(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】呼気サンプリングデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20220831BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220831BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/00 101T
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577072
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 SG2020050361
(87)【国際公開番号】W WO2020263185
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】10201905899R
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュナン・ジア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンキー・チルマライ・ヴェンカテサン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ドゥ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045CB22
2G045HA06
2G045HA09
2G052AA34
2G052AB06
2G052AB11
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA17
2G052CA04
2G052CA38
2G052EB11
2G052GA23
2G052HC10
2G052JA11
(57)【要約】
バッファ管と、センサモジュールと、呼気サンプリングポートとを含む呼気サンプリングデバイスが開示されている。該バッファ管は、ユーザが中へ息を吐く近位端と、該近位端の反対側の遠位端とを有し、センサモジュールは該遠位端にあり、ユーザによりバッファ管内へ吐かれた息のパラメータを測定するために使用され、呼気サンプリングポートは近位端と遠位端との間に配設されている。ユーザが近位端内へ息を吐き、該呼気の部分が、実質的にセンサモジュールに接触することなく、サンプリングポート内へ逸らされることが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが中へ息を吐く近位端および前記近位端の反対側の遠位端を有するバッファ管と、
前記ユーザにより前記バッファ管内へ吐かれた息のパラメータを測定するための、前記遠位端におけるセンサモジュールと、
前記近位端と前記遠位端との間に配設されている呼気サンプリングポートであって、呼気の部分が、前記呼気サンプリングポートを通って、実質的に前記センサモジュールに接触することなく、逸らされることが可能である、と
を含む、呼気サンプリングデバイス。
【請求項2】
前記呼気サンプリングデバイスの内部領域を殺菌するための殺菌デバイスを含む、請求項1に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項3】
前記センサモジュールは前記殺菌デバイスと前記内部領域とを含む、請求項2に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項4】
前記殺菌デバイスは紫外(UV)光源である、請求項2または3に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項5】
前記バッファ管は加熱ジャケットを含み、前記加熱ジャケットは前記バッファ管を加熱して、前記バッファ管への揮発性有機化合物(VOC)の付着を低減する、請求項1から4のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項6】
前記センサモジュールは、前記呼気の呼気流量を感知するための流量計を含み、
前記呼気サンプリングデバイスは、前記流量計から前記流量の測定値を受信するための出力デバイスをさらに含み、前記測定値が許容可能な流量範囲外にある場合、前記ユーザに、前記流量を修正してそれを前記許容可能な流量範囲内にするように信号を出力する、請求項1から5のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項7】
前記呼気サンプリングポートを選択的に開閉するための弁をさらに含み、
前記センサモジュールは、前記呼気の瞬間二酸化炭素レベルを検出するための二酸化炭素(CO
2)センサを含み、
