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特表2022-539121熱分解油をアップグレードするためにゼオライト上でヘテロポリ酸から多機能触媒を生成するための方法、該触媒およびアップグレード方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】熱分解油をアップグレードするためにゼオライト上でヘテロポリ酸から多機能触媒を生成するための方法、該触媒およびアップグレード方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20220831BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220831BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220831BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220831BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B01J29/78 M
B01J37/02 101Z
B01J37/08
B01J35/10 301A
C10G47/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577141
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2019068539
(87)【国際公開番号】W WO2021002886
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】16/502,633
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミョウ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA07C
4G169BB07A
4G169BB07B
4G169BB07C
4G169BC27A
4G169BC27C
4G169BC54A
4G169BC54C
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC59C
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC67C
4G169BD05A
4G169BD05C
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD07C
4G169CC04
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB19
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC11X
4G169EC12X
4G169EC13X
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB16
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC02
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZC04
4G169ZC06
4G169ZC07
4G169ZC08
4G169ZF01B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H129AA02
4H129CA25
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KB05
4H129KC13X
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KC33X
4H129KC33Y
4H129KC40X
4H129KC40Y
4H129KD12X
4H129KD12Y
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD22X
4H129KD22Y
4H129KD32X
4H129KD32Y
4H129KD37X
4H129KD37Y
4H129NA15
4H129NA37
(57)【要約】
熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含む。ゼオライト担体をこの溶液と接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積または吸着されて、多機能触媒前駆体が生成される。この方法はさらに、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む多機能触媒を生成することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法であって、
少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、前記第1の金属触媒前駆体、前記第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含み、前記接触させることにより、前記ゼオライト担体の外面および細孔表面に前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の触媒前駆体が堆積し、多機能触媒前駆体が生成される、接触させることと、
前記多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、
前記多機能触媒前駆体をか焼して、前記ゼオライト担体の前記外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む前記多機能触媒を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ヘテロポリ酸が、
コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属と、
リン、ケイ素、ヒ素、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸を含み、前記第2の金属触媒前駆体が前記第1のヘテロポリ酸とは異なる第2のヘテロポリ酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘテロポリ酸が、式H3PMo1240を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の金属触媒前駆体が同じヘテロポリ酸であり、前記ヘテロポリ酸が第1の金属と、前記第1の金属とは異なる第2の金属と、少なくとも1つのヘテロ原子とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘテロポリ酸が、デカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライト担体が、2マイクロメートル以下の平均細孔径、および10~70のシリカ対アルミナのモル比を有するナノベータゼオライトを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法によって生成される多機能触媒。
【請求項9】
前記第1の金属触媒がモリブデンを含み、前記第2の金属触媒がコバルトを含む、請求項8に記載の多機能触媒。
【請求項10】
前記ゼオライト担体の前記外面および細孔表面に堆積されたリンをさらに含む、請求項8または9に記載の多機能触媒。
【請求項11】
前記多機能触媒が1グラム当たり10,000マイクロモル未満のアンモニア(μモル(NH3)/g)の酸性度を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の多機能触媒。
【請求項12】
前記多機能触媒が1グラム当たり400平方メートル(m2/g)以下のBET表面積を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の多機能触媒。
【請求項13】
熱分解油をアップグレードするための方法であって、
摂氏500度(℃)未満の反応温度および6メガパスカル(MPa)未満の圧力を含む穏やかな反応条件で、前記熱分解油を多機能触媒と接触させることを含み、
前記熱分解油が多環芳香族化合物を含み、前記多機能触媒が、
少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、前記第1の金属触媒前駆体、前記第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含み、前記接触させることにより、前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の触媒前駆体が前記ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体が生成される、接触させることと、
前記多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、
前記多機能触媒前駆体をか焼して、前記多機能触媒を生成することと、を含み、
前記多機能触媒が前記ゼオライト担体上に担持された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む、プロセスによって生成され、
前記反応条件での前記熱分解油と前記多機能触媒との接触により、前記熱分解油中の前記多環芳香族化合物の少なくとも一部が1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換される、方法。
【請求項14】
前記反応条件で前記熱分解油を前記多機能触媒と接触させることにより、前記熱分解油中の前記多環芳香族化合物の前記一部が、後続の化学反応工程を実施することなく、単一工程でC6~C8芳香族化合物に変換される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱分解油が300℃~450℃の温度で前記多機能触媒に接触される、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月3日に出願された米国出願第16/502,633号の優先権を主張し、その開示全体は参照により組み込まれる。
【0002】
本明細書は、一般に、多機能触媒および熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
