(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】使用前にカテーテルを準備するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/585 20210101AFI20220831BHJP
A61M 60/13 20210101ALI20220831BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20220831BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20220831BHJP
A61M 60/538 20210101ALI20220831BHJP
【FI】
A61M60/585
A61M60/13
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/538
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575972
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020066459
(87)【国際公開番号】W WO2020254233
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッセル ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】チュエフ アンドレ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
4C077GG02
4C077HH08
4C077HH20
4C077HH21
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077KK25
(57)【要約】
患者において用いるためのカテーテル1、特に血管内血液ポンプ10のカテーテル1の分野におけるシステムおよび方法が開示され、より具体的には、カテーテル1を適切にパージし空気除去するためのシステムおよび方法が開示される。カテーテル1は、細長い管状部分11と、接続されたデバイス230とを備える。細長い管状部分11は、患者の血管の中に挿入されるように構成されており、内腔12を画定する。接続されたデバイス230は、細長い管状部分11に接続されており、空洞13を有しており、この空洞13は、血液ポンプ10の駆動ユニット4を収容し得、細長い管状部分11の内腔12と流体連通している。システム100を確実に空気除去するために、接続されたデバイス230の向きを検出するために加速度計などのセンサ15が設けられ、ユーザは、適切なパージングのために、接続されたデバイス230の向きを訂正するように誘導され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(1)を備えるシステム(100)であって、前記カテーテル(1)は、細長い管状部分(11)と、少なくとも1つの接続されたデバイス(230)とを備えており、前記細長い管状部分(11)は、患者の血管の中に挿入されるように構成され、近位端(21)および遠位端(22)と、前記近位端(21)から前記遠位端(22)へ延びる内腔(12)とを有しており、それぞれの接続されたデバイス(230)は、前記細長い管状部分(11)に接続されており、少なくとも1つの空洞(13)を有しており、前記少なくとも1つの空洞(13)は、前記細長い管状部分(11)の前記内腔(12)と流体連通している、システム(100)において、
前記細長い管状部分(11)と前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)とのうちの少なくとも一方の向きを検出するための少なくとも1つのセンサ(15)を更に備えることを特徴とするシステム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのセンサ(15)によって検出された前記向きを含むデータを前記少なくとも1つのセンサ(15)から受け取り、前記検出された向きが、前記空洞(13)から空気が解放可能である向きと一致するかどうかを判断するように構成された制御ユニット(5)を更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムであって、前記検出された向きと所定の向きとの差は、前記所定の向きに近づけるためにユーザが前記向きを変更するのを誘導するように計算可能であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステムであって、前記制御ユニット(5)は、検出された向きと空気が前記空洞(13)から解放可能である向きとの一致を表す一致インジケータと、前記検出された向きと、前記検出された向きと前記所定の向きとの差を示す表現とのうちの少なくとも1つを表示するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のシステムであって、前記所定の向きは、垂直の向き、または所定の角度によって定義された垂直軸の周囲の円錐範囲であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのセンサ(15)は、前記接続されたデバイス(230)に配設されており、前記接続されたデバイス(230)の向きを検出するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのセンサ(15)は、重力センサと加速度計とジャイロスコープとのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