(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】TRPV1のアロステリックモジュレータを用いた疼痛の治療
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20220830BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220830BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220830BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61P25/04
A61K45/00
A61K9/14
A61K47/34
A61K31/12
A61K31/045
A61K31/01
A61K9/72
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577266
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 US2020039989
(87)【国際公開番号】W WO2020264424
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519128842
【氏名又は名称】ジービーエス グローバル バイオファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スモール-ホワード,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ヘレン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
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4C206AA01
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4C206NA12
4C206ZA08
(57)【要約】
TRPV1のアロステリックモジュレータを、場合によりTRPV1リガンドと混合して含む医薬組成物を用いて疼痛を治療する方法が本明細書において提供される。医薬組成物は、THC及びTHCAを実質的に含まない。また、TRPV1における特異的結合ポケットへの結合を分析することによってTRPV1のアロステリックモジュレータを同定し、疼痛を治療するためのアロステリックモジュレータを含む複合混合物を設計する方法も提供される。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPV1、TRPV2、TRPM8及びTRPA1から選択されるTRPチャネルを標的とすることによって疼痛を治療するための複合混合物を設計する方法であって、
in vitro技術又はin silico技術を用いてカンナビス又は他の植物における化合物を分析し、化合物の各々がTRPV1の部位4又は部位4Aに結合するかどうかを予測することによって、鎮痛性の可能性がある化合物及び非鎮痛性の可能性がある化合物の間を識別するステップ;
官能性ジメチル部分を含む化合物のサブセットを選択し、官能性ジメチル部分を含まない化合物の異なるサブセットを除外することによって、選択化合物を得るステップ;及び
選択化合物を含む複合混合物を設計するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
TRPV1の部位4が一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TRPV1の部位4Aが一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
TRPV1における状態遷移又はポア拡張を開始しない化合物を同定するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、
方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与するステップを含み、
医薬組成物が、TRPV1の部位4又は4Aに結合することによってTRPV1を活性化することが可能な活性化合物、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、
活性化合物が、(i)天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は(ii)合成化合物である、方法。
【請求項6】
活性化合物がTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
TRPV1の部位4が一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
TRPV1の部位4Aが一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
活性化合物が、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
活性化合物がミルセンである、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
活性化合物がミルセンではない、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
活性化合物がカンナビジオール(CBD)である、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
医薬組成物がPLGAナノ粒子をさらに含む、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
PLGAナノ粒子が、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
乳酸とグリコール酸との比が約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
乳酸とグリコール酸との比が約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
乳酸とグリコール酸との比が約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
乳酸とグリコール酸との比が約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
乳酸とグリコール酸との比が約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
活性化合物が、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で医薬組成物中に存在する、請求項5~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
活性化合物が、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
活性化合物が、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
活性化合物が、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
活性化合物が、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
感覚ニューロンが侵害受容ニューロンである、請求項5~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
感覚ニューロンが末梢侵害受容ニューロンである、請求項5~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
感覚ニューロンが内臓侵害受容ニューロンである、請求項5~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
疼痛が神経障害性疼痛である、請求項5~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
疼痛が糖尿病性末梢神経障害性疼痛である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
疼痛が帯状疱疹後神経痛である、請求項5~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が、7日を超える期間、少なくとも1日1回投与される、請求項5~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
医薬組成物が、感覚ニューロン侵害受容器における活性化合物の有効レベルを少なくとも3日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される、請求項5~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
医薬組成物が、感覚ニューロン侵害受容器における活性化合物の有効レベルを少なくとも7日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
医薬組成物が、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、又は吸入により投与される、請求項5~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与するステップを含み、医薬組成物が、(i)TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、(ii)TRPV1の部位4と少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンド、及び(iii)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが天然、場合によりカンナビス由来であるか、又は合成され、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが異なる化合物である、方法。
【請求項36】
アロステリックモジュレータがミルセンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
アロステリックモジュレータがミルセンではない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
アロステリックモジュレータが、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
TRPV1リガンドがカンナビジオール(CBD)である、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
リガンド結合部位が部位4Aである、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
TRPV1の部位4が一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
TRPV1の部位4Aが一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドがTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない、請求項35~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
医薬組成物がPLGAナノ粒子をさらに含む、請求項13~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
PLGAナノ粒子が、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
乳酸とグリコール酸との比が約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
乳酸とグリコール酸との比が約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
乳酸とグリコール酸との比が約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
乳酸とグリコール酸との比が約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
乳酸とグリコール酸との比が約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で医薬組成物中に存在する、請求項35~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
感覚ニューロンが侵害受容ニューロンである、請求項35~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
感覚ニューロンが末梢侵害受容ニューロンである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
感覚ニューロンが内臓侵害受容ニューロンである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
疼痛が神経障害性疼痛である、請求項35~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
疼痛が糖尿病性末梢神経障害性疼痛である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
疼痛が帯状疱疹後神経痛である、請求項35~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
医薬組成物が、7日を超える期間、少なくとも1日1回投与される、請求項35~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
医薬組成物が、感覚ニューロン侵害受容器におけるアロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドの有効レベルを少なくとも3日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される、請求項35~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
医薬組成物が、感覚ニューロン侵害受容器におけるアロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドの有効レベルを少なくとも7日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
医薬組成物が、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、又は吸入により投与される、請求項35~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、
組成物がTHCを実質的に含まず、
アロステリックモジュレータが、天然化合物、場合によりカンナビス由来化合物、又は合成化合物である、医薬組成物。
【請求項67】
TRPV1の部位4が一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
TRPV1の部位4に少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンドをさらに含み、TRPV1リガンドが、天然化合物、場合によりカンナビス由来化合物、又は合成化合物である、請求項66又は67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
リガンド結合部位が部位4Aである、請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
TRPV1の部位4Aが一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基が、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドがTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない、請求項66~70のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項72】
アロステリックモジュレータがミルセンである、請求項66~71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項73】
アロステリックモジュレータがミルセンではない、請求項66~71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
アロステリックモジュレータが、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される、請求項66~71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項75】
TRPV1リガンドがカンナビジオール(CBD)である、請求項68~74のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項76】
医薬組成物が、アロステリックモジュレータ以外のテルペンを含まない、請求項66~75のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項77】
医薬組成物が、アロステリックモジュレータ以外の部位4に結合するテルペンを含まない、請求項76に記載の医薬組成物。
【請求項78】
医薬組成物がPLGAナノ粒子を含む、請求項66~77のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項79】
PLGAナノ粒子が、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
乳酸とグリコール酸との比が約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
乳酸とグリコール酸との比が約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項82】
乳酸とグリコール酸との比が約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項83】
乳酸とグリコール酸との比が約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項84】
乳酸とグリコール酸との比が約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項85】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で存在する、請求項66~84のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項86】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する、請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する、請求項86に記載の医薬組成物。
【請求項88】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
組成物が、局所、経口、口腔内、舌下、静脈内、筋肉内、皮下又は吸入投与用に製剤化されている、請求項66~89のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項91】
組成物が、気化器、ネブライザー又はエアロゾライザーによる投与用に製剤化されている、請求項66~90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項92】
組成物が凍結乾燥されている、請求項66~91のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,794号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、苦しく、自覚的で、多くの場合消耗性であり、自律神経応答、例えば、発汗、頻脈、高血圧及び失神に関連する。疼痛は、慢性又は急性であり得、毎日の生活の質の制限及び低下、オピオイド依存、不安及び抑うつ、並びに健康への認識不足に関連している。米国の成人の約20.4%(50,000,000人)には慢性疼痛があり、米国の成人の約8.0%(19,600,000人)には、推定経済的費用が約600,000,000,000ドル/年の高衝撃慢性疼痛がある。疼痛には社会的及び社会経済的側面がある。原発性疼痛の蔓延及びそれに関連したオピオイド依存の両方は、有効性があり、低副作用プロファイルを有する新しい鎮痛剤の発見の原動力となるものである。1,700,000人のアメリカ人がオピオイド依存に罹患し、1年につき約50,000人の人がオピオイド依存で死亡しており、新たに78,500,000,000ドル/年の健康上の経済的負担がオピオイド依存によって生じている。一過性受容体スーパーファミリー(TRP)イオンチャネルは、ある型の疼痛に関与していることが知られており、カプサイシンベースの局所鎮痛剤のための分子標的である。
