(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】がんを治療するためのキメラ抗原受容体T細胞及びNK細胞阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20220830BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220830BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220830BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220830BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220830BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20220830BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220830BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220830BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20220830BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220830BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/7076
A61K48/00
C12N5/10 ZNA
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/13
C07K16/30
C12N15/62 Z
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576680
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056085
(87)【国際公開番号】W WO2020261219
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アレクサンダー テレット
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス クレイン
(72)【発明者】
【氏名】エベリナ モラワ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C087AA01
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4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
対象における臨床転帰を改善するための方法であって、治療を必要とする対象に、キメラ抗原受容体(CAR)及びナチュラルキラー(NK)細胞阻害剤(例えばダラツムマブ)を発現する遺伝子改変免疫細胞(例えばT細胞)の集団を投与することを含む、方法。遺伝子改変免疫細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたB2M遺伝子、又はその両方を含み得る。本開示は、本方法で使用するための組成物も特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に、有効量の改変ヒトCAR発現T細胞(CAR T細胞)の集団を投与することを含み、前記改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、前記対象は、有効量のNK細胞阻害剤を受けていたか又は受けており、それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項2】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に有効量のNK細胞阻害剤を投与することを含み、前記対象は、有効量の改変ヒトCAR発現T細胞(CAR T細胞)の集団を受けていたか又は受けており、前記改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、それによって前記対象におけるNK細胞の活性を減少させ、それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項3】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に有効量の:
(a)有効量のNK細胞阻害剤と、
(b)有効量の改変ヒトCAR発現T細胞(CAR T細胞)の集団と、を投与することを含み、前記改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項4】
前記改善された臨床転帰は、
(i)前記対象におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の減少、
(ii)前記対象における前記CAR-T療法に対する臨床応答の増加であって、任意選択的に、前記CAR-T療法のみと比較して、又は前記NK細胞阻害剤のみを含む療法と比較して増加する、増加、
(iii)前記対象における前記改変ヒトCAR-T細胞の残存率の増加、及び
(iv)前記対象における前記改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解の低減であって、任意選択的に、前記改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解は、前記NK細胞阻害剤なしで前記改変ヒトCAR T細胞を受けている対象と比較して、前記対象において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減少する、低減のうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(ii)において、前記臨床応答の増加は加法的又は相乗的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象はがん患者であり、前記改善された臨床転帰は、
(i)前記対象における腫瘍サイズ又は腫瘍細胞数の減少、及び
(ii)前記対象における抗腫瘍応答の増加のうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記改変ヒトCAR-T細胞による前記MHCクラスIの発現が阻害される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたβ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたHLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記改変ヒトCAR T細胞は、
(i)破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子、
(ii)破壊されたB2M遺伝子、及び
(iii)前記CARをコードする核酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CARは、腫瘍抗原に結合する抗原結合性フラグメントを含む外部ドメインを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍抗原は、CD19、CD33、CD70、又はBCMAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記改変ヒトCAR T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのB2M表面タンパク質を発現しない、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞阻害剤は、NK細胞の数を減少させるか、前記NK細胞の活性を阻害するか、又はその両方を行う、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記NK細胞阻害剤は、前記NK細胞の数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記NK細胞阻害剤は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞毒性(CDC)、アポトーシス、又はこれらの任意の組み合わせによって前記NK細胞の数を減少させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記NK細胞阻害剤は、小分子、モノクローナル抗体、若しくはその抗原結合性フラグメント、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記NK細胞阻害剤は、CD38に特異的に結合する抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体は、ダラツムマブ、SAR650984、若しくはMOR202、又はこれらの抗原結合性フラグメントである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、ダラツムマブと同じエピトープに結合し、及び/又はCD38への結合に関してダラツムマブと競合する抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体は、ダラツムマブと同じ重鎖及び軽鎖相補性決定領域を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体は、ダラツムマブと同じ重鎖可変領域及び同じ軽鎖可変領域を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記NK細胞阻害剤は、内因性T細胞の数を有意に減少させない、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記NK阻害剤は、前記改変ヒトCAR T細胞を活性化しない、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞阻害剤は、前記改変ヒトCAR T細胞の集団の投与と同時に投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、前記NK細胞阻害剤の投与よりも前に投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記NK細胞阻害剤は、前記改変ヒトCAR T細胞の集団の投与よりも前に投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、前記改変ヒトCAR T細胞の集団を投与する前の前条件付けレジメンを更に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記前条件付けレジメンは、リンパ球枯渇レジメンを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、前記リンパ球枯渇レジメンから少なくとも48時間後に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、前記リンパ球枯渇レジメンから少なくとも2日後、少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、又は少なくとも7日後に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、前記リンパ球枯渇レジメン後7日以内に投与される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記リンパ球枯渇レジメンは、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、又は少なくとも4日間投与される、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、前記リンパ球枯渇レジメン後48時間~7日で投与され、前記リンパ球枯渇レジメンは、2~3日間投与される、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に、前記NK細胞阻害剤の後続用量を投与することを更に含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記NK細胞阻害剤の前記後続用量は、前記対象におけるNK細胞数が、前記NK細胞阻害剤を投与する前のNK細胞数の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%まで回復した時に、前記対象に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、1回以上の静脈注入によって投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、単回の静脈注入によって投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記改変ヒトCAR T細胞の集団は、2回以上の静脈注入によって投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記NK細胞阻害剤は、1回以上の静脈注入によって投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記NK細胞阻害剤は、1~24mg/kgの用量で投与されるダラツムマブである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記NK細胞阻害剤は、16mg/kgの単回用量注入として投与されるダラツムマブである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記NK細胞阻害剤は、8mg/kgの分割用量注入として投与されるダラツムマブである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記分割用量は連続日で投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記リンパ球枯渇レジメンは、少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含む、請求項29~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビン、又はこれらの組み合わせである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に、改変ヒトCAR発現T細胞(CAR T細胞)の集団を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を投与することを含み、前記改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含み、前記対象は、有効量の抗CD38抗体を受けていたか又は受けており、それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項48】
対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に有効量の抗CD38抗体を投与することを含み、前記対象は、改変ヒトCAR発現T細胞(CAR T細胞)の集団を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けていたか又は受けており、前記改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含み、それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項49】
対象における臨床転帰を改善するための方法であって、前記対象に、
(a)有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団であって、前記改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含む、有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団と、
(b)有効量の抗CD38モノクローナル抗体と、を投与することを含み、
それによって前記対象における臨床転帰を改善する、方法。
【請求項50】
前記改善された臨床転帰は、
(i)前記対象におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の減少、
(ii)前記対象における前記CAR-T療法に対する臨床応答の増加であって、任意選択的に、前記CAR-T療法のみと比較してか、或いは前記NK細胞阻害剤のみを含む療法と比較して増加する、増加、
(iii)前記対象における前記改変ヒトCAR-T細胞の残存率の増加、及び
(iv)前記対象における前記改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解の低減であって、任意選択的に、前記改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解は、前記NK細胞阻害剤なしで前記改変ヒトCAR T細胞を受けている対象と比較して、前記対象において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減少する、低減のうちの1つ以上を含む、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(ii)において、前記臨床応答の増加は加法的又は相乗的である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象はがん患者であり、前記改善された臨床転帰は、
(i)前記対象における腫瘍サイズ又は腫瘍細胞数の減少、及び
(ii)前記対象における抗腫瘍応答の増加のうちの1つ以上を含む、請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記CARは、CD19、CD33、BCMA、又はCD70に結合する抗原結合性フラグメントを含む外部ドメインを含む、請求項47~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記抗原結合性フラグメントはBCMAに結合する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗BCMA抗原結合性フラグメントは、抗BCMA scFvである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗BCMA抗原結合性フラグメントは、ヒト化抗BCMA抗原結合性フラグメントである、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記抗CD38モノクローナル抗体は、ダラツムマブ、又はその抗原結合性フラグメントである、請求項47~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
静脈注入で投与されるフルダラビンとシクロホスファミドとの組み合わせを含むリンパ球枯渇レジメンの投与を更に含む、請求項47~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象は、前記リンパ球枯渇療法から少なくとも48時間後であるが7日以内に、検出可能なレベルのCARを発現する約1×10
7~3×10
8の改変ヒトCAR T細胞の用量を投与される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記破壊されたB2M遺伝子は、少なくとも1つのヌクレオチド塩基対の挿入、欠失、及び/又は置換を含む、請求項47~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記改変ヒトCAR-T細胞の前記破壊されたB2M遺伝子は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記改変ヒトCAR-T細胞は、非修飾T細胞と比較して、TRAC遺伝子中に配列番号26のヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記改変ヒトCAR T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCARを発現し、前記細胞の集団の0.5%未満が検出可能なレベルのTCRを発現する、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記CARをコードする前記核酸は、前記破壊されたTRAC遺伝子の内部に位置する、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
がんの治療のために、有効量のNK細胞阻害剤と組み合わせたCAR T細胞療法に使用するための改変ヒトキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の集団を含む組成物であって、任意選択的に、前記改変ヒトCAR-T細胞は、請求項1~3、7~13、47~49、53~56、若しくは60~64のいずれか一項に記載されるとおりであり、及び/又は、任意選択的に、前記NK細胞阻害剤は、請求項14~24、若しくは57のいずれか一項に記載されるとおりである、組成物。
【請求項66】
がんを治療するためにCAR T細胞療法を必要とする対象におけるがんを治療するためにCAR T細胞療法における請求項65に記載の組成物の使用であって、第1の薬剤は、前記改変ヒトCAR T細胞を含む細胞の集団を含み、前記第1の薬剤は、NK細胞阻害剤及び任意選択的に薬学的に許容される担体を含む第2の薬剤と組み合わせて投与される、使用。
【請求項67】
請求項65に記載の組成物を含む第1の薬剤と、前記組成物を、請求項65に記載のNK細胞阻害剤を含む組成物を含む第2の薬剤及び任意選択的な薬学的に許容される担体と組み合わせてそれを必要とする対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキット。
【請求項68】
請求項65に記載の改変ヒトCAR T細胞の集団を含む第1の組成物と、請求項65に記載のNK細胞阻害剤を含む第2の組成物と、前記第1の組成物を、前記第2の組成物と組み合わせてそれを必要とする対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキット。
【請求項69】
CAR T細胞療法に使用するための請求項65に記載の改変ヒトCAR T細胞の集団を含む第1の組成物と、請求項65に記載のNK細胞阻害剤を含む第2の組成物と、前記第1の組成物を、前記第2の組成物と組み合わせてがんの治療のために対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月27日出願の米国仮特許出願第62/867,764号明細書、及び2019年12月20日出願の米国仮特許出願第62/951,732号明細書の出願日の利益を主張する。各先行出願の全容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、ヒト悪性腫瘍を治療するために用いられる養子T細胞療法である。CAR T細胞療法は、再発性/難治性非ホジキンリンパ腫(NHL)の長期寛解及び小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む驚異的な臨床的効果をもたらしてきたが、認可された生成物は自己由来であり、患者特異的な細胞の回収及び製造を必要とする。このため、一部の患者は治療を待つ間に疾患の進行又は死を経験している。破壊されたMHC-1複合体を含む同種異系CAR T細胞療法は、自己由来CAR T細胞療法に対する魅力的な既製(off-the-shelf)の選択肢を提示する。しかしながら、同種異系T細胞中の破壊されたMHCクラスIのために、CAR T細胞は、例えばナチュラルキラー(NK)細胞が媒介する免疫応答により、宿主免疫系による消失を受けやすくなる。したがって、改善されたCAR T細胞療法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、少なくとも部分的には、代表的なNK細胞阻害剤である抗CD38抗体(ダラツムマブ)が、インビトロ及びインビボの両方でNK細胞を成功裏に枯渇させたが、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞の数を含むT細胞数には影響を及ぼさず、また、CAR T細胞を活性化しなかったという、予想外の発見に基づく。更に、予想外にも、ダラツムマブの前処理により、NK細胞媒介性CAR T細胞溶解が有意に減少し(例えば約50%)、同種異系CAR T細胞の生存度及び数が維持されることが見出された。更に、ダラツムマブとCAR-T細胞との併用療法は、NK細胞の存在下であっても、異種移植マウスモデルにおいて全身腫瘍組織量を減少させ、生存率を延長する上で相乗効果を示した。
【0004】
したがって、本開示の一態様は、臨床転帰を改善するための併用療法を特徴とし、併用療法は、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子改変T細胞(「CAR」及び「CAR T細胞」)及びNK細胞阻害剤(例えば、ダラツムマブ又はその機能的バリアントなどの抗CD38抗体)を伴う。
【0005】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、対象に、有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団を投与すること、を含み、改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、対象は、有効量のNK細胞阻害剤を受けていたか又は受けており、それによって、対象における臨床転帰を改善する方法が本明細書で提供される。
【0006】
いくつかの例では、対象における臨床転帰を改善するための方法は、対象に、改変ヒトCAR T細胞の集団を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を投与すること、を含み、改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含み、対象は、有効量の抗CD38抗体を受けていたか又は受けており、それによって、対象における臨床転帰を改善する。
【0007】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、対象に有効量のNK細胞阻害剤を投与すること、を含み、対象は、有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団を受けていたか又は受けており、改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、それによって、対象におけるNK細胞の活性を減少させ、それによって、対象における臨床転帰を改善する方法が本明細書で提供される。
【0008】
いくつかの例では、対象における臨床転帰を改善するための方法は、対象に有効量の抗CD38抗体を投与することを含み、対象は、改変ヒトCAR T細胞の集団を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けていたか又は受けており、改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含み、それによって、対象における臨床転帰を改善する。
【0009】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けている対象における臨床転帰を改善するための方法であって、対象に、有効量の:(a)有効量のNK細胞阻害剤と、(b)有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団と、を投与すること含み、改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたMHCクラスIを含み、それによって、対象における臨床転帰を改善する、方法が本明細書で提供される。
【0010】
いくつかの例では、対象における臨床転帰を改善するための方法であって、対象に、(a)有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団であって、改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたB2M遺伝子、(ii)破壊されたTRAC遺伝子、及び(iii)CARをコードする核酸を含む、有効量の改変ヒトCAR T細胞の集団と、(b)有効量の抗CD38モノクローナル抗体と、を投与することを含み、それによって、対象における臨床転帰を改善する、方法。
【0011】
本明細書に開示される方法のいずれにおいては、改善された臨床転帰は、(i)対象におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の低下、(ii)対象におけるCAR-T療法に対する臨床応答の増加、(iii)対象における改変ヒトCAR-T細胞の残存率の増加、及び(iv)対象における改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解の減少のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、対象はがん患者であり、改善された臨床転帰は、(i)対象における腫瘍サイズ又は腫瘍細胞数の減少、及び(ii)対象における抗腫瘍応答の増加のうちの1つ以上を含む。
【0012】
いくつかの例では、対象におけるCAR-T療法に対する臨床応答(例えば抗腫瘍応答)は、CAR-T療法のみと比較して増加し得る。或いは、対象におけるCAR-T療法に対する臨床応答は、NK細胞阻害剤のみを含む療法と比較して増加し得る。更に他の例では、臨床応答の増加は加法的であり得る。或いは、臨床応答の増加は相乗的であり得る。
【0013】
いくつかの例では、改変ヒトCAR-T細胞の細胞溶解は、NK細胞阻害剤なしで改変ヒトCAR T細胞を受けている対象と比較して、対象において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減少し得る。
【0014】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、改変ヒトCAR-T細胞におけるMHCクラスIの発現は阻害される。いくつかの場合では、改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたβ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子を含み得る。或いは、又は加えて、改変ヒトCAR T細胞は、破壊されたHLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞は、(i)破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子、(ii)破壊されたB2M遺伝子(例えば、本明細書に記載されるものとして)、及び(iii)CARをコードする核酸を含む。例えば、破壊されたB2M遺伝子は、少なくとも1つのヌクレオチド塩基対の挿入、欠失、及び/又は置換を含み得る。特定の例では、改変ヒトCAR-T細胞の破壊されたB2M遺伝子は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み得る。或いは、又は加えて、改変ヒトT細胞は、非修飾T細胞と比較して、TRAC遺伝子中に配列番号29のヌクレオチド配列の欠失を含み得る。いくつかの場合では、CARをコードする核酸は、破壊されたTRAC遺伝子の内部に位置し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、改変ヒトT細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCARを発現し得る。或いは、又は加えて、細胞の集団の0.5%未満が検出可能なレベルのTCRを発現する。更に、改変ヒトCAR T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのB2M表面タンパク質を発現し得ない。
【0017】
いくつかの例では、改変ヒトCAR T細胞は、腫瘍抗原に結合する抗原結合性フラグメントを含む外部ドメインを含むCARを発現する。例示的な腫瘍抗原としては、CD19、CD33、CD70、及びBCMAが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの例では、腫瘍抗原はCD19であり、CARにおける抗CD19抗原結合性フラグメントは抗CD19scFvである。いくつかの場合では、抗CD19抗原結合性フラグメントはヒト又はヒト化抗CD19抗原結合性フラグメントである。いくつかの例では、腫瘍抗原はBCMAであり、CARにおける抗BCMA抗原結合性フラグメントは抗BCMA scFvである。いくつかの場合では、抗CD19抗原結合性フラグメントはヒト又はヒト化抗BCMA抗原結合性フラグメントである。いくつかの例では、腫瘍抗原はCD70であり、CARにおける抗CD70抗原結合性フラグメントは抗CD70 scFvである。いくつかの場合では、抗CD70抗原結合性フラグメントはヒト又はヒト化抗CD70抗原結合性フラグメントである。いくつかの例では、腫瘍抗原はCD33であり、CARにおける抗CD33抗原結合性フラグメントは抗CD33 scFvである。いくつかの場合では、抗CD33抗原結合性フラグメントはヒト又はヒト化抗CD33抗原結合性フラグメントである。
【0018】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、NK細胞阻害剤は、NK細胞の数を減少させるか、NK細胞の活性を阻害するか、又はその両方を行い得る。いくつかの例では、NK細胞阻害剤は、NK細胞の数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少させ得る。理論に束縛されるものではないが、NK細胞阻害剤は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞毒性(CDC)、アポトーシス、又はこれらの任意の組み合わせによってNK細胞の数を減少させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、内因性T細胞の数を有意に減少させない。或いは、又は加えて、NK阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞を有意に活性化しない。
【0020】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、小分子、モノクローナル抗体、若しくはその抗原結合性フラグメント、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの例では、NK細胞阻害剤は、CD38に特異的に結合する抗体であり得る。例えば、NK細胞阻害剤は、ダラツムマブ、SAR650984、若しくはMOR202、又はこれらの抗原結合性フラグメントであり得る。いくつかの場合では、NK細胞阻害剤は、ダラツムマブと同じエピトープに結合し、及び/又はCD38への結合に関してダラツムマブと競合する抗体である。特定の例では、抗体は、ダラツムマブと同じ重鎖及び軽鎖相補性決定領域を含み得る。例えば、抗体は、ダラツムマブと同じ重鎖可変領域及び同じ軽鎖可変領域を含み得る。
【0021】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の集団の投与と同時に投与され得る。或いは、改変ヒトCAR T細胞の集団は、NK細胞阻害剤の投与よりも前に投与される。その他の例では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の集団の投与よりも前に投与される。
【0022】
本明細書に開示される方法のいずれも、改変ヒトCAR T細胞の集団を投与する前の前条件付けレジメンを更に含み得る。こうした前条件付けレジメンは、リンパ球枯渇レジメンを含む。いくつかの例では、リンパ球枯渇レジメンは、少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含み得る。例としては、シクロホスファミド、フルダラビン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の例では、リンパ球枯渇レジメンは、静脈注入で投与されるフルダラビンとシクロホスファミドとの組み合わせを含み得る。
【0023】
いくつかの場合では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、リンパ球枯渇レジメンから少なくとも48時間後に投与され得る。いくつかの例では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、リンパ球枯渇レジメンから少なくとも2日後、少なくとも3日後(例えば少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、又は少なくとも7日後)に投与され得る。いくつかの例では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、リンパ球枯渇レジメン後7日以内に投与され得る。
【0024】
いくつかの例では、リンパ球枯渇レジメンは、少なくとも1日間(例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、又は少なくとも4日間)投与され得る。特定の例では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、リンパ球枯渇レジメン後48時間~7日後で投与されてもよく、リンパ球枯渇レジメンは、2~3日間投与されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、1回以上の静脈注入によって投与され得る。いくつかの例では、改変ヒトCAR T細胞の集団は、単回の静脈注入によって投与される。或いは、改変ヒトCAR T細胞の集団は、2回以上の静脈注入によって投与される。いくつかの例では、単一の容器が、改変ヒトCAR T細胞の集団の用量を含む。他の例では、2つ以上の容器が、改変ヒトCAR T細胞の集団の用量を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、1回以上の静脈注入によって投与され得る。いくつかの例では、NK細胞阻害剤は、1~24mg/kgの用量で投与され得るダラツムマブである。特定の例では、NK細胞阻害剤は、16mg/kgの単回用量注入として投与されるダラツムマブである。更なる例では、NK細胞阻害剤は、8mg/kgの分割用量注入として投与されるダラツムマブである。分割用量は連続日で投与される。
【0027】
いくつかの場合では、本明細書に開示される方法のいずれも、対象にNK細胞阻害剤の後続用量を投与することを含み得る。いくつかの例では、NK細胞阻害剤の後続用量は、対象におけるNK細胞数が、NK細胞阻害剤を投与する前のNK細胞数の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%まで回復した時に、対象に投与される。
【0028】
一例では、対象は、リンパ球枯渇療法から少なくとも48時間後であるが7日以内に、検出可能なレベルのCARを発現する約1×107~3×108の改変ヒトCAR T細胞の用量を投与される。
【0029】
更に、本開示は、がんを治療するために、これも本明細書に開示される有効量のNK細胞阻害剤と組み合わせたCAR T細胞療法に使用するための、本明細書に開示される改変ヒトキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の集団を含む組成物を提供する。本開示はまた、がんを治療するためにCAR T細胞療法を必要とする対象におけるがんを治療するためにCAR T細胞療法に使用するための第1の薬剤を製造するための、本明細書に開示されるものとしての改変ヒトキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の集団を含む組成物の使用を提供する。第1の薬剤は、改変ヒトCAR T細胞を含む細胞の集団を含み、第1の薬剤は、NK細胞阻害剤及び任意選択的に薬学的に許容される担体を含む第2の薬剤と組み合わせて投与される。
【0030】
(a)本明細書に開示されるCAR-T細胞の集団を含む組成物を含む第1の薬剤と、組成物を、これも本明細書に開示されるNK細胞阻害剤を含む組成物を含む第2の薬剤及び任意選択的な薬学的に許容される担体と組み合わせてそれを必要とする対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキット、
(b)本明細書に開示される改変ヒトCAR T細胞の集団を含む第1の組成物と、これも本明細書に開示されるNK細胞阻害剤を含む第2の組成物と、第1の組成物を、第2の組成物と組み合わせてそれを必要とする対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキット、並びに
(c)CAR T細胞療法に使用するための本明細書に開示される改変ヒトCAR T細胞の集団を含む第1の組成物と、これも本明細書に開示されるNK細胞阻害剤を含む第2の組成物と、第1の組成物を、第2の組成物と組み合わせてがんの治療のために対象に投与するための指示を含む添付文書と、を含むキットも、本開示の範囲内である。
【0031】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面、及びいくつかの実施形態の詳細な説明、並びに添付の特許請求の範囲からも明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
下記の図面は本明細書の一部を形成し、本明細書に示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することによってより良好に理解され得る本開示の特定の態様を更に示すために含まれる。
【0033】
【
図1A】CAR T細胞のCD38発現を示すフローサイトメトリプロットを提供する。
図1Aは、フローサイトメトリによって測定される抗BCMA CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Bは、フローサイトメトリによって測定される抗CD19CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Cは、蛍光マイナスワン(FMO)対照染色細胞を用いてCD38+細胞を測定するためのゲートを設定したことを示すフローサイトメトリを提供する。
【
図1B】CAR T細胞のCD38発現を示すフローサイトメトリプロットを提供する。
図1Aは、フローサイトメトリによって測定される抗BCMA CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Bは、フローサイトメトリによって測定される抗CD19CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Cは、蛍光マイナスワン(FMO)対照染色細胞を用いてCD38+細胞を測定するためのゲートを設定したことを示すフローサイトメトリを提供する。
【
図1C】CAR T細胞のCD38発現を示すフローサイトメトリプロットを提供する。
図1Aは、フローサイトメトリによって測定される抗BCMA CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Bは、フローサイトメトリによって測定される抗CD19CAR T細胞のCD38発現を示す。
図1Cは、蛍光マイナスワン(FMO)対照染色細胞を用いてCD38+細胞を測定するためのゲートを設定したことを示すフローサイトメトリを提供する。
【
