(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】酸化性低張性酸溶液の治療的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 33/20 20060101AFI20220830BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/12 20060101ALI20220830BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220830BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220830BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/451 20060101ALI20220830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220830BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20220830BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220830BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K33/20
A61P17/02
A61P31/14
A61P17/14
A61P17/12
A61P1/02
A61P1/00
A61P17/04
A61P29/00
A61P25/02 101
A61P43/00 111
A61P31/04
A61K33/06
A61K31/451
A61K45/00
A61P17/00 101
A61P17/00
A61K45/06
A61P39/06
A61P43/00 105
A61K31/496
A61K31/7036
A61K31/7048
A61K31/4709
A61P11/00
A61P11/04
A61P11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578102
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056277
(87)【国際公開番号】W WO2021001789
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508318801
【氏名又は名称】エーピーアール アプライド ファーマ リサーチ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジョ レイネル
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ガルフェッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト デ ノーニ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084AA23
4C084NA05
4C084ZA892
4C084ZA912
4C084ZB352
4C084ZC082
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC29
4C086CB25
4C086EA09
4C086EA13
4C086HA05
4C086HA09
4C086HA21
4C086HA24
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA59
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4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZA92
4C086ZB21
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC20
4C086ZC37
4C086ZC41
4C086ZC54
(57)【要約】
次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性溶液を罹患領域に局所適用することによって、表皮水疱症(「EB」)によって引き起こされる潰瘍、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる病変、ブルーリ潰瘍、及びSARS-CoV-2感染症を治療又は予防するための方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮水疱症(「EB」)によって引き起こされる創傷の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、前記創傷に局所適用することを含み、前記遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl
2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO
-)を含む、方法。
【請求項2】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、前記皮膚毒性に罹患した皮膚に局所適用することを含み、前記遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl
2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO
-)を含む、方法。
【請求項3】
ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる局所障害の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、前記障害に罹患した皮膚に局所適用することを含み、前記遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl
2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO
-)を含む、方法。
【請求項4】
mycobacterium ulceransによって引き起こされるブルーリ潰瘍の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、前記潰瘍に局所適用することを含み、前記遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl
2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO
-)を含む、方法。
【請求項5】
SARS Cov2感染症の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、前記患者の鼻腔及び/又は喉及び/又は上気道に局所適用することを含み、前記遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl
2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO
-)を含む、方法。
【請求項6】
前記創傷が、皮膚水疱、粘膜水疱、頭皮水疱形成、瘢痕性脱毛症、萎縮性瘢痕、過角化症、粟粒腫、う蝕症、嚥下障害、及び皮膚の痒み又は痛みからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記創傷が、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記創傷が、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択され、前記治療が、前記創傷の閉鎖に必要な時間の低減を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記創傷が、創傷面スコア(WBS)を有し、前記投与が、前記WBSを低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、MMP2及びMMP9活性の上昇に罹患しており、前記投与が、前記上昇を低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
局所包帯、塩化アルミニウム、シプロヘプタジン、角質溶解剤(keratolytic)、又は局所軟化剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が、前記表皮水疱症に続発する任意の細菌感染をさらに治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記毒性が、乾燥症、裂溝、掻痒、湿疹、皮膚感染症、痒み、蕁麻疹、毛髪成長異常、及び丘疹膿疱性皮疹からなる群から選択され、前記適用が、前記毒性のうちの1以上を治療する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記毒性が、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を含み、前記投与が、前記WBSを低減する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記投与が、NCI-CTCAE v5.0、FACT-EGFRI-18、DIEHL-24、及びMESTTからなる群から選択されるスケールにおいて、毒性グレードを低減する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、QALYに対するEQ-5D-5L/3L、及び/又はDLQI(皮膚科生活品質指数)、Skindex-16、若しくはFACT-EGFRI-18から選択される追加の状態特異的質問票によって測定される際、前記患者の生活の質を改善する、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記皮膚毒性が標的病変であり、前記治療が前記標的病変のサイズを低減する、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
経口若しくは局所用抗生物質又はコルチコステロイド又は皮膚保湿剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、前記EGFR阻害剤誘発性毒性に続発する任意の細菌感染をさらに治療する、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記局所障害が、皮膚発疹、痒み、灼熱感、皮膚ひび割れ、又は二次感染からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記局所障害が、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される創傷である、請求項3に記載の方法。
【請求項22】
前記局所障害が、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される創傷であり、前記治療が、創傷閉鎖に必要な時間の低減を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記局所障害が、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を含み、前記投与が、前記WBSを低減する、請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記局所障害が、再発性及び寛解性の皮膚病変を含み、前記適用が、前記病変の発生(outbreak)の長さ又は前記病変の発生(occurrences)間の時間を低減する、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、機能的ATP2C1ケラチノサイト活性の喪失、1以上の皮膚病変における酸化ストレス、NRF2活性の低下、又はTGFβ1及びTGFβ2発現の不均衡、増殖ケラチノサイトの低減に罹患しており、前記方法が、前記状態を治療する、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
冷湿布、局所包帯、コルチコステロイドクリーム、局所用抗生物質、又は全身用抗生物質を前記患者に投与することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記投与が、前記ヘイリー-ヘイリー病に続発する任意の細菌感染をさらに治療する、請求項4に記載の方法。
【請求項28】
前記ブルーリ潰瘍が、創傷を特徴とし、前記治療が、創傷閉鎖に必要な時間の低減を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項29】
前記ブルーリ潰瘍が、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を特徴とし、前記投与が、前記WBSを低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項30】
前記ブルーリ潰瘍が、ミコラクトン分泌を特徴とし、前記投与が、前記分泌を低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
