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特表2022-539153基板の被加工面に供給されるエネルギー量を空間的に制御するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】基板の被加工面に供給されるエネルギー量を空間的に制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577413
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2020068344
(87)【国際公開番号】W WO2021004832
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19315058.8
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515075197
【氏名又は名称】レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】LASER SYSTEMS AND SOLUTIONS OF EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マツァムート,フルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ピンサード,バスティン
(57)【要約】
第1の領域(11)と第2の領域(13)とを含む加工基板(1)の被加工面(5)に送達されるエネルギー量を空間的に制御するためのシステム(21)において、前記第1の領域が光学特性および熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域が光学特性および熱特性の第2の組み合わせを有し、前記第1の組み合わせと前記第2の組み合わせは異なり、前記システムはパルス光線(27)を被加工面(5)の方に放出する光源(23)を具え、前記パルス光線は、前記被加工面の第1の領域に第1のエネルギー量(E1)を供給し、それによって前記第1の領域が第1の目標温度(Tt1)に到達し、前記被加工面の第2の領域に第2のエネルギー量(E2)に供給し、それによって前記第2の領域が第2の目標温度(Tt2)に到達する。対応する方法も記載されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域(11)と第2の領域(13)とを含む、加工基板(1)の被加工面(5)に供給されるエネルギーの量を空間的に制御するためのシステム(21)において、前記第1の領域(11)は光学特性と熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域(13)は光学特性と熱特性の第2の組み合わせを有し、前記第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なり、前記システム(21)は、パルス光線(27)を前記被加工面(5)に向けて放出するように構成された光源(23)を含み、前記パルス光線(27)は、前記被加工面(5)の第1の領域(11)に第1のエネルギー量(E1)を供給し、それによって前記第1の領域(11)が第1の目標温度(Tt1)に到達し、前記被加工面(5)の前記第2の領域(13)への第2のエネルギー量(E2)を供給し、それによって前記第2の領域(13)が第2の目標温度(Tt2)に到達することを特徴とするシステム(21)。
【請求項2】
前記エネルギー量(E1、E2)が、±1%以内で、前記領域(1、13)のそれぞれに均一かつ同時に供給される、請求項1に記載のシステム(21)。
【請求項3】
前記領域(11、13)がそれぞれ少なくとも1μmに等しい表面積を有する、請求項1または2に記載のシステム(21)。
【請求項4】
前記光源(23)と前記加工基板(1)の被加工面(5)との間に配置されたマスク(31)を含み、前記マスク(31)が、
前記第1のエネルギー量(E1)が前記第1の領域(11)に供給されるように決定された第1の透過係数(k1)を有する第1ゾーン(33)と、
前記第2のエネルギー量(E2)が前記第2の領域(13)に供給されるように決定された第2の透過係数(k2)を有する第2ゾーン(31)とを含む、請求項1から3のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項5】
前記パルス光線(27)の形状を変更するために、前記透過係数(k1、k2)のうちの1つがゼロとなる、請求項4に記載のシステム(21)。
【請求項6】
前記第1ゾーンおよび前記第2ゾーン(33、35)は、前記加工基板(1)に対して固定の形状、寸法、および位置を有する、請求項4または5に記載のシステム(21)。
【請求項7】
前記第1の目標温度(Tt1)および前記第2の目標温度(Tt2)が等しくなるように前記第1の透過係数(k1)および前記第2の透過係数(k2)が決定される、請求項4から6のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項8】
前記第1ゾーン(33)が前記第1の透過係数(k1)を決定するように構成された第1のコーティングを有し、前記第2ゾーン(35)が前記第2の透過係数(k2)を決定するように構成された第2のコーティングを有する、請求項4から7のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項9】
前記第1ゾーン(33)が前記第1の透過係数(k1)を決定するように構成された第1の厚さを有し、前記第2ゾーン(35)が前記第2の透過係数(k2)を決定するように構成された第2の厚さを有する、請求項4から8のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項10】
前記第1ゾーン(33)が前記第1の透過係数(k1)を決定するように構成された第1の開口パターンを有し、前記第2ゾーン(35)が前記第2の透過係数(k2)を決定するように構成された第1の開口パターンを有する、請求項4から9のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項11】
前記マスク(31)がデジタルマイクロミラーデバイスを含み、前記システム(21)がさらに、前記マイクロミラーデバイスの各マイクロミラーを回転させ、それによって前記第1ゾーン(33)が前記第1の透過係数(k1)を達成し、前記第2ゾーン(35)が前記第2の透過係数(k2)を達成するように構成されたコントローラを含む、請求項4から8のいずれかに記載のシステム(21)。
【請求項12】
前記第1ゾーンおよび第2ゾーン(29、31)の少なくとも一方が、前記加工基板(1)に対して変更可能な形状、寸法、または位置を有する、請求項4または5に記載のシステム(21)。
【請求項13】
前記マスク(31)が、前記第1ゾーンおよび第2ゾーン(33、35)の少なくとも一方の位置または形状または寸法を変更するように互いに対して移動可能なプレート(73、75、77、79)を含む、請求項12に記載のシステム(21)。
