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特表2022-538909CAR-T細胞療法のための脂質-フルオレセイン結合体の設計および効率的合成の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】CAR-T細胞療法のための脂質-フルオレセイン結合体の設計および効率的合成の方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220830BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
A61P35/00
A61K31/661
A61K31/365
A61K47/54
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500020
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020040723
(87)【国際公開番号】W WO2021007109
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/870,926
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロウ フィリップ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シュリニヴァーサラオ マドゥリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB21
4C076CC27
4C076DD15
4C076EE59
4C076FF04
4C076FF06
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CA01
4C086DA37
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZB26
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB28
4H050AC60
4H050BB12
(57)【要約】
本開示は、脂質-フルオレセイン結合体、これを含む組成物、ならびにがんの処置などにおける合成法および使用法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中:
R1は独立にH、または腫瘍細胞外マトリックスにおいて脱保護される保護基であり;
Yは非存在、-N(H)C(S)N(H)-、-N(H)C(O)N(H)-、-N(H)C(O)-、-N(H)C(S)-、-C(O)-N(H)-、-C(S)N(H)-、-C(O)O-、-N(H)-、-S(O)N(H)-、-S(O)2N(H)-、-S(O)3-、-P(O)2N(H)-、または-P(O)3-であり;
Lはリンカーであり;かつ
脂質はがん細胞標的指向性脂質であり;かつ
少なくとも1つのR1は保護基である。
【請求項2】
両方のR1が保護基であり、これらは同じであり得るかまたは異なり得る、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
保護基が活性酸素種(ROS)切断可能基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
保護基が
である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
保護基が
である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Lが紫外線(UV)活性リンカーである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Lが発色団である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Lが
である、請求項1~7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
脂質が
である、請求項1~7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
脂質が
である、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
以下:
である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
以下:
である、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
以下:
である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項16】
請求項8記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項17】
9の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項18】
10の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
請求項11~13のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項20】
がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、請求項1~7のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法。
【請求項21】
がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、請求項8記載の化合物、またはその薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法。
【請求項22】
がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、請求項9記載の化合物、またはその薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法。
【請求項23】
がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、請求項10記載の化合物、またはその薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法。
【請求項24】
がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、請求項11~13のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法。
【請求項25】
脂質-FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を作製する方法であって、溶媒中で脂質をFITCおよび塩基と反応させる段階を含む、方法。
【請求項26】
塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリアルキルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、またはその組み合わせである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
塩基が炭酸カリウムである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
溶媒が、クロロホルム、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、水、またはその任意の組み合わせである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
溶媒がクロロホルムである、請求項25記載の方法。
【請求項30】
遮蔽された脂質-FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を作製する方法であって、溶媒中で脂質-FITCを保護基および塩基と反応させる段階を含む、方法。
【請求項31】
塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
溶媒がクロロホルム-DMSO(2:1)である、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
異種の保護基を有するFITC-PLEを作製する方法であって、以下の段階:
i)四級アンモニウム中間体を生成するために、脂質を臭化アミノベンジルに結合する段階、
ii)キシレン系FL-PLEを生成するために、該中間体をフルオレセインイソチオシアネートにカップリングする段階、および
iii)任意で、Pro-FL-PLEを保護する段階
を含む、方法。
【請求項34】
塩基が炭酸カリウムである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
塩基がピリジンである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
溶媒がクロロホルムである、請求項33記載の方法。
【請求項37】
