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特表2022-538856圧力衝撃を防止するための弁および圧力容器付き冷却部
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  • 特表-圧力衝撃を防止するための弁および圧力容器付き冷却部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】圧力衝撃を防止するための弁および圧力容器付き冷却部
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
B21B45/02
B21B45/02 320U
B21B45/02 320V
B21B45/02 320H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577112
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020066970
(87)【国際公開番号】W WO2021001162
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19184168.3
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヴァインツィール
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・オピッツ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ピヒラー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ペシュル
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・ザイリンガー
(57)【要約】
本発明は、それぞれの分枝線(7)を介して水(5)が供給される複数の冷却装置(4)であって、圧延素材(1)に水(5)がかけられるための複数の冷却装置(4)を有する、圧延列において圧延された金属圧延素材(1)を冷却するための装置に関する。分岐線(7)にはそれぞれの弁(8)が備えられ、それを用いてそれぞれの分岐線(7)を通って流れる水流が調整される。弁(8)の各々は駆動器(9)と対にされ、駆動器(9)を介してそれぞれの弁(8)が作動される。冷却装置(4)は複数のグループを形成し、その各々が発明独自の方式で専用の圧力容器(10)と対にされる。各圧力容器(10)は、それぞれの接続点(11)においてそれぞれの送り線(12)に接続され、水(5)は、上記送り線を介して対応するグループの冷却装置(4)の分岐線(7)に供給される。水(5)の流れ方向に見ると、各接続点(11)は、冷却装置(4)のそれぞれのグループの弁(8)の上流に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機において圧延された金属素材(1)を冷却するための装置であって、
前記装置が、それぞれの分枝管路(7)を介して水(5)が送られる複数の冷却装置(4)であって、前記素材(1)に前記水(5)をかけるための前記複数の冷却装置(4)を有し、
前記それぞれの分枝管路(7)を通って流れる水流が設定されるための弁(8)が、前記分枝管路(7)の各々に配置され、
前記それぞれの弁(8)がそれを介して制御される駆動器(9)が、前記弁(8)の各々に割り当てられる、装置において、
前記冷却装置(4)が、専用の圧力容器(10)を各々割り当てられる複数のグループを形成することと、
前記それぞれの圧力容器(10)が、対応するグループの前記冷却装置(4)の前記分枝管路(7)に前記水(5)が供給されるそれぞれの送り管路(12)に、それぞれの接続位置(11)において接続され、その結果、前記それぞれの接続位置(11)が、冷却装置(4)のそれぞれの前記グループの前記弁(8)の、前記水(5)の流れ方向で上流に配置されることと
を特徴とする、装置。
【請求項2】
冷却装置(4)の前記グループの少なくとも一部が、いずれの場合にも単一の冷却装置(4)だけを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動器(9)が電気駆動器として構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記電気駆動器がステップモータとして構成されることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
