(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】荷電粒子のパルス発生器および荷電粒子のパルス発生器を使用するための方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20220831BHJP
H01J 40/06 20060101ALI20220831BHJP
H01J 49/08 20060101ALI20220831BHJP
H01J 49/24 20060101ALI20220831BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20220831BHJP
H01J 37/252 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01J49/00 130
H01J40/06
H01J49/08
H01J49/24
H01J37/073
H01J37/252 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578031
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020068427
(87)【国際公開番号】W WO2021001383
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲリオック,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ルノー,ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オクセンアンドレール,トマ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA21
5C101BB02
5C101CC04
5C101CC11
5C101DD05
5C101DD19
5C101DD25
5C101DD30
5C101DD38
5C101EE04
5C101EE70
5C101FF01
5C101FF03
5C101FF09
5C101GG02
(57)【要約】
本発明の主題は:真空チャンバ(V)を;備える荷電粒子のパルス発生器であり、前記発生器は:真空チャンバ(V)が、10-6mbarと大気圧との間に含まれる内部動作圧力を維持するように構成され;真空チャンバ(V)が、光電陰極(PH)と陽極(AN)とを収容するように構成され;光電陰極(PH)と陽極(AN)とが、30mm以下の調整可能な距離(L)だけ離され;真空チャンバ(V)が、パルス光が最初に光電陰極の背面に到達できるようにする窓(F)を備え;陽極が、光電陰極の下流に配置され、荷電粒子の通過に適したオリフィスを有し;荷電粒子の発生器が、光電陰極と陽極との間に電位差を印加するための手段を備え、前記電位差が、荷電粒子を加速するように構成されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のパルス発生器であって、
- 真空チャンバ(V)を備え、
前記発生器は、
- 真空チャンバ(V)が、10
-6mbarと大気圧との間に含まれる内部動作圧力を維持するように構成され、
- 真空チャンバ(V)が、光電陰極(PH)と陽極(AN)とを収容するように構成され、光電陰極(PH)と陽極(AN)とは、30mm以下の調整可能な距離(L)だけ離され、
- 真空チャンバ(V)が、パルス光が最初に光電陰極の背面に到達できるようにする光学窓(F)を備え、
- 陽極が、光電陰極の下流に配置され、荷電粒子の通過に適したオリフィスを有し、荷電粒子の前記パルス発生器が、光電陰極(PH)と陽極(AN)との間に電位差を印加するための手段を備え、前記電位差が、荷電粒子を加速するように構成されることを特徴とする、パルス発生器。
【請求項2】
光電陰極(PH)と陽極(AN)との間の距離(L)が、10mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項3】
光電陰極(PH)と陽極(AN)との間の距離(L)が、2mm未満であることを特徴とする、請求項2に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項4】
荷電粒子のパケットを取得できるように、光電陰極のバイアス電圧が、絶対値で30kV以下であり、各パケットが、5ps以下の時間的持続時間を有することを特徴とする、請求項3に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項5】
パルス光源が、5ps以下の時間的持続時間を有する光パルスを生成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項6】
破壊検出器(CL)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項7】
破壊検出器(CL)が、陽極の近くに配置され、
- 誘電率の高い絶縁材料で作られた基板(1)と、
- 陽極と同じ電位にされた導電性材料で作られたリング(2)およびステム(3)と、
- 導電性材料で作られたステム(4)とを備え、前記ステムは移動可能であり、導電性リングに近づくことができることを特徴とする、請求項6に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項8】
破壊検出器が、使用される光電陰極のバイアス電圧下での電気的破壊圧力を判定するように構成されることを特徴とする、請求項6または7に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項9】
前記真空チャンバが、分析されるサンプル(E)を備え、陽極と、分析されるサンプルとの間の距離d1が、0<d1≦0.7mmとなることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項10】
前記真空チャンバが、荷電粒子に対して透明な窓(M)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項11】
真空チャンバの外部に配置された、分析されるサンプル(E)を備えることを特徴とする、請求項1から8および10のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項12】
サンプルの分析のための診断モジュール(D’)を備えることを特徴とする、請求項9または11に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項13】
診断モジュール(D’)が、0<d2≦60mmとなるように、サンプルから距離d2に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項14】
光電陰極(PH)が、薄い光学ブレードタイプの基板上にナノメートルの金属スタックを備えることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項15】
陽極(AN)のオリフィスが異方性であり、第1の特性寸法および第2の特性寸法を有し、第2の特性寸法が、第1の特性寸法よりも少なくとも2倍大きいことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項16】
陽極の異方性オリフィスが、スロット形状であることを特徴とする、請求項15に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項17】
スロットが、少なくとも2つの平行なエッジを備え、2つの平行なエッジが、2つの異なる電位にあることを特徴とする、請求項16に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項18】
荷電粒子のパケットの時間的持続時間の判定のための別の診断モジュール(D)を備えることを特徴とする、請求項17に記載の荷電粒子のパルス発生器。
【請求項19】
請求項4から13のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器を使用して、以下のステップ、
- サンプル(E)を真空チャンバ(V)に配置するステップ、
- 真空チャンバ(V)内に、10
-6mbarと、大気圧との間の真空を形成するステップ、
- 荷電粒子のパルス発生器を、パルス光源の前のテーブルに配置するステップ、
- サンプル(E)の分析のための診断モジュール(D’)を、サンプル(E)の下流の所定位置に位置づけるステップ
を含むことを特徴とする、サンプル(E)を分析するための方法。
【請求項20】
