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特表2022-538988生物物理学的シグナルの動力学的解析を使用して疾患を評価するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】生物物理学的シグナルの動力学的解析を使用して疾患を評価するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0295 20060101AFI20220831BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61B5/0295
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575369
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2020052889
(87)【国際公開番号】W WO2020254881
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/862,991
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,005
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099409
【氏名又は名称】アナリティクス フォー ライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パーク, メヘディ
(72)【発明者】
【氏名】バートン, ティモシー ウィリアム フォーセット
(72)【発明者】
【氏名】ラムチャンダニ, シャムラル
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA12
4C017AA18
4C017AC16
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD06
(57)【要約】
例示された方法及びシステムによって、生物物理学的シグナル、例えばフォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は心臓シグナルなどの非線形動力学的特性(例えばリアプノフ指数(LE)、相関次元、エントロピー(K2)、あるいはポアンカレマップに由来する統計的及び/又は幾何学的特性など)を特徴付け及び特定し、疾患又は病態、あるいはその指標(例えば、とりわけ、冠動脈疾患、心不全(上昇した又は異常な左心室拡張末期圧疾患を含むが、それに限定しない)、及び肺高血圧症を含むが、それらに限定しない)の存在及び/又は局在化を予測することができる1つ又は複数の動力学的解析が容易になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するための方法であって、前記方法が:
1つ又は複数のプロセッサにより、対象の生物物理学的シグナルデータセットを得ること;
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記生物物理学的シグナルデータセットの1つ又は複数の動力学的特性を決定すること;ならびに
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記決定された1つ又は複数の動力学的特性に基づいて疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の推定値を決定することを含む、方法。
【請求項2】
疾患又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を、上昇した又は異常なLVEDPを含む、左心室拡張末期圧(LVEDP)の評価に基づいて評価することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患状態又は病態が冠動脈疾患を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患状態又は病態が肺高血圧症を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患状態又は病態が肺動脈性肺高血圧症を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患状態又は病態が、左心疾患に起因する肺高血圧症を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患状態又は病態が、肺高血圧症につながりうる障害を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患状態又は病態が左心室心不全又は左側心不全を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患状態又は病態が右心室心不全又は右側心不全を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患状態又は病態が収縮期又は拡張期心不全を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患状態又は病態が虚血性心疾患を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患状態又は病態が不整脈を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記疾患又は病態のうちの2つ又はそれ以上の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の第2推定値を決定することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動力学的特性が、エントロピー値(K2)、フラクタル次元(D2)、リアプノフ指数、自己相関、自己相互情報量、相互相関、及び相互情報量からなる群より選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の赤色フォトプレチスモグラフィシグナルを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の赤外フォトプレチスモグラフィシグナルを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の心臓シグナルを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の視覚化の生成を起こすことをさらに含み、前記生成された視覚化が、コンピューティングデバイスのディスプレイでレンダリング及び表示され、ならびに/あるいはレポート中で提示される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記生物物理学的シグナルデータセット中での周期性における分散のヒストグラムマップを決定することをさらに含み、前記ヒストグラムマップが、前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の前記決定において使用される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記得られた生物物理学的シグナルデータセットのポアンカレマップを決定すること;
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;ならびに
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定することであって、前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が、前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の前記決定において使用される、決定すること、をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が:
前記アルファ形状オブジェクトの密度値;
前記アルファ形状オブジェクトの凸状表面積値;
前記アルファ形状オブジェクトの外周値;
前記アルファ形状オブジェクトの多孔性値;及び
前記アルファ形状オブジェクトの空隙面積値、の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が:
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「a」の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「b」の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最長軸の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最短軸の長さ;
前記ポアンカレマップにおける評価されたクラスタの数;
前記ヒストグラムマップにおける評価されたカーネル密度モードの数;及び
前記ヒストグラムマップから評価されるサーレス二峰性係数値、の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するための方法であって、前記方法が:
1つ又は複数のプロセッサにより、対象の生物物理学的シグナルデータセットを得ること;
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記生物物理学的シグナルデータセットにおける分散のポアンカレマップを決定すること;
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定すること;ならびに
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記決定された1つ又は複数の幾何学的特性に基づいて、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値を決定することであって、前記疾患状態が、冠動脈疾患の存在あるいは上昇した又は異常な左心室拡張末期圧を含む、決定すること、を含む、方法。
【請求項24】
前記決定されたポアンカレマップが、第1軸において第1時間x-1から第2時間xでの、及び第2軸において前記第2時間xから第3時間x+1でのフォトプレチスモグラフィシグナルピークをプロットすることにより生成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
プロセッサ;及び
その中に記憶された命令を有するメモリであって、前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに請求項1~24の方法のいずれかを実施させるメモリ、を含む、システム。
【請求項26】
プロセッサによる命令の実行によって、前記プロセッサに請求項1~24の方法のいずれかを実施させる、その中に記憶された前記命令を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するためのシステムであって、前記システムが:
プロセッサ;及び
その上に記憶された命令を有するメモリであって、前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
対象の生物物理学的シグナルデータセットを得ること;
前記生物物理学的シグナルデータセットの1つ又は複数の動力学的特性を決定すること;ならびに
前記決定された1つ又は複数の動力学的特性に基づいて、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の推定値を決定すること、を実施させるメモリ、を含む、システム。
【請求項28】
前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
前記疾患又は病態のうちの2つ又はそれ以上の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の第2推定値を決定することをさらに実施させる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記動力学的特性が、エントロピー値(K2)、フラクタル次元(D2)、リアプノフ指数、自己相関、自己相互情報量、相互相関、及び相互情報量からなる群より選択される、請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の赤色フォトプレチスモグラフィシグナルを含む、請求項27~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の赤外フォトプレチスモグラフィシグナルを含む、請求項27~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットが、1つ又は複数の心臓シグナルを含む、請求項27~31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の視覚化の生成を起こすことをさらに実施させ、前記生成された視覚化が、コンピューティングデバイスのディスプレイでレンダリング及び表示され、ならびに/あるいはレポート中で提示される、請求項27~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
前記生物物理学的シグナルデータセット中での周期性における分散のヒストグラムマップを決定することをさらに実施させ、前記ヒストグラムマップが、前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の前記決定において使用される、請求項27~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
前記得られた生物物理学的シグナルデータセットのポアンカレマップを決定すること;
前記ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;ならびに
前記アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定することであって、前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が、前記疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての前記推定値の前記決定において使用される、決定すること、をさらに実施させる、請求項27~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が:
前記アルファ形状オブジェクトの密度値;
前記アルファ形状オブジェクトの凸状表面積値;
前記アルファ形状オブジェクトの外周値;
前記アルファ形状オブジェクトの多孔性値;及び
前記アルファ形状オブジェクトの空隙面積値、の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記1つ又は複数の決定された幾何学的特性が:
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「a」の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「b」の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最長軸の長さ;
前記ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最短軸の長さ;
前記ポアンカレマップにおける評価されたクラスタの数;
前記ヒストグラムマップにおける評価されたカーネル密度モードの数;及び
前記ヒストグラムマップから評価されるサーレス二峰性係数値、の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む、請求項35又は36に記載のシステム。
【請求項38】
対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するためのシステムであって、前記システムが:
プロセッサ;及び
その上に記憶された命令を有するメモリであって、前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサに:
対象の生物物理学的シグナルデータセットを得ること;
前記生物物理学的シグナルデータセットにおける分散のポアンカレマップを決定すること;
前記ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;
前記アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定すること;ならびに
前記決定された1つ又は複数の幾何学的特性に基づいて、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値を決定することであって、前記疾患状態が、冠動脈疾患の存在あるいは上昇した又は異常な左心室拡張末期圧を含む、決定すること、を実施させるメモリ、を含む、システム。
【請求項39】
前記決定されたポアンカレマップが、第1軸において第1時間x-1から第2時間xでの、及び第2軸において前記第2時間xから第3時間x+1でのフォトプレチスモグラフィシグナルピークをプロットすることにより生成される、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナルを取得するように構成された測定システムをさらに含む、請求項27~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
1つ又は複数の心臓シグナルを取得するように構成された測定システムをさらに含む、請求項27~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナルを取得するように構成された第1測定システム;及び
1つ又は複数の心臓シグナルを取得するように構成された第2測定システムをさらに含む、請求項27~39のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この国際PCT出願は、2019年6月18日に出願された「Method and System to Assess Disease Using Dynamical Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と表題が付けられた米国仮特許出願第62/863,005号、及び2019年6月18日に出願された「Method and System to Assess Disease Using Dynamical Analysis of Biophysical Signals」と表題が付けられた米国仮特許出願第62/862,991号への優先権及び利益を主張し、その各々が、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般的に、1つ又は複数の生理学的システムならびにそれらの関連付けられる機能、活性、及び異常を特徴付けるための非侵襲的方法及びシステムに関する。より具体的には、一態様において、本開示は、とりわけ心血管疾患、肺疾患、及び心肺疾患、過程又は病態の存在、非存在、重症度、及び/又は局在化を予測及び/又は検出するために、単独で、又は生理学的現象及びシステムの他の種類の測定との併用においてプレチスモグラフィ関連の測定を利用する非侵襲的方法に関する。別の態様では、本開示は、そのために心臓関連の測定値を利用する非侵襲的方法に関する。別の態様では、本開示は、そのためにプレチスモグラフィ関連測定及び心臓関連測定の両方を利用する非侵襲的方法に関する。
【背景技術】
【0003】
用語「生物物理学的シグナル」は、以下により詳細に記載するように、情報が得られうる任意の生理学的シグナルを包含する。限定することを望まないが、生物物理学的シグナルは、部分的には、そのようなシグナルが取るエネルギーの形態(例えば、電気、音響、化学、熱、磁気、光学など)により、それらが起こりうる及び/又は関連付けられうる1つ又は複数の生理学的システム(例、循環/心血管、神経、呼吸など)により、関連器官系により、組織型により、細胞型により、細胞成分、例えばオルガネラなど(それらの組み合わせを含む)により特徴付けられうる。生物物理学的シグナルは、受動的もしくは能動的に、又はその両方で取得されうる。
【0004】
しばしば、生物物理学的シグナルは、侵襲的又は最小侵襲的技術(例、カテーテルを介して)及び/又は放射線の使用(例、核画像)、運動/ストレス(例、トレッドミル又は核ストレス検査)ならびに/あるいは薬理学的及び/又は他の薬剤(例、血管拡張剤、造影剤)の投与との関連において、又はそれを介して取得される。これらの種々のモダリティによって、そのようなシグナルを取得するコストが適度に又は著しく増加しうる。なぜなら、それらは、しばしば患者が移動することを要求する、さらには時折、例えば、病院又はホテルなどでの一泊の滞在を要求する高価な機器をしばしば介して、特殊な環境において投与されることが必要になりうるからである。これらのモダリティの一部は、副作用、例えば、例、感染症又はアレルギー反応などについて患者へのリスクを増加させうる。一部のモダリティは、望ましくない放射線の線量に患者を曝露させる。及び、例えば、運動又はトレッドミルの場合では、検査は、別の場合では起こらなかったであろう中程度の又はさらには重篤な有害事象(例、心筋梗塞)を誘発しうる。さらに、これらの種々のモダリティによって、一般的に、その生物物理学的シグナルが特徴付けられている患者の健康の状態、疾患、又は病態を確認するために要求される時間が、時折、数週間又は数ヶ月のオーダーで、しばしば、中程度の又はさらには重篤な健康状態である、あるいはそれに苦しんでいる患者について増加される。このことによって、失われた仕事の生産性及び社会にとってのより高い全体的な医療費が招かれる。そのような遅延はまた、患者(それ自体が患者の健康に有害でありうる)、彼らの家族、友人、及び患者のニーズに応対する他の介護者に勘定的な犠牲を強要しうる。
【0005】
そのようなものとして、哺乳類又は非哺乳類の生物における種々の疾患、病変、又は病態の存在、非存在、重症度及び(一部の場合では)局在化を評価(例、予測及び/又は検出)することが、現在の方法及びシステムが提供するよりもより安全に、より低いコストで、及び/又はより短い時間で達成されうるように、侵襲及び/又は低侵襲技術、放射線、運動/ストレス、ならびに/あるいは薬理学的な及び/又は他の薬剤を使用する必要性を最小限にする、又はさらには排除する生物物理学的シグナルから情報を得ることが望まれる。
