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特表2022-539014ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法
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  • 特表-ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法 図1
  • 特表-ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法 図2A
  • 特表-ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法 図2B
  • 特表-ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ピラゾリルベンゾエート配位子を含む金属-有機フレームワーク材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20220831BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20220831BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20220831BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220831BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B01J20/22 A
C07F3/06
C07D231/12 B
B01J20/28 Z
B01J20/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576361
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020034486
(87)【国際公開番号】W WO2021002982
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/870,188
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ.ヨゲシュ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,サイモン シー
【テーマコード(参考)】
4G066
4H048
【Fターム(参考)】
4G066AB07A
4G066AB12A
4G066AB24B
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA51
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA21
4H048AA02
4H048AB99
4H048AC90
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】
金属-有機フレームワーク材料(MOF)は、典型的に配位ポリマーとして複数の金属中心に配位した多座有機配位子を含む、高度多孔性実体である。いくつかの高度多孔性MOFは、周囲条件で安定性が乏しい。周囲条件安定性を有するMOFは、複数の金属クラスタ(MOクラスタ、M=金属)と、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート配位子とを含み得る。これらのMOFの合成方法は、予形成された金属クラスタなどの金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、予形成された金属クラスタを4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させて、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスタを含むMOFを形成することとを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタと;
複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、前記複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子と
を含む金属有機フレームワーク材料であって、前記多座有機配位子が4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む、金属-有機フレームワーク材料。
【請求項2】
前記複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、四面体形状を有する、請求項1に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項3】
前記複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、二価金属を含む、請求項1又は請求項2に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項4】
前記複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン又はそのいずれかの組合せを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項5】
前記複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、亜鉛を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項6】
前記少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、立方空間群と一致するX線粉末回折パターンを示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項7】
前記金属有機フレームワーク材料が、予形成された金属クラスタと前記4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートとの反応生成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項8】
前記予形成された金属クラスタが、ZnO(2,2-ジメチルブタノエート)を含む、請求項7に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項9】
前記内部細孔が、約10Å~約20Åの範囲の細孔直径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項10】
