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特表2022-539098ポストリアクター修飾によるEPDM中の制御された長鎖分岐
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ポストリアクター修飾によるEPDM中の制御された長鎖分岐
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/18 20060101AFI20220831BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08F210/18
C08L23/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577044
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020038468
(87)【国際公開番号】W WO2020263681
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/866,766
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】バウィスカル、サントッシュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】リー、コアンミン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ティエンツー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002BB152
4J002GM01
4J002GN01
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS11R
4J100AS15R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA09
4J100DA13
4J100DA19
4J100DA42
4J100DA43
4J100JA29
4J100JA43
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、本プロセスは、100ムーニー単位(MU)未満のムーニー粘度(125℃でのML(1+4))を有するニートエチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(n-ターポリマー)を提供することを含む。本プロセスは、0.2メガラド(MRad)~1.3MRadの被ばく線量でn-ターポリマーを電子ビーム放射線に曝露することを含む。本プロセスは、25MU~135MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)を有する分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(b-ターポリマー)を形成することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
100ムーニー単位(MU)未満のムーニー粘度(125℃でのML(1+4))を有するニートエチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(n-ターポリマー)を提供することと、
0.2メガラド(MRad)~1.3MRadの被ばく線量で前記n-ターポリマーを電子ビーム放射線に曝露することと、
25MU~135MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)を有する分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(b-ターポリマー)を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記n-ターポリマーが20~65のレオロジー比を有し、前記プロセスが、
55~110のレオロジー比を有するb-ターポリマーを形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記n-ターポリマーが41°以上の位相角δを有し、前記プロセスが、
20°~39°の位相角δを有するb-ターポリマーを形成することを含む、請求項1~2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
85パーセント以上の質量回収率を有するb-ターポリマーを形成することを含む、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
0.5~9.0重量パーセントのノルボルネンを含むn-ターポリマーを提供することと、
0.3~8.6重量パーセントのノルボルネンを含むb-ターポリマーを形成することと、を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
ニートエチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマー(n-EPDM)を提供することであって、前記n-EPDMが、
(i)50重量%~80重量%のエチレン、
(ii)23~38重量パーセントのプロピレン、および
(iii)0.5~9.0重量パーセントのノルボルネンを含む、提供することと、
0.3MRad~0.7MRadの被ばく線量で前記n-EPDMを電子ビーム放射線に曝露することと、
分岐エチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマー(b-EPDM)を形成することであって、前記b-EPDMが、
(A)35MU~120MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)、
(B)55~110のレオロジー比、および
(C)25°~39°の位相角δを有する、形成することと、を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
n-EPDMを提供することを含み、前記n-EPDMが1種類の非共役ポリエンしか含まず、前記非共役ポリエンがヘテロ原子を含まない、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
組成物であって、
分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(b-ターポリマー)を含み、前記b-ターポリマーが、
(A)35MU~120MUの125℃でのムーニー粘度(ML 1+4)、
(B)55~110のレオロジー比、および
(C)20°~39°の位相角δを有する、組成物。
【請求項9】
前記b-ターポリマーがニートである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記b-ターポリマーが80パーセント以上の質量回収率を有する、請求項8~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)によって測定された場合、0.82百万分率(ppm)以下のバナジウムを含む、請求項8~10のいずれかに記載のb-ターポリマー。
【請求項12】
(i)54~72重量パーセントのエチレン、
(ii)23~55重量パーセントのプロピレン、および
(iii)0.3~8.6重量パーセントのノルボルネンを含む、請求項8~11のいずれかに記載のb-ターポリマー。
【請求項13】
0.85g/cc以上~0.89g/cc未満の密度を有する、請求項8~12のいずれかに記載のb-ターポリマー。
【請求項14】
0百万分率(ppm)以上~30百万分率(ppm)以下の塩素含量を有する、請求項8~13のいずれかに記載のb-ターポリマー。
【請求項15】
n-EPDMを提供することを含み、前記n-EPDMが1種類の非共役ポリエンしか含まず、前記非共役ポリエンがヘテロ原子を含まない、請求項8~14のいずれかに記載のb-ターポリマー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