【0006】
本明細書中に記載する方法及びシステムは、この必要性に対処し、多種多様な環境において-病院から救急室、研究所、戦場又はリモート設定まで、患者のプライマリケアの医師又は他の介護者とのポイントオブケア、及びさらには家庭で、多種多様な臨床及びさらには研究の必要性のために使用されうる。限定しないが、以下の記載によって、心臓又は心血管関連の疾患状態及び病態;特に、種々の形態における肺高血圧症(PH)、種々の形態における冠動脈疾患(CAD)、及び種々の形態における心不全の状況におけるそのような使用のための例示的な方法及びシステムが提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示された方法及びシステムによって、生物物理学的シグナル、例えばフォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は心臓シグナルなどの非線形動力学的特性(例えばリアプノフ指数(LE)、相関次元、エントロピー(K2)、あるいはポアンカレマップに由来する統計的及び/又は幾何学的特性など)を特徴付け及び特定し、疾患又は病態、あるいはその指標(例えば、とりわけ、冠動脈疾患、心不全(異常な左心室拡張末期圧疾患を含むが、それに限定しない)、及び肺高血圧症を含むが、それらに限定しない)の存在及び/又は局在化を予測することができる1つ又は複数の動力学的解析が容易になる。
【0008】
一部の実施形態では、力学系及び非線形力学特色、例えばエントロピー率「K2」、フラクタル次元の相関次元「D2」、リアプノフ指数(「LE」)、相互情報量(MI)及び相関(XC)などが抽出される。一部の実施形態では、ポアンカレマップに関連付けられる1つ又は複数の特色が抽出される。
【0009】
本明細書中で使用する「心臓シグナル」は、例えば、心筋の収縮を起こす、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に関連付けられる1つ又は複数のシグナル-そのシグナルの電気/電気化学伝導の側面を含む-を指す。心臓シグナルは、一部の実施形態では、心電図シグナル、例えば、例、心電図(ECG)又は他のモダリティなどを介して取得されるものを含みうる。
【0010】
本明細書中で使用する「フォトプレチスモグラフィシグナル」は、酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収における測定変化に対応する、光センサから取得されるシグナル波形、例えば赤色及び赤外線スペクトル中の波長を有する光などを指す。フォトプレチスモグラフィシグナルは、一部の実施形態では、パルスオキシメータ又はフォトプレチスモグラム(PPG)を介して取得されたローシグナルを含む。一部の実施形態では、フォトプレチスモグラフィシグナルは、疾患又は異常状態を診断する目的のために、そのようなシグナル波形を取得するように構成されているカスタム又は専用装置又は回路(既製のデバイスを含む)から取得される。フォトプレチスモグラフィシグナルは、典型的には、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル(例、約625~740ナノメートルの波長を最も支配的に有する可視光スペクトル中の電磁シグナル)及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル(例、可視スペクトルの公称赤色端から約1mmまで伸長する電磁シグナル)を含むが、他のスペクトル、例えば近赤外線、青色及び緑色などが、用いられているフォトプレチスモグラフィ関連測定の型及び/又はモードに依存して、異なる組み合わせにおいて使用されうる。
【0011】
「生物物理学的シグナル」は、心臓シグナル、神経学的シグナル、又はフォトプレチスモグラフィシグナルに限定されず、情報が得られうる任意の生理学的シグナルを包含する。例により限定することを意図しないが、生物物理学的シグナルを、例えば、電気的(例、技術、例えば種々の領域、例えば時間及び/又は周波数などにおける電圧/電位、インピーダンス、抵抗、導電、電流などの測定などにより観察、特定、及び/又は定量化することができる特定の心臓及び神経系に関連するシグナル)、磁気、電磁、光学(例、技術、例えば反射、インターフェロメトリー、分光、吸光、透過、目視観察、フォトプレチスモグラフィなどにより観察、特定、及び/又は定量化することができるシグナル)、音響、化学、機械(例、流量、圧力、運動、振動、変位、歪みに関連するシグナル)、熱、及び電気化学(例、特定の分析物、例えばグルコースなどの存在に相関させることができるシグナル)を含むことができる型又はカテゴリー中に分類してもよい。生物物理学的シグナルは、一部の場合では、生理学的系(例、呼吸器系、循環器系(心血管、肺)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄系、筋肉系、骨格系、腎/泌尿器/排泄系、免疫系、外皮/内分泌系及び生殖系)、器官系(例、心臓及び肺に固有でありうるシグナルであって、なぜなら、それらは一緒に働くからである)の状況において、又は組織(例、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、オルガネラ、分子(例、水、タンパク質、脂肪、糖、ガス、フリーラジカル、無機イオン、ミネラル、酸、ならびに他の化合物、元素及びそれらの亜原子成分)の状況において記載されうる。別に述べない限り、用語「生物物理学的シグナルの取得」は、一般的に、生理学的系、例えば哺乳類又は非哺乳類の生物などから生物物理学的シグナルを取得する任意の受動的又は能動的な手段を指す。受動的及び能動的な生物物理学的シグナルの取得は、一般的に、身体組織の自然又は誘導された電気、磁気、光学、及び/又は音響のエミッタンスの観察を指す。受動的及び能動的な生物物理学的シグナル取得手段の非限定的な例は、例えば、電圧/電位、電流、磁気、光学、音響、ならびに身体組織の自然なエミッタンスを観察する、及び一部の例では、そのようなエミッタンスを誘導する他の非能動的な方法を含む。受動的及び能動的な生物物理学的シグナルの取得手段の非限定的な例は、例えば、超音波、電波、マイクロ波、赤外線及び/又は可視光(例、パルスオキシメトリ又はフォトプレチスモグラフィにおける使用のため)、可視光、紫外線、及び電離エネルギー又は放射線(例、X線)を含まない身体組織を能動的に調べる他の方法を含む。能動的な生物物理学的シグナルの取得は、励起-発光分光法(例、励起-発光蛍光を含む)を含みうる。能動的な生物物理学的シグナルの取得はまた、電離エネルギー又は放射線(例、X線)(また、「電離生物物理学的シグナル」として言及される)を身体組織に伝達することを含みうる。受動的及び能動的な生物物理学的シグナルの取得手段は、侵襲的手順(例、手術又は侵襲的放射線介入プロトコルを介して)との併用で又は非侵襲的に(例、画像化を介して)実施することができる。
【0012】
本明細書中の種々の実施形態において記載する方法及びシステムは、それほど限定されず、生体の別の生理学的システム又はシステム、器官、組織、細胞などの任意の状況において利用されうる。例としてだけ、心血管系の状況において有用でありうる2つの生物物理学的シグナル型は、従来の心電図(ECG/EKG)装置を介して取得されうる心臓シグナル、他の装置、例えば本明細書中に記載するものなどから取得されうる双極広帯域生物電位(心臓)シグナル、及び、種々のプレチスモグラフィ技術、例えばフォトプレチスモグラフィなどにより取得されうるシグナルを含む。
【0013】
本開示の状況において、生物物理学的シグナルを取得及び解析するための技術が、特に、例えば、肺高血圧症(PH)、冠動脈疾患(CAD)、及び心不全(例、左側又は右側心不全)を含む、心血管(又は心臓)系における、それに関連付けられる、又はそれに影響を及ぼす特定の疾患状態又は病態の存在、非存在、局在化(適用可能である場合)、及び/又は重症度を診断する際での使用について記載されている。
【0014】
肺高血圧症、心不全、及び冠動脈疾患は、心血管系又は心臓系に関する3つの疾患/病態である。肺高血圧症(PH)は、一般的に、肺の動脈における高い血圧を指し、広範な状態を含むことができる。PHは、典型的には、複雑で多因子の病因、及び変動する重症度を伴う潜行性の臨床的発症を有する。PHは、合併症、例えば右心不全などに進行しうるが、多くの場合で、致死的である。世界保健機関(WHO)は、PHを5つの群又は型に分類している。WHOにより分類された第1のPH群は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)である。PAHは、とりわけ、肺の動脈の壁を固く、硬直させる慢性的で、現在は不治の疾患である。PAHは、診断のために、最低でも心臓カテーテル法を要求する。PAHは、肺動脈の脈管障害により特徴付けられ、心臓カテーテル法で、平均肺動脈圧25mmHg又はそれ以上として定義される。肺動脈性肺高血圧症の1つの形態は、特発性肺動脈性肺高血圧症として公知であり、明確な原因を伴わずに生じるPAHである。とりわけ、PAHのサブカテゴリーは、遺伝性PAH、薬物及び毒素誘導性PAH、ならびに他の全身性疾患、例えば、例、結合組織病、HIV感染、門脈圧亢進症、及び先天性心疾患などに関連付けられるPAHを含む。PAHは、肺血管の構造的狭窄に導く全ての原因を含む。PAHでは、肺動脈床の進行性狭窄は、プロスタサイクリン、一酸化窒素、及びエンドセリン-1を含む血管作動性メディエーターの不均衡から起因する。これは、増加した右心室後負荷、右心不全、及び早死に導く。WHOにより分類される第2のPH群は、左心疾患に起因する肺高血圧症である。この群の障害は、一般的に心臓の左側での問題により特徴付けられる。そのような問題は、経時的に、肺動脈内の変化につながりうる。特定のサブグループは、左室収縮機能障害、左室拡張機能障害、弁膜疾患ならびに、最後に、弁膜疾患に起因しない先天性心筋症及び閉塞を含む。この第2のPH群の処置は、根本的な問題に焦点を当てる傾向がある(例、心臓弁を交換するための手術、種々の薬物療法など)。WHOにより分類される第3のPH群は、大きく、多様であり、一般的に肺疾患又は低酸素症に関連する。サブグループは、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、肺胞低換気障害、慢性的な高地暴露、及び発達性肺疾患を含む。第4のPH群は、血栓が肺内に侵入又は形成し、肺動脈を通じた血液の流れを遮断する場合に起こる慢性血栓塞栓性肺高血圧症としてWHOにより分類されている。第5のPH群は、WHOにより、PHに導く稀な障害、例えば血液学的障害など、全身性障害、例えば肺の関与を有するサルコイドーシスなど、代謝性障害、及び他の疾患のサブグループを含むとして分類される。この第5の群におけるPHの機構は、不十分に理解されている。
【0015】
PHを、その形態の全てにおいて、ルーチン的な診察において診断することは困難でありうる。なぜなら、PHの最も一般の症状(息切れ、疲労、胸痛、浮腫、心臓の動悸、眩暈)は、かなり多くの他の状態に関連付けられるためである。血液検査、胸部X線、心電図及び心エコー、肺機能検査、運動負荷検査、ならびに核スキャンは全て、医師がPHをその特定の形態において診断するのに役立てるために、多様に使用される。上で述べたように、PH、特にPAHについて診断するための「ゴールドスタンダード」は、肺動脈中の圧力を直接的に測定することによる、心臓の右側の心臓カテーテル法である。PAHが対象において疑われる場合、いくつかの調査の1つを実施し、その状態を確認してもよい(とりわけ、例えば心電図、胸部X線撮影、肺機能検査など)。心電図検査での右心負荷及び胸部X線検査での顕著な肺動脈又は心肥大のエビデンスが、典型的に見られる。しかし、正常な心電図及び胸部X線検査によって、必ずしもPAHの診断を除外することはできない。さらなる検査が、診断を確認し、原因及び重症度を確定するために必要になりうる。例えば、血液検査、運動検査、及び終夜オキシメトリー検査が実施されうる。さらに、画像検査がまた、実施されうる。画像検査の例は、アイソトープ灌流肺スキャン、高解像度コンピュータ断層撮影、コンピュータ断層撮影肺血管造影、及び磁気共鳴肺血管造影を含む。これらの(及び、恐らくは他の)非侵襲的な調査によって、PAHの診断が裏付けられた場合、右心カテーテル法が、典型的には、肺圧を直接的に測定することにより診断を確認するために必要である。それによって、また、心拍出量の測定及び肺動脈楔入圧を使用した左房圧の推定が可能になる。非侵襲的な技術が、PAHが対象において存在しうるか否かを決定するために存在する一方で、これらの技術では、侵襲的な右心カテーテル法が実施されない限り、PAHの診断を確実に確認することはできない。PHを評価するための方法及びシステムの態様及び実施形態が、共通所有されている米国特許出願第16/429,593号において開示されており、その全体が、参照により本明細書により組み入れられる。
【0016】
心不全は、米国単独でもほぼ600万人が罹患しており、87万を上回る人々が毎年、心不全と診断されている。用語「心不全」(時折、うっ血性心不全又はCHFとして言及される)は、一般的に、心臓の筋肉が弱くなる、又は硬直するため、あるいは適切な循環を妨げる欠陥が存在するため、心臓の筋肉が身体のニーズを満たすのに十分な血液を送り出すことができない慢性で進行性の状態又は過程を指す。これは、例えば、肺中への血液及び体液のバックアップ、浮腫、疲労、眩暈、失神、頻脈及び/又は不整脈、空咳、嘔気、及び息切れを招く。
【0017】
HFは、複数の多様な病態から起因しうる幅広い症状を包含する、複雑な障害である。この臨床症候群は、血液を充満させる、又は排出させる心室の能力を損なう任意の構造的又は機能的な心臓の変化から生じうる。患者は、典型的には、2つの異なる群中に入り、左室(LV)駆出率(LVEF)によりグループ化される:1)低下したLVEFを伴うHF(HFrEF[LVEF≦40%])及び2)保たれたLVEFを伴うHF(HFpEF[LVEF≧50%])。HFrEFの特性を定義するのが収縮機能障害である一方で、対照的に、HFpEFの特性は拡張機能障害であり、両方が、HFrEF及びHFpEFの両方の内で、変動する程度で起こりうる。この診断を伴う600万人以上のアメリカ人のうち、これらの2つのカテゴリーの間にはおよそ均等な分布が存在する。また、この2つの群は5年目に同様の死亡率を有し、その推定値は50~75%の間に及ぶ。
【0018】
心不全の一般の原因は、冠動脈疾患(CAD)、高血圧、心筋症、不整脈、腎臓疾患、心臓の欠陥、肥満、タバコの使用、及び糖尿病である。拡張期心不全(DHF)、左又は左側心不全/疾患(また、左心室心不全として言及される)、右又は右側心不全/疾患(また、右心室心不全として言及される)、及び収縮期心不全(SHF)が、心不全の一般の型である。
【0019】
左側心不全はさらに、2つの主な型に分類される:収縮不全(又は低下した駆出率もしくは低下した左心室機能を伴う心不全)及び拡張不全/機能不全(又は保たれた駆出率もしくは保たれた左心室機能を伴う心不全)。患者が左側心不全を有するか否かを決定するために一般に使用される手順及び技術は、心臓カテーテル法、X線、心エコー、心電図(EKG)、電気生理学的試験、放射性核種画像、及び種々のトレッドミル検査(ピークVOを測定する検査を含む)を含む。駆出率(EF)は、心室(及び左側心不全の場合では左心室)が各々の収縮で送り出す血液量のパーセンテージとして表される測定値であり、しばしば、心エコーを介して非侵襲的に得られる。正常な左心室駆出率(LVEF)は約55%から約70%に及ぶ。
【0020】
収縮不全が起こる場合、左心室は、血液を身体全体に正常に循環させるために十分に力強く収縮できなくなり、それによって、身体から血液の正常な供給が奪われる。左心室が、それを補うために強く送り出すにつれて、それは弱く、薄くなる。その結果、血液が器官中に逆流し、肺における体液貯留及び/又は身体の他の部分における腫脹を起こす。心エコー、磁気共鳴画像、及び核医学スキャン(例、マルチゲート取得)は、収縮不全の診断において補助するために、左心室の充填容量に対する、左心室により送り出される血液の容量のパーセンテージとして表される駆出率(EF)を非侵襲的に測定するために使用される技術である。特に、55%を下回る左室駆出率(LVEF)は、心臓の送り出し能力が正常を下回ることを示し、重度の場合では約35%未満と測定されうる。一般的に、収縮不全の診断は、これらのLVEF値が正常を下回る場合に行う、又は補助することができる。
【0021】
拡張期心不全が起こる場合、左心室が硬直する、又は厚くなり、正常に弛緩するその能力が失われ、それによって次に、心臓の左下室が適切に血液で満たされなくなる。これによって、身体に送り出される血液の量が低下する。経時的に、これによって、血液が左心房の内部、及び次に肺において貯留し、体液のうっ滞及び心不全の症状に導かれる。この場合では、LVEF値は正常範囲内に保たれる傾向がある。そのようなものとして、他の検査、例えば侵襲的カテーテル法などを使用して左室拡張末期圧(LVEDP)を測定し、拡張期心不全ならびに保たれたEFを伴う心不全の他の形態の診断において補助しうる。典型的には、LVEDPは、左心室中でのカテーテルの留置により直接的に測定される、又は肺動脈中にカテーテルを留置して肺毛細血管楔入圧を測定することにより間接的に測定される。そのようなカテーテル技術は、それらの性質により、患者への感染及び他の合併症のリスクを増加させ、高価になる傾向がある。そのようなものとして、拡張期心不全の存在もしくは非存在及び/又は重症度、ならびに保たれたEFを伴う無数の他の形態の心不全を診断する際にLVEDPを決定又は推定するための非侵襲的方法及びシステムが望ましい。また、異常なLVEDPの決定又は推定を必ずしも含むことなく、拡張期心不全の存在もしくは非存在及び/又は重症度、ならびに保たれたEFを伴う無数の他の形態の心不全を診断するための非侵襲的方法及びシステムが望まれる。本開示の実施形態は、これらのニーズの全てに対処する。
【0022】
右側心不全はしばしば、弱くなった及び/又は硬直した左心室が、血液を身体の残り部分に効率的に送り出す力を失う場合に、左側心不全に起因して起こる。その結果、体液が肺を通じて押し戻され、心臓の右側が弱くなり、右側心不全を引き起こす。この逆流は静脈中で逆流し、脚、足首、消化管、及び肝臓において体液を腫脹させる。他の場合では、特定の肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患及び肺線維症などは、心臓の左側が正常に機能しているにもかかわらず、右側心不全を起こしうる。患者が左側心不全を有するか否かを決定するために一般に使用される手順及び技術は、血液検査、心臓CTスキャン、心臓カテーテル法、X線、冠動脈造影、心エコー、心電図(EKG)、心筋生検、肺機能検査、及び種々の形態のストレステスト、例えばトレッドミル検査などを含む。
【0023】
肺高血圧症は心不全と密接に関連付けられる。上で述べるように、PAH(第1のWHO PH群)は、増加した右心室後負荷、右心不全、及び早死につながりうる。左心不全に起因するPH(第2のWHO PH群)は、PHの最も一般の原因であると考えられている。
【0024】
虚血性心疾患(また、心臓虚血又は心筋虚血として公知である)、及び関連する病態又は病変がまた、本明細書中に開示する技術を用いて推定又は診断されうる。虚血性心疾患は、通常、冠動脈疾患(CAD)に起因する、心臓の筋肉への低下した血液供給により特徴付けられる疾患又は疾患の群である。CADは心不全と密接に関連しており、その最も一般の原因である。CADは、典型的には、血液を心筋、又は心臓の筋肉に供給する冠動脈内の内膜が、アテローム性動脈硬化症(内膜の硬化又は硬直及びそこでのプラークの蓄積、しばしば異常な炎症を伴う)を発症した場合に起こる。経時的に、CADはまた心臓の筋肉を弱め、例えば、狭心症、心筋梗塞(心停止)、心不全、及び不整脈に寄与しうる。不整脈は、異常な心臓リズムであり、心臓の電気伝導の正常な順序からの任意の変化を含みうるが、一部の場合では心停止につながりうる。PH、心不全、CAD、及び他の疾患及び/又は病態の評価は複雑でありうるが、多くの侵襲的な技術及びツールを使用して、上に述べる状態の存在及び重症度を評価する。また、これらの疾患及び/又は病態の症状の間での共有性、ならびに呼吸器系と心血管系の間での基本的な関係は-それらが、身体の細胞及び組織を酸素化するために一緒に働くという事実に起因して-、そのような疾患及び/又は病態の検出及び究極的な処置を改善するために活用されうる複雑な生理学的な相互関連性を指摘する。この状況においてこれらの生物物理学的シグナルを評価するための従来の方法は、医療従事者に、そのような疾患及び病態の存在又は非存在を正確に検出/診断するためのツールを提供する際、依然として重大な課題を提起する。
【0025】
例えば、心電図-心臓の電気的活動を解析し、その構造及び機能に関する情報を得る心臓病学の分野-においては、著しい虚血性心疾患によって、冠動脈の狭窄又は閉塞の下流にある灌流床における心筋の心室伝導特性が変化しうることが観察されており、病変は、心臓の異なる部位で及び重症度の異なる段階で出現し、正確な診断を困難にしてきた。さらに、心筋の電気伝導特徴は人から人で変動しうるが、他の要因、例えば測定用プローブの留置に関連付けられる測定変動性、ならびにプローブ及びその関連部品に関連付けられる寄生損失などがまた、心臓の電気生理検査の間に捕捉される生物物理学的シグナルに影響を及ぼしうる。さらに依然として、心筋の伝導特性が比較的長い心臓位相勾配シグナルとして捕捉される場合、それらは、伝統的なモデリング技術により効率的に捕捉することができない複雑な非線形変動性を示しうる。
【0026】
実際に、例示された方法及びシステムによって、生物物理学的シグナル、例えばフォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は心臓シグナルなどの非線形動力学的特性(例えばリアプノフ指数(LE)、相関次元、エントロピー(K2)、あるいはポアンカレマップに由来する統計的及び/又は幾何学的特性など)を特徴付け及び特定し、疾患又は病態、あるいはその指標(例えば、とりわけ、冠動脈疾患、心不全(異常な左心室拡張末期圧疾患を含むが、それに限定しない)、及び肺高血圧症を含むが、それらに限定しない)の存在及び/又は局在化を予測することができる1つ又は複数の動力学的解析が容易になる。
【0027】