【請求項14】
加工基板(1)の被加工面(5)に供給されるエネルギー量を空間的に制御するための方法において、前記被加工面(5)は第1の領域(11)と第2の領域(13)とを含み、前記第1の領域(11)は光学特性と熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域(13)は光学特性と熱特性の第2の組み合わせを有し、前記第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なり、
g)光源(23)を使用して、パルス光線(27)を被加工面(5)に向けて放出するステップと、
h)第1のエネルギー量(E1)を、前記被加工面(5)の第1の領域(11)に送達して、前記第1の領域(11)が第1の目標温度(Tt1)に到達するようにするステップと、
i)第2のエネルギー量(E2)を、前記被加工面(5)の前記第2の領域(13)に送達して、前記第2の領域(13)が第2の目標温度(Tt2)に達するようにするステップと、を含む方法。
【請求項15】
1%以内で、前記第1のエネルギー量(E1)が前記第1の領域(11)に均一かつ同時に送達され、前記第2のエネルギー量(E2)が前記第2の領域(13)に均一かつ同時に送達される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法において、
f)前記光源(19)と前記加工基板(1)の被加工面(5)との間にマスク(31)を配置するステップであって、前記マスク(31)は、前記被加工面(5)の第1の領域(11)の形状と相似形をなす第1ゾーン(33)と、前記被加工面(5)の第2の領域(13)の形状と相似形をなす第2ゾーン(35)とを含むステップと、
d)前記第1のエネルギー量(E1)に基づいて前記第1ゾーン(33)の第1の透過係数(k1)を決定し、前記第2のエネルギー量(E2)に基づいて前記第2ゾーン(31)の第2の透過係数(k2)を決定するステップとを含む、方法。
【請求項17】
前記加工基板(1)の被加工面(5)の第1の領域(11)および前記加工基板(1)の被加工面(5)の第2の領域(13)が、前記パルス光線(27)によって同時に照射される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14または15に記載の方法において、
l)前記光源(23)と前記加工基板(1)の被加工面(5)との間にマスク(31)を配置するステップであって、前記マスク(31)は、前記第1のエネルギー量(E1)が前記第1の領域(11)に供給されるように決定された第1の透過係数(k1)を有する第1ゾーン(33)と、前記第2のエネルギー量(E2)が前記第2の領域(13)に供給されるように決定された第2の透過係数(k2)を有する第2ゾーン(35)とを含むステップと、
m)前記第1ゾーン(33)の形状が、前記加工基板(1)の被加工面(5)の第1の領域(11)の形状と、前記被加工面(5)の第2の領域(13)の形状と逐次的に相似形をなし、それによって前記第1のエネルギー量(E1)が前記第1の領域(11)に供給され、前記第2のエネルギー量(E2)が前記第2の領域(13)に供給されるように、前記第1ゾーン(33)の形状または寸法または位置を変更するステップと、を含む方法。
【請求項19】
請求項14から18のいずれか一項に記載の方法において、
a)試験基板(115)の試験面(117)を光線(27)で照射するステップであって、前記試験面(117)は、前記加工基板(1)の被加工面(5)の第1の領域(11)の光学特性および熱特性の第1の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第1の試験領域(119)と、前記加工基板(1)の被加工面(5)の第2の領域(13)の光学特性および熱特性の第2の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第2の試験領域(121)とを含む、ステップと、
b)照射に応じて、前記試験面(117)の第1の試験領域(119)および前記試験面(117)の第2の試験領域(121)によってそれぞれ放出される第1の電磁放射(123)と第2の電磁放射(125)とを放射検出器(127)で検出するステップと、
c)前記第1の電磁放射(123)に基づいて前記第1のエネルギー量(E1)を決定し、前記第2の電磁放射(125)に基づいて前記第2のエネルギー量(E2)を決定するステップと、を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記試験面(117)で検出される前記第1の電磁放射(123)および前記第2の電磁放射(125)に基づいて、前記試験面(117)の照射(46)に応答して放出された物理的特性または物理量の空間分布のマップを生成するステップであって、前記マップは、前記被加工面(5)に供給されるエネルギー量、または前記被加工面(5)の前記第1および第2の領域(11、13)の形状、寸法および位置を計算するために使用されるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の熱アニーリングのためのシステムに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、パルス光線によって照射された基板の被加工面に供給されるエネルギー量を空間的に制御するためのシステム、および基板の被加工面に供給されるエネルギー量を空間的に制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造において、半導体基板にパルス光線を照射する「熱処理」と呼ばれるプロセスがある。熱処理において、パルス光線にさらされる領域の表面は、数秒間で1000℃以上に加熱される。
【0004】
高温により、露出部分が溶けて構造変化を起こす。構造変化の程度は温度に依存するため、温度を正確に制御することが重要である。さらに、基板の一部の領域は、より脆弱であって高温でダメージを受けやすい他の領域よりも高い温度に到達する必要がある。
【0005】
製造のこの段階では、基板の表面はすでに加工され、いくつかのパターンが示されている。各パターンは独自の光学的および熱的特性があるため、パターンごとにパルス光線とはとの相互作用が異なる。例えば、パターンのコーティングによって吸収される光の量が決まり、パターンの材料および構造によってその熱拡散(パターン全体と隣接領域に熱が再分配される速度)が決まる。結果として、表面温度は基板のパターン自体に依存する。
【0006】
パターニングされた半導体基板は通常さまざまなパターンを示すことから、そこに生じる表面温度を制御することは困難である。
【0007】
この「パターン効果」を低減するために、従来技術の装置は2つの光源を使用する。第1の連続光源は、パターニングされた表面を目標温度よりも低い第1の表面温度に加熱するように構成された光線を放出する。第2のパルス光源は、目標表面温度に到達するために必要なエネルギーを提供するようにパルス光線を放射する。これらの2つの連続した加熱で観察される全体的な温度の不均一性は、パターニングされた表面が目標温度へと直接加熱された場合よりも低くなる。