長鎖分岐(LCB)を含む分子構造を有するエチレン-プロピレン-ジエンモノマーターポリマー(EPDM)が知られている。LCBは、EPDMの主鎖に側鎖を導入し、これにより、EPDMのレオロジー特性および物理的特性が著しく変化する。例えば、EPDMの弾性およびずり減粘特性は、LCBにより向上する。非分岐EPDMと比較した高LCB EPDMの利点には、コールドフローの低減、グリーン強度の向上、中空部品の押出時の耐崩壊性の向上、発泡性の向上、押出速度の高速化、混合の高速化、内部ミキサーにおけるエネルギー消費の低減、フィラー充填率の向上、およびメルトフラクチャーの低減が挙げられる。
【0002】
重合および重合プロセス条件下で使用される触媒を選択することにより、EPDM構造におけるLCBレベルを適応させる方法が提供される。チーグラー・ナッタ(Z-N)触媒(例えば、チタン系触媒またはバナジウム系触媒)は、重合プロセス中にLCBをEPDMに導入することができる。しかしながら、LCBの程度を制御することは困難であり、例えば、Z-N重合プロセスは、ゲル形成をもたらす望ましくない架橋EPDMを形成する傾向がある。Z-N重合プロセスは、広範な組成分布および広範な分子量分布を有するEPDMも生成する。
【0003】
メタロセン触媒(例えば、ジルコニウム系触媒)は、溶液重合プロセスでEPDMを生成する。メタロセン触媒は、一般に、Z-N触媒EPDMと比較してより均一な組成分布、より狭いMWD、およびより直鎖状の分子構造を有するEPDMを生成する。しかしながら、メタロセン触媒は、典型的には、Z-N触媒EPDMと比較して低レベルのLCBを生成する。
【0004】
それ故に、当該技術分野は、高LCB EPDMの必要性を認識している。当該技術分野はさらに、メタロセン触媒EPDM中のLCBを増加させる方法の必要性を認識している。
【発明の概要】
【0005】
プロセスが本明細書に開示される。一実施形態では、本プロセスは、100ムーニー単位(MU)未満のムーニー粘度(125℃でのML(1+4))を有するニートエチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(n-ターポリマー)を提供することを含む。本プロセスは、0.2メガラド(MRad)~1.3MRadの被ばく線量でn-ターポリマーを電子ビーム放射線に曝露することを含む。本プロセスは、25MU~135MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)を有する分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(b-ターポリマー)を形成することを含む。
【0006】
組成物も本明細書に開示される。一実施形態では、本組成物は、(A)35MU~120MUのムーニー粘度(125℃でのML 1+4)、(B)55~110のレオロジー比、および(C)20°~39°の位相角δを有する分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマー(b-ターポリマー)を含む。
【0007】
定義
本明細書における元素周期表への全ての言及は、CRC Press,Inc.により2003年に出版および著作権保護されている元素周期表を指すものとする。また、族(複数可)へのいずれの参照も、族を番号付けするためのIUPACシステムを使用してその元素周期表に反映された族(複数可)に対するものとする。
【0008】
米国特許実務の目的のために、いずれの参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるあらゆる定義と矛盾しない程度に)および当該技術分野における一般的知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(またはその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値~上限値の全ての値(境界値も含む)を含む。明示的な値を含む範囲(例えば、1、または2、または3から、5、または6、または7まで)の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆる下位範囲(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)が含まれる。
【0010】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、その組成物を含む材料の混合物、ならびにその組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0012】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順が本明細書で具体的に開示されているかにかかわらず、それらの存在を除外するようには意図されていない。いかなる誤解も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、相反する記載がない限り、(重合であるか、重合でないかにかかわらず)任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、実施可能性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の列挙の範囲から、いずれの他の成分、ステップ、または手順も除外する。「からなる」という用語は、明確に描写または列記されていないいずれの成分、ステップ、または手順も除外する。「または」という用語は、別途明記されない限り、列記されたメンバーを個別に、かつ任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0013】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合エチレンモノマーを含み、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーおよびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、互換的に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例には、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(ultra-low)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(very low density)ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(別名、オレフィンブロックコポリマー(OBC))、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状プラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラ-ナッタ触媒などの不均質触媒系、第4族遷移金属およびリガンド構造(例えば、メタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子価アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなど)を含む均質触媒系を使用して、気相、流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器中で生成され得る。不均質触媒および/または均質触媒の組み合わせも、単一反応器構成または二重反応器構成のいずれかで使用され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、そのポリマー中で重合された芳香族コモノマーを含まない。
【0014】
「インターポリマー」および「コポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。これらの総称には、両方の古典的コポリマー、すなわち、2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどが含まれる。
【0015】
本明細書で使用される「電子ビーム放射線」または(「電子ビーム」)という用語は、加熱された陰極フィラメント(典型的にはタングステン)から電子ビームを生成することを含む。陰極から放出された電子は、陰極と陽極との間に印加された電界で加速される。電子ビームのエネルギー利得は加速電圧に比例する。エネルギーはeV(電子ボルト)で測定され、最大10MeVの加速器が市販されている。電子ビームの被ばく線量はメガラッド(MRad)で測定される。電子ビームがポリマーに入ると、それは分子をイオン化して励起し、水素原子の変位およびフリーラジカルの形成をもたらす。2つのフリーラジカルの組み合わせが分岐を形成する。この方法によって形成される分岐のタイプは、Hタイプまたは四官能性である。
