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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】子宮内膜のmiRNA受容性分析
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20220831BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220831BHJP
   G16B 25/10 20190101ALI20220831BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220831BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220831BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20220831BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALN20220831BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6876 Z
G16B25/10
C12N15/113 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576586
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2020099781
(87)【国際公開番号】W WO2021000893
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/869,574
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522318232
【氏名又は名称】英▲てい▼生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】康 詩▲チン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉銘
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
(57)【要約】
開示は、女性からのサンプル、例えば、子宮内膜の生検を使用して子宮内膜の状態を判断する方法に関しており、(a)女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルを判断することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する、167のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)例えば、コンピューターベースのアルゴリズムを使用して、miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することとを含む。開示の態様は、さらに、方法を実施することに適したキット、および診断および治療目的のためのキットの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜の状態を判断する方法であって、
(a)女性の前記子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルを判断することであって、前記miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNAの発現レベルを含むことと、
(b)前記miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することであって、前記受容性予測スコアは、前記女性の前記子宮内膜の状態を分類し、前記子宮内膜の状態は、受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態を含み、前記複数のmiRNAは、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する、少なくとも167のmiRNAを含むこととを備える方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、前記女性の子宮腔から取得される方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、子宮内膜の生検、子宮内膜の洗浄、またはその組み合わせを含む方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、(i)前記女性の内因性黄体形成ホルモン(LH)の急増後7日間または(ii)前記女性のプロゲステロン投与後5日間取得される方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項の方法であって、前記miRNA発現プロファイルは、定量PCR(qPCR)、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャ技術により判断される方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、前記miRNA発現プロファイルは、前記子宮内膜サンプルの前記miRNAから合成されたcDNA製剤において実施されたqPCRにより判断される方法。
【請求項7】
請求項6の方法であって、前記cDNA合成は、以下の一般式:5’-R-(dT)nVN-3’で表されるヌクレオチド配列を有するユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施され、Rは配列番号:168を含み、(dT)nはn個の連続したチミン残基であり、nは19であり、Vはアデニン残基、グアニン残基、またはシトシン残基であり、Nはアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、またはチミン残基である方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項の方法であって、前記受容性予測スコアは、コンピューターベースのアルゴリズムにより作成され、
【数1】
の方程式を使用して計算された値であり、βは係数のベクトルであり、εは誤差である方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記コンピューターベースのアルゴリズムは、以下のステップ:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証の1以上を実施することにより確立される方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9の方法であって、1より大きい受容性予測スコアは、前記受容期前の状態を示し、-1未満の受容性予測スコアは、前記受容期後の状態を示し、-1から1の受容性予測スコアは、前記受容期の状態を示す方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項の方法であって、前記子宮内膜の状態が前記受容期前の状態または前記受容期後の状態であると判断された場合、さらに、少なくとも一度または前記子宮内膜の状態が前記受容期の状態であると判断されるまで、ステップ(a)および(b)を繰り返すことを備える方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項の方法であって、前記女性は、着床不全を患っているまたは患っていた方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項の方法であって、前記女性は、体外受精(IVF)治療を受けている方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記受容性予測スコアは、さらに、前記女性の前記IVF治療に対する反応性を分類する方法。
【請求項15】
女性の胚着床に対する子宮内膜の受容性を検出する方法であって、