のシステムであって、ポンプユニット(2)と、患者の血管の中への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(10)を提供する駆動ユニット(4)とを更に備えており、前記ポンプユニット(2)は、前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)の1つであり、前記カテーテル(1)の前記細長い管状部分(11)の前記遠位端(22)に配置されており、空洞(13)を備えており、前記ポンプユニット(2)は、前記ポンプユニット(2)の血流入口(19)から血流出口(20)へ血液を運ぶように回転軸の周囲を回転可能である羽根車(18)を含み、前記ポンプユニット(2)は、好ましくは、拡張可能なポンプユニットであり、前記羽根車(18)は、前記カテーテル(1)の前記細長い管状部分(11)の前記内腔(12)を通じて延びる可撓性の駆動シャフト(16)に結合され、前記駆動ユニット(4)は、前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)の別の1つであり、前記羽根車(18)の回転を生じさせるように前記可撓性駆動シャフト(16)に結合されるハンドル部分(3)の前記少なくとも1つの空洞(13)に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
患者において用いるためのカテーテル(1)を準備するための方法であって、前記カテーテル(1)は、細長い管状部分(11)と、少なくとも1つの接続されたデバイス(230)とを備えており、前記細長い管状部分(11)は、患者の血管の中に挿入されるように構成され、近位端(21)および遠位端(22)と、前記近位端(21)から前記遠位端(22)へ延びる内腔(12)とを有しており、前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)のそれぞれは、前記細長い管状部分(11)に接続されており、少なくとも1つの空洞(13)を有しており、前記少なくとも1つの空洞(13)は、前記細長い管状部分(11)の前記内腔(12)と流体連通している、方法において、
前記少なくとも1つの空洞(13)と前記内腔(12)とのうちの少なくとも一方をパージするために、(a)前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)の少なくとも1つの前記少なくとも1つの空洞(13)と、(b)前記細長い管状部分(11)の前記内腔(12)とのうちの少なくとも一方の中に流体(30)を供給するステップと、
前記細長い管状部分(11)と前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)とのうちの少なくとも一方の向きを検出するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記検出された向きが、前記空洞(13)から空気が解放可能である向きと一致するかどうかを判断するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、前記検出された向きと所定の向きとの差は、前記所定の向きに近づけるためにユーザが前記向きを変更するのを誘導するように計算されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の方法であって、検出された向きと空気が前記空洞(13)から解放可能である向きとの一致を表す一致インジケータと、前記検出された向きと、前記検出された向きと前記所定の向きとの差を示す表現とのうちの少なくとも1つを表示するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、前記所定の向きは、垂直の向き、または所定の角度によって定義された垂直軸の周囲の円錐範囲であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出された向きが前記所定の向きと一致するときには、前記流体の供給が付勢され、前記検出された向きが前記所定の向きと異なるときには、前記流体の供給が消勢されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか1項に記載の方法であって、前記供給される流体(30)の体積を測定するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1項に記載の方法であって、前記向きは、少なくとも1つのセンサ(15)によって検出され、前記少なくとも1つのセンサ(15)は、重力センサと加速度計とジャイロスコープとのうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つのセンサ(15)は、好ましくは、ハンドル部分(3)とポンプユニット(2)と前記細長い管状部分(11)とのうちの少なくとも1つに配設され、前記ハンドル部分(3)は、前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)の1つであり、前記ポンプユニット(2)は、前記少なくとも1つの接続されたデバイス(230)の別の1つであり、前記センサは、好ましくは、前記ハンドル部分(3)と前記ポンプユニット(2)と前記細長い管状部分(11)との外部に好ましくは配設されるカメラを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者において用いるためのカテーテルを準備するための方法、特に、パージングおよび空気除去に関し、カテーテルを含むそれぞれのシステムに更に関する。カテーテルは、患者の血管の中に経皮挿入するための血管内血液ポンプの一部であり得る。