【0003】
神経障害性疼痛、侵害受容性(nocioceptive)疼痛及び心因性疼痛の主要な亜型がある。神経障害は、体性感覚系が傷害を受けているか又は疾患のある(例えば、糖尿病に関連する慢性疼痛、帯状疱疹後疼痛)場合に生じる。ラテン語の「害する(nocere)」(害する(harm)、傷つける)に由来する侵害受容(nocioception)は、危険、傷害又は外傷に対する基本的な進化的適応である。感覚ニューロンは、組織内における化学的な(有害性小分子)、機械的な(圧力)及び物理的な(熱さ、冷たさ、浸透圧)変化に応答し、神経繊維、後根神経節(DRG)及び脊髄を介してシグナルを脳に伝達する。侵害受容性疼痛は、離散的及び非連続的な活性化障壁を有するそれらの活性化を制御する感覚ニューロン及び侵害受容性イオンチャネルによって閾値化される。例えば、感熱性侵害受容器及びそれらの活性化をゲート制御する感熱性一過性受容器電位(TRP)ファミリーカチオンチャネルのために、熱知覚(thermosensation)は、より高い温度で疼痛になる(45~52℃、TRPV1、TRPV2)。侵害受容性疼痛は、一般的事象(及び慢性健康問題)である。侵害受容性TRPチャネルは、植物二次代謝産物として一般に見られる強力な小分子の著しく多様な集合(カプサイシン、アリシン、メントール、ギンゲロール)によってゲート制御される。TRPチャネルのそれらの活性化は、用量及び曝露量に応じて知覚から疼痛までの範囲で変動する。さらに、ある侵害受容性経路は、感覚ニューロンの組織損傷関連感作から生じる痛覚過敏(疼痛に対する慢性的及び異常な感受性)を発現させる傾向がある。
【0004】
侵害受容における役割のため、TRPチャネルは疼痛障害を治療するための標的として特定されている。TRPチャネルのアンタゴニズムとアゴニズムの両方が、疼痛管理に活用されている。例えば、TRPV1アンタゴニストは、急性鎮痛に有用である。慢性疼痛管理には、通常、TRPV1アゴニストが使用されている。この後者の戦略は、TRPV1受容体アゴニズムの継続が細胞表面での脱感作(受容体インターナリゼーション、分解及びリサイクル)を引き起こすという事実を利用している。また、TRPV1の長期アゴニズムは、TRPV1を含む感覚ニューロンのカルシウム及びナトリウムカチオン過負荷を引き起こし、細胞死を引き起こす。
【0005】
実際には、脱感作をもたらすためのTRPV1アゴニストの使用は、患部への、周知のTRPV1アゴニストであるカプサイシンの高レベルでの長期にわたる繰り返しの局所的適用を含む。この治療的アプローチには、有効性と低コストという利点がある。しかし、弱点もある。
【0006】
第一に、高親和性及び高特異性TRPV1アゴニストは、TRPV1を含む侵害受容器のみを標的とし、他の感覚ニューロン及び痛みに関与するTRPチャネルはそのまま放置する。第二に、カプサイシンなどの高親和性及び高特異性TRPV1アゴニストの使用は、脱感作前の期間の、初期治療中に高レベルの不快感を引き起こす。そういう理由で、胃粘膜や生殖管粘膜などの敏感な領域に対する治療の刺激性が高いため、現在は、TRPV1を介した脱感作を使用してヘルペス後の痛みに対処できない。第三に、カプサイシンを介した脱感作治療は、局所使用に限定されている。この療法は、内臓痛、頭痛、及び特定の筋骨格痛障害には、対処していない。
【0007】
したがって、カプサイシンよりも洗練されており、その作用様式において有効性及び副作用プロファイルを改善する、TRPV1アゴニストなどの治療用TRPV1リガンドが必要とされている。このような改善されたリガンドは、脱感作中の痛みを軽減し、それにより敏感な身体領域の局所治療を可能にする。複数のタイプのTRPをもつ侵害受容器を標的とすることができ、それにより組織の脱感作の程度を改善できる、より広い標的特異性を備えたTRPV1リガンドが必要とされている。また、局所適用に加えて、全身投与に適したTRPV1リガンドも必要とされている。
【0008】
このような新しい薬は、痛み以外のTRPV1に関連する様々な疾患の治療にも役立つだろう。TRPチャネルは痛みと侵害受容に関与することが最初に示されたが、現在では他の様々な生理学的役割があることが知られており、他の疾患の治療の標的になり得ることを示唆している。例えば、TRPチャネルは心血管疾患の治療の標的として特定されており、TRPV1の標的化された薬理学的阻害は、マウスモデルで心臓肥大を有意に減少させることが示されている。米国特許第9,084,786号参照。したがって、TRPV1アゴニストを用いた受容体脱感作によるTRPV1レベルの慢性的なダウンレギュレーションは、心臓肥大及びそれに関連する症状と結果(心臓リモデリング、心臓線維化、アポトーシス、高血圧、又は心不全)を同様に保護し、救出する可能性があることが期待される。しかし、現在、全身投与に適しており、臓器のTRPV1の慢性的なダウンレギュレーションに適しているTRPV1アゴニストはないので、上記の慢性疼痛アプローチに類似した方法でそのようなアプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
よって、TRPV1調節のための新しい方法を見出す必要がある。このような新しい化合物又は薬理学的組成物は、疼痛障害や心血管疾患など、TRPV1チャネル及びTRPV1ファミリーの潜在的な他のメンバーに関連する様々な疾患を治療するための新規でより効果的な方法を提供する。
【0010】
カンナビス(Cannabis、大麻)は鎮痛を提供し、様々な種類の痛みを治療するために、数千年間使用されている。しかし、「医薬」として調剤室から得られる全植物C.サティバ(C. sativa)抽出物の使用には、(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の存在に起因する)精神に影響を及ぼす有害作用、一貫性及び標準化の欠如、汚染(微生物、殺虫剤)、並びに有効性の不適切なエビデンスの問題がつきまとう。これらの全てによって、患者にリスクが生じ、治療薬としてのカンナビス由来化合物の潜在的有用性が限定される。カンナビス二次メタボロームの主要成分(数百のカンナビノイド及びテルペン)を評価し、不活性又は不要な化合物から活性治療薬を区別し、認められた調節経路を用いて処方のための単一化合物又は混合物を再製剤化するという、満たされていない要求がある。
【0011】
全体が参照により本明細書に組み込まれている米国出願第15/986,316号及びPCT/US2018/033956に記載されている以前の研究において、本発明者らは、カンナビスが、アゴニストとして作用するカンナビノイド及びテルペンによって、TRPV1受容体を介してその抗侵害受容効果を少なくとも部分的に発揮することを実証した。本発明者らは、観察されたTRPV1アゴニズムにミルセンが大きく寄与し、カプサイシンと同様に、長期曝露後にTRPV1脱感作を引き起こすことをさらに実証した。しかし、以前の研究では、おそらく研究において用いられるin vitroスクリーニング方法の限界のため、C.サティバ抽出物の他の成分(例えば、ミルセン以外のテルペン、カンナビノイド)によってTRPV1アゴニズムを同定することができなかった。
【0012】
本開示において、本発明者らは、異なる戦略を用いることによって、すなわちTRPV1の特異的結合ポケットに結合することが予測される化学的部分を有する化合物を同定することによって、TRPV1アゴニズムを有し、抗侵害受容効果を発揮するC.サティバ抽出物のさらなる成分を同定した。この戦略は、ミルセンに特異的なTRPV1の結合ポケット(「部位4」)又はカンナビジオール(CBD)に特異的なTRPV1の結合ポケット(「部位4A」)、特に拡張状態へのTRPV1の状態遷移を引き起こすことなくTRPV1チャネルに結合し、激しく活性化することに関わる主要なアミノ酸残基の発見と、これらの部位のための化合物の相対的結合エネルギーの計算とに基づくものであった。標的化合物のスクリーニングのための新しく発見された結合部位の使用によって、多くの構造的に多様なテルペン及びカンナビノイドのプレスクリーニング、並びに状態遷移なしのTRPV1の激しい活性化、長期脱感作及びアロステリックモジュレーションなど、ミルセン又はカンナビジオール(CBD)と同様の所望のモジュレーション効果を有するものの同定が可能になった。結合ポケット4及び4Aに結合するテルペン及びカンナビノイド化合物は、カプサイシンと比較して望ましい医薬特性を有すると考えられる。結合ポケット4及び4Aは、カプサイシンへの結合に関わるが、また、複数の残基とカプサイシン結合の公知のメカニズムとは別の三次元ポケットコンホメーションとを関連づけるいくつかの残基を含む。分子モデリング及び本発明者らが有する機能的データの組合せは、部位4又は4Aと完全に相互作用するリガンドがアロステリック的に他のリガンドと作用することが可能であり、おそらくカプサイシンによって引き起こされるものとは別のS4-S5リンカーに対する効果を介して拡張状態への遷移なしで特異的な非拡張状態においてTRPV1チャネルを維持することが可能であるという考えを支持するものである。
【0013】
さらに、同じ又はオーバーラップする結合ポケットに結合するミルセン又は他の化合物のより広範な治療上の可能性を評価するために、GB Sciencesのネットワーク薬理学プラットフォーム(Network Pharmacology Platform、「NPP」)と呼ばれる独自のin silico予測法を使用して、ミルセン及びネロリドールのターゲット分析及び疾患予測ネットワークを作成した。このin silico予測方法は、NPPにおいて用いられる化合物-遺伝子-疾患アプローチを介して、ポケット4又は4Aに結合する化合物の適応候補を、その化合物及びTRPV1又は同様のチャネルに関連しているこれまで認識されていない疾患プロセスに広げることができる。
【0014】
したがって、第1の態様において、本開示は、TRPV1又は同様のイオンチャネル、例えばTRPV2、TRPM8及びTRPA1を標的とすることによって疼痛を治療するための、化合物の複合多成分混合物(医薬組成物)を設計する方法を提供する。この方法は、in vitroで実証されるか又はin silico技術を用いて予測される特異的相互作用部位(例えば、以下で同定される部位4又は4A、及びここで実証される方法論を用いて同定される将来の部位)への化合物の結合を用いて、示されたイオンチャネルでカンナビス又は他の植物において生じる化合物の鎮痛効果と非鎮痛効果の可能性を識別するプロセスを含み、疼痛を標的とする新規複合化合物混合物の合理的且つ情報に基づいた設計を可能にする。例えば、(i)鎮痛のためのカンナビス由来混合物の設計のための、望ましいTRPV1標的テルペン、不要であるTRPV1標的テルペン、又は中性のTRPV1標的テルペンの識別において、官能性ジメチル部分の存在が、部位4(以下で同定される)に結合する可能性がある分子識別器(molecular discriminator)として使用され、鎮痛のための合理的混合設計において、当該部分を含む化合物(ミルセン、オシメン、リナロール、ネロリドール、ビサボロールが挙げられるが、これらに限定されるものではない)を包含させるが、当該部分を含まない化合物(カリオフィレン、カンフェン、ピネンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)を除外させる。(ii)鎮痛のための合理的に設計されたTRPV1標的複合化合物混合物中に含まれる新規合成化合物の構造的特徴の設計において。
【0015】
別の態様において、本開示は、哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与することを含み、医薬組成物が、(i)部位4若しくは4A(以下で同定される)で構成されるポケット内でTRPV1に結合し、Ca2+及びナトリウム透過のためのチャネルを活性化するが、所望の治療転帰に応じてポア拡張及び状態遷移を開始してもよいか若しくは開始しなくてもよいカンナビス由来化合物、又は(ii)前記チャネルを活性化するが、ポア拡張及び状態遷移を開始してもよいか若しくは開始しなくてもよい部位4若しくは4Aで構成されるポケット内でTRPV1に結合するように設計された合成化合物、又は(iii)部位4若しくは4Aで構成されるポケット内でTRPV1に結合し、前記チャネルを活性化するが、ポア拡張及び状態遷移を開始してもよいか若しくは開始しなくてもよい天然化合物、(iv)薬学的に許容される担体若しくは希釈剤を伴う(i)、(ii)若しくは(iii)のいずれか、の単一化合物又は複数成分混合物を含む、方法を提供する。
【0016】
さらに別の態様において、本開示は、哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、TRPV1活性化状態をアロステリック的にモジュレートするために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与することを含み、医薬組成物がアロステリックモジュレータ及び他の1種のTRPV1リガンドを含み、アロステリックモジュレータが、(i)ミルセン若しくは(ii)部位4で構成されるポケット内でTRPV1に結合するカンナビス由来化合物のいずれか、又は(iii)部位4で構成されるポケット内でTRPV1に結合するように設計された合成化合物、又は(iv)部位4で構成されるポケット内でTRPV1に結合する天然化合物、及び(v)薬学的に許容される担体若しくは希釈剤を伴う(i)、(ii)、(iii)若しくは(iv)のいずれか、であり、他のTRPV1リガンドが、部位4とオーバーラップするか又は部分的にオーバーラップする形でTRPV1に結合するカンナビス由来化合物、合成化合物又は他の植物/天然源由来化合物である、方法を提供する。
【0017】
一態様において、本開示は、TRPV1、TRPV2、TRPM8及びTRPA1から選択されるTRPチャネルを標的とすることによって疼痛を治療するための複合混合物を設計する方法であって、in vitro技術又はin silico技術を用いてカンナビス又は他の植物における化合物を分析し、化合物の各々がTRPV1の部位4又は部位4Aに結合するかどうかを予測することによって、鎮痛性の可能性がある化合物及び非鎮痛性の可能性がある化合物の間を識別するステップ;官能性ジメチル部分を含む化合物のサブセットを選択し、官能性ジメチル部分を含まない化合物の異なるサブセットを除外することによって選択化合物を得るステップ;及び選択化合物を含む複合混合物を設計するステップ、を含む、方法を提供する。
【0018】
一部の実施形態において、TRPV1の部位4は一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基(closely equivalent human TRPV1 residues)を含む。一部の実施形態において、TRPV1の部位4Aは一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。一部の実施形態において、方法は、TRPV1における状態遷移又はポア拡張を開始しない化合物を同定するステップをさらに含む。
【0019】
異なる態様において、本開示は、哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与するステップを含み、医薬組成物が、TRPV1の部位4又は4Aに結合することによってTRPV1を活性化することが可能な活性化合物、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、活性化合物が、(i)天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は(ii)合成化合物である、方法を提供する。
【0020】
一部の実施形態において、活性化合物はTRPV1ポア拡張及び状態遷移を開始しない。一部の実施形態において、TRPV1の部位4は一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。一部の実施形態において、TRPV1の部位4Aは一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。
【0021】
一部の実施形態において、活性化合物は、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される。一部の実施形態において、活性化合物はミルセンである。一部の実施形態において、活性化合物はミルセンではない。一部の実施形態において、活性化合物はカンナビジオール(CBD)である。
【0022】
一部の実施形態において、医薬組成物はPLGAナノ粒子をさらに含む。一部の実施形態において、PLGAナノ粒子は、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である。
【0023】
一部の実施形態において、活性化合物は、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で医薬組成物中に存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する。
【0024】
一部の実施形態において、感覚ニューロンは侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは末梢侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは内臓侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、疼痛は糖尿病性末梢神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、疼痛は帯状疱疹後神経痛である。
【0025】
一部の実施形態において、医薬組成物は、7日を超える期間、少なくとも1日1回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、感覚ニューロン侵害受容器における活性化合物の有効レベルを少なくとも3日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、感覚ニューロン侵害受容器における活性化合物の有効レベルを少なくとも7日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、又は吸入により投与される。
【0026】
さらに別の態様において、本開示は、哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与するステップを含み、医薬組成物が、(i)TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、(ii)TRPV1の部位4と少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンド、及び(iii)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが天然、場合によりカンナビス由来であるか、又は合成され、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドが異なる化合物である、方法を提供する。
【0027】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンではない。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態において、TRPV1リガンドはカンナビジオール(CBD)である。一部の実施形態において、リガンド結合部位は部位4Aである。
【0029】
一部の実施形態において、TRPV1の部位4は一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。一部の実施形態において、TRPV1の部位4Aは一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む(表2参照)。
【0030】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドはTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない。
【0031】
一部の実施形態において、医薬組成物はPLGAナノ粒子をさらに含む。一部の実施形態において、PLGAナノ粒子は、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である。
【0032】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で医薬組成物中に存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する。
【0033】
一部の実施形態において、感覚ニューロンは侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは末梢侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは内臓侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、疼痛は糖尿病性末梢神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、疼痛は帯状疱疹後神経痛である。
