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特表2022-539145血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20220831BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20220831BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20220831BHJP
【FI】
A61F2/90
A61B17/12
A61F2/966
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577344
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 CN2020098312
(87)【国際公開番号】W WO2020259640
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910580250.X
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ハンイー
(72)【発明者】
【氏名】ティェン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ポン,チン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チンフェン
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD65
4C160MM33
4C160NN04
4C267AA44
4C267AA54
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267EE03
(57)【要約】
血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器が開示される。血管インプラントの送達中、血管インプラントは送達シャフト(4)に対して軸方向に静止して維持され、それによって、血管インプラントが外れることを防止し、送達をより安定させる。血管インプラントは第1係合構造を含み、送達デバイスは送達シャフト(4)およびチャンバーを含む。送達シャフト(4)は第2係合構造を含み、第2係合構造は第1係合構造と離脱可能に保持係合するよう構成される。第1係合構造および送達シャフト(4)の双方は、チャンバー内に収容されるよう構成される。第1係合構造および送達シャフト(4)がチャンバー内に収容されている場合に、第1係合構造はチャンバーによって閉じ込められ、それによって、第2係合構造と保持係合したままとなり、それによって、血管インプラントが送達シャフト(4)に対してロックされる。第1係合構造がチャンバーから除去された場合に、それはもはやそれによって閉じ込められず、したがって第2係合構造から離脱可能となり、したがって血管インプラントが送達シャフト(4)から軸方向にロック解除される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達シャフトおよびチャンバーを備える送達デバイスによる標的部位への送達のための血管インプラントであって、
前記血管インプラントは、前記送達シャフトと離脱可能に保持係合するよう構成される第1係合構造を画定する近位端を備え、
前記第1係合構造および前記送達シャフトは、前記チャンバーに収容可能であり、または、前記チャンバーから除去可能であり、
前記第1係合構造および前記送達シャフトが前記チャンバーに収容されている場合に、前記第1係合構造は前記チャンバーによって閉じ込められて前記送達シャフトと保持係合されたままであり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトに対して軸方向にロックされ、
前記第1係合構造が前記チャンバーから除去された場合に、前記第1係合構造はもはや前記チャンバーによって閉じ込められず、前記送達シャフトから離脱可能であり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトから軸方向にロック解除される、
血管インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の血管インプラントであって、
前記第1係合構造は少なくとも1つの第1係合部材を備え、
前記少なくとも1つの第1係合部材は、前記チャンバーによって閉じ込められている場合に、前記送達シャフトと保持係合されたままであり、前記チャンバーによってもはや閉じ込められていない場合に、前記送達シャフトから離脱可能となるよう構成され、
前記第1係合部材は隙間を画定し、前記隙間は、
前記第1係合構造および前記送達シャフトが前記チャンバーに収容されている場合に、前記第1係合部材を前記送達シャフトと保持係合に維持するために、前記隙間を前記送達シャフトが通過することを禁止し、
前記第1係合構造が前記チャンバーから除去された場合に、前記第1係合部材を前記送達シャフトから離脱可能とするために、前記送達シャフトが前記隙間を通過することを可能とする、
ように構成される、血管インプラント。
【請求項3】
請求項2に記載の血管インプラントであって、前記第1係合部材は、2つ以上の保持突起を備え、それらは前記血管インプラントの周方向に沿って互いに離間し、それらの間に前記隙間を画定する、血管インプラント。
【請求項4】
請求項3に記載の血管インプラントであって、前記保持突起は、前記血管インプラントの軸方向に沿って変形可能に構成され、それによって、前記第1係合部材は前記血管インプラントの前記軸方向に沿って変形可能となる、血管インプラント。
【請求項5】
請求項3に記載の血管インプラントであって、前記2つ以上の保持突起のうち少なくとも1つは、放射線不透過性の金属材料から製造される、血管インプラント。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の血管インプラントであって、前記第1係合構造は、2つ以上の前記第1係合部材を備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間する、血管インプラント。
【請求項7】
請求項6に記載の血管インプラントであって、前記2つ以上の第1係合部材内の前記保持突起は、前記血管インプラントの前記軸方向に互いに整列する、血管インプラント。
【請求項8】
請求項3~5のいずれか一項に記載の血管インプラントであって、
前記第1係合構造は2つ以上の第1係合部材グループを備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間し、
前記第1係合部材グループのそれぞれは、2つ以上の前記第1係合部材を備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間し、
前記第1係合部材グループのいずれか1つ内の前記保持突起は、前記血管インプラントの前記軸方向に互いに整列し、かつ、前記血管インプラントの前記軸方向に前記第1係合部材グループの別のいずれか1つ内の前記保持突起からずらされる、
血管インプラント。
【請求項9】