モジュールD’が、真空チャンバ(V)の内部に配置されることを特徴とする、請求項19に記載の分析方法。
【請求項21】
モジュールD’が、真空チャンバ(V)の外部に配置されることを特徴とする、請求項19に記載の分析方法。
【請求項22】
請求項4から13のいずれか一項に記載の荷電粒子のパルス発生器を使用し、以下のステップ、
- 真空チャンバ(V)内に、10
-6mbarと、大気圧との間の真空を形成するステップ、
- 荷電粒子のパルス発生器を、パルス光源の前のテーブルに配置するステップ、
- サンプル(E)を、真空チャンバ(V)の下流の所定位置に配置するステップ、
- サンプル(E)の分析のための診断モジュール(D’)を、サンプル(E)の下流の所定位置に位置づけるステップ
を含むことを特徴とする、サンプル(E)を分析するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、物理化学的、または生物学的分析のための荷電粒子の発生器の分野に関する。本発明の主題は、本発明の実施形態によれば、1ナノ秒以下、もしくは5ピコ秒以下さえもの、または100フェムト秒以下さえもの時間的持続時間を有する粒子のパケットを発生させることができる荷電粒子のパルス発生器である。
【0002】
本発明による発生器は、電子またはイオンのパケットを生成することができる。本発明によるデバイスの用途は、電子と物質との相互作用のすべての分野:回折(LEED、RHEED、気相、ナノオブジェクト、USD)によるキャラクタリゼーション、表面の物理的研究、オージェ分光法、実験およびイオン化ソース(エアロゾル、質量分析)、材料の硬化、照射(シンチレータのテスト、シミュレーション照射、マイクロマニュファクチャリング、生物学的材料)、CND、汚染物質の分析、分光法、電子誘導脱離に関する。本発明の別の主題は、本発明による荷電粒子の発生器を使用するための方法である。
【背景技術】
【0003】
比較的最近の電子または荷電粒子の発生器の分野は、互いにほとんど交流せず、おのおのが体系的な作業慣行を有し、ほとんど疑問視されておらず、研究者の各ファミリーの技術的起源に起因するいくつかの技術ファミリーに分割されている。おのおのにおいて、何十年にもわたる研究および実験により、優れた妥協点を表す技術的な選択が支持されるようになり、この点で疑問視されることはなくなった。したがって、各ファミリーは、最適化されたタイプのソースを実現するが、それは前記妥協点または作業慣行に関してである。これは、発明されたソースの特性を強く方向付ける技術的選択につながる。
【0004】
第1のファミリーは、加速器または高エネルギ物理学者のファミリーである。第1のファミリーは、大きさが重要であるロバストで非常に重い機器を開発する。第1のファミリーは、非常に高い真空(圧力が10-7mbar未満であり、通常は圧力が10-9mbar未満の超真空)を想定する。距離は、デシメートルもしくはメートル、またはそれ以上でさえあり、様々な電極に印加される電圧は数十kV、さらにはMVまたはGVでさえある。絶縁体も頑丈で、実績のある材料でできているため、必ずしも機械加工は容易ではない。
【0005】
シンクロトロンでは、得られる粒子は、高い反復率(300GHz)での連続ストリームまたは多数の粒子のパケットで、非常にエネルギが高い。これらの粒子はリングから出てこないため使用されないが、光子を生成するのに役立つ。X線自由電子レーザ(XFEL)は、シンクロトロンに取って代わる傾向にあり、光子ユーザも自由に使用できる機械である。
【0006】
加速器では、検出する事象の複雑さおよび検出器の動作のために、反復率は25から50MHzである。
【0007】
次に、空間電荷は高く、同じパケットの粒子間のクーロン反発は、大規模な強力な圧縮および集束システム(静電レンズまたはRFキャビティなど)の使用を必要とし、これは、放出される粒子のパケットの時間的持続時間を大幅に延長する。それに加えて、機器は、一般的に、厳しい放射線環境に対処する必要がある。このファミリーでは、高い電流強度が必要なため、電子銃は、パルス化され得るが、単一電子レジーム(すなわち、パケットごとに数個の電子)になることはない。
【0008】
たとえば、2007年に「Review of Scientific Instruments」N.78に掲載されたA.Janzenらの文献「A pulsed electron gun for ultrafast electron diffracton at surfaces」は、電子ビームによる表面の分析のための電子銃を開示している。このデバイスは、ターゲットとなる用途に必要な超真空を維持することを可能にする。この銃では、電気的破壊のリスクを最小限に抑えるために、陰極と陽極とが可能な限り離れて配置され、電子ビームの集束は、静電レンズを使用して実行される。
【0009】
2010年に「Physical Review Letters」N.104に掲載されたC.P.Hauriらの文献「Intrinsic Emittance Reduction of an Electron Beam from Metal Photocathodes」は、高エネルギ物理学で通常使用されるMo、Nb、またはAlなどの様々な金属変換ターゲットの使用を開示している。しかしながら、この文献は、大きなサイズのデバイスのみを参照している。
【0010】
第2のファミリーは、光学物理学者のファミリーである。第2のファミリーは、明らかに、一次レーザソースおよび変換ターゲット、通常は金属または半導体を使用するが、プラズマも使用する。多くの場合、依然として固定されているが、10Hzから数MHzの再現率でパルス化される。実施形態は、空間電荷を低減するために、第1のファミリーよりも著しく小さい粒子のパケットを得るように務める。このファミリーの場合、主な規定された目的は、真空度、単純さ、または使いやすさを考慮せずに、粒子のパケットの最終的な持続時間(約100アット秒から約100フェムト秒まで)を得るためのレースである。関与するエネルギは、第1のファミリーのエネルギよりも低い可能性があるが、ターゲットとなるビームエネルギは、一般に、30keVから200Mevである。このファミリーでは、電子銃は、単一電子レジームでパルス化される場合があるが、必ずしもそうであるとは限らず(第1のファミリーのように、数万の電子のパケットを供給する場合があり)、距離は、デシメートルまたはメートルで、高真空または超真空タイプの真空が必要である。
【0011】
たとえば、2013年に「Chemical Physics」に掲載されたP.Baumの文献「On the physics of ultrashort single-electron pulses for time-resolved microscopy and diffraction」は、特に、各パケットを構成する粒子の数を低減することによって、電子のパケットの持続時間を短縮する方法を開示している。しかしながら、これらの方法は、大型で厳しい使用条件のデバイスにのみ適用できる。
【0012】
2009年にApplied Physics B に掲載されたD.Wytrykusらの文献「Ultrashort pulse electron gun with a MHz repetition rate」は、2.7MHzの周波数で粒子のパケットを生成する電子銃を記述している。これらのパケットは、非常に少数の電子しか備えていない場合がある。しかしながら、生成される電子のエネルギ分散は大きく、ΔE/E比は、0.12eVのオーダである。さらに、このシステムは、光電陰極とサンプルとの間に、300mmのオーダの大きな距離を必要とし、これは、デバイスのコンパクト化を大幅に制限する。さらに、電子のパケットの時間的持続時間は測定されず、理論値のみしか与えられない。
【0013】
第3の技術ファミリーは、化学物理学者のファミリーである。彼らは物質をイオン化するのに十分なエネルギの粒子を生成しようと努力しているが、一次ソースを制御していない。第3の技術ファミリーは、サンプルを粒子の生成物のできるだけ近くに配置することを目的としており、その用途のために必ずしも高真空または超真空を求める必要はない。このように開発された器具は、時間的分解能が低く、エネルギの定義が不十分である。これらの2つのパラメータが、研究にとって重要になると、物理化学者は、第1のファミリーの器具に頼らねばならない。
【0014】
たとえば、2006年にPhilosophical Transactions of the Royal Society A に掲載されたJ.R.Dwyerらの文献「Femtosecond electron diffraction: ’making the molecular movie’」は、超真空下でのフェムト秒電子の回折と応用に直接関連して、電子のフェムト秒パケットの生成のレビューを提供する。この文献はさらに、現時点では、生成された新しいタイプの電子パケットを監視するのに十分な分解能の検出システムが存在しないことを教示している。