一部の実施形態では、動力学的特色は、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)の少なくとも決定された相関次元を含む。注目すべきことに、この評価された動力学的特色が、異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)に関連することが観察されており、臨床設定においてそのような病態の存在、非存在、及び/又は重症度について予測するために使用されうる。上で考察するように、LVEDPは心室性能、特に左心室性能の尺度と考えられており、心不全(HF)の後期臨床症状を発症する増加リスクのある患者を特定するためにしばしば使用される。上昇したLVEDPが、心筋梗塞に続いて一般に観察されており;しかし、それは、その後のHFリスクの独立した予測因子であることが認められている。一部の実施形態では、動力学的特色は、隣接する心周期の波形に由来するポアンカレマップオブジェクトの評価された特性を少なくとも含む。評価された特性は、一部の実施形態では、(例、赤外線測定からの)ポアンカレマップオブジェクトの外周値の比率を含む。一部の実施形態では、評価される特性は、ポアンカレマップオブジェクトの表面積を含む。
【0028】
一態様では、対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するための方法が開示され、この方法は以下を含む:1つ又は複数のプロセッサにより(例、保存されたデータベースから又は測定システムから)、対象の生物物理学的シグナルデータセット(例、1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナル又は心臓シグナル)を得ること;1つ又は複数のプロセッサにより、生物物理学的シグナルデータセットの1つ又は複数の動力学的特性を決定すること;ならびに1つ又は複数のプロセッサにより、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の推定値を、決定した1つ又は複数の動力学的特性に基づいて決定すること。
【0029】
一部の実施形態では、疾患又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度は、上昇した又は異常なLVEDPを含む、左心室拡張末期圧(LVEDP)の評価に基づいて評価することができる。
【0030】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、重大な冠動脈疾患を含む。
【0031】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、肺高血圧症を含む。
【0032】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む。
【0033】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、左心疾患に起因する肺高血圧症を含む。
【0034】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、肺高血圧症につながりうる稀な障害を含む。
【0035】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、左心室心不全又は左側心不全を含む。
【0036】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、右心室心不全又は右側心不全を含む。
【0037】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、収縮期心不全(SHF)を含む。
【0038】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、拡張期心不全(DHF)を含む。
【0039】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、虚血性心疾患を含む。
【0040】
一部の実施形態では、疾患状態又は病態は、不整脈を含む。
【0041】
一部の実施形態では、この方法は、1つ又は複数のプロセッサにより、疾患又は病態の2つ又はそれ以上の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の第2推定値を決定することをさらに含む。
【0042】
一部の実施形態では、動力学的特性は、エントロピー値(K2)、フラクタル次元(D2)、リアプノフ指数、自己相関、自己相互情報量、相互相関、及び相互情報量からなる群より選択される。
【0043】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の赤色フォトプレチスモグラフィシグナルを含む。
【0044】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の赤外フォトプレチスモグラフィシグナルを含む。
【0045】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の心臓シグナルを含む。
【0046】
一部の実施形態では、この方法は、1つ又は複数のプロセッサにより、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の視覚化の生成を起こすことをさらに含み、それにおいて、生成された視覚化は、コンピューティングデバイス(例、コンピューティングワークステーション;外科、診断、又は器具装置)のディスプレイでレンダリング及び表示され、ならびに/あるいはレポート(例、電子レポート)中で提示される。
【0047】
一部の実施形態では、この方法は、1つ又は複数のプロセッサにより、生物物理学的シグナルデータセット中での周期性における分散のヒストグラムマップを決定することをさらに含み、それにおいて、このヒストグラムマップは、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の決定において使用される。
【0048】
一部の実施形態では、この方法は、1つ又は複数のプロセッサにより、得られた生物物理学的シグナルデータセットのポアンカレマップを決定することと;1つ又は複数のプロセッサにより、ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;1つ又は複数のプロセッサにより、アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定することをさらに含み、それにおいて、1つ又は複数の決定された幾何学的特性を、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の決定において使用する。
【0049】
一部の実施形態では、1つ又は複数の決定された幾何学的特性は、以下の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む:アルファ形状オブジェクトの密度値;アルファ形状オブジェクトの凸状表面積値;アルファ形状オブジェクトの外周値;アルファ形状オブジェクトの多孔性値;及びアルファ形状オブジェクトの空隙面積値。
【0050】
一部の実施形態では、1つ又は複数の決定された幾何学的特性は、以下の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む:ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「a」の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「b」の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最長軸の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最短軸の長さ;ポアンカレマップ中の評価されたクラスタの数;ヒストグラムマップ中のカーネル密度モードの評価された数n;及びヒストグラムマップから評価されたサーレス二峰性係数値。
【0051】
別の態様では、対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するための方法が開示され、この方法は以下を含む:1つ又は複数のプロセッサにより(例、保存されたデータベースから又は測定システムから)、対象の生物物理学的シグナルデータセット(例、フォトプレチスモグラフィシグナル)を得ること;1つ又は複数のプロセッサにより、生物物理学的シグナルデータセットにおける分散のポアンカレマップを決定すること;1つ又は複数のプロセッサにより、ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定すること;1つ又は複数のプロセッサにより、アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定すること;ならびに、1つ又は複数のプロセッサにより、決定された1つ又は複数の幾何学的特性に基づいて、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値を決定すること、それにおいて、疾患状態は、冠動脈疾患(例、重大な冠動脈疾患)の存在又は上昇した/異常な左心室拡張末期圧を含む。
【0052】
一部の実施形態では、決定されたポアンカレマップは、第1軸において第1時間x-1から第2時間xでの、及び第2軸において第2時間xから第3時間x+1でのフォトプレチスモグラフィシグナルピークをプロットすることにより生成される。
【0053】
実際に、ポアンカレマップにおいて、時間への参照は同義であり、このように、所与のデータセット中のデータ点に関して、互換的に使用することができる。
【0054】
別の態様では、対象の疾患状態又は異常状態を非侵襲的に評価するためのシステムが開示され、このシステムは以下を含む:プロセッサ;及び
その上に記憶された命令を有するメモリ、それにおいて、プロセッサによる命令の実行は、プロセッサに以下を行わせる:対象の生物物理学的シグナルデータセット(例、1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナル又は心臓シグナル)を(例、保存されたデータベースから又は測定システムから)得る;生物物理学的シグナルデータセットの1つ又は複数の動力学的特性を決定する;ならびに疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の推定値を、1つ又は複数の動力学的特性に基づいて決定する。
【0055】
一部の実施形態では、プロセッサによる命令の実行はさらに、プロセッサに、疾患又は病態の2つ又はそれ以上の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての1つ又は複数の第2推定値を決定させる。
【0056】
一部の実施形態では、動力学的特性は、エントロピー値(K2)、フラクタル次元(D2)、リアプノフ指数、自己相関、自己相互情報量、相互相関、及び相互情報量からなる群より選択される。
【0057】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の赤色フォトプレチスモグラフィシグナルを含む。
【0058】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の赤外フォトプレチスモグラフィシグナルを含む。
【0059】
一部の実施形態では、得られた生物物理学的シグナルデータセットは、1つ又は複数の心臓シグナルを含む。
【0060】
一部の実施形態では、プロセッサによる命令の実行はさらに、プロセッサに、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の視覚化の生成を起こし、それにおいて、生成された視覚化は、コンピューティングデバイス(例、コンピューティングワークステーション;外科、診断、又は器具装置)のディスプレイでレンダリング及び表示され、ならびに/あるいはレポート(例、電子レポート)中で提示される。
【0061】
一部の実施形態では、プロセッサによる命令の実行はさらに、プロセッサに、生物物理学的シグナルデータセット中での周期性における分散のヒストグラムマップを決定させ、それにおいて、ヒストグラムマップは、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の決定において使用される。
【0062】
一部の実施形態では、プロセッサによる命令の実行はさらに、プロセッサに、得られた生物物理学的シグナルデータセットのポアンカレマップを決定させ;ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定させ;及びアルファ形状オブジェクトの1又は複数の幾何学的特性を決定させ、それにおいて、1つ又は複数の決定された幾何学的特性が、疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値の決定において使用される。
【0063】
一部の実施形態では、1つ又は複数の決定された幾何学的特性は、アルファ形状オブジェクトの密度値;アルファ形状オブジェクトの凸状表面積値;アルファ形状オブジェクトの外周値;アルファ形状オブジェクトの多孔性値;及びアルファ形状オブジェクトの空隙面積値の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む。
【0064】
一部の実施形態では、1つ又は複数の決定された幾何学的特性は、ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「a」の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円についての半軸「b」の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最長軸の長さ;ポアンカレマップの評価された最大クラスタ楕円の最短軸の長さ;ポアンカレマップにおける評価されたクラスタの数;ヒストグラムマップ中のカーネル密度モードの評価された数;及びヒストグラムマップから評価されたサーレス二峰性係数値の群より選択される2つ又はそれ以上の特性をさらに含む。
【0065】
一部の実施形態では、システムはさらに、(例、保存されたデータベースから又は測定システムから)、対象の生物物理学的シグナルデータセット(例、フォトプレチスモグラフィシグナル)を得るように;生物物理学的シグナルデータセットにおける分散のポアンカレマップを決定するように;ポアンカレマップのアルファ形状オブジェクトを決定するように;アルファ形状オブジェクトの1つ又は複数の幾何学的特性を決定するように;ならびに決定した1つ又は複数の幾何学的特性に基づいて疾患又は病態の存在、非存在、局在化、及び/又は重症度についての推定値を決定するように構成され、それにおいて、疾患状態は冠動脈疾患の存在(例、重大な冠動脈疾患)又は上昇した/異常な左心室拡張末期圧を含む。
【0066】
一部の実施形態では、決定されたポアンカレマップは、第1軸において第1時間x-1から第2時間xでの、及び第2軸において第2時間xから第3時間x+1でのフォトプレチスモグラフィシグナルピークをプロットすることにより生成される。
【0067】
一部の実施形態では、このシステムは、1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナルを取得するように構成された測定システムをさらに含む。
【0068】
一部の実施形態では、このシステムは、1つ又は複数の心臓シグナルを取得するように構成された測定システムをさらに含む。
【0069】
一部の実施形態では、このシステムは、1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナルを取得するように構成された第1測定システム;及び1つ又は複数の心臓シグナルを取得するように構成された第2測定システムをさらに含む。
【0070】
別の態様では、プロセッサ;及びその中に記憶された命令を有するメモリを含むシステムを開示し、それにおいて、プロセッサによる命令の実行が、プロセッサに、上の方法のいずれかを実施させる。
【0071】
別の態様では、コンピュータ可読媒体が開示され、その中に記憶された命令を有し、それにおいて、プロセッサによる命令の実行が、プロセッサに、上の方法のいずれかを実施させる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
添付の図面は、本明細書中に組み入れられ、本明細書の一部を構成し、実施形態を例証し、記載と一緒に、方法及びシステムの原理を説明するために役立つ。
【0073】
本発明の実施形態は、添付の図面との組み合わせにおいて読まれる場合、以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。そのような実施形態は、例証目的だけのためであり、本発明の新規の及び非自明な態様を描写している。図面は、以下の図を含む:
【0074】
図1-1】図1は、例証的な実施形態に従って、そのような生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定するために生理学的システムの動力学的特性を非侵襲的に評価するよう構成された例示的なシステムの図である。
図1-2】図1Aは、例証的な実施形態に従って、生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定するためにフォトプレチスモグラフィシグナルの動力学的特性を非侵襲的に評価するように構成された別の例示的なシステムの図である。
図1-3】図1Bは、例証的な実施形態に従って、生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定するために心臓シグナルの動力学的特性を非侵襲的に評価するように構成された例示的なシステムの図である。
図2-1】図2Aは、例証的な実施形態に従って、図1の測定システムを介して取得された例示的な生物物理学的シグナルとしての例示的なフォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)を示す。シグナルは、ベースラインワンダ及び高周波ノイズが除去されて示されている。
図2-2】図2Bは、高周波ノイズが除去された、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル図2Aの周波数領域表示である。
図2-3】図2Cは、高周波ノイズが除去された、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル図2Aの周波数領域表示である。
図2-4】図2Dは、例証的な実施形態に従ってフォトプレチスモグラフィシグナル104を取得するための例示的なセンサ構成を示す。
図2-5】図2Eは、例証的な実施形態に従ってフォトプレチスモグラフィシグナル104を取得するための例示的なセンサ構成を示す。
図2-6】図2Fは、赤外センサを介して取得された、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルの3次元位相空間プロットを示す。
図2-7】図2Gは、図2Fの同じデータの2次元投影である。
図3-1】図3Aは、例証的な実施形態に従って、図1の測定システムを介して取得された例示的な生物物理学的シグナルとしての例示的な心臓シグナル(例、生体電位シグナル)を示す。シグナルは、ベースラインワンダ及び高周波ノイズが除去されて示されている。
図3-2】図3Bは、例証的な実施形態に従って図3Aの心臓シグナルを取得するように構成された測定システムの図である。
図3-3】図3Cは、例証的な実施形態に従った、臨床環境における患者での図3Bの測定システムの例示的な配置を示す。
図3-4】図3Dは、例証的な実施形態に従って図3Aの心臓シグナルを取得するための、患者の胸部及び背部での図3Bの測定システムの表面電極の例示的な配置の図である。
図4図4は、例証的な実施形態に従って、疾患又は異常状態の存在及び非存在、あるいはその指標を示すフォトプレチスモグラフィシグナル(赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)から抽出された特定の動力学的特色の臨床予測値を示す試験からの実験結果を示す。
図5-1】図5は、例証的な実施形態に従って、疾患又は異常状態の存在及び非存在、あるいはその指標を示す、特定の動力学的特色の抽出された心臓シグナルの臨床予測値を示す試験からの実験結果を示す。
図5-2】図5は、例証的な実施形態に従って、疾患又は異常状態の存在及び非存在、あるいはその指標を示す、特定の動力学的特色の抽出された心臓シグナルの臨床予測値を示す試験からの実験結果を示す。
図6図6は、例証的な実施形態に従ったリアプノフ指数特色抽出モジュールを示す。
図7図7は、例証的な実施形態に従ったフラクタル次元特色抽出モジュールを示す。
図8図8は、例証的な実施形態に従ったエントロピー特色抽出モジュールを示す。
図9図9は、例証的な実施形態に従った相互情報量(MI)特色抽出モジュールを示す。
図10図10は、例証的な実施形態に従った相関特色抽出モジュールを示す。
図11図11は、例証的な実施形態に従ったリアプノフ指数特色抽出モジュールを示す。
図12図12は、例証的な実施形態に従ったフラクタル次元特色抽出モジュールを示す。
図13図13は、例証的な実施形態に従ったエントロピー特色抽出モジュールを示す。
図14図14は、例証的な実施形態に従った相互情報量(MI)特色抽出モジュールを示す。
図15図15は、例証的な実施形態に従った相関特色抽出モジュールを示す。
図16図16は、例証的な実施形態に従って、疾患又は異常状態の存在及び非存在、あるいはその指標を示すフォトプレチスモグラフィシグナル(赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)の生成されたポアンカレマップから抽出された特定の動力学的特色の臨床予測値を示す試験からの実験結果を示す。
図17図17は、例証的な実施形態に従ったポアンカレマップ統計的特色抽出モジュールを示す。
図18-1】図18は、例証的な実施形態に従ったポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュールを示す。
図18-2】図18Aは、例証的な実施形態に従った、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける例示的な目印を示す。
図18-3】図18Bは、例証的な実施形態に従った、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける隣接するサイクルからの同じ目印の間での周期性の例示的な分布を示す。
図18-4】図18Cは、例証的な実施形態に従った、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける最低ピーク目印間の周期性の分布から生成された例示的なポアンカレマップを示す。
図19図19は、例証的な実施形態に従ったクラスタマップ幾何学的特色抽出モジュールを示す。
