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特表2022-539167痕跡量の有機溶媒も含まない低脂質含有量のオーツ麦タンパク質組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】痕跡量の有機溶媒も含まない低脂質含有量のオーツ麦タンパク質組成物
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20220831BHJP
   A23J 1/12 20060101ALI20220831BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220831BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20220831BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
A23J3/14
A23J1/12
A23L5/00 M
A61K38/02
A61K36/899
A61K8/9794
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577486
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020068658
(87)【国際公開番号】W WO2021001478
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19315052.1
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、レオン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ロン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B035
4C083
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
2B150CE04
2B150CJ07
4B035LC16
4B035LG11
4B035LG34
4B035LG51
4B035LP01
4B035LP24
4B035LP41
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD411
4C083AD412
4C084AA01
4C084AA06
4C084BA03
4C084BA44
4C084CA14
4C084ZC80
4C088AB75
4C088BA07
4C088BA16
4C088CA12
4C088CA25
4C088ZC80
(57)【要約】

本発明は、オーツ麦タンパク質組成物及びその製造方法の分野に関する。特に、本発明は、脂質含有量が低く、痕跡量の有機溶媒も含有しないオーツ麦タンパク質組成物、及びその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
痕跡量の有機溶媒も含有しないことを特徴とするオーツ麦タンパク質組成物であって、前記オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有し、レーザー回折によって決定される10ミクロン超の平均粒径(d50)を有する、オーツ麦タンパク質組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で40重量%~70重量%、好ましくは50重量%~60重量%のタンパク質を含有する、請求項1に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で70%超、好ましくは80重量%超のタンパク質を含有する、請求項1に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記組成物中のタンパク質の総重量に基づいて、
300kDa以上の分子量を有するタンパク質を、0.5~30%、有利には5~15%、
50~300kDaの分子量を有するタンパク質を、30~75%、有利には45~65%、
10~50kDaの分子量を有するタンパク質を、10~50%、有利には25~45%、
10kDa以下の分子量を有するタンパク質を、0.5~20%、有利には1~10%含み、
ここで、その合計が100%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で0.1~10重量%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは1~4%のデンプンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質の繊維で0.1~10重量%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは1~4%の総食物繊維を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項7】
前記組成物が、
20ミクロン超、好ましくは30ミクロン超、より好ましくは40ミクロン超の平均粒径、及び
300ミクロン未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは150ミクロン未満の平均粒径で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のオーツ麦タンパク質組成物。
【請求項8】
オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有するオーツ麦タンパク質組成物を製造するプロセスであって、以下の工程、すなわち
