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特表2022-539156ヒアルロン酸を用いた眼組織へのAAV媒介形質導入の増強
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸を用いた眼組織へのAAV媒介形質導入の増強
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20220831BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220831BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/864 100Z
A61K38/17
A61P27/02
A61K47/36
A61K47/46
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/14
C12N7/01 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577419
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020040004
(87)【国際公開番号】W WO2020264438
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,596
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ボエ,シャノン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ボエ,サンフォード,エル.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BD38
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD26Z
4C076DD43
4C076EE23
4C076EE37
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA02
4C084BA44
4C084DB59
4C084DC50
4C084MA05
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA05
4C087MA58
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、rAAV粒子の組成物、および増強された形質導入特性を有するrAAV粒子を投与するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の目へカーゴを送達する方法であって、方法が、(a)ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドおよび(b)カーゴを含むrAAV粒子を対象の目へ投与することを含み、ここでカーゴが目へ送達される、前記方法。
【請求項2】
カプシドが、正に帯電したアミノ残基の、表面が露出した1以上のパッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カプシドの血清型が、AAV2またはそのバリアントである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カプシドが、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドのアミノ酸残基にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換が、Y272F、Y444F、T491V、Y500F、Y700F、Y704F、またはY730Fのうち1以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
カプシドが、AAV2G9カプシドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
カプシドが、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換が、以下:
(a)Y444F;
(b)Y444F+Y500F+Y730F;
(c)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F;
(d)Y444F+Y500F+Y730F+T491V;または
(e)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F+T491V、あるいは、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、もしくは配列番号10で夫々表されるとおりの野生型AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV9、もしくはAAV10のカプシドタンパク質のうちいずれか1つにおける、これらの置換に対応する同等のアミノ酸位置での置換
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
カプシドの血清型が、AAV6またはそのバリアントである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
カプシドが、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドのアミノ酸残基にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換が、Y445F、Y705F、Y731F、T492V、およびS663Vの1以上を含む、請求項1、2および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
カプシドが、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換が、以下:
(a)Y445F;
(b)Y705F+Y731F;
(c)T492V;
(d)Y705F+Y731F+T492V;
(e)S663V;または
(f)S663V+T492V
を含む、請求項1~3および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カプシドが、AAV7m8カプシド、AAV-DJカプシド、AAV2/2-MAXカプシド、AAVSHh10カプシド、およびAAVSHh10Yカプシドからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
カプシドが、AAV3カプシド、AAV3bカプシド、およびAAVLK03カプシドからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
カプシドが、配列番号1で表されるとおりの野生型AAV1カプシドのアミノ酸残基531にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換がE531Kである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
カプシドが、AAV7BP2カプシドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
カプシドが、配列番号8で表されるとおりの野生型AAV8カプシドのアミノ酸残基533および/または733にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換が、E533Kおよび/またはY733Fである、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
カプシドが、投与するステップに先立ち、HAとプレインキュベートされる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
カプシドが、HAを含む緩衝剤とプレインキュベートされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
カプシドが、約5分、約15分、約30分、約45分、約60分、または約75分の間、HAとプレインキュベートされる、請求項15~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
カプシドが、約15分の間、プレインキュベートされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
カプシドが、HAと、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、または1.0%(体積単位の重量)の濃度でプレインキュベートされる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
rAAV粒子が、約1×1010vg/ml、5×1010vg/ml、1×1011vg/ml、5×1011vg/ml、1×1012vg/ml、2×1012vg/ml、3×1012vg/ml、4×1012vg/ml、約5×1012vg/ml、約1×1013vg/ml、または約5×1013vg/mlの力価で、対象の目へ投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
rAAV粒子が、5×1011vg/ml未満の力価で、対象の目へ投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
rAAV粒子が、硝子体内注射によって投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
硝子体内注射が、約200μL、約175μL、約160μL、約145μL、約130μL、約115μL、約100μL、約90μL、約80μL、約70μL、約60μL、約55μL、約50μL、約45μL、約35μL、約20μL、約10μL、または約5μLの体積で、提供される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
硝子体内注射が、約50μLの体積で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
カーゴが、異種の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
異種の核酸配列が、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞において、異種の核酸配列の発現に向かわせる調節配列へ動作可能に連結されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
調節配列が、以下:ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)、ポリアデニル化シグナル配列、イントロン/エキソン接合/スプライシングシグナル、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
異種の核酸配列が、治療剤をコードする、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
治療剤が、神経栄養因子または光遺伝学的アクチュエータである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療剤が、神経栄養因子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
神経栄養因子が、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療剤が、光遺伝学的アクチュエータである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
光遺伝学的アクチュエータが、以下:バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
対象が、治療的に有効な量の治療剤を必要とする、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
rAAV粒子が、治療的に有効な量の治療剤を提供するのに有効な時間、投与される、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるための方法であって、
方法が、ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドを含むrAAV粒子を対象へ、対象における疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な時間、対象の目へ硝子体内投与することを含み、
ここでrAAV粒子が、(a)治療剤をコードするポリヌクレオチドおよび(b)AAV2またはAAV6である血清型のカプシドを含む、前記方法。
【請求項37】
治療的に有効な量の治療剤を、これを必要とする哺乳動物に提供するための方法であって、
方法が、ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドを含むrAAV粒子を対象へ、治療的に有効な量の治療剤を対象に提供するのに有効な時間、対象の目へ硝子体内投与することを含み、
ここでrAAV粒子が、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む、前記方法。
【請求項38】
疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるための方法であって、
方法が、ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドを含むrAAV粒子を対象へ、対象における疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な時間、これを必要とする対象の目へ硝子体内投与することを含み、
ここでrAAV粒子が、(a)治療剤をコードするポリヌクレオチド、および(a)AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む、前記方法。
【請求項39】
疾患、障害、または疾病が、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、または地図状萎縮である、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
対象が、ヒトである、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
治療剤の産生が、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護するか、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させるか、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
治療剤の産生が、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、哺乳動物の片目または両目中へのrAAV粒子の最初の投与から、実質的に少なくとも3カ月後までの期間、留まらせる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
治療剤の産生が、1以上の網膜神経節細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
治療剤が、神経栄養因子を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
疾患、障害、または疾病が、網膜色素変性症または緑内障である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
治療剤の産生が、1以上の網膜神経節細胞または網膜双極細胞を保護する、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
治療剤が、光遺伝学的アクチュエータを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
光遺伝学的アクチュエータが、以下:バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
AAVとヒアルロン酸(HA)との混合物を保存するための緩衝剤であって、以下:
(a)0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、または1.0%(体積単位の重量)の濃度のHA;
(b)平衡塩類溶液(BSS);
(c)人工の脳脊髄液;および
(d)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
を含む、前記緩衝剤。
【請求項50】
さらに以下:
a.リンガー乳酸溶液;
b.TMN200溶液;
c.ポリソルベート20;
d.ポロキサマー188;または
e.これらの組み合わせ
を含む、請求項49に記載の緩衝剤。
【請求項51】
HAが、0.4%(体積単位の重量)の濃度である、請求項49または50に記載の緩衝剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号EY024280の下、政府の支援でなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、2019年6月27日に出願された米国仮出願第62/867,596号(これは、その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
遺伝子治療の分野において、大きな進歩が、ウイルスを使用して治療的遺伝物質(genetic material)を送達することによって実現されてきた。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その低免疫原性および非分裂細胞への有効な形質導入能に起因し、遺伝子治療のための高度に有効なウイルスベクターとして相当な注目を集めている。AAVは、様々な細胞型および組織型に感染することが示されており、過去10年間にわたり著しい進展が、このウイルス系をヒト遺伝子治療における使用に適応させるためになされてきた。眼組織へのAAV処置はこの10年、多くの研究の焦点となっており、一握りのAAV治療が近年、FDAによってペイシェント(patients)における使用が承認されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
