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特表2022-539108熱生産的な地層を獲得するための動作プロトコル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】熱生産的な地層を獲得するための動作プロトコル
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/20 20180101AFI20220831BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F24T10/20
E21B43/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577078
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 CA2020000082
(87)【国際公開番号】W WO2020257917
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,313
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/965,833
(32)【優先日】2020-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/012,952
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518327729
【氏名又は名称】エバー・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・テーブス
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】デレク・リドル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ケアンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・レッドファーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・カーティス-スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アンドリューズ
(57)【要約】
熱生産的な地層からエネルギーを回収するための動作プロトコル順序が開示されている。坑井地層のための所定の順序における封止、掘削、マルチレンジ、発電及び分配技術は、熱勾配変動、地層深さ及び透過率ならびに他の異常またはインピーダンスにかかわらずエネルギーを回収するために利用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の利用可能な潜在的熱容量を有する地層からエネルギー回収するための方法であって、
掘削及び封止の所定の順序で破壊機構を使用して前記地層に掘削し、前記掘削孔と前記地層との間に実質的に不透過性の界面を有する主掘削孔を前記地層内に形成するステップと、
少なくとも前記主掘削孔からの電磁式誘導によって後続の掘削孔を掘削するステップと、
掘削された後続の掘削孔からの累積信号及び個々の信号の少なくとも1つを選択的に利用して、前記地層内に所定パターンの掘削孔を形成する際に掘削を案内するステップと、
入口坑井及び出口坑井を介して前記地層の熱領域内の閉ループ構成内の所定パターンの前記掘削孔をエネルギー回収デバイスに連結して、前記坑井と前記デバイスとの間の閉ループ内の前記ループ構成からエネルギーを回収するステップであって、前記閉ループ構成が前記地層の前記利用可能な潜在的熱容量内の所定のエネルギー出力を有する、ステップと、
所定の滞留時間を有する所定の組成を有する流体組成物を前記閉ループ構成内で循環させて、エネルギー充填流体を形成するステップと、
前記充填された作動流体と前記エネルギー回収デバイスとの間の相互作用を介してエンドユーザにオンデマンドでエネルギーを発生させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記順序付け掘削動作は、前記界面を形成するために、存在する場合、既存の亀裂、割目、ひびまたは他の地質学的異常、及び、掘削の結果として形成された亀裂、割目、ひびまたは他の地質学的異常を封止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも50℃の地層温度で前記方法を実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
400℃を超える地層温度で前記方法を実施する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
掘削動作中に少なくとも1つのパラメータを選択的に修正するステップをさらに含み、
前記パラメータが、
i)掘削穿孔率;
ii)活性冷却剤を用いた掘削面事前調整;
iii)掘削破壊機構選択;
iv)選択された掘削孔間の電磁通信;
v)前記掘削孔の掘削方向;
vi)閉ループ構成のネットワーク化;
vii)閉ループ構成の近接度;
viii)循環流体組成物、流れ方向、滞留時間、流量;
viv)組成的に異なる循環流体のフローサイクル;
x)循環された組成的に異なる循環流体の滞留時間;及び
xi)任意の数及び順序のi)~x)の組み合わせ、
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記掘削穿孔率パラメータが、掘削中の掘削装置の打撃力及び回転速度の変化を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
活性冷却剤を用いた前記掘削面事前調整パラメータが、相変化材料を用いた冷却を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
i)掘削前に前記相変化材料で掘削される岩石面を予備冷却するステップと、
ii)掘削中に前記相変化材料で冷却するステップと、
iii)i)及びii)の連続的に順序付けされた組み合わせと、
iv)i)及びii)の不連続的に順序付けされた組み合わせと、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記掘削破壊機構の選択が、形成された界面と前記掘削孔との間に補助材料が存在しない場合、熱的機構、機械的機構、化学的機構及び生物学的機構のうちの少なくとも1つを使用して前記掘削孔を掘削する間に前記掘削孔に不可逆的な地層損傷を誘発することによって、掘削されている掘削孔と、前記掘削孔の掘削中に流体に対して実質的に不透過性である掘削されている前記地層との間に熱伝導性界面を形成することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
選択された掘削孔パラメータ間の前記電磁通信が、
a)水平坑井と相互接続された離間した垂直掘削孔を有するU字形掘削孔を提供するステップと、
b)前記U字形坑井内に信号経路を確立するステップと、
c)前記垂直掘削孔の少なくとも1つから第2の水平坑井を掘削するステップと、
d)前記U字形坑井からの信号を感知するステップと、
e)ステップd)からの感知信号に基づいて前記第1の水平坑井に対して所定の経路に沿って前記第2の水平坑井の前記掘削を方向付けるステップと、
f)掘削された第1及び第2の坑井を有するシグナル伝達対を形成するステップと、
g)前記垂直掘削孔の少なくとも1つから第3の水平坑井を掘削するステップと、
h)前記シグナル伝達対、前記U字型坑井、及び前記第2の坑井のうちの少なくとも1つからの信号を感知するステップと、
i)ステップh)からの感知信号に基づいて、前記第1の水平坑井及び前記第2の水平坑井に対して所定の経路に沿って前記第3の水平坑井の前記掘削を方向付けるステップと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
選択された掘削孔パラメータ間の前記電磁通信が、
垂直坑井に接続された主水平孔を確立するステップと、
前記先行する水平孔からの累積及び複合センサ誘導を利用して前記主水平掘削孔の前記垂直坑井から各後続の水平孔を掘削するステップと、
を含み、
これにより、最終的に掘削された掘削孔からの軌道ドリフトが最初の掘削された水平掘削孔と比較して実質的に低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
閉ループ構成パラメータのネットワーク化が、中央位置で出口坑井を共通に接続することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
閉ループ構成パラメータのネットワーク化が、閉ループ構成の出口坑井を第2の位置で第2の閉ループ構成の入口坑井と接続することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記閉ループ構成パラメータの近接度が、垂直に積層された閉ループ構成、交互嵌合した閉ループ構成及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記掘削動作が、
相変化材料による掘削を伴う地層内の孔空間を封止しながら順番に掘削し、その後前記孔空間を封止するステップと、
前記相変化材料が存在しない場合の前記穿孔率に対して前記地層の掘削中の前記穿孔率を増加させるために、前記相変化材料を用いて前記地層内に掘削されている岩石面を冷却するステップと、
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
既存のまたは掘削の結果として生じた前記地層の亀裂、ひび及び空隙を封止するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
孔空間を封止する動作をしながら順番に掘削する前記ステップが、掘削流体中のアルカリケイ酸塩組成物を利用する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
順序付けが、交互の順番で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記孔空間の封止が、前記掘削された地層と掘削されたボアホールの周囲との間に界面を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記界面との沈殿物形成を誘発して、前記界面の封止能力及び機械的完全性を高めることができる化学組成物を前記ボアホール内で循環させるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ボアホール内の前記作動流体の循環中に不透過性を維持するための界面維持添加剤を含む流体を前記封止ボアホール内で循環させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記地層への掘削が、入口坑井、出口坑井及び相互接続坑井を掘削して補助デバイスとの閉ループを形成することを含み、少なくとも前記相互接続坑井が前記地層の発熱領域内に配置される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
地層岩石の多孔度、地層岩石の種類、地層温度、掘削深さ、テクトニクス、前記地層の欠陥、地質学的異常及び前記方法の実施中に遭遇するそれぞれのまたはグループの少なくとも一部としての変動に基づいて修正を選択することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項24】
利用可能な潜在的熱容量を回復するための複数の閉ループ構成を形成するステップをさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の閉ループ構成を所定のパターンで連結するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
閉ループ構成の別個の所定パターンを連結するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
近接する閉ループ構成及びそれらの組み合わせと熱的に接触するネスト状グループ内の、局所的ネットワーク、分散ネットワーク、のうちの少なくとも一方における閉ループ構成の別個の所定パターンを連結するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
閉ループ構成の別個の所定パターンを、一方の閉ループ構成の入口坑井によって近接する閉ループ構成の出口坑井と連結するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記流体を前記閉ループ構成ループ内で所定の滞留時間で循環させて、前記地層からの伝導を通じて循環流体に熱負荷をかけるステップと、
ユーザのエネルギー需要に基づいて前記ループ内の熱負荷流体の前記流量を適合させるステップと、
をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記地層において隣接する閉ループ構成からのエネルギー充填流体を前記流体に補充するステップをさらに含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記閉ループ構成が、入口坑井、出口坑井及び流体連通のためのそれらの間の相互接続セクションを含み、
前記相互接続セクションが、ケーシングされ、ケーシングされず、ライニングされ、化学的に処理され、化学的に封止され、熱的に封止され、連続的または不連続的な構成において、単一のパイプ、同軸パイプ及びそれらの組み合わせを含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
送達されるエネルギー出力平均を所定の時間枠にわたって前記利用可能な潜在的熱容量に等しく維持しながら、前記所定のエネルギー出力を一時的に超える発電装置内の前記流体の熱排出を介してエンドユーザへのオンデマンドでのエネルギー送達を容易にするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
一時的な持続時間にわたるエネルギー送達が、前記所定の時間枠全体に対してユーザ要求が高い時間枠である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
既存の網上の電力分配を最適化するための方法であって、
前記既存の網上に、設計された最大発電量及び第2の有効発電量を有する間欠的発電構成を設けるステップと、
前記間欠的発電構成に隣接する熱を持つ地層内にエネルギー回収・生成閉ループを配置するステップであって、前記ループが、入口坑井、出口坑井、前記入口坑井と前記出口坑井との間の相互接続セクションを含み、前記相互接続セクションが、前記地層における熱回収を容易にするために前記地層に配置され、前記地層が、利用可能な潜在的熱容量を有し、前記閉ループが、請求項1に記載の方法に従って形成される、ステップと、
前記利用可能な潜在的熱容量から所定のエネルギー出力を生成するために、前記地層内の構成に前記閉ループを配置するステップと、
所定の滞留時間で前記ループ内で作動流体を循環させて、前記地層からの伝導を通じて循環する作動流体を熱的に充填するステップと、
前記第2の有効発電量を上回り、前記設計された最大発電量を下回る量まで発電量を増加させるために、前記間欠的発電構成を介して前記作動流体を選択的に熱的に排出するステップであって、それにより、前記既存の網を使用して全体的な発電量が最適化される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
熱エネルギーを回収するために作動流体を利用する熱生産的な地層内のエネルギー回収・生成閉ループシステムと、
既存の網上の設計された最大発電量及び第2の有効発電量を有する間欠的発電構成と、
前記閉ループシステムに動作可能に接続された回収された熱エネルギーを処理するためのエネルギー処理デバイスと、
前記間欠的発電構成を介して前記作動流体を選択的に熱的に排出して、前記第2の有効発電量を上回り、前記設計された最大発電量を下回る量まで発電量を増加させるための分配制御システムであって、それによって、前記既存の網を使用して全体的な発電量が最適化される、分配制御システムと、
を備える、環境発電基地。
【請求項36】
前記閉ループシステムが、同じ場所に配置された入口坑井、同じ場所に配置された出口坑井、共通入口坑井、共通出口坑井、それぞれの閉ループの出口坑井及び入口坑井に共通に接続された複数の横方向相互接続坑井、垂直に積層された閉ループ、第1の閉ループの出口坑井が第2の閉ループの入口坑井に接続された閉ループ、隣接する閉ループシステムの互いに噛み合う複数の横方向相互接続坑井、ならびに、それらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つを有する複数の閉ループを含む、請求項35に記載の環境発電基地。
【請求項37】
前記間欠的発電構成が、太陽エネルギー回収構成、風力エネルギー回収構成、電池エネルギー構成及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項35または36に記載の環境発電基地。