冷却装置(4)のそれぞれのグループに割り当てられる前記圧力容器(10)が容器容積を有することと、
前記容器容積がn×20 l~n×200 lの範囲にあり、ここでnが前記それぞれのグループの冷却装置(4)の数であることと
を特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記それぞれの接続位置(11)と前記それぞれの圧力容器(10)との間にそれぞれの流れ抵抗(16)が配置されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機において圧延された金属素材を冷却するための装置に由来しており、
- 上記装置は、それぞれの分枝管路を介して水が送られる複数の冷却装置であって、素材に水をかけるための複数の冷却装置を有し、
- それぞれの分枝管路を通って流れる水流が設定されるための弁が分枝管路の各々に配置され、
- それぞれの弁がそれを介して制御される駆動器が、弁の各々に割り当てられている。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、例えば特許文献1から公知である。この装置では、分枝管路と並列に単一のバイパス管路が配置される。バイパス管路は、分枝管路を通る体積流れの急激な遮断の場合に発生しかねない圧力衝撃を回避するためのものである。バイパス管路は能動的に開閉されなければならない。
【0003】
特許文献2は、平坦な素材のための冷却部を開示しており、冷却部は、各々弁が前置されている複数のスプレーバーを有する。
【0004】
特許文献3は、同様に圧延機において圧延された金属素材を冷却するための装置を開示している。この装置では、その冷却部の冷却ノズルが貯水器に送り管路を介して接続される。冷却ノズルへの水の供給は1つの弁または複数の弁を介して制御される。1つまたは複数の弁の、水の流れ方向で上流に、圧力容器が配置される。圧力容器は、部分的に水でおよび部分的に空気で充填される。この構成の場合、分枝管路を通る体積流れの急激な遮断の場合に発生しかねない圧力衝撃を、圧力容器の緩衝作用の結果として回避することができるか、または少なくとも強さを軽減することができる。
【0005】
圧延機の冷却部では、金属素材の圧延後に圧延素材が冷却される。所望の材料特性を設定して、それらを可能な限り一定に保つために、冷却部における正確な温度プロファイルが当然である。素材の少なくとも片側に水がかけられるようにするための複数の冷却装置が素材の搬送方向に沿って設置される。冷却装置は、例えば冷却バーとして構成できる。冷却装置を介してかけられる水の量は、冷却装置の上流に配置される弁を使用して設定される。弁が急速に閉じられるときに特に問題が発生し得る。弁があまりに急速に閉じられる結果として、技術者の間で圧力パルスとも称される圧力衝撃が、しばしば発生する。したがって、過剰な応力を回避するために、スイッチオフ時間は一般に1秒に限られる。これは、弁がより急速に閉じられ得るときでも当てはまる。
【0006】
先行技術では一般に空気圧弁が使用される。これらは、一般に1秒より急速には切り替わることができない。しかしながら、一部の場合に0.6秒の一層短い切替時間を達成できる。
【0007】
冷却装置が電気作動弁を使用して切り替えられる圧延機の冷却部が上述の特許文献1から公知である。
【0008】
冷却部への送り管路に圧力容器を設置できることが特許文献3から公知である。この圧力容器は、主に冷却部への供給管路において圧力を一定に保つ役目をするが、或る程度は圧力衝撃の軽減をももたらす。その圧力容器は、数立方メートルの容積に設計される。10~20立方メートルの範囲の典型的な容積が特許文献3に具体的に言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2018/080669号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第2767353号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/143902号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、圧延機において圧延された金属素材を冷却するための装置であって、優れた動作特性を有する、装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、圧延機において圧延された金属素材を冷却するための請求項1の特徴を有する装置によって達成される。上記装置の有利な実施形態が従属請求項2~6に記載される。
【0012】
本発明によれば、圧延機において圧延された金属素材を冷却するための冒頭に述べた種類の装置が、