本明細書に記載されるのは、対象の目へカーゴ(cargo)を送達する方法である。いくつかの態様において、対象はこれを必要とする。いくつかの態様において、方法は、rAAV粒子を対象の目へ投与することを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、(a)ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドおよび(b)カーゴを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、(a)ヒアルロン酸(HA)と混和されたカプシドと、(b)カーゴとのうち、一方または両方を含む。いくつかの態様において、カーゴは、目へ送達される。いくつかの態様において、HAは、rAAV粒子カプシドと直接接触している。いくつかの態様において、rAAVカプシドは、HAで、少なくとも部分的に被覆されている。これらの方法は、目の数種の疾患の、遺伝子治療をベースとした処置に使用されてもよい。いくつかの態様において、rAAV粒子は、硝子体内に投与される。いくつかの態様において、カプシドは、正に帯電した残基の、表面が露出した1以上のパッチ(patches)を含む。いくつかの態様において、カプシドの血清型は、rAAV2またはそのバリアントである。いくつかの態様において、カプシドの血清型は、rAAV6またはそのバリアントである。いくつかの態様において、方法はさらに、rAAV粒子を目へ投与することに先立ち、カプシドをHAとプレインキュベートすること(pre-incubating)を含む。いくつかの態様において、カプシドは、HAを含む緩衝剤とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、緩衝剤は、HAを、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、または1.0%(体積単位の重量(weight by volume))の濃度で含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、約1×1010vg/ml、5×1010vg/ml、1×1011vg/ml、5×1011vg/ml、1×1012vg/ml、2×1012vg/ml、3×1012vg/ml、4×1012vg/ml、約5×1012vg/ml、約1×1013vg/ml、または約5×1013vg/mlの力価で、対象の目へ投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、5×1011vg/ml未満の力価で、対象の目へ投与される。いくつかの態様において、カーゴは、異種の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞(astrocyte cell)において、異種の核酸配列の発現に向かわせる調節配列へ動作可能に(operably)連結されている。いくつかの態様において、調節配列は、以下:ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)、ポリアデニル化シグナル配列、イントロン/エキソン接合(junctions)/スプライシングシグナル、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、治療剤をコードする。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子である。いくつかの態様において、神経栄養因子は、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、治療剤は、光遺伝学的アクチュエータ(optogenetic actuator)である。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、以下:バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、カーゴは、以下:網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型(wet)AMD、萎縮型(dry)AMD、ブドウ膜炎、ベスト病、シュタルガルト病、アッシャー症候群、地図状萎縮、糖尿病網膜症、網膜分離症、色覚異常、全脈絡膜萎縮、バルデ・ビードル症候群、糖原病、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される疾患を処置するために投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一である。
【0005】
本明細書に記載されるのは、ある態様において、rAAV粒子をヒアルロン酸とともに共投与することを含む方法である。いくつかの態様において、rAAV粒子は、ヒアルロン酸とともに、硝子体内注射によって哺乳動物の片目または両目へ投与される。いくつかの態様において、AAV粒子は、正に帯電した残基の、表面が露出した1以上のパッチを含むカプシドを含む。いくつかの態様において、カプシドの血清型は、AAV2またはそのバリアントである。いくつかの態様において、カプシドの血清型は、AAV6またはそのバリアントである。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子のカプシドは、哺乳動物の片目または両目への投与に先立ち、ヒアルロン酸(HA)とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、HAを含む緩衝剤とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、少なくとも約5分、約15分、約30分、約45分、約60分、または約75分の間、HAとプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、約15分の間、プレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、HAと、少なくとも約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、1.5%、2.5%、3.0%、3.5%、4%、5%、または10%(体積単位の重量)の濃度でプレインキュベートされる。いくつかの態様において、rAAV粒子は、約1×1010vg/ml、5×1010vg/ml、1×1011vg/ml、5×1011vg/ml、1×1012vg/ml、2×1012vg/ml、3×1012vg/ml、4×1012vg/ml、約5×1012vg/ml、約1×1013vg/ml、または約5×1013vg/mlの力価で投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、5×1011vg/ml未満の力価で投与される。いくつかの態様において、硝子体内注射は、約200μL、約175μL、約160μL、約145μL、約130μL、約115μL、約100μL、約90μL、約80μL、約70μL、約60μL、約55μL、約50μL、約45μL、約35μL、約20μL、約10μL、または約5μLの体積で提供される。いくつかの態様において、硝子体内注射は、約50μLの体積で投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子はさらに、異種の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、異種の核酸配列またはタンパク質は、rAAVのカーゴである。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞において、異種の核酸配列の発現に向かわせる調節配列へ動作可能に連結されている。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、治療剤をコードする。いくつかの態様において、治療剤は、疾患、状態、または疾病の処置のためのものである。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子または光遺伝学的アクチュエータから選択される。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、または地図状萎縮である。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護する(preserves)か、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させる(restores)か、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、rAAV粒子の、哺乳動物の片目または両目中への最初の投与から、実質的に少なくとも3カ月後の期間、留まらせる(persists in)。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子を含む。いくつかの態様において、神経栄養因子は、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、網膜色素変性症または緑内障である。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞または網膜双極細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、光遺伝学的アクチュエータを含む。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一である。
【0006】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、治療的に有効な量の治療剤を、これを必要とする哺乳動物に提供するための方法である。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物の片目または両目へ、rAAV粒子をヒアルロン酸(HA)とともに硝子体内に共投与することを含む。いくつかの態様において、HAは、rAAVカプシドに直接結び付けられている。いくつかの態様において、rAAV粒子のヒアルロン酸との共投与は、治療的に有効な量の治療剤を哺乳動物に提供するのに有効な時間なされる。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV2もしくはAAV6のカプシド、またはそのバリアントを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、およびAAVLK03のカプシドから選択されるカプシドのバリアントを含む。いくつかの態様において、治療剤は、異種の核酸配列である。いくつかの態様において、rAAV粒子は、異種の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞において、異種の核酸配列の発現に向かわせる調節配列へ動作可能に連結されている。いくつかの態様において、異種の核酸配列は、治療剤をコードする。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子または光遺伝学的アクチュエータから選択される。
【0007】
いくつかの態様において、治療剤は、疾患、疾病、または障害の処置のためのものである。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、または地図状萎縮である。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護するか、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させるか、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、rAAV粒子の、哺乳動物の片目または両目中への最初の投与から、実質的に少なくとも3カ月後の期間、留まらせる。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子を含む。いくつかの態様において、神経栄養因子は、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、網膜色素変性症または緑内障である。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞または網膜双極細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、光遺伝学的アクチュエータを含む。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一である。
【0008】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、疾患、障害、または疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるための方法である。いくつかの態様において、方法は、rAAV粒子をヒアルロン酸と、これを必要とする哺乳動物の片目または両目へ硝子体内に共投与することを含む。いくつかの態様において、共投与は、哺乳動物における疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な時間なされる。いくつかの態様において、rAAV粒子は、i)治療剤をコードするポリヌクレオチド、およびii)AAV2もしくはAAV6のカプシド、またはそのバリアントを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、または地図状萎縮である。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護するか、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させるか、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、rAAV粒子の、哺乳動物の片目または両目中への最初の投与から、実質的に少なくとも3カ月後の期間、留まらせる。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子を含む。いくつかの態様において、神経栄養因子は、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、網膜色素変性症または緑内障である。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞または網膜双極細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、光遺伝学的アクチュエータを含む。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。
【0009】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、治療的に有効な量の治療剤を、これを必要とする哺乳動物に提供するための方法である。いくつかの態様において 方法は、rAAV粒子をヒアルロン酸と、哺乳動物の片目または両目へ硝子体内に共投与することを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子のヒアルロン酸との、哺乳動物の片目または両目への共投与は、治療的に有効な量の治療剤を哺乳動物に提供するのに有効な時間なされる。いくつかの態様において、rAAV粒子は、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一である。
【0010】
ある側面において、本明細書に記載されるのは、疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるための方法である。いくつかの態様において、方法は、rAAV粒子をヒアルロン酸と、これを必要とする哺乳動物の片目または両目へ、哺乳動物における疾患、障害、もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な時間、硝子体内に共投与することを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、i)治療剤をコードするポリヌクレオチド、およびii)AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、またはAAVLK03のカプシドを含む。いくつかの態様において、カプシドは、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、およびAAVSHh10Yから選択される。いくつかの態様において、カプシドは、AAV3、AAV3b、およびAAVLK03から選択される。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドのアミノ酸残基にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸の置換は、Y272F、Y444F、T491V、Y500F、Y700F、Y704F、およびY730Fの1以上を含む。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドのアミノ酸残基にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸の置換は、Y445F、Y705F、Y731F、T492V、およびS663Vの1以上を含む。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号1で表されるとおりの野生型AAV1カプシドのアミノ酸残基531にて、ネイティブではないアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸置換は、E531Kである。いくつかの態様において、カプシドは、AAV7BP2を含む。いくつかの態様において、カプシドは、AAV2G9を含む。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号8で表されるとおりの野生型AAV8カプシドのアミノ酸残基533および/または733にて、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸置換は、E533Kおよび/またはY733Fである。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸の置換は、以下:(a)Y444F;(b)Y444F+Y500F+Y730F;(c)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F;(d)Y444F+Y500F+Y730F+T491V;または(e)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F+T491V、あるいは、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、もしくは配列番号10で夫々表されるとおりの野生型AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV9、もしくはAAV10のカプシドタンパク質のうちいずれか1つにおける、これらの置換に対応する同等のアミノ酸位置での置換を含む。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含み、ここでネイティブではないアミノ酸の置換は、以下:(a)Y445F;(b)Y705F+Y731F;(c)T492V;(d)Y705F+Y731F+T492V;(e)S663V;または(f)S663V+T492Vを含む。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、または地図状萎縮である。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護するか、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させるか、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、rAAV粒子の、哺乳動物の片目または両目中への最初の投与から、実質的に少なくとも3カ月後の期間、留まらせる。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、神経栄養因子を含む。いくつかの態様において、神経栄養因子は、以下:脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、疾患、障害、または疾病は、網膜色素変性症または緑内障である。いくつかの態様において、治療剤の産生は、1以上の網膜神経節細胞または網膜双極細胞を保護する。いくつかの態様において、治療剤は、光遺伝学的アクチュエータを含む。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一である。
【0011】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、AAVとヒアルロン酸(HA)との混合物を保存する(storing)ための緩衝剤である。いくつかの態様において、緩衝剤は、以下:(a)約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、2.0%、3.0%、5.0%、もしくは10%(体積単位の重量)の濃度のHA;(b)平衡塩類溶液(BSS);(c)人工の脳脊髄液;および/または(d)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。いくつかの態様において、緩衝剤はさらに、(e)リンガー乳酸溶液;(f)TMN200溶液;(g)ポリソルベート20;および/または(h)ポロキサマー188を含む。いくつかの態様において、HAは、0.4%(体積単位の重量)の濃度である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な記載