【背景技術】
【0002】
患者においてカテーテルを用いる前に、より具体的には、カテーテルを患者の血管の中に挿入する前に、カテーテルは、適切に準備されなくてはならない。特に、カテーテルは、梗塞などの深刻な合併症を生じさせる可能性がある、空気または他の気体の気泡が患者の中に導入されることを防止するために、パージされ空気除去されなければならない。典型的には、カテーテルは、近位端と遠位端とを有する細長い管状体を備えており、遠位端が、患者の中に挿入される際の先端となる。管状体は、適用に応じて、または例えば薬剤を含む流体を患者に供給するために、近位端から遠位端までカテーテルを通じて延び、機能的構造、ラインまたは類似のものを受け取る内腔を有する。この内腔は、使用前には空気を含んでおり、カテーテルが患者の中に挿入される前に、完全に空気除去されなければならない。空気除去およびパージングのために、流体が、一定の圧力でカテーテルを通じて圧送され得る。
【0003】
カテーテルの細長い管状体の内腔を空気除去することは、その平坦な幾何学的形状と小さな直径のために、難問ではない。内腔は、凸面を全く有していないのが典型的であり、直径が小さいため、どの空気泡または他の気体の気泡も消滅させるように、毛管力がパージ流体をその内腔自体を通じて引き寄せる。しかし、カテーテルは、例えばポンプユニットまたはハンドル部など、カテーテルの機能を操作するまたはそれ以外の制御を行うためにユーザによって保持されることがある、少なくとも1つの接続されたデバイスと流体連通していることがあり得る。適用に左右されるが、接続されたデバイスは、カテーテルの内腔と流体連通しておりパージ流体を受け取る流体入口を有する少なくとも1つの空洞を有することがあり得る。接続されたデバイスのこの空洞は、複雑な幾何学的形状を有する場合があるし、機能的およびおそらくは移動可能な部分を収容する場合があり得るので、パージ流体が既に遠位端からカテーテルの外に出ているとしても、気泡が依然として空洞の中に閉じ込められていることがあり得る。特に、ユーザが接続されたデバイスを正しく保持していない場合、例えば、直立した垂直の向きであり得る正しい空気除去の向きに保持していない場合には、気泡が空洞の内部に閉じ込められている可能性があり得る。最新の技術では、カテーテルと接続されたデバイスとがいつ完全に空気除去されるかの判断は、例えば外科医、循環器専門医、一般開業医、またはそれ以外の医療スタッフであり得るユーザの経験に大きく依存している。
【0004】
カテーテルの空気除去、特に接続されたデバイスの空気除去という上述した問題は、血管内血液ポンプに特に関連している。血管内血液ポンプは、患者の血管の中への経皮挿入するように構成されており、その血流入口から血流出口まで血液を運ぶための回転可能な羽根車を有するポンプユニットを備えている。羽根車の回転を生じさせるための駆動ユニットが、提供される。
【0005】
あるタイプの血管内血液ポンプにおいては、ポンプユニットは、羽根車に直接的に結合されておりポンプユニットと一緒に共通のポンプ筐体に含まれる駆動ユニットを備えている。この共通のポンプ筐体は、カテーテルの遠位端に配設され得る。カテーテルの空気除去は、患者への挿入前に、要求され得る。
【0006】
別のタイプの血管内血液ポンプでは、駆動ユニットは、カテーテルの細長い管状部分の内腔を通じて延びる可撓的な駆動シャフトによって羽根車に結合され得るが、その場合、駆動ユニットは、ハンドル部分の空洞に配置され得る。このタイプの血管内血液ポンプでは、羽根車を有するポンプユニットは、拡張可能であり得る。駆動ユニットは、ステータとロータとを含む電気モータと、駆動ユニットの回転を制御するための更なる電子部分とを備え得るが、これらは、その中に気泡が閉じ込められることがあり得る凸部、アンダーカットまたは空洞を生じさせる可能性がある。電気モータの可動部などの駆動ユニットはパージ流体に沈められることがあり得るから、すべての気泡をハンドル部分における空洞から適切に排除することは、より困難にさえなり得る。よって、患者への害を生じさせないために、パージングおよび空気除去の間に、ユーザが、カテーテル特にハンドル部分を、空気除去の向きに保持することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、特に、患者の体中に挿入する前に、カテーテルを確実に空気除去することを可能にする、患者において用いるためのカテーテルを準備する方法、特にパージする方法と、カテーテルを含むそれぞれのシステムとを提供することである。特に、カテーテルは、血管内血液ポンプの一部であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従って、独立請求項の特徴を有するシステムおよび方法により、達成される。本発明の好適実施形態と更なる展開とは、独立請求項に従属する請求項において、特定されている。
【0009】
本発明の第1の態様によると、上述されたカテーテルを備えたシステムが提供され、このカテーテルは、特に、細長い管状部分と、カテーテルに接続されている接続されたデバイスとを備えている。細長い管状部分は、内腔を有する。接続されたデバイスは、少なくとも1つの空洞を有する。既に説明されたように、カテーテルが患者において用いられる前に、内腔と空洞とは、空気除去されるべきである、すなわち、気泡が完全に除去されるべきである。少なくとも1つの接続されたデバイスの向きと、更なる詳細は後述される好ましくは1つの接続されたデバイスである細長い管状部分のための向きとをモニタするために、システムは、前記向きを検出するための少なくとも1つのセンサを更に備えている。
【0010】
