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特表2022-539004無機結合剤並びにリン酸塩の化合物及び酸化ホウ素化合物を含有する鋳型材料の混合物から得られる表面処理された鋳型、並びにその製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】無機結合剤並びにリン酸塩の化合物及び酸化ホウ素化合物を含有する鋳型材料の混合物から得られる表面処理された鋳型、並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 3/00 20060101AFI20220831BHJP
   B22C 1/02 20060101ALI20220831BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20220831BHJP
   B22C 5/00 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
B22C3/00 B
B22C1/02 C
B22C1/00 B
B22C5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576095
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 DE2020100518
(87)【国際公開番号】W WO2020253917
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】102019116702.7
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュック,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ホルトハウゼン,タマラ ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,ローニャ
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA04
4E092AA06
4E092AA11
4E092AA15
4E092BA09
4E092BA12
4E092CA03
4E092DA02
4E092EA01
4E092FA10
4E092GA10
4E093AA01
4E093AB01
4E093JC01
4E093RC01
4E093RD05
(57)【要約】
本開示は、1以上のリン酸塩の化合物と、1以上の酸化ホウ素化合物とを含み、無機結合剤によって鋳型材料の混合物から得られる金属鋳造用の表面処理された鋳型、特に表面処理され、水ガラスで結合された金型及び中子に関し、1以上の耐火性の鋳型基材、無機結合剤としての水ガラス、及び非晶質で粒状の二酸化ケイ素、並びに、1以上の粉状の酸化ホウ素化合物及び1以上のリン酸塩の化合物を含む。本開示は更に、表面処理された鋳造鋳型の本体を製造する方法及びその使用に関し、特に、鉄合金から鋳造部品を製造する方法に関する。表面処理剤は、水系の表面処理剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された金型及び被覆された中子を得るべく、鋳造及び硬化された鋳型材料の混合物を被覆することによって得られる金型又は中子であって、
前記鋳型材料の混合物は、
耐火性の鋳型基材と、
水ガラスと、
粒状の非晶質シリカと、
1以上の酸化ホウ素化合物と、
1以上のリン酸塩含有化合物と
を少なくとも含み、
含水被覆で被覆されている
金型及び中子。
【請求項2】
前記被覆は、
粘土、水、及び耐火性の基材
を含み、特に、
(A)少なくとも
(A1)1~10重量部のパリゴルスカイトと、
(A2)1~10重量部のヘクトライトと、と、
(A3)1~20重量部のナトリウムベントナイトと
であり、相互に関連する成分(A1)、(A2)、及び(A3)の比に応じた
粘土と、
(B)最大160℃及び1013mbarで完全に気化可能な水を含む担体液と、
(C)耐火性である、(A)と別個の基材と
を含む
請求項1に記載の金型又は中子。
【請求項3】
前記被覆は、
(i)前記被覆の粘土の全含有量A1、A2、及びA3は、共に、前記被覆の固体含有量に対して、0.1重量パーセント~4.0重量パーセント、好適には0.5~3.0重量パーセント、最も好適には1.0~2.0重量パーセントであること、
(ii)前記担体液は、50重量パーセントを超える水を含み、更に好適な場合、ポリアルコール及びポリエーテルアルコールを含むアルコールを含むこと、
(iii)前記被覆の組成物の固体含有量は、20~90重量パーセント、より好適には30~80重量パーセントであること、及び
(iv)前記被覆の組成物は、前記被覆の組成物の固体含有量に対して、10~85重量パーセントの耐火性の基材を含むこと
のうちの1以上によって特徴付けられる
請求項1又は2に記載の金型又は中子。
【請求項4】
前記酸化ホウ素化合物は、ホウ酸塩、ホウリン酸塩、ホウリンケイ酸塩、及びそれらの混合物を含む群から選択され、特に、前記酸化ホウ素化合物は、ホウ酸塩、好適にはホウ酸ナトリウム及び/又はホウ酸カルシウムなどのホウ酸アルカリ及び/又はホウ酸アルカリ土類金属である
請求項1~3のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項5】
前記酸化ホウ素化合物は、B-O-Bの構造要素から形成され、それと関係なく、任意の有機基を含まない
請求項1~4のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項6】
前記酸化ホウ素化合物は、粉末形態の固体として添加され、特に、平均粒径が、0.1μmより大きく、かつ、1mm未満であり、好適には1μmより大きく、かつ、0.5mm未満であり、より好適には5μmより大きく、かつ、0.25mm未満である
請求項1~5のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項7】
前記酸化ホウ素化合物は、前記耐火性の鋳型基材に対して、0.002重量パーセントを超え、かつ、1.0重量パーセント未満の量で、好適には0.005重量パーセントを超え、かつ、0.4重量パーセント未満の量で、より好適には0.01重量パーセントを超え、かつ、0.1重量パーセント未満の量で、最も好適には0.02重量パーセントを超え、かつ、0.075重量パーセント未満の量で添加されるか、あるいは含まれる
請求項1~6のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項8】
前記耐火性の鋳型基材は、ケイ砂、ジルコンサンド、クロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、ガラスビード、ガラス顆粒、ケイ酸アルミニウムの中空球、及びそれらの混合物を含み、好適には、前記耐火性の鋳型基材に対して、50重量パーセントを超えるケイ砂からなる
請求項1~7のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項9】
80重量パーセントを超える、好適には90重量パーセントを超える、より好適には95重量パーセントを超える前記鋳型材料の混合物は、前記耐火性の鋳型基材である
請求項1~8のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項10】
前記耐火性の鋳型基材の平均粒径は、100μm~600μm、好適には120μm~550μmである
請求項1~9のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項11】
前記粒状の非晶質シリカのBETによって決定される表面積は、1~200m/g、好適には1m/g以上かつ30m/g以下、より好適には1~19m/g以下である
請求項1~10のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項12】
前記粒状の非晶質シリカは、結合剤の全重量に対して、1~80重量パーセント、好適には2~60重量パーセントの含有量で用いられる
請求項1~11のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項13】
前記粒状の非晶質シリカの動的光散乱によって決定される平均一次粒径は、0.05μm~10μm、好適には0.1μm~5μm、より好適には0.1μm~2μmである
請求項1~12のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項14】
前記粒状の非晶質シリカは、沈降シリカ、火炎加水分解的に生成された焼成シリカ又はアーク生成された焼成シリカ、ZrSiOの熱分解により生成された非晶質シリカ、酸素含有気体により金属ケイ素を酸化することによって生成されたシリカ、結晶石英の溶融及び急速再冷却により生成された球形粒状の石英粉末、及びそれらの混合物からなる群から選択される
請求項1~13のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項15】
前記鋳型材料の混合物は、前記粒状の非晶質シリカを、前記鋳型基材の各々に対して、0.1~2重量パーセント、好適には0.1~1.5重量パーセントの量で含み、それに関係なく、前記鋳型混合物は、前記粒状の非晶質シリカを、水を含む前記結合剤の重量に対して、2~60重量パーセント、より好適には4~50重量パーセントの量で含み、
前記結合剤の固体含有量は、20~55重量パーセント、好適には25~50重量パーセントである
請求項1~14のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項16】
用いられた前記粒状の非晶質シリカの含水量は、5重量パーセント未満、より好適には1重量パーセント未満である
請求項1~15のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項17】
前記水を含む前記水ガラスは、前記鋳型材料の混合物において、前記鋳型基材に対して、0.75重量パーセント~4重量パーセント、より好適には1%~3.5重量パーセントの量で存在し、それに関係なく、好適には上述の値と組み合わせて、前記水ガラスの固体含有量は、前記鋳型材料の混合物において、前記鋳型基材に対して、0.2625重量パーセント~1.4重量パーセント、好適には0.35重量パーセント~1.225重量パーセントである
請求項1~16のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項18】
前記水ガラスのモル率SiO/MOは、1.6~4.0、より好適には2.0~3.5未満であり、Mは、リチウム、ナトリウム、及びカリウムであるか、あるいは、Mは、ナトリウム及びカリウムである
請求項1~17のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項19】
前記リン酸塩含有化合物は、リンの酸化状態が+5である無機リン酸塩の化合物であり、メタリン酸塩及び/又はポリリン酸塩は、特に、各々がリン酸アルカリ又はリン酸アルカリ土類金属として好適であり、
