(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】機能性食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220830BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20220830BHJP
A23G 9/42 20060101ALI20220830BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20220830BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220830BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220830BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220830BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220830BHJP
A21D 2/38 20060101ALI20220830BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20220830BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L7/109 E
A23G9/42
A23L21/10
A23L2/52
A61P3/10
A61P1/04
A61P29/00
A21D2/38
A21D2/36
A23L33/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577343
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2020055958
(87)【国際公開番号】W WO2020261132
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】102019000010110
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564825
【氏名又は名称】バトイア,ロベルト
(71)【出願人】
【識別番号】521564836
【氏名又は名称】マルティネス デル ヴァッレ,マリア ホセ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バトイア,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス デル ヴァッレ,マリア ホセ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B032
4B041
4B046
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG01
4B014GL03
4B014GL07
4B014GL11
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD11
4B018MD12
4B018MD13
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4B032DP05
4B041LC10
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4B041LK22
4B046LA06
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4B046LE16
4B046LG06
4B046LG15
4B046LG26
4B046LG53
4B117LK13
4B117LK30
(57)【要約】
食品混合物、特にヒドロキシチロソール、オレウロペイン、および可溶性繊維を含む食品混合物が開示される。特に、本発明は、
可溶性繊維を含む画分(a)と、
少なくとも100mg/kgのヒドロキシチロソールおよび少なくとも250mg/kgのオレウロペインを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する粉末画分(b)と、
を含む食品混合物に関する。
食品混合物は、さらに、一般にパン、パスタ、および焼き菓子の調製において用途を見出す。
本発明はまた、この混合物を含有する食品、その調製方法、ならびにヒトおよび動物の栄養摂取、炎症状態の治療および予防、ならびに食後血糖の低減におけるその使用についても記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品混合物、特にパスタまたは焼き菓子などの食品の調製に使用するための食品混合物であって、
可溶性繊維を含む画分(a)と、
少なくとも100mg/kg、好ましくは少なくとも110mg/kg、または119mg/kgのヒドロキシチロソール、および少なくとも250mg/kg、好ましくは少なくとも260mg/kg、または264mg/kgのオレウロペインを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する粉末画分(b)と、