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであって、本開示のある側面を実証するために包含される。本開示は、以下の記載を、同様の(like)参照数字が同様の要素を同定する添付の図面と併せ参照することによってより良好に理解され得るが、図面において:
【0013】
図1図1は、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンとの二量体の線状コンカテマーであるヒアルロン酸(HA)の化学構造の概略図である。
【0014】
図2図2A~2Bは、rAAV粒子の、661Wマウス光受容細胞へのin vitroでの投与の効果を説明するものであるが、rAAV粒子のカプシドは、感染から5分前、15分前、および1時間前にHA(商標名ヒーロン(Healon)(登録商標))とプレインキュベートした。HAとのプレ(Pre-)処置は、AAV2(図2A)における661W細胞の形質導入を増大させる。AAV5における661W細胞は、図2Bに説明される。カプシドを、ヒーロン(登録商標)と3:1(AAV:ヒーロン(登録商標))の比率でプレインキュベートし、その後2000の感染の多重度(MOI)にて細胞へ注射した。対照は、非感染細胞と、ベクター単独で感染させられた細胞とを包含した。
【0015】
図3図3は、自己相補的(sc)rAAV6をベースとした粒子(smCBAプロモーターによって動作可能に制御されるmCherryレポーター導入遺伝子を発現する)の、5000および10,000のMOIにてin vitroで注入されたHEK293T細胞への投与の効果を説明する。AAV6カプシドおよびAAV6カプシドのバリアントは、指示があった場合、感染に先立ちHAとプレインキュベートした。試験されたバリアントは、AAV6(D532N)およびAAV6-3pmutを包含する。mCherry発現は、各試料において陽性細胞のパーセンテージに平均蛍光強度を乗じることによって、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって算出した。エラーバーは、-1標準偏差を表す。HAのプレ処置は、これら粒子によるHEK293T細胞の形質導入を実質的に増大させた。
【0016】
図4図4は、免疫組織化学(IHC)を3細胞株においてCD44細胞表面受容体に対し評価した検証実験の結果を説明する。ヒトRPE株であるARPE-19細胞(図4A)はCD44発現を呈した(矢印によって指し示されるとおり);対して、HEK293T(図4C)および661W細胞(図4B)はCD44を発現しなかった。
【0017】
図5図5は、AAV2カプシド単独と、ヒーロン(登録商標)とプレインキュベートされたAAV2カプシドとの、種々の塩濃度(50mMと1Mとの間)のNaClでのヘパラン結合溶離プロファイルの結果を説明する。HAのプレ処置は、AAV2カプシドの、細胞膜上ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との相互作用を変化させない。
【0018】
図6A図6A~6Bは、rAAV2のマウス全網膜中へのin vivo硝子体内注射後AAV2媒介mCherry発現の、形質導入に対するHAのプレインキュベーションおよび共投与の効果を説明する。対照は、非感染細胞と、ベクター単独で感染させられた細胞とを包含した。図6Bは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり、図6Aにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図6A中、矢印によって指し示される。
図6B図6A~6Bは、rAAV2のマウス全網膜中へのin vivo硝子体内注射後AAV2媒介mCherry発現の、形質導入に対するHAのプレインキュベーションおよび共投与の効果を説明する。対照は、非感染細胞と、ベクター単独で感染させられた細胞とを包含した。図6Bは、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、図6Aにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図6A中、矢印によって指し示される。
【0019】
図7A図7A~7Cは、AAV2カプシドバリアントDGE-DFを含むrAAV粒子の、3匹の4週齢Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図7A)および4週目(図7B)にて撮られた眼底画像を示す。図7Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された(aggregated))、図7Aおよび7Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図7A~7B中、矢印によって指し示される。
図7B図7A~7Cは、AAV2カプシドバリアントDGE-DFを含むrAAV粒子の、3匹の4週齢Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図7A)および4週目(図7B)にて撮られた眼底画像を示す。図7Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図7Aおよび7Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図7A~7B中、矢印によって指し示される。
図7C図7A~7Cは、AAV2カプシドバリアントDGE-DFを含むrAAV粒子の、3匹の4週齢Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図7A)および4週目(図7B)にて撮られた眼底画像を示す。図7Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図7Aおよび7Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図7A~7B中、矢印によって指し示される。
【0020】
図8A図8A~8Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V2を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図8A)および4週目(図8B)にて撮られた眼底画像を示す。図8Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図8Aおよび8Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図8A~8B中、矢印によって指し示される。
図8B図8A~8Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V2を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図8A)および4週目(図8B)にて撮られた眼底画像を示す。図8Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図8Aおよび8Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図8A~8B中、矢印によって指し示される。
図8C図8A~8Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V2を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図8A)および4週目(図8B)にて撮られた眼底画像を示す。図8Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図8Aおよび8Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図8A~8B中、矢印によって指し示される。
【0021】
図9A図9A~9Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V3を含むrAAV粒子の、Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図9A)および4週目(図9B)にて撮られた眼底画像を示す。図9Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図9Aおよび9Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図9A~9B中、矢印によって指し示される。
図9B図9A~9Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V3を含むrAAV粒子の、Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図9A)および4週目(図9B)にて撮られた眼底画像を示す。図9Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図9Aおよび9Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図9A~9B中、矢印によって指し示される。
図9C図9A~9Cは、AAV2カプシドバリアントP2-V3を含むrAAV粒子の、Nrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図9A)および4週目(図9B)にて撮られた眼底画像を示す。図9Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図9Aおよび9Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図9A~9B中、矢印によって指し示される。
【0022】
図10A図10A~10Cは、AAV2カプシドバリアントME-B(Y-F+T-V)を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図10A)および4週目(図10B)にて撮られた眼底画像を示す。図10Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図10Aおよび10Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図10A~10B中、矢印によって指し示される。
図10B図10A~10Cは、AAV2カプシドバリアントME-B(Y-F+T-V)を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図10A)および4週目(図10B)にて撮られた眼底画像を示す。図10Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図10Aおよび10Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図10A~10B中、矢印によって指し示される。
図10C図10A~10Cは、AAV2カプシドバリアントME-B(Y-F+T-V)を含むrAAV粒子の、3匹のNrl-GFPマウス中への硝子体内注射の効果(カプシドをHAとプレ処置した、またはしなかった)を説明する。注射後から2週目(図10A)および4週目(図10B)にて撮られた眼底画像を示す。図10Cは、フローサイトメトリーによって測定されたとおり(データは3マウス間で集計された)、図10Aおよび10Bにおいて観察されたmCherry発現の定量化を表す。mCherry発現は図10A~10B中、矢印によって指し示される。
【0023】
図11図11は、4カプシド:DGE-DF、P2-V2、P2-V3、およびME-B(Y-F+T-V)に係るフローサイトメトリー集計データを描く概略図である。
【0024】
図12A図12A~12Eは、HAで処置されたDGE-DF(図12A)、P2-V2(図12B)、P2-V3(図12C)、ME-B(Y-F+T-V)(図12D)の硝子体内投与後の網膜電図(ERG)結果、および集計データ(図12E)を示す概略図である。HAでの処置および共投与は、網膜細胞機能に何ら影響を与えなかった。図12Eの上グラフにおいて、N=11。P値=0.478132。図12Eの下グラフにおいて、N=11。P値=0.524563。
図12B図12A~12Eは、HAで処置されたDGE-DF(図12A)、P2-V2(図12B)、P2-V3(図12C)、ME-B(Y-F+T-V)(図12D)の硝子体内投与後の網膜電図(ERG)結果、および集計データ(図12E)を示す概略図である。HAでの処置および共投与は、網膜細胞機能に何ら影響を与えなかった。図12Eの上グラフにおいて、N=11。P値=0.478132。図12Eの下グラフにおいて、N=11。P値=0.524563。
図12C図12A~12Eは、HAで処置されたDGE-DF(図12A)、P2-V2(図12B)、P2-V3(図12C)、ME-B(Y-F+T-V)(図12D)の硝子体内投与後の網膜電図(ERG)結果、および集計データ(図12E)を示す概略図である。HAでの処置および共投与は、網膜細胞機能に何ら影響を与えなかった。図12Eの上グラフにおいて、N=11。P値=0.478132。図12Eの下グラフにおいて、N=11。P値=0.524563。
図12D図12A~12Eは、HAで処置されたDGE-DF(図12A)、P2-V2(図12B)、P2-V3(図12C)、ME-B(Y-F+T-V)(図12D)の硝子体内投与後の網膜電図(ERG)結果、および集計データ(図12E)を示す概略図である。HAでの処置および共投与は、網膜細胞機能に何ら影響を与えなかった。図12Eの上グラフにおいて、N=11。P値=0.478132。図12Eの下グラフにおいて、N=11。P値=0.524563。
図12E図12A~12Eは、HAで処置されたDGE-DF(図12A)、P2-V2(図12B)、P2-V3(図12C)、ME-B(Y-F+T-V)(図12D)の硝子体内投与後の網膜電図(ERG)結果、および集計データ(図12E)を示す概略図である。HAでの処置および共投与は、網膜細胞機能に何ら影響を与えなかった。図12Eの上グラフにおいて、N=11。P値=0.478132。図12Eの下グラフにおいて、N=11。P値=0.524563。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な記載
本開示は、AAVカプシドとヒアルロン酸とのプレインキュベーションおよび/または共投与を含む、増強された形質導入特性を有するrAAV粒子の投与のための、新規な方法、組成物、および緩衝剤を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示の方法は、哺乳動物の目に既に含まれている天然材料での処置に依拠する。いくつかの態様において、本明細書に開示の方法は、カプシド修飾に依拠せずに、AAVの接着(adhesion)に干渉しない機序を通して機能するものであり、よって当該技術分野における長年の切実なニーズを満たす。有利なことに、of本明細書に開示されるrAAV粒子投与の新規な方法は、哺乳動物の目の網膜を形質導入する効率、とりわけ光受容体(PR)細胞および網膜色素上皮(RPE)細胞をin vivoで形質導入する効率を改善する。
【0026】
眼内AAV治療は一般に、乏しい形質導入プロファイルに悩まされる。AAV2血清型のrAAV粒子の適正な形質導入を達成するのは、AAV2カプシドが凝集する(aggregate)傾向にあるという観点から、具体的には困難である。この凝集は主に、カプシド表面上の正に帯電したアミノ酸残基の存在に起因する。AAV6カプシドは、AAV6、AAV2、および他のカプシドの、数種の偽型ならびにバリアントと併せて、環境へ露出されたそれら表面上の残基の正に帯電した同様の「パッチ」を有する。
【0027】
網膜中への遺伝子送達の2つの一般的なアプローチは、硝子体内注射および網膜下注射である。網膜下注射は、網膜色素上皮(RPE)と光受容体との間の網膜下空隙中への投与を、これらニューロンを形質導入するのに要する。ベクターの送達を達成するのに、針は網膜を貫通しなければならず、その際に光受容細胞層をRPEから剥離させる。
【0028】
硝子体内注射は低侵襲性であり、よって臨床ヒト対象へ定型的に実施される好ましい投与ルートである。それでもなお、硝子体内送達による効率的な形質導入を呈するAAV血清型はほとんどない。これは、硝子体と神経網膜との間にヘパラン硫酸プロテオグリカンを豊富に含む基底膜である内境界膜(ILM)の存在に、一部起因して生じるが、前記膜は、ヘパラン硫酸との親和性が高いカプシドを隔離させることによる網膜を通したベクターの有効な拡散にとっての障壁として作用する。とりわけ、AAV2ベクターは一般に、硝子体内注射による投与の際、光受容細胞を形質導入し損なう。
【0029】
遺伝性の網膜変性疾患は、AAV媒介遺伝子治療の、臨床的に有望な焦点である。これらの疾患は、目の光受容細胞または網膜色素上皮(RPE)に発現されるmRNA転写産物中の病原性突然変異から発生し、細胞死および構造劣化に繋がる。AAV2およびAAV6のカプシド凝集を低減するよう設計された先の方法は、高い塩の緩衝剤でのカプシドのプレ処置を伴う。しかし、これらの緩衝剤は目に対して毒性があり、プレ処置後の投与を実行不可能なものにさせる。
【0030】
ヒアルロン酸(HA)は、ヒト硝子体の主要な構成要素である、アニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンであって、これは前記硝子体中、細胞外マトリックスへ共有結合的に連結されている。加えて、HAは、ヒト硝子体にとって良好な代用物にさせる光学特性および粘弾性特性をもつ、FDAに承認された物質である。HAは典型的には、細胞表面糖タンパク質、とりわけ受容体CD44によるエンドサイトーシスを通して細胞に入る。HAはまた、微飲作用(micropinocytosis)によっても細胞に入り得る。
【0031】
アデノウイルス形質導入は、アデノウイルス感染性の効率に影響を与えるとは言われなかったCD44に依存する機序を介して生じた。形質導入の増大は主に、CD44の細胞内ドメインの遊離(これはCD44へのHA結合の結果として生じた)によって媒介される、導入遺伝子の増大した発現に応じた。しかしながら、アデノウイルス治療の結果は、組換えAAV治療に容易には要約され得ない。さらに、CD44受容体へ結合する賦形剤は、AAVカプシドの、細胞認識および内在化に不可欠なILM構成要素ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)への結合能に干渉する可能性があることから、CD44に依存しない機序を通して機能する賦形剤とともに投与するニーズが存在している。
【0032】
代替的に、AAVベクターが、ILMと神経網膜との間に外科的に誘導されハイドロダイセクションされた(hydrodissected)空隙または水疱(bleb)中に置かれる「ILM下(subILM)」注射方法が開発された。ILM下注射は一般に、上に記載のとおりのAAV拡散へのILM障壁を回避する。
【0033】
記載の方法は、subILM送達のベクター用量より潜在的に低いベクター用量での非侵襲的硝子体内送達を通した、有効なベクター形質導入を提供する。本開示は、正に帯電したパッチを表面上に有するAAVカプシドで被覆することによって、硝子体中のこれら粒子の凝集が防止されるという発見に、少なくとも一部基づく。本明細書に使用されるとき、カプシドの「表面が露出したパッチ」は、環境へ露出されたカプシド上の、連続もしくは隣接した(または実質的に連続もしくは隣接した)カチオン性残基の3次元エリアを指す。カプシド凝集の防止は、網膜全体を通して拡散するAAV単一粒子懸濁液の水平拡散を可能にさせることで、網膜神経節細胞(RGC)、ミューラーグリア細胞、および他のPRなどの標的細胞へ到達させる。この増強されたAAVの拡散は、現在のAAV硝子体内用量が、標的細胞において同じ形質導入効率を達成するために低減されてもよく、これによってより安全な遺伝子治療が提供されることを示唆する。
【0034】