溶媒および塩基がピリジンである、請求項33記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月5日提出の米国特許仮出願第62/870,926号に対する優先権の恩典を主張し、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本開示は、脂質-フルオレセイン結合体、これを含む組成物、ならびに、がんの処置、例えばCAR-T細胞療法などにおける合成法および使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
神経膠腫は小児の最も一般的ながんの1つである。その不均一性ゆえに、神経膠腫は単一の顕著な抗原を提示しない。したがって、小児神経膠腫に対するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、汎がん抗原を同定し標的とすることを必要とするであろう。最近、ユニバーサル抗FITC(フルオレセインイソチオシアネート)CAR-T細胞が報告され、腫瘍特異的リガンドに連結された二重特異性アダプター分子を投与することで、当該CAR-T細胞と腫瘍細胞との架橋を促進し、続くCAR-T細胞活性化によりがん細胞を死滅させる。特異的にがん細胞膜を標的とする特定の合成リン脂質エーテル(PLE)が報告されている。それらはがん細胞膜自体を標的とするため、汎がん標的指向性リガンドになる可能性を有する。これらのPLEは、正常細胞によって急速に代謝分解されるが、腫瘍細胞膜上に長期間存続することが公知である。さらに、これらのPLEは冗長な合成(12~17段階)を必要とする。
【0004】
フルオレセインイソチオシアネートに結合したPLE(FL-PLEと呼ばれる)を含む二重特異性アダプター分子を抗FITC CAR-T細胞との組み合わせで使用することで、神経膠腫に対する治療が達成された(図1)。FITCと脂質成分を接続するためにポリエチレングリコール(PEG3)リンカーが使用された。FL-PLEは12段階合成で製造された。がんに対する特異性を高めるために、フルオレセインの芳香環上の-OHの保護基の形態でさらなるレベルの特異性が導入され、これはがんに見られる活性酸素種によって選択的に切断され、Pro-FL-PLEと呼ばれる(図2)。Pro-FL-PLEに基づくイメージング剤は、神経膠腫において約1.5の腫瘍対バックグラウンド比を示し、この保護されたバージョンは、CAR-T細胞治療薬によって標的とされると、がん組織に特異性を示し得ることを示唆している。Pro-FL-PLEの合成は17段階で達成された。
【0005】
より効率的な合成により、がん細胞膜に特異的なPLEを開発することが依然必要とされている。そのような治療剤を提供することが本開示の目的である。この目的および利点ならびに他の目的および利点は、本明細書において提供する記載から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0006】
概要
提供するのは、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である:
式中:
R1は独立にH、または腫瘍細胞外マトリックスにおいて脱保護される保護基であり;
Yは非存在、-N(H)C(S)N(H)-、-N(H)C(O)N(H)-、-N(H)C(O)-、-N(H)C(S)-、-C(O)-N(H)-、-C(S)N(H)-、-C(O)O-、-N(H)-、-S(O)N(H)-、-S(O)2N(H)-、-S(O)3-、-P(O)2N(H)-、または-P(O)3-であり;
Lはリンカーであり;かつ
脂質はがん細胞標的指向性脂質であり;かつ
少なくとも1つのR1は保護基である。
【0007】
さらに提供するのは、式(I)または(II)の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物である。
【0008】
さらに提供するのは、がんを処置する方法であって、式(I)または(II)の化合物を、がんを患っている対象に投与する段階を含む、方法である。
【0009】
本開示は、脂質-FITCを作製する方法であって、溶媒中で脂質をフルオレセインイソチオシアネートおよび塩基と反応させる段階を含む、方法である。
【0010】
本開示は、遮蔽された脂質-FITCを作製する方法であって、溶媒中で脂質-FITCを保護基および塩基と反応させる段階を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フルオレセイン-脂質結合体(FL-PLE)の構造である。
図2】Pro-フルオレセイン-脂質結合体(Pro-FL-PLE)の構造である。
図3】パーデューフルオレセイン-脂質結合体(パーデューFL-PLE)の構造である。
図4】パーデューPro-フルオレセイン-脂質結合体(パーデューPro-FL-PLE)の構造である。
図5-1】パーデューフルオレセイン-脂質結合体(パーデューFL-PLE Pro-FL-PLE)の合成スキームである。
図5-2】パーデューフルオレセイン-脂質結合体(パーデューFL-PLE Pro-FL-PLE)の合成スキームである。
図5-3】パーデューフルオレセイン-脂質結合体(パーデューFL-PLE Pro-FL-PLE)の合成スキームである。
図5-4】パーデューフルオレセイン-脂質結合体(パーデューFL-PLE Pro-FL-PLE)の合成スキームである。
図6-1】活性酸素種(ROS)切断可能基で保護したFITC-PLEの合成スキームである。
図6-2】活性酸素種(ROS)切断可能基で保護したFITC-PLEの合成スキームである。
図7-1】二重保護基を有するFITC-PLEの合成スキームである(二重ゲートアプローチまたは論理ゲートアプローチ)。
図7-2】二重保護基を有するFITC-PLEの合成スキームである(二重ゲートアプローチまたは論理ゲートアプローチ)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示は、脂質-フルオレセイン結合体、これを含む組成物、ならびに、がんの処置、例えばCAR-T細胞療法などにおける合成法および使用法を提供する。
【0013】
定義
便宜上、本開示のさらなる記載の前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において用いられるいくつかの用語をここに集めている。これらの定義は、本開示の残りの部分を考慮して読まれ、当業者によるとおりに理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0014】
本開示がより容易に理解されるように、いくつかの用語および語句を、以下および本明細書の全体にわたって定義する。
【0015】
本明細書において、「1つの(a)」および「1つの(an)」なる冠詞は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素(an element)」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる「および/または」なる語句は、そのように結合された要素、すなわち、いくつかの場合には結合して存在し、他の場合には非結合的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」と共に挙げられる複数の要素は同じ様式で、すなわち、そのように結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素も、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか、または関連しないかにかかわらず、任意に存在してもよい。したがって、非限定例として、「含む」などの無制限の言語と共に用いられる場合、「Aおよび/またはB」への言及は、Aのみ(B以外の要素を任意に含む);またはBのみ(A以外の要素を任意に含む);またはさらにはAおよびBの両方(他の要素を任意に含む)などを指し得る。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる「または」は、前述の定義の「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストの項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわちいくつかの要素のまたは要素のリストの少なくとも1つを含むが、複数も含み、任意に追加の挙げていない項目も含むと解釈される。「の1つのみ」もしくは「のちょうど1つ」などの、反対であることが明らかに示されている用語、または特許請求の範囲で用いられる場合、「からなる」なる用語だけは、いくつかの要素または要素のリストのちょうど1つの要素の包含を指すことになる。一般に、本明細書において用いられる「または」なる用語は、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」、または「のちょうど1つ」などの、排他性の用語が前にある場合、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるにすぎない。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において用いられる場合、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有する。
