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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】油圧膨張チャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/30 20060101AFI20220831BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B23B31/30 A
B23B31/02 601C
B23B31/02 601E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576865
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2020066864
(87)【国際公開番号】W WO2021001155
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】102019209732.4
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508064506
【氏名又は名称】ギューリング カーゲー
【氏名又は名称原語表記】GUEHRING KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マタイス,クラウス
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB11
3C032FF01
3C032KK00
(57)【要約】
本発明は、油圧膨張チャックであって、回転軸(2)に沿って延びるベース本体(1)を有し、前記ベース本体(1)は、シャフト工具を収容されてクランプするためのクランプ部(30)と、油圧膨張チャックをモジュラー工具システムのモジュールまたは機械スピンドルに直接または間接的に結合するための中空シャフト(21)を有するシャフト部(20)とを有する、油圧膨張チャックに関する。前記クランプ部(30)は、中央収容開口部(31)を有し、前記クランプ部(30)はまた、流体圧力を作用可能な少なくとも1つの圧力チャンバ(34)であって、弾性的に可撓性の膨張壁を介して収容開口部(31)から分離され、圧力流路(33)を介して、ベース本体(1)に配置された圧力発生装置(40)に接続された、圧力チャンバ(34)を、前記収容開口部の周りに有する。本発明によれば、圧力発生装置(40)は、収容開口部と同軸であって中空シャフト(21)内へ開口する中央凹部(32)において、収容開口部(31)と中空シャフト(21)との間の領域に軸方向に配置されており、圧力発生装置(40)は、中空シャフト(21)を介して操作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧膨張チャックであって、
回転軸に沿って延びるベース本体(1)を有し、
前記ベース本体(1)は、シャフト工具を収容されてクランプするためのクランプ部(30)と、油圧膨張チャックをモジュラー工具システムのモジュールまたは機械スピンドルに直接または間接的に結合するための中空シャフト(21)を有するシャフト部(20)とを有し、
前記クランプ部(30)は、中央収容開口部(31)を有し、前記クランプ部(30)はまた、流体圧力を作用可能な少なくとも1つの圧力チャンバ(34)であって、弾性的に可撓性の膨張壁を介して前記収容開口部(31)から分離され、圧力流路(33)を介して、ベース本体(1)に配置された圧力発生装置(40)に接続された、圧力チャンバ(34)を、前記収容開口部(31)の周りに有する、油圧膨張チャックにおいて、
前記圧力発生装置(40)は、前記収容開口部(31)と同軸であって前記中空シャフト内へ開口する中央凹部(32)において、前記収容開口部(31)と前記中空シャフト(21)との間の領域に軸方向に配置されており、前記圧力発生装置(40)は、前記中空シャフト(21)を介して操作可能であることを特徴とする、油圧膨張チャック。
【請求項2】
前記凹部は、前記収容開口部(31)から流体的に分離されていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧膨張チャック。
【請求項3】
前記圧力発生装置(40)は、