本明細書に記載のとおり、カチオン性パッチを有するカプシドの、ヒアルロン酸とのプレインキュベーションは、硝子体内に送達されるrAAV粒子による網膜形質導入を増大させるが、カプシド配列とは無関係である。いくつかの態様において、HA作用(function)による形質導入の増強は、CD44とは無関係である。いくつかの態様において、HAは、ビヒクルとして、ILMおよび硝子体中のHSPGのAAV結合には干渉しない。
【0035】
いくつかの態様において、記載の方法は、様々なAAVカプシドの血清型および偽型との使用に好適である。記載の方法は、ベクター効能を改善させ、よって所望の効果を達成するのに要されるrAAV粒子の濃度を低下させる。結果的に、記載の方法は、rAAVの安全性を増大させ、かつその製造費用を低減させることが可能である。これらの方法は、硝子体内注射に関連する外科的リスクを最小化し、治療費を低下させ、遺伝子治療の利用可能性(accessibility)を増加させる。記載の方法は、AAV2またはAAV6をベースとしたカプシドが硝子体内注射によって送達されるいずれの臨床の場においても、AAVの網膜形質導入を増大させる。
【0036】
ある専門用語
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および組成物と同様または等価ないずれの方法および組成物も、本開示の実践または試験において使用され得るが、好ましい方法および組成物は、本明細書に記載されている。本開示の目的上、以下の用語は、下に定義される:
【0037】
本明細書に使用されるとき、用語「ヒアルロン酸」および「HA」は、ヒアルロン酸、ヒアルロナン、ヒーロン(登録商標)、およびヒアルロン酸ナトリウムを、これらの分子量または質量を問わずに網羅する。つまり、これらの用語は、当該技術分野において知られているかまたは使用されるいずれの分子量のヒアルロン酸も網羅することが意図される。用語はまた、ヒアルロン酸のバリアント(これらに限定されないが、HAのトランケートバージョンおよび化学修飾バージョンを包含する)も網羅する。HAの「バリアント」は、野生型HA配列と、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、少なくとも約99.5%同一、または少なくとも約99.9%同一である。
【0038】
本明細書に使用されるとき、用語「硝子体内注射」、「硝子体内送達」、および「硝子体内投与」は、目の硝子体中のおよび硝子体への材料の注射を指す。この用語は、硝子体または網膜へのILM下注射によって創出される水疱からの材料(例として、AAVのベクターまたは粒子)の漏出は網羅しない。
【0039】
本明細書に使用されるとき、用語「光遺伝学的アクチュエータ」は、生体組織中のニューロン(例として、網膜組織中のニューロン)の活性をモジュレートすることが可能な光感受性イオンチャネルタンパク質を指すが、前記ニューロンは、これらタンパク質を発現するよう遺伝子学的に修飾されている。例示の光遺伝学的アクチュエータは、これらに限定されないが、ハロロドプシン、メラノプシン、錐体オプシン、チャネルロドプシン、バクテリオロドプシン、哺乳動物ロドプシン、および古細菌関連オプシンを包含する。
【0040】
用語「対象」は、本明細書に使用されるとき、本開示に従う組成物での処置が提供され得る、霊長目の動物などの哺乳動物を包含する生物を記載する。記載される処置の方法から利益を得られる哺乳動物種は、これらに限定されないが、類人猿;チンパンジー;オランウータン;ヒト;サル;イヌ(dogs)およびネコ(cats)などの飼育動物;ウマ(horses)、ウシ(cattle)、ブタ(pigs)、ヒツジ(sheep)、ヤギ(goats)、およびニワトリなどの家畜;ならびにマウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどの他の動物を包含する。
【0041】
用語「処置(treatment)」またはいずれかその文法的バリエーション(例として、処置する(treat)、処置すること(treating)、および処置等々)は、本明細書に使用されるとき、これらに限定されないが、疾患もしくは疾病の症状を緩和すること(alleviating);および/または、疾患もしくは疾病の進行、重症度、および/または範囲を低減すること(reducing)、抑制すること(suppressing)、阻害すること(inhibiting)、減少させること(lessening)、向上させること(ameliorating)、または影響を及ぼすこと(affecting)を包含する。結果的に、用語「処置すること」は、疾患に関連する症状もしくは状態の発症を予防するか(prevent)、遅延させるか(delay)、緩和するか、停止させるか(arrest)、または阻害するための、本発明の化合物、組成物、構築物、あるいは剤の投与を包含する。用語「治療効果」は、対象における疾患、疾患の症状、もしくは疾患の副作用の、低減、排除(elimination)、または予防を指す。
【0042】
本明細書に使用されるとき、用語「プレ処置」は、いくつかの態様において、AAVベクターの対象または対象細胞への投与に先立つ、外来材料のAAVベクターへの適用を指す。
【0043】
用語「有効量」は、本明細書に使用されるとき、疾患もしくは疾病を処置または向上させることが可能な量か、あるいは意図した治療効果を別様に産生することが可能な量を指す。
【0044】
本明細書に使用されるとき、用語「改変された」および「組換えの」細胞は、外来ポリヌクレオチドセグメント(生物学的に活性な分子の転写へ繋がるDNAセグメントなど)が導入されている細胞を指すことを意図する。したがって、改変された細胞は、組換えで導入された外来DNAセグメントを含有しない天然に存在する細胞とは識別可能である。したがって、改変された細胞は、人の手を通して導入された、少なくとも1のまたは2以上の異種の核酸セグメントを含む細胞である。
【0045】
用語「プロモーター」は、本明細書に使用されるとき、転写を調節する核酸配列の領域(単数または複数)を指す。
【0046】
用語「調節要素」は、本明細書に使用されるとき、転写を調節する核酸配列の領域(単数または複数)を指す。例示の調節要素は、これらに限定されないが、エンハンサー、転写後要素、転写制御配列、およびこのような要素(such like)を包含する。
【0047】
用語「ベクター」は、本明細書に使用されるとき、宿主細胞において複製することが可能な核酸分子(典型的にはDNAから構成される)、および/または別の核酸セグメントが作動可能に(operatively)(この付着された(attached)セグメントの複製をもたらすように)連結された核酸分子(典型的にはDNAから構成される)を指す。プラスミド、コスミド、またはウイルスは、例示のベクターである。
【0048】
用語「実質的に対応する」、「実質的に相同の」、または「実質的な同一性」は、本明細書に使用されるとき、核酸配列またはアミノ酸配列の特徴を表すが、ここで選択された核酸配列またはアミノ酸配列は、選択された参照核酸配列または参照アミノ酸配列と比較して、少なくとも約70または約75パーセント配列同一性を有する。より典型的には、選択される配列および参照配列は、少なくとも約76、77、78、79、80、81、82、83、84、または85パーセントの配列同一性さえも、より好ましくは、少なくとも約86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95パーセントの配列同一性を有するであろう。これよりさらに好ましくは、高度に相同の配列はしばしば、選択された配列と、これと比較した参照配列との間に、少なくとも約96、97、98、または99パーセントを超える配列同一性を共有する。配列同一性のパーセンテージは、比較される配列の全長にわたって算出されてもよく、または選んだ参照配列の合計で約25パーセント程度(or so)未満になる小さい欠失もしくは付加を排除することによって算出されてもよい。参照配列は、遺伝子配列もしくはフランキング(flanking)配列のある部分、または染色体の繰り返し部分などの、より大きな配列の一部であってもよい。しかしながら、2以上のポリヌクレオチド配列の配列相同性について言えば、参照配列は、典型的には少なくとも約18~25ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約26~35ヌクレオチド、さらにいっそう典型的には少なくとも約40、50、60、70、80、90、または100程度のヌクレオチドさえも含むであろう。
【0049】
高度に相同のフラグメントが所望されるとき、2配列間のパーセント同一性の度合い(extent)は、当業者に周知の配列比較アルゴリズム(例として、PearsonおよびLipman(1988)によって記載されるFASTAプログラム分析、ならびにBrutlag et al.(Comp.App.Biosci.6:237-245(1990))のアルゴリズムに基づくblastnコンピュータプログラムなど)の1以上によって容易に決定されるとおり、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは約90%もしくは95%以上であろう。クエリ配列(例として、本開示の配列)と対象配列との間の、全体的に最良のマッチを決定するための好ましい方法はまた、包括的(global)配列アライメントととも称され、FASTAまたはblastnを使用して決定され得る。配列アライメントにおいて、クエリ配列および対象配列は、ともにヌクレオチド配列であるか、またはともにアミノ酸配列であるかのいずれかである。該包括的配列アライメントの結果は、パーセント同一性として表現される。FASTAアミノ酸アライメントに使用される好ましいパラメータは以下である:Matrix=PAM 0、k-tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Window Size=配列長、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05、Window Size=500または対象アミノ酸配列の長さ(どちらか短い方)。どのヌクレオチドがマッチ/アラインされるかは、FASTA配列アライメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージは、特定パラメータを使用する上のFASTAプログラムによって算出されたパーセント同一性から差し引くことで、最終的なパーセント同一性のスコアに到達する。この最終的なパーセント同一性のスコアは、本開示の目的において使用されるものである。
【0050】
「パーセント(%)同一性」は、2配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)がアライメント中に同じ残基を同じ位置にて有する度合いを指す。例えば、「アミノ酸配列は、配列番号YとX%同一」は、アミノ酸配列の、配列番号Yに対する%同一性を指し、アミノ酸配列中X%の残基が配列番号Yに開示の配列の残基と同一であるとして詳述される。一般に、コンピュータプログラムは、かかる算出のために採用される。対の配列を比較してアラインさせる例示プログラムは、ALIGN(Myers and Miller,1988)、FASTA(Pearson and Lipman,1988;Pearson,1990)およびgapped BLAST(Altschul et al.,1997)、BLASTP、BLASTN、またはGCG(Devereux et al.,1984)を包含する。
【0051】
用語「動作可能に連結されている」は、本明細書に使用されるとき、連結されている核酸配列が、典型的には連続しているか、または実質的に連続しており、2つのタンパク質コード領域を結び合わせることが必要な場合は読み枠において連続していることを指す。しかしながら、エンハンサーは一般に、プロモーターから数キロベース単位で分離されているときに機能し、かつイントロン配列は長さが可変であり得ることから、いくつかのポリヌクレオチド要素は、動作可能に連結されているが、連続していなくてもよい。
【0052】
本明細書に使用されるとき、用語「バリアント」は、天然に存在するものから逸脱するという特徴を有する分子(例として、カプシド)を指し、例として、「バリアント」は、野生型カプシドと、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、少なくとも約99.5%同一、または少なくとも約99.9%同一である。タンパク質分子(例として、カプシド)のバリアントは、そのアミノ酸配列に対し、野生型タンパク質配列と比べて、修飾(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~15、または15~20アミノ酸置換を有する)(これらは、カプシドタンパク質をコードする核酸配列中へ取り入れられた(installed)点突然変異から生じる)を含有していてもよい。これらの修飾は、化学的修飾、ならびにトランケーション(カプシドタンパク質配列のN末端またはC末端でのトランケーションなど)を包含する。
【0053】
本明細書に使用されるとき、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈が明確にそのように指し示していない限り、複数形の指示対象(referents)を包含する。
【0054】
本明細書に使用されるとき、すべての数値または数字で表した範囲は、文脈が明確にそのように指し示していない限り、かかる範囲内のまたはかかる範囲を網羅する全整数、および範囲内のもしくは範囲を網羅する値または整数の端数(fractions)を包含する。よって、例えば、90~100%の範囲への言及は、91%、92%、93%、94%、95%、95%、96%、97%等々、ならびに91.1%、91.2%、91.3%、91.4%、91.5%等々、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%等々、などを包含する。
【0055】
ある数の「約」は、本明細書に使用されるとき、その数を包含する範囲であって、10%下回るその数から10%上回るその数までに及ぶ範囲を指す。「約」の範囲は、範囲の10%上回る上限まで広がる、範囲の10%下回る下限を指す。
【0056】
方法
本開示の実施態様(Illustrative embodiments)は、下に記載される。いくつかの態様において、本開示は、哺乳動物の目への硝子体内注射を介するAAV粒子の投与のためのビヒクルとしてのHAの使用の方法を提供する。いくつかの態様において、本記載の方法は、HAとのプレインキュベーションおよび/またはHAとの共投与を提供する。いくつかの態様において、本開示はさらに、HAおよびAAVカプシドの保管ための緩衝剤を提供する。
【0057】
いくつかの態様において、本明細書に記載の硝子体内投与方法は、正に帯電した残基の、表面が露出した1以上のパッチを有する、いずれのAAVカプシドまたはカプシドバリアントの形質導入能力も増強することが可能である。いくつかの態様において、正に帯電した残基のパッチは、正に帯電した複数の残基を含む。いくつかの態様において、正に帯電した残基のパッチは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、20、30、50、60の正に帯電した残基を含む。いくつかの態様において、ヒアルロン酸の負電荷は、カプシドの正に帯電した残基と静電的に相互作用する。いくつかの態様において、HAは、AAVカプシドと直接接触しているか、またはこれと結び付いている。いくつかの態様において、HAは、AAVカプシドとは直接接触していない。いくつかの態様において、AAVカプシドは、HAによって、少なくとも部分的に被覆されている。いくつかの態様において、HAは、カプシドのカチオン性パッチを有効に被覆することで、これを、目への投与後に他のカプシドのカチオン性パッチによる凝集から遮断する。いくつかの態様において、この遮断効果は、カプシドを遊離させて、硝子体全体にわたり水平拡散させ、かつ標的のRPE細胞およびPR細胞(RGC、ミューラー細胞、星状細胞、および双極細胞など)を形質導入する。
【0058】
いくつかの態様において、宿主細胞の硝子体およびILMの細胞外マトリックスへ共有結合的に連結されている内在性のヒアルロン酸分子は、HAとともに投与されたAAVカプシドの拡散または形質導入に対して、いずれの抑止効果も発揮しない。
【0059】
いくつかの態様において、HAとのプレ処置および投与によって提供される、AAVの形質導入および拡散の増強機序は、CD44細胞表面受容体との相互作用とは無関係である。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、依然としてAAV粒子が硝子体全体にわたり自由に拡散するのを容易にさせつつも、標的細胞表面上のHSPGとの基本的なAAVカプシド相互作用または細胞表面認識とは干渉しない。
【0060】
ガラス体液は、99%の水、コラーゲン原線維、およびグリコサミノグリカン(GAG)から構成される。GAGの大部分はヒアルロン酸(HA)であって、ヒト目中HAの濃度は200ug/mLである。HAは、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンとの二量体の線状コンカテマーである(図1を見よ)。HAは、「ネットワーク」構造を創出する、折り畳み(folds)、ループ、およびターン(turns)を形成し、これによって粘弾性特性が分子へ付与される。HAは、コンカテマー化して様々な長さになり得、これによって少なくとも20キロダルトン(kDa)から5,000kDaまでに及ぶ様々な異なる分子量がもたらされる。
【0061】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、rAAV粒子およびHAを対象の目へ硝子体内注射によって投与すること、および/または対象への投与に先立ちrAAV粒子をHAとをプレ処置することを含む方法であるが、ここでrAAVカプシドは、表面が露出した1以上のカチオン性パッチ、すなわち、環境へ露出されたカプシド表面上の、連続もしくは隣接した(または実質的に連続もしくは隣接した)カチオン性残基の3次元エリアを有する。関係のある環境は、硝子体、内境界膜(ILM)、網膜下空隙、細胞外マトリックス、細胞膜、および/または細胞サイトゾルであってもよい。いくつかの態様において、投与は、逐次的な投与または共投与である。
【0062】
プレインキュベーション
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法において、カプシドは、対象への投与に先立ち、少なくとも約1分、約3分、約5分、約15分、約30分、約45分、約60分、約90分、約120分、または約175分以上の間、HAとプレインキュベートされる。いくつかの態様において、HAは、AAVカプシドと直接接触している。いくつかの態様において、カプシドは、約15分間HAとプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、約15分より長い間HAとプレインキュベートされる。
【0063】
いくつかの態様において、カプシドは、少なくとも約1分、約3分、約5分、約15分、約30分、約45分、約60分、約90分、約120分、または約175分以上の間、HAを含む緩衝剤とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、約15分間、またはmore than 約15分より長い間、HAを含む緩衝剤とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、少なくとも約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、2%、3%、5%、10%、15%、または20.0%(体積単位の重量)(w/v)の濃度のHAを含む緩衝剤と、BSSとプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、約0.4%w/vの濃度のHAを含む緩衝剤と、BSS、人工の脳脊髄液(CSF)、およびPBSの1以上とプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、約0.4%w/vの濃度のHAを含む緩衝剤と、BSS、人工のCSF、PBS、リンガー乳酸溶液、TMN200溶液、ポリソルベート20、およびポロキサマー188の1以上とプレインキュベートされる。
【0064】
記載される方法のいくつかの態様において、カプシドは、HAと、少なくとも約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、2%、3%、5%、10%、15%、または20.0%w/vの濃度でプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、HAと、約0.4%w/vの濃度でプレインキュベートされる。いくつかの態様において、カプシドは、HAと、約0.5%w/vの濃度でプレインキュベートされる。