より好適には、前記アルカリ土類金属はナトリウムである
請求項1~18のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項20】
前記鋳型材料の混合物は、前記耐火性の鋳型基材の重量に対して、0.05重量パーセント及び1.0重量パーセント、より好適には0.1重量パーセント及び0.5重量パーセントの量において、前記リン酸塩含有化合物を含む
請求項1~19のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項21】
被覆された金型又は被覆された中子を製造する方法であって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の物質又は成分を組み合わせて混合することにより前記鋳型材料の混合物を提供する工程と、
前記鋳型材料の混合物を鋳型に導入する工程と、
水が加熱及び除去される間に熱硬化によって、好適には、前記鋳型材料の混合物を100℃~300℃の温度に暴露することによって、前記鋳型材料の混合物を硬化させて、金型又は中子を得る工程と、
型又は中子を含水被覆で被覆する工程と
を含む方法。
【請求項22】
前記鋳型材料の混合物は、圧縮空気の補助を伴ってコアシュータによって前記鋳型に導入され、前記鋳型は成形工具であり、1以上の気体、特にCO、又はCOを含む気体、好適には60℃より高温に加熱されたCO及び/又は60℃より高温に加熱された空気は、前記成形工具を通って流れる
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記鋳型材料の混合物は、硬化目的のために、好適には5分未満、100~300℃、好適には120~250℃の温度に供され、前記温度は、更に好適には、加熱空気を成形工具に送風することによって少なくとも部分的に確立される
請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
金属鋳造、特に鉄鋳造のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の金型又は中子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1以上のリン酸塩含有化合物及び1以上の酸化ホウ素化合物を含み、無機結合剤によって鋳型材料の混合物から得られる金属鋳造用の被覆金型、すなわち、1以上の耐火性の鋳型基材、無機結合剤としての水ガラス、及び粒状の非晶質シリカ、並びに、1以上の酸化ホウ素化合物及び1以上のリン酸塩含有化合物を含む、被覆され、水ガラスで結合された、具体的には鉄合金の鋳造物の製造用の金型及び中子に関する。更に、本開示は、被覆された鋳造鋳型の製造方法及びそれらの使用、特に鉄合金の鋳造物の製造方法に関する。被覆は、水系の被覆である。
【背景技術】
【0002】
鋳造鋳型は、基本的に、製造されるべき鋳造物のネガ型を呈示する中子及び金型からなる。以降においては、「鋳造鋳型(casting mould)」(その複数の形態を含む)との用語は、中子、金型(別個のもの)、並びに中子及び金型(一体のもの)の同義語として用いられる。金型及び中子は、通常、例えば、ケイ砂などの耐火性の材料、及び成形工具から脱離された後の鋳造鋳型に十分な機械的強度を与える適切な結合剤を基盤としている。鋳造鋳型の製造のために、好適な結合剤で被覆された耐火性の鋳型基材は用いられる。耐火性の鋳型基材は、好適な中空の鋳型に充填し、圧縮できるように、自由流動形態で利用可能であることが好適である。結合剤は、鋳型基材の粒子間に堅固な凝集を生じさせ、鋳造鋳型に必要な機械的安定性を与える。
【0003】
鋳造鋳型は、多様な要求を満たす必要がある。鋳造工程自体においては、最初に、1以上の鋳造鋳型によって形成される空洞に、溶融した金属を収容すべく、強度及び温度耐性が十分であることが必要である。凝固工程が開始した後、鋳造物の機械的安定性は、鋳造鋳型の壁に沿って形成する凝固された金属層によって確保される。
【0004】
鋳造鋳型の材料は、金属によって放出された熱の影響下で、当該機械的強度が失われるように、すなわち、耐火性の材料の個々の粒子の凝集が解消されるように分解する必要がある。理想的には、鋳造鋳型は、鋳造品から容易に脱離可能な微細な砂に再崩壊する。
【0005】
鋳造鋳型は鋳造工程中に非常に高い熱的及び機械的な応力を受けるため、例えば、鋳造鋳型の割れ、又は鋳造鋳型の構造中に浸透する液体金属によって、液体金属と金型との接触面で欠陥が生じうる。
【0006】
必要な場合、特に鋼鉄鋳造及び鉄鋳造においては、鋳造鋳型、特に金型及び中子の表面、特に鋳造金属と接触する当該表面は、被覆層で被覆される。被覆は、例えば、これらの点における標的となる欠陥機構の抑制のため、又は冶金学的な効果の利用のために、金型/中子と金属との間に境界層又は防壁層を形成する。一般的には、鋳造技術における被覆は、特に、
鋳造面の平滑性を向上すること、
金型及び/又は中子から液体金属を可能な限り完全に分離するとの機能
金型/中子の成分と溶融物との間の化学反応を回避することによって、金型/中子と鋳造物との間の分離を容易にするとの機能、並びに/又は
気泡、浸透、ベイニング、及び/若しくは肌傷のような鋳造物の面の欠陥を回避する機能
を充足することを意図している。
【0007】
上述の欠陥が生じた場合、所望の表面特性を達成すべく、鋳造物の面の広範な再加工が必要となる。上述には、追加の作業工程が必要となるため、生産性の低下及び費用の増加が欠かせなくなる。十分に接近できない、あるいは、完全に接近できない鋳造物の面上に欠陥が生じる場合、更に、鋳造物の損失の原因となり得る。
【0008】
更に、被覆は、例えば、鋳造物の表面での被覆を介して、鋳造物の表面特性を改善する添加剤を、鋳造物に選択的に移すことによって、鋳造物に冶金学的に影響を及ぼすことができる。
【0009】
更に、被覆は、液体金属から鋳造鋳型を化学的に隔離する層を形成する。上述により、鋳造物と鋳造鋳型との間の密着性が低下するため、鋳造物を鋳造鋳型から容易に脱離できる。しかしながら、被覆は更に、液体金属と鋳造鋳型との間の熱伝達を特異的に制御するために、例えば、冷却速度によって特異的な金属構造の形成を引き起こすために用いられうる。
【0010】
被覆は、通常、耐火性の無機材料及び結合剤からなり、被覆は好適な担体液、例えば、水又はアルコールに溶解又は懸濁される。可能であれば、有機溶媒は乾燥工程の過程で放出されるため、アルコール系の被覆を用いずに、代わりに、水溶液系を用いることが好適である。
【0011】
特に近年においては、環境を保護し、炭化水素、主に芳香族炭化水素によって引き起こされる周囲への有害臭を制限すべく、可能な限り、鋳造鋳型の製造中及び鋳造及び冷却中に、CO又は炭化水素の形態における放出物を零水準に保つことに対する要求が向上している。上述の要件を満たすべく、近年、無機結合剤系が開発又は精製されており、無機結合剤系の使用は、CO及び炭化水素の放出が金属鋳型の製造中に回避できるか、あるいは、少なくとも有意に最小化できることを意味している。しかしながら、無機結合剤系の使用は、多くの場合、以降に詳説する別の欠点を伴う。
【0012】
有機結合剤と比較して、無機結合剤は、それらから製造される金型が比較的低い強度を有するという点で不利である。上述のことは、鋳造鋳型が工具から脱離された直後に特に明白である。しかしながら、当該段階では、複雑であり、かつ/あるいは薄壁である鋳型部品の製造及び安全な処理のために、良好な強度が特に重要である。
【0013】
水ガラスのような無機結合剤を用いて製造された金型及び中子は更に、湿気、又は水若しくは水性の湿気に対する耐性が比較的低い。上述は、鋳型材料の有機結合剤では通常であるように、水系被覆又は含水被覆の適用、及び上述の鋳造した金型又は中子の長期にわたる保管が、多くの場合不可能であることを意味している。
【0014】
有機結合剤系と比較して、無機結合剤系は、コアリングの挙動、すなわち、金属鋳造後に(機械的応力下で)鋳造鋳型を脆く流動可能な形態に迅速に崩壊する能力が、純性に無機的に製造された鋳造鋳型(例えば、結合剤として水ガラスを用いた鋳造鋳型)の場合、有機結合剤で製造された鋳造鋳型の場合よりも、多くの場合において悪いという点で不利である。上述は、鋳鉄用途について特に言えることである。
【0015】
上述の後者の特性、すなわち、コアリングの挙動の乏しさは、薄壁であり、精巧繊細又は複雑な鋳造鋳型が用いられる場合に特に不利であり、鋳造後に脱離するのが原則的に困難となる。一例としては、いわゆるウォータジャケットの中子は、上述に関連するが、特定の領域の燃焼機関の製造に必要である。
【0016】
特許文献1は、耐火性の鋳型基材と、水ガラスによる結合剤と、粒状の非晶質シリカの添加剤とを用いることによって、より高い瞬時の強度と、湿度に対するより高い耐性を実現できることを開示している。
【0017】
特許文献2は、特に非晶質シリカと組み合わせて、無機結合剤によるリチウム含有鋳型材料の混合物を用いることによって、湿度に対する、より高い耐性とともに、水系の被覆に対する、より高い耐性を実現できることを開示している。上述は、複雑な鋳造鋳型であっても安全な処理を確保する。
【0018】
特許文献3は、非晶質シリカと組み合わせて、1以上のリン含有化合物を用いることによって、著しく高い熱強度を達成できることを開示している。更に、リン酸塩含有鋳型材料の混合物から生成された供試体は、「熱間変形(hot deformation)」の時間遅延又は減少を伴う、熱安定性の著しい改善を示す。
【0019】
更に、強度が高いにもかかわらず、本開示による鋳型材料の混合物から製造された鋳造鋳型は、特にアルミニウム鋳造の場合に、非常に良好な崩壊を示すことが開示されている。
【0020】
特許文献4は、1以上の酸化ホウ素化合物を用いることにより、湿気での保管後に、より高い曲げ強度が実現できることを開示している。当該添加剤は、複雑な鋳造鋳型であっても処理の改善を確保する。更に、鋳型材料の混合物から生成された鋳造鋳型の強度が高いにもかかわらず、鋳造鋳型は、特にアルミニウム鋳造の場合に、非常に良好な崩壊を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許第1802409号
【特許文献2】独国特許出願公開第102013106276号明細書
【特許文献3】欧州特許第2097192号
【特許文献4】国際公開第2015/058737号
【特許文献5】独国特許出願公開第102017107655号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102017107657号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102017107658号明細書
【特許文献8】国際公開第2008/101668号(米国特許出願公開第2010/173767号明細書に対応)
【特許文献9】独国特許出願公開第2652421号明細書(英国特許出願公開第1532847号明細書に対応)
【特許文献10】欧州特許出願公開第2305603号明細書(国際公開第2011/042132号に対応)