リファンピシンと、ストレプトマイシン、クラリスロマイシン及びモキシフロキサシンから選択される1以上の抗生物質と、を前記患者に投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項32】
前記ブルーリ潰瘍が、Mycobacterium ulceransの一次細菌負荷を特徴とし、前記投与が、前記細菌負荷を低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が、前記ブルーリ潰瘍に続発する任意の細菌感染をさらに治療する、請求項4に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が、前記鼻腔及び上気道におけるSARS Cov2のウイルス負荷を低減する、請求項5に記載の方法。
【請求項35】
前記投与が、気管又は肺などの下気道へのSARS Cov2の広がりを低減する、請求項5に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が、SARS Cov2感染症及び損傷から鼻腔内嗅覚ニューロンを保護する、請求項5に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、核内因子カッパB(NF-κB)シグナル伝達、Nrf2活性、IL-1活性、顆粒球マクロファージコロニー-刺激因子(GM-CSF)活性、IL-6活性、MMP2、MMP9、TNF-α活性、KGF発現、TGFβ2発現、TGFβ1発現、及びsiATP2C1ケラチノサイト増殖から選択される1以上の生化学的異常に罹患しており、前記投与が、前記生化学的異常のうちの1以上を治療する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与される、請求項1~4及び6~33のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される、請求項1~4及び6~33のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥され、その後、二次治療の局所投与が行われる、請求項1~4及び6~33のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項5及び34~36のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として各鼻孔に一日当たり少なくとも3回投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項5及び34~36のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、作動当たり100~1000mcl、作動当たり200~300mcl、又は作動当たり400~600mclを分配する噴霧ポンプから投与される、請求項5及び34~36のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、2.5~4.5のpH、≦300mg/lの塩化物含有量、及び850~1350mVの酸化還元電位(ORP)を有する、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、
a)250mg/l未満の塩化物含有量と、
b)2.5~4のpHと、
c)850~1350mVの酸化還元電位(ORP)と、
d)≧92.5%のHClO、≦7.5%のCl
2、及び<1%又は0%のClO
-を含む、25~120mg/lの遊離塩素含有量と、を含む、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、
a)200mg/l未満の塩化物含有量と、
b)2.5~3のpHと、
c)1000~1300mVの酸化還元電位(ORP)と、
d)≧95%のHClO、≦5%のCl
2、及び<0.1%又は0%のClO
-を含む、40~100mg/lの遊離塩素含有量と、を含む、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥され、その後、二次治療の局所投与が行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として各鼻孔に一日当たり少なくとも3回投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、作動当たり50~1000mcl、作動当たり75~500mcl、又は作動当たり85~300mclを分配する噴霧ポンプから投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥され、その後、二次治療の局所投与が行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として各鼻孔に一日当たり少なくとも3回投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、作動当たり50~1000mcl、作動当たり75~500mcl、又は作動当たり85~300mclを分配する噴霧ポンプから投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が、表皮水疱症、EGFR阻害剤皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病、又はブルーリ潰瘍に罹患した局所表面に投与され、前記組成物が、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥され、その後、二次治療の局所投与が行われる、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として各鼻孔に一日当たり少なくとも3回投与され、前記投与が、前記装置の2回以上の作動を含み得る、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が、SARS Cov2に感染した人に経鼻投与され、前記組成物が、作動当たり50~1000mcl、作動当たり75~500mcl、又は作動当たり85~300mclを分配する噴霧ポンプから投与される、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性溶液を罹患領域に局所適用することによって、表皮水疱症(「EB」)によって引き起こされる潰瘍、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる病変、ブルーリ潰瘍、及びSARS-CoV-2感染症を治療又は予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮水疱症によって引き起こされる潰瘍、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病によって引き起こされる病変、及びブルーリ潰瘍を含む天然及び人工起源の両方の様々な皮膚障害が、効果的な治療を必要としている。
【0003】
EBは、ごくわずかな接触で皮膚に水疱及び裂傷が生じる、希少な遺伝性皮膚疾患の不均一な群である。EBを持って生まれた人は、皮膚が非常に脆弱であるため、「バタフライ・チルドレン」と呼ばれる。彼らの皮膚は蝶の羽のように非常に脆弱である。このきわめて脆弱な皮膚が損傷している箇所には痛みを伴う開放創及び傷が形成され、場合によっては内膜及び器官も影響を受ける。二次感染及び広範囲の瘢痕化の結果としての合併症は、EBと共に生きる人々がしばしば直面しなければならない要因である。悲劇的なことに、乳児期に致命的となり得るタイプのEBもあれば、重度に生命を制限するタイプのEBもある。EBは、優性又は劣性のいずれかの形式で遺伝し得る。EBは、新たな自然突然変異によっても生じる可能性がある。どちらの親もEBを保有していないが、遺伝子が受胎前に精子又は卵子のいずれかにおいて自然に突然変異する。まれに、自己免疫疾患の結果として重症型のEBが「獲得」されることがある。この場合、身体は自身の組織タンパク質を攻撃する抗体を開発する。
【0004】
上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB-1又はHER-1としても知られている)は、一部の細胞の表面上に見られるタンパク質であって、上皮成長因子が受容体に結合するときに細胞を分裂させる。EGFRは、癌細胞において異常に高いレベルで見られ、EGFRの活性化は、腫瘍の成長及び進行において重要であるように思われる。EGFRは、表皮上、基底細胞層上、皮脂腺のレベルで、及びケラチノサイト上で高度に発現されている。EGFR阻害剤は、EGFRの特定の部分に結合し、細胞成長を遅らせるか、又は停止する。EGFR阻害剤に基づく治療スキームに供された癌患者において、丘疹膿疱性発疹、爪囲炎、毛髪成長の変化、痒み及び皮膚乾燥などの皮膚に対する有害反応は、一般には、前述の薬剤が皮膚細胞増殖プロセスに影響を及ぼすために発現される。
【0005】
ヘイリー-ヘイリー病は、1939年にHailey兄弟によって最初に説明された常染色体優性遺伝性皮膚病である。ケラチノサイトにおいてATP2C1が欠如すると、おそらくは接着斑板からのケラチン中間径フィラメントの後退に起因して、表皮の基底上層の細胞間の細胞間接着が失われる(棘融解)。この疾患は通常、生後30年又は40年以内に発症し、主に首、間質領域、皮膚の屈曲領域に発生する、水疱性病変、痂皮性びらん、及び疣贅性丘疹を特徴とする。疾患は、成人では完全に浸透性であるが、発現度が変化する変動経過を有する。この状態の管理は困難であり、既存の治療では長期にわたるプラスの治療効果が得られない。発汗、UV曝露、摩擦、並びに細菌、真菌及びウイルスによる重複感染などの外部要因は、病変の悪化及び持続において重要な役割を果たす。
【0006】
ブルーリ潰瘍は、主に皮膚、時には骨に影響を及ぼす慢性消耗性疾患である。1897年にウガンダでAlbert Cook卿によって最初に説明され、Peter MacCallumが率いるオーストラリアの科学者達がバーンズデール地域の患者の病変から微生物を培養することに最初に成功したのは1930年代になってからであった。ブルーリ潰瘍は、mycobacterium ulceransによって引き起こされ、結核及びハンセン病を引き起こす細菌のファミリーに属する。ブルーリ潰瘍の原因微生物は環境細菌であるが、ヒトへの感染様式は依然として不明である。微生物は、皮膚に損傷を与える独特の毒素であるマイコラクトンを生成する。
【0007】
SARS-CoV-2は、コウモリのコロナウイルスと遺伝的に類似した呼吸器ウイルスである。SARS-CoV-2は、感染者が咳又はくしゃみをしたときに、主に唾液の飛沫又は鼻からの分泌物を介して広がると考えられている。CoVの物理化学的特性に関する知識の大半は、SARS-CoV及びMERS-CoVから得られる。SARS-CoV-2は、UVで不活化させることができるか、又は56℃で30分加熱することができ、また、ジエチルエーテル、75%エタノール、塩素、過酢酸、及びクロロホルムなどのほとんどの消毒薬に対して感受性がある。現時点で、SARS-CoV-2に対する特定のワクチン又は治療はない。しかしながら、最重症形態に対する潜在的な治療法を評価する多くの臨床試験が進行中であるが、ウイルス感染を減らして制御できる全人口に対する治療法はまだない。
【0008】
ニーズについての記述
表皮水疱症(「EB」)、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性、ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる病変、ブルーリ潰瘍、及びSARS-CoV-2感染症を治療するための安全かつ効果的な療法に対する医学的ニーズはまだ満たされていない。これらの状態の根底にある病因を治療し、創傷に罹患した状態における創傷ケアを促進させるために、迅速で使いやすく、かつ安全な治療は、これらの状態に苦しむ患者とその家族の生活の質を大幅に改善するであろう。
【発明の概要】
【0009】
pH、塩化物含有量、及び遊離塩素含有量によって定義される低張性酸酸化性水溶液は、いくつかの定義された局所状態及び呼吸器感染症を治療する驚くべき多様性を伴って開発されている。したがって、第1の主要な実施形態において、本発明は、表皮水疱症(「EB」)によって引き起こされる創傷の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該創傷に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0010】
第2の主要な実施形態では、本発明は、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、皮膚毒性に罹患した皮膚に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0011】
第3の主要な実施形態では、本発明は、ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる局所障害の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該障害に罹患した皮膚に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法。