本発明の第2の態様によると、患者において用いるためのカテーテルを準備する方法が提供される。特に、カテーテルは、既に説明されたように、細長い管状部分と、接続されたデバイスとを有するように、構築される。カテーテルを準備する、特にカテーテルをパージするこの方法では、流体が、流体入口を通じて、接続されたデバイスの少なくとも1つの空洞の中に、そして、それにより細長い管状部分の内腔に、前記空洞および内腔をパージするために、供給される。この方法は、少なくとも1つの接続されたデバイスの向き、および細長い管状部分の向きを、好ましくは流体供給の間に、検出するステップを更に含む。
【0011】
本発明のシステムおよび方法では、少なくとも1つの接続されたデバイスおよび/または細長い管状部分、好ましくは接続されたデバイスの向きを、検出することが可能である。よって、本発明のシステムおよび方法は、カテーテルを特に接続されたデバイスを正しく向き付けるユーザの経験には依存せず、特にパージングプロセスの間にカテーテルの少なくとも一部の向きをモニタする手段を提供する。「接続されたデバイス」という用語は、ユーザによって操作されること、特に、ユーザによって手で保持されること、または患者と共に回転させることが可能である細長い管状体に接続されており、細長い管状体の内腔と流体連通している空洞を有する、任意の構造を指し得ることが、理解されるであろう。
【0012】
「向き」という用語は、特に、重力などの固定された基準系に対する、3次元空間におけるカテーテルのそれぞれの部分の向きを指す。特に、向きは、3次元空間におけるカテーテルのそれぞれの部分の絶対位置を必ずしも含むとは限らず、むしろ、例えば、3次元空間またはいずれかの他の適切な基準点もしくは基準系における垂直もしくは水平な軸または平面に対する「相対位置」と見なされ得る。例えば、向きは、カテーテルのそれぞれの部分の傾斜を指してもよく、例えば垂直軸または水平面に対する度数による角度として示され得る。垂直軸は、重力の方向に向けられることが可能である。
【0013】
少なくとも1つのセンサからのデータを受け取り得る制御ユニットが提供され得、このデータは、特に、検出された向きを含み、すなわち、データは、カテーテルのそれぞれの部分の実際のまたは現在の向きを表す。データは、有線によりまたは無線で、伝送され得る。検出された向きが、空洞の空気除去が可能な向きと一致するかどうかが、判断され得る。これは、向きが検出される空洞であり得る。検出された向きと、所定の向きすなわちカテーテルの向きを決めるユーザによって達成されるべき予め定義された向きとの差が、計算され得る。所定のターゲットである向きは、必ずしも一意的な向きであるとは限らず、以下でより詳細に説明されるよう適切なパージングに適した向きの範囲を含み得る。
【0014】
検出された向きと所定の向きとの差に基づき、ユーザは、所定の向きに近づけるために、カテーテルのそれぞれの部分の向きを、変更するように、すなわち訂正するように、誘導され得る。カテーテルのそれぞれの部分を、所定の向きに一致するように、または所定の向きによって定義される範囲に少なくとも属するように、移動させることが可能である。公差が許容され得ることは、理解されるであろう。例えば、ディスプレイまたは類似のものなど、ユーザインターフェースが、制御ユニットにおいて提供され得るのであるが、これは、検出された向きもしくは検出された向きと所定の向きとの差を示す表現を、またはその両方を、表示し得る。その代わりにまたは追加的に、そのユーザインターフェースは、検出された向きと、所定の向きであり得る空洞が空気除去され得る向きとの一致を、表示し得る。例えば、その向きをリアルタイムで示すカテーテルのそれぞれの部分の画像が表示され得るし、または、傾斜角を示す線もしくは類似するものなど、単純なグラフィックが表示され得る。追加的にまたはその代わりに、検出された向きと所定のターゲットである向きとの差が、表示されることも可能である。例えば、シンボル、カラースケール(例えば、赤-黄-緑)または類似のものなど、いずれかの適切なグラフィックが、表示され得る。代わりにまたは追加的に、いずれかの適切な音声信号によってこの差が示される場合もあり得、これにより、ユーザは、所定のターゲットである向きに近づけるように向きを変更することが可能になる。
【0015】
カテーテルのそれぞれの部分の向きを訂正するようにユーザを誘導することにより、パージングプロセスを改善することが可能であり、空洞もしくは内腔の内部に気泡が閉じ込められるという危険性を縮小または除去することが可能である。特に、例えば凸部、アンダーカットまたは類似のものなど、空洞または内腔の内部の複雑な幾何学的形状により、気泡が脱出することが可能なようにカテーテルのそれぞれの部分をユーザが所定の向きに保持することが要求される場合があり得る。
【0016】
気泡はパージ流体において垂直方向の上向きに移動するため、所定の向きは、好ましくは、垂直もしくは実質的に垂直な向き、または垂直軸と所定の角度とによって定義された円錐範囲である。空気除去されるべき空洞または内腔の幾何学的形状に応じて、いずれかの他の向きもあり得ることは、理解されるであろう。例えば、内部の幾何学的形状に応じて、空洞を完全に空気除去するためには、45度の角度またはいずれかの他の角度が、必要または適切であり得る。既に述べられているように、「所定の向き」は、例えば、その内部においてはカテーテルの空洞および内腔を完全に空気除去することが可能な角度の範囲など、ある範囲の向きを含み得る。例えば、空洞が平坦で規則的な幾何学的形状を有する場合には、ユーザが、カテーテル特に接続されたデバイスのそれぞれの部分を、垂直軸に対していずれかの方向の45度または30度の範囲内に保持すれば、充分であり得る。好ましくは、向きは、例えば、ハンドル部分のどちらの端部が上を向きどちらの端部が下を向くかを決定するために、0度から180度までの範囲で検出され得る。一般に、適切な空気除去を保証するためには、ハンドル部分の流体入口は、垂直方向に対して、細長い管状部分の内腔の出口よりも下に位置すべきである。例えば、向きの角度は、カテーテルまたは接続されたデバイスの長手方向の主方向を指し得る。