原油は、1つ以上の水素化処理プロセスを介して有益な化学中間体および生成物に変換できる。水素化処理プロセスには、原油中のより大きな炭化水素が分解されてより小さな炭化水素を形成する蒸気分解が含まれ得る。蒸気分解単位は、熱分解油と呼ばれるボトムストリームを生成する。熱分解油は、原油原料と比較して芳香族化合物の濃度が高くなっている可能性がある。多くの原油処理施設では、この熱分解油が燃料として燃焼されている。しかしながら、熱分解油に含まれる芳香族化合物は、有益な化学中間体およびビルディングブロックに変換可能である。例えば、熱分解油由来の芳香族化合物をキシレンに変換することができ、キシレンは、テレフタル酸を生成するための最初のビルディングブロックとなり、次いでポリエステルの生成に使用できる。熱分解油に含まれる芳香族化合物は、他の多くの有益な芳香族中間体を生成するために使用できる。これらの有益な芳香族中間体に対する市場の需要は、成長を続けている。
【発明の概要】
【0004】
したがって、熱分解油をアップグレードするための改良された多機能触媒に対する継続的な必要性が存在する。蒸気分解プロセスからの熱分解油は、熱分解油中の多環芳香族化合物を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、その他の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換するよう作用可能な触媒と熱分解油を接触させることによって有益な芳香族中間体を生成するようにアップグレードされ得る。熱分解油をアップグレードするように作用可能な既存の触媒は、触媒担体上に2つ以上の金属が担持されている多金属水素化分解触媒を含み得る。これらの多金属水素化分解触媒は、通常、メタレート水和物、金属硝酸塩、および他の従来の金属前駆体などの従来の金属前駆体から調製される。
【0005】
従来の金属前駆体から調製されたこれらの多金属水素化分解触媒を使用すると、摂氏380度(℃)~400℃の範囲内の反応温度および6メガパスカル(MPa)~8MPaの圧力で、大きな芳香族化合物(8個を超える炭素原子)をC6~C8芳香族化合物に変換し得る。6MPa~8MPaの範囲内で圧力を維持するには、施設のより大きな圧力抵抗が必要になり得、より低い圧力のシステムと比較してより多くのエネルギーを消費し得る。言い換えれば、熱分解油をアップグレードするために既存の多金属水素化分解触媒を使用するには、より高い作動圧力に対応する高価な機器が必要であり、圧力を6MPa以上に維持するためにより多くのエネルギーを消費し得る。従来の金属触媒前駆体から調製されたこれらの既存の多金属水素化分解触媒を使用してアップグレードする場合、圧力を6MPa未満に下げると、C6~C8芳香族化合物の収率が大幅に低下し得る。
【0006】
本開示は、熱分解油をアップグレードするための、金属前駆体のうちの少なくとも1つに対してヘテロポリ酸を使用して調製される多機能触媒、多機能触媒を作製する方法、および多機能触媒を使用して熱分解油をアップグレードする方法に関する。本開示の多機能触媒は、既存の多金属水素化分解触媒を使用する熱分解油のアップグレードと比較して、低い反応圧力での熱分解油のアップグレードから、高い収率のC6~C8芳香族化合物を生成し得る。本開示の多機能触媒は、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることによって調製することができ、第1または第2の金属触媒前駆体のうちの少なくとも1つはヘテロポリ酸である。ヘテロポリ酸は、少なくとも酸性水素、遷移金属、少なくとも1つのヘテロ原子、および酸素を含む化合物である。従来の金属前駆体の代わりに、ヘテロポリ酸を金属前駆体のうちの少なくとも1つのために使用して多機能触媒を調製すると、熱分解油のアップグレードに現在使用されている多金属水素化分解触媒と比較して、低い反応圧力でC6~C8芳香族化合物の高い収率を達成する多機能触媒が生成されることが発見された。収率の向上および作動圧力の低下により、効率が向上し、熱分解油をアップグレードするプロセスの資本コストおよび運用コストが低減され得る。
【0007】
本開示の1つ以上の態様によれば、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を生成する方法は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み得る。第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸を含み得、接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体が生成され得る。この方法は、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む多機能触媒を生成することと、をさらに含み得る。本開示の態様では、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、本開示の方法によって作製された多機能触媒であり得る。
【0008】
本開示の1つ以上の他の態様によれば、熱分解油をアップグレードする方法は、摂氏500度(℃)未満の反応温度および6メガパスカル(MPa)未満の圧力を含む穏やかな反応条件で熱分解油を多機能触媒と接触させることを含み得る。熱分解油は、多環芳香族化合物を含み得る。多機能触媒は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含む、接触させること、を含み、接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体を生成する。多機能触媒を生成するためのプロセスは、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、多機能触媒を生成することとをさらに含み得る。多機能触媒は、ゼオライト担体上に担持された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含み得る。反応条件での熱分解油と多機能触媒との接触により、熱分解油中の多環芳香族化合物の少なくとも一部が1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換され得る。
【0009】
記載された実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明白であるか、または以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、および添付の図面を含む記載された実施形態を実施することによって認識される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の特定の態様の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと、最もよく理解することができる。
【0011】
図1】本開示に記載の1つ以上の実施形態による、熱分解油をアップグレードするための反応器システムを概略的に示す。
図2】本開示に記載の1つ以上の実施形態による、原油を蒸気分解するための蒸気分解プロセスから得られる熱分解油の組成例をグラフで示す。
図3】本開示に記載の1つ以上の実施形態による、実施例におけるモデル熱分解油をアップグレードするための反応器システムを概略的に示す。
【0012】
図1および3の簡略化した概略図および説明の記載の目的のために、特定の化学処理操作の技術分野の当業者に使用され、熟知され得る多数のバルブ、温度センサ、流量計、圧力調整器、電子コントローラ、ポンプなどは含まれない。さらに、バルブ、パイプ、ポンプ、撹拌機、熱交換器、計装、内部容器構造、または他の下位システムなどの、典型的な化学処理操作に含まれることが多い付随する構成要素は、示されていない場合がある。示されていないとしても、これらの構成要素が、開示された本実施形態の趣旨および範囲内にあることを理解されたい。しかしながら、本開示に記載されているものなどの作動構成要素は、本開示に記載の実施形態に追加され得る。
【0013】
図面中の矢印は、プロセスストリームを指す。しかしながら、矢印は、2つ以上のシステム構成要素間でプロセスストリームを移送させるように機能し得る移送線を同等に指し得る。加えて、システム構成要素に接続する矢印は、各々の所与のシステム構成要素の入口または出口を定義し得る。矢印の方向は、矢印によって示される物理的移送線内に含有されるストリームの材料の主な移動方向に概ね対応する。さらに、2つ以上のシステム構成要素を接続しない矢印は、示されたシステムから出る生成物ストリームまたは示されたシステムに入るシステム入口ストリームを示し得る。生成物ストリームは、付随する化学処理システムでさらに処理され得るか、または最終生成物として商業化され得る。
【0014】
加えて、図面の矢印は、あるシステム構成要素から別のシステム構成要素にストリームを搬送するプロセス工程を概略的に示し得る。例えば、あるシステム構成要素から別のシステム構成要素を指し示す矢印は、あるシステム構成要素から「流出する」または「除去される」プロセスストリームの含有物を含み得るシステム構成要素流出物を別のシステム構成要素に「送る」こと、およびその生成物ストリームの含有物を別のシステム構成要素に「導入する」ことを表す。
【0015】
図1および3の概略的なフロー図で2つ以上の線が交差するとき、2つ以上のプロセスストリームが「混合される」または「組み合わせられる」ことを理解されたい。混合または組み合わせは、両ストリームを、分離単位、反応器、または他のシステム構成要素などの同様のシステム構成要素に直接導入することによって混合することも含み得る。例えば、2つのストリームが、システム構成要素に流入する前に、直接、組み合わせられるように図示されるとき、ストリームが、等価的に、システム構成要素内に導入されてシステム構成要素内で混合され得ることを理解されたい。
【0016】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に示される。可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号を使用して、同じまたは類似の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態は、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒に関する。多機能触媒には、ゼオライト担体に担持された複数の金属触媒が含まれる。本開示の多機能触媒は、金属触媒前駆体のうちの少なくとも1つにヘテロポリ酸を使用して調製することができる。金属触媒前駆体にヘテロポリ酸を使用して作製された本開示の熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、熱分解油のアップグレードから、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレンなどの有益な芳香族化合物のより高い収率を提供し得る。加えて、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、熱分解油をアップグレードするための既存の市販の触媒と比較して、より低い反応圧力で熱分解油のアップグレードを実施することを可能にし得る。