- 冷却装置が、専用の圧力容器を各々割り当てられる複数のグループを形成するように、
- それぞれの圧力容器が、対応するグループの冷却装置の分枝管路に水が供給されるそれぞれの送り管路にそれぞれの接続位置において接続され、その結果それぞれの接続位置が、冷却装置のそれぞれのグループの弁の、水の流れ方向で上流に配置されるように、構成される。
【0013】
上記装置は、圧延機の下流に配置される冷却部として構成できる。代替例として、上記装置は、中間スタンド冷却システムのグループとして構成でき、中間スタンド冷却システムの各々が圧延機の2つの圧延スタンド間に配置される。特定の場合、上記装置は、例えば上記装置が(少なくとも)1つの予備スタンドとマルチスタンド仕上げラインとの間に配置されると、圧延機の上流に配置することもできる。混合形態も可能である。
【0014】
素材は、しばしば鋼から成る。特に、それは平坦な素材、すなわちストリップまたは荒シートであることができる。平坦な素材の場合、冷却装置は、代替例として、平坦な素材に上側にだけ、下側にだけ、または上側にも下側にも水をかけることができる。
【0015】
素材にかけられる水の量は、冷却装置に対してそれらの弁を用いて個々に設定できる。冷却装置のグループが、2つ以上の冷却装置を各々備える冷却装置の「正規の」グループであることが可能である。多くの場合、しかしながら、冷却装置のグループの少なくとも一部が、いずれの場合にも単一の冷却装置だけを備える。特に、全てのグループが各々単一の冷却装置だけを備えることさえ可能である。この場合、冷却装置のグループは縮退している。
【0016】
弁に割り当てられる駆動器は必要に応じて構成できる。特に、それらは、電気駆動器として、例えばステップモータとして構成できる。
【0017】
冷却装置のそれぞれのグループに割り当てられる圧力容器は容器容積を有する。容器容積は、好ましくはn×20 l~n×200 lの範囲にあり、ここでnはそれぞれのグループの冷却装置の数である。容器容積は、特に好ましくはnx50l~nx125lの範囲にある。
【0018】
好ましくはそれぞれの接続位置とそれぞれの圧力容器との間にそれぞれの流れ抵抗が配置される。したがって水の流れに対する抵抗(=流れ抵抗)を提供する目的を有する装置が存在する。
【0019】
上述したように、それぞれのグループの冷却装置の弁が全て全開されると、それぞれの送り管路にそれぞれの体積流が流れる。この状態で、それぞれの接続位置の領域においてそれぞれの送り管路にそれぞれの管路圧力が広がる。それぞれの流れ抵抗は、好ましくはそれぞれの体積流が、それぞれの流れ抵抗を克服する限り、それぞれの管路圧力の25%以上75%以下、特にそれぞれの管路圧力の約半分である、圧力低下をもたらすようなものである。しかしながら、僅かな偏差は許容可能である。
【0020】
本発明の上記の特性、特徴および利点ならびにこれらが達成される方法も、図面と併せてより詳細に説明される実施例の以下の記述と関連してより明らかになり、容易に理解されよう。ここで、図面は概略的な描写である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】圧延スタンドおよび冷却部の図である。
図2】冷却部の一部の図である。
図3】冷却部の図である。
図4】充填レベルの時間プロファイルである。
図5】体積流の時間プロファイルである。
図6】圧力の時間プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、圧延機において素材1が圧延される。図1にはマルチスタンド圧延機の最後の圧延スタンド2だけが描かれる。素材1は、しばしば平坦な素材、すなわちストリップまたは荒シートである。しかしながら、素材1は、異なる形態を有することもできる。例えば、それは、異形材またはバー状の素材1であることができる。素材1は、しばしば鋼から、時にはアルミニウムから、そしてまれなケースでは異なる金属または対応する合金から成る。
【0023】
圧延機に冷却部3が続く。素材1は冷却部3において冷却される。冷却部3は、したがって圧延機において圧延された金属素材1を冷却するための装置である。本発明は、図1に描かれる冷却部3であって、圧延機に続く、冷却部と併せて説明されることになる。用語「冷却部」は、したがってここに述べた装置の意味で使用される。しかしながら、本発明は、上記装置が圧延機内に、すなわちマルチスタンド圧延機の圧延スタンド2間に配置されるときにも実現できる。更には、それは、上記装置が圧延機の上流に設置されるときにも実現できる。
【0024】
