要素を収容スペースから抜き出す際の、保持溝の両側に配置された傾斜を介した、フレームの複数の支持ウェブのうちの1つの支持ウェブのスライドの部分断面図である。
図13】フィルタ要素のフィルタ材料がない状態で、2つの支持ウェブを含む、図1によるフィルタ要素のフレームの斜視図である。
図14】カバーの領域におけるエアフィルタ装置の断面図であり、この図では、フィルタ側の締結要素は、カバー側の閉鎖要素で取り囲まれている。
図15図14による断面図であり、この図では、締結要素及び閉鎖要素は、閉位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図において、同一又は機能的に同一の要素には、同じ参照符号が付与されている。
【0041】
図1には、特にトラックとして形成された自動車のエアフィルタ装置のハウジング12(図3を参照)に設置することが企図されているフィルタ要素10の概略斜視図が示されている。エアフィルタ装置のハウジング12内には、収容スペース14が形成されており(図3を参照)、この収容スペース14に、図1に示されるフィルタ要素10を挿入又は設置することができる。
【0042】
フィルタ要素10は、フィルタ要素10のフィルタ材料18を取り囲む又は縁取るフレーム16を備える。フィルタ要素10がプリーツフィルタとして形成されている場合、フィルタ材料18は、ここに例示的に示されているように、多数のプリーツを有し得る。しかしながら、フィルタ要素10の動作時に空気が通って流れることが可能なフィルタ材料18の他の構成も可能である。
【0043】
フィルタ材料18を円周側において完全に取り囲む又は縁取るフレーム16は、前壁20を含む。前壁20は、図1に矢印で示されている挿入方向22に垂直に延在している。挿入方向22で、フィルタ要素10を、ハウジング12内又はエアフィルタハウジング内に形成されている収容スペース14に挿入することができる(図3を参照)。
【0044】
図2に拡大して図示されている締結要素26は、前壁20の前側24に配置されている。ここで、フレーム16は、2つの側壁28、30もまた含んでおり、これらの側壁28、30は、前壁20から出発して挿入方向22に延在している。
【0045】
その後端において、フレーム16は、ここでは角度を付けて形成された後壁32を用いて閉じられている。これは、ハウジング12の形状によるものであるため、フィルタ要素10の別の形態では、異なる設計のフレーム16も企図され得る。更に、フレーム16は、ここに例示的に示されているように、フィルタ材料18を円周側において周りで囲み込む必要はない。
【0046】
図2に示される締結要素26は、カバー要素又はカバー34をハウジング12に定着又は固定する役割を果たす。カバー34は、図9において、ハウジング12の周囲に面するその外側36を見るように一部が示されている。
【0047】
カバー34の基体38上には、ここでは回転閉鎖具40として形成された閉鎖要素が保持されている。レバー状のグリップ部分58を用いて、回転閉鎖具40を、図10に示される回転軸線70を中心として、カバー34の基体38に対して捻ることができる。締結要素26(図2を参照)は、回転閉鎖具40と協働して、カバー34をその閉位置に固定する。
【0048】
そのために、締結要素26は、シャフト42を有し、このシャフト42は、ここでは(任意選択的な)スロット型の凹部62を有するシリンダ状に形成されている。シャフト42は、前壁20の前側24から挿入方向22に突出している。第1の翼部44及び第2の翼部46の形態の2つの保持部分は、ここでは挿入方向22に実質的に垂直に、シャフト42から延在している。
【0049】
それぞれの第1の端部領域48から反対側の第2の端部領域50まで、それぞれの翼部44、46は、好適には傾斜型の形状を有する。同様に、それぞれの翼部44、46は、それぞれの第1の端部領域48から出発して、それぞれの翼部44、46の反対側の端部領域50に向かって、それぞれの翼部44、46の高さ方向で厚くなる。したがって、それぞれの翼部44、46の高さは、挿入方向22におけるそれぞれの翼部44、46の厚さに対応する。よって、それぞれの翼部44、46に形成された傾斜は、フィルタ要素10の前壁20の方向を指している。
