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特表2022-539172超閾値低周波数電気刺激による神経系ブロック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】超閾値低周波数電気刺激による神経系ブロック
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220831BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577539
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020040288
(87)【国際公開番号】W WO2021003151
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/870,230
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン、タイ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ01
4C053JJ05
4C053JJ21
4C053JJ25
(57)【要約】
本明細書では、神経またはニューロンをブロックする方法であって、神経またはニューロンに電気刺激を手寄与することを含み、その電気刺激は神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度である方法が提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経またはニューロンをブロックする方法であって、前記神経またはニューロンに電気刺激を適用することを含み、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値以上の強度である、方法。
【請求項2】
前記電気刺激が神経またはニューロンの興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、その強度は0.01mA~100mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.5kHz、または1Hz~1.3kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気刺激が5秒~14日、1分~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止し、前記神経伝導またはニューロン興奮のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コントローラと;
前記コントローラと通信するパルス発生器と;
神経またはニューロンに隣接または接触して配置されるように構成され、前記パルス発生器と電気的に通信する電極リード/カフと
を含むデバイスであって、
前記デバイスは前記神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値以上の強度である、デバイス。
【請求項14】
前記パルス発生器が前記電極リード/カフを介して神経またはニューロンの興奮閾値の少なくとも5倍の強度で電気刺激を送達するように構成され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記パルス発生器が前記電極リード/カフによって1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3kHz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で、5秒~14日、または1分~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、電気刺激を送達するように構成され、前記電気刺激は二相性で電荷平衡にある電気パルスを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成され、神経伝導またはニューロン興奮のブロックは、この間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって変更するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
コントローラと;
前記コントローラと通信するパルス発生器と;
前記パルス発生器と電気的に通信する1以上の皮膚表面電極または電磁コイルと
を含むデバイスであって、
前記パルス発生器および1以上の皮膚表面電極または電磁コイルは、神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値以上の強度である、デバイス。
【請求項19】
前記パルス発生器が前記電極または電磁コイルを介して神経またはニューロンの興奮閾値の少なくとも5倍の強度で電気刺激を送達するように構成され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記パルス発生器が前記電極または電磁コイルを介して、1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3kHz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で、5秒~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、電気刺激を送達するように構成され、前記電気刺激は二相性で電荷平衡にある電気パルスを含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成され、神経伝導またはニューロン興奮のブロックは、この間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって変更するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成されている、請求項18に記載のデバイス。
【請求項23】
患者において排尿または排便を制御する方法であって、
第1の電気刺激を患者の左陰部神経またはその分岐へ、第2の電気刺激を右陰部神経またはその分岐へ適用し、前記第1および第2の電気刺激は、第1および/または第2の電気刺激中またはその終了後に、両陰部神経の伝導ブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制すること、
ならびに第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を左または右陰部神経のブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を骨盤神経に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後のEUS/EAS弛緩中に、手で腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧を誘発すること
を含む、方法。
【請求項24】
陰部神経ブロックのための第1および第2の電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
陰部神経ブロックのための前記第1および第2の電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
陰部神経ブロックのための前記第1および第2の電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~3分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および第2の電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第1および第2の電気刺激が二相性電気パルスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1、第2、および第3の電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、第1および/または第2の電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記陰部神経またはその分岐の第1および/または第2の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
一旦、陰部神経伝導または興奮のブロックが達成されると、第1および/または第2の電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記第1および第2の刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための前記第3の電気刺激が1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の電気刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記刺激強度が0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記第3の刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間よりも長い期間、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、または30分間、前記第3の電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で第3の刺激を再開して、膀胱または結腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
患者において排尿または排便を制御する方法であって、
対象の左または右いずれかの陰部神経またはその分岐に第1の電気刺激を適用し、前記電気刺激は、前記電気刺激中またはその終了後に、陰部神経伝導ブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制すること、
および第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、ブロックされた陰部神経の同じ側の、ブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を骨盤神経に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、
あるいは前記電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、手で腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧を誘発すること
を含む、方法。
【請求項40】
陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~3分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の電気刺激が二相性電気パルスを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記第1および第2の電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、第1の電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の第1の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
一旦、陰部神経伝導または興奮のブロックが達成されると、前記第1の電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための第2の電気刺激が1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の電気刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記刺激強度が0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間より長い期間にわたって、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、または30分間、前記第2の電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で第2の刺激を再開して、膀胱または結腸/直腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
患者において排尿または排便を制御するデバイスであって、
コントローラと;
前記コントローラと通信する1つまたは2つのパルス発生器と;
左および/または右陰部神経に隣接または接触して配置されるように構成され、前記第1のパルス発生器と電気的に通信する1以上のリードおよび/またはカフ電極、場合により、2つの電極と、
前記デバイスは、電気刺激中またはその終了後に、前記陰部神経に電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、陰部神経伝導のブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制し;および
ブロックされる陰部神経の、ブロックされる部位の中央部に隣接もしくは接触して配置されるか、または仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、もしくは骨盤神経に隣接もしくは接触して配置されるように構成された別の電極であって、前記第1のパルス発生器と電気的に通信する電極と、
前記デバイスは、陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経の興奮閾値を超える強度での陰部神経ブロック刺激中またはその終了直後に前記電極を用いて電気刺激を適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するように構成され;または
患者の脊椎に沿って皮膚表面に配置され、前記第2のパルス発生器と電気的に通信するように構成された皮膚表面電極または電磁コイルと;
を含んでなり、
前記デバイスは、脊髄の興奮閾値を超える強度での陰部神経ブロック刺激中、またはその終了直後に皮膚表面電極または電磁コイルを用いて電気刺激を適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するように構成される、デバイス。
【請求項56】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項55に記載のデバイス。
【請求項57】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、請求項55に記載のデバイス。
【請求項58】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~5分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、請求項55に記載のデバイス。
