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▶ ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト−ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】圧電振動子アレイの制御
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20220830BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220830BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H04R17/00 332Y
H04R3/00 330
H02N2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576741
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 NL2020050403
(87)【国際公開番号】W WO2020263082
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182089.3
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アッケルマン、ヒルケ ブルル
(72)【発明者】
【氏名】ファン ネール、パウル ルイ マリア ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、アルノ ヴィレム フレデリック
【テーマコード(参考)】
5D019
5H681
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB20
5D019FF01
5H681BB13
5H681DD23
5H681FF21
(57)【要約】
圧電トランスデューサ(11,12,13)のアレイを制御する方法及びシステム。それぞれの駆動信号(Vn)はトランスデューサに印加される。駆動信号(Vn)は、一つ以上の駆動周波数で振動する交流成分(A)を備え、音響波(Wn)を生成するためにトランスデューサに対応する振動を起こさせる。駆動信号(Vn)の一つ以上は、それぞれのバイアス電圧(Bn)によりオフセットされる。バイアス電圧(Bn)は、トランスデューサ間の共振周波数の差を小さくするよう制御される。残存差をなくすために、トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットへの交流成分(A)は定期的にリセットされる。このようにして、生じる音響波(W1,W2)の位相が同期され得る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電トランスデューサ(11,12)のアレイを制御する方法であって、
それぞれの駆動信号(V1,V2)を前記トランスデューサ(11,12)に印加し、前記駆動信号(V1,V2)は、音響波(W1,W2)を生成するために前記トランスデューサ(11,12)に、対応する振動(T1,T2)を起こさせる一つ以上の駆動周波数(Fc,Fm)で振動する交流成分(A)を備え、
前記駆動信号(V1,V2)の一つ以上がそれぞれのバイアス電圧(B1,B2)によってオフセットされ、前記バイアス電圧(B1,B2)は前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の差を低減するよう制御され、前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、生じる前記音響波(W1,W2)の位相を同期させるために周期的にリセットされる、
方法。
【請求項2】
第1のバイアス電圧(B1)を有する駆動信号(V1)が前記トランスデューサ(11,12)のアレイの第1のトランスデューサ(11)に印加され、前記第1のトランスデューサ(11)で生じる第1の共振周波数(Fr1)が前記トランスデューサ(11,12)のアレイの第2のトランスデューサ(12)を使用して測定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トランスデューサ(11,12)が、バックプレーンを有する基板(10)上又は前記基板(10)内に配置され、検出器が、前記バックプレーンで発生した波の振幅を測定するよう構成される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、結合された音響波の測定された効果が所定の閾値(Wmin)を下回る場合にリセットされる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合された音響波の前記効果が、前記アレイ内の一つ以上のトランスデューサを使用して、及び/又は前記トランスデューサ(11,12)が配置された基板(10)のバックプレーンで発生する波の振幅を測定することによって測定される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数のトランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットの作動が、前記サブセットに対する前記交流成分(A)の同期した極性の反転によってリセットされる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスデューサのサブセットへの前記駆動信号は、前記サブセットの局所的な測定に基づいて周期的に変更され、残りの前記トランスデューサへの駆動信号は変更されないままである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1のトランスデューサ(11)に対する第1の駆動信号(V1)が、第2のトランスデューサ(12)に対する第2の駆動信号(V2)と、それぞれの前記バイアス電圧(B1,B2)によって排他的に異なる、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1のトランスデューサ(11)への第1の駆動信号(V1)が、前記アレイ内の別のトランスデューサ(13)への別の駆動信号と同じ前記交流成分(A)を有するが、時間(t)においてシフトされる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