図20図20は、解析システムの例示的な実施形態が実行されうる例示的なコンピューティング環境を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本明細書中に記載される各々の及びすべての特色、ならびにそのような特色の2つ又はそれ以上の各々の及びすべての組み合わせが、そのような組み合わせにおいて含まれる特色が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
本開示は、心臓関連の病変及び病態の診断及び処置における、生物物理学的シグナル、例えば、生の又は前処理されたフォトプレチスモグラフィシグナル、心臓シグナルなどの有益な評価に向けられている一方で、そのような評価は、生物物理学的シグナルが生体の任意の関連システム中に含まれる任意の病変又は病態の診断及び処置(外科的な、低侵襲の、及び/又は薬理学的な処置を含む)に適用することができる。心臓(又は心血管)の状況では、この評価は、冠動脈疾患(CAD)ならびに上昇した又は異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)に関連付けられる疾患及び/又は病態の診断及び処置に適用することができる。この評価は、任意の数の治療での診断及び処置、例えば冠動脈中のステントの留置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物治療の指示、ならびに/あるいは運動、栄養、及び他のライフスタイルの変化の指示などについて、単独で又は組み合わせにおいて、適用することができる。診断されうる他の心臓関連の病変又は病態は、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例、肺動脈性高血圧症、左心疾患に起因する肺高血圧症、肺疾患に起因する肺高血圧症、慢性血栓に起因する肺高血圧症、及び他の疾患、例えば血液又は他の障害に起因する肺高血圧症)、ならびに他の心臓関連の病変、病態、及び/又は疾患を含む。一部の実施形態では、この評価は、神経関連の病変及び病態に適用されうる。診断されうる神経関連の疾患、病変、又は病態の非限定的な例は、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び全ての他の形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、運動障害、認知障害、言語障害、種々の精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、群発頭痛、片頭痛、神経障害(末梢神経障害を含む、その種々の形態)、幻肢/疼痛、慢性疲労症候群、急性及び/又は慢性疼痛(腰痛、腰部手術失敗症候群などを含む)、ジスキネジア、不安障害、感染症又は異物により起こされる状態(例、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、脳卒中、動脈瘤、出血性損傷などに関連する神経学的状態/影響、耳鳴り及び他の聴覚関連疾患/病態、ならびに視覚関連疾患/病態を含む。
【0077】
一部の参考文献は、種々の特許、特許出願、及び出版物を含みうるが、参考文献リストにおいて引用されており、本明細書中で提供する開示において考察されている。そのような参考文献の引用及び/又は考察は、開示された技術の説明を単に明確にするために提供されており、任意のそのような参考文献が、本明細書中に記載する、開示された技術の任意の態様への「先行技術」であることの承認ではない。表示法に関して、“[n]”はリスト中のn番目の参考文献に対応する。例えば、[36]は、リスト中の36番目の参考文献、すなわち、F. Pedregosa, G. Varoquaux, A. Gramfort, V. Michel, B. Thirion, O. Grisel, M. Blondel, P. Prettenhofer, R. Weiss, V. Dubourg, et al., “Scikit-learn: Machine learning in python,” Journal of machine learning research 12, 2825-2830 (Oct 2011)を指す。本明細書中で引用され、考察される全ての参考文献が、それらの全体において参照により、各々の参考文献が個別に参照により組み入れられるのと同じ程度まで本明細書中に組み入れられる。
【0078】
例示的なシステム
図1は、例証的な実施形態に従って、そのような生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定(例、決定)するために、生理学的システムの動力学的特性を非侵襲的に評価するように構成された例示的なシステム100の図である。実際に、本明細書中で使用される場合、用語「予測」は、将来の事象(例、疾患又は病態の潜在的な発生)を予測することを指す一方で、用語「推定」は、例えば、疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度についての、利用可能な情報に基づく一部の計量の定量化を指すことができる。予測及び推定の操作は、一般的に、決定として言及することができる。
【0079】
本明細書中で述べるように、「生理学的システム」は、心血管系、肺系、腎系、神経系、ならびに身体の他の機能的システム及びサブシステムを指すことができる。心血管系の状況では、システム100によって、多くの心臓サイクルにわたる心臓の複雑で非線形な動力学的特性の調査が容易になる。
【0080】
図1では、非侵襲的測定システム102(「測定システム」102として示す)によって、対象108から測定プローブ106を介して1つ又は複数の生物物理学的シグナル104を取得し、生物物理学的シグナルデータセット110を生成する。
【0081】
取得された生物物理学的シグナル104は、一部の実施形態では、酸素化及び/又は脱酸素化ヘモグロビンの光吸収における測定された変化に関連付けられる1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナルを含む(例、図1A中に示すように)。
【0082】
他の実施形態では、取得された生物物理学的シグナル104は、身体の生体電位測定に関連付けられる1つ又は複数の心臓シグナルを含む(例、図1B中に示すように)。本明細書中で使用するように、用語「心臓シグナル」は、例えば、心筋の収縮を起こす、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に関連付けられる1つ又は複数のシグナル-そのシグナルの電気/電気化学伝導の側面を含む-を指す。心臓シグナルは、一部の実施形態では、心電図シグナル、例えば、例、心電図(ECG)又は他のモダリティなどを介して取得されるものを含みうる。
【0083】
図1をさらに参照すると、非侵襲的な測定システム102は、例えば、通信システム及び/又はネットワークを通じて、あるいは直接接続を通じて、取得された生物物理学的シグナルデータセット110、あるいはそこに由来する又はそこから処理されたデータセットを、非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システムにアクセス可能であるリポジトリ112(例、記憶領域ネットワーク)(図示しない)に送信するように構成される。非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システム114(解析エンジン114として示す)は、取得された生物物理学的シグナル104の動力学的特性を解析するように構成される。
【0084】
一部の実施形態では、解析エンジン114は、取得された生物物理学的シグナルから1つ又は複数の特色抽出モジュール(例、118、120)を介して決定された特色のセットを評価し、臨床的意義のある特色を決定するように構成された機械学習モジュール116を含む。一度、特色がフォトプレチスモグラフィシグナル又は心臓シグナルから抽出されると、次に、任意の型の機械学習を使用することができる。機械学習モジュール116の実施形態の例は、限定しないが、決定木、ランダムフォレスト、SVM、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍法、SVM、ナイーブベイズを実行するように構成される。一部の実施形態では、機械学習モジュール116は、例えば、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と表題が付けられた米国特許出願第15/653,433号、及び「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と表題が付けられた米国特許出願第15/653,431号において記載されるように実行してもよい;それらの各々は、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。フォトプレチスモグラフィシグナルを他の取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルと組み合わせて、評価された動力学的特色のセットの評価において機械学習モジュール116用の訓練データセット又は検証データセットにおいて使用されてもよい。フォトプレチスモグラフィシグナルは、所与の疾患状態又は異常状態についての関連ラベル122を有しうる。臨床的意義があると決定された場合、評価された動力学的特色(例、118又は120から)を、その後、所与の疾患又は異常状態の予測因子、あるいはその指標として使用してもよい。
【0085】
一部の実施形態では、解析エンジン114は、例えば、取得された生物物理学的シグナルからベースラインワンダを標準化及び/又は除去するように構成された、前処理モジュールを含む。
【0086】
フォトプレチスモグラフィシグナル及び取得システム
図1Aは、例証的な実施形態に従って、そのような生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定(例、決定)するために、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aの動力学的特性を非侵襲的に評価するよう構成された例示的なシステム100(100aとして示す)の図である。
【0087】
フォトプレチスモグラフィシグナルは、心臓系と呼吸/肺系の間での複雑な相互作用に関連する情報を含むことができる。一部の実施形態では、フォトプレチスモグラフィシグナルは、フォトプレチスモグラムにより取得される。
【0088】
フォトプレチスモグラムは、一般的に、組織中の血液の脈動容量に関連する非侵襲的な循環生物物理学的シグナルを含むと理解されている。パルスオキシメータは、組織の微小血管床における血液容量の変化を検出するために使用することができるフォトプレチスモグラムの型を生成する。フォトプレチスモグラムは、一部の実施形態では、皮膚を照射し、少なくとも2つの異なる光波長を使用して光吸収における変化を測定する。パルスオキシメータは、外来患者、入院患者、及び外傷の設定において、一般に指に装着され(身体の他の部位に使用することもできるが)、血液中のヘモグロビンの部分酸素飽和度(「SpO」として公知である)を測定する。しかし、生のフォトプレチスモグラムが表示される、又はさらに解析されることはあまり一般的ではない。フォトプレチスモグラムの態様は、Reisner et al., “Utility of the Photoplethysmogram in Circulatory Monitoring” Anesthesiology 5 2008, Vol. 108, 950-958において記載されており、その全体が、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0089】
図1Aでは、非侵襲的測定システム102(「測定システム」102aとして示す)は、対象108(例、患者の指で;108aとして示す)から測定プローブ106(プローブ106’a、106’bとして示す)を介して1つ又は複数のフォトプレチスモグラフィシグナル104(104aとして示す)を取得し、生物物理学的シグナルデータセット110(110aとして示す)を産生するように構成される。取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aは、一部の実施形態では、酸素化及び/又は脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収における測定された変化と関連付けられる。
【0090】
一部の実施形態では、測定システム102aは、疾患又は異常状態を診断する目的のために、そのようなシグナル波形を取得するように構成された、カスタム又は専用の装置又は回路(既製のデバイスを含む)を含む。他の実施形態では、測定システム102aは、解析のために、取得された生のシグナルを出力することができるパルスオキシメータ又は光学的フォトプレチスモグラフィデバイスを含む。実際に、一部の実施形態では、取得された波形104aは、「SpO読み取り」として図1A中に示される血液の酸素飽和度のレベルを算出するために解析されうる。例示された解析アプリケーションについては、しかし、波形だけが処理され、利用される。
【0091】
図1Aをさらに参照すると、非侵襲的な測定システム102aは、例えば、通信システム及び/又はネットワークを通じて、あるいは直接接続を通じて、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルデータセット110a、あるいはそこに由来する又はそこから処理されたデータセットを、非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システムにアクセス可能であるリポジトリ112(例、記憶領域ネットワーク)に送信するように構成される。非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システム114(解析エンジン114aとして示す)は、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルの動力学的特性を解析するように構成される。
【0092】
図2Aは、例証的な実施形態に従った、図1の測定システム102(例、図1Aの102a)を介して取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aの一例を示す。
具体的には、図2Aは、患者の指からの脱酸素化ヘモグロビンによる光の赤色スペクトル(例、660nmに及ぶ波長を有する)の吸収レベルに関連付けられるシグナル波形202を示す。図2Aはまた、患者の指からの酸素化ヘモグロビンによる赤外スペクトル光(例、940nmに及ぶ波長を有する)に関連付けられる吸収レベルのシグナル波形204を示す。他のスペクトルが取得されうる。また、測定を、身体の他の部分で実施してもよい。図2Aでは、X軸は時間(秒)を示し、Y軸はシグナル振幅(ミリボルト(mv))を示す。
【0093】
図2B及び図2Cは、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル図2Aの周波数領域表示を示すパワースペクトル密度グラフである。図2B及び図2Cでは、X軸は周波数(ヘルツ)を示し、Y軸はシグナルの対数のパワーを示す。
【0094】
一部の実施形態では、赤色及び赤外チャネルの光吸収データを、500サンプル/秒の速度で記録する。他のサンプリングレートを使用してもよい。フォトプレチスモグラフィシグナルは、各々の対象についての心臓シグナルと同時に取得されうる。一部の実施形態では、2つのモダリティ間での取得は、約10マイクロ秒(μs)未満のジッターを有する。チャネル心臓シグナル間でのジッターは、およそ10フェムト秒(fs)でありうるが、他のジッターが許容されうる。
【0095】
図2Dは、例証的な実施形態に従ったフォトプレチスモグラフィシグナル104aを取得するための例示的なセンサ構成を示す。図2Dでは、システムは、光源(例、赤色LED及び赤外LED)及びフォトトランジスタ(例、赤色検出器及び赤外検出器)を含み;フォトトランジスタは、光源から遠位に位置づけられる。
【0096】
図2Eは、別の例証的な実施形態に従ってフォトプレチスモグラフィシグナル104aを取得するための別の例示的なセンサ構成を示す。図2Dでは、システムはまた、光源(例、赤色LED及び赤外LED)及びフォトトランジスタ(例、赤色検出器及び赤外検出器)を含み;しかし、フォトトランジスタは、反射率を測定するために光源に対して近位に位置づけられる。
【0097】
フォトプレチスモグラフィシグナル104aは、心臓シグナルと同様に、身体における動力学的システムの状態の測定値として考えてもよい。動力学的システムの挙動は、心臓系及び呼吸器系の作用により影響されうる。任意の異常(疾患又は異常状態に起因する)が、特定の相互作用機構を介してフォトプレチスモグラフィシグナル104aのダイナミックスにおいて現れうると仮定される。
【0098】
一部の実施形態では、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aは、250Hzにダウンサンプリングされる。他の周波数範囲を使用してもよい。一部の実施形態では、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aを処理し、ベースラインワンダを除去し、ノイズ及びメインの周波数についてフィルタリングする。
【0099】
取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル104aを、特定のより高次元の空間に埋め込み(例、位相空間埋め込み)、基礎となる動力学的システムによって作製されるマニフォールド(位相空間)を再構築してもよい。三次元可視化及びその二次元投影を図2F及び図2G中に示す(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル202について)。具体的には、図2Fは、赤外センサを介して取得された、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル204の3次元位相空間プロットを示す。軸は変換された電圧値(すなわち、縦軸上の単位は依然としてmVであるが、しかし、標準化され、ベースラインワンダが除去されて約ゼロの平均値を有する)である。埋め込みを方程式2において定義する。色は、この幾何学的物体内でコヒーレントな構造を示すように選択される。フォトプレチスモグラフィ関連測定の動力学的特色を、図により表される埋め込みに基づいて算出する。図2Gは、同の二次元投影を示す。
【0100】
心臓シグナル及び取得システム
図1Bは、例証的な実施形態に従って、そのような生理学的システムにおける疾患又は病態、あるいはその指標の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測及び/又は推定(例、決定)するために、取得された心臓シグナル104bを使用して生理学的システムの動力学的特性を非侵襲的に評価するように構成された例示的なシステム100(100bとして示す)の図である。
【0101】
図1Bでは、非侵襲的な測定システム102(「測定システム」102bとして示す)は、対象108(例、患者の胸部及び背部で;108bとして示す)から測定プローブ106(プローブ106a~106fとして示す)を介して1つ又は複数の心臓シグナル104(104bとして示す)を取得し、生物物理学的シグナルデータセット110(110bとして示す)を産生する。
【0102】
一部の実施形態では、測定システム102bは、生体電位の生物物理学的シグナルとして、二電位感知回路を介した身体の生体電位に基づきうる生物物理学的シグナルを取得するように構成される。
【0103】
心臓及び/又は心電図の状況では、測定システム102bは、哺乳類対象(例えばヒトなど)の心臓関連の生体電位又は電気生理学的シグナルを生体電位心臓シグナルデータセットとして捕捉するように構成される。一部の実施形態では、測定システム102bは、生体電位シグナル、電流シグナル、インピーダンスシグナル、磁気シグナル、超音波又は音響シグナルなどとして広帯域の心臓位相勾配シグナルを取得するように構成される。取得されたシグナル、及びそれに対応するデータセットを参照した用語「広帯域」は、目的の生理学的システムの最高支配周波数のナイキストサンプリング率よりも実質的に大きい周波数範囲を有するシグナルを指す。心臓シグナルについては、それらは典型的には約0.5Hz~約80Hzの間の支配的な周波数成分を有し、広帯域心臓位相勾配シグナル又は広帯域心臓生物物理学的シグナルは、約0.1Hz~1KHzの間、約0.1Hz~約2KHzの間、約0.1Hz~約3KHzの間、約0.1Hz~約4KHzの間、約0.1Hz~約5KHzの間、約0.1Hz~約6KHzの間、約0.1Hz~約7KHzの間、約0.1Hz~約8KHzの間、約0.1Hz~約9KHzの間、約0.1Hz~約10KHzの間、及び約0.1Hz~10KHz以上(例、0.1Hz~50KHz又は0.1Hz~500KHz)の間からなる群より選択される周波数で心臓周波数情報を含む。支配的な周波数成分を捕捉することに加えて、広帯域の捕捉によって、目的の他の周波数の捕捉も容易になる。目的のそのような周波数の例は、とりわけ、QRS周波数プロファイル(250Hzまでの周波数範囲を有することができる)を含むことができる。取得されたシグナル、及び対応するデータセットを参照した用語「位相勾配」は、目的の生理学的システムの一連の異なる事象/機能についての位相情報を観察するために、身体の異なる位置で取得されたシグナルを指す。シグナル取得に続いて、用語「位相勾配」は、非歪みシグナル処理ならびに前処理ハードウェア、ソフトウェア、及び技術(例、位相線形フィルタならびにシグナル処理演算子及び/又はアルゴリズム)の使用を介した位相情報の保存を指す。
【0104】
一部の実施形態では、心臓シグナルデータセット110bは、例えば、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と表題が付けられた米国特許公開第2017/0119272号において記載されているように、位相空間レコーダを介して取得される広帯域生体電位シグナルを含む。一部の実施形態では、心臓シグナルデータセットは、例えば、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と表題が付けられた米国特許公開第2018/0249960号において記載されているように、位相空間レコーダを介して取得された双極広帯域生体電位シグナルを含む。他の実施形態では、心臓シグナルデータセット110bは、従来の心電図(ECG/EKG)装置(例、ホルターデバイス、12リードECGなど)から取得された1つ又は複数の生体電位シグナルを含む。
【0105】
