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特表2022-539081折り畳み式表示装置用の多層のポリマークッションフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】折り畳み式表示装置用の多層のポリマークッションフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220831BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576938
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020037364
(87)【国際公開番号】W WO2020263591
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/866,754
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウェイン・ケン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK52A
4F100AK52B
4F100AK73A
4F100AK73B
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100GB41
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK11A
4F100JK17
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
本出願は、折り畳み式電子表示装置のクッション層として適切な多層フィルムを開示する。多層フィルムは、折り畳み式画面の曲げサイクルに対する需要を、折り畳みによる変形後の許容可能な回復率で満たしながら、低温および高温で落下(falling)または落下(dropping)物からの衝撃エネルギーを吸収することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、
(1)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、60から100重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、0から40重量%の脂環式ポリエステルと
を含む、少なくとも1つの第1の層、ならびに
(2)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、5から35重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、65から95重量%の脂環式ポリエステルと
を含む、少なくとも1つの第2の層
を含む、多層フィルム。
【請求項2】
多層フィルムが、A/B、A/B/A、またはB/A/B層状配列を含む層状配列を有し、A層が第1の層であり、B層が第2の層である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
多層フィルムが、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層とを有する、請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
多層フィルムの厚さが、200ミクロン以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
第1の層の厚さが、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さが、約10から150ミクロンである、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
多層フィルムを含む製品であって、
(1)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、60から100重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、0から40重量%の脂環式ポリエステルと、
を含む、少なくとも1つの第1の層、ならびに
(2)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、5から35重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、65から95重量%の脂環式ポリエステルと、
を含む、少なくとも1つの第2の層
を含む多層フィルムを含む、製品。
【請求項7】
多層フィルムが、A/B、A/B/A、またはB/A/B層状配列を含む層状配列を有し、A層が第1の層であり、B層が第2の層である、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
多層フィルムが、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する、請求項6または7に記載の製品。
【請求項9】
多層フィルムの厚さが、200ミクロン以下である、請求項6に記載の製品。
【請求項10】
第1の層の厚さが、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さが、約10から150ミクロンである、請求項6、7および9のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
第1の層の厚さが、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さが、25から100ミクロンである、請求項6、7および9のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
製品がウェアラブルデバイス、曲面型表示装置、または折り畳み式電子表示装置である、請求項6に記載の製品。
【請求項13】
折り畳み式電子表示装置が内曲げ表示装置または外曲げ表示装置である、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
ウェアラブルデバイスがバイオセンサーである、請求項12に記載の製品。