それぞれのトランスデューサ(11,12)によって発生する前記音響波(W1,W2)のそれぞれの音響位相(ΦW1,Φw2)が、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における前記交流成分(A)の駆動位相(Φd1,Φd2)と、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における駆動周波数(Fm)とそれぞれのトランスデューサ(11,12)のそれぞれの共振周波数(Fr1,Fr2)との間の周波数差と、によって決定され、それぞれのトランスデューサ(11,12)によって発生する前記音響波(W1,W2)のそれぞれの周波数が、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における前記交流成分(A)の一つ以上の前記駆動周波数(Fc,Fm)と、それぞれのトランスデューサ(11,12)の前記共振周波数(Fr1,Fr2)と、によって決定される、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイアス電圧(B1,B2)は、前記駆動信号(V1,V2)のそれぞれの位相(Φd1,Φd2)と、前記音響波(W1,W2)のそれぞれの位相(Φw1,Φw2)と、の間のそれぞれの位相シフト(ΔΦdw1,ΔΦdw2)の変動を最小限にするよう制御される、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイアス電圧(B1,B2)は異なるトランスデューサ(11,12)について異なる、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電圧(B1,B2)は、前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の広がりを低下するために反復的に変化させられる、
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
圧電トランスデューサ(11,12)のアレイと、
前記トランスデューサ(11,12)にそれぞれの駆動信号(V1,V2)を印加するよう構成されたコントローラ(20)と、
を備え、
前記駆動信号(V1,V2)は、音響波(W1,W2)を生成するために前記トランスデューサ(11,12)に対応する振動(T1,T2)を起こさせる一つ以上の駆動周波数(Fc,Fm)で振動する交流成分(A)を備え、前記駆動信号(V1,V2)の一つ以上がそれぞれのバイアス電圧(B1,B2)によってオフセットされ、前記バイアス電圧(B1,B2)の大きさは前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の差を低減するよう制御され、前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、生じる前記音響波(W1,W2)の位相を同期させるために周期的にリセットされる、
システム(100)。
【請求項15】
触覚装置を備え、圧電トランスデューサ(11,12)は基板(10)上に配置され、前記基板(10)からのある距離(Z0)における点(P)で強め合う干渉をするそれぞれの音響波(W1,W2)を発生するよう制御される、
請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は圧電トランスデューサに関し、特にトランスデューサアレイを制御するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
音響デバイスは、(音響)イメージング、測定、オーディオ、駆動、触覚フィードバック等、様々な用途に使用されうる。アレイ状に配置すると、複数の音響トランスデューサが一体となって動作し、結合された音響波プロファイルを生成するように構成することができる。例えば、触覚フィードバック/制御、又は(3D)オーディオ等の応用のために、個々の波の位相を空中のある点で強め合う干渉をするように構成することができる。音響トランスデューサは、通常それぞれの音響波を発生させる振動膜で構成される。例えば、圧電材料に交流電気駆動信号(AC電圧)を印加することにより、膜に振動を発生させることができる。しかし、製造公差、膜の応力、変形、長時間の使用、及び/又はアレイ上の温度変化により、トランスデューサの特性に差が生じ、デバイスの全体的な効率が低下することがある。例えば、音響波の位相差がうまく制御されていない場合、干渉パターンが影響を受け、デバイスの効率が低下することがある。
【0003】
音響トランスデューサアレイの操作性及び効率性をさらに向上させることが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの態様によれば、本開示は、圧電トランスデューサのアレイを制御する方法に関する。本方法は、それぞれの(電気)駆動信号をトランスデューサ、例えばトランスデューサの圧電材料部分に印加することを備える。典型的には、駆動信号は一つ以上の駆動周波数で振動する交流成分(AC電圧)を備え、トランスデューサに対応する振動を起こさせる。振動するトランスデューサ、例えば膜は、例えば空気又は他の何らかの媒体中で音響波を発生させるために使用され得る。 いくつかの好ましい実施形態では、ここに記載されるように、駆動信号の一つ以上はそれぞれのバイアス電圧によってオフセットされる。例えば、バイアス電圧の大きさはトランスデューサ間の(実効)共振周波数の差を、例えばバイアス電圧なしの(固有)共振周波数と比較して、低減するよう制御される。