図2A-2B】健康なドナー(ドナー3469)から回収し、培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図2Aは、培地のみで培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Bは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Cは、培地のみで培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Dは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図2C-2D】健康なドナー(ドナー3469)から回収し、培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図2Aは、培地のみで培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Bは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Cは、培地のみで培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図2Dは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図3A-3B】健康なドナー(ドナー3383)から回収し、培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図3Aは、培地のみで培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Bは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Cは、培地のみで培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Dは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図3C-3D】健康なドナー(ドナー3383)から回収し、培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図3Aは、培地のみで培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Bは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Cは、培地のみで培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図3Dは、10%の補体を追加した培地で培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図4A-4B】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかでの72時間のインビトロ培養後に健康なドナー(ドナー3469)から回収した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図4Aは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Bは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Cは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Dは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図4C-4D】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかでの72時間のインビトロ培養後に健康なドナー(ドナー3469)から回収した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図4Aは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Bは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Cは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図4Dは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図5A-5B】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかでの72時間のインビトロ培養後に健康なドナー(ドナー3383)から回収した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図5Aは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Bは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Cは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Dは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図5C-5D】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかでの72時間のインビトロ培養後に健康なドナー(ドナー3383)から回収した正常な免疫細胞(PBMC)上でのCD38発現を示すフローサイトメトリプロットである。
図5Aは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Bは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のT細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Cは、培地のみで72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
図5Dは、10%の補体を追加した培地で72時間培養したPBMC由来のNK細胞を発現するCD38の割合を示す。
【
図6A】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかで培養してから96時間後に健康なドナーから回収した正常な免疫細胞(PBMC)に対するダラツムマブ(Dara)の効果を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。一部の細胞は、対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で処理した。
図6Aは、これらの処理後のNK細胞の頻度を示す。
図6Bは、これらの処理後のNK細胞の数を示す。
図6Cは、これらの処理後のT細胞の頻度を示す。
図6Dは、これらの処理後のT細胞の数を示す。
【
図6B】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかで培養してから96時間後に健康なドナーから回収した正常な免疫細胞(PBMC)に対するダラツムマブ(Dara)の効果を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。一部の細胞は、対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で処理した。
図6Aは、これらの処理後のNK細胞の頻度を示す。
図6Bは、これらの処理後のNK細胞の数を示す。
図6Cは、これらの処理後のT細胞の頻度を示す。
図6Dは、これらの処理後のT細胞の数を示す。
【
図6C】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかで培養してから96時間後に健康なドナーから回収した正常な免疫細胞(PBMC)に対するダラツムマブ(Dara)の効果を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。一部の細胞は、対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で処理した。
図6Aは、これらの処理後のNK細胞の頻度を示す。
図6Bは、これらの処理後のNK細胞の数を示す。
図6Cは、これらの処理後のT細胞の頻度を示す。
図6Dは、これらの処理後のT細胞の数を示す。
【
図6D】培地のみ、又は10%の補体を追加した培地のいずれかで培養してから96時間後に健康なドナーから回収した正常な免疫細胞(PBMC)に対するダラツムマブ(Dara)の効果を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。一部の細胞は、対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で処理した。
図6Aは、これらの処理後のNK細胞の頻度を示す。
図6Bは、これらの処理後のNK細胞の数を示す。
図6Cは、これらの処理後のT細胞の頻度を示す。
図6Dは、これらの処理後のT細胞の数を示す。
【
図7A】10%の補体を加え、又は加えずにダラツムマブ(Dara)又は対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で72時間培養した後の、抗BCMA CAR T細胞の頻度及び数を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。
図7Aは、これらの処理後の抗BCMA CAR T細胞の頻度を示す。
図7Bは、これらの処理後の抗BCMA CAR T細胞の数を示す。
【
図7B】10%の補体を加え、又は加えずにダラツムマブ(Dara)又は対照アイソタイプmAb(Hu IgG1k)で72時間培養した後の、抗BCMA CAR T細胞の頻度及び数を示すグラフである。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの用量で使用した。
図7Aは、これらの処理後の抗BCMA CAR T細胞の頻度を示す。
図7Bは、これらの処理後の抗BCMA CAR T細胞の数を示す。
【
図8A】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Aは、処理を行わずに24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8B】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Bは、0.01μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8C】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Cは、0.1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8D】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Dは、1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8E】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Eは、2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8F】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Fは、0.01μg/mLのダラツムマブ及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8G】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Gは、0.1μg/mLのダラツムマブ及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8H】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Hは、1μg/mLのダラツムマブ及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8I】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Iは、0.01μg/mLのIgG1kと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8J】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Jは、0.1μg/mLのIgG1kと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8K】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Kは、1μg/mLのIgG1kと24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8L】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Lは、0.01μg/mLのIgG1k及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8M】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Mは、0.1μg/mLのIgG1k及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図8N】0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加した、抗CD19CAR T細胞における初期活性化マーカーCD69の発現を測定するフローサイトメトリプロットである。対照アイソタイプmAb(IgG1k)で処理した後の、及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体を添加したCD69マーカーの発現も測定した。
図8Nは、1μg/mLのIgG1k及び2μg/mLのヤギ抗ヒト抗体と24時間共培養した後の抗CD19CAR T細胞のCD69発現を示す。
【
図9A】NK細胞の存在下でのCAR T細胞溶解を示す図表を提供する。
図9Aは、0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbで前処理された正常なドナー由来の抗BCMA CAR T細胞と精製NK細胞との共培養物における、抗BCMA CAR T細胞溶解の頻度を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図9Bは、
図9Aに記載されるNK細胞との共培養の前の、抗BCMA CAR T細胞におけるTCRa/b及びβ2M発現のレベルを示すフローサイトメトリプロットである。
【
図9B】NK細胞の存在下でのCAR T細胞溶解を示す図表を提供する。
図9Aは、0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbで前処理された正常なドナー由来の抗BCMA CAR T細胞と精製NK細胞との共培養物における、抗BCMA CAR T細胞溶解の頻度を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図9Bは、
図9Aに記載されるNK細胞との共培養の前の、抗BCMA CAR T細胞におけるTCRa/b及びβ2M発現のレベルを示すフローサイトメトリプロットである。
【
図10A】は、ダラツムマブの存在下又は不在下でのNK細胞媒介CAR T細胞溶解の図表を提供する。
図10Aは、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後のCAR T細胞の抗BCMA CAR T細胞頻度を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図10Bは、B2Mが欠乏した抗BCMA CAR T細胞とダラツムマブで処理したNK細胞との1:1比の共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。NK細胞は正常なドナー由来であり、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbで60時間前処理された。
図10Cは、3:1比のダラツムマブで処理したNK細胞と抗BCMA CAR T細胞との共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
【
図10B】は、ダラツムマブの存在下又は不在下でのNK細胞媒介CAR T細胞溶解の図表を提供する。
図10Aは、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後のCAR T細胞の抗BCMA CAR T細胞頻度を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図10Bは、B2Mが欠乏した抗BCMA CAR T細胞とダラツムマブで処理したNK細胞との1:1比の共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。NK細胞は正常なドナー由来であり、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbで60時間前処理された。
図10Cは、3:1比のダラツムマブで処理したNK細胞と抗BCMA CAR T細胞との共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
【
図10C】は、ダラツムマブの存在下又は不在下でのNK細胞媒介CAR T細胞溶解の図表を提供する。
図10Aは、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブと24時間共培養した後のCAR T細胞の抗BCMA CAR T細胞頻度を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図10Bは、B2Mが欠乏した抗BCMA CAR T細胞とダラツムマブで処理したNK細胞との1:1比の共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。NK細胞は正常なドナー由来であり、0.1、1、又は10μg/mLのダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbで60時間前処理された。
図10Cは、3:1比のダラツムマブで処理したNK細胞と抗BCMA CAR T細胞との共培養物におけるNK媒介細胞溶解からの保護を示す。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
【
図11A】濃度0.01、0.1、1、10、100、又は300μg/mLのダラツムマブのいずれかでB2Mを欠乏したCAR T細胞抗BCMA CAR T細胞を、60時間前処理した精製NK細胞と共培養した後のNK及びCAR T細胞数を示すグラフである。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図11Aは、72時間共培養した後のNK細胞数を示す。
図11Bは、72時間共培養した後のT細胞数を示す。
【
図11B】濃度0.01、0.1、1、10、100、又は300μg/mLのダラツムマブのいずれかでB2Mを欠乏したCAR T細胞抗BCMA CAR T細胞を、60時間前処理した精製NK細胞と共培養した後のNK及びCAR T細胞数を示すグラフである。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
図11Aは、72時間共培養した後のNK細胞数を示す。
図11Bは、72時間共培養した後のT細胞数を示す。
【
図12】マウスあたり100μgのダラツムマブ及び/又はマウスあたり0.4×10
6のNK細胞を注射されたマウスから回収された血液のフローサイトメトリによって測定されたNK細胞数を示すグラフである。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
【
図13】0.5×10
6Nalm6細胞/マウスを静脈注射された免疫不全マウスの週1回の生物発光測定値を示すグラフであり、測定値は、NK細胞、PBS、ダラツムマブ(DARA)、IgG1、及び/又は抗CD19CAR T細胞(4×10
6細胞/マウス)によるマウスの別の静脈注射後に回収された。エラーバーは標準誤差(SEM)を表し、ここではn=3である。
【
図14A】5×10
6MM.1S細胞/マウスを静脈注射され、ダラツムマブ、抗BCMA CAR-T細胞、又はこれらの組み合わせで処理された免疫不全マウスの腫瘍容積及び生存率を示すグラフである。
図14Aは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、低用量の抗BCMA CAR-T細胞(0.8×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Bは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞(2.4×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Cは、単体での、又はダラツムマブとの組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞で処理されたマウスの26日目における腫瘍容積を示すグラフである。
【
図14B】5×10
6MM.1S細胞/マウスを静脈注射され、ダラツムマブ、抗BCMA CAR-T細胞、又はこれらの組み合わせで処理された免疫不全マウスの腫瘍容積及び生存率を示すグラフである。
図14Aは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、低用量の抗BCMA CAR-T細胞(0.8×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Bは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞(2.4×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Cは、単体での、又はダラツムマブとの組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞で処理されたマウスの26日目における腫瘍容積を示すグラフである。
【
図14C】5×10
6MM.1S細胞/マウスを静脈注射され、ダラツムマブ、抗BCMA CAR-T細胞、又はこれらの組み合わせで処理された免疫不全マウスの腫瘍容積及び生存率を示すグラフである。
図14Aは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、低用量の抗BCMA CAR-T細胞(0.8×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Bは、単体での、又はダラツムマブ(15mg/kg)との組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞(2.4×10
6CAR
+T細胞)で処理されたマウスの腫瘍容積(上)及び生存率(下)を示すグラフである。
図14Cは、単体での、又はダラツムマブとの組み合わせでの、高用量の抗BCMA CAR-T細胞で処理されたマウスの26日目における腫瘍容積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
理論に束縛されるものではないが、破壊されたMHCクラスIを含むCAR T細胞は、MHCクラスIが十分な細胞、すなわち自己細胞をNK細胞が消失させることを防ぐ、必要なMHCクラスI-NK KIR受容体結合を提供することができないと考えられる。したがって、破壊されたMHCクラスIを含む同種異系CAR T細胞は、NK媒介免疫監視による消失を受けやすい。一例として抗CD38モノクローナル抗体を用いるNK細胞阻害剤の投与は、NK細胞数の減少をもたらしたことが発見された。続いて、NK細胞の枯渇が、宿主NK媒介細胞溶解から同種異系CAR T細胞を保護する。よって、CAR T細胞療法とNK細胞阻害剤との組み合わせは、既存のCAR T細胞療法を上回る改善を示す。
【0035】
PBMCから単離されたT細胞も、細胞表面にCD38タンパク質を発現することが実証された。驚くべきことに、NK細胞を枯渇させた用量での抗CD38モノクローナル抗体の添加は、抗CD38モノクローナル抗体で複数日培養した後であっても、T細胞数に影響を及ぼさなかった。NK細胞数を枯渇させた用量での抗CD38モノクローナル抗体の添加も、CAR T細胞の活性化を誘発しない。したがって、理論に束縛されるものではないが、抗CD38モノクローナル抗体の治療はNK細胞に特異的であり、望ましくない非特異的なCAR T細胞の活性化又は消失をもたらすことなくNK細胞の減少を誘発するものと考えられる。抗CD38モノクローナル抗体などのNK細胞阻害剤の添加は、既存のCAR T細胞療法に対する改善を示す。
【0036】
更に、抗CD38抗体とPBMCとの共培養物に対する補体の添加は、NK細胞枯渇の規模に影響を及ぼさなかったため、NK細胞に対する抗CD38抗体の効果は補体依存性ではなかったことも実証された。より重要なことに、補体の添加でT細胞の枯渇が起きることもなく、CAR T細胞活性化状態が影響を受けることもなかった。したがって、理論に束縛されるものではないが、CAR T細胞療法と組み合わせた抗CD38抗体などのNK細胞阻害剤の投与は、CAR T細胞の残存率及び効力を改善するものと考えられる。更に、動物モデルにおいて、抗CD38抗体が、腫瘍抗原(例えばCD19又はBCMA)を標的化するCAR-T細胞の抗腫瘍効果を成功裏に向上させたことが観察された。理論に束縛されるものではないが、併用療法は、例えば、CAR T細胞療法の抗腫瘍活性を増加させることによって、対象における臨床応答を改善すると考えられる。
【0037】
本開示は、破壊された主要組織適合複合体(MHC)を含み、がんを治療するためにNK細胞阻害剤と組み合わせて使用するためのキメラ抗原受容体(CAR)を発現する改変T細胞の方法及び/又は組成物を提供する。いくつかの実施形態では、これらの改変T細胞は、対象による拒絶反応のリスクを減少させるために、機能性T細胞受容体(TCR)を含まず、破壊されたMHCクラスIを含む。
【0038】
したがって、本開示の一態様は、臨床転帰を改善するための併用療法を特徴とし、併用療法は、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子改変T細胞(「CAR」及び「CAR T細胞」)及びNK細胞阻害剤(例えば、ダラツムマブ又はその機能的バリアントなどの抗CD38抗体)を伴う。
【0039】
I.遺伝子改変キメラ抗原受容体(CAR)T細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する改変ヒトT細胞(すなわち、改変ヒトCAR T細胞)を提供する。CAR T細胞を作製する方法は、当業者に既知であり、また、以下でより詳細に説明される。CAR T細胞療法とは、治療を必要とする対象におけるがんなどの標的疾患を治療するのに用いるための、改変ヒトCAR T細胞の集団(すなわち、改変ヒトCAR T細胞)を含む組成物及び/又は方法を指す。いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法は、リンパ球枯渇レジメンを含み得る前条件付けレジメンを更に含み得る。代表的なリンパ球枯渇レジメンは、リンパ球枯渇レジメンの一部として化学療法薬を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法は、1用量の改変ヒトCAR T細胞を含み得る。その他の実施形態では、本明細書に開示されるCAR T細胞療法は、複数用量(例えば2用量又は3用量)の改変ヒトCAR T細胞を含み得る。
【0040】
遺伝子改変CAR T細胞(例えば、本明細書に開示されるヒトCAR-T細胞)は、目的の抗原(例えば、がん又は腫瘍抗原)に対する特異性を有するキメラ抗原受容体を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CAR T細胞は、1つ以上の標的遺伝子、例えば、MHCクラスI遺伝子(例えば、B2M)及び/又はT細胞受容体遺伝子(例えば、TRAC)における更なる遺伝子編集を含み得る。
【0041】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体は、腫瘍細胞により発現された抗原を認識して結合するように改変されている人工の免疫細胞受容体を指す。一般に、CARは、T細胞用に設計されており、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメイン及び抗原認識ドメイン(例えば、抗体の一本鎖可変フラグメント(scFv)又はその他の抗原結合フラグメント)のキメラである(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498~505)。CARを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれている。CARは、MHCに制限されない様式において、選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性を再指示する能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングに非依存的な抗原を認識する能力を与え、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。更に、T細胞中で発現される場合、CARは、内因性T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖と有利に二量体化しない。
【0042】
4つの世代のCARが存在し、その各々は、異なる構成要素を含む。第一世代のCARは、抗体に由来するscFvをヒンジ及び膜貫通ドメインを介してT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第二世代のCARは、追加のドメイン(例えば、CD28、4-1BB(41BB)又はICOS)を組み込んで、共刺激シグナルを供給する。第三世代のCARは、TCR CD3ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメインを含む。第三世代の共刺激ドメインは、例えば、CD3ζ、CD27、CD28、4-1BB、ICOS又はOX40の組み合わせを含み得る。CARは、いくつかの実施形態では、一本鎖可変フラグメント(scFv)に一般に由来する外部ドメイン(例えば、CD3ζ)、ヒンジ、膜貫通ドメイン並びにCD3ζ及び/又は共刺激分子に由来する1つ(第一世代)、2つ(第二世代)又は3つ(第三世代)のシグナル伝達ドメインを有する内部ドメインを含む(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151-155)。
【0043】
CARは、典型的には、その機能特性が異なる。T細胞受容体のCD3ζシグナル伝達ドメインは、係合される場合、T細胞の増殖を活性化し、及び誘導することになるが、アネルギーを引き起こし得る(身体の防御機構による反応の欠如、末梢リンパ球寛容の直接的な誘導をもたらす)。リンパ球は、特定の抗原に応答できない場合、アネルギー性であるとみなされる。第二世代のCARにおける共刺激ドメインの付加は、修飾T細胞の複製能及び残存率を向上させた。同様の抗腫瘍効果は、インビトロでCD28又は4-1BB CARと共に観察される。臨床試験は、これらの第二世代のCARの両方がインビボで実質的なT細胞増殖を誘発し得ることを示唆する。第三世代のCARは、効力を増強する複数のシグナル伝達ドメイン(共刺激)を組み合わせる。
【0044】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、第一世代のCARである。他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第二世代のCARである。更に他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第三世代のCARである。
【0045】
CARは、いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン(例えば、scFvなどの抗体)、膜貫通ドメイン及び細胞質(内)ドメインを含む細胞外(外部)ドメインを含む。
【0046】
(i)外部ドメイン
外部ドメインは、細胞外の体液に曝されるCARの領域であり、及びいくつかの実施形態では抗原結合ドメイン並びに任意選択的なシグナルペプチド、スペーサードメイン及び/又はヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンのVL及びVHを含む一本鎖可変フラグメント(scFv)である。リンカーは、いくつかの実施形態では、可動性のための一続きのグリシン及びセリン並びに可溶性を加えるための一続きのグルタミン酸塩及びリシンと共に親水性残基を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンの重(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可動性のためにグリシンに富み、溶解性のためにセリン又はスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示のscFvは、ヒト化されている。他の実施形態では、scFvは、完全ヒトである。更に他の実施形態では、scFvは、キメラ(例えば、マウス及びヒト配列)である。
【0048】
いくつかの例では、本明細書に開示されるCARの外部ドメインは、抗CD19scFv、例えば配列番号54(VH)及び配列番号55(VL)のアミノ酸配列を含む抗CD19scFvである。一例では、抗CD19scFvは、配列番号50のアミノ酸配列を含み得る。
【0049】
いくつかの例では、本明細書に開示されるCARの外部ドメインは、抗CD70 scFv、例えば配列番号81(VH)及び配列番号82(VL)のアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。一例では、抗CD70 scFvは、配列番号78又は配列番号80のアミノ酸配列を含み得る。
【0050】
他の例では、本明細書に開示されるCARの外部ドメインは、抗BCMA scFv、例えば配列番号89(VH)及び配列番号90(VL)のアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。一例では、抗BCMA scFvは、配列番号88のアミノ酸配列を含み得る。
【0051】
更に他の例では、本明細書に開示されるCARの外部ドメイン(ectodomin)は、抗CD33 scFv、例えば配列番号116(VH)及び配列番号117(VL)のアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvであってもよい。一例では、抗CD33 scFvは、配列番号113のアミノ酸配列を含み得る。
【0052】
本明細書に開示されるCARを構築するのに使用するためのscFv配列、例えばCAR標的化CD19、BCMA、CD70、又はCD33に関する更なる情報は、国際公開第2019/097305号パンフレット、同第2019/215500号パンフレット、及び同第2020/095107号パンフレットで見出すことができ、該当する各開示は、参照することにより本明細書で参照される目的及び主題に関して組み込まれる。
【0053】
シグナルペプチドは、CAR結合の抗原特異性を増強し得る。シグナルペプチドは、抗体(例えば、限定されないが、CD8)及びエピトープタグ(例えば、限定されないが、GST又はFLAG)に由来し得る。シグナルペプチドの例として、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号30)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号31)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間に位置するか、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。スペーサードメインは、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖中の細胞外ドメイン及び/又は細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。ヒンジドメインは、CAR若しくはそのドメインに可動性をもたらすか、又はCAR若しくはそのドメインの立体障害を妨げるように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、最大で300個のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸又は5~20個のアミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のスペーサードメインがCARの他の領域に含まれ得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。他のヒンジドメインが使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARコンストラクトのいずれかの外部ドメインは、がん又は腫瘍抗原を標的化する(例えば、これに特異的に結合する)。「がん抗原」及び「腫瘍抗原」という用語は、本明細書では互換的に用いられる。いくつかの実施形態では、腫瘍又はがん抗原は、通常、全く発現されない場合があるか、又は低レベルでのみ発現される場合がある非腫瘍細胞より腫瘍細胞においてより高レベルで発現されるタンパク質などの免疫原性分子を参照させる「腫瘍関連抗原」である。いくつかの実施形態では、腫瘍を内部に持つ宿主の免疫系によって認識される腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原と呼ばれる。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、大部分の腫瘍によって広範に発現される普遍的な腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、分化抗原、変異性抗原、過剰発現された細胞抗原又はウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍又はがん抗原は、腫瘍細胞に固有のタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍特異抗原」又は「TSA」である。腫瘍特異抗原は、腫瘍細胞において排他的に発現される。代表的ながん抗原を下記に示す。
【0056】
CD19
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD19を標的化するように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)で改変されている。表面抗原分類19(CD19)は、白血病前駆細胞上で検出可能な抗原決定基である。ヒト及びマウスのアミノ酸及び核酸配列は、GenBank、UniProt及びSwiss-Protなどの公的データベースにおいて見出すことができる。例えば、ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Prot受入番号P15391として見出すことができ、ヒトCD19のヌクレオチド配列のコード化は、受入番号NM-001178098で見出すことができる。CD19は、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球白血病及び非ホジキンリンパ腫を含む大部分のB細胞系列がん上で発現される。それは、B細胞前駆体の早期のマーカーでもある。例えば、Nicholson et al.Mol.Immun.34(16-17):1157~1165(1997)を参照されたい。
【0057】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)を含むCARを発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号49に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)を含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号39に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号49と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号50のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号50と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号54と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号55と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号39と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号40のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号40と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
BCMA
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、BCMAを標的化するように設計されたCARにより改変される。B細胞成熟抗原(BCMA、CD269)は、腫瘍壊死因子受容体(TNF)スーパーファミリーのメンバーである。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖誘導リガンド(APRIL)に結合する。非悪性細胞の中で、BCMAは、形質細胞及び成熟B細胞のサブセットによって主に発現される。BCMAは、多発性骨髄腫細胞及び非ホジキンリンパ腫を含むB系列細胞によって選択的に発現され、したがって、BCMAもまた、魅力的な治療標的である。
【0060】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)を含むCARを発現するように改変される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号87のヌクレオチド配列によってコードされる抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号88のアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号89のアミノ酸配列を含むVHを含む抗BCMA scFvである。或いは、又は加えて、抗BCMA抗体は、配列番号90のアミノ酸配列を含むVLを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号85の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号86の配列を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号87と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号88のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号88と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号89と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗BCMA scFvである。或いは、又は加えて、抗BCMA抗体は、配列番号90と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号85と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号86のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号86と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
CD33
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD33を標的化するように設計されたCARにより改変される。Siglec3としても知られるCD33は、シアル酸に結合することが知られる骨髄系列の細胞上で発現される膜貫通受容体である。CD33は、がん細胞(例えば、急性骨髄性白血病)において発現されるため、CD33は、これらの悪性腫瘍を標的化するための細胞表面マーカーとなると考えられる。
【0063】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)を含むCARを発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号114のヌクレオチド配列によってコードされる抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号113のアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号116のアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD33 scFvである。或いは、又は加えて、抗CD33抗体は、配列番号117のアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号112のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号115のアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号114と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号113のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号113と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号116と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD19scFvである。或いは、又は加えて、抗CD33抗体は、配列番号117と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号112と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号115のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号115と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0065】