【特許文献11】独国特許出願公開第102007045649号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第102012020509号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第102012020510号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第1020120511号明細書
【特許文献15】欧州特許第1884300号(米国特許出願公開第2008/029240号明細書に対応)
【特許文献16】国際公開第2009/056320号(米国特許出願公開第2010/0326620号明細書に対応)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
環境保護及び放出抑制の分野における要求の増加に対処できるように、鋳型材料の無機結合剤、特に鋳型材料の含水結合剤は、今後更に、鉄鋼鋳造及び鉄鋳造の分野における金型及び中子の製造において、重要性を増すべきである。所望の鋳造又は必要な鋳造を達成すべく、上述のように、無機的に結合された金型及び中子を被覆で被覆することは、通常、必要であるか、あるいは有利になる。したがって、環境保護及び放出抑制の面から、被覆を選択する際に、更に、有機物の担体液を用いるのを可能な限り回避すること、又は好適には、水系の被覆、すなわち、水が唯一の担体液であるか、あるいは少なくとも担体液の(重量の面から)主な含有量である被覆を用いることが所望される。
【0023】
しかしながら、上述したように、鋳型材料の無機結合剤、特に鋳型材料の水含有結合剤で製造された鋳造鋳型、特に金型及び中子は、水又は水性の湿気の作用に対する安定性が低い。したがって、水系の被覆の組成物に含まれる水は、水系の被覆の組成物で処理(被覆)された、無機的に結合された金型及び中子に損傷を与えうる。特に、水系の被覆の組成物に含まれる水は、上述のように被覆された金型及び中子の強度を不利に低下させうる。上述の課題は、鋳造技術において周知であり、例えば、特に、金型及び中子の強力な硬化、塗布された被覆を乾燥させるための複雑な方法、又は鋳型材料の混合物若しくは被覆の組成物の調節(特許文献5/特許文献6/特許文献7)を含む現行の手段が用いられる場合、これまでのところ、不十分な程度の解決だけしかできない。
【0024】
特に、鉄鋳造及び鉄鋼鋳造の分野において、鋳造目的でこれまでのところ周知の無機結合剤系は、依然として改善の余地を呈している。特に、
自動化された製造工程において必要とされる、対応する強度(特に、被覆を乾燥させる工程における強度及び保管後の強度)の水準を達成し、
湿気の耐性が特に高いことにより、水系の被覆との適合性を可能にして、特に、薄壁又はフィリグリー又は複雑な無機物の鋳造鋳型であっても、金型及び/又は中子を破損せずに、確実に被覆可能であり、
金型及び/又は中子(すなわち、例えば、熱硬化後の冷却が不完全であるために、依然として温度が50℃を超え、好適には50~100℃の範囲の温度となる金型及び/又は中子)への水系の被覆の塗布を可能にするか、あるいは、少なくとも改善し、
製造された鋳物の非常に良好な表面仕上げを可能にし、その結果、再加工を全く必要としないか、あるいは、軽微な加工のみを必要する
鉄鋼鋳造用の無機結合剤系を開発することが所望される。
【0025】
したがって、本開示は、特に鉄及び鉄合金の金属加工用の鋳造鋳型の製造のための無機物の鋳型材料の混合物を提供する目的に基づくものであり、環境に親和性のある水系の被覆に対する安定性を特に有効に改善し、同時に、被覆及び乾燥工程において、特に、薄壁又は精巧繊細若しくは複雑である、被覆された鋳造鋳型の製造のために自動化された工程において必要となる高い強度水準を確保する。
【0026】
更に、鋳造鋳型は、保管の安定性を高く、かつ、崩壊特性を非常に良好にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述の目的は、独立請求項の特徴を有する金型及び/又は中子、並びにその使用又は方法によって達成される。本開示による鋳型材料の混合物の有利な改良点は、従属請求項の主題であるか、あるいは後述されている。
【0028】
驚くべきことに、水ガラス及び非晶質シリカによる結合剤を含有する無機物の鋳型材料の混合物において、1以上の酸化ホウ素化合物(i)及び1以上のリン酸塩含有化合物(ii)が存在することにより、被覆された場合に上述の目的を達成する、鋳造鋳型、すなわち金型及び/又は中子に到達可能なことが見出された。
【0029】
明白で特有の特徴は、本開示によって用いられる無機物の鋳型材料の混合物が更に、放出を低減できるか、あるいは、放出を零にできるとともに、成分の複雑な幾何学的形状が、鉄鋳造において製造できることである。
【0030】
本開示による鋳造鋳型、すなわち金属加工用の金型又は中子は、少なくとも
耐火性の鋳型基材と、
少なくとも水ガラスを含む結合剤と、
粒状の非晶質シリカと、
酸化ホウ素化合物、特に粉末形態の酸化ホウ素化合物と、
リン酸塩含有化合物、特に粉末形態のリン酸塩含有化合物、又は溶解されたリン酸塩含有化合物、例えば水に溶解されたリン酸塩含有化合物と
を含む鋳型材料の混合物から得ることができ、
鋳造及び硬化の後に、被覆された鋳造鋳型を得るべく、少なくとも部分的に、特に完全に、少なくとも鋳造金属と接触する鋳造鋳型の表面を被覆する。
【0031】
結合剤の部分は、水ガラス、粒状の非晶質シリカ、酸化ホウ素化合物、及びリン酸塩含有化合物である。
【0032】
鋳造鋳型の製造に一般的に用いられ、かつ、周知の材料は、耐火性の鋳型基材として用いることができる。
【0033】
好適なものは、例えば、ケイ砂、ジルコンサンド又はクロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、並びに人工的な鋳型基材、特にケイ砂が、耐火性の鋳型基材に対して50重量パーセントを超える人工的な鋳型基材である。上述においては、新品の砂のみを用いることを要しない。資源保護の観点から、かつ、埋立費用を回避すべく、使用済みの鋳型をリサイクルして得られるような、可能な限り高い含有量の再生された使用済みの砂を用いることが更に有利である。
【0034】
耐火性の鋳型基材は、融点(融解温度)が高い物質であると理解される。好適には、耐火性の鋳型基材の融点は、600℃よりも高く、好適には900℃よりも高く、より好適には1200℃よりも高く、最も好適には1500℃よりも高い。
【0035】
耐火性の鋳型基材は、好適には80重量パーセントを超える鋳型材料の混合物、より好適には90重量パーセントを超える鋳型材料の混合物、最も好適には95重量パーセントを超える鋳型材料の混合物を構成する。
【0036】
好適な砂は、例えば特許文献8に記載されている。粉砕された鋳型の洗浄及びその後の乾燥によって得られる再生物は、同様に好適である。原則として、再生物は、約70重量パーセント以上の耐火性の鋳型基材、好適には約80重量パーセントパーセント以上の耐火性の鋳型基材、最も好適には90重量パーセントを超えるパーセント以上の耐火性の鋳型基材を構成できる。
【0037】
鋳型基材の平均径は、通常120μm~600μm、好適には150μm~500μmである。粒径は例えば、DIN ISO3310に従ってふるい分けすることによって決定できる。最小線膨張に対する最大線膨張(相互にかつ、全ての空間方向についての各々の場合において直角である)の比が、1:1~1:5又は1:1~1:3である粒子の幾何学的形状、すなわち、例えば繊維状でない粒子の幾何学的形状は、特に好適である。
【0038】
耐火性の鋳型基材の流動状態は、特に、従来のコアシュータにおいて本開示による鋳型材料の混合物を処理できるように自由である。
【0039】
水ガラスは溶解したケイ酸アルカリを含み、ガラス状のケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、及び/又はケイ酸カリウムを水に溶解することによって製造できる。水ガラスのモル率SiO/MO(別個のMの値の累積、すなわち合計)は、好適には1.6~4.0、特に2.0~3.5未満であり、Mは、リチウム、ナトリウム、及び/又はカリウムを意味している。結合剤は更に、特許文献9で周知のリチウムで修飾された水ガラスのような、記載された複数のアルカリイオンを含む水ガラスに基づくことができる。更には、水ガラスは更に、特許文献10に記載のアルミニウムで修飾された水ガラスなどの多価イオンを含むことができる。リチウムイオン、特に非晶質のケイ酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムの含有量を含む水ガラス、又は[LiO]:[MO]若しくは[Liactive]:[MO]が、特許文献2に記載されているような比である水ガラスは、特に好適である。
【0040】
水ガラスの固体含有量は、25~65重量パーセント、好適には33~55重量パーセント、最も好適には30~50重量パーセントの範囲である。固体含有量は、水ガラスに含まれるSiO及びMOの量のことである。
【0041】
用途及び所望の強度水準に応じて、用いられる水ガラス系の結合剤は、鋳型基材に対して、それぞれ0.5重量パーセント~5重量パーセント、好適には0.75重量パーセント~4重量パーセント、最も好適には1重量パーセント~3.5重量パーセントである。データは、水ガラスの結合剤の総量であり、溶媒(特に水溶性溶媒)又は希釈液、溶解した水ガラス、及び(推定)固体含有量(総合で100重量パーセント)を含む。
【0042】
粉状又は粒状は、流動可能であるゆえに、ふるい分け可能な固体の粉末(粉塵を含む)又は顆粒を意味すると理解される。
【0043】
本開示による鋳型材料の混合物は、上述の鋳型材料の混合物で製造される鋳造鋳型の強度水準を増加させるように、粒状の非晶質シリカの一部を含む。鋳造鋳型の強度の増加、特に熱強度の増加は、自動化された製造工程において有益にできる。合成的に製造された非晶質シリカは、特に好適である。
【0044】
本開示により好適に用いられる粒状の非晶質シリカの含水量は、15重量パーセント未満、より好適には5重量パーセント未満、最も好適には1重量パーセントである。
【0045】
粒状の非晶質SiOは、粉末(粉塵を含む)として用いられる。合成的に製造されたシリカ及び天然に存在するシリカの双方は、非晶質SiOとして用いることができる。後者は例えば、特許文献11で周知であるが、後者は通常、わずかではない結晶の含有量を含むゆえに、発癌性として分類されるため好適ではない。合成は、天然に存在しない非晶質SiOを意味すると理解される。すなわち、合成的な生成は、人間によって開始されるような意図的な化学反応、例えば、ケイ酸アルカリ溶液としてのイオン交換工程によるシリカゾルの製造、ケイ酸アルカリ溶液からの沈殿、四塩化ケイ素の火炎加水分解、ケイ素鉄及びケイ素の製造における電気アーク炉内でのケイ砂とコークスとの反応を含む。後者の2の工程で生成された非晶質SiOは、更に焼成SiOと称される。
【0046】
場合によっては、合成的な非晶質シリカは、沈降シリカ(CAS番号112926-00-8)及び火炎加水分解的に生成されたSiO(焼成シリカ、フュームドシリカ、CAS番号112945-52-5)のみを意味すると理解され、一方、ケイ素鉄又はケイ素の生成から得られる生成物は、単に非晶質シリカ(シリカフューム、マイクロシリカ、CAS番号69012-64-12)と称される。本開示の目的については、ケイ素鉄又はケイ素の生成で得られる生成物は、更に非晶質SiOを意味するものと理解される。