前記中央凹部(32)内で軸方向に変位可能に配置されたピストン(42)と、
前記ピストン(42)を変位させるねじ本体(41)であって、前記ベース本体(1)内へ軸方向にねじ込まれ、前記中空シャフト(21)を介して操作可能なねじ本体(41)と、
を有するピストン機構を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の油圧膨張チャック。
【請求項4】
前記ねじ本体(41)は、前記凹部(32)に軸方向に隣接するねじ穴(22)にねじ込まれる調整ねじから形成されることを特徴とする、請求項3に記載の油圧膨張チャック。
【請求項5】
前記ねじ穴(22)は、前記シャフト部(20)に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の油圧膨張チャック。
【請求項6】
前記ピストン(42)には、シール本体(43)が設けられていることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の油圧膨張チャック。
【請求項7】
少なくとも1つの前記圧力チャンバ(34)と、前記圧力流路(33)と、前記中央凹部(32)の少なくとも一部とが、前記クランプ部(30)内に形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の油圧膨張チャック。
【請求項8】
少なくとも1つの前記圧力チャンバ(34)を換気装置(38)に接続する換気流路(37)を備えたことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の油圧膨張チャック。
【請求項9】
前記換気装置(38)は、前記換気流路(37)と共に、前記クランプ部(30)に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の油圧膨張チャック。
【請求項10】
前記換気流路(37)と前記圧力流路(33)とが、前記回転軸または長手方向中心軸(2)に対して互いに180°ずれていることを特徴とする、請求項9に記載の油圧膨張チャック。
【請求項11】
前記中空シャフト(21)が、中空シャフト円錐体として形成されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の油圧膨張チャック。
【請求項12】
前記クランプ部(30)と前記シャフト部(20)とは、別々に製造された本体から形成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の油圧膨張チャック。
【請求項13】
前記クランプ部(30)と前記シャフト部(20)とは、形状結合、力結合および/または材料結合で互いに接合されていることを特徴とする、請求項12に記載の油圧膨張チャック。
【請求項14】
前記クランプ部(30)および/または前記シャフト部(20)は、一体に形成されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の油圧膨張チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の油圧膨張チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
このような油圧膨張チャックは、例えば、国際公開第2017/093280A1号、DE102012215036A1号、DE10312743A1号、DE102012110392B4号または国際公開第2015/166062号A1号から公知であり、回転軸または長手方向中心軸に沿って延びるベース本体を有し、このベース本体は、機能的に、シャフト工具を収容してクランプするためのクランプ部と、シャフト部とに分割することができる。クランプ部は、流体圧力を作用可能な少なくとも1つの圧力チャンバを中央収容開口部の周りに有し、この少なくとも1つの圧力チャンバは、弾性的に可撓性の膨張壁を介して収容開口部から分離され、圧力流路を介して、ベース本体内に配置された圧力発生装置に接続されている。流体圧力が少なくとも1つの圧力チャンバに作用されると、膨張壁は、中央収容開口部に収容されたシャフト工具、例えばドリルまたはフライスに対して膨らみ、中央収容開口部に収容されたシャフト工具を力結合でクランプする。シャフト工具のクランプを外すためには、少なくとも1つの圧力チャンバ内の流体圧力が低減される。少なくとも1つの圧力チャンバ内の流体圧力を調整するために、既知の油圧膨張チャックは、通常、クランプ部内の穴内に着座して圧力発生空間を画定する圧力およびシール本体と、穴内に着座して圧力およびシール本体を圧力発生空間の方へ押すピストンと、ピストンを変位させ、穴に軸方向に隣接するねじ穴内に着座した調整ねじとを有する、ピストンクランプ機構の形態の圧力発生装置を有する。ねじ穴は、クランプ部の外側ジャケット表面に開口しており、その結果、調整ねじは、クランプ部の外側から操作可能である。圧力発生空間は、圧力流路を介して少なくとも1つの圧力チャンバに接続される。