【0018】
1つまたは複数の要素のリストに関して、本明細書および特許請求の範囲において用いられる「少なくとも1つ」なる語句は、要素のリストにおける要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に挙げられるそれぞれおよびすべての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外しないと理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つ」なる語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか、または関連しないかにかかわらず、任意に存在し得ることも許容する。したがって、非限定例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、任意に複数を含む、少なくとも1つのAを指し、Bは存在せず(および任意にB以外の要素を含む);または任意に複数を含む、少なくとも1つのBを指し、Aは存在せず(および任意にA以外の要素を含む);またはさらに、任意に複数を含む、少なくとも1つのA、および任意に複数を含む、少なくとも1つのB(および任意に他の要素を含む)を指し得;他も同様である。
【0019】
特に記載がない限り、複数の段階または行為を含む、本明細書において特許請求する任意の方法において、方法の段階または行為の順序は、方法の段階または行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0020】
特許請求の範囲、ならびに前記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる」などの、すべての移行句は、無制限である、すなわち、含むが、制限されないと理解されるべきである。
【0021】
本開示の組成物に含まれる様々な化合物は、特に幾何または立体異性形態で存在し得る。加えて、本開示のポリマーは光学活性であってもよい。本開示は、本開示の範囲内に入る、シスおよびトランス異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、そのラセミ混合物、ならびにその他の混合物を含む、すべてのそのような化合物を企図する。さらなる不斉炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在してもよい。すべてのそのような異性体、ならびにその混合物は、本開示に含まれることが意図される。
【0022】
例えば、本開示の化合物の特定の鏡像異性体が望まれる場合、不斉合成によって、または得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して純粋な所望の鏡像異性体を提供する、キラル補助剤による誘導によって調製してもよい。または、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性酸または塩基とジアステレオマー塩を形成し、続いて当技術分野において周知の分別再結晶またはクロマトグラフィ手段によりそのように形成したジアステレオマーを分割し、その後、純粋な鏡像異性体を回収する。
【0023】
本明細書に示す構造は、1つまたは複数の同位体が濃縮された原子の存在だけが異なる化合物を含むことも意図される。例えば、重水素もしくはトリチウムによる水素の置き換え、または13C濃縮炭素もしくは14C濃縮炭素による炭素の置き換えで製造される化合物は、本開示の範囲内である。
【0024】
本明細書において用いられる「プロドラッグ」なる用語は、生理的条件下で、治療的活性作用物質に変換される化合物を包含する。プロドラッグを作製するための一般的な方法は、生理的条件下で加水分解されて所望の分子を現す、選択された部分を含めることである。他の態様において、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性によって変換される。
【0025】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」なる語句は、対象となる化学物質を1つの器官または体の部分から別の器官または体の部分に運ぶ、または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物または媒体、例えば液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性である、患者に有害でない、および実質的に非発熱性であるという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には下記が含まれる:(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)薬学的製剤に用いられる他の非毒性適合性物質。様々な態様において、本開示の薬学的組成物は、非発熱性であり、すなわち、患者に投与した場合に有意な温度上昇を誘発しない。
【0026】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製中にインサイチューで調製することができ、または精製した化合物をその遊離塩基形態で適切な有機もしくは無機酸と別々に反応させ、そのようにして形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)。
【0027】
他の場合に、本開示の方法において有用な化合物は、1つまたは複数の酸性官能基を含んでもよく、したがって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成し得る。これらの場合の「薬学的に許容される塩」なる用語は、化合物の比較的非毒性の無機および有機塩基付加塩を指す。これらの塩は同様に、化合物の最終的な単離および精製中にインサイチューで調製することができ、あるいは精製した化合物をその遊離酸形態で、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは炭酸水素塩などの適切な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機一級、二級、もしくは三級アミンと別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、Berge et al.、上記を参照)。
【0028】
処置における使用に関する化合物の「治療的有効量」(または「有効量」)とは、所望の投与計画の一部として(ヒトなどの哺乳動物に)投与した場合に、処置する障害もしくは状態、または美容的目的のための臨床的に許容される標準に従い、例えば、任意の医学的処置に適用可能な妥当な損益比で、症状を緩和する、状態を改善する、または疾患状態の発症を遅らせる、調製物中の化合物の量を指す。
【0029】
「予防または治療的」処置なる用語は、当技術分野において認められ、本開示の1つまたは複数の化合物の患者への投与を含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床発現の前に投与する場合、処置は予防的であり(すなわち、望ましくない状態の発生に対して宿主を防護する)、一方、望ましくない状態の発現後に投与する場合、処置は治療的である(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を減少させ、改善し、または安定化させることが意図される)。
【0030】
「患者」または「対象」なる用語は、疾患、障害、または状態を患っている哺乳動物を指す。様々な態様において、患者または対照は、霊長類、イヌ、ネコ、またはウマである。様々な態様において、患者または対象は鳥である。様々な態様において、鳥は、ニワトリなどの家畜化された鳥である。様々な態様において、鳥は家禽である。様々な態様において、患者または対象はヒトである。小児患者または対象は、18歳以下のヒトを指す。
【0031】
本開示のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87の表紙裏に従って特定される。
【0032】
化合物
本開示は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する:
式中:
R1は独立にH、または腫瘍細胞外マトリックスにおいて脱保護される保護基であり;
Yは非存在、-N(H)C(S)N(H)-、-N(H)C(O)N(H)-、-N(H)C(O)-、-N(H)C(S)-、-C(O)-N(H)-、-C(S)N(H)-、-C(O)O-、-N(H)-、-S(O)N(H)-、-S(O)2N(H)-、-S(O)3-、-P(O)2N(H)-、または-P(O)3-であり;
Lはリンカーであり;かつ
脂質はがん細胞標的指向性脂質であり;かつ
少なくとも1つのR1は保護基である。
【0033】
R1はHであり得る。R1は腫瘍細胞外マトリックスにおいて脱保護される保護基であり得る。両方のR1は独立に保護基であり得る。各R1は異なり得る。両方のR1は同じであり得る。
【0034】
保護基は活性酸素種(ROS)切断可能基であり得る。保護基は酸切断可能基であり得る。保護基は還元的に切断され得る。保護基は酵素切断可能基であり得る。保護基は低pHで切断可能であり得る。保護基は腫瘍微小環境における任意のトリガにより切断され得る。保護基は
であり得る。保護基は
であり得る。保護基は