【0005】
発明者は、音響アレイにおいて一つ以上のトランスデューサが共振周波数のような特性に他のトランスデューサと比較して望ましくない逸脱を有し得ることを見いだす。例えば、製造の結果としてトランスデューサの間で直径、厚さ、又は材料にわずかなばらつきが生じ得る。製造後にも、例えば使用中の応力及び/又は温度によって、変動が生じうる。理論に縛られるものではないが、発明者は、そのような変動がトランスデューサアレイの(結合した)機能又は効率に悪影響を及ぼし得ることを見出す。特に、共振周波数の変動は異なるトランスデューサで生じる音響波間の相対的な位相に影響を与え得る。例えば、駆動信号力に対する振動トランスデューサの位相遅れは共振周波数に依存し得る。位相遅延の変動は、駆動周波数が所望のように(変動する)共振周波数に近いときに最も顕著になり得る。駆動信号と生じる振動との間の変動する位相シフトに代えて又は加えて、音響波の支配周波数は、共振周波数によって影響され得る。したがって、音響波は、周波数の望ましくない変動を伴って生成され、相対的な位相差と(周期的な)強め合う干渉の低下とを増大し得る。位相の瞬間的又は時間依存の変動が生じると、異なる波の強め合う干渉に依存する合成波の強度が低下し得る。したがって、音響デバイスの効率が低下しうる。理解されるように、本方法及びシステムは、圧電トランスデューサに対する制御されたバイアス電圧を使用してそれぞれの共振周波数の広がりを低減することにより、これらの問題または他の問題を緩和し得る。共振周波数の残存差は、トランスデューサの少なくともサブセットに対する交流成分を定期的にリセットすることにより、さらに抑制され得る。このような特徴の組み合わせにより、生じる音響波の位相は最適に同期したままであり得る。
【0006】
他の又はさらなる態様は、音響トランスデューサを備える対応するシステム及び装置に関し得る。例えば、システムは、本方法に従った操作行為を実行する回路及び/又はプログラミングを有するコントローラを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の装置、システムおよび方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の請求項、及び添付の図面から、よりよく理解されるであろう。
【0008】
図1A】それぞれの音響波を発生するトランスデューサの断面図である。
図1B】それぞれの駆動信号を示す。
図2A】駆動信号の交流成分と対応する音響波とを示す。
図2B】駆動信号と対応する音響波との交流成分を示す。
図2C】駆動信号と対応する音響波との交流成分を示す。
図2D】駆動信号と対応する音響波との交流成分を示す。
図3A】駆動信号の交流成分の周期的なリセットを示す。
図3B】駆動信号の交流成分の周期的なリセットを示す。
図4A】トランスデューサアレイを示す図である。
図4B】異なるトランスデューサから中心点までの距離を示す。
図5】基板上のトランスデューサのアレイ含むシステムと、対応するコントローラを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数形も含むことが意図される。用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの一つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。用語「備える(comprises及び/又はcomprising)」は、記載された特徴の存在を特定するが、一つ以上の他の特徴の存在又は追加を排除しないことが理解されるであろう。方法の特定のステップが他のステップに後続すると言及されるとき、そうでないと特定されない限り、その特定のステップは前記他のステップに直接続くことができるか、又はその特定のステップを実行する前に一つ以上の中間ステップが実行されることができることがさらに理解されるであろう。同様に、構造又は構成要素間の接続が説明されるとき、そうでないと特定されない限り、その接続は直接又は中間構造或いは構成要素を介して確立され得ることが理解されるであろう。
【0010】
好ましい実施形態は、膜の共振周波数を調整するためにそれぞれの駆動信号にDC電圧を加えること、例えば、アレイ内の隣接する膜の間の任意の差異を補償することを備える。いくつかの実施形態では、周波数差はゼロに調整されないことがある。例えば、周波数を決定する際の精度には限界があり、例えば測定誤差につながる。また、膜の共振周波数間の変動が、DC電圧の使用によって補償されないほど大きいことが起こり得る。例えば、DC電圧は、圧電材料を通るブレークスルー電圧や、電気路を分離する材料(空気でも良い)のブレークスルー電圧によって制限され得る。また、最大許容CD電圧は、加熱効果や電力使用によって制限され得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、例えば誤差推定に基づいて、駆動電圧の極性が膜振動を再同期させるためにリセット又は反転され得る。いくつかの実施形態は、膜の一つまたはグループが受信モードで使用される測定ステップを備えてもよい。このことから共振周波数が確立され得る。直流電圧と周波数シフトとの間の関係は、例えば、モデリング又は実験的に決定され得る。代わりに、これは、例えば直流電圧及び受信電圧をコンデンサと分離して、適応的に行われ得る。共振周波数に残存誤差から誤差推定がされ得る。ある実施形態では、これにより、駆動電圧極性が瞬時に反転するまでの時間が決定され得る。
【0012】
代わりに又は加えて、バックプレーン(膜を含む可撓性のシート)内のガイド波によって引き起こされる定在波パターンを監視するために、いくつかの(別々でもよい)素子/膜を使用することが想定され得る。これらのガイド波は、例えば、膜トランスデューサの大きな開口角のために誘発され得る。定在波パターンの振幅は、全ての素子が同位相で振動しているときに最大となることが予想される。測定された定在波パターンの振幅に基づいて、ランダム/セミランダム/非ランダムパターンで素子群のDC電圧を調整し、駆動電圧極性を反転させるのに必要な時間をモニターすることが可能である。このようにして、製造上の違いによる共振周波数の違いが経時的に確認され得る。
