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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ラチェット機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20220831BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576806
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 IB2020054960
(87)【国際公開番号】W WO2021001705
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1909476.2
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520102901
【氏名又は名称】マーキシン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステュアート,アダム
(57)【要約】
ラチェットリングおよびシャーシを含むラチェット機構を開示する。ラチェットリングは、ラチェット機構の歯によって決定される一般的な回転方向で、シャーシに対して軸の周りで回転可能である。ラチェットリングは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つラチェットリングから第1軸方向に突出している第1歯セットと、ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つラチェットリングから第2逆軸方向に突出している第2歯セットを有する。シャーシは、規則的に配置され、且つ第2軸方向で一般的に第1歯セットと反対側に突出している第3歯セットと、規則的に配置され、且つ第1軸方向で一般的に第2歯セットと反対側に突出している第4歯セットを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットリング、及び、シャーシを含み、
前記ラチェットリングは、ラチェット機構の歯によって決定される一般的な回転方向で、シャーシに対して軸の周りで回転可能であり、
前記ラチェットリングは、第1歯セットと第2歯セットを有し、
前記第1歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから第1軸方向に突出しており、
前記第2歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから逆の第2軸方向に突出しており、
前記シャーシは、第3歯セットと第4歯セットを有し、
前記第3歯セットは、規則的に配置され、且つ前記第2軸方向で一般的に前記第1歯セットと反対側に突出しており、
前記第4歯セットは、規則的に配置され、且つ前記第1軸方向で一般的に前記第2歯セットと反対側に突出しており、
前記第1軸方向または前記第2軸方向に突出している各歯は、前記ラチェットリングの一般的な回転方向に対して前縁と後縁を有し、
前記第1歯セットと前記第2歯セットの各歯の前記後縁は、突出の軸方向に方向を合わされており、前記第1歯セットと前記第2歯セットの各歯の前記前縁は、突出の軸方向に対して後方向に向かって角度を付けられており、
前記第3歯セットおよび前記第4歯セットの各歯の前縁は突出の軸方向に向けられ、前記第3歯セットおよび前記第4歯セットの各歯の後縁は突出の軸方向に対して前方向に向かって角度を付けられていることを特徴とするラチェット機構。
【請求項2】
前記第1歯セットおよび前記第3歯セットからの歯が、前記第2歯セットおよび前記第4歯セットからの歯が揃うように配置されている位置とは異なる前記ラチェットリングおよび前記シャーシの位置で、互いに揃うように配置されている請求項1に記載のラチェット機構。
【請求項3】
前記第1歯セットおよび前記第3歯セットからの歯が前記ラチェットリングの第1位置で対向し、前記第2歯セットおよび前記第4歯セットからの歯が前記ラチェットリングの第2位置で対向し、前記ラチェットリングが一般的な回転方向に回転するに連れて、前記第1位置と前記第2位置が交互になるように、前記歯が配置される請求項2に記載のラチェット機構。
【請求項4】
前記第3歯セットと前記第4歯セットの遠位端の間の間隔が、前記第1歯セットと前記第2歯セットの遠位端の間の間隔よりも小さい請求項1~3のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項5】
前記第3歯セットと前記第4歯セットの遠位端の間の間隔が、前記ラチェットリングの軸方向の長さよりも大きい請求項1~4のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項6】
前記第1歯セットおよび前記第2歯セットが前記ラチェットリングの反対側の表面から突出している請求項1~5のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項7】
前記第1歯セットの歯の数および前記第3歯セットの歯の数が、整数倍によって関連付けられている請求項1~6のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項8】
前記第2歯セットの歯の数および前記第4歯セットの歯の数が、整数倍によって関連付けられている請求項1~7のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項9】
前記第1歯セットの歯の数が前記第2歯セットの歯の数と等しい請求項1~8のいずれか一項に記載のラチェット機構。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のラチェット機構を含むポータブル吸入器であって、