【0065】
投薬量
いくつかの態様において、rAAV粒子は、硝子体内注射を介して投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、硝子体内投与を介し、少なくとも約1×103vg/ml、1×104vg/ml、1×105vg/ml、1×106vg/ml、1×107vg/ml、1×108vg/ml、1×109vg/ml、1×1010vg/ml、5 ×1010vg/ml、1×1011vg/ml、5 ×1011vg/ml、1×1012vg/ml、2×1012vg/ml、3×1012vg/ml、4×1012vg/ml、約5×1012vg/ml、約1×1013vg/ml、5×1013vg/ml、1×1014vg/ml、5×1015vg/ml、または1×1014vg/mlの力価で投与される。いくつかの態様において、rAAV粒子は、5×1011vg/ml未満の力価で投与される。いくつかの態様において、これらの力価の下限は、網膜下AAV送達に定型的使用されるそれら用量より実質的に少ない用量を表す。
【0066】
いくつかの態様において、rAAVとHAとの混合物は、硝子体内注射で投与される。いくつかの態様において、硝子体内注射は、約1000μL、約900μL、約800μL、約700μL、約600μL、約500μL、約400μL、約300μL、約200μL、約175μL、約160μL、約145μL、約130μL、約115μL、約100μL、約90μL、約80μL、約70μL、約60μL、約55μL、約50μL、約45μL、約35μL、約20μL、約10μL、約5μL、約4μL、約3μL、約2μL、約1μL、または約0.5μLの体積で提供される。いくつかの態様において、硝子体内注射は、約50μLの体積で提供される。
【0067】
記載される方法のある側面において、より高濃度のAAVベクターは、硝子体内注射による既定体積の投与で送達される。
【0068】
ヒアルロン酸
いくつかの態様において、記載の方法における使用に好適なHAは、当該技術分野において知られているかまたは使用されているいずれの分子量でもある。いくつかの態様において、記載の方法に従う投与および/またはプレ処置あるいは使用のためのHAは、少なくとも約4kDa、5kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、350kDa、500kDa、750kDa、1000kDa、1500kDa、2000kDa、2500kDa、3000kDa、3200kDa、3500kDa、4000kDa、または5000kDaの分子量を有する。いくつかの態様において、記載の方法に従う投与および/またはプレ処置あるいは使用のためのHAは、約4kDa、5kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、350kDa、500kDa、750kDa、1000kDa、1500kDa、2000kDa、2500kDa、3000kDa、3200kDa、3500kDa、4000kDa、または5000kDa未満の分子量を有する。いくつかの態様において、HAは、約20kDa~約200kDaの範囲にある分子量を有する。いくつかの態様において、HAは、約20kDaまたは25kDaの分子量を有する。いくつかの態様において、HAは、分子量が一様である。いくつかの態様において、HAは、変動する分子量を有する。いくつかの態様において、投与は、逐次的な投与または共投与である。
【0069】
投与
いくつかの態様において、治療的に有効な量の選択された治療剤の提供を、これを必要とする哺乳動物にするための方法が、本明細書に記載される。いくつかの態様において、治療剤は、組換えAAV核酸ベクター中へ挿入された異種の核酸または導入遺伝子にコードされている。いくつかの態様において、核酸ベクターは、プロモーターへ動作可能に連結されている着目した(of interest)タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む1以上の異種の核酸を含むが、ここで1以上の導入遺伝子は、その両側がITR配列でフランキングされている(flanked)。いくつかの態様において、核酸ベクターはさらに、本明細書に記載のとおりのRepタンパク質をコードする領域を含むが、前記領域は、ITRによってフランキングされた領域内に含有されているか、またはその領域の外側もしくはプロモーター(例として、hGRK1プロモーター)へ動作可能に連結されている核酸)の外側に含有されており、ここで1以上の核酸領域。ITR配列は、いずれかのAAV血清型(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10)に由来し得るか、または1種より多い血清型に由来し得る。いくつかの態様において、ITR配列は、AAV2またはAAV6に由来する。いくつかの態様において、第1の血清型のITR配列は、AAV3、AAV2、またはAAV6に由来する。他の態様において、第1の血清型のITR配列は、AAV1、AAV5、AAV8、AAV9、またはAAV10に由来する。いくつかの態様において、ITR配列は、カプシド(例として、AAV3 ITR配列およびAAV3カプシド等々)と同じ血清型である。
【0070】
ITR配列およびITR配列を含有するプラスミドは、当該技術分野において知られており、市販されている(例として、Vector Biolabs(Philadelphia,PA);Cellbiolabs(San Diego,CA);Agilent Technologies(Santa Clara,Ca);およびAddgene(Cambridge,MA)から入手可能な製品および役務を見よ);ならびに骨格筋への遺伝子送達は、持続発現および治療用タンパク質の全身送達をもたらす。いくつかの態様において、核酸ベクターは、AAV2 ITRを含有するプラスミドであるpTR-UF-11プラスミド主鎖を含む。このプラスミドは、American Type Culture Collection(ATCC MBA-331)から市販されている。
【0071】
いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載される1種以上のある量のrAAV粒子を、哺乳動物の片目または両目へ(哺乳動物に、治療的に有効な量の選択された治療剤を提供するのに有効な時間)投与するステップを少なくとも包含する。
【0072】
いくつかの態様において、記載されるrAAVとHAとの混和または投与は、共投与である。いくつかの態様において、rAAVとHAとの投与は、逐次的な投与である。いくつかの態様において、rAAVとHAとの投与は、混和するプレインキュベーション期間の後である。
【0073】
いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載される1種以上のある量のrAAV粒子を、哺乳動物の片目または両目のいずれかへ(哺乳動物に、治療的に有効な量の選択された診断剤または治療剤を提供するのに有効な時間)硝子体内に投与する(単回または複数回)ステップを包含する。
【0074】
いくつかの態様において、治療剤は、治療用タンパク質である。いくつかの態様において、治療用タンパク質は、神経栄養因子または光遺伝学的アクチュエータである。いくつかの態様において、神経栄養因子は、BDNF、NGF、ニューロトロフィン3、毛様体神経栄養因子(CNTF)、エフリン、およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、またはこれらの組み合わせである。
【0075】
いくつかの態様において、記載される方法の光遺伝学的アクチュエータは、バクテリオロドプシン、ハロロドプシン、チャネルロドプシン、微生物感覚性ロドプシン、哺乳動物ロドプシン、錐体オプシン、メラノプシン;およびこれらの組み合わせである。いくつかの態様において、光遺伝学的アクチュエータは、チャネルロドプシン2(ChR-2)である。いくつかの態様において、本開示は、哺乳動物における疾患、障害、機能障害、傷害、正常でない状態、もしくは外傷の1以上の症状を処置するかまたは向上たさせるための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載のrAAV粒子の1種以上の投与を、哺乳動物における疾患、障害、機能障害、傷害、正常でない状態、もしくは外傷の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な量で、かつそのような時間、これを必要とする哺乳動物の片目または両目へするステップを包少なくとも含する。
【0076】
いくつかの態様において、本開示は、哺乳動物(例として、ヒト)の1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞において、異種の核酸セグメントを発現するための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載のrAAV粒子の1種以上を、哺乳動物の1以上のPR細胞またはRPE細胞において治療剤を産生するのに有効な時間、哺乳動物の片目または両目へ投与すること(例として、硝子体内に直接投与すること)を包含するが、ここでポリヌクレオチドは、異種の第1核酸セグメント(治療剤もしくは生物学的に機能的なそのフラグメントをコードする)へ少なくとも動作可能に連結されているPR-またはRPE-細胞特異的プロモーターを少なくとも含む第1ポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの態様において、治療剤または生物学的に機能的なそのフラグメントは、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、もしくは星状細胞、またはこれらの組み合わせにおいて安定的に発現される。
【0077】
いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの態様において、ヒトは、新生児(neonate)、乳児(newborn)、幼児(infant)、年少者(juvenile)、成人(adult)、または高齢者(senior)である。いくつかの態様において、対象は、少なくとも約1日齢~約100歳超である。いくつかの態様において、ヒトは、1以上の網膜障害、網膜疾患、もしくは網膜ジストロフィーを有しているか、これを有すると疑われているか、これを発症するリスクがあるか、またはこれと診断されている。いくつかの態様において、網膜障害、網膜疾患、もしくは網膜ジストロフィーは、遺学的に連鎖されているか、または遺伝性である。
【0078】
いくつかの態様において、治療用構築物の投与のために標的にされた細胞における治療剤または生物学的に活性なそのフラグメントの産生は、a)1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を保護するか、b)桿体および/または錐体を媒介する1以上の機能を回復させるか、c)片目または両目において視覚行動を回復させるか、あるいはd)これらのいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、記載の方法における治療剤の産生は、1以上のPR細胞、RPE細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、ミューラーグリア細胞、または星状細胞を保護する。
【0079】
いくつかの態様において、治療剤または生物学的に活性なそのフラグメントの産生は、1以上の光受容細胞または1以上のRPE細胞を、rAAV遺伝子治療構築物の哺乳動物の片目または両目中への最初の投与から、実質的に少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1カ月、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約9カ月、もしくは少なくとも1年後までの期間、またはそれより長い期間、留まらせる。
【0080】
いくつかの態様において、記載の方法は、これを必要とする哺乳動物に、チャネルロドプシン2、錐体オプシン、または対象のON型双極細胞に対し生物学的に活性があるそれらのフラグメントを提供することを含む。いくつかの態様において、記載の方法は、これを必要とする哺乳動物に、チャネルロドプシン2、錐体オプシン、または対象上のRGCおよびミューラーグリア細胞に対し生物学的に活性があるそれらのフラグメントを提供することを含む。
【0081】
いくつかの態様において、本明細書に開示のrAAVベクター構築物は、硝子体内注射、網膜下注射を介して、経口的に、非経口的に、眼内に、静脈内に、鼻腔内に、関節内に、筋肉内に、皮下に、またはそれらの組み合わせで投与され得る。いくつかの態様において、本明細書に開示のrAAVベクター構築物は、対象へ単回投与される。いくつかの態様において、rAAVベクター構築物は、対象へ、1以上の投与期間中に、例えば、少なくとも日に1度、日に2度、1日につき3回、週に1度、週に2度、月に1度、月に2度、または少なくとも年に1回投与される。いくつかの態様において、AAVベクターをベースとした治療法は、処置されている疾患もしくは障害の1以上の症状の処置または向上を達成するのに必要とされ得るとおり、毎日、毎週、毎月1回以上、またはある期間低頻度で(less-frequent periods)、連続的に(successively)提供されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に開示の医薬組成物は、例えば、毎日、毎週、隔週、もしくは毎月、毎時、単回または複数回投与され得るか、あるいは処置されている疾患、障害、もしくは疾病の再発、逆戻り、または進行の際に投与される。
【0082】
ベクター
いくつかの態様において、本明細書に記載のベクターは、自己相補的rAAV(scAAV)ベクターである。いくつかの態様において、ベクターは、感染性アデノ随伴ウイルス粒子、rAAVビリオン、または複数の感染性rAAV粒子を、処置されている疾患もしくは疾病の1以上の症状を処置するかまたは向上させるのに充分な量でかつそのような時間、1回以上投与することによって、片目または両目へ提供される。
【0083】
いくつかの態様において、本開示は、数多の異なる血清型(これらに限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびこれらの組み合わせを包含する)に由来する、改善されたrAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、カプシドタンパク質配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で表される。いくつかの態様において、カプシドタンパク質配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10を含む。いくつかの態様において、カプシドタンパク質配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を含む。
【0084】
いくつかの態様において、本明細書に記載の硝子体内投与方法は、アミノ酸残基のカチオン性パッチをその表面上に有するいずれのカプシドの送達にも好適であって、その形質導入能力も増強する。いくつかの態様において、カプシドは、AAV2、AAV6、ならびにAAV2およびAAV6に由来するカプシドを含む。いくつかの態様において、カプシドは、AAV7m8、AAV-DJ、AAV2/2-MAX、AAVSHh10、AAVSHh10Y、AAV3、AAV3b、AAVLK03、AAV7BP2、AAV1(E531K)、AAV6(D532N)、AAV6-3pmut、AAV2G9、またはこれらの要素を含む。
【0085】
いくつかの態様において、AAV-DJは、AAV2カプシドのHSPG結合ドメイン中への7アミノ酸の挿入を含み、硝子体内注射後のミューラー細胞において高発現効率を有する。いくつかの態様において、AAV7m8カプシドは、AAV-DJと密接に関わっている。いくつかの態様において、AAV2/2-MAXカプシドは、5つの点突然変異、Y272F、Y444F、Y500F、Y730F、T491Vを含む。いくつかの態様において、AAVSHh10およびAAV6(D532N)カプシドは、AAV6の誘導体である。いくつかの態様において、AAV6-3pmutは、(またAAV6(TM6)およびAAV6(Y705+Y731F+T492V)としても知られている)。
【0086】
いくつかの態様において、カプシドは、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドのアミノ酸残基にてネイティブではないアミノ酸の置換を含むカプシドを含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸の置換は、Y272F、Y444F、T491V、Y500F、Y700F、Y704F、Y730Fの1以上、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、カプシドは、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドのアミノ酸残基にてネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸の置換は、Y445F、Y705F、Y731F、T492V、S663Vの1以上、またはこれらの組み合わせを含む。
【0087】
いくつかの態様において、カプシドは、AAV2のバリアントであるAAV2G9を含む。
【0088】
いくつかの態様において、カプシドは、配列番号8で表されるとおりの野生型AAV8カプシドのアミノ酸残基533にてネイティブではないアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、ネイティブではないアミノ酸置換は、E533K、Y733F、またはこれらの組み合わせである。いくつかの態様において、カプシドは、AAV8のバリアントであるAAV7BP2を含む。
【0089】
いくつかの態様において、カプシドは、配列番号2で表されるとおりの野生型AAV2カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、カプシドは、以下のうち1以上:
(a)Y444F;
(b)Y444F+Y500F+Y730F;
(c)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F;
(d)Y444F+Y500F+Y730F+T491V;または
(e)Y272F+Y444F+Y500F+Y730F+T491V、あるいは、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、もしくは配列番号10で夫々表されるとおりの野生型AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV9、もしくはAAV10のカプシドタンパク質のうちいずれか1つにおける、これらの置換に対応する同等のアミノ酸位置での置換
を含む。
【0090】
いくつかの態様において、カプシドは、配列番号6で表されるとおりの野生型AAV6カプシドの、ネイティブではないアミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、カプシドは、以下:
(a)Y445F;
(b)Y705F+Y731F;
(c)T492V;
(d)Y705F+Y731F+T492V;
(e)S663V;または
(f)S663V+T492V
のうち1以上を含む。
【0091】