を含む、食品混合物。
【請求項2】
前記画分(a)は、最大30mg、好ましくは最大25mgのβ-グルカンと、乾燥形態で前記画分(a)の1グラム当たり30kDa以下の数平均分子量を有する最大300mg、好ましくは最大250mgのペントサンとを含む、請求項1に記載の食品混合物。
【請求項3】
前記画分(a)は、さらにフェルラ酸を、好ましくは乾燥形態で前記画分(a)の1グラム当たり最大0.5mg含む、請求項1または2に記載の食品混合物。
【請求項4】
前記画分(a)は、醸造所の使用済み穀物によって得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の食品混合物。
【請求項5】
前記画分(a)は、粉末の形態であり、好ましくは乾燥した醸造所の使用済み穀物加水分解物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の食物混合物。
【請求項6】
前記粉末画分(b)は、45mg/kg以下の少なくとも1つの天然トリテルペンおよび/または10mg/kg以下のスクアレンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の食品混合物。
【請求項7】
前記粉末画分(b)は、ω-3および/またはω-6脂肪酸の1000mg/kg以下、好ましくは500mg/kg以下をさらに含み、好ましくは約200~500mg/kg、さらにより好ましくは約300~400mg/kgを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の食品混合物。
【請求項8】
前記粉末画分(b)は、オリーブストーン、好ましくは前記オリーブストーンに含まれる種子を粉砕することによって得られる、請求項1~7のいずれか一項に記載の食品混合物。
【請求項9】
10~30重量%の画分(a)および70~90重量%の粉末画分(b)を含み、(a)および(b)の当該量が前記食品混合物の重量を参照する、請求項1~8のいずれか一項に記載の食品混合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の食品混合物を含む食品であって、前記食品は、穀粉または穀粉の混合物およびその由来製品、例えば焼き菓子およびパスタ、フルーツジュース、フルーツマーマレードおよびジャム、アイスクリーム、飲料、ならびにビールから選択される、食品。
【請求項11】
前記食品は、請求項1~9のいずれか一項に記載の食品混合物の15重量%以下、好ましくは3~10重量%、より好ましくは5~7重量%を含む食品グレードの穀粉または食品グレードの穀粉の混合物である、請求項10に記載の食品。
【請求項12】
健康な哺乳動物における食後血糖の低減、ならびに/または炎症の治療および/もしくは予防に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の食品混合物または請求項10もしくは11に記載の食品。
【請求項13】
炎症が、結腸直腸炎症性疾患、好ましくはクローン病、過敏性腸症候群、および大腸炎に関連する、請求項12に記載の使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の食品混合物または請求項10もしくは11に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシチロソール、オレウロペイン、および可溶性繊維を含む食品混合物、その調製方法、ならびにヒトおよび動物の栄養摂取における、炎症状態の治療および予防における、ならびに食後血糖の低減におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
地中海食は、パスタ、パン、より一般的には焼き菓子などの穀類に由来する製品の高摂取を特徴とする。多量の炭水化物を含有するので、これらの製品は通常、高い血糖指数を有し、すなわち食後血糖の高い上昇を引き起こす。
【0003】
食後の高血糖現象は、顕性糖尿病または低耐糖能を有する人々を害する可能性がある。例えば、食後高血糖症と、眼、腎臓、心血管系、および神経系に影響を及ぼす変性疾患などの糖尿病関連合併症の発症との間に関係が見出されている。この理由から、最適な血糖コントロールを達成することが、例えば、ケトン食または糖質制限食の採用を介して、食後の血糖変動を減少させることを目的として、糖尿病の治療においてますます重要になっている。
【0004】
しかし、これらのタイプの食事は、糖尿病または低耐糖能に罹患していない人々によっても利用される。なぜなら、食事による炭水化物の低摂取により、身体にケトン体を生成させ、特に、身体および脳は、エネルギー源としてケトン体を利用し、その結果、脂肪組織に含まれる脂肪のエネルギー消費が増加するからである。もともと薬物耐性てんかんの治療のために開発されたケトン食は、体重減少を促進するために今日広く使用されており、より最近では、スポーツ栄養の分野で使用されている。
【0005】
さらに、ケトン体は高い抗炎症能力を有し、ケトン食は、神経疾患およびリウマチ性疾患のための補助的な予防的および/または保護的な栄養治療として利用するのに適している。
【0006】