【請求項38】
熱エネルギーを回収するために作動流体を利用する熱生産的な地層内のエネルギー回収・生成閉ループシステムであって、前記地層が、利用可能な潜在的熱容量を有する、エネルギー回収・生成閉ループシステムと、
既存の電気網と、
前記閉ループシステムに動作可能に接続された回収された熱エネルギーを処理するためのエネルギー処理デバイスと、
前記エネルギー処理デバイスを介して前記作動流体を選択的に熱的に排出するための分配制御システムと、
送達されるエネルギー出力平均を所定の時間枠にわたって前記利用可能な潜在的熱容量に等しく維持しながら、前記地層の所定のエネルギー出力を一時的に超えるエンドユーザへの前記エネルギー処理デバイス内の前記流体の熱排出を介してオンデマンドでのエネルギー送達を容易にするための送達システムと、
を備える、環境発電基地。
【請求項39】
前記分配制御システム及び前記送達システムの少なくとも1つが、複数のエネルギー回収・生成閉ループシステムに動作可能に接続される、請求項38に記載の環境発電基地。
【請求項40】
基地間で送達可能なエネルギーを再方向付けするために複数の別個の環境発電基地に動作可能に接続された中央伝送ハブをさらに含む、請求項39に記載の環境発電基地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱生産的な地層からエネルギーを回収するための動作順序に関し、より詳細には、本発明は、熱勾配変動、地層深さ及び透過率、ならびに他の異常またはインピーダンスにかかわらずエネルギーを回収するために所定の順序で新規の技術を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
熱生産的な地層から熱エネルギーを獲得または回収することを対象とする技術の分野では、考慮を必要とする要因がある。熱生産地域では、地質パラメータは、回復の可能性において重要な役割を果たす。地層は、高温地層であってもよく、不規則/不連続/一貫性のない温度勾配、様々な多孔度を有する複数の岩石の種類、他の多くの地質学的異常の中の未固結砂帯を有してもよい。これらの要因の各々は、リカバリの複雑さを軽減するためにユニット動作または一連のユニット動作を必要とする。
【0003】
回収が地熱エネルギー回収と組み合わされ、その後に熱または電気に変換される場合、対処を必要とするさらなる問題が生じる。配置及び機械的組成、ならびにマルチラテラル方向性掘削に関する掘削孔構成は、熱回収の効率に関連する最先端の工学的問題となる。
【0004】
従来技術では、これらの要因のいくつかに対処するために多くの技術が公表されている。
【0005】
1996年5月14日に発行された特許文献1において、Shulmanは、より高温での様々な岩石の種類における閉ループ熱エネルギー回収構成を教示しており、そのうちの1つは、Shulmanの開示において区別される固体岩石である。
「本発明は、地下の高温岩における熱エネルギーが抽出され、すなわち採掘され、利用のために表面にもたらされる閉パイプループシステムにおける液体循環を用いる新規の方法及び装置に関する。当該高温岩は、固体であってもよく、亀裂が入っていてもよく、または割れていてもよく、乾燥していてもよく、または湿っていてもよいが、可動流体を本質的に含まなくてもよい。本発明により、熱エネルギーは、高温岩から、表面のマニホールドから高温岩に降下し、次いで、加熱された流体が表面に戻る上昇管の底部と一緒に接合する複数の離れて分離された熱伝導パイプループのうちの1以上を流れる比較的冷たい液体に伝達される。」
【0006】
掘削孔構成は、熱回収導管の複雑なパターンまたは配置では詳細に説明されていない。この構成は、地層から熱回収するための構成を通る流体輸送のための掘削孔構成の配管に依存している。
【0007】
2001年6月19日に発行されたMoeの特許文献2は、地熱地域内に複数の吸熱孔を含む掘削孔構成を開示している。本開示は、ケーシングまたはライナに関して記載していない。しかしながら、割目ゾーンの利用、吸熱孔の角度配置が互いに平行であること、及び、さらなる制限に限定される。本教示は、具体的には、次のように述べる。
「傾斜角の大きさは、いくつかの要因、例えば、岩石内の温度勾配、吸熱孔の長さ及び水流量に依存する。角度の計算は、十分に当業者の能力の範囲内であるため、ここでは詳述しない。角度は、通常、20°~50°の間にあり、好ましくは約40°である。
さらに、所与の体積の岩石からの熱の抽出を最大にするために、吸熱孔の少なくともかなりの部分が互いに平行に延びる。より好ましくは、吸熱孔は、一の層に、または必要に応じて複数の垂直に離間した層に配置される。各層が複数の吸熱孔を有する垂直に離間した層のアレイを設けることにより、孔を広範囲に広げることなくプラントの容量を増加させることができる。これは、開発に利用可能な地球の体積が大きくない場合、かなり重要である。
供給孔3及び帰還孔4は、各々が10cmの直径を有し、約2000mの長さを有する4つの吸熱孔5によって相互接続されている。これらの孔5間の間隔は、100m~150mであってもよい。それらは、供給孔3から出発し、戻り孔4またはその近くで終端するように掘削されている。吸熱孔5を掘削するときに戻り孔4に直接衝突することは困難であるため、孔4、5間の流れ連通を提供するために、この領域に割目ゾーン6が確立されている。」
【0008】
本教示はまた、強調されるように、入口と出口との接続に関する困難性を教示する。
欠点として、Moeの構成は、その異常にかかわらず、勾配への無制限のアクセスに関する十分な教示を提供しないため、本開示は特定のシナリオに限定される。
【0009】
Brownは、2003年12月30日に発行された特許文献3において、高温乾燥岩に割目ゾーンを形成するための割目プロセスを教示している。超臨界CO2は、地熱層から吸収されたエネルギーを運ぶための作動流体として使用される。流体連通は、作動流体が地層から隔離される、入口坑井と出口坑井との間に流体連通する相互接続セグメントが存在する閉ループ内にはない。Brownの構成では、地層自体が入口及び出口坑井と無差別に連通する。これは、Brownが以下を教示しているという事実によってさらに証明される。
「最後に、高温乾燥岩循環システムは、2つ以上の生産坑井を掘削して、割れた高温乾燥岩貯留層の形状を画定する微小地震事象位置の「雲」によって画定されるような細長い貯留領域の各端部付近の貯留層と交差することによって完成する。すべての坑井は、ケーシングを表面に適切に完成させ、次いで、やはり気体二酸化炭素を使用して、掘削流体及び他の水性材料をパージする。」
【0010】
この通路から、ケーシングの使用は、坑井の交差として識別されるが、閉ループのように互いにではなく、むしろ地層内の人工貯留層との交差として識別される。
【0011】
地質学的熱/発電技術に目を向けると、この分野は十分に文書化されている。初期の例の1つは、2012年7月12日に公開されたVaughanらの特許文献4に見出される。
【0012】
他の例としては、2004年4月21日に公開されたMickelsonの特許文献5、2009年8月26日に公開されたMcHargueの特許文献6、及び2012年10月9日に発行されたLakicの特許文献7が挙げられる。
【0013】
2019年4月16日に発行されたSonjuの特許文献8は、地熱プラントを開示している。同心円状の入口/出口坑井構成に対して特定の配置にある構成の製造セクションの特定の要件に関する教示が特許にある。本開示は、掘削中または掘削後の掘削孔の調整、または制限なしに熱生産ゾーンを利用するためにセグメントを相互接続するための可能な方向に関する示唆を提供しない。
【0014】
Muirらは、2020年1月7日に発行された特許文献9において、坑井ケーシングから流体に熱を伝達するための閉ループ熱回収構成を教示している。
本文は、以下を示している。
「本明細書に開示される実施形態は、閉ループ設計を使用して、非浸透性地質資源から動力を生成するための方法及び装置に関し、流体は閉ループ坑井内の地層から完全に隔離され、熱は坑井ケーシングを通って流体に伝達される。」
「上記の背景技術のセクションで説明したように、典型的な水熱システム、ならびに閉ループシステムは、自然にまたは刺激によって割目または多孔性が発生する浸透性地質資源から熱を抽出することに焦点を当ててきた。対照的に、本明細書に開示される実施形態は、塑性ゾーン内の岩石などの低浸透性岩石から効率的かつ効果的に熱を抽出することができる。より高温の低浸透性岩石を含む地層は、流体と岩石との間の直接接触なしに流体を資源に通過させることによって有利に使用され、それによって熱が岩石から坑井ケーシングを通って流体に直接伝達される。」
「次いで、決定された温度プロファイル及び地下層の決定された熱補充プロファイルに基づいて、閉ループ地熱交換システムを地下層内に配置することができる。閉ループ地熱交換システムの設置は、当業者に知られているように、掘削、ケーシング、穿孔、セメンチング、割れを有する未被覆坑井壁の拡張、未被覆坑井壁の封止、及び掘削プロセスに関連する他のステップ、ならびに坑井ループの設置を含むことができる。設置することは、いくつかの実施形態では、地層の塑性ゾーンまたは脆性延性遷移ゾーン内に閉ループ坑井システムの熱交換ゾーンを配置することを含むことができる。いくつかの実施形態では、設置することは、地層の脆いゾーン内に閉ループ坑井システムの熱交換ゾーンを配置すること、ならびに熱交換ゾーンに近接する脆いゾーンを刺激することを含むことができる、または、追加的に含むことができる。
【0015】
本文は封止に関する一般的な教示を提供するが、掘削孔構成の熱回収セクションのケーシングを含む。本文は、以下を示している。
「いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の地熱エネルギーを生成する方法は、金属パイプで被覆されていない坑井の部分を含むことができるが、代わりに、そのような部分の壁は、硬化シーラントで封止された地層岩であってもよく、そのような部分の坑井壁は、いくつかの実施形態では、そのような部分の坑井の直径をそのような坑井の金属被覆部分よりも大きくし、場合によってははるかに大きくするそのような硬化シーラントの境界によって画定される。」
【0016】
参考文献は、上記のShulmanの教示を反映しており、坑井の交差、ケーシング及び/もしくはライナの欠如、または任意の熱勾配パターンに対応するための掘削孔構成の熱回収セグメントの配置の幾何学的変動に関する示唆を提供していない。
【0017】
掘削孔構成及び掘削に関して、マルチラテラルな地層に関連するマルチラテラル掘削及び軌道の問題に関する多数の参考文献が提示されている。第1の例として、2009年10月15日に公開されたClarkらの特許文献10は、マルチラテラル接合部が設置された母掘削孔を掘削及びケーシングすることによってマルチラテラル坑井を掘削する方法を教示している。マルチラテラル接合部からの第1の横方向坑井が掘削され、ケーシングされる。続いて、第2の横方向坑井が第1の横方向坑井に対して制御された関係を有するように、掘削しながら磁気測距を使用して第2の横方向坑井がマルチラテラル接合部から掘削される。この方法論は石油産業に焦点を当てており、したがって多数の横方向坑井に関してさらなる詳細を描写していない。軌道偏差は具体的に対処されていない。
【0018】
2018年11月1日に公開されたDondericiらの特許文献11の地層モデルを較正するために、第1の坑井からの電磁測定値及びサーベイ測定値を利用する効果的なシステムを教示する。次いで、これを使用して、第2の坑井からの測定値の解釈を改善する。本方法は、相対的なアプローチを使用するように示されている。したがって、各掘削孔の正確な位置が正確に特定されない場合でも、それらの相対位置を正確に特定することができる。これは、坑井対のより良好な位置決めをもたらす。
【0019】
2016年9月22日に公開されたDondericiらの特許文献12において、磁気測距及びジオステアリングのための方法及びシステムを開示している。本開示では、それは段落[0019]に示されている。
「本明細書に記載されるように、本開示は、1つの掘削孔を別の掘削孔に導くために磁気双極子ビーコンを利用する例示的な測距方法及びシステムを記載する。一般化された実施形態では、ビーコンは、第1の掘削孔から地層内に低周波磁場を誘導し、次いで、第2の掘削孔の1以上の双極子(1以上の受信機として機能する)によって感知される。ビーコン及び/または受信双極子は磁気双極子であり、特定の実施形態では、一方または両方が3軸磁気双極子であってもよい。それにもかかわらず、いずれの実施形態でも、ビーコンから放出される磁場は、第1の掘削孔への自然な接近経路を形成する。結果として、第2の掘削孔は磁場方向と整列するように操縦することができ、これにより第1の掘削孔に向かう理想的なアプローチが自動的に確立される。」
【0020】
このシステムは、掘削中に一貫性を維持するためのデュアル坑井システムに明らかに有用である。
【0021】
さらなる発展において、Yaoらは、2017年5月4日に公開された特許文献13において、空間変換を使用した複数のダウンホールセンサデジタル位置合わせのためのシステム及び方法を提供している。この構成は、最終的に数学的変換に使用されるデータを伝達してダウンホール掘削の精度を保証する多数のセンサノードを組み込む。
【0022】
2013年11月7日に公開された特許文献14では、水平坑井の最適な間隔のためのシステム及び方法が開示されている。本方法及びシステムは、一の掘削孔を別の掘削孔に導くために磁気双極子ビーコンを使用する。一実施形態は、第1の掘削孔から地層内に低周波磁場を誘導するためのビーコンを含む。次いで、これらは第2の掘削孔内の1以上の双極子によって感知される。ビーコン及び/または受信双極子は磁気双極子であり、本開示は、いくつかの実施形態では、一方または両方が3軸磁気双極子であってもよいと述べている。ビーコンから放出される磁場は、第1の掘削孔への自然な接近経路を形成する。その結果、第2の掘削孔は磁場方向と整列するように操縦することができ、これにより第1の掘削孔に向かう好ましいアプローチが確立される。
【0023】
Rodneyは、2017年2月28日に発行された特許文献15において、ケーシングストリング内に磁気モーメントを誘起する磁気源を有するドリルストリングを有する掘削中に測距を行うシステムを教示している。磁気源は、ドリルストリングの長手方向軸に対して非直交傾斜を有する少なくとも1つの双極子を含む。誘導磁気モーメントから磁場を検出する3軸磁力計が提供され、磁気源の回転方向を示す信号を提供するセンサを有する。プロセッサは、センサ及び3軸磁力計による測定値からケーシングストリングの相対的な距離及び方向を決定する。
【0024】
累積的に、従来技術は、生産的な地層から熱エネルギーを回収するときに遭遇する特定の問題に対して個別化された提案を提示している。動的適応性を有する熱回収の獲得に関連するすべての問題に結束して対処する動作プロトコルが依然として必要とされている。最も望ましい解決策は、とりわけ、一貫性のない岩石の種類、透過性、勾配及び/または複数の地理的に広がった勾配内の不連続性を伴う様々な温度勾配、高温、かなりの深さを有する複雑な地層での適応的熱回収を可能にするものである。
【0025】
本発明のプロトコルは、生産的な地層から熱エネルギーを効率的に獲得するために可変の地層条件を適応的に制御及び利用するための新規な動作で包含され、配電の態様も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第5,515,679号明細書
【特許文献2】米国特許第6,247,313号明細書
【特許文献3】米国特許第6,668,554号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20120174581号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007024572号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第201100480号明細書
【特許文献7】米国特許第8,281,591号明細書
【特許文献8】米国特許第10,260,778号明細書
【特許文献9】米国特許第10,527,026号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2009/0255661号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2018/0313203号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2016/0273345号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2017/0122099号明細書
【特許文献14】国際公開第2013/165437号
【特許文献15】米国特許第9,581,718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の一実施形態の一の目的は、困難な地層特性によって制限されることなく、熱生産的な地層から回収可能なエネルギーを獲得するための適応プロトコルを提供することである。