2017/0119272において記載される位相空間レコーダは、一部の実施形態では、心臓シグナル104bと共にフォトプレチスモグラフィシグナル104aを同時に取得するように構成される。このように、一部の実施形態では、測定システム102bは、2つの型の生物物理学的シグナルを取得するように構成される。
【0106】
図3Aは、例証的な実施形態に従って、図1の測定システムを介して取得された例示的な生物物理学的シグナルとしての例示的な心臓シグナル(例、生体電位シグナル)を示す。シグナルは、ベースラインワンダ及び高周波ノイズが除去されて示されている。一部の実施形態では、心臓シグナル104bは、例えば、2017/0119272において記載されているように、位相空間レコーダデバイスを使用して取得される。シグナル104bは、3つのシグナル302、304、306(また、チャネル「x」、チャネル「y」、及びチャネル「z」として言及される)を提供するために3つのチャネルにわたり取得された双極性生体電位測定値を含む。図3Aでは、X軸は時間(秒)を示し、Y軸はシグナル振幅(ミリボルト(mv))を示す。
【0107】
図3Bは、心臓シグナル104bを取得するように構成された、例えば、米国特許公開第2017/0119272号において記載されている位相空間レコーダデバイスの図である。位相空間レコーダデバイスは、フォトプレチスモグラフィシグナル104aも取得するようにさらに構成される。
【0108】
図1Bをさらに参照すると、非侵襲的な測定システム102bは、例えば、通信システム及び/又はネットワークを通じて、あるいは直接接続を通じて、取得された心臓シグナルデータセット110b、あるいはそこに由来する又はそこから処理されたデータセットを、非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システムにアクセス可能であるリポジトリ112(例、記憶領域ネットワーク)に送信するように構成される。非侵襲的な生物物理学的シグナル評価システム114(解析エンジン114として示す)は、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルの動力学的特性を解析するように構成される。
【0109】
神経学的な状況では、測定システム102は、神経学的な生物物理学的シグナルデータセットとして哺乳類対象(例えばヒトなど)の神経学的関連の生体電位又は電気生理学的シグナルを捕捉するように構成される。一部の実施形態では、測定システム102は、広帯域神経学的位相勾配シグナル、例えば生体電位シグナル、電流シグナル、インピーダンスシグナル、磁気シグナル、超音波又は音響シグナル、光シグナルなどを取得するように構成される。測定システム102の一例が、米国特許公開第2017/0119272号において及び米国特許公開第2018/0249960号において記載されており、その各々が参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
【0110】
一部の実施形態では、測定システム102は、シグナルのスペクトル成分が変わらないように、フィルタリングされていない哺乳類電気生理学的シグナルとして広帯域生体電位の生物物理的位相勾配シグナルを捕捉するように構成される。実際に、そのような実施形態では、広帯域生体電位の生物物理学的位相勾配シグナルは、(例、デジタル化の前に)フィルタリング(例、ハードウェア回路及び/又はデジタルシグナル処理技術などを介して)されることなく捕捉、変換、及びさらには解析され、そうでなければ、目的の生物物理学的シグナルの位相線形性に影響しうる。一部の実施形態では、広帯域生体電位の生物物理学的位相勾配シグナルは、従来の心電図、脳波、及び他の生物物理学的シグナル取得器具のノイズフロアである、それを下回る、又はそれを有意に下回る、マイクロボルト又はサブマイクルボルト分解能において捕捉される。一部の実施形態では、広帯域生体電位の生物物理学的シグナルを同時にサンプリングし、約1マイクロ秒未満の時間的スキュー又は「ラグ」を有し、他の実施形態では、約10フェムト秒以下の時間的スキュー又はラグを有する。注目すべきは、例示された実施形態は、取得された広帯域位相勾配シグナルにおける非線形の歪み(例、特定のフィルタを介して導入されうるもの)を最小限にし、その中の情報に影響を与えない。
【0111】
図3Cは、例証的な実施形態に従った、臨床環境における患者での図3Bの測定システムの例示的な留置を示す。図3Dは、例証的な実施形態に従って、図3Aの心臓シグナルを取得するための、患者での表面電極106a~106gの例示的な留置の図である。具体的には、図3Dは、例証的な実施形態に従って広帯域心臓位相勾配シグナルに関連付けられる生体電位シグナルを取得するための、患者の胸部及び背部での表面電極106a~106gの例示的な留置を示す。図3Dの左ペインでは、表面電極106a~106gが、患者の胸部及び背部で留置されて示されている。図3Dの右ペインでは、表面電極106a~106gの留置の側面図が示されている。
【0112】
図3D中に示す例示的な構成では、表面電極106a~106gを、i)第5肋間腔に対応する右前腋窩線の近位の第1位置;ii)第5肋間腔に対応する左前腋窩線の近位の第2位置;iii)第1肋間腔に対応する左胸骨縁の近位の第3位置;iv)胸骨の下及び患者の剣状突起の外側の左胸骨境界線の近位の第4位置;v)第3肋間腔に対応する左胸骨境界線の近位の第5位置;vi)第5の位置の真反対及び患者の脊椎の左の患者の背部の近位の第6位置;ならびにviii)左腋窩線に沿った、第2肋間腔に対応する右上腹の近位の第7位置で患者の皮膚上に配置される。共通リード(「CMM」として示す)も示す。個々の表面電極の位置は、他の電極構成が有用であるため、本開示の他の実施形態において変動しうる。
【0113】
図1を参照すると、非侵襲的な測定システム102は、回路及びコンピューティングハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアなどを伴って構成され、心臓シグナル及び/又はフォトプレチスモグラフィシグナルを取得し、生物物理学的シグナルデータセット110を生成する。他の実施形態では、非侵襲的な測定システム102は、心臓シグナルを取得するための第1装置(示さず)を含み、フォトプレチスモグラフィシグナルを取得するための第2装置(示さず)を含む。
【0114】
図1を参照すると、動力学的特色抽出モジュール118は、一部の実施形態では、1つ又は複数の非線形動力学的特性(例えば、リアプノフ指数(LE)、エントロピー(K2)、ならびにフォトプレチスモグラフィシグナル104の他の統計的及び幾何学的特徴付け特性を含むが、それらに限定しない)を評価するように構成される。
【0115】
リアプノフ指数は、指数関数的発散の強さを特徴付ける包括的な尺度である[30]。カオス的システムについては、最大リアプノフ指数は、システムが過去のより少ない記憶を有することを示す正の数である。所与の動力学的システムについて、リアプノフ指数の値が大きくなるほど、過去の情報を使用して未来を予測することができるタイムホライズンは短くなる。エントロピー(KS)(又はコルモゴロフ・シナイ・エントロピーK2[31、32])は、時間に伴うエントロピーの変化率を表す。フラクタル次元(D2)は位相空間におけるアトラクタのトポロジー特性を特徴付け、アトラクタの幾何学的情報(フラクタル性)及び動力学がその上でどのように進化するかを組み合わせる際に、動力学についてより多くを明らかにするために使用することができる[33]。
【0116】
非線形動力学及びカオス理論を体系的に使用し、線形システム系の複雑さを説明することができ、それらの挙動を定量的に解析するためのツールを提供する[19]。線形システムは、指数関数的に成長/減衰する応答、又は周期的に振動する応答、あるいはそれらの組み合わせを生成することができ、それにおいて、応答中の不規則なパターンは、これらのシステムへの入力における不規則性又はランダム性に起因しうる。線形システムは現実の単純化であり、大半の動力学的システムは、自然界又は人工物を問わず、本質的に非線形であり、ランダム性の任意の供給源を伴わなくとも、複雑で不規則な挙動を産生することができる。これらの挙動はしばしば決定論的カオスと呼ばれる。非線形動力学及びカオスツールが、種々の複雑な生物学的及び生理学的現象を説明するために使用されてきた[20、21、22、23];例えば、心房細動を分類し[24]、心拍変動を特徴付けるために[25]、これらの各々が、参照により本明細書でその全体において組み入れられる。
【0117】
一部の実施形態では、システム100は、疾患又は異常状態、あるいはその指標の存在、非存在、重症度、及び/又は局在化(該当する場合)を予測及び/又は推定する際に、解析エンジン114のスコア又は種々の出力を、例えば、レポートにおいて表示するための医療提供者ポータルを含む。医師又は臨床医ポータルは、一部の実施形態では、リポジトリ(例、記憶領域ネットワーク)からレポートにアクセスし、回収するように構成される。医師又は臨床医ポータル及び/又はリポジトリは、種々のプライバシー法及び規制、例えば1996年の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)などに準拠することができる。例示的な医療提供者ポータルのさらなる記載が、「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と表題が付けられた米国特許第10,292,596号において提供され、それは、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。特定の実施形態では、ポータルは、医療専門家への患者の医療情報の提示のために構成され、他の実施形態では、医療提供者ポータルは、患者、研究者、学者、及び/又は他のポータル利用者にアクセス可能にすることができる。
【0118】
図1を参照すると、一部の実施形態では、解析エンジン114は、フォトプレチスモグラフィシグナル104から生成されたポアンカレマップオブジェクトの幾何学的及びトポグラフィ特性を評価するように構成されたポアンカレ特色抽出モジュール120を含む。
【0119】
フォトプレチスモグラフィシグナルの動力学的解析の実験結果
図4は、フォトプレチスモグラフィシグナル(赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)から抽出された動力学的特色が、例証的な実施形態に従った、疾患又は異常状態、あるいはその指標の評価において臨床予測値を有することを示す試験からの実験結果を示す。データセットは、予測/推定が特定の集団セット(例、性別に基づく)及び疾患又は病態、あるいはその指標に関することを記述するが、実験結果は、提示された解析において、これらの基準に従って単に層別化されている。実際に、実験結果ならびに本明細書中で考察される方法及びシステムは、駆出率(EF)が保存されている場合でさえ、必ずしもそれをLVEDPレベルに相関させることなく、疾患又は病態、例えば一般的に心不全(HF)などの存在もしくは非存在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断するための基礎を提供する。言い換えれば、即席のシステム及び方法を使用し、種々の形態の心不全(HF)の存在もしくは非存在及び/又は重症度、ならびにLVEDPの決定/推定を伴わない他の疾患及び/又は病態の非侵襲的な診断又は決定を行ってもよい。LVEDPは疾患の指標となりうるが、しかし、それ自体は疾患状態又は病態とはみなされないことが一般的に理解されている。
【0120】
この試験では、フォトプレチスモグラフィシグナルの一連の動力学的特色(相関と相互情報量、リアプノフ指数、及びフラクタル次元、及びエントロピーに関するものを含む)を評価した。相関は、線形相互作用を捕捉するための自己相関(例、自己相関ラグ)及び相互相関を含みうる。相互情報量を使用して非線形依存性を見出してもよい。リアプノフ指数を使用してカオス性のレベルを測定してもよい。フラクタル次元はまた、「D2」として言及される。エントロピーを使用し、フラクタル上で情報を生成する率を評価してもよい;また、「K2」として言及する。
【0121】
本試験では、候補特色を、t検定、相互情報量、又はAUCを使用して評価した。t検定を、正常なLVEDPの帰無仮説及び陰性の冠動脈疾患の帰無仮説に対して行った。t検定は、未知の分散を伴う2つの集団からの2つのサンプル平均値の間に差があるか否かを決定することができる統計検定である。t検定の出力はp値であり、それにおいて、小さなp値(典型的には≦0.05)は帰無仮説に対する強いエビデンスを示す。本試験は、置換を伴うランダムサンプリング(ブートストラッピング)を使用して検定セットを生成した。
【0122】
相互情報量操作を行って、上昇した又は異常なLVEDPの依存性あるいは特定の特色セットでの有意な冠動脈疾患を評価した。相互情報量は、2つの確率変数の間の相互依存性の尺度である無次元量を指す。MIをビンの数により標準化し、高い及び低いMIを、
【数1】
の高値及び低値として算出する。選択された特色は、1.0より大きい高値及び1.0より大きい低値を有する。
【0123】
受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、識別閾値が変動された際での二値分類器システムの診断能力を例証するグラフプロットである。ROC曲線は、種々の閾値設定で、偽陽性率(FPR)に対する真陽性率(TPR)をプロットすることにより作成される。曲線下の面積ROC(AUC-ROC)は、不正確な設定のコストをさらに考慮する。ROC、及びAUC-ROCの値は、それが0.50より大きい場合に有意である。
【0124】
表1は、図4の評価された動力学的抽出パラメータの各々の説明を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0125】
図4は、フォトプレチスモグラフィシグナルのフラクタル次元「D2」が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度、ならびに上昇した又は異常なLVEDPに関連付けられる疾患又は病態を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。CADの存在についての基準は、血管造影による70%より大きな狭窄又はフローワイヤによる0.80未満のフラクション-フローを有するとして定義される。
【0126】
具体的には、図4は、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルのフラクタル次元「D2」(「SpD2L」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に、0.000000434のt検定p値を有することを示す。小さなp値(典型的には≦0.05)は、帰無仮説(即ち、上昇した又は異常なLVEDPの存在がない)に対する強いエビデンスを示す。さらに、図4は、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルのフラクタル次元(「D2」)(「SpD2U」として示す)が、上昇した又は異常なLVED(それは、疾患又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.00000382のt検定p値、ならびに冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.02のt検定p値を有することを示す。さらに、図4はまた、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルのフラクタル次元「D2」(「SpD2U」として示す)は、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.02のt検定p値を有することを示す。小さなp値(典型的には≦0.05)は、帰無仮説(即ち、上昇した又は異常なLVEDPあるいは冠動脈疾患の存在なし)に対する強いエビデンスを示す。
【0127】
さらに、図4は、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルの相互情報量が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図4は、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの最小自己相互情報量ラグ(「SpAMILmin」として示す)及び赤色フォトプレチスモグラフィシグナルの最小自己相互情報量ラグ(「SpAMIUmin」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際にそれぞれ1.288及び1.016の相互情報量値を有することを示す。時間/指標ラグは、最小相互情報量値をもたらすためにそれ自身に関してシフトさせたシグナルに関するシグナルの自己相互情報量を介して算出される。1.0より大きい相互情報量値は、統計的な有意性を有する。
【0128】
さらに、図4は、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナルのエントロピー「K2」値が、冠動脈疾患ならびに/あるいは上昇した又は異常なLVEDPに関連付けられる疾患又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図4は、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル(「SpK2U」として示す)のエントロピー(「K2」)及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル(「SpK2L」として示す)のエントロピー(「K2」)が、それぞれ0.041及び0.046のt検定p値を有し、性別に基づく特定の集団における冠動脈疾患ならびに/あるいは上昇した又は異常なLVEDPに関連付けられる疾患又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する。小さなp値(典型的には≦0.05)は、帰無仮説(即ち、有意な冠動脈疾患の存在なし)に対する強いエビデンスを示す。小さなp値(典型的には≦0.05)は、帰無仮説(即ち、CADの存在なし)に対する強いエビデンスを示す。
【0129】
心臓シグナルの動力学的解析の実験結果
図5は、心臓シグナルから抽出された動力学的特色が、例証的な実施形態に従った、疾患あるいは上昇した又は異常な状態、又はその指標の評価において臨床的予測値を有することを示す試験からの実験結果を示す。上で記述するように、データセットは、予測/推定が特定の集団セット(例、性別に基づく)及び疾患又は病態、あるいはその指標(例、LVEDP又はCAD)に関することを記述するが、実験結果は、提示された解析において、これらの基準に従って単に層別化されている。実際に、実験結果ならびに本明細書中で考察される方法及びシステムは、駆出率(EF)が保存されている場合でさえ、必ずしもそれをLVEDPレベルに相関させることなく、疾患又は病態、あるいはその指標、例えば一般的に心不全(HF)などの存在もしくは非存在及び/又は重症度及び/又は局在化(該当する場合)を診断するための基礎を提供する。言い換えれば、即席のシステム及び方法を使用し、種々の形態の心不全(HF)の存在もしくは非存在及び/又は重症度及び/又は局在化(該当する場合)、ならびにLVEDPの決定/推定を伴わない他の疾患及び/又は病態の非侵襲的な診断又は決定を行ってもよい。
【0130】
この試験では、心臓シグナルの一連の動力学的特色(相関と相互情報量、リアプノフ指数、ならびにフラクタル次元及びエントロピーに関するものを含む)を評価した。相関は、線形相互作用を捕捉するための自己相関(例、自己相関ラグ)及び相互相関を含みうる。相互情報量を使用して非線形依存性を見出してもよい。リアプノフ指数を使用してカオス性のレベルを測定してもよい。フラクタル次元はまた、「D2」として言及される。エントロピーを使用し、フラクタル上で情報を生成する率を評価してもよい;また、「K2」として言及する。
【0131】
本試験では、候補特色を、t検定、相互情報量、又はAUCを使用して評価した。t検定を、正常なLVEDPの帰無仮説及び陰性の冠動脈疾患の帰無仮説に対して行った。t検定は、未知の分散を伴う2つの集団からの2つのサンプル平均値の間に差があるか否かを決定することができる統計検定である。t検定の出力は、p値として公知の無次元量である。小さなp値(典型的には≦0.05)は、帰無仮説に対する強いエビデンスを示す。本試験は、置換を伴うランダムサンプリング(ブートストラッピング)を使用して検定セットを生成した。
【0132】
相互情報量技術を行って、上昇した又は異常なLVEDPの任意の依存性あるいは特定の特色セットでの有意な冠動脈疾患の知見を評価した。用語「相互情報量」は、2つの確率変数間での相互依存性の情報理論的な尺度を指す。MIをビンの数により標準化し、高い及び低いMIを、
【数2】
の高値及び低値として算出する。選択された特色は、1.0より大きい高値及び1.0より大きい低値を有する。
【0133】
表2は、図5の評価された動力学的抽出パラメータの各々の説明を提供する。
【表2】
【0134】
図5は、取得された心臓シグナルのリアプノフ指数が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、チャネル「y」のリアプノフ指数値(「LEY」)は、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に1.2の相互情報量値を有することが示されている。1.0より大きい相互情報量値は、有意性を有する。
【0135】
また、図5は、取得された心臓シグナルのフラクタル次元「D2」が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図5は、チャネル「x」(「D2X」として示す)のフラクタル次元「D2」が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.53のAUCを有することを示す。さらに、図5は、チャネル「y」のフラクタル次元「D2」(「D2Y」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.52のAUC;0.002のt検定p値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し、0.05未満のp値は有意性を有する。
【0136】