(a)前記女性の前記子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルを判断することであって、前記miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNAの発現レベルを含むことと、
(b)前記miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することであって、前記受容性予測スコアは、前記女性が胚着床に対する子宮内膜の受容性を有するかを判断し、前記複数のmiRNAは、それぞれ、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは配列番号:1-167の配列を有する少なくとも167のmiRNAを含むこと、
とを備える方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、前記女性の子宮腔から取得される方法。
【請求項17】
請求項15または請求項16の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、子宮内膜の生検、子宮内膜の洗浄、またはその組み合わせを含む方法。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項の方法であって、前記子宮内膜サンプルは、(i)前記女性の内因性黄体形成ホルモン(LH)の急増後7日間または(ii)前記女性のプロゲステロン投与後5日間取得される方法。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項の方法であって、前記miRNA発現プロファイルは、定量PCR(qPCR)、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャ技術により判断される方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記miRNA発現プロファイルは、前記子宮内膜サンプルの前記miRNAから合成されたcDNA製剤において実施されたqPCRにより判断される方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、前記cDNA合成は、以下の一般式:5’-R-(dT)nVN-3’で表されるヌクレオチド配列を有するユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施され、Rは配列番号:168を含み、(dT)nはn個の連続したチミン残基であり、nは19であり、Vはアデニン残基、グアニン残基、またはシトシン残基であり、Nはアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、またはチミン残基である方法。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれか一項の方法であって、前記受容性予測スコアは、コンピューターベースのアルゴリズムにより作成され、
【数2】
の方程式を使用して計算された値であり、βは係数のベクトルであり、εは誤差である方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、前記コンピューターベースのアルゴリズムは、以下のステップ:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証の1以上を実施することにより確立される方法。
【請求項24】
請求項22または請求項23の方法であって、-1から1の受容性予測スコアは、前記女性が胚着床に対する子宮内膜の受容性を有することを示す方法。
【請求項25】
請求項15乃至24のいずれか一項の方法であって、前記女性は、着床不全を患っているまたは患っていた方法。
【請求項26】
キットであって、
(a)複数のmiRNAを標的にする1以上のマイクロRNA(miRNA)プロファイリングチップと、(b)(i)任意に1以上のmiRNAプロファイリングチップを使用して、女性の子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断することと、(ii)コンピューターベースのアルゴリズムを使用して、前記miRNA発現プロファイルに基づき受容性予測スコアを取得することとに関する指示とを備え、ここで前記複数のmiRNAは、それぞれ、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは配列番号:1-167の配列を有する少なくとも167のmiRNAを含む、キット。
【請求項27】
請求項26のキットであって、前記1以上のmiRNAプロファイリングチップは、前記複数のmiRNAの発現レベルの検出のためのプライマーを含むキット。
【請求項28】
請求項27のキットであって、前記miRNAプロファイリングチップは、前記複数のmiRNAの前記発現レベルを検出するために、定量PCR(qPCR)、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャアッセイ、好ましくはqPCRを実施することに適しているキット。
【請求項29】
女性の子宮内膜の状態を判断するための請求項27または請求項28のキットの使用。
【請求項30】
請求項29の使用であって、前記女性は、着床不全を患っているまたは患っていた、および/または体外受精(IVF)治療を受けている使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年7月2日に出願された米国仮出願第62/869,574号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示は、(a)複数のmiRNA、例えば、167のmiRNAの発現レベルを含むマイクロRNA(miRNA)発現プロファイル、および(b)miRNA発現プロファイルに基づき女性の子宮内膜の状態を分類するコンピューターベースのアルゴリズムを使用して、女性の子宮内膜の受容性を判断する方法に関する。開示の態様は、さらに、方法を実施することに適したキット、および診断および治療目的のためのキットの使用に関する。いくつかの実施形態において、方法および/またはキットは、女性の体外受精(IVF)治療に対する反応性を分類するために使用される。
【背景技術】
【0003】
IVFを含む生殖補助医療は、生殖が成功しないことに対処するための潜在的アプローチとして登場した。IVFの成功率の主要な要因は、子宮内膜の受容期の状態にある。子宮内膜は、着床のウィンドウ(WOI)と呼ばれる比較的短期間にのみ受容期である。これは、通常、月経周期の19-21日頃に生じる。信頼性のない傾向にある、カレンダーアプローチに基づくだけではなく、より確実な方法で胚着床の機会を示すであろう、子宮内膜自体を直接検査することにより、子宮内膜の状態をモニタリングすることが長年のニーズである。
【0004】
ヒト子宮内膜は、タンパク質およびmiRNAの両方により周期的に調節される組織である。ヒトゲノムは、2500より多いmiRNAを含み、その中には、生殖周期で役割を果たすものも見られる。例えば、最近の文献では、特定のmiRNAがWOIの確立および進行に関与している遺伝子の発現を調節することが証明された。
【0005】
従来、子宮内膜の状態を評価するため、組織学的方法および画像検査法が使用されてきた。しかし、それらは時間のかかり、しばしば子宮内膜の受容期の状態および受容不可能な状態を明確に区別することができないことが長く認識されてきた。遺伝子発現レベルの検査に基づく方法も開発されてきた。初期の研究は、少数の標識遺伝子を重要視した。Igenomixは、子宮内膜の受容性に関与している特定の238の遺伝子のマイクロアレイに頼った、「子宮内膜着床能」(ERA)検査を開発した。しかし、マイクロアレイベースのERA検査には、ある欠点がある。例えば、マイクロアレイベースの遺伝子発現測定にはかなりの量の組織サンプルが必要となることが知られている。加えて、マイクロアレイ技術は、一般的に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)技術と比較すると特異性が低い。次世代シーケンシング(NGS)ベースのERA検査は、まだ登場したばかりである。
【0006】
従って、依然として、必要となる組織のインプットが少ない、および/または女性の子宮内膜の受容可能または受容不可能な状態についてより信頼性のある判断を提供する、子宮内膜の受容性を判断する方法の改善へのニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