【0047】
好適に用いられるのは、沈降シリカ及び焼成シリカ、すなわち、火炎加水分解的に生成されたシリカ又はアーク生成されたシリカである。特に好適であるのは、ZrSOの熱分解によって生成された非晶質シリカ(特許文献12に記載)、及び酸素含有気体による金属Siの酸化によって生成されたSiO(特許文献13に記載)である。更に好適であるのは、粒子が球形であり破片状ではないため、結晶石英の溶融及び急速再冷却によって生成された、溶融石英の粉末(主に非晶質シリカ)である(特許文献12に記載)。
【0048】
非晶質シリカの平均粒径は、好適には100μm未満、より好適には70μm未満である。メッシュサイズが125μmのふるい(120メッシュ)を通過するときの粒状の非晶質SiOのふるい残渣は、好適には10重量パーセント以下、より好適には5重量パーセント以下、最も好適には2重量パーセント以下である。上述と関係なく、メッシュサイズが63μmのふるいでのふるい残渣は、10重量パーセント未満、好適には8重量パーセント未満である。ふるい残渣は、DIN66165(Part2)に記載の機械ふるいの方法によって決定され、チェーンリングはふるい補助材として更に用いられる。
【0049】
粒状の非晶質シリカの平均一次粒径は、0.05μm~10μm、より好適には0.1μm~5μm、最も好適には0.1μm~2μmにできる。一次粒径は、走査型電子顕微鏡の画像(FEI社のNova NanoSEM 230などによるSEM画像)によって確認するとともに、例えば動的光散乱(例えば、Horiba LA 959)によって決定できる。更に、SEM画像は、一次粒子の形状の詳細を0.01μm程度まで下げて可視するのに役立った。シリカ試料は、SEM測定のために蒸留水に分散させ、次いで、水を蒸発させる前に、銅テープで覆われたアルミニウム製の容器に配置した。
【0050】
更に、粒状の非晶質シリカの比表面積を、DIN 66131に従ったガス吸着測定(BET理論)を使用して決定した。粒状の非晶質SiOの比表面積は、1~200m/g、好適には1~50m/g、最も好適には1~19m/gである。必要な場合、生成物は更に、例えば特定の粒径分布の特定の混合物を得るべく混合できる。
【0051】
生成の形式及び生成者に応じて、非晶質SiOの純度には、相応の変動があり得る。シリカの含有量が、85重量パーセント以上、好適には90重量パーセント以上、最も好適には95重量パーセント以上の形式は、好適であると証明されている。
【0052】
用途及び所望の強度水準に応じて、使用される粒子状非晶質SiOの量は、鋳型基材に対して、それぞれ0.1重量パーセント~2重量パーセント、好適には0.1重量パーセント~1.8重量パーセント、最も好適には0.1重量パーセント~1.5重量パーセントである。
【0053】
粒状の非晶質シリカに対する水ガラスの結合剤の比は、広い範囲内で変えることができる。上述は、金型及び/又は中子の初期強度、すなわち鋳型から脱離された直後の強度が、最終強度に有意な影響を及ぼすことなく大幅に改善できるという点で有利である。一方では、高い初期強度は、金型及び/又は中子を製造後に問題なく輸送可能にするか、あるいは完全体の中子本体に組み立て可能にするために所望されるが、他方では、最終強度は、鋳造後の中子の崩壊の困難性を回避するため高すぎるべきではない。すなわち、鋳造後に鋳造鋳型内の空洞から鋳型基材を容易に脱離可能にすべきである。
【0054】
水ガラス(希釈液又は溶媒を含む)の全重量に対して、非晶質SiOの含有量は、好適には1~80重量パーセント、より好適には2~60重量パーセント、特に好適には3~55重量パーセント、最も好適には4~50重量パーセントである。代替的に、かつ、上述と関係なく、非晶質SiOに対する、水ガラスにおける固体(酸化物、すなわち酸化アルカリ金属及びシリカの全質量に基づく)の好適な比は、10:1~1:1.2(重量部)である。
【0055】
特許文献1によると、非晶質シリカは水ガラスの添加前後の双方で耐火物に直接的に添加することができ、耐火物に溶解又は懸濁される任意の物質を含むが、特許文献15に記載されているように、最初に水ガラス及び/又は水酸化ナトリウム溶液の少なくとも一部とSiOの混合物を調製し、次いで耐火物に添加することは更に可能である。事前混合に用いられない残余の水ガラスは、事前混合物が添加される前後に、あるいは事前混合物とともに耐火物に添加できる。好適には、非晶質SiOが耐火物に添加された後に、水ガラスが添加される。
【0056】
更なる実施形態においては、粒状形態の少なくとも酸化アルミニウム及び/若しくはアルミニウム/ケイ素の混合酸化物、又は粒状形態のアルミニウム及びジルコニウムの金属酸化物は、鋳型材料の混合物全体に対して、それぞれ、0.05重量パーセント~4重量パーセント、好適には0.1重量パーセント~2重量パーセント、より好適には0.1重量パーセント~1.5重量パーセント、最も好適には0.1重量パーセント~2.0重量パーセント、又は0.3重量パーセント~0.99重量パーセントの濃度で添加できる。
【0057】
本開示による固体混合物は、1以上の酸化ホウ素化合物、特に粒状の粉末形態の酸化ホウ素化合物を含む。酸化ホウ素化合物の平均粒径は、好適には1mm未満、より好適には0.5mm未満、最も好適には0.25mm未満である。酸化ホウ素化合物の粒径は、好適には0.1μmより大きく、より好適には1μmより大きく、最も好適には5μmより大きい。
【0058】
メッシュサイズが1.00mmのふるいでの残渣は、5重量パーセント未満、好適には2.0重量パーセント未満、最も好適には1.0重量パーセント未満である。
前述の情報と関係なく、かつ、特に好適には、メッシュサイズが0.5mmのふるいでのふるい残渣は、好適には20重量パーセント未満、特に好適には15重量パーセント未満、より好適には10重量パーセント未満、最も好適には5重量パーセント未満である。
前述の情報と関係なく、かつ、特に好適には、メッシュサイズが0.25mmのふるいでのふるい残渣は、好適には50重量パーセント未満、より好適には25重量パーセント未満、最も好適には15重量パーセント未満である。ふるい残渣はDIN66165(Part2)に記載の機械ふるいの方法によって決定され、チェーンリングは、ふるい補助材して更に用いられる。
【0059】
酸化ホウ素化合物は、ホウ素の酸化状態が+3で存在する化合物である。更に、ホウ素は、酸素原子、すなわち、3の酸素原子又は4の酸素原子のいずれかで(最初の配位圏において、すなわち、最隣接として)配位される。
【0060】
好適には、酸化ホウ素化合物は、ホウ酸塩、ホウ酸、無水ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、ホウリンケイ酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され、酸化ホウ素化合物は、好適には有機基を含まない。
【0061】
ホウ酸は、オルトホウ酸(化学式HBO)及びメタホウ酸、又はポリホウ酸(化学式(HBO)である。オルトホウ酸は、例えば、水蒸気源において、かつ鉱物のホウ酸石として発生する。
【0062】
オルトホウ酸は、更に酸加水分解によりホウ酸塩(例えば、ホウ砂)から生成できる。メタホウ酸又はポリホウ酸は、例えば、加熱を通した分子間縮合によって、オルトホウ酸から生成できる。無水ホウ酸塩(化学式B)は、ホウ酸の焼きなましをすることによって生成できる。無水ホウ酸塩は、大部分がガラス状の吸湿性の塊体として得られ、次いで粉砕できる。
【0063】
原則として、ホウ酸塩は、ホウ酸に由来する。ホウ酸塩は、天然起源及び合成起源の双方にできる。ホウ酸塩は、ホウ素原子が最隣接として3の酸素原子又は4の酸素原子のいずれかによって囲まれているホウ酸塩の構造単位から構成される。個々の構造単位は、大部分が陰イオン性であり、例えば[BO3-のオルトホウ酸塩のように物質内に単独で存在するか、あるいは、当該単位が環又は鎖を形成するように結合できる[BOn-のメタホウ酸塩のように、相互に結合されるかのいずれかにでき、B-O-B結合に対応する上述の結合構造を考慮した場合、当該構造は、全体的に見て陰イオンである。
【0064】
好適性は、連結されたB-O-B単位を含むホウ酸塩に与えられる。オルトホウ酸塩は、適しているが好適ではない。例えば、アルカリ及び/又はアルカリ土類の陽イオンだけではなく、更に例えば、亜鉛の陽イオン、好適にはナトリウム又はカルシウムの陽イオン、より好適にはカルシウムは、陰イオン性のホウ酸塩の単位に対する対イオンとして作用する。
【0065】
一価の陽イオン又は二価の陽イオンの場合においては、陽イオンとホウ素とのモル質量比がMO:Bのように記載でき、Mは陽イオンであり、xは二価の陽イオンでは1であり、一価の陽イオンでは2である。Bに対するMO(Mがアルカリ金属の場合は、xは2であり、Mがアルカリ土類金属の場合は、xは1である)のモル質量比は、広範囲に変化しうるが、好適には10:1未満、好適には5:1未満、最も好適には2:1未満である。当該下限は、好適には1:20より大きく、より好適には1:10より大きく、最も好適には1:5より大きい。
【0066】
適切なホウ酸塩は更に、三価の陽イオンが陰イオン性のホウ酸塩の単位に対して対イオンとして作用するもの、例えば、ホウ酸アルミニウムの場合にはアルミニウム陽イオンである。
【0067】
天然のホウ酸塩は、大部分が水和されている。すなわち、水は、構造上の水(OH基)及び/又は結晶水(HO分子)として含まれている。ホウ砂、又は更にはホウ砂の十水和物(四ホウ酸二ナトリウムの十水和物)は、化学式が、文献においては、[Na(HO)[B(OH)]として与えられているか、あるいはNa*10H2Oとして単純化して与えられているかのいずれかであり、例として考慮される。水和されたホウ酸塩及び水和されないホウ酸塩の双方は、用いることができるが、水和されたホウ酸塩が好適である。
【0068】
非晶質のホウ酸塩及び結晶質のホウ酸塩は、双方とも用いられうる。非晶質のホウ酸塩は、例えば、ホウ酸アルカリ又はホウ酸アルカリ土類のガラスであると理解される。
【0069】
ホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、及びホウリンケイ酸塩は、大部分が非晶質/ガラス状である化合物を意味すると理解される。
【0070】
これらの化合物の構成においては、中性及び/又は陰イオン性のホウ素-酸素の配位(例えば、中性のBO単位及び陰イオン性のBO 単位)だけでなく、中性及び/又は陰イオン性のケイ素-酸素及び/又はリン-酸素の配位があり、ケイ素の酸化状態は+4であり、リンの酸化状態は+5である。配位は、Si-O-B又はP-O-Bの場合のように、架橋する酸素原子を介して互いに結合できる。酸化金属、特に酸化アルカリ金属及び酸化アルカリ土類金属は、ホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、及びホウリンケイ酸塩の構造に組み込むことができ、いわゆる網目構造の改質剤として作用する。好適には、ホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、及びホウリンケイ酸塩中のホウ素(Bとして計算される)の含有量は、対応するホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、又はホウリンケイ酸塩の全質量に対して、15重量パーセントより多く、好適には30重量パーセントより多く、より好適には40重量パーセントより多い。
