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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】治療に好適なRNA製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20220831BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220831BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220831BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 39/145 20060101ALN20220831BHJP
   A61P 31/00 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K31/713
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61K9/08
A61K39/145
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577069
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020068502
(87)【国際公開番号】W WO2021001417
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/067717
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510330301
【氏名又は名称】バイオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ・ハース
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲ・モレノ・ヘレロ
(72)【発明者】
【氏名】アンネ・マリオン・ジェネヴィエーヴ・シュレーゲル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー・エルバー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC06
4C076CC29
4C076DD26Z
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD60Z
4C076EE17
4C076EE26
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF11
4C076FF61
4C076FF67
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC021
4C084ZC022
4C085AA03
4C085BA55
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA13
4C086ZB31
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明は、RNA、好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA)、より好ましくは自己増幅性RNA(saRNA)、及びポリマー、特に、カチオン性ポリマー、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リシン(PLL)、ポリビニルアミン(PVA)、又はポリアリルアミン(PAA)等を含み、個々のRNA分子が溶液中に存在する、組成物に関する。当該製剤において、RNAは、優先的には、モノマー、ダイマー、トリマー、又はオリゴマーの形態で存在するが、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含む凝集物、特に大きなポリプレックスナノ粒子としては存在しない。当該製剤は、向上したトランスフェクション効率を示し、当該製剤は、対象へのRNAの送達のために使用することができ、当該製剤は、ポリプレックスナノ粒子の形態の大きな凝集物が存在する製剤と比較して、向上した用量応答相関を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA及びポリマーを水性相において含む組成物であって、RNA分子の優勢な分画が、溶液中に個々の分子を含む、組成物。
【請求項2】
前記RNAの大部分が一分子種として存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーがカチオン性ポリマーである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーがポリカチオン性ポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、プロタミン、スペルミン又はスペルミジン、ポリリジン、ポリアルギニンを含むカチオン性又はポリカチオン性ペプチド又はタンパク質、キトサンを含むカチオン性多糖類、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリブレン、ポリアリルアミン、及びポリビニルアミンを含むカチオン性ポリマーからなる群から選択される1つ又は複数を含み、特に前記ポリマーがポリアミドアミン(PAMAM)ポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーがポリ(エチレンイミン)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリ(エチレンイミン)が直鎖状ポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリ(エチレンイミン)が分岐鎖状ポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリ(エチレンイミン)が、1000Daから150000Daの間、5000Daから100000Daの間、10000Daから50000Daの間、15000Daから30000Daの間、20000Daから25000Daの間、又は約22500Daの平均モル質量を有する、請求項5から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス-トリス緩衝系(例えば、ビス-トリスプロパン、ビス-トリスメタン)、カルボン酸緩衝系、例えば、酢酸緩衝系、リン酸緩衝系、又はクエン酸緩衝系からなる群から選択される緩衝物質を更に含み、pHは、4から8、より好ましくは5から7の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
50mM以下のイオン強度を有し、好ましくは、正に帯電した一価イオンの濃度が25mM以下であり、遊離した正に帯電した二価イオンの濃度が20μM以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
遊離した正に帯電した二価のカチオン性イオンの濃度が20μM以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記RNAが、主に、個々にポリマーと会合したRNA分子からなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
RNAモノマー又は1ユニット当たり4以下の数のRNAコピーを伴うオリゴマーとして存在するRNAの質量分率が、RNAの総量の60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
RNA凝集物、好ましくは、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含むRNA凝集物を本質的に含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記RNAが、mRNA、saRNA、siRNA、shRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、及びアンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
ウイルスRNA粒子を含まない、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
RNAと過剰なポリマーとを混合することによって形成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
好ましくは、等体積比でポリマー含有溶液とRNA含有溶液とを混合することによって形成され、RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)が少なくとも約48である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)が、約48から300の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
RNAの溶液とポリマーの溶液とを混合することによって形成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
等体積のRNAの溶液とポリマーの溶液とを混合することによって形成される、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
ポリマーの溶液に脱水されたRNAを溶解させることによって形成される、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
非ウイルス遺伝子送達における使用のための、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
細胞を、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物と接触させる工程を含む、細胞をトランスフェクトする方法。
【請求項26】
トランスフェクションがインビトロ又はインビボにおいて行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が対象に存在し、前記組成物を前記対象に投与する工程を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
投与が注射によってなされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、筋肉内、皮内、又は皮下投与される、請求項27又は28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA、好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA)、より好ましくは自己増幅性RNA(saRNA)、及びポリマー、特に、カチオン性ポリマー、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リシン(PLL)、ポリビニルアミン(PVA)、又はポリアリルアミン(PAA)等を含み、個々のRNA分子が溶液中に存在する、組成物に関する。当該製剤において、RNAは、優先的には、モノマー、ダイマー、トリマー、又はオリゴマーの形態で存在するが、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含む凝集物、特に大きなポリプレックスナノ粒子としては存在しない。当該製剤は、RNAと、当該RNAに対して非常に過剰なポリマーとから形成することができる。その上、当該製剤は、RNAの非常に低い濃度において形成することができる。当該製剤は、向上したトランスフェクション効率を示し、当該製剤は、対象へのRNAの送達のために使用することができ、当該製剤は、ポリプレックスナノ粒子の形態の大きな凝集物が存在する製剤と比較して、向上した用量応答相関を有する。より正確には、本発明は、著しく減少した副作用リスクを伴う減少した有効な投薬量を可能にする、RNA、好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA)、より好ましくは自己増幅性RNA(saRNA)の投与のための製剤に関する。本明細書に記載されているRNA-ポリマー製剤は、例えば、感染症等に対するヒト又は動物のワクチン接種にとって特に有用である。
【背景技術】
【0002】
標的細胞への外来遺伝子情報の送達のためのRNAの使用は、DNAに対する魅力的な代替手段を提示する。RNAを使用する利点としては、一過性発現及び非形質転換特性が挙げられる。RNAは、発現するために核に入る必要がなく、その上、宿主ゲノムと一体化する可能性がなく、それにより、腫瘍発生のリスクを排除する。メッセンジャーRNA(mRNA)に基づく治療アプローチは、様々な分野での応用、例えば、ワクチン接種、腫瘍治療、又はタンパク質補充等のために益々注目を集めている(Sahinら(2014) Nat. rev. 13(10): 759~780)。癌ワクチン接種のためのいくつかのmRNAベースの薬物が、臨床試験にかけられている。そのような新規の治療概念を臨床診療へと移行させるために、患者への投与に好適な製剤が必要である。mRNAは、RNAseによる急速な分解から保護する必要があり、標的部位への細胞送達及びコードされたタンパク質の翻訳を可能にしなければならない。ヌクレオチド送達のための従来のビヒクルは、カチオン性脂質又はカチオン性ポリマーをベースとしており、mRNAと共にナノ粒子製剤を形成する。ポリマー性送達ビヒクルに関して、ポリエチレンイミン(PEI)及びその誘導体は、中でも最も確立された担体系であり(Neubergら(2014) Adv. in Gen. 88: 263~88)、様々な用途のための臨床試験において既に使用されている。
【0003】
PEI等のカチオン性ポリマーは、制御されたトランスフェクション特性を有するナノ粒子複合体へと、mRNAを伴って自己組織化することが知られており、実際に、PEIポリプレックス製剤は、遺伝子送達のために広く使用されている。PEIは、1つのアミノ基と2つの炭素脂肪族スペーサーとによる繰り返しユニットで構成されるカチオン性ポリマーである。PEIベースのホモポリマーは、その構造及びサイズに従って分類することができる。直鎖形態及び分岐鎖形態の両方に対して、広い範囲の分子量(600Da~400kDa)が利用可能である。構造レベルにおいて、直鎖状PEIと分岐鎖状PEIとの間の主な違いは、アミンのタイプに依拠し、すなわち、直鎖状PEIは、第二級アミンのみを有するが、その一方で、分岐鎖PEIは、25/50/25の比で第一級/第二級/第三級アミンを有する。PEIは、室温において水に易溶性であり、水性緩衝液においてプロトン化されるが、有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、又はクロロホルム等にも可溶性である。
【0004】
非ウイルス送達システムとしてのPEIの傑出した特性は、カチオン電荷の高密度を定義する、まさにイミノエチレンモノマーを頼りにしている。ポリマー中におけるプロトン化されたアミンは、DNA及びRNAの両方に存在するホスフェート骨格に主に起因して、核酸中に存在するアニオン電荷と静電結合を形成することができる。
【0005】
PEIポリプレックス製剤のひとつの重要な特性は、いわゆるN/P比であり、それは、RNAのリン酸基の数に対するPEIの窒素基の比を与える。窒素原子(pHに依存する)は、通常、正に帯電し、リン酸基は負に帯電するため、N/P比は、電荷比に相関する。電荷平衡が存在する場合のN/P比は、pHに依存する。適用可能なpHにおいて、電荷平衡は、1から4の間のN/P比の使用によって達成される。したがって、PEI製剤は、多くの場合、4超から12以下のN/P比で形成され、なぜなら、正に帯電したナノ粒子は、トランスフェクションにとって好ましいと考えられるからである。その場合、RNAは、PEIナノ粒子に全て結合していると考えられ、更に、当該ナノ粒子に対して過剰な遊離PEIが存在すると考えられる。いくつかの刊行物によれば、遊離PEIは、潜在的に、ナノ粒子によるトランスフェクションにとって好ましく、なぜなら、PEIは、細胞内取り込みメカニズムに関与することができ、エンドソームコンパートメントから放出することができるからである(Boeckleら(2004) J Gene Med. 6, 1102~1111; Caiら(2016) J Cont. Rel. 238, 71~79; Floreaら(2002) AAPS 4, 1~11)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sahinら(2014) Nat. rev. 13(10): 759~780
【非特許文献2】Neubergら(2014) Adv. in Gen. 88: 263~88
【非特許文献3】Boeckleら(2004) J Gene Med. 6, 1102~1111
【非特許文献4】Caiら(2016) J Cont. Rel. 238, 71~79
【非特許文献5】Floreaら(2002) AAPS 4, 1~11
【非特許文献6】「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、H. G. W. Leuenberger、B. Nagel、and H.Kolbl、Eds., Helvetica Chimica Acta,CH-4010 バーゼル、スイス、(1995)
【非特許文献7】Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、J. Sambrookらeds., Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー 1989
【非特許文献8】Koppel、D., J. Chem. Phys. 57、1972、pp 4814~4820、ISO 13321
【非特許文献9】Joseら、Future Microbiol., 2009, vol. 4, 837~856頁
【非特許文献10】Gouldら、2010、Antiviral Res.、vol. 87 111~124頁
【非特許文献11】Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)
【非特許文献12】Kypr, J.ら(2012) Comprehensive Chiroptical Spectroscopy: Applications in Stereochemical Analysis of Synthetic Compounds, Natural Products, and Biomolecules、第2巻: 575~586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
向上した安全性及び効率を有する生物学的に活性なRNAの送達のための製剤の開発は、依然として、まだ対処されていないニーズである。したがって、標的細胞又は標的組織への生物学的に活性なRNAの効率的な送達のための製剤を提供することが必要とされており、送達されたRNAは、それがコードするペプチド又はタンパク質へと翻訳される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
カチオン性ポリマーによるRNAの製剤が本明細書に記載され、RNAは、主に、モノマー、ダイマー、トリマー、又はオリゴマーの形態で存在するが、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含む凝集物、特に、個々のRNA分子よりはるかに大きく、より多くのRNAコピーを含む大きなポリプレックスナノ粒子としては存在しないか、又はあまり存在しない。驚くべきことに、RNAに非常に過剰なカチオン性ポリマー(電荷比に関して)を加えることによって、及び/又はRNAの非常に低い濃度において製剤を形成することによって、そのような相を形成することができることが見出された。
【0009】
RNAとカチオン性ポリマーとを含む製剤についての通常の理解は、約100nm以下から数百ナノメートルまでのサイズ範囲において存在し得る、いわゆるポリプレックスナノ粒子が形成されるということである。これらのナノ粒子におけるよくあるパラメータの1つは、いわゆるN/P比であり、それは、当該ポリマーにおける正に帯電した窒素基と、負に帯電したRNAのリン酸基との間の電荷比を意味する。過剰なポリマーの場合、RNAは、ナノ粒子に全て結合していると考えられ、当該過剰なポリマーは、遊離水性相中に存在すると考えられる。いくつかの刊行物において、この過剰な遊離ポリマーは、ポリプレックスナノ粒子のトランスフェクション効率にとって有利であると考えられる。
【0010】
ここで、以前から知られているポリプレックスナノ粒子に加えて、新規の相について説明する。増加する過剰なポリマーを、約0.1mg/mlの濃度のRNAに加えることによって、RNA分子がモノマー、ダイマー、トリマー、又はオリゴマーとして存在する個々のRNA分子の相が形成され、オリゴマーとモノマーとの間の平衡は、増加する過剰なポリマーを加えることによってモノマー側へとシフトすることが見出された。0.05mg/ml以下のRNA濃度では、より少ない過剰のPEIによって、当該新規の相を形成することができる。例えば、ポリエチレンイミン(PEI)の場合、RNAモノマーは、RNA濃度が0.1mg/mlのとき、約70から120以上のN/P比の優勢な形態である。RNA濃度が0.05mg/mlのみで、好ましくは、RNA:PEI混合比が>1:1である場合、4、好ましくは12のN/P比による過剰なPEIで、十分である。理論に束縛されることを望むわけではないが、個々のRNA分子は、化学両論的様式において、ポリエチレンイミンと会合し、異なるモル質量のモノマー、ダイマー、トリマー等を生じると考えられる。PEIを含む組成物におけるRNAは、異なる物理化学的技術によって識別することができ、共存するポリプレックスナノ粒子から物理的に分離することができる。
【0011】
驚くべきことに、PEI含有組成物におけるモノマー形態又はオリゴマー形態のRNAは、従来から知られるポリプレックスナノ粒子よりはるかに高いトランスフェクション効率を有することが見出された。RNAが完全にモノマー形態で存在する場合(RNA PEI製剤が、0.1mg/mLの濃度及び約70~120のN/P比で形成される場合)、最も高いトランスフェクション効率が見出された。
【0012】
レポーター遺伝子の発現(ルシフェラーゼ、グリーン蛍光タンパク質)の観察によって実証されるように、個々のRNA分子の相は、インビトロ及びインビボにおいて優れたトランスフェクション効率を実証した。それらは、向上した抗原の力価を得るために、ワクチン製剤としての使用、例えば、筋肉内投与に適用可能である。
【0013】
ポリマー含有組成物におけるRNA分子の当該新規の相は、好適な量のポリマーを好適な濃度、好適な混合比、及び好適な緩衝条件においてRNAに加えることによって容易に形成され得る。当該相は、医薬的使用にとって有利であり、なぜならば、それらは、制御された構造特性に容易に製造され得、大きな粒子の形成又は凝集のリスクがないためである。
【0014】
ポリマー含有組成物におけるRNAの当該新規の相は、RNAの溶液にポリマーの溶液を加えることによって、或いは脱水された(凍結乾燥された)RNAをポリマー溶液を用いて溶解させることによって、形成することができる。したがって、これを基にした医薬的製造及び製品の制御が、大いに促進される。
【0015】
筋肉内、皮内、又は皮下投与のための、RNA相をベースとする医薬製品を形成することができる。
【0016】
本開示の一態様は、RNA及びポリマーを水性相において含む組成物であって、RNA分子の優勢な分画が、溶液中に個々の分子を含む、組成物に関する。一実施形態において、優勢な分画は、当該組成物中のRNAの総量の20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超を含む。
【0017】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含み、当該組成物中のRNAの総量の20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超が、一分子種として存在する、組成物に関する。本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含み、当該組成物中のRNAの総量の60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超が、RNAモノマー又はオリゴマーユニット当たり4以下の数のRNA分子を伴うオリゴマーとして存在するRNAである、組成物に関する。
【0018】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含み、当該組成物中のRNAの総量の60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超が、20,000xgで90分間遠心分離したときに沈殿しないRNAである、組成物に関する。
【0019】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含み、当該組成物中のRNAの総量の20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満が、50nm又は60nmを超えるサイズのRNAポリプレックスナノ粒子として存在し、及び/又はナノ粒子1個当たり10以上、又は20以上の数のRNAコピーを伴うRNAポリプレックスナノ粒子として存在するRNAである、組成物に関する。一実施形態において、当該組成物は、50nm又は60nmを超えるサイズのRNAポリプレックスナノ粒子、及び/又はナノ粒子1個当たり10以上、又は20以上の数のRNAコピーを伴うRNAポリプレックスナノ粒子を本質的に含まない。
【0020】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含み、当該組成物中のRNAの総量の20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満が、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含む凝集物として存在するRNAである、組成物に関する。
【0021】
本明細書に記載されている組成物は、RNA及びポリマーの量を適切に調節することによって、特に、N/P比を適切に調節することによって、得ることができる。
【0022】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該RNAの大部分は、一分子種として存在する。様々な実施形態において、当該組成物中のRNAの総量の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超は、一分子種として存在する。
【0023】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリマーは、カチオン性ポリマーである。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリマーは、ポリカチオン性ポリマーである。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリマーは、プロタミン、スペルミン又はスペルミジン、ポリリジン、ポリアルギニンを含むカチオン性又はポリカチオン性ペプチド又はタンパク質、キトサンを含むカチオン性多糖類、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリブレン、ポリアリルアミン、及びポリビニルアミンを含むカチオン性ポリマーからなる群から選択される1つ又は複数を含む。一実施形態において、当該ポリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)ポリマーを含む。
【0024】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリマーは、ポリ(エチレンイミン)を含む。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリ(エチレンイミン)は、直鎖状ポリマーである。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリ(エチレンイミン)は、分岐鎖状ポリマーである。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリ(エチレンイミン)は、1000Daから150000Daの間、5000Daから100000Daの間、10000Daから50000Daの間、15000Daから30000Daの間、20000Daから25000Daの間、又は約22500Daの平均モル質量を有する。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該ポリ(エチレンイミン)は、22500Daから150000Daの間の平均モル質量を有する。