前記センサモジュールは、前記瞬間二酸化炭素レベルから呼吸位相を判定し、前記呼気サンプリングデバイスによりサンプリングされることが所望される呼吸位相(前記所望の呼吸位相)に応じて前記弁を作動させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項8】
前記センサモジュールは、前記呼気の呼気流量を感知するための流量計を含み、
前記呼気サンプリングデバイスは、前記流量計から前記流量の測定値を受信するための出力デバイスをさらに含み、
前記測定値が許容可能な流量範囲外にある場合、前記ユーザに、前記流量を修正してそれを前記許容可能な流量範囲内にするように信号を出力する、請求項7に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項9】
前記センサモジュールは、前記流量が前記許容可能な流量範囲内にある場合のみ、前記弁を作動させる、請求項8に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項10】
前記出力デバイスは出力を前記ユーザに与え、呼気手順により前記ユーザを導くために発光ダイオード(LED)ディスプレイまたは有機LEDディスプレイを含む、請求項6、8および9のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項11】
清浄空気を吸気用に前記ユーザに送達するために、前記バッファ管に接続されている清浄空気供給部をさらに含む、請求項1から5および7のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項12】
前記清浄空気供給部は、第1の方向の前記清浄空気供給部から前記ユーザへの清浄空気の通過を可能にする第1の逆止め弁であって、前記第1の方向の反対の第2の方向の空気流を不可能にする第1の逆止め弁を含む、請求項11に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項13】
前記第1の逆止め弁は作動されて、呼気中に清浄空気の送達を防止することができる、請求項12に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項14】
前記センサモジュールの近位に前記バッファ管内に配設されている第2の逆止め弁をさらに含み、
前記呼気が第1の方向に前記センサモジュールを通って遠位に流動することを可能にし、前記第1の方向の反対の第2の方向に前記第2の逆止め弁を通る空気流を不可能にする、請求項12または13に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項15】
前記第2の逆止め弁は、前記清浄空気供給部の遠位に配置されて、清浄空気の吸気中に前記第2の逆止め弁を通る空気の通過を防止する、請求項14に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項16】
前記バッファ管の前記近位端は、前記ユーザが通して前記バッファ管内へ息を吐くマウスピースに係合するようになされている、請求項1から15のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項17】
前記マウスピースは、テフロン(登録商標)、ガラス、および塩で処理された材料のうちの少なくとも1つを含む材料から形成される、請求項16に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項18】
呼気中の1つまたは複数の揮発性有機化合物(VOC)の存在を検出するのに有用であり、前記バッファ管は、前記VOCに対して不活性な材料から形成されている除去可能な内管を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項19】
前記バッファ管は、テフロン(登録商標)、ガラス、および塩で処理された材料のうちの少なくとも1つを含む材料から形成されている、請求項18に記載の呼気サンプリングデバイス。
【請求項20】
前記呼気サンプリングポートは、呼気収集容器および分析機器の少なくとも1つに取付け可能である、請求項1から19のいずれか一項に記載の呼気サンプリングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、呼気の分析において使用される呼気サンプリングデバイスに関する。本発明は、特に、例えば分析機器または収集容器内へ呼気を方向付けるために、ユーザが息を吐く呼気サンプリングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の呼吸は、痕跡程度で存在する何千もの揮発性有機化合物(VOC)を含む。これらのVOCは代謝の間に絶えず作り出されており、血液ガス交換により肺胞から呼吸中へ放出されている。疾病が代謝経路の変化を伴うことが多く、したがって呼気のVOCプロフィールに検出可能な変化をもたらすはずである。したがって、呼気の分析によって、疾病バイオマーカの同定および医学的状態の予備的診断の成立を容易にすることができる。
