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特表2022-538918乗り物の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】乗り物の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/56 20180101AFI20220830BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20220830BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20220830BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20220830BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20220830BHJP
   F24F 11/38 20180101ALI20220830BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20220830BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20220830BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20220830BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20220830BHJP
   F24F 130/20 20180101ALN20220830BHJP
   F24F 120/20 20180101ALN20220830BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/52
F24F11/64
F24F11/70
F24F11/89
F24F11/38
F24F11/61
B60H1/00 101F
B60H1/00 101J
B60H1/00 101K
B60H1/00 103S
B60H1/00 101T
F24F110:10
F24F110:20
F24F110:30
F24F130:20
F24F120:20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500108
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 IN2020050569
(87)【国際公開番号】W WO2021005617
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201941027045
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アルンベル タンガマーニー
(72)【発明者】
【氏名】ロビン シー ジャヤラム
(72)【発明者】
【氏名】サムソン リチャードソン ディー
【テーマコード(参考)】
3L211
3L260
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211BA32
3L211DA93
3L211EA79
3L211FB08
3L211FB09
3L211GA82
3L211GA83
3L260AA20
3L260BA01
3L260BA64
3L260CA08
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA15
3L260CA34
3L260EA19
3L260FC33
3L260GA11
3L260GA15
3L260HA01
3L260HA06
3L260JA12
3L260JA13
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】乗り物の熱条件に影響するすべての環境因子を考慮した、乗り物の熱快適性の正確な評価を行う必要性がある。また、エネルギー効率的であって正確な熱快適性値を用いて乗り物のHVACシステムを制御する必要がある。さらには、乗員及び操作者のいずれにとっても扱いやすい、ワイヤレスな熱快適性計測システムが、必要とされている。
【解決手段】
乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)であり、このシステムは、複数の高精度センサ装置(104)、並びにデータ取得装置(106)を含む。センサ装置(104)は、複数のパラメータ、例えば、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射を同時に計測するように構成されている。好ましくは、センサ装置(104)の少なくとも1つが、乗り物(102)のウィンドシールドに埋め込まれている。データ取得装置(106)は、トランシーバユニット(114)、記憶ユニット(116)、及び解析ユニット(118)を含む。データ取得装置は、パラメータに基づいて、データ、例えば、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)、を算出し、算出されたデータ及び計測されたパラメータに基づいて乗り物(102)の熱快適性マップを生成するように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)であり、
前記システムは:
複数のパラメータを同時に計測するように構成されている、複数の高精度センサ装置(104)、
並びに
下記を有するデータ取得装置(106):
トランシーバユニット(114)
記憶ユニット(116)、及び
解析ユニット(118)
を有し、
前記センサ装置(104)の少なくとも1つは、前記乗り物(102)のウィンドシールドに埋め込まれており、
前記パラメータは、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射であり、
前記データ取得装置(106)は、前記パラメータに基づいてデータを算出し、算出された前記データ及び計測された前記パラメータに基づいて前記乗り物(102)の前記熱快適性マップを生成するように構成されており、
前記データとしては、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)が挙げられる、
ワイヤレスシステム(100)。
【請求項2】
前記センサ装置(104)が、空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、表面温度センサ、表面熱流束センサ、正味放射センサ、太陽放射センサ、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項3】
前記センサ装置(104)の少なくとも1つが、前記乗り物(102)のウィンドシールドに埋め込まれており、それによって、前記ウィンドシールドの温度を計測する、
請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項4】
前記センサ装置(104)が、前記乗り物(102)の寸法、インテリア、スケジュール、及び時刻に基づいて配置される、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項5】
前記データ取得装置(106)が、前記パラメータを送信し、受信し、記憶し、かつ解析するように構成されている、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項6】
前記データ取得装置(106)が、前記センサ装置(104)から受信した前記データのリアルタイムな算出を実行する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項7】
前記熱快適性マップが、前記乗り物(102)にわたる、データ及びパラメータのうちの少なくとも1つ又はこれらの組み合わせの分布であり、
前記データとしては、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)が挙げられ、
前記パラメータとしては、空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、湿分センサ、表面温度センサ、表面熱流束センサ、正味放射センサ、及び太陽放射センサが挙げられる、
請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項8】
随意に、前記パラメータ及び前記熱快適性マップを表示するための表示装置108を有する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項9】
前記表示装置(108)が、前記乗り物(102)及び/又はリモートポータブル装置(110)に統合されている、請求項10に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項10】
前記リモートポータブル装置(110)が、コンピュータ、モバイル、ラップトップ、タブ、スマートウォッチ、又はAR眼鏡である、請求項9に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項11】
前記データ取得装置(106)が、1又は複数の前記リモートポータブル装置(110)に同時にペアリングすることができる、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項12】
前記リモートポータブル装置(110)が、前記データ取得装置(106)に制御コマンドを送信し、さらに、前記HVACの作動を起動するように構成されている、請求項9に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項13】
前記表示装置(108)が、前記乗り物(102)のダッシュボード、ウィンドシールド、又は座席の背面に統合されている、請求項8に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項14】
前記データ取得装置(106)が、随意に、前記熱快適性マップを表示するための表示ユニット(108)を有する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項15】
前記センサ装置(104)、前記データ取得装置(106)、及び前記表示装置(108)が、ワイヤレス通信プロトコルを介して接続している、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項16】
前記ワイヤレス通信が、短距離又は長距離のワイヤレス通信プロトコルを用いる、請求項17に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項17】
随意に、前記乗り物(102)の地理的位置を決定するためのグローバルポジショニング装置(120)を有する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項18】
随意にタイマー回路(122)を有しており、前記タイマー回路(122)が、前記計測されたパラメータ、算出された前記データ、及び前記熱快適性マップの、時間及び日付を提供する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項19】