開示は、女性からのサンプル、例えば、子宮内膜の生検を使用して子宮内膜の受容性を判断する方法に関しており、(a)女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する、167のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することであって、受容性予測スコアは、女性の子宮内膜の受容性の状態を判断することとを含む。開示の態様は、さらに、方法を実施することに適したキット、および女性の子宮内膜の状態を判断するためのキットの使用に関する。
【0008】
本開示の特定の実施形態は、以下の段落に要約される。このリストは、例示のみであり、本開示により提供される実施形態の全てを網羅してはいない。
【0009】
実施形態1. 子宮内膜の状態を判断する方法であって、(a)女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することであって、受容性予測スコアは、女性の子宮内膜の状態を分類し、子宮内膜の状態は、受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態を含み、複数のmiRNAは、それぞれ、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは配列番号:1-167の配列を有する少なくとも167のmiRNAを含むこととを備える。
【0010】
実施形態2. 実施形態1の方法であって、子宮内膜サンプルは、女性の子宮腔から取得される。
【0011】
実施形態3. 実施形態1または実施形態2の方法であって、子宮内膜サンプルは、子宮内膜の生検、子宮内膜の洗浄、またはその組み合わせを含む。
【0012】
実施形態4. 実施形態1乃至3のいずれか一つの方法であって、子宮内膜サンプルは、(i)女性の内因性黄体形成ホルモン(LH)の急増後7日間または(ii)女性のプロゲステロン投与後5日間取得される。
【0013】
実施形態5. 実施形態1乃至4のいずれか一つの方法であって、miRNA発現プロファイルは、qPCR、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャ技術により判断される。
【0014】
実施形態6. 実施形態5の方法であって、miRNA発現プロファイルは、子宮内膜サンプルのmiRNAから合成されたcDNA製剤において実施されたqPCRにより判断される。
【0015】
実施形態7. 実施形態6の方法であって、cDNA合成は、以下の一般式:5’-R-(dT)nVN-3’で表されるヌクレオチド配列を有するユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施され、Rは配列番号:168を含み、(dT)nはn個の連続したチミン残基であり、nは19であり、Vはアデニン残基、グアニン残基、またはシトシン残基であり、Nはアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、またはチミン残基である。
【0016】
実施形態8. 実施形態1乃至7のいずれか一つの方法であって、受容性予測スコアは、コンピューターベースのアルゴリズムにより作成され、
【数1】
の方程式を使用して計算された値であり、βは係数のベクトルであり、εは誤差である。
【0017】
実施形態9. 実施形態8の方法であって、コンピューターベースのアルゴリズムは、以下のステップ:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証の1以上を実施することにより確立される。
【0018】
実施形態10. 実施形態8または実施形態9の方法であって、1より大きい受容性予測スコアは、受容期前の状態を示し、-1未満の受容性予測スコアは、受容期後の状態を示し、-1から1の受容性予測スコアは、受容期の状態を示す。
【0019】
実施形態11. 実施形態1乃至10のいずれか一つの方法であって、子宮内膜の状態が受容期前の状態または受容期後の状態であると判断された場合、さらに、少なくとも一度または子宮内膜の状態が受容期の状態であると判断されるまで、ステップ(a)および(b)を繰り返すことを備える。
【0020】
実施形態12. 実施形態1乃至11のいずれか一つの方法であって、女性は、着床不全を患っているまたは患っていた。
【0021】
実施形態13. 実施形態1乃至12のいずれか一つの方法であって、女性は、IVF治療を受けている。
【0022】
実施形態14. 実施形態13の方法であって、受容性予測スコアは、さらに、女性のIVF治療に対する反応性を分類する。
【0023】
実施形態15. 女性の胚着床に対する子宮内膜の受容性を検出する方法であって、(a)女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施して子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)miRNA発現プロファイルを分析して受容性予測スコアを取得することであって、受容性予測スコアは、女性が胚着床に対する子宮内膜の受容性を有するかを判断し、複数のmiRNAは、それぞれ、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは、配列番号:1-167の配列を有する少なくとも167のmiRNAを含むこととを備える。
【0024】
実施形態16. 実施形態15の方法であって、子宮内膜サンプルは、女性の子宮腔から取得される。
【0025】
実施形態17. 実施形態15または実施形態16の方法であって、子宮内膜サンプルは、子宮内膜の生検、子宮内膜の洗浄、またはその組み合わせを含む。
【0026】
実施形態18. 実施形態15乃至17のいずれか一つの方法であって、子宮内膜サンプルは、(i)女性の内因性黄体形成ホルモン(LH)の急増後7日間または(ii)女性のプロゲステロン投与後5日間取得される。
【0027】
実施形態19. 実施形態15乃至18のいずれか一つの方法であって、miRNA発現プロファイルは、qPCR、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャ技術により判断される。
【0028】
実施形態20. 実施形態19の方法であって、miRNA発現プロファイルは、子宮内膜サンプルのmiRNAから合成されたcDNA製剤において実施されたqPCRにより判断される。
【0029】
実施形態21. 実施形態20の方法であって、cDNA合成は、以下の一般式:5’-R-(dT)nVN-3’で表されるヌクレオチド配列を有するユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施され、Rは配列番号:168を含み、(dT)nはn個の連続したチミン残基であり、nは19であり、Vはアデニン残基、グアニン残基、またはシトシン残基であり、Nはアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、またはチミン残基である。
【0030】
実施形態22. 実施形態15乃至21のいずれか一つの方法であって、受容性予測スコアは、コンピューターベースのアルゴリズムにより作成され、
【数2】
の方程式を使用して計算された値であり、βは係数のベクトルであり、εは誤差である。
【0031】
実施形態23. 実施形態22の方法であって、コンピューターベースのアルゴリズムは、以下のステップ:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証の1以上を実施することにより確立される。
【0032】
実施形態24. 実施形態22または実施形態23の方法であって、-1から1の受容性予測スコアは、女性が胚着床に対する子宮内膜の受容性を有することを示す。
【0033】
実施形態25. 実施形態15乃至24のいずれか一つの方法であって、女性は、着床不全を患っているまたは患っていた。
【0034】