【0008】
しかしながら、2つの光源を使用するとデバイスの熱バジェットが増加し、これは用途を制限しないように低く抑える必要がある。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、第1の領域および第2の領域を有する加工基板の被加工面に供給されるエネルギー量を空間的に制御するためのシステムを提供することであり、前記第1の領域は光学特性および熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域は光学特性および熱特性の第2の組み合わせを有し、前記第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なっており、前記システムは、パルス光線を前記被加工面に向けて放出するように構成された光源を具え、前記パルス光線は、前記第1の領域が第1の目標温度に到達するように前記被加工面の前記第1の領域にエネルギー量を供給し、前記第2の領域が第2の目標温度に到達するように前記被加工面の前記第2の領域に第2のエネルギー量を供給する。
【0010】
光学特性および熱特性が異なるため、被加工面の様々な領域、例えばダイの様々な領域は、溶融温度が異なり、それに到達するために同じ量のエネルギーを必要としない場合がある。ある領域に過剰なエネルギーを供給すると、その領域は溶融温度を超える温度に達し、損傷する。ダイの異なる領域に異なる量のエネルギーを供給できるようにするシステムは、不適切な量のエネルギーによって引き起こされる損傷を減らすことで、そのようなダイの製造を改善するのに役立つ。
【0011】
本発明によるシステムの他の有利で非限定的な特徴には、以下が含まれる。
-エネルギー量は前記領域のそれぞれに均一かつ同時に、±1%以内で供給される。
-各領域は、少なくとも1μmに等しい表面積を有する。
-前記システムは、前記光源と前記加工基板の被加工面との間に配置されたマスクを含み、前記マスクは、前記第1のエネルギー量が前記第1の領域に供給されるように決定された第1の透過係数を有する第1ゾーンと、前記第2の量のエネルギーが前記第2の領域に供給されるように決定された第2の透過係数を有する第2ゾーンとを具える。
【0012】
独自の透過係数を持つ複数ゾーンを持つマスクを使用すると、ダイの各領域に供給されるエネルギー量を制御することができる。このマスクは大量のボリュームを必要としないため、既存の熱アニーリングのシステムに簡単に挿入することができる。一般に、熱アニーリング用のシステムは、円形の光線を長方形の光線に整形するための均一な透過係数のマスクをすでに具えている。本発明のマスクは、均一な透過率のマスクと置換するだけでよく、熱アニーリングのためにシステムに配置するために余分な要素を追加する必要がない。
【0013】
本発明によるシステムの他の有利で非限定的な特徴には、以下が含まれる。
-透過係数の1つをゼロにすることで、パルス光線の形状を変更することができる。
-第1ゾーンと第2ゾーンは、加工基板に対して固定された形状、寸法、および位置を有する。
-第1の透過係数と第2の透過係数は、第1の目標温度と第2の目標温度が等しくなるように決定される。
-第1ゾーンは、第1の透過係数を決定するように構成された第1のコーティングを有し、第2ゾーンは、第2の透過係数を決定するように構成された第2のコーティングを有する。
-第1ゾーンは、第1の透過係数を決定するように構成された第1の厚さを有し、第2ゾーンは、第2の透過係数を決定するように構成された第2の厚さを有する。
-第1ゾーンは、第1の透過係数を決定するように構成された第1の開口パターンを有し、第2ゾーンは、第2の透過係数を決定するように構成された第2の開口パターンを有する。
-マスクはデジタルマイクロミラーデバイスを含み、システムはさらに、第1ゾーンが第1の透過係数を達成し、第2ゾーンが第2の透過係数を達成するように、マイクロミラーデバイスの各マイクロミラーを回転させるように構成されたコントローラをさらに含む。
-第1ゾーンと第2ゾーンの少なくとも一方は、加工基板に対して変更可能な形状、寸法、または位置を有する。
-マスクは、第1ゾーンと第2ゾーンの少なくとも一方の位置、形状、または寸法を変更するために、互いに対して移動可能なプレートを含む。
【0014】
本発明はまた、加工基板の被加工面に供給されるエネルギーの量を空間的に制御するための方法に関し、前記被加工面は第1の領域と第2の領域とを含み、前記第1の領域は光学特性および熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域は光学特性および熱特性の第2の組み合わせを有し、前記第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なり、
g)光源を用いて、前記被加工面に向けてパルス光線を照射するステップと、
h)前記第1の領域が第1の目標温度に到達するように、第1の量のエネルギーを前記被加工面の第1の領域に供給するステップと、
i)前記第2の領域が第2の目標温度に到達するように、第2の量のエネルギーを前記被加工面の第2の領域に供給するステップとを含む。
【0015】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴には、以下が含まれる。
-±1%以内で、第1の量のエネルギーが第1の領域に均一かつ同時に供給され、第2の量のエネルギーが第2の領域に均一かつ同時に供給される。
-この方法は、f)前記光源と前記加工基板の被加工面との間にマスクを配置するステップであって、前記マスクは、被加工面の第1の領域の形状と相似形状を有する第1ゾーンと、被加工面の第2の領域の形状と相似形状を有する第2ゾーンとを含む、ステップと、d)第1のエネルギー量に基づいて第1ゾーンの第1の透過係数を決定し、第2のエネルギー量に基づいて第2ゾーンの第2の透過係数を決定するステップとを含む。
-加工基板の被加工面の第1の領域および加工基板の被加工面の第2の領域は、パルス光線によって同時に照射される。
-この方法は、I)前記光源と前記加工基板の被加工面との間にマスクを配置するステップであって、前記マスクは、第1の量のエネルギーが第1の領域に送達されるように決定された第1の透過係数を有する第1ゾーンと、第2の量のエネルギーが第2の領域に送達されるように決定された第2の透過係数を有する第2ゾーンとを含む、ステップと、m)第1ゾーンの形状または寸法または位置を変更するステップであって、それによって第1ゾーンの形状が、逐次的に加工基板の被加工面の第1の領域の形状および被加工面の第2の領域の形状と相似形となり、その結果、第1の量のエネルギーが前記第1の領域に供給され、第2の量のエネルギーが前記第2の領域に供給されるようにするステップとを含む。