【0015】
S.Liedtkeらの文献「Medium Vacuum Electron Emitter as Soft Atmospheric Pressure Chemical Ionization Source for Organic Molecules」は、高い内部動作圧力を有する電子のパケットのソースを記述している。しかしながら、このデバイスは、陰極を加熱すること、すなわち熱イオン放出によって電子のソースを使用する。これは、時間的分解能が低く、使用温度が高く、これは、壊れやすいサンプルまたは液体サンプルには適合しない。
【0016】
第4の技術ファミリーは、電子顕微鏡物理学者の技術ファミリーである。熱イオンソースと、第1のソースの放出を変調する光子のソースとを、電子顕微鏡において協調させることを目的とする文献WO2010/042629 A2によって第4の技術ファミリーを説明できる。文献DE 10245052 A1は、電子顕微鏡に関するものであるが、その電子のソースは、超高速レーザとの相互作用によってアット秒方式でチョッピングされた電子のパケットのストリームを使用して、第2のファミリーの技法にしたがって生成される。アセンブリは、静電集束レンズとともに超真空下にある。
【0017】
出願人はまた、光電放出によって粒子のパケットを生成できる電子銃を開発した。LUBIOLと呼ばれるこのデバイスは、10-7mbarのオーダの非常に低い動作圧力の真空チャンバを有する。電子のパケットは、103のオーダの多数の粒子を備える。電子の運動エネルギはkeVのオーダであり、反復率は、kHzのオーダである。静電レンズのシステムを使用して、電子ビームのこれらの特性を、サンプルのレベルに維持する。このシステムには、特に、高真空がないことが不可能、すなわち、動作圧力を上げることが不可能である、ガス雰囲気の存在下でビームを抽出することが不可能である、壊れやすいまたは液体または脱着剤のサンプルで作業することが不可能である、システムの大きさを低減することが不可能である、および、ロバストで使いやすい器具を得ることが不可能である、といういくつかの欠点がある。
【0018】
より一般的には、先行技術の荷電粒子の発生器は、特定のサンプルの分析のためのそれらの使用を妨げる制約を有する。たとえば、高真空を必要とするデバイスでは、生物学的、液体、または脱着剤のサンプルの分析はできない。それに加えて、高い動作圧力を可能にし、したがって壊れやすいサンプルに適合するシステムは、時間的分解能およびエネルギ分解能が低い。
【0019】
さらに、当業者に知られている荷電粒子のほとんどの発生器は、非常に高い電子加速電圧を使用する。これは高いエネルギ消費につながる。それに加えて、電気的破壊のリスクを低減するために、陰極または光電陰極と、陽極との間の距離を大幅に大きくする必要がある。したがって、低バルクの荷電粒子の高速パルス発生器は存在しない。
【0020】
これらの技術的問題を少なくとも部分的に解決するために、本発明は、液体または生物学的サンプルなどの壊れやすいサンプルをできるだけ破壊せずに、可搬性の荷電粒子の超高速パルスソースを実現すること、したがって、大きさおよびエネルギ消費が可能な限り低く、ピコ秒のオーダの時間的分解能を有する、可搬性の荷電粒子の超高速パルスソースを実現することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2010/042629号
【特許文献2】独国特許出願公開第10245052号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】A.Janzenら、「A pulsed electron gun for ultrafast electron diffracton at surfaces」、Review of Scientific Instruments、N.78、2007年
【非特許文献2】C.P.Hauriら、「Intrinsic Emittance Reduction of an Electron Beam from Metal Photocathodes」、Physical Review Letters、N.104、2010年
【非特許文献3】P.Baum、「On the physics of ultrashort single-electron pulses for time-resolved microscopy and diffraction」、Chemical Physics、2013年
【非特許文献4】D.Wytrykusら、「Ultrashort pulse electron gun with a MHz repetition rate」、Applied Physics B 、2009年
【非特許文献5】J.R.Dwyerら、「Femtosecond electron diffraction: ’making the molecular movie’」、Philosophical Transactions of the Royal Society A 、2006年
【非特許文献6】S.Liedtkeら、「Medium Vacuum Electron Emitter as Soft Atmospheric Pressure Chemical Ionization Source for Organic Molecules」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的のために、本発明は:
- 真空チャンバ;
を備える荷電粒子のパルス発生器に関し、前記発生器は、以下を特徴とする:
【0024】
- 真空チャンバが、10-6mbarと大気圧との間に含まれる内部動作圧力を維持するように構成される。
【0025】
- 真空チャンバが、光電陰極と陽極とを収容するように構成され、光電陰極と陽極とは、30mm以下、好ましくは20mm以下の調整可能な距離だけ離される。
【0026】
- 真空チャンバが、パルス光が最初に光電陰極の背面に到達できるようにする光学窓を備える。
【0027】
- 陽極が、光電陰極の下流に配置され、荷電粒子の通過に適したオリフィスを有する。
【0028】
- 荷電粒子の前記パルス発生器が、光電陰極と陽極との間に電位差を印加するための手段を備え、前記電位差が、荷電粒子を加速するように構成される。
【0029】
荷電粒子は、特徴付けられるサンプルの化学的、物理化学的、または生物学的分析を目的とした電子またはイオンを意味すると解釈される。
【0030】
上流および下流は、パルス光源によって放出される光ビームの方向に対するパーツの位置を意味すると解釈される。同様に、パーツの前面は光線が到達する側であり、背面は反対側である。
【0031】
実施形態によれば、発生器は、最初に、電子を生成し、これらは、任意選択的に、適切な媒体との相互作用によってイオンに変換される。
【0032】
有利には、本発明による発生器は、たとえば5ピコ秒(ps)以下の超短時間的持続時間を有する荷電粒子のパケットを生成することを可能にする。実施形態によれば、生成されたパケットは、少数の荷電粒子、または単一の荷電粒子さえも備える。より一般的には、本発明は、本発明の実施形態によれば、1ナノ秒(ns)以下、さらには5ピコ秒以下、またはさらには100フェムト秒(fs)以下さえもの時間的持続時間を有する荷電粒子のパケットを得ることを可能にする。
【0033】
パルス光源は、光パルスを提供できる光源を意味すると解釈される。実施形態によれば、パルス光源は、80MHzの反復率で持続時間が120fsのパルス、または100MHzの反復率で持続時間が100fsのパルスを提供するレーザである。実施形態によれば、パルスは、紫外線を中心とする平均波長、たとえば、約266nmを有する。実施形態によれば、使用される光は、70ピコ秒以下の時間的持続時間を有するパルスを放出するパルスLEDなどの非コヒーレント光である。
【0034】
真空チャンバは、大気圧以下の内圧を維持することを可能にするデバイスを意味すると解釈される。真空チャンバはさらに、荷電粒子のパケットの生成に必要な要素を収容するように構成される。実施形態によれば、真空チャンバはまた、特徴付けられるサンプルを収容するように構成される。別の実施形態によれば、真空チャンバは、荷電粒子に対して透明であり、チャンバから到来するそれらの経路の軸上に配置される窓を備え、サンプルは、チャンバの外部のこの経路上に、好ましくは可能な限り近くに配置される。
【0035】
真空チャンバは、10-6mbarと大気圧との間に含まれる動作圧力を維持するように構成される。特に、本発明によるデバイスは、10-3mbarと大気圧との間に含まれる動作圧力で動作するように構成され得、これは、壊れやすい、液体または生物学的サンプルの分析を可能にする。この分析は、診断モジュールを使用して実行される。