請求項1に記載の血管インプラントであって、前記血管インプラントは自己拡張インプラントである、血管インプラント。
【請求項10】
請求項1に記載の血管インプラントであって、前記血管インプラントは、ステント、塞栓コイルまたは動脈瘤オクルーダーである、血管インプラント。
【請求項11】
血管インプラントを標的部位に送達するための送達デバイスであって、
前記送達手段は、
第2係合構造を備える送達シャフトであって、前記第2係合構造は、前記血管インプラントの近位端と離脱可能に保持係合するよう構成される、送達シャフトと、
前記送達シャフトと、前記血管インプラントの前記近位端とを内部に収容するよう構成されるチャンバーと、
を備え、
前記血管インプラントの前記近位端と、前記送達シャフトとが、前記チャンバーに収容されている場合に、前記血管インプラントの前記近位端は前記チャンバーによって閉じ込められ、前記第2係合構造と保持係合されたままであり、それによって、前記血管インプラントは前記送達シャフトに対して軸方向にロックされ、
前記血管インプラントの前記近位端が前記チャンバーから除去された場合に、前記血管インプラントの前記近位端はもはや前記チャンバーによって閉じ込められず、したがって前記第2係合構造から離脱可能であり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトから軸方向にロック解除される、
送達デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の送達デバイスであって、
前記第2係合構造は、少なくとも1つの第2係合部材を備え、前記少なくとも1つの第2係合部材は、前記血管インプラントの前記近位端と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記送達シャフトは、さらにシャフト本体を備え、前記シャフト本体には、前記第2係合部材として機能する少なくとも1つの突起が設けられ、それによって、前記血管インプラントの前記近位端は、前記少なくとも1つの突起の両側に保持可能となり、または、少なくとも2つの前記突起の間に保持可能となる、
送達デバイス。
【請求項13】
請求項11に記載の送達デバイスであって、
前記第2係合構造は、少なくとも1つの第2係合部材を備え、前記少なくとも1つの第2係合部材は、前記血管インプラントの前記近位端と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記送達シャフトは、さらにシャフト本体を備え、前記シャフト本体内に、前記第2係合部材として機能する少なくとも1つの凹部が設けられ、それによって、前記血管インプラントの前記近位端は前記凹部内に保持可能となる、
送達デバイス。
【請求項14】
請求項12に記載の送達デバイスであって、
前記第2係合部材は、それを通って軸方向に延びる表面窪みを備え、
前記表面窪みは、その内部に前記血管インプラントの一部を収容するよう構成される、
送達デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の送達デバイスであって、2つ以上の前記表面窪みが設けられ、前記第2係合部材の周上に配置される、送達デバイス。
【請求項16】
請求項14に記載の送達デバイスであって、
前記血管インプラントの前記近位端は、少なくとも1つの第1係合部材を備え、
前記少なくとも1つの第1係合部材は、前記第2係合部材と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記第1係合部材は、2つ以上の保持突起を備え、それらは前記血管インプラントの周方向に沿って互いに離間し、それによって、前記2つ以上の保持突起の間に隙間が形成され、
前記血管インプラントの前記近位端と前記送達シャフトとが互いに保持係合し、前記チャンバーに収容されている場合には、前記表面窪みは、前記保持突起のいずれがそれを通過することをも禁止するよう構成される、
送達デバイス。
【請求項17】
請求項11に記載の送達デバイスであって、前記第2係合構造は放射線不透過性の金属材料から製造される、送達デバイス。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか一項に記載の送達デバイスであって、
前記送達デバイスは、さらに閉じ込め部材を備え、
前記閉じ込め部材は、前記チャンバーを備え、前記送達シャフトの上に配置される、
送達デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の送達デバイスであって、
前記送達デバイスはさらに送達鞘を備え、
前記送達鞘は、その内部に前記血管インプラントを装填するよう構成され、
前記送達シャフトは、前記送達鞘内に移動可能に挿入されるよう構成され、
前記送達鞘は、前記閉じ込め部材として機能する、
送達デバイス。
【請求項20】
請求項18に記載の送達デバイスであって、
前記送達デバイスはさらに送達鞘を備え、
前記送達鞘は、その内部に前記血管インプラントを装填するよう構成され、
前記送達シャフトは、前記送達鞘内に移動可能に挿入されるよう構成され、
前記閉じ込め部材は、前記送達鞘内に移動可能に挿入され、前記血管インプラントの前記近位端および前記送達シャフトの双方に被せられるよう構成される、
送達デバイス。
【請求項21】
医療機器であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の血管インプラントと、
請求項11~20のいずれか一項に記載の送達デバイスと、
を備え、
前記血管インプラントの前記第1係合構造は、前記送達シャフトの前記第2係合構造と離脱可能に保持係合するよう構成される、
医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具の分野に関し、より具体的には、血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の動脈瘤を処置するための治療として、最小限の侵襲的干渉は、典型的には、送達デバイスを用いて病変部位に血管インプラント(たとえば、限定しないが、ステント、塞栓コイルまたは動脈瘤オクルーダー)を送達することを含む。送達デバイスは通常は送達シャフトを含み、送達シャフトは血管インプラントと係合して送達鞘内に共に収容され、これによって送達鞘内で該当部位に血管インプラントを送達し、そこでこれを解放できるようになっている。
【0003】
現在、血管インプラントと、送達鞘内でのその送達を可能にする送達シャフトとの係合は、通常、静摩擦によって達成される。すなわち、血管インプラントは収縮されて送達シャフトに被せられ、それによって、それらの間でいかなる機械的な接続もなしに、送達鞘内でそれらが一緒に動くようになっている。しかしながら、実際には、摩擦の大きさを制御するのは難しく、したがって、血管インプラントが外れる(たとえば送達シャフトから脱落する)可能性が高かった。これが起きると、血管インプラントの安定した送達が不可能となり、外科的な結果に悪影響を与える。
【0004】
<発明のサマリー>
この目的のため、本発明は、血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器を提供することを目的とする。血管インプラントは、送達シャフトに対して軸方向に静止して維持され、したがって、外れることなく、より安定して送達される。