CD70
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD70を標的化するように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)により改変されている。CD70は、T細胞の増殖及び生存に関与する共刺激受容体であるCD27に対するリガンドとして最初に同定された。CD70は、ウイルス感染中の流入領域リンパ節において少ないパーセンテージの活性化T細胞及び抗原提示細胞上においてのみ見出される。明細胞腎臓がん、乳癌、胃癌、卵巣がん、神経膠芽腫、及び血液悪性腫瘍などの固形がんを含むがこれらに限定されない多くのヒト腫瘍もまた、CD70を発現する。正常組織におけるその限定的な発現パターン及び多くのがんにおける過剰発現のために、CD70は、魅力的な治療標的である。
【0066】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)を含むCARを発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号77又は79のヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号78又は80のアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD70 scFvである。或いは、又は加えて、抗CD70抗体は、配列番号82のアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号75のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号76のアミノ酸配列を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号77又は79と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号78及び80のアミノ酸配列をそれぞれコードするヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号78又は80と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号81と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD70 scFvである。或いは、又は加えて、抗CD70抗体は、配列番号82と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号75と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号76のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号76と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
(ii)膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜をまたがる疎水性アルファヘリックスである。膜貫通ドメインは、CARの安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。更に他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメイン及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。他の膜貫通ドメインが使用され得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8a膜貫通ドメインである。
【0069】
(iii)内部ドメイン
内部ドメインは、受容体の機能的な末端である。抗原認識後、受容体クラスター及びシグナルは、細胞に伝達される。最も一般的に使用される内部ドメインの構成要素は、CD3-ゼータであり、このCD3-ゼータは、3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。これは、抗原が結合した後に活性化シグナルをT細胞に伝達する。例示的なCD3-ゼータは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号37のヌクレオチド配列によってコードされ得る。多くの場合、CD3-ゼータは、十分に能力のある活性化シグナルをもたらさない場合があり、そのため、共刺激シグナル伝達が使用される。例えば、CD28及び/又は4-1BBが、CD3-ゼータ(CD3ζ)と共に使用されて、増殖/生存シグナルを伝達し得る。そのため、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの共刺激ドメインは、CD28共刺激分子由来である(例えば、配列番号35のヌクレオチド配列によってコードされ得る、配列番号36のアミノ酸配列を含む共刺激ドメイン)。その他の実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB共刺激分子由来であり得る(例えば、配列番号33のヌクレオチド配列によってコードされ得る、配列番号34のアミノ酸配列を含む共刺激ドメイン)。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ及びCD28共刺激ドメインを含む。他の実施形態では、CARは、CD3-ゼータ及び4-1BB共刺激ドメインを含む。更にその他の実施形態では、CARは、CD3ζ、CD28共刺激ドメイン、及び4-1BB共刺激ドメインを含む。
【0070】
(iv)例示的なCARコンストラクト
本明細書に開示される併用療法で使用するための遺伝子改変CAR-T細胞中で発現され得る多くの例示的なCARコンストラクトを下記で提供する。本開示で使用するためのCARコンストラクト、例えばCAR標的化CD19、BCMA、CD70、又はCD33に関する更なる情報は、国際公開第2019/097305号パンフレット、同第2019/215500号パンフレット、及び同第2020/095107号パンフレットで見出すことができ、該当する各開示は、参照することにより本明細書で参照される目的及び主題に関して組み込まれる。
【0071】
抗CD19CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、本明細書で抗CD19CAR又は抗CD19CAR T細胞とも称されるCD19標的化キメラ抗原受容体(CAR)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、それぞれ配列番号54及び55に記載のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む抗CD19抗体(例えば抗CD19scFv)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、配列番号54に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号55に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、配列番号54に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号55に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、配列番号54に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号55に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、配列番号54に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号55に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、それぞれ配列番号127、128及び129に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号124、125及び126に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19scFv)は、それぞれ配列番号130、131及び129に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号124、125、126に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD19scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号49に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19scFvである。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)それぞれ配列番号54及び55に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号35に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD28共刺激ドメイン及び配列番号37に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)配列番号49に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号35に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD28共刺激ドメイン及び配列番号37に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、(i)それぞれ配列番号54及び55に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD19抗原結合性フラグメントを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号35に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD28共刺激ドメイン及び配列番号37に記載されるヌクレオチド配列によってコードされるCD3-ゼータ共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、配列番号39に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD19CARは、配列番号39に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号40のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0080】
抗CD33 CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、本明細書でCD33 CAR、抗CD33 CAR、又は抗CD33 CAR T細胞とも称されるCD33標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗CD33 CAR中の抗CD33抗体(例えば抗CD33 scFv)は、配列番号116及び117にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号116に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号117に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号116に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号117に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号116に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号117に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号116に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号117に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、それぞれ配列番号118、119及び120に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号121、122及び123に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば抗CD33 scFv)は、配列番号132に記載の重鎖CDR1配列、配列番号94に記載の重鎖CDR2配列、及び配列番号120に記載の重鎖CDR3配列、並びに、それぞれ配列番号121、122、及び123に記載の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む(配列表を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号114に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD33 scFvである。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)それぞれ配列番号116及び117に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD33 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、配列番号115に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、配列番号112に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、配列番号112に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号115のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0087】
抗BCMA CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、本明細書でBCMA CAR、抗BCMA CAR又は抗BCMA CAR T細胞とも称されるBCMA標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗BCMA CAR中の抗BCMA抗体(例えば抗BCMA scFv)は、配列番号89及び90にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号89に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号90に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号89に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号90に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号89に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号90に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号89に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号90に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、それぞれ配列番号106、108及び110に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号103、104及び105に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、それぞれ配列番号107、109及び110に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号103、104及び105に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号87に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗BCMA scFvである。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)それぞれ配列番号89及び90に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗BCMA scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号85に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号85に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号86のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0094】
抗CD70 CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、CD70 CAR、抗CD70 CAR又は抗CD70 CAR T細胞とも本明細書で呼ばれるCD70標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗CD70 CAR中の抗CD70抗体(例えば抗CD70 scFv)は、配列番号81及び82にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号81に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号82に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号81に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号82に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号81に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号82に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号81に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号82に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、それぞれ配列番号97、99及び101に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号91、93及び95に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば抗CD70 scFv)は、それぞれ配列番号98、100、及び102に記載の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号92に記載の軽鎖CDR1配列、LASとして記載される軽鎖CDR2配列、及び配列番号96に記載の軽鎖CDR3配列を含む(下記の配列表を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号79に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号77に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)それぞれ配列番号81及び82に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD70 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、配列番号75に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、配列番号75に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、また任意選択的に配列番号76のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0101】
(v)T細胞におけるキメラ抗原受容体の発現
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、当業者に既知の方法によって改変細胞に導入される。例えば、CARは、ベクターによって改変された細胞に導入され得る。当該技術分野で既知の様々な異なる方法を使用して、本明細書に開示される核酸又は発現ベクターのいずれかを免疫エフェクター細胞に導入することができる。核酸を細胞に導入するための方法の非限定的な例としては、リポフェクション、トランスフェクション(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、高度に分岐した有機化合物を使用するトランスフェクション、カチオン性ポリマーを使用するトランスフェクション、デンドリマー系トランスフェクション、光学的トランスフェクション、粒子系トランスフェクション(例えば、ナノ粒子トランスフェクション)、又はリポソーム(例えば、カチオン性リポソーム)を使用するトランスフェクション)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、セルスクイージング、ソノポレーション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、水力学的送達、遺伝子銃、マグネトフェクション、ウイルストランスフェクション、及びヌクレオフェクションが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、下記に記載されるように、ドナー鋳型として改変細胞に導入される。
【0103】
B.T細胞の遺伝子編集
いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞は、少なくとも1つの遺伝子編集、例えば破壊されたMHCクラスIを含む。例えば、改変T細胞は、破壊されたβ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞は、例えば複数の遺伝子において複数の遺伝子編集を含む。例えば、改変T細胞は、破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、改変T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子及び破壊されたβ2M遺伝子を含む。
【0104】
遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、1つ以上のヌクレオチドを挿入するか又は欠失させるCRISPR/Cas遺伝子編集を使用する)を介した遺伝子修飾を包含することを理解すべきである。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子とは、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えばフローサイトメトリによる)のタンパク質を(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と呼ばれ得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出され得ない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0105】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態では、一定のパーセンテージの細胞が編集されており(例えば、β2M遺伝子が編集されており)、結果として特定の遺伝子及び/又はタンパク質を発現しない一定のパーセンテージの細胞がもたらされる細胞の集団である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団の少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は85%)の細胞は、β2Mノックアウト細胞である。いくつかの実施形態では、この集団の少なくとも50%の細胞(例えば、T細胞)は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の細胞は、β2Mノックアウト細胞であり得る。
【0106】
細胞においてゲノム欠失をもたらす(例えば、細胞において遺伝子をノックアウトする)ためにCRISPR-Cas遺伝子編集技術を使用する方法は、既知である(Bauer DE et al.Vis.Exp.2015;95;e52118)。
【0107】
(i)破壊されたMHCクラスI
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される方法で使用するために、破壊された主要組織適合複合体(MHC)を含む改変ヒトT細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を提供する。本明細書では、「MCHクラスI」及び「MHCクラスI複合体」という用語は互換的に用いられる。ヒト内に40個超存在するHLA遺伝子は、細胞表面上に発現しているか、又は補体系の成分である3つのクラスのMHCタンパク質(I、II、III)をコードする。HLA遺伝子は多種多様であり、数百の既知の対立遺伝子変異がある。この遺伝的多様性のために、高可変性のMHC分子の発現がもたらされる。MHC分子は、その主な機能が、免疫細胞に対して提示するためにペプチド抗原を結合させることであるため免疫調節に不可欠な役割を果たす。構造的に異なるMHC分子は、タンパク質抗原に一意的に結合し、続くMHCクラスIによる抗原提示は、自己抗原に対する免疫応答(寛容を維持して自己免疫反応を回避する)と、外来抗原(感染又は悪性細胞に対する免疫攻撃を展開する)とのバランスを取る上で不可欠な工程である。例えば、Skelton TS et al.,Open J.Immunol.(2011),1(2):15-26;Petersdorf EW,Blood(2013),122(11):1862-1872を参照されたい。
【0108】
MHCクラスIは、全ての有核細胞中に存在し、2つの成分(例えば、MHCクラスIサブユニット):第2のβ2-ミクログロブリン(β2M)ペプチドと非共有結合した、第1のHLA-A、B、及びC遺伝子によってコードされたアミノ酸配列(すなわち、α1、α2、及びα3)を含むα重鎖を含む。これらの2つの成分は固有のペプチド結合溝を形成し、この上で自己又は外来ペプチド抗原が結合して、MHCクラスIを形成する。移植との関係においては、同種異系(HLA不一致)ドナー由来のMHCクラスIは、異なる非自己MHCクラスIを示し、これが免疫反応をトリガして、「外来侵入者」を拒絶する。
【0109】
レシピエント又は宿主T細胞による同種異系(非自己)MHCクラスIの認識、及び続く同種異系(非自己)MHCクラスIを含む細胞の消失を防ぐために、同種異系CAR T細胞は、1つ以上のMHCクラスIサブユニットを破壊又は消失させるように改変される。同種異系改変CAR T細胞上のMHCクラスIサブユニットを破壊することで、外来MHCクラスIと宿主免疫T細胞との係合によって生じる免疫活性化が回避される。更に、破壊されたMHCクラスIを含む改変CAR T細胞は、自己寛容を維持するために必要な、宿主NK細胞阻害剤の受容体(例えば、キラーIg様受容体(KIR))との係合に失敗する。MHCクラスI:NK細胞受容体の相互作用がない場合は、改変CAR T細胞は、宿主/レシピエントNK媒介性の消失を受けやすい。
【0110】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、改変CAR T細胞のNK媒介性の消失を減少させるための方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、改変ヒトCAR T細胞を受けている対象においてNK細胞活性を減少させるための方法も提供する。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞は破壊されたMHCクラスIを含む。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞中のMHCクラスIの発現は阻害される。いくつかの実施形態では、MHCクラスIの阻害は、HLA遺伝子の不活性化又は変異によるものである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIの阻害は、β2M遺伝子の不活性化又は変異によるものである。
【0111】
いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIを含む細胞は、MHCクラスIの機能の喪失をもたらす。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスI複合体は、改変CAR T細胞を非同種異系反応性にし、及び同種異系間移植に適したものにする。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスI複合体は、宿主対移植片疾患のリスクを最小化する。
【0112】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas遺伝子編集を用いた)を介した遺伝子修飾を包含する。遺伝子編集の方法は当該技術分野で既知であり、且つ本開示で提供される。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えば、フローサイトメトリによる)のタンパク質を、(例えば、細胞表面において)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と称され得る。例えば、MHCクラスI遺伝子編集を有する細胞は、MHCクラスIの1つ以上のタンパク質に特異的に結合する抗体を使用してMHCクラスI複合体又はサブユニットが細胞表面で検出され得ない場合、MHCクラスIノックアウト細胞とみなされ得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子とは、コードされたタンパク質のより少ないコピーをコードする遺伝子である。減少したレベルのタンパク質を発現する細胞は、ノックダウン細胞と称され得る。例えば、MHCクラスI遺伝子編集を有する細胞は、MHCクラスI分子上で1つ以上のタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出されたMHCクラスI分子が非修飾細胞と比較してより少ない発現を有する場合、MHCクラスIノックダウン細胞とみなされ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIのサブユニットはα鎖である(例えばHLA-A、HLA-B、HLA-C)。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIのサブユニットはβ2Mペプチドである。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIはβ2Mペプチドと会合したα鎖である。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIは、ペプチド結合溝内で結合したペプチド抗原を更に含む、β2Mペプチドと会合したα鎖である。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIは、β2M遺伝子中の変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は置換)によって生じる。いくつかの実施形態では、破壊されたMHCクラスIは、HLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-C遺伝子中の変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は置換)によって生じる。
【0115】
いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞の約10%未満が破壊されたMHCクラスIを発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞の約50%未満が破壊されたMHCクラスIを発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞の約90%、80%、70%、60%、40%、30%、又は20%未満が破壊されたMHCクラスIを発現する。
【0116】
(ii)TRAC遺伝子編集
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子を含む。この破壊は、TCRの機能喪失をもたらし、この改変T細胞を非同種異系反応性にし、及び同種異系間移植に適したものにし)、移植片対宿主疾患のリスクを最小化する。いくつかの実施形態では、内因性TRAC遺伝子の発現は、移植片対宿主反応を予防するために消失される。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNAにより、mRNA又はタンパク質の発現を破壊する、TRAC遺伝子におけるインデルが生じる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化するgRNAにより生じる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、外因性配列(例えばキメラ抗原受容体をコードする核酸)をTRAC遺伝子にノックインすること(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びドナー鋳型を使用して)によって生じる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子におけるゲノム欠失は、gRNA、及び/又は外因性配列(例えばキメラ抗原受容体をコードする核酸)をTRAC遺伝子へのノックイン(例えば、AAVベクター及びドナー鋳型を使用して)によって生じる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化するgRNA及びキメラ抗原受容体(CAR)をTRAC遺伝子にノックインすることにより生じる。
【0117】
本明細書で提供されるとおりに用いられてTRAC遺伝子中にゲノム破壊を生成することのできる修飾及び非修飾TRAC gRNA配列の非限定的な例としては、配列番号18又は配列番号19のヌクレオチド配列を含むものが挙げられる。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日出願の国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、14番染色体上に位置するTRAC遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:14番染色体:22,547,506~22,552,154;アンサンブルENSG00000277734)。
【0118】
いくつかの実施形態では、改変T細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、改変T細胞の集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、改変T細胞の集団の0.5%未満が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する。
【0119】
いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNAは、配列番号1~8から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子中にインデルを生成する(「-」は欠失を示し、太字のヌクレオチドは挿入を示す)。下記の表1を参照されたい。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、TRAC遺伝子標的配列の欠失を含み、例えば、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号28のヌクレオチド配列の欠失を含む。
【0120】
【0121】
(iii)β2M遺伝子編集
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、破壊されたβ2M遺伝子を含む。β2Mは、MHC I複合体の共通の(不変の)構成要素である。遺伝子編集によりその発現が破壊されると、宿主対治療用同種異系T細胞反応が予防され、同種異系T細胞の残存率の増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、内因性のβ2M遺伝子の発現は、宿主対移植片反応を予防するために消失される。
【0122】
本明細書で提供されるとおりに用いられてβ2M遺伝子中にゲノム破壊を生成することのできる修飾及び非修飾β2M gRNA配列の非限定的な例としては、配列番号20又は配列番号21のヌクレオチド配列を含むものが挙げられる。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日出願の国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、15番染色体上に位置するβ2M遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:15番染色体:44,711,477-44,718,877;Ensembl:ENSG00000166710)。
【0123】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNAにより、mRNA又はタンパク質の発現を破壊する、β2M遺伝子におけるインデルがもたらされる。
【0124】
いくつかの実施形態では、細胞の集団の少なくとも50%の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。
【0125】
いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの50%未満の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの30%未満の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。例えば、細胞の集団のうちの50%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの40%~30%、40%~20%、40%~10%、40%~5%、30%~20%、30%~10%、30%~5%、20%~10%、20%~5%、又は10%~5%の改変T細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。
【0126】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNAにより、β2M遺伝子におけるインデルが生成される。いくつかの実施形態では、破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号9~14から選択される少なくとも1つの配列を含み得る(「-」は欠失を示し、太字のヌクレオチドは挿入を示す)。下記の表2を参照されたい。
【0127】
【0128】
(iv)遺伝子編集方法
遺伝子編集(ゲノム編集を含む)は、ヌクレオチド/核酸が、標的化された細胞のゲノム中などのDNA配列中に挿入され、欠失され、及び/又は置換される一種の遺伝子改変である。標的化された遺伝子編集により、標的化された細胞のゲノム中(例えば、標的化された遺伝子中又は標的化されたDNA配列中)の予め選択された部位での挿入、欠失及び/又は置換が可能になる。内因性の遺伝子の配列が、例えば、ヌクレオチド/核酸の欠失、挿入又は置換によって編集される時、影響を受けた配列を含む内因性の遺伝子は、配列変異のためにノックアウト又はノックダウンされ得る。したがって、標的化された編集を使用して、内因性の遺伝子発現を破壊し得る。「標的化された組込み」は、挿入部位における内因性配列の欠失の有無に関わらず、1つ以上の外因性配列の挿入を含むプロセスを指す。標的化された組込みは、外因性配列を含むドナー鋳型が存在する場合、標的化された遺伝子編集から生じ得る。
【0129】
標的化された編集を、ヌクレアーゼ非依存的な手法又はヌクレアーゼ依存的な手法のいずれかを介して達成し得る。ヌクレアーゼ非依存的な標的化された編集手法において、相同組み換えは、宿主細胞の酵素機構を介して内因性配列に導入されることになる外因性ポリヌクレオチドに隣接する相同配列によって誘導される。この外因性ポリヌクレオチドは、この内因性配列中においてヌクレオチドの欠失、挿入又は置換を導入し得る。
【0130】
或いは、ヌクレアーゼ依存的な手法は、特異的なレアカッティングヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)による二重鎖切断(DSB)の特異的な導入を介して比較的高い頻度を有して標的化された編集を達成できる。そのようなヌクレアーゼ依存的な標的化された編集は、DNA修復機構(例えば、DSBに応答して生じる非相同末端連結(NHEJ))も利用する。NHEJによるDNA修復は、少数の内因性ヌクレオチドのランダムな挿入又は欠失(インデル)を引き起こす場合が多い。NHEJに媒介される修復とは対照的に、修復は、相同組み換え修復(HDR)によっても生じ得る。相同性アームの対に隣接する外因性の遺伝子材料を含むドナー鋳型が存在する場合、この外因性の遺伝子材料を、この外因性の遺伝子材料の標的化された組込みをもたらすHDRによりゲノムに導入し得る。
【0131】
特異的及び標的化されたDSBを導入できる利用可能なエンドヌクレアーゼとしては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼを利用するDICE(二重インテグラーゼカセット交換)システムも、標的化された組込みのために使用され得る。
【0132】
ZFNは、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するポリペプチドドメインであるジンクフィンガーDNA結合ドメイン(ZFBD)に融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。ジンクフィンガーは、構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化されているジンクフィンガー結合ドメイン内の約30個のアミノ酸のドメインである。ジンクフィンガーの例として、C2H2ジンクフィンガー、C3Hジンクフィンガー及びC4ジンクフィンガーが挙げられるが、これらに限定されない。設計されたジンクフィンガードメインは、設計/組成が合理的な基準(例えば、既存のZFP設計及び結合データの情報を保管するデータベース中の情報を処理するための置換規則及びコンピューター処理されたアルゴリズムの適用)から主にもたらされる、天然に存在しないドメインである。例えば、米国特許第6,140,081号明細書;同第6,453,242号明細書;及び同第6,534,261号明細書を参照されたく;国際公開第98/53058号パンフレット;同第98/53059号パンフレット;同第98/53060号パンフレット;同第02/016536号パンフレット;及び同第03/016496号パンフレットも参照されたい。選択されたジンクフィンガードメインは、ファージディスプレイ、相互作用トラップ又はハイブリッド選択などの実験的なプロセスから主にもたらされる、天然に存在しないドメインである。ZFNは、米国特許第7,888,121号明細書及び同第7,972,854号明細書においてより詳細に説明されている。ZFNの最も認知されている例は、FokIヌクレアーゼとジンクフィンガーDNA結合ドメインとの融合物である。