残念なことに、中長期的には、集中、自制および犠牲の点で相当な努力が必要なため、こうした食療法を続けている人の割合は非常に少ないことが記録されている。
【0007】
これに関連して、低血糖指数と抗炎症作用を結び付け、それゆえケトン食との関連でだけでなく地中海食の関連でも利用でき、持続がはるかに容易で、それゆえ成功確率がより高い、食品の必要が当該分野において感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記目的は、
可溶性繊維を含む画分(a)と、
少なくとも100mg/kgのヒドロキシチロソールおよび少なくとも250mg/kgのオレウロペインを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する粉末画分(b)と、
を含む、食品混合物、特にパスタまたは焼き菓子などの食品の調製に使用するための食品混合物によって達成された。
【0009】
別の態様において、本発明は、食品混合物を含む食品であって、前記食品が、穀粉または穀粉の混合物およびその由来製品(焼き菓子およびパスタなど)、フルーツジュース、フルーツマーマレードおよびジャム、アイスクリーム、飲料、ならびにビールから選択される食品に関する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、健康な哺乳動物における食後血糖の低減、ならびに/あるいは炎症の治療および/または予防において使用するための食品混合物または食品に関する。
【0011】
本発明の目的のために、用語「炎症」は、炎症性結腸直腸疾患、特にクローン病、過敏性腸症候群および大腸炎に関連する任意の病理学的状態または状態を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明および例示的かつ非限定的な目的のために提供される実施例、ならびに添付の図面から明らかになる。
【
図1】記載された食品の摂取後の時間における血糖(mg/dL)の変化。破線=グルコース、点線=白パン、実線=本発明による食品混合物を含むパン。
【
図2】本発明による混合物を含むパンを5日間連続して摂取する前後の血清中のIL6のレベル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲の文脈において、「(疑似)穀類」という用語は、パスタまたは焼き菓子を製造するために穀粉に粉砕することができる果実を産生する草本植物を意味する。これらの(疑似)穀類は、イネ科に属する単子葉植物(例えば、トウモロコシ)およびこの科に属さない植物(例えば、タデ科に属する)であり得る。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲の文脈において、「焼き菓子」という用語は、パン、ペストリー、およびビスケットを含む物品を意味する。
【0015】
「可溶性繊維」という用語は、低分子量多糖、オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、β-グルカン、ペクチン、インスリン、難消化性デンプン、粘液、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維を意味し、主にペントサンのファミリーに属するアラビノキシランの多糖鎖および抗酸化分子であるフェルラ酸から構成される繊維である。
【0016】
したがって、第1の態様において、本発明は、好ましいが排他的ではなく、パスタまたは焼き菓子などの食品の調製に使用するための食品混合物に関し、当該食品混合物は、
可溶性繊維を含む画分(a)と、
少なくとも100mg/kgのヒドロキシチロソールおよび少なくとも250mg/kgのオレウロペインを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する粉末画分(b)と、を含む。
【0017】
好ましい実施形態では、前記画分(a)は、最大30mgのβ-グルカンおよび乾燥形態で前記画分(a)1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大300mgのペントサンを含む。
【0018】
さらにより好ましくは、前記画分(a)は、最大25mgのβ-グルカンおよび乾燥形態で前記画分(a)1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大250mgのペントサンを含む。
【0019】
好ましい実施形態において、前記水性画分は、好ましくは乾燥形態で前記画分(a)1グラム当たり最大0.5mgのフェルラ酸をさらに含む。
【0020】
好ましい実施形態では、前記画分(a)は、醸造所の使用済み穀物、すなわち醸造産業の副産物から得られ、ここで、「醸造所の使用済み穀物」という用語は、麦芽処理された穀類の熱抽出の残留物を意味し、それらは、穀物の外皮および麦芽処理およびマッシングプロセス中に可溶化を受けなかった画分、ならびに糖化されなかった様々な量のデンプンおよびデキストリンを含む。
【0021】
特に好ましい実施形態において、画分(a)は、醸造所の使用済み穀物加水分解物であり、より好ましくは、キシラナーゼの存在下での加水分解によって得られる醸造所の使用済み穀物加水分解物である。