【請求項59】
前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、請求項55に記載のデバイス。
【請求項60】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、請求項55に記載のデバイス。
【請求項61】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、請求項60に記載のデバイス。
【請求項62】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、請求項60に記載のデバイス。
【請求項63】
前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、請求項55に記載のデバイス。
【請求項64】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、陰部神経ブロック電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、請求項55に記載のデバイス。
【請求項65】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、陰部神経ブロック電気刺激の強度および/または周波数を変更すること、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、請求項55に記載のデバイス。
【請求項66】
陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための電気刺激が、1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、請求項55に記載のデバイス。
【請求項67】
前記刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、請求項66に記載のデバイス。
【請求項68】
前記刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間より長い期間、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、請求項66に記載のデバイス。
【請求項69】
一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、前記電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記刺激を再開して、膀胱または結腸/直腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、請求項66に記載のデバイス。
【請求項70】
患者において排尿または排便を制御するデバイスであって、
コントローラと;
前記コントローラと通信するパルス発生器と;
左および/または右陰部神経に隣接または接触して配置されるように構成され、前記パルス発生器と電気的に通信する1以上のリードおよび/またはカフ電極、場合により、2つの電極と;
を含んでなり、
前記デバイスは、前記陰部神経に電気刺激を適用するように構成され、
前記電気刺激は、前記電気刺激中または終了後に陰部神経伝導のブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制する、デバイス。
【請求項71】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、請求項70に記載のデバイス。
【請求項72】
陰部神経ブロックのための前記電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、請求項70に記載のデバイス。
【請求項73】
陰部神経ブロックの前記電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~5分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、請求項70に記載のデバイス。
【請求項74】
前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、請求項70に記載のデバイス。
【請求項75】
前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、請求項70に記載のデバイス。
【請求項76】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、請求項70に記載のデバイス。
【請求項80】
一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を変更すること、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、請求項70に記載のデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/870,230号の優先件を主張するものであり、その内容はその全体が引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所が授与したDK102427の下で政府支援を受けてなされたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、神経ブロックの方法および関連のデバイス、より具体的には、閾値を超える電気パルスを神経またはニューロンに適用することによって神経伝導またはニューロン興奮をブロックする方法、およびそのような方法を行うためのデバイスが提供される。
【0004】
本明細書ではまた、泌尿器または消化管障害を治療する方法および関連のデバイス、より具体的には、超閾値電気パルスを陰部神経またはその分岐に適用することによって排尿または排便を制御する方法、およびそのような方法を行うためのデバイスも提供される。
【0005】
関連技術の記載
神経伝導またはニューロン興奮をブロックすることは、慢性疼痛、肥満、心不全、膀胱機能障害または脊髄損傷後の痙攣などを含む多くの障害を治療するために幅広く臨床適用されている。しかしながら、現在、電気的神経ブロックは臨床適用では高キロヘルツ(例えば、4kHz以上)の電気パルスを使用し、これはカフ電極の使用を要する。このような電極の使用は、神経またはニューロンをカフで包む侵襲的手術を要し、このような方法の臨床適用を限定している。
【0006】
よって、当技術分野では、病態を緩和またはそうでなければ治療するために神経伝導をブロックする、またはニューロン興奮を妨げる方法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、患者において神経またはニューロンをブロックする方法であって、神経またはニューロンに電気刺激を適用することを含む方法が提供され、この電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度である。
【0008】
本明細書ではまた、コントローラ;前記コントローラと通信するパルス発生器と;電極、場合により、神経またはニューロンに隣接または接触して配置されるように構成され、パルス発生器と電気的に通信する1以上の電極リードとを含むデバイスも提供され、このデバイスは、患者の神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、この電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度である。
【0009】
本明細書ではまた、コントローラと;前記コントローラと通信するパルス発生器と;パルス発生器と電気的に通信する1以上の皮膚表面電極または電磁コイルとを含むデバイスが提供され、このパルス発生器および1以上の皮膚表面電極または電磁コイルは、患者の神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、この電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度である。
【0010】
さらなる実施形態または態様は、以下の符番された項目に示される。
【0011】
第1項:神経またはニューロンをブロックする方法であって、前記神経またはニューロンに電気刺激を適用することを含み、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値以上の強度である、方法。
【0012】
第2項:前記電気刺激が神経またはニューロンの興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、その強度は0.01mA~100mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第1項に記載の方法。
【0013】
第3項:前記電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.5kHz、または1Hz~1.3kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、第1項または第2項に記載の方法。
【0014】
第4項:前記電気刺激が5秒~14日、1分~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、送達される、第1項~第3項のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
第5項:前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じる、第1項~第4項のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
第6項:前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、第1項~5項のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
第7項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、第6項に記載の方法。
【0018】
第8項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、第6項に記載の方法。
【0019】
第9項:前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
第10項:一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止し、前記神経伝導またはニューロン興奮のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長することをさらに含む、第1項~第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
第11項:一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、第1項~第10項のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
第12項:前記刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、第1項~第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
第13項:コントローラと;前記コントローラと通信するパルス発生器と;神経またはニューロンに隣接または接触して配置されるように構成され、前記パルス発生器と電気的に通信する電極および/またはカフ、場合により、1以上の電極リードとを含むデバイスであって、前記デバイスは前記神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度である、デバイス。
【0024】
第14項:少なくとも5倍の強度で電気刺激を送達するように構成され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第13項に記載のデバイス。
【0025】
第15項:前記パルス発生器が前記電極によって1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3kHz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で、5秒~14日、または1分~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、電気刺激を送達するように構成され、前記電気刺激は二相性で電荷平衡にある電気パルスを含む、第13項または第14項に記載のデバイス。
【0026】
第16項:前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成され、神経伝導またはニューロン興奮のブロックは、この間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長する、第13項~第15項のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
第17項:前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって変更するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成されている、第13項~第16項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0028】
第18項:コントローラ;前記コントローラと通信するパルス発生器;および前記パルス発生器と電気的に通信する1以上の皮膚表面電極または電磁コイルを含むデバイスであって、前記パルス発生器および1以上の皮膚表面電極または電磁コイルは、神経またはニューロンに電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な時間、神経またはニューロンの興奮閾値以上の強度である、デバイス。
【0029】
第19項:前記パルス発生器が前記電極または電磁コイルを介して神経またはニューロンの興奮閾値の少なくとも5倍の強度で電気刺激を送達するように構成され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第18項に記載のデバイス。
【0030】
第20項:前記パルス発生器が前記電極または電磁コイルを介して、1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3kHz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で、5秒~14日、場合により、2分~2時間、場合により、1分~7日、場合により、1分~5日、場合により、2分~5分、場合により、5秒~90秒間、電気刺激を送達するように構成され、前記電気刺激は二相性で電荷平衡にある電気パルスを含む、第18項または第19項に記載のデバイス。
【0031】