【0016】
本明細書で使用される「エンタングルメント分子量」という用語は、以下のように説明される。分子量の対数に対してプロットされたポリマー溶融物の構造的に変形されていない機械的特性の対数のプロットは、分子量への強い依存性を呈するように、およそ10kDaで初期の弱い線形依存性とそれに続く遷移を呈する。。この「遷移分子量」が「エンタングルメント分子量」と呼ばれる。エンタングルメント分子量を上回るポリマーがプラスチックとして有用である一方で、エンタングルメント分子量を下回るポリマーは、一般に脆い粉末である低分子量材料の特徴を呈する。例えば、キャンドルワックスは、ポリエチレンと同じ分子構造を有する低分子量ポリオレフィンである。
【0017】
本明細書で使用される「長鎖分岐」または(「LCB」)という用語は、側鎖分子量がポリマーのエンタングルメント分子量を超えるエチレン/プロピレン/ジエン-モノマーターポリマー上の側鎖の存在を指す。
【0018】
「ポリマー」という用語は、モノマーのセットを反応させる(すなわち、重合する)ことによって調製された材料を指し、このセットは、均質な(すなわち、1種類のみの)モノマーのセットまたは不均質な(すなわち、2種類以上の)モノマーのセットである。本明細書で使用されるポリマーという用語は、均質なモノマーのセットから調製されたポリマーを指す「ホモポリマー」という用語、および以下に定義される「インターポリマー」という用語を含む。
【0019】
「ターポリマー」という用語は、3つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。
【0020】
試験方法
ムーニー粘度試験:EPDMゴムムーニー粘度をASTM 1646-04に従ってムーニーせん断ディスク粘度計で測定する。機器は、Alpha Technologies Mooney Viscometer 2000である。2rpmでローターを回転させるためのトルクをトルクトランスデューサーによって測定する。プラテンを閉じた後、試料を1分間予熱する。その後、モーターが始動し、トルクを4分間にわたって記録する。結果を、ムーニー単位(MU)で「125℃でのML(1+4)」として報告する。「ML」という用語は、大型ローター「ムーニーラージ」が粘度試験で使用されることを示し、この大型ローターは標準サイズのローターである。ムーニー粘度(MV)は、比較的低いせん断速度で流動するポリマーの抵抗性を測定し、ポリマーの流動性を示す。
【0021】
ムーニー緩和面積(MLRA)データを、ローターが停止した後に試験試料が緩和されるムーニー粘度測定から得る。ムーニー粘度試験終了時に、ディスクの回転が0.1秒以内に停止する。リラクゼーションデータの収集は、典型的には、ローターが停止した1秒後に開始し、ローターが停止した後少なくとも2分間継続する。報告されるMLRA値は、1秒~120秒のムーニートルク緩和時間曲線下の積分面積である(MLRA(1’+4’+2’))。MLRA値は、ポリマーの弾性の程度を示し、蓄積エネルギー項とみなすことができる。より高いMRLA値は、加えられたひずみを取り除いた後に、試験試料がより多くのエネルギーを蓄積し、緩和するのに(つまり、蓄積エネルギーを消散させるのに)より多くの時間を必要とすることを示す。より弾性の高いポリマー(例えば、より長い長鎖分岐構造を有するポリマー)は、典型的には、より弾性の低いポリマー(例えば、より短い長鎖分岐構造を有するポリマー)と比較してより高いMLRA値を呈する。MLRAをムーニー単位-秒(MU●s)で報告する。
【0022】
本明細書で使用される「MLRA/ML比」という用語は、ムーニー緩和面積のムーニー粘度に対する比率であり、「125℃でのMLRA/ML(1+4)」の省略形である。MLRA/ML比は、ポリマーの溶融弾性の程度を示し、溶融弾性の程度に正比例する。MLRA/ML比を秒で報告する。
【0023】
ゴムレオロジー特性分析(RPA):ゴムレオロジー特性分析を、ローターレス振動せん断レオメーター(すなわち、ゴムプロセスアナライザー(RPA))を用いてASTM D6204に従って行う。RPA周波数掃引試験を、Alpha Technologies RPA 2000を使用して行う。試験試料をCutter 2000Rで切り抜く。試料サイズは5~7グラムである。ダイを閉じたときにゴム化合物の小さいビーズがダイの周囲に均一に押し出された場合、試験片が適切なサイズ(試験空洞体積の116~160%)であるとみなす。試料を2枚のマイラーフィルム間に配置する。周波数掃引を、ニートターポリマーに対して5%ひずみを使用して125℃で行う。周波数掃引を、ターポリマー組成物に対して5%ひずみを使用して100℃で行う。周波数範囲は、0.1ラジアン/秒(rad/s)~100rad/sである。応力応答を振幅および位相の観点から分析し、そこから貯蔵せん断弾性率(G’)、損失せん断弾性率(G”)、複素粘度(V)、タンデルタ(すなわち、位相角δ)、および複素せん断弾性率G*を計算した。弾性率値をキロパスカル(kPa)で報告し、位相角を度で報告し、粘度をパスカル秒(Pa・s)で報告する。
【0024】
本明細書で使用される「位相角δ」という用語は、加えられた応力と、その応力によって付与された結果として生じるひずみとの間に呈される位相遅れである。所与の動的機械的研究の場合、位相角δを100kPaの値の複素せん断弾性率G*および125℃で測定する。一群のポリマーの位相角δを比較する場合、位相角δ値の低減は、一般に、ポリマーがより弾性であることを示す。
【0025】
「レオロジー比」(または「RR」)という用語は、0.1rad/秒および125℃での複素粘度の、100rad/秒および125℃での複素粘度に対する比率として計算され、RRは、125℃でV0.1/V100に等しい。
【0026】
高温ゲル浸透クロマトグラフィー試験(「HT GPC試験」):HT GPC試験を、赤外線濃度/組成検出器(IR-5検出器)、PDI 2040レーザー光散乱検出器(Agilent)、および4キャピラリーブリッジ粘度計(Malvern)で構成され、かつ数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)、およびゼータ平均分子量(M)の決定を可能にするPOLYMERCHAR(Valencia,Spain)HT GPCシステムを用いて行う。
【0027】
カラムは、4つの混合A LS 20マイクロメートルカラム(Agilent)である。検出器コンパートメントを160℃で動作させ、カラムコンパートメントを150℃で動作させる。担体溶媒は、およそ250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)であり、窒素散布したものである。
【0028】
HT GPCシステムを、21個の狭い分子量分布ポリスチレン標準物で較正する。標準物の分子量は580~8,400,000の範囲であり、個々の分子量間に少なくとも10の隔たりを有する6つの「カクテル」混合物中に配置する。結果として得られたポリスチレン標準物の分子量データ(Mps)を等式(1):Mpe=A(Mpsによってポリエチレン分子量データ(Mpe)に変換し、式中、A値が反復様式で決定され、およそ0.42であり、B値が1.0である。5次多項式を使用して、ポリスチレン標準物毎に、等式(1)から得られたそれぞれのポリエチレン等価較正点を、それらの観察された溶出体積に当てはめた。
【0029】
、M、およびMを、以下の等式に従って計算する。
【数1】
式中、Wfがi番目の溶出成分の重量分率であり、Mがi番目の溶出成分の分子量である。分子量分布(MWD)は、MのMに対する比率(M/M)として表される。等式(3)および対応する保持体積多項式からのMw値が既知のM120,000および固有粘度(1.873dL/g)を有する直鎖状ホモポリエチレン基準に従って得られた独立して決定されたMw値と一致するまでA値を等式(1)で調節することによって、A値を決定する。同じ直鎖状ホモポリエチレン基準を使用して、IR-5検出器、レーザー光散乱検出器、および粘度計の応答係数を決定した。応答係数の決定を、American Chemical Society Publications:“A Strategy for Interpreting Multidetector Size-Exclusion Chromatography Data I,”in“Chromatography of Polymers(ACS Symposium Series,#521),”T.H.Mourey and S.T.Balke,Chap 12,p180,(1993)、および“A Strategy for Interpreting Multidetector Size-Exclusion Chromatography Data II,”in“Chromatography of Polymers(ACS Symposium Series,#521).”S.T.Balke,R.Thitiratsakul,R.Lew,P.Cheung,T.H.Mourey,Chap 13,p199,(1993)に公開されている様式と一致した様式で実施し、これらの両方の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。IR-5検出器を、電子ビーム処理前にEPDM樹脂でさらに較正した。