であり得る。
【0035】
Yは非存在であり得る。Yは-N(H)C(S)N(H)-であり得る。Yは-N(H)C(O)N(H)-であり得る。Yは-N(H)C(O)-であり得る。Yは-N(H)C(S)-であり得る。Yは-C(O)-N(H)-であり得る。Yは-C(S)N(H)-であり得る。Yは-C(O)O-であり得る。Yは-N(H)-であり得る。Yは-S(O)N(H)-であり得る。Yは-S(O)2N(H)-であり得る。Yは-S(O)3-であり得る。Yは-P(O)2N(H)-であり得る。Yは-P(O)3-であり得る。
【0036】
LはUV活性リンカーであり得る。Lは発色団であり得る。Lは
であり得る。
【0037】
脂質は5~30の炭素原子を含む脂質であり得る。脂質は
であり得る。
【0038】
式(I)の化合物は
であり得る。
【0039】
式(I)の化合物は
であり得る。
【0040】
式(I)の化合物は
であり得る。
【0041】
脂質-フルオレセイン結合体を作製する方法
本開示は、脂質-FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を作製する方法であって、溶媒中で脂質をFITCおよび塩基と反応させる段階を含む、方法に関する。
【0042】
本開示は、遮蔽された脂質-FITCを作製する方法であって、溶媒中で脂質-FITCを保護基および塩基と反応させる段階を含む、方法にも関する。
【0043】
本開示は、異種の保護基を有するFITC-PLEを作製する方法であって、以下の段階を含む方法に関する:
i)四級アンモニウム中間体を生成するために脂質を臭化アミノベンジルに結合する段階、
ii)キシレン系FL-PLEを生成するために中間体をフルオレセインイソチオシアネートにカップリングする段階、および
iii)任意にPro-FL-PLEを保護する段階。
【0044】
キシレン系FL-PLEはMS-109であり得る。Pro-FL-PLEはMS-115であり得る。
【0045】
塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリアルキルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムであり得る。塩基はDIEAであり得る。塩基は炭酸カリウムであり得る。塩基はピリジンであり得る。
【0046】
溶媒は、クロロホルム、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、水、またはその任意の組み合わせであり得る。溶媒はクロロホルム-DMSO(2:1)であり得る。溶媒はクロロホルムであり得る。溶媒および塩基はピリジンであり得る。
【0047】
化合物式(I)もしくは(II)、脂質-FITC、遮蔽された脂質-FITC、または異種の保護基を有するFITC-PLEなどの、本開示の化合物は、当業者には公知の任意の様式で合成することもできる。
【0048】
処置の方法
本開示は、がんを患っている対象においてがんを処置する方法に関する。方法は、前述の化合物、またはこの化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み得る。がんは神経膠腫であり得る。
【0049】
化合物は本開示の任意の化合物であり得る。
【0050】
がんにおけるCAR-T細胞療法の文脈で、本明細書において合成した改善されたパーデューFL-PLEをいかに利用するかの詳細な記載は、WO2018148224に記載のとおりであることが企図され、その内容は明確に参照により本明細書に組み入れられる。
【0051】
薬学的組成物、投与経路、および投薬
薬学的組成物も提供する。1つの態様において、薬学的組成物は本明細書に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む。もう1つの態様において、薬学的組成物は複数の本明細書に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む。さらにもう1つの態様において、薬学的組成物は、単独での、または本明細書に記載の1つもしくは複数の他の化合物、もしくはそのプロドラッグとのさらなる組み合わせの、本明細書に記載の化合物のプロドラッグと、薬学的に許容される担体とを含む。
【0052】
いくつかの態様において、本開示の薬学的組成物は、本開示の化合物以外の少なくとも1つの追加の薬学的活性作用物質をさらに含む。少なくとも1つの追加の薬学的活性作用物質は、例えば、虚血再灌流傷害の処置において有用な薬剤であり得る。
【0053】
薬学的組成物は、1つまたは複数の化合物を、薬学的に許容される担体、および任意に1つまたは複数の追加の薬学的活性作用物質と組み合わせることによって調製し得る。
【0054】
前述のとおり、「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を指す。本明細書に提供する教示と合わせて、様々な活性化合物の中から選択し、効力、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害副作用の重症度および投与様式などの因子を考慮することにより、実質的な有害毒性を引き起こさず、特定の対象を処置するのになお効果がある、有効な予防的または治療的処置計画を設計することができる。任意の特定の適用のための有効量は、処置中の疾患もしくは状態、投与中の本開示の特定の化合物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、本開示の特定の化合物および/または他の治療剤の有効量を経験的に決定することができる。いくつかの医学的判断に従って、最大用量、すなわち、最も高い安全用量を使用してもよい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、1日に複数の用量が企図され得る。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物ピークまたは持続血漿レベルの測定により決定し得る。「用量」および「投薬量」は本明細書において交換可能に用いられる。
【0055】
一般に、化合物の1日経口用量は、ヒト対象については、約0.01mg/kg/日~1000mg/kg/日である。0.5~50mg/kgの範囲の経口用量は、1日に1回または複数回の投与で、治療結果を生じ得る。投薬量は、投与の様式に応じて、局所または全身のいずれでも、所望の薬物レベルを達成するために適宜調節してもよい。例えば、静脈内投与は1日あたり1桁から数桁低い用量まで変動し得る。対象の応答がそのような用量で不十分である場合、患者の耐容性が許容する程度まで、より高い用量(または異なる、より限局的な送達経路による、有効なより高い用量)を用いてもよい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、1日に複数回の用量が企図される。
【0056】
本明細書に記載の任意の化合物について、治療的有効量を最初は動物モデルから決定することができる。ヒトで試験された化合物および他の関連する活性作用物質などの、同様の薬理活性を示すことが公知の化合物については、治療的有効用量をヒトデータから決定することもできる。非経口投与のために、より高い用量が必要とされ得る。適用した用量を、投与化合物の相対バイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調節することができる。前述の方法および他の方法に基づいて最大の有効性を達成するための用量の調節は、当技術分野において周知で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0057】
臨床使用のために、本開示の任意の化合物は、1日に対象の体重1キログラム(kg)あたり0.2~2000ミリグラム(mg)の化合物に等しいかまたは等価の量で投与することができる。本開示の化合物は、1日に対象の体重1kgあたり2~2000mgの化合物に等しいかまたは等価の用量で投与することができる。本開示の化合物は、1日に対象の体重1kgあたり20~2000mgの化合物に等しいかまたは等価の用量で投与することができる。本開示の化合物は、1日に対象の体重1kgあたり50~2000mgの化合物に等しいかまたは等価の用量で投与することができる。本開示の化合物は、1日に対象の体重1kgあたり100~2000mgの化合物に等しいかまたは等価の用量で投与することができる。本開示の化合物は、1日に対象の体重1kgあたり200~2000mgの化合物に等しいかまたは等価の用量で投与することができる。本開示の化合物自体ではなく、化合物の前駆体またはプロドラッグを投与する場合、本発明の化合物の前述の量に等価の、すなわち前述の量を送達するのに十分な量で投与する。
【0058】
本開示の化合物の製剤は、治療的有効量でヒト対象に投与することができる。典型的な用量範囲は、1日に約0.01μg/kg~約2mg/kg体重である。投与する薬物の投薬量は、障害の種類および程度、特定の対象の全般的健康状態、投与中の具体的な化合物、化合物を製剤化するために用いた賦形剤、ならびにその投与経路などの変数に依存するようである。日常的実験を用いて、任意の特定の化合物についての用量および投与頻度を最適化してもよい。
【0059】