1)オーツ麦種子を準備する又はタンパク質に富む穀粉を用意する工程、
2)工程1でオーツ麦種子を使用する場合、タンパク質に富む穀粉が得られるまで工程1のオーツ麦種子を粉砕する工程、
3)タンパク質に富む懸濁液が得られるまで、工程1又は2の前記タンパク質に富む穀粉を水と混合する工程、
4)工程3の前記タンパク質に富む懸濁液にアミラーゼ酵素を添加して、前記タンパク質に富む懸濁液を加水分解する工程、
5)任意で、繊維を含む重質層とタンパク質を含む軽質層が得られるまで、工程4の前記加水分解したタンパク質に富む懸濁液を遠心分離によって分離する工程、
6)工程4の前記加水分解したタンパク質に富む懸濁液、又は任意で工程5の前記タンパク質を含む軽質層にポリソルベートを添加する工程、
7)工程6のポリソルベートを含む前記タンパク質に富む懸濁液、又はタンパク質を含む軽質層を遠心分離して、タンパク質を含有する重質層と脂質を含む可溶性化合物を含有する軽質層とに分離する工程、及び
8)任意で、工程7の前記タンパク質を含有する重質層を乾燥させる工程を含む、プロセス。
【請求項9】
工程6において、前記ポリソルベートが50℃~80℃、好ましくは55℃~75℃の範囲、更により好ましくは65℃の温度で添加される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
工程4の前記アミラーゼ酵素が耐熱性アミラーゼである、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
工程4で添加される前記アミラーゼが、100~170KNU/穀粉100g、好ましくは110~160KNU/穀粉100g、更により好ましくは120~150KNU/穀粉100gの範囲の活性レベルを有する、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記オーツ麦タンパク質組成物が、請求項1~7のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項で定義されるタンパク質組成物、又は請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセスに従って得られるタンパク質組成物の、食品、飼料、医薬品、及び化粧品分野における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーツ麦タンパク質組成物及びその製造方法の分野に関する。特に、本発明は、脂質含有量が低く、痕跡量の有機溶媒も含有しないオーツ麦タンパク質組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーツ麦は、多種多様の有用な製品の周知の原料源である。そのような製品の例としては、穀粉、デンプン、タンパク質単離物及び濃縮物、タンパク質富化穀粉、ブラン、ガム、及び油がある。シリアル穀物加工業界で使用される従来の技術は、オーツ麦の中に存在する脂質に関連したプロセスの問題のために、オーツ麦での使用がしばしば困難である。更に、粉砕する前にオーツ麦を脱脂しない限り、粉砕プロセスでは脂質を含有する穀粉及びタンパク質画分が形成され、それにより、穀粉及びタンパク質の貯蔵時に酸敗が生じる可能性がある。
【0003】
最も広く使用されている技術は、ヘキサン又はエタノールのような有機溶媒を用いた一次脱脂からなる。当業者には、オーツ麦粉から脂質を除去するための脂肪族炭化水素溶媒の使用を教示しているデュポンの欧州特許第0051943号の例が知られている。このような技術の主な欠点は、有機溶媒の工業的な使用、関連する爆発と腐敗のリスク、及び最終製品中の脂質の残留レベルである。
【0004】
このようなリスクは重要であるように思われ、PROATEIN(登録商標)と呼ばれる主な現在の市販製品は現在脱脂することなく製造されている。欧州特許第1706001号は、アミラーゼ及び遠心分離の使用にのみ基づいている。実施例の部に開示するように、のようなプロセスにより、総重量に基づいて10重量%超の脂質含有量を有する組成物がもたらされる。
【0005】
これらの欠点に対処するために、いくつかの代替プロセスが最近提案されている。このようなプロセスは、超臨界COの使用に基づいている。当業者には、VALTION TEKNILLINENの欧州特許第2120604号が知られている。しかしながら、高レベルの脱脂に到達するためには、穀粉を加工及び粉砕する必要があり、それによって、タンパク質の平均粒径は10ミクロン未満になる(欧州特許第2120604号の段落0047を参照)。このプロセスにより、いくつかの用途には望ましくない超微細サイズのタンパク質粉末がもたらされ、それはまた、主に粉塵の形成及び爆発の危険によって工業設備での取り扱いが困難である。10ミクロン未満のサイズの粒子に関連する別の主要な工業的問題は、このような小さな粒子を回収するために必要なサイクロン及び濾過システムが高価であり、効率的及び/又は効果的に操作することが困難なことである。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0155444(A1)号には、大豆タンパク質とオーツ麦粉から作られた押出物が開示されている。それには、オーツ麦タンパク質組成物は記述されていない。
【0007】
Bruckner-Guhmannらの文書(Foarming characteristics of oat protein and modification by partial hydrolysis,Europian Food Research and Technology,Vol.244,no12,28 August 2018,pages2095~2106)には、オーツ麦タンパク質濃縮物を出発材料として使用し、この濃縮物をアルカリ抽出する工程、上澄みにタンパク質を分離する工程、この上澄みを凍結乾燥してタンパク質単離物粉を製造する工程を使用する、オーツ麦タンパク質単離物の製造が記載されている。この論文では、得られたタンパク質単離物の発泡の機能性を研究している。この文書には、得られたオーツ麦タンパク質組成物の平均粒径は開示されていない。