【0034】
一部の実施形態において、医薬組成物は、7日を超える期間、少なくとも1日1回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、感覚ニューロン侵害受容器におけるアロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドの有効レベルを少なくとも3日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、感覚ニューロン侵害受容器におけるアロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドの有効レベルを少なくとも7日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、又は吸入により投与される。
【0035】
一態様において、本発明は、TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、組成物がTHCを実質的に含まず、アロステリックモジュレータが、天然化合物、場合によりカンナビス由来化合物、又は合成化合物である、医薬組成物を提供する。
【0036】
一部の実施形態において、TRPV1の部位4は一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。
【0037】
一部の態様において、医薬組成物は、TRPV1の部位4に少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンドをさらに含み、TRPV1リガンドは、天然化合物、場合によりカンナビス由来化合物、又は合成化合物である。
【0038】
一部の実施形態において、リガンド結合部位は部位4Aである。一部の実施形態において、TRPV1の部位4Aは一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドはTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない。
【0039】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンではない。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される。一部の実施形態において、TRPV1リガンドはカンナビジオール(CBD)である。
【0040】
一部の実施形態において、医薬組成物は、アロステリックモジュレータ以外のテルペンを含まない。一部の実施形態において、医薬組成物は、アロステリックモジュレータ以外の部位4に結合するテルペンを含まない。
【0041】
一部の実施形態において、医薬組成物はPLGAナノ粒子を含む。一部の実施形態において、PLGAナノ粒子は、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である。
【0042】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも25%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも50%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも75%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、テルペン及びカンナビノイドの総含有量の少なくとも90%(w/w)の量で存在する。
【0043】
一部の実施形態において、組成物は、局所、経口、口腔内、舌下、静脈内、筋肉内、皮下又は吸入投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、組成物は、気化器、ネブライザー又はエアロゾライザーによる投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、組成物は凍結乾燥されている。
【0044】
本発明のこれらの態様及び他の態様を、以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、TRPV1を含まない細胞型におけるTRPV1の誘導性発現が、細胞にカプサイシン感受性カルシウム流応答をもたらすことを示している。ここで、テトラサイクリン誘導性プロモーターの制御下にラットTRPV1遺伝子でトランスフェクトされたHEK細胞を、テトラサイクリンを1マイクロモルで16時間適用することにより、TRPV1遺伝子を転写し、TRPV1タンパク質を合成するように誘導した。カプサイシンはTRPV1の特異的リガンドであるため、このことにより、以下の試験で使用された実験システムが、明確且つ具体的にTRPV1特異的カルシウム流を報告するものであることが確立される。
【
図2】
図2A-2Cは、カンナビス由来のカンナビノイド及びテルペンの混合物によって誘発されたTRPV1を介して、テルペンがカルシウム流に大きく寄与することを示している。
図2Aは、TRPV1をコードする構築物でトランスフェクトされたHEK細胞における経時的(秒、「s」)なカルシウム流入(相対蛍光単位、「Fluo-4 RFU」)を示している(最初は刺激無し(「NS」)、次いでビヒクル適用後(「veh」)、そして株A混合物の適用後(「株混合物」))。
図2Bは、株A混合物に存在するカンナビノイドのみを含む混合物(「カンナビノイド混合物」)を適用した後のTRPV1発現HEK細胞におけるカルシウム流入を示している。
図2Cは、株A混合物に存在するテルペンのみを含む混合物(「テルペン混合物」)の適用後のTRPV1発現HEK細胞におけるカルシウム流入を示している。
【
図3A】
図3A-3Lは、TRPV1を介してテルペン混合物によって誘発されるカルシウム流に個々のテルペンが異なって寄与することを示している。
図3Aは、TRPV1をコードする構築物でトランスフェクトされたHEK細胞における経時的なカルシウム流入を示している(刺激無し(「NS」)、ビヒクル適用後(「veh」)、そしてテルペン混合物の適用後(「全テルペン」))。
図3B-3Lは、
図3Aで使用したテルペン混合物に存在するテルペンそれぞれについて、具体的には、
図3Bはカリオフィレンについて、
図3Cはリモネンについて、
図3Dはミルセンについて、
図3Eはリナロールについて、
図3Fはアルファビサボロールについて、
図3Gはフムレンについて、
図3Hはベータピネンについて、
図3Iはネロリドールについて、
図3Jはカンフェンについて、
図3Kはオシメンについて、及び
図3Lはアルファピネンについて、TRPV1を発現するHEK細胞におけるベースライン減算カルシウム流入を経時的に示すグラフである。
【
図3B-E】
図3A-3Lは、TRPV1を介してテルペン混合物によって誘発されるカルシウム流に個々のテルペンが異なって寄与することを示している。
図3Aは、TRPV1をコードする構築物でトランスフェクトされたHEK細胞における経時的なカルシウム流入を示している(刺激無し(「NS」)、ビヒクル適用後(「veh」)、そしてテルペン混合物の適用後(「全テルペン」))。
図3B-3Lは、
図3Aで使用したテルペン混合物に存在するテルペンそれぞれについて、具体的には、
図3Bはカリオフィレンについて、
図3Cはリモネンについて、
図3Dはミルセンについて、
図3Eはリナロールについて、
図3Fはアルファビサボロールについて、
図3Gはフムレンについて、
図3Hはベータピネンについて、
図3Iはネロリドールについて、
図3Jはカンフェンについて、
図3Kはオシメンについて、及び
図3Lはアルファピネンについて、TRPV1を発現するHEK細胞におけるベースライン減算カルシウム流入を経時的に示すグラフである。
【
図3F-I】
図3A-3Lは、TRPV1を介してテルペン混合物によって誘発されるカルシウム流に個々のテルペンが異なって寄与することを示している。
図3Aは、TRPV1をコードする構築物でトランスフェクトされたHEK細胞における経時的なカルシウム流入を示している(刺激無し(「NS」)、ビヒクル適用後(「veh」)、そしてテルペン混合物の適用後(「全テルペン」))。
図3B-3Lは、
図3Aで使用したテルペン混合物に存在するテルペンそれぞれについて、具体的には、
図3Bはカリオフィレンについて、
図3Cはリモネンについて、
図3Dはミルセンについて、
図3Eはリナロールについて、
図3Fはアルファビサボロールについて、
図3Gはフムレンについて、
図3Hはベータピネンについて、
図3Iはネロリドールについて、
図3Jはカンフェンについて、
図3Kはオシメンについて、及び
図3Lはアルファピネンについて、TRPV1を発現するHEK細胞におけるベースライン減算カルシウム流入を経時的に示すグラフである。
【
図3J-L】
図3A-3Lは、TRPV1を介してテルペン混合物によって誘発されるカルシウム流に個々のテルペンが異なって寄与することを示している。
図3Aは、TRPV1をコードする構築物でトランスフェクトされたHEK細胞における経時的なカルシウム流入を示している(刺激無し(「NS」)、ビヒクル適用後(「veh」)、そしてテルペン混合物の適用後(「全テルペン」))。
図3B-3Lは、
図3Aで使用したテルペン混合物に存在するテルペンそれぞれについて、具体的には、
図3Bはカリオフィレンについて、
図3Cはリモネンについて、
図3Dはミルセンについて、
図3Eはリナロールについて、
図3Fはアルファビサボロールについて、
図3Gはフムレンについて、
図3Hはベータピネンについて、
図3Iはネロリドールについて、
図3Jはカンフェンについて、
図3Kはオシメンについて、及び
図3Lはアルファピネンについて、TRPV1を発現するHEK細胞におけるベースライン減算カルシウム流入を経時的に示すグラフである。
【
図4】
図4は、ミルセンがテルペン混合物(「テルペン」)で見られるTRPV1を介したカルシウム応答に大きく寄与するが、シグナルの100%を構成しないことを示す。データは、TRPV1でトランスフェクトされ、TRPV1を誘導的に発現するHEK細胞から取得した。
【
図5A】
図5A-5Cは、測定されたカルシウム応答がTRPV1イオンチャネルの存在に全体的又は部分的に依存することを示している。
図5Aは、完全株A混合物の適用後の、HEK野生型細胞(「HEK野生型」)、及びTRPV1をトランスフェクトしたHEK細胞であってテトラサイクリン適用(16時間1μM)によりTRPV1を発現するように誘導されたHEK細胞(「HEK + TRPV1」)における経時的なカルシウム流入を示している。
図5Bは、株A混合物に存在するカンナビノイドのみを含む混合物(「カンナビノイド混合物」)の適用後の、HEK野生型細胞及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。
図5Cは、株A混合物に存在するテルペンのみを含む混合物(「テルペン混合物」)の適用後の、HEK野生型細胞及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。全データはビヒクル減算されている。
【
図5B-C】
図5A-5Cは、測定されたカルシウム応答がTRPV1イオンチャネルの存在に全体的又は部分的に依存することを示している。
図5Aは、完全株A混合物の適用後の、HEK野生型細胞(「HEK野生型」)、及びTRPV1をトランスフェクトしたHEK細胞であってテトラサイクリン適用(16時間1μM)によりTRPV1を発現するように誘導されたHEK細胞(「HEK + TRPV1」)における経時的なカルシウム流入を示している。
図5Bは、株A混合物に存在するカンナビノイドのみを含む混合物(「カンナビノイド混合物」)の適用後の、HEK野生型細胞及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。
図5Cは、株A混合物に存在するテルペンのみを含む混合物(「テルペン混合物」)の適用後の、HEK野生型細胞及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。全てのデータがビヒクル減算されている。
【
図6A】
図6A-6Dは、ミルセン誘発のカルシウム流入がTRPV1イオンチャネルの存在に全体的又は部分的に依存していることを示している。
図6A-6Bは、様々な濃度(3.5 μg/mg (
図6A)、1.75 μg/mg (
図6B)、0.875 μg/mg (
図6C)、及び0.43 μg/mg (
図6D))のミルセンを適用した後のHEK野生型細胞(「HEK野生型」)及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図6B】
図6A-6Dは、ミルセン誘発のカルシウム流入がTRPV1イオンチャネルの存在に全体的又は部分的に依存していることを示している。
図6A-6Bは、様々な濃度(3.5 μg/mg (
図6A)、1.75 μg/mg (
図6B)、0.875 μg/mg (
図6C)、及び0.43 μg/mg (
図6D))のミルセンを適用した後のHEK野生型細胞(「HEK野生型」)及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図6C-D】
図6A-6Dは、ミルセン誘発のカルシウム流入がTRPV1イオンチャネルの存在に全体的又は部分的に依存していることを示している。
図6A-6Bは、様々な濃度(3.5 μg/mg (
図6A)、1.75 μg/mg (
図6B)、0.875 μg/mg (
図6C)、及び0.43 μg/mg (
図6D))のミルセンを適用した後のHEK野生型細胞(「HEK野生型」)及びHEK + TRPV1細胞における経時的なカルシウム流入を示している。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図7】
図7A-7Bは、測定されたミルセン誘発カルシウム流入応答が、TRPV1イオンチャネルの特異的な薬理学的阻害剤によって阻害されることを示している。
図7Aは、ビヒクル(「veh」)の適用、3.5μg/ mlのミルセンの適用、さらにTRPV1阻害剤であるカプサゼピン(10μM)の添加に応答したTRPV1発現HEK細胞におけるカルシウム流入を経時的(秒)に示している。
図7Bは、ビヒクル(「veh」)の適用、3.5μg/ mlのミルセンの適用、さらにカプサゼピンの代わりのリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)の添加に応答した、TRPV1でトランスフェクトされたHEK細胞におけるカルシウム流入を経時的(秒)に示している。データはベースライン減算されている。
【
図8】
図8A-8Dは、外部のカルシウムが存在しない状態でミルセンを適用すると、高濃度でミルセンが内部貯蔵からTRPV1依存性のカルシウム放出を誘導し得ることを示している。
図8A-8Dは、様々な濃度のミルセン-3.5μg/ ml(
図8A)、1.75μg/ ml(
図8B)、0.875μg/ ml(
図8C)及び0.43μg/ml(
図8D)のミルセンに応答した、TRPV1を発現するトランスフェクトHEK細胞(「HEK TRPV1」)又は野生型HEK細胞(「HEK野生型」)における細胞質ゾルカルシウム流入を経時的に示している。実験は、培地に外部カルシウムが存在しない状態で実施された。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図9A-D】
図9A-9Gは、カンナビノイドがTRPV1を介してカルシウム流に異なって寄与することを示している。
図9A-9Gは、
図2Bで試験されたカンナビノイド混合物に存在するカンナビノイドのそれぞれについて、具体的には、
図9Aはカンナビジバリンについて、
図9Bはカンナビゲロールについて、
図9Cはカンナビクロメンについて、
図9Dはカンナビゲロール酸について、
図9Eはカンナビジオールについて、
図9Fはカンナビノールについて、及び
図9Gはカンナビジオール酸について、HEK野生型細胞及びTRPV1を発現するHEK細胞におけるカルシウム流入を経時的(秒、「秒(sec)」)に示している。全ての刺激は20秒で加えられた。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図9E-G】
図9A-9Gは、カンナビノイドがTRPV1を介してカルシウム流に異なって寄与することを示している。
図9A-9Gは、
図2Bで試験されたカンナビノイド混合物に存在するカンナビノイドのそれぞれについて、具体的には、
図9Aはカンナビジバリンについて、
図9Bはカンナビゲロールについて、
図9Cはカンナビクロメンについて、
図9Dはカンナビゲロール酸について、
図9Eはカンナビジオールについて、
図9Fはカンナビノールについて、及び
図9Gはカンナビジオール酸について、HEK野生型細胞及びTRPV1を発現するHEK細胞におけるカルシウム流入を経時的(秒、「秒(sec)」)に示している。全ての刺激は20秒で加えられた。全てのデータがベースライン減算されている。
【
図10】
図10は、治療ターゲットデータベース(「TTD」)エンリッチメント解析(Therapeutic Target Data Base Enrichment Analysis)が、疼痛及び心血管領域の開発(development)について、ネロリドールよりもミルセンを優先する傾向があることを示している。さらに、ミルセンは、天然のカンナビスについての予測される疾患標的セットに大きく寄与している。
【
図11】
図11は、ミルセンによる直接的又は間接的モジュレーションについて、多様なイオンチャネルターゲットが予測されることを示している。
【
図12】
図12は、ネロリドールによる直接的又は間接的モジュレーションについて、限られたイオンチャネルターゲット又はCNS活性ターゲットが予測されることを示している。
【
図13】
図13は、カンナビジオール(CBD)、ミルセン(MYR)又はカプサイシン(CAP)の複数回の連続的適用にわたって測定されたI
maxをまとめた表を提供し、前記表は、これらのリガンドのそれぞれが、異なった様式ではあるが、脱感作を引き起こす可能性があり、このことによって鎮痛におけるチャネル特性の洗練された制御の可能性が提供されることを示している。
【
図15】
図15は、1種のテルペンであるミルセンのターゲット分析及び疾患予測ネットワークを示している。データは、GB Sciencesのネットワーク薬理学プラットフォーム(Network Pharmacology Platform、「NPP」)を使用してin silicoで生成された。ネットワーク内に複数のTRPチャネルが存在することは、ミルセンの効力が、TRPV1を超えて、一次痛伝導チャネルが別個のTRPである他の侵害受容ニューロンにまで及ぶ可能性が高いことを示している。
【
図16】
図16は、1種のテルペンであるネロリドールのターゲット分析及び疾患予測ネットワークを示している。データは、GB SciencesのNPPを使用してin silicoで生成された。ネットワーク内に複数のTRPチャネルが存在することは、ミルセンの効力が、TRPV1を超えて、一次痛伝導チャネルが別個のTRPである他の侵害受容ニューロンにまで及ぶ可能性が高いことを示している。
【
図17】
図17は、有効な鎮痛剤が侵害受容神経束内の複数のイオンチャネル型TRP受容体を標的とすることが望ましいことを示している。
【
図18】
図18A-18Cは、ミルセン(M)の適用量を増やした後のTRPV1を過剰発現する単一HEK293細胞でのTRPV1イオンチャネル活性化を示している。
図18Aは5μMのミルセン、
図19Bは10μMのミルセン、
図18Cは150μMのミルセンを示している。
【
図19A-B】
図19A-19Eは、5μMミルセン(M)及び1μMカプサイシン(Cap)を添加した後の、TRPV1を過剰発現している単一HEK293細胞の電気生理学的データを示している。
図19Aは、ミルセン及びカプサイシンの添加前後の細胞の内向き及び外向きのイオン電流(nA)を示している。
図19Bは、ミルセン誘発応答を示す
図19Aの拡大図である。
【
図19C-E】
図19A-19Eは、5μMミルセン(M)及び1μMカプサイシン(Cap)を添加した後の、TRPV1を過剰発現している単一HEK293細胞の電気生理学的データを示している。
図19C-19Eは、ミルセン又はカプサイシンの適用前(
図19C)、又は5μMのミルセン(
図19D)又は1μMのカプサイシン(
図19E)の適用後の細胞のI-Vカーブを示している。
【
図20】
図20Aは、TRPV1を発現する細胞における30μMのCBDの適用によって誘導される電流を示しており、
図20B-20Cは、カプサゼピンの適用(
図20B)及びCBDのウォッシアウト(
図20C)による電流の減少を示している。
図20Dは、E
revが約0mVである整流電流を示している(
図20D)。
【
図21】
図21は、Ca
2+流入を阻止した0mMの外部Ca
2+濃度(i)を最初に有するチャネルにミルセンを占有させる場合の応答を示している。次いで1mMの外部Ca
2+(ii及びiii)とともにCa
2+濃度を導入した場合、事前のミルセンインキュベーションなしの場合と比較して第2の刺激としてのカンナビジオールの応答は抑制される。
【
図22】
図22A-22Bは、TRPV1結合部位#4におけるミルセンの分子ドッキングを示している。