随意にリモートサーバ(112)を有しており、このリモートサーバは、前記パラメータ、算出された前記データを記憶し、前記熱快適性マップを生成するためのものである、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項20】
センサ装置(104)からの前記パラメータを、前記センサ装置(104)の1つ又は前記データ取得装置(106)に記憶することができる、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項21】
前記熱快適性マップを前記データ取得装置(106)に記憶することもできる、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項22】
前記熱快適性マップを、前記乗り物(102)のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整するために用い、それによって、前記熱快適性を達成する、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項23】
前記データ取得装置(106)の前記解析ユニット(118)が、随意に、乗り物(102)のエネルギー効率的なエネルギー熱快適性及びコスト効率的な熱快適性を予測することができる、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項24】
前記エネルギー効率的なエネルギー熱快適性又は前記コスト効率的な熱快適性を用いて、前記乗り物(102)のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、効率的なエネルギー消費又はコスト効率性を有する熱快適性を達成する、請求項23に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項25】
下記を有する、乗り物(102)の視覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性のマップを生成するためのワイヤレスシステム(100):
空気品質、光、及び騒音を含むパラメータの少なくとも1つを計測するように構成されているセンサ装置(104)のうちの少なくとも1つ、ここで、前記センサ装置(104)のうちの少なくとも1つが、前記乗り物(102)のウィンドシールドに埋め込まれている、並びに、
前記パラメータに基づいて、光の強度、音響レベル、及び空気中の揮発性有機化合物(VOC)の量を含むデータのうちの少なくとも1つを算出し、算出された前記データに基づいて、前記乗り物(102)の視覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性を含むマップの少なくとも1つを生成するように構成されている、データ取得装置(106)。
【請求項26】
随意に、前記センサ装置(104)の少なくとも1つが、光センサ、騒音センサ、雨センサ、及び揮発性有機化合物(VOC)センサである、請求項25に記載の乗り物(102)の視覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性のマップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項27】
随意に、前記データ取得装置(106)が、前記熱快適性マップに基づいて快適性レベルを評価するために適合されている、請求項1に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項28】
前記快適性レベルが、「快適である-中立」、「不快である-わずかに暖かい」、「不快である-わずかに暖かい」、「不快である-暑い」、「不快である-非常に暑い」、「不快である-涼しい」、及び、「不快である-寒い」として規定される、請求項27に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項29】
随意に、前記データ取得装置(106)及び/又はリモートサーバ(112)が、快適性レベルの警告を前記表示装置(108)又は前記リモートポータブル装置(110)に提供するように構成されている、請求項27に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項30】
随意に、前記データ取得装置(106)及び/又はリモートサーバ(112)が、HVAC診断を実行し、整備のための通知を提供するように構成されている、請求項27に記載の乗り物(102)の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステム(100)。
【請求項31】
下記を含む、乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700):
複数のセンサ装置(104)を取り付けるための、前記乗り物(102)における特定の領域を決定すること、ここで、前記センサ装置(104)の少なくとも1つを、前記乗り物(102)のウィンドシールドに埋め込む;
前記乗り物(102)に位置している複数の前記センサ装置(104)によって、同時に、前記乗り物(102)の複数のパラメータを計測すること、ここで、前記パラメータとしては、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射が挙げられるが、これらに限定されない;
前記パラメータを、前記複数のセンサ装置(104)によって、ワイヤレスで送信すること;
前記パラメータを、データ取得装置(106)のトランシーバユニット(114)によってワイヤレスで受信すること;
前記パラメータを、前記データ取得装置(106)の記憶ユニット(116)によって記憶すること;
前記パラメータを、前記データ取得装置(106)の解析ユニット(118)によって解析し、それによって、前記パラメータに基づいて、データ、例えば、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を、算出すること;
算出された前記データ及び計測された前記パラメータに基づいて、前記乗り物(102)の熱快適性マップを生成すること;並びに、
前記熱快適性マップを用いて、前記乗り物(102)のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、前記熱快適性を達成すること。
【請求項32】
前記解析ユニット(118)による前記パラメータの解析の実行が、熱非対称性を評価することを含む、請求項30に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項33】
前記熱非対称性が、前記乗り物(102)における任意の2つの場所の間での、計測されたパラメータにおける差異、又は算出されたデータにおける差異である、請求項31に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項34】
前記パラメータを解析することが、前記解析ユニット(118)によってエネルギー効率的な熱快適性を予測することを含む、請求項30に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項35】
前記エネルギー効率的な熱快適性が、算出された前記データと、HVACシステムを作動させるためのエネルギー消費との間のトレードオフ点であり、このトレードオフは、最適なデータ範囲内での熱快適性を維持しつつエネルギー消費を低減するためのHVACシステムの設定点の値を見出すことを意味する、請求項33に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項36】
前記パラメータを解析することが、随意に、前記解析ユニット(118)によってコスト効率的な熱快適性を予測することを含む、請求項33に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項37】
前記コスト効率的な熱快適性が、前記乗り物のグレージングの性能と、HVACシステムを作動させるためのコストとの間のトレードオフ点であり、このトレードオフは、最適なデータ範囲内での熱快適性を維持しつつ効率的なコストのためのHVACシステムの設定点の値を見出すことを意味する、請求項35に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【請求項38】
前記エネルギー効率的な熱快適性又は前記コスト効率的な熱快適性を用いて、前記乗り物(102)のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、効率的なエネルギー消費又はコスト効率性を有する熱快適性を達成する、請求項33に記載の乗り物(102)の熱快適性を決定する方法(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗り物の熱快適性マップを生成するシステム及び方法に関する。さらに特定的には、本特許開示は、HVACシステムを制御又は調整して、効率的なエネルギー消費を伴う熱快適性を達成するワイヤレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の記載は、本開示を理解するうえで有用であり得る情報を含む。これは、ここに提供される情報のいずれかが従来技術又は本件で請求している開示に関連することを認めるものではなく、又は、特定的若しくは暗黙的に参照されているいずれかの文献が従来技術であることを認めるものではない。
【0003】
乗り物は、日常正確の不可欠な部分になっている。益々増加する移動性に起因して、人々は、より多くの時間を乗り物内で過ごす。これは、乗り物内部における乗員の快適性へのより多くの注目をもたらす。乗員に関する4つの主要な快適性は、熱快適性、視覚的快適性、音響的快適性、及び空気品質快適性である。これらすべての快適性のうち、熱快適性は、乗り物の乗員にとって最も重要であり、なぜならば、これは、乗員の健康及びパフォーマンスに主たる影響を及ぼし得るからである。多くの健康問題が、乗り物内部における高い温度に起因して毎年報告されている。
【0004】
熱快適性は、熱的環境への満足度を表現する心の状態である。熱快適性は、複数の感覚によって規定される主観的な用語であり、乗員によって経験される熱条件に影響する全ての要因によって確保される。人はそれぞれ異なるので、同一条件において、感知される熱感覚は、異なり得る。これは、快適性を達成するために必要とされる環境条件が、万人にとって同一ではないということを意味する。
【0005】
従来、乗り物における熱快適性を評価、監視、又は計測するための方法及びシステムは、頭及び足の高さ(レベル)でセンサを用いて空気温度を計測することを含む。そのような計測の主要な目的は、寒い又は暖かい乗り物において、温度がどれだけ速く上昇または下降するかを決定することである。別の目的は、足の高さでの温度と頭の高さでの温度との間で差異を調べることであり、また、温度がいつ熱的に快適なレベルに達するのかを確立することである。
【0006】