【請求項15】
20℃で150MPaから500MPaのヤング率を有する、少なくとも1つの第1の層と、85℃で100MPaから450MPaのヤング率を有する、少なくとも1つの第2の層とを含む多層フィルム。
【請求項16】
多層フィルムが、A/B、A/B/A、またはB/A/B層状配列を含む層状配列を有し、A層が第1の層であり、B層が第2の層である、請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項17】
多層フィルムの厚さが200ミクロン以下である、請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項18】
第1の層の厚さが10から150ミクロンであり、第2の層の厚さが約10から150ミクロンである、請求項15から17のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項19】
第1の層が、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィン、またはスチレンブタジエンを含み、第2の層が、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィン、またはスチレンブタジエンを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項20】
請求項15から17のいずれか一項に記載の多層フィルムを含む製品であって、ウェアラブルデバイス、曲面型表示装置、または折り畳み式電子表示装置である、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
世界のスマートフォン市場の成長は、LCDまたはOLED表示装置がガラスで覆われて落下(falls)や落下(falling)物から保護されている現行の剛直な形状要因により飽和状態に近づいている。OLED表示装置は、今後の十年間でスマートフォンとテレビを支配する態勢を整えている。さらに、顧客は、ビデオを見ることやゲームをすることのためにスマートフォンの大画面を好む。しかしながら、大画面を使用していない場合、画面を折り畳んだり、曲げたり、かつ/または巻き取ったりできない限り、大きなスマートフォンの取り扱いは困難である。折り畳み式スマートフォンの欠点は、画面をガラスで保護できなくなることである。したがって、ポリマーの(例えば透明なポリイミド)保護画面が必要になる。ポリマーの保護画面を使用すれば、OLED表示装置は、保護ガラス画面なしで落下(falling)物または落下(dropping)からの衝撃損傷を受けやすいものとなる。本出願は、落下(falling)物または落下(dropping)からの衝撃エネルギーを吸収するために使用することができる多層のポリエステル系クッション層を開示する。クッション層は、ポリマー保護層(例えば、ポリイミド)とOLED表示装置との間に配置することができる。本出願で開示されるクッション層は、このような折り畳み式画面の曲げサイクルに対する需要を、折り畳みによる変形後の許容可能な回復率で満たしながら、低温および高温での衝撃を十分に吸収することができるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本出願は、多層フィルムであって、
(1)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100Daの重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシ(hydroxyl)およびカルボキシ(carboxyl)から選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、60から100重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、0から40重量%の脂環式ポリエステルと、
を含む、少なくとも1つの第1の層、ならびに、
(2)
(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、
(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに
(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤
を含む、5から35重量%のポリエステルエラストマーと、
(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、
(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分
を含む、65から95重量%の脂環式ポリエステルと、
を含む、少なくとも1つの第2の層
を含む、多層フィルムを開示する。
【0003】
本出願はまた、本明細書に開示される多層フィルムを含む製品を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】クッション材料の曲げを示す図である。
図2】ポリマーフィルムの典型的な応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
図3】曲げ半径を1Rから4Rまで変化させて、50μmのポリマークッションフィルムを使用して計算された曲げ変形を示すグラフである。
図4】曲げ半径を1Rから4Rまで変化させて、100μmのポリマークッションフィルムを使用して計算された曲げ変形を示すグラフである。
図5】曲げ半径を1Rから4Rまで変化させて、150μmのポリマークッションフィルムを使用して計算された曲げ変形を示すグラフである。
図6】曲げ半径を1Rから4Rまで変化させて、200μmのポリマークッションフィルムを使用して計算された曲げ変形を示すグラフである。
図7】20℃での単層および多層のクッションフィルム(実施例4、10、15および16)の応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
図8】85℃での単層および多層のクッションフィルム(実施例4、10、15および16)の応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
定義