【0030】
照射ターポリマー(すなわち、電子ビーム処理に曝露されたターポリマー)の場合、HT GPC分析の候補をランダムに選択し、切片に切断する。様々なターポリマーから切断された切片のブレンドを使用して各HT GPC分析物を調製して、個々のターポリマー試料内のあらゆる放射線不均一性を克服する。HT GPC分析物を、およそ60ミリグラムの切断された切片およびアルミホイルライナー付きのキャップを備えたガラス瓶中に溶解した30mLのTCBを使用して、およそ2.0ミリグラム/ミリリットル(mL)の濃度で調製する。分析物を穏やかに撹拌しながら150℃で3時間加熱し、注入バイアルに高温で移す。その後、注入バイアル中の溶液を、注入前に160℃で30分間加熱する。注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0mL/分である。分析物を注入時にインラインフィルターを介して濾過して、不溶性物質を除去する。
【0031】
本明細書で使用される「初期分析物」という用語は、HT GPCシステムに注入された分析物の質量である。本明細書で使用される「濾過された分析物」という用語は、インラインフィルターを出てIR-5から回収される分析物の質量である。「可溶性画分」の重量分率は、濾過された分析物を初期分析物で割った結果である。不溶性画分を含む試料の場合、報告される値は分析物の可溶性部分のみのものである。
【0032】
4キャピラリーブリッジ粘度計は、分析物の固有粘度(η)を測定する。分析物のg’値を、η直鎖状で割ったηとして計算し(すなわち、g’=η/η直鎖状)、式中、η直鎖状が同じ分子量を有する直鎖状ポリマーの固有粘度である。
【0033】
質量回収率試験:質量回収率(M-REC)を、HT GPC試験で得られた分析物質量値を使用して、式M-REC=100×[(初期分析物-濾過された分析物)/初期分析物]によって計算する。
【0034】
内部架橋を有するポリマーが質量回収率分析によって定量的に検出可能な不溶性ゲルを形成することが理解される。さらに、85%以上の質量回収率を呈するポリマーが内部架橋を含まないことが理解される。
【0035】
照射ターポリマーのg’値を使用して、長鎖分岐の量を計算する。g’値の変化(すなわち、照射ターポリマーのg’値を同じ非照射ターポリマーのg’値で割った比率)を、Zimm and Stockmeyer,“The Dimensions of Chain Molecules Containing branches and Rings,”B.H.Zimm,W.H.Stockmayer,The Journal of Chemical Physics,Vol.17,page 1301-1314,1949による長鎖分岐の先駆的な研究に従って計算し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。基準に使用されるg値を、経験値0.5を用いた以下の等式を使用してg’値に変換した。
ε=g’
計算したg’値に基づいて、各樹脂の鎖あたりの長鎖分岐を、四官能性(H型)分岐ポリマーの分岐数とZimm and Stockmayerによるg値との線形相関に基づいて計算した。
【0036】
モノマー含量試験:重量パーセント基準でのターポリマーのエチレン含量およびプロピレン含量を、ASTM D3900に従うフーリエ変換赤外(FTIR)分析によって決定する。重量パーセント基準でのターポリマーのENB含量を、ASTM D6047に従うフーリエ変換赤外(FTIR)分析によって決定する。
【0037】
残留元素分析試験:残留元素分析を、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)およびX線蛍光(XRF)の両方の技法を使用して行う。ICP-AES分析の場合、試料を石英管に秤量し、1mLの水および3mLの硝酸を試料に添加する。試料を115℃のホットブロックに30分間入れる。その後、試料をUltraWaveマイクロ波オーブンに入れて、250℃で分解する。マイクロ波で分解した後、試料を希釈し、Perkin Elmer ICPでアルミニウム、カルシウム、クロム、チタン、およびバナジウムについて分析する。XRF分析の場合、試料を260°Fのホットプレスでプラークする。その後、試料を蒸留水ですすぎ、次いで、アセトンですすぎ、塩素含量をXRFで測定する。結果を百万分率(ppm)で報告する。
【0038】
密度を、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果を1立方センチメートル当たりのグラム(g/ccまたはg/cm)で記録する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
プロセス
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、本プロセスは、エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマーを提供することを含む。ターポリマーはニートであり、100ムーニー単位未満のムーニー粘度を有し、ここで、ムーニー粘度試験条件が125℃でのML(1+4)である。本プロセスは、ニートターポリマーを電子ビーム放射線に曝露することを含む。ニートターポリマーは、0.2メガラッド(MRad)~1.3MRadの被ばく線量で電子ビーム放射線に曝露される。本プロセスは、分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマーを形成することを含む。分岐ターポリマーは、25ムーニー単位~135ムーニー単位のムーニー粘度を有する。
【0040】
本プロセスは、ターポリマーを提供することを含む。一実施形態では、ターポリマーは、重合形態で、エチレン、α-オレフィン、および非共役ポリエンを含む、エチレン/α-オレフィン/非共役ポリエンである。α-オレフィンの好適な例には、C3-C20 α-オレフィンまたはC3-C8 α-オレフィンが挙げられる。非共役ポリエンの好適な例には、C4-C40非共役ジエンが挙げられる。
【0041】
一実施形態では、α-オレフィンは、C3-C8脂肪族α-オレフィンである。さらなる実施形態では、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、α-オレフィンは、プロピレンである。
【0043】
一実施形態では、非共役ポリエンは、非環式ジエンまたは環式ジエンである。非環式ジエンの非限定的な例には、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4-ヘキサジエンおよび1,5-ヘプタジエン、ならびに分岐鎖非環式ジエン、例えば、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、5,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、および1,9-デカジエン、ならびにジヒドロミルセンの混合異性体が挙げられる。環状ジエンの非限定的な例には、単環式ジエン、例えば、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、および1,5-シクロドデカジエン、多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデンおよびメチルテトラヒドロインデン、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、およびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、および5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0044】