【0022】
好ましくは、前記画分(a)は、イタリア特許出願第102019000005588号に記載された方法に従って得られ、前記方法は以下の工程を含む:
i)醸造所の使用済み穀物と水とを1:1~1:5の重量比で混合する工程;
ii)このようにして得られた混合物に、混合物の重量に基づいてキシラナーゼからなる酵素を最大2重量%添加し、45~65℃の温度および4~6のpHで1~6時間放置して反応させる工程;
iii)温度を80~90℃に少なくとも5分間上昇させることによって、工程ii)から酵素を失活させる工程;および
iv)工程iii)の終わりに得られた固体成分から液体成分を分離し、液体成分、すなわち醸造所の使用済み穀物加水分解物を保持する工程。
【0023】
好ましくは、前記キシラナーゼはエンド-1,4-β-キシラナーゼである。
好ましくは、工程i)において、醸造所の使用済み穀物と水との重量比は1:1.5~1:3である。
好ましくは、工程ii)において、酵素は、混合物重量に基づいて最大1重量%の量で添加される。より好ましい実施形態では、工程ii)において、酵素は、混合物重量に基づいて、0.1~0.7重量%の量で添加される。
好ましくは、工程ii)において、混合物を58~62℃で2~4時間放置して反応させる。
【0024】
工程iii)において、酵素は熱処理によって、すなわち温度を上昇させることによって失活される。好ましくは、失活は約85℃で約15分間行う。
【0025】
工程iv)において、液体成分の分離は、公知の濾過または/および遠心分離技術によって行うことができる。場合により、水でさらに洗浄することも可能である。
場合により、調製方法は、工程iv)に由来する液体成分の乾燥のための工程v)をさらに含み、このようにして、乾燥した醸造所の使用済み穀物加水分解物を得る。乾燥のための工程v)は、好ましくは65℃以下の温度で実施される。乾燥のためのこの工程v)は、凍結乾燥によって行うことができる。
【0026】
したがって、上記に示した方法から、フェルラ酸、タンパク質、最大30mgのβ-グルカン、および分子量が乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下である最大300mgのペントサンを含む醸造所の使用済み穀物加水分解物が得られる。「乾燥加水分解物(desiccated hydrolysate)」または「乾燥加水分解物(dried hydrolysate)」という表現は、乾燥を受けた加水分解物を意味する。加水分解物は、乾燥加水分解物の重量に基づいて、1重量%以下の残留水含有量を特徴とする場合、乾燥保存した(desiccated)または乾燥した(dried)とみなされる。
好ましくは、醸造所の使用済み穀物加水分解物は、最大25mgのβ-グルカンおよび乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大250mgのペントサンを含む。
【0027】
好ましくは、醸造所の使用済み穀物加水分解物は、乾燥加水分解物1グラム当たり最大0.5mgのフェルラ酸を含む。
好ましくは、醸造所の使用済み穀物加水分解物は、乾燥加水分解物1グラム当たり最大8mgのタンパク質を含む。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、醸造所の使用済み穀物加水分解物は、乾燥加水分解物である。乾燥生成物を有することは、細菌汚染および酸敗の両方の危険性の有意な減少に起因して、保存時間に加えて、対応する水溶液と比較した低容量の取り扱い性から、結果としての輸送の容易さまでの範囲にわたる一連の利点を提供する。当然のことながら、必要な状況であれば、加水分解物を水に容易に可溶化して、生成物を液体形態で所望の濃度にすることができる。
【0029】
したがって、可溶性繊維を含む画分(a)は、液体または固体、特に粉末であり得る。一実施形態では、画分(a)は、液体または乾燥した醸造所の使用済み穀物加水分解物であってもよい。好ましい実施形態では、可溶性繊維を含む画分(a)は、粉末、好ましくは乾燥した醸造所の使用済み穀物加水分解物である。
【0030】
好ましい実施形態は、本発明による食品混合物において、画分(a)が、フェルラ酸、タンパク質、最大30mgのβ-グルカン、および乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大300mgのペントサンを含む醸造所の使用済み穀物加水分解物を含むものである。より好ましい実施形態は、この加水分解物が上記の工程i)~iv)を含む方法によって得られるものである。
【0031】
ペントサンの定量は、迅速かつ再現性がある比色法に基づくもので、510~552nmのD-キシロースを参照標準として使用するフロログルシノール(S.G.Douglas,“A rapid method for the determination of pentosans in wheatflour”,Food Chemistry,7,1981,139-145)に基づく。この方法は高温酸加水分解を想定しているので、全てのペントサンはその重合度にかかわらず計数される。本発明の目的のために、加水分解物中のペントサンの数平均分子量(Mn)は、異なる分画分子量:50kDa、30kDa、10kDaおよび5kDaを有する篩を通したダイアフィルトレーションによって測定される。