実施形態26. キットであって、(a)複数のmiRNAを標的にする1以上のmiRNAプロファイリングチップと、(b)(i)任意に1以上のmiRNAプロファイリングチップを使用して、女性の子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断することと、(ii)コンピューターベースのアルゴリズムを使用して、miRNA発現プロファイルに基づき受容性予測スコアを取得することとに関する指示とを備え、複数のmiRNAは、それぞれ、少なくとも50、75、100、125、150、または200のmiRNA、および好ましくは配列番号:1-167の配列を有する少なくとも167のmiRNAを含む。
【0035】
実施形態27. 実施形態26のキットであって、1以上のmiRNAプロファイリングチップは、複数のmiRNAの発現レベルの検出のためのプライマーを含む。
【0036】
実施形態28. 実施形態27のキットであって、miRNAプロファイリングチップは、複数のmiRNAの発現レベルを検出するために、qPCR、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャアッセイ、好ましくはqPCRを実施することに適している。
【0037】
実施形態29. 女性の子宮内膜の状態を判断するための実施形態27または実施形態28のキットの使用。
【0038】
実施形態30. 実施形態29の使用であって、女性は、着床不全を患っているまたは患っていた、および/またはIVF治療を受けている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】自然な周期またはホルモン補充療法周期における女性の子宮内膜の状態を示す。LH+5:女性の内因性黄体形成ホルモン(LH)の急増後5日間;LH+7:女性の内因性LHの急増後7日間;およびLH+9:女性の内因性LHの急増後9日間。P+3:女性のプロゲステロン投与後3日間;P+5:女性のプロゲステロン投与後5日間;およびP+7:女性のプロゲステロン投与後7日間。
図2】本開示にかかる167のmiRNAを標的とするMIRA PanelChipを使用した、子宮内膜の受容性テストのワークフローを示す。
図3】どのようにコンピューターベースのアルゴリズム(MIRA Model)が構築され、どのようにMIRA Modelがテスト結果を作成するかのプロセスを示す。
図4A】子宮内膜の状態を3つの状態:受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態の1つに分類する、子宮内膜受容性の例示の分析を示す。
図4B】3つの受容的状態の下に分類された女性の例示の着床結果を示す。
図5】183の子宮内膜サンプルからの167のmiRNAの発現レベルを含むmiRNA発現プロファイルを使用した、10分割交差検証および妊娠率を示す。SEN:感度=真陽性/(真陽性+偽陰性);SPE:特異性=真陰性/(真陰性+偽陽性);PPV:精度または陽性予測値=真陽性/(真陽性+偽陽性);およびNPV:陰性予測値=真陰性/(真陰性+偽陰性)。P+6:子宮内膜が受容期前の状態にあるとあらかじめ判断された女性のプロゲステロン投与後6日間の胚着床;P+5:子宮内膜が受容期の状態にあるとあらかじめ判断された女性のプロゲステロン投与後5日間の胚着床;およびP+4.5:子宮内膜が受容期後の状態にあるとあらかじめ判断された女性のプロゲステロン投与後4.5日間(すなわち、108時間)の胚着床。
図6】受容性予測スコアの値によって、子宮内膜サンプルを3つの状態:受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態の1つに分類する、MIRA採点システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書において説明される開示および実施形態は、例示のみと解釈され、発明の範囲を限定するものではない。本明細書において特定の用語が使用されているが、特に断りのない限り、それらは総称および記述的な意味でのみ使用され、制限を目的としていない。
【0041】
定義
【0042】
本明細書において使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに他を示す場合を除き、複数形も含むことを意図している。
【0043】
用語「cDNA」は、逆転写酵素を使用してRNA製剤に逆転写を実施することにより生成される相補的DNAを指す。いくつかの実施形態において、RNA製剤は、子宮内膜の組織サンプルから抽出されるmiRNAを含む。例1参照。
【0044】
用語「comprise」、「have」および「include」は、無制限の連結動詞である。「comprises」、「comprising」、「has」、「having」、「includes」、および「including」のような、これらの動詞の1以上の任意の形式または時制も、無制限である。例えば、1以上のステップを「含む」(「comprises」、「has」または「includes」)任意の方法は、それらの1以上のステップのみを持つことに制限されず、他の列挙されていないステップも含めることできる。同様に、1以上の特性を「含む」(「comprises」、」「has」または「includes」)任意の組成またはキットは、それらの1以上の特性のみを持つことに制限されず、他の列挙されていない特性も含めることできる。本明細書における特定の実施形態に関して提供される任意のおよび全ての例、または例示の言葉(例えば、「such as」)の使用は、単に本開示の理解をより容易にすることを意図しており、他で請求される本開示の範囲に制限を与えるものではない。
【0045】
用語「expression(発現)」は、女性の生体サンプル、例えば、子宮内膜の組織サンプルのRNA分子の転写および/または蓄積を指す。これに関連して、用語「miRNA expression(miRNA発現)」は、生体サンプルの1以上のmiRNAの量を指し、miRNA発現は、当技術分野で周知の適切な方法を使用することにより検出されうる。例えば、例1参照。
【0046】
用語「microRNA(マイクロRNA)」または「miRNA」は、内在性遺伝子に由来する、おおよそ18から25のヌクレオチド長鎖型ノンコーディングRNAのクラスを指す。miRNAは、mRNA分解または翻訳阻害に対する、それらの標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)への塩基対合により、遺伝子発現の転写後調節因子として機能する。
【0047】
用語「nucleic acid(核酸)」、「nucleotide(ヌクレオチド)」および「polynucleotide(ポリヌクレオチド)」は、言い換え可能に使用され、単鎖または二本鎖形式いずれかにおけるDNAまたはRNAのポリマーを指す。特に断りのない限り、これらの用語は、基準核酸として同様の結合特性を有し、自然に発生するヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含むポリヌクレオチドを包含する。
【0048】
用語「primer(プライマー)」は、プライマー伸長物の合成が誘発される条件下、例えば、ヌクレオチドおよびDNAまたはRNAポリメラーゼのような重合誘発剤の存在下で、適切な温度、pH、金属イオン濃度、および塩濃度で置かれた場合、相補的核酸の鎖の合成を開始するように作用するオリゴヌクレオチドを指す。
【0049】
用語「probe(プローブ)」は、標的核酸分析物(例えば、核酸増幅産物)に存在している核酸配列に相補的な核酸配列を含む、ポリヌクレオチドを含む構造を指す。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNA、および/またはRNA、および/または合成ヌクレオチド類似体で構成されてもよい。プローブは、一般的に、標的核酸の標的配列の全てまたは一部の特定の検出におけるそれらの使用に対応している長さを持つ。
【0050】
用語「qPCR」または「quantitative PCR(定量PCR)」は、標的DNAおよび/またはRNAを同時に増幅させ、定量化するための、ポリメラーゼ連鎖反応を使用した実験的方法を指す。定量化は、(例えば、SYBR(R)グリーンの蛍光色素またはTaqmanプローブの蛍光レポーターオリゴヌクレオチドプローブを含む)複数の化学物質を使用して実施され、リアルタイムの定量化は、1以上の増幅周期後の反応における増幅DNAおよび/またはRNAを測定することにより実施される。
【0051】
用語「targeting(標的とする)」は、対象の核酸配列にハイブリッド形成する適切なヌクレオチド配列の選択を指す。いくつかの実施形態において、対象の核酸配列は、配列番号:1-167の任意の1つの配列を有するmiRNAを含む。例1参照。