【0008】
本特許出願の目的は、これらの問題を克服し、したがって、従来技術における既存の技術を改善し、それによって独特のオーツ麦タンパク質粉をもたらす新しいプロセスを提案することである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態は、当該組成物が痕跡量の有機溶媒も含有せず、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有し、10ミクロン超の平均粒径を有することを特徴とするオーツ麦タンパク質組成物である。
【0010】
第2の実施形態は、上で定義された本発明のオーツ麦タンパク質組成物であるオーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有するオーツ麦タンパク質組成物を製造するプロセスであり、このプロセスは以下の工程、すなわち
1)オーツ麦種子を準備する又はタンパク質に富む穀粉を用意する工程、
2)工程1でオーツ麦種子を使用する場合、タンパク質に富む穀粉が得られるまで工程1のオーツ麦種子を粉砕する工程、
3)タンパク質に富む懸濁液が得られるまで、工程1又は2のタンパク質に富む穀粉を水と混合する工程、
4)工程3のタンパク質に富む懸濁液にアミラーゼ酵素を添加して、タンパク質に富む懸濁液を加水分解する工程、
5)任意で、繊維を含む重質層とタンパク質を含む軽質層が得られるまで、工程4の加水分解したタンパク質に富む懸濁液を遠心分離によって分離する工程、
6)工程4の加水分解したタンパク質に富む懸濁液、又は任意で工程5のタンパク質を含む軽質層にポリソルベートを添加する工程、
7)工程6のポリソルベートを含むタンパク質に富む懸濁液、又はタンパク質を含む軽質層を遠心分離して、タンパク質を含有する重質層と脂質を含む可溶性化合物を含有する軽質層とに分離する工程、及び
8)任意で、工程7のタンパク質を含有する重質層を乾燥させる工程を含む。
【0011】
第3の最後の実施形態は、好ましくは食品、飼料、医薬品、及び化粧品分野における本発明のタンパク質組成物の工業的使用である。
【0012】
本発明のよりよい理解のために、以下に詳細に説明する。
実施形態の詳細な説明
【0013】
本発明の第1の実施形態は、当該組成物が痕跡量の有機溶媒も含有せず、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有し、10ミクロン超の平均粒径を有することを特徴とするオーツ麦タンパク質組成物である。
【0014】
「痕跡量の有機溶媒も含有しない組成物」とは、100ppm未満の溶媒、好ましくは10ppm未満の有機溶媒を含有する組成物、より好ましくは有機溶媒を全く含有しない組成物を意味する。
【0015】
「有機溶媒」とは、炭素を含有する化合物に基づく溶媒を意味する。反対に、本発明において許容される無機溶媒は炭素を含有しない。本発明で許容される典型的な無機溶媒は水である。
【0016】
本出願における「オーツ麦」とは、植物属であるカラスムギ属(genus Avena)に属する穀物植物と理解されるべきである。この属は、野生種と、人間及び家畜の食糧源として数千年間栽培されてきた栽培種とに分けることができる。栽培種は、以下を含む。
Avena sativa-最も栽培されている種、一般に「オーツ麦」と呼ばれる。
Avena abyssinica-エチオピアエンバク、エチオピア、エリトリア、及びジブチ原産;イエメン及びサウジアラビアに固有
Avena byzantina、ギリシャ及び中東の副作物;スペイン、アルジェリア、インド、ニュージーランド、サウスアメリカなどで導入。
Avena nuda-エチオピアのエチオピアエンバクと同じように欧州で用いられるハダカエンバク又はハルレスオーツ。これは、A.sativaに含まれる場合もあり、後者によって置き換えられる前には欧州で広く栽培されていた。その栄養素含有量は、一般のオーツ麦のそれよりもいくらか良好であることから、A.nudaは、近年、特に有機農業において重要度が増している。
Avena strigosa-西ヨーロッパ及びブラジルの一部で飼料用に栽培されているセイヨウチャヒキ、ブリストルオーツ、又はブラックオーツ。
【0017】
好ましい実施形態では、オーツ麦は、本出願においては、Avena nuda、すなわちハダカエンバク又はハルレスオーツと理解されるべきである。
【0018】
好ましい実施形態では、オーツ麦タンパク質組成物は、タンパク質濃縮物、又はタンパク質単離物である。したがって、オーツ麦タンパク質組成物は、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で約40重量%以上のタンパク質を有し、例えば、約40~85%である。
【0019】
本出願において、「タンパク質濃縮物」とは、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で40重量%~70重量%、好ましくは50重量%~60重量%のタンパク質を含有するオーツ麦タンパク質組成物として理解されるべきである。
【0020】
本出願において、「タンパク質単離物」とは、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で70重量%超、好ましくは80重量%超のタンパク質を含有するオーツ麦タンパク質組成物として理解されるべきである。
【0021】
タンパク質含有量を定量するためには、従来技術の様々なプロトコルを使用することができる。本出願において、タンパク質含有量を定量する好ましい方法は、1)ケルダール法を使用して組成物中の窒素含有量を分析することと、2)窒素含有量に6,25の係数(これは、タンパク質中の窒素の平均量を表す)を乗じることと、からなる。