【0071】
しかしながら、ホウ酸塩、ホウ酸、無水ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウリン酸塩、及び/又はホウリンケイ酸塩の群では、ホウ酸塩、ホウリン酸塩、及びホウリンケイ酸塩、特にホウ酸アルカリ金属及びホウ酸アルカリ土類金属は、明白に好適である。上述の選択の1つの理由は、無水ホウ酸塩の強い吸湿性であり、無水ホウ酸塩の長期保管中の粉末添加剤としてのその使用可能性に影響する。アルミニウム溶融物を用いた鋳造試験においては、ホウ酸塩は、ホウ酸よりも鋳造表面が著しく良好となることが更に示されているため、ホウ酸は好適性が低い。
【0072】
ホウ酸塩は、特に好適である。特に好適であるのは、ホウ酸アルカリ及び/又はホウ酸アルカリ土類であり、うち、ホウ酸ナトリウム及び/又はホウ酸カルシウムは好適である。ホウ酸カルシウムは、特に好適である。
【0073】
酸化ホウ素化合物の含有量は、それぞれの場合において、耐火性の鋳型基材に対して、優先的には1.0重量パーセント未満、好適には0.4重量パーセント未満、より好適には0.2重量パーセント未満、最も好適には0.1重量パーセント未満である。上述の下限は、優先的には0.002重量パーセントより大きく、好適には0.005重量パーセントより大きく、より好適には0.01重量パーセントより大きく、最も好適には0.02重量パーセントより大きい。
【0074】
更に、本開示により用いられる鋳型材料の混合物は、リンの酸化状態が+5であり、近隣において酸素原子によって取り囲まれている無機リン酸塩の化合物を有するリン酸塩含有化合物を含む。
【0075】
リン酸塩は、リン酸アルカリ金属又はリン酸アルカリ土類金属として存在でき、リン酸アルカリ金属、特にナトリウム塩は好適である。
【0076】
オルトリン酸塩、及びポリリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩は、リン酸塩として用いることができ、ポリリン酸塩及びメタリン酸塩は好適であり、ポリリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムは特に好適である。リン酸塩は、例えば、対応する酸を対応する塩基、例えば、NaOHのようなアルカリ金属の塩基、又は場合によってはアルカリ土類金属の塩基で中和することによって生成でき、リン酸塩の全ての負電荷は、必ずしも金属イオンでの置換を要するわけではない。リン酸塩は、結晶質及び非晶質の両方の形態において鋳型材料の混合物に導入できる。
【0077】
ポリリン酸塩は、特に、2つ以上のリン原子を含む直鎖状のリン酸塩を意味すると理解され、リン原子は、各々が酸素架橋を介して相互に結合される。
【0078】
ポリリン酸塩ポリリン酸塩は、水分の除去を伴うオルトリン酸塩イオンの縮合により得られ、直鎖上のPOの四面体を提供し、各々が、四面体の隅部で結合されている。
【0079】
ポリリン酸塩の一般式は、(O(PO(n+2)-であり、2以上のnは鎖長に対応する。ポリリン酸塩は、最大数百のPOの四面体を含むことができる。しかしながら、鎖長がより短いポリリン酸塩は、好適である。好適には、nの値は、3~100であり、最も好適には5~50である。より高縮合したポリリン酸塩、すなわち、POの四面体が3つ以上の隅部を介して相互に結合されるゆえに、2次元又は3次元における重合を呈するポリリン酸塩は、更に用いることができる。
【0080】
メタリン酸塩は、POの四面体から構成された環状構造を意味すると理解され、各々が隅部で互いに結合される。メタリン酸塩の一般式は、(POn-であり、nは3以上である。好適には、nの値は、3~10である。
【0081】
別個のリン酸塩、及び別個のリン酸塩の混合物の双方は、リン酸塩含有化合物として用いることができる。
【0082】
別個に、リン酸塩含有化合物は、好適には40重量パーセント~90重量パーセント、より好適には50重量パーセント~80重量パーセントのリン、すなわちPとなるように計算されたリンを含む。リン酸塩含有化合物は、リン酸塩含有化合物自体が固体又は溶解形態で鋳型材料の混合物に添加できる。好適には、リン酸塩含有化合物は、固体として鋳型材料の混合物に添加される。
【0083】
驚くべきことに、1以上の粉状の酸化ホウ素化合物及び1以上のリン酸塩含有化合物の非常に少量の添加の組み合わせは、被覆-乾燥工程における水被覆に対する鋳造鋳型の安定性を顕著に改善することが示された。
【0084】
リン酸塩含有化合物に対する酸化ホウ素化合物の重量比は、広い範囲にわたって変化でき、好適には1:30~1:1、好適には1:25~1:2、最も好適には1:20~1:3である。
【0085】
酸化ホウ素及びリン酸基の双方を含む化合物が用いられる場合、P:Bの化学量論的な比が考慮される。P:Bの化学量論的な比が1以下である場合、化合物は、リン酸塩含有化合物として計数され、他の全ての化合物は、酸化ホウ素化合物として計数される。
【0086】
更に驚くべきことに、被覆された金型及び/又は中子の湿気耐性は、鋳型材料の混合物に酸化ホウ素化合物及びリン酸塩含有化合物の組み合わせを添加することによって改善されるゆえに、強度又は保管安定性が増大することが示された。
【0087】
有利な実施形態によると、本開示による鋳型材料の混合物は、血小板形状の潤滑剤、特に黒鉛又はMoSの一部を含む。添加される血小板形状の潤滑剤、特に黒鉛の量は、鋳型基材に対して、好適には0.05~1重量パーセント、最も好適には0.05~0.5重量パーセントである。
【0088】
更なる有利な実施形態によると、鋳型材料の混合物の流動性及び水含有雰囲気における強度を改善する表面活性物質、特に界面活性剤は、用いることができる。当該化合物の好適な代表例は、例えば、特許文献16に記載されている。好適には、陰イオン性の界面活性剤は、本開示による鋳型材料の混合物のために用いられる。本明細書において特に述べるのは、硫酸若しくはスルホン酸基又はそれらの塩を有する界面活性剤である。本開示による鋳型材料の混合物においては、純粋な表面活性物質、特に界面活性剤は、耐火性の鋳型基材の重量に対して、好適には0.001重量パーセント~1重量パーセント、より好適には0.01重量パーセント~0.2重量パーセントの量で存在する。
【0089】
本開示による鋳型材料の混合物は、少なくとも上述した成分の集中的な混合物である。上述において、耐火性の鋳型基材の粒子は、好適には結合剤の層で被覆される。結合剤に存在する水(例えば、結合剤の重量に対して約40~70重量パーセント)を蒸発させることによって、堅固な凝集は、耐火性の鋳型基材の粒子の間で達成できる。
【0090】
本開示による結合剤系で達成可能な高い強度にもかかわらず、本開示による鋳型材料の混合物で生成された鋳造鋳型は、驚くべきことに、鉄鋳造及び鉄鋼鋳造においてであっても、鋳造後に非常に良好な崩壊を示すため、鋳造工程後に、鋳造鋳型を鋳造の狭く角度のある部分から容易に脱離できる。
【0091】
鋳造鋳型は、一般的には、軽金属、非鉄金属、又は鉄類のような金属を鋳造するのに好適である。しかしながら、本開示による鋳型材料の混合物は、特に好適には、鉄及び鉄合金を鋳造するのに好適である。
【0092】
本開示は更に、金属加工用の被覆された鋳造鋳型の製造方法に関し、上述の鋳型材料の混合物は用いられる。本開示による方法は、
少なくとも上述の必須の成分を組み合わせて、混合することにより上述の鋳型材料の混合物を提供する工程と、
鋳型の化合物を鋳造する工程と、
鋳造された鋳型材料の混合物を硬化させて、硬化した鋳型を得る工程と、
硬化した鋳型に水系の被覆を塗布して、次いで乾燥させる工程と
を含む。
【0093】
本開示により用いられる鋳型材料の混合物の生成においては、手順は、一般的に、耐火性の鋳型基材が最初に導入され、次いで結合剤及び添加剤が撹拌しながら添加されるようにする。上述の添加剤は、任意の形態において鋳型材料の混合物に添加できる。添加剤は、別個に、あるいは混合物として添加できる。好適な実施形態によると、結合剤は2成分系として提供され、第1の液体成分は、水ガラスと、適切な場合には界面活性剤(上述を参照)を含み、第2の、ただし固体の成分は、粒状のシリカ並びに1以上の酸化ホウ素化合物及び1以上のリン酸塩含有化合物を含み、適切な場合には鋳型基材を除く、上述の任意の他の固体の
添加剤を含む。
【0094】
鋳型材料の混合物の生成においては、耐火性の鋳型基材は、好適には撹拌機に配置され、次いで、好適には結合剤の1以上の固体成分は、最初に添加され、耐火性の鋳型基材と混合される。混合時間は、耐火性の鋳型基材及び固体の結合剤成分が密接に混合されるように選択される。混合時間は、生成すべき鋳型材料の混合物の量及び用いられる撹拌機に依存する。好適には、混合時間は、1~5分の間で選択される。
【0095】
混合物を好適に撹拌し続ける間に、次いで、結合剤の液体成分は添加され、次いで、混合物は、好適には更に、結合剤の均一な層が耐火性の鋳型基材の粒子に形成されるまで混合される。
【0096】
上述においても更に、混合時間は、生成すべき鋳型材料の混合物の量及び用いられる撹拌機に依存する。好適には、混合工程の持続時間は、1~5分から選択される。液体成分は、異なる液体成分の混合物及び全ての別個の液体成分の全体の双方を意味すると理解され、後者は、鋳型材料の混合物と一緒に添加できるか、あるいは他方の後に一方を添加できる。同様に、固体成分は、上述した固体成分の別個又は全ての混合物及び個々の固体成分の全ての全体の双方を意味すると理解され、後者は、鋳型材料の混合物に一緒に添加できるか、あるいは他方の後に一方を添加できる。
【0097】
更なる実施形態によると、結合剤の液体成分は、更に耐火性の鋳型基材に最初に添加でき、次いで初めて、固体成分は、混合物に添加できる。更なる実施形態によると、鋳型基材の重量に対して0.05重量パーセント~0.3重量パーセントの水は、最初に耐火性の鋳型基材に添加され、次いで初めて、結合剤の固体成分及び液体成分は、添加される。
【0098】
次いで、鋳型材料の混合物は、所望の形態に形成される。例えば、鋳型材料の混合物は、圧縮空気を用いたコアシュータによって、成形工具に射出できる。次いで、鋳型材料の混合物は、水ガラスベースの結合剤について知られている全ての方法、例えば熱硬化、CO若しくは空気、又はその双方によるガス処理、及び液体触媒又は固体触媒での硬化を用いて硬化される。熱硬化は好適である。
【0099】
熱硬化中に、水は、鋳型材料の混合物から除去される。上述により、高い確実性で更に、シラノール基の間の縮合反応が開始するため、水ガラスの架橋が生じる。
【0100】
加熱は、例えば、成形工具で行うことができ、好適には温度が100℃~300℃であり、より好適には温度が120℃~250℃である。成形工具に既にある鋳造鋳型を完全に硬化させることは可能である。しかしながら、鋳造鋳型の強度が成形工具から脱離させるのに十分となるように、鋳造鋳型を鋳造鋳型の周辺領域のみで硬化させることは、更に可能である。次いで、成形工具から更に水を除去することによって、成形工具を完全に硬化させることができる。上述は、例えば炉において行うことができる。水は、更に、例えば減圧で水を蒸発させることによって除去できる。