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は血管インプラントを提供する。血管インプラントは、送達シャフトおよびチャンバーを備える送達デバイスによる標的部位への送達のための血管インプラントであって、
前記血管インプラントは、前記送達シャフトと離脱可能に保持係合するよう構成される第1係合構造を画定する近位端を備え、
前記第1係合構造および前記送達シャフトは、前記チャンバーに収容可能であり、または、前記チャンバーから除去可能であり、
前記第1係合構造および前記送達シャフトが前記チャンバーに収容されている場合に、前記第1係合構造は前記チャンバーによって閉じ込められて前記送達シャフトと保持係合されたままであり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトに対して軸方向にロックされ、
前記第1係合構造が前記チャンバーから除去された場合に、前記第1係合構造はもはや前記チャンバーによって閉じ込められず、前記送達シャフトから離脱可能であり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトから軸方向にロック解除される。
【0006】
任意選択で、
前記第1係合構造は少なくとも1つの第1係合部材を備え、
前記少なくとも1つの第1係合部材は、前記チャンバーによって閉じ込められている場合に、前記送達シャフトと保持係合されたままであり、前記チャンバーによってもはや閉じ込められていない場合に、前記送達シャフトから離脱可能となるよう構成され、
前記第1係合部材は隙間を画定し、前記隙間は、
前記第1係合構造および前記送達シャフトが前記チャンバーに収容されている場合に、前記第1係合部材を前記送達シャフトと保持係合に維持するために、前記隙間を前記送達シャフトが通過することを禁止し、
前記第1係合構造が前記チャンバーから除去された場合に、前記第1係合部材を前記送達シャフトから離脱可能とするために、前記送達シャフトが前記隙間を通過することを可能とする、
ように構成される。
【0007】
任意選択で、前記第1係合部材は、2つ以上の保持突起を備え、それらは前記血管インプラントの周方向に沿って互いに離間し、それらの間に前記隙間を画定する。
【0008】
任意選択で、前記保持突起は、前記血管インプラントの軸方向に沿って変形可能に構成され、それによって、前記第1係合部材は前記血管インプラントの前記軸方向に沿って変形可能となる。
【0009】
任意選択で、前記2つ以上の保持突起のうち少なくとも1つは、放射線不透過性の金属材料から製造される。
【0010】
任意選択で、前記第1係合構造は、2つ以上の前記第1係合部材を備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間する。
【0011】
任意選択で、前記2つ以上の第1係合部材内の前記保持突起は、前記血管インプラントの前記軸方向に互いに整列する。
【0012】
任意選択で、
前記第1係合構造は2つ以上の第1係合部材グループを備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間し、
前記第1係合部材グループのそれぞれは、2つ以上の前記第1係合部材を備え、それらは前記血管インプラントの軸方向に互いに離間し、
前記第1係合部材グループのいずれか1つ内の前記保持突起は、前記血管インプラントの前記軸方向に互いに整列し、かつ、前記血管インプラントの前記軸方向に前記第1係合部材グループの別のいずれか1つ内の前記保持突起からずらされる。
【0013】
任意選択で、前記血管インプラントは自己拡張インプラントである。
【0014】
任意選択で、前記血管インプラントは、ステント、塞栓コイルまたは動脈瘤オクルーダーである。
【0015】
また、上述の目的を達成するために、本発明は送達デバイスも提供する。送達デバイスは、血管インプラントを標的部位に送達するための送達デバイスであって、
前記送達手段は、
第2係合構造を備える送達シャフトであって、前記第2係合構造は、前記血管インプラントの近位端と離脱可能に保持係合するよう構成される、送達シャフトと、
前記送達シャフトと、前記血管インプラントの前記近位端とを内部に収容するよう構成されるチャンバーと、
を備え、
前記血管インプラントの前記近位端と、前記送達シャフトとが、前記チャンバーに収容されている場合に、前記血管インプラントの前記近位端は前記チャンバーによって閉じ込められ、前記第2係合構造と保持係合されたままであり、それによって、前記血管インプラントは前記送達シャフトに対して軸方向にロックされ、
前記血管インプラントの前記近位端が前記チャンバーから除去された場合に、前記血管インプラントの前記近位端はもはや前記チャンバーによって閉じ込められず、したがって前記第2係合構造から離脱可能であり、それによって、前記血管インプラントが前記送達シャフトから軸方向にロック解除される。
【0016】
任意選択で、
前記第2係合構造は、少なくとも1つの第2係合部材を備え、前記少なくとも1つの第2係合部材は、前記血管インプラントの前記近位端と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記送達シャフトは、さらにシャフト本体を備え、前記シャフト本体には、前記第2係合部材として機能する少なくとも1つの突起が設けられ、それによって、前記血管インプラントの前記近位端は、前記少なくとも1つの突起の両側に保持可能となり、または、少なくとも2つの前記突起の間に保持可能となる。
【0017】
任意選択で、
前記第2係合構造は、少なくとも1つの第2係合部材を備え、前記少なくとも1つの第2係合部材は、前記血管インプラントの前記近位端と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記送達シャフトは、さらにシャフト本体を備え、前記シャフト本体内に、前記第2係合部材として機能する少なくとも1つの凹部が設けられ、それによって、前記血管インプラントの前記近位端は前記凹部内に保持可能となる。
【0018】
任意選択で、
前記第2係合部材は、それを通って軸方向に延びる表面窪みを備え、
前記表面窪みは、その内部に前記血管インプラントの一部を収容するよう構成される。
【0019】
任意選択で、2つ以上の前記表面窪みが設けられ、前記第2係合部材の周上に配置される。
【0020】
任意選択で、
前記血管インプラントの前記近位端は、少なくとも1つの第1係合部材を備え、
前記少なくとも1つの第1係合部材は、前記第2係合部材と離脱可能に保持係合するよう構成され、
前記第1係合部材は、2つ以上の保持突起を備え、それらは前記血管インプラントの周方向に沿って互いに離間し、それによって、前記2つ以上の保持突起の間に隙間が形成され、
前記血管インプラントの前記近位端と前記送達シャフトとが互いに保持係合し、前記チャンバーに収容されている場合には、前記表面窪みは、前記保持突起のいずれがそれを通過することをも禁止するよう構成される。
【0021】
任意選択で、前記第2係合構造は放射線不透過性の金属材料から製造される。
【0022】
任意選択で、
前記送達デバイスは、さらに閉じ込め部材を備え、
前記閉じ込め部材は、前記チャンバーを備え、前記送達シャフトの上に配置される。