【0017】
所定の向きは、それが単一の向きを指すのかまたはある範囲の向きを指すのかとは無関係に、傾斜すなわちカテーテルのそれぞれの部分の外部基準系に対する角度を指すのではなく、カテーテルのそれぞれの部分の長手方向軸の周囲の回転など、いずれかの他の自由度を指すことがあり得ることは、理解されるであろう。例えば、特に所定の向きが垂直な向き以外である場合には、空洞からすべての気泡を除去するために、例えば接続されたデバイスをその長手方向軸の周囲を所定の向きに回転させることが必要なことがあり得る。
【0018】
ある実施形態では、ユーザは、パージプロセスを開始し得、流体が、すなわちいずれかの適切なパージ流体が、接続されたデバイスの空洞に、よってカテーテルの管状部分の内腔の中に、供給される。カテーテルのそれぞれの部分を正しい向きに保持するように、すなわち必要な場合には向きを変更するように、ユーザが連続的に誘導される間、パージ流体がカテーテルの空洞および内腔に連続的に供給され得る。
【0019】
しかし、ある好適な実施形態では、検出された向きが所定のターゲットである向きと一致する場合、すなわち、ユーザがカテーテルおよび/または接続されたデバイスをカテーテルのそれぞれの部分に対して正しく向き付けている場合には、特にそのような場合にのみ、流体の供給が付勢され得る。同様に、検出された向きが所定のターゲットである向きと異なる場合、すなわち、ユーザがカテーテルのそれぞれの部分を正しく向き付けていないときには、流体の供給が消勢、すなわち、停止または中断され得る。特にこの実施形態では、供給される流体の体積を測定することが、有利なことがあり得る。よって、供給された流体の測定された体積が、パージされるべき空洞および内腔の既知の体積に到達する場合、正しい向きであるという理由で気泡が常に空洞および内腔から脱出することが可能であるという事実により、空気除去が完了したという結論を引き出すことが可能である。このとき、システムは、ユーザに、パージングは完了したことを告知し得る。パージングプロセスが成功裏のうちに完了したことをシステムが示すまでは、特定の安全性のためのマージンを、すなわち追加的なパージ流体の体積を追加することが可能であることは、理解されるであろう。更に、パージングプロセスを完了するために、ユーザは、パージ流体が遠位端においてカテーテルから排出されているのを確認することを求められる場合があり得る。
【0020】
既に説明されたように、接続されたデバイスの少なくとも1つの空洞のパージングが困難であり得るとしても、カテーテルの細長い管状部分の内腔をパージすることについては、何の問題も存在しないことがあり得る。別の好適な実施形態では、その向きを検出するために、少なくとも1つのセンサが、カテーテルの接続されたデバイスに配設される。カテーテルの細長い管状部分の向きを検出することが必要でないこともあり得る。
【0021】
カテーテルのそれぞれの部分の向きを、特に少なくとも1つの接続されたデバイスの向きを検出するための少なくとも1つのセンサは、重力センサと、加速度計と、ジャイロスコープとのうちの少なくとも1つであり得る。便宜上、これらの要素のいずれも、これらの要素のすべてを指す場合があり得る。しかし、本開示の意味における「センサ」という用語は、いずれかの他のタイプの能動または受動センサ、カテーテルのそれぞれの部分の向きを3次元空間において検出できる手段またはシステムを含み得る。これらは、磁場もしくは電磁場、光学センサまたは類似のものに基づくセンサを含み得る。例えば、別の実施形態では、少なくとも1つのセンサが、カテーテルへのある距離において、配設され得る。センサは、カテーテルのそれぞれの部分を、特に少なくとも1つの接続されたデバイスの向きを記録し、記録された画像から向きを検出するカメラシステムによって形成されることがあり得る。
【0022】
しかし、既存のシステムでの実装が容易であって信頼性の高い結果を提供するセンサが、好ましい。例えば、重力センサまたは加速度計の利点は、外部センサまたは外部的な電磁場生成器などの外部的なインフラストラクチャを全く必要としないことである。更に、加速度計は、例えば血管内血液ポンプの電気モータによって生じ得る磁場などの外部的な摂動に左右されない。加速度計は、MEMSデバイスまたはナノデバイスとして設計されてもよく、例えば血管内血液ポンプの駆動ユニットに既に存在するプリント回路ボード(PCB)またはプリント回路アセンブリ(PCA)上への配設が可能である。
【0023】
重力センサまたは加速度計は、「下向きの」方向を検出し得、より具体的には、垂直方向の検出が可能である。この「下向きの」方向は、検出された向きを表すのであるが、メモリマップドレジスタ技術を用いて、制御ユニットに転送され得る。これは、センサデータすなわち検出された向き(下向きの方向)が、例えば血液ポンプのメモリなどのメモリに記憶されることを意味する。制御ユニットは、ポンプメモリの特定のバイトを読み出すたびに、メモリコンテンツの代わりに、例えば傾斜角度である検出された向きを得る。これは、加速度計が、センサのデータを転送するのに、例えばワイヤなど制御ユニットへの追加的接続を必要とせず、メモリを読み出す既存の通信接続を用いることを意味する。
【0024】