本明細書において使用される「ポリエステル」という用語は、「コポリエステル」を含むことを意図しており、1種または複数の二官能性カルボン酸と1種または複数の二官能性ヒドロキシ化合物との重縮合によって調製される合成ポリマーを意味すると理解される。典型的には、ポリエステルは少なくとも1種の二塩基酸および少なくとも1種のジオールから形成される。このポリエステルは、溶融強度および加工性を改善するために、3つ以上のカルボキシ置換基、ヒドロキシ置換基、イオン形成基、またはそれらの組み合わせを有する1種または複数の分岐剤の残基を、二酸残基の総モル数に基づいて最大2モルパーセント含むことができる。分岐剤の例としては、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸、などの多官能酸またはグリコールを挙げることができるが、これらに限定されない。分岐剤は、例えば、米国特許第5,654,347号に記載されているように、ポリエステル反応混合物に添加するか、または濃縮物の形態でポリエステルと混合することができる。
【0006】
本明細書において使用される「残基」という用語は、対応するモノマーが関与する重縮合反応を介してポリマーに組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書において使用される「繰り返し単位」という用語は、ジカルボン酸残基およびカルボニルオキシ基を介して結合したジオール残基を有する有機構造を意味する。したがって、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸またはそれに関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、またはそれらの混合物に由来し得る。したがって、本明細書において使用される場合、この用語ジカルボン酸は、ジカルボン酸、およびジカルボン酸の任意の誘導体を含むことを意図しており、それに関連する酸ハロゲン化物、エステル、ハーフエステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、またはそれらの混合物を含み、高分子量ポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合工程に有用である。
【0007】
本明細書において使用される「ポリエステルエラストマー」という用語は、変形しやすく加えられた小さな応力の下での可逆的伸び、すなわち、弾性を示す、約1から500MPa(rtで)の低い弾性率を有する任意のポリエステルを意味すると理解される。本明細書において使用される「可逆的」という用語は、加えられた応力が除去された後、ポリエステルがその元の形状に戻ることを意味する。一般的に、これらは(i)1種または複数のジオール、(ii)1種または複数のジカルボン酸、(iii)1種または複数の長鎖エーテルグリコール、および必要に応じて、(iv)1種または複数のラクトンまたはポリラクトンから、従来のエステル化/重縮合プロセスで調製される。例えば、本発明のポリエステルエラストマーは、(i)置換または非置換、直鎖状または分枝鎖状の2から20個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸と、置換または非置換、直鎖状または分枝鎖状の5から20個の炭素原子を含む脂環式ジカルボン酸と、置換または非置換の6から20個の炭素原子を含む芳香族ジカルボン酸から選択された1種または複数の二酸の残基と、を含む二塩基酸の残基と、(ii)2から20個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、平均分子量が約400から約12000のポリ(オキシアルキレン)グリコールおよびコポリ(オキシアルキレン)グリコール、5から20個の炭素原子を含む脂環式ジオール、および6から20個の炭素原子を含む芳香族ジオールから選択された1種または複数の置換または非置換、直鎖状または分枝鎖状のジオールの残基を含むジオール残基と、を含み得る。ポリエステルエラストマーを調製するために使用することができる代表的なジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ソジオスルホイソフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、アゼライン酸、ダイマー酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。好ましい脂肪酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、およびそれらの混合物を挙げることができる。例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸は、純粋なシスまたはトランス異性体として、またはシスおよびトランス異性体の混合物として存在し得る。好ましい芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸およびイソフタル酸、ソジオスルホイソフタル酸、および2,6-ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0008】
ポリエステルエラストマーは、さらに少なくとも1種のジオールの残基を含み得る。ジオールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを挙げることができる。例えば、ポリエステルエラストマーは、例えば、約400から約2000の平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールの残基を含み得る。必須ではないが、ポリエステルエラストマーは、3つ以上のカルボキシ置換基、ヒドロキシ置換基、またはそれらの組み合わせを有する分岐剤の残基を含み得る。分岐剤の例としては、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸、などの多官能性酸またはグリコールを挙げることができるが、これらに限定されない。ポリエステルエラストマー内の分岐剤レベルの例は、二酸残基の総モル数に基づいて、約0.1から約2モル%、約0.1から約1モル%、および0.25から約0.75モル%である。
【0009】