【0018】
本開示で使用される場合、「C6~C8芳香族化合物」という用語は、置換の有無にかかわらず、6~8個の炭素原子の芳香環を有する1つ以上の化合物を指し得る。「BTEX」という用語は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレン、およびオルトキシレンの任意の組み合わせを指し得る。
【0019】
本開示で使用される場合、「キシレン」という用語は、接頭辞パラ、メタ、またはオルトなどの異性体の指定なしで使用される場合、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレン、およびこれらのキシレン異性体の混合物のうちの1つ以上を指し得る。
【0020】
本開示で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、プロセスストリームの流れの方向に対する単位操作の相対的な位置付けを指す。システムを流れるプロセスストリームが第2の単位操作に遭遇する前に第1の単位操作に遭遇した場合、システムの第1の単位操作は、第2の単位操作の「上流」とみなされる。同様に、システムを流れるプロセスストリームが第2の単位操作に遭遇する前に第1の単位操作に遭遇した場合、第2の単位操作は、第1の単位操作の「下流」とみなされる。
【0021】
ここで図1を参照すると、熱分解油12をアップグレードするためのシステム10が概略的に示されている。熱分解油12をアップグレードするためのシステム10は、反応器単位20と、反応器単位20の下流にある分離単位30とを含み得る。反応器単位20は、1つまたは複数の反応器を含み得、熱分解油12を反応ゾーン14内の触媒と接触させて、アップグレードされた流出物22を生成するように作用可能であり得る。触媒は、本開示の多機能触媒であり得る。アップグレードされた流出物22は、1つまたは複数の分離プロセスまたは単位操作を含み得る、分離単位30に送られ得る。分離単位30は、アップグレードされた流出物22を、BTEX含有ストリームおよび大きな沸点留分34などの1つまたは複数の生成物ストリームに分離するように作用可能であり得る。分離単位30は、アップグレードされた流出物22をC6~C8芳香族ストリーム32および大きな沸点留分34に分離するように図1に示されているが、当然のことながら、分離単位30は、アップグレードされた流出物22を複数の生成物ストリームに分離するよう操作可能であり、このストリームのうちの1つは、C6~C8芳香族ストリーム32を含み得る。
【0022】
熱分解油12は、多環芳香族化合物などの芳香族化合物が豊富な炭化水素処理施設からのストリームであり得る。いくつかの実施形態において、熱分解油は、蒸気分解プロセスからのボトムストリームであり得る。熱分解油12は、単芳香族化合物および多芳香族化合物を含み得る。多芳香族化合物は、2、3、4、5、6、7、8、または8を超える芳香族環構造を含む芳香族化合物を含み得る。熱分解油12はまた、飽和炭化水素などであるがこれに限定されない他の成分を含み得る。図2を参照すると、サウジアラビアからの蒸気分解原油から生成される典型的な熱分解油の組成が示されている。図2に示すように、熱分解油は、モノ芳香族化合物、ジ芳香族化合物、トリ芳香族化合物、テトラ芳香族化合物、ペンタ芳香族化合物、ヘキサ芳香族化合物、および7つ以上の芳香環を有する芳香族化合物(ヘプタおよびそれ以上の芳香族化合物)を含み得る。熱分解油は、図2に示されるように、高濃度の二芳香族化合物および7つを超える芳香環を有する芳香族化合物を含み得る。いくつかの実施形態において、多芳香族化合物に富む熱分解油は、熱分解油の単位重量に基づいて、50重量パーセント(重量%)以上の多芳香族化合物、例えば、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、またはさらに80重量%以上の多芳香族化合物油を含み得る。熱分解油はまた、低濃度の硫黄および硫黄化合物を有し得る。熱分解油は、500重量百万分率(ppmw)以下、例えば、400ppmw以下、またはさらに300ppmw以下の硫黄および硫黄含有化合物の濃度を有し得る。
【0023】
熱分解油中の多芳香族化合物は、反応温度および圧力で触媒と接触することにより、C6~C8芳香族化合物にアップグレードし得る。ジ芳香族化合物および多芳香族化合物をベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのC6~C8芳香族化合物に変換することは、複数の同期反応および選択的反応を含み得る複雑な反応であり、化合物中のすべてではなく1つの芳香環の選択的水素化、その後の飽和ナフテン環の開環、水素脱アルキル化、およびトランスアルキル化を含み得る。
【0024】
熱分解油をアップグレードするためのこの複雑な一連の同期反応は、少なくとも触媒遷移金属を有する多金属触媒を使用して触媒することができる。従来のアップグレードプロセスでは、熱分解油をアップグレードするために使用される触媒は、多金属水素化分解触媒であり得る。これらの多金属水素化分解触媒は、メタレート水和物、金属硝酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、他の従来の金属前駆体、またはこれらの従来の金属前駆体の組み合わせなどの従来の金属前駆体を使用して合成されることが多い。
【0025】
従来の金属前駆体から作製されたこれらの多金属水素化分解触媒を使用すると、380℃~400℃の範囲の反応温度および6メガパスカル(MPa)~8MPaの圧力で、大きな芳香族化合物(8炭素原子を超える)を、これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(BTEX)などのC6~C8芳香族化合物に変換できる。圧力を6MPa~8MPaの範囲に維持するには、施設の大きな耐圧性が必要になり得、より低い反応圧力で行われる反応と比較して、より多くのエネルギーを消費し得る。言い換えれば、熱分解油をアップグレードするために既存の多金属水素化分解触媒を使用すると、より高い作動圧力に対応する高価な機器が必要になり得、圧力を6MPa以上に維持するためにより多くのエネルギーを消費し得る。加えて、これらの既存の多金属水素化分解触媒を使用するC6~C8芳香族化合物の収率は低い。圧力を6MPa未満に下げると、既存の多金属水素化分解触媒を使用してアップグレードする場合、C6~C8芳香族化合物の収率をさらに下げることができる。
【0026】
前述のように、本開示は、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒に関し、多機能触媒は、多機能触媒のうちの1つ以上の金属触媒の金属前駆体として1つ以上のヘテロポリ酸を利用することによって生成される。熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含む、接触させること、を含み得る。ゼオライト担体を溶液と接触させることにより、ゼオライト担体の外面および細孔表面に第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体の堆積または吸着が生じて、多機能触媒前駆体が生成され得る。この方法は、多機能触媒前駆体から過剰の溶液および溶媒を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む多機能触媒を生成することと、をさらに含み得る。
【0027】
本開示の方法によって作製された多機能触媒は、既存の多金属水素化分解触媒と比較して、熱分解油をアップグレードすることからのBTEXの収率を増加させることができる。加えて、既存の多金属水素化分解触媒と比較して、本開示の方法によって作製された多機能触媒はまた、同じ反応温度および低減された反応圧力、例えば、5MPa以下の反応圧力で実施される熱分解油のアップグレードを可能にし得る。本開示の多機能触媒によって可能になる低減された反応圧力により、熱分解油をアップグレードするためのシステムの資本コストおよび運用コストが低減され得る。
【0028】
多機能触媒を作製する方法は、ゼオライト担体を提供することを含み得る。ゼオライト担体は、2マイクロメートル(μm)以下、またはさらに1μm以下の平均細孔径を有するナノゼオライトであり得る。ゼオライト担体は、10以上、例えば、20以上、30以上、40以上、50以上、または60以上のシリカ(SiO2)対アルミナ(Al23)のモル比を有し得る。ゼオライト担体は、70以下、例えば、60以下、50以下、40以下、30以下、またはさらに20以下のSiO2対Al23のモル比を有し得る。ゼオライト担体は、10~70のSiO2対Al23のモル比を有し得る。いくつかの実施形態において、ゼオライト担体は、10~60、10~50、10~40、20~70、20~60、20~50、20~40、30~70、30~60、30~50、40~70、40~60、50~70、または10~30のSiO2対Al23のモル比を有し得る。いくつかの実施形態において、ゼオライト担体は、ベータゼオライト担体であり得る。いくつかの実施形態において、ゼオライト担体は、2μm以下の平均細孔径を有するナノベータゼオライト担体であり得る。
【0029】
熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法は、金属触媒前駆体のうちの少なくとも1つがヘテロポリ酸である湿式含浸法であり得る。この方法は、少なくとも第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、および溶媒を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み得る。溶液はまた、リン含有化合物を含み得る。第1の金属触媒前駆体は、第1の金属を含み得、第2の金属触媒前駆体は、第1の金属とは異なる第2の金属を含み得る。第1の金属および第2の金属は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の元素の周期表の第5、6、7、8、9、および10族の遷移金属などであるがこれらに限定されない遷移金属であり得る。いくつかの実施形態では、第1の金属触媒前駆体の第1の金属は、コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される金属であり得る。いくつかの実施形態では、第2の金属触媒前駆体の第2の金属は、コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される金属であり得、かつ第1の金属とは異なり得る。