【0012】
第4の主要な実施形態では、本発明は、mycobacterium ulceransによって引き起こされるブルーリ潰瘍の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該潰瘍に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0013】
第5の主要な実施形態では、本発明は、SARS Cov2感染症の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該患者の鼻腔及び/又は喉及び/又は上気道に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の追加の利点は、以下の説明に部分的に記載されており、部分的には明細書の記載から明らかであるか、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘した要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的で説明的なものに過ぎず、特許請求されるような本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】実施例3に記載されるように、アクティブな治療(APR TD011)を適用した後の、損傷から4時間後及び24時間後の損傷組織並びに陰性対照の組織学的分析である。
【
図2】実施例3に記載されるように、本発明の方法に従って治療した重度の全身性の劣性栄養障害型表皮水疱症を有する24歳の患者における結果を示す一連の写真である。
【
図3】実施例3に記載されるように、本発明の方法に従って治療した接合部型表皮水疱症患者の2歳の慢性創傷の下肢を示す一対の写真である。
【
図4】本発明の実施例5に記載されるように、本発明の溶液の効果を示し、ヘイリー-ヘイリー病に特に関連するモデルにおいてビヒクルで処理したsiATP2C1細胞におけるよりも、本発明の溶液で処理したsiATP2C1細胞において、Nrf2タンパク質発現レベルが有意に高いことを示す。
【
図5】本発明の実施例5に記載されるように、ヘイリー-ヘイリー病に特に関連するモデルにおける、ATP2C1欠損ケラチノサイトにおけるTGFB1及びTGFB2サイトカイン発現に対する本発明の溶液の効果を示す。
【
図6】本発明の実施例5に記載されるように、本発明の溶液によるsiATP2C1細胞の処理の効果、及びsiATP2C1で処理したHaCaT細胞の増殖不良の救済を示す。
【
図7】ブルーリ潰瘍への特定の適用を伴う本発明の実施例6に記載されるように、本発明の溶液に曝露したMycobacterium ulcerans細菌の計算された代謝活性。
【
図8】ブルーリ潰瘍への特定の適用を伴う実施例6に記載されているように、CFUのプレーティング及びカウントによって、本発明の溶液のMycobacterium ulcerans殺菌活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語の定義及び使用
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が関係する技術の状態をより完全に説明するために、その全体が本出願に参照により本明細書に組み込まれる。開示された参考文献はまた、参考文献が依拠する文において考察されている、それらに含まれる資料について、参照により本明細書に個別かつ具体的に組み込まれている。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含む。例えば、「仕様」という用語は、現在開示されている方法及びシステムで使用するための1以上の仕様を指す。「炭化水素」は、2以上のそのような炭化水素の混合物などを含む。本明細書で使用される場合、単語「又は(or)」又は同様の用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0018】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprise)」という単語並びに「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」などの単語の変形は、「~を含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数又はステップを除外することを意図しない。要素が1つ又は複数の構成要素、ステップ、若しくは条件を含むものとして説明される場合、要素はまた、構成要素、ステップ、若しくは条件、又は複数の構成要素、ステップ、若しくは条件「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」ものとして説明され得ることが理解されよう。
【0019】
範囲の代替の上限及び下限を特定することによって、本明細書において範囲を表す場合、端点は、数学的に実現可能な任意の様式で組み合わせることができることが理解されよう。したがって、例えば、50又は80~100又は70の範囲は、50~100、50~70、及び80~100の一連の範囲として代替的に表すことができる。一連の上限及び下限が、相(phase)「及び」又は「又は」を使用して関連する場合、上限は、下限に制限されないか、又は下限と組み合わせることができ、逆もまた同様であることが理解されよう。したがって、例えば、40%超及び/又は80%未満の範囲は、40%超、80%未満、及び40%超であるが80%未満の範囲を含む。
【0020】
プロセス又は物の要素が、1以上の例、構成要素、特性又は特徴を参照することによって定義される場合、それらの構成要素、特性、又は特徴のうちの任意の1つ又は組み合わせもまた、問題の主題を定義するために使用され得ることが理解されよう。これは、例えば、要素の特定の例が請求項(マーカッシュグループの場合のように)に列挙されている場合、又は要素が複数の特徴によって定義される場合に生じ得る。したがって、例えば、特許請求されるシステムが、要素A1、A2及びA3によって定義される要素Aを、要素B1、B2及びB3によって定義される要素Bと組み合わせて含む場合、本発明はまた、要素Bなしに要素Aによって定義されるシステム、要素Aが、要素B2及びB3によって定義される要素Bと組み合わせて、要素A1及びA2によって定義されるシステム、並びに全ての他の可能な変形(permutation)を含むことが理解されよう。
【0021】
「治療有効量」は、代謝プロセスを支持若しくは代謝プロセスに影響を及ぼすために、又は疾患を治療又は予防するためにヒトに投与される場合、疾患のそのような治療又は予防を引き起こすか、又は代謝プロセスに支持若しくは代謝プロセスに影響を及ぼすのに十分である量を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、製造の変動及び時間に起因する製品の劣化による製品強度の差異など、製薬業界で許容され、本業界の製品に固有のばらつきを補償する。この用語は、良好な製造業務の実施において、製品が、ヒトにおいて治療的に同等又は生物学的に同等であると評価されることを特許請求される製品の記載された強度と見なすことができる任意の変動を可能にする。
【0023】
本発明の文脈において、本明細書に記載される疾患状態のうちのいずれかに関するものである限り、「治療」という用語は、症状若しくは状態の発生を低減するか、又はそのような状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和する若しくは軽減するか、又はそのような状態に基づく代謝プロセスを遅らせる若しくは逆転させるか、又はそのような状態に基づいて代謝プロセスを管理する若しくは代謝プロセスに影響を及ぼすことを意味する。本発明の意味の範囲内で、本用語はまた、停止し、発症を遅らせる(すなわち、疾患の臨床症状発現の前の期間)、及び/又は疾患を発症若しくは悪化させるリスクを低減することを示す。治療が本明細書で指定される場合、又は治療の特定の標的が示される場合はいつでも、そのような治療が臨床的有意義な利益をもたらすことが理解されよう。したがって、例えば、治療が細菌負荷を低減するか、又は二次感染を治療する場合、細菌負荷は臨床的に有意義な量で低減するか、又は二次感染が臨床的に有意な程度まで治療されることが理解されよう。
【0024】
本発明の組成物に関連して使用される場合、「許容される(acceptable)」という語句は、生理学的に忍容可能であり、典型的には対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与されたときに不利な反応を生じない、そのような組成物の分子実体及び他の成分を指す。
【0025】
公開された試験方法及び診断器具が本明細書で参照される場合、本明細書では反対の記載がない限り、2019年7月1日に有効なバージョンに基づいて、試験方法又は診断器具が実行されることが理解されよう。
【0026】
主要な実施形態の考察
本発明は、いくつかの主要な実施形態に基づいて定義することができ、これらの実施形態は、追加の実施形態を作成するために物理的かつ数学的に可能な任意の様式で、それらの間で、及び任意の下位実施形態(subembodiment)と、組み合わせることができる。第1の主要な実施形態において、本発明は、表皮水疱症(「EB」)によって引き起こされる創傷の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該創傷に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0027】
第2の主要な実施形態では、本発明は、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、皮膚毒性に罹患した皮膚に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0028】
第3の主要な実施形態では、本発明は、ヘイリー-ヘイリー病(「HHD」)によって引き起こされる局所障害の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該障害に罹患した皮膚に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法。
【0029】
第4の主要な実施形態では、本発明は、mycobacterium ulceransによって引き起こされるブルーリ潰瘍の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該潰瘍に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0030】
第5の主要な実施形態では、本発明は、SARS Cov2感染症の治療を必要とする患者において、それを治療する方法であって、2.5~6のpH、400mg/mL未満の塩化物含有量、及び20~140mg/mLの遊離塩素含有量を含む、治療有効量の低張性酸酸化性水溶液を、当該患者の鼻腔及び/又は喉及び/又は上気道に局所適用することを含み、当該遊離塩素含有量が、≧90%の次亜塩素酸(HClO)、≦10%の塩素(Cl2)、及び≦3%の次亜塩素酸塩(ClO-)を含む、方法を提供する。
【0031】
表皮水疱症(「EB」)の下位実施形態
EBの最新の2008年の分類は、真皮/表皮接合部における切断のレベルによって定義された4つのカテゴリにEBを分類している。参照:Fine JD,Eady RAJ,Bauer EA,et al.The classification of inherited epidermolysis bullosa(EB):report of the Third International Consensus meeting on Diagnosis and Classification of EB.J Am Acad Dermatol 2008;58:931-50。したがって、1つの下位実施形態では、EBを治療するための方法は、単純型表皮水疱症(EBS)を有する患者において実施され、水疱形成が皮膚の上層(表皮)で起こる。別の下位実施形態では、方法は、栄養障害型表皮水疱症(DEB)を有する患者において実施され、水疱形成が、真皮上部の基底膜領域の下で起こる。さらに別の下位実施形態では、方法は、接合部型表皮水疱症(JEB)を有する患者において実施され、水疱形成が、基底膜領域として知られる皮膚の層における表皮と真皮との間の接合部(皮膚の下層)で起こる。さらに別の下位実施形態では、本方法は、乳児期の水疱形成に続いて小児期の水疱症及び光線過敏症を伴う非常に希少な劣性遺伝性障害であるキンドラー症候群(KS)において実施される。(Burch JM,Fassihi H,Jones CA,Mengshol SC,Fitzpatrick JE,McGrath JA(2006)Kindler syndrome:new mutation and new diagnostic possibilities.Arch Dermatol 142(5):620-4を参照されたい)。水疱形成は、皮膚の任意の層で起こり得る。
【0032】