【0101】
鋳造鋳型の硬化は、加熱した空気を成形工具に送風することにより加速できる。本方法の当該実施形態においては、結合剤に含まれる水の迅速な除去は達成され、鋳造鋳型は工業用途に好適な時間において固化される。注入される空気の温度は、好適には100℃~180℃、より好適には120℃~150℃である。加熱された空気の流速は、好適には、鋳造鋳型の硬化が工業用途に好適な時間において生じるように調節される。時間は、製造される鋳造鋳型の大きさに依存する。目標は、5分未満、好適には2分未満で硬化することである。しかしながら、更に長い時間は、非常に大きな鋳造鋳型について要しうる。
【0102】
鋳型材料の混合物からの水の除去は、更に、鋳型材料の混合物の加熱がマイクロ波の照射によって惹起又は支持されるように行うことができる。例えば、鋳型基材を粉状の固体成分と混合し、当該混合物を層状に表面に塗布し、液体の結合剤成分の補助、特に水ガラスの補助を伴い、別個の層を印刷することは考えられ、固体混合物の各々の層的な塗布の後に、液体結合剤の補助による印刷工程が続いている。
【0103】
当該工程の終わりに、すなわち最後の印刷動作が完了した後に、混合物全体は、マイクロ波炉において加熱できる。
【0104】
次いで、上述のようにして製造された少なくとも部分的に硬化された中子及び金型は、少なくとも部分的な表面上に、上塗り又は裏張りの形態において、本開示による被覆の組成物が提供される。
【0105】
被覆の組成物は、噴霧、刷毛塗り、浸漬、又はフラッディングによって、中子又は金型と接触させることができる。使用時において、被覆の組成物は、固体を懸濁させた液体である。被覆における担体液、すなわち、水又は好適な場合には更に低沸点アルコールを除去するために、例えば赤外線放射器又はマイクロ波により、連続炉又はバッチ炉において、空気中又は60℃~220℃、特に100℃~200℃、好適には120℃~180℃の温度上昇で乾燥させる。担体液は160℃及び常圧(1013 mbar)で気化可能な成分であり、当該意味においては、定義により、全て固体含有量ではない成分である。
【0106】
担体液は、水によって部分的又は完全に形成できる。担体液は、50重量パーセントを超える、好適には75重量パーセントを超える、より好適には80重量パーセントを超える、場合によっては95重量パーセントを超える水を含む。担体液における他の成分は、有機溶媒にできる。好適な溶媒は、ポリアルコール及びポリエーテルアルコールを含むアルコールである。アルコールの例は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、グリコール類、グリコールモノエーテル類、及びグリコールモノエステル類である。
【0107】
既製の被覆の組成物の固体含有量は、好適には10~60重量パーセントの範囲に調整されるか、あるいは販売形態で(特に水で希釈前に)、より好適には30~80重量パーセントに調整される。
【0108】
被覆の組成物は、20重量パーセント以上、好適には40重量パーセントを超える担体液を含む。
【0109】
したがって、被覆の組成物は、被覆の組成物への添加に先立ち、1以上の粉状の耐火性の基材を含む。耐火性の基材は、液体金属の浸透に対して鋳造鋳型における細孔を密封するのに用いられる。更に、耐火性の基材は、鋳造鋳型と液体金属との間を断熱する。好適な耐火性の基材は、特に、融点が鋳造すべき液体金属の温度よりも少なくとも200℃高く(少なくとも900℃を超え)、それに関係なく、金属と反応しない。
【0110】
耐火性の(被覆用)基材としては、例えば、葉ろう石、雲母、ケイ酸ジルコニウム、紅柱石、耐火粘土、酸化鉄、藍晶石、ボーキサイト、カンラン石、酸化アルミニウム、石英、滑石、か焼カオリン(メタカオリン)、及び/又は黒鉛を、単独で、又はそれらの混合物として用いることができる。
【0111】
粘土は懸濁剤として用いられる場合、D10の通過分級は、粒径について、好適には0.01μm~5μm、より好適には0.01μm~1μm、最も好適には0.01μm~0.2μmにできる。好適には、粘土のD01の通過分級は、粒径について、0.001μm~0.2μm、より好適には0.001μm~0.1μm、最も好適には0.001μm~0.05μmにできる。
【0112】
雲母については、D90の通過分級は、好適には100μm~300μm、より好適には150μm~250μm、最も好適には200μm~250μmである。好適には、雲母のD50の通過分級は、45μm~125μm、より好適には63μm~125μm、最も好適には75μm~125μmにできる。好適には、D10の通過分級の粒径は、1μm~63μm、より好適には5μm~45μm、最も好適には10μm~45μmにできる。好適には、D01の通過分級は、0.1μm~10μm、より好適には0.5μm~10μm、最も好適には1μm~5μmにできる。
【0113】
更に、被覆の耐火性の基材の粒径は、特に限定されず、1μm~300μm、より好適には1μm~280μmの任意の通常の粒径が用いられうる。
【0114】
被覆の組成物の別個の固体成分の粒径分布は、通過分級のD90、D50、D10、及びD01に基づいて決定できる。上述は、粒径分布の尺度である。本明細書においては、通過分級のD90、D50、D10、D01は、各々が粒子の90%、50%、10%、1%の分級を示し、指定の直径よりも小さい。例えば、5μmのD10の値では、粒子の10%の直径が5μm未満である。粒径並びに通過分級のD90、D50、D10、及びD01は、ISO13320によるレーザ回折のグラニュロメトリによって決定できる。
【0115】
通過分級は、体積基準で提供される。非球形粒子については、仮想的な球形粒径を算出し、対応する直径は基準として用いられる。したがって、粒径は、算出された直径に等しい。
【0116】
粒径及び粒径分布は、水-イソプロパノール混合物におけるレーザ回折によって決定され、懸濁液は、静的光散乱に基づく(DIN/ISO13320による)Retsch社のHoriba LA-960のレーザ散乱光方式のスペクトロメータでの撹拌(のみ)によって、かつ、フラウンホーファーモデルを用いて評価することによって得られる。
【0117】
粒径は、特に被覆において安定な構造が形成されるように、及び被覆の組成物が、例えば噴霧装置を用いて鋳造鋳型の壁に容易に分配できるように選択される。
【0118】
一実施形態によると、本開示による被覆の組成物は、1以上の懸濁剤を含むことができる。懸濁剤は、懸濁液における被覆の組成物の固体成分が沈下しないか、あるいはわずかな程度しか沈下しないため、被覆の粘度の増加を引き起こす。有機材料及び無機材料の双方、又は当該材料の混合物を用いて、粘度を増加させることができる。
【0119】
層の間に水を挿入できる膨潤性の層状ケイ酸塩は、懸濁剤として含むことができる。好適には、膨潤性の層状ケイ酸塩は、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)、蛇紋石、カオリン、スメクタイト(サポナイト、モンモリロナイト、バイデル石、及びノントロナイトなど)、バーミキュライト、イライト、海泡石、合成リチウム-マグネシウムの層状ケイ酸塩、ラポナイトRD、及びそれらの混合物から選択でき、より好適なものは、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)、蛇紋石、スメクタイト(サポナイト、バイデル石、及びノントロナイトなど)、バーミキュライト、イライト、海泡石、合成リチウム-マグネシウムの層状ケイ酸塩、ラポナイトRD、及びそれらの混合物であり、最も好適には、膨潤性の層状ケイ酸塩は、アタパルジャイトにできる。
【0120】
代替的又は追加的に、有機増粘剤は、保護被覆の適用後に、液体金属と接触した際に水をほとんど放出しない程度まで乾燥できるため、更に懸濁剤として選択できる。
【0121】
推定される有機懸濁剤は、例えば、カルボキシメチル、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロースなどの膨潤性の重合体、植物粘質物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ペクチン、ゼラチン、寒天、ポリペプチド、並びに/又はアルギン酸塩である。
【0122】
無機懸濁剤の含有量は、全被覆の組成物に対して、好適には0.1~5重量パーセント、より好適には0.5~3重量パーセント、最も好適には1~2重量パーセントとなるように選択される。
【0123】
有機懸濁剤の含有量は、全被覆の組成物に対して、好適には0.01~1重量パーセント、より好適には0.01~0.5重量パーセント、最も好適には0.01~0.1重量パーセントとなるように選択される。
【0124】
被覆の組成物は、例えば、被覆の成分としての特定の粘土の組み合わせを含むことができ、更に懸濁剤として作用する。粘土材料として特に好適であるのは、
a)1~4重量部、特に1~2.2重量部のパリゴルスカイトと、
b)1~4重量部、特に1~2.2重量部の添加剤と、
c)1~4重量部、特に1~2.2重量部のナトリウムベントナイトと
の、特に、ヘクトライトに対するパリゴルスカイトの重量比が、1:0.8~1.2であり、ナトリウムベントナイトに対するパリゴルスカイトないしヘクトライト(全体)の重量比が、1:0.8~1.2となる組み合わせである(各々の場合において、相対的に用いられる)。
【0125】
別の定義によると、被覆(特に濃縮物)は、
(A)少なくとも
(A1)1~10重量部のパリゴルスカイトと、
(A2)1~10重量部のヘクトライトと、
(A3)1~20重量部のナトリウムベントナイトと
を含み、相互に関連する成分(A1)、(A2)、及び(A3)の比に応じた
粘土と、
(B)最大160℃及び1013mbarで完全に気化可能な水を含む担体液と、
(C)耐火性である、(A)とは別個の基材と
を含む。
【0126】
上述において、上述の粘土の被覆の組成物の粘土の全含有量は、被覆の組成物の固体含有量に対して、0.1~4.0重量パーセント、好適には0.5~3.0重量パーセント、最も好適には1.0~2.0重量パーセントである。
【0127】
好適な実施形態によると、被覆の組成物は、更なる成分として1以上の結合剤を含む。結合剤は、被覆の組成物又は被覆の組成物から作製された保護的な被覆の、鋳造鋳型の表面へのより良好な固定を可能にする。更に、結合剤は、被覆の機械的安定性を増大させるため、浸食が液体金属の作用下でほとんど観られなくなる。好適には、結合剤は、耐摩耗性被覆が得られるように不可逆的に硬化する。湿気と接触して軟化しない結合剤は、特に好適である。例えば、粘土、特に、ベントナイト及び/又はカオリンは、結合剤として用いることができる。他の適切な結合剤は、デンプン、デキストリン、ペプチド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの共重合体、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリラートの分散系、及びそれらの混合物を含む。
【0128】
結合剤の含有量は、好適には、被覆の組成物の固体含有量に対して、0.1~20重量パーセント、より好適には0.5~5重量パーセント、最も好適には0.2~2重量パーセントの範囲で選択される。