図1における冷却部3は、複数の冷却装置4を有する。冷却装置4を用いて素材1に水5がかけられる。冷却装置4は、一般に素材1の全幅にわたって素材1に水5をかけるスプレーバーとして構成される。水5は、その全体が供給管路6を介して冷却部3に送られる。冷却部3内で、水5は、それぞれの冷却装置4に水5が送られる分枝管路7にそれが入るまで分配される。時間単位当たりそれぞれの冷却装置4に送られる水5の量を設定できるようにする1つの弁8が分枝管路7の各々に配置される。したがって冷却装置4、分枝管路7および弁8の1:1の割当てがある。それぞれの冷却装置4に単位時間当たりに送られる水5の量はそれぞれの水流を表す。
【0025】
図1には合計8つの冷却装置4が描かれており、図1の描写では冷却装置4の一部が素材1に上から水5をかけかつ冷却装置4の更なる一部が素材1に下から水5をかける。更には、冷却装置4は、素材1の搬送方向xに互い違いにされる。しかしながら、これらの状況は全く例示である。したがって、8つより多いまたは少ない冷却装置4も容易に存在することができる。冷却装置4を用いて水5が素材1に専ら上からまたは専ら下からかけられることも可能である。素材1が平坦な素材であるとき、図2に描かれるように、複数の冷却装置4が素材1の幅方向yに隣り合って配置されることも可能である。それぞれの分枝管路7を通って流れる水流を設定できるようにするそれぞれの弁8がそれぞれの分枝管路7に配置されることが重要である。
【0026】
弁8の各々に作動装置として駆動器9が割り当てられる。図2における描写では、駆動器9は電気駆動器として構成される。それぞれの弁8はそれぞれの駆動器9によって制御される。これは、図1の弁8に対しても該当する。しかしながら、これは、図1に詰め込みすぎないために図1には図示されない。電気駆動器としての作動装置の設計により、弁8のために、有意に1秒未満の、例えば0.2秒以下の切替時間を実現できる。更には、電気駆動器は非常に急速に精密に設定できる。これは、それぞれの弁位置の急速かつ精密な設定を可能にする。
【0027】
電気駆動器は、例えばステップモータとして構成できる。ステップモータは、0.2秒未満の時間で問題なく90°にわたって移動できる。この角度は、完全閉位置と完全開位置との間の従来の弁8の回転角に相当する。それぞれの弁8は、したがって0.2秒以下の時間で完全閉位置から全開位置へおよびその逆へ変化させることができる。更には、ステップモータの場合の調整は、通常(機械的に)有意に1°未満、例えば0.1°(または類似して小角度)である角度ステップで生じる。この場合、0.1°(または類似して小角度)のステップで完全閉位置と全開位置との間でそれぞれの弁8を変化させることが可能である。更には、電気駆動器の制御エレクトロニクスは十分に単純かつ安価である。摩耗および故障のリスクは空気圧駆動器の場合より非常に低い。スプレー水等に対する保護のための(例えば保護型IP65の)必要とされる封入は容易に実現できる。これは、それぞれの電気駆動器自体にも駆動器のための制御エレクトロニクスにも当てはまる。
【0028】
冷却装置4の具体的な幾何学的配置にかかわらず、冷却装置4は図3に描かれるように複数のグループを形成し続ける。グループの各々に専用の圧力容器10が割り当てられる。表現「専用のものに割り当てられる」は、それぞれの圧力容器10がそれぞれのグループの冷却装置4とかつこれらの冷却装置4だけと連動して作用することを意味すると意図される。特に、それぞれの圧力容器10は、それぞれの送り管路12にそれぞれの接続位置11において接続される。それぞれのグループの冷却装置4の分枝管路7にそれぞれの送り管路12を介して水5が供給される。水5の流れ方向で、それぞれの接続位置11は、したがって冷却装置4のそれぞれのグループの弁8の上流に設けられる。他方で、水5は、それぞれの送り管路12を介して他の冷却装置4の分枝管路7には運ばれない。それぞれの接続位置11は、したがって冷却装置4の他のグループの弁8の、水5の流れ方向で上流には設けられない。圧力容器10は、したがって冷却装置4のそれぞれのグループを定め、すなわち、水5がそれぞれの接続位置11を介して流れる全ての冷却装置4が、冷却装置4の1つのグループを形成する。他の全ての冷却装置4はこのグループに属しない。
【0029】
それぞれの圧力容器10のためのそれぞれの接続位置11は、それぞれのグループの弁8に可能な限り近く配置されるべきである。図3の左手側のように、冷却装置4のそれぞれのグループが単一の冷却装置4だけを備えるとき、それぞれの接続位置11は、したがってこの冷却装置4の弁8に可能な限り近いべきである。図3の右手側におけるように、冷却装置4のそれぞれのグループが複数の冷却装置4を備えるとき、それぞれの接続位置11は、送り管路12がそれぞれのグループの冷却装置4に初めて分岐する分配点13に可能な限り近く配置されるべきである。