【0023】
任意選択で、
前記送達デバイスはさらに送達鞘を備え、
前記送達鞘は、その内部に前記血管インプラントを装填するよう構成され、
前記送達シャフトは、前記送達鞘内に移動可能に挿入されるよう構成され、
前記送達鞘は、前記閉じ込め部材として機能する。
【0024】
任意選択で、
前記送達デバイスはさらに送達鞘を備え、
前記送達鞘は、その内部に前記血管インプラントを装填するよう構成され、
前記送達シャフトは、前記送達鞘内に移動可能に挿入されるよう構成され、
前記閉じ込め部材は、前記送達鞘内に移動可能に挿入され、前記血管インプラントの前記近位端および前記送達シャフトの双方に被せられるよう構成される。
【0025】
上述の目的を達成するために、本発明は医療機器も提供する。医療機器は、
上述の血管インプラントと、
上述のの送達デバイスと、
を備え、
前記血管インプラントの前記第1係合構造は、前記送達シャフトの前記第2係合構造と離脱可能に保持係合するよう構成される。
【0026】
本発明において提供される血管インプラント、送達デバイスおよび医療機器は、以下の利点を有する。
【0027】
第1に、送達デバイス内の送達シャフトと血管インプラントの近位端とを離脱可能に係合保持することにより、血管インプラントは、送達中に送達シャフトに対して軸方向に静止するよう保持される。それによって、送達中に血管インプラントが外れることが回避され、送達がより安定し、結果として外科的複雑性が低減し、外科的安全性が向上し処置の結果が改善される。
【0028】
第2に、医療機器において、送達デバイス内のチャンバーの支援により、送達シャフトに対する血管インプラントの望ましい軸方向ロックおよび送達シャフトからの軸方向ロック解除が容易に実現され、結果として外科的複雑性が低減し、外科的効率が増大し、係合の信頼性が向上する。
【0029】
第3に、血管インプラントの近位端は、好ましくは2つ以上の第1係合部材グループを含み、これらは血管インプラントの軸方向に互いに離間し、異なる第1係合部材グループの保持突起は血管インプラントの軸方向にずらされる。このようにすると、各保持突起は軸方向に離間した異なる周上に閉じ込められ、結果として、血管インプラントおよび送達デバイスの全体のサイズが縮小され、それによって、より小さい送達デバイスによって血管インプラントを送達できる。
【0030】
第4に、送達デバイスは、好ましくは閉じ込め部材を含み、これはチャンバーを提供し、好ましくは送達鞘に移動可能に挿入され、それによって、血管インプラントの近位端において画定される第1係合構造を閉じ込める。それによって、血管インプラントの全体的解放および全体的引き戻しが可能になる。たとえば、標的部位において血管インプラントおよび送達シャフトが送達鞘から押し出された後に、血管インプラントは送達シャフトと係合したままである。このとき、血管インプラントを引き戻し、後に、そうすることが適切であると決定された時点で、再び解放することが可能である。閉じ込め部材と送達シャフトとの相対的移動により、閉じ込め部材の閉じ込めを解放することができ、したがって、送達シャフトからの血管インプラントの係合解除および分離が可能となる。このようにして、血管インプラントをより正確に解放することができ、処置の結果が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態による、自己拡張編組ステントの構造を示す概略図。
図2a】本発明の一実施形態による、自己拡張編組ステントの近位端において形成された保持突起の構造を示す概略図。フィラメントが互いに溶接されている。
図2b】本発明の一実施形態による、自己拡張編組ステントの近位端における保持突起のズームアウト概略図。
図3a】本発明の実施形態による、第2係合部材の変形例の構造を示す概略図。
図3b】本発明の実施形態による、第2係合部材の変形例の構造を示す概略図。
図3c】本発明の実施形態による、第2係合部材の変形例の構造を示す概略図。
図3d】本発明の実施形態による、第2係合部材の変形例の構造を示す概略図。
図4】本発明の実施形態1による、2つの第2係合部材を含む送達シャフトの構造を示す概略図。
図5】本発明の実施形態1による、自己拡張編組ステントと送達デバイスとの間の係合を示す概略図。
図6a】本発明の実施形態1による、第1係合部材内に、隙間がどのように形成されるかを示す概略図。
図6b】本発明の実施形態1による、第2係合部材が、第1係合部材内の隙間の最大スパンより大きい最大径を持つことを示す概略図。
図7】本発明の実施形態2による、自己拡張編組ステントの近位端における保持突起の拡大図。
図8】本発明の実施形態2による、1つの第2係合部材を含む送達シャフトの構造を示す概略図。
図9】本発明の実施形態2による、第1係合部材と第2係合部材との間にどのように保持係合が確立されるかを示す概略図。
図10】本発明の実施形態2による、送達デバイスと自己拡張編組ステントとが互いに係合することを示す概略図。自己拡張編組ステントの近位端は、まだ送達鞘から係合解除されない。
図11】本発明の実施形態3による、自己拡張編組ステントの近位端における保持突起の拡大図。
図12】本発明の実施形態3による、送達デバイスと自己拡張編組ステントとが互いに係合することを示す概略図。自己拡張編組ステントの近位端は、まだ送達鞘から係合解除されない。
図13】自己拡張編組ステントと送達シャフトとが互いに保持係合していることを示す、図12の拡大図。
図14】本発明の実施形態4による、送達デバイスと自己拡張編組ステントとが互いに係合していることを示す概略図。自己拡張編組ステントの近位端は、まだ解放筒から係合解除されない。
【0032】
添付図面において、1はステントを表し、11は近位端を表し、12は遠位端を表し、13は保持突起を表し、14および15は第1係合部材グループを表し、2は第1係合部材を表し、3は第2係合部材を表し、4は送達シャフトを表し、5は送達鞘を表し、6は解放筒を表し、Gは表面窪みを表し、S1、S2およびSはフィラメントを表し、Qは溶接ジョイントを表す。
【0033】
いくつかの視点にわたる類似した参照番号は、同一または同等の特徴を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の目的、利点および特徴は、添付図面とともに作成された、以下のより詳細な説明からより明白となる。図面は、開示される実施形態をより便利かつ明確な方法で説明するのを支援する目的のためだけに、必ずしも正確な寸法を示さない非常に簡素化された形態で提供されるということに留意する。
【0035】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、そうでないと文脈が明確に示す場合を除き、複数の参照対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「または」は、そうでないと文脈が明確に示す場合を除き、概して「および/または」の意味で採用される(「複数」は「2つ以上」、「いくつか」は「1つ以上」)。
【0036】
以下の説明において、用語「遠位」および「近位」は、説明の容易さのために用いられる場合がある。医療器具を説明するのに用いられる場合には、用語「近位」は当該器具を操作するオペレータに近い端を指し、用語「遠位」はオペレータから離れた端を指す。以下の説明は、本発明のより徹底した理解を提供するために、多くの具体的な詳細を示す。しかしながら、本発明は、それらの具体的な詳細のうち1以上を省略して実施できるということが当業者には明白である。他の例では、本発明を不必要に不明確にすることを避けるために、周知の技術的特徴は記載していない。