【0028】
本発明の一実施形態の別の目的は、所定の利用可能な潜在的熱容量を有する地層からのエネルギー回収のための方法を提供することであり、この方法は、
掘削孔と地層との間に実質的に不透過性の界面を有する主掘削孔をその中に形成するために、掘削及び封止の所定の順序で破壊機構を使用して地層に掘削するステップと、
少なくとも主掘削孔からの電磁式誘導によって後続の掘削孔を掘削するステップと、
掘削された後続の掘削孔からの累積信号及び個々の信号の少なくとも1つを選択的に利用して、地層内に所定パターンの掘削孔を形成する際に掘削を案内するステップと、
入口坑井及び出口坑井を介して地層の熱領域内の閉ループ構成内の所定パターンの掘削孔をエネルギー回収デバイスに連結して、坑井とデバイスとの間の閉ループ内のループ構成からエネルギーを回収するステップであって、閉ループ構成は地層の利用可能な潜在的熱容量内の所定のエネルギー出力を有する、ステップと、
所定の滞留時間を有する所定の組成を有する流体組成物を閉ループ構成内で循環させて、エネルギー充填流体を形成するステップと、
充填された作動流体とエネルギー回収デバイスとの間の相互作用を介してエンドユーザにオンデマンドでエネルギーを発生させるステップと、
を含む。
【0029】
好都合には、順序付けされた掘削動作は、界面を形成するために、存在する場合、既存の亀裂、割れ、ひびまたは他の地質学的異常、及び掘削の結果として形成された亀裂、割れ、ひびまたは他の地質学的異常を封止する。
【0030】
この方法は、少なくとも50℃~400℃を超える地層温度での地層において有効性を有する。
【0031】
プロトコルの適応性と一致して、特定の単位動作は、掘削動作中に選択的に変更され得る。これらは、i)掘削穿孔率;ii)活性冷却剤を用いた掘削面事前調整;iii)掘削破壊機構選択;iv)選択された掘削孔間の電磁通信;v)当該掘削孔の掘削方向;vi)閉ループ構成のネットワーク化;vii)閉ループ構成の近接度;viii)循環流体組成物、流れ方向、滞留時間、流量;viv)組成的に異なる循環流体のフローサイクル;x)循環された組成的に異なる循環流体の滞留時間;ならびにxi)任意の数及び順序のi)~x)の組み合わせ、を含む。
【0032】
所与の地層内の特定の領域が任意の数の不規則性を呈することができるという事実に照らして、本方法は、地層岩石の多孔度、地層岩石の種類、地層温度、掘削深さ、テクトニクス、当該地層の欠陥、地質学的異常、及び方法の実施中に遭遇するそれぞれのまたはグループの少なくとも一部としての変動に基づいて修正を選択することができる。
【0033】
特定のシナリオにおける効率のために、利用可能な潜在的熱容量を回復するための複数の閉ループ構成を組み込むことができる。
ループは、別個の所定パターンの閉ループ構成で所定パターンに連結されてもよい。例として、閉ループ構成の別個の所定パターンを連結するステップは、近接する閉ループ構成及びそれらの組み合わせと熱的に接触するネスト化グループ内の、局所的ネットワーク、分散ネットワーク、のうちの少なくとも一方における場合がある。
【0034】
さらなる適応性のために、閉ループ構成は、近接閉ループ構成の出口坑井を有する1つの閉ループ構成の入口坑井によるものであってもよい。
【0035】
本技術の発電態様では、作動流体は、所定の滞留時間で閉ループ構成ループ内で循環されて、当該地層からの伝導によって循環流体に熱負荷をかけることができる。特定の利点として、当該ループ内の熱負荷流体の流量は、ユーザのエネルギー需要に基づいて変化させることができる。
【0036】
ユーザの要求に応じて、循環流体は、地層に配置された隣接する閉ループ構成からのエネルギー充填流体で補充されてもよい。
【0037】
本方法は、送達されるエネルギー出力平均を所定の時間枠にわたって利用可能な潜在的熱容量に等しく維持しながら、当該所定のエネルギー出力を一時的に超える発電装置内の流体の熱排出を介してエンドユーザへのオンデマンドでの送達を可能にする。
【0038】
必要に応じて、入口坑井、出口坑井及び流体連通のためのそれらの間の相互接続セクションを有する閉ループ構成は、ケーシングされ、ケーシングされず、ライニングされ、化学的に処理され、化学的に封止され、熱的に封止された相互接続セクションを有し得、連続的または不連続的な構成において、単一のパイプ、同軸パイプ及びそれらの組み合わせを含む。そのような柔軟性は、上記のように地層の課題を軽減する。
【0039】
本発明の一実施形態のさらなる目的は、既存の網上の電力分配を最適化するための方法を提供することであり、この方法は、
既存の網上に、設計された最大発電量及び第2の有効発電量を有する間欠的発電構成を設けるステップと、
間欠的発電構成に隣接する熱を持つ地層内にエネルギー回収・生成閉ループを配置するステップであって、ループが、入口坑井、出口坑井、及び、入口坑井と出口坑井との間の相互接続セクションを含み、相互接続セクションが、地層における熱回収を容易にするために地層に配置され、地層が、利用可能な潜在的熱容量を有し、閉ループが、請求項1に記載の方法に従って形成される、ステップと、
利用可能な潜在的熱容量から所定のエネルギー出力を生成するために、地層内の構成に閉ループを配置するステップと、
所定の滞留時間でループ内で作動流体を循環させて、地層からの伝導を通じて循環する作動流体を熱的に充填するステップと、
第2の有効発電量を上回り、設計された最大発電量を下回る量まで発電量を増加させるために、間欠的発電構成を介して作動流体を選択的に熱的に排出するステップであって、それにより、既存の網を使用して全体的な発電量が最適化される、ステップと、
を含む。
【0040】
本発明の一実施形態の別の目的は、環境発電基地(energy harvesting farm)を提供することであり、この環境発電基地は、
熱エネルギーを回収するために作動流体を利用する熱生産的な地層内のエネルギー回収・生成閉ループシステムと、
既存の網上の設計された最大発電量及び第2の有効発電量を有する間欠的発電構成と、
閉ループシステムに動作可能に接続された回収された熱エネルギーを処理するためのエネルギー処理デバイスと、
間欠的発電構成を介して作動流体を選択的に熱的に排出して、第2の有効発電量を上回り、設計された最大発電量を下回る量まで発電量を増加させるための分配制御システムであって、それによって、既存の網を使用して全体的な発電量が最適化される、分配制御システムと、
を備える。
【0041】
設計上の簡便さとして、閉ループシステムは、同じ場所に配置された入口坑井、同じ場所に配置された出口坑井、共通入口坑井、共通出口坑井、それぞれの閉ループの出口坑井及び入口坑井に共通に接続された複数の横方向相互接続坑井、垂直に積層された閉ループ、第1の閉ループの出口坑井が第2の閉ループの入口坑井に接続された閉ループ、隣接する閉ループシステムの互いに噛み合う複数の横方向相互接続坑井、ならびにそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有する複数の閉ループを含み得る。
【0042】
間欠的発電構成は、太陽エネルギー回収構成、風力エネルギー回収構成、電池エネルギー構成、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0043】
本発明の一実施形態のまたさらなる目的は、環境発電基地を提供することであり、この環境発電基地は、
熱エネルギーを回収するために作動流体を利用する熱生産的な地層内のエネルギー回収・生成閉ループシステムであって、地層が利用可能な潜在的熱容量を有する、エネルギー回収・生成閉ループシステムと、
既存の電気網と、
閉ループシステムに動作可能に接続された回収された熱エネルギーを処理するためのエネルギー処理デバイスと、
エネルギー処理デバイスを介して作動流体を選択的に熱的に排出するための分配制御システムと、
送達されるエネルギー出力平均を所定の時間枠にわたって利用可能な潜在的熱容量に等しく維持しながら、地層の所定のエネルギー出力を一時的に超えるエンドユーザへのエネルギー処理デバイス内の流体の熱排出を介してオンデマンドでのエネルギー送達を容易にするための送達システムと、を備える。
【0044】
分配制御システム及び送達システムの少なくとも1つは、複数のエネルギー回収・生成閉ループシステムに動作可能に接続され得る。
【0045】
最後に、基地ネットワークの場合、中央伝送ハブは、基地間で送達可能なエネルギーを再方向付けするために複数の別個の環境発電基地に動作可能に接続され得る。
【0046】
熱エネルギーを獲得するための作業プロトコルが発電所の態様と統合されると、その結果、従来の配電を必要とする追加の設置面積及びインフラストラクチャ要件なしに既存の網を使用して電気ユーザの需要に対応するように完全にスケーラブルな効率的な熱回収技術パッケージが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】様々な流体配合物についての時間の平方根の関数としての濾液体積のグラフ表示である。
図2】実施例1で描写された化学封止コアフラッド試験の時間の関数としての差圧及び透過率データのグラフ表示である。
図3】入口坑井と出口坑井との間の横断面における、ケーシングなしで封止された坑井の概略断面図である。
図4】ケーシングストリング部分の横断面及びシーラントとの関係を示す図3と同様の図である。
図5】亀裂を伴う無視できる透過性地層における封止掘削孔構成を示す図4と同様の図である。
図6】横方向相互接続坑井セグメントの多数構成の概略図である。
図7図6で参照される封止されたマルチラテラル掘削孔セクションの拡大概略図である。
図8】代替の地熱坑井構成の概略図である。
図9】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図10】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図11】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図12】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図13図12の上面図である。
図14】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図15】地熱坑井構成の別の代替実施形態の概略図である。
図16】未反応シーラントの蓄えを示す、高浸透率地層内の掘削された掘削孔の断面図である。
図17】作動流体との循環接触後の掘削孔界面の変形を示す図16と同様の図である。
図18】低浸透率地層の掘削された掘削孔及び周囲地層との界面の概略断面図である。
図19】地熱掘削孔方法論の電力サイクル実施態様の概略図である。
図20図19の代替実施形態の概略図である。
図21図19の代替実施形態の概略図である。
図22】地熱作動流体によって直接駆動されるタービン及び発電機を組み込んだ集積地熱回路の概略図である。
図23図22の代替の実施形態の概略図である。
図24】異なる作動流体の距離に対する温度データのグラフ表示である。
図25】W字形または数珠繋ぎ型の地熱坑井構成の概略図である。
図25A図25の相互接続坑井地層の拡大図である。
図26図25の代替の実施形態の概略図である。
図27図25の代替の実施形態の概略図である。
図28図25の代替の実施形態の概略図である。
図29】典型的な掘削動作、流体の流れ、及び熱伝達を示す図である。
図30】坑井の長さに沿った、本明細書に開示される水及びPCMベースの掘削流体のシステム温度のグラフ表示である。
図31】わずかな破壊前の事前調整のための機械的強度を弱めるための岩石面の冷却の効果のグラフ表示である。
図32】臨界流量の上下の異なる流量に対する、坑井の長さに沿ったPCM(液体または固体)の相状態を示すグラフ表示である。
図33】圧力によって制御される管及び環状部の融解温度範囲のグラフ表示である。
図34】冷却性能に対するBHAΔPの効果を示すグラフ表示である。
図35】本方法の一般的なステップを示す流れ図である。
図36】一実施形態によるマルチラテラル坑井構成の概略図である。
図37図36の上面図である。
図38】さらなる実施形態による坑井構成の変形例である。
図39】さらなる実施形態による坑井構成の別の変形例である。
図40】マルチラテラル構成の坑井配置のさらなる変形例である。
図41】マルチラテラル構成の坑井配置の別の変形例である。
図42】マルチラテラル構成の坑井配置のまたさらなる変形例である。
図43】著しく減少した表面設置面積を有するマルチラテラル坑井を有する本発明の別の実施形態である。
図44】地熱の実施形態に適用可能な閉ループシステムの概略図である。
図45】熱を持つ地層に配置されたエネルギー回収構成の概略図である。
図46A】回収構成で使用するための代替的な相互接続セクションまたはマルチラテラルセクションの概略図である。
図46B】回収構成で使用するための代替的な相互接続セクションまたはマルチラテラルセクションの概略図である。
図46C】回収構成で使用するための代替的な相互接続セクションまたはマルチラテラルセクションの概略図である。
図46D】回収構成で使用するための代替的な相互接続セクションまたはマルチラテラルセクションの概略図である。
図47】回復構成の代替例である。
図48】方法論を使用して生成された熱力学データの図である。
図49図48のデータの詳細なバージョンである。
図50】本発明のさらなる実施形態の概略図である。
図51】本発明の別の実施形態の概略図である。
図52】本発明のさらなる実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
予備的概要として、本明細書の技術は、掘削孔地層のための動作プロトコル及び熱生産的な地層から熱エネルギーを回収するための設計に関する。例は、閉ループ地熱掘削孔について描写されている。マルチレンジ誘導技術を用いた掘削プロトコルは、プロトコルに統合され、電力送達プロトコル及びシステムと統合される。
最初の議論は、効率的な掘削孔構成を形成するための掘削/封止プロトコルに向けられる。
【0049】
全体的なステップは、
i)掘削しながら掘削孔を封止し、相変化材料で掘削し、続いてある順序で封止するステップと、
ii)掘削後に化学処理によって封止を増強するステップと、
iii)掘削流体を移動させ、循環する作動流体で掘削した後、残っているまたは生成された透過性を自己回復させて封止を増強及び維持し、掘削孔の完全性を維持するステップと、
を含む。
【0050】
アプローチの柔軟性は、地層の特定の地質に応じて、これらの態様のそれぞれを別々に使用することを可能にするが、閉ループ地熱システムを作成し維持するために統合され協調して動作する場合に最も効果的である。
【0051】
掘削孔は、入口/出口を有する単一のU字管;入口及び出口坑井が同じ面リース上に位置するU字管;掘削孔が垂直、偏位したまたは水平であり得、これらの掘削孔のいくつかを共に「数珠繋ぎ」することを含む「配管接続」構成、L字形など、任意の数の構成とすることができる。これらは例であり、限定することを意図するものではない。他の好適な構成は、当業者には理解されるであろう。
【0052】
上記の態様は、複数のラテラルが垂直坑井に、典型的には垂直ケース入口坑井と垂直ケース出口坑井とを接続する複数の水平ラテラルを備えたU字管構成で接続されているマルチラテラル掘削孔を形成するために使用される場合に特に効果的である。マルチラテラル構成で使用される場合、当技術分野では認識されていないいくつかの利点が実現される。これらには、以下が含まれる。
i)ラテラルは、ケーシングの設置に関連する費用及び時間を回避して、開孔を開始、掘削、及び完成させることができる。
ii)「開孔」接合部は、単一のステップで掘削しながら形成及び封止することができる。これにより、複雑な機械的接合、セメントの配置、プラグまたは金属セクションの掘削、表面への複数のトリップ、ならびに一般に複雑なダウンホールプロセスに関連する複雑さ及び費用、ならびに結果として生じる前方掘削の遅延が回避される。
iii)無限の数のラテラルを掘削することを可能にする材料の内径の減少はない。
iv)鋼ライナと岩石との間の断熱セメント層または停滞した環状部によって生成される熱伝導率の低下はない。
v)他の横方向掘削孔と交差し、閉じたU字管掘削孔構成を作成するために、磁気測距装置を用いてマルチラテラルに再入力することを可能にする。
これについては、以下でより詳細に説明する。
【0053】
掘削中の封止の態様に関して、これは、不可逆的な地層損傷を引き起こし、透過率をゼロまたは無視できるレベルに低下させる添加剤を掘削流体自体に含めることによって達成することができる。
【0054】
添加剤は、微生物増進石油回収法で使用される技術などの生物学的成長促進剤、不透過性濾過ケークを生成する物理的微粒子、または接触時に反応して地層に浸透する化学シーラント、例えば時間硬化または熱硬化樹脂及びエポキシ、ゲル、及びポリマーであり得る。
【0055】
掘削中に掘削孔を封止するための別の方法は、例えば高温プラズマまたはレーザーベースの掘削ビットを使用することによって、掘削孔壁を溶融する極めて高い温度で岩石の表面を熱的に封止することである。
【0056】