【0052】
子宮内膜の状態を判断する方法の概観
【0053】
子宮内膜の受容性は、女性の子宮内膜が胚着床のために準備している状態である。これは、WOIと呼ばれる期間に全て月経周期で生じる。図1に示されるように、自然な周期において、排卵はLHの急増後に生じ、WOIはLHの急増後7日間程度である(LH+7)。ホルモン補充療法周期において、WOIは、プロゲステロン投与後5日間程度である(P+5)。これらの推定により、子宮内膜の受容性に関する確からしい情報がもたらされる。しかし、子宮内膜の状態についての最終回答は、子宮内膜自体の検査によってのみ提供されうる。
【0054】
その目的に向けて、子宮内膜サンプルは、ホルモン補充療法周期におけるプロゲステロン投与後5日間(P+5)または自然な周期における内因性LHの急増後7日間(LH+7)のいずれかに、女性の子宮腔から採取されうる。サンプルは、続いて、子宮内膜の受容性状態を分析する分子診断ツールの対象となる。本開示にかかる子宮内膜の状態を判断する方法においては、分子診断ツールにより、子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルが分析される。
【0055】
図2に示されるように、本開示は、(a)子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断するため、子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)受容性予測スコアを取得するため、コンピューターベースのアルゴリズムでmiRNA発現プロファイルを分析することであって、受容性予測スコアは、子宮内膜の状態を受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態に分類することとを含む、子宮内膜の状態を判断する方法を提供する。
【0056】
受容期前の状態は、子宮内膜が胚を受け取る準備がまだできていないことを示し、この時点の胚着床は早過ぎるかもしれない。受容期の状態(WOI)は、子宮内膜が胚着床に最適な時期にあることを示す。受容期後の状態は、子宮内膜が既に胚着床に最適な段階を過ぎたことを示す。
【0057】
子宮内膜の受容性を判断するためのmiRNA発現プロファイルの分析
【0058】
本開示は、子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断する。いくつかの実施形態において、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、少なくとも10、25、50、75、100、125、150、または200のmiRNAの発現レベルを含み、それらの全ては、子宮内膜の受容性の調整に関わるかもしれない。好適な実施形態において、本開示は、その発現レベルが子宮内膜の受容性の調整に関わっている167のmiRNAの選択を提供する。例1参照。これらの167のmiRNAは、まず、Human Disease Ontologyデータベースから生殖の疾患に関与している遺伝子を識別し、続いて、miRTARBase、TargetScan、およびmiRDBを使用して潜在的な調節因子miRNAを選択することにより選ばれた。
【0059】
子宮内膜の状態を判断するため、本開示にかかる方法は、子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断するためのアッセイを実施することを含み、miRNA発現プロファイルは、表1に示される、167のmiRNAの発現レベルを含む。
【0060】
167のmiRNAの名称および配列
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0061】
miRNAの発現レベルは、当技術分野で周知の定量法で分析されうる。いくつかの実施形態において、分析を促進するため、これらの167のmiRNAを標的とする1以上のmiRNAプロファイリングチップが使用されうる。例えば、例1において、これらの167のmiRNAの発現レベルを分析するため、2つのmiRNAプロファイリングチップが設計および開発される。いくつかの実施形態において、1以上のチップは、さらに、特定のRNA配列、例えば、miRNA発現分析のための内在性コントロールとして使用されうる、18s rRNAを標的とする。例1参照。
【0062】
本開示は、子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断する方法を提供する。方法は、一般的に、(i)女性の子宮腔から子宮内膜サンプルを取得するまたは取得したことと、(ii)子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断するためのアッセイを実施することとを含み、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、子宮内膜サンプルは、例えば、子宮内膜から小さな生検を取得することにより、侵襲的な方法を用いて取得されてもよい。例1参照。いくつかの実施形態において、子宮内膜サンプルは、例えば、子宮内洗浄において存在している分離した細胞を収集することにより、低侵襲的な方法を用いて取得されてもよい。任意の理論に制約されることを望まず、本開示にかかる方法において必要とされうる子宮内膜サンプルの量が著しく少ないように、請求されたqPCRベースのmiRNA発現プロファイリング方法は、マイクロアレイベースのmRNA発現プロファイリング方法と比較して高い特異性および感度を提供すると考えられる。Wang他、「Large scale real-time PCR validation on gene expression measurements from two commercial long-oligonucleotide microarrays」、BMC Genomics、2006、7:59-75参照。
【0064】
いくつかの実施形態において、子宮内膜サンプルは、女性の内因性LHの急増後7日間に取得される(LH+7)。いくつかの実施形態において、子宮内膜サンプルは、女性のプロゲステロン投与後5日間に取得される(P+5)。
【0065】
子宮内膜サンプルのmiRNAは、当技術分野で周知の方法を使用して抽出および濃縮されうる。例えば、miRNAは、製造業者の指示に従い、miRNeasy Micro Kit(QIAGEN)を使用して子宮内膜の組織から抽出されうる。例1参照。miRNA濃縮製剤は、-80°Cで保管されうる。miRNAの量と質は、当技術分野で周知の方法を使用して分析されうる。例えば、miRNAは、市販のAgilentバイオアナライザーを使用して分析されうる。
【0066】
各miRNAの発現レベルは、qPCR、シークエンシング、マイクロアレイ、またはRNA-DNAハイブリッドキャプチャ技術を含む、当技術分野で周知の方法により定量化されうる。いくつかの実施形態において、本開示にかかる方法は、一般的に、ノーザンブロットハイブリダイゼーションおよび/またはマイクロアレイ遺伝子チップ分析より高い感度および特異性を有する、qPCR反応を使用する。その目的に向けて、cDNAは、逆転写反応において抽出および濃縮されたmiRNAから合成され、qPCR反応は、miRNAの発現レベルを定量化するために実施されうる。従って、いくつかの実施形態において、miRNA発現プロファイルは、任意に、本明細書において開示される1以上のmiRNAプロファイリングチップを使用して、qPCRにより判断される。例1参照。
【0067】
現在、qPCRアッセイは、2つのタイプに分けられうる。第一のタイプは、ステムループ逆転写プライマーを使用してcDNA合成を実施すること、およびmiRNAに特異的なプローブまたはユニバーサルプローブを使用してmiRNAを定量化することである。第二の方法は、線形ユニバーサル逆転写プライマーを使用してcDNA合成を実施すること、およびmiRNAに特異的な順方向プライマー、逆転写プライマーに特異的な逆方向プライマー、および二重鎖DNA挿入色素を使用してmiRNAを定量化することである。
【0068】