本明細書において使用される「脂環式ポリエステル」という用語は、脂環式ジカルボン酸および/または脂環式ジオールの残基のモル過剰を含むポリエステルを意味する。本発明のジオールおよびジカルボン酸に関して本明細書で使用される「脂環式」は、本質的に飽和またはパラフィン性、不飽和、すなわち非芳香族炭素-炭素二重結合、またはアセチレン、すなわち炭素-炭素三重結合を含み得る構成炭素原子の環状配列を骨格として含む構造を指す。典型的には、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能性ヒドロキシ化合物は二価アルコール、例えば、グリコールおよびジオールである。
【0010】
本発明の多層フィルムは、製品を含み得る。例示的な物品としては、ウェアラブルデバイス、曲面型表示装置、または折り畳み式電子表示装置を挙げることができる。少量のヒンダードアミン光安定剤(HALS)を、多層フィルムを調製するための組成物、または押し出しプロセス中に、もしくは脂環式ポリエステルまたはポリエステルエラストマーに見出される可能性のある不純物によるUV吸収から開始される光分解によって形成されたラジカルを捕捉するための組成物に、添加することができる。この目的に使用することができるHALSの例としては、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能なCHIMMASORB(登録商標)119、CHIMMASORB(登録商標)944、TINUVIN(登録商標)770など、ならびにCytec Industriesから入手可能なCYASORB(登録商標)UV-3529、およびCYASORB(登録商標)UV-3346を挙げることができる。HALSは、0.1から1重量パーセントのレベルで通常使用される。さらに、多層フィルムを別の表面上の保護層として使用する場合は、いくらかのUV吸収添加剤を組成物に加えることもできる。有効なUV吸収剤の例としては、TINUVIN(登録商標)81、CYASORB(登録商標)UV-9、CYASORB(登録商標)UV-24およびCYASORB(登録商標)UV-531などのベンゾフェノン、TINUVIN(登録商標)213、TINUVIN(登録商標)234、TINUVIN(登録商標)320、TINUVIN(登録商標)360、CYASORB(登録商標)UV-2337およびCYASORB(登録商標)UV-5411などのベンゾトリアゾール、TINUVIN(登録商標)1577およびCYASORB(登録商標)1164などのトリアジン、ならびにCYASORB(登録商標)UV-3638などのベンゾオキサジノンがある。ポリエステル残基が存在する場合、任意のポリエステル残基の分解を遅らせるために、1種または複数の酸化安定剤が使用されることがある。この目的に使用することができる安定剤の例としては、IRGANOX(登録商標)1010およびIRGANOX(登録商標)1076などのヒンダードフェノール安定剤を挙げることができ、これらは典型的には、約0.1から約1重量パーセントのレベルで使用される。
【0011】
脂環式ポリエステルおよびポリエステルエラストマーを、一軸もしくは二軸スクリュー押し出し機、またはバンバリーミキサーで乾式混合または溶融混合することができる。例えば、無配向フィルムは、チルロールキャスティング、カレンダリング、メルトブロー、ダイ押し出し、射出成形、紡糸などの従来の方法によって調製することができる。例えば、ポリエステルエラストマーの高い溶融強度により、低温でのフィルムのカレンダリングが容易となる。多くの繊維の操作で一般的な反応器からの直接押し出しも可能である。例えば、フィルムを調製するための一般的な手順では、溶融物を約200から280℃の溶融温度を使用してスロット付きダイから押し出し、次いで約20℃から約100℃(70°Fから210°F)でチルロール上にキャストする。最適なキャスト温度は、組成物中のエラストマーの量によって異なる。形成されたフィルムは、延伸後のフィルムの最終的な所望の厚さに応じて、約20から600μmのいずれかの公称厚さとすることができる。典型的な光学フィルムの厚さの範囲は、20から300μmである。
【0012】
本発明のフィルムは、1つまたは複数の層を含み得る。フィルムが多層を含む場合、それは、当技術分野で公知であるように、共押し出し、積層、マイクロレイヤー共押し出しなどの方法によって達成することができる、互いに連通している層を有することになる。多層フィルムは、光学的に透明な接着剤を使用して組み立てることができる。さらに、多層は、望ましい任意の順序で配置することができ、例えば、ポリエステルエラストマー/脂環式、ポリエステルエラストマー/脂環式/ポリエステルエラストマー、または脂環式/ポリエステルエラストマー/脂環式などの層状配列を含む。
【0013】
多層フィルム
本出願はまた、20℃で150MPaから500MPaのヤング率を有する、少なくとも1つの第1の層と、85℃で100MPaから450MPaのヤング率を有する、少なくとも1つの第2の層と、を含む多層フィルムである。
【0014】
一実施形態では、多層フィルムは、ポリイミド保護フィルムをさらに含む。
一実施形態では、多層フィルムは、A/B、A/B/A、またはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここで、A層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0015】
この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0016】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B層状配列である層状配列を有する。
このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0017】
このクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブサブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0018】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B/A層状配列である層状配列を有する。
このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0019】
このクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブサブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0020】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、B/A/B層状配列である層状配列を有する。
このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0021】
このクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブサブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0022】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、300ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0023】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、275ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0024】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、250ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0025】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、225ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0026】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、200ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0027】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、175ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0028】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、150ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。このサブクラスの一サブクラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0029】
一実施形態では、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0030】
一実施形態では、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、約25から100ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0031】
一実施形態では、第1の層は、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィンまたはスチレンブタジエンを含む。この実施形態の一クラスでは、第2の層はポリエステル、ポリエステルエラストマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィンまたはスチレンブタジエンを含む。
【0032】
本出願は、多層フィルムであって、(1)(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100Daの重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤を含む60から100重量%のポリエステルエラストマーと;(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、0から40重量%の脂環式ポリエステルとを含む、少なくとも1つの第1の層、ならびに、(2)(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤を含む、5から35重量%のポリエステルエラストマーと;(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、65から95重量%の脂環式ポリエステルとを含む、少なくとも1つの第2の層を含む、多層フィルムを開示する。
【0033】
一実施形態では、多層フィルムは、ポリイミド保護フィルムをさらに含む。
一実施形態では、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0034】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0035】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B層状配列である層状配列を有する。
このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0036】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B/A層状配列である層状配列を有する。
このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0037】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、B/A/B層状配列である層状配列を有する。このクラスの一サブクラスでは、多層フィルムは、室温で150MPaを超え500MPa未満のヤング率を有する少なくとも1つの層と、85℃で100MPaを超え450MPa未満のヤング率を有する少なくとも別の層と、を有する。
【0038】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、300ミクロン以下である。
この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは25から100ミクロンである。
【0039】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、275ミクロン以下である。