好ましい方法は、掘削孔内に液体のままであるが、岩石に接触し浸透すると固体に沈殿する化学シーラント、例えば、10.5を超えるpHを有するアルカリシリケート系掘削流体を使用することである。掘削流体の技術的機能は、硬質頁岩またはシルト岩などの不浸透性岩石と比較して、浸透性岩石(例えば、砂岩または割れた基部)において異なる。浸透性地層では、液体アルカリシリケート掘削流体は、反応して固体になる前に任意の利用可能な流路を浸透する。得られた固体沈殿物は、孔空間及び岩石自体の内部の天然の割目に含浸及び融合され、掘削孔と地層との間に流体不浸透性障壁を作り出す。
【0057】
対照的に、頁岩などのゼロに近い浸透率を有する岩石では、掘削流体の機能は浸透率を封じることではなく、岩石は既に浸透率を有していない。代わりに、掘削流体の機能は、岩石と掘削孔との間に機械的及び化学的障壁を提供し、天然の割目、亀裂または劈開面を埋めることである。最終結果は同じであり、掘削孔と地層との間に流体不浸透性障壁を形成する。
【0058】
シーラントはまた、未固化砂を圧密し、岩石の圧縮強度を高め、砂の生成及び崩壊を防止するために使用されてもよい。
【0059】
既知のように、可溶性ケイ酸塩は、3つの成分、すなわちシリカ、アルカリ及び水を含む。シリカ(二酸化ケイ素、SiO)は、可溶性ケイ酸塩の主成分であり、アルカリによって安定化される。アルカリは、ナトリウム、カリウム、または酸化リチウム(NaO、KO、またはLiO)から選択され得、シリカの溶解度を維持する役割を果たす。
【0060】
好適なケイ酸塩としては、カリウム、ナトリウム及びナトリウムアルミノケイ酸塩が挙げられる。これらの製品は、液体形態及び粉末形態の両方で入手可能である。ケイ酸塩は、異なる種類の化学反応、すなわちゲル化(pHの低下)を受けることができ、これは可溶性ケイ酸塩構造の自己重合または縮合によってケイ酸塩の含水非晶質ゲル構造を形成するためである。ゲル化は、10.5未満のpHで重合が急速に起こり始めるpHの低下によって起こる。
【0061】
ケイ酸塩が経ることができる別の種類の反応は、カルシウムなどのカチオンによる沈殿である。ケイ酸塩の沈殿は、多価カチオン(すなわち、Ca+2、Mg+2、Al+2、Fe+3など)によるケイ酸塩分子の架橋である。これらのカチオンは地層水に存在し、したがって、掘削流体と地層流体との相互作用は、孔空間内に固体沈殿をもたらす。
【0062】
ケイ酸塩が受けるさらなる種類の反応は脱水である。液体ケイ酸塩から水が除去されるにつれて、ケイ酸塩は次第に粘着性になり、より粘性になり、最終的にガラス状膜になる。これらは、掘削流体からの濾液が岩石マトリックス内の流体と混合するときに近くの掘削孔で起こる反応である。
【0063】
ケイ酸塩は、周囲条件及び極めて高温で安定なシーラントであるため、この地熱用途に特に魅力的である。例えば、アルカリシリカート及び砂は、鋳物及び液体金属鋳造産業において650℃以上の温度で使用され、この基本的な化学反応は、周囲温度でコンクリート構造を封止するためにも使用される。
【0064】
アルカリシリケート掘削流体は、掘削孔流体の侵入及び噴出損失を最大にして掘削孔を化学的に封止するために、固体を含まず低粘度であるように配合される。マルチラテラル水平坑井セグメントの摩擦は重要な課題であるため、ケイ酸塩水と適合し、シーラント特性を実質的に妨害しない潤滑剤を添加する。
【0065】
活性アルカリシリカートの濃度は、水中で0.3質量%~10質量%からであり得るが、3質量%~6質量%からである可能性が高い。最適濃度は、in-situ塩水組成及び温度などの地質学的特性にある程度依存する。より高い岩石温度は、沈殿反応の遅延を引き起こす可能性がある。同様に、in-situ塩水が低濃度の多価カチオン、例えば、1000mg/L未満を有する地層は、より遅い反応を引き起こす。したがって、岩石温度が上昇し、多価カチオン濃度が低下するにつれて、アルカリシリカートの濃度を上昇させる必要がある。
【0066】
ケイ酸塩水の補助的な利点には、浸透速度の向上(ROP)、及びビット寿命の延長が含まれる。
【0067】
組み合わされた岩石/シーラント材料の物理的特性は、大部分が岩石に由来するが、シーラントの特性を慎重に選択することによって変更することができる。得られるシーラントが高い熱伝導率を有するように、グラフェンナノ粒子などの熱伝導性添加剤が掘削流体に含まれてもよい。
【0068】
閉ループ地熱システムのエネルギー出力は、流体温度と遠距離場岩石温度との間の複数の熱抵抗を有する離散化掘削孔からなる熱力学掘削孔モデルを使用して決定することができる。各離散化されたセグメントは、実行されるエネルギー及び質量バランスを有し、流体特性及び計算は、状態方程式熱力学パッケージで処理される。熱伝達抵抗には、掘削孔自体内の岩石、セメント、鋼製ケーシング、及び対流熱伝達抵抗が含まれる。
【0069】
定量的な例として、3W/mKの熱伝導率を有する地層と接触している7インチのケーシングセメント坑井を使用すると、岩石、セメント、ケーシング、及びパイプ流対流の5年間の動作後の熱抵抗は、それぞれ2.2E-02、2.1E-03、2.9E-05、及び5.0E-5である。熱伝達は、岩石を通る半径方向の伝導によって支配され、他のすべての熱抵抗は、比較すると無視できる。本明細書に記載の化学シーラントを使用すると、ケーシングまたはセメントからの熱伝達に対する抵抗がないため、熱効率は従来技術の方法よりも約9%高い。バルク岩石/シーラント材料の熱伝導率を高めることにより、熱伝達をさらに増加させることができる。
【0070】
アルカリシリカートシーラントは、封止性能及び機械的完全性を改善するために、アルカリシリカート沈殿物内に化学的に埋め込まれる/結合するように配合された固体微粒子を組み込むことによってさらに強化することができる。掘削流体には、剥離フライアッシュ、表面活性化グラフェン及び酸化グラフェン、炭素繊維などの補強材を組み込むことができる。これらは、ナノ分散状態またはミクロ分散状態であってもよく、沈殿したシリカと化学的に結合していてもよい。
【0071】
掘削中に最初の封止を作製した後、封止の完全性を試験する。
典型的には、これは、当業界で一般的であるように、掘削孔システムを加圧し、もしあれば減圧率を監視することによって行われる。別の方法は、循環動作中の漏れ速度の長期測定によるものである。この場合、掘削流体が除去され、エネルギーを表面に伝達することを主目的とする作動流体と交換され、漏れ速度が通常の動作中に測定される。
【0072】
掘削後に封止は実質的に完全になるが、掘削中に十分に封止されなかった割目ゾーンまたは高浸透性チャネルなど、浸透率がわずかしか残っていないいくつかの小さな領域が存在する可能性がある。したがって、通常の動作を開始または再開する前に、化学的洗浄または処理を使用して封止を増強することができる。
【0073】
前述のようにアルカリシリカート掘削流体を使用する場合、掘削流体はin-situ地層流体と反応してゲル化し、最終的に硬質の高強度固体に固化する。これらの反応は、ケイ酸塩掘削流体と地層流体との間の混合界面で起こる。高透過率チャネルまたは割目では、掘削流体は地層を通って非常に迅速に移動している可能性があるため、地層流体は掘削孔から移動し、混合界面は実質的に岩石に押し込まれるか、または地層塩水は極めて新鮮であり、ケイ酸塩をゲル化させるが完全には沈殿させない可能性がある。
【0074】
これらのシナリオでは、岩石の深部で部分的または実質的な封止が達成されるが、掘削孔付近の領域には「未使用」または未反応の液体アルカリシリカート掘削流体が含まれ、反応するさらなる地層塩水は含まれない。したがって、化学的洗浄の目的は、掘削孔から掘削孔付近の地層への漏れを引き起こすのに十分な圧力で掘削孔システムを通して化学処理を圧送し、掘削プロセスから残っている未使用の液体アルカリシリケートと接触させ、沈殿反応を開始することである。好適な化学物質は、とりわけ塩化カルシウム水、酸、CO、界面活性剤、エステルなど、当業界で既知のものである。
【0075】
封止を増強するための別の実施形態では、化学処理が掘削孔から掘削孔付近の地層への漏れを引き起こすのに十分な圧力で掘削孔システムを通して圧送され得、化学処理は「プラグ」または一定量のアルカリシリカート、それに続く塩化カルシウム水、酸、CO、界面活性剤、エステル、または当業界で既知の他のものからなる反応性化学物質からなる。2つの化学物質は、代替的に数回ポンピングされ、掘削孔付近の領域で実質的に混合され得る。アルカリシリケート及び反応物質の体積は、掘削孔内での混合を防ぐためにまたは直接接触するためにスペーサで分離されてもよい。
【0076】
動作中に封止及び掘削孔の完全性を維持することに目を向けると、石油、ガス及び地熱産業で一般的に採用されているような掘削プロセスは、ケーシングが穴に接合されるか、ライナが設置されるまでの一時的な期間にわたって、掘削孔の完全性及び部分的な掘削孔の封止(すなわち、濾過ケーク)の維持を必要とする。開孔(ケーシングまたはライナを設置する前の)掘削孔の完全性及び部分的な封止は、掘削流体の適切なエンジニアリング及び適用によって作り出される。
【0077】
対照的に、本明細書に開示される発明は、典型的には50年以上である地熱資産の運用寿命のために開孔の封止及び掘削孔の完全性を維持することを必要とする。
【0078】
掘削しながら封止を作成し、場合により別個の化学処理で封止を増強することに加えて、動作用作動流体自体が封止を維持し、掘削孔の完全性を維持する上で重要な役割を有する。作動流体の主な機能は、表面下の岩石から表面にエネルギーを輸送し、そこで直接使用されるか、または電気もしくは冷却に変換されることである。したがって、作動流体は、エネルギー伝達のための重要な物理的特性を有し、システムの熱力学的効率を最大にしなければならない。例えば、流体は、以下を含む群から選択される少なくとも1つの特性を有し得る。
a)流体と周囲のダウンホール熱源との間の温度差及び熱伝達を最大にするために、10MPaを超える圧力及び180℃未満の温度での入口坑井と出口坑井との間の横方向相互接続セクション内の実質的に非線形の温度エンタルピー関係
b)高圧で吸熱し、高圧より低い圧力で発熱する感圧可逆反応を受けることができること
c)横方向相互接続内で吸熱する化学吸収反応を含む流体混合物
d)横方向相互接続内で吸熱効果をもたらす、温度及び圧力に依存する溶解度を有する電解水溶液
e)乱流抗力低減組成物を含む水性流体
f)COなどの超臨界流体
g)アンモニア-エタン混合物
h)a)~g)の機能的組み合わせ
【0079】
熱力学効率を最大化することに加えて、作動流体はまた、掘削流体の多くの特性を有する。
i)典型的にはセトリングタンク、フィルタ、またはハイドロサイクロンを用いて、掘削孔に集まる可能性のある固体微粒子をそれらが除去される表面に輸送する
ii)流体に対して実質的に不透過性であるように掘削孔の封止を維持する
iii)掘削孔の安定性及び完全性を維持する
【0080】
一実施形態では、ボアホール壁に沿って濾過ケークを形成し、または天然の割目をブリッジして塞ぐ固体微粒子を作動流体内に提供することによって封止を維持することができる。これらの微粒子は、炭素繊維、鉱物繊維、セルロース繊維、シリカ、フライアッシュ、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、炭酸カルシウム、ベントナイトまたは当業界で既知の他の微粒子であり得る。これらの固体は、典型的には、水性の場合には作動流体の0.5重量%から2.0重量%の間で添加され、他の作動流体については同等の体積濃度で添加される。
【0081】
前述のようにアルカリシリカート掘削流体を使用する場合、掘削流体はin-situ地層流体と反応してゲル化し、最終的に硬質の高強度固体に固化する。これらの反応は、ケイ酸塩掘削流体と地層流体との間の混合界面で起こる。高透過率チャネルまたは割目では、掘削流体は地層を通って非常に迅速に移動している可能性があるため、地層流体は掘削孔から移動し、混合界面は実質的に岩石に押し込まれるか、または地層塩水は極めて新鮮であり、ケイ酸塩をゲル化させるが完全には沈殿させない可能性がある。これらのシナリオでは、岩石の深部で部分的または実質的な封止が達成されるが、掘削孔付近の領域には「未使用」または未反応の液体アルカリシリカート掘削流体が含まれ、反応するさらなる地層塩水は含まれない。したがって、封止を維持する別の方法は、掘削孔から掘削孔付近の地層に漏出すると、掘削プロセスから残った未使用の液体アルカリシリケートと接触して沈殿反応を開始する反応物質添加剤を含むことである。
【0082】
定義により、掘削後に透過性が残っている掘削孔の任意の領域は、アルカリシリケートのかなりの流入を有し、掘削孔付近の地層に未使用の液体アルカリシリケートを含む。したがって、作動流体内に反応物質を含めることにより、残りの透過性セクションが自然に封止される。好適な化学物質は、塩化カルシウム水、酸、CO、界面活性剤、エステル、及び当業界で既知の他のものである。
【0083】
掘削孔の安定性及び完全性を維持するために、岩石を封止することに加えて、作動流体は、掘削孔への岩石の破壊、崩壊及び部分的崩落を防止するのに十分な圧縮強度を提供するのに十分な圧力を地層に加えなければならない。動作用作動流体が提供する圧力は、位相変化、圧力及び温度による流体特性変化と油圧摩擦損失とを説明するための状態方程式を含む統合熱力学的掘削孔モデルを使用して計算することができる。適切に設計された場合、作動流体は、入口坑井の上部に十分に高い圧力(加圧流体)を加えることによって、または作動流体の密度を変更することによって、掘削孔全体にわたって最小圧縮強度を供給しなければならない。流体密度は、当業界で既知の他の技術の中でも、重晶石などの加重剤の添加によって、または可溶性塩によって増加させることができる。
【0084】
掘削孔の安定性を維持する別の方法は、作動流体内に頁岩抑制剤化学物質を含めることである。この化学物質は、粘土及び頁岩の水和、膨潤及び砕解を阻止する機能を有し、掘削流体における一般的な添加剤である。好適な添加剤は、とりわけ、当業界で既知のアミン系化学物質、ラテックスまたはカリウム塩の水溶液である。
【0085】
上記添加剤及び機能の組み合わせは、エネルギーを効率的に表面に輸送するだけでなく、掘削孔封止を強化及び維持し、発生した透過性を「自己修復」し、掘削孔の安定性及び完全性を維持して、流体に対して実質的に不透過性の閉ループ地熱掘削孔システムを維持する作動流体をもたらす。
【0086】
非常に重要なのは、シーラント添加剤が作動流体の熱力学特性を妨げないという要件である。一実施形態では、作動流体は、水、1L/mから10L/mの間の市販の腐食防止剤、0.05から0.3mol/Lの間の臭化カリウム、3から7mMの間のセチルトリメチルアンモニウム界面活性剤、8mMから16mMの間のサリチル酸ナトリウム、及び0.5重量%の炭酸カルシウム固体微粒子からなる。
【0087】
上述の解決策は、直接使用地熱供給に好適な温度範囲にわたって60%を超える乱流抗力の減少を維持し、これは熱力学的に効率的な動作にとって重要である。それはまた、熱間圧延による頁岩分散のためのAPI RP 13i手順に従って試験した場合に40%を超える回収率を有し、未使用のアルカリシリケートと反応して強い固体材料を形成し、炭酸カルシウム粒子は自然な割れ及びマトリックス透過性をブリッジして塞ぐ。
【0088】
別の実施形態では、作動流体自体は、単に改質アルカリシリカート塩水である。
【0089】
別の実施形態では、作動流体は超臨界COであり、これは、多くの地熱シナリオでは、超臨界COが水よりも優れた熱力学効率を有し、アルカリシリケート液体を凝固させて強い固体材料にするのにも優れた反応物質であるため、特に価値がある。
【0090】
ここで、様々な封止機構を以下の実施例で説明する。
【0091】
実施例1
化学封止
ケイ酸塩系の封止能力の最初の試験を透過性プラギング装置で行った。
【0092】
透過性プラギング装置試験:
-細孔を食塩水で完全に飽和させ、それと反応するケイ酸塩掘削流体のための「シビアケース」in situ流体を生成するために、20pm、3000mDディスク(OFITEによって提供される)を30%塩化カルシウム溶液に一晩(約16時間)浸漬した。
-浸透性プラッギング試験(PPT)は、OFITE取扱説明書及びAPI RP 13i-掘削流体の実験室試験のための推奨基準に従って実施した。
250mLの下記の試験流体をPPTセルに移し、予め浸漬したディスクを装置に入れた。装置を加圧して試験を開始する前に、掘削流体をディスクに45分間接触させた。
-試験は、室温及び500psiで30分間行った。
-1、5、7.5、15及び30分後に濾液体積を記録した。
【0093】
図2は、厚さ1/4インチの濾過ディスクでの試験に典型的ないくつかのデータのプロットである。ポリマーコントロール流体を流し、濾液体積の材料減少はなかった。異なる種類のケイ酸塩を添加した場合、沈殿が起こるにつれて濾過速度は急激に遅くなった。3000mDの透過率を有する厚さ1/4インチのディスクでも、透過率はほぼ解消されていることに留意されたい。
【0094】
流体調製:
-キサンタンガム(Kelzan XCD(商標))を淡水中に約30分間、Silverson Mixerを用いて中程度の剪断速度で混合することによって、5kg/mのポリマー流体1000mLを調製した。
-対照流体は上記のポリマー流体であった。
-配合物A、PQ Corporationから市販されているEcodrill(商標)317 30mLを上記のポリマー流体270mLと組み合わせて、300mLポーションの3%活性可溶性ケイ酸カリウムを製造した。