【0003】
呼気のサンプリングおよび分析が、今のところ、広く採用されていないかまたは商業化されていない低開発技術である。これは、一般に、人間の呼吸のVOC濃度が非常に低いことが原因である。環境因子および他の交絡因子、すなわち結果の有用性の精度に影響を及ぼす因子により、サンプルが汚染され易い。呼気中のいくつかのVOCの存在、またはそれらのVOCの濃度はまた、呼気の量または速度に大きく依存し得る。
【0004】
さらに、いくつかのVOCは、検出可能なもしくは分析的に関連する量に、特に呼吸位相にのみ存在するかまたは存在する。例えば、口腔上気道から放出されるVOCは呼気中に早期に検出可能であり、一方、肺胞から放出されるVOCは呼気中に後で検出可能である。
【0005】
したがって、呼気の収集部分が、当該呼気において実施されることが意図されている分析に適していることを確実にすることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の問題のうちの少なくとも1つを克服するかもしくは改善すること、または少なくとも有用な代替手段を提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、
ユーザが中へ息を吐く近位端および該近位端の反対側の遠位端を有するバッファ管と、
該ユーザにより該バッファ管内へ吐かれた息のパラメータを測定するための、該遠位端におけるセンサモジュールと、
近位端と遠位端との間に配設されている呼気サンプリングポートであって、該呼気の部分が前記呼気サンプリングポートを通って、実質的に該センサモジュールに接触することなく、逸らされることが可能である、呼気サンプリングポートと、
を含む、呼気サンプリングデバイスが開示されている。
【0008】
呼気サンプリングデバイスは、該呼気サンプリングデバイスの内部領域を殺菌するための殺菌デバイスを含み得る。センサモジュールは該殺菌デバイスと内部領域とを含み得る。殺菌デバイスは紫外(UV)光源であってもよい。
【0009】
バッファ管は加熱ジャケットを含んでいてもよく、該加熱ジャケットはバッファ管を加熱して、バッファ管への揮発性有機化合物(VOC)の付着を低減する。
【0010】
センサモジュールは、呼気の呼気流量を感知するための流量計を含んでいてもよく、呼気サンプリングデバイスは、流量計から流量の測定値を受信するための出力デバイスをさらに含んでいてもよく、該測定値が許容可能な流量範囲外である場合、ユーザに、流量を修正して許容可能な流量範囲内にするように信号を出力する。
【0011】
呼気サンプリングデバイスは、呼気サンプリングポートを選択的に開閉するための弁をさらに含んでいてもよく、センサモジュールは、呼気の瞬間二酸化炭素レベルを検出するための二酸化炭素(CO2)センサを含んでいてもよく、センサモジュールは該瞬間二酸化炭素レベルから呼吸位相を判定し、呼気サンプリングデバイスによりサンプリングされることが所望される呼吸位相(所望される呼吸位相)に応じて弁を作動させる。
【0012】
センサモジュールは、呼気の呼気流量を感知するための流量計を含んでいてもよく、呼気サンプリングデバイスは、流量計から流量の測定値を受信するための出力デバイスをさらに含んでいてもよく、該測定値が許容可能な流量範囲外にある場合、ユーザに、流量を修正してそれを許容可能な流量範囲内にするように信号を出力する。センサモジュールは、流量が許容可能な流量範囲内である場合のみ、弁を作動させることができる。
【0013】
呼気サンプリングデバイスは、吸気用に清浄空気をユーザに送達するために、バッファ管に接続されている清浄空気供給部を含み得る。該清浄空気供給部は、第1の方向の清浄空気供給部からユーザへの清浄空気の通過を可能にし、該第1の方向の反対の第2の方向の空気流を不可能にする第1の逆止め弁を含み得る。第1の逆止め弁は作動されて、呼気中の清浄空気の送達を防止し得る。センサモジュールは、呼気の呼気流量を感知するための流量計を含んでいてもよく、センサモジュールは第1の逆止め弁を作動させて、流量が呼気の開始を示すと、清浄空気の送達を防止し、第2の逆止め弁を作動させて、吸気中の周囲空気のバッファ管内への通過を防止する。
【0014】
呼気サンプリングデバイスは、呼気が第1の方向にセンサモジュールを通って遠位に流動することを可能にし、該第1の方向の反対の第2の方向に第2の逆止め弁を通る空気流を不可能にする、センサモジュールの近位にバッファ管内に配設されている第2の逆止め弁をさらに含んでいてもよい。該第2の逆止め弁は、清浄空気供給部の遠位に配置されて、清浄空気の吸気中に第2の逆止め弁を通る空気の通過を防止し得る。
【0015】
バッファ管の近位端は、ユーザが通してバッファ管内へ息を吐くマウスピースに係合するようになされていてもよい。該マウスピースは、テフロン(登録商標)、ガラス、および塩で処理された材料のうちの少なくとも1つを含む材料から形成され得る。