しかしながら、上記のアプローチの不利な点は、熱快適性感覚に関係する必須パラメータの1つ又は2つのみが計測されるということである。例えば、従来の方法は、空気温度のみを計測する。空気温度のみを計測することによって、空気速度、(冷たい又は暑い)放射、相対湿度、及び表面温度の影響が無視され、計測は、間違った結論を導くおそれがある。
【0007】
近年、それぞれの環境パラメータを計測することによって、乗り物内の熱快適性を評価する努力が行われている。全ての環境パラメータを考慮して熱快適性を計測する種々の評価アプローチが存在する。そのようなアプローチは、国際標準化機構(ISO)、アメリカ規格協会(ANSI)、欧州規格で説明されている。主要な熱快適性規格は、ISO7730、ANSI/ASHRAE規格55、及びEN1525である。典型的には、全ての熱快適性規格は、空気温度、平均放射温度、相対湿度、及び空気速度(風速)の組み合わせを用いて熱快適性を評価するアプローチに基づいている。これらパラメータのすべての間には、多くの相互相関が存在する。熱快適性は、これらのパラメータすべてを相互に関連付けることによって、得ることができる。
【0008】
覚えておくべき他の重要事項は、乗り物における熱快適性の評価は、建物における場合よりもはるかに複雑であるということである。熱快適性にたどりつくためにより多くの環境パラメータを考慮しているにもかかわらず、上記のアプローチでの不利な点は、乗り物における環境パラメータに影響する因子をほとんど考慮していない点である。乗り物におけるグレージング領域は、キャビン表面と比較して大きい。グレージングからの太陽光入射は、乗り物の熱環境に大きく影響する。太陽の位置に対する乗り物の方向も、連続的に変化する。したがって、乗り物における熱環境は、ウィンドウ又はウィンドシールドを通る太陽放射の入射にも依存する。さらに、乗り物は建物よりもコンパクトなので、乗り物内部の熱環境は、座席の表面温度及び熱流速、ハンドル、ダッシュボード、ウィンドシールド、及びウィンドウにも大きく依存する。
【0009】
乗り物内部の熱快適性を計測、監視、及び評価するための方法及びシステムのほかに、HVACシステムを制御するための熱快適性研究の使用に関する調査もいくつか存在する。米国特許第5988517号は、熱快適性モデルを利用する熱制御を達成するためのHVAC制御システムを記載している。この熱快適性モデルは、内部温度、設定温度、周囲温度、及び太陽負荷を用いて計算される。1つの不利な点は、米国特許第5988517号で開示されている熱快適性モデルは、乗り物の熱シナリオに影響する全ての環境パラメータを考慮していないことである。結果として、ほんのいくつかのパラメータのみを考慮した熱快適性モデルを用いることは、誤っており、また、間違った結論をもたらす。そのようなモデルは、HVACシステムを、最大冷却又は最大加熱に調整するであろう。したがって、これは、さらに、多くのエネルギー浪費につながる。
【0010】
追加的に、現在の乗り物内部の熱快適性システムは、パラメータを計測するためのセンサ、パラメータを分析して熱快適性を評価するためのソフトウェアを有する計算装置、及び、熱快適性を可視化するための表示装置(ディスプレイ装置)を有する。このようなシステムは、リアルタイムかつマルチポイントな分析(多点分析)のために必要とされる。現状では、センサ、計算装置、及び表示装置は、熱快適性を評価し可視化するために、近接して保持されている。熱快適性を監視する操作者は、熱快適性を視覚化するためにシステムの近くにいる必要がある。したがって、そのようなシステムは、乗り物が走行しているとき、又は、乗り物を1つの場所から別の場所へと移動させるときに、熱快適性の計測および可視化に関係する限界を有する。
【0011】
さらには、センサ、計算装置、及び視覚化装置は、物理的なワイヤを介して接続している。乗り物内における物理的なワイヤは、乗員にとって、乗り物内における大きな邪魔になることがある。上記の事実に起因して、そのようなシステムは、乗員にとって扱いやすいものではなく、操作者にとって扱いやすいものでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、乗り物の熱条件に影響するすべての環境因子を考慮した、乗り物の熱快適性の正確な評価を行う必要性がある。また、エネルギー効率的であって正確な熱快適性値を用いて乗り物のHVACシステムを制御する必要がある。さらには、乗員及び操作者のいずれにとっても扱いやすい、ワイヤレスな熱快適性計測システムが、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、複数の高精度センサ装置及びデータ取得装置を含む、乗り物の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステムを提供する。センサ装置は、複数のパラメータ、例えば、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流速、太陽放射及び正味放射を、同時に計測するように構成されている。好ましくは、センサ装置のうちの少なくとも1つを、乗り物のウィンドシールドに埋め込む。データ取得装置は、トランシーバユニット、記憶ユニット、及び解析ユニットを有する。データ取得装置は、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均温冷申告(予想平均申告)(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を含むデータを算出し、算出されたデータ及び計測されたパラメータに基づいて、乗り物の熱快適性マップを生成するように構成されている。
【0014】
別の側面によれば、本開示は、乗り物の知覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性のマップを生成するためのワイヤレスシステムを提供する。このシステムは、空気品質、光、及び騒音(ノイズ)を含むパラメータのうちの少なくとも1つを計測するように構成されている少なくとも1つのセンサ装置を含む。好ましくは、センサ装置のうちの少なくとも1つを、乗り物のウィンドシールドに埋め込む。データ取得装置は、パラメータに基づいて、光の強度、音レベル、及び空気中における揮発性有機化合物(VOC)の量、を含む少なくとも1つのデータを算出し、算出されたデータに基づいて、乗り物の、知覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性を含む、少なくとも1つのマップを生成するように構成されている。
【0015】
別の側面によれば、本開示は、乗り物の熱快適性を決定する方法を提供する。この方法は、まず、複数のセンサ装置を取り付けるための乗り物内の特定の領域を決定することを含む。センサ装置の少なくとも1つを、乗り物のウィンドシールドに埋め込む。次に、乗り物の複数のパラメータを、乗り物内に位置している複数のセンサ装置によって同時に計測し、パラメータとしては、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射が挙げられるが、これらに限定されない。次に、パラメータを、複数のセンサ装置によってワイヤレスで送信する。次に、パラメータを、データ取得装置のトランシーバユニットによって、ワイヤレスで受信する。次に、パラメータを、データ取得装置の記憶ユニットによって、記憶する。次に、パラメータを、データ取得装置の解析ユニットによって解析する。これは、パラメータに基づいて、データ、例えば、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を算出することを含む。次に、算出されたデータ及び計測されたパラメータに基づいて、乗り物の熱快適性マップを生成する。最後に、熱快適性マップを用いて、HVACシステム操作プランを制御し、又は乗り物のHVACシステムの設計を調整し、それによって、効率的なエネルギー消費を伴う熱快適性を達成する。実施態様を、例示によって説明する。実施態様は、添付の図面に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示に係る、乗り物の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステムのブロックダイアグラムである。
図2図2は、本開示の実施態様の1つに係る、データ取得装置のブロックダイアグラムである。
図3図3は、算出された平均放射温度に基づく、乗り物の例示的な熱快適性マップである。
図4図4は、本開示の実施態様の1つに係る、乗り物の熱快適性マップを生成するためのワイヤレスシステムのブロックダイアグラムである。
図5図5は、本開示の実施態様の1つに係る、データ取得装置のブロックダイアグラムである。
図6図6は、本開示の実施態様の1つに係る、高温度と低温度との間での快適性レベルに関する数値を示すPMV棒グラフに基づく例示的な快適性レベルを示す略図である。
図7図7は、本開示の実施態様の1つに係る、乗り物の熱快適性を決定するフローチャートである。
図8図8は、本開示の実施態様の1つに係る、熱快適性マップを利用して乗り物のHVACシステムを制御し、それによって熱快適性を達成するフローチャートである。
図9A図9Aは、空気温度の分布に基づく乗り物の例示的な熱非対称性である。
図9B図9Bは、空気温度の分布に基づく乗り物の例示的な熱非対称性である。
図10図10は、本開示の実施態様の1つに係る、エネルギー効率的な熱快適性を予測するフローチャートである。
図11図11は、本開示の実施態様の1つに係る、コスト効率的な熱快適性を予測するフローチャートである。
図12図12は、作用温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。
図13図13は、平均放射温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。
図14図14は、等価温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。
図15図15は、PMVの例示的なデータプロットを示すグラフである。
図16図16は、PPDの例示的なデータプロットを示すグラフである。
図17図17は、熱非対称性の例示的なデータプロットを示すグラフである。
図18図18は、駐車時の作用温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図19図19は、冷却時の作用温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図20図20は、駐車時の平均放射温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図21図21は、冷却時の平均放射温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図22図22は、駐車時の等価温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図23図23は、冷却時の等価温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。
図24A図24Aは、乗り物内部における所望の温度を維持するために必要な、熱カット、乗り物内部における作用温度、及びエネルギー消費を示す。
図24B図24Bは、コスト効率的な熱快適性モデルの例を示す。
図25図25は、一組の異なるグレージングに関して、自動車キャビンに関するHVAC負荷の例を示す。
