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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】膵臓がんの新規診断マーカー
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/10 20060101AFI20220830BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20220830BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
C07K5/10 ZNA
G01N33/493 A
C12Q1/37
C12N9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577260
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067542
(87)【国際公開番号】W WO2020260309
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】P.430348
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(31)【優先権主張番号】20150093.1
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20166354.9
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521563895
【氏名又は名称】ユルテステ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】レスナー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】グルバ,ナタリア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB03
2G045DA20
2G045FB12
2G045GC10
4B050CC07
4B050DD11
4B050EE10
4B050FF20C
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR66
4B063QS31
4B063QS40
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、式(1):X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2によって特徴付けられる化合物を提供し、これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。本発明はさらに、被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を本発明の化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法を提供し、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素を含むことができる。さらに、本発明は、本発明の化合物および測定緩衝液を含むキットを提供する。これに加えて、本発明は、膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、本発明の化合物、インビトロ法、またはキットの使用を提供する。本発明はまた、膵臓がんの処置方法における本発明の化合物の使用を提供し、該方法は、被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法を実施し、プロテアーゼ活性が検出された被験体において膵臓がんを処置することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、
X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらし、
X1は成分C1を含むか、または成分C1からなり、X2は成分C2を含むか、または成分C2からなり、検出可能なシグナルは、C1およびC2の空間的分離によりもたらされる。
【請求項2】
配列Thr-Thr-Ala-Argが、加水分解酵素、とりわけ、化合物をX1-Thr-Thr-Ala-Arg-OH(フラグメント1)およびNH-X2(フラグメント2)に開裂する加水分解酵素に接近可能である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
C1およびC2の一方、とりわけC2が、波長1に吸収極大1(AM1)を有する発色団であり、化合物が、波長1とは異なる波長2に吸収極大2(AM2)を有する、請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
C1およびC2が蛍光供与体および蛍光受容体の対である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
C1およびC2の対が、2-アミノ安息香酸(ABZ)/pNA、ABZ/ANB-NH、ABZ/DNP、ABZ/EDDNP、EDANS/DABCYL、TAM/DANSYL、ABZ/Tyr(3-NO)からなる群より選択され、とりわけ、C1およびC2の対が、ABZ/pNAおよびABZ/ANB-NHから選択される、請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができ、
該化合物は、式1によって特徴付けられ:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。
【請求項7】
被験体における膵臓がんの存在または非存在を検出するための請求項6に記載のインビトロ法であって、体液中のプロテアーゼ活性の存在が膵臓がんの存在を示し、体液中のプロテアーゼ活性の非存在が膵臓がんの非存在を示す、前記方法。
【請求項8】
膵臓がんの診断のための請求項6または7に記載のインビトロ法。
【請求項9】
体液が尿である、請求項6~8のいずれかに記載のインビトロ法。
【請求項10】
化合物が、中性またはアルカリ性pH、好ましくは生理学的pHを有する測定緩衝液中、0.1~10mg/mL、とりわけ0.25~7.5mg/mL、より具体的には0.5~5mg/mL、より具体的には0.75~2mg/mL、さらにより具体的には約1mg/mLの濃度で提供され、体液試料が、1:2~1:10、とりわけ1:3~1:8、より具体的には1:4~1:6、さらにより具体的には約1:5の比で化合物に加えられる、請求項6~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
シグナルを検出することが、吸光度または蛍光を測定すること、とりわけ、25~40℃、とりわけ36~38℃において、好ましくは40~60分間にわたり、300~500nm、より具体的には380~430nmにおける吸光度強度を測定することを含む、請求項6~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれかに記載の化合物および測定緩衝液を含むキット。
【請求項13】
膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、
式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす;
請求項6~11のいずれかの方法;または
前記化合物および測定緩衝液を含むキット
の使用。
【請求項14】
膵臓がんの処置方法であって、
a. 請求項7~12のいずれかに記載の方法を実施する段階、および
b. 段階aでプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓がんの診断に使用するための化合物に関する。とりわけ、本発明は、試料内のタンパク質分解酵素の検出に適した発色性ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓がんは通常後期に診断されるため、予後がきわめて不良であることが多い。このがんの動態に起因して、5年生存はまれである。世界中で年間約250000例が膵臓がんと診断されており、ポーランドでは3500例である。残念ながら、大多数の症例は死に至る(80%を超える)。膵臓がんの検出のための、信頼性があり、迅速で、かつ複雑でない診断方法に対する、満たされていない必要性が存在する。早期診断により外科的治療の機会が増え、患者の生存期間が大幅に延長する可能性がある。
【0003】
がん細胞の開始、成長および播種のプロセスには、いくつかのタンパク質分解酵素を含む多くの因子が関与している。この群のタンパク質は、タンパク質およびペプチドをより小さな断片に加水分解することができる。タンパク質分解酵素は細胞外マトリックスの分解を媒介し、その結果、がん細胞が新しい組織にコロニーを形成することが可能になり、新しい血管の形成(血管新生)が可能になり、腫瘍への栄養分の効率的な送達が促進される。さらに、タンパク質分解酵素は、腫瘍成長プロセスによる正常細胞の死の結果として存在する。これらのプロセスはすべて、腫瘍に特徴的なタンパク質分解酵素のプロフィルを形成する。
【0004】
タンパク質分解酵素の影響下で分解して、被験溶液の色の変化または増大を引き起こす発色性ペプチド分子は、以前に記載されている。この発色効果は発色団(例えば、4-ニトロアニリドまたは5-アミノ-2-ニトロ安息香酸)の放出の結果である。
【0005】
このタイプのペプチド誘導体は、以下の公開物から公知である:
1.Erlanger BF, Kokowsky N, Cohen W. The preparation and properties of two new chromogenic substrates of trypsin. Arch Biochem Biophys.1961年11月;95:271-8。
2.Hojo K, Maeda M, Iguchi S, Smith T, Okamoto H, Kawasaki K. Amino acids and peptides. XXXV. Facile preparation of p-nitroanilide analogs by the solid-phase method. Chem Pharm Bull (東京).2000年11月;48(11):1740-4。
【0006】
プロテアーゼの発現を検出および測定するための方法は、以前に記載されている。開示されている方法は、特定のポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体、および特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのPCRに基づく。プロテアーゼ活性の実証は、発色性分子とコンジュゲートした適切な合成ペプチド基質の加水分解によって測定され、ここで、プロテアーゼは前記合成基質を開裂し、基質の加水分解中に放出される色原体の吸光度が測定される。(CA2425829号)。
【0007】
本発明による好ましい化合物は、化合物を膵臓がんを有する人の尿試料と接触させた場合に、シグナル、例えば380~440nmの範囲の色の増大を検出することができるように開発された。この効果は、化合物を健康な人または別のタイプのがんと診断された患者の尿試料と接触させた場合には生じない。
【0008】
本発明者らは、このようなシグナル、例えば、蛍光性供与体/受容体対の分離後に放出される発色性化合物シグナルまたは蛍光性シグナルを、膵臓がんを有する被験体の尿中のタンパク質分解酵素の存在を検出するために使用することができることを発見した。化合物の酵素的加水分解は、検出可能な差異、例えば、320~480nmで吸光度を示す遊離発色団分子(それぞれ、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のANB-NH-アミドまたはpNA-パラ-ニトロアニリン)の放出の発生をもたらす。
【0009】
本発明の化合物は、とりわけ、(i)膵臓がんの検出のための迅速で非侵襲的な診断方法、(ii)膵臓がんの早期検出に適した方法、(iii)膵臓がんのスクリーニングに良好に用いることができる方法、(iv)より有効な処置を導入するためのがん発生の早期における完全な診断プロセスを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】CA2425 829号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Arch Biochem Biophys.1961年11月;95:271-8
【非特許文献2】Chem Pharm Bull (東京).2000年11月;48(11):1740-4
【発明の概要】
【0012】
第1の観点において、本発明は、式1によって特徴付けられる化合物に関する:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。化合物は、配列番号1に従ったテトラペプチドThr-Thr-Ala-Argを含む。
【0013】