【
図23】
図23は、特異的テルペン又は他の化合物の分子ドッキングがイオンチャネル型TRP受容体内の部位を同定する方法及び研究プロセスを示しており、関連づけられた残基及びリガンドの構造に対するそれらの関係、並びにそれらの相対的結合エネルギーが知られていると、所望の部分を同定することができる。これらの部分は、次いでin silicoで天然リガンドを区別するために使用され得るか、又は合成リガンドのための合理的設計プロセスに組み込まれ得る。例えば、この図は、共通する部分を有し、TRPV1の結合部位#4を占有する能力及び親和性を有し得るカンナビステルペン(部位4型テルペン)及びTRPV1の部位#4を占有する可能性が低いテルペン(非部位4型テルペン)の群の間を識別するプロセスを示している。
【
図24】
図24は、TRPV1の結合部位#4Aにおけるカンナビジオール(CBD)の分子ドッキングを示している。
【
図25】
図25Aは、
図24と同じTRPV1の結合部位におけるカンナビジオール(CBD)の分子ドッキングを代替的に表したものを示している。
図25Bは、
図25Aの拡大画像を提供する。
【
図26】
図26は、チャネルのタンパク質配列の二次元表示全体にわたるミルセンの結合に関連づけられた残基を示している。
【
図27】
図27は、チャネルのタンパク質配列の二次元表示全体にわたるCBDの結合に関連づけられた残基を示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
別段に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、以下のそれらに帰属する意味を有する。
【0047】
「ミルセン」(「β-ミルセン」と同義)は、7-メチル-3-メチリデンオクタ-1,6-ジエンであり、構造式
【0048】
【0049】
「α-オシメン」は、cis-3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエンであり、構造式
【0050】
【0051】
「cis-β-オシメン」は、(Z)-3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエンであり、構造式
【0052】
【0053】
「trans-β-オシメン」は、(E)-3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエンであり、構造式
【0054】
【0055】
「リナロール」は、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールであり、構造式
【0056】
【0057】
「ネロリドール」は、3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オールであり、構造式
【0058】
【0059】
「cis-ネロリドール」は、ネロリドールのシス異性体であり、構造式
【0060】
【0061】
「trans-ネロリドール」は、ネロリドールのトランス異性体であり、構造式
【0062】
【0063】
「ビサボロール」は、6-メチル-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ヘプタ-5-エン-2-オールであり、構造式
【0064】
【0065】
「ジメチルアリル」基は、式
【0066】
【化10】
で示される通りの不飽和C
5H
9アルキル置換基を指す。「ジメチルアリル」基は、官能性ジメチル部分であることができる。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「官能性ジメチル部分」は、TRPV1に結合することができるジメチル基を含む部分を指す。
【0068】
「テルペン」は、アルファ-ビサボロール(α-ビサボロール)、アルファ-フムレン(α-フムレン)、アルファ-ピネン(α-ピネン)、ベータ-カリオフィレン(β-カリオフィレン)、ミルセン、(+)-ベータ-ピネン(β-ピネン)、カンフェン、リモネン、リナロール、フィトール及びネロリドールからなる群から選択される化合物の内の1種を意味する。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「部位4」は、
図22A及び
図22Bに示されるように、TRPV1におけるミルセンの結合部位を指す。部位4は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基からなる群から選択される少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種のアミノ酸残基を含むTRPV1における一組のアミノ酸残基の結合ポケットであることができる(表2参照)。好ましい実施形態において、部位4は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む一組のアミノ酸残基の結合ポケットである(表2参照)。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「部位4A」は、
図25A及び
図25Bに示されるように、TRPV1におけるカンナビジオール(CBD)の結合部位を指す。部位4Aは、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基からなる群から選択される少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種又は14種のアミノ酸残基を含むTRPV1における一組のアミノ酸残基の結合ポケットであることができる(表2参照)。好ましい実施形態において、部位4は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含むTRPV1における一組のアミノ酸残基の結合ポケットである(表2参照)。
【0071】
「TRPV1のアロステリックモジュレータ」は、TRPV1の部位4に結合することが可能であり、TRPV1の活性をアロステリック的にモジュレートすることが可能な化合物を指す。一部の実施形態において、TRPV1のアロステリックモジュレータは、ジメチル部分を有するテルペンであるが、テルペンに限定されるものではない。
【0072】
「TRPV1リガンド」は、TRPV1の部位4Aに結合することが可能であり、TRPV1を活性化することが可能な化合物を指す。好ましい実施形態において、TRPV1リガンドは、拡張状態への遷移のない非拡張状態のTRPV1を保持することができる。典型的な実施形態において、TRPV1リガンドは、カンナビノイド、例えばカンナビジオール(CBD)であるが、カンナビノイドに限定されるものではない。
【0073】
「薬学的活性成分」(活性薬学的成分と同義)とは、医薬品の製造に使用することを目的とした物質又は物質の混合物を意味し、医薬の製造に使用した場合、医薬品の活性成分になる。そのような物質は、病気の診断、治療、緩和、処置又は予防において薬理学的活性又は他の直接的な効果を与えること、又は身体の構造及び機能に影響を及ぼすことが意図されている。このような物質又は物質の混合物は、連邦食品医薬品化粧品法のセクション501(a)(2)(B)に基づく現在の適正製造基準(CGMP)規制に準拠して生成されることが好ましい。
【0074】
薬学的活性成分は、その成分が0.3%(w/v)未満のデルタ-9テトラヒドロカンナビノールを含有する場合、「THCを実質的に含まない」。医薬組成物は、医薬組成物が0.3%(w/v)未満のデルタ-9テトラヒドロカンナビノールを含有する場合、「THCを実質的に含まない」。
【0075】
「カンナビス・サティバ抽出物」は、流体及び/又は気体抽出によって、例えば、CO2による超臨界流体抽出(SFE)によってカンナビス・サティバ植物材料から得られる組成物である。カンナビス・サティバ抽出物は、典型的には、テルペン、カンナビノイド及び二次代謝産物を含む。例えば、カンナビス・サティバ抽出物は、テルピネン、カリオフィレン、ゲラニオール、グアイオール、イソプレゴール(isopulegoll)、オシメン、シメン、ユーカリプトール、及びテルピノレンの1種以上を含み得る。
【0076】
「疼痛障害」には、緊張(strains)、捻挫、関節炎、又はその他の関節痛、打撲、背部痛、線維筋痛症、子宮内膜症、手術後の痛み、糖尿病性神経障害、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、群発性頭痛、乾癬、過敏性腸症候群、慢性間質性膀胱炎、外陰部痛、外傷、筋骨格障害、帯状疱疹、鎌状赤血球症、心臓病、がん、脳卒中(stroke)、又は化学療法又は放射線による口内炎に関連するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
「治療」、「治療する」などの用語は、本明細書中で、一般的に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために使用される。この効果は、疾患、状態、又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であってもよく、並びに/あるいは疾患若しくは状態及び/又は有害作用(例えば、疾患若しくは状態に起因する症状)の部分的又は完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書中で使用される場合、「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患又は状態の任意の治療を包含し、(a) 疾患若しくは状態にかかりやすい傾向にあるが、その疾患若しくは状態を有すると未だ診断されていない対象において、疾患若しくは状態が発生することを予防すること;(b) 疾患若しくは状態を阻害すること(例えば、その発症を停止すること);又は(c) 疾患若しくは状態を軽減すること(例えば、疾患又は状態の退縮を引き起こし、1つ以上の症状を改善すること)を含む。任意の状態の改善は、当技術分野において公知の標準的な方法及び技術に従って容易に評価することができる。本方法によって治療される対象の集団としては、望ましくない状態又は疾患に罹患している対象、並びに状態又は疾患の発症のリスクを有する対象などが挙げられる。
【0078】
「治療有効用量」又は「治療有効量」という用語は、それが投与される目的の所望の効果を生じさせる用量又は量を意味する。正確な用量又は量は治療の目的により決定され、公知技術を用いて当業者により確認される(例えば、Lloyd (1912) The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding、第4版を参照)。治療有効量は、予防は治療とみなされ得るので、「予防有効量」であり得る。
【0079】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生じさせるのに十分な量を意味する。
【0080】
「改善する」という用語は、病態、例えば免疫障害の治療における任意の治療的に有益な結果、例えば、それらの予防、重症度又は進行の緩和、寛解、又は治癒などを指す。
【0081】
他の解釈上の慣例
本明細書中で列挙される範囲は、列挙された端点を含めて、その範囲内の値の全てについての省略表現であることが理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群から選択される任意の数、数の組合せ、又は副範囲を含むと理解される。
【0082】
別段に示されない限り、1つ以上の立体中心を有する化合物への言及は、それぞれの立体異性体、及びそれらの立体異性体の全ての組合せを意図する。
【0083】
実験結果の概説
カンナビスは鎮痛を提供し、様々な種類の痛みを治療するために、数千年間使用されている。全体が参照により本明細書に組み込まれており、本明細書にさらに記載されている米国出願第15/986,316号及びPCT/US2018/033956に記載されている以前の研究において、本発明者らは、カンナビスがTRPV1受容体を介して抗侵害受容効果を少なくとも部分的に発揮することを実証した。さらに、本発明者らは、観察されたTRPV1アゴニズムにミルセンが大きく寄与し、カプサイシンと同様に、長期曝露後にTRPV1脱感作を引き起こすことを実証した。
【0084】
本開示において、TRPV1脱感作及び抗侵害受容効果に寄与する医療用カンナビスにおける追加のテルペン/カンナビノイド化合物を同定した。
【0085】
以下の実施例のセクションでより詳しく説明するように、現在米国ネバダ州で医療用として使用されているカンナビス・サティバ品種の実際の化学プロファイルに基づいて、カンナビノイドとテルペンの複合混合物である株A混合物を調製した。株の化学プロファイルデータは、%質量及びmg/g存在量として表され、これらの量を混合物に含まれるべき量に変換した。株A混合物において、向精神活性成分を除去するためにTHCとTHCAを意図的に除き、特定の不安定又は不溶性成分を除くことにより実際の化学プロファイルを修正した。また、株A混合物の化合物のサブセットを含む複合混合物である、CBMIX、カンナビノイド混合物及びテルペン混合物も調製した。表1参照。
【0086】
TRPV-1アゴニスト活性のin vitroアッセイを作成するために、HEK細胞にTRPV1のテトラサイクリン誘導性発現を付与する発現ベクターでHEK細胞をトランスフェクトし、細胞内カルシウムレベルの標準蛍光レポーター(フロ-4アセトキシメチルエステル)(「fluo-4」)を使用した。
図1は、TRPV1の誘導性発現がカプサイシン感受性カルシウム流応答をHEK細胞に付与することを示しており、これにより、実験システムがTRPV1特異的カルシウム流を明確に報告するものであることが確立された。
【0087】
同じアッセイで株A混合物を試験したところ、カンナビス由来のカンナビノイドとテルペンの混合物(株A混合物)がTRPV1をトランスフェクトしたHEK細胞に有意なカルシウム流を引き起こすことがわかった(
図2A)。トランスフェクトされていない野生型HEK細胞を用いて並行して得られたシグナルを比較することにより、完全な株A混合物で観察されたカルシウム流がTRPV1受容体の存在に依存することが確認された(
図5A)。
【0088】
サブ混合物を使用して、株A混合物のテルペンが、観察された効果に大きく寄与することが確認された(
図2C)。株A混合物に存在するカンナビノイドによって、より少ない流入が引き起こされた(
図2B)。テルペン混合物とカンナビノイド混合物を使用して観察されたシグナルは、TRPV1受容体の存在に依存していた(
図5B及び5C)。
【0089】
次に、株A混合物に存在する個々のテルペンを試験し、個々のテルペンがTRPV1を介してカルシウム流に異なって寄与することを見出した(
図3A-3L)。ミルセンは、アゴニスト活性に大きく寄与するが(
図3C)、シグナルの100%を構成するわけではない(
図4)。ネロリドールは、単独で試験した場合、より低めのアゴニスト活性を持つことが観察された(
図3I)。ミルセン誘発カルシウムの流入は用量依存的であり、TRPV1受容体の発現に全体的又は部分的に依存していた(
図6)。さらに、TRPV1阻害剤であるカプサゼピンを使用して、TRPV1への依存性を確認した。
図7は、ミルセン誘発カルシウム流入応答がカプサゼピンによって阻害されることを示している。
【0090】
細胞外カルシウムが存在しない場合(1 mM EGTAを補充した、名目上カルシウムを含まない細胞外環境の構築により達成される)、高濃度でミルセンが内部貯蔵からのTRPV1依存性カルシウム放出を誘発できることが実証された(
図8)。
【0091】
図13にまとめたデータは、部位4又は4Aを標的とする化合物がTRPV1を脱感作することができることを示している。
図13は、CBD及びMYRが曲線下面積分析、カルシウムアッセイ又は電気生理学的方法によって測定されたチャネルの脱感作を引き起こすことを示している。
【0092】
同様の実験を行って、株A混合物中の個々のカンナビノイドの寄与を決定し、カンナビノイドがTRPV1を介してカルシウム流に異なって寄与していることを見出した(
図9A-9G)。カンナビノイドのうち、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメン(CBC)、及びカンナビジオール酸(CBDA)は、アッセイで個別に試験したときに最も強力であった。
【0093】
顕著なTRPV1アゴニスト効果を有するオリジナルのカンナビス株A混合物中の2種のテルペンであるミルセン及びネロリドールのより広範な治療上の可能性を評価するために、GB Sciencesのネットワーク薬理学プラットフォーム(Network Pharmacology Platform、「NPP」)と呼ばれる、独自のin silico予測アプローチを使用した。
【0094】
図10は、治療ターゲットデータベースエンリッチメント解析が、疼痛と心血管領域の開発について、ネロリドールよりもミルセンを優先する傾向があることを示している。さらに、ミルセンは、天然カンナビスの予測される疾患標的セットに大きく寄与している。
図11は、ミルセンによる直接的又は間接的なモジュレーションについて、多様なイオンチャネルターゲットが予測されることを示しているが、
図12は、ネロリドールによる直接的又は間接的なモジュレーションについては、より限られたイオンチャネルターゲット又はCNS活性ターゲットのセットが予測されることを示している。
【0095】
図15は、GB SciencesのNPPを使用したミルセンのターゲット分析と疾病予測ネットワークを示している。ネットワーク内の複数のTRPチャネルの存在は、ミルセンの効力が、TRPV1を超えて、一次痛伝導チャネルが別個のTRP受容体である他の侵害受容ニューロンにまで及ぶ可能性が高いことを示している。
【0096】
ミルセンによるTRPV1活性のモジュレーションをさらに検討するために、パッチクランプ実験を行った。まず、TRPV1を発現する個々の細胞における用量依存的応答を試験し、ミルセンの用量を増やすと、活性化電流の振幅(
図18A~18C)とカルシウム流入(データは示していない)の両方に依存する形で不活性化され得る内向き整流性の非選択的カチオン電流が生じることを見出した。
図19C~Eにおいて提供される通りの(1 IV、2 IV、3 IV及び4 IVにおける)ミルセン及びカプサイシンの添加の前後の
図19AにおけるIVの関係の評価は、ミルセンが主に状態1(非拡張)においてTRPV1を活性化するが、カプサイシンは拡張状態にTRPV1を活性化することを示した。TRPV1は、カンナビジオール(CBD)によっても活性化されたが(
図20A)、それによってカプサゼピン及びウォッシアウト(
図20B及び20C)の両方に感受性がある電流を引き起こした。ミルセンの適用によって、その後のCBDによるTRPV1の活性化をモジュレートすることが可能になったが(
図21)、このことは、ミルセンが他のTRPV1リガンドのアロステリックモジュレータとして作用する可能性を有することを示唆している。
【0097】
バイアスのない計算モデリング分析(unbiased computational modeling analysis)によって、
図22A~22Bに示される通りのTRPV1におけるミルセンのための結合ポケット(部位4)を同定することが可能になった。結合ポケットは、TRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488を含む一組のアミノ酸残基を含む(
図23A及び23B)。同定された結合ポケットをミルセンと同様のTRPV1に対するアロステリック効果を発揮する追加的化合物を同定するためのツールとして使用した。様々なテルペンの化学構造(
図23)及びそれらの部位4との予測された相互作用に基づいて、ジメチルアリル基を含むテルペン(例えば、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロール)は部位4に結合することが予測された。ジメチルアリル基を有さないテルペン(例えば、カリオフィレン、ピネン、リモネン、カンフェン及びフィトール)は部位4に結合しないことも予測された。
【0098】
バイアスのない計算モデリング分析によって、
図25A~25Bに示される通りのTRPV1におけるカンナビジオール(CBD)のための結合ポケット(部位4A)を同定することがさらに可能になった。結合ポケットは、Arg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516を含む一組のアミノ酸残基を含む。結合ポケット(部位4A)は、ミルセンの結合ポケット(部位4)と部分的にオーバーラップしていたが、ミルセンの結合ポケットとは異なっていた。Y554及びR491は、ミルセンと同様のCBDとの主要な相互作用を提供すると思われるが、CBD結合において関連づけられる残りの残基は、ミルセン部位に対する類似性及び相違点の両方を示す。チャネルのタンパク質配列の二次元表示全体にわたるミルセン及びCBDの結合に関連づけられた残基は、
図26及び27に示される。
【0099】
治療のための複合混合物を設計する方法