【0037】
本発明の核となる概念は、標的部位に血管インプラントを送達するための血管インプラントおよび送達デバイスを含む医療機器を提供することであり、送達デバイスは送達シャフトおよびチャンバーを含む。
【0038】
本発明の血管インプラントは、第1係合構造を画定する近位端を有し、本発明の送達デバイス内の送達シャフトは第2係合構造を画定する。第1係合構造は、第2係合構造と離脱可能に保持係合するよう構成され、それによって、血管インプラントは送達シャフトに対して軸方向に静止したままとなる。
【0039】
第1係合構造は、送達シャフトと共にチャンバー内に収容されるよう構成され、それによって、チャンバーによって閉じ込められ、第2係合構造と係合したままとなる。結果として、血管インプラントは送達シャフトに対して軸方向にロックされる。反対に、第1係合構造がチャンバーから解放され、もはやチャンバー内に閉じ込められていない場合には、第2係合構造から離脱可能となり、血管インプラントを送達シャフトから軸方向にロック解除する。このような、血管インプラントと送達シャフトとの間に確立される離脱可能な機械的係合は、血管インプラントの送達中に血管インプラントが外れることを防止し、血管インプラントの安定した送達を可能にする。この結果、外科的操作がより簡単になり、外科的複雑性が低減し、外科的安全性が向上し、処置の結果が改善される。
【0040】
送達デバイスはさらに、チャンバーを画定する閉じ込め部材を含む。閉じ込め部材は、送達シャフトの上に配置されるよう構成される。一実施形態では、送達デバイスはさらに、血管インプラントが装填可能な送達鞘を含む。さらに、送達シャフトは、送達鞘内に移動可能に挿入される。送達鞘は閉じ込め部材として機能してもよい。代替的な実施形態では、閉じ込め部材は、解放筒(送達シャフトに被せられて、第1係合構造および送達シャフトの双方を取り囲むように送達鞘内に移動可能に挿入される)であってもよい。第1係合構造は、第2係合構造との離脱可能な保持係合のための、1つ、2つまたはより多くの第1係合部材を含んでもよい。これに対応して、第2係合構造は、第1係合構造との離脱可能な保持係合のための、1つ、2つまたはより多くの第2係合部材を含んでもよい。
【0041】
本発明によれば、保持係合は、主に以下によって実現されてもよい:
(1)少なくとも2つの第2係合部材の間に、少なくとも1つの第1係合部材を保持すること、
(2)少なくとも2つの第1係合部材の間に、少なくとも1つの第2係合部材を保持すること、および/または、
(3)少なくとも1つの第2係合部材内に、少なくとも1つの第1係合部材を保持すること。
【0042】
実際には、保持係合は、上記3つの方法の1つまたは組み合わせによって実現されてもよい。さらに、単一の保持点によって実現されることに限らず、代替的に2つ以上の保持点を作製し、結果的により強固な係合としてもよい。
【0043】
本発明によれば、血管インプラントは、典型的には、ステント、塞栓コイルまたは動脈瘤オクルーダーのような、血管動脈瘤を処置するためのインプラントである。代替的に、血管拡張処置、血餅捕捉または他の病変体腔の処置に用いられてもよい。たとえば、閉じ込め部材が送達鞘として実装される場合には、本発明の血管インプラントは以下に説明する方法において送達可能である。
【0044】
まず、血管インプラントが、送達シャフトに被せられることにより装填され、その後、それらが一緒に送達鞘内に挿入され、それによって、送達鞘による径方向閉じ込めの作用下で、第1係合構造および第2係合構造が互いに係合したままとなる。結果として、血管インプラントは送達シャフトに対して軸方向にロックされる。
【0045】
続いて、血管インプラントの全体(その近位端を含む)が送達鞘から外に移動するように、送達シャフトによって血管インプラントが前方に押される(すなわち送達される)。結果として、もはや送達鞘によって径方向に閉じ込められなくなり、血管インプラントは拡張し(または拡張し)、第1係合構造および第2係合構造を係合解除させ、それによって血管インプラントを解放可能にする。
【0046】
血管インプラントが送達鞘から外に移動した後の拡張は、自己拡張であってもよく、受動的拡張であってもよい。用語「自己拡張(self-expansion)」は、血管インプラントが自己拡張特性を有し、それによって、拡張または拡張に対する外部制約がない場合に、それ自身で拡張または拡張できることを意味する。用語「受動的拡張(passive expansion)」は、拡張または拡張に対する外部制約がない場合に、血管インプラントが外部機構(バルーン等)によって拡張または拡張されなければならないということを意味する。
【0047】
代替的な実施形態では、閉じ込め部材は、解放筒(送達シャフトに被せられるように、送達鞘内に移動可能に挿入される)である。実際の操作では、解放筒は、以下に詳細に説明するように、血管インプラントの全体的解放および全体的引き出しのために用いられてもよい。これによって、解放されたインプラントの位置および状態を観測し、必要であればその位置を調節することが容易となり、血管インプラントの正確な解放が可能となり、処置結果が改善する。
【0048】
血管インプラントおよび送達デバイスは、さらに、添付図面を参照していくつかの例によって以下に説明される。以下の説明は、血管インプラントがステントであるというコンテキストにおいて行われるが、ステント以外のインプラントにも適用可能となるように、当業者が修正を加えることができる。
【0049】
図1に示すように、血管インプラントはステント1であってもよい。ステント1は、カット構造、編組構造またはそれらの組み合わせを有することができる。さらに、ステント1は、自己拡張式または受動的に拡張可能であってもよい。カット構造は、形状記憶材料または弾性材料(ニッケル・チタン合金を含むがこれに限定されない)から製造可能である。編組構造は、金属材料または高分子材料(ニッケル・チタン合金、ステンレス鋼および高分子ポリマーを含むがこれに限定されない)のフィラメントを編組することによって形成可能である。
【0050】
以下の説明は、主にステントが自己拡張式の編組構造であるというコンテキストにおいて行われるが、自己拡張式の編組構造のステント以外のステントにも適用可能となるように、当業者が修正を加えることができる。
【0051】
続けて図1を参照して、ステント1は、近位端11および反対側の遠位端12を有する。ステント1の近位端は、本発明では限定しないが、単一のフィラメントによって、2つ以上のフィラメントを結合することによって、または、単一のフィラメントを編組することによって、形成可能である。フィラメントセグメントを互いに結合するための例示的手段は、捩り合わせること、接着すること、および、溶接することを含んでもよいが、これらに限定されない。図2aに示す非限定的な例では、近位端11における隣接する2つのフィラメントS1およびS2が、複数の点Qにおいて互いに溶接されてもよい。
【0052】