第2の観点において、本発明は、被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を本発明の第1の観点に従った化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法に関し、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができる。
【0014】
第3の観点において、本発明は、本発明の第1の観点に従った化合物および測定緩衝液を含むキットに関する。
第4の態様において、本発明は、膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、本発明の第1の観点に従った化合物、本発明の第2の観点に従った方法、または本発明の第3の観点に従ったキットの使用に関する。
【0015】
第5の観点において、本発明は、膵臓がんの処置方法における本発明の第1の観点に従った化合物の使用に関し、該方法は、(a)本発明の第2の観点に従った方法を実施する段階、および(b)段階(a)でプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、がんと診断された患者の尿試料(試料1~10)および健常者からの尿(11~25)中の基質(1)ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NHの加水分解速度を示す。アラビア数字は、選択した尿試料の番号を示す。図1は、試料1~10はすべて崩壊したが、試料3および10では材料2または9よりもABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH基質の分解がより効率的に起こったことを示している。この結果は、タンパク質分解に関与する酵素の活性および量の差に起因し得る。さらに、図1は、式2の化合物の溶液を健常者(がんと診断されていない)からの尿試料と一緒にインキュベートしても吸光度の増大は生じず、したがって試験化合物の加水分解は起こらないことを示している。この結果は、膵臓がんに特徴的なタンパク質分解酵素が存在しないことを示している。
図2図2は、がんと診断された患者の尿試料(試料1~10)および健常者からの尿(11~25)中の基質(2)ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNAの加水分解速度を示す。アラビア数字は、選択した尿試料の番号を示す。図1について上記したのと同様の結果が得られている。
図3図3は、基質(1)ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB NHの加水分解度とpH環境との関係を示す。試験したpH値をx軸に示す。タンパク質分解活性と反応環境のpHとの関係を評価した。この実験の結果、試験材料はアルカリ性pHで最大活性を示す少なくとも1つの酵素を有することが見出された。
図4図4は、膵臓がんと診断された人からの尿を含有する無作為に選択された系の逆相HPLC分析を示す。化合物(1)(ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH、示している)および(2)(ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNA、示していない)は両方とも、ABZ-Thr-Thr-Ala-Argペプチドフラグメントおよび発色団(それぞれANB-NHまたはpNA)に分解する。A: 200mM Tris-HCl緩衝液、pH8.0中のABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB NH2基質。B:膵臓がんと診断された患者の尿中のABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB NH2基質の加水分解。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を以下で詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬は変化し得るので、これらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は特定の態様を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。別途定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。好ましくは、本明細書で用いられる用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」, Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.およびKolbl, H.編集(1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel,スイス)に記載されているように定義される。
【0018】
本明細書の本文全体を通して、いくつかの文書が引用されている。本明細書中で引用される文書(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、指示書等を含む)はそれぞれ、上記または下記のいずれであっても、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明に基づきそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈すべきでない。
【0019】
本発明を実施するために、特記しない限り、当分野の文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, J. Sambrook et al.編集, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)に説明されている従来の化学的方法、生化学的方法、および組換えDNA技術を使用する。
【0020】
本明細書および以下の特許請求の範囲の全体にわたって、文脈に別段の要求がない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、提示される整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を包含するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を排除しないことを意味すると、理解されるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が別段の明確な指示をしない限り、複数の指示対象を包含する。
【0021】
以下で、本発明の要素について記載する。これらの要素は特定の態様と共に列挙されるが、任意の方法および任意の数で組み合わせて、追加的な態様を作り出してもよいことを理解すべきである。さまざまに記載される実施例および好ましい態様は、明示的に記載される態様のみに本発明を限定するように解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載される態様を、任意の数の開示されるおよび/または好ましい要素と組み合わせる態様を支持し、包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されるすべての要素の任意の並び換えおよび組み合わせは、文脈が別段の指示をしない限り、本出願の説明によって開示されるとみなされるべきである。
【0022】
特許明細書および特許請求の範囲で用いられる用語および略語は、以下のように理解されるべきである:
本発明の文脈において、「検出可能なシグナル」は、磁気標識、蛍光性部分、酵素、化学発光プローブ、金属粒子、非金属コロイド粒子、ポリマー染料粒子、顔料分子、顔料粒子、電気化学的に活性な種、半導体ナノ結晶、または量子ドットもしくは金粒子を含む他のナノ粒子など、任意の標識によって生じるような任意のシグナルをさす。標識は、例えば、発色団、フルオロフォア、量子ドット、または放射性標識であることができる。
【0023】
本発明の文脈において、「発色団」という表現は、「発色特性」を有する化合物をさすために使用される。「発色特性」という表現は、化合物が着色生成物を形成する能力をさす。
【0024】
本発明の文脈において、「フルオロフォア」という表現は、「発蛍光特性」を有する化合物をさすために使用される。「発蛍光特性」という表現は、化合物が蛍光発光性生成物を形成する能力をさす。
【0025】
本発明の蛍光染料は以下のクラスの染料を含む:キサンテン(例えば、フルオレセイン)、アクリジン(例えば、アクリジンイエロー)、オキサジン(例えば、オキサジン1)、シニン(例えば、Cy7/Cy3)、スチリル染料(例えば、Alexa Fluor 350)、ポルフィン(例えば、クロロフィルB)、金属配位子錯体(例えば、PtOEPK)、蛍光タンパク質(例えば、APC、R-フィコエリトリン)、ナノ結晶(例えば、QuantumDot 705)、ペリレン(例えば、Lumogen Red F300)およびフタロシアニン(Phtalocyanine)(例えば、IRDYE(商標)700DX)ならびにこれらのクラスの染料のコンジュゲートおよび組み合わせ。
【0026】
量子ドットは、周期表のII-VI族またはIII-V族元素からの原子で構成される半導体である(例えば、CdSe、CdTe、InP)。他の代替物としては、任意の二染料系が挙げられる。
【0027】
本発明の文脈において、NMPはN-メチルピロリドンをさす。
本発明の文脈において、DMFはジメチルホルムアミドをさす。
本発明の文脈において、DCMは塩化メチレンをさす。
【0028】
本発明の文脈において、pNAは4-ニトロアニリンをさし、これは、パラ-ニトロアニリンとよばれることもある。
本発明の文脈において、ABZは2-アミノ安息香酸をさす。
【0029】
本発明の文脈において、ANB-NH2は、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のアミドをさす。
本発明の文脈において、AFCは7-アミド-4-トリフルオロメチルクマリンをさす。
【0030】
本発明の文脈において、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基をさす。
本発明の文脈において、Fmocは9-フルオレニルメトキシカルボニル基をさす。
本発明の文脈において、TFAはトリフルオロ酢酸をさす。
【0031】
本発明の文脈において、「膵臓がん」という用語は、もっとも広い意味で使用され、膵臓で始まるすべてのがんをさす。これには、外分泌がん、内分泌がん、膵芽腫、膵肉腫、およびリンパ腫の亜型が含まれる。外分泌がんとしては、腺がん、とりわけ導管腺がんのほか、嚢胞性腫瘍および腺房細胞がんが挙げられる。内分泌がんとしては、ガストリノーマ、インスリノーマ、ソマトスタチノーマ、ビポーマ、およびグルカゴノーマが挙げられる。また、以下の病期(括弧内の対応するTNM分類(1以上)によって定義される)も包含される:0期(Tis、N0、M0)、IA期(T1、N0、M0)、IB期(T2、N0、M0)、IIA期(T3、N0、M0)、IIB期(T1-3、N1、M0)、III期(T4、あらゆるN、M0)、およびIV期(あらゆるT、あらゆるN、M1)。
【0032】
本発明に従ったペプチド、好ましくは発色性または発蛍光性ペプチドは、当技術分野で公知のように、固体支持体上でペプチド合成を実施することによって得ることができる。固体支持体は、Fmoc基を有する樹脂の形態にあることができ、これは反応の過程の間に除去される。このプロセスを実施するために使用される樹脂は、適切に調製されるべきである。この樹脂の調製は、疎水性溶媒で繰り返し洗浄することによってその体積を増大させることを含む。
【0033】
Fmoc保護基は、20%溶媒溶液で洗浄することによって樹脂から除去しなければならない。
発色性ペプチドを得る公知のプロセスは、適切な時間および化学量論的条件下での個々の成分の付着を包含する。この付着プロセスは、個々の要素(アミノ酸誘導体)を付着させ、残基を洗浄除去し、保護基を除去して再洗浄する、後続工程からなる。このサイクルを各アミノ酸残基について繰り返す。得られたペプチドは、酸性条件下での反応によって樹脂から分離する。続いて、濾過により樹脂から溶液を分離した後、得られた溶液から非極性溶媒でペプチドを沈殿させる。次いで、ペプチド沈殿物を遠心分離する。
【0034】
発色性ペプチドを得る公知の方法は、固体支持体上で、部分的に緩衝液中で実施されるプロセスに基づく。固体支持体としてアミド樹脂を使用し、溶液として疎水性溶媒の混合物を使用する。
【0035】
本発明に従った化合物は、Hojo et al., Chem Pharm Bull(東京),2000に記載されている方法を用いて調製した。合成の詳細な説明は、以下の実施例の項に見出すことができる。
【0036】
さらに、本発明に従ったペプチドは、量子ドットに連結させてもよい。量子ドットは、金属ナノ粒子の存在によって消光される場合を除いて、高度にルミネセンスを示す。ビオロゲン(例えば、メチルビオロゲンまたはプロピルビオロゲン-スルホネート(PVS))もまた、消光剤として用いることができる。
【0037】
プロテアーゼがコンセンサス配列を開裂すると、量子ドットが放出され、発光する。