第21項:前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成され、神経伝導またはニューロン興奮のブロックは、この間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記神経またはニューロンの電気刺激を再開して、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを継続または延長する、第18項~第20項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0032】
第22項:前記コントローラが、一旦、神経伝導またはニューロン興奮のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって変更するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成されている、第18項~第21項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0033】
第23項:患者において排尿または排便を制御する方法であって、
第1の電気刺激を患者の左陰部神経またはその分岐へ、第2の電気刺激を右陰部神経またはその分岐へ適用し、前記第1および第2の電気刺激は、第1および/または第2の電気刺激中またはその終了後に、両陰部神経の伝導ブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制すること、ならびに第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を左または右陰部神経のブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第3の電気刺激を骨盤神経に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1および/または第2の電気刺激中またはその終了直後のEUS/EAS弛緩中に、手で腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧を誘発することを含む、方法。
【0034】
第24項:陰部神経ブロックのための第1および第2の電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第23に項記載の方法。
【0035】
第25項:陰部神経ブロックのための前記第1および第2の電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、第23項または第24項に記載の方法。
【0036】
第26項:陰部神経ブロックのための前記第1および第2の電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~3分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、第23項~第25項のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
第27項:前記第1および第2の電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、第23項~第26項に記載の方法。
【0038】
第28項:前記第1および第2の電気刺激が二相性電気パルスを含む、第23項~第27項のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
第29項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、第28項に記載の方法。
【0040】
第30項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、第28項に記載の方法。
【0041】
第31項:前記第1、第2、および第3の電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、第23項~第30項のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
第32項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、第1および/または第2の電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記陰部神経またはその分岐の第1および/または第2の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、第23項~第31項のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
第33項:一旦、陰部神経伝導または興奮のブロックが達成されると、第1および/または第2の電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、第23項~第32項のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
第項34:前記第1および第2の刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、第23項~第33項のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
第35項:陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための前記第3の電気刺激が1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、第23項~第34項のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
第36項:前記第3の電気刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記刺激強度が0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、第23項~第35項のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
第37項:前記第3の刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間よりも長い期間、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、第35項または第36項に記載の方法。
【0048】
第38項:一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、または30分間、前記第3の電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で第3の刺激を再開して、膀胱または結腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、第35項~第37項のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
第39項:患者において排尿または排便を制御する方法であって、対象の左または右いずれかの陰部神経またはその分岐に第1の電気刺激を適用し、前記電気刺激は、前記電気刺激中またはその終了後に、陰部神経伝導ブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制すること、および第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、ブロックされた陰部神経の同じ側の、ブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは第1の電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を骨盤神経に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発すること、あるいは前記電気刺激中またはその終了直後、EUS/EASが弛緩した際に、手で腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧を誘発することを含む、方法。
【0050】
第40項:陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第39項に記載の方法。
【0051】
第41項:陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、第39項または第40項に記載の方法。
【0052】
第42項:陰部神経ブロックのための前記第1の電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~3分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、第39項~第41項のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
第43項:前記第1の電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、第39項~第42項のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
第44項:前記第1の電気刺激が二相性電気パルスを含む、第39項~第43項のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
第45項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、第44項に記載の方法。
【0056】
第46項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、第44項に記載の方法。
【0057】
第47項:前記第1および第2の電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、第39項~第46項のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
第48項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、第1の電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の第1の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、第39項~第47項のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
第49項:一旦、陰部神経伝導または興奮のブロックが達成されると、前記第1の電気刺激の強度および/または周波数を変更することによって、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、第39項~第48項のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
第50項:前記第1の刺激が、10~60秒間、適用される6~9mAの強度および100Hz~1kHzの周波数の二相性パルスを含む、第39項~第49項のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
第51項:陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための第2の電気刺激が1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、第39項~第50項のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
第52項:前記第2の電気刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記刺激強度が0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、第51項に記載の方法。
【0063】
第53項:前記第2の刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間より長い期間にわたって、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、第51項または第52項に記載の方法。
【0064】
第54項:一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、または30分間、前記第2の電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で第2の刺激を再開して、膀胱または結腸/直腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、第51項~第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
第55項:患者において排尿または排便を制御するデバイスであって、コントローラと;前記コントローラと通信する1つまたは2つのパルス発生器と;左および/または右陰部神経に隣接または接触して配置されるように構成され、前記第1のパルス発生器と電気的に通信する1以上のリードまたはカフ電極と、2つの電極と、前記デバイスは、電気刺激中またはその終了後に、前記陰部神経に電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、陰部神経伝導のブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制し;ブロックされる陰部神経の、ブロックされる部位の中央部に隣接もしくは接触して配置されるか、または仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、もしくは骨盤神経に隣接もしくは接触して配置されるように構成された別の電極と、この電極は前記第1のパルス発生器と電気的に通信し、前記デバイスは、陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経の興奮閾値を超える強度での陰部神経ブロック刺激中またはその終了直後に前記電極を用いて電気刺激を適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するように構成され、または患者の脊椎に沿って皮膚表面に配置され、前記第2のパルス発生器と電気的に通信するように構成された皮膚表面電極または電磁コイルとを含んでなり、前記デバイスは、脊髄の興奮閾値を超える強度での陰部神経ブロック刺激中、またはその終了直後に皮膚表面電極または電磁コイルを用いて電気刺激を適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するように構成される、デバイス。
【0066】
第56項:陰部神経ブロックのための前記電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第55項に記載デバイス。
【0067】
第57項:3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、第55項または第56項に記載のデバイス。
【0068】
第58項:陰部神経ブロックのための前記電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~5分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、第55項~第57項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0069】
第59項:前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、第55項~第58項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0070】
第60項:陰部神経ブロックのための前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、第55項~第59項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0071】
第61項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、第60項に記載のデバイス。
【0072】
第62項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、第60項に記載のデバイス。
【0073】
第63項:前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、第55項~第62項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0074】
第64項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、陰部神経ブロック電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、第55項~第63項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0075】
第65項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、陰部神経ブロック電気刺激の強度および/または周波数を変更すること、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、第55項~第63項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0076】
第66項:陰部神経、仙髄(S1、S2、S3、またはS4)神経根、脊髄、または骨盤神経に適用される、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するための電気刺激が、1Hz~100Hz、場合により、15Hz~50Hz、または場合により、1Hz~3Hzの周波数を有する、第55項~第65項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0077】
第67項:前記刺激が、刺激される神経の興奮閾値を超え、かつ、膀胱または結腸/直腸圧を、20cmHOを超えて増大させる膀胱収縮を誘発するのに十分強い強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~20mAおよび/または1mV~20V、場合により、0.1mA~10mAである、第66項に記載のデバイス。
【0078】
第68項:前記刺激が、膀胱または結腸/直腸収縮の期間より長い期間、場合により、10秒~60分、場合により、30秒~60秒、または30秒~2分、または30秒~3分、または30分~60分間、送達される、第66項または第67項に記載のデバイス。
【0079】
第69項:一旦、膀胱または結腸/直腸収縮が終了すると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、前記電気刺激の適用を停止し、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で前記刺激を再開して、膀胱または結腸/直腸収縮を再び誘発することをさらに含み、それとともに陰部神経がブロックされ、EUS/EASが弛緩する、第66項~第68項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0080】
第70項:患者において排尿または排便を制御するデバイスであって、コントローラと;前記コントローラと通信するパルス発生器と;左および/または右陰部神経に隣接または接触して配置されるように構成され、前記パルス発生器と電気的に通信する1以上の電極リードおよび/またはカフ、場合により、2つの電極とを含んでなり、前記デバイスは、前記陰部神経に電気刺激を適用するように構成され、前記電気刺激は、前記電気刺激中または終了後に陰部神経伝導のブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値以上の強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制する、デバイス。
【0081】
第71項:陰部神経ブロックのための前記電気刺激が陰部神経の興奮閾値の少なくとも5倍の強度で送達され、場合により、前記強度は0.01mA~50mAおよび/または1mV~500V、場合により、0.5mA~10mAである、第70項に記載のデバイス。
【0082】
第72項:陰部神経ブロックのための前記電気刺激が1Hz~4kHz未満、または1Hz~1.3Hz、または1Hz~1.5kHz、場合により、100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hzの周波数で送達される、第70項または第71項に記載のデバイス。
【0083】
第73項:陰部神経ブロックの前記電気刺激が5秒~60分、1分~60分、場合により、10秒~90秒、場合により、30秒~60秒、場合により、1分~5分、場合により、2分~20分、場合により、30分~60分間、送達される、第70項~第72項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0084】
第74項:前記電気刺激が電気刺激の停止の後に少なくとも10秒間、陰部神経伝導のブロックを生じる、第70項~第73項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0085】
第75項:前記電気刺激が二相性電気パルスを含む、第70項~第74項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0086】
第76項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で対称である、第75項に記載の方法。
【0087】
第77項:前記二相性パルスが二相性パルスの正の位相と負の位相との間で非対称である、第75項に記載の方法。
【0088】
第78項:前記電気刺激が電荷平衡にある二相性電気パルスを含む、第70項~第77項のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
第79項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分間、電気刺激の適用を停止し、前記陰部神経伝導のブロックはこの間中維持され、この間の終了後、同じもしくは異なる強度および/または同じもしくは異なる周波数で陰部神経またはその分岐の電気刺激を再開して、陰部神経伝導のブロックを継続または延長することをさらに含む、第70項~第78項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0090】
第80項:一旦、陰部神経伝導のブロックが達成されると、電気刺激の強度および/または周波数を変更すること、場合により、電気刺激の強度を低減することまたは電気刺激の周波数を増大することによって前記ブロックを維持することをさらに含む、第70項~第79項のいずれか一項に記載のデバイス。
【0091】
これらの方法およびデバイスのさらなる利点および詳細を、例示的実施形態および態様、ならびに以下の図面を参照して以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1図1A~1Bは、低周波数での超閾値刺激によって一旦ブロックが達成されると、それは様々な異なる様式/周波数で維持できることを示す。
図2図2A~2Cは、本明細書に記載されるような神経ブロックにおいて使用するための、様々な外部システム(図2Aおよび2B)、ならびに埋め込み可能なシステム(図2C)の概略図である。
図3図3は、ブロック刺激の適用のための実験設定を示す。ブロック刺激は、中央部位(Stim.C)に二極フック電極によって誘発された活動電位の伝播をブロックするために三極カフ電極(Stim.B)によって陰部神経に適用される。外尿道括約筋(EUS)が疲労していないことを確認するために、別の二極フック電極を遠位部位(Stim.D)に配置する。尿道圧の増大によってEUS収縮が記録できるように注入ポンプによって尿道をゆっくり潅流する。
図4図4A~4Bは、1kHzで送達された刺激後ブロックに対する異なる強度の影響を示し、興奮閾値Tは1kHzで0.1mAである。
図5図5は、500Hz、強度9mAで70秒間送達した刺激の刺激後ブロック効果を示す。
図6図6は、100Hz、強度9mA、30秒間送達した刺激の刺激後ブロック効果を示す。
図7図7は、10kHz刺激(Stim.B)が、中央部位(Stim.C)における30Hzの間欠的(5秒オン、55秒オフ)刺激によって誘発されたEUS収縮を完全にブロックした刺激強度としてのブロック閾値(T)の決定を示す。この図に示されるようにT=3mA。圧力トレースの下の太い黒いバーは、刺激の持続時間を示す。10kHz Stim.Bは刺激後ブロックを誘発しなかったことに留意されたい。刺激後ブロックを誘発するためには、10kHzでは、はるかに長い刺激持続時間(10~30分)を要した。
図8図8は、1kHz刺激の終了後に完全な神経ブロックが生じることを示す。矢印は、遠位部位(Stim.D)において30Hz刺激によって誘発されたEUS収縮を示す。EUS圧トレースの下の太いバーは、Stim.BおよびStim.Cの刺激持続時間を示す。1kHz Stim.Bの終了後、EUS収縮は遠位Stim.Dによってなお誘発可能であるが、中央Stim.Cによって誘発される収縮は初期に完全にブロックされ、その後、徐々に回復し、神経伝導ブロックはStim.Bにおいて局部的に生じ、EUSは疲労していないことを示す。
図9図9は、EUS収縮を<5cmHO尿道圧、すなわち、完全な刺激後ブロックまで低下させ得る刺激後ブロックを誘発するための、1kHz刺激に関する最小強度および期間を決定するためのプロトコールを示す。下のトレースは上のトレースの続きである。2つの矢印は、遠位部位(Stim.D)および中央部位(Stim.C)において30Hz刺激によって誘発されたEUS収縮を示す。EUS圧トレースの下の太いバーは、Stim.BおよびStim.Cの刺激期間を示す。T=3mA。
図10図10は、500Hz(A)または100Hz(B)刺激についても、完全な刺激後を誘発するために最小刺激強度および持続時間が決定されたことを示す。EUS圧トレースの下の太いバーは、Stim.BおよびStim.Cの刺激持続時間を示す。これらのデータは、図4に示されるように、同じ実験で得られた。回復期間は、EUS収縮圧が刺激前の圧力の>90%に達するのに要する期間と定義される。完全ブロック持続時間は、Stim.Cが<5cmHO尿道圧を初めて誘発し得る刺激後の期間と定義される。
図11図11は、最小強度および持続時間においてLFBSによって誘発される完全な低周波数ブロック刺激(LFBS)後ブロックに対する刺激周波数の影響を示す。完全なLFBS後ブロックを誘発するのに高い周波数ほど長い刺激持続時間を要する(A)。しかしながら、完全ブロック持続時間(B)および回復期間(C)は、刺激周波数によって変化しない(p>0.05、対応のないt検定)。神経ブロックは、種々の周波数において、1~3T(3~9mA)の強度で生じ得る。100HzではN=6、500HzではN=9、および1kHzではN=14。は、有意差を示す(p<0.05、対応のないt検定)。
図12図12は、二極フック電極(上段のパネル)または単電極リード(下段のパネル)の使用がLFBSを提供し、刺激後ブロックを生じ得ることを示す。
【発明の具体的説明】
【0093】
本出願で特定された様々な範囲での数値の使用は、特に明記しない限り、記載された範囲内の最小値および最大値の両方の前に「約」という語が付いているかのように近似値として記載される。このようにして、記載された範囲の上下のわずかな変動を用いて、その範囲内の値と実質的に同じ結果を実現することができる。また、特に明記しない限り、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間の総ての値を含む連続的な範囲として意図される。本明細書で提供される定義については、それらの定義は、それらの語または語句の語形、同義語および文法的変形を指す。
【0094】
本願に付属する図は、その性質上、代表的なものであり、特に明記しない限り、特定の縮尺や方向性を暗示するものと解釈されるべきではない。以下の説明の目的のために、「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横」、「縦」、およびそれらの派生用語は、図面中で方向付けられることで本発明に関するものとする。しかしながら、本発明は、そうではないことが明記されている場合を除き、多様な代替的変形例およびステップ順を想定してもよいことが理解されよう。従って、本明細書に開示される実施形態に関する特定の寸法および他の物理的特性は、限定的なものとみなされるべきでない。
【0095】
本明細書で使用される場合、「を含む」などの用語はオープンエンドである。「から本質的になる」という用語は、クレームの範囲を、指定された材料またはステップならびに特許請求される発明の基本的および新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。「からなる」という用語は、特許請求の範囲で指定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」および「1つ(an)」という用語は、1つ以上を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを含む任意の哺乳動物であり、「ヒト患者」は、任意のヒトである。
【0098】