図2aと共に図2bを参照して、フィラメントS1およびS2のいずれか、または、フィラメントS1およびS2の双方は、さらに、コイル状の筒の形状の保持突起13を形成するように巻かれてもよい。代替的に、保持突起13は、ステント1の近位端11において設けられ、コイル状の筒として巻かれた別のフィラメントから形成されてもよい。さらに代替的には、近位端11において互いに結合したフィラメントに、コイル状の筒の形状の分離した保持突起13が被せられる。本発明は、ステント1の近位端における保持突起13の、いかなる特定の形成にも限定されない。
【0053】
本実施形態では、保持突起13は、コイル状の筒の形状(これに限定されない)の中空の筒状構造であってもよい。代替的な実施形態では、保持突起13は中実構造であってもよく、たとえば2つの結合したフィラメントの近位端に接続される中実円筒であってもよい。したがって、本発明によれば、保持突起13は、それがフィラメントに容易に取り付けられる限り、いかなる特定の構造を有するものにも限定されない。本実施形態では、保持突起13は、好ましくは筒状であり、フィラメントを取り囲み、より好ましくは、コイル状にされていくらかの弾性を有する。コイル状の筒の形状である場合、保持突起13は、ステント1の軸方向に圧縮可能であり、より容易に係合可能な構成となる。保持突起13は、高分子材料または金属材料(ステンレス鋼およびニッケル・チタン合金を含むがこれに限定されない)から形成されてもよい。好ましくは、保持突起13は放射線不透過性の金属材料から製造され、それによって、外科的操作中にステント1の近位端11の位置を確認することが容易となる。
【0054】
本発明の実施形態では、ステント1の近位端11は、少なくとも1つの第1係合部材2(図6a参照)を含む第1係合構造を画定し、これは、チャンバー内に閉じ込められている場合には送達シャフトと係合し、チャンバーの閉じ込めから解放されると送達シャフトから離脱可能となるよう構成される。好ましくは、第1係合部材2は2つ以上の保持突起13を含み、それらはステント1の軸に関して対称に(すなわち、ステント1に関して、周方向に対称または中心対称に)配置され、それによって、各保持突起13の間に隙間(図6aにおいてd1で示す)ができる。この隙間は、主にステントの圧縮および拡張の結果としてサイズが変化してもよい。たとえば、送達鞘として実装される閉じ込め部材の場合には、ステント1は、送達鞘内に装填される前には、未だチャンバーによって径方向に閉じ込めも圧縮もされておらず、このため隙間は、ステント1が送達シャフトに装填可能となるように送達シャフトの第2係合部材3がそこを通過するのに十分大きい通常時のサイズを有する。送達シャフトと係合した状態(または送達シャフト上に保持された状態)で送達鞘内に装填されている場合には、ステント1はチャンバーによって閉じ込められ圧縮され、結果として、隙間は送達シャフトの第2係合部材3が通過できないサイズに縮小する。すなわち、この時点において、隙間の最大スパン(たとえば直径)は、第2係合部材3の対応するサイズ(たとえば直径)より小さく、それによって、ステントの近位端における第1係合部材2が、送達シャフトの遠位端に配置された第2係合部材3と保持係合されたままとなることが保証される。結果として、ステント1が送達シャフトに対して軸方向にロックされ、送達シャフトを用いて送達鞘内でステント1を送達することができる。チャンバーの閉じ込めから解放されると、ステント1が拡張し、それによって、第2係合部材3から第1係合部材2が離脱することができ、すなわち、ステント1が送達シャフトから軸方向にロック解除される。
【0055】
さらに加えて、図4と合わせて図3a~3dを参照して、送達デバイスは、少なくとも1つの第2係合部材3を含む第2係合構造を画定する送達シャフト4を含む。本実施例では、送達シャフト4は、さらにシャフト本体を含み、少なくとも1つの第2係合部材3がシャフト本体に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの突起がシャフト本体に形成され、この少なくとも1つの突起は、第2係合部材3を形成する。そのような場合には、少なくとも第1係合部材2が、少なくとも2つの突起の間に保持されてもよく、または、少なくとも2つの第2係合部材3が少なくとも1つの突起の両端に保持されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの凹部がシャフト本体に形成され、この少なくとも1つの凹部が第2係合部材3を形成する。そのような場合には、少なくとも1つの第1係合部材2が少なくとも1つの凹部内に保持されてもよい。
【0056】
以下の説明は、第1係合構造および第2係合構造の間の保持係合をより容易に実現可能とする例として、第2係合部材3が突起として実装されるというコンテキストにおいて行われるが、第2係合部材3が突起でない場合にも適用可能となるように、当業者が修正を加えることができる。
【0057】
図2bを組み合わせて参照して、実際の使用において、ステント1は送達鞘によって径方向に閉じ込められ、それによって、保持突起13は送達鞘によって制約されつつ第2係合部材3と係合し、したがって脱出できない。このような保持係合により、より安定した送達が可能になり、送達鞘から保持突起13が押し出されると、保持突起13はもはや送達鞘によって閉じ込められず、第2係合部材3から係合解除されることができる。このような係合解除は簡単な構造に基づいて実現可能であり、ステント1の迅速な解放を容易に実現可能とする。
【0058】
従来技術と比較して、ステント1は、機械的に送達シャフト上に保持されつつ送達鞘内で送達される。それによって、送達中にステント1が外れることを実質的に防止し、より安定した送達が可能となる。加えて、保持構造は簡素であり、容易なロックおよびロック解除が可能である。
【0059】
続けて図3a~3cを参照して、いくつかの実施形態では、第2係合部材3に、その軸方向に第2係合部材3を通って延びる表面窪みが形成されてもよい。表面窪みは、図3bまたは3cに示すノッチの形態であってもよく、図3aに示す隣り合う突起によって画定されてもよい。図3dに示すように、いくつかの代替的な実施形態では、第2係合部材3は、平滑な表面およびある断面形状(円形、正方形、長方形、またはプロフィルされたものであってもよいが、これらに限定されない)を有する円筒であってもよい。第2係合部材3は、中実であっても筒状であってもよく、後者の場合にはコイル状の筒であってもよい。第2係合部材3は、高分子材料または金属材料(ステンレス鋼およびニッケル・チタン合金を含むが、これらに限定されない)から形成されてもよい。好ましくは、第2係合部材3は、放射線不透過性の金属材料から製造されてもよく、それによって、インプラント手順中に第2係合部材3の位置(とくに送達鞘の軸に対する位置)を確認し、ステント1の解放の進捗を判定することが容易となる。
【0060】
2つ以上の表面窪みが設けられ、第2係合部材3の軸周りに(すなわち、第2係合部材3の周方向に沿って離間して、より好ましくは対称的に)配置されてもよい。ステント1の近位端11は、そのフィラメントが第2係合部材3の表面窪みに部分的に収容されるよう係合してもよい。それによって、一態様では、圧縮されたステント1の直径が結果的に縮小し、より小さい直径の送達鞘を用いることが可能となり、別の態様では、ステント1および送達シャフトの閉じ込めをより強くし、それによってステントの送達安定性をさらに高めることができる。
【0061】