一実施形態では、非共役ポリエンはヘテロ原子を含まない。本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、およびVII族由来の非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例には、F、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。
【0045】
一実施形態では、非共役ポリエンはENBである。
【0046】
一実施形態では、ターポリマーは、1種類の非共役ポリエンしか含まない。この1種類の非共役ポリエンは無効であるか、またはヘテロ原子を含まない。
【0047】
一実施形態では、ターポリマーは、エチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマーである。さらなる実施形態では、ターポリマーは、エチレン/プロピレン/ENBターポリマーである。本明細書で使用される「EPDM」という用語は、3つのモノマーのみを有するエチレン/プロピレン/ENBターポリマーであり、ENBはターポリマー中の唯一のジエンである。
【0048】
一実施形態では、ターポリマーはニートターポリマーである。本明細書で使用される「ニート」という用語は、その構造内またはその構造上に油を有しない材料を示す。本明細書で使用される「ニート」という用語は、互換的に、「オイルフリー」である材料を示す。一実施形態では、EPDMは、ニートEPDM(すなわち、「n-EPDM」)である。
【0049】
一実施形態では、本明細書で使用されるn-EPDMは、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,101,696号に記載のメタロセン触媒を用いて生成される。
【0050】
n-EPDMは、100MU未満のムーニー粘度を有する。一実施形態では、n-EPDMは、20MU、または30MU、または40MU、または50MU、または60MU、または65MU、または70MUから、80MU、または85MU、または90MU、または99MUまでのムーニー粘度を有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、20~99MU、または30~99MU、または60~80MUのムーニー粘度を有する。
【0051】
一実施形態では、n-EPDMは、25ムーニー単位-秒(MU●s)、または30MU●s、または180MU●sから、280MU●s、または475MU●s、または510MU●s、または550MU●sまでのムーニー緩和面積(MLRA)を有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、25~550MU●s、または30~475MU●s、または180~280MU●sのMLRAを有する。
【0052】
一実施形態では、n-EPDMは、0.5秒、または1秒、または2秒、または3秒、または3.3秒から、4秒、または4.5秒、または5秒、または6秒、または6.5秒、または7秒、または7.5秒、または8秒までのMLRA/ML比を有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、0.5~8秒、または2~6.6秒、または3~6秒のMLRA/ML比を有する。
【0053】
一実施形態では、n-EPDMは、20、または25、または30、または35から、40、または45、または50、または55、または60、または65までのレオロジー比(RR)を有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、20~65、または25~60、または30~55のRRを有する。
【0054】
n-EPDMは、41°以上の位相角δを有する。一実施形態では、n-EPDMは、41°、または45°、または50°から、60°、または70°、または85°までの位相角δを有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、41°~85°、または45°~70°、または50°~60°の位相角δを有する。
【0055】
一実施形態では、n-EPDMは、50重量パーセント(重量%)、または55重量%、または60重量%、または68重量%から、70重量%、または72重量%、または74重量%、または80重量%までの重合エチレンを含む。さらなる実施形態では、n-EPDMは、50~80重量%、または60~74重量%、または68~72重量%の重合エチレンを含む。一実施形態では、n-EPDMは、23重量%、または25重量%から、27重量%、または30重量%、または35重量%、または38重量%までの重合プロピレンを含む。さらなる実施形態では、n-EPDMは、23~38重量%、または25~35重量%、または25~30重量%の重合プロピレンを含む。一実施形態では、n-EPDMは、0.5重量%、または1重量%、または2重量%、または3重量%、または3.5重量%、または4重量%、または4.5重量%、または4.7重量%から、5.1重量%、または5.5重量%、または6重量%、または7重量%、または8重量%、または8.5重量%、または9重量%までの重合ENBを含む。さらなる実施形態では、n-EPDMは、0.5~9重量%、または0.5~8.5重量%、または0.5~7重量%、または4~5重量%の重合ENBを含む。重量パーセンテージは、n-EPDMの総重量に基づく。
【0056】
一実施形態では、n-EPDMは、1.8、または2.0、または2.2、または2.4、または2.6から、3.1、または3.2、または3.5、または4.0、または5.0までの分子量分布(MWD)を有する。さらなる実施形態では、n-EPDMは、1.8~5.0、または2.0~4.0、または2.2~3.5、または2.3~3.1のMWDを有する。
【0057】
n-EPDMは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0058】
ターポリマーは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0059】
本プロセスは、ターポリマー(例えば、n-EPDM)を電子ビーム放射線に曝露することを含む。一実施形態では、ターポリマー(例えば、n-EPDM)は、0.2メガラド(MRad)、または0.3MRad、または0.4MRadから、0.5MRad、または0.6MRad、または0.7MRad、または0.8MRad、または0.9MRad、または1MRad、または1.1MRad、または1.2MRad、または1.3MRad、または1.5MRadまでの被ばく線量で曝露される。さらなる実施形態では、ターポリマー(例えば、n-EPDM)は、0.2~1.3MRad、または0.3~1.2MRad、または0.3~0.9MRad、または0.3~0.7MRad、または0.4~0.5MRadの被ばく線量で曝露される。
【0060】
一実施形態では、ターポリマー(例えば、n-EPDM)は、1ミリ秒、または2ミリ秒、または4ミリ秒、または6ミリ秒、または8ミリ秒、または10ミリ秒から、12ミリ秒、または14ミリ秒、または18ミリ秒、または20ミリ秒、または30ミリ秒、または100ミリ秒までの被ばく時間にわたって曝露される。さらなる実施形態では、ターポリマー(例えば、n-EPDM)は、1~100ミリ秒、または2~30ミリ秒、または4~20ミリ秒、または10~20ミリ秒の被ばく時間にわたって曝露される。
【0061】
一実施形態では、本プロセスは、線形電子ビーム加速器を利用する。ターポリマーは、周囲空気環境下で電子ビーム放射線に曝露される。線形電子ビーム加速器は、4.5MeVのエネルギー範囲、150kWの全エネルギー範囲にわたるビーム出力、±10パーセントのビームエネルギー拡散、および30ミリアンペア(mA)の平均電流で動作する。
【0062】
本プロセスは、分岐ターポリマー(すなわち、b-ターポリマー)を形成することを含む。分岐ターポリマーは、互換的に照射ターポリマーと称される。分岐ターポリマーは、分岐エチレン/α-オレフィン/非共役ポリエンターポリマーである。分岐エチレン/α-オレフィン/非共役ポリエンターポリマーのα-オレフィンは、本明細書に記載の任意のα-オレフィンである。分岐エチレン/α-オレフィン/非共役ポリエンターポリマーの非共役ポリエンは、本明細書に記載の任意の非共役ポリエンである。一実施形態では、分岐ターポリマーは、分岐エチレン/プロピレン/ENBターポリマーである。本明細書で使用される「b-EPDM」という用語は、分岐エチレン/プロピレン/ENBターポリマーである。