【0030】
図3における描写では、冷却装置4のグループの一部が、いずれの場合にも単一の冷却装置4だけを備える。これは、具体的には図3において左に図示される2つの冷却装置4に対して該当する。これらの場合、それぞれの送り管路12は、それぞれの分枝管路7と同一である。代替例として、冷却装置4のグループが各々複数の冷却装置4を備えることが同様に可能である。これは、具体的には図3において右に図示される2つの冷却装置4に対して該当する。これらの場合、それぞれの送り管路12は、それぞれの分枝管路7の上流に設けられる。
【0031】
圧力容器10の配置についての最終的な判定基準は、それぞれの接続位置11とそれぞれの複数の弁8または、単一の下流弁8の場合には、それぞれの1つの弁8との間に存在する水5の量である。これは、この量の水が対応する圧力容器10へ転送できないからである。この量は、したがって、これらの弁8が急速に閉じられると、それぞれの弁8の前に直接かつ急速に止められなければならない。一般に、これは、それぞれの圧力容器10からのそれぞれの弁8の距離が十分に小さい、例えば10m以下、特に5m未満であるときには重要でない。これは、単一の弁8を伴う例によって明らかにされると意図される。
【0032】
対応する分枝管路7における水5の流速が3m/sであるとされる。それぞれの弁8は0.2秒以内に完全に閉じられる。水5は、それゆえ0.2秒以内に3m/sから0m/sに減速されなければならない。これは、15m/s2の平均加速度、すなわち重力加速度の略1.5倍を伴う。更には、高さ10mの水柱が1バールの圧力を発生させることが知られている。同じことが、重力加速度で止められる長さ10mの水柱に当てはまる。更にそれぞれの接続位置11からそれぞれの弁8までの距離が5mであるとされる。この場合、重力加速度の1.0倍で長さ10mの水柱でなく、代わりに重力加速度の1.5倍で長さ5mの水柱を止める必要がある。したがって、この水柱は、0.2秒で3.0m/sから0m/sに減速すると同時に優勢な動作条件下で0.75バールの圧力を発生させる。
【0033】
他方で、圧力容器10が存在しないと、この場合には、それぞれの接続位置11から水5の流れ方向において上流に送り管路12が存在すれば、そこへ流れる水5も止められなければならないため、それぞれの弁8の急速な閉止は圧力衝撃に至ることになる。しかしながら、この場合、それぞれの送り管路12において流れる水5が、冷却装置4のそれぞれのグループに割り当てられる専用の圧力容器10へ転送されるので、そのような圧力衝撃は圧力容器10によって有意に軽減できる。
【0034】
一般に知られているように、圧力容器10は、水管理を均一にする役目をする。それらは、したがって、必要であれば、必要水量の急減の場合に、それらが接続される送り管路12からの水5を収容することができ、そして第二に必要水量の急増の場合に送り管路12へ水5を送り返すことができるべきである。圧力容器10がこの水5を収容して戻すことができるためには、圧力容器10は、図3における描写では、各々動作中に部分的に水5で充填されかつ部分的に空気14で充填される。一般に、約50%の水5の充填レベルF(図4を参照のこと)が求められるはずである。しかしながら、多少の、例えば40%~60%の範囲の偏差は全く可能である。圧力容器10は、したがって動作中に部分的に水5でかつ部分的に空気14で充填されるように設計される。
【0035】
それぞれの充填レベルFを設定することができるためには、圧力容器10は、例えばそれぞれの空気弁15を有することができる。それぞれの空気弁15を介して、それぞれの圧力容器10へ空気14を導入でき、またはそれぞれの圧力容器10から空気14を放出できる。最も単純なケースでは、それぞれの空気弁15は手動操作逆止め弁(例えば自転車または空気入りタイヤを有する別の道路車両の弁の様な)である。この場合、それぞれの圧力容器10は、好ましくは充填レベル指示器および/または圧力指示器を有する。充填レベル指示器は、例えば単純なサイトグラスであることができ、そして圧力指示器は従来の圧力計であることができる。代替例としてまたは追加として、それぞれの空気弁15は、冷却部3の制御装置(図示せず)によって制御されることが可能である。この場合、それぞれの空気弁15は、好ましくは2つの弁経路へ分割され、2つの弁経路の一方がそれぞれの圧力容器10へ追加の空気14を導入するための圧縮空気源と接続され、かつ2つの弁経路の他方がそれぞれの圧力容器10の中から空気14を逃すための周囲への出口を有する。更には、それぞれの充填レベルFおよび/またはそれぞれの圧力容器10に広がる圧力は、この場合好ましくは計装によって測定されて上述の制御装置に伝送される。