本明細書で使用される場合、「通信」および「通信する」という用語は、1以上の信号、メッセージ、コマンド、または他のタイプのデータの受信、送信、または転送を指す。あるユニットまたはデバイスが他のユニットまたはデバイスと通信しているということは、あるユニットまたはデバイスが他のユニットまたはデバイスからデータを受信し、かつ/または他のユニットまたはデバイスにデータを送信することができることを意味する。通信は、直接または間接的な接続を使用することができ、本質的には有線および/または無線とすることができる。さらに、送信されるデータが第1および第2のユニット間またはデバイス間で変更、処理、ルーティングなどが可能であるとしても、2つのユニットまたはデバイスは互いに通信状態にあり得る。例えば、第1のユニットがデータを受動的に受信しかつ第2のユニットにデータを能動的に送信しないとしても、第1のユニットは第2のユニットと通信状態にあり得る。別の例として、仲介ユニットがあるユニットからのデータを処理しかつ処理されたデータを第2のユニットに送信する場合は、第1のユニットは第2のユニットと通信状態にあり得る。多数の他の配置が可能であることが理解されるであろう。例えば、TCP/IP(HTTPおよび他のプロトコールを含む)、WLAN(802.11a/b/g/nおよび他の無線周波数ベースのプロトコールおよび方法を含む)、アナログ送信、Global System for Mobile Communications(GSM)、3G/4G/LTE、BLUETOOTH、ZigBee、EnOcean、TransferJet、無線USB、および当業者に知られているような既知の電子通信プロトコールおよび/またはアルゴリズムを使用することができる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「電気的通信」とは、例えば、パルス発生器から電極へ電気パルスを送信する場合に、パルス発生器によって生成された電気パルスを皮膚表面電極、電極リード、磁気コイル、または一般にワイヤなどの導電性リードを介して本明細書に記載されるように神経またはニューロンを刺激するために電流を生成可能な同様のデバイスに送ることを指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、神経またはニューロンの「興奮閾値」(T)とは、活動電位を誘発するためにニューロンおよび/または神経膜を脱分極させなければならない最小レベルのことであり、その結果、神経またはニューロンの興奮、例えば、活動電位の誘発および活動電位の伝播、それによって神経またはニューロンにおける信号の伝播が生じる。本明細書では、「神経」および「ニューロン」という用語は、特に興奮閾値に関して互換的に使用されるが、当業者であれば、ニューロンは、活動電位が生成される細胞体を指し、神経は、活動電位が伝導される軸索を指すことを理解するであろう。ニューロンを興奮させるのに十分な刺激パラメータは、神経における興奮または活動電位の伝播に好適なものと考えられる。神経またはニューロンの膜電位の脱分極は、結果的に膜電圧を、例えば-70ミリボルト(mV)から+40mVに上昇させる。興奮閾値は、刺激が送達される周波数によって異なり得る。例えば、1kHz送達される0.1mAは、ニューロンの興奮閾値以上のところでニューロンを分極させ得るが、10Hzで送達される同じ強度は、ニューロンを同じ程度に脱分極させるわけではない。
【0101】
本明細書で使用される場合、「超閾値脱分極」または「超閾値刺激」という用語は、神経またはニューロンの膜電圧を安静時の膜電位(例えば、-70mV)から神経またはニューロンが興奮するような、例えば、活動電位が誘発または伝導するような興奮閾値以上のレベルに増加させるのに十分な刺激を意味する。同一の神経幹において、運動神経線維および感覚神経線維は異なる興奮閾値を有するが、膜興奮閾値は-55mV~-45mVの範囲(その間の総ての部分範囲が含まれる)であり得ることに留意されたい。また、同じ感覚神経でも、麻痺または疼痛を誘発するための興奮閾値は異なる。従って、本明細書で使用される超閾値とは、刺激強度が、筋収縮、麻痺、または疼痛を誘発するレベル以上であることを意味する。本明細書に記載されるような超閾値刺激は、膜電圧を安静時(-70mV)から-55mV以上の電圧に増加させることができる。
【0102】
電気パルスの「強度」は、神経またはニューロンに印加される電圧または電流(例えば、ミリアンペアまたはmA)のいずれかに比例し、またそれを指し、強度の増加は、神経またはニューロンに印加される電圧の増加または電流の増加に比例する。強度は、電力、例えば、ワットとして測定可能であるか、またはそれに比例する。
【0103】
本明細書では、神経またはニューロンに超閾値電気刺激を適用することによって、神経またはニューロンをブロックする方法が提供される。神経またはニューロンに適用される電気刺激の強度は、活動電位が生じるように神経またはニューロンの興奮閾値を超え(例えば、約-55mV以上の脱分極膜電圧)、本明細書では「超閾値」刺激と称される。この超閾値刺激は、神経伝導またはニューロン興奮のブロックを生じるのに十分な長さの時間にわたって神経またはニューロンに適用される。超閾値電気刺激によって誘発されるブロックは、刺激後ブロックを含み得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、「刺激後ブロック」とは、電気刺激の停止後に延長する神経ブロックを指し、電気刺激の持続時間および強度に応じて、数秒から数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年まで(その間の単位も含む)持続させることができる。刺激後ブロックは、少なくとも1分間持続し得る。刺激後ブロックは、刺激の停止後、少なくとも1分間、場合により、少なくとも5分、10分、15分、または30分間、維持することができ、その時点で刺激を再適用することができる。再適用される刺激は、ブロックの誘発に使用した最初のパラメータと同じまたは異なる強度および周波数であり得る。これは、イオンの移動、ならびに特定の理論に縛られるものではないが、超閾値刺激の適用中のナトリウムおよびカリウムの再配分によって起こる、超閾値刺激によって達成される興奮閾値の増大の可能性によるものであり得る。刺激後ブロックが達成された後、ブロックを維持または再誘発するために電気刺激の周波数および/または強度を変更することができる。すなわち、刺激後ブロックを達成した後、刺激の周波数を増加または低減することができ、かつ/または刺激の強度を増加または低減することができる。
【0105】
超閾値刺激は、その刺激が超閾値刺激である限り、いずれの好適な特徴を持ち得る電気パルスも含み得る(電流を生じ得る磁気刺激を含む)。従って、「電気刺激」および「電気パルス」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当業者により認識されるように、限定されるものではないが、振幅(信号電圧または電流の規模または大きさ)、電圧、アンペア数、持続時間、周波数、極性、位相、相対的なタイミング、および二相性刺激における正および負のパルスの対称性、および/または波形(例えば、正方形、正弦、三角形、鋸歯またはそれらの変形もしくは組合せ)を含む電気パルスの特徴は、患者または患者クラスにおいて所望の超閾値刺激および結果としての刺激後ブロックを提供するために変化させてもよい。電気信号の他の特徴(例えば、限定されるものではないが、振幅、電圧、アンペア数、持続時間、極性、位相、相対的なタイミング、および二相性刺激における正および負のパルスの対称性、ならびに/または波形)が有用な範囲内にある限り、パルス周波数の変調は、超閾値により誘発される神経またはニューロンのブロックの所望の結果を達成する。
【0106】
図1Aおよび1Bを振り返れば、これらの図面は、どのように超閾値神経ブロックを誘発し、次にそのブロックを長時間維持するかの限定されない例を示す。神経ブロックは、特定の持続時間の超閾値刺激によって誘発することができ、このブロックは刺激の終了後も持続する(例えば、刺激後ブロック)。刺激後ブロック期間は、ブロックの誘発後に追加刺激を適用することによって延長させることができる。追加刺激は同じ強度であっても低強度であってもよく、間欠的もしくは連続的のいずれで、または異なる周波数で適用してもよい(図1A)。さらに、刺激後ブロックはまた、極端な超閾値強度で単一または多重刺激パルスによって誘発し、規則的または不規則の時点で適用される低強度の複数の単一パルスによって維持することもできる(図1B)。
【0107】
上記のように、所望の応答を生成するために使用される電気信号の1つの特徴は、電気パルスの周波数である。なお、有効な周波数範囲(例えば、記載された効果を生じ得る周波数)は、対象ごとに異なる場合があり、その制御因子が所望の結果を達成しているが、特定の非限定的な例示的範囲は、刺激またはパルスが標的の神経/ニューロンにおいて活動電位を誘発する限り、以下の通りであり得る。神経をブロックする場合、有用な周波数は、約1Hz(ヘルツ)、およそ1Hz~4kHz(キロヘルツ)未満、または1Hz~1.5kHz、または1Hz~1.3kHz、または100Hz~1kHz、場合により、100Hz~500Hz(その間の全ての部分範囲を含む)の範囲であり得る。有効刺激は、100Hz、500Hz、1kHz、1.5kHz、もしくはその間の任意の値で、または1Hz~4kHz未満、1Hz~1.3kHz、1Hz~1.5kHz、100Hz~1kHz、もしくは100Hz~500Hzの範囲(その間の全ての部分範囲を含む)で送達され得る。超閾値高周波数刺激(≧4kHz)で得られる神経ブロックは既知であるが、低いキロヘルツ範囲(例えば<4kHz)またはキロヘルツ未満の範囲(1~1000Hz)の超閾値刺激は、神経ブロックを誘発できることはこれまでに知られていなかった。
【0108】
上記で示したように、超閾値電気パルスは、電気刺激の強度によって決定され、これは、哺乳動物組織のような安定したまたは比較的安定した抵抗の媒体において、オームの法則に基づいて、電流(I、一般にmAで測定される)または電圧(V、一般にmVで測定される)に関連して特徴付けられることができる。従って、刺激の強度は、VおよびIの両方の問題であり、このため、両方とも、例えば、刺激の強度の増加に比例してまたは実質的に比例して増加することが理解されるべきである。従って、パルスの1つの特徴は、神経ブロックが可能な超閾値刺激を生じるために印加される電流である。超閾値刺激は、0.1mA~100mA、0.5mA~50mA、0.5mA~5mA(その間の全ての部分範囲を含む)の典型的範囲で達成され得る。刺激は、0.1mA、0.5mA、1mA、2mA、3mA、4mA、5mA、10mA、50mA、100mA、またはその間の任意の値で適用することができる。超閾値神経刺激は、1mV~500Vの一般範囲で達成することができる。
【0109】
中断、または電気刺激が適用されないか、もしくは刺激後ブロックを達成するために必要な頻度よりも少なく適用される期間を導入することができる。中断または電気刺激が適用されない期間では、この中断または期間は、少なくとも10秒、場合により、少なくとも1分、場合により、少なくとも5分、10分、15分、30分、または180分であってよく、神経伝導またはニューロン興奮のブロックは、この中断または期間中、維持される。次に、ブロックを維持するために刺激を再導入することができる。この再導入された刺激は、最初に適用されたものと同じであってもよいし、または最初のブロックを提供する刺激に比べて強度が増加または低減され、および/または周波数が増加または低減されてもよい。
【0110】
超閾値刺激は神経またはニューロンの興奮閾値(T)に関して測定することができ、これにより所与の患者において興奮を誘発するために必要な電流および/または電圧の個々の変動に関係なく患者に適用できる測定基準の使用が可能となる。例えば、限定されるものではないが、電流/電圧の特定の組合せというよりも、所与の患者における対象神経に関して5Tの興奮、すなわち興奮閾値の5倍を挙げることができる。神経ブロックを消磁するために患者の神経に適用可能な刺激は、1T、2T、3T、4T、5T、10T、20T、30T、40T、50T、60T、70T、80T、90T、100T、またはそれより高いものである(その間の全ての値を含む)。
【0111】
以下に記載するように、所望の超閾値ブロック効果が実現される限り、パルスの波形は変化してもよい。当業者は他のタイプの電気刺激も本発明に従って使用され得ることを理解するであろう。単相性刺激もしくは二相性刺激、またはそれらの混合を使用してもよい。電流の印加による神経への損傷は、当技術分野で知られているように、長時間使用のいくつかの例において神経を損傷し得る単相性パルスまたは波形とは対照的に、神経へ二相性パルスまたは二相波形の印加によって最小化され得る。「二相電流」、「二相性パルス」、または「二相波形」とは、等しいまたは実質的に等しい正味電荷(従って、二相および電荷平衡)であり得る逆極性の2つ以上のパルスを指し、対称であっても非対称であってもまたは実質的に対称であってもよい。これは、例えば、電極のターゲットに印加される正味の電荷がゼロまたはほぼゼロとなるように、電極を介して1以上の正のパルスを印加し、その後、一般には正のパルスと同じ振幅および持続時間の1以上の負のパルスを印加することによって、またはその逆によって達成される。電荷平衡二相性刺激の場合、二相性パルスペア(正と負のパルスの組合せ)による正味の印加電荷がほぼゼロである限り、反対の極性のパルスは異なる振幅、プロファイル、または持続時間を有し得る。
【0112】
波形は、限定されるものではないが、正弦波、正方形、矩形、三角波、鋸歯状、直線波、パルス波、指数関数、切頂指数関数、または減衰正弦波を含む任意の有用な形状であってよい。パルスは、刺激期間にわたって増加してもよいし、減少してもよい。波形は矩形であってもよい、超閾値パルスは、必要に応じて連続的または間欠的に印加されてもよい。以下に示すように、特定の電圧または電流で、特定の時間にわたる神経またはニューロンの超閾値刺激は、刺激後神経ブロックを惹起する。従って、超閾値刺激は、少なくとも10秒、30秒、1分、2分、3分、5分、10分、もしくは180分を単位とする、より短い持続的ブロック/緩和を実現するため、または時間、日、週、月、または年を単位とするより長く持続するブロック/緩和を実現するために、極めて短期間(例えば、5秒~70秒)、短期間(例えば、1~10分)、またはより長い期間(例えば、30分、360分またはそれ以上、例えば、日、週、月、または年)にわたって適用してもよい。刺激は、少なくとも5秒、30秒、少なくとも70秒、または少なくとも5分間適用することができる。刺激は30分~2時間適用することができる(その間の全ての部分範囲を含む)。刺激は少なくとも70分、少なくとも80分、または少なくとも90分間、適用することができる。刺激は、連続的または間隔刺激プロトコール中に、間欠的に(すなわち、パルスは、任意の期間に刺激間隔中に交互にオンおよびオフされて)適用することができる。例えば、刺激は、例えば、1~10分またはそれ以上(例えば、時間、日、週、月、年)の間隔にわたって5秒間オンおよび5秒間オフとして適用してもよい。パルスの間欠的な印加の他の例は、360分までまたはそれを超える時間にわたって1~90秒のオンおよび1~90秒のオフであってもよい。他のパルスパラメータ(例えば、強度および周波数)が許容限度内にある限り(例えば、ニューロンまたは神経に対する損傷および/または長期間の障害を引き起こさないことが知られるもの)、抑制は一時的であり、関与するニューロン/神経を損傷しない。例えば、パルスの間欠的な印加は、すなわち、パルスが所望の効果を有している限り、かつ患者が望む(例えば、患者に望ましくない疼痛ら害がない)限り連続的であってもよい。一態様において、刺激は、例えば、重度の症状、または臨床医または患者に望まれる程度の間欠的で短期的な刺激に応答しない症状を治療するために連続的に提供される。
【0113】