【0025】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス-トリス緩衝系(例えば、ビス-トリスプロパン、ビス-トリスメタン)、酢酸緩衝系、他のカルボン酸緩衝系、リン酸緩衝系、又はクエン酸緩衝系からなる群から選択され得る緩衝物質を更に含み、pHは、4から8、より好ましくは5から7の範囲であり得る。
【0026】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、50mM以下のイオン強度を有し、好ましくは、正に帯電した一価イオンの濃度は、25mM以下であり、遊離した正に帯電した二価イオンの濃度は、20μM以下である。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、遊離した正に帯電した二価イオンの濃度は、20μM以下である。
【0027】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該RNAは、主に、個々にポリマーと会合したRNA分子からなる。様々な実施形態において、当該組成物中のRNAの総量の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超は、個々にポリマーと会合したRNA分子として存在する。
【0028】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、RNAモノマー又はオリゴマーユニット当たり4以下の数のRNAコピーを伴うオリゴマーとして存在するRNAの質量分率は、RNAの総量の60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超である。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、凝集物1つ当たり多数のRNA分子を含むRNA凝集物を本質的に含まない。
【0029】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該RNAは、mRNA、saRNA、siRNA、shRNA、miRNA、プレmiRNA、リボザイム、及びアンチセンスRNAからなる群から選択される。
【0030】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、ウイルスRNA粒子を含まない。
【0031】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、RNAと過剰なポリマーとを混合することによって形成される。
【0032】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、ポリマー含有溶液とRNA含有溶液とが混合され、RNAの最終濃度は、0.1mg/ml以下であり、RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)は、少なくとも約48である。一実施形態において、RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)は、約48から300、約60から200、又は約80から150の範囲である。
【0033】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、ポリマー含有溶液及びRNA含有溶液が混合され、RNAの最終濃度は、0.05mg/ml以下であり、RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)は、少なくとも約4である。一実施形態において、RNAのリン酸基に対するポリマーの窒素基の数の比(N/P)は、約4から200、約12から150、又は約24から120の範囲である。
【0034】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、RNA含有溶液が、ポリマー含有溶液に加えられ、RNA含有溶液の量は、ポリマー含有溶液の量と等しいか又は過剰であり、好ましくは、RNA含有溶液とポリマー含有溶液との体積比は、約1:1から99:1の間である。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、RNA含有溶液が、ポリマー含有溶液に加えられ、当該RNA含有溶液は、最終組成物における濃度の2倍未満、より好ましくは、最終組成物における濃度の1.5倍未満、更により好ましくは、最終組成物における濃度の1.1倍未満のRNA濃度を有する。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、ポリマー含有溶液にRNA含有溶液が加えられた混合物におけるRNA濃度は、0.5mg/ml以下、0.4mg/ml以下、0.3mg/ml以下、0.2mg/ml以下、又は0.1mg/ml以下である。本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、ポリマー含有溶液に加えられるRNA含有溶液におけるRNA濃度は、1mg/ml以下、0.9mg/ml以下、0.8mg/ml以下、0.7mg/ml以下、0.6mg/ml以下、0.5mg/ml以下、0.4mg/ml以下、0.3mg/ml以下、0.2mg/ml以下、又は0.1mg/ml以下である。
【0035】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、RNAの溶液とポリマーの溶液とを混合することによって形成される。
【0036】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、等体積のRNAの溶液とポリマーの溶液とを混合することによって形成される。
【0037】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、少なくとも4:1の体積混合比で、RNAの溶液とポリマーの溶液とを混合することによって形成される。
【0038】
本明細書に記載されている組成物の一実施形態において、当該組成物は、ポリマーの溶液に脱水されたRNAを溶解させることによって形成される。
【0039】
本明細書に記載されている組成物中のRNAは、驚くほど密な編成を示し、非常に高い充填密度を示すことが本明細書において実証される。
【0040】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含む組成物であって、当該RNAが、例えば小角X線散乱測定等によって入手可能であるRNAの回転半径が50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径より小さい、非常に密圧されたコンフォメーションにおいて存在する、組成物に関する。
【0041】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含む組成物であって、当該RNAが、例えば小角X線散乱測定等によって入手可能であるRNAの回転半径が50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径の80%以下、好ましくは、50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径の60%以下、好ましくは、50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径の60%以下、好ましくは、50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径の50%以下、好ましくは、50mMのNaCl溶液における当該RNAの回転半径の40%以下である、非常に密圧されたコンフォメーションにおいて存在する、組成物に関する。
【0042】
本明細書に記載されている任意の態様及び他の態様の一実施形態において、本開示は、RNAとポリマーとを水性相において含む組成物であって、当該RNAが、例えば小角X線散乱測定等によって入手可能であるようなRNAの回転半径Rg(nm)と、RNAのモル質量Mw(ダルトン)の立方根との間の比が、下記の式:
【0043】
【数1】
【0044】
[式中、xは、0.17nm*mol1/3*g-1/3、好ましくは、0.15nm*mol1/3*g-1/3、より好ましくは、0.13nm*mol1/3*g-1/3、より好ましくは、0.11nm*mol1/3*g-1/3、より好ましくは、0.09nm*mol1/3*g-1/3、更により好ましくは、0.085nm*mol1/3*g-1/3である]によって示され得る、非常に密圧されたコンフォメーションにおいて存在する、組成物に関する。例えば、約12nmのRgを有する、3*106Daのモル質量を有するRNAの場合、当該比は、約0.083nm*mol1/3*g-1/3であろう。
【0045】
本開示の一態様は、凍結乾燥されている、本明細書に記載されているRNAとポリマーとを含む組成物に関する。そのような凍結乾燥された組成物は、本明細書に記載されているRNAとポリマーとを含む組成物を得るために水溶液を加えることによって再構成され得る。
【0046】
本開示の一態様は、非ウイルス遺伝子送達における使用のための、本明細書に記載されている組成物に関する。一実施形態において、遺伝子送達は、細胞中へと実行されるべきであり、当該細胞は、例えば、対象において、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで存在し得る。
【0047】
本開示の一態様は、細胞を本明細書に記載されている組成物と接触させる工程を含む、細胞をトランスフェクトする方法に関する。一実施形態において、当該細胞は、例えば、対象において、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで存在し得る。
【0048】
一実施形態において、遺伝子が送達される、又はトランスフェクトされる当該細胞は、対象に存在し、当該方法は、本明細書に記載された組成物を当該対象に投与する工程を含む。一実施形態において、投与は、注射によってなされる。一実施形態において、当該組成物は、筋肉内、皮内、又は皮下投与される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】古典的mRNA/PEI及びsaRNA/PEIポリプレックス-集団の特徴付け iVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、0~12の間の様々なN/P比で複合体化した。図1Aは、各測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた3つの独立した実験(n=3)において、様々なN/P比で複合体化したRNAの総量に対する遊離RNAの定量を示す。図1Bは、DLS測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた3つの独立した実験(n=3)において、DLSによって測定した様々なN/P比でのsaRNA及びiVT/PEIポリプレックスの平均直径を表す。
図2】遠心分離後のsaRNA/PEIポリプレックス-集団におけるmRNAの定量化 iVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、9~36の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、PEI:RNA電荷比に基づいて計算される。各分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比(purity ratio)260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図2Aは、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた5つの独立した実験(n=5)における当該製剤のN/Pの増分でのiVT mRNA/PEI-ポリプレックスの様々な分画において見出される、全体に対するRNA%を示す。図2Bは、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた5つの独立した実験(n=5)における当該製剤のN/Pの増分でのsaRNA/PEI-ポリプレックスの様々な分画において見出される、全体に対するRNA%を示す。
図3】コントロール-遠心分離後の沈殿したmRNA及び上清中のmRNAの合計 iVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、9~36の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、PEI:RNA電荷比に基づいて計算される。各分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図3は、図2A及び図2Bにおける前のデータセットに対する遠心分離していないコントロールにおける総濃度のパーセンテージとしての、上清及びペレットに含まれる定量化されたRNAの合計を示す。
図4】DLSによるmRNA及びsaRNA/PEIポリプレックス-集団のサイズiVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、9~36の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、PEI:RNA電荷比に基づいて計算される。各分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図4は、DLS測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた5つの独立した実験(n=5)において、試料の遠心分離による分取後にDLSによって測定した様々なN/P比でのsaRNA/PEIポリプレックスの平均直径を表す。
図5】遠心分離後のPEIポリプレックス-集団における遊離mRNA及びsaRNA iVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、9~36の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、PEI:RNA電荷比に基づいて計算される。各分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図5は、様々なN/P比(12、36、72)での上清分画のアガロースゲル電気泳動を示しており、30℃で20分間のインキュベーション後に上清相においてRNAを放出させるために、高濃度ヘパリン(HEP、100mg/ml)を使用した。アガロースゲルの上側レーン及び下側レーンは、同じ製剤を含む技術的反復試験である。
図6】遠心分離による非常に高いN/P比のmRNA及びsaRNA/PEIポリプレックス-集団の特徴付け iVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、9~204の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、PEI:RNA電荷比に基づいて計算される。上清分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図6は、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた3つの独立した実験(n=3)における、iVT mRNA/PEI又はsaRNA/PEI-ポリプレックス製剤の様々な分画において見出される使用したRNA全体に対する上清中のRNA%を示す。
図7】超遠心分離によって分離されたsaRNA/PEIポリプレックス-集団の特徴付け saRNA又はiVT mRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、12~120の間のN/P比で複合体化した。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。Optima XL-A/XL-I(Beckman-Coultier社)において、80.000G、RTで超遠心分離分析を行った。RNA沈降係数は、255nm波長での吸収によって特定され、Cy5-PEI沈降は、650nm波長での特異的吸収によって測定される。図7Aは、Cy5フルオロフォアで標識されたPEIによって12のN/P比で複合体化されたsaRNAの様々な沈降係数(S)における2つの異なる波長での吸収強度を示す。図7Aの左側のY軸は、255nm波長でのRNA吸収を表しており(黒の実線曲線)、その一方で、右側のY軸は、650nm波長でのPEI吸収を表す(黒の破線曲線)。図7Bは、図7Aにおける沈降するRNA及びPEIの総量に対する、各沈降係数群において共沈降するPEI及びRNAの推定パーセンテージを示す。図7Cは、様々なN/P比(12~120)での沈降係数(S)との関連における、複合体化されたiVT mRNAのλ=255nmでの存在量又は吸収を示す。
図8】遠心分離によって分離された様々なカチオン性ポリマー由来のsaRNA/ポリプレックス-集団の特徴付け saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、12~96の間のN/P比で複合体化した。上清中の粒子を精製するために、製剤を遠心分離(20.000G、4℃、90')によって分画化した。N/P比は、カチオン性ポリマー: RNA電荷比に基づいて計算される。5つの異なるカチオン性ポリマーを試験した(PEI=インビボ/Jet-PEI22kDA、DEAE-デキストラン20kDa、PVA=ポリビニルアミン25kDa、PAA=ポリアリルアミン17.5kDa、PLL=ポリ-l-リジン32,5kDa)。上清分画におけるRNA濃度は、260nm波長でのUV吸収測定によって特定されるが、純粋比260/230及び260/280nmも考慮に入れる。図8は、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)におけるsaRNA/PEI-ポリプレックス製剤の様々な分画において見出される、全体に対する上清中のRNA%を示す。
図9】iVT mRNA又はsaRNAを含有するポリプレックスの分画化された製剤によるC2C12細胞でのトランスフェクションの24時間後に読み取った発光 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするiVT mRNA又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、2~36の間の様々なN/P比で複合体化した。上清中のRNAを得るために、製剤を遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって分画化した。製剤は、製剤中のRNA濃度、遠心分離後の上清中のRNAの%、及びサイズを確認するために、トランスフェクションの前に特徴付けされる。1つのN/P条件に対して3回反復での5ngのRNA/ウェルのトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、分泌されたルシフェラーゼが測定される。N/P比は、RNA電荷比に基づいて計算される。図9Aは、技術的3回反復を用いた3つの独立した実験(n=3)における、5ngのRNA/ウェルでのPEI/iVT mRNAポリプレックスのトランスフェクションを示す。図9Bは、技術的3回反復を用いた3つの独立した実験(n=3)における、5ngのRNA/ウェルでのPEI/saRNAポリプレックスのトランスフェクションを示す。
図10】非常に高いN/P比のiVT mRNA及びsaRNA/PEIポリプレックスによるC2C12でのトランスフェクションの24時間後に読み取った発光 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするiVT又はsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、2~204の間の様々なN/P比で複合体化した。製剤は、製剤中のRNA濃度、遠心分離後の上清中のRNAの%、及びサイズを確認するために、トランスフェクションの前に特徴付けされる。分泌されたルシフェラーゼは、1つのN/P条件に対して3回反復でのトランスフェクションの24時間後に製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って測定される。1つのN/P条件に対して3回反復でのトランスフェクションの24時間後の細胞生存率を、Cell-Titer-Glo製造元プロトコルに従って測定した。図10Aは、技術的3回反復を用いた1つの独立した実験(n=1)における、50ngのRNA/ウェルでのPEI/saRNAポリプレックスにおける生存率及びトランスフェクション効率の相関関係を示す。図10Bにおいて、左側のY軸は、技術的3回反復を用いた3つの独立した実験(n=3)における、5ngのRNA/ウェルでのPEI/saRNAポリプレックスのトランスフェクション効率の相関関係を示し(黒の実線曲線)、右側のY軸は、トランスフェクション後の生存率のパーセンテージ(黒の破線曲線)及び各試験したN/P比での上清中に見出されるRNAのパーセンテージ(黒の一点鎖線曲線)を示す。図10Cにおいて、左側のY軸は、3つの技術的3回反復(x=3)を用いた3つの独立した実験(n=3)における、5ngのRNA/ウェルでのPEI/iVT mRNAポリプレックスのトランスフェクション効率の相関関係(黒の実線曲線)、3つの技術的3回反復(x=3)を用いた3つの独立した実験(n=3)における、トランスフェクトした細胞の生存率及び製剤中のRNAの%を示し、右側のY軸は、トランスフェクション後の生存率のパーセンテージ(黒の破線曲線)及び各試験したN/P比での上清中に見出されるRNAのパーセンテージ(黒の一点鎖線曲線)を示す。
図11】ルミネセンスのインビボ読み取り 5つの群(1群当たり3匹のBalb/cマウス)に、各脚の腹側において、ルシフェラーゼをコードする製剤化した62.5gのsaRNAの筋肉内投与を受けさせた。当該動物に、15日間にわたって異なる時点(1日目、3日目、6日目、9日目、15日目)において非侵襲的なインビボ生物発光画像法を施した。ルシフェラーゼタンパク質由来の光子を1分間にわたって収集し、注射部位における測定された光子/秒(p/s)の定量化のグラフとして示す。各群に、結果として12、24、48、72及び96のN/P比を生じる様々な量のPEIと共に製剤化された同じ量のsaRNAを受けさせた。saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、所望のN/P比で複合体化した。NP比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図11Aは、注入後6日目における、注入された製剤化されたsaRNAのN/P比に対する定量化された生物発光を示す。図11Bは、注入された各N/P群に関する曲線下面積として表される、15日間の測定にわたる、注入された製剤化されたsaRNAのN/P比に対する定量化された生物発光を示す。
図12】発光のインビボ読み取り及びルシフェラーゼペプチドに対するCD8応答 3つの群(1群当たり3匹のBalb/cマウス)に、それぞれの脚の腹側において、ルシフェラーゼをコードする製剤化されたsaRNAの筋肉内(i.m.)投与を受けさせた。当該動物に、15日間にわたって異なる時点(1日目、3日目、6日目、9日目、15日目)において非侵襲的なインビボ生物発光画像法を施した。ルシフェラーゼタンパク質由来の光子を1分間にわたって収集し、注射部位における測定された光子/秒(p/s)の定量化のグラフとして示す。各群に、PEI-ポリマーは同量であるが、異なるN/P比においてPEIと共に製剤化された異なる量のsaRNAを受けさせた(N/P12、500ng; N/P24、250ng; N/P48、125ng)。saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において所望のN/P比で複合体化した。NP比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図12Aは、実験全体にわたって、注入された製剤化されたsaRNAのN/P比に対する定量化された生物発光を示す。図12Bは、N/P群に対する製剤化されたsaRNAの注入量に対して正規化された、IFN-ELISPOTによるマウスMHCによって提示されたルシフェラーゼペプチドに対する処置されたマウスの脾臓試料からのCD8陽性T細胞の筋肉内投与の15日後の定量化された応答を示す。
図13】saRNA/PEIポリプレックスによるワクチン接種後の抗インフルエンザHA特異的IgGのインビボ読み取り 5つの群(1群当たり5匹のBalb/cマウス)に、1つの脚の腹側において、インフルエンザ株カリフォルニア/7/2009のヘマグルチニン(HA)をコードする製剤化されたsaRNAの筋肉内(i.m.)投与を受けさせた。当該動物に、49日間にわたって異なる時点(14日目、24日目、49日目)において、非侵襲的な血清学的監視を受けさせた。血清中の抗インフルエンザHA抗体を、酵素結合免疫測定法によって定量化した。各群に、PEI-ポリマーは同量であるが、N/P比増分(N/P12、500ng; N/P48、125ng; N/P72、83.3ng; N/P96、62.5ng、N/P120、50ng)を達成するために異なる比例量で製剤化されたsaRNAを受けさせた。saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において所望のN/P比で複合体化した。NP比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図13Aは、実験全体にわたって、示されたN/P比で製剤化されたsaRNAの注入試料に対する、血清中に見出される抗インフルエンザHA IgGの定量化された絶対力価値を示す。図13Bは、各群における製剤化されたsaRNAのRNA用量に対して正規化された注入されたN/P比に対する、実験全体において血清中に見出される抗インフルエンザHA IgGにおける定量化された力価値を示す。
図14】RNA/PEIポリプレックス-集団におけるカチオン性ポリマーの長さの影響の特徴付け 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、0~192の間の様々なN/P比で複合体化するために、エチレンイミン繰り返しユニット(r.u)の量が増加する10の異なる長さのPEIポリマーを使用した。試験したポリマー長は、そのエチレンイミンの繰り返しユニットの数、7r.u(0.34kDa)、15r.u(0,68kDa)、31r.u(1.4kDa)、62r.u(2.79kDa)、125r.u(5.63kDa)、250r.u(11.25kDa)、500r.u(22.5kDa)、1000r.u(45kDa)、1500r.u(67.5kDa)、2500r.u(112.5kDa)によって定義される。遊離RNAの分画を、標準的アガロースゲル電気泳動によって、全ての製剤に対して分析した。上清中のRNAを得るために、製剤を、遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって分画化した。当該製剤中のRNA濃度、遠心分離後の上清中のRNAの%、及び流体力学的径(z平均)を確認するために、トランスフェクションの前に製剤を特徴付けした。分泌されたルシフェラーゼの発現が、N/P条件及びポリマー長に対して3回反復での10ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、インビトロにおいて測定される。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図14Aは、技術的3回反復を用いた3つの独立した実験(n=2)における、N/P比及びPEI長に依存する5ngのRNA/ウェルでのPEI/iVT mRNAポリプレックス製剤の遊離RNA含有量を示す。図14Bは、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)における様々なN/P及びPEIポリマー長での当該製剤の異なる分画における総RNAに対する上清中のRNA%を示す。図14Cは、技術的3回反復を用いた2つの独立した実験(n=2)における、全ての試験したPEI-ポリマー長(繰り返しユニット)に対するN/P120でのPEI/saRNAポリプレックスによるトランスフェクション後のルシフェラーゼ活性を示す。図14Dは、エチレンイミンサブユニットの構造式、並びにそのエチレンイミンの繰り返しユニットの数によって定義される試験したポリマー長、対応する分子量(Da)、及び合成後に得られるポリマー多分散度を示す表を示す。