-配合物B、PQ Corporationから市販されているEcodrill(商標)K45 30mLを上記のポリマー流体270mLと組み合わせて、300mLポーションの3%(体積/体積)活性可溶性ケイ酸塩を製造した。
【0095】
配合物Aの総PPT体積は273.8mLであり、257mLの噴出損失が計算され、3.1mL/分の静的濾過速度が計算された。配合物Bの総PPT体積は103.8mLであり、103.8mLの噴出損失が計算され、3.7mL/分の静的濾過速度が計算された。値は、API 13iで表される式を用いて算出した。
【0096】
コアフラッド/回復透過率/コア損傷の研究も行った。これらのタイプの試験は、対象の目標生産ゾーンから得られたコアの透過率に対する掘削流体または掘削流体添加剤の効果を研究するために使用されることが多い。通常、研究の目的は、損傷を最小限に抑えること、または回復透過率を最大にすることである。
初期透過率は、コアを天然の塩水、油または何らかの塩水/油混合物で飽和させ、貯留層圧力及び温度条件での圧力でコアを通して1以上の地層流体を流すことによって確立及び測定される。次いで、試験流体をコアの面を横切って一定期間注入し、濾液の体積、流体の侵入、及び濾過ケークの厚さを測定することができる。次いで、地層流体を流れの逆方向に注入して、試験流体への曝露後に透過率が減少またはさらに増加し得る程度を決定する。この研究では、合成塩水飽和コアによるケイ酸塩試験流体のゲル化及び沈殿反応によってコアを損傷することを目的とした。
【0097】
コアフラッド/回復透過率/コア損傷の研究は、以下のように実施した。
【0098】
約30mDの透過率を有するベリアサンドストーンコアを真空下で合成塩水で飽和させ、ケイ酸カリウムの3%溶液及び2%の特殊潤滑剤を含有するもので試験した。
試験手順、パラメータ、及び結果を以下に示す。
【0099】
手順:
1)プラグを秤量し、15inHg真空下で1週間塩水で予備飽和させた。
2)コア流に入れ、塩水に対する透過率を測定した。
3)ケイ酸カリウム泥を混合し、95℃に加熱した。
4)泥を3mL/分の連続速度でコアに注入する。
5)圧力は経時的に監視される。
6)差圧は、約2500psiまで経時的に指数関数的に増大する。流体の貫流が観察される。
7)コアは完全には栓をしないが、透過率の-99%が失われる。
8)流出物は、流体の移動(侵入の深さ)を決定するために収集される。
【0100】
パラメータ:
機器:Chandler Formation Response Tester
コアプラグ:1.5インチ×3.0インチ砂岩
温度:95℃
試験流体:2%潤滑剤を含む3%のケイ酸カリウム
細孔容積:16.78
初期透過率:28.32mD対塩水
泥処理後の透過率:0.197mD
透過率低下:>99%
流量:3mL/分
塩水組成:
NaCI-230.303g
CaCI-79.054g
KCI-8.346g
MgCI-13.79g
【0101】
次いで、頁岩分散試験を実行して、潤滑剤を含むアルカリシリカート溶液が、頁岩試料を封止し、機械的完全性を提供する能力を決定した。方法論は、以下のような熱間圧延による頁岩分散のためのAPI RP 13i手順に従う。
・約2kgのピエール頁岩を粉砕して、約900gの-5/+10メッシュ(2mm~4mm)片を得た。ピエール頁岩は、地熱に好適な深さに典型的に存在する成熟した硬い頁岩層よりもはるかに反応性が高く、水の影響を受けやすい。これを保守的なベースラインとして選択したが、成熟した頁岩での実際の性能がより良好になる。
・-5/+10メッシュ片をASTMふるい及びロータップふるいシェーカーを用いて2分間ふるい分けした。
・約10gの頁岩を250mLの試験流体に入れた。
・試料を120℃で24時間圧延した。
・次いで、試料を圧延後に20メッシュのスクリーンに注いだ。
・老化したセルを阻害された流体(7%KCI)ですすぎ、内壁に付着した物質を除去した。
・20メッシュで回収した材料の総量をオーブン内で100℃で一定質量まで乾燥させた。
・次いで、各試料を再ふるい分けし、-5/+10画分の質量を記録した。
【0102】
いくつかの異なる流体配合物の結果を以下に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
97%を超える回収が達成され、頁岩の優れた封止及び強化を示している。鉱油は頁岩と反応性がないが、質量の-85%しか回収されなかった。質量の損失は、圧延中の機械的劣化に起因する。したがって、97%の高い回収率は、化学的な封止形態であるだけでなく、機械的な硬度向上も実現していることを示している。頁岩抑制剤が添加された作動流体はまた、1%の回収率しか有さない淡水から実質的に改善された44%の回収率を有する。
【0105】
実施例2
水、市販の腐食防止剤、臭化カリウム、セチルトリメチルアンモニウム界面活性剤、サリチル酸ナトリウム及び0.5重量%の炭酸カルシウム固体微粒子からなる作動流体を試験した。
【0106】
2インチ、200L容量の加熱流を使用して、圧力降下(すなわち、抗力)の測定及び乱流の特性評価を試験した。ループは、それぞれ高剪断及び低剪断を有する遠心(GIW、LCC-M 50~230)及びプログレッシブキャビティ(Moyno(商標)、2F090)ポンプを備えている。最大繰返数は500,000に達し、ループは15%体積濃度の固体で動作することができる。圧力降下を淡水で較正し、作動流体を使用した同じ流量での摩擦圧力降下と比較した。直接使用熱用途に好適な温度範囲にわたって63%の乱流抗力減少が達成された。
【0107】
掘削孔付近の未使用のアルカリシリカートとの反応性を試験するために、Ecodrill(商標)317、SiCO:KOの比が2.5の29.1%活性溶液を作動流体の試料に混合した。NaOHを使用してpH11~12に調整し、アルカリシリケート溶液を穏やかに撹拌しながら作動流体の試料に注入して、3%(体積/体積)及び1%(体積/体積)溶液を生成した。これらの低濃度は、掘削孔付近の未使用のアルカリシリカート掘削流体を保守的に表すように選択された。いずれの場合も、作動流体中へのケイ酸塩溶液の添加は沈殿を引き起こし、24時間後にケイ酸塩は固化した。結果は、作動流体が流体に対して実質的に不透過性であるように掘削孔封止を補強及び増強することを実証している。
【0108】
掘削孔の完全性及び安定性を維持する作動流体の能力を評価するために、修正頁岩分散試験を実施した。試験方法論は、同じ試料で2回の頁岩分散を連続して行うことを含む。まず、上述のように、試料をシーラント中で熱間圧延し、次いで作動流体中に再浸漬して、封止後の頁岩機械的強度及び化学的分離を決定する。掘削流体シーラントを用いて最初の頁岩分散を行った後、試料を乾燥させ、秤量し、作動流体化学に浸漬し、24時間圧延する。
【0109】
次いで、試料を圧延後に20メッシュのスクリーンに注ぎ、20メッシュで回収した材料の総量をオーブン内で100℃で一定の質量まで乾燥させた。次いで、各試料を再度ふるい分けし、-5/+10画分の質量を記録し、封止及び乾燥後の試料の質量と比較した。興味深いことに、複数の実行からの結果は、質量の96%を超える回収を示し、掘削孔の完全性を維持するための作動流体の優れた能力を示している。
【0110】
実施例3
機械的方法
一実施形態では、この機構は、孔空間/割目に自然に移動して透過率を低下させる固体粒子を掘削流体に添加することによって達成され得る。これは、一般に損失循環材料(LCM)として知られている。
【0111】
固体粒子は、粒状材料、繊維状材料、及びフレーク状材料ならびにこれらの組み合わせであってもよく、透過率を低下させるのに必要なサイズで存在してもよい(掘削流体を通して分散されてもよい)。好適なサイズは、サイズがナノメートルからミリメートルであり得る。
【0112】
エイブラムスの法則及び/または理想的な充填理論の概念は、最も好適な材料を確立するのに有用である。エイブラムスの法則は、架橋剤の粒径は、目標地層の媒体細孔スロート径の1/3以上であるべきであることを提案している。
【0113】
理想的な充填理論は、架橋剤によって生成されたものを含むすべての空隙を効果的に封止するための全範囲の粒径分布を提案する。
【0114】
粒子はまた、架橋前に孔空間に浸透するようにサイズ決めされてもよい。
【0115】
さらに、ドリルカッティングは、LCMを増強し、プラギング材料として機能することができる。
【0116】
これらのLCM製品のいずれも、掘削プロセスが完了した後に掘削孔漏れを改善するために利用することができる。LCMを有するさらなる粘性スイープは、LCMの侵入を可能にし、漏れを封止するために、開孔セクションを通して減少した速度で圧送され得る。
【0117】
最後に、固体ケイ酸塩(カプセル化されている可能性がある)はまた、貯留層を封止するための効果的な化学的/機械的組み合わせ機構を提供し得る。
【0118】
実施例4
生物学的方法
微生物強化油回収(MEOR)は、油回収を増加させるために微生物の設計、増殖、及び刺激を管理する工学分野である。ほとんどの深部地層は、孔空間内に嫌気性細菌を含む。これらの細菌は、表面付近の微生物と比較してエネルギー及び栄養素の供給が非常に少なく、したがって集団密度が低い。
【0119】
一のMEOR技術は、土着微生物を栄養分で処理して、その成長を促し、最終的に岩石の多孔性を生物学的材料で塞ぐことである。栄養素は、任意の化学物質であり得るが、典型的には、硝酸カリウム及びリン酸一ナトリウムを含む。細菌の増殖は指数関数的であるため、十分な原材料及び好適な条件が供給されると、細菌は増殖し、細菌が存在する孔空間を完全に塞ぎ、岩石が流体に対して実質的に不透過性になるように誘導することができる。
【0120】
別の技術は、岩石層に新しい微生物を導入し、同時にそれらに栄養素を供給することである。これらの微生物は、特定の温度でのみ増殖するように操作することができ、したがって、高温地層に注入することによって活性化することができる。
【0121】
どちらの技術も従来の掘削流体に適用することができ、岩石を流体に対して実質的に不透過性にし、閉ループ地熱システムを形成する。
【0122】
実施例5
熱的方法
地層は様々な化学的性質、したがって様々な融点を有するが、ほとんどの沈降地層は1200℃以下で溶融する。いくつかの技術は、機械的接触ではなく熱崩壊を使用して岩石を貫通することができる研究、開発及び試験段階にある。
【0123】
一の方法は、電流または原子力のいずれかによってプラズマを生成することである。プラズマは岩石を溶融し、連続掘削を可能にする。
【0124】
別の方法は、岩石の表面にレーザーを発射し、岩石が破砕し、崩壊し、最終的に溶融し始めるまで温度を上昇させることである。
【0125】
別の方法は、衝撃に十分なエネルギーを放出して温度を数百度上昇させる高速発射体を発射することである。
【0126】
これらの技術のそれぞれは、掘削中に多孔質及び浸透性の岩石を溶融する能力を有し、次いで冷却し、アニールして、流体に対して実質的に不透過性の硬質で耐久性のある障壁を形成することができる。
【0127】
本技術の方法の詳細を説明してきたが、ここで、図を参照して特定の実施態様を参照する。
【0128】
ここで図1を参照すると、異なる配合物の時間の平方根の関数としての濾液体積のグラフ表示が示されている。
【0129】
図2は、実施例1で描写された化学封止コアフラッド試験の時間の関数としての差圧及び透過率データのグラフ表示である。
【0130】
図3は、地下水を保護するための表面ケーシング12を有する入口坑井10を有する坑井の断面図である。中間ケーシング14は、図示のように所定の位置に接合される。これらの成分はすべて当技術分野で既知である。中間ケーシング14からは、この例ではケーシングを含まず、むしろ開放封止掘削孔である横方向セクション16が延びている。横方向セクション16を囲む孔空間は、本明細書で前述したようにシーラントで封止される。封止された孔空間は、符号18で示されており、封止された横方向セクションは、中間ケーシング14に連続している。その後、後者のケーシングは出口坑井20と連続的に接続する。出口坑井はケーシング12で完成している。
【0131】
図4は、代替シナリオを示す。この例では、横方向セクション16は、断続的に封止され、未封止の岩石面22をもたらすことができる。この状況では、ケーシング24はライナとして示されており、セメンチングがないことを意味する。したがって、ライナ22は、封止されていない岩石面を改善し、入口10から出口20への連続回路を維持する。これは、連続的に封止された断面と併せて使用されてもよい。これは地層の特定の地質に依存する。
【0132】
多孔質または割れた岩石の封止領域に関して、シーラントは岩石面と融合されず、むしろ上記化学例では岩石内に埋め込まれている。一般に、図2及び図3は硬い岩石を示す。
【0133】
ここで図5を参照すると、坑井が地層内の浸透性の低いセクション内に配置されている例が示されており、その例は沈降頁岩または泥岩セクションである。このシナリオでは、地層は、一般に符号26で示すまれな亀裂、割目、劈開面などを有し得る。化学ライナ28を使用して、入口10と出口20との間の連続性を完成させることができ、化学ライナ組成物28は、図示のように亀裂、割目、及び劈開面を充填する。
【0134】
図6を参照すると、坑井構成の第1の例が示されている。この例では、入口10及び出口20の各々は、複数の横方向坑井システム36の入口32及び出口34と連通する従来のケースセクション30を含む。システムは、地熱層38内に配置される。システム36は、図3及び図4に関して概説したように状況に応じて部分的にケースに入れられ得る複数の横方向坑井16を含む。地層38には、任意の数の坑井システム36を使用することができる。これは、垂直方向及び水平方向に数字6nで表され、「n」は、システム36の形状または任意の他の好適な構成の任意の数のさらなる坑井を示す。
【0135】
入口32及び出口34は、ここでは先行する図において参照されるマルチラテラル接合部においてケースセクション30と一体化されている。
【0136】
図7は、1つの可能なマルチラテラル構成を示す。入口32は、横方向セクション16が連続的に延びる封止されたマルチラテラル掘削孔接合部40と接続する。横方向セクション16は、地層38(図6)内からの熱回収を最大にするために互いに離間している。横方向セクション16は、図3図5に関して説明したケーシングを含むことができる。システム36の出口34は、同様の接合部40(図示せず)を含む。
【0137】
図8を参照すると、一般に符号42で示すL字形坑井構成が示されている。この例では、坑井は、先の例と同様に封止された末端46開口穴掘削孔を有する延長セクション44を有する。断熱管48は、流体送達のために坑井内に延びる。延長セクション44は、任意の選択された角度であってもよい。
【0138】
図9は、垂直方向の例を示す。
【0139】
図10では、符号50で表されるW字形坑井が提供されている。表面は、符号52で示されている。この例では、一方の坑井からの出力が他方の坑井の入力となる。流れ方向は矢印で示されている。パターンは、追加のサイクルで繰り返すことができる。この例では、開孔掘削孔16は、前の図で説明したように封止され、単純に封止された掘削孔セクションと交互のパターンのケースセクションを組み込むことができる。これは地層地質に依存する。
【0140】
図11は、入口管及び出口管を組み合わせて単一の掘削孔にする、図3で最初に参照したものと同様のマルチラテラルシステムのさらなる変形例を示し、マルチラテラルセクションの配置は地層内の任意の角度であり得る。この例では、横方向セクション16は末端54で収束する。
【0141】
図12は、入口坑井10及び出口坑井20が概ね近接している単一サイト構成56の側面図である。流体回路は、横方向セクション16について示されている。先の例と同様に、開放坑井孔は、掘削が実施されている間に封止され、その間に周囲の孔空間が封止される。数字12nは、図6において参照される6nに属する意味と同じ意味を有する。
【0142】
さらなる変形例を図13に示す。複数の横方向坑井構成の上面図が示されている。図示されている複数の個々の坑井16は、共通の入口坑井10を共有し、地層の地熱ゾーン(この図には示されていない)内を延び、閉じた回路で共通の出口坑井20に戻る。流れ方向は矢印で示されており、流れは個々のループまたは別個のループ間の数珠繋ぎに分離することができる。これは、地熱ゾーン内で最大限の熱採掘を可能にしながら、小さな設置面積に有利である。
【0143】
図14は、図13の実施形態に起因する小さな設置面積を維持しながら複数の坑井構成が提供されるさらなる変形例を示す。
【0144】
図15は、図13に最初に提示された坑井構成と組み合わせてマルチラテラル坑井システム50を組み込んでいる。この構成では、2つの別個の単一サイト56は、大きな地下地熱領域を採掘するために最小限の表面侵襲性で大きな領域にまたがることができる。流れ方向は矢印で示されており、流れは個々のループまたは別個のループ間の数珠繋ぎに分離することができる。本明細書で説明する封止技術の有効性は、そのようなハイブリッド構成を提供する柔軟性を可能にする。これにより、多種多様な地質学的状況における熱採掘が可能になり、本明細書の方法を実施する上でさらに別の自由度が可能になる。
【0145】