前記ポータブル吸入器は、前記ポータブル吸入器の第2部分に対する前記ポータブル吸入器の第1部分のユーザーによる回転運動に係合された駆動構成要素を有する回転作動機構を備えることを特徴とするポータブル吸入器。
【請求項11】
前記ラチェットリングおよび前記回転作動機構の前記駆動構成要素が、回転係合されるように相互に干渉するリブまたはスロットを有する請求項10に記載のポータブル吸入器。
【請求項12】
前記シャーシが前記ポータブル吸入器の第2部分であり、前記第3歯セットおよび前記第4歯セットが前記シャーシの内壁から延びている請求項11に記載のポータブル吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、患者が薬物吸入器に投薬量を充填するのを支援するための、薬物吸入器のラチェット機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、いくつかの薬は、推進剤または水性媒体中の粒子の溶液または懸濁液などの流体の形で提供され、患者による経口吸入に適合している。経口吸入薬は、典型的には、呼吸器疾患や肺疾患などに苦しむ患者の治療に使用される。そのような薬物が水性媒体から送達されるために、流体は、微細に形成されたノズルを通してゆっくりと動く霧として圧力下で進められ得る。必要な力は、一部の患者が緊急に必要なときに発揮できる力を超える可能性があるため、このような吸入器は、通常、吸入操作とは別のねじり動作によって作動する。更に、使用する準備ができている吸入器をプライミングするために力を加える必要がある場合、患者はプライミング操作を一度に完了できない可能性がある。
【0003】
そのような吸入器に関連するいくつかの問題がある。そのような問題の一つは、吸入器に負荷をかけて完全に装薬された状態にするためには、高い値のトルクが必要になることである。これは、力や器用さが制限されている患者には不可能な場合がある。更に、完全に装薬された状態に達する前に吸入器が解放されると、吸入器は成熟前の状態で活性化され、部分的な用量が放出される。放出された部分量は無駄になり、放出された量の過少カウントにつながるカウンターメカニズムによって登録されない場合がある。これは最終的に、空の吸入器にまだ用量が残っているとユーザーが信じる状況につながる可能性があり、許容できる状況ではない。
【0004】
従って、前述の議論に照らして、従来の薬物吸入器で前述の欠点を克服する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ラチェット機構を提供することを目的としている。本開示は、ポータブル吸入器を装薬するために必要とされるポータブル吸入器の高い装薬力という既存の問題に対する解決策を提供することを目的としている。更に、本開示の実施形態はまた、ポータブル吸入器の完全な装薬の失敗に起因する部分用量を送達するという既存の問題に対する解決策を提供する。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服し、患者が薬剤吸入器に装薬するために必要な回転行動を一時停止することを可能にするソフトミスト吸入器の高い負荷トルクを確実に抑えることができる弾力性のある頑丈なラチェット機構を提供する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示の一実施形態は、以下を含むラチェット機構を提供する。
ラチェットリング、及び、シャーシを含み、
前記ラチェットリングは、ラチェット機構の歯によって決定される一般的な回転方向で、シャーシに対して軸の周りで回転可能であり、
前記ラチェットリングは、第1歯セットと第2歯セットを有し、
第1歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから第1軸方向に突出しており、
前記第2歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから第2逆軸方向に突出しており、
前記シャーシは、第3歯セットと第4歯セットを有し、
前記第3歯セットは、規則的に配置され、前記第2軸方向で一般的に前記第1歯セットと反対側に突出しており、
前記第4歯セットは、規則的に配置され、前記第1軸方向で一般的に前記第2歯セットと反対側に突出しており、
前記第1軸方向または前記第2軸方向に突出している各歯は、前記ラチェットリングの一般的な回転方向に対して前縁と後縁を有し、
第1歯セットと第2歯セットの各歯の後縁は、突出の軸方向に向けられ、第1歯セットと第2歯セットの各歯の前縁は、突出の軸方向に対する後縁方向に向かって曲げられており、
第3歯セットおよび第4歯セットの各歯の前縁は突出の軸方向に向けられ、第3歯セットおよび第4歯セットの各歯の後縁は突出の軸方向に対する前縁方向に向かって曲げられている。
【0007】
任意選択で、前記第1歯セットおよび前記第3歯セットからの歯が、前記第2歯セットおよび前記第4歯セットからの歯が揃うように配置されている位置とは異なる前記ラチェットリングおよび前記シャーシの位置で、互いに揃うように配置されている。
【0008】
任意選択で、前記第1歯セットおよび前記第3歯セットからの歯が前記ラチェットリングの第1位置で対向し、前記第2歯セットおよび前記第4歯セットからの歯が前記ラチェットリングの第2位置で対向し、前記ラチェットリングが一般的な回転方向に回転するに連れて、前記第1位置と前記第2位置が交互になるように、前記歯が配置される。
【0009】
任意選択で、前記第3歯セットと前記第4歯セットの遠位端の間の間隔が、前記第1歯セットと前記第2歯セットの遠位端の間の間隔よりも小さい。
【0010】
任意選択で、前記第3歯セットと前記第4歯セットの遠位端の間の間隔が、前記ラチェットリングの軸方向の長さよりも大きい。
【0011】
任意選択で、前記第1歯セットおよび前記第2歯セットが前記ラチェットリングの反対側の表面から突出している。
【0012】
任意選択で、前記第1歯セットの歯の数および前記第3歯セットの歯の数が、整数倍によって関連付けられている。