図26図26は、一組の異なるグレージングに関して、乗り物に関する熱非対称性マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者は、図中の要素は簡潔さ及び明確さのためのものであり、必ずしも縮尺どおりではないことを理解する。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、他の要素に対して誇張されており、それによって、本開示の実施態様の理解を向上させることを助ける。
【0018】
本開示を、本願に添付の図面を参照して、より詳細に議論する。添付の図面では、類似の要素及び/又は対応する要素を、同様の参照番号によって、参照している。
【0019】
簡便さのために、本開示で用いている特定の用語及びフレーズの意味を、下記に提供する。本明細書の他の部分における用語の使用と、このセクションで提供されるその定義との間に明らかな乖離がある場合には、このセクションにおける定義が優先する。
【0020】
<定義>
熱快適性 - 熱快適性は、熱環境を伴って表現される心の状態であり、主観的な評価によって評価される。熱快適性は、複数の感覚によって規定される主観的な用語であって、乗員によって経験される熱条件に影響するすべての要素によって確保され、したがって、このコンセプトの普遍的な定義を提供することは困難である。
【0021】
熱快適性マップ - 熱快適性マップは、乗り物の異なる構成要素におけるデータ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))及び/若しくはパラメータ(空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、表面温度センサ、表面熱流束、正味放射センサ、及び太陽放射センサ)の少なくとも1つ又はこれらの組み合わせの分布を描写する3次元熱画像である。
【0022】
空気温度 -空気温度は、位置及び時間に対して、身体を取り囲む空気の平均温度として定義される。空気温度は、IR放射センサ、IRセンサ、IRカメラ、抵抗温度検出器、及び熱電対によって計測することができるが、これに限られない。
【0023】
空気速度 -空気速度(風速)は、位置及び時間に対して、身体が暴露している空気の平均速度として規定される。
【0024】
相対湿度 - 相対湿度(RH)は、特定の温度及び圧力における、空気中の水蒸気の量の、空気が保持することができる水蒸気の量に対する比として、定義された。
【0025】
グローブ温度 - グローブ温度は、グローブ温度計の温度である。グローブ温度計は、熱快適性において、主に平均放射温度を評価するために用いられる装置である。
【0026】
表面温度 - 表面温度は、表面の温度、例えば、ハンドル、座席、ダッシュボード、ウィンドウ、ウィンドシールド、ヘッドレスト、床、ヘッドライナー、又はエアバッグなどの温度である。表面温度は、IR放射センサ、IRセンサ、IRカメラ、抵抗温度検出器、及び熱電対によって計測することができるが、これに限られない。
【0027】
表面熱流束 - 表面熱流束(表面熱フラックス)は、特定の表面、例えばハンドル、座席、ダッシュボード、ウィンドウ、ウィンドシールド、ヘッドレスト、床、ヘッドライナー、又はエアバッグを通る熱エネルギーの量である。
【0028】
太陽放射 - 太陽放射は、測定装置の波長範囲で示される、電磁放射の形態で太陽から受け取られる、単位面積当りのパワー(平方メートル当たりのワット、W/m)である。太陽放射は、多くの場合、所与の期間にわたって積分され、それによって、その期間の間における、周囲環境に放射された放射エネルギー(平方メートル当たりのジュール、J/m)を示す。この積分された太陽放射は、太陽照射、太陽露光、日射、又は日射と呼ばれる。
【0029】
正味放射 -正味放射は、表面、例えばハンドル、座席、ダッシュボード、ウィンドウ、ウィンドシールド、ヘッドレスト、床、ヘッドライナー、又はエアバッグにおける単位面積あたりに受容される熱(平方メートル当たりのワット、W/m)である。
【0030】
平均放射温度 - 平均放射温度は、実際の包囲空間の場合における乗員からの放射による熱損失と同じ熱損失をもたらす、仮想の黒い包囲空間の均一温度である。平均放射温度は、乗員を取り囲む全ての物体(例として、ハンドル、座席、ダッシュボード、ウィンドウ、ウィンドシールド、ヘッドレスト、床、ヘッドライナー、又はエアバッグ)の平均温度、及びグローブセンサ温度を示す。平均放射は、下記の等式(ISO7726規格)を用いることによって算出される:
【0031】
【数1】
【0032】
式中、Trは、平均放射温度であり、Tは、周囲表面iの表面温度であり、Fp-iは、人と表面iとの間の形態係数である。
【0033】
平均放射温度は、下記の等式(ISO7726規格)によって、グローブセンサ温度を用いて評価することもできる:
【0034】
【数2】
【0035】
式中、MRTは、平均放射温度(℃)であり、GTは、グローブ温度(℃)であり、Vは、グローブのレベルにおける空気速度(m/s)であり、eは、グローブの放射率であり(無次元)、Dは、グローブの直径(m)、Tは、空気温度(℃)である。
【0036】
作用温度 - 作用温度は、加熱されていないグローブ温度センサによって直接に計測することができる、空気及び平均放射温度の統合された効果である。作用温度は、下記の等式(CSN EN ISO773)を用いて算出される:
【0037】
【数3】
【0038】
【数4】
【0039】
式中、α、α[Wm-2-1]は、それぞれ、物体表面における、対流及び放射による熱伝達の係数である。T、T[℃]は、それぞれ、空気温度、及び平均放射温度である。
【0040】
等価温度 -等価温度は、空気速度、空気温度、及び平均放射温度の組み合わされた効果を表現する。これは、平均放射温度が空気温度及びゼロの空気速度に等しい、等質空間の温度であり、ここでは、乗員が、評価対象である実際の条件における対流及び放射による熱損失と同じ熱損失を交換する。これは、乗員に関する対流熱伝達係数及び放射熱伝達係数によってそれぞれ重み付けされた、空気温度及び平均放射温度の平均を表す。等価温度は、0.1m/sの周囲空気速度に関する作用温度と同じ算出方法を用いる。0.1m/sよりも大きい周囲空気速度の値に関しては、等価温度は、空気温度、平均放射温度、空気速度、及び衣服の熱抵抗の関数として表現される。等価温度は、下記の等式(ISO14505)のとおり、空気速度、空気温度、及び平均放射温度との一定の関係である:
【0041】
【数5】
【0042】
【数6】
【0043】
式中、Teqは、等価温度、Tは、空気温度、Tは、平均放射温度、Vは、空気速度、Iclは、衣服の熱抵抗である。
【0044】
PMV/PPD - 熱的快適性は、PMV(予想平均申告)によって解析され、熱的不快度は、PPD(予測不快者率)によって解析されうる。PMV及びPPDは、国際規格ISO7730及びASHRAE規格55に入っており、これらによって、熱快適性及び熱的不快度が計測される。PMV及びPPDは、人間の身体と環境との間の相互作用に基づいており、これは、熱平衡式によって記述される。PMV-PPDは、6つの因子を考慮しており、これらは、人間の活動レベル、熱衣服、空気温度、平均放射温度、空気速度、及び相対湿度であり、それによって、体の熱平衡式の条件を満たすようにする。PMVインデックスは、等式(ISO14505)によって与えられる:
【0045】
【数7】
【0046】
式中、Mは、代謝率(W/m)であり、Wは、力学的仕事の率(W/m)であり、fclは、衣服領域因子であり、hは、対流性の熱伝達率(W/m)であり、Tは、平均放射温度(℃)であり、P及びTは、それぞれ、周囲の水蒸気圧及び周囲温度であり、それぞれ、kPa及び℃で表される。PMV値を算出するために必要な入力は、空気温度、平均放射温度、空気速度、相対湿度、代謝率、及び衣服遮断である。ゼロのPMV値は、身体が熱平衡にあることを示す。+0.5~-0.5の範囲のPMVは、熱快適性に関して許容可能である。
【0047】
PPDは、等式(ISO7730)によって与えられるとおりPMVに関係している。
【0048】
【数8】
【0049】
PMVは、熱平衡式と人間の熱快適性との間の定量的な関係を決定するための、7点タイプのPMV値スケールも記述する。PMVインデックスの値が、-3~+3(-3:寒い、-2:涼しい、-1:わずかに涼しい、0:中立である、1:わずかに暖かい、2:暖かい、3:熱い)を有する。
【0050】
熱非対称性 - 熱非対称性は、乗り物における任意の2つの場所の間での、計測されたパラメータ(空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射及び正味放射)における差異、又は、算出されたデータ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))における差異である。
【0051】
エネルギー効率的な熱快適性 - エネルギー効率的な熱快適性は、算出されたデータ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))と、HVACシステムを動かすためのエネルギー消費との間のトレードオフ点であり、このトレードオフは、最適なデータ範囲内で熱快適性を維持しつつ、エネルギー消費を低減するためのHVACシステムの設定値を見出すことを意味する。
【0052】
コスト効率的な熱快適性 -コスト効率的な熱快適性は、乗り物のグレージングの性能と、HVACシステムを動かすためのコストとの間のトレードオフ点であり、このトレードオフは、許容可能なデータ範囲内での熱快適性を維持しつつ、効率的なコストためのHVACシステムの設定値を見出すことを意味する。
【0053】
図1は、本開示のシステムを示すブロックダイアグラムである。図1では、乗り物102の熱快適性マップを生成するためのシステム100が、提供されており、これは、主に、複数のセンサ装置104、及びデータ取得装置106を有する。センサ装置104は及びデータ取得装置106は、ワイヤレス通信を介してカップリングしている(接続している)。ワイヤレス通信は、短距離又は長距離のワイヤレス通信プロトコルを用いる。短距離技術のうちのいくつかとしては、ブルートゥース(商標)、IEEE802.11ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)、ワイヤレスユニバーサルシリアルバス(WUSB)、超広域帯(UWB)、ZigBee(登録商標)(IEEE802.15.4、IEEE802.15.4a)、赤外線、ラジオ周波数識別(RFID)及び近距離無線通信(NFC)技術が挙げられるが、これらに限定されない。長距離ワイヤレス技術のうちのいくつかとしては、GSM(商標)、長距離RF及びWi-Fiが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