前記内部細孔が、約0.9cc/g~約1.5cc/gの範囲の細孔体積を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項11】
前記少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、約2800m/g~約3700m/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項12】
前記少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、少なくとも6.21、8.76、12.40及び13.83(全ての±5%)度2-シータ(°2θ)の特徴ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属-有機フレームワーク材料。
【請求項13】
金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、
前記金属供給源を前記4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させ、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスタを含む金属-有機フレームワーク材料を形成することと
を含む方法であって、前記複数の金属クラスタが1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む、方法。
【請求項14】
前記複数の金属クラスタの少なくとも一部分が四面体形状を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属供給源が、予形成された金属クラスタである、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記予形成された金属クラスタが亜鉛を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記予形成された金属クラスタがZnO(2,2-ジメチルブタノエート)を含む、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の金属クラスタが複数の金属中心を画定し、前記方法が、
前記複数の金属中心を含む第1の金属の少なくとも一部分を第2の金属と交換すること
をさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1つ又はそれ以上の化学種を含む混合物を、1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタ、及び複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、前記複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子を含む金属-有機フレームワーク材料と接触させることと、
前記内部細孔の少なくとも一部分中に前記1つ又はそれ以上の化学種の少なくとも一部分を収着することと
を含む方法であって、前記多座有機配位子が、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート及び/又は4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む方法。
【請求項20】
前記1つ又はそれ以上の化学種がメタンを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピラゾリルベンゾエート配位子から形成される金属-有機フレームワーク材料(MOF)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MOFは、比較的新しい分類の高度多孔性ネットワーク材料である。純粋に性質が無機であるゼオライトとは対照的に、MOFは、(例えば配位ポリマーとして)延在する一次元、二次元又は三次元配位ネットワーク構造中で金属イオン又はクラスタを一緒に架橋する「支柱」として機能する多座有機配位子によって相互連結された金属イオン又はクラスタを含む。MOFは、それらの構造及び多孔性を変調及び制御する能力からもたらされる、高度の構造的及び機能的調和性を提供する。そのような特徴は、他の従来の多孔性材料では一般に得られない。MOFは、低密度、高内部表面積、並びに合成の間に使用される多座有機配位子及び金属又は金属供給源の選択によって調整可能な細孔及びチャネルを特徴とする。
【0003】
ZnO(1,4-ベンゼンジカルボキシレート)の一般式を有し、IRMOF-1としても知られているMOF-5は、MOFの典型例であり、ほぼ20年前に開発されたものである。この材料及びその等網状(isoreticular)材料(すなわち、同一トポロジーを有する材料)は、高い細孔体積及び高い表面積を示し、これらの特徴を利用する応用での使用に関して調査されている。しかしながら、周囲水分条件下でのこれらのMOFの長期性能及び安定性は、確実には確立されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MOFは、中でも、気体貯蔵、気液分離、検知、触媒、ドラッグデリバリー及び廃棄物改善における応用に関して広範囲に調査されている。MOFの広範囲の多数の潜在的応用は、MOFを合成するために利用可能な多座有機配位子及び金属供給源のほぼ無限の組合せから生じる。特に、成分、官能化又は合成後の変性の選択によってMOFの多孔性、組成及び機能性を制御することが期待される能力によって、MOFは、特定の応用に対して特に設計される安定な材料を提供する見込みのある候補になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態において、本開示は、MOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子とを含む金属有機フレームワーク材料であって、多座有機配位子が4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む、MOFを提供する。
【0006】
いくつかの又は他の実施形態において、MOFの合成方法は、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させて、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスタを含むMOFを形成することとを含み得、複数の金属クラスタは1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む。
【0007】