【0013】
任意選択で、前記第2歯セットの歯の数および前記第4歯セットの歯の数が、整数倍によって関連付けられている。
【0014】
任意選択で、前記第1歯セットの歯の数が前記第2歯セットの歯の数と等しい。
【0015】
別の態様では、本開示は、本開示のラチェット機構を含むポータブル吸入器であって、前記ポータブル吸入器は、前記ポータブル吸入器の第2部分に対する前記ポータブル吸入器の第1部分のユーザーによる回転運動に係合された駆動構成要素を有する回転作動機構を備えるポータブル吸入器を提供する。
【0016】
任意選択で、前記ラチェットリングおよび前記回転作動機構の前記駆動構成要素が、回転係合されるように相互に干渉するリブまたはスロットを有する。
【0017】
任意選択で、前記シャーシが前記ポータブル吸入器の前記第2部分であり、前記第3歯セットおよび前記第4歯セットが前記シャーシの内壁から延びている。
【発明の効果】
【0018】
本開示の実施形態は、先行技術における前述の問題を実質的に排除するか、又は少なくとも部分的に対処し、ユーザーが必要に応じてねじり動作を一時停止することによって、ユーザーがポータブル吸入器に漸進的に装薬することを可能にする。
【0019】
本開示の追加の態様、利点、特徴、及び目的は、以下の添付の特許請求の範囲と併せて解釈される図面および例示的な実施形態の詳細な説明から明らかにされるであろう。
【0020】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上記の発明の概要、並びに例示的な実施形態である以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構成が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法および手段に限定されない。また、当業者は、図面が原寸に比例していないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は同じ番号で示されている。
【0022】
本開示の実施形態は、ここで、例としてのみ、以下の図を参照して説明される。
図1図1は、本開示の一実施形態による、回転作動機構を有するポータブル吸入器の概略図である。
図2図2は、本開示の一実施形態による、ラチェット機構の概略図である。
図3A図3Aは、本開示の一実施形態による、第1位置にあるラチェット機構の概略図である。
図3B図3Bは、本開示の一実施形態による、第2位置にあるラチェット機構の概略図である。
図4A図4Aは、第1位置にあるラチェット機構の概略図である。
図4B図4Bは、本開示の別の実施形態による、第2位置にあるラチェット機構の概略図である。
図5図5は、本開示の別の実施形態による、図2のラチェット機構を実装するポータブル吸入器の概略図である。
図6図6は、本開示の一実施形態による、ラチェット機構の分解図の概略図である。
【0023】
添付の図面において、下線番号は、下線番号が配置されているアイテムまたは下線番号が隣接しているアイテムを表すために使用されている。下線のない番号は、下線のない番号をアイテムにリンクする線で識別されるアイテムに関連している。番号に下線がなく、関連する矢印が付いている場合、下線のない番号は、矢印が指している一般的なアイテムを識別するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態およびそれらを実施することができる方法を示している。本開示を実施するいくつかの様式が開示されているが、当業者は、本開示を実施または実行するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0025】
一態様では、本開示の一実施形態は、
ラチェットリング、及び、シャーシを含み、
前記ラチェットリングは、ラチェット機構の歯によって決定される一般的な回転方向で、シャーシに対して軸の周りで回転可能であり、
前記ラチェットリングは、第1歯セットと第2歯セットを有し、
前記第1歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから第1軸方向に突出しており、
前記第2歯セットは、前記ラチェットリングの周りに規則的に配置され、且つ前記ラチェットリングから逆の第2軸方向に突出しており、
前記シャーシは、第3歯セットと第4歯セットを有し、
前記第3歯セットは、規則的に配置され、且つ前記第2軸方向で一般的に前記第1歯セットと反対側に突出しており、
前記第4歯セットは、規則的に配置され、且つ前記第1軸方向で一般的に前記第2歯セットと反対側に突出しており、
前記第1軸方向または前記第2軸方向に突出している各歯は、前記ラチェットリングの一般的な回転方向に対して前縁と後縁を有し、
前記第1歯セットと前記第2歯セットの各歯の前記後縁は、突出の軸方向に方向を合わされており、前記第1歯セットと前記第2歯セットの各歯の前記前縁は、突出の軸方向に対して後方向に向かって角度を付けられており、
前記第3歯セットおよび前記第4歯セットの各歯の前縁は突出の軸方向に向けられ、前記第3歯セットおよび前記第4歯セットの各歯の後縁は突出の軸方向に対して前方向に向かって角度を付けられているラチェット機構を提供する。
【0026】
本開示は、ラチェットリングの一般的な回転方向への動きを可能にし、一般的な回転方向と反対の方向への動きを制限することによって、ポータブル吸入器を一般的な回転方向で漸進的に装薬するためのラチェット機構を提供する。本開示の実施形態は、ポータブル吸入器の高い装薬トルクを弾力的に抑制するように動作可能な頑丈なラチェット機構を提供する。本発明のラチェット機構により、ユーザーは装薬動作を数回一時停止することができ、それによってポータブル吸入器の装薬状態に段階的に到達することができる。このような機構により、患者は最小限の力で装薬操作を実行することができ、ユーザーに使い易いポータブル吸入器が提供される。有益なことに、本発明のラチェット機構は、吸入器に装薬するための完全な手動作動制御をユーザーに提供し、それにより、吸入器の時期尚早な活性化およびそこからの流体量の意図しない放出を防止する。更に、本発明のラチェット機構は、薬剤吸入器のカウンターの誤った過少カウントも防止する。