【0133】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメイン」、「TALエフェクターDNA結合ドメイン」又は「TALE DNA結合ドメイン」は、TALエフェクタータンパク質のDNAへの結合に関与するTALエフェクタータンパク質のポリペプチドドメインである。TALエフェクタータンパク質は、キサントモナス(Xanthomonas)属の植物病原体により、感染中に分泌される。これらのタンパク質は、植物細胞の核に入り、これらのDNA結合ドメインを介してエフェクター特異的なDNA配列に結合し、且つこれらの転写活性化ドメインを介してこれらの配列で遺伝子転写を活性化する。TALエフェクターDNA結合ドメインの特異性は、2アミノ酸残基からなる可変領域(RVD)と呼ばれる選択反復位置で多型を含む、エフェクターにより可変の数の不完全な34個のアミノ酸の反復に依存する。TALENは、米国特許出願公開第2011/0145940号明細書においてより詳細に説明されている。当技術分野におけるTALENの最も認知された例は、TALエフェクターDNA結合ドメインに対するFokIヌクレアーゼの融合ポリペプチドである。
【0134】
本明細書に提供されるとおりの使用に好適な標的化ヌクレアーゼの更なる例としては、個別に使用されようと、組み合わせて使用されようと、Bxb1、phiC31、R4、PhiBT1、及びWβ/SPBc/TP901-1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
標的化ヌクレアーゼの他の非限定的な例として、天然に存在するヌクレアーゼ及び組み換えヌクレアーゼ、例えばCRISPR/Cas9、制限エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼホーミングエンドヌクレアーゼ及び同様のものが挙げられる。
【0136】
(v)CRISPR-Cas9遺伝子編集
CRISPR-Cas9系は、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されてきた原核生物において天然に存在する防御機構である。これは、DNA切断の標的化を、DNAヌクレアーゼCas9並びに2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化RNA(tracrRNA)に依存する。
【0137】
crRNAは、典型的には標的DNA中の20個のヌクレオチド(nt)の配列とのワトソン-クリック塩基対形成を介して、CRISPR-Cas9複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA中の5’ 20ntの配列の変化は、特定の座位へのCRISPR-Cas9複合体の標的化を可能にする。CRISPR-Cas9複合体は、標的配列に、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)が続く場合、crRNAであるシングルガイドRNA(sgRNA)の最初の20ntに一致する配列を含有するDNA配列にのみ結合する。
【0138】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、このRNA二重鎖構造にCas9エンドヌクレアーゼが結合して、触媒活性のあるCRISPR-Cas9複合体が形成され、次いで、このCRISPR-Cas9複合体は、標的DNAを切断し得る。
【0139】
CRISPR-Cas9複合体が標的部位でDNAに結合すると、Cas9酵素内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の上流でDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対(平滑末端)で終結する二本鎖切断(DSB)を残す。
【0140】
CRISPR-Cas9複合体が特定の標的部位でDNAに結合し、部位特異的なDSBが形成された後、次の重要なステップは、DSBの修復である。細胞は、DSBを修復するために、下記の2つの主要なDNA修復経路:非相同末端連結(NHEJ)及び相同組み換え修復(HDR)を使用する。
【0141】
NHEJは、非分裂細胞を含む大部分の細胞型において高度に活性であるように見える堅固な修復機構である。NHEJは、誤りがちであり、多くの場合、DSBの部位において1~数百のヌクレオチド間で除去又は付加をもたらす可能性があるが、そのような改変は、典型的には<20ntである。得られた挿入及び欠失(インデル)は、遺伝子のコード領域又は非コード領域を破壊する可能性がある。代わりに、HDRは、内因的又は外因的に提供される長い一続きの相同性ドナーDNAを使用して、高い忠実度でDSBを修復する。HDRは、分裂細胞においてのみ活性であり、大部分の細胞型において相対的に低い頻度で生じる。本開示の多くの実施形態では、NHEJが修復オペラントとして利用される。
【0142】
いくつかの実施形態では、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)エンドヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するが、他のCas9相同体が使用され得る。本明細書に記載されているように、野生型Cas9が使用され得るか、又はCas9の修飾されたバージョンが使用され得る(例えば、Cas9の発展させたバージョン又はCas9オルソログ若しくは変異体)ことを理解すべきである。いくつかの実施形態では、Cas9は、(クラスII CRISPR/Casシステムの)Cpf1などの別のRNA誘導型エンドヌクレアーゼと置換され得る。
【0143】
ガイドRNA
本開示は、会合したポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の標的核酸内の特定の標的配列に対する活性を誘導し得るゲノム標的化核酸を提供する。このゲノム標的化核酸は、RNAであり得る。ゲノム標的化RNAは、本明細書では「ガイドRNA」又は「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列及びCRISPR反復配列にハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含む。II型システムにおいて、gRNAは、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型ガイドRNA(gRNA)において、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)において、crRNAは、二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、その部位特異的ポリペプチドとの会合により、複合体に標的特異性をもたらす。そのため、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導する。
【0144】
当業者に理解されているように、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計されている。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0145】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、単一分子ガイドRNAである。
【0146】
二重分子ガイドRNAは、RNAの2つの鎖を含む。第1の鎖は、5’から3’の方向に、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択的なtracrRNA延長配列を含む。
【0147】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択的なtracrRNA延長配列を含む。任意選択的なtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば、安定性)に寄与する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復と最小tracrRNA配列とを連結してヘアピン構造を形成する。任意選択的なtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含む。
【0148】
V型システムにおける単一分子ガイドRNA(「sgRNA」又は「gRNA」と称される)は、5’から3’の方向に、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を含む。
【0149】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個未満のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個超のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17~30個のヌクレオチドを有する可変長スペーサー配列を含み得る(例えば配列番号15~17を参照されたい)。
【0150】
sgRNAは、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含み得ない。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1個又は複数のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1個のウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に2個のウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に3個のウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に4個のウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に5個のウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に6個のウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に7個のウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に8個のウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0151】
sgRNAは、非修飾であっても修飾されていてもよい。例えば、修飾sgRNAは、1つ以上の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【0152】
例として、CRISPR/Cas/Cpf1システムで使用されるガイドRNA又は他のより小さいRNAは、下記で説明されており且つ当技術分野で説明されているように、化学的手段により容易に合成され得る。化学合成方法が拡大し続けている一方、ポリヌクレオチドの長さが百数十ヌクレオチドを超えて大幅に長くなると、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGEなどのゲルの使用を回避する)などの方法によるそのようなRNAの精製は、より難しくなる傾向がある。比較的長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、一緒に連結される2つ以上の分子を生成することである。Cas9エンドヌクレアーゼ又はCpf1エンドヌクレアーゼをコードするものなどのはるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。当技術分野で説明されているように、様々な種類のRNA改変(例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性若しくは程度を減少させ、及び/又は他の特質を増強する改変)がRNAの化学合成及び/又は酵素的生成中又は後に導入され得る。
【0153】
スペーサー配列
gRNAは、スペーサー配列を含む。スペーサー配列は、目的の標的核酸の標的配列(例えば、ゲノム標的配列などのDNA標的配列)を定義する配列(例えば、20個のヌクレオチド配列)である。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15~30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、20個のヌクレオチドである。
【0154】
「標的配列」は、PAM配列に隣接しており、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)により修飾された配列である。「標的核酸」は、下記の二重鎖分子である:一方の鎖は、標的配列を含み且つ「PAM鎖」と呼ばれ、他方の相補鎖は、「非PAM鎖」と呼ばれる。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖に位置する標的配列の逆相補鎖にハイブリダイズすることを認識している。そのため、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA均等物である。例えば、標的配列が5’-AGAGCAACAGTGCTGTGGCC-3’(配列番号28)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-AGAGCAACAGUGCUGUGGCC-3’(配列番号19)である。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(即ち塩基対形成)を介して配列特異的な様式で目的の標的核酸と相互作用する。そのため、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に依存して変化する。
【0155】
本明細書のCRISPR/Casシステムにおいて、スペーサー配列は、このシステムで使用されるCas9酵素のPAMの5’に位置する標的核酸の領域にハイブリダイズするように設計されている。このスペーサーは、標的配列と完全に一致し得るか、又はミスマッチを有し得る。各Cas9酵素は、標的DNA中で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、標的核酸において、配列5’-NRG-3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的化される標的核酸配列の3’の直近にある)を含むPAMを認識する。
【0156】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、20個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個未満のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個超のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はより多くのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はより多くのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’の直近に20個の塩基を含む。例えば、
【化1】
を含む配列においては、標的核酸は、Nに対応する配列を含み、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線が引かれたNRG配列は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)PAMである。
【0157】
本明細書に提供されるとおりに使用され得るTRAC gRNAの非限定的な例は、TRAC遺伝子中で配列番号26を標的化する、配列番号18~19及び22~23のいずれか1つを含み得る。本明細書に提供されるとおりに使用され得るβ2M gRNAの非限定的な例は、β2M遺伝子中で配列番号27を標的化する、配列番号20~21及び24~25のいずれか1つを含み得る。下記の表3を参照されたい。米国特許出願公開第2018-0325955号明細書も参照されたい(参照により本明細書で参照される目的及び主題に関して組み込まれる)。
【0158】
【0159】
ドナー鋳型
CARをコードする核酸は、本明細書でドナー鋳型と称される(ドナーポリヌクレオチドとも称される)ものを含むベクター(例えばAAVベクター)を用いてT細胞に送達され得る。ドナー鋳型は、目的のゲノム位置で効率的なHDRを可能にする2つの相同な領域に隣接した、CARをコードする核酸などの非相同配列を含み得る。代わりに、ドナー鋳型は、DNA中の標的化された位置と相同な領域を有しない場合があり、標的部位での切断後のNHEJ依存的末端連結により組み込まれ得る。
【0160】
ドナー鋳型は、一本鎖及び/又は二重鎖のDNA又はRNAであり得、直鎖状又は環状の形態で細胞に導入され得る。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法により(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖状分子の3’末端に付加され、及び/又は自己相補的オリゴヌクレオチドが一方又は両方の末端に連結される。例えば、Chang et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963;Nehls et al.,(1996)Science 272:886-889を参照されたい。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するための追加の方法として、末端アミノ基の付加並びに例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデート及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基などの修飾されたヌクレオチド間結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
ドナー鋳型は、例えば、複製開始点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。更に、ドナー鋳型は、裸の核酸として、リポソーム若しくはポロキサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として導入され得るか、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達され得る。
【0162】
ドナー鋳型は、いくつかの実施形態では、その発現が、組込み部位での内因性プロモーター(即ちこのドナーが挿入される内因性遺伝子の発現を駆動するプロモーター)により駆動されるように挿入される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、外因性プロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、外因性プロモーターは、配列番号47の配列を含むEF1αプロモーターである。他のプロモーターが使用されてもよい。
【0163】
更に、外因性配列はまた、転写又は翻訳制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号74と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有し、任意選択的に配列番号76のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号74のヌクレオチド配列を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号84と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有し、任意選択的に配列番号86のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号84のヌクレオチド配列を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号111と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有し、任意選択的に配列番号115のアミノ酸配列を含む抗CD33 CARをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号111のヌクレオチド配列を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号58と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有し、任意選択的に配列番号40のアミノ酸配列を含む抗CD19CARをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号58のヌクレオチド配列を含む。
【0168】
(vi)送達方法及びコンストラクト
ヌクレアーゼ及び/又はドナー鋳型は、プラスミドベクター、DNA小環、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクター、及びその組み合わせを含むが、これらに限定されないベクター系を使用して送達され得る。
【0169】
従来のウイルス及び非ウイルス系遺伝子導入方法を使用して、細胞(例えば、T細胞)においてヌクレアーゼをコードする核酸及びドナー鋳型を導入し得る。非ウイルスベクター送達系として、DNAプラスミド、DNA小環、裸の核酸及びリポソーム又はポロキサマーなどの送達媒体と複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系として、細胞に送達された後にエピソーム又は組込みゲノムのいずれかを有するDNAウイルス及びRNAウイルスが挙げられる。
【0170】
核酸の非ウイルス送達の方法として、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、裸のRNA、キャップ付きRNA、人工ビリオン及び薬剤で増強されたDNAの取込みが挙げられる。例えば、Sonitron2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも核酸の送達に使用され得る。
【0171】
アデノ随伴ウイルス送達
CARコンストラクトをコードするドナー核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して細胞に送達され得る。AAVは、宿主ゲノムに部位特異的に組み込み、したがってCARなどの導入遺伝子を送達し得る小型のウイルスである。逆位末端配列(ITR)は、AAVゲノム及び/又は目的の導入遺伝子に隣接して存在し、複製開始点として機能する。また、AAVゲノムには、転写された場合にAAVゲノムをカプセル化して標的細胞に送達するためのカプシドを形成するrepタンパク質及びcapタンパク質も存在する。これらのカプシド上の表面受容体は、AAVに血清型を付与し、カプシドが主にどの標的器官に結合するかを決定し、そのため、AAVが最も効率的に感染することになる細胞を決定する。現在知られているヒトAAVの血清型は、12種類である。いくつかの実施形態では、AAVは、AAV血清型6(AAV6)である。
【0172】
アデノ随伴ウイルスは、いくつかの理由のために遺伝子療法に最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。第一に、AAVは、ヒトを含む哺乳動物への投与時に免疫応答を誘発しない。第二に、AAVは、特に適切なAAV血清型を選択することを考慮する場合、標的細胞に効率的に送達される。最後に、AAVは、ゲノムが組込みを伴わずに宿主細胞において存続し得ることから、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する。この形質により、AAVは、遺伝子療法の理想的な候補となる。
【0173】
(vii)相同組み換え修復(HDR)
CARをコードするドナー核酸は、相同組み換え修復(HDR)により標的遺伝子座位に挿入される。標的座位でのDNAの両方の鎖がCRISPR Cas9酵素により切断される。次いで、HDRが発生して、二重鎖切断(DSB)を修復し、ドナーDNAを挿入する。これが正しく発生させるために、ドナー配列は、標的遺伝子のDSB部位を取り囲む配列に相補的な隣接している残基(以下では「相同性アーム」)を有するように設計されている。これらの相同性アームは、DSB修復のための鋳型として機能し、本質的に誤りのない機構であるHDRを可能にする。相同組み換え修復(HDR)の割合は、変異部位と切断部位との間の距離の関数であり、そのため、重複しているか又は近くの標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接した余分な配列を含み得るか、又はゲノム配列と異なる配列を含み得、そのため、配列編集が可能になる。
【0174】
標的遺伝子は、対象での免疫応答と関連し得、ここで、標的遺伝子の少なくとも一部を永続的に欠失させることは、免疫応答を調節することになる。例えば、CAR T細胞を生成するために、標的遺伝子は、TCRα定常領域(TRAC)であり得る。TRACの破壊は、内因性TCRの機能喪失をもたらす。
【0175】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、セーフハーバー座位に存在する。
【0176】
C.遺伝子改変CAR-T細胞の生成
本明細書に開示される遺伝子改変CAR-T細胞のいずれかは、従来法及び/又は本明細書に開示される方法を用いて生成され得る。
【0177】
(i)遺伝子改変CAR-T細胞の生産
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、細胞のゲノムを修飾することによって生産される。いくつかの実施形態では、標的遺伝子中の部位で二重鎖切断(DSB)が誘導される。いくつかの実施形態では、DSBは、1つ以上の内因性のDNA修復経路を使用して修復される。いくつかの実施形態では、DNA修復経路は、相同配列を必要としない(例えば、非相同末端連結経路又はNHEJ経路)。いくつかの実施形態では、修復経路は、相同配列を必要とする(例えば、相同組み換え経路又はHDR経路)。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、エンドヌクレアーゼ、及び1つ以上の非コードRNAとしてのCRISPR-Cas9によりDSBを誘導すること、並びにHDR及び本明細書に記載されるドナーポリヌクレオチド鋳型を使用してDSBを修復することによって生成される。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、TRACである標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号19に記載される配列を含むTRAC gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号18に記載される配列を含むTRAC gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号19に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号26に記載されるTRAC配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号18に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号26に記載されるTRAC配列を標的化する。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号23に記載される配列を含むTRAC gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号22に記載される配列を含むTRAC gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号23に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号26に記載されるTRAC配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号22に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号26に記載されるTRAC配列を標的化する。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、B2Mである標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号21に記載される配列を含むB2M gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号20に記載される配列を含むB2M gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号21に記載される配列を含むB2M gRNAは、配列番号27に記載されるB2M配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号20に記載される配列を含むB2M gRNAは、配列番号27に記載されるB2M配列を標的化する。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号25に記載される配列を含むB2M gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号24に記載される配列を含むB2M gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号25に記載される配列を含むB2M gRNAは、配列番号27に記載されるB2M配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号24に記載される配列を含むB2M gRNAは、配列番号27に記載されるB2M配列を標的化する。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号19に記載の配列を含むTRAC gRNA、及び配列番号21に記載の配列を含むB2M gRNAを用いて生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号23に記載の配列を含むTRAC gRNA、及び配列番号25に記載の配列を含むB2M gRNAを用いて生成される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号18に記載の配列を含むTRAC gRNA、及び配列番号20に記載の配列を含むB2M gRNAを用いて生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号22に記載の配列を含むTRAC gRNA、及び配列番号24に記載の配列を含むB2M gRNAを用いて生成される。
【0185】
本明細書に提供されるgRNA配列のいずれに対しても、明示的に修飾を示さないものは、非修飾配列、及び任意の好適な修飾を有する配列の両方を包含することが意図される。
【0186】
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、CARをコードする核酸である非相同配列を含むドナー鋳型を使用して生成される。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、TRACである標的遺伝子における配列に対応する相同性アームで構成される。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型の5’相同性アーム(左相同性アーム)は、配列番号45に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型の3’相同性アームは、配列番号46に記載される配列を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、外因性プロモーターは、配列番号47に記載される配列を含むEF1aプロモーターである。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号58に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号74に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号84に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号111に記載される配列を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、gRNA、ヌクレアーゼ、及びドナー鋳型をコードするポリヌクレオチドは、従来のウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子導入方法を使用して細胞(例えば、T細胞)に導入される。
【0189】
いくつかの実施形態では、gRNA、sgRNA、ヌクレアーゼをコードするmRNA、又はドナー鋳型などのポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達系を使用して細胞に送達される。非ウイルスベクター送達系の例としては、DNAプラスミド、DNA小環、裸の核酸、リポソーム、リボ核タンパク質粒子(RNP)又はポロキサマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非ウイルスベクター送達系を使用してポリヌクレオチドを細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、又は薬剤で増強された取込みが挙げられる。
【0190】
いくつかの実施形態では、gRNA、sgRNA、ヌクレアーゼをコードするmRNA、又はドナー鋳型などのポリヌクレオチドは、ウイルスベクター送達系を使用して細胞に送達される。ウイルスベクター送達系の例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
いくつかの実施形態では、CARコンストラクトをコードするドナー鋳型は、1つ以上のポリヌクレオチドとして細胞に送達される。いくつかの実施形態では、CARコンストラクトをコードするドナー鋳型は、ウイルス送達媒体によって送達される。いくつかの実施形態では、ウイルス送達媒体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0192】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、ポリペプチドとして細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA、sgRNA)と別々に細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、1つ以上のゲノム標的化ポリヌクレオチド(例えば、gRNA、sgRNA)との複合体として細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ又は予め複合体を形成したエンドヌクレアーゼは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正に荷電したペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、又はRNAー融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない非ウイルス送達媒体によって送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼポリペプチド又は予め複合体を形成したエンドヌクレアーゼポリペプチドを細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、又は薬剤に増強された取込みが挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態では、Cas9ポリペプチドは、1つ以上のsgRNAと予め複合体を形成して、リボ核タンパク質粒子(RNP)を形成する。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、AAVベクターを使用して製剤化される。いくつかの実施形態では、Cas9/sgRNA RNPの細胞への送達は、細胞のエレクトロポレーションによって実施される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されるドナー鋳型は、エレクトロポレーションの前に送達される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されたドナー鋳型は、エレクトロポレーション中に送達される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されたドナー鋳型は、エレクトロポレーション後に送達される。
【0194】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたTRAC遺伝子を有する改変T細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化するgRNAによりもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、TRAC遺伝子の発現の消失又は低減をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の発現の消失又は低減は、TCRの機能の喪失を伴う。いくつかの実施形態では、TCR機能の喪失は、同種異系間移植に好適な(すなわち、GvHDを引き起こすリスクを最小化する)改変T細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、(例えば、AAVベクター及びドナー鋳型を使用して)CARにおいてTRAC遺伝子にノックインすることによって生成される。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化し、及びCARにおいてCAR遺伝子にノックインするgRNAによって生成される。いくつかの実施形態では、ノックインCARは、DSBの部位を取り囲むTRACの配列に対応する相同性アームを有するドナー鋳型によって提供される。
【0195】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたB2M遺伝子を有する改変T細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子発現における破壊は、B2Mゲノム領域を標的化するgRNAによりもたらされる。いくつかの実施形態では、B2Mゲノム領域を標的化するgRNAは、コードされる遺伝子産物の転写及び翻訳を破壊するか又は阻害するB2M遺伝子におけるインデルを生成する。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子の破壊は、B2M遺伝子の発現の消失又は低減をもたらす。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子の発現の消失又は低減は、MHC I複合体の機能の喪失を伴う。いくつかの実施形態では、MHC I機能の喪失は、同種異系間移植に好適な(すなわち、宿主対同種異系T細胞応答のリスクを最小化する)改変T細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、MHC I機能の喪失は、同種異系レシピエントにおいて改変T細胞の残存率の増大をもたらす。
【0196】
(ii)遺伝子改変CAR-T細胞の精製
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変CAR T細胞(例えば抗CD19、抗CD33、抗CD70、BCMA CAR T細胞)の集団は、ゲノム編集の前又は後に活性化及び/又は増殖される。T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、T細胞は、1回以上の刺激、活性化及び/又は増殖に供される場合が多い。T細胞は、一般に、例えば米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;及び同第6,867,041号明細書で説明されているような方法を使用して、活性化されて増殖され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集前に約1日~約4日、約1日~約3日、約1日~約2日、約2日~約3日、約2日~約4日、約3日~約4日又は約1日、約2日、約3日若しくは約4日にわたり活性化されて増殖される。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集後に約1日~約4日、約1日~約3日、約1日~約2日、約2日~約3日、約2日~約4日、約3日~約4日又は約1日、約2日、約3日若しくは約4日にわたり活性化されて増殖される。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集と同時に活性化されて増殖される。
【0197】
いくつかの実施形態では、本開示は、改変CAR T細胞を含む細胞の集団から検出可能なレベルの関心の表面タンパク質(例えばTCR)を発現する細胞を実質的に除去するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、関心の細胞(例えばTCR+細胞)の実質的な除去は、関心の細胞の0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、又は10%未満の時に起こる。いくつかの実施形態では、本開示は、改変CAR T細胞を含む細胞の集団から検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する細胞を実質的に除去するための方法を提供する。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示は、改変CAR-T細胞を含む細胞の集団を単離するための方法であって、細胞の集団を提供することであって、改変CAR-T細胞が破壊されたTCR遺伝子及び破壊されたB2M遺伝子を含む、ことと、細胞の集団からTCR+T細胞を除去することであって、それによって<1.0%のTCR+T細胞を含む細胞の集団を単離する、ことと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、改変CAR-T細胞を含む細胞の単離された集団を調製するための方法であって、細胞の集団を提供することであって、改変CAR-T細胞が破壊されたTCR遺伝子及び破壊されたB2M遺伝子を含む、ことと、細胞の集団からTCR+T細胞を除去することであって、その結果、細胞の集団が<1.0%のTCR+T細胞を含む、ことと、を含む、方法を提供する。
【0199】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される改変CAR T細胞を含む細胞の集団を提供し、集団中の細胞の0.5%未満が検出可能なレベルのTCRを発現する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される改変CAR T細胞を含む細胞の集団を提供し、集団中の細胞の0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、又は10%未満が検出可能なレベルのTCRを発現する。
【0200】
集団由来の細胞のサブセットの除去は、従来の細胞精製方法を用いて実施することができる。細胞選別方法の非限定的な例としては、蛍光活性化細胞選別法、免疫磁気分離法、クロマトグラフィー、及びマイクロ流体細胞選別法が挙げられる。いくつかの実施形態では、TCR発現細胞は、免疫磁気分離法によって、改変T細胞を含む細胞の集団から除去される。いくつかの実施形態では、改変T細胞を含む細胞の集団中のTCR発現細胞は、TCRを標的化するビオチン化抗体でラベリングされる。いくつかの実施形態では、ラベリングされた細胞は、抗ビオチン電磁ビーズを用いて、改変T細胞を含む細胞の集団から除去される。
【0201】
(iii)遺伝子改変CAR T細胞の特性決定
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、TCR、B2M、及びCARの表面タンパク質発現に関して評価される。いくつかの実施形態では、表面タンパク質発現は、当該技術分野で既知の方法を用いて、フローサイトメトリによって決定する。所望の細胞表面マーカー(例えば、抗体)を標的化し、及び蛍光性分子で標識された要素で細胞の集団をラベリングすることによって、フローサイトメトリを用いて、表面マーカーに陽性の集団の一部分、及び表面マーカー発現のレベルを定量化することができる。いくつかの実施形態では、改変T細胞の組成をフローサイトメトリによって評価して、細胞表面CAR、細胞表面TCR、及び細胞表面B2Mで細胞のパーセンテージを決定する。