【0016】
呼気サンプリングデバイスは、呼気中の1つまたは複数の揮発性有機化合物(VOC)の存在を検出するのに利用可能であってもよく、バッファ管は、VOCに対して不活性な材料から形成されている除去可能な内管を含み得る。バッファ管は、テフロン(登録商標)、ガラス、および塩で処理された材料のうちの少なくとも1つを含む材料から形成され得る。
【0017】
サンプリングポートは、呼気収集容器および分析機器の少なくとも1つに取付け可能であり得る。該サンプリングポートは、代わりに、呼気収集容器または分析機器などの外部デバイスに接続するために固定接続を形成し得る。呼気サンプリングデバイスは、該固定接続と外部デバイスとの間で相互作用するためのアダプタをさらに含み得る。
【0018】
本文脈では、「実質的にセンサモジュールに接触することなく」という語句は、センサモジュールにより放出され、かつ呼気サンプリングポートを通して逸らされている呼気の部分内に引き込まれるかまたは別の方法で捕捉される任意のVOCが、呼気の当該部分で実施される分析の結果を混乱させる不十分な量であることを意味する。
【0019】
いくつかの実施形態では、バッファ管は、サンプリングされているVOCに対して不活性な材料から形成されている除去可能な内管を含む。本明細書に不活性であるとして記載されている内管、または任意の他の特徴が、全物質に対して不活性であるという訳ではない。
【0020】
ここで、本発明の実施形態が、図面を参照して、非限定的例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本教示による呼気サンプリングデバイスの概略図である。
【
図2】オンライン呼気サンプリングのための、本教示による呼気サンプリング(すなわち収集)デバイスの別の実施形態の概略図である。
【
図3】オフライン呼気サンプリングのための、本教示による呼気サンプリングデバイスの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載されている呼気サンプリングデバイスが、呼気収集デバイスとしても知られている。本明細書において教示されている本呼気収集デバイスの実施形態が、様々な交絡的影響を回避しながら、呼気の所望の部分の収集を可能にする。
【0023】
交絡的影響
1000個超のVOCが人間の呼吸の中に検出されており、これらの大多数が外因性である。その結果、周囲環境からのVOCの関与は呼気の分析結果に交絡的影響を及ぼす可能性がある。
【0024】
VOCは呼吸器系の様々な部分からも放出される。いくつかのVOCは上気道または口腔から放出される。他のVOCは肺内の肺胞から放出される。したがって、呼気が一般に3つの位相を有すると考えられる。位相1および位相2が口腔および上気道内の死腔からの空気であり、位相3が肺内の深部からの肺胞気である。さらに、該位相はさらに分解されることが可能であり、例えば「呼気終末」息という用語は、1つの呼気の位相3の端部近くで吐き出された肺胞空気の部分を指す。
【0025】
VOCが測定可能な量中に存在することを確実にするために、識別されているVOCに対応する呼気の当該部分を捕捉するかまたはサンプリングすることが重要である。所望の位相以外の位相から呼気を捕捉することが、結果に交絡的影響を及ぼす可能性があり、例えば、誤った位相からの空気は希釈効果を有する可能性がある。
【0026】
呼気流量および過換気も、呼気中の特定のVOCの濃度および存在に影響を及ぼす。呼気サンプルを提供するように求められた場合、何人かのユーザはやはり息を止め、それは結果の精度にさらに影響を及ぼす。さらに、作り出された分析中にユーザが吹き込んだマウスピースのサイズはVOCプロフィールにさらなる変化を引き起こした。
【0027】
したがって、VOCレベル、およびVOC相対レベルは、呼吸流量の変化、呼吸停止、およびテストマウスピースの寸法により影響を受けた。
【0028】
さらなる交絡因子がサンプル収集設備からの汚染である。呼気のVOCレベルが痕跡程度であり、したがって非常に僅かと仮定すると、サンプル収集設備、詳細には流量などの呼気パラメータを測定するのに使用されるセンサ、からの非常に僅かなレベルのVOCのさらなる寄与が、分析の結果に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
本呼気サンプリングデバイスは、上述のかつ他の交絡因子を考慮して開発された。
【0030】
呼気収集デバイス
図1では、呼気サンプリングデバイス100が、
ユーザが中へ息を吐くバッファ管102と、
センサモジュール104と、
呼気サンプリングポート106と
を広く含む。
【0031】
呼気サンプリングデバイス100は、いくつかの実施形態では、呼気収集デバイスと呼ばれる可能性があり、そこでは、例えば、サンプリングポート106は呼気の収集のために使用される。どちらの場合にも、呼気サンプリングデバイス100は、呼気のサンプリングを制御して、当該呼気の特定の部分がVOCに関して分析されることを可能にするために使用される。したがって、デバイス100は、呼気中の1つまたは複数の揮発性有機化合物(VOC)の存在を検出するのに(すなわち検出において)有用である。