いくつかの又は他の実施形態において、本開示は、化学種の収着吸収のための方法を提供する。この方法は、1つ又はそれ以上の化学種を含む混合物を、1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタ、及び複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子を含む金属-有機フレームワーク材料と接触させることと、内部細孔の少なくとも一部分中に1つ又はそれ以上の化学種の少なくとも一部分を収着することとを含む方法であって、多座有機配位子が、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート及び/又は4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む。
【0008】
以下の図面は、本開示の特定の態様を示すために含まれるものであり、排他的実施形態として解釈されるべきではない。開示される対象は、当業者が想定する、本開示の利点を有する、形状及び機能においてのかなりの修正、変更、組合及び同一化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られるMOFのX線粉末回折パターンを示す。
図2A-2B】それぞれ、P/P及びLog P/Pスケールでプロットされた実施例1の生成物に関する77KにおけるN吸着等温線を示す。
図3】種々の温度における実施例1の生成物に関する絶対CH吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、ピラゾリルベンゾエート配位子から形成されるMOFに関する。
【0011】
上記で簡単に議論された通り、MOFは、多座有機配位子を適切な金属供給源と反応させて、複数の内部細孔を有する結晶質又は部分的に結晶質のネットワーク構造を形成することによって合成され得る。ネットワーク構造は、いくつかの例においては、配位ポリマーを構成し得る。MOFの構造及び特性は、多座有機配位子及び金属又は金属供給源の選択によって調整可能である。高度多孔性材料として、MOFは、様々な種類の気体、分子又は他の化学実体を選択的に吸着及び/又は分離することができる。そのように、MOFは、気体貯蔵及び分離を含む潜在的応用を有する。しかしながら、多くの従来のMOFの化学安定性のため、それらの多孔性構造を利用する能力は妨げられている。
【0012】
本開示は、容易に入手可能であり、種々の結合部位を有する多座有機配位子を含むMOFを提供する。特に、本開示において利用される多座有機配位子は、第1の結合部位としてのピラゾリル部分と、第2の結合部位としてのカルボキシレート部分とを含み、それらは、フェニル基を介して一緒に連結されている。多座有機配位子のピラゾリル及びフェニル部分は、種々の置換基を含み得る。驚くべきことに、本明細書で記載される多座有機配位子は、Fm3m空間群の結晶質構造でMOF-5のトポロジーを有するネットワーク構造をもたらし得、且つMOF-5と比較して周囲条件下で増加した安定性を示し得る。
【0013】
特定の実施形態において、本開示の多座有機配位子は、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含み得る。さらに本明細書で議論されるように、有利な特性を有するMOFを形成するために、この多座有機配位子を種々の金属供給源と反応させてもよい。そのようなMOFのより具体的な例としては、複数の亜鉛クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、少なくとも1つの結合部位を介して複数の亜鉛クラスタに配位した4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート多座有機配位子とを含み得る。
【0014】
驚くべきことに、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート及び類似の多座有機配位子は、使用される金属供給源次第で、多様なネットワーク構造を有するMOFを形成し得る。いくつかの例においては、予形成された金属クラスタ、例えば、ZnO(2,2-ジメチルブタノート(dimethylbutanote))(ZnO(DMBA))又は類似の金属カルボキシレートクラスタは、MOFを形成するための上記ピラゾリルベンゾエート配位子との反応のために特に適切であり得る。予形成された金属クラスタは、MOFの形成を促進するための特に望ましい金属供給源であり得るが、他の金属供給源も満足に使用され得る。安定なMOFを形成するための本明細書で記載されるピラゾリルベンゾエート配位子の能力は、ピラゾレート及びカルボキシレート部分への金属中心の配位を介して、大きい立方体型細孔を促進するために有効な結合部位を配置する一方、強力な金属-配位子結合の構造強度から生じるものであると考えられる。
【0015】
上記に加えて、本明細書で記載される多座有機配位子を用いて合成されるMOFは、金属中心の金属原子の少なくとも一部分を1つ又はそれ以上の異なる金属で置き換えるために、他の金属と交換されてもよい。金属中心は、いくつかの場合、1つ又はそれ以上の金属クラスタによって画定され得る。追加的な構造安定化をもたらすため、又は触媒反応を促進するためなどのいずれかの目的のために、1つ又はそれ以上の異なる金属が導入されてもよい。金属交換が行われる多くの場合、最小の構造再編成が生じる。
【0016】
本開示の種々の実施形態をより詳細に記載する前に、本開示のより良好な理解を助けるため、以下に用語のリストを示す。
【0017】
本明細書の詳細な説明及び請求の範囲内の全ての数は、示された値に関して「約」又は「およそ」によって修飾されて、当業者によって予期される実験誤差及び変動を考慮するものである。特記されない限り、室温は約25℃である。
【0018】
本開示及び請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別に明確に示されない限り、複数形を含む。
【0019】
「及び/又は」という用語は、本明細書中、「A及び/又はB」などの句で使用される場合、「A及びB」、「A又はB」「A」及び「B」を含むように意図される。
【0020】
本開示の目的に関して、周期表の群に対する新しいナンバリングスキームが使用される。前記ナンバリングスキームでは、f-ブロック元素(ランタニド及びアクチニド系列)を除いて、群(縦列)は、左から右に順番に1から18まで番号が付けられる。
【0021】
本開示及び請求の範囲で使用される場合、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Prはプロピルであり、cPrはシクロプロピルであり、nPrはn-プロピルであり、iPrはイソプロピルであり、Buはブチルであり、nBuはノルマルブチルであり、iBuはイソブチルであり、sBuはsec-ブチルであり、tBuはtert-ブチルであり、Cyはシクロヘキシルであり、Octはオクチルであり、Phはフェニルであり、そしてBnはベンジルである。