【0027】
本開示を通して、本明細書で使用される「ポータブル吸入器」という用語は、所定量の薬物を噴霧の形態で送達する吸入薬用量ディスペンサーを指す。例えば、当該ポータブル吸入器は、プロピオン酸フルチカゾンなどの喘息薬を含み得る。薬物は、患者などのユーザーによって吸入される。更に、ポータブル吸入器は、流体を少量でより正確に分配するために使用されるマイクロ液体分配システムと呼ばれる。ポータブル吸入器は、少量、通常はマイクロメートルオーダーの液体を制御および操作できる。ポータブル吸入器は、駆動構成要素、例えば、回転作動機構のケージ構成要素を含む。駆動構成要素と、吸入器ハウジングの別の部分に対して回転可能である吸入器ハウジングの第1部分は、投薬量の放出のための作動を提供するために相互に係合されている。吸入器の第2部分は、シャーシの形態であり得る。これは、1つ以上の部分を含み得る。吸入器の第2部分は、適切には、吸入器のマウスピースに対して回転可能ではない。ポータブル吸入器は、作動システムと連動して動作し、作動システムは、装薬端および開放端(マウスピース)を有するハウジングを備える。マウスピースから投与量を受け取るために、吸入器の装薬端は、回転方向にトルクを加えることによって回転される。更に、いったん装薬状態になると、圧力が加えられて、ポータブル吸入器からノズル等の狭い出口を通して流体が分配される。更に、狭い出口により、流体をより高い圧力で供給することができる。ポータブル吸入器は、吸入器の内部に取り外し可能に取り付けられ、使用されていないときに取り外すことができる容器(流体を含む)を含む。特に、計量された量の用量が容器から引き出され、マウスピースを介してノズルを通して送達される。また、ポータブル吸入器はシリンダーの形状を模倣しており、ユーザーの手のひらに簡単に保持できる長さを有している。
【0028】
ラチェットリングは軸を中心に回転可能であり、一般的な回転方向はラチェット機構の歯によって決定される。ラチェットリングは、ラチェットリングの周りに規則的に配置され、ラチェットリングから第1軸方向に突出する第1歯セットと、ラチェットリングの周りに規則的に配置され、ラチェットリングから逆の第2軸方向に突出する第2歯セットとを有する。本明細書で使用される「ラチェットリング」という用語は、軸方向長さを有し、ラチェットリングの軸方向長さによって離間された2つの周面、即ち、第1周面および第2周面を有する環状リングを指す。軸方向長さは、ラチェットリングの第1周面と第2周面との間の距離として定義することができる。第1周面と第2周面は、明確に互いに反対である。
【0029】
第1歯セットは、ラチェットリングの第1周面に配置され、第2歯セットは、ラチェットリングの第2周面に配置される。第1歯セットは、ラチェットリングの第1周面上に均一に配置され、即ち、第1歯セットの歯は、互いに等距離にある。同様に、第2歯セットは、ラチェットリングの第2周面上に均一に配置され、即ち、第2歯セットの歯は、互いに等距離にある。任意選択で、第1歯セットおよび第2歯セットは、ラチェットリング上に不均一に配置され得る。即ち、第1歯セットまたは第2歯セットのそれぞれの歯は、互いに等距離に配置されない。更に、前述のように、第1歯セットは、ラチェットリングから第1軸方向に突出している。本明細書において「第1軸方向」は、ラチェットリングの中心軸(中心を通る軸)に平行であり、ポータブル吸入器のマウスピースに向かう方向を指す。更に、第2歯セットは、ラチェットリングから第2軸方向に突出している。本明細書において「第2軸方向」は、ラチェットリングの中心軸に平行であり、ポータブル吸入器のマウスピースから離れる方向を指す。第1軸方向および第2軸方向は同軸であり、且つ互いに反対であることが理解されよう。本明細書において、第1軸方向および第2軸方向は、ラチェットリングの回転軸の2つの反対方向の方向を単に示すものであり、本明細書に添付される特許請求の範囲を過度に制限するべきではない。特に、ラチェットリングは中心軸を中心に回転するように構成されており、一般的な回転方向はラチェット機構の歯によって決定される。これについては、後で詳しく説明する。
【0030】
更に、本発明のラチェット機構はシャーシを備える。本明細書において「シャーシ」という用語は、ポータブル吸入器の本体を指す。シャーシは、ポータブル吸入器の本体全体を包含し、一緒に固定された1つまたは複数の部品を含み得る。特に、ポータブル吸入器が回転運動を受けても、シャーシは静止したままである。更に、シャーシは、ラチェットリングがその周りを回転するように構成されている中心軸を提供することができる。シャーシの形状は、ポータブル吸入器の内部構造の形状に類似していることが理解されよう。一例では、駆動構成要素およびケージ構成要素は主に円筒形であるため、シャーシも円筒形である。
【0031】
シャーシは、規則的に配置され、第2軸方向に突出し、一般的に第1歯セットとは反対側にある第3歯セットを有する。任意選択で、第3歯セットはポータブル吸入器のシャーシの内壁から突出している。第3歯セットは、駆動構成要素およびそれに結合されたラチェットリングの一般的な回転方向と反対の方向への動きを制限するために、第1歯セットと係合するように配置される。第3歯セットは、シャーシの内壁に均一に配置されている。即ち、第3歯セットの歯は、互いに等距離にある。任意選択で、第3歯セットは、内壁上に不均一に配置され得る。即ち、第3歯セットの歯は、互いに等距離に配置されない。更に、シャーシは、規則的に配置され、第1軸方向に突出し、一般的に第2歯セットとは反対側にある第4歯セットを有する。任意選択で、第4歯セットはポータブル吸入器のシャーシの内壁から突出している。第4歯セットは、駆動構成要素およびそれに結合されたラチェットリングの一般的な回転方向と反対の方向への動きを制限するために、第2歯セットと係合するように配置される。第4歯セットはシャーシ上に均一に配置される。即ち、第4歯セットの歯は互いに等距離にある。任意選択で、第4歯セットは、内壁上に不均一に配置され得る。即ち、第4歯セットの歯は、互いに等距離に配置されない。