【0030】
第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸であり得る。ヘテロポリ酸は、コバルト、モリブデン、またはコバルトとモリブデンの組み合わせ、リン(P)、ケイ素(Si)、ヒ素(As)、ゲルマニウム(Ge)、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、および1つ以上の酸性水素を含み得る。本開示で使用される場合、「酸性水素」という用語は、溶液中のヘテロポリ酸から解離して陽イオンを形成する傾向を有し得るヘテロポリ酸の水素原子を指し得る。ヘテロポリ酸はまた、酸素を含み得る。第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方に適したヘテロポリ酸は、一般式XM1240 n-を有するKeggin構造、または一般式XM1882 n-を有するDawson構造を有し得、式中、Xは、リン、ケイ素、ヒ素、ゲルマニウム、またはこれらの組み合わせから選択されるヘテロ原子であり、Mは、モリブデンおよび任意選択で、コバルト、バナジウム、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり、n-は、ヘテロポリ酸の陰イオンの電荷を示す整数である。ヘテロポリ酸の例には、リンモリブデン酸ヘテロポリ酸(H3PMo1240)、シリコモリブデン酸ヘテロポリ酸(H4SiMo1240)、デカモリブジコバルト酸ヘテロポリ酸(H6[Co2Mo10384])、H4[PCoMo1140]、H4[PVMo1140]、H5[PV2Mo1040]、H7[PV4Mo840]、H9[PV6Mo640]、H3[AsMo1240]、H4[AsCoMo1140]、H5[AsCo2Mo1040、H4[AsVMo1140]、H5[AsV2Mo1040、H7[AsV4Mo840]、H9[AsV6Mo640]、H5[SiCoMo1140]、H6[SiCo2Mo1040]、H5[SiVMo1140]、H6[SiV2Mo1040]、H10[SiV6Mo640]、H6[P2Mo1882]、他のヘテロポリ酸、これらのヘテロポリ酸の塩、またはヘテロポリ酸の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらのヘテロポリ酸の塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硝酸塩、硫酸塩、またはヘテロポリ酸の他の塩が含まれ得る。アルカリ金属には、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。アルカリ土類金属には、マグネシウム、カルシウム、またはこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘテロポリ酸は、式H3[PMo1240]を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、ヘテロポリ酸は、化学式H6[Co2Mo10384]を有するデカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、ヘテロポリ酸は、化学式H4[SiMo1240]を有するシリコモリブデン酸ヘテロポリ酸であり得る。いくつかの実施形態において、第1の金属触媒前駆体、第2の触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩などのヘテロポリ酸の金属塩であり得る。
【0031】
前述のように、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸であり得る。いくつかの実施形態では、第1の金属触媒前駆体は、ヘテロポリ酸を含み得、第2の金属触媒前駆体は、非ヘテロポリ酸前駆体を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体の両方は、ヘテロポリ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の金属触媒前駆体は、第1のヘテロポリ酸を含み得、第2の金属触媒前駆体は、第1のヘテロポリ酸とは異なる第2のヘテロポリ酸を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1の金属触媒前駆体は、金属としてモリブデンを含む第1のヘテロポリ酸を含み得、第2の金属触媒前駆体は、金属としてコバルトを含む第2のヘテロポリ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体は、同じヘテロポリ酸を含み得、ヘテロポリ酸は、第1の金属、第1の金属とは異なる第2の金属、および少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶液は、化学式H6[Co2Mo10384]を有するデカモリブジコバルト酸ヘテロポリ酸を含み得、これは、コバルトおよびモリブデンの両方を含み、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体の両方として機能し得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1の金属触媒前駆体または第2の金属前駆体のうちの1つは、非ヘテロポリ酸金属触媒前駆体、例えば、メタレート水和物、金属硝酸塩、および他の非ヘテロポリ酸前駆体を含み得る。溶液はまた、リン含有化合物、例えば、リン酸、亜リン酸、または他のリン含有化合物を含み得るが、これらに限定されない。
【0033】
第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体は、溶媒に分散または溶解して、溶液を形成し得る。溶媒は、水であってよい。溶媒は、さらに1つ以上の有機溶媒、例えば、有機アルコールまたは他の有機溶媒を含み得るが、これらに限定されない。ヘテロポリ酸を溶媒と組み合わせて溶液を生成する前に、ヘテロポリ酸のうちの1つ以上を脱水し得る。溶液は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積または吸着される第1の金属触媒前駆体をもたらすのに十分な濃度の第1の金属触媒前駆体を有し得る。溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、またはさらに10重量%以上の第1の金属触媒前駆体を有し得る。溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、20重量%以下、15重量%以下、またはさらに12重量%以下の第1の金属触媒前駆体を有し得る。いくつかの実施形態では、溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の第1の金属触媒前駆体、例えば、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、2重量%~20重量%、2重量%~15重量%、2重量%から10重量%、または2重量%~5量%の第1の金属触媒前駆体を含み得る。
【0034】
溶液は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積または吸着される第2の金属触媒前駆体をもたらすのに十分な濃度の第2の金属触媒前駆体を有し得る。溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、またはさらに10重量%以上の第2の金属触媒前駆体を有し得る。溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、20重量%以下、15重量%以下、またはさらに12重量%以下の第2の金属触媒前駆体を有し得る。いくつかの実施形態では、溶液は、ゼオライト担体と接触する前の溶液の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の第2の金属触媒前駆体、例えば、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、2重量%~20重量%、2重量%~15重量%、2重量%~10重量%、または2重量%~5重量%の第2の金属触媒前駆体を含み得る。
【0035】
溶液は、調製され得、ゼオライト担体は、周囲条件で溶液と接触し得る。ゼオライト担体を溶液と接触させる前に、溶液を一定期間混合することができる。溶液中に分散されたゼオライト担体を含む混合物は、ゼオライト担体の外面および細孔表面への第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体の十分な吸着または堆積を提供するように十分な時間混合され得る。第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることにより、溶液中に分散した多機能触媒前駆体の混合物が生じ得る。混合物はまた、ゼオライト担体の外面および細孔表面に吸着されない残りの第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、および他のいかなる成分も含み得る。多機能触媒前駆体は、ゼオライト担体の外面または細孔表面に堆積または吸着された、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含み得る。
【0036】
前述のように、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させた後、溶液または溶媒などの過剰な液体を混合物から除去して、多機能触媒前駆体を生成することができる。液体成分を除去することにより、多機能触媒前駆体から過剰な溶液が除去され、多機能触媒前駆体を乾燥させることを含み得る。多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することにより、混合物がデカンテーション、濾過、真空濾過、またはこれらの組み合わせに供されることが含まれ得る。いくつかの実施形態では、混合物から液体を除去することにより、25℃~90℃の温度での混合物の真空濾過が含まれ得る。多機能触媒前駆体を乾燥することにより、多機能触媒前駆体が溶媒の沸点以上の温度に、例えば、90℃~200℃の温度に維持されることが含まれ得る。乾燥することは、多機能触媒前駆体の総重量の1重量%未満のレベルまで溶媒を除去するのに十分な乾燥期間で実施することができる。乾燥期間は、1時間~24時間、例えば2時間~12時間であり得る。乾燥することにより、溶媒の蒸発により多機能触媒からさらなる溶媒が除去され得る。いくつかの実施形態において、溶媒は水であってもよく、乾燥することは、1時間以上の乾燥期間の間、100℃以上の温度で多機能触媒前駆体を維持することを含み得る。