いくつかの実施形態において、cDNA合成は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第10,590,478号に開示されているようなユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施される。いくつかの実施形態において、cDNA合成は、以下の一般式:5’-R-(dT)nVN-3’で表されるヌクレオチド配列を有するユニバーサル逆転写プライマーを使用して実施され、ここで、RはCAACTCAGGTCGTAGGCAATTCGT(配列番号:168)の配列を含み、(dT)nはn個の連続したチミン残基であり、nは19であり、Vはアデニン残基、グアニン残基、またはシトシン残基であり、Nはアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、またはチミン残基である。
【0069】
コスト削減と使いやすさのため、いくつかの実施形態において、qPCR反応は、本開示にかかる167のmiRNAの全てを標的とする1以上のmiRNAプロファイリングチップを使用して実施されうる。例1参照。いくつかの実施形態において、miRNAプロファイリングチップの各々には、少なくとも20、30、40、50、60、60、70、80、90、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200のmiRNAの発現を同時に分析可能な適切なプライマーおよび/またはプローブが予め組み込まれている。いくつかの実施形態において、miRNAプロファイリングチップは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第9,724,692号、特許第10,415,084号、出願番号第16/191,451号および出願番号第16/233,121号に開示されているようなマルチプレックススライド式プレートを含む。
【0070】
qPCR反応は、当技術分野で周知の方法を使用して実施されうる。いくつかの実施形態において、qPCR反応は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第9,168,533号および出願番号第16/559,642号に開示されるようなサーマルサイクラー装置を使用して実施されうる。例1も参照。
【0071】
子宮内膜の受容性を判断するためのmiRNA分析アルゴリズムおよびその使用
【0072】
本開示の方法によれば、miRNA発現プロファイルは、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムを使用して、受容性予測スコアを生成するために使用されうる。受容性予測スコアは、子宮内膜の状態を以下の3つの状態:受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態の1つに分類する。
【0073】
コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムは、miRNA発現データを使用し、様々な受容性の状態に応じてクラスを区別することを学習する数学的予測分類器である。
【0074】
アルゴリズムを構築するため、miRNA発現レベルについての生データは、訓練セットおよび検証セットに分けられる。訓練セットは、予測分類器を訓練するために使用され、検証セットは、予測分類器の性能を評価および改善するために使用される。図3に示されるように、以下のステップの1以上がアルゴリズムを構築および立証するために実施される:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証。
【0075】
統計的特性が同一の分布になるように、データは、Bolstad他、「A comparison of normalization methods for high density oligonucleotide array data based on variance and bias」、Bioinformatics、2003、19(2):185-193に記載されるように、Quantile Normalizationにより正規化されうる。さらに、目的関数が正確に働くように、データは、ゼロ平均および単位分散を有するデータを作成するため、値域に標準化されうる。
【0076】
データ整理および特徴抽出の両方のため、主成分分析(PCA)は、多数のオリジナル変数から情報を圧縮し、オリジナル変数を線形結合することにより、小さな新しい特性のセットを生成するために使用されうる。
【0077】
PCA変換データは、Zou他、「Regularization and variable selection via the elastic net」、J.R.Statist.Soc.B、2005、67、part2、301-320に記載されているように、lassoおよびridge法のL1およびL2ペナルティを線形結合した正規化回帰法である弾性ネット正則化で、一般化線形モデルをさらに構築するために使用されうる。glmnetに関する追加の情報は、glmnet.stanford.eduで既知であり、入手可能である。
【0078】
k分割交差検証法、例えば、10分割交差検証は、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムの予測値をまとめる前に、それを評価するために使用されうる。図5参照。k分割交差検証において、元のサンプルは、k個の同じ大きさのサブサンプルにランダムに分割される。k個のサブサンプルのうち、単一のサブサンプルは、モデルをテストするための検証データとして保持され、残りのk-1個のサブサンプルは、訓練データとして使用される。交差検証プロセスは、続いて、検証データとして正確に一度使用されるk個のサブサンプルの各々で、k回(分割)繰り返される。分割からのk個の結果は、続いて、単一の推定を作成するために平均化(または、そうでなければ結合)されうる。
【0079】
妊娠率は、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムの予測値を評価するために使用されうる。例2参照。
【0080】
検証および改善後、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムが生成される。アルゴリズムを実行することにより、女性の子宮内膜の状態を以下のような3つの状態の1つに分類する受容性予測スコアが生成される:スコアが1より大きい場合、女性の子宮内膜は受容期前の状態にある;スコアが-1未満の場合、女性の子宮内膜は受容期後の状態にある;そしてスコアが-1から1の場合、女性の子宮内膜は受容期の状態にある。図6参照。
【0081】
本開示にかかる方法の適用
【0082】
本開示は、サンプル、例えば、子宮内膜の生検を使用して、子宮内膜の状態を判断する方法であって、(a)子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断するため、女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)例えば、コンピューターベースのアルゴリズムを使用して、受容性予測スコアを取得するため、miRNA発現プロファイルを分析することとを含む方法を提供する。
【0083】
本開示の方法は、IVF治療を含むがそれに限定されない、様々な診断および治療目的で使用されうる。例えば、いくつかの実施形態において、子宮内膜の結果に基づき、方法は、さらに、女性の胚を移植すること、または着床不全を患っているまたは患っていた女性に1以上の治療を施すことを含んでもよい。いくつかの実施形態において、本開示は、胚着床に対する子宮内膜の受容性を検出する方法であって、(a)子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断するため、女性の子宮内膜サンプルについてのアッセイを実施することであって、miRNA発現プロファイルは、複数のmiRNA、例えば、配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルを含むことと、(b)受容性予測スコアを取得するため、miRNA発現プロファイルを分析することであって、受容性予測スコアは、女性が子宮内膜の受容性を有するかどうかを判断することと、(c)子宮内膜の受容性を有すると判断された女性の子宮内膜に胚を移植することとを含む方法を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態において、子宮内膜の状態を判断する方法は、女性の胚着床のタイミングを判断するために使用されうる。いくつかの実施形態において、子宮内膜の状態が受容期の状態である場合、女性は、胚着床に適していると判断される。子宮内膜の状態が受容期前または受容期後の状態である場合、女性は、胚着床に適していないと判断される。いくつかの実施形態において、子宮内膜の状態が受容期前の状態または受容期後の状態であると判断された場合、本開示は、子宮内膜の状態に関する情報に基づき、胚着床のための方法を提供する。例えば、子宮内膜の状態が受容期前の状態であると判断された場合、次の周期の間、胚着床は、プロゲステロン投与後5.5から7.5日の間、例えば、5.5、6、6.5、7、または7.5日間実施されうる。あるいは、子宮内膜の状態が受容期後の状態であると判断された場合、次の周期の間、胚着床は、プロゲステロン投与後2.5から4.5日の間、例えば、2.5、3、3.5、4、または4.5日間実施されうる。