【0032】
息がバッファ管102内へ吐かれる。該バッファ管102は少量の呼気、例えば60ml、を保持するのに十分な容積を有する。呼気の小部分をバッファリングすることがサンプリング時間を増加させ、分析されている呼気の部分に由来する信号または測定値の質を向上させる。
【0033】
バッファ管102は任意の所望の形状であり得る。現在、バッファ管102は、様々な金属酸化物およびガラスなどの、ガラス、テフロン(登録商標)、塩で処理された材料のうちの少なくとも1つ、または非常に低いVOC放出レベルを有する任意の他の不活性材料から形成されている円筒管である。
【0034】
バッファ管102は、ユーザが中へ息を吐く近位端108と、該近位端108の反対側の遠位端110とを有する。該バッファ管102の近位端108はマウスピース112に係合するようになされている。一方、いくつかの実施形態では、ユーザはバッファ管102内へ直接息を吐く可能性があるが、本実施形態では、ユーザはマウスピース112内へ息を吐き、それによりバッファ管102内へ息を吐く。マウスピース112はバッファ管102から取外し可能であり、マウスピース112の独立した殺菌を可能にし得るか、または使い捨てマウスピースを可能にし得る。
【0035】
マウスピース112は任意の適切な材料から形成され得る。例えば、マウスピース112は、呼気と接触する他の構成要素と同様に、例えばテフロン(登録商標)、ガラス、または塩で処理された金属酸化物などの塩で処理された材料から形成され得る。
【0036】
マウスピース112は、さらに、一方向マウスピースであってもよい。例えば、マウスピース112は、マウスピース112を通して一方向に吹くことにより開かれるが、反対方向に吹いた場合に開かれることが不可能である逆止め弁を含み得る。そのような弁は、本開示に照らして、当業者により理解されるであろう。
【0037】
バッファ管102は、VOCに対して不活性な材料から形成されている除去可能な内管114を含む。そのような材料は前述されている。該内管114は任意の所望の直径を有していてもよく、本実施形態では、約15mmの直径を有する。除去可能な内管114は外スリーブ116内に受容される。該内管114は、使用中である場合にスリーブ116内でのその配向および該スリーブに沿った位置が固定されているように、既知の方法で、例えば固定されかつバッファ管102の遠位端の留め具に当接することにより、外スリーブの内面に係合し得る。
【0038】
マウスピース112および内管114は、殺菌したマウスピース112および内管114が各サンプルまたは各分析に使用され得るように、使い捨てであってもよい。
【0039】
バッファ管102の遠位端110に、センサモジュール104が存在する。本文脈では、「近位端と遠位端との間に」配設されているセンサモジュールは、遠位端110にかつ遠位端110とサンプリングポート106との間の別の場所に配置されているセンサモジュール104を含む。センサモジュール104は、呼気中の特定のVOCの存在を検出することができるセンサを含有していてもよく、本センサモジュール104は代わりにパラメータを測定して、デバイス100の適正な動作を確実にする。センサモジュール104はバッファ管102の遠位端110に配置されており、ユーザによってバッファ管102内へ吐かれた息のパラメータを測定するために使用される。
【0040】
マウスピース112および内管114と同様に、前のサンプルまたは他の源からの残留物によるサンプルの汚染の可能性を減少させるために、デバイス100は殺菌デバイス118を含む。該殺菌デバイスは、呼気サンプリングデバイスの内部領域を殺菌するために使用され、本実施形態では、センサモジュール104の一部である。該「内部領域」は、バッファ管および/またはセンサモジュールの内面である可能性があり(センサモジュールの内面はバッファ管の内面の一部である可能性がある)、呼気に暴露される他の内部構成要素である可能性がある。
【0041】
本実施形態では、殺菌デバイス118はこのようにセンサモジュール104の内部領域を殺菌して、前のサンプル後に残っているまたは不使用期間中に集まるVOCおよび他の汚染物質が、次のサンプルまたは分析が実施される前に除去されることを確実にする。呼気がこのように殺菌したマウスピース112から殺菌した内管114および殺菌したセンサモジュール104まで通過する。
【0042】
殺菌デバイス118は、現在、紫外(UV)光源を含む。センサモジュール104も開いた遠位端120を有して中空である。サンプリングされることを所望されない呼気の部分が、該開いた遠位端120を通して放出される。
【0043】