さらに、非遺伝性EBの形態も同様の特徴で存在する。したがって、さらに別の下位実施形態では、方法は、後天性表皮水疱症(EBA)を有する患者において実施され、水疱形成が基底真皮で起こる。それは、基底膜を真皮構造に接続する固定フィブリルの主成分である、VII型コラーゲンを標的とする抗体によって引き起こされる慢性自己免疫である。Kasperkiewicz M,Sadik CD,Bieber K,Ibrahim SM,Manz RA,Schmidt E,Zillikens D,Ludwig RJ.Epidermolysis Bullosa Acquisita:From Pathophysiology to Novel Therapeutic Options.J Invest Dermatol.2016 Jan;136(1):24-33を参照されたい。
【0033】
表現型及び遺伝子型並びに遺伝様式に従って、上記のカテゴリは、さらに様々なサブグループに分類され、そのいくつかは非常に希少なサブエンティティを含む。Laimer M,Prodinger C,Bauer JW Hereditary Epidermolysis Bullosa.J Dtsch Dermatol Ges.2015 Nov;13(11):1125-33。したがって、さらなる下位実施形態において、
・EBS患者は、ケラチン5及び14、プレクチン、α6β4インテグリン、プラコフィリン-1、又はデスプラキンに変異を有する;
・JEB患者は、ラミニン332(ラミニン5)、XVII型コラーゲン、又はα6β4インテグリンに変異を有する;
・DEB患者は、VII型コラーゲンに変異を有する;あるいは、又は
・KS患者は、キンドリン-1に変異を有する。
【0034】
参照:Denyer,J.,Pillay,E.and Clapham,J.Best practice guidelines for skin and wound care in epidermolysis bullosa.International Consensus.Debra.2007 http://www.debra-international.org/clinical-guidelines/complete-eb-guidelines/wound-care.html。
【0035】
別の下位実施形態において、表皮水疱症を治療する方法において、創傷は、皮膚水疱、粘膜水疱、頭皮水疱形成、瘢痕性脱毛症、萎縮性瘢痕、過角化症、粟粒腫、う蝕症、嚥下障害、及び皮膚の痒み又は痛みからなる群から選択される。
【0036】
別の下位実施形態では、表皮水疱症を治療する方法において、創傷は、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される。
【0037】
別の下位実施形態では、表皮水疱症を治療する方法において、創傷は、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択され、当該治療は、当該創傷の閉鎖に必要な時間の低減を含む。
【0038】
別の下位実施形態では、表皮水疱症を治療する方法において、創傷は、創傷面スコア(WBS)を有し、当該投与は、当該WBSを低減する。
【0039】
別の下位実施形態では、表皮水疱症を治療する方法において、患者は、MMP2及びMMP9活性の上昇に罹患しており、当該投与が、当該上昇を低減する。
【0040】
別の下位実施形態では、表皮水疱症を治療する方法において、方法は、局所包帯、塩化アルミニウム、シプロヘプタジン、角質溶解剤(keratolytic)、又は局所軟化剤を当該患者に投与することをさらに含む。褥瘡性潰瘍及び他のタイプの創傷を治療するために一般的に使用される任意の種類の包帯を、本発明の溶液で処理した後、表皮水疱症に罹患した領域に適用することができ、これには生理食塩水ガーゼ、プロテアーゼ調節包帯、コラゲナーゼ軟膏、フォーム包帯、塩基性創傷接触包帯、及びポリビニルピロリドン+酸化亜鉛包帯が含まれる。
【0041】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、方法は、経口若しくは局所用抗生物質又はコルチコステロイド又は皮膚保湿剤を当該患者に投与することをさらに含む。抗生物質は、予防的に、又は活動性感染症に応答して投与できる。
【0042】
さらに別の下位実施形態では、方法は、表皮水疱症に罹患した皮膚に本発明の溶液を投与することによって、表皮水疱症に続発する感染症を予防することをさらに含む。
【0043】
EGFR阻害剤毒性の下位実施形態
様々な下位実施形態は、毒性を引き起こしたEGFR阻害剤に基づいて定義される。したがって、いくつかの下位実施形態では、EGFR阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ)、又はモノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ、ネシツムマブ)からなる群から選択される。他の下位実施形態では、EGFR阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、及びダコミチニブからなる群から選択される。
【0044】
現在、EGFR阻害剤によって誘発される有害皮膚事象の管理のための共有国際治療プロトコルはない。しかしながら、有害事象ガイドライン(CTCAE v5.0)の一般的な用語基準において、国際癌サポーティブケア学会(Multinational Association of Supportive Care in Cancer,MASCC)及び全米総合癌センターネットワーク(National Comprehensive Cancer Network,NCCN)における、いくつかの推奨は、急性症状発現における損傷皮膚病変の薬理学的治療に関して排他的に行われる。
【0045】
したがって、1つの下位実施形態では、EGFR阻害剤誘発性毒性を治療する方法は、局所用防腐剤、局所用及び/又は全身用抗生物質(予防的なもの及び感染症に応答するものの両方)、局所用レチノイド、及び局所用及び/又は全身用ステロイドからなる群から選択される第2の治療と組み合わせて実施される。別の下位実施形態において、患者は、軽度~中程度の臨床的湿疹化に罹患しており、本発明は、局所クリンダマイシン2%又はエリスロマイシン4%から選択されるテトラサイクリン治療と組み合わせて、任意選択で局所用ステロイド、又はミノサイクリン100mg/日若しくはドキシサイクリン100mg/日(経口)から選択される経口治療と組み合わせて実施される。さらに別の下位実施形態では、患者は、強力な痒みの症状に罹患しており、本発明は、セチリジンなどの抗ヒスタミンと組み合わせて実施される。
【0046】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、毒性は、乾燥症、裂溝、掻痒、湿疹、皮膚感染症、痒み、蕁麻疹、毛髪成長異常、及び丘疹膿疱性皮疹からなる群から選択され、当該適用は、当該毒性のうちの1以上を治療する。
【0047】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、毒性は、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を含み、当該投与は、当該WBSを低減する。
【0048】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、投与は、NCI-CTCAE v5.0、FACT-EGFRI-18、DIEHL-24、及びMESTTからなる群から選択されるスケールにおいて、毒性グレードを低減する。
【0049】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、投与は、QALYに対する5D-5L/3L、及び/又はDLQI(皮膚科生活品質指数)、Skindex-16、若しくはFACT-EGFRI-18から選択される追加の状態特異的質問票によって測定される際、当該患者の生活の質を改善する。
【0050】
別の下位実施形態では、EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、皮膚毒性は標的病変であり、当該治療は、当該標的病変のサイズを低減する。
【0051】
EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療する方法に適用可能な別の下位実施形態では、方法は、経口若しくは局所用抗生物質又はコルチコステロイド又は皮膚保湿剤を当該患者に投与することをさらに含む。抗生物質は、予防的に、又は活動性感染症に応答して投与できる。
【0052】
さらに別の下位実施形態では、方法は、毒性に罹患した皮膚に本発明の溶液を投与することによって、EGFR阻害剤誘発性毒性に続発する感染症を予防することをさらに含む。
【0053】
ヘイリー-ヘイリー病の下位実施形態
ヘイリー-ヘイリー病の診断は、徹底的な臨床評価、詳細な患者の病歴、特徴的な所見の識別、及び様々な専門検査に基づいて行われる。したがって、1つの下位実施形態では、ヘイリー-ヘイリー病は、罹患した皮膚組織の外科的除去及び顕微鏡検査(生検)によって診断される。1つの下位実施形態では、生検皮膚は、ケラチン組織の異常な形成(角化)及び細胞間接着の不良(棘融解)を明らかにする。別の下位実施形態では、患者は、診断を確認するために、ATP2C1遺伝子の変異について試験されている。さらに別の下位実施形態では、ヘイリー-ヘイリー患者は、二次的な細菌及び真菌による重複感染を有し、これらは任意選択で植物性又は悪臭を伴うプラークを生じ得る。
【0054】
他の下位実施形態では、本発明の方法は、冷湿布、包帯、コルチコステロイドクリーム、局所用抗生物質、及び全身用抗生物質から選択される療法と組み合わせて実施される。またさらなる下位実施形態は、ボツリヌス毒素及びグリコピロレートを含む汗腺を閉鎖するための療法と組み合わせて実施される。さらなる下位実施形態は、アシトレチン及びエトレチナートなどのビタミンA誘導体(レチノイド)、アレファセプト及びタクロリムスなどの免疫系を抑制する薬物、並びにイオンポンプの働きを向上させるのに役立つ経口塩化マグネシウムと組み合わせて実施される。
【0055】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、局所障害は、皮膚発疹、痒み、灼熱感、皮膚ひび割れ、又は二次感染からなる群から選択される。
【0056】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、局所障害は、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される創傷である。
【0057】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、局所障害は、皮膚及び粘膜の水疱並びに裂傷から選択される創傷であり、当該治療は、創傷閉鎖に必要な時間の低減を含む。
【0058】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、局所障害は、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を含み、当該投与は、当該WBSを低減する。
【0059】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、局所障害は、再発性及び寛解性の皮膚病変を含み、当該適用は、当該病変の発生(outbreak)の長さ又は当該病変の発生(occurrences)間の時間を低減する。
【0060】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、患者は、機能的ATP2C1ケラチノサイト活性の喪失、1以上の皮膚病変における酸化ストレス、NRF2活性の低減、又はTGFβ1及びTGFβ2発現の不均衡、増殖ケラチノサイトの低減に罹患しており、当該方法は、当該状態を治療する。
【0061】
特にヘイリー-ヘイリー病に適用可能な別の下位実施形態では、方法は、冷湿布、局所包帯、コルチコステロイドクリーム、局所用抗生物質、又は全身用抗生物質(予防的なもの及び活動性感染症に応答するものの両方)を当該患者に投与することをさらに含む。
【0062】
褥瘡性潰瘍及び他のタイプの創傷を治療するために一般的に使用される任意の種類の包帯を、本発明の溶液で処理した後、ヘイリー-ヘイリー病に罹患した領域に適用することができ、これには生理食塩水ガーゼ、プロテアーゼ調節包帯、コラゲナーゼ軟膏、フォーム包帯、塩基性創傷接触包帯、及びポリビニルピロリドン+酸化亜鉛包帯が含まれる。
【0063】
さらに別の下位実施形態では、方法は、ヘイリー-ヘイリー病に罹患した皮膚に本発明の溶液を投与することによって、ヘイリー-ヘイリー病に続発する感染症を予防することをさらに含む。
【0064】
ブルーリ潰瘍
特にブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、ブルーリ潰瘍は創傷を特徴とし、当該治療は創傷閉鎖に必要な時間の低減を含む。
【0065】
特にブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、ブルーリ潰瘍は、創傷面スコア(WBS)を有する創傷を特徴とし、当該投与は、当該WBSを低減する。
【0066】
特にブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、ブルーリ潰瘍は、ミコラクトン分泌を特徴とし、当該投与は、当該分泌を低減する。
【0067】
特にブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、ブルーリ潰瘍は、mycobacterium ulceransの細菌負荷を特徴とし、当該投与は、当該細菌負荷を低減する。