この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0040】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、250ミクロン以下である。
この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0041】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、225ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0042】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、200ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは25から100ミクロンである。
【0043】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、175ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0044】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、150ミクロン以下である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、25から100ミクロンである。
【0045】
一実施形態では、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0046】
一実施形態では、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、約25から100ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0047】
製品
本出願は、多層フィルムを含む製品であって、(1)(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100Daの重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤を含む、60から100重量%のポリエステルエラストマーと;(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、0から40重量%の脂環式ポリエステルとを含む、少なくとも1つの第1の層、ならびに、(2)(a)98から99.9モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基を含む二酸成分、(b)91から93モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、および7から9モル%の500から1100の重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基を含むジオール成分、ならびに(c)二酸成分のモル%に基づいて、0.1から2モル%のヒドロキシおよびカルボキシから選択される少なくとも3つの官能基を有する化合物に由来する分岐剤を含む、5から35重量%のポリエステルエラストマーと;(a)100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、(b)100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、65から95重量%の脂環式ポリエステルとを含む、少なくとも1つの第2の層を含む多層フィルムを含む、製品を開示する。
【0048】
一実施形態では、多層フィルムはポリイミド保護フィルムをさらに含む。
一実施形態では、多層フィルムは、A/B、A/B/A、またはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは、約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、第1の層の厚さは25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは25から100ミクロンである。
【0049】
この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B層状配列である層状配列を有する。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B/A層状配列である層状配列を有する。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、B/A/B層状配列である層状配列を有する。
【0050】
一実施形態では、多層フィルムの厚さは、300ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、275ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、250ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、225ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、200ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、175ミクロン以下である。一実施形態では、多層フィルムの厚さは、150ミクロン以下である。
【0051】
一実施形態では、第1の層の厚さは、10から150ミクロンであり、第2の層の厚さは約10から150ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0052】
一実施形態では、第1の層の厚さは、25から100ミクロンであり、第2の層の厚さは、約25から100ミクロンである。この実施形態の一クラスでは、多層フィルムは、A/B、A/B/AまたはB/A/B層状配列を含む層状配列を有しており、ここでA層は第1の層であり、B層は第2の層である。
【0053】