【0050】
回転閉鎖具40の領域のカバー34の内側54に形成された凹部52は、翼部44、46に対応する(図10を参照)。更に、回転閉鎖具40は、図10にあるように、その内側に2つの保持部分56を有し、これらの保持部分56は、カバー34がその閉位置(カバー34が収容開口部64の領域の収容スペース14(図3を参照)を閉じる)に固定されたときに、締結要素26の翼部44、46を後ろから係合するように形成されている。フィルタ要素10は、収容開口部64を介して収容スペース14に挿入することができる。
【0051】
翼部44、46によって、フィルタ要素10側にクランプ形状又は保持形状が形成され、これらが、回転閉鎖具40の保持部分56と協働して、カバー34をその閉位置に固定する。すなわち、ここで、カバー34に取り付けられた回転閉鎖具40は、翼部44、46によって形成されるクランプ形状又は保持形状に対応する保持部分56を有する。
【0052】
締結要素26は、好適には、フィルタ要素10のフレーム16と強固に接続されているか、又は前壁20と一体的に形成されており、したがって、ここでは、カバー34を、バヨネットロック式でその閉位置又は閉鎖位置に固定又は定着させる。それから、閉位置又は閉鎖位置にあるとき、カバー34は、収容開口部64の領域において、ハウジング12内に形成された収容スペース14を閉鎖する。
【0053】
更に、図10から、回転閉鎖具40が、カバー34を閉じることによって締結要素26が挿入可能なスリーブ型の保持領域66を有することが分かる。そのために、回転閉鎖具40の凹部52は、翼部44、46が凹部52の領域内でスリーブ型の保持領域66に入ることができるように、最初に位置調整される必要がある。次いで、保持領域66によって締結要素26が取り囲まれる。続いて、把持部分58(図9を参照)を作動させることによって回転閉鎖具40をその回転軸線70を中心として回転させる又は捻ると、回転閉鎖具40の保持部分56は、翼部44、46を後ろから係合する。この場合、翼部44、46の形状が傾斜型になっていることに基づいて、締結要素26は、カバー34の回転閉鎖具40によってクランプされ、カバー34は、ハウジング12に対して密接するように引っ張られる。
【0054】
凹部52の形状が翼部44、46の形状に対応していることに基づいて、カバー34を用いてハウジング12の収容スペース14を閉鎖する人は、回転閉鎖具40の動作原理を視覚的に直感的に把握することができる。これは、回転閉鎖具40が容易に操作できる点で有利である。
【0055】
把持部分58のために、ストッパー92がカバー34に形成されていてもよく(図9を参照)、このストッパー92によって、カバー34の固定時の回転閉鎖具40の終了位置が規定される。この終了位置にあるとき、回転閉鎖具40の保持部分56(図10を参照)は、締結要素26の翼部44、46(図2を参照)を後ろから係合する。
【0056】
更に、図2から、前壁20が上側短辺74を有することが分かる。この上側短辺74は、図2に矢印で示されているフィルタ要素10の上方向68で、前壁20のプレート型の基体60の下側短辺72の反対側にある。上方向68は、好適には、フィルタ要素10の設置位置において、重力の方向とは反対である。
【0057】
ここでは、フィルタ要素10は、締結要素26の締結要素26から離間された保持タブ76を有する。この保持タブ76は、前壁20のプレート型の基体60の下側短辺72、すなわち下端から突出している。ここでは、この保持タブ76は、前壁20の基体60と一体的に形成されている。この保持タブ76の機能は、以下の図を参照して以下に説明される。
【0058】
図3から分かるように、収容開口部64は、下側で壁78によって区切られている。この壁78は、図4に、一部が部分断面で図示されている。
【0059】
特に図4から、壁78において保持溝80が形成されており、この保持溝80が、寸法について、ここでは特に、挿入方向22への深さ及び挿入方向22に垂直な幅に関して、保持タブ76の寸法に対応することがよく分かる。したがって、フィルタ要素10の保持タブ76を、エアフィルタ装置のハウジング12側に設けられた保持溝80に挿入することができる。フィルタ要素10がハウジング12の収容スペース14内でその設置位置にあるとき(図8を参照)、保持タブ76は、保持溝80に係合している。