【0037】
前述のように、この方法は、多機能触媒前駆体をか焼して、本開示の多機能触媒を生成することをさらに含み得る。多機能触媒前駆体をか焼することは、多機能触媒前駆体から過剰の溶液および溶媒を除去した後に実施することができる。多機能触媒前駆体は、500℃~600℃の温度で、4時間~6時間のか焼期間でか焼されて、多機能触媒を生成することができる。
【0038】
本開示に記載される方法は、ゼオライト担体の外面および細孔表面への第1および第2の触媒前駆体の湿式含浸法に基づく。当然のことながら、金属触媒前駆体のうちの1つ以上にヘテロポリ酸を使用して多機能触媒を作製する他の方法も使用でき得る。熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製するそのような方法には、例えば、共沈法を含み得るが、これに限定されない。
【0039】
本開示に記載の方法によって生成された熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に担持された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含み得る。第1の金属触媒および第2の金属触媒は、それぞれ、第1の金属触媒および第2の金属触媒について本開示で前述した金属のいずれかを含み得る。多機能触媒はまた、ゼオライト担体の外面または細孔表面に担持されたヘテロポリ酸からのヘテロ原子(リン、ケイ素、ヒ素、またはこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない)を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の金属触媒はモリブデンであり得、第2の金属触媒はコバルトまたはバナジウムであり得るが、少なくともモリブデンはヘテロポリ酸によって提供される。いくつかの実施形態において、コバルトはまた、モリブデンに寄与するヘテロポリ酸と同じかまたは異なるヘテロポリ酸によって提供され得る。いくつかの実施形態において、多機能触媒は、ナノベータゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されたモリブデン、コバルト、およびリンを含み得、少なくともモリブデンおよびリンは、ヘテロポリ酸によって提供される。いくつかの実施形態では、多機能触媒は、ナノベータゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されたモリブデン、コバルト、およびケイ素を含み得る。
【0040】
金属触媒前駆体のうちの少なくとも1つにヘテロポリ酸を使用すると、従来の金属触媒前駆体を使用して調製された熱分解油をアップグレードするための市販の触媒と比較して、多機能触媒の酸性度および表面積が低減し得る。1つ以上のヘテロポリ酸を使用して作製された本開示の熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、同じ金属触媒種を有するが従来の金属触媒前駆体で作製された既存の市販の触媒の酸性度よりも低い酸性度を有し得る。多機能性触媒は、アンモニア1グラム当たり10,000マイクロモル(μモル(NH3)/g)未満、7,000μモル(NH3)/g以下、5,000μモル(NH3)/g以下、またはさらに4,000μモル(NH3)/g以下の酸性度を有し得る。いくつかの実施形態において、多機能触媒は、1,000μモル(NH3)/g~5,000μモル(NH3)/gの酸性度を有し得る。
【0041】
金属触媒前駆体のうちの少なくとも1つに対して1つ以上のヘテロポリ酸で生成する熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、従来の金属触媒前駆体で熱分解油生成物をアップグレードするための既存の市販の触媒と比較して、低減したBET表面積を有し得る。本明細書で使用される場合、「BET表面積」とは、ASTM D-6556に従ってBET(Brunauer Emmett Teller)窒素吸着法によって測定される金属酸化物粒子の平均表面積を指す。多機能触媒は、多機能触媒を調製する前に、ゼオライト担体のBET表面積よりも小さいBET表面積を有し得る。多機能触媒は、400平方メートル/グラム(m2/g)以下、375m2/g以下、350m2/g以下、またはさらに325m2/g以下のBET面積を有し得る。いくつかの実施形態において、多機能触媒は、200m2/g~400m2/g、例えば、200m2/g~375m2/g、200m2/g~350m2/g、または200m2/g~325m2/gのBET表面積を有し得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み得るプロセスによって生成される多機能触媒であり得る。第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸を含み得る。ゼオライト担体を溶液と接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体が生成され得る。ゼオライト担体は、ゼオライト担体のいずれも含み得、本開示で前述されたゼオライト担体のいかなる特徴も有し得る。溶液、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、および1つ以上のヘテロポリ酸は、これらについて本開示で前述された組成、特性、または特徴のいずれも有し得る。この方法は、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、多機能触媒を生成することと、をさらに含み得る。接触工程、過剰溶液の除去工程、およびか焼工程のそれぞれは、これらのプロセス工程のそれぞれに関して本開示で前述されたいずれの工程条件下で実施され得る。この方法によって生成される多機能触媒は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積される少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含み得る。多機能触媒は、多機能触媒について本開示で前述された組成物または特性のいずれも有し得る。
【0043】
本開示に記載の方法によって調製される多機能触媒を使用して、熱分解油をアップグレードし、これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、他の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせなどの1つ以上の有益な芳香族中間体を生成することができる。いくつかの実施形態において、熱分解油をアップグレードするための方法は、500℃未満の反応温度および6MPa未満の圧力を含む穏やかな反応条件で熱分解油を多機能触媒と接触させることを含み得る。熱分解油は、熱分解油について本開示で前述された組成または特徴のいずれも有し得る。いくつかの実施形態において、熱分解油は、多環芳香族化合物を含み得る。多機能触媒は、本開示に記載の多機能触媒を作製するための方法またはプロセスによって作製することができ、多機能触媒について本開示に記載のいかなる特性、組成、または属性も有し得る。いくつかの実施形態において、多機能触媒は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、または両方がヘテロポリ酸を含む、プロセスによって生成され得る。接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積または吸着されて、多機能触媒前駆体が生成され得る。多機能触媒を生成するためのプロセスは、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、多機能触媒を生成することと、を含み得る。多機能触媒は、ゼオライト担体上に担持された第1の金属触媒および第2の金属触媒を含み得る。
【0044】
反応条件での熱分解油と多機能触媒との接触により、熱分解油中の多環芳香族化合物の少なくとも一部が1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換され得る。1つ以上のC6~C8化合物に変換された多環芳香族化合物の少なくとも一部は、熱分解油中の多環芳香族化合物の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または80%を含み得る。C6~C8芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、反応条件で熱分解油を多機能触媒と接触させることにより、後続の化学反応工程を実施することなく、熱分解油中の多環芳香族化合物の一部が単一工程でC6~C8芳香族化合物に変換され得る。
【0045】
熱分解油と多機能触媒を接触させることは、従来の金属触媒前駆体を使用して調製された市販の触媒を使用して熱分解油をアップグレードするプロセスの反応温度に匹敵する範囲の反応温度で実施し得る。いくつかの実施形態において、熱分解油は、500℃以下、450℃以下、またはさらに400℃以下の反応温度で多機能触媒と接触させることができる。熱分解油は、350℃以上、380℃以上、またはさらに400℃以上の反応温度で多機能触媒と接触させることができる。いくつかの実施形態において、熱分解油は、350℃~500℃、350℃~450℃、350℃~400℃、380℃~500℃、380℃~450℃、380℃~400℃、400℃~500℃、または400℃~425℃の反応温度で多機能触媒と接触させることができる。
【0046】
熱分解油を多機能触媒と接触させることは、従来の金属触媒前駆体を使用して調製された市販の触媒を使用して熱分解油をアップグレードするために必要な反応圧力よりも低い反応圧力で実施され得る。いくつかの実施形態において、熱分解油は、6MPa未満、5MPa以下、またはさらに4MPa以下の反応圧力で多機能触媒と接触させることができる。いくつかの実施形態において、熱分解油は、0.1MPa以上、1MPa以上、またはさらに2MPa以上の反応圧力で多機能触媒と接触させることができる。いくつかの実施形態では、熱分解油は、0.1MPa~5MPa、0.1MPa~4MPa、1MPa~5MPa、1MPa~4MPa、2MPa~5MPa、またはさらに2MPa~4MPaの反応圧力で多機能触媒と接触させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、熱分解油をアップグレードする方法は、アップグレードされた熱分解油を多機能触媒から分離することをさらに含み得る。アップグレードされた熱分解油を多機能触媒から分離することは、粒子状固体から流体を分離する任意の既知の方法またはプロセスを使用して実施され得る。