【0032】
フェルラ酸は、好ましくは、水およびトリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの勾配を利用するカラムC18での逆相HPLC分析によって定量される。
【0033】
前記フェルラ酸は、植物繊維の構造によって放出される形態で存在するので、より生物学的に利用可能であり、したがってより効果的である。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記醸造所の使用済み穀物加水分解物は、本質的に、フェルラ酸、タンパク質、最大30mgのβ-グルカン、および乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大300mgのペントサンからなる。「本質的に~からなる」という表現は、フェルラ酸、タンパク質、β-グルカン、および30kDa以下の分子量を有するペントサンが、加水分解物中に存在する唯一の活性成分であるが、任意のさらなる成分または賦形剤は、その作用を妨害しないことを意味する。加水分解物およびその成分に対して好ましくかつ有利であるとして上記で特定された全ての態様は、同様に、これらの実施形態に対して好ましくかつ有利であるとみなされるべきであることが理解されるべきである。
【0035】
他の実施形態では、前記醸造所の使用済み穀物加水分解物は、フェルラ酸、タンパク質、最大30mgのβ-グルカン、および乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大300mgのペントサン、ならびに任意選択で水からなる。
【0036】
上記の加水分解物は、本発明の目的のために特に有利である。実際には、以下を考慮することが望ましい。
【0037】
ペントサン、特にアラビノキシランは、血液中のグルコースおよびコレステロールのレベルの制御に寄与する糖および脂肪の吸着を調節する。したがって、それらは、血糖症の軽減ならびに高コレステロール血症および肥満の制御において積極的な役割を果たす。さらに、アラビノキシランは、糞便ビフィズス菌を増加させ、p-クレゾールの尿中排泄を減少させることができるプレバイオティクスであることが周知であり、腸の健康および免疫系の全体的な改善をもたらす。
【0038】
しかし、アラビノキシランを含むペントサンの大部分、および一般に食品グレードの植物繊維中に存在するフェルラ酸は、セルロースおよびリグニンなどの他の不活性構造に厳密に結合しているため、生物学的に利用可能ではない。
【0039】
消化管がこれらの構造を分解できないことにより、大腸内のプロバイオティック微生物相は加水分解酵素を産生し、この加水分解酵素は、食品グレードの繊維の存在下で、ペントサンおよびフェルラ酸をそれらが結合している化合物から分離し、それらを生物学的に利用可能にする。しかしながら、このプロセスは遅く、腸管の末端部分でのみ起こるため、収率が非常に低い。
【0040】
植物繊維の摂取のプラスの効果は確かであるが、炭水化物100グラム毎に8グラムのアラビノキシランに富む繊維を摂取すると、不溶繊維の部分に起因して、一連の障害(例えば、膨満、鼓腸、結腸刺激、およびその結果生じる腹痛など)が生じ得ることに留意しなければならない。
【0041】
さらに、100g中8gに達するアラビノキシランに富む繊維の含有量に達するために摂取されなければならない全食品は、一般に食欲をそそられず、膵リパーゼを無効にするリパーゼ阻害剤、およびヒトまたは非反芻動物によって消化され得ず、いくつかの栄養素に対するそのキレート効果のために抗栄養素として分類されるフィチン酸塩を含有する。実際に、大量に摂取した場合、フィチン酸塩は、ビタミンB1に加えて、カルシウムおよび亜鉛などの多数のミネラルの代謝および吸収を阻害し、特定のタンパク質を消化不能にする。
【0042】
さらに考慮しなければならないことは、食品グレードの植物繊維の不溶性部分がマイコトキシンで汚染されている可能性があり、これが免疫系および神経系を変化させ、酸化ストレスを引き起こし、腸管バリアを害することである。
【0043】
したがって、上記の加水分解物は、可溶性繊維の高い生物学的利用能を有する生成物にする方法によって得られるので特に有利であり、これにより、同時に、一般に知られている全粒穀物生成物の高摂取に関連する利点を低減することが可能になる。さらに、醸造所廃棄物を再利用して、様々な用途を見出し、廃棄物全体を排除する材料を得る。
【0044】
一実施形態では、前記粉末画分(b)は、45mg/kg以下の少なくとも1つの天然トリテルペンおよび/または10mg/kg以下のスクアレンをさらに含む。
【0045】
好ましい実施形態では、前記粉末画分(b)は、少なくとも110mg/kgのヒドロキシチロソール、またはその119mg/kg、および少なくとも260mg/kgのオレウロペイン、またはその264mg/kgを含み、これらの量が前記粉末画分を参照する。
【0046】
好ましい実施形態では、粉末画分(b)は、ω-3および/またはω-6脂肪酸の500mg/kg以下をさらに含み、好ましくは約200~500mg/kg、さらにより好ましくは約300~400mg/kgを含む。
【0047】