以上で述べたように、本発明によるシステムおよび方法は、血管内血液ポンプと共に用いられたとき、特にカテーテルの細長い部分に接続されたポンプユニットを有する血管内血液ポンプと共に用いられたときに、特に有利であり得る。このタイプの血管内血液ポンプでは、カテーテルの内部は、環境と流体連通しており、ポンプの動作の間、パージされるのであるが、気泡が患者の血管分布の中に導かれることを防止するため、使用に先立って完全に空気が除去されなければならない。少なくとも1つの接続されたデバイスの向きを検出し、ユーザがカテーテルを、特に接続されたデバイスの少なくとも1つを正しく向き付けるように誘導することによって、それぞれの空洞を確実に空気除去することが可能になる。当業者によって理解されるように、ポンプユニットは、拡張可能であり得、すなわち、血管の中に挿入するために圧縮された構成に圧縮され得るし、ターゲットである位置にいったん配置されると解放され拡張され得る。
【0025】
以上の概要と、好適実施形態に関する以下の詳細な説明とは、添付の図面と共に読まれる場合に、よりよく理解される。本開示を例示するという目的のために、図面が参照されるのであるが、これらの図面は、概略的なものとして理解されるべきであり、正確な寸法を反映していない場合があり得る。これらの図面は、本発明を図解するための例示的なものであり、本開示の範囲は、図面に開示されている特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】制御ユニットに接続された血管内血液ポンプを含む、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【
図2】
図1の血液ポンプをより詳細に示す図である。
【
図3a】パージングプロセスの間の異なる向きにおけるカテーテルのハンドル部分またはポンプユニットを概略的に例示する図である。
【
図3b】パージングプロセスの間の異なる向きにおけるカテーテルのハンドル部分またはポンプユニットを概略的に例示する図である。
【
図3c】パージングプロセスの間の異なる向きにおけるカテーテルのハンドル部分またはポンプユニットを概略的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明のある実施形態によるシステム100を示している。特に、システム100は、制御ユニット5に接続された血管内血液ポンプ10を備えている。血管内血液ポンプ10は、ポンプユニット2を有するカテーテル1を備えていて、ポンプユニット2は、カテーテル1の遠位端22に接続されており、より具体的には、カテーテル1の細長い管状部分11に接続されている(
図2を参照のこと)。ポンプユニット2は、また、接続されたデバイス230とも称される。ハンドル部分3が、細長い管状部分11の近位端21に接続されている。ハンドル部分3は、また、接続されたデバイス230とも称される。ハンドル部分3は、カテーテル1を取り扱うためにユーザによって把持されることが可能であり、患者の体内には挿入されない。血管内血液ポンプ10は、左心室補助デバイスとして作用するように設計され得、心臓に向かう、より具体的には、患者の心臓の左心室に向かう患者の大動脈の中に挿入され得る。この場合、ポンプユニット2は、血液を左心室から大動脈の中へ運ぶために、大動脈弁を通じて配置されることになる。しかし、血液ポンプ10が右心室補助デバイスとして作用するような異なる応用のために設計され得ること、またはカテーテルが血管内血液ポンプとは異なる分野のために設計され得ることも、理解されるであろう。
【0028】
依然として
図1を参照すると、ハンドル部分3は、血液ポンプ10の駆動ユニット4を収容するのであるが、これについては、以下で、より詳細に説明される。駆動ユニット4を制御するために、血管内血液ポンプ10を制御ユニット5に接続する電気接続ケーブル7が、提供される。制御ユニット5は、ディスプレイ6を備えたユーザインターフェースを有する。制御ユニット5が、タッチスクリーン、制御ダイアル、ボタンまたは類似のものなど、様々な更なる制御要素を含み得ることは、理解されるであろう。ディスプレイ6は、ポンプ流量、ポンプ速度、モータ電流など、血液ポンプ10の様々な動作パラメータを表示するように構成され得る。特に、本発明の観点からは、ディスプレイ6は、当初のパージングプロセスの間に、センサ15によって検出される例えばハンドル部分3などの接続されたデバイス230の向きの表現を、表示し得る。
図1に示されているように、接続されたデバイス230の現在の向き27が、接続されたデバイスの所定のターゲットである向き28(
図1では、破線によって示されている)との関係で、表示され得る。ユーザを誘導するのに適切ないずれかの他のディスプレイの選択肢も、実装され得る。更に、または代替的な例では、ポンプユニット2の向き27が、表示され得る。
【0029】
電気的接続の他に、血液ポンプ10は、更に、当初のパージングおよび空気除去プロセスと、血液ポンプ10の動作中のパージングおよび空気除去とのために、パージ流体を血液ポンプ10に供給するのに設けられるパージライン8に接続される。パージライン8は、パージカセット9に接続され得るのであるが、パージカセット9は、例えば500mmHgであり得る特定のパージ圧力を生成するために、提供され得る。水または好ましくはブドウ糖溶液などのいずれかの適切な流体であり得るパージ流体は、容器またはバッグ17の中に提供され得、パージカセット9に、更には、パージライン8を介して血液ポンプ10に、供給され得る。血液ポンプ10を準備する方法に関する詳細は、
図3a~
図3cとの関係で、以下でより詳細に説明される。
【0030】
次に
図2を参照すると、