【0022】
本出願において、「タンパク質」とは、アミノ酸残基の1つ以上の長鎖からなる分子として理解されるべきである。本出願において、タンパク質は、天然タンパク質又は加水分解したタンパク質を含む変性タンパク質であってもよい。これらのタンパク質は、タンパク質単離物又はタンパク質濃縮物を含む様々な濃度で存在してもよい。オーツ麦は、主要な貯蔵タンパク質(80重量%)として、グロブリン又はマメ科植物様タンパク質としてのアベナリンを含有する唯一の穀物である。グロブリンは、プロラミンであるグルテンやゼインなどのより一般的な穀物タンパク質とは対照的に、それらが希釈生理食塩水中に溶解することを特徴とする。オーツ麦の副次的なタンパク質は、アベニンと呼ばれるプロラミンである。
【0023】
本出願において、「脂質」とは、非極性溶媒に可溶性である分子として理解されるべきである。脂質には、脂肪酸、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、及びKなど)、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びリン脂質が含まれる。オーツ麦は、全ての穀物の中でトウモロコシに次いで2番目に高い脂質含有量を有し、例えば、小麦及びほとんどの他の穀物の約2~3重量%と比較して、いくつかのオーツ麦では10重量%を超え、いくつかのトウモロコシ栽培種では17重量%にもなる。脂質画分の大部分が胚乳に含まれるため、オーツ麦の極性脂質含有量(約8~17重量%の糖脂質及び10~20重量%のリン脂質又は約33重量%の総極性脂質含有量)は、他の穀物のそれよりも大きい。
【0024】
残留脂質を定量するためには、当業者に公知の全ての方法を使用することができる。好ましくは、CEM法に基づく試験Aが使用される。CEM法はNMR分析に基づくものであり、抽出可能な脂質含有量を与える。CEM法に基づく試験Aでは、試料を単に装置に入れて、ユーザマニュアルに従って分析を始め、結果は非常に迅速に得られる。
【0025】
オーツ麦タンパク質組成物は、有利には20ミクロン超、好ましくは30ミクロン超、より好ましくは40ミクロン超の平均粒径を示す。オーツ麦タンパク質組成物は、有利には300ミクロン未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは150ミクロン未満の平均粒径を示す。
【0026】
オーツ麦タンパク質組成物は、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で0.1~10重量%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは1~4%のデンプンを含む。組成物のデンプン含有量は、AOAC公式方法996.11、Starch(Total)in Cereal Productsを使用して決定することができる。
【0027】
オーツ麦タンパク質組成物は、オーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で0.1~10重量%の繊維、好ましくは0.5~6%、より好ましくは1~4%の総食物繊維を含む。本出願において、繊維含有量は、AOAC公式方法2017.16、Total Dietary Fiber in Foods and Food Ingredientsを使用して決定することができる。組成物中に一般に存在する食物繊維の1つは、β-グルカンである。
【0028】
オーツ麦タンパク質組成物は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて、10kDa以下の分子量を有するタンパク質を、50%未満、有利には30%未満、好ましくは10%未満含む。1つの実施形態において、オーツ麦タンパク質組成物は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて、
300kDa以上の分子量を有するタンパク質を、0.5~30%、有利には5~15%、
50~300kDaの分子量を有するタンパク質を、30~75%、有利には45~65%、
10~50kDaの分子量を有するタンパク質を、10~50%、有利には25~45%、
10kDa以下の分子量を有するタンパク質を、0.5~20%、有利には1~10%含み、
ここで、合計は100%である。
【0029】
本発明のこの好ましい実施形態の利点は、オーツ麦タンパク質組成物の分子量が高く、それにより、例えば、Bruckner-Guhmannらの文書に記載されているような低分子量のオーツ麦タンパク質組成物と比較して、異なるタンパク質の機能を提供できることである。
【0030】
タンパク質の分子量(MW)分布は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して決定することができる。分析する試料の調製及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用した測定のプロトコルは、下の実施例のセクションに含まれている。
【0031】
本出願において、「粒径」とは、固体、液体、又はガス状粒子の寸法を比較するために導入された概念として理解されるべきである。粉末、又は粒状材料、又は流体中に分散された粒子の粒径分布(PSD)とは、大きさに従って存在する粒子の一般的には質量による相対量を定義する値のリスト若しくは数学的関数である。粒子の大きさ及び粒径分布を測定するためには、いくつかの方法を使用することができる。それらのいくつかは、光、又は超音波、又は電界、又は重力、又は遠心分離に基づいている。篩の使用が一般的な測定技術である。本出願では、レーザー回折法の使用が好ましい。レーザー回折によって決定される「平均粒径」(d50)については、この平均粒径は体積加重平均粒径である。当業者は、正確な平均粒径の測定を得ることができるレーザー回折法を選択することができる。そのような方法の例を実施例のセクションに示している。