【0068】
特にブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、方法は、リファンピシンと、ストレプトマイシン、クラリスロマイシン及びモキシフロキサシンから選択される1以上の抗生物質と、を当該患者に投与することをさらに含む。
【0069】
褥瘡性潰瘍及び他のタイプの創傷を治療するために一般的に使用される任意の種類の包帯を、本発明の溶液で処理した後、ブルーリ潰瘍に罹患した領域に適用することができ、これには生理食塩水ガーゼ、プロテアーゼ調節包帯、コラゲナーゼ軟膏、フォーム包帯、塩基性創傷接触包帯、及びポリビニルピロリドン+酸化亜鉛包帯が含まれる。
【0070】
さらに別の下位実施形態では、方法は、ブルーリ潰瘍に罹患した皮膚に本発明の溶液を投与することによって、ブルーリ潰瘍に続発する感染症を予防することをさらに含む。
【0071】
SARS Cov2の下位実施形態
特にSARS Cov2感染症の治療に適用可能な別の下位実施形態では、鼻腔及び上気道におけるSARS Cov2のウイルス負荷を低減する。
【0072】
特にSARS Cov2感染症の治療に適用可能な別の下位実施形態では、投与は、気管又は肺などの下気道へのSARS Cov2の広がりを低減する。
【0073】
特にSARS Cov2感染症の治療に適用可能な別の下位実施形態では、SARS Cov2感染症及び損傷から鼻腔内嗅覚ニューロンを保護する。
【0074】
SARS Cov2感染症の治療に特に適用可能な別の下位実施形態では、組成物は、投与当たり鼻孔当たり100~1500mcl、250~1000mcl、400~750mcl、又は500mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、投与は、装置の2回以上の作動を含み得る。別の好ましい実施形態では、これらの体積は、1日当たり少なくとも3回、各鼻孔に投与される。
【0075】
SARS Cov2感染症の治療に特に適用可能な特に好ましい実施形態では、溶液は、作動当たり50~1000mcl、作動当たり75~500mcl、又は作動当たり85~300mclを分配する噴霧ポンプから分配される。
【0076】
特にSARS Cov2感染症の治療に適用可能な別の好ましい実施形態では、溶液は、各鼻孔に対して少なくとも3回又は4回投与される。
【0077】
本発明の複数の方法に適用可能な追加の下位実施形態
本発明の方法の全てに適用可能な別の下位実施形態では、患者は、核内因子カッパB(NF-κB)シグナル伝達、Nrf2活性、IL-1活性、顆粒球マクロファージコロニー-刺激因子(GM-CSF)活性、IL-6活性、MMP2、MMP9、TNF-α活性、KGF発現、TGFβ2発現、TGFβ1発現、及びsiATP2C1ケラチノサイト増殖から選択される1以上の生化学的異常に罹患しており、当該投与は、当該生化学的異常のうちの1以上を治療する。
【0078】
本発明の方法の全てに適用可能な別の下位実施形態では、溶液は、ボトルに噴霧ノズルが取り付けられているか否かに関わらず、珀色のガラス瓶を一次包装して保存される。
【0079】
表皮水疱症、EGFR阻害剤誘発性毒性、ヘイリー-ヘイリー病、及びブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与される。
【0080】
別の下位実施形態では、表皮水疱症、EGFR阻害剤誘発性毒性、ヘイリー-ヘイリー病、及びブルーリ潰瘍の治療に適用可能な別の下位実施形態では、組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約50~500mcl、75~400、75~150、150~400mcl、100mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される。
【0081】
表皮水疱症、EGFR阻害剤誘発性毒性、ヘイリー-ヘイリー病、及びブルーリ潰瘍の場合、投与ごとに投与される溶液の総量は、皮膚の病変のサイズ及び病変の重症度に依存する。したがって、限定されることを意図するものではないが、小さな創傷の場合には100若しくは250mclを2若しくは3回の噴霧で、又はより大きな創傷の場合には100若しくは250mclを10~20回の噴霧で適用することができる。溶液は、病変の重症度及び必要とされる洗浄の量に応じて、1日当たり2回、3回、又はそれ以上の回数投与することができる。
【0082】
薬物製品/製剤
薬物製品は、塩化ナトリウム溶液電解プロセスを通して得られた次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性溶液である。このプロセスにより、(i)pH、(ii)酸化還元電位(ORP)、(iii)遊離塩素種、(iv)HClOの純度、(v)塩化物含有量、及び(vi)長期安定性の特性に関して定義される低張溶液が得られる。
【0083】
遊離塩素種(塩素(Cl2)、次亜塩素酸塩(ClO-)及び次亜塩素酸(HClO))の濃度は、pH及び塩化物総含有量の関数であり、水中のガス状塩素の解離平衡を利用することによって操作することができる。
【0084】
【0085】
以下の式に従って、3つの遊離塩素種のパーセンテージを計算することが可能である。
αCl2=[H+]2[Cl-]/([H+}2[Cl-]+[H+]Ka1+Ka1 Ka2)
αHClO=[H+]Ka1/([H+}2[Cl-]+[H+]Ka1+Ka1 Ka2)
αClO-=Ka1 Ka2/(H+}2[Cl-]+[H+]Ka1+Ka1 Ka2)
【0086】
%で表される結果の場合、上記の式に100を掛ける必要がある。上記のイオン濃度([H+]及び[Cl-])は、モル濃度として表される。
【0087】
遊離塩素含有量は、20~400mg/l(ppm)の範囲であり得るが、好ましくは20~200mg/l(ppm)又は20~140mg/l(ppm)の範囲である。また、pH、ORP、HClOの純度、及び低張度(低塩化物含有量)に関して生成物の特性を保証するため、40~100ppmの遊離塩素範囲も好ましい。本発明の組成物は、常に酸性pHを有し、低張性であり、優勢な遊離塩素種として次亜塩素酸を含有する。さらに、組成物は、単独で又は組み合わせて、以下の特性のうちのいずれかによって定義することができる:
・20~400mg/l、20~200mg/l、20~140mg/l、40~100mg/l、40~70mg/l、又は70~100mg/lの遊離塩素含有量、
・500mg/l未満、400mg/l未満、300mg/l未満、又は200mg/l未満、及び好ましくは20又は50mg/lを超える塩化物含有量と、
・5mg/l未満、2mg/l、0.5mg/l、又は0.1mg/l未満のClO-濃度、
・2~6、5、4若しくは3、又は2.5~6、5、4若しくは3のpHと、
・850~1350mV又は1000~1300mVの酸化還元電位(ORP)、並びに/あるいは
・≧90%のHClO及び≦10%のCl2、又は≧95%のHClO、<5%%のClO-及び≦5%のCl2を含む遊離塩素含有量。
【0088】
したがって、1つの下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、20mg/lを超える遊離塩素含有量を含む低張水溶液である。あるいは、遊離塩素含有量は、20mg/l~400mg/l、20mg/l~250mg/l、又は20~140mg/lの範囲であり得る。
【0089】
別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、400mg/l未満の塩化物含有量を含む低張水溶液である。
【0090】
さらに別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、400mg/l未満の塩化物含有量及び20~140mg/lの遊離塩素含有量を含む、2.5~6のpHでの低張水溶液である。
【0091】
さらに別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、400mg/l未満の塩化物含有量及び20~400mg/lの遊離塩素含有量を含む、2.5~6のpHでの低張水溶液であり、遊離塩素は、≧90%のHClO、≦10%のCl2、及び5%未満のClO-濃度を含む。
【0092】
さらに別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、400mg/l未満の塩化物含有量、20~400mg/lの遊離塩素含有量、及び850~1350mVの酸化還元電位(ORP)を含む、2.5~6のpHでの低張水溶液であり、遊離塩素は、≧90%のHClO、≦10%のCl2、及び5%未満のClO-濃度を含む。
【0093】
別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、(a)200mg/l未満の塩化物含有量と、(b)2.5~3のpHと、(c)1000~1300mVの酸化還元電位(ORP)と、(d)≧95%のHClO、≦5%のCl2、及び<2%若しくは0.5%のClO-又は0%のClO-を含む、40~100mg/lの遊離塩素含有量と、を含む低張水溶液である。
【0094】
別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、2.5~4.5のpH、≦300mg/lの塩化物含有量、及び850~1350mVの酸化還元電位(ORP)を含む低張水溶液である。
【0095】
別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、(a)250mg/l未満の塩化物含有量と、(b)2.5~4のpHと、(c)850~1350mVの酸化還元電位(ORP)と、(d)≧92.5%のHClO、≦7.5%のCl2、及び<1%若しくは0%のClO-を含む、25~120mg/lの遊離塩素含有量と、を含む低張水溶液である。
【0096】
別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、(a)200mg/l未満の塩化物含有量と、(b)2.5~3のpHと、(c)1000~1300mVの酸化還元電位(ORP)と、(d)≧95%のHClO、≦5%のCl2、及び<0.1%若しくは0%のClO-を含む、40~100mg/lの遊離塩素含有量と、を含む低張水溶液である。
【0097】
本発明の溶液は、好ましくは、100~500マイクロリットル/吹き、好ましくは約250マイクロリットル/吹きをどこかに分配する噴霧ポンプを備えた噴霧ボトルで供給される。治療方法では、溶液は、好ましくは1日2回又は3回適用される。
【0098】
したがって、さらに別の下位実施形態では、薬学的に許容される組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約250マイクロリットルの噴霧として投与される低張水溶液である。
【0099】
投与方法/作用機構
一実施形態では、溶液は、機械的クレンジング機能を有する。したがって、1つの特定の実施形態では、本方法は、罹患した皮膚に有効量の溶液を投与して、罹患した皮膚を通って流れ、生物学的及び不活性材料を除去して実施される。
【0100】
驚くべきことに、この洗浄は、罹患した皮膚に水を流したり、罹患した皮膚を布又はティッシュで乾燥させたり、あるいは罹患した皮膚を創面切除したりするなど、従来の意味で皮膚を洗うことなく行われることが分かっている。むしろ、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、溶液が皮膚と協調して作用することにより、生物学的で不活性な物質が皮膚の表面に押しつけられ、皮膚表面下での治癒プロセス妨害することができなくなると考えられている。
【0101】
したがって、いくつかの実施形態では、溶液が治癒及び再生を促進するのに十分な期間皮膚を湿らせることができるように、溶液を皮膚上に保持することが重要である。したがって、さらに別の実施形態では、本発明の方法は、生理学的治癒を維持及び促進するのに有効な期間、溶液の湿潤層を皮膚上に保持することをさらに含む。他の実施形態では、投与は、罹患した皮膚上に溶液の湿潤層を形成し、機械的介入を伴わずに周囲条件下で溶液を蒸発させることをさらに含む。
【0102】
別の下位実施形態では、組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約150~400mcl、200~300mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与される。
【0103】
さらに別の下位実施形態では、組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約150~400mcl、200~300mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥される。
【0104】
別の下位実施形態では、組成物は、ポンプ型噴霧装置から、作動当たり約150~400mcl、200~300mcl、又は250mclの噴霧として身体上の罹患した局所表面に投与され、物理的介入を伴わずに空気乾燥され、その後、二次治療の局所投与が行われる。
【0105】
さらに別の下位実施形態では、組成物は、投与当たり100~1000mclの体積で噴霧型装置から鼻内噴霧として投与され、投与は、装置の2回以上の作動を含み得る。
【0106】