一態様において、本開示は、TRPV1、TRPV2、TRPM8及びTRPA1から選択されるTRPチャネルを標的とすることによって疼痛を治療するための複合混合物を設計する新しい方法を提供する。方法は、in vitro技術又はin silico技術を用いてカンナビス又は他の植物における化合物を分析し、化合物の各々がTRPV1の部位4又は部位4Aに結合するかどうかを予測し、それらの相対的結合エネルギーを評価することによって、鎮痛性の可能性がある化合物及び非鎮痛性の可能性がある化合物の間を識別するステップ;官能性ジメチル部分を含む化合物のサブセットを選択し、官能性ジメチル部分を含まない化合物の異なるサブセットを除外することによって選択化合物を得るステップ;及び選択化合物を含む複合混合物を設計するステップ、を含む。方法は、TRPV1において状態遷移又はポア拡張を開始しない1種以上の化合物を同定するステップをさらに含むことができる。状態遷移を開始しない化合物は、本技術分野で公知の方法、例えば、全細胞パッチクランピング(whole cell patch clamping)、他の電気生理学的技術、カルシウムイメージング、又はTRPV1の状態遷移に特異的なシグナルの同定を可能にする他の方法によって同定され得る。
【0100】
一部の実施形態において、方法は、本技術分野において利用可能な天然化合物又は合成化合物の中でTRPV1のアロステリックモジュレータを同定するために適用され得る。好ましい実施形態において、方法は、カンナビスにおいて見出されるテルペン及びカンナビノイドの中でTRPV1のアロステリックモジュレータを同定するために適用される。他の実施形態において、方法は、TRPV1活性をモジュレートすることが可能であり、所望の治療効果、例えば鎮痛効果を提供することが可能な新しい化合物を設計し、合成するために使用され得る。
【0101】
in vitro技術又はin silico技術を用いて様々な化合物を分析し、相対的結合エネルギーとともに、化合物の各々がTRPV1の部位4又は部位4Aに結合するかどうかを予測するステップを用いて、多くの化合物をスクリーニングして、それらのTRPV1モジュレーション効果及び鎮痛効果についてさらに試験され得る、より少ない化合物を選択することができる。一部の実施形態において、in vitro技術又はin silico技術を用いて様々な化合物を分析し、化合物の各々がTRPV1の部位4又は部位4Aに結合するかどうかを予測するステップを用いて、TRPV1に対するモジュレーション効果を有すると同定されたか又は考えられる化合物の生理学的効果を検討することができる。
【0102】
複合混合物は、in vitro技術又はin silico技術を用いてTRPV1の部位4又は部位4Aに結合すると同定された1種以上の化合物を含むように設計され得る。一部の実施形態において、複合混合物は、in vitro技術又はin silico技術を用いてTRPV1の部位4又は部位4Aに結合すると同定された1種の化合物のみを含む。一部の実施形態において、複合混合物は、in vitro技術又はin silico技術を用いてTRPV1の部位4に結合すると同定された第1化合物、及びTRPV1の部位4Aに結合すると同定された第2化合物を含む。複合混合物に含まれる化合物は、TRPV1の部位4又は部位4Aに対するそれらの結合親和性に基づいて選択され得る。一部の実施形態において、複合混合物に含まれる化合物は、化合物と相互作用するか、又は相互作用すると予測される部位4の特異的アミノ酸残基に基づいて選択され得る。
【0103】
一部の実施形態において、化合物は、官能性ジメチル部分を含む場合にのみ選択される。一部の実施形態において、官能性ジメチル部分を含まない化合物は、スクリーニングプロセス中に除外される。
【0104】
治療方法
哺乳動物対象の疼痛を治療する方法
テルペン及びカンナビノイド化合物は、TRPV1に対して急性アゴニスト作用及び長期脱感作効果を有することが同定された。化合物は、TRPV1の部位4又は部位4A、すなわち、カプサイシンへの結合部位と部分的にオーバーラップするが、それとは異なる結合部位に結合する。このことは、テルペン及びカンナビノイド化合物がカプサイシンとは異なるTRPV1に対する生理学的効果を有することを示唆している。特に、それらは、拡張状態への遷移なしで特異的な非拡張状態において活性化されたTRPV1チャネルを持続することが可能であり、したがって、例えば感覚ニューロンにおける細胞毒性効果のない鎮痛を引き起こす点で、カプサイシンとは異なる医薬的可能性を持続することが可能である。
【0105】
よって、本開示は、哺乳動物対象の細胞においてTRPV1脱感作をもたらす方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおいてTRPV1不活性化又は脱感作を引き起こすのに十分な量で、投与経路により、且つ期間にわたり、対象に投与することを含み、医薬組成物が、TRPV1の部位4又は4Aに結合することによってTRPV1を活性化することが可能な活性化合物、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、活性化合物が、(i)天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は(ii)合成化合物である、方法を提供する。
【0106】
様々な実施形態において、医薬組成物は局所投与される。
【0107】
様々な実施形態において、医薬組成物は全身投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、経口、口腔内、又は舌下投与される。
【0108】
一部の実施形態において、医薬組成物は非経口投与される。ある実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は皮下投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は吸入により投与される。
【0109】
これらの方法は、哺乳動物、特にヒトの治療的及び予防的治療を特に目的としている。
【0110】
投与される実際の量、並びに投与の速度及びスケジュールは、治療される疾患の性質及び重症度に依存する。治療の処方、例えば、投与量の決定等は、一般的な医師及び他の医療専門家の責任の範囲内であり、典型的には、治療される障害、個々の患者の状態、投与経路、治療される部位、及び医師に知られている他の因子を考慮に入れる。上述の技術及びプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A. (編)、1980に見られ得る。
【0111】
In vivo及び/又はin vitroアッセイを場合により利用して、使用のための最適な投与量範囲並びに投与経路及び回数の同定を補助することができる。製剤中で用いられる正確な用量はまた、投与経路、及び状態の重篤度にも依存し、医師の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量及び投与方法は、in vitro試験系又は動物モデル試験系から導出される用量応答曲線から外挿され得る。
【0112】
一部の実施形態において、TRPV1のアロステリックモジュレータは、1回投与あたり1g未満、500mg未満、100mg未満、10mg未満の量で投与される。
【0113】
本明細書に記載の治療方法において、医薬組成物は単独で、又は組成物と同時に又は連続して投与される他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0114】
疼痛を治療する方法
一部の実施形態において、TRPV1脱感作の対象となる細胞は感覚ニューロンであり、方法は、本明細書に記載の医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおいてTRPV1脱感作を引き起こすのに十分な量で、投与経路によって、且つ期間にわたり、対象に投与することを含む。
【0115】
一部の実施形態において、感覚ニューロンは侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは末梢侵害受容ニューロンである。一部の実施形態において、感覚ニューロンは内臓侵害受容ニューロンである。
【0116】
よって、本開示は、哺乳動物対象の疼痛を治療する方法であって、方法が、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与することを含み、医薬組成物が、TRPV1の部位4又は4Aに結合することによってTRPV1を活性化することが可能な活性化合物、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、活性化合物が、(i)天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は(ii)合成化合物である、方法をさらに提供する。
【0117】
一部の実施形態において、疼痛を治療する方法は、医薬組成物を、対象の中の感覚ニューロンにおけるTRPV1の不活性化又は脱感作を引き起こすために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与することを含み、医薬組成物は、(i)TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、(ii)TRPV1の部位4と少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンド、及び(iii)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドのそれぞれは、天然、場合によりカンナビス由来であるか、又は合成され、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは異なる化合物である。
【0118】
下記の実施例8に記載の、GB Sciences ネットワーク薬理学プラットフォームを使用したin silico分析は、医薬組成物又はその活性化合物の治療効力がTRPV1を超えて、一次痛伝導チャネルが別個のTRPである他の侵害受容ニューロン及びこれらのチャネルが役割を果たす他の疾患(NPPにおける化合物-遺伝子-疾患アプローチを用いて同定される)にまで及ぶ可能性が高いことを示している。したがって、関連態様において、TRPV1又は他のTRPチャネルを標的とすることによって哺乳動物対象の疼痛を治療するための方法が提供される。方法は、本明細書に記載される医薬組成物を、疼痛を低下させるために十分な量で、投与経路によって、且つ時間にわたり、対象に投与することを含む。
【0119】
ある実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、神経障害性疼痛は糖尿病性末梢神経障害性疼痛である。一部の実施形態において、疼痛は帯状疱疹後神経痛である。一部の実施形態において、疼痛は三叉神経痛である。
【0120】
一部の実施形態において、対象は、緊張(strains)、捻挫、関節炎、又はその他の関節痛、打撲、背部痛、線維筋痛症、子宮内膜症、手術、片頭痛、群発性頭痛、乾癬、過敏性腸症候群、慢性間質性膀胱炎、外陰部痛、外傷、筋骨格障害、帯状疱疹、鎌状赤血球症、心臓病、がん、脳卒中(stroke)、又は化学療法又は放射線による口内炎若しくは潰瘍に関連する疼痛又はそれらによって引き起こされる疼痛を有する。
【0121】
一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも3日間、少なくとも1日1回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも5日間、少なくとも1日1回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも7日間、少なくとも1日1回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、7日を超える期間、少なくとも1日1回投与される。
【0122】
様々な実施形態において、医薬組成物は、侵害受容器における活性化合物(すなわち、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンド)の有効レベルを少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも7日間維持するのに十分な用量で、投与経路により、且つスケジュールにて投与される。
【0123】
一部の実施形態において、医薬組成物は、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、又は吸入により投与される。
【0124】
心肥大を治療する方法
別の態様において、哺乳動物対象の心臓肥大を治療する方法が提供される。この方法は、対象に、抗肥大有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0125】
典型的な実施形態において、医薬組成物は全身投与される。
【0126】
一部の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、皮下投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、吸入により投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、経口投与される。
【0127】
心臓肥大を予防的に治療する方法
別の態様において、哺乳動物対象の心臓肥大を予防的に治療する方法が提供される。この方法は、心臓肥大のリスクのある対象に、抗肥大有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0128】
過活動膀胱を治療する方法
別の態様において、哺乳動物対象の過活動膀胱を治療する方法が提供される。この方法は、対象に、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0129】
典型的な実施形態において、医薬組成物は、全身投与される。
【0130】
難治性の慢性咳(refractory chronic cough)を治療する方法
別の態様において、難治性の慢性咳を治療する方法が提供され、この方法は、対象に、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0131】
一部の実施形態において、医薬組成物は、全身投与される。
【0132】
一部の実施形態において、医薬組成物は、吸入により投与される。
【0133】
TRPV1病因による障害(disorders with TRPV1 etiology)を治療する方法
別の態様において、本明細書に記載の医薬組成物で治療される疾患又は障害には、TRPV1の異常な機能に関連する疾患が含まれる。これらの疾患は、TRPV1の異常な活性化、抑制、又は調節不全に関連し得る。一部の実施形態において、これらの疾患は、TRPV1をコードする遺伝子の異常な発現又は突然変異に関連している。
【0134】
一部の実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物で治療される疾患は、内因性TRPV1アゴニストの異常合成に関連する疾患である。
【0135】
医薬組成物
一態様において、医薬組成物が提供される。組成物は、TRPV1の部位4又は部位4Aに結合することによってTRPV1を活性化することが可能な活性化合物(すなわち、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンド)、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、組成物はTHCを実質的に含まず、アロステリックモジュレータは、天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は合成化合物である。
【0136】
一部の実施形態において、組成物は、TRPV1の部位4に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なアロステリックモジュレータ、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、組成物はTHCを実質的に含まず、アロステリックモジュレータは、天然化合物、場合により、カンナビス由来化合物、又は合成化合物である。
【0137】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは一組のアミノ酸残基の結合ポケットに結合し、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む(表2参照)。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはアミノ酸残基のサブセットに結合し、アミノ酸残基は、TRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488を含む。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Phe434、Tyr555、Ser512、Tyr554、Glu513、Phe516及びPhe488又は厳密に同等のヒトTRPV1残基からなる群から選択される2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種のアミノ酸残基に結合する(表2参照)。
【0138】
一部の態様において、医薬組成物は、TRPV1の部位4に少なくとも部分的にオーバーラップするリガンド結合部位に結合することによってTRPV1を活性化することが可能なTRPV1リガンドをさらに含み、TRPV1リガンドは、天然化合物、場合によりカンナビス由来化合物、又は合成化合物である。
【0139】
一部の実施形態において、リガンド結合部位はTRPV1の部位4Aである。一部の実施形態において、リガンド結合部位は一組のアミノ酸残基の結合ポケットであり、アミノ酸残基は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含む(表2参照)。一部の実施形態において、リガンド結合部位は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基を含むアミノ酸残基のサブセットを含む(表2参照)。一部の実施形態において、リガンド結合部位は、ラットTRPV1のArg491、Asn437、Tyr487、Tyr444、Tyr441、Phe488、Val440、Tyr555、Thr708、Thr704、Phe434、Tyr554、Glu513及びPhe516又は厳密に同等のヒトTRPV1残基からなる群から選択される2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種又は14種のアミノ酸残基を含む(表2参照)。
【0140】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンドはTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータ及びTRPV1リガンドは、どちらもTRPV1拡張及び状態遷移を開始しない。
【0141】
一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは、カンナビスに天然に存在するテルペンである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはミルセンではない。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータは、β-オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロールからなる群から選択される。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはβ-オシメンである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはリナロールである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはネロリドールである。一部の実施形態において、アロステリックモジュレータはビサボロールである。
【0142】
一部の実施形態において、TRPV1リガンドはカンナビジオール(CBD)である。一部の実施形態において、TRPV1リガンドは、カンナビスに天然に存在するカンナビジオール(CBD)以外のカンナビノイドである。
【0143】
組成物は、場合により、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンド以外の少なくとも1種のカンナビノイド及び/又は少なくとも1種のテルペンを含む。組成物は20種以下の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物を含み、典型的な実施形態において、実質的にTHCを含まない。
【0144】
様々な実施形態において、医薬組成物は、19種以下の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、18種、17種、16種、15種、14種、13種、12種、11種、又は10種以下を含む。ある実施形態において、医薬組成物は、9種以下の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、8種以下、7種以下、6種以下、又は5種以下を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、4種以下の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、3種以下、又は2種以下を含む。選択された実施形態では、医薬組成物は、1種以下のカンナビノイド及びテルペン化合物を含む。