本明細書ではまた、神経伝導をブロックするために患者に超閾値電気刺激を適用することによって泌尿器または消化管プロセスなどの生理学的プロセスを制御する方法も提供される。この生理学的プロセスは排尿であり得る。この生理学的プロセスは排便であってもよい。引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第8,805,510号は、尿失禁、過活動膀胱、尿閉および排尿不全、排尿筋括約筋協調不全、便失禁、便秘、過敏性腸症候群、男性および女性両方の性機能不全、早漏、性的感覚、オルガスムの低下、尿道痛、前立腺痛、ヴルヴォディニア、肛門痛、直腸痛、および膀胱痛を含む、本明細書に記載されるような電気刺激の投与によって調整および/または制御可能な生理学的プロセスを記載している。このような状態は、神経学的障害またはその他の疾患もしくは病態を原因とし得る。例えば、尿閉および/または失禁は、脊髄損傷もしくは脳卒中、または外傷、疾患(例えば、多発性硬化症)および/もしくは先天性欠陥により引き起こされる傷害を原因とし得る。これらの病態の1以上が脊髄外傷、または疼痛感覚などの感覚を低下および/または消失させる他の傷害によって引き起こされている状態は、患者は超閾値刺激により誘発されるブロックを伴う初期興奮から疼痛を受ける可能性が低いので、本明細書に開示される方法から利益を得る可能性がある。
【0114】
この方法は、患者の陰部神経またはその分岐に超閾値電気刺激を適用するステップを含み得る。陰部神経は仙骨神経叢に始まり、その線維を第1、第2、第3、および第4仙骨神経(S1、S2、S3、S4)から派生する。陰部神経は梨状筋と尾骨筋の間をわたり、大坐骨孔の下部を通って骨盤から出る。この神経は次に坐骨の脊椎を横切り、小坐骨孔を通って再び骨盤に入る。陰部神経は坐骨直腸窩の側壁に沿う内部上行および下行陰部血管を伴い、陰部神経管と呼ばれる閉鎖筋鞘内に含まれる。陰部神経は下直腸神経を発する。これは次に、2つの末端分岐、すなわち、会陰神経、および陰茎の背神経(男性)または陰核の背神経(女性)に分岐する。下肛門神経は、大坐骨孔を通過した後すぐに分岐する。陰茎の背神経または陰核の背神経は、陰部神経のより表在性の末端分岐であるが、会陰神経は、深会陰隙に入る陰部神経のより深部の末端分岐である。
【0115】
陰部神経は感覚(求心性)および運動(遠心性)信号の両方を伝える。この神経はとりわけ肛門括約筋および外尿道括約筋に分布する。この神経はまた、陰茎および陰核、球海綿体筋および坐骨海綿体筋、ならびに陰嚢、会陰、および肛門周囲の領域にも分布している。性的クライマックスでは、球海綿体筋および坐骨海綿体筋の痙攣を伴う、生殖管および付属腺(例えば、精嚢、前立腺およびカウパー(尿道球)腺)の筋肉の蠕動作用は、男性に射精をもたらす。球海綿体筋および坐骨海綿体筋の痙攣は、両性においてオルガスムの絶頂感を伴う。
【0116】
この方法は排尿を制御するために使用することができる。排尿は、膀胱を空にする行為である。ヒトでは、約200mlの尿が蓄積した際に、膀胱壁の膨張が一般に伸長受容器を活性化して内臓反射弓の引き金を引く。求心性インパルスが脊髄の仙骨領域に伝達され、遠心性インパルスが副交感神経の骨盤神経を介して膀胱へ戻り、膀胱の排尿筋を収縮させ、膀胱の内部括約筋を弛緩させる。収縮が強度を増すと、それらは貯留された尿を、内部括約筋を介して尿道上部へ押しやる。求心性インパルスはまた脳へも伝達されるので、この時点で尿意を感じる。外尿道(尿路)括約筋は随意的に制御されているので、ヒトはそれを閉じて維持することを選択し、一時的に排尿を延期することができる。他方、その時が好都合であれば、随意括約筋を弛緩させて、膀胱から尿を放出することができる。排尿しないことを選択する場合には、反射性の膀胱収縮は1分ほど鎮静し、尿は蓄積し続ける。さらに200~300mlが集まった後、排尿反射が再び起こり、排尿が再び遅延されれば、もう一度止められる。
【0117】
よって、正常な膀胱活動は一般に二相に分けられる。第1相の「蓄尿相」では、膀胱の排尿筋が静止し、外尿道括約筋(EUS)が閉じる。第2相の「排尿相」では、膀胱の排尿筋が収縮し、EUSが(随意的に)弛緩し、尿道から尿の流出が可能となる。排尿プロセスに影響をする神経学的損傷を有する患者では、このプロセスは乱され、例えば、失禁または尿閉がもたらされる。
【0118】
失禁は、排尿制御ができないことである。失禁は一般に感情的問題、妊娠中の物理的圧力、または脳卒中もしくは脊髄病変などの神経系の問題の結果である。
【0119】
尿閉の場合には、膀胱はその収容した尿を放出することができない。閉尿は全身麻酔が施された後に多い(平滑筋がそれらの活動を回復するまでに少し時間がかかると思われる)。男性の尿閉は、多くの場合で前立腺肥大を反映し、尿道を狭め、排尿を困難にする。尿による膀胱壁の伸張は、感覚インパルスを脊髄の仙骨領域へ伝達させる。運動インパルスは骨盤神経の副交感神経線維を介して膀胱の排尿筋および内部括約筋へ送達される。陰部神経は外尿道括約筋の横紋筋線維を支配する。
【0120】
排便も排尿と同様の様式で進行する。排便の感覚的および運動的制御は陰部神経を通る。直腸は通常空である。便がマスムーブメントによって直腸に押しやられると、直腸壁が伸張して排便反射を誘発する。排便反射において、S状結腸および直腸の壁が収縮し、肛門括約筋が弛緩し、便を肛門管へ押しやる。しかしながら、便の通過を一時的に停止するべきであるかどうかは脳が決定する。それらが停止されると、直腸壁は、次のマスムーブメントが次の排便反射を誘発するまで弛緩する。
【0121】
核上型脊髄損傷患者は一般に、排尿、排便および射精プロセスを随意的に制御できない。例えば、脊髄損傷(SCI)後、排尿筋の過活動のために失禁がよく起こる。同時に、膀胱も、排尿筋括約筋筋失調(DSD)のために十分に空にならず、その結果、尿残量が増す。よって、SCI後の膀胱機能の維持は、膀胱を空にするためのEUSの弛緩と当時に蓄尿中の排尿筋の過活動の抑制と振幅の大きい膀胱収縮の誘発を要するので、難しい課題である。SCI後の膀胱機能不全の現行の治療は、奏効が限られているか、または脊髄根に刺激電極を埋め込むための侵襲的な脊髄大手術を要する。間欠導尿が尿路機能不全を管理するための最も一般的な方法である。しかしながら、それは頻繁な膀胱感染を招き得る。本明細書に開示される方法およびデバイスは、これらの方法は超閾値刺激が望ましくない疼痛を生じる懸念なく、排尿および排便の制御を助けるために利用可能であることから、特に、SCI患者で使用され得る。
【0122】
本明細書ではまた、排尿および/または排便を制御する方法も提供される。この方法は、第1の電気刺激を患者の左陰部神経またはその分岐に、第2の電気刺激を右陰部神経またはその分岐に適用することを含む。第1および第2の電気刺激は、陰部神経の興奮閾値を超える強度であってよく、LFBSによって神経ブロックを提供するために好適であるような、本明細書に開示されるいずれのパラメータおよび特徴も含み得る。刺激は、第1および/または第2の電気刺激中またはその終了後に、両方の陰部神経の伝導ブロックを提供するのに十分な長さの時間にわたって適用され、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制することができる。
【0123】
ブロックの後、またはブロック刺激中、EUS/EASが弛緩した際に、左または右陰部神経への第3の電気刺激をブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することができる。あるいは、第1および/または第2の電気刺激中またはその直後、EUS/EASが弛緩した際に、再び第3の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、第1および/または第2の電気刺激中またはその直後、EUS/EASが弛緩した際に、再び第3の電気刺激を、硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、第1および/または第2の電気刺激中またはその直後、EUS/EASが弛緩した際に、再び第3の電気刺激を骨盤神経に適用して膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、第1および/または第2の電気刺激中またはその直後、ならびにEUS/EAS弛緩中に、再び腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧をかけることもできる。刺激を含むステップに関して、本明細書に記載されるようなデバイス(後述)は、プログラミング指示が保存されているメモリを含むことができ、このプログラミング指示は、(例えばパルス発生器の制御を介して)プロセッサに上記の様々な刺激を実行させる。
【0124】
本明細書ではまた、患者において排尿および/または排便を制御する方法であって、第1の電気刺激を対象の左または右いずれかの陰部神経またはその分岐に適用し、その電気刺激は、電気刺激中またはその終了後に陰部神経伝導のブロックを生じるのに十分な時間、陰部神経の興奮閾値を超える強度であり、それにより、外尿道括約筋(EUS)および/または外肛門括約筋(EAS)の収縮を抑制することによる方法も開示される。この方法はさらに、第1の電気刺激中またはその直後のいずれかに、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を、ブロックされた陰部神経の同じ側の、ブロックされた陰部神経部位の中央部に適用して、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することを含む。あるいは、第1の電気刺激中またはその直後のいずれかに、EUS/EASが弛緩した際に、第2の電気刺激を仙髄神経根(S1、S2、S3、またはS4)に適用して、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、第1の電気刺激中またはその直後のいずれかに、EUS/EASが弛緩した際に、再び第2の電気刺激を硬膜外電極、または皮膚表面電極もしくは電磁コイルによって脊髄に適用して、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、第1の電気刺激中またはその直後のいずれかに、EUS/EASが弛緩した際に、再び第2の電気刺激を骨盤神経に適用して、膀胱または結腸/直腸収縮を誘発することもできる。あるいは、電気刺激中またはその直後のいずれかに、EUS/EASが弛緩した際に、再び腹部領域を圧迫して膀胱または結腸/直腸圧をかけることもできる。刺激を含むステップに関して、本明細書に記載されるようなデバイス(後述)は、プログラミング指示が保存されているメモリを含むことができ、このプログラミング指示は、(例えばパルス発生器の制御を介して)プロセッサに上記の様々な刺激を実行させる。
【0125】
泌尿器および消化管プロセスは上記に例示されているが、当業者であれば、本明細書に記載の方法およびデバイスは、神経伝導のブロックが病態または疾患を予防し得る、改善し得る、消散させ得る、または逆転させ得る他のシステム/プロセスを処理するために有用であり得ることを理解するであろう。例えば、限定されるものではないが、求心性疼痛線維の伝導のブロック、心不全を治療するための内臓神経のブロック(Fidum et al., Splanchnic nerve block for acute heart failure, Circulation, 2018, Vol. 138, pp. 951-53参照)および肥満の治療のための迷走神経伝導のブロック(Sarr et al., The EMPOWER Study: Randomized, prospective, double-blind, multicenter trial of vagal blockage to induce weight loss in morbid obesity, Obes Surg, 2012参照)は、本明細書に開示されるデバイスおよび方法で達成することができる。
【0126】
また、本明細書では、刺激後神経/ニューロンブロックを誘発するのに十分な様式で超閾値刺激を適用するためのデバイスおよびシステムも提供される。図2Aは、本明細書に記載される方法において有用な電気刺激デバイス10の非限定的な一実施形態または態様の一般的な概略図を示す。デバイス10は、電源またはパルス発生器20を含む。電源/パルス発生器20は、固定出力であってもよく、または、例えば、本明細書に記載されるような有用な範囲内で調整可能であってもよい。デバイス10は、第1の導電性リード30および場合によって第2の導電性リード35を含む。図2Aは神経37と接触しているリード30、35を示すが、当業者であれば、導電性リードはそれらが対象とする神経またはニューロンに接触するような緊密性は必要としないことを理解するであろう。例えば、限定されるものではないが、リード(30および/または35)は、対象とする神経またはニューロンの10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm内に配置できる(その間の全ての部分範囲を含む)。
【0127】
本方法、および超閾値刺激の使用の利益は、カフ付きである必要はない(例えば、神経またはニューロン上に配置する必要はないが、代わりに、対象とする神経またはニューロンに単に近接して配置され得る)1以上のリードを使用するという選択である。導電性リード30、35は、電源/パルス発生器20に直接配線することもき、またはそれぞれが電源/パルス発生器20とリードの末端の間に連続した電気的接続を生じるための複数のリードおよび電気的コネクタ、留め具、端子、またはクリップを含んでもよい。回路を接地するための1以上のリード(示されていない)も提供可能であり、患者の身体に取り付けることができる。皮膚38もまた示され、このように、デバイス10は外付けであり、手持ち型または身体装着型デバイスであり得るが、例えば、フックアンドループファスナバンドのようなベルトまたはストラップによって所定の位置に保持され、場合により、デバイス10は埋め込み可能なデバイスであり得る(以下でより詳細に説明する)。図2Aでは、これらリードは逆極性であり、本明細書に記載される電気波形を適用するための回路を共に形成する。異なるリード、プローブ、電極もしくは電気接点またはそれらの組合せを有する代替設計も当業者には明らかであろう。本明細書で使用される場合、「電気接点」とは、患者の皮膚など、患者の神経または組織に電流を直接印加するのに有用な構造を包含する。磁場、従って、誘導を介した電流を生成するための構造は、電気接点とはみなされない。しかしながらやはり、誘導プローブ、すなわち、電流を生成することができる磁場を生成することができる構造は、本明細書に記載される電気パルスを生成するために使用可能である。
【0128】
図2Bは、神経ブロックのためのデバイス10の別の態様を模式的に示し、図2Aのデバイスと同様に、外部電源を有する。図2Bにおいて、図2Aの参照番号と比較して同様な参照番号は、デバイス10の同様な要素を指す。しかしながら、表面電極31および36が使用され、刺激は経皮的である。示されていなが別の態様では、表面電極31および36は、神経37におけるインパルスの磁気誘導刺激のための電磁石に置き換えられる。
【0129】