-この方法は、a)試験基板の試験面に光線を照射するステップであって、前記試験面は、加工基板の被加工面の第1の領域の光学特性および熱特性の第1の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第1の試験領域と、加工基板の被加工面の第2の領域の光学特性および熱特性の第2の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第2の試験領域とを含む、ステップと、b)前記照射に応答して、試験面の第1の領域および試験面の第2の領域からそれぞれ放出される第1の電磁放射および第2の電磁放射を放射検出器で検出するステップとを含む。
-前記第1の電磁放射に基づいて第1のエネルギー量を決定し、前記第2の電磁放射に基づいて第2のエネルギー量を決定する、
-この方法は、試験面で検出される第1の電磁放射および第2の電磁放射に基づいて、試験面の照射に応答して放出される物理的特性または物理量の空間分布のマップを生成するステップを含み、当該マップは、前記被加工面に供給されるエネルギー量、または前記被加工面の第1および第2の領域の形状、寸法および位置を計算するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明によるシステムおよび方法を、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
図1図1は、基板の実施例の概略図である。
図2図2は、図1の基板でサポートされているダイの例の概略図である。
図3図3は、図2のダイに供給されるエネルギーの空間分布を制御するためのシステムの例示的な実施形態の概略図である。
図4図4は、図3のシステムのマスクの第1の実施形態の概略図である。
図5図5は、開いた状態の、本システムのマスクの第2の実施形態の概略図である。
図6図6は、図5のマスクの一対のスライダに取り付けられたプレートの概略図である。
図7図7は、閉じた状態の図6のマスクの概略図である。
図8図8は、別の開いた構成の図5のマスクの概略図である。
図9図9は、本発明による方法の第1の実施形態のステップの概略図である。
図10図10は、パルス光線が照射されたときに試験ダイから放出される電磁放射を検出するセンサの概略図である。
図11図11は、図10のセンサによって検出された電磁放射に基づいて、試験ダイの照射に応答して放出される物理的特性または物理量の空間分布のマップである。
図12図12は、本発明によるシステムによって処理されたときの図2のダイの温度の空間分布のマップである。
図13図13は、本発明による方法の第2の実施形態のステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、加工基板1は、典型的には半導体デバイス産業で一般的に使用されるようなシリコンウェハまたは複合ウェハである。加工基板1は、その被加工面5にダイ3のアレイを担持する。ダイ3はスクライブライン7で区切られている。加工基板1はまた、その周縁部に位置する周辺領域9を有する。この周辺領域9は、ダイを支持するには小さすぎる。
【0018】
図2を参照すると、各ダイ3は、少なくとも第1の領域11と第2の領域13とを含む。第1の領域11は、光学特性と熱特性の第1の組み合わせを有する。第2の領域13は、光学特性と熱特性の第2の組み合わせを有する。第1の組み合わせと2番目の組み合わせは異なる。
【0019】
光学特性には、パターン密度と光学コーティングが含まれる。パターン密度(「パターンロード」とも呼ばれる)は、ダイ3の領域11、13の表面に担持されるパターンの繰り返し率である。
【0020】
パターンは、例えばトランジスタや抵抗器などの電子デバイスとそれらの金属配線の配置によって形成される。
【0021】
密度の高いパターンの場合、領域の表面の反射率が高くなる。そのため、光線によって供給されるエネルギーは低くなり、当該領域の表面が到達する温度は低くなる。
【0022】
逆に、密度の低いパターンの場合、領域の表面の反射率が低くなる。そのため、より多くのエネルギーが光線によって供給され、領域の表面が到達する温度が高くなる。
【0023】
図2に示すように、第2の領域13は、第1の領域11よりも密度の高いパターンを有する。
【0024】
第1の領域11は、ダイ3の第1の機能回路ブロックに対応し得る。第2の領域13は、ダイ3の第2の機能回路ブロックに対応し得る。
【0025】
同様に、高反射率の光学コーティングでコーティングされた領域11、13の表面は、低反射率の光学コーティングでコーティングされた領域11、13よりも到達温度が低い。
【0026】
熱特性には、考慮対象の領域11、13の熱拡散率(heat diffusion rate)が含まれる。熱拡散速度は、ダイ3内で熱が再分配される速度である。熱拡散速度は、例えば、各領域11、13が構成される材料によって異なる。したがって、第1の領域11と第2の領域13は、異なる熱拡散速度を有し得る。
【0027】
一般に、熱拡散速度が高いと表面温度が低くなる。熱拡散速度が低いと、表面温度が高くなる。
【0028】
各領域11、13は、少なくとも1μm×1μm、最大で26mm×33mmの表面積を有する。
【0029】
図2に示す例示的なダイ3は、第3の領域15、第4の領域17、第5の領域19を含む。第3の領域15は、光学特性と熱特性の第3の組み合わせを有する。第4の領域17は、光学特性と熱特性の第4の組み合わせを有する。第5の領域19は、光学特性と熱特性の第5の組み合わせを有する。すべての組み合わせが異なってもよい。あるいは、いくつかの組み合わせは類似してもよい。
【0030】
加工基板1の被加工面に担持されたダイ3はすべて類似している。
【0031】
図3は、加工基板1の被加工面5に供給されるエネルギーの量を空間的に制御するためのシステム21を示す。
【0032】
システム21は、光源23とビームプロセスモジュール25とを具える。
【0033】
光源23は、パルス光線27を放出する。この光源23は、例えば、紫外線(UV)光源である。光源23は、エキシマレーザー光源である。好ましい発光波長は、例えば308nmである。
【0034】
光源23は、パルスモードで動作することができる。例えば、1~1MHzのレートで1~500ナノ秒のFWHMのナノ秒パルスを生成できる。
【0035】
パルス光線27は、第1の領域11が第1の目標温度Tt1に到達するように、第1の量のエネルギーE1を被加工面5の第1の領域11に供給する。パルス光線27は、第2の領域13が第2の目標温度Tt2に到達するように、第2の量のエネルギーE2を被加工面5の第2の領域13に供給する。
【0036】
ビームプロセスモジュール25が、光源23と基板1との間に配置されている。
【0037】
ビームプロセスモジュール25は、パルス光線27の空間的均一性を確保するためのビームホモジナイザ29を具える。ビームホモジナイザ29は、例えば、マイクロレンズのアレイ(または複数のアレイ)を含む。
【0038】
ビームプロセスモジュール25は、マスク31を具える。マスク31は、光源23と被加工面5との間に配置されている。マスク31は、ビームホモジナイザ29と被加工面5との間に配置されている。
【0039】
図4は、マスク31の第1の実施形態を示す図である。
【0040】