高精度センサ装置104が、複数のパラメータを同時に計測する。これらのセンサ装置104としては、空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、表面温度センサ、表面熱流束センサ、正味放射センサ、及び太陽放射センサが挙げられる。説明の容易さのために、複数のセンサ装置104を、全ての図面において、単一のブロックを用いて描写している。これらのセンサ装置104によって計測されるパラメータは、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射である。センサ装置104の配置は、非常に重要な因子であり、これは、パラメータの計測に影響しうる。センサ装置104は、乗り物102における特定の領域に配置される。いくつかの実施態様では、センサ装置104が、乗り物102の、ハンドル、座席、ダッシュボード、ウィンドウ、ウィンドシールド、ヘッドレスト、床、ヘッドライナー、又はエアバッグに配置される。少なくとも、1又は複数のセンサ装置104が、好ましくは、乗り物102のウィンドシールドに埋め込まれ、これによって、ウィンドシールドの温度を計測する。好ましくはウィンドシールドに埋め込まれるセンサ装置104は、表面温度センサ、表面熱流束センサ、正味放射センサ、及び太陽放射センサである。乗り物102におけるグレージング領域は、キャビン表面と比較して大きいので、ウィンドシールドからの太陽入射が、乗り物102の熱環境に大部分影響する。したがって、乗り物201のウィンドシールドの温度を計測することが重要となる。センサ装置104は、乗員に対して、乗り物102における頭部の高さ、呼気の高さ、足の高さ、又はひざの高さに配置され、それによって、種々のパラメータを計測する。乗り物102におけるセンサ装置104の位置に関係する他の重要な因子は、乗り物102の、寸法、インテリア、スケジュール、及び、時刻である。例えば、SUVでは、ハッチバックと比較して、より多くのセンサ装置104を配置する必要があり、なぜならば、SUVは比較的長いからである。さらに、インテリアも異なる。ハッチバックは、トランクにあまり空間がないので、センサ装置104の配置に困難を伴う場合がある。しかしながら、SUVは、後部に広いトランクを有する。比較的多くのセンサ装置104を、SUVのブートに配置することができる。同様に、乗り物102のスケジュール及び時刻も、センサ装置104の配置に影響する。乗り物102のスケジュールは、乗り物102が、静止しており乗員がいないか、静止しており乗員がいるか、又は走行モードであるか、によって規定される。走行モードの間に、乗り物102が静止モードである場合と比較して、より多くの、空気速度を計測するセンサ装置104を、配置する。時刻も、熱環境に影響する。日中は、夜間の場合と比較して、太陽放射及び熱流束を測定するために、より多くのセンサ装置104が必要である。センサ装置104は、計測したパラメータを記憶することもできる。
【0055】
センサ装置104は、トランシーバ及び受信ユニット、制御ユニット、並びにパワーユニットを有する。トランシーバ及び受信ユニットは、ワイヤレス通信のための少なくとも1つのアンテナを含む。センサ装置104は、測定されたパラメータを、データ取得装置106に送信する。データ取得装置106は、センサ装置104によって計測されたパラメータに基づいて、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を含むデータを算出するように構成されている。
【0056】
そして、データ取得装置106が、算出されたデータと、センサ装置104によって計測されたパラメータとに基づいて、乗り物102の熱快適性マップを生成する。熱快適性マップは、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を含むデータのうちの少なくとも1つ又は組み合わせの分布であり、パラメータとしては、乗り物102にわたる、空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、表面温度センサ、表面熱流束センサ、正味放射センサ、及び太陽放射センサが挙げられる。
【0057】
図2は、データ取得装置106のブロックダイアグラムを説明している。データ取得装置106が、トランシーバユニット114、記憶装置116、及び解析ユニット118を有する。データ取得装置106は、パラメータを送信し、受信し、記憶し、解析するように構成されている。データ取得装置106は、データの、多点かつリアルタイムな算出を実行する。データ取得装置106は、ワイヤレス装置である。トランシーバユニット114は、送信及び受信のためのものである。トランシーバユニット114は、(図示されていない)センサ装置104によって計測されたパラメータを受信する。トランシーバユニット114は、(図示されていない)センサ装置104によって計測されたパラメータを、記憶装置116に渡す。トランシーバユニット114は、ワイヤレス通信のための少なくとも1つのアンテナを含む。記憶装置116は、トランシーバユニット114によって受信されたパラメータを記憶する。解析ユニット118は、データを算出し、データとしては、記憶ユニット116に記憶されたパラメータを使用し、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)が挙げられる。解析ユニット118は、算出されたデータと、(図示されていない)センサ装置104によって計測されたパラメータとを用いて、(図示されていない)乗り物102の熱快適性マップを生成する。トランシーバユニット114が、SPI、I2C及びUARTを含むがこれらに限定されないプロトコルを用いて、解析ユニット118と通信する。好ましくは、いくつかの実施態様では、データ取得装置106の記憶ユニット116が、解析ユニット118によって生成される熱快適性マップを記憶してもよい。
【0058】
1つの実施態様では、センサ装置104及びデータ取得装置106が、それぞれ、パワーユニットを有する。パワーユニットは、バッテリー又は外部電源である。パワーユニットは、さらに、効率的な電力分布のための低電力管理ユニットを有する。
【0059】
熱快適性マップは、3D又は2Dの図であり、これは、乗り物102の異なる構成要素における、データ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))及び/又はパラメータ(空気温度センサ、空気速度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、表面温度センサ、表面熱流束、正味放射センサ、及び太陽放射センサ)の少なくとも1つ又は組み合わせの分布を描写する。2D又は3D画像は、画像、グラフ、表、又は等高線の形態のグラフィック又はテクスチャを含む。図3は、熱画像の形態の、乗り物102の熱快適性マップを示す。図3は、乗り物102における異なる区域での平均放射温度の分布に基づく例示的な熱快適性マップを示す。同様に、熱快適性マップを生成して、乗り物102の任意の算出データ及び計測パラメータの分布を可視化することができる。
【0060】
図4は、本開示のシステム100の1つの実施態様を示すブロックダイアグラムである。図4では、乗り物102の熱快適性マップを生成するためのシステム100が、複数のセンサ装置104、データ取得装置106、表示ユニット(ディスプレイユニット)108、リモートポータブル装置110、及びリモートサーバ112を有する。センサ装置104、データ取得装置106、表示ユニット108、リモートポータブル装置110及びリモートサーバ112は、ワイヤレス通信を介して接続している。データ取得装置106が、表示ユニット108に接続している。特に、表示ユニット108は、乗り物102に統合されており、かつ/又は、リモートポータブル装置110である。表示装置108は、乗り物102の、ダッシュボード、ウィンドシールド、又は座席の背後に、統合される。データ取得装置106は、複数のリモートポータブル装置110と同時にペアリングすることができる。リモートポータブル装置110は、携帯型装置又はウェアラブル装置であり、例えば、コンピュータ、モバイル、ラップトップ、タブ、スマートウォッチ、又はAR眼鏡である。リモートポータブル装置110は、データ取得装置106も制御しうる。リモートポータブル装置110は、データ取得装置106を制御するためのグラフィックユーザインタフェースを有してよい。例として、リモートポータブル装置110を用いて乗り物のHVACシステムを「作動」又は「停止」して、最適な温度を達成することができる。使用者(ユーザ)は、乗り物に乗る前にHVACシステムにコマンド信号(命令信号)を送って、乗り物内の熱快適性を最適化することができる。
【0061】
グラフィックユーザインタフェースは、ソフトウェアアプリケーションであり、又はウェブダッシュボードである。データ取得装置106を、音声コマンドの形態でユーザによって与えられる入力によって制御することができる。グラフィックユーザインタフェースは、インターフェースにおいて音声コマンド(音声命令)の形態でユーザによって与えられた選択を実行するために、構造化されたプログラム言語を用いる。さらには、いくつかの実施態様では、システム100が、リモートサーバ112も有する。リモートサーバ112は、処理能力を有する。リモートサーバ112は、データ取得装置106に接続されている。データ取得装置106、センサ装置104、及びリモートポータブル装置110は、データ取得装置106と、センサ装置104と、リモートポータブル装置110と、リモートサーバ112との間の通信を確立することを助けるeSimモジュール又はWifiモジュール又はブルートゥース(商標)又はLoraモジュールを有してもよいが、これらに限定されない。データ取得装置106は、センサ装置104によって計測されたパラメータ、算出されたデータ、及び熱マップを、リモートサーバ112に送る。代替的には、リモートサーバ112が、センサ装置104に接続されている。リモートサーバ112が、センサ装置104によって計測されるパラメータを記憶するように構成されている。リモートサーバ112は、また、センサ装置104によって計測されたパラメータに基づいて、データ、例として、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)が挙げられるデータを、算出する。さらには、リモートサーバ112は、また、算出されたデータ、及びセンサ装置104によって計測されたパラメータに基づいて、熱快適性マップを生成し、かつ記憶する。代替的には、リモートサーバ112は、リモートポータブル装置110に接続される。代替的には、センサ装置104、データ取得装置106、及びリモートポータブル装置110が、それぞれ、エッジ計算ユニットを有する。エッジ計算ユニットは、センサ装置104、データ取得装置106、及びリモートポータブル装置110によってそれぞれリモートサーバ112に送られた情報を制限する。これは、リモートサーバ112の記憶領域を低減することを助けうる。
【0062】