より詳細には、図16は、本明細書では横方向セクション16とも呼ばれる、掘削された掘削孔の断面図を示す。この例の地熱層38は、高浸透率層である。浸透性のために、シーラントは地層の孔空間内に広がり、掘削孔16のすぐ近くでは未反応のままであり、符号60で示す。未反応シーラント領域の外側には、先の例と同様に、符号18で示されるシーラントで封止された孔空間がある。
【0146】
図17は、図16の掘削孔を作動流体に曝した結果を示す。この処理に続いて、掘削孔を囲む地層領域は封止され、掘削孔自体の内部容積とそれを囲む地層との間に不浸透性界面を形成する。これは、封止された掘削孔16が未反応シーラント60の蓄えによって囲まれているため、特に有利である。掘削孔封止が地震活動または他の有害な活動から損なわれた場合、掘削孔は、利用可能な反応物質の蓄えと作動流体との間の反応による自己修復によってその完全性及び封止能力を維持することができる。これは、運転及び保守コストを経時的に削減するという点で非常に大きな利点を有し、当然のことながら、坑井システムの初期合成に関連する初期の設備投資を大幅に軽減する。
【0147】
浸透率が低いまたは平均的な岩石(その一例は花崗岩、泥岩、または頁岩である)に関して、反応性の作動流体またはさらなる処理を必要とせずに、単一工程で不浸透性界面を形成するために、掘削孔16の周囲に孔空間、割目、亀裂、劈開面などをシーラントで充填することができる。したがって、本明細書で説明する方法の範囲を考慮すると、地質学的透過性は地熱採掘の問題を示さないことが理解されよう。
【0148】
補助的な利点として、本技術は、修復及び後付けの領域に拡張することができる。本明細書の技術の基礎の1つは、魅力のない流体処理を必要とする破砕を回避する、地熱分野におけるエネルギー生成に対する環境に優しい解決策である。第2の基礎は、従来技術では閉ループとして不適切に特徴付けられていたものとは対照的に、本技術が真に閉ループのシステムを提供することである。
【0149】
この技術は、列挙された地熱回収の利益を伴う非常に効果的な封止プロトコルを可能にするため、この技術は、無効な、未使用の、またはその他の動作不能な地熱坑井の修復に適用できることが分かっている。これらの坑井は、とりわけ、低流量、無効な割目、固化していない地層及びその結果生じる砂生産の問題、塩水からの過度の腐食、または浸出の問題などの任意の数の問題のために使用不可能または動作不可能であり得る。
【0150】
したがって、本明細書で説明するような新しい非フラッキング地熱構成への改造が不可能である場合、動作不能な現場は、不要なケーシング及び補助構成要素の除去によって、または可能であればフラッキングなどの高価で環境的に厄介な動作によって、または場合によっては坑井全体を再掘削することによって、放棄される。透過度が問題ではないという事実に照らして、封止技術は魅力的な改善利益をもたらす。
【0151】
既存の地熱坑井の改変または改造に関して、既存の坑井は、著しい経済的利点を伴って技術を展開することを可能にし、破砕流体管理、誘導地震活動、及び環境リスクの必要性を排除し、環境に優しくないエネルギー源として以前広く認識されていた改造現場を、そこからさらに構築するグリーンエネルギープラットフォームとして提供する。
【0152】
本技術範囲のさらなる実施態様に関して、ここで先行する図を参照する。
【0153】
図19では、坑井ループ64は、例えば、地熱層、低浸透率地層、堆積地層、火山地層または堆積流域の下に生じる結晶岩としてより適切に説明される「基盤」地層であり得る地層内に配置された入口坑井10及び出口坑井20を有する閉ループシステムを含む(いずれも示されていない)。
【0154】
坑井ループ64及び電力サイクル66は、熱交換器68によって熱的に接触しており、熱交換器は、サイクル66において発電機70によって電力を発生させるために後に使用される、地層におけるループ64内を循環する作動流体から熱を回収する。一例として、地層の温度は、80℃~150℃の範囲内であってもよく、または150℃超、さらには400℃超であってもよい。
【0155】
図示の構成では、2つの異なる作動流体が使用される。流体に関するさらなる詳細は、本明細書で後述する。システムの坑井ループ動作内で使用される作動流体を変更することは、低い周囲温度で可能である。
【0156】
このように、現在利用可能な発電モジュールは、通常、一次熱交換器内の電力サイクル作動流体の入力温度を0℃超に制限する。作動流体温度を0未満に低下させることによって、より高いタービン圧力比が可能になる。しかしながら、従来の地熱プロジェクトは、熱交換器の反対側の地熱流体の潜在的な凍結によって制限される。
【0157】
本技術におけるこれらの制限は、閉ループ坑井と組み合わせて分離電力サイクルシステムを実装することによって克服される。
【0158】
流体は、0℃未満の温度での凍結を防止するために添加剤で改質されてもよい。好適な添加剤としては、スケーリング防止剤、腐食防止剤、摩擦低減剤、及び凍結防止化学物質、冷媒、殺生物剤、炭化水素、アルコール、有機流体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
分離電力サイクルと組み合わせた調整された坑井ループ作動流体の実質的な利点は、非常に冷たい周囲温度の影響を受けず、したがって、図19に示すように坑井ループと組み合わせて使用される場合、より高い正味発電を増加させるために使用される任意の一般的な電力サイクル(ORC、Kalina、炭素キャリアサイクル、CTPCを含む)の使用を容易にすることである。この構成では、第2の作動流体の温度が0℃または0℃未満である場合に、熱が第1の作動流体から第2の作動流体に伝達される。
【0160】
分離回路を有する任意選択の構成を図20及び図21に示す。
【0161】
図20は、それぞれがそれ自体の発電機22が並列構成を形成する2つの別個の熱交換器18と熱接触する坑井ループ12を組み込んだ分離回路を示す。同様に、図21は、直列構成を示す。
【0162】
統合坑井ループ電力サイクルは、図22に示すように、選択された作動流体が坑井ループ内で循環し、次いでタービンの表面に流入する閉ループシステムである。符号72は全体工程図である。このプロセスでは、離散的な坑井ループ流体及び二次電力サイクル作動流体を有するのではなく、単一流体が使用される。この閉ループサイクルにおける作動流体は、流体が上部作動圧力では超臨界であり、下部作動圧力では亜臨界である遷移臨海サイクルとして、または流体が下部作動圧力では超臨界のままである完全に超臨界のサイクルとして動作することができる。
【0163】
既知のように、遷移臨海サイクルは、作動流体が亜臨界状態及び超臨界状態の両方を通過する熱力学サイクルである。この装置は、例では空中冷却器74及び発電機78を有するタービン76として示されている冷却デバイスをさらに含む。空中冷却器74は、作動流体を周囲温度よりも1℃~15℃高い温度に冷却するために使用される。作動流体は、0℃未満の温度に冷却することができることにも留意されたい。図24を参照すると、性能データが描写されている。
【0164】
この統合サイクルにおける駆動機構は、入口垂直坑井10と出口垂直坑井20との間の密度差に起因して生じる非常に強力なサーモサイフォンである。流体は、入口坑井10内で超臨界液体状態にあり、横方向相互接続セクション80に沿って移動するときに加熱され、出口坑井20内で超臨界状態で出て、大きな圧力を生成する。
【0165】
サーモサイフォン効果は、始動中を除いて通常の動作条件下で表面ポンプの必要性を完全に排除することができる。有利には、これは、ポンプを動作させて正味の電力出力を増加させるのに必要な電力を排除する。
【0166】
坑井ループ回路と協調して動作するのは、掘削孔レイアウト、深さ、長さ及び周囲温度に合わせて調整されたカスタマイズされた流体及び混合物の使用である。先行技術は、二酸化炭素または純粋な炭化水素流体の使用のみを論じている。本明細書で説明するような閉ループシステムでは、流体混合物の初期コスト及び複雑さは、全体的な経済におけるほんの小さな要因である。したがって、流体と周囲のダウンホール熱源、すなわち周囲の岩石との間の温度差及び熱伝達を最大にするために、10MPaを超える圧力及び180℃未満の温度で入口坑井と出口坑井との間の相互接続セグメント内に非線形温度エンタルピー関係を有する流体などの他の流体を使用することができる。
【0167】
坑井ループの横方向部分内で実質的に非線形の温度エンタルピー関係を示す、及び/または、高圧で吸熱し、高圧より低い圧力で発熱する感圧可逆反応を示す流体は、発電を大幅に増加させることができることが分かった。これは、遠距離場の岩石温度と循環流体温度との間の平均温度差が増加し、地層からの熱伝達の増加を推進するために生じる。
【0168】
分離構成で使用するためのこの種類の流体の例は、温度依存性溶解度を有する水性沈殿物/電解質溶液であり、水は入口坑井の上部で過飽和である。固体粒子は、スケーリング防止剤(凝集防止剤)及び乱流(掘削泥に類似)と共に懸濁状態に保持される。横方向セクションでは、温度が上昇しているため、懸濁液中に保持された固体の溶解度も上昇している。これにより、固体粒子が水に溶解するにつれて、溶液が岩石から熱を吸熱的に吸収する(基本的に流体の有効熱容量を増加させる)。分離熱出力サイクルへの熱交換器では、温度が低下しているため、固体物質が発熱的に沈殿している。
【0169】
有用な流体には、例として以下の溶質を含む水溶液が含まれる。
酢酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ギ酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及びリン酸一ナトリウム。
【0170】
単一のタービンを使用し、周囲条件の全範囲にわたって適切な効率を有することは問題である。異なる周囲条件に対して最適化された直列または並列の2つ以上のタービンの使用が問題に対処することが分かっている。低温の期間中、制御ロジック(図示せず)は、作動流体を適切なタービンに自動的にシフトさせて、年間を通して高効率を維持する。
【0171】
ここで図25及び図25Aを参照すると、符号82で全体的に示された坑井の数珠繋ぎの概略図が示されている。この実施形態では、概して符号84で示される各表面位置は、横方向坑井管または相互接続セグメント88及び生産坑井90に接続された注入坑井86を含む。このようにして、連続坑井構造は、ほぼU字形の構造になる。横方向坑井セグメントは、図3で説明したように、または前述した他の構成のいずれかの坑井システム36を含むことができる。
【0172】
図示されているように、各位置84は、別個であり、洗練された有利な方法で近位位置に連結されている。一例として、位置間の距離は、3,500メートル~6000メートルであってもよい。もちろん、これは状況によって異なる。
【0173】
動作中、作動流体は、一の位置84の注入坑井86内で循環され、任意選択的に、例えば、熱エネルギーを回収するために発電装置(図示せず)を通って処理され、その後、出力流として通過して、近位位置84の注入坑井86用の入口供給流となる。チェーン線92は、このリレーまたは数珠繋ぎ順序を示している。すべての熱が回収されるわけではないので、近位位置の坑井86の入口供給流は、横方向管88への注入のために予熱される。その後、プロセスは、次の位置84における繰り返しのためにリセットする。
【0174】
ここで図26を参照すると、本発明のさらなる実施形態、例えば、8,000kW~12,000kWのシステムが示されている。この例では、電力及び効率を高めるために発電装置(図示せず)を集中させるために、個々のループを集中位置94で接合することができる。
【0175】
図27及び図28は、4,000kW~6,000kW(図27)及び2,000kW~3,000kW(図28)の小規模動作を示す。
【0176】
ここで、本発明の位相変化の態様に目を向けると、従来技術よりもはるかに効率的にドリルストリング、底穴アセンブリ、及び岩石面(いずれも示されていない)を冷却する掘削流体組成物が参照される。冷却掘削流体は、相変化材料(PCM)を使用して、標準的な掘削流体で見られる向流熱交換の問題を緩和する。既知のように、PCMは、ほぼ一定の温度で融解(溶融及び凝固)を受けるため、温度を実質的に変化させることなく熱エネルギーを吸収及び放出する。PCMによる掘削と連続して掘削しながらこれらの特性を封止と統合し、その後の封止は、標準的な装置では達成できない高温地層で従来の掘削装置を利用した効率的な掘削に劇的なプラスの影響を与える。
【0177】
図29を参照すると、PCMは掘削流体に添加され、流体は、PCMがシステム全体にわたって(または少なくとも底穴アセンブリ(図示せず)に近接して)位相変化を受けるのに十分な流量で圧送される。
【0178】
管とも呼ばれるドリルストリング96の頂部(システムへの入口)では、PCMは固体状態(またはほとんど固体状態)で圧送される。流体98がストリング96の管100を下降すると、環状部1104内の戻り流体102から熱が伝達されるが、環状部104と管100との間の温度整合が近い(ΔTが小さい)ため、熱伝達率は小さい。管100内の流体98は、下降しながら熱エネルギーを吸収し、温度を実質的に変化させることなく溶融し、完全に固体状態で、または管100の上部よりも高い液体分率でビット106を出る。流体102が環状部104内に戻ると、掘削孔付近の岩石温度が流体温度より低くなるまで、流体102は岩石108から熱を吸収し続ける。システムの熱力学は、ドリルストリング96内の流動するPCMスラリーが底穴アセンブリ(図示せず)で、またはその近くで少なくとも部分的に固体状態のままであるように設計される。この動作は、本明細書で以前に参照されたような任意の順序で封止動作中にドリルでシーケンスすることができる。
【0179】
水の戻りは低下している。ある点では効果的であるが、水の流量を増加させることは、底穴温度にわずかなさらなる影響を与える。これは、下降する水がビットに到達する前に水を加熱する向流熱伝達によるものである(図29)。これは、深さ4500mの340℃の岩石に掘削する場合について図30に示されている。位相変化スラリー(PCS)ケーシングは、PCSが4m/分で流れているときの、ケーシング26、112とドリルストリング10、96との間の環状部24、110内の戻り流体のスラリー温度である。4m3/分で水が流れている場合、BHA(図示せず)の温度は約222℃である。水流量を5m/分に増加させるだけで、BHAは209℃まで冷却される。PCS流体は、水で達成可能なよりもはるかに低い4m/分で160℃までの冷却を可能にする。
【0180】
当技術分野で既知のように、掘削穿孔率ROPは、岩石強度の関数である。ここでは、急速な冷却衝撃を誘発することによって、ビットによる物理的破壊の前に岩石を弱めること、または岩石を「事前調整」することができることが分かっている。in-situ岩石温度よりもはるかに低い循環流体温度を維持することにより、低温掘削流体は、ビット面(図示せず)の近くの岩石に局所的な熱収縮を引き起こす。この収縮は、岩石を弱くし、引張破壊を引き起こす可能性さえある。
【0181】
学術文献において、Yan-Jun Shenらの、Experimental Study on Temperature Change and Crack Expansion of High Temperature Granite under Different Cooling Shock Treatments,Energies,2019は、弱化効果が冷却の大きさに関連することを論じている。ROPに対する材料の影響を達成するためには、50℃を超える冷却が必要である。150℃の冷却では実質的な弱化及び引張破壊が起こる可能性があり、これは水のみでは達成できない。米国特許第9,758,711号明細書は、ビット及び底穴アセンブリを冷却するためのPCS掘削流体を開示している。本開示は、水と比較してわずかに優れた冷却効果(約5℃)しか達成できなかったことに留意する。
【0182】
本明細書に記載の方法を適用する場合、岩石は100℃を超えて冷却することができる。図30を参照すると、190℃の冷却が示されている。図31は、衝撃冷却ΔT、すなわちPCM掘削流体と未使用の岩石温度との間の温度差の関数としての岩石の機械的強度を示す。
【0183】
本発明の特に有用な用途は、本出願人の同時係属出願に開示されているような閉ループの伝導専用地熱システムの構築である。これらのシステムは、通常、様々な掘削孔の交差を可能にして閉鎖システムを作成するために、テレメトリを備えた磁気測距ツール及び方向性MWDシステムを必要とする。動作の測距段階中、磁気測距受信機及び他の電子機器(図示せず)をその温度限界未満に保つことが重要である。受信機は、ドリルストリング(管)の端部に配置され、流体がツールを通って管の端部から流出することを可能にするように構成することができる。このようにして、磁気測距装置は、本明細書に記載の設計及び動作方法を使用して、ツールを通してPCMを高速でポンピングし、環状部をバックアップすることによって能動的に冷却することができる。
【0184】
この用途では、冷却は掘削のためのものではなく、単に底穴電子装置を冷却するためのものである。
【0185】