【0032】
任意選択で、第4歯セットはカウンター機構に配置される。当該カウンター機構は、環状リングの形態であり得、その上面から突出する第4歯セットを有する。当該カウンター機構は、使用された用量数を決定し、ディスプレイカウンターに残りの用量数を表示することができる。本明細書では、第4歯セットは、反対方向へのラチェットの動きに対抗し、同時に使用された用量数を効率的に記録する。
【0033】
任意選択で、ラチェットリングおよび回転作動機構の駆動構成要素は、ラチェットリングおよびケージ構成要素が回転的に係合するように、相互に干渉するリブまたはスロットを有する。ラチェットリングは、駆動構成要素とケージ構成要素に対して同心円状に配置される。特に、ラチェットリングは、ポータブル吸入器のケージ構成要素に回転的に係合されている。本開示を通して「ケージ構成要素」という用語は、特に、ラチェットリングがケージ構成要素の回転運動と共に移動するように、ラチェットリングがケージ構成要素の外面に回転係合され得る円筒形構造を指す。そのような場合、第1歯セットおよび第2歯セットもまた、ラチェットリングが回転するにつれて移動し、一方、第3歯セットおよび第4歯セットは静止していることが理解されよう。代替の実施形態では、本開示の範囲から逸脱することなく、第1歯セットおよび第2歯セットを有するラチェットリングをシャーシに係合させることができ、第3歯セットおよび第4歯セットは、同じ機能を達成するためにケージ構成要素から突出する。このような場合、第1歯セットおよび第2歯セットは静止しているが、第3歯セットおよび第4歯セットは、ポータブル吸入器が回転方向に回転するに連れて動いている。
【0034】
任意選択で、第3歯セットと第4歯セットの遠位端の間の間隔は、第1歯セットと第2歯セットの遠位端の間の間隔よりも小さい。以下、「遠位端」という用語は、対応する第1歯セット、第2歯セット、第3歯セット、および第4歯セットの各歯の先端を指す。2つの遠位端間の間隔は、2つの異なる軸方向に突出している1つの歯の先端から別の歯の先端までの軸方向の距離として決定される。特に、第3歯セットと第4歯セットの遠位端の間の軸方向距離は、第1歯セットと第2歯セットの遠位端の間の軸方向距離よりも小さい。それによって、第1歯セットと第3歯セットとの相互作用、および第2歯セットと第4歯セットとの相互作用が、回転方向で可能になる。更に、第1歯セットと第3歯セットとの係合、及び第2歯セットと第4歯セットとの係合は、反対方向で可能になる。任意選択で、第3歯セットと第4歯セットの遠位端の間の間隔は、ラチェットリングの軸方向長さよりも大きい。第3歯セットと第4歯セットの遠位端の間の軸方向距離は、ラチェットリングが第3のセットの間に緩くはめ込まれるように、ラチェットリングの軸方向長さよりも大きくなるように設計されることが理解されよう。それによって、ラチェットリングの一般的な回転方向への回転が可能になり、反対方向へのラチェットリングの回転に対抗する。
【0035】
任意選択で、第1歯セットの歯の数は、第2歯セットの歯の数と等しい。ラチェットリングの2つの対向する表面(第1表面と第2表面)の歯の数は等しく、その結果、ラチェット機構で生じるバックラッシュは、ラチェットリングの第1位置と第2位置の両方で等しくなる。任意選択で、第1歯セットの歯の数および第3歯セットの歯の数は、整数倍によって関連付けられる。一例では、第3歯セットには、ポータブル吸入器の内壁から円周方向に規則的に延びる8つの数の歯がある。各歯は、各歯が45度の角度で離間するように内壁に配置され、それにより、歯の配置が均一になる。更に、第1歯セットの歯の数は、2の整数倍であり得、それにより、第1歯セットは、第1表面の周囲に規則的に配置され、27.5度の角度で離間された16の数の歯を有し得る。特に、第1歯セットの歯の数は、第2歯セットの歯の数の2倍である。従って、ラチェットリングが第1位置にあるとき、反対方向の回転運動を制限するために、第3歯セットの2つの歯の間に位置する第1歯セットの2つの歯が存在する。別の例では、第1歯セットの歯の数は、第2歯セットの歯の数に等しい。このような場合、第1歯セットの各歯は、第2歯セットの歯の1つと係合して、反対方向の回転運動を制限する。第1位置と第2位置は機能的に互いに同等であり、ラチェット機構は、一般的な回転方向で動作するときにこれらの位置を交互に通過することが理解されよう。更に、ラチェットリングは、様々な歯のセットが互いに乗り越えるときに垂直方向の変位を受け、ラチェットリングの回転軸が一時的にずれることがある。但し、全体の回転方向は「一般的な回転方向」と呼ばれる。
【0036】
任意選択で、第2歯セットの歯の数および第4歯セットの歯の数は、整数倍によって関連付けられる。一例では、第4歯セットには、ポータブル吸入器の内壁から円周方向に規則的に延びる8つの数の歯がある。各歯は、歯が45度の角度で離間するように内壁に配置され、それによって歯の配置が均一になる。更に、第2歯セットの歯の数は、2の整数倍であり得、それにより、第1歯セットは、27.5度の角度だけ離れて、第1表面の周囲に規則的に配置された16の数の歯を有し得る。特に、第2歯セットの歯の数は、第4歯セットの歯の数の2倍である。従って、ラチェットリングが第2位置にあるとき、反対方向の回転運動を制限するために、第4歯セットの2つの歯の間に配置された第2歯セットの2つの歯がある。別の例では、第2歯セットの歯の数は、第4歯セットの歯の数に等しい。このような場合、第2歯セットの各歯は、第4歯セットの歯の1つと係合して、反対方向の回転運動を制限する。
【0037】