【0013】
以下、本発明の実施形態が示された添付図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。図面において、システム、構成要素、層、及び領域の絶対的及び相対的な大きさは、明確性のために誇張され得る。実施形態は、場合によっては理想化された本発明の実施形態及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明され得る。本明細書及び図面において、同番号は全体を通して同要素を指す。相対的な用語及びその派生は、そのとき説明された、又は議論中の図面に示されたような向きを指すように解釈されるべきである。これらの相対的な用語は説明の便宜のためであって、そうでないと言及されない限り、システムを特定の向きで構築又は動作させることを要求するものでない。
【0014】
図1Aは、それぞれ音響波W1,W2を発生するトランスデューサ11,12の断面図である。音響波は、例えば空気中では、一般に伝播方向に振動する縦波として伝播するが、説明のために、ここでは振動は波の伝播に対し横方向で示されている。また、音響波を伝播させるために気体(空気等)以外の媒体を用いてもよい。例えば、粘性の液体及び固体も、粒子の振動が伝播方向に垂直な剪断波をサポートし得る。ここで説明するような同様の応用は、そのような媒体にも使用され得る。図1Bは、例えば前の図の音響波に対応するそれぞれの駆動信号V1,V2を示す。
【0015】
いくつかの態様によれば、本開示は、圧電トランスデューサ11,12のアレイを制御する方法に関する。典型的には、トランスデューサ(11,12)のアレイは、それぞれの駆動信号V1,V2をトランスデューサ11,12に印加することで制御される。例えば、駆動信号V1,V2は、音響波W1,W2を生成するために対応する振動T1,T2をトランスデューサ11,12に引き起こすために一つ以上の駆動周波数(ここではFc及びFm)で振動する交流成分「A」を備える。好ましい実施形態では、駆動信号V1,V2の一つ以上は、それぞれのバイアス電圧B1,B2でオフセットされる。例えば、バイアス電圧B1,B2は、トランスデューサ11,12間の共振周波数Fr1,Fr2の差を低減するように制御される。
【0016】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ11,12は平面アレイに配置される。例えば、トランスデューサ11,12は、(平面の)基板10上又はその中に配置される。代わりに、湾曲した基板及び配置も想定され得る(図示しない)。基板10は、例えばその形状を別の表面の形状に適合させるために、可撓性であってもよい。好ましい実施形態では、トランスデューサ11,12のそれぞれは、例えば周囲の基板に取り付けられた(可撓性の)膜を備える。例えば、膜は、音響波W1,W2を発生させるそれぞれの振動T1,T2を膜に引き起こすように作動され得る。最も好ましくは、圧電トランスデューサが膜を作動させるために使用される。好ましい実施形態において、圧電材料は、可撓性膜上の層として配置される。また、他の層、例えば圧電層にそれぞれの駆動信号V1,V2を印加するために使用される電極層が設けられ得る。
【0017】
トランスデューサをトランスデューサ11,12のそれぞれの共振周波数Fr1,Fr2において又はその付近の搬送周波数Fcで駆動することで、性能が向上され得る。例えば、膜の第1又は基底共振が用いられる。トランスデューサの共振周波数は比較的高くてもよく、例えば1キロヘルツ超、10キロヘルツ超、100キロヘルツ超、又は1メガヘルツ超であってもよい。そのような高い周波数は、すべての用途に適しているとは限らない。例えば、800ヘルツを超える周波数は、触覚用途にとって感じにくいかもしれない。例えば、触覚フィードバックに最適な周波数は、50-500ヘルツ、好ましくは100-300ヘルツの間であろう。
【0018】
いくつかの実施形態では、駆動信号V1,V2は、トランスデューサの共振周波数Fr1,Fr2に(可能な限り)対応する搬送周波数Fc、用途に応じた包絡線又は変調周波数Fm、を含む複数の周波数を備える。例えば、触覚フィードバック装置は、200Hzの変調周波数で振幅変調された40kHzの搬送波周波数を使用してもよい。また、三つ以上の周波数、又は、例えばそれぞれのトランスデューサの共振周波数を含む周波数の帯域幅を使用することも想定される。
【0019】
いくつかの実施形態では、駆動信号は、少なくとも10倍低い、例えば800kHz未満の変調を伴った、10kHz超、例えば数十又は数百kHzの搬送周波数を備える。理論に縛られるものではないが、線形的な意味での触覚フィードバックを誘発するために必要とされるであろう音の強度(即ち、800Hz未満の音の周波数を直接使用する)は、これが聴覚障害につながり得るほど高いであろうことに留意されたい。また、このような低周波では音の波長が大きいため(6.8m(50Hz)-0.4m(800Hz))、効率よく音を出すには非常に大きなトランスデューサ(何波長もの大きさ)が必要になる。また、これらの周波数をトランスデューサのアレイで発生させるために、焦点サイズは良くても波長のオーダーであり、横幅が0.4-6.8mになる。そのため、体のどの部分を励起させるかという選択性はほとんどないだろう。
【0020】
いくつかの実施形態において、それぞれのトランスデューサ11,12によって生成される音響波W1,W2のそれぞれの音響位相Φw1,Φw2は、それぞれの駆動信号V1,V2の交流成分「A」の駆動位相Φd1,Φd2、及びそれぞれのトランスデューサ11,12に対するそれぞれの共振周波数Fr1,Fr2に関するそれぞれの駆動信号V1,V2の駆動周波数Fm間の周波数差によって決定される。これにより、音響波W1,W2の間に(静的な)位相シフトΔΦdw1,ΔΦdw2、が起こりうる。
【0021】