【0003】
このように構成された圧力発生装置は、半径方向外側から半径方向内側にベース本体の回転軸または長手方向中心軸に対して横方向に延びるようにベース本体内に配置されている。
【0004】
回転軸または長手方向中心軸から半径方向にずれた圧力発生装置の配置は、ベース本体の非対称な断面構成をもたらし、したがって、回転軸または長手方向中心軸の周りの不均一な質量分布、および油圧膨張チャックの使用における不均衡をもたらす。クランプされたシャフト工具の半径方向の不均衡に起因する振れ誤差をできるだけ小さく保つために、既知の油圧膨張チャックは、通常、初めて使用される前に均衡化される。必要とされる均衡の質または不均衡の程度に応じて、均衡化処理は非常に複雑になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、一般的な油圧膨張チャックから出発して、不均衡が低減された油圧膨張チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する油圧膨張チャックによって達成される。有利なまたは好ましい展開は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明による油圧膨張チャックは、回転軸または長手方向中心軸に沿って延びるベース本体を有し、このベース本体は、シャフト工具、例えばドリルまたはフライス、を収容されてクランプするためのクランプ部と、油圧膨張チャックをモジュラー工具システムのモジュールまたは機械スピンドルに直接または間接的に結合するための中空シャフトを有するシャフト部とを有する。クランプ部は、軸方向に延びる中央収容開口部を有し、クランプ部はまた、流体圧力を作用可能な少なくとも1つの圧力チャンバを収容開口部の周りに有する。少なくとも1つの圧力チャンバは、弾性的に可撓性の膨張壁を介して収容開口部から分離されている。流体圧力が少なくとも1つの圧力チャンバに作用されると、膨張壁は、中央収容開口部に収容されたシャフト工具に対して膨らみ、中央収容開口部内に収容されたシャフト工具を力結合でクランプする。少なくとも1つの圧力チャンバは、収容開口部を取り囲むリングの形態で形成され得、またこの少なくとも1つの圧力チャンバは、軸方向に分離されるように形成されて互いに流体的に接続される1つまたは複数の圧力チャンバを備え得る。好ましい実施形態では、油圧膨張チャックは、1つまたは複数の偏心接続流路を介して互いに接続された2つの環状に形成された圧力チャンバを有する。いずれの場合でも、少なくとも1つの圧力チャンバは、圧力流路を介して、ベース本体内に配置された圧力発生装置に接続されている。
【0008】
冒頭で述べた一般的な油圧膨張チャックとは対照的に、本発明による圧力発生装置は、収容開口部と同軸であって中空シャフト内へ開口する中央凹部において、収容開口部と中空シャフトとの間の領域に軸方向に配置されており、圧力発生装置は、中空シャフトを介して操作可能である。したがって、圧力発生装置は、回転軸または長手方向中心軸の方向に対応する延長方向を有する。本発明の中央配置は、油圧膨張チャックの回転軸または長手方向中心軸の周りに、より均一な質量分布を達成可能であり、詳しくは、その質量分布では、ベース本体および圧力発生装置の主要慣性軸が回転軸または長手方向中心軸の少なくとも近傍に位置しており、したがって、本発明による圧力発生装置の中央配置は、圧力発生装置に起因する油圧膨張チャックの不均衡を大幅に低減することができる。さらに、圧力発生装置の軸方向の延長によって、ベース本体の半径方向の延長を、公知の油圧膨張チャックの場合よりも小さく保つことができる。さらに、本発明によれば、圧力発生装置は、中空シャフトを介して操作可能である。圧力発生装置は、シャフト部の、クランプ部とは反対側に開口する中空シャフトを通してアクセス(出し入れ)可能である。