特に、第1セット、第2セット、第3セットおよび第4セットのそれぞれの歯の数および歯間の間隔は、ポータブル吸入器に装薬するために回転方向に加えられるトルクの量に影響を与える。歯の数が多いほど、ポータブル吸入器に装薬するのに必要なトルクの量が大きくなることが理解されよう。更に、トルクの量は、第1歯セットと第3歯セットの各歯の先端、また第2歯セットと第4歯セットの各歯の先端の間の摩擦の量に正比例する。噛み合った歯の先端間の摩擦量が大きくなるほど、ポータブル吸入器に装薬するために必要なトルク量が大きくなる。また、トルクの量はラチェットリングの回転慣性に正比例する。
【0038】
第1軸方向または第2軸方向に突出する各歯は、ラチェットリングの一般的な回転方向に対して前縁および後縁を有する。本明細書において、一般的な回転方向は、ポータブル吸入器に装薬するためにトルクが加えられる方向を指す。一例では、一般的な回転方向は時計回りであるため、ポータブル吸入器を時計回りに回転させると、ラチェットリングの歯とシャーシの歯が互いに噛み合って時計回りの動きが可能になり、反時計回りの動きが制限される。別の例では、一般的な回転方向は反時計回りであるため、ポータブル吸入器を反時計回りに回転させると、ラチェットリングの歯とシャーシの歯が互いに噛み合って反時計回りの動きが可能になり、時計回りの動きが制限される。
【0039】
特に、各歯の前縁および後縁は、ラチェットリングの一般的な回転方向に基づいて決定される。各歯の前縁および後縁は、ポータブル吸入器の回転方向に応じて、軸方向に直線に整列させるか、または角度を付けることができる。例えば、前縁または後縁は、角度の付いたプロファイルまたは垂直のプロファイルを有し得る。第1歯セットおよび第2歯セットの各歯の後縁は、突出の軸方向(ここでは、第1軸方向)に向けられ、第1歯セットおよび第2の歯の各歯の前縁は、突出の軸方向(ここでは、第2軸方向)に対して後縁方向に向かって角度が付けられる。更に、第3歯セットおよび第4歯セットの各歯の前縁は、突出の軸方向(ここでは、第1軸方向)に向けられ、第3歯セットおよび第4歯セットの各歯の後縁は、突出の軸方向(ここでは、第2軸方向)に対して前縁方向に向かって角度が付けられる。ラチェットリングおよびポータブル吸入器の滑らかで低力の回転のために、第1歯セットおよび/または第2歯セットの角度の付いたプロファイル(前縁)が、回転方向の第3歯セットおよび/または第4歯セットの角度の付いたプロファイル(後縁)と相互作用することが理解されよう。更に、第1歯セットおよび/または第2歯セットの垂直プロファイル(後縁)は、第3歯セットおよび/または第4歯セットの垂直プロファイル(前縁)と係合して、回転方向と反対の方向へのラチェットリングの反動を制限する。単純化および明確化のために、特に明記しない限り、ポータブル吸入器およびそれによるラチェットリングの一般的な回転方向は、反時計回りであると見なされる。
【0040】
ポータブル吸入器に装薬するためにポータブル吸入器を反時計回りに回転させると、第1歯セットの各歯の前縁は、第3歯セットの各歯の後縁と相互作用する。更に、第2歯セットの各歯の前縁は、第4歯セットの各歯の後縁と相互作用し、それ以降、ラチェットリングおよびポータブル吸入器を回転方向に回転させることができる。しかしながら、ラチェットリングが回転方向と反対の方向に回転されるとき、第1歯セットの各歯の後縁は、第3歯セットの各歯の前縁と係合する。更に、第3歯セットの各歯の後縁は、第4歯セットの各歯の前縁と係合する。その結果、ラチェットリングとポータブル吸入器の回転方向と反対の方向への回転が制限される。特に、ラチェットリングの動きを制限することにより、駆動部品の動きをユーザーが望むように制御することができる。
【0041】
有益なことに、そのようなラチェット機構は、ユーザーが吸入器を徐々に、即ち段階的に装薬することを可能にし、それによってデバイスをユーザーフレンドリーなものにする。任意選択で、ポータブル吸入器は、ポータブル吸入器に装薬するために、180度の回転変位を必要とするようにする。一例では、ポータブル吸入器は、単一ステップで180度の回転変位を有するように回転させることができる。別の例では、ポータブル吸入器は、2ステップで180度の回転変位を有するように回転され得、第1の回転変位は90度であり、続いての第2の回転変位が90度である。別の例では、ポータブル吸入器は、3ステップで180度の回転変位を有するように回転され得、第1の回転変位は60度であり、続いて60度の第2の回転変位、続いて60度の第3の回転変位を有するように回転され得る。180度の回転変位は、ユーザーが望むように、任意の数の増分回転変位およびそれらの間の任意の数の休止によって達成され得ることが理解されるであろう。特に、段階的な回転変位の間の休止は、ラチェットリングと駆動構成要素を中間の負荷状態でも所定の位置に弾性的に保持することによって、本発明のラチェット機構により提供される。
【0042】
任意選択で、第1歯セットおよび第3歯セットからの歯は、ラチェットリングおよびシャーシの異なる相対位置で、互いに整列するように配置される。かかる位置において、第2歯セットおよび第4歯セットからの歯は互いに整列する。特に、第1歯セットの各歯は、第2歯セットの各歯と軸方向に整列し、第3歯セットの各歯は、第4歯セットの各歯と軸方向に整列する。シャーシから突出している第3歯セットおよび第4歯セットは、明確に事前決定された角度によって、ラチェットリングから突出している第1歯セットおよび第2歯セットから噛み合わされ得る。一例では、第3歯セットおよび第4歯セットは、第1歯セットおよび第2歯セットから15度の角度で噛み合わされる。
【0043】