【0022】
「炭化水素」という用語は、炭素に結合した水素を有する化合物の分類を指し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、並びに(iii)異なる数の炭素原子を有する炭化水素化合物の混合物を含む(飽和及び/又は不飽和の)炭化水素化合物の混合物を含む。「C」という用語は、分子又は基あたりn個の炭素原子(nはプラスの整数である)を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。そのような炭化水素化合物は、任意選択的な置換が場合によっては存在する状態で、線形、分枝状、環式、非環式、飽和、不飽和、脂肪族、又は芳香族の1つ又はそれ以上であり得る。
【0023】
「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基」という用語は、本明細書において、交換可能に使用される。「ヒドロカルビル基」という用語は、親化合物から取り除かれる時に、少なくとも1つの非占有原子価位置を有する、いずれかのC~C100炭化水素基を指す。適切な「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基」は、任意選択的に置換され得る。「1~約100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基」という用語は、線形又は分枝状C~C100アルキル、C~C100シクロアルキル、C~C100アリール、C~C100ヘテロアリール、C~C100アルキルアリール、C~C100アリールアルキル及びそのいずれかの組合せから選択される、任意選択的に置換された部分を指す。
【0024】
「置換された」という用語は、ヘテロ原子又はヘテロ原子官能基による、炭化水素又はヒドロカルビル基の少なくとも1つの水素原子又は炭素原子の置き換えを指す。ヘテロ原子としては、限定されないが、B、O、N、S、P、F、Cl、Br、I、Si、Pb、Ge、Sn、As、Sb、Se及びTeが挙げられてよい。置換された炭化水素又はヒドロカルビル基中に存在し得るヘテロ原子官能基としては、限定されないが、O、S、S=O、S(=O)、NO、F、Cl、Br、I、NR、OR、SeR、TeR、PR、AsR、SbR、SR、BR、SiR、GeR、SnR、PbR(式中、Rはヒドロカルビル基又はHである)が挙げられる。適切なヒドロカルビルR基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、複素環などが挙げられてよく、それらのいずれも任意選択的に置換されていてもよい。
【0025】
「任意選択的に置換された」という用語は、炭化水素又はヒドロカルビル基が未置換であっても、又は置換されていてもよいことを意味する。例えば、「任意選択的に置換されたヒドロカルビル」という用語は、ヘテロ原子又はヘテロ原子官能性基によってヒドロカルビル基中の少なくとも1つの水素原子又は炭素原子が置換されていることを指す。特記されない限り、本明細書中、いずれのヒドロカルビル基も任意選択的に置換されていてもよい。
【0026】
「線形」又は「線形炭化水素」という用語は、側鎖分岐を有さない連続炭素鎖を有する炭化水素又はヒドロカルビル基であって、連続炭素鎖が任意選択的に置換されていてもよいものを指す。
【0027】
「環式」又は「環式炭化水素」という用語は、任意選択的に置換されていてもよい閉鎖炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
【0028】
「分岐状」又は「分枝状炭化水素」という用語は、線形炭素鎖又は閉鎖炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基であって、ヒドロカルビル側鎖が線形炭素鎖又は閉鎖炭素環から延在するものを指す。線形炭素鎖、閉鎖炭素環及び/又はヒドロカルビル側鎖中に任意選択的な置換が存在していてもよい。
【0029】
「飽和」又は「飽和炭化水素」という用語は、ヒドロカルビル基中の炭素原子上に存在する非占有原子価位置を除いて、全ての炭素原子が4つの他の原子に結合されている炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
【0030】
「不飽和」又は「不飽和炭化水素」という用語は、炭素上に存在する開放原子価位置を除いて、1つ又はそれ以上の炭素原子が4つ未満の他の原子に結合している炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。すなわち、「不飽和」という用語は、2つの炭素原子の間及び/又は炭素原子とヘテロ原子との間に存在する、1つ又はそれ以上の二重及び/又は三重結合を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
【0031】
「芳香族」又は「芳香族炭化水素」という用語は、ヒュッケル則を満たす、共役パイ電子の環式配列を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
【0032】
「アルキル」という用語は、不飽和炭素-炭素結合を有さず、且つ任意選択的に置換されていてもよいヒドロカルビル基を指す。
【0033】
「アルケン」及び「オレフィン」という用語は、本明細書において同義的に使用される。同様に「アルケン系」及び「オレフィン系」という用語は、本明細書において同義的に使用される。特記されない限り、これらの用語には全ての可能な幾何学的異性体が含まれる。
【0034】
「アリール」という用語は、本明細書で定義される通り、「芳香族」という用語の同義語である。「アリール」という用語は、任意選択的に置換されていてもよい芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物の両方を指す。単核及び多核芳香族化合物がこれらの用語に含まれる。
【0035】
「ヘテロアリール」及び「複素環式芳香族」という用語は、ヘテロ原子を含有し、且つヒュッケル則を満たす芳香環を指す。
【0036】