【0145】
様々な実施形態において、医薬組成物は、少なくとも2種の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、又は少なくとも10種を含み、各場合において、19種以下を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも11種の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、又は少なくとも15種を含み、各場合において、19種以下を含む。
【0146】
一部の実施形態において、医薬組成物は、19種の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物、19種、18種、17種、16種、15種、14種、13種、12種、11種又は10種を含む。様々な実施形態において、医薬組成物は、9種、8種、7種、6種、5種、4種、3種、又は2種の異なる種類のカンナビノイド及びテルペン化合物を含む。
【0147】
様々な実施形態において、活性化合物(すなわち、アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンド)は、医薬組成物中のカンナビノイド及びテルペンの総含有量の少なくとも10%(w/w)の量で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中のカンナビノイド及びテルペンの総含有量の少なくとも15%(w/w)、少なくとも20%(w/w)、少なくとも25%(w/w)、少なくとも30%(w/w)、少なくとも35%(w/w)、少なくとも40% (w/w)、少なくとも45%(w/w)、又は少なくとも50%(w/w)の量で存在する。ある実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中のカンナビノイド及びテルペンの総含有量の少なくとも55%(w/w)、少なくとも60%(w/w)、少なくとも65%(w/w)、少なくとも70%(w/w)、少なくとも75%(w/w)、少なくとも80%(w/w)、少なくとも85%(w/w)、又は少なくとも90%(w/w)の量で存在する。特定の実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中のカンナビノイド及びテルペンの総含有量の少なくとも95%(w/w)の量で存在する。
【0148】
様々な実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中に、0.025%~5%(w/v)の濃度で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中に、0.025%~2.5%(w/v)の濃度で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中に、0.025%~1%(w/v)の濃度で存在する。一部の実施形態において、活性化合物は、医薬組成物中に、2%(w/v)、3%(w/v)、4%(w/v)、5%(w/v)、6%(w/v)、7%(w/v)、8%(w/v)、9% (w/v)、又は10%(w/v)の濃度で存在する。
【0149】
典型的な実施形態において、アロステリックモジュレータ及び/又はTRPV1リガンドは、TRPV1カルシウム流を増加させるのに有効な量で存在する。
【0150】
その他の成分
一部の実施形態において、テルペン及びカンナビノイドは、合計で、医薬組成物中の活性薬学的成分の100重量%(wt%)未満を構成する。
【0151】
様々なそのような実施形態において、テルペン及びカンナビノイドは、合計で、薬学的活性成分の少なくとも75重量%、ただし100wt%未満を構成する。特定の実施形態において、テルペン及びカンナビノイドは、合計で、活性成分の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、又は少なくとも95重量%、ただし100 wt%未満を構成する。一部の実施形態において、テルペン及びカンナビノイドは、合計で、活性成分の少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%、ただし100 wt%未満を構成する。
【0152】
テルペン及びカンナビノイドが合計で薬学的活性成分の100重量%(wt%)未満を構成する実施形態において、活性成分は、テルペン及びカンナビノイド以外の化合物をさらに含む。典型的なそのような実施形態において、活性成分中のその他の化合物は全て、カンナビス・サティバから抽出可能である。特定の実施形態において、活性成分中のその他の化合物は全て、カンナビス・サティバから製造された抽出物に存在する。
【0153】
一部の実施形態において、テルペン及びカンナビノイドは、合計で、薬学的活性成分の100%(w/v)未満を構成する。
【0154】
デルタ-9テトラヒドロカンナビノール(THC)含有量
典型的な実施形態において、医薬組成物には、デルタ-9テトラヒドロカンナビノール(THC)が完全に又は実質的に含まれていないため、向精神作用がなく、このことは、特定の規制その他の生理学的な利点を提供する。
【0155】
ある実施形態において、医薬組成物はデルタ-9 THCを実質的に含まない。これらの特定の実施形態では、医薬組成物は、1~10重量パーセント(wt%)のTHCを含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、2~9重量%のTHC、3~8重量%のTHC、4~7重量%のTHCを含む。ある実施形態において、医薬組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10wt%のTHCを含む。
【0156】
ナノ粒子
一部の実施形態において、医薬組成物は、PLGAナノ粒子をさらに含む。PLGAナノ粒子は、本開示において提供される活性化合物とともにロードされ(loaded)得る。薬物送達のためのナノ粒子の使用は、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国出願第15/549,653号、PCT/ES2019/070765及び米国出願第16/686,069号に記載されている。米国出願第15/549,653号、PCT/ES2019/070765、米国出願第16/686,069号又は他の従来技術に記載されている方法及び組成物は、本開示の様々な実施形態において使用される。ナノ粒子は長期間生物内に残留し得るので、正確で、制御された、持続する薬物送達が確保され、ナノ粒子は本開示の医薬組成物の送達に役立つ可能性がある。好ましい実施形態において、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマー(PLGA)は、その高生体適合性、低毒性及び薬物送達の高制御のために使用される。関連する他のポリマーは、ゼラチン、デキストラン、キトサン、脂質、リン脂質、ポリシアノアクリレート、ポリエステル、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)である(Hudson及びMargaritis、2014;Laiら、2014;Lam及びGambari、2014)。
【0157】
一部の実施形態において、PEG化ナノ粒子又は部分的PEG化ナノ粒子が使用される。一部の実施形態において、非PEG化ナノ粒子が使用される。一部の実施形態において、ナノ粒子は、共有結合したポリエチレングリコール(PEG)並びに生分解性及び生体適合性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマー(PLGA)を含む。ナノ粒子中におけるPEG鎖の存在は、酸性環境、例えば胃の中におけるより大きな安定性を付与する可能性があり、タンパク質の吸収を阻止し、マクロファージによるオプソニン化を阻止し、それによって体循環の時間が増加する。
【0158】
ナノ粒子は、本技術分野で公知の様々な方法、例えば、a)溶媒にPEG-PLGAポリマーを溶解させるステップ、b)その溶液に親油性界面活性剤を溶解させるステップ、c)その溶液に薬物を溶解させるステップ、d)精製水に親水性界面活性剤を溶解させるステップ、e)界面活性剤溶液(d)に薬物-ポリマー共溶液(a+b+c)を一滴ずつ添加するステップ、f)薬物及びポリマーが溶解された溶媒を蒸発させるステップ、g)ナノ粒子を精製水で洗浄するステップ、h)ナノ粒子を回収するステップ、i)凍結保護物質を添加するステップ、j)凍結によってナノ粒子を保存するステップ、を含む方法を用いて合成され得る。
【0159】
ステップa)で使用されるPEG-PLGAポリマー、したがって、本発明のナノ粒子は、乳酸とグリコール酸との比が10%の乳酸:90%のグリコール酸から90%の乳酸:10%のグリコール酸の範囲であることが可能であり、その間のいずれの比率も可能である。
【0160】
一部の実施形態において、PLGAナノ粒子は、乳酸とグリコール酸との比が約10~90%の乳酸:約90~10%のグリコール酸の間であるPLGAコポリマーを含む。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約10%の乳酸:約90%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約25%の乳酸:約75%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約50%の乳酸:約50%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約75%の乳酸:約25%のグリコール酸である。一部の実施形態において、乳酸とグリコール酸との比は約90%の乳酸:約10%のグリコール酸である。
【0161】
含まれるPEGの分子量は、2,000~20,000Daで変化し得る。好ましい調製物において、それは2,000Daである。PEGはPLGAに共有結合する。
【0162】
ステップa)でポリマーを溶解させるために使用される溶媒は、ポリマーが溶解させることができる任意のもの、例えば、限定されるものではないが、アセトン又はアセトニトリルである。
【0163】
本発明の合成方法で使用されるポリマー:薬物の比は、99:1、95:5、90:10、85:15からの範囲であり、この間隔の近くのいずれの組合せでもある。一部の実施形態において、ポリマー:活性化合物(アロステリックモジュレータ又はTRPV1リガンド)の比は、90:10から85:15の間である。
【0164】
製剤
医薬組成物は、液剤、油剤、乳剤、ゲル剤、コロイド剤、エアロゾル剤又は固形剤などの、ヒト又は非ヒト動物への投与に適した任意の形態にすることができ、また、経腸及び非経口投与経路などの、ヒト又は動物用医薬に適した任意の投与経路による投与用に製剤化することができる。
【0165】
吸入による投与に適合した薬理学的組成物
様々な実施形態において、医薬組成物は、吸入による投与用に製剤化されている。
【0166】
ある実施形態において、医薬組成物は、気化器による投与用に製剤化されている。ある実施形態において、医薬組成物は、ネブライザーによる投与用に製剤化されている。特定の実施形態において、ネブライザーはジェットネブライザー又は超音波ネブライザーである。ある実施形態において、医薬組成物は、エアロゾライザーによる投与用に製剤化されている。ある実施形態において、医薬組成物は、乾燥粉末吸入器による投与用に製剤化されている。
【0167】
一部の実施形態において、気化器、ネブライザー、エアロゾライザー、又は乾燥粉末吸入器による医薬組成物の投与に適合した、本明細書に記載される医薬組成物の単位剤形が提供される。一部の実施形態において、剤形は、バイアル、アンプルであり、場合により、使用者による開封を可能とするために切れ目が付けられている。
【0168】
様々な実施形態において、医薬組成物は水溶液であり、鼻スプレー又は肺スプレーとして投与される。液体を鼻スプレーとして分配するための好ましいシステムは、米国特許第4,511,069号に開示されている。このような製剤は、本発明による組成物を水に溶解して水溶液を生成し、溶液を滅菌することによって簡便に調製することができる。製剤は、例えば、米国特許第4,511,069号に開示されている密封された分配システムにおいて、複数回用量容器で提供され得る。他の好適な鼻スプレー送達システムは、Transdermal Systemic Medication、Y. W. Chien編、Elsevier Publishers、New York、1985;M. Naefら、Development and pharmacokinetic characterization of pulmonal and intravenous delta-9-tetrahydrocannabinol (THC) in humans、J. Pharm. Sci. 93、1176-84 (1904);並びに米国特許第4,778,810号;同第6,080,762号;同第7,052,678号;及び同第8,277,781号(それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。さらなるエアロゾル送達形態としては、医薬溶媒(例えば、水、エタノール、又はそれらの混合物)に溶解又は懸濁した生物学的に活性な薬剤を送達する、圧縮空気ネブライザー、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、及び圧電ネブライザーなどが挙げられる。
【0169】
粘膜製剤は、ある実施形態においては、例えば、鼻腔内送達用の、適切な粒径、又は適切な粒径範囲内の、乾燥(通常は凍結乾燥)形態の生物学的に活性な薬剤を含む乾燥粉末製剤として投与される。鼻経路又は肺経路内に沈着するのに適した最小粒径は、多くの場合、約0.5ミクロンの空気力学的質量中央径(mass median equivalent aerodynamic diameter)(MMEAD)、一般に約1ミクロンのMMEAD、より典型的には約2ミクロンのMMEADである。鼻腔内の沈着に適した最大粒径は、多くの場合、約10ミクロンのMMEAD、一般に約8ミクロンのMMEAD、より典型的には約4ミクロンのMMEADである。これらのサイズ範囲内の鼻腔内呼吸用粉末は、様々な従来技術、例えば、ジェットミル、噴霧乾燥、溶媒沈殿、超臨界流体凝縮などにより製造することができる。適切なMMEADのこれらの乾燥粉末は、粉末をエアロゾル化量に分散させるために肺又は鼻吸入時に患者の呼吸に頼る従来の乾燥粉末吸入器(DPI)を介して患者に投与することができる。あるいは、乾燥粉末は、粉末をエアロゾル量に分散させるために外部電源を使用する空気補助装置、例えば、ピストンポンプを介して投与され得る。
【0170】
経口/口腔/舌下投与に適合した薬理学的組成物
様々な実施形態において、医薬組成物は、経口、口腔内、又は舌下投与用に製剤化されている。
【0171】
経口、口腔又は舌下投与用の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントを使用する)、散剤、顆粒剤の形態であってもよく、又は水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤として、又は水中油型若しくは油中水型液体乳剤として、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として、又はトローチ剤(不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを使用する)として、及び/又はマウスウォッシュ剤などとしてであり得、それぞれ、活性成分として所定量の主題のポリペプチド治療剤を含有する。懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0172】
経口、口腔又は舌下投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、1種以上の治療剤は、1種以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、及び/又は以下のいずれかと混合され得る:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又はアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなど;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物;並びに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含み得る。類似の種類の固体組成物もまた、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として利用することができる。経口投与用の液体剤形としては、例えば薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤などが挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香料、着色剤、芳香剤、及び保存剤も含み得る。
【0173】
注射に適合した薬理学的組成物
ある実施形態において、医薬組成物は、注射による投与用に製剤化されている。
【0174】
静脈内、筋肉内、若しくは皮下注射、又は苦痛部位における注射については、活性成分は、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張ビヒクルを用いて、好適な溶液を十分に調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が含まれ得る。
【0175】
様々な実施形態において、医薬組成物は、単位剤形で提供される。単位剤形は、バイアル、アンプル、ボトル、又は予め充填されたシリンジである。一部の実施形態において、単位剤形は、0.01mg、0.1mg、0.5mg、1mg、2.5mg、5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg又は100mgの医薬組成物を含有する。一部の実施形態において、単位剤形は、125mg、150mg、175mg、又は200mgの医薬組成物を含有する。一部の実施形態において、単位剤形は、250mgの医薬組成物を含有する。
【0176】
典型的な実施形態において、単位剤形中の医薬組成物は液体形態である。様々な実施形態において、単位剤形は、0.1mL~50mLの医薬組成物を含有する。一部の実施形態において、単位剤形は、1mL、2.5mL、5mL、7.5mL、10mL、25mL、又は50mLの医薬組成物を含有する。
【0177】
特定の実施形態において、単位剤形は、0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、又は1mg/mLの濃度でTRPV1のアロステリックモジュレータを含有する1mLの混合物を含有するバイアルである。一部の実施形態において、単位剤形は、0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、又は1mg/mLの濃度でTRPV1のアロステリックモジュレータを含有する2mLの混合物を含有するバイアルである。
【0178】
一部の実施形態において、単位剤形の医薬組成物は、固体形態、例えば、可溶化に適した凍結乾燥物(lyophilate)である。
【0179】
皮下、皮内、又は筋肉内投与に適した単位剤形の実施形態としては、それぞれ所定量の本明細書中上記の医薬組成物を含有する、予め装填されたシリンジ、自動注射器、及び自動注射ペンなどが挙げられる。
【0180】
様々な実施形態において、単位剤形は、シリンジ及び所定量の医薬組成物を含む、予め装填されたシリンジである。特定の予め装填されたシリンジの実施形態において、シリンジは皮下投与用に適合される。特定の実施形態において、シリンジは自己投与に適している。特定の実施形態において、予め装填されたシリンジは使い捨てシリンジである。
【0181】
様々な実施形態において、予め装填されたシリンジは、約0.1mL~約0.5mLの医薬組成物を含有する。特定の実施形態において、シリンジは、約0.5mLの医薬組成物を含有する。具体的実施形態において、シリンジは、約1.0mLの医薬組成物を含有する。特定の実施形態において、シリンジは、約19mLの医薬組成物を含有する。
【0182】
特定の実施形態において、単位剤形は自動注射ペンである。この自動注射ペンは、本明細書中に記載される医薬組成物を含有する自動注射ペンを含む。一部の実施形態において、自動注射ペンは所定の体積の医薬組成物を送達する。他の実施形態において、自動注射ペンは、使用者によって設定された体積の医薬組成物を送達するように構成される。
【0183】
様々な実施形態において、自動注射ペンは、約0.1mL~約5.0mLの医薬組成物を含有する。具体的実施形態において、自動注射ペンは、約0.5mLの医薬組成物を含有する。特定の実施形態では、自動注射ペンは、約1.0mLの医薬組成物を含有する。他の実施形態において、自動注射ペンは、約5.0mLの医薬組成物を含有する。
【0184】
局所投与に適合した薬理学的組成物
様々な実施形態において、医薬製剤は、局所投与用に製剤化されている.