第1の観点において、本発明は、式1:X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2(式1)によって特徴付けられる化合物を提供し、ここで、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。
【0038】
好ましい態様において、配列Thr-Thr-Ala-Argは、加水分解酵素、とりわけ、化合物をX1-Thr-Thr-Ala-Arg-OH(フラグメント1)およびNH-X2(フラグメント2)に開裂する加水分解酵素に接近可能である。
【0039】
加水分解酵素は、プロテアーゼ、またはいくつかのプロテアーゼの組み合わせであることができる。
化合物の開裂により生じる検出可能なシグナルは、当業者に公知のさまざまな適したシグナルから選択することができる。好ましい態様において、検出可能なシグナルは光学的シグナルである。
【0040】
好ましい態様において、X1は成分C1を含むか、または成分C1からなり、X2は成分C2を含むか、または成分C2からなり、検出可能なシグナルは、C1およびC2の空間的分離により、すなわち、ペプチドThr-Thr-Ala-Argの加水分解的開裂によって、もたらされる。
【0041】
C1に加えて、X1は、例えば、C1のいずれかの側に1以上のアミノ酸を含んでいてもよい。C2に加えて、X2は、例えば、C2のいずれかの側に1以上のアミノ酸を含んでいてもよい。したがって、開裂の前に、C1およびC2は、Thr-Thr-Ala-Argを含むか、またはThr-Thr-Ala-Argからなる4~20アミノ酸または5~10アミノ酸のアミノ酸配列によって分離されることができる。好ましい態様において、C1およびC2は、10以下のアミノ酸によって分離される。
【0042】
好ましい態様において、検出可能なシグナルは、吸収または蛍光の変化である。前記変化は、増大であっても低減であってもよい。好ましい態様において、検出可能なシグナルは、300~500nm、とりわけ380~430nmにおける吸光度強度の増大である。
【0043】
好ましい態様において、C1およびC2の一方は、波長1に吸収極大1(AM1)を有する発色団であり、化合物は波長1とは異なる波長2に吸収極大2(AM2)を有する。したがって、化合物の開裂の前後に波長2で吸収を測定すると、吸収の増大が検出される。
【0044】
開裂により発色団が遊離形態で放出されることが、とりわけ好ましい。開裂により、フラグメント1はX1-Thr-Thr-Ala-Argからなり、フラグメント2はNH-X2のみからなる。したがって、好ましい態様において、発色団はC1ではなくC2である。C2が発色団である場合、X2はC2からなるか、実質的にC2からなることが好ましい。一方、X1はC1のいずれかの側に追加のアミノ酸を含んでいてもよく、開裂前にC1とC2はThr-Thr-Ala-Argより長いアミノ酸配列によって分離されていてもよい。
【0045】
好ましい態様において、発色団は、パラ-ニトロアニリン(pNA)、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のアミド(ANB-NH)、7-アミド-4-トリフルオロメチルクマリン(AFC)および3-ニトロL-チロシン(Tyr3-NO)から選択される。好ましい態様において、発色団はパラ-ニトロアニリン(pNA)である。好ましい態様において、発色団は5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のアミド(ANB-NH)である。
【0046】
好ましい態様において、C1およびC2は蛍光供与体および蛍光受容体の対である。C1およびC2が蛍光供与体および受容体対であり、化合物が、化合物の開裂による蛍光の変化を測定する方法において使用される場合、C1およびC2は、蛍光受容体による蛍光供与体の効率的な消光を保証するために、10以下のアミノ酸によって分離されることが好ましい。当業者なら、蛍光供与体と蛍光受容体との間の距離が重要なパラメーターであることを知っている。したがって、C1およびC2を分離するアミノ酸配列が凝縮またはねじれた二次構造に折り畳まれて、線状リンカーの場合よりも近いC1およびC2の近接が生じる場合、C1とC2との間にさらに長いスペーサーが可能であることができる。
【0047】
好ましい態様において、C1およびC2の対は、2-アミノ安息香酸(ABZ)/pNA、ABZ/ANB-NH、ABZ/DNP、ABZ/EDDNP、EDANS/DABCYL、TAM/DANSYL、ABZ/Tyr(3-NO)からなる群より選択され、とりわけ、C1およびC2の対は、ABZ/pNAおよびABZ/ANB-NHから選択される。C1およびC2は、500g/mol未満、とりわけ400g/mol未満、より具体的には300g/mol未満、さらにより具体的には100~200g/molの分子量を特徴とすることが好ましい。
【0048】
C1およびC2の対はまた、BFP/GFP、BFP/CFP、BFP/YFP、BFP/DsRed、CFP/GFP、CFP/YFP、CFP/mVenus、CeFP/YFP、CeFP/mVenus、CeFP/mCitrine、CFP/dsRed、CFP/mCherry、mTurquoise/mVenus、GFP/YFP、GFP/DsRed、GFP/RFP、Clover/mRuby、Cy3/C5、Alexa 488/Alexa 555、およびFITC/TRITCからなる群より選択されるタンパク質蛍光供与体および受容体対であってもよい。当業者なら、それらの発光および吸光度スペクトルに基づいて適切なタンパク質蛍光供与体および受容体対を選択する方法を知っている。
【0049】
C1およびC2がタンパク質蛍光供与体および受容体対である場合、比較的大きなサイズのタンパク質が化合物の開裂を妨げず、配列Thr-Thr-Ala-Argが加水分解酵素による開裂に接近可能であることが保証されなければならない。これは、例えば、配列番号1に従ったペプチドを含むアミノ酸配列の長さを増大させることによって達成することができる。
【0050】
好ましい態様において、化合物は、式2によって特徴付けられる:
ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH (式2)。
好ましい態様において、化合物は、式3によって特徴付けられる:
ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNA (式3)。
【0051】
式2または3によって特徴付けられる化合物の開裂により、遊離発色団分子が放出される(それぞれANB-NHまたはpNA)。したがって、吸光度強度の増大は、380~430nmで検出することができる。これに加えて、開裂は、蛍光受容体(それぞれANB-NHまたはpNA)からの蛍光供与体(ABZ)の空間的分離をもたらす。したがって、ABZから放出される蛍光はもはや消光されず、蛍光強度の増大を420nmで検出することができる。
【0052】
第2の観点において、本発明は、被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を本発明の第1の観点に従った化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法を提供し、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができる。
【0053】
好ましい態様において、体液中のプロテアーゼ活性の存在は膵臓がんの存在を示し、体液中のプロテアーゼ活性の非存在は膵臓がんの非存在を示す。
好ましい態様において、本発明は、膵臓がんの診断方法を提供する。
【0054】
好ましい態様において、体液は、血液または尿から選択される。好ましい態様において、体液は尿である。意外にも、本発明者らは、本発明の第1の観点に従った化合物が、尿試料中の加水分解酵素活性を検出することができることを見出した。膵臓がんと診断された被験体では、健常被験体と比較して加水分解酵素活性が有意に上昇している(図1、2)。
【0055】
好ましい態様において、被験体は、膵臓がんを発症するリスクが高いか、膵臓がんを有することが疑われるか、膵臓がんを有していたことがあるか、または膵臓がんを有する。
好ましい態様において、化合物は、中性またはアルカリ性pH、好ましくはpH6.8~8.5、より好ましくは生理学的pHを有する測定緩衝液中、0.1~10mg/mL、とりわけ0.25~7.5mg/mL、より具体的には0.5~5mg/mL、より具体的には0.75~2mg/mL、さらにより具体的には約1mg/mLの濃度で提供され、体液試料は、1:2~1:10、とりわけ1:3~1:8、より具体的には1:4~1:6、さらにより具体的には約1:5の比で化合物に加えられる。
【0056】
本明細書の文脈において、「中性pH」という表現は約7.0のpHをさす。本明細書の文脈において、「生理学的pH」という表現は約7.4のpHをさす。
好ましい態様において、シグナルを検出することは、吸光度または蛍光を測定することを含む。
【0057】
好ましい態様において、シグナルを検出することは、25~40℃、とりわけ36~38℃において、好ましくは40~60分間にわたり300~500nm、とりわけ380~430nmにおける吸光度強度を測定することを含む。
【0058】
好ましい態様において、吸光度の増大は加水分解酵素活性の存在を示す。
第3の観点において、本発明は、本発明の第1の観点に従った化合物および測定緩衝液を含むキットを提供する。
【0059】
第4の観点において、本発明は、膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを発症するリスクが高い、膵臓がんを有することが疑われる、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、第1の観点に従った化合物、第2の観点に従った方法、または第3の観点に従ったキットの使用を提供する。
【0060】
第2の観点の方法の使用目的に応じて、用語「被験体」は異なる制限を有する可能性がある。例えば、該方法が、膵臓がんを検出するために、または膵臓がんに関し被験体をスクリーニングするために使用される場合、被験体が膵臓がんを有することはわかっていない、すなわち、膵臓がんを有するかもしれないし、または有さないかもしれない。この例では、被験体は、好ましくは、膵臓がんを発症するリスクが高いか、膵臓がんを有することが疑われるか、または膵臓がんを有していたことがある(すなわち、検出可能な膵臓がんが治癒している)。「リスクの高い」は、がん全般または膵臓がんに対する1以上のリスク因子が、好ましくはがん全般または膵臓がんについて米国がん協会によって定義されるように、被験体に帰することができることを意味する。膵臓がんのリスク因子の例は、以下である:タバコ消費(とりわけ喫煙)、大量の飲酒、肥満、2型糖尿病、職業(ドライクリーニング業および金属工業で使用される特定の化学物質への職場での暴露)、慢性膵炎、50歳以上(とりわけ65歳以上)の年齢、男性の性別、民族(とりわけ、アフリカ系アメリカ人およびアフリカ人の祖先をもつカリブ人男性)、膵臓がんの家族歴(とりわけ一等親血縁者)、および、遺伝性症候群または素因(BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性乳がん卵巣がん症候群;PALB2遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性乳がん;p16/CDKN2A遺伝子の変異によって引き起こされ、皮膚および眼の黒色腫に関連する家族性異型多発母斑黒色腫(FAMMM)症候群;通常PRSS1遺伝子の変異によって引き起こされる家族性膵炎;リンチ症候群、これは、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)としても知られ、MLH1またはMSH2遺伝子の欠損によって引き起こされることがもっとも多い;または、STK11遺伝子の欠損によって引き起こされるPeutz-Jeghers症候群)。
【0061】
膵臓がんは、上に定義されたどの亜型および病期のものでもよい。すなわち、いずれかの亜型および/または病期の有無を検出することができる。
好ましい態様において、有意な量のプロテアーゼ活性の存在、または対照よりも多い量の存在は、膵臓がんの存在を示し、有意な量のプロテアーゼ活性の非存在、または対照以下の量は、膵臓がんの非存在を示す。
【0062】
特定の態様において、第2の観点の方法はさらに、膵臓がんを検出するための1以上のさらなる手段を使用することによって、膵臓がんの検出を確認することを含む。さらなる手段は、がんマーカー(または「バイオマーカー」)または従来の(非マーカー)検出手段であることができる。癌マーカーは、例えば、DNAメチル化マーカー、変異マーカー(例えば、SNP)、抗原マーカー、タンパク質マーカー、miRNAマーカー、がん特異的代謝産物、または発現マーカーであることができる。従来の手段は、例えば、生検(例えばタンパク質または発現マーカーのための染色方法を伴うまたは伴わない視覚的生検検査など)、画像化技術、または物理的な、例えば触覚検査であることができる。好ましい態様において、膵臓がん検出のためのさらなる手段は、身体的検査(肝臓または胆嚢の腫脹、黄疸、すなわち、皮膚および白眼の黄変)、CTスキャン、MRI、胆管膵管造影(とりわけ、内視鏡的逆行性胆管膵管造影、磁気共鳴胆管膵管造影または経皮経肝胆管造影)、血管造影(とりわけ、x線血管造影、CT血管造影またはMR血管造影)、腹部超音波、超音波内視鏡、PETスキャン、血液検査(とりわけ、ビリルビン、CA 19-9またはCEAについて)および生検からなる群より選択される。