マスク31は、第1のエネルギー量E1が第1の領域11に供給されるように決定された第1の透過係数k1を有する第1ゾーン33と、第2の量のエネルギーE2が第2の領域13に供給されるように決定された第2の透過係数k2を有する第2ゾーン35とを具える。第1の透過係数k1は0%から100%の間で構成される。第2の透過係数k2は0%から100%の間で構成される。
【0041】
第1のエネルギー量E1は、第1の領域11の表面が第1の目標温度Tt1に達するように決定される。第1の目標温度Tt1は、ユーザによって事前に設定される。
【0042】
第2のエネルギー量E2は、第2の領域13の表面が第2の目標温度Tt2に達するように決定される。第2の目標温度Tt2は、ユーザによって事前に設定される。
【0043】
一例では、第1の目標温度Tt1は、第2の目標温度Tt2とは異なる。例えば、第1の目標温度Tt1は第1の領域11の溶融温度であり、第2の目標温度Tt2は第2の領域13の溶融温度である。
【0044】
別の例では、第1の目標温度Tt1は、目標温度Tt2に等しい。この場合、ダイ3が均一な温度に加熱されるように、第1の透過係数k1および第2の透過係数k2が決定される。
【0045】
第1の透過係数k1および第2の透過係数k2の決定方法について以下に説明する。
【0046】
マスク31の第1の実施形態では、第1ゾーン33は、第1の領域11の形状と相似形である。第2ゾーン35は、第2の領域13の形状と相似形である。
【0047】
図示の例では、マスク31は、第3ゾーン37、第4ゾーン39、第5ゾーン41、および第6ゾーン43を含む。
【0048】
第3、第4および第5ゾーン37、39、41は、それぞれ第3、第4および第5の領域15、17、19の形状と相似形をなす。第3、第4、および第5ゾーン37、39、41は、第3、第4、および第5の量のエネルギーE3、E4、E5がそれぞれ第3、第4、第5の領域15、17、19に供給されるように決定された第3、第4、および第5の透過係数k3、k4、k5をそれぞれ有する。第3、第4および第5のエネルギー量E3、E4、E5は、第3、第4および第5の領域15、17、19の表面がそれぞれ第3、第4および第5の目標温度Tt3、Tt4、Tt5に達するように決定される。第3、第4および第5の目標温度Tt3、Tt4、Tt5は、ユーザによって事前に設定される。第3、第4および第5の目標温度Tt3、Tt4、Tt5は、例えば第3、第4および第5の領域15、17、19のそれぞれの溶融温度に等しい。
【0049】
目標温度Tt1~Tt5はすべて異なってもよい。あるいは、目標温度Tt1~Tt5のいくつかは等しくてもよい。
【0050】
すべてゾーン33~41のすべての透過係数k1~k5は異なってもよい。あるいは、透過係数k1~k5のいくつかは等しくてもよい。図示の例では、第3の透過係数k3と第5の透過係数k5が等しい。
【0051】
第6ゾーン43は、マスク31の縁部である。第6ゾーン43の第6の透過係数k6は、例えば0%である。第6ゾーン43は、パルス光線27の形状を整える。
【0052】
第1の実施形態のマスク31では、第1および第2ゾーン33、35の形状、寸法、および位置は、加工基板1に対して固定されている。すなわち、第1および第2ゾーン33、35の形状、寸法および位置は、ダイ3のアニーリング中に変化しない。
【0053】
マスク31の図示の例では、第3、第4、第5および第6ゾーン37~43の形状、寸法および位置は、加工基板1に対して固定されている。すなわち、第3、第4、第5および第6ゾーン37~43の形状、寸法および位置は、経時的に変化しない。
【0054】
図3に示すように、ビームプロセスモジュール25は、マスク31の画像を縮小するためのレンズアセンブリ45を具える。レンズアセンブリ45の光学倍率は、ダイ3に投影されるマスク31の画像の寸法またはサイズが、ダイ3の寸法またはサイズと等しくなるようになっている。
【0055】
より正確には、ダイ3に投影される第1、第2、第3、第4および第5ゾーン37~41の画像の寸法は、それぞれ第1、第2、第3、第4および第5の領域11~19の寸法に等しい。
【0056】
動作時に、パルス光線27がマスク31を照射する。パルス光線27は、第1、第2、第3、第4および第5ゾーン33~43のそれぞれを均一かつ同時に照射する。第1の量は、±1%以内で第1の領域11に均一かつ同時に供給される。
【0057】
パルス光線27は、マスク31の各ゾーン37~43の透過係数k1~k6に応じて、マスク31によって部分的に透過される。
【0058】
マスク31の第1の実施形態の例では、マスク31は、異なる薄膜でコーティングされた透明な基板でできている。マスク31は、特定の透過係数を達成するために複数の光学コーティングで覆われている。光学コーティングは、特定の材料の単一の薄膜であってもよいし、複数の薄膜のスタックであってもよい。
【0059】
第1ゾーン33は、第1の反射率を有する第1の光学コーティングで覆われている。第1の光学コーティングは、第1の透過係数k1を決定する。
【0060】
第2ゾーン35は、第2の反射率を有する第2の光学コーティングで覆われている。第2の光学コーティングは、第2の透過係数k2を決定する。
【0061】
反射率の高い光学コーティングは、反射率の低い別の光学コーティングよりも透過係数が低い。
【0062】
マスク31の第1の実施形態の別の例では、マスク31は吸収性材料でできている。マスク31は、光の伝播方向(ここでは、図3のZ軸に沿った方向)に延びる厚さを有する。
【0063】
第1ゾーン33は、第1の厚さを有する。第1の厚さは、第1ゾーン33が第1の透過係数k1を達成するように決定される。
【0064】
第2ゾーン35は第2の厚さを有する。第2の厚さは、第2ゾーン35が第2の透過係数k2を達成するように決定される。
【0065】
厚さが大きい場合、マスク31で吸収される光が多くなるため、厚さが小さい場合よりも透過係数は低くなる。
【0066】
マスク31の第1の実施形態の別の例では、マスク31は、その透過係数を決定すべくクロスハッチ開口パターンを有する。ここで、クロスハッチ開口パターンは、連続的なスリットとギャップを有する。スリットは光を透過するように構成され、ギャップは光を吸収または反射するように構成されている。クロスハッチ開口パターンの透過係数は、スリットの幅に依存する。また、クロスハッチ開口パターンの透過係数は、ギャップの幅にも依存する。
【0067】
第1ゾーン33は、第1の透過係数k1を決定する第1のクロスハッチ開口パターンを有する。
【0068】
第2ゾーン35は、第2の透過係数k2を決定する第2のクロスハッチ開口パターンを有する。
【0069】
マスク31の第1の実施形態の別の例では、マスク31は、デジタルマイクロミラーデバイス(例えば、テキサスインスツルメンツ・デジタルマイクロミラーデバイス)を含む。デジタルマイクロミラーデバイスは、マイクロミラーのアレイを具える。各マイクロミラーは、ビームプロセスモジュール25のコントローラ(図示せず)によって個別に配向させることができる。コントローラは、ユーザが第1の透過係数k1および第2の透過係数k2を選択できるように、ユーザインターフェースを具えてもよい。
【0070】
マイクロミラーの向きを変えることで、反射する光の量と透過光の量を特定することができる。