【0036】
光電陰極は、光電効果によって電子を、すなわち光電子を放出することを意図された電極を意味すると解釈される。光電子は、パルス光を光電陰極に送ることによって得られる。実施形態によれば、光電陰極は金属である。
【0037】
光電陰極はバックライト照明され、したがって、電子は、光電陰極の下流側で、したがって、光ビームの光子と同じ方向に放出される。光電陰極の出口で放出された電子は非常に低速であり、次に、陽極が電位0にあり、光電陰極を0から-30kVの電位にすることによって加速される。
【0038】
陽極上に存在するオリフィスは、荷電粒子の通過と、光電陰極と陽極との間に印加される電位差による加速を可能にする。
【0039】
陽極から到来する荷電粒子は、次に、分析されるサンプルに送られ得る。
【0040】
光学窓は、パルス光が光電陰極に到達することを可能にする光学要素を意味すると解釈される。光学窓は、たとえば、ポートホール、光ファイバの通路、レンズ、またはこれらの要素の組合せを備え得る。光学窓は漏れがなく、真空チャンバの内部の動作圧力の維持を保証する。実施形態では、光学窓は、直接、光電陰極の入力面である。
【0041】
陰極と陽極との間の距離は調整可能であり、これにより、破壊することなく粒子に与えることができる最大エネルギを適応させることが可能になる。有利には、これにより、印加電圧に応じて非常にコンパクトなデバイスを得ることが可能になる。
【0042】
たとえば、光電陰極と陽極との間の距離Lは、1kV、または5kVさえもの光電陰極のバイアス電圧に対して300μmの値を有する。電圧は5kVに制限されているため、生成される電子ビームのエネルギが1-5keVの範囲にある場合、放射能のリスクはない。5keVまでのエネルギの場合、放射線防護の免除の恩恵を受けることができる(仏国公衆衛生法R.4451-1条およびL.1333-1条参照)。この絶対値の電圧が、10、20、または30kVのオーダであるとき、この距離は、電気的破壊を回避するために2、4、もしくは6、または10、20、もしくは30さえもの比例係数で増加するが、デバイスのサイズは、10mmの大きさのオーダに留まり、これは、先行技術よりはるかに小さい。
【0043】
有利には、したがって、光電陰極と陽極との間の距離の減少は、真空チャンバの内部のより高い動作圧力を可能にする。本発明による粒子発生器は、先行技術の粒子発生器よりも高い動作圧力で動作する。これにより、真空または超真空に適合しない生物学的または液体のサンプルの分析が可能となる。
【0044】
有利には、高い動作圧力のおかげで、特徴付けられるサンプルは、真空チャンバの内部に配置され、先行技術よりも陽極の近くに配置され得る。これにより、陽極と、分析されるサンプルとの間の距離を短縮することができ、したがって、荷電粒子のパケットの時間的分散の影響を低減することができる。言い換えれば、本発明による発生器は、5ピコ秒未満、またはピコ秒未満さえもの非常に短い時間的持続時間を有する荷電粒子のパケットを得ることを可能にする。
【0045】
有利には、本発明による荷電粒子の発生器は、当業者に知られているデバイスでは不可能な非常に高い時間的分解能で、液体または生物学的なサンプルなどの、壊れやすいサンプルを分析することを可能にする。それに加えて、本発明による発生器は、低減された大きさを有し、エネルギ消費が少ない。
【0046】
分析されるサンプルが、大気圧未満の圧力に耐えられないとき、本発明の代替手段に頼ることが可能であり、本発明の代替手段は、荷電粒子に対して透明であり、それらの経路上に設置された窓を備える。サンプルは、その場合、真空チャンバの外部にある間、この窓に対向して配置される。サンプルが液体である場合、本発明による発生器は、ビームが上に出て、粒子の出口窓が水平になるように配向され得る。
【0047】
荷電粒子に対して透明な窓が存在しない場合があり、この場合、発生器は既存の真空チャンバに直接結合される。
【0048】
実施形態によれば、光電陰極は、Au膜と、CrまたはTiで作られた関連膜とを備え、関連膜は、半導体材料で作られた、当業者によって使用される光電陰極よりも悪い真空条件を続けることなく、はるかに長い寿命を可能にする。本発明は、パルスあたりの少数の電子の意図的な選択のために、当業者によって無視された、Au膜を備えたこのタイプの光電陰極を使用することができ、これは、これらのパルスが高速で更新されるという事実によって補償される。
【0049】
実施形態によれば、真空チャンバの内部に存在する要素は、光学的品質に研磨されたブレード上への薄膜または超薄膜の堆積によって得られる。これにより、電気的破壊のリスクを低減しながら、30MV/mを超える強度を有する電場を印加することが可能になる。
【0050】
実施形態によれば、本発明による荷電粒子の発生器はさらに、光電陰極の点および迎角を変更するように、パルス光ビームの方向を変更するための手段を備える。言い換えれば、本発明による発生器は、光ビームの集束点およびその光電陰極への到達角度を変更することを可能にする。
【0051】
実施形態によれば、本発明による発生器はさらに、破壊検出器を備える。有利には、破壊検出器は、所与の電場について、電気的破壊圧力を判定することを可能にする。したがって、電気的破壊を回避しながら、高い動作圧力を選択することが可能である。
【0052】
電子銃の通常の設計では、安全マージンを伴う破壊条件の外部にあることが求められることに注意することが重要であり、それが、電極が非常に離れ、銃が数十cmの大きさを有する理由である。逆に、本発明によるデバイスは、先行技術におけるような、より高い真空によってではなく、逆に、デバイスの破壊電圧よりわずかに低い電圧に調整されたスパークギャップから構成される破壊検出器に関連付けられた、あまり著しくない真空、または疑似真空によって電気的破壊を回避し、警告信号を発して、動作条件(真空チャンバの圧力またはアノード-カソード距離)を破壊条件から少し遠ざけることができる。
【0053】
有利には、本発明によるデバイスは、本発明の実施形態によれば、1ナノ秒以下、もしくは5ピコ秒以下さえもの、または100フェムト秒以下さえもの時間的持続時間を有する粒子のパケットを生成することを可能にする。
【0054】
特定の構成では、光電陰極は負の電位になり、陽極はサンプルと同様にゼロ電位であり、したがって、特定の場合には、陽極とサンプルとの間の距離がゼロになると想定することが可能であるが、一般的には、サンプルに損傷を与えないように、スペーサを、陽極とサンプルとの間に配置するが、それは非常に薄い場合がある。光電陰極をゼロ電位にし、陽極を電位>0にすることは可能であるが、これは、ユーザおよびサンプルにとって危険であり、短絡を引き起こす可能性がある。
【0055】
光電陰極とサンプルとの間の距離は、破壊条件に近い時間的分解能(数fsまで)では大きく作用しない。
【0056】
以下の表は、電圧および光電陰極と陽極との距離について、得られた加速場、および光電陰極から25mmで得られた電子のパケットの持続時間を示す。破壊しないように、10-4mbarに対して1.5kV.mm-1からあたり、10-5mbarに対して3kV.mm-1あたり等にあるようにしていることを認識している。
【0057】
【0058】
本発明によるデバイスはまた、以下の特徴のうちの1つ以上を、それらのすべての技術的に可能な組合せにしたがって、備え得る:
【0059】
- 光電陰極と陽極との間の距離は、10mm未満である。
【0060】
- 光電陰極と陽極との間の距離は、2mm未満である。
【0061】
- 荷電粒子のパケットを取得できるように、光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で30kV以下(好ましくは、-30kVと0Vとの間に含まれる)であり、各パケットは、5ps以下の時間的持続時間を有する。
【0062】
- 荷電粒子のパケットを取得できるように、光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で10kV以下(好ましくは、-10kVと0Vとの間に含まれる)であり、各パケットは、5ps以下の時間的持続時間を有する。
【0063】
- 光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で5kV以下(好ましくは、-5kVから0Vとの間に含まれる)であり、光電陰極と陽極との間の距離は、1.5mm以下、好ましくは300μm以下である。
【0064】
- 光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で10kV以下(好ましくは、-10kVから0Vの間に含まれる)であり、光電陰極と陽極との間の距離は、3mm以下、好ましくは600μm以下である。