【0048】
ヘテロポリ酸を使用して調製される本開示の多機能触媒と接触させることによる熱分解油のアップグレードは、従来の金属触媒前駆体を使用して調製された市販の触媒と接触させることによる熱分解油のアップグレードと比較して、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上のC6~C8芳香族化合物の高い収率を生成し得る。いくつかの実施形態において、ヘテロポリ酸を使用して調製される本開示の多機能触媒と熱分解油を接触させることによる熱分解油のアップグレードは、多機能触媒から分離されアップグレードされる熱分解油の総重量に基づいて、30重量%以上、32重量%以上、またはさらに35重量%以上のC6~C8芳香族化合物の混合収率を生成し得る。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を生成するための本開示の方法、および多機能触媒を使用して熱分解油をアップグレードするための方法を示す。実施例は、特に特定の質量流量、ストリームの組成、温度、圧力、タイムオンストリーム、ゼオライト担体上の触媒金属の量、または実験を実施する目的で固定した他の変数に関して、本開示の範囲をいかなる形であれ制限することを意図するものではない。
【0050】
比較例1:ナノベータゼオライト担体
比較例1では、外面または細孔表面に堆積された、金属化合物を含まないベータゼオライト担体粒子を、ベースラインと比較して示した。ベータゼオライト自体が、炭化水素の接触分解の少なくともいくらかの活性を提供することに留意されたい。比較例1のベータゼオライト担体は、Zeolyst Internationalから入手したCP814Eナノベータゼオライトであった。ナノベータゼオライト担体粒子は、シリカ(SiO2)のモル量をアルミナ(Al23)のモル量で割った比が25であった。
【0051】
比較例2:熱分解油をアップグレードするための比較触媒
比較例2では、ナノベータゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された第1の触媒金属および第2の触媒金属を含む比較触媒を、従来の金属前駆体を使用し、ヘテロポリ酸を使用せずに調製した。第1の金属触媒前駆体は、化学式[(NH36Mo724・4H2O]を有するモリブデン酸アンモニウム四水和物であり、Sigma-Aldrichから入手した。第2の金属触媒前駆体は、化学式[Co(NO32・6H2O]を有する硝酸コバルト(II)六水和物であり、これもSigma-Aldrichから入手した。ナノベータゼオライト触媒担体は、比較例1のナノベータゼオライト触媒担体であった。
【0052】
比較例2の比較触媒を、比較例1からのナノベータゼオライト触媒担体10グラムを丸底フラスコに加えることにより生成した。3.08グラムの[(NH36Mo724・4H2O]を50ミリリットル(mL)の蒸留水に溶解することにより、溶液Aを調製した。次に、2.65グラムの第2の金属触媒前駆体[Co(NO32・6H2O]を50mLの蒸留水に溶解することにより、溶液Bを調製した。[(NH36Mo724・4H2O]および[Co(NO32・6H2O]の量を、それぞれ、3重量%Coおよび12重量%Moの比較例2の比較触媒における最終金属充填を提供するために選択した。次に、溶液Aと溶液Bを一緒に混合し、丸底フラスコ内のナノベータゼオライト触媒担体に加えた。混合溶液およびナノベータゼオライト触媒担体を2時間混合した。真空下50℃の温度で第1および第2の金属触媒前駆体を含浸させたナノベータゼオライト触媒担体から水を除去し、固体サンプルを100℃の温度で一晩乾燥させた。次に、固体サンプルを500℃の温度で5時間か焼して、比較例2の比較触媒を得た。
【0053】
比較例3:熱分解油をアップグレードするための比較リン含有触媒
比較例3では、ナノベータゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された第1の触媒金属、第2の触媒金属、およびリンを含む比較リン含有触媒を、従来の金属前駆体を使用し、ヘテロポリ酸を使用せずに調製した。第1の金属触媒前駆体は、化学式[(NH36Mo724・4H2O]を有するモリブデン酸アンモニウム四水和物であり、Sigma-Aldrichから入手した。第2の金属触媒前駆体は、化学式[Co(NO32・6H2O]を有する硝酸コバルト(II)六水和物であり、これもSigma-Aldrichから入手した。ナノベータゼオライト触媒担体は、比較例1のナノベータゼオライト触媒担体であった。Sigma-Aldrichから入手したリン酸(H3PO4)を使用して、リンを組み込んだ。
【0054】
比較例3の比較リン含有触媒を、比較例1からのナノベータゼオライト触媒担体10グラムを丸底フラスコに加えることにより生成した。3.08グラムの第1の金属触媒前駆体[((NH36Mo724・4H2O]を50ミリリットル(mL)の蒸留水に溶解することにより、溶液Aを調製した。次に、2.65グラムの第2の金属触媒前駆体[Co(NO32・6H2O]を50mLの蒸留水に溶解することにより、溶液Bを調製した。[(NH36Mo724・4H2O]および[Co(NO32・6H2O]の量を、それぞれ、3重量%Coおよび12重量%Moの比較例3の比較触媒における最終金属充填を提供するために選択した。次に、溶液Aおよび溶液Bを一緒に混合し、0.15グラムのリン酸を混合溶液に溶解して溶液Cを生成した。次に、溶液Cを丸底フラスコのナノベータゼオライト触媒担体に加えて、2時間混合した。真空下50℃の温度で第1および第2の金属触媒前駆体を含浸させたナノベータゼオライト触媒担体から水を除去し、固体サンプルを100℃の温度で一晩乾燥させた。次に、固体サンプルを500℃の温度で5時間か焼して、比較例3の比較リン含有触媒を得た。
【0055】
実施例4:ヘテロポリ酸を使用して調製された熱分解油をアップグレードするための多機能触媒。
実施例4では、ナノベータゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された第1の金属触媒、第2の金属触媒、およびリンを含む、本開示による多機能触媒を、第1の金属触媒前駆体用のヘテロポリ酸を使用して調製した。第1の金属触媒前駆体は、化学式[H3PMo1240]を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸であり、Sigma-Aldrichから入手した。第2の金属触媒前駆体は、化学式[Co(NO32・6H2O]を有する硝酸コバルト(II)六水和物であり、これもSigma-Aldrichから入手した。ナノベータゼオライト触媒担体は、比較例1のナノベータゼオライト触媒担体であった。
【0056】
実施例4の多機能触媒を、比較例1からの10グラムのナノベータゼオライト触媒担体を丸底フラスコに加えることによって生成した。2.89グラムの第1の金属触媒前駆体[H3PMo1240]のヘテロポリ酸を50ミリリットル(mL)の蒸留水に溶解することにより、溶液Aを調製した。2.24グラムの第2の金属触媒前駆体[Co(NO32・6H2O]を蒸留水50mLに溶解することにより、溶液Bを調製した。第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体の量を、比較例2および3の比較触媒と同じ金属充填(3重量%のCoおよび12重量%のMo)を提供するように計算した。次に、溶液Aと溶液Bを一緒に混合し、丸底フラスコ内のナノベータゼオライト触媒担体に加えた。混合溶液とナノベータゼオライト触媒担体を2時間混合した。真空下50℃の温度で第1および第2の金属触媒前駆体を含浸させたナノベータゼオライト触媒担体から水を除去し、固体サンプルを100℃の温度で一晩乾燥させた。次に、固体サンプルを500℃の温度で5時間か焼して、実施例4の多機能触媒を得た。
【0057】
実施例5:熱分解油のアップグレード
実施例5では、比較例1、2、および3の比較触媒ならびに実施例4の多機能触媒を使用して、モデル熱分解油組成物をアップグレードして、少なくともベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレンを生成した。モデル熱分解油として、Sigma-Aldrichから入手した1-メチルナフタレンを使用した。
【0058】
図3を参照して、モデル熱分解油のアップグレードを実施した装置100を概略的に示す。装置100は、ゾーン111に触媒が装填された固定床反応器110を含んでいた。固定床反応器110は、固定床反応器110を一定の温度に維持するために、ホットボックス112内に維持した。モデル熱分解油(1-メチルナフタレン)を含む液体原料116は、液体ポンプ120を使用して固定床反応器110に導入された。水素118および窒素119も、固定床反応器110の上流の液体原料116に加えることができる。液体原料116は、熱交換器130を通過して、液体原料116の温度を調整してから、固定床反応器110に送る。液体原料116を、固定床反応器110内の触媒と接触させ、接触させることにより、少なくともモデル熱分解油(1-メチルナフタレン)の反応を引き起こし、モデル熱分解油をアップグレードさせて、少なくともベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレンを含む液体生成物ストリーム114を生成する。固定床反応器110の作動条件を表1に示す。
【0059】
液体生成物ストリーム114は、固定床反応器110から液体ガス分離器140に送られ、そこで液体生成物ストリーム114は、より低い沸騰温度成分を含むガス留分142と、より高い沸点留分および未反応モデル熱分解油(1-メチルナフタレン)を含む液体留分144とに分離された。液体留分144を組成について分析した。ガス留分142を、ガス留分142の組成を分析するためにオンラインガスクロマトグラフに送った。次に、ガス留分142および液体留分144の組成を使用して、液体生成物ストリーム114の各成分の収率を決定した。比較例1~3および実施例4の各触媒について固定床反応器で生成された各化合物の収率を、続いて表1に示す。表1の各成分の収率は、液体生成物ストリーム114の総質量流量に基づく重量パーセントで示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、実施例4の多機能触媒は、モデル熱分解油(1-メチルナフタレン)をベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン(BTEX)にアップグレードするための最高の性能を示した。実施例4の多機能触媒を使用して得られた総BTEX収率は、36.7重量%であり、これは、比較例2の比較触媒よりも34%を超える改善である。実施例4の多機能触媒はまた、1-メチルナフタレンの最大の全体的な変換をもたらした。したがって、同じ温度および圧力で、本出願の多機能触媒は、熱分解油をアップグレードするために使用される従来の触媒と比較して、より低い圧力でより高い収率のBTEX化合物を提供する。実施例4の多機能触媒は、リンを含んでいたけれども、実施例4の多機能触媒は、リンを含まなかった比較例2の比較触媒よりも低い触媒の酸性度を示した。したがって、実施例4の多機能触媒において第1の金属触媒前駆体として使用されたヘテロポリ酸の構造によって提供された酸性度の低下により、比較例2および3の比較触媒と比較して、BTEXの収率が増加し得る。