別の実施形態では、本発明の方法は、罹患した皮膚をたっぷりと覆うために溶液を局所的に投与し、溶液を乾燥させ、投与を繰り返すことを含む。好ましい実施形態では、本発明の方法は、1日当たり1回又は2回繰り返される。
【0107】
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、保湿クリーム、ローション、ゲル、又は軟膏を、罹患した皮膚に局所適用することをさらに含む。
【実施例】
【0108】
以下の実施例では、数(例えば、量、温度など)に関する精度を確保するための努力がなされているが、いくらかの誤差及び偏差を考慮するべきである。以下の実施例は、本明細書において特許請求される方法がどのように作製され評価されるかについての完全な開示及び説明を用いて当業者に提供され、本発明を純粋に例示するものであることが意図されており、本発明者らが発明としてみなす範囲を限定することを意図するものではない。
【0109】
実施例1.本発明のHCLO溶液の説明
生成物は、塩化ナトリウム溶液電解プロセスを通して得られた次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸性酸化性溶液である。このプロセスにより、(i)pH、(ii)酸化還元電位(ORP)、(iii)遊離塩素種、及び(iv)長期安定性の特性を有するHClOの純度に関して定義される低張溶液が得られる。生成物を生成するための方法は、WO/2008/131936及びWO/2007/048772に記載されており、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸性酸化性溶液の仕様を以下の表1に示す。
【0111】
【0112】
表2は、表1に記載の仕様を満たす特定のバッチについての試験結果を示す。
【0113】
【0114】
次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸性酸化性溶液は、琥珀色のガラス瓶に入れ、約100又は250μl/吹きを分配する噴霧ポンプを備えることができる。ICH(調和国際会議)。安定性はいくつかのバッチに対して行われ、生成されたデータに基づき、5℃~25℃に保存された場合、割り当てられた貯蔵寿命は24ヶ月である。
【0115】
実施例2.使用説明
実施例1の生成物を含む、本発明の溶液を使用するための好適な説明を以下に示す。
【0116】
作用機序
投与後に病変上に残った湿潤層は、溶液の3つの特徴(高純度HClO、pH<3.0、及びORP>1000mV)により、生理学的治癒プロセスを維持するのに理想的な微小環境が作製されたことを説明する。
【0117】
溶液は次亜塩素酸(HClO)を含有し、この次亜塩素酸(HClO)は、溶液内の微生物の成長を阻害することによって抗微生物剤及び防腐剤として作用し、病変表面上で局所的かつ補助的な抗微生物効果を発揮することによって汚染を防止する。
【0118】
中性電荷を特徴とするHClOは、負に帯電した細菌膜に非常に効率的に浸透し、そこで抗菌作用を発揮する。
【0119】
pH<3.0は、細菌成長に好ましくない環境を作製することによって細菌成長に影響を及ぼす。さらに、酸環境は、ボーア効果によって組織酸素化を促進し、細菌異化作用のアンモニア副生物による健康な細胞への浸透を阻害する。
【0120】
高ORPは、微生物の細胞膜を物理的に損傷し、それらの防御機構を不活性化する。
【0121】
低pH及び高ORPの組み合わせは、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の阻害において役割を有する。MMP活性の上昇は、治癒プロセスに重要なコラーゲンマトリックスの分解によって、創傷治癒の遅延を引き起こす。MMP活性の阻害は、生理学的治癒プロセスの再開に寄与し得る。
【0122】
使用方向
徴候の発症時に溶液を適用する。この溶液は、混合又は希釈を必要とせずにすぐに使用できる。
【0123】
罹患領域に直接溶液を適用する。
-キャップを緩めてボトルを開ける。
-噴霧キャップが入っているプラスチックの小袋を、上側を切って開ける。
-噴霧キャップを小袋から取り出し、ストローに触れないように注意しながらキャップから取り出す。
-ストローをボトルに挿入する。
-ボトルネック上に噴霧キャップをねじ込む。
-生成物を初めて使用する前に、噴霧(nebulized)溶液が見えるまで、空気中に噴霧してポンプを始動する。
-罹患した領域をたっぷりと覆うために、溶液を噴霧することによって損傷領域上に溶液を直接適用し、乾燥させ、適用を繰り返す。
-1日1回又は2回治療を適用する。
-設置後に噴霧キャップを緩めないこと。噴霧キャップの設置後に、スクリューキャップをボトルに再び適用しないこと。
-使用直後にオーバーキャップで閉じる。
-最初の開封後30日以内に装置を使用する。
【0124】
治療投与のために、患者がメイクアップ又は別の局所包帯を使用する場合、その適用後に生成物を少なくとも2分間乾燥させた後にのみ、そうするべきである。患者が剃毛する必要がある場合、生成物を適用する前に、そうするべきである。
【0125】
実施例3.表皮水疱症への特定の適用を伴う、抗炎症特性及び組織再生特性の評価
実施例1の仕様を満たす次亜塩素酸(HClO)(この表示ではAPR TD-011と呼ばれる)を含有する低張性酸性酸化性溶液の役割を、FT-SKINのインビトロ創傷治癒モデルにおいて評価して、その作用機序を定義し、損傷後処理の4時間及び24時間後の表皮及び真皮レベルでの組織再生特性を転写試験(qRT-PCR)で評価している。
【0126】
方法:
試験システム:
創傷治癒の実験的インビトロモデルは、表皮及び真皮区画の両方を含む再現可能な機械的損傷を誘発し、治癒プロセスの様々な段階を模倣することにより、「全厚皮膚モデル」(FT皮膚)上で開発されている。
【0127】
Phenion(登録商標)全厚皮膚モデルは、Henkel(ドイツ、デュッセルドルフ、直径1.3cm)によって製造されている。このモデルでは、表皮ケラチノサイト及び真皮線維芽細胞(健康なドナーの生検材料に由来)は、培養条件下でヒトの皮膚に似た多層皮膚を形成する。簡潔には、線維芽細胞は、線維芽細胞牽引力下で収縮しない特殊な安定したマトリックスにおいて成長させる。この真皮等価物の発生後、ケラチノサイトを重ね合わせ、数日以内に、明確に認識可能な層で表皮を発達させる。表皮及び真皮は、生理学的に機能的なユニットを形成し、ヒトの皮膚と同様、表皮は、様々な分化マーカー(サイトケラチン10、フィラググリン、トランスグルタミナーゼ、及びインボルクリン)を生成する。表皮-真皮接合部は、基底膜タンパク質(ラミニン及びコラーゲンIV)を特徴とする。皮膚区画では、エラスチン及びフィブロネクチンのデノボ合成が実証されている。基底膜の増殖細胞は、Ki-67染色によって識別される。モデルは、5週間の培養期間後に完全に開発される。
【0128】
この実験における損傷を、直径2mmの生検パンチでシミュレートした。真皮及び表皮の両方の区画に到達する4つの対称性損傷が誘発されている。
【0129】
試験生成物を、50μLの総体積で各創傷に適用した。
【0130】
リアルタイムPCR:
RNA抽出、cDNA逆転写(Retrotranscription)、及びリアルタイムPCR:
急速なフェノールを含まないフィルタベースのRNA単離系を使用して、細胞試料から全RNAを抽出した。高容量cDNA逆転写キットを使用して、RNAからcDNAを合成した。TaqManアッセイを実施する蛍光ベースのPCR化学を備えた機器Applied Biosystems 7500 Fast Real Time PCRを使用して、重要なバイオマーカーの遺伝子発現を研究した。
【0131】
遺伝子発現は、DNA配列などの遺伝子における遺伝性情報が、タンパク質又はRNAなどの機能的遺伝子産物に作製されるプロセスである。相対的定量により、キャリブレータ試料中の同じ配列と比較した試験試料中の核酸配列の発現の変化が判定される。GAPDHを内因性対照遺伝子として使用して、入力量を正規化した。
【0132】
各複製を3回評価した。2X TaqMan Fast Universal PCR Master Mixにおいて、Taqman遺伝子発現アッセイ及びcDNA(25ng)を総体積で20μL加えた。ABI PRISM 7500 Fastにおける熱条件ステップは、95℃で20秒、40サイクル(95℃で3秒+60℃で30秒)である。
【0133】
以下の遺伝子を分析した。
4時間:NRF-2、HO-1、GPX、GSR、GST、KGF、TGFβ2、TGFβ3、Nf-kb、VEGF-C、PDGF
24時間:IL-1α、TNF-α、Nf-kB、Nrf2、KGF eTGFβ2 eβ3、VEGF-C、PDGF
【0134】
初期の時点では、初期炎症期と共に、生成物の抗酸化作用機序の評価が可能である。24時間の時点では、血管の増殖及び安定化に関与する成長因子の発現を誘発する、組織回復の最初の兆候を考慮に入れた、再上皮化の重複、増殖期を伴う創傷治癒の後期炎症期の評価が可能である。
【0135】
生成物の有効性を損傷組織と比較して、損傷状況の回復を評価する。オレンジ色のボックスは、遺伝子の有意な過剰発現に対応し、緑色のボックスは、陰性対照(CN)(損傷しておらず、処理されていない)と、損傷しているが処理されていない(INJ)の両方に関する遺伝子発現の有意な下方制御に対応する。比較を表3の2つの列に示す。特に、表3は、APR TD011のリアルタイムPCR結果を報告している(損傷しており、APR TD011で処理されている)。全ての遺伝子を、損傷から4時間及び24時間後に分析した。
A)全ての試料のキャリブレータ試料は、陰性対照(処理されておらず、損傷していない組織(CN))である。
B)全ての試料のキャリブレータ試料は、損傷対照(損傷しており、処理されていない(INJ))。
【0136】
【0137】
結果の考察
抗炎症特性
得られた結果に基づいて、APR TD011が、分子レベルで、NF-kBの低発現とIL-1及びTNF-αの有意な下方制御に基づいて、24時間後に炎症反応を調節すると結論付けることができる。
【0138】
4時間の時点で、APR TD011は、損傷対照に対するGSR及びGSTA1の増加と、陰性対照に対するNRF2の増加とを実証し、これは、APR TD011が、ケロイド瘢痕に対する組織応答をシフトすることが知られているTGFβ-2シグナル伝達を伴わずに、生理学的方法で炎症性組織応答を調節するという結論を裏付けていた。
【0139】
NF-kBの発現がより低く、IL-1α、TNF-αが(損傷組織と比較して)有意に下方制御されていることから、APR TD011の抗炎症活性が確認され、これはEB患者の皮膚創傷に潜在的に良好であった。
【0140】
組織再生特性
哺乳動物に存在するTGFβの3つのアイソフォームは、ほとんどのインビトロアッセイにおいて同様の生物学的活性を示す。しかしながら、インビボ効力及びいくつかの生物学的活性の点で差異がある。TGFβ-1、TGFβ-2及びTGFβ-3間の相対バランスは、創傷治癒プロセスの結果を判定する。皮膚の瘢痕化(線維性修復応答)にはTGFβ-1及びTGFβ-2が関与しており、瘢痕化(再生応答)の予防にはTGFβ-3が関与している。
【0141】
TGFβ-3は、過剰増殖性上皮において最も豊富なTGFβアイソフォームであり、したがって、ケラチノサイトの増殖及び分化において重要な役割を果たす可能性がある。酸性条件下(pH<3.8)では、タンパク質がおそらく凝集せず、このモノマー形態が単独で創傷を加速させることができ、線維性障害の予防及び/又は治療に使用可能であることを強調することが重要である。
【0142】
以下の結果に基づいて、分子レベルで、APR TD011が、4時間及び24時間後にEBにおける組織再生にプラスの影響を及ぼすと結論付けることが可能である。その理由は、以下のとおりである。
(1)4時間及び24時間の両方でKGFの発現を有意に増加させる。KGFは、表皮創傷治癒において重要な役割を果たすことが知られている。線維芽細胞によるその生成は、インターロイキン-1の存在によって上方制御される。ケラチノサイトの増殖は、KGFの存在によって上方制御される。KGFの増加が大きくなるにつれ、より厚い新表皮(neoepidermis)の発生を誘発する。
(2)損傷対照と比較して、24時間でのTGFβ-2の発現が低いと、ケロイド瘢痕のリスクを低減する(TGFβ-2シグナル伝達は、ケロイド瘢痕に対する組織応答をシフトすることが知られている)。
(3)TGF-β3のモノマー形態は、上皮損傷の部位で上皮再生を促進して、(陰性対照と比較して)KGF遺伝子発現を増加させることができ、これは、再上皮化作用を明らかにする。
【0143】
TGF-β3は主に、以下の2つの主要な形態で存在する:
・低pHの溶液中のモノマー、及び
・生理学的pHでの大きな沈殿凝集体。
【0144】
凝集は、4.3<pH<9.8のpH範囲で顕著であり、pH6.5~8.5で最大であった。APR TD011によって誘発される酸性条件下で(pH<3.8)、タンパク質は凝集しなかった。その低pHを有するAPR TD011は、上皮再生の促進並びに線維性障害の予防及び/又は治療における、創傷治癒及び/又は瘢痕化の阻害の加速に有用であり得るTGF-β3のモノマー形態を維持するようである。
【0145】
図1に示され、以下の表4で考察されるように、4時間及び24時間後の組織の組織学的分析により、APR TD011(「ANW」)の最適な組織再生特性が確認された。4時間のAPR TD011処理後、組織の形態は、損傷組織と比較して著しく保存されており、マトリックスの完全性が十分に保存されており、死細胞の数が少ないように見え、これは組織の完全性の早期保護/回復を示唆していた。