【0063】
本明細書で使用される「を示す(indicative for)」または「示す(indicate)」という用語は、示される物を識別または指定する行為をさす。当業者には理解されるように、このような評価は、正確であることが好ましいが、通常、被験体の100%について正確であるわけではない可能性がある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な部分について正確な表示がなされ得ることを必要とする。当業者なら、ある部分が統計的に有意であるかどうかを、いくつかの周知の統計的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マンホイットニー検定などを使用して、容易に決定することができる。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に提供されている。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは0.05、0.01、または0.005である。
【0064】
膵臓がんに関して本明細書で使用される「存在または非存在の検出方法」という語句は、被験体ががんを有するか否かの決定をさす。当業者には理解されるように、このような評価は、正確であることが好ましいが、通常、被験体の100%について正確であるわけではない可能性がある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な部分について正確な表示がなされ得ることを必要とする。統計的有意性および適切な信頼区間およびp値の説明については、上記を参照されたい。
【0065】
本明細書で使用される「診断」という用語は、被験体ががんを有するか否かの決定をさす。本明細書に記載するようなプロテアーゼ活性の分析による診断を、本明細書に記載するようなさらなる手段で補って、プロテアーゼ活性の分析で検出されたがんを確認してもよい。当業者には理解されるように、診断は、正確であることが好ましいが、通常、被験体の100%について正確であるわけではない可能性がある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な部分について正確な診断が下され得ることを必要とする。統計的有意性および適切な信頼区間およびp値の説明については、上記を参照されたい。
【0066】
本明細書のがんに関して本明細書で使用される「被験体集団をスクリーニングする」という語句は、第1の観点の方法を被験体集団の試料と共に使用することをさす。好ましくは、被験体は、がんのリスクが高いか、がんを有することが疑われるか、またはがんを有していたことがある。とりわけ、本明細書中に列挙される1以上のリスク因子は、集団の被験体に帰する可能性がある。特定の態様では、同じ1以上のリスク因子が、集団のすべての被験体に帰することができる。例えば、集団は、大量の飲酒および/またはタバコ消費を特徴とする被験体からなってもよい。「スクリーニング」という用語は、集団の被験体についての上記したような診断をさし、好ましくは、本明細書に記載するようなさらなる手段を用いて確認されることを理解すべきである。当業者には理解されるように、スクリーニングは、正確であることが好ましいが、通常、被験体の100%について正確であるわけではない可能性がある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な部分について正確なスクリーニング結果を得ることができることを必要とする。統計的有意性および適切な信頼区間およびp値の説明については、上記を参照されたい。
【0067】
本明細書で使用される用語「モニタリング」は、処置手順中、または特定の期間中、典型的には、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、5年、10年、または任意の他の期間中に、診断されたがんの随伴(accompaniment)をさす。用語「随伴」は、がんの状態、とりわけ、がんのこれらの状態の変化を、とりわけ、毎日、または1ヶ月に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15回(1日につき1回以下の決定)で決定される任意のタイプの周期的時間区分における量の変化に基づいて、最長1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、または24ヶ月であることができる処置の過程にわたり、プロテアーゼ活性の量に基づいて検出することができることを意味する。量または量の変化はまた、処置に特異的な事象、例えば、各処置サイクルまたは薬物/治療の適用の前および/または後に、決定することもできる。サイクルは、1ラウンドの処置から次のラウンドの開始までの時間である。がんの処置は通常、1回の処置ではなく、1クールの処置である。1クールは通常3~6ヶ月かかるが、それより長くても短くてもよい。1クールの処置の間に、通常4~8サイクルの処置が行われる。通常、処置サイクルは、身体を回復させるための処置中断を包含する。当業者には理解されるように、モニタリングの結果は、正確であることが好ましいが、通常、被験体の100%について正確であるわけではない可能性がある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な部分について正確なモニタリング結果を得ることができることを必要とする。統計的有意性および適切な信頼区間およびp値の説明については、上記を参照されたい。
【0068】
第5の観点において、本発明は、膵臓がんの処置方法における本発明の第1の観点に従った化合物の使用を提供し、該方法は、本発明の第2の観点に従った方法を実施する段階、および、プロテアーゼ活性、とりわけ増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階を含む。
【0069】
他の態様において、本発明は、本発明の第2の観点に従った方法を実施し、プロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置することを含む、膵臓がんの処置方法を提供する。
【0070】
本明細書で使用される場合、がんに関する「処置」または「処置すること」という用語は治療的処置をさし、目標は、がんの進行を低減することである。有益または望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、症状の緩和(release of symptom)、罹患期間の短縮、病理学的状態の安定化(特に、悪化しない)、病勢悪化の減速、病理学的状態の改善および/または寛解(部分的および全体的の両方)が挙げられ、好ましくは検出可能である。処置の成功は必ずしも治癒を意味するわけではないが、処置を行わない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間の延長を意味することもある。好ましい態様において、処置は一次処置であり、すなわち、がんは以前に処置されていなかった。がんの処置は、処置レジメンを包含する。
【0071】
本明細書で使用される「処置レジメン」という用語は、疾患ならびに利用可能な手順および投薬を考慮した被験体の処置方法をさす。がんの処置レジメンの非限定的な例は、化学療法、外科手術および/または照射またはそれらの組み合わせである。本発明によって可能になるがんの早期検出により、とりわけ外科的処置、特に治癒的切除が可能になる。とりわけ、「処置レジメン」という用語は、以下に定義されるような1以上の抗がん剤または治療を投与することをさす。本明細書で使用される「抗がん剤または治療」という用語は、抗増殖性、発がん抑制性および/または制がん制の特性を有する、化学的、物理的もしくは生物学的な薬剤または治療、またはそれらの組み合わせを含む外科手術をさす。
【0072】
化学的抗がん剤または治療は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイドおよびテルペノイドおよびトポイソメラーゼ阻害剤からなる群より選択することができる。好ましくは、アルキル化剤は白金ベースの化合物である。一態様において、白金ベースの化合物は、シスプラチン、オキサリプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD-147、JMl 18、JM216、JM335、およびサトラプラチンからなる群より選択される。
【0073】
物理的抗がん剤または治療は、放射線治療(例えば、治癒的放射線療法、アジュバント放射線療法、姑息的放射線療法、遠隔放射線療法、小線源療法または代謝性放射線療法)、光線療法(例えば、ヘマトポルフォリンまたはフォトフリンIIを使用する)、および温熱療法からなる群より選択することができる。
【0074】
外科手術は、治癒的切除、姑息的手術、予防的手術または腫瘍縮小手術であることができる。典型的には、それは、BaronおよびValin(Rec. Med. Vet, Special Canc.1990; 11(166):999-1007)に記載されているように、切除、例えば、嚢内切除、辺縁、広範囲切除または根治的切除を包含する。
【0075】
生物学的抗がん剤または治療は、抗体(例えば、がん細胞を破壊する免疫応答を刺激する抗体、例えば、レツキシマブまたはアレムツズバブ(alemtuzubab);免疫細胞の受容体に結合して、免疫細胞が「自身」の細胞を攻撃するのを妨げるシグナルを阻害することにより、免疫応答を刺激する抗体、例えば、イピリムマブ;腫瘍成長に必要なタンパク質の作用を妨害する抗体、例えば、ベバシズマブ、セツキシマブまたはパニツムマブ;または、薬物、好ましくは、毒素、化学療法的分子または放射性分子のような細胞殺滅物質にコンジュゲートする抗体、例えば、Y-イブリツモマブ チウキセタン、I-トシツモマブまたはアド-トラスツズマブ エムタンシン)、サイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン、例えば、INF-アルファおよびIL-2)、ワクチン(例えば、がん関連抗原を含むワクチン、例えばシプロイセル-T)、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルスもしくはムンプスウイルスなど天然の腫瘍溶解性ウイルス、または、がん関連抗原を有する細胞を優先的に標的とする、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスもしくはヘルペスウイルスなどの遺伝子操作されたウイルス)、遺伝子治療薬(例えば、変化した腫瘍抑制因子に置き換わるか、腫瘍遺伝子の発現を遮断するか、被験体の免疫系を改善するか、化学療法、放射線療法もしくは他の処置に対してがん細胞をより感受性にするか、細胞自殺を誘導するか、または抗血管新生効果をもたらす、DNAまたはRNA)、および養子T細胞(例えば、抗腫瘍活性のために選択された、被験体から採取した腫瘍侵入性T細胞、または、がん関連抗原を認識するために遺伝子改変された、被験体から採取したT細胞)からなる群より選択することができる。
【0076】
一態様において、1以上の抗がん剤は、アビラテロン酢酸エステル、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、ADE、アド-トラスツズマブ エムタシン、アファチニブ二マレイン酸塩、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ エルウイニア クリサンチミー、アキシチニブ、アザシチジン、BEACOPP、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブ ベドチン、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩、CAFカペシタビン、CAPOX、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール、カルフィルゾミブ、カルムスチン、カルムスチン埋込物、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クロファラビン、CMF、COPP、COPP-ABV、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、シタラビン、シタラビン、リポソーム、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキン ジフチトクス、デノスマブ、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エルトロンボパグ オラミン、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、エリブリンメシル酸塩、エルロチニブ塩酸塩、エトポシドリン酸塩、エベロリムス、エキセメスタン、FEC、フィルグラスチム、フルダラビンリン酸エステル、フルオロウラシル、FU-LV、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブ オゾガマイシン、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、HPV2価ワクチン、組換えHPV4価ワクチン、Hyper-CVAD、イブリツモマブ チウキセタン、イブルチニブ、ICE、イデラリシブ、イフォスファミド、イマチニブ、メシル酸塩、イミキモド、ヨウ素131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イリノテカン塩酸塩、イキサベピロン、ラパチニブ二トシル酸塩、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリド酢酸塩、リポソームシタラビン、ロムスチン、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、MOPP、ネララビン、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペスクシナート、OPA、OFF、OPPA、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル アルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パミドロネート二ナトリウム、パニツムマブ、パゾパニブ塩酸塩、ペグアスパラガーゼ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、ペルツズマブ、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、塩酸プロカルバジン、ラジウム223二塩化物、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、組換えHPV2価ワクチン、組換えHPV4価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ-2b、レゴラフェニブ、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルキソリチニブリン酸塩、シルツキシマブ、シプロイセル-T、ソラフェニブトシル酸塩、STANFORD V、スニチブリンゴ酸塩、TAC、タルク、タモキシフェンクエン酸塩、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トシツモマブおよびI 131ヨウ素トシツモマブ、TPF、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、VAMP、VeIP、ベムラフェニブ、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ボリノスタット、XELOX、Ziv-アフリベルセプトおよびゾレドロン酸、またはそれらの塩からなる群より選択される。
【0077】
他の観点において、本発明は、本発明の第1の観点に従った化合物の生産方法を提供する。
好ましい態様において、式ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH [式中、ABZは2-アミノ安息香酸であり、ANB-NHは5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のアミドである]によって特徴づけられる化合物は、好ましくはFmoc基を有する固体支持体上で実施されるプロセスに従って生成される。プロセスを開始する前に、固体支持体を調製する:疎水性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンで繰り返し洗浄し、Fmoc保護基を、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンなどの溶媒中のピペリジンの10~30%溶液で洗浄することによって除去することにより、その体積を増大させる。次に、後続工程におけるプロセスを実行する:
a)樹脂上に5-アミノ-2-ニトロ安息香酸ANBを堆積させる前に、固体支持体を、DMF中のN-メチルモルホリン(NMM)の3~6%溶液、続いてDMFで洗浄する。次に、DMF中のANBの溶液を調製し、これにTBTU、DMAP、および最後にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、ポリマー堆積物に対して以下の過剰量で添加する:ANB/TBTU/DMAP/DIPEA、3:3:2:6。得られた混合物を樹脂に加え、均一になるまで混合した後、樹脂を減圧濾過し、DMF、DCMおよびイソプロパノールのような溶媒で洗浄する。次に、ヘキサフルオロホスフェート-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HATU)、続いてヘキサフルオロホスフェート-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HBTU)を過剰に用いてANBの樹脂への結合を継続し、終了後、固体支持体をDMF、DCMおよびイソプロパノールで連続的に洗浄し、穏やかに乾燥させる、
b)アミノ酸残基のANBへの付着を、Fmoc-Arg(Pbf)-OHのアミノ酸誘導体との反応を用いて行い、樹脂に対して少なくとも5倍モル過剰のアミノ酸誘導体を無水ピリジンに溶解し、ANBを堆積させた樹脂と接触させる。次に、全体を20℃を下回らない温度に冷却し、POClを、アミノ酸誘導体の使用量に対して1:1の比で加え、混合する。混合プロセスは、室温、次いで高温で行い;反応完了後、樹脂を減圧濾過し、DMFおよびMeOHで洗浄し、穏やかに乾燥し;得られた中間化合物をアシル化プロセスに付す。
【0078】
c)得られた中間体化合物のアシル化を、アミノ酸誘導体、好ましくはFmoc-Ala-OH、次いでFmoc-Thr(tBu)-OH、続いてFmoc-Thr(tBu)-OH、最後にBoz-Abz-OHを用いて行う。アシル化は、カップリング剤としてジイソプロピルカルボジイミドを使用して、残基6~1の工程で実施し、カップリング剤は過剰に使用する。各段階の最後に、樹脂をDMFで洗浄し、そして(好ましくは)アミノ酸誘導体の付着をモニタリングするクロラニル試験に付す。
【0079】
d)Fmoc保護基の除去を、DMF中の10~30%ピペリジン溶液で洗浄し、次いで、溶媒:DMF、イソプロパノールおよび塩化メチレンの各々で洗浄することによって行う。
【0080】
e)樹脂からのペプチドの分離を、TFA、フェノール、水、およびTIPSの混合物を、それぞれ88:5:5:2のv/v/v/v比を維持しながら用いて実施する;混合物を少なくとも1時間、好ましくは3時間撹拌し、得られた沈殿物を減圧濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、得られたペプチドを遠心分離する。
【0081】
f)最終生成物の調製を、超音波の手段によりペプチドを水に溶解し、凍結乾燥することにより行う。
好ましい態様において、ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNA[式中、ABZは2-アミノ安息香酸であり、pNAはパラニトロアニリドである]によって特徴づけられる化合物は、好ましくはFmoc基を有する固体支持体上で実施されるプロセスに従って生成される。プロセスを開始する前に、固体支持体を調製する:疎水性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンで繰り返し洗浄し、Fmoc保護基を、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンなどの溶媒中のピペリジンの10~30%溶液で洗浄することによって除去することにより、その体積を増大させ;次に、後続工程におけるプロセスを実行する:
a)樹脂への第3のアミノ酸残基(Fmoc-Ala)の付着を、無水塩化メチレンに溶解した樹脂堆積物に対して9倍モル過剰の適したアミノ酸誘導体を用いて行う。次いで、混合物を室温で少なくとも2時間撹拌し;反応完了後、樹脂を減圧濾過し、DMFおよびMeOHで洗浄した後、乾燥する。
【0082】
b)次の段階で、以下アシル化とよぶアミノ酸残基の付着を行い、Fmoc-Thr(tBu)-OHの誘導体、続いてFmoc-Thr(tBu)-OHおよびBoc-ABZ-OHを使用する;各段階の前に、樹脂をDMFで好ましくは5分間洗浄し;続いての付着では、カップリング剤、好ましくはジイソプロピルカルボジイミドを使用し、これは過剰に使用する。この手順を2回繰り返し、各段階の後、樹脂をDMFで洗浄し、好ましくは、アミノ酸誘導体の付着をモニタリングするクロラニル試験に付す。
【0083】
c)Fmoc保護基の除去を、DMF中の10~30%ピペリジン溶液で洗浄し、次いで、溶媒:DMF、イソプロパノールおよび塩化メチレンの各々で洗浄することによって行う。
【0084】
d)化合物(ABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OH)が得られるまで段階b)~c)を繰り返し;残基6~3で合成を実施した後、得られた化合物を、TFA:フェノール:水:TIPSの混合物をそれぞれ88:5:5:2、v/v/v/vの割合で攪拌しながら用いて、固体支持体から分離した。2時間後、フラスコの内容物を減圧濾過し、沈殿物をジエチルエーテルで洗浄する。その後、沈殿物を好ましくは20分間遠心分離し、超音波の手段により水に溶解し、続いて凍結乾燥する。
【0085】
e)Fmoc-Arg(Pbf)-pNA合成を、段階的に実施する;第1の工程で、2mmolのFmoc-Arg(Pbf)を2mmolのN-メチルモルホリン(NMM)の存在下で無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アミノ酸誘導体のカルボキシル基を2mmolの塩化イソブチルで活性化する。10分間の活性化の後、3mmolのp-ニトロアニリンを加え、(好ましくは)-15℃の温度で(好ましくは)2時間、続いて室温で1日、反応を行う。反応が完了したら、溶媒を蒸発させ、乾燥残渣を酢酸エチルに溶解し;その後、得られた溶液を飽和NaCl水溶液、10%クエン酸、5%重炭酸ナトリウムで連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し;酢酸エチルを減圧下で蒸留し、乾燥残渣を乾燥する。
【0086】
f)保護ペプチドABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OHをパラニトロアニリドArg(Pbf)と組み合わせることは、以下のプロセスに基づく:保護ペプチドABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OHを少量のDCMに溶解し、次に、好ましくは0℃の温度において、好ましくは30分間にわたりTFFH(テトラメチルフルオロホルムアミド)で活性化し、その後、触媒量のDMAPおよびFmoc-Arg(Pbf)-pNAを加える。反応は好ましくは室温で24時間行い、その後溶媒を蒸発させ、得られた溶液に、側基保護を除去する混合物:TFA:フェノール:水:TIPS(88:5:5:2、v/v/v/v)を注ぎ入れ、好ましくは3時間混合する。
【0087】
g)超音波を用いてペプチドを水に溶解した後、凍結乾燥に付すことによって、最終生成物を調製する。
【実施例
【0088】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって例示する。
実施例1:化合物ABZ -Thr -Thr -Ala -Arg -ANB-NH の合成
1.発色性ペプチドの調製
a)合成の第1工程は、Fmoc/tBu化学を使用して、すなわち保護を使用して、固体支持体上での固相合成によって発色性ペプチドを得ることであった。配列ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH [式中、ABZは2-アミノ安息香酸であり、ANB-NHは5-アミノ-2-安息香酸のアミドであり、ANBは5-アミノ-2-安息香酸である]を有する化合物を、以下のアミノ酸誘導体を用いて固相での化学合成プロセスで得た。
【0089】
Boc-ABZ、Fmoc-Thr(tBu)、Fmoc-Ala、Fmoc-Arg(Pbf)、ANB
化合物、すなわち、診断がタンパク質分解酵素の影響下でのこの化合物の加水分解に関連づけられる膵臓がん検出用の診断マーカーの合成を、5-アミノ-2-安息香酸のANB-NHアミドへの変換を可能にする固体支持体:例えばアミド樹脂、例えばRAPP Polymere(ドイツ)からのTentaGel S RAM上で、例えば0.23mmol/gの堆積(deposit)で実施した。
【0090】
Rink Amide(ドイツ)など、他の市販のアミド樹脂を使用することも可能である。
化合物は、実験室用振盪機を用いて手動で合成した。ほとんどの段階について、固相合成用の25mL焼結シリンジを反応器として使用した。
【0091】
得られた最終化合物はすべて、配列の1位(すなわちN末端)にABZ2-アミノ安息香酸、および6位(C末端)にANB5-アミノ-2-ニトロ安息香酸分子を含有していた。ABZは蛍光供与体として作用し、ANB(5-アミノ-2-安息香酸)は蛍光消光剤および発色団として作用する。ペプチドは、アミノ酸残基Arg-ANB-NHの間、化合物の5位に位置するその配列中に、少なくとも(そして好ましくは)1つの反応性部位を含有していた。アミノ酸誘導体の付着に関与する合成を、残基6~1、すなわちC末端~N末端で実施する。
【0092】
b)TentaGel S RAM樹脂上でのANBの堆積:
ペプチド合成を、TentaGel S RAM樹脂(Rapp Polymere)上で、0.23mmol/gの堆積で行った。第1の工程で、洗浄サイクルによる弛緩を含めて、樹脂を調製した。続いて、NMP中のピペリジンの20%溶液を用いて固体支持体からFmocアミノ基保護を除去し、溶媒洗浄サイクルを実施した。遊離アミノ基の存在を確認するために、クロラニル試験を行った。
【0093】
溶媒洗浄サイクル:
DMF 1×10分
IsOH 1×10分
DCM 1×10分
Fmoc保護の除去:
DMF 1×5分
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
【0094】
c)クロラニル試験:
クロラニル試験は、反応器-シリンジから数粒の樹脂をガラス製アンプルに移し(スパチュラを用いて)、これにトルエン中のp-クロラニルの飽和溶液100μLおよび未使用のアセトアルデヒド50μLを加えることからなっていた。10分後、粒子の色の制御を行った。
【0095】
この工程で、試験を行った後、緑色の粒子の色が得られ、これは遊離アミノ基の存在を示していた。樹脂からの9-フルオレニルメトキシカルボニル保護の除去を確認した後、次の工程、ANB誘導体(5-アミノ-2-ニトロ安息香酸)の付着に進むことが可能であった。
【0096】
d)固体支持体上での5-アミノ-2-ニトロ安息香酸の堆積
ペプチドライブラリー-ペプチドの混合物の合成における第1段階は、1gの樹脂上でのANB堆積であった。発色団を付着させる前に、反応に使用する樹脂を以下の溶媒:DMF、DCMおよび再びDMFで洗浄し、その後、Fmoc保護を固体支持体の官能基から除去した。Fmoc保護を除去する1サイクルは以下の段階を包含していた:
Fmoc保護の除去:
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
e)洗浄
D MF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
f)遊離アミノ基の存在についてのクロラニル試験。
【0097】
遊離アミノ基を有する樹脂を、DMF中のN-メチルモルホリン(NMM)の5%溶液、続いてDMFで洗浄した。Fmoc保護を除去する手順および洗浄サイクルはMerrifield容器中で行った。別のフラスコ中で、ANBをDMFに溶解し、次いでTBTU、DMAP、および最後にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、ポリマー堆積物に対して以下の過剰量で加えた:ANB/TBTU/DMA/DIPEA、3:3:2:6。このように調製した混合物を樹脂に加え、3時間撹拌した。樹脂を減圧濾過し、DMF、DCMおよびイソプロパノールで洗浄し、アシル化手順全体を2回繰り返した。ヘキサフルオロホスフェート-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HATU)、次いでヘキサフルオロホスフェート-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HBTU)を用いて、樹脂へのANB付着の後続反応を行った。最後の段階において、樹脂をDMF、DCMおよびイソプロパノールで連続的に洗浄し、風乾した。
【0098】
g)C末端アミノ酸残基のANBへの付着
対応するアミノ酸誘導体(樹脂堆積物に対して9倍モル過剰)をピリジンに溶解し、ANBを堆積させた樹脂を含有するフラスコに移した。全体を-15℃に冷却した(氷浴:1重量部のNHCl、1重量部のNaNO、1重量部の氷)。望ましい温度に達した後、POClを加え(アミノ酸誘導体の使用量に対して1:1の比率で)、全体をマグネティックスターラーで、-15℃で20分間、室温で30分間、および40℃で6時間(油浴)撹拌した。反応が完了した後、樹脂を減圧濾過し、DMFおよびMeOHで洗浄し、放置して乾燥した。
【0099】
次の段階で、残基(アラニン)をP2位に付着させた。
アミノ酸残基の付着前に、樹脂を毎回DMFで5分間洗浄した。後続の付着におけるカップリング剤として、ジイソプロピルカルボジイミドを使用した。この手順を2回繰り返した。
【0100】
各アシル化の後、樹脂洗浄サイクルを開始し、続いて、樹脂の遊離アミノ基へのアミノ酸誘導体の付着をモニタリングするためのクロラニル試験を行った。
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
クロラニル試験:
試験の結果、最初の2つのカップリングの後、粒子の色は最初は緑色、その後灰色であった。そのため別のアシル化を行う必要があり、その結果、クロラニル試験で試験した樹脂の粒子は無色であった。これは、TentaGel S RAM樹脂へのANBの付着を示し、これにより、ペプチド合成の次の工程への移行が可能になった。
【0101】
h)さらなる保護アミノ酸残基の付着:
樹脂を反応器中の付着ANB残基と一緒にDMFで洗浄した後、アミノ基からFmocを脱保護して、保護アミノ酸アラニン誘導体を付着させた。
【0102】
Fmoc保護の除去:
DMF 1×5分
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
クロラニル試験:
クロラニル試験は、樹脂粒子の緑色によって証明されたように、肯定的な結果をもたらした。これにより、次の工程-Fmoc-Thr(tBu)-OHアミノ酸残基の付着への移行が可能になった。
【0103】
アミノ酸誘導体の付着:
カップリングのプロセスの前に、樹脂をDMF中で洗浄した。カップリング混合物の組成は、保護グルタミン酸残基を付着させた場合、変化しないままであった。
【0104】
各アシル化の終わりに、所定の手順に従って溶媒洗浄サイクルを行い、続いて溶液中の遊離アミノ基の存在についてクロラニル試験を行った。
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
クロラニル試験:
2回目のアシル化後に実施した試験中の樹脂粒子は無色であり、これにより、次の合成工程、すなわち、他の保護アミノ酸誘導体-トレオニンおよび2-アミノ安息香酸分子の導入に移行することが可能になった。カップリングプロセスは、先に論じた手順に従っていた。
【0105】
上記残基を付着させた後に行った試験は、肯定的な結果を示した:樹脂粒子は無色であった。
2.固体支持体からのペプチドの除去
合成後、ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NHペプチドのアミドを固体支持体から除去し、これと併せて、マグネティックスターラー上の丸底フラスコ中で混合物:TFA:フェノール:水:TIPS(88:5:5:2、v/v/v/v)を用いて側基保護を同時に除去した。
【0106】
3時間後、フラスコの内容物を焼結(Schott)漏斗で減圧濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた沈降物をSIGMA 2K30遠心分離機(Laboratory Centrifuges)で20分間遠心分離した。遠心分離後に得られた沈殿物を超音波の手段により水に溶解し、凍結乾燥する。
【0107】
新規化合物の識別点(identity)/特徴-HPLC分析、MS
HPLC条件:RP Bio Wide Pore Supelco C8 250mm 4mmカラム、A相系 水中の0.1%TFA、B:A)中の80%アセトニトリル、流速1mL/分、226nmでの紫外線検出。
化合物が得られたことを確認した。
【0108】
実施例2:式:ABZ1-Thr2-Thr3-Ala4-Arg5-pNA6を有する化合物の調製
このプロセスは、対応するアミノ酸誘導体および追加の置換基を使用する点、ならびにこのプロセスを部分的に溶液中で、そして部分的に固体支持体上で実施する点を除き、実施例1に記載したものと同様に実施する。
【0109】
p-ニトロアニリドAlaの調製
a)合成の第1工程は、Fmoc/tBu化学を使用して固相合成によって保護ペプチドを得ることであった。
【0110】
ABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OH化合物[式中、ABZは2-アミノ安息香酸である]を、以下のアミノ酸誘導体を用いた固相での化学合成によって得た:
Boc-ABZ、Fmoc-Thr(tBu)、Fmoc-Ala。
【0111】
化合物を以下の固体支持体上で合成した:
-2-クロロ-クロロトリイル樹脂、例えば、Iris BIOTECH GMBH(ドイツ)からのもの、1.6mmol Cl/g基での堆積。
【0112】
化合物は、実験室用振盪機を用いて手動で合成した。すべての工程を通して、固相合成用の25mL焼結シリンジを反応器として使用した。
ペプチド合成を、固体支持体:2-クロロ-クロロトリチル樹脂、例えば、Iris BIOTECH GMBH(ドイツ)からのもの上で、1.6mmol Cl/g基の堆積で行った。第1の工程において、洗浄サイクルで樹脂を弛緩させた。続いて、NMP中のピペリジンの20%溶液を用いて固体支持体からFmocアミノ基保護を除去した。その後、溶媒洗浄サイクルを行った。遊離アミノ基の存在を確認するために、クロラニル試験を行った。
【0113】
溶媒洗浄サイクル:
DMF 1×10分
IsOH 1×10分
DCM 1×10分
Fmoc保護の除去:
DMF 1×5分
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
b)クロラニル試験:
クロラニル試験は、反応器-シリンジから数粒の樹脂をガラス製アンプルに移し(スパチュラを用いて)、トルエン中のp-クロラニルの飽和溶液100μLおよび未使用のアセトアルデヒド50μLを加えることからなっていた。10分後、粒子の色の制御を行った。
【0114】
この工程で、試験後、緑色の粒子の色が得られ、これは遊離アミノ基の存在を示していた。樹脂からの9-フルオレニルメトキシカルボニル保護の除去を確認した後、Fmoc-Ala誘導体の付着を開始した。
【0115】
c)固体支持体上でのFmoc-Alaの埋め込み
ペプチドライブラリーの合成における第1段階は、1gの樹脂上でのFmoc-Ala堆積であった。アミノ酸誘導体を付着させる前に、反応に使用する樹脂を以下の溶媒:DMF(ジメチルホルムアミド)、DCM(塩化メチレン)および再びDMFで洗浄し、その後、Fmoc保護を固体支持体の官能基から除去した。Fmoc保護を除去する1サイクルは以下の段階を包含していた:
Fmoc保護の除去:
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
洗浄
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
遊離アミノ基の存在についてのクロラニル試験。
【0116】
遊離アミノ基を有する樹脂をDMFで洗浄した。別のフラスコ中で、Fmoc-AlaをDMFに溶解した。次いで、TBTU、DMAP、および最後にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、ポリマー堆積物に対して以下の過剰に加えた:Fmoc-Pro/TBTU/DMA/DIPEA、3:3:2:6。得られた混合物を樹脂に加え、3時間撹拌した。樹脂を減圧濾過し、DMF、DCMおよびイソプロパノールで洗浄し、アシル化手順全体を2回繰り返した。ヘキサフルオロホスフェート-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HATU)、次いでヘキサフルオロホスフェート-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HBTU)を用いて、樹脂へのFmoc-Pro付着の後続反応を行った。最後の段階において、樹脂をDMF、DCMおよびイソプロパノールで連続的に洗浄し、風乾した。
【0117】
c.さらなる保護アミノ酸残基の付着:
樹脂を反応器中の付着Fmoc-Ala残基と一緒にDMFで洗浄した後、アミノ基からFmocを脱保護して、保護トレオニン誘導体を付着させた。
【0118】
Fmoc保護の除去:
DMF 1×5分
NMP中の20%ピペリジン 1×3分
NMP中の20%ピペリジン 1×8分
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
クロラニル試験:
クロラニル試験は、樹脂粒子の緑色によって証明されたように、肯定的な結果をもたらした。これにより、次の工程-Fmoc-Thr(tBu)-OHアミノ酸残基の付着への移行が可能になった。
【0119】
アミノ酸誘導体の付着:
カップリングのプロセスの前に、樹脂をDMF中で洗浄した。カップリング混合物の組成は、保護グルタミン酸残基を付着させた場合、変化しないままであった。
【0120】
各アシル化の終わりに、所定の手順に従って溶媒洗浄サイクルを行い、続いて溶液中の遊離アミノ基の存在についてクロラニル試験を行った。
溶媒洗浄サイクル:
DMF 3×2分
IsOH 3×2分
DCM 3×2分
クロラニル試験:
2回目のアシル化後に実施した試験中の樹脂粒子は無色であり、これにより、次の合成工程、すなわち、他の保護アミノ酸誘導体-トレオニンおよび2-アミノ安息香酸分子の導入に移行することが可能になった。カップリングプロセスは、先に論じた手順に従っていた。
【0121】
上記残基を付着させた後に行った試験は、肯定的な結果を示した:樹脂粒子は無色であった。