また、図5は、取得された心臓シグナルのエントロピー「K2」が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図5は、チャネル「x」のエントロピー「K2」(「K2X」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に1.03の相互情報量値及び0.56のAUC値を有することを示す。さらに、図5はまた、チャネル「x」のエントロピー「K2」(「K2X」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.32の相互情報量値;0.0002のt検定p値;0.53のAUCを有することを示す。さらに、図5は、エントロピー「K2」チャネル「y」(「K2Y」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.0002のt検定p値;1.05の相互情報量値;及び0.53のAUCを有することを示す。さらに、図5は、エントロピー「K2」チャネル「z」(「K2Z」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.03のt検定p値;1.07の相互情報量値;及び0.52のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0137】
また、図5は、取得された心臓シグナルの自己相関が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を示しうる)及び冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図5は、チャネル「y」の算出された最小自己相互情報量ラグ(「AMIYmin」として示す)、すなわち、最小相互情報量をもたらすためにシグナルの算出された相互情報量とそれ自体の間でシフトされるべき時間/指標ラグが、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.02のt検定p値を有することを示す。さらに、図5は、チャネル「z」の最小自己相互情報量ラグ(「AMIZmin」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.03のt検定p値を有することを示す。0.05未満のp値は有意性を有する。
【0138】
また、図5は、心臓シグナルの自己相関が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図5は、チャネル「x」の自己相関の第1ゼロ交差(「ACFXZ1」として示す)が、冠動脈疾患の存在の有無、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.05の相互情報量値を有することを示す。さらに、図5はまた、チャネル「y」の自己相関(「ACFYZ1」)及びチャネル「z」の自己相関(「ACFZZ1」)の第1ゼロ交差が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際にそれぞれ0.0001及び0.04のt検定p値を有することを示す。さらに、図5は、チャネル「x」の自己相関の第2ゼロ交差(「ACFXZ2」)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.03のt検定p値及び0.51のAUC値を有することを示す。さらに、図5は、チャネル「y」の自己相関の第2ゼロ交差(「ACFYZ2」)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.001のt検定p値、ならびに冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(場合により)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.51のAUC値を有することを示す。さらに、図5は、チャネル「z」の自己相関の第2ゼロ交差(「ACFZZ2」)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.002のt検定p値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0139】
また、図5は、心臓シグナルの異なるチャネルの間の相互相関が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図5は、取得された心臓シグナルのチャネル「y」とチャネル「z」の間の相互相関の最大値(「XCFYZMax」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に1.03の相互情報量、ならびに冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.13の相互情報量値を有することを示す。さらに、図5は、取得された心臓シグナルのチャネル「x」とチャネル「y」の間の相互相関の最大値(「XCFXYMax」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.0004のt検定p値を有することを示す。さらに、図5は、取得された心臓シグナルのチャネル「x」とチャネル「z」の間の相互相関の最大値(「XCFXZMax」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.04のt検定p値、ならびに冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.03の相互情報量値を有することを示す。0.05未満のp値は有意性を有し、及び1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0140】
また、図5は、取得された心臓シグナル(「XCFXZ1」として示す)のチャネル「x」とチャネル「z」の間の相互相関(ゼロ又はラグなし)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.002のt検定p値;1.59の相互情報量値;及び0.54のAUC値を有することを示す。さらに、図5は、取得された心臓シグナルのチャネル「x」とチャネル「z」の間の相互相関の第1ゼロ交差(「XCFXZZ1」)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.0005のt検定p値;1.16の相互情報量値;0.56のAUC値を有することを示す。さらに、図5は、取得された心臓シグナルのチャネル「y」とチャネル「z」の間の相互相関の第2ゼロ交差(「XCFYZZ2」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.004のt検定p値を有することを示す。さらに、図5は、チャネル「y」と「z」の間の相互相関におけるチャネル「y」と「z」の間の遅延/ラグ(「XCFYZDelay」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.04のt検定p値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0141】
操作の例示的な方法
図6図10及び図11図15は、各々が、例証的な実施形態に従った図1(ならびに図1A及び図1B)の例示的な動力学的特色解析モジュール118を示す。図6図10及び図11図15のモジュールの出力は、単に例証的である。実施形態は、示された出力の一部又は全部を用いて実施されうる。一部の実施形態では、追加の出力が生成される。
【0142】
数学的モデル(方程式)を持つシステムと異なり、循環器系の動力学は、いくつかの測定値として表され、NDS特徴が、明示的な支配方程式を通じるよりむしろ、測定されたシグナルから抽出される。測定値はシステムの真の状態の投影と見ることができる;この理由のため、真のシステムに関する最も多くの情報を含む測定を実施することが必須である。システムの真の状態がx(t),...x(t)である場合、測定値s(t)は以下により表してもよい
【数3】
式中、g(...)は射影関数である。ここで、課題は、s(t)から真のシステム又は数学的に等価である近似を再構築することである。これは、遅延埋め込み位相空間再構築を使用することにより達成することができる。さらなる説明は、Sauer et al., Embedology, Jour. Of Statistical Physics, Vol. 65: 3-4, pp 579-616 (Nov. 1991)において見出されうる。
【0143】
埋め込み定理において、NDSではシステムの構成要素又は状態は通常、互いに共役又は相互作用するため、ちょうど1回の測定が全てのこれらの効果に関する情報を含むべきであることが記述される。また、真のシステムを代表するトポロジー的な等価物が、単一の測定から構築されうる。
【0144】
有効なアプローチの1つは、遅延埋め込みの方法である。この方法では、サイズmのベクトル空間を以下のように構築する。
【数4】
【0145】
2つの重要なパラメータ、位相空間のm次元及び遅延のτがある。次元は、再構成されたマニフォールドが、本来の動力学を表すように十分に展開されるように、十分に高く選択すべきである。遅延は小さ過ぎない(時間的相関が支配的な効果となりうる)及び大き過ぎないようにすべきであり;適した値によって、十分に拡大されたマニフォールドがもたらされるはずである。これらの値は、各々の適用、ここでは心血管シグナルについて微調整されてもよい。
【0146】
この試験では、250Hzシグナルにおける10の指標点に対応するm=24及びtau=40(ms)。これらの値は、収束解析を使用して得られた。一部の実施形態では、NDSの技術を適用し、位相空間においてシステムを特徴付けることができる。
【0147】
リアプノフ指数特色
図6及び図11は、各々が、リアプノフ指数特色抽出モジュール600を示す。図6では、モジュール600(600aとして示す)は、フォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)から決定される最大のリアプノフ指数を決定するように構成される。図11では、モジュール600(1100bとして示す)は、心臓シグナル(例、PSRデバイスのチャネル「x」、PSRデバイスのチャネル「y」、及び/又はPSRデバイスのチャネル「z」)から決定される最大のリアプノフ指数を決定するように構成される。
【0148】
リアプノフ指数は、小さな初期摂動の指数関数的な成長率である。基本的には、それは、2つの近接軌道がどのくらい速く発散するかを表す。
【数5】
式中、λはLEであり、δ(t)は初期摂動δの進化である。一部の実施形態では、λは、多くの点にわたる及び有限の時間での平均として算出される。
【0149】
図6中に示すように、モジュール600は、(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルの及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの)各々のそれぞれのフォトプレチスモグラフィシグナルから決定された最大のリアプノフ指数値を出力しうる。図11では、モジュール1100bは、(例、PSRデバイスの取得チャネル「x」、PSRデバイスの取得チャネル「y」、及び/又はPSRデバイスの取得チャネル「z」からの)各々のそれぞれの心臓シグナルから決定された最大のリアプノフ指数値を出力しうる。
【0150】
表3は、LE特色抽出モジュール600(例、600a、1100b)への例示的な入力引数を示す。
【表3】
【0151】
フラクタル次元特色
図7及び図12は、各々が、フラクタル次元特色抽出モジュール700を示す。図7では、モジュール700(700aとして示す)は、例えば、図4に関連して記載される赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナルのフラクタル次元(「D2」)を含む、フォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)についてのフラクタル次元値を決定するように構成される。図12では、モジュール700(1200bとして示す)は、(例、PSRデバイスのチャネル「x」、PSRデバイスのチャネル「y」、及び/又はPSRデバイスのチャネル「z」からの)心臓シグナルから決定されるフラクタル次元「D2」を決定するように構成される。
【0152】
フラクタルは、同じ全体パターンが種々のスケールでの拡大により観察されることを意味する自己相似構造を有する幾何学的物体である。フラクタル構造の1つの他の態様は、それらの非整数次元である。例えば、有名なローレンツ・アトラクタは2.05の相関次元を有し、それは2次元マニフォールドより大きいが、しかし、3次元容積より小さい。フラクタル次元を見出すために、より多くのデータがLEについて要求される。それでも、測定データから正確なフラクタル次元を見出すことは、計算的に過重である。この問題を軽減するために、フラクタル次元への下界を、相関次元(D2)により算出することができる。
【0153】
位相空間(PS)におけるデータの軌跡が半径εの球U(ε)内に見出される確率は、方程式4.のように表現されうる:
【数6】
【0154】
方程式において、μ(s)は確率密度関数である。次に、次数qの一般化された相関積分を方程式5として定義する。
【数7】
【0155】
方程式5の積分を、方程式6において以下の形式に拡大することができる。
【数8】
【0156】
方程式6によると、関数Θは、軌道s及びs’の2つの点に作用するヘヴィサイド関数である。相関和は以下のべき法則に従って変動することが観察される。
【数9】
【0157】
方程式7から、次数qの相関次元を、方程式8により以下のように得ることができる。
【数10】
【0158】
式中、q=2とし、これを使用してDを算出する。この計算はまた、エントロピーの変化率を推定するために有用でありうる。
【0159】
図7中に示すように、モジュール700aは、(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルの及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの)各々のそれぞれのフォトプレチスモグラフィシグナルから決定された分数次元「D2」を出力しうる。図12では、モジュール1200bは、(例、PSRデバイスの取得チャネル「x」、PSRデバイスの取得チャネル「y」、及び/又はPSRデバイスの取得チャネル「z」からの)各々のそれぞれの心臓シグナルから決定されたフラクタル次元「D2」を出力しうる。
【0160】
表4は、フラクタル次元特色抽出モジュール700(例、700a、1200b)への例示的な入力引数を示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0161】
リニアスケーリング領域を「D2」及び「K2」について算出してもよい。また、種々の埋め込み次元mについてのエントロピーカーブを算出してもよい。
【0162】
エントロピー特色
図8及び図13は、各々が、エントロピー特色抽出モジュール800を示す。図8では、モジュール800(800aとして示す)は、フォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)についてのエントロピー値を決定するように構成される。図13では、モジュール800(1300bとして示す)は、(例、PSRデバイスのチャネル「x」、PSRデバイスのチャネル「y」、及び/又はPSRデバイスのチャネル「z」からの)心臓シグナルについてのエントロピー値を決定するように構成される。
【0163】
エントロピーは不確実性の尺度として、又は情報と等価に理解することができる。事象が生じる確率が高い場合、不確実性は小さく、情報量は高く、その逆も然りである。シャノンエントロピーを方程式9として定義する。
【数11】
【0164】
方程式9により、エントロピーを、全ての可能な状態にわたる総和として定義する。カオス系については、この量は増大する。なぜなら、無限に多くの状態があるためである。それ故に、アトラクタにわたるエントロピーの変化率は、不確実性のよりロバストでより情報価値のある尺度である。エントロピーの変化率は、方程式10によりKolmogorov-Sinaiエントロピーとして公知である。
【数12】
【0165】
方程式10は、ブロック確率を使用したエントロピーの平均変化率である。すなわち、位相空間中のデータをmブロック中に分割した場合、確率は、点1がi中に、点2がi中にある場合など、結合確率を記述する。この量を算出することは、非常に計算的に過重でありうる;代わりに、この量への下限値kを算出してもよい。order-q Renyiエントロピーを方程式11として定義する。
【数13】
【0166】
エントロピー率(K2)は、方程式12により以下のように算出することができることを示すことができる。
【数14】
式中
【数15】
【0167】
エントロピー率は、Kへの下限への良好な近似でありうる。
【0168】
図8中に示すように、モジュール800aは、(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルの及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの)各々のそれぞれのフォトプレチスモグラフィシグナルから決定された最大のエントロピー値「K2」を出力しうる。図13では、モジュール1300bは、(例、PSRデバイスの取得チャネル「x」、PSRデバイスの取得チャネル「y」、及び/又はPSRデバイスの取得チャネル「z」からの)各々のそれぞれの心臓シグナルから決定された最大のエントロピー値「K2」を出力しうる。
【0169】
表5は、エントロピー特色抽出モジュール800(例、800a、1300b)についての例示的な入力パラメータを示す。パラメータは250Hzのシグナルについて適切である。
【表5】
【0170】
2000又は3000のNref値を使用してもよいが;他の値を使用して計算コストを低下させてもよい。
【0171】
相互情報量
図9及び図13は、各々が、相互情報量(MI)特色抽出モジュール900を示す。図9では、モジュール900(900aとして示す)は、フォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)からのラグで自己相互情報量を決定するように構成される。図13では、モジュール900(1300bとして示す)は、(例、PSRデバイスのチャネル「x」、PSRデバイスのチャネル「y」、及び/又はPSRデバイスのチャネル「z」からの)心臓からのラグで自己相互情報量を決定するように構成される。
【0172】
相互情報量は、PSにおける2つのシグナル又は軌道の間の非線形依存性を確率論的な意味において捕捉する。大まかに言えば、MIによって、軌道が状態iにあることを知って、他の軌道が状態jにある確率はどうなりうるかという問題が定量化される。
【数16】
【0173】
Xの自己相互情報量は、方程式14.1におけるシグナルYを、Xのラグ付きバージョン(即ち、X(t+τ))を用いて置換することにより得られうる。AMIは、このように、ラグτの関数となる。AMIがその最小値を達するラグを特色として使用する。
【0174】
形式的には、ラグτでの自己相互情報量は、方程式14.2により定義することができる。
【数17】
【0175】
相互情報量は、一部の実施形態では、位相空間(PS)を分割し、同時確率分布を算出することにより算出される。一部の実施形態では、比率
【数18】
は標準化されたMIとして算出される。
【0176】
入力パラメータは、一部の実施形態では、ビンの数である。本試験において使用される値は128である。他のビン数を使用してもよい。
【0177】
図9中に示すように、モジュール900aは、(例、赤色フォトプレチスモグラフィシグナルの及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの)各々のそれぞれのフォトプレチスモグラフィシグナルから自己相互情報量を出力しうる。
【0178】
図13では、モジュール1300bは、(例、PSRデバイスの取得チャネル「x」、PSRデバイスの取得チャネル「y」、及び/又はPSRデバイスの取得チャネル「z」からの)各々のそれぞれの心臓シグナルから決定された自己相互情報量を出力しうる。
【0179】
相互相関
図10及び図14は、各々が、相関特色抽出モジュール1000を示す。図10では、モジュール1000(1000aとして示す)は、取得された赤色フォトプレチスモグラフィシグナルと赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの間のゼロ交差での自己相関及び相互相関を決定するように構成される。図14では、モジュール1000(1400bとして示す)は、取得された心臓シグナルの間(例えば、チャネル「x」と「y」の間、チャネル「x」と「z」の間、及びチャネル「y」と「z」の間)のゼロ交差での自己相関及び相互相関を決定するように構成される。
【0180】
非線形依存性を、相互情報量を通じて定量化した。2つの確率変数又はシグナルの間の線形相互作用を、相互相関を使用して特定することができる。相互相関関数を以下のように定義する:
【数19】
【0181】
図10及び図15に示すように、一部の実施形態では、第1及び第2ゼロ交差、最大相関、この最大での遅延及びτ=0での値が、特色として抽出される。
【0182】
考察
挙動又は状態が時間中に進化するシステムは動力学的システム(DS)と呼ばれる;これらのシステムは決定論的又は確率的である。前者の場合では、システムの挙動は決定論的な規則により支配され、システムにおいてランダム性はないが、ランダム様応答が観察されうる;後者の場合では、しかし、システムは、ランダム性が駆動機構となる確率過程として進化する。
【0183】
決定論的動力学的システムは、システムにおいてランダム性がないにもかかわらず、完全にランダムであると思える挙動を示しうる。この型の応答は、カオスと呼ばれ、非線形決定論的動力学的システムの形質である。これらのシステムにおける非線形性は、複雑な方法において構成要素の応答と共役し、ランダム様の挙動を生じる。これらの型の動力学は、非線形動力学的システムの数学的技術を使用することにより特定及び特徴付けることができる。
【0184】
本明細書中で使用するように、非線形動力学的システムに言及する場合、決定論的なものを意図する。
【0185】
NDSのカオス的挙動の1つの重要な特色は、初期状態へのそれらの高感度の依存性である;開始状態におけるわずかな差が、指数関数的に速く成長し、比較的短い時間において2つの完全に異なる挙動に導く。この成長速度は、リアプノフ指数(LE)を使用して定量化されうる。十分に長い時間があれば、カオスシステムの運動の軌跡は、位相空間の有界領域(散逸システムについて)を満たす;後に続く幾何学は非常に複雑であり、フラクタル特性を有する。この物体はまた、アトラクタとして言及される。カオスのこの幾何学的側面を試験するために、フラクタル数学が使用され、フラクタル次元は1つのそのような技術である。エントロピーは、カオスの動力学的側面及び幾何学的側面の両方を組み合わせ、この現象を確率的観点からとらえる尺度である。これら及び他の技術を以下のセクションにおいて紹介する。