【0036】
それぞれの送り管路12内を移動する水は、したがってそれぞれの圧力容器10によって徐々に減速される。冷却装置4のグループが一般に比較的少ない、通常6~10個以下の冷却装置4であることにより、圧力容器10は比較的小さくすることもできる。これは、冷却装置4のそれぞれのグループが単一の冷却装置4だけを備える実施形態を図示する図4図6と併せて以下に説明される。しかしながら、関連した説明は、冷却装置4のそれぞれのグループが複数の冷却装置4を備えるときにも当てはまる。この場合、以下の説明は、それぞれのグループの弁8の均一動作を前提とするように変更されなければならない。
【0037】
それぞれの弁8が全開であるとき、単一の冷却装置4を有するグループの場合には分枝管路7と同一である、それぞれの送り管路12において、水5のそれぞれの体積流れV、例えば毎秒100リットルが進行する。この状態は、図5において左に図示される。充填レベルFは、最初は図4における描写では約50%である。それぞれの圧力容器10は、したがって水5および空気14で略等しい程度に充填される。
【0038】
特定の時点t0で、対応する弁8は全開位置から完全閉位置へ移動される。全開位置から完全閉位置への移動は、可能な限り急速に、例えば0.1秒または0.2秒の時間で実施される。それぞれの圧力容器10の寸法設計をより良く説明することができるように、以下においては、対応する弁8の閉止が急激に完全に発生し、その結果、閉止のために必要とされる時間は無視できると仮定される。
【0039】
それぞれの圧力容器10が存在しなければ、それぞれの送り管路12内を進行するそれぞれの体積流れVが急激にゼロに減少されなければならないので、それぞれの弁8の閉止と同時に高圧力衝撃が発生する。しかしながら、それぞれの圧力容器10により、それぞれの体積流れVはそれぞれの圧力容器10へ転送できる。この方法で、それぞれの圧力容器10は、その以前の充填レベルFを越えて充填される。それぞれの圧力容器10の充填の結果として、それぞれの圧力容器に存在する空気14は圧縮され、その結果、その空気圧力は上昇される。上昇した空気圧力は、それぞれの圧力容器への水5の更なる導入に対する増加抵抗を提供する。それぞれの充填レベルFは、したがって、時点t0の後に最初は上昇するが、次いで最大に達し、その後再び低下する。僅かな、通常は実質的に減衰された、振動が発生し得る。これは、図5における体積流れの符号の変化から最も確実に見ることができる。最大充填レベルFは、通常1秒以内に、時には、例えば僅か0.5秒の短時間以内にさえ達成される。
【0040】
時点t0そのもので、すなわち流れの減速の始めに、図4における描写に示されるように、それぞれの体積流れV全体が収容されなければならない。仮にそれぞれの体積流れVが不変に維持されれば、それぞれの圧力容器10は、図4に示されるように、時点t0から、例えば0.5秒後に完全に充填されることになる。それぞれの圧力容器10の容積の50%が、したがって0.5秒でそれぞれの圧力容器10へ流れ込む。それに応じて、それぞれの圧力容器10の容積の100%が1秒でそれぞれの圧力容器10へ流れ込む。図4における描写から見ることができるように、したがって、それぞれの容器容積(単位:リットルまたは立方メートル)およびそれぞれの体積流れV(単位:リットル/秒または立方メートル/秒)の比率は、1秒である。にもかかわらず、この値(1秒)からの或る程度の偏差は可能である。しかしながら、上述の比率は0.2秒~2.0秒の範囲にあるべきである。実際には、これは、単一の冷却装置4の場合、20l~200l、通常50l~125lの範囲の、特に約100lの容積に対応する。グループが複数の冷却装置4を備える場合、前述の容積値はそれに応じてスケーリングされなければならない。
【0041】
それぞれの接続位置11、それぞれの分枝管路7およびそれぞれの冷却装置4によって提供され、それらから計算される抵抗により、最初に図4および図5に想定される状態で、すなわち対応する弁8が全開位置にあるときに、それぞれの接続位置11の領域に、それぞれの管路圧力p0が広がる。この時点のそれぞれの管路圧力pは、したがって値p0を有する。これは、図6において左に図示される。時点t0前に平衡状態が広がるので、それぞれの圧力容器10における空気14は同様に圧力p0下にある。時点t0で、すなわちそれぞれの弁8の閉止の時点で、それぞれの送り管路12において進行する体積流れV全体が第一にそれぞれの圧力容器10へ転送されなければならない。送り管路12を通る体積流れVは、それぞれの接続位置11からそれぞれの圧力容器10への途中においてそれぞれの接続位置11とそれぞれの圧力容器10との間に設けられるそれぞれの流れ抵抗16において、それぞれの接続位置11において測定されて図5に図示される圧力低下δpをもたらす。圧力低下δpは、好ましくはそれぞれの管路圧力p0の少なくとも半分である。それに応じて、それぞれの管路圧力pは、値p0の1.4倍~1.6倍、すなわち略1.5倍に略相当する値に急激に上昇しなければならない。絶対値では、圧力低下δpは実際には通常1バール台である。それぞれの管路圧力pは次いで再び低下する。