理論に縛られるものではないが、圧電トランスデューサー(膜等)は、電圧から圧力への周波数依存変換を記述する伝達関数によって、振幅(振幅伝達関数)及び位相(位相伝達関数)で説明することができる。共振周波数は振幅伝達関数が最大となる周波数である。減衰の弱いトランスデューサ(触覚フィードバックに最適化された膜等)では、励起周波数を変化させると、位相伝達関数が典型的には共振周波数を中心に180度位相反転する。トランスデューサ(圧電位相)の後者の位相挙動は、静的な位相シフトΔΦdw1,ΔΦdw2に寄与し得る。
【0022】
他の又はさらなる実施形態において、それぞれのトランスデューサ11,12によって生成される音響波W1,W2のそれぞれの周波数は、それぞれの駆動信号V1,V2における交流成分「A」の一つ又は複数の駆動周波数Fc,Fm、及びそれぞれのトランスデューサ11,12の共振周波数Fr1,Fr2によって決定される。例えば、交流成分「A」は、駆動周波数によって限られた帯域幅を備え、それぞれの共振周波数Fr1,Fr2により、得られる振動の支配的な周波数が異なる。これにより、音響波W1,W2の間に時間依存位相シフトΔΦdw1,ΔΦdw2が発生し得る。
【0023】
好ましい実施形態では、バイアス電圧B1,B2は、駆動信号V1,V2のそれぞれの位相Φd1,Φd2と音響波W1,W2のそれぞれの位相Φw1,ΦW2との間のそれぞれの位相シフトΔΦdw1,ΔΦdw2の変動を最小限にするよう制御される。例えば、これは異なるトランスデューサ11,12の共振周波数Fr1,Fr2がより均一になるようバイアス電圧B1,B2を調整することで実現できる。典型的には、これは、バイアス電圧B1,B2が異なるトランスデューサ11,12に対して異なる最適な設定となる。例えば、アレイ内の一つのトランスデューサ11に印加されるバイアス電圧B1は、典型的にはアレイ内の別のトランスデューサ12に印加されるバイアス電圧B1と1ミリボルト超、10ミリボルト超、100ミリボルト超、1ボルト超、10ボルト超、又は100ボルト超異なっても良い。これは固有共振周波数の広がりのようなトランスデューサの特性のばらつきに当然依存する。また、最大/最小許容DCバイアス電圧は、いくつかの実施形態において、圧電材料を通るブレークスルー電圧によって制限され得るが、電気路を分離する材料(空気でも良い)のブレークスルー電圧によっても制限され得る。さらに、最大許容DC電圧は、加熱効果または電力使用によって制限され得る。バイアス電圧(圧電材料の電極上に印加される)は、正または負であり、例えば、圧電材料の極性に沿った又は逆らった電界を生成する。
【0024】
圧電材料の損傷又は脱分極を避けるために,1000ボルト未満、500ボルト未満、100ボルト未満、50ボルト未満、10ボルト未満、5ボルト未満、又は1ボルト未満の(絶対)バイアス電圧を使用することが好ましい。これは形状(圧電材料の厚み)、周波数、及び圧電体の種類に依存し得る。例えば、PZT5H圧電材料は比較的低いブレークスルー電圧を有し、PVDF-TRFEは比較的高いブレークスルー電圧を有する。代わりに又は加えて、脱分極を緩和するために、圧電材料の分極に用いるのと同じ方向の電界を発生させるバイアス電圧のみを用いることも想定される。相対的な電圧により、加えられるDC+ACは、好ましくはブレークスルー電圧未満にとどめるべきであることに留意されたい。
【0025】
いくつかの実施形態では、それぞれの共振周波数Fr1の変動は、それぞれのトランスデューサ11へのそれぞれのバイアス電圧B1の関数としてマッピングされ得る。例えば、対応性は、少なくともバイアス電圧の範囲にわたってほぼ線形であり得る。例えば、バイアス電圧の変化に対する共振周波数の変化(Fr/B)は、0.01-1000Hz/Vの間、より典型的には0.05-500Hz/Vの間のいずれかの典型的な値で近似され得る。これは、例えばトランスデューサの材料及び寸法に依存し得る。対応性は、アレイ内の異なるトランスデューサに対しても異なり得るが、対応関係は、同様の種類のトランスデューサに対して一般にはほぼ同様であろう。
【0026】
いくつかの実施形態では、一つ又は複数のうちの各々のトランスデューサへのそれぞれの駆動信号は、それぞれのバイアス電圧B1,B2によって較正される。例えば、バイアス電圧は、複数のトランスデューサの共振周波数Fr1,Fr2の全体的な広がりを低下させるために、一つ以上のトランスデューサのそれぞれの共振周波数を調整するよう構成される。いくつかの実施形態では、較正は、例えばデバイスの製造後に、一度だけ実行され得る。これにより較正されていないアレイと比較して既に均一性を向上させ得る。しかし、特性は、使用後、又は特定の使用、若しくは状況に応じて、いくつかの実施形態において変化し得る。したがって、較正は、使用間、又は使用中であっても繰り返され得る。
【0027】
好ましい実施形態では、バイアス電圧B1,B2は、トランスデューサ11,12間の共振周波数Fr1,Fr2の広がりを低くするよう、例えば最小が達成されるまで、反復的に変化させられる。いくつかの実施形態において、最小の広がりは、生成された波の効率における最適条件を発見することによって決定され得る。例えば、波のピーク強度は、バイアス電圧を変化させることによって測定及び最大化され得る。代わりに又は加えて、強度の任意の時間依存性変動が最小化され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、共振周波数Fr1,Fr2の一つ以上が、例えばそれぞれのバイアス電圧B1,B2の関数として、直接的又は間接的に測定される。好ましい実施形態では、第1のバイアス電圧B1を有する駆動信号V1がトランスデューサ11,12のアレイの第1のトランスデューサ11に印加され、結果としての第1のトランスデューサ11の第1の共振周波数Fr1がトランスデューサ11,12のアレイの第2のトランスデューサ12を使用して測定される。例えば、測定モードにおいて、第2のトランスデューサ12は、駆動信号V2、又は少なくとも駆動信号の交流成分「A」(随意に第2のバイアス電圧B2)を受けない。例えば、第1のトランスデューサ11による(間の空気又は基板を介しての)間接的な作動から生じる信号が測定される。周波数の測定の代わりに又はそれに加えて、結果としての信号の振幅が測定され得る。例えば、第1のバイアス電圧B1が、トランスデューサ11,12が共振周波数において密接に一致するよう選択される場合、第2のトランスデューサ12における測定信号の振幅が比較的高くなり得る。