【0032】
本出願において、「乾燥物質」とは、試料の総重量に基づいた固形分の相対的な重量パーセントとして理解されるべきである。全ての公知の方法を使用することができるが、既知の量の試料を加熱することによって水の量を推定することからなる乾燥法が好ましい。乾燥法において、
試料を調製して、その質量を秤量し:m(g)、
試料の質量が安定するまで試料をオーブンに入れて水を蒸発させる。好ましくは、この工程の間、通常の大気圧下で温度は105℃である。
最終の試料を秤量し:m(g)、
次の式、乾燥物質=(m/m)*100に従って乾燥物質を計算する。
【0033】
本発明の第2の実施形態は、上記で定義されたオーツ麦タンパク質組成物であるオーツ麦タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、乾燥物質で10重量%未満の残留脂質含有量を有するオーツ麦タンパク質組成物を製造するプロセスであり、このプロセスは、以下の工程、すなわち
1)オーツ麦種子を準備する又はタンパク質に富むオーツ麦粉を用意する工程、
2)工程1でオーツ麦種子を使用する場合、タンパク質に富む穀粉が得られるまで工程1のオーツ麦種子を粉砕する工程、
3)タンパク質に富む懸濁液が得られるまで、工程1又は2のタンパク質に富む穀粉を水と混合する工程、
4)工程3のタンパク質に富む懸濁液にアミラーゼ酵素を添加して、タンパク質に富む懸濁液を加水分解する工程、
5)任意で、繊維を含む重質層とタンパク質を含む軽質層が得られるまで、工程4の加水分解したタンパク質に富む懸濁液を遠心分離によって分離する工程、
6)工程4の加水分解したタンパク質に富む懸濁液、又は任意で工程5のタンパク質を含む軽質層にポリソルベートを添加する工程、
7)工程6のポリソルベートを含むタンパク質に富む懸濁液、又はタンパク質を含む軽質層を遠心分離して、タンパク質を含有する重質層と脂質を含む可溶性化合物を含有する軽質層とに分離する工程、及び
8)任意で、工程7のタンパク質を含有する重質層を乾燥させる工程を含むことを特徴とする。
【0034】
したがって、本発明のプロセスは有機溶媒を使用せず、痕跡量の有機溶媒も含有しない組成物を得ることができる。
【0035】
第1の工程は、更なる工程が可能な状態でオーツ麦種子を提供することを目的とする。オーツ麦種子は、栽培であってもよく、及び/又は市販であってもよい。次いで、篩い分け又は脱穀が可能な工程を含めてオーツ麦種子を準備する。
【0036】
オーツ麦種子は使用の前に乾式又は湿式加熱してもよい。乾式又は湿式加熱の目的は、β-グルカナーゼ、リパーゼ、及びリポキシゲナーゼを含む酵素を破壊することである。実際、リパーゼ及びリポキシゲナーゼの不活化は生成物の腐敗を防ぐことが示されている。本発明のプロセスにおいて、熱処理、特に蒸気処理は回避するか、又は少なくとも、オーツ麦タンパク質の変性を低くするように少なくとも可能な限り短い時間で、及び/又は可能な限り低い温度で行わなければならない。
【0037】
工程1のオーツ麦種子の準備のために本発明で使用される好ましい原料は、Avena nuda、ハダカエンバク又はハルレスオーツ、又は熱処理されていない、特に蒸気処理されていない乾式粉砕されたオーツ麦粉である。しかしながら、熱処理されていない湿式粉砕されたオーツ麦粉、又は任意のオーツ麦画分の乾式粉砕された穀粉もまた使用することができる。特に好ましい原材料は、乾式粉砕された熱処理されていないオーツ麦、熱処理されていないオーツ麦ブラン、又は蒸気処理されていないオーツ麦である。
【0038】
第2の工程は、オーツ麦種子を粉砕してタンパク質に富む穀粉を得ることを目的とする。オーツ麦種子を粉砕するために、ストーンミル、ローラーミル又はナイフミルを含む全ての公知の一般的な技術を使用することができる。この工程において、得られるタンパク質に富む穀粉の好ましい粒径分布は、D50(50パーセンタイル)が30ミクロン超、好ましくは40ミクロン超、更により好ましくは50ミクロン超である。本発明において、D50は、当業者に公知の任意の技術を用いて測定される。好ましい方法では、レーザーによる粒度分析が好ましい。
【0039】
タンパク質に富む穀粉は、タンパク質穀粉の乾燥固形分含有量に基づいて、14%超、例えば16%超のタンパク質含有量を含む。
【0040】
好ましくは、タンパク質に富む穀粉中の不溶性繊維の含有量は、タンパク質穀粉の乾燥固形分含有量に基づいて、4%未満、好ましくは2%未満である。これらの好ましい範囲では、プロセス中における粘度が低く、それによりプロセスの誘導がより容易になる。
【0041】
工程1と2の代わりに、直接市販のオーツ麦粉を使用することが可能である。この代替の実施形態によって、請求項1に記載の工程1と2を合わせることができ、それらは第三者によって行われ、工程3で迅速に開始することができる。
【0042】
第3の工程は、オーツ麦粉懸濁液であるタンパク質に富む懸濁液を得ることを目的とする。水として、全ての食品適合性の水を使用することができるが、水道水及び脱炭酸水が好ましい。この第3の工程の目的は、懸濁液の総重量に対して、5重量%~20重量%、好ましくは10重量%~15重量%、最も好ましくは10重量%~13重量%の乾燥物質が含まれるようにすることである。好ましくは、工程3では、水を有し、撹拌、pH、及び加熱装置を備えたタンクに、穀粉を秤量して入れる。好ましくは、工程3の間、温度を60℃~80℃、好ましくは65℃~75℃に調節する。好ましくは、工程3の間、pHを5~6、好ましくは5,5に調整する。本出願では、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、水酸化カルシウム、及び水酸化カリウムなどの公知の酸又は塩基性化合物を添加することによって、pHを調整することができる。泡立つことなく、均質な懸濁液を得るように、撹拌を設定する。