呼気サンプリングポート106は近位端108と遠位端110との間に配設されている。呼気の部分が、実質的にセンサモジュール104に接触することなく、呼気サンプリングポート106内へ逸らされることが可能である。サンプリングポート106は呼気を分析機器内へ方向付けてもよいか、または呼気収集デバイスに取付け可能であってもよい。サンプリングポート106はコネクタの雌部を含んでいてもよく、該雌部はバッファ管102で終端し、その結果、呼気収集デバイスまたは分析機器からの殺菌した雄部がサンプリングポート106の内面を覆い、それにより、デバイス100の全体に亘る呼気のための殺菌した経路を維持する。あるいは、使い捨てのまたはクリーニング可能な細菌濾過器がサンプリングポートに配置されて、その無菌状態を維持してもよい。
【0044】
近位端108とセンサモジュール104との間に呼気サンプリングポート106を備えて、マウスピース112(すなわち近位端108)に対してバッファ管102の反対側端部にセンサモジュール104を配置することにより、センサモジュール104により放出される任意のVOCがサンプリングポート106の下流に存在する。したがって、センサモジュール104から放出されるVOCは、サンプリングされることを実質的に回避する。その意味では、「実質的に回避する」は、サンプリング管内へ方向付けられる呼気の部分からVOCが完全に除外され得るか、またはVOCが分析の結果に悪影響を及ぼさない程度まで除外され得ることを意味する。したがって、センサモジュール104内でセンサから放出されるVOCに起因する上述の交絡的影響は実質的に回避される。
【0045】
以前のデバイスでは、特定の知覚装置が呼気収集デバイスの近位端に配置されている。示度数をより正確にすると考えられて、息が吐かれ始めると直ぐに測定値が取られるので、これは直感的である。しかし、上述されている通り、センサは自体でVOCを放出する可能性がある。センサモジュールからサンプル内へのVOCの引込みまたは捕捉を回避することに加えて、バッファ管の、息が中へ吐かれる端部の反対側端部にかつサンプリングポートの下流に(すなわち遠位に)センサモジュールを配置することが、センサにより行われる測定に悪影響を及ぼさないと分かっていることが有利である。
【0046】
呼気サンプリングデバイス100は出力デバイス122をさらに含む。該出力デバイス122はユーザに出力を与え、呼気手順によりユーザを導く。詳細には、出力デバイス122はユーザに、それらの呼気流量が許容可能な範囲内にあるかどうかの指示を与える。上述されている通り、該指示における呼気量およびその変化は、呼気の特定のVOCの濃度に影響を及ぼす可能性がある。したがって、呼気量を制御することがさらなる交絡的影響を除去する。
【0047】
出力デバイス122は1つもしくは複数の発光ダイオード(LED)または有機LED、メッセージもしくはインジケータが表示されるディスプレイ、触覚フィードバックシステム、あるいは任意の他の所望の出力を含み得る。
【0048】
出力デバイス122はセンサモジュール104に接続されている。該センサモジュール104は、呼気の呼気流量を感知するための流量計124を含む。出力デバイス122は流量計124から流量の測定値を受信する。上述されている通り、測定値が許容可能な流量範囲外にある場合、出力デバイス122は、ユーザに、流量を修正して許容可能な流量範囲内にするように信号を出力する。一実施形態では、出力デバイスは赤色LEDと緑色LEDとを含む。該緑色LEDは、流量が許容可能な範囲内にある場合、ONであり、流量が許容可能な範囲外にある場合、OFFである。同様に、赤色LEDは、流量が許容可能な範囲外にある場合、ONであり、流量が許容可能な範囲内にある場合、OFFである。あるいは、出力は異なる色の2つのLEDを含んでいてもよく、そのうちの1つが、流量が多過ぎることを示し、他方は流量が少な過ぎることを示す。
【0049】
デバイス100は、流量計124および/またはセンサモジュール104の他の構成要素に電力を供給するための電源(例えば電池-図示せず)をさらに含み得る。
【0050】
呼気サンプリングデバイス100は、呼気サンプリングポート106を選択的に開閉するための弁126をさらに含む。いくつかの実施形態では、弁が必要ない可能性がある。しかし、本実施形態では、センサモジュール104は、呼気の瞬間二酸化炭素レベル(例えば、CO2分圧)を検出するための二酸化炭素(CO2)センサ128を含む。センサモジュール104は瞬間二酸化炭素レベルから呼吸位相を判定し、呼気サンプリングデバイス100によりサンプリングされることが所望される呼吸位相(所望の呼吸位相)に応じて弁126を作動させる。他の実施形態では、出力デバイス122は、所望の呼吸位相に達したことを示す、センサモジュール104からの出力を受信し、ユーザに信号を出力して、弁126を手動で切り替えて呼気をサンプリングポート106を通って方向付けされるようにするようにユーザに命令する。
【0051】