【0062】
本開示の第1の態様において、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることを含み得る。第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方は、ヘテロポリ酸を含み得る。接触させることにより、ゼオライト担体の外面および細孔表面に第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体が堆積され、多機能触媒前駆体が生成され得る。この方法は、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、多機能触媒前駆体をか焼して、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む多機能触媒を生成することと、をさらに含み得る。
【0063】
本開示の第2の態様において、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含む、接触させること、を含むプロセスにより生成された多機能触媒を含み得る。接触することにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体が、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体が生成され得る。このプロセスは、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去すること、多機能触媒前駆体をか焼して、多機能触媒を生成することをさらに含み得る。このプロセスによって作製される多機能触媒は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含み得る。
【0064】
本開示の第3の態様は、ヘテロポリ酸が、コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属と、リン、ケイ素、ヒ素、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを含む、第1または第2の態様のいずれかを含み得る。
【0065】
本開示の第4の態様は、第1の金属触媒前駆体がヘテロポリ酸を含む、第1~第3の態様のいずれかを含み得る。
【0066】
本開示の第5の態様は、第1の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸を含み、第2の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸とは異なる第2のヘテロポリ酸を含む、第1~第4の態様のいずれかを含み得る。
【0067】
本開示の第6の態様は、ヘテロポリ酸が式H3PMo1240を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含む、第1~第5の態様のいずれかを含み得る。
【0068】
本開示の第7の態様は、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体が同じヘテロポリ酸であり、ヘテロポリ酸は、第1の金属と、第1の金属と異なり、少なくとも1つのヘテロ原子を有する第2の金属とを含む、第1~第5の態様のいずれかを含み得る。
【0069】
本開示の第8の態様は、ヘテロポリ酸がデカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含む、第7の態様を含み得る。
【0070】
本開示の第9の態様は、ゼオライト担体を溶液と接触させる前にヘテロポリ酸を脱水することをさらに含む、第1~第8の態様のいずれかを含み得る。
【0071】
本開示の第10の態様は、多機能触媒前駆体が500~600℃の温度で4時間~6時間の間か焼されて、多機能触媒を生成する、第1~第9の態様のいずれかを含み得る。
【0072】
本開示の第11の態様は、ゼオライト担体が2マイクロメートル以下の平均細孔径を有するナノベータゼオライトを含む、第1~第10の態様のいずれかを含み得る。
【0073】
本開示の第12の態様は、ゼオライト担体が10:70のシリカ対アルミナのモル比を含む、第1~第11の態様のいずれかを含み得る。
【0074】
本開示の第13の態様は、第1~第12の態様のいずれかに従って生成された多機能触媒であり得る。
【0075】
本開示の第14の態様は、第1の金属触媒がモリブデンを含み、第2の金属触媒がコバルトを含む、第1~第13の態様のいずれかを含み得る。
【0076】
本開示の第15の態様は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されたリンをさらに含む、第1~第14の態様のいずれかを含み得る。
【0077】
本開示の第16の態様は、多機能触媒が1グラム当たり10,000マイクロモル未満のアンモニア(μモル(NH3)/g)の酸性度を有する、第1~第15の態様のいずれかを含み得る。
【0078】
本開示の第17の態様は、多機能触媒が1000μモル(NH3)/g~5000μモル(NH3)/gの酸性度を有する、第1~第16の態様のいずれかを含み得る。
【0079】
本開示の第18の態様は、多機能触媒が1グラム当たり400平方メートル(m2/g)以下のBET表面積を有する、第1~第17の態様のいずれかを含み得る。
【0080】
本発明の第19の態様は、複合触媒は200m2/g~400m2/gのBET表面積を有する、第1~第18の態様のいずれかを含むことができる。
【0081】
本開示の第20の態様において、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒は、1つ以上のコバルト化合物、1つ以上のモリブデン化合物、およびゼオライト担体上に担持されたリンを含み、ここで、モリブデン化合物、コバルト化合物、またはリンはヘテロポリ酸前駆体のうちの少なくとも1つによって提供されます。
【0082】
本開示の第21の態様は、多機能触媒が1グラム当たり10,000マイクロモル未満のアンモニア(μモル(NH3)/g)の酸性度を有する第20の態様を含み得る。
【0083】
本開示の第22の態様は、多機能触媒が1000μモル(NH3)/g~5000μモル(NH3)/gの酸性度を有する、第20または第21の態様のいずれかを含み得る。
【0084】
本開示の第23の態様は、多機能触媒が1グラム当たり400平方メートル(m2/g)以下のBET表面積を有する、第20~第22の態様のいずれかを含み得る。
【0085】
本開示の第24の態様は、多機能触媒が200m2/g~400m2/gのBET表面積を有する、第20~第23の態様のいずれかを含み得る。
【0086】
本開示の第25の態様は、ヘテロポリ酸が式H3PMo1240を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含む、第20~第24の態様のいずれかを含み得る。
【0087】
本開示の第26の態様は、ヘテロポリ酸がデカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含む、第20~第25の態様のいずれかを含み得る。
【0088】
本開示の第27の態様は、ゼオライト担体が2マイクロメートル以下の平均細孔径を有するナノベータゼオライトを含む、第20~第26の態様のいずれかを含み得る。
【0089】
本開示の第28の態様は、ゼオライト担体が10~70のシリカ対アルミナのモル比を含む、第20~第27の態様のいずれかを含み得る。
【0090】
本開示の第29の態様において、熱分解油をアップグレードする方法は、摂氏500度(℃)未満の反応温度および6メガパスカル(MPa)未満の圧力を含む穏やかな反応条件で熱分解油を多機能触媒と接触させることを含む。熱分解油は、多環芳香族化合物を含み得る。多機能触媒は、少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、第1の金属触媒前駆体、第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含む、接触させること、を含むプロセスによって生成され得る。接触させることにより、第1の金属触媒前駆体および第2の触媒前駆体がゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体を生成し得る。多機能触媒を生成するためのプロセスは、多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去すること、多機能触媒前駆体をか焼して、多機能触媒を生成することをさらに含み得る。多機能触媒は、ゼオライト担体上に担持された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む。反応条件での熱分解油と多機能触媒との接触により、熱分解油中の多環芳香族化合物の少なくとも一部が1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換される。
【0091】
本開示の第30の態様は、C6~C8芳香族化合物がベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、第29の態様を含み得る。
【0092】
本開示の第31の態様は、熱分解油を反応条件で多機能触媒と接触させることにより、後続の化学反応工程を実施することなく、熱分解油中の多環芳香族化合物の一部が単一工程でC6~C8芳香族化合物に変換される、第29または第30の態様を含み得る。
【0093】
本開示の第33の態様は、熱分解油を多機能触媒と接触させることにより、少なくとも30%のC6~C8芳香族化合物の収率をもたらす、第29~第31の態様のいずれかを含み得る。
【0094】
本開示の第34の態様は、多機能触媒からアップグレードされた熱分解油を分離することをさらに含む、第29~第33の態様のいずれかを含み得る。
【0095】