【0146】
【0147】
EBを有する二人の患者、及びEBに由来する皮膚の開放病変を、実施例1に記載の溶液で処理した。患者に、実施例2に従って溶液を適用するように指示した。数週間の処理後、各患者は、慢性創傷サイズの低減、病変周囲の炎症徴候の改善(生理学的治癒プロセスが開始したという指標)、及び掻痒の低減(全て患者の観点から価値ある側面)によって示されるような改善を報告した。
【0148】
図2は、重度の一般化RDEBを有する24歳の患者における治療結果を示す。
図2(A)は、0週目(A-1;病変周囲の炎症と落屑、痂皮、滲出液)及び6週目(A-2;創傷洗浄剤、病変周囲の炎症徴候が最小限で、より小さくかつより表面的)の胸部創傷の比較である。
図2(B)は、2週間以内でのサイズの低減及びより少ない病変周囲の落屑を示す右肩甲骨上の創傷の写真である。
図2(C)は、0週目(C-1)から8週目(C-2)までの間に改善された、赤み、痂皮及び鱗屑を含む左軸索の炎症徴候を示す。
【0149】
図3は、生成物で処理したJEB患者の2歳の慢性創傷の下肢の写真である。写真3(A)は、いくつかの異なる処理後に創傷が依然として解決されていないことを示す。写真3(B)は、4週間の処理後の創傷の強い改善を示す。
【0150】
実施例4.EGFR阻害剤誘発性皮膚毒性を治療するための生成物及びその能力の評価
実施例1で報告された仕様を満たす、次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性水の役割(この表示ではAPR TM-011と呼ばれる)を、セツキシマブ治療下の患者において臨床試験で評価している。
【0151】
方法:
セツキシマブをベースとする投薬計画の患者の間で証拠を収集した。各患者は、次のように編成された外来診療を、3ヶ月以内に3回受けた。
-初期診療
-中間診療
-最終診療。
【0152】
中間診療は、患者の健康状態に応じて、15/30日の間隔で初期及び最終診療からスケジュールした。評価形態は、最初の診療時に臨床医によって記入され、その後の2回の診療で更新された。患者に対する最初の診療時に、以下の治療スキームに従って毎日の治療を示した。
-朝:ベースクリームによる水分補給
-昼:顔、胸及び背中に次亜塩素酸を含有する低張性酸溶液を数回吹いて(puffs)分配
-晩:ベースクリームによる水分補給
【0153】
臨床医による評価形態は、評価に焦点を当てた9項目:以前の治療、次亜塩素酸を含有する低張性酸溶液による治療、在宅治療、アジュバント治療、創傷のタイプ、病変の評価(センチメートル単位での幅及び長さ)、病変周囲皮膚、生活の質の評価、並びに評価の一時中止で構成された。
【0154】
病変周囲皮膚の臨床的外観は、紅斑、浸軟、乾燥症、焼灼感(burning)、痒み、及び炎症の状態によって調査し、その重症度レベルを示した:軽度、中程度、又は重度。創傷面の特徴及び進化を、修正した創傷面スコア(WBS)によって検出した。調査したパラメータは次のとおりであった。活性端(active edge)、黒痂皮、肉芽組織(granulation)の深さ/組織、滲出液量、浮腫量、病変周囲皮膚、皮膚毒性/湿疹、胼胝/線維症、バラ色の創傷面、現在の治療前の潰瘍持続時間。各パラメータには、0~2の範囲であり得るスコアが割り当てられた。全てのスコアの合計は、合計スコアを定義し、これは、0(最小又は最悪スコア)から18(最大又は最良スコア)までの間の値をとり得る。
【0155】
生活の質をQoL-EQ5Dによって評価した。調査した健康状態の一般的な領域は次のとおりであった:移動性、パーソナルケア、通常の活動、不快感/疼痛、不安、及びうつ病。前述の領域の各々の条件は、以下の状態のうちの1つを特徴とすることができる:問題がない、何らかの問題がある、又は重大な問題がある。
【0156】
最後に、患者の現在の状態の知覚は、0(悪い健康状態に等しい)から100(より良い健康)までの値の範囲を特徴とする数値スケールを使用して測定した。治療の安全性は、以下のような症状発現の有無に基づいて評価した:不耐性、創傷感染、又は有害事象。回答方法は、7項目については多肢選択式、2項目についてはオープンであった。
【0157】
結果:
最初の化学療法治療の後に、ざ瘡様のセツキシマブ病変を示した、平均年齢60歳の10人の男性及び5人の女性からなる15人の患者に対して観察を行った。
【0158】
病変は、胸部、腕及び顔に位置していた。治療開始時:
病変評価-測定した病変は、異なるサイズを有していた。幅及び長さは、センチメートル単位で測定した。15人の患者において、測定した幅は5cm~22cmの範囲であり、長さは10cm~40cmの範囲であった。最小の損傷領域を有する患者の病変は、5cm×10cmのサイズであり、最大の損傷領域を有する患者の病変は、22cm×40cmであった。
【0159】
病変周囲皮膚-全ての患者の病変周囲皮膚は、主に痒み及び炎症を示した。掻痒は、患者の60%が中程度、40%が軽度であった。中程度の炎症が患者の60%に存在し、軽度の炎症が40%に存在した。患者の6.7%において、皮膚はわずかな焼灼感を示した。
【0160】
WBSスコア(修正)-患者の40%において、総WBSスコアは、14に等しかった。患者の33.3%において、総WBSスコアは、15であった。患者の26.7%において、総WBSスコアは16であった。
【0161】
生活の質-QoL-EQ5Dを使用して生活の質を評価した。重大な問題は、患者の46.7%では不快感/疼痛であり、一方、患者の33.3%は、通常の活動の実施に困難を示した。
【0162】
全ての患者は、何らかの不安及びうつ病に罹患していると報告した。86.7%がパーソナルケアにおいて何らかの困難を示し、46.7%が通常の活動において何らかの困難を示し、20%が不快感及び疼痛の状態を経験した。
【0163】
患者のいずれも、移動性の問題を経験しなかった。さらに、患者の33.3%では不快感及び疼痛の問題は明言されず、患者の20%では通常の活動の問題は明言されず、患者の13.3%ではパーソナルケアの問題は明言されなかった。
【0164】
合計100のうち、今日の発現状態の評価は、患者の20%が40、患者の40%がそれぞれ50及び60であった。
【0165】
治療終了時:
病変評価-全ての患者において、病変面積の低減が検出された。患者の93.3%では面積が90%以上低減し、1人の患者では88.9%の低減が見られた(表5)。
【0166】
病変周囲皮膚-いずれの患者も、病変周囲皮膚上の症状の病理学的発現を報告しなかった。
【0167】
WBSスコア(修正)-全ての患者のWBSスコアは18であった。(表6)
【0168】
生活の質-全ての患者は、不安及びうつ病を除くいかなる問題にも罹患していないことを報告した。(表7)
【0169】
全ての患者について、治療終了時の今日の状態の評価は80であった。さらに、全ての患者は、いずれの時にも不耐性の現象を経験することなく、次亜塩素酸を含有する低張性酸溶液に基づく治療を完了することができた。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
結論:
次亜塩素酸を含有する低張性酸化性酸溶液をセツキシマブ皮膚病変に適用することにより、化学療法治療に対する患者の応答が改善される。病変は、寸法だけでなく、特徴及び相関する症状においても漸進的に改善される。病変は、限局性のままであり、サイズが低減する。病変周囲皮膚は、無傷のままであり、また、痒み及び炎症の事象を低減する。
【0174】
疾患の主要な状態に関連する不安及びうつ病以外にも、自身の身体イメージの知覚を悪化させない皮膚状況の制御及び忍容性が、社会的レベルでより良好な生活の質につながることも明らかである。治療終了時に、「今日の健康状態」を示すパラメータは、全ての患者で80/100であった。得られた良好な結果は、生成物が、抗癌療法の第1、第2のサイクルで通常現れる皮膚症状の最初の発症時に使用されるべきであるという事実の確認である。
【0175】
実施例5.ヘイリー-ヘイリー病への特定の適用を伴う、酸化防止特性の及び組織再生特性の評価
実施例1で報告された仕様を満たす次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性水の役割(この表示ではAPR TD-012と呼ばれる)を、HHDにおいてAPR TD012によって調節される分子経路のより良い理解を得るために、インビトロモデルで評価している。HaCaTケラチノサイト由来細胞株は、HHD患者で発生する遺伝子発現のノックダウン(siATP2C1細胞と呼ばれる)を得るために、ヒトATP2C1に対して検証された低分子干渉RNA(siRNA)でトランスフェクトされている。
【0176】
方法:
細胞培養:
HaCaTケラチノサイト由来細胞株を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、5% L-グルタミン、2%ペニシリン、及びストレプトマイシンを含むDMEM培地内で、37℃で5% CO2を用いて成長させた。
【0177】
細胞培養及びトランスフェクション:
HaCaT細胞(70~80%コンフルエント)を改変低カルシウム培地内に維持し、検証済みのヒトATP2C1(L-006119-00;Thermo Scientific/Dharmacon、米国コロラド州ラファイエット)用の100nmol L-1低分子干渉RNA(siRNA)及び対応する対照スクランブルsiRNAを含むLipofectamine RNAiMAXトランスフェクション試薬を、製造元の指示(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州)に従って使用してトランスフェクトした。
【0178】
細胞生存率アッセイ:
HaCaT細胞(siCTR及びsiATP2C1)をコラーゲン処理皿内で培養し、2回目の継代で[3H]チミジンアッセイに使用した。細胞を、RNAiMAX試薬(Invitrogen)によって100nmのsiATP2C1又はsi-CTR(Ambion)のいずれかで24時間トランスフェクトし、100μMのAPR-TD012で処理した。対照試料として、細胞を等量のビヒクル(H2O)で処理した。細胞生存率を、MTSベースのアッセイCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(G 3580;Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を使用してアッセイした。吸光度は、GloMax Multidetection System(Promega)を使用して、490nmで測定した。測定は、技術に3回実行した。図は、少なくとも2つの生物学的複製の平均±SEMを示す。
【0179】
ウエスタンブロットアッセイ:
細胞を、Tris HCl 20mM(pH7.5)、NaCl 150mM、EDTA 1mM(pH8)、Triton 1%、NaF 30mM、Na3VO4 1mM、PMFS 1mM、及びプロテアーゼ阻害剤(Cocktail-Roche)中で溶解し、試料を13000rpmで15分間遠心分離し、上清を回収した。定量は、Bradfordアッセイ(Bio-Rad)で行った。溶解物を95℃で変性させ、8%アクリルアミドゲル上のSDS-PAGEを通して分離した。PVDF膜に移した後、標準的な手順を使用してタンパク質を免疫ブロットした。以下の試薬は、Santa Cruz Biotechnology(米国カリフォルニア州サンタクルス)から購入した:チューブリン。NRF2(Abcam、英国ケンブリッジ)。
【0180】
RNA分析及び逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応:
全RNAを、グアニジンイソチオシアネート(Trizol試薬、Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州)中で細胞から単離し、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってさらに処理した。各試料をqRT-PCRによって3回分析し、少なくとも2つの独立した実験で分析した。qRT-PCRを、以下に示されるプライマー:SensiFAST SyBr Hi-ROXキット(Bioline、英国)を用いて、又はTaqman遺伝子発現アッセイ(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州)を使用した特定のTaqMan MGBプライマー/プローブを用いて、適切なアニーリング温度で実行した。
【0181】
統計分析:
各実験を、少なくとも2回独立して繰り返した。全ての結果は、平均SDとして表し、有意性にはP<0.05を使用した。独立した試料の一元配置分散分析を使用して、統計的有意性を判定した。
【0182】
結果:
APR TD012によるsiATP2C1細胞の処理は、APR TD012が、酸化ストレスに応答して重要な役割を果たす転写因子Nrf2の発現を回復することができることを実証する(Kensler et al.,2007;Moi et al.,1994;Zhang,2006)。APR TD012は、異なる方法でサイトカインTGFベータ1及び2を調節することができ、APR TD012は、siATP2C1ケラチノサイトの増殖可能性を回復することができる。一緒に、これらの結果は、APR TD012が病理学用モデルであるsiATP2C1ケラチノサイトで観察された欠陥のうちのいくつかを元に戻すことによってケラチノサイトに直接作用できることを示している。