【0202】
いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%(例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%)が、フローサイトメトリによって検出して検出可能なレベルのCARを発現する。
【0203】
いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%(例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、又は少なくとも80%)が、フローサイトメトリによって検出して、検出可能なレベルのCARを発現し、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%(例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、又は少なくとも80%)が、フローサイトメトリによって検出して、検出可能なレベルのCARを発現し、減少したレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%(例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、又は少なくとも80%)が、フローサイトメトリによって検出して、検出可能なレベルのCARを発現し、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又は減少したレベルのB2M表面タンパク質を発現しない。
【0204】
いくつかの実施形態では、改変T細胞を、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)によってCARのゲノム組み込みに関して評価する。デジタルPCRは、試料中のDNA濃度の定量化を可能にする。デジタルPCRは、一部の画分がPCRプローブのコピーを含有せず、その他の画分が1つ以上のPCRプローブのコピーを含有するように、PCR反応の混合物(例えば、核酸分子の試料、及びPCRプローブのコピーを含有する)を分画することによって実施される。画分のPCR増幅が実施され、画分はPCR反応に関して分析される。1つ以上のプローブ及び1つ以上の標的DNA分子を含有する画分は陽性のエンドポイントをもたらし、PCRプローブを含有しない画分は陰性のエンドポイントをもたらす。陽性反応の画分を、続いてポアソン分布に適合させて、非分画試料の所与の体積あたりの標的DNA分子の絶対コピー数(すなわち、試料1マイクロリットルあたりのコピー)を決定する(Hindson,B.et al.,(2011)Anal Chem.83:8604-8610を参照されたい)。デジタルドロップレットPCRは、核酸の試料が水-油エマルションを用いて液滴に分画されるデジタルPCRの変形である。PCR増幅は液滴上で集合的に実施し、ここでは液滴を分離し、各個々の液滴の分析を提供するために流体系を使用する。当業者の場合、コピー数差異分析を提供するか、又はゲノム編集の効率を評価するために、ddPCRを用いて試料中のDNAの絶対的定量を提供する。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAを改変T細胞の組成物から抽出し、ddPCRを用いて、試料組成物あたりのCARコピーの絶対的定量を決定する。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAを改変T細胞の組成物から抽出し、ddPCRを用いて、CAR配列からTRAC遺伝子座へのHDR効率を評価する。
【0205】
いくつかの実施形態では、改変T細胞のサイトカイン非依存性成長を評価する。改変T細胞は、刺激性サイトカイン(例えばIL-2、IL-7)の存在下でのみ成長することが予期される。サイトカインの不在下での成長は、腫瘍形成能の指標である。いくつかの実施形態では、改変T細胞は、1つ以上の刺激性サイトカイン(例えばIL-2、IL-7)の存在下又は不在下のいずれかで、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、又は20日間成長する。いくつかの実施形態では、増殖は、従来法(例えば、フローサイトメトリ、鏡検、光学的密度、代謝活性)を用いて、細胞係数及び生存度によって評価される。いくつかの実施形態では、増殖は、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目に開始して評価される。いくつかの実施形態では、増殖は、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、又は8日毎に評価される。いくつかの実施形態では、サイトカインの不在下での成長は、成長期間の終点で評価される。いくつかの実施形態では、サイトカインの不在下で成長しない改変T細胞は、腫瘍形成能に欠けるとして定義される。いくつかの実施形態では、成長しないことは、成長期間の開始点と成長期間の終点との間における、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、又は1.5倍未満の集団の増殖として定義される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて生産された改変T細胞は、培養から10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、又は20日後に評価して、サイトカインの不在下で成長しないものとして定義される。いくつかの実施形態では、サイトカインの刺激、成長因子の刺激、又は抗原の刺激の不在下では、改変T細胞は増殖しない。
【0206】
D.遺伝子改変CAR-T細胞
本開示の遺伝子改変された(遺伝子編集された)CAR T細胞は、自己由来(「自己」)又は非自己由来(「非自己」、例えば同種異系、同系、又は異種)であり得る。「自己由来」は、同じ対象からの細胞を指す。「同種異系」は、対象と同じ種であるが、対象中の細胞と遺伝的に異なる細胞を指す。いくつかの実施形態では、T細胞は、哺乳動物対象から得られる。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒト対象から得られる。いくつかの例では、T細胞は同種異系である。
【0207】
T細胞を、いくつかの供給源から得ることができ、この供給源として、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、T細胞を、遠心沈降(例えば、FICOLL(商標)分離)などの当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から回収される血液の単位から得ることができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団が使用される。いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)の単離後、細胞毒性及びヘルパーTリンパ球の両方は、活性化、増殖及び/又は遺伝子修飾前又は後のいずれかでナイーブ、メモリー及びエフェクターT細胞亜集団に分別され得る。
【0209】
下記の細胞表面マーカー:TCRab、CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD38、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD122、CD95、CD197、CCR7、KLRG1、MCH-Iタンパク質及び/又はMCH-IIタンパク質の1つ以上を発現するT細胞の特定の亜集団が陽性又は陰性選択手法によって更に単離され得る。いくつかの実施形態では、TCRab、CD4及び/又はCD8からなる群から選択されるマーカーの1つ以上を発現するT細胞の特定の亜集団は、陽性又は陰性選択手法により更に単離される。いくつかの実施形態では、T細胞の亜集団は、遺伝子改変前及び/又は遺伝子改変後に陽性又は陰性選択により単離され得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団は、CD3+、CD4+、CD8+又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されないマーカーの1つ以上を発現する。いくつかの実施形態では、T細胞は、対象から単離され、遺伝子編集を受ける前に、最初に活性化されてインビトロで増殖するように刺激される。
【0211】
いくつかの実施形態では、ドナーT細胞の集団内のCD27+CD45RO-T細胞の量は、遺伝子編集(例えば、CRISPR-Cas9編集)後の疲弊(exhaustion)マーカー及び老化マーカー(例えば、PD1、TIM-3、LAG3、CD57)の発現レベルを示す。いくつかの実施形態では、ドナーT細胞の集団は、少なくとも40%、50%、又は50%のCD27+CD45RO-T細胞を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも40%、50%、又は60%のCD27+CD45RO-T細胞を含むドナーT細胞上の疲弊マーカー又は老化マーカーの発現は、遺伝子編集後に有意に変化しない。
【0212】
T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、T細胞は、1回以上の刺激、活性化及び/又は増殖に供される場合が多い。T細胞は、一般に、例えば米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;及び同第6,867,041号明細書で説明されているような方法を使用して、活性化及び増殖され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物のT細胞への導入前に約1日~約4日、約1日~約3日、約1日~約2日、約2日~約3日、約2日~約4日、約3日~約4日又は約1日、約2日、約3日若しくは約4日にわたり活性化及び増殖される。
【0213】
いくつかの実施形態では、T細胞は、遺伝子編集組成物のT細胞への導入前に約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間又は約72時間にわたり活性化及び増殖される。
【0214】
いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物がT細胞に導入されるのと同時に活性化される。
【0215】
E.医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されるものなどの遺伝子改変CAR T細胞の集団、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。例えば、医薬組成物は、遺伝子改変抗CD19CAR-T細胞の集団、遺伝子改変抗BCMA CAR-T細胞の集団、遺伝子改変抗CD70CAR-T細胞の集団、又は遺伝子改変抗抗CD33CAR-T細胞の集団を含み得る。いくつかの態様では、本開示は、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)などのNK細胞阻害剤を含む医薬組成物を提供する。こうした医薬組成物は、同じく本明細書に開示される、ヒト患者における臨床転帰を改善するための方法で用いることができる。
【0216】
本明細書で使用する時、「薬学的に許容される」という用語は、正当な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に相当する、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を伴わない、対象の組織、器官、及び/又は体液と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。本明細書で使用する時、「薬学的に許容される担体」という用語は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指す。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩又は塩基付加塩を含んでもよい。例えばBerge et al.,(1977)J Pharm Sci 66:1-19を参照されたい。
【0217】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される塩を更に含む。薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、酸付加塩が挙げられる(無機酸(例えば、塩酸又はリン酸)、又は酢酸、酒石酸、マンデル酸などといった有機酸を含むポリペプチドの遊離アミノ基から形成される)。いくつかの実施形態では、遊離カルボキシル基で形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄)又は有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される)。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、低温保存溶液(例えばCryoStor(登録商標)C55)中に懸濁させた遺伝子改変CAR-T細胞の集団を含む。本開示で使用するための低温保存溶液は、アデノシン、デキストロース、デキストラン-40、ラクトビオン酸、スクロース、マンニトール、N-)2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)などの緩衝剤、1種以上の塩(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸カリウム(postassium bicarbonate)、リン酸カリウムなど)、1種以上の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、など)、又はこれらの組み合わせも含み得る。低温保存溶液の成分は、滅菌水(注射品質)に溶解させてもよい。低温保存溶液のいずれも、血清を実質的に含まなくてもよい(常法で検出できない)。
【0219】
場合によっては、低温保存溶液(例えば、血清を実質的に含まない)中に懸濁させた遺伝子改変CAR-T細胞の集団を含む医薬組成物を貯蔵バイアルに入れてもよい。
【0220】
任意選択的に本明細書に開示される低温保存溶液に懸濁させることのできる、本明細書に開示されるものなどの遺伝子改変CAR T細胞の集団を含む、本明細書に開示される医薬組成物のいずれも、将来の使用のために、例えば、細胞及び組織の貯蔵のために一般に適用される条件下で、T細胞の生存度及び生物活性に実質的な影響を及ぼさない環境中に貯蔵させてもよい。いくつかの例では、医薬組成物は、≦-135℃で液体窒素の蒸気相中に貯蔵することができる。細胞がかかる条件下で一定期間にわたり貯蔵された後で、外観、細胞計数、生存度、CAR+T細胞百分率、及び遺伝子編集+T細胞百分率に関して有意な変化は観察されなかった。
【0221】
II.NK細胞阻害剤
NK細胞は、先天免疫及び適応免疫の両方で、抗腫瘍及び抗ウイルス反応の媒介を含む重要な役割を果たす。NK細胞は、その細胞毒性機能を媒介するために事前感作又はプライミングを必要としないため、これらは、喪失した、又は機能していないMHCクラスI(例えば、破壊されたMHCクラスI、又は破壊されたMCHクラスIのサブユニット)を有するウイルス感染細胞及び悪性細胞に対する防御の最前線である。NK細胞は、抗体及び抗原プライミングを必要とすることなく「非自己」細胞を認識する。NK細胞上のMHCクラスI特異性の阻害性受容体は、NK細胞の機能を負に調節する。NK細胞阻害性受容体とこれらのMHCクラスIリガンドとの係合により、NK細胞媒介性の溶解が点検される。MHCクラスIによって破壊された細胞が、阻害性NK受容体(例えば、KIR)との結合に失敗した場合、細胞は、NK細胞媒介性の溶解を受けやすくなる。この現象は、「自己認識の喪失」とも称される。例えば、Malmberg KJ et al.,Immunogenetics(2017),69:547-556;Cruz-Munoz ME et al.,J.Leukoc.Biol.(2019),105:955-971を参照されたい。
【0222】
したがって、本明細書に記載される破壊されたMHCクラスIを含む改変ヒトCAR T細胞は、NK細胞媒介性の溶解を受けて、そのために改変ヒトCAR T細胞の残存率及びそれに続く効力を減少させやすい。
【0223】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される改変ヒトCAR T細胞の集団を含む、CAR T細胞療法と併用して使用するためのNK細胞阻害剤を提供する。
【0224】
本明細書に記載される方法で使用されるNK細胞阻害剤は、直接的又は間接的のいずれかでNK細胞の活性又は数をブロックし、抑制し、又は減少させる分子であり得る。「阻害剤」という用語は、いかなる生物学的作用の特定の機序も暗示せず、また、直接的又は間接的に関わらず、NK細胞との全ての可能な薬理学的、生理学的、及び生化学的相互作用を明示的に含み且つ包含するものとみなされる。本開示の目的において、「阻害剤」という用語が、これまでに特定された用語、表題、並びに機能状態及び機能特性を全て包含し、それによってNK細胞自体、NK細胞の生物活性(細胞死滅を媒介するその能力が挙げられるがこれに限定されない)、又は生物活性の結果が、任意の有意な程度、例えば、少なくとも20%、50%、70%、85%、90%、100%、150%、200%、300%、若しくは500%、又は10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、若しくは104倍で実質的に無効化、低減、又は中和されることが明白に理解されよう。
【0225】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、NK細胞の絶対数を減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、末梢血単核細胞中のNK細胞頻度を減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、CAR T細胞療法を受けている対象におけるNK細胞の総数を、NK細胞阻害剤を受ける前の対象におけるNK細胞の総数と比較して減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞は、血液1μLあたり少なくとも20、40、60、80、100、120、140、160、又は180NK細胞まで減少する。いくつかの実施形態では、NK細胞は、血液1μLあたり200NK細胞未満まで減少する。
【0226】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、内因性T細胞の数を有意に減少させない。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、NK細胞阻害剤治療前のT細胞数と比較して、内因性T細胞数を85%、90%、95%、100%、105%、又は110%のT細胞数に維持する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、内因性T細胞数を血液1μLあたり約1500T細胞に維持する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、内因性T細胞数を血液1μLあたり約1275、1350、1425、1500、1575、又は1650T細胞に維持する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の数を有意に減少させない。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NK細胞阻害剤の不在下での改変ヒトCAR T細胞の数と比較して、改変ヒトCAR T細胞数を増加させる。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞を有意に活性化させない。
【0227】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性溶解を減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトT細胞のNK細胞媒介性溶解を、NK細胞阻害剤の不在下での改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性溶解と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、インビボで改変ヒトT細胞のNK細胞媒介性溶解を減少させる。
【0228】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、NK細胞活性を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示は、NK細胞阻害剤を投与することによりCAR T細胞療法を受けている対象におけるNK細胞活性を減少させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞毒性(CDC)、アポトーシス、又はこれらの組み合わせを減少させる。
【0229】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性の抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を減少させる。NK細胞は、その細胞表面上にFc受容体、例えばFcγRIIIA及び/又はFcγRIICを発現する。Fc受容体は、抗体のFc部分に結合する。一旦結合すると、Fc受容体は、免疫チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を介して活性化シグナルを伝達し、下流NK細胞の脱顆粒、サイトカイン分泌(例えば、IFN-γ)、及び細胞溶解をもたらす。
【0230】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性の抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)を減少させる。ADCPは、抗体のFc部分がマクロファージ上でFc受容体、例えばFcγRIIIA、FcγRIIA、又はFcγRIと係合すると発生する。マクロファージ上でのFc受容体の係合は、標的細胞の細胞貪食作用をトリガし、その結果、マクロファージが標的細胞、例えば改変ヒトCAR T細胞を取り込んで消失させる。
【0231】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性の補体依存性細胞毒性(CDC)を減少させる。細胞表面、例えばNK細胞表面に結合した抗体は、古典的経路を介して補体の活性化をトリガする。補体の活性化は、細胞溶解、細胞貪食作用、走化作用、及び免疫細胞の活性化を誘起する。補体成分C1は、抗体のFc部分を認識し、抗体結合時に活性化する。C1の活性化は、酵素活性化のカスケードをトリガし、これが蓄積して補体成分C3からC3a及びC3bへの開裂、及び活性化をもたらす。C3bは、細胞表面上でオプソニン化し、C5b~C9成分の下流活性化をトリガして、標的細胞の膜上に膜攻撃複合体(MAC)を形成させ、膜破壊及び細胞溶解をもたらす。
【0232】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞のNK細胞媒介性アポトーシスを減少させる。NK細胞が受容体結合を介して標的細胞(例えば、改変ヒトT細胞)を認識してこれに係合すると、免疫学的シナプス(IS)は、微小管形成を分極化させる細胞骨格再構築を介して形成され、NK溶解酵素の標的細胞への輸送及び放出を可能にする。例示的な溶解酵素としては、グランザイムB、パーフォリン、FasL、TRAIL、及びグラニュロシン(granulosyn)が挙げられる。セリンプロテアーゼであるグランザイムBは、カスパーゼ8及びカスパーゼ3などのプロアポトーシス分子を直接開裂することによって、カスパーゼ依存性経路を介してアポトーシスをトリガする。グランザイムBはまた、ミトコンドリアからシトクロムCの放出を生じさせるプロアポトーシス分子であるBidを開裂させることによってアポトーシスを誘発する。溶解脱顆粒の他に、NK細胞上のFasリガンド(FasL)及びTNR関連アポトーシス誘発性リガンド(TRAIL)分子も、細胞死を誘発する。これらの受容体は、標的細胞上で死受容体TRAILR及びFasに結合してこれらを活性化し、カスパーゼ及びIL1β変換酵素(ICE)プロテアーゼを伴いプロアポトーシスのカスケードをトリガする。
【0233】
細胞溶解機能に加えて、NK細胞はまた炎症性及び免疫抑制性サイトカインの分泌を介してこれらの免疫調節機能を発揮する。標的細胞と接触すると、NK細胞はTh1サイトカイン、IFN-γ、TNF、GM-CSFなどを分泌する。これらのサイトカインは、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、及び好中球を活性化する。NK細胞は、更に、エフェクター細胞を活性化部位に誘引するケモカイン、例えば、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、リンホトキシン、IL-8(CXCL8)も分泌する。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、NK細胞の免疫調節機能を減少させる。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、炎症性サイトカインの分泌を減少させ、その結果、改変ヒトCAR T細胞の活性化誘発性細胞死が低減する。
【0234】
NK細胞の活性を判定するためのインビトロ及びインビボ実験は、当該技術分野において既知である。例示的なアッセイとしては、細胞溶解アッセイ、ADCCアッセイ、サイトカイン分泌を判定するためのフローサイトメトリアッセイ、アポトーシス誘導、脱顆粒、CDC又はNK細胞増殖が挙げられる。例えば、Huang M,et al.,Hepatology(2013),57:277-288;欧州特許第2658871B1号明細書;De Weers M,et al.,J.Immunol.(2011)186:1840-8;欧州特許第1720907B1号明細書;米国特許第7,829,673号明細書、同第9,944,711号明細書を参照されたい。
【0235】
A.例示的なNK細胞阻害剤
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、小分子、モノクローナル抗体、若しくはその抗原結合性フラグメント、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである。
【0236】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は小分子である。例示的な小分子NK阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi(登録商標))である。ルキソリチニブは、骨髄線維症の治療に用いられるヤヌスキナーゼ阻害剤である。ルキソリチニブは、タンパク質チロシンキナーゼJAK1及び2に結合してこれを阻害する。ルキソリチニブで治療された患者は、感染率の増加を示した。ルキソリチニブは、NK細胞の増殖、サイトカイン誘導性受容体発現、及びNK細胞機能を減少させ、これとしては、例えば、死滅の減少、脱顆粒の減少、IFN-γ産生の減少、及びサイトカインシグナル伝達の減少が挙げられる(Schonberg et al.,Blood(2014),124(21):3169)。ルキソリチニブの構造、及びルキソリチニブを調製する方法は、例えば、米国特許第7,598,257号明細書、同第8,415,362号明細書、同第8,722,693号明細書、同第8,882,481号明細書、同第8,829,013号明細書、及び同第9,079,912号明細書に見出される。NK細胞の機能を阻害する更なる例示的な小分子免疫抑制薬は、Pradier A,et al.,Front.Imunol.(2019),10:556に記載されている。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、ルキソリチニブ、シクロスポリンA(CsA)、タクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸(MPA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、エベロリムス、又はラパマイシンである。
【0237】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤はポリペプチドである。HLA-Gは、ヒト胎盤及び胸腺上皮細胞中に発現する非古典的なクラスI抗原である。胎盤上のHLA-G抗原の発現は、母体の免疫拒絶から胎児を保護する。Rouas-Freiss N,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(1997),94:5249-5254。HLA-G遺伝子は、或いは、スプライスされて、膜結合HLA-G(HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、及びHLA-G4)及び可溶性HLA-G(HLA-G5、HLA-G6、及びHLA-G7)をコードするHLA-G mRNAを転写する。がん細胞上のHLA-G発現は、NK媒介性細胞溶解からB細胞リンパ腫を保護する。同様に、HLA-G1及びHLA-G2イソ型をK562標的細胞にトランスフェクトすることで、NK様YT2C2T細胞白血病クローンにより媒介される細胞毒性が消滅した。細胞外HLA-G1、G2、G3、又はG4をトランスフェクトした標的細胞も、細胞溶解アッセイでNK細胞の細胞毒性活性を阻害した。例えば、欧州特許第1189627号明細書の実施例3を参照されたい。微小球に製剤化され、同種異系皮膚移植を受けるマウスに腹腔内投与されるβ2MスペーサーHLA-G5を含む組み換え融合ポリペプチドは、移植免疫寛容を改善することができた。例えば、欧州特許第2184297A1号明細書を参照されたい。追加のHLA-G組み換えタンパク質も、組織拒絶に対する潜在的療法として試験した。例えば、Favier B,et al.,PLoS One(2011),6(7):e21011;欧州特許第2264067A1号明細書を参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、GLA-G4、β2M-HLA-G5、HLA-Gアルファ1ドメイン-Fc、又はHLA-Gアルファ1である。
【0238】
いくつかの実施形態では、細胞は、追加のMHCクラスI遺伝子編集を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞は、外因性MHCクラスI遺伝子を含むように改変可能である。いくつかの実施形態では、細胞は、機能性タンパク質をコードする外因性遺伝子を含むように改変可能である。いくつかの実施形態では、細胞は、外因性遺伝子、検出可能なレベル(例えば、抗体によって、例えば、フローサイトメトリによって)の、外因性遺伝子によってコードされたタンパク質を(例えば細胞表面に)発現するように改変可能である。検出可能なレベルの外因性タンパク質を発現する細胞は、ノックイン細胞と称され得る。例えば、MHCクラスI遺伝子編集を有する細胞は、MHCクラスI分子上の1つ以上のタンパク質に特異的に結合する抗体を使用してMHCクラスI分子が細胞表面で検出される場合、MHCクラスIノックイン細胞とみなされ得る。
【0239】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤はポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドとしては、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞に送達するために脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、特定の細胞型に送達するためにコンジュゲートされる。例えば、肝細胞を標的化するため、三価N-アセチルガラクトサミン受容体(GalNAc)にコンジュゲートされるsiRNA。いくつかの実施形態では、siRNAは、CpGヌクレオチドにコンジュゲートされ、CpGヌクレオチドは樹状細胞又はマクロファージ状の受容体に結合する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはベクター中で送達される。いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミドベクター又はDNA小環である。いくつかの実施形態では、ベクターは組み換えウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組み換えウイルスは、組み換えポックスウイルス、組み換えヘルペスウイルス、組み換えアデノウイルス、組み換えレンチウイルス、又は組み換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)、及びこれらの組み合わせである。非限定的な例では、NK細胞阻害剤は、NKG2D受容体を標的化するshRNAである。Huang M,et al.,Hepatology(2013),57:277-288。3つのマウスNKG2Dを標的化するshRNAを含有するプラスミドをマウスに注射すると、NK媒介性細胞溶解が減少する。別の実施形態では、ウイルス性肝炎を患う患者のNK細胞中でカリウムチャネル四量体化ドメイン含有9(KCTD9)タンパク質は上昇する。Zhang X,et al.,BMC Immunol.(2018),19:20。KCTD9標的化shRNAをコードするプラスミドをマウス肝炎モデルに注射した結果、マウスの生存率が増加した。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤はNKG2D shRNA、又はKCTD9 shRNAである。
【0240】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤はモノクローナル抗体である。NK細胞の活性を減少させる抗体の非限定的な例は、オーストラリア国特許出願公開第2005321017B2号明細書(抗NKG2A抗体)、米国特許出願公開第20030095965A1号明細書(CD94/NKG2受容体に対する二価抗体)、米国特許第9,211,328号明細書(NKG2Dに対する抗体)、及び米国特許第7,829,673号明細書(CD38に対する抗体)に開示される。したがって、いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、抗NKG2A抗体、CD94/NKG2受容体に対する二価抗体、抗NKG2D抗体、又は抗CD38抗体である。
【0241】
B.CD38に結合する抗体(抗CD38抗体)
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される方法で使用するための、CD38に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合性フラグメントを提供する。環状ADPリボースヒドロラーゼとしても知られるCD38は、細胞内カルシウムイオン動員メッセンジャーである環状アデノシン5’-二リン酸リボースを合成して加水分解する46-kDaタイプII膜貫通糖タンパク質である。多機能タンパク質であるCD38は、受容体媒介性の細胞接着及びシグナル伝達にも関与している。
【0242】
本明細書で使用する抗体(複数の形態で互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子であって、この免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合し得る免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな(即ち完全長)モノクローナル抗体だけでなく、抗原結合性フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダVHH抗体又はラマVHH抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)並びに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント及び共有結合的に修飾された抗体等、要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された配置も包含する。
【0243】
典型的な抗体分子は、抗原結合に通常関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合に関与するこれらの領域/残基は、当技術分野で既知の方法により、参照抗体(例えば、本明細書で説明されている抗CD38抗体)のVH/VL配列のアミノ酸配列から同定され得る。VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として既知である、より保存されている領域が挿入された、「相補性決定領域」(「CDR」)としても既知である超可変領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、典型的には、下記の順でアミノ末端からカルボキシ末端に整列された、3つのCDR及び4つのFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当技術分野で既知の方法論を使用して、例えば全てが当技術分野で公知であるKabat定義、Chothia定義、AbM定義及び/又はcontact定義により、正確に同定され得る。本明細書で使用される場合、CDRは、当技術分野で既知の任意の方法により定義されたCDRを指し得る。同一のCDRを有する2つの抗体は、これら2つの抗体が、同一の方法により決定されたCDRと同じアミノ酸配列を有することを意味する。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917,Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。
【0244】
抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA若しくはIgM(又はこれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、及び抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、各種クラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、下記の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)に更に分類され得、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分類され得る。免疫グロブリンの各種クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの各種クラスのサブユニット構造及び三次元配置は、公知である。
【0245】
本明細書に記載されているように使用される抗体は、マウス、ラット、ヒト又は任意の他の起源(キメラ抗体若しくはヒト化抗体を含む)であり得る。いくつかの例では、抗体は、免疫学的に不活性である(例えば、補体に媒介される溶解をトリガしないか、又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を刺激しない)定常領域などの修飾された定常領域を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はこれらの抗原結合性フラグメントである非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、マウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能を更に洗練させ且つ最適化するために含まれる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、且つ全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインを実質的に全て含むことになる。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域又はドメイン(Fc))の少なくとも一部も含むことになる。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる、元の抗体に関して改変された1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、及び/又は6つ)を有する。ヒト化抗体は、親和性成熟も伴い得る。
【0247】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト抗体由来の重定常領域及び軽定常領域を含み得るキメラ抗体である。キメラ抗体は、第1の種に由来する可変領域又は可変領域の部分と、第2の種に由来する定常領域とを有する抗体を指す。典型的には、このキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ及びラットなどの非ヒト哺乳動物)の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣するが、定常部分は、ヒトなどの別の哺乳動物に由来する抗体における配列と相同である。いくつかの実施形態では、アミノ酸改変は、可変領域及び/又は定常領域においてなされ得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、標的抗原(例えば、ヒトCD38)に特異的に結合する。標的又はエピトープに「特異的に結合する」(本明細書では互換的に使用される)抗体は、当技術分野でよく理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法も当技術分野でよく知られている。分子は、代替の標的よりも特定の標的抗原とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/又はより高い親和性で反応又は会合する場合、「特異的な結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するより高い親和性で、より高い結合活性で、より迅速に、及び/又はより長い持続時間で結合する場合、標的抗原に「特異的に結合する」。例えば、CD38エピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、同じ抗原又は異なる抗体のその他のエピトープに結合するよりも、より高い親和性で、より高い結合活性で、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。これは、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体が、第2の標的抗原に特異的又は優先的に結合し得るか又はし得ないというこの定義を読むことによっても理解される。そのため、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を(含むことはできるが)必要とするものではない。一般に、必ずしもそうではないが、結合への参照は、優先的な結合を意味する。
【0249】
本明細書に開示されている例示的な抗体のいずれかの機能的バリアントも本開示の範囲内である。機能的バリアントは、参照抗体と比較して、VH及び/若しくはVLにおいて、又はHC CDRの1つ以上及び/又はVL CDRの1つ以上において1つ以上のアミノ酸残基の変異を含み得るが、この参照抗体と実質的に同様の結合活性及び生物学的活性(例えば、実質的に同様の結合親和性、結合特異性、阻害活性、抗腫瘍活性又はこれらの組み合わせ)を保持している。
【0250】
場合により、アミノ酸残基の変異は、保存的なアミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用される場合、「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷又はサイズの特徴を変えないアミノ酸置換を指す。バリアントは、こうした方法をまとめた参考文献、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons、Inc.,New Yorkに見出されるような、当業者に既知のポリペプチド配列を改変するための方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換として、下記の群内のアミノ酸の中でなされる置換が挙げられる:(a)A→G、S;(b)R→K、H;(c)N→Q、H;(d)D→E、N;(e)C→S、A;(f)Q→N;(g)E→D、Q;(h)G→A;(i)H→N、Q;(j)I→L、V;(k)L→I、V;(l)K→R、H;(m)M→L、I、Y;(n)F→Y、M、L;(o)P→A;(p)S→T;(q)T→S;(r)W→Y、F;(s)Y→W、F;及び(t)V→I、L。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される併用療法で使用されるNK細胞阻害剤は、抗CD38抗体である。CD38は、リンパ系細胞、赤血球系細胞、及び骨髄性細胞を含む多くの免疫細胞上で発現する。更に、CD38は、多発性骨髄腫、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及びT細胞ALLを含む様々な白血病、骨髄腫、及び固形腫瘍中で高度に発現する。CD38は、リンパ球活性化のマーカーであり、慢性リンパ性白血病を患う患者のための予後マーカーとして使用される。