呼気量が許容可能な範囲外にある場合にサンプルを捕捉することを回避するために、弁126がセンサモジュール104により動作させられる場合、流量が許容可能な流量範囲内にある場合のみ、センサモジュール104は弁126を作動させることができる。同様に、弁が手動で操作される場合、所望の流量が維持されている場合のみ、出力デバイス122はユーザに弁126を動作させるように命令することができる。
【0052】
オンラインサンプリング
オンラインサンプリングが、サンプリングされると呼気のサンプルが分析されるサンプリングを指す。一般に、これは病院または医療の環境において適用されるであろう。VOCは、呼気の温度および湿度に因り、バッファ管の内面にくっつくことが分かった。
【0053】
オンラインサンプリングのための呼気サンプリングデバイス129が
図2に示されている。該呼気サンプリングデバイス129はバッファ管130を含む。該バッファ管130はバッファ管102に類似しているが、加熱ジャケット132も含む。該加熱ジャケット132は内管114を加熱し、VOCの付着を低減するかまたは防止する。これはまた、内管114への水分付着を低減するかまたは防止する。さらに、これは縦断研究のためのより一貫したサンプリング温度および湿度を実現することを補助する。したがって、加熱ジャケット132を使用することが、さらなる交絡的影響すなわち温度および湿度の変動に起因する事柄を除去する。
【0054】
さらに、上述されている通り、以前のデバイスが、ユーザが中へ息を吐く端部付近にセンサを含んでいた。バッファ管へのVOC付着を防止する加熱ジャケットに関して、加熱ジャケットは近位端108からサンプリングポート106までバッファ管に沿って延在しているべきである。さらに、加熱ジャケットはおよそ65℃から75℃まで、好ましくは70℃まで加熱されるべきである。そのような温度は、センサにより行われる測定に影響を及ぼし、したがってバッファ管の近位端付近に取り付けられているセンサに影響を及ぼす。センサモジュール104、およびしたがってセンサを遠位端110にかつサンプリングポート106の遠位に配置することにより、加熱ジャケット132からの熱がセンサ測定に影響を及ぼさない。
【0055】
図示の通り、加熱ジャケット132はバッファ管130の外スリーブを形成することができ、したがって、バッファ管102の外スリーブ116と動作上類似している。他の実施形態では、加熱ジャケット132は該外スリーブの周囲に受容され得る。
【0056】
呼気サンプリングデバイス129は環境サンプラ134をさらに含む。該環境サンプラ134は、ユーザが息を吐いたと期待され得る周囲環境中に存在するVOCを測定する。したがって、それらのVOCの存在は、分析されている呼気の部分のVOCレベルを査定する時に説明され得る。これは、環境VOCの交絡的影響を除去するのを助ける。
【0057】
環境サンプラ134は、サンプリングされている呼気の部分の分析精度を向上させるために所望される温度センサおよび湿度センサをさらに含み得る。他の実施形態では、環境サンプラは、分析機器と通信している外部デバイスであってもよい。
【0058】
特に、オンラインサンプリングデバイスでは、弁126は必要とされない可能性があり、したがって、本実施形態は弁126を除外する。代わりに、CO2センサが呼気の所望の部分に達したことを確認すると、分析機器(すなわち外部デバイス)はバッファ管130から空気を引き出す。CO2が所望の位相が終了したと判定した場合、分析機器はもはやバッファ管130から息を引き込まない。
【0059】
オフラインサンプリング
オフラインサンプリングが呼気の収集を含む。通常、呼吸バッグまたは収集容器がサンプリングポートに接続されており、呼気が該バッグまたは該容器内へ方向付けられる。バッグまたは容器は次いで封止され、分析に送られる。したがって、オフラインサンプリングデバイスは家庭内の使用に好適である。
【0060】
図3はオフライン呼気サンプリングデバイス136を示す。
【0061】
オフライン分析の主な交絡因子のうちの1つが環境VOCである。環境VOCの影響を低減するために、呼気サンプリングデバイス136は、バッファ管140に接続されている清浄空気供給部138を含む。該清浄空気供給部138は、吸気用に、ユーザに清浄空気を送達する。現在、清浄空気供給部138は清浄空気をバッファ管140内へ供給する。
【0062】
バッファ管140から清浄空気供給部138内へでなく、清浄空気供給部138からバッファ管140内への清浄空気を確実にするために、清浄空気供給部138は逆止め弁142を含む。該逆止め弁142は、本明細書において、「第1の」逆止め弁142と呼ばれる。該第1の逆止め弁142は、矢印Xで示されている第1の方向に清浄空気供給部138からユーザへの清浄空気の通過を可能にし、該第1の方向の反対の第2の方向の空気流を不可能にする。矢印Yが、呼気中の場合ならそうであろうがバッファ管140に沿った空気の通過を示し、その上、呼気は清浄空気供給部138に進入しない。
【0063】