【0063】
一実施形態では、本プロセスは、ゲルを含まない分岐ターポリマーを形成することを含む。さらなる実施形態では、本プロセスは、ゲルを含まないb-EPDMを形成することを含む。
【0064】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、25MU、または35MU、または45MU、または55MU、または75MU、または95MU、または100MU、または105MU、または110MUから、115MU、または120MU、または122MU、または125MU、または130MU、または135MUまでのムーニー粘度を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、25~135MU、または35~120MU、または45~110MUのムーニー粘度を有する。照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、非照射ターポリマーと比較して増加したムーニー粘度を有する。
【0065】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、220MU●s、または280MU●s、または315MU●sから、940MU●s、または1800MU●s、または2300MU●sまでのムーニー緩和面積(MLRA)を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、220~2300MU●s、または280~1800MU●s、または315~940MU●sのMLRAを有する。照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、非照射ターポリマー(例えば、n-EPDM)と比較して増加したMLRAを有する。
【0066】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、7秒、または8秒、または9秒、または10秒から、12秒、または13秒、または15秒、または20秒、または24秒、または26秒、または30秒までのMLRA/ML比を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、7~30秒、または7~26秒、または10~15秒のMLRA/ML値を有する。照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、非照射ターポリマーと比較して増加したMLRA/ML比を有する。特定の理論に拘束されることなく、MLRA/ML比は、ターポリマーの溶融弾性の程度に関連した緩和時間とみなされる。長鎖分岐(LCB)は、ターポリマーの緩和を遅らせ、MLRA/ML比を増加させる可能性がある。MLRA/ML比の増加は、照射非ターポリマーが非照射n-EPDM(例えば、n-EPDM)と比較してより多くのLCBを含んでいることを示す。
【0067】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、55、または60、または70、または80、または90、または95、または100から、105または110までのレオロジー比(RR)を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、55~110、または60~105、または70~100、または80~95のRRを有する。照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、非照射ターポリマーと比較して増加したRR値を有する。特定の理論に拘束されることなく、RR値の増加は、照射ターポリマーが非照射n-EPDMと比較してより高度にずり減粘であることを示す。RR値の増加は、照射ターポリマーが非照射n-EPDMと比較してより多くのLCBを含んでいることを示す。
【0068】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、20°、または22°、または25°、または27°、または29°から、30°、または31°、または32°、または35°、または37°、または39°までの位相角δを有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、20°~39°、または22°~37°、または25°~35°の位相角δを有する。特定の理論に拘束されることなく、照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)が非照射n-EPDMと比較して減少した位相角δ値を有すると考えられる。位相角δ値の減少は、照射ターポリマーが非照射n-EPDMと比較してより弾性であることを示す。
【0069】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、0.85g/cc以上または0.86g/ccから、0.88g/cc以下または0.89g/ccまでの密度を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、0.85~0.89g/cc未満、または0.86~0.88g/ccの密度を有する。
【0070】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、バナジウムを含む。一実施形態では、b-EPDMは、0百万分率(ppm)以上または0.1ppmから、0.7ppmもしくは0.82ppm未満、または0.9ppmまでのバナジウム含量を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、0~0.9ppmまたは0ppm~0.82ppm未満のバナジウム含量を有する。一実施形態では、b-EPDMは、0.82ppm未満の量のバナジウムを含む。
【0071】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、塩素を含む。一実施形態では、b-EPDMは、0百万分率(ppm)以上または10ppmから、15ppmまたは30ppmまでの塩素含量を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、0~30ppmまたは0~15ppmの塩素含量を有する。
【0072】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、54重量パーセント(重量%)、または55重量%、または60重量%から、65重量%、または68重量%から、72重量%までの重合エチレンと、23重量%、または25重量%から、30重量%、または40重量%、または50重量%、または55重量%までの重合プロピレンと、0.3重量%、または0.5重量%、または1重量%、または2重量%、または3重量%、または3.5重量%、または4重量%、または4.5重量%、または4.7重量%から、5.1重量%、または5.5重量%、または6重量%、または7重量%、または8重量%、または8.6重量%までの重合ENBとを含む。さらなる実施形態では、b-EPDMは、54~72重量%、または60~68重量%の重合エチレンと、23~55重量%、または25~50重量%の重合プロピレンと、0.3~8.6重量%、または0.5~8重量%の重合ENBとを含む。重量パーセントは、b-EPDMの総重量に基づく。特定の理論に拘束されることなく、照射ターポリマー(例えば、b-EPDM)が非照射n-EPDMと比較してENB含量のごくわずかな減少を有すると考えられる。ENB含量の減少の欠如は、照射ターポリマーに架橋が存在しないことを示す。
【0073】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、2.3、または2.6、または3.0、または3.3から、4.2、または5.6、または6までのMWDを有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、2.3~6、または2.6~5.6、または3.3~4.2のMWDを有する。
【0074】