様々な態様において、rAAV粒子は、以下のカプシド、すなわち、AAV2のカプシドバリアント:DGE-DF(また「V1V4 VR-V」としても知られている)、P2-V2、P2-V3、およびME-B(Y-F+T-V)のうち1つを含む。DGE-DFカプシドバリアントは、野生型AAV2 VP1のアミノ酸位置492、493、494、499、および500にて、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびフェニルアラニンを含有する。P2-V2カプシドバリアントは、AAV2 VP1の位置263、490、492、499、500、および530にて、アラニン、トレオニン、プロリン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、およびアスパラギン酸を含有する。P2-V3カプシドバリアントは、AAV2 VP1の位置263、264、444、451、454、455、459、527、530、および531にて、アスパラギン、アラニン、フェニルアラニン、アラニン、アスパラギン、バリン、トレオニン、アルギニン、アスパラギン酸、およびアスパラギン酸を含有する。ME-B(Y-F+T-V)カプシドバリアントは、AAV2 VP1の位置492、493、494、499、および500にて夫々、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびフェニルアラニンを、AAV2 VP1の位置546~556にてSAAGADXAXDS(配列番号5)を、ならびに以下の置換:Y272F、Y444F、およびT491Vを含有する。
【0092】
他の態様において、rAAV粒子は、AAV6(3pMut)、AAV2(quadYF+T-V)、またはAAV2(trpYF)から選択されるカプシドを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、国際特許刊行物第WO 2018/156654号に記載されるカプシドバリアントのいずれも含む。
【0093】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、HAを、網膜細胞における該rAAV粒子の増強された形質導入のためのDGE-DFカプシド、P2-V2カプシド、P2-V3カプシド、またはME-B(Y-F+T-V)カプシドを含むrAAV粒子とともに投与する方法である。いくつかの態様において、記載の方法は、HAの、AAV2(Y444F)、AAV2(Y444F+Y500F+Y730F)、AAV2(Y272F+Y444F+Y500F+Y730F)、AAV2(Y444F+Y500F+Y730F+T491V)およびAAV2(Y272F+Y444F+Y500F+Y730F+T491V)、AAV6(Y445F)、AAV6(Y705F+Y731F)、AAV6(Y705F+Y731F+T492V)、AAV6(S663V)、AAV6(T492V)、またはAAV6(S663V+T492V)から選択されるカプシドを含むrAAV粒子との投与を含む。
【0094】
いくつかの態様において、本開示のrAAVポリヌクレオチドまたは核酸ベクターは、AAV血清型1、AAV血清型2、AAV血清型3、AAV血清型4、AAV血清型5、AAV血清型6、AAV血清型7、AAV血清型8、AAV血清型9、もしくはAAV血清型10、またはウイルスに関する技術分野における当業者に知られているとおりのいずれか他の血清型からなる群から選択される血清型を有するビリオン内に構成されていてもよい。
【0095】
カーゴ
いくつかの態様において、本開示はさらに、集団および複数のrAAVポリヌクレオチドもしくは核酸ベクター、ビリオン、感染性ウイルス粒子、または宿主細胞(多重突然変異カプシドタンパク質と、第1の診断用分子および/または第1の治療用分子を少なくともコードする選択されたポリヌクレオチドへ動作可能に連結されているRPE-あるいはPR-細胞特異的プロモーターを包含する1以上の核酸セグメントとを含む)を提供する。
【0096】
いくつかの態様において、本開示は、本開示の、タンパク質もしくは生物学的に活性なそれらのフラグメント、核酸セグメントもしくは生物学的に活性なそれらのフラグメント、ウイルスのポリヌクレオチドもしくは生物学的に活性なそれらのフラグメント、核酸ベクター、宿主細胞、またはウイルス粒子の1以上を、1以上の薬学的に許容し得る緩衝剤、希釈剤、または賦形剤と一緒に包含する、組成物および製剤を提供する。いくつかの態様において、組成物は、哺乳動物の疾患、傷害、障害、外傷、もしくは機能障害の1以上の症状を診断するか、予防するか、処置するか、または向上させるための、1以上の診断用キットあるいは治療用キットに包含されている。いくつかの態様において、診断用キットまたは治療用キットは、哺乳動物の目の光受容体および/またはRPE細胞への治療剤の送達のためのキットを含む。
【0097】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、診断的に-または治療的に有効な量の選択された治療剤の提供を、これを必要とする哺乳動物にするための方法であって、方法は、記載されるある量のrAAV多重カプシド突然変異粒子または核酸ベクターの1以上を、これを必要とする哺乳動物の細胞、組織、または器官へ、診断的に-または治療的に有効な量の選択された治療剤を哺乳動物に提供するのに有効な時間、提供することを含む。
【0098】
いくつかの態様において、本開示は、哺乳動物における疾患、障害、機能障害、傷害、正常でない状態、もしくは外傷のうち少なくとも1のまたは2以上の症状を、診断するか、予防するか、処置するか、あるいは向上させるための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、記載されるrAAV粒子または核酸ベクターの1以上を、これを必要とする哺乳動物へ、哺乳動物における疾患、障害、機能障害、傷害、正常でない状態、もしくは外傷の1以上の症状を診断するか、予防するか、処置するか、または向上させるのに充分な量でかつそのような時間投与するステップを少なくとも包含する。
【0099】
いくつかの態様において、本開示は、哺乳動物の細胞、具体的にはヒト目における1以上の眼細胞の集団を形質導入する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載される有効量のrAAV粒子または核酸ベクターの1以上を含む組成物を、1以上の細胞の集団中へ導入するステップを少なくとも包含する。いくつかの態様において、記載される遺伝子治療用構築物の、1以上の細胞への網膜下送達は、光受容体およびRPE細胞への高効率の形質導入を可能にした。
【0100】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載のとおりのAAV突然変異体カプシドタンパク質の1以上をコードする、単離された核酸セグメントを提供し、かつ該セグメントを含む組換え核酸ベクターを提供する。
【0101】
いくつかの態様において、本開示は、組成物、ならびに記載されるAAV粒子もしくは核酸ベクターの組成物の1以上を包含する治療用キットおよび/または診断用キット(1以上の追加成分とともに製剤化されているか、またはそれらの使用のための1以上の指示とともに調製されている)を提供する。
【0102】
いくつかの態様において、本開示は、1以上の有益な産物または治療用産物(単数もしくは複数)をコードする遺伝子材料を哺乳動物の細胞および組織へ送達するための方法に有用である、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、それらのビリオン、ウイルス粒子、および医薬製剤を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、本開示の組成物および方法は、哺乳動物の1以上の疾患の症状の処置、予防、および/または向上におけるそれらの使用を通し、当該技術分野において有意な進歩を提供する。
【0103】
いくつかの態様において、記載される方法のrAAV粒子は、ベクターで形質転換された1以上の細胞においてセグメントを発現することが可能なRPE-もしくはPR-細胞特異的プロモーターへ動作可能に連結されている、第1の診断的にまたは生物学的に活性なそのフラグメント、あるいは治療剤または生物学的に活性なそのフラグメントを少なくともコードする異種の核酸配列を含むベクターも加えて包含する。いくつかの態様において、PR細胞特異的プロモーターは、ヒトロドプシンキナーゼ(hGRK1)、IRBP、桿体オプシン、NRL、GNAT2e-IRBP、L/Mオプシン、錐体アレスチンプロモーター、これらのいずれかの生物学的に活性なフラグメント、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様において、RPE細胞特異的プロモーターは、VMD2(BEST1)またはRPE65プロモーターを含む。
【0104】
いくつかの態様において、本開示の、表面が露出したアミノ酸で修飾されたrAAV粒子または核酸ベクターは、着目した診断用分子もしくは治療用分子または生物学的に活性なそれらのフラグメントをコードする核酸セグメントへ各々動作可能に連結されている1以上のエンハンサー配列を含む。本開示の、表面が露出したアミノ酸で修飾されたrAAV粒子または核酸ベクターは、1以上のエンハンサー配列を含む。いくつかの態様において、エンハンサー配列は、CMVエンハンサー、合成エンハンサー、光受容体特異的特異的エンハンサー、網膜色素上皮細胞特異的エンハンサー、血管(vascular)特異的エンハンサー、眼特異的エンハンサー、神経細胞特異的エンハンサー、網膜細胞特異的エンハンサー、生物学的に活性なこれらのフラグメント、およびこれらのいずれかの組み合わせである。
【0105】
いくつかの態様において、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。いくつかの態様において、組織特異的プロモーターは、光受容体特異的-および/またはRPE細胞特異的プロモーターである。
【0106】
いくつかの態様において、核酸ベクターは、転写後調節配列またはポリアデニル化シグナルを含む。いくつかの態様において、核酸ベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)、ポリアデニル化シグナル配列、イントロン/エキソン接合/スプライシングシグナル、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0107】
いくつかの態様において、本明細書に記載のカーゴは、本明細書に開示の、核酸配列、遺伝子、コードされたタンパク質、またはタンパク質の活性なコードされたフラグメントである。
【0108】
いくつかの態様において、改善されたrAAV粒子は、診断用もしくは治療用タンパク質、分子マーカーのポリペプチドまたは生物学的に活性なフラグメント、感光性オプシン、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシスインヒビター、サイトカイン受容体、サイトカイン、細胞毒素、赤血球生成(erythropoietic)剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼインヒビター、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性(neurogenic)因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルタートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼインヒビター、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼインヒビター、タンパク分解性のタンパク質、タンパク分解性のタンパク質インヒビター、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込みインヒビター、セロトニン受容体セルピン、セルピン 受容体、腫瘍サプレッサー、またはこれらのいずれかの組み合わせをコードする配列を含む。いくつかの態様において、感光性オプシンは、ロドプシン、メラノプシン、錐体オプシン、チャネルロドプシン、もしくは細菌、古細菌関連オプシン、これらのいずれかの生物学的に活性なフラグメント、またはそれらの組み合わせを含む。
【0109】
いくつかの態様において、本開示のrAAV粒子は、ポリペプチドRPE65、ベストロフィン(Bestrophin)(BEST1)、REP1、MERTK、SOD2、MYO6A、MFRP、LRAT、KCNJ13、オルニチンアミノトランスフェラーゼ(OAT)、これらのいずれかの生物学的に活性なフラグメント、またはそれらのいずれかの組み合わせをコードする核酸セグメントを含む。
【0110】
いくつかの態様において、rAAV粒子は、ポリペプチドCNTF、GDNF、BDNF、IL6、LIF、XIAP、STAT3、これらのいずれかの生物学的に活性なフラグメント、またはそれらのいずれかの組み合わせをコードする核酸セグメントを含む。
【0111】
ある態様において、rAAV粒子は、ニクタロピン(nyctalopin)(nyx)、代謝調節型グルタマート受容体6-mGluR6(Grm6)、一過性受容体電位メラスタチン1(transient receptor potential melastatin 1)(TRPM1)、Gタンパク質共役受容体179(GPR179)、およびGタンパク質、Gβ5、Gβ3、Gα01/2、Gγ13、RGS7、RGS11、R8AP、ならびにいずれかの組み合わせ、またはそのペプチドフラグメントをコードする核酸セグメントを含む。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、着目したベクターで好適に形質転換された哺乳動物細胞において1以上の内在性生物学的プロセスの活性を変化させるか(alter)、阻害するか、低減させるか、防止するか(prevent)、排除するか、もしくは損なわせる(impair)1以上の診断剤、治療剤、または生物学的に活性なそれらのフラグメントをコードする第1の核酸セグメントを少なくとも含むrAAV核酸ベクターである。いくつかの態様において、診断剤、治療剤、または生物学的に活性なそれらのフラグメントは、1以上の代謝プロセス、機能障害、障害、もしくは疾患の効果を選択的に阻害または低減する分子を含む。いくつかの態様において、欠陥は、処置が所望される、哺乳動物への傷害または外傷によって引き起こされる。いくつかの態様において、欠陥は、内在性の生物学的化合物の過剰発現によって引き起こされる。いくつかの態様において;欠陥は、1以上の内在性の生物学的化合物の過小発現または欠如によって引き起こされる。
【0113】
いくつかの態様において、本開示のrAAV核酸ベクターおよび発現系は、rAAV粒子によって発現される着目したヌクレオチド配列の転写を変化させるか、改善させるか、調節するか、および/または影響を及ぼす、エンハンサー、調節要素、1以上の転写要素、またはこれらのいずれかの組み合わせを含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなる第2の核酸セグメントを含む。
【0114】
いくつかの態様において、本開示のrAAV核酸ベクターは、CMVエンハンサー、合成エンハンサー、細胞特異的エンハンサー、組織特異的エンハンサー、もしくはこれらのいずれかの組み合わせを含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる第2の核酸セグメントを含む。いくつかの態様において、第2の核酸セグメントはさらに、ロドプシン、メラノプシン、錐体オプシン、チャネルロドプシン、細菌もしくは古細菌関連オプシンからの、1以上のイントロン配列、1以上の転写後調節要素、または1以上のエンハンサー、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシスインヒビター、サイトカイン受容体、サイトカイン、細胞毒素、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼインヒビター、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルタートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼインヒビター、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼインヒビター、タンパク分解性のタンパク質、タンパク分解性のタンパク質インヒビター、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込みインヒビター、セロトニン 受容体、セルピン、セルピン受容体、あるいは腫瘍サプレッサーを含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなる。いくつかの態様において、第2核酸セグメントはさらに、RPE65、Bestrophin(BEST1)、REP1、MERTK、SOD2、MYO6A、MFRP、LRAT、KCNJ13、もしくはオルニチンアミノトランスフェラーゼ(OAT)からの、1以上のイントロン配列、1以上の転写後調節要素、または1以上のエンハンサーを含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなる。いくつかの態様において、第2の核酸セグメントは、RPE65、Bestrophin(BEST1)、REP1、MERTK、SOD2、MYO6A、MFRP、LRAT、KCNJ13、オルニチンアミノトランスフェラーゼ(OAT)、CNTF、GDNF、BDNF、IL6、LIF、XIAP、もしくはSTAT3からの、1以上のイントロン配列、1以上の転写後調節要素、または1以上のエンハンサーを含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなる。
【0115】
いくつかの態様において、rAAV粒子は、rAAV粒子中への、1以上の選択された遺伝子要素、着目した遺伝子、および/または1以上の治療用分子もしくは診断用分子の、ベクター内の選択された部位での挿入(クローニング)を容易にする、1以上のポリリンカー、制限部位、および/または多重クローニング領域(単数もしくは複数)を含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなるポリヌクレオチドを含む。
【0116】
いくつかの態様において、外来性のポリヌクレオチド(単数または複数)は、哺乳動物起源の、本明細書に記載の核酸ベクターを含むrAAV粒子によって、好適な宿主細胞中へ送達されるが、ポリヌクレオチドは、例として、ヒト、霊長目の非ヒト動物、豚(porcine)、牛(bovine)、羊(ovine)、ネコ科(feline)、イヌ科(canine)、ウマ科(equine)、epine、山羊(caprine)、もしくはオオカミ(lupine)起源の1以上のポリペプチドまたはペプチドをコードする。
【0117】
いくつかの態様において、記載の粒子またはウイルスベクターによって宿主細胞中へ送達される外来性のポリヌクレオチド(単数もしくは複数)は、いくつかの態様において、1以上のタンパク質、1以上のポリペプチド、1以上のペプチド、1以上の酵素、または1以上の抗体(もしくはその抗原結合性フラグメント)、これらのいずれかの生物学的に活性なフラグメント、あるいはこれらのいずれかの組み合わせをコードする。いくつかの態様において、外来性のポリヌクレオチドは、1以上のsiRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PNA分子、またはこれらのいずれかの組み合わせを発現する。いくつかの態様において、単一のrAAV発現系、または代替的に、選択された宿主細胞から産生される2以上の異なる分子は、2以上のユニークなrAAV発現系(これらの各々は、治療剤をコードする1以上の別個のポリヌクレオチドを含んでいてもよい)でトランスフェクトされてもよい。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、感染性のアデノ随伴ウイルス粒子またはビリオン内に、ならびに複数のかかるビリオンまたは感染性の粒子内に含まれているrAAV核酸ベクターである。いくつかの態様において、本明細書に開示のベクターおよびビリオンは、1以上の希釈剤、緩衝剤、生理学的な溶液、または医薬ビヒクルとともに組成物中にあり、1以上の診断的、治療的、および/または予防的なレジメンにおいて哺乳動物への投与のために製剤化されている。いくつかの態様において、本開示のベクター、ウイルス粒子、ビリオン、およびこれらの複数種は、選択された家畜、外来種(exotics)、飼育動物、および伴侶動物(ペットなどを包含する)への、ならびに霊長目の非ヒト動物、動物園の動物標本または別様に捕獲された動物標本(zoological or otherwise captive specimens)への獣医学的投与を許容し得る賦形製剤(excipient formulations)において提供される。
【0119】