本開示の第35の態様は、熱分解油が300℃~450℃の温度で多機能触媒と接触される、第29~第34の態様のいずれかを含み得る。
【0096】
本開示の第36の態様は、熱分解油が0.1MPA~5MPAの圧力で多機能触媒と接触される、第29~第35の態様のいずれかを含み得る。
【0097】
本開示の第37の態様は、ヘテロポリ酸が、コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属と、リン、ケイ素、ヒ素、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを含む、第29~36の態様のいずれかを含み得る。
【0098】
本開示の第38の態様は、第1の金属触媒前駆体がヘテロポリ酸を含む、第29~第37の態様のいずれかを含み得る。
【0099】
本開示の第39の態様は、第1の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸を含み、第2の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸とは異なる第2のヘテロポリ酸を含む、第29~第38の態様のいずれかを含み得る。
【0100】
本開示の第40の態様は、ヘテロポリ酸が式H3PMo1240を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含む、第29~第39の態様のいずれかを含み得る。
【0101】
本開示の第41の態様は、第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体が同じヘテロポリ酸であり、ヘテロポリ酸は第1の金属、第1の金属とは異なる第2の金属、および少なくとも1つのヘテロ原子を含む、第29~第39の態様のいずれかを含み得る。
【0102】
本開示の第42の態様は、ヘテロポリ酸がデカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含む、第41の態様を含み得る。
【0103】
本開示の第43の態様は、ゼオライト担体を溶液と接触させる前にヘテロポリ酸を脱水することをさらに含む、第29~第42の態様のいずれかを含み得る。
【0104】
本開示の第44の態様は、多機能触媒前駆体が500~600℃の温度で4時間~6時間の間か焼されて、多機能触媒を生成する、第1~第43の態様のいずれかを含み得る。
【0105】
本開示の第45の態様は、ゼオライト担体が2マイクロメートル以下の平均細孔径を有するナノベータゼオライトを含む、第29~第44の態様のいずれかを含み得る。
【0106】
本開示の第46の態様は、ゼオライト担体が10~70のシリカ対アルミナのモル比を含む、第29~45の態様のいずれかを含み得る。
【0107】
本開示の第47の態様は、第1の金属触媒がモリブデンを含み、第2の金属触媒がコバルトを含む、第29~第46の態様のいずれかを含み得る。
【0108】
本開示の第48の態様は、ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されたリンをさらに含む、第29~第47の態様のいずれかを含み得る。
【0109】
本開示の第49の態様は、多機能触媒が1グラム当たり10,000マイクロモル未満のアンモニア(μモル(NH3)/g)の酸性度を有する、第21~48の態様のいずれかを含み得る。
【0110】
本開示の第50の態様は、多機能触媒が1000μモル(NH3)/g~5000μモル(NH3)/gの酸性度を有する、第29~第49の態様のいずれかを含み得る。
【0111】
本開示の第51の態様は、多機能触媒が1グラム当たり400平方メートル(m2/g)以下のBET表面積を有する、第29~第50の態様のいずれかを含み得る。
【0112】
本開示の第52の態様は、多機能触媒が200m2/g~400m2/gのBET表面積を有する、第29~第51の態様のいずれかを含み得る。
【0113】
ここで、熱分解油をアップグレードするための多機能触媒の様々な態様、金属触媒前駆体としてヘテロポリ酸を使用して熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法、およびこれらの方法を使用して熱分解油をアップグレードする方法が記載され、そのような態様が様々な他の態様と組み合わせて利用でき得ることを理解されたい。
【0114】
本開示を通して、多機能触媒の様々な特性および特徴、ならびに多機能触媒を作製し、熱分解油をアップグレードするための方法のための様々な処理パラメーターおよび作動条件の範囲が提供される。1つ以上の明示的な範囲が提供されているとき、すべての可能な組み合わせの明示的な列挙を提供することが禁止的であるため、その範囲内で形成される個々の値および部分範囲も提供されるように意図されることが理解されるであろう。例えば、提供された1~10の範囲はまた、1、2、3、4.2、および6.8などの個々の値、ならびに1~8、2~4、6~9、および1.3~5.6などの提供された範囲内で形成され得る範囲をすべて含む。
【0115】
特許請求された主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に様々な修正および変形がなされ得ることは、当業者には明らかであるはずである。したがって、そのような修正および変形が添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に入る限り、本明細書が様々な記載された実施形態の修正および変形を網羅することが意図される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油をアップグレードするための多機能触媒を作製する方法であって、
少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、前記第1の金属触媒前駆体、前記第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含み、前記接触させることにより、前記ゼオライト担体の外面および細孔表面に前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の金属触媒前駆体が堆積し、多機能触媒前駆体が生成される、接触させることと、
前記多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、
前記多機能触媒前駆体をか焼して、前記ゼオライト担体の前記外面および細孔表面に堆積された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む前記多機能触媒を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ヘテロポリ酸が、
コバルト、モリブデン、バナジウム、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属と、
リン、ケイ素、ヒ素、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の金属触媒前駆体が第1のヘテロポリ酸を含み、前記第2の金属触媒前駆体が前記第1のヘテロポリ酸とは異なる第2のヘテロポリ酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘテロポリ酸が、式H3PMo1240を有するリンモリブデン酸ヘテロポリ酸を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の金属触媒前駆体が同じヘテロポリ酸であり、前記ヘテロポリ酸が第1の金属と、前記第1の金属とは異なる第2の金属と、少なくとも1つのヘテロ原子とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘテロポリ酸が、デカモリブドジコバルト酸ヘテロポリ酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライト担体が、2マイクロメートル以下の平均細孔径、および10~70のシリカ対アルミナのモル比を有するナノベータゼオライトを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法によって生成される多機能触媒。
【請求項9】
前記第1の金属触媒がモリブデンを含み、前記第2の金属触媒がコバルトを含む、請求項8に記載の多機能触媒。
【請求項10】
前記ゼオライト担体の前記外面および細孔表面に堆積されたリンをさらに含む、請求項8または9に記載の多機能触媒。
【請求項11】
前記多機能触媒が1グラム当たり10,000マイクロモル未満のアンモニア(μモル(NH3)/g)の酸性度を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の多機能触媒。
【請求項12】
前記多機能触媒が1グラム当たり400平方メートル(m2/g)以下のBET表面積を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の多機能触媒。
【請求項13】
熱分解油をアップグレードするための方法であって、
摂氏500度(℃)未満の反応温度および6メガパスカル(MPa)未満の圧力を含む穏やかな反応条件で、前記熱分解油を多機能触媒と接触させることを含み、
前記熱分解油が多環芳香族化合物を含み、前記多機能触媒が、
少なくとも第1の金属触媒前駆体および第2の金属触媒前駆体を含む溶液とゼオライト担体を接触させることであって、前記第1の金属触媒前駆体、前記第2の金属触媒前駆体、またはそれらの両方がヘテロポリ酸を含み、前記接触させることにより、前記第1の金属触媒前駆体および前記第2の触媒前駆体が前記ゼオライト担体の外面および細孔表面に堆積されて、多機能触媒前駆体が生成される、接触させることと、
前記多機能触媒前駆体から過剰な溶液を除去することと、
前記多機能触媒前駆体をか焼して、前記多機能触媒を生成することと、を含み、
前記多機能触媒が前記ゼオライト担体上に担持された少なくとも第1の金属触媒および第2の金属触媒を含む、プロセスによって生成され、
前記反応条件での前記熱分解油と前記多機能触媒との接触により、前記熱分解油中の前記多環芳香族化合物の少なくとも一部が1つ以上のC6~C8芳香族化合物に変換される、方法。
【請求項14】
前記反応条件で前記熱分解油を前記多機能触媒と接触させることにより、前記熱分解油中の前記多環芳香族化合物の前記一部が、後続の化学反応工程を実施することなく、単一工程でC6~C8芳香族化合物に変換される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱分解油が300℃~450℃の温度で前記多機能触媒に接触される、請求項13または14に記載の方法。
【国際調査報告】