【0071】
第1ゾーン33上のマイクロミラーは、第1の方向に向けられている。この第1の方向が第1の透過率を決定する。
【0072】
第2ゾーン35上のマイクロミラーは、第2の方向に向けられている。この第2の方向が第2の透過率を決定する。
【0073】
図3に戻ると、ビームプロセスモジュール25は、減衰モジュール47を含み得る。減衰モジュール47は、減衰プレートまたはその組み合わせ471、472、473、474、475、476、477、478、479を含む。
【0074】
コントローラ(図示せず)は、パルス光線27の経路に減衰プレート471~479を配置または除去することによって、減衰モジュール47の透過係数kmodを変更する。
【0075】
システム21はまた、パルス光線27に所望の方向性を与えつつ、システム21をよりコンパクトにするために、折りたたみミラー49またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0076】
図示の例では、基板1は並進ステージ51上に配置されている。並進ステージ51は、ステップバイステップモータ(図示せず)に接続されている。ステップバイステップモータは、アレイの各ダイ3がパルス光線27によって順番に照射されるように、並進ステージ51を(XY)平面内で並進運動させる。
【0077】
図5は、マスク31の別の実施形態を示す図である。この図5では、マスク31はオープン構成になっている。
【0078】
マスク31は、中に開口部55が形成されたフレーム53を具える。フレーム53には、複数のスライダ57、59、61、63、65、67、69、71がスライド可能に取り付けられ、スライダには複数のプレート73、75、77、79が取り付けられている。
【0079】
図示の例では、フレーム53は、等しい長さの4つの辺(sides)と4つの直角を有する。開口部55は正方形である。フレーム53の各辺は、それぞれの並進軸A1、A2、A3、A4に沿って延びる。
【0080】
他のタイプのフレームも可能であり、例えば、フレーム53は、長方形の開口部55を規定するように異なる長さの側面を有してもよい。あるいは、フレーム53は直角でなくてもよい。あるいは、フレーム53は4より多いか少ない辺を有していてもよい。
【0081】
図示の例では、フレーム53の各辺に2つのスライダ57~71が取り付けられている。
【0082】
各スライダ57~71には、モータ、ここではリニアモータ81、83、85、87、89が装備されている(図5にはそのうちの5つのみが示されている)。モータ81~89は、並進軸A1、A2、A3、A4と整列するように、フレーム53のそれぞれの辺に取り付けられた磁気トラック811、831、851、871を有する(そのうちの4つのみが示されている)。各磁気トラック811~871は、可動子813、833、853、873を支持している。各可動子813~873に1つのスライダ57~71が取り付けられている。
【0083】
各スライダ57~71には、マウント95、97、99、101、103、105、107、109が回動可能に取り付けられている。各マウント95~109は、それぞれのピボット軸R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8を中心に回転する。ピボット軸R1~R8は互いに平行である。ピボット軸R1~R8は、平行移動軸A1~A4に垂直である。
【0084】
プレート73~79のそれぞれは2つの端部を有し、プレート73~79の各端部は、フレーム53の反対側に位置するスライダ57~71のマウント95~109に固定されている。したがって、各プレート73~79は、開口部55を横切って延びる。
【0085】
プレート73-79は剛性を有する。プレート73~79は、例えば炭化ケイ素(SiC)や酸化アルミニウム(Al)で作られている。
【0086】
プレート73~79の透過係数は、0%~100%である。一例では、プレート73~79の透過係数は等しい。別の例では、プレート73~79の透過係数は異なる。
【0087】
プレート73~79の間の領域は、マスク31ゾーン、例えば第1ゾーン33に対応する。プレート73~79の間の領域は穴80である。
【0088】
プレート73~79によって画定される領域は、マスク31の別ゾーン、例えば、第2ゾーン35に対応する。
【0089】
図6は、一対のスライダ57、67に取り付けられたプレート73を示している。
【0090】
各スライダ57、67は、磁気トラックに沿った位置を知るためのエンコーダ91、93を具えている。
【0091】
図6に示すように、プレート73の内側のエッジ110は面取りされている。面取りされた内側エッジ110により、基板1上のマスク31の鮮明な画像を達成することが改善される。
【0092】
マウント95~109は、トーション下で弾力的に変形可能である。この効果のために、各マウント95~109は、少なくとも1つのノッチ1051、1053、1055を呈する。図6に示す例では、各マウント95、105は3つのノッチ1051、1053、1055を呈する。
【0093】
コントローラ(図示せず)は、モータ81~89を命令するように構成されている。
【0094】
動作時に、コントローラはそれぞれの磁気トラック811~871に沿った可動子813~893の変位を命令する。これにより、スライダ57~71が、それぞれの並進軸A1~A4に沿って並進運動する。
【0095】
1つのプレートを支持する一対のスライダが共に同じ距離だけ移動すると、プレートは(XY)平面上の単一軸に沿って移動する。
【0096】
図7に示す例では、すべてのスライダ57~71が同じ距離だけ移動している。その結果、すべてのプレート73~79が直線的に、ここでは開口部55の中心に向かって移動される。この例では、プレート73~79は、開口部55を閉じるように移動される。マスク31は閉じた状態となる。
【0097】
図8に示す例では、プレート73~79を支持する一対のスライダのスライダ57~71が異なる距離だけ動かされ、プレート73~79が(XY)平面内で回転している。これは、マウント95~109の弾性変形によって、マウント95~109が回転軸R1~R8を中心に回転できるようになるためである。
【0098】
本実施形態マスク31では、第1および第2ゾーン33、35の少なくとも一方が、加工基板に関して変更可能な形状、寸法、または位置を有する。
【0099】
コントローラは、第1ゾーン33および第2ゾーン35の少なくとも一方の位置、形状、または寸法を変更するように、プレート73~79を相互移動させるように適合されている。
【0100】
コントローラは、穴80の形状がダイ3の領域11、13、15、17、19のうちの1つの形状と相似となるように、プレート73~79を動かすように適合されている。
【0101】
換言すれば、コントローラは、第1ゾーン33の位置が領域11~19の1つと整列するようにプレート73~79を動かすように適合されている。この文脈において、「整列(aligned)」とは、第1ゾーン33の画像が領域11~19の1つに投影されることを意味する。
【0102】