図15】ポリマー長の関数としての、発光のインビボ読み取り及びルシフェラーゼペプチドへのCD8媒介免疫応答 7つの群(1群当たり3匹のBalb/cマウス)に、それぞれの脚の腹側において、ルシフェラーゼをコードする製剤化されたsaRNAの筋肉内(i.m.)投与を受けさせた。コントロールとして、1つの余分な群(3匹のBalb/cマウス)に製剤緩衝液を注入した。当該動物に、20日間にわたって異なる時点(1日目、3日目、6日目、9日目、20日目)において、非侵襲的なインビボ生物発光画像法を施した。ルシフェラーゼタンパク質に由来する光子を、1分間にわたって収集し、注射部位における測定された光子/秒(p/s)の定量化のグラフとして示す。各群に、同じN/P比(N/P120)だが異なるPEI-ポリマー長(31r.u、62r.u、125r.u、250r.u、500r.u、1000r.u、2500r.u)を使用して製剤化された、PEIを用いて製剤化されたsaRNAの同じ量(125ng)を受けさせた。saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、所望のN/P比で複合体化した。試験したポリマー長は、示された数のエチレンイミンの繰り返しユニットと分子量: 31r.u(1.4kDa)、62r.u(2.79kDa)、125r.u(5.63kDa)、250r.u(11.25kDa)、500r.u(22.5kDa)、1000r.u(45kDa)、2500r.u(112.5kDa)とを有する。NP比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。製剤を、製剤中のRNA濃度、上清中のRNAの%、及びサイズを確認するために、注入の前に特徴付けした。図15Aは、実験全体にわたって、N/P120、125ngの製剤化されたsaRNAでの、注入されたポリマー長に対する定量化された生物発光を示す。図15Bは、左側のY軸において、ポリマー長(繰り返しユニット)の関数としての、注入後6日目に測定された生物発光を示す。右側のY軸は、注入された製剤の上清中に見出されるRNAの%を示す。図15Cは、筋肉内投与後20日目における、処置したマウスの脾臓試料からのCD8陽性T細胞の定量化された応答を示す。マウスMHCによって提示されるルシフェラーゼペプチドに対するCD8応答が、ELISPOTにおけるIFN放出によって定量化される。無関係のペプチドは、ルシフェラーゼペプチドに対するCD8の応報が特異的であることを示すための、コントロールとして機能する。
図16】製剤化の際のRNA/PLXesの集団に対するRNAの局所濃度の効果 分泌されたナノルシフェラーゼをコードするmRNA又はsaRNAを含有する9つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において500r.uのPEI(22.5kDa)によってN/P12において複合体化した。RNAの最終濃度(0.1mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とPEIポリマー含有溶液との混合比は、RNA含有溶液におけるRNAの開始濃度が異なるように変えた。試験した開始RNA濃度(局所濃度)は、2.0mg/mlと0.105mg/mlの間で変えた。上清中のRNAを得るために、製剤を、遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって分画化した。分画の前及び上清中のRNAの精製の後に、製剤中のRNA濃度及び複合体のサイズを測定した。製剤に対して3回反復での12.5ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、分泌されたルシフェラーゼのインビトロ発現を測定した。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図16Aは、RNAの様々な局所濃度ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.1mg/ml)及びN/P比(12)で製剤化された複合体の流体力学的径を示す。ここで、データは、技術的2回反復を用いた2つの独立した実験(n=2)を表す。図16Bは、RNAの様々な局所濃度ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.1mg/ml)及びN/P比率(12)での、RNA/ポリプレックス製剤の様々な分画において見出される、全体に対する上清中のRNA%を示す。ここで、データは、UV測定に対して2つの技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)を表す。図16Cは、RNAの様々な局所濃度ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.1mg/ml)及びN/P比率(12)での、PEI/saRNA製剤のトランスフェクション後の、分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤は、技術的3回反復(x=3)を用いた2つの独立した実験(n=2)においてであった。
図17】製剤化の際のRNA/PLXesの集団に対するRNAの局所濃度の効果 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する3つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、500r.uのPEI(22.5kDa)によってN/P12又はN/P120のいずれかにおいて複合体化した。RNAの最終濃度(0.1mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とPEIポリマー含有溶液との混合比は、RNA含有溶液中のRNAの開始濃度が異なるように変えた。1つの製剤を、N/P12及び0.2mg/ml(1:1)の局所RNA濃度において製剤化した。1つの製剤を、N/P120及び0.2mg/ml(1:1)の局所RNA濃度において製剤化した。1つの製剤を、N/P12及び0.105mg/ml(99:1)の局所RNA濃度において製剤化した。製剤に対して3回反復での12.5ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、分泌されたルシフェラーゼインビトロ発現を測定した。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図17は、RNAの様々な局所濃度及び/又はN/Pではあるが、一定の最終RNA濃度(0.1mg/ml)及び製剤体積(500uL)での、PEI/saRNA製剤によるトランスフェクション後の、分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤を、技術的3回反復(x=3)を用いた2つの独立した実験(n=2)において試験した。
図18】製剤化の際のRNA/PLXesの集団に対するRNAの局所濃度及びN/P比の影響 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する25の製剤を、試験したN/P比に対してRNAの5つの異なる開始濃度(局所濃度)を有するように、様々なN/P比(3、6、9及び12)及びRNA含有溶液とPEIポリマー含有溶液との様々な混合比で複合体化した。全ての製剤に対して、RNAの最終濃度(0.1mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を一定に維持した。全ての製剤化を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、500r.uのPEI(22.5kDa)によって実施した。図18は、様々なN/P比及びPEI/saRNA製剤の局所濃度での、試験した製剤における複合体の流体力学的径を示す。ここで、データは、技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)を表す。
図19】製剤化後のRNA/PLXes集団のコロイド安定性 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する2つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、500r.uのPEI(22.5kDa)によってN/P12又はN/P120のいずれかにおいて複合体化した。RNAの最終濃度(0.1mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とPEIポリマー含有溶液との混合比は、RNA含有溶液におけるRNAの開始濃度(局所濃度)が異なるように変えた。1つの製剤を、N/P12及び0.105mg/ml(99:1)の局所RNA濃度において製剤化した。1つの製剤を、N/P120及び0.2mg/ml(1:1)の局所RNA濃度において製剤化した。両方の製剤を、4℃で960時間(40日間)貯蔵し、異なる時点(0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、960時間)において、当該製剤の、流体力学的径等の物理化学特性、カウント/秒における複合体濃度、又は総濃度に対する上清中のRNA含有量の%をモニターした。製剤の貯蔵の前に、全体の分画を遠心分離して精製した。上清中のRNAも、前に言及した物理化学特性のモニタリングのために、4℃で960時間貯蔵した。各特定の時点において、ストック製剤、貯蔵した(エイジングした)上清分画、及びRNAの新たに調製した上清分画の物理化学パラメータを収集した。図19Aは、各時点での、遠心分離前の、及び新たに調製した上清分画からの製剤における複合体の経時での流体力学的径を示しており、それにより、上清中のRNAの流体力学的径を特定することができる。図19Bは、各時点での、遠心分離前の、及び新たに調製した上清分画からの製剤中の複合体の量を示す。図19Cは、各時点での、新たに調製した上清分画からの、及びt=0(0時間)において遠心分離した、エイジングした上清分画からの製剤における複合体の経時での流体力学的径を示しており、それにより、新たに調製された製剤とエイジングした製剤との間において、上清中のRNAの流体力学的径を特定することができる。図19Dは、各時点での、新たに調製した上清分画からの、及びt=0(0時間)において遠心分離した、エイジングした上清分画からの製剤における複合体の量を示す。図19Eは、新たに遠心分離した上清及びt=0(0時間)において遠心分離した、エイジングした上清の両方からの、経時における上清において識別されたRNAの分画における変化を示す。
図20】RNA/ポリプレックス-集団の形成におけるG5-PLL(64)カチオン性デンドリマーの特徴付け ペンタ-L-リジンポリマーの64のアームによって官能化されたG(5)-PAMAMデンドリマーからなる、ポリ(アミドアミン)ファミリーの新規の生分解性カチオン性ポリマーを、分泌されるナノルシフェラーゼをコードするmRNA又はsaRNAの複合体化に対して評価した。製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、様々なN/P比(3~192)で複合体化した。様々なN/PでのmRNA及びsaRNA含有製剤の流体力学的径を、遠心分離及び当該複合体によるトランスフェクションの前に評価した。遠心分離の前に、RNA濃度をUV吸収によって評価した。上清中のRNAを得るために、製剤を、遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって分画化した。上清中のRNA濃度を評価し、総RNAに対する上清中に見出されるRNAの%として特定した。分泌されたルシフェラーゼのインビトロ発現は、3回反復での12.5ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、測定される。N/P比は、G(5)PLL(64)-RNA電荷比に基づいて計算される。図20Aは、遠心分離前の、すなわち、製剤全体に由来する複合体の流体力学的径を示す。図20Bは、様々なN/P比でのRNA/G(5)-PLL(64)製剤の様々な分画において見出される、全体に対する上清中のRNA%を示す。図20Cは、様々なN/P比でのG(5)-PLL(64)/RNA製剤によるトランスフェクション後の、分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤を、技術的3回反復(x=3)を用いた3つの独立した実験(n=3)において試験した。
図21】製剤化の際のG(5)-PLL(64)/RNA複合体に対するRNAの局所濃度の効果 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするmRNA又はsaRNAを含有する5つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、G(5)-PLL(64)(ペンタ-L-リジンポリマーの64のアームによって官能化されたG(5)-PAMAMデンドリマーからなる新規のカチオン性ポリマー)によってN/P12において複合体化した。RNAの最終濃度(0.1mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とG(5)-PLL(64)デンドリマー含有溶液との混合比は、RNA含有溶液におけるRNAの開始濃度が異なるように変えた。試験した開始RNA濃度(局所濃度)は、4.0mg/mlと0.0505mg/mlの間で変えた。図21は、RNAの様々な局所濃度ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.05mg/ml)及びN/P比率(12)で製剤化された複合体の流体力学的径を示す。ここで、データは、技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)を表す。
図22】RNA/ポリプレックス-集団の形成におけるViromer(登録商標)の特徴付け Viromer(登録商標)は、アルキル鎖及び芳香族モチーフで大いに修飾される市販されている分岐鎖状のPEIである。ここで、分泌されたナノルシフェラーゼをコードするsaRNA/Viromerポリプレックスを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、様々なN/P比(0~120)で製剤化した。様々なN/PでのsaRNA含有製剤の流体力学的径を、遠心分離の前後において評価した。遠心分離の前に、RNA濃度をUV吸収によって評価した。上清中のRNAを得るために、製剤を遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって分画化した。上清相におけるRNA濃度を、上清相に見出される全体に対するRNAの%の定量化について、評価した。3回反復での12.5ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、分泌されたルシフェラーゼインビトロ発現を測定した。電荷比を、Viromer(登録商標)/RNA N/P比に基づいて計算した。図22Aは、遠心分離の前、すなわち、製剤全体(全体分画)からの、及び遠心分離の後、すなわち、上清分画(モノマー分画)の、複合体の流体力学的径を示す。図22Bは、様々なN/P比での、Viromer(登録商標)-RNA複合体の様々な分画において見出される、全体に対する上清中のRNA%を示す。図22Cは、様々なN/P比での、Viromer(登録商標)/RNA製剤によるトランスフェクション後の分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤を、技術的3回反復(x=3)を用いた3つの独立した実験(n=3)において試験した。
図23】製剤化の際のViromer(登録商標)/RNA複合体に対するRNAの濃度の効果 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する9つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、Viromer(登録商標)(アルキル鎖及び芳香族モチーフで大いに修飾された、市販されている分岐鎖状のPEI)によって、N/P12において複合体化した。RNAの最終濃度(0.05mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とViromer(登録商標)含有溶液との混合比は、RNA含有溶液中のRNAの開始濃度が異なるように変えた。試験した開始RNA濃度(局所濃度)は、4.0mg/mlと0.0505mg/mlとの間において変えた。様々なN/PにおけるsaRNA含有製剤の流体力学的径を、前もって評価した。遠心分離の前に、RNA濃度をUV吸収によって評価した。上清中のRNAを得るために、製剤を遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90分)によって分画化した。上清相におけるRNA濃度を、上清相に見出される全体に対するRNAの%の定量化について、評価した。N/P比を、Viromer(登録商標)-RNA電荷比に基づいて計算した。図23Aは、RNAの様々な局所濃度ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.05mg/ml)及びN/P比率(12)で製剤化された複合体の流体力学的径を示す。ここで、データは、技術的2回反復(x=2)を用いた3つの独立した実験(n=3)を表す。図23Bは、様々な局所濃度での、Viromer(登録商標)-RNA複合体の様々な分画において見出される、全体に対する上清中のRNA%を示す。
図24】RNA又はRNA/PEI製剤の凍結乾燥 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する合計で3つの製剤を、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、500r.uのPEI(22.5kDa)により、様々なN/P: N/P12又はN/P120のいずれかにおいて複合体化した。RNAの最終濃度(0.05mg/ml)及び最終製剤体積(500μL)を、異なる製剤の間において一定に維持したが、RNA含有溶液とPEI-ポリマー含有溶液の混合比は、RNA含有溶液におけるRNAの開始濃度(局所濃度)が異なるように変えた。1つ凍結乾燥又は凍結された試料を、N/P12及び0.1mg/mlの局所濃度(1:1)においてsaRNAを使用して製剤化した。1つ凍結乾燥又は凍結された試料を、N/P12及び0.0505mg/mlの局所濃度(99:1)においてsaRNAを使用して製剤化した。1つ凍結乾燥又は凍結された試料を、N/P120及び0.1mg/mlの局所濃度(1:1)においてsaRNAを使用して製剤化した。更に、saRNAを、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)、MBS緩衝液(最終濃度10% w/vスクロース、10mMのMES、pH6.1)、又はddH2Oのいずれかにおいて凍結乾燥させた。次いで、凍結乾燥させたsaRNAを、12又は120のいずれかの最終N/P、500μLの最終体積、及び0.05mg/mlの最終RNA濃度に対して、PEI-ポリマー含有溶液を用いて再構成した。様々なN/P又は局所濃度において、凍結乾燥/凍結の前後の、saRNA含有製剤の流体力学的径を評価した。PEI含有溶液を用いて再構成された凍結乾燥saRNA試料に対しても、流体力学的径を評価した。N/P120に対して3回反復での12.5ngのRNA/ウェルによるトランスフェクションの24時間後に、製造元のプロトコル(Nano-GLO、Promega社、米国)に従って、分泌されたルシフェラーゼインビトロ発現を測定した。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図24Aは、新たに調製した試料、凍結試料、及び前に凍結乾燥したものを様々な緩衝系によって再構成したsaRNAのいずれかからの、様々なN/P比(12又は120)での複合体の流体力学的径を示す。図24Bは、N/P120でのPEI-saRNA製剤と、1つの新たに調製した試料と、凍結乾燥形態から様々な緩衝液において再構成した3つのsaRNA試料とによる、トランスフェクション後の分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤を、技術的3回反復(x=3)を用いた2つの独立した実験(n=2)において試験した。図24Cは、RNAの様々な局所濃度及びN/P比ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.05mg/ml)及び最終体積(500μL)で製剤化された複合体の流体力学的径を示す。ここで、データは、技術的2回反復(x=2)を用いた3つの独立した実験(n=2)を表す。図24Dは、RNAの様々な局所濃度及びN/P比ではあるが、一定の最終RNA濃度(0.05mg/ml)及び最終体積(500μL)で製剤化したPEI-saRNA製剤によるトランスフェクション後の、分泌されたルシフェラーゼの発現を示す。製剤は、新たに調製するか、又は以前に凍結乾燥したsaRNA/PEI複合体の再構成後に調製した。ここで、データは、技術的2回反復(x=2)を用いた2つの独立した実験(n=2)を表す。
図25】凍結乾燥させたsaRNA又はRNA/PEI製剤によるワクチン接種後の抗インフルエンザHA特異的IgG及びCD4/CD8 T細胞応答のインビボ読み取り 6つの群(1群当たり5匹のBalb/cマウス)に、1つの脚の腹側において、インフルエンザ株カリフォルニア/7/2009のヘマグルチニン(HA)をコードする製剤化された125ngのsaRNAの筋肉内(i.m.)投与を受けさせた。比較のため、1つの余分な群(5匹のBalb/cマウス)に、製剤緩衝液だけを受けさせた。当該動物に、49日間にわたって異なる時点(14日目、24日目、56日目)において、非侵襲的な血清学的監視を受けさせ、インフルエンザHAペプチドに対するCD4/CD8 T細胞応答の定量化のために、実験の終了時に脾臓を摘出した。血清中の抗インフルエンザHA抗体を、酵素結合免疫測定法によって定量化した。中和力価をVNTアッセイによって定量化した。CD4/CD8 T細胞応答を、脾細胞のIFN-ELISPOTによって定量化した。インフルエンザHAをコードするsaRNAを含む合計6つの製剤を、異なる条件において、全てにおいて直鎖状PEI(22.5kDa)を用いて、複合体化した。2つの群に、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、N/P12又はN/P120のいずれかにおいて新たに製剤化したsaRNAを受けさせた。1つの群には、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)におけるN/P120で以前に凍結乾燥させたsaRNA/PEI製剤の水で再構成したものを受けさせた。1つの群に、以前に凍結乾燥させた、水におけるインフルエンザ-HA saRNAを、120の最終N/P比を有するようにPEI-ポリマー溶液によって再構成したものを受けさせた。1つの群に、以前に凍結乾燥させた、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)におけるインフルエンザ-HA saRNAを、120の最終N/P比を有するようにPEI-ポリマー水溶液によって再構成したものを受けさせた。1つの群に、前に凍結乾燥させた、MBS緩衝液(最終濃度10% w/vスクロース、10mMのMES、pH6.1)におけるインフルエンザ-HA saRNAを、120の最終N/P比を有するようにPEI-ポリマー水溶液によって再構成したものを受けさせた。N/P比は、PEI-RNA電荷比に基づいて計算される。図25Aは、実験全体にわたって、注入した製剤化されたsaRNAの試料毎の、血清中に見出される抗インフルエンザHA IgGの絶対力価値の、定量化した曲線下面積を示す。図25Bは、注入された群毎の、血清中の実験の56日目において見出される抗インフルエンザHA IgGの定量化されたウイルス中和力価を示す。図25Cは、IFN -ELISPOTによりマウスMHCによって提示される、インフルエンザ(HA)カリフォルニア/7/2009ペプチドに対する、処置したマウスの脾臓試料からのCD8及びCD4陽性T細胞の筋肉内投与後の56日目における、定量化された応答を示す。
図26】小角X線散乱(SAXS)によるモノマー性RNA-PEI製剤の評価 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する3つの試料を、SAXS評価のために調製した。1つの試料は、0.2mg/mlの最終濃度において、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6)におけるsaRNAを含んだ。1つの試料は、1.0mg/mlの最終濃度において、50mMのNaClにおけるsaRNAを含んだ。1つの試料は、0.2mg/mlの最終濃度において、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6)におけるN/P12でのsaRNA/PEIを含んだ。以前の実現可能性実験において特定されるように、様々な培地におけるRNAから十分な散乱強度を得るために、様々な濃度が必要であった。この最後の試料は、99:1の混合体積比(RNA:PEI相)及び0.105mg/mlの開始局所RNA濃度において調製した。それを、上清中のsaRNAを排他的に得るために、遠心分離アッセイ(20.000G、4℃、90')によって精製し、0.2mg/mlの最終濃度を達成するために、10kDaカットオフAmicon(登録商標) Ultra Centrifugal Filtersを用いて、遠心分離機(約3000G、4℃、45分)において再濃縮した。分画の前及び上清におけるRNAの精製の後に、製剤中のRNA濃度及び複合体のサイズを測定した。ここで、ハンブルク、ドイツ(P12、PETRAIII、EMBL)におけるシンクロトロンでの工業ビームタイムの間にデータを得た。図26Aは、対数強度(y軸)対対数q空間(x軸)として提示された散乱データである。図26Bは、自然対数強度(y軸)対二乗q空間(x軸)においてGuinierプロットとして提示された散乱データである。図26Cは、二乗q空間を掛けた自然強度(y軸)対q空間(x軸)においてKratkyプロットとして提示された散乱データである。図26Dは、p(r)(y軸)対ラジアン(nm)(x軸)における、saRNA/PEI試料の散乱データから導出された距離2体分布関数(p(r))を示す。図26Eは、p(r)(y軸)対ラジアン(nm)(x軸)における、50mMのNaCl試料中のsaRNAの散乱データから導出された距離2体分布関数(p(r))を示す。
図27】G(5)-PLL(64)/RNA又はViromer(登録商標)/RNA製剤におけるモノマー性RNAの分画の増分のインビボ効果 8つの群(1群当たり3匹のBalb/cマウス)に、それぞれの脚の腹側においてルシフェラーゼをコードする製剤化したsaRNAの筋肉内(i.m.)投与を受けさせた。コントロールとして、1つの余分な群(3匹のBalb/cマウス)に製剤緩衝液を注入した。当該動物に、8日間にわたって異なる時点(1日目、3日目、6日目、8日目)において非侵襲的なインビボ生物発光画像法を施した。ルシフェラーゼ由来の光子を1分間にわたって収集し、注射部位における測定された光子/秒(p/s)の定量化のグラフとして示す。各群に、様々なN/P比(N/P12-24-48-96)で製剤化した、G(5)PLL(64)ポリ(アミドアミン)ポリマー又はViromer(登録商標)のいずれかを用いて製剤化した同量(125ng) のsaRNAを受けさせた。MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、saRNAを所望のN/P比で複合体化した。N/P比を、ポリマー-RNA電荷比に基づいて計算した。製剤中のRNA濃度、上清中のRNAの%、及びサイズを確認するために、注入の前に製剤を特徴付けした。図27Aは、筋肉内投与後の様々な時点での、G(5)PLL(64)の注入されたN/P比に対する定量化された生物発光を示す。図27Bは、筋肉内投与後の異なる時点での、Viromer(登録商標)の注入されたN/P比に対する定量化された生物発光を示す。図27Cは、8日間の測定にわたっての、製剤化したsaRNAの注入されたN/P比に対する、定量化された生物発光を示し、各注入されたN/P群に関する曲線下面積として表される。