芳香族ヒドロカルビル群の例としては、限定されないが、フェニル、トリル、キシリル、ナフチルなどが挙げられる。ヘテロアリール及び多核ヘテロアリール基としては、限定されないが、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、キナゾリニル、アクリジニル、ピラジニル、キノキサリニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、ベンゾピラゾリル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、イソキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、イミダゾリニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル及びベンゾフラニルが挙げられる。多核アリール基としては、限定されないが、ナフタレニル、アントラセニル、インダニル、インデニル及びテトラリニルが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「多座」という用語は、金属中心を配位することが可能な部位を2つ以上有する化合物を指す。したがって、「多座」という用語は、二座、三座、四座、より高配位座数の配位子を含む。
【0038】
「金属中心」という用語は、配位子が配位結合している単一金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンの群を指す。
【0039】
「金属クラスタ」という用語は、配位子が配位結合している金属原子又は金属イオンの群を指す。
【0040】
「二次構築単位」という用語は、2種以上の多座配位子が配位結合している金属クラスタを指す。例えば、二次構築単位は、式MOを有し得、そしてカルボキシレート基などの多座配位子に配位し、式MO(COの多金属核カルボキシレートクラスタを有するMOFを形成し得る。クラスタMOは、カルボキシレート又はヒドラジル基を含む二座の基によって配位されて、MOFを形成し得る。
【0041】
「予形成された金属クラスタ」という用語は、MOFを形成するための別の材料と組み合わせられる前に合成される、複数の金属原子及び1つ又はそれ以上の配位子の群を指す。
【0042】
「少なくとも部分的に結晶質」という用語は、物質がX線粉末回折パターンを示すことを意味する。
【0043】
「結合部位」という用語は、金属-配位子結合によって金属中心を配位することができる化学実体を指す。
【0044】
したがって、本開示のMOFは、複数の金属中心と、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属中心に配位した複数の多座有機配位子とを含み得る。多座有機配位子は、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む。
【0045】
より具体的な例において、本明細書で記載されるMOFは、MOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子とを含み得る。多座有機配位子は、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む。
【0046】
以下の式1は、多座有機配位子として本開示のMOFに組み込まれることが可能である4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸の化学構造を示す。
【化1】
【0047】
以下の式2は、4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸の化学構造を示す。これも多座有機配位子として本開示のMOFに組み込まれることが可能である。
【化2】
【0048】
本明細書で開示されるMOF中に存在し得る金属中心又は金属クラスタの識別は、特に制限されるようには考えられない。いくつかの実施形態において、複数の金属中心又は金属クラスタの少なくとも一部分は、四面体形状を有する金属を含み得る。いくつかの実施形態において、複数の金属中心又は金属クラスタの少なくとも一部分は、二価金属を含み得る。いくつかの例では、単独で、或いは1つ又はそれ以上の二価金属と組み合わせて、三価金属も十分に含まれ得る。本明細書で開示されるMOF中に存在し得る適切な二価金属としては、例えば、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン又はそのいずれかの組合せが挙げられる。複数の金属中心又は金属クラスタを構成する金属は、適切な金属供給源を上記で開示された多座有機配位子と反応させる場合に導入され得るか、或いは金属中心又は金属クラスタ中の金属の少なくとも一部分は、MOFを画定する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を形成した後に交換反応によって導入され得る。いくつかの実施形態において、複数の金属中心又は金属クラスタは、MO二次構築単位の形態であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書の開示に従ってMOFを形成するために使用され得る適切な金属塩としては、限定されないが、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh、Ir2+、Ir、Ni2+、Ni、Pd2+、Pd、Pt2+、Pt、Cu2+、Cu、Ag、Au、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Ti3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As、Sb5+、Sb3+、Sb、Bi5+、Bi3+及びBiなどの金属イオンが挙げられる。いくつかの例では、これらの金属イオンの他の酸化状態も十分に使用され得る。多座有機配位子の識別及びMOFが形成される条件次第で、金属イオンの適切な対イオンの形態としては、限定されないが、硝酸、亜硝酸、硫酸、硫酸水素、酸化物、酢酸、ギ酸、酸化物、水酸化物、安息香酸、アルコキシド、炭酸、アセチルアセトノエート(acetylacetonoate)、炭酸水素、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素などが挙げられる。
【0050】
他の特定の例において、予形成された金属クラスタは、本明細書で開示されるMOFを形成するために適切な金属供給源を含み得る。予形成された金属クラスタは、本開示のMOFの形成に使用されるために特に望ましくなり得るが、上記の共通の金属塩も特定の例では適切であり得ることは認識されるであろう。例えば、金属酸化物及び金属カルボン酸塩(例えば金属酢酸塩)は、予形成された金属クラスタを使用する場合に製造されたものに関するネットワーク構造を有するMOFを形成するために、適切に使用され得る。ネットワーク構造の存在及びその結晶化度の決定は、特定のネットワーク構造が別のネットワーク構造に関連しているかどうかの決定を含めて、本明細書の他の部分に記載されるようにX線粉末回折によって実行され得る。本明細書で記載される多座有機配位子によるMOFの形成を促進するために使用され得る適切な金属クラスタの一例は、式ZnO(2,2-ジメチルブタン酸)(ZnO(DMBA))によって記載される亜鉛クラスタである。
【0051】