任意選択で、ラチェットリングの第1位置で第1歯セットおよび第3歯セットからの歯が反対向きになり、また、ラチェットリングの第2位置で第2歯セットおよび第4歯セットからの歯が反対向きになることにより、ラチェットリングが一般的な方向に回転するに連れて第1位置と第2位置が交互に起きるように歯を配置する。特に、事前に決定されたオフセット角度と、ポータブル吸入器に加えられたトルクがゼロに減少するラチェットリングの位置で、第1歯セットおよび第3歯セットは、ラチェットリングの異なる位置で係合するように配置され、第2歯セットおよび第4歯セットは、ラチェットリングの異なる位置で係合するように配置される。ポータブル吸入器が初期状態(無負荷状態)にあるとき、ラチェットリングの第1歯セットは、シャーシの第3歯セットと係合することができる。その結果として得られる位置は、ラチェットリングの第1位置と見なされる。更に、ポータブル吸入器が一般的な回転方向に15度回転すると、ラチェットリングの第2歯セットとシャーシの第4歯セットが係合して、ラチェットリングの反対方向の動きが制限される。その結果として得られる位置は、ラチェットリングの第2位置と見なされる。オフセット角度の値が、ラチェットリングに起因する最大のバックラッシュ程度を決定することが理解されよう。特に、第1歯セットの歯の遠位端と第3歯セットの歯との間の間隔、また、第2歯セットの歯の遠位端と第4歯セットとの間の間隔が、歯のオフセット角度を決定し、それによって、ラチェットリングに起因するバックラッシュの程度が決定される。オフセット角度は、第1歯セットの歯の遠位端と第3歯セットの歯との間の間隔、及び第2歯セットの遠位端と第4歯セットの歯との間の間隔を増加または減少させることによって、増加または減少させることができる。
【0044】
前述のように、ラチェットリングの一般的な回転方向にトルクを加えることによってラチェットリングが回転すると、ラチェットリングの第1位置と第2位置が交互に起こる。特に、ラチェット機構は、ラチェットリングの位置(第1位置または第2位置)に応じて、第1歯セットを第3歯セットと係合させるか、及び/又は、第2歯セットを第4歯セットと係合させることによって、反対方向へのラチェットリングの回転運動に対抗するように構成される。ラチェットリングは、最初に遭遇する歯のセットに応じて、ラチェットリングを第3歯セット(即ち、第1位置)および第4歯セット(即ち、第2位置)の一方または両方と係合させることによって、ポータブル吸入器の反対方向への動きに対抗できることが理解されるであろう。一例では、装薬中にポータブル吸入器に加えられるトルクがゼロに減少すると、ラチェットリングの第1歯セットが第3歯セットと係合し、ラチェットリングを所定の位置である第1位置に保持することができる。又は、ラチェットリングの第2歯セットは第4歯セットと係合して、ラチェットリングを所定の位置である第2位置に保持することができる。
【0045】
任意選択で、ラチェットリングは、軸方向に平行移動し、第3歯セットまたは第4歯セットのいずれかと係合するように構成される。ラチェットリングは、駆動構成要素の並進運動に応じて往復運動し、それによって第1位置と第2位置の間で平行移動する。このような場合、ラチェットリングは、駆動構成要素の軸方向の動きに応じてラチェットリングが軸方向に移動するように、駆動構成要素に回転的に係合される。特に、ラチェットリングは軸方向に移動するだけでなく回転し、駆動構成要素の動きを往復させる。ここで、ラチェットリングの第1位置は、ポータブル吸入器が初期状態にあるとき、即ち回転変位がゼロであるときの位置である。そのような位置で、第1歯セットの各歯の後縁は、第3歯セットの歯の一つの前縁と係合し、駆動構成要素は最も高い位置にある。ポータブル吸入器を回転方向(反時計回り)に回転させると、駆動構成要素が回転するに連れて、第1歯セットと第2歯セットの歯の前縁のそれぞれが互いに相互作用し、ラチェットリングが下向きの軸方向へ徐々に動く。ラチェットリングは下向きの軸方向に移動して、第2位置に到達する。そのような位置で、第2歯セットの各歯の後縁は、第4歯セットの一方の歯の前縁と係合し、駆動構成要素は最も低い位置にある。ポータブル吸入器が作動すると、回転作動機構の機能によって逆回転を防ぐことができる。
【実施例
【0046】
図1を参照すると、本開示の実施形態によるラチェット機構を含むのに適したタイプのポータブル吸入器100の概略図が示されている。示されているように、ポータブル吸入器100は、装薬端部104を有するシャーシ102と、マウスピース106を含む開放端部とを備える。シャーシ102は、回転作動機構が第1位置から第2位置に移行する際に1回分の薬を分配するために解放可能な駆動構成要素(図示せず)を含む回転作動機構を囲む。更に、駆動構成要素は、ケージ構成要素(図示せず)に回転係合され、ケージ構成要素は、ラチェットリング(図示せず)に回転係合される。ポータブル吸入器100に装薬するために、装薬端部104は、反時計回り方向に回転して、180度の回転変位を提供する。本明細書では、180度の回転変位は、ラチェット機構(図示せず)を介してポータブル吸入器100の回転変位を漸進的に制御することによって一時停止で達成され得る。
【0047】
図2を参照すると、本開示の一実施形態による、図1のポータブル吸入器などのポータブル吸入器のラチェット機構200の概略図が示されている。示されているように、ラチェット機構200は、第1歯セット204および第2歯セット206を有するラチェットリング202を備える。ここで、第1歯セット204は、ラチェットリング202の周りに規則的に配置され、第1軸方向208に突出している。ラチェットリング202からの第2歯セット206は、ラチェットリング202の周りに規則的に配置され、ラチェットリング202から第2軸方向210に突出している。特に、第1軸方向208および第2軸方向210は、180度の角度をなしている。即ち、第1軸方向208と第2軸方向210は互いに反対である。更に、ラチェット機構200は、第3歯セット212および第4歯セット214を有するシャーシ(図示せず)を備える。第3歯セット212は、ポータブル吸入器のシャーシの内壁に規則的に配置され、第2軸方向210(第1歯セット204の反対側)に突出している。第4歯セット214もまた、ポータブル吸入器のシャーシの内壁に規則的に配置され、第1軸方向208(第2歯セット206の反対側)に突出している。特に、第1歯セット204、第2歯セット206、第3歯セット212、及び第4歯セット214の各歯は、回転方向216に関して後縁および前縁を有する。即ち、前縁は、各ラチェット歯204、206の進む側に対応する。