図28】円偏光二色性によるRNA/PEI又はRNA/NaCl製剤でのRNA二次-三次構造評価の評価 分泌されるナノルシフェラーゼをコードするsaRNAを含有する12の試料を円偏光二色性(CD)分光法のために調製した。最初の6つのRNA/PEI製剤を、様々なN/P比(N/P 0-24-48-72-120-240)で複合体化した、MBG緩衝液(最終濃度5% w/vグルコース、10mMのMES、pH6.1)において、saRNAを所望のN/P比で複合体化した。N/P比を、ポリマー-RNA電荷比に基づいて計算した。RNAの0.1mg/mlの最終濃度及び様々なNaCl濃度(0-2-4-8-16-50mM)のために、RNA含有溶液とNaCl含有溶液を等体積比で混合することによって、RNA/NaCl製剤の6つの試料の第2の群を調製した。RNA含有溶液を調製するために、RNAストック(ddH20中における0.2m/mL)とddH20とによるある量の適切な混合物を使用する。NaCl含有溶液を調製するために、NaClストック(100mM)とddH20とによるある量の適切な混合物を使用する。図28Aは、RNA/NaCl製剤における様々なNaCl濃度での楕円度(mdeg)としての円偏光二色性シグナルによって235~310nmの間で測定された波長(nm)の関数としてのCDスペクトルを示す。図28Bは、RNA/PEI製剤における様々なN/P比での楕円度(mdeg)としての円偏光二色性シグナルによって235~310nmの間で測定された波長(nm)の関数としてのCDスペクトルを示す。図28Cは、PEI製剤又はNaCl製剤のいずれかにおける正電荷濃度(mM)の関数としての、製剤化されたRNAにおいて観察されるピーク位置(nm)におけるシフトを示す。ピーク位置におけるシフトは、それぞれのコントロール群によって計算される(RNA/NaCl製剤の場合の0mMのNaCl、又はRNA/PEI製剤の場合のN/P=0(純粋なRNA、PEIなし))。図28Dは、PEI製剤又はNaCl製剤のいずれかにおける正電荷濃度(mM)の関数としての、製剤化されたRNAにおいて観察されるピーク位置での楕円度(mdeg)としての円偏光二色性シグナルにおけるシフトを示す。ピーク位置におけるCD(mdeg)でのシフトは、それぞれのコントロール群によって計算される(RNA/NaCl製剤の場合の0mMのNaCl、又はRNA/PEI製剤の場合のN/P=0(純粋なRNA、PEIなし))。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、下記において詳細に記載されるが、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬は変わり得るため、本開示は、それらに限定されるものではないことは理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。特に明記されない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0051】
好ましくは、本明細書において使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、H. G. W. Leuenberger、B. Nagel、and H. Kolbl、Eds., Helvetica Chimica Acta,CH-4010 バーゼル、スイス、(1995)に記載されるように定義される。
【0052】
本開示の実施は、特に明記されない限り、当技術分野における文献に記載される、化学、生化学、細胞生理学、免疫学、遺伝子組換えDNA技術における従来の方法を用いるであろう(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、J. Sambrookらeds., Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー 1989を参照)。
【0053】
以下において、本開示の要素について記載されることとなる。これらの要素は、特定の実施形態によって列挙されるが、しかしながら、それらは、追加の実施形態を創出するためにあらゆる方法及びあらゆる数において組み合わせ得ることは理解されるべきである。様々に説明される実施例及び実施形態は、明確に説明された実施形態のみに本開示を限定すると解釈すべきではない。この説明は、明確に説明された実施形態を任意の数の開示された要素と組み合わせる実施形態を、開示及び包含すると理解されるべきである。更に、全ての説明された要素のあらゆる順序及び組み合わせは、文脈において示されない限り、この説明によって開示されると解釈すべきである。
【0054】
用語「約(about)」は、およそ(approximately)又はほぼ(nearly)を意味し、本明細書に記載されている数値又は範囲との関連において、それは、一実施形態において、列挙又は権利請求される数値又は範囲の±20%、±10%、±5%、又は±3%を意味する。
【0055】
本開示を記載する文脈において使用される用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示語は(特に特許請求の範囲の文脈において)、本明細書において明記されないか又は文脈において明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈されるできである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、当該範囲内に属する別々の各値を個々に言及するための簡単な方法として機能することが意図される。本明細書において特に明記されない限り、個々の各値は、あたかも本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み入れられる。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書において明記されない限り、或いは文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序において実施することができる。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例又は例示言語(例えば、「例えば、~等(such as)」)の使用は、単に本開示をより良く解説することを意図するものであり、特許請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書におけるいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0056】
特に明白に規定されない限り、用語「含む(comprising)」は、「含む(comprising)」によって導入されるリストのメンバーに加えて、場合によりさらなるメンバーが存在してもよいことを示すために、本明細書との関連において使用される。しかしながら、本開示の特定の実施形態として、用語「含む(comprising)」がさらなるメンバーの存在しない可能性を包含することも想到され、すなわち、この実施形態の目的のために、「含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」の意味も有すると理解されるべきである。
【0057】
いくつかの文献が、本明細書の本文全体を通して引用されている。本明細書において引用された各文献(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)は、上記及び下記に関わらず、それらを参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる記載も、本開示がそのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。
【0058】
カチオン性ポリマー及びRNAからなる水性相が本明細書に記載され、RNA-ポリプレックスナノ粒子の代わりに、個々のRNA分子が当該水性相中に存在する。ポリマー含有溶液において可溶化されたRNAの製剤は、インビトロ及びインビボでの当該RNAの送達にとって好ましいトランスフェクション特性を有する。それらは、様々な治療アプローチのためにRNAが標的細胞に送達されることを必要とする医薬的用途において有利である。RNA/ポリマー系のコロイド性質の徹底的な調査によって、新規の相が発見された。
【0059】
ポリプレックス製剤の古典的理解に従って、カチオン性ポリマーの量の増加は、電荷平衡に近づき、それを超えて、もはや遊離RNAが存在しなくなるまで、遊離RNAの量を減少させる。RNAは、ポリプレックスナノ粒子中に完全に挿入されていると考えられ、それらは、異なるサイズを有し、典型的には、いくつかのRNA及びポリマー分子のコピーを含む。
【0060】
PEI/RNA系の徹底的な調査により、驚くべきことに、PEI過剰により、個々に溶解した分子として存在するRNAを見出すことができることが明らかとなった。その上、更に驚くべきことに、そのような個々に溶解した分子の形態で存在するRNAの分画は、過剰なポリマーの増加に伴って増加することが見出された。ポリプレックスナノ粒子中のRNA及び個々に溶解したRNAは、遠心分離によりお互いから分離することができた。図2は、遠心分離実験の結果を示しており、上清及びペレット中のRNA含有量がUV測定によって定量化された。実験は、約2000のヌクレオチドからなるメッセンジャーRNA(mRNA)と、約9000のヌクレオチドからなる自己増幅性RNA(saRNA)とを用いて実施した。RNAの両方のタイプmRNA及びsaRNAの場合、それらの分画は、適用された遠心分離条件下において、沈殿しなかった。図は、上清中のRNA分画が増加するPEI過剰に伴って増加したことを実証する。図3において、沈殿したRNA及び上清中のRNAの量を、それぞれのN/P比に関して合計した。理論上の濃度の100%の近い値が得られ、それは、調査結果が、任意のアーチファクトに起因するのではなく、真のRNA濃度に明らかに相関することを示している。
【0061】
N/P比の関数としての様々な分画からの粒子サイズ測定を実施し、図4に示した。再懸濁させた沈殿物及び上清からの、2つの成分を混合した後、及び遠心分離後の、未修飾の系におけるサイズが示される。再懸濁させたペレットからは、遠心分離前の系の値に近い値が得られた。とりわけ、上清からでも、測定は可能であり、その場合、サイズは、25nmから50nmの間であった。サイズ測定の場合、ある特定の誤差を考慮に入れなければならないが、データは、どのような場合でも、いくらかの粒子分画が上清中に存在したことを示す。
【0062】
上清分画の組成を、アガロースゲル測定によって更に調査した。図5は、N/P12、36、及び72での上清との比較における裸のRNAに対するアガロースゲルトレースを示す。上清を、未処理の場合と、最終的にPEI複合体化RNAを放出するために、ヘパリンを用いたインキュベーション後、とのいずれかにおいて測定した。未処理の上清の場合、RNAバンドは見られなかったが、ヘパリン処理後では、検出することができ、バンド強度は、N/P比と共に増加する。このことは、事実上、上清中にRNAは存在することを確認するが、遊離形態ではなく、むしろ、それは、PEI会合状態において存在し、それらから、ヘパリン処理によって放出させることができると仮定され得る。
【0063】
上清分画のより体系的な調査により、ナノ粒子から上清相へのRNAのシフトに関する定量的洞察が明らかとなった。図6では、図2に示されたような上清分画の測定が、はるかにより高いN/P値へと拡張された。上清分画は、全てのRNAが約130から150のN/P値において非沈殿状態へと移行するまで単調に増加した(N/P=120において、上清は、RNA試料に応じて、RNAの85%から95%を含有する)。したがって、このN/P値において、RNAは、完全に上清状態へと移行していると見なすことができる。
【0064】
上清状態のRNAの分子干渉性に関する洞察を明らかにするために、分析的超遠心分離(AUC)測定を使用した。図7Aに、N/P12でのAUC測定の結果を示す。ナノ粒子に対応する高い沈降係数での大きなピークと、更に、モノマー、ダイマー、トリマー等としての分子部分の分画と同様のより低い沈降係数での一連のピークが特定された。RNA及びPEIのピークは、独立して又は同時に明らかにすることができる。したがって、上清中のRNAは、RNAのモノマー、ダイマー、トリマー等の形態で存在すると見なされ、それは、準化学量論的に、PEIによって溶媒和される。図7Cにおいて観察されるように、iVT mRNAを含有するPEIポリプレックスのN/P増分のさらなるAUC分析は、より高いN/P比が、当該系を個別のモノマー性RNA分子に向かってシフトさせることを実証した。N/P=120において、全てのiVT mRNAは、モノマー性分子配置において見出される。
【0065】
例としてPEIによってここで概説される観察は、いくつかの代替のカチオン性ポリマーによるRNA相がN/P比の関数と見なされる、図8又は図20B又は図22Bにおいて実証されるように、他のカチオン性ポリマーでも行うことができる。全ての場合において、遠心分離後、可溶化されたRNA分画の増加が、N/Pの増加と共に見出された。このことは、モデル分子としてのPEIによる観察及び結論が、原則として、他のカチオン性ポリマーに対しても同様に適用可能であることを実証している。
【0066】
高いN/P比での新規のPEI/RNA相は、古典的ポリプレックスナノ粒子系と比較して、優れたトランスフェクション効率を示した。これは、インビトロでのトランスフェクション実験の結果が示される図9において実証される。ルシフェラーゼをコードするRNAからのRNA/PEIポリプレックス系を、様々なN/P比でアセンブルし、完全な系に対して、又は遠心分離によるペレット及び上清の分離の後に、ルシフェラーゼ発現を測定した。上清相の活性は、活性が非常に低い、系全体又はペレット化したナノ粒子よりもN/P比の増加によってはるかに増加した。したがって、明らかに、上清相は、当該系の活性に対して重要な貢献を提供したが、その一方で、ナノ粒子は、活性が非常に低いか、又は有害でさえあるように思われる。活性は、N/P比と共に、最高で約120の値まで単調に増加したが、それ以上では、横這いのように見える。これは、RNAがモノマー形態へと定量的にトランスフェクトされた範囲と一致する(図10B図10C)。したがって、120以上のN/P比で存在する純粋なモノマー性RNAは、最良のトランスフェクション効率にとって最も好ましいように思われる。
【0067】
インビトロにおいてなされた観察は、図11図13に示されるように、インビボにおいても確認することができる。首尾一貫して、最高で120までのN/Pの増加によるトランスフェクション効率の増加が見出された。免疫実験からのより高い力価と同様の、より高いルシフェラーゼ発現が得られた。同時に、用量を減らすことができ、結果として、ビヒクルの潜在的毒性作用を減らすことが可能となった。その上、優れたトランスフェクション効率に対する高いN/P比での以前の観察は、活性がN/P比と共に単調に増加し、可能な限り最も多い量のモノマー形態においてRNAが定量的にトランスフェクトされる範囲において横這いになる、図20C又は図22Cにおける実質的に異なるカチオン性ポリマーに対して観察することができた。これは、他のカチオン性ポリマーに対する、そのようなRNA/PEI系における増強された生物活性の一般的応用を際立たせる。
【0068】
定義
以下において、本開示の全ての態様に適用される定義が提供される。以下の用語は、特に明記されない限り、以下の意味を有する。いかなる未定義の用語も、その技術分野において認識される意味を有する。
【0069】
「減少させる(reduce)」又は「阻害する(inhibit)」等の用語は、本明細書において使用される場合、例えば、レベルにおいて、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、又は約75%以上の全体的減少を生じさせる能力を意味する。用語「阻害する(inhibit)」又は類似する語句は、完全な又は本質的に完全な阻害、すなわち、ゼロ又は本質的にゼロへの減少を包含する。
【0070】
「増加させる(increase)」又は「増強する(enhance)」等の用語は、一実施形態において、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、又は少なくとも約100%の増加又は増強に関する。
【0071】
本明細書において使用される場合、用語「水性相」は、全体において又は一部において、水を含む組成物を意味する。
【0072】
「生理学的pH」は、本明細書において使用される場合、約7.5のpHを意味する。
【0073】
本開示において使用される場合、「w/v%」は、重量/体積パーセントを意味し、それは、ミリリットル(ml)単位の溶液の総体積のパーセントとして表現されるグラム(g)単位の溶質の量を意味する濃度の単位である。
【0074】
本開示において使用される場合、「mol%」は、全ての成分のモル総数に対する1つの成分のモル数の比に100を掛けたものとして定義される。
【0075】
場合によって、割合は、重量パーセントにおいて、すなわち、「重量%」において与えられる。用語「重量%」は、化合物又は組成物の総重量に基づく重量パーセントを意味する。
【0076】
用語「質量分率」は、本明細書において使用される場合、総質量に対するある成分の質量比を意味する。ここで、質量分率は、典型的には、パーセント(%)として表現される(多くの場合、重量パーセントと呼ばれ、重量%と略される)。例えば、60%超のある特定の分子数において存在するRNAの質量分率は、組成物中のRNAの総量の(質量ベースの)RNAの60%超がこの特定の分子数に存在することを意味する。
【0077】
用語「イオン強度」は、特定の溶液中の異なる種類のイオン種の数とそれらのそれぞれの電荷との間の数学的関係を意味する。したがって、イオン強度Iは、以下の式:
【0078】
【数2】
【0079】
によって数学的に表され、式中、cは、特定のイオン種のモル濃度であり、zは、その電荷の絶対値である。合計Σは、溶液中の全ての異なるイオン(i)に対して取られる。
【0080】
本開示によれば、用語「イオン強度」は、一実施形態において、一価イオンの存在に関連する。二価イオン、特に二価のカチオン、の存在に関して、それらの濃度、又はキレート化剤の存在に起因する有効濃度(遊離イオンの存在)は、一実施形態において、RNAの分解を防ぐために十分に低い。一実施形態において、二価イオンの濃度又は有効濃度は、RNAヌクレオチドの間のリン酸ジエステル結合の加水分解に対して触媒レベル未満である。一実施形態において、遊離二価イオンの濃度は、20μM以下である。一実施形態において、遊離二価イオンは存在しないか、又は本質的に存在しない。
【0081】
「オスモル濃度」は、溶媒1キログラム当たりの溶質のオスモルの数として表現された溶質の濃度を意味する。
【0082】
用語「凍結する(freezing)」は、通常は熱の除去による、液体の凝固に関する。用語「凍結乾燥する(lyophilizing)」又は「凍結乾燥(lyophilization)」は、物質を凍結させ、次いで、周囲の圧力を減少させて、物質中の凍結した媒体を固相から気相へと直接昇華させることによる物質の凍結-乾燥(freeze-drying)を意味する。
【0083】
用語「噴霧乾燥」は、(加熱された)気体を、容器(噴霧乾燥機)内において霧化(噴霧)させた流体と混合することによって、物質を噴霧乾燥することを意味し、形成された液滴から溶媒が蒸発し、乾燥粉末を生じる。
【0084】
用語「抗凍結剤」は、凍結段階の間に有効成分を保護するために製剤に加えられる物質に関する。
【0085】
用語「リオプロテクタント(lyoprotectant)」は、乾燥段階の間に有効成分を保護するために製剤に加えられる物質に関する。
【0086】
用語「再構成する(reconstitute)」は、水等の溶媒を乾燥した産物に加えてそれを液体状態、例えば、その元の液体状態等に戻すことに関する。
【0087】
用語「組換え」は、本開示との関連において、「遺伝子工学により作製された」を意味する。一実施形態において、本開示との関連における「組換え対象物」は、自然には生じない。
【0088】
用語「天然に存在する」は、本明細書に使用される場合、対象物を天然において見出すことができるという事実を意味する。例えば、有機体(ウイルスを含む)中に存在し、天然の源から単離することができ、並びに実験室において人によって故意に改変されていない、ペプチド又は核酸は、天然に存在する。用語「天然において見出される(found in nature)」は、「天然に存在する」を意味し、既知の対象物並びにまだ自然から発見されていない及び/又は単離されていないが将来に天然源から発見及び/又は単離され得る対象物を包含する。
【0089】
本開示との関連において、用語「粒子」は、分子又は分子複合体によって形成された構造化エンティティに関する。一実施形態において、用語「粒子」は、マイクロサイズ又はナノサイズの構造体、例えば、マイクロサイズ又はナノサイズの密な構造体等に関する。
【0090】
本開示との関連において、用語「RNA粒子」は、RNAを含有する粒子に関する。一実施形態において、RNA粒子は、ナノ粒子である。
【0091】
本開示において使用される場合、「ナノ粒子」は、好ましくは少なくとも約50nmの平均直径を有する粒子を意味する。
【0092】
用語「平均直径」は、結果として長さの次元を有するいわゆるZ平均と無次元の多分散度(PI)とを提供する(Koppel、D., J. Chem. Phys. 57、1972、pp 4814~4820、ISO 13321)、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用するデータ解析を用いた動的レーザー光散乱(DLS)によって測定されるような、粒子の平均流体力学的径を意味する。ここで、粒子に対して「平均直径」、「直径」、又は「サイズ」は、Z平均のこの値と同意語として使用される。
【0093】
「多分散指数(polydispersity index)」は、好ましくは、「平均直径」の定義において言及される、いわゆるキュムラント解析により、動的光散乱測定に基づいて計算される。ある特定の前提の下、それは、ナノ粒子の集合の粒度分布の指標と見なすことができる。
【0094】
用語「凝集物」又は「複合体」は、本明細書において使用される場合、複数の(少なくとも2つの)分子を含む、粒子等のより大きな統一体を形成する、当該複数の分子を意味する。そこでは、個々の分子は、もはや独立して存在しない。凝集は、個々の分子が非共有結合的に会合して凝集物を形成するプロセスである。正に帯電した分子、例えば、ポリマー等と、負に帯電したRNAとの間の静電相互作用は、凝集物形成に関与し得る。これは、結果として、複合体化並びにRNA凝集物又はRNA粒子の自発的形成を生じる。
【0095】
用語「RNA凝集物」は、本明細書において使用される場合、複数の(少なくとも2つの)RNA分子を含む凝集物又はユニットを意味する。したがって、この用語は、1つのRNA分子及び1つ又は複数のポリマー分子のポリプレックスを排除し、ポリプレックスは、本明細書において、RNAに関して使用される場合、用語「個体(individual)」、「一分子(monomolecular)」、「単分子(unimolecular)」、又は「モノマー」に包含される。用語「多くのRNA分子を含む凝集物」、又は単に「大きいRNA凝集物」又は「大きい凝集物」は、本明細書において使用される場合、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、25以上、又は50以上のRNA分子、又は更により多くのRNA分子を含むRNA凝集物を意味する。
【0096】
用語「ポリプレックス」は、本明細書に使用される場合、静電相互作用によって形成された、ポリマーと核酸、例えば、RNA等との会合体を意味する。ポリプレックスがRNAを含む場合、当該用語は、「RNAポリプレックス」とも呼ばれ得る。
【0097】
用語「個別分子」、「一分子」、「単分子」、又は「モノマー」は、本明細書において使用される場合、分子が、同じタイプの複数の(少なくとも2つの)分子として存在せず、物理的相互作用によって、同じタイプの他の分子とより大きな統一体を形成しないことを意味する。特に、用語「個別分子」、「一分子」、「単分子」、又は「モノマー」は、本明細書において使用される場合、1つのRNA分子しか含まないユニットを意味する。当該ユニットは、任意の数のRNA以外の化合物の分子、例えば、ポリマー、を含み得る。多分子RNAユニット(後者のそれぞれが、2つ以上のRNA分子を含有する)は、ユニットそれぞれの異なるサイズによって区別され得る。典型的には、用語「個別分子」、「一分子」、「単分子」、又は「モノマー」は、本明細書において使用される場合、ポリマーと会合したRNAを含み、当該ポリマー及びRNAは、1ユニット当たり2つ以上のRNA分子を伴うユニットを形成しないが、むしろ、一分子RNAユニットを形成する。一実施形態において、単一のRNA分子が、RNAの分子間凝集なしにカチオン性ポリマーと会合する。
【0098】
本文脈において、用語「分画(fraction)」は、分取プロセス、例えば、ろ過、遠心分離、又はクロマトグラフィ等によって他の分画から分離され得る一部、例えば、RNAの一部に関する。一実施形態において、分画は、定義された数のRNA分子、例えば、1ユニット当たり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ等のRNA分子、を有するユニット(例えば、RNA分子-ポリマー複合体)に関連し得る。例えば、異なる分画は、1ユニット当たり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ等のRNA分子を含む、単分子RNA分画、二分子RNA分画、三分子RNA分画、四分子RNA分画、五分子RNA分画等に関連し得る。そのような1ユニット当たりのRNA分子の様々な数も、本明細書において「分子数(molecularity)」と指定される。
【0099】
用語「優勢な分画」は、本明細書において使用される場合、最も多くのRNAを含む(質量ベースにおいて)、ある特定の分子数のRNAの分画、例えば、単分子RNA分画、二分子RNA分画、三分子RNA分画、四分子RNA分画、五分子RNA分画等を意味する。例えば、30ngのRNAを含む組成物において、10ngのRNAが単分子RNA分画に存在し、8ngのRNAが二分子RNA分画に存在し、6ngのRNAが三分子RNA分画に存在し、4ngのRNAが四分子RNA分画に存在し、2ngのRNAが五分子RNA分画に存在する場合、RNAのほとんどが、単分子RNA分画以外の分画に存在するという事実にもかかわらず、単分子RNA分画が、優勢な分画である。ある組成物が、1つのタイプのRNA分子のみを含む場合、優勢な分画は、全ての分画の最も多い数のRNA分子を含有するある特定の分子数のRNAの分画である。
【0100】
RNAを定量化するために一般的に使用される実施の1つは、分光光度計を用いた分光光度分析の使用である。分光光度分析は、核酸が特定のパターンにおいて紫外線光を吸収するという原理に基づいている。RNAの場合、試料は、約260ナノメートル(nm)の波長の紫外線光に曝露され、光検出器が、当該試料を通過した光を測定する。紫外線光の一部は通過し、一部は、RNAによって吸収されるであろう。より多くの光が試料によって吸収されるほど、試料中のRNA濃度は高い。
【0101】
本発明によれば、用語「N/P比」、「NP比」、「N:P比」、「N/P」、及び「NP」は、ポリエチレンイミン等のポリマーの窒素原子(N)とRNAのリン原子(P)とのモル比を意味する。
【0102】
RNA組成物
本開示は、RNAの大部分が、溶液中に個々の分子として存在する、RNAと1つ又は複数のポリマーとを含む組成物を説明する。当該ポリマーは、RNAに対する非共有結合的相互作用によって様々な形態においてRNAと会合し得る。本明細書に記載されているRNAは、ウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子としては存在せず、すなわち、細胞にウイルス感染することができない。本明細書に記載されているRNA組成物は、RNA及びカチオン性ポリマー、例えば、ポリ(エチレンイミン)等から典型的に形成される。いくつかの実施形態において、RNA組成物は、2つ以上のタイプのRNA分子を含み、当該RNA分子の分子パラメータは、モル質量又は基本的構造要素、例えば、分子アーキテクチャ、キャッピング、コード領域、又は他の特徴等に関してお互いに同様でも又は異なっていてもよい
【0103】