したがって、本開示のさらにより具体的なMOFは、複数の金属クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートとを含み得る。なおさらにより具体的な例において、そのようなMOFは、複数の亜鉛クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の亜鉛クラスタに配位した4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートとを含み得る。いくつかの実施形態において、MOFは、ネットワーク構造中の複数の内部細孔の少なくとも一部分に組み込まれた残留配位子、金属塩、又は溶媒をさらに含み得る。そのような残留配位子の代表的な例は、2,2-ジメチルブタン酸、その塩、又は別のカルボン酸/カルボン酸塩である。いくつかの又は他のより具体的な実施形態において、複数の亜鉛クラスタを含む本開示のMOFは、少なくとも1つの結合部位を通して4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート配位子に配位される複数のニッケル中心もさらに含み得る。
【0052】
本明細書の開示に従って形成されるMOF、特に多座有機配位子として4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートから形成されるMOFは、それらの内部多孔性に関して特徴づけられ得る。本開示のMOFは、ミクロ細孔、メソ細孔、マクロ細孔及びそのいずれかの組合を含み得る。ミクロ細孔は、本明細書において、約2nm以下の細孔径を有するものとして定義され、そしてメソ細孔は、本明細書において、約2nm~約50nmの細孔径を有するものとして定義される。ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の決定は、当業者によって理解される通り、77Kにおける窒素吸着等温線の分析によって決定され得る。MOFの内部細孔体積及び他の形態的特徴は、当業者によって理解される通り、窒素吸着等温線から同様に決定され得る。本明細書の開示に従って形成される典型的な材料に関して、細孔直径は、77Kにおいて実施されるN吸着等温線のDFTフィッティングによって決定される場合、約10Å~約20Åの範囲であり得、約0.9cc/g~約1.5cc/gの細孔体積が得られる。さらに約2800m/g~約3700m/gの全表面積が達成可能である。
【0053】
本明細書中、本開示のMOFを合成するための方法が記載される。上で示したように、いくつかの合成は、金属供給源として予形成された金属クラスタを用いて有利に実施され得るが、いくつかの単純な金属塩を含む他の金属供給源も同様に適切に使用され得る。有利には、金属供給源は、関連するが、わずかに異なるネットワーク構造を有するMOFが得られるように選択され得る。そのように、本明細書で開示されるMOFを合成するために使用される金属供給源の選択は、特定の応用との適合性に関するネットワーク構造の調整の実現を可能にし得る。いくつかの例において、MOFにおける金属クラスタを形成するために適切な金属供給源が使用され得る。
【0054】
したがって、本開示の特定の方法は、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させて、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属中心又は金属クラスタを含む金属-有機フレームワーク材料を形成することとを含み得る。複数の金属クラスタは1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含み得る。より具体的な実施形態において、金属供給源は、予形成された金属クラスタ、例えば亜鉛を含む予形成された金属クラスタ、より詳しくはZnO(2,2-ジメチルブタノエート)又は類似の金属カルボキシレートクラスタであり得る。
【0055】
多座有機配位子として4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを使用する場合、MOFを形成するための他の適切な亜鉛供給源としては、例えば、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛が挙げられる。これらの金属供給源は、両方とも、ZnO(2,2-ジメチルブタン酸)の存在下で形成されるものに関連するネットワーク構造を有するMOFの形成を促進し得る。
【0056】
本開示のいくつかの又は他の方法は、MOFの複数の内部細孔中に存在し得る残留配位子、金属塩、溶媒又はそのいずれかの組合せを熱的又は化学的に除去することを含み得る。例えば、2,2-ジメチルブタン酸、その塩、別のカルボン酸/カルボン酸塩、亜鉛塩又はジメチルホルムアミドは、存在する場合、MOFの内部細孔から熱的に除去され得る。
【0057】
本開示のいくつかの又は他の方法は、複数の金属中心又は金属クラスタを含む第1の金属の少なくとも一部分を少なくとも第2の金属と交換することを含み得る。例えば、本開示の種々の実施形態によれば、金属中心を含む亜鉛原子の少なくとも一部分をニッケル原子と交換してもよい。金属交換は、例えば、MOFを塩溶液と接触することによって実行され得る。
【0058】
本明細書で開示される実施形態としては、以下が挙げられる。
【0059】
A.4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート骨格を有するMOF。MOFは、1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子とを含み、多座有機配位子は4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む。
【0060】
B.4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート骨格を有し、亜鉛を含むMOF。MOFは、1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタと、複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属クラスタに配位した複数の多座有機配位子とを含み、多座有機配位子は4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含み、複数の金属クラスタの少なくとも一部分は亜鉛を含む。
【0061】
C.4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート骨格を有するMOFの製造方法。本方法は、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させ、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスタを含む金属-有機フレームワーク材料を形成することとを含み、複数の金属クラスタが1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む。