d)側基保護を維持しつつの固体支持体からのペプチドの除去
合成の完了後、保護ABZ-Thr(tBu)-Th(tBu)-Ala-OHペプチドを固体支持体から除去し、マグネティックスターラー上の丸底フラスコ中で混合物:酢酸:TFE(トリフルオロエタノール):DCM(2:2:6、v/v/v)を用いて側基保護を保持した。
【0122】
2時間後、フラスコの内容物を焼結(Schott)漏斗で減圧濾過し、収れん性混合物で洗浄した。溶液をヘキサン(1:10、v/v)で洗浄し、減圧下で蒸発させた後、凍結乾燥した。
【0123】
e)パラニトロアニリドArg誘導体の化学合成
混合無水物法を用いて、Fmoc-Arg(Pbf)-pNAを合成した。第1の段階で、2mmolのFmoc-Arg(Pbf)を2mmolのN-メチルモルホリン(NMM)の存在下で無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。アミノ酸誘導体のカルボキシル基を2mmolの塩化イソブチルで活性化した。10分間の活性化の後、3mmolのp-ニトロアニリンを加えた。-15℃で2時間、続いて室温で24時間にわたり反応を行った。反応完了後、溶媒を蒸発させ、乾燥残渣を酢酸エチルに溶解した。得られた溶液を飽和NaCl水溶液、10%クエン酸および5%重炭酸ナトリウムで連続的に洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、酢酸エチルを減圧留去し、乾燥残渣を真空デシケーター中でPおよびKOH上で乾燥した。
【0124】
f)保護ペプチドとパラニトロアニリドArg(Pbf)とのカップリング
保護ABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OHペプチドを少量のDCMに溶解した後、0℃で30分間にわたりTFFH(テトラメチルフルオロホルムアミド)で活性化した。その後、触媒量のDMAPおよびArg(Pbf)-pNAを加えた。反応を室温で24時間行った後、溶媒を蒸発させた。得られた溶液に、側基保護を除去する混合物:TFA:フェノール:水:TIPS(88:5:5:2、v/v/v/v)を注ぎ入れ、マグネティックスターラー上の丸底フラスコ中で3時間混合した。
【0125】
この時間の後、フラスコに冷ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿物を高速遠心分離機で5000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後に得られた沈殿物を超音波の手段により水に溶解した後、凍結乾燥した。
【0126】
新規化合物の識別点/特徴-HPLC分析、MS
HPLC条件:RP Bio Wide Pore Supelco C8 250mm 4mmカラム、A相系 水中の0.1%TFA、B:A)中の80%アセトニトリル、流速1mL/分、226nmでの紫外線検出。化合物が得られたことを確認した。
【0127】
実施例3
膵臓がんと診断された患者10人の群に対し、新規化合物の適用に関する試験を行った。このために、式2:ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NHまたは式3:ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNAを有する化合物を、ジメチルスルホキシド(0.5mg/mLの濃度)に溶解し;この溶液50μLを、120μLの緩衝液(200mM Tris-HCl、pH8.0)および膵臓がん患者の尿80μLと混合した。吸光度を測定するために設計された96ウェルプレートで測定を行い、各試料を37℃で3回分析した。測定時間は60分であった。測定中、放出された発色団(ANB-NHまたはpNA)に特徴的な波長を405nm(380~430nmの範囲)でモニタリングした。
【0128】
測定の結果、膵臓がんと診断された患者からの尿試料すべてで、溶液の色が経時的に増大した。経時的に観察された吸光度の増大は、試験試料の各々で異なっていた。健常者の15試料については、試験した15個の尿試料のいずれも診断範囲において吸光度の増大を示さなかったため、異なる結果が得られた。
【0129】
分析により、膵臓がんの診断における本実施例に従った化合物の使用が裏付けられた。新規化合物の作用機序は、当該箇所でのその酵素的加水分解に基づいており、それぞれ5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のANB-NH-アミドまたはpNA-パラ-ニトロアニリンである遊離発色団分子の放出をもたらし、320~480nm、特に380~430nmで吸光度を示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
本発明はさらに、以下に関連する
1.化合物-以下の一般式の診断マーカー:
ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-X (式1)
[式中:
ABZは、2-アミノ安息香酸であり、
Xは、ANB-NHまたはpNAであり、
これに関し、
ANB-NHは、5-アミノ-2-安息香酸のアミドであり、
ANBは、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸であり、
そしてpNAは、パラ-ニトロアニリンである]。
【0134】
2.化合物-診断マーカー:
ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-ANB-NH 、(式2)
[式中:
ABZは、2-アミノ安息香酸であり、
ANB-NHは、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸のアミドである]
を得る方法は、プロセスが、好ましくはFmoc基を有する固体支持体上で実施されるという事実に基づく。プロセスを開始する前に、固体支持体を調製する:疎水性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンで繰り返し洗浄し、Fmoc保護基を、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンなどの溶媒中のピペリジンの10~30%溶液で洗浄することによって除去することにより、その体積を増大させる。次に、後続工程におけるプロセスを実行する:
a)樹脂上に5-アミノ-2-ニトロ安息香酸ANBを堆積させる前に、固体支持体を、DMF中のN-メチルモルホリン(NMM)の3~6%溶液、続いてDMFで洗浄する。次に、DMF中のANBの溶液を調製し、これにTBTU、DMAP、および最後にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、ポリマー堆積物に対して以下の過剰量で添加する:ANB/TBTU/DMAP/DIPEA、3:3:2:6。得られた混合物を樹脂に加え、均一になるまで混合した後、樹脂を減圧濾過し、DMF、DCMおよびイソプロパノールのような溶媒で洗浄する。次に、ヘキサフルオロホスフェート-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HATU)、続いてヘキサフルオロホスフェート-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(HBTU)を過剰に用いてANBの樹脂への結合を継続し、終了後、固体支持体をDMF、DCMおよびイソプロパノールで連続的に洗浄し、穏やかに乾燥させる、
b)アミノ酸残基のANBへの付着を、Fmoc-Arg(Pbf)-OHのアミノ酸誘導体との反応を用いて行い、樹脂に対して少なくとも5倍モル過剰のアミノ酸誘導体を無水ピリジンに溶解し、ANBを堆積させた樹脂と接触させる。次に、全体を20℃を下回らない温度に冷却し、POClを、アミノ酸誘導体の使用量に対して1:1の比で加え、混合する。混合プロセスは、室温、次いで高温で行い;反応完了後、樹脂を減圧濾過し、DMFおよびMeOHで洗浄し、穏やかに乾燥し;得られた中間化合物をアシル化プロセスに付す。
【0135】
c)得られた中間体化合物のアシル化を、アミノ酸誘導体、好ましくはFmoc-Ala-OH、次いでFmoc-Thr(tBu)-OH、続いてFmoc-Thr(tBu)-OH、最後にBoz-Abz-OHを用いて行う。アシル化は、カップリング剤としてジイソプロピルカルボジイミドを使用して、残基6~1の工程で実施し、カップリング剤は過剰に使用する。各段階の最後に、樹脂をDMFで洗浄し、そして(好ましくは)アミノ酸誘導体の付着をモニタリングするクロラニル試験に付す。
【0136】
d)Fmoc保護基の除去を、DMF中の10~30%ピペリジン溶液で洗浄し、次いで、溶媒:DMF、イソプロパノールおよび塩化メチレンの各々で洗浄することによって行う。
【0137】
e)樹脂からのペプチドの分離を、TFA、フェノール、水、およびTIPSの混合物を、それぞれ88:5:5:2のv/v/v/v比を維持しながら用いて実施する;混合物を少なくとも1時間、好ましくは3時間撹拌し、得られた沈殿物を減圧濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、得られたペプチドを遠心分離する。
【0138】
f)最終生成物の調製を、超音波の手段によりペプチドを水に溶解し、凍結乾燥することにより行う。
【0139】
3.化合物-診断マーカー:
ABZ-Thr-Thr-Ala-Arg-pNA (式3)
[式中:
ABZは2-アミノ安息香酸であり、
pNAはパラニトロアニリドである]
を得るための方法は、プロセスが、好ましくはFmoc基を有する固体支持体上で実施されるという事実に基づく。プロセスを開始する前に、固体支持体を調製する:疎水性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンで繰り返し洗浄し、Fmoc保護基を、好ましくはジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはN-メチルピロリドンなどの溶媒中のピペリジンの10~30%溶液で洗浄することによって除去することにより、その体積を増大させ;次に、後続工程におけるプロセスを実行する:
a)樹脂への第3のアミノ酸残基(Fmoc-Ala)の付着を、無水塩化メチレンに溶解した樹脂堆積物に対して9倍モル過剰の適したアミノ酸誘導体を用いて行う。次いで、混合物を室温で少なくとも2時間撹拌し;反応完了後、樹脂を減圧濾過し、DMFおよびMeOHで洗浄した後、乾燥する。
【0140】
b)次の段階で、以下アシル化とよぶアミノ酸残基の付着を行い、Fmoc-Thr(tBu)-OHの誘導体、続いてFmoc-Thr(tBu)-OHおよびBoc-ABZ-OHを使用する;各段階の前に、樹脂をDMFで好ましくは5分間洗浄し;続いての付着では、カップリング剤、好ましくはジイソプロピルカルボジイミドを使用し、これは過剰に使用する。この手順を2回繰り返し、各段階の後、樹脂をDMFで洗浄し、好ましくは、アミノ酸誘導体の付着をモニタリングするクロラニル試験に付す。
【0141】
c)Fmoc保護基の除去を、DMF中の10~30%ピペリジン溶液で洗浄し、次いで、溶媒:DMF、イソプロパノールおよび塩化メチレンの各々で洗浄することによって行う。
【0142】
d)化合物(ABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OH)が得られるまで段階b)~c)を繰り返し;残基6~3で合成を実施した後、得られた化合物を、TFA:フェノール:水:TIPSの混合物をそれぞれ88:5:5:2、v/v/v/vの割合で攪拌しながら用いて、固体支持体から分離した。2時間後、フラスコの内容物を減圧濾過し、沈殿物をジエチルエーテルで洗浄する。その後、沈殿物を好ましくは20分間遠心分離し、超音波の手段により水に溶解し、続いて凍結乾燥する。
【0143】
e)Fmoc-Arg(Pbf)-pNA合成を、段階的に実施する;第1の工程で、2mmolのFmoc-Arg(Pbf)を2mmolのN-メチルモルホリン(NMM)の存在下で無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アミノ酸誘導体のカルボキシル基を2mmolの塩化イソブチルで活性化する。10分間の活性化の後、3mmolのp-ニトロアニリンを加え、(好ましくは)-15℃の温度で(好ましくは)2時間、続いて室温で1日、反応を行う。反応が完了したら、溶媒を蒸発させ、乾燥残渣を酢酸エチルに溶解し;その後、得られた溶液を飽和NaCl水溶液、10%クエン酸、5%重炭酸ナトリウムで連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し;酢酸エチルを減圧下で蒸留し、乾燥残渣を乾燥する。
【0144】
f)保護ペプチドABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OHをパラニトロアニリドArg(Pbf)と組み合わせることは、以下のプロセスに基づく:保護ペプチドABZ-Thr(tBu)-Thr(tBu)-Ala-OHを少量のDCMに溶解し、次に、好ましくは0℃の温度において、好ましくは30分間にわたりTFFH(テトラメチルフルオロホルムアミド)で活性化し、その後、触媒量のDMAPおよびFmoc-Arg(Pbf)-pNAを加える。反応は好ましくは室温で24時間行い、その後溶媒を蒸発させ、得られた溶液に、側基保護を除去する混合物:TFA:フェノール:水:TIPS(88:5:5:2、v/v/v/v)を注ぎ入れ、好ましくは3時間混合する。