図5は、本開示の実施態様の1つに係るデータ取得装置106のブロックダイアグラムである。データ取得装置106は、トランシーバユニット114、記憶ユニット116、解析ユニット118、表示ユニット108、グローバルポジショニング装置120、及びタイマー回路122を有する。いくつかの実施態様では、データ取得装置106が、地理的位置装置120を有しており、それによって、(図示されていない)乗り物102の地理的な位置を検出する。乗り物102の地理的位置120は、好ましくは、グローバルポジショニングシステム(GPS)である。随意に、地理的位置装置120が、乗り物102自体に提供される。換言すると、地理的位置装置120が、データ取得装置106に含まれていない。このように仮定すると、そのようなシナリオでは、地理的位置装置120が、データ取得装置106に接続される。地理的位置装置120は、(図示されていない)乗り物102のリアルタイムな地理的位置を提供することができる。解析ユニット118は、乗り物102の熱快適性マップと、地理的位置とを一緒に結合して、特定の地理的位置における(図示されていない)乗り物102の熱快適性マップを生成することができる。例えば、(図示されていない)乗り物102の特定の経路に関する熱快適性マップを生成することができる。乗り物102のリアルタイムな地理的位置、及び太陽経路に対する経時的データの統合は、熱快適性マップに関して向上した正確性を提供する。いくつかの実施態様では、乗り物102の熱快適性マップ及び地理的位置を、記憶ユニット116に記憶する。いくつかの実施態様では、データ取得装置106が、タイマー回路122を有する。タイマー回路122は、日付及び時間を提供する。解析ユニット118は、熱快適性マップを、時間及び日付に結合することができる。データ取得装置106は、(図示されていない)乗り物102の、日付、時間、及び地理的位置に基づいて、乗り物102の熱快適性マップを連続的に更新することができる。いくつかの実施態様では、地理的位置装置120が、乗り物102の方向も提供する。乗り物102のリアルタイムな地理的位置、日付、時間、及び方向、並びに態様経路に対する経時的なデータは、熱快適性マップのための向上した正確性を提供する。随意に、データ取得装置106が、乗り物102の電子制御ユニット(ECU)に接続され、それによって、種々の機能を制御する。この種々の機能としては、例えば、HVACシステム、グレージングの開閉、IR/可視/UV調整グレージングの活性化及び不活性化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
1つの実施態様では、表示装置108及びリモートポータブル装置110が、乗り物102のパラメータ、データ、熱快適性マップ、地理的位置、時間及び日付を表示することができる。
【0064】
熱快適性マップは、HVACシステムの作動計画を制御し、又は乗り物102のHVACシステムの設計を調整するために用いられ、それによって、効率的なエネルギー消費及びコスト効率性を有する熱快適性を達成する。いくつかの実施態様では、システム100が、データ、例えば、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)、並びに、パラメータ、例えば、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、正味放射、及び太陽放射、を考慮に入れた熱快適性マップを利用することによって、HVACシステムを制御してよい。1つの実施態様では、熱快適性マップの可視化は、HVACシステムのどこで設定の調整が可能であるかを見ることを可能にする。
【0065】
代替的な実施態様では、データ取得装置106が、統合システムとして、1又は複数のセンサ装置104を有する。統合システムは、センサ装置104がデータ取得装置106に非常に近接して又は隣接して配置されるときに、データ取得装置106におけるハードウェア及び通信の複雑性を低減する。いくつかのセンサ装置104、例えば、データ取得装置106によって計測パラメータをある程度計算する必要がある、正味放射センサ、グローブ放射センサは、送信速度を向上し、全体的なサイズを低減し、かつ携帯性を向上させるために、データ取得装置106に統合されることが好ましい。そのような実施態様では、データ取得装置106が、外部のワイヤレスセンサ装置104及びリモートサーバ112との通信のためのトランシーバユニット114を、なおも含む。
【0066】
1つの実施態様では、データ取得装置106の解析ユニット118が、随意に、乗り物102の、エネルギー効率的なエネルギー熱快適性、及び、コスト効率的な熱快適性を、予測することができる。エネルギー効率的なエネルギー熱快適性、又は、コスト効率的な熱快適性は、HVACシステムの作動計画を制御し、又は乗り物102のHVACシステムの設計を調整するために用いられ、それによって、効率的なエネルギー消費又はコスト効率性を有する熱快適性を達成する。
【0067】
乗員の快適性は、熱快適性だけではなく、他の快適性、例えば、視覚的な快適性、音響的な快適性、及び、空気品質快適性によっても、影響される。本開示の他の実施態様では、システム100が、乗り物102における乗員の快適性に影響する、視覚的な快適性、音響的な快適性、及び空気品質快適性を含む、4つのすべての必須因子の計測を実行することができる。システム100は、乗り物102の視覚的快適性マップ、音響快適性マップ、及び空気品質快適性マップを生成する設備も有する。センサ装置104が、更に、空気品質、光、及び騒音を含むパラメータのうちの少なくとも1つを計測するように構成されている。センサ装置104としては、光センサ、騒音センサ(ノイズセンサ)、雨センサ、及び揮発性有機化合物(VOC)センサが挙げられる。データ取得装置106は、随意に、センサ装置104によって計測されたパラメータに基づいて、データのうちの少なくとも1つを算出するように構成されており、このデータとしては、光の強度、音レベル、及び、空気中の揮発性有機化合物(VOC)の量が挙げられる。データ取得装置106は、算出されたデータに基づいて、乗り物102の、視覚快適性、音響快適性、及び空気品質快適性を含むマップのうちの少なくとも1つを生成する。
【0068】
例示的な実施態様によれば、データ取得装置が、リモートサーバと通信して、乗り物内の空気品質を決定し、さらに、計測されたパラメータに基づいてHVACのメンテナンスに関する通知を提供する。さらには、データ取得システムは、湿分センサによって作動されて、雨を検出し、乗り物内の熱快適性の値を最適化することができる。データ取得システムは、HVACシステムの故障又はエンジンの故障に関する通知を提供するように構成されてよい。データ取得システムからのデータを、乗り物診断のために使用して、乗り物のHVAC動作、乗り物の温度プロファイルに対する乗り物における異なるグレージングの影響、及び、異なるタイプのグレージングに関する熱非対称性の値を、評価することができる。
【0069】
本開示は、さらに、快適性レベルの評価及び可視化を含んでよい。熱快適性マップは、乗り物102の快適性レベルを提供することができる。例えば、算出されたPMVに基づく熱快適性マップが、図6に示されているように快適性レベルを提供することができる。データ取得装置106は、熱快適性マップに基づいて快適性レベルを評価することに関与しうる。快適性レベルは、「快適である-中立」、「不快である-わずかに暖かい」、「不快である-わずかに暖かい」、「不快である-暑い」、「不快である-非常に暑い」、「不快である-涼しい」、及び、「不快である-寒い」として規定される。アラームが、乗り物102における快適性レベルに関して乗員に警告を行う。いくつかの代替的な実施態様では、データ取得装置106又はリモートサーバ112が、表示装置108及び/又はリモートポータブル装置110に快適性レベルの警告を提供するために適合されている。
【0070】
図7は、乗り物102の熱快適性を決定するフローチャートである。方法700は、乗り物102の熱快適性を決定するために提供される。この方法は、複数のセンサ装置104を取り付けるための乗り物102における特定の領域を決定する第1の工程702を含み、この工程では、センサ装置104のうちの少なくとも1つを、乗り物102のウィンドシールドに埋め込む。第2の工程704は、乗り物102の複数のパラメータを、乗り物102に位置している複数のセンサ装置104によって同時に計測することを含み、この工程では、パラメータとしては、空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射及び正味放射が挙げられるが、これらに限定されない。第3の工程706は、パラメータを、複数のセンサ装置104によってワイヤレスで送信することを含む。第4の工程708は、パラメータを、データ取得装置106のトランシーバユニット114によってワイヤレスで受信することを含む。第5の工程710は、パラメータを、データ取得装置106の記憶ユニット116によって記憶することを含む。第6の工程712は、データ取得装置106の解析ユニット118によってパラメータの解析を実行することを含み、これは、パラメータに基づいて、データ、例えば、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を算出することを、含む。第7の工程714は、算出されたデータ及び計測されたパラメータに基づいて、乗り物102の熱快適性マップを生成することを含む。最後に、第8の工程716は、熱快適性マップを用いて乗り物102のHVACシステム動作計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、熱快適性を達成することを含む。1つの実施態様では、熱快適性マップを用いて乗り物102のHVACシステム動作計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、熱快適性を達成する。
【0071】
図8は、熱快適性マップを用いて乗り物102のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、熱快適性を達成するフローチャートである。方法800は、熱快適性マップを用いて乗り物102のHVACシステム作動計画を制御し又はHVACシステムの設計を調整し、それによって、熱快適性を達成するために、提供される。方法800は、解析ユニット118によって熱快適性のための最適なデータ範囲を算出する第1の工程802を含む。第2の工程804は、データと、熱快適性のための最適なデータ範囲との間のずれを算出することを含む。第3の工程806は、HVACシステムについての、熱快適性のための設定点を算出することを含む。設定点は、温度、空気速度、及び空気流モードを含む。第4の工程808は、設定点を、表示装置108又はリモートポータブル装置110に表示することを含む。第5の工程810は、HVACシステムを設定点に調整することを含む。HVACシステムは、設定点に、手動又は自動で調整することができる。
【0072】
1つの実施態様では、熱快適性マップが、乗り物102の開閉可能グレージングを制御するためにも用いられる。熱快適性マップを、乗り物102の外部環境(空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射)と比較する。乗り物102の熱快適性マップと、外部環境との間のずれを用いて、冷却時間を決定する。特定の期間にわたって、グレージンを、開状態に保持し、それによって、乗り物102の内部を冷却する速度を増加させる。熱快適性マップと外部環境との間での熱平衡に到達した後で、グレージングを閉じる。
【0073】
1つの実施態様では、熱快適性マップを、乗り物201の機能性グレージングを制御するためにも用いる。機能性グレージングは、色合い制御又は透明性制御を行うことができるグレージングである。熱快適性マップを、乗り物102の外部環境(空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射、及び正味放射)と比較する。熱快適性マップと外部環境との間のずれを用いて、グレージングが活性状態(活性化された不透明性又は特定の色合いレベル)に保持される期間の長さを決定し、それによって、乗り物102の内部の冷却速度を増加させる。熱快適性マップと外部環境との間での熱平衡に到達した後で、機能性グレージングを不活性化する。