【0062】
D.4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート及び亜鉛を有するMOFの製造方法。本方法は、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と組み合わせることと、金属供給源を4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸と反応させ、その中に画定された複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を有し、且つ4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスタを含む金属-有機フレームワーク材料を形成することとを含み、金属供給源は予形成された金属クラスタを含み、且つ予形成された金属クラスタは亜鉛を含む。
【0063】
E.気体吸収方法。本方法は、1つ又はそれ以上の化学種を含む混合物を、1つ又はそれ以上のMOクラスタ(Mは金属である)を含む複数の金属クラスタ、及び複数の内部細孔を有する少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造を画定するように、複数の金属中心に配位した複数の多座有機配位子を含む金属-有機フレームワーク材料と接触させることと、内部細孔の少なくとも一部分中に1つ又はそれ以上の化学種の少なくとも一部分を収着することとを含み、多座有機配位子は、4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエート及び/又は4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートを含む。
【0064】
実施形態A~Eは、いずれかの組合せで以下の追加的な要素の1つ又はそれ以上を有し得る。
【0065】
要素1:複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、四面体形状を有する。
【0066】
要素2:複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、二価金属を含む。
【0067】
要素3:複数の金属クラスタの少なくとも一部分が、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン又はそのいずれかの組合せを含む。
【0068】
要素4:少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、立方空間群と一致するX線粉末回折パターンを示す。
【0069】
要素5:金属有機フレームワーク材料が、予形成された金属クラスタと4-(1H-ピラゾル-4-イル)ベンゾエートとの反応生成物である。
【0070】
要素6:複数の金属クラスタが、予形成された金属クラスタから形成される。
【0071】
要素7:予形成された金属クラスタが、ZnO(2,2-ジメチルブタノエート)を含む。
【0072】
要素8:77Kにおいて実施されるN吸着等温線のDFTフィッティングによって決定される場合、内部細孔が、約10Å~約20Åの範囲の細孔直径を有する。
【0073】
要素9:内部細孔が、約0.9cc/g~約1.5cc/gの範囲の細孔体積を有する。
【0074】
要素10:少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、約2800m/g~約3700m/gの範囲のBET表面積を有する。
【0075】
要素11:少なくとも部分的に結晶質のネットワーク構造が、少なくとも6.21、8.76、12.40及び13.83(全ての±5%)度2-シータ(°2θ)の特徴ピークを有するX線粉末回折パターンを有する。
【0076】
要素12:金属供給源が、予形成された金属クラスタである。
【0077】
要素13:複数の金属クラスタが、複数の金属中心を画定し、方法が、複数の金属中心を含む第1の金属の少なくとも一部分を第2の金属と交換することをさらに含む。
【0078】
要素14:1つ又はそれ以上の化学種がメタンを含む。
【0079】
非限定的な例として、Aに適用可能な例示的な組合せは、1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び8;1及び9;1及び10;1及び11;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び8;2及び9;2及び10;2及び11;3及び4;3及び5;3及び6;3及び8;3及び9;3及び10;3及び11;4及び5;4及び6;4及び8;4及び9;4及び10;4及び11;5及び6;5及び8;5及び9;5及び10;5及び11;6及び7;6及び8;6及び9;6及び10;6及び11;6、7及び8;6、7及び9;6、7及び10;6、7及び11;8及び9;8及び10;8及び11;9及び10;9及び11;10及び11を含む。
【0080】
Bに適用可能な例示的な組合せは、1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び8;1及び9;1及び10;1及び11;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び8;2及び9;2及び10;2及び11;3及び4;3及び5;3及び6;3及び8;3及び9;3及び10;3及び11;4及び5;4及び6;4及び8;4及び9;4及び10;4及び11;5及び6;5及び8;5及び9;5及び10;5及び11;6及び7;6及び8;6及び9;6及び10;6及び11;6、7及び8;6、7及び9;6、7及び10;6、7及び11;8及び9;8及び10;8及び11;9及び10;9及び11;10及び11を含む。
【0081】
Cに適用可能な例示的な組合せは、1及び12;1及び13を含む。
【0082】
Dに適用可能な例示的な組合せは、7及び13を含む。
【0083】
本明細書で記載される実施形態のより良好な理解を容易にするために、種々の代表的な実施形態の実施例を以下に挙げる。いかなる場合も、以下の実施例は、本開示の範囲を制限、又は定義するものとして解釈されてはならない。
【実施例
【0084】
以下の実施例でのX線粉末回折パターンは、Cu K-α放射線を使用して得られた。
【0085】
以下の実施例におけるBET表面積は、77Kにおいて得られるN吸着等温線から決定した。N吸着等温線は、77KにおいてTristar II分析器(Micromeritics)を使用して測定した。測定前に、試料を4時間、10-5トルの一定圧力まで150℃で脱気した。次いで、試料の表面上に吸着されるNの量によって表面積を測定した。その後、データに回帰分析を適用し、等温線が得られた。等温線をさらに分析し、ミクロ細孔体積及び他の量を算出した。