【0145】
g)超音波を用いてペプチドを水に溶解した後、凍結乾燥に付すことによって、最終生成物を調製する。
【0146】
4.膵臓がんの診断方法は、以下のプロセスに基づく:0.1~10mg/mL(好ましくは1mg/mL)の濃度範囲の一般式1の化合物を、中性またはアルカリ性pH、好ましくは生理学的pHの測定緩衝液中で、1:2~1:10(好ましくは1:5の尿試料対測定緩衝液)の割合範囲の少量のヒト尿と一緒にインキュベートし、300~500nm(好ましくは380~430nm)の範囲の吸光度強度を、25~40℃(好ましくは36~38℃)の範囲の温度で40~60分間にわたって測定する。
【0147】
これに加えて、本発明は、とりわけ以下の事項に関する:
1. 式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。
【0148】
2. 配列Thr-Thr-Ala-Argが、加水分解酵素、とりわけ、化合物をX1-Thr-Thr-Ala-Arg-OH(フラグメント1)およびNH-X2(フラグメント2)に開裂する加水分解酵素に接近可能である、事項1に従った化合物。
【0149】
3. X1が成分C1を含むか、または成分C1からなり、X2が成分C2を含むか、または成分C2からなり、検出可能なシグナルが、C1およびC2の空間的分離によりもたらされる、事項1または2に従った化合物。
【0150】
4. C1およびC2の一方、とりわけC2が、波長1に吸収極大1(AM1)を有する発色団であり、化合物が、波長1とは異なる波長2に吸収極大2(AM2)を有する、事項1~3のいずれかに従った化合物。
【0151】
5. C1およびC2が蛍光供与体および蛍光受容体の対である、事項1~4のいずれかに従った化合物。
6. C1およびC2の対が、2-アミノ安息香酸(ABZ)/pNA、ABZ/ANB-NH、ABZ/DNP、ABZ/EDDNP、EDANS/DABCYL、TAM/DANSYL、ABZ/Tyr(3-NO)からなる群より選択され、とりわけ、C1およびC2の対が、ABZ/pNAおよびABZ/ANB-NHから選択される、事項1~5のいずれかに従った化合物。
【0152】
7. 被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を事項1~6のいずれかに従った化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができる。
【0153】
8. 被験体における膵臓がんの存在または非存在を検出するための事項7に従ったインビトロ法であって、体液中のプロテアーゼ活性の存在が膵臓がんの存在を示し、体液中のプロテアーゼ活性の非存在が膵臓がんの非存在を示す、前記方法。
【0154】
9. 膵臓がんの診断のための事項7または8に従ったインビトロ法。
10. 体液が尿である、事項7~9のいずれかに従ったインビトロ法。
11. 化合物が、中性またはアルカリ性pH、好ましくは生理学的pHを有する測定緩衝液中、0.1~10mg/mL、とりわけ0.25~7.5mg/mL、より具体的には0.5~5mg/mL、より具体的には0.75~2mg/mL、さらにより具体的には約1mg/mLの濃度で提供され、体液試料が、1:2~1:10、とりわけ1:3~1:8、より具体的には1:4~1:6、さらにより具体的には約1:5の比で化合物に加えられる、事項7~10のいずれかに従った方法。
【0155】
12. シグナルを検出することが、吸光度または蛍光を測定すること、とりわけ、25~40℃、とりわけ36~38℃において、好ましくは40~60分間にわたり、300~500nm、より具体的には380~430nmにおける吸光度強度を測定することを含む、事項7~11のいずれかに従った方法。
【0156】
13. 事項1~6のいずれかに従った化合物および測定緩衝液を含むキット。
14. 膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、事項1~6のいずれかに従った化合物、事項7~12のいずれかの方法、または事項13に従ったキットの使用。
【0157】
15. 膵臓がんの処置方法で使用するための事項1~6のいずれかに従った化合物、該方法は、
a. 事項7~12のいずれかに従った方法を実施する段階、および
b. 段階aでプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階
を含む。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
[式中、
X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらし、
X1は成分C1を含むか、または成分C1からなり、X2は成分C2を含むか、または成分C2からなり、検出可能なシグナルは、C1およびC2の空間的分離により、該化合物の加水分解的開裂によってもたらされ、そして
C1およびC2は、蛍光供与体および蛍光受容体の対である]。
【請求項2】
配列Thr-Thr-Ala-Argが、加水分解酵素、とりわけ、化合物をX1-Thr-Thr-Ala-Arg-OH(フラグメント1)およびNH-X2(フラグメント2)に開裂する加水分解酵素に接近可能である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
C1およびC2の一方、とりわけC2が、波長1に吸収極大1(AM1)を有する発色団であり、化合物が、波長1とは異なる波長2に吸収極大2(AM2)を有する、請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
C1およびC2の対が、2-アミノ安息香酸(ABZ)/pNA、ABZ/ANB-NH、ABZ/DNP、ABZ/EDDNP、EDANS/DABCYL、TAM/DANSYL、ABZ/Tyr(3-NO)からなる群より選択され、とりわけ、C1およびC2の対が、ABZ/pNAおよびABZ/ANB-NHから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法であり、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができ、
該化合物は、式1によって特徴付けられ:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす、方法。
【請求項6】
被験体における膵臓がんの存在または非存在を検出するための請求項5に記載のインビトロ法であって、体液中のプロテアーゼ活性の存在が膵臓がんの存在を示し、体液中のプロテアーゼ活性の非存在が膵臓がんの非存在を示す、前記方法。
【請求項7】
膵臓がんの診断のための請求項5または6に記載のインビトロ法。
【請求項8】
体液が尿である、請求項5~7のいずれかに記載のインビトロ法。
【請求項9】
化合物が、中性またはアルカリ性pH、好ましくは生理学的pHを有する測定緩衝液中、0.1~10mg/mL、とりわけ0.25~7.5mg/mL、より具体的には0.5~5mg/mL、より具体的には0.75~2mg/mL、さらにより具体的には約1mg/mLの濃度で提供され、体液試料が、1:2~1:10、とりわけ1:3~1:8、より具体的には1:4~1:6、さらにより具体的には約1:5の比で化合物に加えられる、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
シグナルを検出することが、吸光度または蛍光を測定すること、とりわけ、25~40℃、とりわけ36~38℃において、好ましくは40~60分間にわたり、300~500nm、より具体的には380~430nmにおける吸光度強度を測定することを含む、請求項5~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物および測定緩衝液を含むキット。
【請求項12】
膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、
式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす;
請求項5~10のいずれかの方法;または
前記化合物および測定緩衝液を含むキット
の使用。
【請求項13】
膵臓がんの処置方法であって、
a. 請求項5~10のいずれかに記載の方法を実施する段階、および
b. 段階aでプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階
を含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
15. 膵臓がんの処置方法で使用するための事項1~6のいずれかに従った化合物、該方法は、
a. 事項7~12のいずれかに従った方法を実施する段階、および
b. 段階aでプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階
を含む。
本明細書は以下の発明の開示を包含する:
[1]式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、
X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらし、
X1は成分C1を含むか、または成分C1からなり、X2は成分C2を含むか、または成分C2からなり、検出可能なシグナルは、C1およびC2の空間的分離によりもたらされる。
[2]配列Thr-Thr-Ala-Argが、加水分解酵素、とりわけ、化合物をX1-Thr-Thr-Ala-Arg-OH(フラグメント1)およびNH-X2(フラグメント2)に開裂する加水分解酵素に接近可能である、[1]に記載の化合物。
[3]C1およびC2の一方、とりわけC2が、波長1に吸収極大1(AM1)を有する発色団であり、化合物が、波長1とは異なる波長2に吸収極大2(AM2)を有する、[1]または[2]のいずれかに記載の化合物。
[4]C1およびC2が蛍光供与体および蛍光受容体の対である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]C1およびC2の対が、2-アミノ安息香酸(ABZ)/pNA、ABZ/ANB-NH、ABZ/DNP、ABZ/EDDNP、EDANS/DABCYL、TAM/DANSYL、ABZ/Tyr(3-NO)からなる群より選択され、とりわけ、C1およびC2の対が、ABZ/pNAおよびABZ/ANB-NHから選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]被験体の体液中のプロテアーゼ活性を検出するためのインビトロ法であって、体液を化合物と接触させ、シグナルを検出することを含む方法、該体液は、膵臓がん細胞に由来する加水分解酵素、とりわけプロテアーゼを含むことができ、
該化合物は、式1によって特徴付けられ:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす。
[7]被験体における膵臓がんの存在または非存在を検出するための[6]に記載のインビトロ法であって、体液中のプロテアーゼ活性の存在が膵臓がんの存在を示し、体液中のプロテアーゼ活性の非存在が膵臓がんの非存在を示す、前記方法。
[8]膵臓がんの診断のための[6]または[7]に記載のインビトロ法。
[9]体液が尿である、[6]~[8]のいずれかに記載のインビトロ法。
[10]化合物が、中性またはアルカリ性pH、好ましくは生理学的pHを有する測定緩衝液中、0.1~10mg/mL、とりわけ0.25~7.5mg/mL、より具体的には0.5~5mg/mL、より具体的には0.75~2mg/mL、さらにより具体的には約1mg/mLの濃度で提供され、体液試料が、1:2~1:10、とりわけ1:3~1:8、より具体的には1:4~1:6、さらにより具体的には約1:5の比で化合物に加えられる、[6]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]シグナルを検出することが、吸光度または蛍光を測定すること、とりわけ、25~40℃、とりわけ36~38℃において、好ましくは40~60分間にわたり、300~500nm、より具体的には380~430nmにおける吸光度強度を測定することを含む、[6]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12][1]~[5]のいずれかに記載の化合物および測定緩衝液を含むキット。
[13]膵臓がんの検出のための、または、膵臓がんを有することが疑われる、膵臓がんを発症するリスクが高い、もしくは膵臓がんを有していたことがある被験体をモニタリングするための、
式1によって特徴付けられる化合物:
X1-Thr-Thr-Ala-Arg-X2 (式1)、
これに関し、X1を含むフラグメント1およびX2を含むフラグメント2への該化合物の開裂は、検出可能なシグナルをもたらす;
[6]~[11]のいずれかの方法;または
前記化合物および測定緩衝液を含むキット
の使用。
[14]膵臓がんの処置方法であって、
a. [7]~[12]のいずれかに記載の方法を実施する段階、および
b. 段階aでプロテアーゼ活性、とりわけ、増大したプロテアーゼ活性が検出された被験体において、膵臓がんを処置する段階
を含む、前記方法。

【国際調査報告】