図1のシステム100の血管内血液ポンプ10が、より詳細に記載されている。血液ポンプ10は、ハンドル部分3とポンプユニット2とである2つの接続されたデバイス230を備えている。接続されたデバイス230のそれぞれは、空洞13を備えている。これらの空洞13のそれぞれは、細長い管状体11の内腔12と流体連通している。示されている実施形態の血液ポンプ10は、拡張可能なカテーテルポンプであり、換言すると、ポンプユニット2は、圧縮された構成(図示せず)から拡張された構成に拡張可能である。より具体的には、血液ポンプ10を小さな入口を通じて患者の血管の中へ挿入するため、ポンプユニット2は、その直径を縮小させるために、圧縮された構成に圧縮される。例えば左心室および大動脈などのターゲットである位置にいったん配置されると、ポンプユニット2は、拡張し得る。この目的のため、ポンプユニット2は、拡張可能なポンプ筐体23を備え得るが、このポンプ筐体23は、カニューレの形態であり得、薄い高分子膜によって被覆された網状のサポート構造として形成され得る。このサポート構造は、ニチノールなどの形状記憶材料で製造され得る。ポンプユニット2は、その遠位端に、Jチップまたはピッグテールとしても知られる、非外傷性先端24を有し得る。また、拡張および圧縮がそれぞれ可能であり得る羽根車18が、ポンプ筐体23の内部に配置される。特に、左心室サポートのための上述した応用の場合には、血流入口19が、例えば拡大された直径部分に、ポンプ筐体23の遠位部分において、形成され得る。血液は、ポンプ筐体23に入り、回転軸の周囲を回転する羽根車18によってポンプ筐体23を通じて運ばれ、血流出口20から外に出る(矢印Bによって示されている)。
【0031】
羽根車18は、可撓性の駆動シャフト16に結合されており、この可撓性の駆動シャフト16は、カテーテル1を通じて、より具体的には、カテーテル1の細長い管状体11の内腔12を通じて、延びている。可撓性の駆動シャフト16は、ハンドル部分3の空洞13の内部に位置する駆動ユニット14に結合されている。駆動ユニット4は、
図2では単に概略的に図解されているだけであるが、電気モータを備え得る。PCB26など、駆動ユニット4の更なる電子部分が、ケーブル7に接続されており、このケーブル7は、他方で、
図1との関係で既に説明されたように、制御ユニット5に接続されている。
【0032】
ハンドル部分3の向きを検出するためのセンサ15が、制御ユニット4に対する現在の向きに関するデータを送信できるように、PCB26上に配置されている。患者に用いる前に、特に、カテーテル1のハンドル部分3の空洞13と細長い管状部分11の内腔12とおよびポンプユニット2も、完全に空気が除去されていなければならないのであるが、これは、それによって梗塞などの深刻な合併症を生じさせ得る患者の血管分布の中への空気の導入を防止するために、血液ポンプ10のすべての空洞から気泡が完全に除去されなければならないことを意味する。パージ流体を血液ポンプ10に供給するために、パージライン8は、ハンドル部分3のパージ流体入口25に接続される。様々なラインおよびケーブルを接続するために、Yコネクタ、ルアコネクタまたは類似のものなど、様々なコネクタが用いられ得るということを、当業者は理解するであろう。更に、または代わりに、センサを、ポンプユニットに、追加的にまたは単独で配置し得る。
【0033】
次に
図3a~
図3cを参照して、本発明のある実施形態によるカテーテルを準備するための方法について、説明する。特に、既に説明されたように、患者に用いられることが可能になる前にカテーテル1を準備する間に、気泡が完全に除去されなければならない。カテーテル1の細長い管状体11の内腔12に気泡が閉じ込められるという危険は実質的に全く存在しないが、ハンドル部分3および/またはポンプユニット2などの接続されたデバイスの空洞13の内部に、気泡が閉じ込められることがあり得る。特に、遠位端22においてカテーテル1から出る(すなわち、ポンプユニット2から出る)パージ流体が、カテーテル1の空気除去が成功しているということを誤って暗示するという危険が存在する。この理由は、パージ流体が既にカテーテル1の細長い管状部分11の内腔12を通じて流れているとしても、ハンドル部分3(または、示されていないポンプユニット)の空洞13が、依然として空気で満たされ得るような内壁もしくは元々組み込まれている構成要素の凹部またはそれ以外の幾何学的構造を有する場合があり得るからである。特に、内腔12は、ハンドル部分3および/またはポンプユニットの空洞13に依然として空気が存在する場合であっても、毛管力がパージ流体を内腔12の中に引き込むことがあり得るような非常に小さな直径を有し得るのである。更に、空洞または元々組み込まれている構成要素が、気泡が閉じ込められているという危険を更に増大させる不規則な構造を有することもあり得る。
【0034】
ハンドル部分3および/またはポンプユニット2の内部に気泡が閉じ込められるという危険性は、カテーテル1の空気除去を行うための当初のパージプロセスの間、ハンドル部分3および/またはポンプユニット2が正しい向きに保持される場合には、実質的に縮小させるまたは取り除くことが可能である。したがって、本発明のシステム100は、ハンドル部分3および/またはポンプユニット2の向きを検出するためのセンサ15を含む。換言すると、ハンドル部分3および/またはポンプユニット2の現在の向きを、管状部分11を介してハンドル部分3またはポンプユニットの中へライン8を通じて(矢印P参照)パージ流体を供給する間、検出することが可能である。特に、向きを適切にモニタすることが可能であるように、現在の向きを、連続的に、または、好ましくは非常に短い時間間隔である特定の時間間隔で、検出し得る。
【0035】
センサ15は、向きを検出することができる、重力センサ、加速度計、ジャイロスコープまたはいずれかの他のセンサであり得る。特に、向きを検出すれば充分なのであって、ハンドル部分3および/またはポンプユニット2の3次元空間における絶対位置を、特に重力との関係で検出することは必要ではあり得ない。特に加速度計は、外部的な電磁場生成器またはそれに類似するものなど、いかなる外部的なインフラストラクチャも必要とせず、駆動ユニット4によって生じることがあり得る磁場に左右されない。それゆえ、加速度計は、正確な向きを提供することができる。