好ましい実施形態では、脂肪酸はω-3脂肪酸であってもよく、より好ましくは、エイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)から選択されてもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、前記粉末画分(b)は、オリーブストーンを粉砕することによって、さらにより好ましくはオリーブストーンの内部に含有される種子を粉砕することによって得られる粉末をさらに含む。前記粉末は、特許出願ES2389820に記載されている方法から得ることができ、ここでその全体が想起される。この方法によれば、任意のストーン除去システムから得られた全オリーブストーンは、種子を損傷することなく破壊され、その後、種子は殻から機械的に分離される。種子を乾燥させて残留水分を除去し、次いで、好ましくは連続プレスで冷間プレスする。プレスから得られたケーキを粉砕し、微粉化して、所望の特性を有する、好ましくは500μm以下の粒径を有する粉末を得る。
【0049】
このようにしてオリーブストーンの種子から得られた粉末は、タンパク質、脂肪、水、繊維、炭水化物、トリテルペン、およびスクアレンを含む。
【0050】
特に、この粉末は、200~300mg/kgのマスリン酸、100~200mg/kgのオレアノール酸、および50~100mg/kgのスクアレンを含み、ここで「mg/kg」は、粉末1kg当たりのmgを意味する。
粉末はさらに、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン、アラニン、プロリン、チロシン、バリン、メチオニン、リジン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、グルタミン、アスパラギン、およびトリプトファンなどのいくつかの遊離アミノ酸を含む。
【0051】
したがって、それは、オレアノール酸、マスリン酸およびスクアレンも大量に含む粉末であり、機能性食品の加工における成分または添加剤として非常に競争力のある植物ベースの穀粉となっている。
【0052】
したがって、あるいは、本発明による食品混合物は、
可溶性繊維を含む画分(a)と、
オリーブストーンに含まれる種子の粉砕から得られる粉末をさらに含み、45mg/kg以下の少なくとも1つの天然トリテルペンおよび/または10mg/kg以下のスクアレンを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する粉末画分(b)と、を含む。
【0053】
好ましくは、前記少なくとも1つの天然トリテルペンは、オレアノール酸、マスリン酸、またはそれらの組み合わせである。
【0054】
オリーブストーンに含まれる種子を粉砕することによって得られる粉末は、上述した全ての栄養特性を提供するが、前記粉末は、非常に強い苦味によって特徴付けられるという欠点を有し、これは、これまでのところ、食品におけるその使用を妨げてきた。これに関して、驚くべきことに、上記のように、この粉末を醸造所の使用済み穀物加水分解物と混合すると、得られる食品混合物は、明らかにより心地よい風味を提供し、それによって、有利には、オリーブストーンに含まれる種子の粉砕から得られる粉末の特徴と、醸造所の使用済み穀物加水分解物の特徴との両方を利用することが可能になることが見出された。実際に、予想外にも、醸造所の使用済み穀物加水分解物は、粉末の苦味を適切にマスクし、得られる混合物に心地よい風味および良好な嗜好性を保証する。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、苦味をマスキングするこの効果は、前記加水分解物中のキシロースなどの糖の存在に起因すると考えられる。
【0055】
したがって、より好ましい実施形態は、本発明による食品混合物であって、
フェルラ酸、タンパク質、最大30mgのβ-グルカン、および乾燥加水分解物1グラム当たり30kDa以下の分子量を有する最大300mgのペントサンを含む醸造所の使用済み穀物加水分解物を含む画分(a)と、
ヒドロキシチロソールおよびオレウロペインに加えて、オリーブストーンに含まれる種子の粉砕から得られる粉末をさらに含み、45mg/kg以下の少なくとも1つの天然トリテルペンおよび/または10mg/kg以下のスクアレンを含む粉末画分(b)であって、これらの量が前記粉末画分(b)を参照する、粉末画分(b)と、を含む食品混合物である。
【0056】
醸造所の使用済み穀物加水分解物およびオリーブストーンの種子からの粉末について好ましくかつ有利であるとして上記で特定された全ての態様は、同様に、両方を含むこれらの実施形態についても好ましくかつ有利であるとみなされるべきであると理解されるべきである。
【0057】
好ましくは、食品混合物において、オリーブストーンに含まれる種子の粉砕から得られる粉末の量は、醸造所の使用済み穀物加水分解物の量よりも多い。
【0058】
より好ましくは、前記オリーブストーンからの粉末と前記醸造所の使用済み穀物加水分解物とは、2:1~5:1の重量比である。
【0059】
特に好ましい実施形態では、前記オリーブストーンからの粉末と前記醸造所の使用済み穀物加水分解物とは、3:1の重量比である。
【0060】
好ましくは、食品混合物は上述の全ての成分を含む。