一実施形態では、分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)は、HT GPC試験によって決定される質量回収率を有する。一実施形態では、b-EPDMは、80%以上の質量回収率を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、80%、または85%、または90%から、95%、または96%、または97%、または98%、または99%、または100%までの質量回収率を有する。別の実施形態では、b-EPDMは、80%~100%、または85%~100%、または97%~100%の質量回収率を有する。
【0075】
一実施形態では、本プロセスは、
(1)(i)50~80重量%の重合エチレン、(ii)23~38重量%の重合プロピレン、および(iii)0.5~9重量%の重合ENBを含むニートエチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマーを提供することであって、ここで、重量パーセンテージがターポリマーの総重量に基づく、提供することと、
(2)0.3~0.7MRadの被ばく線量でニートエチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマーを電子ビーム放射線に曝露することと、
(3)分岐エチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマーを形成することであって、分岐エチレン/プロピレン/ノルボルネンターポリマーが、
(A)35~120MU、または45~110MU、または55~105MUのムーニー粘度、
(B)55~110、または60~105、または70~100の125℃でのレオロジー比、および
(C)28°~39°、または22°~37°、または25°~35°の位相角δを有する、形成することと、を含む。
本プロセスは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
組成物
【0076】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、本組成物は、分岐エチレン/プロピレン/非共役ポリエンターポリマーを含む。分岐ターポリマーは、35ムーニー単位(MU)~120MUのムーニー粘度(125℃でのML 1+4)を有する。分岐ターポリマーは、55~110のレオロジー比を有する。分岐ターポリマーは、20°~39°の位相角δを有する。
【0077】
一実施形態では、分岐ターポリマーは、本明細書で前述されている分岐エチレン/プロピレン/ENBターポリマー(すなわち、b-EPDM)である。
【0078】
一実施形態では、b-EPDMは、ニートb-EPDMである。さらなる実施形態では、b-EPDMは、ニートであり、かつゲルを含まないb-EPDMである。
【0079】
一実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5重量%、または10重量%、または15重量%から、18重量%、または30重量%、または50重量%までの量の分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含む。さらなる実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、または10~30重量%、または15~18重量%の量の分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含む。
【0080】
一実施形態では、本組成物は、68~72重量%の重合エチレンおよび4.7~5重量%の重合ENBを有するニート分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含み、本分岐ターポリマーは、以下の特性:
(i)36~121MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)、および/または
(ii)62~102の125℃でのレオロジー比(RR)V0.1/V100、および/または
(iii)31°~36°の位相角δ、および/または
(iv)240~1795MU●sのムーニー緩和面積(MLRA)、および/または
(v)7~15秒のMLRA/ML比のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0081】
一実施形態では、本組成物は、69~71重量%の重合エチレンおよび0.3~0.35重量%の重合ENBを有するニート分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含み、本分岐ターポリマーは、以下の特性:
(i)56~63MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)、および/または
(ii)64~87の125℃でのレオロジー比(RR)V0.1/V100、および/または
(iii)31°~37°の位相角δ、および/または
(iv)348~630MU●sのムーニー緩和面積(MLRA)、および/または
(v)7~10秒のMLRA/ML比のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0082】
一実施形態では、本組成物は、54~55重量%の重合エチレンおよび8~9重量%の重合ENBを有するニート分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含み、本分岐ターポリマーは、以下の特性:
(i)37~103MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)、および/または
(ii)57~107の125℃でのレオロジー比(RR)V0.1/V100、および/または
(iii)32°~38°の位相角δ、および/または
(iv)315~2005MU●sのムーニー緩和面積(MLRA)、および/または
(v)8~20秒のMLRA/ML比のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0083】
一実施形態では、本組成物は、0百万分率(ppm)以上または0.1ppmから、0.7ppmもしくは0.82ppm未満、または0.9ppmまでのバナジウム含量を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、0~0.9ppmまたは0ppm~0.82ppm未満のバナジウム含量を有する。一実施形態では、本組成物は、0.82ppm未満の量のバナジウムを含む。
【0084】
一実施形態では、本組成物は、0百万分率(ppm)以上または10ppmから、15ppmまたは30ppmまでの塩素含量を有する。さらなる実施形態では、b-EPDMは、0~30ppmまたは0~15ppmの塩素含量を有する。
添加剤
【0085】
本組成物は、任意選択的に、1つ以上の添加剤を含み得る。
【0086】
一実施形態では、本組成物は、b-EPDMおよび油を含む。b-EPDMは、本明細書で先に開示された任意のb-EPDMであり得る。油には、石油、例えば、芳香油およびナフテン油;ポリアルキルベンゼン油;有機酸モノエステル、例えば、オレイン酸およびステアリン酸アルキルおよびアルコキシアルキル;有機酸ジエステル、例えば、フタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、およびグルタル酸ジアルキル、ジアルコキシアルキル、およびアルキルアリール;グリコールジエステル、例えば、ジアルカン酸トリ、テトラ、およびポリエチレングリコール;トリメリット酸トリアルキル;リン酸トリアルキル、トリアルコキシアルキル、アルキルジアリール、およびトリアリール;塩素化パラフィン油;クマロンインデン樹脂;パインタール;植物油、例えば、ヒマシ油、トール油、菜種油、および大豆油、ならびにそれらのエステルおよびエポキシ化誘導体;ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、油は、SUNPAR 2280、PARALUX 6001、HYDROBRITE 550、およびCALSOL 5550からなる群から選択される。
【0087】
一実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5重量%、または15重量%、または20重量%から、30重量%、または40重量%、または70重量%までの量の油を含む。さらなる実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5~70重量%、または15~40重量%、または20~30重量%の量の油を含む。
【0088】