【0085】
子宮内膜がサンプリング時に受容不可能な状態を示した場合、得られた情報は有益である。それは、方法が別の時に子宮内膜サンプルを取得することにより繰り返され、初めの判断の結果に従って修正されうるためである。例として、子宮内膜の状態が受容期前の状態である場合、子宮内膜サンプルを取得する次の時点は、内因性LHの急増後7日間より長く、またはプロゲステロン投与後5日間より長くなりうる。例えば、子宮内膜サンプルを取得する次のポイントは、内因性LHの急増後7.5から10.5日の間、例えば、7.5、8、8.5、9、9.5、10、または10.5日間、またはプロゲステロン投与後5.5から7.5日の間、例えば、5.5、6、6.5、7、または7.5日間になりうる。あるいは、子宮内膜の状態が受容期後の状態である場合、子宮内膜サンプルを取得する次の時点は、内因性LHの急増後7日間より短く、またはプロゲステロン投与後5日間より短くなりうる。例えば、子宮内膜サンプルを取得する次のポイントは、内因性LHの急増後3.5および6.5日の間、例えば、3.5、4、4.5、5、5.5、6、または6.5日間、またはプロゲステロン投与後2.5から4.5日の間、例えば、2.5、3、3.5、4、または4.5日間になりうる。これらの手順に従うことにより、受容期の状態が見つかり、IVF治療の成功率が改善しうる。これらの使用の任意の1つとして、女性が着床不全を患っているまたは患っていたことがある。いくつかの実施形態において、女性は、IVF治療を受けている。
【0086】
いくつかの実施形態において、子宮内膜の状態が受容期前の状態または受容期後の状態であると判断された場合、子宮内膜の状態を判断する方法は、少なくとも一度または子宮内膜の状態が受容期の状態であると判断されるまで繰り返されうる。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示にかかる子宮内膜の状態を判断する方法は、女性のWOIを判断するために使用されうる。いくつかの実施形態において、本開示にかかる方法は、女性のIVF治療に対する反応性を分類するために使用されうる。これらの使用の任意の1つとして、いくつかの実施形態において、女性が着床不全を患っているまたは患っていたことがある。いくつかの実施形態において、女性は、IVF治療を受けている。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示にかかる子宮内膜の状態を判断する方法は、妊娠薬の女性の子宮内膜への効果を調査するための有益な手段として使用されうる。これらの実施形態において、女性は、着床不全を患っているまたは患っていた。いくつかの実施形態において、女性は、IVF治療を受けている。
【0089】
キット
【0090】
本開示の他の態様は、子宮内膜の状態を判断する方法を実施するキットに関する。いくつかの実施形態において、キットは、複数のmiRNA、例えば、それぞれ配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルの検出に適したプライマーおよび/またはプローブを含む。例1参照。いくつかの実施形態において、プライマーおよび/またはプローブは、167のmiRNAの発現レベルを検出するためのqPCR反応を実施することに適している。いくつかの実施形態において、キットは、167のmiRNAを標的とする1以上のmiRNAプロファイリングチップを含む。いくつかの実施形態において、1以上のチップは、さらに、miRNA発現分析に対する内在性コントロールとして使用されうる、RNA配列、例えば、18s rRNAを標的とする。
【0091】
キットは、さらに、(i)任意に1以上のmiRNAプロファイリングチップを使用して、女性の子宮内膜サンプルのmiRNA発現プロファイルを判断すること、および/または(ii)コンピューターベースのアルゴリズムを使用して、miRNA発現プロファイルに基づき受容性予測スコアを取得することに関する指示を含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、受容性予測スコアをどのように解釈および使用するかに関する指示を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、キットは、IVF治療を含むがそれに限定されない、診断および治療目的に役立つ。
【実施例
【0093】
例1:miRNA発現プロファイルを生成する材料および方法
【0094】
子宮内膜の生検. ホルモン補充療法周期におけるプロゲステロン投与後5日間(P+5)または自然な周期における内因性黄体形成ホルモンの急増後7日間(LH+7)のいずれかに、Pipelle Endometrial Suction Curette(Cooper Surgical,Inc.)を使用して、子宮内膜の生検が女性の子宮腔から採取された。子宮内膜の組織は、すぐにRNAlaterに保管された。
【0095】
RNA抽出およびmiRNA濃縮. 製造業者の指示に従い、miRNeasy Micro Kit(QIAGEN)を使用して、全てのRNAが子宮内膜の組織から分離された。短時間で、5mgの子宮内膜の組織が、モーターおよび乳棒で液体窒素内において破壊および均質化された。700μlのQIAzol Lysis Reagentが均質化された組織に追加され、結果として生じたサンプルは、核タンパク複合体の解離を促進するため、5分間室温で培養された。700μlのQIAzol Lysis Reagentにつき140μlのクロロホルムが管に追加され、管は、15秒間勢いよく手で振られ、2-3分間室温で培養された。サンプルは、4°Cで15分間、12,000gで遠心分離された。遠心分離後、上部の水相が新しい管に移され、サンプルと同量の70%のエタノールが管に追加され、管は完全にボルテックスされた。サンプルは、RNeasy MinEluteスピンカラムに移され、室温で15秒間、8,000gで遠心分離された。素通り画分は、2mlの管にピペットで移され、サンプルの0.65倍量の100%のエタノールが素通り画分に追加され、結果として生じたサンプルは、完全にボルテックスされた。サンプルは、続いて、RNeasy MinEluteスピンカラムに移され、室温で15秒間、8,000gで遠心分離された。素通り画分は廃棄され、700μlのBuffer RWTがRNeasy MinEluteスピンカラムに追加され、カラムは、洗浄のため15秒間8000gで遠心分離された。素通り画分は廃棄され、500μlのBuffer RPEがRNeasy MinEluteスピンカラムに追加され、カラムは、洗浄のため15秒間8,000gで遠心分離された。素通り画分は廃棄され、500μlの80%のエタノールがRNeasy MinEluteスピンカラムに追加され、カラムは、スピンカラム膜を乾燥させるため、2分間8,000gで遠心分離された。RNeasy MinEluteスピンカラムは、新しい2mlの採取管に入れられ、5分間8,000gで遠心分離された。RNeasy MinEluteスピンカラムは1.5mlの採取管に入れられ、14-20μlのヌクレアーゼフリー水がスピンカラム膜上に追加され、カラムは、miRNA濃縮画分を溶離するため、1分間8,000gで遠心分離された。miRNA濃縮画分は、-80°Cで保管された。
【0096】
cDNA合成. 子宮内膜の組織からの≧2ngのmiRNA濃縮画分が、20μlの逆転写反応においてcDNAを合成するために使用された。逆転写は、製造業者の指示に従い、QuarkBio microRNA Universal RT Kit(Quark Biosciences Taiwan,Inc.)を使用して実施された。短時間で、ポリAテールが、ポリAポリメラーゼを使用してmiRNAに追加され、その後cDNA合成が続いた。cDNA合成は、続いて、以下のプログラムを使用して実施された:42°Cで60分間および95°Cで5分間、続いて、プログラムの完了まで4°C。合成されたcDNAは、-20°Cで保管された。