【0185】
局所投与用の医薬組成物及び製剤としては、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴下剤、坐剤、スプレー剤、液剤及び散剤などが挙げられる。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤又は油性基剤、増粘剤などが必要又は望ましい場合がある。被覆コンドーム、グローブなどもまた有用であり得る。好適な局所製剤としては、本発明において特徴付けられるTRPV1のアロステリックモジュレータを含有する複合混合物が、局所送達剤、例えば、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤及び界面活性剤と混合されているものなどが挙げられる。好適な脂質及びリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)及びカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAP及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)の脂質及びリポソームが挙げられる。本発明において特徴付けられるTRPV1のアロステリックモジュレータを含有する混合物は、リポソーム内に封入されていてもよいか、又はリポソーム、特にカチオン性リポソームに複合体を形成していてもよい。あるいは、TRPV1のアロステリックモジュレータを含有する混合物は、脂質、特にカチオン性脂質に複合体化されていてもよい。好適な脂肪酸及びエステルとしては、限定するものではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1~10アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルIPM)、モノグリセリド、ジグリセリド又はそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
【0186】
活性成分の調製方法
一部の実施形態において、薬学的活性成分は、TRPV1の化学的に純粋なアロステリックモジュレータと、場合によりTRPV1リガンドとを所望の最終濃度に混合することによって調製される。組成物はそれぞれ独立して、全合成又は中間体の合成修飾のいずれかにより、化学合成することができ、カンナビス・サティバ抽出物などの組成混合物から精製することができ、あるいは下記の実施例のように、市販品を購入することができる。
【0187】
他の実施形態において、薬学的活性成分は、TRPV1のアロステリックモジュレータ、TRPV1リガンド及び他の組成物のいずれか1つ又は複数を所定の所望の最終濃度に調整することにより、出発組成混合物から調製される。典型的な実施形態において、出発組成混合物は、カンナビス・サティバ抽出物である。現在好ましい実施形態において、出発組成混合物はカンナビス・サティバ抽出物であり、TRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV-1リガンドを、所定の所望の最終濃度になるように混合物に加える。
【0188】
典型的には、このような実施形態において、前記方法は、出発組成混合物中の各所望のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドの濃度を決定する初期ステップをさらに含む。
【0189】
特定のこれらの実施形態において、上記方法は、カンナビス・サティバ抽出物を調製する、さらに先行するステップをさらに含む。カンナビス・サティバ抽出物を調製する方法は、米国特許第6,403,126号、同第8,895,078号及び同第9,066,910号;Doorenbosら、Cultivation, extraction, and analysis of Cannabis sativa L.、Annals of The New York Academy of Sciences、191、3-14 (1971) ;Fairbairn and Liebmann、The extraction and estimation of the cannabinoids in Cannabis sativa L. and its products、Journal of Pharmacy and Pharmacology、25、150-155 (1973);Oroszlan及びVerzar-petri、Separation, quantitation and isolation of cannabinoids from Cannabis sativa L. by overpressured layer chromatography、Journal of Chromatography A、388、217-224(1987)に記載されており、それらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、抽出方法は、活性成分の所定の組成に最も近い含量のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドを含む抽出物を提供するように選択される。
【0190】
一部の実施形態において、この方法はさらに、治療薬又は治療のための抽出化合物の供給源として、その後の開発のためにカンナビス・サティバ株を選択する最初のステップを含む。
【0191】
ある実施形態において、選択された株は、植物全体に又はその抽出可能な部分に、活性成分の所定の組成に最も近い典型的な含量のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドを含む。ある実施形態において、選択された株は、活性成分の所定の組成に最も近い抽出物を提供できるものである。特定の実施形態において、選択された株は、植物、その抽出可能部分、又はその抽出物に、所望のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドの所定の重量比に最も近い典型的な含量を有する。特定の実施形態において、選択された株は、植物、その抽出可能部分、又はその抽出物に、最小数の所望のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドの濃度の調整を必要とする典型的な含有量を有する。特定の実施形態において、選択された株は、植物、その抽出可能な部分、又はその抽出物に、所望のTRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンドの濃度で最も安価な調整を必要とする典型的な含有量を有する。
【0192】
方法による生成物
典型的な実施形態において、薬学的活性成分は、上記のセクションに記載される方法の1つにより調製される。
【0193】
所定の所望の最終濃度に調整することによって、薬学的活性成分が出発組成混合物から調製される実施形態において、活性成分中のTRPV1のアロステリックモジュレータ、場合によりTRPV1リガンド、活性成分における他の全ての化合物の1種以上が、出発組成混合物内に存在する。出発組成混合物がカンナビス・サティバ抽出物である一部の実施形態において、TRPV1のアロステリックモジュレータ及び場合によりTRPV1リガンド以外の活性成分における全ての化合物は、カンナビス・サティバ抽出物内に存在する。
【0194】
用量範囲、一般
In vivo及び/又はin vitroアッセイを場合により利用して、使用のための最適な投与量範囲の同定を補助することができる。製剤中で用いられる正確な用量はまた、投与経路、及び状態の重篤度にも依存し、医師の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitro試験系又は動物モデル試験系から導出される用量応答曲線から外挿され得る。
【0195】
単位剤形
医薬組成物は、単位剤形で都合よく提供され得る。
【0196】
単位剤形は、典型的には、医薬組成物の1つ以上の特定の投与経路に適合される。
【0197】
様々な実施形態において、単位剤形は、吸入による投与用に適合される。特定のこれらの実施形態において、単位剤形は、気化器による投与用に適合される。特定のこれらの実施形態において、単位剤形は、ネブライザーによる投与用に適合される。特定のこれらの実施形態において、単位剤形は、エアロゾライザーによる投与用に適合される。
【0198】
様々な実施形態において、単位剤形は、経口投与用、口腔投与用、又は舌下投与用に適合される。
【0199】
一部の実施形態において、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与用に適合される。
【0200】
一部の実施形態において、単位剤形は、髄腔内又は脳室内投与用に適合される。
【0201】
一部の実施形態において、医薬組成物は、局所投与用に製剤化されている。
【0202】
単回剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。
【実施例】
【0203】
実施例
以下の実施例は、限定ではなく例示を目的として提供される。
実施例1: テルペン、カンナビノイド、及びテルペンとカンナビノイドの両方を含む混合物
【0204】
米国ネバダ州で現在医療用として使用されているカンナビス・サティバ品種の実際の化学プロファイルに基づいて、カンナビノイドとテルペンの複合混合物である、株A混合物を調製した。株の化学プロファイルデータは、%質量とmg/g存在量として表され、これらの量を混合物に含まれるべき量に変換した。株A混合物において、THCとTHCAの意図的な除去、及び特定の不安定又は不溶性成分の除去により、実際の化学プロファイルを修正した。株A混合物中の化合物のサブセットを含む複合混合物、CBMIX、カンナビノイド混合物及びテルペン混合物も調製した。
【0205】
以下の表1に指定されているように、個々の成分を混合することによって全ての混合物を調製した。表には、各混合物に含まれる個々の成分の重量基準の百分率比(比率、%)が示されている。また、以下で説明する実験における細胞培養に適用される各成分の最終濃度も示されている(濃度、μg/ml)。
【0206】
【0207】
個々の成分は、様々な供給業者から入手した:東京化成工業製のネロリドール(#N0454)、東京化成工業製のリナロール(#L0048)、Sigma Aldrich製のアルファ-ピネン(#P45680)、MP Biomedicals製のリモネン(#155234)、Ultr Scientific製のフィトール(#FLMS-035)、Sigma Aldrich製のカンナビジバリン(#C-140)、Sigma Aldrich製のカンナビクロメン(#C-143)、Sigma Aldrich製のカンナビジオール(#C-045)、Sigma Aldrich製のカンナビゲロール(#C-141)、及びSigma Aldrich製のカンナビノール(#C-046)。MP Biomedicalが製造したミルセンは、VWRから入手した(製品番号M0235)。 上記の表1で指定されているように、各成分を混合した。
【0208】
実施例2: TRPV1を介したカルシウム応答を試験するための細胞培養系
HEK293細胞株を、pcDNA6TR(Invitrogen、CA)プラスミド(テトラサイクリン感受性TRExリプレッサータンパク質をコードする)で安定にトランスフェクトし、37℃の加湿した5%CO2雰囲気下でDMEM+10%ウシ胎仔血清(55℃にて1時間不活性化した)+2mMグルタミン中に維持した。TRex293細胞に対する選択圧は、10μg/mlのブラストサイジン(Sigma、St Louis、MO)中での連続培養によって維持した。
【0209】
TRPV1の誘導発現を用いてTRex HEK293細胞を産生するために、親細胞を、pcDNA4TOベクターにおけるラットTRPV1 cDNAを用いてエレクトロポレーションし、クローン細胞株を、400μg/mlのゼオシン(Invitrogen、CA)の存在下で限界希釈によって選択した。37℃にて16時間、1μg/mlのテトラサイクリンを使用してTRPV1発現を誘導した。抗FLAGウェスタンブロットを使用して安定な株を誘導タンパク質発現についてスクリーニングし、誘導発現を確認した。電気生理学的測定により、これらの誘導細胞におけるTRPV1の存在及びI/V曲線「シグネチャ」をさらに確認した。さらに、TRPV1をコードする構築物を含まないHEK野生型細胞ではカルシウム流が検出されなかったので、
図1に示されたカプサイシン特異的カルシウム流によって、細胞におけるTRPV1の発現及び特異的応答も確認された。
【0210】
TRPV1を介したカルシウム応答を、細胞培養系におけるカルシウムアッセイによって試験した。細胞を洗浄し、以下の組成(mM):NaCl 145、KCl 2.8、CsCl 10、CaCl2 10、MgCl2 2、グルコース10、Hepes・NaOH 10、pH7.4、330mOsmの標準改変リンゲル溶液中で37℃にて30分間、0.2μMのFluo-4アセトキシメチルエステル(「Fluo-4」)とインキュベートした。細胞を50,000個の細胞/ウェルにて96ウェルプレートに移し、示したように刺激した。Flexstation 3(Molecular Devices、Sunnydale、USA)を使用してカルシウム信号を取得した。SoftMax(登録商標)Pro 5(Molecular Devices)を使用してデータを分析した。示される場合、名目上カルシウムを含まない外部条件は、1mMのEGTAを含有する0mMのCaCl2リンゲル溶液の調製によって達成した。示される場合、カプサイシン(10μM)及びイオノマイシン(500nM)を陽性対照として使用してカルシウム応答を誘導した。示される場合、カプサゼピン(10μM)を使用してTRPV1媒介性カルシウム応答を特異的にアンタゴナイズした。示される場合、ベースライントレース(刺激なし、NS)を差し引いた。示される場合、ビヒクル単独のトレースを差し引いた。示される場合、対応する混合物と一致した種々の希釈剤を含むビヒクルを陰性対照として使用した。
【0211】
実施例3: 株A混合物、カンナビノイド混合物、又はテルペン混合物に対するTRPV1媒介性カルシウム流応答
上記のような株A混合物、カンナビノイド混合物、及びテルペン混合物に対するTRPV1媒介性カルシウム流応答を試験した。各混合物を細胞培養培地に適用して、表1に示すように細胞を個々の成分の最終濃度にさらした(「濃度μg/ ml」)。 例えば、株A混合物を適用して、細胞を5.6μg/ mlのカンナビジバリン(CBDV)、8.75μg/ mlのミルセンなどにさらした。
【0212】
図2A~
図2Cは、経時的(秒)にFluo-4相対蛍光単位(Fluo-4RFU)として測定されたカルシウム流データを示す。
図2A~2Cに示されているとおり、株A混合物(
図2A)及びテルペン混合物(
図2C)の適用に対して有意なカルシウム流応答が観察されたが、カンナビノイド混合物の適用(
図2B)に対するカルシウム流応答はそれほどでもなかった。刺激の非存在下(「NS」)での、又はビヒクルの適用(「veh」)に対するカルシウム流応答は検出されなかった(
図2A~2C)。
【0213】
TRPV1構築物を含まない野生型HEK細胞を同じ刺激条件で提示した場合、カルシウム流は観察されなかった(
図5A~5C)。これらのデータは、株A混合物、カンナビノイド混合物、又はテルペン混合物に対するカルシウム流入応答がTRPV1に特異的であり、TRPV1によって媒介されることを示している。
【0214】
実施例4: 個々のテルペンに対するTRPV1媒介性カルシウム流入応答
テルペン混合物は、実施例3において、株A混合物のTRPV1アゴニスト作用に大きく関与することが特定されたため(
図2A~2Cを参照)、テルペン混合物の個々の成分に対するTRPV1媒介性カルシウム流入応答を試験した。各成分を細胞培地に加え、蛍光シグナルをモニターした。個々のテルペン化合物について経時的に測定された蛍光シグナルは、
図3B~3Lに示されている。
【0215】
有意なカルシウム流入応答が一部の成分に対して検出されたが、試験したテルペン化合物の全てではなかった。特に、ミルセン(
図3D)及びネロリドール(
図3I)に対して有意なカルシウム流応答が検出された。
【0216】
ミルセン単独とテルペン混合物の間でTRPV1アゴニスト作用を比較すると、ミルセンはTRPV1媒介性カルシウム応答に大きく寄与することが観察されたが、カルシウム流入シグナルの100%を占めてはいなかった。
図4に示されているとおり、テルペン混合物(実線の曲線)は、ミルセン単独(点線の曲線)よりも有意な作用を有していた。これは、ネロリドールを含むいくつかのテルペンが、ミルセンとともに適用された場合、TRPV1に相加的又は相乗的な効果を及ぼし得ることを示唆している。
【0217】
実施例5: ミルセンによるTRPV1の活性化
TRPV1に対するミルセンのアゴニスト作用を、様々な条件下でさらに試験した。まず、種々の濃度のミルセン(3.5μg/ml、1.75μg/ml、0.875μg/ml及び0.43μg/ml)に対するTRPV1媒介性カルシウム流の応答を試験した。
図6A~6Dに示されるように、ミルセンに対するカルシウム応答は用量依存的であり、3.5μg/mlのミルセンに応答する流が最大であり、0.43μg/mlのミルセンに対する流が最小であった。カルシウム流は、野生型HEK細胞培養ではかなり小さく(
図6A~6Dの点線の曲線)、ミルセンがTRPV1チャネルを介してカルシウム流を誘導することを示している。
【0218】
ミルセンのTRPV1に対するアゴニスト作用は、3.5μg/mlのミルセンを用いて活性化された細胞にTRPV1阻害剤である10μMのカプサゼピンを適用することでさらに確認された。
図7Aに示されているとおり、ミルセンによって誘発されたカルシウム流は、カプサゼピンに反応して減少した。
図7Bに示されているとおり、カルシウム流は、対照として適用されたPBSに対しては変化しなかった。このデータは、ミルセンがTRPV1を活性化することによりカルシウム流を誘導することを示している。
【0219】
ミルセンによるTRPV1の活性化も、カルシウムを含まない培地条件下で試験した。これらの条件下では、低濃度のミルセン(0.43μg/ml、0.875μg/ml及び1.75μg/ml)はカルシウムによって媒介される蛍光の増大を引き起こさなかったが(