【0183】
Nrf2タンパク質発現:
NRF2の発現は、siATP2C1ケラチノサイト(Cialfi et al,2016)で減少したことが以前に観察されている。ATP2C1損失はDNA損傷応答阻害をもたらす機構を誘発するため、この事象はHHD発症において重要な役割を果たし得る。NFR2下方調節の結果としてROSレベルが増加することにより、ケラチノサイトが修復することができない閾値までDNA損傷が生じ、次いで病変の発現が促進される。このインビトロモデルでは、Nrf2タンパク質発現レベルは、ビヒクルで処理したsiATP2C1細胞におけるよりも、APR TD012で処理したsiATP2C1細胞において有意に高かった(
図4)。これらのデータは、APR TD012がNrf2経路を活性化することによって抗酸化防止応答を促進することを示唆している。HaCaT細胞、ケラチノサイト由来細胞株に、siRNA-CTR又はsiRNA ATP2C1のいずれかをトランスフェクトし、24時間後、APR TD012又はH2Oのいずれかでさらに24時間処理した。HaCaT細胞におけるNRF2発現の密度測定分析。2つの独立した実験の平均±標準誤差を示す。
【0184】
TGFB2及びTGFB1のmRNAレベル:
HHD病変は、調節解除されたサイトカイン発現及び低減された修復特性を特徴とする(Cialfi et al,2016)。ATP2C1欠損ケラチノサイトにおいて変化したサイトカインTGFB1及びTGFB2の発現レベルを分析した。siATP2C1細胞において、TGFB2及びTGFB1のmRNAレベルは、対照であるsiCTR対照細胞のmRNAレベルよりも有意に高かった。
図5は、ATP2C1欠損ケラチノサイトにおけるサイトカインに対するAPR TD012溶液の効果を示す。TGFB-1及びTGFB2は、q-RT-PCRアッセイを定量した。データは、3回実行した2つの独立した実験の平均±SDとして表す。
【0185】
ビヒクルとAPR TD012処理細胞との間でTGFB1及びTGFB2レベルの有意差が観察された。特定のTGFB1発現は、siCTR細胞と比較してsiATP2C1細胞で上方制御された。APR TD012で処理したsiATP2C1細胞では、TGBF1発現の有意な上方制御が観察された。
【0186】
TGFB2サイトカインのレベルは、対照細胞のものよりもsiATP2C1処理細胞において有意に高かった。TGFB2発現レベルの発現の減少が、APR TD012で処理したsiATP2C1細胞で観察された。これらのデータは、APR TD012がHHD-ケラチノサイト中のいくつかのサイトカインのパターンに影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
【0187】
siATP2C1で処理したHaCaT細胞の増殖:
siATP2C1細胞は、siCTR処理細胞と比較して増殖が低減していることが既に実証されており、この実験でも確認されている。APR TD012でsiATP2C1細胞を処理することにより、siATP2C1で処理したHaCaT細胞の増殖不良を救済した。
図6は、APR TD012処理細胞の増殖率の分析を示す。HaCaT細胞、ケラチノサイト由来細胞株に、siRNA-CTR又はsiRNAATP2C1のいずれかをトランスフェクトし、24時間後、APR TD012又はH2Oのいずれかでさらに24時間処理した。細胞数を、トランスフェクションの48時間後にMTSアッセイによって分析した。3回行った2つの独立した実験の平均±標準誤差を示す。
【0188】
実施例6.ブルーリ潰瘍への特定の適用を伴うMycobacterium ulceransに対する活性の試験
実施例1に報告されている仕様を満たす、2つの異なる濃度で次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性水の役割(この表示ではAPR TD-013と呼ばれる)を、ブルーリ潰瘍の病因に関与する活性細菌であるMycobacterium ulceransに対するそれらの活性を評価するためのインビトロモデルにおいて評価している。
【0189】
代謝活性試験
第1のステップでは、試験溶液(溶液1と命名された、40~70ppmの遊離塩素含有量を有する溶液、及び溶液2と命名された、70~100ppmの遊離塩素含有量を有する第2の溶液)が、多くの抗菌処理に耐性のあるM.ulceransに対して活性を有するか否かを分析するために、レザズリンアッセイを採用した。培養細菌(新たに単離されたアフリカ参照株S1013;OD0.3;対数期)を試験溶液に曝露した。0.1mlの細菌培養物を1.9mlの試験溶液と混合し、様々な時間インキュベートした。混合物をすぐにボルテックスし、チューブを1分、4分、9分、19分、又は29分間放置した。時間が経過した後、細菌を遠心分離(13,300×gで1分間)にペレット化し、上清を除去した。ペレットを直ちに0.2mlの7H9培地に再懸濁した。この懸濁液を、レザズリンアッセイ用の接種材料として使用した。
【0190】
代謝活性アッセイについて、20μlのレザズリンを細菌懸濁液に添加し、30℃で72時間インキュベートした。蛍光を測定し、含まれる対照を使用して代謝活性を計算した。上記の全てのプロセスを2回行い、以下に示す結果は両方の複製の平均である。両方の試験溶液を用いた2分間の曝露により、未処理の対照と比較して、代謝活性が>90%低減した。このアッセイにおいて、M.ulceransの2つの試験溶液の活性に識別可能な差異はなかった。曝露された細菌の計算された代謝活性を
図7に示す。
【0191】
殺菌活性試験
次のステップでは、溶液1及び2の殺菌活性を、プレーティングアッセイにおいてコロニー形成単位(CFU)の数を判定することによって試験した。培養細菌(新たに単離されたアフリカ参照株S1013;OD0.3;対数期)を、実施例1の仕様を満たす2つの試験溶液に曝露した。0.1mlの細菌培養物を1.9mlの試験溶液と混合し、1分、4分、及び9分間インキュベートした。時間が経過した後、細菌を遠心分離(13,300×gで1分間)によってペレット化し、上清を除去した。ペレットを直ちに0.2mlの7H9培地に再懸濁した。この懸濁液を、CFU数を2通りで判定するための接種材料として使用した。各懸濁液の10倍段階希釈液を7H9培地で調製した(10-1~10-3)。各希釈物を7H9寒天プレート上にプレーティングした(プレート当たり100μl)。全てのプレートを密閉し、30℃で最大12週間インキュベートした。
【0192】
図8に示される結果は、各希釈についての平均CFUである。2つの生成物に2分間曝露した後、CFU数は>80%低減した。10分後、細菌の溶液1(遊離塩素種の40~70ppm)では>99%、溶液2(遊離塩素種の70~100ppm)では>99.9%が死滅した。
【0193】
実施例7.COVID-19殺ウイルス活性のインビボ試験
実施例1で報告された仕様を満たす次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸酸化性水の役割を、鼻の忍容性及びSARS-Cov-3に対する生成物の有効性を評価するために、インビトロ試験で評価している。
【0194】
方法:
ウイルス、培地、及び細胞
SARS-CoV-2ウイルスストックを、Vero76細胞においてウイルスを成長させることによって調製した。使用した試験培地は、2%FBS及び50μg/mLゲンタマイシンを補充したMEMであった。
【0195】
殺ウイルスアッセイ
実施例1の仕様を満たす低張性酸性酸化性溶液を、薄めずそのまま試験し、90%の試料を10体積%のウイルス溶液に添加して、90%の最終試験濃度を達成した。SARS-CoV-2ウイルスストックを3つのチューブに添加し、培地のみを各調製濃度の1つのチューブに添加して、毒性対照として機能させた。エタノールを陽性対照として並行して試験し、水のみをウイルス対照として機能するように使用した。
【0196】
化合物及びウイルスを室温で1分未満及び3分間の2つの接触時間でインキュベートした。接触期間に続いて、溶液を10%FBSを含有する試験培地で1/10希釈によって中和した。
【0197】
ウイルス定量
3回の試験の平均を定量するために中和試料を合わせた。試料を、試験培地中で8つの半対数希釈物を使用して段階希釈した。各希釈物を、80~100%コンフルエントなVero76細胞を含む96ウェルプレートの4ウェルに添加した。毒性対照を追加の4ウェルに添加し、これらのウェルのうちの2つをウイルスに感染させて中和対照として機能させ、プレーティングした力価アッセイにおける残留試料が生存ウイルスの成長及び検出を阻害しないようにした。全てのプレートを37±2℃、5%CO2でインキュベートした。
【0198】
感染後6日目に、ウイルス細胞変性効果(CPE)の有無について、プレートをスコアリングした。リードミュンヒ法を使用して、試料のエンドポイント力価(50%細胞培養感染量、CCID50)を判定し、陰性(水)対照と比較した化合物の対数低減値(LRV)を計算した。
【0199】
対照
ウイルス対照を水中で試験すると、対数低減値(LRV)として計算されたウイルス対照と比較して、試験ウェル中のウイルスが低減した。試料が細胞に対して毒性であるか否かを確認するために、ウイルスを含まない培地を用いて毒性対照を試験した。ウイルスの不活性化が特定の接触時間の後に継続せず、力価アッセイプレート内の残留試料が生存ウイルスの成長及び検出を阻害しないように、中和対照を試験した。これは、毒性試料を力価試験プレートに添加し、次いで、インキュベーション期間中に観察可能な量のCPEを生成する少量のウイルスで各ウェルをスパイクすることによって行った。
【0200】
結果:
SARS-CoV-2に対する次亜塩素酸(HClO)を含有する低張性酸性酸化性溶液のウイルス力価及びLRVを表8に示す。
【0201】
【0202】
溶液を90%で1分未満及び3分間試験すると、殺ウイルス活性が示され、ウイルスは、ウイルス対照中0.1mL当たり3.5logのCCID50から0.7logの検出限界未満(>99.8%)まで低下した。より低い濃度で再現性及び潜在的に活性を評価するために、さらなる試験が保証され得る。
【0203】
中和対照は、残留試料が、細胞傷害性を有しなかったウェルにおいてエンドポイント力価アッセイにおけるウイルス成長及び検出を阻害しなかったことを実証した。陽性対照は予想通りに実行されたが、エタノールは、1/10の希釈物において細胞に対して毒性であり、ウイルスの検出を0.1mL当たり<1.7log CCID50に制限する。
【0204】
実施例7.鼻刺激試験
この鼻刺激試験の目的は、試験種ニュージーランド白ウサギが試験項目と共に1日2回、5日間連続して投与されたときに、次亜塩素酸を含有する低張性酸性酸化性溶液の潜在的な刺激可能性を評価することであった。
【0205】
研究デザイン
試験項目は、MAD(登録商標)(粘膜噴霧装置)を取り付けた1mLのシリンジを使用して、200μL/鼻孔及び500μL/鼻孔で、各鼻孔に1日2回、4時間間隔で5日間連続して鼻腔内に適用した。さらに、生理食塩水(500μL/鼻孔)を対照群動物に適用した。
【0206】
方法
ウサギを、治療日には投与前(最初の適用前)及び投与後(最後の適用後)に1日2回、非治療日には1日1回、一般的な臨床徴候、罹患率、及び死亡率について観察した。適用部位における局所反応を、全ての適用日には1日2回、すなわち、最初の適用前及び各日の最後の適用後(適用後約30分)、並びに非治療日には1日1回検査した。局所反応は、ペントーチを使用して目視観察した。局所反応は、Draize(1959)の方法に従って評価した。全ての動物を最後の適用の24時間後に安楽死させ(6日目)、詳細な肉眼的病理学的検査に供した。動物を、外部異常について慎重に検査した。周囲の組織と共に全ての動物からの適用部位(鼻孔)を巨視的に検査した。胸腔及び腹腔を切り開き、臓器の徹底的な検査を行って、異常を検出した。組織病理学的検査は、全ての動物の鼻に対して行った。鼻(適用部位)の4つのレベルの横方向切片を顕微鏡検査した。組織を、常套的なパラフィン包埋のために処理し、5マイクロメートル切片をヘマトキシリン及びエオシン染色で染色した。組織切片を評価し、ISO10993-10の方法B.3に従ってスコアを記録し、ISO10993-10の方法B.4に従って刺激指数を計算した。
【0207】
結果
臨床的徴候又は最終的な死亡はなく、体重に影響はなかった。適用部位での巨視的検査中に局所反応は観察されなかった。最後の適用の約24時間後、全ての動物を安楽死させ、全ての動物から鼻腔の下鼻甲介及び鼻中隔粘膜の下縁部の鼻粘膜を収集し、肉眼的観察を記録し、組織病理学のために処理した。剖検時に試験動物のいずれにおいても肉眼的病変はなかった。ISO10993-10の方法B.3及びB.4による鼻粘膜の顕微鏡評価では、200μL/鼻孔及び500μL/鼻孔投与群でそれぞれ0及び0.083の刺激指数が示された(表9)。
【0208】
【0209】
結論
上記の結果に基づくと、200μL/鼻孔及び500μL/鼻孔の用量レベルでの、次亜塩素酸を含有する低張性酸性酸化性溶液の、ニュージーランド白ウサギへの1日2回の経鼻投与は、ニュージーランド白ウサギの鼻粘膜に対して「非刺激性」であると推測される。
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【0210】
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【国際調査報告】