【0042】
それぞれの流れ抵抗16は、それぞれの接続位置11とそれぞれの圧力容器10との間のそれぞれの接続管路の適切な寸法設計によって、特にそれぞれの接続管路全体の横断面またはそれぞれの接続管路の一区画の横断面の寸法設計によって設定できる。振動傾向は、特に流れ抵抗16の適切な寸法設計によって抑制および減衰される。
【0043】
本発明は多くの利点を有する。特に、弁8が非常に急速に(1sを大幅に下回る切替時間で)切り替えられるときでも圧力衝撃を回避できる。冷却装置4に実際に送られる水の量への圧力容器10の影響は、冷却部3の適切なモデルを使用して考慮できる、または冷却部3の基本的な自動化によって簡単な方法で均一にすることができる。更には、流体力学系(供給管路6、送り管路12および分枝管路7から成る)内の圧力振動が圧力容器10によって低減される。これは、水5を運ぶポンプの制御を単純化する。これは、ポンプを調整するために圧力測定が利用されるときに特に当てはまる。更には、弁8を開く際の圧力低下も軽減されるが、この場合、圧力容器10から対応する送り管路12へ水5が送られるからである。電気駆動器としての駆動器9の構成は、弁8の信頼できかつ高速な作動を簡単な方法で可能にする。
【0044】
本発明が好適な実施例によって詳細に例示および記載されたが、本発明は開示した例によって制限されず、本発明の保護の範囲外になることなく当業者によってそこから他の変形例を導出できる。
【符号の説明】
【0045】
1 圧延される金属素材
2 圧延スタンド
3 冷却部
4 冷却装置
5 水
6 供給管路
7 分枝管路
8 弁
9 電気駆動器
10 圧力容器
11 接続位置
12 送り管路
13 分配点
14 空気
15 空気弁
16 流れ抵抗
F 充填レベル
p、p0 管路圧力
t0 時点
V 体積流れ
x 搬送方向
y 幅方向
δp 圧力低下
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機において圧延された金属素材(1)を冷却するための装置であって、
前記装置が、それぞれの分枝管路(7)を介して水(5)が送られる複数の冷却装置(4)であって、前記金属素材(1)に前記水(5)をかけるための前記複数の冷却装置(4)を有し、
前記それぞれの分枝管路(7)を通って流れる水流が設定されるための弁(8)が、前記分枝管路(7)の各々に配置され、
前記それぞれの弁(8)がそれを介して制御される駆動器(9)が、前記弁(8)の各々に割り当てられる、装置において、
前記冷却装置(4)が、専用の圧力容器(10)を各々割り当てられる複数のグループを形成することと、
前記それぞれの圧力容器(10)が、対応するグループの前記冷却装置(4)の前記分枝管路(7)に前記水(5)が供給されるそれぞれの送り管路(12)に、それぞれの接続位置(11)において接続され、その結果、前記それぞれの接続位置(11)が、冷却装置(4)のそれぞれの前記グループの前記弁(8)の、前記水(5)の流れ方向で上流に配置されることと
を特徴とする、装置。
【請求項2】
冷却装置(4)の前記グループの少なくとも一部が、単一の冷却装置(4)だけを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動器(9)が電気駆動器として構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記電気駆動器がステップモータとして構成されることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
冷却装置(4)のそれぞれのグループに割り当てられる前記圧力容器(10)が容器容積を有することと、
前記容器容積がn×20リットル~n×200リットルの範囲にあり、ここでnが前記それぞれのグループの冷却装置(4)の数であることと
を特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記それぞれの接続位置(11)と前記それぞれの圧力容器(10)との間にそれぞれの流れ抵抗(16)が配置されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【国際調査報告】