【0036】
特に、向きは、一般的な長手方向軸Lによって包囲される傾斜角αおよび/またはポンプユニット2と好ましくは重力に沿った垂直軸Vとの傾斜角αによって、表され得る。
図3a~
図3cにおける矢印によって示されているように、加速度計15は、典型的に、垂直な下方向を検出する。センサデータは、特定の下方向に対する傾斜角αを計算するのに用いることができる。検出された向きは、制御ユニット5に送信され得る。好ましくは、センサ15によって得られたセンサデータは、メモリマッピングを用いて送信され、これにより更なる接続ワイヤが不要になるが、センサデータを送信するためには、既存の接続ケーブル7を用いることも可能である。制御ユニット5は、センサデータから計算された検出された向きを、
図1に図解されているように、ディスプレイ6に表示することができる。更に、制御ユニット5は、ハンドル部分3またはポンプユニット2の向きを、所定のターゲットである向きに近づくように、ユーザが変更することを誘導するように構成され得る。
図3a~
図3cに図解されているように、ディスプレイ6は、現在の向きが所定のターゲットである向きと一致するのかしないのかに関する正および負の指示29も、それぞれ与え得る。
【0037】
空気除去プロセスが、
図3a~
図3cにおけるハンドルを用いて、ポンプユニット2にも類似的に適用されることが可能な例として、説明される。すなわち、所定のターゲットである向きが、ハンドル部分3の内部の幾何学的形状に応じて、ハンドル部分3の空洞13からカテーテル1の細長い管状部分11の内腔12の中へ気泡が確実に脱出することができる向きとして、選択され得る。この所定のターゲットである向きは、
図3aに示されているように、垂直方向であり得るのであるが、この場合、パージ流体のライン8は、管状部分11の近位端21よりも垂直方向に更に下に位置しており、すなわち、ゼロ度の角度αであり、換言すると、垂直軸Vは長手方向軸Lと一致している。この向きの場合、パージ流体30は、下から導かれ、空洞13と内腔12とが確実に空気除去されるように、すべての空気31を垂直な上方向に確実に押し上げることが可能である。ゼロよりも大きなどの角度αでも、またはどのような範囲の角度でも、所定のターゲットである向きを定義するように選択され得ることが、理解されるであろう。
【0038】
図3bに示されているように、ハンドル部分3が、例えば斜めの角度に保持されている場合、つまり角度αが45度などのように0度より大きくて90度未満である場合には、パージ流体30が既に内腔12に存在していても、空気31が、ハンドル部分3の空洞13の隅に閉じ込められていることがあり得る。同様に、
図3cに示されているように、ハンドル部分3が、ハンドル部分3への流体入口が内腔12の中への出口よりも垂直方向の上に位置する向きに保持されている場合、すなわち、例えば角度αが90度より大きく180度未満である場合には、空気31が、ハンドル部分3の空洞13の隅に閉じ込められていることがあり得る。しかし、パージ流体は、遠位端22においてカテーテル1から連続的に排出され得、それにより、ユーザは、自分がカテーテル1の空気除去に成功したと誤って信じることになる。
【0039】
したがって、ユーザは、ハンドル部分3をどのように保持すればよいのか、換言すると、所定のターゲットである向きと一致させるにはハンドル部分3の向きをどのように変更すればよいのか、誘導されることになる。検出された向きが、すなわちこれは、センサ15によって検出された現在の向きを意味する検出された向きが、所定のターゲットである向きと比較され、例えば上で説明された指示27、28および29の中の少なくとも1つである適切な指示が、ディスプレイ6上に表示される。現在の検出された向きとユーザが正しい向きを選択するように誘導するのに適切な所定のターゲットである向きとの差を表すいずれかの指示が、図形的な図解、色による尺度、矢印または類似のものなどとして想定され得ることが理解されるであろう。同様に、追加的にまたはその代わりに、システムの完全な空気除去に必要である、ユーザが現在の向きを変更して所定のターゲットである向きに近づき一致させるように誘導するのに、音声信号が用いられることもあり得る。
【0040】
上述したパージングおよび空気除去プロセスの間、パージ流体は、流体ライン8によって空洞13および内腔12の中へ連続的に供給され得るが、ユーザがハンドル部分3を正しい向きに保持する場合に限りパージ流体の流れを付勢することが有利であり得る。逆に、ユーザがハンドル部分3を正しく保持していない場合には、パージ流体の流れを停止または休止され得る。これにより、空気がハンドル部分3の中に依然として存在する早すぎる時点でパージ流体が内腔12の中へ引き込まれるという危険性を縮小または排除し得る。供給されるパージ流体の体積は、カテーテル1におけるすべての空洞の既知の体積に基づいてパージングおよび空気除去プロセスがいったん完了したら指示が表示され得るように、測定され得る。安全上の理由により、制御ユニット5は、パージ流体が遠位端において血液ポンプ10から出て、パージ流体の量に対する安全上のマージンが追加され得ることをユーザが確認することを促すことがあり得る。
【0041】
開示されている方法およびシステムによると、患者に用いられるためのカテーテルの適切で確実な準備が、特に、気泡が患者の血管分布の中に導かれることを防止するためのカテーテルの適切なパージングおよび空気除去が、可能になる。本発明は血管内血液ポンプの分野において特に有用であるが、患者に用いられる前に適切な空気除去を必要とするどのカテーテルでも実装され得るということが理解されるであろう。
【国際調査報告】