典型的には、負に帯電したRNAに静電気的に結合し得るカチオン性ポリマーが使用される。これらの正に帯電した基は、多くの場合、アミンからなり、当該アミンは、5.5から7.5の間のpH範囲においてそれらのプロトン化の状態を変更し、それが、結果としてエンドソーム破断を引き起こすイオン不平衡を生じると考えられる。本明細書において、キトサン等の天然に存在するポリマー及び合成されたポリマーを使用することができる。
【0104】
「ポリマー」は、本明細書において使用される場合、その通常の意味が与えられ、すなわち、分子構造は、共有結合によって接続された1つ又は複数の繰り返しユニット(モノマー)を含む。繰り返しユニットは全て、同一であってもよく、又は、場合によって、2つ以上のタイプの繰り返しユニットがポリマー内に存在していてもよい。場合によって、当該ポリマーは、生物学的に誘導され、すなわち、タンパク質等のバイオポリマーである。場合によって、追加の部分、例えば、標的化部分、も当該ポリマー内に存在し得る。
【0105】
2つ以上のタイプの繰り返しユニットがポリマー内に存在する場合、当該ポリマーは、「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いる任意の実施形態において、用いられるポリマーは、場合よって、コポリマーであり得ることは理解すべきである。コポリマーを形成する繰り返しユニットは、任意の方式において配置することができる。例えば、繰り返しユニットは、ランダムな順序において、交互の順序において、又は「ブロック」コポリマーとして、配置することができ、すなわち、それぞれが第1の繰り返しユニット(例えば、第1のブロック)を含む1つ又は複数の領域と、それぞれが第2の繰り返しユニット(例えば、第2のブロック)等を含む1つ又は複数の領域とを含むことができる。ブロックコポリマーは、2つのブロック(ジブロックコポリマー)、3つのブロック(トリブロックコポリマー)、又はそれ以上の数の異なるブロックを有することができる。
【0106】
ある特定の実施形態において、当該ポリマーは、生体適合性である。生体適合性ポリマーは、典型的には結果として中程度の濃度においてあまり細胞死を生じないポリマーである。ある特定の実施形態において、当該生体適合性ポリマーは、生分解性であり、すなわち、当該ポリマーは、体内等の生理環境内において、化学的及び/又は生物学的に分解することができる。本発明との関連において、カチオン性又はポリカチオン性ポリマーは、好ましくは、本明細書に記載されているようなRNAの製剤化にとって好適な任意のカチオン性又はポリカチオン性ポリマーから選択される。特に好ましいカチオン性又はポリカチオン性ポリマーは、カチオン性又はポリカチオン性ペプチド又はタンパク質、特にプロタミン、ヒストン、スペルミン、スペルミジン、ポリアルギニン、ポリリジン、例えば、ポリ-L-リシン(PLL)等; カチオン性多糖類、例えば、キトサン、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン等; 或いはカチオン性又はポリカチオン性ポリマー、例えば、ポリイミン類、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(アミドアミン)(PAA)、ポリアミノエステル(PAE)、特に、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(アリルアミン)、ポリビニルアミン、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、臭化ヘキサジメトリン(商業ブランド名はポリブレン)から選択され得る、核酸結合性ペプチド又はタンパク質である。
【0107】
ある特定の実施形態において、当該ポリマーは、ポリアルキレンイミン、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)等である。
【0108】
一実施形態において、当該ポリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)ポリマーを含む。ポリ(アミドアミン)又はPAMAMは、アミド及びアミン官能性の繰り返し分岐鎖状サブユニットで作製されたデンドリマーのクラスである。PAMAMデンドリマーは、全体的には球のような形状を有しており、各外側「層」又は世代が指数関数的により多くの分岐点を有する、木のような分枝からなる内部分子アーキテクチャによって代表される。この分岐アーキテクチャは、PAMAMを従来のポリマーに由来する他のデンドリマーと区別するが、それは、それらが、合成の際に、低分散度及び高いレベルの構造制御を可能にし、総分子体積と比較して多くの表面部位をもたらすためである。一実施形態において、PAMAMは、L-リジンポリマーによって官能化される。
【0109】
ポリアルキレンイミン類
本明細書における使用のためのポリアルキレンイミン類は、直鎖状及び分岐鎖状のポリアルキレンイミン類及びその混合物を含む。ポリアルキレンイミンの平均分子量は、好ましくは、1000Daから150000Daの間、5000Daから100000Daの間、10000Daから50000Daの間、15000Daから30000Daの間、20000Daから25000Daの間、又は約22500Daである。
【0110】
本明細書において使用されるような当該ポリアルキレンイミンは、好ましくは、下記の一般式(I):
【0111】
【化1】
【0112】
[式中、RはH、アシル基又は下記の一般式(II):
【0113】
【化2】
【0114】
を含む基であり、R1はH、又は下記の一般式(III):
【0115】
【化3】
【0116】
を含む基であり、n、m及びlは、2から10の整数から独立して選択され; p、q及びrは、整数であり、p、q及びrの合計は、好ましくは、当該ポリマーの平均分子量が、1000Daから100000Daの間、5000Daから75000Daの間、10000Daから50000Daの間、15000Daから30000Daの間、20000Daから25000Daの間、又は約20000Daであるような値である]を含む。
【0117】
一実施形態において、n、m及びlは、2、3、4及び5から、好ましくは2及び3から独立して選択され、より好ましくは2である。一実施形態において、R1はHである。一実施形態において、RはH又はアシル基である。
【0118】
一実施形態において、当該ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン及び/又はポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。
【0119】
好ましいポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは、1000Daから100000Daの間、5000Daから75000Daの間、10000Daから50000Daの間、15000Daから30000Daの間、20000Daから25000Daの間、又は約20000Daである。本発明に従って好ましいのは、直鎖状PEIである。一実施形態において、直鎖状PEIは、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)(PEOX; N-プロピオニル-PEI)を得るために2-エチル-2-オキサゾリンの開環異性化重合によって得られ、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)は、次いで、N-プロピオニル基を切り離してPEIを得るために酸加水分解される。
【0120】
RNA濃度
本開示のある特定の実施形態において、本明細書に記載されている組成物中のRNAは、約0.0001mg/mLから約1mg/mL、約0.0001mg/mLから約0.5mg/mL、約0.00025mg/mLから約0.5mg/mL、約0.0005mg/mLから約0.25mg/mL、約0.0025mg/mLから約0.1mg/mL、又は約0.005mg/mLから約0.1mg/mLの濃度である。特定の実施形態において、当該RNAは、約0.00025mg/mLから約0.1mg/mL、約0.00025mg/mLから約0.09mg/mL、約0.00025mg/mLから約0.08mg/mL、約0.00025mg/mLから約0.07mg/mL、約0.00025mg/mLから約0.06mg/mL、又は約0.00025mg/mLから約0.05mg/mLの濃度である。
【0121】
RNA
本開示において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態において、当該RNAは、リボヌクレオチド残基の全て又は大部分を含む。本明細書において使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。RNAは、これらに限定されるものではないが、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば、部分的に精製されたRNA等本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え的に作製されたRNA、並びに1つ又は複数のヌクレオチドの追加、欠失、置換、及び/又は変更によって、天然に存在するRNAとは異なる改変されたRNAを包含する。そのような変更は、内部RNAヌクレオチド又はRNAの末端への非ヌクレオチド材料の追加を意味し得る。RNAにおけるヌクレオチドが、非標準的ヌクレオチド、例えば、化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドであり得ることも、本明細書において想到される。本開示の場合、これらの変更されたRNAは、天然に存在するRNAのアナログと見なされる。
【0122】
本開示のある特定の実施形態において、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当技術分野において確立されているように、mRNAは、概して、5'非翻訳領域(5'-UTR)、ペプチドコード領域、及び3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。いくつかの実施形態において、当該RNAは、インビトロ転写又は化学合成によって作製される。一実施形態において、当該mRNAは、DNAテンプレートを使用するインビトロ転写によって作製され、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を意味する。
【0123】
一実施形態において、RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNAテンプレートのインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼに対する任意のプロモーターであり得る。インビトロ転写のためのDNAテンプレートは、核酸、特にcDNA、のクローニング及びそれをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。当該cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0124】
本開示のある特定の実施形態において、RNAは、レプリコンRNA又は単に「レプリコン」、特に自己複製RNA(自己増殖RNA; saRNA)である。特に好ましい一実施形態において、当該レプリコン又は自己複製RNAは、ssRNAウイルス、特にプラス鎖ssRNAウイルス、例えば、アルファウイルス等に由来するか又はそれに由来する要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的な代表である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質において複製する(アルファウイルスのライフサイクルの概要については、Joseら、Future Microbiol., 2009, vol. 4, 837~856頁を参照されたい)。多くのアルファウイルスの全ゲノム長は、典型的には、11,000から12,000ヌクレオチドの間の範囲であり、ゲノムRNAは、典型的には、5'-キャップ及び3'ポリ(A)テールを有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、改変、及び複製並びにタンパク質改変に関与する)及び構造タンパク質(ウイルス粒子を形成する)をコードする。典型的には、当該ゲノムには2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する。4つの非構造タンパク質(nsP1~nsP4)は、典型的には、当該ゲノムの5'末端付近で始まる第1のORFによって一緒にコードされるが、その一方で、アルファウイルスの構造タンパク質は、第1のORFの下流に見出され、当該ゲノムの3'末端付近まで延びる、第2のORFによって一緒にコードされる。典型的には、第1のORFは、第2のORFより長く、その比は、およそ2:1である。アルファウイルスによって感染された細胞において、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみが、ゲノムRNAから翻訳され、その一方で、構造タンパク質をコードするゲノム情報は、真核生物メッセンジャーRNA(mRNA; Gouldら、2010、Antiviral Res.、vol. 87 111~124頁)に類似するRNA分子である、サブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわち、ウイルスのライフサイクルの初期段階に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにまさにメッセンジャーRNAのように振る舞う。標的細胞又は標的有機体への外来遺伝子情報の送達のために、アルファウイルス由来のベクターが提案されている。シンプルなアプローチでは、アルファウイルスの構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームが、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームによって置き換えられる。アルファウイルスベースのトランス複製系は、2つの別々の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素を頼りにし、すなわち、一方の核酸分子は、ウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子は、トランスにおいて当該レプリカーゼによって複製することができる(したがって、トランス複製系の指定)。トランス複製は、所定の宿主細胞におけるこれら両方の核酸分子の存在を必要とする。トランスにおいてレプリカーゼによって複製することができる核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識及びRNA合成を可能にするために、ある特定のアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
【0125】
一実施形態において、当該RNAは、改変されたリボヌクレオチドを有し得る。改変されたリボヌクレオチドの例としては、これらに限定されるわけではないが、5-メチルシチジン、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)、又は5-メチル-ウリジン(m5U)が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示によるRNAは、5'-キャップを含む。一実施形態において、本開示のRNAは、キャップされていない5'-トリホスフェートを有さない。一実施形態において、当該RNAは、5'-キャップアナログによって改変され得る。用語「5'-キャップ」は、mRNA分子の5'-末端上に見出される構造を意味し、概して、5'-5'トリホスフェート連結によって当該mRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態において、このグアノシンは、7位においてメチル化される。5'-キャップ又は5'-キャップアナログを有するRNAを提供することは、インビトロ転写によって達成され得、5'-キャップは、RNA鎖へと共転写的に発現されるか、又は、キャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合され得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示によるRNAは、5'-UTR及び/又は3'-UTRを含む。用語「非翻訳領域」又は「UTR」は、アミノ酸配列中へと転写されるが翻訳はされないDNA分子の領域、又はRNA分子、例えば、mRNA分子等における対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5'(上流)(5'-UTR)及び/又はオープンリーディングフレームの3'(下流)(3'-UTR)に存在し得る。5'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流である5'末端に位置される。5'-UTRは、5'-キャップ(存在する場合)の下流に、例えば、5'-キャップに直接隣接して、存在する。3'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流である3'末端に位置されるが、用語「3'-UTR」は、好ましくは、ポリ(A)配列を含まない。したがって、3'-UTRは、ポリ(A)配列(存在する場合)の上流に、例えば、当該ポリ(A)配列に直接隣接して存在する。
【0128】
いくつかの実施形態において、本開示によるRNAは、3'-ポリ(A)配列を含む。用語「ポリ(A)配列」は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置されるアデニル(A)残基の配列に関する。本開示によれば、一実施形態において、ポリ(A)配列は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約80、又は少なくとも約100、かつ最高で約500まで、最高で約400まで、最高で約300まで、最高で約200まで、又は最高で約150までのAヌクレオチド、特に、約120のAヌクレオチドを含む。一実施形態において、ポリ(A)配列は、例えば、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドを含む5から20の間のヌクレオチドによる1つ又は複数の短い配列によって割り込まれ得る。
【0129】
本開示との関連において、用語「転写」は、DNA配列の遺伝暗号がRNAへと転写されるプロセスに関する。それに続いて、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質へと翻訳され得る。
【0130】
RNAに関して、用語「発現」又は「翻訳」は、mRNAの鎖がアミノ酸の配列のアセンブリにペプチド又はタンパク質を作製するように指示するための、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
【0131】
RNAは、コードRNAであり得、すなわち、ペプチド又はタンパク質をコードするRNAであり得る。当該RNAは、コードされたペプチド又はタンパク質を発現し得る。例えば、当該RNAは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質をコードし発現するRNAであり得る。或いは、当該RNAは、非コードRNA、例えば、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、又はsiRNA等であり得る。
【0132】
本明細書において使用されるRNAは、医薬的に活性なRNAであり得る。「医薬的に活性なRNA」は、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質をコードするRNA又はそれ自体が医薬的に活性なRNAであり、例えば、それは、1つ又は複数の医薬的活性、例えば、医薬的に活性なタンパク質について説明されるもの、例えば、免疫賦活作用等を有する。例えば、当該RNAは、RNA干渉(RNAi)の1つ又は複数の鎖であり得る。そのような薬剤としては、低分子干渉RNA(siRNA)、又は低分子ヘアピンRNA(shRNA)、又は、標的転写物、例えば、対象の内因性疾患関連転写物の転写物、を標的にする、siRNA又はマイクロRNA様RNAの前駆体が挙げられ得る。
【0133】
本開示のいくつかの態様は、ある特定の細胞又は組織への、本明細書において開示されるRNAの標的化された送達を伴う。一実施形態において、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より詳細には脾臓、を標的化する工程を伴う。リンパ系、特に二次リンパ器官、より詳細には脾臓、を標的化する工程は、投与されたRNAが、免疫応答を誘導するために抗原又はエピトープをコードするRNAである場合、特に好ましい。一実施形態において、標的細胞は、脾臓細胞である。一実施形態において、標的細胞は、抗原提示細胞、例えば、脾臓における専門的抗原提示細胞等である。一実施形態において、標的細胞は、脾臓における樹状細胞である。「リンパ系」は、循環器系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の通導ネットワーク、及び循環リンパ液からなる。一次リンパ器官又は中枢リンパ器官は、未熟な前駆細胞からリンパ球を生成させる。胸腺及び骨髄は、一次リンパ器官を構成する。リンパ節及び脾臓を含む、二次リンパ器官又は末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応的免疫応答を開始する。
【0134】
一実施形態において、標的器官は肝臓であり、標的組織は肝臓組織である。特に、この器官又は組織におけるRNA又はコードされたペプチド若しくはタンパク質の存在が望ましい場合、及び/又は大量のコードされたペプチド又はタンパク質を発現することが望まれる場合、及び/又は特にかなりの量においての、当該コードされたペプチド又はタンパク質の全身性の存在が所望される又は必要である場合、そのような標識組織への送達は好ましい。
【0135】
一実施形態において、本明細書に記載されているRNA組成物の投与後、当該RNAの少なくとも一部は、標的細胞又は標的器官に送達される。一実施形態において、当該RNAの少なくとも一部は、標的細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態において、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするRNAであり、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質を産生するために、標的細胞によって翻訳される。一実施形態において、標的細胞は、肝臓の細胞である。一実施形態において、標的細胞は、筋肉細胞である。一実施形態において、標的細胞は、内皮細胞である。一実施形態において、標的細胞は、腫瘍細胞又は、腫瘍微小環境における細胞である。一実施形態において、標的細胞は、血球細胞である。一実施形態において、標的細胞は、リンパ節の細胞である。一実施形態において、標的細胞は、肺の細胞である。一実施形態において、標的細胞は、皮膚の細胞である。一実施形態において、標的細胞は、脾細胞である。一実施形態において、標的細胞は、抗原提示細胞、例えば、脾臓における専門的抗原提示細胞等である。一実施形態において、標的細胞は、脾臓の樹状細胞である。一実施形態において、標的細胞は、T細胞である。一実施形態において、標的細胞は、B細胞である。一実施形態において、標的細胞は、NK細胞である。一実施形態において、標的細胞は、単核細胞である。したがって、本明細書に記載されているRNA組成物は、そのような標的細胞へRNAを送達するために使用され得る。したがって、本開示は、対象において標的細胞にRNAを送達するための方法であって、当該対象への本明細書に記載されているRNA組成物の投与を含む方法、にも関する。一実施形態において、当該RNAは、標的細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態において、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするRNAであり、当該RNAは、ペプチド又はタンパク質を産生するために、標的細胞によって翻訳される。
【0136】
ある実施形態において、RNAは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質をコードする。
【0137】
本開示によれば、用語「RNAがコードする」は、当該RNAが、適切な環境、例えば、標的組織の細胞内等に存在する場合、アミノ酸のアセンブリに、それが翻訳のプロセスの際にコードするペプチド又はタンパク質を産生するように指示することができる。一実施形態において、RNAは、ペプチド又はタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。細胞は、当該コードされたペプチド又はタンパク質を細胞内(例えば、細胞質において、及び/又は核において)で産生し得るか、当該コードされたペプチド又はタンパク質を分泌し得るか、又は、表面においてそれを産生し得る。
【0138】
本開示によれば、用語「ペプチド」は、オリゴペプチド及びポリペプチドを包含し、約2以上、約3以上、約4以上、約6以上、約8以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上、かつ最高で約50まで、約100まで、又は約150までの、ペプチド結合によって互いに連結された連続するアミノ酸を含む物質を意味する。用語「タンパク質」は、大きなペプチド、特に、少なくとも約151のアミノ酸を有するペプチドを意味するが、用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、通常、本明細書において同義語として使用される。
【0139】
「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」又は「治療用ペプチド又はタンパク質」は、治療有効量において対象に提供された場合に対象の状態又は疾患状態に対する好ましい効果又は有益な効果を有する。一実施形態において、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、治癒特性又は緩和特性を有し、疾患又は障害の1つ又は複数の症状を改善するか、軽減するか、緩和するか、反転するか、発症を遅延するか、又は重症度を減少させるために投与され得る。医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、予防的特性を有し得、疾患の発症を遅延するため、又はそのような疾患又は病的状態の重症度を減少させるために使用され得る。用語「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、医薬的に活性なそれらの断片も意味することができる。それは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質のアナログも包含することができる。
【0140】
医薬的に活性なタンパク質の例としては、これらに限定されるわけではないが、サイトカイン及びその誘導体、例えば、サイトカイン融合物(アルブミン-サイトカイン融合物)等及び免疫系タンパク質、例えば、免疫学的に活性な化合物(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレッシン、セレチン(seletin)、ホーミング受容体、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、免疫グロブリン、例えば、抗体又は二重特異性抗体等、例えば、ウイルス/細菌感染の場合における免疫刺激又は中和抗体の産生に対して、可溶性の主要組織適合性複合体抗原、免疫的活性抗原、例えば、細菌性、寄生生物性、又はウイルス性の抗原、アレルゲン、自己抗原、抗体)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロピン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトトロピン、レプチン等)、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、成長因子(例えば、上皮成長因子、神経成長因子、インスリン様成長因子等)、成長因子受容体、酵素(組織プラスミノーゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、コレステロール生合成性又は分解性、ステロイド産生性酵素、助酵素、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、シトクロム、アデニレート又はグアニレートシクラーゼ、ノイラミニダーゼ、リソゾーム酵素等)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質(成長ホルモン又は成長因子結合性タンパク質等)、転写因子及び翻訳因子、腫瘍成長抑制タンパク質(例えば、脈管形成を抑制するタンパク質)、構造タンパク質(例えば、コラーゲン、フィブロイン、フィブリノゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、及びミオシン等)、血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲンアクチベータ、プロテインC、フォン・ヴィレブランド因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は改変された第VIII因子、抗凝血物質等が挙げられる。