【0065】
- 光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で20kV以下(好ましくは、-20kVから0Vの間に含まれる)であり、光電陰極と陽極との間の距離は、6mm以下、好ましくは1.2mm以下である。
【0066】
- 光電陰極のバイアス電圧は、絶対値で30kV以下(好ましくは、-30kVから0Vの間に含まれる)であり、光電陰極と陽極との間の距離は、10mm以下、好ましくは1.8mm以下である。
【0067】
- パルス光源は、5ps以下の時間的持続時間を有する光パルスを生成する。
【0068】
- 発生器はさらに、破壊検出器を備える。
【0069】
- 破壊検出器は、陽極の近くに配置され、以下を備える:
- 誘電率の高い絶縁材料で作られた基板。
- 陽極と同じ電位にされた導電性材料で作られたリングおよびステム。
- 導電性材料で作られたステムであって、前記ステムは移動可能であり、導電性リングに近づくことができる。
【0070】
- 破壊検出器は、使用される光電陰極のバイアス電圧下での電気的破壊圧力を判定するように構成される。
【0071】
- 分析されるサンプルは、真空チャンバの内部または外部に配置される。
【0072】
- パルス発生器は、サンプルの分析のための診断モジュールを備える。
【0073】
- 分析されるサンプルは、サンプルが外部に配置されたとき、0<d2≦60mmとなるように、診断モジュールから距離d2にあり、d1は、サンプルが内部に配置されたとき、0<d2≦0.7mmとなる。したがって、サンプルおよび診断モジュールのいくつかの位置が可能である:
- 診断モジュールとサンプルが内部にある。
- 内部にサンプルがあり、外部に診断モジュールがある。
- 診断モジュールとサンプルが内部にある。
【0074】
- 本発明による発生器は、荷電粒子のビームの軸内に、前記荷電粒子に対して透明な窓を有し、チャンバ内で大気圧よりも低い圧力を保持することを可能にする。
【0075】
- 荷電粒子に対して透明な窓は膜であり、これは、サンプルが、ガスなどの低密度の場合、または液体である場合に特に適している。
【0076】
- 膜は、窒化ケイ素Si3N4またはグラフェン(C)nでできており、数nmから数百nm、通常は2から200nmの間に含まれる厚さを有する。
【0077】
- 光電陰極は、薄い光学ブレードタイプの基板上にナノメートルの金属スタックを備える。
【0078】
- 陽極のオリフィスは異方性であり、第1の特性寸法および第2の特性寸法を有し、第2の特性寸法は、第1の特性寸法よりも少なくとも2倍大きい。
【0079】
- 2つの特性寸法は、互いに直交し、両方とも荷電粒子のビームの軸に直交する。
【0080】
- 陽極の異方性オリフィスは、スロット形状である。
【0081】
- スロット形状のオリフィスは、少なくとも2つの平行なエッジを備え、2つの平行なエッジは、2つの異なる電位にある。
【0082】
- 発生器は荷電粒子のパケットの時間的持続時間の判定のための別の診断モジュールをさらに備える。
【0083】
- 破壊検出器は、真空チャンバの内部の動作圧力が、電気的破壊のリスクを回避するのに十分に低くない場合には、警告信号を提供するように、および/または、粒子の発生を停止するように構成される。
【0084】
- 荷電粒子はイオンであり、本発明による発生器はさらに以下の要素を備える:
- 電子衝突中に陽イオンを放出できるガス。
- イオンビームを集束させるための少なくとも1つの陽極。
【0085】
本発明の別の主題は、本発明による荷電粒子のパルス発生器を使用するための方法である。
【0086】
本発明による方法は、第1の使用モードにしたがって、本発明による荷電粒子のパルス発生器を使用して、サンプルを分析することを可能にし、以下のステップを備える:
- サンプルを真空チャンバに配置するステップ。
- 真空チャンバ内に、10-6mbar、好ましくは10-5mbarと、大気圧との間の真空を形成するステップ。
- 荷電粒子のパルス発生器を、パルス光源の前のテーブルに配置するステップ。
- サンプルの分析のための診断モジュールを、サンプルの下流の所定位置に位置づけるステップ。
【0087】
第1の構成によれば、モジュールD’は、真空チャンバの内部に配置される。
【0088】
第2の構成によれば、モジュールD’は、真空チャンバの外部に配置される。
【0089】
本発明による方法は、第2の使用モードにしたがって、本発明による荷電粒子のパルス発生器を使用して、サンプルを分析することを可能にし、以下のステップを備える:
- 真空チャンバ内に、10-6mbar、好ましくは10-5mbarと、大気圧との間の真空を形成すること。
- 荷電粒子のパルス発生器を、パルス光源の前のテーブルに配置するステップ。
- サンプルを、真空チャンバの下流の所定位置に配置するステップ。
- サンプルの分析のための診断モジュールを、サンプルの下流の所定位置に位置づけるステップ。
【0090】
内部動作圧力の調整は、破壊検出器を使用して行われ、調整は、所与の電場について、電気的破壊の限界における動作圧力の判定を備える。
【0091】
言い換えれば、本発明による方法は、所与の電場について、電気的破壊の限界における動作圧力を発見することを可能にする。
【0092】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図を参照して、例示の目的のために、そして決して限定するものではなく、以下に与えられる説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】サンプルの2つの可能な位置、および前記サンプルの分析のための診断モジュールを備えた、本発明による粒子発生器の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による破壊検出器の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による粒子発生器の破壊検出器の電気回路の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による粒子発生器の陽極の第1の実施形態を示す図である。
【
図5】本発明による粒子発生器の陽極の第2の実施形態を示す図である。
【
図6】異方性陽極の最小直径を通過する、陽極の断面図である。
【
図7】本発明による荷電粒子発生器の光トリガリングの異なる構成を示す図である。
【
図8】本発明による粒子発生器を較正するためのモードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
図1は、本発明による荷電粒子の発生器Gの実施形態を示す。本書の残りの部分では、発生器Gは、無差別に荷電粒子の発生器Gまたは小型銃と呼ばれる。発生器Gは、光パルスLPを放出するパルス光源Lによって照明される。光パルスLPは、トリプラデバイスTに送られ、パルスLPよりも短い波長を有する光パルスLP_UVを得ることを可能にする。次に、ビームLP_UVが光電陰極PHに送られる。
図1に示される実施形態によれば、ビームLP_UVは、光電陰極PHの正確な点に集中するようにレンズを使用して集束される。
【0095】
光電陰極PHは、バックライト照明されており、電子は光ビームの光子と同じ方向に放出され、これにより、特定の場合には、分析されるサンプルに対するそれらの効果を累積することが可能となる。実施形態によれば、光源は、1064nmのパルス光源であり、周波数クワッドルプラシステムを使用して、より高いエネルギを有する光パルスを得る。
【0096】
実施形態によれば、発生器Gはさらに、光電陰極上のビームLP_UVの到達点および迎角を変更するための手段を備える。
【0097】
実施形態によれば、パルス光源LPは、赤外線の中心波長を有するパルスを放出する。たとえば、パルスは、80MHzの反復率の800nmの中心波長を有する。パルスの時間的持続時間は、数十fsのオーダである。実施形態によれば、光源Lは、フェムト秒レーザなどのパルスレーザである。あるいは、トリガリングレーザは、パルスUV、VIS、もしくはIRレーザ、または他の任意のUV、VIS、もしくはIRパルス光源である。
【0098】
当業者に知られている方式で、トリプラTは、光源Lによって放出されるパルスの波長よりも約3倍小さい中心波長を有する光パルスLP_UVを得ることを可能にする。たとえば、トリプラTから到来する光パルスは、266nmのオーダの中心波長を有する。有利には、ビームLP_UVの光パルスは、光電陰極PHのレベルで光電子を生成するのに適している。
【0099】