本開示の化合物は、約0.001μg/kg~約500mg/kg超の範囲の濃度で投与することができる。例えば、濃度は0.001μg/kg、0.01μg/kg、0.05μg/kg、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1.0μg/kg、10.0μg/kg、50.0μg/kg、100.0μg/kg、500μg/kg、1.0mg/kg、5.0mg/kg、10.0mg/kg、15.0mg/kg、20.0mg/kg、25.0mg/kg、30.0mg/kg、35.0mg/kg、40.0mg/kg、45.0mg/kg、50.0mg/kg、60.0mg/kg、70.0mg/kg、80.0mg/kg、90.0mg/kg、100.0mg/kg、150.0mg/kg、200.0mg/kg、250.0mg/kg、300.0mg/kg、350.0mg/kg、400.0mg/kg、450.0mg/kg、約500.0mg/kg超、またはその任意の増分値であってもよい。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲は本発明に包含されることが理解されるべきである。
【0060】
本開示の化合物は、約0.2mg/kg/日~約100mg/kg/日超の範囲の投薬量で投与することができる。例えば、投薬量は0.2mg/kg/日~100mg/kg/日、0.2mg/kg/日~50mg/kg/日、0.2mg/kg/日~25mg/kg/日、0.2mg/kg/日~10mg/kg/日、0.2mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.2mg/kg/日~5mg/kg/日、0.25mg/kg/日~100mg/kg/日、0.25mg/kg/日~50mg/kg/日、0.25mg/kg/日~25mg/kg/日、0.25mg/kg/日~10mg/kg/日、0.25mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.25mg/kg/日~5mg/kg/日、0.5mg/kg/日~50mg/kg/日、0.5mg/kg/日~25mg/kg/日、0.5mg/kg/日~20mg/kg/日、0.5mg/kg/日~15mg/kg/日、0.5mg/kg/日~10mg/kg/日、0.5mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.5mg/kg/日~5mg/kg/日、0.75mg/kg/日~50mg/kg/日、0.75mg/kg/日~25mg/kg/日、0.75mg/kg/日~20mg/kg/日、0.75mg/kg/日~15mg/kg/日、0.75mg/kg/日~10mg/kg/日、0.75mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.75mg/kg/日~5mg/kg/日、1.0mg/kg/日~50mg/kg/日、1.0mg/kg/日~25mg/kg/日、1.0mg/kg/日~20mg/kg/日、1.0mg/kg/日~15mg/kg/日、1.0mg/kg/日~10mg/kg/日、1.0mg/kg/日~7.5mg/kg/日、1.0mg/kg/日~5mg/kg/日、2mg/kg/日~50mg/kg/日、2mg/kg/日~25mg/kg/日、2mg/kg/日~20mg/kg/日、2mg/kg/日~15mg/kg/日、2mg/kg/日~10mg/kg/日、2mg/kg/日~7.5mg/kg/日、または2mg/kg/日~5mg/kg/日であってもよい。
【0061】
本開示の化合物は、約0.25mg/kg/日~約25mg/kg/日の範囲の投薬量で投与することができる。例えば、投薬量は0.25mg/kg/日、0.5mg/kg/日、0.75mg/kg/日、1.0mg/kg/日、1.25mg/kg/日、1.5mg/kg/日、1.75mg/kg/日、2.0mg/kg/日、2.25mg/kg/日、2.5mg/kg/日、2.75mg/kg/日、3.0mg/kg/日、3.25mg/kg/日、3.5mg/kg/日、3.75mg/kg/日、4.0mg/kg/日、4.25mg/kg/日、4.5mg/kg/日、4.75mg/kg/日、5mg/kg/日、5.5mg/kg/日、6.0mg/kg/日、6.5mg/kg/日、7.0mg/kg/日、7.5mg/kg/日、8.0mg/kg/日、8.5mg/kg/日、9.0mg/kg/日、9.5mg/kg/日、10mg/kg/日、11mg/kg/日、12mg/kg/日、13mg/kg/日、14mg/kg/日、15mg/kg/日、16mg/kg/日、17mg/kg/日、18mg/kg/日、19mg/kg/日、20mg/kg/日、21mg/kg/日、22mg/kg/日、23mg/kg/日、24mg/kg/日、25mg/kg/日、26mg/kg/日、27mg/kg/日、28mg/kg/日、29mg/kg/日、30mg/kg/日、31mg/kg/日、32mg/kg/日、33mg/kg/日、34mg/kg/日、35mg/kg/日、36mg/kg/日、37mg/kg/日、38mg/kg/日、39mg/kg/日、40mg/kg/日、41mg/kg/日、42mg/kg/日、43mg/kg/日、44mg/kg/日、45mg/kg/日、46mg/kg/日、47mg/kg/日、48mg/kg/日、49mg/kg/日、または50mg/kg/日であってもよい。
【0062】
様々な態様において、化合物またはその前駆体は、0.01μM~500μM超または500μMと等価の範囲の濃度で投与する。例えば、用量は0.01μM、0.02μM、0.05μM、0.1μM、0.15μM、0.2μM、0.5μM、0.7μM、1.0μM、3.0μM、5.0μM、7.0μM、10.0μM、15.0μM、20.0μM、25.0μM、30.0μM、35.0μM、40.0μM、45.0μM、50.0μM、60.0μM、70.0μM、80.0μM、90.0μM、100.0μM、150.0μM、200.0μM、250.0μM、300.0μM、350.0μM、400.0μM、450.0μM、約500.0μM超、またはその任意の増分値であってもよい。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲は本発明に包含されることが理解されるべきである。
【0063】
様々な態様において、化合物またはその前駆体は、0.10μg/mL~500.0μg/mLの範囲の濃度で投与する。例えば、濃度は0.10μg/mL、0.50μg/mL、1μg/mL、2.0μg/mL、5.0μg/mL、10.0μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、60.0μg/mL、70.0μg/mL、80.0μg/mL、90.0μg/mL、100.0μg/mL、150.0μg/mL、200.0μg/mL、250.0g/mL、250.0μg/mL、300.0μg/mL、350.0μg/mL、400.0μg/mL、450.0μg/mL、約500.0μg/mL超、またはその任意の増分値であってもよい。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲は本発明に包含されることが理解されるべきである。
【0064】
本開示の製剤は、薬学的に許容される液剤で投与することができ、これらは薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、補助剤、および任意に他の治療成分を日常的に含んでもよい。
【0065】
治療において用いるために、化合物の有効量を対象に、化合物を所望の表面に送達する任意の様式によって投与することができる。薬学的組成物の投与は、当業者には公知の任意の手段によって達成してもよい。投与の経路には、静脈内、筋肉内、腹腔内、膀胱内(膀胱)、経口、皮下、直接注入(例えば、腫瘍または膿瘍中に)、粘膜(例えば、眼に局所的に)、吸入、および局所が含まれるが、それらに限定されない。
【0066】
静脈内および他の非経口投与経路のために、本開示の化合物は、凍結乾燥調製物として、リポソームに挿入もしくは封入した活性化合物の凍結乾燥調製物として、水性懸濁液中の脂質複合体として、または塩複合体として製剤化することができる。凍結乾燥製剤は一般に、投与の直前に、適切な水性溶液中、例えば、滅菌水または食塩水中で再構成する。
【0067】
経口投与のために、化合物は、活性化合物を当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより、容易に製剤化することができる。そのような担体は、本開示の化合物を、処置される対象が経口摂取するために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、望まれる場合は適切な補助剤を加えた後、得られた混合物を任意に粉砕し、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠の核を得るための、固体賦形剤として得ることができる。適切な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。望まれる場合、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を加えてもよい。任意に、経口製剤は食塩水もしくは内部の酸性状態を中和するための緩衝液、例えば、EDTA中で製剤化してもよく、またはいかなる担体もなしで投与してもよい。
【0068】