態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載のrAAV粒子(例えば、哺乳動物の目への硝子体内投与もしくは網膜下投与を意図したベクターの医薬製剤など)の1以上を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる、組換えアデノ随伴ウイルスビリオン粒子(例として、改善された形質導入効率粒子)、組成物、および宿主細胞である。
【0120】
キット
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、記載のrAAV粒子または核酸ベクター(ならびに、かかるベクターを含む1以上のビリオン、ウイルス粒子、形質転換された宿主細胞、もしくは医薬組成物)の1以上を含むキット;ならびに、1以上の治療的、診断的、および/または予防的な臨床態様においてかかるキットを使用するための指示もまた、本開示によって提供される。いくつかの態様において、キットはさらに、1以上の試薬、制限酵素、ペプチド、治療法、医薬化合物、あるいは組成物(単数もしくは複数)を宿主細胞または動物へ送達する手段(例として、シリンジ、注射剤等)を含む。いくつかの態様において、本明細書に開示のキットは、疾患、欠陥、機能障害、および/または傷害の症状を処置するか、予防するか、あるいは向上させる。いくつかの態様において、キットは、ウイルスベクター自体の大規模産生のための(商用販売などのための)、または他者(例として、ウイルス学者、医療従事者等を包含する)による使用のための構成要素を包含する。
【0121】
使用
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、動物(とりわけ、目)における疾患、機能障害、障害、正常でない状態、欠陥、傷害、もしくは外傷の少なくとも1のまたは2以上の症状を診断するか、予防するか、処置するか、あるいは向上させるための医薬の調製における、本明細書に記載のrAAV粒子またはベクター、ビリオン、発現系、組成物、および宿主細胞の使用の方法である。いくつかの態様において、方法は、記載のベクター、ビリオン、ウイルス粒子、宿主細胞、組成物、またはこれらの複数種の1以上を、罹患動物の片目もしくは両目における、かかる疾患、機能障害、障害、正常でない状態、欠陥、傷害、または外傷の1以上の症状を診断、予防、処置、あるいは減少させるのに充分な量でかつこのような時間、これを必要とする哺乳動物の片目または両目の硝子体へ直接投与することを含む。
【0122】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、記載のrAAV粒子、発現系、感染性AAV粒子、および宿主細胞のうち1以上を含む組成物である。いくつかの態様において、組成物はさらに、医薬の製造およびかかるrAAV粒子または核酸ベクターの治療的な投与を伴う方法における使用のための第1の薬学的に許容し得る賦形剤を少なくとも含む。いくつかの態様において、医薬製剤は、ヒトもしくは他の哺乳動物の片目または両目中への硝子体内投与に好適である。
【0123】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、症状を処置または向上させるための方法における、あるいは哺乳動物の目における様々な欠陥(とりわけ、ヒト光受容体もしくはRPE細胞における1以上の欠陥)の症状を処置または向上させるための医薬の調製における、本明細書に記載の粒子、ベクター、ビリオン、発現系、組成物、および宿主細胞の使用の方法である。いくつかの態様において、その症状の処置または向上のための、目の疾患および障害(例として、PR細胞またはPRE細胞における1以上の遺伝子欠陥によって引き起こされる)は、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、加齢性黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、ブドウ膜炎、ベスト病、シュタルガルト病、アッシャー症候群、地図状萎縮、糖尿病網膜症、網膜分離症、色覚異常、全脈絡膜萎縮、バルデ・ビードル症候群、糖原病(眼への兆候)、またはそれらの組み合わせを包含する。いくつかの態様において、方法は、記載の粒子ベクター、ビリオン、宿主細胞、または組成物のうち1以上を、罹患哺乳動物におけるかかる欠陥の症状を処置または向上するのに充分な量でかつそのような時間、これを必要とする対象の片目もしくは両目への硝子体内または網膜下に投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、かかる疾病を有することが疑われる動物の予防的な処置、またはかかる疾病を発症するリスクがあるそれらの動物(診断後もしくは症状の発病前のいずれか)へのかかる組成物の投与を含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。
【0124】
緩衝剤の保管および製造
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に開示のrAAV粒子の保管および製造のための緩衝剤である。いくつかの態様において、本明細書に開示の医薬組成物は、緩衝溶液を含む。
【0125】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、rAAVベクターまたはカプシドとHAとの混合物の保管のための緩衝剤である。いくつかの態様において、記載の緩衝剤は、HAを、少なくとも約0.05%、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、または15%(体積単位の重量)(w/v)の濃度で、およびBSSを含む。いくつかの態様において、記載の緩衝剤は、少なくとも約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、または15%(体積単位の重量)(w/v)の濃度のHA、およびBSS、ならびに以下の賦形剤のうち1以上:人工の脳脊髄液(CSF)、PBS、リンガー乳酸溶液、TMN200溶液、ポリソルベート20、およびポロキサマー188(商業上Pluronic F-68(登録商標)として知られている)、および/または追加の賦形剤、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0126】
いくつかの態様において、緩衝剤は、約0.4%w/vの濃度のHA、およびBSS、人工のCSF、またはPBSのうち1以上を含む。いくつかの態様において、緩衝剤は、約0.4%w/vの濃度のHAと、BSSと、人工のCSF、PBS、リンガー乳酸溶液のうち1以上と;ならびに任意に、TMN200溶液、ポリソルベート20(Tween 20)、およびポロキサマー188とを含む。いくつかの態様において、記載の緩衝剤は、Tween 20を、少なくとも約0.005%、0.009%、0.01%、0.014%、0.02%、0.1%、0.2%、0.5%、または1%の濃度で、およびポロキサマー100を、約0.005%、0.009%、0.01%、0.02%、0.1%、0.2%、0.5%、または1%の濃度で含む。
【0127】
いくつかの態様において、記載の緩衝剤は、約0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、または1.0%w/vの濃度のHA、BSS、人工のCSF、PBS、およびリンガー乳酸溶液から本質的になる。
【0128】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、HAを含むrAAV粒子を製造するための溶離緩衝剤である。いくつかの態様において、緩衝剤は、最終産物へのパッケージングおよび製剤化に先立ち、親和性カラムからAAVカプシドを即時に溶離するために使用されてもよい。いくつかの態様において、緩衝剤は、表面が露出したカチオン性パッチを有するAAVカプシドの凝集を、製造最中の凝集から防止する。いくつかの態様において、緩衝剤は、7未満のpHを含む。いくつかの態様において、緩衝剤は、5未満のpHを含む。いくつかの態様において、緩衝剤は、酸性である。いくつかの態様において、緩衝剤は、塩基性である。いくつかの態様において、本明細書に開示の医薬組成物は、酸性である。いくつかの態様において、本明細書に開示の医薬組成物は、塩基性である。いくつかの態様において、本明細書に開示の医薬組成物は、中性である。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14のpHを有し得る。
【0129】
いくつかの態様において、緩衝剤は、HAを、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.75%、または1.0%w/vの濃度で含む。
【0130】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、AAVカプシドを精製することを含むrAAV粒子を製造する方法であって、ここでカプシドは、AAV-XもしくはAVB親和性樹脂、または当該技術分野において知られている別の樹脂から選択される樹脂を含有する親和性カラムから溶離される。
【0131】
rAAV粒子
本開示の側面は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子、あるいはRepタンパク質および/または着目したタンパク質もしくはポリペプチドをコードする配列を含む1以上の核酸ベクターの、様々な組織、器官、および/または細胞中への送達のためのかかる粒子の調製に関する。いくつかの態様において、rAAV粒子は、本明細書に記載のとおりのRepタンパク質の存在下、宿主細胞へ送達される。
【0132】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、ヒト疾患の無数の前臨床動物モデルにおけるin vivo遺伝子導入に成功裏に使用され、かつ多種多様な治療薬の長期発現に成功裏に使用されてきた。AAVベクターはまた、免疫特権部位が標的にされたとき(例として、レーバー先天性黒内障のための眼への送達)のヒトにおいて長期の臨床利益ももたらしている。このベクターの利点は、限定的な炎症反応しか惹起しない、その比較的低い免疫プロファイルであって、いくつかのケースにおいては、導入遺伝子産物に対し免疫寛容にも向かわせる。それでもなお、治療効果は、非免疫特権器官が標的にされたとき、ウイルスカプシドに対する抗体およびCD8+ T細胞応答に起因し、ヒトにおいては限定的であるが、動物モデルにおいてはまた導入遺伝子産物に対する適応応答も報告されている。
【0133】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その効率、存続、および低免疫原性に起因し、眼の遺伝子治療のために使用される。硝子体を介してPRを形質導入することが可能なベクターを同定することは、歴史的に見て、局所送達後にどの血清型がこの細胞型に対しネイティブな指向性を有するかを同定することに依拠している。数種の血清型は、網膜下注射(例として、AAV2、AAV5、およびAAV8を包含する)後、導入遺伝子にPRを標的にさせるために成功裏に使用されており、複数の哺乳動物種(例として、マウス、ラット、イヌ、ブタ、および霊長目の非ヒト動物)にわたって実施された実験において3種すべてがその効き目を実証した。
【0134】
いくつかの態様において、表面が露出したチロシン残基の点突然変異(チロシン→フェニルアラニン、Y-F)を含むAAV2およびAAV8ベクターは、非修飾ベクターと比べて、網膜下注射と硝子体内注射との両方の後の網膜細胞型における導入遺伝子発現を増加させることを顕す。いくつかの態様において、AAV2は、三重の突然変異体を含む(「三重Y→F」と指定される)。いくつかの態様において、AAV2は、四重の(quadruple)突然変異体を含む(「四重(quad)Y→F」)。いくつかの態様において、AAVは、表面が露出したトレオニン(T)残基またはセリン(S)残基の、これらのアミノ酸の1以上での、ネイティブでないアミノ酸への定方向突然変異誘発を含む。いくつかの態様において、AAVは、Y→Fおよび/またはT→V/T→A突然変異を含む。
【0135】
いくつかの態様において、rAAVは、本明細書に記載のrAAVである。
【0136】
いくつかの態様において、rAAV核酸ベクターは、一本鎖または自己相補的組換えウイルスゲノムなどの、一本鎖(ss)または自己相補的(sc)AAV核酸ベクターを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。
【0137】
野生型AAVゲノムは、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)であって、プラス鎖またはマイナス鎖のいずれかである。ゲノムは、2つの逆方向末端反復(ITR)(DNA鎖の各末にて1つずつ)、2つのオープンリーディングフレーム(ORF):ITR間のrepおよびcap、ならびにITR間に位置付けられた挿入核酸(任意に、導入遺伝子を含む)を含む。rep ORFは、AAV生活環に要されるRepタンパク質をコードする4つの重複遺伝子を含む。cap ORFは、相互作用して一緒にウイルスカプシドを形成するカプシドタンパク質:VP1、VP2、およびVP3をコードする重複遺伝子を含む。VP1、VP2、およびVP3は、1つのmRNA転写産物から翻訳され、これが2つの異なるやり方でスプライシングされ得る:either longerまたはshorterより長い方のイントロンまたはより短い方のイントロンのいずれかが切除されて、mRNAの2つのアイソフォーム:~2.3kb長および~2.6kb長のmRNAアイソフォームの形成がもたらされ得る。カプシドは、およそ60の個々のカプシドタンパク質サブユニットの超分子集合体を形成して、AAVゲノムを保護することが可能な非エンベロープT-1 20面体格子になる。成熟したカプシドは、約1:1:10の比率のVP1、VP2、およびVP3(夫々およそ87、73、および62kDaの分子量)から構成される。
【0138】
組換えAAV(rAAV)粒子は核酸ベクターを含んでいてもよく、前記核酸ベクターは、以下:(a)着目したタンパク質もしくはポリペプチドまたは着目したRNA(例として、siRNAもしくはマイクロRNA)をコードする配列、あるいはRepタンパク質をコードする配列を含む1以上の核酸領域を含む、1以上の導入遺伝子;および(b)1以上の異種の核酸領域(例として、導入遺伝子)をフランキングする逆方向末端反復(ITR)配列)を含む1以上の領域を、最小限含んでいてもよい。いくつかの態様において、核酸ベクターは、サイズが4kbと5kbとの間(例として、サイズが4.2~4.7kb)である。いくつかの態様において、核酸ベクターはさらに、本明細書に記載のとおりのRepタンパク質をコードする領域を含む。本明細書に記載されるいずれの核酸ベクターも、AAV6カプシドまたは別の血清型(例として、ITR配列と同じ血清型である血清型)などのウイルスカプシドによってカプシド形成され(encapsidated)ていてもよく、前記ウイルスカプシドは、本明細書に記載のとおりの修飾されたカプシドタンパク質を含んでいてもよい。いくつかの態様において、核酸ベクターは、環状である。いくつかの態様において、核酸ベクターは、一本鎖である。いくつかの態様において、核酸ベクターは、二本鎖である。いくつかの態様において、二本鎖核酸ベクターは、例えば、核酸ベクターのある領域に相補的な核酸ベクターの別の領域を含有しており、核酸ベクターの二本鎖の形成を開始する自己相補的ベクターであってもよい。
【0139】
結果的に、いくつかの態様において、かかる粒子を含有するrAAV粒子またはrAAV調製物は、本明細書に記載のとおりのウイルスカプシドおよび核酸ベクターを含み、前記核酸ベクターは、ウイルスカプシドによってカプシド形成される。いくつかの態様において、核酸ベクターの挿入核酸は、(1)着目したタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む1以上の導入遺伝子、(2)導入遺伝子の発現を容易にする配列(例として、プロモーター)を含む1以上の核酸領域、および(3)導入遺伝子の(任意に、発現を容易にする配列を含む1以上の核酸領域とともに)、対象のゲノム中への組込み(integration)を容易にする配列を含む1以上の核酸領域、を含む。
【0140】
ヘルパープラスミド
いくつかの態様において、本明細書に開示の核酸ベクター配列を含有するプラスミドは、1以上のヘルパープラスミド(例として、rep遺伝子(例として、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40をコードする)、ならびにcap遺伝子(VP1、VP2、およびVP3(本明細書に記載のとおりの修飾されたVP3領域を包含する)をコードする)を含有する)と組み合わされている。いくつかの態様において、rAAV粒子がパッケージングされ、続いて精製され得るように、ヘルパープラスミドは産生細胞株中へトランスフェクトされる。
【0141】
いくつかの態様において、1以上のヘルパープラスミドは、rep遺伝子とcap遺伝子とを含む第1のヘルパープラスミド、および/またはE1a遺伝子、E1b遺伝子、E4遺伝子、E2a遺伝子、VA遺伝子、もしくはこれらの組み合わせを含む第2のヘルパープラスミドを含む。いくつかの態様において、rep遺伝子は、AAV2に由来するrep遺伝子である。いくつかの態様において、cap遺伝子は、AAV2に由来する。いくつかの態様において、cap遺伝子は、本明細書に記載の修飾されたカプシドタンパク質を産生するために、遺伝子への修飾を包含する。ある態様において、rep遺伝子は、Rep78、Rep68、Rep52、またはRep40を含む。ある態様において、cap遺伝子は、VP1、VP2、VP3、またはそれらのバリアントを含む。いくつかの態様において、ヘルパープラスミドは、pDM、pDG、pDP1rs、pDP2rs、pDP3rs、pDP4rs、pDP5rs、pDP6rs、pDG(R484E/R585E)、またはpDP8.apeのプラスミドを含む。
【0142】
産生
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、rAAV粒子の産生方法である。いくつかの態様において、1以上のヘルパープラスミドは、産生されるか、または得られたものである。いくつかの態様において、1以上のヘルパープラスミドは、所望されるAAV血清型およびアデノウイルスVA、E2A(DBP)、およびE4遺伝子のためのrepおよびcap ORFを含む。いくつかの態様において、所望されるAAV血清型およびアデノウイルスのVA、E2A(DBP)、およびE4遺伝子のためのrepおよびcap ORFは、それらのネイティブなプロモーターの転写制御下にある。いくつかの態様において、cap ORFは、本明細書に記載のとおりの修飾されたカプシドタンパク質を産生するための1以上の修飾を含む。いくつかの態様において、HEK293細胞(ATCC(登録商標)から入手可能)は、CaPO4媒介トランスフェクション、ヘルパープラスミド(単数もしくは複数)および本明細書に記載の核酸ベクターを含有するプラスミドとともに脂質またはポリエチレンイミン(PEI)などのポリマー分子を介してトランスフェクトされる。いくつかの態様において、HEK293細胞は、少なくとも約60時間インキュベートされることで、rAAV粒子産生が可能になる。いくつかの態様において、Sf9をベースとした安定した産生細胞株は、核酸ベクターを含有する単一の組換えバキュロウイルスに感染させられる。いくつかの態様において、HEK293細胞株またはBHK細胞株は、核酸ベクターを含有するHSV、および任意に1以上のヘルパーHSVで感染させられる。いくつかの態様において、ヘルパーHSVは、本明細書に記載のとおりのrep ORFおよびcap ORFと、アデノウイルスのVA、E2A(DBP)、およびE4遺伝子とを、それらのネイティブなプロモーターの転写制御下に含有している。いくつかの態様において、HEK293細胞、BHK細胞、またはSf9細胞は次いで、少なくとも60時間インキュベートされることで、rAAV粒子産生が可能になる。いくつかの態様において、rAAV粒子は、精製されている。いくつかの態様において、rAAV粒子は、イオジキサノールステップ勾配、CsCl勾配、クロマトグラフィー、またはポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって精製されている。
【0143】
改善されたrAAV送達のためのキットおよび使用