図8B、8C、及び8Dを参照)、高濃度のミルセン(3.5μg/ml)はそのような増大を誘発した(
図8A)。このことは、ミルセンが低濃度ではほとんど細胞外バッファーからカルシウム流を誘導するが、高濃度では細胞内貯蔵から細胞質ゾルにカルシウム流を誘導できることを示唆している。カルシウム流入はTRPV1のない野生型HEK細胞では観察されなかったか、最小限しか観察されなかったので、細胞外及び細胞内の流は両方ともTRPV1に依存している(
図8A~8Dの点線の曲線)。
【0220】
ミルセンによるTRPV1の活性化を確認し、さらに調査するために、ラットTRPV1を過剰発現している単一HEK293細胞でのパッチクランプ実験によりチャネル電流を評価した。HEK293細胞は、140mM NaCl、1mM CaCl2、2mM MgCl2、2.8mM KCl、11mMグルコース、及び10mM HEPES-NaOHを含み、pH 7.2及び浸透圧300 mOsmolのナトリウムベースの細胞外リンゲル溶液に保持した。細胞の脂肪質ゾルに、140mM Cs-グルタメート、8mM NaCl、1mM MgCl2、3mM MgATP、及び10mM HEPES-CsOHを含む細胞内パッチピペット溶液を灌流させた。標準内部Ca2+濃度を、4mM Ca及び10mM BAPTAで180 nMに緩衝化した。WebMaxCで提供される計算機(http://www.stanford.edu/~cpatton/webmaxcS.htm)を使用して、フリーの緩衝化されていないCaのレベルを調整した。最終溶液のpHをpH7.2に調整し、浸透圧を300mOsmolで測定した。
【0221】
TRPV1チャネルを、細胞外溶液に5μM、10μM、又は150μMミルセンを加えることで活性化させた。1μMカプサイシンをTRPV1活性化の陽性対照として使用した。細胞外溶液の迅速な適用と交換は、SmartSquirtデリバリーシステム(Auto-Mate Scientific、サンフランシスコ)を使用して行った。システムには、電子バルブとEPC-9アンプ(HEKA、ランブレヒト、ドイツ)の間にValveLink TTLインターフェイスが含まれいる。この構成により、PatchMasterソフトウェア(HEKA、Lambrecht、ドイツ)を介してプログラム可能な溶液変更が可能になる。
【0222】
パッチクランプ実験を、21~25℃でホールセル構成で実施した。パッチピペットの抵抗は2~3MΩであった。EPC-9アンプを制御するPatchMasterソフトウェアでデータを取得した。-100から100mVの電圧範囲にわたる50msの電圧ランプを、500msの期間にわたって0.5 Hzのレートで0mVの保持電位から供給した。電圧を、10mVの液間電位差に対して補正した。電流を2.9 kHzでフィルタリングし、100μs間隔でデジタル化した。各電圧ランプの前に、容量性電流を決定し、補正した。特定の電位に対する電流の発生を、-80mV及び+80mVの電圧で電流振幅を測定することにより、個々のランプ電流記録から抽出した。データは、FitMaster(HEKA、ランブレヒト、ドイツ)、及びIgorPro(WaveMetrics、レイクオスウィーゴ、オレゴン、米国)で分析した。該当する場合、平均化されたデータの統計誤差は、平均値±s.e.m.として示される。
【0223】
図18A~18Cに示されるように、ミルセンは個々の細胞において用量依存的応答を誘発した。内向き及び外向きの電流の発生が経時的に示されている。各データポイント(DP)は約1秒に相当する。5μM(
図18A)、10μM(
図18B)、及び150μM(
図18C)のミルセンは、1μMカプサイシンの適用により誘導された4~10nAの電流(図示せず)と比較して、0.5~2.2nAの電流を誘導した。ミルセンの用量を増やすと、活性化電流の振幅(
図18A~18C)とカルシウム流入(データは示していない)の両方に依存する形で不活性化した内向き整流性の非選択的カチオン電流が生じる。
【0224】
図19Aは、ミルセン適用後にカプサイシンを追加した以外は
図18Aと同じ実験を示す。ラットTRPV1を過剰発現するHEK293細胞を、1mM Caを含む細胞外リンゲル液で平衡化した。細胞外バッファーを、データポイント(DP)60で5μMミルセンを含むバッファーに交換した。ミルセン溶液を、DP 120で1μMカプサイシンを含む細胞外バッファーに交換した。内向き及び外向きの電流(nA)を各DPで測定した。
図19Aは、6つの独立した実験の平均内向き及び外向き電流を示している。5μMミルセンは時間とともに約0.5nAの内向き電流を誘導し、1μMカプサイシンは約9nAの内向き電流を誘導した。ミルセンとカプサイシンはどちらも、内向き電流よりも低い振幅で外向き電流を誘導した。
図19Bは、ミルセン誘導電流の拡大図を示す。
【0225】
次に、ミルセン及びカプサイシンによって誘導される電流と実験電圧との関係を分析した。データポイント1、59、119、179で電圧ランプを実行し(
図19A、矢印1~4 IV)、ミルセンとカプサイシンの添加の前後にIVの関係を評価した(
図19C~19E)。
図19Cは、リンゲル液の存在下での初期の電流発生(
図19Aの「2 IV」)と細胞のブレークイン電流(break-in current)(
図19Aの「1 IV」)を示している。
図19Dは、ミルセンによって誘導されたTRPV1の活性化を示している(
図19Aの「3 IV」)。
図19Eは、カプサイシンによって誘導されたTRPV1の活性化を示している(
図19Aの「4 IV」)。
【0226】
カプサイシンは、TRPV1チャネルのCa
2+イオン透過性を選択的に高めることが知られているTRPV1アゴニストである。チャネルの透過特性は、以前に2つの状態で実証されている。この非選択的カチオンチャネル(NSCC)の状態1は、ナトリウムに対するカルシウムの選択性はわずかであるか、選択性がない。状態2(拡張状態又は遷移状態)は、ポアの特性が変化して大きなカチオン(例えばNMDG)を透過させ、それに対応して大量のカルシウム及びナトリウム流をサポートする到達状態を表す。状態1から状態2への遷移は、IV曲線の顕著な線形化によって特徴付けられ、それに対応して状態1よりも大きな内向き電流を伴う。
図18A~18C及び
図19A~19Eは、ミルセンがTRPV1の強力な活性化剤であり、nA電流を生成することを示している。カプサイシンとは対照的に、ミルセンは主に状態1でチャネルを活性化する。ミルセン誘発性とカプサイシン誘発性のTRPV1活性化特性の違いは、TRPV1活性化の振幅、選択性、したがって生理学的結果を、従来のリガンドであるカプサイシンとは対照的に、ミルセンに対するTRPV1媒介性の応答の示差的電気生理学的特性に基づいて合理的な方法で操作し得ることを示唆している。
【0227】
実施例6: TRPV1に対する株A混合物のミルセン以外の成分の作用
ミルセン単独では株A混合物のTRPV1アゴニスト作用の全てを説明できなかったので、株A混合物の残りのTRPV1-アゴニスト作用を理解するために、個々のカンナビノイド及びCBMIX(すなわち、ミルセンを含まない株A混合物)のTRPV1に対する作用をさらに調査した。
【0228】
まず、個々のカンナビノイドを細胞培養培地に加え、蛍光シグナルをモニターした。
図9A~9Gは、カンナビノイドがTRPV1を介するカルシウム流に異なった貢献をすることを示している。カンナビノイド化合物の全てではないが、一部に対し、中程度のカルシウム応答が検出された。特に、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、及びカンナビゲロール酸(CBGA)に対してカルシウム流の応答が検出された。そのようなカルシウム応答は、TRPV1のない細胞においてはごくわずかであるか、欠如しており、これは、カルシウム応答がTRPV1によって媒介されることを示している。
【0229】
実施例7: ネットワーク薬理学プラットフォーム(Network Pharmacology Platform)
有意なTRPV1アゴニスト作用を有するオリジナルのカンナビス株A混合物に含まれる2つのテルペンであるミルセン及びネロリドールがformatting arguments、他のTRPチャネルにおいて効果を有するかどうかを評価するために、GB Sciences ネットワーク薬理学プラットフォーム(Network Pharmacology Platform)と呼ばれるin silico予測法を開発した。
【0230】
ノード及びエッジのデータは、http://bionet.ncpsb.org/batman-tcm/ 結果ページのソースから取得した。データには、ソース及びターゲットの情報、及びWebサイトでCytoscapeネットワークグラフを生成するために使用されるグループの割り当てが含まれている。ノード及びエッジテキストファイルを、コンマ区切りファイル(csv)としてR統計分析プログラムにロードした。
【0231】
ファイルから余分なラベリングと特殊文字が削除され、dplyrライブラリを使用して、明確に定義された変数列と観測行を含むノードデータフレームとエッジデータフレームに配置された。ノードデータは、バットマンの割り当てに従ってグループ指定を再割り当てされ、dplyrライブラリを使用してアルファ順にソートされた。ネットワークライブラリを使用して、有向ネットワークデータオブジェクトを生成するために、エッジデータフレームが使用された。ネットワークオブジェクトには2つの変数が追加された:(i)ノードデータフレームからのソートされたグループ割り当て、及び(ii)エッジリストから計算され、snaライブラリを使用して各ノードに割り当てられるフリーマン度属性(Freeman degree attribute)。ネットワークグラフは、ggnetwork及びggrepelライブラリのグラフインタプリタを介してレンダリングされ、これは、ネットワークオブジェクトからグラフをレンダリングし、スタイルにフォーマット引数(formatting arguments)を使用する。
【0232】
図15は、ミルセンのターゲット分析と疾患予測ネットワークを示している。ネットワーク内に複数のTRPチャネルが存在することは、ミルセンの効力が、TRPV1を超えて、一次痛伝導チャネルが別個のTRPである他の侵害受容ニューロンにまで及ぶ可能性が高いことを示している。
図16は、ネロリドールのターゲット分析と疾患予測ネットワークを示している。ネットワーク内に複数のTRPチャネルが存在することは、ネロリドールの効力が、ミルセンが示されていないTRPチャネルを大幅に追加しないことを示している。
【0233】
図10は、治療ターゲットデータベース(TD)エンリッチメント解析(Therapeutic Target Database (TD) enrichment analysis)が、疼痛及び心血管適応症における開発のために、ネロリドールよりもミルセンを優先する傾向があることを示している。さらに、ミルセンは、天然カンナビスについての予測疾患ターゲットセットに大きく寄与している。
【0234】
図11は、ミルセンによる直接的又は間接的モジュレーションに対して多様なイオンチャネルターゲットが予測されることを示している。
【0235】
実施例8: 後続のTRPV1リガンド適用に対するミルセンの効果
本実施例では、TRPV1におけるミルセンの事前適用及び存在が他のTRPV1リガンド、例えばカンナビジオール(CBD)の後続の応答にいかに影響を与えるかが実証される。
【0236】
まず、このアロステリックモジュレーション実験で使用される第2のリガンド(カンナビジオール)の活性を確認した。-カンナビジオール(CBD)はTRPV1のための有効なリガンドであり、
図20A~20Dは、I
maxが最高5nAとなり(
図20A)、カプサゼピン及びウォッシアウトの両方に対して感受性があり(
図20B及び20C)、E
revが約0mVの整流電流である(
図20D)電流の活性化を含むTRPV1に対するCBD媒介効果を示す。
【0237】
ミルセン適用が後続のCBD効果をモジュレートする可能性も探究した。それ自体、ミルセンは、最初に、Ca
2+の流入を妨げる0mMの外部Ca
2+濃度の下でチャネルを飽和させることが可能である。次いで、1mMの外部Ca
2+濃度の下における飽和TRPV1受容体への第2の刺激としてカンナビジオールを導入する。そのような条件の下で第2の刺激(カンナビジオール)によって引き起こされる応答は、
図21に示されるようにTRPV1受容体の以前のミルセン飽和のないカンナビジオール刺激と比較して抑制される。
【0238】
これらのデータは、ミルセンが他のTRPV1リガンドのアロステリックモジュレータとして作用する可能性を有することを示唆し、以下で示されるように、カンナビジオール及びミルセンの両方のためのTRPV1における相互作用部位をモデル化する試みを促した。
【0239】
実施例9: TRPV1におけるミルセン及びカンナビジオールの分子ドッキング
rTRPV1のCryo-EM構造(RCSB PDB番号5IS0)を用いて分子ドッキング分析を行って、ミルセン結合のための潜在的な部位及びメカニズムを評価した。TRPV1受容体におけるアリシンの結合と比較したTRPV1受容体におけるミルセンの結合のバイアスのない計算モデリング分析を行った(MOE Site Finder、Molecular Operating Environment version 2018、Chemical Computing Group、Montreal、QC)。その構造に基づいて、ミルセンは、求電子的付加に関与する可能性は低いが、チャネルとの親油性相互作用を介して関与する可能性がより高い。疎水性相互作用を介して、TRPV1においてミルセンのための80を超える潜在的結合部位が同定された(その多くはCys621の領域内にある)が、Cys616又は621との強い相互作用は観察されなかった。部位#4はアリシン及びミルセンの両方の結合を示したが、
図22A及び22Bに示されるように、ミルセンが主にArg 491及びTyr 554と、さらに他の残基、例えば、F488、N437、F434、Y555、S512、E513及びF516との疎水性相互作用を介して相互作用することが可能なだけだったのに対して、アリシンがおそらく共有結合様式でシステインと相互作用することが可能だったという事実にもかかわらず、アリシンのドッキングエネルギー(-14.0kcal/mol)と比較して、ミルセンについてはより低いドッキングエネルギー(-17.7kcal/mol)が観察された。これらの残基のそれぞれはラット若しくはヒトTRPV1の間で同一であるか、又は厳密に保存され、ほとんどは、TRPV1のリガンド結合又は調節において重要なものとして以前に関与が示されている。例えば、以前の研究では、Tyr554からアラニンへの変異がTRPV1におけるカプサイシン及びレシニフェラトキシン結合の両方を切断したことが示された。これらの関係は、表2に完全に記載されており、プロトン化部位(R491)、カプサイシン相互作用部位、膜貫通領域S1、2及び4の疎水性内部に寄与する残基を含む。いくつかの部位も電圧又は熱的検知に関与したが、突然変異誘発試験に基づいて、このミルセン結合部位(部位#4)もレシニフェラトキシン競合に対する感受性を有する可能性があった。S4-S5リンカー(TRPのための主要な調節領域)に近い残基もミルセンの結合において関連が示された。
【0240】
表2は、本発明者らの分子ドッキング分析によるTRPV1におけるミルセン及びカンナビジオールを結合する際に関連づけられる残基の分析を示す。関連づけられた残基は、左に示される。第2列は、残基がS4-S5リンカー内にあるかどうかを同定する。第3列は、残基がヒトにおいて正確に保存されているかどうかを同定し、完全に保存されていない場合にどのヒト残基が同等であるかを同定する。第3列及び第4列は、実施されたいずれかの突然変異誘発のそれらの役割及び効果に関する以前の試験をまとめた、これらの残基の文献調査を含む。第4列は、Pub Med ID(PMID)の形で、引用された試験についての参考文献を提供する。
【0241】
【0242】
結合部位におけるいくつかの残基が接触するミルセンの1つの化学部分は、
図23に示される通り、カンナビスに見出される多くの他のテルペン、例えば、オシメン、リナロール、ネロリドール及びビサボロール、並びに他の植物源に見出される多くの他のテルペンに共通するジメチル基であり、この結合部位を占有する能力を有し得る。興味深いことに、本発明者らは、ネロリドールも、
図3Iに示されるように、TRPV1媒介Ca
2+流入を活性化したことを示したが、同じ用量で他の化合物を用いた場合、同様の流れは観察されなかった。その他のテルペンが考察されたものとは異なる構造を有すると仮定すると(例えば、フムレン(示されない))、これらのデータは、多数のテルペン分子のうちのどれがTRPV1及び侵害受容という観点での調査に優先されるべきかについての決定のためのプレスクリーニング法を提供する。
【0243】
図25A、25B及び26に示されるように、CBD結合部位も同様に検討した。CBDのドッキングが-26.5kcal/molであると計算されたミルセンの結合ポケットと部分的にオーバーラップする結合ポケットを同定した。この部位において、Y554及びR491は、ミルセンの場合と同様にCBDとの主要な相互作用を提供すると考えられる。CBD結合において関連づけられる残りの残基は、ミルセン部位との類似性及び相違点の両方を示す。チャネルのタンパク質配列の二次元表示全体にわたるミルセン及びCBDの結合に関連づけられる残基が
図26及び27に示される。さらに、表2は、それぞれの関連づけられた残基、その保存又はラット及びヒトの間の同一性、S4-5リンカーへの配置、公知の変異誘発の機能、効果、並びに裏付ける参考文献を表にしたものである。
【0244】
参照による組み込み
この出願において引用される全ての刊行物、特許、特許出願及び他の文献は、それぞれの個別の刊行物、特許、特許出願又は他の文献があらゆる目的のために個別に示されて参照により組み込まれるのと同程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0245】
均等物
様々な具体的実施形態が示され、記載されているが、上記の明細書は限定的ではない。本発明(1つ又は複数)の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行い得ることが理解されるだろう。本明細書を概観すれば、当業者には多くの変形が明らかであろう。
【0246】
【国際調査報告】