同様に企図されるのは、本開示の化合物の経口剤形である。本開示の化合物は、誘導体の経口送達が有効であるように、化学修飾してもよい。一般に、企図される化学修飾は、化合物自体へ少なくとも1つの部分を連結することであり、該部分は(a)酸加水分解の阻害;および(b)胃または腸から血流中への取り込みを可能にする。同様に所望されるのは、体内での化合物の全般的安定性の増大および循環時間の増大である。そのような部分の例には、ポリエチレングリコール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンならびにポリプロリンが含まれる。Abuchowski and Davis, "Soluble Polymer-Enzyme Adducts", In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383 (1981);Newmark et al., J Appl Biochem 4:185-9 (1982)。使用し得る他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカンである。薬学的使用のためには、前述のとおり、ポリエチレングリコール部分が適切である。
【0069】
本開示の化合物の放出の部位は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者であれば、胃では溶解しないが、十二指腸または腸の他所で材料を放出する、利用可能な製剤を有する。本開示の化合物を保護することにより、または腸内などの胃環境を越えてから化合物を放出することにより、放出は、胃環境の有害作用を回避することができる。
【0070】
完全な胃耐性を確保するために、少なくともpH5.0で不透過性のコーティングが必須である。腸溶コーティングとして使用される、より一般的な不活性成分の例は、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、フタル酸酢酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびシェラックである。これらのコーティングを混合フィルムとして用いてもよい。
【0071】
コーティングまたはコーティングの混合物を錠剤に用いることもでき、これらは胃からの保護を意図するものではない。これには糖コーティング、または錠剤を飲み込みやすくするコーティングが含まれ得る。カプセルは、乾燥治療薬(例えば、散剤)の送達用のハードシェル(ゼラチンなどの)からなってもよく;液体形態のために、ソフトゼラチンシェルを用いてもよい。カシェ剤のシェルの材料は、厚いデンプンまたは他の食用紙であり得る。丸剤、ロゼンジ、成形錠または粉薬錠剤に対しては、湿式塊化法(moist massing techniques)を用いることができる。
【0072】
治療薬は、粒径約1mmの顆粒またはペレットの形態の微細多粒子として製剤中に含まれ得る。カプセル剤投与用の材料の製剤は、散剤、軽く圧縮したプラグ、または錠剤としてもよいであろう。治療薬は圧縮により調製し得る。
【0073】
着色剤および着香剤はすべて含まれ得る。例えば、本開示の化合物を製剤化し(例えば、リポソームまたはミクロスフェア封入により)、次いで着色剤および着香剤を含む冷蔵飲料などの食品中にさらに含めてもよい。
【0074】
不活性材料で治療薬を希釈しても、または治療薬の体積を増やしてもよい。これらの希釈剤には、炭水化物、特にマンニトール、a-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、改変デキストランおよびデンプンが含まれ得る。カルシウムトリホスフェート、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む、一定の無機塩を充填剤として使用してもよい。いくつかの市販の希釈剤は、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0075】
崩壊剤を、治療薬の固形剤形への製剤中に含めてもよい。崩壊剤として使用される材料には、デンプン系の市販の崩壊剤であるExplotabを含む、デンプンが含まれるが、それに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトをすべて使用し得る。別の形態の崩壊剤は、不溶性のカチオン性交換樹脂である。粉末ガムを崩壊剤および結合剤として使用してもよく、これらには、寒天、カラヤまたはトラガントなどの粉末ガムが含まれ得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0076】
結合剤を用いて、治療薬を一緒に保持し、硬質錠剤を形成してもよく、これらには、アラビアゴム、トラガント、デンプンおよびゼラチンなどの天然物由来の材料が含まれる。その他のものには、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はいずれも、治療薬を造粒するためにアルコール溶液中で使用し得る。
【0077】
減摩剤を治療薬の製剤中に含めて、製剤化プロセス中の固着を防止してもよい。滑沢剤を、治療薬と型壁との間の層として使用してもよく、これらにはマグネシウムおよびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスが含まれ得るが、それらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000などの可溶性滑沢剤も使用し得る。
【0078】
製剤中の薬物の流動特性を改善し、圧縮中の再配列を助け得る滑剤を添加してもよい。滑剤には、デンプン、タルク、焼成シリカおよび水和ケイアルミン酸塩が含まれ得る。
【0079】
治療薬の水性環境への溶解を助けるために、湿潤剤として界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートなどのアニオン性洗浄剤が含まれ得る。使用可能なカチオン性洗浄剤には、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが含まれる。界面活性剤として製剤中に含め得る可能な非イオン性洗浄剤には、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースならびにカルボキシメチルセルロースが含まれる。これらの界面活性剤は、本開示の化合物または誘導体の製剤中に、単独で、または様々な比率の混合物として存在し得る。
【0080】
経口で使用し得る薬学的調製物には、ゼラチン製のプッシュフィット型カプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトールで作製された密封軟カプセル剤が含まれる。プッシュフィット型カプセル剤は、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意に安定剤との混合で含有することができる。軟カプセルでは、活性化合物は、適切な液体、例えば、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁してもよい。加えて、安定剤を加えてもよい。経口投与用に製剤化したミクロスフェアも使用し得る。そのようなミクロスフェアは、当技術分野において明確に定義されている。経口投与のための製剤はすべて、そのような投与に適した投薬量であるべきである。
【0081】
頬側投与の場合、組成物は、通常の様式で製剤化した錠剤またはロゼンジの形態を取り得る。
【0082】
局所投与の場合、化合物は、当技術分野において周知のとおり、液剤、ゲル剤、軟膏、クリーム剤、懸濁剤などとして製剤化してもよい。全身製剤には、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、クモ膜下腔内または腹腔内注射による投与用に設計されたもの、ならびに経皮、経粘膜経口または肺内投与用に設計されたものが含まれる。
【0083】
吸入による投与の場合、本開示に従って使用するための化合物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスを用いて、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーを供給する形態で都合よく送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定してもよい。吸入器または吹送器で使用するための、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物および適切な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含めて製剤化してもよい。
【0084】
化合物は、全身に送達するのが望ましい場合、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化し得る。注射用の製剤は、単位剤形、例えば、アンプル、または保存剤を添加した複数用量容器で提供し得る。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液または乳液などの形態を取ってもよく、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。
【0085】