【0141】
用語「免疫学的に活性な化合物」は、例えば、免疫細胞の成熟化を誘導及び/又は抑制すること、サイトカイン生合成を誘導及び/又は抑制すること、並びに/或いはB細胞によって抗体産生を刺激することによって液性免疫を変更することによって、免疫応答を変更する任意の化合物に関する。免疫学的に活性な化合物は、強力な免疫刺激活性、例えば、これらに限定されるわけではないが、抗ウイルス性活性及び抗腫瘍性活性等を有し、例えば、免疫応答を、様々なTH2媒介疾患の治療にとって有用であるTH2免疫応答から離すことにより、当該免疫応答の他の面を下方制御することもできる。免疫学的に活性な化合物は、ワクチンアジュバントとして有用であり得る。
【0142】
一実施形態において、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、サイトカインを含む。用語「サイトカイン」は、細胞シグナル伝達において重要な小タンパク質(約5~20kDa)のカテゴリを意味する。小タンパク質の放出は、それらの周りの細胞の挙動に対してある効果を有する。サイトカインは、免疫調節薬として、自己分泌シグナル伝達、パラ分泌シグナル伝達、及び内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子を含むが、概して、ホルモン及び成長因子は含まない(専門用語におけるいくらかのオーバーラップにもかかわらず)。サイトカインは、広範囲な細胞、例えば、マクロファージのような免疫細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、及び肥満細胞、並びに内皮細胞、線維芽細胞、及び様々なストロマ細胞等によって産生される。所定のサイトカインは、2つ以上のタイプの細胞によって産生され得る。サイトカインは、受容体を介して作用し、特に、免疫系において重要であり; サイトカインは、液性免疫応答と細胞ベースの免疫応答との間のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟化、成長、及び応答性を調節する。いくつかのサイトカインは、複雑な方法において他のサイトカインの作用を増強又は阻害する。一実施形態において、本発明による医薬的に活性なタンパク質は、リンパ系ホメオスタシスの調節に関与するサイトカイン、好ましくは、T細胞の成長、プライミング、増殖、分化、及び/又は生存に関与し、好ましくはそれらを誘導又は増強するサイトカイン、である。一実施形態において、サイトカインはインターロイキンである。一実施形態において、本発明による医薬的に活性なタンパク質は、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、及びIL-21からなる群から選択されるインターロイキンである。
【0143】
一実施形態において、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、補充タンパク質を含む。この実施例において、本発明は、タンパク質補充を必要とする障害(例えば、タンパク質欠損症)を有する対象の治療のための方法であって、当該対象に、補充タンパク質をコードする本明細書に記載されているようなRNAを投与する工程を含む方法を提供する。用語「タンパク質補充」は、そのようなタンパク質の欠乏症を有する対象へのタンパク質(その機能性バリアントを含む)の導入を意味する。当該用語は、タンパク質の提供を必要とするか又は恩恵を受ける対象、例えば、タンパク質不足に苦しむ対象、へのタンパク質の導入も意味する。用語「タンパク質欠乏によって特徴付けられる障害」は、タンパク質の不在又は不十分な量によって引き起こされる病理によって提示される任意の障害を意味する。この用語は、結果として生物学的に不活性なタンパク質産物を生じるタンパク質フォールディング病、すなわち、構造障害を包含する。タンパク質不足は、感染症、免疫抑制、臓器障害、腺障害、放射線病、栄養欠乏症、中毒、又は他の環境発作又は外部発作に関与し得る。一実施形態において、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、1つ又は複数の抗原或いは1つ又は複数のエピトープを含み、すなわち、対象への当該ペプチド又はタンパク質の投与は、治療的であり得るか又は部分的に若しくは完全に保護的であり得る対象における1つ又は複数の抗原或いは1つ又は複数のエピトープに対する免疫応答を誘発する。
【0144】
用語「抗原」は、免疫応答を生じさせることができるエピトープを含む原因物質に関する。用語「抗原」は、特に、タンパク質及びペプチドを包含する。一実施形態において、抗原は、免疫系の細胞、例えば、樹状細胞又はマクロファージのような抗原提示細胞等によって提示される。抗原又はそのプロセシング産物、例えば、T細胞エピトープ等は、一実施形態において、T細胞受容体又はB細胞受容体によって、又は抗体等の免疫グロブリン分子によって結合される。したがって、抗原又はそのプロセシング産物は、抗体又はTリンパ球(T細胞)と特異的に反応し得る。一実施形態において、抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原等であり、並びに、エピトープは、そのような抗原に由来する。
【0145】
用語「疾患関連抗原」は、疾患に関連する任意の抗原を意味するためにその最も広い意味において使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患に対して細胞抗原特異的免疫応答及び/又は液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原又はそのエピトープは、治療目的のために使用され得る。疾患関連抗原は、微生物、典型的には微生物性抗原による感染に関連し得るか、又は癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
【0146】
用語「腫瘍抗原」は、細胞質、細胞表面、及び細胞核に由来し得る癌細胞の成分を意味する。特に、それは、細胞内において又は腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を意味する。
【0147】
用語「ウイルス抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を引き起こすことができる、任意のウイルス成分を意味する。ウイルス抗原は、ウイルス性リボ核タンパク質又はエンベロープタンパク質であり得る。
【0148】
用語「細菌抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を引き起こすことができる、任意の細菌成分を意味する。細菌抗原は、細菌の細胞壁又は細胞質膜に由来し得る。
【0149】
用語「エピトープ」は、免疫系によって認識される抗原等の分子の一部又は断片を意味する。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞、又は抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続又は不連続な一部を含み得、並びに、約5から約100の間、例えば、約5から約50の間、より好ましくは約8から約30の間、最も好ましくは約10から約25の間のアミノ酸長さであり得、例えば、当該エピトープは、好ましくは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸長さであり得る。一実施形態において、エピトープは、約10から約25のアミノ酸長さである。用語「エピトープ」は、T細胞エピトープを包含する。
【0150】
用語「T細胞エピトープ」は、MHC分子との関連において提示される場合、T細胞によって認識されるタンパク質の一部又は断片を意味する。用語「主要組織適合性複合体」及び略語「MHC」は、MHCクラスI及びMHCクラスIIの分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質又は分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞又は病気の細胞との間のシグナル伝達にとって重要であり、MHCタンパク質又は分子は、ペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされたタンパク質は、細胞の表面において発現され、T細胞に自己抗原(細胞自体に由来するペプチド断片)及び非自己抗原(例えば、侵入する微生物の断片)を示す。クラスIのMHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には、約8から約10のアミノ酸長さであるが、より長い又はより短いペプチドも有効であり得る。クラスIIのMHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には、約10から約25のアミノ酸長さであり、特に約13から約18のアミノ酸長さであるが、より長い及びより短いペプチドも有効であり得る。
【0151】
用語「T細胞」及び「Tリンパ球」は、本明細書において相互互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)及び、細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。用語「抗原特異的T細胞」又は同様の用語は、特に、MHC分子との関連において、抗原提示細胞又は癌細胞等の病気の細胞の表面において提示される場合に、T細胞が標的とする抗原を認識するT細胞に関し、好ましくは、T細胞のエフェクター機能を発揮する。T細胞は、抗原を発現する標的細胞を当該細胞が殺す場合、抗原に対して特異的であると見なされる。T細胞特異性は、例えば、クロム放出アッセイ又は増殖アッセイ内において、様々な標準的技術のいずれかを使用して評価され得る。或いは、リンホカイン(例えば、インターフェロン-γ等)の合成を測定することができる。
【0152】
本開示のある特定の実施形態において、当該RNAは、少なくとも1つのエピトープをコードする。ある特定の実施形態において、当該エピトープは、腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、様々な癌において発現されることが一般的に知られている「標準的」抗原であり得る。腫瘍抗原は、個々の腫瘍に対して特異的で、免疫系によって前に認識されていない、「新抗原」でもあり得る。新抗原又は新エピトープは、結果としてアミノ酸変化を生じる、癌細胞のゲノムにおける1つ又は複数の癌特異的変異の結果として生じ得る。腫瘍抗原の例としては、これらに限定されるわけではないが、p53、ART-4、BAGE、β-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えば、CLAUDIΝ-6、CLAUDIN-18.2、及びCLAUDIN-12等c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくは、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90マイナーBCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1、又はRU2、SAGE、SART-1、又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、及びWT-1が挙げられる。
【0153】
癌変異は、各個体によって異なる。したがって、新規のエピトープ(新エピトープ)をコードする癌変異は、ワクチン組成物及び免疫療法の開発における魅力的な標的を代表する。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内での強力な免疫応答を誘導することができる癌特異的抗原及びエピトープの選択を頼りにする。RNAは、患者特異的腫瘍エピトープを患者に送達するために使用することができる。脾臓に常在する樹状細胞(DC)は、免疫原性エピトープ又は抗原、例えば、腫瘍エピトープ等の特にRNA発現に対する目的の抗原提示細胞を代表する。複数のエピトープの使用が腫瘍ワクチン組成物において治療効果を促進することが示される。腫瘍ミュータノーム(Mutanome)の迅速な配列決定は、例えば、単一のポリペプチドとして、本明細書に記載されているRNAによってコードすることができる個別化されたワクチンのために、複数のエピトープを提供し得、当該エピトープは、場合により、リンカーによって分離される。本開示のある特定の実施形態において、当該RNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエンエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、又は少なくとも10つのエピトープをコードする。例示的実施形態は、少なくとも5つのエピトープ(「ペンタトープ(pentatope)」と呼ばれる)をコードするRNA、及び少なくとも10つのエピトープ(「デカトープ(decatope)」と呼ばれる)をコードするRNAを含む。
【0154】
A. 塩及びイオン強度
本開示により、本明細書おいて説明される組成物は、塩、例えば、有機又は無機塩、を含み得、その例としては、これらに限定されるわけではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化カルシウム、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)とアミノ酸とのナトリウム塩が挙げられる。
【0155】
概して、本明細書に記載されている組成物は、好ましくは0mMから約100mM、約5mMから約50mM、又は約5mMから約20mMの範囲の濃度の塩を含む。一実施形態において、組成物は、そのような塩濃度に対応するイオン強度を含む。
【0156】
一実施形態において、塩化ナトリウム等の正に帯電した一価イオンは、0mMから約50mM、0mMから約40mM、又は約10mMから約20mMの濃度である。
【0157】
一実施形態において、正に帯電した二価イオンは、0mMから約20μM、0mMから約10μM、又は約0mMから約5μMの濃度(又は有効濃度)である。
【0158】
B. 安定化剤
本明細書に記載されている組成物は、産物品質の実質的な低下、特に、貯蔵、凍結、凍結乾燥、及び/又は噴霧乾燥の際のRNA活性の実質的な低下を避けるため、例えば、凝集、RNA分解、及び/又は他のタイプのダメージを減少させるため、又は防ぐために、安定化剤も含み得る。
【0159】
ある実施形態において、当該安定化剤は、凍結防止剤又は凍結乾燥防止剤(lyoprotectant)である。
【0160】
ある実施形態において、当該安定化剤は、炭水化物である。用語「炭水化物」は、本明細書に使用される場合、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、及び多糖類を意味し、並びにそれを包含する。ある実施形態において、当該安定化剤は、スクロース及び/又はトレハロースである。
【0161】
ある実施形態において、当該安定化剤は、アミノ酸又は界面活性剤(例えば、ポロキサマー)である。
【0162】
C. pH及び緩衝剤
本開示により、本明細書おいて説明される組成物は、当該組成物の安定化、特にRNAの安定化にとって好適なpHを有する。一実施形態において、本明細書おいて説明される組成物は、約4から約8、約5から約7、又は約5.5から約6.5のpHを有する。
【0163】
理論に束縛されることを望むものではないが、緩衝剤の使用は、当該組成物の製造、貯蔵、及び使用の際に、当該組成物のpHを維持する。本開示のある特定の実施形態において、緩衝剤は、重炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン)、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリス)、N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン(トリシン)、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、ジメチルアルシン酸、2-モルホリン-4-イルエタンスルホン酸(MES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり得る。他の好適な緩衝系は、酢酸単独で又は塩において、クエン酸単独で又は塩において、ホウ酸単独で又は塩において、及びリン酸単独で又は塩において、或いはアミノ酸及びアミノ酸誘導体であり得る。
【0164】
ある特定の実施形態において、当該緩衝剤は、約2.5mMから約20mM、又は約2.5mMから約10mMの濃度を有する。
【0165】
D. キレート化剤
本開示のある特定の実施形態は、本明細書に記載されている組成物におけるキレート化剤の使用を想到する。キレート化剤は、金属イオンと少なくとも2つの配位共有結合を形成し、それによって安定で水溶性の錯体を生成することができる化学化合物を意味する。理論に束縛されることを望むわけではないが、キレート化剤は、本開示におけるRNA分解の加速を誘導し得る遊離二価イオンの濃度を減少させる。好適なキレート化剤の例としては、これらに限定されるわけではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの塩、デスフェリオキサミンB、デフェロキサミン、ジチオカルブナトリウム、ペニシラミン、ペンテト酸カルシウム、ペンテト酸のナトリウム塩、スクシマー、トリエンチン、ニトリロ三酢酸、trans-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル-N,N,N',N'-四酢酸、イミノ二酢酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、又はその塩が挙げられる。ある特定の実施形態において、キレート化剤は、EDTA又はEDTAの塩である。例示的実施形態において、キレート化剤は、EDTAジナトリウム二水塩である。
【0166】
いくつかの実施形態において、当該EDTAは、約0.05mMから約5mM、約0.1mMから約2.5mM、又は約0.25mMから約1mMの濃度である。
【0167】
E. 組成物の物理状態
実施形態において、本開示の組成物は、液体又は固体である。固体の非限定的な例としては、凍結形態、又は脱水形態、例えば、凍結乾燥形態又は噴霧乾燥形態等が挙げられる。好ましい実施形態において、当該組成物は液体である。
【0168】
医薬組成物
本明細書に記載されている組成物は、治療的処置又は予防的処置のための医薬組成物又は薬剤として、又はそれを調製するために、有用である。
【0169】
用語「医薬組成物」は、好ましくは、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と一緒に、治療的に有効な薬剤を含む製剤に関する。当該医薬組成物は、当該医薬組成物を対象に投与することによって、疾患又は障害を処置し、防止し、又はその重症度を減じるために有用である。医薬組成物は、当技術分野において医薬製剤としても知られている。本開示の医薬組成物は、1つ又は複数の補助剤(adjuvant)を含んでもよく、又は1つ又は複数の補助剤と共に投与してもよい。用語「補助剤」は、免疫応答を長引かせ、増強し、又は加速する化合物に関する。補助剤は、化合物の異種群、例えば、油乳剤(例えば、フロイントアジュバント)、鉱物化合物(例えば、ミョウバン等)、細菌産物(例えば、百日咳(Bordetella pertussis)毒素等)、又は免疫刺激性複合体等を含む。補助剤の例としては、これらに限定されるわけではないが、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、及びサイトカイン、例えば、モノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン等が挙げられる。ケモカインは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INFa、INF-γ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる既知の補助剤は、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、又は油、例えば、Montanide(登録商標)ISA51等である。本開示の使用にとって好適な他の補助剤としては、リポペプチド、例えば、Pam3Cys等並びに親油性成分、例えば、サポニン類、トレハロース-6、6ジベヘネート(TDB)、モノホスホリル脂質-A(MPL)、モノミコロイルグリセロール(MMG)、又はグルコピラノシル脂質補助剤(GLA)が挙げられる。
【0170】
本開示による医薬組成物は、概して、「医薬的有効量」において、並びに「医薬的に許容される調製物」において適用される。
【0171】
用語「医薬的に許容される」は、当該医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の非毒性を意味する。
【0172】
用語「医薬的有効量」は、所望の反応又は所望の効果を単独で又はさらなる用量と一緒に達成する量を意味する。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、当該疾患の経過の阻害に関連する。これは、疾患の進行を減速させること、並びに、特に疾患の進行を中断又は逆転することを含む。疾患の治療における所望の反応は、当該疾患又は当該状態の発症の遅延又は発症の防止でもあり得る。本明細書に記載されている組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の個々のパラメータ、例えば、年齢、生理的状態、サイズ、及び体重等治療の継続期間、付随する療法(存在する場合)のタイプ、投与の特定の経路、及び同様の要因に応じて変わるであろう。したがって、本明細書に記載されている組成物の投与される用量は、そのような様々なパラメータに応じて変わり得る。初回の用量で患者の反応が不十分な場合、より多い用量(又は、別のより局所的な投与経路によって効果的に達成されるより多い用量)が使用され得る。
【0173】
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、保存料、及び場合により他の治療薬を含有してもよい。一実施形態において、本開示の医薬組成物は、1つ又は複数の医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0174】
本開示の医薬組成物での使用にとって好適な保存料としては、これらに限定されるわけではないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールが挙げられる。
【0175】
用語「賦形剤」は、本明細書に使用される場合、本開示の医薬組成物中に存在し得るが有効成分ではない物質を意味する。賦形剤の例としては、これらに限定されるわけではないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、表面活性剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、矯臭剤、又は着色剤が挙げられる。
【0176】
用語「希釈剤」は、希釈及び/又は減粘する薬剤に関する。その上、用語「希釈剤」は、流体、液体、又は固体懸濁液及び/又は混合媒体のうちの任意の1つ又は複数を含む。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール、及び水が挙げられる。
【0177】
用語「担体」は、医薬組成物の投与を容易にする、増強する、又は可能にするために有効成分と組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を意味する。担体は、本明細書において使用される場合、対象への投与にとって好適な、1つ又は複数の適合性の固体又は液体の、充填剤、希釈剤、又はカプセル化物質であり得る。好適な担体としては、これらに限定されるわけではないが、滅菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、無菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、及び特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。一実施形態において、本開示の医薬組成物は、等張食塩水を含む。
【0178】
治療用途のための医薬的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤は、医薬分野において周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)に記載される。
【0179】
医薬的な担体、賦形剤、又は希釈剤は、意図される投与経路及び標準的薬務に関連して選択することができる。
【0180】
医薬組成物の投与経路
一実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内、又は筋肉内投与され得る。ある特定の実施形態において、当該医薬組成物は、局所投与又は全身投与のために製剤化される。全身性投与は、胃腸管による吸収を伴う経腸投与、又は非経口投与を含み得る。本明細書において使用される場合、「非経口投与」は、例えば、筋肉内、皮内、皮下、又は静脈内注射による、胃腸管以外での任意の方法における投与を意味する。好ましい実施形態において、当該医薬組成物は、筋肉内投与のために製剤化される。
【0181】
医薬組成物の使用
本明細書に記載されている組成物は、様々な疾患、特に、対象へのペプチド又はタンパク質の提供が結果として治療効果又は予防効果を生じるような疾患の治療的処置又は予防的処置において使用され得る。例えば、ウイルス由来の抗原又はエピトープの提供は、当該ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療において有用であり得る。腫瘍抗原又はエピトープの提供は、癌細胞が当該腫瘍抗原を発現する癌疾患の治療において有用であり得る。機能性タンパク質又は酵素の提供は、機能不全タンパク質によって特徴付けられる遺伝性障害、例えば、リソソーム蓄積症(例えば、ムコ多糖症)又は因子欠損、の治療において有用であり得る。サイトカイン又はサイトカイン融合物の提供は、腫瘍微小環境を調節するために有用であり得る。
【0182】
用語「疾患」(本明細書において「障害」とも呼ばれる)は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を意味する。疾患は、多くの場合、特定の症状及び徴候に関連する医療状態として解釈される。疾患は、例えば、感染症等外部源に由来する要因によって引き起こされ得るか、又は例えば、自己免疫疾患等内部的機能不全によって引き起こされ得る。ヒトにおいて、「疾患」は、多くの場合、苦しめられている個体に、疼痛、機能不全、苦痛、社会問題、又は死亡を生じさせる任意の状態、又は個体と接触する人に対する同様の問題を意味するためにより広く使用される。このより広い意味において、それは、しばしば、損傷、身体障害、障害、症候群、感染、単発症状、逸脱行動、及び構造と機能の非定型的変動を包含し、その一方で、他の文脈において、並びに他の目的のために、これらは、区別可能なカテゴリと見なされ得る。疾患は、通常、個体に対して身体的だけでなく感情的にも影響を及ぼすが、それは、多くの疾患において、それを抱えた生活が、その人の人生の見方及び人柄を変え得るためである。
【0183】