油は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0089】
一実施形態では、本組成物は、b-EPDMおよび添加剤を含む。b-EPDMは、本明細書で先に開示された任意のb-EPDMであり得る。好適な添加剤には、充填剤、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、着色剤または色素、硬化剤(例えば、硫黄、過酸化物)、促進剤、補助薬剤、加工助剤、発泡剤、可塑剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
充填剤には、カーボンブラック;ケイ酸アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、およびそれらの混合物;炭酸カルシウム、マグネシウム、およびそれらの混合物;酸化ケイ素、カルシウム、亜鉛、鉄、チタン、およびアルミニウム;硫酸カルシウム、バリウム、鉛;ポリエチレングリコール(PEG);硫黄;ステアリン酸;スルホンアミド;アルミナ三水和物;水酸化マグネシウム;沈降シリカ;フュームドシリカ;天然繊維;合成繊維;およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤には、ヒンダードフェノール、ビスフェノール、およびチオビスフェノール;ならびに置換ハイドロキノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
一実施形態では、本組成物は、b-EPDMおよび炭酸カルシウムを含む。一実施形態では、炭酸カルシウムは、本組成物の総重量に基づいて、5重量%、または15重量%、または20重量%から、30重量%、または40重量%、または70重量%までの量で存在する。さらなる実施形態では、炭酸カルシウムは、本組成物の総重量に基づいて、5~70重量%、または15~40重量%、または20~30重量%の量で存在する。
【0093】
一実施形態では、本組成物は、b-EPDMおよびカーボンブラックを含む。一実施形態では、カーボンブラックは、本組成物の総重量に基づいて、5重量%、または15重量%、または20重量%から、30重量%、または40重量%、または70重量%までの量で存在する。さらなる実施形態では、カーボンブラックは、本組成物の総重量に基づいて、5~70重量%、または15~40重量%、または20~30重量%の量で存在する。
【0094】
一実施形態では、本組成物は、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックを除く総添加剤装填量を含む。一実施形態では、総添加剤装填量は、本組成物の総重量に基づいて、0.5重量%、または1重量%、または2重量%から、4重量%、または5重量%、または10重量%までの量で存在する。さらなる実施形態では、総添加剤装填量は、本組成物の総重量に基づいて、0.5~10重量%、または1~5重量%、または2~4重量%の量で存在する。
【0095】
添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0096】
総添加剤装填量は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0097】
一実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5重量%、または10重量%、または15重量%から、18重量%、または30重量%、または50重量%までの量の分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含む。さらなる実施形態では、本組成物は、本組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、または10~30重量%、または15~18重量%の量の分岐ターポリマー(例えば、b-EPDM)を含む。
【0098】
本組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0099】
本組成物は、物品を形成するために使用することができる。本組成物を用いて形成することができる物品の非限定的な例には、ベルト、ケーブル、押出機プロファイル、ホース、成形品、屋根ふき膜、スポンジ、タイヤ、目詰め材、およびワイヤが挙げられる。
【0100】
本発明は、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明される。別途明記されない限り、全ての部およびパーセントは、重量に基づく。
【実施例
【0101】
比較試料(「CS」)および発明実施例(「IE」)を配合するために使用した原材料を以下の表1に示す。
【表1】
【0102】
比較試料CS1、CS4、CS9、CS12、CS15、CS18、およびCS19は非照射ベースニートEPDMであり、受け取ったままの状態で使用する。比較試料CS7およびCS8はZ-N触媒ニートEPDMであり、受け取ったままの状態で使用する。表2を参照されたい。
【0103】
分岐EPDM(b-EPDM)を、空中でDYNAMITRON線形電子ビーム加速器を使用して10~20ミリ秒(ms)の被ばく時間にわたってニートEPDMを照射することによって生成する(表2)。電子ビーム加速器の動作パラメータは、4.5MeVのエネルギー範囲、150kWの全エネルギー範囲にわたるビーム出力、±10パーセントのビームエネルギー拡散、および30ミリアンペア(mA)の平均電流である。
【0104】
比較試料CS2およびCS3を、CS1を照射することによって生成する。比較試料CS6、CS11、CS14、およびCS17を、それぞれ、CS4、CS9、CS12、およびCS15を照射することによって生成する。
【0105】
発明実施例IE1およびIE2を、CS1を照射することによって生成する。発明実施例IE3およびIE4を、CS4を照射することによって生成する。発明実施例IE5およびIE6を、それぞれ、CS9およびCS12を照射することによって生成する。発明実施例IE7およびIE8を、CS15を照射することによって生成する。発明実施例IE9およびIE10を、CS18を照射することによって生成する。発明実施例IE11およびIE12を、CS19を照射することによって生成する。
【0106】
表2は、比較試料および発明実施例の一連の特性に対する照射の結果を要約する。表2には、残留元素分析試験からのバナジウム含量(V)および塩素含量(Cl)が含まれている。略語N.M.は、インデックス付き試料について特性が測定されなかったことを示す。
【表2】
【0107】
表2は、b-EPDMがベースEPDMと比較して増加したMV値を有することを示す。NORDEL 4760、NORDEL 4770、NORDEL 4785、およびNORDEL 6565の場合、MVは、0.7MRadの被ばく線量で照射した後に、それぞれ、59.5MU~81.1MU(IE4)、69.4MU~107.4MU(IE5)、83.8MU~120.4MU(IE6)、および66MU~103MU(IE12)増加した。CS6のMV値(163.1)、CS11のMV値(162.2MU)、およびCS14のMV値(165.1MU)は、1.5MRadの被ばく線量で照射した後にb-EPDMが望ましくない架橋を有することを示すマクロゲル形成の証拠を伴った。
【0108】
出願人は、予想外に、0.7MRadの被ばく線量でNORDEL 4770(IE5)を照射することにより、MVが69.4MUから107.4に、RRが42.5から102.2に、位相角δが48から31に変化することを発見した。0.7MRadの被ばく線量でNORDEL 4785(IE6)を照射することにより、MVが83.8MUから120.4に、RRが43.7から99.8に、δが50から33に変化した。
【0109】
表2は、分子量分布(MWD)および質量回収率(M-REC)の値に対する電子豆放射の結果を要約する。出願人は、予想外に、0.7MRadの被ばく線量でNORDEL 4725(IE1)、NORDEL 4785(IE6)、およびNORDEL 3745(IE7)を照射することにより、100パーセントの質量回収率を有するb-EPDMが生成されることを発見した。100%の質量回収率は、b-EPDMに架橋が存在しない状態で鎖分岐が存在することを示す。
【0110】
本開示が本明細書に含まれる実施形態および例証に限定されず、実施形態の一部分、および以下の特許請求の範囲に含まれる異なる実施形態の要素の組み合わせを含む実施形態の修正形態を含むことが具体的に意図されている。

【国際調査報告】