さらに、ステント1の近位端11はいくつかのメッシュセルを含んでもよく、保持突起13は、メッシュセルの少なくともいくつかの末端に配置されてもよい。すなわち、メッシュセルのそれぞれがその近位端において保持突起13を備える必要はない。加えて、各第1係合部材2は、2つ以上の保持突起13を含み、それらはそれぞれ対応するメッシュセルに、同一の周上に、対称となるように、配置される。
【0062】
第1係合部材2および第2係合部材3の間に確立される保持係合を、以下にさらに説明するが、以下の説明は、本発明をいかなる意味でも限定するよう意図されるものではない。以下の説明に照らして行われる任意のおよびすべての修正は、本発明の範囲に包含されることを意図される。
【0063】
実施形態1
図4に示すように、本実施形態の送達シャフト4は第2係合構造を含み、第2係合構造は少なくとも2つの第2係合部材3を含み、それらはシャフト本体の軸方向に沿って離間する。たとえば、2つの第2係合部材3が含まれ、それらは、それら2つの第2係合部材の間に少なくとも1つの第1係合部材2が保持可能となる距離だけ、互いに軸方向に離間する。第1係合部材2が2つの第2係合部材3の間で圧縮可能な弾性部材である場合には、それら2つの第2係合部材3の間の軸方向距離は、第1係合部材2(圧縮されていないとき)の軸方向の長さ以下であってもよい。代替的に、第1係合部材2は、弾性および変形性を持たない剛性部材であってもよい。その場合には、2つの第2係合部材3の間の軸方向距離は、第1係合部材2の軸方向の長さ以上であってもよい。さらに、実質的な軸方向のずれを回避するため、第2係合部材3と第1係合部材2とのいずれの間にも、過大なクリアランスを設けるべきではない。さらに、各第2係合部材3が変形して第1係合部材2がそれらの間で圧縮可能となるように、各第2係合部材3は弾性部材であってもよい。その場合には、2つの第2係合部材3の間の軸方向距離もまた、第1係合部材2の軸方向の長さ以下であってもよい。
【0064】
図2bと合わせて図5に示すように、第1係合部材2は4つの保持突起13を含み、それらは同一の周に離間しており、それぞれがステント1の近位端11のフィラメント上に配置される。これらの保持突起13は、同一の構造であっても互いに異なる構造であってもよく、両側で互いに整列してもしなくてもよい。送達デバイスはさらに送達鞘5を含む。図5に示すように、実際の操作では、ステント1は送達鞘内に全体が圧縮され、それによって、第1係合部材2の近位端および遠位端にそれぞれ配置される2つの第2係合部材の間に、近位端11における4つの保持突起13が閉じ込められて保持される。このようにして、ステント1が反対側に移動することが防止される。
【0065】
加えて、遠位側の第2係合部材3の外表面に窪みが形成されてもよく、そこに、ステント1の近位端11におけるフィラメントが収容されてもよい。したがって、2つの第2係合部材3は、同一の構造または互いに異なる構造を有してもよい。好ましくは、遠位側の第2係合部材3は表面窪みを備え、他方のものはそうではない。
【0066】
図6aおよび6bに示すように、ステント1が送達鞘5内に(全体が)圧縮されている場合には、4つの保持突起13の間に隙間(図中にd1で示す)が形成される。この隙間が規則的形状(たとえば円形)を有する場合には、第2係合部材3はいずれも、隙間の直径d1より大きい直径(たとえば最大スパン)d2を有する。隙間が不定形状を有する場合には、第2係合部材3の直径d2は、隙間の最大スパンより大きい。それによって、ステントが押された場合に、第2係合部材3が隙間を通過しないことが保証される。
【0067】
続けて図6aおよび6bを参照して、ステント1が完全に圧縮されている場合には、表面窪みに対する径方向距離L1は、隙間の径方向距離(d1/2)以上であってもよい。代替的に、表面窪みに対する径方向距離L1は、隙間に対する径方向距離(d1/2)未満であってもよい。すなわち、表面窪みは、いかなる特定の深さを有するものにも限定されない。しかしながら、いずれの保持突起13がいずれの表面窪みを通って脱出することをも回避するために、表面窪みは、保持突起13がそこを通過することを禁止するサイズであることが好ましい。好ましくは、第2係合部材3の周方向に沿った各表面窪みの最大スパンは、ステント1の周方向に沿った各保持突起13の最小スパンより小さくなるよう設計される。
【0068】
このようにすると、実際の操作において、図5に示すように、送達シャフト4が引き戻される(すなわち、近位方向に移動させられる)際に、第1係合部材2は遠位側の第2係合部材3によってブロックされ、送達シャフト4に対して移動できない。反対に、送達シャフトが前方に押される場合(すなわち遠位方向に移動させられる)場合には、第1係合部材2は近位側の第2係合部材3によってブロックされ、この場合にも送達シャフト4に対して移動できない。
【0069】
実施形態2
図7および8に示すように、この実施形態において、送達シャフト4の第2係合構造は、少なくとも1つの第2係合部材3を含み、ステント1の近位端11における第1係合構造は、少なくとも2つの第1係合部材2を含み、それらはステント1の軸方向に沿って互いに離間する。たとえば、2つの第1係合部材2が含まれ、それらは、それらの間に少なくとも1つの第2係合部材3が保持可能となるような軸方向距離だけ離間する。2つの第1係合部材2の間の軸方向距離は、第2係合部材3の軸方向の長さより大きくてもよく、小さくてもよく、等しくてもよい。たとえば、第1係合部材2は、引き伸ばし可能または圧縮可能な弾性部材であってもよい。
【0070】
図9に示すように、実際の操作において、送達鞘5内で、第2係合部材3が2つの第1係合部材2の間に保持されており、第2係合部材3内に形成される表面窪みGに収容される2つの第1係合部材2の間のフィラメントSを伴う。さらに、送達中に、ステント1が進められる場合(すなわち遠位側に移動させられる場合)には、近位側の第1係合部材2が第2係合部材3によってブロックされ、ステント1と送達シャフト4との間の相対的移動がないことを保証する。反対に、ステント1が引き戻される場合には、遠位側の第1係合部材2が第2係合部材3によってブロックされる。このようにして、ステント1が前方に押されるか引き戻されるかに関わらず、ステント1は送達シャフト4に対して移動しないので、ステント1の安定した送達が可能となる。
【0071】
さらに、図10に示すように、ステント1の解放は、ステント1の近位端11が完全に送達鞘5から押し出されるまでステント1を進めることによって、単純に実現できる。続いて、第1係合部材2が、径方向外側に開きまたは開かせられて係合解除され、それによってステント1の解放が可能となる。理解されるように、このようにして、ステント1の係合解除および解放が簡単に実現される。
【0072】
実施形態3
本実施形態では、ステントの近位端における第1係合構造は2つ以上の第1係合部材グループを含み、それらはステント1の軸方向に沿って互いに離間し、それぞれが2つ以上の第1係合部材2を含む。各第1係合部材グループにおいて、2つ以上の第1係合部材2もまた、ステント1の軸方向に沿って互いに離間し、第1係合部材内のすべての保持突起13はステント1に対して軸方向に整列する。ここで、用語「軸方向に整列する」とは、ステントの軸に直交する単一の平面に投影した場合に、各第1係合部材グループのすべての保持突起13の軸方向投影が互いに一致することを意味する。