【0029】
他のまたはさらなる実施形態では、共振周波数のようなトランスデューサの動作パラメータは、他の方法でも測定され得る。例えば、一つまたは複数の別の検出器が使用され得る。一実施形態では、トランスデューサ11,12は、バックプレーンを有する基板10上又はその中に配置される。例えば、別の又は統合された検出器は、バックプレーン内で発生した波の振幅を測定するよう構成される。理解されるように、トランスデューサによって生成された音響波はバックプレーンを伝播し、そのような波の振幅はトランスデューサが同じ周波数で振動するときに最大となり、例えば、バックプレーンに定在波を形成し得る。理解されるように、振幅は検出器が定在波パターンの波腹に位置するときに最大となる。いくつかの実施形態では、予想される定在波の周波数が事前に決定され、検出器はそれに応じて配置される(又は複数の検出器を使用され得る)。
【0030】
図2A図2Dは、駆動信号の交流成分「A」と対応する音響波W1,W2を示す。図2Aは、搬送波周波数Fc及び変調周波数Fmを含む二つの周波数を備える駆動信号の交流成分「A」を示す図である。図2Bは、駆動信号の結果として生成される第1の音響波W1を示す。図2Cは、同じ駆動信号の結果として生成される第2の音響波W2を示す。わかりづらいかもしれないが、音響波W1,W2は、例えばトランスデューサのそれぞれの共振周波数の間の違いの結果として、わずかに異なる搬送波周波数を有する。図2Dは、音響波W1+W2の組合せを示す。これは、波において搬送波周波数の位相がずれたときの弱め合う干渉の効果を明確に示している。本教示は、一つの周波数のみ、または三つ以上の周波数を有する駆動信号にも適用できることが当然理解されよう。例えば、搬送波周波数のみを有する駆動信号は、異なる共振周波数を有するトランスデューサにおいて同様の周期的干渉を生じさせるであろう。
【0031】
図3A及び図3Bは、駆動信号の交流成分「A」の定期的なリセットを示す。ここに記載されたバイアス電圧B1,B2の使用は、望まない位相シフトを大幅に緩和することができるが、補正は必ずしも完全でない。例えば、音響波が長時間(又は高い周波数を有して)維持される実施形態においては、補正の残存誤差が蓄積され得る。例えば、共振周波数の測定は必ずしも完全でない。これらの、又は他の理由のために、いくつかの実施形態において、交流成分「A」にリセットRを適用することが有利であり得る。駆動信号の交流成分の反転によるトランスデューサのリセット又は同期は、ここに記載されるように、バイアス電圧の使用による共振周波数の補正に加えて相乗的に使用することができるが、バイアス電圧を用いない使用も想定され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ11,12の少なくともサブセットに対する交流成分「A」は、結果としての音響波W1,W2の位相を再調整するために、周期的にリセットされる。例えば、リセットは、例えば共振周波数の予想誤差又は残存差、及び少なくとも部分的な弱め合う干渉が発生するまでに必要な予想時間に基づいて、あるリセット期間「tr」後に発生する。他の又はさらなる実施形態では、トランスデューサ11,12の少なくともサブセットに対する交流成分「A」は、結合された音響波の測定された効果が所定の閾値「Wmin」未満に低下したときにリセットされる。例えば、閾値「Wmin」は、最大測定効果、例えばアレイの上のある点における相対空気圧、又はバックプレーンの相対振幅、の百分率又は分数として選択される。例えば、結合された信号が0.5-0.9の間の範囲の閾値分数を下回るとき、トランスデューサが再同期される。
【0033】
いくつかの実施形態において、リセットは、一定期間交流成分「A」をゼロにした後に作動を再開することを備える。しかし、これは、トランスデューサにおいていくらかの中断時間を引き起こし得る。好ましい実施形態において、複数のトランスデューサ11,12の少なくともサブセットの作動は、サブセットに対する交流成分「A」の極性の同期した反転によってリセットされる。交流成分「A」の極性を反転させることによって、例えば、成分が最大であるときそれぞれのトランスデューサの位相は比較的早くリセットされ同期するように強制され得る。定期的なリセットの代わりに又はそれに加えて、他の適応も実施することができ、例えばトランスデューサ11,12へのバイアス電圧及び/又は駆動周波数を変更しても良い。
【0034】
一実施形態では、トランスデューサのサブセットに対する駆動信号はサブセットの局所的測定に基づいて定期的に変更され、残りのトランスデューサへの駆動信号は変更されないままである。トランスデューサのそれぞれのサブセットに対する駆動信号のみを毎回更新することによって、残りのトランスデューサの動作は影響を受けず、例えば全体信号の中断を回避する。 例えば、更新はトランスデューサのすべてのサブセットにわたって順次進めても良い。
【0035】
いくつかの実施形態(図示しない)において、リセットは非常に短い期間の広帯域励起として記述され得る。例えば、これは周波数及び第1の位相を有する時間窓の正弦曲線の終了と、周波数及び第2の位相を有する時間窓の正弦波の開始としてモデル化され得る。したがって、古い波が数サイクル(数回又は数十回、帯域幅に依存)で消滅し、新しい波が数サイクルで立ち上がることを意味する。
【0036】
図4Aは、トランスデューサアレイを示す図である。いくつかの実施形態において、例えば図示されるように、トランスデューサアレイは、トランスデューサの円形配置を備える。いくつかの実施形態において、トランスデューサのそれぞれは、駆動信号を運ぶための別個の電気パス又はラインを有しても良い。他の又はさらなる実施形態において、トランスデューサのサブセットは、駆動信号を運ぶための信号ラインを共有しても良い。可変バイアス電圧は、例えばラインとトランスデューサとの間に、又はラインに直接、印加され得る。