【0060】
したがって、フレーム16の下端に形成されている保持タブ76又は係止タブは、フィルタ要素10の橋台のように機能する。したがって、保持タブ76は、フィルタ要素10が収容スペース14から滑り落ち得ることを防ぐ。これは、フィルタ要素10の特定の設置状態における挿入方向22が水平ではなく、傾斜している場合に特に有利である。
【0061】
更に、保持タブ76は、カバー34に対してフィルタ要素10を事前に固定する役割を果たす。保持タブ76が保持溝80にあるとき、締結要素26又は保持要素もまた正しい位置に位置調整されており、すなわち、それによって、回転閉鎖具40(図9及び図10を参照)は、対向した締結要素26と協働することができる。
【0062】
ここでは、締結要素26は、前壁20の幅方向又は横方向において、すなわち、挿入方向22に垂直に見て、前壁20の前側24の実質的に中央に配置されている。これによって、回転閉鎖具40が作動して、その際に回転軸線70を中心として捻られるときに、カバー34がハウジング12に対して非常に均等に押し付けられる。
【0063】
更に、翼部44、46の領域に形成された締結要素26の2つの大面積の傾斜によって、カバー34がフィルタ要素10に非常に堅牢に固定されるようになる。
【0064】
回転閉鎖具40の作動によって閉鎖要素40が締結要素26によってクランプされると、保持タブ76を介して繋がったフィルタ要素10の前面24は、逆戻り防止要素に当接し、この逆戻り防止要素は、ここでは、傾斜型の保持突起82として形成されており(図4を参照)、挿入方向22で保持溝80の上流に存在する。したがって、保持溝80及び逆戻り防止要素82は、カバー34及びフィルタ要素10をそれらのそれぞれの閉鎖要素40又は締結要素26によってクランプするための橋台を形成する。
【0065】
ここでは、保持突起82は、挿入方向22で見て斜めに上昇しており、そのため、フィルタ要素10が収容開口部64を介して収容スペース14に押し込まれるとき、保持タブ76は、保持突起82に沿ってスライドする際に、まず上方向68に動く。図5には、収容スペース14へのフィルタ要素10のこの押し込みが、矢印84によって示されており、その方向は、挿入方向22と同じである。
【0066】
図6には、フィルタ要素10が収容スペース14内でその水平の最終位置に到達した状態が示されている。したがって、フレーム16の後壁32は、収容スペース14の後部を区切るハウジング12の壁86の近くにある。特に、ここで、フレーム16の後壁32に配置されたシール88は、壁86に当接し得る。
【0067】
図7には、保持突起82(図4を参照)を横切った後に保持溝80に到達した際に、どのように保持タブ76が重力によって下向きに下降するかが、更なる矢印90によって示されている。結果的に、保持タブ76は、重力によって、スロット状に形成された保持溝80に到達する。というのも、保持タブ76が挿入方向22で保持溝80の高さに位置するとすぐに、フィルタ要素10のフレーム16が重力によって下向きに落下するからである。
【0068】
図8には、保持タブ76が保持溝80に係合している設置状態が示されている。したがって、引き抜き方向で、すなわち挿入方向22に反して、保持タブ76は、ハウジング12とアンダーカットを形成している。次いで、締結要素26もまた、その正しい位置にあり、カバー34が折り畳まれた後に、又はカバー34がハウジング12側に設けられた枢動軸を中心として枢動された後に、回転閉鎖具40は、締結要素26と協働することができる。
【0069】
図11及び図12を参照して、収容スペース14からのフィルタ要素10の取り出しを説明する。この場合、まず、フィルタ要素10のフレーム16は、前壁20の領域で持ち上げられるため、保持タブ76は、もはや保持溝80内には位置しなくなる。保持溝80から保持タブ76を取り出すこの動きは、図11において、矢印104によって示されており、その矢印の方向は、図7に示される矢印90とは反対向きである。それ以外の点では、ハウジング12に対する図7に図示されているフィルタ要素10の向きは、ハウジング12に対する図11に示されるフィルタ要素10の向きに対応する。