一実施形態では、製品は、ウェアラブルデバイス、曲面型表示装置または折り畳み式電子表示装置である。この実施形態の一クラスでは、製品はウェアラブルデバイスである。このクラスの一サブクラスでは、ウェアラブルデバイスは、連続的なグルコース監視システム、または健康センサーもしくはフィットネスセンサーである。このサブクラスの一サブサブクラスでは、ウェアラブルデバイスは連続的なグルコース監視システムであり、ウェアラブルデバイスは健康センサーまたはフィットネスセンサーである。
【0054】
この実施形態の一クラスでは、製品は、曲面型表示装置である。この実施形態の一クラスでは、製品は、折り畳み式電子表示装置である。このクラスの一サブクラスでは、折り畳み式表示装置は内曲げ表示装置または外曲げ表示装置である。このクラスの一サブクラスでは、折り畳み式表示装置は内曲げ表示装置である。
【0055】
実験の部
略語
wt%は、重量パーセントである。%Tは、パーセント透過率である。Mwは、重量平均分子量である。molは、モルである。mol%は、モルパーセントである。μmは、マイクロメートルまたはミクロンである。℃は、セルシウス度である。MPaは、メガパスカルである。rtまたはRTは、室温である。
【0056】
組成
ポリマーI
ポリマーIは、99.5モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する残基、91.1モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する残基、8.9モル%の500から1100のMを有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールに由来する残基、および0.5mol%のトリメリト酸無水物に由来する残基の組成を有するポリエステルエラストマーである。
【0057】
ポリマーII
ポリマーIIは、100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、および100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの組成を有する脂環式ポリエステルである。
【0058】
フィルム
実施例1~11
表1は、ポリマーIとポリマーIIから製造されたフィルム(実施例1~11)の調製品を示す。ポリマーIとポリマーIIの混合物の溶融加工と、それに続く235~250℃での混合物の溶融押し出しからフィルムを、製造した。ポリマーIおよびポリマーIIのペレットを、押し出す前に55~65℃で8~12時間の間乾燥し、ポリマーIおよびポリマーIIのペレット・ペレット混合によって混合物を、調製した。次いで、混合物をキャストフィルム押し出しラインに供給して、150μmの厚さのフィルムを製造した。ポリマーI/ポリマーII混合物は、表1に示すように、いずれの比率でも混和性があり、ヘイズが非常に低い。すべてのサンプルの光透過率は、約90%である。光学フィルム用途向けに、低ヘイズと高可視光透過率が必要である。
【0059】
表1に、各フィルムの厚さ、組成、ヘイズとともに調製されたフィルムの実施例を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
ASTM D882に従って決定された、実施例1~11の引張特性を表2に示す。ポリマーIの含有量が多いサンプルは、破断点伸びが大きくなる。最も重要なことは、優れた混和性により良好な光学特性を維持しながら、ポリマーIIの含有量の増加とともに弾性率を増大させることができることである。混合物の弾性率は、ポリマーIIの含有量の増加とともに増加する。
【0062】
表2のデータに基づいて、rtおよび85℃でのピークヤング率は、70~90wt%のポリマーII(実施例8~10)付近に見られる。85℃において、実施例8~10では最良のクッションがもたらされる。しかしながら、ヤング率は169から433MPaの間であるので、実施例1~5では、rtで0~40wt%のポリマーIでクッションを提供する場合に優れた性能を発揮する。実施例1~11には、rtおよび85℃で良好に機能するものはない。
【0063】
【表2】
【0064】
折り畳み式OLED表示装置については、各層は、画像の歪みを引き起こす可能性のある恒久的な変形をすることなく、繰り返し曲げられても耐える必要がある。図1は、クッション層の折り畳みと展開を示す。中立軸とは、曲げの間、応力がかからないため変形がない線である。中立軸の長さは曲げ許容値と呼ばれ、式(8)によって計算される。中立軸の内側部分は圧縮応力を受けて寸法が減少し、一方中立軸の外側部分は引張応力を受けて寸法が増加することになる。クッション材料は、曲げサイクルを繰り返した後に、恒久的な変形をすることなく、伸張と圧縮からすみやかに回復できることが重要である。
【0065】
式8:
【0066】
【数1】
【0067】
[式中、
BA:曲げ許容値、中立軸の長さ(mm)
A:曲げ角度(度)
R:曲げ半径(mm)
T:クッション層の厚さ(μm)
t:内面から中立軸までの距離(μm)
K:Kファクター=t/T=f(材料、厚さ、曲げ半径、…)、典型的には0.3~0.5]
図2は、ポリマーフィルムの典型的な応力-ひずみ曲線を示す。伸びは、降伏点(図2の約5%)の前で引張応力とともに直線的に増加する。負荷を取り除くと、フィルムは元の寸法に戻る。この弾性変形は可逆的で非永続的である。一方、応力が弾性限界(約5%)を超えると、フィルムは不可逆的に変形することになる。したがって、繰り返しの折り畳みでの恒久的な変形を回避するために、弾性率と降伏ひずみの両方がクッション層の回復にとって重要である。
【0068】
フィルムの恒久的な変形を回避するために、フィルムの変形限界を、5%の降伏ひずみの±4%になるように選択することができる。図3~7は、K=0.5で、全体の厚さと曲げ半径を変化させた場合の、曲げの内面から外面への変形を示す。厚さが50μmの薄いクッション層については、図3の1R(1mm)などの曲げ半径が小さい場合でも、変形は十分に4%以内である。厚さを2倍にして100μmにすると、図4に示すように、1Rでの小さな曲げ半径で変形が4%を超えることになる。クッション層の恒久的な変形を防ぐために、2Rが必要とされる場合もある。150μmのクッション厚さについては、図5に示すように、変形は2R(2mm)の曲げ半径で4%に近づく。図6に示すように、200μmのクッションを使用する場合は、曲げ半径を3R(3mm)以上にすべきである。結論として、より薄いクッションは、内曲げのOLED表示装置の小さな曲げ半径に有利である。より厚いフィルムは、外曲げのOLED表示装置に必要である。