【0009】
この目的のために、中空シャフトは、例えば、当業者に知られた、中空シャフト円錐体(コーン、テーパ)(HSK)シャフト、急勾配円錐体(SK)シャフト、または円筒形シャフトとして形成することができる。
【0010】
好ましい実施形態では、好ましくは円筒形の凹部は、収容開口部から流体的に分離されている。凹部は、例えば、中空シャフトからクランプ部の方向に延びて軸方向に収容開口部の前で終わる、軸方向の止まり穴(盲穴)から形成することができる。この場合、圧力流路は、基部の領域で止まり穴内へ開口することができる。
【0011】
さらに、圧力流路内に流体圧力を発生させるための圧力発生装置は、凹部内で軸方向に変位可能に配置されたピストンと、ピストンを変位させ、ベース本体に軸方向にねじ込まれ、中空シャフトを介して操作可能なねじ本体と、を有するピストン機構を有することができる。この場合、ピストンは、圧力流路が開口する基部の領域に圧力発生空間を画定することができる。
【0012】
ピストンには、凹部内に正確に着座するシール本体であって、弾性材料、例えばゴムまたは高強度プラスチックから成る、シール本体を設けることができる。
【0013】
ねじ本体は、例えば、中央凹部を軸方向に伸ばすねじ穴にねじ込まれてピストンに直接または間接的に作用する調整ねじとすることができる。ねじ本体が着座するねじ穴は、シャフト部に形成することができ、一方、ピストンおよび場合によってはシール本体が着座して、圧力発生空間が位置する、中央凹部の少なくともその長手方向部分は、クランプ部に形成することができる。シャフト部にねじ穴を形成し、クランプ部に凹部を形成することは、シャフト部およびクランプ部が、最初に別々に製造され、次いで、形状結合、力結合および/または材料結合によって軸方向に互いに接合された本体となる場合に、特に有利である。この場合、特に、少なくとも1つの圧力チャンバと、圧力流路と、中央凹部の少なくとも一部とによって、より複雑な中空構造を有するクランプ部は、3D印刷によって付加的に製造することができる。一方、中空シャフトと、ねじ穴と、場合によっては中央凹部の一部とによって、より単純な中空構造を有するシャフト部は、従来の方法で、例えば金属体を切削加工することによって製造することができる。これに代えて、油圧膨張チャックのベース本体は、全体として、例えば、付加的な製造によって一体(モノリシック)に構成することができる。
【0014】
同時に、シャフト部とクランプ部との間の接触点におけるピストンの起こり得る不規則性の間の意図しない相互作用を回避することができる。圧力制限空間が位置して圧力流体がある中央凹部の長手方向部分が接触点の外側にあるので、接触点に追加のシールを設ける必要がない。
【0015】
さらに、チャックの製造のために適切なクランプ部を適切なシャフト部と組み合わせることができるので、クランプ部とシャフト部とを別々に製造することにより、チャックのモジュール化された構造、したがって広範囲の用途が可能になる。
【0016】
回転方向に固定された軸方向の接続を行うために、クランプ部およびシャフト部は、形状結合、力結合および/または材料結合で互いに接合される。形状結合は、例えば、ねじ留め、クランプ留めなどによって達成することができ、これは、技術的に実施が容易であり、安定した、同時に解放可能な接続を保証する。材料結合接続は、例えば、溶接、はんだ付けまたは接着によって達成される。
【0017】
構成要素の高い強度および耐久性ならびに高い同心性を保証するために、チャック全体を、例えば付加的な製造によって、一体(モノリシック)にすることができる。
【0018】
油圧膨張チャックはまた、少なくとも1つの圧力チャンバを換気装置に接続する換気流路を、当業者に知られている方法で有することができる。換気装置は、初めてまたは再び充填された後に、圧力チャンバ、圧力流路、中央凹部等から形成される圧力流体システムを換気するために使用され、詳しくは、充填後に外部に向かって気密封止される。
【0019】
上述した換気装置は、上述した理由により、換気流路と共に、クランプ部に形成することができる。設計によって引き起こされる不均衡をできるだけ小さく保つために、換気流路および圧力流路が、回転軸または長手方向中心軸に対して互いに180°ずれている場合に、有用であり得る。
【0020】