【0252】
例示的なヒトCD38タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号59(NCBI参照配列:NP001766.2)に提供される。例示的なヒトCD38タンパク質をコードするmRNA配列は、配列番号60(NCBI参照配列:NM_001775.4)に提供される(ホモサピエンスCD38分子(CD38)、転写産物変異体1)。ヒトCD38に特異的に結合する抗体を生成するための方法は当業者に既知である。
【0253】
抗CD38抗体は、様々な前臨床研究及び臨床研究で、例えば、NK/T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、免疫グロブリンに関して試験されてきた。抗腫瘍特性に関して試験された例示的な抗CD38抗体としては、CD38+B細胞悪性腫瘍を患う患者における第1相臨床試験におけるSAR650984(イサツキシマブ、キメラmAbとも称される)(Deckert J.et al.,Clin.Cancer.Res.(2014):20(17):4574-83)、MOR202(MOR03087、完全ヒトmAbとも称される)、及びTAK-079(完全ヒトmAb)が挙げられる。
【0254】
いくつかの実施形態では、本開示で使用するための抗CD38抗体としては、SAR650984(イサツキシマブ)、MOR202、Ab79、Ab10、HM-025、HM-028、HM-034;並びに米国特許9,944,711号明細書、米国特許7,829,673号明細書、国際公開第2006/099875号パンフレット、同第2008/047242号パンフレット、同第2012/092612号パンフレット、及び欧州特許第1720907B1号明細書で開示される抗体が挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗CD38抗体は、本明細書に開示される参照抗体のいずれかの機能的バリアントであり得る。こうして機能的バリアントは、参照抗体として同じ重鎖及び軽鎖相補性決定領域を含み得る。いくつかの例では、機能的バリアントは、参照抗体と同じ重鎖可変領域及び同じ軽鎖可変領域を含み得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、本開示で使用するための抗CD38抗体はダラツムマブである。ダラツムマブ(Darzalex(登録商標)、HuMax-CD38、又はIgG1-005とも称される)は、CD38を標的化する完全ヒトIgGκモノクローナル抗体であり、多発性骨髄腫の治療に認可済みである。これは、新規に診断された、又は過去に治療を受けた多発性骨髄腫患者を治療するための単剤療法又は併用療法として使用されている。ダラツムマブは、米国特許第7,829,673号明細書及び国際公開第2006/099875号パンフレットで説明されている。
【0256】
ダラツムマブは、CD38のアミノ酸233~246及び267~280に位置する2つのβストランドを含むCD38上のエピトープに結合する。CD38変異体ポリペプチドを用いた実験は、S274アミノ酸残基が、ダラツムマブの結合に重要であることを示す。(van de Donk NWCJ et al.,Immunol.Rev.(2016)270:95~112)。CD38に対するダラツムマブの結合配向により、Fc受容体媒介性の下流免疫プロセスが可能となる。
【0257】
リンパ腫及び多発性骨髄腫療法としてのダラツムマブに起因する作用機序としては、などのFc依存性エフェクター機序補体依存性細胞毒性(CDC)、ナチュラルキラー(NK)細胞媒介性抗体依存性細胞毒性(ADCC)(De Weers M,et al.,J.Immunol.(2011)186:1840-8)、抗体媒介性細胞貪食作用(ADCP)(Overdijk MB et al.,MAbs(2015),7(2):311-21)、及び架橋後アポトーシス(van de Donk NWCJ and Usmani SZ,Front.Immunol.(2018),9:2134)が挙げられる。
【0258】
ダラツムマブの完全重鎖アミノ酸配列は、配列番号61に記載されており、ダラツムマブの完全軽鎖アミノ酸配列は、配列番号63に記載されている。ダラツムマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号62に記載されており、ダラツムマブの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号64に記載されている。ダラツムマブは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2、及び3(それぞれ配列番号65、66、及び67)、並びに軽鎖CDR(LCDR)1、2、及び3(それぞれ配列番号 68、69、及び70)を含む。いくつかの実施形態では、これらの配列は、CD38に結合するモノクローナル抗体を生成するために用いられ得る。例えば、ダラツムマブを製造するための方法は、米国特許第7,829,673号明細書に記載されている(参照により本明細書で参照される目的及び主題に関して組み込まれる)。
【0259】
いくつかの実施形態では、本開示で使用するための抗CD38抗体は、ダラツムマブ、ダラツムマブと同じ機能的特徴を有する抗体、又はダラツムマブと同じエピトープに結合する抗体である。
【0260】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、(a)免疫グロブリン重鎖可変領域及び(b)免疫グロブリン軽可変領域(light variable region)を含み、ここで重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、CD38の結合部位(パラトープ)を画定する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列は、免疫グロブリンフレームワーク(FR)配列によって分離される。
【0261】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、(a)免疫グロブリン軽鎖可変領域及び(b)免疫グロブリン重鎖可変領域を含む、ここで軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、CD38の結合部位(パラトープ)を画定する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列は、免疫グロブリンフレームワーク(FR)配列によって分離される。
【0262】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)、及び免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号62に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、70%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%同一なアミノ酸配列を含むVHを含み、また、配列番号64に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、70%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0263】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993にあるとおりに修正されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを用いて決定される。こうしたアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施して本発明のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間のギャップが存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402(1997)に記載されるとおりに利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラムのデフォルトパラメーター(例えばXBLAST及びNBLAST)を用いることができる。
【0264】
CD38は、NK細胞上で発現し、ダラツムマブの注入は、末梢血及び骨髄中のNK細胞の減少をもたらす。NK細胞の減少は、ADCCを介したNK細胞の死滅に起因し、ここでNK細胞は隣接するNK細胞の細胞毒性死滅を媒介する。ダラツムマブの投与も、骨髄由来サプレッサ細胞、制御性T細胞、及び制御性B細胞の細胞数を低減させることが示されている。制御免疫細胞が消失した結果、T細胞応答が増加し、T細胞数が増加する(J Krejcik et al.,Blood(2016),128(3):384-394)。
【0265】
したがって、いくつかの実施形態では、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)、NK細胞の絶対数を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、PBMC中のNK細胞のパーセンテージを減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、Fc媒介機序を介してNK細胞の活性を阻害する。その他の実施形態では、抗CD38抗体は、CDCを介したNK細胞の死滅を媒介する。その他の実施形態では、抗CD38抗体は、ADCCを介したNK細胞の死滅を媒介する。その他の実施形態では、抗CD38抗体は、NK細胞の細胞貪食作用を増強する。その他の実施形態では、抗CD38抗体は、FcγR媒介架橋後にアポトーシス誘導を増強する。
【0266】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ダラツムマブ、又はダラツムマブと同じ機能的特徴を有する抗体、例えばダラツムマブの機能的バリアントである。いくつかの例では、機能的バリアントは、ダラツムマブと実質的に同じVH及びVL CDRを含む。例えば、これは、抗体の合計CDR領域中に最大で8個(例えば8、7、6、5、4、3、2、又は1個)のみのアミノ酸残基の変異を含むことができ、ダラツムマブと実質的に同様の親和性(例えば、同じ順序でKD値を有する)を備えたCD38の同じエピトープに結合する。場合によっては、機能的バリアントは、ダラツムマブと同じ重鎖CDR3、及び任意選択的にダラツムマブと同じ軽鎖CDR3を有し得る。或いは、又は加えて、機能的バリアントは、ダラツムマブと同じ重鎖CDR2を有し得る。こうした抗CD38抗体は、ダラツムマブのVHと比較して、重鎖CDR1にのみCDRアミノ酸残基の変異を有するVHフラグメントを含み得る。いくつかの例では、抗CD38抗体は、ダラツムマブと同じVL CDR3、及び任意選択的に同じVL CDR1又はVL CDR2を有するVLフラグメントを更に含み得る。或いは、又は加えて、アミノ酸残基の変異は、保存的なアミノ酸残基置換であり得る(上記の開示を参照されたい)。
【0267】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ダラツムマブのVHCDRと比較して、個々に又は集合的に少なくとも80%(例えば85%、90%、95%、又は98%)配列同一性である重鎖CDRを含み得る。或いは、又は加えて、抗CD38抗体は、ダラツムマブとしてのVLCDRと比較して、個々に又は集合的に少なくとも80%(例えば85%、90%、95%、又は98%)配列同一性である軽鎖CDRを含み得る。本明細書で使用する時、「個々に」とは、抗体のCDRが、ダラツムマブの対応するCDRに対して、示された配列同一性を共有することを意味する。「集合的に」とは、抗体の3つのVH又はVLCDRが、組み合わせで、ダラツムマブの対応する3つのVH又はVLCDRに対して、示される配列同一性を共有することを意味する。
【0268】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ヒトCD38上のダラツムマブによって結合された同じエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ヒトCD38への結合に関してダラツムマブと競合する。
【0269】
抗体が、CD38への結合に関してダラツムマブと同じエピトープに結合するか、又はダラツムマブと競合するかを判定するための競合アッセイは、当技術分野において既知である。例示的な競合アッセイとしては、イムノアッセイ(例えばELISAアッセイ、RIAアッセイ)、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAコア分析)、生体層干渉法、及びフローサイトメトリが挙げられる。
【0270】
競合アッセイは、通常は、不動化抗原(例えばCD38)、試験抗体(例えばCD38結合抗体)及び参照抗体(例えばダラツムマブ)を伴う。参照又は試験抗体のうちいずれか一方がラベリングされ、もう一方はラベリングされない。いくつかの実施形態では、競合的結合は、漸増濃度の試験抗体中で不動化抗原に結合した参照抗体の量によって決定される。参照抗体と競合する抗体としては、参照抗体と同じか又は重複するエピトープに結合する抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、試験抗体は、隣接する非重複エピトープに結合し、その結果、抗体の近接性によって、抗原に対する参照抗体の結合に影響を及ぼすのに十分な立体障害が生じる。
【0271】
競合アッセイは、ラベル又は立体障害の存在が、エピトープへの結合に干渉するか又はこれを阻害しないことを保証するために、両方の方向で行われてよい。例えば、第1の方向では、参照抗体はラベリングされ、試験抗体はラベリングされない。第2の方向では、試験抗体はラベリングされ、参照抗体がラベリングされない。別の実施形態では、第1の方向で、競合的結合を測定するために、参照抗体が不動化抗原に結合し、漸増濃度の試験抗体が添加される。第2の方向で、競合的結合を測定するために、試験抗体が不動化抗原に結合され、漸増濃度の参照抗体が添加される。
【0272】
いくつかの実施形態では、抗原中で一方の抗体の結合を減少又は消失させる本質的に全てのアミノ酸変異が、もう一方の結合を低減又は消失させる場合、2つの抗体は同じエピトープに結合すると判定され得る。一方の抗体の結合を減少又は消失させる変異のサブセットのみが、もう一方の結合を低減又は消失させる場合、2つの抗体は重複するエピトープに結合すると判定され得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体(例えばダラツムマブ)のうちのいずれかの重鎖は、重鎖定常領域(CH)又はその一部分(例えば、CH1、CH2、CH3、又はこれらの組み合わせ)を更に含み得る。重鎖定常領域は、任意の好適な起源、例えばヒト、マウス、ラット、又はウサギのものであってよい。或いは、又はそれに加えて、抗CD38抗体の軽鎖は、当該技術分野で既知の任意の軽鎖定常領域(CL)であり得るCLを更に含み得る。いくつかの例では、CLはカッパ軽鎖である。その他の例では、CLはラムダ軽鎖である。抗体重鎖及び軽鎖定常領域は、当該技術分野で周知されている(例えば、そのどちらも参照により本明細書に組み込まれる、IMGTデータベース(www.imgt.org)又はwww.vbase2.org/vbstat.phpで提供されるもの)。
【0274】
ヒト抗体又はヒト化抗体を含む抗CD38抗体のいずれも、従来型のアプローチ、例えば、ハイブリドーマ技術、抗体ライブラリスクリーニング、又は組み換え技術によって調製することができる。例えば、Harlow and Lane,(1998)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York、国際公開87/04462号パンフレット、Morrison et al.,(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851、及びQueen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033(1989)を参照されたい。
【0275】
記載される抗体は例示に過ぎず、任意の抗CD38抗体が、本明細書に開示される組成物及び方法で使用され得ることを理解されたい。抗体を生産するための方法は、当業者に既知である。
【0276】
III.併用療法
いくつかの態様では、本開示は、併用療法を投与される対象(例えばヒト患者)の臨床転帰を改善するために、遺伝子改変CAR-T細胞のいずれか、及びNK細胞阻害剤のいずれかを伴う併用療法を提供する。いくつかの実施形態では、併用療法は、有効量の本明細書に開示される遺伝子改変CAR-T細胞の集団を、これも本明細書に開示されるNK細胞阻害剤を投与されているか、又は投与済みである対象に投与することを含む。その他の実施形態では、併用療法は、有効量のNK細胞阻害剤を、遺伝子改変CAR-T細胞の集団を投与されているか、又は投与済みである対象に投与することを含む。更にその他の実施形態では、併用療法は、有効量の遺伝子改変CAR-T細胞の集団及び有効量のNK細胞阻害剤を、同時的に又は逐次的にのいずれかで対象に投与することを含む。
【0277】
A.臨床転帰の改善
本明細書で使用する時、「臨床転帰」とは、併用療法から得られた、CAR-T細胞単剤療法及び/又はNK細胞阻害剤単剤療法と比較して治療効力の改善につながる。対象における1つ以上の治療的効果(直接的又は間接的な)を指す。いくつかの例では、改善された臨床転帰は、1つ以上の実際の治療的利点、例えば、CAR-T細胞に対する臨床応答の増加(例えば、疾患負荷の減少、1つ以上の病気の症状の緩和、及び/又は生存率の延長)を含む。がん療法との関係においては、治療的利点は、腫瘍容積の低減、腫瘍細胞数の減少、及び/又は抗腫瘍応答の増加を含み得る。或いは、改善された臨床転帰は、最終的に治療的利点につながる、1つ以上の望ましい特徴の強化、及び/又は1つ以上の望ましくない特徴の減少を含む。例えば、改善された臨床転帰は、対象における改変ヒトCAR-T細胞の残存率の増加、NK細胞によって誘導され得るCAR-T細胞溶解の低減、NK細胞の減少、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0278】
医学的状態の治療のための組成物を含む治療の臨床転帰は、熟達した臨床医により判定され得る。治療は、一例ではあるが、任意の1つ又は全ての徴候又は症状の機能的標的のレベルが有利な様式で変えられる(例えば、少なくとも10%増加する)か、又は疾患(例えば、癌)の他の臨床的に認められている症状又はマーカーが改善されるか又は緩和される場合、「有効な治療」とみなされる。臨床転帰は、入院、又は医学的介入の必要性により評価して対象が悪化しないことによっても測定され得る(例えば、疾患の進行が止まるか又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に既知であり、及び/又は本明細書で説明されている。治療は、対象における疾患の任意の治療を含み、且つ(1)疾患を阻害すること、例えば症状の進行を止めるか若しくは遅くすること、又は(2)疾患を軽減すること、例えば症状の退行をもたらすこと、及び(3)症状の発症の可能性を予防するか若しくは減少させることを含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法を受けている対象における臨床応答を増加させるための方法が提供され、方法は、破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を受けていたか又は受けている対象に、有効量のNK細胞阻害剤を対象に投与することを含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法を受けている対象における臨床応答を増加させるための方法が提供され、方法は、対象に、破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を投与することを含み、ここで対象は、有効量のNK細胞阻害剤を受けていたか又は受けている。
【0281】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法を受けている対象における臨床応答を増加させるための方法が提供され、方法は、対象に、有効量の(a)破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法、及び(b)NK細胞阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、臨床応答の増加は、CAR T細胞療法のみを含む療法と比較してのものであるか、又はNK細胞阻害剤のみを含む療法と比較してのものである。いくつかの実施形態では、臨床応答の増加は、加法的又は相乗的である。
【0282】
いくつかの実施形態では、臨床応答は、腫瘍容積又は腫瘍サイズの減少である。いくつかの実施形態では、臨床応答は腫瘍成長の阻害である。いくつかの実施形態では、臨床応答は腫瘍細胞数の減少である。いくつかの実施形態では、臨床応答は寛解期である。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、NK細胞阻害剤の不在下でCAR T細胞療法を受けている対象と比較して、CAR T細胞療法を受けている対象における臨床応答を増加させる。
【0283】
いくつかの実施形態では、本開示は、NK細胞阻害剤を投与することによって、対象におけるCAR T細胞療法の抗腫瘍応答を増加させるための方法を提供する。
【0284】
いくつかの実施形態では、対象におけるCAR T細胞療法の抗腫瘍応答を増加させるための方法が提供され、方法は、対象に、破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を投与することを含み、ここで対象は、有効量のNK細胞阻害剤を受けていたか又は受けている。いくつかの実施形態では、抗腫瘍応答の増加は、細胞毒性分子の増加である。いくつかの実施形態では、抗腫瘍応答の増加は、腫瘍細胞中のグランザイムB活性の増加、又はグランザイムBの発現による腫瘍細胞数若しくは腫瘍細胞画分の増加である。いくつかの実施形態では、抗腫瘍応答の増加は、免疫細胞又は改変ヒトCAR T細胞によるIFN-γサイトカインの分泌の増加である。いくつかの実施形態では、抗腫瘍応答の増加は、免疫細胞又は改変ヒトCAR T細胞により媒介される腫瘍細胞死滅の増加である。
【0285】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法効力の臨床応答を増加させることは、抗腫瘍活性の増加、改変CAR T細胞の残存率の増加、改変CAR T細胞の細胞溶解の低減、又は寛解の延長である。いくつかの実施形態では、改善された臨床転帰は、全生存若しくは無進行生存の増加、療法を投与される時間の減少、療法を受ける時間の低減、最大療法応答の増加、臨床的利点(例えば、療法に対する安定した疾患、部分寛解、又は完全寛解)、有害事象の減少、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、本開示は、NK細胞阻害剤を投与することによって、CAR T細胞療法を投与される対象における改変ヒトCAR T細胞の残存率を改善する方法を提供する。
【0286】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法を受けている対象におけるNK細胞活性を減少させるための方法が提供され、方法は、対象に、破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を投与することを含み、ここで対象は、有効量のNK細胞阻害剤を受けていたか又は受けている。
【0287】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法を受けている対象におけるNK細胞活性を減少させるための方法が提供され、方法は、破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を受けていたか又は受けている対象に、有効量のNK細胞阻害剤を対象に投与することを含む。
【0288】
いくつかの実施形態では、対象におけるNK細胞活性を減少させる方法が提供され、方法は、対象に有効量の(a)NK細胞阻害剤、及び(b)破壊されたMHCクラスI複合体を含む改変ヒトCAR T細胞の集団を含むCAR T細胞療法を投与することを含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、改変ヒトCAR T細胞の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞はNK細胞阻害剤と組み合わせで与えられ、ここで改変ヒトCAR T細胞は、NK細胞阻害剤の投与の前に、それと同時に、又はその後に与えられる。
【0290】
いくつかの実施形態では、2用量以上のNK細胞阻害剤が対象に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤の初回用量が、CAR T細胞療法の前に、それと同時に、又はその後に、対象に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤の少なくとも1つの後続用量が投与される。いくつかの実施形態では、初回用量及び後続用量で同じNK細胞阻害剤が投与される。いくつかの実施形態では、初回用量及び後続用量で異なるNK細胞阻害剤が投与される。いくつかの実施形態では、NK阻害剤の後続用量は、対象におけるNK細胞数が、NK細胞阻害剤を投与する前のNK細胞数の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%まで回復した時に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞数は、NK細胞阻害剤の投与から1、2、3、4、5、6、7、及び/又は8週間後に測定される。いくつかの実施形態では、NK細胞数は、NK細胞阻害剤の投与から3、4、5、6、7、8及び/又は12ヶ月後に測定される。いくつかの実施形態では、NK細胞数は、CAR T療法の投与から1、2、3、4、5、6、7、及び/又は8週間後に測定される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤の後続用量は、改変ヒトT細胞の残存率を維持する。
【0291】
B.遺伝子改変CAR-T細胞及びNK細胞阻害剤の投与
併用療法においては、本明細書に開示される遺伝子改変CAR-T細胞のいずれもが、同じく本明細書に開示されるNK細胞阻害剤のいずれとも併用することができる。こうした遺伝子改変CAR-T細胞及びNK細胞阻害剤は、好適な経路、例えば静脈注入を介して、治療を必要とする対象に与えることができる。
【0292】
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、(i)配列番号40に記載されるアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されるTRAC遺伝子、及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む改変ヒトT細胞を含む細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、配列番号39に記載されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号28のヌクレオチド配列の欠失を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号58に記載されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、改変T細胞の0.5%未満が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の30%未満が、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCAR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトT細胞は同種異系である。
【0293】
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、(i)配列番号76に記載されるアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されるTRAC遺伝子、及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む改変ヒトT細胞を含む細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、配列番号75に記載されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号28のヌクレオチド配列の欠失を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号74に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、改変T細胞の0.5%未満が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の30%未満が、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCAR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトT細胞は同種異系である。
【0294】
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、(i)配列番号86に記載されるアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されるTRAC遺伝子、及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む改変ヒトT細胞を含む細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、配列番号85に記載されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号28のヌクレオチド配列の欠失を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号84に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、改変T細胞の0.5%未満が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の30%未満が、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCAR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトT細胞は同種異系である。
【0295】
いくつかの実施形態では、改変T細胞は、(i)配列番号115に記載されるアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されるTRAC遺伝子、及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む改変ヒトT細胞を含む細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、配列番号112に記載されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号28のヌクレオチド配列の欠失を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号111に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、改変T細胞の0.5%未満が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の30%未満が、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのCAR表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変ヒトT細胞は同種異系である。
【0296】
本明細書に開示される併用療法は、上記の特定の遺伝子改変CAR-T細胞のいずれか、及びNK細胞阻害剤、例えば、ダラツムマブ又はその機能的バリアントを伴い得る。
【0297】
CAR T細胞療法を投与する工程は、所望の効果がもたらされるように、腫瘍などの所望の部位における導入細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、対象への細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の配置(例えば、移植)を含み得る。改変T細胞は、移植された細胞又はこの細胞の構成要素の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路により投与し得る。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間(例えば、24時間)という短い期間から、数日、数年又は更には対象の寿命(即ち長期の生着)までであり得る。例えば、本明細書で説明されているいくつかの態様では、有効量の改変T細胞を、腹腔内又は静脈内経路などの全身性の投与経路を介して投与する。
【0298】
対象は、治療又は療法が望まれる任意の対象であり得る。いくつかの実施形態では、この対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、この対象は、ヒトである。
【0299】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法に従って投与される改変ヒトCAR T細胞集団及び/又はNK細胞阻害剤は、対象中で毒性を誘発せず、例えば、この改変ヒトCAR T細胞及び/又はNK細胞阻害剤は、非がん細胞中で毒性を誘発しない。いくつかの実施形態では、投与される改変ヒトCAR T細胞集団及び/又はNK細胞阻害剤は、補体に媒介される溶解をトリガしないか、又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を刺激しない。いくつかの実施形態では、投与される改変ヒトCAR T細胞集団及び/又はNK細胞阻害剤は、アポトーシスをトリガしない。いくつかの実施形態では、投与される改変ヒトCAR T細胞集団及び/又はNK細胞阻害剤は、ADCPをトリガしない。
【0300】
有効量は、医学的状態(例えば、がん)の少なくとも1つ以上の徴候又は症状を予防又は緩和するのに必要な改変ヒトCAR T細胞の集団及び/又はNK細胞阻害剤の量を指し、例えば、医学的状態を有する対象を処置するために所望の効果をもたらすのに十分な量の組成物に関する。有効量としては、疾患の症状の発症を予防するか若しくは遅らせるか、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量も挙げられる。いくつかの実施形態では、有効量のNK細胞阻害剤とは、NK細胞が媒介する改変ヒトCAR T細胞の溶解、又はNK細胞活性のうち少なくとも1つの予防又は緩和するのに必要な量を指す。いくつかの実施形態では、有効量のNK細胞阻害剤とは、改変ヒトCAR T細胞の残存を可能にするのに必要な量を指す。
【0301】
任意の所与の場合に関して、適切な有効量は、当業者により通常の実験を使用して決定され得ることが理解される。
【0302】
いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、6×107、8×107、9×107、1×108、2×108、3×108、4×108、5×108、6×108、7×108、8×108、9×108、又は1×109の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約1×107、3×107、1×108、3×108、又は1×109の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトT細胞)を含む細胞の集団を、約3×107、1×108、又は3×108の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約1×107~3×108の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。
【0303】
いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約1×107の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約3×107の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を、約1×108の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトT細胞)を含む細胞の集団を、約3×108の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトT細胞)を含む細胞の集団を、約1×109の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCARを発現する改変T細胞の用量で投与される。
【0304】
いくつかの実施形態では、対象は、細胞を、約1×107の、検出可能なレベルのCARを発現する改変ヒトCAR T細胞の用量で投与される(例えば、CD19、CD33、CD70、又はBCMA抗原結合ドメイン)。いくつかの実施形態では、対象は、細胞を、約3×107の、検出可能なレベルのCARを発現する改変ヒトCAR T細胞の用量で投与される(例えば、CD19、CD33、CD70、又はBCMA抗原結合ドメイン)。いくつかの実施形態では、対象は、細胞を、約1×108の、検出可能なレベルのCARを発現する改変ヒトCAR T細胞の用量で投与される(例えば、CD19、CD33、CD70、又はBCMA抗原結合ドメイン)。いくつかの実施形態では、対象は、細胞を、約3×108の、検出可能なレベルのCARを発現する改変ヒトCAR T細胞の用量で投与される(例えば、CD19、CD33、CD70、又はBCMA抗原結合ドメイン)。
【0305】
いくつかの実施形態では、細胞は1つ以上のドナーから誘導される。本明細書で説明されているいくつかの例において、細胞は、それを必要とする対象への投与前に培養で増殖される。
【0306】
改変ヒトCAR T細胞及び/又はNK細胞阻害剤のための投与の方式としては、注射及び注入が挙げられる。注射としては、静脈内、くも膜下腔内、腹腔内、脊髄内、脳脊髄内(intracerebro spinal)、及び胸骨内(intrasternal)注入が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、経路は、静脈内である。
【0307】
いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞及び/又はNK細胞阻害剤が全身的に投与されるが、これは、標的部位、組織又は臓器に直接的ではなく、代わりに対象の循環系に入り、それにより代謝及び他の同様の過程に供されるような投与を指す。
【0308】
C.標的がん
いくつかの実施形態では、がん(例えば、白血病、例えば、急性の骨髄性白血病)を治療するための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載されるCAR T細胞療法を、がんを有する対象(例えば、ヒト患者)に送達することを含む。
【0309】
本明細書で提供されるように治療され得るがんの非限定的な例としては、多発性骨髄腫、白血病、及び/又は腎明細胞癌(ccRCC)が挙げられる。本明細書で提供されるように治療され得る白血病の非限定的な例としては、T細胞白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫(FL)、等級3BのFL、及びCLLのリヒター形質転換)、及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。いくつかの実施形態では、方法は、本開示のCAR T細胞(例えば、抗BCMA、抗CD19、抗CD33及び/又は抗CD70 CAR T細胞)を、多発性骨髄腫、白血病、又はリンパ腫を有する対象に送達することを含む。本明細書に提供されるとおりに治療され得る癌(例えば、固形腫瘍)の他の非限定的な例としては、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、腎臓癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、神経膠芽腫、及び/又は黒色腫が挙げられる。
【0310】
いくつかの実施形態では、本開示は、約1×107~3×108、又は約1×107~1×109の静脈内用量の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCAR(例えば、抗CD19CAR)を発現する改変ヒトT細胞を投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、約3×107の静脈内用量の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCAR(例えば、抗CD19CAR)を発現する改変ヒトT細胞を投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、約1×108の静脈内用量の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCAR(例えば、抗CD19CAR)を発現する改変ヒトT細胞を投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、約3×108の静脈内用量の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCAR(例えば、抗CD19CAR)を発現する改変ヒトT細胞を投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、約1×109の静脈内用量の、検出可能なレベルの本明細書に記載されるCAR(例えば、抗CD19CAR)を発現する改変ヒトT細胞を投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。
【0311】
いくつかの実施形態では、本開示は、約1×107~3×108の用量の、又は約1×107~1×109の用量の、検出可能なレベルの抗CD19CARを発現する改変ヒトCAR T細胞を、ダラツムマブなどの本明細書に開示されるNK阻害剤のうちのいずれかと組み合わせて静脈内投与することによって、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するための方法を提供する。
【0312】
いくつかの実施形態では、本開示は、ダラツムマブと組み合わせて、約2.5×107~4.5×108の用量の、検出可能なレベルの抗BCMA CARを発現する改変ヒトCAR T細胞を静脈内投与することによって、ヒト患者における多発性骨髄腫(MM)を治療するための方法を提供する。
【0313】
いくつかの実施形態では、本開示は、ダラツムマブと組み合わせて、約1.0×107~1×109の用量で、検出可能なレベルの抗CD70 CARを発現する改変ヒトCAR T細胞を静脈内投与することによって、ヒト患者における腎細胞癌又はT細胞若しくはB細胞悪性腫瘍などの固形腫瘍を治療するための方法を提供する。
【0314】
いくつかの態様では、本開示は、対象に本明細書に記載される細胞又は改変CAR T細胞の集団を投与するための方法を提供する。いくつかの態様では、改変T細胞は、改変ヒトT細胞である。いくつかの態様では、対象は、がんを有する。いくつかの態様では、がんは、CD70、BMCA、CD19、CD33、又はこれらの組み合わせを発現する。いくつかの態様では、細胞の集団は、がんを治療するのに有効な量で対象に投与される。いくつかの態様では、がんは、固形悪性腫瘍又は血液悪性腫瘍である。いくつかの態様では、固形悪性腫瘍は、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、腎臓腫瘍、肺腫瘍、及び腸腫瘍からなる群から選択される。いくつかの態様では、細胞の集団は、対象における腫瘍の容積又は腫瘍細胞数を減少させるのに有効な量で対象に投与される。
【0315】