【0186】
精巧な伝導及び機械的サブシステムを伴う心血管系は、NDSとみなしてもよい;生理学的機能におけるカオス性によって、システムは外因的条件により良好に応答することが可能になる。DSの内部特徴が、例えば、あるパラメータ変化に起因して変化する場合、その挙動は分岐し、それにより、異なる特徴を有する応答を産生しうる。心血管系の状況では、これは、心臓が正常な状態から病的な状態に移る際に、異なるNDS特色値(例、LE)に変換される。
【0187】
動力学的システムの特色では、しばしば、それが位相空間において良好に表示されるように、測定シグナルが十分に長いことが要求される。現実には、しかし、心血管系シグナルをそれほど長い間にわたり取得することは可能ではないであろう。結果的に、抽出された特色は、正確であるとして見なすべきではない。一部の実施形態では、シグナルは250Hzにダウンサンプリングされる。より高いサンプリングレートを使用してもよいが、しかし、より高い計算要件に供されるであろうし、そのかなりの部分がノイズになるであろう。一部の実施形態では、シグナルは、ベースラインワンダが除去され、ノイズ及びメインの周波数についてフィルタリングされる。
【0188】
ポアンカレマップ特色抽出
図1中に示すように、一部の実施形態では、システム100は、フォトプレチスモグラフィシグナル104から生成されたポアンカレマップオブジェクトの幾何学的及びトポグラフィ特性を評価するように構成されたポアンカレ特色抽出モジュール120を含む。
【0189】
一部の実施形態では、解析は、生成されたポアンカレマップの統計的特色及び幾何学的特色を抽出することを含む。
【0190】
図16は、例証的な実施形態に従って、疾患又は異常状態、あるいはその指標を示すフォトプレチスモグラフィシグナル(赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は赤外フォトプレチスモグラフィシグナル)の生成されたポアンカレマップから抽出された特定の動力学的特色の臨床予測値を示す試験からの実験結果を示す。上で記述するように、データセットは、予測/推定が特定の集団セット(例、性別に基づく)及び疾患又は病態、あるいはその指標に関することを記述するが、実験結果は、提示された解析において、これらの基準に従って単に層別化されている。実際に、実験結果ならびに本明細書中で考察される方法及びシステムは、駆出率(EF)が保存されている場合でさえ、必ずしもそれをLVEDPレベルに相関させることなく、疾患又は病態、例えば一般的に心不全(HF)などの存在もしくは非存在及び/又は重症度及び/又は局在化(該当する場合)を診断するための基礎を提供する。言い換えれば、即席のシステム及び方法を使用し、種々の形態の心不全(HF)の存在もしくは非存在及び/又は重症度及び/又は局在化(該当する場合)、ならびにLVEDPの決定/推定を伴わない他の疾患及び/又は病態の非侵襲的な診断又は決定を行ってもよい。
【0191】
本試験では、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける予め定義されたランドマーク(例、ピーク、クロスオーバー)間のフォトプレチスモグラフィシグナル104の第1型のポアンカレマップを評価した。また、同じ赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び同じ赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける予め定義されたランドマーク(例、ピーク、クロスオーバー)間のフォトプレチスモグラフィシグナル104の第2型のポアンカレマップを評価した。
【0192】
ポアンカレマップから、試験では、平均値、中央値、最頻値、標準偏差、歪度、及び尖度を含む統計的特性を評価した。試験では、また、以下を含む幾何学的特性が評価された:データの3つの標準偏差を含む点に基づく楕円フィッティング;長径及び短径ならびに方向。
【0193】
表6は、図16の評価された動力学的抽出パラメータの各々の説明を提供する。表中では、フォトプレチスモグラフィシグナルを「PPGシグナル」として言及する。実際に、上に記述するように、ポアンカレマップにおいて、時間への参照は同義であり、このように、所与のデータセット中のデータ点に関して、互換的に使用することができる。さらに、連続した時間又はデータ点への言及では、即時のデータ点又は時間増分、ならびにある固定増分のデータ点又は時間増分を参照することができる。
【表6-1】
【表6-2】
【0194】
図16は、ポアンカレプロット(また、ポアンカレマップとして言及される)から抽出された種々の幾何学的特色が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度、ならびに/あるいは上昇した又は異常なLVEDPに関連付けられる疾患又は病態を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。
【0195】
図16は、例えば、フォトプレチスモグラフィシグナルのポアンカレマップの生成されたアルファ形状(「alphaShapePoincareOutput.alphaShapeDensity」として示す)の密度(例、データ点の数により標準化された表面積)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.538のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0196】
さらに、図16は、ポアンカレマップから生成されたアルファ形状を囲む凸包の表面積(「alphaShapePoincareOutput.convexSurfaceArea」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.533のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0197】
さらに、図16は、フォトプレチスモグラフィシグナルのポアンカレマップから生成されたアルファ形状の外周(「alphaShapePoincareOutput.perim」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.044のt検定p値;1.295の相互情報量値;及び0.523のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有し、0.5より大きい相互情報量は有意性を有する。
【0198】
さらに、図16は、そのアルファ形状の表面積にわたるアルファ形状の外周の比率(「alphaShapePoincareOutput.perimSurfaceAreaRatio」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.00001のt検定p値;1.841の相互情報量値;及び0.566のAUC値を有することを示す。さらに、同じ特色が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.011のt検定p値を有する。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有し;0.5より大きい相互情報量は有意性を有する。
【0199】
さらに、図16は、フォトプレチスモグラフィシグナルのポアンカレマップの生成されたアルファ形状(「alphaShapePoincareOutput.porosity」として示す)の多孔性が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.0035のt検定p値及び0.509のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;0.05未満のp値は有意性を有する。
【0200】
さらに、図16は、フォトプレチスモグラフィシグナルのポアンカレマップの表面積(「alphaShapePoincareOutput.surfaceArea」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.549のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0201】
さらに、図16は、フォトプレチスモグラフィシグナルのポアンカレマップの空隙面積(例、凸包及びアルファ形状の表面積における差)(「alphaShapePoincareOutput.voidArea」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.505のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0202】
また、図16は、隣接するPPGピークの間の時間差の標準偏差が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.506のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0203】
また、図16は、ポアンカレマップのクラスタ中の適合楕円に関連付けられるパラメータが、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に潜在的な臨床的関連性を有することを示す。具体的には、図16は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のx軸の副軸(半径)(「largestClusterEllipse.a」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.502のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0204】
さらに、図16は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のy軸の副軸(半径)(「largestClusterEllipse.b」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.502のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有する。
【0205】
さらに、図16は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する楕円の長軸のサイズ(「largestClusterEllipse.long_axis」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.37の相互情報量値及び0.508のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0206】
さらに、図16は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する楕円の短軸のサイズ(「largestClusterEllipse.short_axis」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.086の相互情報量値及び0.527のAUC値を有することを示す。0.5より大きいAUC値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0207】
さらに、図16は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のx軸での中心(「largestClusterEllipse.X0」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に1.04の相互情報量値を有することを示す。1.0より大きい相互情報量値は、有意性を有する。
【0208】
また、図16は、隣接するPPGピークの間の時間差のヒストグラムのカーネル密度定量化における主要モードの数(「numberOfKernelDensityModes」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.049の検定p値を有することを示す。0.05未満のp値は有意性を有する。
【0209】
また、図16は、DBSCANクラスタリングアルゴリズムにより検出されるポアンカレマップにおけるクラスタの数(「numClusters」として示す)が、上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に0.013のt検定p値を有することを示す。0.05未満のp値は有意性を有する。
【0210】
また、図16は、歪度及び尖度を使用した分布の二峰性の定量化(「sarleBiomodalityCoef」として示す)が、冠動脈疾患の存在、非存在、局在化(該当する場合)、及び/又は重症度を予測/推定する際に0.045のt検定p値を、ならびに上昇した又は異常なLVEDP(それは、疾患及び/又は病態の存在、非存在、及び/又は重症度を示しうる)を予測/推定する際に1.234の相互情報量値を有することを示す。0.05未満のp値は有意性を有し;1.0より大きい相互情報量値は有意性を有する。
【0211】
図17図19は、各々が、例証的な実施形態に従った図1の例示的なポアンカレマップ特色解析モジュール120を示す。図17図19のモジュールの出力は、単に例証的である。実施形態は、示された出力の一部又は全部を用いて実施されうる。一部の実施形態では、追加の出力が生成される。
【0212】
図17は、ポアンカレマップ統計特色抽出モジュール1700を示す。モジュール1700は、一部の実施形態では、同じフォトプレチスモグラフィシグナルにおけるランドマークの間の周期性の、又は赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおけるランドマークの間の周期性の平均値、最頻値、中央値、標準偏差、歪度、及び尖度を決定するように構成される。
【0213】
図18は、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800を示す。モジュール1800は、ポアンカレマップオブジェクトの生成されたアルファ形状から幾何学的特色を決定するように構成される。一部の実施形態では、ポアンカレマップ及びそれに対応するオブジェクトは、赤色フォトプレチスモグラフィシグナル及び赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおけるランドマークの間の周期性から生成されうる。一部の実施形態では、ポアンカレマップ及びその対応するオブジェクトは、同じフォトプレチスモグラフィシグナル(例、赤外フォトプレチスモグラフィシグナル及び/又は赤色フォトプレチスモグラフィシグナル)におけるランドマークの間の周期性から生成することができる。
【0214】
図18Aは、赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける例示的なランドマーク(最低ピーク)を示す。図18Aでは、X軸は時間(秒)を示し、Y軸はシグナル振幅(ミリボルト(mv))を示す。図18Bは、ヒストグラム中の赤外フォトプレチスモグラフィシグナルにおける隣接サイクル間の振幅値の分散の例示的な分布を示す。図18Bでは、ヒストグラムのX軸はシグナル振幅(mV)を示し、Y軸は頻度/カウントを示す。図18Cは、x軸中の時間x及びx-1ならびにy軸中の時間x及びx+1での赤外フォトプレチスモグラフィシグナルの振幅値から生成された例示的なポアンカレマップを示す。すなわち、所与の時間/データ点での各々の評価パラメータ(例、シグナル振幅)は、次の時間/データ点(例、[x,xi+1]対[x,xi-1])に関してポアンカレマップ中に示される。ポアンカレマップによって、このように、取得されたデータセットにおけるサイクルの間の所与のパラメータの変動(例、最低ピークランドマークにおける変動)の解析が容易になる。同様の解析を、本明細書中で考察されるパラメータ及び特色のいずれに適用してもよい。
【0215】
ポアンカレマップから、システムによってアルファ形状を生成し、それに対して、結果として得られたアルファ形状の幾何学的特色を抽出する。
【0216】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から密度値を抽出するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1800によって、密度が、データ点の数により標準化された表面積として決定される。
【0217】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から凸状表面積値を抽出するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1800によって、凸状表面積が、ポアンカレマップのアルファ形状を包含するように生成される凸包の表面積として決定される。
【0218】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から外周値を抽出するように構成される。
【0219】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から外周値及び表面積値を抽出するように構成される。モジュール1300によって、外周値及び表面積に基づく比率が生成されうる。
【0220】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から多孔性値を抽出するように構成される。
【0221】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から表面積を抽出するように構成される。
【0222】
図18に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1800は、ポアンカレマップのアルファ形状から空隙面積を抽出するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1800によって、凸包及びアルファ形状の表面積における差として空隙面積が決定される。
【0223】
図19に従って、一部の実施形態では、ポアンカレマップ幾何学的特色抽出モジュール1900は、フォトプレチスモグラフィシグナルにおける隣接ピークの間の時間差の標準偏差を抽出するように構成される。
【0224】
図19に従って、クラスタマップ幾何学的特色抽出モジュール1900は、ポアンカレマップオブジェクトの決定されたクラスタから幾何学的特色も決定するように構成される。
【0225】
図19中に示すように、一部の実施形態では、モジュール1900は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のx軸の副軸(半径)を決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のY軸の副軸(半径)を決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する楕円の長軸のサイズを決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する楕円の短軸のサイズを決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、ポアンカレマップにおける最大クラスタを包含する非傾斜楕円のX軸での中心を決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、隣接するPPGピークの間の時間差のヒストグラムのカーネル密度定量化における主要モードの数を決定するように構成される。一部の実施形態では、モジュール1900は、DBSCANクラスタリングアルゴリズムにより検出される、ポアンカレマップにおけるクラスタの数を決定するように構成される。
【0226】
一部の実施形態では、モジュール1900は、歪度及び尖度を使用し、分布の二峰性の定量化を決定するように構成される。
【0227】
モジュール1900によって、例えば、その後の解析及び/又は疾患状態もしくは病態の診断における使用のために、上で考察したパラメータの1つ、一部、又は全部が生成されうる。
【0228】
図16に従って、これらのパラメータは、上昇した又は異常なLVEDP及び冠動脈疾患を評価する際にある統計的関連性、依存性、又は臨床的価値を有することが示されている。
【0229】
冠動脈疾患-学習アルゴリズム開発試験
「Coronary Artery Disease - Learning Algorithm Development」(CADLAD)試験を試み、取得されたフォトプレチスモグラフィシグナル及び心臓シグナルが機械学習アルゴリズムの開発及びテストをサポートする。
【0230】
この試験では、対になる臨床データを使用し、開発の前処理、特色抽出、及び機械学習段階の設計及び開発をガイドする。すなわち、収集された臨床試験データは、以下のコホートに分割される:訓練コホート、検証コホート、及び立証コホート。本試験では、各々の取得されたデータセットを最初に前処理して、データのクリーニング及び標準化する。前処理過程に続いて、一組の特色をシグナルから抽出し、それにおいて、特色の各々の組を、真の状態の表示-例えば、有意なCADの存在又は非存在の二値分類あるいは所与の冠動脈における有意なCADの存在又は非存在のスコア化分類-と対にする。
【0231】
評価システム(例、114、114a、114b)によって、一部の実施形態では、特色に基づく予測と成功裏に一致することができるそれらの組み合わせを見出すことを目的として、種々の機能順列における特色の組み合わせが自動的に及び反復的に探索される。訓練データへの解答の過剰適合を回避するために、検証セットを比較対象として使用する。一度、候補予測因子が開発されると、それらを次に、立証データセットに手動で適用し、予測因子を生成するために全く使用されていないデータに対して予測因子の性能を評価する。データセットが十分に大きいという条件で、立証セットに対する選択された予測因子の性能は、新たなデータに対するその予測因子の性能に近いであろう。
【0232】
医療提供者ポータル