【0074】
方法700の顕著な特徴の1つは、熱非対称性を評価するために解析ユニット118によってパラメータの解析を実行することである。熱非対称性は、乗り物102の任意の2つの場所の間での、計測されたパラメータ(空気温度、空気速度、相対湿度、グローブ温度、表面温度、表面熱流束、太陽放射及び正味放射)における差異、又は、算出されたデータ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))における差異である。図9A及び9Bは、空気温度の分布に基づく乗り物102の例示的な熱非対称性を示す。乗り物102が、3つの垂直平面及び3つの水平平面に分割されている。熱非対称性が、乗り物102内の空気温度に基づいて評価される。図9Aは、乗り物の3つの水平平面HP1、HP2、及びHP3における熱非対称性を示す断面図である。図9Bは、乗り物の3つの垂直平面VP1、VP2及びVP3における熱非対称性を示す断面図である。HP1における空気温度が、HP3における場合と比較して高い。対照的に、垂直平面にわたる空気温度は、対称的である。
【0075】
方法700の別の顕著な特徴は、解析ユニット118によるパラメータの解析が、エネルギー効率的な熱快適性を予測することを含む点である。エネルギー効率的な熱快適性は、算出されたデータ(平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD))と、HVACシステムを作動させるためのエネルギー消費との間のトレードオフ点であり、トレードオフは、許容可能なデータ範囲内での熱快適性を維持しつつ、エネルギー消費を低減するための、HVACシステムの最適な設定点の値を見出すことを意味する。
【0076】
図10は、乗り物102のエネルギー効率的な熱快適性を予測するフローチャートである。方法1000は、乗り物102のエネルギー効率的な熱快適性を決定するために提供される。方法1000の第1の工程1002は、解析ユニット118によって、乗り物102のHVACシステムのエネルギー消費を算出することを含む。エネルギー消費は、特定の期間にわたってHVACシステムを作動させるためのエネルギー又は電力の消費である。第2の工程1004は、熱快適性に関する最適なデータ範囲及びエネルギー効率的なデータ範囲を算出することを含む。第3の工程1006は、データと、最適なデータ範囲と、熱快適性に関するエネルギー効率的なデータ範囲との間のずれを算出することを含む。データは、センサ装置104によって計測されたパラメータに基づいて、データ取得装置106によって算出される。第4の工程1008は、HVACシステムに関するエネルギー効率的な熱快適性のための設定点を算出することを含む。第5の工程1010は、設定点を表示装置108又はリモートポータブル装置110に表示することを含む。第6の工程1012は、HVACシステムを設定点に調整することを含む。
【0077】
方法700の別の顕著な特徴は、解析ユニット118によるパラメータの解析が、コスト効率的な熱快適性を予測することを含んでいる点である。コスト効率的な熱快適性は、乗り物のグレージングの性能と、HVACシステムを作動させるコストとの間のトレードオフ点であり、トレードオフは、最適なデータ範囲内での熱快適性を維持しつつ、効率的なコストのためのHVACシステムの設定点の値を見出すことを意味する。
【0078】
図11は、乗り物102のコスト効率的な熱快適性を予測するフローチャートである。方法1100は、乗り物102のコスト効率的な熱快適性を決定するために提供される。方法1100は、第1の工程1102を含み、この工程は、乗り物102のHVACシステムのエネルギー消費を算出することを含む。第2の工程1104は、異なる性能を有するグレージングに関しての、熱快適性のための、最適なデータ範囲、エネルギー効率的なデータ範囲を算出することを含む。また、異なる性能を有するグレージングに関してHVACシステムを作動させるコストを算出することも含む。グレージングの性能は、乗り物102においてグレージングによって提供される熱カットを含む。HVACシステムを作動させるコストは、HVACシステムを作動させるために用いられるエネルギー又は燃料の量である。第3の工程1106は、異なるグレージングに関しての、熱快適性に関する、データと、最適なデータ範囲と、エネルギー効率的なデータ範囲との間のずれ、及び、HVACシステムに関する作動コスト又は再設計コストを算出すること含む。データは、センサ装置104によって計測されたパラメータに基づいてデータ取得装置106によって算出する。第4の工程1108は、異なるグレージングに関する最適でエネルギー効率的な熱快適性に関する設定点、及びHVACシステムに関する作動コスト又は再設計コストを算出すること含む。第5の工程1110は、表示装置108及び/又はリモートポータブル装置110において、異なるグレージングに関する設定点、及び、HVACシステムに関する作動コスト又は再設計コストを表示すること含む。
【実施例
【0079】
<例1-熱快適性システム>
以下で、例示を参照して、本開示をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示はこのような特定の例示によっていかなる意味でも限定されないことを理解する必要がある。
【0080】
乗り物102の熱快適性マップを生成するために、システム100を提供した。高精度センサ装置104を用いて、種々のパラメータを計測した。用いたセンサ装置104は、空気温度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、及び空気速度である。これらのセンサ装置104によって計測されたパラメータは、空気温度、相対湿度、グローブ温度、及び空気速度である。上記のセンサ装置104のそれぞれは、乗り物の、ダッシュボード、トランク、座席、ハンドルに配置され、これらの場所においてパラメータを計測した。さらに、それぞれのセンサ装置104は、足、もも、及び顔の高さに保持された。センサ装置104は、空気温度、相対湿度、グローブ温度、及び空気速度を、同時に計測した。計測されたパラメータを、データ取得装置106に送った。データ取得装置106は、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を算出するように構成されていた。
【0081】
熱快適性マップを生成し、これは、乗り物102の異なるスケジュールに関する平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)の分布を示す。パラメータは、乗り物102の4つのスケジュールに関して計測された。乗り物102のスケジュールは、ソーキング、冷却、駐車、走行の組み合わせである。ソーキングは、乗り物102を、HVACシステムが作動していない環境条件下に配置する場合を意味している。冷却は、乗り物102のHVACシステムが作動していることを示している。パラメータを計測した乗り物102の4つのスケジュールは、ソーキング+駐車、冷却+走行、再ソーキング+駐車、再冷却+駐車である。データ取得装置106は、乗り物102の4つの全てのスケジュールに関して、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)を算出するように構成されていた。図12は、作用温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。図13は、平均放射温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。図14は、等価温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。図15は、PMVの例示的なデータプロットを示すグラフである。図16は、PPDの例示的なデータプロットを示すグラフである。図12図16に説明されているグラフから、平均放射温度、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)が、冷却+走行、及び再冷却+駐車の間に、減少していることが観察される。
【0082】
本例1では、図13で示されるとおりの平均放射温度を用いて、乗り物102のHVACシステムを調整した。データ取得装置106が、熱快適性に関する最適な平均放射温度範囲を算出した。熱快適性に関する最適な平均放射温度範囲は、過去のデータ、又は特定のHVACシステムに関する熱快適性に関する所定のデータ範囲、又はユーザによって設定された所与のデータ範囲である。所与のデータ範囲に関しては、HVACシステムの作動能力を、既存のHVAC仕様から算出することができ、又は、過去のデータに関しては、HVACシステムの作動能力を、一定期間にわたる冷却+走行及び再冷却+駐車のスケジュールの間に取得されたデータから由来する冷却速度を用いて決定することができる。考慮された最適な平均放射温度範囲は、24℃~26℃であった。最適な平均放射温度範囲と、冷却+走行又は冷却+駐車のスケジュールから算出された平均放射温度データとの間のずれを用いて、HVACシステムのための設定点を決定した。設定点は、単純にHVACインターフェースユニットにおける温度設定であり、又は、温度、空気速度、又は空気流モードの組み合わせであり、これは、手動又は自動であってよい。この実験に関して、15分間のHVAC作動時間のうちに、32℃~34℃の平均放射温度範囲に到達した。ずれに基づいて、HVACシステムは、最適な平均放射温度範囲24℃~26℃を達成するために、同じ設定温度値の下で追加的に7~10分間にわたって作動する必要がある。同様に、作用温度、等価温度、予想平均申告(PMV)、及び予測不快者率(PPD)も用いて、HVACシステムのための最適な設定点を決定することができる。したがって、本システム及び本方法は、熱快適性マップを生成し、熱マップを用いてHVACシステムを調整するために、有用である。
【0083】
<例2-熱快適性非対称性>
データ取得装置106が、4つのスケジュールに関して乗り物102内の異なる場所に関する作用温度を算出するように構成されていた。2つの異なる場所は、乗り物の前部及び後部であった。図17は、4つのスケジュールに関して乗り物102の前部及び後部に関する作用温度の例示的なデータプロットを示すグラフである。熱非対称性は、乗り物102の前部及び後部の作用温度における差異である。
【0084】
<例3-熱快適性システム>
システム100を、乗り物102の熱快適性マップを生成するために提供した。高精度センサ装置104を用いて、種々のパラメータを計測した。用いたセンサ装置104は、空気温度センサ、相対湿度センサ、グローブ温度センサ、及び空気速度であった。これらのセンサ装置104によって計測されたパラメータは、空気温度、相対湿度、グローブ温度、及び空気速度であった。上記のセンサ装置104のそれぞれを、乗り物におけるダッシュボード、前方乗員区域、及び後方乗員区域に配置し、これらの場所で、パラメータを計測した。センサ装置104は、空気温度、相対湿度、グローブ温度、及び空気速度を、同時に計測した。計測されたパラメータは、データ取得装置106に送信された。データ取得装置106は、平均放射温度、作用温度、及び等価温度を算出するように構成されていた。
【0085】