図2Cは、埋め込まれる神経ブロックデバイス110のさらなる態様を示し、埋め込み可能なハウジング112を含む。ハウジング112は、神経137を刺激するための第1のリード130および第2のリード135に接続された電源/パルス発生器120を含んだデバイスの様々なサブユニットを含む。皮膚138は、文脈のために図中に描かれている。ハウジングは、プラスチック、金属、炭素繊維、もしくはセラミック材料などの埋め込み可能なデバイスで使用するための医療分野で知られている任意の生体適合性材料、または生体適合性ポリマーもしくはヒドロゲルで被覆された金属もしくはプラスチックハウジングなどのポリマー被覆材料で構成されてよい。ハウジング112はまた、プロセッサ140、一時データストレージ(例えば、RAM)を含むストレージモジュール142、およびフラッシュメモリまたはソリッドステートドライブなどの非一時データストレージを含む、デバイス110の様々な接続サブユニットと、場合により、電磁誘導によって再充電可能なバッテリー144とを含む。プロセッサ140はまた、例えば近接場通信によってまたはBLUETOOTH、Wi-Fi、もしくはセルラーネットワークによって、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、スマートウォッチ、ワークステーション、サーバー、またはコンピュータネットワークなどの外部コンピュータまたはコンピュータネットワークと無線で通信するための無線通信モジュール150に接続することもできる。
【0130】
図2A~2Cのデバイスは、電池で動力供給され、場合により、この電池は充電式である。デバイスが埋め込まれる場合、デバイスを既知のようにワイヤレス、例えば磁気誘導充電法によって再充電することができる。図2Aおよび/または図2Bのデバイスはまた、データを送信するため、かつスマートフォン、タブレット、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、またはコンピュータネットワーク上のコントローラアプリまたはソフトウェアなどの別個のコンピューティングデバイスから指示を受信するための、無線通信インターフェースまたはモジュールなどの通信インターフェースを含むことができる。コンピュータおよびソフトウェア工学の分野における熟練者であれば理解するであろうが、本明細書に記載されているような電気刺激および神経ブロックを提供するデバイスおよびシステムを制御するために、多数の潜在的なデバイスおよびシステム構成および実施スキームを使用することができる。
【0131】
デバイスのいずれの態様にも等しく適用されるが、図2Cを参照すると、例えば、図2Aおよび/または図2Bのデバイス10など、デバイス110は電源の電気パルス出力に関する機能を実行するためのコントローラを含む。いくつかの例では、コントローラは、ベースラインプロセッサ、メモリ、および通信能力を含む中央処理エンジンである。例えば、コントローラは、コンピュータ可読メモリを含み、メモリに記憶されているかまたは他のソースから受信した命令を実行するように構成された好適なプロセッサであり得る。コンピュータ可読メモリは、例えば、ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、光学ドライブ、テープドライブ、フラッシュメモリ(例えば、不揮発性コンピュータ記憶チップ)、カートリッジドライブ、および新しいソフトウェアをロードするための制御要素であり得る。
【0132】
いくつかの例では、コントローラは、本明細書では「プログラミング指示」と称される、プログラムされた通りにデバイスが相互作用して動作するように独立または集合的に指示するプロセッサによって実行可能なプログラム、コード、一連の命令、またはそれらのいくつかの組合せを含む。いくつかの例では、コントローラは、本開示を通して記載されるように、超閾値電気パルスを誘発するように電源/パルス発生器に命令を発行し、かつ神経/ニューロンブロック、場合により、刺激後ブロックを誘発するのに十分な様式で(例えば、超閾値刺激、一旦ブロックが達成されると刺激パラメータを変更するなど)、電源の出力パラメータを制御するように構成される。当業者であれば、本明細書に開示されるデバイス10、110に関連するプロセッサが、本開示全通して一般に記載されているように、適切な超閾値刺激を送達するようにプログラムされ得ることを理解するであろう。いずれの場合においても、コントローラは、デバイスにプログラムされた、または外部ソースからの電気パルスパラメータを受信して処理するように構成され、場合により、電源が所望の出力を生成しているかどうかを判断するためのフィードバックとして、電源から得られたデータを出力するように構成されている。処理は、可読性を向上させるために、捕捉された信号から信号のアーティファクト、ノイズ、ベースライン波形、または他の項目を除去するためのフィルタおよび他の技術を適用することを含み得る。
【0133】
上記に加えてさらに、デバイス10、110は、プロセッサ140によって実行されると、ニューロンの初期興奮閾値未満の強度(例えば、-55mV未満)で、神経/ニューロンの興奮閾値を第1の増加した興奮閾値以上(例えば、-55mV以上)の強度で、神経もしくはニューロンにおいてブロックおよび/もしくは刺激後ブロックを生じるために、または上記のような生理学的結果を送達するために十分な時間にわたって、電源/パルス発生器120に電気刺激を適用させる命令をプログラミングすることを含み得る。有用なパラメータは上記されているが、例えば、限定されるものではないが、100Hz、500Hz、1kHz、1Hz~4kHz未満または1Hz~1.5kHz、1Hz~1.3kHz、100Hz~1.5kHz、100Hz~500Hz、500Hz~1.5kHz(その間の全ての値の部分範囲を含む)で、例えば、限定されるものではないが、1mA、3mA、9mA、12mA、15mA、または0.1mA~50mAの強度で、秒~日の持続時間(全てのパラメータがその間の全ての部分範囲を含む)にわたる刺激を含み得る。
【0134】
先に記載したように、プロセッサ140は、その後、電源/パルス発生器120が、遮断の誘発後に、第1の低減または増大された強度および/または周波数の電気刺激を適用するように指示することができる。このコントローラは、一旦、神経伝導またはニューロン興奮が達成されると、その電気刺激の強度および/または周波数を変更するようにパルス発生器に指示するようにプログラムまたは構成することができる。ブロックが達成されたかどうかを判定するために様々なセンサおよびデバイスが使用可能である。例えば、上記のように、また、下記の例で示すように、デバイスは1つ以上の接点またはリードを含むことができる。接点/リード/カフのうちの1つは、ブロックする接点/リードの近位に配置することができ、ブロックはブロックの近位に印加された刺激パルスがブロックする接点/リードの位置から遠位に活動電位の伝達をもたらすかどうかによって決定することができる。
【0135】
デバイス10、110は、デバイス10、110が様々な時点、位置、および強度での刺激の適用を介して、排尿、排便、および/または保持を誘発することができるようにブロック刺激および興奮性刺激を提供するために、複数のチャネルおよび複数の電極リード/接点を含むことができる。このような生理学的作用を誘発するための刺激パラメータおよび電極リード/接点の配置は米国特許第9,623,243号に開示されており、その内容は引用することによりその全てが本明細書の一部とされる。しかしながら簡単に述べれば、例えば、限定されるものではないが、本明細書に記載されるようなデバイス10、110は、埋め込み型であっても装着型であっても、またはそうでなければ外付けであっても、複数のチャネル、本明細書に記載されるようなブロック刺激を提供するための1つ(または複数の)チャネル、およびデバイスが排尿および/または排便を制御できるように、例えば、限定されるものではないが、EUSもしくは肛門括約筋の収縮を生じる刺激(例えば、0.5Hz~15Hzでの刺激)および/または膀胱もしくは結腸/直腸の収縮を生じる刺激(例えば、15Hz~50Hz)を提供するための1つ(または複数の)チャネルを含み得る。デバイス10、110は、例えば、限定されるものではないが、両側の陰部神経(例えば、身体の反対側の陰部神経の2分岐)に、本明細書に記載されるようなブロック刺激を提供するための複数のチャネルを含み得る。このような処置に有用なデバイス10、110、例えば、米国特許第9,623,243号に記載されているような3つの出力チャネルを備えたデバイスは、患者の陰部神経またはその分岐の、陰部神経またはその分岐上の第1の地点に電気信号を適用し、その電気信号は膀胱収縮および直腸収縮の一方または両方をもたらす反射を生み出すことができる振幅および周波数を有し、患者の陰部神経またはその分岐上および/または反対側の陰部神経またはその分岐上の第1の地点の遠位に超閾値電気ブロック信号(本明細書に記載される通り)を適用し、そのブロック電気信号は、患者の外尿道括約筋および肛門括約筋の一方または両方の収縮を抑制するために陰部神経伝導をブロックすることができる振幅および周波数を有することを含む方法で使用することができる。刺激の停止および開始は、膀胱または結腸が完全に空になるまで、陰部神経がブロックされ、EUSおよび/または肛門括約筋が弛緩した際に膀胱または結腸/直腸収縮を誘発するために複数回繰り返すことができる。
【実施例
【0136】
例1
材料および方法
9匹のネコ(雄5匹と雌4匹;3.3~4.2kg;Marshall BioResources、ノース・ローズ、NY、USA)を手術中はイソフルラン(2~5%酸素)で麻酔し、データ収集中はα-クロラロース麻酔(最初65mg/kg i.v. 必要に応じて補給)に切り替えた。流体または麻酔薬の投与のために、右橈側皮静脈にカテーテルを留置した。気管切開により気道を確保した。血圧を監視するために、右頚動脈にカテーテルを挿入した。心拍数および血中酸素を監視するために、パルスオキシメーター(9847V;NONIN Medical、プリマス、MN)を舌に取り付けた。
【0137】
腹部切開により、遠位尿道にカテーテルを挿入して生理食塩水で尿道をゆっくり(1ml/分)潅流し、陰部神経刺激によって誘発された外尿道括約筋(EUS)の収縮によって引き起こされた尿道圧の増加を記録した(図3)。尿管を結紮し、切断し、外部に廃液した。HFBSを送達するために三極カフ電極(NEC113、MicroProbes Inc、ゲーサーズバーグ、MD、USA)を埋め込むために尾の側方の坐骨切痕を3~4cm切開することで左陰部神経を露出させた(図3のStim.B)。2つのフック電極を三極カフ電極の中央部(Stim.C)と遠位(Stim.D)に配置した。右陰部神経も露出させ、同じ3セットの電極を埋め込んだ。EUSの反射活性化を妨げるために陰部神経を中央で横に切断した(図3)。刺激装置(Grass S88、Grass Technologies、RI、USA)によって精製した刺激パルス(20Hz、0.2ms)を、刺激アイソレータ(SIU5、Grass Technologies、RI、USA)を介してフック電極に送達し(Stim.CまたはStim.D)、>30cmHOの尿道圧を誘発した。LabViewプログラム(National Instrument、TX、USA)を実行中のコンピュータによって生成された、パルス間隔のないLFBS(1kHz、500Hz、または100Hz)方形波形(図3参照)を、刺激アイソレータ(A395、World Precision Instruments、FL、USA)を介して三極カフ電極に送達して陰部神経伝導をブロックし、Stim.Cによって誘発されたEUS収縮を抑制した(図3)。例えば、患者が脊髄損傷を有していた場合には、最初の神経発火は問題ではなく、1kHzのLFBSを、神経伝導ブロックを達成するための時間を有意に短縮する超閾値強度(例えば、図4A~4Bに示されるように5T、10T、20T、30T、40T、または50T)で適用することができる。
【0138】
結果
図4Aおよび4Bは、1kHz、5T(0.5mA)(ここでは、T=神経の興奮閾値)、10T(1mA)、20T(2mA)、30T(3mA)、40T(mA)、および50T(5mA)で送達された刺激が神経ブロックおよび有意な刺激後ブロックを生じ得ることを示す。図5は、強度が90T(9mA)である場合、刺激が70秒間送達される場合に、より低い周波数(500Hz)でブロックが達成され得ることを示し、図6は、90T(9mA)の強度で、刺激が30秒間送達される場合に、より低い周波数(100Hz)であっても達成され得ることを示す。
【0139】
考察
ここで示された結果は、神経またはニューロンの興奮閾値を超える強度(例えば、5T、10T、20T、30T、40T、50T)で送達されたLFBSは、神経またはニューロンにブロックおよび刺激後ブロックを速やかに誘発し得ることを示す。
【0140】
例2
材料および方法
実験プロトコール
合計10匹のネコ(雌5匹および雄5匹、2.9~3.7kg)を本研究に使用した。これらの動物を、手術中はイソフルラン(酸素中2~5%)で麻酔し、データ収集中はα-クロラロース麻酔(最初65mg/kg i.v.、その後、必要に応じて補給)に切り替えた。流体および麻酔薬の静脈内投与のために、右橈側皮静脈にカテーテルを留置した。気道に接近するために正中前頚切開を用い、気道は気管切開により確保した。動脈血圧を監視するために、右頚動脈にカテーテルを留置した。酸素飽和度および心拍数を、舌に取り付けたパルスオキシメーター(9847V;NONIN Medical、プリマス、MN)によって測定した。腹部切開により、尿管を単離し、切断し、外部に廃液した。近位尿道の小切開によって尿道にカテーテルを挿入した。カテーテルを、三方活栓を介してシリンジポンプ(SP200i;World Precision Instruments、サラソタ、FL)および圧力変換器(BLPR2、World Precision Instruments)に接続して尿道をゆっくり(1ml/分)潅流し、中立的に誘発された外尿道括約筋(EUS)の収縮によって引き起こされた尿道圧の増加を測定した(図3)。二相性刺激波形を送達するために三極カフ電極(NEC113、MicroProbes Inc、ゲーサーズバーグ、MD、USA)を埋め込むために尾の側方の坐骨切痕を3~4cm切開することで各陰部神経を露出させた(図3のStim.B)。二極フック電極を三極カフ電極の遠位(Stim.D)と中央部(Stim.C)とに配置した(図3)。EUSの反射活性化を妨げるために、各陰部神経を中央で横に切断した。神経および電極を温かい(37℃)鉱油で覆った。刺激装置(Grass S88、Grass Technologies、RI、USA)によって生成された刺激パルス(30Hz、0.2ms)を、刺激アイソレータ(SIU5、Grass Technologies、RI、USA)を介してフック電極に送達し(Stim.CまたはStim.D)、EUS収縮および>30のcmH2Oの尿道圧増加を誘発した。LabViewプログラム(National Instrument、TX、USA)を実行中のコンピュータによって生成された、二相性刺激波形を、刺激アイソレータ(A395、World Precision Instruments、FL、USA)を介して三極カフ電極に送達して陰部神経伝導をブロックし、EUS収縮を抑制した(図1)。
【0141】
刺激プロトコール