次に、加工基板1の被加工面5に供給されるエネルギー量を空間的に制御するための方法を説明する。
【0103】
この方法の第1の実施形態は、マスク31の第1の実施形態で実施される。この方法の第1の実施形態のステップを、図9に概略的に示す。
【0104】
この方法の第1の実施形態の第1のフェーズIでは、マスク31の少なくとも1つのパラメータが決定される。マスク31のパラメータは、ゾーン33~41の透過係数、ゾーン33~41の形状、ゾーン33~41の寸法からなるグループから選択される。
【0105】
図10を参照すると、ステップa)において、光源23がパルス光線27を放出する。パルス光線27は、均一透過マスク111によって受光され透過される。均一透過マスク111は、パルス光線27を成形して、試験ダイ113の形状に対応した長方形の形状にする。
【0106】
試験基板115が、並進ステージ51上に配置される。試験基板115は、その試験面117上に試験ダイ113のアレイを担持している。試験基板115は基板1と同様である。あるいは、試験基板115は、より少ない数の試験ダイ113を担持してもよい。試験基板115に担持された試験ダイ113は、加工基板1に担持されたダイ3と同様である。
【0107】
換言すれば、試験基板115の試験面117は、加工基板1の被加工面5の第1の領域11の光学特性および熱特性の第1の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第1の試験領域119と、加工基板1の被加工面5の第2の領域13の光学特性および熱特性の第2の組み合わせと同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第2の試験領域121とを含む。
【0108】
この例では、試験ダイ113はまた、第3、第4、および第5の領域15、17、19とそれぞれ同じ光学特性および熱特性の組み合わせを有する第3、第4および第5の試験領域133、135、137を含む(図11に示す)。矢印Tmaxは、温度の上昇を示す。
【0109】
均一透過マスク111は、その表面全体にわたって均一な透過係数を有する。その結果、試験面115は均一に照射され、試験ダイ113全体がパルス光線27から同じ量のエネルギーを受ける。
【0110】
次に、試験面115が受けたエネルギーは熱に変換され、試験面の表面温度が上昇する。先に説明したように、この到達温度は、試験面115の領域の光学的特性と熱的特性の組み合わせに依存する。
【0111】
ここで、1つの試験ダイ113がパルス光線27に照射される。
【0112】
光学特性と熱特性の第1の組み合わせにより、第1の試験領域119は、パルス光線27に照射されると第1の温度T1へと加熱される。
【0113】
光学特性と熱特性の第2の組み合わせにより、第2の領域121は、パルス光線27に照射されると第2の温度T2へと加熱される。
【0114】
この照射に応答して、各試験領域119、121は、その温度T1、T2に比例したそれぞれの電磁放射123、125を放出する。第1の試験領域119は、第1の電磁放射123を放出する。第2の試験領域121は、第2の電磁放射125を放出する。
【0115】
第3、第4、第5の試験領域から放出される電磁放射は図示していない。
【0116】
ステップb)において、放射検出器127が第1の電磁放射123と第2の電磁放射125を検出する。
【0117】
放射センサ127は、試験基板115の物理量を検出するように適合されている。例えば、放射センサ127は、熱電磁放射123、125を検出するように適合された熱センサである。
【0118】
あるいは、放射センサ127は、試験基板115の物理的特性を検出するように適合されている。例えば、放射センサ127は、ダイ3の表面で反射された形状の光で電磁放射線123、125を検出するように適合された光学センサである。
【0119】
放射検出器127は、試験ダイ113の表面全体の電磁放射123、125の空間分布を捕捉し、それを計算ユニット129(例えばコンピュータ)に送信する。
【0120】
ステップc)において、計算ユニット129は、各試験領域119、121、133、137によって放出される電磁放射123、125の量に基づいて、エネルギー量E1~E5を決定する。
【0121】
より正確には、計算ユニット129は、第1の領域11が第1の目標温度Tt1に到達するために必要な第1のエネルギー量E1を決定する。計算ユニット129は、第2の領域13が第2の目標温度Tt2に到達するように、第2のエネルギー量E2を決定する。
【0122】
エネルギー量E1~E5を決定するために、計算ユニット129は、電磁放射に関連する温度を計算するようにプログラムされている。
【0123】
試験ダイ113の試験領域119、121の座標は既知であり、計算ユニット129に入力して記憶させることができる。計算ユニット129は、試験領域119、121の座標に基づいて試験ダイ3の空間マップを生成する。
【0124】
計算ユニット129は、試験ダイ3の空間マップと、検出された電磁放射123、125とに基づいて、試験ダイ113の温度311の空間分布のマップを生成する。図11は、試験ダイ113の温度131の空間分布のマップの例を示す図である。ここでは、第1の試験領域119の第1の温度T1が最も低くなっている。また、第2の試験領域121の第2の温度T2が最も高い。
【0125】
温度空間分布マップ131は、各領域の光学特性(反射される光の量)だけでなく、それらの熱特性(熱拡散率の高い領域が熱拡散率の低い隣接領域に熱を伝達する)も考慮されている。
【0126】
代替例では、試験ダイ113の領域の座標は、既知ではない。計算ユニット129は、試験ダイ113の温度分布に基づいて、試験ダイ113の領域の座標を特定する。
【0127】
計算ユニット129は、ダイ3内の相対温度の空間分布のマップを生成することができる。例えば、第1の温度T1を「基準」温度と見なし、計算ユニット129は、他の領域の温度が基準温度と比較してどれだけ高いか低いかを特定する。例えば、第2の温度T2は基準温度の110%、温度T3は基準温度の90%であり得る。
【0128】
パルス光線27のパワーを検出するために、例えばフォトダイオードなどのエネルギー検出器(図示せず)が配置される。
【0129】
計算ユニット129は、検出された電力、パルス光線27によって照射されたときの試験領域119、121、133、135、137の到達温度、および領域11~19のそれぞれの目標温度Tt1~Tt5に基づいてエネルギー量E1~E5を決定する。
【0130】
ステップd)において、計算ユニット129は、エネルギー量E1~E5に基づいてマスク31の異なるゾーン33~41の透過係数k1~k5を決定する。
【0131】
透過係数k1~k5は、パルス光線27によって放出された電力がダイ3に到達するまでにどれだけ減衰するかを示す指標である。
【0132】
次に、マスク31ゾーン33~41の透過係数k1~k5がファイルに記憶される。
【0133】
ステップe)において、マスク31が、記憶されたファイルに基づいて作製される。ゾーン33~41の透過係数k1~k5は、前述のように達成される(異なる光学コーティング、異なる厚さなど)。
【0134】