本発明は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による油圧チャックの側面図を示す。
図2】本発明による油圧チャックの端面図を示す。
図3図2の線AAに沿った本発明による油圧チャックの縦断面図である。
図4】本発明による油圧チャックの図3において円で囲まれた領域Bの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図4は、本発明による油圧膨張チャックの好ましい実施形態を示す。
【0023】
本発明による油圧膨張チャックは、回転軸または長手方向中心軸2に沿って延びて機能的にシャフト部20とクランプ部30とに分割することができるベース本体1を有する。
【0024】
シャフト部20は、ベース本体1を、分離点(図示せず)(工具システム内)にまたはクランプ部30とは反対の側のインターフェース(機械スピンドルへの直接取り付け)に接続するために設けられている。このような接続のために、シャフト部20は、図3に示すように、クランプ部30とは反対の側に中空シャフト21を有する。好ましい実施形態では、シャフト(シャンク)は、当業者に知られているHSKシャフトによって形成される。
【0025】
図3から分かるように、中空シャフト21は、中心に位置する空洞21aを有し、この空洞は、回転軸または長手方向中心軸2に対して本質的に回転対称であり、クランプ部30とは反対の側に開口している。さらに、シャフト部20は、回転軸または長手方向中心軸2に沿って延びる中央ねじ穴22を有し、止まり穴の形態の中央凹部32がクランプ部30において中央ねじ穴22に隣接し、中央凹部32は、回転軸または長手方向中心軸2に沿ってクランプ部30内へ延びる。ねじ穴22は、止まり穴よりも大きな直径を有する。
【0026】
ねじ穴22には、調整ねじの形態のねじ本体41がねじ込まれ、ねじ本体41は、後に詳述されて中央凹部32に着座するピストン42をクランプ部30の方向に押し動かす。
【0027】
図1および図3から分かるように、好ましい実施形態のシャフト部20は、クランプ部30に面する端面でクランプ部30に接続されるように形成されている。
【0028】
クランプ部30は、シャフト工具(図示せず)を収容してクランプするために設けられている。
【0029】
クランプ部30は、回転軸または長手方向中心軸2に沿って延びる中央収容開口部31であって、シャフト部20とは反対の端面に開口し、シャフト工具を収容してそれを油圧でクランプする、中央収容開口部31を有する。図3に示すように、中央収容開口部31は、中央凹部32およびシャフト部20のねじ穴22と同軸に延びている。図3はまた、好ましい実施形態においては、中央収容開口部31が、中央凹部32から離間され、したがって流体的に分離されていることを示す。
【0030】
図3に見られるように、上述の中央凹部32、詳しくは止まり穴は、シャフト部20からクランプ部30内へ延びている。
【0031】
基部の領域では、止まり穴内へ圧力流路33が開口している。図面に示された好ましい実施形態では、圧力流路33は、偏心して、圧力チャンバ装置まで弧状に延びている。好ましい実施形態では、圧力チャンバ装置は、中央収容開口部31を取り囲む2つの環状の圧力チャンバ34であって、互いに軸方向に分離されるように形成されて偏心接続流路36を介して互いに流体的に接続された、圧力チャンバ34を備える。図3に示すように、圧力チャンバ34は、弾性的に可撓性の膨張壁によって、中央収容開口部31からそれぞれ分離されている。
【0032】
図3はまた、圧力チャンバ34から換気装置38に通じる偏心した換気流路37を示す。好ましい実施形態では、換気装置38は、半径方向に延びるねじ穴22にねじ込まれていて円錐形の端面を有する円錐ねじを有し、この端面は、換気流路37を気密に封止するために、円錐形の座面上に正確に着座する。
【0033】
図3の異なるハッチングから分かるように、好ましい実施形態におけるシャフト部20およびクランプ部30は、最初に互いに別々に製造され、次に、回転方向に固定および軸方向に固定されるように互いに接合された。具体的には、2つの圧力チャンバ34、圧力流路33、換気流路37等を有する、より複雑な中空構造を有するクランプ部30は、3D印刷によって付加的に製造され、一方、中空シャフト21、ねじ穴22等を有する、より単純な中空構造を有するシャフト部20は、従来の方法で、金属体を切削加工することによって製造した。回転方向に固定された、軸方向の接続を行うために、好ましい実施形態におけるクランプ部30およびシャフト部20は、次に、溶接、はんだ付けなどによって、材料結合で互いに接合された。