陰部神経伝導をブロックするための強度閾値は、全ての実験の開始時に、10kHz HFBSを50~60秒間、1mAから初めて1mA刻みで増える強度で適用することによって決定した。Stim.Cでの刺激によって誘発された尿道圧を完全に抑制するための10kHz HFBSの最小強度は、ブロック閾値(T)(図7参照、ここで、T=神経伝導をブロックするための10kHz刺激に関するブロック閾値)として決定した。この刺激の周波数および持続時間は、従前の実験で、刺激後ブロックを生じずに刺激中に陰部神経伝導を一貫してブロックすることが示されたものである。10kHzの神経ブロックは周知であり、最近の研究は10kHzが刺激後ブロックを誘発するために極めて長い刺激持続時間(10~30分)を要することを示していることから、10kHzブロック閾値を本研究での参照強度として選択した。最初の3匹のネコを用いた予備研究において、LFBS(1kHz、500Hz、または100Hz)を陰部神経に、異なる強度(1T、2Tまたは3T)、異なる持続時間(5秒~3分)で無作為に適用し、LFBS後ブロックが生じ得るかどうかを決定した。全ての実験において、Stim.C部位(周波数30Hz、パルス幅0.2ms、5秒オンおよび55秒オフ)における刺激がEUS収縮を誘発できなかった場合に、Stim.D部位(周波数30Hz、パルス幅0.2ms、持続時間5秒)における刺激はなお>30cmH2OのEUS収縮を誘発したことを示すことにより(図8参照)、Stim.BがLFBS後神経ブロックの部位と特定された。残りの7匹のネコで、完全なLFBS後ブロックを誘発するためのLFBS(1kHz、500Hz、または100Hz)の最小強度および持続時間を体系的な様式で調べた。完全なLFBS後ブロックは、Stim.C(周波数30Hz、パルス幅0.2ms、5秒オンおよび55秒オフ)における<5cmH2O尿道圧までの刺激によって誘発される少なくとも1回のEUS収縮の抑制と定義された。試験は、1T、2Tおよび3Tの増加強度で適用される持続時間60秒の1kHz LFBSを用いて開始した。完全なLFBS後ブロックが生じなかった場合、LFBS強度を3Tに維持し、完全なLFBS後が見られるまで試験を繰り返して刺激持続時間を30秒ずつ連続的に増した(図9参照)。その後、5秒の持続時間で開始し、1Tでの500Hz LFBSを行った。次に、持続時間を5~10秒刻みで最大60秒まで連続的に増した。完全なブロックが惹起されなかった場合、その後、強度を60秒で2Tに、次に、必要であれば60秒で開始して3Tに増し、その後、完全なLFBS後ブロックが見られるまで、連続5回の第2の持続時間の増加を行った。最終の試験系では、最初に、1T強度および持続時間5秒で100Hz LFBSを適用した後、連続的な5~10秒の増加を最大60秒まで行った。完全なLFBS後ブロックが見られなかった場合、強度を3Tおよび持続時間5秒に増し、その後、完全なLFBS後ブロックが見られるまで、持続時間を5~10秒のステップで連続的に増した。各LFBS試験の終了時に、次のLFBS期間を適用する前にEUS収縮を完全に回復させるために休息期間(3~30分)を挟んだ。1kHzを14神経(7匹のネコで左右)で試験し、500Hzを9神経で試験し、100Hzを6神経で試験した。
【0142】
データ分析
回復期間は、EUS収縮圧が刺激前の圧力の>90%に達するのに要する時間と定義された(図10、上段のパネル)。異なる周波数(1kHz、500Hz、および100Hz)で完全なLFBS後ブロックを誘発するための最小LFBS刺激持続時間を比較した。異なる動物において同じ条件下で得られたデータの平均を取り、平均+標準誤差として表した。有意差を検出するために、対応のないスチューデントのt検定を行った(p<0.05)。
【0143】
結果
各実験の始めに、陰部神経の、ブロック電極(Stim B)に対して中央部(Stim C)および遠位部(Stim D)における電気刺激(30Hz間欠的、5秒オンおよび55秒オフ)により誘発されたEUS収縮を示す尿道圧応答(図3)は、一定の強度範囲にわたって惹起された。両部位で>30cmH2Oの尿道圧においておよそ等しい増加を生じた刺激強度(0.6~1.2V、パルス幅0.2ms)を、LFBSブロックに対する感受性に関して試験した対照応答を惹起するための残りの実験に使用した。最初の3匹のネコにおける予備研究では、異なる周波数(1kHz、500Hz、または100Hz)および刺激強度でLFBSの効果を調べた。刺激強度を、尿道圧に一時的に増加をもたらした10kHzでの刺激強度閾値(T)、次に、Stim.Cでの刺激に対する尿道圧の完全ブロックを参照することで、各動物において正規化した(図7参照)。図8に示されるように、LFBS(Stim.B:1kHz、3T=9mA、120秒)は、刺激中の緊張性のEUS収縮およびStim.Cの電極による電気刺激(30Hz、0.2ms、0.6V、5秒オンおよび55秒オフ)によって誘発されたEUS収縮を完全に抑制した全なLFBS後ブロックを誘発した。EUS収縮は、LFBS後に約5.5分内に徐々に回復した(図8)。LFBS後ブロック中、遠位電極(Stim.D:30Hz、0.2ms、0.6V、5秒オン)での刺激は、事前のLFBS(図8)と同じ振幅のEUS収縮を誘発し、このことはLFBSがStim.B部位において局部的に陰部神経をブロックしたのであって、遠位に神経、神経筋接合部の部位をブロックするのでも、またはEUS筋の疲労によるのでもないことを示す。
【0144】
1kHzの刺激の後に完全なLFBS後ブロックを誘発するために要される最小刺激強度および持続時間を決定するための探索プロトコールを図9に示す。持続時間60秒の1kHz LFBSは強度を1Tから3Tに増加させたことから、LFBS後ブロックをまず、3T強度においてEUS収縮圧の50%の低下として観察された(図9の上のトレースを参照)。3T強度において、刺激の持続時間の60秒から150秒へのさらなる増加は、完全なLFBS後ブロックを生じた(図9の下のトレースを参照)。従って、完全な神経ブロックを誘発するための最小刺激強度および持続時間は、1kHz LFBSに関して3Tおよび150秒であると決定された(図9)。このネコにおいて同じ神経を用い、完全なLFBS後ブロックを誘発するための、500H(図10、上段のパネル)または100Hz(図10、下段のパネル)のLFBSに関する最小刺激強度および持続時間も決定した。完全なブロックからの回復は、両方の刺激周波数について同様の経時的推移を示した(図10)。このネコでは、完全なLFBS後ブロックを誘発するために、1kHz、500Hz、および100Hz LFBSで3T強度が必要とされ、ブロックはまた、他の6匹のネコにおいて異なる周波数で、1Tまたは2T強度においても見られた。平均において(N=7匹)、ブロックは様々な刺激強度(1~3T)で生じたが、完全ブロックを誘発するための最小刺激持続時間は、周波数が100Hzから1kHzに増加した時、23±8秒から95±14秒に有意に(p<0.05)増加した(図11、上段のパネル)。最小刺激強度および持続時間において、異なる周波数の刺激によって誘発された完全なLFBS後ブロックは、同様の完全ブロック持続時間(図11、中段のパネル)および回復期間(図11、下段のパネル)を有した。最小刺激強度および持続時間において誘発されたLFBS後ブロックは、3種類の周波数(図11、中段および下段のパネル)に関して同じ時間(平均10~15分)内の全ての実験で完全に可逆的であった(図8~10)。
【0145】
考察
ネコにおけるこの研究により、陰部神経伝導の刺激後ブロックは周波数1kHz未満(図8~10)およびより低い周波数のLFBSによって誘発可能であり、完全なLFBS後ブロックを誘発するために必要な持続時間はより短いことが判明した(図11、上段のパネル)。最小強度および持続時間のLFBSによって誘発されたブロックは、異なる周波数において同様の回復期間内で完全に可逆的であった(図11、中段および下段のパネル)。これらの結果は、二相性刺激波形によって神経伝導のブロックの基礎にある、あり得る機構を理解するために有価な情報を提供する。本研究はまた、従来の10kHzのHFBSは刺激後ブロックを達成するためにずっと長い刺激持続時間(10~30分)を要していたところ、30~60秒内に低周波数≦1kHz)で刺激後ブロックを誘発するための臨床適用の機会を拓く(図11、上段のパネル)。
【0146】
LFBS後ブロックは完全に可逆的であり、これは神経がLFBSによって損傷を受けるおそれがないことを示す。従って、LFBS後ブロックは軸策伝導の基礎にあるイオン機構の変更によって引き起こされると仮定することが妥当である。従前のコンピュータシミュレーション研究では、内向きのナトリウム流と外向きのカリウム流を生じ得ることが明らかにされた。従って、LFBSが継続すると細胞内および細胞外のイオン濃度が劇的に変更されるはずであると予想することが妥当である。LFBSが終了した際、イオン濃度におけるこれらの大きな変化は、活動電位の生成に必要な正常な膜透過イオン勾配を妨げ、神経伝導ブロックを引き起こすはずである。膜透過イオンポンプは正常な細胞内および細胞外イオン濃度を徐々に回復させるので、LFBS後ブロックはゆっくり消失し、神経伝導が回復する。コンピュータシミュレーション研究によって明らかにされたこの機構は、電流研究によって見られたLFBS後ブロックを非常によく説明することができる。LFBSは刺激中に緊張性のEUS収縮を誘発したが、刺激後に神経伝導をブロックした(図8~10)ことは注目に値する。このことは、刺激中に緊張性のEUS収縮を誘発する代わりに神経ブロックを生じたが刺激後に神経をブロックしなかったHFBS(10kHz)(図7)とは劇的な対比である。これらの結果は、LFBS後ブロックと刺激中にHFBSによって誘発されるブロックとは機構が非常に異なることを示す。実際に、本発明者らの従前のコンピュータシミュレーション研究は、刺激周波数≧5kHzにおいてカリウムチャネルを絶えず開放状態で維持する、HFBSの異なるブロック機構を明らかにした。これは、刺激後に起こる、膜透過イオン勾配の変化によって媒介されるブロックではなく、刺激中に神経伝導ブロックを生じる(図7)。
【0147】
また、より低い周波数で、二相性刺激波形各刺激パルス(図3参照)は、より多くのナトリウムイオンおよびカリウムイオンに軸策膜を通過させ得る、従って、イオン濃度の変更において、より短い持続時間の刺激パルスを有するより高い周波数の刺激よりも有効であり得る、より長い持続時間を有することを注記しておくことも重要である。このことは、なぜより低い周波数(100Hz)の刺激が、完全なLFBS後ブロックを誘発するために、より高い周波数(500Hzまたは1kHz)よりも必要な刺激持続時間が短いかを説明し得る(図11、上段のパネル)。また、この所見から、より低い周波数(<100Hz)がさらにより短い持続時間で有効であるかどうかという疑問も持ち上がる。しかしながら、極めて長い刺激パルス中、ナトリウムチャネルおよびカリウムチャネルはパルスの開始時には開いているが、パルスの終了時にはイオンチャネルの速度論のために閉じていることから、この提案される機構は最小有効周波数を持つはずである。従って、極めて低い周波数(すなわち、極めて長い刺激パルス)の場合、長い刺激パルスの最終相での内向きのナトリウム流および外向きのカリウム流は低下し、細胞内および細胞外のイオン濃度に対する影響が小さくなるので、LFBSは効果が小さくなる。
【0148】
LFBS後ブロックを生じるための最小刺激持続時間は周波数に依存するが、異なるLFBS周波数によって誘発された神経ブロックも回復に関しては同様の経時的推移を示す(図11、中段および下段のパネル)。異なる周波数での完全な伝導ブロックはおそらく最小強度および持続時間のLFBSにより誘発された同じイオン濃度変化の後に起こっているので、このことは予想されることであるが、回復は、膜ポンプが正常なイオン濃度を回復させるために必要な時間の後に起こり、回復の開始点は100Hz~1kHzの刺激の後には同じであるはずであるので、これは周波数に依存するはずである。しかしながら、イオン濃度仮説に基づけば、LFBS後ブロックの持続時間は、高い強度または長い持続時間のLFBSによって増大されるはずである。神経組織損傷を引き起こすことなく、長い持続時間の強いLFBSによって誘発されるLFBS後ブロックの最大持続時間は、やはり決定する必要がある。加えて、LFBS後ブロックを誘発するための固定周波数でのLFBSに関する強度-持続時間の関係、ならびに固定持続時間のLFBSに関する強度-周波数の関係も研究する必要がある。これらの関係は、神経ブロックのイオン濃度仮説を支持するまたはそれに反論するためのさらなる情報を与えるであろう。
【0149】
LFBSは常に、それがLFBS後ブロックを誘発し得るまで、刺激中に緊張性の神経発火を生じる(図8~10)。従って、LFBSは慢性疼痛の治療のために末梢神経をブロックするために臨床使用される可能性は低い。しかしながら、LFBS後ブロックは、初期の緊張性の神経発火が許容できる臨床適用では極めて有用である。例えば、LFBS後ブロックは、本研究に示されるように、陰部神経伝導をブロックすることによって、脊髄損傷後の排尿筋括約筋共同運動障害を予防し、効率的排尿を可能とするために使用することができる。2~5分の完全なLFBF後陰部神経ブロック中(図11、中段のパネル)、EUSは弛緩して、低い膀胱圧で効率的排尿が生じることを可能とする。
【0150】
要約すると、本研究では、低い(≦1kHz)周波数の二相性刺激波形を用いて神経伝導をブロックするための新規な方法が見出された。これらの結果により、HFBS(≧5kHz)だけでなくLFBS(≦1kHz)によっても刺激後ブロックが誘発され得ることが確認され、このことは、イオン濃度の変化が二相性刺激波形による神経伝導ブロックに重要な役割を果たし得るという理論を裏付ける。LFBS後ブロックは、初期の緊張性の神経発火が許容できる多くの臨床適用で使用可能であり、新規な神経調節デバイスを開発する機会を提供する。
【0151】
例3
材料および方法
図3に示されるような実験設定を用いて、図12に示される結果も得た。ただし、LFBSを送達して陰部神経伝導をブロックするために、カフ電極(図3のStim.B)は、フック電極または単一リード電極に置き換えた。
【0152】
結果
図12の上段のパネルに示されるように、1kHz、0.5mA、パルス幅0.2msで2.5分間ブロック刺激を送達する二極フック電極(Stim.B)は刺激後ブロックを提供することができる。また、示されているように(図12、下段のパネル)、LFBS(100Hz、0.5mA、パルス幅0.2ms、30秒間)を送達するための単一リード電極の使用も同様に刺激後ブロックを提供することができる。
【0153】
考察
本明細書に提示される結果は、神経を包囲する、または少なくとも部分的に包囲するために接近する必要があるという点で侵襲性の高い二極/三極カフ電極は、LFBSの送達に必要とされないことを示す。むしろ、対象とする神経(例えば、陰部神経)の近位に配置した単電極リードが、本明細書に述べる治療効果を送達するために、ブロックを、刺激後ブロックとともに提供することができる。
【0154】
現在のところ何が最も実用的で好ましい実施形態と考えられるかをもとに例示のために方法およびデバイスを詳細に説明したが、このような詳細は単にその用途に関するものであり、このようなシステムおよび方法が開示される実施形態に限定されず、逆に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある改変および等価の構成を包含することが意図されるものと理解されるべきである。例えば、本システムおよび方法が可能な範囲で、任意の実施形態の1以上の特徴を任意の他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせ得ることを企図したものであると理解されるべきである。

図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】