【0037】
図4Bは、異なるトランスデューサ11,12,13から中心点Pまでの距離を示す。例えば、前図と同様の実施形態の断面図に対応する。異なるトランスデューサ11,12,13と点「P」との間のそれぞれの距離Z0+ΔZn(n=1,2,3)は、その点「P」の位置に応じて同じでも異なってもよいことに留意されたい。そのような距離の違いを補償するために、いくつかの実施形態は、それぞれの位相Φw1,Φw2,Φw3を整合させるため、駆動信号に可変遅延を提供し得る。
【0038】
図5は、基板10上のトランスデューサ11,12,13のアレイと、対応するコントローラ20を含むシステム100を示す。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のトランスデューサ11に対する第1の駆動信号V1は、第2のトランスデューサ12に対する第2の駆動信号V2と、それぞれのバイアス電圧B1,B2(及び随意に交流成分「A」における時間シフト)によって排他的に異なる。言い換えれば、交流成分「A」は、駆動信号V1の少なくとも一部について同じであって良い。例えば、図示する実施形態では、トランスデューサ11,12の少なくともいくつかは、音響波間の強め合う干渉が望まれる点「P」までの距離が同じであって良い。
【0040】
他のまたはさらなる実施形態では、第1のトランスデューサ11に対する第1の駆動信号V1は、アレイ内の別のトランスデューサ13に対する別の駆動信号と同じ交流成分「A」を有するが、時間tでシフトされる。 例えば、第3のトランスデューサ13に対する駆動信号の交流成分は、第1及び/又は第2のトランスデューサ11,12への交流成分に対して時間シフトされても良い。いくつかの実施形態では、例えば図示するように、時間シフトは、音響波Wn間の強め合う干渉が望まれる点Pへのそれぞれのトランスデューサn=1,2,3の相対距離に依存する。典型的には、駆動信号は異なる距離ΔZnによる位相遅れを補償するために時間シフトされ得る。点Pまでの移動時間の差は、例えばΔZn/Cと書かれ、ここで「c」は音響波の(位相)速度である。バイアス電圧Bnもトランスデューサ間で当然異なっても良い。
【0041】
いくつかの態様によれば、本教示は、圧電トランスデューサ11,12,13のアレイ及びここに記載されるようにそれぞれの駆動信号Vnを適用するよう構成されたコントローラ20を備えるシステム100として実施され得る。いくつかの実施形態では、例えば図示するように、システムは触覚(フィードバック)装置を備え、例えば圧電トランスデューサ11,12は基板10上に配置され、基板10からの距離Z0におけるいくつかの点「P」で強め合う干渉をするそれぞれの音響波Wnを発生するよう制御される。いくつかの実施形態では、点「P」は、音響波の相対的な位相に依存して位置がずらされても良い。
【0042】
明確性及び簡潔な説明のために、特徴はここで同一又は別々の実施形態の一部として記載されるが、本発明の範囲は、記載された特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されよう。本開示のいくつかの態様は、一つの素子または素子のグループに対するバイアス又はオフセット電圧を動的に調整することを含んでいても良い。他の又はさらなる態様は、例えば極性の反転による、トランスデューサの同期に関連し得る。実施形態は、特定の構成及び適用のために示されたが、また、同様の機能及び結果を達成するために、本開示の利益を有する当業者によって代替的な方法が想定され得る。例えば、トランスデューサのアレイは一つ又は複数の代替的な構成要素に結合又は分割されても良い。議論され図示されたような実施形態の様々な要素は、圧電ベースのトランスデューサの性能及び同期の最適化のようなある利点を提供する。上記の実施形態または過程のいずれか一つを一つ又は複数の他の実施形態又は過程と組み合わせ、設計と利点を発見及び一致させることにおいてさらなる改良を提供してもよいことが当然理解されよう。本開示は、強め合う干渉による音響波の生成に特定の利点を提供し、一般に異なるトランスデューサをさらに補正又は較正することが望まれる任意の用途に適用できることが理解される。
【0043】
添付の請求項を解釈する際、「備える(comprising)」という語は、所定の請求項に記載された要素以外の要素又は行為の存在を排除しないこと、要素の前に「a」又は「an」という語があっても、その要素の複数の存在を排除しないこと、請求項のいかなる参照符号もその範囲を制限しないこと、いくつかの「手段」が同一又は異なる項目(複数可)又は実装された構造又は機能によって表され得ること、開示される装置又はその一部のいずれもがそうでないと特定されない限り一緒に組み合わせられる又はさらなる一部に分離され得ること、が理解されるべきである。ある請求項が他の請求項に言及している場合、これはそれぞれの特徴の組み合わせによって達成される相乗的な利点を示し得る。しかし、ある手段が互いに異なる請求項に記載されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせも有利に使用できないことを示すものではない。本実施形態はしたがって、文脈によって明確に除外されない限り、各請求項が原則として任意の先行する請求項を参照する請求項のすべての実用的な組み合わせを含み得る。
【0044】
(付記)
(付記1)
圧電トランスデューサ(11,12)のアレイを制御する方法であって、
それぞれの駆動信号(V1,V2)を前記トランスデューサ(11,12)に印加し、前記駆動信号(V1,V2)は、音響波(W1,W2)を生成するために前記トランスデューサ(11,12)に、対応する振動(T1,T2)を起こさせる一つ以上の駆動周波数(Fc,Fm)で振動する交流成分(A)を備え、