【0034】
流体圧力が2つの圧力チャンバ34に作用されると、膨張壁は、中央収容開口部31に収容されたシャフト工具、例えばドリルまたはフライスに対して膨らみ、その結果、シャフト工具は力結合でクランプされる。シャフト工具のクランプを外すためには、少なくとも1つの圧力チャンバ34内の流体圧力が低減される。
【0035】
2つの圧力チャンバ34に流体圧力を作用させるために、本発明による油圧膨張チャックは、図3および図4を参照して説明される圧力発生装置40を有する。好ましい実施形態では、圧力発生装置40は、中央凹部32内で軸方向に変位可能に配置されたピストン42と、ピストン42を変位させ、中空シャフト21を介して上述のねじ穴22内へねじ込まれる、調整ねじの形態のねじ本体41と、を有するピストン機構を有する。ピストン42には、中央凹部32内に正確に着座して、図3に示すように、圧力流路33が開口する止まり穴の基部に向かって圧力発生空間を画定する、弾性材料、例えばゴムまたは高強度プラスチックから成る、シール本体43が設けられている。
【0036】
調整ねじがねじ穴22内にクランプ部30に向かってねじ込まれると、シール本体43を備えたピストン42が止まり穴の基部に向かって押され、それによって、流体が圧力発生空間から圧力流路33内へ、また、2つの圧力チャンバ34内へ押し出される。圧力チャンバ34内で発生する圧力上昇は、膨張壁を中央収容開口部31の方向に膨らませる。
【0037】
換気装置38は、初めてまたは再び流体で充填された後に、流体システムを換気する役割を果たす。
【0038】
図3に示すように、本発明によれば、圧力発生装置40は、収容開口部31と同軸であって中空シャフト21内へ開口する中央凹部32において、収容開口部31と中空シャフト21との間の領域に軸方向に配置されており、圧力発生装置40は、中空シャフト21を介して操作可能である。したがって、圧力発生装置40は、回転軸または長手方向中心軸2の方向に対応する延長方向を有する。本発明による中央配置は、油圧膨張チャックの回転軸または長手方向中心軸2の周りに、より均一な質量分布を達成可能であり、詳しくは、その質量分布では、ベース本体1および圧力発生装置40の主要慣性軸が、回転軸または長手方向中心軸2の少なくとも近傍に位置し、したがって、本発明による圧力発生装置40の中央配置は、圧力発生装置40に起因する油圧膨張チャックの不均衡を大幅に低減することができる。さらに、圧力発生装置40の軸方向の延長によって、ベース本体1の半径方向の延長を小さく保つことができる。さらに、本発明によれば、圧力発生装置40は、中空シャフト21を介して操作可能である。圧力発生装置40は、シャフト部20の、クランプ部30とは反対側に開口する中空シャフト21を通してアクセス可能である。
【0039】
特許請求の範囲の保護の範囲内で、上述の実施形態からの逸脱が可能である。
【0040】
例えば、図3に示す2つの円周方向の圧力チャンバ34の代わりに、1つ、3つ、4つ、またはそれより多い環状円周方向圧力チャンバを設けることができ、あるいは、圧力チャンバの各々は、部分的にのみ取り囲むように形成されることができる。
【0041】
さらに、ベース本体1は、全体として一体(モノリシック)に製造することができる。
【0042】
少なくとも1つの圧力チャンバ34は、例えばDE102012215036A1号から知られているように、中央収容開口部31内へ軸方向に押し込まれた膨張ブッシュを介して実現することができる。
【0043】
さらに、シャフト部20は、HSKシャフトの代わりに、例えば、当業者に知られた、急勾配テーパシャフト(SK)、円筒形シャフト、または別の中空シャフトを有することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース本体(油圧膨張チャック)
20 シャフト部
21 中空シャフト
21a 空洞
22 ねじ穴
30 クランプ部
31 収容開口部
32 中央凹部
33 圧力流路
34 圧力チャンバ
36 接続流路
37 換気流路
38 換気装置
40 圧力発生装置
41 ねじ本体
42 ピストン
43 シール本体
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】