食品混合物は、好ましくは10~30重量%の画分(a)と、70~90重量%の粉末画分(b)とを含み、(a)および(b)の当該量が食品混合物の重量を参照する。
【0061】
さらなる態様において、本発明は、本発明による組成物を含む食品に関する。非限定的な例として、前記食品は、穀粉または穀粉の混合物およびその由来製品(焼き菓子およびパスタなど)、フルーツジュース、フルーツマーマレードおよびジャム、アイスクリーム、飲料、およびビールから選択される。
【0062】
別の態様では、本発明は、上記に詳細に記載した食品混合物の15重量%以下、好ましくは3~10重量%、より好ましくは5~7重量%を含む少なくとも1つの(擬似)穀類でできている食品グレードの穀粉に関し、これらの量が、食品混合物を含む食品グレードの穀粉の総重量を参照する。
【0063】
食品混合物が、前記醸造所の使用済み穀物加水分解物を含む好ましい実施形態である場合、前記食品グレードの穀粉は、好ましくは、食品グレードの穀粉の重量に対して、最大5重量%の加水分解物を含む。
【0064】
食品混合物が、前記オリーブストーンからの粉末を含む好ましい実施形態である場合、前記食品グレードの穀粉は、好ましくは、食品グレードの穀粉の重量に対して最大15重量%のオリーブストーンからの粉末を含む。
【0065】
食品混合物が、前記醸造所の使用済み穀物加水分解物および前記オリーブストーンからの粉末を含む好ましい実施形態にある場合、前記食品グレードの穀粉は、好ましくは、食品グレードの穀粉の重量に対して最大5重量%の加水分解物および最大15重量%のオリーブストーンからの粉末を含む。
【0066】
より好ましくは、前記食品グレードの穀粉は、好ましくは、食品グレードの穀粉の重量に対して、0.1~3重量%の加水分解物および1~8重量%のオリーブストーンからの粉末を含む。
特に好ましい実施形態では、前記食品グレードの穀粉は、食品グレードの穀粉の重量に対して、0.5~2重量%の加水分解物および1.5~6重量%のオリーブストーンからの粉末を含む。
【0067】
より好ましい実施形態では、前記食品グレードの穀粉は、食品グレードの穀粉の重量に対して、1重量%の加水分解物および3重量%のオリーブストーンからの粉末を含む。
【0068】
好ましくは、(疑似)穀類は、コムギ、ライムギ、ソバ、オオムギ、オートムギ、トウモロコシ、イネ、およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0069】
食品グレードの穀粉は、以下のイタリア穀粉タイプ:タイプ2、タイプ1、タイプ0、タイプ00およびそれらの組み合わせのいずれかであり得、好ましくは、作製される製品のタイプに応じて、タイプ0またはタイプ00の穀粉である。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、健康な哺乳動物における血糖、特に食後血糖の低減に使用するための、ならびに/あるいは炎症の予防および/もしくは治療、特に炎症性結腸直腸疾患、好ましくはクローン病、過敏性腸症候群、および大腸炎に関連する炎症の予防および/または治療に使用するための、食品混合物およびそれを含む食品に関する。
【0071】
食後血糖の低減および炎症に対する本発明による食品混合物の有意な有効性を実証するために、以下の実施例は、健康な人々、すなわち本格的な疾患および明白な炎症状態に罹患していない人々に対して実施された試験を示す。この選択は、正常な健康状態下でさえも効力が観察されることを実証することを可能にし、したがって、任意の病理学的状態の発症の予防作用を確認する。同時に、例えば、肥満もしくは糖尿病または慢性疾患に罹患している人々などの慢性炎症状態を有する患者の治療において、結果的に効果ははるかに有意であり、すなわち実際の真の治療効果が観察されることになる。
【0072】
食品混合物、個々の画分(a)および(b)、その調製方法および使用ならびにそれらを含有する製品の好ましい態様の全ての可能な組み合わせは、上記のように、本明細書に開示され、同様に好ましいとみなされることが理解されるべきである。
【0073】
したがって、食品混合物ならびにその画分(a)および(b)について好ましいおよび有利であると特定された全ての態様は、その調製および使用についても同様に好ましくかつ有利であるとみなされるべきであることも理解されるべきである。
以下は、例示目的で提供される本発明の実施例である。
【実施例】
【0074】
以下の分析方法を利用して、本明細書および実施例に記載される特性を決定した。
【0075】
ペントサンの定量:ペントサンは、迅速かつ再現性があり、510~552nmのD-キシロースを参照標準として使用するフロログルシノールに基づく比色法(S.G.Douglas,“A rapid method for the determination of pentosans in wheatflour”,Food Chemistry,7,1981,139-145)を適用して定量した。この方法は高温酸加水分解を想定しているので、全てのペントサンはその重合度にかかわらず計数される。本発明の目的のために、加水分解物中のペントサンの数平均分子量(Mn)は、異なる分画分子量:50kDa、30kDa、10kDaおよび5kDaを有する篩を通したダイアフィルトレーションによって測定される。
【0076】
実施例1.