【0043】
第4の工程は、タンパク質に富む懸濁液に含有されるデンプンをアミラーゼで加水分解することを目的とする。アミラーゼは、デンプン分子の加水分解を触媒してより小さい糖分子にする種類の酵素である。本出願の工程4において、β-アミラーゼ又はアミログルコシダーゼのような全ての種類のアミラーゼを使用することができるが、α-アミラーゼが好ましい。好ましい実施形態では、耐熱性α-アミラーゼが好ましい。
【0044】
工程4の目的は、加水分解によってタンパク質に富む懸濁液に含有されるデンプンの大きさを効率的に減少させ、それによってデンプンの代わりに可溶性のデキストリン又はグルコースシロップを得ることである。このデンプンを可溶性に変換することによって、以降の工程における不溶性化合物をより簡単に分離することができる。しかし、下に例示するように、先行技術から知られているそのような分離は、タンパク質組成物の総乾燥重量に基づいて、10重量%未満の脂質を有するタンパク質組成物を得るためには効果的ではない。
【0045】
好ましい実施形態では、α-アミラーゼ酵素が好ましい。α-アミラーゼの活性は、KNU単位で表される。実際には、α-アミラーゼ活性は、基質としてエチリデン-G7-PNP(4,6-エチリデン(G7)-p-ニトロフェニル(G1)-α,D-マルトヘプタオシド)を使用して測定される。その化合物は、LE399α-アミラーゼによってG2-PNP及びG3-PNPに加水分解され、ここで、Gはグルコースを意味し、PNPはp-ニトロフェノールを意味する。続いて、G2-PNP及びG3-PNPは反応混合物に添加されたα-グルコシダーゼによってグルコースとp-フェノールに加水分解される。吸光度は、標準的な反応条件下、409nmの分光光度法で測定される。1KNU(T)は、標準条件下(pH7.1、37℃)で、1分あたり672マイクロモルのエチリデン-G7PNPを加水分解するα-アミラーゼの量に対応する。方法の定量限界は、約0.3KNU(T)/gである。工程4において、工程4で添加されるアミラーゼは、100~170KNU/穀粉100g、好ましくは110~160KNU/穀粉100g、更により好ましくは120~150KNU/穀粉100gの範囲の活性レベルを有する。言い換えれば、デンプンを加水分解するために導入するα-アミラーゼの単位量は、100~170KNU/穀粉100g、好ましくは110~160KNU/穀粉100g、更により好ましくは120~150KNU/穀粉100gの範囲である。1キロノボα-アミラーゼ単位(KNU)は、当業者によって既知の値であり、それはノボザイムの標準法で1時間あたりで決められた量のデンプンを分解する酵素の量である。この試験は、既知の活性を有するα-アミラーゼの標準(Termamyl)と比較してα-アミラーゼ活性を決定することからなり、キロノボα-アミラーゼ単位(KNU)で表される。1KNUは、標準条件下(pH7.1、37℃)で、1時間あたり5.26gのデンプン乾燥物質をデキストリン化するα-アミラーゼの量である。
【0046】
第5の工程は、繊維を含む重質層とタンパク質を含む軽質層とを分離する任意の遠心分離からなる。実際、繊維とデンプンは不溶性であり、タンパク質、糖及び塩よりも重いため、それらは、好ましくは3000G~4000Gで作動する遠心分離機によって分離される。
【0047】
下に例示するように、工程5の後に得られる乾燥物質の70%超、好ましくは乾燥物質の80%超がタンパク質からなる。
【0048】
第6の工程は、ポリソルベートを添加することからなる。
【0049】
ポリソルベートは、化粧品、医薬品及び食品の調製に使用される乳化剤の部類である。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)に由来する油性液体である。ポリソルベートの一般的なブランド名としては、Scattics、Alkest、Canarcel、及びTweenが挙げられる。一般的に使用されるポリソルベートは、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)及びポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)である(「ポリオキシエチレン」の後の数は、分子中に見られるオキシエチレン-(CH2CH2O)-基の総数を指し、及び「ポリソルベート」の後の数は、分子のポリオキシエチレンソルビタン部分に結合する脂肪酸の種類に関連する)。好ましくは、ポリソルベートは、Tween80としても知られるポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)である。
【0050】
工程4の加水分解及び任意の工程5の内部繊維の除去の後、工程6でポリソルベートを添加する前に、pHを5.5~7.5、好ましくは6.5に調整し得る。工程6では、ポリソルベートを、50℃~80℃、好ましくは55℃~75℃の範囲、更により好ましくは65℃の温度で添加し得る。
【0051】
ポリソルベートは、オーツ麦粉であるタンパク質に富む穀粉の総重量に対して、0.5重量%~5重量%、好ましくは2重量%~4重量%の範囲、より好ましくは3重量%の割合で添加し得る。
【0052】
ポリソルベート80が好ましく、市販のポリソルベート80の例はクローダ製のTween80である。
【0053】
次いで、媒体を撹拌下で、好ましくは通常1時間かき混ぜ得る。
【0054】
第7の工程は、タンパク質に富む懸濁液を主にタンパク質を含有する重質層と脂質を含む他の化合物を含有する軽質層とに分離することができる遠心分離からなる。
【0055】