この方法の第2段階では、被加工面5がアニールされる。
【0135】
ステップf)において、マスク31が、光源23と加工基板1の被加工面5との間に配置される。加工基板1は、並進ステージ51上に位置している。加工基板の被加工面5は、供給されるエネルギーの量を空間的に制御するためのシステム21に向けられている。
【0136】
マスク31は、加工面5の第1の領域11の形状と相似形状を有する第1ゾーン33と、加工面5の第2の領域13の形状と相似形状を有する第2ゾーン35とを含む。
【0137】
マスク31は、第1ゾーン33が第1の領域13と整列し、第2ゾーン35が第2の領域13と整列し、第3ゾーン37が第3の領域15と整列し、第4ゾーン39が第4の領域17と整列し、第5ゾーン41が第5の領域19に整列するように配向されている。
【0138】
この文脈において、「整列」とは、各ゾーン33~41の画像が、関連する領域11~19に投影されることを意味する。
【0139】
ステップg)において、光源23が、パルス光線27を被加工面5に向けて照射する。マスク31は、パルス光線27を受け、パルス光線27を少なくとも部分的に透過させる。
【0140】
ステップh)において、第1の量のエネルギーE1が、ダイ3の第1の領域11に供給される。第1の量のエネルギーE1は、±1%以内で第1の領域11に均一かつ同時に供給される。第1の領域11は、第1の目標温度Tt1に達する。
【0141】
ステップi)において、第2の量のエネルギーE2が、ダイ3の第2の領域13に供給される。第2の量のエネルギーE2は、±1%以内で第2の領域に均一かつ同時に供給される。
【0142】
同様に、第3、第4および第5の量のエネルギーE3~E5が、それぞれ±1%以内で均一かつ同時に、第3、第4および第5の領域15~19に供給される。
【0143】
この方法の第1の実施形態では、加工基板1の被加工面5の第1の領域13と、加工基板1の被加工面5の第2の領域13とが、パルス光線27によって同時に照射される。
【0144】
図12は、本発明の方法に従って加工されたダイ3の温度分布を示す図である。この図示の例では、すべての目標温度Tt1~Tt6が等しい。
【0145】
この方法の第2の実施形態は、マスク31の第2の実施形態を用いて実施される。この第2の実施形態では、マスク31ゾーン33~41の形状、寸法、または位置は、加工基板1に関して可変である。
【0146】
この方法の第2の実施形態の第1段階では、この方法の第1の実施形態の第1段階で説明したように、ステップa)、b)およびc)が実施される。
【0147】
ステップj)の間に、計算ユニット129は、穴80が次々に被加工面5の領域11~19の形状と相似形状となり、その穴80が次々に領域11~19と整列するように、プレート73~79を変位させるコマンドを作成する。
【0148】
一例では、ステップk)において、計算ユニット129が減衰モジュール47の透過係数kmodの値kmod1~kmod5を決定し、それによって減衰モジュール47が放出されたパルス光線27を減衰させて、それぞれの領域11~19にエネルギーE1~E5が供給される。例えば、第1の量のエネルギーE1を第1の領域11に供給するように、パルス光線は減衰モジュール47の第1の透過係数値kmod1によって減衰される。
【0149】
透過係数kmodの値kmod1~kmod5は、ステップd)で説明したように、パルス光線27のパワー、試験領域119、121の到達温度T1~T5、および領域11~19の目標温度Tt1~Tt5に基づいて決定される。
【0150】
この方法の第2の実施形態の第2段階のステップI)において、第2の実施形態のマスク31が、光源23と加工基板1の被加工面5との間に配置される。
【0151】
加工基板1は、並進ステージ51上に配置されている。加工基板の被加工面5は、エネルギー量を空間的に制御するためのシステム21に向けられている。
【0152】
ステップm)において、第1ゾーン33が、次々に加工基板1の被加工面5の領域11~19と相似形状となり、これらの領域11~19と整列して、それぞれの量のエネルギーE1~E5が各領域11~19に供給されるように、第1ゾーン33の形状または寸法または位置が変更される。
【0153】
例えば、第1ゾーン33の形状または寸法または位置は、第1ゾーン33が被加工面5の第1の領域11の形状および第2の領域13の形状と相似形状となるように変更され、その結果、第1の量のエネルギーE1が第1の領域に供給され、第2の量のエネルギーE2が第2の領域13に供給される。
【0154】
より正確には、第1の時間t1において、コントローラは精巧なコマンドをリニアモータ81~89に送信し、プレート73~79を移動させる。例えば、プレート73~79は、マスク31の第1ゾーン33に対応する穴80が第1の領域11の形状と相似形状となり、第1の領域11と整列するように移動する。
【0155】
ステップn)において、減衰モジュール47が第1の透過係数値kmod1でパルス光線27を透過するように、減衰モジュール47の透過係数kmodが修正される。
【0156】
ステップm)とn)は、同時に実施してもよいし、連続して実施してもよい。
【0157】
ステップg)において、光源23がパルス光線27を放出する。
【0158】
ステップh)において、第1の量のエネルギーE1が被加工面5の第1の領域11に供給され、その結果、第1の領域11が第1の目標温度Tt1に達する。
【0159】
この例では、第2ゾーン35に対応するプレート73~79の透過係数はゼロである。その結果、パルス光線27はこれらの領域13~19を照射しないので、第2、第3、第4および第5の領域13~19に送達されるエネルギーE2~E5の量はゼロである。
【0160】
第2の時間t2において、ステップm)で、プレート73~79が、穴80が第2の領域13の形状と相似形状となり、第1の領域13と整列するように移動する。
【0161】
ステップn)において、減衰モジュール47が第2の透過係数値kmod2でパルス光線27を透過するように、減衰モジュール47の透過係数kmodが修正される。
【0162】
ステップg)において、光源23がパルス光線27を放出する。
【0163】
ステップi)において、第2の量のエネルギーE2が被加工面5の第2の領域13に供給され、その結果、第2の領域13が第2の目標エネルギーTt2に到達する。
【0164】
照射のない領域11、15~19に供給されるエネルギーE1、E3~E5の量はゼロである。
【0165】
ステップm)、n)、およびg)は、エネルギー量E1~E5がそれぞれの領域11~19に供給され、領域11~19がそれぞれの目標温度Tt1~Tt5に達するまで繰り返される。
【0166】
別の例では、第1の領域11は、第1の露光時間Δt1だけ照射される。
【0167】
露光時間Δt1~Δt5の変化を、減衰モジュール47の透過係数kmodの変化と組み合わせることができる。代替的に、別の例では、露光時間Δt1~Δt5のみを変化させ、減衰モジュールの透過係数kmodが固定される。
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【国際調査報告】