第1の逆止め弁142は受動的であり、したがって吸気中の圧力と呼気中の圧力との間のバッファ管140内の圧力差に基づいて動作し得る。あるいは、第1の逆止め弁142は作動されて(例えば、どちらかの方向の流動を防止するように分離されて)呼気中に清浄空気の送達を防止し得る。
【0064】
非受動的実施形態では、第1の逆止め弁142は手動で動作させられ得る。
【0065】
呼気サンプリングデバイス136は第2の逆止め弁144も含む。該第2の逆止め弁144は、センサモジュール146の近位にバッファ管140内に配設されている。第2の逆止め弁144は、呼気がセンサモジュール146を通って第1の方向の反対の第2の方向に遠位に流動することを可能にし、該第1の方向の反対の第2の方向に第2の逆止め弁144を通る空気流を不可能にする。
【0066】
第2の逆止め弁144は清浄空気供給部138の遠位に配置されている。したがって、吸気中、第2の逆止め弁144の近位のバッファ管140の内容積(容積148)は清浄空気供給部138から引き出される清浄空気で溢れている。吸気中、第2の逆止め弁144は、周囲空気がセンサモジュール146を通ってバッファ管140の近位内容積148へ流入することを防止する。
【0067】
オフラインサンプリングデバイス136はまた、第1の弁150と第2の弁152とを含む(
図1の弁126も参照)。弁150、152の動作がセンサモジュール146により制御される。弁150、152が、以下、電磁弁と呼ばれるが、センサモジュール146により制御可能な任意の他の弁が使用されてもよい。センサモジュール146のCO
2センサが所望の呼吸位相に達したことを示すと、センサモジュール146は電磁弁150を閉じて、空気流がセンサモジュール146を通ることを防止し、電磁弁152を開いて、呼気の所望の部分がバッグまたは息捕捉容器などのサンプル収集デバイス内へ流入することを可能にする。所望の呼気部分に達するまで、弁150は開いており、弁152は閉じられている。いくつかの実施形態では、CO
2センサはサンプリングポートと弁152との間に配置されていてもよく、その結果、弁152は、所望の呼気部分が通過した後、再度開かれ得る。あるいは、弁152は省略されてもよく、そのような実施形態では、CO
2圧力(例えば分圧)が所望の値または範囲未満である(特定の呼気位相を示している)場合、弁152は閉じられたままであり、所望の値に達すると、弁152は開かれ、呼気が必然的にセンサモジュール146とサンプリングポートの両方を通って流動し、CO
2レベルがもはや存在せず(すなわち所望の呼気位相が終わり)、弁152は閉じられる。
【0068】
オフラインデバイス136は、
図2の環境サンプラ134に類似した環境サンプラをさらに含み得る。
【0069】
当然のことながら、記載されている実施形態の様々な態様の多くのさらなる修正および変更が可能である。したがって、記載されている態様は、任意の添付の請求項の精神および範囲内に入る全てのそのような部分的変更形態、修正形態、および変形形態を包含することが意図されている。
【0070】
本明細書および後続する任意の請求項を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「comprise(含む)」という語、ならびに「comprises(含む)」および「comprising(含む)」などの変化形は、述べられた整数もしくはステップ、または一群の整数もしくはステップの包含を意味し、任意の他の整数もしくはステップ、または一群の整数もしくはステップの除外を意味しない、ということが理解されるであろう。
【0071】
本明細書における、任意の先行文献(もしくはそれに由来する情報)へのまたは既知の任意の事柄への参照は、当該先行文献(もしくはそれに由来する情報)または既知の事柄が、本明細書が関連する技術分野における共通の一般知識の一部を成すことの承認または了解または何らかの示唆とは見なされず、見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 (呼気の)位相
100 呼気サンプリングデバイス
102、130、140 バッファ管
104、146 センサモジュール
106 呼気サンプリングポート
108 (バッファ管102の)近位端
110 (バッファ管102の)遠位端
112 マウスピース
114 (バッファ管102の)内管
116 外スリーブ
118 殺菌デバイス
120 (センサモジュール104の)遠位端
122 出力デバイス
124 流量計
126 弁
128 二酸化炭素(CO2)センサ
129 呼気サンプリングデバイス、オンラインサンプリングのための呼気サンプリングデバイス
132 加熱ジャケット
134 環境サンプラ
136 呼気サンプリングデバイス、オフラインサンプリングデバイス
138 清浄空気供給部
142 逆止め弁、第1の逆止め弁
144 第2の逆止め
148 容積、近位内容積
150 第1の弁、電磁弁
152 第2の弁、電磁弁
X、Y 矢印
【国際調査報告】