PCMは、ドリルストリング及びBHA内の装置、電子機器、及びセンサの最高温度限界未満の融解温度を有するように設計及び選択される。したがって、岩石温度が装置の最高温度限界よりも大幅に高くなり得る場合でも、掘削流体温度はPCM融解温度のままである。200℃~400℃を超える岩石温度は、標準的な方向性掘削装置、電子機器などで掘削することができる。
さらに、いくつかの坑井は、現在、250℃までの高価な高温ツールで掘削されている。対照的に、本明細書で開示される技術は、はるかに安価で信頼性が高く効果的な装置を可能にし、大幅なコストを節約する。
【0186】
上述のように、米国特許第9,758,711号明細書は、ビット及び底穴アセンブリを冷却するためのPCM掘削流体を開示している。しかしながら、本開示は、より速いROPのために岩石を弱めるのに十分な冷却を可能にせず、または大規模な冷却効果を達成するのに必要な動作上の課題を解決しない。
【0187】
流路の凝集及び潜在的なプラギングを防ぐために、ドリルストリング内のPCMの分散を維持することが重要である。本明細書の教示は、固相PCM粒子を含む安定なエマルジョンを提供する。しかしながら、数回の溶融/凝固サイクルの後、PCM粒子は凝集し、より大きく成長する傾向がある。重要なことは、流体が乱流であり、高い剪断速度の下で凝固プロセスが行われ、凝集が特定の最大粒径に制限されることである。
【0188】
岩石を弱め、ROPを増加させ、高温岩石中の地熱閉ループシステムの磁気測距を可能にすることができる顕著な冷却効果を達成するために臨界流量が必要であることが分かった。臨界流量は、PCMがドリルストリング全体にわたって少なくとも部分的に固体のままであり(したがって、融解を受け)、部分的に固体形態でビット(または底穴アセンブリ)を出る流量によって定義される。環状部に固体形態のPCMを有する必要はなく、管のみを有する必要がある。
【0189】
ここで図32を参照すると、150℃の融解温度で、4500mの深さで340℃の岩石(線形75℃/km地熱勾配)を掘削するシナリオの異なる流量が示されている。各流量に対する底穴アセンブリの温度は、それぞれ2.5m/分、2.9m/分、3.0m/分で180℃、150℃、150℃である。したがって、このシナリオでは臨界流量は2.9m/分であり、流量が低いとBHAの温度が高くなり、流量が高いと追加の冷却は行われない。
【0190】
地熱プロジェクトに関連する深さ及び温度の場合、典型的には、臨界流量は2m/分~6m/分である。
【0191】
所望の冷却効果を達成するために、管と環状部との間の熱伝達が最小限に抑えられることが重要である。BHA圧力が適切に制御されない場合、環状部内の溶融PCMの融解温度は、管内の融解温度よりも高く、環状部から管への著しい望ましくない熱伝達を引き起こす。融解温度は圧力の関数である。管と環状部との間の圧力差ΔPは、管の最低融解温度が図33に示す環状部内の最高融解温度よりも高くなるように、十分に高くなるように制御されなければならない。
【0192】
図34は、BHAにわたってΔPを適切に設計することの重要性を示すグラフ表示を示す。これは、それぞれ同一の流量、掘削流体組成、坑井寸法、及び岩石温度を有する2つの場合を示している。ケース1は、ストリング(底穴アセンブリ)の底部にある装置及び構成要素にわたって圧力降下、すなわちΔPがない。ケース2は、大きな圧力降下を有する。ビットの流体温度は、それぞれ230℃及び160℃である。
【0193】
掘削流体の必要な固形分/密度を維持するために、表面に運ばれる岩石カッティングを除去する必要がある。多くの地熱用途、特に本出願人の同時係属中の用途に開示されている用途では、透明な流体が理想的であり、これは固体含有量がわずかな流体を意味する。より大きなカッティングはスクリーン/シェーカーを介して除去されるが、より小さな固体は、より高密度の材料を分離する遠心分離機を用いて除去される。したがって、PCMは、遠心分離機でカッティングを除去することを可能にするが、流体内にPCM粒子を残すために、ベースキャリア流体の密度に類似し、理想的にはキャリア流体よりわずかに下の密度を有するように選択されるべきである。
【0194】
固体PCMを水などのベースキャリア流体に添加すると、有効バルク粘度が大幅に増加する。粘度が増加するにつれて、掘削孔を通る油圧摩擦圧力も低下する。高圧損失は、通常、大量の表面ポンプ動力及び高圧装置を決定する。しかしながら、PCMは、液体状態と固体状態との間に有意な密度差を有するように選択することができる。
このPCM特性を最適化された流体組成及び流量と組み合わせることにより、システムは、PCMが環状部よりもドリルストリング内で著しく高い固相%を有するように設計/動作され、したがって、ドリルストリングと環状部との間に大きな密度差を作り出し、顕著なサイフォン効果を可能にする。サイフォン効果は、PCMからの粘度増加の影響を部分的に克服する大きな圧力駆動をシステムに加える。
【0195】
管/環状部内の温度が本質的に同じであるため、密度差は古典的なサーモサイフォンではない。代わりに、サイフォンは、環状部と管との間のPCMの相対的な相状態によって引き起こされる。
【0196】
数珠繋ぎ型実装を採用することの重要な特徴の1つは、近表面戻り管の要件がないことである。必要に応じて、従来の坑井ループ構成のように、資本コストはプロジェクトの総資本の10%を超え、通行権を交渉する必要があり、約3℃の熱損失及び圧力損失の結果、効率が低下する可能性がある。
【0197】
対照的に、数珠繋ぎ接続は、坑井ループが前後に連結されているため、近表面戻り管の必要性を排除する。さらに、対になったループは、廃熱を入力として使用して上記の予熱された流れを生成する対と共に、互いに戻り管として機能する。
【0198】
他の利点は、すべてが表面下にあり、位置84間の距離が短いため、表面破壊(設置面積)のない発電量の増加を含む。
これは、予熱供給流設計の温度が上昇したために、より短い管88を使用できる場合、コストを相応に削減する。
【0199】
実施例の坑井は、記載された掘削方法を採用することによって形成される。坑井構成の任意の組み合わせを数珠繋ぎタイプ構成に組み込むことができることが理解されよう。さらに、数珠繋ぎ型例の掘削孔及びすべての図に示す他の構成のいずれかを形成するために、破壊的技術の任意の組み合わせを使用することができる。いくつかの図では、「n」指定への参照が図番号と共に含まれる。一例は、6nで示される面積を有する図6である。これは、任意の数、したがってn個の追加の坑井が、示されているものと垂直に積層され得るか、平行な関係で配置され得るか、またはその両方であり得ることを表すためのものである。坑井タイプは、追加の坑井に対して異なるものであっても同じものであってもよい。
【0200】
実施例によって列挙されるように、本明細書に記載の技術は、透過率にかかわらず、最大の伝導率のためにエネルギー効率の良い掘削孔に地熱層を形成する能力に基づいている。この能力は、非常に効果的な作動流体と結合されると、顕著な方法をもたらす。
【0201】
坑井内の流体循環は、効率を促進する任意のパターン及び方向で起こり得る。これは、地層の性質によって部分的に決定され、当業者によって決定及び認識される。
【0202】
ここで本発明のプロトコルのマルチ測距の態様に目を向けると、図35は、マルチ測距方法における全体的なステップの一般的な流れ図を示している。
【0203】
図36は、全体として符号114で示される本発明の一実施形態の概略図である。この例では、U字形坑井は、一対の離間した垂直坑井10(入口)、20(出口)と、先の実施形態と同様に坑井10、20を相互接続する水平坑井として示されている相互接続坑井16と、を含む。この坑井は、未使用の坑井、すなわち、SAGD構成からの既存のものであってもよく、または新たに掘削されてもよい。本明細書でさらに説明される技術は、未使用の油坑井を再利用するのに特に有用であり、開示される技術の多くの態様は、地熱産業に位置付けられるのと同様に容易に既存の石油及びガス環境に容易に追加または置換され得ることが、本開示において明らかになるであろう。
【0204】
図示の例では、複数の補助横方向水平坑井16A、16B、16C、16Dが接合部40、40’から延びる。このようにして、すべての坑井16A、16B、16C及び16Dは、それぞれの垂直坑井10または20に共通に接続される。U字形坑井が既存であるシナリオでは、信号デバイスは、垂直坑井10、20及び相互接続坑井16に沿って配置されてもよい。これらは概略的に示され、符号116で表される。好適な信号デバイスは、当技術分野で知られているデバイスの全分野から選択することができ、とりわけ、受信機、送信機、トランシーバを備えることができる。好適なデバイスの例の目的のために、Baker Hughes、Scientific Drilling、Halliburtonなどの参考文献を参照することができる。
【0205】
デバイスは、掘削された坑井内の掘削速度、坑井間の間隔、坑井から接合部までの接続完全性、ビット摩耗、温度及び流体流量のうちの少なくとも1つを監視できるように修正または選択することができる。
【0206】
この領域は当技術分野で成熟しており、したがって詳細な説明は必要ない。
【0207】
U字型坑井が事前に存在していない状況では、それらを恒久的にin situに残すこと、または時間依存性回収のために配置することを目的として、坑井は、プロセス内の好適な時間にシグナル伝達デバイスを配置して初期基礎坑井として掘削することができる。
【0208】
配置されると、これは、第2の横方向(水平)坑井16Bの指向性掘削との信号通信のための「マスタ」を提供する。掘削構成(図示せず)は、信号デバイス116からスレーブとして案内信号を受信し、水平坑井16Bの経路に沿ってさらなる信号デバイス118を残す能力を含むことができる。掘削構成と信号デバイス116、118とのさらなる通信も可能である。
【0209】
信号デバイス118を有する第2の坑井16Bを確立すると、これは、第3の横方向(水平)坑井16Cのための案内信号のためのマスタとして機能することができる。前述の掘削構成は、この掘削手順に対して同様に機能する。さらなる信号デバイス120は、水平坑井16Cの経路に沿って配置される。この構成により、第2の坑井は、信号デバイス116及び118を一緒にまたは任意の連続的もしくは不連続的な順序で独立して案内することから恩恵を受ける。理解されるように、これは、複数のセンサ場所及び位置のために掘削中の軌道ドリフトを大幅に低減する効果を有する。
【0210】
第3の横方向(水平)坑井16Cに関して。掘削構成は、信号デバイス116、118、120からスレーブとして案内信号を受信し、水平坑井16Cの経路に沿ってさらなる信号デバイス122を残す能力を含むことができる。先の例と同様に、これはデバイス116、118、120の案内から恩恵を受ける。
【0211】
最後に、上記の例の趣旨において、信号デバイス124は、第4の横方向(水平)坑井16D内に配置され、デバイス116、118、120、122と通信することができる。
【0212】
信号デバイスは、最後のマルチラテラル坑井に対して累積的であるため、各追加のマルチラテラルセグメントのドリフトを徐々に低減することが理解されよう。これにより、初期の坑井はマルチラテラルシナリオにおいて重要性が低いため、既存の/未使用の/放棄された坑井の使用が可能になる。初期の「マスタ」状態は、より多くの横方向坑井が拡張されてマルチラテラル構成を形成するにつれて重要性が低下する。
【0213】
従来技術で描写されているように、この技術分野における既存の技術の多くは、SAGD環境に固有のデュアル坑井または注入及び生産坑井システムに焦点を当てている。しかしながら、技術に関連する精度は、技術の地熱領域における例外的な適用を可能にし、その容量における参照がここで説明される。
【0214】
図37は、坑井の配置の上面図である。
【0215】
ここで図38を参照すると、地熱勾配G内に配置された、一般に「積層」構成と呼ばれる坑井構成の変形例が示されている。この実施形態では、積層内の各マルチラテラルシステム36は、それ自体の入口坑井10、10’、10’’、10’’’及び出口坑井20、20’、20’’を有することができる。実現可能であれば、各積層は、単一の入口坑井10及び単一の出口坑井20に共通に接続されてもよい。積層構成の魅力は、より小さい設置面積でのより高い熱回収の可能性である。
【0216】
図39は、「フォーク」構成として参照されるさらなる変形例を示す。この構成では、マルチラテラル坑井システム36は、離間した同一平面関係または離間した平行平面構成で配置されてもよい。そのような構成は、システムの全体的な設置面積が問題にならない場合に適している。
【0217】
ここで図40を参照すると、上述の相互接続坑井16に対して半径方向に離間したアレイに分散されたマルチラテラル坑井16B、16C、16D、16E、16Fの構成が示されている。実施例における構成は同軸であるが、他の変形例が当業者によって理解されるであろう。
【0218】
明確にするために部分的に除去しているが、坑井16B、16C、16D、16E、16Fはすべて、垂直坑井11、20及び接合部40、40’と共通の接続を有し、坑井及び接合部を示していないことが理解されよう。この半径方向の分散は、所与の熱生成容積内でより多くの量の熱を抽出することができるため、地熱環境において特に価値がある。本開示に記載の方向性掘削の進歩に照らして、そのような構成は、周囲環境に応じて可能であり、カスタマイズ可能である。
【0219】
図41は、さらなる変形例を示す。この実施形態では、図40に示す構成の対は、同様の坑井16A’、16B’、16C’、16D’、16E’と互いに噛み合っている。本明細書で確立された掘削方法に起因する精度は、嵌合を容易にする。この構成は、設置面積に影響を与えることなく、例えば地熱ゾーン内の熱回収を向上させる。これは明らかに資本支出のメリットを有するが、所与の領域内でさらに大きなエネルギーサービス能力も可能になる。
【0220】
図42は、図41からの構成の対が離間しているが熱接触している別の変形例を概略的に示す。
【0221】
坑井の立上部(heel)からその先端部(toe)への温度偏差を緩和するために、図41及び図42に示す構成が有用である。一例として、図41を参照すると、坑井16A、16B、16C、16D、16E内の流体の流れの方向は、坑井16A’、16B’、16C’、16D’、16E’内の流れと反対であってもよい。このようにして、一方の坑井の立上部は、他方の坑井の先端部と熱的に接触する。
【0222】
ここで図43を参照すると、本発明の別の実施形態が示されている。この実施形態では、別個のマルチラテラル坑井40は、地層38内で地理的に分散されてもよい。この実施形態は、出口坑井20との接続のために終端部37でループバックするように36、36’などのマルチラテラルシステムを接続する。第2のセットのマルチラテラル36’’、36’’’は、マルチラテラル36、36’’と同一平面または平行平面にあってもよく、39でループバックしてもよい。この構成の利点は、入口/出口設置面積48が比較的小さいが、熱エネルギー回収能力が非常に重要であることである。これにより、設置面積48の一地点が、大規模な土地区画を必要とせずに複数の生産性を有することが可能になる。
【0223】
すべての例において、入口10及び出口20は、既知の補助構成要素、すなわち、発電デバイス、エネルギー貯蔵デバイス、電力網へのリンク構成(本明細書で後述)、とりわけコジェネレーションシステムを含む。これは明確にするために省略されている。さらに、地熱システムは、閉ループであり、つまり、入口、接合部、発電デバイスに介在するマルチラテラルなものであることを意味し、出口坑井は、超地下位置に配置された最小限の接続管を有する連続回路を形成することが理解されるであろう。これに対する一般的な参照は、図10に関して行うことができる。
【0224】
補助または介在デバイスは、地面レベル52の上方に配置された符号50で参照される。地面レベル52より下の閉ループは、この例では誇張されている。
【0225】
ここで本発明のプロトコルの電力及びディスパッチ能力の態様を参照すると、図45は、本明細書に描写される方法の実施形態を実施するために使用される全体的な構成の例を示している。符号130は、全体的な配置を全体的に参照する。少なくとも90℃の温度を有し、典型的には150℃超、またはさらには600℃以上であり得る熱エネルギーを有する地層38は、少なくとも1つの相互接続セクション16と同一場所に相互接続され得る入口坑井10及び出口坑井20を有する地下ループ構成を含む。この例では、いくつかのセクション16A、16B、16Cが、図面に関する前述の説明と同様に描かれている。
【0226】
表面52において、入口10及び出口20は発電デバイス50に接続されている。デバイス50は、Lとして簡略化のために参照される閉ループとしてループ構成を完了する。明らかなように、セクション16、16Aなどは、周囲の地層38から熱エネルギーを回収する目的で地層内に配置される。明確にするために、閉ループL、特にセクション18は、流体を輸送することができる亀裂、割目、ひびを含むことができるが、これは閉ループの概念のポイントを損なうものではなく、局所的な多方向の流れの異常が存在し得るという事実にもかかわらず、流れパターンは、入口10、相互接続16、出口20、発電デバイス50の要素の組み合わせにおいて閉じたままである。
【0227】