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、哺乳動物の疾患、傷害、障害、外傷、もしくは機能障害の1以上の症状を診断、予防、処置、または向上させるためのキットに含まれる、rAAV粒子とヒアルロン酸との混合物である。いくつかの態様において、キットは、本明細書に考察されたとおりの哺乳動物の目における1以上の欠陥の、診断、予防法、および/または治療に、ならびに処置、予防、および/または向上に有用である。いくつかの態様において、キットは、本明細書に開示の医薬組成物を含み得る。いくつかの態様において、キットは、医薬組成物を単位用量形態で含み得る。いくつかの態様において、方法は、本明細書に開示のキットを作製することを含み得る。いくつかの態様において、キットは、1以上の容器、瓶、またはアンプルを含み得る。いくつかの態様において、キットは、使用のための指示を含む。
【0144】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、疾患、障害、もしくは機能障害の処置、予防、および/または予防法、および/またはかかる疾患、障害、もしくは機能障害の1以上の症状の向上を含む、疾患、障害、機能障害、傷害、もしくは外傷の症状を処置、予防、または向上させるための医薬の製造における、本明細書に記載の緩衝剤および組成物の使用を含む方法である。
【0145】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、哺乳動物のおよびヒトの片目もしくは両目における、かかる疾患、傷害、障害、または機能障害の症状を処置あるいは向上させるための方法である。いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載のとおりのrAAV粒子の1以上を、哺乳動物の片目もしくは両目の、かかる疾患、傷害、障害、または機能障害の症状を処置あるいは向上させるのに充分な量でかつそのような時間、これを必要とする哺乳動物へ投与するステップを少なくとも含む。いくつかの態様において、
【0146】
rAAV粒子を含む医薬組成物
いくつかの態様において、本明細書に記載の改善されたrAAV送達方法は、より高いレベルの従来のrAAV方法を使用して得られた形質導入効率と同じ形質導入効率を達成するのに、より小さい力価のウイルス粒子の送達を可能にする。いくつかの態様において、方法は、単回投与を含む、治療的に有効な量の記載の組成物の投与を含む。いくつかの態様において、方法は、かかる処置を受けているペイシェントへ治療上の利益を提供するのに充分な数の感染性粒子の単回注射を含む。いくつかの態様において、方法は、相対的に短い期間または相対的に持続した期間のいずれかにわたる、AAVベクター組成物の複数回のまたは連続的な投与を含む。いくつかの態様において、対象へ投与される感染性粒子の数は、少なくとも約101、102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、またはさらに多くの、感染性粒子/mLである。いくつかの態様において、感染性粒子は、処置されている具体的な疾患もしくは障害の治療を達成するのに要され得るとおりの単回用量(または2以上の投与に分割された用量等々)のいずれかとして与えられる。いくつかの態様において、方法は、具体的なレジメンもしくは治療の所望される効果を獲得するため、2以上の異なるrAAV粒子-またはベクター-ベースの組成物を、単独で、あるいは1以上の他の診断用の剤、薬、生物活性剤(bioactives)と組み合わせて、投与することを含む。いくつかの態様において、プレ処置してAAVカプシドをHAと共投与する記載の方法を実践するとき、AAVカプシドがプレ処置もHAとの共投与もされないときに要される感染性粒子の力価と比較すると、感染性粒子のより小さい力価が要されるであろう。いくつかの態様において、カプシド配列は、with 配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、もしくは配列番号10と、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を含む。いくつかの態様において、カプシド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10を含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、キメラウイルスの/非ウイルスのナノ粒子には含まれない。
【0147】
いくつかの態様において、rAAV粒子は、治療剤をコードする核酸セグメントを、1以上のプロモーターの制御下に含む。いくつかの態様において、配列をプロモーター「の制御下」にもってくるには、転写読み枠の転写開始部位の5'末であって、選んだプロモーターから一般に約1~約50ヌクレオチド「下流」(すなわち、選んだプロモーターの3')に位置付ける。いくつかの態様において、「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされるポリペプチドの発現を促進する。いくつかの態様において、組換えベクター構築物は、1以上の診断剤および/または治療剤をコードする少なくとも1の核酸セグメントへ動作可能に連結されているRPE細胞-あるいは光受容細胞-特異的プロモーターを含有する、カプシドタンパク質が修飾されたrAAVベクターを包含するものである。
【0148】
いくつかの態様において、方法は、1以上の外来性のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リボザイム、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ベクターでトランスフェクトされる具体的な細胞へ導入することを含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAV粒子は、1以上の外来性のポリヌクレオチドを、選択された宿主細胞(例として、哺乳動物の目内の選択された1以上の細胞)へ送達するのに使用される。
【0149】
いくつかの態様において、対象へ投与されるウイルス粒子の数は、少なくとも約101~1020粒子/mlもしくは103~1015粒子/ml、またはいずれかの範囲についてその範囲内の(therebetween)いずれかの値(例えば、約101、102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018、1019、または1020粒子/mlなど)に及ぶオーダーであってもよい。いくつかの態様において、1013粒子/mlより多いウイルス粒子が、投与されてもよい。いくつかの態様において、対象へ投与されるウイルス粒子の数は、106~1014ベクターゲノム(vgs)/mlもしくは103~1015vgs/ml、またはいずれかの範囲についてその範囲内のいずれかの値に及ぶオーダーであってもよい。いくつかの態様において、対象へ投与されるウイルス粒子の数は、約101、102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014vgs/mlのオーダーであってもよい。いくつかの態様において、1013vgs/mlより多いウイルス粒子が、投与される。いくつかの態様において、ウイルス粒子は、単回用量として投与される。いくつかの態様において、ウイルス粒子は、処置されている具体的な疾患または障害の治療を達成するのに要され得るとおりの2回以上の投与に分割される。いくつかの態様において、0.0001ml~10ml、例として、0.001ml、0.01ml、0.1ml、1ml、2ml、5ml、または10mlが、対象へ送達される。
【0150】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、細胞または動物への投与(単独投与、もしくは1以上の他の治療のモダリティ(modalities)と組み合わせた投与のいずれか)のための、とりわけ、ヒトの細胞、組織、および対象が罹患している疾患の治療のための、本明細書に記載のウイルスをベースとした1以上の組成物の、薬学的に許容し得る溶液中の製剤である。
【0151】
いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAV粒子は、他の剤(例として、タンパク質もしくはポリペプチド、または様々な薬学的に活性な剤など)とも組み合わせて投与される(治療用ポリペプチド、生物学的に活性なそのフラグメントもしくはバリアントの、1回以上の全身投与または局所投与を包含する)。いくつかの態様において、組成物は、宿主細胞もしくは他の生物学的供給源から精製されていてもよく、または代替的に、本明細書に記載のとおり、化学的に合成されたものであってもよい。
【0152】
いくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る緩衝剤、賦形剤、または担体溶液を含む。いくつかの態様において、組成物は、経口の、非経口の、硝子体内の、眼内の、静脈内の、鼻腔内の、局所の、関節内の、筋肉内の投与、またはそれらの組み合わせのために製剤化されている。
【0153】
いくつかの態様において、本明細書に開示の組成物は、薬学的に許容し得る担体を含む。いくつかの態様において、薬学的に許容し得る担体は、これらに限定されないが、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例として、水酸化アルミニウム);または防腐剤を包含する。
【0154】
いくつかの態様において、これらの製剤は、少なくとも約0.1%の治療剤(例として、rAAV粒子)を、またはそれ以上に含む。いくつかの態様において、活性成分(単数または複数)のパーセンテージは、製剤全体の重量もしくは体積の、少なくとも約0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、または2%と、約70%または80%以上との間にある。
【0155】
いくつかの態様において、用語「賦形剤」は、希釈剤、アジュバント、担体、またはビヒクルを指し、rAAV粒子はこれらとともに投与される。いくつかの態様において、医薬賦形剤は、水あるいは油(鉱油などの石油、落花生油、大豆油、もしくはゴマ油などの植物油、動物油、または合成物起源の油を包含する)などの滅菌液体を含む。いくつかの態様において、液体担体は、生理食塩溶液、水性のデキストロース、グリセロール溶液、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、賦形剤およびビヒクルは、HA、BSS、人工のCSF、PBS、リンガー乳酸溶液、TMN200溶液、ポリソルベート20、ポロキサマー100、またはそれらの組み合わせを含む。
【0156】
いくつかの態様において、治療的に有効な量の組成物の投与は、例えば、かかる処置を受けているペイシェントへ治療上の利益を提供するのに充分な数のウイルス粒子の単回注射などの、単回投与を含む。いくつかの態様において、治療的に有効な量の組成物の投与は、かかる組成物の投与を監督する医師によって決定されるとおり、相対的に短い期間または相対的に持続した期間のいずれかにわたる、組成物の複数回のまたは連続的な投与を含む。
【0157】
いくつかの態様において、組成物は、rAAV粒子もしくは核酸ベクターを、単独で含むか、あるいは1以上の追加の活性成分(これは、天然のもしくは組換えの供給源または化学的に合成されたものから得られたものであってもよい)と組み合わせて含む。
【0158】

例1-In Vitro実験
表面が露出したカプシド残基のカチオン性パッチを含有するAAVカプシド(すなわち、AAV2およびAAV6)が、HAとのプレインキュベーション後にHEK293T細胞(ヒト)および661W細胞(マウス錐体由来の光受容細胞株)の増強された形質導入を呈したか決定しようとした。
【0159】
AAV2カプシドを、ヒーロン(登録商標)と3:1(AAV:ヒーロン(登録商標))の比率でプレインキュベートし、次いで2000の感染の多重度(MOI)にて細胞中へ注入した。対照は、非感染細胞、およびAAVベクター単独で感染させた細胞を包含した。AAV媒介mCherryレポーター発現データは、HAが、HAとの(感染に先立つ5分間、15分間、および1時間での)プレインキュベーション後のrAAV2粒子のin vitro投与後に661W細胞の形質導入を増大させたことを図2Aにおいて実証した。
【0160】
AAV6カプシドは、AAV2と同様、正に帯電した残基のパッチを持つ。両血清型とも、HAとのプレインキュベーション後に形質導入の改善を示す。AAV2と同様に、HAのプレ処置および共投与は、図3に示されるとおり、5000~10,000の感染の多重度(MOI)にて注入された自己相補的rAAV6ベースのベクターのin vitro投与後のHEK293T細胞において、mCherryレポーター(偏在的なCBAプロモーターの制御下)の形質導入を増大させた。この実験において、カプシドバリアントであるAAV6(D532N)およびAAV6-3pmutの形質導入効率を、HAプレインキュベーションの存否において評価した。
【0161】
これに反して、カプシド表面上一様に負電荷を有するAAV5は、増強された形質導入を呈し損ねた(図2および3を見よ)。
【0162】
次に、形質導入のHA媒介性増強がCD44細胞表面受容体への結合に依存しなかったことを確立した。第1に、HEK293Tおよび661WはCD44の発現を呈しなかったが(図4を見よ)、CD44を発現することが知られているヒトRPE細胞株のARPE19細胞はCD44発現を呈したことを、免疫細胞化学を介して確認した。
【0163】
HEK293においてAAV6をベースとしたカプシドで実施したのと同様の実験をARPE19細胞において実施したとき、AAVのHAとのプレ処置は、形質導入を低減させたことを示した。この阻害は、HAの側鎖長を低減させるヒアルロニダーゼでHAを消化させることによって克服されたが、これによってAAVはもはやCD44によって認識されない。
【0164】
述べたとおり、AAV2のHAとのプレインキュベーションはARPE19細胞の形質導入を阻害し、かつARPE19細胞はCD44を発現する。しかしながら、AAV2をHAとプレインキュベートし、HAをヒアルロニダーゼで消化すると、ARPE19細胞の形質導入が増強する。ヒアルロニダーゼがHAを分解したとき、その結果得られる短縮コンカテマーは、一般に50~100単量体長である(20~40kDaの分子量を有する)。HAのCD44への親和性は、分子量が減少するにつれ、具体的にはほぼ20kDaの分子量を境に、大幅に減少する(一価の相互作用vs.二価の相互作用)。
【0165】
次に、HAで被覆されたAAV2が依然として、網膜の硝子体内形質導入に必要な細胞認識および内在化事象に要されるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)受容体フットプリントを認識するかを問うた。これを査定するためHAをAAV2とインキュベートし、次いで、HSPGの代理材料として確立されているヘパリンへの結合を評価した。図5に描かれる溶離プロファイルにおいて説明されるとおり、HA処置は、ヘパリンへの結合を変化させなかった。HAで被覆されたAAV2のヘパリン親和性は、AAV2単独と有意には相違しなかったが、このことは、HA媒介形質導入の増強が、AAVカプシドの標準的なHSPG結合に対し、ほとんど~まったく影響を与えないことを指し示している。
【0166】
まとめると、結果は、HAによって媒介される形質導入の改善がCD44依存性ではないことを指し示す。
【0167】
例2-In Vivo実験
次いで、AAV2をベースとした数個のカプシドバリアントのHAとのプレインキュベーションが、硝子体内に注射されたマウスにおいて、ウイルス単独と比べて増強された網膜形質導入を容易にしたかを決定した(図6A~6Bを見よ)。10μLのウイルスカプシド(2×1012ベクターゲノムコピー(vg)/mL)を、注射の30分以内に10μLヒーロン(登録商標)(5百万kDaの分子量)と混合した。ウイルスのみの対照は、10μL平衡塩類溶液(BSS)+Tween20と混合された10μLのウイルス(2×1012vg/mL)から構成した。最終ベクター濃度は1×1012vg/mLであった。硝子体内注射を4週齢Nrl-GFPマウスに実施し、眼底画像を注射から2週後および4週後にて撮った。4カプシド-すべてが、表面が露出したカチオン性パッチを保持するAAV2のバリアント-を試験した。これらのカプシドは、当該技術分野において、「DGE-DF」、「P2-V2」、「P2-V3」、および「ME-B(Y-F+T-V)」として知られている(国際特許刊行物第WO 2018/156654号を見よ)。ゲイン(Gain)およびインテグレーション(integration)の設定は、すべての画像を通してずっと一貫していた(図7A~7B、8A~8B、9A~9B、および10A~10Bを見よ)。
【0168】
注射から5週後に網膜電図(ERG)およびFACS分析を実施した。フローサイトメトリーを使用し、mCherry発現を測定することによって網膜細胞の形質導入を分析し、注射されていない目の全網膜を使用してゲーティング(gating)をした。注射から2週後および4週後での眼底画像を、これらの画像におけるシグナルの集約(aggregated)フローサイトメトリー定量化と共に、DGE-DFについては図7A~7Cに、P2-V2については図8A~8Cに、P2-V3については図9A~9Cに、ME-B(Y-F+T-V)については図10A~10Cに示す。4つすべてのカプシド全体についてのフローサイトメトリーデータを集約し、図11に示す。
【0169】
4カプシドバリアントは各々、HAとのプレインキュベーション後に、改善された網膜形質導入を呈した。カプシドのHAとのプレ処置および共投与が、ERGデータによって査定されたとおり、硝子体内送達後の網膜の機能に何ら有意な影響を与えなかったこともまた、確認した(図12A~12Eを見よ)。桿体細胞および錐体細胞におけるA波ならびにB波の振幅は、HAとの処置後、有意な程度までには変動しなかった。
【0170】
まとめると、結果は、HAとのプレ処置および共投与が、表面が露出したカチオン性パッチを有する数種の異なるカプシドタイプにわたり、形質導入効率をin vivoで増強することを指し示す。HAとのプレ処置は、カプシド自体の残基を修飾することなく、AAV形質導入を改善するための、かつ所望される形質導入を達成するのに必要なこれらAAVの力価を低下させるための、強力な新規方法を表す。
【0171】
本明細書に記載の例および態様は説明のためだけであって、これらに照らした様々な修飾または変更は当業者に示唆されるものであり、かつ本出願の精神および権限の範囲内であって添付のクレームの範囲内に包含されるべきであることは、理解されるはずである。本明細書に引用されるすべての参考文献(刊行物、特許出願、および特許を包含する)は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照によって組み込まれることを意図していた場合であって、その全体が本明細書に記述されていた場合と同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書に別様に指し示されていない限り、範囲内に収まる別々の各値を個々に参照する省略法として役立つことを単に意図したものであって、別々の各値は、本明細書に個々に列挙されたかのように本明細書中へ組み込まれる。
【0172】
本明細書に記載されクレームされる組成物および方法のすべてが、本開示に照らせば過度の実験をせずともなされ得るし、かつ実行され得る。組成物および方法は好ましい態様の観点から記載されてはいるものの、バリエーションが、組成物および方法へ、かつ本明細書に記載の方法のステップまたはステップの順序において、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく適用されてもよいことは当業者には明らかであろう。より具体的に言うと、化学的および/または生理学的に関連するある剤が、本明細書に記載の剤に置換されてもよく、と同時に同じ結果または同様の結果が得られることは明らかであろう。当業者にとっては明らかである、かかる同様の置換および修飾のすべてが、添付のクレームによって定義されるとおりの本発明の精神、範囲、および概念の範囲内にあると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
【配列表】
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【国際調査報告】