【0069】
弾性変形には、フックの法則(式9)を適用することができる。
式9:F=-kx=-k(L-L)=-kΔL、
[式中、
Fは力(N)であり、
x=ΔLは、伸びまたは圧縮(m)であり、
kは、ばね定数(N/m)と呼ばれ、
ΔL=L-L
は、元の長さであり、
Lは、作用力の下での長さである]
ヤング率は、式10で定義される。
【0070】
式10:
【0071】
【数2】
【0072】
[式中、
Eは、ヤング率(MPa)であり、
σ=F/Aは、応力(MPa)であり、
ε=ΔL/Lは、ひずみであり、
Fは、力(N)であり、
Aは、横断面積(m)である]
式9を式10に挿入して式11を得ることにより、ばね定数は比例的にヤング率に等しくすることができる。
【0073】
式11:
【0074】
【数3】
【0075】
圧縮または伸長されたばねの回復速度(時間)は、エネルギーの保存によって計算することができる。ばねの伸び(圧縮)から生じる位置エネルギーを、他のエネルギー損失がないと仮定することにより、運動エネルギーに完全に変換することができる。
【0076】
式12:
【0077】
【数4】
【0078】
[式中、
mは、質量(kg)であり、
vは、速度(m/s)であり、
xは、変位(m)である]
式12を式13へ再構成することができる。
【0079】
式13:
【0080】
【数5】
【0081】
定義によれば、速度は、式14に示すように、時間の変化に対する距離の変化である。
式14:
【0082】
【数6】
【0083】
[式中、tは、時間(s)である]
式13および式14を組み合わせることによって、式15を得る。
式15:
【0084】
【数7】
【0085】
式15を積分することによって、式16を得る。
式16:
【0086】
【数8】
【0087】
弾性変形下のクッション層の回復時間(速度)は、式16に示すように、変形の程度、ばね定数、したがって材料の弾性率として表すことができる。弾性率が高いクッション材料は、式17に示すように、より短い時間で変形からすみやかに回復する。しかし、硬質材料は、通常、降伏ひずみと衝撃吸収能がより低い。本発明は、これらの課題に共に取り組むことを目的とする。
【0088】
式17:
【0089】
【数9】
【0090】
表2に示すように、実施例1~11のいずれも、個別的にrtおよび85℃で適切なクッションを提供するものではない。表3は、A/BまたはA/B/A配列で実施例4および実施例10から調製された多層フィルム(実施例15および実施例16)を示す。
【0091】
【表3】
【0092】
降伏ひずみが大きいエラストマーなどのクッション材料は、曲げと衝撃の両方に適しているようである。しかしながら、エラストマー材料の弾性率は低くなる可能性があり、その結果、最終的に完全に回復することができても、寸法回復の速度が遅くなる可能性がある。さらに、エラストマー材料の弾性率は、温度の上昇とともに大幅に低下する。その結果、高温での回復が遅れることになる。このジレンマを克服するために、多層構造がこの問題を解決すべく発明された。例えば、実施例4は、降伏ひずみは大きいが弾性率が低いポリエステルエラストマーであり、実施例10は、降伏ひずみは小さいが弾性率が高い熱可塑性コポリエステルである。2つの単層(実施例4および実施例10)、2層(実施例15)および3層(実施例16)の多層フィルムを、ASTM D882を使用して20℃および85℃での引張特性についてテストした。実施例4と実施例10を、実施例12として熱ラミネートして2層サンプルにした。実施例10、実施例4および実施例10を、実施例16として積層して3層サンプルにした。図7~8は、これら4つのサンプルの20℃と85℃での引張応力-ひずみ曲線をそれぞれ示す。各サンプルの降伏ひずみと弾性率を表5に示す。
【0093】
20℃では、積層により実施例10のみの降伏ひずみが増加し、実施例4の弾性率が向上する。実施例10の尖鋭な上向きの降伏のピークは、延伸中のネッキングを示す。ネッキングは深刻な不可逆変形である。多層の実施例15と実施例16のネッキングは大幅に減少するが、これは予想外のことである。多層は全体として、降伏ひずみが高く、ネッキングが少なく、弾性率が中程度である。したがって、多層構造の曲げと衝撃性能が最適化される。
【0094】
85℃では、実施例4の弾性率が低くなり、やはり変形回復率には望ましくない。実施例10の弾性率は許容範囲であるが、rtでネッキングする傾向がある。多層は、よりよい回復率と耐衝撃性のために高温で良好な弾性率を維持する。
【0095】
表4は、実施例15および実施例16の降伏ひずみとヤング率も示す。
【0096】
【表4】
【0097】
結論として、出願人は、曲面型表示装置、ウェアラブルディスプレイ、または折り畳み式表示装置のクッション層として適した多層フィルムを実証した。さらに、本出願は、(1)異なる温度で異なる性能を発揮する調整可能な弾性率を備えた新規な混和性混合物と、(2)全体的な曲げ性能を満たしながら、少なくとも1つの層が低温での衝撃を受け、少なくとも別の層が高温での落下(falling)物のエネルギーを吸収できる多層クッションスタックと、を提供する。単層については、調整可能な弾性率と、透明度(>90%)や低ヘイズ(<1%)などの優れた光学特性とを備えた2成分混和性混合物を使用することにより、折り畳み式OLED表示装置に使用することができる。弾性率と降伏ひずみは、さまざまな混合比と厚さを使用することにより、曲げおよび衝撃性能に合わせて調整することができる。高温必要条件により衝撃において単層の方法が十分でない場合は、多層構造を使用して弾性率、降伏ひずみ、回復速度、およびクッション層の低温および高温の衝撃を最適化できる。個々の層と比較したとき多層積層体の降伏点遅延は、予想外の降伏ひずみの増加とネッキングの減少とにより曲げサイクルを改善するのに有益である。
【0098】
他の実施形態は、本明細書に開示された実施形態の説明および実施について考察することにより、当業者には明らかとなるであろう。開示された実施形態の精神および範囲内で、変形および改良が達成できることが理解されよう。さらに、説明および実施例は、例示にすぎないとみなされ、開示された実施形態の真の範囲および精神は、以下の請求項によって示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】