【0073】
加えて、本発明者らは、第1係合部材2の径方向サイズがより大きいと、または、保持突起13の数がより多いと、圧縮されたステント1および送達デバイスの全体サイズがより大きくなりやすいということを見出した。これを克服するために、異なる第1係合部材グループ内の保持突起13は、ステント1の軸方向に沿ってずらされてもよく、それによって、各第1係合部材グループ内の保持突起13が、ある分離した周に閉じ込められてもよく、結果として、圧縮されたステントのサイズが縮小され、ステントが送達可能なより小さい送達鞘5の使用が可能となる。
【0074】
図11に示すように、本実施形態では、2つの第1係合部材グループ14および15が存在する(明確な図示のため破線で示す)。第1係合部材グループ14および15は、ステント1の軸方向に互いに離間され、それらの内部の保持突起13は互いに軸方向にずらされる。ここで、用語「軸方向にずらされる」とは、ステントの軸に直交する単一の平面に投影した場合に、第1係合部材グループ14内の各保持突起13の軸方向の投影が、第1係合部材グループ15の各保持突起13のそれらとは一致しないということを意味する。
【0075】
より具体的には、第1係合部材グループ14は2つの第1係合部材2を含み、それらは、それらのうち一方が遠位端に近く、他方が近位端に近くなるように、ステント1の軸方向に互いに離間する。さらに、第1係合部材グループ14内の2つの第1係合部材2の各保持突起13は、軸方向に整列する。同様に、第1係合部材グループ15は2つの第1係合部材2を含み、それらは、それらのうち一方が遠位端に近く、他方が近位端に近くなるように、ステント1の軸方向に互いに離間する。さらに、第1係合部材グループ15内の2つの第1係合部材2の各保持突起13は、軸方向に整列する。
【0076】
たとえば、図11に示すように、各第1係合部材2は2つの保持突起13を含む。図示のように、遠位端から近位端への方向に沿って、4つの第1係合部材2(すなわち、係合部材2の第1、第2、第3、第4のもの)がステント1の近位端11において順次配置される。最も遠位側の第1係合部材2(すなわち、第1係合部材2のうち第1のもの)内の2つの保持突起13は、第1係合部材2のうち第2のもの内のそれらと軸方向に整列し、第1係合部材2のうち第3のもの内および最も近位側の第1係合部材2(すなわち第1係合部材2のうち第4のもの)内のそれらは同様に配置される。しかしながら、最後に述べた2つの第1係合部材2内の保持突起13は、最初に述べた2つの第1係合部材2内のそれらに対して軸方向にずらされる。周方向に異なる保持突起13の軸方向位置(すなわち、軸方向にずらされている)による配置により、ステント1が圧縮された場合に縮小されたサイズを有することができ、したがって、より小さいサイズを有する送達鞘5内で送達可能となる。
【0077】
本実施形態では、図4に示すように、送達シャフト4は、2つの第1係合部材グループ14および15それぞれとの係合を保持するための2つの第2係合部材3を含む。図12および13に示すように、第2係合部材3のうち一方は、第1係合部材2のうち近位側の2つの間に配置され、他方は、第1係合部材2のうち遠位側の2つの間に配置される。このようにして、ステント1および送達シャフト4は位置に関して互いに対して制限され、それによって、縮小されたサイズに加え、安定した信頼性のある係合が可能となる。
【0078】
実施形態4
本実施形態によるステントおよび送達デバイスは、構造において上述の各実施形態のそれらと同様であり、以下にそれらからの相違のみを説明する。
【0079】
本実施形態では、図14に示すように、送達デバイスはさらに開放筒6を含み、開放筒6は、ステント1の全体の解放および全体の引き出しを可能にするために、送達鞘5内で送達シャフト4の上に移動可能に配置される。この場合には、解放筒6は閉じ込め部材を構成する。
【0080】
具体的には、ステント1が標的部位において送達鞘5から押し出された後、ステントの近位端11は送達シャフト4と係合したままとなる。この時点で、係合解除があまりうまく進まないと判明した場合には(たとえばステントの全体が開放されないかまたは係合解除されない)、送達シャフト4を移動させて戻すことにより、ステント1を全体的にまたは部分的に送達鞘5内に引き戻すことができる。ステントを係合解除させることが適切であると決定した(たとえば正しい解放位置が達成された)場合には、解放筒6と送達シャフト4との間の相対的移動を発生させてもよい。たとえば、操作している外科医は、解放筒6を静止に維持しつつ、同時に、送達シャフト4を前方に(遠位側に)押してもよい。代替的に、送達シャフト4が静止に維持されている間に解放筒6が引き戻されてもよい。結果として、ステント1の近位端11はもはや解放筒6によって径方向に閉じ込められず、それによって、ステント1が送達シャフト4から係合解除され分離される。従来技術と比較して、本発明によれば、ステント1(近位端11を除く)は、その全体の解放後に全体が引き戻されることができ、これに続いて、満足できる解放位置および条件が確認された場合に、送達シャフト4からのステント1の近位端11の係合解除が可能となる。それによって、ステント1の解放精度が向上し、したがって処置の結果が改善する。
【0081】
より具体的には、解放筒6は、第2係合部材3および第1係合部材2が互いに保持係合したままとなるように、それらを取り囲む。さらに、送達シャフト4と解放筒6との間に相対的移動がない場合には、ステント1は常に送達シャフト4と係合する。しかしながら、解放筒6が送達シャフト4に対して近位側に移動すると、ステント1の近位端11および第2係合部材3は、もはや径方向に閉じ込められない。さらに、ステント1の自己拡張特性のため、ステント1の近位端11は第2係合部材3から離れて径方向に開き、したがって送達シャフト4から係合解除される。
【0082】
この実施形態では、解放筒6は、外科医によって操作可能となるように、第1係合部材2(複数可)を閉じ込めるために、遠位側にステント1の近位端11まで、および、近位側に送達鞘5の近位端を超えて、伸長してもよい。さらに、解放筒6は、高分子材料または金属材料から製造されてもよいが、これらに限定されない。
【0083】
さらに、2つの第1係合部材2の間に1つの第2係合部材3が保持されている場合には、2つの第1係合部材2が軸方向に互いに離間しており、それらの保持突起13は軸方向に整列するかまたはずらされるということに留意すべきである。ずらされた配置では、結果として、圧縮された構成のステントのサイズが縮小される。
【0084】
上記の各実施形態において、ステントおよび送達シャフトが互いにどのように係合するかを詳細に説明したが、当然ながら、本発明は上述の係合手法に限定されず、上記の教示に照らして加えられる任意のおよびすべての修正が本発明の範囲に属することが意図される。当業者は、上記の各実施形態の説明に基づき、他の実施形態を考えることができる。
【0085】
上記の説明は、本発明の単にいくつかの好適な実施形態のものであり、いかなる意味でもその範囲を限定するよう意図されるものではない。上記の教示に基づいて当業者によって加えられる任意のおよびすべての変更および修正は、添付の特許請求の範囲に定義される範囲に属する。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】