本発明による荷電粒子の発生器は、その中に10-6mbar、好ましくは10-3mbarと、大気圧との間に含まれる動作圧力を維持するように構成された真空チャンバVをさらに備える。真空チャンバVは、光電陰極PHに焦点を合わせるように意図されたパルスLP_UVの通過を可能にする光学窓Fを備える。真空チャンバVは、荷電粒子のビームの軸において、前記荷電粒子に対して透明な窓Mを有し、荷電粒子に対して透明な窓Mは、たとえば、膜であり得る。この窓Mは、サンプルEおよび診断モジュールD’が、真空チャンバVの外部に配置されたときに、荷電粒子が、サンプルEおよび診断モジュールD’に到達できるようにする。窓Mは、2から200nmの間に含まれる厚さを有する。
【0100】
実施形態によれば、光電陰極PHは、薄い光学ブレードタイプの基板上のナノメートルの金属スタックから構成され、その性質は、トリガリング波長および所望の真空保持に応じている。構成金属の表面状態は、滑らかであってもまたはナノ構造であってもよい。基板は、平坦であるか、またはビームの所望の空間的形状に応じて成形され得る。
【0101】
本発明による発生器Gは、光電陰極PHから距離Lに位置づけられた陽極Aと、光電陰極と陽極との間に電場(または、電位差)を印加するための手段とを備える。この電場は、電子加速場とも呼ばれる。
【0102】
光電陰極PHと陽極ANとの間の距離Lは調整可能であり、選択された電圧に適合させることができる。たとえば、光電陰極と陽極との間の距離Lは、絶対値1kV、または5kVさえもの光電陰極のバイアス電圧に対して、300μmの値を有する。この絶対値の電圧が、10、20、または30kVのオーダであるとき、この距離Lは、電気的破壊を回避するために10、20、または30の比例係数で増加するが、デバイスのサイズは、先行技術よりもはるかに小さい、mmの大きさのオーダにある。
【0103】
実施形態によれば、光電陰極PHおよび陽極ANを備えるモジュールは機械加工され、電極は変位可能ではない。したがって、電極間の距離Lの変化は、選択された光電陰極のバイアス電圧に適した距離Lを有するモジュールを選択することによって、電極を備えるモジュールを置き換えることによって生じる。別の実施形態によれば、電極は移動可能であり、距離Lは、モジュールを変更せずに2つの電極を遠ざけるかまたは近づけることによって調整される。
【0104】
実施形態によれば、光電陰極PHと陽極ANとの間の距離Lは、30mm未満、好ましくは10mmである。
【0105】
実施形態によれば、光電子放出陰極と加速器陽極との間の距離Lは、LMax(mm)=1+V(kV)未満の数値を有し、ここで、Vは、kV単位の加速電圧であり、LMaxは、ミリメートル単位である。
【0106】
有利には、本発明は、高い動作圧力を使用しながら、光電陰極PHと陽極ANとの間の距離Lを短縮することを可能にする。これにより、生成された電子のパケットの時間的分散を低減し、時間的持続時間が短い、たとえば5ps以下の電子のパケットを得ることが可能となる。
【0107】
陽極ANは、光電陰極PHと陽極ANとの間に印加される電場によって加速された荷電粒子の通過を可能にするためのオリフィスまたは開口部を有する。
【0108】
実施形態によれば、陽極ANは、電子ビームに垂直な平面内に異方性断面を有する電子の通過のためのオリフィスを有する。
【0109】
図4に示されるように、円形陽極の場合、オリフィスの異方性断面は、2つの特性寸法:互いに垂直な、より小さな直径PDと、より大きな直径GDとを備える。
【0110】
そのような陽極は、実現が困難である下流の集束レンズを通過することなく、電子ビームの使用を可能にする。
【0111】
小さな直径は、先行技術の実施形態によるよりも実質的に小さい。より大きな直径は、最小の直径の2倍以上である。
【0112】
実施形態によれば、小さな直径は、100μmから2mmの間に含まれ、大きな直径は、100μmから20mmの間に含まれる。
【0113】
有利には、異方性陽極ANは、軸外で生成された電子をフィルタリングする役割を果たし、透過される電子の流れを犠牲にしてビームのエミッタンスを改善する。有利には、これにより、電子の数を低減し、小型銃の時間的分解能を低下させる、空間電荷効果を制限することが可能になる。
【0114】
代替案によれば、陽極は、リングまたは孔の開いた板のようなものではなく、スロット形状の荷電粒子の通過のためのオリフィスを得るように、2つの平行なリップによって互いに向かい合う2つの平坦なプレートの同じ平面内における並置である。この実施形態が、
図5に示される。
【0115】
任意選択的に、本発明による発生器Gはさらに、破壊検出器CLまたはスパークギャップを備える。
【0116】
破壊の検出は、小型銃の内部の弱い真空にも関わらず、構成要素、特に陰極および陽極の劣化がないことを保証することを可能にする。真の圧力測定は必要なく、小型銃の内部のために選択された動作圧力で、破壊のリスクがないことを確認するだけである。破壊検出器の使用は、真空チャンバの内部の圧力を測定するための手段の使用を求める当業者の直感に反するものの、破壊条件から可能な限り離れるように圧力および電圧を調整する。
【0117】
そうするために、陽極と陰極との間の破壊距離よりも短い破壊距離を有するスパークギャップが、このスパークギャップ上でスパークが生成されるように、小型銃のチャンバ内に配置される。実施形態によれば、破壊検出器CLまたはスパークギャップは、ステムの反対側に配置された導電性リングで構成され、全体が電子の伝搬方向に沿って陽極の直後に挿入される。このスパークギャップは、好ましくは、動作キャンペーンの初期調整段階で小型銃のチャンバを動作させるために望まれる電圧まで増加され、この電圧は、1kVと30kVとの間に含まれる。スパークギャップにおける破壊の出現は、スパークギャップの要素を分離する距離よりも少し大きい距離Lだけ離された機能要素、すなわち陰極および陽極を保護する。破壊検出器CLを使用すると、選択された動作電圧で、エクスプロイテーションモードでも、まったく同様に、機能構成要素を露出させることなく、破壊に非常に近づけることが可能となる。
【0118】
有利には、破壊検出器またはスパークギャップCLのおかげで、本発明による荷電粒子の発生器は、真空チャンバの内部で高圧で動作しながら、非常に短い時間的持続時間を有する荷電粒子のパケットを提供する。言い換えれば、破壊検出器のおかげで、ピコ秒のオーダの時間的分解能で、壊れやすい、液体または生物学的なサンプルを分析することが可能である。
【0119】
図1において、分析されるサンプルEは、真空チャンバVの内部または外部の両方に配置され得ることが理解され得る。サンプルの分析のための診断モジュールD’は、分析されるサンプルEの下流に依然配置されている。
図1において、サンプルEが真空チャンバVの内部に配置されるとき、診断モジュールD’は、前記チャンバVの内部または外部に配置され得ることが理解され得る。分析されるサンプルEが、診断モジュールの外部にあるとき、D’も外部にある。診断モジュールD’は、0<d2≦60mmとなるように、サンプルEから距離d2に配置される。電荷の移動を避けるために、分析されるサンプルは、診断モジュールと接触していないことが重要である。
【0120】
実施形態によれば、光電子放出陰極とサンプルとの間の距離dは、1mmと30mmとの間に含まれ、1mmは、絶対値で1kVの下部光電陰極のバイアス電圧に対してであり、30mmは絶対値で30kVのオーダの光電陰極のバイアス電圧に対してである。
【0121】
有利には、陽極ANと、分析されるサンプルEとの間の距離が小さいことにより、電子パケットの時間的分散を制限し、高い時間的分解能を得ることが可能になる。したがって、サンプルEがチャンバVの内部にあるとき、分析されるサンプルEは、0<d1≦0.7mmとなるように、距離d1にある。
【0122】
図8に示されるように、本発明による発生器Gは、電子または荷電粒子のパケットの時間的持続時間の判定のために、陽極に可能な限り近く配置された別の診断モジュールDを備え得、これは、使用されるレーザに応じて、発生器を較正するために使用され、その後、サンプル測定中に取り除かれる。この他の診断モジュールDは、スロット形状の開口部を有する異方性陽極とともに使用され得る。
【0123】
実施形態によれば、荷電粒子はガスのイオンである。この場合、ガスのイオンの発生器を得るために、以下の要素が、電子ビームの下流に追加される:
- 電子衝突中に陽イオンを放出できるガス。
- イオンビームを集束させるための少なくとも1つの陽極。
【0124】
図2は、本発明による破壊検出器またはスパークギャップCLの実施形態を示す。
【0125】
電子銃の通常の設計では、安全マージンを伴う破壊条件の外側にあることが求められ、それが、銃が、一般に、数十cmの寸法を有する理由である。1.5kV.mm-1の値は、10-4mbarにおける真空の破壊しきい値に対応し、3kV.mm-1の値は、10-5mbarにおける真空の破壊しきい値に対応する。