前記駆動信号(V1,V2)の一つ以上がそれぞれのバイアス電圧(B1,B2)によってオフセットされ、前記バイアス電圧(B1,B2)は前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の差を低減するよう制御され、前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、生じる前記音響波(W1,W2)の位相を同期させるために周期的にリセットされる、
方法。
【0045】
(付記2)
第1のバイアス電圧(B1)を有する駆動信号(V1)が前記トランスデューサ(11,12)のアレイの第1のトランスデューサ(11)に印加され、前記第1のトランスデューサ(11)で生じる第1の共振周波数(Fr1)が前記トランスデューサ(11,12)のアレイの第2のトランスデューサ(12)を使用して測定される、
付記1に記載の方法。
【0046】
(付記3)
前記トランスデューサ(11,12)が、バックプレーンを有する基板(10)上又は前記基板(10)内に配置され、検出器が、前記バックプレーンで発生した波の振幅を測定するよう構成される、
付記1又は2に記載の方法。
【0047】
(付記4)
前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、結合された音響波の測定された効果が所定の閾値(Wmin)を下回る場合にリセットされる、
付記1から3のいずれか一つに記載の方法。
【0048】
(付記5)
前記結合された音響波の前記効果が、前記アレイ内の一つ以上のトランスデューサを使用して、及び/又は前記トランスデューサ(11,12)が配置された基板(10)のバックプレーンで発生する波の振幅を測定することによって測定される、
付記4に記載の方法。
【0049】
(付記6)
複数のトランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットの作動が、前記サブセットに対する前記交流成分(A)の同期した極性の反転によってリセットされる、
付記1から5のいずれか一つに記載の方法。
【0050】
(付記7)
前記トランスデューサのサブセットへの前記駆動信号は、前記サブセットの局所的な測定に基づいて周期的に変更され、残りの前記トランスデューサへの駆動信号は変更されないままである、
付記1から6のいずれか一つに記載の方法。
【0051】
(付記8)
第1のトランスデューサ(11)に対する第1の駆動信号(V1)が、第2のトランスデューサ(12)に対する第2の駆動信号(V2)と、それぞれの前記バイアス電圧(B1,B2)によって排他的に異なる、
付記1から7のいずれか一つに記載の方法。
【0052】
(付記9)
第1のトランスデューサ(11)への第1の駆動信号(V1)が、前記アレイ内の別のトランスデューサ(13)への別の駆動信号と同じ前記交流成分(A)を有するが、時間(t)においてシフトされる、
付記1から8のいずれか一つに記載の方法。
【0053】
(付記10)
それぞれのトランスデューサ(11,12)によって発生する前記音響波(W1,W2)のそれぞれの音響位相(ΦW1,Φw2)が、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における前記交流成分(A)の駆動位相(Φd1,Φd2)と、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における駆動周波数(Fm)とそれぞれのトランスデューサ(11,12)のそれぞれの共振周波数(Fr1,Fr2)との間の周波数差と、によって決定され、それぞれのトランスデューサ(11,12)によって発生する前記音響波(W1,W2)のそれぞれの周波数が、それぞれの前記駆動信号(V1,V2)における前記交流成分(A)の一つ以上の前記駆動周波数(Fc,Fm)と、それぞれのトランスデューサ(11,12)の前記共振周波数(Fr1,Fr2)と、によって決定される、
付記1から9のいずれか一つに記載の方法。
【0054】
(付記11)
前記バイアス電圧(B1,B2)は、前記駆動信号(V1,V2)のそれぞれの位相(Φd1,Φd2)と、前記音響波(W1,W2)のそれぞれの位相(Φw1,Φw2)と、の間のそれぞれの位相シフト(ΔΦdw1,ΔΦdw2)の変動を最小限にするよう制御される、
付記1から10のいずれか一つに記載の方法。
【0055】
(付記12)
前記バイアス電圧(B1,B2)は異なるトランスデューサ(11,12)について異なる、
付記1から11のいずれか一つに記載の方法。
【0056】
(付記13)
前記バイアス電圧(B1,B2)は、前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の広がりを低下するために反復的に変化させられる、
付記1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
(付記14)
圧電トランスデューサ(11,12)のアレイと、
前記トランスデューサ(11,12)にそれぞれの駆動信号(V1,V2)を印加するよう構成されたコントローラ(20)と、
を備え、
前記駆動信号(V1,V2)は、音響波(W1,W2)を生成するために前記トランスデューサ(11,12)に対応する振動(T1,T2)を起こさせる一つ以上の駆動周波数(Fc,Fm)で振動する交流成分(A)を備え、前記駆動信号(V1,V2)の一つ以上がそれぞれのバイアス電圧(B1,B2)によってオフセットされ、前記バイアス電圧(B1,B2)の大きさは前記トランスデューサ(11,12)の間の共振周波数(Fr1,Fr2)の差を低減するよう制御され、前記トランスデューサ(11,12)の少なくともサブセットに対する前記交流成分(A)が、生じる前記音響波(W1,W2)の位相を同期させるために周期的にリセットされる、
システム(100)。
【0058】
(付記15)
触覚装置を備え、圧電トランスデューサ(11,12)は基板(10)上に配置され、前記基板(10)からのある距離(Z0)における点(P)で強め合う干渉をするそれぞれの音響波(W1,W2)を発生するよう制御される、
付記14に記載のシステム。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】