いくつかの態様では、本開示は、対象におけるがんを治療するための方法であって、本明細書に記載される細胞又は改変ヒトCAR T細胞の集団を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0316】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている方法に従って投与される改変ヒトCAR T細胞集団は、1つ以上のドナーから得られた同種異系T細胞を含む。同種異系とは、1つ以上の座位での遺伝子がレシピエントと同一ではない細胞、細胞集団又は同じ種の1つ以上の異なるドナーから得られた細胞を含む生体試料を指す。例えば、対象に投与される改変CAR T細胞集団は、1つ以上の血縁ではないドナー又は1つ以上の同一ではない同胞由来のT細胞から誘導され得る。いくつかの実施形態では、遺伝的に同一のドナー(例えば、同一の双子)から得られたものなどの同系細胞集団が使用され得る。
【0317】
いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞は同種異系である。いくつかの実施形態では、改変ヒトCAR T細胞は同種異系移植体として投与される。
【0318】
D.CAR-T細胞療法の毒性の減少
腫瘍標的化CAR T細胞療法による腫瘍再発のリスクは、一部には、投与後に対象内でCAR T細胞の残存率が限られていることに起因すると考えられる(Maude,S.,et al.(2014)N Engl J Med.371:1507-1517;Turtle,C.et al.,(2016)J Clin Invest.126:2123-2138)。本明細書に開示される併用療法は、CAR-T細胞療法に伴われる毒性を減少させることも目的としている。例としては、宿主対移植片疾患(HvGD)及び移植片対宿主疾患(GvHD)が挙げられる。
【0319】
(i)宿主対移植片疾患(HvGD)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、減少した又は最小の宿主対移植片(HvG)応答に起因する延長された残存率を有する。HvG応答は、レシピエントによる活性免疫応答に起因する同種異系移植片(例えば同種異系ドナーT細胞)の機能的及び構造的劣化として定義される。HvG応答の原因は、宿主の免疫系を活性化する同種異系ドナー細胞上の抗原である。ドナー細胞によって発現される同種異系主要組織適合抗原(例えばヒト内のヒト白血球抗原又はHLAと称される)は、HvG応答の強力な誘導因子である(Ingulli,E.(2010)Pediatr Nephrol.,25:61-74;Alelign,T.et al.,(2018)J Immunol Research Article ID5986740)。対象中のT細胞の約1~10%が、同種異系HLA複合体を認識することのできるTCRを発現する。認識は直接的であってもよく、ここでは宿主T細胞が、ドナー細胞上に存在する同種異系HLA分子を直接認識するTCRを発現する。認識は間接的であってもよく、ここではドナー細胞が、最初に宿主抗原提示細胞(APC)によって内部移行及び処理され、宿主T細胞は、宿主APCによってペプチド形態で提示される同種異系HLA分子を認識する。ドナー細胞上の同種異系抗原を認識して活性化される宿主T細胞は、HvG応答をトリガする。移植前にドナー細胞から同種異系抗原を消失させることで、HvG応答のリスクを消失又は減少させ、それにより投与後の残存率を増加させることができる。
【0320】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の改変ヒトCAR T細胞の集団は、CRISPR-Cas9遺伝子編集を使用することによって改変されて、標的遺伝子配列中で部位特異的破壊を生じさせ、これが同種異系抗原の発現を消失させる。いくつかの実施形態では、同種異系抗原は主要組織適合抗原である。いくつかの実施形態では、主要組織適合抗原は、MHCクラスI複合体である。いくつかの実施形態では、標的遺伝子配列は、MHCクラスI複合体のタンパク質成分をコードするB2M遺伝子中に見出される。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、宿主対改変CAR T細胞応答のリスクを排除するか又は減少させ、レシピエントに投与した後で改変T細胞残存率を増加させる。
【0321】
いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の残存率は、改変ヒトCAR T細胞の投与後に対象から回収された1つ以上の組織試料中に存在する改変ヒトCAR T細胞の存在及び量を分析することによって評価される。いくつかの実施形態では、残存率は、投与時点から、所与の組織タイプ(例えば末梢血)中に検出可能なレベルの改変T細胞が存在する時点までの最長期間として定義される。
【0322】
いくつかの実施形態では、残存率は、疾患の連続した不在として定義される(例えば、完全寛解又は部分寛解)。疾患の不在及び治療に対する応答は、当業者に既知であり、また本明細書に記載されている。
【0323】
適切な組織回収、調製、及び貯蔵の方法は、当業者に既知である。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の残存率は、末梢血、脳脊髄液、腫瘍、皮膚、骨、骨髄、乳房、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、脾臓、胃腸管、扁桃腺、胸腺、及び前立腺からなる群からの1つ以上の組織試料中で評価される。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量は、単一のタイプの組織試料(例えば末梢血)中で測定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量は、複数の組織タイプ(例えば骨髄及び脳脊髄液に加えて末梢血)中で測定される。複数の組織タイプ中で改変ヒトCAR T細胞の量を測定することによって、身体の様々な組織全体にわたる改変ヒトCAR T細胞の分布を判定することができる。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量は、投与後の単一の時点で、1つ以上の組織試料中で測定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量は、投与後の複数の時点で、1つ以上の組織試料中で測定される。いくつかの実施形態では、投与後のある時点で1つ以上の組織試料中に存在する改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量が、投与前に患者から回収された同じ組織タイプの試料と比較される。
【0324】
所与の組織中で検出可能なレベルの改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)は、既知の技法によって測定することができる。関心対象の組織中における改変T細胞の存在又は量を評価するための方法は当業者に既知である。こうした方法としては、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合的RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、RNアーゼ保護アッセイ(RPA)、定量的免疫蛍光法(QIF)、フローサイトメトリ、ノーザンブロット法、DNAを用いた核酸マイクロアレイ、ウエスタンブロット法、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、組織免疫染色法、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ、蛍光-活性化細胞分類法(FACS)、質量分析法、電磁ビーズ-抗体免疫沈降法、又はタンパク質チップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0325】
本明細書で使用する時、いくつかの実施形態では、残存率は、投与時点から、検出可能なレベルの改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)が測定される時点までの最長期間である。いくつかの実施形態では、検出可能なレベルの改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)は、分析方法の検出限界の点から定義される。検出限界は、関心対象の成分又は物質の量を全く有さないと見込まれる組織試料と比較した場合の、分析手順によって確実且つ再現可能に測定することが可能な成分又は物質の最低量として定義され得る。再現可能な検出限界を決定するための非限定的な例示的方法は、ブランク試料と比較してゼロ較正物質の複製に対する分析信号を測定することである(Armbruster,D.et al.(2008)Clin Biochem Rev.29:S49-S52)。ブランク試料は、関心対象の分析質を含まないことが知られている。ゼロ較正物質は、既知の濃度又は量の試験試料の最大希釈であり、ブランク試料に対して測定されたものを上回る分析信号をもたらす。ゼロ較正物質の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30の複製に対する分析信号を定量化することによって、関心対象の分析方法の検出限界の平均偏差及び標準偏差(SD)を決定することができる。所与の組織中の改変T細胞を定量化するために好適な検出限界を用いる方法の選択は、当業者によって確かめられ得る。いくつかの実施形態では、検出可能なレベルの改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)は、分析方法の検出限界を上回る分析信号をもたらす組織試料中の任意の量の改変T細胞である。いくつかの実施形態では、検出可能なレベルの改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)は、分析方法の検出限界を少なくとも2SD、3SD、4SD、5SD、6SD、7SD、8SD、9SD、又は10SD上回る分析信号をもたらす、組織試料中の任意の量の改変T細胞である。
【0326】
CAR発現改変T細胞は、レシピエントへの投与後に増殖を経験し得ることが知られている。増殖は、抗原認識及び信号活性化に対する応答である(Savoldo,B.et al.(2011)J Clin Invest.121:1822;van der Stegen,S.et al.(2015)Nat Rev Drug Discov.14:499-509)。いくつかの実施形態では、増殖後に、改変T細胞は収縮期間を経るが、ここで短命のエフェクター細胞である改変T細胞集団の一部分は消失して、長命の記憶細胞である改変T細胞集団の一部分が残る。いくつかの実施形態では、残存率は、増殖及び収縮後の改変T細胞集団の寿命の指標である。増殖、収縮、及び残存率相の期間は、薬物動態プロファイルを用いて評価される。いくつかの実施形態では、薬物動態(PK)プロファイルは、所与の組織中で経時的に測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量の記述であり、これは、所与の組織(例えば末梢血)中で複数の時点における改変T細胞の量を測定することによって当業者により容易に確かめられる。いくつかの実施形態では、PKプロファイルの指標は、対象を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、PKプロファイルの指標は、がんを有する対象における改変T細胞療法(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の有効性を評価又は監視する方法を提供する。いくつかの実施形態では、PKプロファイルの指標は、対象における改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の残存率を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、PKプロファイルは、対象における改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の増殖を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象における改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の残存率の指標を用いて、対象における改変T細胞療法の有効性を評価する。いくつかの実施形態では、対象における改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の増殖の指標を用いて、対象における改変T細胞療法の有効性を評価する。
【0327】
いくつかの実施形態では、PKプロファイルは、レシピエントから回収した所与の組織タイプ(例えば末梢血)の試料中の改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量を測定し、様々な時点で評価を繰り返すことによって調製される。いくつかの実施形態では、ベースライン組織試料は、投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、13日、14日、又は15日以内にレシピエントから回収される。いくつかの実施形態では、レシピエントからの組織の回収は、改変T細胞の投与時間から0.25~2時間以内、1~3時間以内、2~6時間以内、3~11時間以内、4~20時間以内、5~48時間以内に実施される。いくつかの実施形態では、レシピエントからの組織の回収は、1日目、2日目、3日目、又は4日目に開始し、少なくとも5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、又は20日目まで継続して毎日実施される。いくつかの実施形態では、レシピエントからの組織の回収は、改変T細胞の投与後に、最大1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、又は16週間の間、1週間あたり少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、又は6回実施される。いくつかの実施形態では、レシピエントからの組織の回収は、改変T細胞の投与後に、最大で1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、又は24ヶ月間の間、1ヶ月あたり少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、又は6回実施される。いくつかの実施形態では、レシピエントからの組織の回収は、改変T細胞の投与後に、最大で1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、又は10年間の間、1年間あたり少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、又は6回実施される。
【0328】
いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は投与からの期間として定義され、ここでは改変T細胞のピーク量の少なくとも0.005~0.05%、0.01~0.1%、0.05~0.5%、0.1~1%、0.5%~5%、又は1~10%である改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)量が存在する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、所与の組織タイプ(例えば末梢血)中で測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量を、同じ組織タイプ中で測定された改変T細胞のピーク量に対して比較することによって決定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、所与の組織タイプ(例えば末梢血)中で測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量を、異なる組織タイプ中で測定された改変T細胞のピーク量に対して比較することによって決定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、所与の対象(例えば末梢血)中で測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量を、同じ対象中で測定された改変T細胞のピーク量に対して比較することによって決定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、所与の対象(例えば末梢血)中で測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量を、異なる対象(例えば、部分寛解した対象、完全寛解した対象)中で測定された改変T細胞のピーク量に対して比較することによって決定される。
【0329】
いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、投与後に1つ以上の組織タイプ(例えば末梢血)中に存在し、ここで改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR発現T細胞)は1日目に投与される。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、投与後、最大で1日、2日、3日、4,日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、21日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、又は35日間1つ以上の組織タイプ(例えば末梢血)中に存在し、ここで改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)は1日目に投与される。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の投与後、最大で1ヶ月間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、又は24ヶ月間、1つ以上の組織タイプ(例えば末梢血)中に存在する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の残存率は、改変T細胞の投与後、最大で1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、及び10年間の間、1つ以上の組織タイプ(例えば末梢血)中で測定される。いくつかの実施形態では、改変T細胞が1日目に投与され、投与後少なくとも10~25日、少なくとも25~50日、少なくとも50~100日、少なくとも100~364日、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年間である改変T細胞の残存率は、レシピエントにおける応答(例えば、完全寛解又は部分寛解)を示す。
【0330】
いくつかの実施形態では、曲線下面積(AUC)は、所与の組織タイプ(例えば末梢血)中で経時的に測定された改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量の曲線下の総面積として定義される。AUCの計算方法は、当業者には既知であり、これは、一連の台形によってAUCを概算することと、台形の面積を計算することと、台形の面積を合計してAUCを決定することと、からなる。いくつかの実施形態では、PKプロファイルに関してAUCが定義され、ここでは所与の組織タイプに関して改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の量が経時的に測定される。いくつかの実施形態では、PKプロファイルに関して1つの指定された時点から別の指定された時点までAUCが定義される(すなわち、AUC10~80は、投与後10日目~80日目の量を示す量-時間曲線下の総面積を指す)。いくつかの実施形態では、投与時間(例えば、1日目)から1日の終了時間までにわたる予め選択された期間、すなわち、投与後10~20日、15~45日、20~70日、25~100日、又は40~180日間に対してAUCが決定される。いくつかの実施形態では、レシピエント中のPKプロファイルに関して測定されるAUCは、レシピエントの応答(例えばCR又はPR)を示す。いくつかの実施形態では、レシピエント中のPKプロファイルに関して測定されるAUCは、レシピエントの再発のリスクを示す。
【0331】
(ii)移植片対宿主疾患(GvHD)
今日までに開発された大半のCAR T細胞療法は、自己由来CAR T細胞を用いる(すなわち、患者自身のT細胞の遺伝子修飾により誘導されたCAR T細胞)。ドナーT細胞は、ヒト内のヒト白血球抗原又はHLAとして知られる、宿主組織抗原及び/又は組織適合抗原に対して潜在的に反応性のT細胞受容体(TCR)を発現するため、同種異系CAR T細胞(すなわち、遺伝的に異なるヒトドナー由来のT細胞の遺伝子修飾により生成されたCAR T細胞)の使用は、移植片対宿主疾患(GvHD)を生じさせるリスクを有する。GvHDは、同種異系細胞を移植した後に起きる、免疫適格ドナー細胞(移植片)が免疫不全の同種異系レシピエント(宿主)中の組織を認識して攻撃する症候群である(Barnes,D.et al.,(1962)Ann NY Acad.Sci.99:374-385;Billingham,R.(1966)Harvey Lect.62:21-78)。相当な臨床的証拠が、特に造血幹細胞移植(HSCT)の状況下で同種異系T細胞移植を投与することによるGvHDのリスクを強調している。
【0332】
HSCTは、白血病又はリンパ腫などの難治性の血液学的悪性腫瘍を患う患者に対する治療レジメンの一部として投与される。同種異系HSCT(すなわち、宿主患者と遺伝的に同一でない個体由来のHSCT)の実質的な治療効果は、移植片対腫瘍(GVT)効果である。HSCT移植で投与されたドナーT細胞は、一部が腫瘍細胞上の腫瘍抗原及び同種異系HLA抗原を外来物(foreign)として認識し、腫瘍細胞を消失させるという点において、GVT効果の主媒介物質である(Kolb,H.(2008)Blood112:4371-4383)。しかしながら、移植されたドナーT細胞も、宿主HLAを外来物として認識し、皮膚、胃腸、肝臓、及び肺などの臓器に組織損傷を生じさせることで応答することによって、GvHDをトリガする可能性を有する。移植前にHSCT調製物からT細胞を除去することにより、GvHDの発生が大幅に減少され得るが、腫瘍再発及び移植片不全のリスクは著しく増加する(Apperley,J.et al.(1988)Br J Haematol.69:239-245;Martin,P.et al.,(1985)Blood 66:664-672;Patterson,J.et al.(1986)Br J Haematol.63:221-230)。したがって、改変同種異系T細胞(例えば、抗CD19、抗CD33、抗CD70、又はBCMA CARを発現する改変ヒトT細胞)の移植は、有益のみならず、有害な転帰ももたらし、移植された宿主反応性T細胞は、有益なGVT効果を促進するが、健康な組織の破壊も生じさせ、これがGvHDをもたらす。
【0333】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、GVT効果を生じさせるための外因的に投与されたT細胞の使用に対して相当な改善を提供する。CARは、HLAの抗原提示を必要とすることなしに腫瘍抗原を高い親和性で認識する修飾T細胞を提供する。更に、CARは、抗原認識時にT細胞の活性化に貢献する共刺激成分を提供する(Sadelain M.,et al.(2013)Cancer Discov.3:388-398;Davila M.,et al.(2012)Oncoimmunology 1:1577-1583)。しかしながら、大半のCAR T細胞生成物は、TCRの発現を保持する、従って、ドナーと遺伝的に同一でない宿主に投与された時にGvHDを生じさせるリスクを有するT細胞クローンの混合集団から生成される。GvHDを生じさせるリスクを回避するために、今日までに開発されたCAR T細胞療法の大部分は、自己由来CAR T細胞を用いており、そのため、CAR T細胞によって発現されたTCRが宿主抗原に対して反応的ではない(Maude,S.et al.(2014)N Engl J Med.371:1507-1517;Neelapu,S.et al.(2017)N Engl J Med.377:2531-2544;Schuster,S.et al.(2017)N Engl J Med.377:2545-2554)。しかしながら自己由来CAR T細胞の生成は高価で且つ時間のかかるものであり、その結果、一部の患者は治療を待つ間に疾患の進行又は死を経験する。
【0334】
いくつかの実施形態では、本開示は、破壊されたTCR及びMHCを含む改変T細胞(例えばCAR T細胞)の集団を投与し、それによりレシピエント患者におけるGvHDのリスクを減少させることに関する。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9遺伝子編集成分は、TCR及び/又はMCHなどの、GvHDに関連する遺伝子配列における部位特異的破壊を導入するために用いられる。いくつかの実施形態では、遺伝子配列はTCRの成分から選択される。いくつかの実施形態では、TCR成分はTRACである。いくつかの実施形態では、部位特異的破壊は、遺伝子の少なくとも一部分の永久的欠失である。いくつかの実施形態では、部位特異的破壊は、遺伝子中の小欠失である。いくつかの実施形態では、部位特異的破壊は、遺伝子中の小挿入である。いくつかの実施形態では、部位特異的破壊は、遺伝子中のCARをコードする核酸の挿入である。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の部位特異的破壊は、機能的TCRを含まないT細胞を提供する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座の部位特異的破壊は、同種異系レシピエント中にGvHDを生じさせるT細胞の能力を減少又は消失させる。いくつかの実施形態では、TRACの部位特異的破壊は、同種異系T細胞を対象に投与した後のGvHDのリスクを減少させる。
【0335】
いくつかの実施形態では、本開示は、レシピエント患者中でGvHDが生じるリスクが減少した、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与に関する。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9遺伝子編集成分は、TRAC遺伝子座に部位特異的破壊を導入するために用いられる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座における部位特異的破壊は、遺伝子中のCARをコードする核酸の挿入である。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座における部位特異的破壊は、ドナーT細胞の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の集団を提供する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座における部位特異的破壊は、改変T細胞の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞を提供する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座における部位特異的破壊、及び精製工程は、改変T細胞の少なくとも97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座における部位特異的破壊、及び精製工程は、改変T細胞の少なくとも97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞を提供する。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)の少なくとも97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞の集団の投与は、レシピエント患者への投与後にGvHDのリスクを減少させる。いくつかの実施形態では、改変T細胞の少なくとも97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%が機能的TCRの発現を欠く改変T細胞の投与は、レシピエント患者への投与後にGvHDのリスクを減少させる。
【0336】
臨床的には、GvHDは、臨床兆候、及び同種異系ドナー細胞の投与に対する発生時間に基づいて、急性、慢性、及び重複症候群に分類される。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与は、レシピエントにおける急性GvHD(aGvHD)のリスクの減少を伴う。いくつかの実施形態では、改変T細胞の投与は、レシピエントにおける急性GvHD(aGvHD)のリスクの減少を伴う。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR発現T細胞)を含む細胞の集団の投与は、レシピエントにおける慢性GvHDのリスクの減少を伴う。いくつかの実施形態では、改変T細胞の投与は、レシピエントにおける慢性GvHDのリスクの減少を伴う。aGvHDを生じる患者において、症状としては、斑点状丘疹;小胆管の損傷に起因して胆汁鬱滞をもたらす、黄疸を伴う高ビリルビン血症;悪心、嘔吐、及び食欲不振;並びに水様性又は出血性の下痢、及び痙性腹痛が挙げられ得る(Zeiser,R.et al.(2017)N Engl J Med 377:2167-2179)。aGvHDの重症度は、臨床兆候に基づいており、また、例えば表4で定義される広く受け入れられている等級パラメーターを用いて当業者によって容易に評価される。
【0337】
いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、CARを発現する改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与は、減少した又は軽度のaGvHDをもたらす。いくつかの実施形態では、減少した又は軽度のaGvHDとは、臨床等級2未満、臨床等級1未満、又は等級0である。いくつかの実施形態では、減少した又は軽度のaGvHDとは、臨床等級2未満である。いくつかの実施形態では、減少した又は軽度のaGvHDとは、臨床等級1未満である。いくつかの実施形態では、減少した又は軽度のaGvHDとは、臨床等級0である。
【0338】
いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR発現T細胞)を含む細胞の集団の投与は、aGvHDの発生をほとんど又は全くもたらさない(例えば、本開示の改変T細胞の集団を投与した後で、どの対象も臨床的に有意な(例えば等級2~4)のaGvHD、又はaGvHDの症状を経験しない)。いくつかの実施形態では、改変T細胞の投与は、aGvHDの発生をほとんど又は全くもたらさない(例えば、改変T細胞を投与した後で、どの対象も臨床的に有意な(例えば等級2~4)のaGvHD、又はaGvHDの症状を経験しない)。いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与は、aGvHDの部分的発生を伴い、対象のうち1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%、又は18%未満が、投与後に、臨床的に有意な(例えば等級2~4)のaGvHDの症状を経験する。いくつかの実施形態では、改変T細胞の投与は、aGvHDの部分的発生を伴い、対象のうち1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%、又は18%未満が、投与後に、臨床的に有意な(例えば等級2~4)aGvHDの症状を経験する。
【0339】
【0340】
ステロイドは、aGvHDに対する第一選択治療として用いられる。しかしながら、奏効率は限定されており、患者の約50のみが第一選択療法に応答する。ステロイド難治性aGvHDを有する患者の転帰は、長期死亡率が90%に達し、悲惨である(Westin,J.et al.,(2011)Adv Hematol.Article ID 601953)。
【0341】
いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与は、ステロイド難治性aGvHDの発生を伴わず、どの対象も、投与後に、臨床的に有意な(例えば等級2~4)のステロイド難治性aGvHDの症状を経験しない。いくつかの実施形態では、本開示の改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与は、ステロイド難治性aGvHDの部分的発生を伴い、対象のうち1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%、又は18%未満が、投与後に、臨床的に有意な(例えば等級2~4)のステロイド難治性aGvHDの症状を経験する。
【0342】
いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与後、最大で21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、又は36日の間、aGvHDの症状に関して観察される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団の投与後、少なくとも20~50日、25~70日、28~100日の間、aGvHDの症状に関して観察される。
【0343】
いくつかの実施形態では、HSCTの臨床状況は、改変T細胞を含む細胞の集団の投与に応答したaGvHDの発生に関するベンチマークを提供する。臨床的に有意な(例えば等級2~4)aGvHDの全発生率は、同種異系HSCTの投与後で約50%であるが、これは、ドナーとレシピエントとの間のHLAの不一致、ドナー及びレシピエントの性別、ドナー及びレシピエントの年齢、移植片の組織供給源、並びに条件付けレジメンの強度が挙げられるがこれらに限定されない因子に応じて大きく変化し得る(Hatzimichael,E.(2010)Stem Cells and Cloning:Advances and Applications,3:105-117)。より具体的には、HLAが一致する同胞ドナー由来のHSCTを投与した後の臨床的に有意な(例えば等級2~4)aGvHDの発生率は、約20~35%である(Remberger,M.et al.,(2002)Br J Haematol.119:751-759;Hahn,T.et al.(2008)J Clin Oncol.26:5728-5734)。発生率は、無関係な、又はHLAが一致しないドナーの場合で上昇する。いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T)の投与は、同種異系HSCTを投与することにより誘導される臨床的に有意な(例えば等級2~4)aGvHDの発生率よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%低い、臨床的に有意な(例えば等級2~4)aGvHDの発生を伴う。いくつかの実施形態では、HSCTは、HLAが一致する同胞ドナー由来である。いくつかの実施形態では、HSCTは、HLAが一致する非血縁ドナー由来である。いくつかの実施形態では、HSCTは、HLAが不一致の同胞ドナー由来である。いくつかの実施形態では、HSCTは、HLAが不一致の非同胞ドナー由来である。
【0344】
E.前条件付けレジメン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCAR T細胞療法に対する宿主免疫応答を防ぐために、前条件付けレジメンが対象に投与される。T細胞注入を投与する前に1つ以上の免疫抑制化学療法薬で患者を前条件付けすることで、移植後のドナーT細胞の有効性が増加され得る(North,R.et al.(1982)J Exp Med,155:1063-1074;Berenson,J.et al.(1975)J.Immunol.115:234-238;Cheever,M.et al.,(1980)J Immunol.125:711-714)。
【0345】
本明細書に開示される併用療法のいずれも、前条件レジメンを更に伴い得る。いくつかの実施形態では、前条件付けレジメンは、CAR T細胞療法(例えば、改変T細胞)の投与の前に、それと同時に、又はそれに続いて、投与される。いくつかの実施形態では、前条件レジメンは、NK細胞阻害剤の投与の前に、それと同時に、又はそれに続いて、投与される。
【0346】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞療法が本明細書に記載される前条件付けレジメン(例えば、リンパ球枯渇レジメン)を含む場合、NK細胞阻害剤は前条件付けレジメン(例えば、リンパ球枯渇レジメン)と同時に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、前条件付けレジメン(例えば、リンパ球枯渇レジメン)の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、NK細胞阻害剤は、前条件付けレジメン(例えば、リンパ球枯渇レジメン)の投与後に投与される。
【0347】
いくつかの実施形態では、前条件付けレジメンはリンパ球枯渇レジメンを含む。
【0348】
(i)リンパ球枯渇
いくつかの実施形態では、改変T細胞(例えば、改変ヒトT細胞)を含む細胞の集団は、対象(例えば、がん、例えば非ホジキンリンパ腫を有するヒト患者)がリンパ球枯渇レジメン及び/又はNK細胞阻害剤を投与された後で、対象に投与される。
【0349】
リンパ球枯渇(LD)化学療法は、注入後に移植されたT細胞の増殖及びエフェクター機能を可能にする目標を有する。内因性制御性T細胞及びその他の免疫細胞が、特定のサイトカイン(例えばインターロイキン7(IL-7)、IL-15、IL-2、IL-21)を循環から吸収(siphon)し得ることは既知である。LD化学療法の機能は、刺激性サイトカインの「細胞シンク(cellular sink)」として機能し、それにより、投与後にドナーT細胞の活性化及び増殖を促進するサイトカインの発生量を増加させる、内因性免疫細胞の一時的消失である(Gattinoni,L.et al.,(2005)J Expt Med 202:907-912)。更に、宿主のナイーブT細胞の量を特定の閾値未満に減少させることによって、移植されたドナーT細胞が枯渇したT細胞集団を回復させるために増殖及び分化することは知られている(Dummer,W.et al.(2002)J Clin Invest.110:185-192;Muranski,P.et al.(2006)Nat Clin Pract Oncol.3:668-681)。したがって、LD化学療法のもう1つの機能は、移植されたドナーT細胞の増殖及び分化を助けるための、宿主中におけるナイーブなT細胞の一時的な減少である(例えば、改変ヒトT細胞、例えば、改変同種異系ヒトT細胞)。いくつかの実施形態では、条件付け療法は、内因性免疫細胞を減少させ、また、対象中に存在する恒常性サイトカイン及び/又は免疫促進因子(pro-immunefactors)の血中濃度を増加させることを意図している。いくつかの実施形態では、条件付け療法は、投与すると、内因性リンパ球を閾値未満に減少させ、ドナーT細胞(例えば、改変ヒトT細胞、例えば、改変同種異系ヒトT細胞)の増殖を助けることを意図している。いくつかの実施形態では、条件付け療法は、レシピエントに投与されると、ドナーT細胞(例えば、改変ヒトT細胞、例えば、改変同種異系ヒトT細胞)が増殖するのにより最適な微環境を生成する。いくつかの実施形態では、条件付け療法は、レシピエントに投与されると、ドナーT細胞(例えば、改変ヒトT細胞、例えば、改変同種異系ヒトT細胞)がエフェクター機能を有するのにより最適な微環境を生成する。
【0350】
いくつかの実施形態では、LD化学療法は、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの化学療法薬からなる。いくつかの実施形態では、LD化学療法は、1回以上の用量のシクロホスファミドを投与することからなる。いくつかの実施形態では、LD化学療法は、1回以上の用量のフルダラビンを投与することからなる。いくつかの実施形態では、LD化学療法は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第9,855,298号明細書に記載されるように、1回以上の用量の追加化学療法薬(例えばシクロホスファミド+フルダラビン)と組み合わせて1回以上の用量のシクロホスファミドを投与することからなる。いくつかの実施形態では、LD化学療法は、白血球搬出を誘導するために、放射線照射と組み合わせられる。
【0351】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、静脈内投与される(例えば、静脈注入として)。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの注入は、約200mg/m2~約2000mg/m2の用量で投与される(m2はレシピエントの体面積を指す)。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの注入は、約300mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの注入は、約500mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの注入は、約750mg/m2の用量で投与される。
【0352】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、少なくとも1用量、2用量、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、又は10用量からなる注入として投与される。いくつかの実施形態では、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、又は32時間以下の介在間隔で2回以上のシクロホスファミドの逐次注入が投与される。いくつかの実施形態では、1日、2日、3日、4日、又は5日以下の介在間隔で2回以上のシクロホスファミドの逐次注入が投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの逐次注入間の介在間隔は同じである。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの逐次注入間の介在間隔は異なる。いくつかの実施形態では、2日、3日、4日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、又は12日間の間隔以内でシクロホスファミドの2回以上の逐次注入が投与される。
【0353】
いくつかの実施形態では、フルダラビンは、静脈内投与される(例えば、静脈注入として)。いくつかの実施形態では、フルダラビンの注入は、約10mg/m2~約900mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、フルダラビンの注入は、約30mg/m2の用量で投与される。
【0354】
いくつかの実施形態では、フルダラビンは、少なくとも1用量、2用量、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、又は10用量のシクロホスファミドからなる注入として投与される。いくつかの実施形態では、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、又は32時間以下の介在間隔で2回以上のフルダラビンの逐次注入が投与される。いくつかの実施形態では、1日、2日、3日、4日、又は5日以下の介在間隔で2回以上のフルダラビンの逐次注入が投与される。いくつかの実施形態では、フルダラビンの逐次注入間の介在間隔は同じである。いくつかの実施形態では、フルダラビンの逐次注入間の介在間隔は異なる。いくつかの実施形態では、2日、3日、4日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、又は12日間の間隔以内でフルダラビンの2回以上の逐次注入が投与される。
【0355】
いくつかの実施形態では、LD化学療法は、化学療法薬の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、LD化学療法は、シクロホスファミドとフルダラビンとの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンは同時投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンは逐次投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンは逐次投与され、フルダラビンの投与間の介在間隔は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、又は20時間以下である。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドはフルダラビンの投与前に投与され、投与間の介在間隔は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、又は20時間以下である。