【0086】
実施例1:金属-有機フレームワーク合成。4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸(720mg)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中30体積%の水の溶液100mL中に溶解した。この溶液に、1.434gのZnO(2,2-ジメチルブタノエート)(2,2-ジメチルブタノエート=DMBA)を添加した。ZnO(DMBA)の合成は、M.R.Gordonら,「Preparation and properties of tetrazinc μ-oxohexa-μ-carboxylates(basic zinc carboxylates)」,Can.J.Chem.,1983,pp.1218-1221,61に記載の文献方法によって達成した。反応混合物を60℃で16時間撹拌し、その後、遠心分離によって固体を単離した。固体をベンゼンで洗浄した。次いで、生成物を冷凍乾燥させた。
【0087】
実施例2:生成物の特徴決定。図1は、実施例1で得られた生成物のX線粉末回折パターンを示す。図示されるように、4-(1H-ピラゾル-4-イル)安息香酸との組合せで亜鉛供給源としてZnO(DMBA)を使用する場合、高度に結晶質の材料が得られた。表1に、実施例1で得られた生成物のX線粉末回折ピークの2-シータ値(°)、d-間隔(Å)及び相対強度H(%)を列挙する。
【0088】
【表1】
【0089】
図2A及び2Bは、それぞれ、P/P及びLog P/Pスケールでプロットされた実施例1の生成物の77KにおけるN吸着等温線を示す。算出されたBET表面積は3487.9m/gであった。外表面は73.7m/gであった。ミクロ細孔体積は1.194cm/gであった。相当する全細孔体積は1.375cm/gであった。ミクロ細孔表面は3414m/gであった。
【0090】
図3は、実施例1の生成物の30℃、50℃、75℃において測定されたCH吸着等温線(0.610g/ccの密度に基づく)、及び-25℃における予測されたCH吸着等温線を示す。
【0091】
本明細書で記載される全ての文献は、それらが本明細書と矛盾しない場合において、いずれの先行文献及び/又は試験手順も含めて、そのような実行を可能にする全ての司法権の目的のため、本明細書に参照によって組み込まれる。上記の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかであるように、本開示の形態が示され、説明されるが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の修正を実行することができる。したがって、本開示がそれによって制限されることは意図されない。例えば、本明細書で記載される組成物は、本明細書で明確に記載されていないか又は開示されていないいずれの成分又は組成物も含まなくてよい。いずれの方法も、本明細書で記載又は開示されていないいずれのステップも含まなくてよい。同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると考えられる。方法、組成物、要素又は要素の群に「含む(comprising)」という移行句が先行する場合は、常に、組成物、要素又は複数の要素の記載に先行して「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群から選択される(selected from the group of consisting of)」又は「である(is)」という移行句を有する同組成物又は要素の群も考慮されることは理解され、逆の場合も同じである。
【0092】
特記されない限り、本明細書及び関連請求項において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、全ての例において、「約」という用語によって修飾されることは理解される。したがって、特記されない限り、以下の明細書及び添付の請求項において明らかにされる数パラメーターは、本発明の実施形態によって得られることが求められる望ましい特性次第で変動し得る近似値である。少なくとも、そして同義語の原則の適用を請求の範囲に制限する試みではなく、それぞれの数パラメーターは、少なくとも報告された有意な桁の数を考慮して、そして通常の四捨五入技術を適用することによって解釈されなければならない。
【0093】
下限及び上限による数の範囲が開示される場合は、常に、範囲内のいずれの数及びいずれの含まれる範囲も特に開示される。特に、本明細書に開示される(「約aから約bまで」、又は同等に「およそaからbまで」、又は同等に「およそa~b」の形態の)値の全ての範囲は、より広い値の範囲内に含まれる全ての数及び範囲を明らかにするものとして理解される。また明白且つ明確に特許権者によって定義されない限り、請求項の用語はそれらの明白な通常の意味を有する。そのうえ、不定冠詞「a」又は「an」は、請求項で使用される場合、それが導入する要素の1つ又は1つ以上を意味するものとして本明細書で定義される。
【0094】
1つ又はそれ以上の例証となる実施形態が本明細書で提示される。明快さのために、物理的実施の全ての特徴が本出願に記載又は示されているわけではない。本開示の物理的実施形態の発展において、実施によって、そして時間によって変動する、システム関連、ビジネス関連、政府関連、他の制約の対応性などの開発者の目標を達成するために多数の実施特有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力は時間のかかるものであり得るが、そのような努力は、それにもかかわらず、本開示の利点を有する当業者の通常の作業である。
【0095】
したがって、本開示は、その中に固有のものだけでなく、記載の目的及び利点を達成するために十分に適応される。上記で開示された特定の実施形態は例証となるのみであり、本開示は修正され得、且つ本教示の利点を有する当業者に明らかである異なるが同等の様式で実行され得る。さらにまた、以下の請求項に記載される以外、本明細書に示される構造又は設計の詳細に対する制限は意図されない。したがって、上記で開示された特定の例証となる実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正され得、そして全てのそのような変形は、本開示の範囲及び精神の範囲内で考えられる。適切に本明細書で実例として開示される実施形態は、本明細書で特に開示されないいずれの要素及び/又は本明細書で開示されるいずれの任意選択的な要素がない場合でも実行され得る。
図1
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】