本文脈において、用語「治療」、「治療すること」、又は「治療介入」は、疾患又は障害等の状態と戦う目的のための、対象の管理及びケアに関する。当該用語は、例えば、症状又は併発症を軽減するため、疾患、障害、又は状態の進行を遅らせるため、症状及び併発症を緩和又は鎮静するため、及び/又は疾患、障害、又は状態を治癒又は除去するため、並びに当該状態を防止するための、治療的に有効な化合物の投与等患者が患っている所定の状態に対する治療の全範囲を包含することが意図され、防止は、当該疾患、状態、又は障害と戦う目的のための、個体の管理及びケアとして理解されるべきであり、症状又は併発の発症を防止するための、活性化合物の投与を含む。
【0184】
用語「治療的処置」は、個体の健康状態を向上させる及び/又は寿命を延ばす(増加させる)任意の処置に関する。当該処置は、個体における疾患を排除し得、個体における疾患の発生を阻止、阻害、又は緩徐し得、個体における症状の頻度又は重症度を減少させ得、及び/又は現在疾患を患っているか又は以前に患っていた個体における再発を減少させ得る。
【0185】
用語「予防的処置」又は「防止的処置」は、個体において疾患が生じるのを防止することを意図する任意の処置に関する。用語「予防的処置」又は「防止的処置」は、本明細書において相互互換的に使用される。
【0186】
用語「個体」及び「対象」は、本明細書において相互互換的に使用される。それらは、ヒト又は別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)、又は任意の他の非哺乳動物、例えば、鳥(ニワトリ)、魚等或いは、疾患又は障害(例えば、癌、感染症)に苦しみ得るか又はその影響を受けやすいが、当該疾患又は障害を有し得るか又は有し得ないか、又はワクチン接種等の予防的介入に対する必要性を有し得るか、又はタンパク質補充等による介入に対する必要性を有し得る、任意の他の動物種を意味する。多くの実施形態において、個体は人間である。特に明記されない限り、用語「個体」及び「対象」は」、特定の年齢を指定せず、したがって、成人、高齢者、子供、及び新生児を包含する。本開示の実施形態において、「個体」又は「対象」は、「患者」である。
【0187】
用語「患者」は、治療に対する個体又は対象、特に病気の個体又は対象を意味する。
【0188】
本開示の一実施形態において、目的は、ワクチン接種によって感染症に対する保護を提供することである。
【0189】
本開示の一実施形態において、目的は、分泌された治療用タンパク質、例えば、抗体、二重特異性抗体、サイトカイン、サイトカイン融合タンパク質、酵素等を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0190】
本開示の一実施形態において、目的は、タンパク質補充療法、例えば、エリスロポエチン、第VII因子、フォン・ヴィレブランド因子、βガラクトシダーゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼの産生、を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0191】
本開示の一実施形態において、目的は、血液中の免疫細胞を調節/再プログラム化することである。
【0192】
1つ又は複数の抗原或いは1つ又は複数のエピトープを含むペプチド又はタンパク質をコードするRNAを含む本明細書に記載されている医薬組成物が、治療的或いは部分的に又は完全に保護的であり得る対象において、当該1つ又は複数の抗原或いは1つ又は複数のエピトープに対する免疫応答を起こさせるために、当該対象に投与され得る。当業者は、免疫療法及びワクチン接種の原理の1つが、疾患に対する免疫保護反応が、治療される疾患に免疫学的に関連する抗原又はエピトープによって対象を免疫することによって生じるという事実に基づいていることを知っているであろう。したがって、本明細書に記載されている医薬組成物は、免疫応答を誘導又は増強するために適用可能である。したがって、本明細書に記載されている医薬組成物は、抗原又はエピトープの関与する疾患の予防的処置及び/又は治療的処置において有用である。
【0193】
用語「免疫化」又は「ワクチン接種」は、例えば、治療的又は予防的理由において、免疫応答を誘導する目的によって個体に抗原を投与するプロセスを説明する。
【0194】
本明細書において参照される文献及び研究の列挙は、上述のいずれかが適切な先行技術であるとの承認として意図されるものではない。これらの文献の内容に関連する全ての記述は、出願人に利用可能な情報に基づいており、これらの文献の内容の正当性に関するいかなる承認も構成するものではない。
【0195】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態をなし、それを使用することを可能にするために提示される。特定の装置、技術、及び用途の説明は、単なる例として提供される。本明細書に記載されている実施例に対する様々な変更は、当業者に容易に明らかとなるであろうし、本明細書において定義される一般原理は、当該様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の実施例及び用途にも適用され得る。したがって、当該様々な実施形態は、本明細書に記載されている実施例に限定されることを意図するものではないが、特許請求の範囲に一致する範囲に一致する。
【実施例
【0196】
材料及び方法
PEI製剤の調製
20kDaから25kDaの分子量の直鎖状ポリエチレンイミンを使用する(インビボ/Jet-PEI)。ポリプレックス製剤のN/P比の計算のために、PEIにおけるアミンの窒素原子の正電荷(N)と、RNAの負電荷(ホスフェート)(P)とを考慮する。必要なRNA濃度を、最終注入緩衝液において調製する。別々の管において、製剤のためのPEIを、注射可能なH2Oにおいて希釈する。所望の体積比のRNA-PEI相を混合することによって、RNAの複合体化が生じるであろう。当該製剤を、安定化のために、室温において15分間インキュベートする。全ての実験において製剤に対して使用した緩衝液は、MGB(MES緩衝化グルコース(10mMのMES、pH6.1、5%のD-グルコース))である。
【0197】
Viromer(登録商標)、脂肪族/芳香族置換ポリアルキレンイミンを使用する製剤の調製
Viromer(登録商標)は、アルキル鎖及び芳香族モチーフで大いに修飾された市販の分岐鎖状PEIである。Viromer(登録商標)製剤のN/P比の計算のため、Viromer(登録商標)におけるアミンの窒素原子の正電荷(N)と、RNAの負電荷(ホスフェート)(P)とを考慮する。必要なRNA濃度を、最終注入緩衝液において調製する。別々の管において、製剤のためのViromer(登録商標)を、注射可能なH2Oにおいて希釈する。所望の体積比のRNA-Viromer相を混合することによって、RNAの複合体化が生じるであろう。当該製剤を、安定化のために、室温において15分間インキュベートする。全ての実験において製剤に対して使用した緩衝液は、MGB(MES緩衝化グルコース(10mMのMES、pH6.1、5%のD-グルコース))である。
【0198】
星形ポリ-L-リジンPAMAMデンドリマー(G5-PLL64)製剤の調製
ペンタ-L-リジンポリマーの64のアームによって官能化されたG(5)-PAMAMデンドリマーからなる、ポリ(アミドアミン)ファミリーの新規の生分解性カチオン性ポリマー。ポリプレックス製剤のN/P比の計算のため、G5-PLL64におけるアミンの窒素原子の正電荷(N)と、RNAの負電荷(ホスフェート)(P)とを考慮する。必要なRNA濃度を、最終注入緩衝液において調製する。別々の管において、製剤のためのG5-PLL64を、注射可能なH2Oにおいて希釈する。所望の体積比のRNA-G5-PLL64相を混合することによって、RNAの複合体化が生じるであろう。当該製剤を、安定化のために、室温において15分間インキュベートする。全ての実験において製剤に対して使用した緩衝液は、MGB(MES緩衝化グルコース(10mMのMES、pH6.1、5%のD-グルコース))である。
【0199】
ルシフェラーゼ及び生存率アッセイ
培養培地において所望の濃度に達するために、製剤化されたナノ粒子を適切に希釈する。96ウェルプレートに、5.000のC2C12細胞/ウェルを播種する。播種の24時間後、培地を吸引し、希釈した製剤を伴う100μlの培養培地を適用する。当該プレートを更に、所望の時点に達するまで、細胞インキュベーター内に維持する。ルシフェラーゼ測定及び生存率測定のため、Nano-Glo及びCell Titer Glo 2.0製造元プロトコルに厳密に従う。白色底板において、Tecan Infinite Pro200にて発光測定を行う。
【0200】
サイズ測定
ここで、ナノ粒子の流体力学的サイズを計算するために、全てのサイズ測定を動的光散乱(DLS)を使用してDynaPro PlateReader IIによって行う。試料を96ウェルプレートのウェルにおいて120μlのMGB5%により0.01mg/mlのRNAに希釈することによって、当該製剤を測定する。1つのウェル当たり10のデータ点を、それぞれ10秒かけて記録する。
【0201】
RNA定量化
RNA濃度をNanodropによって定量化する。RNAの定量化のためにマイクロボリュームオプションを使用し、より詳細には、1.5μlの製剤化されたRNAを使用する。RNA濃度の計算のために、260/280nm及び260/230nm純度比を考慮に入れる。純度基準を満たしたデータのみを、RNAの定量化において使用する。純度基準は、260/280nm比に対しては1.8~2.2、並びに260/230nm比に対しては>1.8によって定義される。各試料のRNA定量化のためのブランク溶液として、製剤緩衝液を使用する。
【0202】
遊離RNA定量化
製剤中の遊離RNAを、変性条件下のアガロースゲル電気泳動によって測定する。TAE緩衝液中における1%アガロースの100mlを使用する。RNA蛍光標識化のため、ゲル凝固の前に10μlのGelRedを加える。1μgのRNAを含む製剤試料を、ゲルローディングバッファーによって12μlの最終体積に希釈する。これをアガロースゲルに位置し、当該試料を、80V、50mAにおいて40分間走らせる。UV蛍光を、0.1秒の曝露時間の後に測定する。
【0203】
遠心分離アッセイ
試料を、20.000Gにおいて、4℃で90分間遠心分離する。遠心分離後、上清の90%を新しいバイアル瓶に移す。次いで、遠心分離後に残ったペレットを、前に移した上清の90%と同体積によって再懸濁させる。
【0204】
超遠心分離アッセイ
試料を、分析的超遠心分離機によって測定し、光吸収を2つの異なる波長: 255nm及び650nmにおいて測定する。測定のためのブランク試料として、MBG試料緩衝液を使用する。試料を室温において80.000Gで遠心分離する。
【0205】
PEI濃度アッセイ
PEI濃度を、還元した硫酸銅(II)の定量化によって特定する。還元銅の量は、当該溶液中に存在する第二級アミンの量に比例する。pH5.4の0.1M酢酸ナトリウムを使用して、硫酸銅(II)の1.4mM溶液を調製する。既知のPEIレファレンスの較正曲線を、1.55mMの最大値に対して調製する。製剤化したRNAが0.2mg/mlになるまで、製剤化した試料を希釈し、300μlの最終体積まで硫酸銅(II)溶液と1:1で混合する。還元銅の吸収を285nmにおいて測定する。
【0206】
RNA放出アッセイ
ポリプレックスにおけるRNAの複合体化の後、強力なポリアニオンであるヘパリンを使用することによって、RNAの放出をトリガーすることができる。100mg/mlのヘパリンによる溶液を、1mMのEDTA、10mMのMES、pH6.1において調製する。ヘパリン溶液を、100μlの製剤化されたRNA試料において1:10に希釈する。ヘパリン及び製剤化したRNA溶液を、30℃で20分間インキュベートする。RNAの分解を避けるために、直後に試料を4℃で貯蔵する。
【0207】
インビボイメージング
製剤のインビボ試験のためにBALB/Cマウスを使用する。RNA及びD-ルシフェリンの筋肉内注射を、各マウスの両脚の後脛骨筋において実施する。それぞれの所望の時点に達したときに、発光を測定する。酸素中における2.5%イソフルオランを通気したチャンバーにおいて、マウスに麻酔を施し、注射の5分後に、インビボイメージングシステム(IVIS、パーキンエルマー社、ウォルサム、MA)によって画像化する。200μlのD-ルシフェリン及び20μLのRNA/PEIポリプレックス製剤を筋肉内に注入する。Living Imageソフトウェア(パーキン、エルマー社)を使用して、発光を定量化する。
【0208】
ELISpotアッセイ
このアッセイは、インビボワクチン接種後における反応性IFNγを分泌するCD4+/CD8+T細胞の頻度を測定するために使用される。ニトロセルロース膜96ウェルプレート(Multiscreen、Millipore社)を、抗マウスIFNγモノクローナル抗体(1-D1K; Mabtech社)でコーティングする。IFNγモノクローナル抗体のコーティングの1日後、ワクチン接種したマウスの脾臓を摘出し、PBMC抽出のためにホモジナイズする。1x106細胞のPBMC溶液を各ウェルに播種し、特異的MHC1&MHCII特異的HA-ペプチドによって刺激した。細胞を、RMPI1640+GlutaMax(Gibco)+10%FCSにおいて48時間インキュベートした。指示されるように捕捉及び検出抗体を使用してIFNγ分泌を検出し(Mabtech AB社)、ImmunoSpot Series Analyzer(Cellular Technology Ltd.社)を使用して画像化した。
【0209】
ELISAアッセイ
菌株A/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHA抗原に対して特異的な抗体を、標準化ELISAを使用して血清において測定する。ピアスストレプトアビジン96ウェルプレート(Nunc社)を、1μg/mLのHA-ビチオン化組換え表面タンパク質によってコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。プレートを、PBS中における1%BSAによってブロッキングする。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(AbD Serotec社)を使用して、結合したIgGを検出する。特異抗体を定量するための標準として、組換えマウス免疫グロブリンの希釈系列を使用する。3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いた8分のインキュベーション後、硫酸(25%)を使用して反応を停止させる。450nmにおいて光学濃度を読み取った。
【0210】
ウイルス中和アッセイ(VNT)
動物の血清中におけるHAに対する中和抗体のレベルを特定するために、Manual for the Laboratory Diagnosis and Virological Surveillance of Influenza(WHO世界インフルエンザサーベイランスネットワーク)に従って、VNTを実施した。1:10で開始する血清試料の段階希釈を、感染性インフルエンザウイルスの100 TCID50と共に2時間インキュベートした。このアッセイの最終血清希釈は1:1.280であり、それが上側検出限界であった。次いで、96ウェルプレートにおいてコンフルエントなマディン・ダービー イヌ腎臓(MDCK)単分子層に血清-ウイルスミックスを適用し、更に3日間インキュベートした。その後、50mLの上清を、50mLの0.5%ニワトリ赤血球(Lohmann Tierzucht社、クックスハーフェン、ドイツ)と共にインキュベートし、赤血球凝集を評価した。凝集を阻害した最低希釈の逆数としてVNT力価を記録した(VNT/50mL)。
【0211】
小角X線散乱(SAXS)
PETRAR III、DESYでのEMBL P12 bioSAXSビームライン(German Electron Synchrotron社、ハンブルク、ドイツ)においてSAXS測定を行った。測定は、10keVのX線エネルギー及び5×1012ph/sのフラックスにおいて実施し; 試料位置でのビームサイズは、0.2×0.3mm2(v×h、全幅最大半減、FWHM)であり、BioSAXSサンプルチェンジャーを用いた。少量(30μL)の当該試料を、真空取り付けクォーツキャピラリー管に移し、PILATUS 6M検出器を使用して画像を収集した。散乱シグナルの画像を、SASFLOWパイプラインによって処理し、すなわち、全ての画像を半径方向に平均化し、フレームを放射線ダメージに対して比較し、放射線ダメージによって影響を受けていないフレームを平均化して、Origin 9.1にインポートした。ブランクレファレンスを使用して、バックグラウンド散乱を差し引いた。
【0212】
自動化ハイスループット円偏光二色性(CD)分光法
J-1500 CD分光計(JASCO, Inc.社)を用いてCDスペクトル測定を実施した。175μLの試料を96-PCRプラットに移した。2mmセル経路長での標準測定パラメータ: 200~310nm波長範囲、0.1nmデータ取得間隔、4秒応答、50nm/分スキャン速度による連続スキャンモード、及び1nmバンド幅。150μlの試料量の取得及び試料をセルに送達するための575μL空気の注入のために、HTモジュールパラメータを設定した。2×200μLの水、2×200μLのEtOh: 水(1:1)、及び2×200μLのEtOH(96%)によって、試料間の洗い流しを連続して行った。管の乾燥を200秒に設定した。バックグラウンドを差し引くために、ブランクレファレンスを使用した。SpectraManagerソフトウェア(JASCO, Inc社)を用いてデータ解析を実施した。
【0213】
実施例1: 粒子分画の特徴付け
PEI/RNAポリプレックス製剤のコロイド的性質を調査するために、結合研究を実施し、様々な量のRNAをPEIに加え、遊離RNAの分画を、アガロースゲル電気泳動によって定量化した。2つのRNA種: メッセンジャーRNA(mRNA)及び自己増幅メッセンジャーRNA(saRNA)、に対して測定を実施した。図1Aに示されるように、どちらの場合においても、残留遊離RNAの分画は、加えたPEIの分画の増加と共に減少するため、PEIへのRNAの結合をモニターすることができた。明らかに、結合特性は、例えば、配列及び長さ等において異なる個々の核酸にも依存した。そのため、saRNAの50%結合は、0.8のN/P比(RNAの過剰)を必要とし、その一方で、比較したmRNAは、1.4のN/P比(PEIの過剰)を必要とした。2以上のN/P比では、もはや遊離RNAは測定されず、RNAは、ポリプレックスナノ粒子に定量的に結合した。
【0214】
2を超えるN/PにおいてRNAは完全に結合したが、粒子特性が更により高いN/P比に向かって変化するいくらかの示徴が存在した。図1Bに、動的光散乱測定によって特定される粒子サイズが示される。粒子サイズは、約6のN/P値までは減少し、その値を超えると、サイズの変化は非常に小さい。
【0215】
製剤において与えられた過剰なポリマーの役割を解明するために、遠心分離アッセイを実施して、製剤において与えられた2つの主要な相を分離する。RNAポリプレックスのサイズは、60~100nmの間で変わることが知られている。遊離ポリマーの分子量は、22kDaであり、その一方で、遊離iVT mRNAは、約500kDaであり、saRNAは、約2900kDaである。これらの仕様の知識から、所定の特定の回転半径及び遠心分離力(20.000G)に対して、遠心分離時間を計算することができる。
【0216】
図2A/2Bの線図は、低いN/P比で、RNAは、ペレット中において豊富だが、その一方で、PEI濃度全体の増加と共に、RNAが豊富な分画は上清へと徐々にシフトすることを示す。図3に示されるように、上清相及びペレット相におけるRNAの異なる分画を回収した後、製剤中の初期RNA量のおよそ100%を回収することができ、それは、当該アッセイが、異なる集団におけるRNA/PEIポリプレックスの正確な定量的分析を可能にしていることを支持する。
【0217】
さらなる実験において(図6)、より大きいN/P比の製剤を試験する。上清分画中のRNA含有量は、全てのRNAが、排他的に上清分画中において見出されるまで、N/Pの増分に相関して増加する。さらなるRNAをペレット分画中に見出すことができないN/P比は、RNAの各タイプに対して特異的である。
【0218】
両方の分画化されたRNAポリプレックスの相において検出したポリプレックスのサイズの分析は(図4)、ポリプレックスの著しく小さいサイズの集団が上清において見出され、ペレット分画において見出される粒子より30~40nm小さいことを明らかにした。とりわけより低いN/Pにおいて(N/P<72)、この相における高い多分散度に起因して、上清集団に対して測定された実寸は完全に正確なわけではない。これらの粒子のサイズは、PEI-RNA製剤における異なる分子配置を示唆する。
【0219】
上清中のRNAはPEIに結合しており、遊離RNAの形態で存在しないことを確認するために、アガロースゲル電気泳動を使用する。内因性ポリアニオン(ヘパリン)の使用により、PEIのカチオン基を打ち消すことができ、並びにナノ粒子内のRNAを放出させ、遊離RNAとして検出することができる(図5)。当該データは、分画化後に上清相において遊離RNAを検出することができないが、PEIに結合したRNAは検出することができることを確認し、結合したRNAは、ヘパリンインキュベーションによって放出させることができる。
【0220】
図7Aは、製剤における異なるRNA-PEIポリプレックスを示す異なる集団におけるPEI及びRNAの明確な共沈降を示す。50~400Sで沈降するポリプレックス集団に注目した場合、分子量分布は、複合体化されたRNAモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、及びペンタマーを強力に組み立て直す。製剤緩衝液中の同じだが裸のRNAの分析用超遠心分離は、明確に確定されたピークを示し、RNAの90%が23.56Sで沈降するのを見出された。各集団における図7Bに示されたRNA及びPEIの量を、図7Aに示される当該データの統合によって定量化し、すなわち、沈降したPEI及びRNAの曲線下面積を特定する。図7Bは、異なる集団におけるPEI粒子の分子配置において顕著な違いを観察することができることを示す。最後に、図7Cに示されるように、iVT mRNA PEI-ポリプレックスのN/P比を増加させることにより、異なる集団の沈降係数プロファイルにおける明確なシフトが達成される。これは、N/P比の増加が、複合体化されたRNAをより低い沈降係数を有する相に向かって、すなわち、より低い分子量のモノマー集団へとシフトさせることを示す。
【0221】
小角X線散乱(SAXS)測定によって、モノマー性ポリマー会合RNAの構造を更に調査した。精製されたモノマー性RNA-PEI種を含む培地において、比較のために緩衝液のみにおいて、並びに50mMのNaClをバルク相に追加することによるより高いイオン強度の存在下において、RNAを測定した。図26Aに、log-logスケールの直接散乱曲線が示される。既に目視できるように、曲線は、識別可能な異なる特徴によって特徴付けられる。緩衝液のみにおけるRNAは、ほとんど構造を全く示さない曲線を示すが、NaClの存在下では、最小の約0.33nm-1によるわずかな変調が視認され、当該曲線は、低いqに向かって平坦になっている。PEI中におけるRNAの曲線は、更により強い構造的特徴を示し、少なくとも2つの変調が0.32nm-1及び0.6nm-1において既に視認される。低いqにおける平坦な領域は、塩が存在する場合より、より長く延びる。PEI曲線の変調は、個々のPEI溶解RNA分子であると考えられる、非常に低い多分散度を有する密で球形の粒子の存在を向いている。NaClの存在下でのRNAも、なんらかの変調を示すが、しかしながら、それはあまり顕著ではなく、より高いq値において存在する。これは、ここでも、RNAがいくらか凝縮しているが、はるかに低い程度であり、あまり密でないパッケージングであることを示す。これらの定性的観察は、曲線をより徹底的に解析することによって確証される。図26Bにおいて、3つのデータセットのギニエプロットが与えられる。ギニエ近似において、粒子の回転半径Rgは、以下のように強度に相関する:
【0222】
【数3】
【0223】
したがって、運動量移行qの二乗の関数としての対数強度のプロットは、結果として、直線を生じ、Rgは、傾斜-(Rg)2/3から導き出すことができる。ギニエ近似は、qの最大値までのみにおいて有効であることに留意すべきである。例えば、固体球の場合、近似が有効な範囲は、通常、q*Rg,<1.3と見なされる。平滑な界面を有する剛体球でない粒子の場合(異方性形状、粗界面、ランダムコイル編成)、この範囲は、更に低く、例えば、q*Rg,<1である。ギニエプロットにおいて、PEIにおけるRNAは、表示された範囲全体にわたって線形挙動を示し、そこから、12nmの回転半径を導き出すことができる。とりわけ、当該線形挙動は、より低いq端に向かっても観察され、最も低い測定データ点付近まで下がり、それは、実質的に、より大きい凝集物(ダイマー、オリゴマー、より大きい粒子)が存在しないことを示す。そのようなより大きな粒子が存在する場合、強度は、湾曲した形状を示すであろうし、強度は、ギニエプロットにおける直線よりも増加する。
【0224】
更に、線形挙動も、q=0.1nm-1(q2=0.01nm-2)まで、すなわち、固体球からの散乱に関する限界まで、よく維持される。したがって、実際には、RNAが、低い異方性及び低い表面粗度を有する非常に密な形態で存在すると結論付けることができる。
【0225】
更に、NaClにおけるデータも直線範囲を示すが、それは、最大でも約0.001nm-2までであり(PEIによる試料の場合より10倍低い)、傾斜はより高く、それは、より高いRgを示す。この曲線の解析から、約29nmの回転半径が得られる。緩衝液中のRNAに対するデータは、最も低いq範囲においてのみ、直線挙動を示し、ここで、Rgは、90nmであると推定され得る(そこでは、近似は、最高で約0.0001nm-2までにおいてのみ有効であり、それは、この測定において、利用可能なq2-範囲ギリギリ又はそれ以下である)。
【0226】
図26Cにおいて、データは、Kratkyプロットとして与えられており、運動量移行qの二乗が掛けられた散乱強度が、qの関数として与えられる。当該Kratkyプロットにおいて、折りたたまれていない(非常にフレキシブルな)分子は、高いqにおいて横這いを有するはずであり、その一方で、密な球状巨大分子は、釣り鐘型の(ガウス形)ピークを有する。PEIデータに対してのみ、密な球状編成を示す明確なピーク様パターンが観察される。図26Dには、計算された対分布関数P(r)が示され、それは、粒子における散乱部分の間の距離に関する情報を与える。当該ピークは、最も豊富な距離を与える。拡張されたコンフォメーションにより、当該データは、緩衝液中のRNAに対して曲線を計算することができず、したがって、ここでは、NaCl中及びPEI中のRNAのみが示されている。ここで、PEI中のRNAに関するピークは、NaCl中のRNAよりもより密で著しく低い距離であり、それは、PEI中のRNA粒子がはるかにより密であるという、ギニエプロットから既に導き出された情報を支持する。まとめると、過剰なPEIに溶解したRNAは、驚くほど密な編成を示し、RNAの非常に高いパッキング密度が存在するに違いない。可能な限りシンプルな固体球モデルを考慮して、回転半径は、(V=4*π/3r3、Rg=r*(3/5)1/2)15600nm3の単一のRNA分子の体積を説明するであろう。この数は、2のN/P比でPEIと複合体化した3*106Daのモル質量を有するRNAの体積と比較することができ、結果として、約4.15*106Daの総モル質量を生じる(330Daの各ヌクレオチドは、それぞれ43Daの2つのPEIユニットを伴う(したがって、総質量は、330/456倍高い)。アボガドロ数と共に、1の密度を想定した場合、以下に対するアセンブリの体積を計算することができる:
【0227】
【数4】
【0228】
RNAの真の密度は、1g/mLよりいくらか高いが、この値は、驚くべきことに、上記の計算値の1.56*104nm3に近い。対イオン、及び水分子は計算に含まれていない。その上、実際には、密化されたRNAは、厳密に球体ではなく、増加する半径を伴うパッキング密度のある特定の崩壊を考慮に入れなければならず、両方とも、単一分子の回転半径の増加をもたらす。したがって、これらのデータは、ここで測定された低回転半径によって、単一のRNA分子のみが当該散乱プロファイルを説明することに対するさらなる確認が与えられることを示す。パッキング密度は、RNAが密化される他の条件、例えば、高い塩濃度等と比較して非常に高い。例えば、ここで提示されるRgデータにより、PEI中のRNA粒子によって占有される体積は、NaCl溶液中おいてより約15倍低い((12/29)3)。したがって、低回転半径の特定は、PEI密化RNAを溶液状態のPEIの他の形態と区別するための明白な指標であり得る。
【0229】