【0356】
いくつかの実施形態では、LD化学療法は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、又は12日間毎日投与される。いくつかの実施形態では、LD化学療法は1~4日間毎日投与される。いくつかの実施形態では、LD化学療法は3日間毎日投与される。
【0357】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンを含むLD化学療法は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、又は12日間毎日投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンを含むLD化学療法は1~4日間毎日投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド及びフルダラビンを含むLD化学療法は3日間毎日投与される。
【0358】
いくつかの実施形態では、LD化学療法(例えば、シクロホスファミド及びフルダラビン)の投与は、IL-7、IL-15、IL-2、IL-21、IL-10、IL-5、IL-8、MCP-1、PLGF、CRP、sICAM-1、sVCAM-1、又は任意のこれらの組み合わせの血中濃度の増加を伴う。いくつかの実施形態では、LD化学療法(例えば、シクロホスファミド及びフルダラビン)の投与は、パーフォリン、MIP-1b、又は任意のこれらの組み合わせの血中濃度の低減を伴う。いくつかの実施形態では、LD化学療法(例えば、シクロホスファミド及びフルダラビン)の投与は、リンパ球減少症を伴う。いくつかの実施形態では、LD化学療法(例えば、シクロホスファミド及びフルダラビン)の投与は、対象における制御性T細胞の低減(例えば枯渇)を伴う。
【0359】
いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する前に、LD化学療法レジメンを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日前に、LD化学療法レジメンを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、又は少なくとも10日前に、LD化学療法レジメンを投与される。
【0360】
いくつかの実施形態では、対象は、LD化学療法レジメンを1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日の間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、LD化学療法レジメンの完了後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日の間投与される。いくつかの実施形態では、対象は、LD化学療法レジメンを1~3日間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、LD化学療法レジメンの完了後、少なくとも2日間(例えば48時間)であるが7日以下の間投与される。いくつかの実施形態では、対象は、LD化学療法レジメンを約3日間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、LD化学療法レジメンの完了後、少なくとも2日間(例えば48時間)であるが7日以下の間投与される。
【0361】
いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する前に、シクロホスファミド及びフルダラビンを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日前に、シクロホスファミド及びフルダラビンを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団を投与する少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、又は少なくとも10日前に、シクロホスファミド及びフルダラビンを投与される。
【0362】
いくつかの実施形態では、対象は、シクロホスファミド及びフルダラビンを1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日の間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与完了後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日の間投与される。いくつかの実施形態では、対象は、シクロホスファミド及びフルダラビンを1~3日間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与完了後、少なくとも2日間(例えば48時間)であるが7日以下の間投与される。いくつかの実施形態では、対象は、シクロホスファミド及びフルダラビンを約3日間投与され、改変T細胞(例えば、改変ヒトCAR T細胞)を含む細胞の集団は、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与完了後、少なくとも2日間(例えば48時間)であるが7日以下の間投与される。
【0363】
IV.CAR-T療法に伴う臨床転帰を改善させるためのキット
本開示はまた、臨床転帰を改善させるために、どちらも本明細書に開示される、NK細胞阻害剤と組み合わせた遺伝子改変CAR-T細胞の集団を使用するためのキットを提供する。こうしたキットは、本明細書に開示される遺伝子改変CAR-T細胞のいずれか、又はCARコンストラクトをコードする核酸(例えばAAVベクター)を含む1つ以上の容器を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上のリンパ球枯渇剤と1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む容器を更に含み得る。或いは、又はそれに加えて、キットは、NK細胞阻害剤のいずれかと1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を更に含み得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかで使用するための指示を含み得る。同梱される指示は、ヒト患者において目的の活性を達成するための、遺伝子改変CAR-T細胞、リンパ球枯渇剤、及び/又はNK細胞阻害剤を投与することの説明を含み得る。キットは、ヒト患者が治療を必要としているか否かを特定することに基づいて治療に適したヒト患者を選択することの説明を更に含み得る。
【0365】
本明細書に記載される遺伝子改変CAR-T細胞、リンパ球枯渇剤、及び/又はNK細胞阻害剤の集団の使用に関する指示は、一般的には、目的の治療のための投薬量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位容量、バルクパッケージ(例えば複数用量パッケージ)又は副単位用量であり得る。本開示のキット内で供給される指示は、典型的には、ラベル又は添付文書上の書面指示である。ラベル又は添付文書は、遺伝子改変T細胞の集団が、対象における腎細胞癌を治療する、発病を遅らせる、及び/又は緩和するために用いられることを示す。
【0366】
本明細書で提供されるキットは、好適なパッケージング内にある。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージングなどが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、経鼻投与装置、又は注入装置などの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも検討される。キットは、滅菌接近ポート(sterile access port)を有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈注射用溶液袋又はバイアルであり得る)。容器はまた、滅菌接近ポートを有し得る。
【0367】
キットは、任意選択的に、緩衝材及び解説情報などの追加の構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上の又は容器に付随したラベル又は添付文書とを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記で説明されたキットの内容を含む製造物品を提供する。
【0368】
一般的技術
本開示の実施では、別段の指摘がない限り、当該技術分野の範囲内にある分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来技術が用いられる。こうした技術は、例えば下記の文献で完全に説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995);DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1985);Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.1984);Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986);及びA practical Guide To Molecular Cloning(B.Perbal,John Wiley & Sons Inc.,1984)。
【0369】
更に詳述する必要なく、当業者であれば、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈すべきであり、本開示の残りの部分をいかなる意味においても限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、参照により本明細書で参照される目的又は主題に関して組み込まれる。
【実施例】
【0370】
本開示を、その特定の実施形態を参照して記載したが、本開示の真の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことができ、等価物を置換することができることが当業者には理解されよう。更に、特定の条件、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程又は工程を本開示の目的、趣旨、及び範囲に適合させるように、多くの改変を行うことが可能である。こうした改変の全てが本開示の範囲内に入るものと意図される。
【0371】
実施例1.改変ヒトCAR T細胞の調製。
この実施例は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現し、TCR遺伝子及びβ2M遺伝子の発現を欠く、同種異系改変ヒトT細胞の生産について説明する。細胞は、がん抗原、例えばCD19及び/又はBCMAを標的化するキメラ抗原受容体を発現することができる。これらのCAR T細胞を製造する方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018-0325955号明細書に記載されている。
【0372】
簡潔には、初代ヒトT細胞を、最初に、TRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号28)及びB2M(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号29))を標的化するCas9又はCas9:sgRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体でエレクトロポレーションした。TRAC遺伝子座におけるDNA二重鎖切断を、下記で説明する相同組み換え修復によって修復した。
【0373】
抗CD19CAR T細胞の生成
抗CD19CAR T細胞を生成するために、TRAC遺伝子座におけるDNA二重鎖切断を、キメラ抗原受容体(CAR)カセット(配列番号58)に隣接するTRAC遺伝子座に対して右及び左の相同性アームを含有する配列番号57のヌクレオチド配列を含む組み換えアデノ随伴アデノウイルスベクター、血清型6(AAV6)による相同組み換え修復によって修復した。CARは、CD19に対して特異的なマウス抗体から誘導される一本鎖可変フラグメント(scFv)と、CD8ヒンジ領域と、膜貫通ドメイン並びにCD3z及びCD28シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ドメインと、を含んだ。CARのアミノ酸配列、及びこれをコードするヌクレオチド配列は配列番号39及び40にそれぞれ記載される。AAV6を、Cas9:sgRNA RNP(1μMのCas9、5μMのgRNA)と共に活性化ヒトT細胞まで送達した。ヌクレオフェクション混合物は、Nucleofector(商標)溶液、5×106細胞、1μMのCas9及び5μMのgRNA(Hendel et al.,Nat Biotechnol.2015;33(9):985-989,PMID:26121415において記載される)を含有した。
【0374】
各RNP複合体は、saCas9、及びTRAC中の配列番号28又はβ2M中の配列番号29を標的化する2つのsgRNAのうちの1つを含んだ。例示的なTRAC sgRNAとしては、配列番号18及び22が挙げられる。例示的なTRAC sgRNAスペーサーとしては、配列番号19及び23が挙げられる。例示的なβ2M sgRNAとしては、配列番号20及び24が挙げられる。例示的なβ2M sgRNAスペーサーとしては、配列番号21及び25が挙げられる。以下のsgRNAを使用した:TRAC(配列番号22)及びβ2M(配列番号24)。gRNAの非修飾バージョン(又は他の修飾バージョン)も使用され得る(例えば、配列番号18及び配列番号20)。
【0375】
エレクトロポレーションから約1週間後、細胞は、未処理のままであるか、又は酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)/イオノマイシンで一晩処理された。翌日、細胞をフローサイトメトリのために処理して(例えば、Kalaitzidis D et al.J Clin Invest 2017;127(4):1405-1413)、編集された細胞集団の細胞表面でTRAC及びβ2Mの発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表5):
【0376】
【0377】
抗CD19CAR発現は、ビオチン化組み換えヒトCD19(ACROBIOSYSTEMS INC;CD9-H825)を使用して検出された。
【0378】
抗BCMA CAR T細胞の生成
抗BCMA CAR T細胞を生成するために、TRAC遺伝子座における二重鎖切断を、配列番号83のヌクレオチド配列を含むAAV6(配列番号86のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードする、配列番号84におけるドナー鋳型を含む)による相同組み換え修復によって修復し、AAV6をCas9:gRNA RNP(1μM Cas9、及び5μM gRNA)と共に活性化同種異系ヒトT細胞に送達する。以下のgRNAを使用することができる:TRAC(配列番号22)及びβ2M(配列番号24)。gRNAの非修飾バージョン(又は他の修飾バージョン)も使用され得る(例えば、配列番号18及び配列番号20)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞を、抗CD19CAR+T細胞に関して上述したようにフローサイトメトリのために処理するが、以下の相違を有する。抗BCMA CAR発現は、ビオチン化組み換えヒトBCMA(ACROS Cat#BC7-H82F0)を使用して検出された。
【0379】
実施例2:CAR T細胞上でのCD38発現。
CAR T細胞上のCD38細胞の発現を、フローサイトメトリによって測定した。具体的には、上記のエレクトロポレーション工程から約15日後に、実施例1で概説したように調製した抗CD19及び抗BCMA CAR T細胞を抗体のパネルで染色し、CD38発現を測定した。
【0380】
生CAR T細胞をその前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)プロファイルによって、並びにlive/dead染料(cat#L34965、ThermoFisher Scientific)でゲートをかけた。続いて、細胞を抗体のパネル:CD38 FITC(Clone HIT2、BioLegend)、CD3 PE(UCHT1、Biolegend)、CD4 APC/Cy7(RPA-T4、Biolegend)、及び CD8 Pacific Blue(SK-1、Biolegend)で染色した。続いてCD3T細胞にゲートをかけて、CD38発現を測定した。CD38+集団のゲーティングカットオフ(gating cut-off)を確立するために、蛍光マイナスワン(FMO)対照染色細胞を用いた(
図1C)。データは、抗BCMA(70.5%)及び抗CD19(87.1%)CAR T細胞の大部分がCD38+を発現することを示す。
【0381】
実施例3:正常なPBMCからのNK及びT細胞上のCD38発現。
末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナーから回収して、正常な免疫細胞におけるCD38発現を評価した。2つのドナー(ドナー3469及びドナー3383)から回収したPBMCを、10%の補体(プールされた補体血清、Innovative Research,Inc.)を含む又は含まない培地(5%のヒトAB血清(cat#HP1022HI、Valley Biomedical)を追加したX-vivo培地(cat#04-744,Lonza)、IL-2及びIL7)で培養した。補体が媒介する溶解が抗CD38抗体によってトリガされると、細胞が、補体を含む又は含まない培地中で培養されて、CD38+細胞に対する補体の効果を評価した。インビトロ培養の0日目(
図2A~2D及び3A~3D)及び72時間(
図4A~4D及び5A~5D)に、フローサイトメトリを用いて、NK細胞(CD3-、CD56+)及びT細胞(CD3+)中のCD38発現を評価した。フローサイトメトリに使用した抗体パネルは、CD3 PE(UCHT1、BioLegend)、CD38 FITC(Clone HIT2、BioLegend)、CD56 APC(HCD56、BioLegend)、及びCD69 PECY5(FN50、BioLegend)であった。
【0382】
0日目(培養後1時間)に、NK細胞の大部分、及びT細胞の約半分が、その細胞表面上でCD38を発現した。ドナー3469由来のPBMCは、NK細胞の96.1%(培地のみ)及び96.6%(培地+10%補体)でCD38発現を示した(
図2C~2D)。培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養したT細胞上のCD38発現を、46.5%及び44.9%でそれぞれ測定した(
図2A~2B)。同様に、培地、又は10%の補体を追加した培地で培養したドナー3383由来のPBMCは、NK細胞の97.2%(培地のみ)及び97.0%(培地+10%補体)、並びにT細胞の57.9%(培地のみ)及び58.2%(培地+補体)でCD38を発現した(
図3A~3D)。
【0383】
72時間の培養の後、NK細胞及びT細胞の大部分がその細胞表面上でCD38を発現した。ドナー3469由来のPBMCを、培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養した場合、CD38発現は、NK細胞の98.4%(培地のみ)及び99.5%(培地+10%補体)で検出された(
図4C~4D)。培地のみ、又は10%の補体を追加した培地で培養したT細胞上のCD38発現を、85.3%及び87.9%でそれぞれ測定した(
図4A~4B)。同様に、培地、又は10%の補体を追加した培地で培養したドナー3383由来のPBMCは、NK細胞の99.2%(培地のみ)及び99%(培地+10%補体)、並びにT細胞の71%(培地のみ)及び82.6%(培地+補体)でCD38を発現した(
図5A~5D)。
【0384】
これらのデータは、CD38活性マーカーは、NK細胞の大部分(>90%)に存在し、また、細胞がインビトロで培養される時、補体の有無にかかわらず高いレベルのCD38発現が維持されることを示した。CD38発現は、正常なT細胞集団では比較的低い(約50%)が、CD3+T細胞中のCD38発現は、培地のみでは72時間の培養後に71%及び85.3%に増加し、10%の補体を追加した培地では72時間の培養後に87.9%及び82.6%に増加した。補体によって媒介される溶解は、誘発抗CD38抗体(例えばダラツムマブ)であることが過去に報告されているが、データは、補体の存在はCD38+NK又はT細胞数の細胞数に影響を及ぼさないことを示す。
【0385】
実施例4:ダラツムマブの処理はNK細胞を枯渇させたが、T細胞数は影響を受けないままであった。
NK及びT細胞上のCD38の発現レベルに基づき、こうした細胞に対する抗CD38抗体であるダラツムマブ(TAB-236、Creative Biolabs)の効果を評価した。健康なドナー由来のPBMCを、0.01、0.1、又は1μg/mLのダラツムマブを含有する培地中で96時間培養した。細胞培養に対する10%補体の効果も試験した。未処理の細胞及び0.01、0.1、又は1μg/mLのアイソタイプ対照mAb(ヒトIgG1k)(カタログ#403501、BioLegend)で処理した細胞を対照として用いた。96時間の培養後、NK及びT細胞の頻度及び数を測定した。
【0386】
ダラツムマブのインビトロ培養は、NK細胞の頻度及び数の用量依存的な低減をもたらした(
図6A~6B)。試験された最大用量の1μg/mLで、ダラツムマブは96時間後にNK細胞数を約75%減少させた。アイソタイプ対照mAbによる処理はNK細胞数に影響を及ぼさなかったため、この効果は、ダラツムマブに特異的である。10%補体を細胞培養に添加しても、NK細胞のダラツムマブの効果は変化しなかったため、NK細胞の減少は、これらの培養条件下では補体依存性ではない。
【0387】
別のドナー由来の第2の実験PBMCでは、ダラツムマブはわずか72時間後にNK細胞数を約57%減少させた(データは示さない)。これらのデータは、ダラツムマブが異なるドナー集団由来のNK細胞に対して同様の効果を有することを実証する。
【0388】
NK細胞に対するその効果とは反対に、ダラツムマブは、T細胞の数又は頻度に影響を及ぼさなかった(
図6C~6D)。CD38発現がT細胞上で検出され(
図2A~2B及び
図3A~3B)、PBMCのインビトロ培養がT細胞中でCD38表面発現のアップレギュレーションをもたらしたが(
図4A~4B及び
図5A~5B)、T細胞数は、ダラツムマブを培養培地に添加したことによる影響を意外にも受けなかった。
【0389】
実施例5:ダラツムマブ処理はCAR T数に影響を及ぼさない。
破壊されたβ2M遺伝子を有するCAR T細胞にダラツムマブ処理が影響を及ぼすかどうかを評価するために、実施例1で生成された抗BCMA CAR T細胞を、10%の補体を含む又は含まないダラツムマブで処理した。72時間の培養期間後、実施例3に記載するように、抗BCMA CAR T細胞の数及び頻度をフローサイトメトリアッセイで測定した(
図7A~7B)。抗BCMA CAR T細胞の大部分(70.5%)がCD38を発現したが(
図1A)、10%の補体の有無に関わらず、ダラツムマブによる処置は、抗BCMA CAR T細胞の数又は頻度に影響を及ぼさなかった。
【0390】
実施例6:ダラツムマブ処理はCAR T細胞を活性化しない。
ダラツムマブがCAR T細胞を活性化し、それに続く増殖又は活性化誘発性の細胞死を引き起こすかどうかを判定するために、抗CD19CAR T細胞を、ダラツムマブのみ、又は2μg/mLのヤギ抗ヒトアイソタイプ対照抗体を含むダラツムマブを用いて24時間培養した。ダラツムマブは、0.01、0.1、又は1μg/mLの濃度で使用した。未処理の細胞、又はIgG1kアイソタイプ対照mAbで処理した抗CD19CAR T細胞を、対照として使用した。24時間のインキュベーション期間の最後に、初期活性化マーカーであるCD69の発現を評価した(
図8A~8N)。代表的なフローサイトメトリパネルに示すとおり、CD69の発現は、処理に関係なく試験された全ての抗CD19CAR T細胞集団で変化しなかった。したがって、データは、抗CD19CAR T細胞上でCD38細胞表面マーカーが発現したにもかかわらず(87.1%)(
図1B)、ダラツムマブ処理が抗CD19CAR T細胞の活性化を誘導しなかったことを示す。
【0391】
実施例7:ダラツムマブ前処理は、NK細胞に誘導されるCAR T細胞溶解を減少させた。
ダラツムマブが、NK細胞が媒介するCAR T細胞溶解を鈍らせるかどうかを判定するために、抗BCMA CAR T細胞を、0.01、0.1、又は1μg/mLの濃度のダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbのいずれかで60時間前処理した精製NK細胞と共培養した(
図9A)。60時間の前処理期間の最後に、50,000個のefluorでラベリングした抗BCMA CAR T細胞を、150,000個のNK細胞及びDara/アイソタイプ対照を含有するプレートに添加し、更に24時間インキュベートした。24時間の共培養期間の最後に、抗BCMA CAR T細胞の溶解を、DAPIを用いた細胞死滅アッセイ(cell-kill assay)で測定した。
【0392】
具体的には、抗BCMA CAR T細胞を、5μMのefluor670(カタログ#65-0840-90;ThermoFisher Scientific)でラベリングし、洗浄し、NK細胞との共培養物(3:1(NK:T)比)中でインキュベートした。共培養物を24時間インキュベートした。インキュベーションの後、ウェルを洗浄し、培地を、5mg/mLのDAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する150μLの1×FACS緩衝液、及び12.5μLのCountBrightビーズ(C36950;ThermoFisher Scientific)で置き換えた。細胞を、フローサイトメトリによって分析した(すなわち、生存細胞はDAPI染色陰性である)。ダラツムマブで前処理した結果、抗BCMA CAR T細胞の溶解は用量依存的に減少した(
図9A)。1μg/mLのダラツムマブで60時間前処理したNK細胞は、抗BCMA CAR T細胞溶解を引き起こするその能力を50%減少させた。アイソタイプ対照mAbで前処理したNK細胞と共培養した抗BCMA CAR T細胞は、NK細胞が媒介するCAR T細胞溶解の変化に影響を及ぼさなかったため、この効果はダラツムマブに特異的である。
【0393】
実施例8:NK及びCAR T細胞に対する高濃度のダラツムマブの効果。
高濃度のダラツムマブ(10μg/mL)がCAR T細胞を活性化させ、それに続く増殖又は活性化誘発性の細胞死を引き起こすかどうかを判定するために、B2Mが欠乏した抗BCMA CAR T細胞を、0.1、1、又は10μg/mLの濃度のダラツムマブと共に24時間培養した。未処理の細胞、又はIgG1kアイソタイプ対照mAbで処理したB2M欠乏抗BCMA CAR T細胞を、対照として使用した。
図10Aは、ダラツムマブの濃度を10μg/mLに増加させても、B2M欠乏CAR T細胞数が有意に減少しなかったことを実証する。
【0394】
10μg/mLのダラツムマブが、NK細胞が媒介するCAR T細胞溶解を鈍らせるかどうかを判定するために、B2M欠乏抗BCMA CAR T細胞を、0.1、1、又は10μg/mLの濃度のダラツムマブ又はアイソタイプ対照mAbのいずれかで60時間前処理した精製NK細胞と共培養した。簡潔に言えば、NK細胞を1ウェルあたり50,000又は150,000細胞で平板培養し、0、0.1、1、及び10μg/mLの濃度のダラツムマブ又はアイソタイプ対照で処理した。NK細胞をダラツムマブで60時間処理した後、抗BCMA CAR T細胞を、5μMのefluor670(カタログ#65-0840-90;ThermoFisher Scientific)でラベリングし、洗浄し、ダラツムマブで処理したNK細胞との共培養物に1ウェルあたり50,000細胞で播種して、1:1又は3:1(NK:T)の比にした。共培養物を更に24時間インキュベートした。インキュベーションの後、ウェルを洗浄し、培地を、5mg/mLのDAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する150μLの1×FACS緩衝液、及び12.5μLのCountBrightビーズ(C36950;ThermoFisher Scientific)で置き換えた。細胞を、フローサイトメトリによって分析した(すなわち、生存細胞はDAPI染色陰性である)。ダラツムマブでの前処理は、抗BCMA CAR T細胞をNK誘導細胞溶解から用量依存的に保護した(
図10B~10C)。CAR T細胞をNK細胞と1:1比で共培養した場合、NK細胞を0.1μg/mLのダラツムマブで前処理すると、抗BCMA CAR T細胞溶解に対して91%の最大保護効果を示した(
図10B)。NK:CAR T細胞の比を3:1に増加させた場合、ダラツムマブは、1μg/mLのわずかに高い用量で、NK細胞溶解からの有意な保護効果を依然としてもたらした(85%保護)(
図10C)。
【0395】
実施例9:NK及びCAR T細胞に対するダラツムマブの用量増加の効果。
ダラツムマブは、診療所では16mg/kg((225μg/mL当量)で処方されている。NK及びCAR T細胞に対する高濃度のダラツムマブの効果を判定するために、B2M欠乏抗BCMA CAR T細胞を、前述の実施例に記載されるとおりの方法を用いてそれぞれ濃度0.01、0.1、1、10、100、又は300μg/mLのヒトIgG1κ又はダラツムマブのいずれかで60時間前処理した精製NK細胞と共培養した。前述の実施例に記載されるとおりの方法を用いて前処理したNK細胞との共培養から72時間後に、フローサイトメトリを用いて、NK及びCAR T細胞の数を評価した。
【0396】
図11Aは、ダラツムマブの用量を増加させると、暴露から72時間後にNK細胞数が低減したことを実証する。1μg/mLのダラツムマブに暴露した後で29%のNK細胞の低減が見られ、一方で300μg/mLのダラツムマブでは更に38%のNK細胞の低減がもたらされる。対照的に、BCMA CAR T細胞数は、高いダラツムマブの濃度による影響を受けなかった(
図11B)。
【0397】
実施例10:急性リンパ芽球性白血病のマウス異種移植モデルにおけるNK及びCAR T細胞に対するダラツムマブのインビボ効果。
播種マウスモデルを用いて、ダラツムマブを含む、及び含まない場合の両方で、NK細胞の存在下でのB2M不足抗CD19CAR T細胞のインビボ効力を更に評価した。
【0398】
24頭の5~8週齢の雌、CIEA NOG(NOD.Cg-PrkdcscidI12rgtm1Sug/JicTac)マウスを、試験開始の5~7日前に、換気されたマイクロアイソレーターケージ内で個別に収容し、無菌条件下で維持した。研究開始時に、マウスを12の治療群に分けた。マウスを静脈接種して(尾静脈)、播種性疾患をモデリングした。1日目に、マウスにNALM6腫瘍細胞の静脈注射を投与した(マウスあたり0.5×106細胞)。この実験で使用したNALM6腫瘍細胞は、GFP及び発光酵素を発現するヒト急性リンパ芽球性白血病(ALL)腫瘍細胞株であった。2日目に、群2~12に、NK細胞、PBS、ダラツムマブ(DARA)、及び/又はIgG1の静脈注射を投与した。PBS及びIgG1は陰性対照として含めた。群1~3及び7~8には、研究の4日目に抗CD19CAR T細胞(マウスあたり4×106細胞)の静脈注射も投与した。注射された抗CD19CAR T細胞は、実施例1に記載されるとおりに調製した。群3。6、9、及び12は、ダラツムマブの代わりにIgG1で処理した陰性対照群であった。IgG1群の予期せぬ効果は存在しなかった(データは示さず)。実験群の詳細を下記の表6に示す。
【0399】
【0400】
研究過程において、マウスを毎日監視し、体重を週2回測定した。注射後2週間で、マウスから血液を回収し、フローサイトメトリによって細胞数を測定して、循環中のNK細胞に対するDARAの効果を判定した。
図12は、DARAがインビボマウスモデル中のNK細胞数を効果的に低減させたことを示す。
【0401】
疾患負荷を、発光酵素を発現するレンチウイルスベクターでマークしたNALM6腫瘍細胞の生物発光イメージングによって測定した。簡潔に言えば、マウスを麻酔し、腹腔内注射によってルシフェリンを投与した。発光酵素でマークしたNALM6白血病細胞は、ルシフェリンを代謝し、Translations Drug Development,LLC(Scottsdale,AZ)により採用され、本明細書に記載される方法を用いて、放射された光を検出して定量化した。この方法を用いて、研究の2日目に生物発光(BLI;合計ROI、光子/秒)を開始して週に2回測定し、白血病負荷の測定及び生着の検出を可能にする。
【0402】
NK細胞、DARA、又はCD19 CAR T細胞を投与されなかった対照群10、11、及び12は、15日目で生物発光の急激な増加を示し、20日を超えて生存しなかった(
図13)。抗CD19CAR T細胞による処理(群1:
図13)は、対照と比較して腫瘍進行を遅らせ、生存率を増加させた。NK細胞の存在は、抗CD19CAR T細胞のみの効力に悪影響を及ぼすようには見えなかった。しかしながら、NK細胞の存在下では、ダラツムマブの添加により、抗CD19CAR T細胞の効率が劇的に増加した(群8、
図13)。予期せぬことに、ダラツムマブのみ(群11)及びNK細胞の存在下でのダラツムマブ(群5)も、対照と比較して腫瘍成長を遅らせ、CD19CAR T細胞と組み合わせると相乗効果を有した(群2)(
図13)。
【0403】
有意なエンドポイント(罹患前後までの時間)及びT細胞生着の効果も評価した。研究の全ての群に対して動物死亡率のパーセンテージ及び死亡までの時間を記録した。マウスは、瀕死状態に達する前に安楽死させた。以下の基準の1つ以上が適合した場合、マウスは瀕死状態にあると定義して犠牲にした:
・1週間を超える期間にわたり持続する20%以上の体重の減少;
・摂食、飲水、運動性、並びに排尿及び/又は排便能力などの正常な生理学的機能を阻害する腫瘍;
・過剰な体重減少(>20%)をもたらす長期の過剰な下痢;又は
・持続的な喘鳴及び呼吸困難。
【0404】
動物は、臨床的観察によって定義して、下記のものなどの長期の又は過剰な疼痛又は困難が存在する場合も瀕死であると見なされた:衰弱、猫背の姿勢(hunched posture)、麻痺/不全麻痺、腹部膨張、潰瘍形成、膿瘍、痙攣、及び/又は出血。動物の生存率に対するダラツムマブの効果を下記の表7に示し、ここで統計的有意性はマン-ホイットニー検定を用いて決定し、p値はPBS対照と比較して計算した(例えば、群10対群1、群2、など)。
【0405】
【0406】
実施例11:ダラツムマブは、抗BCMA CAR-T細胞の抗腫瘍活性を強化し、多発性骨髄腫の異種移植マウスモデルにおける生存率を延長する。
免疫不全NOGマウスにおけるダラツムマブ及び抗BCMA CAR-T細胞処理の組み合わせの効果を、皮下MM.1S異種移植モデルで試験した(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTac)。簡潔に言えば、5~8週齢の雌NOGマウスを、換気されたマイクロアイソレーターケージ内で個別に収容し、無菌条件下で維持した。動物はそれぞれ右側腹部に50%マトリゲル中5×106個のMM.1S細胞の皮下接種を受けた。平均腫瘍容積が150mm3(約125~175mm3)に達した時、マウスを各群5匹のマウスの群に無作為化した。試験群は、未処理治療群、ダラツムマブのみの処理、抗BCMA CAR-T細胞のみの処理(低用量又は高用量)、及びダラツムマブと組み合わせた抗BCMA CAR-T細胞(低用量又は高用量)を含んだ。0日目に、抗BCMA CAR-T細胞を、0.8×106(低用量)又は2.4×106(高用量)CAR+T細胞の静脈注射によって投与した。ダラツムマブは、抗BCMA CAR-T細胞投薬の2日前に開始して、週2回15mg/kgを腹腔内(IP)投薬した。
【0407】
腫瘍容積及び体重は、週に2回測定され、個々のマウスは、それらの腫瘍容積が≧2000mm
3に達した時に安楽死させられた。試験された抗BCMA CAR-T細胞のいずれの用量でも、腫瘍阻害の最大効力は、各単一治療群の処理と比較して組み合わせ治療群で観察された。更に、長期の生存率は、低用量(
図14A)及び高用量(
図14B)抗BCMA CAR-T細胞処理のいずれにおいても、ダラツムマブ又は抗BCMA CAR-T細胞のいずれかの単一治療群処理と比較して、組み合わせ治療群で観察された。26日目における腫瘍容積を
図14Cに示す。高用量の抗BCMA CAR-T細胞、又はダラツムマブのみのいずれかで処理された動物は、約1500mm
3(それぞれ1486mm
3及び1475mm
3)の平均腫瘍容積を示し、一方で組み合わせ治療群における平均腫瘍容積は668mm
3の平均を示した(
図14C)。
【0408】
要約すると、これらの結果は、抗BCMA CAR-T細胞とダラツムマブとの組み合わせは、抗BCMA CAR-T細胞又はダラツムマブのみのいずれかと比較して、多発性骨髄腫のマウスモデルにおける腫瘍阻害及び生存率の増加の両方における効力の増加を示したことを実証する。
【0409】
【0410】
【0411】
【0412】
【0413】
【0414】
【0415】
【0416】
【0417】
【0418】
【0419】
【0420】
【0421】
【0422】
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
【0427】
【0428】
【0429】
【0430】
【0431】
【0432】
【0433】
【0434】
【0435】
【0436】
【0437】
【0438】
【0439】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わせが可能である。本明細書に開示される各特徴は、同じ、等価の、又は同様の目的に役立つ代替的な特徴へと置き換えが可能である。つまり、特に記載されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価又は同様の特徴の単なる一例である。
【0440】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に把握することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の種々の変更及び修正を行い、本発明を各種の用途及び条件に適合させることができる。したがって、その他の実施形態も請求項の範囲に含まれるものとする。
【0441】
等価物
本明細書でいくつかの本発明の実施形態を説明及び図示してきたが、当業者であれば、本明細書で説明される機能を実施し、並びに/又は結果及び/若しくは1つ以上の利点を得るための様々なその他の手段及び/又は構造を容易に想定するものであり、こうした変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書で説明される本発明の実施形態の範囲内にあるものと見なされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明される全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成は例示的であることを意図し、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成は、本発明の教示が適用される特定の用途に依存することを容易に理解するものである。当業者は、本明細書に記載された特定の本発明の実施形態に対する多く等価物を、日常の実験のみを用いて認識するか、又は確認可能である。したがって、上述の実施形態は単に例として提示されており、また、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内において、本発明の実施形態が、具体的に説明及び特許請求される以外の別の方法で実践され得ることを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書で説明される各個別の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合は、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0442】
本明細書中で定義され用いられる全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献中の定義、及び/又は定義される用語の普通の意味を超えて優先されるものと理解されたい。
【0443】
本明細書に開示されている全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれ引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合により文献の全体を包含する場合がある。
【0444】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0445】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する時、「及び/又は」という表現は、等位結合される要素、すなわち、一部の場合では接続的に提示され、その他の場合で離接的に提示される要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されたい。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外に、具体的に特定された要素に関連する又は関連しないに関わらず、その他の要素が任意選択的に提示されてよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する参照は、「~を備える」などのオープンエンド用語と共に使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0446】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する時、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する際に、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、要素のリストのうち少なくとも1つを含むが、2つ以上の数、及び任意選択的に追加的な列挙されていない項目も含むものと解釈されるべきである。「~のうち1つのみ(only one of)」又は「~のうちの厳密に1つ(exactly one of)」、或いは特許請求の範囲で使用される時の「~からなる(consisting of)」などの反対を明らかに示す用語のみが、多数の要素又は要素のリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用する時、用語「又は」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合のみ、排他的代替用語(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。「本質的に~からなる(Consisting essentially of)」は、特許請求の範囲内で使用される時、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0447】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する時、「少なくとも1つ」という語句は、1つ以上の要素のリストを参照して、要素のリスト中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されたあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、また、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しないものと理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定された要素に関連する又は関連しないに関わらず、「少なくとも1つ」という語句を指す、要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、若しくは同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、任意選択的に1つ超のAを含む少なくとも1つのA(且つ任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在しない、任意選択的に1つ超のBを含む少なくとも1つのB(且つ任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA、及び任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのB(且つ任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0448】
同様に、明確に反対に示されない限り、複数の工程又は行為を含む、本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法の工程又は行為の順序は、必ずしもこの方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】