【0126】
逆に、小型銃は、破壊条件に非常に近い:本発明によるデバイスは、破壊の限界で動作する。なぜなら、一方では、低減された大きさで高電圧を印加する必要があるため、他方では、システムに対して十分に小型化された圧力計の挿入ができないためである。
【0127】
銃の内部の電気的破壊は、先行技術におけるような、より高い真空によってではなく、逆に、銃の破壊電圧よりわずかに低い電圧に調整されたスパークギャップを備える破壊検出器CLに関連付けられた、あまり著しくない真空、または疑似真空によってさえ回避され、警告信号を発して、動作条件を破壊条件から少し遠ざけることを可能にする。
【0128】
本発明による破壊検出器CLは、以下を備える:
- 誘電率の高い絶縁材料で作られた、たとえば、Peekで作られた基板1。
- 同様に導電性である、ステム3に接続された伝導性リング2であって、2つは、電気的に接続され、陽極の電位とされている。
- ボーリング内をスライドし、図示されていないが、たとえば、マイクロメートルネジの影響下で、放射状に変位させることができる導電性ステム4。
【0129】
中央のボーリングにかろうじて突き出ているのが見えるステム4の端部は、陽極ANと光電陰極PHとの間の最短の電気経路の距離よりもわずかに短い距離に配置される。この陽極ANと光電陰極PHとの距離は、銃のチャンバを機能させるために選択された電圧に応じて変化するために、これに応じて、ステム4の端部と、陽極の電位にあるリングとの間の距離を調整して、同じ値を有するように、または非常にわずかに低くなるようにする必要がある。優先的な代替案によれば、ステム4は陰極PHと一体的であり、陽極ANおよび光電陰極PHの距離が調整されたとき、ステム4の頂点と、リング2との間の距離が、同時に、同じ比率に変更される。
【0130】
実施形態によれば、陽極ANおよび光電陰極PHは、300μmの距離Lだけ離される。大気圧での空気の電気抵抗は36kVcm-1であり、これは、1080Vの電位差の場合、300μmに等しい。本発明によるデバイスは、最大10kVで動作することができ、これは破壊を回避するのに十分ではなく、したがって、真空を形成するという事実は、システムに損傷を与える可能性のある電気アークの形成の前に、この最大電圧を上げることを可能にし、ユーザにリスクをもたらす可能性がある。
【0131】
分析されるサンプルの必要性に応じて、真空が非常に弱いか、または非真空であることに注意することが重要である。これは、ポンピングデバイスによって行われるが、たとえば、測定キャンペーンの前など、時々使用される。
【0132】
有利には、本発明によるデバイスは、10-5mbarを超える、そしてしばしば10-7mbarを超える真空下で動作するデバイスのような、重くて常にアクティブなデバイスを必要としない。
【0133】
有利には、破壊検出器CLのおかげで、本発明によるデバイスの使用のために、圧力の正確な測定は必要ではない。
【0134】
有利には、本発明によるデバイスは、圧力が十分に低くなく、破壊のリスクを表す可能性があるときに、ユーザに警告するか、またはシステムを停止することを可能にする。
【0135】
この機能に応答するために;システムは、電子ボードに接続されたアースを備える。このアースは、絶縁スペーサとして機能する較正済みのリングのおかげで、陰極よりも陽極に近くなるように配置される。したがって、陽極とアースとの間の破壊がより早く発生し、システムの破壊の上流で情報を処理することが可能となる。
【0136】
図3に示される、破壊を検出するための回路は、「Vin」に光電陰極PHの電圧を提供する一方、回路の残りの部分および陽極ANは、アースを基準としている。各スパークにおいて、出力「Vout」にパルスが生成される。したがって、出力「Vout」における信号を使用して、ユーザに、電気的破壊のリスクを警告することができる。
【0137】
上記で論じた
図4および
図5は、異方性開口部を有する陽極ANの2つの実施形態を示している。
【0138】
図6は、陽極ANの断面図を示しており、この断面は、陽極ANの最小直径を通過する。実施形態によれば、陽極は、電子ビームの伝搬軸に対応する軸zに直交する、厚さ700μmのサファイアで作られた絶縁基板S上に堆積される。実施形態によれば、陽極ANは、たとえば、穴あき基板上に取り付けられた導電性フィルムから構成される単一の同じ電極である。
【0139】
図5に示されるように、荷電粒子の通過のための開口部は、スロット形状であり得る。この場合、大径GDは、陽極の端部まで延びており、それを絶縁要素によって機械的にともに接続された2つの別個の要素に切断するようになっている。それで、陽極ANは、1つは電圧U-Δvに曝され、もう1つはU+Δvに曝された2つの平行なリップを備える。
【0140】
実施形態によれば、並列のいくつかのソースポイントのためのいくつかの並列スロットを想定することも可能である。
【0141】
実施形態によれば、そのようなスロット形状の陽極は、基板S上に取り付けられた導体から構成され得、平行なエッジを有して、全体が、xに沿った非常に小さい大きさの、yに沿った細長いスロットによって切断されている。この構成によれば、発光電陰極と比較して1kV以上の電位をもつが、互いに電気的に絶縁された2つの別個の電極を得ることが可能である。それらはまた、それらの間に陰極の電圧と比較して、小さいが、数十または数百ボルトであり得る電位差を有する可能性があり、したがって、それらのリップの間に電場Eを形成する。この電場Eは、電子パケットの到着と同期して経時的に変化し得、これによって、電子パケットの両端部が、同じ電界Eを経験しないようになる。したがって、
図6の図では、各パケットの最初の電子は、それを電極E2に向かって偏向させる重要な電界Eを経験し、この電界は、後続の電子では、パケットの最後の電子について、最大でゼロ電界まで減少する。これは、電子のパケットの軸を回転させる効果があり、したがって、伝搬軸に垂直なその投影を増加させ、空間的測定を可能にし、空間的測定から時間的測定が推定される。好ましくは、電極E1およびE2は、50Ωのインピーダンスの「コプレーナマイクロストリップライン」を構成し、これらの電極に沿って非常に急速な立ち上がりエッジまたはトレーリングエッジを可能にする。
【0142】
言い換えれば、陽極が、互いに向き合う2つの平坦なリップで構成されているとき、わずかな距離だけ離れ、厳密に不変であるこれら2つのリップは、異なる電位となる。これは、発生器Gが、電子の小さなパケットによって反射された短い持続時間psまたはfsのパルスでパルス化されるときに有利である。それで、陽極は、同時にいくつかの機能を果たす。
【0143】
代替案によれば、電極E1およびE2に印加される定電位VE1およびVE2は、比較的小さいが経時的に変化する差分ΔVEを有する。それで、陽極は、その加速機能に加えて、電子ビームの時間的診断を可能にするデフレクタの機能を有する。これは、この時間的診断の原則であり、「ストリーキング」またはスキャンと呼ばれ、したがって、次のように要約できる:電子のパケットは、異なる電位の2つの要素を有する小さな場を通過させられ、小さな場は、電子のパケットの伝搬方向に対して横方向に、時間に応じて振動する電場に曝されている。したがって、電子のパケットは、最初の伝搬軸zに対して時間に応じて偏向される。持続時間の測定は間接的であり、マイクロチャネルおよびリンスクリーンのウェーハタイプの検出器に投影された電子のパケットの空間的寸法から推定され:パケットが、時間的に長くなるほど、検出器上のパケットの画像は大きくなる。ここで、電子のパケットは、陽極を構成するブレードの厚さによって大きさが与えられる場を通過させられる。
【0144】
陽極の2つのリップに電圧をかけるという事実は、たとえば、+/-20Vの電圧の場合に30μm、+/-100Vの場合に180μmのビームの変位を取得することを可能にする。
【0145】
有利には、この実施形態は、陽極のレベルで、直接的に、走査システムの統合を可能にする。
【0146】
統合された走査システムを備えた陽極の例示的な実施形態。電極は、50Ωの「コプレーナマイクロストリップライン」を構成するように設計される。この構成により、このデバイスの時間分解スキャンモードをテストすることが可能となる。陽極プレートは、デバイスの最も複雑な部分である。これは、700μmにカットされたサファイア基板であり、電極が出て中央で分割され、電子が通過できるように、たとえば100μmのスロットを有する。サンプルプレートとの接触を避けるために、背面は、任意選択的に、中央で薄くされる。
【0147】