図1(ならびに図1A及び図1B)を参照すると、システム100(例、100a、100b)は、一部の実施形態では、疾患状態又は病態(例、上昇した又は異常なLVEDPならびに/あるいは冠動脈疾患に関連付けられる)の評価をレポート中に呈示するための医療提供者ポータルを含む。一部の実施形態では、レポートは、血管造影等価レポートとして構成される。医師又は臨床医ポータルは、一部の実施形態では、リポジトリ(例、記憶領域ネットワーク)からレポートにアクセスし、回収するように構成される。医師あるいは臨床医ポータル及び/又はリポジトリは、HIPAAに準拠することができる。例示的な医療提供者ポータルが、「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と表題が付けられた米国特許第15/712,104号において提供され、それは、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。特定の実施形態では、ポータルは、医療専門家への患者の医療情報の提示のために構成され、他の実施形態では、医療提供者ポータルは、患者、研究者、学者、及び/又は他のポータル利用者にアクセス可能にすることができる。このポータルは、多種多様な環境において-病院から救急室、研究所、戦場又はリモート設定まで、患者のプライマリケアの医師又は他の介護者とのポイントオブケア、及びさらには家庭で、多種多様な臨床及びさらには研究の必要性のために使用されうる。
【0233】
機械ベース分類子
機械学習技術によって、入力データのセットに基づいて結果が予測される。例えば、機械学習技術は、パターン及び画像を認識し、医学的診断を補足するなどのために使用されている。機械学習技術は、データのトレーニングセット(即ち、観測のデータセット、その各々において、予測される結果が公知である)を使用して生成される一連の特色に依存し、その各々が、観測されたデータの一部の測定可能な側面を表し、1つ又は複数の予測モデルを生成し、調整する。例えば、観測されたシグナル(例、多数の対象からの心拍シグナル)を解析し、これらのシグナルに関する頻度、平均値、及び他の統計情報を収集してもよい。機械学習技術は、これらの特色を使用し、1つ又は複数の病態、例えば一部の形態の心血管疾患(CVD)など(冠動脈疾患(CAD)を含む)に関連するモデルを生成及び調整し、次にそのモデルを、不明な結果を伴うデータソース、例えば未診断の患者又は将来のパターンなどに適用してもよい。従来、心血管疾患の状況では、これらの特色は、従来の心電図から手動で選択され、領域専門家と働くデータ科学者により組み合わされる。
【0234】
機械学習の実施形態の例は、限定しないが、決定木、ランダムフォレスト、SVM、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍法、SVM、ナイーブベイズを含む。一部の実施形態では、機械学習は、例えば、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と表題が付けられた米国特許出願第15/653,433号、及び「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と表題が付けられた米国特許出願第15/653,431号において記載されるように実行してもよい;それらの各々は、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
【0235】
例示的なコンピューティングデバイス
図20は、解析システム114及びその態様の例示的な実施形態が実行されうる例示的なコンピューティング環境を示す。
【0236】
コンピューティングデバイス環境は、適切なコンピューティング環境のわずかに1つの例であり、使用の範囲又は機能性に関する任意の限定を示唆することを意図しない。
【0237】
多数の他の多目的又は特殊目的のコンピューティングデバイス環境又は構成を使用してもよい。使用のために適切でありうる周知のコンピューティングデバイス、環境、及び/又は構成の例は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルド又はラップトップデバイス、携帯電話、ウェアラブルデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークパーソナルコンピュータ(PC)、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、組み込みシステム、上のシステム又はデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境などを含むが、それらに限定しない。
【0238】
コンピュータにより実行されているコンピュータ実行可能な命令、例えばプログラムモジュールなどを使用してもよい。一般的に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施する、又は特定の抽象データ型を実行するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。分散コンピューティング環境を使用してもよく、ここで、タスクは、通信ネットワーク又は他のデータ伝送媒体を通じて連結されている遠隔処理デバイスにより実施される。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュール及び他のデータは、ローカル及びリモートコンピュータ記憶装置媒体(メモリ記憶デバイスを含む)の両方において位置づけられうる。
【0239】
図20を参照すると、本明細書中に記載される態様を実行するための例示的なシステムは、コンピューティングデバイス、例えばコンピューティングデバイス2000などを含む。その最も基本的な構成において、コンピューティングデバイス2000は、典型的には、少なくとも1つの処理ユニット2002及びメモリ2004を含む。コンピューティングデバイスの正確な構成及び型に依存して、メモリ2004は、揮発性(例えばランダムアクセスメモリ(RAM)など)、不揮発性(例えば読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなど)、又はその2つのある組合せでありうる。この最も基本的な構成を、図20中に破線2006により例証する。
【0240】
コンピューティングデバイス2000は、追加の特色/機能性を有しうる。例えば、コンピューティングデバイス2000は、追加の記憶装置(リムーバブル及び/又は非リムーバブル)を含みうるが、磁気ディスクもしくは光ディスク又はテープを含むが、それらに限定しない。そのような追加の記憶装置は、図20中に、リムーバブル記憶装置2008及び非リムーバブル記憶装置2010により例証される。
【0241】
コンピューティングデバイス2000は、典型的には、多様なコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、デバイス2000によりアクセスすることができる任意の利用可能な媒体でありうるが、揮発性媒体及び不揮発性媒体、リムーバブル媒体及び非リムーバブル媒体の両方を含む。
【0242】
コンピュータ記憶装置媒体は、情報の記憶のための任意の方法又は技術、例えばコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどにおいて実行される揮発性及び不揮発性、ならびにリムーバブル及び非リムーバブル媒体を含む。メモリ2004、リムーバブル記憶装置2008、及び非リムーバブル記憶装置2010は、コンピュータ記憶装置媒体の全ての例である。コンピュータ記憶装置媒体は、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置デバイス又は他の磁気記憶装置デバイス、あるいは所望の情報を記憶するために使用でき、コンピューティングデバイス2000によりアクセスすることができる他の任意の媒体を含むが、それらに限定しない。任意のそのようなコンピュータ記憶装置媒体は、コンピューティングデバイス2000の一部でありうる。
【0243】
コンピューティングデバイス2000は、デバイスが他のデバイスと通信することを可能にする通信接続2012を含みうる。コンピューティングデバイス2000はまた、入力デバイス2014、例えばキーボード、マウス、ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイスなどを単独で又は組み合わせにおいて有してもよい。出力デバイス2016、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンタ、振動機構などがまた、単独で又は組み合わせにおいて含まれうる。全てのこれらのデバイスが当技術分野において周知であり、本明細書で長々と考察する必要はない。
【0244】
本明細書中に記載される種々の技術が、ハードウェアコンポーネント又はソフトウェアコンポーネントとの、あるいは適する場合、両方の組み合わせとの関連において実行されうることを理解すべきである。使用することができるハードウェアコンポーネントの例証的な型は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)などを含む。現在開示されている主題の方法及び装置、又はそれらの特定の態様もしくは部分は、プログラムコードが機械、例えばコンピュータなどにロードされ、それにより実行される際に、その機械が、現在開示されている主題を実践するための装置となる、有形媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、ハードドライブ、又は任意の他の機械可読記憶装置媒体などにおいて具現されたプログラムコード(即ち、命令)の形態を取りうる。
【0245】
例示的な実行は、1つ又は複数のスタンドアロンコンピュータシステムの状況において本開示の主題の態様を利用することを指しうるが、本主題はそれほど限定されず、しかし、むしろ、任意のコンピューティング環境、例えばネットワーク又は分散コンピューティング環境などとの関連において実行されうる。さらに、現在開示されている主題の態様は、複数の処理チップ又はデバイスにおいて、あるいはそれらにわたり実行されてもよく、記憶装置が同様に、複数のデバイスにわたりもたらされてもよい。そのようなデバイスは、例えば、パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバ、ハンドヘルドデバイス、及びウェアラブルデバイスを含みうる。
【0246】
主題は、構造的特色及び/又は方法論的行為に特有の言語において記載されてきたが、添付の請求項において定義される主題は、上に記載される特定の特色又は行為に必ずしも限定されないことを理解すべきである。
むしろ、上に記載される特定の特色及び行為は、請求項を実行するための例示的な形態として開示される。
【0247】
例示された方法及びシステムと使用されうる処理のさらなる例が、以下に記載されている:「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と表題が付けられた米国特許番号9,289,150;「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と表題が付けられた米国特許番号9,655,536;「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と表題が付けられた米国特許番号9,968,275;「System and Method for Evaluating an Electrophysiological Signal」と表題が付けられた米国特許番号8,923,958;「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems and All-Cause Mortality and Sudden Cardiac Death Risk」と表題が付けられた米国特許番号9,408,543;「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems and All-Cause Mortality and Sudden Cardiac Death Risk」と表題が付けられた米国特許番号9,955,883;「Noninvasive Electrocardiographic Method for Estimating Mammalian Cardiac Chamber Size and Mechanical Function」と表題が付けられた米国特許番号9,737,229;「Noninvasive Electrocardiographic Method for Estimating Mammalian Cardiac Chamber Size and Mechanical Function」と表題が付けられた米国特許番号10,039,468;「Noninvasive Method for Estimating Glucose, Glycosylated Hemoglobin and Other Blood Constituents」と表題が付けられた米国特許番号9,597,021;「Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems From Single Channel Data」と表題が付けられた米国特許番号9,968,265;「Methods and Systems Using Mathematical Analysis and Machine Learning to Diagnose Disease」と表題が付けられた米国特許番号9,910,964;「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と表題が付けられた米国特許公開番号2017/0119272;「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と表題が付けられたPCT公開番号WO2017/033164;「Non-invasive Method and System for Measuring Myocardial Ischemia, Stenosis Identification, Localization and Fractional Flow Reserve Estimation」と表題が付けられた米国特許公開番号2018/0000371;「Non-invasive Method and System for Measuring Myocardial Ischemia, Stenosis Identification, Localization and Fractional Flow Reserve Estimation」と表題が付けられたPCT公開番号WO2017/221221;「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と表題が付けられた米国特許番号10,292,596;「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と表題が付けられた米国特許出願番号16/402,616;「Method and System for Wide-band Phase Gradient Signal Acquisition」と表題が付けられた米国特許公開番号2018/0249960;「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Volumetric Objects」と表題が付けられた米国特許出願番号16/232,801;「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Volumetric Objects」と表題が付けられたPCT出願番号IB/2018/060708;「Methods and Systems of De-Noising Magnetic-Field Based Sensor Data of Electrophysiological Signals」と表題が付けられた米国特許公開番号US2019/0117164;「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と表題が付けられた米国特許出願番号16/232,586;「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と表題が付けられたPCT出願番号PCT/IB2018/060709;「Methods and Systems to Quantify and Remove Asynchronous Noise in Biophysical Signals」と表題が付けられた米国特許出願番号16/445,158;「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と表題が付けられた米国特許出願番号16/725,402;「Method and System to Assess Pulmonary Hypertension Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と表題が付けられた米国特許出願番号16/429,593;「Method and System for Automated Quantification of Signal Quality」と表題が付けられた米国特許出願番号16/725,416;「Method and System to Configure and Use Neural Network To Assess Medical Disease」と表題が付けられた米国特許出願番号16/725,430;「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と表題が付けられた米国特許出願番号15/653,433;「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と表題が付けられた米国特許出願番号15/653,431。それらの各々が、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0248】
別に明示的に記述しない限り、本明細書中に示す任意の方法が、その工程が特定の順番において実施されることが要求されているとして解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項によって、その工程により従うべき順番が実際に列挙されていない、又は工程が特定の順番に限定されることが請求項又は説明において別に具体的に記述されていない場合、順番が任意の点において推測されることは意図されていない。これは、工程の配置又は操作の流れに関する論理の問題;文法的構成又は句読点に由来する平易な意味;本明細書中に記載される実施形態の数又は型を含む、解釈のための任意の可能な非表現的根拠について該当する。
【0249】
方法及びシステムを特定の実施形態及び具体例との関連において記載してきた一方で、その範囲を、示される特定の実施形態に限定することを意図しない。なぜなら、本明細書中の実施形態は、全ての点において制限的であるよりむしろ、例証的であることが意図されているためである。
【0250】
本明細書中に記載される方法、システム、及び過程を使用し、手順、例えば血管、例えば生きている(例、ヒト)対象の動脈などの内での血管ステントの留置など、ならびに他の介入及び外科システム又は過程との関連における使用のために、狭窄及びFFR出力を生成する。一実施形態では、本明細書中に記載される方法、システム、及び過程は、FFR/狭窄出力を使用し、操作中に、生きている(例、ヒト)において留置されるべきステントの数(とりわけ、所与の血管内の配置のそれらの最適位置を含む)を決定及び/又は修正するように構成することができる。
【0251】
例示的な方法及びシステムを使用して全体的に、又は部分的に解析されうる他の生物物理学的シグナルの例は、心電図(ECG)データセット、脳波(EEG)データセット、ガンマ同期シグナルデータセット;呼吸機能シグナルデータセット;パルスオキシメトリシグナルデータセット;灌流データシグナルデータセット;準周期生物学的シグナルデータセット;胎児ECGデータセット;血圧シグナル;心臓磁場データセット、及び心拍シグナルデータセットを含むが、それらに限定しない。
【0252】
例示的な解析は、心臓関連の病変及び病態ならびに/あるいは神経関連の病変及び病態の診断及び処置において使用することができ、そのような評価は、生物物理学的シグナルが、生体の任意の関連システム中に含まれる任意の病変又は病態の診断及び処置(外科的、低侵襲、及び/又は薬学的処置を含む)に適用することができる。心臓の状況における1つの例は、CADの診断及び、単独での又は組み合わせにおける任意の数の治療、例えば冠動脈中のステントの留置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物治療の処方、ならびに/あるいは運動、栄養、及び他のライフスタイルの変化の処方などによるその処置である。診断されうる他の心臓関連の病変又は病態は、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例、肺動脈性高血圧症、左心疾患に起因する肺高血圧症、肺疾患に起因する肺高血圧症、慢性血栓に起因する肺高血圧症、及び他の疾患、例えば血液又は他の障害に起因する肺高血圧症)、ならびに他の心臓関連の病変、病態、及び/又は疾患を含む。診断されうる神経関連の疾患、病変、又は病態の非限定的な例は、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び全ての他の形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、運動障害、認知障害、言語障害、種々の精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、群発頭痛、片頭痛、神経障害(末梢神経障害を含む、その種々の形態)、幻肢/疼痛、慢性疲労症候群、急性及び/又は慢性疼痛(腰痛、腰部手術失敗症候群などを含む)、ジスキネジア、不安障害、感染症又は異物により起こされる状態(例、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、脳卒中、動脈瘤、出血性損傷などに関連する神経学的状態/影響、耳鳴り及び他の聴覚関連疾患/病態、ならびに視覚関連疾患/病態を含む。
【0253】
以下に列挙する、及び本書全体を通した特許、出願、及び刊行物は、それらの全体において参照により本明細書により組み入れられる。
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図1-2】
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【国際調査報告】