【0070】
続いて、フィルタ要素10は、挿入方向22に反して、収容スペース14から抜き出される。この動きは、図12に矢印94によって示されている。更に、図12には、フレーム16の支持ウェブ96が、部分断面で図示されている。
【0071】
図13から、フィルタ要素10のフレーム16が、ここでは2つのそのような支持ウェブ96を有することが分かる。ここでは、支持ウェブ96は、側壁28、30を互いに接続しているが、フィルタ要素10が支持されるべき方向に応じて、前壁20及び後壁32が互いに接続されてもよい。これは、フィルタ表面の一方向での広がりが非常に大きく、それによってフィルタ要素10が不安定になる場合に特に必要である。
【0072】
更に、支持ウェブ96は、櫛の突起98のように形成された多数の延長部を有する。それぞれの支持ウェブ96のここではストリップ型の背面から上向き又は上方向68に突出するこれらの突起98は、下からフィルタ材料18のプリーツに係合する(図1を参照)。このようにして、特に、ここでは自由端に向かって先細になる、支持ウェブ96の突起98は、フィルタ材料18を支持する。支持ウェブ96及び突起98を設けることによって、たとえフィルタ要素10が挿入方向22で比較的長く形成されている場合でも、フレーム16及び特にフィルタ材料18の優れた寸法安定性が保証されている。後者は、特に、フィルタ要素10がトラックのエアフィルタ装置に使用される場合に当てはまり得る。
【0073】
支持ウェブ96によって、特に、エアフィルタ装置の動作中にフィルタ材料18上に堆積した固形物を、フィルタ材料18から容易に軽くたたいて落とすこと又は振り落とすことができるようになり、この場合、フィルタ材料18のプリーツに悪影響が与えられることはない。
【0074】
図12から、特に図4と併せて見た場合、フィルタ要素10を挿入方向22に反して収容スペース14から抜き出す際に、支持ウェブ96の下側が、それぞれの傾斜100に沿って案内されることがよく分かる。したがって、傾斜100は、フィルタ要素10が収容スペース14から抜き出されるときに、フィルタ要素10のための初動傾斜面としての役割を果たす。
【0075】
ここでは、壁78上に2つの傾斜100が形成されており、これらの傾斜100は、保持溝80の長手延在方向又はスロット状に形成された保持溝80の長さ方向で、保持溝80の隣に横方向に配置されている(図4を参照)。
【0076】
保持溝80のおよそ前側縁部の高さにある、それぞれの傾斜100の頂部領域102から出発して、傾斜100は、挿入方向22で見て斜めに降下するように形成されている。ここで、頂部領域102において、傾斜100は、保持突起82の最大高さよりも高い高さを有する。それによって、フィルタ要素10を挿入方向22に反して収容スペース14から抜き出す際に、支持ウェブ96が、保持突起82に絡まること又は保持突起82に引っ掛かったままになることが特に防がれる(図12を参照)。
【0077】
更に、傾斜100は、挿入方向22で見て、保持突起82と同様に、頂部領域102に向かって傾斜して上昇するように形成されている(図4を参照)。したがって、傾斜100によって、フィルタ要素10を収容スペース14に挿入する際に、フィルタ要素10が保持突起82に絡まり得ることも防がれる。
【0078】
更に、傾斜100によって、フィルタ要素10を収容スペース14から抜き出す際に、フレーム16の後壁32が特に保持突起82と絡まることが防がれ、フィルタ要素10を収容スペース14から取り出す際に、フィルタ材料18が損傷することが防がれる。
【0079】
図14に示される、カバー34を貫く断面図では、締結要素26の保持部分又は翼部44、46が、まだ回転閉鎖具40の保持部分56によっては後ろから係合されていない状態が分かる。
【0080】
図15に図示されているように、締結要素26に対して回転閉鎖具40を捻ることによって、保持部分56が、翼部44、46を後ろから係合するようになる。図15には、回転閉鎖具40の対応する回転運動もまた、回転方向106を示す湾曲した矢印によって示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】