静的モードでは、陽極の電極に差分電圧がない場合、ビームは、20μm未満の低減された大きさを維持する。電子ビームの大きさは、光電陰極に入射する光子のビームの大きさよりも大きいが、同じ大きさのオーダである。スキャニングモードでは、陽極の電極に電圧がかかるため、このサイズは、100μm/100Vのオーダの感度、すなわち、電極用に電圧+/-100Vのサンプルレベルで、200μmのシミュレートされた変位で、維持される。最大偏向は、スロットの形状に依存し、+/-500Vの電圧で1mmのオーダである。これらの値は、スロットに垂直な変位に対して有効であり、サンプルのレベルにおいて、陽極から700μmにおいて測定される。
【0148】
陽極ANと、分析されるサンプルEとの間の距離d1は小さく、60mm未満、好ましくは0<d1≦0.7mmである。したがって、サンプルEを、荷電粒子の発生器Gのチャンバの内部または外部に配置することが有利である可能性がある。陽極およびサンプルの電位がゼロの場合を除いて、電荷の移動を避けるために、分析されるサンプルが陽極と接触していないことが重要である。
【0149】
有利には、レーザビームをトリガする入射が完全に習得され得る場合、光学ベンチまたは他の任意のマウンティング上で水平または垂直位置で小型銃を使用することが可能である。その後、垂直位置のビームで液体サンプルを分析することが可能である。
【0150】
水平位置におけるシステムの使用は、特に、液体サンプルと作用する可能性を提供する:サンプルの液滴は、電子のエネルギに適した出力インターフェース、たとえば、2nmと200nmとの間で構成された厚さを有するSi3N4またはグラフェンの極薄膜に位置づけられる。
【0151】
先行技術では、電子ビームは、真空チャンバ内に配置されたサンプルに向けられる。有利には、本発明によるデバイスは、電子ビームが、小型化された真空チャンバを構成する小型銃から出るようにされるので、サンプルが大気圧に留まる可能性を提供する。
【0152】
真空に耐えるサンプルの研究の代替案は、サンプルを小型銃のチャンバに直接、放出に可能な限り近づけて配置することであり、研究する現象、たとえば、シンチレーションの検出が、サンプルのすぐ後ろに配置された検出器によって実行される。
【0153】
サンプルは、光電陰極、陽極、または検出器と同じように、小型銃のモジュールとして設計され得る。
【0154】
図7は、デバイスの光トリガリングのための異なる幾何学的構成を示している。
【0155】
レーザビームを、同一直線上にある電子ビームから分離できることが重要である。これを行う手法の1つは、レーザビームおよび電子ビームがターゲット上で同一直線上にないように、レーザLP_UVを、通常の入射とは異なる入射で光電陰極PHに送ることである。それに加えて、陽極ANのスロットは、ビームLP_UVが、システムを通過しないように十分に閉じられる。実施形態によれば、30から45°の角度が、この形状で使用され得る。
【0156】
実施形態によれば、レーザの発射軸は、ある点で、調整可能な角度よりも小さく対象に衝突する。実施形態によれば、衝突の角度は90°とは異なり、好ましくは30から45°の間に含まれる。
【0157】
小型銃のこの代替案によれば、モジュール方式で動作するように設計され、いくつかの使用モードが想定される:
【0158】
法線から離れた入射角、法線に近いまたは正確には法線上の角度であるが、スロットに平行な相対変位でxに沿って分割された陽極により、x軸に沿ったビームの変位の緯度を有するレーザLP_UVで、小型銃の入力面を攻撃するように特に選択することができる。したがって、光電陰極の異なるゾーンに衝突して動作することが可能である。
【0159】
小型銃の出力面を攻撃することにより、サンプルのバックライティングで動作することを選択することが可能である。
【0160】
有利には、これらの実施形態は、分析に使用されるサンプルおよび検出モジュールのレベルでの電子ビームおよびビームLP_UVのより良好な分離のおかげで、分析の精度および信頼性を高めることを可能にする。
【0161】
第1の代替案によれば、小型銃は固定されたままであり、小型銃の入口面または出口面に入射するレーザビームの軸が変更される。
【0162】
第2の代替案によれば、レーザビームは固定されたままであり、小型銃の位置は、レーザビームの軸に対して変更される。
【0163】
第3の代替案によれば、衝突点は、中心から外れた点で光電陰極上に配置され、衝突点の変更が望まれるとき、光電陰極は、解体せずに(およびチャンバ内の圧力を変更せずに)手動で回転される。
【0164】
言い換えれば、レーザの衝突点の変更は、クレードル内の光電陰極を変位させることによって、またはスロット上のレーザの方向を変更することによって行うことができる。有利には、光電陰極へのレーザの衝突点の変更は、チャンバVの内部の真空を破壊することなく行われる。
【0165】
以下の表では、陰極-陽極距離および陰極-サンプル距離に応じて取得された時間的分解能を見ることができる。
【0166】
【0167】
いくつかの例示的な実験が以下に説明される。
【0168】
第1は、以下の動作が実行される自律システムのために実現される:
- ポンピンググループ(プライマリポンプ+ターボポンプ)により10-5mbarまでポンピングする。
- カップリングバルブを閉じる。
- ポンピンググループから電子小型銃を切り離す。
- 電子小型銃をユーザのレーザ実験室に輸送する。
- ミニチャンバを光トリガリングレーザの前の光学テーブルにクランプする。
- ミニイオンポンプが、所望の実験の持続時間に応じてミニチャンバに接続され得る(現在、静的真空で最大1週間が可能)。
【0169】
この構成では、研究されるサンプルは、真空下に配置される前に、ミニチャンバに配置する必要がある。
【0170】
第2は、既存のシステムに結合されたシステムで実現され、以下の動作が実行される:
- 電子小型銃を、任意選択的にレーザ源を備えたユーザ実験室に輸送する。
【0171】
- ミニチャンバを、一般的にはより大きな大きさの、既存のシステムにクランプする。
【0172】
この構成では、研究されるサンプルは、真空下に配置される前に、最大寸法のチャンバに配置する必要があり、カップリングバルブは、出力モジュールの側面にある。真空は、10-5から10-7mbar、またはそれ未満の受取システムによって管理される。一般に、検出手段は、既存のシステム自体に結合されている。
【0173】
第3は、自律システムを用いて大気圧で行われ、以下の方式で実行される:
- ポンピンググループ(プライマリポンプ+ターボポンプ)により最大10-4mbarまでポンピングする。
- カップリングバルブを閉じる。
- ポンピンググループから電子小型銃を切り離す。
- 電子小型銃をユーザのレーザ実験室に輸送する。
- ミニチャンバを光トリガリングレーザの前の光学テーブルにクランプする。
【0174】
ミニイオンポンプは、所望の実験の持続時間に応じてミニチャンバに接続され得る(現在、静的真空で最大1週間が可能)。この構成では、膜を介して空気に抽出できるようにするために、電圧は-10kV以上である。研究されるサンプルは、ミニチャンバの外部に残り、水平に配置された、出口の極薄膜に配置されるか、または、垂直の液体またはガス状のジェットを含む場合は、垂直に配置された極薄膜に配置される。
【0175】
第4は、自律システムを用いて大気圧で行われ、以下の方式で実行される:
- ポンピンググループ(プライマリポンプ+ターボポンプ)により最大10-4mbarまでポンピングする。
- カップリングバルブを閉じる。
- ポンピンググループから電子小型銃を切り離す。
- 電子小型銃を、任意選択的にレーザ源を備えたユーザ実験室に輸送する。
- ミニチャンバを、一般的にはより大きな寸法である、実験テーブルにクランプする。
【0176】
この構成では、膜を通した空気への抽出を可能にするために、電圧は-10kV以上であり、研究されるサンプルは、ミニチャンバの外部に残り、水平に配置された、出口の極薄膜上に配置されるか、または、垂直の液体またはガス状のジェットを含む場合は、垂直に配置された極薄膜上に配置される。真空は一般に、10-5から10-7mbar、またはそれ以下でさえもあり、受取システムによって管理される。一般に、検出手段は、受取システム自体に結合されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
- 分析されるサンプルは、サンプルが外部に配置されたとき、0<d2≦60mmとなるように、診断モジュールから距離d2にあり、d2は、サンプルが内部に配置されたとき、0<d2≦0.7mmとなる。したがって、サンプルおよび診断モジュールのいくつかの位置が可能である:
- 診断モジュールとサンプルが内部にある。
- 内部にサンプルがあり、外部に診断モジュールがある。
- 診断モジュールとサンプルが内部にある。
【国際調査報告】