非経口投与のための薬学的製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁剤は、適宜油性の注射用懸濁剤として調製してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。水性注射用懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増大させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含んでもよい。任意に、懸濁剤は、高度濃縮溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を増大させる適切な安定剤または薬剤も含み得る。
【0086】
または、活性化合物は、適切な媒体、例えば、無菌の非発熱性水を使用前に用いて再構成するための粉末形態であってもよい。
【0087】
化合物は、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含む、坐剤または停留浣腸剤などの直腸または腟用組成物で製剤化してもよい。
【0088】
前述の製剤に加えて、デポー調製物として製剤化してもよい。そのような長期作用製剤は、適切なポリマーまたは疎水性材料と共に(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化し得る。
【0089】
薬学的組成物は、適切な固相またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれるが、それらに限定されない。
【0090】
適切な液体または固体薬学的調製物形態は、例えば、吸入用の水性または食塩水溶液、マイクロカプセル化、コクリエート化(encochleated)、顕微的金粒子へのコーティング、リポソーム中への包含、噴霧、エアロゾル、皮膚植込み用のペレット、または引っ掻いて皮膚中に導入するための鋭利な物体上での乾燥形態である。薬学的組成物には、顆粒剤、散剤、錠剤、コート錠剤、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、クリーム、活性化合物の遅延性放出を伴う滴剤または調製物が含まれ、これらの調製物では、賦形剤および添加剤ならびに/または補助剤、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、着香剤、甘味料または可溶化剤が、前述のとおり習慣的に使用される。薬学的組成物は、様々な薬物送達系における使用に適している。薬物送達法に関する簡単な概説は、Langer R, Science 249: 1527-33 (1990)を参照されたい。
【0091】
本開示の化合物および任意に他の治療薬は、それ自体(ニート)または薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。薬剤中で使用する場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩を都合よく用いてその薬学的に許容される塩を調製してもよい。そのような塩には、以下の酸から調製されるものが含まれるが、それらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、そのような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することもできる。
【0092】
適切な緩衝剤には、酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8~2%w/v)が含まれる。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)が含まれる。
【0093】
本開示の薬学的組成物は、本明細書に記載の化合物の有効量および任意に薬学的に許容される担体中に含まれる治療薬を含む。「薬学的に許容される担体」なる用語は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適した、1つまたは複数の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。「担体」なる用語は、天然または合成の有機または無機成分を指し、これと活性成分とを組み合わせて適用を促進する。薬学的組成物の構成要素は、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用がないような様式で、本開示の化合物と、および構成要素相互に、混合することも可能である。
【0094】
特に、本開示の化合物を含むが、それに限定されない、治療剤は、粒子で提供してもよい。本明細書において用いられる粒子は、全体または一部として、本開示の化合物または本明細書に記載の他の治療剤からなり得る、ナノ粒子または微粒子(またはいくつかの場合には、より大きな粒子)を意味する。粒子は、腸溶コーティングを含むが、それに限定されない、コーティングにより取り囲まれたコア中に治療剤を含んでもよい。治療剤は、粒子全体に分散してもよい。治療剤は、粒子中に吸着してもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびその任意の組み合わせなどを含む、任意の次数の放出動力学にであってもよい。粒子は、治療剤に加えて、腐食性、非腐食性、生分解性、または非生分解性材料またはその組み合わせを含むが、それらに限定されない、薬学および医学の技術分野において日常的に使用される任意の材料を含んでもよい。粒子は、溶液または半固体状態の本開示の化合物を含む、マイクロカプセルであってもよい。粒子は実質的に任意の形状であってもよい。
【0095】
非生分解性および生分解性ポリマー材料の両方を、治療剤を送達するための粒子の製造に使用することができる。そのようなポリマーは、天然または合成ポリマーであり得る。ポリマーは、望まれる放出期間に基づいて選択する。特に興味が持たれる生体付着性ポリマーには、Sawhney et al., Macromolecules 26:581-587 (1993)に記載の生体腐食性ヒドロゲルが含まれ、その教示は本明細書に組み入れられる。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が含まれる。
【0096】
治療剤は制御放出系に含まれてもよい。「制御放出」なる用語は、製剤からの薬物放出の様式および特性が制御されている任意の薬物含有製剤を指すことが意図される。これは、即時ならびに非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤には、持続放出および遅延放出製剤が含まれるが、それらに限定されない。「持続放出」(「徐放」とも呼ばれる)なる用語は、その通常の意味で使用され、薬物の長期間にわたる徐々の放出を提供し、かつ長期間にわたり実質的に一定の薬物血中レベルをもたらし得る、薬物製剤を指す。「遅延放出」なる用語は、その通常の意味で使用され、製剤の投与とそれからの薬物の放出との間に時間遅延がある、薬物製剤を指す。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の徐々の放出を含んでも、そうでなくてもよく、したがって、「持続放出」であってもそうでなくてもよい。
【0097】
長期持続放出植込錠の使用は、慢性状態の処置に特に適切であり得る。本明細書において用いられる「長期」放出は、植込錠が少なくとも7日間、最大30~60日間にわたり、治療レベルの活性成分を送達するように構成され、配置されることを意味する。長期持続放出植込錠は当業者には周知であり、前述の放出系のいくつかが含まれる。
【0098】
本明細書に記載の組成物および方法に対する他の適切な改変および適応は、当業者には公知の情報を考慮すれば、本明細書に含まれる本開示の記載から容易に明らかであり、本開示またはその任意の態様の範囲から逸脱することなく行い得ることは、関連技術分野の当業者には理解されよう。
【実施例
【0099】
本開示を一般に記載しているが、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されると思われる。これらは本開示の様々な局面および態様を例示するために含まれるにすぎず、本開示を限定する意図はない。
【0100】
PLE誘導体の合成
キシレン系のFL-PLE(図3)およびPro-FL-PLE(図4)の合成は2~3段階で達成された(図5)。
【0101】
ROS(図6)、酵素、および低pHまたは腫瘍微小環境における任意の他のトリガによって切断可能な、脂質-フルオレセイン結合体の保護バージョンも、同様の様式で合成することができる(図6)。当該合成は、二重特異性のために2つの異なる保護基を含むPro-FL-PLEを作製するためにも適用できる(論理ゲートまたは二重ゲートアプローチ、図7)。
【0102】
合成および特徴づけ
脂質-リンカー(MS-100)、脂質-FITC(MS-109)および遮蔽された脂質-FITC(MS-115)の合成手順
【0103】
脂質MS-100の調製。N,N-ジメチルセファリンオクタデシルエステル(5mg、0.011mmol、1当量)および4-(ブロモメチル)ベンジルアミン.HBr塩(3.4mg、0.012mmol、1.1当量)を0.3mLのクロロホルム(またはトルエン)に溶解した。炭酸カリウム(1.5mg、0.011mmol、1当量)の添加後、得られた混合物を80℃まで加熱し、12時間撹拌した。反応の完了をLC-MS(移動相:A=20mM炭酸水素アンモニウム緩衝液、pH7;B=アセトニトリル;勾配は7分で0~100%B、0.75mL分-1、λ=220nm)によりモニターした。粗生成物を次の段階に進めた。