【0129】
更に好適な実施形態によると、被覆の組成物は、黒鉛の一部を含む。上述は、鋳物と金型との間の界面での層状の炭素の形成を支持する。黒鉛の含有量は、被覆の組成物の固体含有量に対して、好適には0~30重量パーセント、より好適には1~25重量パーセント、最も好適には1~20重量パーセントの範囲で選択される。黒鉛は、鉄が鋳造される場合に、鋳物の表面品質に好適な効果を与える。
【0130】
例えば、陰イオン性及び非陰イオン性の界面活性剤、特にHLB値が7以上の界面活性剤は、被覆のための湿潤剤として用いることができる。上述のような湿潤剤の一例は、ジオクチルスルホコハク酸二ナトリウムである。湿潤剤は、既製の被覆の組成物に対して、好適には0.01~1重量パーセント、より好適には0.05~0.3重量パーセントの量で用いられる。
【0131】
消泡剤又は泡止め剤は、被覆の組成物の調製中又は塗布中の発泡を防止するために用いることができる。
【0132】
被覆の組成物の塗布中の発泡は、被覆における不均一な被覆厚さ及び穴となり得る。例えば、シリコーン又は鉱油は、消泡剤として用いることができる。好適には、消泡剤は、既製の被覆の組成物に対して、0.01~1重量パーセント、より好適には0.05~0.3重量パーセントの量で存在する。
【0133】
一般的な顔料及び染料は、好適な場合に、被覆の組成物に用いることができる。上述は、例えば異なる層の間で様々なコントラストを達成するため、又は鋳物からの被覆のより強力な分離効果を生成するために添加される。顔料の例は、赤色及び黄色の酸化鉄及び黒鉛である。染料の例は、BASF SE社のLuconyl(登録商標)の染料系のような市販の染料である。染料及び顔料は、好適には被覆の組成物の固体含有量に対して、0.01~10重量パーセント、より好適には0.1~5重量パーセントの量で存在する。
【0134】
更なる実施形態によると、被覆の組成物は、殺生物剤を含んでおり、細菌の侵入を防ぐことで、被覆の流体力学及び結合剤の結合力に対する負の影響を回避する。
【0135】
上述は、被覆の組成物に含まれる担体液が重量ついて本質的に水から形成される場合、すなわち、本開示による被覆の組成物がいわゆる水系の被覆の形態で提供される場合、特に好適である。
【0136】
好適な殺生物剤の例は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの遊離剤、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、並びに臭素基及びニトリル基を含む殺生物性の物質である。殺生物剤は、通常、既製の被覆の組成物の重量に対して、10~1000ppm、好適には50~500ppmの量で用いられる。
【0137】
被覆の組成物は水を導入し、高剪断式の撹拌機を用いて懸濁剤として作用する粘土を水中で温浸することによって調製できる。
【0138】
次いで、耐火性の基材、顔料(ある場合)、及び着色剤(ある場合)を、均質な混合物が得られるまで撹拌する。最後に、湿潤剤(ある場合)、泡止め剤(ある場合)、殺生物剤(ある場合)、及び結合剤(ある場合)を撹拌する。
【0139】
被覆の組成物は、既製の処方された被覆の組成物として調製及び配給できる。しかしながら、被覆の組成物は、更に濃縮形態で生成及び配給できる。上述の場合に既製の被覆の組成物を提供するために、被覆の組成物の所望の粘度及び密度を調整するのに必要な(更なる)担体液の量が添加される。
【0140】
被覆の一部の層を、所望の層の厚さを生成するために、各々の被覆が同一の複数の層に塗布するか、あるいは、別個の被覆を塗布することによって塗布するかのいずれかにすることは、更に可能である。
【0141】
最上層の乾燥被膜の厚さは、例えば、0.01mm~1mm、好適には0.05mm~0.8mm、より好適には0.1mm~0.6mm、最も好適には0.2mm~0.3mmである。
【0142】
被覆の乾燥被膜の厚さは、ネジマイクロメータ(好ましい)を用いて、被覆(乾燥)の前後の屈曲棒を測定することによってか、あるいは湿潤被膜の厚さの櫛を用いて測定することによってかのいずれかで決定される。例えば、層の厚さは、基質が露出するまで、櫛の端部標識部で被覆を引っかくことによって、櫛で決定できる。次いで、層の厚さは、歯のマーキングから読み取りできる。代替的には、DIN EN ISO2808によって、つや消し状態の湿潤被膜の厚さを測定することは、更に可能である。
【発明の効果】
【0143】
本開示による方法は、それ自体が、金属鋳造に通例の全ての鋳造鋳型の製造、すなわち、例えば、中子及び金型に好適である。特に、非常に薄い壁の部分を含む鋳造鋳型を製造するのに有利である。
【0144】
本開示による鋳型材料の混合物を用いて、又は本開示による方法を用いて製造された鋳造鋳型の強度は、製造直後、及び全製造工程、特に被覆-乾燥工程において高いが、硬化後又は被覆乾燥後の金型の強度が高く、鋳物が製造された後、及び金型が脱離される際に、鋳型からの脱離が困難であるということはない。更に、これらの鋳造鋳型は被覆されていない状態及び被覆された状態において、湿度が増加した状態で高い安定性を呈する。すなわち、驚くべきことに、鋳造鋳型は、問題なく、かつ、品質を失うことなく、より長期間保管できる。利点としては、鋳造鋳型の安定性は、機械的負荷下で非常に高いため、鋳造鋳型の薄壁部であっても、鋳造中の金属静水圧加圧によって変形されることなく実現できる。更に、鋳造鋳型は、金属鋳造、特に鉄鋳造後の崩壊特性が著しく改善されている点で利点があり、鋳造鋳型の薄壁断面のコアリングを更に可能にする。したがって、本開示の更なる主題は、上述の本開示による方法によって得られる鋳造鋳型である。
【発明を実施するための形態】
【0145】
以下においては、実施例により更に詳細に説明するが、これらに限定するものではない。例えば、硬化方法として熱硬化のみを記載しているという事実は、限定を構成しない。
【実施例
【0146】
以下の実施例は、本開示の範囲を限定することなく、本開示を記載及び説明することを意図する。
【0147】
[実施例]:粉状の酸化ホウ素化合物及び/又はリン酸塩含有化合物の、被覆-乾燥工程における曲げ強度への影響
鋳型材料の混合物を試験するために、いわゆるジョージフィッシャー(Georg Fischer)の試験棒を生成した。ジョージフィッシャーの試験棒は、寸法が180mm×22.36mm×22.36mmの直方体の試験棒である。鋳型材料の混合物の組成を表1に示す。ジョージフィッシャーの試験棒を生成すべく以下の工程をとった。
・表1に列記した成分は、実験室用のパドル式撹拌機HSM10(独国フュルト郡のHOBART社)において混合された。当該目的のため、ケイ砂が最初に導入され、次いで粒状の非晶質SiO、及び、必要に応じて、粉状の酸化ホウ素化合物及び/又は粉状のリン酸塩含有化合物が添加された。混合物は、1分間混合された。用いられる水ガラスは、ナトリウムの水ガラスであり、カリウムの含有量を有していた。したがって、以下の表においては、比率は、SiO:MOとして与えられ、Mはナトリウムとカリウムとの合計である。第2の工程においては、水ガラスは、砂と前述の粉末成分との混合物に添加され、次いで、混合物を別に1分間撹拌した。
・鋳型材料の混合物は、Laempe&Moesner社(独国ショップハイム)のL1 Labor Hot-Boxのコアシュータの貯蔵ホッパーに移し、当該成形工具を180℃に加熱した。
・鋳型材料の混合物は、圧縮空気(3バール)によって成形工具に導入され、更に35秒間成形用具に保持した。
・化合物の硬化を促進するために、熱風(当該工具に入る際に2バール、100℃)を、最後の25秒間、成形工具に通過させた。
・成形工具は開放され、試験棒は脱離された。
【0148】
曲げ強度を測定するために、試験棒(180mm×22.36mm×22.36mm)は、Multiserw-Morek(ポーランド国のBresnitz社)の標準測定プログラム「Rg1v_B 870 N/cm」(3点曲げ装置)をそれぞれ有する、「Multiserw-Morek LRu-2e」形式の標準曲げ棒装置で測定した。曲げ強度は、
・脱離後10秒(熱強度)
・脱離後1時間(冷間強度)
・室温で24時間保管後、次いで気候キャビネットにおいて、30℃、相対湿度60%で更に24時間保管
の計画で測定した。
【0149】
表3に示したように、用いた被覆の組成物のパラメータは、本願明細書において意図した用途、すなわち、浸漬塗布又は槽による試験用の中子への用途のために調整した。
【0150】
表3に示すすぐに使用できる被覆の組成物の密度を、標準試験方法DIN EN ISO 2811-2:2011に従って測定した。
【0151】
表3に示した既製の被覆の組成物の流動時間は、DIN cup4を用いて標準試験方法DIN 53211(1974)より測定した。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
混合物1.1~1.4の強度試験は、無機物結合の中子の気候安定性が、リン酸塩含有成分単独の添加によっては改善されないことを示し、気候保管後の強度保持比(%)は、混合物1.1(45%)及び混合物1.2(44%)についてほぼ同一である。しかしながら、酸化ホウ素化合物、当該例では、メタホウ酸カルシウムを添加することにより、正の効果が達成される。
気候保管後、84%(混合物1.3)又は83%(混合物1.4)の冷強度が添加によって得られる一方、リン酸塩含有成分は、混合物1.3及び1.4の比較において再び更なる影響を呈しない。
【0155】
【表3】
【0156】
鋳造中子の軟化(すなわち、曲げ強度の最大降下)を測定するために、試験用の中子は、表3による被覆の組成物で、中子の製造の1時間後に、室温(25℃)で、浸漬(1秒の浸漬、被覆の組成物における3秒の保持時間、1秒の脱離)によって被覆(表面処理)した。被覆の湿潤膜の厚さは、約250μmに設定した。
【0157】
続いて、被覆された試験用の中子を、送風炉において、以下に特定される条件(20分、140℃)下で乾燥させ、試験用の中子の曲げ強度のそれぞれの変化を乾燥条件下で試験した。
【0158】
被覆された試験用の中子は、それぞれ20分間乾燥させ、試験用の中子の曲げ強度(Verein Deutscher Giessereifachleute(ドイツ鋳造専門家協会)のリーフレットR202(1987年10月版)に記載されている規定により、N/cmで)を、乾燥中の様々な時点で測定し、次いで、乾燥工程の終了後1時間、標準曲げ棒装置の型式「Multiserw-Morek LRu-2e」を用いて、各々の例において標準測定プログラム「Rg1v_B 870.0N/cm」(3点曲げ強度)により評価した。
【0159】
表4は、鋳型材料の混合物1.1~1.4及び表3による被覆を用いて製造された、試験された、被覆された試験用の中子の強度の値を示す。
本実施例においては、被覆されていない中子の冷強度、被覆-乾燥工程中の最小強度(絶対値)、及び被覆-乾燥工程中の強度の最大の相対低下が比較される。更に、被覆された試験用の中子の冷強度を列記する。
【0160】
【表4】
【0161】
被覆の乾燥中の最小強度の比較は、まず、混合物1.1において強度の強い低下を示し、被覆されていない中子の冷強度と比較して最大88%が失われる。
【0162】
混合物1.2~1.4については、当該強度の最大損失は77~38%に低減する。