【0048】
示されているように、回転方向にトルクを加えることによってポータブル吸入器が回転方向216(ここでは反時計回り方向)に回転されると、第1歯セット204の前縁は、第3歯セット212の前縁と相互作用し、第2歯セット206の前縁は、第4歯セット214の前縁と相互作用し、ラチェットリングへの回転方向216の移動が可能になる。
【0049】
図3Aを参照すると、本開示の一実施形態による、ラチェットリング202の第1位置にあるラチェット機構300A(図2のラチェット機構など)の概略図が示されている。回転方向(図示せず)でポータブル吸入器に加えられるトルクが、180度の回転変位を達成する前にゼロに減少すると、ラチェットリング202は、回転作動機構の傾斜した特徴によって回転方向に向けられるばね力の影響で時計回り方向302に引き戻される。更に、ラチェットリング202の後退は、第3歯セット212によって対抗される。第1歯セット204の各歯の後縁は、第3歯セット212の歯の前縁と係合する。それにより、回転方向にトルクを加えることによって達成されたラチェットリング202の位置が保持される。第1歯セット204が第3歯セット212と係合してラチェットリング202の方向302への動きを制限するときのラチェットリング202のこの位置は、ラチェットリング202の第1位置である。
【0050】
図3Bを参照すると、本開示の実施形態による、ラチェットリング202の第2位置にあるラチェット機構300B(図2のラチェット機構など)の概略図が示されている。回転方向(図示せず)でポータブル吸入器に加えられるトルクが、180度の回転変位を達成する前にゼロに減少すると、ラチェットリング202は、時計回り方向302に後退する。更に、ラチェットリング202の後退は、第4歯セット214によって対向されている。第2歯セット206の歯の後縁は、第4歯セット214の歯の前縁と係合し、それにより、回転方向にトルクを加えることで達成されたラチェットリング202の位置が保持される。第2歯セット206が第4歯セット214と係合して方向302へのラチェットリング202の動きが制限されるときのラチェットリング202のこの位置は、ラチェットリング202の第2位置である。
【0051】
図4Aを参照すると、本開示の実施形態による、ラチェットリング202の第1位置にあるラチェット機構400A(図2のラチェット機構など)の概略図が示されている。第1歯セット204の歯の後縁は、第3歯セット212の歯の前縁と係合し、駆動構成要素は最も高い位置にある。ポータブル吸入器が回転方向402(反時計回り)に回転すると、第1歯セット204の歯の前縁と第3歯セット212の歯の後縁のそれぞれが互いに相互作用し、ラチェットリング202は、軸方向下方向へ徐々に移動し、ポータブル吸入器が回転するに連れて、駆動構成要素と共に回転する。
【0052】
図4Bを参照すると、本開示の実施形態による、ラチェットリングの第2位置にあるラチェット機構400B(図2のラチェット機構など)の概略図が示されている。第2歯セット206の歯の後縁は、第4歯セット214の歯の前縁と係合し、駆動構成要素は最も低い位置にある。ポータブル吸入器が回転方向402(反時計回り)に回転すると、第2歯セット206の歯の前縁と第4歯セット214の歯の後縁のそれぞれが互いに相互作用し、ラチェットリング202は、軸方向に上向きの方向へ徐々に移動し、ポータブル吸入器が回転するに連れて、駆動構成要素と共に回転する。
【0053】
図5を参照すると、本開示の実施形態による、図2のラチェット機構を用いる、外側ケーシングが取り外されたポータブル吸入器500の正面概略図が示されている。示されるように、ポータブル吸入器500は、装薬端502およびマウスピース504を備える。更に、ポータブル吸入器は、第1軸方向510に突出する第1歯セット508および第2軸方向514に突出する第2歯セット512を有するラチェットリング506を備える。ラチェットリング506は、2つの環状リング516と518との間に配置される。環状リング516は、第2軸方向514に突出する第3歯セット520を有し、環状リング518は、第1軸方向510に突出する第4歯セット522を有する。
【0054】
図6を参照すると、本開示の一実施形態による、ラチェット機構600(図2のラチェット機構など)の分解概略図が示されている。示されるように、ラチェット機構600は、第1歯セット604および第2歯セット606を有するラチェットリング602を含み、各セットは、第1軸方向608および第2軸方向610という2つの反対の軸方向にラチェットリング602の対向する表面から突出している。更に、ラチェット機構600は、第3歯セット614および第4歯セット616を有するシャーシ612を備える。特に、ラチェットリング602は、ケージ構成要素(図示せず)に回転係合しており、シャーシ612は、ラチェットリング602がシャーシ612の第3歯セット614と第4歯セット616との間にぴったりとはまるように、ケージ構成要素に結合されたラチェットリング602を取り囲む。
【0055】
前述の本開示の実施形態への変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく可能である。本開示を説明および主張するために使用される「含む(including)」、「含む(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「有する(have)」、「である(is)」などの表現は、非排他的な様式で、即ち、存在するものとして明確には記載されていない項目(items)、部品(components)、要素(elements)も許容するものとして解釈されることが意図されている。単数形への言及は、複数形にも関連すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】