SAXSによるモノマー性RNA種の調査によって導き出すことができる以前に説明した観察に基づいて、PEIを含む溶液中におけるRNAの立体配座構造を円偏光二色性によって調査した。RNA/PEI製剤におけるバルクN/P比の増分の下において(0-24-48-72-120-240)、並びにRNA/NaCl製剤中におけるNaCl濃度の増分の下において、RNA二次-三次構造を調査した。この最後の群は、別のタイプの高分子電解質と比較するために使用される。スペクトルのピーク位置の変化、並びにこのピーク位置での楕円率(mdeg)の変動は、RNAの3つの主要な特徴: (1)糖骨格の非対称性及びいわゆるA-B-Z形態におけるその特異的な回転/空間定位、(2)ワトソン-クリック塩基対又は非ワトソン-クリック塩基対の両方の場合のヌクレオチド対の水素結合、及び(3)鎖のπ-カチオン性-駆動スタッキング相互作用(Kypr, J.ら(2012) Comprehensive Chiroptical Spectroscopy: Applications in Stereochemical Analysis of Synthetic Compounds, Natural Products, and Biomolecules、第2巻: 575~586)に相関した。図28Aにおいて、より低い波長に向かうピーク位置の明確なシフトと、当該ピーク位置での当該測定された楕円率の増加が存在する。この両方の効果は、RNAの溶液中のNaCl濃度の増分に相関する。より低い波長に向かうピーク位置のシフト全体は、以前に言及したような鎖のスタッキング効果を検出することができるUV領域である、280~300nmの間におけるシグナルの比例損失を伴う。その一方で、RNA溶液中におけるNaClの当該説明された効果とは対照的に、PEIは、RNAの立体配座構造において反対の効果を引き起こした。図28Bにおいて、より高い波長に向かうピーク位置の明確なシフトと、測定された楕円率の減少が存在する。この両方の効果は、RNA/PEI製剤におけるN/P比の単調な増分に相関する。より高い波長に向かうピーク位置のシフト全体は、280~300nmの間におけるシグナルの比例利得を伴う。PEI又はNaClによるRNA構造における相互作用及び効果の性質は、図28C及び図28Dおいて続き得、PEI又はNaCl濃度を、正電荷濃度(mM)の共通のX軸に変換することにより、それは、ピーク位置のシフトに関するPEI及びNaClの当該反対の効果並びに当該ピーク位置での楕円率における効果をまとめる。以前に説明したSAXS分析による効果に従って、PEI及びNaClの縮合性質は劇的に異なることがわかり、ポリカチオン性ポリマーにおけるモノマー性RNA構造が間違いなく独特であることを強調することができる。モノマー性のPEI複合体化RNA種は、ヌクレオチドの水素結合の損失、スペクトルにおける独特なレッドシフト、及び280~300nm波長におけるシグナルの利得を説明するカチオン性ポリマーとRNAのヌクレオチドとのπ-カチオンに駆動される相互作用に起因する、RNAの二次構造の固有損失を伴う非常に縮合された構造である。これとは対照的に、NaClは、内部RNA編成(二次構造)によって物理的に制限される縮合を引き起こすことができ、それは、スペクトルにおける観察可能なブルーシフトによって十分に特徴付けられる。
【0230】
実施例2: 異なるカチオン性ポリマー/RNAポリプレックスの遠心分別後の上清においてポリマー溶媒和RNA分画を検出することができる
この新しい概念の拡張を確認するために、PEI-ポリプレックスは別として、PEIに構造的に関連するか又は同様のカチオン性部分を有する、さらなるカチオン性ポリマーを試験する。DEAE-デキストラン、ポリ-L-リジン、ポリビニルアミン、及びポリアリルアミンを含む、PEI以外の4つの異なるポリマーを試験する(図8)。全ての試験したポリマーにおいて、ポリプレックスのN/P比を増加させたときに、遠心分離の後の上清中のRNA含有量が比例増加することを観察する、一般的傾向が存在する。ポリプレックスの上清集団におけるRNAの増分は、試験されたポリマーでは異なっており、DEAE-デキストラン及びPEIRNA-ポリプレックスにおいて最も高く、PLL、PVA、及びPAAがそれに続く。これらの結果は、RNAとの結合特性に対するポリマー鎖におけるカチオン性部分の構造配置と、モノ/オリゴマー性RNA分画の形成との間の強力な相関関係を示唆する。更に、ポリエチレンイミンに化学的/構造的に近い様々な異なるポリマーにおける高N/P比に対する以前に観察された効果に対して、著しく異なる化学的/構造的性質の2つの新規なポリマーを試験する。それぞれ図20B及び図22Bにおける、ペンタ-L-リジンの(64)アームによってG(5)-官能化されたPAMAM(つまり、G(5)-PLL(64))及びViromer(登録商標)の両方に関して、製剤のN/P比を増加させることにより、モノマー性RNA集団のより高い含有量が得られることが示される。これは、N/Pの増分が、ポリエチレンイミンに密接に関連するものだけでなく、広範のカチオン性ポリマーファミリーに適用できる普遍的法則であることを明確に示す。
【0231】
実施例3: 遠心分離後の上清において観察されるPEI溶媒和RNA分画は、PEI-ポリプレックス製剤の生物活性全体における重要な駆動力である。
様々なN/P比でのルシフェラーゼをコードするRNAによるC2C12細胞のトランスフェクションの後に、PEI-ポリプレックスの異なる分画化された集団の生物活性を調査する(図9A図9B)。製剤化されたナノ粒子及び分画化された集団を、ウェル当たり合計で5ngの製剤化されたsaRNA/iVT mRNAをまとめて、培養培地において所望の濃度に従って希釈する(100μL)。結果は、上清集団が生物活性のための主要な駆動力であることを明確に示す。実際に、これらの結果は、当該製剤の上清分画は、遠心分離されていない親製剤より高い生物活性さえ有することを示唆した。
【0232】
実施例4: 高いN/P比は、増加した効果を約束するが、インビトロでの高い用量における毒性により制限される。
様々なN/P比でのルシフェラーゼをコードするRNAによってトランスフェクトしたC2C12を、ルシフェラーゼ&生存率アッセイにおいて分析する。培養培地における所望の濃度に従って、製剤化されたナノ粒子を希釈する。5000のC2C12細胞/ウェル当たり50ngのRNAの用量において(100μL)、ルシフェラーゼ活性は、低いPEI濃度において高いが、PEI濃度を増加させるに従い、生存率と共に減少し(図10A)、10倍低いRNA(及びPEI)用量において完全に異なる様子が見られる。より低い用量のパネルでは、毒性は観察されず、生存率も変わらないままであり、測定されたルシフェラーゼ活性は、PEI濃度の増加と共に増加する(図10B図10C)。したがって、PEIは、トランスフェクトした細胞に対して毒性効果を有するが、これは、低用量でのトランスフェクション効果の増加によって過剰に補償され、結果として全体として同等の効果を生じるように思われる。その上、両方の製剤化されたRNAの場合(iVT mRNA又はsaRNA)、N/P比の増分は、上清分画において見出されるRNA量の増分及び発光の増分に完全に相関する。両方の図において観察されるように(図10B図10C)、発光シグナルは、全てのRNAが上清分画において見出されるとすぐに、増加するのをやめる。N/Pのさらなる増分は、より高い生物活性につながらず、むしろ、横這いにとどまる。これは、発光の増分は、製剤中の小規模のモノマー性PEI溶媒和RNA含有量の増分のみに起因し、必ずしも過剰なポリマー自身に起因するわけではないことを示す。この観察は、PEI溶媒和RNAによる高いN/P比の生物活性に対してだけではなく、他のカチオン性ポリマー、例えば、Viromer(登録商標)及びG(5)-PLL(64)等に対しても見られ、生物活性は(図20C図22C)、上清分画において見出されるRNA量の増分と共に単調に増加するのが示される(図20B図22B)。これら2つのポリマーの場合、上清分画中のRNAの最大量が増加することができないポイントを超えてのN/Pのさらなる増分は、生物活性における横這いにつながる。
【0233】
実施例5: 減少した用量における高いN/P比の注入後のインビトロにおける生物発光発現の効率の増加
15匹の雌のBALB/Cマウスを、5つの研究群に分ける。全ての群に、同じ量の製剤化したルシフェラーゼをコードするsaRNA(62.5ng)を、各脚において筋肉内に適用することによって受けさせた。第1の群には、N/P12で製剤化した62.5ngのsaRNAを受けさせ、第2の群には、62.5ngのN/P24を受けさせ、第3の群には、62.5ngのN/P48を受けさせ、第4の群には、62.5ngのN/P72を受けさせ、最後の群には、62.5ngのN/P96を受けさせた。5つの時点において(24時間、72時間、6日目、9日目、20日目)、当該マウスをライブイメージングによって観察する。図11Aは、ポリプレックスの注入後6日目に検出された生物発光シグナルを示す。N/P比の増加に伴って発光シグナルが増加し、N/P72において最大シグナルに達する(96のN/P比は、飽和限界に達しているように思われる)。生物発光全体は、曲線下面積として表すことができ(図11B)、ここで再び、N/Pの増分が、注入したRNA用量のより高い有効性につながり、有効性は、複数によって増加させることができることが明確に示される。
【0234】
実施例6: 高いN/P比での増加した有効性は、同じ絶対的生物学的性能全体から恩恵を受けつつRNA用量を減少させるためにインビボにおいて使用することができる。
9匹の雌のBALB/Cマウスを、3つの研究群に分ける。第1の群に、12のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする500ngのsaRNAを投与する。群2に、24のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする250ngのRNAを受けさせ、群3に、48のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする125ngのRNAを受けさせる。5つの時点において(24時間、72時間、6日目、9日目、15日目)、当該マウスをライブイメージングによって観察する。ストレスを減らすため、24時間及び72時間において、各群のマウスのうちの無作為な半分のみを調べる。6日目以降は、全てのマウスのうちの半分(コントロール群を除く)を犠牲にし、脾臓試料を採取する。残りのマウスを、9日目及び15日目に調べ、その後、血液及び脾臓試料を得るために犠牲にする。
【0235】
RNA濃度に対する発光シグナルの正規化の後、最も大きなN/P比による最も少ない用量(RNAの最も少ない濃度、PEIの基本濃度)が最も大きな効果を示すことが視認されるようになる(図12A)。したがって、RNAに対するPEI比を増加させつつPEI濃度を一定に維持することによって、効果を減らすことなくRNA濃度を著しく減少させることが可能である。
【0236】
CD8ポジティブT細胞の調製のために当該脾臓試料を使用する。当該T細胞調製物を、抗原提示細胞を有するBALB/c MHC-I 1、2及び3に接触させ、ホタルルシフェラーゼペプチドであるGFQSMYTFV、VPFHHGFGM、及びVALPHRTACとプレインキュベートする。図12Bは、群1、群2、及び群3は、同様の強いCD8応答を有するが、各群に適用されたRNA濃度に対してCD8応答を正規化した後、12から48へと当該製剤のN/P比を増加させることにより、注入されたRNAの有効性の約5倍の増加が明確に見られることを示す。したがって、当該応答に対する用量及び/又はN/P比の間の関係性は、インビトロにおいて以前に観察されたトランスフェクション効率に適用されるだけでなく、インビボでの生物発光及び免疫刺激能力にも適用される。
【0237】
実施例7: 高いN/P比は、用量減少スキーム下においてさえより高い抗HA IgG及びVNTを生じる。
25匹の雌のBALB/Cマウスを、5つの研究群に分ける。第1の群に、12のN/P比でPEIによって製剤化したカリフォルニア/7/2009-HAをコードする500ngのsaRNAを投与する。群2に、48のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする125ngのRNAを受けさせ、群3に、72のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする83.3ngのRNAを受けさせ、群4に、96のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする62.5ngのRNAを受けさせ、群5に、120のN/P比でPEIによって製剤化したルシフェラーゼをコードする50ngのRNAを受けさせる。3つの時点において(14日目、28日目、49日目)、血清試料を各マウスから採取する。図13Aにおいて、3つの時点に対する抗HA IgGの絶対値は、注入されるsaRNAの用量を減らしても、N/P比を比例して増加させた場合、特定のIgGの量の著しい増分が存在し、最高値は群3においてであることを明確に示す。1群当たりの注入されたRNAの量に対する血清中の抗HA IgGレベルの正規化の後、N/P比を増加させることにより、49日後において、注入されたRNAの有効性の著しい増加があり、N/P12に対してN/P120では、ほぼ12倍の増加を有することが明らかとなる(図13B)。
【0238】
実施例8: PEI-ポリマー長は、ポリマー会合モノマー性RNA種の形成及び生物活性全体に対して影響を与える。
ここではエチレンイミンの繰り返しユニット(r.u)として表されるポリマー長の体系的変動によってRNA製剤におけるPEIポリマー長の効果を調査する。レファレンスとして、エチレンイミンの約500r.uと同等の22500Daの分子量を有するPEIを用いる。最初に、RNAに対する様々なPEI-ポリマー長の結合親和力を評価した(図14A)。結合親和力とポリマー長との間には明確な相関関係が存在し、そのため、より長いポリマー(>500r.u)は、非常に低いN/P(<1.0)においてでさえ、RNAに対して非常に強く結合し、遊離RNAは検出できない。それとは対照的に、より短いポリマー(<62r.u)は、RNAを完全に結合させるためには、より高いN/P比(>1.3~1.5)を必要とする。結合親和力と並行して、上清分画中に見出されるRNAの量は、所定のN/P比で使用されるポリマー長と強く相関した(図14B)。所定のN/P比(6、12、30、60、又は120のいずれか)において遠心分離アッセイの後の上清において定量化されるRNAの量は、7r.uから500r.uまでのPEIポリマー長と共に単調に増加した。PEIにおけるエチレンイミンの500r.u超では、モノマー性RNAの分画の増分は検出できない。このデータは、N/P比だけが、そのようなモノマー性RNA-ポリマー会合種の形成においてある役割を果たすのではなく、ポリマーの長さも、基本的な役割を果たすことを示唆する。最後に、C2C12細胞のトランスフェクションから測定される発光として示されるインビトロ活性は、所定のN/P比に対して、使用されるポリマー長と共に非常に強く増加した(図14C)。より詳細には、全てのポリマー長さを同じN/P(120)でインビトロで試験することにより、生物活性の増分は、上清中のRNAの量の増分と完全に相関し(図14B)、それは、生物活性がポリマー会合モノマー性RNAの量に強く依存し、この実験において一定に維持された過剰な正電荷には依存しない(図14C)ことを示唆する。
【0239】
更に、24匹の雌のBALB/Cマウスを、8つの研究群に分ける。全ての群に、同じ製剤化したN/P比(120)の、製剤化した同じ量におけるルシフェラーゼをコードするsaRNA(125ng)を、各脚への筋肉内投与によって受けさせた。当該群に、異なるPEI-ポリマー長: 31-62-125-250-500-1000-2500r.uで製剤化したRNAを受けさせた。最後の群には、製剤化緩衝液のみを受けさせた。6つの時点において(1日目、3日目、6日目、9日目、13日目、20日目)、当該マウスをライブイメージングによって観察した。図15Aは、様々なポリマー長のPEI製剤の注入後に実験全体において検出された生物発光シグナルを示す。図15Bは、全ての試験したポリマー長に対して発現のピーク点(6日目)において観察される生物発光を示す。当該データは、生物発光、すなわち、生物活性はポリマー長と共に単調に増加し、上清中のRNAの量と直接相関することを明確に示す(図15B)。
【0240】
実施例9: 局所RNA濃度がポリマー会合モノマー性RNA種の形成において重要な役割を果たす。
モノマー性RNA-ポリマー会合種の形成を理解するために、RNA含有溶液とPEI含有溶液との古典的等体積混合以外に、さらなる体積混合比を系統的に調査する。形成された複合体の流体力学的サイズ、遠心分離アッセイによるポリマー会合モノマー性RNAの含有量をモニターすることによって、及び最終的に、インビトロでの生物活性をモニターすることによって、体積混合比の変動の影響を評価する。RNA及びカチオン性ポリマーの異なる開始濃度を有するために、RNAの最終濃度、最終N/P比、及び最終製剤体積が試験条件間において一定であるが、RNA含有溶液及びカチオン性ポリマー含有溶液の体積混合比は変わるように、体積混合比の変量を実施した。当該複合体のサイズ全体は、図16Aに示されるように、両方のRNAのタイプの場合、最も低いRNA開始濃度(すなわち、最も高い初期RNA体積、最も低い初期PEI体積)において20~30nmまで減少する。開始RNA濃度の増加は、最も高いRNA開始濃度に関して最高で100~120nmまでの、当該複合体のサイズのかなりの増分を生じる。これは、図21又は図23Aに示されるように、PEI-ポリマーだけでなく、他のカチオン性ポリマー、例えば、Viromer(登録商標)又はG(5)-PLL(64)にも同様に適用可能であることを維持し、最も低いRNA開始濃度(すなわち、最も高い初期RNA体積、最も低いPEI体積)を使用することによって、当該複合体のサイズに対する同じ効果を観察することができる。そのような製剤の遠心分離後の上清中におけるポリマー会合モノマー性RNA種の量の評価は、図16B及び図23Bに示される。これらの図は、所定の一定のN/P比、すなわち、初期ポリマー体積に対して過剰なRNAの最も高い初期体積が、上清中のポリマー会合モノマー性RNAとして見出される、RNAの最も多い量を生じることを示す。初期ポリマー体積に対する初期RNA体積の混合比の減少は、上清中に見出されるRNAの量の短調な減少を生じる(図16B図23B)。更に、当該体積混合比の様々な変量における生物活性を、C2C12細胞のトランスフェクションによって評価する。図16Cは、RNA開始濃度の増加に伴って(初期体積の減少に伴って)、生物活性が単調に減少することを示しており、それは、図16Bにおいて上清に見出されるRNAの減少に相関する。図16Bにおける最も高い生物活性は、製剤中の最も低いRNA開始濃度に対して、すなわち、ポリマー初期体積に対するRNA初期体積の最も高い体積混合比に対して観察される。図16Bにおける観察のさらなる比較を、図17AにおけるC2C12細胞のトランスフェクションの後に観察される生物活性によって確認することができる。この図において、N/P12での等体積混合物及び、N/P12での初期PEI体積に対する初期RNA体積の99:1混合比による混合物を、N/P120での等体積混合物と比較する。当該データは、RNAがポリマー会合モノマー性RNA種として排他的に見出される場合、過剰な正電荷(12対120)は、ほとんど役割を果たさないことを明確に示す。図16における試験した混合比に関して、図18において異なるN/P比を試験したが、それは、同様の効果が、12より更に低いN/P比で観察することができることを示した。それにもかかわらず、試験した混合比によるより強力な効果が、図18AにおいてN/P12で観察され、さらなる実験は、N/P12に集中する。
【0241】
実施例10: ポリマー会合モノマー性RNA種は、長期間にわたる液体貯蔵においてコロイド状において安定である
遠心分離後のPEI製剤化RNAの上清において見出されるモノマー性RNA種のコロイド安定性を評価するために、上清中のRNAの大部分(>60%)を有することを示した、すなわち、ポリマー会合モノマー性RNA種として、2つの製剤を分析した(図19)。当該複合体の流体力学的サイズ、懸濁液においてカウントした複合体の量、又は上清中のRNAの量を、実験全体にわたってモニターした。全体で、5つの異なる時点(0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、960時間)をモニターした。全体的に、貯蔵した上清分画、すなわち、ポリマー会合モノマー性RNA種においても、バルク相においても、960時間にわたって当該複合体の流体力学的サイズにおいて著しい変化はない(図19A)。これらの研究結果を確認するために、粒子の濃度を、流体力学的サイズの測定と並行してDLSによって測定したカウント/秒の量によって評価することができる。図19Bに示されるように、実験全体にわたってカウント/秒における著しい変化は観察されず、それは、バルク製剤又は単離されたRNA上清内のモノマー性RNA種と非モノマー性RNA種との間においてシフトがないことを示唆する。このことは、「エイジング(aged)」試料をそれ以外は同一の条件下において新たに調製した試料と比較した図19C及び図19Dにおいて更に確認することができた。ここで再び、図19C及び19Dの両方は、同一のサイズ及びカウント/秒を実証しており、図19A及び図19Bにおいて以前に示されたことを確認した。最後に、「エイジングした」貯蔵製剤と新たに調製したコントロールとを比較することにより、上清中のRNAの量をプロセス全体においてモニターし、上清中のRNAの定量化された量における倍率変化として、図19Eに示し、エラーバー内の小さな変動のみを検出することができる。図19Eに示されたデータは、最終的に、製剤内のポリマー会合モノマー性RNA種において見出されるRNAの量は、960時間にわたって変化しないことを支持する。
【0242】
実施例11: RNA又はRNA-ポリマー製剤の凍結乾燥
RNA又はRNA-ポリマー製剤の凍結乾燥は、そのような製剤の古典的液体/凍結貯蔵に対する代替手段である。したがって、水性ポリマー含有溶液による直接再構成にとって適切なマトリックスにおいて凍結乾燥したRNAの使用を調査した。図24及び図25において、サイズ、インビトロ生物活性、抗HA IgGのインビボ生成、インビボインフルエンザ中和力価、及びインフルエンザHA-CD4/CD8+T細胞応答を評価した。図24C及び図24Dにおける、試験した凍結乾燥RNA-PEI製剤を、様々なN/P比及びRNA:PEI体積混合比で製剤化した。この製剤の分画を凍結又は凍結乾燥する。凍結乾燥した製剤は、その後、再構成した。複合体のサイズは、図24Cにおける新たに調製した試料と、凍結又は凍結乾燥した試料との間において変化しなかった。そのような製剤の生物活性を、C2C12のトランスフェクションによって試験した。当該生物活性を図24Dに示しており、それは、RNA-PEI製剤の凍結乾燥が生物活性を維持することを示す。図24A及び図24Bにおいて、当該RNAの凍結乾燥を、様々な緩衝溶液において試験した。凍結乾燥したRNAの再構成は、ポリマー含有水溶液を使用して行った。凍結乾燥したRNAの再構成後のサイズ、或いは新たなコントロール製剤又は凍結させたコントロール製剤のサイズを、図24Aにおいて評価したが、当該図は、全ての製剤の同等なサイズを示すが、純水において凍結乾燥させたRNAから作製した製剤は示されていない。120の最終N/Pにおけるポリマー溶液で再構成した当該凍結乾燥させたRNAの生物活性を、図24Bにおいて評価した。図24Aにより、この実験は、MBSにおいて凍結乾燥させたRNAを使用して最も高い生物活性を示し、純水において凍結乾燥させたRNAから最も低い発現が得られた。図25において、凍結乾燥したRNA-PEI製剤又は凍結乾燥したRNAの生物学的性能を、更にインビボにおいて評価した。35匹の雌のBALB/Cマウスを、7つの研究群に分けた。第1の群には、製剤緩衝液のみを受けさせた。全ての他の6つの群には、様々な条件下においてPEIによって製剤化した、カリフォルニア/7/2009-HAをコードするsaRNAを受けさせた。第2の群には、N/P12で製剤化した500ngのsaRNAを受けさせ、第3の群には、N/P120で製剤化した125ngのsaRNAを受けさせ、第4の群には、以前に凍結乾燥させ、当該群のマウスに注射する前に水によって再構成した、N/P120で製剤化した125ngのsaRNAを受けさせ、第5の群には、純水において凍結乾燥させ、最終N/P120を有するようにポリマー溶液によって再構成した、125ngのsaRNAを受けさせ、第6の群には、MBG緩衝液において凍結乾燥させ、最終N/P120を有するようにポリマー溶液によって再構成した、125ngのsaRNAを受けさせ、最後の群には、MBS緩衝液において凍結乾燥させ、最終N/P120を有するようにポリマー溶液によって再構成した、125ngのsaRNAを受けさせた。3つの時点において(14日目、28日目、56日目)、血清試料を各マウスから採取した。図25Aにおいて、ELISA法によって得られた抗HA IgGの絶対値を、当該3つの時点に対して各群の曲線下面積として表す。抗HA IgGレベルは、MBSにおいて凍結乾燥させたsaRNAを注入した群において最も高く、新たに調製したベンチマークのN/P120及び凍結乾燥させたN/P120のRNA-PEI製剤が続いた。水において凍結乾燥させたRNAによって処理した群において、HAに対する明確なIgGレベルは検出することができなかった(5匹のマウスのうち1匹だけが応答性であった)。前の研究結果を、図25Bにおける56日後(実験の最後の時点)に採取した血清学的試料から得ることができるウイルス中和力価によって確認した。当該データは、最も高いVNTは、MBSにおいて凍結乾燥させたsaRNAを注入した群において観察され、新たに調製したベンチマークのN/P120及び、凍結乾燥させたN/P120のRNA-PEI製剤が続くことを確認する。最後に、図25Cでは、インフルエンザペプチドに対するCD4/CD8+T細胞の応答を、IFN -ELISPOTによって測定した最終時点において摘出した脾臓の脾細胞において評価する。最も高いT細胞応答(CD4及びCD8の両方)は、MBSにおいて凍結乾燥したRNAで処理した群から得られ、それは、新たに調製したN/P120より2倍高く、又は新たに調製したN/P12よりも10倍(用量に対して正規化した)高かった。全体的に、凍結乾燥が、ワクチン接種アプローチにおけるそのような系の使用に対してより長い期間の安定性を提供するだけでなく、凍結乾燥が適切なマトリックスにおいて行われた場合に、同じ用量/条件において、そのようなアプローチにおいてより高い有効性も提供することが証明される。
【0243】
実施例12: 他のカチオン性ポリマーに関する減らした用量での高N/P比の注入後のインビボでの生物発光発現の効率の増加
27匹の雌のBALB/Cマウスを、9つの研究群に分けた。全ての群に、同じ量の製剤化したルシフェラーゼをコードするsaRNA(125ng)を各脚において筋肉内に適用することによって受けさせた。最初の4つの群には、様々なN/P比12-24-48-96において製剤化した125ngのG(5)-PLL(64)/saRNAを受けさせた。次の4つの群には、様々なN/P比12-24-48-96において製剤化した125ngのViromer(登録商標)/saRNAを受けさせた。最後の1つの群には、saRNA又はポリマーを用いない製剤緩衝液のみを受けさせた。4つの時点において(1日目、3日目、6日目、8日目)、当該マウスをライブイメージングによって観察した。図27A及び図27Bは、様々なポリマー-ポリプレックスの注入後に実験全体にわたって検出された生物発光シグナルを示す。図27Cは、2つの異なる試験したポリマーに分類された、試験したN/P比の関数としての、実験全体における各群の発現に関する曲線下面積を示す。N/P48において最大シグナルに達する、N/P比の増加による発光シグナルの明確な増分が存在し、その一方で、このN/P比を超えると、トランスフェクトされた細胞がRNAの発現の前に死んでいる場合、この両方のカチオン性ポリマーに対するインビトロ観察に沿った有害効果、すなわち、実質的にRNAの発現を不可能にする局所的毒性効果、が存在するように思われる。インビボでのより高いN/P比における両方のポリマーの生物活性は、前の研究結果(図11)を支持しており、ポリマー会合モノマー性RNA種におけるRNAの量を増加させることによって生物活性を増強するために、他のカチオン性ポリマーに対するN/Pを増加させることの普遍的適用性を示す(図8図20B図22B)。
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【配列表】
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【国際調査報告】