画分(a)の調製
醸造所の使用済み穀物加水分解物を、以下のプロセスパラメーターを設定することによって、本発明に従って調製した。
i)醸造所の使用済み穀物と水とを混合した。ここで、醸造所の使用済み穀物は40重量%であった。
ii)pH5で、温度を60℃に上げて4時間、酵素を0.2重量%の量で添加した。
iii)次いで、85℃で15分間加熱することによって酵素を失活させた。
iv)次いで、得られた加水分解物を、濾過によって残りの固体から分離した。
【0077】
【0078】
続く乾燥工程v)の後、加水分解物は以下の組成を有していた。
【表2】
【0079】
・乾燥加水分解物中でも得られるアラビノキシランの分子量の分布:
カットオフ膜を通した濾過による分布の分析は以下の通りである。
【表3】
【0080】
実施例2.
本発明による食品混合物を含むパンの抗炎症活性および血糖指数の評価
6名、すなわち3名の男性と3名の女性が登録された。
【0081】
血糖指数は、GlucoMen(Menarini Diagnostic社製)装置を使用し、指先から毛細管血液試料を採取することによって評価した。
各被験者は(3つの異なる時間に)以下のものを摂取した:50gのグルコース、70gの従来の白パン、および本発明による15重量%の食品混合物を含む穀粉で製造された80gのパンであって、食品混合物は、119.12mg/kgのヒドロキシチロソールおよび263.98mg/kgのオレウロペインを含有する10重量%の粉末画分(b)と、上記のように実施例1で調製された乾燥した醸造所の使用済み穀物加水分解物からなる90重量%の画分(a)とを含有していた。
【0082】
これらの量が、各投与において同じ量の炭水化物を有するように較正した。
血液試料を、食物を投与する前に採取し、次いで、30分後、45分後、60分後、90分後および120分後に採取した。
図1は、被験者が経時的に経験した血糖の変化のグラフを示す。血糖応答、したがって血糖指数は、本発明による混合物を含むパンの投与後、経時的に低かった。
【0083】
グルコースの曲線下面積と本発明による食品混合物を含むパンの曲線下面積との間の比を適用することによって計算される血糖指数は約46であり、低血糖指数(GI55未満)ゾーンに位置することがわかる。同じ穀粉を含むが本発明による混合物を含まないパン製品の同じタイプの使用では、約76の血糖指数をもたらし、したがって、これは、本発明による食品混合物を含むパンで観察されるものよりもはるかに高いことに留意することが重要である。
【0084】
3回の試験のうち別の日に、しかし同じ人たちで静脈血試料を採取した。同じ人が、本発明による混合物を含む100gのパンを5日間連続して毎日摂取する以外は、食習慣や生活習慣を何も変えずに、当該5日後にさらに静脈血試料の採取を実施した。
【0085】
次いで、炎症性サイトカインであるインターロイキン6(lL6)を、ELISA試験を使用して評価した。データを
図2に示す。本発明による食品混合物を含むパンを5日間摂取した後のIL6のレベルの減少は、統計的に有意であった。
【0086】
データは、本発明による混合物を含むパンの抗炎症作用を実証する。この結果は、本格的な疾患または炎症状態を有さない健康な人々において得られる場合、特に重要であるとみなされるべきであり、したがって、この作用は、通常の日常生活に起因する炎症を減少させるのに有効である。この影響は、例えば肥満もしくは糖尿病または慢性疾患に罹患している人などの慢性炎症状態にある人においてはるかに大きい。
【国際調査報告】