地層は、上述のように温度を提供する任意の地層であってもよい。これに関して、例としては、地熱層、低浸透率地層、高温乾燥岩、堆積地層、火山地層、高温地層、可変透過率地層、及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらは単なる例である。任意の数の他のものが本発明の範囲内にある。
【0228】
地層は、その性質に応じて、当業者に既知の好適な技術によって事前に分析することができる所定の潜在的な熱出力容量を有する。各地層は、もちろん、異なる出力容量を有する。
【0229】
これを考慮して、各ループLは、とりわけ、セクション18の数、その幾何学的構成、深さ、長さ、地層温度、地層岩石特性などのその設計パラメータを反映する所定の潜在的な熱出力容量を有する。これらのパラメータはすべて、当業者には明らかであろう。
【0230】
潜在的な熱出力容量は、システムの最大持続可能熱エネルギー出力である。熱出力は、本明細書に開示された方法で一時的に変化させることができるが、長期平均出力(すなわち、数か月または数年にわたって平均化される)は、潜在的な熱出力容量を超えることはできない。システムの全体効率は、平均熱出力を潜在的熱出力容量で割ったものに等しく、これは一般に「容量係数」と呼ばれる。高い容量係数、または利用可能な潜在的な熱出力容量の高い利用率を有することが有利である。従来、これは、潜在的な熱出力容量で、またはその付近で一定の熱出力によって達成される。多くの地熱システムは、このように90%を超える容量係数で動作し、「ベースロード」動作と呼ばれることもある。開示された方法は、高い容量係数を可能にすると同時に、一定の出力ではなく柔軟なオンデマンドのエネルギー出力を提供する。
【0231】
回収のために、作動流体がループLを通って循環され、出口坑井20を出て発電デバイス50を流れ、発電デバイスは、熱エネルギー及び/もしくは運動エネルギーを、符号132で全体的に参照されるエンドユーザによる使用のための電気に変換し、ならびに/または、本明細書で後述する代替使用のために134で再分配される。示されるように循環されると、作動流体は入口10に再導入される。
【0232】
作動流体は、充填期間中に比較的低い流量で、閉ループLを通って作動流体を循環させることによって、熱的に「充填」されるか、または負荷される。表面下流路内の作動流体の滞留時間が増加し、したがって、流体は、周囲地層38との伝導性熱伝達を介して高温に加熱される。
【0233】
システムは、流量を大幅に増加させ、閉回路Lの高温の表面下部分内の加熱された作動流体の体積を洗い流すことによって「排出」される。放出サイクル中、熱出力は、熱的充填流体の大きな表面下体積及びシステムの過渡的な性質のために、比較的短い持続時間(<24時間)の間、潜在的な熱出力容量を一時的に超える可能性がある。
【0234】
作動流体は、水、超臨界二酸化炭素などを含むことができ、界面活性剤、ポリマー化合物、懸濁液、生物学的添加剤、安定剤、スケーリング防止剤、腐食防止剤、摩擦低減剤、凍結防止化学物質、殺生物剤、炭化水素、アルコール、有機流体及びそれらの組み合わせなどの抗力低減添加剤を含むことができる。他の好適な例は、当業者には理解されよう。作動流体は、表面下の熱特性の変化が決定する場所で動的に組成的に変更されてもよいと考えられる。
【0235】
ここで図46A図46B図46C及び図46Dを参照すると、先にマルチラテラルシステム36と称された相互接続セクション16の可能な配置及び組み合わせの概略図が示されている。この図は、一般に、隣接する相互接続セクションが、分離またはグループ化されたネットワーク及びそれらの組み合わせにおいて、隣接する相互接続セクションに対して対称的、非対称的であり、隣接する相互接続セクションに対して櫛形であり、隣接する相互接続セクションに対して同一平面であり、隣接する相互接続セクションに対して平行平面であり得ることを示している。具体的な幾何学的配置は、温度勾配特性によって異なる。図面は例示的なものにすぎない。好適な変形例は、設計者によって理解されるであろう。
【0236】
図47は、ループLが複数の相互接続セクション16またはマルチラテラルシステム36を含み、一方のセクション16/36の出力136が隣接するセクション16/36の入力10として機能し、発電デバイス50で共通の収集を行う例を示す。このようにして、ループLは、方法の動作のために数珠繋ぎ構成に細分される。
【0237】
図48は、とりわけ、本出願人の同時係属中の国際特許出願第PCT/CA2019/000076号に記載されている閉ループマルチラテラルシステムを使用する例を示す。熱充填または装填サイクルは、作動流体を循環させることを含み、作動流体の一例は、上述のように水であってもよく、約40L/秒で16時間循環させる(典型的には、これは12:00AMから4:00PMまで行われる)。これにより、相互接続セクション16など(前の図で参照されている)は、地層から熱エネルギーを回収することができる。時間枠は、所定の滞留時間の1つの可能な例であり、説明目的のみのためのものである。
【0238】
放出サイクルは、8時間にわたって約160L/秒まで流量を増加させることからなる。この例では、4:00PMから12:00AMまでのピークの夕方のユーザ電力需要の間に発生し、太陽が沈むにつれて網(図示せず)上の太陽光電力が急速に減少している期間と一致する。
【0239】
図49は、3日間の時間枠に焦点を合わせた詳細を示す。流量(黒)は充放出サイクルを示す。WHTは出口坑井16を出る流体温度である。dHはエンタルピーの変化を指す。
【0240】
図から、組み合わされた充填/放出期間にわたる平均流量は、システムがベースロード方式で動作した場合の最適な固定流量にほぼ等しい。この例では、先の図で述べたのと同じ表面下坑井構成は、ベースロード方式で動作する場合、流量が80L/秒に等しいときに最大電気を生成する。専門用語では、システムは、全表面下潜在的熱出力容量で動作する。これは、「充填」サイクル及び「放出」サイクルを組み合わせた平均地熱出力が長期容量を大幅に下回るいくつかの従来技術(PunaのOrmat)との決定的な違いである。
【0241】
充填サイクルは、出口坑井20内の高温流体と比較した、入口坑井10内の低温流体の密度差によって駆動される強力なサーモサイフォンを確立する。充填サイクル中、サーモサイフォン圧力駆動は、所望の流量を維持するために必要とされるよりも高い。したがって、流量は、圧力降下を加えるために流量制御バルブまたは他の装置(図示せず)を使用して出口坑井20の下流の流れをチョークすることによって制御される。
【0242】
放出時には、チョークを解除する(制御バルブを開く)ことで、即座に流量を増加させることができる。このほぼ瞬間的な流量の増加は、急速な上昇能力を可能にする。閉回路ループを通る油圧損失がサーモサイフォン圧力駆動に等しくなるまで、流量を増加させることができる。
【0243】
流れは、寄生電力負荷を必要とするポンプを使用してこのレベルを超えて増加させることができる。しかしながら、圧力駆動の大部分がサーモサイフォン効果によって生成される限り、寄生負荷は実用的に許容される。
【0244】
これらの方法論を使用して、充填及び放出サイクルとループ内の作動流体の滞留時間との両方を介して、電力出力をエンドユーザ要求に一致させるように流量を制御することができる。
【0245】
従来技術の従来の開放型地熱システムまたは多孔質媒体の流れでは、放出中に高流量に達するために必要なポンプ圧力は、許容できないほど高い寄生ポンプ負荷を引き起こし、正味出力のゲインを大幅に低減または排除する。サーモサイフォン圧力駆動に対する回路内の圧力損失の比が約1.5であるときに実用的な限界が達成されることが分かった。システムは、サーモサイフォン圧力駆動の1.5倍未満の油圧損失を有するように設計されなければならない。理想的には、圧力損失はサーモサイフォン駆動の1倍未満であり、流れ全体はサーモサイフォンによって駆動される。したがって、寄生ポンプ負荷はない。
【0246】
エネルギーは、作動流体自体の中に蓄積される。充填サイクル中、放出サイクルに対応するのに十分な作動流体を加熱するのに十分な滞留時間が必要である。例えば、放出サイクルが典型的には8時間である場合、流体回路通過時間は少なくとも8時間(放出サイクル及び充填サイクルの両方にわたって平均化される)でなければならない。
【0247】
充填サイクル中、表面下流路及び出口坑井16に隣接する岩石にエネルギーを一時的に貯蔵することもできる。低流量では、熱は地層12内のより高温の岩石から作動流体に伝導的に伝達され、流体がシステムを通って進むにつれて、より低温の岩石(例えば、出口坑井16では、典型的にはより浅い)に遭遇し、そこでエネルギーが流体からより低温の岩石に伝達され、一時的に貯蔵される。放出サイクル中、平均流体温度は低下し、貯蔵された熱は作動流体に戻される。
【0248】
閉ループは、本明細書で説明するように流れを劇的に変化させるときに悪化する従来の地熱システムの動作上の問題を回避する。例えば、一般的な動作上の問題は、塩水、固体、スケーリング、プラギング及び溶存ガスによって引き起こされる。
【0249】
本明細書に開示されるディスパッチ能力は、極低温空気貯蔵装置(CES)と良好に統合される。処理の流れの一例を以下に示す。CES充電サイクルは、網または同じ場所に配置された再生可能エネルギー(例えば、日中のピーク時間の太陽)からの安価な余剰電力を使用することができる。CESはまた、生成された地熱を使用して充電することができるが、必須ではない。一実施形態では、地熱システムは、充電及び放電サイクルを通して一定量の電気を生成する。放電サイクル中に生成される熱エネルギーの増加は、タービン内で膨張する前に、CESプロセスからの空気流を加熱するように向けられる。
【0250】
ディスパッチ可能な地熱でCESを使用する場合、いくつかの利点がある。熱機関(熱エネルギーを電気に変換する)は、放電サイクルのピーク出力ではなく、充電サイクル専用のサイズになっており、装置及び資本コストを劇的に削減する。
【0251】
わずかな追加設備が、CES設備に熱を供給するために必要とされる。CESは、1日の中で数ピーク時間にわたってしか放電していない。ディスパッチ可能な地熱システムの放電サイクルは、CES放電サイクルと一致し得る。
【0252】
図50は、間欠的な電源による電気網の飽和を緩和するように設計された本発明の一実施形態を示す。この例では、太陽光回収構成138は、ループL(ループ構成または解決策)に、より具体的には142でアレイ140に動作可能に接続される。発電デバイス50は、特定の容量を有する網(図示せず)と電気的に連通している。これは概して参照符号144で示される。
【0253】
以下の例では、ループ構成またはループ解決策は、本明細書で前述した構成、すなわち発電デバイス22を含むことができる熱を持つ地層内の坑井10、20及び相互接続16を包含することを意図している。
【0254】
太陽光は、今日のよりクリーンな形態の電力への移行において主導的な役割を果たしている。
しかしながら、成功は、それ自体の複雑さをもたらし得る。現在、多くの電気網は、より間欠的な電源を吸収することが困難になりつつある点まで、風力及び太陽光で飽和している。必要とされているのは、グリーンディスパッチ可能電力のスケーラブルな形態である。幸いにも、その解決策に今や到達した。これは、Eavor-Lightと呼ばれ、我々の他の解決策のいくつかとは異なり、新規またはさらには既存の太陽光プラントを補完するように特別に設計されている。
【0255】
典型的な10MWのループLユニットは、ORCを有する5MWの表面下ベースロード解決策と、10MWにスケールされた表面設備とを組み合わせたものである。これは、ループLによって生成されるエネルギーの固有のディスパッチ能力を促進するためである。これは、より多くのループ構成Lを単純に追加することによってさらにスケーリングすることができる。例として、200MWのループLの構成は、以下の動作データを有する。
【0256】
【表2】
【0257】
太陽光のみの解決策
200MWの太陽光ファームでは、その間欠的な性質のため、平均してわずか40MWしか生産しない。平均発電量を3.5倍または平均でさらに100MW増加させることが望まれる場合、太陽光負荷率が10%~25%の範囲になるという単純な理由で、追加の500MWの太陽光ファーム及び追加の500MWの伝送容量を追加しなければならない。
残念なことに、これは表面設置面積を3.5倍増加させることを含むだけでなく、伝送ネットワークを3.5倍にアップグレードする(またはより望ましくないことに、新しい太陽光ファームへの新しい伝送線を構築すること)必要もある。これは、増加した容量のほとんどが、平均価格を大幅に下回ることが達成可能な時間帯に生産されるため、さらに悪化する。
【0258】
ループの解決策
対照的に、現在または計画されている太陽光ファームの既存の表面設置面積の直下に200MWのループの解決策を組み込むことによって、同じ結果を達成することができる。有利には、新たな土地取得は必要とされない。さらに、ループ構成は、太陽光ファームの20%の負荷率付近で電力を生成するためにその固有のディスパッチ能力を使用するため、任意の追加の伝送容量を必要とせず、時間及び費用の両方を節約する。最後に、ループは、真昼の太陽光生産のピーク期間中に多くを生産する伝送容量を持たないが、(ほとんど価値のないことが多い)真昼の生産は、間欠的またはベースロード電力ではなく、ディスパッチ可能な電力に対して達成されるべき価格設定プレミアムのため、魅力的な収益化に移行することができる。
【0259】
太陽光+電池の解決策
もちろん、太陽光は、十分な電池を追加することによってループの解決策を模倣することができるが、かなりのコストがかかる。200MWのループの解決策を単に追加する代わりに、太陽光開発者は500MWの太陽光容量を追加する必要があり、大規模に拡張された表面設置面積及び200MWの8時間の電池貯蔵を必要とし、必然的にコスト及び遅延が増加する。
【0260】
例の変形例として、図51は、原動機として風車146を使用する構成を示す。
【0261】
ここで図52を参照すると、実施例のさらなる変形例が示されている。符号150は、配電センタ152が、154を介して送電網(図示せず)に電気を送達するように配置されている地理的領域を表す。既知のように、網は出力容量を有する。センタ152は、設計された最大発電量及び網上の第2の有効または「実際の」発電量を有する地理的領域150にわたる発電システムに貢献する。
【0262】
明らかに、センタ152間の広範囲の領域150にわたって、センタ152間の大規模なユーザ要求または再配分の急増など、当業者に既知の様々な理由で「ブラウンアウト」または他の送達異常が時折発生する。
【0263】
一貫性のない送達問題を軽減するために、ループ構成Lは、隣接する電気通信センタ152の間など、センタ152の回路上に統合され得る。本明細書の先の例及び仕様と同様に、閉ループ構成を基礎となる地層内に提供して、地層に起因する利用可能な潜在的熱容量から所定のエネルギー出力を生成することができる。
【0264】
次いで、上述したように作動流体を循環させ、当該発電構成50を通して選択的に熱的に放電して、当該送電網全体の容量まで発電を維持することができる。したがって、これにより、上記の異常または不規則性が緩和される。
【0265】
地理的領域及び他の要因に応じて、複数のループ構成Lを含む主分配ハブ156は、センタ152及び個別に配置されたループLの一部または全部を増強または置換することができる。
【符号の説明】
【0266】
10,10’,10’’,10’’’ 入口坑井、12 表面ケーシング、14 中間ケーシング、16 横方向セクション、16 横方向坑井、18 孔空間、20,20’,20’’ 出口坑井、22 ライナ、24 ケーシング、26 亀裂,割目,劈開面、28 化学ライナ、30 ケースセクション、32 入口、34 出口、36,36’,36’’,36’’’ 坑井システム、37 終端部、38 地層、40,40’ マルチラテラル掘削孔接合部、44 延長セクション、46 末端、48 断熱管、50 W字形坑井、52 表面、54 末端、56 単一サイト構成、60 シーラント、64 坑井ループ、66 電力サイクル、68 熱交換器、70 発電機、72 全体工程図、74 空中冷却器、76 タービン、78 発電機、80 横方向相互接続セクション、82 坑井の数珠繋ぎ、84 表面位置、86 注入坑井、88 相互接続部、88 横方向坑井管、90 生産坑井、92 リレーまたは数珠繋ぎシーケンシング、94 集中位置、96 ドリルストリング、98 流体、100 管、102 流体、104 環状部、106 ビット、108 岩石、110 環状部、112 ケーシング、114 本発明の一実施形態の概略図、116,118,120,122,124 信号デバイス、16A,16A’,16B,16B’,16C,16C’,16D,16D’,16E,16E’,16F 坑井、130 全体的な配置、136 出力、138 太陽光回収構成、140 アレイ、144 網、146 風車、150 地理的領域、152 配電センタ、156 主分配ハブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25-25A】
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46A
図46B
図46C
図46D
図47
図48
図49
図50
図51
図52
【国際調査報告】