好ましい実施形態では、工程7の間、pHを最初に4~6、好ましくは6に調整する。この範囲にpHを調整することにより、タンパク質は凝固する。好ましい実施形態では、凝固を助けるように熱を加えてもよい。この場合、温度は40℃~70℃、好ましくは50℃~60℃に設定する。全ての実施形態において、工程7の継続時間は、十分な凝固が得られるように選択される。好ましくは、工程7の継続時間は、30分~2時間、好ましくは45分~1時間に設定する。次いで、3000G~4000Gで作動する遠心分離機に媒体を供給する。タンパク質を含有するペレット、下部又は重質層を収集する。加水分解されたデンプンと脂質を含有する上澄み、上層又は軽質層は廃棄する。
【0056】
好ましい実施形態では、ペレット、下部又は重質層を水と混合し、撹拌して、次いで3000G~4000Gで動作する第2の遠心分離機に供給する。再び、タンパク質を含有するペレット、下部又は重質層を収集する。加水分解されたデンプンと脂質を含有する上澄み、上層又は軽質層は廃棄する。
【0057】
最後の第8の任意の工程で、ペレット、下部又は重質層中に濃縮されたオーツ麦タンパク質を乾燥させてもよい。そうするために、当業者は、好ましくは噴霧乾燥機、好ましくは多段式噴霧乾燥機を使用することができる。これにより、上記で定義された平均粒径を有するオーツ麦タンパク質組成物を得ることができる。噴霧乾燥の前に、均質化及びUHT処理工程を行ってもよい。
【0058】
本発明の第3の最後の実施形態は、好ましくは食品、飼料、医薬品、及び化粧品分野における本発明の、又は本発明のプロセスによって得られるタンパク質組成物の使用である。
【0059】
そのようなオーツ麦タンパク質組成物は、缶入り飲料、飲料、焼成品に特に好適である。その低い脂質含有量によって、配合された場合に、脂質含有量が低く、酸素の存在下で望ましくない化合物がその官能的な品質を変化させることがないため、味覚経験を改善することができる。
【0060】
本発明は、以下の例示的な実施例によってよりよく理解される。
【実施例
【0061】
MW分布の決定方法:
【0062】
試料を、pH=7.6の200mMリン酸緩衝液に溶解し、最初に、また10分後に1分間ボルテックスして、4℃で一晩保存した。翌日に溶液を7000gで10分間遠心分離して、可溶性タンパク質含有量について上澄みを測定し、試料はリン酸緩衝液で10mg/mLに希釈した。
【0063】
試料を、pH=7.6のリン酸緩衝液を移動相として用い、0.5mL/分で、2つのSECカラム(400及び300のAgilent Advanced Bio SECカラム、5000~1,250,000のMW範囲)を使用してクロマトグラフした。UV=280nmで検出した。
【0064】
14300~669000Daの範囲のいくつかのタンパク質の分子量標準(リゾチーム、カルボニックアンヒドラーゼ、BSA、HSA、B-アミラーゼ、アポフェリチン、チログロブリン)を分析して、保持時間を特定して、クロマトグラフィー装置を較正した。
【0065】
試料の分析では、クロマトグラムのピーク又はピーク頂点(群)をピークの範囲(開始及び終了)とともに測定して、分子量を範囲及びピーク頂点について決定した。分子量のパーセントは、>300kDa、300kDa~50kDa、50kDa~10kDa、及び<10kDaで決定した。
【0066】
実施例1:デンプンの加水分解を含む先行技術のプロセス
【0067】
Grien MIller製、ロット番号1802150の2.5kgのN°70のオーツ麦粉を秤量する。40~50℃の25Lの水で供給タンクを満たす。穀粉を水に混合する。10分間撹拌しながら1NのHClを用いてpHを5.4~5.5に調整する。25gのLiquozyme supra(Novozyme製)を添加する。300rpmで、70℃のホットプレート上で2時間加熱する。1NのHClでpHを5.0に下げて30分間撹拌する。500mL/分で、580G、10rpmの差速でLemitec遠心分離機に供給する。50℃の12.5Lの水を凝固物に加える。1NのHClでpH5.0に調整する。500mL/分で、3600rpm、10rpmの差速でLemitecに供給する。洗浄した凝固物を噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0068】
試料を、「S1:ポリソルベートを含まない先行技術」と呼ぶ。
【0069】
実施例2:デンプンの加水分解及びポリソルベートの使用を含む本発明のプロセス
【0070】
Grien MIller製、ロット番号1802150の2.5kgのN°70のオーツ麦粉を秤量する。40~50℃の25Lの水で供給タンクを満たす。穀粉を水に混合する。10分間撹拌しながら1NのHClを用いてpHを5.4~5.5に調整する。25gのLiquozyme supra(Novozyme製)を添加する。300rpmで、70℃のホットプレート上で2時間加熱する。75gのTween80を添加する。pHを6.5に調整して65℃に冷却し、60分保持する。1NのHClでpHを5.0に下げて、30分間撹拌する。500mL/分で、580G、10rpmの差速でLemitec遠心分離機に供給する。50℃の12.5Lの水を凝固物に加える。1NのHClでpH5.0に調整する。500mL/分で、3600rpm、10rpmの差速でLemitecに供給する。洗浄した凝固物を噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0071】
試料を、「S2:ポリソルベートを用いた本発明」と呼ぶ。
【0072】
実施例3:界面活性剤としてのポリソルベートの選択の重要性
【0073】
ポリソルベートを別の公知の食品用界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムと比較する。
【0074】