熱快適性マップを生成し、これは、乗り物102の3つの領域に関する平均放射温度、作用温度、及び等価温度の分布を示すものであった。3つの領域は、前方ダッシュボード、前方乗員区域、及び、後方乗員区域である。2つのスケジュール、すなわち乗り物102の駐車及び冷却に関して、パラメータを計測した。データ取得装置106は、乗り物102の3つの領域すべてに関する平均放射温度、作用温度、及び透過温度を算出するように構成されていた。図18は、駐車の間の作用温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。図19は、冷却の間の作用温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。図20は、駐車の間の平均放射温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。図21は、冷却の間の平均放射温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。図22は、駐車の間の等価温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。図23は、冷却の間の等価温度の例示的なデータプロットを示す等高線マップである。追加的に、熱快適性マップは、表面温度センサ、及びIR画像センサ、及び/又は占有率センサによって強化され得る。IR画像センサは、表面温度データに加えて、乗り物における乗員の数を提供することもできる。
【0086】
<例4-エネルギー効率的でコスト効率的な熱快適性>
本例1では、エネルギー効率的でコスト効率的な熱快適性のために、HVACシステムを調整することもできる。
【0087】
異なるグレージングを考慮し、異なるグレージングに関する作用温度データ、HVACシステムのエネルギー消費を、算出した。例えば、異なる太陽エネルギー合計透過率(TTS)の3つのグレージングG1、G2及びG3を考慮し、TTS(G1)>TTS(G2)>TTS(G3)であった。例えば、G1は、コーティングを有しない基本ガラスであり、G2は、比較的高いIR吸収性及び熱快適性を有するTSA3+グレージングであり、G3は、銀などの反射コーティングを有するグレージングである。
【0088】
作用温度は、グレージングのTTS値に直接的に依存し、標準的なものと比較した場合に、高機能グレージングに関して、グレージングを通る熱/加熱エネルギーにおける低減(熱カット)が比較的高いことを示す。低減されたTTSに起因して、乗り物内の作用温度が、グレージングからの改善された熱カットに伴って、低下する。また、作用温度における変化に伴って、乗り物内の空調を熱快適性温度に維持するために必要な燃料エネルギーが、変化する。したがって、標準的なグレージングと比較して温度低減が大きい程、十分な熱快適性温度に達するためにかかる時間が比較的低くなるであろう。図24Aでは、熱カット、乗り物内の作用温度、及び、乗り物内の所望の温度を維持するために必要なエネルギー消費が、概略的に示されている。エネルギー消費は、HVACシステムによって利用される燃料を意味する。3つのパラメータの交差点が、エネルギー効率的な熱快適性区域として提案される。したがって、本開示は、エネルギー効率的でコスト効率的な熱快適性を達成するための方法を提供する。これを用いることによって、エネルギー効率及びコスト効率のための最適なグレージングを選択することができる。
【0089】
図24Bは、コスト効率的な熱快適性モデルの例を示す。典型的には、熱快適性温度は、一定のAC負荷を犠牲にして維持されるので、燃料経済性及びシステムの全体的な効率に影響する。熱制御グレージングの使用によって、比較的低減されたAC負荷で、熱快適性を維持することができる。例では、グレージングのコストに関する費用は、およそ、G3>>G2>>G1である。グレージングのコストは、G2、G3のような高機能グレージングと比較した場合のG1のように、標準的なものに関しては比較的低いが、熱快適性温度を維持するためのACのコスト又はACに関する負荷は、他のものと比較したときに比較的高い。したがって、図24Bに示されているようなこれら2つのパラメータの交差点は、費用投資とHVAC作動コストとの間のバランスが最適な点である。
【0090】
別の実験において、異なるグレージングP1、P2、P3、P4、P5に関して、ソーキング時間と冷却時間との間の関係を、表1に示されているように、決定した。提案P1、P2、P3、P4は、IR吸収特性を有しており、P5は、反射特性を有している。
【0091】
【表1】
表1に関して、異なるセットのグレージングに関して、自動車キャビンに関するHVAC負荷を算出した。図25で見られるとおり、HVAC負荷又は冷却負荷は、グレージングP4(提案4)、P5(提案5)に関して比較的低いことが観察された。
【0092】
<例5:熱非対称データ>
表2で示されるとおり、種々のセットのグレージングP1、P2及びP4に関して、センサによって、熱非対称性データを決定した。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示されている計測に関して、熱計測のためのワイヤレスシステムの解析ユニットによって表示された熱非対称性マップを、図26に示す。図26に関しては、P1 TSANx、P2 TSA3+、及びP3 TSA3+のグレージングに関する熱非対称性である(ウィンドシールド、サイドライト、及びバックライトの全ての組み合わせを示す)。熱非対称性は、コーティングを有しない基本的なグレージングに関して最も高いことが観察される。
【0095】
一般的な記載又は例示において上述したすべての操作が必要なわけではないこと、特定の操作の部分は必要でないことがあること、上述したものに加えて、1又は複数のさらなる操作を実行しうることに留意が必要である。さらに、操作が並べられている順番は、必ずしも、それらが実行される順番であるとは限らない。
【0096】
特定の実施の形態に関して、利点、他の長所、及び問題への対処法を、上記で説明した。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、又は解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれか又はすべての重要な、必要な、又は本質的な特徴として解釈されるものではない。
【0097】
本明細書に記載される実施形態の明細書及び例示は、様々な態様の構造の一般的な理解を提供することを意図している。本明細書及び例示は、本明細書に記載された構造又は方法を使用する装置及びシステムの要素及び特徴のすべての網羅的かつ包括的な説明として役立つことを意図していない。明確性の観点から別個の実施形態の文脈で本明細書に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔性の観点から単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、別々に、又は組み合わせで提供されてもよい。さらに、範囲で記載された値への言及は、その範囲内の全ての値を含む。多くの他の実施形態が、本明細書を読んだ後にのみ、当業者に明らかとなるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用し、本開示から導出することができ、したがって、構造的置換、論理的置換、又は別の変更を行うことができる。したがって、本開示は、限定的ではなく、例示的であると見なされるべきである。
【0098】
図面と組み合わせた説明は、本明細書で開示される教示の理解を助けるために提供され、教示の説明を助けるために提供され、教示の範囲又は利用可能性に対する制限として解釈されるべきではない。しかしながら、他の教示が確かに、本出願において使用され得る。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を包含することを意図している。例えば、特徴のリストを含む方法、物品、又は装置は必ずしもそれらの特徴のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていないか、又はそのような方法、物品、又は装置に固有でない他の特徴を含むことができる。さらに、反対に明示的に述べられていない限り、「又は」は包含的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味していない。例えば、条件A又はBが満たされるのは:Aが真であり(又は存在し)Bが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)Bが真である(又は存在する)、並びに、A及びBの両方が真である(又は存在する)、のいずれか1つによってである。
【0100】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書で説明される要素及び構成要素を説明するために使用される。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を示すために用いられる。この説明は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、別段の意味であることが明らかでない限り、複数形も含み、その逆もまた同様である。例えば、単一の項目が本明細書に記載される場合、単一の項目の代わりに2つ以上の項目が使用されてもよい。同様に、2つ以上の項目が本明細書に記載されている場合、その2つ以上の項目の代わりに単一の項目を使用することができる。
【0101】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。特定の材料及び処理行為に関する特定の詳細が記載されていない場合、そのような詳細は、製造技術の範囲内の参考文献及び他の情報源に見出され得る従来のアプローチを含み得る。
【0102】
本開示の態様が、上記の実施形態を参照して特に示され、説明されたが、開示されたもの精神及び範囲から逸脱することなく、開示された機械、システム、及び方法の修正によって、様々な追加の実施形態が企図され得ることが、当業者によって理解される。そのような実施形態は、特許請求の技術的範囲及びその任意の等価物に基づいて判定されるとおりに、本開示の技術的範囲内にあると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0103】
100 システム
102 乗り物
104 センサ装置
106 データ取得装置
108 表示装置
110 リモートポータブル装置
112 リモートサーバ
114 トランシーバユニット
116 記憶ユニット
118 解析ユニット
120 グローバルポジショニング装置
122 タイマー回路
700 方法
702 工程
704 工程
706 工程
708 工程
710 工程
712 工程
714 工程
716 工程
800 方法
802 工程
804 工程
806 工程
808 工程
810 工程
1000 方法
1002 工程
1004 工程
1006 工程
1008 工程
1010 工程
1012 工程
1100 方法
1102 工程
1104 工程
1106 工程
1108 工程
1110 工程
1112 工程
HP1 水平平面
HP2 水平平面
HP3 水平平面
VP1 垂直平面
VP2 垂直平面
VP3 垂直平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
【国際調査報告】