【0104】
脂質-FITC MS-109の調製。前述の反応からの粗製脂質MS-100(0.011mmol)を、0.3mLのクロロホルム中でフルオレセインイソチオシアネート(4.3mg、0.011mmol、1.0当量)および炭酸カリウム(4.5mg、0.033mmol、3.0当量)と反応させた。混合物を室温で2時間撹拌した。反応の完了をLC-MS(保持時間=4.2分、移動相:A=20mM炭酸水素アンモニウム緩衝液、pH7;B=アセトニトリル;勾配は7分で0~100%B、0.75mL 分-1、λ=280nm)によりモニターした。乾燥窒素ガスを通過させることにより溶媒を蒸発させた。得られた混合物をDMSOに溶解した(注:粘性の低い溶液とするために十分な量のDMSOを加えた。溶液を0.45ミクロンフィルターを通してろ過した後、HPLC上にロードした。乳濁液の生成を防止するために、いかなる激しい振盪またはピペット操作も回避すべきである)。次いで、溶液をHPLC(移動相:A=20mM酢酸アンモニウム緩衝液、pH7;B=アセトニトリル;勾配は35分で0~100%B、12mL 分-1、λ=280nm)で精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、凍結乾燥して、6mg(収率59%)のMS-109を提供した。
【0105】
遮蔽された脂質-FITC MS-115の調製。脂質-FITC MS-109(4mg、0.004mmol)を、0.15mLのクロロホルム-DMSO(2:1)中、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾル-1-イル(2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル)エチル)カーボネート(3.5mg、0.010mmol、2.2当量)およびDIEA(3.0当量)と反応させた。混合物を室温で12時間撹拌した。反応の完了をLC-MS(保持時間=5.8分、移動相:A=20mM炭酸水素アンモニウム緩衝液、pH7;B=アセトニトリル;勾配は7分で0~100%B、0.75mL 分-1、λ=280nm)によりモニターした。乾燥窒素ガスを通過させることにより溶媒を蒸発させた。得られた混合物をDMSOに溶解した(注:粘性の低い溶液とするために十分な量のDMSOを加えた。溶液を0.45ミクロンフィルターを通してろ過した後、HPLC上にロードした。乳濁液の生成を防止するために、いかなる激しい振盪またはピペット操作も回避すべきである)。次いで、溶液をHPLCで精製した(保持時間=移動相:A=20mM酢酸アンモニウム緩衝液、pH7;B=アセトニトリル;勾配は35分で0~100%B、12mL 分-1、λ=280nm)。純粋な生成物を含む画分を合わせ、凍結乾燥して、1mg(18%)のMS-115を提供した。
【0106】
1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾル-1-イル(2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル)エチル)カーボネートは、Journal of Medicinal Chemistry, 53(21), 7767-7777; 2010に報告されたプロトコルに従って調製した。
【0107】
番号付き態様
態様1は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する:
式中:
R1は独立にH、または腫瘍細胞外マトリックスにおいて脱保護される保護基であり;
Yは非存在、-N(H)C(S)N(H)-、-N(H)C(O)N(H)-、-N(H)C(O)-、-N(H)C(S)-、-C(O)-N(H)-、-C(S)N(H)-、-C(O)O-、-N(H)-、-S(O)N(H)-、-S(O)2N(H)-、-S(O)3-、-P(O)2N(H)-、-P(O)3-であり;
Lはリンカーであり;かつ
脂質はがん細胞標的指向性脂質であり;かつ
少なくとも1つのR1は保護基である。
【0108】
態様2は、両方のR1が保護基である、態様1の化合物に関する。
【0109】
態様3は、各R1が異なる、態様1の化合物に関する。
【0110】
態様4は、両方のR1が同じである、態様1の化合物に関する。
【0111】
態様5は、保護基がROS切断可能基である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0112】
態様6は、保護基が酸切断可能基である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0113】
態様7は、保護基が還元的に切断される、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0114】
態様8は、保護基が酵素切断可能基である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0115】
態様9は、保護基が低pHで切断可能である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0116】
態様10は、保護基が腫瘍微小環境において任意のトリガにより切断される、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0117】
態様11は、保護基が
である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0118】
態様12は、保護基が
である、態様1~4のいずれか1つの化合物に関する。
【0119】
態様13は、LがUV活性リンカーである、態様1~12のいずれか1つの化合物に関する。
【0120】
態様14は、Lが発色団である、態様1~12のいずれか1つの化合物に関する。
【0121】
態様15は、Lが
である、態様1~12のいずれか1つの化合物に関する。
【0122】
態様16は、脂質が5~30の炭素原子を含む脂質であり得る、態様1~15のいずれか1つの化合物に関する。
【0123】
態様17は、脂質が
である、態様1~16のいずれか1つの化合物に関する。
【0124】
態様18は、
である、態様1の化合物に関する。
【0125】
態様19は、
である、態様1の化合物に関する。
【0126】
態様20は、
である、態様1の化合物に関する。
【0127】
態様21は、態様1~20のいずれか1つの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物に関する。
【0128】
態様22は、がんを患っている対象においてがんを処置する方法であって、態様1~20のいずれか1つの化合物、または態様18の薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象のがんを処置する、方法に関する。
【0129】
態様23は、がんが神経膠腫である、態様22の方法に関する。
【0130】
態様24は、脂質-FITCを作製する方法であって、溶媒中で脂質をフルオレセインイソチオシアネートおよび塩基と反応させる段階を含む、方法に関する。
【0131】
態様25は、遮蔽された脂質-FITCを作製する方法であって、溶媒中で脂質-FITCを保護基および塩基と反応させる段階を含む、方法に関する。
【0132】
態様26は、異種の保護基を有するFITC-PLEを作製する方法であって、以下の段階:
i)四級アンモニウム中間体を生成するために脂質を臭化アミノベンジルに結合する段階、
ii)キシレン系FL-を生成するために中間体をフルオレセインイソチオシアネートにカップリングする段階、および
iii)任意にPro-FL-PLEを保護する段階
を含む、方法に関する。
【0133】
態様27は、塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリアルキルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたはその組み合わせである、態様24~26のいずれか1つの方法に関する。
【0134】
態様28は、塩基が炭酸カリウムである、態様24~26のいずれか1つの方法に関する。
【0135】
態様29は、溶媒が、クロロホルム、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、水、またはその任意の組み合わせである、態様24~28のいずれか1つの方法に関する。
【0136】
態様30は、溶媒がクロロホルムである、態様24~28のいずれか1つの方法に関する。
【0137】
態様31は、塩基がDIEAである、態様30の方法に関する。
【0138】
態様32は、溶媒がクロロホルム-DMSO(2:1)である、態様24~26のいずれか1つの方法に関する。
【0139】
参照による組み込み
本明細書において引用するすべての特許、特許出願公報、雑誌論文、書籍および他の出版物は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
等価物
当業者であれば、日常的実験だけを用いて、本明細書に記載の本開示の様々な態様に対する多くの等価物を認識する、または確認し得るであろう。そのような等価物は添付の請求の範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】