Grien MIller製、ロット番号1802150の2.5kgのN°70のオーツ麦粉を秤量する。40~50℃の25Lの水で供給タンクを満たす。穀粉を水に混合する。10分間撹拌しながら1NのHClを用いてpHを5.4~5.5に調整する。25gのLiquozyme supra(Novozyme製)を添加する。300rpmで、70℃のホットプレート上で2時間加熱する。75gのSDSを添加する。SDS試料のpHを6に調整して65℃に冷却し、60分保持する。1NのHClでpHを5.0に下げて、30分間撹拌する。500mL/分で、580G、10rpmの差速でLemitec遠心分離機に供給する。50℃の12.5Lの水を凝固物に加える。1NのHClでpH5.0に調整する。500mL/分で、3600rpm、10rpmの差速でLemitecに供給する。洗浄した凝固物を噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0075】
試料を、「S3:SDSを用いた比較例」と呼ぶ。
【0076】
実施例4:ポリソルベートとの反応のパラメータの重要性
【0077】
Grien MIller製、ロット番号1802150の2.5kgのN°70のオーツ麦粉を秤量する。40~50℃の25Lの水で供給タンクを満たす。穀粉を水に混合する。10分間撹拌しながら1NのHClを用いてpHを5.4~5.5に調整する。25gのLiquozyme supra(ノボザイム製)を添加する。300rpmで、70℃のホットプレート上で2時間加熱する。75gのTween80を添加する。pHを6.5に調整して35℃に冷却し、60分保持する。1NのHClでpHを5.0に下げて、30分間撹拌する。500mL/分で、580G、10rpmの差速でLemitec遠心分離機に供給する。50℃の12.5Lの水を凝固物に加える。1NのHClでpH5.0に調整する。500mL/分で、3600rpm、10rpmの差速でLemitecに供給する。洗浄した凝固物を噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0078】
試料を、「S4:最適ではない条件でのポリソルベート処理」と呼ぶ。
【0079】
実施例5:ポリソルベートの使用の前に繊維の遠心分離を使用した好ましい実施形態
【0080】
Grien MIller製、ロット番号1802150の2.5kgのN°70のオーツ麦粉を秤量する。40~50℃の25Lの水で供給タンクを満たす。穀粉を水に混合する。10分間撹拌しながら1NのHClを用いてpHを5.4~5.5に調整する。25gのLiquozyme supra(Novozyme製)を添加する。300rpmで、70℃のホットプレート上で2時間加熱する。1NのNaOHでpHを7.0に調整する。500ml/分で、580G、10rpmの差速で60/10のウィアを備えたLemitec遠心分離機で遠心分離する。75gのTween80をオーバーフローに添加する。pHを6に調整して65℃に冷却し、60分保持する。1NのHClでpHを5.0に下げる。580G、3600rpm、10rpmの差速でLemitec遠心分離機に供給する。50℃の12.5Lの水を凝固物に加える。1NのHClでpH5.0に調整する。500mL/分で、3600rpm、10rpmの差速でLemitecに供給する。洗浄した凝固物を噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0081】
試料を、「S5:ポリソルベートの使用の前に繊維の遠心分離を使用」と呼ぶ。
【0082】
実施例6:先の実施例の比較
【0083】
結果を、下の表1に示す。表1において、パーセンテージは、上記の方法を使用した重量パーセントとして表されている。
D50は、レーザー式粒度測定装置(MalvernのMastersizer3000)によって測定し、ここでは、前方散乱測定法を使用して、分散緩衝液を含まない乾燥粉末で一定の散乱角度の範囲にわたる散乱光の強度を測定し、ミー散乱モデルを測定された散乱パターンに分布をフィッティングさせる装置のソフトウェアを使用した。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例7:パイロットスケールでのオーツ麦タンパク質組成物の製造
【0086】
タンパク質組成物を、以下のプロトコルを使用して製造した。
【0087】
12.5kgのオーツ麦粉(70番のGrain miller)を秤量し、約88Lの50℃の水で50ガロンのジャケット付きタンクを満たし、穀粉を水に混合して、12%固形分になるように調整する。10分間撹拌しながらHClを用いてpHを5.4~5.5に調整し、125gのLiquozyme supra(Novozyme製)を添加する。再循環ポンプを使用して、熱交換器で70℃に2時間加熱する。次いで、NaOHでpHを7.0に調整し、2000ml/分で、5000rpm、10rpmの差速で60/10のウィアを備えたLemitecのデカンタ型遠心分離機に供給して、オーバーフローを50ガロンのタンクに収集する。210gのTween80の30%溶液(62.5gの純粋なT80)をタンクに添加して65℃に加熱し、60分保持する。タンクを水で一杯に満たして60℃に加熱し、HClでpHを5.0に下げる。0.45m/hで、9,000rpmのClara20ディスク型遠心分離機で遠心分離する。50ガロンのジャケット付きタンク中でアンダーフロー画分を再懸濁し、水で一杯に満たして60℃に加熱し、遠心分離工程を繰り返し、5ガロンのバケツ中でアンダーフロー画分を冷蔵庫内で一晩保存する。40℃に加熱し、pH7.0に調整して、超高温装置に通す(154℃の保持温度、71℃のフラッシュ温度、15秒の保持時間(380ml/分、pp速度200、長いループ))。噴霧乾燥機で乾燥させる。
【0088】
オーツ麦タンパク質組成物は、82.8%のタンパク質、6.1%の脂質、1.5%の不溶性繊維、1.6%の可溶性繊維、1.7%のβ-グルカン、及び3.3%の水分を含む。デンプン含有量は、約2~3%と決定される。MWの分布を下の表2に示す。
【0089】
【表2】
【国際調査報告】