【0163】
無機物の中子への含水被覆の適用は、水が水分感受性系に導入されるので、強度の崩壊を示唆する。本開示に記載の実験は、酸化ホウ素化合物の添加が被覆された無機物の中子の強度を維持するのに正の効果を有することを示す(表4、混合物1.3参照)。
【0164】
混合物1.2及び1.4については、リン酸塩含有成分を添加することによる気候安定性への影響は、表2の結果からは明らかではない。対照的に、混合物1.1及び1.2を比較した場合、正の効果は、表4の結果から明らかであり、リン酸塩含有成分が被覆-乾燥工程中の強度の保持を増加させている。
【0165】
同様に、混合物1.2、1.3及び1.4を比較すると、表4から、リン酸塩含有成分と酸化ホウ素化合物との組み合わせた添加は、両方の成分の単独添加よりも強い効果を生じ、驚くべきことに、被覆-乾燥工程中の最高強度保持が、組み合わせ添加で達成される。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された金型及び被覆された中子を得るべく、鋳造及び硬化された鋳型材料の混合物を被覆することによって得られる金型又は中子であって、
前記鋳型材料の混合物は、
耐火性の鋳型基材と、
水ガラスと、
粒状の非晶質シリカと、
1以上の酸化ホウ素化合物と、
1以上のリン酸塩含有化合物と
を少なくとも含み、
含水被覆で被覆されており、
前記鋳型材料の混合物は、前記鋳型基材に対して、それぞれ、
0.1~2重量パーセントの量の前記粒状の非晶質シリカと、
0.002重量パーセントを超え、かつ、1.0重量パーセント未満の量の前記1以上の酸化ホウ素化合物と、
0.05~1.0重量パーセントの量の前記1以上のリン酸塩含有化合物と
を含む
金型及び中子。
【請求項2】
前記被覆は、粘土、水、及び耐火性の基材
を含み、特に、
(A)少なくとも
(A1)1~10重量部のパリゴルスカイトと、
(A2)1~10重量部のヘクトライトと、
(A3)1~20重量部のナトリウムベントナイトと
であり、相互に関連する成分(A1)、(A2)、及び(A3)の比に応じた
粘土と、
(B)最大160℃及び1013mbarで完全に気化可能な水を含む担体液と、
(C)耐火性である、(A)と別個の基材と
を含む
請求項1に記載の金型又は中子。
【請求項3】
前記被覆は、
(i)前記被覆の粘土の全含有量A1、A2、及びA3は、共に、前記被覆の固体含有量に対して、0.1重量パーセント~4.0重量パーセント、好適には0.5~3.0重量パーセント、より好適には1.0~2.0重量パーセントであること、
(ii)前記担体液は、50重量パーセントを超える水を含み、更に好適な場合、ポリアルコール及びポリエーテルアルコールを含むアルコールを更に含むこと、
(iii)前記被覆の組成物の固体含有量は、20~90重量パーセント、より好適には30~80重量パーセントであること、及び
(iv)前記被覆の組成物は、前記被覆の組成物の固体含有量に対して、10~85重量パーセントの耐火性の基材を含むこと
のうちの1以上によって特徴付けられる
請求項1又は2に記載の金型又は中子。
【請求項4】
前記酸化ホウ素化合物は、ホウ酸塩、ホウリン酸塩、ホウリンケイ酸塩、及びそれらの混合物を含む群から選択され、特に、前記酸化ホウ素化合物は、ホウ酸塩、好適にはホウ酸ナトリウム及び/又はホウ酸カルシウムなどのホウ酸アルカリ及び/又はホウ酸アルカリ土類金属である
請求項1~3のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項5】
前記酸化ホウ素化合物は、B-O-Bの構造要素から形成され、それと関係なく、任意の有機基を含まない
請求項1~4のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項6】
前記酸化ホウ素化合物は、粉末形態の固体として添加され、特に、平均粒径が、0.1μmより大きく、かつ、1mm未満であり、好適には1μmより大きく、かつ、0.5mm未満であり、より好適には5μmより大きく、かつ、0.25mm未満である
請求項1~5のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項7】
前記酸化ホウ素化合物は、前記耐火性の鋳型基材に対して0.005重量パーセントを超え、かつ、0.4重量パーセント未満の量で、より好適には0.01重量パーセントを超え、かつ、0.1重量パーセント未満の量で、最も好適には0.02重量パーセントを超え、かつ、0.075重量パーセント未満の量で添加されるか、あるいは含まれる
請求項1~6のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項8】
前記耐火性の鋳型基材は、ケイ砂、ジルコンサンド、クロム鉱砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、ガラスビード、ガラス顆粒、ケイ酸アルミニウムの中空球、及びそれらの混合物を含み、好適には、前記耐火性の鋳型基材に対して、50重量パーセントを超えるケイ砂からなる
請求項1~7のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項9】
80重量パーセントを超える、好適には90重量パーセントを超える、より好適には95重量パーセントを超える前記鋳型材料の混合物は、前記耐火性の鋳型基材である
請求項1~8のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項10】
前記耐火性の鋳型基材の平均粒径は、100μm~600μm、好適には120μm~550μmである
請求項1~9のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項11】
前記粒状の非晶質シリカのBETによって決定される表面積は、1~200m/g、好適には1m/g以上かつ30m/g以下、より好適には1~19m/g以下である
請求項1~10のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項12】
前記粒状の非晶質シリカは、結合剤の全重量に対して、1~80重量パーセント、好適には2~60重量パーセントの含有量で用いられる
請求項1~11のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項13】
前記粒状の非晶質シリカの動的光散乱によって決定される平均一次粒径は、0.05μm~10μm、好適には0.1μm~5μm、より好適には0.1μm~2μmである
請求項1~12のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項14】
前記粒状の非晶質シリカは、沈降シリカ、火炎加水分解的に生成された焼成シリカ又はアーク生成された焼成シリカ、ZrSiO4の熱分解により生成された非晶質シリカ、酸素含有気体により金属ケイ素を酸化することによって生成されたシリカ、結晶石英の溶融及び急速再冷却により生成された球形粒状の石英粉末、及びそれらの混合物からなる群から選択される
請求項1~13のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項15】
前記鋳型材料の混合物は、前記粒状の非晶質シリカを、前記鋳型基材の各々に対して0.1~1.5重量パーセントの量で含み、それに関係なく、前記鋳型混合物は、前記粒状の非晶質シリカを、水を含む前記結合剤の重量に対して、2~60重量パーセント、より好適には4~50重量パーセントの量で含み、
前記結合剤の固体含有量は、20~55重量パーセント、好適には25~50重量パーセントである
請求項1~14のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項16】
用いられた前記粒状の非晶質シリカの含水量は、5重量パーセント未満、より好適には1重量パーセント未満である
請求項1~15のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項17】
前記水を含む前記水ガラスは、前記鋳型材料の混合物において、前記鋳型基材に対して、0.75重量パーセント~4重量パーセント、より好適には1%~3.5重量パーセントの量で存在し、それに関係なく、好適には上述の値と組み合わせて、前記水ガラスの固体含有量は、前記鋳型材料の混合物において、前記鋳型基材に対して、0.2625重量パーセント~1.4重量パーセント、好適には0.35重量パーセント~1.225重量パーセントである
請求項1~16のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項18】
前記水ガラスのモル率SiO/MOは、1.6~4.0、より好適には2.0~3.5未満であり、Mは、リチウム、ナトリウム、及びカリウムであるか、あるいは、Mは、ナトリウム及びカリウムである
請求項1~17のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項19】
前記リン酸塩含有化合物は、リンの酸化状態が+5である無機リン酸塩の化合物であり、メタリン酸塩及び/又はポリリン酸塩は、特に、各々がリン酸アルカリ又はリン酸アルカリ土類金属として好適であり、
より好適には、前記アルカリ土類金属はナトリウムである
請求項1~18のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項20】
前記鋳型材料の混合物は、前記耐火性の鋳型基材の重量に対して0.1重量パーセント及び0.5重量パーセントの量において、前記リン酸塩含有化合物を含む
請求項1~19のいずれか一項に記載の金型又は中子。
【請求項21】
被覆された金型又は被覆された中子を製造する方法であって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の物質又は成分を組み合わせて混合することにより前記鋳型材料の混合物を提供する工程と、
前記鋳型材料の混合物を鋳型に導入する工程と、
水が加熱及び除去される間に熱硬化によって、好適には、前記鋳型材料の混合物を100℃~300℃の温度に暴露することによって、前記鋳型材料の混合物を硬化させて、金型又は中子を得る工程と、
前記金型又は前記中子を含水被覆で被覆する工程と
を含む方法。
【請求項22】
前記鋳型材料の混合物は、圧縮空気の補助を伴ってコアシュータによって前記鋳型に導入され、前記鋳型は成形工具であり、1以上の気体、特にCO、又はCOを含む気体、好適には60℃より高温に加熱されたCO及び/又は60℃より高温に加熱された空気は、前記成形工具を通って流れる
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記鋳型材料の混合物は、硬化目的のために、好適には5分未満、100~300℃、好適には120~250℃の温度に供され、前記温度は、更に好適には、加熱空気を成形工具に送風することによって少なくとも部分的に確立される
請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
金属鋳造、特に鉄鋳造のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の金型又は中子の使用。
【国際調査報告】