【0097】
NextAmp Analysis SystemおよびMIRA PanelChipセットを使用したmiRNA発現プロファイリング. MIRA PanelChipセットは、合計167のmiRNAアッセイを含む。167のmiRNAに対する配列は、表1に示される。加えて、RNU6B、RNU43、および18s rRNAが、内在性コントロールとして使用された。3つの内在性スパイクインコントロールが、miRNA抽出、cDNA合成、およびqPCR効率をモニタリングするために使用された(Quark Biosciences Taiwan,Inc.)。cDNAは、MIRA PanelChipセットで分析された。(0.1ngのmiRNA濃縮画分に相当する)cDNAが、30μlの2X SYBR Master Mix(Quark Biosciences Taiwan,Inc.)を含む混合物に追加され、ヌクレアーゼフリー水が、60μlの最終量を取得するため、混合物に追加された。混合物は、手で完全に混合され、底部に液体を集めるために短時間で沈降された。60μlの混合物が、チップの端に沿ってPipetmanを使用して投与され、混合物は、続いて、ガラススライドでの剥離動作により、MIRA PanelChipの全表面にわたって塗布された。各チップは、続いて、トレイの底に対向する反応ウェルで、Channeling Solution(Quark Biosciences Taiwan,Inc.)を含むトレイに沈められた。各トレイは、続いて、MIRA PanelChipアッセイおよびデータ分析が都合よく、すぐに実施されうるように、MIRA PanelChip適用に対するサーモサイクラー(図2のPanelStation参照)であり、ビルトインサンプル管理データベースおよび解析プラットフォームを含む、Q Stationに入れられた。MIRA PanelChip分析は、続いて、以下のプログラムに従って実施された:40周期の間、95°Cで36秒および60°Cで72秒。
【0098】
例2:コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムおよびその使用
【0099】
図3に示されるように、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズム(MIRA)は、以下のステップ:データ正規化、データのスケーリング、データ媒体変換、予測モデリング、および交差検証の1以上を実施することにより構築された。
【0100】
データ正規化. 統計的特性が同一の分布になるように、データは、Quantile Normalizationにより正規化された。図3の方程式(A)参照。また、Bolstad他、「A comparison of normalization methods for high density oligonucleotide array data based on variance and bias」、Bioinformatics、2003、19(2):185-193参照。
【0101】
データのスケーリング. 目的関数が正確に働くように、データは、ゼロ平均および単位分散を有するデータを作成するため、値域に標準化された。図3の方程式(B)参照。
【0102】
データ媒体変換. データ整理および特徴抽出のため、PCAは、多数のオリジナル変数から情報を圧縮し、オリジナル変数を線形結合することにより、小さな新しい特性のセットを生成した。図3の方程式(C)参照。
【0103】
モデリング. PCA変換データは、lassoおよびridge法のL1およびL2ペナルティを線形結合した正規化回帰法である弾性ネット正則化で一般化線形モデルをさらに構築するために使用された。図3の方程式(D)参照。また、Zou他、「Regularization and variable selection via the elastic net」、J.R.Statist.Soc.B、2005、67、part2、301-320参照。
【0104】
MIRAモデルをまとめる前に、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムの予測値を評価するため、交差検証が実施された。図4Aに示されるように、表1に示される配列番号:1-167の配列を有する167のmiRNAの発現レベルを含むmiRNA発現プロファイルを使用して、MIRAモデルは、clinalサンプルを3つの状態グループ:受容期前の状態、受容期の状態、または受容期後の状態の1つにうまく分類された。さらに、図4Bに示されるように、予備検証は、受容期の状態に分類された女性で100%の妊娠率を示した(テストセット)。
【0105】
モデル評価のための10分割交差検証を実現するため、183人の女性のデータが10個のサブセットに分けられた。図5は、183個の子宮内膜サンプルの167のmiRNAの発現レベルを含むmiRNA発現プロファイルを使用した、10分割交差検証および妊娠率を示した。これらのテストにおいて、初めの周期に、各女性の子宮内膜の状態が判断された。女性の子宮内膜が受容期前の状態であると判断された場合、胚着床は、次の周期にプロゲステロン投与後6日間実施された(P+6グループ;35人の女性)。女性の子宮内膜が受容期の状態であると判断された場合、胚着床は、次の周期にプロゲステロン投与後5日間実施された(P+5グループ;142人の女性)。女性の子宮内膜が受容期後の状態であると判断された場合、胚着床は、次の周期にプロゲステロン投与後4.5日間実施された(P+4.5グループ;6人の女性)。加えて、図5は、10分割交差検証結果の感度、特異性、PPV、NPV、および全体の一致率を示す。
【0106】
3つのグループの中で、P+6グループから22件、P+5グループから113件、およびP+4.5グループから2件の、137件の妊娠が検出された。図5参照。コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムの予測評価に関して、137件の妊娠の中で、P+4.5グループの2件のうち1件、P+5グループの113件のうち107件、およびP+6グループの22件のうち17件は、アルゴリズムにより判断された正確な胚着床タイミング調整を示し、91.24%の妊娠率(125/137)をもたらした。図5参照。
【0107】
MIRA Model. 本例に記載される全てのパラメーターを考慮して(図3、方程式(A-D)および後続の交差検証に基づくそれらのパラメーターの微調整参照)、全てのサンプルを3つの明確な子宮内膜の状態に分類する予測モデルが生成された。MIRAを実行することにより、以下の方程式:
【数3】
を使用して計算された受容性予測スコア(MIRAスコア)が生成され、ここで、βは係数のベクトルであり、εは誤差であり、両方とも交差検証を通したglmnetにより生成されている(図3)。このモデルは、子宮内膜の状態を予測するため、子宮内膜の任意のqPCRプロファイリングに適用することができた。
【0108】
図6に示されるように、コンピューターベースのmiRNA分析アルゴリズムを実行することにより、女性の子宮内膜の状態を3つの状態の1つに分類する受容性予測スコアが生成された:スコアが1より大きい場合、女性の子宮内膜は受容期前の状態にあり;スコアが-1未満の場合、女性の子宮内膜は受容期後の状態にあり;そしてスコアが-1から1の場合、女性の子宮内膜は受容期の状態(WOI)にある。
【0109】
開示は、特に、特定の実施形態を参照して示され、記載されているが、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、形式および細部における様々な変更がその中でなされてもよいことは、当業者により理解されるべきである。
(参照)
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図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【配列表】
2022539037000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】